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後宮の烏白川紺子

「後宮の烏 4巻」烏妃を頼る者は徐々に増え、、 感想・ネタバレ

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後宮の烏 4の表紙画像(レビュー記事導入用) 後宮の烏

後宮の烏3レビュー
まとめ
後宮の烏5レビュー

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  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
  2. 読んだ本のタイトル
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
  5. 晩霞が寿雪から離れていく
          1. 蚕神|幽鬼より問題なのは消えた繭
          2. 本物の幽鬼は、ただ蚕が好きだった
          3. 金の杯|淡海が殺人犯として捕まりそうになる
          4. 被害者に聞いても犯人はわからなかった
          5. 罪人であっても、寿雪は死者を見捨てない
          6. 人助けをしていたら「緇衣娘娘」になってしまった
          7. 墨は告げる|書庫を彷徨う幽鬼
          8. 消されそうになった記録が、寿雪を救う手掛かりになる
          9. 禁色|晩霞の父・朝陽が都へやって来る
          10. 寿雪が人とつながるほど危険になっていく
          11. 晩霞の妊娠と賀州の御家騒動
          12. まとめ|あれ? 幽鬼は出てきたか?
  6. 考察・解説
      1. ストーリー・プロット
        1. 第1幕:蚕室の幽鬼と繭の紛失
        2. 第2幕:偽幽鬼の正体と沙那賣の蚕
        3. 第3幕:金の杯と淡海への嫌疑
        4. 第4幕:招魂による真実の解明
        5. 第5幕:古文書の発見と烏漣娘娘の秘密
        6. 第6幕:沙那賣朝陽の策略と高峻の苦悩
        7. 第7幕:鯊門宮の対決と白雷の再臨
      2. 主要な転換点
      3. 主人公を中心とした人物関係の変化
      4. 主人公の認識と周囲の評価
      5. クライマックス:白雷の襲撃と呪詛
      6. 巻末時点の状況
      7. この巻のプロット構造
    1. 蚕室の幽鬼
        1. 蚕室に伝わる不気味な噂
        2. 宮女の来訪と貴重な繭の消失
        3. 寿雪の探索と幽鬼の正体
        4. 繭の盗難と事件の背景
    2. 金の杯
        1. 宝物の来歴と従者の過去
        2. 真相の究明と悲劇的な結着
        3. 象徴的意味と過去との訣別
        4. まとめ
    3. 計衷の冤罪
        1. 計衷の人物像と冤罪の経緯
        2. 隠蔽工作の真相と権力者の意図
        3. 彷徨う霊魂と屏風下貼りの発見
        4. 物語における重要な意義と神話の解明
        5. まとめ
    4. 緇衣娘娘信仰
        1. 信仰の発生と由来
        2. 拡大の背景と伝播経路
        3. 偽護符事件と背後の謀略
        4. 泊鶴宮における騒動と皇帝の下した処置
        5. 主人公の自省と掟の再認識
        6. まとめ
    5. 沙那賣朝陽の策
        1. 一族の存続と安泰を目指す根本思想
        2. 長老の暴走を利用した内部粛清
        3. 皇帝への取引と関係の再構築
        4. 烏妃の脅威に関する洞察と宮廷への揺さぶり
        5. 肉親すら道具とする冷徹な統制
        6. まとめ
  7. 登場キャラクター
    1. 夜明宮
      1. 柳寿雪
      2. 麗娘
      3. 九九
      4. 蘇紅翹
      5. 星星
      6. 桂子
    2. 皇室・凝光殿
      1. 夏高峻
      2. 衛青
      3. 温螢
      4. 淡海
    3. 後宮(妃嬪・宮女・宦官)
      1. 雲花娘(花娘)
      2. 藍晩霞(鶴妃)
      3. 年秋児
      4. 万若萃
      5. 衣斯哈
      6. 利冗
      7. 石安
      8. 牧憲
      9. 漆雕奉
      10. 吉鹿女
      11. 紀泉女
    4. 朝廷・官吏・学士
      1. 令狐之季
      2. 何明允
      3. 漆雕坤
      4. 沙那賣朝陽
      5. 沙那賣晨
      6. 沙那賣亮
    5. 冬官府・神祇
      1. 董千里
      2. 薛魚泳
      3. 烏漣娘娘
      4. 羽衣
    6. 市井・宗教・巫術師
      1. 封一行
      2. 白雷(玉眼)
      3. 隠娘
      4. 梟
    7. 歴史上の人物・過去の人物
      1. 欒夕
      2. 香薔
      3. 先帝
      4. 計衷
      5. 小明
    8. 集団・組織
      1. 禁軍
      2. 内侍省
      3. 勒房子
      4. 冬官府(放下郎)
      5. 洪濤殿(学士・経生)
      6. 少府監
      7. 八真教
      8. 沙那賣家
      9. 海燕子(阿尼族・蛇古族)
      10. 鵐帮
      11. 幽宮
  8. 展開まとめ
    1. 蚕神
    2. 金の杯
    3. 墨は告げる
    4. 禁色
  9. 同シリーズ
    1. 後宮の鳥
  10. 同著者のシリーズ
    1. 花菱夫妻の退魔帖
  11. その他フィクション

物語の概要

■ 作品概要

夜明宮で幽鬼の相談を受ける烏妃・柳寿雪の日常は、蚕室での幽鬼騒動と貴重な「賀州の繭」の紛失事件を契機に流動化する。
同時期、内侍省の宦官・牧憲が殺害され、護衛の淡海に過去の因縁から殺人の嫌疑がかけられる事態が発生する。
寿雪はこれらの事件を解決する過程で、死者をも憐れむ慈悲深い「緇衣娘娘(しすいにゃんにゃん)」として後宮内で神格化され、意図せず政治的・宗教的な勢力の中心となっていく。
一方、外廷では賀州から沙那賣朝陽が入京し、寿雪の出生の秘密(銀髪)を盾に、彼女を「王朝の禍の種」として排除するよう皇帝・夏高峻に圧力をかける。
さらに寿雪は、幽鬼・計衷の未練を解く過程で発見した古文書により、自身の内に宿る烏漣娘娘が千年前の戦いで半身「黒き羽刈の大刀」を失い、弱体化しているという神話的真実に到達する。
物語は、弱体化した烏漣娘娘を蔑み、鼇の神の優位を狙う宿敵・白雷の再臨により、寿雪が守るべき「擬似家族」との絆を懸けた決断を迫られる局面で終結する。

■ 主要キャラクター

白雷:  鼇(ごう)の神に仕える占卜師。変装して「玉眼」と名乗り、呪具「詛戸(うめどろ)」を用いた罠で寿雪を襲撃。弱体化した烏漣娘娘の抹殺を企図する。

柳寿雪:  烏妃。自身の孤独を規定していた先代の教えに葛藤しつつ、冤罪に陥った淡海を救うために「助けてほしいと願え」と説き、彼を保護する決断を下す。

夏高峻:  皇帝。寿雪への身体的接触を許容されるほど心理的距離を縮めており、沙那賣朝陽の烏妃排除要求に対し、政治的リスクを承知で彼女を庇護する立場を貫く。

沙那賣晩霞:  鶴妃。父・朝陽の冷酷な支配への恐怖と寿雪への友情の間で分裂し、寿雪の銀髪の秘密と、証拠となる抜け毛を父に渡してしまう。

淡海:  護衛の宦官。本名は淡海。没落した名家・淡家の生き残りであり元盗賊。家宝「金の杯」を盗んだ牧憲への怨恨による殺人嫌疑をかけられるが、寿雪により救済される。

温螢:  護衛の宦官。優れた間諜能力で事件の背景を調査する。寿雪に対し、彼女の破滅時には運命を共にするという絶対的な忠誠を誓う。

沙那賣朝陽:  沙那賣一族当主。一族の安泰を最優先する冷徹な現実主義者。寿雪を王朝を揺るがす宗教的象徴(緇衣娘娘)と見なし、政治的な粛清を画策する。

読んだ本のタイトル

後宮の烏 4
著者:白川紺子 氏
イラストレーター:香魚子 氏
出版社:集英社
発売日:2020年4月17日
ISBN:978-4-08-680314-4

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

あらすじ・内容

今宵も夜明宮には訪いが絶えない。泊鶴宮の蚕室で、大切な繭がなくなったという宮女……。一方、花娘を通じ城内での謎多き失せ物探しも舞い込んで!? 烏妃を頼る者は日に日に増え、守るもののできた寿雪の変化に言いようのない感情を抱く高峻。やがて二人は真実眠る歴史の深部へ。鍵を握るのは名もなき幽鬼か、あるいは――。圧倒的中華幻想譚、待望の第四弾!!【目次】蚕神/金の杯/墨は告げる/禁色

後宮の烏 4

感想

4巻を読んでいて感じたのは、

「あれ? 幽鬼は出てきたか?」

いや、ちゃんと出てくる。

蚕室にも出るし、書庫にも出る。

殺された宦官の魂まで寿雪が呼び出している。

それなのに読み終わって印象に残っているのは、幽鬼より圧倒的に生きている人間たちなのであった。

鶴妃・晩霞の父である朝陽。

冤罪を作り上げようとする勒房子の者。

寿雪を「緇衣娘娘」として崇め始める宮女や宦官たち。

そして再び現れる白雷。

幽鬼より人間のほうが怖くない?

そんな4巻だった。

晩霞が寿雪から離れていく

鶴妃の晩霞は、賀州の有力者である沙那賣家の娘である。

寿雪とはかなり親しくなっていた。

寿雪からすると、数少ない友人のような存在だったと思う。

ところが、父親の朝陽から寿雪に近づくなと言われてしまう。

寿雪は銀髪であり、前王朝の血筋を引いている。

それだけでも現在の王朝にとって危険な存在になりかねない。

しかも寿雪は、後宮の中で多くの人間から慕われるようになっている。

朝陽から見れば、前王朝の血筋を持つ寿雪の周囲に人が集まっている状況は無視できない。

一方の晩霞も、高峻の子を身籠った可能性が出てくる。

もし本当に皇帝の子を産めば、晩霞の実家である沙那賣家の立場も変わってくる。

だから父親としては、娘を寿雪から遠ざけたい。

理屈はわかる。

わかるのだが……。

仲良くなった寿雪と晩霞が、本人たちの意思とは関係ないところで離されていくのが辛い。

寿雪はようやく人とのつながりを持ち始めたのに、今度はそのつながり自体が政治的な問題になっていく。

烏妃って面倒くさすぎない?

蚕神|幽鬼より問題なのは消えた繭

そんな中、蚕を養殖している建物に幽鬼が現れるという相談が寿雪へ持ち込まれる。

ところが相談してきた宮女たちは、幽鬼そのものについてはそれほど問題にしていない。

問題なのは、

「繭の数が足りない」

ということだった。

最初は幽鬼が盗んでいるのではないかと疑い、その後を追ってみる。

しかし、どうも違う。

しかも翌日になると、寿雪に相談してきた宮女が突然、

「もう調べなくていい」

と言い出す。

いやいや。

絶対何かあっただろ。

あまりにも様子がおかしいため、寿雪は再び蚕室を調べる。

すると、宮女を脅した「幽鬼」と、普段から蚕の世話をしている幽鬼は別物だと判明する。

そして寿雪は見抜く。

片方は幽鬼ですらない。

宦官が女装して幽鬼に化けていたのである。

幽鬼の噂を利用して繭を盗んでいたわけだ。

本物の幽鬼より偽物の幽鬼のほうが悪いことしてるじゃないか。

本物の幽鬼は、ただ蚕が好きだった

一方、本当に蚕室へ現れていた幽鬼には悪意がなかった。

ただ蚕が好きだった。

死んで幽鬼になっても蚕の世話をしている。

これまでの『後宮の烏』には、強烈な未練や恨みを抱えた幽鬼が多かった。

だから今回も何か重たい事情があるのかと思ってしまった。

ところが、ただ蚕が好き。

なんだか妙にほっとする。

最終的には、その幽鬼が出入りしていた蚕の塚を宮女たちがお参りするようになる。

怖がられていた幽鬼が、いつの間にか蚕を見守る存在のようになっている。

4巻の中では比較的穏やかな話だった。

なにしろ、この後は生きている人間の話がどんどん怖くなっていく。

金の杯|淡海が殺人犯として捕まりそうになる

突然、淡海が殺人の容疑をかけられる。

殺されたのは、かつて淡海の家に仕えていた宦官だった。

しかも、その男は淡海の家から「金の杯」を盗んでいた。

昔の使用人。

盗まれた家宝。

そして、その使用人が殺された。

動機だけを見れば淡海が疑われるのもわからなくはない。

しかし淡海は殺していないと言う。

寿雪も淡海を引き渡そうとしない。

それなら本人に聞けばいい。

寿雪の解決方法が烏妃すぎる。

殺された宦官の魂を呼び出して、直接話を聞くのである。

幽鬼から事情聴取。

普通の捜査では絶対にできない。

被害者に聞いても犯人はわからなかった

ところが、殺された本人にも犯人はわからなかった。

後ろから襲われたため、顔を見ていないのである。

死者なら全部知っているわけではない。

ここが妙に面白かった。

ただし、犯人が着ていた服の色は覚えていた。

その情報によって、少なくとも淡海が犯人ではないことがわかる。

さらに寿雪は、奪われた金の杯の行方を探す。

すると杯が見つかったのは、淡海を捜査していた者の弟の部屋だった。

つまり、淡海を追い詰めようとしていた側に問題があったのである。

弟を庇うためなら、冤罪でも構わない。

状況証拠を作り上げて淡海を犯人にしてしまえばいい。

怖い。

幽鬼より怖い。

しかし真相へたどり着いたときには、その兄弟はすでに死んでいた。

罪人であっても、寿雪は死者を見捨てない

ここで印象に残ったのは、寿雪の対応だった。

寿雪は兄弟が冥府へ旅立てるように祈る。

彼らは善人ではない。

淡海へ罪を被せようとした人間である。

それでも、死んだからといって放っておかない。

後宮にいる宦官の中には罪人として宮刑を受けた者もいる。

そのため、死後にまともに弔われない者も珍しくない。

そんな彼らからすれば、罪を犯した者であっても死後の安寧を願う寿雪の姿は特別に見えたのだろう。

そして、寿雪を信奉する者が増えていく。

……あ。

これ、まずいやつだ。

人助けをしていたら「緇衣娘娘」になってしまった

寿雪本人は、信者を集めたいわけではない。

困っている人間がいた。

幽鬼がいた。

だから助けた。

基本的にはそれだけである。

しかし、助けられた側から見れば違う。

誰にも助けてもらえない人間を救ってくれる。

死んだ後ですら見捨てない。

そんな烏妃を「緇衣娘娘」として崇める者が増えていく。

寿雪本人の意思とは関係なく、一種の信仰が出来上がってしまった。

これは危ない。

しかも寿雪は前王朝の血筋を引いている。

前王朝の血を引く銀髪の少女。

不思議な力を持つ烏妃。

後宮の人々から慕われ、信仰まで集め始める。

現在の王朝を守る側から見れば、

「こいつ、そのうち反乱の象徴になるんじゃないか?」

と警戒してもおかしくない。

寿雪にはそんな気がまったくないのに。

人を助けた結果、政治的に危険な存在になっていく。

なんとも皮肉である。

墨は告げる|書庫を彷徨う幽鬼

次は書庫に現れる幽鬼である。

相談を持ってきたのは、寿雪を「阿妹」と呼ぶ花娘。

幽鬼から事情を聞いてみると、自分が生前に書いたものを探しているらしい。

彼はさまざまな書物を書き写す仕事をしていた。

しかし、書いてはいけないものを書いたことで処刑され、彼が書き写したものもすべて焼かれてしまったという。

ところが幽鬼となった彼は、

「この書庫のどこかに自分の書いたものが残っている」

と感じている。

寿雪たちは探す。

しかし見つからない。

そこで知恵を借りると、屏風の下貼りに古い紙が使われている可能性が出てくる。

調べてみると……。

あった。

自分の仕事が完全には消えていなかった。

それを知った幽鬼は満足して旅立っていく。

書いたものが残っている。

それだけで救われる。

個人的には、かなり印象に残る話だった。

消されそうになった記録が、寿雪を救う手掛かりになる

さらに重要なのは、その書物の内容である。

なぜ彼は処刑されなければならなかったのか。

そこには寿雪の中にいる烏漣娘娘についての記録が含まれていた。

だから消された。

そして、消されたはずの記録が偶然残っていた。

そこから烏漣娘娘について新しい事実が見えてくる。

烏漣娘娘には失われた半身がある。

その存在が眠っている場所までわかってくる。

ここまで来ると、物語の目的が少し変わってきたように感じる。

最初は幽鬼の未練を解決する物語だった。

それが寿雪の出生へつながり、烏妃の歴史へつながり、ついには烏漣娘娘そのものの秘密へ踏み込み始めている。

何百年も前に消されそうになった誰かの仕事が、今の寿雪を救う手掛かりになる。

これは面白い。

禁色|晩霞の父・朝陽が都へやって来る

そして後半。

鶴妃・晩霞の父である朝陽と、その息子たちが都へやって来る。

さらに以前騒動を起こした白雷までいる。

嫌なメンバーが揃ってきた。

朝陽は賀州の蚕を高峻へ献上し、皇帝への忠誠を示す。

表向きは忠臣である。

しかし腹の中はよくわからない。

しかも朝陽は、寿雪を排除すべきだと考えている。

理由もわからなくはない。

寿雪は前王朝の血筋。

さらに緇衣娘娘として信仰まで集め始めた。

そのうえ、娘の晩霞は高峻の子を身籠った可能性がある。

もし皇子が生まれれば、沙那賣家は外戚になる可能性がある。

そんな状況で前王朝の血筋を持ち、人々から信仰される寿雪がいる。

政治的に見れば、危険物扱いされても不思議ではない。

本人は幽鬼の相談を聞いているだけなのだが。

寿雪が人とつながるほど危険になっていく

ここまで読んでいて面白いと思ったのが、寿雪の変化と政治的な危険性が完全につながってしまったことである。

1巻の寿雪は孤独だった。

人を寄せ付けない。

烏妃として一人で生きていく。

それが巻を重ねるごとに変わってきた。

九九がいる。

イシハがいる。

温蛍がいる。

淡海がいる。

高峻が来る。

花娘にも妹のように扱われる。

晩霞とも仲良くなった。

人間として考えれば、いい変化だと思う。

孤独だった寿雪に居場所ができている。

ところが政治の世界では逆になる。

人が集まる。

慕われる。

信仰される。

それだけで「勢力」になってしまう。

寿雪本人が権力など望んでいなくても関係ない。

周囲が勝手に意味を与えてしまう。

先代の烏妃が寿雪に、人と深く関わらないよう教えていた理由も少しわかってきた気がする。

孤独でいることは、烏妃を守るためでもあったのかもしれない。

晩霞の妊娠と賀州の御家騒動

さらに晩霞には、高峻の子を身籠った可能性が出てくる。

これによって賀州の沙那賣家まで一気に重要になってくる。

朝陽。

その息子たち。

長男と次男の間にも何やら確執がある。

そして晩霞。

そこへ白雷まで絡んでいる。

後宮だけで終わる話ではなくなってきた。

賀州そのものが動きそうな雰囲気がある。

騒乱の予感がビシビシと伝わってくる。

まとめ|あれ? 幽鬼は出てきたか?

『後宮の烏』4巻にも幽鬼の話はある。

蚕を愛して死後も世話を続ける幽鬼。

自分が書き残したものを探し続ける幽鬼。

殺人事件では、被害者本人の魂まで呼び出した。

ちゃんと怪異の物語である。

なのに読み終わると、

「あれ? 幽鬼は出てきたか?」

という気分になった。

それくらい、生きている人間たちの動きが強烈だった。

特に印象に残ったのは、寿雪が人を救えば救うほど危険な存在になっていくことだ。

本人は権力など欲しくない。

人を集めるつもりもない。

それでも救われた人たちが寿雪を慕う。

やがて信仰する。

そして権力者から危険視される。

孤独から抜け出しつつあることが、そのまま寿雪を追い詰めていく。

なんとも皮肉である。

さらに晩霞の妊娠。

朝陽と息子たちの上京。

賀州内部の不穏な関係。

白雷の再登場。

そして烏漣娘娘の失われた半身。

幽鬼の未練を解決していた頃が、なんだか平和に思えてきた。

次に問題になるのは幽鬼なのか。

賀州なのか。

白雷なのか。

それとも寿雪を信仰する人間たちなのか。

……もう幽鬼だけ相手にしていたほうが楽なんじゃないか?

最後までお読み頂きありがとうございます。

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考察・解説

ストーリー・プロット

第1幕:蚕室の幽鬼と繭の紛失

【原因】泊鶴宮の宮女・秋児より、蚕室に現れる宮女の幽鬼と、沙那賣一族が門外不出とする貴重な「賀州の繭」の紛失について相談が持ち込まれる。【行動】寿雪は宦官に変装して蚕室に潜入し、実在する幽鬼の動線を確認するとともに、周辺の調査を開始する。【結果】幽鬼が実在すること、そして現場に物理的な違和感があることを察知する。【次の展開】繭の紛失が単なる超常現象ではなく、人的介在の可能性があるとして本格的な捜査へ移行する。

第2幕:偽幽鬼の正体と沙那賣の蚕

【原因】調査の結果、幽鬼の噂を悪用して繭を盗む者の存在が浮上する。【行動】寿雪は先代・麗娘から継承した「縷(る)」を用いた結界の儀式を実際に執り行い、犯人を心理的に包囲する。犯人は宦官・利冗と石安であり、繭を養蚕農家に横流ししようとしていた。【結果】現行犯で犯人を拘束し、紛失した繭を回収することに成功する。【次の展開】この解決によって後宮内での寿雪の評価が急上昇し、その影響力を危惧した内侍省の犯罪捜査機関「勒房子(ろくぼうし)」が夜明宮への介入を試みる。

第3幕:金の杯と淡海への嫌疑

【原因】内侍省の牧憲が殺害され、勒房子の漆雕坤が夜明宮に現れて淡海の連行を要求する。【行動】牧憲はかつて淡家から家宝「金の杯」を盗んだ男であり、淡海には明確な動機があった。また、金の杯には「持ち主に不幸をもたらす」という牧憲の証言通りの呪縛の噂があった。【結果】淡海は過去の悲劇(従姉の自死)から自暴自棄となり、抵抗を放棄する。【次の展開】寿雪は自身の護衛を不当な嫌疑から守るため、独自の手段で真犯人を特定することを決意する。

第4幕:招魂による真実の解明

【原因】勒房子の強制捜査を退けた寿雪は、直接的な証言を得るため被害者の魂を呼び出す。【行動】術を用いて牧憲を招魂。牧憲の証言により、真犯人が勒房子の漆雕坤の弟・奉(ほう)であり、兄の坤が弟を庇うために淡海に罪を着せようとした事実が判明する。【結果】追い詰められた坤は弟を殺害し自害するという悲劇的結末を迎えるが、淡海の冤罪は証明される。【次の展開】一連の事件を経て、寿雪は罪人をも憐れむ姿から「緇衣娘娘」としての信仰を集め始め、それが外廷の沙那賣朝陽を刺激する。

第5幕:古文書の発見と烏漣娘娘の秘密

【原因】洪濤殿の幽鬼・計衷(黄麻紙の横領罪で処刑された経生)の冤罪を晴らすべく、彼が執着する「書写した記録」を捜索する。【行動】之季の協力を得て、書庫の屏風の下貼りに再利用されていた計衷の手による記録を発見する。【結果】記録には、千年前の戦いで烏漣娘娘が鼇の神に敗れ、半身「黒き羽刈の大刀」を切り離して東海に沈めた神話が記されていた。【次の展開】烏漣娘娘が不完全な「半身」の状態であることが判明し、物語の目的が「失われた半身の奪還」という神話的命題へとシフトする。

第6幕:沙那賣朝陽の策略と高峻の苦悩

【原因】沙那賣朝陽が入京し、高峻と対談する。【行動】朝陽は、後宮内で「緇衣娘娘」として民衆の支持を集める寿雪を、王朝を覆す恐れのある反乱の象徴と見なし、処刑を諫言する。同時に、晩霞から得た銀髪の事実を突きつける。【結果】高峻は、寿雪が「烏妃」という孤立した存在から、意図せず「緇衣娘娘」という勢力の中心に変質してしまった政治的危うさを痛感する。【次の展開】朝陽に呼応するように、背後で鼇の神を奉じる白雷が寿雪抹殺のために動き出す。

第7幕:鯊門宮の対決と白雷の再臨

【原因】晩霞を装った偽の呼び出しにより、寿雪は一人で外廷の鯊門宮へ向かう。【行動】待ち構えていたのは変装した白雷であった。彼は事前に足元の土中に「遺体の爪や髪」を埋めた呪具「詛戸(うめどろ)」を仕掛けており、寿雪の身体を霊的に縛り上げる。【結果】白雷は、弱体化した烏漣娘娘を「贄(にえ)を求める鼇の神」の敵ではないと嘲笑い、寿雪に呪詛を放つ。【次の展開】絶体絶命の窮地の中、寿雪は神の半身を奪還し、自身の呪縛を解くための戦いへと身を投じることになる。

主要な転換点

  • 転換点:淡海の救済と主従の絆の確立
  • それ以前の状況:  淡海は自身の過去を「罰」として受け入れ、生への執着を欠いていた。
  • 出来事:  寿雪が「助けてほしいと願え」と言葉をかけ、超常的な手段で彼の冤罪を晴らす。
  • 変化:  淡海が寿雪を真の主君として認め、絶対的な忠誠を誓う。
  • 次への影響:  寿雪の周囲に強固な「擬似家族」的な護衛網が形成され、孤立した烏妃の形態が崩壊する。
  • 転換点:計衷の記録発見による「半身の欠落」の露呈
  • それ以前の状況:  烏漣娘娘がなぜ弱体化しているのか、その物理的・神話的原因は不明だった。
  • 出来事:  屏風の下貼りから、烏漣娘娘が「黒き羽刈の大刀」を切り離した記録を発見する。
  • 変化:  烏漣娘娘の解放という目的を達成するための「鍵」が、東海の海底にあることが判明。
  • 次への影響:  物語の主眼が、宮中内の事件解決から、神の半身を求める探索へと拡張される。
  • 転換点:沙那賣朝陽による「緇衣娘娘」の危険視
  • それ以前の状況:  烏妃は後宮の深奥に隠棲する、恐ろしくも限定的な存在だった。
  • 出来事:  寿雪が宮女や宦官から救済者として神格化され、その事実を朝陽が政治的リスクと断定。
  • 変化:  寿雪が個人的な存在から、王朝を脅かしかねない宗教・政治勢力の首魁へと周囲の認識が変わる。
  • 次への影響:  朝陽による直接的な物理的・政治的な抹殺作戦が本格化する。
  • 転換点:白雷による直接襲撃と鼇の神の介入
  • それ以前の状況:  敵対勢力は主に後宮内の人間関係や、実体のない幽鬼の未練であった。
  • 出来事:  鼇の神に仕える白雷が「詛戸」を用いて寿雪を物理的に拘束し、殺害を試みる。
  • 変化:  闘争の次元が人間界の諍いから、鼇の神対烏漣娘娘という神格間の覇権争いへと激化する。
  • 次への影響:  寿雪は自身の出生の秘密を隠す段階を超え、生存を懸けた神格の対決を強いられる。

主人公を中心とした人物関係の変化

  • 寿雪 ⇔ 高峻:  単なる協力関係から、身体的接触(頬に触れる、手を握る)を自然に受け入れる親密な関係へ。将来(老後)を共に過ごす未来を語り合う「魂の伴侶」へと深化。
  • 寿雪 ⇔ 淡海:  互いの欠落(見捨てた過去)を鏡合わせとして認識。寿雪が淡海を「守るべき部下」として、淡海が寿雪を「命を賭すべき主人」として認める主従関係の完成。
  • 寿雪 ⇔ 晩霞:  友情の成立と同時に、一族の圧力による「裏切り(秘密の露洩)」が介在。晩霞の内面に罪悪感と自己喪失の恐怖が生じ、関係性はより複雑で空虚なものへ変質。

主人公の認識と周囲の評価

  • 寿雪自身の認識:  先代の遺訓(孤独の保持)と、増え続ける「擬似家族」的な絆との矛盾に苦悩。しかし、彼らを守るために主君として強く在るべきという新たな自覚が芽生える。
  • 周囲(宮女・宦官)からの評価:  弱者を救い、罪人をも弔う「緇衣娘娘」として、熱狂的な信仰の対象へ。黒い飾り紐や魚の佩き飾りを身につける信徒が急増する。
  • 認識の差が現れた場面:  勒房子の事件解決後、寿雪にひざまずき「緇衣娘娘」を崇める宦官たちの姿。自身の行為(憐れみ)が、他者には宗教的救済と捉えられていることに当惑する。

クライマックス:白雷の襲撃と呪詛

  • 発生原因:  晩霞を装った偽の招待を信じ、護衛を伴わず鯊門宮へ単独で向かったこと。
  • 当初の状況:  異国装束の男(玉眼)と対峙。男が放つ異常な呪詛の気配に対し、当初は防戦の構えをとる。
  • 予定外の出来事:  男が事前に足元の土中に仕掛けていた「詛戸(うめどろ)」が発動。無数の霊的な手が寿雪を物理的に拘束。
  • 敵の正体:  蝦蟇の呪法を用い、かつて寿雪に退けられた因縁を持つ叢星占卜師・白雷。
  • 敵の主張:  自身が奉じる「鼇の神」の再興のため、半身を欠いて弱体化した烏漣娘娘は不要であると断じ、その器である寿雪を抹殺せんと呪術を行使する。

巻末時点の状況

  • 寿雪の状況:  白雷による直接的な呪術襲撃にさらされ、肉体的・精神的な極限状態にある。また、銀髪という処刑対象の秘密を沙那賣朝陽に完全に掌握されている。
  • 烏漣娘娘の正体:  千年前の戦いで「半身」を失った不完全な神であることが判明。東の海底に沈む「黒き羽刈の大刀」の奪還が、現状を打破する唯一の鍵となる。
  • 継続する問題:  寿雪が「緇衣娘娘」として神格化されたことで、王朝の安定を願う朝陽ら政治勢力との対立が決定的となり、高峻の庇護も限界に達しつつある。

この巻のプロット構造

  • 開始地点:  蚕室での日常的な怪異の解決依頼。
  • 発端:  繭の紛失と宮女の幽鬼。
  • 展開:  淡海の過去の露呈と冤罪事件。後宮内での烏妃信仰の肥大化という社会現象の発生。
  • 中盤の転換:  屏風の下貼りから発見された「二神の戦い」の記録による、神話的欠落の判明。
  • クライマックスへの導線:  政治的脅威(沙那賣朝陽)と呪術的脅威(白雷)の同期した動き。
  • クライマックス:  鯊門宮における「詛戸」を用いた白雷との呪術的対決。
  • 到達地点:  「黒き羽刈の大刀」の捜索という新たな目的の発生と、神・人間両面における敵対勢力の明確化。

蚕室の幽鬼

後宮の烏第4巻で描かれる蚕室の幽鬼は、後宮の養蚕施設で発生した怪奇現象と、それに便乗した人間たちの思惑が交錯する事件となる。怪異の真相究明と盗難事件の解決を経て、恐ろしい噂が信仰へと転化していく経緯を以下に整理する。

蚕室に伝わる不気味な噂

後宮には、前王朝の時代に誤って蚕を踏み殺した事実を秘匿した結果、口から生糸を吐き出し続けて絶命した宮女の祟りという伝承が残る。新たに建設された蚕室において、作業中の宮女に紛れ込んで蚕の世話をする死者の姿が目撃され、不穏な噂として広がりを見せる。

宮女の来訪と貴重な繭の消失

泊鶴宮の蚕室で使役される宮女の年秋児が、夜明宮に隠棲する烏妃の柳寿雪のもとへ相談に訪れる。

  • 貴重な蚕の消失
  • 幽鬼の出現に加え、鶴妃の実家である賀州から持ち込まれた極めて希少な蚕の繭が、作業の合間に2頭分消失する事態が生じる。
  • 処罰への危機感
  • 羽化した個体が在来種と交雑した場合、血統の維持が困難となるため、重大な責任問題を危惧した宮女が真相究明を哀願する。
寿雪の探索と幽鬼の正体

寿雪は宦官の装束を纏って蚕室に潜入し、術を用いて姿なき霊を可視化させる。霊の足取りを追って後宮の北端へ向かうと、死んだ蚕や蛹を供養する古い塚に行き当たる。

  • 怨念を欠いた穏やかな気配
  • 現れた幽鬼には恨みや哀切の情が存在せず、澄み切った気配を保つ。言い伝えにある怨霊ではなく、死後も変わらず蚕を慈しみ、世話を続けるために現れる無害な霊と判明する。
  • 古代の説話との合致
  • 皇帝の調査により、前王朝の文献に記された皇帝への入内を拒絶して命を落とした養蚕を愛する女性の逸話と特徴が一致する。
  • 蚕室への結界の展開
  • 先代から継承した術を用いて蚕室の周囲に結界を施し、霊の立ち入りを静かに遮断する処置をとる。
繭の盗難と事件の背景

霊そのものに害意がない点に着目した寿雪らは、繭の消失を人間による工作と判断して調査を進める。

  • 悪ふざけから始まった侵入
  • 若年の宦官である利冗が、女装して幽鬼の真似事をする賭けの延長で蚕室へ侵入し、繭を持ち出していた事実が露見する。
  • 利権を狙う脅迫
  • 持ち出しを知った上役の石安が若者を脅迫し、門外不出とされる高品質な蚕を外部の養蚕農家へ横流しして利益を得ようと画策していた構図が浮き彫りとなる。
  • 犯行現場での確保
  • 隠匿場所である塚の近辺の樹木から繭を取り出そうとした瞬間を取り押さえ、無傷のまま繭を回収する。

まとめ

繭が無事に回収された後、背景を知らない宮女たちの間では幽鬼を養蚕の守り神と見なす新たな伝承が定着する。当初は忌まわしい怪異として恐れられた出来事が、蚕を愛護する人々の祈りと感謝の場へと昇華を遂げ、静かな安寧を取り戻す結末を迎える。

金の杯

作中に登場する至宝を巡る騒動は、主人公に仕える護衛宦官の過酷な生い立ちを解き明かす契機となる。不審死の真相究明と宝物の追跡を通じて、過去の因縁を断ち切り新たな忠誠を誓う登場人物の精神的成長を以下に記述する。

宝物の来歴と従者の過去
  • 淡家の家宝
  • 羽のように軽薄な金で鋳造され、全面に繊細な草花文様が刻まれた至高の工芸品として伝来する。所有者に災厄をもたらす不吉な噂を伴う。
  • 使用人による持ち逃げ
  • 実家の商家が傾いた際、仕えていた知家事の牧憲がその造形美に魅せられ、家宝を持ち去って逃亡する。
  • 家の没落と後宮での再会
  • 両親の死によって実家は潰え、幼少の淡海は人買いの手を経て盗賊組織を渡り歩いた末に宦官となる。盗難に及んだ使用人も罪責感を抱えながら困窮し、後宮の下級宦官として密かに器を隠し持つ。

後宮における殺害と容疑

  • 被害者の変死
  • 宿舎において牧憲が頭部を殴打されて絶命し、隠匿していた器が何者かに奪回される。
  • 嫌疑の浮上
  • 治安を司る勒房子の次官が過去の怨恨に着目し、復讐目的の犯行と断定して淡海の出頭を迫る。
  • 烏妃による庇護と霊魂の招集
  • 主君の寿雪は短慮な犯行を否定し、真相究明のために被害者の霊を呼び寄せる儀礼を執り行う。
真相の究明と悲劇的な結着
  • 被害者の証言
  • 招喚された霊は背後からの襲撃ゆえに犯人の容貌を認識できず、薄墨色の衣服のみを記憶する。かつての幼君に対する悔恨を吐露し、淡海もまた個人的な遺恨を抱いていない胸中を明かす。
  • 術を用いた遺失物の捜索
  • 遺留した毛髪と木製の人形を用いた術によって宝物の位置を特定し、次官の実弟が起居する部屋から器を発見する。
  • 兄弟の悲劇的終焉
  • 真犯人は器への物欲から凶行に及んだ実弟と判明する。弟の極刑を免れさせようと濡れ衣を画策した兄は自責の念に苛まれ、弟の命を自らの手で奪った後に自刃する結末を迎える。
象徴的意味と過去との訣別
  • 家宝の返還
  • 事件の収束後、本来の所有者である淡海の手元へ器が戻される。
  • 宝物の粉砕
  • 受け取った器を躊躇なく地面へ叩きつけ、刀の鞘を用いて粉々に打ち砕く行動に出る。
  • 守り刀としての決意
  • 滅亡した一族への未練を物理的に破却し、自身に信を置いた主君のために生きる決意を固める。
まとめ

宝物の破壊は、囚われ続けてきた一族の怨嗟や過去の執着を自力で打ち砕いた証となる。怪異の解決にとどまらず、主従の確固たる信頼関係を築き上げる契機として深い余韻を残す。

計衷の冤罪

前王朝の時代に仕組まれた宮廷の隠蔽工作は、物語終盤の核心となる烏妃の解放へと繋がる重大な契機を形成する。古文書の書写を担っていた実務官吏が被った理不尽な処刑の真相と、残された記述がもたらす歴史的意義を以下に整理する。

計衷の人物像と冤罪の経緯

前王朝五代皇帝の治世下において、典籍の収集や保管を司る洪濤院で古文書の書写に従事していた人物に計衷が存在する。身なりに構う暇も惜しみ、手足を墨で汚しながら朽ちかけた竹簡や文字の掠れた古文書を丹念に筆写し、後世へ残す責務に強い自負を抱いていた。

  • 濡れ衣と即日処刑
  • ある日、高価な黄麻紙を横領した容疑を突如として着せられ、正当な審理を経ることなく即日処刑される事態に至る。
  • 書写物の破却
  • 計衷が生涯を費やして書き写した書写物は、皇帝の厳命によってことごとく焼却処分を受ける。
隠蔽工作の真相と権力者の意図

当代の記録を紐解く調査により、処刑劇の背後に隠されていた政治的謀略が白日の下に晒される。

  • 視察時における露見
  • 処刑の前日、当時の皇帝が書写所を親しく巡察した折、収集した古文書の中に後世へ残してはならない秘匿事項が含まれており、それを当人が知らずに書き写していた事実を察知する。
  • 罪状を利用した記録の抹消
  • 特定の文書のみを破棄したり関係者を直接処断したりする行為は、周囲に内容への疑念や関心を抱かせる危険を伴う。そのため、紙の横領という架空の罪状を仕立て上げて処罰の名目を整え、連座の形で関係文書を一括して灰燼に帰す工作が実行に移される。
彷徨う霊魂と屏風下貼りの発見

命を奪われた無念以上に、精魂を注ぎ込んだ筆写の成果がすべて灰にされた痛恨が魂を現世に縛り付ける要因となる。自身の仕事がどこかに残されているはずだという確信から、死後も長きにわたり書庫を彷徨い続ける。

  • 助言に基づく探索
  • 不要となった古紙が建具の下貼りとして再利用される慣習に着目し、保管されていた古い屏風の解体調査が行われる。
  • 筆跡の特定と昇華
  • 剥ぎ取られた紙片の中から、生前の均整の取れた筆跡を留めた約30枚の書写物が発見される。自身の仕事が確かに現存していた証拠を目にした霊魂は、長年の苦悶から解き放たれ、安寧を得て旅立ちを迎える。
物語における重要な意義と神話の解明

難を逃れて保存されていた紙片には、古代の神話に関する決定的な記録が記されている。

  • 失われた神話の断片
  • 記録には、古代における巨大な亀の神と烏漣娘娘との激しい抗争、ならびに神の弱点に関する記述が残される。
  • 刀の沈降と神の半身
  • 戦いの過程で神の半身が黒い大刀と化して東海へ沈んだ事実が明らかとなる。
  • 封印の謎と救済への道筋
  • 初代烏妃が絶大な神力を誇る存在を宮城の地下へ留め置くことが可能であった背景として、半身を喪失して衰弱していた事情が論理的に裏付けられる。半身を呼び戻して完全な姿へと復元し、神そのものを解放するという、烏妃を過酷な宿命から解き放つための道筋が切り拓かれる。
まとめ

権力によって不当に命を奪われた書写生の悲哀は、建具の奥深くに残された反故紙を通じて時を超え、歴史の闇に葬られていた神代の真実を現世へと甦らせる。無念の死を遂げた者が遺した忠実な仕事の痕跡が、何重もの呪縛に囚われていた烏妃に救いの光を届ける決定的な転換点となる。

緇衣娘娘信仰

後宮の烏第4巻において描かれる緇衣娘娘信仰は、烏妃である柳寿雪を救世主や神格のように崇める後宮内の熱狂的な信仰現象を指す。弱者への救済が意図せぬ神格化を生み、政治的謀略や後宮の秩序崩壊へと発展していく過程は、物語の大きな転換点を形成する。

信仰の発生と由来
  • 名称の由来
  • 寿雪が身に纏う黒い衣にちなみ、後宮の宮女や宦官の間で烏妃が緇衣娘娘と呼称されるようになる。
  • 信徒の目印
  • 信徒となった者たちは、烏妃が黒衣を纏う姿に倣って黒い飾り紐を腰に提げる。さらに寿雪が所持するものに似せた魚形の飾りを護符代わりに身につけて連帯を示す。
拡大の背景と伝播経路
  • 善意の神格化
  • 寿雪が幽鬼の救済や不条理な事件の解決を通じて困窮者へ手を差し伸べ続けた結果、救われた者や噂を聞いた下層の宮女、宦官が自らの苦難や祈りの対象として過度に神格化を進める。
  • 人的ネットワークを通じた拡大
  • 鶴妃が居住する泊鶴宮を中心に、同郷の繋がりや宮仕え同士の交友関係を通じて後宮全域へ急速に拡大する。
偽護符事件と背後の謀略
  • 偽造された護符の流通
  • 信仰の過熱に乗じ、烏妃が作成したと偽った呪符が作成され、後宮内で売買される事態が発生する。
  • 首謀者の意図
  • 筆跡を模倣して偽護符を作成した真の首謀者は八真教の教主である白雷であり、鶴妃の実家である沙那賣家の思惑とも連動しながら寿雪を窮地に追い込む工作として利用される。
  • 内部の扇動と自決
  • 泊鶴宮の古参侍女である吉鹿女らが信徒の侍女たちを扇動して騒動を拡大させる。事件の発覚後、当人は独断の暴走として自ら毒をあおって命を絶つ結末を迎える。
泊鶴宮における騒動と皇帝の下した処置
  • 秩序の動揺と反発
  • 後宮の統括を担う二の妃の雲花娘が事態を収拾すべく泊鶴宮を訪れて諌めた際、熱狂した侍女たちが信教の自由を主張して激しく反発し、不穏な騒乱状態に陥る。
  • 禁令の発布と謹慎処分
  • 寿雪自らが現場へ赴いて騒動を鎮静化させたものの、皇帝の夏高峻は後宮内において烏妃以外の者が黒い衣服や装飾品を用いる行為を厳禁とする。さらに寿雪に対しても、当面の間は許可なく夜明宮の外へ出ることや、外部からの依頼を引き受けることを禁じる処分を下す。
主人公の自省と掟の再認識
  • 課されていた禁忌
  • 先代烏妃の麗娘からは、烏妃は常に孤立を保ち、徒党や勢力を形成してはならないと厳しく訓戒を受けていた経緯を持つ。
  • 甘さへの省察
  • 頼られ必要とされる境遇に無意識の安らぎを見出し、職分を踏み越えていた自身の甘さを自覚する。自らが生み出した結果として皇帝からの謹慎処分を静かに受け入れ、再び夜明宮へ留まる道を選択する。
まとめ

緇衣娘娘信仰をめぐる騒動は、善意に基づく救済行為であっても、過剰な崇拝へと転じた際に周囲を巻き込む凶器となり得る現実を突きつける。孤高の掟に潜む防壁としての意味を痛感した寿雪は、他者との距離感や己の分限を深く見つめ直す契機を得る。

沙那賣朝陽の策

物語において賀州を治める豪族の沙那賣家当主が見せる謀略は、個人的な感情を徹底して排除し、計算に基づき構築された一族の存続と保全のための冷徹な戦略を特徴とする。作中で巡らされた策略や深謀遠慮について、目的や具体的な手法を整理して記述する。

一族の存続と安泰を目指す根本思想

行動の根底にある動機は、権勢への野心ではなく、過酷な政治環境下で一族を滅亡から守り抜く点に集約される。

・中央政界への野心の放棄

異国から渡来した出自を持つ家門ゆえ、朝廷の中央権力闘争に深入りすれば破滅を招くと熟知し、表舞台の覇権争いからは距離を置き、土着の実利と防衛を最優先事項に据える。

長老の暴走を利用した内部粛清

かつての不正を糊塗しようと新興勢力の巫術師と通じ、朝廷重臣への接近や呪殺未遂を企てた叔父に対し、極めて計算高い対処法を講じる。

・静観と致命的瞬間の掌握

叔父の暗躍を把握しつつ即座に介入せず、計画が破綻の域に達した段階で現場に急行し、自らの手で叔父を斬首する処断を下す。

・全責任の転嫁と家門の保護

家中の危険分子を排除すると同時に、すべての責任を死亡した叔父単独の暴走として処理し、家門全体への追及を遮断する名分を確立する。

皇帝への取引と関係の再構築

一族の過去の不正が明るみに出た際、若き皇帝に対して門外不出とされてきた最高品質の蚕種を献上する取引を持ちかける。

・重要資源を切り札とした交渉

養蚕の改良を強く推進する朝廷の需要を的確に見極め、希少な蚕種を提供することで謝罪と損失補填を成立させる。

・処分の最小化

国家的な実利を提示することで懲罰を最小限に抑え込み、中央権力との間に実質的な融和関係を再構築する成果を得る。

烏妃の脅威に関する洞察と宮廷への揺さぶり

当代の烏妃が前王朝の血統を引く事実や、後宮内部で救世主のように崇敬を集める動向をいち早く危険視する。

・君主に対する直接の警告

皇帝との対面時、信徒を集める前王朝の遺児を放置することは国家の乱れに直結すると説き、幽閉や処断を直言する。

・事件を通じた危険性の実証

新興宗教の指導者や後宮内の侍女の動きを間接的に利用し、偽りの護符の流通や過剰な崇拝による騒乱を表面化させ、烏妃を放置する危険性を現実の脅威として皇帝に突きつける。

肉親すら道具とする冷徹な統制

入宮させた実の娘を情報網の一環や手駒として扱い、生糸に隠した密書を通じて接触の制限を厳命する。

・一族の掟と冷徹な選択

過去に家系に伝わる呪いから逃れる際にも、身代わりの養女を犠牲にする残酷な決断を娘自身に迫るなど、肉親の情愛よりも家門の存続を優先する徹底した冷酷さを貫く。

まとめ

沙那賣家の当主が展開した一連の策謀は、他者の思惑や肉親の犠牲すら計算に組み込み、一族の存続という単一の成果を追い求めた現実主義者の生存戦略にほかならない。倫理や感情を排して実利を追求する姿勢は、苛烈な政治の波を乗り切るための防壁として機能し、物語における特異な存在感を放つ。

後宮の烏3レビュー
まとめ
後宮の烏5レビュー

登場キャラクター

夜明宮

柳寿雪

夜明宮に住む烏妃を務める。術を用いて幽鬼の解決や捜し物を行う。過剰な神格化や周囲の熱狂に戸惑いを見せる。

・所属組織、地位や役職
 夜明宮・烏妃。冬の王。

・物語内での具体的な行動や成果
 蚕室の幽鬼事件を調査して結界を施した。盗まれた繭の回収と利冗たちの悪ふざけの解明を行う。牧憲の招魂を行い金の杯の所在を追跡した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 信徒の急増による騒動の責任を取り夜明宮への謹慎を受け入れた。夏高峻とともに神からの解放を目指す道を歩み始める。

麗娘

かつて夜明宮で寿雪を育てた先代の烏妃を指す。寿雪に知識や術を教え込んだ。

・所属組織、地位や役職
 夜明宮・先代烏妃。

・物語内での具体的な行動や成果
 寿雪に巫術の結界術を授けた。新月の苦痛に耐え抜き長命を保った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 物語開始の2年前に故人となった。かつて封一行から巫術を学んだ経歴を持つ。

九九

夜明宮で寿雪に仕える明るい侍女を務める。後宮内の噂話を集めて寿雪に報告する。

・所属組織、地位や役職
 夜明宮侍女。

・物語内での具体的な行動や成果
 蚕室に幽鬼が出る噂を寿雪に伝えた。寿雪の衣装選びや身支度を楽しそうに行う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 淡海と軽口を叩き合う関係性を見せる。寿雪から深い親しみと信頼を寄せられる。

蘇紅翹

夜明宮で仕える手先の器用な宮女を務める。言葉を発することができない。

・所属組織、地位や役職
 夜明宮宮女。

・物語内での具体的な行動や成果
 九九が脱ぎ散らかした衣類を丁寧に畳む作業を行った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 寿雪や九九を温かく見守る態度を示す。

星星

夜明宮で飼われている金色の化鳥を指す。金鶏と呼ばれる存在に該当する。

・所属組織、地位や役職
 夜明宮の化鳥。

・物語内での具体的な行動や成果
 部屋の外に大勢の配下の気配を察知して暴れて警告を発した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 寿雪に尾羽を抜かれて諸刃の剣や道具へ変化する性質を持つ。

桂子

夜明宮に長く仕える無口な老婢女を務める。料理や力仕事を担う。

・所属組織、地位や役職
 夜明宮婢女。

・物語内での具体的な行動や成果
 衣斯哈の体を気遣って肉を多めによそった食事を用意した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 麗娘の時代から変わらぬ態度で仕え続けている。

皇室・凝光殿

夏高峻

霄国の若き皇帝を務める。冷徹な決断力と周囲への気配りを合わせ持つ。

・所属組織、地位や役職
 霄国・皇帝。夏の王。

・物語内での具体的な行動や成果
 沙那賣朝陽から最上級の蚕種の献上を受けた。大海螺を用いて牢の梟と会話を試みる。後宮での黒い衣服や装飾品の着用を禁止した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 寿雪を烏の呪縛から解放する決意を固めた。沙那賣朝陽からの牽制や諫言に対峙する。

衛青

夏高峻に絶対の忠誠を誓う宦官を務める。武芸に優れ冷静沈着に行動する。

・所属組織、地位や役職
 内侍省・衛内常侍。

・物語内での具体的な行動や成果
 夜明宮での勝手な行動を寿雪に諌めた。泊鶴宮の騒動で飛んできた器から寿雪を庇い額に負傷した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 寿雪への評価や高峻との距離感に葛藤を抱く。高峻の命を受けて寿雪に処分を伝達した。

温螢

寿雪の護衛を務める宦官を指す。頬に傷を持つ元鵐帮の軽業師に該当する。

・所属組織、地位や役職
 寿雪の護衛宦官。

・物語内での具体的な行動や成果
 蚕塚の由来や宮女たちの身元を迅速に調査した。利冗を取り押さえて事態の解明に貢献する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 寿雪の守り刀として強い忠誠心を示す。淡海とともに主人の護衛に全力を尽くす。

淡海

寿雪の護衛を務める元盗賊の宦官を指す。観察力が高く軽妙な口調を用いる。

・所属組織、地位や役職
 寿雪の護衛宦官。

・物語内での具体的な行動や成果
 牧憲殺害の疑いをかけられるが寿雪に庇われた。過去の悲しい血縁の事件を寿雪に打ち明けた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 家宝の金の杯を自ら打ち砕いて過去を断ち切る。寿雪を守り抜く覚悟を固めた。

後宮(妃嬪・宮女・宦官)

雲花娘(花娘)

鴛鴦宮に住む二の妃を務める。高い教養と落ち着いた品格を備える。

・所属組織、地位や役職
 鴛鴦宮・二の妃(鴦妃)。

・物語内での具体的な行動や成果
 洪濤殿で借りた巻物を書写して寿雪に贈る約束をした。緇衣娘娘の過熱を収めるため泊鶴宮を訪問した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 後宮の最上位の妃として統括を行う。狂信的な侍女たちに取り囲まれて足を負傷した。

藍晩霞(鶴妃)

泊鶴宮に住む妃を務める。賀州の豪族・沙那賣朝陽の娘に該当する。

・所属組織、地位や役職
 泊鶴宮・妃(鶴妃)。

・物語内での具体的な行動や成果
 父からの荷物に隠された密書を確認した。寿雪に警告を与えるため私的に訪問した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 父への服従から脱却して自分の道を選んだ。夏高峻の子を身籠もっていることが判明した。

年秋児

泊鶴宮付きの宮女を務める。蚕室で蚕の世話を担当する。

・所属組織、地位や役職
 泊鶴宮宮女(蚕室担当)。

・物語内での具体的な行動や成果
 消えた繭と幽鬼の存在を夜明宮へ相談に訪れた。偽の幽鬼から不吉な言動で脅迫を受けた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 寿雪の術と温かな対応により恐怖から救われた。

万若萃

泊鶴宮付きの宮女を務める。真面目で素直な観察眼を持つ。

・所属組織、地位や役職
 泊鶴宮宮女。

・物語内での具体的な行動や成果
 繭が消えた日に現れた幽鬼が薄化粧をしていた事実を寿雪に証言した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 事件の偽物に気づく重要な手がかりを提供した。

衣斯哈

夜明宮で仕える見習い宦官を務める。素直で健気な性格を見せる。

・所属組織、地位や役職
 夜明宮見習い宦官。

・物語内での具体的な行動や成果
 寿雪から読み書きの手習いを受け続けた。凝光殿の知り合いの小間使いと交流した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 桂子や花娘から可愛がられる存在へ成長した。

利冗

蚕室付きの年若い宦官を務める。小柄で整った顔立ちを持つ。

・所属組織、地位や役職
 蚕室付き宦官。

・物語内での具体的な行動や成果
 女装して幽鬼のふりをする悪ふざけの賭けを行った。石安に脅されて繭の盗難に加担した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 隠し場所から繭を取り出す際に温螢に捕縛された。

石安

蚕室で蛹の運搬を担当する上役の宦官を務める。

・所属組織、地位や役職
 蚕室付き上役宦官。

・物語内での具体的な行動や成果
 利冗の悪ふざけを利用して門外不出の繭の横流しを企てた。年秋児を幽鬼のふりをして脅迫した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 悪事が露呈して淡海に捕縛された。

牧憲

内侍省に仕えていた下級宦官を務めた人物を指す。

・所属組織、地位や役職
 内侍省下級宦官(故人)。

・物語内での具体的な行動や成果
 かつて淡家の家宝である金の杯を盗んで逃亡した。宿舎で背後から頭部を襲われて死亡した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 寿雪の招魂に応じ真犯人の衣の色を証言した。

漆雕奉

内侍省に勤める下級宦官を務めた人物を指す。

・所属組織、地位や役職
 内侍省下級宦官(故人)。

・物語内での具体的な行動や成果
 金の杯を奪うため牧憲を殺害した。兄の漆雕坤に泣きついて罪の隠蔽を求めた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 追い詰められた兄の手によって胸を刺されて死亡した。

吉鹿女

泊鶴宮の古参侍女を務めた人物を指す。侍女頭の立場にあった。

・所属組織、地位や役職
 泊鶴宮侍女頭(故人)。

・物語内での具体的な行動や成果
 白雷から受け取った偽護符を後宮内で売りさばいた。泊鶴宮の侍女たちを扇動して大きな騒動を引き起こした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 責任を自ら負う形で毒をあおって自裁した。

紀泉女

泊鶴宮に仕える侍女を務める。寿雪へ強い感謝を抱く。

・所属組織、地位や役職
 泊鶴宮侍女。

・物語内での具体的な行動や成果
 泊鶴宮での異様な騒動の危険を寿雪へ知らせに走った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 八真教の飾りを捨てて寿雪を象徴する魚形の飾りを提げる。

朝廷・官吏・学士

令狐之季

洪濤殿書院の学士を務める。鋭い考察力と暗い情念を秘める。

・所属組織、地位や役職
 洪濤殿書院学士。

・物語内での具体的な行動や成果
 洪濤殿に出没する経生の幽鬼の調査を行った。不都合な記録の隠蔽工作や計衷の冤罪の真相を突き止めた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 何明允の屋敷に居候している。白雷に対する深い憎悪を胸に抱き続ける。

何明允

朝廷の中書省を統括する長官を務める。

・所属組織、地位や役職
 中書令。

・物語内での具体的な行動や成果
 令狐之季を学士に推薦して屋敷に留め置いた。之季に様々な調べものや用事を指示する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 朝廷で強い影響力を保持する。

漆雕坤

勒房子の次官を務めた宦官を指す。生真面目で厳格な性格を持つ。

・所属組織、地位や役職
 勒房子次官(故人)。

・物語内での具体的な行動や成果
 殺人の濡れ衣を淡海に着せようと夜明宮に迫った。弟の漆雕奉を刺殺した後に自らの首を切って自刃した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 没落した名家の出身に該当する。責任感と罪悪感の挟目で命を落とした。

沙那賣朝陽

賀州を支配する豪族・沙那賣家の当主を務める。冷徹なリアリストとしての顔を持つ。

・所属組織、地位や役職
 沙那賣家当主。

・物語内での具体的な行動や成果
 最上級の蚕種を夏高峻へ献上した。高峻に対し烏妃の排斥や幽閉を直接諫言した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 白雷と裏で協力関係を結ぶ。一族の生存と安泰のみを絶対的な価値基準とする。

沙那賣晨

沙那賣朝陽の長男を務める。慎重で落ち着いた風貌を見せる。

・所属組織、地位や役職
 沙那賣家長男。

・物語内での具体的な行動や成果
 父に同行して京師の鯊門宮へ滞在した。倒れた妹の晩霞を気遣う態度を示す。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 嫡男としての誇りを保持する。

沙那賣亮

沙那賣朝陽の三男を務める。気の強さと神経質な観察眼を持つ。

・所属組織、地位や役職
 沙那賣家三男。

・物語内での具体的な行動や成果
 父の思惑に対して苛立ちや焦りを見せた。妹の晩霞に対して軽口を叩きつつ身を案じる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 家族の行く末に対して複雑な感情を抱く。

冬官府・神祇

董千里

冬官府の長官を務める。病弱だが穏やかで高い知識を持つ。

・所属組織、地位や役職
 冬官府・冬官。

・物語内での具体的な行動や成果
 屏風の下貼りに反故紙が使われる助言を行った。古文書の文字を解読して烏漣娘娘と鼇の神の戦いの伝承を明かした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 夏高峻からの私的な寄進を受けて冬官府の修繕を進める。知的好奇心から烏妃の秘密の調査に協力する。

薛魚泳

かつて冬官を務めた老翁を指す。

・所属組織、地位や役職
 元冬官(故人)。

・物語内での具体的な行動や成果
 烏妃に纏わる記録や手記を冬官府に残した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 麗娘と交流を持っていた。

烏漣娘娘

夜と生命を司る女神を指す。

・所属組織、地位や役職
 神(夜と生命の女神)。

・物語内での具体的な行動や成果
 かつて鼇の神との激戦により自ら半身を切り離して東の海へ沈めた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 半身を失ったことで弱体化している。新月の夜に半身を捜して徘徊する。

羽衣

かつて宝物庫の番人を務めた宦官を指す。

・所属組織、地位や役職
 元宝物庫番人。鼇の神の使い部。

・物語内での具体的な行動や成果
 かつて烏漣娘娘への防御策について語っていた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 鼇の神の再訪に伴い消滅した。

市井・宗教・巫術師

封一行

かつて宮廷に仕えていた老巫術師を指す。

・所属組織、地位や役職
 元宮廷巫術師。

・物語内での具体的な行動や成果
 内廷から冬官府の別棟へ移されて療養を受けた。香薔の結界が九つの指を用いた呪術である事実を明かした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 麗娘に巫術を伝授した過去を持つ。逃亡した罪悪感を抱え続ける。

白雷(玉眼)

八真教の教主を務める凄腕の巫術師を指す。

・所属組織、地位や役職
 八真教教主。雨果の占卜師(玉眼)。

・物語内での具体的な行動や成果
 偽護符を作成して後宮へ流通させた。鯊門宮で寿雪を襲撃して警告を発した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 沙那賣朝陽と裏で協力関係を結ぶ。過去に一族を虐殺された背景から強い憎悪を抱く。

隠娘

白雷に同行する少女を指す。

・所属組織、地位や役職
 白妙子の巫婆。

・物語内での具体的な行動や成果
 浜辺で貝殻拾いを行う様子を見せた。寿雪との闘いの最中に池から巨大な水柱を上がらせた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 漂海民の出身である性質を持つ。

梟

幽宮の創子手を務める不気味な存在を指す。

・所属組織、地位や役職
 幽宮の創子手。

・物語内での具体的な行動や成果
 大海螺を通じて夏高峻と対話を重ねた。鼇の神が若い娘の生贄を欲する警告を発した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 寿雪を殺さずに神を救う方法の提示を皇帝へ求めている。

歴史上の人物・過去の人物

欒夕

前王朝の初代皇帝を務めた人物を指す。

・所属組織、地位や役職
 前王朝初代皇帝(故人)。

・物語内での具体的な行動や成果
 香薔を後宮へ閉じ込めて烏妃と名付けた。冬の王の存在を史書から抹消した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 香薔の愛と執着を引き出した。

香薔

前王朝の初代烏妃を務めた女性を指す。

・所属組織、地位や役職
 前王朝初代烏妃(故人)。

・物語内での具体的な行動や成果
 烏漣娘娘を己と夜明宮の下に封印した。自らの九つの指を用いて宮城の九つの門に強い結界を施した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 歴代の烏妃へ強い呪縛を残した。

先帝

夏高峻の父親を務めた人物を指す。

・所属組織、地位や役職
 現王朝第二代皇帝(故人)。

・物語内での具体的な行動や成果
 后が蚕を嫌ったため後宮の蚕室を取り壊した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 過去の後宮環境の変更に関与した。

計衷

前王朝の時代に洪濤院で書写を担当した経生を指す。

・所属組織、地位や役職
 前王朝洪濤院経生(故人)。

・物語内での具体的な行動や成果
 不都合な記録の処分のために横領の濡れ衣を着せられて処刑された。書写した紙が屏風の下貼りとして残されていた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 寿雪から自身の筆跡の紙を見せられて成仏を果たした。

小明

令狐之季の亡き妹を指す。

・所属組織、地位や役職
 月真教信徒の妻(故人)。

・物語内での具体的な行動や成果
 月真教の信徒であった婚家により暴動の中で打殺された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 死後も之季の右袖を引く幽鬼として佇む。

集団・組織

禁軍

皇帝の身辺警護や宮城の治安を担当する直属の軍隊を指す。

・所属組織、地位や役職
 皇帝直属軍。

・物語内での具体的な行動や成果
 過去に夏高峻が率いて皇太后一派の制圧を行った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 皇帝の絶対的な武力として機能する。

内侍省

後宮の宦官や事務全般を管轄する機関を指す。

・所属組織、地位や役職
 後宮管理機関。

・物語内での具体的な行動や成果
 衛青や牧憲や漆雕奉が所属して公務を行った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 後宮の人的組織の運営を担当する。

勒房子

後宮内の犯罪を取り締まる皇帝直属の捜査機関を指す。

・所属組織、地位や役職
 後宮犯罪捜査機関。

・物語内での具体的な行動や成果
 帯刀した宦官たちが牧憲殺害事件の捜査を実施した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 漆雕坤の死により動揺が広がる結果となった。

冬官府(放下郎)

神祇や天文や儀式を司る官庁を指す。

・所属組織、地位や役職
 神祇管理機関。

・物語内での具体的な行動や成果
 星烏廟の清掃や管理を行った。放下郎たちが病気の封一行の看護を担当した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 夏高峻からの私的な寄進により殿舎の修繕を進める。

洪濤殿(学士・経生)

古文書の収集や書写や保管を行う史館を指す。

・所属組織、地位や役職
 典籍保管書写機関。

・物語内での具体的な行動や成果
 令狐之季や学士見習いたちが書物の整理や書写を行った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 前王朝時代からの膨大な文献を保持する。

少府監

宮廷内の工房や織物や工芸品制作を担当する機関を指す。

・所属組織、地位や役職
 宮廷工芸制作機関。

・物語内での具体的な行動や成果
 機殿で賀州の生糸を用いて三枚綾の経錦を織りあげた。屏風の下貼りを剥がす作業を行った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 国内最高の技術を持つ職人たちが集う。

八真教

白雷が教主を務めた新興宗教を指す。

・所属組織、地位や役職
 新興宗教。

・物語内での具体的な行動や成果
 白妙子を祀り偽護符を用いて後宮へ影響力を広げようと企てた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 白雷の離脱により賀州での組織は瓦解へ至った。

沙那賣家

賀州を治める強力な豪族を指す。

・所属組織、地位や役職
 賀州大豪族。

・物語内での具体的な行動や成果
 卡卡密から渡ってきた歴史を持ち養蚕によって富を築いた。門外不出の最上級の蚕種を献上した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 朝陽の絶対的な統率のもと一族の安泰を最優先とする。

海燕子(阿尼族・蛇古族)

海上で生活を送る漂海民の集団を指す。

・所属組織、地位や役職
 漂海民集団。

・物語内での具体的な行動や成果
 漁や交易や医術や薬や呪術を行って各地の沿岸を移動した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 陸地の民から恐れられつつ医療や呪術の担い手とされる。

鵐帮

沿岸部を回る遊芸人の集団を指す。

・所属組織、地位や役職
 旅芸人集団。

・物語内での具体的な行動や成果
 神話や古い祭文を歌謡として受け継いでいた。幼い白雷を拾って保護した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 古代の神話の口伝を保持する。

幽宮

現世とは異なる神や死者の領域を指す。

・所属組織、地位や役職
 神異領域。

・物語内での具体的な行動や成果
 梟が所属して罪を犯した神の管理や処罰を行う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 烏漣娘娘や鼇の神の根源に関わる。

後宮の烏3レビュー
まとめ
後宮の烏5レビュー

展開まとめ

蚕神

蚕室の幽鬼と消えた繭

鶴妃・晩霞は、父の沙那賣朝陽から送られた賀州産の生糸に、烏妃とはかかわるなという密書が隠されているのを見つけた。晩霞は寿雪に友情を抱きながらも、父への忠誠を選び、寿雪が髪の色を隠していることをすでに朝陽へ知らせていた。そのため、命を救ってくれた寿雪とはもはや友になれないと苦悩していた。

一方、寿雪は九九から、泊鶴宮の蚕室に前王朝の宮女の幽鬼が現れるという噂を聞いた。そこへ蚕室で働く秋児が訪れ、幽鬼が現れるだけでなく、賀州から持ち込まれた蚕の繭が二つ消えたと訴えた。羽化した蚕が在来の蚕と交雑すれば品種が乱れるため、寿雪は幽鬼と繭の行方を調べることにした。

蚕塚の幽鬼

寿雪は温螢や淡海と蚕室を調べ、幽鬼が古い蚕塚へ戻っていくことを突き止めた。そこはかつて死んだ蚕や糸を取った後の蛹を捨てていた場所で、後に蚕を祀る塚となっていた。幽鬼には恨みや悲しみがなく、ただ黙々と蚕の世話を続ける澄んだ存在であった。

寿雪は幽鬼だけを犯人と決めつけず、蚕室で働く宮女たちについても調べさせた。幽鬼を蚕室へ入れないための結界を張りながら、繭の紛失と幽鬼の由来を追った。この一件を通じ、晩霞の故郷である賀州と養蚕、沙那賣家にまつわる事情が寿雪の周囲へ近づいていった。

金の杯

牧憲殺害と淡海への疑い

内侍省の宦官・牧憲が殺され、勒房子の漆雕坤は淡海を疑った。牧憲はかつて淡海の家に仕えていた知家事で、家宝である金の杯を持ち去っていた。淡家はその後没落し、父は病死、母は自死し、淡海自身も人買いに売られて盗賊となっていたため、復讐の動機があると見られたのである。

しかし寿雪は、淡海が犯人ならば自分が疑われるようなやり方はしないとして、彼を引き渡すことを拒んだ。さらに、淡海が犯してもいない罪で罰せられるのは嫌だと告げ、自分が助けるから淡海自身も助けてほしいと願ってよいのだと伝えた。

金の杯の追跡

寿雪は牧憲の幽鬼を呼び出し、殺害時の記憶を確かめた。牧憲が最後に見た犯人の衣は下級宦官の薄墨色であり、淡海のものではなかった。牧憲は淡家を裏切って金の杯を盗んだことを悔いていたが、淡海は牧憲を恨んではいなかった。淡海にとって牧憲は、幼いころ遊び相手にもなってくれた、最後まで家に残った召使いだったのである。

寿雪は、犯人が牧憲から奪った金の杯を術で追跡した。その結果、杯は漆雕坤の弟で内侍省に勤める漆雕奉の部屋から発見された。しかも奉だけでなく坤まで姿を消していたため、寿雪たちは奉の毛髪を使った術で兄弟を追った。こうして淡海に向けられた疑いは崩れ、金の杯をめぐる過去と事件の真相が明らかになっていった。

墨は告げる

洪濤院の経生

寿雪は洪濤院で、墨に汚れた経生の幽鬼について調べた。之季から、書写では紙を整える装潢、書物を書き写す経生、誤りを確認する校生が働き、間違いや脱落があれば報酬を減らされるほど厳密な作業だったと教えられた。

調査によって、幽鬼は前王朝五代の皇帝の時代に処刑された経生・計衷だと判明した。計衷は、勅命による古文書の書写に使われる高価な黄麻紙を横領した罪で死罪となっていた。

計衷の冤罪

寿雪が計衷の幽鬼と対面すると、彼は黄麻紙など盗んでいないと訴えた。計衷が何より無念としていたのは、自分が処刑されたこと以上に、長い年月をかけて書写した巻物がすべて焼却されたことであった。朽ちかけた竹簡や墨の消えかけた文書を丹念に写し、失われつつある古い伝承を後世へ残すことに誇りを持っていたのである。

寿雪と之季たちは、計衷がなぜ冤罪を着せられ、その書写物まで急いで処分されたのかを調べた。寿雪の目的は犯人を裁くことそのものではなく、現世に残された計衷の無念を解き、幽鬼を楽土へ送ることにあった。

この調査と並行して、寿雪は千里とともに前王朝や烏妃について調べ続けた。巫術師・封一行から話を聞く準備も進め、烏妃を取り巻いてきた過去の仕組みへさらに近づいていった。

禁色

朝陽と白雷

沙那賣朝陽が京師を訪れ、その背後で寿雪を憎む術師・白雷も動き始めた。白雷は隠娘を通じて鼇の神から烏漣娘娘と烏妃について聞き、烏漣娘娘が弱っているなら烏妃にも存在価値はないと考えていた。以前、寿雪へ仕掛けた呪詛を返されて片目を失っていたが、それでも寿雪と烏漣娘娘への憎悪を失っていなかった。

朝陽に呼ばれて京師へ来た白雷は、隠娘を伴っていた。寿雪は白雷と対峙し、呪詛で足を封じられながらも術を破って反撃した。白雷は烏漣娘娘が弱りつつあり、寿雪もろともすべてを失って死ねと憎悪をぶつけた。

寿雪は、鼇の神が若い娘の贄を必要とすることから、幼い隠娘が犠牲にされるのではないかと危惧した。しかし白雷は生贄の話を知らない様子を見せた。そこへ晩霞の兄たちも現れ、寿雪は沙那賣家と白雷の複雑な関係を目の当たりにした。

緇衣娘娘の信仰

そのころ後宮では、寿雪を緇衣娘娘として崇める者が急増していた。寿雪に救われた者たちを中心に黒い飾り紐が広まり、偽の護符まで出回っていた。寿雪自身に人を集める意思はなかったが、多くの頼みを聞き、困窮した者を救ってきたことが信仰へ変わっていた。

寿雪は、泊鶴宮がその中心となっていることを突き止めた。さらに白雷が裏で糸を引き、その奥には朝陽がいる可能性を考えた。信仰が暴動にまで発展すれば、寿雪自身が処罰される危険があった。

後宮を預かる花娘は事態を収めるため晩霞を訪ねた。晩霞も自分の侍女たちの動きには気づいており、花娘の要請を受け入れた。しかし黒い飾り紐を身につけた侍女たちは、何を信じるかは自分たちの自由だとして花娘に反発した。晩霞の言葉さえ聞かなくなり、花娘たちは取り囲まれた。

泊鶴宮の騒動

危機を知らされた寿雪は温螢と淡海を連れて泊鶴宮へ急行した。寿雪を救い主として崇める者たちの熱狂は、もはや晩霞にも抑えられないほどになっていた。寿雪は、自分が人々の頼みを引き受け続けたことが、この状況を生んだ一因であることと向き合った。

騒動後、高峻は後宮内で黒い衣服や装飾品を用いることを禁じ、烏妃だけを例外とした。寿雪には衛青を通じ、当分の間、許可なく夜明宮から出ることを禁じる処分が伝えられた。

寿雪は命令に従う義務のない立場だったが、今回の騒動は自分が蒔いた種だとして処分を受け入れた。困っている者を放っておけないというだけでなく、頼られ、必要とされることに喜びを感じていた自分を認め、烏妃としての領分を越えていたことを自覚した。

衛青も以前から、寿雪の周囲に人が集まりすぎることを危惧していた。寿雪は夜明宮に留まりながら、自らを閉じ込める烏妃という立場、人々とのつながり、そして自分を烏漣娘娘から解放しようとする高峻との関係を改めて見つめることになった。

後宮の烏3レビュー
まとめ
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