とある魔術の禁書目録(11)レビュー
【とある魔術の禁書目録】あらすじ・ネタバレ・まとめ
とある魔術の禁書目録(13)レビュー
物語の概要
■ 作品概要
『とある魔術の禁書目録(12)』は、最先端の科学が息づく「学園都市」を舞台に、超能力を持つ学生たちと宗教的な異能を操る魔術師たちの対立を描いた学園アクションファンタジー小説である。
本作では、これまでの魔術サイドとの激しい攻防から一転し、学園都市の裏に潜む「科学サイド」の闇と狂気が本格的に動き出す。九月三十日の学園都市を舞台に、最強の超能力者である一方通行(アクセラレータ)が、自身の運命を大きく狂わせた狂気の科学者・木原数多や、都市の暗部組織「猟犬部隊(ハウンドドッグ)」と激突する。日常の裏で同時多発的に進行する陰謀と、それに抗う能力者たちの死闘が圧倒的なスケールで描かれる、シリーズの大きな転換点となる一冊である。
■ 主要キャラクター
- 上条当麻: 学園都市の高校生。あらゆる異能を打ち消す「幻想殺し(イマジンブレイカー)」を右手に宿す。本作では、突然走り去ってしまったインデックスを捜して学園都市の地下街を奔走することになる。
- インデックス: イギリス清教に所属する、10万3000冊の魔道書を脳内に記憶した銀髪の修道女。本作では、偶然出会った白髪の人物(一方通行)から借りたポケットティッシュを返すために上条の制止を振り切って走り去り、事件の渦中へと近づいていく。
- 一方通行(アクセラレータ): 学園都市第1位の超能力者。かつて凄惨な実験で多くの「妹達」を殺害した過去を持つ。本作では、自らの命を救ってくれた少女・打ち止め(ラストオーダー)を二度と闇の世界へ戻すまいと誓い、満身創痍になりながらもかつての師である木原数多と過酷な死闘を繰り広げる。
- 打ち止め(ラストオーダー): 御坂美琴のクローンである「妹達(シスターズ)」の欠陥電気(ラジオノイズ)の上位個体であり、司令塔にあたる少女。猟犬部隊を率いる木原数多によって誘拐の標的となり、傷つきながらも一方通行によって守られる。
- 木原数多: 学園都市の暗部組織「猟犬部隊(ハウンドドッグ)」を率いる狂気の科学者。一方通行の能力開発にかかわった過去を持ち、彼の「反射」の弱点を完璧に突く戦術で追い詰める。打ち止めの確保を狙い、残虐非道な手段で迫る本作の冷酷な強敵である。
■ あらすじ
9月30日、衣替えを迎えた学園都市で、上条当麻は御坂美琴の罰ゲームに付き合わされ奔走する。
同じ頃、退院した一方通行は打ち止めと共に黄泉川愛穂のもとへ身を寄せた。
しかし、打ち止めが迷子になったことで事態は急転していく。
彼女を探す一方通行は、かつての研究者・木原数多率いる猟犬部隊に強襲される。
木原の狙いは打ち止めであり、能力の弱点を突かれた一方通行は倒れるが、最後の力で彼女を逃がすことに成功。
逃げ延びた打ち止めは上条と遭遇し、彼に一方通行の救出を懇願した。
時を同じくして、ローマ正教「神の右席」の前方のヴェントが学園都市へ侵入。
彼女の不可解な力により警備員たちは次々と昏倒し、都市の治安維持機能は麻痺状態となる。
これに対し統括理事長アレイスターは、反撃としてヒューズ=カザキリの投入を決断し、木原に打ち止めを確保させる。
交わるはずのなかった上条と一方通行の道が交差し、学園都市を揺るがす大きな事件が幕を開ける。
書籍情報
とある魔術の禁書目録 12
(A Certain Magical Index)
著者:鎌池 和馬 氏
イラスト:はいむらきよたか 氏
出版社:株式会社KADOKAWA(電撃文庫)
発売日:2007年1月10日
ISBN:9784048666336
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あらすじ・内容
罰ゲームをめぐる、科学と魔術の学園コメディ編がスタート!?
冬服への衣替えの季節がやってきた学園都市。エリートお嬢様学校に通う御坂美琴は、コンサートホール前の広場にいた。待ち合わせである。 だが、罰ゲームを受けるはずの “あの少年” は姿を見せず……。上条当麻と御坂美琴が交差する時、学園(ラブ)コメディは始まる!?
感想
前半で描かれる上条当麻と御坂美琴の罰ゲームを巡る掛け合いは、どこか微笑ましく、賑やかな学園コメディとしての楽しさに満ちている。また、一方通行が打ち止めと共に新しい居場所へ引っ越し、迷子になった彼女を不器用ながらも必死に捜す姿には、彼らなりの平穏でささやかな幸せが感じられて心が温まった。しかし、そのような平和な時間が続いたからこそ、終盤に向けて一気に加速するシリアスな展開の落差には強い衝撃を禁じ得ない。
特に印象深いのは、やはり狂気の科学者である木原数多の襲撃シーンだ。アニメを視聴した際にも、この木原の圧倒的な存在感と容赦のない暴力描写が強く記憶に焼き付いていたが、原作小説で読むとその絶望感はさらに際立っている。最強を誇るはずの一方通行の「反射」が一切通じず、弱点を完璧に突かれてダウンさせられる展開には、読んでいて「これは本当にピンチではないか」と息を呑んだ。無敵の盾を破られた一方通行が、それでも最後の力を振り絞って打ち止めを逃がす執念の描写には、彼の人間的な成長と強い覚悟が痛烈に伝わってくる。
そこへ偶然インデックスが現れるという急転直下の状況や、逃げ延びた打ち止めが上条に救出を懇願する流れは、張り詰めた緊張感をさらに高めていく。前方のヴェントの不可解な力によって警備員たちが次々と昏倒し、統括理事長が反撃のためにヒューズ=カザキリの投入を決断する中、物語のスケールは一気に国家や世界の存亡を懸けたレベルへと膨れ上がっていく。
本作は、爽快な日常パートの裏で、科学サイドの暗部と魔術サイドの脅威が同時多発的に押し寄せる多角的な構成が絶妙である。登場人物たちの複雑な人間関係や守りたいもののために戦う姿勢が泥臭く描かれており、一度ページをめくれば一気読みしてしまうほどの吸引力がある。交差した上条と一方通行の運命がここからどう絡み合い、この破滅的な状況をどう切り抜けていくのか、読後の興奮が冷めやらないまま次巻への期待が大きく膨らむ一冊である。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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とある魔術の禁書目録(11)レビュー
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考察・解説
白井黒子の嫉妬
『とある魔術の禁書目録 12』における白井黒子の嫉妬について、早朝の美琴の寝言に対する動揺、上条の愛玩奴隷宣言に対する複雑な感情、ツーショット撮影現場への乱入とドロップキック、そしてペア契約への不満という観点から解説する。
1. 美琴の幸せそうな寝言に対する動揺
常盤台中学の女子寮の早朝、白井黒子は一人だけ眠れずにベッドの上を転がっていた。
- その隣で、彼女がお姉様と慕う御坂美琴が、罰ゲームなんだから、何でも言う事聞かなくちゃいけないんだからねーと幸せそうな笑顔で寝言を漏らしたためである。
- 白井は自分と罰ゲームを賭けて争った覚えはないため、相手が誰なのか気になって激しく動揺した。
- 美琴が枕に頬ずりする姿を見てさらに嫉妬とモヤモヤを募らせていたのである。
2. 愛玩奴隷宣言に対する羨望と嫉妬
放課後、美琴と上条当麻が待ち合わせをしている場に白井が駆けつけた際、上条は美琴の挑発に乗って愛玩奴隷として何なりとお申し付けるがよいと公衆の面前で跪き、美琴に下敷きで風を送っていた。
- この光景を目の当たりにした白井は、自分が担うべき潔い直球従属姿勢を上条に奪われたと感じた。
- そのため、上条に対して羨望と嫉妬、さらにはわずかな尊敬の念まで入り混じった複雑な感情を抱き、わなわなと震えることになったのである。
3. ツーショット撮影現場への乱入とドロップキック
その後、美琴は携帯電話のペア契約を結ぶため、上条を地下街のサービス店へ連れて行く。
- 契約にはツーショット写真が必要であり、二人は携帯電話のカメラで撮影を試みていた。
- うまく撮れずヤケになった上条が美琴の肩に腕を回し、美琴も上条の腰に腕を回して密着した瞬間、空間移動(テレポート)で現れた白井が嫉妬と怒りから上条の後頭部に強烈なドロップキックを叩き込んだのである。
まとめ
ドロップキックの衝撃により、撮影された写真は上条と美琴、そして白井のパンツが写り込む失敗作となった。白井は、美琴が殿方である上条と親密な様子でいることに強い不満を抱き、自分が美琴とペアになればよいと主張した。しかし、ペア契約の条件が男女のペア限定であったため、白井の提案は成立しなかった。これらのエピソードからは、白井がお姉様に対して抱く強烈な独占欲と嫉妬深さが明確に描かれているのである。
常盤台中学の寮生活
『とある魔術の禁書目録』シリーズにおける常盤台中学の寮生活について、寮の立地と雰囲気、厳格な生活リズムと規則、食事環境とメイド見習いの存在、そして部屋の様子と恐れられる寮監の存在という観点から解説する。
1. 寮の立地と雰囲気
常盤台中学の学生寮には、五大お嬢様学校が集まる学舎の園の内部にあるものと、外部にあるものの二種類が存在する。
- 御坂美琴と白井黒子が暮らしているのは学外の学生寮である。
- 石造りの古い洋館のような荘厳な雰囲気を漂わせている。
2. 厳格な生活リズムと規則
お嬢様学校らしく、寮での生活は分単位で規則正しく管理されている。
- 朝は午前7時に起床し、30分以内に身だしなみを整え、7時30分には食堂に集合して点呼をとる。
- その後、午前8時までに朝食を済ませるというスケジュールになっており、驚くべきことに夏休みであってもこの生活リズムは変わらないのである。
- また、消灯や就寝に関しても厳しい規則が設けられており、早朝5時台などの時間帯は寮内が静まり返っている。
3. 食事環境とメイド見習いの存在
食事は非常にだだっ広く荘厳な食堂でとる。
- この学生寮では、給仕や食器の片付けなどを他校の家政学校から実習として派遣されてきたメイド見習いの生徒たちが担当している。
- 土御門元春の義妹である土御門舞夏もその一人として働いており、美琴たちと軽口を交わすなど、寮生との交流も見られるのである。
まとめ
美琴と黒子は同じ部屋のルームメイトであり、二人のベッドの間隔は50センチもないほど近距離に置かれている。外部の人間は寮内に入ることができないため、外部からの荷物は寮生を通じて受け渡す必要がある。しかし、運悪く厳しい寮監に捕まると厄介なことになるため、美琴は外部の友人に荷物運びを頼むことを極力避けている。また、部屋に大型の家電(冷蔵庫や電子レンジなど)を隠し持つことも、寮監に発覚するリスクがあるため基本的には困難なのである。
一方通行の更生
『とある魔術の禁書目録』シリーズにおける一方通行(アクセラレータ)の更生について、最強からの転落と心境の変化、打ち止め(ラストオーダー)との出会いと過去への気づき、命を懸けた救出劇と悪としての覚悟、そして負債の返済と最強を名乗り続ける決意という観点から解説する。
1. 最強からの転落と心境の変化
第5巻において、上条当麻に敗北し学園都市最強の座から引きずり下ろされた一方通行は、その噂を聞きつけた無能力者の不良たちから連日襲撃を受けるようになる。
- しかし彼は自ら積極的に反撃することはなく、ただ能力で攻撃を反射するだけの虚無的な日々を送っていた。
- 明確なゴールを失った彼は、自分の力では誰も救えず、ただ壊すことしかできないという絶望と諦念の中にいたのである。
2. 打ち止めとの出会いと過去への気づき
そんな中、彼は妹達(シスターズ)の最終ロットである打ち止めと出会う。
- 彼女から一人の命にも価値があり、もう誰も死なせないという強い宣言を聞いた一方通行は、かつての実験を思い返した。
- そして、自分が実験中に感情のない妹達にわざわざ話しかけていたのは、単なる八つ当たりではなく、誰かに自分を止めてほしかったからなのだと、自身の本当の願いに気づいたのである。
3. 命を懸けた救出劇と悪党としての覚悟
打ち止めが研究者である天井亜雄によって拉致され、暴走ウィルスを打ち込まれた際、一方通行は彼女を救うために自らの存在意義を捨てて立ち上がった。
- 彼は能力を応用して打ち止めの脳内データを書き換えるが、その最中に天井の銃撃を受け、脳に致命的なダメージを負ってしまう。
- それでも彼は手を離さず、自分がどれほどのクズであっても、この少女を見殺しにしていい理由にはならないと叫んだ。
- 最悪の悪党である己を自覚しながらも、一人の少女を救い出したのである。
まとめ
第8巻で退院した彼は、能力に時間制限を抱える身となりながらも、黄泉川愛穂の家に身を寄せる。彼は自らが犯した一万人以上の殺戮という罪を一億の負債と感じていたが、黄泉川からどれほど無様でも一円ずつ返済を続けるしかないと諭された。その後、妹達の計画を再開させようとする結標淡希の前に立ちはだかり、彼女の野望を完全に粉砕する。かつての無敵の力を失ったことを自覚しつつも、彼はあのガキの前じゃ最強を名乗り続けると決意し、打ち止めを守るための最悪の悪として戦い続ける道を選んだのである。
上条当麻の罰ゲーム
『とある魔術の禁書目録』シリーズにおける上条当麻の罰ゲームについて、大覇星祭での賭けと敗北、罰ゲームの延期と愛玩奴隷宣言、ペア契約への付き添い、そして期待のすれ違いと結末という観点から解説する。
1. 大覇星祭での賭けと敗北
上条当麻と御坂美琴の間で交わされた罰ゲームとは、学園都市の大規模体育祭である大覇星祭における学校の総合順位を巡る賭けのことである。
- 順位の低かった方が相手の言うことを何でも聞くという取り決めであった。
- しかし、上条の高校は初日から魔術師絡みの事件で怪我人が続出し、名門である常盤台中学に敗北してしまう。
- これにより、上条は美琴からの罰ゲームを受けることになったのである。
2. 罰ゲームの延期と愛玩奴隷宣言
その後、上条がイタリアでの事件(アドリア海の女王)に巻き込まれて不在だったため、罰ゲームは9月30日の衣替えの日まで持ち越された。
- ようやく待ち合わせ場所にやってきた上条に対し、美琴が凡人には馬鹿にできない事を頼むつもりはないと挑発的な態度をとった。
- そのため、上条はヤケになり、公衆の面前で愛玩奴隷上条当麻に何なりとお申し付けるがよい!!と土下座して下敷きで風を送るという奇行に走ったのである。
3. ペア契約への付き添いとツーショット撮影
美琴が課した実質的な最初の罰ゲームは、携帯電話のペア契約に付き合わせることであった。
- 彼女の真の目的は、契約特典であるゲコ太とピョン子の限定ストラップを手に入れることであった。
- この契約は男女のペアであることが条件であり、上条は書類作成や、ペアであることを証明するためのツーショット写真の撮影などに付き合わされることになったのである。
まとめ
上条は、美琴の目的がストラップの入手だけで終わったと考えていた。しかし美琴は、罰ゲームとして上条が一日自分専用機として一生懸命付き合ってくれることを期待していたため、彼が他の少女(御坂妹や打ち止め)に構うのを見て嫉妬と怒りを爆発させる。上条が素直に目的はゲコ太だけだろと指摘すると、美琴は強がりからゲコ太達が手に入ればもう用済みよ!と言い放ち、雷撃を浴びせて走り去るという、すれ違いの結末を迎えたのである。
打ち止めの逃走劇
『とある魔術の禁書目録 12』における打ち止め(ラストオーダー)の逃走劇について、前半の御坂妹との無邪気な追いかけっこから、後半の猟犬部隊(ハウンドドッグ)による捕獲と命がけの逃亡、そして上条当麻への救援要請という観点から解説する。
1. 御坂妹からのゴーグル強奪と追いかけっこ
黄泉川愛穂のマンションを抜け出して地下街を歩いていた打ち止めは、偶然遭遇した御坂妹が身につけている電子ゴーグルを羨ましがった。
- 彼女は御坂妹にお辞儀をさせた隙を突いてゴーグルを強奪し、そのまま勝利の余韻に浸りながら猛ダッシュで逃走した。
- これに対し、御坂妹は上位個体との演習と称して学生鞄からサブマシンガンとゴム弾を取り出し、本気で追跡を開始する。
- 二人はミサカネットワーク上で挑発合戦を繰り広げながら地下街を走り回った。
- 途中で上条当麻の腕に抱きつくなどして彼を巻き込みながら、再び人混みへと消えていったのである。
2. 猟犬部隊による捕獲
しかし、この遊び半分の逃走劇は、かつて一方通行の能力開発に関わった研究者である木原数多率いる猟犬部隊の登場によって暗転する。
- 彼らの真の目的は一方通行ではなく打ち止めの生け捕りであった。
- 意識を失い傷だらけになった彼女は、黒ずくめの男たちによってビニール袋のように乱暴に捕獲されてしまうのである。
3. 一方通行による決死の逃がし
打ち止めが再び血と闇の世界へ引きずり戻されることを防ぐため、木原に打ちのめされ満身創痍となっていた一方通行は最後の力を振り絞った。
- 彼は木原へ直接攻撃を仕掛けるのではなく、風速120メートルに達する暴風を発生させた。
- その烈風が打ち止めの小さな体を黒ずくめの男の腕からもぎ取り、ビルをいくつも飛び越えて遠方の風景の陰へと吹き飛ばす。
- そうすることで、彼女を強制的に敵の手から逃がすことに成功したのである。
まとめ
空の彼方へ吹き飛ばされた打ち止めだが、木原は着水のショックで目を覚ますと予測し、部下の一班にクッションになりそうな場所の周辺を調べさせ、彼女の追跡を命じた。冷たい雨が降る夜の街を逃げ惑う打ち止めは、パニック状態の中で偶然にも上条当麻のお腹にぶつかる。ずぶ濡れになりながら上条のシャツにすがりついた彼女は、真っ赤に充血した瞳から涙を流し、お願いだからあの人を助けてと、自らの身の安全よりも自分を逃がしてくれた一方通行の救出を必死に懇願したのである。
前方のヴェント襲来
『とある魔術の禁書目録 12』における前方のヴェント襲来について、ヴェントの異様な容姿と正体、警備員(アンチスキル)を無力化する圧倒的な被害、アレイスターへの宣戦布告、そして学園都市側の反撃計画という観点から解説する。
1. ヴェントの異様な容姿と正体
黄色を基調とした15世紀のフランス市民のような衣装をまとい、耳や鼻、唇、まぶたなど顔中に無数のピアスを施した女性である。
- 舌先のピアスからは、十字架のアクセサリーが繋がれた細い鎖が腰の辺りまで伸びている。
- 彼女の正体は、ローマ正教の最深部に位置する組織である神の右席の一員である。
- 自らを二〇億の中の最終兵器、前方のヴェントと名乗っている。
2. 警備員(アンチスキル)を無力化する圧倒的な被害
冷たい雨が降る夜の学園都市で、彼女の襲来により、治安を司る警備員たちが次々と意識を失って倒れるという異常事態が発生する。
- 抵抗の痕跡や出血、悲鳴すらないまま、ほんの数十分で警備員の七割弱が戦闘不能に追い込まれた。
- さらにヴェントは、すでに学園都市の統括理事会のメンバーを3人ほど潰してきたと豪語し、街の防衛網に甚大な打撃を与えたのである。
3. アレイスターへの直接通信と宣戦布告
ヴェントは倒れた警備員の無線機を拾い上げ、学園都市統括理事長であるアレイスターへ通信を繋いだ。
- 彼女はアレイスターが少しも焦りを見せない態度に苛立ちつつも、自らの名を明かした。
- この一晩でアンタも、学園都市も、幻想殺しも、禁書目録も、その全てを潰してあげると強烈な宣戦布告を行ったのである。
まとめ
学園都市が危機的状況に陥る中でも、窓のないビルにいるアレイスターは動揺するどころか最高に面白いと不敵な笑みを浮かべた。彼は予定より早い段階での反撃を決断し、暗部組織である猟犬部隊(ハウンドドッグ)の木原数多に指示を下す。その計画は、虚数学区・五行機関とAIM拡散力場を利用したヒューズ=カザキリを投入して敵を潰すこと、そしてそのために逃走中の打ち止め(検体番号二〇〇〇一号)を早急に捕獲することであった。
とある魔術の禁書目録(11)レビュー
【とある魔術の禁書目録】あらすじ・ネタバレ・まとめ
とある魔術の禁書目録(13)レビュー
登場キャラクター
学園都市
上条当麻
平凡な高校生でありながら、右手にあらゆる異能の力を打ち消す幻想殺しを持つ少年である。記憶喪失であることを周囲に隠しつつ、インデックスを自室に居候させている。困っている人を見過ごせない性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
学園都市の高校生。無能力者。
・物語内での具体的な行動や成果
インデックスを保護し、ステイルや神裂といった魔術師から彼女を救出した。大覇星祭ではオリアナと対峙し、魔術による学園都市の支配を阻止した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
魔術と科学の双方に関わる存在として、各勢力から上条勢力と見なされ危険視されている。
土御門元春
上条当麻のクラスメイトであり、金髪にサングラスという目立つ外見の少年である。義理の妹である土御門舞夏を溺愛している。
・所属組織、地位や役職
学園都市の高校生。イギリス清教の魔術師。多重スパイ。
・物語内での具体的な行動や成果
大覇星祭において、ステイルや上条とともにオリアナの追跡と迎撃術式の無効化に尽力した。自身の肉体が魔術使用による拒絶反応で傷つくことも厭わず、探索の魔術を使用した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
魔術と科学の両方に精通し、アレイスターとも対等に応対する立場にある。
青髪ピアス
上条当麻のクラスメイトであり、独特な発言が目立つ少年である。
・所属組織、地位や役職
学園都市の高校生。
・物語内での具体的な行動や成果
大覇星祭において上条と同じ陣営で競技に参加した。夏休みの宿題を終わらせ、上条をからかうような言動を見せた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
吹寄制理
上条当麻のクラスメイトであり、責任感が強く真面目な少女である。
・所属組織、地位や役職
学園都市の高校生。大覇星祭の運営委員。
・物語内での具体的な行動や成果
大覇星祭において、クラスの競技を指揮し勝利へ導いた。オリアナの仕掛けた魔術の罠に巻き込まれて倒れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
月詠小萌
上条当麻たちの担任教師であり、小学生にしか見えない外見の女性である。生徒思いの性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
学園都市の高校教師。
・物語内での具体的な行動や成果
重傷を負った姫神秋沙を助けるため、ステイルの指示に従って魔術的な治療の手伝いを行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
黄泉川愛穂
緑のジャージを着用する体育教師であり、大人の女性である。面倒見が良く、一方通行や打ち止めを自宅に居候させている。
・所属組織、地位や役職
学園都市の高校教師。警備員。
・物語内での具体的な行動や成果
大覇星祭の警備を担当し、倒れたインデックスを保護した。打ち止めの捜索にあたっては、警備員の機材を用いて協力した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
御坂美琴
強力な電撃を操る少女である。上条当麻をライバル視しつつも好意を抱いている。
・所属組織、地位や役職
常盤台中学の生徒。超能力者。
・物語内での具体的な行動や成果
大覇星祭において上条と罰ゲームをかけた勝負を行った。上条とともにオリアナの罠の解除に関わった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
学園都市に7人しかいない超能力者の1人として広く知られている。
白井黒子
御坂美琴の後輩でありルームメイトである。美琴を慕い、強い執着を見せる。
・所属組織、地位や役職
常盤台中学の生徒。風紀委員。大能力者。
・物語内での具体的な行動や成果
結標淡希との戦闘で重傷を負った。大覇星祭期間中は車椅子に乗りながらも風紀委員として活動した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
初春飾利
白井黒子の同僚であり、頭に造花を乗せた少女である。お嬢様学校に憧れを抱いている。
・所属組織、地位や役職
風紀委員。
・物語内での具体的な行動や成果
車椅子に乗る白井黒子をサポートし、風紀委員の仕事を補佐した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
一方通行
学園都市最強の能力者であり、全てのベクトルを操る少年である。過去の過ちを悔い、打ち止めを守ることに固執している。
・所属組織、地位や役職
超能力者。
・物語内での具体的な行動や成果
木原数多率いる猟犬部隊から打ち止めを救うため、満身創痍になりながらも戦った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
頭部に受けた銃創の後遺症により、能力の使用には電極の補助と時間制限が必要となった。
打ち止め
妹達の最終ロットとして製造された幼い少女である。一方通行に懐き、彼を気遣っている。
・所属組織、地位や役職
クローン人間。ミサカネットワークの管理者。
・物語内での具体的な行動や成果
木原数多に捕らえられたが、一方通行の力で逃がされた。上条当麻と遭遇し、一方通行の救助を懇願した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
御坂妹
御坂美琴の体細胞クローンである。感情の起伏が乏しいが、人間らしい一面も持つ。
・所属組織、地位や役職
クローン人間。
・物語内での具体的な行動や成果
ミサカネットワークを通じて情報を収集し、上条当麻へ助けを求めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ミサカ一〇〇三九号
妹達の一人である。
・所属組織、地位や役職
クローン人間。
・物語内での具体的な行動や成果
病院でカエル顔の医者と外出着のサイズについて会話した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ミサカ一三五七七号
妹達の一人である。
・所属組織、地位や役職
クローン人間。
・物語内での具体的な行動や成果
病院での会話に参加し、全個体が同一の遺伝子から製造されたことを補足した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
芳川桔梗
一方通行や打ち止めの保護者的な役割を担う女性研究者である。
・所属組織、地位や役職
元研究員。
・物語内での具体的な行動や成果
天井亜雄が打ち止めに仕込んだウイルスコードの解析と除去を試みた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
カエル顔の医者
カエルに似た顔立ちの医師である。高い医療技術を持つ。
・所属組織、地位や役職
学園都市の医師。
・物語内での具体的な行動や成果
上条当麻や妹達など、負傷したキャラクターたちの治療を一手に引き受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
土御門舞夏
土御門元春の義理の妹である。
・所属組織、地位や役職
メイド見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
大覇星祭でメイド弁当を売り歩いた。兄のために手作りのシチューを大量に差し入れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
木原数多
かつて一方通行の能力開発に関わった研究者である。冷酷な性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
猟犬部隊のリーダー。
・物語内での具体的な行動や成果
アレイスターの命令で打ち止めを捕獲するため、一方通行を徹底的に打ちのめした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
風斬氷華
引っ込み思案で気弱な少女である。インデックスの初めての友達となる。
・所属組織、地位や役職
AIM拡散力場の集合体。
・物語内での具体的な行動や成果
地下街でゴーレムの襲撃に巻き込まれた。自らが人間ではない存在だと知り、絶望して逃走した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
学園都市の能力者が発するAIM拡散力場が生み出した物理現象の一つであると判明した。
アレイスター
窓のないビルに逆さまで浮かぶ学園都市の支配者である。冷徹に計画を進める。
・所属組織、地位や役職
学園都市統括理事長。
・物語内での具体的な行動や成果
ヴェントの襲撃に対し、ヒューズ=カザキリの投入と打ち止めの捕獲を木原数多に命じた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
妹達
御坂美琴の遺伝子から作られたクローン人間の集団である。ミサカネットワークと呼ばれる脳波リンクで意思を共有している。
・所属組織、地位や役職
クローン人間。
・物語内での具体的な行動や成果
一方通行の実験の標的として殺害され続けていた。事件解決後は世界各地の協力機関で治療を受けている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
猟犬部隊
木原数多が率いる暗部組織である。
・所属組織、地位や役職
学園都市の暗部組織。
・物語内での具体的な行動や成果
アレイスターの命令に基づき、打ち止めを捕獲するための作戦を実行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
警備員
学園都市の治安を維持する大人の部隊である。
・所属組織、地位や役職
治安維持機関。
・物語内での具体的な行動や成果
大覇星祭の警備にあたり、地下街でのテロリスト襲撃時には負傷しながらも民間人の避難を優先した。ヴェントの襲撃により多数が昏倒した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
風紀委員
学園都市の治安を維持する生徒の部隊である。
・所属組織、地位や役職
治安維持機関。
・物語内での具体的な行動や成果
大覇星祭の運営や警備をサポートした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
イギリス清教
インデックス
純白の修道服を着た銀髪の少女である。上条当麻に強い信頼を寄せており、食欲が極めて旺盛である。
・所属組織、地位や役職
イギリス清教第零聖堂区。禁書目録。
・物語内での具体的な行動や成果
一〇万三〇〇〇冊の魔道書の知識を用いて、敵の魔術を分析し上条たちを支援した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
脳内に魔道書を記憶しているため、常に様々な魔術師から狙われる立場にある。
ローラ=スチュアート
非常に長い金髪を持つ女性である。底知れぬ思惑を抱え、策謀を巡らせる。
・所属組織、地位や役職
イギリス清教第零聖堂区の最大主教。
・物語内での具体的な行動や成果
ステイルに学園都市での任務を命じ、天草式やオルソラをイギリス清教の傘下に取り込むよう誘導した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ステイル=マグヌス
赤髪で長身の魔術師である。インデックスを守るためなら手段を選ばない覚悟を持っている。
・所属組織、地位や役職
イギリス清教第零聖堂区の魔術師。
・物語内での具体的な行動や成果
炎の魔術を操り、上条と協力してオリアナやアウレオルスと戦った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
神裂火織
長刀を操る女性である。他者に迷惑をかけることを気にする性格である。
・所属組織、地位や役職
イギリス清教の魔術師。聖人。
・物語内での具体的な行動や成果
イギリス清教の任務で動きつつも、天草式の仲間を思い行動した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
世界に二〇人もいない聖人の一人である。
シェリー=クロムウェル
ゴシックロリータ風の衣装を着た魔術師である。科学と魔術を遠ざけようと考えている。
・所属組織、地位や役職
イギリス清教第零聖堂区の魔術師。
・物語内での具体的な行動や成果
ゴーレムを操り、科学と魔術の戦争の火種を作るために学園都市で破壊工作を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
オルソラ=アクィナス
黒い修道服を着た金髪の女性である。天然な一面があるが、信仰心は厚い。
・所属組織、地位や役職
元ローマ正教の修道女。
・物語内での具体的な行動や成果
魔道書の解読法を見つけたとされ、ローマ正教から命を狙われた。上条たちの助けにより救出された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アニェーゼ=サンクティス
厚底サンダルを履いた小柄な修道女である。自らを犠牲にして仲間を守ろうとする。
・所属組織、地位や役職
ローマ正教アニェーゼ部隊のリーダー。
・物語内での具体的な行動や成果
オルソラを暗殺しようとしたが上条たちに敗北した。その後、罰として労働施設に送られた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ルチア
背が高く、厳格な性格の修道女である。アニェーゼを慕い、彼女を助け出そうと奮闘する。
・所属組織、地位や役職
ローマ正教アニェーゼ部隊の修道女。
・物語内での具体的な行動や成果
女王艦隊から脱獄を試みるが捕縛され、上条たちによって救出された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アンジェレネ
小柄で気弱な修道女である。アニェーゼへの恩義から、彼女を助けるために行動する。
・所属組織、地位や役職
ローマ正教アニェーゼ部隊の修道女。
・物語内での具体的な行動や成果
ルチアとともに女王艦隊からの脱獄を図り、上条たちと協力してアニェーゼの救出に向かった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ロシア成教
サーシャ=クロイツェフ
小柄で無表情な戦闘修道女である。上司であるワシリーサの非常識な言動にいつも振り回されている。
・所属組織、地位や役職
ロシア成教の特殊部隊に所属。
・物語内での具体的な行動や成果
大天使をその身に宿したことによる身体の異変について調査していた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ワシリーサ
サーシャの直属の上司である。子供っぽくふざけた態度をとるが、実力は高い。
・所属組織、地位や役職
ロシア成教の特殊部隊に所属。
・物語内での具体的な行動や成果
サーシャに奇抜な衣装を着せようとするなど、彼女をからかう様子が描かれている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ローマ正教
前方のヴェント
顔中にピアスを開けた異様な容姿の女性である。学園都市とそれに連なる全てを破壊しようという強い敵意を持つ。
・所属組織、地位や役職
ローマ正教の一員。
・物語内での具体的な行動や成果
学園都市に侵入し、不可解な力で警備員の大部分を無力化してアレイスターに宣戦布告を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
とある魔術の禁書目録(11)レビュー
【とある魔術の禁書目録】あらすじ・ネタバレ・まとめ
とある魔術の禁書目録(13)レビュー
展開まとめ
序 章 白井黒子と枕とベッド Suffering_of_a_Negligee.
白井黒子の寝不足な朝
常盤台中学の女子寮がまだ静まり返る早朝、白井黒子だけは眠れずにベッドの上で何度も寝返りを打っていた。透明感のある寝間着姿のまま、彼女は隣のベッドで眠る御坂美琴へ視線を向けた。
御坂はぐっすりと眠っており、白井にとって特別な存在である彼女の寝顔は穏やかだった。
御坂美琴の幸せな寝言
眠っている御坂は、幸せそうな表情を浮かべながら、罰ゲームだから何でも言うことを聞かなければならないと寝言を口にした。
大覇星祭以降ずっと同じような様子を見せていることもあり、白井はその言葉の相手が誰なのか気になって仕方なかった。自分ではない誰かに向けられたものだと考えると、白井の不安と嫉妬はさらに膨らんでいった。
白井の妄想と焦燥
御坂は目を覚ますことなく、大きな枕を抱き寄せながら、まずは何をしてもらおうかと楽しそうに呟いた。
その姿を見た白井は、枕が誰かの代わりなのではないかと想像し、激しく動揺した。寝言の相手が誰なのか分からないまま、白井はベッドの上を転がり続けたが、御坂は幸せそうな表情のまま眠り続けていた。
寝不足の朝の始まり
時刻は午前五時二十五分になっていた。
御坂が安らかに眠り続ける一方で、白井は悶々とした思いを抱えたまま眠れずに過ごしていた。そして今日もまた、寝不足の朝を迎えることになったのである。
第一章午前中授業のひだまり Winter_Clothes.
午前中授業と上条のぼやき
九月三十日、学園都市では衣替えに伴い全学校が午前中授業となっていた。しかし一年生の上条当麻には新しい制服を受け取る必要がなく、普段通りの学校生活を送っていた。
休み時間、上条は廊下の窓から外を眺めながら退屈そうに過ごし、思わず出会いが欲しいと呟いた。その直後、背後にいた土御門元春と青髪ピアスから頭を挟み込むように殴られた。
肩揉み器を巡る議論
土御門と青髪ピアスは、通販雑誌に掲載されていた肩揉み器の効果について意見を戦わせていた。肩こりに悩む青髪ピアスは効果を信じていたが、土御門は宣伝を疑っていた。
意見を求められた上条は、肩こりの症状は人それぞれであり、誰にでも効くと宣伝する時点で怪しいと判断した。そして実際に肩こりに悩み、通販グッズ好きでもある吹寄制理に試してもらおうと提案した。
吹寄への誤解と制裁
三人は吹寄を呼び出したが、上条が一生のお願いだから揉ませてくれと叫んだため、吹寄は激怒した。
吹寄は土御門と青髪ピアスを正拳で吹き飛ばし、さらに上条にも頭突きを叩き込んだ。そこへ授業担当の月詠小萌が現れたが、教室内の惨状に驚き慌てふためいた。
上条が吹寄は気持ち良さそうなものを持っているのに揉ませてくれないと誤解を招く発言をしたことで、小萌までも倒れ込み、吹寄はさらに拳を握り締めて迫った。
妹達の退院準備
病院では妹達が退院後に着用する常盤台中学の冬服について話し合っていた。彼女達は全員同じ遺伝子から作られたため同じサイズだと考えていたが、一九〇九〇号だけは体型に変化が生じていた。
その事実を知った他の妹達は驚き、一九〇九〇号へ詰め寄った。カエル顔の医者は、同じ遺伝子でも生活習慣によって個性や体型の差が生まれると説明した。
その結果、他の妹達は一九〇九〇号の変化の理由を探ろうとし、一九〇九〇号は逃げ出そうとしたが追いかけられることになった。
一方通行の退院
同じ病院では、一方通行が打ち止めと共に退院の日を迎えていた。脳への後遺症は残っていたが、必要な処置は終わり日常生活へ戻ることになった。
打ち止めはスポーツバッグの上に乗って騒ぎ、一方通行はそれに振り回されながらも病院の外へ出た。芳川桔梗はそんな二人を見守りながらタクシーへ案内した。
新たな生活への移行
タクシーの中で芳川は、一方通行が学校を辞めたことで学生寮も失うことになり、新しい生活環境が必要だと説明した。
一方通行は絶対能力進化実験や研究施設との関わりを断ち切るため、これまでの環境を捨てたことを明かした。そして今後は研究者の管理下に置かれるのではないかと警戒した。
しかし芳川は、自分は管理者ではなく、これから会う相手も研究者ではないと告げた。
新たな保護者候補
打ち止めは、その相手が黄泉川ではないかと予想した。芳川はその答えを正解だと認め、これから黄泉川のもとへ向かうことを明かした。
一方通行は意外な答えに舌打ちしながらも、芳川の説明を聞いて警戒を緩めることはなかった。一方で打ち止めは無邪気なまま、一方通行へまとわりついていたのである。
九月三十日の放課後
午前中授業を終えた上条当麻は、部活動にも参加していないため寮へ向かっていた。しかし頭の中では、吹寄制理に頭突きを受けた原因について考え続けていた。様々な言い方を試しても結局殴られていたため、何が問題だったのか理解できずにいた。
秋の風が吹く学園都市の街並みを歩いていた上条だったが、その平穏は長く続かなかった。
御坂美琴との再会
上条の前に現れたのは、冬服姿の御坂美琴だった。美琴は大覇星祭での勝負の結果を持ち出し、上条に約束していた罰ゲームを実行すると告げた。
上条は忘れかけていたが、美琴は上条が病院やイタリアに行っていたことで実行を先延ばしにされていた不満も抱えていた。さらに凡人には大したことは頼まないと挑発的な言葉を重ねたため、上条の反発心に火が付いた。
愛玩奴隷宣言による騒動
挑発された上条は開き直り、自分を愛玩奴隷と称して何でも命じるよう宣言した。その発言に周囲の学生達は騒然となり、美琴も顔を真っ赤にして動揺した。
さらに上条は跪き、美琴を扇いで世話を始めたため、周囲の誤解はますます深まった。美琴は必死に止めようとしたが、上条は真面目な顔で続けた。
白井黒子の誤解
そこへ白井黒子が現れた。目の前で上条が美琴に従属しているように見えた黒子は大きな衝撃を受けた。
黒子は本来自分だけが担うべき立場を上条に奪われたと感じ、羨望や嫉妬、尊敬が入り混じった複雑な感情を抱いた。一方、美琴は二人の奇行に振り回されながら絶叫するしかなかった。
進路希望調査に悩む小萌先生
その頃、職員室では月詠小萌が進路希望調査票を前に頭を抱えていた。
土御門元春はメイドの国でクーデターを起こすと書き、青髪ピアスはモテたいと大きく記し、上条当麻は幸せになれれば何でもいいと書いていた。いずれも本人達は真剣だったため、小萌は余計に困惑していた。
黄泉川との喫煙談義
そこへ黄泉川愛穂が現れ、小萌と共に煙草を吸いながら雑談を交わした。
二人は煙草の値上がりや学園都市独特の税制度について語り合った。また黄泉川は、小萌の喫煙時の仕草が知人の神父に似てきたと指摘し、小萌を慌てさせた。
その後、黄泉川はこれから迎える予定の生徒達について話し、小萌を連れて職員室を後にした。
一方通行と小萌の初対面
高校の校門近くでは、一方通行と打ち止めが黄泉川や小萌と対面した。
小柄な小萌を見た一方通行は状況を理解できず、学園都市の特殊な研究成果ではないかとまで考えた。打ち止めも独自の推測を語り、小萌は困惑しながら否定した。
その様子を見た黄泉川や芳川桔梗は笑みを浮かべていた。
黄泉川の保護申し出
黄泉川は、一方通行と打ち止めが今後自分の家で暮らすことになると説明した。
一方通行は、自分を匿うことが学園都市の暗部を敵に回す危険な行為だと警告した。しかし黄泉川は、警備員としての立場からその程度の危険は承知の上だと答えた。
助けを必要とする子供から目を背けるつもりはないという黄泉川の言葉に、一方通行は反論しながらも内心では複雑な感情を抱いていた。
一方通行への評価
黄泉川は、一方通行は思ったより助けやすい人間だと語った。
一方通行自身は、自らが一万人以上を殺してきた事実を知っているため、その評価を理解できなかった。しかし黄泉川は、一方通行が自分達を守るために危険を確認し続けていることを見抜いていた。
その言葉に一方通行は不機嫌そうな表情を浮かべながらも、改めて黄泉川のような人間への対処の難しさを感じていたのである。
そうめん処分への帰宅
上条当麻は御坂美琴と別れ、自炊と着替えのため学生寮へ向かっていた。特に大量に余ったそうめんを消費する必要があり、その処分に頭を悩ませていた。
以前の特売で大量購入した上に、両親からも大量の乾麺が送られてきたため、上条は不幸な状況を嘆きながら帰路を急いでいた。
土御門舞夏の上機嫌な理由
寮の前で上条は土御門舞夏と出会った。普段以上に機嫌の良い舞夏は、メイド服の袖口であるカフスの出来栄えに満足していた。
舞夏は、目立つことを避けるメイドにとって袖口や襟元の細かな装飾が個性を表現する重要な部分だと説明した。さらに、そうめんの処分法を尋ねられた舞夏は、細かく刻んで春巻きの具に混ぜる方法を教え、そのまま上機嫌で立ち去った。
そうめんに飽きたインデックス
部屋へ戻った上条は、床で倒れていたインデックスに今日もそうめんだと告げた。
インデックスは勢いよく起き上がり、麺類ばかりの食生活への不満を爆発させた。しかし実際には毎回美味しく食べているため、上条は深刻には受け止めなかった。
上条は春巻き風そうめんを作る決意を固めたが、インデックスは普通の春巻きで良いと嘆いていた。
土御門元春からの誘い
そこへ土御門元春が訪ねてきた。上条はまた危険な事件への協力かと警戒したが、実際は舞夏が大量に作ったシチューを一緒に食べてほしいという誘いだった。
その話を聞いたインデックスは即座に飛び出し、上条を押しのける勢いで参加を決定した。三毛猫も食べ物の匂いに引き寄せられていた。
舞夏特製シチューとの対面
一行は土御門の部屋へ移動した。そこには巨大な寸胴鍋いっぱいのオレンジ色のシチューが置かれていた。
シチューは煮崩したニンジンをベースにしながら、大きめに切られた野菜や豚肉がたっぷり入った栄養豊富な料理だった。三毛猫はタマネギが入っているため食べられず、残念そうにしていた。
舞夏の気遣いに気付く上条
食事をしながら上条は、舞夏がこれほど大量のシチューを作った理由に思い至った。
保存用の大型容器が用意されていることから、舞夏はしばらく土御門の部屋へ来られなくなるため、その間に土御門が困らないよう保存の利く料理を大量に残したのだと推測した。
舞夏の優しさと土御門の生活力の低さを理解した上条とインデックスは顔を見合わせた。
シチュー争奪戦
三毛猫の鳴き声を合図に、上条とインデックスは勢いよくシチューを食べ始めた。
土御門は慌てて止めようとしたが、特にインデックスの食欲は止まらず、あっという間におかわりへ突入した。土御門は自分の食料が失われる危機に絶叫したが、二人は構わず食べ続けた。
こうして賑やかな食事風景の中、平和な一日が過ぎていったのであった。
行間 一
ランベス宮の秘密と厳重な防衛
ランベス宮はイギリス清教最大主教の官邸であり、外観こそ知られているものの内部は完全に秘匿されていた。建物全体が巨大な魔術装置として設計されており、警備員だけでなく庭師や清掃係までもが侵入者対策の魔術を習得していた。柱や壁紙、照明に至るまで全てが防御機構の一部となっており、通常の侵入手段が通用しない構造となっていた。
ローラの入浴時間
深夜のランベス宮で、ローラ=スチュアートは広大な浴室にいた。そこには学園都市から贈られた様々な機能付き浴槽が並んでおり、ローラはジェット水流風呂に足を浸してくつろいでいた。
足湯を楽しみながら次は電気風呂へ入ろうと考え、一日の疲れを癒していた。
ステイルの乱入
そこへステイル=マグヌスが報告書を手に浴室へ飛び込んできた。突然の来訪に驚いたローラは慌てて身を隠そうとしたが、浴槽へ転落してしまった。
ステイルはローラの様子など気にも留めず、報告書の内容について説明を求めた。しかしローラは混乱したままで、まともに応じることができなかった。
報告書を巡る追走劇
ローラが服装や身だしなみを気にして騒ぎ続ける一方で、ステイルの苛立ちは増していった。ついには炎剣を取り出して追及を始め、ローラは慌てて逃げ回った。
ローラは炎剣を浴室で使わないよう訴えたが、二人の騒動は収まらず、ランベス宮の夜は再び騒がしいものとなっていた。
第二章 罰ゲームはどんな味? Pair_Contract.
待ち合わせ場所での美琴と初春
御坂美琴はコンサートホール前の広場で上条を待っていた。寮へ戻る手間を避けるため制服姿のまま学生鞄とバイオリンケースを持参していたが、荷物を引き取りに来るはずだった白井黒子も現れず、一人で待ち続けることになっていた。
そこへ初春飾利が現れ、風紀委員の仕事で白井が来られなくなったことを伝えた。初春は代わりに荷物を預かろうとしたが、美琴は初春に負担をかけることを避け、自分で対処すると告げた。
バイオリンを通じた交流
初春が常盤台中学やバイオリンに憧れを抱いていることに気づいた美琴は、実際に楽器を触らせることを提案した。そして初春の後ろから手を添え、楽器の持ち方や弓の使い方を丁寧に教え始めた。
初春は突然の密着した指導に緊張していたが、美琴は全く気づかず純粋に演奏方法を教えていた。やがて周囲には人だかりができ、その中には白井黒子の姿もあった。白井は二人の様子に大きな衝撃を受けたが、美琴は最後までその反応に気づかなかった。
遅刻した上条との再会
午後一時三十分になってようやく上条当麻が現れた。三十分の遅刻に美琴は激怒し、上条は平謝りした。
会話の中で上条は、美琴がかなり早い時間から待ち合わせ場所に来ていたことに気づいた。しかし美琴はそれを必死に否定し、話を誤魔化そうとした。さらに上条がからかうような発言をすると、美琴は雷撃を放って応じた。
罰ゲームの開始
上条は改めて罰ゲームの内容を尋ねたが、美琴は具体的な計画を立てていなかったことを露呈した。上条に指摘されるとさらに機嫌を悪くし、罰ゲームとして自分の言うことを聞くよう強く命じた。
そして美琴は上条の手を掴み、そのまま強引に連れ出した。上条は戸惑いながら抵抗したが、美琴は黙ってついて来ることが最初の罰ゲームだと宣言した。二人は手を繋いだまま街を歩き始めたが、そのことを当人たちは意識していなかった。
黄泉川宅への到着
一方通行、打ち止め、黄泉川愛穂、芳川桔梗の四人は、黄泉川が住む教職員向けマンションへ到着した。黄泉川は防犯設備の整った高層マンションを案内し、一方通行は襲撃への懸念を口にしたが、黄泉川は警備員として守る意志を示した。
四人は十三階の部屋へ入り、整然と片付いた室内を目にした。芳川はその様子から黄泉川が何らかの問題を起こした後だと見抜き、二人は旧知の仲らしい軽口を交わした。
黄泉川の独特な料理事情
続いて一行はキッチンへ向かった。そこには最新式の調理器具が並んでいたが、黄泉川が主に活用していたのは複数の炊飯器だった。
黄泉川は炊飯器を使ってパンやシチュー、蒸し料理などを同時に作っていると説明し、効率の良さを自慢した。しかし芳川は、その極端な調理方法を昔から変わらない悪癖だと呆れていた。
二人は料理に対する考え方の違いを語り合いながらも、長年の付き合いを感じさせるやり取りを続けていた。
地下街での罰ゲームの行き先
御坂美琴はバイオリンをクロークに預けた後、上条当麻を地下街へ連れて行った。地下街は以前の戦闘による被害が完全に修復されており、大覇星祭に向けた急速な復旧の跡がうかがえた。
上条はゲームセンターなどの娯楽施設へ向かうのかと思っていたが、美琴が案内した先は携帯電話のサービス店だった。そこで美琴は、利用者同士の携帯電話を中継アンテナとして活用するハンディアンテナサービスへの加入を考えていると説明した。
ペア契約への誘い
美琴はサービス料金の割引やゲコ太ストラップの特典を理由に、上条へペア契約への協力を求めた。上条はストラップ目当てであることを見抜いて呆れたが、美琴は契約に必要だからと強引に話を進めた。
さらに上条がペア契約は恋人向けではないかと指摘すると、美琴は激しく動揺しながら否定した。しかし最終的には罰ゲームを理由にして上条を店内へ引きずり込んだ。
ツーショット写真の必要性
契約手続きの途中で、店員からペアであることを証明するためツーショット写真の提出を求められた。写真立て型充電器にも使用されると聞き、美琴はさらに動揺した。
二人は店の外へ出て携帯電話のカメラで撮影を始めたが、互いに緊張していたため表情も姿勢も不自然になり、何度撮っても満足な写真にならなかった。
無理やり撮影した写真と白井の乱入
撮影が進まないことに業を煮やした上条は、美琴の肩へ腕を回して恋人らしい構図を作った。美琴も半ばやけになりながら上条へ体を寄せ、二人は周囲の視線も気にせず撮影に臨んだ。
しかしシャッターが切られる直前、空間移動で現れた白井黒子が上条へドロップキックを叩き込んだ。その結果、写真は上条と美琴に加えて白井まで写り込んだ失敗作となった。
白井の誤解と美琴の弁解
白井は、美琴が上条と親密な様子でいたことに強い不満を抱いていた。美琴は慌てて、全てはゲコ太ストラップのための契約手続きであり、写真もそのために必要だっただけだと説明した。
すると白井は、自分が美琴とペアになればよいと主張した。しかし契約条件が男女のペア限定だったため、その案は成立しなかった。上条が帰ってもよいかと尋ねると、美琴は雷撃を放って否定した。
一方通行の不安
その頃、一方通行は黄泉川愛穂の部屋のソファで目を覚ました。最近は眠りが浅くなっており、自身の変化を実感していた。
彼は首に装着した電極によって妹達の演算能力を借りて生活しており、その補助がなければ能力の使用どころか日常生活もままならなかった。能力使用時は十五分ほどしか持続できず、かつての無敵の力には厳しい制限が課されていた。
テレビを見ながら電極のスイッチを切ると、思考能力が著しく低下し、自分が今や極めて脆弱な存在であることを改めて認識した。
浴室での騒動
気分転換にシャワーを浴びようとした一方通行は、脱衣所へ続く扉を開けた。するとそこには、風呂上がりの打ち止め、黄泉川愛穂、芳川桔梗の三人がいた。
打ち止めは大慌てしたが、黄泉川と芳川は落ち着いたまま対応した。一方通行は彼女たちの警戒心のなさに呆れ、鍵をかけるよう注意した。
打ち止めが大人たちの反応に疑問を抱く中、黄泉川と芳川は気にする様子もなく振る舞った。一方通行はそんな光景にため息をつきながら、もっと警戒すべきだと改めて感じていた。
打ち止めと御坂妹の再会
打ち止めは黄泉川のマンション前で御坂妹と会話していた。打ち止めは先ほどの出来事を報告したが、御坂妹はその情報がすでにミサカネットワークを通じて共有済みであると指摘した。
それでも打ち止めは、実際に会話することで認識の誤差を補正する必要があると主張した。御坂妹は呆れながらも話に付き合い、打ち止めがオートロックに締め出されて困っていたことをからかった。
ゴーグルへの羨望
やがて打ち止めは話題を変え、御坂妹が装着している電子ゴーグルに興味を示した。自分だけが持っていないことを不満に思っており、羨ましそうに見つめた。
しかし御坂妹は、個体ごとに事情が異なるとして諦めるよう促した。打ち止めは納得せず、駄々をこねながらゴーグルを欲しがったが、御坂妹は冷静にあしらった。
ゴーグル強奪作戦
打ち止めは御坂妹にお辞儀をするよう頼み込んだ。御坂妹が疑問を抱きながらも従った瞬間、打ち止めはその隙を突いてゴーグルを奪い取った。
打ち止めは勝ち誇った様子で挑発の言葉を残し、そのまま全力で逃走した。御坂妹は突然の出来事に呆然としたが、すぐに追跡を決意した。
御坂妹の反撃開始
御坂妹は学生鞄からサブマシンガンとゴム弾を取り出し、上位個体との演習であると理屈を付けながら追跡を開始した。
表情は平静を保っていたものの、目元には怒りが滲んでいた。御坂妹は冷静な判断だと自ら説明しつつ、実銃を手に全力で打ち止めを追いかけた。
ミサカネットワーク上の挑発合戦
一方の打ち止めは、ミサカネットワークを通じて妹達へ挑発的な言葉を送りながら路地裏を走り回った。
打ち止めが勝利を誇示すると、御坂妹は革命の時が来たと宣言した。こうして二人の追いかけっこは、ミサカネットワークを巻き込みながら激しさを増していった。
行間 二
女子寮への新型洗濯機到着
ロンドンのランベス区にある『必要悪の教会』の女子寮では、神裂火織が学園都市製の最新型全自動洗濯機の設置作業を行っていた。
これまで使っていた洗濯機が故障したため新しい機種が届いたものの、機械に不慣れな神裂たちは説明書と格闘し続け、気付けば深夜になっていた。神裂は昼間に土御門から送られてきた奇妙な荷物のことを忘れるためにも作業へ没頭していた。
洗濯機を巡る反応
オルソラ=アクィナスは洗濯機の便利さに期待を寄せていたが、シェリー=クロムウェルは洗濯など川で十分だと素っ気なく語った。
神裂は耐震補強や落雷対策の設定を終えたものの、液晶画面に表示された複雑な情報を前に途方に暮れ、手洗いへ戻る提案をした。しかし、洗濯当番の負担を身に染みて感じていたアンジェレネは強く反対し、全自動洗濯機への希望を訴えた。
洗濯物不足とオルソラの行動
オルソラは説明書を読み進め、洗濯ボタンを押すだけでほとんどの工程が自動化されることを発見した。しかし神裂は、その日の洗濯物はすでに保管庫へ収納済みであり、深夜にわざわざ稼働させる必要はないと指摘した。
ところがオルソラは実演を見たい一心で自ら修道服を脱ぎ始めた。神裂は慌てて制止したが聞き入れられず、その過程で浴衣の帯まで解かれてしまった。さらに浴衣の構造についてのやり取りが交わされ、神裂は必死に体を隠す羽目になった。
洗濯機の稼働開始
オルソラは自分やアニェーゼたちの衣類、さらに神裂の帯まで洗濯機へ投入し、洗濯を開始した。
最新鋭の球状洗濯槽は静かに動作し、洗濯物を三六〇度全方向へ回転させた。その様子にオルソラやアニェーゼたちは歓声を上げ、珍しい機械の動作を興味深そうに見守った。一方で神裂だけは、帯を勝手に洗濯されたことに疲れ切っていた。
色落ちの発覚
その時、シェリーが説明書の内容を確認し、色落ちする染物は別洗いにしなければならないと指摘した。
神裂は自分の藍染の帯が洗濯機の中に入っていることを思い出し、慌てて洗濯機へ飛び付いた。中止ボタンを探して操作しようとしたが混乱のため見つけられず、その間にも洗濯は進行した。オルソラは帯の汚れが落ちていると喜んだが、神裂は脱色しているだけだと悲鳴を上げた。
洗濯機による惨事
神裂はついに耐え切れなくなり、稼働中の洗濯機の蓋を無理やり開けた。
しかし高速回転中の洗濯槽から大量の水が噴き出し、神裂は全身ずぶ濡れになった。その結果、浴衣が透けてしまい、周囲から思わぬ指摘を受けることになった。
不用意な一言を聞いた神裂は、ついに罵声を上げながら泣き崩れたのであった。
第三章 ミサカとミサカの妹と Sister_and_Sisters.
地下街での待機と御坂妹との遭遇
上条当麻は地下街の待ち合わせ広場で一人待っていた。白井黒子は御坂美琴に追い払われて姿を消し、美琴は携帯電話の契約手続きのためサービス店へ戻っていた。
しばらくして戻ってきた人物は美琴ではなく御坂妹だった。ゴーグルを失ったため美琴との区別がつきにくくなり、その回収を目的に行動していることを上条へ説明した。
ゴーグル探しとネックレス購入
御坂妹はゴーグルを失ったことで周囲から美琴と間違えられて困っていると語った。上条は代わりに見分けがつく目印を用意しようと提案し、アクセサリーを買うことを思いついた。
指輪の話題が出た際、御坂妹は妙な反応を見せたが、最終的に上条は安価なネックレスを購入した。しかし御坂妹は満足している様子を見せながらも、どこか複雑な感情を抱えているようだった。
一方通行による打ち止め捜索
一方通行は打ち止めがマンションから姿を消したことを知り、不安を募らせた。打ち止めが研究材料として狙われる可能性や、自身との関係を利用される危険性を考えたためである。
黄泉川愛穂と芳川桔梗は楽観的だったが、留守番電話に残された打ち止めのメッセージを確認すると、妹達との追いかけっこをしている最中であることが判明した。
それでも一方通行は打ち止めを捜そうと考え、黄泉川と芳川も協力を申し出た。黄泉川は録音された周囲の音から居場所を特定できるかもしれないと提案し、三人は打ち止め捜索を開始した。
ヒヨコ菓子との出会い
地下街では御坂妹の機嫌を取ろうとした上条が、大学の研究用アンケートを兼ねた動物型のお菓子を購入した。
御坂妹はヒヨコ型のお菓子を本物のヒヨコのように扱い、くちばしをつつきながら観察していた。上条は食べ方が分からないのだと思い、自らフォークで刺して食べ始めた。
ヒヨコを巡る誤解と放電
ヒヨコが食べられる様子を見た御坂妹は大きな衝撃を受けた。ヒヨコの命が奪われると勘違いしたためである。
動揺した御坂妹は無意識に放電し、両手が塞がっていた上条は直撃を受けて吹き飛ばされた。正気に戻った御坂妹は散らばったヒヨコを回収し始めたが、上条が落ちたヒヨコも三秒ルールで食べると言ったため、さらに蹴り飛ばした。
御坂美琴との合流
その後、契約手続きを終えた御坂美琴が戻ってきた。御坂妹の首にはネックレスがあり、美琴との区別が容易になっていた。
御坂妹はゴーグルを奪った検体番号二〇〇〇一号を追跡していることを説明したが、途中から美琴の持つゲコ太とピョン子のマスコットへ興味を移してしまった。
御坂妹の挑発
ヒヨコを大切に抱える御坂妹は、美琴に見せることを拒否したうえ、欲しければ上条に買ってもらえばよいと告げた。
その言葉に美琴は上条へ意識を向け、罰ゲームで自分に付き合っているはずなのに他の少女にも親切にしていることへ不満を爆発させた。雷撃を何度も放ったが、上条に防がれ続けたため疲れ果ててしまった。
御坂妹の行動と打ち止めの再登場
御坂妹は美琴へ素直になれないのではないかと指摘した。そして自分は素直になると言うと、突然上条の右腕へ抱きつき、買ってもらったネックレスを見せつけた。
その直後、打ち止めが現れ、今度は上条の左腕へ抱きついた。御坂妹は打ち止めをゴーグル強奪犯の検体番号二〇〇〇一号と断定し、追跡を再開した。
打ち止めは人混みへ逃げ込み、御坂妹はサブマシンガンを取り出して追撃を開始した。上条へヒヨコを託した御坂妹は、銃器を携えて打ち止めを追いかけ、人混みの向こうからはさらに武装を展開する金属音が響いていた。
午後五時の捜索開始
午後五時、一方通行はマンションを出て打ち止めの捜索を開始した。空には黒い雲が広がり、雨が降り出しそうな空模様になっていた。黄泉川愛穂は電話越しに、打ち止めが帰宅する可能性を考慮して芳川桔梗をマンションに残したことを説明した。
一方通行は、じっとしていられない打ち止めがさらに遠くへ行ってしまうことを懸念しながら、黄泉川から捜索状況の報告を受けた。
電話の音声解析による居場所特定
黄泉川は、打ち止めの留守番電話に記録された音声を解析し、地下街周辺にいる可能性が高いと説明した。
学園都市では店内スピーカーから人には聞こえない低周波音が流されており、警備員が持つ特殊な周波数と組み合わせることで位置情報の推定が可能になっていた。黄泉川はこの仕組みを利用して打ち止めの行動範囲を絞り込み、一方通行へ地下街で聞き込みを行うよう促した。
聞き込みへの抵抗
一方通行は、自身が悪い意味で有名な存在であるため、人に聞き込みを行うことへ強い抵抗を示した。
しかし打ち止めを見つけるためには情報収集が不可欠であり、不本意ながらも捜索を続ける必要があると認識していた。
黄泉川の問いかけ
捜索の途中、黄泉川は一方通行に対し、他人へ好意を向けることを恐れているのではないかと問いかけた。
黄泉川は、一方通行がこれまで悪意や拒絶によって他人との距離を保ってきたため、好意を示すことや関係を深めることを避けているのではないかと指摘した。さらに、打ち止めからの好意は受け入れている一方で、自分から好意を返すことを恐れているとも語った。
特力研での過去
黄泉川が特例能力者多重調整技術研究所について触れると、一方通行は自らの過去を語り始めた。
特力研は多重能力者研究を行う施設であり、多くの失敗と犠牲を生み出していた。一方通行は九歳までその施設にいたが、その能力は研究者達ですら制御できず、恐れられる存在だったため別の研究施設へ移された。
その後も虚数研、叡智研、霧ヶ丘付属など複数の研究施設を転々としたが、どこでも周囲から恐怖の対象として扱われ続けた。一方通行は、自分が人間社会に受け入れられない怪物であるという認識を強めていった。
負債への意識
一方通行は、自分が積み重ねてきた罪や犠牲を一億の負債になぞらえた。
今さら好意を積み重ねたところで意味はなく、返済など不可能だと考えていた。しかし黄泉川は、だからこそ少しずつでも返済を続けるべきだと語った。たとえ綺麗事であっても、自分が返済を忘れた人間になりたくないと思っているからこそ苦しんでいるのだと指摘した。
黄泉川自身の後悔
黄泉川は、自分が子供へ武器を向けないという信条を持っている理由を語った。
それは過去に経験した出来事への後悔があるからであり、一方通行と同じように消せない過去を抱えているためだった。罪の大きさは違っても、向き合い続けるべきという点では同じだと黄泉川は述べた。
未来への提案
黄泉川は、どれほど無様でも一円ずつ返済を続けるしかないと語り、その積み重ねが未来を切り開くのだと諭した。
さらに冗談めかして風紀委員への参加を提案し、一方通行の存在だけでも学園都市の治安は大きく改善すると語った。しかし一方通行は、自分の力は破壊しか生まない力だと否定した。
それでも彼の脳裏には、過去に妹達を救えたかもしれないという後悔や、今からでも何かを変えられるのではないかという思いが浮かんでいた。
黄泉川の結論
黄泉川は、どれほどくだらなく見えても負債の返済は小さな積み重ねから始まるのだと語った。
その言葉を受けた一方通行は否定しながらも完全には切り捨てられず、陽の当たる場所に立つ黄泉川の言葉を聞き続けていた。
行間 三
風斬氷華
街を歩く風斬氷華
風斬氷華は学園都市の街を歩いていた。地味な服装と飾り気のない外見をしていたが、人々の視線を集めていた。その理由は美貌ではなく、彼女の輪郭が時折ノイズのように歪み、霧が揺らぐように姿を変化させていたからである。夏服が冬服へと変わるなど、不自然な現象が断続的に起きていた。
学園都市の反応
周囲の人々は風斬の異常な姿に注目こそしていたものの、騒ぎ立てることはなかった。学園都市では超能力や科学技術による現象が日常的に存在するため、多くの者が未知の実験や技術によるものだと受け止めていたのである。
警備員の男も風斬の近くへやって来たが、彼女自身を見ているわけではなかった。男は能力者が生み出した立体映像による悪戯だと思い込み、その発生源を探していた。
受け入れられる怪物としての存在
風斬は誰が見ても人間とは異なる存在でありながら、学園都市では排斥されることなく受け入れられていた。人々は彼女を超能力や科学技術による現象として認識し、街の風景の一部として扱っていたのである。
しかし、それは風斬氷華という人格や心を持つ存在を認めているわけではなかった。能力者が生み出した立体映像として受け入れられているだけだった。
風斬の寂しさ
風斬はその現実を理解していた。人々は自分の姿を受け入れているようでいて、最も大切な部分である心や人格には気づいていなかった。
警備員が精密な幻像だと評した言葉さえ受け入れられたが、それは彼女が人間として認識されていないことを意味していた。風斬はその事実を噛みしめながら、寂しさを含んだ人間らしい微笑みを浮かべていた。
第四章 緩やかに交差する二組 Boy_Meets_Girl(x2).
地下街のすれ違い
美琴との決裂
御坂美琴は御坂妹や打ち止めと一緒にいた上条当麻を見たことで機嫌を悪くしていた。上条が罰ゲームの目的はゲコ太を手に入れることだと思っていたと答えると、美琴は激怒し、雷撃を放ってその場から走り去った。
取り残された上条は何が悪かったのか理解できず、罰ゲームが終わったのかどうかも分からないまま困惑していた。また、御坂妹たちと似た幼い少女の正体についても疑問を抱いていた。
打ち止めとの再会
悩んでいた上条の背中に、幼い少女が突然飛びついてきた。その正体は先ほど見かけた打ち止めだった。
打ち止めは上条に甘えるようにまとわりつき、上条は戸惑いながらも相手をしていた。
一方通行とインデックスの遭遇
一方通行は打ち止めを捜して地下街へやって来たが、その途中で空腹に苦しむインデックスと遭遇した。
黄泉川との会話を思い出していたこともあり、一方通行は彼女を見捨てず、ファストフード店で大量の食事を与えた。インデックスは豪快な食べっぷりを見せながら礼を述べ、自分が上条当麻を捜していることを明かした。
一方通行は打ち止めの写真を見せて情報を求めたが、インデックスは見覚えがないと答えた。その後、インデックスは上条を捜すまで一緒に打ち止め探しを手伝うと申し出た。一方通行は面倒だと思いながらも、その善意を拒みきれなかった。
打ち止めの正体の説明
打ち止めは上条に、自分が妹達のネットワークを管理するために作られた存在であり、暴走した妹達を人間側から制御するための役割を持つことを説明した。
また、上条へ礼を言うために来たと語ったが、本音では別の目的もあると認めた。上条は呆れながらも相手をしていた。
ポップコーン騒動
上条は打ち止めの機嫌を取ろうとしてポップコーンを買い与えた。打ち止めは喜んで受け取ったものの、大量の甘いポップコーンを無理に食べ続けた結果、途中で苦しみ始めた。
上条は飲み物を買い与え、ようやく打ち止めは落ち着きを取り戻した。
ゴーグルの調整
打ち止めは御坂妹から奪ったゴーグルを自慢し、自分にはサイズが合わないと不満を漏らした。
上条はゴムバンドの長さを調整しようとしたが失敗し、ゴーグルが打ち止めの顔に当たってしまった。何度か失敗を重ねた末、ようやくサイズ調整に成功し、打ち止めは嬉しそうにゴーグルを装着した。
青髪ピアスと土御門の誤解
上条と打ち止めのもとへ青髪ピアスと土御門元春が現れた。
二人は上条と幼い少女が一緒にいる状況を見て勝手な誤解をし、からかい始めた。上条は必死に否定したが聞き入れられず、最終的には大乱闘となった。
打ち止めは二人が上条の友人だと知り、騒動を眺めていた。
美琴の後悔と怒り
一方その頃、美琴は地下街を歩きながら、自分が上条に対して怒ったことを振り返っていた。
上条が罰ゲームから解放されたことに安堵していた様子を思い出し、自分だけが勝手に浮かれていたように感じて落ち込んでいた。それでも感情の整理がつかず、ゲームセンターの能力測定機械へ向かった。
能力測定機械への八つ当たり
美琴は能力使用可能と書かれた注意書きを見つけると、溜め込んでいた怒りを超電磁砲の力で機械へぶつけた。
大覇星祭のために努力していたことや、上条への不満を叫びながら攻撃を続け、機械は激しく揺れ動いた。結果としてハイスコアを更新したものの、虚しさしか残らなかった。
上条のもとへ戻る決意
感情を吐き出した美琴は冷静さを取り戻した。
妹達が贈り物をもらったこと自体は悪いことではなく、自分が大人気なかったと認めた。そして上条に謝ることを決意し、罰ゲームの続きについても改めて話すため、再び上条のもとへ向かうことにした。
打ち止めとの別れ
帰宅を決意する打ち止め
上条当麻が時刻を確認すると、すでに午後六時を過ぎていた。打ち止めは時間に気づき、そろそろ帰らなければならないと告げた。
本当はもっと一緒にいたかったが、自分を心配している人物に迷惑をかけたくないのだと語り、その相手が自分を捜しに来るかもしれないと笑いながら話した。
大切な相手への想い
打ち止めは、自分を気にかけている相手について語った。その人物は多くの傷を負い、大切なものを守れなかった過去を抱えているため、これ以上負担をかけたくないのだと説明した。
さらに、自分のために血まみれになりながら戦ってくれたことを誇らしげに話し、今度は自分がその人物を守りたいのだと打ち明けた。
上条は詳しい事情こそ理解できなかったが、その相手が本当に良い人物なのだと感じていた。
人混みへ消える打ち止め
打ち止めは上条へ別れを告げると、人混みの中へ駆け出した。
上条はその小さな背中を見送りながら帰ろうとしたが、その時、見覚えのある人物の姿を目にした。
インデックスと一方通行の発見
一方通行と共にいたインデックスは、遠くに上条当麻の姿を見つけて足を止めた。
一方通行はインデックスに行くよう促し、自分もまた捜していた相手を見つけたと告げた。その視線の先には、自分へ向かって走ってくる打ち止めの姿があった。
それぞれの再会
一方通行は打ち止めの名を呼んだ。呼ばれた打ち止めは嬉しそうな表情で駆け寄った。
同時にインデックスも上条のもとへ向かって走り出した。二人の少女は地下街で交差したが、お互いに気づくことはなかった。
それぞれが会いたかった相手のもとへ向かい、それぞれの場所へ戻っていった。
打ち止めと一方通行の再会
打ち止めは一方通行のもとへ飛び込み、元気よく帰宅の挨拶をした。しかし一方通行は無言で頭を叩き続け、どこで何をしていたのか問いただした。
打ち止めは遊んでもらっていたと素直に答えた。一方通行はそれ以上追及せず、人混みの向こうへ視線を向けたが、そこにはもう何も見えなかった。
地下街にはいつも通りの人混みだけが広がっていた。
行間 四
現象管理縮小再現施設
ロシア成教の再現施設
サーシャ=クロイツェフは、ロシア成教が運営する現象管理縮小再現施設にいた。この施設は事件現場を原寸大で忠実に再現するためのものであり、その精密さは徹底していた。
ロシア成教は、死者を名乗る存在を本物か偽物かに関係なく敵と見なし、地上をさまよう時点で排除対象と考えていた。そのため、この施設は超常現象を調査し、問答無用で敵を討つための情報収集の場として機能していた。
自身の異変を調べるサーシャ
サーシャは再現された宮殿の中で、ブランデー入りの紅茶を飲みながら古い書物を読んでいた。
彼女は指先の震えや、大きな魔力に接すると胸に圧迫感を覚える異常に悩まされていた。検査の結果、それは高密度の天使の力を長期間宿した状態に似ていると判明したが、本人には心当たりがなかった。
この異常はロシア成教全体の懸案事項となっており、サーシャ自身も原因究明のため天使に関する資料を調べ続けていた。
ワシリーサの乱入
調査に集中していたサーシャの背後から、上司であるワシリーサが忍び寄った。
ワシリーサは突然サーシャに抱きつこうとしたが、サーシャは即座に金槌とバール状の武器を抜いて反撃した。魔術的な力を宿した金槌の一撃でテーブルは大きくへこみ、施設の備品に被害が出たものの、ワシリーサは慌てながらも平然としていた。
上司との軽口と体調の話題
ワシリーサはサーシャの体調異変について尋ねながら軽口を叩いた。
サーシャが宿していた天使の力の規模や受胎告知の話を持ち出し、妊娠を連想させる冗談まで口にしたため、サーシャはノコギリを振り回して抗議した。しかしワシリーサは傷一つ負わず、冗談を続けた。
サーシャは拘束服のような衣装を着せられていることにも不満を抱いていたが、それもワシリーサの指示によるものであった。
新たな衣装計画と逃走
衣装への不満を聞いたワシリーサは、別の衣装を用意したと語った。
彼女は学園都市や日本の文化を調査しており、自作した新しい衣装を披露しようとした。その際、超機動少女カナミンという存在の名を口にした。
広げられた衣装を見たサーシャは強い危機感を覚え、扉を破壊して逃走した。
サーシャは、自分が戦闘修道女として過酷な戦場に立つ身であり、ワシリーサの用意した派手な衣装で戦うなど到底受け入れられないと考えていた。部署異動まで考えるほど嫌悪感を抱きながら、その場を離れたのであった。
第五章 曖昧に過ぎていく日没 Hard_Way, Hard_Luck.
一方通行への気遣いと打ち止めの負傷
雨の降る夜の街を歩いていた一方通行と打ち止めは、軽口を交わしながら移動していた。途中で打ち止めが転倒し、掌に小さな擦り傷を負った。痛みを訴えながらも我慢しようとする打ち止めを見て、一方通行はバス停のベンチに座らせ、自ら薬局へ向かうことにした。
絆創膏を買う一方通行の葛藤
一方通行は薬局で消毒用品や絆創膏を選びながら、自分が打ち止めのために行動していることへ複雑な思いを抱いていた。多くの人間を傷つけてきた自分が、少女の小さな傷を心配している現状に戸惑いながらも、打ち止めを守ろうとする意思を改めて確認していた。
黒いワンボックスによる襲撃
薬局を出た一方通行は、突然背後から突っ込んできた黒いワンボックスカーに襲われた。しかし能力による反射が発動していたため無傷だった。車両の状態や乗っていた男たちの装備から、一方通行は自分を狙った襲撃であると判断した。
襲撃者たちへの反撃
一方通行は車内の黒ずくめの男たちへ容赦なく反撃した。男たちを車外へ叩き出し、次々と戦闘不能に追い込んでいく。さらに増援として現れた複数の車両も爆発に巻き込み、圧倒的な力で制圧しようとした。
木原数多の登場
そこへ白衣姿の木原数多が現れた。かつて一方通行の能力開発に関わった研究者である木原は、一方通行への敵意を隠さず接近した。そして木原の拳は、一方通行の絶対防御である反射を無効化して顔面へ直撃した。
反射の弱点を突く木原
木原は一方通行の能力の仕組みを熟知しており、攻撃の直前に拳を引き戻すことで反射を逆利用していた。また特殊な音波によって能力の計算式そのものを乱し、風を操る攻撃までも封じていた。一方通行は反撃の手段を次々と失い、一方的に打ちのめされていった。
打ち止めの捕獲
木原は自分たちの本当の目的が打ち止めであることを明かした。やがて黒ずくめの男たちによって、意識を失い傷だらけになった打ち止めが連れて来られた。一方通行はその姿を見て激しく動揺し、彼女を再び闇の世界へ戻させまいと決意した。
打ち止めを逃がすための最後の力
満身創痍となった一方通行は、残された力を振り絞って暴風を発生させた。その風は木原ではなく打ち止めへ向かい、彼女の体を男たちの手から引き離して遠方へ吹き飛ばした。打ち止めを敵の手から遠ざけることだけを優先した行動だった。
木原の追撃と一方通行の絶望
木原は部下たちに打ち止めの追跡を命じ、自身は一方通行の始末に取り掛かった。一方通行は助けを求めながらも、自力ではどうにもならない状況に追い込まれていた。それでも打ち止めだけは守りたいという思いを捨てなかった。
現れた銀髪の修道女
木原が工具箱を振り下ろそうとしたその時、近くの路地から声が響いた。そこには銀髪と緑の瞳を持つ修道女が立っていた。豪華な修道服をまとい、三毛猫を抱えたその女性の姿を見て、一方通行は彼女の存在を思い出したところで場面は終わった。
地下街でインデックスを捜索
上条当麻は地下街を歩き回りながら、突然走り去ったインデックスを捜していた。インデックスは白髪の人物から借りたポケットティッシュを返すと言い出し、上条の制止も聞かずに走り去っていた。携帯電話も繋がらないため、上条は自力で彼女を探し続けていた。
雨の夜の街へ
地下街にインデックスの姿が見当たらなかったため、上条は地上へ出た。外では小雨が降り始めており、上条は学生寮の窓や布団のことを気にしながらも、まずはインデックスとの合流を優先しようと考えた。
異様に多い警備員たち
街を歩く上条は、夜道に警備員の姿が異様に多いことへ気付いた。学生の姿はほとんどなく、防具で固められた警備員たちが雨の中を巡回していた。上条は補導される前にインデックスを連れ帰ろうと考えていたが、その直後に異変が起きた。
警備員たちの突然の倒壊
上条の目の前で警備員の一人が突然地面へ倒れ込んだ。さらに周囲を見回すと、巡回していた警備員たちが次々と倒れていることが判明した。全員が意識を失っているようだったが、怪我や出血の様子は見られなかった。
救助と状況確認
上条は倒れていた警備員を水溜まりから移動させ、脈拍や呼吸を確認した。命に別状はなかったが、原因は全く分からなかった。周囲に助けを求められる人もおらず、上条は緊急通報を行い、状況を説明した。
無線から聞こえた侵入者の情報
通報を終えた直後、倒れていた警備員の無線機から通信が流れた。そこではゲートの破壊と侵入者の市街地侵入が報告されていたが、通信は途中で途切れた。上条は詳細を把握できなかったものの、学園都市へ何者かが侵入したことだけは理解した。
インデックスへの不安
侵入者の情報を聞いた上条は、真っ先にインデックスの安否を案じた。侵入者の正体も目的も不明だったが、念のため早く合流して安全を確認する必要があると判断した。
打ち止めとの再会
その時、上条の腹に小さな衝撃が走った。ぶつかってきたのは打ち止めだった。ずぶ濡れになった彼女は上条のシャツにしがみつき、小刻みに震えていた。
打ち止めの救援要請
打ち止めは充血した瞳から涙を流しながら顔を上げた。そして上条に対し、あの人を助けてほしいと必死に頼み込んだ。こうして打ち止めと上条が出会い、それぞれの道が一つに結びつくこととなった。
行間 五
前方のヴェントの襲撃
冷たい雨が降る夜の街で、警備員たちが次々と意識を失い倒れていった。倒れた者たちは抵抗も悲鳴もなく路上へ沈み、その間を縫うように一人の女が歩いていた。黄色を基調とした中世風の衣装をまとい、顔中に無数のピアスを施したその女は、十字教の象徴を利用した魔術師だった。
アレイスターへの通信
女は倒れた警備員の無線機を拾い上げると、聞こえていないはずの相手へ語りかけた。すると通信先は学園都市統括理事長アレイスターへと切り替わった。女は統括理事会の人間を複数潰したことを告げ、アレイスターの反応を探ったが、彼は補充はいくらでも利くと意に介さなかった。
神の右席の名乗り
女は自らをローマ正教最深部に存在する神の右席の一員であると明かした。しかしアレイスターはそれすら意に介さず、単なる賊として扱った。女は学園都市の防衛網を次々と無力化している現状を語り、自らを前方のヴェントと名乗ったうえで、学園都市、アレイスター、幻想殺し、禁書目録の全てを一晩で潰すと宣言した。
学園都市の危機
通信を終えたヴェントが無線機を握り潰す一方、窓のないビルにいるアレイスターは学園都市全域の被害状況を確認していた。街中では無数の異常事態が発生し、警備員の七割近くが戦闘不能に追い込まれていた。死者こそ出ていなかったが、学園都市の治安維持機能は深刻な打撃を受けていた。
アレイスターの反撃準備
学園都市が危機に陥る中でも、アレイスターは動揺するどころか興味深そうな笑みを浮かべていた。そして計画より早い段階ながら反撃を決断し、学園都市の闇に属する者たちへ命令を下した。
ヒューズ=カザキリ投入命令
アレイスターは猟犬部隊の木原数多へ連絡し、虚数学区・五行機関とAIM拡散力場を利用する計画を発動した。さらにヒューズ=カザキリを使って敵を排除するよう命じるとともに、逃走中の検体番号二〇〇〇一号を捕獲して指定地点へ運ぶよう指示した。こうして学園都市側も本格的な反撃へ動き始めたのである。
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