物語の概要
■ 作品概要
後宮における権力均衡の象徴である鶴妃(晩霞)と燕夫人(黄英)の懐妊という慶事の裏側で、烏妃・寿雪が置かれた孤立と、彼女を救い出そうとする高峻の長期的策略が描かれる。
前巻の緇衣娘娘騒動を受け、寿雪は夜明宮に事実上の蟄居状態にあるが、外部との文を通じた交流や、持ち込まれた怪異の調査を通じて事態に関与し続ける。
物語は大きく二つの軸で展開する。
一つは、燕夫人の鵲巣宮への移宮に伴う怪異調査である。寿雪は自ら介入することで、宮女・松娘の持つ漆箱に纏わる悲劇的な生贄の伝承と、それがもたらす警告を解明する。
もう一つは、解州の有力な塩商であり、欒王朝の重臣の末裔である羊舌慈恵を巡る政治工作。
令狐之季の現地調査と寿雪による「黒い塩」の鑑定により、十五年前に非業の死を遂げた慈恵の娘・瑛の真相が明らかになる。
最終的に高峻は、羊舌家を寿雪の強力な後ろ盾として確保すると同時に、寿雪を烏の呪縛から解放し、隣国「阿開(あかい)」へ亡命させるという、過酷な宿命を断ち切るための具体的な計画を提示するに至る。
■ 主要キャラクター
- 柳寿雪 :烏妃。緇衣娘娘騒動の責任により夜明宮で蟄居中。烏への供花を停止した副作用により、身体の内側から裂けるような激痛(内側から裂けるような痛み)に苦しむ。事件解決のため限定的に外出・調査を行う。
- 夏高峻 :皇帝。世継ぎ問題への配慮を見せつつ、寿雪の解放を最優先事項として動く。「燕(欒の隠語・烏衣の比喩)の木像」を用いた謎かけにより羊舌慈恵を動かすなど、高度な政治的策略を駆使する。
- 衛青 :高峻の側近。寿雪が皇帝の弱点となることを危惧し、殺意と庇護欲を同居させている。寿雪に対し「自由になったらどうするか」と問い、彼女自身の意志を初めて確認する。
- 九九・温螢・淡海 :夜明宮の侍従・護衛。温螢は軽業師の技能を活かした隠密調査、淡海は外部情報の収集、九九は寿雪の精神的支柱および実務面での補佐を担当。
- 昌黄英(燕夫人/のちの鵲妃) :懐妊により鵲妃へ昇格。前代の変死が起きた鵲巣宮への移宮に強い恐怖を抱く。寿雪に純粋な信頼を寄せ、個人的な感謝を直接伝える。
- 長勺松娘 :飛燕宮の宮女。鵲巣宮の木の下に漆箱を埋めようとしていたところを寿雪に発見される。実家に伝わる「笑う赤い女」の怪異に悩まされる。
- 令狐之季 :高峻の臣下。解州への使者として派遣され、羊舌家の勧誘と瑛の死の真相調査を行う。自身の過去(妹の幽鬼)の影響から寿雪の境遇に深く共鳴する。
- 羊舌慈恵 :解州の塩商。欒王朝の元重臣。高峻が提示した木像の意図(欒氏の生存)を理解し、入宮の条件として娘・瑛の死の解明を要求する。
書籍情報
後宮の烏 5
著者:白川紺子 氏
イラストレーター:香魚子 氏
出版社:集英社
発売日:2020年12月18日
ISBN:978-4-08-680353-3
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あらすじ・内容
高峻は寿雪を救い出すため、もっとも険しい道を選び、進んでいく。
初代烏妃、香薔(こうしょう)の過ちをただすこと。
すなわち、香薔が烏妃のなかに閉じ込めた烏漣娘娘(うれんにゃんにゃん)を解放すること。
この秋、宮中は慶事に沸いた。
同じ頃、先の騒動の影響で夜明宮は、ひっそりと静まり返っていた……。
烏妃はひとりで在るもの。先代、烏妃の戒めが、寿雪の胸を刺す。
それでも周囲には九九や温螢、淡海たちがいる。
寿雪は、抱えたものを守り通すため、烏妃として突きつけられた切ない運命(さだめ)に対峙することを決意して――。
笑う女
黒い塩
烏妃の首飾り
破界
互いの思いが重なる時、歴史が動く……。シリーズ続々大重版、圧倒的中華幻想譚。激動の第五弾!
感想
5巻を読んでいて強く感じたのは、寿雪を縛っているものがあまりにも多すぎるということだった。
前王朝の血を引く銀髪。
烏妃という立場。
身体の中にいる烏漣娘娘。
宮城から出ることを許さない結界。
そして「烏妃はひとりで在るもの」という先代・麗娘の教え。
高峻は、そんな寿雪を救い出そうとしている。
そのために選んだのが、初代烏妃・香薔が作った結界を破り、寿雪の中から烏漣娘娘を解放するという道である。
しかし読み進めるほど思う。
香薔、いったい何をしたんだ?
結界だけでも十分に厄介なのに、その先にも仕掛けがある。
歴代の烏妃たちは静かに夜明宮で暮らしていたのだと思っていたが、実際にはまったく違った。
逃げようとした者もいた。
苦しみに耐えられなかった者もいた。
そして先代の麗娘まで……。
寿雪を自由にする物語であると同時に、これまで隠されてきた烏妃たちの苦しみが一気に見えてきた巻だった。
「烏妃はひとりで在るもの」が重くなってくる
秋の宮中は慶事に沸いている。
晩霞と黄英が懐妊したからである。
ところが寿雪のいる夜明宮は静まり返っていた。
前巻の騒動によって寿雪は自由に動けなくなっている。
そこで思い出されるのが、
「烏妃はひとりで在るもの」
という麗娘の教えである。
最初の頃なら、それが烏妃という存在なのだと思えた。
しかし今の寿雪を見ると、もう無理ではないかと思ってしまう。
九九がいる。
温螢がいる。
淡海がいる。
花娘や妃たちとも関係を築いてきた。
そして何より高峻がいる。
1巻の頃の寿雪なら、ひとりでいることを受け入れられたのかもしれない。
しかし寿雪はもう、人と関わる温かさを知ってしまった。
だからこそ、孤独へ戻されることが以前より苦しく感じられる。
寿雪の優しさは人を引き寄せる
4巻では、寿雪の周囲に人が集まること自体が危険視されるようになった。
5巻では、その流れがさらに強くなったように感じる。
寿雪は自分から人を集めているわけではない。
困っている人がいれば助ける。
幽鬼に未練があれば話を聞く。
怖がっている人がいれば、その恐怖を否定せずに受け止める。
そうやって行動してきた結果、自然と人が集まってきたのである。
寿雪の優しさは人を引き寄せる。
しかし同時に、寿雪に流れる血は厄介なものまで引き寄せる。
前王朝の血を引いているというだけで、本人の意思とは関係なく政治的な意味を持たされてしまう。
本人は普通に生きたいだけなのに、それが許されない。
何をしても「烏妃だから」「前王朝の血筋だから」と別の意味を付けられてしまうのが、なんとも苦しい。
「笑う女」|助けたのに怖がられるのが辛い
印象に残った怪異の一つが「笑う女」である。
赤い女が現れるという話だけを聞けば、いかにも怖そうな怪異だ。
ところが調べていくと、その意味はまったく違っていた。
赤い女は災いをもたらそうとしていたのではない。
危険を知らせようとしていたのである。
そのおかげで命が助かる。
ここまでは『後宮の烏』らしい怪異譚である。
しかし、その後が辛い。
助けられた側が寿雪を恐れてしまうのだ。
寿雪は助けただけなのに。
前巻では寿雪を慕う人間が増えたことで危険視された。
今度は助けた相手から恐れられる。
慕われても危険。
恐れられても孤独。
どうしろというのだ。
ただ、その一方で黄英のように寿雪を信頼してくれる者もいる。
九九も、寿雪一人の力ではなくても、寿雪のために皆が動いたのならそれも寿雪の力だと支えてくれる。
夜明宮はもう、寿雪一人だけの場所ではなくなっている。
そのことが嬉しくもあり、同時に怖くも感じられた。
「黒い塩」|高峻は寿雪を救うために政治まで動かす
高峻も本格的に動き始める。
寿雪を救うには、烏漣娘娘を解放するだけでは足りない。
その後の寿雪をどうするのかまで考えなければならないからである。
寿雪は前王朝の血筋である。
正体が知られれば、烏妃から解放されたからといって普通に暮らせるとは限らない。
そこで高峻は、前王朝と縁の深い羊舌氏を寿雪の後ろ盾にしようとする。
さらに国外へ逃がすことまで考えている。
ここまで来ると、高峻の覚悟も相当なものである。
寿雪を自分の近くへ置いて守るのではない。
守るために自分から遠ざけようとしている。
好きな相手を助けるために、その相手と離れる道を選ぶ。
なかなかできることではない。
高峻、正しいことを言いすぎる
ただ、高峻を見ていると時々思う。
正しい。
ものすごく正しい。
でも正しいことを言いすぎでは?
寿雪の安全を考える。
皇帝として国のことも考える。
前王朝の血筋である寿雪をどう守るか考える。
その結果として出てくる答えは理屈が通っている。
しかし寿雪の気持ちは、それだけでは片づかない。
人は正しい答えだけで動けるわけではない。
寿雪にとって、九九も温螢も淡海も花娘も高峻も、すでに大切な存在になっている。
そこから離れれば安全だと言われても、
「はい、そうですか」
とはならない。
相手のためを思っているからこそ、高峻は正しいことを言う。
その正しさが、逆に寿雪を追い詰めてしまうところが二人らしい。
ようやく高峻と寿雪の気持ちが重なった
それでも5巻では、二人の関係が大きく進んだように感じた。
これまでは、とにかくすれ違う。
特に寿雪は、自分の気持ちそのものに気づいていないところがあった。
本人に自覚がなければ、当然ながら相手にも伝わりようがない。
高峻も寿雪を大切に思っているが、皇帝という立場がある。
単純な恋愛関係にはなれない。
そんな二人が、ようやく互いを「半身」として認める。
離れたくない。
でも相手を生かすためには離れなければならない。
そこで相手を縛るのではなく、離れていてもつながっていると考える。
かなり好きな場面だった。
寿雪はずっと「ひとりで在るもの」と教えられてきた。
そんな寿雪が、自分には半身がいると思えるようになった。
それだけでも大きな変化である。
だからこそ、この後の展開が余計に辛い。
せっかくここまで来たのに。
何とか窮地を脱してほしい。
「烏妃の首飾り」|歴代の烏妃も逃げようとしていた
この巻でかなり印象が変わったのが、歴代烏妃に対する見方である。
これまでは、麗娘のように夜明宮で静かに暮らしてきたのだと思っていた。
もちろん幸せだったとは思っていない。
それでも「そういう存在」として受け入れて生きてきたのだろうと、どこかで考えていた。
しかし違った。
逃げようとした烏妃がいた。
序寧である。
新月のたびに襲ってくる苦痛。
宮城の外へ出られない生活。
そんなものに耐え続けろというほうがおかしい。
序寧は逃げようとした。
烏漣娘娘の半身を探し、自分の運命を変えようとした。
しかし失敗した。
しかも協力するはずだった者の裏切りまであった。
これを知ると、「烏妃はひとりで在るもの」という言葉の重さも変わって見える。
それは伝統という綺麗なものではない。
何代もの烏妃が苦しみ、諦め、死んでいった結果として残された言葉なのかもしれない。
そして麗娘もまた、その中の一人だった。
香薔、いったい何者なんだ?
ここから初代烏妃・香薔への疑問がどんどん大きくなっていった。
香薔は夏の王を慕っていた。
その思いから烏妃となり、烏漣娘娘を閉じ込める側へ回った。
話だけを聞けば、
恋に目がくらんでしまった「哀れで愚かな小娘」
とも見える。
しかし、本当にそれだけなのだろうか。
巻を追うごとに明らかになる仕掛けを見ると、どうにも引っかかる。
まず宮城から逃げられないように結界を作った。
しかも簡単には解除できない。
一つを解いても他が補う。
複数の術者が同時に破らなければならないほど複雑な仕組みである。
そこまでやる?
さらに、その先まで用意していた。
結界を破れば終わりではない。
その先にも逃亡を阻む仕掛けがある。
恋する相手のために烏漣娘娘を閉じ込めました、という甘い動機から想像するものと、やっていることの規模が合わない。
香薔は何を知っていたのだろう。
何を恐れていたのだろう。
そして、なぜここまで徹底的に後の烏妃を閉じ込める必要があったのか。
読み進めるほど、
「本当にただ恋に目がくらんだだけなのか?」
という疑問が膨らんでいった。
「破界」|ついに結界を壊す
そして、いよいよ香薔の結界を破る。
必要なのは三人の巫術師。
寿雪。
封一行。
そして白雷。
ここで白雷か。
これまで散々寿雪を狙ってきた人間と協力しなければならない。
しかも白雷には白雷の事情がある。
完全に信用できる仲間というわけでもない。
それでも結界を破るには必要である。
寿雪たちは九つの門を分担し、同時に術を破っていく。
寿雪の前には、香薔の術が三つ首の大蛇となって現れる。
これまで幽鬼の未練を解いてきた寿雪が、今度は自分自身を縛っているものと直接戦う。
5巻の戦いは、単に敵を倒すためのものではない。
自分の人生を取り戻すための戦いである。
だからこそ、結界が壊れた瞬間は嬉しかった。
これで外へ出られる。
やっと寿雪が自由になれる。
……と思った。
結界を破ったら歴代烏妃が出てきた
ところが終わらない。
香薔はさらに仕掛けを残していた。
結界を破った者を殺すため、歴代烏妃の骸を利用する禁術である。
いや、どれだけ念入りなんだ。
生きている間だけではない。
死んだ後まで烏妃を利用する。
逃げようとする未来の烏妃を殺すために、過去の烏妃たちまで縛りつけている。
ここまで来ると、香薔への印象はかなり変わった。
何が彼女をそこまでさせたのか。
夏の王への思慕だけで、本当にここまでやれるのだろうか。
麗娘まで自由ではなかった
そして歴代烏妃の中には、麗娘もいる。
寿雪を育てた先代烏妃。
寿雪にとって親のような存在でもある。
麗娘は死んだ。
それで烏妃の役目から解放されたと思っていた。
違った。
死んでも香薔の術に捕まっていた。
これは辛い。
ただ、麗娘も何も知らなかったわけではない。
自分が死後に利用される可能性を見越し、あらかじめ呪詛返しを仕込んでいた。
最後まで寿雪を守る。
そして香薔の禁術を破壊する。
寿雪の頬に触れた後、麗娘は歴代烏妃たちに引き裂かれていく。
寿雪がその骨を集めて泣く場面は、かなりきつかった。
「烏妃はひとりで在るもの」
そう寿雪に教えた麗娘自身も、どれほど孤独だったのだろう。
自分と同じ苦しみを寿雪に味わわせたくなかったはずである。
それでも寿雪を烏妃として育てなければならなかった。
そして最後は、自分の死後まで利用されながら寿雪を守った。
麗娘もまた、香薔が作った仕組みの犠牲者だったのだ。
自由になったはずなのに、何かがおかしい
結界は壊れた。
麗娘の呪詛返しによって、香薔の禁術も破られた。
これで終わり。
……ではなかった。
寿雪の悲しみに呼応するように天候が荒れ、激しい雨が降る。
その雨によって、寿雪の髪を黒くしていたものが落ちていく。
現れたのは本来の銀髪。
前王朝の血を示す、寿雪本来の姿である。
そして寿雪の様子が変わる。
梟に呼びかける寿雪。
しかし、その声と眼差しは寿雪でありながら寿雪ではない。
烏が目覚めている。
……ちょっと待って。
高峻たちは寿雪を救うために結界を壊したはずである。
烏漣娘娘を寿雪から解放するために動いていた。
それなのに、烏のほうが前面に出てきてしまった。
計画と違う。
完全に予定外である。
これ、鼇の神も困るのでは?
さらに気になるのが鼇の神である。
白雷が結界破りへ協力した背景には、鼇の神の思惑があった。
寿雪を烏から奪う。
そして自分の巫にする。
つまり鼇の神にも計画がある。
高峻にも計画がある。
寿雪にも覚悟がある。
白雷にも事情がある。
それぞれが別の思惑で同じ結界を破った。
ところが出てきた結果が、
「烏、目覚めました」
である。
これ、高峻だけでなく鼇の神も困る状況では?
誰の計画通りにも進んでいないように見える。
非常に気になるところで5巻が終わってしまった。
まとめ|寿雪を自由にするはずが、とんでもないものを起こしてしまった
『後宮の烏』5巻は、寿雪を救うために本格的に動き始める巻だった。
高峻は政治を動かし、寿雪が自由になった後の逃げ道まで用意する。
寿雪自身も「ひとりで在る」という烏妃の生き方から離れ、自分にとって大切な人たちを自覚していく。
そして高峻とは、互いを半身だと思えるところまでたどり着いた。
ようやく寿雪が孤独ではなくなった。
だからこそ、失うものも増えたのである。
一方で、歴代烏妃の過去を知るほど、香薔への疑問は大きくなる。
彼女は本当に、
夏の王への恋に目がくらんだ「哀れで愚かな小娘」
だったのだろうか。
あまりにも仕掛けが多い。
あまりにも徹底している。
結界を作る。
簡単には解除できないようにする。
さらに突破された後の罠まで残す。
歴代烏妃の死後すら利用する。
これだけのことをした人物を、単純に恋に狂った少女として考えていいのか。
何か別の理由があるのではないか。
そう考えずにはいられなかった。
そして最大の問題は、寿雪である。
結界は破った。
自由への道は開いた。
麗娘も最後の力で寿雪を守った。
それなのに最後に現れたのは、これまでより強く表へ出てきた烏だった。
高峻は寿雪を救うため、もっとも険しい道を選んだ。
だが、その道の先に待っていたものは自由ではなかった。
むしろ今まで眠っていた何かを起こしてしまったように見える。
いや、これどうするんだ?
寿雪を助けるために結界を壊したのに。
ここからが本当の「烏漣娘娘を解放する戦い」なのかもしれない。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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考察・解説
ストーリー・プロット
第1幕:慶事の影と移宮の不安
後宮は二妃の懐妊に沸くが、寿雪は静まり返った夜明宮で蟄居を続けていた。燕夫人の侍女から、移宮先の不吉な噂を払拭するための「お祓い」が強引に依頼される。高峻の許可を得て鵲巣宮へ向かった寿雪は、不審な行動をとる宮女・松娘を偶然発見し介入。彼女が隠そうとしていた赤い女が描かれた漆箱を一時預かることになる。
第2幕:笑う女と漆箱の怪
寿雪は預かった漆箱を鑑定するが、禍々しい気配は感じられない。しかし松娘は、夜な夜な赤い顔の女が笑いながら自分を覗き込むと訴える。寿雪は術への反応からこれが血筋に関連するものと推測し、九九らを通じて箱の出自である蕪州および長勺氏に伝わる伝承の調査を開始する。
第3幕:過去の悲劇と現在の警告
調査により、漆箱の絵は「旱を鎮めるために焼かれた生贄の母が、わが子を安心させるために見せた笑顔」であることが判明する。寿雪は、この怪異が呪いではなく、松娘の身に迫る危機を知らせる「警告」であると断定し飛燕宮へ急行する。直後、老朽化した屋根が崩落するが、寿雪の介入により松娘は難を逃れる。しかし周囲の宮女たちはこの奇跡を「烏妃の呪いによる破壊」と誤認し、寿雪への畏怖と拒絶を強める。
第4幕:黒い塩と羊舌家の因縁
高峻は塩政の刷新と寿雪の保護を目的とし、令狐之季を解州へ派遣する。慈恵は高峻が提示した「燕(マキ=欒、燕=烏衣)の木像」という謎かけから、現皇帝が欒氏の生き残りである烏妃を匿っていることを察知する。慈恵は娘・瑛の死の真相解明を条件として提示し、之季は遺体の傍らにあった「黒い塩」を持ち帰る。
第5幕:呪詛の正体と父娘の情
寿雪は「黒い塩」を鑑定し、それが呪いの被害ではなく、瑛自らが執り行った「復讐の道具」であると看破する。瑛は、恋人を無実の罪で捕らえ二日で処刑した腐敗役人(司法参軍事)に復讐するため、自らの命を糧とする禁忌の呪詛を行っていた。真実を知った慈恵は、高峻の策略と寿雪の誠実さに心服し、寿雪の守護者となることを誓い帰順する。
第6幕:烏妃の首飾りと未来の提示
寿雪は前代の烏妃・序寧の遺品「藍彩玉(らんさいぎょく)の首飾り」の調査を通じ、結界の打破を試みて失敗した過去を知る。序寧の招魂を試みるも、彼女が結界を越えようとして死亡したため、その魂が「消滅」しているという絶望的な事実が浮上する。これを受け、高峻は夜明宮を訪れ、寿雪を呪縛から解放した後に隣国「阿開」へ亡命させるという、危険を伴う救出計画を提示する。
主要な転換点
- 転換点1:飛燕宮の屋根崩落
- 怪異が「警告」であったことが実証されるが、周囲の評価は「烏妃による呪い」へと反転。寿雪の救済意志が届かない現状が露呈する。
- 転換点2:羊舌慈恵への「燕の木像」の提示
- 木の別名「マキ(欒)」と「燕(烏衣)」を組み合わせた高度な謎かけにより、高峻は慈恵に「欒氏の生存」を確信させ、強力な後ろ盾へと変えた。
- 転換点3:黒い塩が「呪具」であるとの断定
- 瑛が呪い殺された「被害者」ではなく、自ら命を賭して役人を葬った「加害者(復讐者)」であった事実の提示。慈恵の未練を解消し、帰順の決定打となる。
- 転換点4:序寧の招魂失敗と「魂の消滅」の示唆
- 結界の突破失敗が「死」だけでなく「魂の消滅」を意味することが判明。寿雪に残された時間の少なさと、高峻の亡命計画の切実さが強調される。
主人公を中心とした人物関係の変化
- 寿雪 ⇔ 高峻 :物理的な距離が生じる中、文を用いた碁の対局を通じて精神的距離を維持。単なる主従を超えた「過酷な未来を共有する共犯者」へと変質する。
- 寿雪 ⇔ 羊舌慈恵 :当初は見知らぬ欒王朝の遺臣であったが、事件解決を経て、寿雪の出生を知った上での「私利私欲なき強力な守護者」へと変化。
- 寿雪 ⇔ 衛青 :監視と不信の対象から、衛青が「自由になったらどうするか」という踏み込んだ問いを投げかけるまでに接近。殺意の裏側に、彼女の自由を問う敬意が芽生える。
主人公の認識と周囲の評価
- 寿雪自身の認識 :烏への供花を拒絶したことにより、「身体の内側から裂けるような激痛」に襲われ、限界が近いことを悟る。高峻の亡命計画に戸惑いつつも、「自由」という概念に初めて直面する。
- 周囲からの評価(評価の断絶) :一般宮女たちは屋根崩落を寿雪の呪いと恐れ、松娘は礼を言う代わりに「口止め料」としての金子を渡して寿雪を拒絶する。対照的に、高峻と側近たちは、彼女を救うべき対象として認識を強める。
- 認識の差が現れた場面 :松娘が恐怖のあまり寿雪を「化け物」のように扱い、関わりを絶つために走り去る場面。善意が恐怖に変換される孤独が強調される。
クライマックス
- 発生原因 :令狐之季が解州から持ち帰った「黒い塩」の鑑定。
- 当初の状況 :瑛は無念の死を遂げた被害者であり、慈恵はその無念を晴らすことを望んでいた。
- 調査と推論 :之季による役人(司法参軍事)の死の調査と、寿雪による呪具鑑定。塩が「呪詛の結果」ではなく「道具」であることを特定。
- 決着 :瑛が自らの身を役人に捧げることで復讐の機会を得、一族に伝わる禁忌の呪術で仇を討ったという「強靭な意志による自己犠牲」の提示。
- 直後の結果 :慈恵が娘の覚悟を知り、真相を解いた寿雪に帰順。高峻が寿雪に対し、阿開への亡命計画を打ち明ける。
巻末時点の状況
- 寿雪の状況 :夜明宮での蟄居を維持。烏の咆哮と身体の異変(裂ける痛み)は悪化の一途を辿る。
- 解決した問題 :羊舌家の帰順による政治基盤の確立。燕夫人の無事な移宮。
- 継続している問題 :序寧の魂が消滅していることによる結界打破の手掛かり喪失。巫術師が一人不足(寿雪、封一行、あと一人)。
- 今後につながる要素 :羊舌家の娘が侍女として入宮予定。阿開への亡命という、高峻による究極の救済計画の始動。
寿雪の出自と解放
柳寿雪の出自と、神示的な呪縛から抜け出す軌跡は、物語の根底を貫く重要な主題を成す。過酷な生い立ちを経て夜明宮に迎えられた彼女が、皇帝との出会いや周囲との関わりを通じて運命を切り開く過程を、各段階に沿って整理する。
寿雪の出自と過酷な幼少期
・前王朝および古代王族の血統
本来の頭髪は銀色を呈し、現王朝の祖によって徹底的に粛清された前王朝皇族の証を示す。さらに遡ると、北方の高地に栄えた古代王朝の王族であり、神の血を引く銀髪を持つ一族の末裔に位置づけられる。
・母の処刑と罪悪感
四歳の頃、実母が反逆の罪により処刑される事態に直面する。恐怖から息を潜めて隠れていた幼少期の行動が、母を見捨てて生き延びたという痛恨と罪悪感を生み、自らへの罰として長年心に深く刻まれる。
・奴婢生活から夜明宮への保護
母を失った後、人買いの手を経て楊家の家婢として過酷な労働と虐待に耐える日々を過ごす。六歳の秋、宮城から飛来した金鶏の金色の羽に選定され、次代の烏妃として夜明宮へ連れ出される。先代の麗娘は出自を秘匿するために髪を黒く染め、文字や作法、呪術を伝授して育成に努める。
烏妃としての呪縛
・歴史から消された冬の王の宿命
かつて国家は、政を司る夏の王と神託を司る冬の王という二名の君主によって治められていた。しかし前王朝の初代皇帝は、冬の王であった初代烏妃の香薔を夜明宮へ囲い込み、正史から冬の王の存在を抹消する。香薔は初代皇帝への思慕から不条理を受け入れ、宮城の直下に女神・烏漣娘娘を留める番人となる。
・新月の苦痛と孤独の戒め
歴代の烏妃は神の器として宮城の外へ踏み出す自由を奪われ、新月の夜には体内から離脱を図る神の力によって激痛に苛まれる。初代が九つの指を用いて施した門の結界により、境界を越えれば命を落とす呪縛が持続する。先代からは、何者も愛さず何も望まず孤立を守り抜くよう厳命を受ける。
夏高峻との出会いと解放への模索
・捕殺令の廃止と四つの誓約
若き皇帝の夏高峻は寿雪の銀髪を目撃しても秘密を守り抜き、形骸化していた前王朝皇族の捕殺令を公式に破棄する。何があっても命を奪わないこと、決して争わないこと、私的な場では対等な冬の王として扱うこと、良き友になることという誓約を交わし、孤独に沈んでいた寿雪に尊厳をもたらす。
・神からの離脱計画
命を奪わずに神から解放する方策を模索し始める。古代の神話において東の海へ沈んだ神の半身にあたる黒き大刀を探し出し、完全な力を取り戻させた上で器から離脱させる道筋を立てる。
結界の打破と烏の覚醒
・三人の術者による結界破却
宮城の外へ出るため、初代が施した結界を破る儀式を挙行する。寿雪、老巫術師の封一行、八真教の白雷の三名が同時に三門ずつ術を解く段取りを進め、寿雪は春見門において三つ首の大蛇と化した術を切り払って破壊を完遂する。
・過去の禁術と先代の消滅
結界が崩れた直後、烏妃の塚に仕掛けられていた禁術が発動し、歴代の骸が寿雪を襲撃する。蘇生した先代の麗娘が生前に施していた呪詛返しによって禁術を相殺し、自らも崩壊して完全に消滅する。
・銀髪の顕現と新たな局面
先代の消滅に打ちひしがれた寿雪の慟哭に応じるように激しい雷雨が降り注ぎ、黒い塗料が洗い流されて本来の銀髪が露わとなる。星烏を介して現れた存在の問いかけに対し、寿雪の身体には自身でありながら神そのものの意志が顕現し、物語は未知の領域へと進展する。
まとめ
過酷な血脈と神の呪縛に縛られていた少女は、皇帝との誓約や人々の助力を得て宮城の結界を破り、自らの運命に立ち向かう一歩を踏み出す。数々の犠牲と引き換えに本来の姿を取り戻した歩みは、孤独な器からの完全な解放を目指す新たな闘争の幕開けを告げる。
香薔の結界破壊
物語の第5巻において実行される初代烏妃の結界破壊は、烏妃を縛る神話的な宿命を断ち切るための最大の挑戦となる。自由の獲得を目指した儀式が激甚な惨劇へと転じ、登場人物たちの運命を大きく揺るがす転換点について、経緯と結末を整理する。
初代烏妃の結界とその構造
初代烏妃の香薔は、歴代の烏妃が宮城から逃走することを阻止するため、自らの指を用いて宮城の九つの門に強力な結界を構築した。
・結界を越えて外へ出た烏妃は即座に絶命を迎える仕組みとなる。
・補綴の術が組み込まれており、単独の結び目が解かれても他の結び目が作用を補い合って元へ戻るため、一人の術者のみで解呪することは叶わない。
・体内の神を解放するためには東の海に沈む神の半身を探し出す工程が不可欠であり、宮城を取り囲む結界の破却が絶対条件となる。
三人の術者による結界破却の決行
結界を完全に破るため、三名の強力な術者が配備され、表向きは門の神を祀る神事という名目で一斉に儀式を開始した。
・柳寿雪:結界の要となる西北の春見門、ならびに西蜃門と朔老門を担当
・封一行:南および西に位置する経禍門、月噬門、戻昏門を担当
・白雷:東および南に位置する夙浪門、東蜃門、月滔門を担当
春見門における攻防と結界の崩壊
寿雪が相対した春見門には、残された術が巨大な三つ首の大蛇へと姿を変えて立ちはだかった。
・牡丹の花から生成した縄で大蛇の動きを封じる。
・星烏の羽から変化させた褐色の諸刃の剣を振るい、三つの首をことごとく切り払う。
・衝撃により門は崩壊に至り、三名の術者が同時に役目を果たしたことで、宮城を拘束し続けていた結界は消滅を迎えた。
作動した禁術と歴代烏妃の襲来
結界が消滅した瞬間、塚に仕掛けられていた初代烏妃による禁術が発動した。
・結界の破壊に伴う逃走者を抹殺するため、歴代烏妃の魂を塚へ封じ込め、骸を使役する罠が残されていた。
・禁苑の塚から這い出した無数の骸骨は、歩みを進めるごとに生前の姿を取り戻しながら、黒衣を翻して寿雪へと襲いかかった。
先代の犠牲と呪詛返しの発動
群れを成して襲撃する異形の中に、先代烏妃である麗娘の姿が現れた。
・生前から禁術の存在を予見していた先代は、自らが死後に操られる事態を見越し、あらかじめ塚へ呪詛返しの術を施していた。
・寿雪の頬に触れて終わりを告げ、自ら他の烏妃たちの盾となって引き裂かれる道を選んだ。
・先代の首が落ちた瞬間、仕掛けられていた呪詛返しが作動して禁術そのものを粉砕し、すべての骸は白骨へと戻った。
・呪縛に弄ばれた先代の骨を抱き、寿雪は慟哭した。
神の覚醒と本来の姿の顕現
寿雪の慟哭に呼応するように激しい雷雨が降り注ぎ、宮城を覆った。
・豪雨によって頭髪の黒い塗料が洗い流され、本来の血統を示す銀髪が露わとなった。
・星烏を介して現れた存在に対し、立ち上がった寿雪の眼差しと声には、彼女自身のものではない神の冷徹な意志が宿っていた。
・人としての救済を求めた皇帝や周囲の尽力は、神の完全な覚醒という過酷な結末を迎えることとなった。
まとめ
宮城の結界破却は、長きにわたり烏妃を縛り続けた物理的な牢獄を打ち砕いた一方、先代の消滅と神の覚醒という計り知れない代償を伴う結果となった。過酷な試練を経て現れた本来の銀髪と神の意志は、呪縛からの完全な解放を目指す闘いがより深い領域へと突入した事実を鮮烈に刻み込む。
歴代烏妃の呪縛
国家の歴史の裏側に不当に押し込められ、神の器として肉体と精神を削り取られ続けてきた女性たちの凄惨な宿命が存在する。その理不尽な構造の起源、受け継がれた苦痛、逃亡を阻む厳重な仕組み、そして積み重ねられた悲劇の実態を整理して記す。
冬の王から烏妃へ至る歴史隠蔽と監禁の始まり
かつてこの国は、政を行う夏の王と、神託を司る冬の王という二人の君主によって統治される体制をとっていた。
・初代皇帝による謀略
前王朝の初代皇帝は、冬の王であった香薔を愛しながらも、二人の王が並び立つことによる再度の戦乱を恐れ、彼女を後宮の夜明宮に幽閉して烏妃と名付けた。
・歴史の改ざんと不条理な連鎖
初代皇帝は正史から冬の王の存在を抹消し、烏妃を単なる神を祀る巫女の末裔とする偽りの記録を仕立てた。香薔は初代皇帝への愛ゆえにその境遇を受け入れ、夜明宮の直下に女神を繋ぎ止める番人となったことで、後世に続く苛烈な連鎖が始まった。
神の器として課された肉体的および精神的苦痛
選定の証たる金鶏の羽根によって無作為に見出された少女は、本人の意思に関わらず夜明宮へ連行され、生涯にわたり宮城の外へ出られない幽閉生活を強いられた。
・新月の夜に生じる激痛
月のない新月の夜には、体内に封じられた神が外界へ出ようとして激しく暴れ、四肢を引きちぎられるような痛痒に見舞われた。この苦痛の凄まじさゆえに、歴代の多くは若くして命を落とした。
・孤独を強いる掟
配下や徒党を結成して政治的な災いを招く事態を防ぐため、先代からは誰も愛さず何も望まず孤立を守るよう厳命され、他者との温かな関わりを絶たれた境遇に置かれた。
逃亡を阻む結界と禁術の二重構造
初代烏妃は、歴代の者が後宮から逃走する事態を阻むため、二重の過酷な仕掛けを残した。
・九つの指を用いた結界
自らの九つの指を用いて宮城の九つの門に強固な結界を構築した。門の外へ踏み出した瞬間に絶命する仕組みを備えており、苦痛に耐えかねて逃亡を図った過去の者も境界を越えた途端に命を落とした。この結界は単独では解けず、複数の強力な術者が同時に術を行使しなければ破れない構造を持つ。
・塚に仕掛けられた禁術
万が一結界が破られた場合に備え、歴代が眠る塚に魂を閉じ込めて骸骨を使役する冷酷な術を残し、逃亡者を抹殺する罠を張り巡らせた。
百三十六人を数えた悲劇と先代の犠牲
前王朝の約三百年におよぶ歴史において、烏妃の座に就いた者は百三十六人にのぼった。
・重なる悲惨な結末
過酷さに耐えかねて自ら命を絶った者、狂気に囚われて皇帝の座を望んだ者、愛する者とともに脱出を図り落命した者など、数多の悲哀が積み重なった。
・禁術の作動と先代の消滅
結界を破る儀式が成し遂げられた際にも、仕掛けられていた禁術が作動して歴代百三十六人の骸骨が一斉に蘇り、当代の寿雪へ襲いかかった。先代が生前に施していた呪詛返しによって術自体は打ち破られたものの、先代自身が引き裂かれて消滅するという痛ましい犠牲を払う結果となった。
まとめ
歴代を縛り続けた宿命の本質は、時の権力者の都合と初代の執着によって本来の尊称を奪われ、神を現世に留め置く生け贄として人生を捧げさせられた女性たちの深い無念に帰結する。理不尽な歴史の闇に埋もれた叫びは、長きにわたる沈黙を経てようやく白日の下に晒されるに至った。
羊舌氏との協力
物語の中盤から終盤において描かれる羊舌氏との連携は、皇帝の夏高峻が推進する塩政改革の要石となるにとどまらず、烏妃の柳寿雪を神の呪縛および宮廷の政治的脅威から解放するための決定的な安全網を形成する。一族の由緒、皇帝が接近を図った背景、娘の死の真相究明を経て築かれた強固な信頼関係を以下に整理して解説する。
羊舌氏の出自と歴史的背景
・解州における権勢と塩業の掌握
解州において広大な塩田と海上交通網を統括する屈指の富豪であり、当代の当主は羊舌慈恵が務める。
・古代王朝および前王朝との深い因縁
家門の起源は前王朝よりもさらに古く、北方に栄えた古代杼王朝の時代に遡る。神より白塩の製法を授かり、銀髪を持つ王族に神職として奉仕した伝承を有する。前王朝創始の際にも経済面から多大な支援を提供したが、末期の塩政をめぐる権力闘争に巻き込まれて失脚し、朝廷の表舞台から身を引いた経緯を辿る。
皇帝が連携を求めた多面的な意図
・国家財政の再建と塩政の是正
先代の治世下で価格高騰と流通混乱に陥った塩の市場を正常化させるため、実務と流通に精通する当主を専任の高官として中央政界へ登用する方針を固める。
・前王朝の遺臣による強力な後盾の確保
皇帝は寿雪の本来の頭髪が銀色であり前王朝の正統な血を引く事実を率直に当主へ開示する。かつての主家へ忠義を寄せる有力者を陣営に組み込むことで、万が一素性が露見した際の政変を防ぐ防壁を構築する配慮を施す。
・後宮内部における支援拠点の設営
一族の令嬢を新たな側妃として後宮へ迎え入れ、孤立しやすい寿雪を間近で日常的に護衛し補佐する体制を企図する。
・神からの離脱に伴う国外脱出網の準備
宮城の結界を破断して寿雪を神の器の役目から解放した後、国内滞在が招く危険を回避するため、羊舌家が管掌する外洋船と航路を活用して安全な異国へ逃避させる脱出計画を策定する。
交渉の推移と愛娘の不審死の真相
皇帝は腹心の学士を特使として派遣し、後宮の木材を用いて削り上げた燕の木彫りを届けさせる。当主はその意図を即座に読み取り、前王朝の生存者が後宮に存在することを察知する。当初は中央への復帰を辞退する構えを見せるが、十五年前に急死を遂げた愛娘の死の真相を烏妃に調査させる条件を提示し、帝都への上洛を承諾する。
・事件の真相と黒い塩の呪詛
娘の恋人であった塩の運搬役は、利権と欲望に駆られた現地の官吏によって無実の密売罪を着せられ処刑されていた。官吏は恋人の助命を条件に娘へ身を差し出すよう強要したが、娘が屈した時点で青年は落命を遂げていた。欺瞞に気づいた娘は自らの命を代償とする禁忌の呪詛を発動させて仇敵を呪殺し、父への詫び状を残して息を引き取った結末が露見する。
・当主の自責と主人公への共鳴
事件当時に不在で娘の救難信号を見落とした悔恨に苛まれていた当主は、魂の悲哀を解きほぐし静かに痛みに寄り添う寿雪の姿に接し、亡き娘の面影を重ね合わせて深い敬愛を寄せる。
協力体制の確立と意義
寿雪の清廉な人格に心を動かされた当主は、過去の主家に対する義務感を越え、苦難を抱えながら他者に手を差し伸べる少女個人を守り抜く決意を固める。中央高官への就任、後宮への側妃擁立、寿雪の庇護、ならびに国外亡命の支援要請を無条件で受託する。
まとめ
羊舌氏との同盟は、君主の周到な計略、烏妃の無私な慈愛、そして愛娘を失った父親の庇護意識が合致したことで結実を見る。政治的利害を超越して結ばれた強固な絆は、苛烈な運命に翻弄されてきた冬の王を解き放ち、新たな生へ踏み出させるための揺るぎない基盤として機能する。
高峻との半身の関係
夏高峻と柳寿雪が結ぶ関係は、宮廷における皇帝と妃の枠組みを超え、歴史の宿命や過去の痛恨、魂の奥底における共鳴によって形づくられる。本作の核心をなす半身としての結びつきについて、歴史的背景や心理的葛藤の側面から整理して論じる。
歴史と神話における対の王権
かつてこの国は、政務を担う夏の王と神託を司る冬の王という二名の君主によって治められていた。前王朝の創始者が冬の王を後宮の夜明宮へ囲い込み、烏妃と名付けて正史から抹消した経緯を持つ。
・王権の不可分性
冬の王が欠ければ夏の王も滅びるという摂理のもと、高峻が皇帝として存立する背景には、冬の王の継承者たる寿雪の存在が不可欠となる。
・対等性の回復
歴史の真相を究明した高峻は、私的な場において寿雪を対等な冬の王として遇する誓約を交わし、不当に歪められた二王の均衡を取り戻す。
過去の悔恨と孤独の共鳴
両者の精神的な合致は、他者に明かせない過酷な生い立ちと深い自責の念を分かち合う過程を通じて深まる。
・寿雪の自責
幼少期に実母が処刑された折、恐怖から身を潜めて生き延びた経緯から、母を見捨てた痛恨を拭えず、自らを罰するように生きる姿勢を保つ。
・高峻の喪失感
幼少期に生母や忠臣を権力闘争の中で惨殺され、無力なまま見殺しにした悔悟から、胸底に埋めようのない虚無感を抱え込む。
・痛みの共有
自己を責め苛む境遇を共有する二人は、他者には理解されない心の空隙を静かに埋め合わせる唯一無二の理解者となる。
池畔における告白と魂の合致
神の呪縛から寿雪を解き放つ計画が進展する最中、夜明宮の池畔において月を仰ぎながら、高峻は胸中の情懐を吐露する。
・光と陰の同一性
月を引き合いに出し、どちらか一方が光で他方が陰という関係ではなく、双方が光であり陰を兼ね備える存在と位置づける。
・半身としての自覚
相手の感情の揺らぎがそのまま己の痛痒となる心情を明かし、救済のために遠方へ逃避させねばならない事態を、自らの半身をもぎ取られる苦痛として表現する。
・手を取り合う誓心
寿雪もまたその認識に深く同意を示し、冷えた手を重ね合わせる所作を通じて、たとえ物理的に隔絶されようとも自らの半身は常にこの地にあるという確固たる覚悟を刻み込む。
救済と離別が孕む悲劇的相克
寿雪を神の器たる過酷な宿命から解放する試みは、同時に二人の永続的な離別を決定づける矛盾を内包する。
・解放に伴う代償
過酷な神から解き放つ手段は国外への脱出を前提とし、相手を救い出す行為そのものが半身を引き裂く苦痛へと直結する。
・予期せぬ危機の顕現
結界の破壊を成し遂げた直後、寿雪の肉体に神の意志そのものが覚醒し、綿密に整えられた救出計画は混迷を極める事態へと突入する。
まとめ
二人が分かち合う半身の関係は、権力や恋愛感情の次元を遥かに超越し、歴史の暗部に埋もれた王権の回復と、傷を負った魂同士の相互救済を具現化する。相手を生かすために別れを受け入れようとする純粋な覚悟は、過酷な神話の呪縛に立ち向かう強固な意志として物語を前進させる原動力となる。
登場キャラクター
夜明宮
柳寿雪
夜明宮に住む烏妃を務める。
術を用いて幽鬼の解決や捜し物を行う。
過剰な神格化や周囲の熱狂に戸惑いを見せた。
・所属組織、地位や役職
夜明宮・烏妃。冬の王。
・物語内での具体的な行動や成果
長勺松娘の化粧箱の真相を解明した。香薔の結界を春見門で破った。白骨化して襲い来る歴代烏妃の骸と対峙した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
結界の破壊に伴い髪の黒い塗料が洗い流された。本来の銀髪が現れて烏の意志が覚醒した。
麗娘
かつて夜明宮で寿雪を育てた先代の烏妃を指す。
寿雪に知識や術を教え込んだ。
・所属組織、地位や役職
夜明宮・先代烏妃(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果
生前に烏妃の塚へ呪詛返しの術を施した。香薔の禁術を打ち破って寿雪を守った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
香薔の禁術により骸として蘇った。最後は首が落ちて白骨へと戻った。
九九
夜明宮で寿雪に仕える明るい侍女を務める。
後宮内の噂話を集めて寿雪に報告する。
・所属組織、地位や役職
夜明宮侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
寿雪の指示で長勺氏や昔話の情報を集めた。新月の夜に激痛に苦しむ寿雪の手を握った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
寿雪の寝台で一緒に眠り安心感を与えた。寿雪から深い信頼を寄せられる。
蘇紅翹
夜明宮で仕える手先の器用な宮女を務める。
言葉を発することができない。
・所属組織、地位や役職
夜明宮宮女。
・物語内での具体的な行動や成果
寿雪のために湯気立つ饅頭や茶を用意した。悲鳴を聞いて寿雪のもとへ駆けつけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
言葉の代わりに身振りで気持ちを表現する。夜明宮の温かな生活を支える。
星星
夜明宮で飼われている金色の化鳥を指す。
金鶏と呼ばれる存在に該当する。
・所属組織、地位や役職
夜明宮の化鳥。
・物語内での具体的な行動や成果
衣斯哈に抱かれて夜明宮の部屋へやってきた。寿雪のピンチに現れて大弓の矢へ変化した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
寿雪に尾羽を抜かれて諸刃の剣や金色の矢に変わる。
桂子
夜明宮に長く仕える無口な老婢女を務める。
料理や力仕事を担う。
・所属組織、地位や役職
夜明宮婢女。
・物語内での具体的な行動や成果
滋養に良い松の実や鶏肉が入った粥を調理した。新月の翌日の寿雪の体を気遣った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
麗娘の時代から変わらぬ態度で仕え続けている。
皇室・凝光殿
夏高峻
霄国の若き皇帝を務める。
冷徹な決断力と周囲への気配りを合わせ持つ。
・所属組織、地位や役職
霄国・皇帝。夏の王。
・物語内での具体的な行動や成果
羊舌慈恵を塩鉄使に任用する交渉を進めた。寿雪を自らの「半身」と呼んで思いを告げた。香薔の結界破壊の儀式を神事として執り行わせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
寿雪を神から解放して国外亡命させる計画を練る。覚醒した「烏」の姿を目撃した。
衛青
夏高峻に絶対の忠誠を誓う宦官を務める。
武芸に優れ冷静沈着に行動する。
・所属組織、地位や役職
内侍省・衛内常侍。
・物語内での具体的な行動や成果
高峻から寿雪への文や碁の返書を運んだ。冬官府へ向かう寿雪の護衛を担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
高峻の安全を最優先に考える姿勢を保つ。寿雪への庇護と警戒の間で葛藤を抱く。
温螢
寿雪の護衛を務める宦官を指す。
頬に傷を持つ元鵐帮の軽業師に該当する。
・所属組織、地位や役職
寿雪の護衛宦官。
・物語内での具体的な行動や成果
樹上に登って寿雪の木登りを補佐した。長勺松娘の化粧箱を冬官へ預ける機転を利かせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
寿雪の身を守るため常に迅速に行動する。寿雪へ変わらぬ忠誠心を示した。
淡海
寿雪の護衛を務める元盗賊の宦官を指す。
観察力が高く軽妙な口調を用いる。
・所属組織、地位や役職
寿雪の護衛宦官。
・物語内での具体的な行動や成果
後宮外の事情や妃嬪の情勢を詳しく報告した。飛燕宮の屋根崩落の原因を調査した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
寿雪が後宮を出る際も同行する意思を表明した。寿雪の側近として厚い信頼を得る。
後宮(妃嬪・宮女・宦官)
藍晩霞(鶴妃)
泊鶴宮に住む妃を務める。
賀州の豪族・沙那賣朝陽の娘に該当する。
・所属組織、地位や役職
泊鶴宮・妃(鶴妃)。
・物語内での具体的な行動や成果
夏高峻の子供を身籠もった。長兄から贈られた紅の薄絹を寿雪へおすそ分けした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
父の支配から離れて自らの意志で行動し始めた。雲花娘との交流を深めている。
昌黄英(燕夫人)
飛燕宮に住む妃を務める。
深窓の令嬢として育ち怖がりな性質を見せる。
・所属組織、地位や役職
飛燕宮・燕夫人。のちに鵲妃。
・物語内での具体的な行動や成果
夏高峻の御子を身籠もった。死者の出た鵲巣宮へ移ることを恐れて寿雪へ相談した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
燕夫人から鵲妃へと昇格を果たした。夜明宮を密かに訪れて寿雪に感謝を伝えた。
雲花娘(鴦妃)
鴛鴦宮に住む二の妃を務める。
高い教養と落ち着いた品格を備える。
・所属組織、地位や役職
鴛鴦宮・二の妃(鴦妃)。
・物語内での具体的な行動や成果
界島の首飾りの来歴を父の伝手で調べさせた。後宮の妃たちを集めてお茶会を主催した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
最上位の妃として後宮の調和に配慮する。寿雪を妹のように慈しみ続けている。
衣斯哈
夜明宮で仕える見習い宦官を務める。
素直で健気な性格を見せる。
・所属組織、地位や役職
夜明宮見習い宦官。
・物語内での具体的な行動や成果
星星のお世話係として仲良く過ごした。雲花娘から手ずから書写した巻物を贈られた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
故郷の浪鼓での食生活について寿雪たちに語った。周囲から可愛がられて育っている。
長勺松娘
飛燕宮で仕える宮女を務める。
実家が蕪州の漆商に該当する。
・所属組織、地位や役職
飛燕宮宮女。
・物語内での具体的な行動や成果
代々伝わる朱漆の化粧箱を埋めようとした。枕元に現れる赤い女の存在を寿雪に相談した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
寿雪に呼び出されたことで屋根の崩落事故から助かった。周囲の噂を恐れて寿雪に金子を渡して離れた。
万若萃
泊鶴宮に仕える宮女を務める。
真面目で素直な観察眼を持つ。
・所属組織、地位や役職
泊鶴宮宮女。
・物語内での具体的な行動や成果
藍晩霞の身の回りの世話や使者の対応を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
晩霞に寄り添い忠実に仕え続けている。
琴恵瑤(鵲妃)
かつて鵲巣宮に住んでいた妃を指す。
・所属組織、地位や役職
鵲巣宮・元鵲妃(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果
兄を想うあまり泥人形の事件を引き起こした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
不幸な事件によって命を落とした。彼女の死後も鵲巣宮に不吉な噂が残った。
朝廷・官吏・学士
令狐之季
洪濤殿書院の学士を務める。
鋭い考察力と行動力を合わせ持つ。
・所属組織、地位や役職
洪濤殿書院学士。
・物語内での具体的な行動や成果
夏高峻の命で解州へ赴き羊舌慈恵と交渉した。羊舌瑛の15年前の事件を調査した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
亡き妹の幽鬼に袖をつかまれ続けている。白雷に対する復讐心を秘めている。
何明允
朝廷の中書省を統括する長官を務める。
・所属組織、地位や役職
中書令(宰相)。
・物語内での具体的な行動や成果
夏高峻や雲行徳と小舟の上で国政を協議した。令狐之季を自身の屋敷に寄宿させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
頭の切れる官吏として朝廷で手腕を振るう。
雲永徳
かつて中書令を務めた老臣を指す。
・所属組織、地位や役職
元中書令(元宰相)。
・物語内での具体的な行動や成果
夏高峻の太師教育係として知識を授けた。羊舌氏の才能を高く評価していた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
宰相を辞したのちも朝廷に強い影響力を残す。
雲行徳
中枢に就任した雲永徳の次男を務める。
温和で懐の広い性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
朝廷高官。雲家次男。
・物語内での具体的な行動や成果
解州の塩の旨さについて身振りを交えて力説した。名家側の不満をうまく収めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
父に代わり雲家の代表として重用される。
里錡
解州の州院に勤める年配の役人を指す。
・所属組織、地位や役職
解州州院役人。
・物語内での具体的な行動や成果
羊舌家の白壁の屋敷や白石の由来を之季に説明した。十五年前の塩の取り締まりの様子を語った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地元の歴史や言い伝えに詳しい知識を持つ。
沙那賣家・羊舌家・界島
沙那賣朝陽
賀州を支配する豪族・沙那賣家の当主を務める。
冷徹に一族の存続を追求する。
・所属組織、地位や役職
沙那賣家当主。
・物語内での具体的な行動や成果
白雷を通じて寿雪へ文を届けさせた。不祥事を起こす前に早々に賀州へ帰還した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
息子の晨や亮との間に深い溝が生じている。
沙那賣晨
沙那賣朝陽の長男を務める。
風流を好み妹思いの優しい性格を見せる。
・所属組織、地位や役職
沙那賣家長男。
・物語内での具体的な行動や成果
東院で夏高峻や寿雪と対面した。白雷の居場所を寿雪へ伝達した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
寿雪のために紅の薄絹を妹経由で贈った。父への反発から京師に留まる。
沙那賣亮
沙那賣朝陽の三男を務める。
気の強さと鋭い勘を合わせ持つ。
・所属組織、地位や役職
沙那賣家三男。
・物語内での具体的な行動や成果
京師の屋敷で愛用の琵琶のお手入れを行った。寿雪の持つ恐ろしさを兄に警告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
妹の晩霞や兄の晨を心から大切に思っている。
羊舌慈恵
解州で巨大な塩田を牛耳る豪族の当主を務める。
熊のような風格と深い情を持つ。
・所属組織、地位や役職
羊舌家当主。塩鉄使。
・物語内での具体的な行動や成果
夏高峻からの塩鉄使就任の要請に応じた。寿雪と対面して娘の死の真実を打ち明けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
寿雪が欒氏の生き残りであることを知り庇護者となった。寿雪の国外亡命の手助けを約束した。
羊舌瑛
羊舌慈恵の一人娘を務めた人物を指す。
・所属組織、地位や役職
羊舌家令嬢(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果
恋人を殺した司法参軍事へ黒塩の呪詛を行った。仇を討ったのちに命を落とした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
15年前に22歳で亡くなった。父に感謝と謝罪の文を残していた。
序寧
かつて界島から後宮へ上がった烏妃を指す。
・所属組織、地位や役職
界島出身の烏妃(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果
後妻から隠し持っていた藍彩玉の首飾りを奪い取った。巫術師の五生とともに結界突破を試みた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
宮門を抜けた直後に結界の力で死亡した。魂が消滅して招魂できない状態となった。
冬官府・神祇
董千里
冬官府の長官を務める。
病弱だが頭が切れ知的好奇心を満たす。
・所属組織、地位や役職
冬官府・冬官。
・物語内での具体的な行動や成果
長勺松娘の化粧箱の伝承を解読した。界島北方の海底火山の存在を突き止めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
寿雪の苦悩に寄り添い助言を与えた。魚泳の残した資料の整理を進めている。
薛魚泳
かつて冬官を務めた老翁を指す。
・所属組織、地位や役職
元冬官(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果
各地の地方伝承や海底火山の記述を書き残した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
死後もその手記が寿雪の救済の手がかりとなった。
烏漣娘娘
夜と生命を司る女神を指す。
・所属組織、地位や役職
神(夜と生命の女神)。
・物語内での具体的な行動や成果
寿雪が牡丹の花を捧げるのをやめたことで酩酊から覚め始めた。新月の夜に寿雪の体内で激しく暴れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
結界破りののち寿雪の身体に意識を顕現させた。
鼇の神
古代から白塩の製法を授けたとされる神を指す。
・所属組織、地位や役職
神(鼇の神)。
・物語内での具体的な行動や成果
白雷に命じて香薔の結界を破らせようと企てた。結界が破れた隙に寿雪を自分の巫として奪おうとした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
水辺を通じて隠娘に神託を与える。
市井・宗教・巫術師
封一行
宮廷に仕えていた老巫術師を指す。
・所属組織、地位や役職
元宮廷巫術師。
・物語内での具体的な行動や成果
春見門などの九門の割り振りを提案した。自ら三門の結界破りの術を実行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
冬官府で療養しながら伝承の解読に協力した。
白雷(掲車)
八真教の教主を務める凄腕の巫術師を指す。
・所属組織、地位や役職
八真教教主。卜砂師(掲車)。
・物語内での具体的な行動や成果
観風の占いを用いて珠玉商の屋敷に身を寄せた。香薔の結界破りのために高峻へ協力した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
鼇の神の命を受けて寿雪奪還の裏工作に従う。隠娘を贄にしない約束を守ろうとする。
隠娘(鮑児)
白雷に同行する哈彈族の少女を指す。
・所属組織、地位や役職
鼇の神の巫婆。
・物語内での具体的な行動や成果
水盆や川の水に手を浸して神の声を聞いた。夏高峻の保護のもとで静かに過ごした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
鼇の神の器として利用される。食べ物や着替えに無頓着な様子を見せる。
梟
幽宮の創子手を務める存在を指す。
・所属組織、地位や役職
幽宮の創子手。烏漣娘娘の兄。
・物語内での具体的な行動や成果
星烏に乗り移って夏高峻に警告を発した。香薔の禁術で歴代烏妃が蘇った危機を伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
妹である烏(烏漣娘娘)を救おうと画策する。
五生
かつて後宮に出入りしていた若い巫術師を指す。
・所属組織、地位や役職
元宮廷巫術師(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果
序寧に頼まれて結界を破るふりの儀式を行った。序寧の首飾りを夜明宮へ残した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
妃との姦通罪をかぶせられて斬首された。寿雪の招魂に応じて真相を明かした。
歴史上の人物・過去の人物
欒夕
前王朝の初代皇帝を務めた人物を指す。
・所属組織、地位や役職
前王朝初代皇帝(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果
香薔を夜明宮へ閉じ込めて烏妃と名付けた。弧矢宮を造らせて烏妃の呪いを防ごうとした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
香薔の死後にその骸を塩漬け(醢)にした。
香薔
前王朝の初代烏妃を務めた女性を指す。
・所属組織、地位や役職
前王朝初代烏妃(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果
九つの指を用いて宮城の九門に強固な結界を施した。塚に禁術(封嘴の術)をかけて歴代烏妃を閉じ込めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
死後も自らの妄執で歴代烏妃を縛り続けた。
炎帝
現王朝の初代皇帝を務めた人物を指す。
・所属組織、地位や役職
現王朝初代皇帝(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果
神事や巫術師を嫌い弾圧や処刑を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
夏高峻の祖父に該当する。
先帝
夏高峻の父を務めた人物を指す。
・所属組織、地位や役職
現王朝第二代皇帝(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果
塩価を数十倍から数百倍へ引き上げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
皇后一派の暴政を許す結果となった。
小明
令狐之季の亡き妹を指す。
・所属組織、地位や役職
月真教信徒の妻(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果
白雷が関わる宗教暴動の中で殺害された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
死後も幽鬼として之季の右袖をつかみ続ける。
集団・組織
北衙禁軍
皇帝直属の親軍を指す。
・所属組織、地位や役職
皇帝直属軍。
・物語内での具体的な行動や成果
禁苑や宮城の重要拠点の警戒に当たった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
皇帝の強力な武力として機能する。
内侍省
後宮の宦官や事務全般を管轄する機関を指す。
・所属組織、地位や役職
後宮管理機関。
・物語内での具体的な行動や成果
衛青や各宮の宦官たちが業務をこなした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
後宮の人的組織の運営を担当する。
冬官府(放下郎)
神祇や天文や儀式を司る官庁を指す。
・所属組織、地位や役職
神祇管理機関。
・物語内での具体的な行動や成果
門神を祀る神事の準備を取り仕切った。放下郎たちが真綿を干して冬支度を進めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
董千里の指導のもと伝承の整理を進める。
洪濤殿
古文書の収集や書写や保管を行う史館を指す。
・所属組織、地位や役職
典籍保管書写機関。
・物語内での具体的な行動や成果
令狐之季や学士たちが過去の処刑記録を検索した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
膨大な歴史記録を維持・管理する。
沙那賣家
賀州を支配する強大な豪族を指す。
・所属組織、地位や役職
賀州大豪族。
・物語内での具体的な行動や成果
朝陽の指導のもと中央の権力争いから距離を置いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
晨や亮が京師に残り自らの道を探る。
羊舌家
解州で巨大な塩田を所有する富裕な豪族を指す。
・所属組織、地位や役職
解州大豪族・塩商。
・物語内での具体的な行動や成果
古代から白塩の製法を受け継ぎ鼇の神を祀った。寿雪の後ろ盾となる誓いを立てた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
前王朝末期に下野したが塩鉄使として復帰した。
序氏
界島に位置する古くからの海商の家系を指す。
・所属組織、地位や役職
界島海商。
・物語内での具体的な行動や成果
代々伝わる家系図や家史を保管していた。かつて序寧を烏妃として後宮へ送り出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
藍彩玉の首飾りに纏わる悲劇の歴史を持つ。
蹈鞴衆
洞州などで鉄の鋳造を行う集団を指す。
・所属組織、地位や役職
製鉄技術者集団。
・物語内での具体的な行動や成果
山林の伐採をめぐり解州の塩商と争いを起こした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
西辺節度使の手綱さばきによって越境を抑えられた。
鵐帮
各地の港や街を回る遊芸人の集団を指す。
・所属組織、地位や役職
旅芸人・巫術集団。
・物語内での具体的な行動や成果
幼い白雷を保護して占術や呪術の機会を与えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
温螢や白雷が過去に縁を持っていた。
幽宮
現世と異なる神や死者の領域を指す。
・所属組織、地位や役職
神異領域。
・物語内での具体的な行動や成果
梟が閉じ込められつつ現世へ干渉を試みた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
烏漣娘娘や鼇の神の宿命と深く関わる。
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展開まとめ
笑う女
懐妊した二人の妃
宮中では鶴妃・晩霞と燕夫人・黄英の懐妊が判明した。〈緇衣娘娘〉の騒動後、寿雪は高峻から外出を禁じられ、烏妃として人に頼られることへの喜びと、ひとりで在るべきという麗娘の教えの間で自らの在り方を考えていた。同時に、高峻とともに香薔の結界を破り、海に沈んだ烏漣娘娘の半身を探す道を進もうとしていた。
赤い女の化粧箱
鵲妃への昇格で鵲巣宮へ移る黄英が宮を怖がっていると知り、寿雪は高峻の許可を得て辟邪のまじないを施した。その際、飛燕宮の宮女・長勺松娘が、朱漆で笑う女を描いた黒漆の化粧箱を埋めようとしているところを見つけた。松娘の枕元には箱の絵と同じ真っ赤な女が現れていたが、寿雪は悪意を感じず、箱の由来を調べた。
蕪州と箕州の伝承から、長勺氏の祖先には旱を鎮める生贄として焼かれながら、幼い子を安心させるため笑い続けた女がいたことが判明した。生き残った子は優れた漆職人となっており、寿雪は化粧箱が母の姿を残したものだと考えた。
寿雪が赤い女の出現を災厄への警告ではないかと疑い、松娘を宿舎から呼び出した直後、腐った梁が折れて屋根が崩落した。赤い女は松娘を脅かしていたのではなく、命を守ろうとしていたのである。しかし松娘は烏妃との関係を周囲に疑われることを恐れ、寿雪に今後は訪ねないでほしいと頼んだ。寿雪は傷つきながらも、その事情を受け入れた。
黄英の恐怖
黄英は密かに夜明宮を訪れ、寿雪へ礼を伝えた。黄英が恐れていたのは死者の出た鵲巣宮だけでなく、自分の腹で子供が育つことそのものでもあった。寿雪がその恐怖を否定しなかったことで黄英は安堵し、烏妃がいてよかったと感謝した。その言葉は、人に頼られることとの距離を模索する寿雪の心に残った。
寿雪は今回の一件を自分だけで解決したわけではないと考えたが、九九は皆が寿雪のために動いたのだから、それも寿雪の力だと語った。寿雪は、孤独だった夜明宮が九九たちとの支え合いの場へ変わったことを実感した。
晩霞の兄への接触
千里は各地の伝承から烏漣娘娘の半身につながる手掛かりを探し始めた。一方、寿雪は香薔の結界を破るには三人の巫術師が必要であり、自分と封一行のほかには白雷しか候補がいないと考えた。そこで白雷の居場所を知る可能性がある晩霞の兄との面会を求めた。
高峻は白雷が寿雪を何度も害そうとしたことから協力を求めることには反対したが、晩霞の長兄・晨については父の朝陽と立場が違う可能性を認め、自らも会うことにした。
解州への使者
高峻は令狐之季を解州へ送り、前王朝の重臣の家系である塩商・羊舌氏との接触を命じた。高峻は塩政に通じた羊舌氏を廟堂へ迎えようとしており、之季は前王朝と深い関係を持つ一族を登用する危険性を懸念しながら解州へ向かった。
黒い塩
羊舌慈恵への招聘
之季は羊舌家当主・羊舌慈恵と面会した。慈恵は高峻の塩政を評価しながらも招聘を断ったが、高峻から預かった燕の木像を見て、欒氏の生き残りが烏妃となっていることを察した。そして亡くなった娘・羊舌瑛について烏妃に頼みを聞いてもらうことを条件に、京師へ赴くと約束した。
瑛は十五年前、二十二歳で急死し、傍らには黒塩を詰めた割れた貝が残されていた。之季の調査から、瑛の恋人だった塩の運搬人が私塩密売の罪で処刑され、その後、処刑を決めた司法参軍事も突然死していたことが判明した。寿雪は黒塩の貝が呪詛を行った者の呪具であり、瑛が自らの命と引き換えに参軍事を呪い殺したと見抜いた。
瑛の復讐
京師を訪れた慈恵は、参軍事が瑛の恋人を陥れ、命を助ける代わりに瑛へ身を委ねるよう迫ったことを明かした。しかし瑛が従った時点で恋人はすでに処刑されていた。瑛は復讐のため黒塩の呪詛を行い、自らも命を落とした。
慈恵は当時家を空けており、助けを求める瑛の文を読むのが遅れたことを悔やみ続けていた。寿雪は瑛を一度だけ招魂できると申し出たが、慈恵は娘が恋人と楽土で憩っていることを願い、それを断った。
寿雪を守る羊舌氏
慈恵は、羊舌氏が古くから杼氏や欒氏と深い縁を持ち、欒氏の挙兵も支援していたことを寿雪へ教えた。そして高峻の頼みを受け、羊舌一族が寿雪の後ろ盾となることを約束した。
高峻は寿雪を烏漣娘娘から解放した後、羊舌氏の海路を利用して国外へ逃がすことまで考えていた。寿雪を妃にすれば、欒氏捕殺令を撤廃したことまで私情によるものと疑われるため、高峻は寿雪を救うには自分から遠ざけなければならないと考えていた。
その後、寿雪と高峻は晩霞の長兄・晨と会い、白雷が京師の商家に身を寄せていることを聞き出した。寿雪は晨に白雷への文を託した。
烏妃の首飾り
新月の異変
寿雪から結界破りへの協力を求める文を受け取った白雷は、隠娘を贄にしたくないという心を見抜かれて動揺した。一方、寿雪は烏漣娘娘を酩酊させていた牡丹を祭壇へ捧げることをやめた結果、新月の夜にこれまで以上の激痛に襲われた。
千里と封一行は、烏漣娘娘が酩酊から醒め始めた可能性を考えた。封は過去にも香薔の結界を破って逃げようとした烏妃がいたと語った。その烏妃は逃亡に失敗して死亡し、協力した巫術師も処刑されていた。
序寧の首飾り
夜明宮に残された青い玉の首飾りを調べた結果、逃亡した烏妃は界島の海商・序氏出身の序寧だと判明した。寿雪は序寧を招魂しようとしたが、その魂を呼び出せなかった。
そこで寿雪は、序寧に協力した巫術師・五生を招魂した。五生は、序寧が新月の苦痛に耐えられず、烏の半身を探して逃れようとしていたことを明かした。しかし五生は処刑を恐れて結界を破るふりをし、絶望した序寧は結界の外へ飛び出して死亡した。五生は自らの裏切りを悔やみ、序寧が忘れ去られないよう首飾りを夜明宮に残していた。
千里は界島北方に海底火山の伝承が残ることを突き止めた。序寧もそこを烏漣娘娘の半身が沈んだ場所だと考えていた可能性が高まり、寿雪たちは結界を破った後の目的地を界島と定めた。
破界
白雷の協力
白雷は冬官府へ出向き、香薔の結界を破ることへの協力を申し出た。封は宮城の九門を三人で分担し、寿雪、白雷、封がそれぞれ三門の結界を破る方法を定めた。
しかし白雷が従った本当の理由は、鼇の神から結界を破れと命じられたためだった。鼇の神は杼の血を引く寿雪を自らの巫として欲し、結界が破れた隙に寿雪を烏から奪って烏を殺し、その代わり隠娘を贄にしないと約束していた。
月下の半身
結界を破った後に霄を離れることを考えた寿雪は、花娘や九九たち、千里、そして高峻まで失うことを恐れた。高峻も寿雪を救うには遠くへ行かせなければならないと理解しながら、別れに苦しんでいた。
夜明宮の池辺で、高峻は寿雪を自分の半身だと思っていると明かした。寿雪が喜べば自分もうれしく、苦しめば自分も平静ではいられず、遠くへやることは半身をもがれるようにつらいと語った。寿雪も同じ思いを認め、離れていても高峻は自分の半身であるからこそ、どこへでも行けると心を定めた。
香薔の結界
儀式当日、寿雪、封、白雷は門神を祀る神事を装って九門の結界を破った。寿雪は春見門で三つ首の大蛇となった香薔の術を斬り払い、結界の要を破壊した。春見門は崩壊し、寿雪はついに宮城の外へ出られると喜んだ。
しかし直後、禁苑から烏妃の黒衣をまとった大量の骸が現れ、生前の姿を取り戻しながら寿雪へ襲いかかった。香薔は烏妃の塚に禁術を施し、結界が破られた際には歴代烏妃の骸を使って逃亡者を殺す仕掛けを残していたのである。
麗娘との別れ
歴代烏妃の中から麗娘が現れた。麗娘は生前から香薔の禁術を悟っており、自分も死後に囚われると知って塚へ呪詛返しを施していた。寿雪が結界を破ったことで、その術が発動する時が来たのである。
麗娘は寿雪の頬に触れ、これですべて終わると告げた。その直後、ほかの烏妃たちに襲われて体を引き裂かれたが、同時に禁術も崩壊し、歴代烏妃はすべて白骨へ戻った。寿雪は麗娘の骨を抱き集め、生涯だけでなく死後まで香薔に苦しめられた彼女を思って慟哭した。
目覚めた烏
寿雪の悲しみに呼応するように暗雲と雷が宮城を覆い、鼇枝殿付近から巨大な水柱が噴き上がった。寿雪は星星の羽根を矢に変えて水柱を射抜いたが、直後に激しい雷雨が降った。
雨が弱まると、寿雪の髪は銀色に輝いていた。星烏を通して現れた梟に寿雪が呼びかけると、その声と眼差しは寿雪でありながら別の存在のものとなっていた。梟は寿雪を烏と呼んだ。高峻はその姿を見て、寿雪を救うために積み重ねてきた方策が崩れ去ったことを悟った。
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後宮の鳥




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同著者のシリーズ
花菱夫妻の退魔帖


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