魔導具師ダリヤ 10巻レビュー
まとめ
魔導具師ダリヤ 12巻レビュー
物語の概要
■ 作品概要
年末の多忙な時期を迎えた魔導具師ダリヤ・ロセッティは、ロセッティ商会としての寄付手続きや仕事納めの対応に追われる。
彼女は商業ギルドでの寄付先選定において、会頭補佐メーナの縁がある救護院の屋根修繕を迅速に手配し、商会員や関係者と贈り物を交わして1年を締めくくる。
ダリヤは友人である騎士ヴォルフレード・スカルファロット(ヴォルフ)と共に、冬祭りの屋台巡りを楽しみ、絆を深める。新年を迎えた後は、王城魔導具制作部から借り受けた魔導書の解読や、服飾師ルチア・ファーノが試作した「遠征夜着」の実験協力、先輩職人フェルモ・ガンドルフィの新工房開設祝いなど、多様な職人や騎士団関係者との交流を重ねる。
物語の終盤では、スカルファロット家別邸にてイシュラナ国の大商会「ハルダード商会」の商会長ユーセフ・ハルダードとの初面談に臨む。
異国の商会長との人払いの対談を通じ、彼が義理の息子であるヨナス・グッドウィンを深く案じる父親としての切実な姿勢に触れたダリヤは、ヨナスを「大切な仕事仲間」として助け合うことを約束し、互いに深い信頼関係を築き上げるに至る。
■ 主要キャラクター
ダリヤ・ロセッティ
- 立場・所属 : ロセッティ商会会長、魔導具師、魔物討伐部隊相談役(次期男爵)。
- 主人公との関係 : 本作の主人公。
- この巻での主な役割・変化 : 年末の商会および個人での寄付手続きの決定、冬祭りでのヴォルフとの屋台巡り、王城魔導具制作部ウロス部長からの作業用手袋および魔導書写本の拝領、服飾魔導工房による遠征夜着の試作協力、ガンドルフィ工房新築祝いでのペンダント進呈、ユーセフ・ハルダード商会長との面談とヨナスに関する支援依頼の受諾。
ヴォルフレード・スカルファロット(ヴォルフ)
- 立場・所属 : オルディネ王国騎士団 魔物討伐部隊隊員(伯爵家三男)。
- 主人公との関係 : ダリヤの友人。
- この巻での主な役割・変化 : 年末年始の王城待機組として勤務。ダリヤと「頬に紅のある仮面」をつけて冬祭りの屋台を回る。父レナートと過去の壁破壊エピソードをきっかけに会話を交わして関係改善の兆しを得て、父に贈るための魔導ランタン制作をダリヤに依頼する。
イヴァーノ・メルカダンテ
- 立場・所属 : ロセッティ商会副会長。
- 主人公との関係 : ダリヤの側近・商会経営の補佐。
- この巻での主な役割・変化 : 商会の寄付手続きの取りまとめ、メーナが提出した救護院の屋根修繕における大工の手配、冬祭り前の商会員への配慮、ハルダード商会との交渉準備および通訳の確認。
メーナ(メッツェナ・グリーヴ)
- 立場・所属 : ロセッティ商会会頭補佐(元商業ギルド員)。
- 主人公との関係 : ダリヤの部下・商会員。
- この巻での主な役割・変化 : 出身地であるモルテード子爵管理の救護院の屋根修繕について相談。知人が制作した冬祭り用の仮面(頬の紅あり)をダリヤとヴォルフに販売する。
ヨナス・グッドウィン
- 立場・所属 : スカルファロット家武具工房長、魔物討伐部隊相談役(炎龍の魔付き)。
- 主人公との関係 : 協力関係にある相談役・友人。
- この巻での主な役割・変化 : 氷蜘蛛の短杖や魔剣間夜斬りの納品に対するお礼(兼・冬祭りのプレゼント)として、グイードと共にダリヤへワインの目録を贈呈。スカルファロット別邸でドリノとヴォルフに対して「威圧訓練」を実施。ハルダード商会長(義父)から身を案じられていることが描かれる。
グイード・スカルファロット
- 立場・所属 : 魔導部隊中隊長、スカルファロット家次期当主。
- 主人公との関係 : ヴォルフの兄、ダリヤの支援者。
- この巻での主な役割・変化 : ヨナスと共に納品のお礼としてダリヤへワインの目録を贈呈。スカルファロット別邸での酒席(暴露大会)にて、ドリノの実家が製造する「漬け込み羊肉」20樽の発注を行う。
ドリノ・バーティ
- 立場・所属 : 魔物討伐部隊員(赤の騎士)。
- 主人公との関係 : ヴォルフの同僚・友人。
- この巻での主な役割・変化 : 独身騎士の宴の幹事を担当。スカルファロット別邸に漬け込み羊肉を届け、ヨナスの威圧訓練を受ける。ヨナスより利子付きでの魔力ポーション購入代金分割払いを提案される。
ルチア・ファーノ
- 立場・所属 : 服飾魔導工房長、服飾師。
- 主人公との関係 : ダリヤの友人。
- この巻での主な役割・変化 : ダリヤの冬祭り用衣類の見立てを担当。「着る毛布/遠征夜着」の試作品を複数制作し、魔物討伐部隊棟でのお披露目を行う。
フェルモ・ガンドルフィ
- 立場・所属 : ガンドルフィ工房長、小物職人。
- 主人公との関係 : 先輩職人、技術的協力者。
- この巻での主な役割・変化 : 西区に新工房を新築・移転。ダリヤから祝い品として「本の乾かし機」と、妻バルバラの痛み止めおよび自身の肩こり用として「一角獣のペンダント(龍の彫刻)」を受け取る。
ユーセフ・ハルダード
- 立場・所属 : イシュラナ国・ハルダード商会商会長。
- 主人公との関係 : 取引相手(ヨナスの義父)。
- この巻での主な役割・変化 : ロセッティ商会との初回取引の挨拶のため来訪。ダリヤと二人きりになった際、片膝をついて頭を下げ、義理の息子ヨナスを「大切な仲間」として助けてほしいと乞う。
読んだ本のタイトル
魔導具師ダリヤはうつむかない ~今日から自由な職人ライフ~11
著者:#甘岸久弥 氏
イラスト:駒田 ハチ 氏
出版社:KADOKAWA
発売日:2024年11月25日
ISBN:9784046838209
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あらすじ・内容
オルディネの年末年始――ダリヤとヴォルフ、二人で楽しむ冬祭りは……?
男爵内定のお披露目を乗り越え、年末を忙しく過ごす魔導具師のダリヤ。
それはロセッティ商会も例外ではなく、仕事納めを前に慌ただしくも、どこか浮き足立った雰囲気だった。そんな中ダリヤは、ヴォルフとの『冬祭り』の約束を心待ちにするとともに、冬祭りのプレゼントを贈れる相手が増えたことに喜びを感じていた。
今年一年で広がったダリヤの縁――その縁で彼女もまた、周囲からたくさんの“贈り物”を受け取ることになる。
「プレゼントが増えたね、ダリヤ」
そして訪れた冬祭り、ダリヤとヴォルフは屋台を巡り、一年を締めくくる。迎える新年にダリヤが祈るのは――。
「共に、笑って過ごせますように――」
それぞれが過ごす年末年始は……? 魔導具師ダリヤのものづくりストーリー、気持ちを新たな第十一弾、開幕!
感想
11巻は年末年始ということもあって、全体的ににぎやかで温かい話が多かった。
ダリヤとヴォルフは冬祭りへ。
魔物討伐部隊では新年早々、義足や義手を手に入れた老騎士たちが暴れ始める。
遠征夜着を作れば、なぜか騎士たちは空を飛び始める。
相変わらず平和なのか騒がしいのかよく分からない。
そんな中で印象に残ったのが、年を取った人達がもう一度前を向き始める姿だった。
身体を取り戻した老騎士たち。
ひ孫に会えたことで元気を取り戻す人達。
そして、自分達の次の世代が貴族社会の中で食い物にされないように動き始める。
年を取ったから終わりではない。
むしろ、
「まだやることがある」
と動き始める老人達がやたら元気である。
ひ孫パワー、ハンパない。
そして最後にはカルロ。
これはダメだ。
泣く。
年末年始、ダリヤとヴォルフは冬祭りへ
年末の忙しい仕事を終え、ダリヤとヴォルフは冬祭りを楽しむ。
屋台を巡って食べ歩き。
こういう二人の日常はやっぱりいい。
しかも二人がつけることになったのは、頬に紅のある仮面。
周囲から見ると、連れ立つ相手や伴侶を示す意味もあるらしい。
いや、もう完全にカップルじゃないか。
本人達は相変わらずだけど。
人混みではぐれないようにダリヤがヴォルフの袖をつかみ、最終的には腕を組んで歩く。
これだけ見ると普通にデートである。
それでも関係が一気に進展するわけではない。
この進みそうで進まない感じ。
もう慣れてきた。
でも、ダリヤ自身がヴォルフともう少し一緒にいたいと思うようになっている。
少しずつではあるが、確実に変化しているのだと思う。
新年早々、老騎士たちが「新人です!」
一方、魔物討伐部隊では新年早々とんでもない新人達が現れる。
ベルニージ。
ゴッフレード。
レオンツィオ。
義足や義手によって再び戦えるようになった老騎士たちである。
彼らは再入隊を目指しているため、立場としては新人。
だから若い騎士達へ、
「先輩方、稽古をつけてください!」
とやってくる。
いやいやいや。
無理だろ。
ベルニージは元副団長。
ゴッフレードもレオンツィオも長年戦ってきた熟練者。
若手からすれば、
「こっちが稽古をつけてもらう側なんですが……」
という状態である。
それなのに本人達は新人面している。
やりづらいわ!
しかもベルニージなんて新年早々やる気満々。
身体が動くようになったのが本当にうれしいのだろう。
分かる。
分かるけど。
若手騎士達には同情する。
元気になりすぎるのも問題である
義足や義手によって、もう一度騎士として身体を動かせる。
これは素晴らしいことである。
これまで失ったものを取り戻した人達なのだから、多少はしゃぐくらい仕方ない。
……多少なら。
この人達、元気になりすぎなんだよ。
特にベルニージ。
若手相手でも容赦がない。
長年の経験まであるのだから、身体が戻ってしまえば普通に強い。
老騎士が義足や義手によって復活する。
物語としては感動的なのに、実際に相手をさせられる若手からすると恐怖でしかない。
「新人です!」
と言いながら歴戦の老騎士が迫ってくる。
こんな新人、嫌すぎる。
ひ孫に会えたら、そりゃ泣く
11巻で特に好きだったのが、老人達と次の世代とのつながりである。
長く生きてきた人達には、それぞれ失ったものがある。
身体もそう。
仲間もそう。
家族との時間もそうだろう。
それでも生きていれば、新しい出会いがある。
その象徴がひ孫だったように感じた。
思わぬ形でひ孫に会える。
これは泣くやろ……。
戦場を生き抜いてきた人でも、家族の前ではただのおじいちゃんになる。
むしろ長く生きてきたからこそ、
「この子が生まれるところまで来られた」
という重みがあるのかもしれない。
そして面白いのが、ひ孫に会って満足して隠居するわけではないところ。
逆である。
さらに元気になる。
ひ孫パワー、恐るべし。
ひ孫達を貴族の食い物にさせない
そして、ここからがこの作品らしい。
かわいい。
元気になった。
よかったね。
だけでは終わらない。
この子達がこれから成長したとき、貴族社会の都合で利用される可能性がある。
だったら、自分達が生きているうちに守れる仕組みを作っておこう。
そう考えて動き始める。
ここがすごく好きだった。
自分達がずっと守り続けられるとは考えない。
年齢を考えれば当然である。
だからこそ、人ではなく組織として残そうとする。
自分達がいなくなったあとでも、次の世代を守れるようにする。
長く生きてきた人だからこその考え方だと思う。
目の前のひ孫をかわいがるだけではない。
その子達が自分の力で生きられるところまで考えている。
老人達、強い。
そして行動が早い。
クッションリスから、なぜ空を飛ぶ話になるんだ
一方で、いつもの魔物討伐部隊も健在だった。
遠征用の夜着。
寒い場所でも暖かく眠れる。
そのまま動くこともできる。
ここまでは分かる。
ダリヤとルチアが関われば、実用的で便利な装備ができるのも分かる。
クッションリス型。
これもまだ分かる。
かわいいから。
問題はここからである。
なぜ飛ぶ?
空蝙蝠の素材を使って付与。
そして高い場所から滑空。
男性社会の悪ノリが始まった。
何でそんなに飛びたいんだ!?
防寒着を作っていたはずなのに。
気がついたら空を飛ぶ装備になっている。
この作品、たまに魔導具開発の方向がおかしい。
いや、実用性はある。
高所からの移動や偵察にも使える。
理屈は分かる。
でも、
「暖かく寝られる服を作ろう」
から、
「よし、飛ぼう!」
になるのがおかしい。
魔物討伐部隊に新しい物を渡すと、だいたいこうなる気がする。
ダリヤの作ったものが、いろいろな人の人生を変えている
老騎士達の話を読んでいると、改めて感じることがある。
ダリヤ本人は、
「自分はちょっと手伝っただけ」
くらいに考えていることが多い。
でも、その「ちょっと」が誰かの人生を大きく変えている。
義足を手に入れて、また歩けるようになった。
義手を手に入れて、もう一度武器を握れた。
孫を抱き上げられた。
騎士として戻ることまで考えられるようになった。
ダリヤが一人で作ったわけではない。
多くの魔導具師や職人が関わっている。
だからこそダリヤ自身も、自分だけの功績とは考えない。
でも、彼女が動かなければ始まらなかったことも多い。
10巻のお披露目でも感じたが、ダリヤが積み重ねてきたものが、本人の知らないところまで広がり始めている。
11巻では、それがさらに次の世代へつながっていくように感じた。
ヴォルフとの関係は相変わらずじれったい
そして恋愛方面。
進みそう。
でも進まない。
もう様式美になってきた。
冬祭りを一緒に歩く。
腕まで組む。
来年も一緒に祭りへ行こうと約束する。
別れ際には、もっと一緒にいたいと思う。
十分じゃないか。
もう付き合えよ。
……と言いたくなる。
でも、この二人はそうならない。
一気に恋愛関係になるより、この距離感だからこそ安心して一緒にいられる部分もあるのだろう。
特にヴォルフには過去がある。
ダリヤにも婚約破棄の経験がある。
二人とも関係を壊すことに慎重なのかもしれない。
だから少しずつでいい。
そう思う。
思うのだが。
長いな!
そして最後のカルロ
11巻で一番感情を持っていかれたのは、やはりカルロだった。
本編ではすでに亡くなっている。
ダリヤの記憶の中にいる父親。
これまでにも過去の話は何度も出てきた。
魔導具師としてのカルロ。
師匠としてのカルロ。
友人達から見たカルロ。
そして父親としてのカルロ。
巻を重ねるたびに、ダリヤの知らなかったカルロが少しずつ見えてくる。
だからこそ、最後を描かれるのはきつい。
結末を知っている。
カルロがもういないことも知っている。
それでも実際にその時が近づいていくと、
「やめてくれ」
と思ってしまう。
未来は変わらない。
ダリヤは父親を失う。
分かっているから余計につらい。
カルロは、ダリヤにたくさんのものを残していた
シリーズをここまで読んでくると、カルロの存在の大きさがよく分かる。
本人はもういない。
それでもカルロが作った縁は残っている。
オズヴァルド。
ウロス。
レオーネ。
ガブリエラ。
魔導具師や商業ギルドの人達。
その縁が巡り巡って、今のダリヤを支えている。
カルロ本人が、
「娘をよろしく」
と一人一人に頼んで回ったわけではないだろう。
それでも彼が人とどう付き合ってきたのか。
どんな仕事をしてきたのか。
誰を助けてきたのか。
その積み重ねが、カルロの死後もダリヤを守っている。
そう考えると、11巻で描かれる老人達の行動とも重なる。
自分はいずれいなくなる。
それでも次の世代に何かを残すことはできる。
人との縁。
技術。
組織。
思い出。
生きているうちに作ったものは、自分がいなくなったあとも誰かを助けることがある。
カルロもまた、そういう人だったのだと思う。
年末年始なのに「受け継ぐもの」を強く感じる巻だった
最初はもっと気楽な年末年始巻だと思っていた。
ダリヤとヴォルフが冬祭り。
老騎士達が新人面して若手を困らせる。
クッションリスを着て飛ぶ。
いつもの楽しい『魔導具師ダリヤ』である。
でも読み終わってみると、
「次の世代へ何を残すのか」
という話が強く印象に残った。
身体を取り戻した老騎士達。
ひ孫に会って元気を取り戻す人達。
ひ孫達が将来利用されないよう、今のうちから守る仕組みを作ろうとする老人達。
そして、亡くなったあとも娘を支え続けているカルロの縁。
人はいつまでも生きられない。
でも、自分が作ったものまで消えるとは限らない。
それが技術なのか。
組織なのか。
人とのつながりなのか。
11巻を読んでいて、そんなことを考えさせられた。
まとめ
『魔導具師ダリヤはうつむかない』11巻は、年末年始らしい温かさと笑いがありながら、最後にはしっかり泣かされた巻だった。
個人的に笑ったのは、やはり老騎士達。
義足や義手によって身体を取り戻したと思ったら、
「新人です! 先輩、稽古をお願いします!」
と若手騎士のところへやってくる。
いや、あなた達の方が圧倒的に先輩だから。
若手、やりづらすぎるだろ。
さらに遠征夜着ではクッションリスから飛行へ。
何でそんなに飛びたいんだ!?
相変わらず魔物討伐部隊は楽しそうである。
その一方で、ひ孫との出会いは本当に温かかった。
長く生きてきた人が、自分よりずっと先まで生きていく小さな命を見る。
それ、泣くやろ……。
しかも感動して終わりではない。
ひ孫達が将来、貴族達の都合で利用されないように動き始める。
ひ孫パワー、ハンパない。
そして最後のカルロ。
ここまでシリーズを読んできたからこそ、彼の最期は重かった。
カルロ本人はいなくなった。
でも、カルロが築いた縁は今もダリヤの周囲に残っている。
その人がいなくなっても、その人が残したものは誰かの人生の中で生き続ける。
にぎやかな年末年始の物語だったはずなのに、最後にはそんなことまで考えさせられた。
笑って、ほっこりして、最後に泣く。
11巻は、そんな一冊だった。
魔導具師ダリヤ 10巻レビュー
まとめ
魔導具師ダリヤ 12巻レビュー
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考察・解説
ストーリー・プロット
第1幕:年末の繁忙とロセッティ商会の寄付
年末を迎え街が慌ただしくなる中、ダリヤとヴォルフはスカルファロット家の馬車で商業ギルドへ向かう。車内では年末年始の予定が交わされ、王城待機組のヴォルフと、ルチアとの約束以外は静かに過ごす予定のダリヤがお互いの近況を確認する。
商業ギルドの商会部屋に到着したダリヤは、副会長イヴァーノおよびメーナと年末の寄付手続きについての協議を行う。
商会からの寄付先を神殿と魔物討伐部隊に決定したほか、ダリヤは個人資産からも「ロセッティ家」として魔物討伐部隊への匿名寄付を行うことを決める。
協議の途中でメーナの出身地である救護院(モルテード子爵管理)の屋根が破損し雨漏りしている事実を知ったダリヤとイヴァーノは、即座に大工を手配し、修繕費を出資する対応をとる。
その後、岩石チーズや板ハム、魔羊の膝掛け、天馬の羽根のお守りといった冬祭りのプレゼントを商会員同士で交換し、年末の作業を進めた。
第2幕:魔物討伐部隊の反省会と独身騎士たちの宴
ダリヤは今年最後の打ち合わせのため、魔物討伐部隊棟を訪問する。グラート隊長をはじめとする隊員たちと乾杯を交わし、相談役としての貢献に対して隊から冬祭りのプレゼント(ダリヤへは東ノ国の調味料目録、ヨナスへは牛肉目録)を受ける。
歓談中、王城財務部長のジルドが書類の納品日未記入などの不備を理由にグラート隊長を連行する一幕もあった。反省会終了後、ドリノが幹事を務める独身騎士たちの二次会が市内の酒場で開催される。グイードの勧めにより、護衛のヨナスも二次会に参加する。
宴の場では、結婚や独身生活に対するそれぞれの考え方、魔付きに関する質疑応答、さらにはランドルフの秘めた思いなどが語られ、騎士たちは交流を深めた。
第3幕:王城魔導具制作部での拝領と冬休みの準備
魔物討伐部隊棟からの帰り際、ダリヤとヴォルフは王城魔導具制作部のカルミネ副部長に案内され、ウロス制作部長の部屋を訪れる。
ウロスは約束していた作業用手袋(レッドワイバーン製・赤珊瑚付き)をダリヤに贈呈する。その際、ダリヤの父カルロやオズヴァルドの学院時代の失敗談、レナート(ヴォルフの父)の過去の壁破壊エピソードなどが語られる。
ウロスは、積もる雪を効率よく作れるようにして氷魔法使いの負担や魔力ポーション代を削減する目的で改良した「細雪マドラー」の簡素かつ美しい魔導回路図面と、回路の短縮化を学ばせるための課題(宿題)として貴重な魔導書写本をダリヤに貸与した。
商業ギルドの商会部屋へ戻ったダリヤは仕事納めの準備を行い、メーナから冬祭り用の「頬に紅のついた仮面(連れ立ち・伴侶のサイン)」をヴォルフの分と合わせて購入する。
待ち合わせ時間を繰り上げ、翌日の冬祭りに備えた。
第4幕:冬祭りと屋台巡り
冬祭り当日、ルチアに見立ててもらった服装でダリヤが準備を整えていると、待ち合わせより早く到着したヴォルフが門前で近所の子供たちと雪人形を作っていた。
二人は乗合馬車で中央区および南区へ向かい、ポルケッタのせパン、羊肉の香辛料串、クレスペッレ、クラーケン焼き、銀亀のスープ、風船魚の天ぷら、巣蜜などの屋台巡りを楽しむ。
混雑する街中において、二人は「頬に紅のある仮面」を着用し、はぐれないようにヴォルフが腕を差し出して歩みを進める。
時間が経つのも忘れ、屋台の料理や酒を分かち合った二人は、来年の祭りにも朝一番から二人で参加することを約束し、夕刻に王城の待機勤務へと戻るヴォルフをダリヤが見送った。
第5幕:新年の訪れとスカルファロット別邸での威圧訓練・暴露大会
新年を迎え、ダリヤは緑の塔の屋上で初日の出を見ながら祈りを捧げる。ヴォルフは兵舎でベルニージたち老騎士との激しい訓練に明け暮れる。
待機明けの1月3日、ヴォルフはダリヤの塔を訪問し、ルチアが試作した「クッションリス寝間着」を二人で試着しながら、ウロスから聞いた「レナートが学生時代に校舎の壁に大穴を開けた」という話を直接父に尋ねたことがきっかけとなり、長年距離のあった父子の会話が開かれ、領地に持参するための魔導ランタン(青と金)の制作依頼へと繋がったことを報告する。
後日、ドリノが実家の漬け込み羊肉を携えてスカルファロット家別邸を訪問する。そこで炎龍の魔付きであるヨナスによる「威圧訓練」が行われ、ドリノとヴォルフは強力な威圧による恐怖と実力差を体感する。
その後の宴席では、グイード、ヨナス、ヴォルフ、ドリノの4人で「暴露大会(過去の失敗談や恋愛観の開示)」が行われ、グイードよりドリノの実家へ漬け込み羊肉20樽の発注がなされた。
第6幕:ガンドルフィ工房の新築祝いと「一角獣のペンダント」
仕事初めの日、ダリヤとイヴァーノは西区に完成したガンドルフィ工房を訪問する。開業の挨拶として「職人の塩」の受け渡しが行われた後、ダリヤは新築祝いとして制作した「本の乾かし機」を進呈する。さらに、妻バルバラの「アカザシ」の後遺症である痛みの予備対策、およびフェルモの肩こり軽減用として、自作の「一角獣のペンダント(龍の彫刻)」を贈呈する。
フェルモとバルバラ夫妻はダリヤの深い配慮に感謝し、過去の経営難や病気から完全に立ち直し、職人として稼いで弟子を取る決意を新たにした。
第7幕:遠征夜着のお披露目と飛行実験
魔物討伐部隊棟にて、今年度の導入予算会議およびルチアたち服飾魔導工房による「遠征夜着」の試作お披露目会が開催される。会議では無事に予算余剰と重傷者ゼロが報告された。続くお披露目会では、ルチアが手がけた基本型、迷彩型、クッションリス型、赤熊型、森大蛇型、黒狼型といった多種多様な遠征夜着が披露される。その中でグリゼルダ副隊長が過去に森大蛇に呑み込まれ、自力で脱出して後発魔力を発現させた経緯が語られる。屋外での動作確認の際、カルミネ副部長が魔封箱から取り出した「空蝙蝠の頭蓋」を使い、その場で魔力を注ぎ込んで遠征夜着に飛行補助の付与を実施した。これにより、クッションリス型を着たカーク隊員が3階バルコニーから見事に滑空成功する場面が発生した。
第8幕:イシュラナ・ハルダード商会との面談と父の祈り
スカルファロット家別邸の客間にて、イシュラナの大商会であるハルダード商会の商会長ユーセフ、通訳ミトナとの初顔合わせが行われる。初回取引として小型魔導コンロと王蛇の魔核の目録交換が行われ、ワイバーンを使用した「王蛇の抜け殻釣り」などの事業手法が紹介される。
対談の途中、ユーセフ商会長の希望により人払いがなされ、ダリヤとユーセフの二人きりとなる。ユーセフは片膝をついて頭を下げ、義理の息子であるヨナスを「大切な仲間」として助けてほしいとダリヤに乞う。ダリヤはヨナスを「大事な仕事仲間」と伝えて頭を上げさせ、彼を安心させて支援を約束した。
自分とヨナスとの関係を案じるユーセフの温かな父親としての姿に触れたダリヤは、姿形は似ていないものの亡き父カルロの面影を重ね合わせ、深い親愛と信頼関係を結んだ。
主要な転換点
転換点1:救護院への即時屋根修繕の決定
- それ以前の状況 : 冬祭り前の寄付先として神殿や魔物討伐部隊を中心に検討していた。
- 出来事 : メーナの出身救護院が雨漏りし、食堂のテーブルにバケツが置かれている状況を知る。
- 変化 : 商会から修繕費を出すことを決め、イヴァーノの知人の大工を即日派遣して翌日には修繕を完了させた。
- 次への影響 : モルテード子爵からの礼状を受け取り、メーナの商会に対する信頼と安心感が深まった。
転換点2:冬祭りでの「頬に紅のある仮面」の着用と腕組み
- それ以前の状況 : お互いに過去の出来事から恋愛関係を意識的に避け、友人としての距離を保っていた。
- 出来事 : 屋台巡りの人混みで声をかけられるのを防ぐため、メーナから買った「頬に紅のある仮面(伴侶・連れ立ちのサイン)」を二人で着用し、ヴォルフが左腕を出してダリヤと腕を組んで歩いた。
- 変化 : 周囲から連れ立ちとして扱われ、温もりを感じながら長い時間を二人で楽しく過ごした。
- 次への影響 : 翌年の祭りにも朝一番から二人で参加する約束を交わした。
転換点3:スカルファロット別邸での「威圧訓練」
- それ以前の状況 : ドリノは自身の強さに限界を感じつつも、同期のヴォルフとの力量差や自身の弱さに悩んでいた。
- 出来事 : 炎龍の魔付きであるヨナスの本気の威圧を受け、全身の震えと敗北感を味わった。
- 変化 : 実力差を痛感しながらも意地を通すため、ヨナスから利子付き分割払いで資金を借り、魔力ポーションを購入して魔力を上げる決意をした。
- 次への影響 : ドリノの強さへの具体的足がかりと、ヨナスとの分割払い契約による独自の信頼関係が成立した。
転換点4:一角獣のペンダント(龍の彫刻)の進呈
- それ以前の状況 : フェルモ夫妻は経営難から立ち直りつつあったが、バルバラの病気の後遺症に対する予備のペンダントはなかった。
- 出来事 : ガンドルフィ工房の新築祝いとして、ダリヤが自作した龍の彫刻入り「一角獣のペンダント」を進呈した。
- 変化 : フェルモ夫妻はダリヤの配慮に感謝し、職人として完全に再起し、稼いで弟子を取る意欲を固めた。
- 次への影響 : ロセッティ商会とガンドルフィ工房の協力体制がより強力になった。
転換点5:遠征夜着への空蝙蝠付与と滑空成功
- それ以前の状況 : 遠征夜着は防寒・機動性のための「着る毛布」として開発が進められていた。
- 出来事 : カルミネ副部長が「空蝙蝠の頭蓋」を用いて遠征夜着へ即興で付与を行い、カーク隊員が3階から滑空に成功した。
- 変化 : 単なる防寒着から、高所からの偵察や滑空移動が可能な戦術装備へと進化した。
- 次への影響 : 魔物討伐部隊における実戦投入や追究、服飾魔導工房への大量発注へとつながった。
転換点6:ユーセフ・ハルダードとの二人きりの対談
- それ以前の状況 : イシュラナの役職のある男性は女性に頭を下げず、一定の距離を置くのが常識とされていた。
- 出来事 : ユーセフが人払いを求めた上で片膝をついて頭を下げ、義息ヨナスへの助力を請うた。
- 変化 : ダリヤはヨナスを「大事な仕事仲間」と伝えて頭を上げさせ、ユーセフの深い親心を受け止めた。
- 次への影響 : イシュラナの大商会との間に個人的かつ強固な信頼関係が構築された。
ダリヤを中心とした人物関係の変化
ヴォルフレード
- 開始時 : 気の置けない友人関係だが、過去のトラウマから距離感を意識していた。
- 主な出来事 : 冬祭りで「頬に紅のある仮面」をつけて過ごしたこと、ルチア試作の「クッションリス寝間着」を共有したこと、ヴォルフが父との会話の第一歩を踏み出したことを報告し合ったこと。
- 巻末時 : 互いの存在がより自然で不可欠なものとなり、次の祭りや魔導ランタン制作を通じて将来の時間を共有する約束が当たり前のものとなった。
フェルモ・バルバラ夫妻
- 開始時 : 商会の下請け・先輩職人と後輩魔導具師の関係。
- 主な出来事 : 新工房のお祝いに「本の乾かし機」と「一角獣のペンダント」を進呈したこと。
- 巻末時 : 単なるビジネスの関係を超え、互いの意地と技術を尊重し合う確固たる職人同士の深い絆で結ばれた。
ユーセフ・ハルダード
- 開始時 : 初めて顔を合わせる異国の大商会の会長。
- 主な出来事 : 初回取引の挨拶後、人払いのうえでヨナスの身を案じるユーセフの頭を下げる姿を受け止め、頼みを快諾したこと。
- 巻末時 : ヨナスを大切な者として案じる者同士として、個人的な深い感謝と信頼を得た関係。
主人公の認識と周囲の評価
主人公自身の認識
- 自身をまだまだ魔力が少なく、付与や加工の技能・知識が不足している駆け出しの魔導具師と捉えている。
- 商会運営においてはイヴァーノに頼り切りであり、周囲に負担をかけたり助けられてばかりいると感じている。
周囲からの評価
- 王城魔導具制作部(ウロス・カルミネ) : 才能と熱意を認め、最高級の作業手袋や秘蔵の魔導書写本を貸し出すほど将来を期待する優秀な若手魔導具師。
- 魔物討伐部隊(グラート・グリゼルダ・隊員たち) : 遠征環境や隊員の生存率・安全性を向上させる魔導具(コンロ、中敷き、遠征夜着等)を生み出す、心強く不可欠な「相談役」。
- フェルモ・ルチア等職人たち : 刺激的なアイデアを持ち、職人としての腕を急速に上げている敬意に値するパートナー。
- ユーセフ・ハルダード : 腕が立つだけでなく、義息ヨナスの安全や将来を安心して託せる誠実で貴重な人物。
認識の差が現れた場面
- ウロスから作業用手袋と魔導書を渡された場面 : ダリヤは自分には勿体ないと恐縮するが、ウロスはダリヤの技能を正当に評価し、さらなる成長を促すために当然のごとく与えている。
- 遠征夜着の大量発注の場面 : ダリヤはただの動きやすい防寒寝間着のつもりで協力したが、魔物討伐部隊(グラート・グリゼルダ)は戦術・生存戦略上の極めて重大な発明と捉えて大真面目に議論・評価している。
キャラクター紹介
ダリヤ・ロセッティ
オルディネ王国で活動する魔導具師であり、ロセッティ商会の会長を務める。前世の記憶と知識を持ち、それを活かした魔導具開発を行っている。ヴォルフレードとは恋愛関係を避けつつも、互いに深い信頼を寄せる特別な友人関係にある。
- 所属組織、地位や役職
- ロセッティ商会・会長。
- 魔物討伐部隊相談役。
- 物語内での具体的な行動や成果
- 冬祭りに向けて商会員や友人に贈り物を準備し、神殿や討伐部隊への寄付を行った。
- 王城での会議に出席し、ウロス部長から技術指導や改良の課題(細雪マドラー)を受けた。
- ヴォルフレードと共に冬祭りの屋台巡りを楽しみ、様々な料理を堪能した。
- ヴォルフと共同で、氷の魔石とミスリルを用いた「氷翅刃の魔剣」を完成させた。
- ガンドルフィ工房の再出発を祝い、本の乾かし機や一角獣のペンダントを贈った。
- ハルダード商会との商談を成功させ、小型魔導ランタンの受注を取り付けた。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
- 商会会長としてだけでなく、職人としての技術や人間的な成長が周囲に認められている。
- 他国の大商会であるハルダード商会からも「腕の良い魔導具師」として評価された。
ヴォルフレード・スカルファロット
王城騎士団の魔物討伐部隊に所属する騎士であり、王国一と評される美貌を持つ。対人関係に苦労してきた過去があるが、ダリヤとは気兼ねなく接している。魔剣や魔導具への関心が強い。
- 所属組織、地位や役職
- 魔物討伐部隊・隊員(赤鎧)。
- スカルファロット侯爵家の四男。
- 物語内での具体的な行動や成果
- 冬祭りでダリヤをエスコートし、人混みの中で彼女を守りながら祭りを楽しんだ。
- 新年には実家で父や兄と交流し、魔導ランタンの依頼を報告した。
- 引退騎士ベルニージらとの激しい鍛錬に参加し、実戦的な技術を学んだ。
- ダリヤと共に「氷翅刃の魔剣」の実験を行い、兄グイードの協力で刃の強化に成功した。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
- 魔剣制作を通じて、ダリヤと共に白髪になるまで作り続けたいという夢を語った。
イヴァーノ・バド
ロセッティ商会の副会長であり、商会の運営や対外的な交渉を一手に引き受ける。ダリヤの父カルロの友人でもあり、ダリヤを公私ともに支えている。
- 所属組織、地位や役職
- ロセッティ商会・副会長。
- 元商業ギルド職員。
- 物語内での具体的な行動や成果
- 年末の寄付活動や商業ギルドとの手続きを円滑に進めた。
- ダリヤとヴォルフに「天馬の羽根のお守り」を贈り、二人の縁と健康を願った。
- ガンドルフィ工房への祝い品として会計帳簿を選び、経理の重要性を説いた。
- ハルダード商会との交渉に同席し、商談を成立させた。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
- 商会の要として不可欠な存在であり、職人の技術を守るための経営手腕を発揮している。
ヨナス
スカルファロット家と関わりの深い騎士であり、グイードの護衛や補佐を務める場面が多い。魔付きであり、威圧や炎の魔法を扱うことができる。
- 所属組織、地位や役職
- 騎士(グイードの護衛役)。
- ハルダード商会会長ユーセフの義理の息子。
- 物語内での具体的な行動や成果
- 体調不良から回復し、王城での会議や宴席に参加した。
- ドリノに対して「威圧訓練」を行い、魔力ポーション購入のための融資を提案した。
- スカルファロット別邸で火魔法による魔剣の色彩変化を訓練した。
- ハルダード会長の来訪時には複雑な感情を見せつつも、商談の場に関わった。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
- 義父ユーセフから深く愛されており、ダリヤに対しても彼の助力を願う懇願がなされた。
ドリノ
魔物討伐部隊の騎士であり、ムードメーカー的な存在。ヴォルフの友人であり、彼を通じてスカルファロット家の面々と交流を深める。
- 所属組織、地位や役職
- 魔物討伐部隊・隊員。
- 物語内での具体的な行動や成果
- 反省会の二次会で幹事を務め、場を盛り上げた。
- スカルファロット家の別邸に招待され、グイードやヨナスと食事を共にした。
- ヨナスの威圧訓練に耐え、魔力向上のために彼からの融資を受け入れた。
- 牙鹿討伐の際、森大蛇の擬態着を着て囮となったが、逆に敵対視され追い回された。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
- 貴族たちとの交流を通じて自身の未熟さを痛感しつつも、成長への意欲を見せた。
グイード・スカルファロット
ヴォルフレードの兄であり、次期侯爵と目される人物。氷魔法の使い手であり、貴族としての器量と余裕を併せ持つ。
- 所属組織、地位や役職
- スカルファロット侯爵家・次期当主(推測)。
- 物語内での具体的な行動や成果
- ドリノを夕食に招き、洗練されたもてなしを行った。
- 暴露大会に参加し、自身の失敗談や恋愛観を語って場を和ませた。
- ヴォルフの「氷翅刃の魔剣」に氷魔法で魔力を供給し、刃の形成と強化を助けた。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
- 弟ヴォルフとの距離を縮め、彼の活動を支援する姿勢を示している。
ルチア
ダリヤの友人であり、服飾師として活動している。機能性とデザインを兼ね備えた衣服の提案を行う。
- 所属組織、地位や役職
- 服飾師。
- 物語内での具体的な行動や成果
- ダリヤに冬祭りの服装について助言し、食事に有利な服を選定した。
- 魔物討伐部隊向けに「遠征夜着」の試作品を制作し、動物や魔物の擬態を取り入れた。
- クッションリスや黒狼、赤熊などの擬態着を作成し、討伐部隊の戦術に影響を与えた。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
- 彼女の制作した擬態着は、討伐部隊の新たな戦術オプションとして注目されている。
ウロス
王城魔導具制作部の部長。ダリヤの父カルロの知人であり、ダリヤに対して指導や助言を行う。
- 所属組織、地位や役職
- 王城魔導具制作部・部長。
- 物語内での具体的な行動や成果
- ダリヤに作業用手袋を贈り、カルロやオズヴァルドとの過去のエピソードを語った。
- 「細雪マドラー」の改良案と魔導書をダリヤに貸与し、技術的な課題を与えた。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
- ダリヤを若手魔導具師として認め、育成しようとする意図が見られる。
ベルニージ
引退した老騎士であり、元侯爵家当主。高齢ながらも現役騎士と渡り合う実力を持つ。
- 所属組織、地位や役職
- 元ドラーツィ侯爵家当主。
- 引退騎士。
- 物語内での具体的な行動や成果
- ヴォルフやヨナスに稽古をつけ、実戦的な技術を伝授した。
- ダリヤが製作した魔導義足を使用し、ヨナスとの手合わせで勝利した。
- 曾孫であるマルチェラの双子の誕生を神殿で祝い、名書きを行った。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
- 魔導義足によって騎士としての誇りと動きを取り戻し、若手の育成に貢献している。
メルセラ
ベルニージの妻であり、「準備万端」の二つ名を持つ貴族夫人。一族を守る強い意志と政治力を持つ。
- 所属組織、地位や役職
- 貴族夫人(ドラーツィ家)。
- 物語内での具体的な行動や成果
- 神殿でイルマを見舞い、魔力付きの金の指輪を渡して支援を約束した。
- 夫と共に曾孫の誕生を喜び、ドラーツィ家としてマルチェラ一家を支える方針を固めた。
- 女性や子供の支援、人材育成などの新たな活動計画を立案した。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
- 過去に息子を失った後悔を原動力に、一族と次世代を守るために精力的に動き出した。
ユーセフ・ハルダード
イシュラナを拠点とするハルダード商会の会長。情に厚く、義理の息子ヨナスを深く案じている。
- 所属組織、地位や役職
- ハルダード商会・会長。
- 物語内での具体的な行動や成果
- ダリヤと面会し、王蛇の素材などについて商談を行った。
- ダリヤに対して、ヨナスを助けてほしいと跪いて懇願した。
- アルテアを訪問し、ヨナスの処遇や新たな派閥との縁について助言を受けた。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
- ワイバーンを保有するほどの大商会の長だが、家族への愛情を優先する姿勢を見せる。
アルテア・ガストーニ
貴族の女性であり、ユーセフと面識がある。洞察力に優れ、派閥を超えた人脈を持つ。
- 所属組織、地位や役職
- 貴族夫人(ガストーニ家)。
- 物語内での具体的な行動や成果
- ユーセフの訪問を受け入れ、ヨナスの立場や将来について助言した。
- ユーセフに新たな派閥の「先輩」を紹介する約束をし、白の魔糸のヴェールを注文した。
- 自身の行動が周囲に与える影響を計算しつつ、将来への布石を打つ手紙を書いた。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
- 貴族社会における強かな生き存え方を示し、裏で糸を引くような影響力を持っている。
グラート
魔物討伐部隊の隊長。部隊の指揮と装備の充実に尽力している。
- 所属組織、地位や役職
- 魔物討伐部隊・隊長。
- 物語内での具体的な行動や成果
- 来年の装備計画や遠征について語り、部隊の安全性向上を目指した。
- 財務部長ジルドからの予算修正の指摘を素直に受け入れた。
- 擬態着の実験結果を確認し、戦術への導入を検討した。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
- 部下からの信頼が厚く、柔軟な思考で新しい魔導具を積極的に採用している。
フェルモ
ガンドルフィ工房の職人。一時期は廃業を考えていたが、再起を果たした。
- 所属組織、地位や役職
- ガンドルフィ工房・職人。
- 物語内での具体的な行動や成果
- 新しい工房を開き、ダリヤからのお祝いを受け取った。
- ダリヤとイヴァーノに「職人の塩」を贈り、決意を示した。
- 妻バルバラと共に借金返済と職人としての成功を目指すことを誓った。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
- ダリヤの支援により再起し、職人としての誇りを取り戻した。
カルロ・ロセッティ
ダリヤの父であり、故人。優れた魔導具師であった。
- 所属組織、地位や役職
- 元魔導具師(ロセッティ商会先代)。
- 物語内での具体的な行動や成果
- 番外編にて、虫除け付き魔導ランタンの修理や弟子への指導を行う姿が描かれた。
- 体調不良を押して活動していたが、商業ギルドで倒れ、家族を想いながら息を引き取った。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
- 彼の技術や教えはダリヤやウロス、イヴァーノらの中に生き続けている。
戦闘 一覧
冬の寝間着とクッションリス
赤鎧隊の鍛錬(模造剣による模擬戦)
- 戦闘者:ヴォルフ vs ベルニージ(引退騎士)およびその他の隊員
- 発生理由:新年の王城待機中における、実戦を想定した訓練のため。
- 結果:魔物討伐に匹敵する厳しさであり、ヴォルフたちは多くの教訓を得た。
友の家と臆病者の意地
ヨナスによる威圧訓練
- 戦闘者:ヨナス(威圧する側) vs ドリノ、ヴォルフ(受ける側)
- 発生理由:ヨナスが訓練として提案し、二人がそれを受けたため。
- 結果:一方的な威圧による訓練。ドリノは重圧に震えながらも耐え抜いたが弱さを痛感した。ヴォルフは威圧に対して動こうとし、胆力を示した。
牙鹿と森大蛇
牙鹿による農家への被害
- 戦闘者:牙鹿の群れ vs 農家(および馬車)
- 発生理由:牙鹿が街道で馬車の果物を味わったことをきっかけに、農家の作物を狙うようになったため。
- 結果:農家に被害を与え続けており、討伐依頼が出された。
グリゼルダの過去の戦闘(回想)
- 戦闘者:グリゼルダ vs 牙鹿、森大蛇、赤熊、二角獣など
- 発生理由:過去の魔物討伐活動における戦闘。
- 結果:過酷な戦いを重ねてきた(詳細は記述なし)。
赤熊擬態による威嚇実験
- 戦闘者:ランドルフ(赤熊の擬態着着用) vs 牙鹿の群れ
- 発生理由:擬態着を用いた魔物の行動制御実験のため、ランドルフが威嚇の咆哮を放った。
- 結果:一方的な威嚇。牙鹿たちは恐慌状態に陥り逃げ惑ったが、方向が定まらず追い込みには不向きと判明した。
森大蛇擬態による遭遇戦
- 戦闘者:牙鹿の群れ vs ドリノ(森大蛇の擬態着着用)
- 発生理由:実験でドリノが接近した際、牙鹿が森大蛇を天敵と認識し、群れで一斉排除行動に出たため。
- 結果:ドリノは全力で逃走し、隊員たちが急遽討伐を開始する事態となった。
牙鹿の討伐
- 戦闘者:魔物討伐部隊 vs 牙鹿の群れ
- 発生理由:農家への被害を食い止めるための討伐依頼、およびドリノへの攻撃に対する応戦。
- 結果:牙鹿を無事に制圧(討伐)した。
老騎士の手合わせと双子の名書き
魔導義足の性能試験(模擬戦)
- 戦闘者:ベルニージ vs ヨナス
- 発生理由:ベルニージの魔導義足の性能を試すため、模造剣を用いた激しい打ち合いを行った。
- 結果:ベルニージが僅差で勝利。ヨナスも善戦し、周囲を魅了した。
魔導具師ダリヤ 10巻レビュー
まとめ
魔導具師ダリヤ 12巻レビュー
展開まとめ
冬祭りの準備と寄付
年末の寄付
年末を迎え、ロセッティ商会では冬祭り前の寄付について話し合った。ダリヤは商会の純利益の一割五分を神殿と魔物討伐部隊へ半分ずつ寄付し、さらに個人として魔物討伐部隊へ匿名で寄付することを決めた。そこには現役隊員の装備だけでなく、死亡した隊員の家族や負傷して退役した者達へ少しでも役立ててほしいという思いがあった。
メーナから育った救護院の屋根が傷み、食堂に雨漏り用のバケツが置かれていると聞くと、ダリヤとイヴァーノは修繕費を商会で負担することを決めた。イヴァーノの知人の大工がすぐに応急修理へ向かい、院長であるモルテード子爵から礼状が届いた。
冬祭りの贈り物
ダリヤは商会設立後初めての冬祭りとして、会員達へ贈り物を用意した。イヴァーノには家族で楽しめる岩石チーズと板ハム、マルチェラには魔羊の膝掛けと双子用のおくるみ、メーナには膝掛けと砂丘泡のクッションを贈った。
逆にイヴァーノからは、健康と縁結びを願う天馬の羽根のお守りを二つ渡され、一つをヴォルフへ贈るよう頼まれた。ダリヤは健康のお守りだと受け取ったが、イヴァーノは密かに二人の縁結びへ期待していた。
魔物討伐部隊の仕事納め
王城では魔物討伐部隊の仕事納めが行われ、ダリヤとヨナスも相談役として参加した。二人には部隊から冬祭りの贈り物が用意され、ダリヤには東ノ国の調味料、ヨナスには好みの牛肉を好きな部位から選べる目録が贈られた。
グラートはダリヤの寄付へ遠回しに感謝し、来年は八本脚馬や魔弓、ワイバーンの鎧などを増やして部隊の安全性を高める予定だと明かした。
その後、財務部長ジルドが現れ、書類の不備を残していたグラートを連行した。長く疎遠だった二人が再び友人として接する姿に、隊員達も変化を感じていた。
ウロスの作業用手袋
ダリヤは王城魔導具制作部長ウロスから、レッドワイバーンの革と魔蚕の糸、赤珊瑚を使った高性能な作業用手袋を贈られた。
師匠が弟子へ最初に贈ることが多い品だと知り、ダリヤはその重みを受け止めた。さらにウロスは細雪マドラーを改良した雪降らし用の魔導具を見せ、魔導回路短縮化について記された魔導書まで貸した。
父カルロやオズヴァルド、ヴォルフの父レナートらの若い頃の失敗談も聞き、ダリヤは優れた魔導具師や魔導師も試行錯誤を重ねてきたことを知った。
冬祭りと屋台巡り
二人の冬祭り
冬祭り当日、ダリヤとヴォルフは中央区から南区へ屋台巡りに出かけた。二人とも楽しみで早くから準備し、ヴォルフは約束より早く緑の塔へ来て、近所の子供達と雪人形を作っていた。
二人は天馬の羽根のお守りをそれぞれ身につけ、乗合馬車で中央区へ向かった。ポルケッタ、羊肉の串焼き、クレスペッレ、クラーケン焼きなどを次々に食べ、一人分を二人で分けることで多くの料理を楽しんだ。
人が増えると、メーナから買った冬祭り用の仮面をつけた。二人の仮面には恋人や決まった相手がいることを示す頬の紅が入っていたが、本人達は人避けとして受け入れていた。
人混みではぐれないよう、最初はダリヤがヴォルフの袖をつかんでいたが、滑りやすかったため、やがて腕を組んで歩く形となった。二人は気恥ずかしさを覚えながらも、そのまま祭りを巡った。
南区の屋台
南区では銀亀のスープ、毒を持つ風船魚の天ぷら、東ノ国の酒などを味わった。毒消しの魔導具を身につけたまま毒の残る料理を楽しむ食文化に、ダリヤは魔導具の発展が食文化とも深く結びついていると感じた。
最後には巣蜜を食べ、まだ多くの料理を試せていないことから、二人は来年の冬祭りや夏祭りにも一緒に来ようと約束した。
ヴォルフは夕方から王城で待機するため、途中で別れることになった。ダリヤは朝からずっと共にいたにもかかわらず、もう少し一緒にいたいと思った。遠ざかるヴォルフが振り返ってまたねと告げると、ダリヤも笑顔で待っていると返した。
それぞれの新年
ダリヤの初日の出
新年の朝、ダリヤは緑の塔の屋上から初日の出を眺めた。前世の家族や父カルロとの記憶を思い出しながら、今世ではうつむかず好きに生きると改めて考えた。
商会員達の健康、イルマとマルチェラの双子の無事、魔物討伐部隊の安全、そしてヴォルフが無事に討伐から帰り、共に笑って過ごせることを願った。
新人騎士達の新年
王城ではヴォルフ、ドリノ、ランドルフ達が新年を迎えた。そこへ正式な再入隊を目指すベルニージ、ゴッフレード、レオンツィオらが鎧姿で現れ、新人として稽古をつけてほしいと頼んだ。
しかし三人はいずれも長年戦ってきた熟練騎士であり、ヴォルフ達にとっては自分達が稽古をつけられる側だった。ベルニージは新年早々、後輩達へ嬉々として手合わせを求めた。
冬の寝間着とクッションリス
新年最初の訪問
ダリヤはウロスから借りた魔導書の書き写しと魔力制御の訓練に没頭していた。そこへ王城待機を終えたヴォルフが差し入れを持って訪れた。
ダリヤが着ていたのは、ルチアが試作した上下がつながった厚手の寝間着であった。携帯温風器の風が全身を巡るため非常に暖かかったが、幅広い袖と脚の形からクッションリスのように見えた。
ダリヤはヴォルフにも男性用を着せ、二人で性能を試した。ヴォルフは遠征で使う着る寝袋より動きやすいとして、魔物討伐部隊の遠征装備に利用できる可能性を見いだした。
遠征夜着への発展
寝間着は単なる家庭用で終わらず、携帯温風器と組み合わせた遠征用装備として検討されることになった。
ルチアの服飾技術とダリヤの魔導具が結びついたことで、暖かく眠れて、そのまま動ける遠征夜着という新しい装備へ発展していった。
友の家と臆病者の意地
ドリノの訪問
ドリノはヴォルフに頼まれ、実家の食堂で作る漬け込み羊肉をスカルファロット家へ届けた。大貴族の別邸へ入ることに緊張したが、ヴォルフは友人として普段通りに迎えた。
ドリノは貴族と庶民という身分差を意識していたものの、ヴォルフ自身はそうした距離を感じていなかった。二人は騎士としての悩みや、より強くなりたいという思いを語り合った。
ヨナスの威圧
ヨナスを相手にした訓練では、ドリノは魔付きの強烈な威圧を体験した。恐怖に身体が動かなくなり、自分の弱さを思い知らされたものの、それでも逃げずに耐えようとした。
ドリノは仲間を守るため、もっと強くなりたいと願っていた。魔付きになれば強くなれるのではないかとも考えていたが、ヨナスから相性次第では死ぬ危険があると聞かされていた。
そこでヨナスは、ドリノ自身の魔力を一段階上げるため、必要となる魔力ポーション代を貸すと提案した。魔力が上がれば氷や冷却関係の仕事で返済できると説明し、利子も取るから慈善ではないと笑った。
ドリノはその提案を受け入れた。ヨナスは次の威圧訓練にも参加させると告げ、ドリノも怖さに慣れて強くなると決意した。
西区ガンドルフィ工房
フェルモの新工房
ダリヤとイヴァーノは、西区に完成したフェルモのガンドルフィ工房を訪れた。ダリヤは工房開きの祝いとして、羊皮紙の本を均一に乾燥させる本の乾かし機を贈った。
ガンドルフィ工房はロセッティ商会の魔導具や部品を数多く制作しており、フェルモはダリヤにとって頼れる先輩職人となっていた。
バルバラの復帰
新しい建物にはフェルモの小物工房だけでなく、妻バルバラのガラス工房も設けられていた。
バルバラは結婚後、家庭を優先して職人としての仕事から離れていたが、再びガラス職人へ戻っていた。フェルモは、自分との生活によって妻の技術を眠らせてしまったことを悔やんでいた。
しかしバルバラは自分で選んだことだと受け止め、失った腕はこれから取り戻すと笑った。フェルモは妻にも弟子を取り、仕事を広げる計画を立て、二人は残された職人人生をそれぞれ精一杯進もうと決めた。
遠征夜着と服飾師
遠征夜着のお披露目
王城魔物討伐部隊では、ルチアが改良した遠征夜着のお披露目が行われた。
基本型はダリヤ達が試したクッションリス型で、ゆったりした構造によって動きやすく、携帯温風器の風を全身へ巡らせることができた。
さらにルチアは、黒狼、赤熊、森大蛇など魔物の外見を模した擬態型を制作していた。魔物に仲間や天敵だと思わせれば、追い込みや回避に利用できる可能性があった。
ヴォルフは黒狼、ランドルフは赤熊、ドリノは森大蛇の姿となり、隊員達は実用性を検討した。
滑空着
カルミネはクッションリス型の構造と空蝙蝠の素材を利用し、滑空機能を持つ装備へ発展させていた。
風魔法を使えるカークが試着すると、ハシゴから飛び降りて長い距離を滑空することに成功した。安全面には課題が残ったものの、上空からの地形確認や偵察に使える可能性が生まれた。
寝間着から始まった発想は、服飾師、魔導具師、騎士達の手を経て、遠征用の新装備へ大きく変化していった。
イシュラナの商会長
ユーセフとの商談
ダリヤはイシュラナを拠点とする大商会、ハルダード商会の会長ユーセフと面会した。
ユーセフはヨナスの母が再婚した相手でもあった。彼はオルディネを訪れる度にスカルファロット家へ挨拶し、ヨナスを気遣っていた。
商談ではイシュラナ産の魔物素材や宝石などについて話が進み、ロセッティ商会は国外との取引へ足を広げることになった。
擬態着の実戦試験
その頃、魔物討伐部隊では擬態着を実際の討伐で試していた。
クッションリスは観察される程度で、黒狼や赤熊は魔物を追い払う効果が見られた。一方、森大蛇姿のドリノだけは牙鹿の群れから激しく追いかけられた。
森大蛇は巨大に育てば緑の王と呼ばれるほどの天敵となるため、他の魔物は小さいうちに全力で排除しようとしていたのである。
理由を知らないドリノは牙鹿の群れから必死に逃げ続け、結果として自ら森大蛇の生存競争を再現することになった。
人工魔剣制作八回目 ~氷刃の魔剣〜
氷翅刃
牙鹿討伐後、ヴォルフは牙と肉を持って緑の塔を訪れた。
食事の後、ダリヤは久しぶりに人工魔剣作りを提案した。今回は実用性より実験を優先し、刃のない柄から氷の刃を作る魔剣を試すことにした。
柄の内部へ氷龍のウロコを付与し、氷魔法を制御する細かな魔導回路を描き、小型の氷の魔石を組み込んだ。刃そのものはヴォルフの魔力によって氷から形成する構造だった。
完成した魔剣は半透明の薄い氷の刃を伸ばした。ヴォルフは母ヴァネッサが使っていた氷剣を思わせる姿に大喜びし、氷翅刃と名付けた。
ただし魔力制御に慣れていないヴォルフが使うと、刃はすぐ折れた。それでもグイード達から制御方法を教わり、少しずつ長く維持できるようになった。
ヨナスは、刃のない柄だけに見える武器が突然氷刃を生み出すことから、暗殺用にも転用できる危険性を感じた。後でダリヤとヴォルフへその可能性を教える必要があると考えた。
オルディネの魔女とイシュラナの蟻
アルテアとユーセフ
ユーセフはイシュラナからの土産を持ち、アルテア・ガストーニを訪ねた。
アルテアはイシュラナ語にも通じ、ユーセフと直接話した。ユーセフが最も望んでいたのはヨナスの安全であり、貴族社会の中で彼を守れる縁を増やしたいと考えていた。
アルテアはその意図を理解し、南派閥だけでなく北派閥にもつながりを作ることを考えた。若い者達を守ることが自分にも利益となり、さらに貴族社会へ戻すべき人物を再び舞台へ引き戻せると判断した。
アルテアは手紙を書き始め、かつて自分を導いた先輩へ、もう一度社交界で共に動こうと呼びかけた。
老騎士の手合わせと双子の名書き
ベルニージとの手合わせ
ダリヤ達は擬態着の実験結果を確認し、魔物によって仲間とみなす場合、恐れて逃げる場合、逆に攻撃してくる場合があると整理した。
一方、再入隊したベルニージ達は現役隊員との手合わせを重ねた。魔導義足によって再び剣を振るえるベルニージは、長年積み重ねた技術で若い隊員達を苦しめた。
身体能力だけでなく、経験や駆け引きの重要性が示され、若い騎士達にとっても大きな訓練となった。
双子の誕生
神殿ではイルマが無事に双子の男児を出産した。
マルチェラは二人をベルノルトとディーノと名付けた。初めて我が子を目にしたマルチェラは、その小ささと愛しさに胸をいっぱいにした。
ベルニージは曾孫達のために練習してきた名書きを完成させた。そこには、自分が息子ベルナルディにしてしまったことへの長年の後悔も込められていた。
ベルニージは、息子が騎士となり死んだのは自分のせいではないかと苦しみ続けていた。しかしベルナルディは自ら騎士として戦い、子や孫の未来を守ったのだと受け止め直した。
ならば生き残った自分も、曾孫達と王国の未来を守らなければならないと決意した。
名書きを妻メルセラへ見せようとしたベルニージは、涙で文字を読めなくなった。メルセラも同じであり、夫婦は互いを支えながら長く抱き合った。
閑話 金の指輪とある貴婦人の追憶
イルマへの約束
出産後、メルセラはイルマを訪れ、魔力の高い子供を育てる母として注意すべきことを伝えた。
さらにドラーツィ家は、イルマ、マルチェラ、ベルノルト、ディーノを今後も必ず支えると約束した。
メルセラはかつて、貴族の血筋を重視するあまり、息子ベルナルディが愛した女性との関係を認めなかった。その結果、理解し合えないまま息子を失ったことを悔やみ続けていた。
メルセラの復讐
メルセラは、過去の自分と同じ過ちを二度と繰り返さないと決めた。
身分や血筋に関係なく、生まれた子供達へ教育や金銭的援助を与え、才能と望みがあれば伸ばし、本人が望めばドラーツィ家へ迎える仕組みを作ろうとした。
それは過去の自分自身への復讐であり、同時に一族の未来を強くする方法でもあった。
夫ベルニージも妻の考えを喜び、二人は残された時間を使って曾孫達とその先の世代を守ることを決めた。
魔導具師と魔物討伐部隊員
守られた村
ダリヤとヴォルフは、出産したイルマ達への差し入れを持って神殿を訪れた。
そこでヴォルフは、以前赤熊に襲われた村の青年から礼を言われた。青年の家族を含め、村人達が全員生き残れたのは魔物討伐部隊のおかげだった。
ヴォルフは自分が危険な目に遭ったことや仲間に救われたことを気にしていたが、ダリヤは結果として村の全員を守ったのだから、それは誇ってよいことだと伝えた。
二人の仕事
ダリヤはこれまで、自分の魔導具が人の暮らしや命を助けたことを実感していた。
ヴォルフもまた、魔物討伐部隊員として自分達の腕が誰かを守るところまで届いたことを認めた。
ダリヤは魔導具師でよかった、ヴォルフは魔物討伐部隊員でよかったと、それぞれ自分の仕事を肯定した。
互いに同じ思いを抱いていることを感じながら空を見上げると、雨上がりの空には淡い虹がかかっていた。
番外編 父と娘の魔導具開発記録~虫除け付き小型魔導ランタン~
虫除け付き小型魔導ランタン
過去、カルロは古い虫除け付き小型魔導ランタンを修理していた。
火の魔石でランタンを灯すと同時に液体の防虫香を温め、周囲へ虫除け成分を広げる魔導具だった。便利ではあるものの、傾けると液体がこぼれ、手入れにも手間がかかるため、あまり普及しなかった。
ダリヤとトビアスはカルロから仕組みや修理方法を教わった。売れなかった魔導具であっても、誰かの暮らしに役立ち、長く使われ続けていることをカルロは大切にしていた。
カルロの最期
その後、カルロの体調は悪化していった。
胸の痛みを抱えながらも、娘には詳しく知らせず、いつも通り魔導具師として過ごそうとしていた。
やがてカルロは倒れ、イヴァーノが駆け寄った。意識が遠のく中、カルロはダリヤと亡き妻テリーザを思った。
商売の不得意な娘を支えてほしいとイヴァーノへ頼みたかったが、声にすることはできなかった。
身体の痛みも冷たさも、後悔も未練も次第に遠ざかっていった。
最後にカルロが願ったのは、自分から妻と娘との思い出を消さないでほしいということだった。
二人への尽きることのない愛だけは忘れずにいたいと願いながら、カルロの意識は静かに途切れた。
魔導具師ダリヤ 10巻レビュー
まとめ
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