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とある魔術の禁書目録フィクション(Novel)読書感想

小説「とある魔術の禁書目録 (11)」感想・ネタバレ

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とある魔術の禁書目録 11の表紙画像(レビュー記事導入用) とある魔術の禁書目録

とある魔術の禁書目録(10)レビュー
とある魔術の禁書目録(12)レビュー

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物語の概要

■ 作品概要

『とある魔術の禁書目録(11)』は、高度な超能力開発が行われる「科学サイド」と、オカルトや宗教の異能を操る「魔術サイド」が衝突する学園アクションファンタジー小説(ライトノベル)である。

物語の舞台は、過酷な「使徒十字(クローチェディピエトロ)」の危機から脱したばかりの学園都市、そしてイタリアの歴史ある水上都市「ヴェネチア」である。前巻までの賑やかな体育祭の喧騒が終わり、束の間の平穏が訪れるはずの学園都市であったが、魔術サイドの不穏な影は止まることなく少年たちの日常を脅かし続ける。今作は学園都市を飛び出し、世界の勢力均衡を大きく揺るがす魔術的兵器を巡る、息をもつかせぬ追撃戦と水上決戦へと移行していく。

本作(第11巻)では、上条当麻が引いた旅行券をきっかけに、インデックスと共にヴェネチアを訪れることになる。しかしそこは、ローマ正教が誇る最大級の大量破壊兵器『アドリア海の女王』が配置された戦術拠点でもあった。かつてバチカンの暗号解読で協力したシスターのオルソラ=アクィナスや、ローマ正教を離脱した「天草式十字凄教」の面々と現地で予期せぬ再会を果たす中、上条は再び宗教勢力のど真ん中で世界の破滅を止めるための壮絶な戦いへ身を投じる。

■ 主要キャラクター

  • 上条 当麻(かみじょう とうま): 本作の主人公。学園都市の高校生であり、能力の評価は最低の「無能力者(レベル0)」である。しかし、あらゆる異能の力を触れるだけで打ち消す謎の能力「幻想殺し(イマジンブレイカー)」が右手に宿っている。大覇星祭での宿題の山から逃れるように訪れたヴェネチアにて、世界規模の魔術兵器の発動を阻止するため、持ち前の行動力と泥臭い闘志でローマ正教の陰謀へと立ち向かう。
  • インデックス(禁書目録): 本作のメインヒロイン。頭の中に10万3000冊の魔術書を完全に記憶しているイギリス清教のシスターである。魔術の知識は膨大だが、自身は魔力を持たないため戦闘力はない。上条の旅行に同行してヴェネチアへ渡り、異国での美味しい食べ物を満喫する。しかし事件が始まると、その圧倒的な魔道書の知識を駆使して、兵器の術式解析や上条の戦闘のサポートを行う。
  • オルソラ=アクィナス: かつてローマ正教に所属し、現在はイギリス清教へと改宗したシスターの少女。非常にのんびりとしたお調子者で天然な性格だが、魔道書の暗号解読において卓越した才能を持つ。イギリス清教の任務としてヴェネチアを訪れており、現地で上条たちと偶然の再会を果たす。ローマ正教が発動を目論む危険な兵器『アドリア海の女王』の真実を探るため、上条たちと行動を共にする。
  • 建宮 斎字(たてみや さいじ): 「天草式十字凄教」の教皇代理を務める少年。フラフラとした軽い態度を見せるが、仲間たちを率いる責任感と優れた統率力を備える。今回は、ローマ正教によって囚われの身となったかつての教皇「神裂火織」の部下たちを救出、あるいは守るためにヴェネチアの戦場へ潜入しており、共通の敵を叩くために上条たちと共闘の戦線を構築する。

■ あらすじ

大覇星祭のイベントで北イタリア旅行を当てた上条当麻とインデックスは、現地キオッジアへ向かった。しかし到着後、インデックスとはぐれた上条は、偶然再会したオルソラと共に海中から現れた氷の巨大帆船に拉致されてしまう。

その帆船は、ローマ正教の大規模攻撃術式『アドリア海の女王』を守護する『女王艦隊』の一隻である。艦隊では、かつて敵対したアニェーゼや彼女の元部下たちが囚人として過酷な労働を強いられていたのだ。アニェーゼは都市を壊滅させる術式の発動キーとして利用される運命にあり、自らを犠牲にして部下たちを逃がそうと画策する。

上条は天草式十字凄教の面々らと協力し、アニェーゼを救うため艦隊の旗艦へ突撃を仕掛けた。立ちはだかる艦隊指揮官ビアージオの強力な術式や暴走の危機を上条の右手で打ち破り、少女の救出と術式の完全破壊を見事達成。

事件を解決に導いた一行だったが、上条の行動はローマ正教中枢『神の右席』の怒りを買い、彼に対する暗殺指令が下される事態へと発展していく。

書籍情報

とある魔術の禁書目録 11
(A Certain Magical Index)
著者:鎌池 和馬 氏
イラスト:はいむらきよたか 氏
出版社:株式会社KADOKAWA電撃文庫
発売日:2006年10月10日
ISBN:9784048693950

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あらすじ・内容

破滅の罠か、奇跡か!?“不幸男”当麻がイタリア旅行に当選!
大覇星祭ナンバーズでイタリア旅行のペアチケットを当てた上条当麻は、インデックスを連れて水の都ヴェネチアへ。憧れのバカンスに2人のラブも燃え上がる?上条当麻と幸運の女神が交差するとき、愛(!?)とスリルに満ちた旅の物語は始まる――。

とある魔術の禁書目録(11)

感想

これまでに「クジでハズレしか引いたことがない」というほどの極端な不幸体質である上条当麻が、大覇星祭のイベントでペアのイタリア旅行を引き当てた冒頭には大きな驚きを隠せなかった。このような想定外の幸運が訪れたとなれば、その後に恐ろしい揺り戻しが来るのではないかと予想していたが、その直感は完璧に的中することとなる。華やかなイタリア観光を満喫する時間はほとんど与えられず、複数回も海に突き落とされた挙句、氷の大艦隊へと強制的に乗り込まされる羽目になるのだから、彼の不運のスケールは相変わらず凄まじい。最終的には大立ち回りを演じて重傷を負い、時速700キロを超える超音速の飛行機で緊急帰国するという結末には、どこまでも彼らしい不幸が詰まっていると感じて苦笑してしまった。

しかし、その不条理な戦いの中で繰り広げられる人間ドラマと戦闘描写には、ひたすら胸を熱くさせられた。かつて敵対したアニェーゼが過酷な労働を強いられ、自らを犠牲にして部下たちを逃がそうとする健気な姿には深く心を揺さぶられる。彼女を救うべく、天草式十字凄教の仲間たちと結託して敵の旗艦へ突撃していく展開はまさに圧巻の一言であった。

立ちはだかる艦隊指揮官ビアージオの強烈な術式や、大爆発の暴風が荒れ狂う極限状態において、上条の「幻想殺し」がすべてを打ち破る瞬間は圧倒的な爽快感を覚えずにはいられない。少女の命を救い、大規模破壊兵器を完全に粉砕したカタルシスは非常に大きかった。

事件を無事に解決へ導いた安心感に浸るのも束の間、ラストで提示される新たな火種には一気に緊張感を煽られた。上条の奮闘がローマ正教の中枢である『神の右席』の怒りを買い、彼に対する正式な暗殺指令が下されるという一幕は、物語がさらなる激動のステージへ進むことを予感させる。爽快な日常への帰還と同時に、世界規模の巨大な闇が迫りくる高揚感を残す、非常に満足度の高い一冊である。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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とある魔術の禁書目録(10)レビュー
とある魔術の禁書目録(12)レビュー

考察・解説

イタリア旅行の当選

『とある魔術の禁書目録 11』における上条当麻のイタリア旅行の当選について、来場者数ナンバーズでの一等賞獲得、不幸体質ゆえの疑心暗鬼、パスポートを巡るトラブルと解決、そしてインデックスへの期待という観点から解説する。

1. 来場者数ナンバーズでの一等賞獲得と落とし穴への疑心
大覇星祭の最終日、上条当麻は学生主導のイベントである来場者数ナンバーズに参加し、見事に指定数字を当てて一等賞である北イタリア五泊七日のペア旅行を獲得する。

  • しかし、彼は自らを極度の不幸体質だと自認していたため、この幸運を素直に喜ぶことができなかった。
  • 飛行機がハイジャックされる、目を覚ましたら南極のど真ん中といったとんでもないイレギュラーや落とし穴が待っているのではないかと疑心暗鬼に陥っていたのである。

2. パスポート不在の絶望と偶然の発見
旅行の日程は2日後(9月27日)の現地集合と迫っていたが、上条は海外旅行に必須であるパスポートがないことに気づき、申請も間に合わないと絶望して自室の床を転げ回る。

  • しかし、クローゼットの上にいた三毛猫が蹴飛ばした拍子に、偶然にも上条自身の日本国旅券が落ちてきた。
  • 記憶喪失である彼には覚えていなかったが、過去に家族旅行でサイパンやグアムへ行った際に取得していたものであり、奇跡的に旅行へ参加できる可能性が生まれたのである。

3. インデックスの所持品とペア旅行の実現
ペア旅行の同伴者であるインデックスについても、彼女がパスポートを持っているかどうかが問題となったが、彼女の修道服の袖からは英国式のパスポートが出てきた。

  • それはイギリス清教の必要悪の教会が発行したもので、魔術的な細工はされておらず、名義もそのままIndex-Librorum-Prohibitorumとなっていた。
  • これにより、無事に二人で北イタリア旅行へ出かける見通しが立ったのである。

まとめ
出発の日、学園都市の国際空港に到着した上条は、英語すら赤点レベルの自分がイタリアへ行くことに再び不安を募らせる。しかし、インデックスが一〇万三〇〇〇冊の魔道書を読むためにイタリア語など簡単だと語り、今回は私が引っ張ってあげるからトラブルを恐れずに楽しめばいいと力強く約束したことで、上条の不安は吹き飛んだ。彼女の言葉に救われた上条は、久しぶりに不幸ではない有意義な休日を心から満喫しようと前向きな決意を固めたのである。

学園都市の国際空港

学園都市の国際空港は、航空・宇宙開発のために用意された特別学区である第二三学区に位置する施設である。主に学会などで学園都市の外から訪れる客を迎え入れるために作られた。

広大すぎる敷地と設備

  • 空港のロビーはいっそ無駄だと感じるほど広々としており、全面ガラス張りの壁からは滑走路側からの日差しが差し込み、ピカピカに輝いている。
  • 空港内にはショッピングモールも併設されているが、出入国管理ゲート付近からお買い物エリアまでは1.5キロメートルも離れており、長い連絡通路を移動しなければならない。
  • 上条当麻はこの敷地の広さについて、絶対敷地を無駄遣いしているとこぼしている。

大覇星祭後の様子

  • 超巨大規模の体育祭である大覇星祭の期間中、空港ロビーはラッシュアワーのように混雑していたと報じられていた。
  • 祭りの終了後は帰宅する客によってそこそこの人だかりができている程度に落ち着いている。
  • 学園都市では、業者による設備の撤収や警備状態の移行に加え、大勢の客を効率良く帰すために数日間の臨時休日期間を設けているのである。

まとめ
北イタリア旅行へ向かう際、上条とインデックスはこの空港を利用した。しかし、出入国管理ゲートの金属探知機にインデックスの修道服に付いている無数の安全ピンが反応し、不審者として係員に取り押さえられてしまう。安全ピンを外すと修道服がバラバラになってしまうため、係員からは空港内のショッピングモールでまっとうな衣類を購入するよう促された。飛行機の離陸まで28分しか残されていない状況で、上条はやっぱり今回も不幸な事になりそうだと嘆きながら、1.5キロ先のモールを目指してインデックスの手を引き、長い連絡通路を全力で走る羽目になったのである。

オルソラとの再会

『とある魔術の禁書目録 11』におけるオルソラとの再会について、異国の地での偶然の出会い、キオッジアにいた理由、噛み合わない独特の会話ペース、そしてインデックスの居場所と手料理の提案という観点から解説する。

1. 異国の地での偶然の出会い

  • 北イタリアのキオッジアに到着した上条当麻は、食べ物に気を取られたインデックスとはぐれて迷子になってしまう。
  • 言葉が通じず地元のおばさんとの会話に四苦八苦していると、突然流暢なイタリア語で助け舟を出してくれた女性がいた。
  • 上条が振り返ると、そこにいたのは以前『法の書』を巡る事件で関わった元ローマ正教のシスター、オルソラ=アクィナスであった。

2. オルソラがキオッジアにいた理由

  • オルソラはすでにイギリス清教へと鞍替えしており、現在はロンドンで暮らしているはずであった。
  • しかし、移住した際に残していた家財道具をロンドンへ送るため、引っ越し作業の目的で一時的にかつての地元であるキオッジアに戻ってきていたのである。
  • また、その引っ越し作業の手伝いとして、彼女と同様にイギリス清教の傘下に入った天草式十字凄教の面々も一緒に来ていた。

3. 噛み合わない独自の会話ペース

  • 遠い異国の地で知人に会えたことに安心する上条であったが、オルソラとの会話はなかなか噛み合わなかった。
  • 上条が天草式や建宮の話題を振っても、オルソラは自身の修道服の話やイギリス清教の話題に戻してしまったりと、彼女の頭の中にある独自のルールと順序で話が進む。
  • そのため、上条はそのリズムに激しく振り回されてしまうのである。

まとめ
上条がインデックスとはぐれたことを相談すると、オルソラは上条の無防備な旅行者姿を見て、スリやぼったくりに遭わないための対策として、引っ越しの手伝いを条件に自宅で手料理を振る舞うと提案する。実はオルソラはすでにジェラート店に張り付いていたインデックスを発見しており、彼女はオルソラの友人たちと共に先にオルソラの家へ向かっていたことが判明する。自分だけ置いて行かれたことに落胆しつつも、上条はインデックスと合流するためにオルソラの案内に従うことになったのである。

女王艦隊の襲撃

『とある魔術の禁書目録 11』における女王艦隊の襲撃について、キオッジアでの急襲と氷の巨大帆船の出現、襲撃者の正体と艦隊の概要、ローマ正教からの警戒と標的、そして大艦隊の集結という観点から解説する。

1. キオッジアでの急襲と氷の巨大帆船の出現
北イタリアのキオッジアでインデックスとはぐれた上条当麻は、偶然再会したオルソラと合流するが、突如としてオルソラの荷物が魔術による狙撃を受ける。

  • 続いて運河の中から短い槍を持った黒い修道服の男が襲いかかってくるが、上条とインデックスの連携によってこれを撃退する。
  • しかし直後、運河の海面を突き破って全長100メートルを超える半透明の氷でできた巨大な帆船が浮上する。
  • ボートやヴィーゴ橋を破壊しながら、上条とオルソラを乗せたまま海へと進み始めたのである。

2. 襲撃者の正体と女王艦隊の概要
襲撃してきたのはローマ正教の人間であり、現れた氷の帆船は女王艦隊の護衛艦の一隻であった。

  • この艦隊は建前上、アドリア海周辺の魔術的な異常を監視するための施設とされている。
  • しかし実態は、ローマ正教の罪人や失敗者と見なされた修道女たちを収容し、過酷な労働を強いる牢獄でもある。
  • 氷で構成された船体は、破壊されても周囲の海水を用いて修復・再構成が可能な特性を持っているのである。

3. ローマ正教の警戒と襲撃の理由
なぜ彼らが突然襲撃されたのか。それは、かつて法の書を巡る事件でローマ正教の計画を打ち砕いた上条やオルソラが、同じく事件に関わった天草式の面々と共にイタリアへやってきたためである。

  • ローマ正教のブラックリストに載っている彼らが揃って現れたことで、また何かやらかすのではないかと警戒された。
  • 監視網に引っかかった彼らを排除するために軍艦が差し向けられたというのが事の発端であった。

まとめ
一隻の護衛艦に乗せられた上条たちは、海上でさらなる絶望的な光景を目の当たりにする。水平線まで続く暗い海を割って、同型の氷の軍艦が次々と浮上し、最終的には100隻近くの大艦隊が集結したのである。この常軌を逸した規模の艦隊は、単なる監視のためではなく、対ヴェネツィア用であり学園都市をも標的とする超大規模術式であるアドリア海の女王を防衛し、その発動準備を水面下で進めるための強固な防衛網だったのである。

アニェーゼ救出作戦

『とある魔術の禁書目録 11』におけるアニェーゼ救出作戦について、救出の動機と天草式との共闘、氷の大艦隊への突入とシスター達との激突、旗艦への到達と陽動、そしてビアージオとの死闘という観点から解説する。

1. 救出の動機と天草式との共闘
アニェーゼ=サンクティスは女王艦隊の囚人でありながら、元部下のルチアとアンジェレネを逃がすために自らを囮にしていた。

  • 彼女は対都市専用の大規模術式であるアドリア海の女王の照準制限を解除する追加術式、刻限のロザリオの起動キーとして利用され、脳を破壊される運命にあった。
  • かつて敵対したアニェーゼの自己犠牲と悲惨な末路を知った上条当麻は、彼女の想いが利用されたまま使い潰されることを良しとせず、見捨てることを明確に拒絶したのである。
  • そして建宮斎字ら天草式十字凄教の面々も、自分達の未熟さで失ってしまった女教皇(神裂火織)へ居場所を返すため、救われぬ者に救いの手をという教義のもと、総力を挙げてアニェーゼの救出に全面協力することを決意したのである。

2. 氷の大艦隊への突入とシスター達との激突
女王艦隊は周囲5キロを砲撃圏内に収める強固な防衛網を敷いていた。

  • 正面突破が不可能な中、天草式は潜行能力を持つ木船である上下艦で海中から接近した。
  • そして和紙の札で作った無数の火船を囮として突撃させ、自爆させることで艦隊の防衛線を大きく混乱させたのである。
  • その隙を突いて上条たちは氷の護衛艦へ強行上陸を果たすが、そこで立ちはだかったのは、職務として戦わざるを得ない元アニェーゼ部隊のシスター達であった。
  • ルチアとアンジェレネは重傷を負いながらも、敵味方関係なく皆を守るためにかつての仲間達と激突し、上条や天草式のメンバーも彼女達を支えながら旗艦への道を切り開いていったのである。

3. 旗艦への到達とインデックスの陽動
天草式がシスター達を足止めする中、上条、インデックス、オルソラは旗艦であるアドリア海の女王へと到達する。

  • 旗艦の最下層にある巨大な扉の前には、アニェーゼが囚われる空間を守るように巨大な氷の鎧や自律式の砲台が無数に出現した。
  • まともに戦えば全滅は免れない状況下で、インデックスは自身の強制詠唱(スペルインターセプト)を用いて氷の守護兵達の制御に干渉したのである。
  • 彼女は自ら標的となって氷の守護兵達を引き連れて通路の奥へ走り去り、オルソラと上条をアニェーゼの元へ進ませるための決定的な陽動を果たしたのである。

まとめ
氷の部屋に辿り着いたオルソラはアニェーゼを助けようとするが、艦隊の指揮官である司教ビアージオ=ブゾーニの十字架の魔術により重傷を負わされた。ビアージオの真の狙いは、刻限のロザリオを利用して学園都市を標的とし、科学サイド全体を壊滅させることであった。ビアージオの圧倒的な力にオルソラが殺されかけたその時、アニェーゼがオルソラを庇って抵抗し、さらに壁を破壊して上条が突入する。ビアージオは、艦隊の全装備品の重量を対象に押し付けるという神の子の十字架を背負うシモンの伝承を利用した魔術を放つが、上条はその重量攻撃を右手で打ち消し、一気に懐へ飛び込んだ。激闘の末、上条の右拳がビアージオの顔面と胸元に直撃し、彼の魔術の核である十字架の群れを粉砕する。こうして上条と仲間たちはビアージオを打ち倒し、アニェーゼの救出とアドリア海の女王の完全崩壊を成し遂げたのである。

アドリア海の女王

『とある魔術の禁書目録 11』におけるアドリア海の女王について、対ヴェネツィア用の大規模攻撃術式としての本来の目的、刻限のロザリオによる標的の変更、アニェーゼを利用した非道な起動条件、そして暴発の危機と完全崩壊という観点から解説する。

1. 対ヴェネツィア用の大規模攻撃術式
アドリア海の女王とは、かつてローマ正教と対立していた海洋国家ヴェネツィアを一撃で壊滅させるために、9世紀頃に作られた対都市専用の大規模術式である。

  • 発動すると、第一段階としてヴェネツィアの街を物理的に破壊する。
  • 第二段階として街から持ち出された芸術品や広まった文化、歴史的学問など、ヴェネツィアに関わる全ての影響を世界から消し去るという、ソドムとゴモラに対する天罰のような恐るべき効果を持っている。
  • また、この術式を守るための強固な防衛網として、無数の氷の護衛艦からなる女王艦隊が存在する。
  • その旗艦の最深部にある四角錐の部屋自体がアドリア海の女王の制御施設となっているのである。

2. 刻限のロザリオによる標的の変更と真の目的
本来、アドリア海の女王は敵に奪われた際に自らに向けられるのを防ぐため、標的がヴェネツィアに限定された照準制限がかけられていた。

  • しかし、艦隊の指揮官であるビアージオ=ブゾーニ司教は、追加術式である刻限のロザリオを用いてこの制限を解除しようと企てていた。
  • 彼の真の狙いは、現在のヴェネツィアではなく、科学サイドの中心である学園都市に照準を合わせることであった。
  • 学園都市が世界に与えた影響もろとも、科学サイド全体を一夜にして消し去ろうとしていたのである。

3. アニェーゼを利用した非道な起動条件
刻限のロザリオを発動させるためには、普通の人間が作る魔力ではなく特殊な魔力が必要とされた。

  • その起動キーとして選ばれたのが、ローマ正教の罪人として女王艦隊に囚われていたアニェーゼ=サンクティスである。
  • 術式の適性を持つ彼女の精神や脳を魔術的に破壊し、ただ心臓を動かすだけの部品に改造する。
  • そうすることで、無理やり発動の条件を満たそうとしていたのである。

まとめ
上条当麻の手によってビアージオが倒されると、追い詰められた司教は未完成の刻限のロザリオの力を利用して、アドリア海の女王を自爆(暴発)させようとした。もし暴発していれば、魔術的効果を無視した単純な爆発力だけでも半径10キロ以上が吹き飛び、発生した水蒸気爆発や気圧変動によってヴェネツィアや周辺都市まで巻き込む大災害になるはずであった。しかし、上条の右手がビアージオの魔術の核である十字架の群れを粉砕したことで術式は完全に停止する。代替不能な中枢である旗艦の四角錐の部屋が砕け散ったことで、アドリア海の女王は二度と修復不可能な形で完全崩壊を迎えたのである。

ローマ正教の対立

『とある魔術の禁書目録』シリーズにおけるローマ正教の対立について、イギリス清教台頭によるパワーバランスの揺らぎ、科学サイド(学園都市)への敵対と支配の目論見、内部における派閥対立と神の右席の台頭、そして上条当麻への暗殺指令という観点から解説する。

1. イギリス清教台頭によるパワーバランスの揺らぎ
ローマ正教は20億人の信徒を抱える世界最大宗派であるが、イギリス清教の台頭に強い危機感を抱いている。

  • 過去の事件においてグレゴリオの聖歌隊やアニェーゼ部隊といった主要戦力が撃破・離脱した。
  • 加えて、イギリス清教が法の書の解読法を発見したオルソラ=アクィナスや天草式十字凄教といった新たな戦力を取り込んだことで、魔術世界の天秤が大きく揺らぎ始めている。
  • この焦りが、ローマ正教に極端な行動や強硬な作戦をとらせる引き金となっているのである。

2. 科学サイド(学園都市)への敵対と支配の目論見
ローマ正教は科学を宗教に屈するべき異教と見なしている。

  • そのため、大覇星祭の最中には、リドヴィア=ロレンツェッティやオリアナ=トムソンが霊装である使徒十字(クローチェディピエトロ)を用いて学園都市をローマ正教の支配下に置こうと暗躍した。
  • また、司教ビアージオ=ブゾーニは、大規模術式であるアドリア海の女王とその照準制限を解く刻限のロザリオを利用した。
  • 学園都市が世界に与えた影響をすべて消し去り、科学サイド全体を一夜にして壊滅させようと企てたのである。

3. 内部における派閥対立と神の右席の台頭
巨大組織であるローマ正教は、141人の枢機卿が管理し113ヶ国に教会を持つほど肥大化しており、外側より内側の方に多くの敵を抱えていると言われるほど複雑な派閥対立を抱えている。

  • さらに中枢であるバチカンの大聖堂では、選挙によって選ばれたローマ教皇と、教皇以上の権限を持つとされる謎の存在である神の右席の女性との間で深刻な対立が生じている。
  • 彼女は、多数決ではなく絶対的な意志で組織を導くかつての十字教の姿を取り戻そうとしており、教皇を力で押さえつけているのである。

まとめ
一連のローマ正教の計画(法の書を巡る事件、使徒十字による学園都市支配、アドリア海の女王による科学サイド壊滅)は、ことごとく上条当麻の幻想殺し(イマジンブレイカー)とその行動によって打ち砕かれた。この結果を受け、神の右席の女性は主を知らぬだけならまだ救いの道はあると反対する教皇の意見をこの私に否定形はないと強引に押し切り、上条当麻を主の敵と認定して確実に殺害するための暗殺申請書類にサインさせた。これにより、ローマ正教は総力を挙げて上条を暗殺する事態へと突入したのである。

とある魔術の禁書目録(10)レビュー
とある魔術の禁書目録(12)レビュー

登場キャラクター

学園都市

上条当麻

学園都市に住む高校生である。不幸な出来事に巻き込まれやすい体質を持つ。困っている人間を見捨てられない性格をしている。

・所属組織、地位や役職
 学園都市の高校生。無能力者(レベル0)。

・物語内での具体的な行動や成果
 大覇星祭のイベントで北イタリア旅行を引き当て、インデックスと共にキオッジアへ向かった。アニェーゼを救出するため、天草式と共に女王艦隊の旗艦へ突入した。ビアージオの魔術を打ち破り、彼を打倒している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 異能の力を打ち消す「幻想殺し(イマジンブレイカー)」を右手に宿す。

御坂美琴

常盤台中学のエースとして知られる少女である。上条と勝負をしており、彼に対して負けず嫌いな一面を見せる。

・所属組織、地位や役職
 学園都市の常盤台中学に所属する生徒。超能力者(レベル5)。

・物語内での具体的な行動や成果
 病室で療養する上条の元へ見舞いに訪れた。大覇星祭での学校対抗の勝負結果について彼を問い詰めている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 電撃を操る能力を持つ。

白井黒子

常盤台中学の1年生である。美琴を「お姉様」と慕っている。

・所属組織、地位や役職
 学園都市の風紀委員(ジャッジメント)。常盤台中学の生徒。大能力者(レベル4)。

・物語内での具体的な行動や成果
 美琴の付き添いとして上条の病室を訪問した。ベッドの上の上条とインデックスの様子を見て誤解をしている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 空間移動能力(テレポート)を操る。以前の戦闘で負傷し、スポーツ用の車椅子に乗っている。

姫神秋沙

無表情で平坦な口調で話す少女である。上条に助けられた過去を持つ。

・所属組織、地位や役職
 学園都市の高校生。

・物語内での具体的な行動や成果
 事件で重傷を負い、病院のベッドで目を覚ました。見舞いに来たインデックスから上条の行動について話を聞いている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 吸血鬼を殺す能力を有する。

吹寄制理

上条のクラスメイトである。責任感が強く、学校行事に熱心に取り組む。

・所属組織、地位や役職
 学園都市の高校生。大覇星祭の運営委員。

・物語内での具体的な行動や成果
 上条の回想の中で、彼に頭突きをした人物として言及された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき事項は確認できない。

小萌先生

上条のクラスの担任教師である。小学生のような外見をしている。

・所属組織、地位や役職
 学園都市の高校教師。

・物語内での具体的な行動や成果
 上条の海外旅行を心配し、滞在先の彼に電話をかけた。インデックスが置いていった三毛猫を預かっている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 身長が135センチほどである。

カエル顔の医者

学園都市の病院に勤務する医師である。患者に必要なものは何でも用意するという信条を持つ。

・所属組織、地位や役職
 学園都市の医師。

・物語内での具体的な行動や成果
 重傷を負った姫神の治療を行った。イタリアから搬送されてきた上条の診察も担当している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 「冥土帰し(ヘヴンキャンセラー)」と呼ばれる。

霧ヶ丘女学院の女子高生

スポーツ少女のような服装をした学生である。営業用の笑顔で客の応対を行う。

・所属組織、地位や役職
 霧ヶ丘女学院の生徒。

・物語内での具体的な行動や成果
 大覇星祭の来場者数ナンバーズで店番を担当した。一等賞を当てた上条に北イタリア旅行の封筒を手渡している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 赤いスパッツと半袖Tシャツを着用している。

イギリス清教

インデックス

食べ物への関心が強いシスターである。上条の部屋に居候している。

・所属組織、地位や役職
 イギリス清教のシスター。

・物語内での具体的な行動や成果
 上条と共に北イタリアのキオッジアへ旅行に出かけた。女王艦隊での戦いにおいて、強制詠唱(スペルインターセプト)で氷の守護兵の動きを操作し、陽動を成功させた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 10万3000冊の魔道書を記憶している。

オルソラ=アクィナス

おっとりとした性格のシスターである。独自のペースで会話を進める傾向がある。

・所属組織、地位や役職
 イギリス清教のシスター。元ローマ正教所属。

・物語内での具体的な行動や成果
 キオッジアで引越し作業中に上条達と再会した。女王艦隊の旗艦へ乗り込み、ビアージオの魔術を受けて重傷を負う。事件解決後はロンドンの寮へ向かった。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 過去に法の書の解読法を発見したとして追われていた。

神裂火織

義理堅い性格を持つ魔術師である。面倒見が良い一面を持つ。

・所属組織、地位や役職
 イギリス清教の魔術師。元天草式十字凄教の女教皇。

・物語内での具体的な行動や成果
 ロンドンの寮で土御門と電話で会話をした。その後、寮に到着したオルソラとアニェーゼを出迎えている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 七天七刀を扱う聖人である。

土御門元春

上条の悪友として振る舞う少年である。飄々とした態度で相手をからかう。

・所属組織、地位や役職
 イギリス清教の魔術師であり、学園都市の生徒でもある。

・物語内での具体的な行動や成果
 神裂に電話をかけ、堕天使メイドの衣装を貸し出すと提案して彼女を動揺させた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 義妹を溺愛している。

天草式十字凄教

建宮斎字

仲間思いの教皇代理である。上条達の戦いを支援する。

・所属組織、地位や役職
 天草式十字凄教の教皇代理。現在はイギリス清教の傘下に入る。

・物語内での具体的な行動や成果
 オルソラの引越しの手伝いでキオッジアを訪れた。アニェーゼを救出するため、潜行能力を持つ上下艦を操り女王艦隊へ突入している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 フランベルジェと呼ばれる大剣を武器として扱う。

五和

天草式に所属する少女である。上条に対して好意的な態度を見せる。

・所属組織、地位や役職
 天草式十字凄教の所属。

・物語内での具体的な行動や成果
 上下艦の甲板で上条におしぼりを渡した。ルチア達を援護するため、海軍用船上槍を構えて戦闘に参加している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 二重まぶたが特徴的である。

ローマ正教

アニェーゼ=サンクティス

元部下達を逃がすために自己犠牲の道を選んだシスターである。

・所属組織、地位や役職
 ローマ正教のシスター。

・物語内での具体的な行動や成果
 アドリア海の女王の起動キーとして利用されようとしていた。上条達によって救出された後、オルソラと共にイギリス清教の寮へ身を寄せた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 厚底のサンダルを履いている。

ルチア

アニェーゼの元部下である。真面目で厳格な性格を持つ。

・所属組織、地位や役職
 ローマ正教のシスター。女王艦隊の労働者。

・物語内での具体的な行動や成果
 女王艦隊からの脱走を試みたが連れ戻された。その後、上条達と協力してアニェーゼを救うために戦った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 馬車に使う巨大な木の車輪を武器として扱う。

アンジェレネ

アニェーゼの元部下である。小柄で気弱な性格をしている。

・所属組織、地位や役職
 ローマ正教のシスター。女王艦隊の労働者。

・物語内での具体的な行動や成果
 ルチアと共に脱走を図るが捕まった。アニェーゼ救出のため、上条達と共にローマ正教のシスター達と戦っている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 硬貨を詰めた袋を武器とする。

アガター

アニェーゼの知り合いのシスターである。入浴時のエピソードで登場する。

・所属組織、地位や役職
 ローマ正教のシスター。

・物語内での具体的な行動や成果
 女王艦隊において労働を強いられていた。風呂の温度について熱いと文句を言っている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アニェーゼよりも年上に見える容姿をしている。

カテリナ

アニェーゼの知り合いのシスターである。アガターと共に行動する。

・所属組織、地位や役職
 ローマ正教のシスター。

・物語内での具体的な行動や成果
 女王艦隊において労働を強いられていた。風呂の温度について文句を言っている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アニェーゼよりも年上に見える容姿をしている。

ビアージオ=ブゾーニ

女王艦隊の指揮官である。目的のためには非道な手段も辞さない。

・所属組織、地位や役職
 ローマ正教の司教。

・物語内での具体的な行動や成果
 アニェーゼを起動キーとして利用し、アドリア海の女王を用いて学園都市を破壊しようと目論んだ。上条との戦闘の末に敗北している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 多数の十字架を用いた魔術を操る。

ローマ教皇

ローマ正教のトップである。慎重な判断を好む。

・所属組織、地位や役職
 ローマ正教の教皇。

・物語内での具体的な行動や成果
 神の右席の女性の圧力に屈し、上条当麻の暗殺指令書に署名した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 選挙によって選ばれた指導者である。

『神の右席』の女性

教皇を凌ぐ影響力を持つ謎の女性である。絶対的な意志で組織を導こうとする。

・所属組織、地位や役職
 ローマ正教「神の右席」の所属。

・物語内での具体的な行動や成果
 上条当麻を主の敵と認定した。教皇に圧力をかけ、暗殺指令書へサインさせている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 舌にピアスをしており、そこから十字架のついた鎖を提げている。

とある魔術の禁書目録(10)レビュー
とある魔術の禁書目録(12)レビュー

展開まとめ

序 章 北イタリアの旅行 Un_Viaggio_in_Italia.

北イタリア旅行当選と予想外の障害

大覇星祭最終日、上条当麻は来場者数ナンバーズで一等賞を獲得し、北イタリア五泊七日のペア旅行を手に入れた。しかし極度の不幸体質を自認する上条は素直に喜べず、何か落とし穴があるのではないかと疑っていた。

帰宅後、旅行に必要なパスポートがないことに気付き落胆したが、偶然クローゼットの上から自分のパスポートが落ちてきた。記憶喪失のため取得経緯は分からなかったものの、旅行に参加できる可能性が生まれた。一方でインデックスも英国のパスポートを所持していたため、二人で旅行へ行ける見通しが立った。

旅行準備とインデックスへの期待

上条は海外旅行への不安を抱えながら準備を進めた。英語すら苦手な自分に対し、インデックスはイタリア語を含む多くの言語を扱えると語り、現地では自分が支えると約束した。

その言葉を聞いた上条は安心し、久しぶりに不幸ではない休日を楽しめるのではないかと期待を抱いた。

空港での出発準備

翌朝、上条とインデックスは第二三学区の国際空港へ向かった。上条は財布やパスポートなどを何度も確認し、不幸な展開が起きないか心配していたが、インデックスは旅行を純粋に楽しみにしていた。

イタリア語について質問した上条は、自分がほとんど外国語を理解できないことを改めて実感し、現地ではインデックスを頼るしかないと考えた。インデックスは通訳役を引き受けると語り、上条を励ました。

出発直前のトラブル発生

しかし出国ゲートを通過しようとした直後、インデックスの修道服に大量に付けられた安全ピンが金属探知機に反応し、係員に取り押さえられてしまった。

安全ピンだらけの修道服では搭乗できず、係員からは空港内のショッピングモールで新しい服を購入するしかないと告げられた。飛行機の出発まで残りわずかしかない状況の中、上条は予想通り不幸な展開になったと嘆きながらも、インデックスの手を引いて空港内を走り出した。

第一章 キオッジアの街並 II_Vento_di_Chioggia.

北イタリア到着とツアー不在の発覚

上条当麻とインデックスを乗せた旅客機は、北イタリアの玄関口であるマルコポーロ国際空港へ到着した。上条は出入国審査や荷物の受け取りで苦労しながらも無事に空港を出た。インデックスは現地で安全ピンを調達し、再び修道服を着用していた。

二人はツアー参加者やガイドとの合流を待ったが、集合時間を二時間過ぎても誰も現れなかった。電話も繋がらず、上条は計画通りに旅行が始まらない事態に困惑した。

自力でホテルへ向かう決断

空港で待ち続けても状況が変わらないため、上条は先にホテルへ向かうことを決めた。ホテルでガイドと合流できる可能性に期待しつつ、インデックスと共に移動を開始した。

インデックスは暑さで疲れていたが、ジェラートを食べたいと話し、上条も観光気分を高めていた。一方で、バスの運行表を読むよう頼まれたインデックスは、運行表の読み方自体が分からないと答え、二人は苦戦しながらもバスへ乗り込んだ。

キオッジアの街並みとの出会い

二人が宿泊先のあるキオッジアへ到着すると、そこは運河に囲まれた島の街だった。海水が流れる運河や大量のボートが生活の一部となっており、道路だけで構成された街とは異なる景観が広がっていた。

インデックスはキオッジアがヴェネツィア本来の風景を残す街であると説明し、運河によって移動が不便になる欠点もそのまま残っていると語った。上条は意外にも観光知識を披露するインデックスに驚いていた。

街中での騒動と観光への期待

ホテルへ向かう途中、二人は飲食店が並ぶ賑やかな通りを歩いた。インデックスは食べ物へ強い興味を示し、上条は先にホテルへ向かうよう言い聞かせた。

その後も観光地の話題で盛り上がったが、上条の不用意な発言に怒ったインデックスは、いつものように上条へ噛みついた。上条は悲鳴を上げながらも、ヴェネツィア観光への期待を膨らませていた。

インデックスとのはぐれと迷子状態

上条は観光気分に浮かれながら街を歩いていたが、ふと振り返るとインデックスの姿が消えていた。人混みの中で完全にはぐれてしまい、上条は慌てて周囲を探し始めた。

しかし複雑な街並みに翻弄され、自分自身まで迷子になりかけた。インデックスの携帯電話も電源が切れたままで連絡が取れず、上条は途方に暮れた。

オルソラとの再会

困り果てていた上条のもとへ、地元の女性へ流暢なイタリア語で応対する人物が現れた。その人物は上条へ親しげに声を掛け、日本語で会話を始めた。

振り返った上条の前にいたのは、学園都市で別れたはずのオルソラであった。予想外の再会に上条は驚き、なぜ彼女がキオッジアにいるのか問いかけた。

オルソラはかつてローマ正教に所属していたが、『法の書』を巡る事件の後にイギリス清教へ移っており、現在はロンドンで暮らしていた。しかし、移住時に残していた家財道具を運ぶため、地元であるキオッジアへ戻ってきていたのである。

噛み合わない会話

上条はオルソラと近況を語り合ったが、オルソラは独特の思考順序で話題を行き来させるため、会話はなかなか噛み合わなかった。上条が天草式や建宮の話題を振っても、オルソラは修道服やイギリス清教の話へ戻してしまい、上条は会話の流れを掴めず振り回されていた。

インデックス捜索の相談

上条は、インデックスがジェラートに気を取られて姿を消してしまった事情を説明した。するとオルソラは話を聞きながらも、学園都市からの任務ではなく純粋な旅行で来ていることを確認し、自身の引っ越し作業を手伝う代わりに昼食を振る舞うと提案した。しかし上条は観光を優先したいと考え、その申し出に戸惑っていた。

イタリアでの注意事項

オルソラは上条の服装や持ち物を見て、旅行者であることが一目で分かる状態だと指摘した。そして、観光客を狙うスリや詐欺師、法外な料金を請求する店が存在するため注意が必要だと忠告した。上条は現地の事情に詳しいオルソラの説明を聞き、イタリアでは地元の人間の助言が重要であることを実感した。

インデックスの居場所判明

観光について話している最中、オルソラは既にインデックスの姿を見つけていたことを明かした。インデックスはジェラート店に夢中になっていたうえ、昼食の話を聞いてオルソラの友人と共に先にオルソラの家へ向かっていたのである。上条は自分だけ置いて行かれた事実に落胆したが、インデックスと合流するにはオルソラの家へ向かうのが最も早い方法だと理解した。

オルソラの案内を受ける上条

オルソラは結論として、自分の家について来れば良いと告げた。上条は再び厄介事に巻き込まれている気がしたものの、一人で途方に暮れるよりはましだと判断した。そして、旅行とは予定通りに進まないものだというオルソラの言葉を受け入れ、彼女の案内に従うことにしたのであった。

行間 一

脱走した修道女たち

シスター・ルチアとシスター・アンジェレネは、護送用の馬車から脱出していた。ルチアは車輪を武器とする戦闘シスターであり、アンジェレネは馬車内部に封印されていた魔術武器の封を解除して回収した。二人は『禁色の楔』によって魔術を封じられていたが、自らの血で霊装の機能を一時的に妨害し、行動の自由を確保していた。

アニェーゼ救出への決意

二人は周囲の言葉遣いから、自分たちがヴェネツィア近辺にいることを推測した。そして『女王』のもとへ連れ戻される危険を警戒しながら、まず身を隠して霊装や武器の準備を整える方針を決めた。ルチアは、シスター・アニェーゼが教会によって罪人として扱われている現状を受け入れられず、彼女を救う決意を新たにしていた。

逃走防止術式の発動

二人は武器を手に街中を走り抜けたが、突如として強烈な圧迫感に襲われた。ルチアは呼吸を奪われ、手にしていた車輪を落として石畳の上へ倒れ込んだ。アンジェレネも同様の攻撃を受け、すでに意識を失っていた。

捕縛と再収容

ルチアは馬車の屋根から赤い光が放たれているのを見て、馬車と『禁色の楔』を連動させた逃走防止術式が発動したのだと悟った。馬車から一定距離離れるか、馬車が破壊されてから一定時間が経過すると作動する仕組みだったのである。

やがて新たな馬車が到着し、緊急事態の報告を受けて追手が駆けつけたことが判明した。反撃する力も残っていなかったルチアは、アニェーゼの名を思い浮かべながら意識を失った。その後、ルチアとアンジェレネは修道服の襟首を掴まれ、荷物のように馬車へ積み込まれていった。

第二章 ロンドンへの準備 Un_Frammento_di_un_Piano.

オルソラの住居への到着

上条とインデックスは、オルソラが以前住んでいたアパートメントを訪れた。建物は歴史を感じさせる古い煉瓦造りで、海の街らしく建物ごとに壁の色が異なっていた。オルソラは、船上から自宅を見分けるために色分けされたのが由来だと説明した。

インデックスとの再会

部屋へ到着すると、天草式の面々が出迎えた。その直後、インデックスが巨大なアイスクリームの容器を抱えて現れた。インデックスは冷凍庫の整理を手伝う名目でジェラートを食べており、上条は自分を置いて先に行動していたことに不満を漏らしたが、理屈としては間違っていないため反論しきれなかった。

天草式の誤解と上条の困惑

上条は天草式の人々が自分について噂している内容を耳にした。彼らは上条をローマ正教の戦闘シスターたちに立ち向かった人物や、女教皇に拳で挑んだ怪物のように語っていた。上条は誤解された評価に困惑したが、天草式の面々は逆に怯えて部屋へ引き下がった。

オルソラの手料理

オルソラは引っ越し作業の前に昼食を振る舞った。アサリのパスタやカニの入った冷製スープ、ポレンタとイカスミ料理などが並び、上条とインデックスはその美味しさに感動した。食事中、オルソラはヴェネツィアやキオッジアの歴史について説明し、ヴェネツィアが海洋国家として栄えた過去や、キオッジアとの関係を語った。

引っ越し作業の開始

食事を終えた一行は荷物整理を始めた。家具や食器を段ボールに詰め、トラックへ運び出していった。作業を続けるうちに修道服へ埃が付着し、インデックスは汚れを気にし始めた。オルソラは飛行機移動の疲れも考慮し、先にシャワーを使うよう勧めた。

新聞紙を探した上条の誤算

上条は梱包に必要な新聞紙を探すため廊下へ向かった。二つ並んだ扉のどちらかに新聞紙があると考えたが、片方からシャワー音と鼻歌が聞こえたため、もう片方が安全だと推測した。しかし実際には両方とも浴室であり、右の扉を開けると入浴中のオルソラがいた。

浴室での大混乱

動揺した上条が反対側の扉へ逃げ込もうとした直後、今度は左の浴室から裸のインデックスが飛び出してきた。オルソラは聖バルバラの伝承に基づき、生活用と宗教用の二つの浴室を備えていたと説明したが、上条には理解できなかった。

さらに新聞紙は浴室ではなく廊下に置かれていたことが判明したため、上条は自らの勘違いに頭を抱えた。そこへ、自分の裸より新聞紙を優先したように見えたことへ腹を立てたインデックスが噛みつき、上条は異国の地で再び痛い目に遭う結果となった。

襲撃と別れの直前

引っ越し作業を終えた上条たちは、夜になったアパートメント前でオルソラと別れようとしていた。オルソラはロンドンへ戻る前にキオッジアの街へ別れを告げて回りたいと語り、自身にとって大切な土地を離れる複雑な思いを覗かせた。上条はその言葉から、彼女が失った日常の重みを改めて理解した。

突如として始まった狙撃

別れの直後、インデックスは異変を察知して二人に伏せるよう叫んだ。直後にオルソラの鞄が何者かの攻撃によって弾き飛ばされ、表面には不自然な穴が穿たれていた。さらにオルソラの修道服へ照準のような印が現れ、上条は狙撃だと判断してインデックスとオルソラを突き飛ばした。

運河から現れた襲撃者

上条が状況を把握する間もなく、運河から伸びた手に首を掴まれ、水中へ引きずり込まれた。海面から顔を出した上条が見たのは、黒い修道服をまとい槍を振り上げた襲撃者だった。オルソラへ止めを刺そうとする男に対し、上条は散乱した荷物の中からドライヤーを投げつけて妨害した。

上条とインデックスの反撃

襲撃者は上条へ向かって突進したが、インデックスが強制詠唱を発動したことで男の槍は自壊した。その隙を突いた上条は拳で男を殴り倒し、襲撃者を戦闘不能にした。

一方、遠距離から狙撃していた別の敵に対しても、インデックスは強制詠唱による攻撃を行った。苦しみながら姿を現した狙撃手は撤退を命じ、海へ飛び込んで逃走を図った。

氷の巨大帆船の出現

その直後、運河の水面を突き破って巨大な帆船が出現した。船は半透明の氷のような素材でできており、運河の幅を超える巨体で周囲の道路や船を破壊しながら浮上した。

上条たちは激流に巻き込まれ、オルソラは船体に引っ掛かる形で持ち上げられた。上条自身も船体の縁に押し上げられ、二十メートル近い高さへ運ばれた。

氷の船への取り残され

上条は船体へよじ登り、落下しかけたオルソラを救い上げた。二人が立った甲板は巨大で、全体が淡く発光していた。船は運河を破壊しながら進み続け、やがてキオッジアの中心部を抜けて海へ向かっていた。

オルソラは進路上にあるヴィーゴ橋の存在に気づき警告したが、直後に船は橋を一撃で破壊した。衝撃によって二人は甲板へ叩きつけられたものの、辛うじて無事だった。

海上への連行

船はそのまま海へ出て進み続けた。インデックスとは完全に引き離され、上条とオルソラだけが船上へ取り残された。さらに船内からは複数の敵が二人を捜索する声が聞こえてきた。

海へ飛び込んで逃げることもできない状況の中、上条はオルソラの手を掴み、巨大な氷の船の内部へ身を隠すことを決めた。楽しい旅行だったはずのイタリア滞在は、思いもよらぬ危機へと変わっていった。

行間 二

アニェーゼの移送

数週間前、アニェーゼ・サンクティスは驢馬の引く馬車の車室に乗せられていた。車室の窓には外側から角材が組まれ、潮の香りが漂う中、彼女は衛星都市の街並みを眺めていた。修道服は不自然なほど綺麗な状態を保っており、その姿は周囲から浮いていた。

御者との旅の会話

御者はアニェーゼへこの地方は初めてかと尋ねた。アニェーゼはミラノ出身であり、この地域には縁が薄いと答えた。二人はイタリア各地や世界遺産について語り合い、アニェーゼはフォンテーヌブローの庭園やケルン大聖堂、東洋の印象など、自身が訪れた土地について話した。

御者は国外へ出た経験がなく、馬車で移動できる範囲しか知らないと語った。話題は飛行機や気球へ移り、科学技術と魔術側の事情にも触れられたが、アニェーゼは穏やかに応じていた。

目的地への到着

やがて馬車は目的地へ到着した。停止した気配を感じたアニェーゼは、車室後方の扉へ視線を向けた。そして行き先はアドリア海の女王と呼ばれる場所に属する女王艦隊なのだろうと口にした。

その言葉を合図にするかのように、閉ざされていた扉の鍵が外された。

第三章 水の都の船の上で II_Mare_e_la_Sconfitta.

女王艦隊との遭遇

上条当麻とオルソラは氷で作られた巨大帆船の内部へ侵入し、砲室らしき部屋に身を隠した。船内は通路や壁、調度品に至るまで氷で統一されており、淡い光に照らされた幻想的な空間だった。外では複数の男たちの声や足音が響き、二人は追跡の緊張に包まれていた。

オルソラは、自分を襲うためにここまで大規模な行動が取られた理由に疑問を抱いていた。上条も、街を破壊しながら堂々と現れた氷の軍艦の異常さに困惑していた。

無数の氷の軍艦の出現

二人が砲室の覗き窓から外を確認すると、海面を突き破って次々と同型の氷の帆船が現れた。水平線まで広がる海は無数の軍艦によって埋め尽くされ、一隻だと思われていた船が巨大な艦隊の一部に過ぎないことが判明した。

上条は状況の深刻さを痛感し、オルソラも自分の荷物が失われたことを気にしながら、この事態の先行きを案じていた。

アニェーゼとの再会

その時、船内の扉が一斉に開放された。捜索の気配に身構えた二人の前へ現れたのは、かつて法の書を巡る事件で敵対したアニェーゼ・サンクティスだった。

上条は思わず彼女の名を呼んだが、アニェーゼは即座に上条へ攻撃を加えた。上条を叩き伏せた後も警戒を解かず、武器の有無を確認したが、見つかったのは予備の財布だけだった。やがてオルソラの説明を聞いたことで、二人が侵入者ではなく偶然巻き込まれた存在であると理解した。

女王艦隊の正体

アニェーゼは、この艦隊がアドリア海全域の魔術活動を監視するために建造された女王艦隊であると説明した。数百年前に作られた巨大な監視施設であり、他勢力への牽制の意味も持っていた。

しかし監視施設という説明は表向きのものであり、実際には罪人や失敗者と見なされた修道女たちを収容し、長時間の労働を課す施設でもあった。アニェーゼ自身もその囚人の一人であり、元部隊の修道女たちの多くもここで働かされていた。

ルチアとアンジェレネ救出の依頼

アニェーゼは、自身の元部下であるルチアとアンジェレネが艦隊から脱獄を試みたことを明かした。二人は他の修道女たちを救い出そうとしていたが、再び捕らえられてしまったのである。

現在は脱獄に使った術式を吐かせるための処分が行われようとしており、そのままでは魔術を使えなくするため脳へ深刻な処置が施される可能性があった。アニェーゼはそれを阻止するため、上条とオルソラへ二人の救出を依頼した。

アニェーゼの立場

アニェーゼは囚人でありながら特別な立場を与えられていた。元部隊の修道女たちに対して大きな影響力を持つため、反乱を防ぐ精神的な象徴として扱われていたのである。

そのため艦隊内を自由に移動する権限や特別待遇を受けていたが、ルチアたちの行動を空回りだと評しながらも、最終的には彼女たちを助けるため上条たちへ協力を求めた。

協力の成立と新たな騒動

逃げるためにはルチアたちの協力が不可欠だと判断した上条は、渋々ながら救出へ協力することを了承した。アニェーゼも陽動のため旗艦へ向かうと告げ、三人は一時的な共闘関係を結ぶこととなった。

立ち上がろうとした上条がアニェーゼの手を掴んだ瞬間、彼女の修道服に施されていた魔術的拘束装飾が破損し、衣服が崩れ落ちた。突然の事態にアニェーゼは激しく動揺し、大騒ぎになる前に上条とオルソラが慌てて彼女を取り押さえ、口を塞いだのであった。

女王艦隊からの脱出計画

インデックスは混乱に包まれたキオッジアの街に立ち、運河や橋が破壊された惨状を見つめていた。彼女は氷の帆船の正体がローマ正教の女王艦隊の一隻であると知識から推測し、オルソラと天草式が関係している可能性を考えた。

しかし自分一人では対処できないと判断したインデックスは、上条たちを助ける方法を求めて街の中を走り出した。

艦内の移動開始

一方、上条当麻とオルソラは砲室を追い出され、アニェーゼの指示に従って行動を開始した。艦内は極めて狭く、人影も見当たらなかったが、二人は襲撃への警戒を解けずにいた。

アニェーゼの説明によれば、艦隊の運航や砲撃は魔術による自動制御が中心であり、乗組員は少数だった。ルチアとアンジェレネは三階部分へ連行されていると聞き、二人は上層を目指した。

女王艦隊の規模を目撃

三階へ到着した上条とオルソラは窓から外を見て、その光景に息を呑んだ。海面には無数の氷の軍艦が広がり、巨大な艦隊全体が一つの都市のような規模を形成していた。

さらに、船同士を繋ぐ氷の橋を渡るアニェーゼの姿を確認し、彼女も陽動のために動き始めていることを知った。二人は改めて、この艦隊から脱出することこそが最優先だと認識した。

氷の鎧との遭遇

目的地の近くまで進んだ二人は、部屋の前を守る巨大な氷の鎧を発見した。三メートルを超える鎧は巨大な棍棒を持ち、通路を塞ぐように立っていた。

上条が対策を考える間もなく、鎧は瞬時に移動して攻撃を仕掛けた。回避不可能と判断した上条は反射的に右手で棍棒を受け止めた。その結果、幻想殺しによって棍棒と鎧は次々に砕け散り、完全に破壊された。

オルソラは鎧を調べ、これは独立した存在ではなく艦そのものの一部が変形したものであり、内側へ向けられた砲台のような役割を持つ存在ではないかと推測した。

救出作戦への突入

障害を突破した二人は、ルチアとアンジェレネが収容されている部屋へ向かった。オルソラは内部に術者たちがいる可能性を指摘し、氷の鎧の残骸を武器代わりに回収した。

そして二人は覚悟を決め、勢いよく部屋の扉を開いた。

オルソラの機転

部屋の中にはルチアとアンジェレネ、そして彼女たちへ処置を施そうとしていた五人の修道士がいた。人数では圧倒的に不利だったが、オルソラは先に行動した。

彼女は砕けた氷の鎧の破片を部屋へ投げ込み、それを破壊した存在が近くにいることを示した。そして袖の中に強力な霊装を隠しているかのように振る舞い、相手へ圧力をかけた。

氷の鎧を破壊できる力を持つと誤解した修道士たちは動揺し、交渉の主導権はオルソラ側へ移った。相手が完全に怯んだことを確認したオルソラは、上条に彼らを拘束するよう指示したのであった。

女王艦隊の脱出準備

ローマ正教の男たちは、オルソラの霊装を持っているというハッタリに屈し、抵抗せず拘束された。上条当麻は男たちのベルトを利用して手足を縛り上げた。

緊張から解放されたオルソラは、ルチアとアンジェレネへ助けに来たと告げた。しかし二人はすぐには信用せず、とくにルチアは強い警戒心を見せた。

オルソラによる説得

上条はアニェーゼの依頼で助けに来たことと、自分たちも艦隊から脱出したいことを説明した。しかしルチアは罠の可能性を疑い続けた。

そこでオルソラは、敵の本拠地であるこの場所まで危険を冒して来た理由は二人を助ける以外にないと問いかけた。拘束された男たちを示しながら論理的に説明したことで、ルチアは反論できなくなった。

上条は、異教徒への布教と説得を続けてきたオルソラの経験が、この場で発揮されていることに感心した。

脱獄術式の実演

ルチアとアンジェレネはようやく協力を決め、脱獄術式を実演した。二人は拘束衣の術式を逆利用し、互いの掌を合わせて魔力を流した。

すると氷の戸棚に巨大な穴が開き、海水を利用した海底コースターを作り出せることを説明した。これは艦隊の海上監視能力の弱点を突き、海中から脱出するための術式であった。

しかし術式を発動した直後、アンジェレネは頭痛に襲われた。拘束具に迎撃機能が追加されていたためであり、二人は氷のペンを使って拘束服の縫い目を壊し、妨害機能を解除しようとした。

アニェーゼへの期待

脱出準備を進めながら、ルチアとアンジェレネはアニェーゼと合流できることを期待していた。二人はアニェーゼを救出し、共に艦隊から逃げる未来を信じていた。

しかし上条は、アニェーゼが旗艦へ向かったことを打ち明けた。ルチアとアンジェレネは激しく動揺し、アニェーゼこそ最も危険な立場に置かれていると訴えた。

女王艦隊の真実

ルチアたちは、女王艦隊は単なる監視施設や労働施設ではなく、旗艦アドリア海の女王で行われる大規模魔術を守るための護衛艦隊であると明かした。

そして、その大規模魔術には刻限のロザリオという術式が関わっており、その発動のためにアニェーゼが利用される予定だと説明した。さらに、その過程でアニェーゼは脳を破壊され、心臓を動かすだけの存在になる可能性があることも語られた。

その話を聞いた上条は、アニェーゼが自らを犠牲にしてルチアたちを逃がそうとしていた真意を理解した。

突然の艦隊砲撃

その直後、艦内に凄まじい爆発音が響いた。壁が外側から破壊され、上条たちは衝撃で床へ投げ出された。

最初は何が起きたのか分からなかったが、オルソラは破壊された壁の向こうを見て、味方艦から砲撃されていると叫んだ。ルチアも、護衛艦は海水から再建可能なため、損傷を気にしない運用ができると説明した。

次の瞬間、無数の砲撃が船体全体へ降り注いだ。壁や船室は次々と砕け、拘束されていた男たちは海へ投げ出された。周囲の艦艇は損傷を修復していたが、この艦だけは再生せず、大きく傾き始めた。

激しい爆発と衝撃波の中、氷の護衛艦は容赦なく破壊されていったのであった。

行間 三

アニェーゼの過去

路上生活の日々

アニェーゼは両親を殺されたことをきっかけに路上生活を送るようになった。食料はゴミ箱から確保できたものの、それを食べ物として受け入れるまでが辛かった。一方で、それ以上に過酷だったのは冬の寒さであった。

ミラノの整備された街には防寒に使える物も少なく、石造りの建物やアスファルトは夜になると冷え切っていた。眠れば凍傷の危険があり、ゴミ箱の中の食料すら凍りついているような環境で、幼いアニェーゼは生き延びていた。

ローマ正教との出会い

そんなアニェーゼを拾い上げたのがローマ正教であった。そこには彼女以外にも様々な事情を抱えた人々が集められていた。

アニェーゼのように命懸けの生活を送っていた者は少なく、多くは選ばれたことを幸運だと感じていた。ローマ正教は膨大な信徒を抱えており、その中から才能を持つ人材を集めていたため、選抜には一定の条件があったものの、その詳細はアニェーゼには分からなかった。

仲間たちとの出会い

そこでアニェーゼはアンジェレネやルチア、アガター、カテリナらと出会った。

アンジェレネは両親に捨てられた過去を持ち、将来への不安を抱えていた。一方のルチアは信仰心が強く、自ら進んでローマ正教に選ばれることを望んでいた。

アニェーゼは神の存在を信じてはいたものの、祈ればすぐに助けてくれる存在とは考えていなかった。両親が祈りながら死んだことや、自ら犯人を殺した経験からも、その考えは揺るがなかった。

少女たちの日常

将来への不安を語るアンジェレネや信仰を重んじるルチアとは対照的に、アニェーゼはその日の夕食を気にしていた。

やがて話題は料理の味付けや風呂の温度へ移り、ルチアも思わず熱く反論した。さらにアガターやカテリナまで巻き込んだ騒ぎとなり、少女たちは賑やかなやり取りを繰り広げた。

新たな居場所への決意

騒がしい仲間たちを見ながら、アニェーゼは神が常に傍にいるとは思えなくても、彼女たちと出会えたことには感謝していた。

ローマ正教のおかげで巡り合えた仲間たちを守りたいと考え、その幸運を自らの手で守り抜くことこそ、自分なりの信仰の証にしようと決意した。

そして、これからここが自分の居場所になるのなら、まずは風呂の温度を改善するために直談判するのも悪くないと考えるのであった。

第四章 火船と砲火の戦い Lotte_di_Liberazione.

アニェーゼの真実と旗艦の内部

アニェーゼは『女王艦隊』の旗艦『アドリア海の女王』にある特異な部屋にいた。その空間は物理法則を無視した四角錐状の構造を持ち、中心には透明な氷の球体が置かれていた。その球体こそ、アニェーゼが収容されるべき牢獄でもあった。

そこにはビショップ・ビアージオもおり、アニェーゼに対して『アドリア海の女王』の発動には彼女の適性が必要であると語った。『刻限のロザリオ』という術式はアニェーゼの精神を破壊し、その異質な魔力を利用するものであり、彼女は術式の鍵として選ばれていた。

沈没した三七番艦への反応

ビアージオは三七番艦の撃沈について語り、侵入者たちが生き延びている可能性を否定的に捉えていた。アニェーゼは上条たちの安否を案じたが、それを表には出さなかった。

その後、三七番艦の沈没地点付近で巨大構造物の反応が確認されたとの報告が届いた。ビアージオは海中から現れた存在をシスター・ルチアたちの脱獄術式と関連付けながらも、背後に集団がいる可能性を指摘し、部下たちの失態に苛立ちを見せた。

海中で意識を失う上条

一方、上条当麻は暗い海の中を漂っていた。沈没した船の残骸はすでになく、意識も朦朧としていた。

オルソラやルチアたちの安否を気にしながらも体は動かず、死を覚悟しかけたその時、巨大な構造物が海中から接近した。その構造物は大きく口を開くように展開し、上条を飲み込んだ。

天草式との再会

上条が目を覚ますと、そこにはインデックスがいた。さらに建宮斎字や天草式十字凄教の面々も集まっていた。

建宮は上条たちを海中から救出したことを明かし、オルソラやルチア、アンジェレネも無事であると説明した。上条は仲間たちの生存を知り安堵した。

上下艦の正体

建宮は現在いる場所が建物ではなく『上下艦』という乗り物であると説明した。

上下艦は木材で作られた潜行能力付きの船であり、海中から浮上すると内部構造が展開された。上条はその常識外れの仕組みに驚きながらも、天草式が得意とする海戦用の魔術兵器であることを知った。

アニェーゼを巡る会話

上条は遠方に見える『女王艦隊』を見つめながら、旗艦に残ったアニェーゼのことを思い返した。

インデックスは今後の行動には情報整理が必要だと告げ、上条もルチアとアンジェレネから話を聞くべきだと考えた。そこへオルソラに背中を押されたルチアとアンジェレネが現れた。

拘束術式解除の後日談

建宮は、ルチアとアンジェレネを拘束していた術式を解除するため、気絶していた上条の右手を利用したことを明かした。

拘束術式が組み込まれた修道服は破壊され、その結果として二人は非常に恥ずかしい状況になっていたらしい。ルチアは真っ赤になって反応し、上条も状況を理解して慌てた。

その様子を見たインデックスはさらに不機嫌になり、上条へ説教を始めた。

アンジェレネの強引な注目集め

その最中、アンジェレネはアニェーゼについて説明しようと何度も声をかけたが、誰も話を聞いてくれなかった。

ついに意を決したアンジェレネは、隣にいたルチアのスカートを勢いよく持ち上げて周囲の注目を集めた。場は一瞬で静まり返り、ルチアは顔を真っ赤にして激怒した。

アンジェレネは必死に弁解したが、周囲はますます気まずい空気となり、上条はインデックスに拘束されたまま頭をかじられる羽目になった。

ソット・マリーナでの情報整理

天草式は上下艦で陸地近くまで移動した後、小型の木製ボートへ分乗してソット・マリーナへ上陸した。建宮は上下艦を紙へ戻し、さらに紙から椅子やテーブル、食器を作り出して作戦会議の準備を整えた。

ルチアはすぐにアニェーゼ救出へ向かいたいと訴えたが、建宮は艦隊の警戒が強まっているため今は無理だと制止した。こうして一行は食事を取りながら情報交換を行うことになった。

食事の席でのやり取り

食事の準備中、アンジェレネは好物のチョコラータ・コン・パンナについて語ったが、ルチアから警戒心の欠如と甘い物への執着を注意された。さらに五和は上条におしぼりを渡し、周囲の天草式の仲間たちは彼女をからかいながら応援していた。

賑やかな雰囲気の中で食事が始まり、本格的な情報整理と作戦会議へ移った。

『アドリア海の女王』の正体

インデックスは『女王艦隊』が大規模術式『アドリア海の女王』を守るための護衛艦隊であると指摘した。ルチアとアンジェレネは、自分たちが艦隊内で働かされていたものの、その作業が何に使われていたのか知らなかったと説明した。

そこからオルソラやインデックスが歴史的背景を語った。ヴェネツィアは古くからローマ正教と対立し続けた独立都市国家であり、『アドリア海の女王』は本来、そのヴェネツィアを滅ぼすために作られた対都市専用の大規模術式であった。『女王艦隊』はその術式を守るための防衛網だったのである。

ヴェネツィア破壊の恐るべき効果

インデックスは『アドリア海の女王』の効果について説明した。この術式はヴェネツィアを背徳の都に見立てて破壊するだけでなく、街の外へ持ち出された人や物、芸術や文化、歴史的価値までも消し去る力を持っていた。

その説明を聞いたアンジェレネは、アニェーゼが術式の本質を知っているとは思えないと語った。ルチアもまた、ローマ正教にとってアニェーゼは使い捨ての道具であり、詳細を知らされていないだろうと推測した。

救出作戦の困難さ

建宮は現状を整理し、『女王艦隊』まで約十キロ離れていること、さらに艦隊の周囲五キロ以上が砲撃圏内であることを説明した。接近するだけでも激しい砲火を潜り抜けなければならず、上下艦ですら一発で沈められる危険があった。

オルソラは海中からの接近を提案したが、ルチアは指揮官ビアージオが既に対潜対策を整えているはずだと否定した。ビアージオは司教でありながら極めて狡猾な人物であり、艦隊運用の専門家でもあった。

ルチアとアンジェレネの決意

厳しい現実を突き付けられながらも、ルチアとアンジェレネは救出を諦めなかった。ルチアはアニェーゼを教会の宝と呼び、そのような人物が道具として使い潰されることを許せないと語った。

アンジェレネもまた、これまで何度も助けてもらった恩を返したいと告白し、今こそ行動する時だと訴えた。二人は恐怖を抱えながらも、自らの意志で救出を望んでいた。

上条の訴え

二人の言葉を聞いた上条は、勝算や戦略よりも大切なのはアニェーゼを助けたいかどうかだと語った。

アニェーゼは仲間を逃がすために自らを犠牲にしようとしており、その想いが利用されたまま終わることを上条は認められなかった。アニェーゼを助ければヴェネツィアの破壊も防げるのだから、やるべきことは一つだと断言した。

建宮の策と天草式の覚悟

上条の言葉を聞いた建宮は、自分も最初からアニェーゼ救出を望んでいたことを明かした。そして既に作戦も用意しており、その実行に皆が覚悟を決められるか確認していただけだと説明した。

建宮は天草式の仲間たちへ向かい、全員で生きて帰ることを前提に戦うと宣言した。誰一人異論を唱える者はおらず、天草式の全員が同じ意志を示した。

最後に建宮が教えを問いかけると、天草式十字凄教の者たちは声を揃えて、救われぬ者に救いの手をと答えた。

女王艦隊への接近準備

天草式と上条たちを乗せた上下艦は、『女王艦隊』へ向けてアドリア海を北上していた。

建宮は巨大なフランベルジェを携え、ルチアは聖カテリナの車輪伝説を模した術式に使う大きな車輪を準備していた。アンジェレネもまた、武器として用いる金貨や銀貨を袋へ詰めていたが、威力を気にして量を調整しようとしたため、ルチアから叱責を受けていた。

その様子を見た上条はローマ正教への認識が変わりつつあることを感じた。オルソラは、人はそれぞれ異なる側面を持っており、単純に善悪で分けられるものではないと語った。さらにインデックスは、以前アニェーゼが使用していた銀の杖をオルソラへ渡した。上条とインデックスの間には微妙な空気が流れたが、上下艦はそのまま女王艦隊へ向けて進み続けた。

天草式による火船艦隊の展開

女王艦隊が近づく中、建宮は紙束を海へ投げ捨てた。

海水を吸った紙は巨大な木製帆船へ変化し、数十隻もの船団を形成した。しかしそれらには砲台が存在せず、軍艦ではなかった。

建宮は、かつてイギリス海軍がスペイン無敵艦隊に対して用いた火船戦術を持ち出し、この船団が敵艦へ突撃するための火船であることを示唆した。

女王艦隊による迎撃

女王艦隊の情報艦では、索敵担当のアガターが接近する多数の船影を発見した。

異常な高速で迫る敵艦隊に対し、ビアージオは即座に迎撃を命令した。女王艦隊は大量の砲弾を放ち、次々と木造船を沈めていった。

しかし火船は砲撃を避けることなく前進し続けた。そして外周護衛艦へ激突すると、船体ごと大爆発を起こした。無人の火船による特攻攻撃によって、女王艦隊の防衛線は大きく混乱した。

海中からの本隊侵入

火船による陽動の最中、アガターは真の脅威を発見した。

海中を索敵した結果、女王艦隊の南方に上下艦が潜航していることが判明したのである。ビアージオは対潜用の砲弾を使用し、周囲の海水ごと凍結させることで上下艦の動きを封じた。

上下艦は氷塊ごと浮上させられたが、それも囮だった。実際には一隻だけ爆発しない船へ上条たち本隊が乗り込み、火船群に紛れて女王艦隊へ直接突入していたのである。

女王艦隊への強行上陸

上条、インデックス、オルソラ、ルチア、アンジェレネ、建宮らは氷の護衛艦へ乗り込んだ。

建宮は各艦の制圧ではなく旗艦『アドリア海の女王』の攻略を優先するよう指示した。しかし艦隊側は侵入艦ごと沈めて再構築する方針を取り、乗組員へ退避命令を出した。

建宮は紙札で船同士を繋ぐ木橋を作り、旗艦への突破路を確保したが、周囲から激しい砲撃が降り注いだ。上条たちは崩壊する船体を駆け抜けながら前進を続けた。

アニェーゼ部隊との対峙

上条たちの前に立ちはだかったのは、アニェーゼ部隊のシスターたちだった。

彼女たちはアニェーゼ救出の目的を理解していながらも、任務を優先して武器を向けた。上条はなぜ協力しないのかと問いかけたが、シスターたちは感情よりも職務を選んだ。

オルソラは、その厳しい態度はアニェーゼやルチアたちへの期待の裏返しであり、本心では打開を願っているのだと語った。

ルチアとアンジェレネの奮戦

ルチアは車輪を爆発させて木片の雨を降らせ、シスターたちの隊列を崩した。

さらに艦隊からの砲撃が襲うと、アンジェレネは金貨袋を操ってマストを倒し、砲撃を防いだ。しかし砲撃の衝撃で金貨袋は限界を迎えた。

それでもアンジェレネは敵味方を区別せず、シスターたちを守ろうと前へ飛び出した。そして巨大な氷塊から修道女を突き飛ばして救った直後、自らは飛散した氷塊の直撃を受けて吹き飛ばされた。

アンジェレネの願い

重傷を負ったアンジェレネのもとへルチアが駆け寄った。

アンジェレネは震えるルチアの手を握りながら、アニェーゼも仲間たちも全員で帰るという約束を忘れないでほしいと語った。そして敵味方ではなく、皆を守るために一緒に戦ってほしいと願った。

ルチアはその言葉を受け止めながら、アンジェレネの傍らに立ち続けた。

上条の激励と再出発

さらに砲撃が迫る中、上条は右手で氷の砲弾を受け止めて砕いた。

そしてルチアに対し、自分が力を貸す価値があると思える言葉を口にするよう求めた。ルチアは必ず皆を守ると断言し、アンジェレネにも自分自身と戦うよう呼びかけた。

その言葉にアンジェレネは微笑み、ルチアは彼女を抱き上げた。車輪を使えなくなっても構わず、共に戦う意志を示したのである。

天草式と上条たちはルチアたちを守るように前へ立ち、全員で同じ方向を見据えた。その先には、目指すべき旗艦『アドリア海の女王』が存在していた。

行間 四

アンジェレネの願い

氷塊の直撃を受けて意識が朦朧とする中でも、アンジェレネは諦めたくないと強く願っていた。

周囲で響く爆発音や武器の衝突音を聞きながら、彼女はアニェーゼのことを思い返していた。アニェーゼは教会のために危険な仕事を引き受け、その報酬で聖書を刷り、人の来なくなった教会を巡って神父たちへ届けていたのである。

仲間たちへの想い

全身の痛みと頭部への衝撃に苦しみながらも、アンジェレネはルチアや仲間たちの姿を思い浮かべていた。

ルチアは仕事がない時でも教会の鐘楼で待機し、異変があればすぐに駆けつけられるよう備えていた。その場所が居場所になるほど、長い間その務めを続けていたのである。

アンジェレネは、他の仲間たちにも必ず良いところがあり、本当に悪い人など誰もいないはずだと考えていた。

争いへの悲しみ

涙を流しながら、アンジェレネはなぜこのような状況になったのかを嘆いていた。

善悪という基準で線引きされ、互いに戦わされることを嫌い、自分たちが悪者として扱われることにも強い悲しみを抱いていたのである。

仲間を救いたいという祈り

動けないまま手足を揺らしながら、アンジェレネは心の中で願い続けた。

歯を食いしばり、涙を浮かべながら、自分ではなく大切な仲間たちを助けてほしいと祈っていた。そして、皆をこんなくだらない闇の中から救い出してほしいと強く願っていた。

第五章 アドリア海の女王 La_Regina_del_Mar_Adriatico.

アドリア海の女王への突入

ビアージオの苛立ち

ビアージオ=ブゾーニは旗艦アドリア海の女王の船底で、計画の終わりが近いことを感じていた。

しかし、護衛艦同士の砲撃が続いていることから、敵がなお旗艦へ接近していると判断していた。彼は、職制者が戦闘向きではなく、元アニェーゼ部隊のシスター達も船上戦に慣れていない状況に不満を抱き、上層部の判断を役立たずだと見なしていた。

アニェーゼへの悪意

ビアージオは、刻限のロザリオの鍵として使われるアニェーゼを見ていた。

彼は、アニェーゼがなお誰かに期待しているような表情を浮かべていることを嘲り、その希望を打ち砕くことで部品に感情は必要ないと語った。アニェーゼは嫌悪感を示し、顔を背けていた。

天草式の足止めと上条達の前進

天草式は、数で勝るローマ正教側を船上の混戦で足止めしていた。

建宮は主戦力を引き付けると告げ、上条、インデックス、オルソラを旗艦へ向かわせた。オルソラは和紙を使った橋の術式を慎重に扱い、三人は船から船へ渡って旗艦アドリア海の女王へ到達した。

旗艦への侵入

旗艦は他の護衛艦よりも巨大で、宮殿のような装飾を備えていた。

インデックスは、この船が女王艦隊全体を統括制御する魔術的船体だと説明した。扉は氷で封じられていたが、上条は右拳で扉と周囲の壁をまとめて破壊し、三人は船内への入口を開いた。

氷の鎧による追撃

旗艦内部へ入ろうとした直後、甲板から多数の氷の西洋鎧が現れ、上条達を取り囲んだ。

オルソラは、鎧が船を守る存在なら内部破壊を避けるはずだと判断し、船内へ逃げ込むよう促した。三人は斬撃をかわして船内へ転がり込んだが、氷の鎧はなお追ってきた。

上条の囮

上条は、氷の鎧が幻想殺しを危険視して自分を狙っていると察した。

そこで彼はインデックスとオルソラを横の通路へ突き飛ばし、自分だけ別方向へ走った。さらに右手で壁を破壊して注意を引き、氷の鎧達を自分へ集中させた。

ルチアとアンジェレネの苦戦

一方、ルチアは傷ついたアンジェレネを守りながらシスター達に囲まれていた。

アンジェレネは金貨袋の代わりにフードへ硬貨を詰めて戦おうとしていたが、本来は前線に立てる状態ではなかった。シスター達は弱い箇所から潰そうと包囲を強め、ルチアは車輪を構えて突破口を探していた。

天草式の合流

艦内放送で複数の艦を沈める指示が流れた直後、建宮率いる天草式が木の橋をかけて突入した。

建宮は怪我人を相手にしている状況をつまらないと吐き捨て、天草式の参戦によってルチア達を囲む輪が崩れた。ルチアはその隙を逃さず、アンジェレネを連れて動くため、シスター達に向けて車輪を爆破した。

旗艦内部での逃走と反撃

氷の鎧との消耗戦

上条当麻は、自分が一対一なら勝算があっても、多数を相手にすれば本来勝ち目がないことを理解していた。

しかし、相手が魔術で動く氷の鎧であるため、右手で触れるだけで無力化できた。上条は通路を埋め尽くす鎧達を次々と停止させたが、後続の鎧が残骸を破壊しながら押し寄せてくるため、その場に留まることはできなかった。

議場のような部屋への侵入

追い詰められた上条は、行き止まりで氷の壁を右手で破壊し、その先の部屋へ飛び込んだ。

そこは劇場の二階席や議場を思わせる巨大な空間だったが、上条にはその用途も意味も分からなかった。直後に氷の鎧が侵入してきたため、彼は迎撃に移った。

最後の氷の鎧との戦い

上条は氷の鎧の大剣による攻撃を受けそうになったが、鎧自身の動きの変化によって軌道がずれたことで辛うじて回避した。

頭髪を切り裂かれるほどの危険な一撃を避けた上条は、そのまま右拳を鎧へ叩き込み、最後の一体を破壊した。追撃がないことを確認すると、インデックス達との合流を考え始めた。

オルソラとの電話連絡

その時、上条の携帯電話に着信が入った。

電話はインデックスの携帯を借りたオルソラからであり、彼女はインデックスと共に逃走中だと伝えた。上条は自分の位置を説明できなかったが、オルソラからおおよその方角を聞くと、壁を破壊しながら一直線に向かうことを決めた。

刻限のロザリオへの疑問

電話を代わったインデックスは、アドリア海の女王の発動条件として刻限のロザリオが必要だという話に疑問を示した。

彼女は、アドリア海の女王は本来単独で即座に発動できる対ヴェネツィア用の大規模術式であり、追加の準備が必要なら本来の役割を果たせないと説明した。さらに、自身の知識の中にも刻限のロザリオが必要だという記録は存在しないと語った。

一方でオルソラは、ルチア達が嘘をついているようには見えなかったと話した。上条達は、刻限のロザリオが別の意味を持つ術式ではないかと考え始めた。

ビアージオの襲撃

考察の最中、突然天井が崩壊し、巨大な氷塊が上条を押し潰そうとした。

上条は右手でそれを破壊して回避したが、その先には豪奢な法衣をまとった男が立っていた。男はビアージオ=ブゾーニと名乗り、上条の幻想殺しに強い嫌悪を示した。

巨大十字架による攻撃

ビアージオは首元の十字架を投げ放ち、それを瞬時に巨大化させて攻撃した。

上条は一つを破壊したものの、もう一つに吹き飛ばされて下階へ落下した。ビアージオは続けて十字架を巨大化させて通路を封鎖し、さらに重力を極端に増した十字架を降らせて上条を追い詰めた。

上条は壁を破壊しながら回避を続けたが、肩をかすめただけで激痛を受けるほどの威力だった。

刻限のロザリオへの執着

ビアージオは、アドリア海の女王の回復能力を抑えてまで刻限のロザリオの完成を優先していると語った。

上条は、その術式がアドリア海の女王とは別の重要な意味を持つのではないかと考えたが、深く追及することなく、ビアージオを倒してアニェーゼを救出することだけを目的に据えた。

ビアージオとの本格的な戦闘開始

上条の言葉を聞いたビアージオは、首元からさらに七つの十字架を外した。

そして主に逆らう悪性は十字架が拒絶すると告げ、上条を排除するため本格的な攻撃を開始した。

旗艦外部での持久戦

建宮の奮戦と天草式の役割

建宮斎字は、沈みかけた護衛艦から木の橋を使って次々と別の艦へ移動していた。撃破したシスター達には和紙の術式で作った浮き輪代わりの板を取り付け、沈没する艦から落ちても溺れないようにしていた。

しかし、どれだけシスター達を倒しても艦隊の自動制御には影響がなく、次々と新たな護衛艦が出現していた。最大の脅威は艦隊の砲撃であり、それを止めない限り戦局は変わらなかった。

建宮は旗艦への直接介入も考えたが、天草式の主力が移動すれば敵戦力も旗艦へ集中し、上条達を危険にさらすと判断した。そのため、自分達は戦線を維持して上条達を支える役目に徹し、再びシスター達の集団へ突撃した。

ビアージオの真意の一端

ビアージオとの戦闘を続ける上条当麻は、巨大化した十字架の攻撃を右手で破壊しながら接近を試みた。

その最中、ビアージオは自分の狙いはヴェネツィアではないと語り、上条の推測を否定した。そして真意は明かさないまま、上条が考える以上に面白い計画だと意味深な言葉を残した。

十字架の本来の意味による攻撃

ビアージオは十字架が処刑の道具として使われていたことを語り、その象徴として新たな術式を発動した。

シモンは神の子の十字架を背負うという言葉と同時に、上条は何をされたか理解できないまま吹き飛ばされ、床へ叩きつけられた。攻撃の過程すら認識できず、体に力も入らなくなった。

その後も無数の十字架が空中でぶつかり合いながら攻撃を続け、上条は状況を把握できないまま追い詰められていった。

旗艦内部を進むインデックスとオルソラ

一方、インデックスとオルソラは旗艦アドリア海の女王の内部を進んでいた。

船内は常識外れな豪華さで満たされており、無数の芸術品が通路を埋め尽くしていた。二人は敵に遭遇しないことを不自然に感じながらも進み、インデックスは旗艦の構造からアニェーゼのいる場所を推測して最下層へ向かった。

最下層の大扉への到達

最下層には巨大なホールがあり、その正面には巨大な両開きの扉が存在していた。

インデックスは扉を調べ、防御術式が仕掛けられていることを見抜いた。許可なく触れれば氷の中へ引きずり込まれる仕組みだと判断し、この場所がアニェーゼとビアージオ以外を拒む重要区画であると推測した。

しかし二人は、それでも突破できると考え、扉の解析を始めた。

氷の守護兵の出現

その直後、床から巨大な氷柱が次々と出現し、氷の鎧や自律式の砲台へ変化した。

オルソラは迎撃しようとしたが、インデックスは敵の思考へ干渉できると判断し、自分に標的を集中させた。強制詠唱によって氷の守護兵達の制御へ割り込めると考えたのである。

インデックスによる陽動

インデックスは守護兵達を引きつけながら通路の奥へ走り去り、オルソラにはアニェーゼ救出を優先するよう告げた。

守護兵達は一斉にインデックスを追って移動し、その場にはオルソラだけが残された。オルソラは彼女の名を呼んだが、返事は返ってこなかった。

アニェーゼ救出

オルソラとの再会

アニェーゼ=サンクティスは氷の球体のそばで戦いの音を聞きながら、自分を巡って多くの者が戦っている現実に戸惑っていた。そんな中、閉ざされていた氷の扉が開き、オルソラ=アクィナスが部屋へ入ってきた。オルソラは無事なアニェーゼの姿を見て安堵し、再会を喜んだ。

アニェーゼの葛藤とオルソラの言葉

アニェーゼは、自分が過去にオルソラへ行った仕打ちを思い出しながら、なぜ助けに来たのかと問いかけた。オルソラは、自分には何が正しいか断言する資格はないと認めつつも、ルチアやアンジェレネがアニェーゼを助けたいと願っていた事実を伝えた。

さらに、絶望的な状況でも再び皆と笑いたいと願った仲間達の想いを語り、アニェーゼへその気持ちを問いかけた。

ビアージオの介入

二人の会話の最中、ビアージオ=ブゾーニが現れた。彼は上条当麻を倒してきたと語り、自身の計画を妨げる者達を排除する意思を示した。

そして、アドリア海の女王は単なる対ヴェネツィア用術式ではなく、刻限のロザリオによって照準制限を解除する計画であることを明かした。

刻限のロザリオの真の目的

ビアージオは、刻限のロザリオによってアドリア海の女王の照準制限を取り払い、学園都市を標的にできるようにすると語った。

アドリア海の女王は対象となった都市だけでなく、その都市が与えた影響そのものを消し去る術式であるため、学園都市へ向ければ科学サイド全体を壊滅させられると主張した。さらに、邪魔者を全て排除し、最終的にローマ正教だけが残る世界を目指していると明言した。

オルソラの敗北

計画を阻止しようとしたオルソラはビアージオへ立ち向かったが、十字架の術式による攻撃を受けて圧倒された。

天使の杖を弾き飛ばされ、肩や背中へ強烈な打撃を受けて倒れた。それでも立ち上がろうとしたが、ビアージオはさらに重量を操る術式で追い詰め、オルソラを戦闘不能に追い込んだ。

アニェーゼの決断

ビアージオは計画開始を宣言し、アニェーゼへ刻限のロザリオへの参加を命じた。アニェーゼは迷いながらも従おうとしたが、なおも自分を守ろうとするオルソラの姿を目にした。

オルソラは、自分の命よりもアニェーゼや多くの人々が傷つくことを許せないと訴え続けた。その言葉と行動を見たアニェーゼは、ついにビアージオへ従うことを拒んだ。

アニェーゼの反抗

ビアージオがオルソラへ致命的な攻撃を放とうとした瞬間、アニェーゼは落ちていた天使の杖を拾い、その攻撃を受け止めた。

さらに天使の杖を構え、自分がまだルチア達や他のシスター達を守りたいと思っていること、ビアージオの命令に従わされている仲間達のために怒りを覚えていることを告白した。

その態度に激怒したビアージオは、重量を押し付ける術式をアニェーゼへ向けた。

重量攻撃の正体

攻撃を受けながらも、アニェーゼは術式の正体を見抜いた。

それは神の子の十字架をシモンが代わりに運んだ伝承を利用した術式であり、女王艦隊全体の装備品の重量を肩代わりさせて対象へ押し付けるものであった。

アニェーゼはその分析を口にしながら抵抗を続けたが、重量攻撃によって徐々に追い詰められていった。

上条当麻の再登場

ビアージオが決定打を放とうとしたその時、巨大な扉が破壊され、上条当麻が部屋へ突入した。彼は右手で重量攻撃を打ち消しながら現れ、生存していたことを示した。

驚くビアージオは再び同じ攻撃を放ったが、上条は右手で容易く打ち消し、そのまま一気に間合いを詰めた。

ビアージオへの一撃

上条はビアージオの懐へ飛び込み、反撃の隙を与えないまま拳を振り抜いた。

その拳はビアージオの顔面へ直撃し、大きな衝撃音を響かせた。

ビアージオとの決着

ビアージオ撃破後の会話

上条当麻は気絶したビアージオを確認し、アニェーゼがオルソラを守ったことへ感謝を伝えた。しかしアニェーゼは素直に応じられず、顔を背けて黙り込んだ。

その後、上条はアドリア海の女王と刻限のロザリオを完全に破壊する方法を尋ねた。アニェーゼは、自分たちのいる四角錐の部屋だけは代替不能な施設であり、ここを破壊すればアドリア海の女王は二度と修復できないと説明した。

アニェーゼの異変

上条たちが脱出方法を相談していた最中、突然アニェーゼの膝が崩れ落ちた。彼女は激しい苦痛に襲われ、床へ倒れて絶叫した。

異変の原因を探る中で、気絶していたはずのビアージオが再び動き出していることが判明した。彼は十字架を握り潰しながら、刻限のロザリオは未完成だが、その力だけは既に発動可能であると語った。

自爆計画の発動

ビアージオは、アドリア海の女王が敵に奪われた場合に備えた最後の手段として、自爆機構が存在することを明かした。

四角錐の部屋では巨大な魔術装置が作動を始め、天井には光の天蓋が形成された。オルソラは、この大規模術式が暴発すればヴェネツィアや周辺都市まで巻き込む大災害になると警告した。

上条もまた、爆発だけでなく蒸気や暴風による二次被害まで想像し、その危険性を理解した。

上条の決断

アニェーゼの苦痛が続く中、上条はオルソラへアニェーゼを連れて脱出するよう命じた。そして天草式や他の者たちも避難させるよう頼み、自分はビアージオを止めると宣言した。

オルソラは強く反対したが、時間がないことを悟り、アニェーゼを抱えて部屋を後にした。

ビアージオの執着

二人きりになった部屋で、ビアージオは自分が失敗すれば全てを失う立場であることを吐露した。そして、自分の破滅を受け入れる代わりに敵もろとも全てを巻き込むことを選んだ。

上条は、その身勝手な考えによって多くの人々が犠牲になることへ怒りを露わにしたが、ビアージオは上条自身をローマ正教の脅威と見なし、最期の貢献としてここで葬ると宣言した。

激突する二人

上条とビアージオは同時に駆け出し、至近距離で激突した。

ビアージオは十字架の膨張や重量操作による術式を連続で放ち、上条へ強烈な攻撃を浴びせた。上条は吹き飛ばされながらも立ち上がり続け、アニェーゼを見捨てるという考えを決して受け入れなかった。

反撃の一手

再び接近戦となった際、ビアージオは十字架による攻撃を放とうとした。

しかし上条は、幻想殺しを持たない左拳で十字架をわずかに弾き、その向きを狂わせた。その結果、膨張した十字架はビアージオ自身の顎を下から打ち上げる形となり、司教は大きく体勢を崩した。

決着の拳

生まれた隙を逃さず、上条はさらに踏み込み、今度は右拳へ全力を込めた。

放たれた一撃はビアージオの胸元に直撃し、首から下げていた四本のネックレスと無数の十字架をまとめて破壊した。司教は力を失って床へ倒れ伏し、上条はたとえ二〇億の信徒と一一三ヶ国を相手にしても、アニェーゼたちを守るために戦い続けると告げた。

アドリア海の女王の崩壊

ビアージオの十字架が破壊されたことで、作動していた巨大術式は停止した。天井を覆っていた光の天蓋は消え去り、部屋には静寂が戻った。

同時に、女王艦隊の核を失ったアドリア海の女王は崩壊を始めた。大爆発は阻止されたものの、四角錐の部屋と旗艦は砕け散り、上条は再びアドリア海へと落下していった。

終章 学園都市への帰還 L’inizio_Nuovo…….

上条の帰国命令

アドリア海での戦いを終えた上条当麻は、イタリアの病院で治療を受けながら運ばれていた。インデックスとの軽口を交わしている最中、医師から電話を渡される。

電話の相手は学園都市のカエル顔の医者であり、能力者の身体を国外で調べることは問題があるとして、すぐに学園都市へ帰還するよう命じた。学園都市製の超音速旅客機が用意されていると聞かされた上条は驚愕したが、帰国は避けられない状況だった。

御坂美琴との約束を思い出す

医者はさらに、見舞いに来ていた御坂美琴からの伝言を伝えた。

その内容を聞いた上条は、大覇星祭での勝負に敗れた際の罰ゲームを完全に忘れていたことを思い出した。帰国後に待つ状況を想像し、上条は病院内で激しく取り乱した。

それでも医者は、お帰りなさいと静かに告げた。

神裂と土御門の会話

ロンドンのイギリス清教の寮では、神裂火織が土御門元春から今回の事件について報告を受けていた。

神裂はオルソラや上条がイタリアへ向かった経緯について疑問を呈したが、土御門は話題を変え、上条が天草式を救ったことへの感謝について語った。

その流れから、神裂が上条へどのように恩返しをするべきかという話題になり、土御門は堕天使メイド姿になるべきだと冗談交じりに勧めた。神裂は激しく動揺しながらも電話を切った。

神裂の混乱

電話を切った後も神裂の混乱は収まらなかった。

彼女は熱帯魚の水槽を前に、堕天使とは何かを真剣に考え始め、頭の上に皿を乗せながら仕草や話し方まで想像していた。

その最中に玄関のベルが鳴り、神裂は慌てて我に返った。

オルソラとアニェーゼの帰還

来訪者を迎えに行った神裂は、寮へ戻ってきたオルソラ=アクィナスと再会した。

大量の荷物を抱えたオルソラの背後には、修道服を掴みながら身を寄せるアニェーゼ=サンクティスの姿があった。

さらにオルソラは、今後もっと多くの仲間たちがやって来ると語り、寮が賑やかになることを告げた。

バチカンでの報告

一方、バチカンの聖ピエトロ大聖堂では、アドリア海の女王の破壊とビアージオの失敗について話し合われていた。

若い女性は計画の失敗や標的の行方不明に強い不満を示したが、教皇は計画自体が時期尚早であり、介入がなくとも成功しなかっただろうと冷静に評価した。

二人の会話から、女性が教皇以上の影響力を持つ立場にあることが示された。

神の右席の影響力

教皇は女性の持つ力に警戒を示したが、女性は意に介さなかった。

教皇が神の右席の名を口にすると、女性はその立場を認めながらも、自分の決定に否定は存在しないと断言した。

教皇は不満を抱きながらも、その意向を無視できなかった。

上条当麻暗殺計画の始動

女性は教皇へ一枚の書類を渡し、署名を命じた。

教皇は上条当麻が単に十字教を知らないだけであり、救済の可能性もあるとして消極的な姿勢を見せたが、女性は一切認めなかった。

最終的に教皇は書類を受け取り、自室へ戻った。

その書類には、上条当麻を速やかに調査し、主の敵と認定された場合は確実に殺害するよう命じる内容が記されていた。それはローマ正教が総力を挙げ、神の右席まで動員して上条を暗殺するための申請書類であった。

そして、その命令は五日も待たず実行されることとなった。

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