魔導具師ダリヤ 8巻レビュー
まとめ
魔導具師ダリヤ 10巻レビュー
物語の概要
■ 作品概要
ダリヤ・ロセッティは、ロセッティ商会会長および魔物討伐部隊相談役を務める庶民出身の魔導具師である。
物語は、元婚約者トビアスから亡父カルロの魔導書の写しと希少素材・加工業者の詳細な連絡先リストが届き、ダリヤが魔導書に紅血設定を行って商会の直接仕入れ基盤を確立させるところから始まる。
王城にて大盾の経過観察を行った際、グラート隊長より希少金属「銀赤」の縁取りが施された五重付与の特製相談役ローブを授与されるとともに、来春の男爵叙爵の内定を伝えられる。
その後、指導を受けるオズヴァルドの屋敷にて、妻エルメリンダとヴォルフの手合わせ中に負傷事故が発生する。
落ち込むヴォルフの気分転換を兼ね、ダリヤは希少金属「紅金」やヨナスの「赤ウロコ」を用いて『紅蓮の魔剣』を試作し、スカルファロット邸での検証を経て極めて高い攻撃兵器としての性能を露わにする。
見舞いに贈られたネリネの花言葉による貴族間の誤解リスクに対しては、副会長イヴァーノらが黒の蠍酒や蜂蜜酒を添えた迅速な商会フォローを行う。
終盤では、遠征用の「緑の野菜ジュース(青汁)」導入会議をきっかけに王城魔導具制作部を見学し、父の旧友であるウロス部長らの前で緻密な球面付与技術を実証し、庶民の職人から王城や貴族社会と深く結びつく魔導具師へと立ち位置を確固たるものにする。
■ 主要キャラクター
ダリヤ・ロセッティ
- 立場・所属 : 魔導具師、ロセッティ商会会長、魔物討伐部隊相談役。前世の記憶を持つ転生者。魔力数値は10。
- この巻での主な役割・変化 : トビアスから受け取ったカルロの魔導書の写しに針で指を刺して紅血設定を行い、商会の直接取引基盤を整える。王城にて銀赤の縁取りが施された五重付与の相談役ローブを受け取り、来春の男爵叙爵の内定を伝えられる。手合わせ事故で落ち込むヴォルフのため、紅金とヨナスの赤ウロコを用いて『紅蓮の魔剣』(室内灯目的の構造)を試作。王城魔導具制作部にて月光蝶の翅を用いた仮眠ランタンのガラスへの球面付与を行い、緻密でムラのない技術を結実させる。
ヴォルフレード・スカルファロット(ヴォルフ)
- 立場・所属 : 王城騎士団魔物討伐部隊員、伯爵家四男(黒髪金目)。体内魔力数値は12。
- この巻での主な役割・変化 : ダリヤの友人・仕事仲間。ゾーラ邸での手合わせ中、亡き母(黒髪の騎士)の面影を重ねて本気となり、身体強化と風魔法を駆使した空中戦の末に加減を誤ってエルメリンダの短剣を折り、脚に深い切創を負わせる。落ち込みからダリヤと共に『紅蓮の魔剣』を制作し、実家で兄グイードやヨナスに披露する。ゾーラ家およびダリヤへお見舞いとしてネリネの花を箱で贈り、意図せず愛人関係や逢瀬を唆る貴族間の誤解リスクを生じさせる。
ヨナス・グッドウィン
- 立場・所属 : グイードの従者・護衛、スカルファロット家武具開発部門長、「魔付き」。
- この巻での主な役割・変化 : 王城の馬場にて、実兄(グッドウィン子爵家)から2時間待たれた末に「魔付きの解除と実家復帰」か「離籍」を迫られ、即座に離籍を選択する。ダリヤと共に来春の男爵叙爵が内定する。自らの功績を謙遜するダリヤに対し、金銭やウロコによる礼を断られたため、ダリヤ側からの提案で「ダリヤの貸し(ヨナスの借り)」という関係を受け入れる。ダリヤに自らの赤ウロコを提供し、紅蓮の魔剣に莫大な火の魔力を注ぎ込んで炎の巨大な花弁を出現させる。
グイード・スカルファロット
- 立場・所属 : スカルファロット伯爵家当主代理(次期侯爵)、ヴォルフの兄。
- この巻での主な役割・変化 : ヨナスの実家離籍と叙爵の動きを察知し、養子先の選定や地位の保護に動く。ヴォルフが持ち帰った『紅蓮の魔剣』の威力を実家の裏庭で検証し、天井に達する炎の威力を確認したことで、ヨナスへの叙爵祝いとして同様の魔剣制作または製法伝授をダリヤに打診することを決める。
オズヴァルド・ゾーラ
- 立場・所属 : ゾーラ商会関係者(子爵)、ダリヤの魔導具師の指導者。学院時代の二つ名は『猛吹雪』。
- この巻での主な役割・変化 : 第一夫人、第二夫人、第三夫人(エルメリンダ)の3人をいずれも第一夫人の実家(子爵家)の養女として迎え、二家による完全な「同盟」関係を構築している。エルメリンダがヴォルフとの手合わせで負傷した際、銀狐のごとく激昂して駆けつけ、普段隠していた深い愛情と独占欲、嫉妬を露わにする。
エルメリンダ・ゾーラ
- 立場・所属 : オズヴァルドの第三夫人、元上級冒険者(「刃風のエル」)。魔力数値は14。身体強化および風魔法の専門家。
- この巻での主な役割・変化 : ヴォルフに手合わせを申し込み、本気の戦闘へ突入して脚に深い傷を負う。ポーションで治療後、オズヴァルドが自分の名前呼びやヴォルフとの手合わせに嫉妬していたことを知り、夫の深い愛と独占欲に歓喜する。
ジルド
- 立場・所属 : 王城財務部長(侯爵)。
- この巻での主な役割・変化 : グラートと共にダリヤの叙爵を祝う品(花束、水晶の花瓶、紅茶、ドライフルーツ)を贈る。遠征用「緑の野菜ジュース」の導入会議に参加し、予算試算を行う。王城魔導具制作部の見学に同行し、予算過多のウロス部長に容赦ない指摘を行い分を弁えさせるとともに、ダリヤの安全管理・開発視点を高く評価して財務部へ招こうとする。
イヴァーノ
- 立場・所属 : ロセッティ商会副会長(「紺の鳥」)。
- この巻での主な役割・変化 : トビアスから届いた書類の写しや素材・業者リストを整理し、オルランド商会を下請けとして適切に扱う体制を整える。マルチェラの育児休業体制を明文化して商会の労働環境を整備。ヴォルフが贈ったネリネの花言葉(「再会を楽しみに」「幸せな思い出」)と箱詰め様式が招く貴族社会での誤解を即座に見抜き、ゾーラ家へ黒の蠍酒や蜂蜜酒を添えた正式なお見舞い手配を行って不義理を防ぐ。
マルチェラ&イルマ
- 立場・所属 : ダリヤの友人夫婦(マルチェラはダリヤの護衛、イルマは美容師)。
- この巻での主な役割・変化 : イルマが双子を妊娠7ヶ月で迎え、9ヶ月目からの神殿移動に備える。仲間たちが自宅に集まり、双子用乳母車や魔法暴発防止魔導具、ベルニージ夫妻からの山羊の乳お届けサービス(目録)などの出産祝い品を決定する。マルチェラはベルニージから義手慣らしを兼ねた組み手や剣の指導を受ける。
カルミネ・ザナルディ&ウロス・ウォーロック
- 立場・所属 : 王城魔導具制作部副部長(カルミネ)、部長(ウロス)。
- この巻での主な役割・変化 : カルミネは大型粉砕機の開発においてダリヤに協力を求め、制作部一課・二課を案内する。ウロスは学院時代の魔導具研究会でカルロやレオーネ(現・商業ギルド長)の先輩であり、高魔力ゆえにクラーケンテープが貼れない弊害を持つ。ダリヤに月光蝶の翅を用いた「仮眠ランタン」の球面付与を行わせ、その完璧な仕上がりを見てカルロの技術継承を絶賛し、専用作業用手袋の提供を申し出る。
読んだ本のタイトル
魔導具師ダリヤはうつむかない ~今日から自由な職人ライフ~ 9巻
(英語名:Dahlia in Bloom: Crafting a Fresh Start with Magical Tools)
著者:甘岸久弥 氏
イラスト:駒田ハチ 氏
キャラクター原案:景 氏
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あらすじ・内容
炎龍や氷龍のウロコに月光蝶の結晶、希少素材でダリヤが作るものは!?
魔導具師ダリヤはうつむかない ~今日から自由な職人ライフ~ 9
スカルファロット家武具部門と協力し、開発を重ねる女性魔導具師のダリヤ。
ダリヤは魔物討伐部隊相談役として認められ、彼女の叙爵が正式に決定する。
そんなある日、王城魔導具制作部を見学する機会に恵まれたダリヤは、制作部長、副部長同席のもと、月光蝶を使用した魔導ランタンへの付与を体験することに。
「美しい付与は、カルロに似たのだな」
父から受け継いだ技術、そして彼女自身の人柄で多くの人を引き付けていくダリヤを前に、ヴォルフは彼女を守りたいという気持ちを強めていくのだった。
そんな二人を見守る周囲は、ダリヤが叙爵前のお披露目で舞踏会に参加することを好機とばかりに、ヴォルフの背を押そうとあらゆる手を画策するが――!?
魔導具師ダリヤのものづくりストーリー、二人の気持ちが動きだす第九弾、開幕!
感想
五本指靴下から始まり、遠征用コンロ、防水布、衝撃吸収材。
さらには魔物との戦闘で四肢を失った元騎士達のための義手や義足まで。
魔物討伐部隊の環境を次々と改善してきたダリヤ。
その功績によって魔物討伐部隊の相談役となったわけだが、とうとう次の段階へ進むことになる。
年が明ければ男爵に叙爵される。
……男爵?
本人は相変わらず、
「少し便利な物を作っています」
くらいの感覚なのに、周囲から見た功績がとんでもないことになってきた。
そして男爵になるということは、当然ながら貴族社会に入るということでもある。
礼儀作法。
社交。
王城。
仕事。
商会。
魔物討伐部隊の相談役。
ただでさえ忙しいのに、さらに予定が増えていく。
ダリヤ、本当に身体が足りるのだろうか。
五本指靴下から始まって、ついに男爵へ
改めてダリヤが作ってきたものを考えると、かなり面白い。
最初から、
「歴史に名を残す魔導具を作ってやる!」
と考えていたわけではない。
むしろ逆である。
足が蒸れるなら五本指靴下。
遠征先でも温かい物を食べたいなら遠征用コンロ。
騎士達の身体への負担を減らしたいなら衝撃吸収材。
手足を失った元騎士が困っているなら義手や義足。
目の前に困っている人がいる。
だったら少し便利にできないだろうか。
そんな積み重ねだった。
ところが、その「少し便利」が魔物討伐部隊全体の環境を変えてしまった。
そしてついには爵位までついてくる。
ダリヤ本人よりも周囲の方が、
「いや、あなたがやったことはそれくらい大きいから」
と理解している感じが面白い。
相談役専用ローブまで豪華すぎる
しかも相談役として渡されるローブが普通ではない。
火。
土。
水。
風。
さらに緊急防御。
五重付与。
縁取りには希少金属まで使われている。
完全に重要人物用の装備である。
魔物討伐部隊としても、
「この人は絶対に守る」
という意思が伝わってくる。
考えてみれば当然なのかもしれない。
ダリヤが一つ魔導具を作るだけで、騎士達の生存率や遠征環境が変わる可能性がある。
戦えるわけではない。
でも、魔物討伐部隊にとって欠かせない人になっている。
前線で剣を振るうだけが戦力ではないというのが、この作品らしいところだと思う。
しかし男爵になるなら礼儀作法が必要になる
問題はここからである。
男爵になる。
めでたい。
だが、ダリヤ本人にとっては仕事が増える。
貴族としての礼儀作法を覚えなければならない。
言葉遣い。
挨拶。
社交。
立ち居振る舞い。
魔導具を作るなら何時間でも集中できそうなのに、こちらはかなり苦戦する。
なんとなく分かる。
得意分野なら時間を忘れて作業できるのに、慣れないことを覚えるのはものすごく疲れる。
しかもダリヤは商会長でもある。
魔導具師でもある。
魔物討伐部隊相談役でもある。
そこへ、
「今度から貴族なので勉強してください」
まで追加される。
忙しすぎる。
そして王城魔導具制作部へ
そんなダリヤが相談役として王城魔導具制作部を見学することになる。
ここは王城の魔導具を作っている場所。
当然ながら一流の魔導具師達が集まっている。
ダリヤからすれば完全に上の世界である。
しかし話をしていると、また出てくる。
父カルロの名前が。
そして商業ギルド長レオーネの名前まで出てくる。
ダリヤが知らないところで父親の人脈がどんどん出てくるのが面白い。
「カルロさん、どれだけ顔が広かったんだ」
と思ってしまう。
父カルロはやっぱり凄い魔導具師だったんだな
王城魔導具制作部の部長ウロスは、学院時代の魔導具研究会でカルロ達と関わっていた人物。
つまり、ダリヤが知らない若い頃のカルロを知っている。
このシリーズでは巻を重ねるごとに、亡くなったカルロの別の顔が少しずつ見えてくる。
父親としてのカルロ。
師匠としてのカルロ。
商売人としてのカルロ。
魔導具師としてのカルロ。
そして今回は、同じ魔導具師達から見たカルロである。
ダリヤにとってはずっと身近な「父さん」だった。
でも外へ出れば出るほど、
「カルロ・ロセッティという魔導具師はかなり凄い人物だったのでは?」
という事実が見えてくる。
父親の死後に、父親の人生を知っていく。
この流れが結構好きだ。
王城の魔導具師達の前で魔力付与
そしてダリヤも魔力付与をやってみることになる。
月光蝶の翅を使った仮眠用ランタン。
ガラスへの球面付与である。
周囲は王城の魔導具師。
高い魔力を持った一流の職人達。
彼らは短時間で付与を終えていく。
一方のダリヤは時間がかかる。
汗だく。
出来上がった色も周囲より淡い。
そして本人は思う。
やってしまった。
失敗した。
不良品を作ってしまった。
……ところが。
周囲の反応がおかしい。
ダリヤ、それ失敗じゃないらしいぞ
部長達が見ていたのは色の濃さではなかった。
付与の均一さ。
ムラのなさ。
球面全体へ丁寧に施された魔力。
ダリヤ本人は、
「時間もかかったし、色も薄い」
と落ち込んでいる。
しかし一流の魔導具師達からすれば、
「なんだ、この綺麗な付与は」
となる。
この認識のズレがダリヤらしい。
本人は魔力が高いわけではない。
だから周囲のように一気に強い魔力を流すことはできない。
その代わり、時間をかける。
丁寧に。
均一に。
ムラなく。
それが技術になっている。
そして「カルロの技術を受け継いでいる」と認められる
ここがかなり印象に残った。
ダリヤの付与を見たウロス達が、父カルロの技術を思い出す。
ダリヤ本人にとっては、ずっと当たり前にやってきた方法だったのかもしれない。
父親から教えられた。
繰り返し練習した。
だからそうしている。
でも王城の一流の魔導具師から見れば、それは明確な技術だった。
カルロが娘へ残したもの。
魔導書だけではない。
人脈だけでもない。
技術そのものがダリヤの中に残っている。
ここは良かった。
ダリヤは自分の評価が低すぎる
それにしても、ダリヤは自分を低く見すぎでは?
周囲の高魔力な魔導具師を見て、
「自分は魔力が低いから」
と考える。
付与に時間がかかれば、
「遅かった」
と思う。
色が薄ければ、
「失敗した」
と思う。
でも周囲は完成品を見て絶賛する。
これは9巻だけの話ではない。
ダリヤはずっとそうだった。
自分が作っているのは生活用品。
少し便利にしただけ。
みんなに協力してもらったから完成した。
もちろん、それ自体は間違っていない。
実際にダリヤは多くの人に支えられている。
でも同時に、
「その発想を形にしているのはダリヤなんだよ」
とも思う。
「凄い魔力」ではなく「丁寧な技術」で評価されるのが良い
今回特に良かったのは、単純にダリヤの魔力が突然強くなるわけではないところだった。
魔力の量なら上がいる。
もっと速く付与できる人もいる。
それでもダリヤにはダリヤの技術がある。
時間をかける。
丁寧に作る。
失敗しないよう確認する。
均一に仕上げる。
派手ではない。
でも、それを一流の職人達がきちんと評価してくれる。
こういう成長の描き方は好きだ。
ダリヤは父親の後を追っているわけではない
カルロの名前が何度も出てくるので、父親の跡を継ぐ話にも見える。
でも、読んでいて少し違うように感じた。
ダリヤはカルロと同じ魔導具師になろうとしているわけではない。
父から教わった技術は受け継いでいる。
父の人脈にも助けられている。
しかし作っている物はダリヤ自身が考えたものだ。
五本指靴下。
防水布。
遠征用コンロ。
衝撃吸収材。
義手義足。
そして魔物討伐部隊のための様々な道具。
カルロから受け取ったものを土台にして、自分の道を進んでいる。
だからこそ、父を知る人達から認められる場面にも意味があるのだと思う。
気がつけばダリヤの立場がとんでもないことになっている
改めて現在のダリヤを整理すると凄い。
ロセッティ商会会長。
魔導具師。
魔物討伐部隊相談役。
王城魔導具制作部ともつながりができる。
スカルファロット家からも守られている。
商業ギルドとの関係も深い。
そして来春には男爵。
1巻の頃から考えると、立場が変わりすぎである。
婚約を破棄されて、
「これから自分の好きなように魔導具を作ろう」
と始まった生活だった。
それがいつの間にか王城まで届いている。
でも本人はあまり変わっていない。
目の前の人が困っている。
だったら何か作れないだろうか。
その姿勢はずっと同じである。
9巻はダリヤの「積み重ね」が評価される巻だった
『魔導具師ダリヤはうつむかない』9巻を読んでいて強く感じたのは、これまで積み重ねてきたものが形になって返ってくる巻だということだった。
魔物討伐部隊へ提供してきた魔導具。
義手や義足。
相談役としての仕事。
カルロから教わった魔力付与。
周囲との人間関係。
商会として積み重ねてきた信用。
それらがつながって、ダリヤの立場を押し上げていく。
本人が爵位を欲しがって動いたわけではない。
王城で評価されようとして魔導具を作ったわけでもない。
ただ目の前の問題を一つずつ解決してきた。
その結果、
「あなたはもう、それだけの立場にいる人ですよ」
と周囲から示されているように感じた。
まとめ
9巻では、ダリヤが魔導具師としても、ロセッティ商会の会長としても、さらに大きな場所へ進んでいく。
魔物討伐部隊の相談役。
来春の男爵叙爵。
貴族としての礼儀作法。
そして王城魔導具制作部とのつながり。
どんどん世界が広がっている。
それでも印象に残ったのは、王城の一流魔導具師達を前にして、
「失敗したかもしれない」
と不安になるダリヤだった。
本人は自分の魔力の低さを見る。
周囲は彼女の技術を見る。
本人は時間がかかったことを気にする。
周囲は完成品の丁寧さを見る。
このズレが面白い。
そして、その技術が父カルロから受け継いだものだと認められる。
父親から受け取ったものを土台にしながら、ダリヤ自身の魔導具師としての道がどんどん広がっている。
五本指靴下を作っていた魔導具師が、義手義足を作り、魔物討伐部隊の相談役となり、とうとう男爵になる。
それでも本人は、たぶんこれからも変わらない。
「これ、もう少し便利にできませんかね?」
そんな一言から、また周囲を巻き込んでいくのだろう。
そしてイヴァーノの胃が痛くなる。
そこまで含めて、今後が楽しみである。
最後までお読み頂きありがとうございます。
魔導具師ダリヤ 8巻レビュー
まとめ
魔導具師ダリヤ 10巻レビュー
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考察・解説
ストーリー・プロット
第1幕:魔導書の到着と相談役ローブ・男爵叙爵の内定
元婚約者トビアスから、亡父カルロの魔導書の写しと、希少素材の仕入れ先・加工業者の連絡先および価格リストがロセッティ商会へ届く。ダリヤは指に針を刺して緑の石に血を垂らす「紅血設定」を行い、商会としてもオルランド商会を経由しない直接的な素材仕入れ基盤を確立させる。
その後、王城の魔物討伐部隊棟で衝撃吸収材を付けた大盾の経過観察を行った際、グラート隊長より「相談役」としての特製オーバーローブが授与される。
このローブは火・土・水・風の魔法耐性上げと緊急防御が施された「五重付与」であり、縁取りにはサラマンダーが棲む銀鉱脈から採れる希少金属「銀赤」が使用されている。
さらに、隊への多大な貢献が認められ、来春にダリヤとヨナスが正式に男爵へ叙爵される内定が下りたことを告げられる。
第2幕:ヨナスの身元問題とダリヤへの「貸し」
王城の馬場にて、ヨナスは実兄(グッドウィン子爵家)から馬車脇で2時間待たれた末に「魔付きの解除と実家復帰」または「離籍」を迫られ、即座に離籍を選択する。馬車内にいたダリヤとマルチェラはこの会話を意図せず盗み聞きしてしまう。
その後、緑の塔へ荷物を運んだヨナスは、男爵叙爵の功績がダリヤから譲られたものであるとして深謝し、金銭やウロコによるお礼を申し出る。ダリヤがそれを固辞し、「では『貸し』とさせてください」と提案したことで、ヨナスは「女性への『借り』は高くつく」と納得して受け入れる。
両者は対等な仕事仲間および来春の叙爵同士としての信頼関係を深め、ヨナスは新たな養子先の選定へと動くことになる。
第3幕:仲間たちの集いとイルマの出産お祝い品決め
双子を妊娠中で七ヶ月を迎えたイルマと夫マルチェラの自宅に、ダリヤ、ヴォルフ、イヴァーノ、ルチア、メーナが集まり、出産祝いの品決めを行う。
イヴァーノが神殿入りの日から産後までのマルチェラの育児休業体制(有給)を明文化して整備する中、各自が実用的な贈り物を申し出る。
ルチアはベビー服とおむつ、ダリヤは防水布を用いた雨除け付き双子用乳母車、ヴォルフは幼児の魔法暴発防止魔導具、イヴァーノは大盛の沐浴用品、そしてベルニージ夫妻からは山羊の乳お届けサービス一年分の目録が贈られる。
商会メンバーと友人たちが支え合う体制を再確認し、双子の誕生に向けた準備が整う。
第4幕:ゾーラ邸での指導とエルメリンダとの手合わせ事故
オズヴァルドの屋敷での指導中、元上級冒険者(「刃風のエル」、魔力14)である第三夫人エルメリンダが、ヴォルフに手合わせを申し込む。
庭での打ち合い中、ヴォルフは黒髪のエルメリンダに亡き母(黒髪の騎士)の面影を重ね、「強い相手に手加減はいらない」という思いが「勝ちたい」という執着へ変質する。
身体強化と風魔法、天狼の腕輪による空中戦へと戦闘が加熱した末、ヴォルフの長剣によってエルメリンダの短剣が折れ、彼女の膝下に深い切創を負わせてしまう。騒ぎを聞きつけたオズヴァルドは激怒して駆けつけ、手当を通じて妻への深い愛情と隠していた独占欲・嫉妬を露わにする。
ポーション治療後、エルメリンダは夫の激しい嫉妬を知って歓喜し、ヴォルフは自身の加減のなさに深く落ち込む。
第5幕:『紅蓮の魔剣』の制作とスカルファロット邸での検証
手合わせ事故で深く落ち込むヴォルフの気分転換のため、ダリヤは塔で新しい魔剣の試作を提案する。
高級金属「紅金」、銀蛍の翅の粉、そしてヨナスから提供された「赤ウロコ」を用いて、刃に炎のグラデーションが走る安全な構造(室内灯目的の「剣型室内灯」)を完成させ、『紅蓮の魔剣』と命名する。ヴォルフがスカルファロット邸に持ち帰り、グイードとヨナスに披露した際、強い火の魔力を持つヨナスが魔力を流すと、天井に達するほどの巨大な炎の花弁が噴出する。
実家の裏庭での実験を経て、グイードはその高い攻撃兵器としての性能を認め、ヨナスへの叙爵祝いとして同様の魔剣制作または製法伝授をダリヤに打診することを決定する。
第6幕:ネリネの花束による誤解と商会によるフォロー
ヴォルフがゾーラ家への怪我のお見舞いとして生花店で選んだ「ネリネ」の花(花言葉:「再会を楽しみに」「幸せな思い出」)が、白い箱に銀粉を散らした様式で送られ、気遣いとして金粉入りの同種の花がダリヤにも届く。
商会で花を見たメーナとイヴァーノは、ネリネの花言葉や箱詰めの様式が貴族間で「逢瀬の示唆や愛人関係、秘密の復縁」等の誤解を生むリスクを指摘する。
ヴォルフに他意はないものの、ゾーラ家との不要な摩擦を防ぐため、ロセッティ商会としてオズヴァルドへ高級酒(黒の蠍酒や蜂蜜酒)に感謝の文面を添えた正式なお見舞いを即座に手配し、不義理と貴族間の誤解を回避するフォローを行う。
第7幕:王城魔導具制作部(一課・二課)の見学と球面付与の実証
遠征用「緑の野菜ジュース(青汁)」の導入会議にて、壊血病(大船乗りの病)や栄養偏重の対策を協議した後、ダリヤはジルド、ヴォルフと共に王城魔導具制作部を見学する。
一課(武具・防具、ゴッフレードの義手『風掴み』)と二課(生活用魔導具、馬用給湯器)を回り、大型粉砕機の開発協力を承諾する。
さらに作業室にて、父カルロの学院時代(魔導具研究会)の先輩であるウロス部長やカルミネ副部長のもと、月光蝶の翅を用いた「仮眠ランタン」のガラスへの球面付与を体験する。
ダリヤは控えめな魔力(10)ゆえに5分以上の時間を要し、汗を流しながら淡い青色に仕上げ、「不良品を作った」と恥じ入るが、ウロスとカルミネはムラが一切ない完璧な球面付与に感服し、カルロの極めて優れた技術の継承であると絶賛する。
主要な転換点
転換点1:トビアスからの魔導書写しと素材・取引先リストの到着
- それ以前の状況 : ダリヤは父カルロの遺した魔導書の行方や、オルランド商会との取引関係の整理について決着を待つ状態であった。
- 出来事 : トビアスがカルロの魔導書を全て書き写した上でダリヤに返送し、さらに希少素材の入手先や加工業者の詳細な連絡先・価格リストを同封して寄贈した。
- 変化 : ロセッティ商会がオルランド商会を経由せず、直接的に素材の仕入れや加工業者への相談・直接発注を行える体制が整った。
- 次への影響 : 商会の取引基盤が大幅に強化され、下請け関係の明確化とともに、ダリヤが紅金などの高級素材を使った新たな試作(紅蓮の魔剣など)に踏み出す直接のきっかけとなった。
転換点2:王城での男爵叙爵の内定と相談役ローブの授与
- それ以前の状況 : ダリヤとヨナスは魔物討伐部隊の「相談役」として協力していたが、貴族籍を持たないため王城の一部施設への立ち入りや発言権に制限があった。
- 出来事 : グラート隊長より、来春にダリヤとヨナスの男爵叙爵が正式決定したことと、相談役用の五重付与特製ローブ(銀赤の縁取り)が授与された。
- 変化 : 両者の王城内および対外的な立場が男爵同格となり、公的な発言権や活動範囲が大幅に拡大した。
- 次への影響 : 貴族社会へのお披露目やマナー教育の必要性が生じ、ジルドによる顔つなぎお披露目会の打診や、ヨナスの養子先選び・グイードの護衛継続といった展開に繋がった。
転換点3:ゾーラ邸でのエルメリンダの負傷事故
- それ以前の状況 : ヴォルフはオズヴァルドの妻エルメリンダ(元上級冒険者)と好意的な挨拶を交わし、待ち時間を利用して庭で手合わせを開始した。
- 出来事 : 戦闘が加熱して互いに本気となり、ヴォルフの長剣によってエルメリンダの短剣が折れ、膝下を大きく切る負傷を負わせた。
- 変化 : オズヴァルドが激怒して駆けつけ、夫婦間の深い愛情と独占欲が顕わになると同時に、ヴォルフは自身の加減のなさと母の面影を追っていたことに深く落ち込んだ。
- 次への影響 : 落ち込むヴォルフの気分転換としてダリヤとの『紅蓮の魔剣』制作が行われ、また誤解を招く「ネリネの花」の送付とそれに対する商会のフォロー作業が発生した。
転換点4:『紅蓮の魔剣』の試作とスカルファロット邸での魔力検証
- それ以前の状況 : ダリヤは父の魔導書から得た知識と高級素材(紅金、ヨナスの赤ウロコ)を用いた安全な試作を行おうとしていた。
- 出来事 : 塔で刀身が炎で光る安全な『紅蓮の魔剣』(室内灯目的)を完成させ、ヴォルフがスカルファロット邸でグイードとヨナスに披露した際、ヨナスが魔力を流すと天井に届くほどの巨大な炎の花弁が噴出した。
- 変化 : 単なる鑑賞・室内灯用と思われた構造が、高魔力者(火属性)が使用することで強力な攻撃兵器へと変貌することが判明した。
- 次への影響 : グイードがこの構造を高く評価し、ヨナスへの叙爵祝いとして同型の魔剣の制作(または製法の伝授)をダリヤに依頼することを決めた。
転換点5:「緑の野菜ジュース」導入会議と王城魔導具制作部での球面付与実証
- それ以前の状況 : ダリヤは自身の魔力数値(10)を控えめと捉え、王城の最高峰エリート技術者たちに対して気後れや引け目を感じていた。
- 出来事 : 野菜ジュース導入会議を経て魔導具制作部を見学し、ウロス部長やカルミネ副部長の前で月光蝶の翅を用いた仮眠ランタンへの球面付与を実証した。
- 変化 : 時間をかけて丁寧かつ均一に仕上げた技術が、父カルロの真髄を継ぐ「ムラのない完璧な球面付与」として王城トップの魔導具師たちに絶賛・公認された。
- 次への影響 : 王城魔導具制作部との直接的な技術連携ラインが確立し、ウロスからの素材提供や専用作業手袋の贈与、大型粉砕機開発への参画へと発展した。
転換点6:ヨナスの実家離籍と対等な「貸し」の確立
- それ以前の状況 : ヨナスはグッドウィン家の一員でありながら「魔付き」として扱われ、実家とグイードの護衛役という複雑な板挟み状態にあった。
- 出来事 : 王城の馬場で兄からの通告に対し即座にグッドウィン家からの離籍を選択し、叙爵内定の日にダリヤに対して「功績を譲られた」と深謝するも、ダリヤから「将来の貸し」とする提案を受けた。
- 変化 : ヨナスは実家から独立した男爵候補・相談役仲間となり、ダリヤに対して一方的な債務感(借り)を持った状態から、対等に頼り合えるプロフェッショナルの絆へと移行した。
- 次への影響 : スカルファロット家後援のもとで養子先選びが進み、ダリヤとヨナスが王城や武具開発において遠慮なく背中を預け合う対等なパートナーシップが構築された。
ダリヤを中心とした人物関係の変化
ヴォルフ
- 開始時 : 二度の偶然の出会いから親しい友人・仕事仲間となり、日常的に食事や魔導具の試作を共にする関係。
- 主な出来事 : 男爵叙爵の内定を共に喜び、ゾーラ邸での手合わせ事故後に塔で『紅蓮の魔剣』を共同制作する。ネリネの花の送付による花言葉の誤解(逢瀬や愛人関係の示唆)が浮き彫りになる。
- 巻末時 : 男爵叙爵により身分上の距離が少し縮まることを互いに認識しつつ、敬語や崩した口調に関する約束を再確認し、変わらず対等な友人・制作パートナーとしての強い信頼関係を維持している。
ヨナス
- 開始時 : グイードの従者・護衛であり、スカルファロット家武具開発部門の共同作業者。
- 主な出来事 : ヨナスが実家から離籍する場面に遭遇する。同日に男爵叙爵が内定したことで、ヨナスから「功績を譲られた」として深謝されるが、ダリヤは固辞して「将来の貸し(ヨナスの借り)」とする。ヨナスの赤ウロコを魔剣制作に使用する。
- 巻末時 : 対等な男爵同士・相談役仲間としての絆が深まり、気兼ねなく互いに頼り合える関係へと変化した。
主人公の認識と周囲の評価
主人公自身の認識
- 自分は魔力数値(10)が控えめな庶民出身の魔導具師であり、作っているものは生活に根ざした道具や小規模な改善品に過ぎないと考えている。
- 男爵叙爵や魔物討伐部隊相談役としての功績は、周囲の騎士やグイード、ヨナス、素材提供者たちのおかげであり、自分一人の実力によるものではないと捉えている。
周囲からの評価
- 魔物討伐部隊(グラート、騎士たち) : 隊の装備や衛生、食生活(遠征用コンロ、衝撃吸収材、義手義足、緑の野菜ジュース)を根本から改善してくれる不可欠で尊い「相談役・ダリヤ先生」。
- 王城財務部(ジルド) : 商業的・実用的な価値を正確に見抜き、予算削減や安全管理にも寄与する極めて有能な開発者。
- 王城魔導具制作部(ウロス、カルミネ) : 魔力数値以上の緻密で美しい「球面付与」の技術を持ち、伝説的な魔導具師カルロの才能を正しく受け継いだ敬意を表すべき対象。
認識の差が現れた場面
- 王城魔導具制作部での「球面付与」の場面 :
- ダリヤの認識 : 周囲の高魔力な王城魔導具師たちが3分足らずで鮮やかな青に染め上げる中、自分は付与作業に5分以上の時間を要し、額から汗を滴らせて深緑のワンピースを濡らし、色の濃さも淡くなったため、「不良品を作ってしまった」と恥じ入り謝罪した。
- 周囲の評価 : 部長のウロスや副部長のカルミネは、ムラがなく均一で極めて緻密・完璧な球面付与の仕上がりを見て、父カルロの優れた技術の継承であると深く感心・絶賛した。カルロが生前「一輪だけで咲くのではなく、多くの人に囲まれ、長く幸せに生きてほしい」と願っていた通り、ダリヤの丁寧な仕事ぶりが王城の一流職人たちを引き寄せる結果となった。
魔導具師ダリヤ 8巻レビュー
まとめ
魔導具師ダリヤ 10巻レビュー
キャラクター紹介
ダリヤ・ロセッティ
オルディネ王国で活動する魔導具師であり、ロセッティ商会の会長。前世の知識と今世の魔法を組み合わせ、人々の生活に役立つ魔導具を開発している。ヴォルフレードとは公私にわたるパートナーであり、互いに信頼し合っている。
- 所属組織、地位や役職
- ロセッティ商会・会長。
- 魔物討伐部隊相談役(男爵叙爵予定)。
- 物語内での具体的な行動や成果
- 魔物討伐部隊から「相談役」としてのローブを授与され、男爵への叙爵が告げられた。
- ヴォルフレードと共に「紅蓮の魔剣」を制作し、その美しい炎を確認した。
- 王城の魔導具制作部を見学し、カルミネやウロスから技術や設備について学んだ。
- スライムの溶解液でスカートを溶かす事故に遭ったが、ヴォルフの助けで事なきを得た。
- ヨナスの依頼を受け、グイードへの祝い品として「氷蓮の短杖」の制作をレオーネに依頼した。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
- 魔物討伐部隊への貢献が認められ、貴族(男爵)としての地位を得ることが決定した。
- 王城魔導具制作部との連携が深まり、外部の魔導具師としての評価が高まっている。
ヴォルフレード・スカルファロット(ヴォルフ)
魔物討伐部隊の騎士であり、伯爵家の四男。ダリヤの良き理解者であり、彼女の護衛や魔導具開発の助手を務める。
- 所属組織、地位や役職
- 王城騎士団・魔物討伐部隊員(赤鎧)。
- 男爵叙爵予定。
- 物語内での具体的な行動や成果
- ダリヤの男爵叙爵を祝い、花束と酒を贈った。
- オズヴァルドの屋敷でエルメリンダと剣の打ち合いを行い、彼女に怪我をさせてしまったが、和解した。
- 兄グイードにエルメリンダの一件を報告し、貴族間の対応について助言を受けた。
- ダリヤのスカートがスライムに溶かされた際、迅速に対応し彼女を守った。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
- ダリヤと共に男爵に叙爵されることが決まり、身分的な基盤が固まりつつある。
- 魔剣「紅蓮の魔剣」の美しさに魅了され、ヨナスへの贈り物としても提案した。
ヨナス・グッドウィン
グイードの従者であり、護衛。魔付きであり、スカルファロット武具工房長も務める。
- 所属組織、地位や役職
- グイードの従者。
- スカルファロット武具工房長。
- 男爵叙爵予定。
- 物語内での具体的な行動や成果
- ダリヤと共に男爵への叙爵が告げられ、彼女への深い感謝と恩返しを申し出た。
- グイードへの昇進祝いとして、氷龍のウロコを使った短杖の制作をダリヤに依頼した。
- スライム事故の直後にダリヤを訪ね、彼女の安全を確認するとともにスライム容器の改善を助言した。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
- スカルファロット家からの離籍や養子縁組の話が進んでいるが、騎士としてグイードに仕え続ける意志は変わらない。
グイード・スカルファロット
ヴォルフレードの兄であり、スカルファロット家の次期当主。弟やヨナスの将来を案じ、的確な手を打つ。
- 所属組織、地位や役職
- スカルファロット家・長男。
- 侯爵叙爵予定。
- 物語内での具体的な行動や成果
- ヨナスの身分や将来について話し合い、彼が騎士として留まるための調整を行った。
- ヴォルフからエルメリンダへの怪我の報告を受け、政略や同盟の観点から対応策を教授した。
- ヨナスへの叙爵祝いとして、「紅蓮の魔剣」と同様の魔剣制作をヴォルフに提案した。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
- 侯爵への昇進を控えており、家内だけでなく対外的な影響力も増している。
イヴァーノ・メルカダンテ
ロセッティ商会の副会長。ダリヤの代理として商務や対外折衝を取り仕切る。
- 所属組織、地位や役職
- ロセッティ商会・副会長。
- 物語内での具体的な行動や成果
- オルランド商会から届いた魔導書や書類を確認し、今後の業務に活かす手配をした。
- ジルドから届いた舞踏会の招待客リストを確認し、ダリヤのお披露目に向けた準備を進めた。
- ヴォルフがダリヤのエスコート役を務めるよう調整した。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
- 商会の実質的な運営を担い、貴族やギルドとの調整役として手腕を振るっている。
オズヴァルド・ゾーラ
熟練の魔導具師であり、ダリヤの師匠。
- 所属組織、地位や役職
- ゾーラ商会・会長。
- 魔導具師。
- 物語内での具体的な行動や成果
- ダリヤとラウルに革の補強作業を指導した。
- ヴォルフとエルメリンダの打ち合いを見守り、妻の怪我を心配した。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
- ダリヤの技術向上に協力し、彼女の相談役としても機能している。
エルメリンダ
オズヴァルドの第三夫人。元上級冒険者。
- 所属組織、地位や役職
- ゾーラ商会・関係者。
- 物語内での具体的な行動や成果
- ヴォルフに剣の打ち合いを申し込み、熱戦を繰り広げた末に怪我を負った。
- 魔付きの危険性についてヴォルフに助言した。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
- 冒険者としての血が騒ぐ一面を見せ、ヴォルフと剣を通じて交流を深めた。
カルミネ・ザナルディ
王城魔導具制作部の副部長。研究熱心で柔軟な思考を持つ。
- 所属組織、地位や役職
- 王城魔導具制作部・副部長。
- 物語内での具体的な行動や成果
- ダリヤたちに魔導具制作部を案内し、各課の役割や研究内容を説明した。
- スライム成形靴の開発において、ダリヤの提案を受け入れ、民間工房(ダレッシオ工房)との協力を決定した。
- ダリヤに仮眠ランタンのレシピや大型粉砕機の仕様書を贈った。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
- ダリヤの知識や発想を高く評価し、対等な技術者として接している。
ウロス
王城魔導具制作部の部長。
- 所属組織、地位や役職
- 王城魔導具制作部・部長。
- 物語内での具体的な行動や成果
- 月光蝶の翅の結晶化作業を指導し、ダリヤに付与を体験させた。
- ダリヤに作業用手袋を贈り、彼女を魔導具師として認める姿勢を示した。
- スライム成形靴の制作において、自ら靴底の付与を担当することを宣言した。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
- ダリヤの父カルロを知っており、彼女の成長を温かく、時に厳しく見守っている。
サンソル
ダレッシオ工房の靴職人。
- 所属組織、地位や役職
- ダレッシオ工房・工房長。
- 物語内での具体的な行動や成果
- 王城に招かれ、スライム成形靴の共同開発に合意した。
- 職人としての誇りを持ち、隊員のための靴作りに全力を注ぐことを誓った。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
- 王城魔導具制作部との提携により、工房の技術を活かす新たな機会を得た。
レオーネ・ジェッダ
商業ギルド長。高い魔力を持つ魔導具師でもある。
- 所属組織、地位や役職
- 商業ギルド長。
- 物語内での具体的な行動や成果
- ダリヤとヴォルフから持ち込まれた高難度の付与依頼(氷蓮の短杖など)を引き受けた。
- 報酬の代わりに、妻ガブリエラをダリヤの叙爵時の付添人にすることを条件とした。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
- かつての友人カルロの面影をダリヤに重ね、彼女の成長を喜んでいる。
グラート・バルトローネ
魔物討伐部隊の隊長。
- 所属組織、地位や役職
- 魔物討伐部隊・隊長。
- 物語内での具体的な行動や成果
- ダリヤたちに新しいローブを渡し、男爵叙爵を伝えた。
- 遠征中の野菜不足解消のため、緑の野菜ジュースの導入に前向きな姿勢を見せた。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
- 部下の健康管理や装備改善に積極的で、ダリヤやカルミネと協力体制を築いている。
ベルニージ
元魔物討伐部隊副隊長。
- 所属組織、地位や役職
- 元魔物討伐部隊・副隊長。
- 物語内での具体的な行動や成果
- イルマの出産祝いとして、山羊の乳の配達を贈ることを決めた。
- 王城で新型の鎧やスライム靴について意見を交わした。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
- 引退後も魔物討伐部隊やダリヤたちと関わりを持ち、経験に基づいた助言を行っている。
トビアス・オルランド
ダリヤの元婚約者。
- 所属組織、地位や役職
- オルランド商会・魔導具師。
- 物語内での具体的な行動や成果
- ダリヤに魔導書の写しや希少素材の連絡先リストを送り、彼女の活動を支援した。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
- 別々の道を歩みながらも、魔導具師としてダリヤに敬意を払い続けている。
カルロ・ロセッティ
ダリヤの亡き父。
- 所属組織、地位や役職
- 元魔導具師。
- 物語内での具体的な行動や成果
- 過去の回想にて、食材刻み器をダリヤに教えたり、ガブリエラやドミニクに娘の将来を託す姿が描かれた。
- 彼の遺した技術や人脈が、現在のダリヤを支える基盤となっている。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
- 娘の幸せと安全を第一に願い、生前に様々な準備をしていたことが明らかになった。
戦闘一覧
黒犬と子狐と名呼び
魔付きの暴走(過去エピソード)
- 戦闘者(誰 vs 誰):魔付きの仲間(詳細不明) vs エルメリンダの仲間(詳細不明)
- 発生理由:魔付きの仲間が暴走したため。
- 結果:エルメリンダが魔付きの危険性を警告するほどの経験となった(具体的な被害や勝敗の詳細は原文に記述なし)。
ヴォルフとエルメリンダの剣の打ち合い
- 戦闘者(誰 vs 誰):ヴォルフ vs エルメリンダ
- 発生理由:エルメリンダの提案と、ヴォルフがそれに応じたため。
- 結果:互いに強い対手としての敬意と興奮を感じながら進行したが、最終的にエルメリンダが転倒して怪我をした。
お披露目の打診と臨時の魔導具師願い
ブルースライムによる溶解
- 戦闘者(誰 vs 誰):ブルースライム vs ダリヤ
- 発生理由:飼育容器を開ける際のトラブルにより、スライムが飛び出したため。
- 結果:スライムがダリヤのスカートに溶解液をかけ、衣服を部分的に破壊した。ダリヤ自身は無事で、ヴォルフによってスライムは安全に保管された。
ヴォルフとヨナスの鍛錬
- 戦闘者(誰 vs 誰):ヴォルフ vs ヨナス
- 発生理由:実戦向けの訓練として、ヴォルフがヨナスに挑んだため。
- 結果:ヴォルフの敗北。グイードが介入し、ヨナスの行動を止めた。
魔導具師ダリヤ 8巻レビュー
まとめ
魔導具師ダリヤ 10巻レビュー
展開まとめ
鶏団子と太白ネギのスープ
来年へ続く約束
ダリヤは緑の塔でヴォルフと鶏団子と太白ネギの鍋を囲んだ。旬の食材について話す中、ヴォルフは来年の夏に辛い細ネギを探して食べ比べようと提案し、二人の間に新たな約束が増えた。
食後はヴォルフの別邸の庭や、ダリヤの叙爵へ向けた礼儀作法の話となった。男爵となるダリヤは貴族向けの礼儀に苦戦していたが、侯爵家となるスカルファロット家のヴォルフも、自分は敬語や社交に詳しくないと気づいた。家族との関係を取り戻しつつあるヴォルフは、以前のように家を出る話をしなくなっていた。
魔導書と魔物討伐部隊のローブ
カルロの魔導書
オルランド商会から、トビアスが書き写したカルロの魔導書がダリヤへ届いた。トビアスは自分が口頭で教わった内容や危険な箇所への注意も添え、さらに希少素材の仕入れ先や加工業者の一覧まで渡していた。
ダリヤは婚約破棄についてすでに思うところはなく、オルランド商会を他と同じ大切な取引先として扱うようイヴァーノへ任せた。魔導書にはまだ知らない魔導具が数多く記されており、ダリヤは父から新たな知識を受け継いだ。
ヨナスの離籍
王城へ向かう途中、ヨナスは実兄と遭遇した。兄はグッドウィン家へ戻るよう求め、スカルファロット家との取引や情報提供に応じなければ離籍するよう迫った。
ヨナスは迷わず離籍を選んだ。兄から生涯兄と呼ぶなと言われた過去もあり、家に戻る意思はなかった。
その会話を偶然聞いてしまったダリヤへ、ヨナスは自分の母が砂漠の国イシュラナから父へ贈られた踊り子であり、奴隷としてオルディネへ来たことを明かした。母は第二夫人となったものの馴染めず、離縁後は祖国へ戻って再婚していた。
離籍すれば一時的に王城内で入れない区域ができるため、ヨナスは貴族家の養子となる必要があった。
相談役の黒いローブ
王城ではランドルフの大盾に装着した衝撃吸収材を確認した。素材自体はほとんど劣化していなかったが、盾本体に歪みが生じるほど攻撃力が上がっており、重量や持ち手を含めた改良が進められることになった。
その後、グラートからダリヤとヨナスへ、魔物討伐部隊相談役用の黒いローブが贈られた。銀赤を使った縁取りと、火・土・水・風の耐性、緊急防御を含む五重付与を備えた特別な魔導具であった。
ローブを着た者への言動は魔物討伐部隊への言動と同じとみなされるため、二人を守る意味も持っていた。
二人の男爵叙爵
さらにグラートから、ダリヤとヨナスが翌春に男爵へ叙爵されることが正式決定したと告げられた。
ヨナスは魔付きである自分の功績は足りないと辞退しかけたが、疾風の魔弓、大盾、武具改良への貢献を認められ、ベルニージをはじめとする引退騎士達から十三通もの推薦状が届いていた。
爵位を得れば王城内でグイードの護衛を続けられるため、ヨナスにとって叙爵は願ってもない形となった。
ヨナスは自分の功績はダリヤから譲られたものだとして礼をしようとしたが、ダリヤは共同開発した仲間なのだから何もいらないと断った。最終的に、必要なときに頼み事をする貸し一つとして受け取ることになった。
男爵決定の祝杯
夕方、ヴォルフは花束と料理、祝いの東酒を持って緑の塔を訪れた。グイード達からも料理が用意され、ジルドとグラートからは連名の祝いが届いた。
かつて弟を失ったことで関係を絶っていたジルドとグラートが、今では一緒に茶を飲むほど和解していると知り、ダリヤも喜んだ。
遠征中の食生活の話から、ダリヤは魔物討伐部隊の野菜不足に気づき、緑の野菜ジュースを冷凍して携行する案を出した。ヴォルフは味を警戒したものの、実際に飲むと問題なく受け入れた。
祝いの酒を交わしながら、ダリヤは男爵になればヴォルフに少し近づけると話した。ヴォルフは爵位を得た後には、以前から約束していたように自分にも砕けた口調で話してほしいと伝えた。
ダリヤは叙爵祝いとして欲しい物を尋ねられ、カルロの魔導書にあった方法を試すため、魔剣制作に使う長剣を頼んだ。二人は再び魔剣を作ることを楽しみにし、その計画を秘密にすることにした。
お祝いの品決め
双子への贈り物
ダリヤ、ヴォルフ、イヴァーノ、ルチア、メーナは、マルチェラとイルマの家へ集まり、間もなく生まれる双子への祝いを相談した。
双子の出産を控えるイルマは神殿へ入る予定であり、ロセッティ商会ではマルチェラへ長期の休暇を与えることになった。イヴァーノは、今後ほかの会員にも子供が生まれた際に休みやすくするためにも、最初にきちんと制度を作る必要があると説明した。
祝いとして、メーナは乳児用石鹸と食器、ルチアは衣類、ダリヤは防水布の雨除け付き双子用乳母車、ヴォルフは幼児の魔法暴発防止の魔導具、イヴァーノは沐浴用品などを選んだ。
さらにベルニージとメルセラから、一年間の山羊乳配達が贈られることになった。ダリヤも試作品の冷凍庫付き冷蔵庫を提供すると申し出た。
イルマは、ダリヤ自身に子供ができたときには返すと言ったが、ダリヤはその予定はないと否定した。そこでヴォルフとイルマが同時に、そのときに作ればいいと答え、場が妙な沈黙に包まれた。
それでも最後には、生まれる子が男でも女でも、無事に生まれてくれればそれでいいというイルマの願いを皆が受け止めた。
黒犬と子狐と名呼び
ヴォルフとラウル
ダリヤはヴォルフと共にオズヴァルドの屋敷を訪れ、息子ラウルエーレと対面させた。
ラウルはダリヤとヴォルフが互いを名前で呼ぶことから婚約者なのかと尋ねたが、二人は即座に友人だと否定した。ラウルもダリヤを名前で呼ぶ許可を得ていると話し、ヴォルフは表面上笑顔を保ちながら紅茶へ砂糖を多く入れた。
ダリヤはオズヴァルドへ、ヨナスから提供された炎龍のウロコを渡した。オズヴァルドは、それが魔付き本人から抜かれたウロコだと見抜き、魔付きには暴走の危険があると警告した。
エルメリンダも、冒険者時代に仲間の魔付きが暴走し、本人が死亡した経験を語った。ヴォルフはヨナスなら制御できると信じていたが、危険性そのものは覚えておくことになった。
ヴォルフとエルメリンダの一戦
ダリヤとラウルがオズヴァルドから魔導具制作を学ぶ間、ヴォルフは元上級冒険者のエルメリンダと模造剣で手合わせをした。
エルメリンダは双剣と身体強化、風魔法を使う強者であり、ヴォルフも次第に本気となった。幼い頃、母と剣を合わせていた記憶も重なり、ヴォルフは遠慮を捨てて戦った。
作業場からその姿を見ていたダリヤは、ヴォルフが自分には見せたことのない楽しげな笑顔をエルメリンダへ向けていることに、思わずうらやましさを覚えた。
激しい戦いの末、エルメリンダの剣が折れ、彼女は膝を負傷した。オズヴァルドは珍しく激怒し、ヴォルフを責めたが、すぐに自分の失言を認めて謝罪した。
エルメリンダを抱えて運ぶ途中、オズヴァルドは彼女がヴォルフと名前で呼び合い、楽しそうに戦っていたことへ嫉妬していたと明かした。自分が夫から嫉妬されることなどないと思っていたエルメリンダは、彼の独占欲を知って喜んだ。
人工魔剣制作七回目~紅蓮の魔剣~
炎龍のウロコと人工魔剣
ダリヤとヴォルフは再び人工魔剣制作に取り組んだ。
カルロの魔導書を参考に、炎龍のウロコを使った付与を試し、これまでより本格的な魔剣を目指した。ヴォルフは魔剣制作そのものを心から楽しみ、ダリヤも父の残した知識を実際に試せることへ胸を躍らせた。
試行錯誤の末、剣へ火の力をまとわせることに成功し、刀身から紅い炎が立ち上がった。これまでの人工魔剣とは明らかに異なる出来となり、二人は紅蓮の魔剣として完成を喜んだ。
魔剣は実戦武器として扱えるほどの力を持ち始めており、単なる趣味の制作から、より危険で高度な開発へ進んだことをダリヤ達も意識することになった。
王城魔導具制作部見学
王城の魔導具師達
ダリヤは王城魔導具制作部を見学し、部長ウロス、副部長カルミネらの仕事に触れた。
王城の魔導具師達は温熱座卓を自作するほどダリヤの魔導具を取り入れており、一方で軍や王城で使う高出力の魔導具を多数制作していた。
ダリヤは設備や素材、魔導回路を目の当たりにし、自分にはない技術へ強い興味を抱いた。
仮眠ランタン
制作部では、月光蝶の翅を使った仮眠用のランタンを制作することになった。催眠効果を持つ淡い青い光によって、短時間でも穏やかに眠れる魔導具であった。
ダリヤも制作へ加わったが、周囲が濃い青に仕上げる中、自分のランタンだけ色が薄くなった。それでも機能は成立しており、新たな付与技術を学ぶ経験となった。
一方、王城ではヴォルフとヨナスが対人戦の訓練を行った。ヨナスの厳しい指導を受け続けたヴォルフは、ついに彼の頬を剣で傷つけるところまで成長した。
戦いに高揚したヨナスは魔付きの力を強く表し、瞳が龍のように変化したため、グイードが氷魔法で止めた。
ヨナスはヴォルフの成長を認め、以後は生徒ではなく護衛者の後輩として扱うことを決め、外部の者がいない場ではヴォルフと呼ぶようになった。
王城魔導具制作部二課
食材刻み器の大型化
王城魔導具制作部では、カルロが作った食材刻み器を基に大型粉砕機の開発が進められた。
安全装置や清掃方法まで含めて改良され、蓋を閉じなければ作動しない構造や、動力部分を外して清掃できる工夫が施された。
ダリヤは王城の魔導具師達が、自分やカルロの魔導具を土台としながら、さらに安全で実用的なものへ発展させていく姿を見た。
スライム成形素材
ブルースライムやイエロースライムなどを使った素材研究も続き、防水性や柔軟性を持つ新素材が試作された。
ダリヤは王城の魔導具師達と意見を交わしながら、自分一人では届かなかった分野へ開発が広がっていることを実感した。
お披露目の打診と臨時の魔導具師願い
叙爵前のお披露目
ジルドから、男爵叙爵前にダリヤを貴族社会へ紹介するお披露目の舞踏会を開くという手紙が届いた。
貴族の会話や社交に慣れないダリヤは気が重かったが、イヴァーノは、晩餐会や茶会より会話時間が短い舞踏会の方が安全だと説明した。
独身のダリヤは踊る相手をあらかじめ決める必要があり、候補としてヴォルフ、グイード、グラート、ベルニージらが挙げられた。ダリヤ自身は、踊るならヴォルフがいいと自然に考えた。
また、ジルドから財務部へ一日来るよう求められ、魔導具の費用対効果などについて講義することになった。
氷蓮の短杖
ヨナスは、侯爵となるグイードへ祝いの品を贈りたいとして、ダリヤへ氷蓮の短杖制作を依頼した。
一方、グイードは密かにヨナスへ紅蓮の魔剣を贈ろうとしており、主従が互いに相手への武器を準備しようとしていることが判明した。
ダリヤだけでは高魔力の付与が難しいため、レオーネへ協力を依頼することになった。
レオーネはかつて魔導具師として高魔力の付与を行っていたが、作りたくない魔導具を生活のために作った経験から、魔導具師が望まぬ物を作る苦しさをダリヤへ語った。
それでもカルロの娘であるダリヤを支えるため、短杖や魔剣の制作に協力することを受け入れた。
レオーネはカルロが死の直前、自分や家族を大切にするよう告げていたことを思い返した。カルロが高位貴族や国の上層部に関わる何かから仲間を遠ざけるため、自分達との距離を取った可能性も考えていた。
父と同じように魔導具へ夢中になり、利益にうとく、人を助けようとするダリヤを見て、レオーネはカルロに似てほしくないところまで似てきたと感じながら、彼女を守ろうと決めた。
水ギョウザと氷
舞踏会への準備
緑の塔へ戻ったダリヤとヴォルフは、水ギョウザを作りながら叙爵前のお披露目について話した。
ダリヤは舞踏会へ向けてダンスを練習する必要があり、ヴォルフと踊りを合わせることになった。ただし独身男女が二人だけで練習することを避け、第三者を置いてヴォルフの屋敷で行うことにした。
二人とも舞踏会では目立ちたくないという本音を漏らしたが、ダリヤは最初のお披露目をヴォルフと一緒に経験できることを心強く感じた。
何気なく二人のお披露目みたいなものだと口にしたダリヤに対し、ヴォルフは、貴族社会でその言葉が婚約披露のように受け取られることを指摘できなかった。
氷の思い出
二人は酒へ氷を入れながら、子供の頃の思い出を話した。
ヴォルフは母が窓へ氷の結晶模様を作ってくれた記憶を語った。その思い出を知ったダリヤは、後に作る仮眠ランタンの意匠へ雪の結晶を使うことを考えるきっかけを得た。
スライム成形の靴と見習い騎士
復帰を望む老騎士達
ダリヤは王城魔導具制作部二課を訪れ、スライム成形の靴の試作品を確認した。
そこでベルニージ達と再会し、魔導義手を得た老騎士レオンツィオから、再び槍を握れただけでなく孫を抱けたと直接礼を言われた。
義手や義足によって戦えるようになった引退騎士達の中には、魔物討伐部隊への復帰を望む者も現れていた。しかし再入隊には試験が必要であり、かつて部隊を支えた老騎士達が見習い騎士になる可能性が生まれていた。
靴職人との共同開発
スライム素材から継ぎ目の少ない戦闘靴を作れるようになると、これまで革の戦闘靴を作ってきた職人達の仕事が失われる可能性が浮上した。
ダリヤは、長年靴を作ってきた職人には仕様書だけでは残せない知識と技術があるため、排除するのではなく共同で開発すべきだと主張した。
その考えを受け、カルミネ達は従来の靴工房から職人を招き、魔導具師と職人が対等に意見を出し合って新しい戦闘靴を作ることを決めた。
閑話 靴工房と職人の女神
ダレッシオ工房の転機
長年、魔物討伐部隊の戦闘靴を作ってきたダレッシオ工房のサンソルは、王城から呼び出しを受けた。
新しいスライム成形靴によって自分達の仕事が終わるのではないかと覚悟していたが、王城から求められたのは技術提供と共同開発だった。
サンソル達は積み重ねてきた革選び、木型、補強、修理の技術を惜しみなく伝え、魔導具制作部からも新しい素材と付与技術を学んだ。
双方の技術を合わせた戦闘靴はさらに改良され、工房の仕事も守られることになった。
サンソルは、この道を残すきっかけを作ったダリヤへ感謝し、仲間達と相談して彼女専用の高性能な紅い長紐靴を作ることにした。
その靴には、制作に関わった者だけが知る職人の女神という文字が刻まれた。
友の仮眠ランタン
雪の結晶のランタン
王城で仮眠ランタンを学んだダリヤは、ヴォルフ専用のものを作ろうと考えた。
月光蝶の翅による催眠効果へ、魔魚の白いウロコを使った雪の結晶模様を組み合わせ、灯りをつければ部屋へ淡い雪模様が映る設計にした。
ヴォルフが悪夢ではなく穏やかな眠りを得られるよう願いながら、自分用も同じ仕様で試作することにした。
ダリヤという名前
参考のため父カルロが使っていた妖精結晶のランタンを灯すと、空中に色とりどりのダリアが咲く花園の映像が現れた。
ダリヤは、自分の名前が一輪のダリアではなくダリヤ園に由来し、一人ではなく多くの人と共に生きてほしいという父の願いが込められていたことを改めて思った。
今の自分には友人、仲間、先輩、先生がいる。父の願いに少し近づけたと感じたダリヤは、いつか実際のダリヤ園へ行きたいと思った。
ヴォルフは花だけでは退屈するかもしれないと考えたダリヤは、食事や酒、買い物も楽しめる場所を調べ、来年一緒に出かける計画を考え始めた。
番外編 父と娘の魔導具開発記録 ~食材刻み器~
食材刻み器の授業
過去、料理中に指を切ったダリヤを見たカルロは、以前制作していた食材刻み器を使わせた。
風の魔石で刃を回転させ、野菜や肉を細かくする魔導具にダリヤは興味を示し、構造や魔導回路について父から教わった。
食材刻み器は、高等学院時代のカルロが友人の屋台を助けるために作り始めたものだった。その友人はレオーネだったが、ダリヤには知らされていなかった。
カルロの選択
カルロは、ダリヤが生まれながらに高い才能を持つことを知りながら、その力が高位貴族や国に利用されることを恐れていた。
才能を伸ばすことだけを考えるなら、より高い魔力を得る方法もあった。しかしカルロは、魔導具師としての可能性を狭めることになっても、娘に平穏で幸せな人生を送らせることを選んだ。
自分は父として身勝手で、師匠として最低かもしれないと語るカルロに、友人ドミニクは最高の父親だと答えた。
カルロは、自分に何かあればダリヤを助けてほしいとドミニクへ頼んだ。
一輪だけで咲くのではなく、多くの人に囲まれ、長く幸せに生きてほしい――カルロは娘の未来をそう願っていた。
魔導具師ダリヤ 8巻レビュー
まとめ
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