ヒモ生活8巻レビュー
【理想のヒモ生活】あらすじ・ネタバレ・まとめ
ヒモ生活10巻レビュー
どんな本?
「理想のヒモ生活」とは、渡辺恒彦 氏によるライトノベル。
日本でブラック労働をしていた善治郎は久しぶりの休みの日に異世界に召喚された。
その召喚主は善治郎の好みドストライクの美女だった。
そんな彼女は大国の女王で、善治郎に婿に来て欲しいと言う。
善治郎は躊躇なく「はい」と返事をして地球で婿に行く準備をしていざ異世界へ、、
後宮に引き篭もるヒモ生活を享受出来ると思っだが、、
女王が妊娠したら悪阻が酷く、彼女の代理として政治の表舞台へと行くと、世間が彼を後宮に引きこもる事を許してくれなくなった。
さらに彼の持ち物のビー玉が隣国双王国の付与魔術の媒体として最高品であると判ると、、
さらに善治郎の血統も、、
そんなタイトル詐欺と言いたくなるほど大忙しな善治郎のヒモ生活。
読んだラノベのタイトル
理想のヒモ生活 9
著者:渡辺恒彦 氏 イラスト: 文倉 十 氏
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あらすじ・内容
待望の大人気シリーズ第9弾! 王位継承に絡む権力争いに巻き込まれるヒモ男。新たな魔道具が命運を握る!?
『瞬間移動』の魔法を会得し、双王国へやってきた善治郎を待っていたのは、ブルーノ王の退位宣言であった。善治郎はもちろん、双王国の貴族達にとっても寝耳に水の宣言に、騒然とする『紫卵宮』。末王子であるラルゴ王子を中心に、多くの貴族は、突然の王の退位に反対の姿勢を示す。そんなラルゴ王子達をブルーノ王は尊き客人にいらぬ誤解をさせることになるといさめる。また、双王国では、新たなる王は即位する際に、四人の公爵に『魔道具』を送り、四公から返礼の品をもらうことで初めて、王として認められるのだが……。善治郎は他国の王位継承に絡む、権力争いに巻き込まれていくのだった―――。
理想のヒモ生活9
感想
善治郎が初めて外国に行ったが、突然その国の国王が退位を宣言する。
その裏では、『完全融合派』の国王と王太子がフランチェスコ王子を時期王太子にするよう企みがあると、善治郎を追うように自国に帰還して来たフランチェスコ王子と彼の叔父のラルゴ王子の暴露で知る。
しかもそれを善治郎の息子、カルロス善吉を国内結束のダシに使い、双王国の王族、貴族のカ敵意をカルロス善吉に向けさせる策略に善治郎が完全にブチギレた。
そのせいで、善治郎はブルーノ王・ジュゼッペ王太子に完全な隔意を持つことになる。
そこで善治郎は彼等の脚を引っ張るためにブルーノ王・ジュゼッペ王太子が唸ざるえない魔道具を提案する事を決意する。
そして、フランチェスコ王子の助力のもと善治郎は放浪の二公爵の為になる魔道具を開発する。
そのお陰で、国王になりたくないフランチェスコ王子と、アホな甥を国王にしたくないラルゴ王子の思惑通りになるのだが、、、
カルロス善吉の為ならどんな無茶でも可能にしてしまう善治郎というイメージが出来てしまう。
そこにボソを噛む善治郎。。
気楽なヒモ生活とは完全に離れてしまったな。。。
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ヒモ生活8巻レビュー
【理想のヒモ生活】あらすじ・ネタバレ・まとめ
ヒモ生活10巻レビュー
考察・解説
女王アウラの妊娠
『理想のヒモ生活9』における「女王アウラの妊娠」は、夫が不在の中で抱える一人の妻としての不安や、我が子に対する愛情と為政者としての政治的思考の板挟み、そして家族を最優先する夫を支えようとする女王の決意を描くエピソードとして描かれている。
女王アウラの妊娠について、以下の4つのポイントから解説する。
1. 善治郎不在に伴う無意識の不安
・双王国へと赴いた善治郎の不在時、アウラは朝目を覚ました際に無意識のうちに隣の予備の小さなベッドを探ってしまった。
・自分が妊娠中であり、さらに愛する夫が自らの権力が及ばない他国へ行っている状況から、さしもの女傑アウラであっても無意識レベルで不安を抱いていた。
・いつの間にか独り寝に違和感を覚えるほど夫の存在に慣れていたことを自覚している。
2. 酷暑期の生活管理とカルロスへの懸念
・外気が体温を上回る酷暑期の真っ只中において、アウラは母体の健康を最優先し、木戸を閉めきりエアコンの効いた寝室で過ごし、食事もそこで取るなどの対応をしていた。
・一方で、第一子であるカルロスが涼しい部屋に慣れきってしまい、部屋の外に出ると泣き出す状態になっていることを危惧する。
・次期王となるカルロスが後宮の快適さに依存しすぎることを防ぐため、健康を害さない範囲で氷の供給を止め、国の気候に慣らすことも検討し始めた。
3. 第二子の性別に対する政治的期待と鬱屈
・アウラは腹の中の第二子について、もし男児であれば年齢の近いカルロスとの間で将来の王位継承の不安要素になり得ると懸念していた。
・女児であれば後宮で育て、パソコンをはじめとする電化製品を「王家の武器」として管理・継承させる分家王族にできると考えており、二重の意味で女児誕生を望んでいた。
・しかし、我が子への愛情にまで政治的な楔が打ち込まれる自らの立場には、鬱屈した思いを抱いていた。
4. 家族愛を優先する夫へのフォローの決意
・帰国した善治郎から、双王国でカルロスの秘密を政争に巻き込まれそうになったため、それを防ごうと画期的な魔道具(新型「双燃紙」)のアイデアを双王国に提供したと報告を受ける。
・アウラは、その行動が双王国側に「カルロスを脅しの材料にすれば屈する」という実績を示してしまい、長期的には息子を危険に晒す結果になったと厳しく指摘した。
・しかし同時に、善治郎が子の命をチップにした冷徹なパワーゲームを行えない、情の深い人間であることを受け入れる。
・そして、その政治的な甘さを女王である自分がフォローして彼を支え続けるという決意を新たにした。
まとめ
第9巻における女王アウラの妊娠期の描写は、彼女が母としての情愛と女王としての冷徹な政治的判断の間で揺れ動く姿を浮き彫りにしている。善治郎への深い愛情と依存を自覚しつつも、彼の家族愛ゆえの政治的弱さを自らが補うと決意するアウラの、強さと優しさが入り交じった魅力的なエピソードとなっている。
双王国の王位継承問題
『理想のヒモ生活9』における「双王国の王位継承問題」は、単なる次期国王の座を巡る争いではなく、王家の成り立ちや血統魔法の密約、そして他国の王子までもを巻き込んだ、複雑で冷徹な権力闘争として描かれている。
双王国の王位継承問題について、以下の4つのポイントから解説する。
1. 突然の退位宣言と善治郎の政治利用
・現国王のブルーノ三世は、善治郎との公式謁見の場において、突如として次期国王ジュゼッペ王太子への譲位を宣言した。
・これは、他国の大国の王族である善治郎を「生き証人」として同席させることで、国内の有力貴族や他の王族が表立って反対できない状況を作り出し、強引に王位継承を既成事実化しようとする老獪な罠であった。
2. 表向きの対立軸と情報操作
・次期王位を狙う野心家としてジュゼッペ王太子と対立していると噂される第五王子ラルゴだが、それはラルゴの発言力を削ぐためにブルーノ王達が流した情報操作であった。
・両陣営の表向きの対立軸として設定されていたのは「四公の処遇」であり、ジュゼッペ王太子は経済力のある定住の二公を重視し、ラルゴ王子は国境防衛を担う放浪の二公を保護すべきだと主張していた。
3. 真の対立軸である「完全融合派」の悲願
・ラルゴ王子の真の目的は自身が王になることではなく、ブルーノ王とジュゼッペ王太子が企む「フランチェスコ王子の次期王太子任命」を阻止することであった。
・ブルーノ王達は、シャロワ王家とジルベール法王家を統合し、二つの血統魔法を独占する新たな王家の成立を目指す「完全融合派」であり、二つの魔法を使えるフランチェスコ王子をその象徴として王位に据えようと長年画策していた。
4. カルロス・善吉への飛び火と善治郎の反撃
・ブルーノ王達は、二つの魔法の素質を持つカープァ王国のカルロス・善吉の存在を脅威として喧伝し、それに対抗する口実としてフランチェスコ王子を表舞台に引き上げようと企んでいた。
・愛息を他国の政争のダシにされようとしていることを知って激怒した善治郎は、ラルゴ王子の側につくことを決意した。
・そして、新王即位の際の四公への魔道具贈与において、放浪の二公に有利な「新型双燃紙」を自ら提案・採用させることでジュゼッペ王太子に政治的譲歩を迫り、フランチェスコ王子の王太子就任を当面の間阻止することに成功した。
まとめ
双王国の王位継承問題は、長きにわたる王家の思想と密約が絡み合った根深い問題であり、善治郎が初めて明確な敵意を持って他国の陰謀に立ち向かう契機となった出来事である。善治郎が現代日本の知識である感熱紙の発想を異世界の魔法と融合させ、大国の王太子を政治的に出し抜いて家族を守り抜いた手腕が光るエピソードとなっている。
砂漠の四公爵
『理想のヒモ生活9』における「砂漠の四公爵」は、双王国の建国の歴史に深く関わり、独自の文化と権力を有する一方で、内部に深刻な経済格差や王家との対立を抱える複雑な存在として描かれている。
砂漠の四公爵について、以下の4つのポイントから解説する。
1. 双王国建国の立役者と絶大な権力
・四公爵は、双王国建国前から砂漠を実効支配していた四部族の族長家がルーツである。
・彼らは精強な戦士と広大な土地を持っていたが、血統魔法を持たないため他国から国と認められていなかった。
・そこに北大陸から逃れてきたシャロワ王家とジルベール法王家が合流し、互いに協力して建国したという歴史的経緯がある。
・そのため、現在でもシャロワ王家から独立したような絶大な権力と広大な領地を保持しており、新王即位時には王家から四公へ魔道具を贈与する伝統が存在する。
2. 放浪と定住による二極化
・四公は現在、大きく二つの陣営に分かれている。
・エレハリューコ公爵家とリーヤーフォン公爵家は、昔ながらの砂漠の放浪生活を続け、独立独歩の気風を保ち王家とは距離を置く「放浪の二公」である。
・対して、エレメンタカト公爵家とアニミーヤム公爵家は放浪をやめて定住し、王家に臣従する道を選んだ「定住の二公」である。
・この生活様式の違いは、民族衣装と北大陸由来のドレスという服装の違いや、自らを族長家と呼ぶか公爵家と呼ぶかといった帰属意識の差として明確に表れている。
3. 深刻な経済格差とシャロワ王家の思惑
・定住の二公は、領内にある金山や塩湖を魔道具によって開発し、莫大な財力を築いている。
・一方、放浪の二公は経済力で大きく劣っており、人口も倍以上の差が開いている。
・この格差を利用し、ブルーノ王とジュゼッペ王太子は定住の二公を優遇し、将来的には放浪の二公を侯爵に格下げしようと画策している。
・しかし、ラルゴ王子は国境防衛を担う精強な放浪の二公の没落は国益を損なうと考え、彼らを支援して格差を埋めるべきだと主張しており、この方針の違いが王家内の表向きの対立軸となっている。
4. 善治郎との交渉と新型双燃紙による支援
・善治郎はジュゼッペ王太子から四公へ贈る魔道具の助言役を任され、四公の代理人である四人の美女たちと面会した。
・彼女たちは単なるハニートラップ要員ではなく、各家の利益を代弁する優秀な交渉人であった。
・善治郎は、家族を守るための政治的取引としてラルゴ王子側に付き、放浪の二公に配慮した魔道具を提案することを決意した。
・放浪の二公の領地に生息する害獣「化竜」の革を利用した「新型双燃紙」を開発・提案することで、善治郎は彼らに新たな資源価値をもたらし、経済格差を是正する可能性を提示したのである。
まとめ
砂漠の四公爵は、双王国の複雑な成り立ちと抱える矛盾を象徴する存在である。独自の文化や誇りを持つ彼らが王位継承問題や派閥争いと深く絡み合う中で、善治郎が現代知識と魔法を組み合わせた発明によってそのパワーバランスに影響を与え、国のあり方に関わっていく展開は、本巻の大きな見どころとなっている。
新型双燃紙の開発
『理想のヒモ生活9』における「新型双燃紙の開発」は、善治郎が愛する息子カルロス・善吉を他国の政争から守るため、現代日本の知識と異世界の魔法を見事に融合させ、双王国の複雑な政治状況を打破した逆転劇として描かれている。
新型双燃紙の開発について、以下の4つのポイントから解説する。
1. 開発の動機と政治的背景
善治郎が新たな魔道具の開発に迫られた最大の理由は、ブルーノ王とジュゼッペ王太子が、二つの血統魔法を持つカルロス・善吉の存在を利用して、フランチェスコ王子の王太子即位を強行しようと企んでいたためである。
・これを阻止すべく、善治郎はラルゴ王子と裏で手を結んだ。
・ラルゴ王子からの「放浪の二公に配慮した魔道具を提案してほしい」という依頼に応えるため、善治郎は放浪の二公の一角であるリーヤーフォン公爵家が希望していた双燃紙に着目することになる。
2. ピサーニ侯爵との対話と「感熱紙」の着想
魔道具開発の決定的なブレイクスルーは、ピサーニ侯爵との何気ない会話からもたらされた。
・侯爵から砂漠の害獣である化竜の革が、死後も温度によって色を変える性質を持つため全く使い道がないと聞かされた。
・それを聞いた善治郎は、化竜の革を現代日本の感熱紙と同じものであると見抜く。
・化竜は放浪の二公のもう一角であるエレハリューコ公爵領に多く生息しており、これを資源として活用できれば、放浪の二公双方に多大な利益をもたらす完璧な条件が揃うことになった。
3. フランチェスコ王子との共同開発
善治郎は、魔道具の専門家であり、自身も王太子即位を望んでいないフランチェスコ王子に協力を仰いだ。
・燃える竜皮紙の代わりに熱伝導率の高い薄い金属板に双燃紙の効果を付与し、熱した金属活字と化竜の革を組み合わせるという善治郎の斬新なアイデアを提示した。
・フランチェスコ王子はこの提案に対し、技術的な側面から改良を加えた。
・魔道具だけで完結させるのではなく、外部の素材(化竜の革)を組み合わせるという発想は、生粋の付与術士であるシャロワ王家の人間には思いつかないものであった。
4. 王と王太子への実演と政治的勝利
期日当日、善治郎はブルーノ王とジュゼッペ王太子の前で試作品の実演を行った。
・熱した金属活字を金属板に押し当てると、もう一枚の金属板の上に置かれた化竜の革が熱に反応して変色し、見事に文字が浮かび上がった。
・一度きりの使い捨てだった双燃紙が何度でも繰り返し使えるようになるこの大発明に、ジュゼッペ王太子は四公への贈与魔道具として採用せざるを得なくなった。
・これにより、善治郎はラルゴ王子側の意向を通すことに成功し、息子を巻き込む陰謀を未然に防ぐという当初の目的を達成した。
まとめ
新型双燃紙の開発は、魔法を持たない善治郎が、現代の知識である感熱紙や活字の概念と異世界の魔法技術を掛け合わせることで、双王国の国益に直結する大発明を生み出した痛快なエピソードである。同時に、愛する家族を守るためならば自ら進んで他国の権力闘争に介入し、大国の王や王太子をも政治的に出し抜いてみせる善治郎の、父親としての強さと特異な為政者としての才能が遺憾なく発揮された重要な出来事となっている。
カルロスの政治利用
『理想のヒモ生活9』における「カルロスの政治利用」は、二つの血統魔法の素質を持つ王子の存在が他国の権力闘争に組み込まれようとした事件である。善治郎が初めて他国の政争に牙を剥く契機となったと同時に、女王アウラと善治郎の政治的価値観の違いを浮き彫りにした重要なエピソードとして描かれている。
カルロスの政治利用について、以下の4つのポイントから解説する。
1. 「完全融合派」による外の脅威としての利用計画
双王国のブルーノ王とジュゼッペ王太子は、シャロワ王家とジルベール法王家を統合する「完全融合派」であり、両家の血統魔法を使えるフランチェスコ王子を次期王太子に据えようと企んでいた。
・この計画は、両王家の密約に反する国内に乱を呼ぶ行為であった。
・そこで彼らは、カープァ王国とシャロワ王家の血を引き、二つの血統魔法の素質を持つカルロス・善吉の存在を「外の脅威」として双王国内に喧伝した。
・それに対抗するという口実を設けることで、フランチェスコ王子を表舞台に引き上げようと画策していた。
2. 善治郎の激怒とラルゴ王子との結託
ラルゴ王子からこの陰謀を聞かされた善治郎は、愛する息子が他国の政争のダシにされ、危険な矢面に立たされようとしていることに激しい怒りを覚えた。
・カルロスを守るため、善治郎はブルーノ王たちの目論見を阻止しようとラルゴ王子の側につくことを決意した。
・新王即位に伴う四公への贈与魔道具の選定において、放浪の二公に配慮した画期的な魔道具「新型双燃紙」を自ら開発・提案した。
・これにより、ジュゼッペ王太子に政治的譲歩を迫り、フランチェスコ王子の王太子就任を当面阻止することに成功した。
3. アウラの懸念と「脅しに屈した実績」
帰国した善治郎から報告を受けた女王アウラは、復帰した夫の行動を評価しつつも、政治的観点から厳しい指摘を行った。
・善治郎がカルロスの問題に絡めて画期的な魔道具のアイデアを提出した行為を、アウラは冷静に分析した。
・この対応は、双王国側に「カルロスを脅しの材料にすれば、カープァ王配は屈して国益をもたらす」という実績を示したことになると指摘した。
・これは長期的には双王国が同じ手口を繰り返す可能性を高め、結果的にカルロスをより危険に晒す失態でもあった。
4. 女王としてのリカバリーと夫婦の絆
この事態を挽回するため、アウラは双王国に「この一件は高くつく」と思い知らせる強硬策に出た。
・新型双燃紙の複数組の無償譲渡や、カープァ王国への優先的かつ国内同等価格での販売を要求する公式文書を用意し、善治郎にブルーノ王へ突きつけるよう指示した。
・アウラは、善治郎が我が子の命を天秤にかけるような冷徹なパワーゲームを行えない、情の深い人間であることを欠点ではなく特徴として受け入れた。
・そして、その政治的な甘さを女王である自分がフォローして彼を支え続けるという決意を新たにした。
まとめ
カルロスの政治利用は、愛する家族を守るために善治郎が異世界の魔法と現代知識を駆使して大国の陰謀を打ち破る展開を見せつつも、その背後にある為政者としての冷酷な現実を突きつけるエピソードである。夫の家族愛ゆえの弱さを妻である女王が冷静に補い、二人三脚で国と家族を運営していくという、本作ならではの夫婦の絆と政治ドラマが色濃く表れている。
治癒術士の派遣交渉
『理想のヒモ生活9』における「治癒術士の派遣交渉」は、善治郎が双王国を訪れた最大の目的でありながら、双王国の複雑な王位継承問題の駆け引きに利用される政治的取引として描かれている。
治癒術士の派遣交渉について、以下の4つのポイントから解説する。
1. 出産予定月の一ヶ月間の派遣確約
善治郎が双王国を訪れた最大の目的は、妊娠中の女王アウラの出産に備え、ジルベール法王家の治癒術士を確保することであった。
・ブルーノ王との私的面談において、善治郎がこの要件を切り出すと、ブルーノ王は意外にもあっさりと対応した。
・アウラの出産予定日近くの一ヶ月間、治癒術士を一名、カープァ王国に滞在させる準備は整えてあるという吉報を伝える。
・これにより、善治郎は目的の大部分を早々に達成することになった。
2. 長期契約の提示とブルーノ王の思惑
善治郎は万が一の事態に備え、緊急時の対応も求めていたが、治癒術士の予定は常に王侯貴族で埋まっているため、急な割り込みは他国との軋轢を生むとブルーノ王から釘を刺される。
・代案として、半年単位で治癒術士を雇う長期契約が提示された。
・しかし、それにはベネディクト法王との直接交渉が必要であり、ブルーノ王は双王国の王位継承問題の道筋が整うまでは紹介は難しいと告げる。
・これは暗に、他国の王族という看板を持つ善治郎を自国の政争の生きた魔除けとして長期間留め置くための政治的な駆け引きであった。
3. 善治郎の妥協と滞在の延長
ブルーノ王の思惑を正確に察した善治郎であったが、出産時の一ヶ月間の確約が取れただけでも十分な成果であると冷静に判断した。
・あくまで妻アウラの健康を最優先し、本国の状況次第で帰国するという条件をつけた。
・その上で、双王国の王位継承問題が解決するまで滞在を延長し、問題解決に尽力するという口約束を交わし、事実上の取引を成立させた。
4. 帰国後のアウラの判断と次期滞在の区切り
約一ヶ月ぶりにカープァ王国へ一時帰国した善治郎は、アウラに交渉結果を報告した。
・アウラは母子ともに健康である現状から、産み月の一ヶ月間派遣してもらえるならそれ以上は必要ないと判断した。
・治癒術士の派遣期間を延ばすために長期滞在するよりも、一刻も早く善治郎に帰国してほしいと望む。
・愛する妻の言葉を受けた善治郎は、次回の双王国滞在を十日間に区切り、そこで結果が出なければ帰国するという新たな決意を固めた。
まとめ
治癒術士の派遣交渉は、単なる医療者の手配にとどまらず、他国の王族を自国の政争に巻き込もうとする大国の老王のしたたかさと、それに対して家族の安全を第一に現実的な妥協点を見出す善治郎の交渉術を描いたエピソードである。最終的にアウラの愛情深い判断により善治郎の帰国が最優先される展開は、夫婦の強い絆を改めて浮き彫りにしている。
アウラの女王としての決意
『理想のヒモ生活9』における「アウラの女王としての決意」は、双王国から帰国した善治郎の報告を受けた女王アウラが、夫の政治的な甘さを指摘しつつも、それを欠点ではなく彼の情の深い本質として受け入れ、自らが女王として彼を支え守り抜く覚悟を固める重要なエピソードとして描かれている。
アウラの女王としての決意について、以下の4つのポイントから解説する。
1. 善治郎の報告と「脅しに屈した実績」への懸念
双王国から帰国した善治郎から、カルロス・善吉を巻き込む陰謀を防ぐために新型「双燃紙」を提案したという報告を受けたアウラは、その行動を評価しつつも、政治的観点から厳しい指摘を行った。
・善治郎がカルロスの問題に絡めて画期的な魔道具のアイデアを提出したことは、双王国側に「カルロスを脅しの材料にすれば、カープァ王配は屈して国益をもたらす」という実績を示してしまったことになる。
・これは長期的には双王国が同じ手口を繰り返す可能性を高め、結果的に息子をより危険に晒しかねない失態であるとアウラは分析した。
2. 双王国への強硬な対抗策の指示
善治郎の失敗を挽回するため、アウラは双王国に「この一件は高くつく」と思い知らせる強硬策に出た。
・シャロワ王家に対する新型「双燃紙」の複数組無償譲渡や、カープァ王国への優先的かつ国内同等価格での販売を要求する公式文書を用意した。
・これを善治郎に次回の訪問時にブルーノ王へ突きつけるよう指示する。
・これにより、夫が作ってしまった政治的な隙を自らの手で素早くフォローした。
3. 善治郎の「情の深さ」への理解と受容
善治郎が入浴に向かい一人になった後、アウラは夫との判断のズレについて考えを巡らせた。
・アウラ自身であれば、カルロスの秘密を暴露すると脅されても簡単には譲歩しなかったはずであった。
・しかし、善治郎がそうできなかったのは、彼が生まれついての王族ではなく、我が子が生命の危険に晒された場合に子の命をチップにした冷徹なパワーゲームを行えない、情の深い人間だからであると冷静に理解する。
・その性質は欠点ではなく、通常の王族では築けない深い信頼関係を築く要因になり得ると前向きに受け入れた。
4. 夫の弱さを補う「女王としての決意」
アウラは、冷徹になりきれない善治郎の政治的な弱さをフォローし助けることこそが、自分の役割であると認識した。
・これまで異世界から来た彼にどれだけ助けられてきたかを思い返し、「そのくらい出来ずして、何が女王か」と自らに問いかけた。
・夫の家族愛ゆえの弱さを自らが補い、女王として彼を支え続けるという強い決意を、その瞳ににじませた。
まとめ
アウラの女王としての決意は、善治郎との間に生じた為政者としての価値観のズレを否定するのではなく、夫婦の絆と役割分担として昇華させたエピソードである。夫の家族を最優先する深い愛情を尊重しつつ、その裏で生じる政治的なリスクを冷徹な計算で自らが引き受けるアウラの姿は、彼女の妻としての深い愛情と、女王としての揺るぎない強さを象徴している。
ヒモ生活8巻レビュー
【理想のヒモ生活】あらすじ・ネタバレ・まとめ
ヒモ生活10巻レビュー
登場キャラクター
カープァ王国 王家・王宮
アウラ一世
カープァ王国の女王である。国政と軍事の直接指揮を執る。夫の善治郎を深く愛している。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国女王。
・物語内での具体的な行動や成果
第二子を妊娠したため、政務に支障が出ることを見越している。双王国への強硬な要求文書を用意し、善治郎に手渡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
国家の最高権力者として強い影響力を維持する。
善治郎・カープァ
現代日本から召喚された王配である。政治的野心を持たず家族を最優先に考える。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国王配。
・物語内での具体的な行動や成果
治癒術士の派遣を求めて双王国へ赴き、ブルーノ三世と面会した。ラルゴ王子と結託し、新型双燃紙を提案してジュゼッペ王太子の計画を阻止した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
カルロスを守るための行動が、結果的に双王国に対して影響力を示すことになった。
カルロス・善吉
アウラと善治郎の間に生まれた第一王子である。時空魔法と付与魔法の両方の素質を持つ。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国第一王子。
・物語内での具体的な行動や成果
赤斑熱から回復し、後宮の涼しい部屋で乳母と共に過ごしている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
二つの血統魔法を持つ可能性があるため、双王国の政治的駆け引きの材料として利用されそうになった。
ミシェル
王室付きの医師である。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国王室付き医師。
・物語内での具体的な行動や成果
アウラの懐妊を診断し、単独入浴を禁じる指示を出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
カープァ王国の医療における最高権威に就いている。
後宮の侍女・護衛・王宮関係者
アマンダ
後宮の侍女長である。規律に厳しく、後宮全体の管理と若い侍女の教育を担う。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国後宮侍女長。
・物語内での具体的な行動や成果
新人侍女たちに悪影響を与えている問題児三人組を侍女長室へ呼び出し、厳しく叱責した。本棟勤務を条件に提示して彼女たちの態度を改めさせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
後宮における実質的な責任者として権限を行使する。
イネス
後宮の清掃担当責任者である。善治郎の世話役として的確な助言を行う。
・所属組織、地位や役職
後宮清掃担当責任者。
・物語内での具体的な行動や成果
双王国へ同行し、善治郎の身の回りの世話や情報収集の補佐を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
善治郎からの信頼が厚く、相談役として重用されている。
カサンドラ
カルロス王子の乳母である。
・所属組織、地位や役職
カルロス王子の乳母。
・物語内での具体的な行動や成果
後宮の涼しい部屋でカルロス王子の世話を担当している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
エミリア
庭園担当責任者である。
・所属組織、地位や役職
後宮庭園担当責任者。
・物語内での具体的な行動や成果
雨期に若い侍女たちへ発電機の整備を命じ、作業後には水浴びと着替えを指示した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
オラジャ
浴室担当責任者である。寡黙で無表情な性格をしている。
・所属組織、地位や役職
後宮浴室担当責任者。
・物語内での具体的な行動や成果
口喧嘩をしていたフェーとドロレスに冷水を浴びせ、無言で注意を与えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ヴァネッサ
調理責任者である。豪快な性格で料理の腕前が高い。
・所属組織、地位や役職
後宮付き調理責任者。
・物語内での具体的な行動や成果
若い侍女たちに王宮料理の練習をさせ、厳しい指導を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
フェー
問題児三人組の一人と呼ばれる若い侍女である。小柄で楽観的な性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
後宮の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
新人侍女のルイサにLEDランタンの電池交換方法を教えた。携帯ゲーム機に熱中し、アマンダから叱責を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ドロレス
問題児三人組の一人と呼ばれる若い侍女である。長身で要領が良い。
・所属組織、地位や役職
後宮の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
新人のルイサに電池交換の補助を行った。アマンダから手抜き仕事を注意された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
レテ
問題児三人組の一人と呼ばれる若い侍女である。料理が得意でマイペースな性格をしている。
・所属組織、地位や役職
後宮の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
ニルダに即席のアイスクリームを作り振る舞った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ルイサ
新人後宮侍女である。平民出身で真面目な性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
後宮の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
フェーからLEDランタンの電池交換方法を教わり、その内容をアマンダへ報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ミレーラ
新人後宮侍女である。上品な雰囲気を持つお嬢様育ちの少女である。
・所属組織、地位や役職
後宮の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
洗濯済みのシーツを寝室へ運んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ニルダ・ガジール
新人後宮侍女である。ガジール辺境伯の次女で、純真で人懐っこい性格をしている。
・所属組織、地位や役職
後宮の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
夜間に携帯ゲーム機を借りるため控え室を訪れ、レテからアイスクリームを受け取った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ナタリオ・マルドナド
王軍の騎士であり、善治郎の直衛騎士を務める。
・所属組織、地位や役職
善治郎の直衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
双王国へ同行し、善治郎の護衛を担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ケイト・マルドナド
後宮の侍女である。ナタリオの妹に当たる。
・所属組織、地位や役職
後宮の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
双王国でナタリオから得た情報をイネスに伝達する役割を担った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
王国軍
プジョル・ギジェン
カープァ王国軍の将軍である。
・所属組織、地位や役職
竜弓騎兵団総団長。将軍。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎の双王国訪問に護衛隊の責任者として同行した。その後、若い大隊長に任務を引き継ぎカープァ王国へ帰国した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
エラディオ
カープァ王国軍の若い部隊長である。
・所属組織、地位や役職
大隊長。
・物語内での具体的な行動や成果
プジョル将軍から善治郎の護衛責任者を引き継いだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ウップサーラ王国
フレア・ウップサーラ
ウップサーラ王国の第一王女である。
・所属組織、地位や役職
ウップサーラ王国第一王女。
・物語内での具体的な行動や成果
側室候補として将来後宮へ入る可能性について、侍女たちの間で噂されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
シャロワ・ジルベール双王国
ブルーノ三世
シャロワ・ジルベール双王国の国王である。両王家の融合を目指している。
・所属組織、地位や役職
シャロワ・ジルベール双王国国王。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎との面会時に突如退位を宣言し、ジュゼッペ王太子の即位を強引に決定した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
完全融合派の中心人物として強大な権力を持つ。
ジュゼッペ
双王国の第一王子であり王太子である。次期国王の座に就く。
・所属組織、地位や役職
双王国第一王子。王太子。
・物語内での具体的な行動や成果
ブルーノ三世の退位宣言により、次期国王となることが決定した。四公への魔道具贈与に関して善治郎の提案を受け入れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
完全融合派としてフランチェスコの王太子就任を企図している。
ラルゴ
シャロワ王家の第五王子である。保守的な思想を持ち、完全融合派と対立している。
・所属組織、地位や役職
シャロワ王家第五王子。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎にカルロスが政治利用される危険性を伝え、協力を持ちかけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
兄ジュゼッペの計画を遅らせることに成功した。
フランチェスコ
シャロワ王家の王子である。付与魔法と治癒魔法の両方を使える。
・所属組織、地位や役職
シャロワ王家の王子。ジュゼッペの第一男子。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎を訪問し、防諜用の魔道具を設置して内密な会談を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
本人は完全融合派ではない可能性が高いと推測されている。
ボナ
シャロワ王家の王女である。
・所属組織、地位や役職
シャロワ王家の王女。
・物語内での具体的な行動や成果
近日中にカープァ王国から双王国へ帰国する見込みであると語られた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ヴェットール
ジュゼッペの第二男子である。
・所属組織、地位や役職
シャロワ王家の王子。
・物語内での具体的な行動や成果
フランチェスコの代わりに王太子に据えられるべき人物として言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
次期王太子候補として認識されている。
トスカ
ジュゼッペの正妃である。付与魔法の使い手として知られる。
・所属組織、地位や役職
ジュゼッペの正妃。
・物語内での具体的な行動や成果
完全融合派の一員として、ジュゼッペに同調していると語られた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
フィリベルト
シャロワ王家第二王子である。
・所属組織、地位や役職
シャロワ王家第二王子。
・物語内での具体的な行動や成果
この巻における具体的な行動の記述はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ベネディクト
ジルベール法王家の法王である。
・所属組織、地位や役職
ジルベール法王家法王。
・物語内での具体的な行動や成果
治癒術士の長期派遣に関する決定権を持つ人物として名が挙がった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
シャルル
ジルベール法王家の法王太子である。
・所属組織、地位や役職
ジルベール法王家法王太子。
・物語内での具体的な行動や成果
実の父であるジュゼッペ以上に、息子のフランチェスコを可愛がっていると言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
完全融合派の主要人物の一人である。
シュラ
エレハリューコ公爵家の娘である。気位が高く誇り高い性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
エレハリューコ公爵家第一女子。四公の代理。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎と面会し、自部族のために火炎柵の魔道具を希望した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ナズィーム
リーヤーフォン公爵家の娘である。温和な性格をしている。
・所属組織、地位や役職
リーヤーフォン公爵家三女。四公の代理。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎と面会し、双燃紙の魔道具を希望した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
タラーイェ
エレメンタカト公爵家の娘である。先進的な考えを持つ。
・所属組織、地位や役職
エレメンタカト公爵家の娘。四公の代理。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎と面会し、魔道具の希望について議論に参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
フィクリヤ
アニミーヤム公爵家の娘である。知的な雰囲気を持つ。
・所属組織、地位や役職
アニミーヤム公爵家の娘。四公の代理。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎と面会し、真水化の魔道具を希望した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ルクレツィア・ブロイ
ブロイ侯爵家の少女である。善治郎の世話役を務める。
・所属組織、地位や役職
ブロイ侯爵家の少女。善治郎の世話役。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎の予定管理や人脈構築を熱心に補佐した。夜会の同行や面談の同席を申し出た。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
フローラ
ルクレツィアの侍女である。
・所属組織、地位や役職
ルクレツィアの侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
ルクレツィアに対して、ブロイ侯爵家へ迷惑をかけないよう忠告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
アラン・ピサーニ
ピサーニ侯爵家の当主である。
・所属組織、地位や役職
ピサーニ侯爵。
・物語内での具体的な行動や成果
社交パーティで善治郎と対面した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
王家と深い縁を持つ人物として影響力を有する。
ヒモ生活8巻レビュー
【理想のヒモ生活】あらすじ・ネタバレ・まとめ
ヒモ生活10巻レビュー
展開まとめ
プロローグ 一人の寝室
カープァ王国の酷暑期
アウラが善治郎不在を実感する
アウラは後宮の寝室で目を覚まし、隣にいるはずの善治郎を無意識に探した。だが、善治郎はシャロワ・ジルベール双王国へ向かっており、アウラは独り寝に違和感を覚えるほど夫の存在に慣れていたことを自覚した。
善治郎が他国にいることと、自身が妊娠中であることが重なり、アウラは無意識の不安を抱いていた。それでも女王として気持ちを切り替え、侍女達を呼んで身支度を整えさせた。
酷暑期の後宮で生活を調整する
酷暑期の後宮では、外気が人の体温を上回るほど暑くなっていた。アウラは冷気を逃がさないため木戸を開けず、LEDスタンドライトを点けさせた。
妊娠中の身体を優先するため、アウラはしばらく食事を寝室で取ると決めた。通常の王族の食事とは異なる対応であったが、酷暑期の暑さを避けるためには必要な措置であった。
カルロスの寝室を訪ねる
アウラは朝食前にカルロス・善吉の様子を見るため、侍女達に守られながら寝室へ向かった。カルロスの部屋は氷と団扇で冷やされており、外気に比べれば十分に涼しい空間であった。
カサンドラは、カルロスが涼しい部屋では気持ちよく眠る一方、部屋の外に出るだけで泣き出すようになっていると報告した。アウラはその状況をまずいと考え、少しずつカープァ王国の気候に身体を慣らす必要があると判断した。
カルロスの将来を案じる
カルロスは善治郎が電化製品を後宮に持ち込んだ後に生まれたため、酷暑期を冷気なしで過ごした経験がなかった。だが男児であるカルロスは、いずれ後宮を出なければならず、後宮の快適さに慣れすぎれば将来苦労することになる。
アウラはミシェル医師と相談し、健康を損なわない範囲で氷の供給を止めることも考えるべきだと思った。カルロスは将来の王であり、酷暑期に後宮へ引きこもるような立場ではいられないためであった。
第二子への期待と政治的な思考
アウラは眠るカルロスを見つめながら、自分の腹に宿る第二子について考えた。もし第二子が女であれば、後宮で育て、電化製品やパソコンの扱いを継承させる分家王族にできると考えていた。
特にパソコンは王家の武器として次世代へ継承すべきものだった。善治郎はその生き方に拒否感を持ちながらも、必要性は理解していた。
一方で、第二子が男であれば、カルロスと年齢の近い同母同父の兄弟となり、将来の不安要素になり得た。そのためアウラは二重の意味で女児であることを望み、王という地位が我が子への愛情にまで政治的な楔を打ち込むことに鬱屈を覚えた。
第一章 謁見
双王国国王との公式謁見
善治郎の緊張した公式対面
善治郎はシャロワ王家の王宮である紫卵宮を訪れ、双王国国王との公式謁見に臨んだ。周囲を護衛に囲まれ、ルクレツィアに先導されながら謁見の間へ向かった善治郎は、礼法を守ることに神経を集中させながら進んだ。
玉座に座るブルーノ三世と対面した善治郎は、定型の挨拶を交わしながら公式の場を進めていった。
ブルーノ王の突然の退位宣言
定型的なやり取りが続く中、ブルーノ王は自らの退位を近々行うつもりだと突然宣言した。その発言は善治郎だけでなく双王国の貴族達にとっても寝耳に水であり、謁見の間は騒然となった。
その中でラルゴ王子は強く退位に反対したが、ブルーノ王は王太子ジュゼッペが国政の大半を担っていることを理由に退位の意思を崩さなかった。
ラルゴ王子との対立
ラルゴ王子はブルーノ王に再考を求め続けたが、ブルーノ王はジュゼッペへの王位継承に異論があるのかと問い返した。
ラルゴ王子はジュゼッペの即位自体には反対しないと述べたものの、退位を急ぐ理由に納得できない姿勢を示した。しかし善治郎が見守る公式の場であったため、それ以上強く反発することはできなかった。
善治郎が理解した退位宣言の意図
やり取りを見守る中で、善治郎はブルーノ王が自分を利用したことに気付いた。他国の有力王族である善治郎の前で退位と王位継承を宣言することで、国内の王族や貴族が後から反対しにくい状況を作り上げたのである。
その結果、ブルーノ王の退位とジュゼッペ王太子の即位は、強引ながらも既成事実として確定する形となった。
プジョル将軍による事情説明
謁見後、善治郎はプジョル将軍から事情を聞いた。ラルゴ王子は自身の王位継承の可能性を期待しており、ブルーノ王が長く在位し続ければ、年老いたジュゼッペ王太子よりも自分が有利になると考えていたという。
しかしブルーノ王が退位を決断したことで、その可能性は大きく失われた。プジョル将軍は、長期政権と王族の多さが新たな継承問題を生み出していると説明した。
『近々』という言葉の意味
さらにプジョル将軍は、ブルーノ王が退位時期を明確に示さず近々とだけ表現した点に注目した。その言葉の解釈次第で王位継承の時期に影響を与えられるため、善治郎にはその解釈について強い発言力が生まれていると指摘した。
善治郎はその説明を聞きながら、ブルーノ王があえて曖昧な表現を使った可能性について考えたが、情報不足から結論を出せなかった。
ルクレツィアの来訪と謝罪
その後、ルクレツィアが善治郎のもとを訪れた。彼女は謁見の場での出来事についてブルーノ王に代わって謝罪したが、善治郎はそれを受け取らず、王同士の問題であると返した。
代わりにルクレツィアは、後日ブルーノ王が改めて時間を設ける意向を伝え、その招待状を差し出した。
事前に準備されていた招待状
善治郎は招待状の状態から、それが謁見前に用意されていたことに気付いた。つまり、ブルーノ王の退位宣言は突発的なものではなく、最初から計画されていた出来事であった。
善治郎は老王の周到さを改めて実感し、今後の対応に気を引き締めた。
双王国貴族達からの招待
ルクレツィアは続いて大量の招待状を渡した。それらは双王国の王族や有力貴族からのものであり、善治郎との接触を望む者達から送られたものであった。
善治郎はその中に四公からの招待状が含まれていることを確認し、双王国内で自分が重要な存在として扱われていることを実感した。
ブロイ侯爵家の立場
善治郎は招待状の中にブロイ侯爵家からのものがないことを不思議に思い、その理由を尋ねた。
ルクレツィアは、自分がブロイ侯爵家の名代として善治郎の世話役を務めているため、侯爵家はあえて招待状を出さなかったと説明した。
善治郎はその説明に納得し、滞在中はルクレツィアを通じてブロイ侯爵家とやり取りすることを了承した。
双王国の複雑な権力構造
善治郎の疲労と着替え
公式の予定を終えた善治郎は、離れの奥の部屋で護衛達を下がらせ、気心の知れた後宮侍女達だけを残した。椅子に座ったまま机に突っ伏し、深い疲労を吐露した。
イネス達の手を借りて第一正装を脱ぎ、現代日本から持ち込んだ部屋着に着替えた善治郎は、冷たい水を飲んでようやく落ち着きを取り戻した。
双王国の事情への困惑
善治郎は双王国内の対立関係が複雑すぎて把握できないと嘆いた。
イネスは、双王国には二つの王家が存在し、北大陸からの移民と砂漠民という二つの民族が共存していることに加え、王家同士や四公同士の対立、さらにラルゴ王子と王家中枢との対立まで絡んでいると説明した。そのため、双王国の貴族でさえ全体像を正確に理解している者はいないかもしれないと語った。
ルクレツィアの発言への考察
善治郎は、ルクレツィアが四公を遠回しに軽視するような発言をしていた理由について、移民と砂漠民の対立が関係しているのではないかと考えた。
イネスはその可能性を認めつつも、民族間の対立は長い歴史の中で婚姻が繰り返されてきたため比較的緩やかなものであり、それだけで判断するべきではないと指摘した。
兵士達からの情報収集計画
善治郎は、双王国までの旅路を共にした両国の兵士達から情報を集めることを提案した。兵士同士の親睦という名目で交流費を支援し、自然な形で情報が集まるようにする方針を示した。
さらに、その情報をナタリオに集約させ、ケイトを連絡役にすることで、不自然さを避けながら情報収集を進める案を採用した。
帰国の難しさと今後の方針
善治郎は、本来の目的である治癒術士派遣の契約を早く済ませて帰国したいと本音を漏らした。しかしイネスは、王位継承問題に巻き込まれた以上、それは難しいだろうと指摘した。
善治郎もそれを認め、まずはブルーノ王との私的面談で相手の出方を探り、状況を見極める必要があると判断した。イネスも同行を申し出て、善治郎はその支援を頼りにするのだった。
第二章 私的面談
ブルーノ王との私的面談
王と王太子との対面
公式謁見から二日後、善治郎はブルーノ王との私的面談に臨んだ。王の私室には護衛や侍女を含む五人だけを伴い、対面にはブルーノ王とジュゼッペ王太子が待っていた。
善治郎は両者と挨拶を交わし、早速本題に入るというブルーノ王の申し出を受け入れた。
謁見での一件への謝罪
ブルーノ王とジュゼッペ王太子は、謁見の間で善治郎を事前説明なしに巻き込んだ件について謝罪した。
善治郎は、現王と王太子が人前で頭を下げたこと自体が誠意の表れであると理解し、この件についてはこれ以上追及しないことにした。
王位継承問題の説明
謝罪だけでは終わらず、ブルーノ王は王位継承問題の背景を説明した。
長年にわたり自身の治世が続いたことで、多くの者が現状維持を望むようになったが、自らの死後に混乱を招かないためにも、生前に王位を譲る必要があると考えたと語った。
善治郎はその説明に理解を示したが、自身が双王国を訪れた本来の目的はアウラの出産に備えた治癒術士の確保であることを遠回しに伝えた。
治癒術士派遣の約束
善治郎の意図を察したブルーノ王は、出産予定日前後の一か月間、ジルベール法王家の治癒術士をカープァ王国へ派遣する準備が整っていることを明かした。
さらに、半年単位で治癒術士を雇い入れるという前例も存在すると説明し、その場合はベネディクト法王との直接交渉が必要になると伝えた。
善治郎は魅力的な提案であると認めながらも、その裏にある意図を感じ取った。
王位継承問題への協力要請
ブルーノ王は、王位継承問題の道筋が整うまではベネディクト法王への紹介も難しいと述べた。
善治郎は、その言葉が長期の治癒術士派遣を望むなら王位継承問題の解決まで双王国に留まってほしいという意味であることを理解した。
ブルーノ王は善治郎に便宜を図ることを約束し、善治郎もアウラの健康を最優先とする条件付きで協力を承諾した。こうして、善治郎は王位継承問題に一定の協力を行い、その見返りとして治癒術士派遣の後押しを受けるという合意に至った。
四公への贈答品相談
契約成立後、ジュゼッペ王太子は善治郎へ新たな相談を持ちかけた。
双王国では新王即位の際に四公へ魔道具を贈る伝統があり、その贈答品選びについて助言してほしいと依頼したのである。
善治郎は魔法に詳しくないと戸惑ったが、ジュゼッペ王太子は歴代の贈答品や候補を示した上で意見を求めた。
善治郎は、その助言自体よりも、自分の名を利用して四公への贈答に権威を与えることが目的だと察しながらも協力を引き受けた。
四公との面会計画
ジュゼッペ王太子は、善治郎と四公の代理人達との面会についても提案した。
個別ではなく四人を同時に集めることで善治郎の負担を減らすと説明したが、その言葉から善治郎は、シャロワ王家が四公やその代理人達に対して複雑な感情を抱いている可能性を感じ取った。
ルクレツィアの立場の説明
話題はルクレツィアへ移った。
ジュゼッペ王太子は、ルクレツィアの実家であるブロイ侯爵家が建国以前から続く名家であり、双王国を支える重要な家柄であると説明した。
さらに、ブロイ侯爵家が王家と深い結び付きを持つことも明かし、善治郎にルクレツィアを自由に頼ってほしいと勧めた。
その説明を聞いた善治郎は、ルクレツィアとシャロワ王家との結び付きの強さを改めて認識すると同時に、王家と四公の間に何らかの対立が存在する可能性への警戒を強めた。
それでも表面上は感謝を示し、今後もルクレツィアを頼りにする意向を伝えた。
四公の代理人との面会
四人の代理人との対面
善治郎は紫卵宮の一室で、四公爵家の代理人達と対面した。
現エレハリューコ族長家の第一女子シュラ、リーヤーフォン族長の三女ナズィーム、エレメンタカト公爵家の名代タラーイェ、アニミーヤム公爵家のフィクリヤの四人はいずれも若い女性であった。
その顔ぶれを見た善治郎は、ルクレツィアが四公の代理人達に好意的でなかった理由が、政治的対立ではなく、自身と同じ立場の存在だったためだと察した。
探り合いを含んだ雑談
善治郎は四人と挨拶を交わし、まずは雑談を通じて交流した。
その中で善治郎は、シュラとナズィームが砂漠民の民族衣装を着ている一方、タラーイェとフィクリヤは北大陸由来のドレスを着ていることに注目した。
シュラは走竜に乗る生活を送る族長家の娘としての誇りを語り、タラーイェは定住民としての生活様式を説明した。それを聞いた善治郎は、四公家の中でも生活様式や価値観に大きな違いがあることを理解した。
四公家の立場の違いを理解
会話を重ねる中で善治郎は、エレハリューコ家とリーヤーフォン家が遊牧生活を維持する砂漠民としての色合いを強く残しているのに対し、エレメンタカト家とアニミーヤム家は定住し、王家との結び付きが強いことを把握した。
さらに、双王国には王家同士の対立や四公家同士の溝も存在していることを改めて認識し、自らはどの陣営にも深入りしないよう心に決めた。
魔道具への希望を聞く
善治郎は本題に入り、ジュゼッペ王太子の王位継承に伴う魔道具贈与について、それぞれが望む魔道具を尋ねた。
シュラは家畜や狩猟に役立つ火炎柵を希望した。
ナズィームは移動を続ける公都との連絡手段として双燃紙を望んだ。
フィクリヤは塩湖の水を利用するため、真水化の魔道具が必要だと主張した。
それぞれの希望は、自らの家の事情や立場に根差したものであった。
空間遮断結界を求めるタラーイェ
タラーイェは空間遮断結界の魔道具を希望した。
その発言に他の三人は大きく驚いた。空間遮断結界は時空魔法であり、善治郎自身の協力が不可欠だからである。
善治郎が理由を尋ねると、タラーイェは自領の金鉱山で発生する崩落事故から鉱夫を守るためだと説明した。
善治郎はその有効性を認めたものの、現状では対応できないとして断った。
将来の取引への布石
断られたタラーイェはすぐに話を切り替え、カープァ王国に滞在しているフランチェスコ王子とボナ王女への依頼の可能性を口にした。
善治郎はそこで、魔道具を得る手段は王位継承時の贈与だけではなく、王族へ直接依頼する方法もあると理解した。
さらにタラーイェは代案として土硬化の魔道具を希望し、善治郎は彼女達が単なる美貌の使者ではなく、公爵家を代表する交渉人であることを再認識した。
面会の終了
善治郎は四人の希望をジュゼッペ王太子へ伝えることを約束し、自分も良い案を考えると答えた。
四人はそれぞれ礼を述べ、面会は終了した。
ルクレツィアとの会話
離れへ戻った善治郎は、ルクレツィアを茶に誘い、四公の代理人達について尋ねた。
ルクレツィアは、シュラが四部族の歴史と血統に強い誇りを持つ人物であること、ナズィームが竜好きで走竜の世話を好むことを説明した。
さらにタラーイェについては商人とも積極的に交渉する先進的な女性であること、フィクリヤについては聡明で魔法研究に優れる一方、魔力量が少ないことを語った。
善治郎は説明を聞くうちに、ルクレツィアが四人への興味を削ぐような情報を意図的に選んで伝えていることに気付いた。
ルクレツィアの提案
善治郎は話題を変え、四公へ贈る魔道具についてルクレツィア自身の意見を求めた。
ルクレツィアは、不動火球による照明の魔道具が無難で適切だと答えた。
その魔道具は使い勝手が良く、多く製造されているため短期間で用意できる利点もあった。
善治郎はその回答を聞き、ルクレツィアが四公側ではなく、あくまでシャロワ王家側の立場から考えていることを改めて理解した。
幕間 作戦会議
ルクレツィアの苛立ち
四公の代理人への対抗心
善治郎の世話役を終えて自室へ戻ったルクレツィアは、四公の代理として現れた四人の女性達への不満を爆発させた。
シュラ達も善治郎に接近しようとしていると確信したルクレツィアは、自分の思い通りに事が進まないことに苛立ち、侍女フローラの前で感情を露わにした。
善治郎の女性への無関心を分析
落ち着きを取り戻したルクレツィアは、善治郎が四人の女性達をどう見ていたかをフローラに尋ねた。
フローラは、善治郎が四人に興味を示していなかったこと、そしてそれはルクレツィア自身に対する態度と同程度だったと答えた。
その言葉を聞いたルクレツィアは、自分だけでなく、容姿も個性も異なる四人全員に無関心だったことへ疑問を抱いた。
善治郎の人物像への考察
ルクレツィアは、善治郎が女性に興味を持たない理由について考え始めた。
同性愛者や不能者ではないことは、アウラとの間に子がいる事実から否定され、権力欲に取り憑かれた野心家とも思えなかった。
さらに欲望そのものが薄い人物という可能性も挙がったが、王族として精力的に活動していることや、アウラと仲睦まじい関係にあることと矛盾していた。
ルクレツィアとフローラは、善治郎に関する情報や印象のどこかに、まだ見えていない要素が存在するのではないかと考えた。
アウラとの関係への疑問
話し合いの中でルクレツィアは、善治郎が他の女性には関心を示さず、アウラだけを特別に愛しているように見えることへ強い違和感を覚えた。
アウラが優れた女性であることは認めつつも、それだけでは善治郎の行動原理を説明しきれないと感じていた。
フローラもまた、現在得られている情報だけでは善治郎という人物を理解するには不十分だと考えていた。
自身の失敗を振り返る
ルクレツィアは、この数日間に自分が積極的な接近を続けてきたにもかかわらず、まったく手応えがなかったことを振り返った。
距離の取り方や言葉遣い、容姿の見せ方まで工夫したものの、善治郎は一切反応を示さなかった。
その結果、ルクレツィアは善治郎を実体のない幻のような相手だと感じていた。
新たな攻略方針の決定
しかしフローラは、善治郎が攻略不可能な相手なのではなく、単にアプローチする方向を間違えているだけだと指摘した。
正しい急所を見つけられれば攻略の余地はあるという言葉に、ルクレツィアは希望を見出した。
そして様々な方法を試しながら善治郎に有効な接近方法を探り当て、その後に一気に攻勢をかけることを決意した。
そんなルクレツィアに対し、フローラはブロイ侯爵家へ迷惑をかけないよう釘を刺しながら見守るのだった。
第三章 帰国した人、帰国してきた人
プジョル将軍の帰国準備
善治郎は、侍女イネスに促されて第三正装へ着替えながら、その日の予定を確認した。
この日はプジョル将軍がカープァ王国へ帰国する日であり、引き継ぎや移動の予定で埋まっていた。善治郎は連日の面会対応が一段落したことを確認し、安堵を見せた。
ラルゴ王子との面会延期への疑念
イネスから、ラルゴ王子との面会日程を再調整する必要があると聞いた善治郎は、その件を思い出した。
面会が急遽中止された理由がブルーノ王の命令だったという噂を聞き、善治郎は意図的な妨害ではないかと考えた。そして、ラルゴ王子がブルーノ王陣営にとって不都合な情報を持っている可能性を指摘されると、その考えに納得した。
善治郎は基本的な支持方針は変えないものの、ラルゴ王子の話も早急に聞く必要があると判断し、次に面会の申し込みがあった際には優先するようイネスへ指示した。
護衛責任者の引き継ぎ
数時間後、善治郎はプジョル将軍と後任となる若い大隊長エラディオの引き継ぎに立ち会った。
エラディオは自信に満ちた態度で任務への意欲を示したが、プジョル将軍は護衛任務の重要性を説き、失敗が許されない仕事であると厳しく戒めた。
さらにプジョル将軍は、無能な一般兵など存在せず、部隊が失敗した時に責任を負うべきは隊長であると語った。エラディオはその言葉を受け、自らが任務を完遂すると力強く宣言した。
将軍との別れの会話
引き継ぎを終えた後、善治郎はプジョル将軍と共に『瞬間移動』用の部屋へ向かった。
道中で善治郎は、エラディオへの厳しい言葉について尋ねた。プジョル将軍は、それはかつて自分が先代将軍から受けた教えを伝えただけだと明かした。
先代将軍は隊長には厳格な責任を求める一方で、兵士にも無能な上官の下でも生き延びる能力を要求するほどの完璧主義者だったと語った。
善治郎とプジョル将軍は、互いに軽口を交えながら和やかな会話を続けた。
瞬間移動による帰国
『瞬間移動』のための部屋に到着すると、善治郎はアウラ宛ての手紙をプジョル将軍へ託した。
プジョル将軍は騎士や兵士達から預かった家族宛ての手紙と共にそれを受け取り、帰国の準備を整えた。
善治郎は写真を見ながら魔法を発動し、プジョル将軍をカープァ王国王宮の『石室』へ送り届けることに成功した。
魔法が一度で成功したことに熟練の向上を実感した善治郎は、イネスに促されて移動先の様子をデジタルカメラで記録した。
すべての作業を終えると、善治郎はイネスとナタリオを伴い、その部屋を後にした。
フランチェスコ王子の突然の来訪
プジョル将軍を送り出した日の午後、善治郎はフランチェスコ王子が面会を求めているという予想外の報告を受けた。
フランチェスコ王子は本来カープァ王国に滞在していたはずであり、公式な帰国手続きも済ませていない状態で真っ先に善治郎を訪ねてきたため、善治郎はその非常識さに困惑した。それでも相手が王族である以上断ることはできず、すぐに応接の準備を整えた。
アウラからの手紙と訪問の真意
応接室に通されたフランチェスコ王子は、アウラからの返事である手紙と小包を善治郎へ渡した。
しかし、王子が急いで訪れた理由は手紙の配達ではなく、ブルーノ王の退位とジュゼッペ王太子の即位、さらに四公へ贈る魔道具の選定に善治郎が関わっていることを知ったためだった。
フランチェスコ王子は魔道具に強い興味を示したが、自分はこの件に意見を出さないと明言した。そして、今回の件ではラルゴ王子の方が善治郎と利害が一致するはずだと助言した。
ラルゴ王子との面談準備
フランチェスコ王子は、ラルゴ王子の話を聞くべきだと勧めた。
さらに、自身の帰国式典や家族との食事会の日程を善治郎へ伝え、それによってブルーノ王やジュゼッペ王太子が動きにくい時期を暗に知らせた。
善治郎はその意図を理解し、ラルゴ王子との面談を早急に実現させる決意を固めた。
アウラからの手紙
その夜、善治郎はアウラから届いた手紙を読んだ。
アウラは善治郎でも理解できるよう平易な文章で手紙を書いており、善治郎は辞書代わりに知識をたどりながら内容を読み進めた。
手紙にはフレア姫が暑さで苦しんでいることや、氷を送る案などが記されており、善治郎はその内容を楽しみながら読んでいた。
ラルゴ王子との密談
二日後、善治郎はラルゴ王子との面談を実現させた。
ラルゴ王子は贈り物として浮遊する絨毯の魔道具を贈った。それは幼児が転んでも怪我をしない遊具として使われるものであり、善治郎はその実用性を高く評価した。
その後ラルゴ王子は、四公への魔道具贈与について善治郎の考えを確認し、まだ結論が出ていないと知ると安堵した。
四公の現状と王家の対立
周囲を遠ざけた密談の場で、ラルゴ王子は四公の現状について説明した。
四公は定住して経済的に発展したエレメンタカト公爵家とアニミーヤム公爵家、そして放浪生活を続けるエレハリューコ公爵家とリーヤーフォン公爵家に分かれていた。
定住した二公は金山や塩湖によって莫大な財力を築いていた一方、放浪の二公は経済力で劣る代わりに優れた軍事力を保持していた。
ブルーノ王とジュゼッペ王太子は定住の二公を重視し、将来的には放浪の二公を格下げする方向を目指していた。一方ラルゴ王子は、国境防衛を担う放浪の二公を支援し、四公体制を維持すべきだと主張していた。
真の対立軸の告白
善治郎が対立の理由を尋ねると、ラルゴ王子は自分はジュゼッペ王太子の即位そのものには反対していないと明かした。
ラルゴ王子が本当に反対しているのは、フランチェスコ王子を次期王太子にする計画だった。
フランチェスコ王子が王位継承権を持たない真の理由が、シャロワ王家とジルベール法王家双方の血統魔法を使える特殊な存在であることに関係していると示唆し、その秘密を利用して王位継承へ組み込もうとしていると語った。
さらに、ブルーノ王とジュゼッペ王太子がラルゴ王子を王位を狙う野心家として見せかけていたのは、その反対運動を封じるためだったと説明した。
完全融合派の存在
ラルゴ王子は、ブルーノ王とジュゼッペ王太子が『完全融合派』であると明かした。
完全融合派は、シャロワ王家とジルベール法王家を統合し、両方の血統魔法を継承する新たな王家の成立を目指していた。
フランチェスコ王子はその象徴的存在であり、ジュゼッペ王太子やその周囲は長年にわたり計画を進めてきたのだという。
カルロス・善吉を巡る危機
ラルゴ王子はさらに推測として、ブルーノ王とジュゼッペ王太子が計画を早めた理由を語った。
カープァ王国のカルロス・善吉が二つの血統魔法を持つ存在として注目されれば、双王国側もフランチェスコ王子を表舞台に出しやすくなるという考えである。
その話を聞いた善治郎は、自分の息子が他国の政治利用の材料にされようとしている可能性を知り、強い怒りを抱いた。
ラルゴ王子からの依頼
善治郎は話の裏付けを取ると前置きしたうえで、ラルゴ王子の望みを尋ねた。
ラルゴ王子は、四公への贈与魔道具について放浪の二公に有利な提案をしてほしいと頼んだ。
それによって善治郎が自分の側についたことをブルーノ王とジュゼッペ王太子へ示したいのだと説明した。
さらに、ジュゼッペ王太子がその提案を受け入れれば、ラルゴ王子への譲歩となり、フランチェスコ王子の王太子任命を少なくとも先送りにできると語った。
ヴェットール王子を巡る応酬
善治郎は、フランチェスコ王子ではなくヴェットール王子を王太子に据える方が一般的ではないかと確認した。
ラルゴ王子はその見解自体には同意したが、双王国内政への干渉は避けるべきだと牽制した。
それに対し善治郎は、他国の幼い王子の人生へ干渉することは絶対に許されないと応じ、ブルーノ王とジュゼッペ王太子の行動を暗に批判した。
その言葉を受けたラルゴ王子は反論できず、その場の会話はそこで一区切りとなった。
第四章 積極的な暗躍
ラルゴ王子との会談後の行動開始
ラルゴ王子から重要な情報を聞いた翌日、善治郎は積極的な行動を開始した。
本来であれば最低限の面会だけを済ませて引きこもるつもりだったが、方針を変更したことで、多くの貴族との面会や交流を続けることになった。その結果、日程調整や情報収集を担うルクレツィアとの接触も増加した。
ルクレツィアの献身的な補佐
ルクレツィアは善治郎の予定管理や人脈構築を熱心に支えた。
夜会の同行や面談の同席を申し出るなど積極的に補佐し、善治郎もその働きを高く評価していた。ルクレツィアは仕事のできる女性として振る舞うことで善治郎への好意を示していたが、善治郎はその方向性ならば助かると感じていた。
夜会用の衣装についても相談が行われたが、善治郎は危険な予感を覚え、最終的に侍女イネスへ判断を委ねた。
ピサーニ侯爵との対面
善治郎は社交パーティのため、名門貴族であるピサーニ侯爵家を訪れた。
ピサーニ侯爵家は王家とも深い縁を持ち、侯爵夫人はヴェットール王子の乳母を務めていた。そのため、ヴェットール王子に接触したい善治郎にとって重要な相手であった。
善治郎は侯爵の若き日の武功について尋ね、会話の糸口を作った。
武勇談から狩猟の話題へ
ピサーニ侯爵は初陣で敵将を討った体験や、その際に味わった恐怖を交えながら若い頃の武勇談を語った。
その後、狩猟の話題へ移り、侯爵がエレハリューコ公爵と親交を持ち、公都で狩りを楽しんでいることを明かした。
善治郎は自然な流れでエレハリューコ公爵領に関する情報を引き出していった。
放浪の二公と走竜の話
ピサーニ侯爵は双王国の走竜について説明した。
双王国の走竜は砂漠に適応した砂色であり、エレハリューコ公爵領とリーヤーフォン公爵領の走竜が特に優れているという。
エレハリューコ公爵領の走竜は力強く、リーヤーフォン公爵領の走竜は速いとされており、どちらが優れているかという話題は両公爵家の前では禁物であることも教えられた。
化竜の特徴
続いてピサーニ侯爵は、砂漠特有の竜種である化竜について語った。
化竜は気温によって体色を変える小型の草食竜であり、昼は砂漠に溶け込む薄黄色、夜は濃い藍色へ変化するため発見が難しい存在であった。
危険性は低く、砂漠の子供達が最初に狩る獲物として知られていた。
化竜の革から得た着想
化竜は家畜と同じ植物を食べて草地を荒らすため害獣と見なされていた。
肉にも革にも価値がなく、特に革は温度によって色が変わり続けるため利用できないと説明された。
しかし善治郎は、その革が死後も温度によって変色する性質を知ると強い衝撃を受けた。そして、その特徴から新たな魔道具の可能性を思いつき、頭の中で構想を練り始めた。
予定通りの社交活動
重要な着想を得たものの、善治郎は不自然な行動を避けるため予定を変更しなかった。
午後にはマルガリータ王女と面談し、結婚指輪の魔道具化について礼を述べた。
その後はルクレツィアを伴い、夜会へ出席した。
双王国の魔道具文化への感嘆
夜会会場で善治郎は双王国の魔道具技術の高さを改めて実感した。
大広間には光の魔道具による照明が設置され、さらに火、風、霧などの魔道具によって快適な環境が維持されていた。
善治郎は、少なくとも王宮や富裕貴族の生活環境に関しては、双王国がカープァ王国を大きく上回っていると認めた。
タラーイェとの再会
会場を見回した善治郎は、エレメンタカト公爵家の傍流であるタラーイェを見つけて声をかけた。
タラーイェは夜会を情報収集と商機発見の場と捉えており、流行や人々の欲望を観察することが利益につながると語った。
善治郎はその商才を素直に称賛したが、ルクレツィアは貴族らしくない姿勢を皮肉るような反応を見せた。
他の四公関係者の近況
善治郎が他の三人について尋ねると、タラーイェはシュラが公都へ戻り、ナズィームは公式行事以外ほとんど姿を見せないと説明した。
またフィクリヤは会場内の魔法技術者を捕まえ、新しい魔道具について熱心に質問していた。
その様子を見た善治郎は、彼女の関心が魔法技術に向いていることを知った。
夜会での人脈作り
タラーイェと別れた後、善治郎は王族が参加していないことを知り、当初期待していた成果が得られないと判断した。
そこで数人に挨拶して帰ることを決め、人選をルクレツィアへ任せた。
その言葉に大きく喜んだルクレツィアは、善治郎を有力貴族達の元へ案内した。
こうしてこの夜最も成果を得たのは、善治郎のパートナーとして振る舞い、人脈形成に深く関わることができたルクレツィアであった。
情報収集と善治郎の焦り
ラルゴ王子との会談翌日、善治郎は夜会を終えて寝室へ戻り、ようやく気を緩めていた。
その後、イネスに命じていた情報収集の進捗を確認した。兵士や侍女達から集めた噂話の中には、ラルゴ王子の説明を否定する内容は見つかっていなかった。一方で、善治郎が口外を禁じていた『融合派』については情報が得られておらず、その存在すら確認できていない状態であった。
時間不足への危機感
善治郎は、ラルゴ王子の情報が正しい前提で動きながらも、その裏付けを取ろうとしていた。
しかし連れてきている人員は少なく、本格的な諜報活動は不可能であった。さらに四公への贈呈用魔道具について答えを出す期限も迫っており、それまでに十分な裏付けが取れないことを悟っていた。
善治郎は最終的に、情報が揃わないままどちらを信じるか決断する必要があると考えた。
集まった情報の整理
イネスは現時点で判明している状況を報告した。
双王国の貴族達はジュゼッペ王太子の即位を当然視しており、次期王太子にはヴェットール王子が選ばれると考える者が多かった。また、ラルゴ王子については王位を狙う政敵という認識が広く浸透していた。
善治郎は、その状況がラルゴ王子の説明と矛盾しないことを確認した。
誰を信じるべきかの葛藤
善治郎は、ラルゴ王子の話が事実に思える一方で、彼もまた全てを明かしているとは限らないと考えた。
さらに、ラルゴ王子との面会を妨害したジュゼッペ王太子が、その後何も接触してこないことにも不自然さを感じていた。誰もが何かを企んでいるように思え、どの選択をしても誰かの思惑に利用されるように感じていた。
イネスの助言
混乱する善治郎に対し、イネスは大切なのは善治郎自身とカープァ王国の利益であると助言した。
たとえ誰かの思惑通りに動くことになったとしても、それが善治郎達に利益をもたらすなら問題ではないという考えであった。
その言葉を聞いた善治郎は、自分がカルロス・善吉を巻き込まれるかもしれないという怒りから、視野が狭くなっていたことに気づいた。
優先すべき目標の再確認
善治郎は考えを整理し、自分が守るべきものを明確にした。
カルロス・善吉の安全を確保すること、アウラとそのお腹の子のために治癒術士を確保すること。その二つこそが最優先事項であり、それ以外の政治的な駆け引きに深入りする必要はないと結論づけた。
完全融合派への疑問
善治郎は、ラルゴ王子の話を裏付けるためには『完全融合派』の存在を確認する必要があると考えた。
しかし、現国王と次期国王が所属しているにもかかわらず少数派とされることに違和感を覚える。イネスは、長い歴史の中では中枢から外れた思想だった可能性を指摘した。
その説明を受けた善治郎は、長年少数派だった勢力が現在最盛期を迎えているのではないかと推測した。
フランチェスコ王子の立場を考察
さらに善治郎は、完全融合派におけるフランチェスコ王子の立場について考え始めた。
イネスは、これまでの行動を見る限り、フランチェスコ王子自身は完全融合派ではない可能性が高いと述べた。
善治郎も、ラルゴ王子との面会のきっかけを作ったのがフランチェスコ王子であったことを思い出し、その考えに納得した。そして、この問題の鍵を握る人物がフランチェスコ王子であることを改めて認識した。
フランチェスコ王子との接触を模索
善治郎はフランチェスコ王子と自然な形で連絡を取りたいと考え、イネスに相談した。
しかしイネスは、何もしないことが最善だと答えた。フランチェスコ王子の性格を考えれば、この状況を黙って見ていられるはずがなく、いずれ向こうから接触してくると断言したのである。
善治郎はその意見に納得し、数日間は様子を見ることに決めた。
第五章 感謝の言葉
フランチェスコ王子の訪問
善治郎がフランチェスコ王子との接触を望んだ翌日、当のフランチェスコ王子が善治郎のもとを訪れた。
フランチェスコ王子はボナ王女の近況について語り、近日中に帰国する見込みだと説明した。その後、善治郎との内密な話を望み、護衛達との交渉の末、同じ部屋に残しながらも十分な距離を取らせることに成功した。
さらにフランチェスコ王子は防諜用の魔道具を設置し、秘密の会談の準備を整えた。
両陣営への立場の確認
会談が始まると、フランチェスコ王子は善治郎に父ジュゼッペ王太子と叔父ラルゴ王子のどちらに付くのかを率直に尋ねた。
善治郎はまだ判断材料が不足していると答え、代わりにフランチェスコ王子とラルゴ王子の関係について質問した。
フランチェスコ王子は、ラルゴ王子を頼りになる人物と評価し、自分を王位争いの駒として見ないため一緒にいて気楽だと語った。一方でブルーノ王とジュゼッペ王太子は完全融合派であり、自分を王にしようとしているため息苦しさを感じていることも明かした。
王位への拒絶と理想の未来
善治郎が王位への関心を尋ねると、フランチェスコ王子は完全に否定した。
王になれば魔道具開発に打ち込めなくなるため望んでおらず、父の即位後はヴェットール王子が王太子となり、自分は研究に専念する未来こそ理想だと断言した。
善治郎はその言葉がこれまでの行動とも一致していることから、フランチェスコ王子を信頼することにした。
完全融合派の実情
善治郎はフランチェスコ王子が完全融合派ではないことを確認した。
フランチェスコ王子は、自身が完全融合派の両親から生まれ、その思想の希望とされる能力を持ちながらも思想には賛同していないと語った。
さらに、ブルーノ王とジュゼッペ王太子は昔から自分を王位に就けようとしており、その考えに賛成しているのは完全融合派の人間だけであると説明した。
魔道具選定の重要性
善治郎は、ラルゴ王子から聞いた四公への贈与用魔道具の選定が王位継承問題に関わるという話を伝えた。
フランチェスコ王子はそれを肯定し、放浪の二公に配慮した魔道具が選ばれれば、ブルーノ王とジュゼッペ王太子は警戒を強め、自分を王太子に据える危険な策には出られなくなると断言した。
その言葉を聞き、善治郎はラルゴ王子側に立つ決意を固めた。
新たな魔道具の構想
善治郎は『双燃紙』を応用した案をフランチェスコ王子へ打ち明けた。
金属板に双燃紙と同じ効果を持たせ、さらに温度で色が変わる化竜の革を組み合わせるという発想であった。
フランチェスコ王子は即座に可能性を理解し、技術的な改善案を示しながら強い関心を示した。善治郎が試作品の制作を望むと、フランチェスコ王子は全面的に協力を約束した。
その後二人は護衛達に催促されるまで、熱心に魔道具の詳細を議論し続けた。
贈与用魔道具の発表
九日後、善治郎はブルーノ王とジュゼッペ王太子の前で、新たに完成した魔道具を披露した。
侍女達は二枚の金属板、金属活字、そして化竜の革を準備した。善治郎は熱した活字を金属板へ押し当て、その熱を双燃紙の効果で離れたもう一枚の金属板へ伝達させた。
すると化竜の革が熱に反応して変色し、活字と同じ文字が浮かび上がった。
新型双燃紙の価値
善治郎は、この魔道具が従来の双燃紙と異なり何度でも繰り返し使用できることを説明した。
ブルーノ王とジュゼッペ王太子は、その価値を即座に理解した。放浪の二公だけでなく定住の二公にとっても有益であり、さらに化竜の革という新たな資源価値を生み出す可能性を持っていたからである。
四公が確実に欲しがる魔道具であることも明白であった。
善治郎の勝利
熟考の末、ジュゼッペ王太子は四公への贈与魔道具として、この新型双燃紙を採用すると宣言した。
善治郎はその決定によって、放浪の二公に利益をもたらしながらも王家にも利益を残す形を実現した。また、それはラルゴ王子の主張に沿う結果でもあり、フランチェスコ王子を王太子に据える動きを抑える意味も持っていた。
善治郎とジュゼッペ王太子は互いに表向きは穏やかな言葉を交わしながらも、それぞれの真意を確認し合った。
こうして善治郎は目的を達成し、緊張の続いた交渉を終えたのであった。
老王と王太子の評価
善治郎達が去った後、ブルーノ王とジュゼッペ王太子は静かな部屋で今回の結果を振り返った。
二人は善治郎にしてやられたことを認めつつも、新型双燃紙は双王国に大きな利益をもたらす発明であり、国益の面では十分な成果だったと評価した。
また、善治郎が魔道具に関して常識にとらわれない発想を持っていることに改めて感心し、その価値を認めていた。
新型双燃紙への驚き
ブルーノ王とジュゼッペ王太子は、繰り返し使える双燃紙という発想自体は以前から存在していたと語った。
しかし、魔道具だけで完結させようとしていたシャロワ王家の研究者達は成果を出せず、善治郎は化竜の革という外部素材を組み合わせることで突破口を見出した。
二人は、付与魔法の門外漢である善治郎が短期間で国益につながる魔道具を考案したことを高く評価した。
魔道具の独占方針
新型双燃紙の価値を理解した二人は、可能な限り他国への販売を避けるべきだと判断した。
善治郎の提案によって生まれた魔道具である以上、カープァ王国への供給は避けられないが、それ以外の国への流出は防ぐべきだと考えた。
さらにカープァ王国との契約にも再販売禁止を盛り込む方針を確認し合った。
密室での兄弟の会談
公務を終えたジュゼッペ王太子は、側近や護衛も立ち入れない私室へ向かった。
その部屋では、政敵と見なされている弟ラルゴ王子が待っていた。二人は世間の認識とは異なり、双王国の将来について率直に語り合える関係を保っていた。
ラルゴ王子は今回の件について自分の勝利かと尋ね、ジュゼッペ王太子はそれを認めた。
フランチェスコ王子問題の決着
ラルゴ王子は、これでフランチェスコ王子を王太子に据える計画を諦めるのかと確認した。
ジュゼッペ王太子は今回は断念すると答えたが、完全に諦めたわけではない含みを残した。
それに対しラルゴ王子は、フランチェスコ王子を王位に就ける考え自体をやめてほしいと改めて訴えた。
善治郎への評価
話題は善治郎へ移った。
ジュゼッペ王太子は、善治郎は政治判断力に優れる一方で強引さはなく、何より行動や発想が読みづらい人物だと評価した。
さらに、新型双燃紙の発想力にも驚かされ、可能であれば双王国側へ取り込みたいという本音を漏らした。
善治郎とカルロス・善吉への関心
ジュゼッペ王太子は、善治郎の血筋に強い価値を見出していた。
善治郎にはカープァ王家とシャロワ王家双方の血が流れており、その息子カルロス・善吉が時空魔法と付与魔法の両方を発現したことも高く評価していた。
そのためルクレツィアだけでなく、場合によっては四公家の女性まで利用して善治郎を取り込むことも考えていた。
兄弟の対立する国家観
ラルゴ王子は、双王国は十分に強大な国家であり、危険を冒してまで拡大を急ぐ必要はないと主張した。
しかしジュゼッペ王太子は、北大陸の教会勢力や白の帝国の末裔を巡る問題を挙げ、現状に満足していてはならないと反論した。
ラルゴ王子は兄の考えにも一定の理解を示しながらも、遠い過去への執着が不要な危機を招くのではないかという不安を拭えずにいたのであった。
エピローグ 1ヶ月ぶりの帰国
帰還と後宮への帰宅
善治郎は写真を見ながら瞬間移動の魔法を発動し、無事にカープァ王国へ帰還した。
兵士達に迎えられた善治郎は、アウラへの連絡を任せて後宮へ向かった。双王国に残してきた侍女達の代わりに、兵士達から託された手紙を持ち帰りながら、歩き慣れた王宮の廊下を進んだ。
我が家への安堵
後宮に到着した善治郎は、出迎えた侍女達に迎えられ、久しぶりに我が家へ戻ったことを実感した。
紫卵宮の快適さを認めながらも、テレビやパソコン、冷蔵庫などの家電に囲まれた後宮の方が自分にとって落ち着ける場所だと感じた。
第三正装を脱ぎ捨てた善治郎は、稼働中のエアコンの冷気で火照った身体を冷やし、その後、自室のベッドに潜り込んだ。
アウラとの再会
目を覚ました善治郎を迎えたのは、約一ヶ月ぶりに再会するアウラだった。
二人は抱擁と口づけを交わし、再会の喜びを確かめ合った。その後アウラは、真面目な話をするためリビングへ移るよう提案した。
双王国での出来事の報告
善治郎は双王国で起きた出来事を最初から説明した。
ジュゼッペ王太子の即位が近いことや、完全融合派の存在、そしてフランチェスコ王子の王太子就任を阻止できたことを報告した。
話を聞いたアウラは、完全融合派の存在に納得するとともに、カルロス・善吉を巻き込む企みを防いだ善治郎を称賛した。
治癒術士派遣の確認
続いて善治郎は、治癒術士を出産予定月の一ヶ月間派遣してもらう約束を取り付けたことを説明した。
アウラは感謝しつつも、自身と子供は健康であり、長期派遣よりも善治郎に早く帰国してほしいと望んだ。
その言葉を受けた善治郎は、次回の双王国滞在を十日間に区切り、それ以上長引くようなら帰国すると約束した。
新型双燃紙への懸念
アウラは善治郎が提案した新型双燃紙について言及した。
善治郎は他国に利益を与えてしまったことを問題視していたが、アウラが懸念していたのは別の点だった。
それは、善治郎が画期的な魔道具を提案できる人物だと認識されたこと、そしてカルロス・善吉を利用した圧力が有効だと双王国側に示してしまったことである。
その結果、将来も同じ手法で脅しを受ける可能性が高まったと指摘された善治郎は、自らの判断が長期的には息子を危険にさらしかねないことに気づき、強い悔しさを覚えた。
女王としての対抗策
アウラは今回の件を高くつくものだと双王国に理解させる必要があると判断した。
そのため、新型双燃紙の無償譲渡や、カープァ王国への優先的かつ国内同等価格での販売を要求する公式文書を用意し、次回の訪問時にブルーノ王へ渡すよう善治郎へ依頼した。
善治郎はその提案を受け入れた。
夫婦の会話と休息
重い話が終わると、アウラは気分を切り替えるよう促し、先に入浴することを勧めた。
妊娠中のアウラは医師の指示で単独入浴を禁じられており、一緒に入れないことを残念そうに伝えた。
善治郎は一人で入浴へ向かい、アウラはその背中を見送った。
アウラの決意
善治郎が去った後、アウラは今回の件について一人で考えた。
もし自分なら、カルロス・善吉の秘密を暴露すると脅されても簡単には譲歩しなかっただろうと考えた。
今回の判断は善治郎と自分の考え方の違いが表れた結果だったが、それは善治郎が生まれながらの王族ではなく、家族への情を優先する人間だからだと理解していた。
そして、その性質は欠点ではなく特徴であり、自分が女王として不足を補えばよいと考えた。
アウラは、今後も善治郎を支え続けることこそ自分の役目だと決意を新たにしたのであった。
付録 主と侍女の間接交流
後宮侍女達の汚染問題
後宮の実質的な責任者であるアマンダ侍女長は、各担当責任者を集めて緊急会議を開いた。
アマンダは若い侍女達の間で汚染が広がっていると訴えた。その原因は新人侍女達が先輩侍女を手本にしていることにあり、現在後宮に残る先輩侍女がフェー、ドロレス、レテの問題児三人組だけであることを危惧していた。
新人達が携帯ゲームを気軽に持ち出すようになっていることも三人の影響だと指摘し、このままでは後宮侍女の名声が損なわれると警戒した。
問題児三人組への監視開始
アマンダは新人達がどの程度問題児三人組の影響を受けているか調査することを決定した。
翌日、ドロレスは何者かに見られているような違和感を覚えていたが、フェーとレテは気にしていなかった。
そんな中、新人侍女ルイサがLEDランタンの電池交換方法を教えてほしいと訪ねてきた。フェーは電池交換や充電方法を詳しく丁寧に説明し、ドロレスとレテも補助した。
その後、ルイサはアマンダに報告したが、予想に反して三人の指導内容は非常に分かりやすく適切なものだった。
例外的に優秀だった指導
アマンダは問題児達にも後輩への自覚が芽生えたのではないかと期待した。
しかし実際には、三人が電化製品に慣れ親しんでいたことと、後輩に格好良い姿を見せたい気持ちが重なった結果に過ぎなかった。
そのため、この一件だけで三人の評価を改めるのは早計であった。
手抜き仕事の実態
続いて新人侍女ミレーラが洗濯済みのシーツを運んできた。
ドロレス達は寝室の掃除に長時間をかけていたが、それは妊娠中のアウラが寝室で過ごす時間が長いためだと説明した。
ところがミレーラが時間配分を心配すると、フェーがリビングなどの掃除は手を抜いて最短時間で終わらせていると正直に話してしまった。
報告を受けたアマンダは、やはり問題児達は問題児であると頭を抱えた。
ニルダへの悪影響
その夜、問題児三人組は待機時間中に氷入り果汁水を飲みながらくつろいでいた。
そこへ携帯ゲームを借りに来た新人侍女ニルダが現れる。三人は携帯ゲームの話で盛り上がり、徹夜の方法まで教え始めた。
さらにレテは生クリームと凍らせた野いちごを使い、即席のアイスクリームを作ってニルダへ振る舞った。ニルダは先輩達との交流を心から楽しんでいた。
しかしその後、ニルダから報告を受けたアマンダは、純真なニルダが最も問題児達の影響を受けていることを知り、大きな危機感を抱いた。
問題児三人組への説教
翌朝、フェー、ドロレス、レテは侍女長室へ呼び出された。
アマンダは新人達に対し、要領の良い手抜きや後宮で楽をする方法ばかり教えていると厳しく叱責した。
三人は謝罪したものの、自分達の問題を本当に理解している様子はなかった。
本棟勤務を餌にした矯正策
正論だけでは三人に効果がないと悟ったアマンダは、別の方法を取った。
将来フレア王女が後宮へ入ると、本棟勤務と離れ勤務に侍女が分かれることになると説明した。そして本来であれば三人を善治郎付きとして本棟に残すつもりだったが、新人達が三人のやり方を引き継げるなら、善治郎の世話は新人に任せてもよいと告げた。
それを聞いた三人は態度を一変させ、新人達には正しい後宮侍女の仕事を教えると即座に約束した。
その反応を見たアマンダは深く溜息をつきながらも、ようやく効果的な対策を見つけたのであった。
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