とある魔術の禁書目録SSレビュー
とある魔術の禁書目録(15)レビュー
物語の概要
■ 作品概要
『とある魔術の禁書目録(14)』は、超能力が開発される科学の街・学園都市と、魔術を操る巨大宗教勢力・ローマ正教との間で高まる緊張と、世界規模の対立を描いたSFファンタジー・バトルアクション作品である。
学園都市とローマ正教の対立が激化する中、世界各地でローマ正教徒による大規模な抗議活動やデモが頻発し、世界は混乱の渦に飲み込まれつつあった。
そんな中、上条当麻は学園都市統括理事会の一員である親船最中から、この世界的混乱の裏には人々の認識を操るローマ正教の霊装「C文書」が関わっており、その元凶を右手の「幻想殺し(イマジンブレイカー)」で断ってほしいと託される。
上条はクラスメイトであり暗躍するエージェントでもある土御門元春の手引きで、C文書が使用されていると目されるフランスの観光都市・アビニョンへと向かう。
現地で天草式十字凄教の少女・五和と合流した上条は、C文書を狙って一般市民もろとも強引な武力制圧を開始した学園都市の駆動鎧(パワードスーツ)部隊や超音速爆撃機、そしてローマ正教の暗部組織『神の右席』の一人である左方のテッラと対峙することになる。
争いそのものを止めるため、上条は過酷な戦いへと身を投じていく。
■ 主要キャラクター
- 上条当麻(かみじょうとうま): 右手に異能の力を打ち消す「幻想殺し(イマジンブレイカー)」を宿す高校生。親船最中の命懸けの覚悟に触れ、C文書による世界的な混乱を止めるためにフランス・アビニョンへと向かい、強大な力を持つ左方のテッラと激突する。
- 土御門元春(つちみかどもとはる): 上条のクラスメイトであり、学園都市とイギリス清教のマルチスパイとして暗躍する少年。親船最中から依頼を受けて自ら彼女を銃撃するという「制裁」を偽装し、上条をアビニョンへと送り届ける。現地では上条たちを先へ進ませるため、単身で学園都市の駆動鎧部隊を引き受ける。
- 五和(いつわ): 天草式十字凄教に所属する少女。イギリス清教からの要請でアビニョンを調査していた際、空からパラシュートで降下して川に落ちた上条を救出し、行動を共にする。海軍用船上槍や鋼糸を操る「七教七刃」を用いて、上条とともにテッラに立ち向かう。
- 左方のテッラ: ローマ正教の暗部『神の右席』の一人。対象の優先順位を自在に操作する特殊術式「光の処刑」と、小麦粉で作った巨大なギロチンを操る。自らの目的のためならば一般人の犠牲も厭わない歪んだ思想を持ち、上条や五和を圧倒的な力で追い詰める。
- 親船最中(おやふねもなか): 学園都市統括理事会の一員。戦争の激化を望む学園都市上層部の方針に反発し、争いそのものを止めるため、自ら反逆の「制裁」として土御門の銃弾を受ける覚悟を示し、上条に世界規模の混乱の解決を託す。
- 後方のアックア: 『神の右席』の一人。照準調整のために民間人を平然と利用するテッラの歪んだ思想を非難し、彼を容赦なく粛清する。民間人を巻き込まず兵士同士のみで戦うべきだと主張し、自らが次なる行動を起こすことを決意する。
- 御坂美琴(みさかみこと): 学園都市第三位の超能力者。偶然、上条の壊れた携帯電話を通じて教皇庁宮殿での戦闘の音声を聞いてしまい、テッラの口から語られた「上条が記憶喪失である」という事実を知り、激しい衝撃を受ける。
■ 物語の特徴
本作の大きな特徴は、「科学サイド」と「魔術サイド」の対立が世界規模へと拡大し、舞台を学園都市からフランス・アビニョンへと移して展開される壮大なスケールにある。
最大の魅力は、上条当麻が直面する過酷な状況である。暴動を扇動するローマ正教の「C文書」と、それを破壊するためなら一般市民の犠牲も厭わずに駆動鎧や超音速爆撃機を投入する学園都市。
相反する二つの強大な「悪」に挟まれながらも、上条が「争いそのものを止める」という親船最中の想いを背負い、孤軍奮闘する姿が熱く描かれている。
また、戦闘面では左方のテッラが操る「優先順位」を入れ替えるというトリッキーな魔術の謎解きと攻略がスリリングである。
さらに、テッラによってこれまで謎に包まれていた「幻想殺しの正体」について意味深な言及がなされる点も、読者の興味を強く惹きつける。 そして物語のラストにおいて、上条がこれまで隠し通してきた「記憶喪失」の事実が、電話越しに御坂美琴に知られてしまうという衝撃的な幕切れとなっており、今後の人間関係や物語の展開に大きな波乱を予感させる重要なターニングポイントとなっている。
書籍情報
とある魔術の禁書目録 14
(A Certain Magical Index)
著者:鎌池 和馬 氏
イラスト:はいむらきよたか 氏
出版社:株式会社KADOKAWA(電撃文庫)
発売日:2007年11月10日
ISBN:9784048664332
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あらすじ・内容
驚異の霊装 「C文書」 を駆使する、ローマ正教の企みを阻止せよ──!
10月。 突然、世界中でローマ正教徒たちによる、反科学デモが起き始めた。そのアンチ行動は、学園都市を筆頭とする 「科学サイド」 への糾弾に他ならない。世界が混乱する中、「C文書」 と呼ばれる霊装がこの事件の元凶だと知った上条は、土御門と共に 「C文書」 があるとされる、フランスの観光都市・アビニョンへと飛び立つ。科学と魔術が交差するとき、上条当麻の物語は始まる――!
感想
ローマ正教と学園都市の対立が激化し、世界中で暴動が発生するというスケールの大きな展開に深く引き込まれる巻であった。親船最中から事態の収拾を命がけで託された上条当麻が、暴動の元凶である霊装「C文書」を破壊すべく、土御門元春と共にフランスのアビニョンへと飛ぶ胸熱の展開から物語は動き出す。
まず印象に残ったのは、イタリアから緊急帰国した時に使った超音速旅客機に乗り込み、そこからパラシュートでおフランスへ降下するという破天荒な移動手段である。しかも、着水地点がずれて川に落ち、あわや溺れかけるというのは、まさに不幸体質な「上条クオリティ」全開であり、緊迫した状況の中にもクスリとさせられる魅力があった。そこで天草式の五和と合流し、目的の品が使われている教皇庁宮殿を目指す流れは非常にワクワクさせられる。
一方で、学園都市の駆動鎧部隊が武力制圧を開始し、さらには爆撃機による街の殲滅計画までもが進行していく展開には背筋が凍った。暴徒を容赦なく蹂躙する非情なやり方に憤る上条たちの姿には、強く感情移入してしまう。そして、宮殿で待ち受けていた「神の右席」の一員である左方のテッラと相対する戦闘シーンは見応え抜群だった。優先順位を操るという厄介な敵の術式に苦戦を強いられながらも、冷静にその弱点を見抜き、死闘の末に見事打ち倒してのけた場面は実に痛快である。
こうして目標としている魔法(C文書)は何とか破壊に成功し、世界を覆う混乱は一時的に収束していく。しかし、コレで本当に戦争が止まるのかという不安は拭いきれない。何しろ、敗北したテッラは味方であるはずの後方のアックアに容赦なく粛清されてしまい、戦争の火種は未だ消えていないことが突きつけられたからだ。 さらに極めつけは、偶然繋がった通信を介して、御坂美琴が「上条当麻が記憶喪失である」という衝撃の事実を知ってしまうラストシーンである。これまで隠されてきた秘密が露呈したことで、今後の人間関係にどのような波乱を巻き起こすのか、次巻への期待が否応なしに高まる素晴らしい一冊であった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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とある魔術の禁書目録SSレビュー
とある魔術の禁書目録(15)レビュー
考察・解説
ローマ正教のデモ
とある魔術の禁書目録14におけるローマ正教のデモについて、世界規模で拡大する抗議活動、混乱の真の元凶であるC文書、学園都市への経済爆撃という狙い、そして左方のテッラの歪んだ思想という観点から解説する。
1. 世界規模で拡大する抗議活動と一般市民の参加
ローマ正教派によるデモや抗議運動は、フランスのトゥールーズをはじめ、ドイツ、イタリア、アメリカの西海岸、さらにはロシアなど世界中で同時多発的に発生している。
- 参加しているのは魔術や超能力とは縁のない一般市民である。
- 暴動や乱闘によって負傷者も出るなど深刻な事態となっている。
- 彼らは誰かに強制されたわけではなく、ニュースなどを見て憤り、個々の信条に基づいて自発的に行動を起こしているのである。
2. 混乱の真の元凶である霊装C文書
この世界的な混乱の裏には、ローマ正教の霊装であるC文書が存在する。
- C文書は、ローマ教皇の発言を人々に絶対に正しい情報だと信じ込ませる強大な力を持っている。
- 科学と宗教の両方の恩恵を受けて暮らす一般の人々が、学園都市を敵視する情報を正しいと信じ込まされた。
- その結果、その認識が歪んだ形でデモや抗議活動として表面化しているのである。
3. 学園都市への経済爆撃という狙い
学園都市の統括理事会の一員である親船最中は、ローマ正教の真の狙いが経済爆撃にあると推測している。
- デモ活動が長引けば経済活動が停滞し、世界レベルの恐慌を引き起こす危険性がある。
- 莫大な維持費を必要とする軍事大国にとって経済恐慌は致命的なダメージとなる。
- そのため、ローマ正教は資金源を絞り上げることで、学園都市を中心とした科学世界そのものを内部から崩壊させようとしていると見られているのである。
まとめ
フランスのアビニョンにおいてC文書を用いた作戦を主導しているのは、神の右席の左方のテッラである。彼は、十字教徒の最終目標である神聖の国において、人間が派閥争いなどの醜い争いを起こさないかを試し、人類を正しい方向へ導くための検証としてこの混乱を引き起こしたと語っている。テッラは一般市民が暴動に巻き込まれ傷つくことを意に介さず、自らの独善的な救済の思想に基づいて世界を意図的に混乱へ陥れているのである。
神の右席
とある魔術の禁書目録14における神の右席について、組織の概要と四大天使の属性、原罪の克服と天使の術式の獲得、真の目的である神上への進化、そして独善的な暴走と監視の必要性という観点から解説する。
1. 組織の概要と四大天使の属性
ローマ正教の暗部に存在する神の右席は、左方のテッラ、後方のアックア、前方のヴェント、右方のフィアンマというわずか4人の正式メンバーで構成される特異な組織である。
- 彼らはそれぞれが四大天使の属性を秘めており、通常の魔術組織とは全く異なる次元の力を有している。
- ローマ正教のトップである教皇すらも彼らを完全に制御できていない。
- 共にバチカンにいても教皇の存在感が翳ってしまうほどの威圧感と実力を持っているのでる。
2. 原罪の克服と天使の術式の獲得
彼らは、全人類が背負っているとされる原罪を、裏技的な術式によって可能な限り薄めることに成功している。
- 原罪を消去することで人間としての質を天使に近いものへと変化させ、通常は人間には行使不能とされる天使や神の術式(テッラの光の処刑やヴェントの天罰など)を自在に操ることができる。
- しかし、知恵の実と同義である原罪を失った代償として、通常の魔術師が使うような人間用の魔術は扱えなくなってしまった。
- そのため、C文書のような霊装の行使は他の術者に任せなければならないという弱点も抱えているのである。
3. 真の目的である神上への進化
原罪の抹消は彼らにとって手段に過ぎず、最終的な目標は組織名でもある神の右席に至ることである。
- 彼らは、神と対等とされる右側の席に座る大天使(神の如き者など)を標的に定めている。
- その右席の力を奪い取ることで、天使という形を借りて地上へ顕現した神を見本とする。
- そして、天使からさらに別の存在である、神よりも上位の存在の神上(かみじょう)へと到達することを本気で目指す、異端の集団なのである。
まとめ
強大な力と目的を持つ神の右席であるが、ひとたびその思想が暴走すればどこまでも破壊を撒き散らす危険な存在でもある。例えば左方のテッラは、人類を正しい方向へ導くためと言いながら、ローマ正教徒以外の異教徒を人間ではないと断じ、自身の術式の照準調整のために観光客などを犠牲にする歪んだ思想を持っていた。これを重く見た後方のアックアはテッラを容赦なく粛清し、いくら有能な集団であっても暴走を防いで本来の機能を維持するためには、ローマ教皇のように外部から監視し導く存在が必須であると結論づけたのである。
親船最中の銃撃
とある魔術の禁書目録14における親船最中の銃撃について、親船最中の真の目的と統括理事会の思惑、上条当麻への接触とC文書の破壊依頼、土御門元春による銃撃と制裁の回避、そして上条当麻の怒りとアビニョンへの出撃という観点から解説する。
1. 親船最中の真の目的と統括理事会の思惑
親船最中は学園都市の最高機関である統括理事会の一員であるが、世界規模で拡大するデモや暴動に対して、他の理事たちとは異なる考えを持っていた。
- 統括理事会はローマ正教の行動を逆手に取り、戦争を激化させて科学サイドの敵である魔術サイドを徹底的に破壊することを望んでいた。
- そのため、混乱が簡単に収まることを良しとしていなかったのである。
- しかし親船は、戦争の激化という馬鹿げた事態を阻止するため、組織の意志に反して単独で行動を起こした。
2. 上条当麻への接触とC文書の破壊依頼
親船は、自分一人の力では状況を覆せないと悟り、異能の力を打ち消す幻想殺し(イマジンブレイカー)を持つ上条当麻を人気のない児童公園に呼び出す。
- 彼女は、混乱の元凶がローマ教皇の発言を絶対の真実だと思い込ませる霊装であるC文書にあると説明した。
- そして、国家や国連でも解決できないこの問題を、上条の右手で根本から終わらせてほしいと依頼したのである。
3. 土御門元春による銃撃と制裁の回避
二人の会話の最中、土御門元春が現れ、手にした拳銃でためらいなく親船の腹部を撃ち抜く。
- 激昂した上条は土御門を殴り飛ばすが、倒れた親船自身が上条の足首を掴んで彼を制止した。
- 実は、親船の行動は統括理事会への反逆であり、いずれ発覚して自らや家族に制裁の矛先が向かうことを防ぐための行動であった。
- あえて土御門に急所を外して自分を撃つよう頼んでいたのである。
- 土御門自身も嫌がっていたが、彼女の強い意志を受けてその汚れ仕事を引き受けたのであった。
まとめ
自分を動かすためだけに、そして家族を守るために自らの命を懸けた親船の覚悟と、それを黙って引き受けた土御門の真意を知り、上条は激しい怒りとともに強い決意を固める。親船が自らの権限を一度だけ使って手配した第二三学区の超音速旅客機に乗り込むため、上条は血まみれで倒れる彼女を後に残し、土御門と共にC文書が使用されているフランスのアビニョンへと向かったのである。
上条当麻のフランス行
とある魔術の禁書目録14における上条当麻のフランス行について、親船最中の覚悟とアビニョンへの出撃、超音速旅客機での移動とC文書の解説、フランス上空からの強制降下とローヌ川への落下、そして天草式の五和との合流と教皇庁宮殿への道という観点から解説する。
1. 親船最中の覚悟とアビニョンへの出撃
上条当麻は、統括理事会の一員である親船最中から、世界中で起きているデモや暴動の元凶であるローマ正教の霊装であるC文書の破壊を依頼される。
- 彼女は上条を動かすためにあえて土御門元春に自分を銃撃させ、自身の家族などに及ぶ学園都市からの制裁を回避するという命がけの覚悟を見せた。
- これに激しい怒りと決意を抱いた上条は、親船が一度だけ権限を使って手配した第二三学区の超音速旅客機に乗り込む。
- そして、土御門と共にフランスのアビニョンへと向かうのである。
2. 超音速旅客機での移動とC文書の解説
機内では時速七〇〇〇キロオーバーという凄まじい速度が生み出すGによって内臓が圧迫され、上条はまともに言葉を発することもできない苦痛を味わう。
- そんな状況の中、隣に座る土御門から今回の標的であるC文書についての説明を受けた。
- それは、ローマ教皇の発言を人々に絶対に正しい情報だと信じ込ませる強大な効果を持つ霊装であるという内容であった。
3. フランス上空からの強制降下とローヌ川への落下
目的地に近づいたものの、真っ当にフランスの空港へ着陸すればローマ正教側に気付かれてしまうため、土御門は上空で機体の荷物搬入用ハッチを開放する。
- そして、パラシュートを背負わされた上条は、有無を言わさず機外へと蹴り落とされてしまうのである。
- 強風に流された結果、上条は降下予定地点を大きく外れてローヌ川の中央へ落下した。
- そして、服やパラシュートの布地が絡まった重みで水中に沈み溺死の危機に瀕したのである。
まとめ
川に落ちて溺れかけていた上条を救出したのは、イギリス清教からの要請でアビニョンを調査していた天草式十字凄教の五和であった。上条は彼女から、アビニョン捕囚の時代に築かれたバチカンとの術的なパイプラインが再接続されており、アビニョンにある教皇庁宮殿でC文書が使われている可能性が高いという推測を聞く。二人はC文書の行使を阻止すべく合流し、教皇庁宮殿を目指すことになるのである。
C文書の争奪
とある魔術の禁書目録14におけるC文書の争奪について、混乱の元凶と破壊依頼、アビニョンでの行使と術的なパイプライン、学園都市の強硬な軍事介入、そして左方のテッラとの死闘と霊装の消滅という観点から解説する。
1. 混乱の元凶C文書と破壊依頼
上条当麻は、学園都市の統括理事会の一員である親船最中から、世界中で激化するデモや暴動の元凶となっているローマ正教の霊装であるC文書の破壊を依頼される。
- C文書は、ローマ教皇の発言を人々に絶対に正しい情報だと信じ込ませる強大な力を持っていた。
- これを根本から止めるためには異能の力を打ち消す上条の幻想殺し(イマジンブレイカー)が必要であったのである。
- 上条は土御門元春と共に、超音速旅客機に乗ってC文書が使用されているフランスのアビニョンへと向かう。
2. アビニョンでの行使と術的なパイプライン
C文書は本来バチカンの中心部でしか使えない霊装であるが、アビニョンにある教皇庁宮殿には、かつてのアビニョン捕囚時代に築かれたバチカンとの術的なパイプラインが再接続されていた。
- そのため、ローマ正教の術者たちは煩雑な手続きを省き、遠隔操作でC文書を発動できていたのである。
- 現地で天草式十字凄教の五和と合流した上条は、C文書の行使を直接止めるべく、彼女と共に教皇庁宮殿を目指すこととなる。
3. 学園都市の強硬な軍事介入
C文書を巡る争奪は、上条たちとローマ正教の間だけに留まらなかった。
- 学園都市はアビニョンに対して駆動鎧(パワードスーツ)部隊や超音速ステルス爆撃機を投入する。
- そして、街を物理的に蹂躙しながら教皇庁宮殿ごと破壊しようとする大規模な軍事行動に出たのである。
- この想定外の事態を受け、神の右席の左方のテッラは、教皇庁宮殿内でC文書を操作していた術者たちに代わって自らC文書を回収し、撤退を試みた。
まとめ
教皇庁宮殿の内部で、上条と五和はC文書を手にした左方のテッラと死闘を繰り広げる。テッラは優先順位を操る強力な術式である光の処刑で上条たちを追い詰めるが、上条はその術式が複数の対象に同時適用できないという弱点を見抜き、ついにテッラを打ち倒した。その後、倒れたテッラの懐から転がり出たC文書を上条が右手で掴むと、強大な霊装であったはずの羊皮紙はあっけなく粉末となって崩壊し、世界を混乱に陥れていた元凶は完全に消滅したのである。
学園都市の介入
とある魔術の禁書目録14における学園都市の介入について、駆動鎧部隊によるアビニョン制圧、超音速爆撃機と地殻破断による街の隔離、旧市街全域への爆撃計画、そして超能力者による作戦変更という観点から解説する。
1. 駆動鎧部隊によるアビニョン制圧
C文書を巡る暴動が続くフランスのアビニョン旧市街に対し、学園都市は非公式編成機甲部隊を投入して強硬な軍事介入を行った。
- 投入された最新鋭の駆動鎧(HsPS-15)は、対隔壁用ショットガンの空砲が放つ巨大な衝撃波で暴徒を無力化する。
- そして、気絶した人々を防弾繊維を織り込んだ巨大なバルーンに収容して排除していくという、圧倒的な暴力による制圧作戦を展開したのである。
- 上条当麻は、作戦上の都合を優先し、力で市民を屈服させる学園都市のやり方に強い怒りを覚えた。
2. 超音速爆撃機と地殻破断による街の隔離
駆動鎧部隊の侵攻に続き、アビニョン上空には11機の超音速ステルス爆撃機(HsB-02)が飛来した。
- 爆撃機は機体下部に装備された漆黒のブレードと少量の砂鉄を用いた地殻破断(アースブレード)によって、時速一万キロオーバーの気体と化した金属粉末と摂氏八〇〇〇度の熱を発生させる。
- そして、アビニョンを取り囲むように大地を切り裂いた。
- これにより周囲の地面は溶岩の川と化し、アビニョン旧市街は外部から完全に隔離され、逃げ遅れた住民たちは街に閉じ込められる結果となったのである。
3. 旧市街全域への空爆計画
学園都市の当初の計画では、街を隔離した後、標的である教皇庁宮殿だけでなく旧市街全域を爆撃機で空爆する予定であった。
- 駆動鎧部隊の発信信号だけを避けて街そのものを徹底的に焼き払うというものである。
- 作戦終了後には地上部隊は装備を放棄し、地中海沿岸に待機する潜水艦で撤収する計画まで組まれていた。
- 逃げ遅れた住民の大部分が犠牲になる過酷な作戦だったのである。
まとめ
しかし、爆撃機の一機に爆弾代わりとして搭乗していた超能力者が、この作戦の変更を命じる。彼は一流の悪党ってのはな、カタギの命は狙わねェンだよと語り、旧市街全体への爆撃をやめさせ、標的を教皇庁宮殿への集中攻撃に変更させた。この変更された爆撃によって教皇庁宮殿の一部は溶岩の海と化し、C文書を失ってその場にいた左方のテッラを直撃し、彼を撤退に追い込むほどの甚大な破壊をもたらしたのである。
上条当麻の記憶
とある魔術の禁書目録14における上条当麻の記憶について、五和の言葉と失われた過去の記憶、記憶喪失を隠し続ける彼なりのルール、左方のテッラによる指摘と心の動揺、そして御坂美琴への露見と衝撃という観点から解説する。
1. 五和の言葉と失われた過去の記憶
フランスのアビニョンで天草式十字凄教の五和と合流した際、彼女は上条がかつて元女教皇様である神裂火織を拳一つで殴り倒したという過去の出来事に言及する。
- しかし、すでに記憶を失っている上条にはその思い出が存在しない。
- 自分が知らない間に神裂へ何をしでかしたのかと内心で戸惑うことしかできなかったのである。
2. 記憶喪失を隠し続ける彼なりのルール
上条は、自分が記憶を失っているという事実を誰にも明かさないと固く心に決めていた。
- それは、記憶を喪失した後に初めて出会った白い少女であるインデックスを悲ませないための彼なりのルールである。
- 何としてでも守り抜かなければならない大切なものであったのだ。
3. 左方のテッラによる指摘と心の動揺
しかし、左方のテッラとの戦闘の中で、その秘密は無惨にも暴かれてしまう。
- テッラは上条が幻想殺し(イマジンブレイカー)の本来の性能を知らないことに気付き、彼が記憶を失っていることを図星で突き当てた。
- 絶対に知られてはならない秘密を敵に暴かれ、さらにその状況を面白がって嘲笑するテッラの言葉は、上条の心を深く抉り、彼に激しい怒りを抱かせたのである。
まとめ
さらに最悪なことに、上条の壊れた携帯電話は偶然にも御坂美琴の携帯電話と通話状態のままになっていた。美琴はテッラとの会話の大部分を理解できなかったが、忘れているという言葉だけははっきりと彼女の胸に突き刺さった。上条が記憶喪失であるという衝撃的な可能性を知り、美琴は激しいショックを受けて立ち尽くすことになるのである。
とある魔術の禁書目録SSレビュー
とある魔術の禁書目録(15)レビュー
登場キャラクター
学園都市
黄泉川愛穂
学園都市の警備員を務める女性教師である。兵器開発の急激な方向転換に疑念を抱いている。
・所属組織、地位や役職
学園都市の警備員。教師。
・物語内での具体的な行動や成果
第三学区の迎撃兵器ショーで駆動鎧のデモンストレーションを行う。展示されている兵器が高殺傷力のものに変わっている事実へ違和感を覚えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項は記載されていない。
上条当麻
学園都市に住む男子高校生である。親船最中から世界的な混乱の収拾を託され、行動を起こす。
・所属組織、地位や役職
学園都市の高校生。無能力者。
・物語内での具体的な行動や成果
C文書を無効化するため、フランスのアビニョンへ向かう。現地で五和と合流し、左方のテッラと交戦してこれを撃破した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
右手に異能の力を打ち消す幻想殺しを持つ。記憶喪失である事実を御坂美琴に知られる。
青髪ピアス
上条当麻のクラスメイトである。
・所属組織、地位や役職
学園都市の男子高校生。
・物語内での具体的な行動や成果
大乱闘を起こした結果、職員室で親船素甘から説教を受ける。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項は記載されていない。
土御門元春
上条当麻のクラスメイトであり、裏の世界で暗躍するスパイである。
・所属組織、地位や役職
学園都市の男子高校生。スパイ。
・物語内での具体的な行動や成果
上条当麻と共にアビニョンへ飛ぶ。親船最中を銃撃する偽装を行い、現地では駆動鎧の相手を引き受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項は記載されていない。
吹寄制理
上条当麻のクラスメイトである。
・所属組織、地位や役職
学園都市の女子高生。
・物語内での具体的な行動や成果
職員室で説教を受ける上条たちの背後に立ち、不機嫌な様子を見せる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項は記載されていない。
親船素甘
上条当麻の通う高校の数学教師である。しつけに厳しい性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
学園都市の教師。
・物語内での具体的な行動や成果
大乱闘を起こした上条当麻らを職員室で説教した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
高級なブランド品を身につけている。
御坂美琴
学園都市の常盤台中学に通う女子生徒である。
・所属組織、地位や役職
常盤台中学。学園都市第三位の超能力者。
・物語内での具体的な行動や成果
飛行船のニュース画面で海外のデモ活動を視聴する。銃声の発生源である児童公園へ向かい、通信を通じて上条が記憶喪失である事実を知った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項は記載されていない。
親船最中
学園都市統括理事会の一員である。争いを阻止するために行動を起こす。
・所属組織、地位や役職
学園都市統括理事会。
・物語内での具体的な行動や成果
上条当麻に接触し、ローマ正教との争いを止めるよう依頼する。自ら反逆の制裁を受けるため、土御門元春へ自身を銃撃させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項は記載されていない。
ローマ正教
左方のテッラ
神の右席の一員である。民間人の犠牲を厭わない思想を抱いている。
・所属組織、地位や役職
ローマ正教・神の右席。
・物語内での具体的な行動や成果
アビニョンでC文書を回収する。上条当麻や五和と交戦して敗北を喫し、その後アックアに粛清されて死亡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
優先順位を変更する魔術である光の処刑を操る。小麦粉からギロチンの刃を生成する特徴がある。
後方のアックア
神の右席の一員である。民間人を巻き込むテッラのやり方に不満を持つ。
・所属組織、地位や役職
ローマ正教・神の右席。傭兵崩れ。
・物語内での具体的な行動や成果
ローマ教皇やテッラとの会合に参加する。敗北したテッラを粛清して命を奪った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項は記載されていない。
ローマ教皇
ローマ正教の指導者である。
・所属組織、地位や役職
ローマ正教の教皇。
・物語内での具体的な行動や成果
野外での会合に苦言を呈する。テッラとアックアのやり取りへ口を挟んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項は記載されていない。
リドヴィア=ロレンツェッティ
ローマ正教の重役である。社会的弱者を支援する立場にある。
・所属組織、地位や役職
ローマ正教。
・物語内での具体的な行動や成果
処刑塔の地下にある尋問施設でステイルたちの尋問を受ける。神の右席の目的や原罪について証言した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項は記載されていない。
ビアージオ=ブゾーニ
ローマ正教に所属する人物である。挑発的な態度を崩さない性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
ローマ正教。
・物語内での具体的な行動や成果
処刑塔の尋問室に拘束され、尋問を受ける。拷問には屈しないと主張した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項は記載されていない。
イギリス清教
ステイル=マグヌス
イギリス清教の魔術師である。
・所属組織、地位や役職
イギリス清教・必要悪の教会。
・物語内での具体的な行動や成果
処刑塔でリドヴィアとビアージオを尋問する。神の右席の情報を引き出そうと試みた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
死体から情報を引き出す技術の存在を仄めかし、ビアージオを脅す場面がある。
アニェーゼ=サンクティス
元ローマ正教のシスターである。
・所属組織、地位や役職
イギリス清教。元ローマ正教のシスター。
・物語内での具体的な行動や成果
ステイルと共に処刑塔を訪れる。リドヴィアの証言内容を羊皮紙へ記録した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項は記載されていない。
天草式十字凄教
五和
天草式十字凄教の戦闘メンバーである。
・所属組織、地位や役職
天草式十字凄教。
・物語内での具体的な行動や成果
アビニョンで上条当麻と合流する。暴動や駆動鎧から逃れつつ、上条と共に教皇庁宮殿を目指した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
海軍用船上槍を使用する。
集団・その他
駆動鎧開発チームのエンジニア
兵器開発を担当する研究者である。
・所属組織、地位や役職
学園都市のエンジニア。
・物語内での具体的な行動や成果
第三学区の迎撃兵器ショーの会場で、ノートパソコンを通じてニュースを視聴する。仕事が増えることへ不満を漏らした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項は記載されていない。
暴徒達
C文書の影響で抗議活動を行う人々である。
・所属組織、地位や役職
ローマ正教徒を中心とした群衆。
・物語内での具体的な行動や成果
世界各地で大規模なデモや暴動を引き起こす。アビニョンの街を練り歩き、店舗を襲撃した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項は記載されていない。
駆動鎧
学園都市製の無人兵器である。
・所属組織、地位や役職
学園都市の兵器。
・物語内での具体的な行動や成果
アビニョンに展開され、空砲の衝撃波を用いて暴徒を薙ぎ倒す。気絶した人々をバルーンへ収容した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
テッラによって優先順位の魔術を受け、破壊される。
警備員
学園都市の治安維持を担当する者たちである。
・所属組織、地位や役職
学園都市の警備員。
・物語内での具体的な行動や成果
児童公園の入口に立ち塞がり、立ち入りを禁止する。公園の奥で調査を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項は記載されていない。
とある魔術の禁書目録SSレビュー
とある魔術の禁書目録(15)レビュー
展開まとめ
序章 あまりにも暗い聖堂 Bread_and_Wine.
神の右席の会合
左方のテッラはバチカンの聖ピエトロ広場の噴水の縁に腰掛け、安物の赤ワインを飲みながら夜空を見上げていた。そこへ同じ『神の右席』の後方のアックアとローマ教皇が現れた。教皇は護衛もつけずに集まっていることを懸念したが、テッラはバチカンを覆う多重結界によって外部からの魔術狙撃は困難であると説明した。
神の血と儀式の酒
アックアや教皇は大量の安酒を飲むテッラを咎めたが、テッラはそれが嗜好品ではなく、『神の薬』の力を補充するための儀式であり、『神の血』を補う行為だと語った。酒の味には興味がなく、ただ儀式の道具として利用しているだけであると説明した。
バチカンを守る多重結界
テッラは夜空に揺らめく結界群について語った。バチカン全体を覆う多重結界は、無数の十字教的意味を持つ建造物が複雑に絡み合って成立しており、その全容はローマ教皇ですら把握できなくなっていた。そのため解析や対抗策の構築は極めて困難であり、外部からの干渉を防ぐ強固な防壁として機能していた。
テッラの出発と戦争観
力の補充を終えたテッラは出発を告げた。アックアはテッラが民間人を利用する方針に不満を示したが、テッラはローマ正教最大の武器は二〇億人という信徒の数であり、その圧倒的な人数こそが強みだと主張した。学園都市の人口は二三〇万人に過ぎず、戦争は結局のところ人員と物資の量で決まると語った。
羊飼いとしての決意
テッラは、自分たち『神の右席』は神秘によって民を導く存在であると述べた。そして怯える信徒たちには自らの導きに従ってもらうだけだと語り、かつて自分の笛に導かれて消えていった子供たちになぞらえながら、羊飼いとして人々を導く決意を示した。
第一章 早すぎる変化の速度 In_a_Long_Distance_Country
第三学区で開催された迎撃兵器ショー
学園都市第三学区では、対外向け施設が並ぶ中、迎撃兵器ショーが開催されていた。展示品は無人制御の攻撃ヘリ、駆動鎧、狙撃装置、大出力光学兵器などであり、娯楽というより学園都市の兵器技術を示す意味合いが強かった。
黄泉川の駆動鎧デモと兵器展示への違和感
黄泉川愛穂は駆動鎧のデモンストレーションを終え、暑さと疲労に不満を漏らしていた。傍らのエンジニアは淡々と応じ、展示場全体の熱気や明日の一般公開の混雑について語った。黄泉川は会場に並ぶ兵器が、従来の捕獲用装備ではなく高殺傷力の兵器へ変わっていることに違和感を抱いた。
世界各地で広がる抗議と報復
ニュースでは、フランス南部でローマ正教徒による大規模な抗議運動が起き、ドイツではカトリック系教会にブルドーザーが突っ込む事件が報じられていた。黄泉川は、ローマ正教側の抗議活動とそれへの反発が世界中で争いを加速させていると受け止めた。
学園都市の事前準備への疑念
黄泉川は、迎撃兵器ショーの手際が良すぎることから、学園都市が現在の混乱を見越して事前に準備していた可能性を考えた。戦争の引き金を引いたのが学園都市ではないとしても、その状況を利用して利益を得ようとしていることに忌々しさを覚えた。
職員室で説教を受ける上条たち
一方、上条当麻、青髪ピアス、土御門元春は、昼休みの教室での騒動を理由に職員室で親船素甘から説教を受けていた。上条は、バニーガールの色をめぐる議論に土御門が白ウサギ論を持ち込んだため乱闘になったと説明した。吹寄制理は三人を止めようとしただけだと主張したが、乱闘の中心にいたため同じく呼び出されていた。
放課後の草むしりと逃げた二人
罰として、上条たちは放課後に体育館裏の草むしりを命じられた。しかし土御門と青髪ピアスは姿を消し、現場に残ったのは上条と吹寄だけだった。上条は文句を言いながら作業を始め、吹寄は不満を漏らしつつも効率よく雑草を刈っていった。
吹寄のフォークボール実演
草むしりに飽きた上条は、吹寄が中間テスト中止後も勉強を続けている理由を尋ねた。吹寄は期末テストの範囲が広がるから気を抜けないと答え、さらに自分はフォークボールも投げられると主張した。上条が疑うと、吹寄は健康ボールを取り出し、実際に投げて見せることになった。
投球勝負の始まり
吹寄はフォークボールを投げようとしたが、スカートの動きを上条に指摘され、怒って剛速球を上条の腹へ直撃させた。その後、改めてフォークボールを投げ、上条は落ちたかどうか分からないと反応した。吹寄は実際に打席で見れば分かると主張し、上条は小型ホウキをバット代わりに構え、吹寄との勝負に応じた。
親船素甘の美人へのこだわり
親船素甘は、美人であることによる恩恵を理解しており、それを維持するために日々努力を重ねていた。放課後になると化粧や身だしなみの乱れが気になり始めるものの、美人としての評価を保つため表立って気にすることは避けていた。
月詠小萌との会話と上条たちの回収
職員室で教材作りに追われる月詠小萌と話していた素甘は、上条たちへ命じた草むしりを長時間放置していたことに気づいた。時間を確認した素甘は慌てて職員室を飛び出し、体育館裏へ向かった。
草むしりを忘れた勝負への熱中
体育館裏では、上条当麻と吹寄制理がフォークボール勝負に熱中していた。負けた方が五分間全力で草むしりをするという独自ルールまで作られ、二人は作業そっちのけで勝負を続けていた。吹寄は自分のフォークボールが落ちていると主張し、上条は疑いながらも打席に立っていた。
親船素甘への直撃事故
吹寄の投げたボールを上条が打ち損じた結果、軌道の変わったボールが体育館裏へ現れた親船素甘の顔面へ直撃した。怒りに震える素甘は上条を捕まえようとしたが、上条は咄嗟に土下座して拳をかわしたため、代わりにパンプスの踵で踏みつけられることになった。
職員室での大混乱
職員室へ戻った素甘は、顔や服に付いた土や乱れた身だしなみを必死に整え始めた。そこへ上条が草むしり終了の確認に訪れたことで、着替え途中の姿を見られてしまう。激怒した素甘は大型三角定規や分度器を投げつけて上条を追い払ったが、上条の目的は草むしり終了の確認だけだった。
御坂美琴との遭遇
学校を後にした上条は、駅前で自動販売機を蹴っている御坂美琴を見つけた。関わりを避けようとしたものの、美琴に捕まり、以前送ったメールを無視された件を追及されることになった。
御坂美鈴の連絡先を巡る騒動
美琴は上条の携帯電話に母・御坂美鈴の連絡先が登録されていることを発見した。不審に思った美琴はその場で美鈴へ電話をかけたが、美鈴本人は酔っていたため経緯を覚えていなかった。これにより美琴はさらに疑念を深め、上条へ詰め寄った。
広がる世界規模の対立
話題は世界情勢へ移り、飛行船のニュース映像ではローマ正教派による大規模な抗議活動がアメリカへも拡大している様子が流されていた。負傷者が出るほど事態は深刻化しており、美琴は何故普通の人々が傷つけ合わなければならないのかと疑問を口にした。
上条の認識する現状
上条は、美琴が黒幕を倒せば全て解決するという考えを抱いていることを察した。しかし実際には、問題はすでに一部の首謀者だけでは止められない段階に達しており、怒りや憤りを抱いた無数の人々がそれぞれの意思で動いていた。解決策の見えない状況の中、美琴の問いかけは上条の胸に重く残った。
行間 一
処刑塔の闇と尋問室
ステイル=マグヌスはアニェーゼ=サンクティスを伴い、表向きは観光施設となっている処刑塔の地下にある尋問施設を訪れた。そこにはローマ正教の重役であるリドヴィア=ロレンツェッティとビアージオ=ブゾーニが拘束されていた。ステイルは二人に『神の右席』について知る情報を話すよう求めたが、ビアージオは挑発的な態度を崩さず、リドヴィアも無関心な様子を見せていた。
必要悪の教会の脅し
ビアージオが拷問にも屈しないと語ると、ステイルは『必要悪の教会』には死体から情報を引き出す技術すら存在すると告げた。死による逃避も許さないという発言に、ビアージオは不快感を示し、リドヴィアも初めて明確な反応を見せた。ステイルは抵抗しても無意味だと警告し、尋問の主導権を握り続けた。
外の世界を案じるリドヴィア
リドヴィアは『神の右席』の話題よりも、現在の世界情勢について尋ねた。彼女は社会的弱者を支援してきた立場であり、世界各地で起きている混乱によって苦しむ人々を案じていた。ステイルはその心情を理解しつつ、混乱による被害が弱い立場の人々へ集中していることを示唆した。
協力と引き換えの要求
リドヴィアは協力の条件として、処刑塔に収監されている仲間達の解放を求めた。混乱を鎮め、人々を守るために必要な人材を解放してほしいと訴えたが、ステイルは簡単には応じない姿勢を示した。一方でビアージオは、リドヴィアの妥協的な態度に苛立ちを見せていた。
拘束からの反撃
リドヴィアは突然呪文を唱えた。彼女自身の魔術ではなく、アニェーゼが身に着けていた十字架が反応し、光の杭によって拘束具の一部が破壊された。拘束から解放された右腕で金属片を掴んだリドヴィアと、ルーンカードを構えたステイルは互いの喉元へ武器を突き付け合う形となった。
オリアナ解放の要求
リドヴィアはオリアナ=トムソンの解放を要求した。暴動に巻き込まれる人々を導くために必要な存在だと主張したが、ステイルはオリアナ自身がすでに世界情勢を理解した上で、リドヴィアの理想を実現するためにイギリス清教との協力を選んでいると説明した。そのため解放を求めても本人が承諾しないだろうと告げた。
神の右席に関する証言の開始
オリアナもリドヴィアと同じ目的のために行動していると知ったリドヴィアは沈黙した。その後、ステイルが『必要悪の教会』の目的は魔術に翻弄される人々を救うことだと語ると、リドヴィアは彼の言葉を見極めるように観察した。そしてやがて協力する決意を固めたように口を開き、『神の右席』について知る情報を語り始めた。
第二章 決定打となる引き金 Muzzle_of_a_Gun.
世界情勢への思索
上条当麻は御坂美琴と別れた後、駅前のデパートで数日分の食材を購入した。帰り道で飛行船のニュースを眺めながら、世界各地で拡大する抗議運動について考えていた。九月三〇日の事件が利用され、新たな混乱へ繋がっている現状に納得できず、問題を止めたいと考えたものの、具体的な解決策は思い浮かばなかった。そのため、まずは土御門元春を訪ねて情報を得ようと考えながら帰路についた。
初老の女性との遭遇
考え事をしながら歩いていた上条は、初老の女性とぶつかった。女性は丁寧に応対したが、直後に上条の腹部へ何か硬い物を押し当てた。コートで隠されたそれが何なのかは分からなかったが、女性はこれから迷惑をかけると告げ、上条を連れ歩き始めた。上条は警戒したものの、正体不明の物を恐れて下手に抵抗できなかった。
一端覧祭を意識する美琴
一方の御坂美琴は、上条と別れた後に一端覧祭のことを思い出した。大覇星祭で数々の騒動に巻き込まれた経験から、今度は事前に上条と一緒に回る約束を取り付けようと考えた。しかし携帯電話は圏外や通信不能状態となり連絡が取れず、美琴は直接上条を探すことを決めた。
正体不明の案内
上条は初老の女性に付き添われながら学生寮が並ぶ区域へ移動した。女性は終始穏やかな態度を崩さなかったが、コートの中の物を隠したまま上条を誘導し続けた。やがて二人は住宅街の中にある小さな児童公園へ到着し、ベンチへ並んで腰を下ろした。上条は目的を尋ねたが、女性は大したことではないと答えた。
世界の混乱についての対話の予告
ベンチに座った初老の女性は、自分が上条と話をしたかっただけだと明かした。そして話題として、現在世界中で起きている大きな混乱を挙げた。上条は女性の真意も正体も分からないまま、その言葉を聞くことになった。
上条を探し続ける美琴
美琴は上条を探して街を歩き回ったが見つけられなかった。帰ろうと考えたものの、白井黒子と初春飾利を見かけたことで思わず物陰へ隠れ、そのまま見知らぬ住宅街へ入り込んだ。そこは学生寮が立ち並ぶ区域で、夕食の匂いが漂う静かな場所だった。美琴は最後にこの辺りを見て回ろうと考えながら歩き続けた。
親船最中の正体と目的
上条は初老の女性から世界規模の混乱について意見を求められた。女性は国家では宗教や思想による混乱を解決できないと説明し、現在の問題がさらに大規模な内乱へ発展する危険性を指摘した。
上条が正体を尋ねると、女性は親船最中と名乗り、自らを学園都市の統括理事会の一員だと明かした。上条はその発言を疑ったものの、親船は気にすることなく本題へ話を進めた。
幻想殺しへの期待
親船は現在の混乱を解決するには上条の力が必要だと語った。そして、その理由は上条当麻だけが持つ幻想殺しにあると説明した。
親船によれば、世界中の混乱には異能の力による明確な原因が存在し、その元凶を打ち消すことができれば問題そのものを解決できる可能性があるというのであった。上条は、自身の力が関係していることに驚きを覚えた。
混乱を生み出した勢力の推測
親船は学園都市に混乱を起こす利益はなく、問題を引き起こしたのはローマ正教側であると推測していた。しかし上条は、被害を受けているのもローマ正教徒であり、自らの仲間を苦しめる理由が見当たらないと反論した。
それに対し親船は、ローマ正教の目的は二十億人の信徒を完全に味方へ取り込むことにあり、科学と宗教の両方の恩恵を受けている人々を自陣営へ引き寄せるために何らかの工作を行った結果、現在の混乱が生じたのではないかと語った。
科学と宗教の間にいる大多数の人々
親船は、世の中の大多数は科学か宗教かのどちらか一方に属しているわけではなく、その両方を生活の中で利用していると説明した。
学園都市の技術による恩恵を受けながら教会で結婚式を挙げるような人々こそ世界の多数派であり、ローマ正教はそうした人々を完全に自らの側へ取り込もうとしているのではないかと推測した。
経済爆撃という脅威
親船は、学園都市が警戒しているのは信徒の増加だけではないと語った。混乱が長引けば世界経済に深刻な悪影響を与え、やがて大規模な恐慌を招く危険があるというのである。
軍事大国ほど膨大な維持費を必要とするため、経済恐慌によって大きな打撃を受ける可能性があると説明した。さらに学園都市もローマ正教も戦争資金の確保を進めており、学園都市は兵器展示会による資金集めを、ローマ正教は平和基金という名目の寄付集めを行っている状況だった。
上条の推論
親船の説明を聞いた上条は、学園都市が自ら混乱を起こしている可能性も考えた。しかしデモ参加者の多くが経済活動を支える一般人であることから、自らの資金源を損なうような策とは考えにくいと判断した。
その結果、混乱の背後にはローマ正教側の何らかの工作が存在する可能性が高いのではないかと考えるようになった。
土御門の出現
上条が混乱を引き起こしている具体的な手段について尋ねた時、公園に土御門元春が現れた。
土御門は上条ではなく親船へ話しかけ、親船も彼の来訪を予想していたかのように応じた。二人は何らかの確認を交わし、親船は土御門に全てを任せると告げた。
親船最中の死
土御門は背中へ手を回し、拳銃を取り出した。上条は状況を理解できないまま見守ることしかできなかった。
次の瞬間、銃声が響き渡った。土御門が放った弾丸は親船最中を撃ち抜き、親船は笑みを浮かべたままベンチから地面へ崩れ落ちた。
銃声を聞いた美琴
一方、美琴は住宅街を歩いている最中に銃声を耳にした。能力者による騒動かもしれないと考えた美琴は、自身なら対処できると判断し、音の発生源へ向かうことを決めた。
そして銃声のした方向へ足を進めていった。
土御門による銃撃
親船最中が腹部を撃たれた事実を、上条はすぐには理解できなかった。土御門元春が撃ったと気付いた後も、親船は抵抗する様子を見せず、自らの意思で弾丸を受け入れたように見えた。
一方の土御門は何事もなかったかのように拳銃をしまい、薬莢を回収していた。その淡々とした態度に激怒した上条は土御門へ掴みかかり、顔面を殴り飛ばした。
親船最中の真意
さらに土御門へ向かおうとした上条だったが、倒れた親船に足首を掴まれて止められた。親船は土御門を責めないでほしいと告げ、自分の行動は統括理事会全体の方針とは異なっていたと明かした。
統括理事会は戦争の激化とローマ正教の徹底的な破壊を望んでおり、混乱の早期収束を望んでいなかった。親船はその方針に反して上条へ接触したため、反逆への制裁を受ける運命だったと説明した。
家族を守るための決断
親船は、自分一人なら制裁を回避できたものの、その場合は家族へ危険が及ぶと語った。上条が家族を人質に取られたのかと察すると、親船は否定も肯定もせず沈黙した。
そして土御門による制裁は自ら依頼したものであり、土御門自身は実行を嫌がっていたとも明かした。急所を外して撃つよう頼んだのも親船自身だった。
土御門の保証
土御門は親船へ無理に話すなと告げた上で、彼女の役目は完璧に果たされたと伝えた。そして安心しろとだけ約束した。
その言葉を聞いた親船は満足そうに微笑んだ。首に巻かれた手製のマフラーが示すように、親船の行動の根底には家族を守りたいという強い思いがあった。
出発準備
土御門は親船の持ち物から携帯電話を取り出して救急車を呼び、さらにコートの中に隠されていた小型拳銃を回収した。
その後、上条へ今すぐ動けるかと問いかけた。上条は親船の命懸けの行動を理解し、その覚悟に応えるため動く決意を固めた。
第二三学区への移動
土御門は説明は後回しにし、第二三学区へ向かうと告げた。そこには親船最中の力によって用意された航空機があり、その準備を無駄にはできないと語った。
上条は土御門の後に続きながら、命を懸けて自分を動かそうとした親船への思いを胸に、公園を後にした。公園には血まみれの親船だけが残され、遠くから救急車のサイレンが近づいていた。
美琴が見た現場
一方、美琴は銃声の発生源である児童公園へ到着した。公園の入口には警備員が立ち塞がり、黄色いテープによって立入禁止となっていた。
公園の奥では複数の警備員がベンチ付近を調査していたが、一般人の姿はなかった。美琴には何が起きたのか分からなかったものの、事件そのものはすでに終わっているように見えた。
行間 二
神の右席と原罪の関係
リドヴィア=ロレンツェッティは、『神の右席』とは原罪を克服するための集団であると説明した。
原罪とは、アダムとイヴが知恵の実を口にしたことで生じた罪であり、その性質は全人類へ受け継がれているとされる。しかし新約聖書では、『神の子』が全人類の罪を引き受けて抹消したことで、信仰を貫いた者は最終的に罪を洗い流されると語られていた。
聖母マリアという例外
リドヴィアは、この原罪の理論には例外が存在すると語った。ステイルはその例外が聖母マリアであると即座に見抜いた。
聖母マリアは聖霊との深い接触によって原罪を持たない存在となったとされており、そこから通常とは異なる方法で原罪を打ち消す手段が存在することが導き出されると説明された。
神の右席の力の源
リドヴィアによれば、『神の右席』はその裏技的な術式によって原罪を可能な限り薄めることに成功していた。
完全な抹消には至っていないものの、原罪を減少させた結果、彼らは通常の人間を凌駕する術的素養を獲得していた。さらに、本来は人間には扱えない天使や神の術式までも使用できるようになっていた。
一方で、原罪は知恵の実と同義であるため、それを失った者は通常の魔術師が用いる人間用の魔術を扱えなくなるという特性も存在していた。
原罪抹消は手段に過ぎない事実
ステイルは、『神の右席』の最終目的は体内に残るわずかな原罪の完全消去ではないかと推測した。
しかしリドヴィアはそれを否定した。原罪の抹消はあくまで目的達成のための手段の一つであり、彼らにはさらに大きな目標が存在すると語った。
神の右席の真の目的
ステイルが本当の目的を問いただすと、リドヴィアは彼らの目的は最初から名称そのものに示されていると答えた。
そして『神の右席』の目標とは、その名の通り『神の右席』へ至ることであると明かした。
第三章 魔術師から遠いもの Power_Instigation.
第二三学区への移動
上条と土御門は第二三学区へ向かった。第二三学区は航空・宇宙産業に特化した学区であり、学園都市の主要空港やロケット発射施設が集まる広大な地域であった。
上条は買い物袋を高額な冷蔵機能付きコインロッカーへ預けた後、土御門から国外へ向かうと聞かされた。非公式活動であるためパスポートは不要だと説明され、二人は国際空港行きのバスへ乗り込んだ。
ロケット発射と国外任務の説明
移動中、二人は学園都市製のロケット打ち上げを目撃した。土御門は、それが軍事衛星や大陸間弾道ミサイルなど様々な憶測を呼び起こすことで牽制効果を生み出していると説明した。
その後、上条はインデックスのことを心配したが、土御門から舞夏が世話をしていると聞かされ安心した。そして目的地がフランスであることを知らされるが、移動時間はわずか一時間ほどだと説明され驚愕した。
超音速旅客機への搭乗
空港では、かつて利用した超音速旅客機が用意されていた。上条はその圧倒的な速度と搭乗時の苦しさを思い出して強く嫌がったが、他に選択肢はなかった。
二人は一般の搭乗口を使わず機内へ入り、広大なファーストクラス席に腰を下ろした。
C文書の正体
機内で土御門は、今回の鍵となる霊装「C文書」について説明した。
正式名称はDocument of Constantineであり、コンスタンティヌス大帝がローマ教皇へ権限や土地を譲渡したことを示す文書とされていた。本来知られていた効果は、コンスタンティヌス大帝の遺産をローマ正教の所有物として示す程度のものだった。
しかし真の力は別にあり、ローマ教皇の発言を絶対に正しいものとして信じ込ませる効果を持っていた。人々の認識に作用する霊装であり、物理法則を書き換えるものではないが、ローマ正教に有利な思想や情報を広範囲へ浸透させることが可能だった。
C文書と現在の混乱
土御門は、C文書が過去の宗教的危機の中で、人々の信仰を維持するために生み出されたものであると語った。
上条は、現在のデモや混乱もC文書によって学園都市への敵意が正しいものだと信じ込まされた結果ではないかと理解した。しかしC文書は扱える者や場所が限定されており、本来はバチカンから地脈を利用して発動するものであった。
上条はフランスへ向かう理由や、すでに発動したC文書を止められるのかを疑問に思ったが、その説明は途中で中断された。
緊急降下作戦の開始
機内アナウンスが流れると、土御門は時間切れだと告げた。上条が体調不良から回復した頃、土御門は彼を機体後方へ連れていった。
そこは荷物搬入口付近であり、土御門は上条にパラシュート付きの装備を装着させた。そして突然後部ハッチを開放し、猛烈な風を機内へ吹き込ませた。
フランスの空港へ着陸すると敵に察知されるため、空中で降下する作戦だったのである。
上条の空中投下
土御門は抵抗する上条の手を蹴り離し、そのまま機外へ放り出した。
上条は青空の中へ投げ出され、激しく回転しながら落下した。土御門も笑顔で後を追って飛び出してくる。
やがて自動でパラシュートが開き、上条は首を締め付けられながらも降下を開始した。しかし風に流された結果、本来の降下地点を外れ、幅百メートル以上のローヌ川の中央へ落下する運命となっていた。
ローヌ川への落下と救助
パラシュートが風に流された結果、上条はローヌ川の中央へ落下した。衣服を着たまま水中へ投げ出されたうえ、パラシュートの布地が体に絡みついたため、思うように浮上できなかった。
体力と体温を奪われながら水中でもがく上条は、次第に恐怖と混乱に飲み込まれていった。しかしその時、水面を破って現れた人物が上条の腕を掴み、強引に水面へ引き上げた。
五和による救出
上条を救ったのは少女だった。少女は上条を河原まで引き上げ、そのまま力を抜いているよう指示した。
上条は絡みついたパラシュートから解放され、ようやく立ち上がった。周囲には人影がなく、近くには途中で崩れたアーチ状の石橋があった。
上条が自分を助けた少女を見ると、それは天草式十字凄教の五和だった。上条が名前を呼ぶと、五和は頭を下げて挨拶した。
フランスでの再会と任務の確認
上条は五和が土御門に呼ばれて来たのではないかと尋ねたが、五和はその名を聞いて首を傾げた。
上条がC文書の件を口にすると、五和はその情報を知っていることに驚いた。天草式もC文書について調査しており、その情報は簡単に掴めるものではなかったからである。
上条は自分も土御門と共にC文書を止めるために来たと説明した。一方で五和は、イギリス清教からの要請を受け、天草式十字凄教の戦闘メンバー五十二名でフランス各地を調査していることを明かした。五和自身はアビニョンを担当していた。
その話を聞いた上条は、自分が現在アビニョンにいることを初めて知った。
C文書の疑問と五和の荷物
上条は、C文書が本来バチカンでしか使えないはずなのに、なぜフランスを調査しているのかを五和へ尋ねた。
五和は説明しようとしたが、その前に石橋の上へ置いてきた荷物を取りに行きたいと申し出た。上条は、自分を助けるために五和が橋から飛び込んできたことを知り、改めて礼を述べた。
五和は照れながら否定したが、上条は続けて荷物の中に着替えがあるかを確認した。
五和の状況への気付き
五和は、天草式が隠密行動に特化しているため、着替えなどの装備も携帯していると説明した。
その返答を聞いた上条は安心した様子を見せたが、五和にはその理由が分からなかった。そこで上条は空を見上げながら指を向けた。
五和がその先を追うと、自分の胸元へ視線が移った。川へ飛び込んだことでタンクトップが濡れ、布地が肌に張り付いて体の線がはっきりと浮かび上がっていたのであった。
五和の着替えと気まずい空気
上条に濡れた服装を指摘された五和は、顔を真っ赤にしながらも冷静に対応し、荷物のある石橋へ向かった。しばらくして戻ってきた五和は着替えを済ませていたが、用意していた服は本来タンクトップの上から羽織るためのものであり、結果として露出の多い格好になってしまっていた。
上条が神裂も似たような服装だとフォローすると、五和は全力で否定したものの、自分の格好を再認識してさらに恥ずかしがった。
行動の共同行動と市街地への移動
五和は土御門と合流するまで一緒に行動しようと提案した。上条もフランス語が分からず、一人では行動できないため、その提案を受け入れた。
二人はアビニョン旧市街へ向かい、巨大な城壁と城門を抜けて市内へ入った。五和は人目を避けるため、地元住民ばかりが集まる店ではなく、日本人観光客も利用するチェーン店を選んで案内した。
暴動の爪痕が残る店内
店内には多くの客がいたが、その多くは服が汚れたり包帯を巻いていたりと、暴動や抗議行動の影響を受けた様子だった。
その光景を見た上条は事態の深刻さを実感し、五和も一刻も早く状況を止めなければならないと語った。二人は作戦会議を兼ねて店内へ入った。
アビニョン捕囚と教皇庁宮殿の調査
席についた二人は、C文書についての情報交換を始めた。
五和は、アビニョンにはかつてローマ教皇がフランス王によって移住を強いられたアビニョン捕囚の歴史があり、その際に建てられた教皇庁宮殿が存在すると説明した。
さらに、当時ローマ教皇領の設備を遠隔利用するための術的なパイプラインが築かれており、ローマ正教がそれを再接続している可能性があると推測した。そのため、教皇庁宮殿こそがC文書を使用している有力候補だと考えていた。
C文書使用に関する推測
上条は、なぜローマ正教が本拠地のバチカンではなくアビニョンでC文書を使っているのか疑問を口にした。
五和は、バチカンで正式にC文書を使用するには多数の枢機卿の承認が必要であり、発動までに長い時間がかかる可能性があると説明した。一方で、アビニョン経由の使用は正規手続きが不要な代わりに準備時間が必要であり、今なら発動を阻止できる可能性が残されていると語った。
その話を聞いた上条は、教皇庁宮殿を調べる必要性を強く認識した。
暴動による襲撃
五和が情報収集の続きを説明しようとした矢先、店の窓ガラスが轟音とともに砕け散った。
外にいた大量の暴徒が一斉に店内へ押し寄せ、店は瞬く間に混乱状態となった。上条と五和は非常口から脱出したが、店内には子供や女性も取り残されていた。
上条は助けに戻ろうとしたが、五和は今優先すべきは暴動の根源であるC文書を止めることだと訴えた。上条も苦しむ人々を救うためには元凶を断つしかないと理解し、その場を離れた。
敵による迎撃の察知
路地を逃走する中、二人は行く先々で暴徒に遭遇した。
五和はこれまで暴動を事前に察知して回避してきたと話したが、今回だけは異常なほど遭遇率が高かった。上条はその事実から、自分が超音速旅客機で降下したことを敵に察知され、暴動そのものが迎撃手段として利用されているのではないかと推測した。
五和もその可能性を認め、二人は敵がアビニョンに潜伏していると考えた。
教皇庁宮殿への強行突破
上条は土御門との合流を待つ余裕はなく、敵がC文書を持って逃げる前に行動するべきだと判断した。
五和も最終的に同意し、二人は教皇庁宮殿を目指すことを決断した。暴徒の大群を突破するため、五和は人波の中に身を隠すよう助言した。
二人は暴徒の群れへ飛び込み、殴られ、掴まれながらも前進を続けた。上条は噛みつき、押しのけながら進み、五和も傷を負いながら同行した。
ようやく一つの人波を突破した二人だったが、その先にはさらに巨大な暴動の渦が広がっていた。教皇庁宮殿へ辿り着くためには、さらに大規模な人の壁を突破しなければならなかったのである。
暴動による進路封鎖
上条と五和は教皇庁宮殿を目指していたが、アビニョン旧市街の狭い道路は暴徒で埋め尽くされており、まったく前進できなかった。行く先々で暴動が発生し、日本人や学園都市関係者と思われる上条たちは執拗に狙われていた。
五和は正面突破は不可能と判断し、上条を連れて来た道を引き返した。しかし退路にも別の暴徒集団が現れたため、二人は石造りの建物へ逃げ込んだ。
膠着する状況と土御門からの連絡
建物の中で身を潜めながら、上条と五和は暴動によって教皇庁宮殿へ近づけない現状に焦りを感じていた。
その時、上条の携帯電話に土御門から連絡が入った。土御門も同様に暴動へ巻き込まれていたが、教皇庁宮殿こそがC文書を扱う拠点であると考えていた。
二人は互いの状況を共有し、暴動が意図的に引き起こされたものであり、待機しても状況は改善しないことを確認した。
パイプライン切断作戦の提案
土御門は、教皇庁宮殿へ直接行けないなら、教皇庁宮殿とバチカンを結ぶ術的なパイプラインを切断するべきだと提案した。
アビニョンが重要視される理由は、バチカンの設備を遠隔操作できる点にあり、その接続を断てばC文書を使用できなくなると説明した。上条は敵が逃げる危険性を指摘したが、土御門はまずC文書の機能停止を優先するべきだと答えた。
幻想殺しと地脈の例外
移動しながら上条は、自分の右手である幻想殺しを使えばパイプラインを破壊できるのではないかと尋ねた。
しかし土御門は、幻想殺しには正体不明の例外が存在すると語った。生命力や地脈のようなものに対して本当に作用するかは不明であり、地脈もその例外に該当する可能性が高いと説明した。
その言葉を聞いた上条は、自分自身の力についてほとんど理解していないことを改めて意識した。
博物館でのパイプライン発見
土御門の案内を頼りに、上条と五和はパイプラインが通るとされる博物館へ到着した。
暴動の影響で閉館していたため、五和は槍を使ってシャッターと扉を強引に破壊し、館内へ侵入した。薄暗い館内を進むと、展示物の配置だけが不自然に避けられている場所を発見する。
五和はそこからローマ正教特有の力の流れを感知し、教皇庁宮殿とバチカンを結ぶパイプラインの存在を確信した。
切断儀式の開始
五和はバッグから様々な日用品を取り出し、術式の準備を始めた。その中には偶然入っていた自身の下着も含まれており、術式に必要だと分かると複雑な表情を浮かべながら配置へ加えた。
準備を終えると、五和は槍を床へ突き刺し、パイプラインの方向をずらすための儀式を開始した。槍は床の中へ沈み込み、術式は順調に進行しているように見えた。
白い刃による襲撃
しかし儀式の最中、博物館の外壁を突き破って白い刃のような攻撃が飛来した。
五和は間一髪で回避したものの、槍は真ん中からへし折られてしまう。彼女は即座に予備部品を取り出して槍を修復したが、続けて放たれる白い刃が館内を次々と破壊した。
石壁や展示ケースは粉砕され、建物そのものが崩壊しかねない状態となったため、上条と五和は博物館から脱出した。
左方のテッラの出現
館外へ飛び出した直後、上条たちは襲撃者と遭遇した。
緑色の礼服を身にまとった男は、上条へ向けて再び白い刃を放った。しかし上条は幻想殺しでそれを打ち消し、攻撃は白い粉となって砕け散った。
男は自らを神の右席の一員、左方のテッラと名乗った。テッラはC文書の行使自体には関わっていないものの、対地脈用の探査に引っかかった上条たちを見つけたため、暇潰しとして相手をすると告げた。
こうして上条と五和は、神の右席の一人である左方のテッラとの戦闘に突入したのである。
テッラの猛攻と上条の突破作戦
博物館の前で対峙したテッラは、白いギロチンを巨大な津波のように変形させて周囲一帯を薙ぎ払った。建物や車両をまとめて破壊する凄まじい威力だったが、上条は幻想殺しで攻撃を防ぎ、その能力が有効であることを確認した。
上条は自らが攻撃を引き受け、その隙に五和が接近する作戦を選択した。テッラも幻想殺しに興味を示しながら攻撃を続けたが、上条は防御に徹しつつ前進を試みた。
五和の接近戦と七教七刃
五和はテッラの放つ白い刃を次々と回避しながら接近し、槍による攻撃を仕掛けた。しかしテッラはギロチンで迎撃し、反撃を繰り出した。
五和は回避しながら再度攻撃の機会を狙い、切り札である七教七刃を発動した。鋼糸による七方向同時攻撃はテッラの全身を包囲したが、彼の体には傷一つ付かなかった。
驚く五和を前に、テッラは絡みついた鋼糸を容易く引き千切った。
優先順位操作による防御と反撃
続いて五和は槍で突きを放ったが、テッラが優先するという言葉を発した途端、彼の体は壁の中へ沈み込むように消えた。
槍は空振りに終わり、直後に壁の中から白いギロチンが飛び出して五和を襲った。五和は辛うじて回避したが、攻撃後の隙を狙われてしまう。
そこへ上条が割って入り、五和へ振り下ろされたギロチンを幻想殺しで打ち消した。
追い詰められる上条と五和
テッラは外壁ごと白い刃で切り裂き、大量の瓦礫を攻撃手段として利用した。上条は五和を連れて退避したが、テッラは余裕を崩さず二人を追い詰めていった。
さらにテッラは幻想殺しを過大評価していたと語り、前方のヴェントとの戦いも特殊な状況が重なった結果に過ぎないと評した。
上条はその実力差を痛感しながらも、なお戦意を失わなかった。
空気を優先した術式
再び二人が同時に攻撃を仕掛けると、テッラは槍の動きを下位に、空気を上位にと宣言した。
その瞬間、五和の槍は目標へ届かず空中で停止した。一方で上条も接近を試みたが、テッラの白い刃を受けて壁へ叩きつけられた。
激しい衝撃を受けた上条だったが、体を真っ二つにされることはなく、かろうじて生存していた。
光の処刑の正体
上条は攻撃の威力に違いがあることへ疑問を抱いたが、五和は刃に付着していた白い粉が小麦粉であることに気づいた。
その言葉を受けたテッラは、自らの術式の正体を明かした。それは神の子の処刑という神話を基盤とした術式、光の処刑であった。
テッラは対象の優先順位を自由に変更できる能力を持っていた。ワイヤーより自分の肉体を優先したため傷つかず、外壁より小麦粉の刃を優先したため圧倒的な破壊力を生み出していた。また空気を槍より優先したことで五和の攻撃を停止させていた。
その説明を聞いた上条は仕組みを理解したものの、打開策は見つけられなかった。
土御門の乱入
余裕を見せるテッラは、上条たちへ十秒間の猶予を与えると告げた。
その直後、炎をまとった折り紙が飛来し、テッラを襲った。しかしテッラは魔術より人肌を優先することで攻撃を無効化した。
現れたのは土御門だった。魔術の副作用で口から血を流しながらも、彼は落ち着いた様子でテッラを見据えていた。
土御門は今の攻撃で十分だと語り、テッラを追い詰めたと断言した。
土御門の推理と次の一手
土御門は拳銃を取り出し、テッラへ向けて発砲した。
テッラは弾丸より人肌を優先することで攻撃を防いだが、土御門は結果を見ても余裕を崩さなかった。さらに黒い折り紙を取り出し、次で勝負が決まると宣言した。
テッラもその言葉を受けて警戒を強め、両者の間に緊張が走った。
C文書を優先する土御門の指示
対峙する二人を見守る中、五和は上条へ耳打ちした。
土御門からの伝言によれば、重要なのはテッラを倒すことではなく、教皇庁宮殿にあるC文書を停止させることだった。土御門が動いた瞬間、その隙を突いて教皇庁宮殿へ向かうよう指示されていた。
上条はその作戦を理解し、戦況の変化を待った。
学園都市の機甲部隊侵攻
しかし決着がつく直前、アビニョンの街並みを揺るがす巨大な爆発音が響いた。
それは土御門やテッラによるものではなく、第三者による介入だった。建物の外壁が崩壊し、粉塵の向こうに巨大な人影が現れた。
その正体は学園都市の非公式編成機甲部隊が運用する駆動鎧だった。全長二・五メートルほどの機体群は対隔壁用ショットガンで城壁を粉砕しながら旧市街へ侵攻していた。
暴動に参加していた人々が混乱する中、駆動鎧は無感情に武器を向ける。そして敵勢力を発見という報告が無線で流れ、学園都市の介入によって戦場は新たな局面へ突入したのである。
学園都市の駆動鎧部隊の侵攻
アビニョン旧市街に侵入した大量の駆動鎧を見て、上条は愕然とした。狭い道路や建物など意に介さず、外壁を破壊しながら進むその姿は明らかに学園都市の技術によるものだった。
駆動鎧は対隔壁用ショットガンを用いて建物や車両を吹き飛ばし、暴動を起こしていた人々にも容赦なく銃口を向けた。発射されたのは実弾ではなく空砲だったが、巨大な衝撃波だけで人々を吹き飛ばし、抵抗する者たちを次々と無力化していった。
学園都市の介入への困惑
暴徒たちを圧倒する駆動鎧の姿を見ながら、上条は状況を理解できずにいた。
これまで学園都市はアビニョンの問題へ積極的に介入しないと聞かされていた。しかし実際には軍事行動とも呼べる規模で部隊を送り込み、街を蹂躙していたのである。
上条は学園都市上層部の思惑を考えながら、目の前で起きている光景に強い怒りと困惑を覚えた。
テッラの撤退
学園都市の介入を目にしたテッラは、教皇庁宮殿でC文書を扱っている術者たちにとって厄介な事態になったと判断した。
そして光の処刑の実戦データ収集は十分だと考えたのか、上条たちとの戦闘を切り上げて、その場から離脱した。
土御門はすぐに追おうとしたが、その直後に駆動鎧による攻撃が行われ、建物内部で大規模な爆発が発生した。テッラが逃げ込んだ通路は炎に包まれ、追跡は困難になった。
教皇庁宮殿を目指す決断
爆風で吹き飛ばされた上条を五和が助け起こした。
土御門は今はテッラを追い、教皇庁宮殿へ向かうべきだと判断した。学園都市の介入によって状況はさらに混乱していたが、駆動鎧の目的もC文書である以上、まずはその霊装を破壊することが先決だと告げた。
上条は学園都市のやり方に強い不信感を抱きながらも、C文書を止める必要性を理解していた。
土御門との別行動
その時、数体の駆動鎧が炎の向こうから現れ、上条たちへ銃口を向けた。
土御門は状況を見て、問題が二つに分かれたと判断した。上条と五和には教皇庁宮殿へ向かわせ、自分は駆動鎧への対処を引き受けると告げた。
上条は反対しかけたが、土御門は駆動鎧の相手は自分の方が適任だと説得した。完全な敵ではない以上、交渉や駆け引きの余地があると考えていたのである。
教皇庁宮殿への疾走
土御門の言葉を受けた上条は、五和と共にその場を離れた。
背後では駆動鎧の機械音と、土御門が魔術を使ったらしい音が響いていた。魔術を使うたびに傷つく土御門を案じながらも、上条には前へ進むしかなかった。
二人は煙と火薬の臭いが漂う旧市街を走り続けた。街では人々が逃げ惑い、その後を駆動鎧が追い立てていた。
暴動をはるかに上回る軍事的暴力に怒りを覚えながらも、上条は五和の案内で教皇庁宮殿を目指した。やがて遠方に、その目的地と思われる建物の姿が見え始めていた。
行間 三
神の右席の情報を整理するステイル
ステイル=マグヌスは一度処刑塔の外へ出た。ロンドンでは大規模な暴動こそ発生していなかったものの、街全体には緊張した空気が漂っていた。
新しい煙草を咥えながら、ステイルはリドヴィア=ロレンツェッティから聞いた神の右席について考えていた。神の右席は正式な構成員が四人しかおらず、それぞれが四大天使の属性を秘めているとされていた。
リドヴィアの証言への疑問
共に外へ出たアニェーゼ=サンクティスは、リドヴィアの証言が攪乱目的の虚偽である可能性を指摘した。自身もローマ正教に所属していたが、そのような話は聞いたことがなかったためである。
それに対しステイルは、尋問室での会話は魔術的に記録されており、その内容を再分析すれば真偽をある程度判断できると説明した。ただし、完全な保証はできないとも付け加えた。
神の右席の正体への考察
ステイルはリドヴィアの証言が真実である場合を想定しながら思考を巡らせた。
その内容によれば、神の右席とは単なるローマ正教の暗部組織の名称ではなく、彼らが目指す最終目標そのものを示す名前でもあった。しかし現時点では情報が不足しており、その意味を特定するには至らなかった。
尋問の再開
考察を終えたステイルはアニェーゼに休憩を続けるか尋ねたが、アニェーゼは早く尋問を終わらせたいと答えた。
それを受けて二人は再び処刑塔の中へ戻り、リドヴィアからさらなる情報を引き出すため尋問を再開しようとしたのである。
第四章 空を覆う鋼鉄の群れ Cruel_Troopers.
駆動鎧によるアビニョン制圧
上条と五和は教皇庁宮殿を目指してアビニョンの街を走った。かつて街を埋め尽くしていた暴徒たちはほとんど姿を消しており、道路や建物は駆動鎧によって破壊されていた。
駆動鎧は実弾ではなく空砲による衝撃波で暴徒たちを無力化していた。気絶した人々は巨大なバルーンに収容されて運び出されており、街全体で大規模な制圧作戦が進行していた。
上条は、作戦上の都合を優先して暴力で市民を屈服させる学園都市のやり方に強い怒りを覚えた。そして親船最中が止めようとしていたのはローマ正教ではなく、争いそのものだったのだと理解した。
教皇庁宮殿への到着
やがて二人は教皇庁宮殿へ到着した。上条が想像していた華やかな宮殿ではなく、それは巨大な要塞のような建造物だった。
しかし建物はすでに破壊されており、正面入口や窓には大きな損傷が見られた。内部からは銃声や爆発音が聞こえており、戦闘が続いていることがうかがえた。
上条と五和は迷うことなく宮殿内部へ突入した。
駆動鎧に追われる土御門
一方、土御門元春は駆動鎧の追撃を受けながら街中を逃走していた。
魔術の副作用で血を流しながらも遮蔽物を利用して逃げ続けたが、駆動鎧は高い機動力と環境適応能力を備えており、容易に振り切れなかった。
さらに実弾へ切り替えた対隔壁用ショットガンによって瓦礫の壁を吹き飛ばされ、土御門は追い詰められていった。
土御門による逆転
土御門は魔術を使って攻撃を防ぎ、水の術で駆動鎧を吹き飛ばした。しかし連続使用の副作用によって身体は限界に近づいていた。
そこで土御門は降参を装いながら時間を稼ぎ、駆動鎧に搭載された新型駆動補助装置の欠陥を利用した。
特定条件を連続して入力させることでシステムにエラーを発生させ、駆動鎧の動きを停止させることに成功したのである。
その後、土御門は駆動鎧から武器を奪い、しばらくは脱出もできないと説明した上で、今後は交渉に持ち込もうと考えた。
教皇庁宮殿内部の探索
教皇庁宮殿へ侵入した上条と五和は、人影のない広大な内部を進んでいた。
銃声や爆発音は続いていたが、ローマ正教の大部隊が駐留している様子はなく、C文書を扱う術者たちが少人数で活動している可能性を考えた。
移動中、上条は御坂美琴へ電話をかけ、外部の状況を確認した。美琴は世界中でアビニョンのニュースが報道されており、宗教団体が国際法違反の特別破壊兵器を保有しているとして学園都市主導の制圧作戦が行われていると伝えた。
テッラとの再会
その直後、宮殿内の戦闘音が突然止み、不気味な静寂が訪れた。
次の瞬間、壁を突き破って機能停止した駆動鎧が飛来し、上条を押し倒した。五和が警戒する中、その先には左方のテッラが立っていた。
テッラは優先の魔術によって駆動鎧部隊を全滅させており、手にはC文書が握られていた。C文書の術者はすでに戦闘不能となり、テッラ自身がそれを回収していたのである。
テッラは学園都市が大規模な軍事介入を行ったことに苛立ちを見せながらも、今は撤退を優先すると告げた。
上条はC文書を持ち去らせまいと立ちはだかったが、テッラは学園都市の部隊すら退けた自分を止められるのかと嘲笑し、再び上条たちとの戦いに応じる姿勢を見せた。
爆撃機出現と土御門の危機感
土御門が交渉を考えていた頃、アビニョン上空に大量の超音速ステルス爆撃機が飛来した。
それを見た土御門は、駆動鎧部隊が爆撃機によって学園都市から運び込まれたことを理解した。
さらに、駆動鎧はC文書の所在確認が目的であり、その後は爆撃機によって教皇庁宮殿ごと破壊する計画だったのではないかと推測した。
しかしテッラの能力を考えれば単純な爆撃で解決できるとは思えず、土御門はアレイスターがまだ別の切り札を隠している可能性を疑ったのであった。
超音速爆撃機と新たな作戦開始
アビニョン上空九〇〇〇メートルでは、十一機の超音速ステルス爆撃機HsB-02が作戦行動を続けていた。そのうちの一機には杖をついた超能力者が搭乗していた。
作戦行動Aの完了後、機内では次の段階への移行が伝えられたが、超能力者は投下準備を急ぐ必要はないと答えた。そしてアビニョンを見下ろしながら、面倒な騒動を早く終わらせて本来の目的へ戻りたいと考えていた。
地殻破断によるアビニョン隔離
作戦行動Bが開始されると、四機の爆撃機が隊列から離れて加速した。
機体下部に装備された巨大なブレードは超高速で大気を切り裂き、さらに砂鉄を混ぜ込むことで絶大な破壊力を発揮した。四機の飛行によってアビニョンの周囲が巨大な溝で切り裂かれ、その地面は高熱によって溶岩と化した。
その結果、アビニョン旧市街は外部から完全に隔離され、水道や電力、さらにはローヌ川の流れまで寸断された。住民たちは街の中へ閉じ込められる形となった。
旧市街全域への爆撃計画
隔離完了後、爆撃機部隊は旧市街全域への空爆準備へ移行した。
標的は教皇庁宮殿だけではなく旧市街全体であり、爆撃機は駆動鎧部隊の発信信号だけを避けながら街そのものを焼き払う予定だった。作戦終了後、地上部隊は装備を放棄し、潜水艦によって撤収する計画も組まれていた。
モニタには逃げ遅れた住民たちの姿も映っていたが、その多くは爆撃の危険にさらされていた。
超能力者による作戦変更
旧市街全体への爆撃が予定される中、超能力者は作戦変更を命じた。
まず教皇庁宮殿へ攻撃を集中し、それでも成果が得られなければ自ら投入されると告げた。そして自身との連絡も途絶えた場合に限り、旧市街全体への爆撃を実行するよう命令した。
理由を問われた超能力者は、悪にも種類があり、一流の悪党は一般人の命を狙わないと語った。その結果、上層部も申請を受理し、作戦は教皇庁宮殿への集中攻撃へ変更された。
テッラとの戦闘開始
教皇庁宮殿では上条と五和がテッラと対峙していた。
上条がC文書を渡す気はないのかと問いかけると、テッラは挑発的に応じた。上条は突進したが、テッラは優先術式によって小麦粉のギロチンを巨大化させ、圧倒的な衝撃波で迎撃した。
五和は上条を救いながら反撃に移ったが、優先術式によって槍の攻撃は皮膚に弾かれた。さらに小石による目潰しも通用せず、テッラの反撃によって二人は吹き飛ばされた。
五和の負傷と弱点への気付き
吹き飛ばされた際、五和は瓦礫の上に倒れ込んで足首を負傷した。
テッラはその隙を突いて攻撃を加えたが、上条が右手で防御した。さらに攻防が続く中、五和はテッラの優先術式に不自然な点があることに気付いた。
土御門が言いかけていた優先術式の弱点について言及すると、テッラは興味深そうな反応を見せた。しかし同時に、弱点に気付いたとしても活用する時間はないと告げた。
天井落下による五和の戦闘不能
テッラは天井と小麦粉の優先順位を入れ替える術式を発動した。
すると天井全体が突然落下し、五和は槍で支えて圧死を免れたものの武器を封じられた。その直後、テッラのギロチンが直撃し、五和は大きく吹き飛ばされて意識を失った。
テッラは神の右席にただの魔術師が敵うはずがないと嘲笑した。
上条への挑発と記憶喪失への言及
五和が倒れると、上条は激しい怒りを覚えた。
しかしテッラはなお余裕を崩さず、幻想殺しが本来の性能を失っていることを示唆した。さらに上条がその事実を知らない様子を見て、記憶を失っているのではないかと指摘した。
その言葉は記憶喪失を隠してきた上条の心を深く抉った。テッラはそれを面白がりながら挑発を続け、上条の怒りをさらに煽った。
テッラの弱点を探る上条
怒りを抱えながらも、上条は冷静にテッラの能力を分析し始めた。
土御門と五和は優先術式には弱点が存在すると断言していた。上条はこれまでの戦闘を思い返し、テッラの攻撃には確かに不自然な部分があったことを思い出した。
やがてテッラは自ら攻撃に出ると宣言し、小麦粉のギロチンを放った。上条はその攻撃を目の当たりにしながら、優先術式の弱点を見抜こうとしていた。
優先術式の弱点を暴く上条
上条は迫る小麦粉の刃を右手で受けずに回避し、床に落ちていた石塊を拾ってテッラへ投げつけた。テッラは優先術式で防御したが、続いて上条が投げた財布には同じ対応を取らなかった。
その違和感を突いた上条は、五和の槍や土御門の魔術は防いだのに、ただの財布を防がなかった理由を問いかけた。そして、テッラの優先術式は複数の対象を同時に扱えず、一つの優先設定から別の設定へ切り替える必要があるという弱点を見抜いた。
弱点を認めつつも余裕を崩さないテッラ
テッラは上条の推測を否定せず、優先術式が未調整であることを認めた。
しかし、弱点が判明した程度で自分は敗北しないと嘲笑し、さらに攻撃を続けた。床と小麦粉の優先順位を入れ替えて床を破壊しながら後退し、上条との距離を保とうとした。
神聖の国を目指すテッラの思想
戦いながらテッラは、自身の目的が十字教徒の最終目標である神聖の国の実現にあると語った。
最後の審判の後に築かれる救済の王国について説明した後、人間がその王国で争いを起こすのではないかという疑問を抱いたと明かした。そして、人類が神聖の国に相応しい存在となれるよう導くために行動しているのだと主張した。
救いの在り方を巡る対立
テッラの言葉を聞いた上条は、その考え方そのものを否定した。
親船最中や土御門、五和のことを思い浮かべながら、救いとは人々の争いを生み出すものではないと訴えた。そして、自分勝手な救いを押し付けるテッラの幻想をここで打ち壊すと宣言した。
槍を利用した決定的な隙
上条はさらにテッラへ迫りながら、床に落ちていた五和の槍を蹴り飛ばした。
滑るように進んだ槍はテッラの足元へ向かい、テッラはわざわざギロチンでそれを叩き落とした。その行動から、テッラ自身には高い身体能力がなく、優先術式に依存していることを上条は確信した。
その隙を突き、上条はついに懐へ潜り込み、渾身の右拳をテッラの顔面へ叩き込んだ。
反撃と対隔壁用ショットガンの利用
顔面を殴られたテッラは激怒しながらも反撃に出た。
人体より小麦粉を優先する設定で放たれたギロチンが上条の腹へ迫る。上条は回避も防御もできない状況だったが、足元にあった駆動鎧の対隔壁用ショットガンを蹴り上げ、自分とギロチンの間へ割り込ませた。
ギロチンはショットガンを貫けず、その威力は大幅に減衰した。優先術式が人体と小麦粉にしか作用していなかったため、間に挟まった金属製のショットガンが盾として機能したのである。
左方のテッラの敗北
一撃を耐え切った上条は、砕けたギロチンを右手で消し去りながら前へ踏み込んだ。
テッラは幻想殺し以外の要因で攻撃が防がれたことに驚愕したが、上条は答えず、そのまま拳を振り抜いた。二度目の一撃を受けたテッラはついに床へ倒れ伏し、戦闘不能となった。
C文書の消滅
戦いを終えた上条は、テッラの懐から転がり出たC文書を発見した。
それを右手で掴もうとした瞬間、羊皮紙は崩壊し始めた。C文書は粉末となって風に流され、あっけなく消滅した。
こうしてアビニョンを混乱へ陥れていた霊装は失われた。
五和への感謝とテッラの問いかけ
上条は倒れている五和の元へ向かい、呼吸を確認した。
彼女の槍を傍らへ置き、五和がいなければ勝利できなかったと静かに感謝を伝えた。そして土御門と連絡を取ろうとしたが、携帯電話は戦闘中に壊れていた。
その直後、倒れていたテッラがわずかに意識を取り戻した。
幻想殺しの謎
テッラは上条へ、幻想殺しについて尋ねないのかと問いかけた。
上条が興味を示すと、テッラは幻想殺しがなぜ右手に宿っているのか考えるべきだと語った。そして、その力の正体こそ大きな答えに繋がると意味深な言葉を残した。
さらに、上条が本当に記憶を失っていることを見抜き、その反応を楽しむように笑った。
爆撃によるテッラの消滅
テッラが幻想殺しの正体を語ろうとした瞬間だった。
突如として天井を貫くオレンジ色の閃光が降り注ぎ、テッラのいる場所を直撃した。教皇庁宮殿内部は爆風と熱波に飲み込まれ、床は溶岩へと変わった。
窓の外には複数の超音速爆撃機が旋回しており、同様の攻撃が続けて放たれた。教皇庁宮殿の三分の一が消滅するほどの破壊の中で、左方のテッラは死体すら残さず消え去った。
上条はその光景を目の当たりにしたまま意識を失った。
終章 その解は次の謎へと Question.
五和の目覚めと惨状の確認
爆発の衝撃で五和は意識を取り戻した。気がつくと教皇庁宮殿の壁際まで吹き飛ばされており、近くには自分の槍も転がっていた。
周囲では壁や床、天井が高熱によって溶解し、オレンジ色の溶岩のような状態へ変わっていた。少し離れた場所には機能停止した駆動鎧と、気を失った上条が倒れていた。上条は軽度の火傷を負っていたため、五和は持っていたおしぼりで応急手当を施した。
正体不明の存在との遭遇
五和は状況を整理しながら上条の回復を待とうとしていたが、その時、溶岩の広がる通路の奥から声が聞こえた。
そこには数千度の溶岩の中に平然と立つ人影がいた。その人物は誰かと通信しながら、爆撃や死体確認について話していた。五和は圧倒的な存在感に恐怖を覚え、槍を構えながらも動くことができなかった。
やがて人影は教皇庁宮殿の奥へ消えていったが、五和は追跡することも声をかけることもできなかった。
神の右席の目的の解明
一方ロンドンの処刑塔では、ステイルとアニェーゼがリドヴィアから神の右席についての説明を受けていた。
リドヴィアによれば、神の右席は天使の中に紛れ込んだ神の存在を追い求めており、人間が原罪を取り除いて天使へ進化する方法を探しているという。そして最終的には神の右席に座り、神上と呼ばれる神以上の存在へ至ることを目的としていた。
その説明を聞いたステイルは、神の右席を異端宗派そのものだと評した。
テッラとアックアの再会
その頃、聖ピエトロ大聖堂では左方のテッラと後方のアックアが対面していた。
テッラは教皇庁宮殿でC文書を失ったことを認めたが、それでも上機嫌だった。理由はロシア成教が正式にローマ正教側へ協力することが決まったためである。
テッラは今回の事件によって学園都市とイギリス清教の連携が明らかになり、その結果としてロシア成教を自陣営へ引き込む目的を達成できたと語った。
テッラの歪んだ思想
アックアはテッラが優先術式の調整のために子供や観光客を利用していたという報告について問い質した。
テッラはそれを平然と認め、自分が救う対象はローマ正教徒だけであり、それ以外は人間ではないと断言した。ローマ正教徒以外なら照準調整用の標的として扱っても問題ないという考えを隠そうともしなかった。
アックアはその発言を聞き、テッラの思想が完全に歪んでいることを再確認した。
アックアによる粛清
アックアは話を終えると、突然行動に移った。
聖ピエトロ大聖堂の柱を引き抜き、それを振るってテッラの肉体を粉砕した。学園都市の爆撃すら防いだテッラだったが、優先術式を発動する暇すら与えられず、一撃で瀕死に追い込まれた。
それでもテッラは死を恐れず、自らが神聖の国へ迎えられると信じていた。しかしアックアは、テッラが神に選ばれることは絶対にないと断言し、地獄以外に居場所はないと告げた。
その言葉を受けた直後、テッラは完全に息絶えた。
ローマ教皇との会話
テッラの死後、ローマ教皇が姿を現した。
アックアは神の右席が機能を維持するためには外部から監視し導く存在が必要であり、その役目に最も相応しいのは教皇だと語った。
さらに今後について問われたアックアは、ヴェントとテッラが脱落した以上、自らが動くしかないと答えた。そして民間人を戦場へ巻き込むべきではなく、兵士同士だけが戦うべきだと述べ、日本への襲撃に自ら参加する意志を示した。
美琴が知った真実
一方、御坂美琴は上条との通話が切れた後も携帯電話を見つめていた。
壊れた携帯電話を通じて、教皇庁宮殿で交わされた上条とテッラの会話が美琴にも聞こえていたのである。
美琴は会話の内容の大半を理解できなかったが、一つの言葉だけは強く胸に残った。それは上条が記憶を失っているという事実だった。
震えながらその言葉を反芻した美琴は、上条が記憶喪失である可能性に衝撃を受けていた。
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