小説「魔導具師ダリヤはうつむかない ~今日から自由な職人ライフ~3巻」感想・ネタバレ

小説「魔導具師ダリヤはうつむかない ~今日から自由な職人ライフ~3巻」感想・ネタバレ

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どんなラノベ?

転生者である魔導具師のダリヤ・ロセッティは、決められた結婚相手からの手酷い婚約破棄をきっかけに、自分の好きなように生きていこうと決意する。

前巻からのあらすじ

前巻

元々亡くなった父親のために作った五本指ソックス。

革のブーツのムレに悩む騎士団に所属するヴォルフに五本指ソックスと中敷きをお試しに渡したら、、

水虫に悩む騎士団員達の心を鷲掴みにしてしまう。

足🦶のムレに悩む野郎達の心を掴んで離さなくなり、半ば強制的に商品化から量産へ真っしぐら。

それに振り回されてしまう。

読んだ本のタイトル

魔導具師ダリヤはうつむかない ~今日から自由な職人ライフ~ 3
(英語名:Dahlia in Bloom: Crafting a Fresh Start with Magical Tools
著者:甘岸久弥  氏
イラスト: 氏

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あらすじ・内容

試作に量産、ダリヤのつくった魔導具がさらに広まる――!?

婚約破棄されたことを機に、自分の好きなように生きると決めた、女性魔導具師のダリヤ。
彼女が商会を立ち上げてから、ダリヤの魔導具づくりは様々な人を巻き込んで進んでいく。
商会長としても魔導具師としても、少々危なっかしいところのあるダリヤに対し、周囲の者はそれぞれの想いを募らせる。
「恩には利子をつけて返す」「商会長の『右腕』を目指す」「守れるくらい強くなる」
そんな想いに応えるように、ダリヤ自身も前を向き、また大きな一歩を踏み出す――!
小物工房と『泡ポンプボトル』の量産品試作、『魔導コンロ』の更なる小型化、『人工魔剣』の実験など……とどまるところを知らないダリヤのものづくりの行方は!?
魔導具師ダリヤの、自由気ままなものづくりストーリー第三弾、開幕!

魔導具師ダリヤはうつむかない ~今日から自由な職人ライフ~ 3

アニメ化

TVアニメ「魔導具師ダリヤはうつむかない」公式

感想

商業ギルドの全面的なバックアップの元、五本指ソックスと中敷、さらに泡ポンプボルトの商品化と量産化に踏み出す事になるのだが、、

なんせ商会の長としては1年生なダリア。

手配も何も判らない。

それを支えてくれる貴族のヴォルフと副ギルド長、そして商業ギルドの人々。

父親の代から続く人脈に恵まれつつも持ち前の商品開発力でドンドン発展していくダリアの商会。

魔導コンロを小型化して、魔獣討伐のために遠征をする騎士達に暖かい物を食べてほしいと開発するダリア。

それを支える右腕となるイヴァーノも商業ギルドから移籍して来て、ヴォルフとは下ネタで盛り上がれるほど親しくなる。

それを偶然にもダリアに聞かれる不運はあるが、商品化は順調。

そしてヴォルフが大好きな魔剣作りは、、
2回目はホラーな展開に。。

勝手に動くナイフ、、、
ただ進む速度はカタツムリのように遅いけど、、
ホラーだ。
しかも刃物だから怖いよ。

3回目は、、
ヴォルフの手と共に凍る魔剣。
手ごと凍らせるとかホラーすぎるw

そして、外伝ではダリアの父カルロが母親を思い出を語る。

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フィクション あいうえお順

アニメ

PV

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OP

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ED

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備忘録

魔導具 ~ポップアップトースター ~

リンと鳴るベルと共に、狐色の食パンが宙を飛ぶ。食パンを放物線を描くように飛ばしてしまったダリヤは、黒髪の青年、ヴォルフレードにその食パンを捕まえられる。ダリヤは前世の日本で家電会社に勤めていたが、今世では魔導具師として活動している。魔物討伐部隊員であるヴォルフレードは、ダリヤが開発中のポップアップトースターの飛んでくる食パンを捕獲する。このトースターは、食パンを簡単に取り出せるよう自動で上に出る機能を持っているが、試作中の強すぎるバネの力で食パンが飛んでしまったのだ。

ヴォルフはダリヤの説明を聞いて、トースターがパンを配膳する機能を持つと誤解し、それが便利だと感じる。彼はトースターを「フライングトースター」と命名する提案をし、ダリヤはそのアイデアに心動かされる。この青年の前向きな提案に、ダリヤは新しい可能性を感じている。

作業場から二階の居間に移ったダリヤは、すぐに送風扇のスイッチを入れる。五月だがすでに暑いため、ヴォルフに氷入り炭酸水とカットオレンジを提供する。ダリヤは台所へ移動し、焼き直した食パンをカナッペにして、後でプティングにする予定である。居間に戻り、カナッペを勧めつつ、ヴォルフが明日からハーピーの討伐に行くことを話す。ヴォルフは攻撃役の赤鎧を務めており、非常に危険な役割であるが、ダリヤが制作した天狼の牙を付与した腕輪を持っており、その効果は絶大である。腕輪は風の魔法を使いこなし、飛び跳ねる補助ができるが、外部魔力には反応してしまうため、ヴォルフ専用に設定されている。

ヴォルフは空を自由に飛べる魔導具の作成を冗談めかして尋ねるが、ダリヤはそれが現実的でないことを知っている。ただ、彼女にはそのような魔導具を作る浪漫がある。今回の遠征では弓騎士が活躍するとヴォルフは考えており、弓騎士が使用する「剛弓」は非常に強力で、ワイバーンの外皮も貫くことができる。過去にヴォルフがワイバーンに捕まった経験を振り返りつつ、彼はダリヤに助けられたことを幸せに思う。

職人と職人

夏の日差しの下、ダリヤは紺色の夏用ワンピースと薄手の麻のジャケットを着て、職人街の一角にあるガンドルフィ工房に到着する。工房主フェルモは、ダリヤとの打ち合わせのために量産用の泡ポンプボトルの試作品を用意していた。工房内では、フェルモがダリヤに量産モデルの泡ポンプボトルを試す機会を提供し、その品質に満足してもらう。ダリヤはその使い心地を試し、改善されたポンプ機構について説明を受ける。

フェルモはさらに異なるタイプの泡ポンプボトルの試作品を数多く提示し、ダリヤに意見を求める。これらには、髭剃り用、大容量、安定した設計のモデルや、固定できるタイプなどが含まれる。さらに、貴族向けの装飾的なガラス製ボトルも紹介される。これらの多様なデザインは、ダリヤによるフィードバックを受けてさらに改良される予定である。

また、フェルモはダリヤと共に、泡ポンプボトルにクラーケンテープを貼る作業を行う。これは防水と滑り止めの機能を向上させるためのもので、フェルモ自身が魔力を用いてテープを貼る方法を学ぶ。この過程で、ダリヤはフェルモに対して、貼付作業に必要な魔力の使い方を教える。

フェルモとダリヤは仕事に関するさらなる協力の可能性について話し合い、互いに支援を約束する。フェルモは魔導具の設計と製造において、ダリヤからの支援を受けることになる。この協力関係は、両者にとって有益であり、ダリヤがフェルモの工房を訪れた目的を達成する上で重要な役割を果たす。

バルバラ・ガンドルフィが紅茶を運んでくるが、動作には痛みがある様子が見える。バルバラは「アカザシ」という病気からの後遺症に苦しんでおり、痛みが残っていることを明かす。ダリヤは前世の母も同様の痛みを経験していたことから、共感を覚える。このため、バルバラに痛みの軽減が期待できる一角獣の角を使ったペンダントを提供し、その使用感を聞くことにする。バルバラはペンダントを受け取り、痛みが和らぐことを実感する。一角獣の角は希少で価値があるため、フェルモは代価を支払うことを申し出るが、ダリヤは設計の助言を求めることを提案する。互いに支援し合うことで、商会と工房の関係はより強固なものになる見込みだ。

ダリヤが商会からの迎えの馬車で去った後、フェルモとバルバラは仕事の話を再開する。フェルモは、もっと若い頃にダリヤのような職人仲間がいればと悔やむが、バルバラは彼の言葉を冗談にして返す。バルバラの動きは病気前の活動的な状態に戻っており、夫婦は楽しげに会話を続ける。フェルモはダリヤから贈られた一角獣の角のペンダントの価値について話し、バルバラはその返済を心待ちにする。また、工房での仕事が進む中、バルバラはクラーケンテープの使用を試みようとする。夫婦は自分たちの職人としての役割に満足しながら、弟子たちとの協力も楽しみにしている。

ダリヤが迎えの馬車で去った後、フェルモとバルバラは仕事の話を再開する。フェルモは若い頃からダリヤのような職人と知り合っていれば、さらに多くの作品を作れたかもしれないと述べ、そのことに少し悔しさを感じている。しかし、バルバラは元気になり、動けるようになったことを喜んでおり、彼女もフェルモも職人としての活動に満足している。また、バルバラはクラーケンテープを使うことに挑戦し、フェルモは弟子たちもそれを使えるようにするつもりである。夫婦は弟子たちの帰りを楽しみにしており、フェルモはクラーケンテープを妻に手渡す。

ハーピー討伐

馬車と徒歩を使い、魔物討伐部隊と魔導師が王都から北東の山際に到着した。村がハーピーに悩まされていたため、国に討伐を依頼された。部隊はハーピーが作った巣を確認し、計画を立てた。魔導師と弓兵がまずハーピーを攻撃し、地上の隊員が仕留める戦略である。ハーピーを全て討ち、巣を焼き払い、洞窟の入口を塞ぐことに成功した。

その後、予期せぬ出来事が発生し、残ったハーピーが子供をさらって来た。ヴォルフは子供を救うために、風魔法のような力で宙に跳び、子供をハーピーから奪い返した。その際、ランドルフはヴォルフの足場となって大怪我をした。治癒魔法を使える者が呼ばれ、ヴォルフは友人に謝りに行く。事件が収束し、部隊は王都へ戻る準備をした。

茨の道

芥子色の髪の男、イヴァーノが商業ギルドのガブリエラの執務室で深いため息をついている。イヴァーノは泡ポンプボトルの仕様書と設計書の大量の書類を持っており、これが利益契約書として登録するためのものであることを明かす。ロセッティ商会のための商会部屋をギルド内に契約したいと要求し、事務員も募集する意向を示す。ギルド内での仕事の多さを踏まえ、商会部屋は二階にあることを希望し、その理由として頻繁な行き来が必要であるためと説明する。また、ガンドルフィ工房の製造能力を懸念しつつ、他の工房には声をかけないことを決めている。イヴァーノはガンドルフィ工房をダリヤの専属工房にする計画を持っている。さらに、泡ポンプボトルの貴族向けバージョンの販売でギルドを仲介者とすることを提案し、それに伴う条件としてギルドが中間マージンを取ることを容認する。

午後、商業ギルドに入ったダリヤは女性職員に声をかけられ、階段手前に移動する。職員はヴォルフレード・スカルファロットとの関係について尋ねるが、ダリヤは「普通の友人」と答える。商会保証人としての関係はあるものの、それ以上ではないと明かす。職員はさらに個人的な質問をし、ダリヤにヴォルフとの食事やお茶の頻度を尋ねる。ダリヤはこれを拒否し、職員にヴォルフ本人かその家族に直接尋ねるよう助言する。その後、追いかけてきた職員に再度ヴォルフの好みについて質問され、ダリヤはその場を去る。二階に上がると、イヴァーノが大量の書類を持っているのを見て、商業ギルド内にロセッティ商会の部屋を借りたことに安堵する。イヴァーノは妖精結晶が間もなく入荷することを報告し、これがヴォルフの眼鏡スペア制作に役立つと説明する。その後、イヴァーノは元の姓「メルカダンテ」に戻そうと考えていることをダリヤに告げる。ダリヤはこれを承諾し、イヴァーノの名前変更に問題がないかを確認する。

人工魔剣制作二回目 ~ 這い寄る魔剣 ~

塔の作業場でダリヤとヴォルフが再会し、作業着を手に取っていた。ヴォルフは遠征から帰ってきたばかりで、二人は久しぶりに会うことになった。ヴォルフは遠征でハーピーの群れと戦い、村の子供がハーピーにさらわれた事件があったが、無事解決したことを報告した。しかし、ヴォルフは同僚のランドルフに怪我をさせてしまい、治癒魔法で応急処置を行ったことを反省していた。その後、ヴォルフは「後発魔力」の疑いを持たれるが、天狼の腕輪が問題にならないように適切に対応した。

続いて、二人は魔剣の製作を進め、イエロースライムの粉を使って短剣に魔法を付与する実験を行った。しかし、イエロースライムによるコーティングが魔法を遮断してしまい、試作品は失敗に終わった。ヴォルフとダリヤは安全性を確認しながら、さらに短剣の改良を続けることを決めた。

ぐい呑みと星空

人工魔剣制作の二回目の試作品である『より寄る魔剣』は、確認の後、氷の魔石と一緒に箱に保管された。イエロースライムの薬液は、水と共に凍らせて後に取り除かれる。ダリヤが作業を行い、『魔王の配下の短剣』へと戻す作業を行った後、動かなくなった短剣を魔封箱にしまう。この作業の後、ヴォルフはダリヤに飲みに行こうと提案し、二人はその提案に同意した。その後、二人は東酒のグラスを求めて王都の南区へ向かい、商店エリアで買い物を楽しんだ。

マルチェラはダリヤとヴォルフの関係を見ながら、彼らが初々しいカップルのように見えたと思った。ダリヤが男の袖をつかんでおり、男はダリヤを守るように周囲を気にしながら歩いていた。マルチェラは自身の過去を思い出し、二人の様子に笑ったが、同時にトビアスとダリヤの関係を思い出すことができなかった。彼らは婚約していたが、実際の関係はより家族的であった。その後、マルチェラは「幸運の運搬人」として、ダリヤとヴォルフの恋路に干渉することを考えていた。

一方、ダリヤとヴォルフは酒器を探している店を訪れた。店主は彼らに東酒の酒器を紹介し、特に錫の器を推奨した。錫の器は飲み物の味をまろやかにすると説明され、店主は酒を注ぎ、味の変化を体験させた。最終的に、ヴォルフは錫の器に興味を示し、店主は割引を提案したが、ダリヤはヴォルフの反応に驚いた。店主は二人が似ていると述べ、ダリヤとヴォルフの間の親密さを強調した。

酒器の店を出たダリヤとヴォルフは、ガラスのぐい呑みと片口、および錫器を購入し、その配送を塔へ依頼した。夕暮れ時に港近くの食堂「黒鍋」に向かい、そこで食事をすることにした。ヴォルフは以前から知っている食堂の副店長に挨拶し、特に静かな部屋で飲食するための席を案内された。食事の注文時には、魔物討伐部隊の話や魔導具師としてのダリヤの仕事について話し合いが交わされた。最終的にはヴォルフとダリヤが子供時代に兄妹であったら楽しかったかもしれないという話で盛り上がり、危険だが面白い遊びを想像しながら笑い合った。

副店長が紅牛のステーキとテールスープを運んできた。ヴォルフとダリヤは、サービスとして提供されたブラックペッパークラッカーと紅牛のチーズケーキを受け取り、食事を開始した。飲み物として炭酸ウイスキーとシードルを選び、乾杯した後、食事を楽しんだ。紅牛の肉は非常に赤いが、適切に調理されており、肉汁が豊富であった。付け合わせのチーズソースも肉と非常に相性が良かった。

食後、二人は紅牛の肉がどのようにして捕まえられたかについて話し合った。眠り薬を使って捕まえ、家畜化したことが語られた。さらに、テールスープを楽しんだ後、将来の計画や仕事、魔導具についての話で盛り上がった。その後、ダリヤはヴォルフとの関係について感謝を示し、過去の出来事を振り返りながら、亡くなったワイバーンの冥福を祈った。この静かな祈りの瞬間にヴォルフは感動し、二人の絆がさらに深まることを感じた。

夜遅くに家路につくことにしたヴォルフとダリヤは、送り馬車の店が混んでいたため、隣の区画まで歩くことにした。途中、ヴォルフは盗聴防止の魔導具を使いながら、ダリヤに尾行されていることを告げた。ヴォルフはダリヤを安全な場所へと素早く移動させるため、屋根から屋根へと跳躍し、最終的に道へ降りた。彼は自身の行動のためにダリヤに心配をかけたことを詫び、彼女を守るために尾行者から逃れる必要があったことを説明した。

その後、二人は手をつなぎながら送り馬車の店へと向かった。ヴォルフはダリヤの安全を確認するために、翌日の午前中に安全確認の使いを送ることを提案し、ダリヤはそれを受け入れた。事件をきっかけに、ヴォルフはダリヤの安全にさらに気を使うことに決め、彼女が安全に過ごせるよう配慮を強化した。

小型魔導コンロの改良

ダリヤは朝早くから作業場で小型魔導コンロの改良作業に没頭していた。魔物討伐部隊が遠征に持っていくためのもので、軽量化が求められているため、今の半分の重さにする必要があった。様々な改良案を考えながら、ダリヤはメモを取り続け、試作品を何度も調整した。一日中集中して作業しているうちに、食事の時間をすっかり忘れ、ヴォルフからの使いが訪れて気づく。使いからは手紙と薄い空色の小箱が届けられ、箱の中には色とりどりの金平糖が入っていた。

新しいアイデアとして、コンロの蓋を鍋としても使えるようにする案を思いつき、その実現に向けて更に作業を進める。また、ダリヤは鍋の取っ手を取り外し可能にするなど、使い勝手を考慮した設計を施した。作業に夢中になりすぎて体調を崩さないように注意を払うことを自らに課した後、疲れを感じつつも作業に対する情熱を新たにしていた。

恋文と王城騎士団合同演習

演習の打ち合わせ後、ヴォルフは廊下を歩いていると、薄黄色のドレスを着た少女から手紙を受け取るように頼まれる。ヴォルフは家の方針で直接受け取らず、スカルファロット家を通すよう告げる。少女は落胆するが、ヴォルフは厄介ごとを避けるため、断固として拒む。その場を立ち去りながら、後輩からの非難を受けるが、自身の立場を説明する。後輩は理解し、ヴォルフの苦労を知り、共感を示す。後輩はヴォルフをカークと呼び、ヴォルフも自身を名前で呼ばせることによって、距離を縮めようとする。カークは風魔法を使い、ヴォルフは身体強化を望むが、お互いの能力には満足していない。カークはヴォルフに風魔法を応用した戦い方を提案し、実際に試すために鍛錬場へと誘う。ヴォルフは、ダリヤを思い出し、カークの提案に同意する。

王城の広い演習場で、騎士団の合同演習が行われていた。オルディネ王国の騎士団は、近衛隊、第一から第五までの騎士団、魔導部隊、魔物討伐部隊の四つに大きく分かれており、それぞれが異なる役割を持っている。この日の演習は第一騎士団と魔物討伐部隊の選抜者が行うもので、約五十名が参加していた。

一方、第一騎士団の若手隊員の中には、ヴォルフレードを標的にし、動けなくすることを企てる者がいた。これは彼らの私怨に基づくもので、魔物討伐部隊への見下しや嫉妬も含まれていた。しかし、ヴォルフはこれを機に作戦を立て、演習を楽しむ構えを見せる。

演習は「兜落とし」と呼ばれる模擬戦で、双方が兜を奪い合う形式で行われた。魔法や模擬剣が用いられるが、治癒魔法が使える魔導師も待機しており、安全対策が施されていた。ヴォルフと彼のチームは、彼が標的になることを利用して、敵陣地への強襲を企画。ランドルフとドリノが兜を落としに行く中、ヴォルフ自身も騎士団間の隙をついて敵を惑わせた。

最終的には、ヴォルフたちの計画通り騎士団の若手が陣地の兜を落とし、演習は彼らの勝利で終了した。この演習を通じて、騎士団内での序列や偏見に対する理解が進むきっかけとなり、ヴォルフは新たな戦略を考える楽しさを知ることになった。

演習が終わった後、魔物討伐部隊は作戦の成功を確認し、和やかに語り合っていた。ランドルフは空中での飛行を楽しんだが、同時に風魔法を持たないことに対する悔いも感じていた。彼とカークは名前で呼び合うことになり、お互いの存在を認め合った。

一方、第一騎士団の反省会は不調で、若手騎士たちがヴォルフを攻撃できなかったことに苛立ちを露わにしていた。その中の壮年騎士が、不甲斐なさを責め、再訓練を命じると脅した。これにより、第一騎士団内での緊張が高まった。

その後、ヴォルフの兄であるグイードが登場し、ヴォルフを食事に誘った。これは他の騎士たちにとって意外な光景で、ヴォルフの家庭環境や社会的地位について新たな認識を与えるものだった。また、魔物討伐部隊のカークが、第一騎士団の騎士たちに対して厳しい一言を放ち、彼らを唖然とさせた。

最後にカークは、自身が高貴な出自であることをドリノに打ち明け、もし問題が起こる場合は支援を求めると伝えた。ドリノはカークを支持し、隊の結束を固める発言をした。

兄と岩牡蠣

貴族街の一角にある三階建ての白レンガの店で、ヴォルフと兄のグイードが個室で夕食を共にしていた。グイードはリラックスを促し、二人は白ワインを楽しみながら、演習の話や幼少期の思い出に花を咲かせた。特に、幼い頃に兄弟で裏庭で鬼ごっこをして母に叱られたエピソードが笑いを誘う。また、幼少期に鬼ごっこをした際の派手な転倒や涙を流す様子が語られ、ノスタルジックな雰囲気が流れる中、二人は互いにかつての遊びや家族の絆を懐かしんだ。

食事中、岩牡蠣が出され、その大きさと味に感嘆の声をあげながら、二人は牡蠣の美味しさを堪能した。ヴォルフはダリヤとも牡蠣を食べに行きたいと考えるなど、食事を楽しむ一方で、今回の演習で狙われたことについてグイードは憤りを露わにした。しかし、和やかな食事の時間を大切にするため、その話題は切り上げられた。

最後に、母親の意外な酒豪エピソードが語られ、ヴォルフが幼い頃に葡萄ジュースを一気飲みしようとしてむせた話が出るなど、兄弟の会話は親しみやすい雰囲気で続けられた。

食事を終えたヴォルフは、従者から新しいグラスを受け取り、グイードが注文した赤ワインを試した。ワインは甘い香りとは裏腹に辛く重たい味わいで、二人はそれについて話し合った。その後、グイードは過去の行動について謝罪し、ヴォルフがダリヤと一緒にいた時の護衛が自分によるものだったことを明かした。これにはヴォルフが安堵する一方で、なぜ突然護衛が必要になったのかと問うと、グイードはヴォルフの安全を考慮したからだと答えた。

さらに、グイードはヴォルフの移動の便宜を図るために、西区に馬場を設けることも伝えた。この計画にヴォルフは驚くが、兄が自分の行動を監視していたことに気づき、混乱する。その上、グイードはダリヤの履歴を調べたことも告げ、それがヴォルフの安全を守るためだと説明した。これにはヴォルフが感謝と困惑の両方を示した。

最後に、グイードはヴォルフが市井に下ることに警告し、その危険性と責任について話し合った。また、将来的にダリヤとの関係が変わる可能性もあることを指摘し、ヴォルフに慎重に行動するよう促した。この話から、ヴォルフは自分の考えが浅はかであったと認識し、兄の助言を受け入れることを約束した。

幕間臆病者の贖罪

グイードは、夜が更けた後も店に残り、ヴォルフに先に兵舎へ帰らせた。店で過ごす時間は、彼にとって久しぶりの心地よい酔いであり、弟と過ごした時を思い出す機会となった。ヴォルフが自分よりも背が高くなっていることに気づき、それが彼にとって心の奥深くで痛みとなって感じられた。

スカルファロット家の長男である彼には、異母弟が三人おり、家庭内では比較的良好な関係が維持されていた。特に母たちは仲が良く、父が多忙で家にいないことが多かったため、彼らは母親たちとより密接な関係を持って育った。

ある時、父が若くして騎士だったヴァネッサと結婚したことを知り、グイードはその選択に驚いた。ヴァネッサは美しく、魔法の才能もあり、グイードやその弟たちとの模擬戦で彼らを圧倒した。その結果、彼女はグイードたちにとって尊敬と親近感を感じる存在となった。

グイードは、家族間の愛と絆を再認識しながらも、家族が直面した試練や困難についても深く反省している。特に弟のファビオが亡くなった事件や、その他の家族の苦悩は彼に大きな影を落としていた。自身の役割と家族への責任を深く感じつつ、これからもスカルファロット家の長兄としての責務を全うしようと決意している。

グイードは、酔いを覚ますための氷水を飲んだ後、長年の従者であるヨナスに、その日の合同演習に参加した全員の情報を調べるよう指示した。これには、未婚者の婚約者の有無も含まれていた。ヨナスとの会話の中で、グイードは王城内での一人歩きの危険性について警告され、これに同意した。彼らは牡蠣を食べた日のことや、将来的にヴォルフと一緒に食事をすることについても話し合った。

グイードはかつての苦い経験、特に弟ヴォルフが幼いながらも家族を守ろうとした過去の事件を振り返り、自分の臆病さが原因であると自責の念に駆られている。彼は自身の罪悪感と向き合い、これからはヴォルフを守ることを自分の責任として受け入れることを決意している。この過去の出来事がグイードに深い影を落とし、彼の現在と未来の行動に大きな影響を与えていることが語られている。

商会活動とそれぞれの矜持

ロセッティ商会のダリヤは、イヴァーノから業務報告を受けていた。彼らは服飾ギルド、冒険者ギルドとの連携で新商品の量産体制を整えており、王城への初回納品の挨拶が控えていた。ダリヤは以前の訪問での苦い経験から、再びの王城訪問を気重く感じていた。また、礼儀作法の習得も課題とされており、ガブリエラから教えを乞うための紹介を求めている。

商会は神殿から浄化の魔石を寄贈され、その使用指示が添付されていた。ダリヤは、この魔石が自分個人に対するものでないことを確認し、イヴァーノにその一部を提供した。さらに、イヴァーノの健康を気遣い、彼に適切な休息を取るよう指示した。

また、商会の業務拡大に伴い、新たな人材を募集し、より大きな責任と可能性に向き合っていた。イヴァーノは、商会の発展にわくわくしており、ダリヤにもその楽観を共有させようとした。二人は商会の将来について前向きに計画を立て、日々の業務に臨んでいた。

ガブリエラとの会合は予約していたものの、前の客の対応が長引き、ダリヤは遠征用小型魔導コンロの設計図を描くなどして時間を過ごした。ガブリエラは王城の礼儀作法について教える商会を紹介し、ダリヤにはオズヴァルド・ゾーラが担当することを勧めた。オズヴァルドはダリヤの父の友人であり、ガブリエラの娘が過去にオズヴァルドに恋心を抱いたことがあるが、父親に止められた経緯がある。

また、ガブリエラはダリヤに自信を持つよう助言し、バルトリーニ商会長が自分の息子とのお見合いを提案していることを伝えた。ダリヤは結婚に興味がないと即座に断り、今後のお見合いの話も断ることをガブリエラに伝えた。ガブリエラは、ダリヤがヴォルフレードと出歩くことが婚約を避ける抑止力になるかもしれないと提案した。ダリヤはこの提案に賛同し、自分の恋愛観と結婚に対する意向を明確にした。

副ギルド長の部屋から出たダリヤは、塔へ帰るために馬場へ向かった。その途中、幼い頃に自分が刺繍した白いハンカチの話が心に浮かんだ。メイドのソフィアから初恋の人に贈る物と教わったが、ダリヤにはその意味が理解しにくかった。父カルロに刺繍入りのハンカチをもらったか尋ねたところ、困った顔で「もらったことがない」と答えた。ダリヤは自ら懸命に刺繍をして父に贈ることを決め、見事な貴族の礼を受けたカルロはそのハンカチを大切にすると言った。しかし、冬祭りの朝、父に撫でられて髪型が崩れ、イルマが苦情を申し立ててくれたことも思い出された。そのハンカチはもうないが、父の手の感触やイルマの怒りが思い出として残っており、ダリヤは笑顔で商業ギルドを後にした。

イヴァーノはオルランド商会を訪れる前に、自らの転職を伝えるためいくつかの商会に挨拶に行った。ダリヤとともにロセッティ商会を運営しており、その活動は既に一部で話題となっている。トビアスとの婚約解消後、ダリヤが起業し、ヴォルフと商業ギルド長が保証人となっていたことが注目を集めていた。イヴァーノ自身も商業ギルドを辞めており、多くの旧知の商人との関係を活かしている。一方で、ダリヤは公私ともに行動が制限され、情報が限られている状況だ。オルランド商会に着くと、トビアスとのやり取りがあったが、彼はダリヤが元気であることを知り安堵する。また、イヴァーノは商会長のイレネオとの会話で、自身の家族の過去と現在の立場を確認し合った。会話の中でイヴァーノは、商業ギルド員としての経験を活かし、ロセッティ商会での役割を強調する。最後にはお互いの商売の成功を願う挨拶で会話が終わり、イヴァーノは新たな挑戦に意欲を見せている。

昨日の夕方、ヴォルフからの使者が塔に来た。ヴォルフは午前のお茶の時間に訪れ、椅子に座る前に謝罪を始めた。彼はダリヤが尾行されていたこと、それが自身の兄によってつけられた護衛だったことを明かした。さらに、ダリヤの経歴が調査されていたことも謝った。ダリヤは自分には特別な経歴がないことを理解しており、彼女の身に危険が及ぶことはないと考えているが、ヴォルフは心配している。

ヴォルフは自身が出かけた際、騎士達に狙われたと語り、それが婚約者の命令によるものだったことを明かした。彼は無傷であるが、この出来事が彼を大きく悩ませている。ダリヤとしては、ヴォルフと距離を置くことが彼女の安全につながるかもしれないとヴォルフが提案するも、彼女はそれを即座に拒否した。

さらに、ヴォルフの家が西区に馬車場を設置することが決まり、ダリヤはそれを利用することになるかもしれない。ヴォルフは、彼女が仕事以外での外出を避けるよう願い出るが、ダリヤは彼とのつながりを続けたいと強く願っている。彼女は彼の負担にならないよう、また、彼に心配をかけないような強さを身につけたいと思っている。それが彼女の矜持である。

魔導具師と騎士と小物職人と商人

ガンドルフィ工房のフェルモと魔物討伐部隊のヴォルフが初めて会った場面である。フェルモは愛想がなく、緊張しているように見えた。ダリヤの横にヴォルフ、向かいにフェルモ、斜め向かいにイヴァーノが座り、一緒に話し合うことは珍しい光景であった。この日、小型魔導コンロの改良について話し合う予定だったが、フェルモの態度が硬かったため、会話が進まなかった。

イヴァーノが雑談を提案し、ダリヤがお茶を淹れる間に、男性同士で打ち解けることを試みる。イヴァーノはフェルモにヴォルフとダリヤの関係について説明し、彼らがただの友人であることを強調する。しかし、ギルドでの噂話がフェルモの不快感を引き起こしていたことが明らかになる。フェルモはギルドで聞いたダリヤに関する根も葉もない噂について話し始め、イヴァーノとヴォルフはそれらの噂がどれも事実に反するものであると反論する。

ヴォルフとイヴァーノは、ダリヤの元婚約者の話と彼女が商会を立ち上げた経緯について説明する。ダリヤが婚約解消された後、自立して商会を設立したこと、そしてヴォルフとイヴァーノが彼女の事業を支えていることを詳しく説明し、フェルモはこれらの情報を受け入れる。フェルモは誤解が解け、ヴォルフとイヴァーノに対する見方が変わり、彼らの正直さと直接話したことにより、彼らのキャラクターを理解する。

ダリヤが紅茶を持ってくると、フェルモとヴォルフは既に友好的な関係になっており、遠征の話で盛り上がっていた。この日は、改良した小型魔導コンロの試作品を二つ、ダリヤがテーブル上に展示し、三人はそれについて話し合った。フェルモはコンロの構造を詳しく見たが、ヴォルフは鍋のサイズについて指摘し、もう少し大きい方が良いと提案した。

さらに、鍋の構造を改良するためにフェルモが提案したアイディアにはコストがかかることが問題となり、イヴァーノは販売価格とコストのバランスを検討するための提案をした。この会議は、それぞれ異なる視点からのアイディアが飛び交う活発な議論となった。

最終的には、フェルモがコンロを外で試すことを提案し、ダリヤはそのアイディアに同意し、外での実験を行うことになった。この話し合いを通じて、フェルモとヴォルフはお互いの立場を理解し、より良い製品開発へと向かう一歩を踏み出した。

ダリヤとヴォルフが二階に上がった後、イヴァーノは小型魔導コンロと遠征用コンロを隣に並べた。フェルモは階段を見つめながら、ダリヤとヴォルフの関係について疑問を呈する。イヴァーノは彼らが友人であると答えるが、身分差があるため簡単ではないと説明する。その後、イヴァーノはフェルモに広い新しい工房を提案するが、フェルモはそれを断り、ダリヤとの協力関係について話し合う。フェルモはダリヤに望まれていない限り、動きたくないと言い、イヴァーノが職人としての年齢をからかうと、フェルモはやや冷静に答える。最後にフェルモは、身内や愛する人が危機にあれば行動すると述べる。

塔の台所でダリヤは野菜を、ヴォルフは肉を切っていた。ジュースと炭酸水が減った氷水バケツに、白ワインと黒エールが追加された。ダリヤは懇親会を兼ねて酒とチーズフォンデュを提案する。二人はそれに楽しみを感じ、笑顔を交わす。塔の周りは広く、隣の家が空き家であるため、騒いでも問題ないと考えられる。次に来る際、ダリヤは妖精結晶を持ってくると言い、これでスペアの眼鏡に挑戦できるとヴォルフは喜ぶ。お見合いの話があったが、ダリヤは驚きつつも断る。自由に好きなことをする現在の生活が良いと感じており、ヴォルフも同様の考えを持つ。二人はこれからも現在のように魔導具や魔剣を作り、自由に楽しみたいと思っている。

食材と飲み物を持ち、皆で庭に出たときはまだ日差しが強かった。大きな防水布を芝生に敷いて、その上に小型魔導コンロと遠征用コンロを設置した。一つのコンロは焼肉と焼き野菜用、もう一つはチーズフォンデュ用として準備された。焼肉が始まる前に、コンロの滑り止めや熱の問題などについて改良点が話し合われた。チーズが溶け、食事が始まりながらも、フェルモは鍋の設計について考え続けた。ダリヤは飲み物の準備に忙しく、ヴォルフとイヴァーノは軽食を楽しみながら商会の未来について語り合った。最後には、二人で乾杯し、ロセッティ商会の未来を祝った。

人工魔剣制作三回目 ~凍えし魔剣 ~

夕暮れ時の作業場で、ダリヤとヴォルフはライム入りの炭酸水を飲みながら会話を楽しんでいた。二人はお互いを呼び捨てにするほど親しくなっていた。ヴォルフは、希少素材の一つとしてブラックスライムの粉を使っているダリヤに他の必要な素材を尋ねた。ダリヤは、他のスライムも使っているが、ブラックスライムの独特の特性があるため、特にそれを求めていることを説明した。スライムにはさまざまな種類があり、それぞれ異なる属性の魔法を持っていると話した。

話題は幻のホワイトスライムにも及び、その回復魔法の効果をもつ粉を剣に付与できるかという話になったが、アンデッドに対しては効果的かもしれないという点で意見が一致した。しかし、現実的には神官の浄化魔法がアンデッドに対してより効果的であることが話された。二人は過去の学院時代の話に花を咲かせながら、今後の挑戦として「氷剣もどき」の制作にチャレンジすることに決めた。この新しい試みについて、ヴォルフは特に興奮している様子を見せた。

夕暮れ時、ダリヤとヴォルフは制作活動に没頭していた。ダリヤは短剣の柄の内部にポケットを作り、氷の魔石を入れるための準備を進めていた。これにより、スイッチを押すと刃部が氷で覆われる仕組みとなったが、意図せず柄まで冷える問題が発生した。ダリヤはこれが反射材の特性か、配置の問題かと考えていた。

その後、ヴォルフは氷の短剣を振って試すも、予想外に氷が厚くなり、柄にも氷が付着してしまった。これによりヴォルフの手が冷たくなり、凍傷の危険が生じた。ダリヤはヴォルフを浴室に連れていき、急いで氷を溶かした。これにより、二人は一時的にパニックに陥りつつも、問題を解決した。

この一連の出来事から、ダリヤは自分の行動に責任を感じ、ヴォルフの安全を第一に考えることの重要性を再認識した。しかし、彼女は自分の心配が過剰だったかもしれないと自己反省し、ヴォルフの選択と役割を尊重する必要があると感じていた。この経験は、彼らの関係において、互いの信頼と理解を深める機会となった。

紫の二角獣

ヴォルフは朝から身体を動かしていた。彼は魔物討伐部隊の一員で、その日の予定には体力作りの走り込みとチーム対戦の訓練が含まれていたが、それに加えて自主的な朝練も行っていた。これは、最近よく眠れない彼が自分を疲れさせて眠りやすくしようとしていたためである。彼の睡眠の問題に対して、ドリノは睡眠薬を提案したが、彼には効果がないため拒否された。その後、部隊長から緊急の討伐命令が出され、部隊は紫の二角獣の討伐に向かうこととなった。この魔物は見た者に幻覚を見せる特性を持ち、討伐が難しいとされていた。ヴォルフはこの討伐任務への参加を申し出、他の隊員たちも続いた。

副隊長グリゼルダと三十名の隊員、四人の魔導師が南街道の水場に討伐に向かった。到着してからは馬から降り、隊員のみで進んだ。グリゼルダと魔導師たちは幻覚防止の魔導具を使用しても幻覚の影響を受けており、特に右側の二匹の二角獣が強力だった。二角獣には親しい人々の姿が映り、それが彼らにとって非常に困難な状況を作り出していた。ヴォルフは先駆けを志願し、他の騎士達も彼を支援するために加わった。討伐では、魔導師たちの魔法で二角獣の動きを止め、騎士達がそれを討ち取った。その後、場の雰囲気は和らぎ、騎士たちはお互いに話し合いながら次の行動に移った。

幕間 先輩職人と利子

フェルモ・ガンドルフィはガンドルフィ工房の工房長で、小物製作の職人である。様々な金属や魔物素材の成形を依頼に応じて行い、昔からの固定客や妻の営業のおかげで仕事が回っていた。しかし、固定客の代替わりや妻の病気などで工房は傾き始め、フェルモは商業ギルド、ガブリエラの呼び出しに応じ、ロセッティ商会長であるダリヤと会った。ダリヤの職人としての腕を認め、共同で泡ポンプボトルの改良に取り組むことを決意し、彼女の提案にも関わらず当初は共同名義に抵抗感を持っていたが、彼女の真摯な姿勢を知り、了承した。ダリヤとの会話から、フェルモは職人としての自覚を新たにし、さらなる改良に取り組む決意を固めた。

イボダイの塩焼きと王都七不思議

ダリヤは緑の塔の台所でヴォルフと一緒にイボダイという魚を調理していた。イボダイは鯛の仲間で、銀色で黒い斑点が特徴的な魚であり、人気はないが、美味しいとされている。この日、ヴォルフはダリヤの招きで、遠征用コンロの試作を見に来ており、疲れている様子であった。ダリヤは遠征用コンロを使って、イボダイの塩焼きを作り、ヴォルフと一緒に食事を楽しんだ。イボダイはネバネバしているが、これが新鮮な証拠である。焼けたイボダイは甘みがあり、塩味が良く効いていて、ヴォルフもその味を気に入った様子であった。食事中にダリヤは遠征時の食材についても考え、干物や塩漬け魚などの保存が利く食材の使用を考慮していた。そして、食事の後で冷やした東酒を楽しみ、二人は遠征用コンロの性能について話し合った。

ダリヤは遠征用コンロと食材に関するアイデアをまとめている際、疲れたヴォルフが後片付けをしてくれた。その後、二人はソファーでリラックスしながら、王都の七不思議について話をした。この話題には、「王都の下水道に主がいる」という噂や、外壁の下にアダマンタイトが埋められているという伝説が含まれていた。また、王城に出入り口のない建物があるという話や、王城歌劇場で妖精が歌っているという話が出た。王族の治癒魔法の強さや、歴史資料館に幽霊がいるという話も交わされた。

会話の中で、「王は死んでも復活する」という王都の最も有名な不思議が話題になり、この話は治癒魔法に関するものである可能性が示唆された。ダリヤは遠征用コンロの改良についてヴォルフに期待を込めて語り、ヴォルフはその決意を応援した。夕食後の会話で、紫の二角獣との遭遇についてヴォルフが語り、幻覚魔法の影響で大切な人の幻影を見てしまうという困難を抱えていることが明かされた。この遠征の経験はヴォルフにとって非常に心理的な負担が大きいものだったが、彼はさらに強くなることを誓った。

今世の人々は魔石や魔物素材を利用し、魔物の存在による危険と共に生活している。ダリヤにとって、オルディネ王国は他国よりも安全な場所であり、魔物討伐部隊や魔導師の存在が大きい。強力な魔物は、自然災害のような存在であり、森大蛇や砂漠蟲、大海蛇などが大きな被害をもたらす。変異種の魔物も存在し、その出現や被害は予測がつかない。ダリヤは魔物と戦えないが、魔導具師としての役割を全うしようと考えている。彼女は魔導具を通じて、オルディネの人々や魔物討伐部隊の生活を少しでも良くすることを目指している。ヴォルフと共にがんばる決意を新たにしている。

番外編  父と娘の魔導具開発記録
~妖精結晶のランタン ~

三月は春間近であるが、朝晩の冷え込みは厳しい。緑の塔は石造りであり、深夜の階段は冷たい。ダリヤは初等学院生でありながら、暗い階段を怖がりつつも、作業場に向かう。父は体調が悪そうであり、夜遅くに妖精結晶のランタンを作成する必要があった。妖精結晶は貴重であり、妖精が隠れるための魔力が固まったものとされる。ダリヤは階段上から父の作業をこっそり覗き見た。父は作業机に突伏して寝ており、その前には幻影を映し出す妖精結晶のランタンがあった。白い紙が床に落ち、ダリヤが拾い上げると、それは母の死を知らせる便箋だった。父は未だに母を愛していることがわかり、ダリヤは父の悲しみに共感しながら、一人前の魔導具師になることを決意した。

カルロは二日酔いで起き上がるのが困難だった。前夜、妖精結晶のランタンを作りながら、元妻の死を思い、激しい感情に襲われていた。妖精結晶は加工が難しく、幻影や悪夢を見せることがあり、過剰に魔力を注ぐと粉になることもある。カルロは妖精結晶を使って、かつての妻テリーザとの幸せだった夏の日の思い出をランタンに映し出したが、悪夢も同時に見てしまう。その後、自分を慰めるように魔力ポーションを飲み、新たなランタンを完成させた。朝になり、ダリヤが朝食を呼びに来た際、彼はまだ毛布をかぶったままであり、娘に見られたかを心配していた。封筒から便箋が逆向きに戻されていたことから、ダリヤが母の死に関する内容を知ってしまったことを悟る。彼女は父のために一人前の魔導具師になりたいと宣言し、カルロはそれを支持しつつ、自身も娘を超えないよう努力することを誓う。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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