アラフォー賢者15巻レビュー
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アラフォー賢者17巻レビュー
どんな本?
■ 作品概要
本作は、異世界に転生したアラフォーの主人公・ゼロスが、大賢者の規格外の力を持ちながらもマイペースに生きる姿を描いたファンタジーである。第16巻では、ルーセリスやジャーネとの婚約を果たしたゼロスの日常から物語が始まる。ゼロスは邪神アルフィアからダンジョンの真の目的を聞かされて世界の真実の一部に触れる一方、旧時代の万能工作機械を用いて八十八ミリ砲搭載のハーフトラックを建造するなど、相変わらず趣味の探究を暴走させていた。時を同じくして、ルーダ・イルルゥ平原では獣人族を束ねるケモ・ブロスが、メーティス聖法神国の北方防衛拠点「カルマール要塞」を攻略するため、イサラス王国を経由してアドやゼロスへ応援を要請する。大賢者、野蛮人(ブロス)、邪神がそれぞれの思惑を胸に動き出し、メーティス聖法神国への反攻の序曲が静かに奏でられていく。
■ 主要キャラクター
- ゼロス:【大賢者】の職業を持つ転生者のアラフォー。ルーセリス、ジャーネと正式に婚約する。ブロスの要請を受けてアドと共に獣人族の居留地へ赴き、魔導錬成を用いて大量の脆い武器を徹夜で修繕した。
- ケモ・ブロス:獣人族の長であり、【野蛮人】の二つ名を持つ少年。極度の人間不信であるが、獣人族の同胞を守るためにカルマール要塞攻略の準備を進め、知り合いであるアドとゼロスに助力を求めた。
- アルフィア・メーガス:次世代の観測者である元邪神。ゼロスに対し、ダンジョンの目的が「命の循環」と「生命の進化の記録」であることを明かす。
- アド:ゼロスと同郷の転生者。ブロスからの指名依頼により、家族と離れてゼロスと共にルーダ・イルルゥ平原へ向かうことになり、スライムボートでの絶叫暴走航行や過酷な武器修繕に巻き込まれて疲労困憊する。
- ツヴェイト:ソリステア公爵家の長男。魔法式の解読法公表による学院の混乱から、新入生に対する臨時講師の役目を押し付けられる。しかし、アスマール城塞都市戦を題材にした的確な戦術講義を行い、高い評価を得る。
■ 物語の特徴
本作の特徴は、旧時代の工作機械での兵器製造や化石レベルの美少女ゲームのプレイといった転生者たちのコミカルなオタク的日常と、獣人族とメーティス聖法神国による熾烈な戦争準備というシリアスな展開のギャップである。特に、ダンジョンが「命を循環させ、進化を記録して次の世界のための星の種子を作るシステム」であるという世界観の核心に迫る事実が明かされる点は、読者にとって非常に興味深い要素となっている。また、圧倒的な力を持つブロスを恐れて要塞放棄を決断する神国側の将軍の悲哀や、学院で不本意ながらも講師役に奮闘するツヴェイトたち若者の姿など、様々な視点から多角的に異世界の情勢が描かれていることも魅力に挙げられる。
読んだ本のタイトル
アラフォー賢者の異世界生活日記 16
著者:寿安清 氏
イラスト:ジョンディー 氏
出版社:KADOKAWA(MFブックス)
発売日:2022年2月25日
ISBN:9784046811745
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あらすじ・内容
大賢者×野蛮人×邪神ちゃん、それぞれの思惑を胸に動き出す!
デート中に立ち寄った宝石店にて突然ゼロスから婚約を迫られ、それを受けることにしたルーセリスとジャーネ。帰宅後、婚約指輪を眺めながら幸せいっぱい夢心地のルーセリスと、ため息混じりに物思いに耽るジャーネと、二人の反応は対象的だった。一方のゼロスは、邪神ちゃんことアルフィアから、これまで不可解だったダンジョンに関する秘密を聞かされ、意図せずこの世界の真実の一部に触れる。そんな中、ルーダ・イルルゥ平原で獣人族を束ねるケモ・ブロスは、メーティス聖法神国との大勝負を前に、ある人物へ応援要請を計画し……。
アラフォー賢者の異世界生活日記 16
一度事を起こすと手がつけられない大賢者・ゼロス、ケモミミを守るためなら手段を選ばない野蛮人・ブロス、そして二柱を封印し神としての権限を取り戻しつつある元邪神・アルフィア。役者は揃い、メーティス聖法神国に対する反攻の序曲が静かに奏でられる!
感想
婚約したオッさんは、アドとエロムラを巻き込んで多脚戦車やPCを分解して解析する。
その合間に公爵家の娘、セレスティーナとその友人のキャロスティーに超高度な試薬作りを教えて、それを見ていたエロムラを戦慄させる。
物凄く危険な試薬作りを高位な家の娘にさせるオッさんはマジでハンパない。
それをフーンで終わらせる転生者達も、、
その結果、、
その娘達が学園に帰ったら教師にされてしまうほどの高度な指導だったと後でセレスティーナとキャロスティーは判るのだが、、
教師になった2人のお陰で、学園の薬学のレベルが限界突破してしまうらしい。
後の祭りw
さらに他の兄弟達も教師にされてしまうがどの様な授業かは次巻かな?
そんな高度な授業を令嬢達にやっていながら、その横でエロムラがダンジョンから出て来たPCのようなモノで、ギャルゲーをプレーして、
セレスティーナとキャロスティーの2人にケダモノを見る目をされてしまう。
そしてオッさんは、ダンジョン産の更に高度な3Dプリンターのような生産機械のキッドを組み立て、そのOSも発見、再現して産業技術のレベルを数段飛ばしたようなモノを作ってしまう。
これぞチートと言えるモノを作ったが、、
職人達のドワーフ達に受け入れられるのだろうか?
あのヒトの話を聞かないで小粋なダンシングをするドワーフ達に、、
もし、受け入れなかったら、、、
ドワーフ達が破壊するだろう。
ある意味ホラーだw
そんなほのぼのした空気のオッサンのいる国だったが、とある宗教国とその周辺は戦争の真っ只中。
その一つ、宗教国の聖法神国に奴隷にされていた獣人族達が1人の転生者ケモ・ブロスの下に集い同胞を取り返すために拠点の要塞に攻め寄せて来た。
獣人族を率いてる少年、ケモ・ブロスは破竹の勢いで国境の要塞まで攻め寄せるが、、
武器の整備が追い付かない。
そこでケモ・ブロスはアドを呼び寄せてほしいとアドのいた国に要請を出す。
それが方々の国々に飛んでアドの元に届いたときは逃げ場は全くない状態。
そして、アドはドナドナされた。。
開発したトラックを見せびらかしたくて付いて行くオッサンと共に。。
関わってはいけない人を巻き込んで、聖法神国に対する反攻が始まる。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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考察・解説
ゼロスの婚約騒動
『アラフォー賢者の異世界生活日記 16』における「ゼロスの婚約騒動」は、ルーセリスおよびジャーネと強引に婚約を果たした直後の、周囲のドタバタな反応や転生者たちの冷ややかな視線を中心に描かれている。
教会での乙女たちの変化と孤児たちの観察、イリスの勘違いによる暴走とレナのでまかせ、転生者たちの驚愕とモテないエロムラの激しい嫉妬、そしてゼロスの前世の経験に基づくリアルな夫婦問題の説教にいたる全容は以下の通りである。
婚約指輪を眺めるルーセリスの変貌と縁のまとまりに安堵する孤児たち
デートを終えて教会に戻ってきたルーセリスは、上機嫌で掃除をしながら婚約指輪を眺め、締まりのない笑みを浮かべていた。
・一方のジャーネは物思いに沈んでは挙動不審になるという、普段の姉御肌とはかけ離れた姿を見せていた。
・この様子を壁の陰から観察していたジョニーら孤児の子供たちは、二人がゼロスと婚約したのだと察する。
・結婚に逃げ腰だったジャーネを心配してお節介を焼いていた子供たちは、ようやく縁がまとまったことに安心した。
・二人の浮かれた姿をキショいと評しながらも、温かく見守っていた。
愛し愛され3Pファイッの咆哮とミスリル指輪に込められた永久の束縛という嘘
そこへ帰宅したイリスは、二人の指輪を見ていきなり結婚に結びついたと勘違いし、お赤飯だぁ!、愛し愛され3Pファイッ、などと激しく暴走し始める。
・さらに傭兵仲間のレナが現れ、ゼロスが贈ったミスリルの婚約指輪には、あなたは私の所有物、永久の束縛、という意味があるという嘘(でまかせ)を吹き込み、ジャーネをからかって遊ぶ。
・その後、レナが隠し持っていたエッチな本(刺激的な内容の漫画)をイリスとルーセリスが好奇心から覗き見てしまう。
・刺激が強すぎて、あの本……刺激的すぎ、というダイイングメッセージを残して倒れるという惨事(殺人現場のような証拠隠滅騒ぎ)にまで発展した。
年下二人との同時婚約への冷徹な視線と昨今の婚活事情に絶望した叫び
ゼロスがソリステア公爵家別邸で、アド、エロムラ、ツヴェイト、リサ、シャクティらに婚約をナチュラルに報告すると、一同は驚愕の声を上げる。
・セレスティーナとユイは祝福したものの、地球の常識を持つリサとシャクティは、年下の女性二人との同時婚約(重婚約)という事実に冷ややかな視線を向けた。
・また、モテないエロムラは、なんでこんなおっさんに……。絶望した!昨昨の婚活事情に絶望したぁ!!、と激しく嫉妬し、嘆き悲しむことになった。
前世の会社員時代における家庭トラブル相談と悲惨な崩壊実例の熱弁
周囲の反応を受けつつも、ゼロスは結婚生活において夫婦間の相互理解と子育ての協力がいかに重要であるかを熱弁し始める。
・彼は前世(地球)の会社員時代に、同僚や部下の家庭トラブルの相談に乗り続けていた経験があった。
・仕事を理由に育児を妻に任せきりにする夫、や、自己中心的な行動で家庭を壊す妻、が引き起こす悲惨な家庭崩壊の実例を次々と挙げる。
・この長々としたリアルな説教により、将来の家庭を顧みないであろうエロムラや、公爵家の跡取りとして重圧を背負うツヴェイトに深く釘を刺すこととなった。
まとめ
ゼロスの婚約騒動は、異世界ならではの重婚という結果に対し、現代地球の価値観や前世の世俗的な経験が交錯するコミカルかつ現実味のあるエピソードとして描かれている。教会側ではイリスの妄想暴走やレナの悪ふざけによるドタバタ劇が巻き起こる一方で、転生者コミュニティでは地球の常識を持つ女性陣からの冷ややかな視線や、エロムラの結婚事情への絶望と嫉妬が浮き彫りとなった。こうした周囲の喧騒をよそに、ゼロスが前世の会社員時代に培った悲惨な家庭崩壊の実例をもとに、夫婦間の相互理解や育児協力の重要性を説くリアルな説教を展開したことは、ファンタジーの婚約劇に強烈な生活感と教訓を与える象徴的な一幕となっている。
ダンジョンの正体
『アラフォー賢者の異世界生活日記 16』において、これまで謎に包まれていた「ダンジョンの正体」が、元邪神であるアルフィアの口からゼロスへと語られている。ダンジョンは単なる魔物の巣窟や過去の遺跡の再現装置ではなく、惑星の環境維持と、次なる世界を創り出すための巨大なシステムであった。
強い自我による世界汚染を防ぐ浄化プロセス、外宇宙へ拡散させる星の種子の創造目的、知的生命体を内部へ誘き寄せるための宝の罠、端末の連動と惑星そのものである本体の定義、そして宇宙崩壊を防ぐためアカシックレコードを利用しない理由にいたる全容は以下の通りである。
魂のアンデッド化による瘴気汚染の回収と輪廻の円環へ送る肺機能
魔力に満ちたこの世界では、強い自我や情愛、未練を持った魂が輪廻転生の円環から切り離され、現世に留まって不死者化し、やがて魔力を瘴気に変換して世界を汚染してしまうことがある。
・本来であれば龍脈がその瘴気を運ぶ役割を担うが、現在は魔力消費過多によって機能が低下している。
・ダンジョンは、そうした現世に留まる命や澱んだ瘴気を回収、浄化し、再び輪廻の円環へと送る、惑星の肺機能、のような役割を果たしている。
生命進化のプロセス記録と次なる世界を再構築する星の種子の外宇宙拡散
ダンジョンのもう一つの目的は、現在進行形で生命の進化を記録し続けることである。
・ダンジョン内の魔物を意図的に進化させ、外部からやってきた知的生命体と戦わせることで、双方の成長や進化のプロセスを情報として収集、記録している。
・そして、この世界がいずれ滅ぶ瞬間に、蓄えられた全情報を内包した星の種子を外宇宙へ拡散させる。
・新たな世界、すなわち生命が生まれやすい惑星の核を再構築するためのシステムとして機能している。
人間を観察し魔物と争わせるための旧時代遺物とコアエネルギーへのリサイクル
ダンジョン内に旧時代の遺物や高価な宝、資源が存在するのは、知的生命体(人間など)をリアルタイムで観察し、魔物と争わせるために内部へ誘き寄せる餌(褒美)として用意されたものに過ぎない。
・ゼロスはこれを非道な人体実験だと感じたが、アルフィアによれば、ダンジョン内で死んでも魂は円環に送られる。
・さらに死骸はダンジョンコアのエネルギー源としてリサイクルされるため、すべては自然の理の中の出来事とされている。
大規模迷宮の連動による端末共有といくらでも生み出せる惑星本体の真実
ダンジョンコアを破壊すれば星の種子が作れなくなるのではないかというゼロスの疑問に対し、アルフィアは別の事実を提示した。
・各地にある大規模な迷宮は、互いに連動して情報共有を行う端末に過ぎない、と語った。
・端末をいくら潰しても、本体が無事であればダンジョンはいくらでも生み出せる。
・その本体とは、この惑星そのもの、であると明かされた。
無限の次元世界の混在による誤引出しの回避と宇宙崩壊リスクの排除
星を創るための情報であれば、すべてが記録されたアカシックレコードから直接引き出せばよいとゼロスは指摘した。
・しかし、そこには無限の次元世界の情報が混在している。
・誤って別の次元の情報を引き出してしまうと、この世界の摂理と合わずに最悪の場合は宇宙崩壊を引き起こす危険性がある。
・そのため、リアルタイムでこの世界独自の情報を安全に収集し続ける必要があった。
まとめ
アルフィアによって語られたダンジョンの正体は、世界の維持と再生を司る、惑星規模の壮大な超常システムである。現世に留まる魂や瘴気を浄化する肺機能として稼働しつつ、知的生命体と魔物を宝という餌で争わせることで進化のプロセスをリアルタイムで記録している。各地の迷宮は惑星そのものを本体とするネットワークの端末に過ぎず、滅亡の際には収集した全情報を星の種子として外宇宙へ放ち、次なる世界を再構築する役目を持つ。別次元の混在による宇宙崩壊のリスクを避けるため、あえてアカシックレコードに頼らず自力で安全に観測を続けるこの機構は、世界の摂理そのものが一つの巨大な生存戦略である現実を厳密に証明している。
古代文明の遺物
『アラフォー賢者の異世界生活日記 16』において、「古代文明の遺物」はダンジョン探索で回収されたコンテナの解析を通じて、魔導文明期の異常なまでの技術水準と、それにそぐわない古代人の俗っぽい娯楽文化が入り交じる形で描かれている。
全自動で部品加工や素材分別を行う万能工作機械の脅威、分解不可能な電圧調整キューブの謎、旧式PCから起動した同人美少女ゲームが示す開発者の心の闇、そして知的生命体を誘き寄せる餌としてのダンジョン資源の真の目的にいたる全容は以下の通りである。
全自動の魔導錬成と素材分別を行う3Dプリンター型の箱型機材
ゼロス達が回収したコンテナの中には、旋盤や溶接加工、そして魔導錬成が可能な機材が収められていた。
・これらを繋ぎ合わせると、巨大な3Dプリンターのような箱型の万能工作機械が組み上がる。
・金属の結合や分離、部品の加工や組み立てにとどまらず、魔導錬成によって鉱石から直接鉱物を抽出、加工する。
・さらに余った素材の分別や再利用まで全自動で行うという、現代の常識を遥かに凌駕する性能を持っていた。
・ゼロスとアドはチャンドラー2600というOSらしきディスクを使い、この工作機械の試運転として八十八ミリ砲搭載のハーフトラックを製造した。
・これにより、世界の軍事バランスを簡単に崩壊させうるほどの兵器を生み出している。
魔導術式を刻んだ変換円盤と魔導錬成を拒絶する金属キューブの超技術
遺物を稼働させる心臓部として、外界の魔力を大電力に変換する魔導力機関が登場する。
・これはモーターに近い構造をしており、内部の円盤や金属塊にびっしりと魔導術式が刻まれている。
・これによって外界魔力を吸収、圧縮してエネルギーに変換する。
・さらに、機材の制御を統括する手のひらサイズの金属キューブであるブラックボックスは、変換された電力を機械に合わせて自動で電圧調整する機能を持つ。
・しかし、魔導錬成による分解すら受け付けないため、ゼロスでも内部構造を解明できない未知の超技術の結晶であった。
フロッピーディスクによる骨董品PCの起動と破廉恥な同人クソゲーへの驚愕
コンテナの奥からは、フロッピーディスクを挿入して起動する骨董品レベルの古いデスクトップPCも発見された。
・ゼロス達が正常に起動させてディスクを読み込むと、映し出されたのは猟奇的なバッドエンドや理不尽な展開を含む、同人作と思しきクソゲー(美少女ゲーム)であった。
・軍事研究施設の職員が仕事の合間に職場の機材で作っていた可能性が高く、古代文明の遺物開発者の心の闇やオタク気質が垣間見える。
・セレスティーナやキャロスティーは、高度な魔導技術が破廉恥な遊戯に使われていたことに驚愕する。
・しかしゼロスは、高度な文明の時代には様々な娯楽が存在していた、と古代文明の多様性を説いている。
生命の進化プロセスを記録するために配置された旧時代魔導具の役割
旧時代の兵器や軍事施設をそっくりそのまま複製していたダンジョンそのものも、単なる古代遺跡や情報集積装置ではない。
・惑星の命の循環(浄化)と生命の進化の記録を担う巨大なシステムであることがアルフィアから明かされる。
・ダンジョン内に旧時代の高度な魔導具や宝が存在している理由は、人間などの知的生命体を内部へ誘き寄せるためである。
・意図的に進化させた魔物と争わせることで双方の成長情報を記録するための餌に過ぎなかった。
まとめ
第16巻における古代文明の遺物は、一つの世界を創り出すほどの壮大なシステムから、現代の産業を置き去りにする工作機械、そして古代の研究者が残したクソゲーにいたるまで、シリアスとギャグが入り混じったロマン溢れる要素として描かれている。世界の軍事バランスを揺るがす八十八ミリ砲搭載のハーフトラックを一瞬で組み上げる万能工作機械や、解明不可能なブラックボックスが圧倒的な超技術を証明する一方で、その技術が個人の嗜好による美少女ゲーム開発に浪費されていた事実は、古代人の生々しい人間性を浮き彫りにする。さらに、これら高度な遺物すらも、惑星の再生システムであるダンジョンが知的生命体を釣るための餌に過ぎないというスケールの大きな真実は、物語の世界観に圧倒的な深みを与えている。
獣人族の要塞攻略
『アラフォー賢者の異世界生活日記』における獣人族の要塞攻略は、メーティス聖法神国に奪われたルーダ・イルルゥ平原を取り戻す戦いにおける最大の難局として描かれている。
星形構造を持つカルマール要塞の迎撃脅威、仲間を置いて一人で戦うことを良しとしない獣人族の民族性と転生者ケモ・ブロスの苦悩、魔導錬成による武器修繕とグレネードランチャーの提供、そしてガルドア将軍による防衛放棄と全軍撤退の決断にいたる全容は以下の通りである。
左右の三角陣地からの集中攻撃と火縄銃配備の可能性を持つ星形要塞
カルマール要塞は、メーティス聖法神国の北方平原を守る最後の砦である。
・中央に八角形の城塞都市が存在し、周囲に八つの鋭角な三角形の防衛陣地が築かれた星形の構造をしている。
・入り口は北と南の二ヶ所しかなく、城門を破るために近づけば、左右の三角陣地から投石機、バリスタ、弓兵による集中攻撃を受ける死地となる。
・さらに、神国側には火縄銃が配備されている可能性もあり、正面から攻め込めば攻城側に甚大な被害が出ることが予想されていた。
強者と背中合わせで共に戦う矜持と一人で活躍しすぎる指導者の板挟み
獣人族の指導者となった転生者ケモ・ブロスは、単独であればこの要塞を容易に陥落させるだけの実力を持っていた。
・しかし、獣人族は、強者と背中合わせで共に戦うこと、を至上の喜びとし、仲間を置いて一人で戦いを終わらせることを良しとしない民族性を持つ。
・過去の戦いでブロスが一人で活躍しすぎた結果、獣人族の戦士達が面目を潰されて意気消沈し、ストライキを起こすほど拗ねてしまう事態が発生していた。
・さらにカルマール要塞は、かつて獣人達が奴隷として拉致される拠点であったため、獣人族自身の手で落とさなければ彼らの誇りを取り戻すことができなかった。
・ブロスは仲間の犠牲を出したくない一方で、彼らの民族的な矜持を守らなければならないという板挟みに苦しんでいた。
アドとゼロスによる徹夜の魔導錬成とダネルMGLの極秘提供
獣人族の武器は装飾が施されている一方で極めて脆く、要塞攻略に耐えうる品質ではなかった。
・そこでブロスは、知り合いの転生者であるアドとゼロスを呼び寄せ、武器の修繕と強化を依頼する。
・二人は魔導錬成を用いて、大量の武器を徹夜で修繕した。
・さらにゼロスは、犠牲を出さずに防衛設備を無力化する手段として、長距離砲撃を提案した。
・彼は自作した八十八ミリ砲搭載のハーフトラックを持参していたが、それはこの世界の軍事バランスを根本から破壊する危険な兵器であった。
・最終的にゼロス達は表立って戦争に参加せず裏方に徹することにしたが、ゼロスはブロスに対し、後で返すよう念押ししつつダネルMGL(グレネードランチャー)をこっそり提供した。
ガルドア将軍による死守強要の拒絶と被害最小化のための避難撤退
一方、カルマール要塞を預かる神国の将軍ガルドア・カーバインは、過去の戦場でブロスの異常な戦闘力を目撃していた。
・彼はブロスをバーサーカーと評し、まともに戦えば要塞ごと全滅させられると悟っていた。
・中央議会から派遣された神官は要塞の死守を強要したが、ガルドアは兵の練度不足や周辺国の不穏な動きを考慮し、要塞の維持は不可能と判断した。
・彼は本国の命令に背き、要塞の放棄と住民の避難、および全軍の撤退を決定する。
・獣人族の進軍が始まる直前、ガルドアは被害を最小限に抑えるため、残された時間で撤退準備を急がせていた。
まとめ
カルマール要塞を巡る攻防は、圧倒的な防衛能力を誇る星形要塞に対し、各陣営の民族的矜持や戦略的な思惑が交錯する重要な一戦である。容易に単独攻略が可能な実力を持ちながらも、仲間の誇りとストライキ回避のために思い悩むケモ・ブロスに対し、アドとゼロスは魔導錬成による武器強化や現代兵器の極秘提供という形で後方から支えた。対する神国側でも、ブロスの脅威を本能的に理解したガルドア将軍が、中央の死守命令を拒絶して全軍撤退を断行するなど、血で血を洗う攻城戦の裏で、転生者の知恵と現実的な軍事判断が物語の展開を大きくコントロールしている。
魔法学院の教育改革
『アラフォー賢者の異世界生活日記』における「イストール魔法学院の教育改革」は、ゼロスの教え子たちの急速な成長と新たな魔法理論の発見が引き金となり、旧態依然とした学院の体制が根底から覆される過程として描かれている。
クロイサスの発表による既存理論の崩壊、成績優秀な院生たちへの教育の丸投げと新プラン策定、セレスティーナによるシャーマニック・マジックの導入、そして魔導士団改革と連動した実力主義への移行にいたる全容は以下の通りである。
魔法文字の解読法発表に伴う講師陣の指導力喪失と院生への指導丸投げ
クロイサスが大講堂にて、魔法文字は一つ一つに意味があるのではなく繋げて言葉にすることで魔力の事象変換を行う、という魔法式の正しい解読法を発表したことで、従来の魔法理論が根本から覆された。
・古い知識しか持たない既存の講師陣は、新たな理論を教える能力を失い、完全に指導力を喪失してしまう。
・保身に走った講師たちは、成績優秀な院生たちに新入生の教育を丸投げした。
・これにより、講義内容の構築から実際の指導までを一任するという前代未聞の事態が引き起こされた。
進路に応じた専門分野の選択科目再編と初等部における魔力制御の徹底
丸投げされたツヴェイトやクロイサスたち上位成績優秀者は、協議の末に新たな教育プランを構築した。
・初等部:いきなり難解な術式解読を教えるのではなく、まずは魔力制御や魔力量を高める基礎訓練を徹底的に教え込む方針とした。
・中等部以降:旧来の無駄な科目を整理した。戦闘魔導士、戦術魔導士、錬金術師、新たに生まれた医療魔導士、魔導考古学など、生徒自身が進みたい専門分野に応じた選択科目制を維持しつつ、各学科の講義内容をより密度の濃いものへと再編した。
一文字の物理現象イメージによる魔力底上げと術式に頼らない基礎訓練
臨時講師となったセレスティーナとキャロスティーは、初等部の新入生に対し、術式に頼らない画期的な基礎訓練を導入した。
・完成された術式魔法を使わせるのではない方針をとった。
・火や水といった属性を表す魔法文字一文字だけを用い、物理現象を明確にイメージして魔法を発動させる太古の、シャーマニック・マジック、の手法を取り入れた。
・発動の難易度は高いが、生徒自身の魔力制御力と保有魔力量を効果的に底上げする実践的な訓練として、新入生から好評を得ることになった。
過酷な実戦を想定した戦術理論の提出とローブ階級制度の撤廃
学院の教育改革と並行して、ツヴェイトたちウィースラー派の学院生は、旧来の机上の空論を排し、過酷な実戦を想定した戦術理論や魔導士団の組織構造改革案を学院議会および国王へ提出していた。
・この改革案が国家に採用されたことで、実力のない魔導士や権力に固執する者たちが排除された。
・騎士団との連携を重視する能力主義の軍組織へと再編が進んだ。
・これに伴い、学院のローブによる階級制度も撤廃されている。
まとめ
イストール魔法学院の教育改革は、既得権益化していた旧世代の魔法理論が否定され、実用性と真理の探求を重視する新世代の手によって構造そのものが再編されていくダイナミックな変革劇である。クロイサスの新理論提示を発端とする講師陣の職務放棄を好機に変え、ツヴェイトらが策定した系統的な教育プランや、セレスティーナによるシャーマニック・マジックの実践は、生徒の基礎能力を飛躍的に向上させた。さらに、この教育の近代化が国軍の魔導士団改革やローブ制度の撤廃という実力主義への移行にまで直結した事実は、学院が貴族の面子争いの場から、国家の基盤を支える真の最高学府へと生まれ変わったことを示している。
子供達の自立と成長
『アラフォー賢者の異世界生活日記』における「子供達の自立と成長」は、サントールの街の養護院で暮らす孤児たち(ジョニー、ラディ、アンジェ、カイ、およびハイ・エルフのカエデ)が、過酷な過去を乗り越え、自分の力で生き抜く術を身につけていく過程として描かれている。
飢えと暴力の路地裏生活から生じたハングリー精神、武闘派コッコ達との容赦のない組手と子供を装う狡猾な情報収集能力、初狩猟でのハンドサイン連携と仲間脱落の危機が突きつけた現実の厳しさ、そして他人に寄生する考えからの脱却と大人たちの見守りにいたる全容は以下の通りである。
路地裏での飢えと暴力の記憶と二度と戻らないための俗物的な夢
カエデを除く四人は、かつてストリートチルドレンとして路地裏で飢えと寒さに苦しみ、大人から暴力を受けながら盗みで命を繋ぐ地獄のような生活を送っていた。
・彼らはメルラーサ司祭やルーセリスに保護され養護院に引き取られたが、二度と飢えた生活には戻りたくないという強烈なハングリー精神を抱き続けている。
・そのため、傭兵になって一攫千金を得て、自堕落に暮らす、美味しい肉を食べて暮らす、という逞しくも俗物的な夢を抱く。
・この目的のために、自立に向けた準備を秘密裏に進めていくことになった。
陰陽崩山流拳法の基礎と使い魔コッコ達による容赦なき乱取りの成果
彼らは強くなるために、ゼロスに教えを請い陰陽崩山流拳法の基礎を学ぶだけでなく、ゼロスの使い魔である武闘派コッコ達(ウーケイ、メイケイなど)を師匠とした。
・容赦のない組手や乱取りを毎日行うようになり、一般の傭兵を容易に凌駕するほどの圧倒的な戦闘スキルを身につけていく。
・また、戦闘力だけでなく、路地裏で培った観察眼と処世術を活かす知恵も持っていた。
・無知な子供を装って大人(傭兵など)から魔物の生息地や狩りの情報を引き出すという、非常に狡猾でしたたかな情報収集能力も発揮し、ゼロスやルーセリスを末恐ろしくさせている。
ハンドサインによる無言の獲物捕獲とドドン・トード戦での致命的ピンチ
自立の第一歩として、ゼロスとルーセリスの引率のもと、モブの村周辺の森へ初の狩猟へと向かった。
・ゼロスお手製の防具と武器を身につけた彼らは、ハンドサインを用いた無言の連携で獲物(ウサギや蛇など)を仕留め、素人の域を遥かに超えた手際を見せる。
・しかし、大物であるドドン・トードとの戦いでは、経験不足からカイが飲み込まれそうになるという致命的なピンチに陥った。
・自力で魔物を撃破し急激な格上げを経験した彼らであるが、同時にギルドで仲間を魔物に殺された若き傭兵の悲痛な姿を目の当たりにする。
・この経験を通じて、彼らは自分の強さに慢心せず、一歩間違えれば命を落とすという、現実の厳しさ、と、命のやり取りの重さ、を深く学ぶこととなった。
慈善事業による装備資金の貯蓄と過保護を宥めるゼロスの教育方針
かつてはゼロスに、肉をくれ、とたかるだけであった子供たちであるが、精神的な脱皮を見せ始める。
・領主の慈善事業(ゴミ拾いなど)で小遣いを稼ぎ、自分たちで装備の購入資金を貯めるなど、他人に寄生する考えから脱却していく。
・ゼロスは彼らの行動原理が俗物的であると呆れつつも、自立するなら危険を自分達で乗り越える経験が必要、と考える。
・過保護になりがちなルーセリスを宥めながら、いざという時以外は手を出さずに彼らの成長を見守り続けている。
まとめ
子供たちの自立と成長の物語は、ファンタジー世界におけるシビアな生存競争と、それに適応していく子供たちの強かさ、そして彼らを導く大人たちの葛藤が交差する、本作の重要なサイドストーリーである。地獄のような路地裏生活の記憶をバネに、武闘派の使い魔との訓練や大人の裏をかく情報収集で異常な戦闘能力を培いながらも、初狩猟の危機や他者の死を通じて命の重さを学ぶプロセスがリアルに描かれている。肉をねだるだけの存在から自力で資金を稼ぐ狩猟者へと脱皮していく子供たちの強靭な生命力と、あえて突き放して見守るゼロスの教育方針は、過酷な世界を生き抜くための本質的な強さを証明している。
登場キャラクター
転生者・地球の人物
ゼロス
自由を好む大賢者の転生者である。ルーセリスとジャーネの2人と婚約を果たした。
・所属組織、地位や役職
無職の魔導士。ソリステア公爵家客分。
・物語内での具体的な行動や成果
アルフィアからダンジョンの秘密を聞かされた。アドと共に獣人族の武器の修繕を魔導錬成で行い、ブロスにダネルMGLをこっそり手渡している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ルーセリスとジャーネと正式に婚約した。
アド
ゼロスと同郷の転生者である。ユイの夫であり、過酷な状況で方向音痴を発揮する。
・所属組織、地位や役職
イサラス王国の嘱託魔導士。
・物語内での具体的な行動や成果
雪山で龍王と三日三晩戦い生還した。ゼロスと共に獣人族の武器修繕作業に駆り出されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
娘のかのんが誕生し、父親となった。
エロムラ
ツヴェイトの護衛を務める転生者である。モテないことにコンプレックスを抱いている。
・所属組織、地位や役職
傭兵。ツヴェイト専属の護衛。
・物語内での具体的な行動や成果
地下都市イーサ・ランテの調査団に同行した。キャロスティーやミスカから荷物運びなどの雑用を押し付けられている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ゼロスが婚約したことに絶望し、激しく嫉妬した。
ユイ
アドの妻であり転生者である。夫への愛情が深く、嫉妬深い一面を持つ。
・所属組織、地位や役職
アドの妻。
・物語内での具体的な行動や成果
アドの娘であるかのんを出産した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
リサ
アドと行動を共にする転生者の女性である。
・所属組織、地位や役職
イサラス王国の嘱託魔導士。ソリステア公爵家別邸のメイド。
・物語内での具体的な行動や成果
バザーに向けてハンカチやぬいぐるみなどの小物を作った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
シャクティ
アドと行動を共にする転生者の女性である。
・所属組織、地位や役職
イサラス王国の嘱託魔導士。ソリステア公爵家別邸のメイド。
・物語内での具体的な行動や成果
バザーに向けて彫金でブローチなどの小物を作った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ソリステア魔法王国
ツヴェイト・ヴァン・ソリステア
ソリステア公爵家の長男である。真面目な性格で、妹のセレスティーナや問題児たちに振り回されることが多い。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院生。次期公爵。
・物語内での具体的な行動や成果
講師陣の職務放棄により、新入生への臨時講師として戦術講義を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
提出した軍組織改革案が採用され、幹部候補として期待されるようになった。
セレスティーナ・ヴァン・ソリステア
ソリステア公爵家の長女である。ゼロスの教え子であり、魔法研究に没頭している。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院生。
・物語内での具体的な行動や成果
臨時講師として新入生に魔法の指導を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ミスカによって書かれた小説が出版され、世間に広まって倒れた。
ミスカ
セレスティーナ専属のメイドである。神出鬼没で人を驚かせることを好む。
・所属組織、地位や役職
ソリステア公爵家のメイド。
・物語内での具体的な行動や成果
セレスティーナが封印していた物語を勝手に書籍化して出版した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
過去に氷の女帝と呼ばれた超越魔導士であることが明かされた。
かのん
アドとユイの間に生まれた娘である。
・所属組織、地位や役職
アドとユイの子供。
・物語内での具体的な行動や成果
特になし。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
平仮名で名前が付けられた。
ディーオ
ツヴェイトの友人である。セレスティーナに想いを寄せている。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院生。
・物語内での具体的な行動や成果
ミスカから温泉宿の宿泊券をもらい、ツヴェイト達を温泉旅行に誘った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
セレスティーナからは空気のように認識されている。
アンズ
小柄な体格の忍者である。ツヴェイトの護衛を務めている。
・所属組織、地位や役職
傭兵。ツヴェイトの護衛。
・物語内での具体的な行動や成果
夜の庭でコッコ達と徹夜で戦い、全滅させてモフり続けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
キャロスティー・ルド・サンジェルマン
サンジェルマン侯爵家の娘である。魔法研究に熱心な学院生である。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院生。
・物語内での具体的な行動や成果
臨時講師の補佐役としてセレスティーナと共に新入生の指導に当たった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
デルサシス公爵
ソリステア公爵家の現当主である。情報網を駆使し、国の防衛と利益のために暗躍する。
・所属組織、地位や役職
ソリステア魔法王国公爵。ソリステア商会会長。
・物語内での具体的な行動や成果
アドを王室顧問魔導士として抱え込み、他国との交渉材料に利用した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
神国の密偵まで情報網を広げている。
クレストン元公爵
ソリステア公爵家の前当主である。孫娘のセレスティーナを異常なまでに溺愛している。
・所属組織、地位や役職
ソリステア魔法王国元公爵。
・物語内での具体的な行動や成果
獣人族からの指名依頼を受け、アドとゼロスをルーダ・イルルゥ平原へ派遣する手配をした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
クロイサス・ヴァン・ソリステア
ソリステア公爵家の次男である。魔法研究に没頭し、生活能力が皆無である。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院生。
・物語内での具体的な行動や成果
魔法式の解読に関する研究成果を大講堂で発表した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
発表により古い常識を覆し、学院内に改革の兆しをもたらした。
マカロフ
ツヴェイトやディーオとクラスが同じになったことがある学院生である。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院生。
・物語内での具体的な行動や成果
特になし。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
セレスティーナやツヴェイトから名前を正しく覚えられていない。
イー・リン
クロイサスと同じ派閥に属する犬耳の少女である。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院生。サンジェルマン派。
・物語内での具体的な行動や成果
クロイサスへの思いから、強引に迫られて倒れ込むような場面を作った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
クロイサスの恋人であると周囲から誤解されている。
セリナ
クロイサスと同じ派閥に属する女学生である。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院生。サンジェルマン派。
・物語内での具体的な行動や成果
クロイサスとイー・リンの仲を誤解し、噂を広めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
サントールの街・傭兵・孤児院・その他
ルーセリス
養護院を管理する見習い神官である。ゼロスに対して恋心を抱いている。
・所属組織、地位や役職
四神教の見習い神官。教会の管理者。
・物語内での具体的な行動や成果
ゼロスから婚約指輪を受け取り、正式に婚約した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ゼロスと婚約したことで浮かれた様子を見せている。
ジャーネ
傭兵の女性である。ゼロスに想いを寄せているが、奥手で逃げ腰である。
・所属組織、地位や役職
傭兵。
・物語内での具体的な行動や成果
ゼロスからプロポーズを受け、婚約した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
婚約後も気持ちの整理がつかず、挙動不審になっている。
ジョニー
養護院で暮らす孤児の少年である。仲間たちのリーダー格である。
・所属組織、地位や役職
養護院の孤児。
・物語内での具体的な行動や成果
ルーセリスとジャーネが婚約したことを察し、温かく見守った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ラディ
養護院で暮らす孤児の少年である。
・所属組織、地位や役職
養護院の孤児。
・物語内での具体的な行動や成果
ジョニーたちと共にルーセリスの婚約を察した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アンジェ
養護院で暮らす赤毛の少女である。
・所属組織、地位や役職
養護院の孤児。
・物語内での具体的な行動や成果
ルーセリスの婚約に対して乙女心を理解しているような発言をした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
カイ
養護院で暮らす孤児の少年である。肉に対して強い執着を持つ。
・所属組織、地位や役職
養護院の孤児。
・物語内での具体的な行動や成果
結婚式で山盛りの肉が食べられることを期待した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
カエデ
ハイ・エルフの少女である。剣の道に生きる武闘派である。
・所属組織、地位や役職
養護院の孤児。
・物語内での具体的な行動や成果
ジョニーたちと共にルーセリスたちの様子を観察した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
イリス
転生者の少女である。大賢者であるゼロスに憧れを抱いている。
・所属組織、地位や役職
傭兵。
・物語内での具体的な行動や成果
ルーセリスとジャーネの指輪を見て、二人が結婚したと勘違いし騒ぎ立てた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
将来の不安からゼロスへの弟子入りを検討し始めた。
レナ
少年を愛好する女性傭兵である。倫理観が世間から大きく外れている。
・所属組織、地位や役職
傭兵。
・物語内での具体的な行動や成果
婚約したジャーネをからかい、刺激的な本を見せてルーセリスとイリスを卒倒させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
イサラス王国
ルーイダット・ファルナンド・イサラス
イサラス王国の国王である。小心者だがソリステアの支援に感謝している。
・所属組織、地位や役職
イサラス王国国王。
・物語内での具体的な行動や成果
アドの派遣要請に対し、本人の判断に委ねる決定を下した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ザザ
イサラス王国諜報部の騎士である。アド達の監視役兼案内役を務める。
・所属組織、地位や役職
イサラス王国諜報部の騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
獣人族への使者としてアド達と共にルーダ・イルルゥ平原へ向かった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
獣人族
ケモ・ブロス
野蛮人の異名を持つ転生者の少年である。人間不信だが獣人族を深く愛している。
・所属組織、地位や役職
獣人族の指導者。
・物語内での具体的な行動や成果
カルマール要塞攻略のため、アドとゼロスを呼び寄せて武器修繕を依頼した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
三十三人の妻を持つようになった。
獣人族の戦士達
誇り高く、強者と共に戦うことを好む戦闘民族である。
・所属組織、地位や役職
獣人族の戦士。
・物語内での具体的な行動や成果
ゼロス達が修繕した武器を手に、喧嘩祭りや大宴会を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
熊の獣人の戦士
獣人族の戦士である。
・所属組織、地位や役職
獣人族の戦士。
・物語内での具体的な行動や成果
居留地に到着したゼロス達をブロスのテントへ案内した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
フンドシな男達
強者との戦いを求める獣人族の男たちである。
・所属組織、地位や役職
獣人族の戦士。
・物語内での具体的な行動や成果
ゼロスに決闘を申し込み、喧嘩祭りの熱気を作り出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
奥さん達
各部族から差し出されたケモ・ブロスの妻達である。
・所属組織、地位や役職
ケモ・ブロスの妻。
・物語内での具体的な行動や成果
夜の相手を巡って争い、ブロスをテントへ引きずり込んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
メーティス聖法神国
辺境伯
メーティス聖法神国の貴族である。
・所属組織、地位や役職
メーティス聖法神国の辺境伯。
・物語内での具体的な行動や成果
ソリステア魔法王国の外交部職員と交易の継続について交渉した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ガルドア・カーバイン
カルマール要塞を預かる将軍である。状況を冷静に判断する歴戦の騎士である。
・所属組織、地位や役職
メーティス聖法神国・将軍。聖天十二将。
・物語内での具体的な行動や成果
神官の命令に背き、要塞の放棄と住民の避難、全軍の撤退を決定した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ロクス
ガルドアの副官である。
・所属組織、地位や役職
メーティス聖法神国の副官。
・物語内での具体的な行動や成果
ガルドアの命を受け、住民の避難と撤退準備を急がせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
神・観測者
アルフィア・メーガス
元邪神であり次世代の観測者である。少女の姿をしている。
・所属組織、地位や役職
次世代の観測者。元邪神。
・物語内での具体的な行動や成果
ゼロスにダンジョンの正体や目的を明かした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ガイラネス
大地の女神である。怠け者で世界の管理に未練がない。
・所属組織、地位や役職
大地の女神。
・物語内での具体的な行動や成果
ファーフラン大深緑地帯で眠っていたところをアルフィアに起こされたが、寝直そうとした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
フレイレス
四神の一柱である。
・所属組織、地位や役職
女神。
・物語内での具体的な行動や成果
力を消耗して小さな姿で復活し、聖域へ逃げ帰ることにした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アクイラータ
四神の一柱である。
・所属組織、地位や役職
女神。
・物語内での具体的な行動や成果
力を消耗して小さな姿で復活し、聖域へ逃げ帰ることにした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
魔物・使い魔
センケイ
ゼロスの使い魔であるコッコの一羽である。
・所属組織、地位や役職
ゼロスの使い魔。
・物語内での具体的な行動や成果
夜の庭でアンズと戦ったが、敗北してモフられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ザンケイ
ゼロスの使い魔であるコッコの一羽である。
・所属組織、地位や役職
ゼロスの使い魔。
・物語内での具体的な行動や成果
夜の庭でアンズと戦ったが、変わり身の罠に誘い込まれて敗北した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
コッコ達
ゼロスが飼っている武闘派のニワトリ達である。
・所属組織、地位や役職
ゼロスの使い魔。
・物語内での具体的な行動や成果
ルーセリスたちの部屋の空いたベッドに陣取っていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アラフォー賢者15巻レビュー
アラフォー賢者まとめ
アラフォー賢者17巻レビュー
展開まとめ
プロローグ 婚約後の乙女達の語らい
教会の婚約騒動と禁断の本
浮かれるルーセリスと揺れるジャーネ
教会へ戻ったルーセリスは、婚約指輪を眺めながら上機嫌に掃除をしていた。一方のジャーネは椅子に座って指輪を見つめ、物思いに沈んだかと思えば急にそわそわし、いつもの姉御肌とはかけ離れた姿を見せていた。ジョニー達はその様子を陰から見守り、ゼロスと婚約したのだろうと察していた。
子供達の見守り
ジョニー達は、ルーセリスとジャーネの変化を見て驚きつつも、二人の縁がまとまったことに安心していた。特にジャーネは逃げ腰だったため、子供達も遠回しに煽ったり心配したりしていた。二人は、自分達が子供達にまで結婚を心配されていたことを知り、複雑な気持ちになった。
イリスの早合点
依頼から戻ったイリスは、ルーセリスとジャーネの浮かれた様子と指輪を見て、二人がゼロスと結婚したのだと勘違いした。イリスは赤飯だと騒ぎ、さらに三人の夜を勝手に想像して暴走した。ルーセリスとジャーネは否定したが、イリスの意味不明な興奮ぶりに逆に落ち着きを取り戻していた。
婚約後の不安
ジャーネとルーセリスの婚約により、イリスはパーティーの今後に不安を覚えた。ジャーネはいずれ嫁入りし、レナも少年達に手を出して妊娠すれば離脱する可能性があるため、傭兵パーティーの解散が近づいているように思えた。イリスは将来を考え、ゼロスへ本格的に弟子入りすることも考え始めた。
恋愛症候群への警戒
イリスは、ゼロスの妻になるには年齢的に無理があると考えたが、ルーセリスはこの世界では歳の差婚は珍しくないと語った。イリスは地球的な感覚から同年代との恋愛結婚を望み、恋愛症候群には気をつけようと思った。しかしルーセリスは、恋愛症候群は本能から来る衝動であり、気をつけて防げるものではないと話した。
レナの帰還
レナはいつの間にか背後に現れ、ゼロスとの婚約を知ってジャーネをからかい始めた。彼女はミスリルの婚約指輪には所有物や永久の束縛という意味があると語ったが、それはジャーネを遊ぶためのでまかせだった。ジャーネはゼロスの愛が重いと煽られ、顔を赤くして動揺していた。
エッチな本の記憶
レナは、以前に宿で見せた刺激的な本の話を持ち出した。その本にはジャーネに似た女性が描かれており、ジャーネは当時の悪ふざけを思い出して怒った。イリスは自分が寝ている間にそんなことがあったと知り、強い興味を示した。
危険な好奇心
イリスとルーセリスは、レナが持つ刺激的な本を見たいと言い出した。ジャーネは必死に止めたが、ルーセリスは後学のためだと言って彼女を羽交い絞めにし、レナは本を取りに向かった。見てはいけないと言われるほど二人の好奇心は高まり、ついに禁断の本を見ることになった。
赤く染まったリビング
しばらく後、子供達が見たのは赤く染まったリビングだった。ルーセリスとイリスは刺激の強すぎる本に倒れ、指先には本が刺激的すぎたという言葉が残されていた。ジャーネとレナはその後始末をしており、まるで殺人現場の証拠隠滅のようだった。出版物の検閲がない弊害は、新たな犠牲者を生んだ。
第一話 おっさん、ダンジョンの存在理由を知る
邪神ちゃんの空腹とダンジョンの正体
帰宅したゼロス
ゼロスはルーセリス達との外出を終え、教会前で別れて自宅へ急いでいた。多脚戦車の解体やコンテナの確認をアドとエロムラに任せていることが気になっていたためである。庭で訓練するコッコ達を横目に玄関へ向かうと、腹をすかせたアルフィアがわざとらしく倒れていた。
満たされない邪神
アルフィアは菓子を大量に食べても満たされないと訴えた。ゼロスが問いただすと、食べたものは量子変換されるため排泄もなく、そもそも満腹になることがないと判明した。さらにアルフィアは無から純度の高い銀貨を作って食費にしており、ゼロスはそれが通貨価値を揺るがしかねない行為だと呆れた。
ダンジョンへの疑問
ゼロスは、アルフィアがダンジョンに入ると誤作動が起きかねないと聞き、ダンジョンの正体について尋ねた。旧時代の兵器や建造物まで再現すること、人間を内部に招き入れることに意味があるはずだと考えたからである。アルフィアは禁則事項に触れない範囲で、ダンジョンの役割を説明し始めた。
命の循環
アルフィアは、ダンジョンの目的の一つは命を循環させることだと語った。魔力に満ちたこの世界では、死者の魂が輪廻から外れて現世に留まり、やがて瘴気を生んで世界を汚染することがある。ダンジョンはそうした魂や淀んだ魔力を回収し、浄化して輪廻の円環へ送る役割を持っていた。
生命進化の記録
もう一つの目的は、生命の進化を記録することだった。ダンジョン内の魔物は進化を意図的に促され、外部の知的生命体と争うことで双方の成長情報が収集される。ダンジョンはその情報を蓄え、やがて惑星が滅ぶ時に星の種子として外宇宙へ拡散し、新たな世界の再構築に利用するシステムだった。
異界の摂理
ゼロスは、アカシックレコードから直接情報を引き出せばよいのではないかと疑問を抱いた。アルフィアは、別次元の情報を誤って使えばこの世界の摂理に合わない星を生み、最悪の場合は宇宙崩壊につながると説明した。勇者達の魂に刻まれた異界の摂理がこの世界を侵食していることも、原理としては同じだった。
宝と魔物の理由
ダンジョンに宝や資源があるのは、知的生命体を内部へ誘い込むための餌だった。危険に見合う褒美がなければ誰も入らず、魔物と戦うことで成長情報も得られないからである。ゼロスはそれを人体実験のようだと感じたが、アルフィアは死者も円環へ送られ、全ては自然の理の中で起きていると語った。
惑星そのものの本体
ゼロスは、ダンジョンコアを破壊すれば星の種子が作れなくなるのではないかと尋ねた。アルフィアは、各地のダンジョンは互いに情報共有する端末であり、本体は惑星そのものだと明かした。ゼロスはその規模に呆れたが、アルフィアは重要な話を切り上げ、すき焼きや龍王の肉を求め始めた。
地下室の作業確認
アルフィアの食欲に呆れながら、ゼロスは地下室へ向かった。頑丈な鉄扉の奥では、多脚戦車が分解され、外された装甲や電子機器が並べられていた。作業は進んでいたが、ゼロスが覗くと、アドとエロムラは希少金属を使って変形合体ロボのようなものを作って遊んでいた。
男達のロボ魂
ゼロスは二人が作業をさぼっていたことに圧をかけたが、変形合体への男のロマンには理解を示した。さらにアドがゼロスの木製模型に独自のネタを混ぜていたことを問い詰めると、アドは後悔していないと答えた。ゼロスはその覚悟を認め、二人と固い握手を交わし、熱いロボ談義へ突入した。
置き去りのアルフィア
ゼロス、アド、エロムラはロボ玩具談義に夢中になり、アルフィアの食事の訴えは誰にも届かなかった。男達の熱いロボ魂は神すら入れない領域となり、アルフィアは寂しく取り残された。
第二話 おっさん、夫婦問題を語る
婚約報告と学院へ戻る準備
公爵家別邸の驚愕
ゼロスはアド、エロムラと共にソリステア公爵家の別邸を訪れ、家庭教師の真似事と夕食を終えた後、ルーセリスとジャーネとの婚約を自然に漏らした。アド、エロムラ、ツヴェイト、リサ、シャクティは驚愕したが、セレスティーナとユイは落ち着いて祝福した。リサとシャクティは地球の常識から重婚約に冷たい視線を向け、エロムラはゼロスが二人と婚約したことに絶望していた。
ツヴェイトの意中の相手
エロムラはツヴェイトにも恋人がいると騒ぎ、そこへミスカが突然現れて相手の名を明かそうとした。ツヴェイトは正式に決まっていないことを理由に止め、ミスカの情報漏洩を咎めた。ミスカは悪びれず、代わりにセレスティーナの隠していた原稿を取り出した。
セレスティーナの危険な原稿
ミスカはセレスティーナの新作原稿を確認し、珍しく狼狽した。内容は以前の文学的な薔薇世界ではなく、欲望に溺れた王が破滅する小説であり、ファラオネェをモデルにした追悼作品だった。ミスカが素直に謝罪するほど危険な内容だったため、男達は読みたくないと思ったが、娯楽に飢えたユイ、リサ、シャクティは強い興味を示した。
娯楽を求める女性陣
ユイ達は、メーティス聖法出版の有害書籍が持ち込み規制されていることもあり、セレスティーナの原稿を娯楽として求めた。セレスティーナは未完成で世に出すつもりもないと拒んだが、三人は逃がす気を見せなかった。男達は面倒事を避けるため傍観を決め込み、セレスティーナは全力で逃げ出した。
既婚者と子育て
アドが娘のかのんを連れて部屋へ戻ると、エロムラは既婚者を羨んだ。ゼロスは、結婚後は夫婦間の相互理解と子育てへの協力が重要だと語り、家庭を女性に任せきりにする考えは家庭を壊すと指摘した。エロムラは自分の考えの危うさを突かれ、ツヴェイトも親子関係や貴族家の家庭について考えさせられた。
親の愛情と責任
ゼロスは、子育てとは子供の感受性を理解し、興味を伸ばし、危険なことは叱るものだと語った。ツヴェイトは母から親らしい愛情を感じたことがなく、父デルサシスの厳しさも愛情なのか計算なのか分からないと口にした。ゼロスは、親の期待や理想を過度に背負わせることは子供の人生を歪ませると考えていた。
貴族家の後継者問題
話は貴族の後継者問題へ移った。ツヴェイトは公爵家の跡取りとして、将来は子を持つことも義務になると示された。ゼロスは、不妊体質や精神的な重圧で子供ができにくくなる場合もあると説明し、この世界では女性ばかりが責められがちな現状に疑問を呈した。ツヴェイトは、貴族や王族の重圧が想像以上に重いことを改めて意識した。
家庭崩壊の実例
ゼロスは、仕事を理由に家庭を顧みない夫や、逆に家庭を壊す妻の例を長々と語った。どちらか一方だけが悪いとは限らないが、自己中心的な人間は家庭を破壊しやすいと説明した。エロムラは自分への説教だと気づき、ゼロスとツヴェイトから軽薄さや現実味のない願望を指摘された。
学院への帰還
ゼロスは話題を変え、ツヴェイトに学院へ戻る予定を尋ねた。ツヴェイトは六日後に出発するつもりであり、仲間達と戦術研究を進めたいと語った。魔法文字の解読法が判明したことで講師達は混乱していたが、学院の図書館や仲間との研究環境はツヴェイトにとって有用だった。
学生時代の時間
ゼロスは、学生時代の友人との時間は卒業後には二度と戻らないかもしれない貴重なものだと話した。ツヴェイトは貴族という立場が緩い今のうちに、仲間達と研究や議論を続けたいと考えていた。ゼロスはその時間を青春として大切にするよう勧めた。
恥柱のエロムラ
一方、エロムラは落ち込みから立ち直るたびに、女好きや本能を叫ぶ方向へ悪化していた。ゼロスは彼に恥柱の称号を贈ろうかと考え、ツヴェイトも日に日に危ない方向へ進んでいると感じた。二人は、エロムラについてはもう諦めるしかないと思っていた。
第三話 その頃の四神達
ディーオの来訪と封印された元女神達
公爵家に来た親友
ツヴェイトが学院へ戻ると告げてから四日目の朝、ソリステア公爵家本邸にディーオが訪れた。庶民である彼が公爵家を訪れることは珍しく、ツヴェイトは歓迎よりも困惑を見せた。ディーオは門前で不審者扱いされていたが、偶然通りかかったミスカによって入邸を許された。
ミスカの暴走
ミスカは、ツヴェイトに友人が訪ねてきたことを大げさに驚き、彼をボッチ扱いしたうえで、妙な神の名まで持ち出した。さらにディーオとツヴェイトにあらぬ疑いをかけ、守衛や周囲の人々を混乱させた。ツヴェイトは怒ったが、ミスカには何もできず、公爵家内の力関係を思い知らされていた。
セレスティーナ目当て
ディーオが訪ねてきた理由は、ツヴェイト達が学院へ戻る時期を見計らい、セレスティーナと同行したいという下心からだった。ツヴェイトはそれを見抜き、ディーオが本邸ではなく別邸へ行っていたら、クレストンに命を狙われていたかもしれないと告げた。ディーオは、孫娘を溺愛するクレストンが最大の難関だと改めて理解した。
セレスティーナへの壁
ツヴェイトは、セレスティーナを狙うならクレストンだけでなくデルサシスとも向き合うことになると語った。デルサシスは表向き放任しているように見えて、娘に近づく相手には厳しく、婚約者候補を排除した例もあった。ディーオはソリステア公爵家の怖さを知り、庶民の自分には難易度が高すぎると感じた。
自力で振り向かせる努力
ディーオはツヴェイトに協力を求めたが、ツヴェイトはセレスティーナ本人の意思が最も大事だと突き放した。ツヴェイトは、過去に妹を虐げた自分が彼女の人生に口出しするべきではないと考えていた。ディーオには、友人を頼る前に自分でセレスティーナを振り向かせる努力が必要だった。
バニー姿のアンズ
二人がセレスティーナの趣味について話していると、アンズが突然バニーガール姿で現れた。ドワーフの妻向けに夜の仕事を彩る衣装として作ったというが、幼い見た目には危険すぎる格好だった。ツヴェイトとディーオは誰かに見られたら人生が終わると焦った。
冤罪の混乱
アンズの姿を年配のメイドが目撃し、ツヴェイトとディーオが犯罪に関わっていると誤解した。二人は必死に否定したが、メイドはさらに錯乱し、自分にも同じ格好をさせられると思い込んだ。ツヴェイトとディーオの失礼な反論が事態を悪化させ、家臣達まで集まり、冤罪はしばらく晴れなかった。
聖域の異変
一方、聖域ではアクイラータとフレイレスが、ウィンディアとガイラネスの不在を不審に思っていた。聖域は惑星管理の監視室のような場所だったが、今では四神の引きこもり部屋になっていた。二柱は、勇者召喚による文明発展の計画が思うように進まなかったことや、メーティス聖法神国の閉塞的な現状を振り返っていた。
ドラゴン襲撃の問題
フレイレスは、ドラゴンが神殿や教会を集中的に襲っていると話した。アクイラータは、ドラゴンが神殿を狙う異常性に気づき、神国が滅びれば自分達の下僕が失われると焦った。二柱は残る二人の所在を気にしたが、ウィンディアとガイラネスはすでに神ではなく、聖域へ戻ることはなかった。
眠るガイラネス
ガイラネスは、ソリステア魔法王国の民家の一室に封印され、安眠枕と羽毛布団に包まれて惰眠を貪っていた。彼女は管理権限をアルフィアに返し、その見返りとして快適な寝床と封印空間を得ていた。神の地位にも世界管理にも未練はなく、好きなだけ眠れる現状を楽園と考えていた。
抱き枕のウィンディア
ガイラネスの布団には、アルフィアに封印された後、彼女に引き抜かれてきたウィンディアがいた。ウィンディアは聖域へ戻るために協力を求めたが、ガイラネスは面倒だとして拒んだ。さらにガイラネスはウィンディアを抱き枕にして眠り、ウィンディアは暗黒空間に封印されたままの方がましだったと思うほど苦しむことになった。
第四話 ルーセリス、婚約後の日常風景
ルーセリスの往診と万能工作機械
朝の往診準備
ルーセリスは早朝に野菜や薬草を収穫し、コッコ達から無精卵を分けてもらった。書斎でメーティス聖法神国から届いた書類を確認した後、薬箱を手に往診へ向かった。最近の彼女は薬師としても評判を得ており、旧市街の患者を症状の重さに応じて巡回していた。
旧市街の信頼
ルーセリスは街の人々から気軽に声を掛けられる存在になっていた。道中で昔馴染みのキオと再会し、彼がハンバ土木工業でドワーフ達に鍛えられ、過酷な労働に染まっていることを知った。キオは親方が使う魔法薬によって仕事中毒のようになっており、ルーセリスはそれがゼロスの売った薬ではないかと察した。
婚約を知った男達
キオはルーセリスの指輪に気づき、婚約を祝った。周囲で密かにルーセリスへ想いを寄せていた男達は一斉に絶望し、告白せずに足の引っ張り合いばかりしていたことを悔やんだ。ルーセリス自身は彼らの好意に全く気づいておらず、キオは彼女の無自覚さと昔からの一直線な性格を思い出していた。
往診と改良ヒール
ルーセリスは自作ポーションと改良ヒールを併用し、魔力消費を抑えながら患者を治療していた。ゼロスから教わった消毒や感染症の知識、外界魔力を利用する改良ヒールによって、以前より多くの患者を診られるようになっていた。メルラーサ司祭長もその魔法を黙認し、神国に知られれば面倒になるとして秘密にしていた。
元気すぎる老婆
ルーセリスは骨折した老婆の家を訪ね、腕の治療を行った。老婆は浮気性の夫を殴ったことで骨を折ったが、夫が戻ればまた鍛え直した拳で引導を渡す気でいた。ルーセリスは無茶をしないよう注意したが、家の中からはすでにスパーリングを始める音が聞こえ、聞かなかったことにした。
魔導力機関の分解
一方、ゼロスとアドは旧時代の魔導力機関を分解していた。内部はモーターに近い単純な構造で、円盤や金属塊にびっしりと魔導術式が刻まれていた。外界魔力を吸収・圧縮してエネルギー変換する仕組みであり、ゼロス達にも再現できそうな構造だった。
万能工作機械
ゼロス達はコンテナ内の作業機械を確認し、旋盤、溶接加工、魔導錬成に対応した機材が一体化できる設計だと知った。中心装置に加工情報を入力し、各機材を接続することで、3Dプリンターのような万能工作機械として使える可能性があった。これが動けば、細かな術式刻印や機械部品の製造が容易になると分かった。
チャンドラー2600
エロムラはコンテナの奥から、チャンドラー2600と書かれたパッケージを見つけた。中身は工作機械へ導入するOSらしきもので、ゼロスとアドはこれが本物ならやりたい放題だと興奮した。エロムラはロボを作ろうと盛り上がったが、二人の反応は冷ややかだった。
人型兵器の現実
ゼロスとアドは、人型ロボットはロマンこそあるが兵器としては欠点が多く、この世界で作れば貴族や王族の権威の道具になり、戦争の火種になると説明した。エロムラはロボのパイロットになれば女性にモテると考えていたが、平民の彼が乗れる可能性はなく、夢はあっさり打ち砕かれた。
残された八十八ミリ砲
ゼロスとアドは万能工作機械の組み立てに意欲を見せたが、エロムラは二日後にツヴェイト達の護衛として学院へ向かうため、その作業に参加できなくなることにまだ気づいていなかった。男達が新たな工作機械に夢中になるそばで、取り外された八十八ミリ砲だけが空しく揺れていた。
第五話 おっさん、拾ってきた旧式PCを弄る
青空教室と旧時代の美少女ゲーム
庭先の錬金術講義
ゼロスは庭先でコンテナ内の機材を確認しながら、セレスティーナとキャロスティーに錬金術を教えていた。二人は翌日に学院へ戻る予定だったが、準備は済ませており、ゼロスから学べる機会を逃すまいとしていた。キャロスティーは高位魔導士としてのゼロスを尊敬し、この機会に教えを受けようとしていた。
命懸けの調合
ゼロスはヒュドラの毒を用い、万能結合溶剤の調合法を二人に教えていた。下処理で毒性は落としていたが、扱う薬品は劇薬であり、工程を誤れば危険な作業だった。セレスティーナとキャロスティーは慎重に調合を進め、緊張の末に溶剤を完成させた。
万能結合溶剤
完成した溶剤は、複数の魔法薬の効能を損なわずに定着させる媒体だった。セレスティーナとキャロスティーは、その有用性に興味を抱き、さっそく効能変化の実験まで考え始めた。ゼロスは、錬金術を極めるなら毒の扱いにも長ける必要があると考えていた。
錬金術と文明水準
ゼロスは、この世界の錬金術が薬効成分や化学反応の理由を理解しないまま、結果だけを頼りに発展していると説明した。魔法薬は有用だが、なぜ効くのか、何が毒として作用するのかは曖昧だった。アドは犯罪者への投与実験に戸惑ったが、ゼロスはこの世界では人権の扱いが軽いと受け止めていた。
旧時代パソコンの準備
ゼロスとアドは、地下から持ち出した旧時代の機材を使い、古いパソコンを動かす準備を進めていた。ブラックボックスが電圧を自動調整しているらしく、魔導力機関と組み合わせれば多くの機械を動かせる可能性が見えた。エロムラが持ってきた古いパソコンは、見た目も処理速度も骨董品のようだった。
ダンジョンの古代遺物
セレスティーナはキャロスティーに、ダンジョン内で魔導文明期の施設や兵器を見たことを語った。ゼロスが危険と判断して施設を破壊したが、それは気休めに過ぎないかもしれなかった。キャロスティーは、ダンジョンが再び同じような遺物を生み出し、傭兵達が危険な魔導具を地上へ持ち出す可能性を恐れた。
起動した古代ゲーム
ゼロス達がフロッピーディスクを読み込ませると、古いパソコンには美少女ゲームらしきものが表示された。軍事研究施設の再現物からギャルゲーが出てきたことに三人は困惑し、過去の職員が何をしていたのかと呆れた。ゲームは唐突にエッチな場面へ進み、さらに妹キャラが主人公をカジキで殺す不可解な展開になった。
制作者の闇
ゲームは短時間で終わる同人ゲームのような作りだったが、複数のエンディングが存在した。主人公無視の百合ハーレム、女性キャラ全員との友達エンド、主人公が復活後に再び殺害されるエンドがあり、特に最後は拷問や死体処理の描写が異様に濃かった。三人は、制作者が主人公に強い恨みを込めていたのではないかと感じた。
古代技術の限界
ゼロスは、パソコンがデータ読み込み専用に近い外部端末だと判断した。正常に稼働したことから他の機械も動く可能性は高まったが、ブラックボックスの構造は依然として謎だった。セレスティーナとキャロスティーは、そんな古代技術が娯楽に使われていたことに驚き、ゼロスは失われた文明の再現には膨大な時間が必要だと語った。
研究という言い訳
少女二人の前で美少女ゲームを動かしていたことに気づき、ゼロス達は気まずくなった。ゼロスは、これは機械の動作確認であり、内部データは動かさないと分からないと説明した。さらに古代文明には娯楽用の映像遊戯も存在し、その技術の高さを認めるべきだと話し、二人の好奇心を研究の方向へそらした。
逃げ出すエロムラ
エロムラは別のディスクも試し、際どい描写に喜んでいた。しかしセレスティーナとキャロスティーの軽蔑の視線にようやく気づき、いたたまれなくなって逃げ出した。ゼロスとアドは、彼が時と場所を考えないことに呆れ、エロムラは泣きながら走り去った。
第六話 おっさん、二度目のお見送り
モフラーの襲撃と獣人族の要塞攻略
闇夜のコッコ戦
夜のゼロス邸の庭では、センケイとザンケイが強敵を相手に苦戦していた。ウーケイは既に倒され、ザンケイの斬撃も相手には通じなかった。センケイは仲間達が次々と屈服した理由を理解し、師父並みの強者を敵に回す恐ろしさを痛感していた。
変わり身の罠
センケイとザンケイは渾身の連携技で相手を囲み、勝利を確信した。しかし攻撃が当たったのは丸太であり、相手の変わり身に誘われていたことに気づいた直後、ザンケイは姿を消した。遠くから聞こえる悲鳴により、センケイはザンケイがモフられたことを悟り、撤退を選んだ。
センケイの敗北
センケイは気配を消して逃れようとしたが、相手も闇に紛れる忍者であり、欺くことはできなかった。羽毛の糸による捕縛陣と影分身で罠を張ったものの、相手はそれ以上の分身を作り出して迫ってきた。やがて尾羽を掴まれたセンケイは、アンズに満足するまでモフられ、武闘派コッコ達は全滅した。
真夜中のモフり
夜中の騒ぎに気づいたゼロスが庭へ出ると、アンズがコッコ達を相手に十二時間にも及ぶ死闘を繰り広げていた。彼女は翌朝に護衛で出発するため、しばらくモフれなくなる前に徹夜で堪能するつもりだった。ゼロスは近所迷惑を気にしつつも、アンズを止めれば自分が戦う羽目になるため、ほどほどにするよう言うだけにした。
船着き場の見送り
翌朝、サントールの船着き場ではツヴェイト達が学院へ戻るため船に乗ろうとしていた。キャロスティーはエロムラに荷物を運ばせ、ミスカも鞭を構えて彼をこき使っていた。アンズは船のマスト上で眠っており、ゼロスはその見事な平衡感覚に感心した。
樽詰めのクロイサス
クロイサスは準備もせず研究を続けていたため、ミスカによって猿轡をされ、樽に詰められて運ばれていた。ツヴェイト達はその扱いに呆れたが、船内で実験されるよりはましだった。ミスカは容赦なく、クロイサスを荷物扱いで船倉へ運ばせた。
出航の混沌
ツヴェイト、セレスティーナ、キャロスティー、エロムラ、ミスカ達は船に乗り込み、ゼロスに別れを告げた。ゼロスは気の利いた言葉をかけようとしたが、船着き場では夢を追う者、逃げる者、恋人や借金相手に叫ぶ者達が入り乱れ、場の濃さに押されて言葉を失った。結局、ほどほどに頑張れとだけ告げ、船を見送った。
ディーオの空回り
ディーオは偶然を装ってセレスティーナに近づくため、先回りして船に乗っていた。しかしキャロスティーやミスカの存在によって計画は外れ、ツヴェイト同伴での世間話しかできなかった。船旅の間もセレスティーナに声をかけようとしたが、結局もじもじするだけで終わった。
カルマール要塞
ルーダ・イルルゥ平原では、獣人族連合がメーティス聖法神国から土地を取り戻す戦いを進めていた。だが北方平原最後の砦であるカルマール要塞は、八芒星の形をした堅牢な要塞で、迂闊に攻めれば左右から集中攻撃を受ける構造だった。ケモ・ブロスは自分一人なら落とせると考えたが、それでは獣人族の誇りが許さなかった。
獣人族の撤退
獣人族の戦士達は自らの手で自由を勝ち取りたいと望んでいたが、武器や矢は限界を迎え、要塞攻略には犠牲が避けられなかった。ブロスは彼らの意気を尊重しつつも、今回は攻略を見送って態勢を整えることを決めた。血の気の多い戦士達を納得させるため、彼は拳による説得を行うことになった。
イサラス王国の復興
イサラス王国では、ソリステア魔法王国との地下街道や共同事業によって復興の兆しが見えていた。鉱物資源の取引、魔導式モートルキャリッジの部品工場、食料支援、医療魔導士の育成が進み、かつて仮想敵だったソリステアとの関係も大きく改善していた。ルーイダット王は支援の大きさを感じ、敵対はできないと考えていた。
神国への反撃準備
イサラス王国は、アルトム皇国と協議しながらメーティス聖法神国への反撃準備を進めていた。東方平原の一部掌握を目標とし、獣人族の戦いを情報攪乱として利用しつつも、彼らの負担を心苦しく思っていた。ルーイダット王は、デルサシス公爵の才覚と支援の形に感嘆し、アドを救国の英雄のように見ていた。
アドへの要請
イサラス王国に、獣人族側からアドを派遣してほしいという要請が届いた。ケモ・ブロスとアドが知り合いであり、カルマール要塞攻略に関わる可能性があったためである。ルーイダット王はアドを軽々しく呼び出すことに悩んだが、勝手に断ることもできず、諜報部を通してアド本人に判断を委ねることにした。
第七話 おっさん、戦争の兆しを予見する
万能工作機械と学院改革の丸投げ
完成した万能工作機械
ツヴェイト達が学院へ戻って六日後、ゼロスとアドは地下で万能工作機械の性能を確認していた。機械は金属の結合や分離、加工、組み立て、鉱石からの鉱物抽出まで自動で行い、資材の分別や再利用もこなしていた。ゼロス達は、旧時代の工業技術の異常な高さに驚いていた。
ハーフトラックの製作
万能工作機械は、戦車ではなくハーフトラックを組み立てていた。ゼロスは当初戦車を作るつもりだったが、試運転用として途中から方針を変え、後輪をキャタピラにし、八十八ミリ砲まで搭載する車両へ発展させた。アドはその思いつきの変化に呆れつつ、ゼロスらしいと納得していた。
戦争の気配
ゼロスとアドは、メーティス聖法神国を巡る情勢について話した。獣人族、イサラス王国、アルトム皇国などが動きつつあり、ソリステア魔法王国も裏から領地を削る可能性があるとゼロスは見ていた。すでに諜報戦は始まっており、神国の崩壊は近いと二人は感じていた。
ドラゴンの正体
ゼロスは新聞記事から、神殿や教会を襲うドラゴンが、単なるドラゴンではない可能性を示した。記事には、ドラゴンが謎の魔物と交戦し、喰らいながら姿を変貌させたことが書かれていた。ゼロスは、それが邪神石を使った魔法薬に関係し、さらに元勇者の復讐存在である可能性が高いと考えた。
四神への借り
ゼロスとアドは、戦争に直接加わるべきか迷っていた。国民には恨みがないため国を滅ぼすことは望まなかったが、四神には周辺世界すら危険にさらした借りがあった。どこにも属さず獣人族に肩入れする案も出たが、二人はまだ状況を甘く見ていた。
デルサシスの缶詰
サントールの倉庫街では、デルサシスがクレストンに新商品である缶詰を見せていた。魚の油漬けを詰めた小さな金属容器は、保存性と携行性に優れ、兵士の食事事情を大きく変えるものだった。クレストンは、最前線でも温かい食事を取れることや、兵士全員に数日分の食料を持たせられる利点に気づいた。
戦争準備の前倒し
デルサシスは、缶詰工場をすでに稼働させ、国境の砦やイサラス王国へ食料を送っていた。さらに魔導銃の量産も進めており、メーティス聖法神国の混乱に備えて準備を前倒ししていた。ジャバウォックの動きは予想外だったが、それによって神国の内憂外患はさらに悪化していた。
アド派遣の要請
デルサシスのもとに、イサラス王国経由で獣人族側からアドの派遣要請が届いた。デルサシスは、ケモ・ブロスの強さが獣人族の誇りを傷つけ、武器の修繕や要塞攻略のためにアドが求められているのだろうと推測した。彼はついでにゼロスも送ることを考え、非常識な三者が揃うことで何が起こるかを楽しみにしていた。
学院の講師不足
イストール魔法学院では、新学期を迎えた講師陣が深刻な問題に直面していた。魔法式の解読法が公表されたことで、従来の講義内容は根本から崩れ、正しい術式を扱えるのは成績優秀な院生達だけになっていた。講師達は自分達では新入生を教えられないと判断し、上位成績者を講堂へ集めた。
新入生教育の押しつけ
講師達は、成績優秀者達に新入生の面倒を見てほしいと告げた。院生達は反発したが、クロイサス達が研究成果を公表したことや、各研究室が改革を提唱したことも混乱の原因であり、完全に逃げることはできなかった。学院側は講義内容を院生達に一任し、臨時講師として給料も出すと決定した。
丸投げされた教育改革
イストール魔法学院では、院生が新入生を教えるという前代未聞の事態が始まった。講師達は安い臨時講師料と報告書の提出を条件に、教育内容の構築まで丸投げした。成績優秀者達は面倒事を押しつけられたと嘆きながら、新入生の教育プランを話し合うことになった。
第八話 おっさん、ルーダ・イルルゥ平原に向かう準備をする
獣人族への同行依頼と学院改革の講師問題
別邸での指名依頼
ゼロスはソリステア公爵家の別邸に呼ばれ、クレストンとアドから獣人族側の指名依頼について聞かされた。依頼はイサラス王国経由で届いたもので、ケモ・ブロスがアドに助力を求めていた。アドはユイと娘との暮らしを大切にしたく、国家間の戦争に関わることを迷惑に感じていた。
獣人族の面倒な誇り
クレストンは、獣人族の武器の質が悪く、カルマール要塞やアンフォラ関門の攻略で犠牲が出る可能性を説明した。ブロス一人なら攻略できるが、獣人族は強者と共に戦うことを重んじ、単独で戦いを終わらせられると拗ねる性質があった。ゼロスとアドは、その民族性の面倒さに呆れた。
アドの監視役
クレストンは、アドを軍事的に利用されないよう、ゼロスにも同行してほしいと頼んだ。アドはブロスの要請を無視することもできず、ゼロスに協力を求めた。ゼロスはブロスの危険性を知っており、彼の変化を確かめる必要もあると判断し、ルーダ・イルルゥ平原へ向かうことを決めた。
ケモ・ブロスの闇
ゼロスは、ブロスが極度の人間不信であり、獣人族を傷つけた相手には容赦なく虐殺を行う危険人物だと語った。ブロスはゼロスやアドの知る頃なら一人で神国に攻め込んでいてもおかしくなかったため、今の慎重な動きに違和感があった。ゼロスは、場合によっては自分達がブロスを止める必要があるかもしれないと考えた。
出立準備
クレストンはイサラス王国へ連絡し、アドと面識のある使者を寄越す手配を進めることにした。ゼロスは合流場所をオーラス大河の畔と伝えるよう頼んだ。アドは使者の心当たりを思い出せないまま、ゼロスと共に急いで出立準備を始めた。
丸投げされた新入生教育
イストール魔法学院では、講師役を任された上位成績優秀者達が講義室で頭を抱えていた。彼らは責任ある立場で授業をした経験がなく、講義内容を一から作り直せという無茶ぶりに困惑していた。ツヴェイトは講師達の保身を疑ったが、現状では新しい教育案を考えるしかなかった。
基礎重視の教育案
院生達は、初等部では魔力制御や魔力量を高める訓練など基礎を徹底し、術式解読は初等部高学年から始める案をまとめた。中等部以降は修練科、戦闘魔法科、錬金科、薬学科、魔導学科などの選択式を維持し、生徒が進みたい分野に応じて講義を選べる形に整理することになった。
臨時講師役の押しつけ合い
教育案はまとまったが、誰が新入生に講義するのかという問題で空気が凍りついた。成績優秀者達は自分の研究を優先したがり、互いに講師役を押しつけ合った。最終的には多数決により、成績の良い者達が得意分野を交代で講義する形になったが、医療魔導士の講師だけは不在のままだった。
地下倉庫の探索
ルーダ・イルルゥ平原へ向かうことになったゼロスは、地下倉庫で必要な道具を探していた。倉庫には作品や失敗作、素材が無造作に置かれており、一般人から見れば危険な代物も混じっていた。ゼロスは目当ての品を探す中で、南国人形や奇妙な玩具を次々と放り出していた。
スライムボート
ゼロスが探していたのは、スライムの粘液を加工した素材で作ったゴムボート風の船だった。厳密にはゴムボートではなく、スライムボートと呼ぶべき代物である。河釣り用に趣味で作っていたものだったが、今回の移動に役立つと考え、ゼロスは船外機の稼働確認を始めた。
第九話 おっさん、オーラス大河を北上す
オーラス大河の暴走航行と初等部の基礎魔法講義
河原の合流地点
ゼロスとアドは、ルーダ・イルルゥ平原へ向かうため、オーラス大河の畔にある合流地点へ向かった。案内人の気配はなかなか見つからなかったが、森の先でザザと合流した。アドは久々に再会したザザに恋人の有無を尋ねてしまい、彼の沈んだ反応を見て余計なことを言ったと後悔した。
スライムボートの出発
ゼロスは陸路ではなく河を北上するため、スライム素材で作ったゴムボート風の船と船外機を用意していた。ザザは見慣れない道具に戸惑い、アドもゼロス製という理由で不安を隠せなかった。二人が足踏みポンプで船を膨らませ、船外機を取り付けたことで、三人はオーラス大河へ乗り出した。
暴走する船外機
船外機は静かに始動したが、速度は予想以上だった。ボートは凄まじい加速で北上し、ザザは未体験の速度と水面で跳ねる浮遊感に悲鳴を上げた。ゼロスは加速力を見誤り、アドは転覆やカーブで吹き飛ばされる危険に焦った。
撹拌柱の突破
ボートは橋の下を通過し、ゼロスは以前の工事中に遭遇した融合モンスターや、ドワーフに彫像を修正させられた苦労を思い出した。その先には河の流れを緩める撹拌柱が迫っていたが、船外機は魔石の魔力が切れるまで止まらない状態だった。三人は減速できないまま、柱の間を命懸けで抜けることになった。
絶叫の北上
想定外の波でボートは横滑りし、柱に激突しかけたが、逃げようとして倒れたザザの加重が偶然働き、体勢を立て直した。だがその先も蛇行、浅瀬、岩場、中州が続き、三人は絶叫しながら上流へ進み続けた。進んでも気を抜いても地獄という状況のまま、ボートは国境付近まで暴走した。
臨時講師の重圧
一方、イストール魔法学院では、セレスティーナが初等部の臨時講師役を押しつけられていた。彼女は以前から下級生へ指導していたため満場一致で選ばれたが、大勢の新入生の前で教えることには強い緊張を感じていた。補佐役のキャロスティーに励まされ、セレスティーナは講義室へ向かった。
基礎魔法の説明
セレスティーナは新入生達に、魔導士としての基礎知識と魔法の訓練を教えると説明した。黒板に灯火の魔法陣を描き、魔法陣全体ではなく、一文の魔法文字だけでも魔法を構成できることを示した。新入生達は、魔法は術式で発動するものという常識を覆されて驚いた。
術式と魔法文字
新入生からの質問に対し、セレスティーナは術式が魔法発動を円滑にする利便性の高い仕組みであり、魔法文字だけでの発動は制御と想像力が必要だと説明した。キャロスティーも、魔法文字は言語であり、物理現象としてイメージできる意味ある言葉でなければ媒体にならないと補足した。術式は不要なのではなく、高度な魔法ほど術式の利便性が重要だった。
六属性の訓練
セレスティーナ達は、火、土、水、風、光、闇を示す魔法文字を書いた紙を新入生に配った。まずは単純な属性語だけで魔法を発動し、魔力制御と物理現象への理解を鍛える方針だった。キャロスティーは土を小石に凝縮する手本を見せ、セレスティーナは火と水を同時に生み出して空中で動かし、新入生達の興味を引いた。
好評だった実験講義
新入生達は手本に刺激され、魔法文字だけでの魔法発動に挑戦した。三十五人中七人が成功し、十三人が惜しいところまで進み、残りは発動できなかった。講義は意外にも好評となり、セレスティーナ達が継続して担当することになったが、この古代式の魔法発動は上位成績者でも苦戦するほど難しいものだった。
国境付近の野営
その日の深夜、ゼロス達はようやくイサラス王国の国境付近へ到着した。アドとザザは一日中続いたスリルだらけの航行で満身創痍となり、河辺でへばっていた。ゼロスだけは平然としており、二人にスープを作った。アドとザザはその後妙に目が冴え、数日間疲れ知らずになったが、何を飲まされたのかは分からなかった。
第十話 おっさん、処刑要塞に到着する
獣人族居留地と神国辺境伯の決断
平原の軽ワゴン
ゼロス、アド、ザザは軽ワゴンでルーダ・イルルゥ平原を進み、獣人族の居留地へ向かっていた。代わり映えしない草原に飽きたゼロスとアドはくだらない言葉遊びをしていたが、ザザはその会話についていけず呆れていた。獣人族の生活は木材の乏しい平原に根ざしており、燃料にも家畜の糞を使うほど質素なものだった。
獣人族の戦況
ザザは、獣人族の戦況を圧勝と見つつも、ブロスの突出した強さが不和を招く可能性を懸念していた。獣人族は強さを尊ぶ一方で、部族全体で戦うことを重視するため、一人の英雄だけが勝利を収める状況を好まなかった。ゼロスは、彼らがどんな犠牲を払っても共に戦う道を選ぶ民族性を再確認した。
処刑要塞
一行の前に、日本の城を模したような異様な建物が現れた。アドによれば、それはブロスが建てた超処刑要塞であり、最深部へ踏み込んだ敵をマイクロウェーブで焼き殺す大型電子レンジのような施設だった。ゼロスは、そこにブロスの人間嫌いと殺意を感じ取り、メーティス聖法神国がとんでもない相手を敵に回したと考えた。
居留地の視線
獣人族の居留地に到着したゼロス達は、大勢の獣人に囲まれた。イサラス王国の国章を軽ワゴンに貼っていたため即座に敵対はされなかったが、人族を嫌う者達からは強い殺意を向けられた。熊の獣人が現れ、ブロスは地下に潜ったまま戻っていないと告げた。
地下の遺跡
アドは、居留地の地下に旧時代の機械があり、それが要塞の動力源になっていると説明した。ゼロスは、それが魔導力機関ではないかと考え、旧時代の技術水準が宇宙開拓すら可能なほど高かった可能性に思いを巡らせた。だが今は勝手に調べるわけにもいかず、ブロスのテントへ案内されることになった。
不在のブロス
ブロスのテントには本人も妻達もおらず、ゼロス達は中で待つことになった。アドはブロスに複数の獣人族の妻がいると話し、ザザはその事実に強い羨望を抱いた。ゼロスは、妻が何人もいるブロスが搾り取られていないか冗談交じりに心配した。
フンドシ姿の再会
ブロスはテンション高く現れたが、あっぱれ富士山と書かれたフンドシ一丁だった。地下で採掘作業をしていたところ、妻達が来たためそのままの姿だったらしい。ゼロスは初対面同然に挨拶し、以前より人格が丸くなったと感じたが、ブロスの中には今も人間への冷たい闇が残っていた。
守りたいもの
ブロスは、ここで守りたいものができたため、それを壊す者にはゼロスであっても容赦しないと告げた。彼は現在三十三人の妻を持ち、獣人族の助けを受けながら暮らしていた。ゼロスは、ブロスが良い方向に変わったことを喜びつつも、別の意味で危険な存在になったと感じた。
武器修繕の依頼
ブロスがアドを呼んだ理由は、獣人族全員分の武器修繕と強化を手伝わせるためだった。獣人族の武器は脆く、カルマール要塞の攻略にはとても耐えられない状態だった。ゼロスとアドはその依頼内容を理解したが、到着直後だったため作業は翌日からにすることになった。
喧嘩祭り
ブロスに案内される途中、フンドシ姿の獣人族の男達がゼロスの前に立ちはだかった。彼らは強者と戦いたいだけだったが、言い回しが紛らわしく、ゼロスは一瞬そっち系の誘いだと誤解した。結局、獣人族の代表者達と決闘する流れとなり、居留地は宴と喧嘩祭りの熱気に包まれた。ゼロスは深夜まで戦い続け、多くの獣人達を宙に舞わせた。
神国辺境伯の交渉
一方、ソリステア魔法王国の王都では、メーティス聖法神国の辺境伯が交易継続を求めて交渉していた。だがソリステア側は、地下街道や海路によって神国の領土を通る必要がなくなったため、譲歩するつもりはなかった。これまでの高い通行税や不当な価格つり上げへの不満もあり、外交部職員は冷淡に応じた。
二つの道
外交部職員は、辺境伯に領民を思うなら決断すべきだと示唆した。辺境伯に残された道は、祖国に殉じて没落するか、領地ごとソリステア側に呑まれるかだった。地下街道による周辺国との結びつきやイサラス商人の進出を聞いた辺境伯は、ソリステア魔法王国が戦わずして神国領を切り崩そうとしている可能性に気づいた。
狐と狸の化かし合い
辺境伯は、交易の話に見せかけて祖国を裏切る選択肢を示されたのだと察した。外交部職員はあくまで世間話だと白を切り、明確な言質は与えなかった。交渉は平行線のまま終わったが、辺境伯が決断を迫られる時は遠くなかった。
第十一話 おっさん、獣人族の武器を修繕する
獣人族の武器修繕とカルマール要塞の恐怖
粗末な武器工房
喧嘩祭りの翌日、ゼロス、アド、ブロスは獣人族の武器工房を訪れた。工房は炉も金床も粗末で、鍛冶師の多くは石槌を使っていた。獣人族の武器は板状の金属に柄をつけた程度の脆いものが多く、そこへ部族ごとの文様まで彫り込むため、実戦に耐える品質ではなかった。
終わりの見えない修繕作業
ゼロス達は部族ごとに担当を分け、魔導錬成で武器の修繕と強化を始めた。普通に鍛冶をしていては終わらない量だったため、鉱石を使って金属同士を結合させる方法を取った。三人は最初こそ会話しながら作業していたが、単調で膨大な作業に次第に無言になっていった。
付与武器の問題
ゼロス達は武器に特殊効果を付与する案も考えたが、元の品質が低く、高性能な武器を作っても整備できる者がいないという問題があった。部族の猛者だけに渡す案も出たが、嫉妬や軋轢を生む可能性があり、ブロスは慎重だった。獣人族の血の気の多さもあり、武器の扱いには余計な問題がつきまとっていた。
カルマール要塞の難所
ブロスは、攻略目標であるカルマール要塞の構造を説明した。要塞は星形の防衛陣地を備え、門へ近づくほど左右から投石機、バリスタ、弓兵の集中攻撃を受ける作りだった。守備隊が火縄銃らしき武器まで持っている可能性もあり、正面から攻めれば獣人族に甚大な被害が出ることは明らかだった。
獣人族の矜持
ブロス一人なら要塞を落とせるが、獣人族は彼だけに戦わせることを良しとしなかった。カルマール要塞は奴隷商人の拠点でもあり、獣人族自身の手で落とさなければ意味がなかった。ブロスは犠牲を減らしたい一方で、獣人族の誇りを傷つけずに勝つ方法を見つけられず、頭を抱えていた。
長距離砲撃の案
ゼロスは、防衛設備を破壊するために長距離砲撃を行う案を出した。アドは、ゼロスが地下で作った八十八ミリ砲搭載ハーフトラックを思い出し、この世界で使うには危険すぎる兵器だと警戒した。ゼロスも軍事常識を変えてしまう危険を理解しつつ、ブロスに自慢するつもりで持ってきたことを明かした。
裏方としての支援
三人は要塞攻略の方法を話し合ったが、獣人族の矜持を傷つけない案は簡単には見つからなかった。ゼロス達は表立って戦争に参加せず、あくまで裏方として行動する方針を取った。その中でゼロスは、後で返すよう念押ししながら、ブロスにダネルMGLを二丁こっそり渡した。
カルマール要塞の将軍
カルマール要塞では、聖天十二将の一人であるガルドア・カーバインが、中央議会から来た神官と対立していた。神官は獣人族の掃討を求めたが、ガルドアは獣人族の頭目が勇者以上の化け物であり、要塞すら単独で落とせる相手だと説明した。彼は本国の命令よりも住民避難を優先し、要塞放棄も視野に入れていた。
三十六砦の記憶
ガルドアは、三十六砦でブロスを目撃していた。ブロスは大剣を片手で振るい、騎士達を肉片に変え、逃げる者達を嬉々として蹂躙していた。ガルドアは望遠鏡越しに見ていた自分さえ認識され、嘲笑われたと感じ、その記憶に今も震えていた。
撤退の決断
ガルドアは副官ロクスに、住民の避難と撤退準備を急がせるよう命じた。中央議会は状況を理解しておらず、周辺国の動きや補給の停滞も要塞維持を難しくしていた。彼は今が撤退の最大の好機だと判断し、要塞を守るより民と騎士達を生かす道を選ぼうとしていた。
修繕後の喧嘩騒ぎ
夕暮れまでに、ゼロス達は大量の武器修繕を終えた。三人は疲労困憊で倒れ込んだが、完成した武器を受け取った獣人達は、さっそく手合わせで使い心地を試そうと騒ぎ始めた。ゼロス達は慌てて止めたが、獣人族は結局喧嘩祭りを始めてしまい、三人は翌日も再び修繕作業に追われることになった。
第十二話 おっさん、獣人族とともにカルマール要塞へ向かう
カルマール要塞進軍前夜と臨時講師の戦術講義
進軍前夜の檄
獣人族は新しい武器での喧嘩騒ぎを経て、四日目にようやくカルマール要塞侵攻の準備を整えた。ブロスは疲労を隠して戦士達の前に立ち、奪われた家族や踏みにじられた誇りを思い出せと檄を飛ばした。獣人族は復讐の熱狂に包まれ、翌朝の進軍を前に大宴会を始めた。
発酵酒の力
ゼロス達は休めると思っていたが、獣人族の酒を勧められて宴に巻き込まれた。その酒は山羊や羊の乳を発酵させたもので、低級マナ・ポーションに近い魔力回復効果を持っていた。ゼロスは天然の発酵ポーションに驚いたが、酒に弱いアドは早々に目を回していた。
ブロスの夜の試練
ブロスは三十人以上の妻達に囲まれ、夜の相手を巡る争いに巻き込まれていた。助けを求められたゼロスは関わることを拒み、代わりに夜の帝王になれるという新薬を渡した。ブロスは妻達に引きずられていき、ゼロスは酒から逃げられなくなった。
ガルドアの悪夢
カルマール要塞のガルドアは、闇の中で獣人族に追い詰められる悪夢を見た。夢の中では破壊された砦と血のぬかるみの中、魔物の骨を纏った少年が瓦礫の上から彼を見下ろしていた。ガルドアはその少年を英雄のように美しく、同時に自分を喰らう化け物として恐れた。
迫る獣人族
目覚めたガルドアは、悪夢がただの夢ではなく虫の知らせに近いものだと感じた。城壁の上で平原の空気に漂う強大な闘気を感じ取り、獣人族が予想より早く攻めてくると判断した。彼は住民に家財を捨ててでも避難するよう伝え、翌日には自軍も撤退すると決めた。
撤退の焦り
ガルドアは、勇者イワタの敗北以降、要塞の騎士達の練度も兵力も足りず、火縄銃も決定打にはならないと見ていた。カルマール要塞やアンフォラ関門でさえ安全とは言えず、獣人族が奴隷解放を続ければ本国まで攻め込まれる危険もあった。彼は上層部の楽観論に期待せず、撤退準備だけを急がせた。
臨時講師の評価
イストール魔法学院では、成績優秀者達による講義が始まっていた。彼らの講義は講師陣よりも分かりやすく、評判も高かったため、講師達は自分達の存在意義に疑問を抱くほど落ち込んでいた。特にツヴェイト達ウィースラー派の魔導戦術科の講義には多くの学生が集まっていた。
アスマール城塞都市戦
ツヴェイトは、アスマール城塞都市戦を題材に、トラン王国第七騎士団の敗北を分析した。彼は将軍が突撃一辺倒の短慮な人物で、アサン国の露骨な誘導に乗ってしまったことが敗因だと説明した。アサン国の軍師ラクノアフューレンは、将軍の性格まで読んで第七騎士団を潰す策を仕掛けていた。
講師の自信喪失
ツヴェイトは、戦争において正確な情報と相手の性格分析が重要だと示し、無能な味方の危険性を語った。講義は好評だったが、見学していた講師は自分よりも彼らの方が講師らしいと感じ、完全に自信を失った。ツヴェイト達は講義後も反省点を議論し、次の講義内容を考え始めた。
荷馬車の道中
ゼロス達は獣人族と共にカルマール要塞へ向かう荷馬車に揺られていた。ゼロスは寝不足、アドは二日酔いで苦しんでおり、ブロスも妻達に搾り取られたようにやつれていた。ザザはブロスを羨ましがったが、ゼロスとアドは女性の執着の恐ろしさを知る者として忠告した。
西の大国の思惑
道中、ゼロス達はルーダ・イルルゥ平原の旧時代の廃墟や、グラナドス帝国の使者について話した。ゼロスは、西の大国がイサラス王国の軍事力を調べ、メーティス聖法神国を多方面から消耗させる駒として見ている可能性を考えた。真面目な推測の途中、アドは二日酔いと馬車酔いに耐えきれず吐いていた。
アルフィアの間引き
ファーフラン大深緑地帯の深奥では、アルフィアが異常進化した魔物の王達を一方的に狩っていた。魔力密度の濃い地で自然の理から外れた存在を、再生する世界に不要と判断したためである。彼女は魔物達の攻撃を反転させ、互いに自滅させるように殲滅していた。
三人の使徒
アルフィアは本体から、ゼロスとアドがルーダ・イルルゥ平原へ向かった情報を受け取った。そこには二人と同等に強大な力を持つもう一人の使徒がいる。アルフィアは、ゼロスとアド、そしてブロスが接触することで何が起きるかを観察し、ブロスを手駒として使えるか見極めようとしていた。
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