ヒモ生活13巻レビュー
【理想のヒモ生活】あらすじ・ネタバレ・まとめ
ヒモ生活15巻レビュー
どんな本?
■ 作品概要
「理想のヒモ生活」は、異世界における国家間の外交や歴史的因縁、そして王族たちの複雑な結婚生活や政治的駆け引きを描いたファンタジー小説である。
現代日本から召喚され、南大陸カープァ王国の王配となった善治郎と女王アウラは、双王国の貴族令嬢ルクレツィアから、シャロワ・ジルベール双王国がかつて大陸を支配した『白の帝国』の末裔であるという歴史的秘密を知らされる。北大陸で絶大な影響力を持つ宗教組織『教会』が『白の帝国』を敵視しているため、双王国と関係の深いカープァ王国は、北大陸諸国からの侵攻という将来の脅威に直面することになる。アウラは双王国のブルーノ先王と極秘会談を行い、北大陸のウップサーラ王国を含めた同盟体制の構築や大陸間航行船の提供に向けて動き出す。
一方、ウップサーラ王国を訪れた善治郎は、グスタフ王やユングヴィ王子と情報を共有する中で、謎に包まれた国家『ウトガルズ』からの使者である灰色猫と遭遇し、血統魔法ではない高度な魔法技術『魔法文字』で記された招待状を受け取る。本作の世界は、血統魔法を重視する南大陸と、造船技術や火薬などの科学技術が発展する北大陸という異なる文明圏が存在し、その間で国家間の思惑と技術の獲得競争が激しく交錯している。
■ 主要キャラクター
- 善治郎・ビルボ・カープァ:現代日本から召喚されたカープァ王国の王配である。『瞬間移動』の魔法を駆使し、南北大陸を往復して外交の要として奔走する。争いを好まず、妻たちとの平和な家庭を築くことを望んでいるが、ルクレツィアの側室問題や国家間の密約に巻き込まれて頭を悩ませる。
- アウラ・カープァ:カープァ王国の女王であり、善治郎の正妻である。大国の君主として冷徹かつ現実的な判断を下し、来るべき北大陸の脅威に対抗するため、ビー玉を活用した魔道具の量産や同盟構築による国力増強を進める。
- フレア・アルカト・カープァ:善治郎の新たな側室となった、ウップサーラ王国の元第一王女である。善治郎の寵愛を得ようと後宮で波風を立てまいと努力する一方で、未知への探求心が極めて強く、ウトガルズへの同行を熱望して床に転がって駄々をこねるなど、子供っぽい一面も見せる。
- ルクレツィア・ブロイ:シャロワ・ジルベール双王国の貴族令嬢である。生家であるシャロワ王家への復帰を念頭に善治郎への側室入りを熱望しているが、結婚後の人生をすべて夫に委ねるという受動的な姿勢が、共に結婚生活を築きたいと考える善治郎にとって逆に大きな負担となっている。
- グスタフ五世:ウップサーラ王国の国王である。国益を最優先に考える老獪な為政者であり、善治郎からもたらされた『白の帝国』や『ウトガルズ』の情報を重く受け止め、カープァ王国との連携を強める。
- ユングヴィ・ウップサーラ:ウップサーラ王国の第二王子である。次期国王の最有力候補であり、野心家かつ好奇心旺盛な性格を持つ。ウトガルズからの招待状の同行枠を巡り、泣き叫んで手足をバタつかせるという実力行使で同行者の座を勝ち取る。
- ブルーノ先王:シャロワ・ジルベール双王国の先王である。アウラとの極秘会談において『白の帝国』の歴史的真実を語り、北大陸の脅威に対抗するため、大陸間航行船の提供を条件に南大陸諸国の防衛と反撃の要となる協力を約束する。
■物語の特徴
本作は、魔法や武力による直接的な無双展開よりも、国家間の情報戦、同盟交渉、技術格差を埋めるための政治的駆け引きが物語の主軸となっている点が大きな特徴である。 第14巻では、「双王国が白の帝国の末裔である」という世界の根幹に関わる歴史的秘密が明かされ、宗教対立や将来の侵略戦争を見据えた重厚な外交ドラマが展開される。その一方で、ウトガルズからの招待を巡って駄々をこねる王族たちのコミカルなやり取りや、巨大な走竜に初めて乗る善治郎の苦労、後宮においてパンケーキやアイスクリームを通じて打ち解けていく南北大陸の侍女たちの文化交流など、日常の温かみとユーモアが随所に織り交ぜられている。政治と日常、価値観の異なる者同士の相互理解が丁寧に描かれており、読者を惹きつける独自の魅力となっている。
簡単な感想
側室を迎えたばかりなのに、もう新たな側室の話が出て来た。
今度は双王国から側室を迎えないといけないようだ。
本妻との間で板挟みって云うより、完全に国の事情じゃん。
読んだ本のタイトル
理想のヒモ生活 14
著者:渡辺恒彦 氏
イラスト:文倉十 氏
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あらすじ・内容
シリーズ累計270万部突破! ヒモ男に新たな側室? 本妻との間で板挟み? 宝石をくわえた猫? コミックスも絶好調!
善治郎と女王アウラは、ルクレツィアから双王国と『白の帝国』、
理想のヒモ生活 14
そしてウトガルズの隠された歴史について知らされる。
双王国は『白の帝国』の末裔であり、
ウトガルズは古の巨人族の自治都市『ウートガルド』と
密接な関係があると。
看過できない情報に、女王アウラは一刻も早く、
双王国のブルーノ先王との密議をこらす必要性を確信する。
数日後、善治郎は双王国に『瞬間移動』する。
表向きは鍛冶師ヴェルンドへの弟子入りを熱望する
マルガリータ王女を迎えるためだが、本当の目的は、
秘密裏にブルーノ先王をカープァ王宮に飛ばし、
女王アウラとの極秘会談を成立させるためであった。
一方、双王国滞在中の善治郎は、エレハリューコ、
リーヤーフォンの両公爵から新型双燃紙の礼として
走竜の贈与を伝えられる。
それを受けてカープァの後宮に帰った善治郎は、
女王アウラ、フレア姫と共に後宮の中庭で騎竜術の訓練を始める。
その後、双王国が白の帝国の末裔であるという情報を伝えるため、
善治郎は単身『瞬間移動』でウップサーラ王国に飛ぶ。
グスタフ王とユングヴィ王子と善治郎は秘密裏に会談して
情報の共有を図り、『教会』勢力に対するカープァ王国、
双王国、ウップサーラ王国の連携構築を図る。
その話し合いの最中、緑色の石をくわえた灰色の猫が現れる。
「灰色猫は『ウトガルズの使い』だ」。
緑色の石はほどけて緑色のプレートに変じたが、
そのプレートはウトガルズへの招待状だった。
そこに書かれた名前は――。
感想
フレア姫を正式に迎えて、早速彼女が強請るのが交易船。
でも善治郎の国には、大航海出来る造船技術が無い。
そうなったら、以前乗っていた黄金の木葉号をと思ったらアレは北方の国の旗艦だからダメらしい。
それなら技術を寄越せと云う善治郎の正妻殿。
でも、はいそうですかとは行かないのがお国の事情。
さらに双王国の側室候補は、結婚するまでしか考えておらず、結婚後の生活に全く想像が及んでおらず。
その辺りは全て善治郎に丸投げされるのに善治郎は、そんな無責任に相手の人生を背負えないと思っている。
そんな事を言う善治郎に、嫁2人は価値観の違いで理解出来ないと頭を抱える。
周辺の男達は全てを背負い、引っ張って行く事が誇りだと思っているのに。
善治郎はそれが重いと言う。
北方五ヶ国筆頭のウトガルズからの紹介状が来て。
招待されたのは善治郎とあと1人。
それに付いて行くと言う双子の兄妹が、、
駄々っ子のように床に寝転んで手足をバタつかせて行きたいと主張するのが、、
やっぱりこの2人は双子なんだなと思ってしまう。
身内だから見れる態度なんだろうな、、
最後までお読み頂きありがとうございます。
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ヒモ生活13巻レビュー
【理想のヒモ生活】あらすじ・ネタバレ・まとめ
ヒモ生活15巻レビュー
考察・解説
白の帝国の滅亡
『理想のヒモ生活14』における「白の帝国の滅亡」は、本作の世界観の根幹に関わる歴史的秘密であり、南大陸と北大陸の間に横たわる深い対立の起源として描かれている。
白の帝国の滅亡について、以下の4つのポイントから解説する。
1. 十二王家による圧倒的な繁栄と驕り
遥か昔、大陸には「白 service の帝国」と呼ばれる巨大な国が存在していた。
・力、創造、契約、付与など十二種類の強力な血統魔法を有する十二の王家によって統治されていた。
・「白の帝国にできないことは、思いつかないことだけ」と言われるほどの一大文明を築き上げていた。
・しかし、その圧倒的な国力に対する自信はやがて過信や驕りへと変わる。
・帝国は拡張主義の赴くまま、不可侵の領域である「聖域」へと手を出してしまった。
2. 聖域への侵攻とわずか七日間の竜の審判
聖域とは、この世界の監理者である「竜」の生息領域であり、絶頂期の白の帝国にとっても竜に歯向かうことは無謀以外の何物でもなかった。
・聖域への侵略から白の帝国が滅びるまで、要した時間はわずか七日間であった。
・竜種の炎は、大地や緑、動物などの自然を一切害することはない。
・ただ帝国の人間とその創造物だけを跡形もなく焼き尽くし、栄華を極めた大帝国は滅亡を迎えた。
3. 竜の審判を免れた3つの王族グループ
帝国は滅びたが、支配層である十二王家が完全に全滅したわけではなかった。竜族は冷徹でありながらも理性的であり、以下の3つのグループは審判を免れた。
・最後まで侵略戦争に反対し、帝国によって虜囚の憂き目に遭っていた者たち。
・侵略より遥か以前に血統魔法で人造の大地「サンドリヨン大陸」を作り、不干渉を貫いて引き籠もっていた者たち。彼らは戦後、大陸の明け渡しを条件に竜族と相互不干渉を勝ち取る。
・戦争当時、竜族とも対等な間柄であった巨人族の自治都市(ウートガルド)に身を寄せていた者たち。
4. 双王国の先祖と竜族との契約、そして後世への影響
巨人族の都市に身を寄せていたグループには、シャロワ王家やジルベール法王家の先祖が含まれていた。
・彼らは後に異界へと去る巨人族と分かれてこちらの世界に残ることを選ぶ。
・巨人族の仲介によって古代竜族と契約魔法を用いた契約を交わすことで生存を許された。
・その条件として、帝国時代の知識・技術の放棄や、北大陸からの期限付き追放などを受け入れたと伝えられている。
・しかし、長い年月を経て北大陸で絶大な権力を持つ宗教組織「教会」は歴史の真実を失伝した。
・現在では白の帝国の末裔をすべて「竜種に歯向かった大罪人」として強烈に敵視している。
まとめ
「白の帝国の滅亡」は、単なる過去の神話や伝説ではなく、現在の世界情勢に直結する重大な歴史的事件である。シャロワ・ジルベール双王国が白の帝国の末裔であるという事実は、彼らと同盟を結ぶカープァ王国にとっても対岸の火事ではなく、将来的に北大陸の教会勢力との生存を懸けた大戦争に巻き込まれる決定的な火種となっている。
北大陸と教会の脅威
『理想のヒモ生活』における「北大陸と教会の脅威」は、圧倒的な技術格差を持つ北大陸諸国の南大陸への進出と、宗教組織「教会」が抱える歴史的因縁が結びつくことで生じる、国家の存亡を懸けた最大の危機として描かれている。
北大陸と教会の脅威について、以下の4つのポイントから解説する。
1. 教会と白の帝国の歴史的因縁
南大陸のシャロワ・ジルベール双王国は、かつて竜の生息領域「聖域」を侵略して竜の怒りを買い、七日間で滅亡した巨大国家「白の帝国」の末裔であることが判明する。
・一方、北大陸で絶大な影響力を持つ宗教組織である教会は、長い歴史の中で歴史の真実を失伝した。
・その結果、現在では白の帝国の末裔をすべて、竜種に歯向かった大罪人、として強烈に敵視している。
・この宗教的な因縁が、将来的に北大陸と南大陸を巻き込む決定的な火種となっている。
2. 南大陸解放が大義名分となる侵略戦争の危険性
双王国が白の帝国の末裔であるという事実が教会勢力に知られれば、彼らはその事実を利用する可能性が高い。
・末裔の討伐や南大陸解放を大義名分として、南大陸への侵略戦争を仕掛けてくる危険性が予測されている。
・ウップサーラ王国のグスタフ王は、現状の北大陸は情勢が不安定であり、教会内部にも権力闘争があるため直ちに動く可能性は低いと分析する。
・しかし、国家に対する最大の脅威として警戒を強めている。
3. 北大陸の圧倒的な国力と矢面に立つカープァ王国
善治郎が持ち帰ったズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国のポモージエ港の写真を目の当たりにした女王アウラと双王国のブルーノ先王は、巨大な港湾施設や多数の大型船から、北大陸の圧倒的な国力と技術力を痛感する。
・ブルーノ先王は、いずれ北大陸諸国による国を挙げた大攻勢が来ると断言した。
・さらに、善治郎やカルロス王子も白の帝国の血を引いているため、カープァ王国は双王国と一蓮托生の関係にある。
・海沿いに位置するカープァ王国は、北大陸からの侵攻を受けた際に真っ先に矢面に立たされるという危機的状況に置かれている。
4. 防衛の限界とカープァ王国主導の反撃計画
女王アウラは、南大陸側に大陸間航行船が存在しない現状では、どれほど防衛に成功しても北大陸側は痛手を負わずに何度でも侵攻してくるため、絶対に勝てない、と分析する。
・この絶望的な状況を打破し、北大陸本土へ攻撃の手を伸ばす力を得るため、アウラはウップサーラ王国から得た技術で大陸間航行船の量産計画を推し進める。
・同時に、双王国から船員の育成協力や魔道具の提供を引き出す。
・自国でもビー玉を活用した爆炎の魔道具を量産するなど、北大陸の脅威に対抗するための強固な軍事・同盟体制の構築に乗り出している。
まとめ
「北大陸と教会の脅威」は、単なる他国との国境紛争ではなく、技術的優位に立つ北大陸と、歴史的・宗教的な憎悪を抱く教会が結びつくことで起こり得る、南大陸全体を巻き込む生存競争である。この避けられない未来の戦争を見据え、女王アウラや善治郎が水面下で他国と結ぶ冷徹な同盟交渉や軍備拡張の決断は、物語の緊張感を飛躍的に高める重要な要素となっている。
宝玉と専属契約
『理想のヒモ生活14』における「宝玉と専属契約」は、カープァ王国が持つ新技術(宝玉=ビー玉)と、シャロワ・ジルベール双王国の血統魔法(付与魔法)を巡る国家間の高度な取引であり、善治郎の瞬間移動を盤面に組み込んだ外交的駆け引きとして描かれている。
「宝玉と専属契約」について、以下の4つのポイントから解説する。
1. ラルゴ王弟の目的と宝玉の大量購入打診
双王国のラルゴ王弟は、砂漠を巡る「放浪の二公」(エレハリューコ公爵領とリーヤーフォン公爵領)の枯渇したオアシスを復活させるため、水作成の魔道具を必要としていた。
・善治郎の助言を受け、岩山や丘に穴を掘って巨大な天然の水がめを作るという構想を得る。
・ラルゴ王弟は、穴掘り用の土魔法の魔道具も同時に作成しようと計画した。
・その結果、付与魔法の最適な媒体となるカープァ王国の「宝玉(ビー玉)」を40個という単位で大量に購入したいと善治郎に持ちかけた。
2. 破格の対価である専属契約の実態
非常に高価で量産も容易ではない宝玉の対価として、ラルゴ王弟が提示したのが「専属契約」である。
・これは本来、シャロワ王家の付与術士とジルベール法王家のお互いの治癒術士を融通し合うために、両王家間でのみ結ばれていた特別な契約であった。
・この契約を結べば、期間中(提示されたのは2年間)は追加の交渉や報酬を一切必要としない。
・契約した術者に自由に魔法の使用(魔道具の作成など)を命じることができるという、極めて破格で魅力的な内容であった。
3. 専属契約の制約と双王国側の思惑
しかし、この契約には制約も存在した。
・対象となる術者は、高すぎず低すぎない地位、年齢、魔法の熟練度の条件を満たした者に限られる。
・シャロワ王家の人間はジルベール法王家との約定により国外活動が制限されているため、契約した術者は期間中も双王国内に留まることが条件とされた。
・これは必然的に、魔道具の作成依頼や完成品の受け渡しのために、善治郎が瞬間移動で定期的に双王国へ出向かなければならないことを意味している。
・善治郎とアウラは、双王国側が善治郎を便利な移動手段として国内に引き留めることを狙っていると見抜いた。
4. 女王アウラの決断とリスク管理
帰国した善治郎から報告を受けた女王アウラは、宝玉の量産体制が整いつつある現状を踏まえ、2年間付与術士を独占して自国用の魔道具を多数作らせることができるこの契約に大きな魅力を感じる。
・しかし、善治郎は現在カープァ王国において代わりの利かない重要な外交の要となっている。
・彼が双王国に長期間拘束されるような事態はどうしても避けなければならない。
・そのためアウラは、善治郎の足止めを防ぐための条件をさらに詳細に詰めることを大前提として、この専属契約を受ける決断を下した。
まとめ
「宝玉と専属契約」は、魔道具の量産を望む両国の利害が一致した取引であると同時に、貴重な付与術士を貸し出す代わりに善治郎の瞬間移動という能力を自国のために活用しようとする、双王国側の老獪な思惑が絡んだエピソードである。この取引を通じて、両国の結びつきはさらに強固なものとなり、来るべき北大陸の脅威に対抗するための準備が進められていくこととなる。
魔法文字の招待状
『理想のヒモ生活14』における「魔法文字の招待状」は、謎に包まれた北方五か国の筆頭「ウトガルズ」への扉を開くアイテムであり、同時にこの世界の魔法の常識を根本から覆す極めて重要な情報をもたらしたエピソードとして描かれている。
「魔法文字の招待状」について、以下の4つのポイントから解説する。
1. ウトガルズの使いである灰色猫の出現
ウップサーラ王国にあるカープァ王国大使館にて、善治郎、グスタフ王、ユングヴィ王子の三人が秘密会談を行っている最中、突如として緑色の石をくわえた一匹の灰色猫が密室に出現した。
・灰色猫は石をテーブルに落とすと忽然と姿を消すという超常的な現象を見せる。
・ウップサーラ王の口伝を知るグスタフ王は落ち着いた様子で、それがウトガルズの使いであることを明かした。
2. 形状変化と自動翻訳機能を持つプレート
グスタフ王が拾い上げた緑色の石の表面を指でなぞると、石は折り目が解けるように緑色のプレート状へと変化した。
・このプレートこそがウトガルズからの招待状である。
・不思議なことに、善治郎には日本語、アウラには南大陸西方語、フレア姫には北大陸北方語に見えるという自動翻訳の効果を持っていた。
・さらにそこには、善治郎の本名である「山井善治郎」が名指しで招待対象として記されていた。
3. 血統魔法の常識を覆す技術である魔法文字
この招待状に用いられていたのは、ウトガルズ独自の「魔法文字」という技術である。
・グスタフ王の説明により、これが特定の血筋に依存する血統魔法ではなく、魔力を視認し操る能力さえあれば誰でも習得可能な魔法技術であることが判明する。
・難易度は極めて高いものの、血統魔法以外にも習得可能な高度な魔法技術が存在するという事実は、善治郎やユングヴィ王子に驚愕と強い衝撃を与えた。
・この重大な秘密が漏れることを防ぐため、善治郎はアウラとフレア姫以外には魔法文字の存在を明かさないと約束する。
4. 同行者の枠を巡る王族たちの実力行使
招待状の定員は二名であり、善治郎が指名されているため、空き枠は一名のみであった。
・善治郎がフレア姫を候補に挙げると、未知の知識と技術を求めるユングヴィ王子は即座に猛反発する。
・床に五体投地して両手両足をバタつかせながら泣き叫ぶという、駄々こね(実力行使)に出た。
・外交上の配慮から同行者はユングヴィ王子に決定する。
・しかし、帰国後に事の顛末を聞かされたフレア姫もまた、弟と全く同じように後宮の床で泣き叫んで駄々をこねるという、双子ならではのそっくりな反応を見せることになった。
まとめ
「魔法文字の招待状」は、単にウトガルズへの道筋を示すだけでなく、南大陸の血統魔法と北大陸の科学技術という既存の枠組みに属さない、第三の技術「魔法文字」の存在を明らかにした点で、物語の世界観を大きく広げる重要な要素である。同時に、未知の探求のためなら体面を捨てて駄々をこねる王族たちのコミカルな姿が描かれ、シビアな外交交渉の中にも人間味あふれるユーモアをもたらしている。
ウトガルズへの同行
『理想のヒモ生活14』における「ウトガルズへの同行」は、謎に包まれた北方五か国の筆頭であるウトガルズへ足を踏み入れるという重大な外交イベントでありながら、限られた同行枠を巡って王族たちが体面を捨てて「駄々をこねる」という、非常にコミカルで人間味あふれるエピソードとして描かれている。
「ウトガルズへの同行」について、以下の4つのポイントから解説する。
1. 招待状の定員とたった一つの同行者枠
ウトガルズの使いである灰色猫がもたらした緑色のプレート(魔法文字の招待状)には、招待の定員が二名であることと、そのうちの一名として善治郎の本名である「山井善治郎」が名指しで指定されていることが記されていた。
・必然的に空き枠は一名のみとなる。
・このたった一つの同行者枠を誰が手にするかが、ウップサーラ王国とカープァ王国を巻き込んだ争奪戦の火種となった。
2. ユングヴィ王子の実力行使
善治郎が同行者の候補としてフレア姫の名前を挙げると、同席していたウップサーラ王国のユングヴィ第二王子は即座に猛反発し、自分が行くと強く主張した。
・グスタフ王も、百余年ぶりのウトガルズからの招待の枠を自国に譲ってほしいという本音を明かす。
・ユングヴィ王子は、連れて行ってくれると言うまで五体投地し、両手両足をバタつかせ「連れてって」と泣き叫ぶ覚悟、と宣言した。
・善治郎が結論を保留すると、本当に有言実行で床に倒れ込み、駄々をこねるという実力行使に出た。
3. 同行者の決定とフレア姫の双子ゆえの反応
帰国した善治郎は、後宮で女王アウラとフレア姫に事の顛末を報告する。
・ウップサーラ王国との関係を考慮した結果、同行者はユングヴィ王子となり、フレア姫は留守番を告げられた。
・すると、未知への探求心にあふれるフレア姫は、弟のユングヴィ王子と全く同じようにソファーから滑り落ち、絨毯の上で手足をバタつかせて「連れてって、連れてって!」と泣き叫び始める。
・善治郎は、お前たちは双子か、ああ双子だった、と妙に納得しつつ、普段は理性的な妻の意外な一面に驚かされることになった。
4. 埋め合わせと桁違いのおねだり
泣き叫ぶフレア姫をなだめるため、善治郎は帰国後にドレスや宝石、ウトガルズの土産などで我慢の埋め合わせをすると約束した。
・するとフレア姫は一瞬で泣き止み、ドレスや宝石ではなく「船が欲しい」「アルカト港建造計画の前倒しを」という、国家予算規模の桁違いなおねだりを繰り出す。
・結果として、女王アウラから「調子に乗るでない」と襟首を掴んで物理的に引き上げられるというオチを迎えた。
まとめ
「ウトガルズへの同行」を巡るエピソードは、シビアな政治的駆け引きが続く物語の中で、王族たちの意外な一面を描き出すユーモラスな場面である。ユングヴィ王子とフレア姫の双子ならではのそっくりな反応や、妻たちの勢いに押され気味な善治郎の姿が描かれ、国家間の思惑の中にも家族としての温かな日常のやり取りが存在することを印象づけている。
ヒモ生活13巻レビュー
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登場キャラクター
カープァ王国
アウラ・カープァ
カープァ王国の女王であり、善治郎の正妻である。大国の君主として冷徹かつ現実的な判断を下す。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国・女王。
・物語内での具体的な行動や成果
ブルーノ先王と極秘会談を行い、北大陸の脅威に対抗するための同盟構築を進める。ビー玉を活用した魔道具の量産を推進した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
他国との連携を強化し、国家の防衛体制をより強固なものとしている。
善治郎・ビルボ・カープァ
現代日本から召喚されたカープァ王国の王配である。争いを好まず、平和な家庭を望む温和な性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国・王配。ビルボ公爵。
・物語内での具体的な行動や成果
ウップサーラ王国でウトガルズからの招待状を受け取る。南北大陸を往復し、国家間の外交交渉を担った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ウトガルズへの招待者に名指しで選ばれ、世界の秘密に関わる重要な立ち位置となる。
フレア・アルカト・カープァ
ウップサーラ王国の元第一王女であり、善治郎の新たな側室である。未知への探求心が極めて強い。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国・王配側室。アルカト公爵。
・物語内での具体的な行動や成果
ウトガルズへの同行を熱望し、後宮の床で泣き叫んで駄々をこねる姿を見せる。新しい船や港の建造を善治郎に要求した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
正式にカープァ王国の一員としてお披露目された。
カルロス・善吉・カープァ
アウラと善治郎の間に生まれた第一王子である。付与魔法の素養を持つことが判明している。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国・第一王子。
・物語内での具体的な行動や成果
本編では乳飲み子として保護されており、直接の行動描写は少ない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
シャロワ王家の血を引くため、将来的な国際問題の火種となる可能性を秘めている。
カルロス二世
カープァ王国の先代国王である。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国・先王。
・物語内での具体的な行動や成果
本編ではすでに故人であり、直接の登場はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
在位期間は一年にも満たない短い期間であったと回想されている。
エスピリディオン
カープァ王国の宮廷筆頭魔法使いである。豊富な知識を持つ老賢者である。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国・宮廷筆頭魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
フィクリヤの魔法研究論文を読み、稚拙ながら斬新な発見があるとして面談に応じる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
パスクアラ
エスピリディオンの妻である。優れた魔法使いとして宮廷に勤めている。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国・宮廷魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
本編での直接的な登場はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
ファビオ
アウラに仕える第一秘書官である。常に鉄仮面のような無表情を保ち、冷徹な直言を行う。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国・第一秘書官。
・物語内での具体的な行動や成果
ブルーノ先王の極秘訪問に立ち会い、記録と助言を行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
女王の右腕として、国政の中枢で強い権限を持ち続けている。
プジョル・ギジェン
カープァ王国の元帥である。巨漢の武人であり、尽きることのない野心を持っている。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国・元帥。
・物語内での具体的な行動や成果
本編では双王国での護衛任務などから帰還し、軍の指揮を執っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
ナタリオ
善治郎の護衛を務める騎士である。実直で忠誠心が厚い。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国・ビルボ公爵騎士団長。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎の北大陸行きに護衛として同行し、帰国後は騎士団の編成に苦労する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
エラディオ
双王国に駐在するカープァ王国軍の指揮官である。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国軍・竜弓騎士団第三大隊大隊長。双王国駐在部隊指揮官。
・物語内での具体的な行動や成果
双王国を訪れた善治郎を出迎え、護衛と案内の任務を遂行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
アマンダ
後宮の侍女長である。厳格な態度で後宮の秩序を守っている。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国後宮・侍女長。
・物語内での具体的な行動や成果
フレアの護衛であるスカジを後宮の侍女たちに紹介し、規律を保つ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
ヴァネッサ
後宮の調理担当責任者である。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国後宮・調理担当責任者。
・物語内での具体的な行動や成果
本編での直接的な行動の記載は少ない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
イネス
善治郎の身の回りの世話をする侍女である。常に落ち着いた態度で主を補佐する。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国後宮・清掃担当責任者。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎の北大陸行きに同行し、異国での生活を支えた。最後に善治郎の瞬間移動でカープァ王国に帰還する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
マルグレーテ
アウラ付きの侍女である。密偵としての訓練を受けている。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国・侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎の北大陸行きに同行する。オフス王国のケヴィンから素性を疑われ、執拗な質問を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
フェー
後宮の若い侍女である。小柄で感情表現が豊かである。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国後宮・侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
北大陸から来た侍女レベッカたちと交流し、文化の違いについて語り合う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
ドロレス
後宮の若い侍女である。長身で面倒見が良い性格である。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国後宮・侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
レベッカにカープァ王国の結婚事情や魔力量の重要性について教えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
レテ
後宮の若い侍女である。豊かな胸元を持つ。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国後宮・侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
同僚たちとともに、ウップサーラ王国から来た侍女たちと親交を深める。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
ルイサ
後宮の侍女である。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国後宮・侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
本編での具体的な行動の記載は少ないが、一時的にアウラ付きの任務に就く。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
ニコライ
ウップサーラ王国出身の船乗りである。
・所属組織、地位や役職
『黄金の木の葉号』・船員。山羊の飼育係。
・物語内での具体的な行動や成果
後宮に連れてこられた山羊の世話を担当する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
ウップサーラ王国
グスタフ五世
ウップサーラ王国の国王である。国益を最優先に考える老獪な為政者である。
・所属組織、地位や役職
ウップサーラ王国・国王。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎との会談中に現れた灰色猫からウトガルズの招待状を受け取る。魔法文字の存在を善治郎に説明し、情報統制を命じた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
将来的にユングヴィへの王位継承を早める構想を抱いている。
ユングヴィ・ウップサーラ
ウップサーラ王国の第二王子である。野心家で好奇心旺盛な性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
ウップサーラ王国・第二王子。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎が受け取ったウトガルズの招待状の同行枠を巡り、床で泣き叫ぶという実力行使に出る。結果として同行者の座を勝ち取った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
次期国王の最有力候補として認知されている。
エリク・ウップサーラ
ウップサーラ王国の第一王子である。戦士としての誇りが高い。
・所属組織、地位や役職
ウップサーラ王国・第一王子。
・物語内での具体的な行動や成果
本編では直接的な登場は少ないが、オフス王国の関係者から動向を注目されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
将来的にオフス王国の国王となることが内定している。
フェリシア
ウップサーラ王国の第二王妃である。フレアの実母である。
・所属組織、地位や役職
ウップサーラ王国・第二王妃。
・物語内での具体的な行動や成果
本編での直接的な登場は少ない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
フレデリック・オースルンド
カープァ王国に駐在するウップサーラ王国の外交官である。
・所属組織、地位や役職
ウップサーラ王国・外交官。
・物語内での具体的な行動や成果
フレアのお披露目夜会に出席し、善治郎と会話を交わす。霧の魔道具のおかげで酷暑をしのいでいると報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
ペテル・リンネ
自然学を専門とする教授である。
・所属組織、地位や役職
ウップサーラ王国・教授。
・物語内での具体的な行動や成果
鉱物探索の専門家として、黄金の木の葉号に乗船してカープァ王国へ向かう予定となる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
ヴィクトリア・クロンクヴィスト
フレアの護衛を務める女戦士である。「スカジ」の銘を持つ。
・所属組織、地位や役職
ウップサーラ王国・フレアの護衛。女戦士。
・物語内での具体的な行動や成果
フレアの別棟の安全確認を行い、ウップサーラ出身の侍女のために魔道具の追加購入を申請する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
ヴェルンド
ウップサーラ王国の国一番の鍛冶師の称号を持つ老職人である。
・所属組織、地位や役職
ウップサーラ王国・鍛冶師。
・物語内での具体的な行動や成果
カープァ王国へ移住し、職人の箱庭で優れた剣を打ち上げる。マルガリータ王女を弟子として受け入れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
ランヒルド
フレア付きのベテラン侍女である。
・所属組織、地位や役職
ウップサーラ王国・侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
カープァ王国後宮に到着し、厳格な態度で挨拶を行い若い侍女たちを緊張させる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
レベッカ
フレア付きの若い侍女である。
・所属組織、地位や役職
ウップサーラ王国・侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
カープァ王国の侍女たちと会話し、魔力量が結婚に影響するという南大陸の文化に驚愕する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
エルヴィーラ
フレア付きの若い侍女である。
・所属組織、地位や役職
ウップサーラ王国・侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
本編での直接的な登場は少ないが、レベッカの同室者として言及される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
シャロワ・ジルベール双王国
ブルーノ
双王国の先王である。
・所属組織、地位や役職
シャロワ・ジルベール双王国・先王。
・物語内での具体的な行動や成果
密かにカープァ王国を訪問し、アウラと極秘会談を行う。双王国が白の帝国の末裔であるという伝承を語った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
ジュゼッペ
双王国の現国王である。
・所属組織、地位や役職
シャロワ・ジルベール双王国・国王。
・物語内での具体的な行動や成果
本編での直接的な登場は少ない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
ラルゴ
双王国の王弟である。
・所属組織、地位や役職
シャロワ・ジルベール双王国・王弟。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎に宝玉の大量購入を持ちかけ、対価として双王国の術者の専属契約を提案する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
フランチェスコ
シャロワ王家第一王子の長男である。
・所属組織、地位や役職
シャロワ王家・王子。
・物語内での具体的な行動や成果
アウラ宛てにブルーノ先王からの双燃紙を届ける。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
マルガリータ
シャロワ王家の王女である。魔道具制作に並々ならぬ情熱を持つ。
・所属組織、地位や役職
シャロワ王家・王女。付与魔法の使い手。
・物語内での具体的な行動や成果
フレアの世話役を務める。カープァ王国を訪れ、鍛冶師ヴェルンドに期間限定で弟子入りを志願した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
ボナ
シャロワ王家の王女である。
・所属組織、地位や役職
シャロワ王家・王女。
・物語内での具体的な行動や成果
本編での直接的な行動の記載は少ない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
フィルベルト
シャロワ王家第二王子である。ルクレツィアとマルガリータの実父である。
・所属組織、地位や役職
シャロワ王家・第二王子。
・物語内での具体的な行動や成果
本編での直接的な登場はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
ヨランダ
フィルベルトの正妻である。ルクレツィアとマルガリータの実母である。
・所属組織、地位や役職
シャロワ王家・第二王子妃。
・物語内での具体的な行動や成果
本編での直接的な登場はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
ルクレツィア・ブロイ
ブロイ侯爵家の養女である。双王国が白の帝国の末裔であるという秘密を伝える。
・所属組織、地位や役職
ブロイ侯爵家・養女。
・物語内での具体的な行動や成果
アウラと善治郎の密談の場において、双王国の魔道具が白の帝国時代の遺産である事実を証言する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
フローラ
ルクレツィアの侍女である。
・所属組織、地位や役職
ブロイ侯爵家・侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
本編での直接的な行動の記載は少ない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
エレハリューコ
エレハリューコ公爵家の当主である。
・所属組織、地位や役職
シャロワ・ジルベール双王国・公爵(族長)。
・物語内での具体的な行動や成果
本編での直接的な登場はない。新型双燃紙の礼として善治郎に走竜を贈る約束をする。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
リーヤーフォン
リーヤーフォン公爵家の当主である。
・所属組織、地位や役職
シャロワ・ジルベール双王国・公爵(族長)。
・物語内での具体的な行動や成果
本編での直接的な登場はない。エレハリューコ公爵と共に走竜の贈与を申し出た。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
シュラ
エレハリューコ公爵の長女である。
・所属組織、地位や役職
エレハリューコ公爵家・長女。
・物語内での具体的な行動や成果
本編での直接的な登場は少ない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
ナズィーム
リーヤーフォン公爵の三女である。
・所属組織、地位や役職
リーヤーフォン公爵家・三女。
・物語内での具体的な行動や成果
本編での直接的な登場は少ない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
フィクリヤ
アニミーヤム公爵家の養女である。魔法研究に熱心である。
・所属組織、地位や役職
アニミーヤム公爵家・養女。
・物語内での具体的な行動や成果
カープァ王国に滞在し、必要最低限の社交のみを行い魔法知識を深める。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
タラーイェ
エレメンタカト公爵家の名代である。商売に強い関心を持つ。
・所属組織、地位や役職
エレメンタカト公爵家・名代。
・物語内での具体的な行動や成果
カープァ王国で積極的に社交の場に顔を出し、空間遮断結界の魔道具の取引を熱望した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
オフス王国
ケヴィン
オフス王国の初老の戦士である。
・所属組織、地位や役職
オフス王国・戦士。
・物語内での具体的な行動や成果
フレアの結婚式の席で、カープァ王国の侍女マルグレーテの素性について執拗な質問を行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
海難事故で行方不明になったマルグレーテ王女を探し続けている。
マルグレーテ
オフス王国の王女である。
・所属組織、地位や役職
オフス王国・王女。
・物語内での具体的な行動や成果
本編での直接的な登場はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
海難事故により行方不明となっている。
ウトガルズ
灰色猫(ウトガルズの使い)
ウトガルズの使いとして現れる猫である。
・所属組織、地位や役職
ウトガルズの使い。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎とグスタフ王の密談の場に現れ、魔法文字で書かれた招待状のプレートを落として姿を消す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
ヒモ生活13巻レビュー
【理想のヒモ生活】あらすじ・ネタバレ・まとめ
ヒモ生活15巻レビュー
展開まとめ
プロローグ 建国神話
白の帝国の滅亡と生き残った王族
遥か昔、大陸には十二の王家が血統魔法を用いて支配する『白の帝国』が存在していた。力、創造、契約、付与など十二種の血統魔法によって繁栄を極め、白の帝国にできないことは思いつかないことだけだと言われるほどの文明を築いていた。
しかし、その繁栄は驕りを生み、帝国は竜の生息地である聖域へ侵攻した。その結果、竜種の怒りを買い、侵略開始からわずか七日で滅亡した。竜種の炎は自然には一切被害を与えず、人間とその創造物のみを焼き尽くしたのである。
それでも十二王家が全滅したわけではなかった。侵略に反対して囚われていた王族、人造大陸サンドリヨンへ移住して不干渉を貫いていた王族、そして巨人族の自治都市に身を寄せていた王族たちは竜の審判を免れて生き残ったのだった。
ルクレツィアによる秘密の説明
カープァ王国王宮で、ルクレツィアは女王アウラと善治郎だけを相手に密談を行った。北大陸に関わる重要な内容であるため、フレア姫も同席させずに話が進められた。
ルクレツィアは、双王国が保有する魔道具の一部が白の帝国時代の遺産であると説明した。たとえば『凪の海』の中心部にある白い球体は、マカロフ王家の創造魔法によって作られた純魔力物質であると明かした。
善治郎はその説明を聞き、『凪の海』の白い球体が不自然なほど純白であったことを思い出し、驚きを覚えた。
教会に残された知識
善治郎が北大陸の人々に遺産の正体が分かるのかと尋ねると、ルクレツィアは大半の人間には判別できないと答えた。
しかし、真竜の牙から生まれた使徒や、真竜の爪から作られた武具を継承する勇者の末裔である教会中枢の人間ならば、知識を受け継いでいる可能性が高く、遺産の正体を見抜けるだろうと説明した。
教会と白の帝国の末裔の対立
善治郎は、白の帝国の末裔が竜と和解していたのなら教会と敵対する理由はないのではないかと考えた。
しかし女王アウラは、それならばシャロワ王家やジルベール法王家が南大陸へ移住する必要はなかったと指摘した。
ルクレツィアは、使徒が活動を停止し、勇者の知識継承も薄れた結果、教会が白の帝国の末裔を竜に歯向かった大罪人と見なすようになったと語った。さらに長い年月の中で本来の歴史そのものが失われたのだと説明した。
避けられない衝突への懸念
女王アウラはルクレツィアの説明を全面的には信じなかったものの、教会が白の帝国を敵視し、双王国がその末裔を自認している事実は重く受け止めた。
そして、白の帝国の末裔には双王国だけでなく、その血を引く善治郎や、付与魔法の素養を持つカルロス=善吉も含まれることを確認した。
北大陸諸国の南大陸進出が進めば、教会と白の帝国の末裔との対立は避けられず、海沿いのカープァ王国が最前線に立たされる可能性が高いと判断した。
双王国の思惑の発覚
女王アウラは、双王国が最初から教会を警戒していたのではないかとルクレツィアを追及した。
ルクレツィアは、フレア姫から北大陸の情勢や教会の影響力について事前に聞いていたことを認めた。北大陸の急速な発展と教会の存在を知った双王国が警戒を強めるのは当然だったのである。
さらに女王アウラは、ルクレツィアを北大陸へ送り込んだ背景には、情報収集だけでなく、カープァ王国と双王国の結び付きを各国へ示し、将来の対立にカープァ王国を巻き込む意図もあったと見抜いた。
本国との連絡方法の決定
女王アウラは事態を重く見て、ブルーノ前王を招かなければならないと判断した。そしてフランチェスコ王子やボナ王女へ連絡を取るべきかを尋ねた。
しかしルクレツィアは、自身が本国との連絡手段を確保しているため不要であると答えた。さらに、ジュゼッペ王の要望として、フランチェスコ王子とボナ王女には連絡しないでほしいと伝えた。
女王アウラはルクレツィアの反応から発言が事実であると判断し、その要望を受け入れた。そして本国への連絡をルクレツィアに任せることを決定した。
その言葉を受けたルクレツィアは、大役を終えた安堵をにじませながら自然な笑顔を浮かべたのだった。
第一章 側室のお披露目
フレア姫のお披露目夜会
善治郎とフレア姫はウップサーラ王国で結婚式を挙げていたため、カープァ王国では代わりにフレア姫のお披露目を兼ねた夜会が開催された。
善治郎はフレア姫に合わせた赤を基調とした洋装をまとい、正式にカープァ王家の一員となったフレア姫は赤いドレス姿で出席した。二人は結婚祝賀の挨拶を受けながら会場を回り、善治郎は女王アウラといる時とは異なり、上位者として振る舞うことに気を遣っていた。
フレデリック外交官との会話
善治郎はウップサーラ王国の外交官フレデリック・オースルンドに声をかけた。
両国の外交は善治郎の瞬間移動能力によって大きく支えられており、善治郎自身が頻繁に南北両大陸を往復していた。酷暑のカープァ王国と冷涼なウップサーラ王国を行き来する負担は大きかったが、外交のために欠かせない役割となっていた。
フレデリックは当初は暑さに苦しんだものの、霧を発生させる魔道具によってどうにか生活できていると語った。
リンネ教授失踪の真相
善治郎は『黄金の木の葉号』に予定外の人物が乗船した件について尋ねた。
その人物は植物学の権威であるペテル・リンネ教授であった。教授はカープァ王国の植物や木材に強い興味を抱き、自らの意思で『黄金の木の葉号』に乗り込んだ可能性が高いことが判明していた。
王宮では教授の失踪に大騒ぎとなったが、グスタフ王らは教授の性格や過去の行動から事情を理解していた。フレデリックは、船が到着次第、教授を本国へ送り返してほしいと善治郎に依頼した。
夜会後の夫婦の時間
夜会を終えた善治郎とフレア姫は後宮別棟へ戻った。
善治郎はようやく緊張から解放され、二人はくつろぎながら会話を交わした。フレア姫は善治郎がまだ形式的な口調から完全に抜け出せていないことを指摘し、善治郎もそれを認めた。
話題はリンネ教授へ移り、フレア姫は教授について詳しい人物として鍛冶師ヴェルンドの名を挙げた。
ヴェルンドと北大陸の職人たち
フレア姫は、ヴェルンドが鉱物学に詳しいリンネ教授と交流があったことを説明した。
ヴェルンドはすでに『職人の箱庭』でその腕前を示し、カープァ王国の職人たちから高く評価されていた。しかし環境や材料の違いから、ウップサーラ王国と同じ品質の仕事を行うには試行錯誤が必要だった。
善治郎は北大陸から来た技術者たちに期待を寄せたが、フレア姫はヴェルンドが特別な存在であり、他の職人たちに同じ成果を求めるべきではないと説明した。
アルカト開発を巡る苦戦
善治郎が港湾整備の進捗を尋ねると、フレア姫は大きなため息をついた。
フレア姫はアルカト公爵として領地開発を進めたいと考えていたが、女王アウラとの交渉では後手に回っていた。『黄金の木の葉号』の修繕ドックや同型艦建造施設がワレンティア港へ優先的に整備されることになり、アルカトの開発は後回しになっていたのである。
善治郎は立場上どちらにも肩入れできず、労いの言葉をかけるだけだった。
蒸気風呂での生活談義
二人は蒸気風呂へ向かい、まず水風呂に入って暑さを和らげた。
善治郎が生活に不便はないか尋ねると、フレア姫は乳製品不足を挙げた。山羊の飼育は順調だったが、繁殖が優先されているため人間が消費できる乳製品は限られていた。
善治郎は山羊の追加購入を提案したが、ウップサーラ王国の山羊は気候の違いから適応が難しいと説明され、その案は見送られた。
侍女たちの苦労
続いてフレア姫は、共に来た侍女たちが酷暑に苦しんでいることを打ち明けた。
仕事中は霧の魔道具を使えないため負担が大きく、かといってウップサーラ王国出身の侍女だけを優遇することもできなかった。
善治郎は一時帰国や人員補充を提案したが、条件に合う侍女は限られているため簡単には増やせないと説明された。それでも体調を崩した場合は帰国させることを確認し合った。
提案を巡る反省
侍女たちを一時帰国させる案について話していた途中、フレア姫は突然自らの失言に気づいた。
善治郎の瞬間移動能力を何日も拘束するような提案は、側室として越権的な願いだったと認めて謝罪した。
善治郎もまた、アウラとの対等な話し合いの感覚をそのまま持ち込んでいたことを反省した。
さらにフレア姫は、自分が幼い頃から願いを却下され続けた経験から、最初に無理な要求を出して交渉する癖が身についていると打ち明けた。
善治郎はそのやり方は自分とは相性が悪いと笑い、二人は今後は交渉ではなく話し合いを重視していくことを確認した。
双王国訪問の予告
蒸気風呂へ向かう途中、フレア姫は善治郎の予定について尋ねた。
善治郎は近いうちにシャロワ・ジルベール双王国へ向かう予定であり、長期間の滞在になるかもしれないと明かした。その表情には珍しく不快感が浮かんでいた。
アウラの孤独な夜
同じ頃、後宮本棟ではアウラが一人で夜を過ごしていた。
善治郎は近くにいるにもかかわらず別棟でフレア姫と過ごしており、その事実がアウラの心を重くしていた。眠れないアウラは仕事に意識を向けることにした。
北大陸情勢と双王国への対応
アウラは北大陸の情勢や白の帝国の歴史、ブルーノ先王の極秘訪問計画について整理した。
さらに、ヴェルンドを目当てにマルガリータ王女が訪問を希望していることも検討した。善治郎の瞬間移動を利用して王女とブルーノ先王を極秘に移動させる案が現実的だと判断した。
ビー玉と魔道具量産への期待
アウラはビー玉の量産体制が整いつつあり、さらにフランチェスコ王子が水作成付与の魔道具を完成させたことを思い返した。
魔道具を作る魔道具とビー玉の量産が組み合わされば、魔道具が大量生産される時代が到来する可能性がある。アウラは急激な変化を好まなかったが、国力維持のためには必要な変化だと認識していた。
共和国への警戒
アウラはポモージエ港の写真を見ながら、北大陸最大級の港の規模と活況に強い警戒心を抱いた。
共和国は巨大な港を十分に活用し、大型船も多数保有していた。経済力や技術力ではカープァ王国を上回る可能性が高く、将来的には大規模な海上貿易で南大陸へ進出してくるかもしれないと考えた。
その脅威に対抗するため、ビー玉を活用した魔道具量産による国力増強を進める決意を固めたアウラは、ようやく訪れた眠気に身を任せて目を閉じるのだった。
第二章双王国訪問
シャロワ・ジルベール双王国への訪問
数日後、善治郎は『瞬間移動』でシャロワ・ジルベール双王国を訪れていた。
善治郎を出迎えたのはマルガリータ王女であった。王女はヴェルンドに会えることへの興奮を隠せず、善治郎に強い歓迎の言葉を向けた。善治郎はその様子から、事前に聞いていた彼女の性格を改めて実感していた。
その後、エラディオの取り成しもあり、マルガリータ王女は自らの振る舞いを反省して謝罪した。善治郎はそれを笑い話として受け流し、場を和ませた。
風の鉄槌への謝意
移動中、善治郎はマルガリータ王女から贈られた魔道具『風の鉄槌』について感謝を伝えた。
善治郎は『成人の証』を達成するうえで大いに役立ったと評価し、何らかの形で礼をしたいと申し出た。しかしマルガリータ王女は、すでにルクレツィアに関する約束という形で十分な対価を得ていると答えた。
それでも善治郎が礼を望むと、マルガリータ王女は『風の鉄槌』の使用感を詳細に教えてほしいと依頼した。自身が改良した魔法であるため、今後の研究の参考にしたいと考えていたのである。善治郎は後日書面で報告することを約束した。
双王国での滞在開始
善治郎はカープァ王国大使館として利用されている『紫卵宮』別棟へ入った。
部屋は以前滞在した時のまま維持されており、霧の魔道具によって快適な環境が整えられていた。『瞬間移動』による疲労もなかったため、善治郎は到着当日から面会に応じることになった。
放浪の二公の使者との面会
善治郎はエレハリューコ公爵家のシュラと、リーヤーフォン公爵家のナズィームを迎えた。
二人はそれぞれの父である族長からの感謝状を持参していた。感謝の対象は善治郎が提案した『新型双燃紙』である。
従来の双燃紙と異なり、新型双燃紙は繰り返し使用できたため、広大な砂漠を巡る放浪の二公にとって連絡手段が飛躍的に向上していた。さらに材料となる化竜の皮が両家の領地に生息する化竜から得られるため、新たな収入源にもなっていた。
その恩恵に対し、両族長は深い感謝を示していた。
エレハリューコ家からの贈り物
シュラは、エレハリューコ族長家からの礼として走竜が贈られることを伝えた。
その走竜は族長家本家の騎竜の血筋を引く極めて価値の高い個体であり、しかもまだ十五歳という若さであった。今後も長く活躍できる年齢であり、族長家の誠意が示された贈り物だった。
善治郎はその厚意に感謝を示したものの、これほどの走竜を受け取る以上、自らも最低限の騎竜術を身につけなければならないと感じていた。
リーヤーフォン家からの贈り物
続いてナズィームは、リーヤーフォン族長家から一歳の走竜を贈る予定であると説明した。
その意図は善治郎ではなく、第一王子カルロス=善吉にあった。幼い頃から共に育った走竜との絆は大きな力になるため、カルロスが成長するまで待ち、本人に選ばせたいという考えだった。
善治郎はその意図を理解し、選定を数年後に延期してカルロス本人に選ばせることを提案した。ナズィームは族長へ確認が必要だとしながらも、受け入れられる可能性が高いと答えた。
さらに、その際には自身も走竜の世話役として同行すると説明した。ナズィームは竜の飼育に強い誇りを持っており、長距離移動を伴う幼竜の管理には自分が適任だと考えていた。
有翼騎兵の話題
贈り物の話が終わると、三人は雑談を交わした。
善治郎は北大陸の共和国が保有する『有翼騎兵』について説明した。空を飛ぶ有翼馬の存在を聞き、シュラは軍事的観点から対抗策を考え始めた。
一方のナズィームは、有翼馬の飼育や世話の方法に強い興味を示した。同じ話題でありながら、二人の関心の向け方は大きく異なっていた。
善治郎は、有翼馬は共和国でも希少であり、南大陸で目にする可能性はほぼないと説明した。
ラルゴ王子に関する伝言
面会の終わり際、ナズィームは思い出したように足を止めた。
ラルゴ王子からも善治郎へ面会の申し込みがあるはずだと伝え、その際に語られる内容についてはリーヤーフォン族長も了承していると告げた。
シュラも同様にエレハリューコ族長の了承を伝えた。
善治郎は二人の言葉から、それこそが今回の面会で最も伝えたかった重要事項であると理解し、その話を心に留めるのだった。
ラルゴ王弟との会談
翌日、善治郎はラルゴ王弟と面会した。
ラルゴ王弟は来国への感謝を述べた後、甥であるフランチェスコ王子について話題を切り出した。善治郎が迷惑をかけられていないと答えると、ラルゴ王弟は本当に迷惑がないなら今後に注意した方がよいと真剣に忠告した。善治郎はその言葉を素直に受け止めた。
宝玉購入の申し出
本題に入ったラルゴ王弟は、カープァ王国から大量の宝玉を購入したいと告げた。
購入を希望するのは最低二十個、多ければ六十個であり、用途は『水作成』の魔道具であった。善治郎は宝玉の権利の一部を持っているものの、最終決定権はアウラにあると前置きした上で、目的について詳しい説明を求めた。
放浪の二公が抱える問題
ラルゴ王弟は、エレハリューコ公爵家とリーヤーフォン公爵家が抱える事情について説明した。
四公爵家の席次は本来、砂漠の放浪民時代の勢力を示すものであり、首席と次席である両家は放浪生活に適した比較的豊かな土地を有していた。しかし放浪生活は依然として厳しく、家畜を養うために複数のオアシスを巡回しなければならなかった。
ところが、一部のオアシスでは水源の枯渇や移動が発生していた。総体的な水量は変わらないものの、放浪ルート上の重要なオアシスが失われることで移動経路の維持が難しくなっていた。
水作成の魔道具による中継地点の再生計画
ラルゴ王弟は、枯れたオアシスを完全に復活させることはできなくても、『水作成』の魔道具を常時稼働させることで中継地点として利用できるようにしたいと説明した。
水量は限られるものの、周辺に草が再生すれば、家畜と放浪民が短期間補給を行う場所として機能する。特にリーヤーフォン公爵領では重要な分岐点となるオアシスが枯れており、その再生が急務となっていた。
善治郎は事情を理解し、放浪民にとって死活問題であることを認識した。
善治郎の提案
善治郎は雨期の雨水を利用する方法について尋ねた。
ラルゴ王弟は、すでに枯れた泉を天然の水がめとして利用しているが、砂漠では蒸発が激しく十分な効果を得られないと説明した。
そこで善治郎は、平地ではなく丘や巨岩の上部に穴を掘り、雨水を内部に貯める構造を作ればよいのではないかと提案した。内部に水を蓄え、横穴から取り出せるようにすれば利用しやすく、周辺には染み出した水によって草も育つ可能性があると考えたのである。
新たな可能性の発見
善治郎の説明を聞いたラルゴ王弟は大きな衝撃を受けた。
その方法なら、地底に大規模な貯水施設を作る際の問題の多くが解消されると判断したのである。残る課題は工事の労力だけであり、それならば土魔法の魔道具を併用することで解決できる可能性があった。
そのためラルゴ王弟は、宝玉購入の最低希望数を二十個から四十個へ引き上げたいと申し出た。宝玉を用いて『水作成』の魔道具と土魔法の魔道具を同時に製作する考えであった。
宝玉取引を巡る交渉
善治郎は宝玉が非常に高価であり、大量供給も容易ではないと説明した。
これに対しラルゴ王弟は、宝玉の唯一の売り手がカープァ王国であり、唯一の買い手が双王国である以上、交渉の余地は十分にあると主張した。
さらに対価として、『専属契約』を提案した。
専属契約の説明
ラルゴ王弟は、『専属契約』とはシャロワ王家の付与術士やジルベール法王家の治癒術士を一定期間独占的に利用できる契約であると説明した。
通常の契約とは異なり、契約期間中は追加報酬なしで術者に様々な仕事を命じることができる。ただし対象となるのは地位や年齢、魔法技術などの条件を満たした者に限られていた。
善治郎はその内容に驚きながらも、両王家が互いの人材を融通し合うための制度であることを理解した。
契約条件の提示
ラルゴ王弟は、宝玉四十個の対価として二年間の専属契約を想定していると説明した。
契約対象となる術者が使える魔法は事前に全て開示され、その範囲内で自由に働かせることができるという。
ただし、シャロワ王家の人間は国外活動が制限されているため、契約期間中も双王国内に留まることが条件であった。そのため、魔道具の依頼や受け取りにはカープァ王国側が双王国へ赴く必要があった。
善治郎の保留
ラルゴ王弟の提案は非常に魅力的であったが、規模が大きすぎる話でもあった。
善治郎は即答を避け、帰国後にアウラへ報告し、検討してもらうと返答したのであった。
ブルーノ先王との秘密会談
善治郎が双王国を訪問している間、カープァ王国ではマルガリータ王女の訪問準備が進められていた。その関係者に紛れる形でブルーノ先王も極秘裏に来訪し、アウラとの秘密会談が実現した。
会談にはアウラとファビオ秘書官、ブルーノ先王の三人だけが出席し、機密保持を最優先とした場となっていた。アウラは早速、本題である『白の帝国』の末裔について問いただした。
白の帝国と契約の真相
ブルーノ先王は、自らが白の帝国の末裔であることを認めたうえで、伝承として残る事情を語った。
白の帝国の滅亡後、シャロワ王家とジルベール法王家の祖先は巨人族の庇護下にあった。しかし異界に存在したウートガルドとこの世界が離れていくことになり、人間たちはこちらの世界に残る道を選んだ。
その際、古代竜族との間で契約が交わされ、『白の帝国』時代の知識と技術の放棄、北大陸からの期限付き追放、遺産となる魔道具の管理などが定められたという。契約は『契約魔法』の魔道具によって結ばれたと伝えられていた。
ウートガルドと異界の存在
アウラがウトガルズとの関係について尋ねると、ブルーノ先王はウートガルドそのものではないが深い関係がある可能性を認めた。
さらに、ウートガルドはこの世界と極めて近い異界に存在していた巨人族の領域であり、現在そこへ辿り着ける可能性があるのはアウラと善治郎だけだと説明した。
アウラはその話から、ウートガルドが異界に存在する場所であることを理解した。
北大陸の脅威に関する認識の共有
話題は現在の北大陸諸国へ移った。
アウラは善治郎やその子供を切り捨てる選択肢はなく、白の帝国と教会の確執にカープァ王国も巻き込まれることは避けられないと語った。そして双王国とカープァ王国は一蓮托生であるとして、率直な意見を求めた。
ブルーノ先王は、北大陸諸国はいずれ南大陸へ本格的に進出してくると断言した。本格的な侵攻は十年以上先かもしれないが、避けられない未来であると判断していた。
写真が示した北大陸の国力
アウラは善治郎が持ち帰ったポモージエの写真をブルーノ先王に見せた。
現実をそのまま写した光景を見たブルーノ先王は驚愕した。整備された街並み、多くの人々、豊かな生活、巨大な港湾施設、数えきれない大型船からは、ズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国の圧倒的な国力が読み取れた。
その様子を見たアウラは、北大陸諸国の脅威を軽視できないことを改めて示した。
防衛だけでは勝てないという認識
アウラは、侵略者を迎撃するだけでは真の勝利にはならないと語った。
南大陸側には大陸間航行船が存在しないため、防衛に成功しても北大陸側は何度でも侵攻できる。一方で南大陸側は反撃手段を持たず、戦いは永遠に繰り返されることになる。
そのため、北大陸本土へ攻撃の手を伸ばせる力を持つ必要があると主張した。
大陸間航行船計画の提示
アウラは、善治郎とフレアの婚姻によってウップサーラ王国の技術を取り込み、大陸間航行船を量産する計画が進んでいることを明かした。
しかし船だけでなく航海技術や人材育成も必要であり、その不足を双王国の魔道具や治癒術士の力で補いたいと考えていた。
その提案に対し、ブルーノ先王は双王国にも同型船を最低一隻提供することを条件に協力を約束した。代価は魔道具で支払い、ジルベール法王家への働きかけにも協力すると申し出た。
協力関係の成立
アウラは『黄金の木の葉号』と同型の船を一隻提供すると約束した。
人員についてはアニミーヤム公爵家やウップサーラ王国からの協力が必要になるだろうと話し合われた。また、ウップサーラ王国は教会と対立する立場にあり、将来的な協力関係も期待できるとの認識で一致した。
こうして両国は、北大陸諸国に対抗するための協力体制を築く方向で合意した。
異文化統合への警告
会談の最後に、ブルーノ先王はアウラへ忠告した。
異なる文化や血筋を国家に取り込むことは、当事者たちが生きている間は問題なくても、次世代やその先の世代で対立を生む可能性があるというのである。
フレアの子孫が異物視される可能性や、逆に血筋の源流であるウップサーラ王国へ帰属意識を抱く可能性を挙げ、将来の問題を防ぐためにも今のうちから法制度を整備しておくべきだと助言した。
アウラはその言葉の重みを受け止め、心に留めると答えたのであった。
第三章 職人の本懐
マルガリータ王女の弟子入り志願
カープァ王国を訪れたマルガリータ王女は、女王アウラとの面会や歓迎行事を終えるとすぐに鍛冶師ヴェルンドとの面会を求めた。そして、自分を弟子にしてほしいと申し出た。
ヴェルンドは王族を弟子として扱うことに戸惑ったが、鍛冶師として生きてきた証が刻まれたマルガリータ王女の姿を見て判断に迷った。そこで自身の古傷を理由に弟子入りを断ろうとしたが、マルガリータ王女は専属契約を結ぶ治癒術士によってその古傷を治療させた。
ヴェルンドの古傷治癒
治癒術士の魔法により、ヴェルンドは長年苦しんできた腰や膝の痛みから解放された。
老化そのものは治せないものの、古傷は完全に治癒しており、ヴェルンドは失われた体の自由を取り戻したことに大きな喜びを感じた。さらにマルガリータ王女は、弟子入りを認めるなら今後も定期的に治癒を受けられると説明した。
正式な弟子入りの成立
マルガリータ王女は両国の王から許可を得ていることを明かした。
それを聞いたヴェルンドは弟子入りを認めたが、工房では王族ではなく弟子として扱うこと、必要であれば厳しい指導も行うことを条件にした。
マルガリータ王女はその条件を喜んで受け入れ、ヴェルンドの正式な弟子となった。
フレア姫の相談
同じ頃、後宮ではアウラとフレア姫が面会していた。
雑談を交わした後、フレア姫は善治郎に知られない形で相談したいことがあると切り出し、善治郎がアウラといる時のように自分といる時もくつろげているのかを尋ねた。
善治郎への気遣いへの悩み
フレア姫は新婚生活自体は非常に良好だと認めた。しかし、それは善治郎が自分に対して細やかな気遣いを続けているから成り立っていると感じていた。
自分が善治郎を安らがせる立場であるはずなのに、逆に善治郎へ負担をかけていることを気にしていたのである。
アウラは、善治郎の性格上、フレア姫が後宮に完全になじみ安心して過ごせるようになるまで気を遣うのは当然だと説明した。また、侍女たちをうまく統率し後宮内で問題を起こしていないことを高く評価した。
後宮での信頼獲得
フレア姫は侍女たちを慎重に選んで連れてきたことを明かし、今後も善治郎に嫌われないよう最善を尽くすと語った。
アウラは、善治郎からの好意が婚姻前よりも確実に高まっていると伝え、これまでの努力は間違っていないと評価した。
その言葉を受けたフレア姫は喜びながらも、善治郎の愛情を巡る競争相手としてアウラを意識していた。
後宮外活動の許可
アウラは後宮全体が安定してきたことを認め、今後はフレア姫の後宮外での活動を原則自由とすると伝えた。
フレア姫は喜んだものの、南大陸特有の酷暑にまだ慣れておらず、活動再開にはもう少し時間が必要だと感じていた。
ルクレツィアの側室入りの話題
フレア姫は続いて、ルクレツィアの側室入りについてアウラの考えを尋ねた。
アウラは、北大陸の脅威への対抗という観点から、双王国から側室を迎えることはほぼ既定路線であり、その第一候補はルクレツィアだと説明した。ただし本人としては付与術士であるボナ王女の方が魅力的だとも語った。
それでも善治郎が相手の意思を重視する性格であるため、側室入りを望んでいるルクレツィアが有力になると判断していた。
善治郎の価値観への理解不足
フレア姫はルクレツィアについて懸念を口にした。
ルクレツィアは善治郎の価値観や性格を十分理解しておらず、そのままでは善治郎の負担になりかねないというのである。
ただし、以前よりは善治郎との距離感を学び改善していることも認めていた。
三人に共通する打算から始まった関係
フレア姫は、自分も以前はルクレツィアと同じだったと語った。
善治郎との婚姻を望みながらも、最初に求めていたのは善治郎自身ではなく別の目的だったのである。
アウラもまた、善治郎を召喚した当初は王としての打算から結婚を望んでいたと認めた。
三人とも打算から善治郎との婚姻を望んだという共通点があり、その後の関係の中で感情が変化していったのであった。
ルクレツィアへの懸念
フレア姫は、ルクレツィアも同じように善治郎へ恋愛感情を抱く可能性があると指摘した。
しかしその場合、ルクレツィアが後宮内で波風を立てずにいられるか疑問だと述べた。
アウラも同意し、現在のルクレツィアの性格のままであれば確実に問題を起こすだろうと断言した。
善治郎に負担をかけない決意
アウラは、複数の女性が同じ男性を愛すると人間関係は容易に複雑化すると語った。
しかし善治郎は本来側室を望んでいたわけではなく、側室問題で苦労するべきなのは自分たちであって善治郎ではないと断言した。
フレア姫もその考えに全面的に同意し、善治郎へ余計な負担をかけないことを改めて確認するのであった。
善治郎の帰還
数日後、善治郎は無事にカープァ王国へ帰国した。
移動日だったため公務はなく、善治郎はまっすぐ後宮本棟へ向かった。酷暑期のため長い昼休みが設けられており、リビングではアウラが善治郎を迎えた。二人は再会を喜び合った後、より涼しい寝室へ移動して近況報告を始めた。
フレア姫への対応方針
寝室で会話を交わす中、善治郎はフレア姫に対して地球由来の品々を隠し続ける必要があるのかを確認した。
アウラは、フレア姫の人柄も理解でき、ウップサーラ王国との関係も深まっているため、ある程度の情報漏洩は許容すべきだと判断していた。これを受けて善治郎はフレア姫を本棟へ招待しようと考えたが、アウラはそれを自分が行うべきだと指摘し、善治郎も納得した。
走竜の贈呈と騎竜術習得の決意
善治郎はエレハリューコ公爵家とリーヤーフォン公爵家から走竜を贈られた件を報告した。
アウラは、それらは両家にとって最高級の贈り物であり、断るべきではないと説明した。また、受け取った以上は自ら騎乗する必要があり、人に貸し出すのも望ましくないと告げた。
善治郎は騎竜術の習得を避けられないと理解し、走竜が届くまでの間に学ぶ決意を固めた。
後宮での騎竜術訓練計画
善治郎が誰に騎竜術を学ぶべきか尋ねると、アウラは自ら教えると申し出た。
後宮の中庭に気性の穏やかな走竜を連れてきて基礎訓練を行う計画が語られた。さらにフレア姫やスカジも参加する可能性が高いと判断され、善治郎もその考えに賛同した。
カルロス王子への幼竜贈呈
話題はカルロス王子に贈られた幼竜へ移った。
アウラは、王族の男子にとって騎竜術は必須であり、幼少期から世話をして育てる走竜は生涯の相棒になり得る存在だと説明した。幼竜は後宮ではなく王宮の竜舎で飼育されることになり、世話は専門職が担当すると語った。
専属契約の提案を検討
続いて善治郎とアウラは、ラルゴ王弟から提案された宝玉四十個と引き換えの専属契約について話し合った。
宝玉については量産体制が整いつつあり、時間的猶予があれば用意可能だと判断された。一方で、契約によって付与術士を専属で使える利点は非常に大きく、アウラも大きな魅力を感じていた。
瞬間移動利用という双王国の狙い
しかし契約には問題もあった。
付与術士は双王国から出されないため、善治郎が瞬間移動で往復しながら依頼や受け渡しを行う必要があるのである。善治郎は、それこそが双王国側の狙いであり、自分を移動手段として活用したいのだろうと指摘した。
アウラもその見方を認め、双王国が瞬間移動の利便性を十分理解していると語った。
善治郎の重要性への認識
アウラは専属契約を受けたいという意向を示したが、善治郎が長期間双王国に留め置かれるような状況だけは避けたいと条件を付けた。
善治郎自身は自覚していなかったが、王配、ビルボ公爵、そしてフレア姫の夫として多くの役割を担っており、代わりの利かない存在となっていた。そうした事情を踏まえ、慎重に条件を詰める必要があると判断された。
瞬間移動拠点拡充の必要性
会話の中で善治郎は、国内各地への瞬間移動拠点を増やす必要性にも触れた。
現在は港町ワレンティアしか自由に移動できないため、銀山都市ポトシなど残る重要拠点も訪れて写真を撮影し、今後の移動に備える考えを示した。
北大陸への焦りの共有
専属契約の話に戻ると、アウラは善治郎が提案内容に積極的だったことに違和感を覚え、その理由を尋ねた。
善治郎は、自分が少し焦っていたのだと認めた。その焦りは、実際に北大陸を見て発展の差を実感したことによるものであった。
その言葉を聞いたアウラは表情を引き締めた。これまで北大陸の脅威は理解しているつもりだったが、実際に現地を見た善治郎ほどの危機感は持っていなかったと気付いたのである。
そしてアウラは、自分の認識はまだ甘かったのかもしれないと考え、より強い警戒心を持つ必要性を感じるのだった。
後宮中庭での騎乗訓練
数日後の早朝、後宮の中庭では二頭の走竜が待機し、善治郎、アウラ、フレア姫、スカジが騎乗訓練のために集まっていた。
フレア姫は間近で見る走竜の大きさに興奮を隠せず、善治郎は軍装や騎乗服に身を包んだアウラとフレア姫の姿を褒めた。善治郎は妻二人を同時に相手にする状況に緊張していたが、アウラとフレア姫はその心情を察し、余計な駆け引きを避けて穏やかに訓練へ集中することを選んだ。
善治郎の初騎乗
酷暑期のため時間が限られていることから、一行はすぐに訓練を開始した。
善治郎は走竜が跨りやすい姿勢を取ってくれているにもかかわらず、その巨大な体躯に苦戦しながら縄梯子を使って背中へ登った。さらに広い背幅に足を大きく開かされ、強い負担を感じたが、アウラの助言を受けて姿勢を修正した。
不安定さを覚える善治郎をアウラは後ろから支え、安心させながら指導を続けた。
走竜を立たせて歩かせる訓練
善治郎は教えられた通りに合図を送り、走竜を立ち上がらせた。
走竜は乗り手に配慮した極めて穏やかな動作で立ち上がったが、それでも善治郎には十分な高さと恐怖を感じさせた。アウラに支えられながら気持ちを落ち着かせた善治郎は、さらに指示を出して走竜を歩かせることに成功した。
フレア姫とスカジの見学
その間、フレア姫とスカジは訓練の様子を見守っていた。
別の走竜を使って同時に訓練することも可能だったが、夫と正妻が共に騎乗している場面で自分たちだけ別行動を取ることを避け、見学を選んでいた。
二人は善治郎の騎乗を観察しながら、走竜と乗馬の共通点や違いについて語り合った。
走竜の高い知能
スカジは走竜が人間の言葉をかなり理解しているのではないかと指摘した。
侍女はそれを認め、実際に言葉だけで走竜へ命令を出してみせた。走竜は素直に従い、さらに頭を撫でられて喜ぶ様子まで見せた。
フレア姫が撫でてよいか尋ねると、走竜は自ら頭を差し出した。フレア姫はその賢さと人懐っこさに感心しながら頭を撫でた。
賢い家畜の扱いの難しさ
侍女は、この走竜は特別に頭が良く気性も穏やかな個体だと説明した。
フレア姫とスカジは、頭が良いだけで気性の悪い家畜がどれほど扱いづらいかを理解しており、その話に深く同意した。賢い家畜は人を見分けて対応を変え、ときには人間を困らせる行動まで取るためである。
善治郎の初訓練終了
一通りの訓練を終えた善治郎とアウラは、走竜を操って戻ってきた。
フレア姫は、善治郎が言葉だけで走竜を止めているように見えたことを不思議に思ったが、侍女から、まずは思い通りに動かせるという感覚を覚えさせることが重要だと説明を受けた。
善治郎は依然として走竜の高さに怯えながら慎重に降り立ったが、無事に初めての騎乗訓練を終えた。そしてフレア姫はタオルを手に善治郎へ駆け寄り、その労をねぎらったのであった。
第四章 次への準備
女王アウラの魔道具実験
その日の午後、アウラはカープァ王家所有の無人島を訪れていた。酷暑期の真昼に一人で来たのは、実験内容を可能な限り秘匿するためであった。
アウラはフランチェスコ王子に秘密裏に作らせた『爆炎』の魔道具を手に取り、発動実験を行った。精神集中も魔力量の調整も行わず、発動の言葉だけを唱えると、爆音とともに深紅の炎が広がった。実験は成功し、魔法の残滓として熱気と焦げ臭さだけが残った。
魔道具の脅威を実感するアウラ
実験結果を確認したアウラは、魔道具の危険性と利便性を改めて認識した。
本来、魔法の発動には正しい発音、魔力量、認識が必要であり、戦場で自在に扱える者は極めて少ない。しかし魔道具であれば、発動の言葉さえ唱えられれば使用できるため、訓練を積んだ兵士ならば十分に運用可能であった。
少数ながらも量産が可能になれば戦場のあり方そのものが変化すると確信し、アウラはその脅威に身震いした。
実戦運用への課題検討
アウラは同時に、現状の魔道具には改良の余地があると判断した。
小型で携帯性に優れる反面、発射方向を示す赤い角を正しく向ける必要があり、混乱した戦場では事故の危険が高かった。
解決策として、使用者の視線や認識で狙いを定める機能を付与する案と、杖の先に固定して発射方向を固定する案を考えた。しかし前者は製作時間とコストが増大し、後者は携帯性が著しく損なわれる欠点があった。
付与術士が他国にしか存在しない現状を踏まえ、アウラは当面は自国側の工夫による改良を優先する方針を固めた。
孤島からの帰還
実験と検討を終えたアウラは、酷暑期の強烈な日差しを見上げた。
用事を済ませたアウラは『瞬間移動』を発動し、無人島を後にした。
善治郎とルクレツィアの歓談
同じ頃、善治郎は王宮の中庭の東屋でルクレツィアと軽食を取りながら談笑していた。
二人は北大陸への船旅を振り返り、揺れる船内で水をこぼした思い出や、船酔いをしなかったことなどを語り合った。一方で同行していたフローラとナタリオは船酔いした側だったため、複雑そうな様子を見せていた。
善治郎とルクレツィアは北大陸や共和国の街並みについても話し合い、以前より自然に会話できる関係になっていた。
マルガリータ王女の代役を務めたルクレツィア
善治郎は、ルクレツィアが各地の昼食会や夜会へ積極的に参加していることについて尋ねた。
ルクレツィアは、マルガリータ王女が出席できない場で代役を務めていたと説明した。本来なら王女を期待していた招待客も多かったはずだが、ルクレツィアは大きな問題を起こすことなく役目を果たしていた。
善治郎はその手腕に感心し、自身はそうした社交の場を苦手としていると語った。するとルクレツィアは、善治郎は苦手なのではなく嫌っているのではないかと指摘し、善治郎もそれを否定できなかった。
側室入りへの意思確認
善治郎は侍女と騎士を遠ざけ、ルクレツィアに今でも側室入りを望んでいるのかを率直に尋ねた。
ルクレツィアは、それが自分の一番の望みであり、そのためなら何でもすると熱意を示した。しかし善治郎は、ルクレツィアの本当の願いはシャロワ王家への復帰ではないかと指摘した。
善治郎は、もしシャロワ王家の男性との縁談があるならばそちらの方が望ましいのではないかと問うたが、ルクレツィアはそれでも善治郎を選ぶと答えた。
結婚後の展望を問う善治郎
善治郎はさらに、結婚後の生活についてどのような展望を持っているのかを尋ねた。
ルクレツィアは、自分の身は夫に委ねるものであり、夫の望むままに振る舞うつもりだと答えた。その返答に善治郎は大きな負担を感じたが、さらに具体的な考えを尋ねた。
するとルクレツィアは、後宮で静かに暮らし、年に何度か夫と特別な時間を過ごし、王族や貴族の妻としての責務を果たしたいと語った。
価値観の違いを悟る善治郎
ルクレツィアの答えを聞いた善治郎は、彼女にとって結婚そのものが目標であり、その後の人生について具体的な展望を持っていないことを理解した。
結婚後の幸福を夫婦で築く共同作業と考える善治郎にとって、結婚生活の内容をすべて相手に委ねる姿勢は大きな負担であった。
一方でルクレツィアは、自分の答えが善治郎を困らせている理由を理解できず、両者の結婚観の違いが浮き彫りとなったのであった。
定期会談の開始
翌日、善治郎は後宮本棟のリビングルームでアウラ、フレア姫と共に話し合いの場を設けた。善治郎は今後も定期的に三人で集まり、情報共有や意見交換を行う方針を示した。
ルクレツィアの側室入り問題
善治郎はルクレツィアと会い、彼女が依然として側室入りを強く望んでいることを報告した。しかしアウラは、ルクレツィアが王家主導の婚姻政策の候補者となった以上、失敗してもシャロワ王家の男性へ嫁ぐ道は残されていないと説明した。
その事実を知った善治郎は、自分がルクレツィアの好意を素直に受け取っていたことに気付き、恥ずかしさを覚えた。
善治郎の抱く違和感
フレア姫が側室入りの見通しを尋ねると、アウラは政治的には必要な話だと認めながらも、最終的には善治郎の意思が重要だと答えた。
善治郎はルクレツィアへの印象は改善していると認めつつも、彼女が結婚後の人生を全て夫に委ねる姿勢に重さを感じていると打ち明けた。結婚生活を共に築くための負担を一方的に背負うように思えたためである。
アウラはしばらく考えた末、自身が善治郎に何も望みを言われず戸惑ってきた感覚に近いのではないかと指摘した。善治郎はその説明に納得し、自らの態度がアウラに負担を与えていたことを理解した。
結婚を急がない提案
フレア姫は、善治郎の問題は時間をかければ解決できる部分が大きいと考え、側室入りを急ぐ必要があるのかと尋ねた。
善治郎も結婚前に関係を深められるなら、その方が不安を減らせると賛同した。アウラは理解を示しつつも、双王国を納得させる理由が必要だと述べた。
そこでフレア姫は、自身やウップサーラ王国の王族が不快感を示す形を取れば、側室入りを遅らせる理由になるのではないかと提案した。
白の帝国の秘密
その提案から外交の話題になると、アウラはフレア姫に対し、シャロワ・ジルベール双王国が白の帝国の末裔であることを明かした。
善治郎とアウラは知る限りの情報を説明したが、フレア姫はすぐには信じられなかった。それでも事実なら重大な問題だと理解し、父であるグスタフ王へ伝える必要性を認識した。
さらに善治郎は、ウップサーラ王国との連絡役を引き受けることになった。
夫婦三人の距離感
政治的な話が一段落すると、アウラとフレア姫は善治郎の左右に座った。善治郎は二人に挟まれた状況に強い緊張を覚えたため、アウラは距離を取り、フレア姫もそれに倣った。
アウラは今後も三人で過ごす機会は増えるため、少しずつ慣れてほしいと伝えた。
価値観の共有
アウラは夫婦三人が互いの常識や価値観を知ることが重要だと考え、率直な会話を提案した。
しかしフレア姫が最初に尋ねたのは、部屋に置かれた見慣れない電化製品についてだった。善治郎とアウラは、それらが善治郎の故郷から持ち込まれた私物であり、魔道具ではないことなどを説明した。
冷蔵庫への執着
説明を受けたフレア姫は冷蔵庫の冷気に強く魅了された。暑さに耐え続けていた反動もあり、冷蔵庫から離れようとしなかった。
アウラが引き離しても効果がなく、最終的に三人はエアコンのある寝室へ移動することになった。
寝室での団欒
初めてエアコンの効いた寝室に入ったフレア姫は、その涼しさに感動した。ここで暮らしたいと冗談を言うほど気に入り、ホットワインや冷酒の話題で盛り上がった。
その後、善治郎とグスタフ王の秘密会談の話になると、善治郎が内容を明かせないと言ったため、フレア姫は父が自分の悪口を言ったのではないかと慌てた。しかし善治郎は誤解だと説明した。
船と航海への夢
会話は航海の話へ移り、善治郎は船旅で苦労した経験からハンモックを提案した。フレア姫はその有用性を理解しつつ、自分が今後航海を続けるためには船が必要だと語った。
そしてアウラに対し、新たな大陸間航行船を譲ってほしいと頼んだ。アウラは条件付きで了承し、フレア姫は船員集めについても構想を語った。
その中で、運の悪い船乗りを避けるべきだと考えるフレア姫と、運より能力を重視する善治郎との価値観の違いが明らかになった。
アルカト開発と国力差
フレア姫はアルカト公爵として港湾開発を進めていたが、予算についてアウラと軽い応酬を繰り広げた。
やがて話は両国の国力差へ及び、復興途中のカープァ王国ですらウップサーラ王国を大きく上回る財力を持っている現実に、フレア姫は改めて衝撃を受けた。
王族としての立場
フレア姫はウップサーラ王国への思いを見せたが、アウラは今の彼女がカープァ王国王族であることを忘れてはならないと諭した。
フレア姫は理解を示しつつも、善治郎やアウラの前では本音を語らせてほしいと願った。アウラはそれを認め、三人の間での信頼関係を深めた。
ユングヴィ王子の話題
会話はやがてユングヴィ王子へ移った。アウラは将来的な婚姻外交を見据え、ユングヴィ王子の人物像を知りたいと考えていた。
フレア姫は、ユングヴィが王国そのものに強い関心を持つ人物であり、常識に縛られない変わり者だと説明した。
その結果、善治郎がウップサーラ王国を訪れる際にユングヴィ王子との接触を増やし、可能であれば王子自身をカープァ王国へ招く方向で話が進んだ。
第五章 灰色猫の招待状
ウップサーラ王国での会談
数日後、善治郎は第三正装を纏い、フレア姫の故国であるウップサーラ王国を訪れていた。王都ウップサーラにあるカープァ王国大使館で、善治郎はグスタフ五世とユングヴィ第二王子との会談に臨んだ。
善治郎がフレア姫のお披露目が無事に終わったことを伝えると、二人はフレア姫が常識的に振る舞ったことを信じられない様子を見せた。しかし善治郎は、フレア姫は自分の意思を明確に示し、理性的な判断ができる人物であるため信頼していると語った。
ユングヴィ王子への招待
善治郎はフレア姫がお披露目の場でユングヴィ王子の話をしたことを伝えた。その結果、カープァ王国の若い女性たちがユングヴィ王子に強い関心を示していることを明かし、カープァ王国への訪問を提案した。
ユングヴィ王子はその申し出を喜んで受け入れ、グスタフ王も公務との調整を条件に了承した。こうしてユングヴィ王子のカープァ王国訪問が具体的に進むこととなった。
小飛竜への興味
ユングヴィ王子は南大陸への興味を語り、特に小飛竜に強い関心を示した。しかし善治郎は、小飛竜を北大陸へ持ち帰ることは認められないと明言した。
小飛竜が野生化した場合の影響を懸念しての判断であり、見学や接触は認めるものの持ち出しは禁止する方針を示した。
白の帝国と双王国の秘密
ユングヴィ王子に関する話が終わると、善治郎はグスタフ王へ内密の話を切り出した。ユングヴィ王子も同席したまま、善治郎は白の帝国とシャロワ・ジルベール双王国、そしてウトガルズに関する情報を共有した。
話を聞いたグスタフ王は、ウップサーラ王家に伝わる口伝により白の帝国の存在を信じることができると語った。王家にはかつて白の帝国の末裔と関わったという伝承が伝わっており、その知識が善治郎の説明を裏付けるものとなった。
教会勢力への懸念
善治郎は、双王国が白の帝国の末裔である以上、教会勢力との対立が起こり得ることについて意見を求めた。
グスタフ王は、教会勢力がその事実を利用し、最悪の場合は南大陸解放を名目に侵略を企てる可能性があると指摘した。しかし現状の北大陸西部は情勢が安定しておらず、教会内部にも権力闘争が存在するため、すぐに行動へ移る可能性は低いとの見解を示した。
また、ヤン司祭が教義の見直しを訴える勢力の中心人物であることも説明された。
ウップサーラ王国との連携確認
善治郎は、教会勢力との関係悪化を理由にウップサーラ王国が距離を置く可能性を危惧した。しかしグスタフ王は、フレア姫と善治郎の婚姻を北大陸諸国へ公表している以上、両国の関係は容易に変えられないと説明した。
その上で善治郎は、ウップサーラ王国と双王国の橋渡しをカープァ王国が担うことを提案した。グスタフ王は即座に賛同し、双王国から十分な権限を持つ人物を派遣するよう求めた。
凪の海を巡る複雑な事情
グスタフ王は、双王国から贈られた魔道具『凪の海』について謝意を伝えてほしいと依頼した。
しかしその言葉の裏には、白の帝国の末裔であることを伏せたまま重要な魔道具を贈られたことへの不満も含まれていた。とはいえ『凪の海』の恩恵は大きく、今さら手放すことも難しい状況であった。
マルグレーテ王女の噂
話題はオフス王国のマルグレーテ王女の生存説へ移った。
善治郎は侍女マルグレーテ本人に記憶がなく、決定的な証拠も存在しないと説明した。さらに海難事故と南大陸で発見された時期を比較すると時間的な矛盾があり、同一人物と考えるには無理があることを示した。
それを聞いたグスタフ王は安堵し、ユングヴィ王子もひとまず納得した。
ウトガルズの伝承
善治郎は続いてウトガルズについて質問した。
グスタフ王は、ウトガルズが白の帝国以前から存在し、真竜とも対等な関係を持っていたと伝承されていることを明かした。また白の帝国の末裔を保護したという伝承も存在し、双王国に伝わる話との共通点が多いことを認めた。
一方で現在のウトガルズは北方五か国の筆頭とされながらも、外部との交流をほとんど行わない閉鎖的な存在であると説明された。
灰色猫の出現
ウトガルズとの国交について話していた最中、応接室に灰色の猫が現れた。
猫は緑色の石を咥えていたが、石を落とした直後に忽然と姿を消した。その異常な光景に善治郎とユングヴィ王子が驚く中、グスタフ王は冷静に対応した。
グスタフ王はその猫をウトガルズの使いと説明し、残された石を拾い上げた。
ウトガルズからの招待状
石に文字を描くと、それは緑色の板へと変化した。グスタフ王はそれをウトガルズからの招待状だと説明し、善治郎へ手渡した。
善治郎が見ると、そこには日本語で文章が記されており、自分の本名である山井善治郎宛ての招待状となっていた。招待対象は二名であり、一人は善治郎と明記されていた。
魔法文字の存在
グスタフ王は、この招待状に使われているのはウトガルズ独自の『魔法文字』であると説明した。
魔法文字は血統魔法ではなく魔法技術であり、適性があれば誰でも習得可能だが、極めて高度な技術であるという。善治郎は、血統魔法以外にも習得可能な高度魔法が存在する事実に強い衝撃を受けた。
その後、グスタフ王は魔法文字の存在を不用意に広めないよう善治郎へ求め、善治郎もアウラとフレア姫以外には話さないと約束した。
同行者を巡る争い
招待状の定員は二名であり、善治郎以外に同行できるのは一人だけであった。
善治郎がフレア姫の名前を挙げると、ユングヴィ王子は即座に反対し、自分が同行すると強く主張した。グスタフ王も、ウトガルズからの招待は極めて希少であり、ウップサーラ王国としても参加したいという本音を示した。
それでも善治郎は即答を避け、アウラと相談してから返答すると告げた。
ユングヴィ王子の実力行使
善治郎が結論を保留すると、ユングヴィ王子はその場に倒れ込み、約束通り両手両足を振り回しながら連れて行ってほしいと泣き叫んだ。
ユングヴィ王子は、自ら口にした宣言をそのまま実行したのであった。
エピローグ 後宮の密談、もしくは駄々っ子の説得
ウトガルズからの招待状
翌日、善治郎は『瞬間移動』でカープァ王国へ戻り、後宮本棟のリビングルームで女王アウラとフレア姫だけを集めて密談を行った。善治郎がウップサーラ王国での出来事とウトガルズからの招待状について説明すると、フレア姫は同行を望んで五体投地しながら駄々をこねた。
善治郎とアウラに引き起こされたフレア姫はすぐに泣き止み、感情を切り替えたと説明した。善治郎は結婚後になって初めて知るフレア姫の一面に改めて驚かされていた。
魔法文字の性質を検討
三人は招待状である緑色のプレートを見比べた。善治郎には日本語、アウラには南大陸西方語、フレア姫には北大陸北方語に見えており、それぞれ異なる文字として認識されていた。
善治郎は、グスタフ王の説明ではこの魔法文字は自動翻訳の効果を持つと語った。また、石からプレートへ変化した現象についても、魔法文字による効果ではないかと推測した。
ウトガルズとシャロワ王家の可能性
アウラは、ウトガルズにシャロワ王家の人間が残っていた可能性について言及した。白の帝国の末裔が南大陸へ脱出した際、血筋を残すため一部がウトガルズに留まった可能性も考えられると指摘した。
しかしその可能性は低く、もしそのような分家が存在するなら双王国の王族に伝わっていないことが不自然だとも述べた。善治郎もその視点は考えておらず、新たな可能性として受け止めた。
魔法文字の秘匿を確認
アウラは、招待状をフランチェスコ王子やボナに見せれば魔道具かどうか判別できるのではないかと考えた。しかし善治郎は、魔法文字の存在はアウラとフレア以外には明かさないとグスタフ王に約束していると説明した。
そのためアウラも約束を尊重し、エスピリディオンやファビオ、フレア姫の腹心であるスカジを含め、誰にも秘密を漏らさないことを確認した。善治郎もウトガルズへ行った際に、招待状を他者へ見せる許可を得られないか試みるつもりだと語った。
同行者の決定
話題はウトガルズへ同行する人物へ移った。善治郎はアウラの助けを期待したが、アウラは判断を善治郎自身に委ねた。
覚悟を決めた善治郎は、同行者はユングヴィ王子であり、フレア姫は留守番だと告げた。
フレア姫の抵抗
決定を聞いたフレア姫は再び床へ寝転び、連れて行ってほしいと駄々をこね始めた。善治郎はウップサーラ王国との関係上、ユングヴィ王子を優先せざるを得ないと説明し、アウラもアイスクリームを禁止すると脅したが効果はなかった。
未知の世界への探求心が強いフレア姫の気持ちは善治郎にも理解できたため、帰国後に埋め合わせをすると約束し、ドレスや宝石、ウトガルズの土産などを贈る提案をした。
桁違いの要求
その言葉を聞いたフレア姫は一瞬泣き止んだが、ドレスや宝石ではなく船が欲しいことや、アルカト港建造計画の前倒しを求めた。
あまりに大きな要求に対し、アウラは調子に乗るなと叱りつけ、フレア姫の襟首を掴んで強引に引き上げるのだった。
付録 侍女と侍女の南北交流
後宮侍女たちの昼休み
酷暑期の終わりが近づいたある日、善治郎がウップサーラ王国へ出向き、アウラが王宮で昼食を取っている間、後宮本棟は比較的穏やかな空気に包まれていた。
若く体力のあるフェー、ドロレス、レテの三人は昼寝をせず、自由時間を利用してパンケーキを味わっていた。レテは作り手として改良点を考えながら試作品を評価し、フェーとドロレスはその味を楽しんでいた。
パンケーキ作りと後宮の信頼
パンケーキのレシピは善治郎が持ち込んだものであり、山羊の飼育によって乳製品の生産が可能になったことで実現した菓子であった。さらに北大陸から持ち帰ったメープルシロップが、その再現のきっかけとなっていた。
レテたちは試作のために貴重な食材の使用を許可されており、後宮内でも高い信頼を得ていた。特に冷蔵庫の管理は厳重であり、限られた侍女だけが扱うことを許されていた。
レベッカの来訪
そこへフレアに付き従ってウップサーラ王国から来た侍女レベッカが現れた。彼女は酷暑に苦しみながらも、フレアの命令でカープァ王国の侍女たちとの親交を深めるために姿を見せたのであった。
レベッカは暑さで疲弊していたが、フレアのためにも環境に慣れなければならないと語った。フェーたちは無理をしないよう気遣ったが、レベッカは気力で踏みとどまっていた。
女戦士への憧れと挫折
会話の中でレベッカは、自身が幼い頃から女戦士に憧れ、訓練を積んでいたことを明かした。しかし女戦士の証には合格できず、その夢は叶わなかったと語った。
彼女はフレアと同じく女戦士を目指していた過去を持ち、実力ではフレアより優れていたと振り返った。フェーとドロレスはその経歴に驚き、ウップサーラ王国の文化について興味を深めていった。
冷たいパンケーキの贈り物
暑さに苦しむレベッカを見かねたレテは席を外し、冷やしたパンケーキを持ち帰った。その上にはアイスクリームが添えられていた。
レベッカは勧められるまま一口食べると、その冷たさと甘さに衝撃を受けた。暑さで失われていた活力を取り戻し、夢に出てきそうなほど美味しかったと感謝を述べた。
南大陸と北大陸の技術の違い
アイスクリームを食べたレベッカは、カープァ王国には驚くような設備や魔道具が存在すると感心した。
ドロレスは、北大陸全体の技術水準は南大陸より高いが、カープァ王国王宮は魔道具や善治郎の持ち込んだ技術によって例外的な環境になっていると説明した。レベッカも火球の魔道具や霧の魔道具の便利さを高く評価した。
女戦士と婚姻制度
ドロレスから武装しない理由を尋ねられたレベッカは、自分はいずれウップサーラ王国へ戻って結婚する予定であり、女戦士になれなかった以上は戦士として振る舞わない方がよいと考えていると答えた。
さらに女戦士は百人長と同格であり、条件を満たせば分家の家長となれる権利を持つことも説明した。そのため女戦士への合格は、結婚や人生そのものを大きく変える意味を持っていた。
理想の女性像の違い
話題は両国の価値観へ移った。レベッカはウップサーラ王国では女性の体格や強さが重視されると語り、高身長のドロレスを羨ましがった。
一方でドロレスたちは、カープァ王国では家柄や人格、そして魔力量が重視されると説明した。レベッカはその価値観の違いに驚き、両国では魔法に対する考え方が大きく異なることを実感した。
善治郎への評価
フェーは、戦士を重んじるウップサーラ王国で善治郎がどのように評価されているのかを尋ねた。
レベッカは詳細を避けながらも、一般的な評価は決して高くないことを認めた。しかしその一方で、グスタフ王やユングヴィ王子などの王族は善治郎を高く評価していると説明した。
侍女たちの家柄と共感
会話は侍女たちの家柄の話へと発展した。レベッカは後宮では家柄について語らない決まりがあることを再確認し、その上で自身が女戦士を目指して挫折したため、年長侍女ランヒルドから厳しく見られていると打ち明けた。
その話を聞いたフェー、ドロレス、レテは、自分たちも問題児として侍女長に目を付けられていることを重ね合わせた。そしてレベッカを自分たちと同じ仲間だと感じ、親近感を抱くのであった。
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