小説「ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり〈5〉冥門編〈下〉」感想・ネタバレ

小説「ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり〈5〉冥門編〈下〉」感想・ネタバレ

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ゲート 自衛隊 〈5〉冥門編〈上〉レビュー
ゲート 自衛隊 全巻まとめ
ゲート 外伝 1 南海漂流編 <上>レビュー

物語の概要

■ 作品概要

『ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり〈5〉冥門編〈下〉』は、柳内たくみによる自衛隊×異世界ファンタジー小説のシリーズ本編完結巻である。 東京・銀座に突如出現した異世界への「門(ゲート)」を巡り、自衛隊とファンタジー世界の住人たちが交錯する壮大な物語のクライマックスが描かれている。

本作では、オタク自衛官・伊丹耀司と美少女たちが、誘拐された魔法使いの少女・レレイの奪還に向けて動き出す。一方、特地(異世界)では、ピニャ皇女率いる正統政府軍および自衛隊と、皇太子ゾルザル軍との戦いが最終局面を迎えていた。しかし地球側では、特地の利権を狙う諸外国の謀略により銀座のゲートが占拠され、自衛隊・特地方面派遣部隊にまさかの撤退命令が下されてしまう。日本政府との連絡が途絶え、撤退のタイムリミットが迫る中、特地に残るか日本へ帰還するか、隊員たちは究極の決断を迫られる。帝国の内乱の行方と「門」の運命を描く、激動の最終巻である。

■ 主要キャラクター

  • 伊丹耀司: 本作の主人公。オタク趣味を優先する自衛官(二等陸尉)でありながら、いざという時には卓越した決断力と行動力を発揮する。本作では拉致されたレレイの救出に向け、自らの進退を賭けた戦いに身を投じる。
  • レレイ・ラ・レレーナ: 天才的な魔法使いの少女。本作において諸外国の特務機関による謀略に巻き込まれて拉致されてしまい、彼女の救出が伊丹たちの大きな行動原理となる。
  • テュカ・ルナ・マルソー: 金髪碧眼のハイエルフの娘。伊丹に深い愛情と信頼を寄せており、過酷な状況下でも彼と行動を共にする。
  • ロゥリィ・マーキュリー: 死と狂気の神エムロイに仕える亜神の少女。巨大なハルバードを操り、特地と日本の命運を賭けた激戦において圧倒的な戦闘力で伊丹たちをサポートする。
  • ピニャ・コ・ラーダ: 帝国の皇女。自衛隊の圧倒的な力を理解し、講和軍を率いてゾルザル軍との全面戦争に臨む。劣勢のなかでも都市を死守する、有能で誇り高い指揮官としての顔を見せる。
  • ゾルザル・エル・カエサル: 帝国の皇太子であり、日本との徹底抗戦を掲げる強硬派の首魁。本作における帝国側の最大の敵対者として、総力を挙げて自衛隊およびピニャの軍勢と激突する。

■ 物語の特徴

自衛隊の近代兵器と、剣や魔法が支配するファンタジー世界の軍勢との圧倒的な戦力差を描く、ミリタリーエンターテインメントとしての面白さが最大の特徴である。 本巻では、これまでの異世界探索の楽しさから一転し、現実世界(地球側)における各国の政治的謀略や「門」の封鎖というタイムリミットが絡み合い、緊迫したサスペンス展開が繰り広げられる。また、自国への帰還か、異世界での残留かという重い選択を迫られる自衛隊員たちの葛藤や、伊丹たちと異世界の住人たちとが織りなす絆の結末が、読者に深いカタルシスと感動を与える構成となっている。

書籍情報

ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり〈5〉冥門編〈下〉
著者:柳内たくみ 氏
イラスト:黒獅子
出版社:アルファポリス
発売日:2014年12月28日

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あらすじ・内容

累計100万部突破!超人気の自衛隊×異世界ファンタジー、文庫化第五弾・後編! オタク自衛官伊丹耀司と美少女達がレレイ奪還に動き出すなか、異世界でゾルザル軍掃討に後一歩のところまで迫った自衛隊・特地方面派遣部隊に、まさかの撤退命令が下った。日本政府との連絡が途絶え、混乱する自衛隊――『特地』に残るか、日本に戻るか、それぞれの隊員達が下した決断は? 伊丹達はレレイを救出できるのか? 帝国の内乱、そして『門』の行方は? 激動のシリーズ本編、ついに完結!

ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり〈5〉冥門編〈下〉

感想

自衛隊と異世界が交錯する壮大なスケールの物語が、ついに完結の時を迎えた。最終巻にふさわしく、特地と日本、さらには諸外国の思惑までもが入り乱れる怒涛の展開が連続し、最後までページをめくる手が止まらない読書体験となった。

まず心に残ったのは、緊迫感あふれる戦いと各陣営の決着である。中国の工作機関によって誘拐されたレレイの救出劇は、手に汗握るスリリングな展開の連続だった。そして特地では、ピニャ皇女が自らを囮にするという悲壮な覚悟を見せ、奇襲を仕掛けてきたゾルザル皇太子をついに討ち取る。長きにわたる帝国の内乱に終止符が打たれた瞬間は、確かなカタルシスを感じさせてくれる。

一方で、現実世界におけるドロドロとした政治劇や、予期せぬテロの恐怖も凄まじい。門の管理を国連に委託しようとした総理大臣が更迭されるなど、国家間の腹の探り合いが非常にリアルに描かれている。さらに、他国の工作員によるテロ行為が引き金となって門が崩壊し、あろうことか別世界に繋がって巨大な虫が溢れ出してくる展開には、パニックホラーのような絶望感を味わわされた。事態を収拾するため、伊丹が要となっている魔法陣を爆薬で破壊する決断を下したシーンは重苦しい。再度世界を繋げるための要となる印を付けないまま、門が完全に閉じてしまった喪失感は、胸にぽっかりと穴が空いたように切ないものだった。

しかし、本作の真骨頂は悲劇的な別れの後に待っていた。門の消失から4年後、なんと伊丹が同人誌即売会の会場にふらっと姿を現すのである。どうやら、どうしても同人誌が欲しいという凄まじい煩悩の力で、再び世界を繋げてしまったらしい。あれほどの犠牲と感動、そしてシリアスな決断は何だったのかと思わず笑ってしまった。

結局のところ、国家の思惑でも魔法の力でもなく、伊丹の底抜けな「オタク心」こそが世界を越える最強の原動力だったとは…

最後までお読み頂きありがとうございます。

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ゲート 自衛隊 〈5〉冥門編〈上〉レビュー
ゲート 自衛隊 全巻まとめ
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考察

銀座駐屯地における攻防と「門」の閉鎖:その全貌と影響

特地と日本を繋ぐ「門」を管理するために設けられた「銀座駐屯地」は、各国の思惑と工作活動が交錯する激しい攻防の舞台となった。以下に、駐屯地占拠から「門」の崩落・閉鎖に至るまでの一連の経緯とその影響を解説する。

1. デモの暴徒化と駐屯地の占拠

銀座駐屯地は、門を囲む一辺200メートルのフェンスと強固なコンクリート製ドームで守られた自衛隊の管理区域である。しかし、「特地を国際社会に委託せよ」などと掲げる国際NGOのデモ隊の一部が突如として暴徒化し、トラックを襲撃して駐屯地内に乱入・占拠する事態が発生した。 この暴動は単なるデモではなく、中国の工作機関(劉局長ら)が主導し、特殊武装工作員や留学生などを動員して周到に計画されたものであった。自衛隊や警察は、非武装の民間人が混在していることや、「日本側では武装が確認できない限り武力行使できない」という制約から発砲できず、人海戦術によって押し切られてしまう結果となった。

2. ドーム内での対峙とレレイの人質化

暴徒を先導した劉たちはドーム内へ進み、特地への立ち入りと「門」の国連管理を要求した。彼らは、要求が呑まれなければ門を破壊し、特地にいる約3万人の自衛隊員を異世界の漂流者にすると脅迫する。 狭間陸将ら自衛隊側は戦車を配置して侵入を拒んだが、中国側はあらかじめ観光客を装って潜入させていた女性工作員(鈴芳華ら)を使い、特地側でレレイを人質に取るという強硬手段に出た。そして劉の合図により、大型トラックがドームの外壁に激突し、物理的な破壊が開始される。自衛官たちは発砲許可を求めたが、民間人への発砲と報道されることを恐れた狭間はこれを許可できず、怒りと屈辱を噛み殺すしかなかった。

3. 工作員同士の対立と伊丹たちの突入

さらにドーム内には、「門」の権益やレレイの身柄を狙うアメリカ(CIAのジェイキンズら)など第三勢力も介入し、工作員同士で銃口を突きつけ合う緊迫した事態に陥る。 この絶望的な状況を打破したのが、伊丹、富田、栗林、テュカの4名であった。彼らは防衛大臣・嘉納の密命を受け、夜間に高度1万3000フィートからパラシュートで降下し、ドーム天頂部のハッチから内部へと突入した。栗林の着地が伊丹の股間に直撃して伊丹がのたうち回るというアクシデントがありつつも、この頭上からの予想外の乱入によって工作員同士の張り詰めた空気は霧散し、その隙を突いてレレイの奪還に成功する。

4. 銃撃戦による「門」の構造的崩壊

人質を失い、自衛隊の戦力に勝てないと悟った劉たちは捕虜となることを避けるため、発煙手榴弾などを投じて一斉に銃撃戦を開始した。この激しい銃撃戦のさなか、飛び交う銃弾が、すでにダンプカーの突撃によって半壊状態だった「門」を深く抉る。これにより、構造の要となっていた石が落下し、門の崩壊の連鎖が始まってしまった。 なお、この戦闘の様子は、決死の潜入取材を行っていたテレビ旭光の栗林菜々美らによって撮影され、「平和的デモのはずが武器を持って撃ち合っている」という事実が世間に生中継されることとなる。

5. レレイの限界と「門」の縮小・閉鎖

同時に、特地側で「門」を魔法で開き続けていたレレイの体力と気力も限界に達していた。強行突破を試みた柳田たちの乗るヘリコプターを通すため、一瞬だけ門を大きく押し広げたことが決定的な消耗となり、その後「門」は急速に縮小し始める。最後には土管ほどの大きさにまで狭まり、隊員たちは荷物を捨てて匍匐前進で通り抜ける事態となったが、ついにレレイが気を失って倒れたことで、門は一旦完全に閉じられてしまった。

6. 多世界接続と「暗黒の太陽」の出現

門が崩壊・閉鎖した直後、アルヌスの丘のドームの天井には紅と黒紫が渦巻く「暗黒の太陽」が出現し、床は漏斗状に落ち窪んで深い穴が開いた。レレイによれば、これは「門」以外の力が働き、複数の異なる世界が一気に絡み合って繋がってしまった異常事態であった。好奇心からその深淵を覗き込んだ劉は無数の触手に引きずり込まれ、穴からは人間大の巨大な「蟲獣」が次々と溢れ出し、ドーム内の人々を襲撃し始める。

7. 蟲獣の流入阻止と魔方陣破壊作戦

目を覚ましたレレイは再び呪文を唱え、伊丹の故郷(銀座)への通路を大きく押し広げることで、他の世界へ繋がる穴を押しつぶし、蟲獣の流入を食い止めた。しかし、この歪んだ状態を根本的に解決するには、暗黒の太陽の周囲に浮かぶ「魔方陣(アルヌス防御陣地の鏡像)」を破壊するしかなかった。狭間陸将から全権を委ねられた伊丹と富田は、この魔方陣を破壊(爆破)する任務を引き受け、銀座側へと向かう。

8. 総員退去(脱兎)の発令と歪みエネルギーの解放

狭間陸将は総員退去命令である「脱兎」を発令し、隊員たちはレレイが維持する門を通って銀座側へと急いで退避した。 そして、伊丹たちが銀座ドーム側から爆薬を点火し、門が完全に消失したその瞬間、二つの世界の間に長期間溜まり続けていた「歪みエネルギー」が一気に解放される。これにより、震源から離れても揺れが減衰しないという極めて特殊で世界規模の地震が発生した。特地だけでなく、日本や世界各地でも震度5強規模の揺れが観測され、耐震構造のない海外の地域では甚大な被害がもたらされる結果となった。

9. 閉鎖後の世界(4年後)と再開通への布石

門の消失から4年が経過しても、日本側では「門」の再開通は実現していない。再び門を開き、無数にある世界の中から元の世界(地球)を特定するためには、「混ざり物のない単一元素の純粋結晶」を目印として設置しておく必要があった。 伊丹は閉鎖時の銀座ドーム内に、特地でヤオから受け取っていた巨大な金剛石(ダイヤモンド)を半分に割った片割れを残しており、それがガラスケースで保管され、いつか彼らが帰還するための希望の目印となっているのである。

イタリカの攻防と帝国内乱の終結:ゾルザル派の壊滅と特地のその後

特地(ファルマート大陸)を二分した、ピニャ・コ・ラーダ率いる「帝国正統政府」と、第一皇子ゾルザル率いる「ゾルザル派」による内乱は、フォルマル伯爵領の都市イタリカを舞台とした最終決戦を経て終結を迎えた。 以下に、帝国の存亡を賭けた総力戦の全貌と、その結末について詳細に解説する。

1. ピニャの決断:あえて「野戦」を選ぶ理由

正統政府軍の主力と自衛隊が各所でゾルザル派の拠点を制圧していく中、ゾルザル本人は約1万の精鋭を率いて、ピニャが留守を守るイタリカへと強襲をかけた。 この時、ピニャの麾下には亜人連合部隊や騎士団など約6千の兵力しかなく、城に籠もれば守り切ることは可能であった。しかし、ピニャはあえて城外での野戦を決断する。その理由は、籠城戦になって手間取れば、臆病なゾルザルが味方の主力部隊が戻る前に逃げ出し、別の地で再起を図って内乱が長引くと読んだためである。ピニャは**「自らを餌にしてゾルザルをこの地に縛り付け、決着をつける」**という悲壮な覚悟で、味方の援軍(自衛隊と正統政府軍主力)が到着するまでの持久戦に挑んだ。

2. イタリカ城外での死闘と城館内の「影戦」

ゾルザル軍のヘルム将軍は、兵力を千人単位に分割し、間断なく波状攻撃を仕掛ける。これに対し、ピニャはドワーフの重装歩兵やダークエルフ、ワータイガーなどの亜人部隊の特性を活かして正面から受け止めた。 しかし、亜人部隊は血の気が多く、敵の偽装退却に釣られて陣形を崩してしまう弱点があった。綻びが生じそうになる戦線を支えるため、ピニャは温存していたヴィフィータ率いる「白薔薇隊」や、身重のボーゼス率いる「黄薔薇隊」を投入する。彼女たちは見事な統制で敵の側背面を痛撃し、辛うじて戦線を維持し続けた。

一方、城外で凄惨な野戦が続く中、イタリカの城館内ではゾルザルが放った暗殺部隊「ハリョ族」による奇襲が行われていた。彼らの目的は、皇帝モルトの拉致、または暗殺である。メイド長の指揮のもと、フォルマル家の私兵や戦闘メイド(ペルシアやマミーナたち)、そしてピニャから死守命令を受けたシャンディーたち女性騎士が、城館の深奥部で血みどろの防衛戦を繰り広げた。

3. 自衛隊への「撤退命令」と絶望的な状況

同じ頃、地球側の東京・銀座では、中国などの工作機関に先導された暴徒が「門」の管理権を求めて駐屯地を占拠するという事態が発生していた。これにより、特地派遣部隊には「韋駄天(撤退準備命令)」および「脱兎(総員退去命令)」が発令され、自衛隊は特地におけるすべての軍事作戦を放棄し、日本へ帰還しなければならなくなった。これは、イタリカで死闘を繰り広げるピニャたちへ援軍が向かえなくなることを意味していた。

4. ゾルザルの焦燥と鋼鉄の天馬の飛来

半日以上続く戦闘に加え、突如発生した「地揺れ(地震)」によって両軍の兵士は恐怖にすくみ上がる。ピニャは将帥としての毅然とした態度を崩さず味方を鼓舞したが、ゾルザルは勝利への渇望と焦りから狂気に走った。彼は「帝権擁護委員(掃除夫)」を使い、戦意が鈍ったと見なした味方の兵士を次々と処刑させ、恐怖で軍を支配する。そして青ざめて人形のようになった兵士たちを密集陣形に組ませ、強引な全軍総突撃を命じた。度重なる猛攻に、ついにピニャ陣営の戦線は崩壊を始める。

ピニャが自決を覚悟しつつも、最後の突撃を命じようとしたその瞬間、撤退のタイムリミットが迫る中、上空から航空自衛隊のF-4ファントムが飛来する。 密集陣形のまま前進していたゾルザル軍の頭上にナパーム弾の劫火が降り注ぎ、彼らは逃げる間もなく焼き尽くされた。さらに、ワーグナーの『ワルキューレの騎行』を大音量で響かせながら、UH-1J戦闘ヘリの大編隊が到着し、ドアガンの掃射で敵をなぎ倒す。これを見たピニャは全軍突撃を命じ、エルベ藩王国のデュラン国王らも掃討戦に加わった。完全に戦意を喪失したゾルザル軍は瓦解し、指揮を執っていたヘルム将軍も多勢に無勢で捕縛された。

5. ゾルザルの最期と内乱の終結

戦場から逃亡したゾルザルは、少数の兵士や側近(ボウロ、アブサン)と共に森を敗走していたが、そこにテューレが現れる。テューレの甘言に乗せられたゾルザルは、敗戦の責任を側近に押し付けて処刑を命じた。これを見た残存兵たちはゾルザルを見限り、彼のもとから去っていく。 全てを失い、テューレと二人きりになったゾルザルは再起を口にするが、テューレは隠し持っていたナイフで彼の腹部を刺し貫いた。致命傷を負ったゾルザルは最後の力でテューレの首を絞め上げ、二人は相打ちとなって絶命する。指導者と軍事力を完全に失ったことでゾルザル派は消滅し、帝国の内乱は正統政府側の勝利で幕を閉じた。

6. 「門」の閉鎖と特地のその後

内乱は終結したものの、日本側での戦闘の影響で「門」は完全に崩落し、地球と特地を繋ぐ通路は失われてしまった。 特地には、破壊作戦の任務を負って自ら残留を選んだ伊丹たち少数の自衛官と、レレイやテュカ、ロゥリィ、ヤオ、そして戦禍で住処を失った住民たちが取り残されることとなる。彼らは日本からの支援を失った特地で、瓦礫の整理や自給自足の生活から、新たな国づくりへと歩み始めることになったのである。

登場キャラクター

嘉納

防衛大臣であり、政治的決断力を備えた人物である。森田総理の弱腰な政策に反発し、自ら国を牽引する姿勢を見せる。伊丹の力量を評価し、重要な局面で非公式な任務を託す。

・所属組織、地位や役職

 日本政府・防衛大臣。のちに内閣総理大臣。政界引退後は一般人。

・物語内での具体的な行動や成果

 伊丹に銀座駐屯地への潜入と連絡任務を命じた。深夜の首相公邸で森田総理に全閣僚の辞表を突きつけ、内閣総辞職を迫った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 森田退陣後に総理の座を引き継いだ。四年の歳月を経て政界を引退し、秋葉原で伊丹と再会を果たした。

伊丹耀司

オタク趣味を優先する自衛官である。平時は飄々としているが、危機的状況では部下を率いて大胆な作戦を遂行する。特地の住人や仲間から強い信頼を寄せられている。

・所属組織、地位や役職

 自衛隊。

・物語内での具体的な行動や成果

 嘉納の密命を受けて銀座ドームの天頂部から空挺降下し、レレイの奪還に成功した。多世界接続の危機に際して、魔方陣を爆破する任務を引き受けた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 「門」の消失から四年後、同人誌への強い情念によって再び世界を繋ぎ、秋葉原の即売会場に姿を現した。

富田

伊丹の部下であり、冷静に任務をこなす自衛官である。異世界の貴族であるボーゼスと深い関係を築いている。

・所属組織、地位や役職

 自衛隊。

・物語内での具体的な行動や成果

 伊丹らと共に銀座ドームへ降下し、工作員同士が対立する現場へ乱入した。「門」の閉鎖が迫る中、伊丹に同行して魔方陣を爆破する任務に就いた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 作戦前にボーゼスとの結婚の意思を表明した。

栗林

伊丹の部下であり、戦闘を好む好戦的な自衛官である。非常事態においても後退を嫌い、最前線に立つことを選ぶ。

・所属組織、地位や役職

 自衛隊。

・物語内での具体的な行動や成果

 銀座ドームへの空挺降下に加わった。特地からの撤退命令が出た後も残留を志願し、防衛陣地の構築を指揮した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 ロゥリィと共に特地に残り、巨大な蟲獣の群れを迎撃する主力として活躍した。

テュカ

精霊魔法を操るハイエルフの女性である。伊丹に対して強い愛情を抱き、危険な任務にも積極的に同行する。

・所属組織、地位や役職

 明記なし。

・物語内での具体的な行動や成果

 伊丹らと共に銀座ドームへ降下し、魔法で風を操って着地点への誘導を行った。特地での蟲獣との戦闘では、火矢や雷撃を用いて自衛隊を支援した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 作戦前に伊丹と結婚すると宣言し、空挺降下時には彼を道連れにして飛び出した。

ロゥリィ

巨大なハルバートを操る亜神である。戦闘において圧倒的な力を見せ、他者の精神的な弱さを厳しく指弾する。

・所属組織、地位や役職

 神の使徒。

・物語内での具体的な行動や成果

 アルヌスでレレイの行方を捜索し、ディアボから監禁場所を聞き出した。蟲獣との戦闘では最前線に立ち、隊員たちと共に防衛線を支えた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 玉砕を覚悟した勝本を激しく叱責し、生き残るために粘り抜くよう諭した。

レレイ

魔法使いの少女である。「門」の維持に関わる能力を持ち、各国の工作機関から標的とされる。

・所属組織、地位や役職

 魔法使い。

・物語内での具体的な行動や成果

 中国の工作員に拉致されたが、伊丹たちによって救出された。多世界接続の異常事態が発生した際、銀座への通路を広げて他世界からの蟲獣の流入を防いだ。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 自衛隊の撤退を助けるために「門」を開き続けたが、体力の限界により気を失い、それが門の完全な閉鎖に繋がった。

ヤオ

ダークエルフの女性である。非常事態において的確な判断を下し、集団を統率する能力を持つ。

・所属組織、地位や役職

 傭兵部隊の指揮官。

・物語内での具体的な行動や成果

 アルヌスで怪異の襲撃が発生した際、傭兵を配置して街路の防衛態勢を整えた。非戦闘員を食堂に集め、伊丹の名義を利用して住民を誘導した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 自衛隊が動けない状況下で、住民と街を守るための実質的なリーダーとして機能した。

中国の工作機関を指揮する人物である。目的達成のためには手段を選ばず、世論操作や恫喝を得意とする。

・所属組織、地位や役職

 中国工作機関・局長。

・物語内での具体的な行動や成果

 暴徒を先導して銀座駐屯地を占拠し、自衛隊に対して「門」の国連管理を要求した。レレイを人質に取り、トラックによる物理的な門の破壊を指示した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 「暗黒の太陽」が出現した際、好奇心からその深淵を覗き込み、触手に引きずり込まれて消息を絶った。

鈴芳華

中国の女性工作員である。任務に忠実であり、暴力や脅迫を躊躇なく実行する。

・所属組織、地位や役職

 中国の特殊武装工作員。

・物語内での具体的な行動や成果

 観光客を装って特地に潜入し、メトメスに暴行を加えてレレイの居場所を特定した。レレイを人質に取り、狭間に対して道を空けるよう要求した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 伊丹たちの乱入によって吹き飛ばされ、気絶したところを傭兵たちに取り押さえられた。

狭間

特地派遣部隊を統括する指揮官である。政治的制約の中で最善の選択を模索し、部下の安全を第一に考える。

・所属組織、地位や役職

 自衛隊・特地方面派遣部隊・陸将。

・物語内での具体的な行動や成果

 銀座駐屯地で劉と対峙し、シビリアンコントロールを遵守しながら時間稼ぎの交渉を行った。撤退命令に従って隊員の帰還を指揮しつつ、自らは特地に残る決断を下した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 指揮官としての責任を全うするため、特地に残留して蟲獣迎撃と事後処理の指揮を執った。

ディアボ

帝国の皇子である。権力への執着が強く、自らの保身と利益を最優先に行動する。

・所属組織、地位や役職

 帝国皇子。

・物語内での具体的な行動や成果

 皇帝になる目的で中国工作機関と取引し、レレイを引き渡そうとした。アルヌスの住民を扇動して支持を集めようとしたが、裏の意図を告発されて孤立した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 ロゥリィから住民意思を反映する傀儡の地方長官という役目を提示され、生き残る手段としてそれを受け入れた。

ピニャ

帝国正統政府を率いる皇女である。困難な戦況でも将としての責任を重んじ、味方を鼓舞する強さを持つ。

・所属組織、地位や役職

 帝国正統政府軍・指揮官、皇女。

・物語内での具体的な行動や成果

 ゾルザル軍を足止めするため、イタリカ城外での野戦を決行した。自衛隊の航空支援によって敵陣が崩れた際、全軍に突撃を命じた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 自らを囮にする悲壮な覚悟で戦線を維持し、特地を二分した内乱を勝利で終わらせた。

ゾルザル

帝国の第一皇子であり、内乱を引き起こした人物である。焦燥感に駆られやすく、恐怖政治によって軍を動かす。

・所属組織、地位や役職

 帝国皇太子、ゾルザル派指導者。

・物語内での具体的な行動や成果

 精鋭を率いてイタリカを強襲し、味方兵士を処刑して全軍総突撃を強行した。戦場から逃亡した後、テューレの言葉に乗せられて側近を処刑した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 すべてを失って孤立し、最後はテューレにナイフで刺され、彼女と相打ちになる形で命を落とした。

テューレ

ヴォーリアバニー族の女性である。ゾルザルに対して深い憎悪を抱き、彼を破滅へ導くために暗躍する。

・所属組織、地位や役職

 ゾルザルの側近。

・物語内での具体的な行動や成果

 古田と共に逃亡する機会を得たが、復讐を優先してゾルザルの元へ戻った。敗走するゾルザルを甘言で孤立させ、彼をナイフで刺した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 致命傷を負ったゾルザルに首を絞められ、古田との平穏な未来を思い描きながら息絶えた。

古田

料理人としての顔を持つ自衛官である。テューレの境遇に同情し、彼女を救おうと行動する。

・所属組織、地位や役職

 自衛隊、料理人。

・物語内での具体的な行動や成果

 ゾルザルの陣営からテューレを連れ出し、共に日本へ帰還しようとした。ヘリの搭乗直前に負傷した彼女を介抱したが、搭乗を拒絶された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 単独で日本へ帰還し、「門」の消失から四年後には小さな店を開き、かつての仲間たちを迎え入れている。

栗林菜々美

テレビ局に勤める記者である。非常事態にも動じず、事実をありのままに伝える報道の使命を追求する。

・所属組織、地位や役職

 テレビ旭光の記者。のちにネット放送局のニュースキャスター。

・物語内での具体的な行動や成果

 テレビ局トップの逮捕による社内の混乱を突いて、銀座駐屯地への潜入取材を強行した。ドーム内での銃撃戦を撮影し、世間に事実を生中継した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 四年後にはネット放送局のキャスターを務め、門の再開通に関する情報を中立的な立場で報じている。

森田

日本の総理大臣である。事態の収拾を焦るあまり、現場の状況を無視した政治的妥協に走る。

・所属組織、地位や役職

 日本政府・内閣総理大臣(のちに辞職)。

・物語内での具体的な行動や成果

 「門」の管理を国連安保理常任理事国に委ねる方針を進めた。その判断を問題視され、嘉納をはじめとする全閣僚から辞表を突きつけられた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 自派閥の領袖や幹事長からも支持を打ち切られ、孤立無援のまま総辞職に追い込まれた。

ゲート 自衛隊 〈5〉冥門編〈上〉レビュー
ゲート 自衛隊 全巻まとめ
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展開まとめ

07

極秘任務の通達

嘉納は河川敷のゴルフ場で伊丹に封筒を手渡し、デモ隊に占拠された銀座駐屯地へ赴き、特地派遣部隊の狭間陸将に届けるよう依頼した。レレイの件については伊丹の判断に委ねるとし、命令の形を取らぬ狡猾な配慮を示した。伊丹は不満を抱きつつも救出の決意を固めていた。

空挺降下という作戦内容

野路は銀座駐屯地ドームの設計図を示し、天頂部のハッチから侵入する計画を説明した。ザイルで内部へ降下し、「門」直上へ向かうというものであった。散弾銃や弾薬も用意され、富田と栗林は自前のPDWを携行した。テュカには強弓が渡され、その腕前も示された。

夜間降下への動揺

作戦は高度一万三千フィートからの夜間自由降下であった。伊丹と富田が空挺資格を持つことが前提とされたが、伊丹は自らが熟練者ではないことに動揺した。嘉納は伊丹を降下のプロと信じ込み、計画はこれしかないと断言した。地下からの侵入案も退けられ、警察の協力による停電と機動隊の陽動が準備されていた。

装備と緊張の中で

伊丹はテュカにハーネスを装着し、自身もパラシュートを背負った。富田は手慣れた様子で準備を進め、栗林は緊張を隠せなかった。伊丹は虚勢を張りつつ仲間を励まし、降下手順を確認した。やがて降下十分前の合図が響き、伊丹は恐怖を押し殺しながら大きく息を吸い、作戦開始の瞬間を迎えた。

劉の交渉と「門」破壊の示唆

劉はメガホンで自衛隊に特地への立ち入りを要求したが、自衛隊は政府許可のない者は通さないと拒否した。劉は宇宙条約を根拠に特地の非領有を主張し、自衛隊側は帝国との講和条約により領有権が認められ宇宙条約は対象外だと反論した。劉は「門」破壊も辞さないと告げ、トラックの空ぶかしと自衛隊の武装で一触即発となったが、劉は時間稼ぎと割り切って後退した。

通信遮断の齟齬と作戦の目的変更

劉が下がると、呉連袍少校は携帯回線まで切断されディアボと連絡不能になったことに激怒した。本来はディアボが送った箱から「玉璧」を確保し、外交圧力で「門」の管理を国連へ委譲させる計画であったが、箱の中身は杖のみであった。ディアボは皇帝就任のための軍を要求し、軍を連れてこなければ「玉璧」を渡さないと通告したため、劉は短時間で特地へ乗り込む決断を迫られた。

潜入チーム編成と「玉璧」奪取命令

劉は国際NGOだけでなく留学生・労働者・機関員・特殊武装工作員が混在している状況を踏まえ、女性工作員十二名を選んで急造チームを編成した。彼女達には観光客を装って自衛官に救助を求め、後続の乱入に紛れて特地へ入り、ディアボに接触して「玉璧」を確保する任務を与えた。手段は問わず、必要ならディアボを殺してもよいと劉は命じた。

非軍事的圧力の誇示と現場の引き継ぎ

呉は作戦の行き当たりばったりを批判したが、劉はレアアース禁輸、拘禁、為替操作、マスコミやネットへの介入など非軍事手段で日本政府を揺さぶれると述べ、作戦指揮の正当性を示した。各国NGOの抗議とマスコミ調整の要請を受け、劉は本部への工作を指示し、現場を呉に任せた。

特地内での保護と脱出準備

十二人の女性工作員は自衛官の案内で建物四階の小部屋に収容され、トイレなどの自由は認められたが行動範囲は制限された。外では車両と隊員の動きが活発で、彼女達は総出撃準備と誤認したが、実際は銀座側占拠により発令された撤退準備命令「脱兎」に伴う整理と移動であった。日没後、発砲音や爆発音、火柱が見え、混乱で警戒が外に向いたと判断した工作員は窓から脱出を決断した。ディアボの所在不明という問題には、通訳の女性パナシュを手掛かりにすると定め、六人がシーツでロープを作って降下し、残りはアリバイ作りのため部屋に残った。

「韋駄天」がアルヌスに広げた動揺

「韋駄天」の発令により、自衛官の買い物客が姿を消し、アルヌス側の店や従業員は突然の退去準備に追い込まれた。料理長は、残留する者が出るはずという認識を覆され、一人残らず退去と聞かされて激昂した。この不安はアルヌス全域へ拡散し、さらに新難民にも伝播した。

新難民の恐怖と不穏な会話

新難民は焦土戦術で生まれた戦災孤児や被災者であり、庇護者である自衛隊を失うことを悪夢の再来と受け止めた。避難民は置き去りへの恐怖から連れて行ってほしいと一致する一方、会堂の片隅では警戒が薄い今が騒ぎを起こす好機だと語る者がいたが、子供は危険な相談だと気づかず聞き流した。

テュワルの空白と子守りの依頼

会堂にいたハーピーのテュワルは周囲の不安に同調できず、現実感の乏しさに囚われていた。帝都の悪所を離れて夫と開墾生活を始めたはずが、唐突にアルヌスの診療施設へ移っており、過去の記憶も現実味を失っていた。そこへトゥハッタが孤児の世話を頼み、テュワルは子供達を見守る立場に置かれた。

怪異テロの発火点と自衛隊の葛藤

夜、火災が起き、竹笛の音と叫びが恐怖を煽り、幼児が怪異化したダーが難民を襲撃した。子供達が爪と牙の餌食となり、テュワルは逃げろと叫ぶしかなかった。自衛官達は救援に動こうとしたが、「韋駄天」により駐屯地外への行動が禁じられ、幹部は帰還不能の危険を理由に自重を命じた。

檜垣の決断と第三偵察隊の出動

部下の強い訴えを受け、檜垣三佐は自ら責任を負うとして第三偵察隊の指揮を執り、救出に向かうと宣言した。子供も怪異化していなければ救出対象とし、怪異認定は自分が行い、認定後は躊躇なく射殺せよと命じた。仁科一曹の運転する高機動車は新難民地区へ突入し、怪異を車体で弾き、隊員は小銃と重機関銃で群れを撃退しつつ、追われる避難民を救助した。

救助直後の裏切りと誘引工作

救助した男女はトゥハッタとトイスタを名乗ったが、直後に檜垣三佐と運用訓練幹部を刺し、竹笛を吹いて混乱を広げた。戸津は銃床で襲撃者を叩き潰そうとし、倒れた女は袋から液体を撒いて勝本らに浴びせ、ダーが臭いに引き寄せられると告げて逃走した。桑原は病院へ向かうよう指示し、仁科は負傷者搬送を急いだ。

横転事故と勝本の最期の覚悟

逃走途中、怪異が建材で道を塞ぎ、高機動車は乗り上げて横転し、仮設住宅に突っ込んで停止した。外に投げ出された勝本は、倒れているテュワルを庇いながら拳銃で応戦したが弾切れとなった。怪異が臭いに引き寄せられて群がる中、勝本は手榴弾のピンを抜き、怪異の足下へ転がすと、テュワルに覆い被さって爆発に備えた。

ヤオの即応と傭兵の部隊化

非常事態を察知したヤオはボンテージ鎧を着込み、サーベルを振って傭兵を要所に配置し、街路を固める防衛態勢を命じた。炎龍襲撃の経験から、緊急時は迅速な状況把握と明瞭な指示が全てを救うと理解しており、傭兵も職場を守るために楯を並べて備えを固めた。

自衛隊不在を前提にした判断

ハントは、アルヌスが自衛隊管理下である以上、傭兵を勝手に動かすのは問題だと危惧した。ヤオは日本の軍は大きな命令に縛られて動けず、頼れないと断じ、アルヌスは自分達の街だから自分達で守ると宣言した。ロゥリィはレレイの行方不明を心配して捜索中であり、そのためヤオが現場指揮を執っている状況であった。

住民の集約と伊丹名義の方便

ヤオは戦力集中のため、非戦闘員を食堂へ集める方針を示し、誘導指揮をハントに任せた。貴族の姫君やメイドも対象となる点でハントは逡巡したが、ヤオは一人残らず集めるよう命じ、従わない者には伊丹の指示だと告げればよいと判断した。その名義は嘘であるが、結果が出れば伊丹は文句を言わないだろうとヤオは割り切った。

食堂の過密と状況説明

カトー老師やコダ村の子供や年寄り、組合従業員が食堂へ集められ、店内はすし詰めとなった。椅子が足りない者は床や立席とし、必要なら貴賓室の椅子も出し、収まらない分は隣や道ばたでもよいとして、とにかく食堂周辺へ集約させた。ヤオは街でダーと思われる怪異が暴れ、新難民が襲われたと説明し、戦災難民の子供に紛れ込んでいた可能性を述べた。

ディアボの同席と身分の露見

パナシュとメイドに加え、ディアボとメトメスも食堂に現れた。ディアボはゾルザルへの悪態を吐いたが、料理長はディアボに親しげな視線を向け、予告通りの事態になったと漏らした。ディアボは混乱を避けるため黙るよう料理長を制したが、周囲の視線が集まり、ディアボは自らがディアボ殿下に仕える者であり、帝国をゾルザルに牛耳られたため殿下がパナシュのもとに身を寄せていたと釈明した。続けてメトメスが頷き、ディアボが皇子であることも理解され、料理長はディアボがゾルザルがこの街で何か仕掛けると予告していたと明かした。ディアボは兄の性質から予測していたが、その手段が人倫に悖るものだとは思わなかったと認めた。

勝本の決死とロゥリィの介入

勝本三曹は、手榴弾で怪異を巻き込む覚悟を決め、爆発に自分も巻き込まれる危険を承知でテュワルを楯になって庇った。だが爆発前にロゥリィが黒い暴風のように怪異の首を刈り落とし、巨体を手榴弾の上に倒れ込ませ、さらにハルバートで爆風を遮って被害を抑えた。

「玉砕」を拒むロゥリィの叱責

ロゥリィは勝本の自己犠牲を「命を捨てる戦い方」として激しく嫌悪し、伊丹なら最後まで足掻くのだと叱りつけた。助けられた側は一生傷になるとしてテュワルを指さし、玉砕は自己陶酔であり死への逃避だと断罪した。生き残るために無様でも格好悪くても粘り抜け、爆発物があるなら腕ごと怪異の口に突っ込めとまで言い、魂を拾えない結末を避けてほしいと懇願した。勝本は圧倒され謝罪し、以後の覚悟を改めた。

鈴芳華一行の捕捉と「狼男」傭兵の威圧

一方、潜入工作員の鈴芳華は物陰に潜んでいたが、背後から声をかけられ、犬というより狼の風貌を持つ亜人傭兵に鋭い視線で捕捉された。傭兵たちは嗅覚で散っていた仲間も次々見つけ出し、鈴は素性を問われていると推測して日本語で弱々しく取り繕う。だが傭兵側はそれを軽く受け流す態度で、鈴は見下された不快感を覚えつつ、連行される形で街の食堂へ向かう。

住民集約下の食堂での観察と方針転換

食堂は住民で溢れ、周囲の道や広場にまで人があふれていた。武装した兵が守っており、鈴は占領にも見える状況に戸惑う。だが、住民が一箇所に集められているならディアボ探索に有利だとして、鈴は「しばらく様子見」を選び、床の片隅に腰を下ろして機会を待った。

ヤオへの報告と鈴への違和感

鈴たちを連れてきた傭兵ウォルフはヤオへ報告し、相手は日本人らしいが身のこなしや肉付きが以前の「じゃーなりすと」とは違うと述べた。ヤオはダーの臭いがしないことを確認し、では何から隠れていたのかと疑念を抱く。ウォルフは軽口を叩きつつも警戒継続を命じられ、通訳役としてメイアを呼ぶ流れになる。

通訳メイアの“助言”と予想外の応答

ウォルフはメイアに「イヤらしいことをしたい」と伝えるよう頼み、メイアは呆れつつも、蹴る・引っかく・泣くなど対処法まで添えて通訳した。ところが鈴は微笑んで「暇な時なら」と応じ、さらに「芳華で、親しい者はファファと呼ぶ」と名乗る。周囲は唖然とし、ウォルフ本人も舞い上がって迫るが、鈴は「後で。今は仕事を済ませろ」と押し返し、状況把握を優先させた。

ダー情報の取得とディアボ接近の導線確保

鈴はメイアから、ダーが子供に紛れて突然巨大化して襲う怪物であり、だから皆がここに集められていると聞く。さらに鈴が探すディアボ殿下の居場所を尋ねると、メイアは貴賓席のメトメスやパナシュの位置を示し、彼らが「門」を閉じさせないため日本側と交渉する方針を話していると説明した。鈴は通訳を申し出てメイアを伴い、仲間とともにメトメスの元へ近づく。

注意の陥穽と失踪の成立

店外警戒に意識を取られるヤオや傭兵、店内ではディアボの交渉方針に注目が集まり、監視が薄い「注意の穴」が生じた。その隙に鈴たちはメイアを連れて動き、結果としてメトメスとメイアの姿が見えなくなったことに、しばらく誰も気づけない状況が成立した。

08

倉庫への拉致と「玉璧」要求の正体

メトメスとメイアは鈴芳華一行に倉庫へ放り込まれ、事情も告げられないまま通訳を強要された。鈴は「殿下から玉璧を受け取る」と伝えさせ、玉璧がレレイを指す暗号であると明かす。メトメスは相手が「ちゅうごく」側だと理解し、取引の交渉が始まるが、鈴は軍を連れていないと告げ、レレイの身柄引き渡しを先に要求した。

レレイ輸送の破綻と疑念の拡大

メイアは、レレイを保護してもらうため箱詰めで送り出したはずだと食い下がるが、鈴は箱の中身は杖だけだったと断言した。メトメスは「殿下の深慮」と言い募り、メイアは自分も計画に加担したのに話が違うと反発する。鈴はメイアを通訳機扱いし、従わねば壊して捨てると脅し、メイアはメトメスの言葉ぶりから、目の前の男が皇子本人ではなく影武者だと看破した。

影武者発覚と暴行による尋問

鈴はメトメスの襟首を掴んで「騙したな」と追及し、仲間も苛立つ中、任務は玉璧=レレイの回収だと再確認する。鈴はメトメスに居場所を吐けと迫り、拒めば壊して捨てると明言する。メトメスは忠誠心と恐怖の板挟みで抵抗するが、鈴たちは生命に直結しにくい部位を狙う訓練の成果で殴打・蹴りの暴行を加え、心理的にも追い詰めた。

メイアの虚偽通訳と脱出

メトメスが折れて案内を示す段階に入ると、メイアは「本当のことを言えばレレイが攫われる」と判断し、メトメスの降伏を「案内しない」と偽って通訳した。言葉と態度の不一致を鈴が見抜き、メイアを殴って追及した瞬間、メイアは俊敏な身体能力で倉庫の軒へ跳び、屋根伝いに逃走する。鈴たちはナイフを投擲し、一本が背に刺さるが致命傷に至らず、メイアは血痕を残しつつ食堂へ向かった。鈴は追撃よりも玉璧回収を優先する決断を下す。

ディアボの演説と住民の熱狂

同時刻、食堂ではディアボが「門」を閉じる動きに反対し、門こそが生活の希望の基盤だと説く。帝都の惨状とアルヌスの活気を対比し、閉鎖の先送りは反逆ではなく「知ってほしい」という正当な訴えだと扇動する。冬支度の比喩で不安を「準備不足」に置き換え、住民の自尊心と利己心を肯定して、行動の正当性を与えた。住民は拍手し、ディアボは代表者としての地位を得る。

血みどろの告発で潮目が変わる

負傷したメイアが乱入し、ディアボは嘘つきで、レレイを「ちゅうごく」に引き渡し軍隊を引き入れて権力を得ようとしていると告発する。さらに、ディアボを名乗っていた者(影武者)が拷問され、居場所を吐く寸前だったと訴える。ディアボは動揺しつつ否定するが、メイアは「戯言なら無視すればいい」と挑発し、メトメス不在を突いて疑念を増幅させる。

切り札への執着が露呈し、信頼が崩壊

メイアは「軍が門の向こうまで来ている」と言い、今動かなければレレイも軍も失うと煽る。ディアボは結局、切り札であるレレイを奪われることを恐れて食堂を飛び出し、これが告発の信憑性を住民の前で裏付ける形となった。住民は、雇い主であるレレイを取引の具にする行為を許し難いと感じ、熱狂は一転して衝撃と落胆へ変わった。料理長だけが追走し、ディアボは自分がディアボ本人で、メトメスは影武者だったと認めつつ、「味方を先に騙す」方便だったと開き直る。

拘束寸前の対立とロゥリィの介入

ディアボの前にヤオ率いる傭兵が立ちはだかり、拉致監禁の容疑で拘束を告げる。ディアボは皇子として威圧するが、アルヌスでは通じず、パナシュは必死に止めようとする。緊迫の瞬間、ロゥリィが現れ、ディアボはレレイの居場所へ案内すると断じ、ディアボは観念して武器から手を離した。

叱責と救出行動、そして“空”

ロゥリィは権力志向自体は否定せず、玉座を目指すのは当然としながらも、品格を欠く下衆な振る舞いは格を落とすと釘を刺す。ディアボはレレイを「それなりに」扱ったと言い訳し、監禁場所は物置だと白状する。一行が物置へ向かうと、寝台は用意されていたが、そこにいたのは手足を縛られ猿ぐつわをされたメトメスだけで、レレイの姿はなかった。

狭間の指揮転換と被害対応の決断

狭間陸将は執務室に戻ると、アルヌス市街で新難民の負傷者・犠牲者が多数発生し、救出だけで手一杯で掃討が追いつかない状況を把握した。狭間は第五戦闘団の待機命令を解除し、負傷者・遺体の収容と診療施設の開設を命じ、街の住民を駐屯地内へ避難させる方針を示した。一方で、散開中の部隊は最短でも到着まで数時間、全員帰還には一日以上を要すると報告され、作戦の即応性が崩れている現実が明確化した。

通信断と「門」破壊の脅威

市ヶ谷との連絡は回線断で回復不能となり、狭間は状況を自力で切り抜ける必要に迫られる。ドーム内では国際NGOを名乗る集団が、攻城槌のように改造した大型トラックで「門」へ体当たり可能な態勢を見せ、破壊の本気度を誇示していた。狭間は彼らを単なる民間人と見なさず、交渉を装った戦闘を展開する組織的な相手だと判断し、最悪の場合は力尽くで排除してでも隊員を脱出させる準備として「脱兎」発令時の序列徹底と、弾薬・燃料・薬品・食糧を残置する方針を命じた。

マニュアル遵守と時間稼ぎの継続

幕僚からは退去準備を撤回してゾルザル派殲滅を優先し、講和条約発効によってアルヌス保持を狙う案が出るが、狭間は「順番が逆」と退けた。緊急時対応マニュアルは閣議決定=総理命令の効力を持ち、現地指揮官が覆せないという統制の論理を貫き、デモ隊との交渉で時間を稼ぐ方針を確認した。

劉との対峙と「国連管理」要求の提示

狭間はドーム内へ戻り、七四式戦車の前で代表を名乗る劉と交渉に入る。劉は特地への立ち入りを認め、最終的に「門」と特地の管理を国連へ譲れと迫り、拒否すれば「門」破壊で日本側を異世界の漂流者にすると脅した。狭間は立ち入りを断固拒否し、交渉は政府と行うべきだと突き放すが、劉は孫子の言葉を引き合いに出し、将軍として裁量で受け入れろと揺さぶった。

狭間の違和感と劉の狙いの輪郭

狭間は、武器を持たないNGOが特地を保持できるはずがない点に違和感を抱き、劉の目的を探る。劉は「門」閉鎖を止め、今後は国連の常任理事国が方針決定すると言い、狭間は劉が特定国家の意志を隠し持っていると見抜く方向へ傾く。狭間はあくまでシビリアンコントロールに従い任務を遂行すると宣言し、漂流者となる覚悟も示した。

挑発としての“天安門”と報道操作の脅し

劉は、武力排除すれば「六四天安門事件の再現」として国際世論と報道で日本を叩けると露悪的に語り、ハンディカメラ役を示して映像化の意図を明確にする。さらに日本のマスコミが自衛隊を「デモ隊虐殺」「門を壊した愚か者」と報じると断じ、隊員家族が社会的に追い込まれると脅迫する。狭間は反論しきれず、劉が報道を含む世論工作の主導権を握る構図に窮する。

交渉の正体が時間稼ぎだと見抜くが手遅れ

狭間は劉の要求が現実に実行不可能である点から、相手の狙いが「何もさせないための時間稼ぎ」だと喝破する。劉もそれを認め、遅かったと嘲笑した直後、背後に縛り上げられたレレイが人質として現れる。狭間は人質が「保護した観光客」だったと認識し、相手が日本側の温情を利用したと理解する。

レレイ人質化と通行要求、狙いの確定

劉は人質に危害を加えないと約束する代わりに、女たちを通す道を開けと要求する。狭間は「通すな、彼女の入手が狙いで傷つけられるはずがない」と命じ、相手の真の狙いがレレイ確保だったと断定する。劉は、これは目的の一つに過ぎないと余裕を見せ、計画が多目的に組まれていることを示して満足げに微笑んだ。

銀座上空での降下準備と恐怖の露呈

銀座上空到達が迫り、伊丹たちは降下準備に入った。伊丹はハーネスを執拗に点検し、不安と恐怖を強く抱えつつも安全確認を徹底した。伊丹はテュカを、富田は栗林を抱えてヘリのドア口に座り、眼下の東京夜景を見下ろしながら降下に備えた。伊丹は寒さと恐怖を隠しきれず、栗林は「ベテランのはずだ」と不満をぶつけ、伊丹は恐怖を知るからこそ安全に気を配るのだと強弁した。

死亡フラグ騒動とテュカの強引な突入

栗林は富田が「戦争が終わったらボーゼスと結婚する」と言ったことを死亡フラグだとして騒ぎ、伊丹も危険な作戦直前の発言を問題視した。降下命令が出ると、テュカが「そのフラグは私が引き取る」と言い出し、さらに自分が伊丹と結婚すると叫んで飛び出したため、伊丹は引きずられる形で空中へ放り出された。富田と栗林も後に続き、富田は空中で回転する曲芸まで見せながら降下を開始した。

主傘トラブルと自由落下への移行

伊丹は開傘したものの減速感がなく、夜間で主傘の状態確認が困難なため、反射的に主傘をカットウェイして自由落下へ移行した。回転しながら急降下する中で高度計の減り方が異常に速く、AAD作動の危険も意識しつつ、伊丹は姿勢を安定させるためアーチ姿勢を必死に維持した。回転が止まったところでリザーブを開傘し、強烈な衝撃とともにようやく正常な降下へ復帰した。

テュカの風操作による誘導と銀座ドーム接近

テュカは降下そのものを歓喜しつつ、伊丹は発言の危険性を叱責したが、即座に着地点の確保を優先した。伊丹は操縦に自信が薄くテュカに誘導を依頼し、テュカは精霊魔法で風を操って銀座の「ドーム」へ進路を寄せた。暗視鏡越しに、地上では機動隊とデモ隊が衝突する騒乱が展開している一方、上空から近づく伊丹たちはまだ気付かれていない状況だった。

着地操作の失敗と外壁滑落の危機

伊丹が減速操作を入れたことで、風誘導と噛み合わず高度が高いまま急停止し、二人は振り子のように振られてドーム天井へ激突しかけた。尻餅状態で落下した直後、テュカが咄嗟に風を呼んで持ち直そうとするが、今度は外壁を滑り落ちかける。伊丹は予備傘をカットウェイし、外壁の出っ張りに掴まって滑落を防ぎ、切り離した傘は風で飛ばされて近隣の建物に引っかかった。

天頂到達と侵入準備、ドーム内の異常を確認

伊丹は天頂までよじ登ってテュカとの接続を切り離し、行動可能な状態に戻す。ロープを用意してハッチから内部侵入する段取りを整え、嘉納の秘書から受け取った散弾銃に二発装填して構える。ハッチから覗くと、ドーム内では多数の人間が「門」を取り囲み、トラック二台がエンジンを唸らせ、破壊音も響いており、事態が危険域に入っていることを伊丹は察知した。

富田・栗林ペアの突入と衝突事故、伊丹の転落

その矢先、富田と栗林のペアが天頂へ一直線に降下してきて、狭い着地点で衝突の危険が発生した。伊丹は躊躇なくテュカを押しのけて庇うが、着地姿勢の栗林のつま先が伊丹の股間に直撃し、伊丹は吹き飛ばされてハッチ内へ転落してしまった。

レレイ人質交渉の決裂と狭間の屈服

劉は鈴たちを通せと要求し、狭間は犯罪者との交渉を拒否した。劉はレレイを失えば「門」は二度と開けないと脅し、機密情報が漏れている事実に狭間は暗い危機感を抱いた。狭間は「レレイは傷つけられないはず」と論じるが、劉は外見ではなく機能が目的であり、四肢の切断や薬物による意思の改変すら辞さないと示唆して圧力を強めた。

狙撃の逡巡と鈴芳華の誇示

狭間側では狙撃配置の報告が上がり、鈴を狙撃する案も出たが、狭間は即断せず、複数犯を同時に無力化できない限りレレイに危害が及ぶと判断した。劉の合図で鈴がレレイの心臓付近に刃を当て、狭間は道を開けるよう命じるしかなくなった。鈴芳華は勝ち誇り、レレイを抱え刃を押し当てたまま嘲笑し、自衛官たちは飛び出したい怒りを抑え込まれる。

トラック突入による「門」破壊開始と発砲禁止の葛藤

劉はトラック運転手に合図し、二台の大型トラックが構造的に脆弱とされる外壁へ突進した。金属がひしゃげる轟音とともに外壁が一部崩れ、漆喰や瓦礫が降り注ぐ中、狭間は部下を後退させる。幕僚は発砲許可を求めたが、狭間は「民間人に発砲した」と報道される危険を理由に拒否し、隊員たちは怒りと屈辱を噛み殺したままトラックの再突入を許してしまう。二度目の激突でも外形は辛うじて保たれ、三度目の突入準備としてトラックが後退し、警報音が秒読みのように響いた。

第三勢力の介入と工作員同士の対立露呈

その場に「打ち合わせにない行動」を非難する第三者が介入し、劉側は外から入ってくる武装集団を遮ろうとする。しかし第三勢力は銃を携行し、素手の相手でも撃ちかねない気配が劉の部下を動揺させた。素顔を晒した代表者ジェイキンズらは米英仏系の工作員連合と推測され、劉は中国側の「受け持ち」への介入だと抗議する。ジェイキンズは「交渉圧力」が目的なのに「門」を壊す直接行動は度を越えていると批判し、劉は自衛隊が譲歩しないからだと正当化するが、第三勢力は核心として「玉璧(レレイ)」確保が強攻策の理由だと指摘する。

狭間による状況整理と相互牽制の銃口

狭間側は状況の意味を問われ、狭間は「アメリカは中国の狙いを最初から見抜き、確保後に横取りするつもりだった」と説明する。劉もそれを認め、自分たちも米側の意図を承知していたと明かす。劉が拳銃を抜いてジェイキンズに向け、呉たちも武器を出して銃口を突きつけ合い、ドーム内は工作員同士の緊迫した沈黙に包まれる。

空中からの乱入と場面転換の導入

その直後、空中ブランコのような勢いで何かが降下してきて、レレイを抱える鈴を後方から突き飛ばし、特地側に並ぶ自衛官の頭上を飛び越えるほどの勢いで状況を攪乱した。

時間遡行:赤坂ホテルでの公安の摘発作戦

時間は戻り、夜の赤坂で公安の駒門が黒塗り車両の到着を監視し、ターゲットを確認した。肥田木社長と十代半ばの美貌の少女がホテルに入る様子を撮影し、部下の一人は少女を「トューレン・ホゥナ」という東アジアのスターだと興奮して語る。だが駒門はその知名度自体が宣伝による錯覚だと冷笑し、スターが枕営業をする不自然さを突いて部下を打ちのめす。

逮捕令状の執行と現行犯の確保

深夜二時前後、令状とカードキーが届き、都内十二カ所で顧客を一斉確保する段取りが整う。公安はホテルの部屋へ踏み込み、肥田木を児童福祉法違反容疑で逮捕すると通告する。現場には裸体の老人と少女の性行為があり、薬物や白い粉末も確認され、少女は薬物の影響で周囲の異変を認識できていない様子だった。少女は女性課員に保護され、肥田木はバスローブ姿のまま手錠と腰縄で連行される。

権力の失墜予告と「ペイバックタイム」宣言

肥田木は総理との関係を盾に抵抗するが、駒門は森田総理がまもなく「前総理」になると示唆し、某国との関わりも含め徹底追及すると告げる。作戦を終えた駒門は、国内に巣くう「ウジ虫」を徹底的に駆除すると部下に号令し、摘発を「ペイバックタイム」と位置づけた。

深夜の首相公邸と内閣総辞職カード

森田は深夜の首相公邸で、閣僚一同の突然の来訪を受けた。寝間着にカーディガンという姿の森田に対し、嘉納を先頭に閣僚はスーツ姿で整然としていた。嘉納は前置きなく「総理の椅子から降りてもらう」と告げ、森田の前に辞職願の束を突きつけた。そこには森田と官房長官の木檜を除く閣僚全員の辞意が揃っていた。

「門」政策への断罪と派閥の総意

閣僚側の理由は「門」の管理を国連安保理常任理事国の管理下に置く判断を森田が進めたことにある。森田は「大臣を任命し直せばよい」と抵抗するが、嘉納は引き受け手がいないこと、そして各派閥から均衡任命していた閣僚が全員揃って辞意を示したこと自体が「派閥の総意」であると突きつけた。森田は「誰が首相になっても選挙管理内閣で損だ」と食い下がるが、嘉納は自分が引き継ぐと宣言し、森田の判断が国を危うくするほど致命的だと断じた。

現場不信への糾弾と責任の肩代わり

嘉納は、現場を信じて待つべきだったのに森田は譲歩を先行させ、さらに安全保障を他国へ委ねようとしたと非難した。森田が「失敗したら誰が責任を取るのか」と問うと、嘉納は「だからお前を責任から解放してやる。俺が引き継ぐ」と迫り、森田の続投を実質的に否定した。

森田の電話工作と“待機していた”反応

森田は受話器を掴み、自派閥領袖の高津へ電話をかけて巻き返しを図る。だが相手は深夜にもかかわらず即応し、森田の訴えを受け止める余地がない状況が示唆される。森田は追い詰められており、その異様な早さの意味を考える余裕すら失っていた。

同時進行:テレビ局の崩壊報せと菜々美の逆張り判断

同じ頃、銀座で取材を続ける菜々美に、テレビ局社長の逮捕という報せが入る。容疑は児童買春で、相手は十六歳のトューレン・ホゥナとされ、言い逃れが困難な致命傷だった。さらに売春組織の顧客名簿に報道局長の名があり、参考人として連行されたとも伝えられる。捜査は財界や与野党政治家へ波及し、局内は「トップ総入れ替え」もあり得ると呆然として思考停止に陥った。

深夜帯を利用した“既成事実”の放送強行

しかし菜々美だけは状況を「チャンス」と捉え、現場判断で銀座の映像をニュースに突っ込めと指示する。視聴者が少ない「夜の二十七時」でも、深夜アニメ視聴層に刺さり、いったん流せば朝の情報番組へ接続できるという算段だった。責任追及には「自分に無理強いされたと言え」と逃げ道を作り、反発する者には「逮捕された報道局長が喋っているが大丈夫か」と囁けとまで命じる。

“報道のあり方”宣言と銀座へ突進

菜々美はカメラマンに、現場の三百六十度全景を撮り、「何も足さない、何も削らない。意見もつけない」と宣言する。善悪や正否は視聴者が判断し、報道は材料を提供するだけだという信条を掲げ、カメラマンを引き連れて銀座駐屯地へ突き進んだ。

森田の最終的な孤立と“前総理”への転落

公邸では森田がさらに電話を重ねるが、幹事長の岩原から「すでに嘉納支持を決めた。あなたを支持する勢力は国内のどこにもいない。前総理」と告げられる。森田は受話器を投げ捨て、頭を抱えて崩れ落ちた。

09

乱入の余波と伊丹の戦線離脱

伊丹はドーム内で転落した直後、栗林のつま先が股間に直撃した痛みで瓦礫の上をのたうち回った。富田・栗林・テュカは周囲の状況より伊丹の救護を優先し、各国工作員が銃口を突きつけ合っていた緊迫は、突発的な乱入によって一時的に霧散した。栗林が責任回避の言い訳をすると、テュカが激怒し、伊丹が「使えなくなったら困る」と言い争いに発展した一方、富田は伊丹の腰を叩いて「落とせ」と苦悶を促した。

レレイ奪還と形勢逆転の宣言

狭間が最初に我に返り、状況把握に動く。レレイを抱えていた鈴は吹き飛ばされて気絶し、ウォルフらに拘束される。レレイはアルヌス側に奪還され、料理長が確保した。狭間は劉とジェイキンズに対し、レレイが日本側へ戻ったことで形勢が逆転したと告げる。

中米の対立と中国側の降伏判断

ジェイキンズは劉を牽制しつつ降伏を迫り、米側は「同盟国として外交交渉で引き渡し要求をする」立場を示した。劉は、同時に米工作員と自衛隊を相手に勝てないこと、人質を失ったこと、戦車を含む自衛隊戦力に抗し得ないことを認め、銃を置いて投降姿勢に入る。ただし部下は「生きて捕らわれるわけにはいかない」と主張し、劉も「そのための用意」を確認する。

ディアボの暴走とロゥリィの“執政官”提案

ところが特地側で、料理長とディアボが逆にレレイへ包丁を突きつけ、ディアボが「誰でもいいから俺を皇帝にしろ」と叫んで混乱が再燃する。帝国を日本の属国にしてでも名を残したいという自己中心の告白に、パナシュは窘めるが失敗する。そこへロゥリィが現れ、ディアボに与えるのは「皇帝位」ではなく、アルヌスの住民意思を汲む傀儡として政務を担う“機会”だと提示する。任期は四年ごとの更新制で、失敗すればハルバートで脅す形の強制力も示した。実務の方法はレレイの計画が鍵になるとし、ディアボはパナシュの後押しも受けて、将来の足がかりとして受諾を決断する。

菜々美の潜入取材と“武装勢力”の可視化

菜々美はカメラマン砂川を連れ、占拠された銀座駐屯地へ潜入して取材を進める。国際NGO側が占拠後の方針を持たず、運営部も曖昧で霧散しそうだと見抜いた菜々美は、核心はドームにあると判断して接近する。ドーム内の動きがテレビ中継に載ることで、視聴者の目に「武装勢力」と「自衛隊」の戦闘が明確に映る土台が整う。

中国側の撤退工作とドーム内戦闘の開始

狭間は劉に今後を問うが、劉はなおディアボに揺さぶりをかける。しかしディアボは、軍事力も持ち込めず門破壊まで試みた劉の言葉は信用できないと断じ、アルヌスの地方長官として現実的に生き残る道を選ぶ。追い詰められた劉は呉少校と確認し、捕虜回避のための撤退を決断、攻撃手榴弾と発煙手榴弾を投下して戦闘を開始する。煙幕と銃撃は砂川の映像で鮮明に撮られ、菜々美は武器のアップも撮らせて「平和的デモのはずが、なぜ武器を持って撃ち合うのか」と強い口調で報じ、朝の時間帯に視聴者の眠気を吹き飛ばす映像となった。

「門」崩落の引き金と戦場の転換

銃撃下でテュカらは伊丹を安全地帯へ移動させようとするが、跳弾や破片がかすめる。さらに弾丸が半壊状態の「門」を深く抉り、要となっていた石が落下したことで、構造的に崩壊が連鎖する危険が決定的になる。ここで場面は特地のフォルマル伯爵家城館の戦闘へ移り、ハリョ族の戦士が深奥部へ突入、私兵と戦闘メイドが死闘で阻止する構図が描かれる。

伯爵家城館の死闘とシャンディーの限界

館内は血みどろの乱戦となり、最後の門番たる戦闘メイドのシャンディーは、俊敏で合理的な剣筋で敵を倒し続けるが、仲間のスィッセスは相打ちで倒れ、シャンディー自身も多数の負傷と疲弊で限界に近づく。毒の疑いもある傷を応急処置しながら、なお接近する気配に泣きたい心を抑え、形式美として誰何を繰り返す。暗がりから現れたのは初老の男と女で、女はノッラであった。シャンディーは勝ち目を見出せず、「もうだめかな」と現実を噛み締めるところで区切られる。

古田の潜入とボルホスの黙認

古田はテューレの手を取り、ゾルザル軍の陣から脱出した。ボルホスは古田の正体が「補助兵ではなく料理人」であり、テューレを連れ出す目的で荷物に紛れ込んだことを見抜きつつ、最初から員数外の補助兵が消える程度では問題にならないとして見逃した。ボルホスはテューレの反応から、彼女が古田に特別な感情を抱いていると断じ、朴念仁な古田に呆れながらも逃走を促した。

救援ヘリ到達とデリラの襲撃

古田は地図とコンパスで進路を割り出し、アルヌス帰還のための救援地点へテューレを導いた。森を抜けた先にUH-1Jが待機しており、柳田らが合流する。機内には帝国の「日本派遣大使」とされる少女が先乗りしていた。搭乗直前、ヴォーリアバニーのデリラがテューレに飛びかかり、左肩に刃を突き立てて「裏切り者」を糾弾する。柳田は兎耳を掴んで強制的に沈黙させ、捨て置くと脅して従わせた。

古田の処置とテューレの拒絶演技

古田はテューレにモルヒネを投与し、刃は抜くなと指示して搭乗させようとする。しかしテューレは「行かない」と拒み、古田を突き放すように冷笑して侮辱し、柳田に古田の制止を示唆する目配せを送った。柳田は誤解なく受け取り、部下に古田を押さえさせた上で離陸を指示する。ヘリが上昇する中、古田は「置いていくな」と叫び続ける。

テューレの“最高の幸福”と逆走の決意

テューレは、古田についていけば幸せになれるという確信に到達し、古田の夢(店を開き、共に暮らす未来)を具体的に思い描いて幸福の極致に達する。だが同時に「やり残したこと」を果たすため、別の結末を確かめる決意を固める。テューレは左肩の刃を自ら引き抜き、恨みの刃を握ってゾルザルの元へ走り戻った。

イタリカ野戦の危機と白薔薇隊の帰還

一方イタリカ前面では、ヴィフィータの行方不明が報じられ、ピニャ陣営は動揺する。援軍(自衛隊・正統政府軍主力)を待つ計画で野戦に応じていたが、到着が遅れ、混戦から抜けた敵騎兵・ケンタウロス混成が本陣へ迫る。グレイ・コ・アルドは長槍で突撃を受け止め、死骸の山を背にして持ちこたえるが戦線は消耗し続ける。そこへ千切れかけた白薔薇旗を掲げたヴィフィータ隊が戻り、続いてボーゼスの黄薔薇隊も帰還して本陣を救う。ただし彼女らの離脱により最前線の支えが失われ、戦線は崩壊へ傾く。

ゾルザルの総突撃と“地揺れ”の介入

ヘルムは戦線崩壊を見て勝利を確信し、ゾルザルに総突撃を促す。ゾルザルは興奮の極みにありながら冷静に見える号令で全軍突撃を命じ、勝利の陶酔に浸る。だが直後、閃光のような暗転、突風と砂嵐、そして大地震(震度五弱相当)が襲来し、突撃は恐怖と混乱に転化する。地震と砂嵐はアルヌスへ向かう自衛隊戦闘団にも及び、加茂は全軍停止と周囲警戒を命じ、揺れの収束後も不穏な黒雲の渦をアルヌス方向に認める。

アルヌスの歪みと多世界接続の顕在化

アルヌス丘頂では「門」崩壊を契機に空が塗りつぶされ、紅黒紫が渦巻く暗黒の太陽が出現し、床は漏斗状に落ち込んで深い穴を開けた。呉少校やジェイキンズは撃ち合いを止め、レレイは無表情に異常事態を告げる。カトー老師は黒い太陽の周囲に六芒星の魔方陣を見出し、狭間はそれが魔方陣ではなく「アルヌス防御陣地の鏡像」であると推測する。レレイは「門」以外の要因で多数の世界が絡み合い、一気に複数の通路が開いた可能性を示す。

好奇心の破滅と蟲獣の侵入

ジェイキンズと劉は多世界接続を「人類への祝福」と捉え、原住民は武力で排せると主張する。劉が深淵を覗き込むと硬直・痙攣して倒れ、直後に無数の触手が出現して部下を絡め取り、引きずり込む。さらに深淵から人間大の蟲獣が溢れ出し、工作員を襲撃して拡大する。ロゥリィすら血相を変え、テュカの矢、富田と栗林のPDW、伊丹の散弾銃が防戦するが、数と一部の装甲で押し切られかける。七四式戦車の主砲は効果はあるが効率が悪く、外壁損傷の懸念で多用できない。

レレイの封鎖と魔方陣破壊任務の確定

レレイは呪文で銀座(伊丹の故郷側)への通路を押し広げ、床を平坦に戻し、黒い太陽を消し去って、瓦礫の「門」跡に無色透明の“水たまりの壁”のような通路を顕現させる。流入が止まった蟲獣は火力で削られ、状況は沈静化へ向かう。レレイは他世界への通路を押し潰し、蟲獣侵入を止めたうえで「今のうちに魔方陣を」と急かす。ロゥリィも「魔方陣破壊しかない」と断じ、カトー老師は緻密な魔方陣は一部破壊で機能を失うため、城壁や壕に相当する構造を崩すべきだと述べる。

伊丹と富田の出発、栗林の帰還、そして“脱兎”

狭間は伊丹に「必要と思われる行動を許可する」とし、魔方陣破壊のため銀座側へ向かう任を伊丹に負わせる形になる。伊丹は栗林の同行を退け、富田を伴って走り出す。富田は栗林に「日本に帰れ」と告げ、自身はボーゼスに決めたと明言する。伊丹はヤオに住民と傭兵の指揮を託し、テュカの“死亡フラグ移し”の意図を聞いて舌打ちしつつ、終わったら紅茶とケーキの約束を叫んで区切りを付ける。

政府命令書と残留編成、蟲獣迎撃態勢

狭間は「脱兎」を発令し、隊員はレレイの通路を越えて銀座へ退去する。栗林は嘉納大臣預かりの茶封筒を狭間に渡し、防衛大臣命令書などから政府との連絡回復を確認する。狭間は命令に従う姿勢を示しつつ、総員退去命令を一部変更して残留希望者を残す方針へ転じる。通路は一方通行であり、改めて蟲獣侵入を防ぐ防御態勢(ドーム内外)を整えるよう命じ、残留部隊は伊丹の魔方陣破壊まで持久する段取りが確定する。

10

撤収開始と残留部隊の編成

アルヌス残留部隊の過半が「門」を渡り終えた段階で、各地派遣部隊も帰還し、特地派遣部隊の撤収が本格化した。狭間は銀座への退去を継続させつつ、負傷者搬送と重要物資輸送以外の目的では車両・武器弾薬を可能な限り置いていくよう命じ、輸送能力を負傷者優先へ振り向けた。同時に狭間は残留希望者を組織し、アルヌス住民と協同で土嚢積みと鉄条網敷設を進め、レレイが力尽きて再び蟲獣が溢れ出す事態に備えた。

第三偵察隊の帰還と栗林の居残り

負傷した檜垣を担架で搬送する桑原陸曹長ら第三偵察隊は帰還列に加わり、陣地構築中の栗林を目撃する。栗林は「帰っても面白くない」「もう少し暴れる」として残留を選び、階級が下の隊員を臨時の部下に集めて鉄条網設置を指揮した。狭間は蛇腹鉄条網を三重にするよう求め、ドーム壁だけに依存せず多層の遅滞策を取る意図を示し、私服の栗林には装備を整えるよう命じた。

狭間の指揮官観と幹部の退去

狭間を補佐していた幹部達は大量の荷物を抱えて退去準備に入り、狭間自身の帰還を促す。しかし狭間は「進む時は先頭、退く時は最後尾」という指揮官の責務を理由に残留を選び、家族の心配は少ないとして部下達に後始末を託して送り出した。幹部達は敬礼して「門」の向こうへ消えた。

ヘリの帰投と古田の残留希望の否定

柳田・古田らを乗せたヘリはアルヌスへ急行し、航空無線では残留希望者の募集が続いていた。拘束状態の古田は口頭で残留を希望するが、シェリーは「それはテューレが望んだことか」と問い、古田には日本に戻って夢を叶えるべきだと説く。デリラも介入しつつ、最終的に「テューレは古田の夢の成就を自分の幸せと感じた」とシェリーは断言する。古田は納得できず反発するが、デリラは「絶望の中に長くいると、幸せの可能性を確信しただけで満足してしまう」「扉を開けるのが怖く、想像の幸福に留まる方が楽だ」という心理を語り、テューレの選択の哀しさを示した。

時間切迫による強行突入と銀座での墜落停止

帰還が間に合わなくなる切迫状況のため、柳田は着陸せずそのまま「門」を突っ切る強行策を指示する。ヘリは地面を擦る低高度で突入し、周囲の人員が伏せて避ける中、強行突入に成功して白濁世界を抜け、銀座側へ出た。直後に帰還隊列への衝突を避けるため高度を上げるが天井に接触しかけ、急降下の後、ドーム外で機体を擦り、ローターを破損させつつ滑走した。銀座周辺の交通が途絶していたため大惨事を免れ、ヘリはウェディングドレスのショーウィンドウに鼻先を突っ込む形で停止する。機動隊と消防が駆け寄り消火液を浴びせる中、柳田ら搭乗者は生存を確認し、古田・デリラ・シェリー・部下・操縦士も含め全員が無事であることが確かめられた。

レレイの限界と「門」の急縮小

レレイは数時間にわたり「門」を開き続け、汗を滝のように流しながら限界へ追い込まれていた。柳田のヘリを通すため一瞬だけ「門」を拡大したことが決定的な消耗となり、その後「門」は急速に縮小して、隊員が頭を下げ一列でしか通れない大きさへ変わった。狭間は残り時間が十分程度と聞かされ、全員が渡り切れないと判断して「どうしても帰る理由がある者以外は列から離れろ」と命じ、家族事情などを抱える者を優先して押し出した。さらに「門」は土管ほどの穴にまで狭まり、荷物を抱えては通れなくなったため、隊員達は装備を投げ捨て、匍匐前進や向こう側からの引き上げで突破を続けた。

気絶と閉鎖、戦闘配置への移行

声援の中でレレイは踏みとどまるが、ついに気を失って倒れ、「門」は閉じた。最後に抜けようとした隊員の戦闘靴の爪先だけが切断されて残り、負傷が致命傷になっていないことに皆が安堵する。直後、天井に黒い太陽が現れ、床が落ち窪み世界が歪み始める。狭間はドーム扉を閉鎖し、全員を配置につかせ、蟲獣襲来に備えた。帰還したのが家族持ち中心だったため、残留側は若手が多く、幹部も単身者の初級幹部が中心となる。狭間は残存戦力を概算で四〜五千と把握し、部隊を編成し直してドーム外にも配備し、傭兵も接近戦要員として共同防衛に組み込む方針を示した。

ドーム内外での同時多発戦闘と連携

ロゥリィと栗林は完全装備で並び立ち、巨大な蟲獣を迎撃する。ロゥリィは脚肢の刺突を紙一重で躱しつつハルバートで圧倒し、狭間の号令で重機関銃や戦車砲が援護して蟲の甲羅を穿った。さらにカマキリ型蟲獣との駆け引きでは、相手のタイミングずらしに対し回転加速で鎌を断ち切るが、乱入で左腕を損傷し、片腕戦術へ即座に切り替える。ところが台所の害虫型に似た蟲獣の出現でロゥリィと栗林は生理的嫌悪に崩れ、そこをテュカが火矢と精霊魔法で焼き払って立て直す。ヤオの号令で傭兵が盾列を作り、隙間から自衛官が銃火を浴びせ、テュカの雷撃が小型蟲獣を焼き焦がして局地を支えた。

伊丹側の爆薬作業とダーとの近接決着

狭間は無線で伊丹へ状況を問い、爆薬設置の進捗を確認するが、深淵から象サイズの蟲獣が出現し、通信は途絶して支援要請が届かない。伊丹は壁面で爆薬ケーブルをまとめる富田を待たせたまま、道具のある位置を塞ぐ怪異ダーと対峙する。散弾銃は鳥撃ち用散弾で威力不足であり、伊丹は至近距離まで引き寄せる危険策を選ぶ。さらにロゥリィが伊丹の傷を肩代わりする「追伸」の文面が伊丹の皮膚に浮かび、伊丹は死ねない状況で戦う羽目になる。ダーの一撃で胸を切り裂かれた直後、伊丹は喉奥へ銃口を突き立てゼロ距離射撃で頸椎と延髄へ致命傷を与え、ダーを割れ目へ蹴落として排除し、富田に発破母線を下ろして結線作業を前進させた。

防衛線の崩壊寸前と外部増援による反転

ドーム内は蟲の増殖で飽和し、鉄条網は外骨格に効かず、傭兵の盾も尖脚で貫かれて被害が続出する。隊員も針刺しで倒れる者が出て、方陣は縮小し、蟲獣は外壁を削岩機のように穿って外界へ流出を始める。外では火炎放射で穴からの流出を焼くが、蟲が炎をまとって隊員に張り付き、逆に隊員が焼かれる事態も起きる。ロゥリィは流出阻止に動くが、伊丹の負傷の影響か胸から出血して戦線を支え切れない。そこへ第四戦闘団のヘリが到着し、溢れ出た蟲へ銃撃を浴びせて掃討を開始する。さらにジゼルが膨大な翼竜群を率いて急降下させ、蟲獣を捕食して急速に数を減らし、翼竜はドーム内にも侵入して形勢を逆転させた。

点火直前の救護混乱と決行

狭間は無線で「十秒後に点火」と受け取り、衝撃に備えて退避を命じる。テュカは倒れたヤオを引きずって退避させる最中、ヤオの鎧から砕けた五百円玉がこぼれ、ヤオはそれが護符として身を守ったと説明するが、テュカが胸を叩いた拍子に心臓震盪で再び意識を失い、衛生科が心臓マッサージと蘇生準備に入る。伊丹と富田は安全距離でカウントに合わせて点火栓を握り、軽口を交わしながらも「ゼロ」で伊丹が点火栓をひねり、最終手段の発動へ踏み切った。

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「門」消失の比喩と歪みエネルギーの解放

2本のゴム紐を限界まで引き伸ばし、細い糸で固定しておいて糸を切ると、溜め込まれていた張力が一気に解放される。同様に「門」の消失は、二つの世界の間に溜まっていた歪みエネルギーを瞬間的に解放する現象であり、その結果として地震が発生した。

世界全体を均質に揺らす特殊地震

この地震は通常の地震のように震源からの距離で減衰せず、世界規模でほぼ均質に揺れた。震度は日本基準で5強、マグニチュードは計測不能とされ、被害程度で等級化するのが不適切な性質の揺れであった。地震が稀な地域ほど建物が耐震的に弱く、日本人なら「驚いた」程度の揺れでも、家屋倒壊など大規模被害につながった。

イタリカ戦線での戦意崩壊と「災害の恐怖」

フォルマル伯爵領イタリカでは二度の地揺れが、交戦中の兵士達の戦意に深刻な打撃を与えた。敵への恐怖は打倒で乗り越え得るが、自然災害は人力で制御できず、個々の勇気では克服しにくい。そのため兵士達は戦いに集中できなくなり、戦意は急冷し、疲労や苦痛が意識に浮上して、負傷者を支えつつ陣営へ戻り始めた。

ピニャの「将帥の態度」と士気の再点火

ピニャの周囲にも味方が戻り、ヴィフィータは弱気を漏らすが、ピニャは馬上で軍旗を掲げ「この程度の地揺れは恐れるに足らぬ」と強く叱咤して士気を支えた。内心では恐怖で震え、逃げ出したいほど竦んでいたが、かつて帝都の地揺れで伊丹が動揺せず笑っていた姿を思い出し、それこそが将帥の取るべき態度だと学んでいた。自分が兵士に安心を与える番だと歯を食いしばり、恐怖で引きつる表情を無理に整えて持ちこたえた。

ゾルザルの強圧と将軍達の進言、降伏勧告への転換

一方ゾルザルは怒鳴り散らして戦えと強要し、ヘルムやミュドラは「今は休息を取らせるべき」と進言するが聞き入れない。焦りと勝利への渇望が、恐怖から目を逸らして決戦へ彼を駆り立てていた。そこでカラスタが「ピニャへ降伏勧告を出せ」と提案し、兵士の動揺が強い今こそ心理的に応じる可能性があると説く。ゾルザルは納得し、ヘルムを使者に立て、他の将軍には陣容の立て直しを命じた。

ヘルムの交渉失敗とピニャの戦略的拒絶

ヘルムはピニャ軍が恐怖で崩れていると予想したが、実際には必死の覚悟と戦意で満ちており、ピニャの統率に圧倒される。ヘルムは功績を称えつつ降伏を勧告するが、ピニャは「共に天を戴くつもりはない」と拒絶し、部下を助けたいからこそ退けないと主張する。ここで兄を逃せば再び乱が起き、その都度犠牲が増え、さらにゾルザル政権はニホンとの戦争を継続して民も兵も死地へ送る、とピニャは見通していた。ヘルムは完全には反論できず、交渉は空振りに終わる。

ゾルザル軍の「準備完了」の内実と強制前進

ヘルムが戻ると、ゾルザルはピニャが動揺で冷静さを失っていると決めつけ、決戦を命じる。兵士達は青い顔で人形のように無表情で整列していたが、その理由はアブサンに命じた苛烈な取り締まりで、戦意がないと見なした者を処刑させていたためだった。帝権擁護委員の暴力で兵は凍りつき、ヘルムはこれ以上の処刑を止めるためにも前進命令を出すしかない心理に追い込まれ、ゾルザル軍はマスゲームのような正確さで密集隊形のまま進撃を開始した。

航空攻撃での壊滅とピニャの突撃命令

ピニャが前進命令を発しようとした瞬間、二機のF-4ファントムが頭上を裂き、ナパーム弾の劫火が密集したゾルザル軍を押し潰した。回避の余裕がない隊形のため、兵は炎熱に覆われた時点で事実上即死し、戦場は衝撃波と爆音で凍り付く。続いてヘリの大編隊が接近し、ドアガン射撃がゾルザル軍を掃討する。ピニャは正気を保ち「いまだ、全軍突撃。兄を逃すな」と命じ、味方は茫然自失の敵へ一斉に襲いかかった。

追撃態勢の形成と救援の合流

デュランは着陸したヘリから降り、主を失った馬を集めて即席騎馬隊を編成するよう命じる。ピニャもボーゼスとヴィフィータに追撃を指示し、逃走する敵集団の中から最大勢力を選んで追う。追撃中、UH-1Jが低空で併走し、ヴィフィータは健軍を見つけて手を振る。ボーゼスはヘリの中に父の姿を認め、救援の到来を確信した。

寝所に迫る剣戟と侵入者の正体

地揺れで室内が崩れた皇帝の寝所では、皇帝・内相マルクス・メイド長が、扉外の剣戟の行方が自分達の運命を決めると緊張して待ち構えていた。扉が開くと、侵入してきたのは初老の男と女の二人で、無造作に距離を詰める。迎撃に出たアウレアは、ジヴォージョニーの女に首を刎ねられて倒れ、戸口にはシャンディーも倒れていた。メイド長はミュイを庇い、侵入者に名乗れと迫る。

ハリョ族の使命と皇帝暗殺命令

侵入者はハリョ族の戦士と名乗り、ゾルザルからの命令として「皇帝をゾルザルの下へ連行」することを告げる。しかし皇帝は寝台から動けないと拒否し、次の用件として「皇帝の命を頂戴する」と暗殺を宣言する。マルクス伯が短刀で割って入るが、ハリョ側は決闘などせず卑怯かつ効果的に仕留めると公言し、抵抗しないなら子供は害さないと牽制した。

薬物による制圧とマルクスの失速

ハリョ男は手袋を払って白い粉を舞わせ、これが埃ではなく特殊薬物だと説明する。吸えば思考が鈍り、配合次第で暗示にかかりやすくなり、幻覚や麻痺・行動不能も起こるという。マルクス伯は脂汗を流して平衡を失い、膝をつくまでに追い込まれ、寝所側は一気に劣勢へ傾く。

菅原の銃撃とアウレアの逆転

ノッラが踏み出した瞬間、菅原が拳銃で撃ち倒して進行を止める。さらに初老の男が拳銃に意識を奪われた刹那、天井からメデュサの頭部が降りかかり、アウレアの触手髪が男を絡め取って吸精する。男は急速に干からび、養分を得たアウレアの肢体が十三~四歳ほどまで成長する。皇帝は男の悶える声を不快と断じ、メイド長はアウレアに「手早く片付けろ」と指示して処理を完了させた。

成長後のアウレアと皇帝の褒美

急成長したアウレアは「育ッタ」と呟き、ミュイは羨望から「ずるい」と漏らす。羞恥心が薄いアウレアは裸のままでいようとし、服が合わないため倒れた女の服を剥ごうとするが、皇帝は自分のガウンを褒美として手ずから与え、周囲に裸体を見せるのは惜しいと語る。

別室での死闘と倉田隊の救援

同じ館内ではハリョ戦士ウクシがバスタードソードで戦闘メイドのペルシアを追い詰めていた。ペルシアはかすり傷を負いながらも短刀一本で受け止め続け、刃こぼれはウクシ側に出る。ウクシは体重をかけて押し潰し、刃が喉元に食い込む寸前まで迫るが、発砲音と共にウクシの頭部が炸裂し即死する。駆けつけた倉田がペルシアを抱き起こし無事を確認し、ペルシアは生存を喜び、倉田は抱き潰す勢いで抱擁した。

ヘルムの敗北と捕縛

鉄のトンボ――ヘリコプターの空輸により戦況は決定的となり、ヘルムは混乱する兵を掌握して退却を図ろうとした。しかし本陣は既に崩壊し、ゾルザルの姿も消えていた。そこへ亜人部族兵とエルベ藩王国のデュラン率いる軍勢が現れ、包囲される。ヘルムは最後までピニャの名を叫び抵抗するも、多勢に無勢で取り押さえられ、失神した。ピニャとデュランは合流し、勝利を確認した。

敗走するゾルザル軍

一方、森を退くゾルザルは敗因を他者に転嫁し、兵士達の無言の視線に追い詰められていた。動揺と劣等感から部下に当たり散らす姿に、兵士達の心は離れていく。百人隊長ボルホスの指示で敗残兵は進軍を続けるが、そこへ姿を現したのがテューレであった。

テューレの帰還と毒

ゾルザルは再会を喜び、敗北の責任をヘルムや部下に押し付ける。テューレは甘言をもって彼を包み込み、敗戦の原因は自分を側に置かなかったこと、そして無能な側近にあると示唆する。精神的に依存していたゾルザルはその言葉を無批判に受け入れ、ボウロとアブサンに責任を負わせ処刑を命じた。兵士達は命令に従い二人を殺害するが、同時に旗と兜を捨てて去り、ゾルザルの元を離れていった。

復讐の成就

二人きりとなったゾルザルは、なおもテューレに縋り再起を語る。だがテューレの復讐は終わっていなかった。口づけの直後、デリラのナイフがゾルザルの腹部を貫く。致命傷を負ったゾルザルは彼女を道連れにしようと首を締め上げる。抵抗叶わぬ中、テューレは一瞬、料理人フルタと過ごす穏やかな未来を幻視するが、やがて息絶えた。

全てを失った皇太子

テューレの亡骸を前に、ゾルザルは自らの人生の意味を問いながら倒れる。忠臣も軍も愛した女も失い、彼の周囲には何も残されていなかった。帝国の内紛は、かくして破滅的な結末へと収束していったのである。

ゾルザル軍殲滅と戦後の現実

健軍から「ゾルザル軍殲滅」の報告が入り、狭間と隊員達は勝利を喜んだ。だが狭間は、崩落したドームと負傷者の搬送、荒廃したアルヌスの街を見て、ここからが本当の難局だと理解していた。住民達は瓦礫の前で呆然と立ち尽くし、住処も食料も仕事も一瞬で失い、未来を見失っていた。

ディアボの現実論と、伊丹の「希望」の言葉

ディアボは被害確認、調査、会議、予算捻出といった現実的な手順を列挙するが、それは傷ついた住民に「途方もないハードル」だけを突き付けた。そこへ伊丹と富田が現れ、伊丹は軽い調子で「なんとかなる」「手伝ってくれ」と言い、まずは瓦礫整理と仮の住居確保、食料の掘り起こしから始めようと提案する。その言葉が住民の表情を和らげ、彼らは作業へ動き出した。

「門」再開通の目印と、レレイの沈黙

伊丹は、再び「門」を開く際に必要な“向こう側の目印設置”がいつ行われたのかを確認する。ロゥリィとテュカには記憶がなく、視線は必然的にレレイへ集まる。しかしレレイは伊丹に顔を埋めたまま答えず、焦りを示すような様子だけが描かれた。再開通に重要な手順が欠落している可能性が、ここで強く示唆された。

四年後の日本:ネット報道と「門」再開通不在

四年後、ネット放送局のニュースキャスターとなった栗林菜々美が、長倉総理の訪米や基地問題などを淡々と報じる。番組は視聴者コメントとソース提示を併走させ、偏りがあれば即座に訂正される形式で信頼を得ていた。特集では「門」再開通が四年間起きていない現状が扱われ、再開通には双方に“目印となる単結晶”設置が必要だったが、閉鎖時の混乱で実行できなかったという学説がコメントとして流れる。菜々美は東大教授陣、望月紀子、そして駐日帝国大使シェリー伯爵夫人を招き、証言と情報から今後の可能性を検証すると宣言する。

古田の店に集う元関係者達の現在

場面は小さな店へ移り、戸津、勝本、桑原、柳田らが満員の店内でニュースを眺めながら近況を語り合う。勝本の告白と玉砕が揶揄され、デリラは店の仕事に手慣れ、アルヌスでの経験が今の生活に繋がっていることが示される。そこへ仁科が北海道土産を抱えて来店し、皆で迎え入れる。散り散りになった仲間の消息も語られ、最後は舟盛りが置かれて歓声が上がり、失われたものの大きさと、それでも続いていく日常が対比されて締められた。

政界の緊張と「門」消失が残した国際不信

政界引退後の嘉納は、保守党党首となった夏目の公用車に同乗し、過剰な警護を揶揄する。夏目は、長倉総理の支持率急落と解散総選挙の近さで警察が神経質になっていると説明し、嘉納には「約束を果たす」ため銀座へ向かうと告げた。
一方で「門」消失の瞬間、日本も震度五規模の揺れに見舞われたが、日本の被害が軽微だったことが逆に国際社会の疑念を招き、「門は危険」「歪みが蓄積する」という認識が広がった。結果として国連の場でも、中露が「再開通時は共同管理」を要求するなど政治問題化している。

銀座駐屯地のドームと“目印”の金剛石

銀座では、危険な蟲獣侵入に備えて強化されたドームに入る。内部には、半分に割れた金剛石の片割れがガラスケースで保管されており、嘉納はそれが伊丹が日本側へ送った“目印”だと確認する。夏目は「単一元素の純粋結晶なら目印になるはず」とし、あとは彼らの帰還を待つだけだと述べる(ただし後見人のレンタル料が高いという実務的な問題も示される)。

秋葉原の“マンガ文化施設”と同人誌即売会

次に二人は秋葉原の新施設へ向かう。そこは国立国会図書館の分館扱いで、同人誌のアーカイブに加え、アニメ映像、セル画、脚本なども収蔵するマンガ文化の博物館であった。落成記念として建物内で同人誌即売会が開催され、徹夜組や搬入作業で現場は熱気に満ちていた。夏目は場の空気に圧倒され、うっかり過激な内容の薄い本をめくって凍り付く一幕も挟まれる。

伊丹“帰還”の発覚と、場違いな一行

会場の売り子が嘉納と夏目を「太郎閣下」「夏目閣下」と認識し、伊丹耀司の知人だと見抜く。売り子は「伊丹はいる」と断言し、梨紗が“帰ってきたなら連絡しろ”と激怒した話まで持ち出す。
やがて嘉納は伊丹本人を視認する。伊丹は黒ゴス、エルフ、ダークエルフ、杖を持つ銀髪少女、紅髪の姫などを連れ、即売会場に紛れ込んでいた。

再接続の理由:情念と「アキバに行きたい」

伊丹は、世界を見つける方法を試すうちに「記憶」「一念」「情念」のようなものが使えると分かり、結果として“ここ”に開いてしまったと説明する。特に「アキバに行きたい」「同人誌即売会に行きたい」という欲求が条件を満たし、この日時・場所に繋がったのではないか、と弁明する。さらに、ここが元の世界に似た“別の世界”の可能性もあるため、偵察していたと主張する。
夏目は四年がかりの準備と予算が無意味になる可能性に頭を抱え、嘉納は伊丹が全く変わっていないことに安堵しつつ呆れる。

結び:彼らの戦いの記録は終わるが、平和は続かない

この出来事をもって、特地での戦いの物語は一つの区切りを迎える。しかし戦いが終わったわけではなく、平和は次の嵐までの一時のものに過ぎないという認識が示される。そして記録の末尾は「自衛隊は、彼の地にて、斯くのごとく戦った」と締めくくられる。

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本編

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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