スポンサーリンク
フィクション(Novel)読書感想魔導具師ダリヤはうつむかない

小説「魔導具師ダリヤはうつむかない 10 」感想・ネタバレ

スポンサーリンク
魔導具師ダリヤはうつむかない ~今日から自由な職人ライフ~ 10の表紙画像(レビュー記事導入用) フィクション(Novel)

魔導具師ダリヤ 9巻レビュー
まとめ
魔導具師ダリヤ 11巻レビュー

スポンサーリンク
  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
        1. ダリヤ・ロセッティ
        2. ヴォルフレード・スカルファロット (ヴォルフ)
        3. ジルドファン・ディールス (ジルド)
        4. ベルニージ・ドラーツィ
        5. ティルナーラ・ディールス (ティル)
        6. ユリシュア・グッドウィン
        7. グリゼルダ
        8. イヴァーノ・バドエル
        9. フェルモ (ガンドルフィ)
  2. 読んだ本のタイトル
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
          1. ワイバーン討伐でヴォルフがお披露目に来られない
          2. ワイバーンを倒したと思ったら、今度は赤熊
          3. 薬草煎餅を食わせた八本脚馬で王都へ爆走
          4. そしてヴォルフが間に合った
          5. ジルドさん、マジで男前
          6. ダリヤとヴォルフ、初めてのダンス
          7. ただしヴォルフ、もう限界です
          8. ベルニージの言葉も印象に残った
          9. 「周囲に助けてもらった」と「自分は何もしていない」は違う
          10. 10巻は「ダリヤを支える人達」の巻だった
          11. それにしてもジルドが格好いい
          12. そして最後に不穏な名前が出てくる
          13. まとめ
  5. 考察・解説
      1. ストーリー・プロット
        1. 第1幕:叙爵前の準備と緑の塔での夕食
        2. 第2幕:社交練習と贈り物に込められた意図
        3. 第3幕:お披露目の祝与とワイバーン討伐の緊急招集
        4. 第4幕:過酷な連続討伐と八本脚馬での激走
        5. 第5幕:ディールス邸でのお披露目と誇りの獲得
        6. 第6幕:企図されたアクシデントとファーストダンス
        7. 第7幕:送迎の馬車と新たな魔導具開発の始動
      2. 主要な転換点
        1. 転換点:ヴォルフによる黒瑪瑙付き金イヤリング(二組)の選定と贈呈
        2. 転換点:赤熊討伐後の伝令役指名と八本脚馬での帰還
        3. 転換点:ユリシュアおよびベルニージとの対話
        4. 転換点:ジルドによる身体強化での靴紐切断と代理指名
      3. ダリヤを中心とした人物関係の変化
        1. ヴォルフレード (ヴォルフ)
        2. ジルドファン (ジルド)
        3. ベルニージ
      4. 主人公の認識と周囲の評価
        1. 主人公自身の認識
        2. 周囲からの評価
        3. 認識の差が現れた場面
  6. キャラクター紹介
      1. ダリヤ・ロセッティ
      2. ヴォルフレード・スカルファロット
      3. レオーネ・ジェッダ(ジルド)
      4. イヴァーノ・バド
      5. ガブリエラ(ティルナーラ)
      6. オズヴァルド・ゾーラ
      7. フェルモ
      8. ベルニージ
      9. ユリシュア
      10. カルロ・ロセッティ
      11. グイード・スカルファロット
      12. ヨナス
      13. グリゼルダ
  7. 戦闘 一覧
    1. ワイバーン釣りと苦い鎧
        1. 緑のワイバーン討伐戦
        2. 過去のワイバーン遭遇(回想)
    2. 魔物討伐部隊員の選択
        1. 赤熊による村への襲撃
        2. 赤熊の討伐
  8. 備忘録
    1. アクアパッツァとダンスの練習
        1. お披露目への準備
        2. ファーストダンスの相手
    2. 金のイヤリングと騎士
        1. ヴォルフの贈り物選び
        2. イヤリングと仮眠ランタン
    3. ワイバーン釣りと苦い鎧
        1. 緑のワイバーン
        2. 黒の一号
    4. 魔物討伐部隊員の選択
        1. 赤熊に襲われた村
        2. 仲間との戦い
    5. お披露目とファーストダンス
        1. ベルニージの言葉
        2. 最初のダンス
        3. お披露目の盾
    6. 小物職人と副会長の迷い
        1. 細雪マドラー
        2. イヴァーノとジルド
    7. 二人の先生と暁の剣
        1. 魔剣闇夜斬り
        2. 氷蜘蛛短杖
    8. 幕間 銀狐の振り返り
        1. カルロとの学院時代
        2. カルロへの疑念
    9. プレゼント交換とダンスパートナー
        1. 主従への贈り物
        2. 次のお披露目
        3. 氷と炎の衝突
    10. 魔物愛好店でのディナー
        1. 魔物料理のコース
        2. ヴォルフの母の記憶
        3. 魔物の養殖
    11. 番外編 父と娘の魔導具開発記録~製薬用粉砕機~
        1. 製薬用粉砕機
        2. 父と娘の家族
  9. 魔導具師ダリヤはうつむかない 一覧
  10. その他フィクション

物語の概要

■ 作品概要

庶民の魔導具師ダリヤ・ロセッティは、来年に控えた男爵叙爵に向けて貴族の社交マナーやダンスの練習に励みつつ、緑の塔での研究開発と日常を維持していた。
しかし、ディールス侯爵邸でのお披露目催事が目前に迫る中、友人である騎士ヴォルフがワイバーン討伐へ急遽招集され、さらに赤熊の連続討伐が発生する。お披露目当日にヴォルフ不在の危機に瀕するが、彼は薬草煎餅を食べさせた八本脚馬による不眠不休の激走を経て間一髪で会場へ駆けつける。
ダリヤは会場で魔導義足により歩行を取り戻した少女ユリシュアや前侯爵ベルニージと出会い、自らの開発した魔導具が多くの人々の笑顔と生活を取り戻していた事実を知り、男爵となることへの自責や迷いを克服する。
ジルド侯爵の機転によりヴォルフとのファーストダンスを果たしたダリヤは、魔物討伐部隊相談役および魔導具師としての誇りと存在価値を確立し、周囲との絆を一段と深めていく。

■ 主要キャラクター

ダリヤ・ロセッティ
  • 立場・所属:  ロセッティ商会長、魔導具師、魔物討伐部隊相談役。
  • 作中での位置づけ:  物語の主人公。来年に男爵叙爵を予定している庶民の女性。
  • 今巻での主な役割:  社交ダンスや作法の練習に励みつつ、お披露目催事に臨む。「仮眠ランタン」の制作や水魔馬の骨を用いた伸縮式短杖の設計課題の解決に取り組む。
  • 変化・行動:  自身が男爵となる不完全燃焼感や自己評価の低さを抱えていたが、ユリシュアやベルニージからの感謝と叱咤を受け、魔導具師としての誇りと自己の存在価値を確立した。
ヴォルフレード・スカルファロット (ヴォルフ)
  • 立場・所属:  スカルファロット伯爵家四男、王城騎士団魔物討伐部隊員(赤)。
  • ダリヤとの関係:  ダリヤの友人、ロセッティ商会の保証人。
  • 今巻での主な役割:  ダリヤへのお祝いとして宝飾店でふた対の金イヤリング(秋冬用の雪の結晶、春夏用のダリアの花)を注文し、黒瑪瑙をあしらった雪の結晶のイヤリングを贈る。ワイバーンおよび赤熊の連続討伐戦に参加し、囮役を務める。
  • 変化・行動:  赤熊討伐後、身体の疲労を押して不眠不休で八本脚馬を駆りお披露目会場へ滑り込む。ジルドの指名によりダリヤとファーストダンスを踊り、無事の帰還を喜び合うとともに強い信頼と想いを再確認した。
ジルドファン・ディールス (ジルド)
  • 立場・所属:  ディールス侯爵家当主、王城財務部長。
  • ダリヤとの関係:  ロセッティ商会の保証人、ダリヤのお披露目催事の主催者。
  • 今巻での主な役割:  ダリヤのお披露目を自邸で主催し、衣装やシューズを手配する。亡き父カルロ・ロセッティを偲び、ダリヤの功績を称える。
  • 変化・行動:  ダリヤを妻ティルナーラと共に「自身の娘」同等に扱うことで社交界に威光を示した。遅れて到着したヴォルフのため、指先に身体強化をかけて自ら靴紐をちぎり取り、赤いポケットチーフを渡してファーストダンスの代理に指名する機転を利かせた。
ベルニージ・ドラーツィ
  • 立場・所属:  前ドラーツィ侯爵家当主、元魔物討伐部隊副隊長(新人隊員として復帰希望中)。
  • ダリヤとの関係:  魔導義足の使用者であり、ダリヤの発明の理解者・支持者。
  • 今巻での主な役割:  姪の娘であるユリシュアをダリヤに引き合わせる。
  • 変化・行動:  自らの卑下にとらわれるダリヤに対し、彼女の発明が自分や騎士たち、少女の笑顔と生を取り戻した事実を指摘し、「ダリヤ・ロセッティ男爵」としての誇りを与えた。
ティルナーラ・ディールス (ティル)
  • 立場・所属:  ディールス侯爵夫人(ジルドの妻)。
  • ダリヤとの関係:  お披露目の主催側。ダリヤを温かく後押しする社交界の親族的存在。
  • 今巻での主な役割:  緊張するダリヤを優しく迎え、ドレス選びやコルセットの調整、当日の接客を細やかにサポートする。
  • 変化・行動:  貴族社交界における実力者として、ダリヤが居心地よく過ごせる環境を整え、空腹で到着したヴォルフにも手厚い食事と休憩の配慮を行った。
ユリシュア・グッドウィン
  • 立場・所属:  グッドウィン子爵家の次女。
  • ダリヤとの関係:  ダリヤの魔導義足によって救われた恩恵者。
  • 今巻での主な役割:  お披露目会場を訪れ、歩行可能となったお礼をダリヤに直接伝える。
  • 変化・行動:  怪我で足を失い絶望していたが、ベルニージに連れ出されて得た魔導義足によりリハビリを完遂。今後は魔導具師を目指すという強い志を告げた。
グリゼルダ
  • 立場・所属:  王城騎士団魔物討伐部隊副隊長。
  • ダリヤとの関係:  ダリヤが相談役を務める部隊の上官。
  • 今巻での主な役割:  ワイバーン討伐および村を襲撃した赤熊討伐の現地指揮を執る。
  • 変化・行動:  連戦で功績を挙げたヴォルフの成長を称え、お披露目に間に合わせるべく王城への緊急伝令役に指名し、秘蔵の八本脚馬と「薬草煎餅」を託した。
イヴァーノ・バドエル
  • 立場・所属:  ロセッティ商会副会長。
  • ダリヤとの関係:  ダリヤの右腕であり、実務・社交面での全般的な補助者。
  • 今巻での主な役割:  お披露目への同行・手配、ガンドルフィ商会との連携、伸縮式短杖の事業化検討。
  • 変化・行動:  お披露目からの帰り道、ヴォルフとダリヤの二人きりの時間を尊重するため、機転を利かせて御者台へ移動し馬車を遠回りさせる配慮を見せた。
フェルモ (ガンドルフィ)
  • 変化・行動:  筒物加工の技術と知見を活かし、水魔馬の骨を削って伸ばした後に戻らなくなる構造の課題を「多角形の遊び」によって解決し、伸縮式短杖の完成に大きく貢献した。
  • 立場・所属:  ガンドルフィ商会長、小物職人。
  • 今巻での主な役割:  硬質化ミスリル工具を用いてダリヤの短杖開発に協力する。
  • ダリヤとの関係:  職人仲間の先輩・技術協力者。

読んだ本のタイトル

魔導具師ダリヤはうつむかない ~今日から自由な職人ライフ~ 10
(英語名:Dahlia in Bloom: Crafting a Fresh Start with Magical Tools)
著者:甘岸久弥 氏
イラスト:駒田ハチ 氏
キャラクター原案:景 氏

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

あらすじ・内容

男爵内定のお披露目パーティーで、ダリヤの手をとるのは……?

男爵内定のお披露目パーティーを前にして、緊張を強める魔導具師のダリヤ。
ヴォルフが参加してくれることで少なからず安堵していた彼女だったが、お披露目まで間もなくというタイミングで、魔物討伐部隊員に緊急招集がかけられる。
王都を離れなくてはいけなくなったヴォルフを送り出したダリヤは、彼の無事を祈りながら当日までの日々を過ごすのだった。
「どうか気をつけて――行ってらっしゃい」
一方、ワイバーンと対峙したヴォルフら魔物討伐部隊は、春までとは打って変わって優勢に戦いを進めていた。しかし、帰路で想定外の事件に遭遇し……。
「早く帰って、ただいまと言えたら――」
互いを想う、二人の願いの行方は……? 魔導具師ダリヤのものづくりストーリー、二人の想いが募る第十弾、開幕!

魔導具師ダリヤはうつむかない ~今日から自由な職人ライフ~ 10
KADOKAWAanime

感想

10巻を読んでいて強く感じたのは、

「ダリヤ、本当にいろいろな人から大切にされるようになったな」

ということだった。

物語の中心となるのは、男爵位を得るダリヤのお披露目。

当然ながら貴族社会の大きなイベントなので、準備も大変である。

そんなダリヤを周囲の人達が全力で支えてくれる。

そして、その集大成のように感じたのがファーストダンスだった。

本来ダリヤと踊る予定だったのは財務部長のジルド。

ところが、魔物討伐へ向かったため間に合わないと思われていたヴォルフが、ギリギリで帰ってくる。

そこでジルドがやってくれた。

自分の立場や体面より、若い二人を優先する。

ジルドさん、マジで男前だわ。

ワイバーン討伐でヴォルフがお披露目に来られない

ダリヤのお披露目を前に、ヴォルフはダンスの練習にも付き合っていた。

二人で練習しているのだから、

「本番でも一緒に踊るのでは?」

と思ってしまう。

ところがヴォルフは魔物討伐部隊の騎士である。

ワイバーン出現の知らせが入り、当然ながら仕事が優先。

お披露目どころではない。

ヴォルフは討伐へ向かうことになる。

ダリヤとしては心配だろう。

来てほしいという気持ちもある。

でも、それ以上に無事に帰ってきてほしい。

この辺りは二人の関係らしい。

ワイバーンを倒したと思ったら、今度は赤熊

しかもヴォルフの仕事はワイバーンだけでは終わらない。

ワイバーン討伐を終えたあと、今度は近隣の村が赤熊に襲われている。

休む暇がない。

しかも赤熊との戦いでは、ワイバーン戦で身体強化を使いすぎた影響もあり、ヴォルフの膝がまともに動かなくなる。

かなり危険な状態である。

それでも村人を守るために戦う。

危険な場面では仲間達にも助けられ、どうにか赤熊を討伐する。

もうこの時点で、

「お披露目は諦めて寝ろ」

と言いたくなる。

普通ならここで終わりだろう。

ところが周囲の騎士達もヴォルフの気持ちを分かっている。

今度はお前がダリヤのところへ行け。

そんな感じで背中を押される。

10巻は本当に周囲の人達が優しい。

薬草煎餅を食わせた八本脚馬で王都へ爆走

そこで登場するのが八本脚馬。

しかも普通の状態ではない。

薬草煎餅を食べている。

馬までドーピングしてるじゃないか。

いや、薬草煎餅だけど。

その効果もあって八本脚馬はものすごい速度で王都へ向かう。

数日かかるような距離を一気に駆け抜ける。

そしてヴォルフも不眠不休。

ワイバーン討伐。

赤熊討伐。

膝も痛い。

そこから八本脚馬で王都まで爆走。

全部終わったら普通に倒れるスケジュールである。

それでもダリヤのお披露目へ向かう。

本人達は相変わらず「友人」という認識なのだろうけど。

友人のお披露目のために、ここまでやるのか?

そしてヴォルフが間に合った

ダリヤのお披露目が始まる。

ファーストダンスの相手を務める予定なのはジルドである。

ヴォルフは間に合わなかった。

そう思われていた。

ところがギリギリで会場へ到着する。

ただし、来ればそれでいいわけではない。

貴族のお披露目である。

正式な手順がある。

ヴォルフは最初の挨拶に間に合っていない。

つまり、そのままではダリヤのファーストダンスの相手にはなれない。

そこでジルドが動く。

ジルドさん、マジで男前

ジルドは自分の靴紐を切る。

しかも偶然ではない。

身体強化まで使って自分で切っている。

そして、

「靴に問題が起きたので踊れない」

という状況を自分で作る。

そのうえで代理としてヴォルフを指名。

そこまでやるのか。

自分のお披露目ではないとはいえ、ジルドは侯爵であり財務部長。

当然ながら大勢の貴族が見ている。

そんな場所で、自分にちょっと格好の悪いアクシデントが起きたように見せてまで、若い二人にファーストダンスを譲る。

ジルドさん、マジで男前だわ。

ヴォルフが来た。

ダリヤもきっとヴォルフと踊りたい。

だったら自分が退けばいい。

でも普通に交代すれば礼儀上の問題がある。

だから、

「仕方なく代理を頼んだ」

という形を作る。

財務部長だけあって、こういうところの処理がうますぎる。

ダリヤとヴォルフ、初めてのダンス

こうしてダリヤのファーストダンスの相手はヴォルフになる。

しかもヴォルフにとっても舞踏会で踊るのは初めて。

二人にとってのファーストダンスである。

ここまで長かったな……

と思ってしまった。

恋人ではない。

婚約者でもない。

本人達は友人。

でも周囲から見ると、

「もうお前ら踊れよ」

状態である。

そして踊りながら交わす、

「ただいま」

「おかえりなさい」

がいい。

派手な愛の言葉ではない。

でも、この二人にはこれくらいがちょうどいい。

危険な討伐へ行ったヴォルフが帰ってきた。

ダリヤがそれを迎える。

二人がこれまで積み重ねてきた関係が、その短いやり取りに出ているように感じた。

ただしヴォルフ、もう限界です

非常にいい場面だった。

感動的だった。

……でもヴォルフの身体は限界である。

そりゃそうだ。

ワイバーンを討伐。

赤熊とも戦う。

膝を痛める。

そのあと八本脚馬で不眠不休の爆走。

そして到着直後にダンス。

休め。

本当に休め。

ファーストダンスを無事に終えたあとは、食事をして仮眠を取る。

当たり前である。

むしろよく踊れたな。

ダリヤと踊るという目的だけで最後の体力を使い切ったように見えてしまう。

ベルニージの言葉も印象に残った

ファーストダンスだけではなく、ダリヤ自身の変化も印象的だった。

ダリヤは、自分が男爵になることに迷いを持っている。

自分一人でここまで来たわけではない。

周囲に助けてもらった。

だから、

「自分が男爵になっていいのだろうか」

と考えてしまう。

これまでのダリヤらしい。

自分の功績をあまり自分のものとして考えない。

そんなダリヤにベルニージが、自分の作ったものが何を変えてきたのかを突きつける。

魔導義足によって歩けるようになった人がいる。

騎士へ戻れた人がいる。

ダリヤの魔導具によって助けられた魔物討伐部隊の人達がいる。

一人で全部やったわけではない。

でも、ダリヤがいなければ生まれなかったものも確実にある。

だから胸を張れ。

これはダリヤに必要な言葉だったと思う。

「周囲に助けてもらった」と「自分は何もしていない」は違う

この場面は少し考えさせられた。

人から助けてもらうことが多いと、

「自分の力でやったわけではない」

と思ってしまうことがある。

ダリヤもそうなのだろう。

確かにロセッティ商会がここまで大きくなったのは、ダリヤ一人の力ではない。

イヴァーノがいる。

ヴォルフがいる。

商業ギルドがいる。

オズヴァルドがいる。

ジルドやベルニージのような貴族達もいる。

多くの人から助けられている。

でも、それはダリヤ自身が何もしていないという意味ではない。

ダリヤが魔導具を作った。

それによって助かった人がいる。

そして、その積み重ねによって人とのつながりが生まれた。

周囲に助けてもらいながら積み上げたものも、自分の歩いてきた道なのだと思う。

10巻は「ダリヤを支える人達」の巻だった

読んでいて感じたのは、10巻はダリヤ一人の成功を描いた巻ではないということだった。

むしろ、

「これまでダリヤが作ってきた人間関係が、今度はダリヤを支える」

という巻に感じた。

ジェッダ子爵夫妻。

オズヴァルド。

ジルド。

ベルニージ。

魔物討伐部隊の人達。

そしてヴォルフ。

それぞれ立場も違う。

ダリヤとの関係も違う。

それでも、みんな自分のできる形でダリヤを支えている。

最初の頃のダリヤを考えると、かなり遠くまで来た。

婚約破棄をされ、父親も亡くなり、一人で緑の塔へ戻った女性だった。

それが今では、こんなにも多くの人が彼女のお披露目を成功させようと動いている。

ダリヤ本人以上に、周囲の変化から彼女が歩いてきた道を感じる巻だった。

それにしてもジルドが格好いい

やはり一番印象に残ったのはここである。

ファーストダンスをヴォルフへ譲るジルド。

ただ、

「私はいいから君が踊りなさい」

では済まない。

貴族社会には形式がある。

遅れてきたヴォルフには踊る資格がない。

だったら自分が踊れない状況を作る。

靴紐を自分で切る。

代理を指名する。

これならヴォルフが踊れる。

頭の回転が速い。

そして優しい。

さらに、ダリヤとヴォルフのことをよく見ている。

自分がファーストダンスを踊るより、この二人に踊らせた方がいい。

そう判断して即座に行動する。

若い二人のために自分が悪目立ちする役を引き受ける大人。

こういう人物は好きだ。

ジルドさん、マジで男前。

そして最後に不穏な名前が出てくる

いいお披露目だった。

ダリヤも自分の立場を少し受け入れられた。

ヴォルフも無事に帰ってきた。

ファーストダンスも踊れた。

周囲の人達の温かさも感じられた。

いい巻だったな。

……で終わらせてくれない。

最後に出てくるザナルディ。

カルロの過去に関わる人物らしく、一気に不穏になる。

ダリヤの父カルロについては、これまでも少しずつ過去が明らかになってきた。

ダリヤが知らないところで何があったのか。

そして、それが今のダリヤにまでつながってくるのか。

嫌な予感しかしない。

せっかく周囲に支えてくれる人達が増えて、お披露目まで無事に終わったのに。

頼むからダリヤに余計なことをしないでくれ。

まとめ

『魔導具師ダリヤはうつむかない』10巻で印象に残ったのは、ダリヤを支える人達の存在だった。

その象徴がファーストダンスだったと思う。

ワイバーンを討伐。

さらに赤熊とも戦う。

そこから薬草煎餅で強化された八本脚馬に乗って、不眠不休で王都へ戻ってくるヴォルフ。

そして、ギリギリで間に合ったヴォルフを見て、自分の靴紐をわざと切り、代理としてファーストダンスを譲るジルド。

そこまでお膳立てされて、ようやく踊る二人。

もう周囲が完全に二人を応援している。

本人達だけが相変わらずなのが面白い。

同時に、ベルニージの言葉も印象に残った。

ダリヤは一人でここまで来たわけではない。

多くの人に助けられている。

でも、だからといってダリヤ自身の功績がなくなるわけではない。

人に助けてもらいながら積み上げたものだって、自分の人生である。

10巻は、そんなダリヤが少しだけ胸を張れるようになる物語だったと感じた。

そして、その背中を押してくれる人が今のダリヤにはたくさんいる。

最初の頃を思えば、本当に遠くまで来た。

……だからこそ最後のザナルディが怖い。

カルロの過去から、今度は何が出てくるのだろう。

せっかく幸せそうなファーストダンスを見せてもらったのだから、しばらく平和に魔導具でも作っていてほしいのだが。

たぶん、そうはいかないんだろうな。

最後までお読み頂きありがとうございます。

魔導具師ダリヤ 9巻レビュー
まとめ
魔導具師ダリヤ 11巻レビュー

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

考察・解説

ストーリー・プロット

第1幕:叙爵前の準備と緑の塔での夕食

来年に男爵叙爵を控える庶民の魔導具師ダリヤ・ロセッティは、侯爵邸で行われるお披露目催事でのダンスに不安を抱きつつ、緑の塔で日々の開発と生活を送っていた。ある日、友人の騎士ヴォルフが塔を訪れ、二人は大鍋で作ったアクアパッツァとスープを吸わせたバゲット、白ワインを味わいながら語り合う。ヴォルフはダンス練習の相手を買って出るとともに、隊のハードな鍛錬の様子を報告する。ダリヤも王城で大型粉砕機を用いた栄養豊富な青汁野菜ジュースの試作が進んでいることや、自身が開発した遠征用コンロが討伐部隊に定着している近況を分かち合い、互いに明日からの健康と幸運を祈って乾杯を交わす。(308文字)

第2幕:社交練習と贈り物に込められた意図

ダリヤは商業ギルド副ギルド長ガブリエラに招かれ、ジェッダ子爵邸で練習用ドレスを着てダンス指導を受けつつ、貴族社交の心得を学ぶ。そこにレオーネからジルド侯爵手配のワイン色のダンスシューズが届けられる。一方、ヴォルフはレオーネの紹介で高級宝飾店を訪れる。店主ロレンツの助言を受け、過酷な鍛錬で傷ついた手に騎士の誇りを見出されながら、ダリヤに似合う装飾を吟味する。ロレンツから「秋冬用に雪の結晶、春夏用にダリアの花」という二つの対になる金イヤリングを提案されたヴォルフは両方を買い求め、守護と魔導具付与の用途を兼ねた黒瑪瑙を裏石として貼るカスタムを注文する。(316文字)

第3幕:お披露目の祝与とワイバーン討伐の緊急招集

ヴォルフは完成した二組のうち、冬のお披露目用として雪の結晶モチーフの金イヤリングを緑の塔でダリヤに手渡し、自ら彼女の耳へと装着する。ダリヤはその祝与に応えるため、睡眠導入効果と雪の結晶の投影機能を備え、悪夢を防ぐ願いを込めて自作した「仮眠ランタン」を彼に贈る。二人が心温まる交換を交わした直後、御者が駆け込み、王城から緊急招集を示す赤の警報光が三度上がったことを告げる。東街道周辺に緑のワイバーンが出現したためであり、ヴォルフはお披露目に間に合わない可能性を深謝しつつも、騎士としての使命から戦地へ出動する。ダリヤは身を案じつつも、人の命を守る任務へ向かう彼を笑顔で送り出す。(322文字)

第4幕:過酷な連続討伐と八本脚馬での激走

ワイバーン討伐戦において、魔物は空蝙蝠の肉の被膜で苦味を付けた防具と天狼の腕輪を駆使するヴォルフの囮行動により誘い出され、グラート隊長が「黒の一号」鎧と魔剣「灰手」で仕留める。直後、近隣の村が赤熊二匹に襲撃されたとの知らせが入る。ヴォルフは激走による膝の限界と焦りを抱えつつも村人の命を守るため参戦し、隊員たちと協力して赤熊を退治する。副隊長グリゼルダはヴォルフの献身を高く評価し、王城への緊急伝令役に指名する。特別な栄養補給である「薬草煎餅」を与えられた八本脚馬に跨がったヴォルフは、王都でお披露目を迎えるダリヤの元へ向けて不眠不休で激走する。(317文字)

第5幕:ディールス邸でのお披露目と誇りの獲得

お披露目当日、ダリヤはディールス侯爵邸に到着し、主催者ジルドの妻ティルナーラから温かい歓迎を受ける。用意された上品なワイン色のドレスに身を包んだダリヤは、別室でグッドウィン子爵家の次女ユリシュアと出会い、自らの開発した魔導義足によって歩行を取り戻せたことへの深い感謝を伝えられる。さらに前侯爵ベルニージから、ダリヤの発明が多くの人々や騎士に笑顔と生を取り戻した事実を喝破され、「ダリヤ・ロセッティ男爵」としての誇りを持つよう強く促される。周囲からの真摯な言葉と感謝に触れたダリヤは、自責と迷いを解消し、誇りを持って会場へ挑む。(307文字)

第6幕:企図されたアクシデントとファーストダンス

ダリヤが舞踏会会場の広間へ入場した直後、不眠不休の激走を終えたヴォルフが汗と泥に塗れて会場へ滑り込む。従僕たちに身なりを洗われ整えられたものの、公式の挨拶に遅れたヴォルフはマナー上ダリヤと踊れない状況にあった。異変を察した主催者ジルド侯爵は、指先に身体強化をかけて自らの靴紐をちぎり、胸に赤いポケットチーフを押し当てることで、ヴォルフを己の代理としてファーストダンスの相手に指名する。ダリヤとヴォルフは「ただいま」「おかえりなさい」と無事帰還の言葉を交わしながら共にファーストダンスを踊り切る。その後、ダリヤはジルド、グラート、ベルニージらと舞い、貴族女性たちと魔導具や健康についての歓談を通じて親和を深める。(358文字)

第7幕:送迎の馬車と新たな魔導具開発の始動

催事が無事に終了した後、ダリヤはスカルファロット家の馬車で帰路に就く。副会長イヴァーノは二人の時間を尊重するため、密かに御者台へ移動して二人きりの空間を提供する。車内でダリヤとヴォルフは、これまでの出来事やこれからの日々に思いを馳せながら互いの絆を確かめ合う。後日、イヴァーノと小物職人フェルモが緑の塔を訪問する。ダリヤとフェルモは購入した硬質化ミスリル工具を活用し、水魔馬の骨の加工に挑む。試行錯誤の末に「温熱座卓の脚」からヒントを得た多層の伸縮構造と多角形の遊びを考案し、グイドから依頼されていた短杖の設計問題を解決して新たな開発を始動させる。(324文字)

主要な転換点

転換点:ヴォルフによる黒瑪瑙付き金イヤリング(二組)の選定と贈呈
  • それ以前の状況:  ヴォルフはダリヤのお披露目に贈るアクセサリーの選定に悩み、自身の身分や貴族社会の思惑との間で不慣れな模索を続けていた。
  • 出来事:  宝飾店主ロレンツの助言を受け、秋冬用の「雪の結晶」と春夏用の「ダリアの花」という二対の金イヤリングを選び、耳に接する裏面に守護と付与のための黒瑪瑙を配置する加工を施して購入し、まず雪の結晶のイヤリングをダリヤに贈呈した。
  • 変化:  貴族社会の形式を超えて、ダリヤの安全と幸福を心から願うヴォルフの個人的かつ強い想いが明確な形となった。
  • 次への影響:  ダリヤはお披露目当日にこのイヤリングを着用し、ヴォルフとの強い絆と安心感を胸に会場へと臨むことになった。
転換点:赤熊討伐後の伝令役指名と八本脚馬での帰還
  • それ以前の状況:  ワイバーン討伐後の赤熊襲撃により、ヴォルフはお披露目催事の開始時刻までに王都へ帰還することが絶望視されていた。
  • 出来事:  ヴォルフは膝の痛みを抱えながらも赤熊討伐で献身的に活躍。副隊長グリゼルダはその功績と想いを汲み取り、王城への緊急伝令役として彼を指名し、薬草煎餅を食べさせた八本脚馬を託した。
  • 変化:  ヴォルフは規格外の速度で街道を駆け抜け、お披露目のファーストダンス直前に会場へ到着することが可能となった。
  • 次への影響:  お披露目会場において、ジルドの機転と組み合わさることで、ダリヤとのファーストダンス実現への道が拓かれた。
転換点:ユリシュアおよびベルニージとの対話
  • それ以前の状況:  ダリヤは自らの魔力値や実績の不十分さを感じており、「他者の協力で得た男爵位であり自分にはふさわしくない」という自責の念を抱いていた。
  • 出来事:  お披露目の控室にて、魔導義足で歩けるようになったユリシュアから感謝を伝えられ、ベルニージから「多くの騎士や人々に笑顔と生を取り戻した」と喝破された。
  • 変化:  ダリヤは自分の発明が確かに人々の救いとなっていることを実感し、卑下するのをやめて「ダリヤ・ロセッティ男爵」としての誇りを受け入れた。
  • 次への影響:  堂々とした態度でお披露目舞踏会に臨み、高位貴族たちの前でも臆することなく存在感を示すことができた。
転換点:ジルドによる身体強化での靴紐切断と代理指名
  • それ以前の状況:  ヴォルフは到着したものの最初の公式挨拶を逃していたため、貴族の作法上、ダリヤとお披露目のダンスを踊る権利を持っていなかった。
  • 出来事:  主催者であるジルド侯爵が指先に身体強化をかけて自らの靴紐をちぎり、「不測の事態により靴を替える」という名目で、胸に赤いポケットチーフを託してヴォルフを自身の代理に指名した。
  • 変化:  厳格な作法を力技で回避し、ヴォルフがダリヤのファーストダンスの正当な相手として踊ることが認められた。
  • 次への影響:  二人は周囲の祝福の中で感動的なファーストダンスを果たし、互いの絆と信頼関係をより一段と深化させた。

ダリヤを中心とした人物関係の変化

ヴォルフレード (ヴォルフ)
  • 開始時:  緑の塔で共に食事や魔導具・魔剣の開発を楽しむ、気の置けない対等な友人関係。
  • 主な出来事:  金のイヤリングと「仮眠ランタン」の交換、ワイバーン・赤熊討伐に伴う緊急遠征、八本脚馬での激走による帰還、そしてジルドの演出によるお披露目でのファーストダンス。
  • 巻末時:  互いの不在や危機を経たことで、ヴォルフにとってダリヤが揺るぎない精神的支柱となり、言葉に出さずとも互いをかけがえのない存在と認識し合う深い情愛に満ちた関係へと発展した。
ジルドファン (ジルド)
  • 開始時:  商会の保証人であり王城財務部長という、庶民のダリヤにとっては遥か高位の厳格な後ろ盾。
  • 主な出来事:  お披露目催事の全般的な手配、ドレスやシューズの選定、ヴォルフにファーストダンスを譲るための意図的な靴紐切断、亡き父カルロ・ロセッティを「友と飲む酒がうまくなった」と温かく振り返る言葉。
  • 巻末時:  政治的な保証関係を超え、ダリヤを自身の「娘」同然に扱い庇護する、強固で温かな父性的後見関係が確立された。
ベルニージ
  • 開始時:  魔導義足をきっかけに知り合った、元副隊長・前侯爵という大物退役騎士。
  • 主な出来事:  義足により歩行を取り戻した姪の娘ユリシュアをダリヤに紹介し、ダリヤの発明がもたらした社会的貢献を直接語って彼女の男爵位獲得を強く承認・祝福した。
  • 巻末時:  ダリヤの技術と精神に対する深い敬意を抱く確かな理解者となり、職人と騎士の枠を超えた強い誇りと信頼を結ぶ関係。

主人公の認識と周囲の評価

主人公自身の認識
  • 自分の魔力値はほどほどで、特別な攻撃魔法も治癒魔法もない地味な存在であると思っている。
  • 魔導具の開発は周囲の職人や素材提供者、助言者の協力があってこそ成り立ったものであり、自分一人だけの功績ではないと考えている。
  • 男爵位を得ることは魔物討伐部隊の庇護や周囲の取りなしによる結果であり、自分自身がその爵位に本当にふさわしい人間なのか強い疑問と迷いを抱いていた。
周囲からの評価
  • 騎士団・魔物討伐部隊:  遠征用コンロや小型魔導コンロにより遠征中の食生活と衛生環境を劇的に改善した命の恩人であり、深く敬愛される相談役。
  • 傷病騎士・退役貴族:  魔導義足や魔導義手を可能にしたことで、身体的失意から生への希望、笑顔、そして現役復帰や歩行の喜びを取り戻してくれた救世主。
  • 貴族女性たち:  泡ポンプボトルや温熱座卓のほか、健康や美容に配慮した食事・生活知見を提供する親しみやすく有能な魔導具師。
認識の差が現れた場面

ディールス邸の控室において、ダリヤが「周囲の助けがあったからできたことで、自分自身には男爵位の価値がないのではないか」という旨の迷いを口にした場面。これに対し、前侯爵ベルニージは、ダリヤが開発した魔導義足によって自分やユリシュアが歩行と笑顔を取り戻したこと、退役騎士たちが再起できたこと、討伐部隊が快適さを得たことを具体的に挙げ、「あなたが奪われた笑顔や人生を取り戻したのだ」と大声で一蹴した。ベルニージから「ダリヤ・ロセッティ男爵として大いに誇れ」と喝破されたことで、ダリヤは己の自己評価の低さと周囲が受けている恩恵の大きさとの間の決定的なギャップを自覚し、自らの存在と実績を受け入れるに至った。

キャラクター紹介

ダリヤ・ロセッティ

オルディネ王国で活動する魔導具師であり、ロセッティ商会の会長を務める。前世の記憶を持ち、生活を便利にする魔導具の開発に情熱を注いでいる。ヴォルフレードとは友人以上の信頼関係にあり、互いに支え合う存在である。

  • 所属組織、地位や役職
    • ロセッティ商会・会長。
    • 新たに男爵位を授与される(「ダリヤ・ロセッティ男爵」と呼ばれる)。
  • 物語内での具体的な行動や成果
    • 叙爵前のお披露目に向け、ジェッダ子爵邸でダンスの特訓を行った。
    • ヴォルフレードから雪の結晶とダリアを模した金のイヤリングを贈られた。
    • お披露目の舞踏会にて、父の代理であるジルドにエスコートされ、遅れて到着したヴォルフとファーストダンスを踊った。
    • レオーネ(ジルド)、オズヴァルドと共に高度な付与魔法を行い、「氷蜘蛛短杖」や魔剣を完成させた。
    • ヴォルフと共に魔物料理の専門店を訪れ、クラーケンのムースや棘草魔のサラダなどを堪能した。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
    • 自身の開発した魔導具が多くの人々、特に魔物討伐部隊や身体に不自由を抱える者を救っていると評価された。
    • お披露目を成功させ、貴族社会での地位を確固たるものにした。

ヴォルフレード・スカルファロット

王城騎士団の魔物討伐部隊に所属する騎士。ダリヤの親しい友人であり、彼女の魔導具開発を素材提供や試験運用で支えている。

  • 所属組織、地位や役職
    • 魔物討伐部隊・隊員(赤鎧)。
    • スカルファロット侯爵家の四男。
  • 物語内での具体的な行動や成果
    • ダリヤのお披露目用に、彼女に似合う金のイヤリングを宝飾店で選んだ。
    • 緑のワイバーンや赤熊の討伐遠征に参加し、負傷しながらも任務を遂行した。
    • 遠征から急いで帰還し、ダリヤの舞踏会に間に合わせ、彼女とダンスを踊った。
    • ダリヤと共に「魔剣闇夜斬り」などの魔導具を確認し、互いに贈り物を交換した。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
    • ダリヤとの関係を通じて精神的に安定し、騎士としての責務と個人的な幸福の両立を目指している。

レオーネ・ジェッダ(ジルド)

商業ギルド長であり、貴族としては「ジルド」の名を持つ侯爵。ダリヤの保証人として彼女を庇護し、親身になって支援する。

  • 所属組織、地位や役職
    • 商業ギルド長。
    • ディールス侯爵(文中では「ジルド」として言及)。
  • 物語内での具体的な行動や成果
    • ダリヤにダンスの指導を行い、舞踏会では父親代わりとしてエスコートした。
    • 緑の塔を訪れ、自身の拙い魔力制御を補うためにダリヤと協力して付与魔法を行った。
    • 自身の靴紐をあえて切ることで、ヴォルフにダリヤとのダンスの機会を譲る粋な計らいを見せた。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
    • ダリヤの才能を高く評価しており、彼女を守るために貴族としての権力や人脈を行使している。

イヴァーノ・バド

ロセッティ商会の副会長。元商業ギルド職員であり、商会の経営や対外的な交渉を一手に引き受ける。

  • 所属組織、地位や役職
    • ロセッティ商会・副会長。
  • 物語内での具体的な行動や成果
    • ダリヤのお披露目に同行し、彼女の補佐を務めた。
    • 帰りの馬車で御者に指示を出し、ダリヤとヴォルフが話す時間を長く確保するよう配慮した。
    • 小物職人のフェルモをスカウトし、スカルファロット武具工房への参加を促した。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
    • フェルモに貴族のマナー本を渡すなど、商会メンバーの育成にも力を入れている。

ガブリエラ(ティルナーラ)

レオーネの妻であり、侯爵夫人。ダリヤの社交界デビューを全面的にバックアップする。

  • 所属組織、地位や役職
    • 侯爵夫人(文中では「ティルナーラ」「ティル」とも表記)。
  • 物語内での具体的な行動や成果
    • ダリヤのためにダンス練習の場を設け、講師や演奏者を手配した。
    • 舞踏会当日はダリヤの着替えやメイクを手伝い、精神的な支えとなった。
    • ヴォルフが到着した際、彼を客間に案内し、ダリヤの送り役を依頼した。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
    • ダリヤに対して自身の初お披露目の経験を語り、緊張を和らげる優しさを見せた。

オズヴァルド・ゾーラ

熟練の魔導具師であり、ダリヤの父カルロの旧友。ダリヤに対して技術的な指導を行う。

  • 所属組織、地位や役職
    • ゾーラ商会・魔導具師。
  • 物語内での具体的な行動や成果
    • 緑の塔での合同作業に参加し、ダリヤやレオーネと共に高度な付与を行った。
    • ダリヤに付与技術の要点を教え、彼女の成長を促した。
    • カルロとの思い出を振り返り、ダリヤの技術が彼に似ていることを認めた。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
    • 自身の魔力不足や年齢を感じつつも、次世代であるダリヤの才能を認め、協力体制を築いている。

フェルモ

小物職人。細かな細工や加工技術に優れている。

  • 所属組織、地位や役職
    • 職人。
    • スカルファロット武具工房(参加予定)。
  • 物語内での具体的な行動や成果
    • イヴァーノの勧誘を受け、スカルファロット家の仕事に参加することを決めた。
    • ダリヤの短杖制作に協力し、伸縮機能の構造について技術的な助言を行った。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
    • ダリヤとの交流を通じて、職人としての新たな可能性を見出し、貴族社会への適応も視野に入れている。

ベルニージ

引退した老騎士。ダリヤの魔導具によって生活の質を改善された一人。

  • 所属組織、地位や役職
    • 元侯爵家当主、引退騎士。
  • 物語内での具体的な行動や成果
    • お披露目の場でダリヤに会い、彼女を「ダリヤ・ロセッティ男爵」と呼んで功績を称えた。
    • 姪の娘であるユリシュアをダリヤに紹介した。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
    • ダリヤの技術に深い感謝を抱いており、彼女の強力な支持者の一人である。

ユリシュア

ベルニージの親族の少女。魔導義足を使用している。

  • 所属組織、地位や役職
    • ベルニージの姪の娘。
  • 物語内での具体的な行動や成果
    • 魔導義足のおかげで歩けるようになった感謝をダリヤに伝えた。
    • 将来は魔導具師になりたいという夢を語った。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
    • ダリヤの作った魔導具が具体的に人々の希望となっていることを象徴する存在。

カルロ・ロセッティ

ダリヤの亡き父。優秀な魔導具師であり、ダリヤに多大な影響を与えた。

  • 所属組織、地位や役職
    • 元魔導具師。
  • 物語内での具体的な行動や成果
    • 過去の回想にて、製薬用粉砕機や馬の蹄洗浄機を開発していたことが語られた。
    • ダリヤが風邪を引いた際、自身の祖父母を風邪で亡くした経験から過剰に心配した。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
    • 彼の遺した技術や道具、そして愛情は、現在のダリヤの活動の基盤となっている。

グイード・スカルファロット

ヴォルフレードの兄。スカルファロット家の次期当主として弟を見守る。

  • 所属組織、地位や役職
    • スカルファロット侯爵家・次期当主。
  • 物語内での具体的な行動や成果
    • ヴォルフとダリヤから新しい魔導具(魔剣や短杖)を受け取った。
    • ヨナスの養子縁組やヴォルフの恋愛事情について心を砕いている。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
    • 弟ヴォルフとダリヤの関係進展を好意的に受け止め、後押ししている。

ヨナス

グイードの側近であり騎士。

  • 所属組織、地位や役職
    • 騎士(グイードの護衛)。
  • 物語内での具体的な行動や成果
    • ダリヤたちから武器を受け取り、ヴォルフの恋愛について現実的な指摘をした。
    • 自身の養子先の問題についてグイードと話し合った。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
    • 冷静な視点でヴォルフたちを見守りつつ、グイードとは主従を超えた信頼関係にある。

グリゼルダ

魔物討伐部隊の副隊長。

  • 所属組織、地位や役職
    • 魔物討伐部隊・副隊長。
  • 物語内での具体的な行動や成果
    • ヴォルフに王城への伝令役を命じ、彼がダリヤのお披露目に間に合うよう配慮した。
    • 赤熊討伐において、新しい魔法槍を用いてトドメを刺した。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
    • 部下の状況を把握し、適切な采配を振るう指揮官である。

戦闘 一覧

ワイバーン釣りと苦い鎧

緑のワイバーン討伐戦
  • 戦闘者:ヴォルフ、カークを含む魔物討伐部隊員、魔導師、弓騎士 vs 緑のワイバーン
  • 発生理由:緑のワイバーンの討伐任務のため。ヴォルフが囮となり、谷底の待機部隊へ誘導する作戦が実行された。
  • 結果:討伐に成功し、解体作業を経て素材を確保した。ヴォルフは過去の経験と強化された装備を活かし任務を遂行した。
過去のワイバーン遭遇(回想)
  • 戦闘者:ヴォルフ vs ワイバーン
  • 発生理由:過去の任務または遭遇において襲撃を受けたため。
  • 結果:ヴォルフは生存したが、当時は現在よりも装備が劣っていたことが回想されている。

魔物討伐部隊員の選択

赤熊による村への襲撃
  • 戦闘者:赤熊(レッドベア) vs 山間の村の住人
  • 発生理由:赤熊が村を襲い、被害を与えていたため。
  • 結果:怪我人が出たが、魔物討伐部隊の到着と神官の治療により全員回復した。
赤熊の討伐
  • 戦闘者:魔物討伐部隊(ヴォルフ、ドリノ、副隊長グリゼルダら) vs 赤熊(レッドベア)
  • 発生理由:村を守り、被害を食い止めるための緊急討伐。
  • 結果:激しい戦闘の末、ドリノが囮となり、最後は副隊長の新しい魔法槍で赤熊を確実に仕留めた。ヴォルフは膝を負傷したが、後に回復した。

魔導具師ダリヤ 9巻レビュー
まとめ
魔導具師ダリヤ 11巻レビュー

備忘録

アクアパッツァとダンスの練習

お披露目への準備

男爵叙爵前のお披露目が舞踏会形式で行われることになり、ダリヤはダンスへの不安をヴォルフへ漏らした。ヴォルフはできる限り練習に付き合うと約束し、二人は緑の塔でアクアパッツァを囲みながら近況を語り合った。

ダリヤは王城魔導具制作部で、大型粉砕機を使った遠征用の野菜ジュース作りを見学していた。カルミネが中心となって制作した粉砕機は高性能だったが、ウロスは一目見ただけで刃や魔導回路の改良点を指摘していた。ダリヤは二人の技量に感嘆し、遠征中の野菜不足解消へ期待を膨らませた。

ヴォルフは新人隊員が最初の遠征で昔の携帯食を食べ、先人達が食事や装備を改善してきた歴史を知る習慣について話した。その後に現在の遠征用コンロなどを使うことで、隊員達は今ある環境が積み重ねの成果だと実感していた。

ファーストダンスの相手

ダリヤはガブリエラの屋敷で、本格的なダンスの講習を受けた。久しぶりのダンスで講師の足を踏んだものの、基礎はできており、練習を重ねればお披露目には間に合うと励まされた。

そこでダリヤは、ファーストダンスをジルド、続いてヴォルフ、グラートと踊る予定だと知った。自分の失敗で彼らへ迷惑をかけたくないダリヤは、さらに練習への意欲を強めた。

ガブリエラから貴族女性のお披露目やデビュタントの習慣を教わり、父カルロが生きていれば自分と踊ったかもしれないと聞かされた。さらにジルドから舞踏会用のワイン色の靴が届けられ、ダリヤのお披露目準備は着々と進んでいった。

金のイヤリングと騎士

ヴォルフの贈り物選び

ヴォルフはレオーネに紹介された装飾品店を訪れ、ダリヤへ贈る金のイヤリングを探した。店主ロレンツから贈る相手について尋ねられると、ヴォルフはダリヤの赤髪や緑の目、普段の服装を思い返しながら丁寧に説明した。

ロレンツはその様子から二人を恋仲だと誤解したが、ヴォルフ自身はダリヤを大切な友人として語っていた。ヴォルフは雪の結晶とダリアの花を模した二種類まで候補を絞ったものの選びきれず、季節ごとに使えるよう両方を購入した。

裏側には邪悪なものから心身を守るとされ、軽い魔法も付与できる黒瑪瑙を付けてもらった。ロレンツから一度に贈るより機会を分けた方が何度も笑顔を見られると教えられ、まず雪の結晶を贈ることにした。

イヤリングと仮眠ランタン

ダンスの練習で筋肉痛になっていたダリヤのもとへ、正装したヴォルフが訪れた。ヴォルフはお披露目を祝って赤いブーゲンビリアと雪の結晶のイヤリングを贈った。

高価な装飾品を借りるものだと思ったダリヤは、プレゼントだと知って驚いた。黒瑪瑙がヴォルフの黒髪を連想させたため、一瞬だけ恋人への贈り物のようだと意識したものの、すぐ考え直した。ヴォルフが守りの意味と付与できる利点を説明すると、ダリヤは黒瑪瑙も含めて喜んで受け取った。

ダリヤからも、睡眠不足のヴォルフへ仮眠ランタンを贈った。月光蝶の翅を使った眠りを促す魔導具で、灯すと雪の結晶が壁や天井へ映し出されるよう作られていた。母を失った悪夢を見ることがあったヴォルフに、少しでも穏やかに眠ってほしいという願いが込められていた。

ヴォルフは昔、母のイヤリングを直していた経験から、ダリヤの耳へ自らイヤリングを付けた。だが直後、王城から魔物討伐部隊への緊急招集を知らせる赤い光が三度上がった。

ダリヤは危険な討伐へ行ってほしくない気持ちを抑え、魔物討伐は人の命を守る大切な仕事だとしてヴォルフを送り出した。ヴォルフは行ってきますと答え、王城へ急いだ。

ワイバーン釣りと苦い鎧

緑のワイバーン

魔物討伐部隊は、人里近くへ現れた若い緑のワイバーン討伐へ向かった。ダリヤのお披露目が迫っていたため、ヴォルフは任務が長引くことを気にしていた。それでも自分が間に合わなかった場合に備え、ベルニージへダリヤを励ましてほしいと頼んでいた。

討伐では、ヴォルフが牛肉を背負って谷を走り、ワイバーンを誘い込む囮を担当した。天狼の腕輪、ミスリルの爪を付けた戦闘靴などを使い、追いつかれないぎりぎりの速度で谷を駆けた。

赤鎧には空蝙蝠由来の強烈な苦みを持つ被膜が追加され、噛みついた魔物が吐き出すよう工夫されていた。王城魔導具制作部と魔物討伐部隊の連携も深まり、従来の部署の壁を越えた装備開発が始まっていた。

黒の一号

谷の先では、グラートがブラックワイバーン素材の全身装備・黒の一号を着て待ち構えていた。見た目は小型の黒いワイバーンのようだったが、非常に軽く、魔法防御や衝撃吸収能力に優れ、手足には攻撃力を高める機能まで備えていた。

ワイバーンは弓騎士達の攻撃によって翼を失いながらも戦意を失わず、最後には黒の一号をまとったグラートへ向かった。グラートはその誇り高い姿に敬意を抱き、魔剣・灰手で正面から応じて仕留めた。

大きな人的被害を出さず討伐は成功し、素材は王城魔導具制作部へ運ばれることになった。次に作られる装備は緑の一号になりそうだと、グラートは争奪戦を予想した。

魔物討伐部隊員の選択

赤熊に襲われた村

ワイバーン討伐後、隊は二手に分かれて王都へ戻ることになった。ヴォルフは早く戻ればダリヤのお披露目に余裕を持って間に合ったが、負傷したランドルフを休ませるためドリノと共に後方を守る道を選んだ。

野営中、馬を潰すほど走らせた村人が助けを求めてきた。近くの村が二匹の赤熊に襲われ、猟師達も不在だったのである。

グリゼルダはヴォルフへ、戦力は足りているので王都へ先に戻ってよいと告げた。ヴォルフは一瞬迷ったが、ダリヤが送り出す際に魔物討伐は人の命を守る大事な仕事だと言ったことを思い出した。

ここで自分が戻れば、討伐がわずかに遅れ、その間に誰かが家族や大切な者を失うかもしれない。そう考えたヴォルフは魔物討伐部隊員として村へ向かうことを選んだ。

仲間との戦い

村では二班に分かれて赤熊へ対応した。ドリノが誘い出した一匹は、弓騎士と魔導師の連携、さらに疾風の魔弓によって仕留められた。

もう一匹は負傷して倉庫へ入り込み、その地下には女性や子供達が避難していた。ヴォルフは一人で倉庫へ入り、赤熊を外へ誘導した。

しかし昼間のワイバーン戦で身体強化を限界まで使った影響から膝が動かなくなり、赤熊の一撃を避けられない状況へ陥った。そこへドリノや先輩騎士達が割って入り、ヴォルフを救った。

ヴォルフは自分一人で戦う必要はなく、仲間と共に戦っていることを改めて知った。赤熊は隊員達の連携によって倒され、地下に避難していた者達も救われた。

グリゼルダはヴォルフの選択を認め、一人前の魔物討伐部隊員になったと評した。そして急ぎの報告を王城へ届ける役を任せ、今度こそダリヤのもとへ戻るよう送り出した。

ヴォルフは薬草煎餅で力を増した八本脚馬を借り、王都へ全速力で向かった。

お披露目とファーストダンス

ベルニージの言葉

ダリヤのお披露目当日、ジルドの屋敷ではティルを中心に準備が進められた。ダリヤはワイン色のドレスをまとい、ヴォルフからもらった雪の結晶のイヤリングを付けた。

会場では魔導義足を使うユリシュアと出会った。彼女は以前なら事務職へ進むしかなかったが、魔導義足のおかげで歩けるようになり、自分も魔導具科へ進んで義手や義足を作ると決意していた。ダリヤを先輩と呼び、感謝を伝えた。

ベルニージからは、ヴォルフが間に合わなかった場合にダリヤを励えてほしいと頼まれていたことを聞いた。ダリヤは、多くのことを周囲に助けられてきた自分が男爵に値するのかという迷いを抱えていた。

ベルニージは、魔導義足によって歩くことを取り戻した者、騎士へ戻った者、魔導具によって助けられた魔物討伐部隊員達がいることを示し、ダリヤ・ロセッティ男爵として大いに誇れと背中を押した。

ダリヤは涙を流しながら、その言葉を受け止めた。自分一人の成果ではなくとも、魔導具師として皆と共に積み上げてきたものを否定してはいけないと考え、胸を張って会場へ向かった。

最初のダンス

ダリヤがジルドにエスコートされて階段を下りる途中、ヴォルフが会場へ到着した。

本来、最初の挨拶に間に合わなかったヴォルフはダンスに参加できない立場だった。しかしジルドは階段途中で靴紐が切れたとして立ち止まり、ヴォルフを自分の代理に指名した。実際にはダリヤとヴォルフを踊らせるため、自ら靴紐を切ったのである。

こうしてダリヤのファーストダンスの相手はヴォルフとなった。踊りながらダリヤは、最初の相手がヴォルフでよかったと伝えた。ヴォルフも舞踏会で踊るのは初めてであり、互いにとってのファーストダンスとなった。

ヴォルフが遅くなったがただいまと告げると、ダリヤはおかえりなさいと返した。危険な任務から帰ってきたヴォルフと再会できた喜びの中、二人は最後まで踊りきった。

お披露目の盾

お披露目では、ダリヤへ不用意に近づく貴族を減らすための対策も密かに施されていた。ダリヤの装いや周囲の人物関係から、高位貴族と特別な血縁やつながりがあるのではないかという噂が生まれるよう調整されていたのである。

実際には存在しない関係だったが、ジルド達はあえて否定せず、独身で後ろ盾の必要なダリヤを守る盾として利用した。

小物職人と副会長の迷い

細雪マドラー

ダリヤはイヴァーノとフェルモを緑の塔へ招き、グイードへ贈る短杖について相談した。限られた表面積へ二つの機能を持つ魔導回路を入れるため、ダリヤは水魔馬の骨を中空にして内側にも回路を描く方法を考えていた。

フェルモの加工技術によって短杖をくり抜くことに成功し、試作で機能が足りなかった短杖も、小さな氷を作れる細雪マドラーとして利用できると判明した。イヴァーノは即座に商品価値を見いだし、利益契約をまとめた。

フェルモは貴族との仕事を恐れていたが、イヴァーノはスカルファロット家の武具工房へ関わること自体が、家族や弟子を守る盾になると説明した。フェルモは参加を受け入れた。

一方でフェルモは、イヴァーノが貴族社会へ踏み込みすぎ、以前より危うい方向へ進んでいると忠告した。イヴァーノもそれを認め、急ぎすぎないよう心に留めた。

イヴァーノとジルド

イヴァーノはジルドと会い、お披露目でダリヤを守るために用意された噂や人間関係について確認した。

ダリヤを高位貴族に縁のある者のように見せることで、強引な接触を避けさせる狙いがあった。イヴァーノも噂を否定せず、商会長を守るために利用するつもりだった。

ジルドは、各ギルドや高位貴族と渡り合えるまでになったイヴァーノを評価した。一方のイヴァーノは、自分はまだロセッティ商会から受け取っている報酬に見合う仕事をしていないと考えていたが、ジルドは彼が自分自身の価値と将来性を理解しているからこその悩みだと見抜いた。

二人の先生と暁の剣

魔剣闇夜斬り

ダリヤとヴォルフは、グイードとヨナスへ贈る武器を完成させるため、レオーネとオズヴァルドの協力を得た。

ヨナスへ贈る剣は、イシュラナで作られた赤金とミスリルの美しい片手剣・暁であった。ヨナス自身の炎龍のウロコを素材に使い、レオーネが高魔力で付与した。

本人のウロコとの相性から高出力になる危険があるため、紅血設定によってヨナス以外には使えないようにした。完成した剣は炎をまとい、ヴォルフによって魔剣闇夜斬りと名付けられた。

氷蜘蛛短杖

グイードへの短杖には氷龍のウロコを使い、レオーネが外側、オズヴァルドが内部の魔導回路を担当した。

オズヴァルドは糸のように細く正確な魔力操作で、わずかな空間へ回路を付与した。ダリヤは二人の異なる技術を間近で学び、自分もいつか父や先達を超えられる魔導具師になろうと決意を深めた。

短杖は伸ばして使うことができ、氷の結晶や刃を生み出す機能を備えた。レオーネが漏らした言葉から、ヴォルフは氷蜘蛛短杖と名付けた。

レオーネから魔導武具師として名を上げる道も示されたが、ダリヤは自分が作りたいのは生活のための魔導具であるとして、その道を選ばなかった。

幕間 銀狐の振り返り

カルロとの学院時代

レオーネと夜通し飲んだ帰り、オズヴァルドは高等学院時代のカルロを思い返した。

容姿や低い魔力に劣等感を抱き、将来は商会経営だけをするつもりだったオズヴァルドに、カルロは魔力が低くても練習を重ねれば魔導具師になれると教えた。

花の蜜を吸いに行ったり、魔導具を作ったりするカルロとの時間によって、オズヴァルドは他人の評価に縛られていた自分から少しずつ解放された。そして商会経営と魔導具師の両方を目指す道を選んだ。

後に結婚と商売で失敗し、すべてを終わらせようと考えたときも、カルロが現れて酒を飲ませ、もう一度魔導具を作るよう背中を押した。その結果生まれたのが冷風扇であり、オズヴァルドは商会も人生も立て直していた。

カルロへの疑念

カルロが亡くなる直前、オズヴァルドは男爵会で再会していた。しかしカルロは別室へ呼ばれ、オズヴァルドを同行させず、体に気をつけろという言葉を最後に姿を消した。

現在になり、ダリヤの急速な活躍を見たオズヴァルドは、カルロが生前、娘を何かから守るため目立たせないようにしていたのではないかと疑い始めた。

カルロが王城の魔導具師への誘いを断り、酒がまずくなるような魔導具は作りたくないと語っていたことも思い出した。カルロの死に何らかの高位者が関わった可能性まで考えたが、確証はなかった。

それでもダリヤが望まぬ道へ引き込まれることがあれば、カルロに助けられた自分が止める側に立とうと決意した。

妻エルメリンダへ、地位を失う危険があっても進みたい道がある場合どうするかと尋ねると、彼女は相手が魔物でも人間でも隣で戦うと答えた。オズヴァルドは家族を巻き込むことだけを恐れていたが、エルメリンダは自分達はすでに一つなのだから迷う必要はないと支えた。

プレゼント交換とダンスパートナー

主従への贈り物

ダリヤとヴォルフはスカルファロット家を訪れ、グイードとヨナスへ秘密にしていた贈り物を渡した。

グイードからヨナスへは魔剣闇夜斬り、ヨナスからグイードへは氷蜘蛛短杖という形をとり、主従は互いに相手へ武器を用意していたことを知った。

二人は贈り物を心から喜んだ。さらにダリヤは試作から生まれた細雪マドラーも贈った。

次のお披露目

侯爵となるグイードは、自分の代替わり後最初の催しを、男爵となるダリヤとヨナスのお披露目も兼ねたものにすると提案した。

三人同時であれば注目が分散し、ダリヤ達への負担も減らせるため、ダリヤは喜んで受け入れた。次のお披露目ではヴォルフがダリヤのパートナー役を務めることも決まり、ダリヤは少しうれしく感じた。

氷と炎の衝突

その後、グイードとヨナスは屋外で新しい武器を試した。

氷蜘蛛短杖は氷の刃や槍を生み、魔剣闇夜斬りは炎をまとった。やがてどちらが強いかという話になり、周囲の制止を聞かずに本気に近い一撃をぶつけ合った。

巨大な氷と炎が衝突して爆発し、二人はそろって倒れた。それでも武器の出来を褒め合い、勝負は引き分けとした。

結果として二人は翌日からそろって療養させられ、主従仲良く監視下に置かれることになった。

魔物愛好店でのディナー

魔物料理のコース

ダリヤとヴォルフは、魔物料理専門店・魔物愛好店で食事をした。

魔羊、紅牛、角兎のハムから始まり、森大蛇のスープ、漆黒蠍、クラーケンのムース、緑冠のソテー、棘草魔とブラッドオレンジのサラダなど、多様な魔物料理が並んだ。

ヴォルフが苦手としていたクラーケンのムースも、ダリヤが塩と辛口の酒を合わせるよう勧めると食べやすくなり、ヴォルフのお気に入りへ変わった。

店長はいつかワイバーンを丸焼きにしたいと夢を語り、魔物の種類や育った地域によって味が変化する面白さを語った。

デザートには紅牛の乳製品やコカトリスの卵を使った菓子に加え、レッドスライムそのものを加工したゼリーまで登場した。二人はほかのスライムも食用にできるのではないかと想像を広げた。

ヴォルフの母の記憶

帰りの馬車で、流行り風邪の薬となる棘草魔の話から、ヴォルフは幼い頃に母と一緒に風邪をひいた記憶を思い出した。

二人で同じ部屋に寝込み、回復してからも母へ騎士と魔物の物語を読んでもらっていた。母を亡くした辛い記憶ばかりが残っていたヴォルフにとって、それは忘れていた優しい思い出だった。

ダリヤから思い出せてよかったと言われ、ヴォルフはもう忘れないと答えた。

魔物の養殖

話題は薬草煎餅から魔物の養殖へ移った。グリーンスライムは日光で成長がよくなることが判明し、薬草煎餅を増産するための飼育方法が検討されていた。

ダリヤは飼育できるなら水魔馬が欲しいと答え、ヴォルフはワイバーンを挙げた。飛行できる騎獣が増えれば遠征時間を大幅に短縮できるが、どちらも現実には飼育や入手が難しかった。

さらに八本脚馬や緑馬も、相性の問題から繁殖が難しいという話になった。ヴォルフが、初めて会った日に仲良くなってそのまま一緒になるのは人間でも難しいと言いかけ、途中で言葉を止めた。

ダリヤも、自分達は初対面から魔導具と魔剣の話で意気投合し、偶然の再会を経て親しい友人になったことを思い返した。

ヴォルフとなら自然体でいられる。ダリヤは友人としてだと自分へ言い聞かせながらも、少しでも長く共に在りたいと願った。

番外編 父と娘の魔導具開発記録~製薬用粉砕機~

製薬用粉砕機

ダリヤは、弓騎士の指を摩擦熱から守る手袋を試作するため、鎧蟹の殻を細かな粉末にしようとした。

そこで父カルロが残した製薬用粉砕機を探したところ、先に馬の蹄洗浄機を見つけた。蹄洗浄機は開発当時ほとんど売れなかったが、イヴァーノが貴族や馬の品評会向けに売り込み直したことで、現在は一定数売れるようになっていた。

続いて見つけた製薬用粉砕機は、風の魔石で刃を動かし、氷の魔石で冷却しながら薬を細かくする魔導具だった。

箱の中から幼い頃に使っていた黒犬模様の小皿も見つかり、ダリヤは父との生活を思い出した。

父と娘の家族

幼いダリヤが風邪をひいた際、母親がいないからかわいそうだとカルロの友人に言われたことがあった。ダリヤは自分はかわいそうではないと強く反発していた。

大人になった今、父の再婚を邪魔したのではないかという思いもあったが、それでも一つだけは断言できた。

母がいなくとも、ダリヤは不幸ではなかった。カルロと二人で確かに幸せな家族だったのである。

製薬用粉砕機も、医師から薬を熱をかけず細かくしたいと相談されたカルロが開発したものだった。薬師ギルドからの評価は低く、大きく売れることはなかったが、幼いダリヤへ飲ませる薬を細かくする際には何度も役立っていた。

カルロとファウスト

カルロが亡くなる少し前、ダリヤが風邪をひいた。カルロは異常なほど心配したが、それは自分の父母を流行り風邪で続けて失った過去があったためだった。

一方、カルロ自身は魔力過多による胸の痛みを抱え、すでに薬も効きづらくなっていた。それを娘にも弟子のトビアスにも隠していた。

数日後、男爵会へ出たカルロは、別室へ呼び出された。待っていたのはザナルディ公爵ファウストだった。

ファウストはカルロへ、高額な治療費を負担し、命を半年ほど延ばす代わりに、ザナルディ家の魔導具師カルミネへ知識を与えてほしいと提案した。

求められている知識がダリヤの前世の記憶、カルロが天の愛し子と考えていた発想へつながる可能性を恐れたカルロは拒絶した。

国を守る兵器を求めるファウストの立場を理解しながらも、カルロが守りたいものは国より娘の自由と平穏、幸福だった。

カルロは、自分が死んでも魔導具と弟子達は残り、仲間達も自分を超えていくと告げた。使う者が望まない知識を残し、後を継ぐ者達の枷になることだけは拒んだ。

ファウストはその決意を受け入れ、治療との取引を諦めた。それでも最後に二ヶ月ほど痛みを抑えられる薬を無償で渡した。

長く異なる道を歩んできた二人は互いの立場を認め、カルロは娘の待つ緑の塔へ帰っていった。

魔導具師ダリヤ 9巻レビュー
まとめ
魔導具師ダリヤ 11巻レビュー

魔導具師ダリヤはうつむかない 一覧

その他フィクション

フィクションのまとめページの表紙画像(導入用)
フィクション あいうえお順

Share this content:

コメント

タイトルとURLをコピーしました