ゲート0 -zero- 〈前編〉レビュー
ゲート 自衛隊 全巻まとめ
ゲート 自衛隊 〈1〉接触編〈上〉レビュー
物語の概要
累計650万部を超える大ヒット異世界×自衛隊ファンタジー『ゲート』シリーズの原点となる「銀座事件」を描いた前日譚の後編である。 東京・銀座に突如現れた「門(ゲート)」から異世界の軍勢が侵攻し、殺戮と略奪が繰り広げられた未曾有の事態に対し、日本政府と治安組織がいかに立ち向かったかを描く。 後編では、事件発生2日目以降の混迷する政治的駆け引き、皇居における警視庁機動隊の決死の防衛戦、そしてついに発令された「治安出動」による自衛隊の圧倒的な反攻作戦が、ドキュメンタリータッチかつ多角的な視点で詳細に描かれる。
主要キャラクター
- 伊丹耀司(いたみ ようじ)
本作の主人公的存在であり、オタク趣味を持つ陸上自衛官。非番中に銀座事件に巻き込まれ、皇居での避難民誘導や防衛戦で活躍する。後編では、敵中枢に取り残された女性警官らを救出するため、単身で敵拠点へ潜入するなどの英雄的行動を見せる。 - 嘉納太郎(かのう たろう)
防衛大臣。未曾有の危機に対し、法と政治の狭間で苦悩しながらも、事態収拾のために奔走する。決断を下せない総理代行・風松を追い落とし、自衛隊出動への道筋をつけるため、老獪な政治的駆け引きを展開する。 - 北条(ほうじょう)
風松の後任として就任した総理臨時代理。嘉納らの説得に応じ、政治生命を懸けて自衛隊への「治安出動」を命じる決断を下す。 - 沖田聡子(おきた さとこ)
警視庁の女性警察官。内閣危機管理室の密命を帯びて敵拠点に潜入するが捕虜となる。伊丹に救出され、彼に淡い恋心を抱くことになる。 - レルヌム
異世界帝国軍の将軍。銀座侵攻軍の最高指揮官。当初は日本側の戦力を侮っていたが、自衛隊の圧倒的な火力を目の当たりにし、撤退と再侵攻を画策する。
物語の特徴
本作の最大の特徴は、異世界ファンタジーでありながら、徹底したリアリズムで描かれる「国家の危機管理シミュレーション」としての側面である。 「総理不在」「法的制約」といった民主国家特有の足枷により、目の前で国民が犠牲になりながらも軍を動かせない政治の「重さ」と「遅さ」が克明に描かれる。それとは対照的に、一度出動命令が下された後の自衛隊の圧倒的な展開力と火力によるカタルシス、そして敵軍を一方的に蹂躙する「現代兵器の恐怖」が読者に強烈な印象を与える。 また、警察、自衛隊、政治家、マスコミ、市民、そして敵軍兵士と、多岐にわたる視点から「戦争」を描き出している点も魅力である。
書籍情報
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり〈後編〉
著者:柳内たくみ 氏
装丁・本文イラスト:Daisuke Izuka 氏
出版社:アルファポリス
発売日:2022年8月31日
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あらすじ・内容
「ゲート」シリーズ始まりの物語『銀座事件』編、堂々完結!
20XX年、8月某日――東京銀座に突如現れた『門(ゲート)』。中からなだれ込んできた怪異や武装勢力により、銀座はたちまち血の海と化してしまった。 事件発生から5日、警視庁、警察庁は総力を挙げて奮戦するものの、敵武装兵力の攻撃は苛烈さを増していく。そんな中、嘉納防衛大臣の暗闘が実を結び、ついに自衛隊に「治安出動」が発令される。銀座制圧に向け動き出した陸上自衛隊。そしてオタク自衛官伊丹耀司も、囚われた女性警官救出のため、武装勢力の中枢へと侵入する――! シリーズ始まりの物語『銀座編』、堂々完結!
感想
前編で描かれたのは、異世界からの侵攻を無防備に受けてしまった日本の姿だった。総理大臣は不運にも巻き込まれて命を落とし、現場確認に赴いた警視総監たちも飛竜の攻撃で墜落死した。主人公の自衛官・伊丹と警察官・沖田は、多くの犠牲の下で安全圏まで逃げ延びる。 この後編で描かれるのは、そこから続く意思決定の停滞がもたらした「地獄」である。
現場ではゴブリンや獣人による殺戮が続き、民間人の犠牲が増え続けているにもかかわらず、国家の中枢機能は停止していた。総理大臣の不在、そして総理代行・風松が自衛隊の出動命令を頑なに拒否し続けたことで、事態は悪化の一途をたどるばかりだ。読んでいて、この遅々として進まない状況にやるせなさを覚えざるを得ない。
こうした状況下で、防衛大臣の嘉納は、日本経済への影響や治安維持、政治的配慮、さらには公安との裏取引まで抱え込み、孤軍奮闘を強いられていた。彼の苦悩、そして同情せざるを得ない立場は、あまりに過酷だ。現実の政治家であれば、おそらく職務を放棄して逃亡していただろうと思わせるほどである。 その嘉納が風松というブレーキ役を排除するため、林原のスキャンダルという政治カードを切るまでの過程は、民主主義国家における意思決定の重さと遅さをまざまざと見せつけた。
一方、現場では機動隊が圧倒的な数的不利と疲労の中で防衛線を維持しようと必死だった。帝国軍が民間人の遺体を堀に投げ込んで侵入路を作るという、非人道的な戦術をとる中、機動隊の防衛線は崩壊寸前まで追い込まれていた。 ここで印象的なのが、自衛官である伊丹が提案した「撤退して皇居内に敵を誘導し、車両を走らせて敵を轢き殺す」という合理的かつ残虐な作戦だ。これが却下される場面は、文明国としての自縛と倫理的な葛藤を象徴しているようで、深く考えさせられる。
マスコミの描き方もまた、強烈だった。彼らは時に「報道の自由」の名の下に自衛隊の足を引っ張り、悪意ある行動をとる邪魔者として描かれる。だが同時に、民主主義にとって不可欠な存在であることも否定できない。腹立たしいが、彼らがいなければ情報は伝わらない――作中でその功罪の側面がもう少し明示的に語られていれば、より深みが増したように思う。
事態が動いたのは、風松が失脚し、北条が総理代行に就任してからだ。治安出動命令が発令され、ようやく自衛隊が「本来の任務」を遂行し始める。攻撃ヘリ、戦車、空挺団が投入され、圧倒的な火力で帝国軍を蹂躙していく様は圧巻だ。しかし、そこに単純な爽快感はない。むしろ、ここに至るまでにどれだけの無駄な血が流れたかという事実が重くのしかかり、読後には静かな悲しみが残った。
結論として、この物語に安易なカタルシスはない。しかし、だからこそ説得力がある。国家が武力行使に踏み切るまでの遅さ、政治の重み、そして削られていく人命。攻撃に出るまでが長いのは当然だ。それが民主国家の戦争なのだという現実を、読者に突きつける作品であった。
ゲート0 -zero- 〈前編〉レビュー
ゲート 自衛隊 全巻まとめ
ゲート 自衛隊 〈1〉接触編〈上〉レビュー
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登場キャラクター
自衛隊・防衛省関係者
伊丹耀司
自衛隊の三等陸尉であり、コードネーム「アヴェンジャー」を持つレンジャー隊員である。非番中に銀座事件に巻き込まれ、皇居での避難誘導や防衛戦で活躍する一方、個人的な動機から単独行動も辞さない。
・所属組織、地位や役職 陸上自衛隊・三等陸尉。特殊作戦群。
・物語内での具体的な行動や成果 皇居外苑の戦いでは、機動隊の車両を用いた突撃作戦を立案・実行し、多くの隊員を救出した。また、地下迷宮を通って越久百貨店へ単身潜入し、人質となっていた沖田聡子と物部さおりを救出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 数々の功績を上げながらも、その行動が目立ちすぎたため、一時的に所属部隊から離れて現場待機を命じられた。
狭間
陸上自衛隊東部方面総監であり、銀座解放作戦の立案と指揮を統括する。政治的な制約やマスコミの批判を考慮しつつ、部隊を動かす冷静な指揮官である。
・所属組織、地位や役職 陸上自衛隊陸将・東部方面総監。
・物語内での具体的な行動や成果 政治的な制約の中で最善の作戦を立案し、各部隊を指揮して銀座を制圧した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 冷静沈着な指揮官として、警察や他省庁からも信頼を集めた。
潮崎
陸上自衛隊第七師団長であり、現場での豪快な指揮に定評がある。急遽編成された混成部隊を束ね上げ、強力なリーダーシップを発揮する。
・所属組織、地位や役職 陸上自衛隊陸将・第七師団長。
・物語内での具体的な行動や成果 寄せ集めの部隊である機動打撃戦闘団を統率し、首都高速からの砲撃で敵を圧倒した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 特になし。
竜崎
防衛省特殊作戦室長であり、伊丹の上司にあたる。無理難題を押し付けながらも、部下の行動をバックアップする姿勢を持つ。
・所属組織、地位や役職 防衛省特殊作戦室長。
・物語内での具体的な行動や成果 伊丹に沖田救出の密命を下し、後方支援を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 特になし。
中邑咲良(メイガス)
防衛省特殊作戦室のオペレーターであり、伊丹のサポートを担当する。無線を通じて的確な指示や励ましを送り、任務遂行を支える。
・所属組織、地位や役職 防衛省特殊作戦室・二等陸曹。
・物語内での具体的な行動や成果 伊丹の潜入作戦を遠隔支援し、的確な情報を提供した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 特になし。
野木原松葉
即応予備自衛官であり、災害派遣で招集された一般市民としての顔も持つ。現場では冷静な判断力を発揮し、正規隊員に劣らぬ活躍を見せる。
・所属組織、地位や役職 陸上自衛隊即応予備自衛官・陸士長。
・物語内での具体的な行動や成果 麻布での巡回中にゴブリンを撃退し、その後は機動打撃戦闘団の一員として戦車に随伴して銀座へ突入した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 現役復帰を打診された。
桑原惣一郎
陸上自衛隊の陸曹長であり、野木原と共に任務にあたるベテラン隊員である。若手を指導しつつ、現場での的確な状況判断を行う。
・所属組織、地位や役職 陸上自衛隊・陸曹長。
・物語内での具体的な行動や成果 避難誘導や戦闘において的確な判断を下し、部隊を牽引した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 特になし。
用賀
陸上自衛隊第二連隊の二等陸佐であり、独自の心理戦を画策する技術者肌の将校である。
・所属組織、地位や役職 陸上自衛隊第12旅団第2連隊・二等陸佐。
・物語内での具体的な行動や成果 ヘリコプターに巨大スピーカーを積み、ワーグナーの楽曲を大音量で流す計画を立てたが、機材が間に合わず上官に却下された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 作戦には参加できなかったが、後にその準備が役立つことが示唆された。
警察関係者
沖田聡子
警視庁の女性警察官であり、正義感が強く行動力がある。内閣危機管理室の密命で敵地に潜入するが捕虜となり、過酷な状況下でも人々の支えとなる。
・所属組織、地位や役職 警視庁築地警察署地域課・巡査。
・物語内での具体的な行動や成果 越久百貨店で捕虜のリーダー的存在となり、人々の健康管理や脱出準備を進めた。伊丹と共に屋上へ脱出する際、敵将ガレリーとの一騎打ちに勝利した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 事件後、内閣危機管理室指揮下の秘匿部門へ異動し、特殊任務に就くことになった。
佐伯三郎
警視庁SIT隊長であり、現場での実戦経験が豊富な指揮官である。伊丹の提案に理解を示し、柔軟な発想で事態に対処する。
・所属組織、地位や役職 警視庁捜査一課特殊犯捜査係(SIT)係長。
・物語内での具体的な行動や成果 伊丹の作戦に協力し、皇居外苑での戦闘や機動隊員の救出活動で中心的な役割を果たした。報道記者の金土を殴打したことで叱責を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 伊丹との信頼関係を深めた。
原田
警視庁第一機動隊長であり、皇居外苑の防衛指揮を執る。圧倒的な劣勢の中でも部下を鼓舞し、最後まで前線で戦い抜く責任感を持つ。
・所属組織、地位や役職 警視庁第一機動隊長。
・物語内での具体的な行動や成果 機動隊を指揮して防衛線を維持しようと尽力し、自らも武器を取って戦った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 特になし。
芹沢
警察庁警備局付のキャリア官僚であり、特殊部隊の指揮を執る。部下思いだが、組織の論理と政治的判断に翻弄される苦悩を味わう。
・所属組織、地位や役職 警察庁警備局付。
・物語内での具体的な行動や成果 「仲間を見捨てない」と意気込み沖田救出作戦を準備したが、政治的な判断により総理救出を優先せざるを得なくなった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 組織の論理に翻弄される苦渋を味わった。
蟻通
長野県警の巡査であり、災害派遣で東京へ応援に来た警察官である。自衛隊と共に巡回任務にあたり、持ち前の記憶力で手柄を立てる。
・所属組織、地位や役職 長野県警・巡査。
・物語内での具体的な行動や成果 「つぶやき泥棒」こと布佐松夫を偶然発見し逮捕した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 刑事部への転属が推薦された。
政府・政治家
嘉納太郎
防衛大臣であり、未曾有の国難に対して強い指導力を発揮する。法と政治の狭間で苦悩しながらも、事態収拾のために奔走し、時には汚れ役も厭わない。
・所属組織、地位や役職 防衛大臣。
・物語内での具体的な行動や成果 優柔不断な総理代行・風松を辞任に追い込み、北条を後任に据えることで自衛隊の治安出動を実現させた。財界や他派閥との調整を行い、国家の意思決定を正常化させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 事件解決の立役者の一人として、その政治的手腕と胆力が改めて評価された。
北条
風松の後任として就任した総理臨時代理であり、政治生命を懸けて決断を下す。
・所属組織、地位や役職 内閣総理大臣臨時代理。
・物語内での具体的な行動や成果 治安出動命令を発令し、自衛隊による本格的な反攻作戦を承認した。記者会見では毅然とした態度で臨み、国民の不安を払拭しようと努めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 次期総裁選への不出馬を明言し、事件解決に専念する姿勢を示したことで、逆に国民からの信頼を得た。
風松
前総理代行であり、決断力に欠け、批判を恐れる政治家である。
・所属組織、地位や役職 前内閣総理大臣臨時代理。
・物語内での具体的な行動や成果 嘉納にスキャンダルを突きつけられ、急病を装って辞任した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 事実上の失脚となり、表舞台から姿を消した。
マスコミ・民間人
金土日葉(かねつち ひよ)
テレビ旭光の報道記者であり、功名心と使命感の間で揺れ動く。過激な取材姿勢を見せるが、戦争の悲惨な現実に直面し、自身の役割に苦悩する。
・所属組織、地位や役職 テレビ旭光報道部記者。
・物語内での具体的な行動や成果 皇居での惨状をレポートし、世論に大きな衝撃を与えた。総理の居所を知りながら黙っていたことを佐伯に追及され、自責の念に駆られた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 その報道は賛否両論を巻き起こしたが、戦争の悲惨さを伝える役割を果たした。
古村崎哲朗
フリージャーナリストであり、スクープを求めて危険な場所にも潜入する。自衛隊の活動に密着し、批判的な視点も持ちつつ現場を伝える。
・所属組織、地位や役職 フリージャーナリスト。
・物語内での具体的な行動や成果 自衛隊に同行して銀座の掃討作戦を取材した。総理救出の現場にも居合わせ、批判的なコメントを発した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 特になし。
胡麻味
帝都テレビのディレクターであり、視聴率至上主義の強引な取材姿勢を持つ。手段を選ばない行動でトラブルを起こす。
・所属組織、地位や役職 帝都テレビディレクター。
・物語内での具体的な行動や成果 警察官や自衛官に変装して取材を試み、拘束された。その後、指揮通信車に同乗して最前線の映像を撮影することに成功した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 特になし。
物部さおり
テレビ旭光のアナウンサーであり、聡子と共に捕虜となる。持ち前の明るさと機転で周囲を励まし、情報を収集するしたたかさも持つ。
・所属組織、地位や役職 テレビ旭光アナウンサー。
・物語内での具体的な行動や成果 グローリアに取り入り、情報を収集した。伊丹によって救出された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 聡子に「略奪婚」を唆すなど、したたかな一面を見せた。
布佐松夫
「つぶやき泥棒」として知られる窃盗犯であり、火事場泥棒を働く。
・所属組織、地位や役職 指名手配犯。
・物語内での具体的な行動や成果 偽装したテレビクルーと遭遇し、彼らの正体を暴いた。老人を助けた後、蟻通に逮捕された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 逮捕された。
異世界帝国軍
レルヌム
異世界帝国軍の将軍であり、銀座侵攻軍の最高指揮官である。当初は日本側の戦力を侮っていたが、圧倒的な火力を前に撤退を決断する。
・所属組織、地位や役職 帝国遠征軍将軍。
・物語内での具体的な行動や成果 皇居外苑での総攻撃を指揮したが、自衛隊の航空攻撃と戦車部隊の投入により壊滅的な打撃を受けた。生存した部下を率いて「門」の向こう側へ撤退した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 敗北を喫したものの、再起を誓って帰還した。
ヘルム
帝国軍の騎兵大隊長であり、若く柔軟な思考を持つ指揮官である。戦況の不利を悟ると、独自の判断で撤退戦を指揮する。
・所属組織、地位や役職 帝国軍騎兵大隊長。
・物語内での具体的な行動や成果 自衛隊の攻撃を「殺意を持った本気」と見抜き、早期撤退を進言した。撤退中、独断で追撃に出た部下を救おうとして自衛隊と交戦し、捕虜となった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 日本側の捕虜となり、一時的に戦線を離脱した。
ブローロ
帝国軍の百人隊長であり、部下からの信頼が厚い叩き上げの古参兵である。戦場では勇猛果敢に戦い、上官を守る忠誠心を見せる。
・所属組織、地位や役職 帝国軍百人隊長。
・物語内での具体的な行動や成果 負傷したレルヌムを背負って戦場から脱出させた。越久百貨店の屋上で伊丹と対峙し、道連れにしようとしたが失敗して転落死した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 その死に様はレルヌムによって英雄として称えられ、遺体は特例として回収された。
ガレリー
帝国軍の獣兵使いであり、サディスティックな性格の女性である。沖田聡子と物部さおりを執拗に付け狙う。
・所属組織、地位や役職 帝国軍獣兵使い。
・物語内での具体的な行動や成果 越久百貨店で聡子たちを追い詰めたが、屋上での一騎打ちで聡子に敗れ、死亡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 死亡。
マジーレス・カ・ホントースカ
帝国軍の竜騎兵大隊長であり、空からの偵察と攻撃を担当する。自衛隊の対空兵器の脅威を身をもって知ることになる。
・所属組織、地位や役職 帝国軍竜騎兵大隊長。
・物語内での具体的な行動や成果 自衛隊のヘリコプターに挑むも撃墜され、重傷を負った。レルヌムと共に撤退した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 部隊を失ったものの、生還を果たした。
ゴダセン
帝国軍の従軍魔導師総監であり、魔法による支援を行う。撤退時には煙幕を展開して味方を守る老獪さを見せる。
・所属組織、地位や役職 帝国軍従軍魔導師総監。元老院議員。
・物語内での具体的な行動や成果 撤退作戦において、魔法と物理的な手段を組み合わせて煙幕を張り、味方の脱出を助けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 レルヌムと共に帰還した。
グローリア
レルヌムの愛人であり、奔放な性格の女性である。聡子とさおりを気に入り、ペットのように扱う。
・所属組織、地位や役職 レルヌムの愛人。
・物語内での具体的な行動や成果 戦場に同行し、独自の感性で状況を観察した。レルヌムと共に撤退した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 特になし。
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戦闘 一覧
第一章
麻布・避難誘導中のゴブリン襲撃
- 戦闘者:陸上自衛隊第三一普通科連隊(迎撃班) vs ゴブリン、獣人
- 発生理由:住民避難誘導中、民家の庭から怪異が出現し自衛官に襲い掛かったため。
- 結果:自衛隊の勝利。銃剣による格闘戦でゴブリンを刺殺。獣人は逃走した。
第二章
皇居外苑・第六次突撃と防衛戦
- 戦闘者:帝国軍(ブローロら) vs 警視庁機動隊(放水車含む)
- 発生理由:帝国軍による皇居侵入・突破の試み。機動隊は車両を並べて壁とし、放水と発煙弾で阻止を図った。
- 結果:帝国軍の撤退。車両の隙間を越えられず転落者や圧死者が多数発生。ブローロは負傷した味方を救出して退却した。
第三章
麻布・泥棒と偽装取材班の衝突(小規模・威嚇含む)
- 戦闘者:泥棒集団 vs 帝都テレビ取材班(偽装)・老婆
- 発生理由:火事場泥棒が金庫を盗み出そうとしたところ、老婆に止められ、さらに偽装取材班に撮影されたため。
- 結果:泥棒集団の自滅。取材班のライトに目が眩み、老婆を避けようとして車が激突・横転した。
麻布・取材班への怪異襲撃
- 戦闘者:ゴブリン・オーク vs 帝都テレビ取材班・泥棒集団
- 発生理由:事故処理中に怪異の集団が現れたため。
- 結果:取材班と泥棒集団の敗走。取材班は逃亡し、残された泥棒集団は助けを求めつつ襲われた。
第四章
皇居外苑・堀の埋め立て攻防
- 戦闘者:帝国軍 vs 警視庁機動隊(SIT狙撃班含む)
- 発生理由:帝国軍が侵入路確保のため、民間人の遺体を堀に投棄して埋め立てを開始。機動隊は放水や狙撃で妨害を試みた。
- 結果:帝国軍による埋め立て完了。機動隊は弾薬不足や、敵が警官の遺体を盾にする等の対抗策を取ったため、作業を阻止できなかった。
皇居外苑・突破と蹂躙
- 戦闘者:帝国軍(ヘルム隊・怪異) vs 警視庁第四機動隊
- 発生理由:埋め立てられた堀を渡り、帝国軍が騎兵と怪異(ゴブリン・オーク)の質量で突入したため。
- 結果:帝国軍の突破成功。機動隊の防衛線は崩壊し、隊員は踏み潰され外苑内へ雪崩れ込まれた。
西の丸大手門・車両突撃による救出
- 戦闘者:伊丹耀司・SIT・機動隊(車両部隊) vs 帝国軍(ヘルム隊・怪異)
- 発生理由:崩壊した戦線で孤立した機動隊員を救出するため、伊丹の指揮で車両による強行突入と轢殺を行った。
- 結果:伊丹側の目的達成。敵を車両で跳ね飛ばして混乱させ、孤立していた第四機動隊第二中隊を収容して撤収した。
西の丸大手門・火攻めによる防衛
- 戦闘者:帝国軍(ガンプラル隊) vs 伊丹耀司・SIT・機動隊
- 発生理由:帝国軍が西の丸大手門を突破し内部へ侵入してきたため。
- 結果:防衛側の勝利。警備車で足止めした敵に対し、火炎瓶(ガソリン+発泡スチロール)と落下物による退路封鎖で殲滅。ガンプラル将軍を含む多数が焼死・圧死した。
第八章
「二重橋の戦い」・橋上の攻防
- 戦闘者:帝国軍(先鋒) vs 警視庁機動隊・SIT
- 発生理由:帝国軍総攻撃による正門外石橋からの侵入阻止。
- 結果:拮抗・一時休戦。機動隊は催涙弾などで応戦するも側面からの矢で被害を受ける。その後、伊丹が発煙弾を使用し、煙の中で双方が負傷者回収のために一時的に戦闘を中断した。
皇居外苑・航空支援攻撃
- 戦闘者:陸上自衛隊AH-1S編隊(第一梯隊) vs 帝国軍本隊
- 発生理由:本格的な反攻作戦(状況開始)の初手として、敵主力を叩くため。
- 結果:自衛隊の勝利。ハイドラ70ロケット弾の斉射により外苑は炎と爆煙に包まれて壊滅的打撃を受け、帝国軍は大混乱に陥った。
第九章
隅田川上空・対竜騎兵迎撃戦
- 戦闘者:陸上自衛隊(UH-1J囮・ビル屋上の重機関銃部隊) vs 帝国軍竜騎兵(ビッコスら)
- 発生理由:航空優勢確保のため、好戦的な竜騎兵をキルゾーン(隅田川上空)へ誘引し殲滅を図った。
- 結果:自衛隊の勝利。重機関銃の集中砲火により竜騎兵は粉砕され撃墜。ビッコスはヘリに取り付こうとしたが振り落とされ川へ落下した。
都心上空・対空ミサイル攻撃
- 戦闘者:陸上自衛隊(PSAM装備) vs 帝国軍竜騎兵(バラッキーノ)
- 発生理由:敵情を報告しようとした竜騎兵の撃墜。
- 結果:自衛隊の勝利。携帯地対空誘導弾によりバラッキーノは撃墜・死亡した。
都心上空・指揮官同士の空中戦
- 戦闘者:陸上自衛隊AH-1S(アタッカー1) vs 帝国軍竜騎兵大隊長マジーレス
- 発生理由:部下を殺されたマジーレスがヘリに一騎打ちを挑んだため。
- 結果:自衛隊の勝利。急旋回のドッグファイトの末、20mmガトリングガンで翼竜が撃墜され、マジーレスはビル屋上へ落下し重傷を負った。
皇居内・ゴブリン掃討戦
- 戦闘者:SIT・伊丹耀司 vs 丙種害獣(ゴブリン)
- 発生理由:帝国軍が投石機で生きたゴブリンを皇居内へ投下し、避難民を襲わせたため。
- 結果:SITと伊丹によりゴブリンは駆除された。伊丹は数頭を斬殺したが、血まみれの姿に避難民の子供たちが怯える結果となった。
第十一章
銀座路上・機動打撃
- 戦闘者:陸上自衛隊機動打撃任務部隊(戦車・高射機関砲) vs 帝国軍・怪異
- 発生理由:首都高速道路上からの射撃により、銀座路上の敵を一掃するため。
- 結果:自衛隊の一方的な制圧。北・西・南の三方からの砲撃により、路上の帝国軍は薙ぎ払われ四散した。
銀座地下街・空挺突入
- 戦闘者:陸上自衛隊第一空挺団 vs 帝国軍(地下潜伏部隊)
- 発生理由:地下鉄を利用して敵中枢へ突入し、地下に逃げた敵を掃討するため。
- 結果:自衛隊の勝利。暗闇と自衛隊の装備に恐れをなした帝国軍は逃走し、地下街は制圧された。
第十二章
日比谷公園付近・ヘルム隊の退却戦
- 戦闘者:陸上自衛隊装甲機動部隊(中即連) vs 帝国軍ヘルム騎兵隊の残存兵
- 発生理由:ヘルムが退却を決断した直後、北から自衛隊の車列が突進してきたため。
- 結果:自衛隊の圧倒。突撃を試みた帝国兵は飛礫(機関銃)で薙ぎ倒され、ヘルムは部下を連れて逃走した。
越久百貨店地下・人質救出突入
- 戦闘者:陸上自衛隊第一空挺団 vs 帝国軍
- 発生理由:捕らえられた民間人を救出するため、壁を爆破してバックヤードへ突入。
- 結果:76名の救出に成功。しかし上階からの家具投下によるバリケード封鎖でこれ以上の進攻が困難となり、沖田・物部を残して撤収した。
第十五章
越久百貨店屋上・最終決戦
- 戦闘者:伊丹耀司・沖田聡子 vs ブローロ・ガレリー
- 発生理由:伊丹が沖田と物部さおりを救出して脱出する際、帝国軍指揮官たちが立ちはだかったため。
- 結果:伊丹・沖田の勝利。
- 沖田 vs ガレリー:剣による一騎打ちの末、沖田がガレリーの首を斬り落として勝利。
- 伊丹 vs ブローロ:狙撃支援でブローロが負傷した後、伊丹が銃剣で刺突。道連れにされそうになったが、伊丹が銃を手放してブローロを突き落とし、ブローロは転落死した。
余章
銀座街路・ヘルムの最後
結果:自衛隊の勝利。部下は瞬殺され、ヘルムはバイクとの機動戦の末に落馬・負傷し、捕縛された(現場判断で放置)。
戦闘者:陸上自衛隊第一偵察隊(温泉一曹ら) vs ヘルム(帝国軍騎兵大隊長)
発生理由:退却中に独断で自衛隊を追撃した部下をヘルムが助けようとし、自衛隊と遭遇したため。
展開まとめ
序章 醒めない悪夢
政局と経済危機の共有
銀座事件二日目、防衛大臣・嘉納太郎は経聯団会長・加持幸司の屋敷を訪れ、急落する円相場と週明けの市場大混乱を指摘した。丸の内の企業活動が麻痺する中、政府の迅速な判断が期待できない現状では、事態収拾の遅れが国家経済に致命的な影響を及ぼすと警告した。
総理代行交代を巡る打算
嘉納は、現総理代行を退かせ、別の人物を立てる必要性を説いた。加持は既に山海聡と林原敏光から同様の打診を受けており、次期総理の座を巡る派閥争いが背景にあることが明らかになった。自衛隊出動を巡る判断が、救国の英雄という政治的価値を生むとの認識が共有されていた。
北条擁立の現実性
嘉納は北条を推す理由として、現内閣の総辞職や国会開催を避け、即時に自衛隊出動を命じられる点を挙げた。国会議事堂が戦場となっている現状では、制度上の正攻法が機能しないことが確認され、加持も一定の理解を示したが、北条の長期政権には強い懸念を抱いていた。
歴史に名を刻む覚悟の迫り
嘉納は、今回の判断が後世の歴史評価に残ると強調し、私利私欲による先延ばしは国民を犠牲にすると加持を追い詰めた。財界人としての名誉と責任を突きつけられた加持は、容易に拒めない立場に置かれた。
密会と公安の介入
屋敷を後にした嘉納は、私用車で警視庁公安部の駒門英世と密会した。駒門は、嘉納の要請に応じる見返りとして用意した証拠資料を提示し、林原議員の致命的なスキャンダルを明らかにした。
スキャンダルの実態と利用
提示された写真は、林原が未成年に対する犯罪に関与していた証拠であり、政治生命を完全に断ち得る内容であった。証拠は反社会勢力の壊滅時に押収されたもので、警察官僚閥との癒着構造も浮き彫りとなった。
少年の保護と証拠管理
嘉納と駒門は、被害者である少年を世間の好奇の目から守るため、身柄の保護と生活基盤の確保を優先する方針を確認した。同時に、証拠が国外の諜報機関などに流出しないよう、公安による厳重管理が必要であると認識された。
公安内の派閥再編と避難要請
警察官僚閥の崩壊により、公安内部でも派閥再編が進む中、駒門は抗争を避けるため、一時的な避難先を求めた。嘉納は、防衛省への出向という形で受け入れる可能性を示し、協力関係を継続する意思を示した。
第一章 災害派遣
麻布の異様な静けさと自衛隊車列の到着
銀座事件二日目の午後、麻布の高級住宅地は日曜の昼にもかかわらず人影も車も途絶え、異常な静寂に包まれていた。そこへ陸上自衛隊東部方面混成団・第三一普通科連隊の車列が「災害派遣」を掲げて進入し、拡声器で避難指示を繰り返した。銀座中心半径四キロが警戒区域に指定され、被害が外縁へ及ぶ可能性が見込まれていた。
避難が進まない理由と流言飛語の拡散
名ヶ沢三等陸佐は、住民が高防音の住宅で窓を閉め切っているため呼び掛けが届きにくい点や、事件の非常識さゆえに陰謀論や作り話が飛び交い、判断を保留する心理が強まっている点を説明した。相反する情報の輻輳が避難の遅れを生み、アナウンスだけでなく直接の働きかけが必要だと位置づけられた。
長野県警との合流と戸別訪問の開始
車列は高級マンション前で停止し、長野県警の関川警視と合流した。関川は地元局の取材も伴い、共同で住宅やマンションを一軒一軒訪問する体制が組まれた。桑原惣一郎陸曹長と蟻通巡査は巡回連絡カードの不備や管理人不在に悩まされ、オートロック越しの説得にも反発が続いた。
避難誘導と住民対応の難航
住民の中には、事件を虚偽と決めつけて避難を拒み、警察や自衛隊に守れと要求しながら戦うなと矛盾した主張をぶつける者もいた。一方で恐怖から閉じ籠もっていた世帯は呼び掛けに応じ、名ヶ沢は安全ヘルメットを配り、子供や荷物を隊員が補助してトラックへ乗せ、避難所へ送る段取りを整えた。
ゴブリン襲撃の発生と銃剣戦
避難誘導中、庭木の不自然な揺れから怪異が察知され、ゴブリン数頭と鎧を纏った獣人が屋敷から襲来した。名ヶ沢は迎撃班を前進させ、隊員は銃剣を装着して格闘戦に移行し、ゴブリンを突き伏せた。獣人は劣勢を悟って逃走したが、名ヶ沢は追跡を止め、負傷者の有無を確認して現場の安全確保を優先した。
屋敷内の惨状と住民の態度変化
関川は怪異が出てきた屋敷を捜索し、一家全滅を確認した。被害は周辺にも及び、家々を移動して襲撃が続いた形跡が示された。目撃しづらい環境が被害拡大を招いたと整理され、ゴブリンの死骸が誤情報を打ち消す強い証拠となって住民の危機意識が高まり、避難が一気に進んだ。
避難の加速と現場保存の棚上げ
逃げ先のある住民は車で退避し、蟻通は安全な道路情報を伝えつつ避難状況を記録した。関川は現場検証の要否を問われたが、怪異による災害事故として扱い、生存者の救出と避難を最優先し、ご遺体の扱いは収束後に回す判断を下した。
取材対応と発砲しない理由の説明
取材側は銃を撃たなかった理由を問うた。名ヶ沢は、避難未完了の市街地で流れ弾や跳弾を避ける必要があり、住民退避後にこそ十分な力を発揮できると説明した。関川は麻酔銃の非現実性を具体的に述べ、緊急時は怪異だけでなく人々の無知とも戦う構図が浮き彫りになった。
防衛省プレスセンターの混乱と映像不足
銀座事件二日目の夕刻、防衛省の大会議室が臨時プレスセンターとして開放され、多数の報道関係者が詰め掛けていた。各局は特集番組を流していたが、最前線である皇居外苑の映像は定点気味で迫力に欠け、古村崎哲朗は苛立ちを募らせた。スタジオでは中途半端な議論が続き、犠牲者数はテロップで断片的に示されるに留まっていた。
皇居内避難民の停滞と報道側の焦燥
皇居内に避難する人々は半蔵門から脱出可能にも見えるのに動かず、その背景には自宅周辺の安全が保証できないという不安と、皇居が相対的に安全に見える事情があった。しかし映像として動きが乏しく、テレビ局側は退屈な画を嫌って焦燥を深めた。
取材クルーの負傷と定点撮影への転落
古村崎は、皇居外苑で各局の合同取材班が城壁へ接近した結果、岩や矢が降り注いで負傷者が続出し、救出に入った機動隊側にも死者が出たと知らされた。現場の機動隊長からも強く制止され、以後、皇居外苑の映像が安全優先の定点撮影へと縮退した経緯が示された。
避難取材の失敗と「テレビ長野提供」映像の衝撃
避難所に到着した住民へ栗林菜々美が突撃取材を試みたが、住民は不快感を露わにして拒絶し、栗林はスタジオへ戻すしかなかった。その直後、麻布でのゴブリンとの接触戦闘映像が流れ、銃剣戦の迫力とゴブリンの死骸が住民の避難を加速させる様子まで映った。映像には「テレビ長野提供」と表示され、中央局側は最重要場面をローカル局に先取りされた形となった。
同行取材の許可問題と記者たちの離脱
胡麻味らは、防衛省に閉じ込められているのに同行取材が許可されている理由を追及したが、広報官は警察との合同活動であり許可主体は長野県警側だろうと説明した。組織が合同で動くことで取材許可や安全基準に差が出る現象が共有され、胡麻味は現場へ向かうとしてプレスセンターを離れ、同調する社も続いた。
統合幕僚監部の発表と疎開進捗
入れ替わるように統合幕僚監部の報道官が新発表を行い、銀座中心半径三キロに機動隊連合が配備され、外側四キロ圏で陸自各普通科連隊が警察と合同で避難誘導を実施中と示した。自主避難四十パーセントと避難所行き三十五パーセントで計七十五パーセントの疎開が完了し、大使館関係者の避難も外務省の働きかけで進行しているとされた。一方、残り二十五パーセントは空き家か不在か居留守か判別できず、確認に時間が読めないと説明された。
自衛隊が銀座へ出動しない理由と会見の決裂
記者から現役部隊の動きや銀座への出動を問われ、報道官は銀座周辺は人間による騒擾事案であり、治安出動や防衛出動には総理大臣の命令が必要だと述べた。避難誘導は防衛大臣命令の災害派遣として可能だが、性質が異なると線引きした。これに対し、女性記者が独断専行を迫って激しく詰め寄り、報道官は法治国家と統制を強調しつつ反発を示して会見を打ち切り、退出した。
古村崎の観察と「出動はある」という読み
会見後、他社記者が女性記者の質問姿勢を非難する中、古村崎は報道官の苛立ちを出動できない憤懣の表れと捉えた。さらに、警務官を含む場の物々しさから、上から待ての命令を受けたまま見込みが立っていない状況だと推測し、政治部に立川の動向、特に防衛大臣・嘉納の周辺監視を指示するよう促した。記者たちは散開し、同僚との連絡に動いた。
第二章 皇居外苑の戦い
皇居外苑の戦場化と機動隊の消耗
皇居外苑では弓箭が驟雨のように降り注ぎ、機動隊員はポリカーボネートの楯を頭上に掲げて耐えた。矢傷が出る中、巨石の投擲で土砂と瓦礫が飛び散り、さらに油壺の投擲による火炎で隊員が包まれる場面も発生した。機動隊は放水車を要請しつつ、救助のため走り回って負傷を重ね、防御態勢は徐々に崩されていった。
侵入口の限定と「車両壁+放水」による防衛
皇居外苑の出入口は複数あるが、猛攻の主戦場は和田倉門の行幸通りと馬場先門であった。広い道路を利して隊伍で押し寄せる武装勢力に対し、機動隊側は車両を隙間なく並べて進入数を制限し、寡兵でも持久できる構図を作った。放水砲は警備車の屋根を越えようとする敵兵を直撃し、滑落や転倒を誘発して車両壁を強固な防壁へ変えた。
浸透策への対抗と拘束の積み上げ
武装勢力はバスの窓破りや車体下の潜行で突破を図ったが、車内には催涙弾を撃ち込み、下を這う敵兵は頭を出した瞬間に警棒や大楯の縁で乱打される形となった。敵側は負傷者が続出し、倒れた者は機動隊に拘束され手錠を掛けられていった。こうして早朝からの攻防は夕刻まで拮抗し続けた。
帝国軍の第六次突撃と「水魔法」の誤認
和田倉門前では帝国軍が六回目の突撃を敢行し、警備車の壁を楯の縁を踏み台にして越えようとした。古参兵ブローロは煙と放水を「水魔法」と捉え、長期戦で敵の“魔力”が尽きると踏んで耐えようとした。しかし実際には同威力の“新手”が次々投入され、しかも使い手が「鉄の箱」に隠れており狙撃もできず、ブローロは厄介さを痛感した。
車両列の罠と圧死の連鎖
車両の列間の隙間は飛び越えにくく、多くの帝国兵が転落した。ブローロも味方に足首を掴まれバランスを崩して落下し、下敷きとなった同僚が動かなくなる描写が入る。さらに落下が連鎖し、下敷きの者が吐血して絶命するなど、戦死の多くが「敵に斬られて」ではなく「障害と転落と味方の圧死」によって発生していた。
車体下潜行の待ち伏せと撤退命令
ブローロは車体下に潜り、伏せた姿勢で進む味方と合流するが、頭を出した者が待ち構えた敵国兵に叩きのめされ、引きずり出されていく。そこは敵が意図的に空けた罠の通路であり、前進は不可能となったところで「攻撃中止、総員退却」の号令とラッパが鳴った。ブローロは退却を優先しつつも、懇願する味方を引きずって救出する判断を取った。
ゴダセンの撤退支援と貴族的矜持
撤退局面では従軍魔導師総監ゴダセンが風魔法で砂を巻き上げ、煙を押し返して敵の追撃と弓矢・放水の効果を弱める支援を命じた。従兵は危険を理由に退却を促すが、ゴダセンは「味方を置き去りにしない」貴族としての誇りを優先し、最後尾を待つ姿勢を崩さなかった。ブローロが負傷兵を三人抱えて戻ると、ゴダセンは従兵を走らせて引き受けさせ、全員で戦線を離脱した。
帝国軍本陣の総括と次手の検討
帝国遠征軍最高指揮権者ドミトス・ファ・レルヌムは第六次攻撃の失敗を受け、敵が想定以上に粘ると認めた。有能な指揮官が自由に采配できる状態になり、かえって手強くなった可能性が語られた。攻城兵器群は水堀と城壁で肉迫できず、時間を掛けた穴攻めや兵糧攻めは暑さゆえ避けたいとして、オークやトロル投入、さらにオーガー運用のためガンブレル将軍召集が検討された。損害は負傷者多数だが死者は意外に少なく、死因は圧死や堀での溺死が多いと報告され、ヘルムが水屍体を見て作戦を思いついたが、日没が近いとして話は夜に持ち越された。
宿営地でのブローロ表彰
帝国軍は日没前に「門」周辺の宿営地へ退き、兵は建物を宿舎にして装備を解き手入れと食事に入った。疲弊したブローロは武器の手入れもせず横になろうとするが、最高指揮権者レルヌムが自ら現れ、負傷兵三人を担いで戻った功を称えた。レルヌムは市民冠(樫の葉の冠)と金貨を授け、さらに昇進も示唆し、失敗続きで重かった陣営の空気は笑いで緩和された。
戦闘後の現場処理と機動隊の限界
午後六時五十二分、武装勢力は波が退くように後退し、現場には負傷者・戦死者の遺骸・持ち場を守り切った機動隊員が残された。機動隊員は疲労困憊で倒れ込む者も出るが、直ちに負傷した同僚の搬送、さらに武装兵の死者と生者の仕分けという過酷な後処理に入った。即死が明白な遺骸は集積し、判別がつかない者は生者として収容する必要があり、腐敗の進行もあって搬送を急がねばならなかった。
原田指揮所の統制と「異世界人」認識の共有
二重橋前の指揮所では第一機動隊長・原田が現場の全命令を担っていた。警視庁中枢(警備部長・新見警視監ら)との連絡は断絶しており、近藤参事官がいる立川の内閣危機管理室に後始末を引き取らせる方針が示された。捕虜の言語が一切通じない問題から、原田は伊丹の報告を踏まえて武装勢力の正体を「異世界人」として共有し、言語学者による解析を進めるため拘束者を立川へ後送する手配を命じた。
持久方針への異議と伊丹の危機感
島田ら機動隊指揮官は「時間は味方」「持ち場を守り続ければ皇居への侵入は阻止できる」と持久戦を主張した。これに伊丹が異議を唱え、敵はデモ隊ではなく戦争を仕掛けている「敵」であり、受け身の警備継続では早晩破綻すると警告した。昨日の安全地帯構築は正しかったが、敵の規模が見えた以上、主導権を取り返す発想に切り替えるべきだと主張した。
伊丹の三段階案と指揮官の拒絶
伊丹は、避難民が西の丸へ移ったことを前提に、第一段階として外苑の黒松を伐採し、第二段階として武装勢力を外苑へ引き込み、第三段階として機動隊バスを十〜二十台で縦横無尽に走らせる案を提示した。内容は実質「轢殺」による大量損害の強制であり、伊丹は戦争の勝ち筋は“こちらが傷付かずに一方的に損害を与え続けること”だと断言した。しかし原田は「警察には警察の戦い方がある」「政府が警察に任せているのが意思だ」として却下し、会議は打ち切られた。
報道陣の追及と“保育所”問題の露呈
散会後、原田らは報道陣に囲まれる一方、伊丹は皇居内の“保育所”に向かった。そこは医療関係者休憩所の隣に置かれた警備車内で、親と離れた乳児から小学生までが集められていた。行政機関や児相機能は避難対応で麻痺し、子供たちは皇居に留め置かれる形となっていた。テレビ旭光の金土日葉らは人権問題として批判するが、負傷者や殉職者が運び込まれる現実を前に、現場が手一杯であることも突き付けられる。
避難民の自発支援と身元確認の実務
幸い皇居内には手持ち無沙汰な大人が多く、保育士・幼稚園教諭・学生らが名乗り出て子供の世話を担い始めた。マスコミも協力に回り、子供の情報を放送し、記憶を手繰って家族・親戚へ連絡する動きが進む。自称保護者への即時引き渡しの危険も意識され、警察等で身元確認を行ったうえで引き渡す手順が取られた。保護者が判明した子供は、捕虜や遺骸搬送のトラックや警備車に同乗して立川へ向かったが、行き先が決まらない子供は残された。
伊丹が子供に懐かれる理由と心身状態のチェック
子供たちは不安で泣き続けるが、伊丹は不思議と人気があり、到着すると群がられる。伊丹は食事・トイレ・睡眠という限界判別の基本を確認し、備蓄食糧はあるものの、子供が乾パンやチョコを食べ残し、昼寝もできていないことを問題視した。恐怖や喪失で胃が縮み、後から心を蝕む可能性が示唆され、早急な環境改善が必要だと認識された。
佐伯との連携と“最悪”回避への動き
三つ編みの少女・心寧が登場し、伊丹はSIT隊長の佐伯に引き渡す。佐伯は伊丹の先ほどの過激な提言に驚いたと述べつつ、今が危険であることは理解し、SITとして使える装備と人員で「最悪」を防げる余地があるのではないかと提案した。伊丹も同意し、二人は具体的な準備について耳打ちで協議を始めた。金土だけが置いてけぼりにされて騒いでいた。
東部方面総監部での「銀座作戦」検討
午後八時四十三分、陸上自衛隊・東部方面総監部では、防衛部長(作戦参謀相当)が銀座周辺の大地図を用いて部隊行動計画を説明していた。方面総監の狭間陸将と副官らがそれを聞き、柳田が青い兵棋(戦車・普通科部隊など)を動かして、敵(赤い兵棋)の中を突破し銀座四丁目交差点へ達する流れを可視化した。提示されたのは仮称「銀座作戦」構想第二案であった。
第二案の狙いと致命的欠点
第二案は「門」のある銀座四丁目交差点を敵の指揮中枢かつ出現点とみなし、そこを短時間で叩いて早期決着を狙う案である。狭間は時間が短い点を評価したが、防衛部長は重大な欠点を指摘した。指揮中枢を砕かれた敵は統制と逃げ場を失い、自暴自棄の強硬抵抗や、組織崩壊後の生存本能に任せた四散を起こし得る。警察の包囲(半径三キロ)には限界があり、突破されれば敵が周辺へ滲出して住民被害が拡大する恐れがある、という論点である。
第一案の特徴と「追い立て」発想
対比として第一案は、敵を撃破するよりも「一カ所へ追い立てる」ことを優先し、外側から包囲を縮めて敵を蝟集させ、唯一の逃げ道である銀座四丁目へ後退させる構想である。敵の組織を崩壊させなければ敗残兵がうろつく懸念が減り、形勢不利を悟った敵が自主的に「門」の向こうへ退却する可能性も期待できると整理された。
幕僚たちの懸念点の整理
説明後の反応では、第一案は落伍兵の掃討を残すだけで済む一方、戦意を挫くまでが大変で、敵が任意の時と場所で決戦を挑める状況になり得るため、即応できる予備戦力が要るとされた。戦力確保のための折衝が重荷になる点や、怪異(家屋やビルを一室ごとに検索する課題)が残り、仮に警察に任せても日数が膨大になる見込みも挙げられた。
「安全確実」か「迅速収束」かの二者択一
防衛部長は結論として、時間を掛けて安全確実を優先するか、多少の取り零しを許容して迅速な収束を狙うか、選択が必要だと明示した。狭間は孫子の「拙速」を引きつつも、兵書の一節を鵜呑みにして破綻した馬謖の例を挙げ、浅薄な適用への警戒を示した。
第三案の位置付けと政治制約の強調
狭間が第三案を求めると、防衛部長は第一案と第二案の折衷案だと説明しつつ、折衷は欠点が出やすいと牽制される中で、自身は本命を第一案に置いていると述べた。理由は地域住民の安寧を最優先したいという本音である。ただし最終決定は政府が行い、軍は政治の制約を受けるため、現場は第一〜第三案をさらに詰め、どんな命令でも対応できるように準備すべきだと狭間は締めた。最後に副官と古畑幕僚副長を残し、師団司令部との調整に入ることを命じた。
第三章 群像
新宿御苑の即応予備招集
午後九時十二分、新宿御苑へ向かうマイクロバスが、渋滞する下り車線を避けつつ、都度スーツ姿の青年たちを拾い集めた。自衛官が本人確認を行い、戦闘服への着替えを指示する。到着した新宿御苑は第三一普通科連隊の拠点となっており、天幕と車両が整然と並び、他部隊の高機動車や偵察車両の姿も見えた。引率幹部は「直下型地震想定の訓練が偶然たまたま行われているだけ」と、露骨に“建前”を説明した。
特技で回る災害派遣の現場
即応予備自衛官たちは名ヶ沢三等陸佐(中隊長)の前に整列し、野木原松葉ら二十五名が災害派遣に招集され到着したと申告した。中隊長は隊員の職業スキルを即座に割り振る。板前の山原は炊事班へ、保育士の畑山は避難所の乳幼児対策へ、鍵屋の小此木は備蓄倉庫の鍵トラブル対応へ回され、他の者も技能に応じて散っていった。災害対応という名目で、実際には都市機能が崩れた現場の穴埋めが進んでいく構図である。
野木原班の任務と警察との同行
野木原は担当地域の巡回を命じられ、小銃・銃剣・弾薬を受領して出発準備を整えた。合流したのは桑原千畝曹長であり、さらに長野県警の蟻通巡査が同行者として紹介された。任務は巡回しながら蟻通巡査の職務遂行を支援することに置かれ、高機動車の車列は新宿御苑から外苑西通りを南下していった。
西麻布の“境界線”と住民の不安
西麻布交差点は銀座四丁目から約四キロ西に位置し、避難対象地区(西麻布一・三丁目)と居残り許容地区(二・四丁目)を分ける境界となった。道路一本で、片側はゴーストタウン化し、もう片側は生活の匂いが残るという歪な日常が続く。居残り側の住民は安堵しつつも「本当に避難しなくてよいのか」という不安を抱えた。警察の規制線は東側への侵入を遮断し、警察と自衛隊は避難側を濃密にパトロールしているが、それでも惨劇は起きており、赤日医療センターには重篤者が絶えず運び込まれていた。さらに平日を迎える現実として、出勤の可否、交通遮断、幼稚園や保育の安全など、生活の再開そのものが疑問視されていく。
帝都テレビの暴走と“偽装”の準備
一方その境界線上で、帝都テレビのワゴン車が取材のため足止めされる。規制線を敷くのが島根県警の人員だったことで、現場の“コネ”が効かないとディレクター胡麻味が激昂し、許可不要論と視聴率至上主義を叫んだ末、ドラマ制作部から借りた警官制服と陸自迷彩服をスタッフに着せ、立ち入り突破を図る。取材の正義を盾に、違法すれすれどころか普通にアウトな発想へ滑り落ちていく場面である。
D+2 未明の無人高級住宅地と“つぶやき泥棒”
三日目午前三時三十二分、三キロ配備の外側から四キロ圏に入る麻布・六本木・赤坂の高級住宅地で、指名手配犯の布佐松夫が窃盗を開始した。窓ガラスを割って侵入し、犯行をSNS「トッター」に実況投稿する“つぶやき泥棒”として、警察の来援が遅れる状況を逆手に取り、豪邸の書斎から高級釣具を丁寧に詰めていく。向かいでは素人じみた集団窃盗が金庫を運び出し、住民に見つかって揉め始め、布佐は巻き込まれを避けて撤収に移った。
偽警官・偽自衛官との遭遇と現場の破綻
撤収中の布佐は交差点で、警官と自衛官に見える一団と鉢合わせる。布佐は機転を利かせ「押し込み強盗だ」と助けを求める形で彼らを現場へ誘導するが、彼らは職務らしい動きより先に撮影を始め、布佐は偽装集団だと察する。ならず者たちは逃走しようとして撮影ライトとカメラに視界を乱され、さらに老婆が飛び出して混乱し、ワゴン車は塀に激突し横転する。偽装集団は犯人確保もせず眺めるだけで、老婆は無事だったものの「金庫を家に戻せ」と“公僕”に要求する。布佐はその困り顔を写真に収め、皮肉な戦利品として記録した。
偽装取材班、金庫の後始末で地獄を見る
午前四時二十二分。日の出が近づく中、帝都テレビの偽警官・偽自衛官一団は、横転したワゴン車を押し起こそうとしていた。後部ドアが開かず、金庫を取り出すには車体を起こすしかないからである。胡麻味(ゴマさん)は「今さら名乗れない」「薄情扱いされる」と体裁のための重労働を正当化し、布佐松夫はその会話を聞きながら、カメラの『帝都テレビ』シールを根拠に正体を確信する。布佐はわざとらしく皮肉を挟み、胡麻味も悪びれず開き直った。
怪異の追撃で取材班が“本物の現場”に叩き込まれる
そこへ、逃げ去ったはずの泥棒集団が絶叫しながら戻ってくる。「警察!自衛隊!助けろ!」という叫びの直後、錆びた剣や槍で武装したゴブリン、さらにオークまで混じる怪異の集団が出現した。危険の理解が薄いカメラマンは撮影を始め、布佐はスマホで撮影しつつトッターへ投稿する。だが胡麻味はさすがに逃走を選び、取材クルーは散り散りに逃げ出した。布佐は「婆さんをどうする」と呼び止めるが当然届かず、ならず者たちは助けを期待した相手に見捨てられたことで罵声を浴びせる。布佐は胡麻味たちの“逃亡”を写真付きで晒し、結局は老婆を背負って退避した。
巡回車列の雑談が“異常”に接続する
場面は自衛隊・警察の合同巡回へ移る。高機動車の後部座席で、野木原は蟻通巡査に話しかけ、蟻通は田舎勤務の退屈、人間関係の摩耗、希望と現実のズレを吐露する。野木原も「外の水を飲んで分かった」「組織の嫌な部分は民間でも起きる」「規律より人間関係が染みる」「結局は性格に合うか」と返し、蟻通は妙に納得して気が晴れる。
その最中、どこかで“鳴りっぱなし”のクラクションが聞こえ、蟻通と桑原が異常事態の可能性を重視して予定ルートを外れ、生活道路へ入る。
生活道路での接触戦、威嚇射撃で民間人を救う
生活道路に入った瞬間、事態が急転する。ゴブリンの群れが民間人を追っていた。蟻通は「特殊害獣の丙」と叫び、ここが重点配備(半径三キロ)の外であることに驚く。桑原は即断し、軽装甲機動車(LAV)を前進させ、各車に下車戦闘を命じ、民間人救出を最優先に掲げる。
射撃は住宅地と民間人の存在を踏まえ、怪異の足元を狙った威嚇射撃が中心となった。車載ミニミの連射と隊員の射撃で路面が砕け、その破片や弱った跳弾がゴブリンに痛撃を与え、群れは悲鳴を上げて逃散する。追撃の提案に桑原は「民間人の安全確保が先」と退けた。
救助の末に“つぶやき泥棒”が回収される
隊員たちは倒れた男たちと、老婆を背負った中年男を助け起こし、負傷の有無を念入りに確認する。そこで蟻通が中年男の顔に見覚えを覚え、懐中電灯で照らしながら腕を掴む。男はとぼけるが、蟻通は正体を言い当てる。全国指名手配の「つぶやき泥棒」布佐松夫である。
布佐は観念したように嘆息し、蟻通と並んで自撮りを撮ると、トッターに「お縄になった……涙」と投稿して幕を引いた。
第四章 崩壊の兆し
皇居外苑に“戦争の朝”が来る
D+2、午前五時四十八分。皇居外苑で警笛が鳴り、警視庁第一機動隊第三中隊が楯を抱えて守備位置へ走った。原田が物見台から確認すると、東京駅方面から“隊伍を組み、足並みまで揃えた”正体不明の武装勢力が大軍で前進していた。中隊長は「配置完了まで時間がかかる」と見て、原田に朝食と水分補給を勧め、原田も全隊へ摂食を指示する。そこへマスコミが押しかけ、原田は「必ず撃退する」と笑顔で断言するが、金土(かねつち)の「諦めなかったら?」連打で言葉が詰まり、伊丹の“抑止には惨たらしい死傷者が必要”という不吉な論理を思い出す。
弓雨と投石で始まる定型戦、空の監視が刺さる
午前六時三十一分、攻撃開始。まず弓箭が雲のように空を覆い、機動隊は楯で防ぐ。続いて投石機の“岩”が指揮車周辺に着弾し、車体が跳ねて指揮官が落ちかける。敵がこちらの位置を把握できるのは、上空を旋回する翼竜が“目”になっているからだと部下が指摘するが、機動隊側に対空手段はない。弓が途切れると武装兵が前進し、原田は「昨日と同じだ」と迎撃を命じる。
放水と発煙で押し返すが、敵は“渡橋”で学習する
戦いは警備車を壁にし、登ってくる武装兵を排除する形で進む。放水車が水流で吹き飛ばし、発煙弾で目鼻喉を痛めつけ、楯と警棒で力尽くで押し返す。だが敵は警備車の隙間を越える“渡橋”を持ち込み、放水車を執拗に狙い始める。投石に加え、火のついた油壺も投げ込まれ、放水車が炎上する場面も出る。他の放水車が消火に回るほど前線放水が薄くなり、武装兵の勢いが増す。接触戦では剣が警備服の上から肩に食い込み、警棒が兜を凹ませ、双方が鼻血や歯折れを出す消耗戦になる。原田は負傷者を早めに下げ、手当てと休息で復帰を早めるよう命じ、指揮は徐々に“戦術”から“体力と人員の在庫管理”へ移っていく。
“堀を遺体で埋める”という地獄の突破策
そこへ「武装集団がお堀に遺体を放り込んでいる」と報告が入る。原田は意味を飲み込めず、遺体が敵兵の屍かと錯覚するが、実態は銀座で殺された民間人の遺体だった。敵は堀を遺体で埋め、渡ってくるつもりなのである。伊丹の「明日の敵は同じ手は使わず、堀突破を考える」という予言が現実化し、原田は激昂して前線へ走る。馬場先濠では武装兵がバケツリレーで遺体を投げ込み、幅約五十七メートルの堀を埋めようとしていた。妨害手段は乏しく、放水は距離が足りず、狙撃は有効だが実包が足りない。原田はSITの狙撃投入を決め、指揮官狙いなどで“節約しながら遅延”させる方針を示すが、部下は「人質もない相手を撃てるのか」と心理的抵抗を口にする。原田は「広い意味で正当防衛」と押し切り、弾が尽きた後は放水と催涙で妨害する腹を固める。
午前十時五十二分、埋め立ては止まらず士気が削れる
和田倉門・馬場先門の撃退自体は続くが、三カ所の埋め立ては中断できない。敵は煙幕や遺骸を楯にして狙撃を鈍らせ、上空の竜騎兵は槍を投げ、矢も降らせる。特に悪辣なのが“警察官の制服を着た遺体”を楯にするやり方で、狙撃手のメンタルを揺さぶって無駄撃ちを誘発する。報告では堀の半ばまで進み、このままなら三〜四時間で渡れる見込みとなる。原田は増援要請済みだが、封じ込めと避難誘導、国会・官邸防衛で余剰なしと突っぱねられる。現場は「放棄も止むなし」という言葉が漏れるほど追い詰められ、原田は交代要員まで前線投入する決断を迫られる。要するに、負け筋が見えてるのに“言った手前”で突っ込む、日本の組織が大好きなやつだ。
伊丹が“最終防衛線”を仕込む
一方、伊丹は西の丸大手門櫓の屋根で、SIT隊員と丸太・土嚢・瓦礫を積み、ブルーシートを引けば一斉落下する罠を準備していた。金土は重要文化財云々に文句を言いつつ、結局は梯子で上がって撮影を始める。佐伯は、機動隊が意地で“自縄自縛”に陥り、撤退や柔軟策を選べなくなっていると見抜く。佐伯は大手門内側に警備車を隙間なく並べる手配を終え、あとは「いつ介入するか」の判断を伊丹に任せる。佐伯は伊丹の“逃げの才能”を、状況を広く見渡す能力だと評価し、冗談めかしながらもタイミングの見極め役を託して去っていった。
帝国軍側:死体埋め立てが“予定通り”進む
午後二時三十四分、馬場先門・和田倉門では正面衝突が続く一方、日比谷濠手前では百人隊長ブローロが兵士を叱咤し、遺骸を堀へ投じ続けていた。敵側の水魔法・燻煙魔法(=こちらの妨害)は効いているが止めるほどではなく、遺骸は折り重なって水面上にまで積み上がり、橋が完成しつつある。
ただし作業は地獄で、腐敗臭と死体の扱いづらさに兵は不満だらけ。さらに狙撃(石弩弾)を避けるための濃煙が自分たちにも刺さり、目鼻喉が壊される。ブローロは「嫌な仕事ほど気合いで終わらせろ」と同僚口調で押し切って作業を継続させた。
レルヌム本陣:若者を使い潰す発想で突撃を許可
本陣ではヘルムが「進路啓開(突破路の確保)が進んでいる」と報告し、将軍レルヌムは満足する。幕僚が若者の逸りを気にするが、レルヌムは「失敗は上官が補えばいい」「失敗したら罰し成功したら称する」と割り切り、若手重用の理由(年寄りは保身で動かない)まで説明する。
そこへガンプラル将軍が登場し、オーガーを使って城を一気に落とすと名乗り出る。
午後四時四十九分:突破命令 “嚆矢を放て”
進路啓開完了。ヘルムは伝言で「矢は番えられ、弓は引き絞られた。あとは放つだけ」と煽り、レルヌムはそれに乗って「嚆矢を放て」と命じる。ガンプラルには“ヘルムの後詰め”を担当させるという建付けで、全軍突入の流れが固まる。
ヘルム隊:濃煙と怪異を先行させ、死体橋へ騎兵突入
ヘルムは煙幕をさらに濃くし、弓兵・石弩・投擲で牽制、その後に獣兵使いのゴブリン・オークを前進させ、騎兵が速度を上げて続く。ガレリーが「真っ白で見えない、堀に落ちる」と抗議しても、ヘルムは「落ちたら足場になる」と切り捨てる。
そして騎馬隊が死体の山を踏みしめながら斜面を駆け上がり、煙幕の中へ突入する。
皇居外苑側:第四機動隊が“狭い道なら止められる”と構えるが崩壊
樹木が視線遮蔽になり、第四機動隊第二中隊長の島田は「ここが勝負」と楯を並べて待つ。堀を埋めた道は幅が狭く、横に五〜六人が限界だから押し返せるはず、という理屈で士気を上げる。
しかし来たのは人間の兵ではなく、ゴブリン・オークの“層が厚い”大群で、圧倒的質量で楯列を押し潰す。さらに、その群れを踏み台にして騎兵が突っ込む。馬の前脚の重量が乗った踏みつけは楯では止まらず、隊列は薙ぎ倒され踏み潰され、三カ所の突破口から怪異と軍馬が外苑へ雪崩れ込み、機動隊の隊列は崩壊していく。
伊丹の介入:車列突撃で混乱を作り、救出に切り替える
大手門櫓上から突破を見た金土(かねつち)が伊丹に詰め寄る。伊丹は「混乱は敵が十分に増えてから」と待ち、頃合いで西の丸大手門を開放。SITと機動隊の車両がクラクション鳴らして横に広がり、怪異の群れへ突撃して跳ね飛ばす。
敵騎兵が挑んでも車両は止まらず、ヘルム隊は“殺意全開の鉄の箱”に蹂躙され、林へ逃れようとして味方同士が衝突し落馬・踏殺が連鎖、数の多さが逆に自滅要因になる。
伊丹はこの混乱に乗じて救出行動へ移行し、孤立して円陣を組む第四機動隊第二中隊を発見。車で武装兵列を引き裂き、隊員を収容する。島田は悔しがりつつも撤収を受け入れ、宮川が人数確認して全員収容、伊丹が接近戦で武装兵を斬り捨てつつ、坂下門から西の丸大手門へ帰還する。
帝国軍側の評価:ヘルムは叱られず、ガンプラルが前進して罠に落ちる
ヘルムはレルヌムに謝罪するが、レルヌムは「敵殲滅は命じていない。地歩を進め敵を後退させた、それで十分」と不問にする。
その直後、ガンプラル隊が西の丸大手門を破って内部へ雪崩れ込み、分岐路で警備車列に阻まれる。屋根に座る男(伊丹)が挑発めいた態度を取り、帝国兵がよじ登ろうとした瞬間、アンフォラが投げ込まれてオレンジ色の液体が撒かれる。続いて火のついた瓶が飛来し、液体を浴びた者から一気に燃え広がり、兵が連鎖的に火だるまになる。
退こうとすると、櫓上に積んでいた土砂・瓦礫・土嚢・丸太が落下して退路を封鎖。暴れる火だるまオーガーが味方を薙ぎ倒し、焼死・圧死・踏殺の地獄が完成する。ガンプラルもやられ、帝国軍首脳部は青ざめる。
ヘルムの“違和感”の正体:敵は追い返しから、殺しに切り替えた
ヘルムは「敵はいよいよ本気になった」と言い、これまでの敵は“追い返す”戦い方(水・燻煙・棍棒中心)で、全滅させる殺意が薄かったと分析する。今回、罠と火で明確な殺意を見せたことで、以後は手加減なしになると警告する。
将軍たちは「それが戦争だろ」で流しかけるが、実害(ガンプラル壊滅)が重いので、ロンギヌス代将の取りなしもあり、対火装備や陣立て見直しの必要は認める流れになる。
レルヌムの決定:攻勢停止、装備を整えて再計画
レルヌムは攻めを一旦休め、本陣を前進させて足場を固め、鉄の箱車(車両突撃)への対策を準備する方針へ切り替える。アルヌスから火炎対策の「火蜥蜴の鎧」、兵には「石綿のマント」を取り寄せ、それが届き次第、新しい作戦で再攻撃すると宣言する。
第五章 政治と軍事
防衛省会議:日本全体の防衛が最優先として確認される
D+2三日目19:41、防衛省では統幕長・陸海空の幕僚長が勢揃いし、防衛大臣の嘉納ら政務三役に状況説明を行った。銀座対応のせいで日本の防衛が薄くなるのが最悪なので、北方・西方・南西諸島の警戒を維持する方針が強調される。
中国・ロシアの偵察機への対処として、空自は警戒強化と在日米軍連携、海自は艦隊移動と南西重点配備。さらに日米合同演習を大々的に広報し、対外的な牽制材料にする。嘉納は「警戒である」と中露に説明する根回しも指示し、外務省出身の森盛政務官に担当させた。
銀座解放作戦案:狭間が概略を説明するが、政治が割り込む
嘉納は「政治の問題はこっちで解決する、作戦の話を進めろ」と言い、陸自側は狭間東部方面総監が作戦計画案を説明する(概略でも1時間超)。
しかし那珂湊政務官が「承服できない」と割り込み、理由が「時間が掛かりすぎる」「最終的に敵が銀座にひしめく」「盟友・高垣の地元が銀座で陳情が来た」など、政治案件を正面から持ち込む。嘉納はブチ切れて会議を中断し、喫煙室へ連行する。
喫煙室:本音の衝突 “建前” vs “陳情”
嘉納は「作戦が練られてることが漏れている」と問題視する。総理代行(風松)は“警察で解決”を望んでおり、自衛隊出動は建前上まだ表に出せない。那珂湊は「国民は警察だけで無理と思ってる」「内閣はすぐ解散する」と現実論で押し返し、さらに「早期解放を最優先」「自衛官が血を流すのが仕事」と踏み込む。
嘉納は「特定の誰かだけを救えは道義としておかしい」「限りある戦力を割けば、誰かを見捨てる」と制止するが、那珂湊は“有力者の支持が欲しい”という露骨な出世論まで吐く。
一方で、高垣が自分の家族の行方不明を黙って陳情していた(公私を分けていた)点が出てきて、嘉納も即答できなくなる。結論として嘉納は「期待させない程度に配慮し、助かったら特別ルートで報せる」程度の現実的妥協に留める。
救助要請の規模:遭難者本人から312人の電話
副大臣(東原)が、警察庁には家族の捜索願いだけでなく遭難者本人からの救助要請電話が来ていて、その数が「312人」と説明する。初日以降はスマホの電池が尽きるので、連絡が途絶えても“その時点では生存していた”ことが希望になり、陳情が過熱する。
制服組の判断:民間救出重視に寄せた“第三案”へ
休憩中、狭間は幕僚長たちと作戦変更を協議する。
背景として「警察官と自衛官が民間人を見捨てて逃げた」というネットの噂が拡散しつつあり、信頼維持のため“救出を重視する姿勢”が必要と統幕長が言う。狭間は、包囲を狭めつつ迅速に銀座を抑える第三案を用意しているが、必要戦力が膨大になると説明。
そこで統幕長は「包囲を警察に任せた共同作戦」を提案し、警察2万人を活用。さらに戦車1個大隊を投入し、欠分は関東一円の部隊(中即団・空挺・富士教導団など)で補填、北方から来た74式戦車も活用する方針が出る。古畑が「5時間で形にする」と引き受ける。
ただし狭間は重大な副作用も明言する。銀座を先に抑えれば指揮系統が崩れた敵が逃散し、包囲外に漏れて民間被害が出る可能性が高い。批判は政府・警察・自衛隊に集中するので、その覚悟を内閣に含み置く必要がある。
嘉納の正式要請:生存者救出を最優先にした計画へ変更
嘉納らが会議に戻り、「銀座の生存者救出に重点を置いた行動計画を策定してほしい」と狭間に正式依頼。狭間側は、電話が300件超ある以上、作戦変更しても政府の批判が致命的にはなりにくいと判断し、第三案準備を古畑に命じて確定する。
警視庁多摩指令センター:救助電話は“赤”で地図に打点される
立川の臨時作戦室では、銀座周辺からの救助要請を整理。遭難者本人の電話は赤、家族からの捜索願いは青で地図に記入され、青が圧倒的多数。赤は銀座中心部を避けて外縁にドーナツ状に分布しており、中心部の生存者が少ない傾向が示される。
武田指令課長は電話口で「いつ行けるとは言えないが必ず助ける」「電池を節約しろ」と支え続けるが、現実には外側2km圏が限界で、銀座(特に半径600m内)には手が出せない状況が語られる。
救出の難しさ:空も地下も“技術”より“結果”が問題になる
芹沢(警備局付)はSIT投入に慎重で、ヘリボンはワイバーンが飛び回り航空優勢がなく危険、救出後の離脱も難しいとする。武田は地下道網での潜入を提案するが、芹沢は別の理由で否定する。救出活動が始まると敵の“生存者狩り”を誘発し、周辺の隠れた生存者を危険に晒す恐れがあるためだ。把握している生存者314人(ここは直前の312から増えている)がいる以上、「ほぼ同時に救出」できない救助は逆効果になり得る、という判断になる。
その最中、自衛隊から「銀座の三百名の件で話したい」と連絡が入り、近藤参事官が防衛省へ向かう流れで締まる。
皇居の最前線が“放送”される
午前6:30、テレビ旭光の金土が皇居西の丸大手門櫓から中継を開始する。銀座事件は4日目に入り、武装勢力は銀座へ戻らず皇居外苑に拠点を築き、黒松を伐採して宿営地化とバリケード(鹿砦)を構築していると報じる。これは「次の攻撃がより苛烈になる」兆候として描写される。
西の丸大手門内部の“地獄”と、孔明の罠の後味
カメラが捉えた大手門内には、黒焦げの武装勢力兵が山積みになっている。前日、巨大な新種の怪異を先頭にした突入を、伊丹が警備車上で敵を引き付けて密集させ、合図で火炎瓶(ガソリン+発泡スチロール)を投擲して一斉焚殺した経緯が回想される。
この“罠”はネットで「孔明の罠(笑)」「二重橋の英雄」と喝采されたが、翌朝に残った遺体の山が、勝利の興奮を一気に地獄へ引き戻す。
金土の崩壊とジャーナリズムの自責
金土は「流せなくても撮る」と言い切り、惨状をレポートする。皇居に残る3万人超の避難民、とりわけ子供を守るための戦いだったと理解しつつ、自分も「早くなんとかしなさい」と嗾けた側であり、守られる立場でもあると認めて自己嫌悪を露呈する。
「許せない」は特定の誰かではなく「何もかも全部」と叫び、涙で撮影を止める。彼女の叫びは他局や避難民に撮られ、SNS拡散で国中の議論へ波及する。
“正当防衛”と“殺戮”の分断が社会に発火する
現場の記者同士でも、
- 子供や避難民を守るため仕方ない
- 生きたまま焼き殺すのを“仕方ない”で済ませるのは異常
- そもそも武器を持つ側が全部悪い
みたいな論争が噴出する。さらに「俺たちも間接的に加担している」という責任論まで出て、価値観が真っ二つに割れる構図になる。
政治の密室:料亭で“総理すげ替え”が揉める
午後12:45、神楽坂の料亭『浜夏』で嘉納が与党派閥幹部の山海・林原・福藁と激突する。嘉納は「銀座に生存者300人超がいる。4〜5日も総理交代の調整を待てない」と、北条への交代を急がせようとする。
しかし山海・林原は「北条の長期政権だけは嫌」「産業政策で企業が潰れる」「中小企業が死ぬ」と反対し、嘉納は「今日明日の死の方が先」と押す。話は乱闘寸前の罵倒合戦にまで荒れる。
福藁の冷静な助言:突破口は“北条そのもの”にある
福藁はトイレで嘉納に、嘉納が状況に絡め取られて視野が狭いと指摘する。そして「二人が嫌なのは北条の長期政権。それなら彼らの要望を叶える形を用意し、北条と話し合え」と示唆する。嘉納はそこで“長期政権”が争点だと腑に落ち、突破口に気付く。
内閣危機管理:生存者が“集められている”理由が見える
立川の臨時指揮所で、危機管理監・松平が沖田聡子巡査(映像通話)から報告を受ける。沖田は伊丹耀司と潜入偵察中、武装勢力の女性グローリアに気に入られ、物部さおりと共に越久百貨店に留め置かれている。落ち着ける場所がなくトイレから報告するのも、まあ終末感がすごい。
人身売買の推測:捕虜は“略奪品”扱いの可能性
沖田の観察では、越久百貨店地下の一室に捕らえられた民間人が約50人、しかも増加中。グローリア(女王様)の夫らしきレルヌムが最上位らしい。
門の搬入出で、向こう側から荷物が来て日本側の宝飾品が運び出され、さらに“檻付き荷車”が出たことで、人身売買(奴隷化)の可能性が高いと推測される。政府側も「交渉材料の人質」より「文化形態的に奴隷制度の略奪品」説が筋が通ると評価する。
救出のタイミング問題:助ければまた攫われる
伊東参事官は即救出を主張するが、松平は否定する。少人数救出と多人数救出では趣旨が違い、50人規模の救出は「武装勢力を打倒する寸前の一度きり」に近い。なぜなら銀座を支配されている限り、生存者は再び掻き集められるから。
「その都度救出すればいい」には、「相手は対応策を作る。2回目以降は確実に難しくなる」と現実を突きつける。
結局のボトルネックは“総理の裁可”
地下道で大人数移動は無理、空からの接近も銀座上空の脅威排除が必要で、それをできるのは自衛隊。ただし自衛隊出動には総理の裁可が要る。
松平は「決断できないトップが何を招くかが今の現状」と言い切り、反対意見を浴びる覚悟がない総理代行が、人質の運命を握っているという最悪の構図が浮き彫りになる。
第六章 会議室の戦い
風松の“執務室引きこもり”と責任回避
D+3 18:06、立川の臨時総理執務室で風松は、状況把握ではなく“自分の評判”確認のためにネットを巡回していた。笹倉総理と連絡が途絶したことで臨時代理の立場にあるが、具体的な指示や責任の引き受けをせず、実務を松平らに丸投げしている。過去に法務大臣として死刑執行で激しい非難を浴びた経験がトラウマ化しており、以後「批判される決断」から逃げ続けてきた背景が示される。
自衛隊出動の必要性と、決断できない心理
銀座の事態は悪化し、民間人が取り残されている以上、自衛隊出動が必要だと風松自身も理解している。しかしネット上では「犠牲が増えたのは風松のせい」「腰抜け」「犯罪者」などの罵倒が飛び交い、さらに皇居外苑での火炎瓶による焼死体の映像が拡散して“残忍な戦い”批判も噴出している。風松は「自衛隊を出せと言うのは殺せと言うのと同じ」と恐れ、結局どちらを選んでも非難される状況に追い詰められていく。
林原への泣きつきと、政治的条件の積み上げ
追い詰められた風松は林原に電話し、「早く解放してほしい」「身を引きたい」と泣き言を並べる。林原は途中で電話を切り、風松の弱さと、政治が“人命の危機”より“条件闘争”で動いている現実が強調される。
別室で進む“取引” 嘉納と北条の交渉
同じ施設内の会議室ベランダで、嘉納は北条と対面し、山海・林原が風松降ろしに同意する条件として「北条が次の総裁選に出ない」案を提示する。北条は政治を“波乗り”に例え、今回の混乱を「大波」と見て好機だと感じた本音を吐露する一方、それを好機と思った罰だと自嘲し、条件を飲み込む方向へ傾く。
嘉納は「次の次(約3年後)なら再挑戦できる」「事件を片付けた総理代行の実績で勝負できる」と支え、北条は納得というより“それで自分を納得させる”形で折れる。
D+4 自衛隊側の“銀座突入”に向けた実務準備
翌D+4 9:14、大宮駐屯地で酒源一等陸尉が暗視下のCQB訓練を統制する。銀座のデパート・オフィス・地下街を想定し、複数チーム連携での索敵、民間人の接触による注意逸らし、上方からの奇襲、近接戦闘の発生を織り込む。
訓練では“民間人役が抱きつく”ことで射撃判断が鈍る問題が露出し、拘束・制圧の手順も議論される(横四方固めはセクハラリスク、など)。
未知要素としての“魔法使い”と対策の具体化
皇居方面の報告として、火の玉や風で催涙ガスを押し流すなど“魔法的攻撃”の存在が共有される。魔法使いは拘束しても危険かもしれない、背中から撃てる可能性まで想定し、頭に布や紙で視界を遮る手段を検討する。ただし物資不足のため「各自が使い古しのTシャツ携行で代用」という実務的な落とし所に着地する(トランクス案は虐待疑惑で却下)。
敵兵と民間人の識別問題と、警察への引き渡し運用
敵が民間人に擬装する可能性、観光客との判別困難が議論され、最終的に「確保した民間人も一カ所にまとめ、身元確認は警察が行う。それまでは油断しない」という運用に整理される。現場で“完璧な見分け”は不可能という前提に立った設計である。
作戦開始前提が固まる兆候
連隊長命令で訓練は11:00までの“一夜漬け”で打ち切り、本番準備に移行する。政府が今日の昼頃に動く内示が出ており、政治の決断待ちだった自衛隊が「いつでも行ける」状態に追い込んでいる構図が見えてくる。
大会議室の作戦説明と、風松の被害妄想爆発
D+4 11:05、立川政府施設の大会議室に、国家安全保障会議メンバーに加え、都知事・警察庁・消防庁・海保・入管・地下鉄各社まで集結し、陸自東部方面総監の狭間が銀座解放作戦案を説明する。作戦は「日本国の総力結集」が前提で、統幕長も「欲張った前代未聞の計画」と認めつつ、嘉納の要望を達成するにはこれが必要だと補強する。
ところが風松は、計画を“全実力組織を自衛隊が統制下に置くクーデター”だと決めつけ、そもそも「自衛隊出動は絶対許可しない」「会議に出たくなかった」と言い残して退出し、会議を崩壊させる。
場の空白が生む“非公式連携”と、狭間の人脈
主催者が消えたことで会議は休憩状態になり、その隙に狭間は警察側の要人(比島=埼玉県警本部長、東大同期)と再会し、作戦への本音確認に入る。狭間が東大出身であることが、警察・官庁側との“同窓ネットワーク”として効く事情も説明される。
警察側は「自衛隊に全部持っていかれて“すっこんでろ”と言われるのが怖かった」が、計画では警察の出番も最後まで残っているため「この内容なら全力で当たる」と前向きに受け止める。要するに、現場同士は腹を割れば同じ方向を向けるのに、トップだけが邪魔で止まっている構図である。
裏の本題 林原の“条件追加”と、嘉納のブチ切れ
風松を追って嘉納が執務室に踏み込み、林原と話が付いているはずだと詰めるが、風松は「警察が解決するべき」という一点張りで動かない。嘉納が林原に電話すると、林原は「風松にも要望がある」「従うなら条件がある」と言い、さらに“次の総裁選で協力を約束しろ”という追加条件を突きつける。
国家の非常時を総裁選の踏み台にする腐り具合に、嘉納は電話をぶん投げてスマホを踏み潰す。睡眠不足も相まって、理性が限界に来ているのが露骨に出る。
嘉納の“切り札” 林原スキャンダルで首根っこを掴む
嘉納は書類(銀塩写真つきのスキャンダル)を風松に突き付け、林原が未成年(当時13歳未満)に対して行ったとされる性的加害の証拠を示す。風松は動揺し、林原の“警察による庇護”まで含めて大問題だと理解する。
嘉納は風松の過去の主張(少年法、未成年のプライバシー保護)を逆手に取り、「それでも林原に従うのか」「逮捕・刑務所行きにできるかはお前の腹ひとつ」と迫る。ここでの目的は説得ではなく、風松を“自発的に退場させる”ための追い込みである。
“急病”という名の退場装置 風松の茶番劇
その後、政府施設前で救急搬送の芝居が打たれる。担架の風松はマスコミの前で「腹が痛い」「胆石か腸捻転か胃穿孔か胃癌末期か」「職務遂行不可能」と大騒ぎし、最後に「後は北条に任せた」と宣言して救急車で退場する。
つまり、責任を取って辞めるでもなく、決断して前に立つでもなく、“病気”という逃げ道で席を空けたのである。
北条への権限移譲と、会議再開
ベランダから茶番を見届けた一同に、嘉納が「風松は急病で職務遂行困難、総理臨時代理は北条」と通告し、異議なしで承認される。北条が中央席に座り、「総理大臣の権限を継承する」と宣言して会議が再始動する。
第七章 夜明け前
越久百貨店地下 人質への配食と“女王様の機嫌”
D+4(五日目)14:45、銀座四丁目・越久百貨店ビル地下のバックヤードで、沖田聡子と物部さおりが寸胴鍋を持って食事を配りに来る。遅刻の理由は単純で、二人の行動自由がグローリアの気分と都合(午睡やレルヌムと過ごす時間)に左右され、解放されるタイミングが読めないからである。
人質側は空腹と苛立ちで揉めかけるが、さおりが“てへぺろ”と謝るだけで中年男性の怒りが鎮火し、聡子は自分にできない「笑顔で相手を操る技」を見せつけられて複雑な気分になる。
“媚技”の練習と、伊丹への恋バナ
榊原妙子・神木佐知・北郷玲奈(越久百貨店の社員)が食器配りなどを手伝い、聡子の“媚技真似”を全力で止めに入る。聡子は「使う使わないは別に、使えると便利」と言い訳しつつ、実は助けてくれた男 伊丹の顔が浮かんで赤くなる。
さおりも混ざって、吊り橋効果まで含めた恋愛談義になり、過酷な状況の中で人間関係の温度だけが妙に上がる。
食糧事情 人数増加と健康状態の把握
配られる食事は乾燥パスタと缶詰中心で、デパ地下の生鮮・菓子・高級食材は武装勢力に略奪され尽くしている。人質は増えており、計78名(男性24・女性52・聡子さおり含む)となる。負傷者(腕の怪我の男性)や、脱水で衰弱した女性が5〜6名おり、捕虜の中に看護師もいてケアしている。
「捕まったから冷房の効いたここに来られた」という皮肉も語られ、同時に「奴隷として連れて行かれたら終わりだ」という恐怖が場を支配する。
聡子が“救出作戦”を開示し、誘導の協力を頼む
悲観が暴走しそうな空気を止めるため、聡子は伏せていた情報を公開する。自分たちが食事係を買って出たのは、人質の人数・健康状態を警察上層部に伝える目的もあったと明かし、「政府方針が決まった。自衛隊が出動する」と断言する。
さらに、脱出時は体力のある者が動けない者を助けるよう頼む。聡子は最後に“媚びたお願い”で締めようとして盛大に滑り、場の決意をしぼませて反省する(しかも陰口が刺さる)。
防衛省プレスセンター “拡散される惨劇”と世論のねじれ
同日16:35、防衛省の臨時プレスセンターはマスコミで溢れ、同行取材の取り合いムードになる。古村崎は、金土の西の丸大手門の惨状レポートが、避難民のスマホ撮影からトッター経由で拡散し、同業他社まで追随報道に踏み切った経緯を語る。
テレビでは「焼き殺すのは卑怯」「他にやりようは」「国家による殺人だ」など、倫理と現実が噛み合わない議論が延々続き、社会が“暴力装置で安全が維持されていた事実”を直視させられて動揺している構図が描かれる。
北条会見 “治安出動”の宣言で空気が凍る
画面が臨時ニュースに切り替わり、北条総理代行が「治安出動命令」について会見を開始する。「防衛出動ではなく治安出動なのは、外患の証拠がなく国内騒擾と解釈するから」と説明し、政局の思惑(門の向こう派遣狙い等)の質問は切り捨て、噂は政府意思ではないと釘を刺す。
さらに北条は「次の総裁選に出馬しない」「事件解決まで代行を続ける」と宣言し、記者の“クーデター茶番”問いにも睨みで圧をかける。会場は「本邦初の治安出動」と騒然となり、戦闘がより組織的に拡大する予感が記者たちを痺れさせる。
お台場避難民と、連絡が途切れた伊丹家
東京湾のフェリー埠頭で「ナッチャンWorld」が出航し、避難民は甲板に出ずキャビン内の会見に釘付けになる。伊丹の妻・梨紗は政局話に飽き、夫と連絡が取れないことが気になり始める(これまで訓練等で途切れることはあったが、状況が状況で不安が増す)。
一方そのころ 記者たちの潜行
胡麻味らは麻布から反時計回りに芝公園まで到達し、無人ホテルのスイートに侵入して充電と休息、厨房から食料(パン・ソーセージ・炭酸水)を確保する。警察・自衛隊の合同パトロールや怪物の目を避けるため移動は難航し、2km未満の距離が実質何十kmにもなり、住民遭遇やゴブリンに追われるなど危険を重ねながらも“武装勢力支配域”には踏み込めないままである。
梨紗の逡巡 連絡は“死亡フラグ”になるのか
D+5(六日目)0:23。梨紗はスマホを見つめ、伊丹にメッセージを送るか迷う。ネットでは伊丹が「英雄」か「大量虐殺の殺人鬼」かで評価が真っ二つに割れており、今連絡して自分の安心を取りに行く行為が、逆に“悪い流れ”を呼ぶのではと怖れる。結局送れないまま、埋め立て地の夜景を振り返り、伊丹がこれから向かう戦場の「悪意と底意地の悪さ」を思って不安を深める。
胡麻味クルーの強行軍 芝公園が“駐屯地”化していく夜
同時刻帯、胡麻味ら帝都テレビの取材クルーは芝公園近くのホテルに潜伏。胡麻味は「今夜のうちに銀座へ踏み込みたい」と若手を叩き起こし、窓から外を見ると、芝公園出口周辺へ自衛隊車両が続々流入している。
野球場やテニスコートは占拠され、天幕と鉄条網で臨時拠点化。胡麻味は用語マウントを取りつつ(陸自は“基地”じゃなく“駐屯地”)、87式自走高射機関砲、74式戦車(トレーラー搬入→降ろして点検・給油→弾薬交付所で装填)まで目撃し、興奮して「カメラ!撮れ!」と騒ぐ。さらに増上寺方面の芝公園広場にヘリが次々着陸し、胡麻味はヒューイコブラと見立て、地形的にここが兵站・展開に都合が良すぎることから“必然を疑うのがジャーナリスト”論をぶち上げる(要するに陰謀論と紙一重)。
自衛官の突入 身分確認から“取材妨害はどっちだ”へ
そこへ突然、自衛官が銃を構えて部屋に突入。三一連隊の桑原・野木原らと、長野県警の蟻通が同伴し、胡麻味らは両手を挙げて身元を名乗る。
クルーはテントへ連行され、尋問ではなく質問を受ける。麻布界隈で撮られた写真(迷彩服や警官制服姿)が提示され、「避難指定地域への立ち入り」「無人ホテル侵入(建造物侵入の疑い)」「警官制服(軽犯罪法違反)」が問題になる。胡麻味は「通年契約してる」「電話で許可を取った」と苦しい言い訳を重ねるが、警官制服はアウト判定で拘束を告げられ、泣き落としで取材継続を懇願する。
“つぶやき泥棒”騒動の後始末と、蟻通の出世イベント
桑原は、クルーのせいで「自衛隊が民間人を見捨てて逃げた」という風説が拡散し、信用が毀損されたと主張。胡麻味は「勘違いした奴が悪い」と開き直るが、蟻通は拡散元の“つぶやき泥棒”布佐を逮捕済みだとニッコリ。さらに布佐と老婆の証言からならず者も芋づるで検挙し、蟻通の手柄になった。関川警視にも褒められ、刑事部転属の推薦まで得る。
胡麻味は信じられない面の皮で「その手柄は俺たちのおかげ」と言い、桑原に即否定される。最終的に胡麻味は“生贄”として警官制服のADだけ差し出そうとし、迷彩も脱ぐから上の人間に会わせろと食い下がる。
機動打撃戦闘団の編組 “寄せ集め”を潮崎が束ねる
D+5 3:25。多目的運動公園(芝公園)に設置された機動打撃戦闘団本部。治安出動により、方面隊の指揮系統外の部隊(空挺や学校部隊など)まで動員が必要となり、寄せ集めを一括指揮する臨時部隊が編組された。
寄せ集めは人間関係が地獄になりがちで、特に学校部隊のエリートはプライドが高い。そこで指揮官には、北海道から74式戦車を多数引っ張ってきた第七師団長・潮崎が据えられる。戦車乗りからの信望が厚く、「あの人ならまあいいや」で従わせる狙いがある。狭間は潮崎を酷使する腹づもり。
作戦要点 首都高は“水の道” 高所攻撃と足軽化リスク
潮崎は加茂一佐(機甲教育隊)や山崎三佐(高射教導隊)らと状況確認。首都高の進路は高層ビルに囲まれた狭隘路で「水の道」扱いとなり、高所からの攻撃・伏撃が最大の脅威になる。
戦車が“足軽に群がられる”状況を避けるため、普通科との連携が重要で、タンクデサント(戦車に跨乗して移動)まで視野に入る。芝公園のテニスコート・野球場には弾薬搭載済みの74式・87式、さらに三一普通科連隊の軽装甲機動車が整列し、隊員は跨乗のコツを再確認している。潮崎は士気の高さに満足する。
胡麻味、戦闘団本部へ“持ち込み案件”化
そこへ関川警視と蟻通が現れ、「報道関係者が紛れ込んで取材をさせろと騒いでいる」と潮崎に報告。背後には、しれっと胡麻味クルーが並んでいる。
つまりこの章のラストは、作戦準備のど真ん中に“撮れ高中毒の厄介者”が突っ込んできて、現場が余計なタスクを背負わされる場面で締まる。
第八章 朝
戦機 眠れない朝の“決戦の匂い”
D+5(六日目)5:01。皇居外苑の帝国軍陣地では、空の色が変わる系の演出はないが、決戦前特有のピリついた空気が肌にまとわりつくと語られる。タンジマヘイル群集団・第一尖兵竜騎兵大隊のバラッキーノは悪夢と寝不足に悩まされ、湿気と暑さ、そして本陣移動で空調のない天幕生活になったことが原因だと示される。兵はラッパ合図で動くため、集合前に自主的に整列してしまうほど士気が高まり、決戦の圧が部隊を“勝手に”早起きさせている。
竜騎兵の飛翔 都心上空の監視任務へ
バラッキーノは遅刻を疑って慌てるが、実際は集合ラッパ前の自主集合だった。大隊長マジーレス・カ・ホントースカの下、第一尖兵竜騎兵大隊は飛翔し、ビル群を越えた高所で散開する。戦場の空域は城(皇居)を中心に九つに区切られ、マジーレス直衛であるバラッキーノらは、主戦場と周辺の動きを上空から監視して逐次報告する役目を担う。
帝国軍中枢 レルヌムの朝支度と“よい扱いの侍童団”
皇居外苑の帝国軍陣地ではレルヌムが天幕から出て暑さを見上げ、寝台のグローリアと会話する。彼女は「門」の建物(空気が清涼な場所)へ戻る提案をし、暑さを避ける段取りを整える。侍童団(8〜12歳ほどの少年少女)が朝食と装備準備を担当し、黄金の食器、蜂蜜がけの麦粥、果物、羊乳など、明らかに上等な待遇が描写される。レルヌムは手早く食べ、鎧を整え、グローリアに口づけして出陣する。
陣営の総力準備 ブローロ昇格と火への対策
最古参百人隊長となったブローロが完全装備で待ち、レルヌムの身辺警護を命じられる。騎兵大隊長ヘルムには「向こう見ずに戦え、窮地は上が救う」と背中を押し、兵の士気を維持する。投石機、弓兵の矢の支給、先陣への石綿マント配布が進み、「火を使われる」ことを前提に、石綿のない者はマントを濡らして乾いたら濡らし直すよう命じられる。ここで後に「二重橋の戦い」と呼ばれる一日が始まる、と宣言される。
皇居守備側 原田の視点と“伊丹への複雑な感情”
皇居西の丸大手門の屋根から、原田は外苑の武装勢力が投石機・石弩・弓兵・剣盾兵で隊列を組む様子を監視する。かつてマスコミが並んだ場所だが、門が破られたため内側が最前線となり、マスコミは基本排除された。
機動隊内部の伊丹評は割れ、現場隊員は「危ないところに自ら来て助けた」点で好意的だが、首脳部は伊丹の予言通りに事態が悪化したことが悔しく、素直に認められない。原田はそれを「歳を取ると素直になれない」と吐露する。
金土の取材続行 伊丹の“現場待機”と覚悟
報道の金土は残留し、「コタツ記事ライターと違う本物のジャーナリスト」を見せると言い張る。伊丹は自衛隊の治安出動下でも所属部隊へ戻らず、上から「ここにいろ」と指示されたと説明する。秘匿性の高い部隊に“顔が割れた有名人”が戻ると困るため、手続きが済むまで現場待機になったという事情が原田に推測される。
伊丹は避難民、とくに子供たちと心寧を見て「守るために戦う」と明言し、必要なら敵の親玉が「家に帰った方がマシ」と思うまで徹底すると淡々と言う。金土は「死ぬんじゃない」と告げ、伊丹や機動隊員の姿を一人ずつ撮影して“証し”を残す。
総攻撃開始 矢雨と油壺と巨石
6:02。帝国側は喚声と楯打ちで士気を極限まで上げ、レルヌムの合図で進撃。ゴブリンやオークが堀へ土嚢や丸太を投げ込み、投石機は火を点けた油壺を投射、弓兵は矢を一斉射して西の丸大手門周辺を制圧する。油壺の着弾で炎が広がり、巨石がアスファルトを砕く。
橋上戦 機動隊の押し返しと“横合いの弓”
機動隊は楯を掲げて矢を受け、動きが止まる隙に敵先鋒が正門外石橋を渡る。伊丹の指示でSITが火炎瓶を投じるが、敵は耐火装備と水で消火する魔法使いらしき者で落ち着いて対処する。
原田は狭い橋で数の有利を潰す意図で迎撃し、催涙弾で苦しませ押し返すが、伊丹は「出過ぎるな」と警告。直後に横合いから弓兵の矢が飛び、機動隊が側面攻撃を受ける。追随して敵が雪崩れ込もうとするが、西の丸からSITが銃撃し、敵は損害で後退。戦線は石橋を往復し、双方に負傷者と死者が累々と残る。
白煙の中の収容 互いに助け合う異様な“休戦”
伊丹は見ていられず、催涙弾ではなく発煙弾を要求し、白煙を盾に負傷者の救出へ飛び出す。煙の中で敵兵と至近距離で遭遇するが、その敵も自軍負傷者の救助に集中しており、伊丹は交戦せず救出を優先する。さらに伊丹は息のある敵兵を敵側へ寄せ、双方が白煙の中で互いに身構えながらも、伊丹と敵兵が“協力するように”負傷者と死者の収容を黙々と続ける。煙が晴れると、敵兵は伊丹を見据え、伊丹も一瞥して引く。すぐ次の戦いが再開される気配が残る。
帝国側の評価 ブローロの勇気は“指揮官としては厄介”
場面は帝国側へ。ブローロは負傷者収容で前に出た勇気を歓呼で迎えられるが、レルヌムは指揮官として「勢いが削がれた」とも感じ、恨み言を吐く。それでもブローロは「敵でも負傷者は助ける、だが剣を握って向かい合えば戦う」と兵士の論理で答え、レルヌムはそれを良しとして兵の士気回復に利用する。「ブローロがいる限り置き去りはない」と宣言し、途切れかけた高揚を再点火する。
狂気の上書き 投石機で“ゴブリン弾”
最後にレルヌムは投石機へ命令し、アーム先端に巨石や油壺ではなく“怯えきったゴブリン”を載せる。ガレリーが「ないよ」と頭を抱える中、レルヌムは城内へ投げ込んで内部混乱を起こせと命じ、ゴブリンが空へ放り出される。ここで戦いがさらに地獄に舵を切る。
第九章 状況開始
誘引の異変 バラッキーノが“トンボ降下”を察知する
9:40。竜騎兵バラッキーノは、これまで高高度で偵察していた敵の「トンボ」(ヘリ)が、突然高度を下げてきた異変に気付く。バラッキーノは臆病と嘲るが、マジーレス大隊長は「明らかにおかしい」と直感し、ジャマンスカらに深追い禁止の伝令を命じる。しかし敵は“逃げるふり”から一転、ビルの隙間や川面すれすれ、橋の下くぐりまで見せる曲芸で、追撃側の虚栄心を刺激して誘導を強める。
キルゾーン 隅田川上空で竜騎兵が粉砕される
追撃は北へ東へ、海へ繋がる河口付近へ。橋を潜った瞬間、周囲に水柱が上がり、屋上群から飛来する“飛礫”が連続炸裂する。だが実態は石ではなく、重機関銃の弾幕である。隣の竜騎兵は上半身が消し飛び、翼竜の翼に穴が空いて墜落、ジャマンスカの翼竜もズタズタにされて撃墜される。バラッキーノは目の前で仲間が一瞬で落とされ、敵の反撃が“質”の違うものだと理解する。
種明かし UH-1Jの囮とM2重機関銃の上から撃ち下ろし
場面は自衛隊側へ。囮役は乾河一等陸尉らのUH-1Jで、翼竜の好戦性(手の届く敵を放置できない)を観察で把握していたため成立した作戦となる。隅田川沿いのビル屋上に銃架を据え、ブローニングM2重機関銃(12.7mm、いわゆる.50口径)を「川面へ向けて」撃つ制限をかけた上で、誘い込まれた竜騎兵を撃墜する。市街地で上空へ撃てば流れ弾が大惨事になるので、撃角と撃つ方向を縛ったという理屈が添えられる。撃墜後、溺れる竜騎兵は「放っておけ、いずれ溺れ死ぬ」と割り切られ、翼竜も救助対象にはならない。
第二の刃 PSAMがバラッキーノを追尾して撃墜する
生き残ったバラッキーノは急いで報告に戻ろうとするが、下方から“息の長いラッパの失敗みたいな音”が近づき、白煙が一直線に迫る。回避の急降下にも追随し、空中で進路を変えて追いかけ続ける。結末は閃光と爆発。バラッキーノを落としたのはPSAM(91式携帯地対空誘導弾)で、赤外線パッシブ誘導と可視光イメージ誘導の併用により、一度捕捉されると逃げ切れないと説明される。竜騎兵に“回避の手段がない”と断言され、空の優位が崩れる。
上空の綻び マジーレスが“帰ってこない部下”に気付く
11:13。皇居上空で戦況観察を続けるマジーレスは、本来の任務が偵察・連絡・哨戒であることを再確認しつつ、部下が戻らない異常を認識する。ジャマンスカ、パレル、ミャングッス、さらに伝令役のバラッキーノも戻らず、把握できる戦況が自分の視界範囲に限定されていく。マジーレスは“やられた可能性”を示唆し、ビッコスに敵情解明を命じて部隊を出す。結果としてマジーレスの周囲は二騎だけになり、護衛の一人をレルヌムへ急報に走らせる。「正体不明の敵の襲撃、被害甚大、損害拡大中」という内容である。
皇居内の地獄 ゴブリン投下が避難民を襲う
皇居内は「丙種害獣(ゴブリン)」が暴れて大混乱となる。投石機で投げ込まれ、落下で即死する個体が大半だが、樹冠に引っかかって生き残った個体が避難民へ襲撃する。SITは分散対応を強いられ、軽快なゴブリンに追いつけず、子供や避難民が危険にさらされる。伊丹は駆けつけてファルカタで数体を斬り伏せるが、血まみれの姿と“目の前での斬殺”が恐怖を増幅し、心寧や子供たちが伊丹にすら怯えて泣き叫ぶ。ギャルの娘がタオルを投げて「ホラー映画のモンスター」と突っ込みつつ気遣い、伊丹は礼を言って再出動する。この場面、守ったのに怖がられるという救いのない現実が刺さる。
レルヌムの誤判 “もう勝った”と総攻撃へ
レルヌムには堀の埋め立て完了、城内混乱など吉報が届く一方、竜騎兵大隊が不明な敵襲で損害拡大中という報告が入る。それでもレルヌムは「反撃は遅い、勝敗は決した」と楽観し、帯剣を抜いて“将軍が斬り込む風の演出”で士気を煽り、全軍総攻撃を命じる。堀を屍体や土嚢、瓦礫で埋めた突入路から兵が殺到し、城壁全域が戦場化。敵側は放水や強力な“飛礫”(銃撃・機関銃に類する表現)で多数を貫くが、帝国兵は止まらない。さらにゴダセンが燻煙魔法を大量投入し、城内外が白煙に覆われ、視界ゼロの肉弾戦へ移行する。「進んでぶつかったら敵」という原始的な戦い方に収束していく。
機動隊崩壊から再編へ 放水車を“旗印”に密集横隊
混戦で機動隊の隊列は崩壊し、原田自身も拳銃と警棒で格闘する。隊旗の重要性がここで痛感されるが、乱戦が酷すぎて旗を立てられない部隊も出る。増援要請が殺到する中、放水車が乱戦へ放水し、敵味方まとめて転がる二次被害を起こす。原因は伊丹と佐伯で、車内には金土まで同乗し撮影している。
伊丹は「ゴブリンは粗方片付いた。原田は機動隊員をまとめろ、もうすぐ味方が来る」と押し切り、「指揮系統はどうだっていい、とにかく放水車の周囲に集めて隊列を作れ」と命じる。原田はスピーカーで“所属不問で隊旗のもとに集結”を指示し、混成でも密集横隊が成立する。仲間の楯の後ろが安全地帯として機能し、隊列戦へ戻すことに成功する。
航空攻撃到来 AH-1Sのハイドラ70が外苑を焼く
日比谷公園上空からAH-1S三機編隊が低高度侵入し、ハイドラ70ロケット弾を外苑へ斉射する。伊丹が「弾着五秒前」とカウントし、外苑は一瞬で炎と爆煙に包まれる。ここで“地上がぐちゃぐちゃで識別不能”という問題は、攻撃対象が皇居外苑の敵集結地帯であること、機動隊が放水車周辺に集結していることを前提に、時間と位置で割り切って実行した形になっている。
指揮所での号令 「状況開始」が実戦の開始合図になる
14:12。立川の政府施設に置かれた指揮所では、皇居東側の地図とヘリのマークが表示され、航空隊の位置取りが確認される。武装満載の攻撃ヘリは滞空余裕が短く、ハイドラ70の搭載を優先し機関砲弾は抑えめという制約が共有される。古畑が準備完了を告げ、狭間は背後の政治家・統幕長らを確認した上で「状況開始!」と号令する。演習用の号令しか“実戦用の言い回し”が定着していなかったという自衛隊の事情が語られ、狭間は「いざという時は日頃やってる通りしかできない」と笑う。
第一梯隊の空襲 皇居外苑を叩いて混乱を作る
第一梯隊(対地攻撃ヘリ隊)が皇居外苑を攻撃し、損害報告なしで戦果確認に移る。映像では、整然と待機していた武装勢力が爆発で崩れ、救護・放心・恐慌・右往左往が同時発生して“大混乱”に陥っている様子が映る。死傷は出ているが、人数が多いことと楯が破片を受けたことで生存者も多い。
第二梯隊投入判断 “中途半端が最悪”として戦果拡張へ
情報部長が第二梯隊突入の要否を問うが、幕僚側は「中途半端ほど良くない」「奇襲効果が残る間に戦況を決定的にすべき」として投入を肯定する。外苑は主力だが全てではなく、このまま放置すると残存部隊が立て直して再活動するため、叩ける時に徹底して叩く必要があると整理される。地図上では74式戦車と96式装輪装甲車を含む装甲機動部隊(中即連)が北から戦闘加入していく。
帝国側の視点 ブローロが“雷の衝撃”から立ち上がる
帝国兵ブローロは耳鳴りと眩暈、全身の激痛の中で地面に倒れていたことに気付き、踏み殺される恐怖から必死に起き上がる。投石機は破壊され、油壺が燃え、軍勢の大半が地に伏している光景に直面する。指揮官は隊列再建を試み、弓兵は救護を始めるが、ゴブリン・オーク・トロルは狂乱し、獣兵使いが制御に苦しむ。
装甲突進 鉄の“箱”が柵ごと押し潰し、飛礫で掃討する
そこへ“毫象(マンモス)の群れ”に見える箱型の化け物が突進してくる。馬防柵や鹿砦を押し倒し踏み潰し、槍・矢・火球も通しにくい“鉄の肌”で進む。さらに豆の弾ける音を立てて強烈な飛礫(連射火器)を放ち、帝国兵を一方的に薙ぎ倒す。ブローロは無謀突撃を止めようとするが止まらず、自分だけでも生き残るため堀へ飛び込んで屍体の隙間で潜伏する。
堀での発見 ブローロが水底でレルヌムを見つける
堀の水中で、意識を失って沈む将軍レルヌムを発見する。地上はもはや戦いというより掃討で、指揮官の生死すら不明という状況が示される。
日比谷公園のヘルム 退却支援を独断決行する
主戦場から離れた日比谷公園にいたヘルムの騎兵隊は空襲を直撃せず生き残る。爆発と白煙で“敵の攻撃”を察し、状況は死に体に近いと判断して「門」周辺へ部下を戻し、味方の退却支援に回るよう命じる。命令なしの退却に部下が反発するが、ヘルムは「決断できない上官が一番見捨てられる」という教練の教えを引き合いに、責任を自分が取ると宣言して動かす。直後に北から装甲集団が突進してきて判断の正しさが証明される。
空の格闘戦 竜騎兵がコブラ編隊に挑むが各個撃破される
皇居外苑を攻撃したAH-1S三機(第一梯隊)は周回して離脱機動に入るが、竜騎兵三騎がシェブロンで接近し交戦開始。アタッカー2は低空へ誘い込み、急減速から上昇して背後上方を取り、20mmガトリングで翼竜と竜騎兵を撃墜する。ビッコスの分隊は翻弄され、二騎が墜落(射撃で落ちる、建物稜線に激突)し、ビッコスは槍投擲からの跳躍でヘリに飛び付く暴挙に出る。
ヘリへの取り付き ビッコスは振り落とされて川へ落下する
ビッコスはアタッカー3の左スタブウィング付近(ハイドラポッド)にしがみ付き、よじ登ろうとする。アタッカー3は隅田川上空で急降下・急旋回をかけ、遠心力でビッコスを振り落として川へ落下させる。撃ち殺さず“落水で処理”する判断が描かれる。
マジーレスの最期 20mm射撃で翼竜が粉砕され、流弾が銀座へ飛ぶ
マジーレスも突進してトンボと格闘戦になるが、急旋回を重ねた末にガンナーが照準を合わせ、20mm弾が翼竜の腹部・翼を貫いて撃墜する。マジーレス自身は翼竜から投げ出され、ビル屋上へ落下してフェンスに激突し停止する。この射撃の一部は目標から外れて銀座方向へ飛翔していく。
銀座の“優雅な隔離”が崩壊 百貨店新館レストラン街が被弾する
銀座四丁目交差点近く、越久百貨店新館の最上階レストラン街では、グローリアが聡子の紅茶とさおりのヴァイオリンで優雅に過ごしていた。言葉が通じず不満を抱えつつも、聡子を連れ帰って言語教育する話まで出る。そこへ突然、窓ガラスが粉砕して破片が暴風のように飛び込み、負傷者と血飛沫が発生する。グローリアも切創を負い、聡子とさおりは比較的軽傷ながら救助へ動く。カステロは上空に無数の“空飛ぶ船のようなもの(軍用ヘリ)”を視認し、敵の接近を警告する。ガレリーは「下の兵を集めて建物の守りを固めろ」と即応を促す。
ヘリボーン狙撃班 銀座の高所を占拠して射撃態勢へ
銀座上空には多数の軍用ヘリが展開し、UH-1J編隊が北から侵入して散開、各目標へ。庵辺一等陸曹ら狙撃班はR・パワー本社ビルのFMアンテナ塔へ懸垂降下し、ランドマーク(東京駅、皇居、警視庁など)で位置を掴み、風向・気温・壁面温度などを計測し射撃準備に入る。各所の屋上へも狙撃班が次々降りて、銀座全域を見渡す高所配置が整っていく。
第十章「前進用意。前へ!」
首都高の戦車列 タンクデサントで最前線へ
14:52、首都高速都心環状線の分岐点に、74式戦車34両・87式自走高射機関砲4両・軽装甲機動車20台の車列が停止して命令待ちとなる。軽装甲機動車の搭載人数に限りがあるため、普通科隊員は戦車に跨乗して移動する「タンクデサント」を強いられる。安全帯で固定するため落車よりも、無防備な状態で敵火を最初に浴びる危険が問題として意識される。桑原と野木原は、この任務が災害派遣の延長ではなく「先鋒中の先鋒」だと実感し、覚悟と不安を抱える。
潮崎陸将の登場 指揮通信車に“取材クルーごと”乗せる
82式指揮通信車が到着し、潮崎陸将が自ら桑原・野木原を急かして乗車させる。さらに帝都テレビの胡麻味・カメラマン・アナウンサー真奈美の取材クルーも同乗となり、防弾チョッキと黄色ヘルメットで最前線撮影を始める。胡麻味は安全な軽装甲機動車を勧められても拒否し、危険を承知で最前線を選ぶ。野木原は民間人の装具を確認し、落下しないよう監督役を担う。
「運転始め」からの突撃 「前進用意。前へ!」で鉄の列が動く
潮崎の号令で一斉にエンジンが唸り、首都高は黒煙に包まれる。潮崎が作戦開始と射撃位置への突撃を告げ、車長たちが右手を掲げる儀式のような動きが連動する。「前進用意!」ののち「前へっ!」で右手が振り下ろされ、戦車列が一定の車間を保って前進する。指揮通信車は加速の振動が激しく、実況中の真奈美はヘルメットがずれても直せず、野木原が手で角度を戻す。現場の滑稽さが、これからの地獄の前座として効いている。
鉄環作戦の発動 偵察で炙り出し、機動隊が“壁”で締め上げる
同時刻、日本全国から集めた各県警機動隊と第一師団の戦車部隊、偵察隊による「鉄環作戦」が発動される。偵察隊が高層ビル屋上を確保して監視し、87式偵察警戒車や偵察バイクが空砲や空ぶかしで敵に「見つかった」と錯覚させ、反撃や逃走で動いた個体を位置特定する。敵の潜伏位置が割れると、機動隊が盾を密に並べ徒歩速度で前進し、活動範囲をじわじわ圧縮する。犬(警察犬だけでなく空自・海自の警備犬まで)も投入され、ゴブリン等を嗅覚で追い立てる。反撃に出たトロルの群れも、後方の74式戦車105mm砲で粉砕され、包囲は有効に締まっていく。
チヌーク降下 数寄屋橋のデパート屋上へ“尻だけ載せる”降着
帝都テレビ別班(古村崎とカメラマン福)はCH-47Jチヌーク編隊に同乗し、三三普通科連隊第六中隊の本牧中隊長から「前に出るな、危険なら叩き出す」と釘を刺される。チヌークは屋上へ完全着陸せず、飛行しながら機体後部だけをちょこんと屋上に載せる形で降ろす。隊員は降りた瞬間から戦えるよう銃を構え、古村崎は本牧に抑え込まれつつ上陸する。
建物内掃討 突入爆破と“戦闘の臭い”
屋上塔屋の鉄扉を導爆線で爆破し、小銃手が雪崩れ込む。階下では銃声・爆発音が続き、メガホンで「我々は陸上自衛隊です」と呼び掛けながら階層ごとに進む。許可条件は「本牧から離れない」。階段を下りると土埃と火薬臭に加え、腐肉の臭いが混ざる。フロアは略奪の痕跡で荒れ、武装勢力の遺体が転がる。窓際には石弩や弓矢が並び、補助兵的な軽装兵が配置されていたと推測される。
“撃ったのは誰だ”で火が付く 記者と中隊長と若い隊員
古村崎が「誰が撃ったか」を執拗に聞いて回り、本牧が「意味がない、笑顔でピースでもさせるのか」と制止し、マスコミ不信(過去の事件で実名報道や家族への追跡があった)を露わにする。そこへ若い自衛官が名乗り出て「撃ったのは俺」と応じ、状況は不意打ちで背後からバースト三発だと淡々と語る。古村崎が「無抵抗を後ろから」と詰めると、隊員は「それが戦闘」「正々堂々で死ねというのか」と返し、戦闘を“スポーツ”扱いする視線を切り捨てる。心境については、今は何も感じない、訓練通り行動できた満足があると述べ、命令があれば同様に行動すると締める。福は罵られなかったことが逆に後味を悪くし、古村崎もその理由を言語化する。
職員遺体の山と限界 腐臭で福が崩れる
フロア奥には職員らしき遺体が積み上がり、腹部を裂かれたものもあり、ハエと酸腐臭が充満している。福は嘔気に耐えられず離れるが、そこで現実が追撃してくる。
潜伏兵の奇襲を狙撃が止める R・パワー屋上からの一撃
福の近くで耐火ガラスに蜘蛛の巣状の弾痕が広がり、同時に短剣を持った武装勢力兵が横合いから殴られたように壁へ叩き付けられて死亡する。潜伏していた兵が福を背後から襲う寸前、窓の外からの狙撃で阻止された形である。弾痕の方向と遠方のR・パワー社屋上の紅白電波塔の位置が一致し、本牧は「あそこから、うちの狙撃班」と認める。古村崎が礼を言うよう頼むと、本牧は「余計なことをしやがってって伝える」と憎まれ口で去る。福は助かったが、現実感の遮断が壊れ、吐瀉してしまう。
第十一章 突入
地上 戦車列の到来と取材班の合流
15:20、本牧中隊長は「オブジェクト・カジケ制圧完了」を枯葉連隊長へ報告し、ちょうど機動打撃任務部隊が通過するから出迎えろと指示を受ける。本牧は古村崎と福を建物外周へ誘導し、首都高を突進してくる74式戦車・87式自走高射機関砲の車列を撮影させる。沿道のビルを確保した自衛官たちが手を振り、戦車上の隊員も応じるという、戦場っぽいのに妙に“お祭り寄り”の光景が出る。
胡麻味は指揮通信車で最前線 古村崎は悔しがる
福が車列中央の装輪車両に帝都テレビの胡麻味・カメラマン・女子アナ真奈美を発見する。古村崎は「戦車に乗ってやがる」と激昂するが、本牧に「戦車ではなく指揮通信車」と訂正される。とはいえ古村崎の怒りの本質は分類じゃなく、**“自分だけ置いていかれた”**という記者同士の縄張り争いである。
首都高射撃開始 銀座四丁目を三方から刈り払う
やがて戦車が首都高の晴海通り跨ぎ付近で停車し、74式戦車が超信地旋回で向きを変え、高速道路西端へ寄って車体を前傾させる。本牧は「これから射撃が始まる」と告げ、砲口は銀座四丁目交差点方面へ向く。
一方、潮崎の指揮通信車も同位置で停止し、加茂の無線で「攻撃開始」が下令される。首都高が銀座を囲む地形と、銀座の直線道路(盤面みたいな構造)を利用し、路上の武装勢力は北・西・南の三方から砲撃を浴びる。戦車砲の炸裂音に真奈美は悲鳴を上げ、密集地点を狙った砲撃で敵は薙ぎ払われ、四分五裂して逃げ惑う。
潮崎の“テレビ向け講義” 路上を火力支配して逃げ場を奪う
真奈美の問いに潮崎は、敵が建物陰へ逃げようとしても路上に安地はないと説明する。正面を避けて脇道に入れば側面から撃たれるという構造で、銀座の道路全てを火力制圧下に置くのが要諦だと語る。胡麻味は「ビル屋上から落とす」などの反撃可能性を挙げるが、首都高沿いのビルは既に複数の普通科連隊と12旅団部隊が確保済みで封じられている。
地下という“抜け道”への回答 空挺が電車で突入する
真奈美が地下街の存在を指摘し、胡麻味も同調するが、潮崎は「地下は別働隊が重要作戦を実施する」とニヤリと返す。ここで舞台が地下へ切り替わる。
第一空挺団 “装甲列車”で東銀座へ
都営浅草線の車内に、完全武装の第一空挺団が乗り込む。空から降りるのが本業でも、都市の銀座では降下に不向きなので、地下鉄で敵中深くへ殴り込む手段を選ぶ。習志野駐屯地から北習志野へ移動し、新京成で京成津田沼へ。一般客に「銀座?」と聞かれ「秘密なので」と苦笑でかわし、励まされて降車する。
彼らが乗る臨時列車は先頭部や窓に鉄板を溶接し、銃口や無反動砲を突き出せる隙間まである“急拵えの装甲列車”仕様で、立て籠もり戦闘まで想定している。先発の誘導班が徒歩で経路安全確認済みで、さらに第二・第三案も用意されているとされる。
消灯と“ノリ”の儀式 戦闘前のスイッチを入れる
銀座地下が停電で暗いことに合わせ、列車内も消灯して暗順応を行う。尋旗二佐の統括のもと、井蔵中隊長と大木陸曹長が前方へ。車掌のユーモア混じりの到着アナウンスに苦笑が走る。
大木は掛け声で士気を作り、井蔵に“点検のフリ”までやらされる。実務というより、非日常へ踏み込むための儀式として「統御されたノリ」が機能している。
東銀座駅 突入 改札を飛び越え闇の地下街へ
列車が東銀座へ停車。真っ暗な構内で先行2名が安全確認し、井蔵の号令で部隊が一斉にホームへ躍り出る。改札は切符を通さず(当然開かないので)飛び越えて突破し、そのまま闇の地下街へ突入する。
立川の臨時指揮所 作戦が順調すぎて逆に困る
後方の立川政府施設では、地図上に各部隊の進捗が次々反映される。中即連が皇居外苑を占拠し、敵を銀座へ追い込む。普教連が国会議事堂・首相官邸を確保し機動隊と合流。普通科各連隊が目標確保、損害皆無。機動打撃任務部隊が首都高射撃位置を占拠し、路上の敵排除を進める。
そして空挺の地下突入が“トドメ”として扱われ、各線(浅草線・丸ノ内線・日比谷線)の臨時列車がそれぞれ駅へ突入、地下へ逃れた敵の掃討を開始する。敵は暗い地下を忌避し、空挺が現れると悲鳴を上げて逃げるため、地下制圧は「無人の野を征くがごとく」順調に進む。
順調すぎる問題と政治の手癖
方面幕僚副長の古畑は、進行が予定より早すぎて待機時間が膨らみ、警察など他組織との歩調が乱れる危険を懸念する。しかし東原副大臣は「生存者救出は待つな」と前倒しを指示し、狭間は救出計画の実施を命じる。
そこへ背広組(森盛・那珂湊ら)が「成功を大々的に発表しよう」と言い出す。狭間は、まだ端緒であり油断を招くと拒みつつも、彼らが株価下落や円安を理由に“吉報”を欲しがっているのを聞く。だが本音は、岡松官房長官に花を持たせるための猟官運動だと狭間は見抜く。
狭間は妥協案として、「最初の救出者が出た段階で官房長官が会見し、これは始まりで本番はこれからだと強調する」案を提示し、背広組は検討に入る。
第十二章 生存へのあがき
銀座は“死の街” 雨が血を洗い流し、帝国軍は敗残兵になる
銀座は遺骸が片付けられ宿営地になったが、今度は帝国兵・馬・怪異の死体が街を埋め、精神的にも肉体的にも崩れた将兵が窓越しに怯えていた。季節の移り変わりを告げるような大粒の雨が降り、血の痕を洗い流す一方で、帝国軍の“終わり”を際立たせる。
ヘルム隊の現実主義 逃げるために「評判」を稼ぐ
ヘルムの騎兵隊は戦車の死角になるロータリーに避難し、偶然の地形と「門」の遮蔽で被害が少なかった。だが安全圏でも油断は禁物で、馬が道路に半身を出した瞬間に飛礫が飛んでくる。ヘルムは「もう勝ち目はない」と断言し、撤退を選ぶ。ただし指揮官として体裁も要るため、
- 必須目標:生きて帰る
- 望成目標:評判を良くする(味方救出で格好をつける)
という、身も蓋もないが合理的な方針を部下に共有する。友軍の位置確認を命じ、自分はレルヌム将軍から“退却許可”を得るため捜索に向かう。
ブローロの救出行 レルヌム将軍を背負って鼠のように進む
豪雨の中、ブローロは鉄板壁を乗り越えながら意識不明のレルヌムを背負って逃走していた。途中で落下してレルヌムを下敷きにし、頭を打った疑いまで出るが、レルヌムは咳き込みながら復活する。状況説明はブローロ視点で「空から雷が束で落ちたような攻撃」「堀に落ちて溺れた」「鎧が重くて外して捨てた」と整理され、レルヌムは泳げない過去まで自白する。
ただし安全だと思って道路に出た瞬間、弾丸が降り注ぐ。帝国側はそれを“石弩”の攻撃と認識しており、少しでも姿を見せれば撃たれて道路横断が不可能になっている現実が明確化される。
越久百貨店 地獄の動線と“好機” 沖田・さおりの潜入が詰む
越久百貨店では、地下からの敵襲を恐れた武装勢力がバリケードで要塞化し、警戒が極端に強まっていた。そんな中、将軍生存の報が流れて兵士たちが浮き立ち、グローリアが迎えに行く流れが生まれる。聡子とさおりはその混乱に乗じて行動し、兵士が地下を嫌っていなくなる踊り場からさらに地下へ降りる。
しかし地下でガレリーが二人を獲物扱いし、鞭で聡子の首に巻き付ける。救出“予定時刻”が迫るのに二人が戻らず、店員たちは焦燥するが、根拠の薄い楽観で自分を落ち着かせる。
救出突入 予定より早い空挺の爆破侵入が“成功”と“裏目”を同時に生む
予定より大幅に早く、第一空挺団が地下街から女子更衣室への壁を爆破してバックヤードへ突入する。隊員は「伏せろ」の連呼で民間人を制圧姿勢にさせ、井蔵が指揮して救出を開始、捕虜は次々誘導される。人数は78名想定で救出が進むが、北郷玲奈が「沖田聡子と物部さおりが戻っていない」と訴え、大木が二人の重要性(聡子は政府の指示で潜入)を補足する。
井蔵は「突入時刻を早めたのが裏目」と吐き捨てつつも、まず76名の確実救出を優先し、二人の捜索は状況次第で上階突入も視野に入れる判断へ動く。
帝国側も越久へ集結 “撤退”を言えない空気の中で撤退準備を始める
越久北側玄関でグローリアがレルヌムに抱きつき、レルヌムは残存兵の少なさに歯噛みする。ヘルムや重傷のマジーレスも合流し、残存兵力は越久に約2600、他建物を含めれば約6000規模と見積もられる。連絡は矢文などで辛うじて維持。
マジーレスが「我々はどうすべきか」と踏み込むが、退却の言葉は不興を買いかねず重苦しい沈黙が落ちる。レルヌムは「味方を置き去りにしない」と大義を掲げ、状況把握と撤退作戦立案を命じる。そのためにまず休む、食べて眠って判断力を回復するという、妙にまともな指揮官ムーブを取る。
地下から“亡者”が湧く 帝国側は空挺を死霊と誤認し、家具投下で階段封鎖
直後、地揺れと鈍い音。ガレリーが「地下に敵」と叫び、聡子とさおりを縄で引きずって出すことで事態が露呈する。兵士たちは暗闇から現れる敵を「顔が緑・黒・茶」「目が飛び出た亡者」と形容し、死霊が地下の底から溢れたと恐怖を語る。ゴダセンは「敵が死霊を使役しているのか」と推測し、レルヌムは地下への通路を椅子などで埋めて時間稼ぎするよう命じる。
要するに帝国側は、空挺団の突入を“怪異の侵入”として受け止め、物理的バリケードで封鎖する方向に全振りした。
井蔵の苦渋 階段が“高価な家具の雪崩”になり、救出を断念する
井蔵が第二班の階段へ出ると、踊り場はテーブルや棚が山積みで、上から高価な家具が投げ落とされて危険で近づけない。階段・エスカレーターは同様に潰され、閉所戦闘で最悪の「上から重量物投下」状態になる。日本の建物は堅牢で上階床の爆破突破も現実的でなく、エレベーターは閉じ込めリスクで禁忌。
結果として井蔵は、沖田・さおりの位置特定もできないまま、76名の救出を優先して全員撤収という決断を下す。ここで救出作戦は一部成功しつつ、重要人物の取り残しという“最悪の宿題”を残す。
第十三章 記者会見
四ツ谷駅の“茶番会見” 岡松官房長官の晴れ舞台が始まる
四ツ谷駅改札前にカメラの砲列が並び、官房長官・岡松がフラッシュを浴びながら「銀座解放作戦の開始」「救出作戦の実施」を発表する。確認できている救出待ちは317人で、「取り零しなく救う」と大見得を切る。背後で森盛・那珂湊ら政務官が、これは自分たちが仕立てた“歴史に残る演出”だと満足げに眺め、岡松を首相候補として押し上げる算段を語る。
“予定調和”の到着演出 しかし現場の声が台本を破る
合図と同時に列車が入線し、第一空挺団が救出者を毛布で包んで降ろす。ここまでは完璧な段取りだったが、救出された北郷玲奈がマイクに向かって叫ぶ。
「沖田聡子さんと物部さおりさんを助けてください!」
榊原妙子・神木佐知も続き、捕虜たちは二人の献身(励まし、冗談、支え)を口々に称える。会見は“成果発表”から一転し、「取り残された重要人物」という爆弾を抱えた公開審問になる。
記者の“正義ごっこ”が官房長官を粉砕する
岡松は「もちろん全力救出」と即答するが、記者が一斉に刺す。
- 民間人317人より警察官を優先するのか
- 女性だから助けるのは逆差別では
- 有名人だから優先されるのは納得できない
完全に揚げ足取りだが、政治家はそれを捌けなければ終わりである。岡松はしどろもどろになり、政務官たちは「総理の目は消えた」と悟り、仕掛けた会見が弱点の公開処刑になったことを悔やむ。
警察の“仲間は見捨てない” 救出対象は沖田へ一本化…のはずが
立川の警視庁多摩総合庁舎で、警察庁の芹沢と近藤参事官が全国から集めた特殊急襲部隊40名を前に檄を飛ばす。目的は「敵中潜入し情報を送り続けた女性警察官(沖田)の救出」。批判は来るが胸を張れ、「仲間を決して見捨てない」と唱和し、ヘリで出動しようとする。
救出作戦が“総理の居所”でひっくり返る 倫理が置き去りになる
離陸直前、危機管理監・松平から無線が入る。沖田救出は中止(延期)で、理由は「笹倉総理の居所判明」。会見映像で、北郷玲奈らが「物部さおりから聞いた。総理は銀座アトラスビルに隠れている」と証言する。
松平は「警察の威信にかけて総理救出を優先せよ」と命令し、近藤も同意する。だが芹沢は叫ぶ。「仲間を見捨てないのではなかったのか?」答えは返ってこない。標語は、都合が悪くなると消える。人間らしいね。
防衛省・特殊作戦室に“丸投げ” 竜崎がブチ切れる
防衛省B棟地下。特殊作戦室の竜崎室長に、越久百貨店(武装勢力2000が籠る)から「物部さおり&沖田聡子を救出せよ」という無茶振りが飛ぶ。現場支援で手一杯の特殊作戦室は余力ゼロ。中邑咲良(メイガス)がカップ麺啜りながら他人事で煽り、竜崎は「アヴェンジャーを使う」と宣言するが、結局“部隊”が足りない。
警察案は、Pフォンで位置把握→ヘリボーンで屋上制圧&陽動→懸垂降下で窓突入→確保→懸垂脱出。理屈は分かるが、実行する中隊がいない。
“中隊がいない問題”の答え 保安中隊を見つける
喫煙所で竜崎が「休息中の隊員をかき集める」など危険な案に傾きかけ、中邑が「集団として訓練済みの中隊ならいい」と言って目の前を指す。儀仗訓練をしている保安中隊が“一個中隊”として存在していた。ここで竜崎の作戦が、ようやく現実味を帯びる。
皇居外苑の“後始末” 機動隊の疲弊と、報道・金土の狂気
皇居外苑では豪雨の中、機動隊が死体の間を巡回し、生存確認と負傷者搬送を続ける。死んだふりの武装勢力兵が襲いかかり、刺された隊員は最初「防刃だから大丈夫」と笑うが、結局大量出血で倒れる。
そこへ報道が入り、テレビ旭光の金土が「大量虐殺」「政府の無策の責任」と執拗に撮影し煽り続ける。少年少女の遺体、堀に投げ込まれ踏みにじられた遺体まで映す。
その金土をSIT佐伯と機動隊指揮官らが囲み、核心を突く。「総理の居所を知っていたのに黙っていたな?」金土は泣きながら吐露する。「総理救出が優先されるのは不公平だと思った」「あいつがいないだけで日本がこうなるなんて思わなかった」と。佐伯はカメラの前で襟首を掴み上げる。
第十四章 潜入作戦
皇居の“戦い”は終わり、避難民は去っていく
皇居内に避難していた人々にとっての恐怖はひとまず終わり、彼らは新宿御苑への移動を受け入れて半蔵門から順次退去した。伊丹と佐伯は、親とはぐれた子供たちを見送り、心寧が祖母のもとへ向かうことを後押しする。佐伯は金土を殴った件で叱責を受けに行くことになり、伊丹と握手して警視庁へ戻っていった。
伊丹に届く“直渡し書留” 仕事は終わらせてくれない
雑踏の中、警務隊の半村が「直渡し書留指定の逓送便」としてプラ箱2つを伊丹に手渡す。中身は無線機、迷彩服、小銃・拳銃、弾薬で、メイガス(中邑咲良)から通信が入る。
「予定外の場所に運ばれたら同梱のC4でドカン」などという雑な安全設計を聞かされ、伊丹は疲労困憊を訴えるが、任務は沖田聡子の救出だと告げられる。警察が総理救出へ吸われたため、沖田と物部さおりの救出枠が消滅したという事情である。
アヴェンジャー、地下迷宮を走る 連絡は届かない
伊丹はコードネーム“アヴェンジャー”として地下トンネルへ潜入する。大深度地下で電波もGPSも方位磁石も死に、メイガスとの交信も途切れる。伊丹は歩数を数えて距離を測り、ブラックライトで蛍光ルートが浮かぶ特殊地図を頼りに進む。
通信ケーブル用トンネル、首都高の作業孔、廃河川(京橋川)の痕跡、排水路が無秩序に繋がった“銀座地下の巨大迷宮”を、換気口を這い、水路を腰まで浸かりながら突破し、越久百貨店の地下4階・地下駐車場へ侵入する。
人類、こういう時だけ無駄にインフラが複雑で頼もしい。
一方その頃 帝国軍は包囲でジリ貧、脱出案に縋る
銀座側では、レルヌムの指揮で死霊の侵入を押し返すが、帝国軍は分断され孤立し、周囲の建物が次々に陥落する。味方が引きずり出されても助けに行けず、焦れた第二大隊が飛び出して遠距離攻撃(飛礫)で壊滅し、レルヌムは「外に出れば丸見えだからダメだ」と現実を突きつける。
正々堂々を叫ぶ帝国兵に対し、亜人の獣兵使いたちは“今さら何を”という冷めた目を向け、立場逆転への苦味と小さな溜飲を覚える。
煙で視界を潰し、馬で陽動し、“門”へ退く作戦が組まれる
指揮官会議で、ゴダセンが照明破壊と燻煙の活用を提案する。燃える物を窓から投げて道路にガラクタ山を作り、火矢で燃やして煙幕を張る。敵が闇雲に撃つ危険はあるため、煙は自分たちから離したい。
さらにヘルムが“騎兵の馬だけを走らせる”案を出し、煙と夕闇の中で轟く馬蹄音で「突撃が来た」と敵の注意を奪う。その隙に一団は“門”からアルヌスへ撤退する。愛馬を犠牲にする苦渋も織り込みつつ、レルヌムは採用し、連絡(矢文や投擲の伝言)で散在部隊へ段取りを流し始める。
沖田と物部は捕縛されたまま “空気”が悪い方向へ変わる
沖田聡子と物部さおりは一度逃げかけたがガレリーに先回りされ、殴られて縛られ、連れ戻されている。グローリアは扱いの酷さに不満を示すが、逃亡未遂を知って拘束解除まではしない。
二人は「内閣危機管理室が状況を把握している」「警察の精鋭が来るはず」と自分に言い聞かせる一方、さおりは生還したら特集番組を立ち上げ、沖田も呼んで出演させるなどと夢を語る。沖田は“元女警グラビア”案を一瞬想像して笑って誤魔化す。
嫌な予感が現実になる前兆 ガレリーが短剣に手を掛ける
レルヌムの命令で武装勢力が活発に動き出すと、周囲の視線が沖田とさおりへ集まり、空気が剣呑になる。ガレリーが何か告げ、グローリアが悲しそうに俯き、レルヌムが慰める。カステロが“別れの挨拶”めいた調子で告げに来る。
そして蜥蜴女ガレリーが、ニヤつきながら短剣の柄に手を掛けて近づく。次に起きることは、もう想像がつく。
第十五章 最終局面
三三普連の掃討と“絵”を狙う古村崎
日没前、雨が上がり、三三普連は銀座五丁目区画で建物を一棟ずつ捜索し、生存者救出と怪異・武装勢力の掃討を進めていた。古村崎とカメラマン福は、隊員の動線に逆らって建物内へ入り、遺体や隠れ場所、救出が間に合わなかった被災者まで“丹念に”撮る。隣ビルの銃撃と爆発でトロルが落下する場面すら「いい絵」として回収する。
小学校を連隊本部兼避難所にし、疲労困憊の隊員、救護所の負傷兵も撮影対象となる。そこで「自衛隊も無傷ではない」現実が映し出される。
総理救出の搬入と、古村崎の露骨な煽り
救護所に警察庁の芹沢率いる特殊急襲部隊が到着し、運び込まれたのは笹倉総理とSP2名。SPも総理も状態が悪く昏睡状態で、空き教室が即席治療室にされる。
古村崎は人垣を割って総理に突撃し、「犠牲者が出たがコメントは」「役に立っていたのか」「最優先治療の資格はあるのか」と、ほぼ公開処刑の形でカメラに向けて語る。芹沢は力ずくで排除するが、古村崎は“自衛官が負傷して呻く横で総理が優先される”対比で世論を炊きつけた。
晴海通りの警戒線と、戦いが終わらない感触
別地点では七四式戦車が四丁目交差点方向を威圧し、第三一普通科連隊の桑原・野木原らが日比谷方向(北西)から逃げてくる怪異・武装勢力を狙撃する。オークを射撃で止め、機動隊が止め刺し確認する流れが確立していた。
桑原は野木原の腕を褒めつつ「現役復帰しないか」と揺さぶり、野木原も“この戦いは続く”気配を感じ取る。
現場の“絵が足りない”というテレビ側の本音
潮崎陸将は取材に「順調」と答えるが、現実はテンポよく進まない。カメラマン胡麻味は一方的な掃討の連続に飽きかけ、移動すべきか逡巡する。
そのとき越久百貨店屋上で“映画みたいな”戦闘が見え、胡麻味は即座に「これを撮れ」と興奮する。ここで物語は屋上の最終局面へ接続する。
屋上の人質拘束 戦線は聡子の剣に託される
屋上では物部さおりがブローロに背後から拘束され、喉元に剣を突き付けられて盾にされる。伊丹は小銃を構えるが撃てない。上空のヘリも誤射の恐れで手が出せない。
ガレリー(蜥蜴女)が剣を抜いて前に出て、沖田聡子もファルカタで応じ、合図なしの果たし合いが始まる。
ガレリーの首が飛ぶ 聡子の“勝ち方”が異常に冷たい
ガレリーは腕力で圧殺するつもりで乱打するが、聡子は受け止めず流し、間合いの出入りでガレリーの軸を崩す。ガレリーは剣も身体も“粘る何か”に絡め取られる感覚に焦り、半歩引いた瞬間に踏み込まれて決壊する。
聡子は峰で滑らせていなし、崩れた相手の隙に一閃。ガレリーはうなじを断たれ、自分の首が落ちたと理解する。ここで“聡子救出”の最大障害が消える。
狙撃の一発で人質が解放され、伊丹が銃剣で刺す
ガレリーの首が転がるのを見てブローロが硬直する。紅白の電波塔上の狙撃班長・庵辺がその隙を撃ち抜き、ブローロの右肘を貫通させて剣を落とさせる。
腕が緩んだ瞬間、さおりは合図を待たず肘鉄で離脱し走る。伊丹はすれ違いざまに銃剣を突き立て、ブローロの右腹部(肝臓付近)に刺突を入れる。
鎖帷子が引っ掛かり“刺したのに抜けない”地獄が始まる
ところが銃剣ののこぎり部が鎖帷子に噛み、抜けない。ブローロは刺さった小銃の銃身を握って、伊丹ごと屋上から落ちるつもりで押し出してくる。伊丹は縁まで追い詰められ、説得も通じず、いよいよ詰みかける。
伊丹の最適解 小銃を捨てて“尻を押す”
伊丹は諦めて小銃を手放し、横に退く。力の行き場を失ったブローロはつんのめり、縁から飛び出す。踏みとどまろうとするところへ、伊丹が爪先で尻を軽く押し、ブローロは転落する。
伊丹は「銃の回収どうしよう」と青ざめるが、メイガスは保安隊に回収させるとして通信を切り、アヴェンジャーは二人を連れて迎えのCH-47Jに乗って離脱する段取りとなる。
余章 さらなる戦いに向けた結末
陽動の正体と、ヘルムの“指揮官あるある”敗北
越久を出て脱出準備に戻ったヘルムは、敵百人隊が「逃走」ではなく隊列を保って去っていくのを見て違和感を覚える。直後、屋上から敵のトンボ(ヘリ)が離脱し、あの激しい攻撃が“陽動”だったと理解する。
だが部下の一部は分からない。跟随すれば飛礫が撃てないと短絡し、ヘルムの制止を無視して十騎ほどが独断追撃に出る。ヘルムは「統率できたと思い込んでいた」自分の甘さを痛感し、連れ戻しに走る。
結果は最悪で、側方から現れた“鉄馬”に乗る敵(四名)が石弩めいた武器で騎兵を瞬殺し、十騎はあっという間に全滅する。ヘルムは怒りと恐怖で突撃し、一騎打ちになるが、相手は鉄馬の陰に隠れる曲芸じみた機動で応戦する。ヘルムは騎射(パルティアンショット)まで駆使して食らいつくものの、街路の障害物で愛馬が転倒し、転がったところを囲まれて殴打され、意識を落として捕虜となる。
つまり、銀座での遠征は「勇猛」じゃなく「判断ミスと交通事故」で終わった。戦場って、ほんと理不尽。
温泉一曹の“業務優先”が冷たいほど正しい
ヘルムと渡り合った第一偵察隊の温泉一等陸曹は、捕虜対応が面倒なので「放置でいい」と割り切る。次の任務(怪異の炙り出し、警察協力)が詰まっており、介入自体が余計だったと内心で整理している。
現場の論理としては妥当だが、人間味はゼロである。まあ戦場で人間味を出すと死ぬ。
“逃がすために撃たない”という超現実的な終幕
特殊作戦室から「レルヌム(敵最高指揮官)が生存」の報告が入り、潮崎は「秩序を保った撤退」を狙って、戦車に攻撃手控えを指示する。敵は門周辺に可燃物を投げて放火し、煙幕で視界を潰して脱出を開始する。
勝ってる側が、わざと逃げ道を開けて“戦争を閉じる”。映画だと地味だが、現実の戦争はだいたいこういう“後始末”で決まる。
ブローロの“英雄化”と、レルヌムの矛盾した公平論
レルヌムは屋上から落下死したブローロに黙祷し、「英雄の亡骸」として称える。古参兵は遺体を連れて帰りたいが、レルヌムは「不公平」を理由に拒否する。
しかしゴダセン(従軍魔導師総監かつ元老院議員)が「英雄なら多少の贔屓は通る」と押すと、あっさり特別許可。結局“公平”は、権威の許可が出た瞬間に溶ける。人間社会の標準仕様。
グローリアは「敵が動かないのは詰めが甘い」と言うが、カステロは「見逃されているだけ」と冷静で、レルヌムもそれを認めつつ「必ず戻る」と再戦を宣言して門の向こうへ撤退する。
CH-47J帰投の中で始まる、聡子の恋と最悪の助言
立川へ向かうチヌーク内で、聡子は伊丹を凝視し、さおりにからかわれて話しかける。伊丹の返答は「同人誌即売会の戦果報告」。よりによってその話題である。
さらに伊丹が「嫁さんからメール」と言い、聡子は伊丹を独身だと思い込んでいた自分に絶望する。そこへ、さおりが“悪魔みたいに”「禁じ手はない」「不倫から略奪婚もある」と焚き付け、番組出演を餌に煽る。聡子は全力で拒否して絶叫する。
この余韻が、後に聡子を“助けに来てくれるはず”という謎信念へ誘導し、内閣危機管理室指揮下の秘匿部門へ異動して特殊任務に就く伏線になる。恋愛がキャリアを歪める瞬間って、だいたいこういう雑なきっかけで始まる。
D+6 政府施設 収束宣言は「政治」と「相場」で決まる
七日目、政府内では「事件は収束した」と言い切りたい勢力と、都内に残る怪異・落伍兵、再侵攻リスク、門の向こうの調査、感染症リスク、健康管理、法理(専守防衛や憲法)などを理由に“まだ終わってない”勢力が揉める。
結論は露骨で、「金曜日に収束宣言を出せれば月曜の市場で円と株が回復する」という経済都合が強く働く。
そして物語は、公式には七日目に「銀座事件」収束宣言が出たが、それは政治経済的な幕引きに過ぎず、実際には都内各所で戦闘が続いたと締める。
用賀二佐の場合
状況
北条内閣総理大臣代行から治安出動が命じられ、相馬原駐屯地はヘリのローター音とジェットの噴気で地獄の送風機会場になる。第12旅団隷下の部隊が整然と出動準備を進める中、用賀二佐は第二連隊長・日之一佐に食い下がっていた。
用賀二佐の狙い
UH-1Hにスピーカーを盛りまくって、上空から
- 住民には避難呼びかけ
- 敵には投降勧告
という“本来目的”に加え、さらに - 敵へ威圧
- 味方の士気高揚
- 助けを待つ民への励まし
を狙って「バックミュージック」を流そうとする。
心理戦・神経戦だと言い張る。言い張るだけならタダ。
やってることが完全におかしい
日之連隊長が見たヘリは「ローターと操縦席をスピーカーに付けた」みたいなゴテゴテ仕様。
用賀は技術オタク全開で、
- 4wayに低音域バックロードホーン追加
- 15インチウーファー
- スーパーツィーター
- さらに音声帯域用に10インチ・コーン8個(Low-Mid)
と、もう野外フェス装備である。ヘリで。
音源は「カラヤン指揮・ワルシャワフィルのワーグナー名盤」。
つまり、異世界侵略や怪異より先に、住民の鼓膜を制圧する気だった。
致命的ミス
ここまで盛っておいて「パワーアンプが届いてない」。
オーディオ沼で一番やっちゃいけないやつ。
日之連隊長は当然キレる。目的逸脱もさることながら、出動が遅れるのが致命的だから「諦めろ」「ボツ」と切り捨てる。
結末と含意
ヘリは号令で次々離陸。用賀二佐の“空飛ぶワーグナー砲”計画は出動には間に合わず封印される。
ただし本文は「この準備が実戦で役立つのはもう少しばかり後」と言っているので、用賀はこの先、どこかで満を持して“音で殴る”局面を作る。
ゲート0 -zero- 〈前編〉レビュー
ゲート 自衛隊 全巻まとめ
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ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 一覧
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

あらすじと考察は本文で詳しく解説。

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本編

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