第五部 女神の化身6レビュー
第五部 女神の化身
本好きの下剋上 全巻まとめ
第五部 女神の化身8レビュー
どんな本?
フェルディナンドが旅立ったエーレンフェストの冬は重い。騒乱を好む「混沌の女神」のようなゲオルギーネに関する密告があったことで粛清が早められた。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身1」
一方、貴族院の三年生になったローゼマインは喪失感を振り払うように、忙しく動き回る。寮内では旧ヴェローニカ派の子供達が連座を回避できるように説得し、院内では領主候補生の講義初日が開始。文官コースの試験に、新しい上級司書との出会い、専門コースの専攻など、一年前とは立場も環境も激変した日々へ突入していく。
次第に「らしさ」を取り戻す中、神々のご加護まで大量に得て、ますますローゼマインの暴走は止まらない!?
「わたしの本好きウィルス、皆に広がれ!」
読んだ本のタイトル
#本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身7」
著者: 香月美夜 氏
イラスト: 椎名優 氏
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あらすじ・内容
「フェルディナンドの脳裏に、霧のような不安が濃さを増していく。ーー嫌な予感がする。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身7」
一方、中央への移動準備を続けるローゼマインは冬の支度に追われていた。洗礼式、貴族院四年生の始まり、親睦会と忙しい。奉納式を終え、魔力供給をしている最中、彼女は貴族院から突然姿を消した。
移動した先に出現するのは巨大図書館、始まりの庭、育成の神アーンヴァックス。その力でローゼマインが急成長! 身長が伸び、年相応の女性に変貌する。
だが、それは急変する事態の始まりに過ぎなかった。ゲオルギーネとの戦いに備え、エーレンフェストの防衛計画が進められる中、アーレンスバッハで事件が勃発し……。
諦めムードの周囲に対して、聖女が下した決断とは?
「何かが起こっても、わたくしが守ります」
前巻からのあらすじ
緑萌ゆる春。ローゼマインは領主会議に呼ばれた。星結びの儀式で神殿長役を務め、地下書庫では書写とお喋りに癒される。
ところが、次期ツェント候補を巡る動きが活発化したことで、ローゼマインはフェルディナンドの連座回避を目指すことに。
王族に強要されたのは、森の中の「祠巡り」。そこで触れる世界の深淵ーー祠に並ぶ神々の像、貴色の石板、謎の言葉、巨大な魔法陣。
グルトリスハイトを手に入れたい王族に立ち向かう中、ついに迎える王子との前哨戦。
いざ、交渉へ! 平民育ちの商人聖女が見せる秘策とは⁉︎
「取れる時に、取れるところから、取れるだけ、取っておくもの……だよね!」
感想
王家へ養子に行く準備を進めて、貴族院へと行ったらツェント主催の奉納の儀式をして。
上級貴族の書士が体調不良で居なくなってしまい、貴族院の図書館は魔力が少ない状態。
それでローゼマインは、ジジ様に魔力を流したら、、
いつの間にか始まりの庭へ来ており、そこにエアヴェルミーンがおり早く魔力を満たして知識を全て受け入れろと言う。
だが、器が小さいのでアヴェルミーンは、育成の神アーンヴァックスに頼んでローゼマインを成長させた。
そして、知識を詰め込むのだが、、
ローゼマインのグルトリスハイトは7割くらいしか満たせなかった。
それに対して、アヴェルミーンはフェルディナンドを殺して魔石を獲て吸収すればグルトリスハイトは完成すると言う。
ちなみにアヴェルミーンはローゼマインをフェルディナンドと同じように見えているらしく。
身食いであり、色が薄いローゼマインの魔力は、記憶を覗いたりしたフェルディナンドの魔力の色に染められているのが原因らしい。
そして、始まりの庭から外に出たら、、
どうやら結構長い間行方不明になってたようで、季節が一つ過ぎていた。
そして、出会う人間全てがローゼマインの成長に驚きながも彼女の無事を喜ぶ一同。
そして、グルトリスハイトを読んでいた時に見つけた領地の礎の魔術に侵入する方法があった。
神殿からの侵入経路があると、、
そんなアーレンスバッハの侵攻に対して罠を設置する事をジルヴェスタと悪巧みをする。
銀の布対策に一般兵を使って汚物を投げるとか、相手を転ばす罠を設置するなど色々と悪巧みをした。
さらに3体のシュヴァルツを作成。
何気に凄いくないかこの子、、
戦いの準備を終わらせ。
そんな時に、フェルディナンドが人を魔石にする粉をかけられてかなりのピンチ。
だが、アーレンスバッハの侵攻を防ぐために戦力を出せないとジルヴェスタは言う。
だが、侵攻されるなら相手の領土を攻めても構わないのではないかと、、
さらに隣国の王族をツェントにしようと内憂外患をしているアーレンスバッハを討伐すると、ダンケルフェルガーを巻き込んでローゼマインはアーレンスバッハに攻め込む事を決める。
ローゼマインは間に合うのだろか?
最後までお読み頂きありがとうございます。
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第五部 女神の化身6レビュー
第五部 女神の化身
本好きの下剋上 全巻まとめ
第五部 女神の化身8レビュー
考察・解説
フェルディナンドとアーレンスバッハ
『第五部 女神の化身7』におけるフェルディナンドとアーレンスバッハの関係や、彼が置かれている過酷な状況、および暗殺計画の顛末について解説する。
執務と魔力供給の負担
フェルディナンドは王命により、次期アウブであるディートリンデの婚約者としてアーレンスバッハへ婿入りした。しかし、現地で彼が置かれた状況は極めて過酷なものであった。
- アーレンスバッハは領主一族が極端に不足しており、彼が領地の執務の大半を一人で担うこととなった。
- 星結びの儀式を終える前であるにもかかわらず、自ら申し出る形で礎への魔力供給まで引き受けていた。
- これには、アーレンスバッハの成人した供給者がディートリンデとゲオルギーネしかいないという深刻な人材不足が背景にある。
孤立と情報収集の困難
領地運営に多大な貢献をしているにもかかわらず、フェルディナンドの扱いは冷遇そのものであった。
- ディートリンデからは深く嫉妬され、何に関しても反対する冷たい男として疎まれ、西の離れに隔離されていた。
- この隔離によってゲオルギーネらの不穏な動向を探ることが難しくなり、彼は情報不足に悩まされることとなった。
- 春になるとランツェナーヴェの使者であるレオンツィオたちが来訪し、彼らの王族との面会準備などに振り回された結果、レティーツィアの教育にすら時間を割けなくなるほど多忙を極めた。
ローゼマインへの深い懸念
孤立状態にあるフェルディナンドは、エーレンフェストから届く大量の料理や素材の荷物を日常的なものと周囲に錯覚させ、検閲をすり抜けながらローゼマインたちと情報のやり取りを行っていた。
- 彼はローゼマインが作った料理のレシピを買い取ることを建前とし、ゲオルギーネの妨害を排除して領地対抗戦などで貴族院図書館へ向かう理由を作ろうと画策していた。
- 一方で、彼は王族やジルヴェスターの言動から、ローゼマインが王族の要求に巻き込まれ追い詰められているのではないかと強い疑念を抱く。
- 手紙で彼女のゲドゥルリーヒについて探りを入れたものの明確な返答がなく、何かを隠していると確信し、深い焦燥感と不安を抱えていた。
ディートリンデたちによる毒殺計画
フェルディナンドは、かつて貴族院で最優秀を取った経歴から、ゲオルギーネにとって最も自分の邪魔になる存在と見なされていた。
- ディートリンデにとっても、レオンツィオと共に次期ツェントの座を狙う計画において不必要な存在であった。
- ディートリンデは彼を、洗礼式前に魔石となってランツェナーヴェに返されるはずだった出来損ないであるアダルジーザの実と呼んで侮蔑し、ゲオルギーネの立てた計画に従って彼を排除しようと動いた。
絶体絶命の危機と反撃の糸口
ディートリンデとレオンツィオの罠により、ロスヴィータの行方不明に焦るレティーツィアが騙され、供給の間でフェルディナンドに毒である白い粉を浴びせてしまう。
- 即死毒であったが、ローゼマインが渡していたお守りが虹色の光を放って発動したため、即座に魔石化することは免れた。
- しかし、倒れ込んだフェルディナンドに対して、ディートリンデはシュタープを封じる手枷をはめ、彼の手を供給の魔法陣の上に拘束した。
- 魔力が枯渇して死ぬまで放置されるという絶体絶命の危機に陥るが、彼は意識を失う直前、レティーツィアに名捧げ石の入った籠を託し、ユストクスとエックハルトへ「行け」と伝えるよう命じた。
- この最後の命令がエーレンフェストへの救援要請となり、ローゼマインがダンケルフェルガーを巻き込んでアーレンスバッハの礎を奪う本物のディッターを仕掛ける決定的な引き金となった。
まとめ
フェルディナンドを巡るアーレンスバッハでの過酷な状況と暗殺計画の顛末は、物語が最終決戦へと向かう最大の転換点である。絶体絶命の危機に陥りながらも、彼が最後に遺したエーレンフェストへの救援要請は、ローゼマインの激怒と本物のディッターの幕開けを導くこととなった。
領地対抗戦とレシピ
『第五部 女神の化身7』における「領地対抗戦とレシピ」について、アーレンスバッハでの昼食会での出来事や、フェルディナンドがそれをどのように利用したかを解説する。
レシピを通じた交流と料理の工夫
アーレンスバッハで孤立気味のフェルディナンドの元には、ローゼマインから定期的に料理やお菓子、そしてそのレシピが送られていた。その料理には以下のような工夫が凝らされていた。
- フェルディナンドはレティーツィアを昼食会に招き、ローゼマインが考案した料理を振る舞った。
- その料理は「ガルネシェルのポメ煮込み」を基にしながらも、ガルネシェルを一切使わずアーレンスバッハの調味料を活用するなど、元の料理とは全く異なるものに改造されていた。
- ローゼマインは、アーレンスバッハの食材にエーレンフェストの味付けをしたり、その逆を行ったりしていた。
- 初めて食べる料理でも、慣れた味わいがどこかにあると取っ付きやすく感じるという心理に基づいた工夫であった。
アーレンスバッハの課題とレシピ買い取りの提案
アーレンスバッハ特有の料理には他領へ提供する際にある課題があり、それに対する提案がなされた。
- アーレンスバッハ特有の料理は、ランツェナーヴェから輸入される香辛料や調味料の影響で酸味や辛みが強い。
- そのため、領主会議などで他領の者に出してもあまり受け入れられないという課題を抱えていた。
- ローゼマインの工夫された料理を食べたレティーツィアは、他領の者にも美味しく感じられるだろうと高く評価した。
- レティーツィアは、ローゼマインのレシピを買い取ってアーレンスバッハの新しい料理として使うことを考慮した方が良いと提案した。
- この提案により、冬の領地対抗戦の場でエーレンフェストとレシピ買い取りの交渉を行うことが決定した。
フェルディナンドの建前としての利用
フェルディナンドはレティーツィアの提案に即座に賛同したが、これには裏の目的が存在していた。
- 彼は魔術具作製のために貴族院の図書館へ赴くことを望んでいたが、今年はディートリンデのエスコートという理由がなく、ゲオルギーネに邪魔をされる可能性が高かった。
- そのため、次期アウブであるレティーツィアも賛同するアーレンスバッハの新しい料理のレシピを買い取るための商談という正当な理由は、貴族院へ向かうための非常に都合の良い建前となった。
ローゼマインの反応と実際の領地対抗戦
フェルディナンドからの打診に対し、ローゼマインは前向きに応じたものの、実際の領地対抗戦では想定外の事態が起きた。
- フェルディナンドから手紙で領地対抗戦でレシピを買い取りたいと打診されたローゼマインは、「わたくしの料理のレシピは高いですよ。商談が楽しみです」と強気な返事を書き、冬の終わりを楽しみにしていた。
- しかし、実際の領地対抗戦の時期、ローゼマインは始まりの庭へ飛ばされていた。
- 対外的には病気で長期間臥せっていることになっていたため、直接商談を行うことはできなかった。
- それでも領地対抗戦にやってきたフェルディナンドには、ローゼマインの側近たちを通じて彼が要求していた最高品質 of 魔紙が無事に渡されている。
まとめ
レシピの買い取り交渉を巡るエピソードは、アーレンスバッハの料理の課題解決に向けたレティーツィアの熱意と、それを自らの目的のために巧妙に利用するフェルディナンドのしたたかさを浮き彫りにしている。実際の領地対抗戦ではローゼマインの不在により直接の商談こそ叶わなかったものの、側近を通じて最高品質の魔紙が引き渡されるなど、離れた地にあっても二人の水面下での連携と確かな絆が途切れていないことを示す重要な局面となっている。
中央騎士団長の疑惑
『第五部 女神の化身7』における中央騎士団長ラオブルートに対する疑惑と、その裏に隠されていた真実について解説する。
ランツェナーヴェとの不審な接触
ラオブルートはランツェナーヴェとの間で不審な接触を繰り返していた。その状況は以下の通りである。
- レティーツィアの証言により、ラオブルートがランツェナーヴェの使者であるレオンツィオと個人的な親交を深めていることが判明した。
- アーレンスバッハの葬儀で起きた騒動の際、調査や事情聴取と称して何度も話し合いの場を持っていた。
- フェルディナンドは、ラオブルートがアダルジーザの離宮に関わっていたのであれば、ランツェナーヴェに対して何かしら思うところがあるはずだと考え、強い警戒心を抱いていた。
フェルディナンドとエーレンフェストへの強い敵意
ラオブルートはフェルディナンドやエーレンフェストに対して明確な敵意を示していた。
- ラオブルートは、フェルディナンドがアダルジーザの実であることを知っており、それを理由に彼をエーレンフェストから引き離してアーレンスバッハへ婿入りさせるよう王に進言した。
- 葬儀での騎士乱入騒ぎの際には、ディートリンデの言い分を鵜呑みにして碌な取り調べもせずに騎士たちを処分した。
- 他領からの事情聴取の場でも、騒動を起こしたのはエーレンフェスト出身の騎士だと執拗に繰り返し、エーレンフェストに原因を押し付けようとするなど、不自然な対応を見せていた。
ゲオルギーネとのきな臭い繋がり
ラオブルートの背後には、ゲオルギーネとの不穏な繋がりも見え隠れしていた。
- ランツェナーヴェの館へラオブルートを案内したのは、次期アウブであるディートリンデではなくゲオルギーネであった。
- 表向きは「感情的なディートリンデを遠ざけるため」という判断によるものであったが、フェルディナンドはこれをきな臭いと感じていた。
- 実際、ゲオルギーネは数年前からランツェナーヴェ側へ「ランツェナーヴェの王は中央騎士団長と面識がおありでしょうか?」という手紙を送っており、意図的にラオブルートとの繋がりを持とうと暗躍していたことが判明している。
疑惑の真実:ジェルヴァージオとの主従関係
エピローグにおいて、ラオブルートに対する疑惑は最悪の形で真実となる。
- アーレンスバッハにあるアダルジーザの離宮へ繋がる転移陣から現れたラオブルートは、やって来たランツェナーヴェの王ジェルヴァージオの前に跪いた。
- そして「お迎えに参じました、我が主」と呼んで恭しく迎え入れた。
- ラオブルートはかつてアダルジーザの離宮にいた頃のジェルヴァージオの護衛騎士であり、長年にわたってツェントを裏切っていた。
- ランツェナーヴェの王をユルゲンシュミットへ招き入れるための計画を進めていた、黒幕の一人であった。
まとめ
中央騎士団長ラオブルートの不審な言動や敵意は、すべてランツェナーヴェの王ジェルヴァージオへの隠された忠誠に起因するものであった。ゲオルギーネとの暗躍やフェルディナンドへの排除工作など、彼のこれまでの行動はすべてランツェナーヴェを招き入れるための周到な計画の一部であった。この真実の露呈は、ユルゲンシュミット全体を揺るがす最終決戦の幕開けを告げる重要な転換点となっている。
ディルクとベルトラムの洗礼式
『第五部 女神の化身7』における「ディルクとベルトラムの洗礼式」について、その背景や儀式での出来事、そして二人の関係性の変化について解説する。冬の社交界の始まりに向けて、異なる境遇を持つ二人の少年が神殿から貴族社会へと踏み出す重要な場面である。
洗礼式前の準備と厳しい現実の直視
孤児院で育った身食いのディルクと、旧ヴェローニカ派で連座を免れたベルトラムは、貴族として洗礼式を受けるための準備を進めていた。その過程では、以下のような厳しい現実に向き合うこととなった。
- ローゼマインの側近であるグレーティアから、連座を免れた犯罪者の子供は少しでも不穏な動きがあれば即座に処分される立場にあると指摘される。
- 自分たちの愚かな行いが孤児院の子供たちや神殿全体にまで罰を及ぼす可能性があると告げられ、甘やかしは優しさではないという厳しい忠告を受けた。
- ラウレンツからも城での生活では嫌でも現実が見えると諭され、二人は自らの立場の危うさを深く自覚した。
- 危機感を持ちながら、祝福やフェシュピールの演奏、貴族社会における常識や上下関係を身につけるための特訓を短期間で重ねた。
ディルクの魔力登録と特異な反応
洗礼式当日、親のいない二人の後見人となったジルヴェスターの前で儀式が執り行われた。ディルクの登録の様子と周囲の反応は以下の通りである。
- ディルクの魔力登録の際、魔術具のメダルに全体へ薄く色がつくような不可解な反応が現れた。
- これは、彼が親の魔力の影響を受けていない身食い(エーヴィリーベの印を持つ子)であり、薄い全属性と生まれた土地であるエーレンフェストの風属性を帯びているためであった。
- ジルヴェスターにより魔力量を基準として新しい中級貴族に認定され、赤い魔石の指輪を与えられた。
- しかし、旧ヴェローニカ派の連座免除の子供として見られている背景から、貴族たちからの拍手は疎らであり、会場には明確な拒絶感が漂っていた。
ベルトラムの最大級の感謝
続いてベルトラムの登録が行われ、彼は自身の行動によって周囲の空気を変えることとなった。
- 水と火の御加護を持つことが確認され、ジルヴェスターから青い魔石の指輪を与えられて中級貴族として認められた。
- かつての上級に近い中級貴族から孤児(最下層の中級貴族)へと転落した大きな落差に戸惑いつつも、指輪を受け取ったその場で跪いた。
- ジルヴェスターの手の甲に自分の額を当てるという、領主に対する最大級の感謝の礼を捧げた。
- この毅然とした立派な態度は、それまで彼らを冷ややかな目で見て囁き合っていた貴族たちの声を一瞬にして黙らせることに成功した。
社交の場での支え合い
洗礼式後のお披露目や社交の場では、二人の関係性に新たな変化が見られた。
- お披露目において、ディルクは練習の成果を発揮し、ベルトラムは貴族の子らしい見事なフェシュピールの演奏を披露した。
- 午後の社交の場では、貴族の常識に疎いディルクがローゼマインに気安く話しかけてしまうハプニングが起きた。
- その際、ベルトラムがすぐにディルクの腕を引いて制し、貴族社会における正しい振る舞いを教え諭した。
- ローゼマインはベルトラムの機転を褒め、彼にディルクの監視役および教育役を任せた。
- ベルトラムは嫌そうな顔をしつつも、孤児院時代よりも打ち解けた様子でディルクのサポートを丁寧に行っており、ローゼマインはその姿を見て深く安堵した。
まとめ
ディルクとベルトラムの洗礼式は、厳しい現実と周囲の冷淡な視線に晒されながらも、二人が貴族としての第一歩を厳かに踏み出す重要な契機となった。魔力登録での特異な反応や領主への最大級の感謝の礼は、彼らの存在感と覚悟を貴族社会に知らしめる結果となった。また、かつては壁のあった二人が社交の場で互いに支え合い、教育役と被教育役として新たな絆を結んでいく姿は、激動の未来へ向かう物語において確かな希望を感じさせる場面として描かれている。
貴族院の奉納式と魔法陣
『第五部 女神の化身7』における「貴族院の奉納式と魔法陣」について、その儀式の様子と、それが引き金となって引き起こされた魔法陣の起動や転移現象について解説する。
貴族院の奉納式と発光現象
貴族院での奉納式は、クラッセンブルクとエーレンフェストの共同研究という建前のもと、土の日を利用して下級、中級、上級・領主候補生の三回に分けて開催されることになった。その仪式の詳細と発生した現象は以下の通りである。
- ローゼマインは最初の週に行われた領主候補生と上級貴族の奉納式に神殿長として参加した。
- 儀式は講堂の最奥にある祭壇が設けられた礼拝室(最奥の間)で行われ、参加者はシュツェーリアの風の盾による選別を経て入場した。
- ローゼマインの先導で祈りの言葉が唱えられると、参加者の魔力が赤いカーペットを通じて光の波となり祭壇へ流れ込んだ。
- 真っ白な神の像が抱える神具の魔石がそれぞれの貴色で輝き始め、全ての神具から七色の光の柱が立ち上った。
- 光は絡み合いながら一つの塊となって飛んでいくという、非常に派手で幻想的な現象が起こった。
上空の巨大魔法陣への魔力充填
奉納式に先立ち、ローゼマインは素材採集の際の上空で巨大な魔法陣を確認していた。
- 貴族院の敷地全体を覆うように神々の貴色の線が走って形成された魔法陣は、神殿長の聖典や奉納舞の舞台に浮かび上がっていた「王を選別するための魔法陣」と同じものである。
- これは祠巡りと祈りによって出現したものであった。
- ローゼマインは、この魔法陣を起動させるにはさらなる祈りが必要だと推測し、最奥の間の祭壇に向かって祈りを捧げる奉納式がその引き金になると考えていた。
- 予想通り、奉納式を終えて講堂から出た際、上空の魔法陣が強い光を放っていることに気付いた。
- 祭壇での祈りによって魔法陣に十分な魔力が行き渡り、いつ起動してもおかしくない状態になっていた。
図書館での魔力供給と転移
奉納式を終えたローゼマインは、上級司書のオルタンシアが不在となって魔力不足に陥っている図書館の魔術具へ魔力供給を行うために図書館へ向かった。
- シュバルツとヴァイスへの供給を終えた後、「じじさま」と呼ばれる二階閲覧室のメスティオノーラ像へ魔力供給を行った。
- 像が手にするグルトリスハイトの魔石に触れて魔力を流し込んでいると、突然脳裏にくっきりと魔法陣が浮かび上がり、視界が暗転した。
- 神具が作れるようになる時と同じ感覚を覚えた直後、ローゼマインは側近たちのいる図書館から忽然と姿を消し、誰もいない真っ暗な空間へと一人で転移させられた。
- この転移が、後に「始まりの庭」でエアヴェルミーンと対面し、メスティオノーラの書を受け取るための道筋へと繋がっていくこととなった。
まとめ
貴族院の奉納式とそれに続く一連の出来事は、ローゼマインが意図せず世界の深淵へと足を踏み入れる決定的な契機となった。共同研究としての奉納式は上空の巨大魔法陣を満たす魔力を供給する結果となり、図書館での魔力供給中の突然の転移を招いた。この現象は、彼女が始まりの庭でエアヴェルミーンと対面し、メスティオノーラの書を取得するという、ユルゲンシュミットの歴史を揺るがす重大な展開へと繋がっている。
ローゼマインの急成長
『第五部 女神の化身7』における「ローゼマインの急成長」について、その原因や過程、そして周囲への影響を解説する。
急成長のきっかけと原因
- 図書館のメスティオノーラ像に魔力供給を行ったローゼマインは、不思議な空間を経て「始まりの庭」へとたどり着いた。
- そこで出会った白い大木の化身「じじさま」ことエアヴェルミーンから、器が縮んでいると指摘される。
- エアヴェルミーンは彼女の意思を確認することなく、育成の神アーンヴァックスに頼んでローゼマインを強制的に成長させた。
成長に伴う激痛と対処
- アーンヴァックスの青い光が降り注ぐと、ローゼマインは骨が軋み、筋肉が引き伸ばされるような激痛に見舞われた。
- 急激に体が大きくなったことで、着ていた服の帯や靴下が体に食い込み、呼吸すら苦しくなる状態に陥る。
- 彼女は痛みに耐えながらシュタープでメッサー(ナイフ)を作り出し、自らの服の背中や靴下を切り裂いて急場を凌いだ。
成長後の姿と人違いの事実
- 激痛が治まると、貴族院入学くらいの幼い姿だったローゼマインは、一気に頭一つ分以上も成長していた。
- 子供らしい丸みは消え、年相応の女性らしい玲瓏とした美しさを持つ姿へと変貌し、妹のシャルロッテより背が高くなり、側仕えのグレーティアとほぼ同じ目線になった。
- しかし、この強制的な成長はエアヴェルミーンの人違いによるものであった。
- かつて正規のルートを通らずに始まりの庭へ侵入したフェルディナンドと勘違いされていたのである。
- ローゼマインは「エーヴィリーベの印を持つ子」という特異な身食いであり、過去に同調薬でフェルディナンドの魔力に染められた影響が強く残っていたため、魔力が酷似しておりエアヴェルミーンにも判別できなかったことが原因であった。
周囲の反応
突然美しく成長したローゼマインの姿は、周囲に大きな衝撃を与えた。
- 王族・領主一族:最奥の間に迎えに来たジギスヴァルトやヒルデブラントは息を呑み、ジギスヴァルトはこれを「神々の祝福」と表現した。エーレンフェストに帰還した際も、ジルヴェスターら領主一族は唖然とした。
- 神殿の側仕え:ローゼマインが不在の間、ハルトムートが「メスティオノーラのお招きを受け、神々の祝福によって成長している」と熱心に触れ回っていたため、神殿の側仕えたちはすんなりとその成長を受け入れ、感動の眼差しを向けた。
- 下町の家族:春の洗礼式で再会したギュンターやエーファ、ルッツは目を丸くして驚きつつも、純粋に彼女の成長を喜んだ。採寸に訪れたトゥーリも、本当に神の力が働いたようだと感心していた。
生活への影響
- 急激に手足が伸びたため、ローゼマインは新しい体の感覚に全く慣れず、足がもつれてよく転ぶようになった。
- 城内を移動する際も、転倒を防ぐためにボニファティウスに抱き上げられたり、騎獣を使用したりする必要があった。
- また、既存の服や靴が全く合わなくなったため、当面は体格が近くなったブリュンヒルデの服を借りて過ごすこととなる。
- 春の終わりには中央への移動が控えていたため、関係者の専属針子を総動員して、急遽新しい衣装の採寸と注文という大仕事が行われた。
まとめ
ローゼマインの急成長は、神々の誤認による強制的なものであったが、その結果として彼女は年相応の美しい容姿を手に入れることとなった。この劇的な変化は周囲に大きな衝撃と混乱をもたらしたものの、ハルトムートの根回しや下町の家族の深い愛情によって受け入れられていく。新しい身体への不慣れさや衣装の新調といった生活面への影響を抱えつつも、この変化は彼女が中央の王族へと赴き、さらなる激動の運命へと進むための重要な転換点となっている。
フェルディナンド毒殺未遂
『第五部 女神の化身7』における「フェルディナンド毒殺未遂」について、その背景から実行の経緯、原因、そして彼が陥った絶体絶命の危機について解説する。
暗殺計画の背景
アーレンスバッハへ婿入りしたフェルディナンドは、ディートリンデやゲオルギーネにとって、自分たちの計画の最大の障壁となる存在であった。その背景には以下の要因が存在した。
- ディートリンデは、ランツェナーヴェの使者レオンツィオと共にグルトリスハイトを手に入れて次期ツェントとなり、彼を王配に迎えることを目論んでいたため、星結びの儀式の前に婚約者であるフェルディナンドを排除しようとしていた。
- フェルディナンドはアダルジーザの離宮の出身(アダルジーザの実)であり、本来ならば洗礼式前に魔石としてランツェナーヴェに送られるはずの存在であった。
- 彼らはフェルディナンドを殺害して「ランツェナーヴェの魔石」として回収する計画を立てていた。
レティーツィアを利用した巧妙な罠
暗殺の実行犯として、未成年の領主候補生であるレティーツィアが利用された。その巧妙な手口は以下の通りである。
- ゲオルギーネとディートリンデは、レティーツィアの第二の母とも言える筆頭側仕えのロスヴィータを拉致し(後に魔石化して殺害)、レティーツィアを精神的に追い詰めた。
- 不安に駆られる彼女にレオンツィオが接触し、「これを使えばフェルディナンド様がお願いを聞いてくれる」と騙して、ランツェナーヴェの玩具である「銀の筒」を手渡した。
- 供給の間でフェルディナンドから「ロスヴィータのことは諦めろ」と冷たく告げられたレティーツィアは、彼にお願いを聞いてもらおうと銀の筒の紐を引いてしまう。
- 筒からは即死して魔石化するはずの猛毒(白い粉)が噴き出し、フェルディナンドはそれを浴びて倒れ込んでしまった。
ローゼマインの「お守り」と側近の脱出
即死毒を浴びたフェルディナンドであったが、以下の展開により即座の魔石化を免れ、救援要請に繋がった。
- 衣装の下に身につけていたローゼマインのお守りが虹色の光を放って発動したため、即座に魔石化することは免れた。
- 苦痛に喘ぐ中、彼は自らの名捧げ石が入った金属製の籠をレティーツィアに託し、「これを、ユストクスに・・・・・・行け、と伝えよ」と命じた。
- 供給の間を飛び出したレティーツィアから籠と伝言を受け取ったユストクスとエックハルトは、主の危機と意図を即座に察知し、その場からエーレンフェストへの救援を求めて脱出した。
ディートリンデの追撃と「魔力枯渇」の罠
その後、供給の間にディートリンデとレオンツィオが現れ、さらなる追撃を行った。
- ディートリンデはフェルディナンドが魔石になっていないことに不満を漏らしつつ、彼を侮蔑した。
- フェルディナンドは最後の力を振り絞り、所持していた魔術具の魔石を投げつけて反撃を試みたが、ディートリンデが纏っていた魔力を通さない「銀の布」のマントに全て弾かれてしまう。
- 反撃に憤慨したディートリンデは、さらに粉薬を投げつけてフェルディナンドを完全に行動不能にすると、彼の腕にシュタープを封じる犯罪者用の手枷をはめた。
- 彼の手を魔力供給の魔法陣の上に拘束して魔法陣を起動させた。
- これにより、自力で手を離せないフェルディナンドは、魔力が枯渇して死に至るまで魔法陣に魔力を吸われ続けるという絶体絶命の危機に陥った。
ローゼマインの目撃と救出への決意
この一連の凄惨な出来事は、遠く離れたエーレンフェストで防衛会議をしていたローゼマインの視界に、フェルディナンドと同調する形で映像として流れ込んでいた。
- 彼が陥った危機を目の当たりにしたローゼマインは、周囲の反対を押し切った。
- 「ダンケルフェルガーの戦力を借りてアーレンスバッハの礎を奪い、フェルディナンドを救出する」という前代未聞の「本物のディッター」を仕掛ける決意を固めることとなった。
まとめ
フェルディナンド毒殺未遂事件は、ゲオルギーネらの残酷な陰謀とレティーツィアへの欺瞞によって引き起こされた、物語が最終決戦へと向かう最大の事件である。虹色のお守りによって辛うじて繋ぎ止められた命と、ユストクスらによる命がけの脱出、そして同調によって危機を目撃したローゼマインの激怒は、アーレンスバッハへの電撃的な救出作戦へと繋がっていく。この絶体絶命の危機は、領地や王命の壁を越えた「本物のディッター」の幕開けとなる決定的な契機である。
メスティオノーラの書
『第五部 女神の化身7』における「メスティオノーラの書」について、その正体や取得の経緯、そしてローゼマインが抱えることになった「欠落」の問題について解説する。
メスティオノーラの書の正体
メスティオノーラの書(グルトリスハイト)は、ユルゲンシュミットのツェント(王)となるために不可欠な神々の英知の結晶である。その特徴は以下の通りである。
- この英知は、シュタープを得た者の中で一定以上の魔力を持った者が死して魔石になった際、その記憶が集められて更新される仕組みになっている。
- 歴代のツェントやアウブに関する情報や歴史は豊富だが、下級貴族や平民に関する情報はほとんど含まれていない。
取得の経緯と知識の流入
ローゼマインがメスティオノーラの書を取得するに至った経緯と、その際の状況は以下の通りである。
- ローゼマインは、貴族院の図書館にあるメスティオノーラ像に魔力供給を行ったことで「始まりの庭」へと転移し、そこで「じじさま」ことエアヴェルミーンと出会った。
- エアヴェルミーンの指示に従い、祠巡りで得た七色の石板を出して神々に祈りを捧げると、空から膨大な光と共にメスティオノーラの英知が流れ込んできた。
- 流れ込んでくる知識は、神事のやり方、神々の逸話や恋愛話、歴代ツェントの歴史などが分類されずに混在している雑多なものであった。
- ローゼマインは情報を整理しようとしたが、流れ込んでくる知識について考えたり吟味しようとすると知識が弾かれてしまうため、思考を放棄してすべてを受け入れるしかなかった。
知識の欠落とフェルディナンドとの共有
知識の流入が終わった後、ローゼマインの知識には重大な問題が発生していた。その原因と顛末は以下の通りである。
- ローゼマインは、得られた知識全体の3から4割が欠けていることに気付いた。歴代ツェントの歴史が途切れていたり、大魔術に必要な魔法陣の一部が黒塗りになっていたりと、虫食い状態になっていた。
- この欠落の原因は、ローゼマインがフェルディナンドとメスティオノーラの書を分け合っている状態になっているためであった。
- ローゼマインは「エーヴィリーベの印を持つ子」という特異な身食いであり、過去に同調薬を使ってフェルディナンドの魔力で染められた影響が未だに強く残っていた。
- そのためエアヴェルミーンは彼女を、十数年前に正規のルートを通らずに始まりの庭へ侵入したフェルディナンドと同一人物だと勘違いしていた。
- エアヴェルミーンは、欠けた知識を補って完全無欠のツェントになるために「フェルディナンドを殺し、彼の魔石からすべての知識を奪え」と命じた。
- しかしローゼマインは、フェルディナンドを救うために知識を求めているのだとして、この命令を明確に拒絶した。
具現化の形状と検索機能
ローゼマインが手に入れたメスティオノーラの書は、独自の形状と機能を持っている。
- メスティオノーラの書は、シュタープを変形させることで具現化する。呪文は「グルトリスハイト」である。
- ローゼマインは、雑多な知識の塊から必要な情報だけを引き出せるように、片手で持てる単行本サイズのタブレット型として具現化し、検索機能を付加した。
- このタブレット型の書は淡く発光するため、暗闇の中でも文字を読むことができる。
礎に関する重大な発見
ローゼマインはメスティオノーラの書の検索機能を用いて、ゲオルギーネがエーレンフェストの礎を奪う方法について調べ、以下の事実を突き止めた。
- 各領地の「礎」は城の中ではなく、神殿の礼拝室の真下に存在することが判明した。
- 神殿長が代々引き継いできた「聖典の鍵」こそが、神殿から礎へ向かう扉を開けるための鍵であるという重大な事実を突き止めた。
- この結果から、ローゼマインはゲオルギーネの真の狙いが神殿への襲撃であることを確信した。
まとめ
メスティオノーラの書を巡るエピソードは、ユルゲンシュミットの統治に不可欠な英知の正体を明かすと同時に、ローゼマインとフェルディナンドの深い魔力の結びつきを浮き彫りにした。知識の欠落というリスクやフェルディナンド殺害の命令を拒絶したローゼマインの選択は、物語を最終決戦へと導く重要な契機となっている。また、書から得た「礎と聖典の鍵」に関する重大な発見は、エーレンフェスト防衛における決定的な情報となり、今後の防衛戦の行方を大きく左右する要素となっている。
エーレンフェスト防衛計画
『第五部 女神の化身7』における「エーレンフェスト防衛計画」について、その背景や具体的な役割分担、神殿を中心とした罠や魔術具による対策について解説する。
防衛計画策定の背景
ゲオルギーネによる襲撃に備え、防衛計画が練り直されることとなった背景には、以下のような重大な事実の発覚がある。
- ローゼマインがメスティオノーラの書から、各領地の礎は城の中ではなく神殿の礼拝室の真下にあるという事実を発見した。
- 神殿長が引き継いできた聖典の鍵こそが礎へ向かう扉を開けるための鍵であり、ローゼマインが預かっている鍵がアーレンスバッハのものとすり替えられていたことが判明した。
- これらの発見により、ゲオルギーネの真の狙いが神殿への襲撃であり、エーレンフェストの礎を奪う計画が間近に迫っていることが確実視された。
領主一族と騎士団の役割分担
ゲオルギーネの襲来に備え、ジルヴェスターは領主一族および騎士団の防衛配置を以下のように決定した。
- ジルヴェスター:礎の魔術を最優先で守るため、礎の間に籠城する。
- カルステッドと騎士団の一部:エーレンフェストの街全体の防衛に専念する。
- ボニファティウスと騎士団の一部:街以外の場所に敵が出現した際、地方ギーベの騎士たちの応援に駆けつける。
- 領主候補生たち:それぞれ護衛騎士を率いて担当区域の守りに就く。フロレンツィアとシャルロッテは城、ヴィルフリートは貴族街、メルヒオールは神殿と下町を担当する。
- ローゼマイン:王族からの召喚命令がいつ来るかわからず、中央への移動準備を優先すべき立場であるため、固定の担当は持たない。ただし、祈念式の最中に襲撃があった場合は、直轄地へ出かけている領主候補生の穴埋めとして動くことが命じられた。
神殿の罠と防衛策
手薄になりがちな神殿を守るため、ローゼマインとジルヴェスターは以下のような罠や防衛策を仕掛けた。
- 図書室への転移陣設置:礎への入り口がある神殿図書室の入り口前に、侵入者をヴェローニカが幽閉されている白の塔へ強制転送する転移陣を設置する。銀の布をまとった侵入者でも、礎の魔術を扱うためには最後に布を脱がざるを得ないため、その瞬間を狙う罠である。この魔法陣は刺繍ではなく、ローゼマインが一晩で消えるインクを使って描くことで、転移陣だと悟られないように偽装する。
- 戦闘特化シュミルの配置:神殿の3カ所の門を守るため、物理攻撃と魔力攻撃の両方に反撃できる戦闘特化のシュミルを3体作製した。これらにはフェルディナンドの護符に刻まれていた反撃の魔法陣が複数仕込まれており、防衛能力は極めて高い。魔力を節約するため普段は停止させておき、門番の魔石を主認識装置として緊急時のみ起動する仕組みになっている。
銀の布対策と魔術具の量産
ランツェナーヴェ由来の魔力を通さない銀の布をまとった敵を想定し、シュタープ以外の物理的な対策も講じられた。
- 下町の門の警戒と物理攻撃:下町の門には騎士を2人ずつ配置し、ダームエルが騎士と兵士の仲立ちをする。銀の布を被った者を発見した場合は、普通の武器の扱いに慣れた平民の兵士をぶつけたり、汚物をかけて布を脱がざるを得ない状況に追い込むなど、容赦のない手段が提案された。
- 宝盗りディッター経験の活用と魔術具量産:領主一族の側近だけでなく、騎士や学生たちも総動員して神殿や図書館で回復薬や魔術具を量産する体制を整えた。特に、かつて宝盗りディッターを経験した世代の知識を活用し、光による目潰しや虫を降らせるなど、魔力ではなく物理的妨害となる凶悪な魔術具を作製して銀の布対策とした。
- 領内の結束:こうした防衛準備を進める中で、引退した老人世代と若い騎士の間で情報共有が進み、ライゼガング系と旧ヴェローニカ派が共通の敵に向けて協力し合う姿勢が見られるなど、領内がまとまるという副次的な効果も生まれている。
まとめ
エーレンフェスト防衛計画は、ローゼマインがもたらした礎の位置に関する重大な発見を契機に、領地全体の防衛体制を根底から見直すものとなった。各領主一族や騎士団への緻密な役割分担に加え、神殿図書室の転移陣や戦闘特化シュミルの配置、銀の布を想定した物理的な妨害魔術具の量産など、非常に具体的かつ徹底的な対策が講じられている。この未曾有の危機に対する防衛準備は、領内の派閥を超えた結束を促すという効果をもたらし、エーレンフェストが一体となってゲオルギーネの襲撃に立ち向かう強固な基盤を形成することとなった。
アーレンスバッハ侵攻決意
『第五部 女神の化身7』におけるローゼマインのアーレンスバッハ侵攻決意について、その引き金となったフェルディナンドの危機から、エーレンフェスト上層部との衝突、そしてダンケルフェルガーを巻き込んだ作戦立案に至るまでの過程を解説する。
絶体絶命の危機と救出への強い意志
ジルヴェスターたちとエーレンフェストの防衛計画を練り直していたローゼマインの頭に、突然フェルディナンドの声が響いた。その直後に起きた出来事と周囲の反応は以下の通りである。
- ローゼマインの視界が突然アーレンスバッハの供給の間に切り替わり、フェルディナンドがディートリンデとランツェナーヴェの企みによって毒を盛られる光景を目撃した。
- フェルディナンドはシュタープを封じられたうえで、魔力が枯渇するまで吸い取り続ける供給魔法陣に拘束されるという絶体絶命の状況に陥っていた。
- 視界が元に戻ったローゼマインは、フェルディナンドの窮地を周囲に伝え、今すぐ助けに向かおうとした。
- しかし、ボニファティウスからは、優先すべきはエーレンフェストの礎を守ることである、距離や時間を考えれば間に合わないから諦めろと一蹴されてしまった。
全てを敵に回す覚擁とヴィルフリートの後押し
諦めろという言葉に対し、ローゼマインは激しい怒りと共に強い魔力を溢れさせ、拒絶の姿勢を明確にした。
- 彼女は、フェルディナンドを救うためならば、アーレンスバッハも中央も王もエアヴェルミーンさえも敵に回しても構わない、諦めるつもりなどは一切ないと宣言した。
- ローゼマインにとっては、ユルゲンシュミット全体よりもエーレンフェストが、何よりも自分の身内である下町の家族やフェルディナンドが大事であり、彼の命が失われれば自分が王の養女になる意味すらなくなると訴えた。
- その凄まじい覚悟を見たヴィルフリートは、エーレンフェストの防衛は元々ローゼマインが中央へ行く前提で組まれていたのだから彼女が動いても問題ないと指摘した。
- さらに、今にも魔力を暴走させそうなローゼマインを置いておく方が危険であり、相手が礎を狙ってくる以上はやられる前にやれば良いと述べ、彼女の侵攻を強く後押しした。
大義名分(建前)の創出
ジルヴェスターもフェルディナンドを救いたい気持ちはあったが、他領の礎を奪う領地簒奪を責められないためには、中央や他領を納得させる正当な建え前が必要だと指摘した。これに対し、ローゼマインは以下のような大義名分を捻り出した。
- アーレンスバッハが外国であるランツェナーヴェと結託し、ツェントの座を奪おうとしている外患誘致の罪を犯している点を挙げた。
- 過去に外国と手を組んで反逆したアイゼンライヒの歴史を持つエーレンフェストとして、王族を守るためにアーレンスバッハを討つのは当然の義務であるという論理を組み立てた。
- ジルヴェスターは、建前としては悪くないとしてこの理由を承認した。
「本物のディッター」によるダンケルフェルガー参戦要請
建前はできたものの、中領地であるエーレンフェスト単独では大領地アーレンスバッハへ攻め込む戦力が不足していた。そこでローゼマインは以下の手段を用いて協力を要請した。
- 領主用の通信魔術具を使ってアウブ・ダンケルフェルガーへ連絡を取り、本物のディッターを餌にして協力を求めた。
- 外患誘致の阻止とフェルディナンド救出という目的を語った上で、これからエーレンフェストとアーレンスバッハの間で壮大なディッターが始まる、礎を賭けた本物のディッターを経験してみたくはないかとアウブの情熱を煽った。
- ディッターの勝利条件をフェルディナンドの救出と定め、ダンケルフェルガーの有志に城の上空でアーレンスバッハの騎士団を引き付けて囮になってもらい、その隙に自分が最速でアーレンスバッハの礎を奪うという作戦を提示した。
- 本物のディッターの誘惑に抗えなかったアウブ・ダンケルフェルガーは参戦を即決し、シュタイフェリーゼより速く出陣することを高らかに宣言した。こうしてローゼマインは強力な戦力を味方につけ、フェルディナンド救出のためのアーレンスバッハ侵攻を決定づけたのである。
まとめ
ローゼマインのアーレンスバッハ侵攻の決意は、フェルディナンドの絶体絶命の危機を発端とし、領地や王命という絶対的な壁を打ち破る規格外の行動へと繋がった。ヴィルフリートの後押しや外患誘致という大義名分の創出、そしてダンケルフェルガーの戦闘民族としての情熱を巧妙に煽った参戦要請により、単なる救出劇を超えたユルゲンシュミット全体を揺るがす大規模な戦いへと発展することとなった。
第五部 女神の化身6レビュー
第五部 女神の化身
本好きの下剋上 全巻まとめ
第五部 女神の化身8レビュー
登場キャラクター
中央・王族・貴族院
ツェント
ユルゲンシュミットの現在の王である。グルトリスハイトを持たないまま統治を行っている。
・所属組織、地位や役職
中央・王族。ツェント。
・物語内での具体的な行動や成果
ローゼマインの失踪についてジギスヴァルトから報告を受け、エーレンフェストの要望通りに事態を伏せることを決めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
自身も小さい祠を回って祈りを捧げ、全属性を得ている。
ジギスヴァルト
ツェントの息子である。ローゼマインの王族入りの件に関わっている。
・所属組織、地位や役職
中央・王族。王子。
・物語内での具体的な行動や成果
ローゼマインの失踪に遭遇し、父であるツェントへ報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
まだ二つの眷属神の御加護を得られていない。
アナスタージウス
ツェントの息子である。エグランティーヌの夫である。
・所属組織、地位や役職
中央・王族。王子。
・物語内での具体的な行動や成果
エグランティーヌに出産直後から祠巡りをさせることに反発した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
エグランティーヌ
アナスタージウスの妻である。ローゼマインの貴族院での教師を務めている。
・所属組織、地位や役職
中央・王族。貴族院の教師。
・物語内での具体的な行動や成果
貴族院での奉納式の後、ローゼマインからクラッセンブルクとの共同研究への不満を聞いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
秋の終わりに女児を出産した。
ヒルデブラント
ツェントの息子である。図書委員を務めている。
・所属組織、地位や役職
中央・王族。王子。図書委員。
・物語内での具体的な行動や成果
貴族院の奉納式で最奥の間に続く扉を開ける役目を担った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ローゼマインの急成長に衝撃を受けていた。
ラオブルート
中央騎士団長である。ジェルヴァージオの元護衛騎士である。
・所属組織、地位や役職
中央騎士団・騎士団長。
・物語内での具体的な行動や成果
ランツェナーヴェの館の転移陣から現れ、ジェルヴァージオを迎え入れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
長年にわたりツェントを裏切っていたことが判明する。
イマヌエル
中央神殿の者である。神具の重要性を主張する。
・所属組織、地位や役職
中央神殿・青色神官。
・物語内での具体的な行動や成果
奉納式への同席を求めたが、ローゼマインに拒否された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ヒルシュール
エーレンフェストの寮監である。研究に没頭する傾向がある。
・所属組織、地位や役職
貴族院・教師。エーレンフェスト寮監。
・物語内での具体的な行動や成果
ローゼマインの不在を不審に思い、隠蔽に協力する代わりに研究用素材を融通してもらった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
フェルディナンドと共に検索特化型シュミル魔術具を完成させた。
パウリーネ
音楽の教師である。
・所属組織、地位や役職
貴族院・教師。
・物語内での具体的な行動や成果
音楽の実技でローゼマインに祝福を求めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ソランジュ
貴族院の図書館に務める中級貴族である。
・所属組織、地位や役職
貴族院・図書館の中級司書。
・物語内での具体的な行動や成果
オルタンシア不在のため、一人で図書館の日常業務を担っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
シュバルツ
図書館の魔術具である。ローゼマインを「ひめさま」と呼ぶ。
・所属組織、地位や役職
貴族院・図書館の魔術具。
・物語内での具体的な行動や成果
ローゼマインに魔力供給を求めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ヴァイス
図書館の魔術具である。
・所属組織、地位や役職
貴族院・図書館の魔術具。
・物語内での具体的な行動や成果
シュバルツと共にローゼマインを出迎えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
エーレンフェスト
ジルヴェスター
エーレンフェストの領主である。ローゼマインの養父である。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・アウブ。
・物語内での具体的な行動や成果
防衛計画を練り直し、神殿図書室の入り口前に転移陣を設置することを決めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ゲオルギーネの襲撃に備え、自らは礎の間に籠城する予定である。
フロレンツィア
ジルヴェスターの第一夫人である。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・第一夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
防衛計画において城の守りを担当することになった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ローゼマイン
本作の主人公である。本を読むことを何よりも好む。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・領主候補生。神殿長。
・物語内での具体的な行動や成果
メスティオノーラの書を手に入れ、エーレンフェストの礎の場所を突き止めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
エアヴェルミーンの頼みを受けた育成の神により、年相応の姿へ急成長した。
ボニファティウス
ジルヴェスターの叔父である。ローゼマインを溺愛している。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・領主一族。
・物語内での具体的な行動や成果
急成長したローゼマインを無造作に抱き上げて領主執務室へ運んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
防衛計画において、地方ギーベの救援を担当する。
カルステッド
エーレンフェストの騎士団長である。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・騎士団長。
・物語内での具体的な行動や成果
防衛計画の練り直しに参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
防衛計画において、エーレンフェストの街全体の防衛を担当する。
ヴィルフリート
ジルヴェスターの息子である。ローゼマインの婚約者である。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
ローゼマインのアーレンスバッハ侵攻を後押しした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
防衛計画において、貴族街の守りを担当する。
シャルロッテ
ジルヴェスターの娘である。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
下級貴族の奉納式を担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
防衛計画において、城の守りを担当する。
メルヒオール
ジルヴェスターの息子である。神殿長の業務を引き継ぐ準備をしている。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
冬の成人式を立派にやり遂げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
防衛計画において、神殿と下町の守りを担当する。
ハルトムート
ローゼマインの側近である。彼女への狂信的な忠誠心を持つ。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・上級文官。神官長。
・物語内での具体的な行動や成果
ローゼマインの不在中、彼女が神々の祝福で成長しているという主張を広めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
クラリッサ
ダンケルフェルガー出身の文官である。ハルトムートの婚約者である。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・上級文官。
・物語内での具体的な行動や成果
ローデリヒやユーディットの調合技術を厳しく鍛え上げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
リーゼレータ
ローゼマインの筆頭側仕えである。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・中級側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
成長したローゼマインのために大人用のマントを用意して迎えに行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
グレーティア
ローゼマインの側仕えである。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・中級側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
ディルクとベルトラムに貴族社会の厳しさを教えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
オティーリエ
ローゼマインの側仕えである。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・上級側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
マティアスの卒業式のエスコート相手を務めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ブリュンヒルデ
ローゼマインの側仕えである。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・上級側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
ベルティルデの教育を担当し、シャルロッテの相談に乗った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ジルヴェスターの第二夫人になることが周知された。
ベルティルデ
ブリュンヒルデの妹である。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・上級側仕え見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
ローゼマインの夏用衣装の注文を任された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ヴァネッサ
シャルロッテの筆頭側仕えである。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・上級側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
ローゼマインの帰還を待つシャルロッテと話し合った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
イディリーヌ
シャルロッテの側仕え見習いである。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・上級側仕え見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
奉納式から戻ったシャルロッテにブリュンヒルデからの面会予約を伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
カトライン
シャルロッテの側仕え見習いである。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・中級側仕え見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
王族が現状維持を望んでいると推測した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
カサンドラ
シャルロッテの側仕え見習いである。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・中級側仕え見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
先生方の間でローゼマインの不在に関する噂は聞こえなかったと報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
フォンゼル
シャルロッテの護衛騎士見習いである。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・護衛騎士見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
学生達がローゼマインの失踪について噂していることを報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
コルネリウス
ローゼマインの護衛騎士である。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・上級護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
ハルトムートの奉納式の日程調整に反対し、口論になった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
アンゲリカ
ローゼマインの護衛騎士である。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・中級護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
下町の門を回り、兵士達に銀の布への警戒を伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
レオノーレ
ローゼマインの護衛騎士である。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・上級護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
ローゼマインの不在について、ハルトムートの賞賛を解禁する可能性を示唆した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ユーディット
ローゼマインの護衛騎士である。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・中級護衛騎士見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
クラリッサから攻撃用魔術具の作り方を教え込まれた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ダームエル
ローゼマインの護衛騎士である。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・下級護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
下町の門を守る騎士と兵士の仲立ちを任された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
マティアス
ローゼマインの護衛騎士である。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・中級護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
ボニファティウスと共にゲルラッハの隠し小屋の確認へ向かうことを志願した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ラウレンツ
ローゼマインの護衛騎士である。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・中級護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
ユーディットを神殿の護衛に呼ぶ手配を済ませた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ローデリヒ
ローゼマインの文官である。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・中級文官。
・物語内での具体的な行動や成果
ハンネローレから借りた本を写本した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ミュリエラ
エルヴィーラに仕える文官見習いである。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・中級文官見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
少ない魔力で動く転移陣の改良に取り組んでいる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
テオドール
ローゼマインの側近である。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・騎士見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
キルンベルガに滞在していたグーテンベルク達の話を伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ニコラウス
メルヒオールの護衛騎士見習いと行動を共にしている。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・騎士見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
神殿の門を守る役割を引き受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
フィリーネ
ローゼマインの文官である。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・下級文官。青色巫女見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
祈念式に向かい、神殿と孤児院の防衛体制を維持する役割を担った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
フラン
ローゼマインの筆頭側仕えである。
・所属組織、地位や役職
神殿・筆頭側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
ローゼマインが神殿にもたらした変化を語り、聖典の鍵を用意した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ザーム
ローゼマインの側仕えである。
・所属組織、地位や役職
神殿・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
明日の予定や専属達の行動について連絡を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
モニカ
ローゼマインの側仕えである。
・所属組織、地位や役職
神殿・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
急成長したローゼマインへの着付けを担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ニコラ
ローゼマインの側仕えである。
・所属組織、地位や役職
神殿・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
神殿長室でお茶を淹れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ギル
ローゼマインの側仕えである。
・所属組織、地位や役職
神殿・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
ローゼマインの急成長を純粋に喜んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
フリッツ
神殿の側仕えである。
・所属組織、地位や役職
神殿・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
城からの荷物を神殿長室へ運んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ヴィルマ
孤児院の管理を担う側仕えである。
・所属組織、地位や役職
神殿・灰色巫女。
・物語内での具体的な行動や成果
フィリーネの着付けを担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ディルク
孤児院出身の少年である。身食いの魔力を持つ。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・中級貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
洗礼式で中級貴族として認められた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
エーヴィリーベの印を持つ子であることが判明する。
ベルトラム
旧ヴェローニカ派の出身である。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・中級貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
洗礼式でジルヴェスターに最大級の感謝を捧げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
中級貴族として認められた。
コンラート
フィリーネの弟である。
・所属組織、地位や役職
神殿・灰色神官見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
孤児院に残り、魔力成長後に青色見習いとなる予定である。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
カミル
ギュンターとエーファの息子である。
・所属組織、地位や役職
下町。
・物語内での具体的な行動や成果
春の洗礼式に参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ギュンター
ローゼマインの対外的な死前の父親である。
・所属組織、地位や役職
下町・兵士。
・物語内での具体的な行動や成果
春の洗礼式で成長したローゼマインの姿を見て喜んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
エーファ
ローゼマインの対外的な死前の母親である。
・所属組織、地位や役職
下町・染色職人。
・物語内での具体的な行動や成果
カミルの洗礼式の晴れ着に染め布で縁取りを施した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
トゥーリ
ローゼマインの対外的な死前の姉である。
・所属組織、地位や役職
下町・髪飾り職人。
・物語内での具体的な行動や成果
城での採寸会に参加し、ローゼマインの身体を測った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ルッツ
プランタン商会の商人見習いである。
・所属組織、地位や役職
下町・商人見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
カミルの洗礼式に同席し、ローゼマインへ手を振った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
フーゴ
ローゼマインの専属料理人である。
・所属組織、地位や役職
城・専属料理人。
・物語内での具体的な行動や成果
貴族院での滞在を終え、神殿へ戻った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ライゼガング系貴族
エーレンフェストの有力な派閥である。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
旧ヴェローニカ派と協力して防衛準備を進めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
旧ヴェローニカ派の子供達
連座を免れた子供達である。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・学生。
・物語内での具体的な行動や成果
貴族院で他の学生達と協力して過ごした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
アーレンスバッハ
ゲオルギーネ
アーレンスバッハの第一夫人である。
・所属組織、地位や役職
アーレンスバッハ・第一夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
エーレンフェストの礎を奪う計画を進めている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ディートリンデ
アーレンスバッハの次期アウブとされている人物である。
・所属組織、地位や役職
アーレンスバッハ・領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
フェルディナンドに毒を盛り、供給の間に閉じ込めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
アルステーデ
ディートリンデの姉である。
・所属組織、地位や役職
アーレンスバッハ・上級貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
アーレンスバッハの礎の魔術を染めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
実質的なアウブとなっている。
ブラージウス
アルステーデの夫である。
・所属組織、地位や役職
アーレンスバッハ・上級貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
ランツェナーヴェの館でディートリンデと共に過ごしていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
レティーツィア
アーレンスバッハの領主候補生である。
・所属組織、地位や役職
アーレンスバッハ・領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
ディートリンデとレオンツィオの罠にかかり、フェルディナンドに毒を使用してしまった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ディートリンデによって捕らえられ、ランツェナーヴェへ送られることになった。
フェルディナンド
アーレンスバッハへ婿入りした人物である。ローゼマインの元後見人である。
・所属組織、地位や役職
アーレンスバッハ・婚約者。
・物語内での具体的な行動や成果
毒を受けながらも、名捧げ石をユストクスに託した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
魔力供給の間に拘束され、命の危機に陥っている。
ユストクス
フェルディナンドの側近である。
・所属組織、地位や役職
アーレンスバッハ・側近。
・物語内での具体的な行動や成果
レティーツィアから名捧げ石を受け取り、エーレンフェストへ救援を求めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
エックハルト
フェルディナンドの側近である。
・所属組織、地位や役職
アーレンスバッハ・側近。
・物語内での具体的な行動や成果
ユストクスと共に貴族院のエーレンフェスト寮へ現れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
マルティナ
ディートリンデの側仕えである。
・所属組織、地位や役職
アーレンスバッハ・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
親睦会でフェルディナンドが魔力供給を行っていることをヴィルフリートに伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ロスヴィータ
レティーツィアの筆頭側仕えである。
・所属組織、地位や役職
アーレンスバッハ・筆頭側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
行方不明になり、魔石に変えられてしまった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ゼルギウス
フェルディナンドの側仕えである。ロスヴィータの息子である。
・所属組織、地位や役職
アーレンスバッハ・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
ユストクス達を追いかけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
シュトラール
フェルディナンドの護衛騎士である。
・所属組織、地位や役職
アーレンスバッハ・護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
ユストクス達を追いかけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
元騎士団長であったが、ディートリンデによって罷免された。
フェアゼーレ
レティーツィアの側仕え見習いである。シュトラールの娘である。
・所属組織、地位や役職
アーレンスバッハ・側仕え見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
ランツェナーヴェの者達に捕らえられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ダンケルフェルガー
アウブ・ダンケルフェルガー
ダンケルフェルガーの領主である。ディッターを好む。
・所属組織、地位や役職
ダンケルフェルガー・アウブ。
・物語内での具体的な行動や成果
ローゼマインからの誘いを受け、アーレンスバッハへの侵攻に協力することを即決した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ハンネローレ
ダンケルフェルガーの領主候補生である。
・所属組織、地位や役職
ダンケルフェルガー・領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
ローゼマインを心配し、お見舞いの本を貸し出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ダンケルフェルガーの有志
ディッターに参加する騎士達である。
・所属組織、地位や役職
ダンケルフェルガー・騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
アーレンスバッハの騎士団を上空で引き付ける役割を担う予定である。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
クラッセンブルク
ジャンシアーヌ
クラッセンブルクの領主候補生である。
・所属組織、地位や役職
クラッセンブルク・領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
共同研究として古い神事を再現したいと提案した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ドレヴァンヒェル
オルトヴィーン
ドレヴァンヒェルの領主候補生である。
・所属組織、地位や役職
ドレヴァンヒェル・領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
エーレンフェストに共同研究を申し入れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
インメルディンク
ムレンロイエ
インメルディンクの領主候補生である。
・所属組織、地位や役職
インメルディンク・領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
ローゼマインが中央神殿に入るという噂を嘲笑交じりに語った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ギレッセンマイアー
ルーツィンデ
ギレッセンマイアーの領主候補生である。
・所属組織、地位や役職
ギレッセンマイアー・領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
親睦会で弟と妹を紹介した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ランツェナーヴェ
ジェルヴァージオ
ランツェナーヴェの王である。
・所属組織、地位や役職
ランツェナーヴェ・王。
・物語内での具体的な行動や成果
アーレンスバッハのランツェナーヴェ館に到着し、ラオブルートの出迎えを受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
レオンツィオ
ランツェナーヴェの使者である。
・所属組織、地位や役職
ランツェナーヴェ・使者。
・物語内での具体的な行動や成果
レティーツィアを騙してフェルディナンドに毒を使わせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ジョルダーノ
レオンツィオの従弟である。
・所属組織、地位や役職
ランツェナーヴェ・使者。
・物語内での具体的な行動や成果
馬車の中でレオンツィオと今後の計画について語り合った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
始まりの庭
エアヴェルミーン
白い大木の化身である。シュバルツ達からは「じじさま」と呼ばれている。
・所属組織、地位や役職
始まりの庭。元命の眷属神。
・物語内での具体的な行動や成果
ローゼマインをフェルディナンドと勘違いし、アーンヴァックスに成長を頼んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
金色シュミル
始まりの庭の案内役である。
・所属組織、地位や役職
始まりの庭。
・物語内での具体的な行動や成果
来訪者であるローゼマインの望みを映し出し、資格を確認した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
第五部 女神の化身6レビュー
第五部 女神の化身
本好きの下剋上 全巻まとめ
第五部 女神の化身8レビュー
展開まとめ
プロローグ
エーレンフェストからの荷物
冬の社交界開始直前、フェルディナンドの元へエーレンフェストから大量の荷物が届いた。
かつては危険物確認のため複数の文官や騎士による厳重な検分が行われていたが、今では「いつもの荷物」として自室へ運ばれる程度になっている。
フェルディナンドは、ローゼマインの緊張感のない手紙が周囲を慣れさせたのだろうと考えていた。
荷物には、レティーツィアが以前送った調味料やレシピを基にした料理や返礼品も含まれていた。
フェルディナンドは、礼を返すたびに新たな贈り物が届く状況に、どこでやり取りを終わらせれば良いのかわからず困惑していた。
シュトラールの現状
検分作業では、元騎士団長シュトラールも加わっていた。
シュトラールは、ランツェナーヴェ館へ頻繁に出入りするディートリンデを諫め続けた結果、「口うるさい」という理由で罷免されていたのである。
フェルディナンドは、そのような理由で有能な人材を切り捨てるディートリンデへ強い呆れを抱いていた。
さらに、まともな側近達は次々と遠ざけられ、現在ではゲオルギーネやアルステーデまで監視役として動いている状況だった。
フェルディナンドは、その裏にゲオルギーネの意図があるのではないかと疑っている。
レティーツィアとの昼食会
フェルディナンドは、冬の社交界開始前にレティーツィアを昼食へ招待することを決めた。
実際には、ランツェナーヴェ館の情報を得ることが目的だった。レティーツィアは既に何度か館を訪れていたのである。
昼食では、ローゼマイン考案の料理が次々と並べられた。アーレンスバッハの調味料を使いながらも、既存料理とは全く異なる仕上がりになっている。
特に「ガルネシェルのポメ煮込み」を基にした料理は、もはや別料理だった。
レティーツィアは初めて味わう風味へ驚きながらも、美味しさに感動していた。
フェルディナンドは、ローゼマインの料理は常に「味は良いが、なぜこうなったかわからない」と苦笑する。
料理と領地対抗戦
ユストクスは、ローゼマインが「他領でも受け入れやすい味」を意識していると説明した。
アーレンスバッハ料理は香辛料や酸味が強く、他領には馴染みにくい。ローゼマインの改良料理は、その問題を緩和していたのである。
レティーツィアは、ローゼマインのレシピを買い取り、領地対抗戦で活用することも検討し始める。
フェルディナンドにとっても、それは貴族院図書館へ行くための建前作りとして都合が良かった。ゲオルギーネからの妨害を避けるため、複数の理由を用意しておきたかったのである。
ランツェナーヴェ館の情報
食事が進んだところで、フェルディナンドは本題としてランツェナーヴェ館について尋ねた。
しかしレティーツィアは、ディートリンデから「フェルディナンドとレオンツィオを会わせると決闘になる」と聞かされていたらしく、的外れな話を始める。
フェルディナンドは内心呆れながらも、怒りを抑えて情報収集を続けた。
その結果、レオンツィオがユルゲンシュミット王族の血を引いていること、さらに中央騎士団長ラオブルートと親しくなっていることが判明する。
フェルディナンドは、ラオブルートがアダルジーザ離宮と関係している人物であり、自分やエーレンフェストへ敵意を持っていると考えていたため、強い警戒心を抱いた。
隠された転移陣
レティーツィアはさらに、ランツェナーヴェ館には「アウブしか開けられない扉」があると語った。
フェルディナンドは、それがアーレンスバッハとアダルジーザ離宮を繋ぐ転移陣だと知っている。
ディートリンデは礎を染め終える前からランツェナーヴェ姫受け入れを王族へ要求していたが、もし受け入れられていた場合、姫用施設を開けられず大恥をかくところだった。
フェルディナンドは、その愚かさに失笑していた。
魔力供給訓練
フェルディナンドは、ディートリンデがようやく礎を染め終えたため、今後は自分も礎への魔力供給へ加わることになると説明した。
同時に、レティーツィアにも魔力供給訓練を始める予定だという。
レティーツィアは、褒美としてローゼマインのお菓子が大量に届いているかを真剣に気にしていた。
フェルディナンドは、ローゼマインから「無理をさせすぎるな」と釘を刺されていることを思い出し、少々呆れていた。
ランツェナーヴェの玩具
レティーツィアは、レオンツィオから貰ったランツェナーヴェ製のお菓子と玩具を見せた。
お菓子は砂糖の塊のような極端な甘さだったが、玩具は紐を引くと花弁が舞い散る珍しい仕組みだった。
フェルディナンドは、その構造へ強い興味を示し、玩具を譲る代わりにレティーツィアの課題を少し減らすという交渉まで成立する。
その後フェルディナンドは玩具を分解し、魔術を使わず内容物を放出する構造を危険視していた。中身次第では危険物にもなり得ると考えたのである。
隠された情報
昼食後、フェルディナンドは隠し部屋でローゼマインからの手紙と、ユストクス達が集めた情報を確認した。
そこから、レオンツィオとラオブルートの親密さ、ゲオルギーネがラオブルートをランツェナーヴェ館へ案内していたことなどが判明する。
さらにフェルディナンドは、ジルヴェスターの「嫌な勘」を思い出していた。ゲオルギーネもその勘を警戒しているように見えたのである。
何か大きな問題が起こる気配はある。しかし現時点では全貌が見えない。
ローゼマインへの疑念
フェルディナンドは、王族がローゼマインへ何らかの要求をしているのではないかと疑い始めていた。
事情聴取の際、ジルヴェスターや王族が「ローゼマインは王命へ従った」と発言していたからである。
そこでフェルディナンドは、「君のゲドゥルリーヒを教えてほしい」と遠回しに探りを入れていた。
しかしローゼマインは、その問いへ全く触れない返事を寄越した。フェルディナンドは、それこそが「何かを隠している証拠」だと確信する。
彼は、ローゼマインが王族やグルトリスハイト問題へ巻き込まれ、追い詰められているのではないかと危惧していた。
だが距離が遠く、直接問い質すこともできない。冬の領地対抗戦で直接確認するしかないと決意しつつ、フェルディナンドは深い不安を抱えたまま問題を先送りにするのだった。
ディルクとベルトラムの洗礼式
冬支度と貴族院準備
収穫祭が終わると、神殿では冬支度が始まった。孤児院や神殿長室の準備はフラン達へ任せられる状態になっており、メルヒオールや青色見習い達の支度も神殿の側仕え達が進めていた。
ローゼマイン自身は、フェルディナンドから頼まれた魔紙作成や、図書館のシュミル作成に必要な素材集めへ集中していた。
さらにアーレンスバッハへ料理やお菓子も送り、今回は魚の出汁を効かせた独自改造版のアーレンスバッハ料理まで同封している。
ローゼマインは、現地の人間から「これは違う」と言われそうな改造具合だと理解しながらも気にしていなかった。
フェルディナンド工房の素材
クラリッサは、フェルディナンド工房に集められた膨大な素材群へ感嘆していた。
素材の多くはユストクスが各地で採集し持ち帰った物であり、フェルディナンド自身も祈念式や収穫祭の際に採集を行っていたという。
一方ローゼマインは、フェルディナンドの複雑なレシピを見ながら調合を進めていたが、手順の多さへ不満を漏らしていた。
洗礼式衣装の準備
グレーティアからのオルドナンツで、ディルクとベルトラムの洗礼式衣装が確保できたと知らされる。
旧ヴェローニカ派から接収した品や、お下がりを活用して子供用衣装を集めていたのである。
ローゼマイン達は、五日後に神殿で衣装合わせを行うことを決めた。
グレーティアの厳しい忠告
ベルトラムへ向け、グレーティアは極めて厳しい現実を突き付けた。
連座を免れた犯罪者の子供達は、少しでも危険視されれば即座に処分対象となる。今の状況は奇跡的な救済であり、それを理解しない愚かさは周囲全体を危険へ晒すというのである。
さらに、孤児院の子供達や神殿全体まで同罪扱いされる危険も指摘した。
ローゼマインが止めても、グレーティアは「甘やかしは優しさではない」と断言する。
ラウレンツも、孤児院は優しい世界であり、城へ出れば現実を嫌でも知ることになると弟へ告げた。
洗礼式へ向けた訓練
その後、ディルクとベルトラムは春から使う部屋や家具を選び、洗礼式へ向けた訓練を進めていった。
祝福の練習、フェシュピール演奏、儀式手順、貴族の上下関係など、多くの内容を短期間で覚えなければならなかった。
コンラートはまだ孤児院に残り、魔力成長後に青色見習いとなる予定だった。
貴族院奉納式の決定
冬の洗礼式を終える頃には、多くの貴族が貴族街へ戻ってきていた。
ローゼマイン達も城へ移動し、冬の社交界開始準備を進める。
その中で、貴族院開始直後に奉納式を行うことが決定したと知らされる。中央神殿の神具貸出事情や、三年生の御加護獲得効率を考慮した結果だった。
ローゼマインは、自分の都合が無視されていると不満を漏らす。
しかしヴィルフリートは、ローゼマインの負担軽減のため、下級奉納式をシャルロッテ、中級奉納式を自分が担当する案をアウブへ掛け合っていた。
また、神殿関係者達も奉納式終了まで貴族院同行を許可されている。
洗礼式の開始
始まりの宴では、新たに貴族となる子供達の洗礼式が行われた。
ディルクとベルトラムは最後尾から入場する。
まずディルクの魔力登録が行われたが、メダルの反応は極めて異質だった。全体へ極薄く色が付き、特に風属性が強いように見える不可解な状態だったのである。
ローゼマインもハルトムートも正確な意味を理解できず、風の御加護があるとだけ説明した。
その後ジルヴェスターは、孤児であるディルクの後見人となり、魔力量基準で新たな中級貴族として認めると宣言した。
ディルクは感謝を述べ、ローゼマインから祝福を受ける。だが会場の拍手は疎らであり、旧ヴェローニカ派への拒絶感が空気に滲んでいた。
ベルトラムの感謝
続いてベルトラムの登録が行われた。こちらは通常通り水と火の御加護が確認される。
ベルトラムもジルヴェスターから指輪を受け、中級貴族として認められた。
その際ベルトラムは跪き、ジルヴェスターの手へ額を当てる最大級の感謝表現を行う。
それによって、会場の貴族達のひそひそ声が一瞬止まった。
その後のフェシュピール演奏でも、ベルトラムは貴族教育を受けてきた者らしい見事な腕前を見せる。
社交界での反応
午後の社交では、ローゼマインへ「中央神殿へ行くのか」という質問が相次いだ。
ヴィルフリートは、それらを否定しながらローゼマインを守っていた。
ローゼマインは旧ヴェローニカ派の子供達へ声をかけて回るが、中央から帰省した貴族達が料理へ異様に執着している姿も目にする。
ハルトムートによれば、彼等は後日正式に面会予定の中央帰還組だった。
ディルクとベルトラム
ディルクはついローゼマインへ親しげに話しかけてしまうが、ベルトラムはすぐに貴族社会の礼儀を教え込んだ。
ローゼマインは、ジルヴェスターへの感謝表現で空気を変えたベルトラムを高く評価する。
ベルトラムは照れながらも、ディルクへ細かく礼儀を教えていた。
グレーティアはまだ安心するには早いと釘を刺すが、ローゼマインは孤児院時代より打ち解けた二人の様子へ安堵を覚えていた。
冬の子供部屋と貴族院の始まり
子供部屋の穏やかな空気
冬の社交界が始まると、未成年達は例年通り子供部屋で過ごすことになった。ローゼマインは新たな子供達の挨拶を受けながら、旧ヴェローニカ派の子供達が孤立しないよう注意を払っていた。
しかし実際には、子供部屋の空気は予想以上に穏やかだった。貴族院へ通う年齢の子供達は、粛清期間も共に過ごした経験があり、派閥よりも協力を重視する雰囲気を維持していたのである。
ゲームや勉強で競い合い、お菓子を得ることへ夢中になっている様子からも、ギスギスした対立はほとんど感じられなかった。
領主候補生達の話し合い
夕食後、領主候補生達は盗聴防止の魔術具を使いながら、子供部屋の様子や貴族院計画について話し合っていた。
シャルロッテとヴィルフリートは、ローゼマインが去った後の子供部屋が荒れることを危惧していたが、その心配が杞憂だったことへ安堵する。
メルヒオールが子供達を上手くまとめている理由について、本人は神殿孤児院で皆と遊び交流していた経験が役立っていると語った。
ローゼマインも、メルヒオールが時折周囲へ目を配れるようになっていることへ成長を感じていた。
一年生への懸念
ローゼマインは、去年の混乱によって一年生達の学習機会が不足していたことを心配していた。
座学は大きな問題がないものの、フェシュピールの練習不足は顕著であり、下級と中級の実力差も大きい。
シャルロッテは、今いる楽師達が在籍している間に少しでも補習を進めるべきだと提案する。
ヴィルフリートは、自分の一年生時代を思い出しながら、ローゼマインへ暴走しないよう釘を刺していた。
ディルクとベルトラムの立場
ローゼマインは、ディルクとベルトラムが無事に馴染めている様子へ安堵していた。
ディルクはゲームでは活躍できても、歴史や地理、貴族常識にはまだ弱さがある。
一方ベルトラムは、かつて上級寄り中級貴族だった立場から、孤児として洗礼式を受けた最下層中級貴族へ転落した現実に戸惑っていた。
ラウレンツを兄と呼ぶことすら許されなくなった変化は、彼にとって大きな負担だったのである。
ローゼマインは、メルヒオールへ二人へ不利益が及ばないよう気を配るよう頼んだ。
シャルロッテへの贈り物
ローゼマインは、鍛冶職人ヨハンへ依頼していた紋章入りのペンダントトップをシャルロッテへ渡した。
そこにはローゼマインの紋章だけでなく、シャルロッテの女紋や神々の記号も繊細に彫り込まれている。
シャルロッテは、他領へ移っても姉妹の繋がりを感じられる証として、この品を欲しがっていたのである。
ローゼマインは、その思いを嬉しく感じていた。
メルヒオールとヴィルフリート
メルヒオールも同じような証を欲しがり、ローゼマインは快く新しいデザインを考え始めた。
さらにヴィルフリートまで、自分用のデザイン画を描き始める。
ローゼマインは、婚約時にはあれほど拒絶していたヴィルフリートが、今更繋がりを欲しがることへ戸惑っていた。
しかしヴィルフリートは、兄妹関係と婚約関係は全く別物であり、自分達は婚約者としては無理だったと悟った様子で語る。
ローゼマインは、その妙に達観した態度へ複雑な感情を抱きつつも、結局デザイン画を受け取った。
貴族院到着と側近達
四年生の移動日に、ローゼマイン達は貴族院へ到着した。
成人済み側仕えとして同行したのはリーゼレータである。オティーリエはクラリッサの抑え役としてエーレンフェストへ残り、ブリュンヒルデは上位領地との社交対応役として貴族院内のみ側近を務める形になっていた。
ローゼマインは、久し振りにブリュンヒルデの淹れたお茶を楽しみながら、グレッシェルの発展状況について聞かされる。
木工工房や商人達が次々と入り、街は急速な賑わいを見せていた。
ベルティルデの側仕え入り
ブリュンヒルデは、妹ベルティルデを短期間でもローゼマインの側仕え見習いとして仕えさせてほしいと頼んだ。
ローゼマインは快諾し、さらにメルヒオールの側近達にも上位領地社交の実地経験を積ませたいと希望する。
ブリュンヒルデは、将来のエーレンフェストのために可能な限り後任育成へ協力すると答えた。
印刷業の課題
続いてミュリエラが訪れ、印刷業の現状を報告した。
少ない魔力で動く転移陣を使い、試し刷り見本を各地から城へ迅速に送る研究が進められているが、魔力消費と劣化が課題になっているという。
ローゼマインは、ライムントとの共同研究を勧め、自身は図書館魔術具作成で忙しいと説明した。
エルヴィーラが「少しでも早くローゼマインへ本を届けたい」と動いている事実に、ローゼマインは深く感激していた。
素材採集と祈り
その後、学生達は講義用素材採集へ向かった。
ローゼマインは危険防止用にシュツェーリアの盾を展開するだけに留め、採集場所回復の祈りは学生達自身へ任せる。
来年には自分がいなくなる以上、学生だけで神事を行えるか確認したかったのである。
フィリーネ達は回復薬素材を大量に集め、祝詞を復唱しながらフリュートレーネへ祈りを捧げた。
その結果、採集場所は無事回復する。
貴族院上空の魔法陣
採集後、ローゼマインは以前から気になっていた魔法陣を確認するため、騎獣で上空へ向かった。
雪に覆われた貴族院全体を、神々の貴色の線で構成された巨大魔法陣が包み込んでいた。
それは神殿長の聖典や奉納舞に現れていた「王を選別する魔法陣」と同一だった。
ローゼマインは、この魔法陣が祠巡りと祈りによって出現した以上、起動にも祈りが必要なのではないかと推測する。
さらに、次の奉納式が祭壇のある最奥で行われることを思い出し、その際に何か起こる可能性へ気付いた。
ローゼマインは、事前に王族へ連絡すべきだと判断する。
新入生歓迎と共同研究
新入生到着後、ローゼマインはベルティルデやメルヒオール側近達へ今後の予定を説明した。
また、去年ドレヴァンヒェルへ研究成果を奪われかけた経験から、今年の共同研究では秘密保持を徹底するよう文官見習い達へ指示する。
その後、奉納式へ参加する成人側近達も到着した。
ハルトムートは、中央神殿やクラッセンブルクとの日程調整を引き受け、ローゼマインの講義へ支障が出ないよう動くと宣言する。
読書の幸福
貴族院生活が始まり、ローゼマインは久し振りに自由な読書時間を得た。
各地で印刷された新刊には、挿絵入りディッター物語やダンケルフェルガー史、恋物語など様々な本が並んでいる。
王の養女問題以降、資料読みばかりで純粋な読書へ没頭する余裕はなかった。
ローゼマインは、本を読む幸福感を噛み締めながら、やはり自分には本が必要なのだと改めて実感するのだった。
親睦会(四年)
進級式前の準備
進級式当日の朝、ローゼマインはリーゼレータとベルティルデに髪を整えてもらっていた。
ベルティルデは髪を結うことが得意であり、エルヴィーラからも褒められていたという。ローゼマインは、彼女が既に側仕え見習いとして十分動けていることを感じ取っていた。
リーゼレータは、親睦会へ同行する側近の確認を行いながら、クラッセンブルクに新たな領主候補生一年生がいると報告する。
その少女は、アウブ・クラッセンブルク第三夫人の娘ジャンシアーヌだった。
奉納式打ち合わせへの警戒
多目的ホールへ向かうと、ダームエル達は青色神官衣装を纏って待機していた。
これは、ローゼマイン達が進級式や親睦会へ出ている間に、中央神殿との奉納式打ち合わせがあるためだった。
ローゼマインは、以前から対立気味だったイマヌエルとハルトムートが再び揉めることを懸念し、コルネリウスやダームエルへ監視を頼む。
コルネリウスは、久し振りに友人達へ会えるだろうから親睦会を楽しめとローゼマインを送り出した。
進級式とカリキュラム変更
講堂で進級式が始まると、今年からシュタープ取得が三年生へ変更されたことと、それに伴う大規模なカリキュラム改定が発表された。
新入生達は不満げだったが、ローゼマインは、神々の御加護や魔力変動を考えれば、シュタープ取得は遅い方が望ましいと説明する。
一年時に取得したシュタープでは、後に増大した魔力へ対応できなくなる可能性があるためだった。
ベルティルデやニコラウスは、その説明に納得していた。
ジャンシアーヌとの初対面
親睦会では、まずクラッセンブルクとの挨拶が行われた。
ジャンシアーヌは、菫色の髪と青い瞳を持つ、穏やかな雰囲気の少女だった。
彼女は、奉納式共同研究についてローゼマインへ指導を依頼する。ローゼマインもそれを受け入れた。
今後、奉納式関連で何度も顔を合わせることになると双方理解していたのである。
ハンネローレとの再会
続いてダンケルフェルガーとの挨拶が行われた。
レスティラウト卒業後、今年はハンネローレが単独で代表を務めている。ヴィルフリートはローゼマインを前へ押し出し、友人同士の会話を優先させた。
ローゼマインは、新刊としてレスティラウトの挿絵入りディッター物語やダンケルフェルガー史が出ていることを嬉しそうに伝える。
しかしハンネローレが最も興味を示したのは、例年通り恋物語の新刊だった。
二人は、今年も本の貸し借りをしようと約束する。
ドレヴァンヒェルからの誘い
ドレヴァンヒェルでは、オルトヴィーンから再び共同研究へ誘われた。
しかしヴィルフリートは、今年はクラッセンブルクやフレーベルタークとの神事研究予定が既に詰まっているとして断る。
オルトヴィーンは、グンドルフと相談して改めて魅力的な研究題材を考える必要があると呟いていた。
ローゼマインは、図書館魔術具作成や印刷業関連研究で既に手一杯であり、これ以上共同研究へ関わる余裕がないと感じていた。
養子縁組増加の理由
ギレッセンマイアーやハウフレッツェでは、新たに養子縁組された領主候補生が増えていた。
これは、神々の御加護を得る方法が広まったことで、専門コース分岐前の血族上級貴族を養子へ迎える動きが各領地で活発化したためだった。
ローゼマインは、読書へ夢中になっていたせいで事前報告をほとんど聞き流していたことをヴィルフリートから呆れられる。
それでも、「大事な読書時間を邪魔しないよう配慮していた」というハルトムートの気遣いには、少しだけ感心していた。
フェルディナンドの魔力供給
アーレンスバッハとの挨拶では、マルティナからフェルディナンドが既に礎への魔力供給へ参加していると知らされる。
星結び前に隠し部屋を与えるという王命への代償として、フェルディナンド自ら申し出たという説明だった。
ローゼマインは、それが本当に自発的な行動なのか、それともアーレンスバッハ側の政治的演出なのか判断できず、不安を覚える。
中央神殿入りの噂
インメルディンクのムレンロイエは、ローゼマインが中央神殿長になるという噂を皮肉交じりに語った。
周囲の領地も、エーレンフェストから「聖女」が取り上げられる状況を半ば面白がっている様子だった。
ヴィルフリートは、まだ何も決定していないと即座に否定する。
さらにローゼマインは、もし自分が中央神殿長になるなら、王族や全領地の領主一族が神事を学ぶため中央神殿へ通う必要があると笑顔で告げた。
ムレンロイエは顔色を変え、それ以降この話題を持ち出す者はいなくなった。
奉納式の日程調整
親睦会後、ローゼマインはハルトムート達から奉納式交渉結果を聞かされる。
共同研究扱いのため講義時間は使えず、土の日を利用して奉納式を行うことが決定した。
中央神殿は一度で済ませるよう求めたが、魔力量差の問題から却下されている。
さらにエグランティーヌは、安全面を考慮し、低学年には一段下の階級の奉納式へ参加させる案を提案した。
コルネリウスとハルトムートの対立
奉納式日程を巡っては、コルネリウスとハルトムートが激しく対立していた。
コルネリウスは、講義で疲弊する最初の週ではなく、三週目へローゼマインの奉納式を回すべきだと主張する。
しかしハルトムートは、ローゼマインが少しでも早くエーレンフェストへ戻りたがっている以上、最初の週で行うべきだと譲らなかった。
二人は王族の前で口論寸前となり、最終的にはエグランティーヌが仲裁して、身分順に奉納式を行う形で決着したのである。
ダームエルやレオノーレは、生きた心地がしなかったと疲労を滲ませていた。
ローゼマインは、自分の保護者達が普段どれほど胃を痛めていたのか、少し理解した気分になるのだった。
初週の講義
講義開始と一年生達の奮闘
親睦会翌日から講義が始まり、学生達は必死に勉強へ取り組み始めた。
講義内容の大幅変更が事前に通達されていたため、ドレヴァンヒェルの学生達が強敵になると予想されていたが、ヴィルフリートはエーレンフェストが以前から旧課程内容を学んでいたことを理由に学生達を励ます。
成人側近達も教師役として協力し、ダームエル、コルネリウス、レオノーレ、ハルトムートが一年生達へ勉強を教えていた。
エグランティーヌへの警告
ローゼマインは自室へ戻ると、ソランジュへ新入生登録予約のオルドナンツを送り、さらにエグランティーヌへ奉納式で何か起こる可能性があると警告した。
エグランティーヌは、領主候補生講義後に詳しい話を聞きたいと返事を寄越す。
しかしローゼマイン自身も、具体的に何が起こるのかは予測できていなかった。
調合実技とヴィルフリート
実技講義では、回復薬調合が課題として出された。
ローゼマインは、フェルディナンドから依頼されていた魔紙調合に比べれば簡単すぎると感じ、時間短縮魔術まで用いて早々に終わらせてしまう。
一方、領主候補生達は薬草を切る手つきも危なっかしく、特にヴィルフリートは大きさを揃えて切ることすら苦戦していた。
ローゼマインは、婚約魔石調合には高度な調合技術が必要だと説明し、ヴィルフリートへもっと調合を練習すべきだと忠告する。
図書館登録とオルタンシア不在
昼休みには、新入生達を連れて図書館登録へ向かった。
シュバルツとヴァイスは、久し振りに訪れたローゼマインを歓迎する。
しかしオルタンシアは不在だった。夏の半ばに夫から突然呼び戻された後、一度も図書館へ戻っていないという。
秋の終わり頃から体調を崩しているらしく、現在は仕事不能状態だとソランジュは説明した。
ローゼマインは、オルタンシアの回復を願いつつも、不在による魔力供給不足を懸念する。
シュバルツ達への魔力供給
シュバルツ達は、オルタンシア不在によって魔力不足になっていた。
ローゼマインは額の魔石へ触れて魔力供給を行いながら、図書委員制度を利用して王族経由で魔力供給者を確保するべきだと提案する。
ソランジュは、ヒルデブラント経由ならオルタンシアの近況も知れるかもしれないと少し表情を明るくした。
音楽実技と祝福要求
午後の音楽実技では、課題曲と自由曲演奏が行われた。
ローゼマインは普通に演奏しただけだったが、教師パウリーネから「祝福が足りない」と指摘される。
神事研究を進める立場なのだから、真剣に祈りながら演奏して祝福を飛ばすべきだと言われたのである。
ローゼマインは指輪へ魔力を込めながら祈りを捧げ、水の女神への祝福を発生させた。
パウリーネは満足したが、ローゼマインは今後奉納舞などでも同様の特別扱いを求められるのではないかと不安を覚える。
特別視への違和感
ローゼマインは、自分だけ祝福を求められることへ強い違和感を抱いていた。
しかしレオノーレは、それこそが王族入り予定者として特別視させるための演出ではないかと指摘する。
周囲から「あの子ならば仕方ない」と納得される状態を作ることで、嫉妬や反発を減らそうとしている可能性があるというのである。
ローゼマインは完全には納得できなかったが、一定の合理性は認めていた。
レティーツィアからの贈り物
ライムント経由で、フェルディナンドとレティーツィアから荷物が届いた。
中にはランツェナーヴェ由来の珍しい玩具や菓子が入っており、レティーツィアからはエーレンフェスト皆で楽しんでほしいと書かれていた。
フェルディナンドは玩具の仕組みに興味を示し、一つ取り上げた代わりにレティーツィアの課題を減らしたらしい。
ローゼマインは、そのやり取りへ呆れながらも少し安心していた。
フェルディナンドからの報告
手紙には、フェルディナンドが既に礎へ魔力供給していること、レティーツィアも供給練習を始めたこと、ランツェナーヴェが帰還し境界門を閉じられたことなどが書かれていた。
また、領地対抗戦でローゼマインが送った料理レシピを買い取りたいとも書かれている。
しかし、以前ローゼマインが気にしていた「ゲドゥルリーヒ」関連質問への返答はなかった。
ローゼマインは、結局直接問い詰めるしかないと考える。
同調薬の真実
次の調合実技では、同調薬作成が課題になった。
ローゼマインは、自信満々に「犯罪者の記憶を覗く際に使う薬」と答えたが、ヒルシュールから「特殊例」と指摘される。
本来この薬は、結婚した男女が互いの魔力へ馴染むために使うものだったのである。
ローゼマインは、フェルディナンドから一般的用途を教わっていなかったことへ衝撃を受ける。
魔力の染まりと誤解
ヒルシュールは、他人の魔力は本来反発するが、薬で染まりやすくして受け入れるのだと説明した。
ローゼマインは、自分がフェルディナンドから同調薬を使われていた事実を思い出し、自分の魔力が既にフェルディナンドへ染められているのではないかと青ざめる。
しかしヒルシュールは、薬の影響は長くても一月程度で消えると説明した。
周囲では、ヴィルフリートが染めた相手なのではないかという誤解まで生じていたが、ローゼマインは記憶閲覧経験者が他にも多数いることを挙げて何とか誤解を打ち消した。
領主候補生講義
領主候補生講義では、礎の模型を魔力で染める実技が行われた。
ローゼマインは圧倒的な速さで模型を染め上げ、供給の間用魔石作成まで進める。
ハンネローレは、その技量へ驚いていた。
ローゼマインは、フェルディナンドの厳しい指導を受け続けた結果、最低限合格できるラインを見極める感覚が身に付いたのだと語る。
アーレンスバッハへの理解
礎供給可能人数について話す中で、ローゼマインはアーレンスバッハの深刻な人材不足を改めて理解する。
成人した供給者がディートリンデとゲオルギーネしかおらず、未成年もレティーツィアしかいない以上、フェルディナンドへ依存せざるを得ない状況だったのである。
それでも、フェルディナンドを酷使している現状へ複雑な感情を抱いていた。
登録メダル講義への嫌悪
次回講義では、登録メダル作成と廃棄を学ぶ予定だと説明される。
ローゼマインは、ハッセで見た処刑風景を思い出し、強い嫌悪感を抱いた。
魔石廃棄が処刑そのものを連想させるためだった。
奉納式と共同研究への本音
講義後、エグランティーヌはローゼマインを呼び止め、奉納式について詳しく質問する。
ローゼマインは、祈りと神具が揃った今年の奉納式では、去年と違って何らかの異変が起こる可能性が高いと説明した。
さらに話は共同研究へ及ぶ。
ローゼマインは、現在のクラッセンブルクとの共同研究は、学生主体ではなく王族とアウブ主導で決定されたものであり、自分達学生の意見は全く反映されていないと不満を吐露した。
講義前半の貴重な休日を潰してまで奉納式を行うことは、エーレンフェスト側へ大きな負担を強いているのである。
エグランティーヌは困惑するが、ローゼマインは、来年以降も続けたいならクラッセンブルク自身が神事を学ぶべきだと告げる。
そして、青色見習い達ですら半年で神事を覚えられたのだから、やる気があれば十分可能だと断言した。
貴族院の奉納式
奉納式前の急な顔合わせ
エグランティーヌとの会話翌日、クラッセンブルクから奉納式前に共同研究について話し合いたいという申し入れが届いた。
しかし、その日は既に奉納式前日であり、時間的余裕は全くなかった。ローゼマイン達は相談した結果、奉納式当日の朝、講堂で短時間の顔合わせだけ行うことに決める。
シャルロッテは、急な時間帯でも面会の場を設けること自体が社交上重要だと説明した。
ヴィルフリートも、自分が中級奉納式担当であり、ジャンシアーヌと事前に顔を合わせておく必要があると理解して同行を決める。
メルヒオール側近達の参加
さらにエーレンフェストから、メルヒオールの側近見習い達が奉納式見学のため貴族院へ来ることも伝えられた。
メルヒオールは、自領奉納式前に側近達へ実地経験を積ませたいと望んでいたのである。
既に貴族院にいるメルヒオール側近達も、講義を早く終わらせてローゼマインと共にエーレンフェストへ戻るよう命じられていた。
ローゼマインは、彼等へ成人側近達による濃密な教育が行われている現状を説明していた。
奉納式当日の準備
奉納式当日、ローゼマインは神殿長用の儀式衣装へ着替え、青色衣装を纏った側近達と講堂へ向かう。
そこには中央神殿の神官達や中央騎士団、さらに最奥の間を開ける役目を担うヒルデブラントもいた。
クラッセンブルク一行も到着し、ローゼマインはまずハルトムート達神殿業務担当者を紹介する。
その後、ヴィルフリートとシャルロッテも正式にジャンシアーヌへ紹介された。
共同研究の方向性
ジャンシアーヌは、クラッセンブルクには神事関連と思われる古い書物が存在し、それを再現する研究を行いたいと説明した。
ローゼマインはその話へ強く興味を示し、古い神事再現を共同研究テーマにする案を提案する。
エーレンフェスト側はハルデンツェルで復活させた春呼びの儀式を研究例として扱えば、無理なく共同研究形態を整えられると考えたのである。
シャルロッテも、ハルデンツェルの事例についてギーベ達から話を聞いているため協力可能だと申し出た。
ローゼマインは、古い書物を書き写した資料をぜひ見せてほしいと期待を高めていた。
中央神殿との対立
儀式準備完了後、ハルトムートはイマヌエルが中央神殿神官達を奉納式へ同席させたがっていると報告した。
しかしローゼマインは、領主会議奉納式で中央神殿神官達が意識を失った事例を理由に拒否する。
どうしても見届けたいなら、下級貴族奉納式へ中央神殿の聖杯を持ち込めと命じ、イマヌエルを退かせた。
最奥の間と奉納式開始
最奥の間では、祭壇、供物、神像、赤いカーペットなどが整えられていた。
クラッセンブルクの学生達は、儀式準備内容を必死に記録していた。
その後、王族、領主候補生、上級貴族達が風の盾による選別を経て入場する。今回は事前に危険性を理解していたため、参加者に脱落者は出なかった。
学生達からは採集場所回復への感謝や、御加護獲得効率についての質問も寄せられる。
ローゼマインは、自分のためではなく「誰かのため」に祈ることが最も効果的だと説明していた。
神具の発光現象
儀式が始まると、参加者達の魔力が赤いカーペットを通じて祭壇へ流れ込んでいく。
やがて祭壇の神具全てが各属性色で輝き始めた。これはエーレンフェスト奉納式では見られなかった現象だった。
さらに七つの光柱が立ち上がり、互いに絡み合いながら一つの塊となって飛び去っていく。
ローゼマインは、神具が複数あることで極めて派手な現象になったと感じていた。
しかし、それ以上の異変は起こらず、奉納式は無事終了する。
図書館への魔力供給
儀式後、ローゼマインは図書館の魔力不足を懸念し、王族へ魔力分配を願い出た。
ジギスヴァルトの口添えもあり、ツェントは快く承諾する。
ローゼマインはシュタープで聖杯を作り、そこへ王族達の魔力を受け取った。
アナスタージウス達は、シュタープで神具を作り出すローゼマインへ改めて呆れていた。
空の魔法陣
図書館へ向かう途中、ローゼマインは貴族院上空の巨大魔法陣が強く輝いていることに気付く。
祭壇前での祈りが引き金となり、魔法陣へ十分な魔力が行き渡った状態になっていたのである。
あと一歩で起動しそうだと感じながらも、その次に何をすべきなのかまではわからなかった。
オルタンシア不在への不安
ローゼマインは、地下書庫鍵管理者であるオルタンシア不在を改めて問題視する。
ジギスヴァルトは、代役上級文官を確保できていない現状を認めつつ、将来的にはジャンシアーヌを図書委員へ加える予定だと説明した。
ローゼマインは、司書不在状態の危うさへ不安を抱いていた。
図書館魔術具への供給
図書館では、ローゼマインが去年と同じ魔術具へ魔力供給を行った。
さらにオルタンシア不在による不足分を補うため、「じじさま」ことメスティオノーラ像側の魔術具へも供給することになる。
ローゼマインは、像が持つグルトリスハイトの魔石へ触れて魔力を流し込んだ。
すると突然、脳裏へ鮮明な魔法陣が浮かび上がる。
神具取得時と似た感覚を覚えた次の瞬間、ローゼマインは真っ暗な空間へ一人立っていた。
じじさまとの対面
暗闇の空間への転移
ローゼマインは、図書館のメスティオノーラ像へ魔力供給を行った直後、真っ暗な空間へ一人で立っていた。
周囲には誰もおらず、側近達も消えている。ローゼマインは、祠へ移動させられた時と似た現象だと考えながら状況を探った。
床へ触れると魔力の線が広がり始め、その魔力が暗闇を洗い流すように景色を浮かび上がらせていく。
そこに現れたのは、巨大な螺旋階段と、壁一面を埋め尽くす本棚を備えた巨大図書館だった。
ローゼマインは、これほど膨大な本に囲まれた光景へ興奮し、神が与えた楽園だと感動する。
偽物の図書館
歓喜したローゼマインは、本棚へ飛びつき背表紙へ触れようとした。
しかし、それは本ではなく壁に描かれた絵のような平面だった。どれだけ叩いても本は取り出せない。
大きく期待した直後に絶望へ叩き落されたことで、ローゼマインはメスティオノーラへ本気で苦情を言いたくなる。
その時、「知識を求める者か」と声が響いた。
ローゼマインが振り返ると、そこには金色のシュミルが立っていた。
金色シュミルの案内
金色シュミルは、ローゼマインへ「来訪者の望みを映す場所」であり、知識を求める意思と資格を確認する場所だと説明する。
つまり、先程の巨大図書館はローゼマイン自身の願望を映した幻だったのである。
金色シュミルは、流暢には喋るものの、返答内容はほぼ固定されていた。
ローゼマインは騎獣へ乗り込み、金色シュミルの後を追って螺旋階段を下りていく。
七色の扉
階段最下層には、七つの魔石が付いた扉があった。
金色シュミルは、「資格があれば開く」と告げる。
地下書庫で弾かれた経験を持つローゼマインは強く警戒するが、恐る恐る触れると魔石が赤く光った。
さらに全体へ触れると、七色全てが輝き、扉が自動的に開いていく。
金色シュミルは、「神々に認められた知識を求める者よ、進め」と告げた。
ローゼマインは本を読む期待に胸を躍らせながら、その先へ飛び込む。
始まりの庭への到達
扉の先は岩肌の洞窟だった。白く光る道を進み、さらに白い螺旋階段を上がる。
その先にあったのは、一年生時に神の意志を得た「始まりの庭」だった。
中央には巨大な白い木が立ち、枝葉の間から光が降り注いでいる。
しかし本は一冊も存在せず、ローゼマインは困惑していた。
白い男の出現
その時、「やっと来たか」という声が響く。
ローゼマインが周囲を探していると、中央の白い大木が徐々に透け、人型へ変化していった。
現れたのは、全身白尽くめの大柄な男だった。長い白髪と白い衣装を纏い、目は閉ざされたままである。
男は開口一番、ユルゲンシュミット全体の魔力不足を理由にローゼマインを叱責した。
何を言われているかわからないまま、ローゼマインはとりあえず謝罪する。
じじさまの正体
ローゼマインが「じじさまか」と尋ねると、男はその呼び名を懐かしいと言った。
しかし男は、ローゼマインの器が以前より縮んでいると指摘し、妙な呪いを受けたのかと尋ねる。
さらに「正規の道で来た」と語り、以前にもローゼマインと会ったことがあるような口ぶりを見せた。
ローゼマインは、自分が誰かと勘違いされているのではないかと困惑する。
アーンヴァックスによる成長
白い男は突然「アーンヴァックス」と呼びかけた。
直後、青い光がローゼマインへ降り注ぎ、全身に激痛が走る。骨や筋肉が強制的に成長し始めたのである。
ローゼマインは悲鳴を上げるが、白い男は「諦めて耐えろ」としか言わなかった。
衣服や靴は急成長した体へ食い込み、呼吸すら困難になる。
ローゼマインは必死に帯や紐を解き、ヴァッシェンで整髪料を洗い流し、シュタープのメッサーで靴下や衣服を切り裂きながら何とか耐え抜いた。
最終的に成長は止まり、ローゼマインは神殿長衣装を着直して最低限の体裁を整える。
白い男との対話
ローゼマインは、勝手に成長させた白い男へ激怒する。
しかし男は、自分には姿ではなく魔力しか見えていないと説明した。
さらに「今回は正規の道を通って来た」と語り、過去にも似た存在と接触していたことを示唆する。
ローゼマインが説明を求めようとするが、男は聞く耳を持たず、すぐにシュタープを出して祈れと命じた。
七色の石板
ローゼマインがシュタープを出した瞬間、そこから七色の光が飛び出した。
光はローゼマインの周囲を巡り、最終的に七枚の石板へ変化する。
ローゼマインは、祠巡りで得た時と同じように、石板の名を順番に唱えていった。
石板は次々に光の柱へ変わり、最後にはローゼマインを囲むように並ぶ。
メスティオノーラへの祈り
白い男は、最高神と五柱の大神へ祈りを捧げ、メスティオノーラの英知を借りたいと願えと命じた。
ローゼマインはその場へ跪き、神々への正式な祈りを捧げ始める。
メスティオノーラの書
メスティオノーラの英知の流入
ローゼマインを囲む七つの光は空へ昇り、直後に膨大な光と知識が降り注ぎ始めた。
流れ込んでくる知識へ抗おうとした瞬間、エアヴェルミーンから「全て受け入れろ」と叱責される。
ローゼマインは、本という形で知識を得たかったと不満を抱きながらも、後で印刷すれば良いと考え、全力で知識を受け止め始めた。
しかし流入する情報は極めて雑多であり、神事知識、神々の逸話、恋愛話、歴代ツェントの記録などが混ざり合っていた。
ローゼマインは、これほど膨大で無秩序な知識を扱うには検索機能付きの書物が必要だと実感する。
重要知識の断片
知識の中には、領地の礎作成法、神殿本来の役割、国境門への魔力供給など、極めて重要な情報も含まれていた。
ローゼマインは、その知識からゲオルギーネが礎を奪う方法へ繋がる可能性を感じ取る。
しかし考え始めた瞬間、エアヴェルミーンは「考えるな」と再び制止した。
知識を整理・吟味すると、受け取りそのものが阻害されてしまうのである。
欠落した歴史
やがて知識は歴代ツェント達の歴史へ移ったが、その内容には大きな欠損があった。
ある王子へグルトリスハイトを託す場面の直後、突然「グルトリスハイトが消えた」と嘆く別場面へ飛ぶなど、歴史が途切れ途切れだったのである。
さらに儀式や魔法陣にも黒塗りされたような欠落部分が存在していた。
ローゼマインは、見せるなら最後まで完全に見せてほしいと強く感じていた。
知識酔いと欠損率
知識の奔流が終わると、ローゼマインは大量読書後のような知識酔い状態に陥った。
エアヴェルミーンから休むよう言われ、その場へ横になる。
整理不能な知識の塊に苦しみながらも、ローゼマインは本来得られるはずだった知識の三〜四割ほどが欠けていることを何となく理解した。
自分の器では完全に受け止め切れなかったのである。
メスティオノーラの知識の正体
ローゼマインは、何故メスティオノーラの英知にはツェントやアウブ関連情報ばかりで、平民や下級貴族の情報が少ないのかを尋ねた。
エアヴェルミーンは、一定以上の魔力を持つ者が死後に魔石となった際、その記憶がメスティオノーラの英知へ加わるためだと説明する。
つまり英知は、歴代ツェントや有力貴族達の記憶蓄積だったのである。
成長後の身支度
意識を取り戻したローゼマインは、散乱した髪飾りや切り裂いた靴下を回収しながら帰還準備を始めた。
急成長で破れた服を何とか整え、簡易鎧を利用して胸元を補強し、神殿長衣装を着直す。
さらに魔石を変形させて靴を作り、最低限の体裁を整えた。
その途中、エアヴェルミーンは「以前の記憶と合わせれば、ほぼ全てを得ているはずだ」と告げる。
ローゼマインは、人違い問題を完全に失念していたことへ青ざめた。
無礼な侵入者の正体
ローゼマインが事情を尋ねると、エアヴェルミーンは十年以上前、正規手段を使わずここへ侵入した「礼儀知らずの愚か者」の話を始める。
その人物は全祠を巡った後、起動していなかった巨大魔法陣へ上空から莫大な魔力を叩き込み、直接始まりの庭へ飛び込んできたという。
ローゼマインは、それがフェルディナンドではないかと気付き始める。
エアヴェルミーンは、ローゼマインとその人物が極めて似た魔力を持ち、さらに最高神の御名まで同じであるため、別人と認識できなかったのだと説明した。
エーヴィリーベの印
ローゼマインは、メスティオノーラの書を具現化して検索を行い、自分が「エーヴィリーベの印を持つ子」であると知る。
それは、死にかけても死なず、体内へ死人のような魔力の塊を持つ特異な身食いを指していた。
この性質を持つ者は、他者から魔力で染められた場合、その影響が極めて長く残る。
ローゼマインは、青色巫女時代にフェルディナンドの同調薬で染められた影響が未だ続いていることを悟った。
その結果、エアヴェルミーンにはフェルディナンドと同一存在に見えていたのである。
クインタの名
エアヴェルミーンは、ローゼマインを染めた相手を「クインタ」と呼んだ。
ローゼマインがフェルディナンドだと答えると、エアヴェルミーンは「本来の名はクインタだ」と説明する。
さらにローゼマインへ触れ、その記憶を読み取った。
そこでローゼマインが別人であることを完全に理解する。
失われた知識の奪取命令
エアヴェルミーンは、フェルディナンドとローゼマインがメスティオノーラの書を分け合った状態になっていると語った。
そして、失われた部分を求めるなら、フェルディナンドを殺してその魔石から知識を奪えと命じる。
それによって完全無欠のツェントになれるというのである。
しかしローゼマインは、その提案を即座に拒絶した。
自分が欲しいのはフェルディナンドを救うための知識であり、フェルディナンドを犠牲にして得る知識ではないと断言する。
その後ローゼマインは、歩行感覚の違和感へ苦労しながらも、忘れ物がないことを確認して始まりの庭を後にした。
帰ってきたわたし
最奥の間からの帰還
ローゼマインが始まりの庭を出ると、そこは講堂最奥の祭壇の上だった。
しかし既に夜になっており、最奥の間は王族でなければ開けられない。ローゼマインは、深夜に王族へ直接オルドナンツを飛ばすのは不敬になると判断した。
そこで筆頭側仕えリーゼレータへ連絡を送り、王族への取り次ぎと、大人用のフード付きマントを持参するよう頼む。
急成長で衣装が破損しており、他者へ見せられる格好ではなかったのである。
グルトリスハイトによる調査
連絡後、ローゼマインは騎獣の中でグルトリスハイトを開き、礎に関する情報を調べ始めた。
そこで、ゲオルギーネがエーレンフェストの礎を奪う方法へ繋がる重要情報を発見する。
ローゼマインは、一刻も早くジルヴェスターへ知らせなければならないと強い焦燥感を覚えた。
しかし焦って歩こうとして転倒し、自分がまだ成長後の身体へ慣れていないことを痛感する。
迎えの到着
しばらく後、礼拝室の扉が開き、ジギスヴァルトとヒルデブラントを先頭に王族達が入室した。
さらにリーゼレータ、コルネリウス、マティアス、グレーティアも同行している。
リーゼレータとグレーティアは、急いでローゼマインへ大人用マントを着せ、散乱していた破れた靴下や布切れも回収した。
ローゼマインは、何とか体裁を整えられたことへ安堵する。
成長への驚き
ヒルデブラントは、急激に成長したローゼマインの姿へ大きな衝撃を受けていた。
ローゼマインは、始まりの庭でエアヴェルミーンが育成の神アーンヴァックスへ成長を願った結果だと説明する。
さらにジギスヴァルトへ、詳しい事情説明は領主会議時まで待ってほしいと頼み、その代わり大至急エーレンフェストへ戻りたいと願い出た。
礎に関する重大情報をアウブへ伝えなければならなかったのである。
ジギスヴァルトは退出と騎獣使用を許可した。
空白の季節
寮へ戻ると、そこは既に人気のない静かな空間になっていた。
ローゼマインは、皆が領地へ帰還済みであり、さらに自分が不在だった期間が「季節一つ分」だと知らされる。
ローゼマインの感覚では数日程度だったため、本気で驚愕していた。
それでもローゼマインは休養より帰還を優先し、翌朝エーレンフェストへ戻ることを決める。
コルネリウスとの再会
コルネリウスは、以前のようにローゼマインの頭を撫でようとして一瞬戸惑った。
見た目が大きく変わり、以前のような幼い妹ではなくなっていたからである。
しかしローゼマインは、自分から彼の手を頭へ乗せ、「撫でてくださいませ」と甘えた。
コルネリウスは複雑な表情を浮かべながらも、以前と同じように頭を撫でてくれた。
新しい姿への実感
自室へ戻ったローゼマインは、グレーティアとほぼ同じ視線の高さになっていることへ改めて驚く。
リーゼレータ達は、急成長させた神々へ怒りを露わにしながらも、ローゼマインが本当に美しく成長していることを喜んでいた。
ローゼマイン自身も、鏡に映る姿を見て「よくここまで美人に育った」と感心する。
一方で、言動が伴わなければ「残念な美少女」になると自戒していた。
ハルトムートの確信
リーゼレータ達によれば、ローゼマイン失踪直後から、ハルトムートは「ローゼマイン様はメスティオノーラに招かれた」と断言し続けていた。
さらに毎日のように「魔力が成長している」と周囲へ語っていたため、皆は半信半疑ながらも大人用衣装準備を進めていたのである。
その結果、ブリュンヒルデの成人用衣装が残されており、ローゼマインは当面それを利用できるようになっていた。
ローゼマインは、ハルトムートの異常な確信へ恐怖を覚えていた。
卒業式裏話
リーゼレータ達は、ローゼマイン不在中の貴族院事情も報告した。
奉納式は無事終了し、ハンネローレはローゼマインを心配して見舞い用の本を貸してくれていた。
また、卒業式ではマティアスがエスコート相手を決められず、最終的にオティーリエへ依頼したことも語られる。
ローゼマインは、自分が主として十分配慮できていなかったのではないかと少し落ち込んでいた。
エーレンフェストへの帰還
翌朝、ローゼマイン達は転移陣からエーレンフェストへ帰還した。
転移の間では、駐在騎士達が急成長したローゼマインを見て驚愕と拒絶混じりの反応を見せる。
ローゼマインは、その視線によって自分の存在が常識外れであることを改めて自覚してしまった。
そんな中、マティアスだけは自然に接し、ローゼマインを安心させる。
家族達の反応
帰還後、ボニファティウス、ジルヴェスター、フロレンツィア、ヴィルフリート、シャルロッテ、メルヒオール達が出迎えた。
皆が成長したローゼマインへ驚く中、ローゼマインは即座に「礎に関する重大情報がある」とジルヴェスターへ告げる。
ジルヴェスターもただちに表情を引き締め、二人だけで話す準備を始めた。
一方、メルヒオールはハルトムートから聞かされていた「神々に招かれた」という話が本当だったのだと感動していた。
ローゼマインは、またしてもハルトムートによる聖女伝説強化へ頭を抱えていた。
ボニファティウスの抱き上げ
まだ体へ慣れていないローゼマインは、歩いている途中で何度も足をもつれさせた。
するとボニファティウスは、無造作にローゼマインを抱き上げて運び始める。
ローゼマインは、成長後でも自然に接してくれる祖父へ安心感を覚え、そのまま甘えることにした。
礎の魔術
領主執務室での転倒
ローゼマインは、ボニファティウスに抱き上げられたまま領主執務室へ到着した。
カルステッド達も、成長したローゼマインが祖父に抱えられて現れるとは予想しておらず驚いていた。
執務室へ入った後、ローゼマインは慎重に歩こうとしたが、扉の音に振り返った瞬間に足をもつれさせて派手に転倒する。
ジルヴェスターは、重大な話を聞くため緊張して待っていたにもかかわらず転ぶローゼマインを見て吹き出した。
ローゼマインは、急成長した身体へまだ全く慣れていないのだと説明し、しばらく城内移動へ騎獣使用を許可してほしいと頼む。
成長後の違和感
ジルヴェスターは、外見だけなら完全に聖女なのに中身が伴っていないと苦笑する。
ローゼマインは、中身などそう簡単に変わるものではないと返し、養父も似たようなものだと含みを持たせた。
ジルヴェスターも、それについては強く否定できなかった。
二人は改めて席に着き、礎に関する本題へ入る。
礎の場所の真実
ローゼマインは、ゲオルギーネが礎を奪う方法について確証はないものの、聖典盗難事件を踏まえると間違いないと思うと前置きした。
その上で、各領地の礎は城ではなく「神殿の礼拝室の真下」に存在すると告げる。
ジルヴェスターは完全に言葉を失った。
領主の自室から礎へ繋がる扉や鍵の存在によって、誰もが礎は城内にあると思い込んでいたのである。
しかし実際には、神殿こそが本来の入り口だった。
神殿長と聖典の鍵
ローゼマインは、建国初期には次期アウブが神殿長を務めていたと説明する。
神事を行い、御加護や魔力を増やすために神殿長は極めて重要な役職だったのである。
そして、神殿長が継承する「聖典の鍵」こそが、神殿から礎へ向かう扉を開く本来の鍵だった。
そのため、大昔は領主が急死しても、次期アウブは神殿側から礎へアクセスできたのである。
しかし時代が下るにつれ、神事と政治が切り離され、その本来の役割も忘れ去られていった。
ゲオルギーネへの情報流出
ローゼマインは、ゲオルギーネが前神殿長との手紙のやり取りから礎情報を得た可能性を指摘する。
ジルヴェスターは、かつて叔父の遺品として前神殿長の手紙をゲオルギーネへ渡したことを思い出した。
魔術的細工はないと判断していたが、暗号による情報伝達までは考慮していなかったのである。
ジルヴェスターは、自らの判断が情報流出へ繋がった可能性へ強い疲労感を滲ませていた。
神殿襲撃の危険性
ローゼマインは、ゲオルギーネが狙っているのは城側の入口ではなく、神殿側の入口だと推測する。
聖典盗難事件そのものが、その前段階の行動だった可能性が高いのである。
神殿は青色神官中心で守りが薄く、ローゼマインやメルヒオールが不在になる冬の社交界、春の祈念式、秋の収穫祭は特に危険だった。
ジルヴェスターは、これまで全く神殿側を警戒していなかったことへ衝撃を受ける。
ローゼマインは、防衛方法や情報公開範囲の判断はアウブの仕事だと告げた。
ゲオルギーネ襲撃時期の推測
ジルヴェスターは、ゲオルギーネが動くなら春の祈念式時期が最も怪しいと判断する。
ローゼマイン失踪によって神殿の守りが弱いと他領に認識されていること、さらにフェルディナンドが本館へ正式移住する前に勝負をかけたいはずだからである。
加えて、ランツェナーヴェ由来と思われる銀の布があれば、境界突破も容易になる。
ローゼマインも、フェルディナンドの手紙で「情報を得にくくなった」と書かれていたことを思い出していた。
グルトリスハイトへの確信
話を終えた後、ジルヴェスターはローゼマインへ「その知識をどこで得たのか」と尋ねる。
ローゼマインは、どこだと思うかと逆に問い返した。
しばらく沈黙した後、ジルヴェスターは「まさか、本当に得たのか」と呟く。
ローゼマインは、七割にも満たず重要部分も抜け落ちていて使い勝手は悪いと答えながらも、事実上それを認めた。
ジルヴェスターは、ローゼマインが本当にグルトリスハイトへ到達したのだと理解する。
聖典の鍵確認
最後にローゼマインは、すぐ神殿へ戻って聖典の鍵を確認したいと申し出る。
聖典自体がすり替えられていた以上、鍵にも何らかの細工が施されている可能性があるからである。
ローゼマインは、聖典なら本物かどうか見分けられるが、鍵に関しては全く自信がないと真顔で語った。
ジルヴェスターは頭を抱えながらも、すぐ確認するよう命じるのだった。
聖典の鍵
城での採寸予定
ローゼマインは、神殿へ戻る準備を進めながら、翌日に再び城へ戻って採寸を受ける約束をリーゼレータ達と交わした。
急成長によって既存の衣装が全て合わなくなっており、領主会議までに新しい衣装を整える必要があったのである。
フロレンツィア、シャルロッテ、エルヴィーラ専属の針子達まで呼ばれる予定となっていた。
ベルティルデは、貴族院ではほとんど役に立てなかったことを悔やみ、自分にも衣装選びを任せてほしいと申し出る。
ローゼマインは、彼女へ夏用衣装一着の注文を任せることで励ました。
ブリュンヒルデへの贈り物
ローゼマインは、結婚準備中のブリュンヒルデへ退職祝い兼結婚祝いとして髪飾りを贈りたいと考える。
そのため、ベルティルデへ姉を呼び出してほしいと依頼した。
ベルティルデは、姉がきっと喜ぶと嬉しそうに返答する。
ローゼマインは、正式に第二夫人となって側近を離れるブリュンヒルデへ感謝を示したかったのである。
神殿への帰還準備
ローゼマインは、神殿で確認すべき用件だけ済ませれば翌日には戻ると説明しながら、同行者を振り分けていく。
ハルトムートとフィリーネは同行、ローデリヒとクラリッサはハンネローレから借りた本の写本担当となった。
護衛騎士も神殿組と城待機組へ分けられ、コルネリウスやレオノーレは騎士団対応のため城側へ残される。
側仕え達は、急変した体格へ対応するため慌ただしく荷造りを進めていた。
神殿側近達の反応
神殿へ到着したローゼマインを見た神殿側仕え達は、驚きながらも拒絶ではなく感嘆に近い反応を示した。
これは、ハルトムートが「神々の祝福によって成長した」と熱心に語り続けていた影響だった。
モニカは、神々の祝福によって本当に美しく成長したのだと感動していた。
フランとギルも、長年仕えてきた主の成長を純粋に喜んでくれる。
ローゼマインは、ハルトムートの布教活動が気持ち悪いと思いつつも、自分が自然に受け入れられた理由でもあると理解していた。
神殿での確認事項
神殿長室へ戻ったローゼマインは、儀式衣装や普段着の調整についてフラン達へ指示を出した。
その後、今回神殿へ戻った最大の目的が「聖典の鍵の確認」であると明かす。
新たな事実が発覚し、鍵自体を調べ直す必要が出てきたのである。
フランはすぐに聖典の鍵を準備し始めた。
銀の布への警戒
ローゼマインは、ダームエルとアンゲリカへ下町全ての門を警戒するよう命じた。
銀の布を纏った人物が侵入してこないか注意し、発見しても決してその場で騒がず騎士団へ連絡するよう伝える。
相手が高位貴族である可能性が高かったためである。
マティアスは、銀の布という単語からゲルラッハ関連を察していた。
ゲルラッハ調査願い
マティアスは、ボニファティウスと共に発見したゲルラッハ内の隠し小屋を確認したいと願い出る。
そこには罠付き魔術具が隠されており、状況確認が必要だったのである。
ローゼマインはボニファティウスへ連絡を取った。
するとボニファティウス本人が同行を決定し、回復薬を大量に準備するよう命じる。
マティアスは、もうエーレンフェストを荒らされたくないと強い決意を語っていた。
優秀な側近達
ラウレンツは、既にユーディットへ連絡済みであり、ボニファティウスと共に神殿へ来てもらう段取りまで整えていた。
ローゼマインは、自分の側近達の有能さへ素直に感心していた。
その後、フランから聖典の鍵を受け取る。
ローゼマインは、護衛不要と告げて隠し部屋へ一人で籠もった。
聖典の鍵の正体
隠し部屋でグルトリスハイトを開き、聖典の鍵について検索したローゼマインは衝撃の事実を知る。
鍵には領地色を示す魔石が存在するが、エーレンフェストのはずの鍵は薄い藤色だった。
つまり、その鍵はアーレンスバッハの聖典の鍵だったのである。
ローゼマインは、自分が今までその鍵で普通に聖典を開いていた事実へ愕然とした。
聖典と鍵の関係
さらに調べると、聖典の鍵は礎とは対になっているが、聖典自体とは対になっていないことも判明する。
ツェントが作るため物理形状はどの領地でも同じであり、聖典と鍵へ登録された魔力さえ一致していれば使用可能だったのである。
大昔の神殿長達にとって聖典は、メスティオノーラの書取得までの教科書に過ぎなかった。
そのため、交換前提で作られていたのである。
エーレンフェスト崩壊の危機
ローゼマインは、もしゲオルギーネの目的が「エーレンフェストを壊すこと」ならば最悪だと気付く。
礎の魔力を空の魔石などで急激に奪えば、領地全体は白い砂漠へ戻り、街も農村も崩壊する可能性があるのである。
その後に礎を奪えば、魔力消耗後のため比較的容易に染め替え可能になる。
本来なら許されない暴挙だが、現在のツェントはグルトリスハイトを持たないため、それを裁くことができなかった。
ローゼマインは、正当なグルトリスハイト保持者によるツェントの必要性を痛感する。
未完成のメスティオノーラの書
しかしローゼマイン自身のメスティオノーラの書は欠損が多く、大規模魔術用の魔法陣も虫食い状態だった。
完全版を得るか、地下書庫奥の写本を確保しなければ、本格的対抗手段は取れないのである。
ローゼマインは、一人で考えても限界だと判断し、すぐジルヴェスターへ知らせることを決めた。
その上で、聖典の鍵を自ら保管し、神殿の警戒強化も始めるのだった。
採寸と焦燥
衣装準備と焦燥感
ローゼマインは神殿から城へ戻り、ジルヴェスターへ「新事実が発覚したので話す時間がほしい」とオルドナンツを送った。
しかしジルヴェスターは、防衛計画の見直しやボニファティウスの出動対応で多忙を極めており、面会は翌日の夕食後になった。
通常なら異例の早さだったが、ローゼマインには一刻も早く報告しなければならない内容だったため、ひどく待たされているように感じられる。
一方、リーゼレータやオティーリエ達は、急成長したローゼマインの衣装準備へ追われていた。春の終わりには中央移動が決まっているにもかかわらず、準備済みだった衣装は全て作り直しになってしまったのである。
新しい衣装の方針
側近達は、春服と夏服を短期間で揃えるため、事前に大まかなデザインを決めようとしていた。
グレーティアやベルティルデ、クラリッサ、レオノーレまで加わり、衣装会議が始まる。
ローゼマインは、自分の雰囲気が以前より大人びたため、従来の可愛らしい衣装が似合わなくなっていることを理解していた。
そこで、ブリュンヒルデの衣装を基礎にした大人向けデザインを提案する。
さらにフェルディナンドから届いていたアーレンスバッハの薄布を利用し、花弁のように布を重ねる夏服案まで示した。
ベルティルデは、その新しいデザインへ目を輝かせていた。
慣れない身体
夕食時、ローゼマインは急成長した身体へまだ慣れていないことを痛感する。
以前と同じ感覚で食事をすると、皿やカトラリーが大きな音を立てたり、口とスプーンの位置が噛み合わなかったりするのである。
リーゼレータから「昨日よりは慣れた」と言われても、ローゼマイン自身にはまだ強い違和感が残っていた。
その夜は、ジルヴェスターへの報告が間に合わず大変なことになる夢まで見てしまい、焦燥感から寝不足になる。
採寸会の開始
翌日、ローゼマインは専属針子達を集めた採寸会へ向かった。
フロレンツィア、シャルロッテ、エルヴィーラ、ブリュンヒルデの専属達まで総動員され、午前は衣装、午後は靴や小物という大規模な日程が組まれている。
その中で、ローゼマインはトゥーリの姿を発見した。成人したことで城への出入りを許可され、正式にローゼマイン専属として中央同行を視野に入れられていたのである。
ローゼマインは、成長した自分の姿をトゥーリへ見せられることを心から嬉しく感じていた。
トゥーリとの再会
トゥーリは採寸担当としてローゼマインへ近付き、巻尺で丁寧に身体を測り始めた。
神殿から「神々の祝福によって成長した」と聞かされていたが、本当に神の力が働いたようだと感心する。
ローゼマインは、育成の神アーンヴァックスのおかげだと説明しながら、成長後もトゥーリ製の髪飾りを使い続けていることを示した。
トゥーリは、長く使えるよう工夫して作ったのだと誇らしげに微笑む。
ローゼマインは、密かにトゥーリとの身長差を比較し、自分はまだ少し背が低いのではないかと気にしていた。
不穏な予感
トゥーリは、冬の初めに突然衣装作り中止を命じられたことで、ローゼマインへ何か悪いことが起きたのではないかと心配していたと打ち明ける。
しかしローゼマインは、むしろ本当に危険なのはこれからだと感じていた。
ゲオルギーネ襲撃や聖典の鍵問題、祈念式時期の危険性は全て推測段階であり、決定的証拠は何もない。
それでもローゼマインは「何かが起こっても、わたくしが守ります」と断言する。
その言葉を聞いたトゥーリは、一瞬表情を強張らせながらも、ローゼマインの笑顔を見て何も追及しなかった。
終わらない不安
採寸後は、皆でデザインを最終決定していった。
シャルロッテが冬の貴族院用お揃い衣装案を提案するなど、穏やかな会話も交わされる。
しかしローゼマインは、一日がかりの衣装準備をこなしながらも、まだジルヴェスターとの重要な話し合いが終わっていないことへ焦りを抱え続けていた。
守る方法
アーレンスバッハの鍵発覚
夕食後、ローゼマインは領主執務室でジルヴェスターへ聖典の鍵について報告した。
現在神殿長として保管している鍵は、エーレンフェストの物ではなく、アーレンスバッハの聖典の鍵だったのである。
ローゼマインは、鍵の小さな魔石が領地色を示していると説明し、その色がアーレンスバッハの色であることを示した。
さらに、ゲオルギーネは領地継承ではなく、エーレンフェストそのものを壊すことを目的にしている可能性があると推測を語る。
鍵が持つ政治的危険
ジルヴェスターは、アーレンスバッハの鍵がエーレンフェスト側に存在するだけで、いくらでも罪を被せられると指摘した。
エーレンフェストがアーレンスバッハを狙っている、フェルディナンドが混乱工作をしている、鍵奪還を名目に侵攻するなど、全て侵略理由になり得るのである。
しかも、神殿育ちであるローゼマインとフェルディナンドが疑われれば、葬儀訪問時に盗んだと主張される危険もあった。
ローゼマインは、その悪意ある利用法の多さへ愕然としていた。
ツェントへの迷い
ローゼマインは、王の養女となって正式にツェントになれれば、もっと多くの対抗策を打てるのではないかと相談する。
地下書庫奥の写本グルトリスハイトを得られれば、欠損の多い現在の知識を補えるからである。
しかしジルヴェスターは、エーレンフェストの礎を守るのはアウブの役目であり、ツェントの力を借りる問題ではないと語った。
さらに、ローゼマインは身内には過保護だが、それ以外には無関心な性格であり、本当にユルゲンシュミット全体を守るツェントになれるのかと問い掛ける。
ローゼマインの本心
ローゼマインは、自分が欲しいのは大切な人達を守る力であり、別にツェントになって国を治めたいわけではないと本音を漏らした。
むしろ、できる人がいるなら面倒事を丸投げしたいとさえ思っている。
読書時間が減り、本を手に入れにくくなる環境など望んでいないのである。
ジルヴェスターは、そのくらい理解していると返し、期限が来るまで王族への移動など放置しておけと告げた。
王族への不満
ジルヴェスターは、王族達がグルトリスハイトも持たぬまま威張り、フェルディナンドやローゼマインを次々と利用してきたことへ強い不満を露わにする。
本来ユルゲンシュミットを守るのは王族の役目であり、ローゼマイン一人へ背負わせるべきではないと考えていたのである。
さらに、もしローゼマインがグルトリスハイトを完成させたなら、「自分達のことは自分達でやれ」と王族へ突き返せば良いとまで言い放つ。
ローゼマインは、アナスタージウスの顔面へグルトリスハイトを叩きつける想像をして思わず笑ってしまっていた。
フェルディナンドの役目
ローゼマインは、グルトリスハイトを使わずにゲオルギーネを止める方法を尋ねた。
ジルヴェスターは、最も確実なのはフェルディナンドへ「手段を選ばず殺せ」と命じることだと答える。
フェルディナンドは、その覚悟込みでアーレンスバッハへ行ったのである。
しかしジルヴェスターは、そんな命令を出したくないと苦々しく語った。
ローゼマインもまた、フェルディナンド一人へ全責任を押し付けることなどできないと首を振る。
防衛方針の決定
現在はまだ相手から実際の攻撃が始まっていない以上、こちらから先制攻撃するわけにはいかず、防衛強化が優先されることになった。
ローゼマインは、神殿を第二の家だと考えており、灰色神官や孤児達を犠牲にしたくないと明言する。
そのため、避難訓練まで実施するつもりだった。
ジルヴェスターも、危険は今日明日のことではない以上、不安に押し潰されるより迎撃方法を考えるべきだと諭す。
神殿図書室への罠
ジルヴェスターは、礎への入口がある神殿図書室へ転移陣を設置し、侵入者を白の塔へ転送する作戦を考えていた。
銀の布を纏った侵入者でも、礎の魔術を扱うためには最後に布を脱がざるを得ない。
そこで、鍵を開けて中へ入ろうとした瞬間を狙って転移させるのである。
転送先はヴェローニカが閉じ込められている白の塔であり、ジルヴェスターは「姉上の隣に部屋を用意する」と悪戯好きのような笑みを浮かべていた。
ローゼマインの協力
図書室に設置する転移陣について、ジルヴェスターは本来フロレンツィア達へ魔法陣刺繍を頼むつもりだった。
しかしローゼマインは、一晩で消えるインクを使って魔法陣を描けば良いと提案する。
刺繍より遥かに早く設置でき、見た目にも転移陣だと気付かれにくいのである。
ジルヴェスターは、「結局いつの間にか其方が中心になっていないか」と呆れながらも、その案を許可した。
新たな案内役
ただしローゼマインは、図書室まで案内した人物が口封じに殺される危険性へ気付く。
そこで、人ではなく図書室へ案内でき、さらに攻撃されても反撃可能な存在を思い付いた。
ローゼマインは、図書室案内役としてシュバルツ達を新たに作ると宣言する。
戦いの準備
シュバルツ案への疑問
ローゼマインが神殿防衛用のシュバルツ達を作ると言い出すと、ジルヴェスターは困惑した。
図書館型魔術具には大量の属性と魔力が必要であり、中央へ移動した後の維持者が存在しないからである。
さらに、怪しげな魔術具へゲオルギーネ達が警戒する可能性も指摘した。
しかしローゼマインは、用途を絞れば必要魔力を減らせるはずだと考え、門番達の支援に特化した戦闘型シュミルを構想し始める。
神殿防衛の発想
ローゼマインは、灰色神官達に多数の防御魔術具を持たせるのは魔力量的に難しいと説明した。
そのため、門を守る側へ魔石を持たせ、必要時だけ起動する省魔力型シュミルの方が有効だと考える。
一方ジルヴェスターは、礎の入口付近へさらに罠を仕掛けることも検討していた。
ローゼマインも、落石や転倒用の石など、侵入者を妨害する案を次々と出していく。
ゲルラッハ警戒
ゲオルギーネ侵入経路としては、やはりゲルラッハが最有力と考えられていた。
ボニファティウスとマティアスの調査では、まだ侵入痕跡は見つかっていない。
銀の布を使えば境界突破は可能だが、全身を覆う必要があり、騎獣やシュタープが使えないため移動手段に制約があるのである。
ローゼマインは、戦いへ備えて回復薬や魔術具を大量生産するべきだと提案した。
宝盗りディッターの経験
ローゼマインは、宝盗りディッター経験者達の知識を活用するべきだと主張する。
自身が三年時に使用した妨害魔術具も有効だと説明した。
光による目潰しや虫を降らせる魔術具は、魔力攻撃ではなく物理的妨害なので、銀の布を纏った相手にも効果があるからである。
さらにローゼマインは、銀の布を纏った侵入者へ兵士をぶつけたり、汚物を浴びせて布を脱がせる案まで出した。
ジルヴェスターは、その容赦ない発想へ引き気味になっていた。
フェルディナンドへの相談
ローゼマインは、フェルディナンドへ料理と手紙を送り、助言を求めたいと提案する。
しかしジルヴェスターは、ゲオルギーネへローゼマイン復活を悟られないため、エーレンフェスト名義で送るべきだと判断した。
その後、ローゼマインは神殿と図書館へ人員を分散させ、回復薬と魔術具を同時並行で作る体制を整えていく。
ハルトムート達の協力
自室へ戻ると、ハルトムートが待ち構えていた。
彼は、メルヒオールへ神殿業務を引き継ぎ済みであり、ローゼマインへ同行することを最優先にしていたのである。
ハルトムートは、回復薬程度なら騎士や側仕えでも調合可能だと説明し、領主一族側近全員を調合へ動員する案を示した。
ローゼマインは、その合理性へ納得する。
クラリッサの準備
クラリッサもまた、自身の成果を誇らしげに報告した。
広域魔術補助魔術具の改良や、大量の魔紙作成を進めていたのである。
ローゼマインは、魔紙があれば神殿防衛用シュミル作成へ全力を注げると大いに喜んだ。
さらにリーゼレータから、ヒルシュールとフェルディナンドが完成させた「検索特化型シュミル魔術具」の存在も知らされる。
アドレット誕生
ローゼマインは、その検索用魔術具を確認しながら、新しい魔術具の名前を考え始めた。
本人は「ケンサク」や「オパック」を提案したが、貴族院で既にリーゼレータが「アドレット」と呼んで可愛がっていたため、その名前が採用される。
ローゼマインは少し不満だったが、周囲に馴染んでいるなら仕方ないと受け入れた。
メスティオノーラの書による調査
ローゼマインは、より高度な戦闘型シュミルを作るため、隠し部屋でグルトリスハイトを用いた検索を始める。
図書館関連の魔術具情報は膨大であり、貴族院図書館が極めて重要な施設だったことを改めて実感した。
さらに、知識欠損箇所からフェルディナンドがどの分野へ興味を持っていたかまで推測し始める。
フェルディナンドは、興味対象へいちいち思考を巡らせてしまうため、知識受け入れへ抵抗してしまったのではないかと考えていた。
革袋の秘密
その後、ローゼマインは「大変結構」が入っていた革袋の二重底へ気付く。
中には、白い紙に包まれた小さな魔石と、フェルディナンドのメモが入っていた。
そこには「クインタという者の名捧げの石」であり、自分が取りに来るまで触れず保管してほしいと書かれている。
ローゼマインは、クインタがフェルディナンドの本名であることを思い出し、これはフェルディナンド本人の名捧げ石だと気付いて衝撃を受けた。
フェルディナンドへの想い
ローゼマインは、なぜこんな重要な物を自分へ預けたのか理解できず混乱する。
しかし同時に、自分なら他人の名捧げ石を勝手に受け取らないと見越して預けたのだろうとも理解した。
ローゼマインは、フェルディナンドの命運を握る石へ触れる覚悟などないと考え、そのまま革袋へ戻す。
そして、こんな大切な物を安全に持てないほど、アーレンスバッハが危険な場所なのだと痛感していた。
戦闘特化シュミル完成
その後、ローゼマイン達は戦闘用シュミル作成と避難訓練を進めていった。
最終的に、物理攻撃と魔力攻撃の両方へ反撃できる戦闘特化型シュミルを三体完成させる。
これらは神殿三門を守るために配置され、門番の魔石を主認識装置として起動する仕様になっていた。
ハルトムートによれば、全属性と高品質素材が必要な極めて高度な魔術具であり、作れる者はほとんど存在しないという。
それでも、シュバルツとヴァイスより遥かに省魔力化されており、神殿防衛の切り札として期待されるのだった。
カミルの洗礼式
春の洗礼式への強い希望
工房で調合を続けるうちに冬の成人式が終わり、春の洗礼式が迫っていた。ローゼマインは、カミルが神殿へ来る洗礼式であり、自分がエーレンフェストで行える最後の儀式でもあるため、神殿長として儀式を行うことを強く望んだ。
メルヒオールは、ローゼマインが人前に出ない方が良い状況であることを理由に、自分が儀式を行うと申し出た。しかしローゼマインは、最後にエーレンフェストの平民達へ祝福を贈りたいと訴え、ジルヴェスターにも願い出て、春の洗礼式を担当する権利を得た。
最後の神殿長衣装
モニカとニコラは、ローゼマインへ儀式用衣装を着せながら、これが最後になることを寂しがった。ローゼマインも、成長後の身体に合わせた着付けへ二人がようやく慣れたところで別れることに寂しさを覚えた。
一方、フィリーネにはローゼマインが青色巫女見習い時代に使っていた儀式用衣装が譲られていた。ローゼマイン工房の紋章はそのまま残され、フィリーネの後ろ盾を示すものとして使われることになっていた。
フランが語った神殿の変化
礼拝室へ向かう途中、フランはローゼマインが神殿にもたらした変化を語った。孤児院に押し込められていた灰色神官達は食事と仕事を得て、製紙業や印刷業を支える存在となった。
また、平民達は本物の祝福を受けることで真剣に祈るようになり、貴族達も神殿へ出入りするようになった。さらに孤児から貴族となる者も現れ、メルヒオールが次代の神殿長となることで、領主一族が神殿を守る体制も確約された。
カミルを見つけた洗礼式
礼拝室へ入ったローゼマインは、成長した自分を見て驚く子供達の反応を楽しみながら壇上へ進んだ。かつて必要だった踏み台も、今はもう不要になっていた。
壇上から子供達を見回したローゼマインは、後方に並ぶカミルを見つけた。カミルはギュンターに似た青い髪と、昔のトゥーリを思わせる顔立ちをしており、プランタン商会の見習い教育を受けているため姿勢も良かった。
エーファが染めた布で晴れ着の縁取りがされており、ローゼマインはその工夫から家族との繋がりを感じ取った。
最後の祝福と家族との距離
ローゼマインは聖典の物語を読み、祈りの仕方を教え、子供達へ祝福を贈った。最後の祝福であるため少し強めの光が溢れたが、トゥーリの成人式での暴走よりは抑えられていた。
儀式後、扉の向こうにはギュンター、エーファ、トゥーリ、ルッツがいた。ギュンターとエーファは成長したローゼマインに驚きつつも、嬉しそうに笑っていた。
ローゼマインは家族の輪に入れない自分の立場を改めて感じ、中央へ行けばこのような些細なやり取りすら難しくなることに寂しさを覚えた。
防衛会議への招集
儀式後、城からオルドナンツが届いた。祈念式の日程とエーレンフェスト防衛について、領主一族で話し合うことになったのである。
ローゼマインは、コルネリウス、ハルトムート、リーゼレータを連れて会議へ向かうことを決めた。一方で、ダームエル、アンゲリカ、マティアス、ラウレンツ、フィリーネを神殿に残し、神殿と孤児院の防衛体制を整えさせた。
神殿で何か起きた場合には、ダームエルやフィリーネを通じて下町の門や孤児院へ連絡を回す手順も確認し、ローゼマインは感傷に浸る間もなく防衛対応へ移るのだった。
防衛についての話し合い
中央移動準備の進行
城へ戻ったローゼマインを、オティーリエ、リーゼレータ、グレーティアが迎えた。
クラリッサとローデリヒは図書館で魔紙作成と調合を続けており、クラリッサの厳しい指導によってローデリヒの調合技術は大きく向上していた。ユーディットもまた、攻撃用魔術具の作製を教え込まれていた。
ローゼマインは、中央へ移動する以上、側近達が中央で侮られないだけの技術を持つ必要があると考えていた。
また、中央移動準備も着実に進められていた。神殿の隠し部屋に残っていた素材は図書館工房へ運ばれ、大半の物品はフィリーネへ譲る予定となっている。
防衛会議の開始
午後、ローゼマイン達が会議室へ到着すると、室内には重苦しい空気が漂っていた。領主夫妻と側近達に加え、騎士団上層部まで集まっていたのである。
ジルヴェスターは、ゲオルギーネが礎の魔術へ到達する方法を知っている可能性が高く、襲撃時期として祈念式期間が怪しいと説明した。
さらに、ゲルラッハの夏の館でゲオルギーネ本人が「エーレンフェストの礎を手に入れられそう」と発言していたこと、聖典盗難事件や粛清の流れも含め、襲撃計画の存在はほぼ確実だと語られる。
フェルディナンド不在の危機
ジルヴェスターは、フェルディナンドがアーレンスバッハで西の離れへ隔離されているため、ゲオルギーネの情報収集が困難になっていると説明した。
そのため、フェルディナンドが正式に領主一族として動けるようになる前、つまり領主会議での星結び前後に襲撃が起きる可能性が高いと予測されていた。
皆が緊張した表情になる中、ジルヴェスターは防衛配置を順番に説明していく。
各自の防衛担当
ジルヴェスター自身は礎を守るため礎の間へ籠もり、カルステッド達はエーレンフェスト全体の防衛、ボニファティウスは地方ギーベ領の救援へ向かう役割を担うことになった。
さらに、フロレンツィアとシャルロッテは城、ヴィルフリートは貴族街、メルヒオールは神殿と下町を担当するよう命じられる。
シャルロッテは、自分達女性領主候補生まで前線へ立つことへ不安を見せたが、ジルヴェスターは「礎を守れぬアウブはアウブではない」と厳しく言い切った。
ローゼマインは、幼少時から騎士訓練を受けてきたヴィルフリートと違い、シャルロッテが戦いへ慣れていないことを感じ取っていた。
ローゼマインの役割
ローゼマイン自身には固定担当が与えられなかった。王族からいつ召喚命令が来るかわからないためである。
その代わり、不在になった者の穴埋め役として行動するよう命じられた。祈念式期間中に襲撃が起きた場合、直轄地巡回へ出ている領主候補生の代わりを務めるのである。
ローゼマインは、襲撃時に自分だけ行動指針がない状態を嫌がり、きちんと役割を与えてほしいと要求した。
するとヴィルフリートから、毎年ダンケルフェルガーと宝盗りディッターをしている領主候補生など他にいないと指摘され、ローゼマインは反論できなくなった。
領内結束の変化
戦いへの備えとして、各地では若い世代と引退世代が協力して罠や魔術具の情報共有を始めていた。
さらに、ライゼガング系と旧ヴェローニカ派も、共通の敵であるゲオルギーネに対抗するため歩み寄り始めている。
ローゼマインは、外敵の存在が領内をまとめる好機になっていると感じていた。
神殿防衛用シュミル
会議の終盤、ヴィルフリートから神殿防衛用魔術具について尋ねられたローゼマインは、完成済みだと胸を張った。
三体の戦闘用シュミルが既に神殿の門へ配置されており、普段は停止しているが、防衛時には極めて強力な反撃能力を発揮する。
ローゼマインは本来、赤・青・黄の戦隊風配色を望んでいたが、リーゼレータの趣味でピンク、水色、クリーム色になり、リボンやレースまで付けられていた。
可愛らしい外見に反して、フェルディナンドの護符に刻まれていた反撃魔法陣を複数搭載しており、防衛能力は非常に高かった。
突然のフェルディナンドの声
ローゼマインがシュミル達の性能を説明している最中、突然「ローゼマイン!」というフェルディナンドの声が頭へ直接響いた。
驚いて周囲を見回した瞬間、ローゼマインは自分の身体が虹色の光に包まれたように感じるのだった。
目にした危機
突然の転移
フェルディナンドの声が頭へ響いた直後、ローゼマインの視界は突然切り替わった。
気付けばそこは、アーレンスバッハの供給の間だった。白い空間の中央では、天球儀のように魔石と魔法陣が回転している。
その場には、苦しそうに胸元を押さえて膝をつくフェルディナンドと、駆け寄るレティーツィアの姿があった。
しかしローゼマインは、声を掛けても触れようとしても二人へ干渉できず、自分が映像を見せられているだけの存在だと悟る。
名捧げ石の託付
フェルディナンドは震える手で薬を飲み込み、名捧げ石入りの金属籠を外してレティーツィアへ渡した。
そして「ユストクスに行けと伝えろ」と命じる。
レティーツィアは真っ青な顔で籠を抱え、急いで供給の間から出ていった。
彼女が去った瞬間、フェルディナンドは床へ倒れ込み、起き上がることもできなくなる。
ローゼマインは癒しや薬を与えたくても何もできず、ただ見守るしかなかった。
虹色の守り
苦しむフェルディナンドの胸元からは、淡い虹色の光が広がっていた。
ローゼマインは、それが自分の魔力で作ったお守りの力だと直感する。
まるでお守りがフェルディナンドの命を繋ぎ止めているようだった。
しかしフェルディナンドの呼吸は浅く短く、状況は明らかに危険だった。
ディートリンデの来訪
そこへ銀の布のマントを纏ったディートリンデが現れる。
フェルディナンドが明らかに危険な状態であるにもかかわらず、彼女は心配する素振りすら見せなかった。
むしろ「即死毒のはずなのにまだ生きている」と不満げに呟き、レティーツィアへ毒を使わせた計画について語り始める。
ローゼマインは、ディートリンデ自身が毒殺計画へ関与していたことを知り、強い怒りを覚えた。
ランツェナーヴェの計画
ディートリンデは、レオンツィオという人物から「ランツェナーヴェの魔石を返すよう頼まれている」と話した。
さらにフェルディナンドを「アダルジーザの実」と呼び、本来は洗礼式前に魔石としてランツェナーヴェへ返されるべき存在だったと侮辱する。
フェルディナンドは最も触れられたくない出自を土足で踏みにじられながらも、必死に平静を保っていた。
ディートリンデは、自分はレオンツィオと共にグルトリスハイトを手に入れ、ツェントになるつもりだと語る。
そのためにフェルディナンドには星結び前に消えてもらう必要があるのだと言い放った。
アーレンスバッハの真相
フェルディナンドが「其方は次期ツェントになれぬ」と呻くと、ディートリンデは嘲笑した。
現在アーレンスバッハの礎を染めているのは自分ではなく「お姉様」であり、自分は次期ツェントになる存在だから礎を染める必要はないと説明する。
さらに、グルトリスハイトを手に入れれば、王命を排して叔父達を領主一族へ戻せると夢想していた。
しかしその未来図には、フェルディナンドだけでなくレティーツィアの存在すら含まれていなかった。
ゲオルギーネの狙い
ディートリンデは、ゲオルギーネがエーレンフェスト獲得準備を進めていることまで語る。
フェルディナンドの死を知らせるオルドナンツを待っているとも言い、ローゼマインは自分の手を汚さず毒殺を進めるゲオルギーネへ激しい怒りを抱いた。
ディートリンデは、このままではゲオルギーネへ叱られると不満を漏らしながら、さらなる毒を使おうとする。
最後の抵抗
フェルディナンドは苦痛の中、魔術具の魔石を投げつけて反撃した。
爆発による衝撃は発生したものの、ディートリンデの銀の布が魔力攻撃を完全に防いでしまう。
逆にディートリンデは、ランツェナーヴェの粉薬を投げつけ、フェルディナンドを完全に行動不能へ追い込んだ。
さらに犯罪者用の手枷をはめ、シュタープ使用を封じる。
ローゼマインのお守りが一度はディートリンデを弾いたものの、銀のマント越しに強引に手枷が装着された。
魔力供給による拘束
ディートリンデは、フェルディナンドの手を供給魔法陣の上へ置き、そのまま魔法陣を起動した。
これにより、フェルディナンドは自力で手を離すまで魔力を吸われ続ける状態になる。
ディートリンデは「魔力が枯渇するまで供給していればよい」と満足そうに笑い、供給の間を去っていった。
残されたフェルディナンドを包む虹色の光は、徐々に薄れていく。
そしてフェルディナンド自身も、怒りも憎悪も消え失せたように目を伏せ、全てを諦めたような表情になっていた。
現実への帰還
ローゼマインが「そこで諦めないでくださいませ!」と叫んだ瞬間、視界は突然元の会議室へ戻った。
目の前には、心配そうな表情で集まる領主一族と側近達の姿があった。
誘惑
フェルディナンド救出への決意
ローゼマインが視界から戻ると、周囲の者達は虹色に光ったまま動かなくなっていた彼女を心配していた。
しかしローゼマインには説明している余裕すらなく、フェルディナンドがアーレンスバッハで毒に倒れたことを叫びながら、今すぐ助けに向かおうとした。
だが、ジルヴェスターに腕を掴まれ、半ば強制的に席へ戻される。
ローゼマインは見た光景を必死に説明し、ゲオルギーネ、ディートリンデ、ランツェナーヴェが結託していることまで明かした。
ボニファティウスの諦めろ
説明を聞いたボニファティウスは、優先すべきはエーレンフェストの礎防衛であり、他領の供給の間で瀕死になっているフェルディナンドは助けられないと断言した。
アーレンスバッハ到着までの日数、供給の間への侵入手段、フェルディナンドの残り魔力を考えれば、間に合わないと判断したのである。
しかしローゼマインは、アーレンスバッハの鍵へ触れながら「間に合えば助けに行っても良いのか」と問い返した。
その全身から魔力が溢れ始め、周囲は空の魔石を慌てて準備し始める。
ローゼマインの本心
ローゼマインは、フェルディナンドを救うためならアーレンスバッハも中央も王族も、エアヴェルミーンすら敵に回して構わないと宣言した。
彼女にとって大切なのはユルゲンシュミット全体ではなく、エーレンフェストと、その中にいる家族やフェルディナンドだからである。
王の養女になる意味すら、フェルディナンドが死ねば失われると語った。
その覚悟へ、ボニファティウスも言葉を失う。
ヴィルフリートの後押し
そんな中、ローゼマインへ助力したのはヴィルフリートだった。
元々エーレンフェスト防衛は、ローゼマインが中央へ移動する前提で組まれていたため、彼女とその側近が動いても領地運営には支障がないと指摘する。
さらに、今にも魔力暴走しそうなローゼマインを領内へ置いておく方が危険だとも言った。
ボニファティウスは、まだローゼマインがエーレンフェスト籍である以上、アーレンスバッハへ攻め込めば領地間戦争になると反論した。
しかしヴィルフリートは、相手が礎を狙ってくるなら先手を打っても構わないと断言した。
攻め込むための建前
ジルヴェスターは、フェルディナンドを救いたい気持ちは理解していた。
だが、領地簒奪を責められないためには、中央や他領を納得させる「建前」が必要だと指摘する。
ローゼマインは必死に理由を考えた末、アーレンスバッハがランツェナーヴェと結託し、外国勢力を利用してツェントの座を奪おうとしていると主張した。
これは外国と組んでツェントを狙ったアイゼンライヒと同じ罪であり、その後継領地であるエーレンフェストが討伐へ動くのは当然だと論じる。
ジルヴェスターは、その建前なら悪くないと評価した。
ダンケルフェルガーという切り札
しかし戦力差は圧倒的だった。
エーレンフェスト単独では、アーレンスバッハへ攻め込める戦力を持たないのである。
そこでローゼマインは、足りない戦力は外から借りれば良いと考えた。
そして「ディッター最強の手札」であるダンケルフェルガーへ協力を求めることを提案する。
ジルヴェスターは驚きながらも、その交渉役をローゼマインへ任せた。
アウブ・ダンケルフェルガーとの交渉
領主用通信魔術具でアウブ・ダンケルフェルガーと接続すると、相手は急成長したローゼマインの姿へ驚愕した。
ローゼマインは、アーレンスバッハが外患誘致を行い、中央を脅かしていると説明し、大領地として王族防衛へ協力してほしいと依頼する。
さらに中央騎士団では過去にトルーク事件が二度起きているため、ダンケルフェルガー騎士団の方が信頼できるとも付け加えた。
アウブ・ダンケルフェルガーは、真剣な話として耳を傾け始める。
本物のディッターへの誘惑
その後、ローゼマインは「本物のディッター」に興味はないかと笑みを浮かべて誘った。
これからエーレンフェストとアーレンスバッハの間で、礎を賭けた本物のディッターが始まる予定だと説明する。
アーレンスバッハの礎を奪う戦いへ参加しないかと誘われ、アウブ・ダンケルフェルガーは大きく動揺した。
しかもローゼマインは、「礎を賭けたディッターなど未経験でしょう」と煽り、本物の戦いへの情熱を刺激する。
フェルディナンド救出の大義
最後にローゼマインは、フェルディナンドが供給の間で毒を盛られ、動けなくされていることを明かした。
フェルディナンドを救うにはアーレンスバッハの礎を押さえる必要があり、かつてフェルディナンド救出へ協力してくれたダンケルフェルガーなら今回も力を貸してくれるはずだと訴える。
するとアウブ・ダンケルフェルガーは、「過去の償いのためだ」と建前を整えたうえで、アーレンスバッハの礎を奪うディッターへの参加を即決した。
だがその表情は、明らかに楽しそうに笑っていた。
シュタイフェリーゼより速く
ダンケルフェルガーへの依頼内容
アウブ・ダンケルフェルガーは、ディッターへ参加するにあたり、自分達へ何を望むのかをローゼマインへ尋ねた。
ローゼマインは、自分が最速でアーレンスバッハの礎を押さえる間、ダンケルフェルガーの騎士達には城上空でアーレンスバッハ騎士団を引き付け、撹乱してほしいと依頼する。
今回の目的はフェルディナンド救出であり、敵を壊滅させることではないため、最短時間で安全に動ける援護が必要だったのである。
さらにローゼマインは、フェルディナンド救出後なら、ダンケルフェルガーが礎を染め直しても構わないとまで口にした。
ディッターの勝利条件
しかしアウブ・ダンケルフェルガーは、ランツェナーヴェと結託した問題だらけのアーレンスバッハなど褒美にならず、欲しくないと断言した。
彼等にとって重要なのは、あくまで「本物のディッター」に参加することだったのである。
ローゼマインは、自分にとっての勝利条件はフェルディナンド救出であり、フェルディナンドの魔力が尽きた時点で敗北だと説明した。
つまり、このディッターは既に始まっているのだと語る。
出陣準備の確認
ローゼマインは、ダンケルフェルガー側で有志の騎士を募り、どの程度で出陣準備が整うか確認した。
エーレンフェストでは、長期間にわたり回復薬や魔術具を量産し、騎士達も防衛準備を済ませているため、出発準備は既にほぼ完了していたのである。
ローゼマイン自身も、夜陰に紛れて侵入したいと語った。平民を巻き込まず、可能な限り被害を減らしたかったからである。
ただし絶対条件はあくまでフェルディナンド救出であり、状況次第では強行突破も辞さない覚悟だった。
アーレンスバッハ城への懸念
ローゼマインは、ユストクスやエックハルトと連携できれば潜入が楽になると考えていた。
しかし二人が無事かも不明であり、そもそも供給の間の位置すら正確にはわかっていない。
そこでローゼマインは、アーレンスバッハ出身であるアウレーリアなら、城内部の構造に詳しい可能性があると思い至った。
ディッター時間と物資
アウブ・ダンケルフェルガーは、戦闘時間次第で必要物資も変わると確認した。
ローゼマインは、礎を押さえるだけなら鐘一つ分で済むが、フェルディナンド救出にどれほど時間が必要かは読めないと説明する。
その上で、アーレンスバッハでの戦闘は鐘二つ分を想定して準備してほしいと依頼した。
魔術具や回復薬はエーレンフェスト側から支給し、消耗分も後日補填するとまで申し出る。
ジルヴェスターは、安易に負担を引き受けるなと叱責したが、ローゼマインは「交渉時間を買うための出費」だと考えていた。
銀の布への警戒
ローゼマインは、ランツェナーヴェ由来の銀の布についても警告した。
そのため、シュタープ以外の武器を必ず携帯し、毒粉対策として口元を布で覆い、回復薬や解毒薬、ユレーヴェも大量に持参するよう求める。
アウブ・ダンケルフェルガーは、その程度の準備なら日付が変わる頃には騎士選抜を終えられると即答した。
ローゼマインは、その準備速度へ驚愕する。
中央への根回し
ただしダンケルフェルガー側は、王族から正式要請があった場合のみ中央へ動くつもりだった。
無断で大軍を動かせば逆賊扱いされる危険があるためである。
ジルヴェスターは、自分から王族へ状況説明とダンケルフェルガー協力可能性を伝えると約束した。
さらに、中央騎士団への不信感も踏まえ、他の上位領地へも声を掛けてほしいと依頼する。
アーレンスバッハの重荷
アウブ・ダンケルフェルガーは、旧ベルケシュトックを抱える領地統治の困難さを実感として理解していた。
そのため、たとえ礎を奪っても、その後の統治こそが本物のディッター最大の難所だと指摘する。
ローゼマイン達がアーレンスバッハをどう扱うのか、非常に楽しみだと笑いながらも、エーレンフェストごと共倒れになる危険性を警告した。
しかしローゼマインは、グルトリスハイト取得後に境界線引き直しや新礎設置が可能であることを踏まえ、全く引くつもりはなかった。
国境門での合流
最終的にローゼマインは、日付変更頃にダンケルフェルガー国境門へ迎えに行くと宣言した。
アウブ・ダンケルフェルガーは、その意味に気付き愕然とする。ローゼマインが国境門を通って直接アーレンスバッハへ向かうつもりだと理解したのである。
そして「俄然面白くなった」と高揚し、シュタイフェリーゼより速く出陣すると拳で胸を叩いた。
ユストクス達の帰還
通信終了後、ジルヴェスターはローゼマインへ出陣準備を優先するよう促した。
その直後、貴族院の寮から緊急連絡が届く。
なんとユストクスとエックハルトが貴族院へ現れ、アウブとの面会を求めているというのである。
ローゼマインは、フェルディナンドが事前に二人へ脱出指示を与えていたのだと悟った。レティーツィアが無事に伝言を届けた証でもあった。
ジルヴェスターもまた、ローゼマインが見た光景が紛れもない事実だったことを認めるのだった。
エピローグ
ランツェナーヴェの早期来訪
アーレンスバッハの国境門へランツェナーヴェの船が現れたのは、フェルディナンドやディートリンデが領地対抗戦と卒業式で不在にしている時期だった。例年より一季節も早い来訪であり、目的は領主会議前に王族へ直談判し、前年の決定を覆させることだった。
レティーツィアは、礎を染めた者しか境界門を開けられないため、ディートリンデ不在の間に追い返せると考えていた。だが、ディートリンデ派の貴族達が貴族院へ連絡したことで状況は一変する。ディートリンデは予定を切り上げて帰還し、自ら境界門を開けてランツェナーヴェを迎え入れた。
その結果、ランツェナーヴェの館が早期に開かれ、港には銀色の船が行き交うようになる。レオンツィオはディートリンデへ露骨な求婚めいた贈り物を繰り返し、婚約者であるフェルディナンドを軽視するような光景が公然と続いていた。
レティーツィアとフェルディナンドの不安
レティーツィアには、レオンツィオから銀の筒と菓子が贈られた。ローゼマインから受け取った菓子が尽きていたこともあり、レティーツィアは素直に礼を述べて受け取る。
一方でフェルディナンドは、ランツェナーヴェとの面会調整や領地運営で疲弊していた。祈念式では、ゲオルギーネの提案によってギーベ達へ小聖杯を持たせる方針が採られる。フェルディナンドは、小聖杯は悪用可能な神具であると危険性を訴えたが、ディートリンデの命令によって押し切られた。
その後フェルディナンドは、王族とランツェナーヴェの面会準備に追われ、レティーツィアへの教育時間を減らさざるを得なくなった。レティーツィアは閉じ込められたような生活に息苦しさを感じながらも、フェルディナンドの毒殺警戒を理解していた。
ロスヴィータ失踪
春を寿ぐ宴の後、ロスヴィータはゼルギウスと課題の話をするため本館へ向かったまま戻らなくなった。
翌日になっても姿は見つからず、レティーツィアは強い不安に襲われる。ロスヴィータは第二の母のような存在であり、その不在はレティーツィアにとって耐え難いものだった。
レティーツィアはフェルディナンドへ面会を申し込むが、正式な面会日は五日後と告げられる。焦った彼女はゼルギウスを通じて相談を持ちかけ、翌日の魔力供給時に話を聞いてもらえることになった。
しかし、その夜にロスヴィータが助けを求める悪夢を見たレティーツィアは、ますます追い詰められていく。
レオンツィオの罠
供給の間へ向かう途中、レティーツィアはディートリンデとレオンツィオに遭遇した。レオンツィオは、悩みがあるなら相談に乗ると優しく声をかけ、お菓子を差し出す。
レティーツィアは違和感を覚えながらも、その場で菓子を口にした。さらにレオンツィオは、「これを使えばフェルディナンドが願いを聞いてくれる」と言いながら銀の筒を渡してくる。レティーツィアは、ロスヴィータを助けてもらえるかもしれないという希望に縋り、その銀の筒を受け取った。
供給の間へ入る前、ゼルギウスは銀の筒について警戒を示したが、レティーツィアは「フェルディナンドにお願いを聞いてもらうための交渉材料」だと説明する。
フェルディナンドへの懇願
供給の間で、レティーツィアは銀の筒を差し出し、ロスヴィータ捜索への協力を頼んだ。
しかしフェルディナンドは、その銀の筒は既に調査済みであり不要だと冷静に告げる。そして、ロスヴィータは諦めた方がよいと断言した。
レティーツィアは必死に食い下がるが、フェルディナンドは鍵を開ける権限もなく、救出自体が罠の可能性も高いと説明し、あくまで諦めるよう求める。
絶望に沈むレティーツィアの頭には、レオンツィオの「これを使えば願いを聞いてくれる」という言葉が何度も響き始めた。お菓子に仕込まれていた何かの影響で、彼女の思考は徐々に曇っていく。
銀の筒の発動
交渉材料を奪われると思い込んだレティーツィアは、慌てて銀の筒の紐を引いた。
銀の筒から白い粉が噴き出し、フェルディナンドは即座に「吸い込むな」と叫びながらレティーツィアを突き飛ばす。次の瞬間、フェルディナンドの胸元が虹色の光を放ち始めた。
彼は苦しそうに「ローゼマイン」と呟き、虹色の光は供給の間全体へ広がっていく。レティーツィアの意識も晴れ、異常事態を理解した。
フェルディナンドは震える手で小さな籠を外し、「これをユストクスに……行け、と伝えろ」と命じる。
ユストクス達の離脱
供給の間を飛び出したレティーツィアは、ユストクスへ籠を渡し、「フェルディナンドが行けと言った」と伝えた。
ユストクスとエックハルトは即座に異常を悟る。エックハルトは、領主一族しか入れない供給の間で何をしたのかとレティーツィアへ激しい敵意を向けた。
しかしユストクスは「事情聴取よりフェルディナンドの命令が優先だ」と制し、二人は即座にその場を離脱する。
シュトラールとゼルギウスは二人を追いかけるが、その意図までは理解できていなかった。
ディートリンデ達の襲撃
その直後、ディートリンデとレオンツィオが領主執務室へ踏み込んできた。
レオンツィオは、レティーツィアがフェルディナンドを害したと告げ、供給の間へディートリンデを向かわせる。レティーツィアは、自分が完全に嵌められたことを理解した。
さらにレオンツィオは、領主執務室でも銀の筒を発動させた。白い粉を浴びた護衛騎士達は、一瞬で魔石へ変えられてしまう。
フェルディナンドだけが即座に魔石化しなかった理由は不明だったが、ディートリンデは「亡くなった」と断言し、全ての罪をレティーツィアへ着せた。
その上で、レティーツィアをランツェナーヴェへ連行し、一生そこで過ごさせると宣言する。
ロスヴィータの最期
レティーツィアとフェアゼーレは拘束され、本館の鍵付き区画へ連れて行かれた。
そこでディートリンデ達が入った部屋からは、くぐもった声が聞こえていた。やがてディートリンデは、レティーツィアへロスヴィータの魔石を転がして見せる。
ロスヴィータは、ランツェナーヴェへ連れて行くには邪魔だったため、既に魔石化されていたのである。
第二の母を失い、自らの手でフェルディナンドを害してしまったと知らされたレティーツィアは、絶望の悲鳴を上げ、そのまま意識を失った。
閑話 ローゼマインの失踪と帰還
ローゼマイン失踪の隠蔽
奉納式後、ローゼマインは図書館の二階へ魔力供給へ向かったまま、突然姿を消した。
ジギスヴァルトは一階閲覧室で待機していたが、しばらくしてハルトムートが現れ、「ローゼマインは読書をしたいので残る」と説明する。だが、その態度には隠しきれない焦りが滲んでいた。
ハルトムートは、ローゼマインがいつ戻るかわからず、今は騒ぎを大きくしたくないと述べる。エーレンフェスト側は「奉納式の疲れで体調を崩した」という形で対外的に処理する予定だった。
ジギスヴァルトは一週間だけ猶予を与え、その夜、ツェントへだけ事情を報告する。王族側も、現時点では情報が少なすぎて動けなかった。
王族の焦燥
しかし一週間が経ってもローゼマインは戻らなかった。
王族にとって、ローゼマインは将来的にグルトリスハイトをもたらす重要人物である。彼女の失踪は王族の計画全体を揺るがしかねなかった。
特にジギスヴァルトは、自分と父であるツェントがまだ完全な御加護を得られておらず、小祠巡りに苦戦している現状を痛感していた。
ローゼマインだけが既にグルトリスハイト取得へ届きそうな地点まで進んでおり、その重要性は日に日に増していたのである。
エグランティーヌへの圧力
もしローゼマインが戻らなかった場合に備え、王族内部では代替案も話し合われた。
ツェントは、授乳期間終了後にはエグランティーヌへ祠巡りを命じる方針を示す。
アナスタージウスは、出産直後のエグランティーヌへ過度な負担をかけることへ反発した。だが、王族にとってグルトリスハイト取得は最優先事項であり、全属性を持つエグランティーヌが最も効率的だと判断されたのである。
ジギスヴァルトは内心、エグランティーヌが妊娠を急ぎすぎたことへ複雑な感情を抱いていた。ローゼマインが王族入りしてからなら、負担も軽減できたはずだと考えていたからである。
エーレンフェストの異様な平静
一方で、エーレンフェスト側は驚くほど落ち着いていた。
王族主催のお茶会へ呼ばれたヴィルフリートやハルトムート達は、ローゼマイン不在でも問題ないよう、半年以上前から体制を整えていたと説明する。
ヴィルフリートは、ローゼマインが中央へ行く場合も「いなくなる」という点では同じだと述べ、王族への当てこすりとも取れる発言をした。
さらにハルトムートは、自分は名捧げをしているため、ローゼマインの魔力状態がわかると平然と告げる。
彼によれば、ローゼマインの魔力は日に日に強くなっており、どこにいるか不明でも元気であることだけは確信できる状態だった。
王族から見たローゼマイン
ジギスヴァルトは、ローゼマインという存在を改めて理解しきれないと感じていた。
見た目も魔力も優秀な貴族でありながら、考え方の根本が中央貴族とも神殿とも全く異なる。エーレンフェストそのものが、王族の常識では測れない領地だったのである。
アナスタージウスが「ローゼマインへ権力を持たせるのは危険だ」と警戒する理由も、ジギスヴァルトには理解できていた。
それでも、グルトリスハイト取得の可能性を持つ以上、王族は彼女へ依存せざるを得なかった。
フェルディナンドの疲弊
卒業式後、ジギスヴァルトは図書館の二階を訪れ、そこでフェルディナンドと遭遇した。
フェルディナンドもまた、ローゼマインが最後に魔力供給した魔術具を確認しに来ていたのである。
彼はジギスヴァルトへ、どの魔術具へ魔力供給していたか淡々と説明した。だが、ジギスヴァルトが去ろうとした時、フェルディナンドは誰にも聞かれていないと思ったのか、「ローゼマインはこちらの予定をめちゃくちゃにしてくれる」と疲れ切った声で呟く。
それは、普段冷静な彼には珍しい本音だった。
ローゼマイン帰還
卒業式後、エーレンフェストは「ローゼマインが戻った」と王族へ連絡を入れる。
夜遅く、ジギスヴァルトとヒルデブラントは最奥の間へ向かった。そこには、光る板を持ったローゼマインの姿があった。
だが、その姿は以前と全く違っていた。小柄で幼かった少女は、年相応の成長を遂げ、儚くも玲瓏とした美貌を持つ少女へ変貌していたのである。
ジギスヴァルトは、その姿を見て「神々の祝福」という言葉しか思い浮かばなかった。
始まりの庭
ヒルデブラントが急成長の理由を尋ねると、ローゼマインは「始まりの庭で、エアヴェルミーンが育成の神アーンヴァックスへ成長を願った」と説明した。
しかし彼女は詳しい事情説明を後回しにし、「今は一刻も早くエーレンフェストへ戻ってアウブと話をしなければならない」と訴える。
ローゼマインの金色の瞳には強い焦燥が宿っており、既に王族の都合へ意識を向ける余裕すらなかった。
お姉様が不在の貴族院
ローゼマイン失踪直後の混乱
奉納式後、シャルロッテ達が昼食を摂っている場へ、ローゼマインの側近達が現れた。だが、そこにローゼマイン本人の姿はなかった。
ハルトムートは恍惚とした表情で「ローゼマイン様は英知の女神メスティオノーラのお招きを受けた」と宣言し始め、周囲を完全に困惑させる。
説明不能な状況を前に、ダームエルが代わりに事情を説明した。奉納式後、図書館の魔術具へ魔力供給していたローゼマインが、突然その場から消失したのである。
図書館の魔術具は「じじ様のところへ行った」と答えたが、その正体を知る者は誰もいなかった。
名捧げ側近達の存在
ローゼマインの側近達は、名捧げをした者達に異常がないことから、ローゼマイン本人も無事だと判断していた。
しかし、いつ戻るかは誰にもわからない。王族との話し合いにより、対外的には「ローゼマインは体調を崩して臥せっている」という形で統一されることになった。
ヴィルフリートは、余計なことを言えば王族とアウブ・エーレンフェストの双方から咎められると学生達へ警告する。
さらにレオノーレは、もし噂が広まれば「ハルトムートの賞賛」を解禁し、他領を煙に巻くことになると説明した。
その瞬間、学生達はハルトムートを見つめ、全員が危機感を共有する。
ハルトムートによる封殺
数日後、学生達の間では「祭壇の最高神」など貴族院の不思議話とローゼマイン失踪を結びつける声が出始めた。
だが、そのような学生達はハルトムートに捕まり、「ローゼマイン様が神々の怒りを買うはずがない」と延々説教される。
さらに彼等は祈りを強要され、ローゼマインの偉業暗唱まで課されていた。
結果として、寮内ではローゼマインについて不用意に話す学生が激減する。
ヴィルフリートは、ハルトムートに関わりたくないという理由もあり、「余計なことを言う方が悪い。諦めて暗唱しろ」と放置していた。
ヒルシュールへの事情説明
やがて、ヒルシュールがエーレンフェスト寮を訪れた。ローゼマインが長期間講義へ出てこない状況を不審に思ったのである。
彼女は共同研究用素材もローゼマインが管理していると指摘し、事情説明を求めた。
誤魔化しきれないと判断したシャルロッテ達は、ブリュンヒルデやリーゼレータを通して事情を説明し、隠蔽協力と講義調整を依頼する。
その代わり、ローゼマインが持ち込んでいた研究素材をヒルシュールへ融通することで話をまとめた。
シャルロッテの不安
ローゼマイン不在のまま十日近くが経過すると、シャルロッテは強い不安を抱き始める。
しかし、名捧げ側近達は、ローゼマインの魔力が日に日に増していると証言した。特にハルトムートは、ローゼマインが毎日成長していることを感じ取っていた。
ローデリヒやマティアス達も、魔力の増大と安定を認めており、ローゼマインの器自体が成長している可能性を語る。
シャルロッテは、ハルトムートを上手く持ち上げることで暴走を抑え、場を落ち着かせた。
王族主催のお茶会
その後、ジギスヴァルト王子から、ヴィルフリートとシャルロッテ、そしてローゼマインの側近達へ招待状が届く。
ブリュンヒルデは、これは神事参加者を労う建前であり、実際にはローゼマイン不在について探るための場だと推測した。
シャルロッテは、王族との会話でヴィルフリートが不用意な発言をしないか強く警戒していた。
実際、ヴィルフリートは「ローゼマインがいなくても何とかなるよう、半年以上前から体制を整えていた」と発言し、シャルロッテは胃痛を覚えるほど焦る。
そこへハルトムートが割って入り、ローゼマイン賛美を延々語ることで、王族の意識を完全に逸らしてしまった。
ヴィルフリートへの失望
お茶会後も、ヴィルフリートは「ローゼマインがいない方が余計な騒動がなくて良い」と軽口を叩いていた。
シャルロッテは、ローゼマイン不在によって将来的な社交戦略が大きく狂っていることを理解していたため、その無神経さへ強い不満を抱く。
ローゼマインが中央へ移動する前提で、他領との関係構築を進める予定だったのである。
一方で、ブリュンヒルデは既に次代領主一族として動き始めており、シャルロッテもまた、メルヒオールへ円滑に継承するための未来設計を考え始めていた。
ローゼマイン帰還
そして春を寿ぐ宴の翌朝、ついに「ローゼマインが戻った」という連絡が届く。
シャルロッテ達は急いで転移の間へ向かい、そこで成長したローゼマインと再会した。
夜色の髪を揺らし、年相応へ成長したローゼマインは、以前とは比較にならないほど美しくなっていた。
シャルロッテは、その圧倒的な変化に言葉を失い、まるで自分と別次元へ進んでしまったような感覚を抱く。
だが、ヴィルフリートは以前と全く変わらない態度で接した。
ローゼマインも「美人になったでしょう?」と普段通りに返し、その変わらぬやり取りを見たシャルロッテは、ようやく安心して「お姉様、おかえりなさいませ」と声を掛けることができた。
各々の望み
レティーツィア達の拘束
ディートリンデは、レティーツィアとフェアゼーレを閉じ込めたまま、後で船へ移送するよう命じた。
さらに北の離れと西の離れへ立ち入るための結界突破用魔術具を渡し、レティーツィアやフェルディナンドの部屋にある魔術具・魔石を運び出す準備を整える。
レオンツィオは、レティーツィアはディートリンデに疎まれながら暮らすより、ランツェナーヴェで「魔力豊富な女性」として扱われた方が幸せだろうと考えていた。
ゲオルギーネの目的
ゲオルギーネは、祈念式を理由にエーレンフェスト国境近くへ移動しており、オルドナンツが届く範囲で計画成功報告を待機していた。
彼女の関心は徹底してエーレンフェストに向けられており、ランツェナーヴェもアーレンスバッハも、さらには娘達すら駒としてしか見ていないようにレオンツィオには感じられた。
本来ゲオルギーネは「フェルディナンドの死亡確認と魔石回収」を命じていたが、ディートリンデはそれを実行していなかった。
フェルディナンドには毒が完全に効かず、シュタープ封印の手錠をかけたうえで供給の間へ閉じ込め、魔力枯渇で死ぬまで放置する方針に変更されていたのである。
ディートリンデの甘さ
レオンツィオは、まだ生きていると正確に報告すべきだと進言した。
しかしディートリンデは、自分が叱られるのを嫌がり、「時間が経てば死ぬ」と軽く考えていた。
さらに、供給の間から出られないよう、フェルディナンドの登録魔石まで持ち去っている。
レオンツィオは、ゲオルギーネなら娘の性格も計画に織り込み済みだろうと考え、それ以上は追及しなかった。
レオンツィオ達の本音
馬車へ戻ったレオンツィオは、従弟ジョルダーノと本音を語り合う。
今夜予定されている「魔石狩り」では、レティーツィア派貴族への襲撃が許可されていた。ディートリンデは自分へ反対する者達を排除したく、ゲオルギーネは今後の障害を消したい。そしてランツェナーヴェ側は大量の魔石を欲していたのである。
ランツェナーヴェでは離宮閉鎖後、魔石不足が深刻化していた。今夜の襲撃で良質な魔石を大量確保できれば、一時的な延命になると期待されていた。
ランツェナーヴェの王族事情
レオンツィオは、ランツェナーヴェの王族事情を振り返る。
ランツェナーヴェにはコラレーリエ、シェンティス、レーヴェライアの三系統があり、それぞれ離宮の姫の系譜を表していた。
次期王はユルゲンシュミットで育てられ、成人後にランツェナーヴェへ戻って王族入りする慣習となっている。
しかし政変後、離宮閉鎖によって新たな姫を迎えられなくなり、魔石供給も停止した。その結果、ランツェナーヴェでは魔力偏重社会から技術偏重社会への変化が進み始めていた。
コラレーリエ系であるレオンツィオは、自分達一族の立場を回復するためにも、離宮再開を必要としていた。
中央騎士団長との接触
二年前、ゲオルギーネは「ランツェナーヴェ王は中央騎士団長と面識があるか」という簡潔な手紙を送ってきた。
そこから王城内では大騒ぎとなり、最終的にランツェナーヴェ側は中央騎士団長との接触を決定する。
だが、いきなり王を送り込むのは危険だったため、交渉役としてレオンツィオが選ばれた。
彼は、離宮再開や魔石確保、さらにはシュタープ獲得の可能性へ強い執着を抱いていた。
アルステーデの立場
館へ到着したレオンツィオを迎えたのはアルステーデだった。
現在、実際にアーレンスバッハの礎を染めているのは彼女であり、実質的なアウブだったのである。
しかし彼女自身は本来アウブを望んでおらず、夫ブラージウスの地位回復と、娘を領主候補生として育てるためにゲオルギーネの計画へ協力していた。
レオンツィオは、政変が多くの人間を歪めたことを改めて実感していた。
離宮への転移陣
ランツェナーヴェの館には、離宮へ繋がる転移陣が存在していた。
本来、ゲオルギーネ達はこれを自由に使うために先代アウブを排除したのである。だが、離宮が王族養女用へ改装されたことで、転移陣利用は長く制限されていた。
ようやく工事が終わり、今だけ自由使用が可能になっていたのである。
転移陣発動時、レオンツィオは初めて見る高度な魔術に圧倒され、ユルゲンシュミットの魔術体系への渇望を強める。
ラオブルートの登場
転移陣の光が収まった後、そこに現れたのは中央騎士団長ラオブルートだった。
彼はジェルヴァージオへ跪き、「我が主」と呼びかける。
ラオブルートは、離宮にいた頃からジェルヴァージオへ仕えていた人物であり、長年この計画実現を待ち続けていたのである。
ジェルヴァージオは、全てが終われば皆にとって良い結果になると語り、ラオブルートへ懐かしき離宮への案内を命じた。
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領主の養女

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貴族院の自称図書委

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女神の化身

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