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フィクション(Novel)読書感想魔導具師ダリヤはうつむかない

小説「魔導具師ダリヤはうつむかない 13」感想・ネタバレ

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魔導具師ダリヤはうつむかない ~今日から自由な職人ライフ~ 13の表紙画像(レビュー記事導入用) フィクション(Novel)

魔導具師ダリヤ 12巻レビュー
まとめ
魔導具師ダリヤ 14巻レビュー

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  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
        1. ダリヤ・ロセッティ
        2. ヴォルフレード・スカルファロット(ヴォルフ)
        3. ヨナス・ドラーツィ
        4. フェルモ・ガンドルフィ
        5. ランドルフ・グッドウィン
        6. イデア・ニコレッティ
        7. セラフィノ・オルディネ・ザナルディ(ザナルディ大公)
        8. ウロス
        9. ローザリア・スカルファロット
        10. グイード・スカルファロット
        11. ドリノ
        12. コルンパーノ・ヒューラ
  2. 書籍情報
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
          1. 魔鳩対策にランドルフの知識が役立つ
          2. 最後はワイバーンの匂いまでつけられる魔鳩
          3. 人工魔剣、ついに一つの完成形へ
          4. 騎士達が目を輝かせる姿が想像できる
          5. そして発覚するダリヤの特殊な身体
          6. 以前のスライムの反応も、これが原因だったのか?
          7. ローザリアは家族の顔を見ることができなかった
          8. 「見る側」ではなく「見られる側」に眼鏡をかける
          9. ダリヤは「できないこと」を別の方向から解決する
          10. まとめ
  5. 考察・解説
      1. ストーリー・プロット
        1. 第1幕:スライム養殖場の魔鳩被害と対策の着手
        2. 第2幕:魔鳩の弱点解明と「魔鳩恐怖小屋」の完成
        3. 第3幕:多重付与による「黒風の魔剣」の制作と実戦検証
        4. 第4幕:「ミルフィーユ付与」の共有と王城魔導具制作部三課の調査
        5. 第5幕:スカルファロット本邸訪問と「妖精結晶の眼鏡」の完成
      2. 4. 主要な転換点
        1. 転換点1:スライム養殖場への魔鳩飛来問題の発生
        2. 転換点2:ダリヤによる長剣への「ミルフィーユ付与(8回重ね掛け)」
        3. 転換点3:王城魔導具制作部における「ミルフィーユ付与」の解明と採用
        4. 転換点4:首無鎧の反応と「ブラックスライム残滓魔力」の判明
      3. ダリヤを中心とした人物関係の変化
        1. ダリヤ ⇔ ヴォルフレード・スカルファロット
        2. ダリヤ ⇔ ヨナス・ドラーツィ
        3. ダリヤ ⇔ セラフィノ・ザナルディ(ザナルディ大公)
      4. 6. 主人公の認識と周囲の評価
        1. 主人公(ダリヤ)自身の自己認識
        2. 周囲(専門家・貴族・騎士等)からの客観的評価
        3. 認識の差が明確に現れた場面
  6. 登場キャラクター
    1. 主要キャラクター
      1. ダリヤ・ロセッティ
      2. ヴォルフレード・スカルファロット
      3. フェルモ・ガンドルフィ
      4. ヨナス
      5. ランドルフ・グッドウィン
      6. セラフィノ・ザナルディ
      7. グイード・スカルファロット
      8. ローザリア・スカルファロット
      9. コルンバーノ
      10. ウロス
      11. カルミネ
      12. ヴァネッサ・スカルファロット
      13. ドリノ・バーティ
  7. 戦闘 一覧
    1. スカルファロット家別邸での相談
        1. 連絡用魔鳩への攻撃(過去の事例)
    2. スライム養殖場の魔鳩対策
        1. ジャン所長による魔鳩の捕獲
    3. 魔鳩恐怖小屋と国境の騎士
        1. 身体強化を持つ魔鳩による施設襲撃
        2. 魔鳩恐怖小屋での撃退
        3. ジャン所長による王城の魔鳩への制裁
        4. ランドルフによる魔鳩の洗浄時の攻防
    4. 誕生日と赤い花籠
        1. ヴォルフレードによるドア破壊
    5. 岩山蛇と魔王
        1. 上級冒険者と岩山蛇の戦闘(過去)
        2. 山裾での岩山蛇との戦闘
        3. 魔物討伐部隊による岩山蛇殲滅戦
    6. 戦闘靴の報告会とミルフィーユ付与
        1. 付与見学時の魔力圧迫
    7. 大公と王城魔導具制作部三課
        1. 魔羊フランドフランの暴走(過去)
        2. 首無鎧接触時の護衛による威嚇
    8. 魔剣の再検証とオルディネ大公の独白
        1. グイードによるザナルディへの拒絶(過去)
    9. 閑話 宵闇の館と甘い夢
        1. ドリノによるテーブル破壊(過去)
    10. スカルファロット家への訪問
        1. ローザリアによる防衛行動
        2. 裏庭での魔物ごっこ
    11. スカルファロット家の妖精結晶の眼鏡
        1. コルンバーノによるレンズ破壊
    12. 番外編 母と息子の鍛錬と魔剣話~炎の魔剣~
        1. ヴァネッサによる家と家族の防衛(過去)
        2. ヴァネッサの父と兄と森大蛇の戦闘(過去)
        3. ヴァネッサとバーレットの剣の指導(過去)
  8. 展開まとめ
    1. スカルファロット武具工房顔合わせ
        1. 魔鳩対策の依頼
    2. スライム養殖場の魔鳩対策
        1. グリーンスライムの餌場化
        2. 魔鳩の弱点
        3. 魔鳩恐怖小屋
        4. 不規則な風と罠餌
        5. 魔鳩恐怖小屋の完成
        6. 孤立した魔鳩
    3. 誕生日と赤い花籠
        1. ダリヤの誕生日
        2. スカルファロット家への招待
    4. 人工魔剣制作九回目~黒風の魔剣~
        1. 黒い剣への多重付与
    5. 岩山蛇と魔王
        1. 岩山蛇の殲滅
        2. ドリノの恋
    6. 戦闘靴の報告会とミルフィーユ付与
        1. 新型戦闘靴
        2. 十六掛けとミルフィーユ付与
    7. 大公と王城魔導具制作部三課
        1. ザナルディとの出会い
        2. 首無鎧の反応
    8. 魔剣の再検証とオルディネ大公という者
        1. グイードへの報告
        2. ザナルディの研究者観
    9. 閑話 宵闇の館と甘い夢
        1. ファビオラとの時間
    10. スカルファロット家への訪問
        1. ローザリアの誤解
        2. 家族を見るための眼鏡
    11. スカルファロット家の妖精結晶の眼鏡
        1. 家族の金の目
        2. コルンパーノの挑戦
    12. スライムの名付けと温かな夕食
        1. ミズマリとアオマリ
    13. 番外編 母と息子の鍛錬と魔剣話~炎の魔剣~
        1. 炎の魔剣への願い
        2. 母子の鍛錬
  9. 魔導具師ダリヤはうつむかない 一覧
  10. その他フィクション

物語の概要

■ 作品概要

本巻は、ロセッティ商会会長および王城騎士団魔物討伐部隊相談役を務める庶民出身の魔導具師ダリヤ・ロセッティが、日常の業務や周囲からの相談を起点に、技術的・政治的な課題を次々と解決へと導いていく過程を描く物語である。
物語は、スライム養殖場で屋外乾燥中のグリーンスライムが、貴族や王城の連絡用を含む「魔鳩」に食い荒らされる被害から始まる。撃ち落とせば国際問題や情報遮断に発展するリスクを孕む中、ダリヤは職人フェルモ・ガンドルフィや魔物討伐部隊員ランドルフ・グッドウィンの知見を結集し、不規則な温冷風、毒花粉を用いた罠餌、ワイバーン臭の噴霧仕掛けを備えた「魔鳩恐怖小屋」を開発。
養殖場所長ジャンの強力な追撃も奏功し、魔鳩被害を完治させて問題の終息を図る。
直後、ダリヤは訪問したヴォルフレード(ヴォルフ)との交流の中で、彼が日常使用する演習用長剣の補強を約束。
魔力ポーションを服用して限界を超えた集中力を発揮し、一角獣の角と首長大鳥の嘴を微小な魔力差で計16層交互に重ね掛けする「ミルフィーユ付与」を施して「黒風の魔剣」を完成させる。
この魔剣を用いたヴォルフは、街道を脅かした岩山蛇の群れを単身で20匹以上切断し、無傷のまま戦術的圧勝を収める。
この成果は王城魔導具制作部へと伝わり、部長ウロスおよび副部長カルミネは、従来「魔力10以上の付与は剣を脆くして折れやすくなる」とされてきた技術的限界が、ダリヤの細やかな多重付与によって打破された事実を解明する。
ウロスは部限の規程を改定し、王城全体の魔導具師によるチーム制多重付与の研究体制を立ち上げるに至る。
さらに王城内で偶然救護したザナルディ大公の案内により魔導具制作部三課を見学した際、地下倉庫に保管されていた不活性の「首無鎧の殻」がダリヤの手にのみ微弱な赤光で反応。
一時的な魔物・魔付きの疑惑が生じるが、副神殿長エラルドの魔力鑑定により、学生時代に素手で触れたブラックスライムの粉による火傷を神殿で治療した際、消えきっていなかった微細な粉末と魔力が治癒魔法によって皮膚下に閉じ込められ、意図せず「手自体にブラックスライムが付与された状態」になっていたことが判明する。
解呪による付与感覚の狂いを懸念したザナルディらの判断で状態は維持され、鑑定書の発行と厳しい口外禁止指示により穏便な収束を迎える。

■ 主要キャラクター

ダリヤ・ロセッティ
  • 立場・所属:魔導具師、ロセッティ商会会長、王城騎士団魔物討伐部隊相談役、スカルファロット武具工房相談役
  • 主人公との関係:主人公本人
  • この巻での主な役割:スライム養殖場の魔鳩対策(魔鳩恐怖小屋)の考案・開発、ヴォルフへの「黒風の魔剣」の制作、セラフィノ・ザナルディ大公との交流、ローザリアのための「妖精結晶の眼鏡」の制作および技術伝授
  • この巻で起きた重要な変化や行動:魔力遮断と硬質化を薄く多重に重ねる「ミルフィーユ付与」を考案・実行し「黒風の魔剣」を完成させた。王城魔導具制作部三課で首無鎧の「殻」に触れた際、過去の火傷により両手にブラックスライムの薄い残滓魔力があることが判明した。見る側の目を隠すのではなく、対象者側の外部魔力を隠すという発想の転換により、ローザリアのための「妖精結晶の眼鏡」を完成させた。
ヴォルフレード・スカルファロット(ヴォルフ)
  • 立場・所属:王城騎士団魔物討伐部隊員、スカルファロット伯爵家四男
  • 主人公との関係:ダリヤの親しい友人、ロセッティ商会の保証人・担当
  • この巻での主な役割:魔鳩対策でランドルフに協力を依頼、ダリヤに自身の通常剣への追加付与を依頼、遠征での岩山蛇討伐、ダリヤの誕生日に花籠やペンダントの贈呈
  • この巻で起きた重要な変化や行動:ダリヤから受領した「黒風の魔剣」を使って岩山蛇討伐の戦闘で無傷のまま圧倒的な威力を発揮し、周囲から「魔王」と評された。誕生日にダリヤから「かっこいい」と言われたことを喜んだ。本邸訪問時に変装用の妖精結晶の眼鏡をかけていたため、ローザリアから魔物と誤解された。
ヨナス・ドラーツィ
  • 立場・所属:ドラーツィ侯爵家子息、スカルファロット家相談役、スカルファロット家武具工房長
  • 主人公との関係:仕事仲間・協力者
  • この巻での主な役割:スカルファロット家武具工房長として魔鳩対策を主導、「ミルフィーユ付与」や「黒風の魔剣」の検証・評価、スカルファロット家本邸でのグイードやローザリアのサポート
  • この巻で起きた重要な変化や行動:従者からドラーツィ侯爵家子息・スカルファロット家相談役への立ち位置の変化に伴い言葉遣いや礼儀作法の学びに苦労している。ダリヤの多重付与技術の価値とリスクを正しく認識し、スカルファロット武具工房名義で保護・処理するよう調整した。
フェルモ・ガンドルフィ
  • 立場・所属:ガンドルフィ工房長、小物職人
  • 主人公との関係:仕事仲間、尊敬する先輩職人
  • この巻での主な役割:スライム養殖場の魔鳩対策(魔鳩恐怖小屋)で、不規則な風を送る大型ドライヤーや仕掛け扉などの装置を制作・設置した
  • この巻で起きた重要な変化や行動:武具工房での仕事の危険性を事前にダリヤへ説明しなかったヨナスへ筋を通すよう苦言を呈し、ヨナスから頼れる先輩職人「ガンドルフィ先輩」として認められた。
ランドルフ・グッドウィン
  • 立場・所属:王城騎士団魔物討伐部隊員、国境伯グッドウィン家子息(次男)
  • 主人公との関係:友人・仕事上の協力者
  • この巻での主な役割:実家での魔鳩飼育知識を活かし、魔鳩の生態・習性や弱点(ワイバーンの匂い、空蝙蝠の肉、不規則な風など)に関する助言・情報を提供した
  • この巻で起きた重要な変化や行動:ワイバーンの匂いを付けられて仲間から孤立した王城の魔鳩を消臭石鹸等で丁寧に洗い流して救い、後に「魔鳩使い」と呼ばれるきっかけを作った。
イデア・ニコレッティ
  • 立場・所属:スライム養殖場研究主任
  • 主人公との関係:仕事上の協力者
  • この巻での主な役割:スライム養殖場での魔鳩被害の現状を説明し、ダリヤ達が制作した魔鳩恐怖小屋の実験・運用に協力した
  • この巻で起きた重要な変化や行動:アウグストの仲介で、勘当されていた父(ニコレッティ商会長)と再会し、薬草やスライムの知識を共有しながら定期的に会う関係へと復縁した。
セラフィノ・オルディネ・ザナルディ(ザナルディ大公)
  • 立場・所属:オルディネ大公、王位継承順位第3位、王城魔導具制作部三課長、宝物庫管理副長、倉庫管理長など
  • 主人公との関係:王城での知人、同業者
  • この巻での主な役割:王城でダリヤと出会い、魔導具制作部三課へ案内して各種研究(おいしいポーション、首無鎧の「殻」など)を見学させた
  • この巻で起きた重要な変化や行動:五要素魔法を持たない立場だが身分を問わず研究者を集めて自由な研究を推進しており、ダリヤに不敬を問わない免罰の手帳ページを授与した。首無鎧の「殻」に反応したダリヤに対し、神官エラルドを手配して人間であることを確認・保護した。
ウロス
  • 立場・所属:王城魔導具制作部 部長
  • 主人公との関係:仕事上の関係者、指導的立場の魔導具師
  • この巻での主な役割:短剣への付与見学にダリヤを招き、ダリヤが披露した「ミルフィーユ付与(多重付与)」の原理と可能性を高く評価した
  • この巻で起きた重要な変化や行動:ダリヤの多重付与技術に着目し、従来の「一人一付与」の責任制度を見直して連名責任とし、魔導具師たちが協力して行う多重付与の研究と鍛錬・導入を決定した。
ローザリア・スカルファロット
  • 立場・所属:グイード・スカルファロットの妻(次期侯爵夫人)
  • 主人公との関係:スカルファロット家本邸で出会う人物
  • この巻での主な役割:人の顔よりも魔力が重なって見える目を持つため、変装用眼鏡で外部魔力を遮断したヴォルフを魔物と誤解して氷壁を展開した
  • この巻で起きた重要な変化や行動:ダリヤから「対象(家族)側の外部魔力を隠す眼鏡(妖精結晶の眼鏡)」の提案を受け、家族の顔が見られる期待から感銘を受けてダリヤと打ち解けた。完成した眼鏡によってグイードの顔をはっきりと見ることができ涙を流した。
グイード・スカルファロット
  • 立場・所属:スカルファロット伯爵家当主(次期侯爵)、魔導師
  • 主人公との関係:ダリヤの貴族後見人
  • この巻での主な役割:ダリヤを本邸のランチに招待し、ダリヤから「黒風の魔剣」「ミルフィーユ付与」「ブラックスライムの残滓魔力」等の報告を受け、防護・庇護の対応を行った
  • この巻で起きた重要な変化や行動:ダリヤの技術や秘密を守るための取り決めを交わした。コルンパーノとダリヤが制作した妖精結晶の眼鏡により、妻ローザリアに自身の顔を初めてはっきりと見せることができた。
ドリノ
  • 立場・所属:王城騎士団魔物討伐部隊員(赤)
  • 主人公との関係:ヴォルフの同僚・友人、ダリヤの知人
  • この巻での主な役割:岩山蛇討伐遠征での活躍、花街の酌華ファビオラへの想いと葛藤
  • この巻で起きた重要な変化や行動:岩山蛇討伐で無双するヴォルフの「黒風の魔剣」の威力を目撃した。グラート隊長から過去の失恋経験を聞かされ、自身もいつか終わるかもしれない花街での恋への覚悟を深めた。
コルンパーノ・ヒューラ
  • 立場・所属:スカルファロット家専属魔導具師、スカルファロット家魔導具部門長
  • 主人公との関係:仕事仲間、魔導具師の同僚
  • この巻での主な役割:ダリヤから妖精結晶の眼鏡の制作技術の指導を受け、ローザリアのためにグイード用の妖精結晶の眼鏡を制作・完成させた
  • この巻で起きた重要な変化や行動:当初は若くして活躍するダリヤに対し激しい嫉妬と無力感を抱いていたが、ダリヤの「使う人の笑顔のために作る」姿勢と真摯な付与を目の当たりにして嫉妬を克服し、自らも集中してグイード用眼鏡の付与を成功させた。

書籍情報

魔導具師ダリヤはうつむかない  ~今日から自由な職人ライフ~13
著者:甘岸久弥 氏
イラスト:駒田 ハチ  氏
出版社:KADOKAWA
レーベル:MFブックス
発売日:2026年1月23日
ISBN:9784046855367
備考:紙書籍版、電子書籍版が同時発売。小冊子付き特装版もあり。

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

あらすじ・内容

グイードと妻ローザリアが抱える苦悩。ダリヤが見出した希望の光は……?冒険者ギルドからの依頼や王城魔導具師との意見交換など、日々忙しく過ごす魔導具師のダリヤ。
誕生日も魔導具制作に勤しむ彼女の元に、贈り物を携えたヴォルフが訪れる。そこでグイードの妻ローザリアが自分を招いていると聞き、スカルファロット家を訪れることに。ダリヤは初めての本邸に緊張しながらも、温かい歓迎を受ける。
しかし、グイード夫妻との挨拶の直前、突如現れた氷の壁に道を塞がれ――。
「ヴォルフレードのフリをするなど許しません!」
ローザリアからの突然の敵意に困惑するダリヤとヴォルフ。誤解の原因は彼女の抱える秘密と『妖精結晶の眼鏡』にあるようで……!?
魔導具師ダリヤのものづくりストーリー、人の想いにふれる第十三弾、開幕!

魔導具師ダリヤはうつむかない ~今日から自由な職人ライフ~13

工房の結束と魔鳩対策

三人の信頼と魔鳩恐怖小屋の完成

フェルモ・ガンドルフィは貴族対応への不安を抱いていたが、ダリヤ・ロセッティとヴォルフレード・スカルファロットの励ましにより、三人は対等な仲間としての信頼を深めた。その後、スライム養殖場で深刻化した魔鳩被害に対し、ランドルフ・グッドウィンの知識を借りて対策に乗り出した。フェルモが改良した小屋に罠餌とワイバーンの匂いを利用した仕掛けを施し、捕獲した魔鳩に徹底的な恐怖を植え付けることで撃退に成功した。

黒風の魔剣と王城での波紋

多重付与の成果と三課での発見

ダリヤはヴォルフレードのために人工魔剣「黒風の魔剣」を制作した。薄い付与を重ねる技術により耐久性を高めた剣は、岩山蛇討伐で異常な戦果を挙げ、王城魔導具制作部との共同研究へと繋がった。その後、ダリヤはセラフィノ・ザナルディ大公の招きで第三課を訪れた。保管されていた首無鎧がダリヤに反応したため魔力鑑定が行われ、過去の治療の影響で彼女の手にブラックスライムの魔力残滓が残っている事実が発覚した。

スカルファロット家の眼鏡

ローザリアの瞳と妖精結晶の輝き

ダリヤはスカルファロット本邸を訪問した際、ヴォルフレードの義姉ローザリアから攻撃を受けた。彼女は魔力が光として視えるため、人の顔を判別できずに誤認したのだった。ダリヤは解決策として妖精結晶を用いた眼鏡制作を提案し、技術を共有した。家付き魔導具師コルンバーノは重圧と幻覚の副作用を乗り越えて付与を成功させ、家族の顔を取り戻したローザリアは涙を流して喜んだ。

明日への活力と母の願い

ダリヤの帰還とヴァネッサの追憶

役目を終えて緑の塔へ戻ったダリヤは、ヴォルフレードからの差し入れに心を温め、増えたスライムにミズマリとアオマリと名付けた。彼女はヴォルフレードの誕生日を祝う計画を立て、前向きな気持ちで休息についた。一方、ヴォルフレードの母ヴァネッサは、かつて自身が魔剣を扱えなかった経験から、息子が戦場で生き残れるよう魔剣の探索と剣の指導に深い愛情と執念を注いでいたことが語られた。

感想

13巻を読んで最初に思ったこと。

この世界の鳩、怖すぎない?

今回、スライム養殖場で問題になったのが魔鳩である。

狙われているのは、屋外で乾燥させているグリーンスライム。

どうやら魔鳩にとって、乾燥させたグリーンスライムはかなり魅力的な餌らしい。

普通の鳩なら網でも張れば終わりそうな話なのだが、そこはファンタジー世界の鳩。

身体強化を使う。

隠蔽魔法を使う。

金網を破る。

強化ガラスまで破壊する。

捕まえて威圧して逃がしても、数日後にはまた戻ってくる。

アグレッシブすぎるだろ。

こんな鳩が日本の公園にいたら怖すぎる。

しかも、野生の魔鳩だけならまだ駆除という選択肢もある。

ところが王城や貴族、商会などが連絡用に使っている魔鳩まで混ざっている。

うっかり撃ち落とせば大問題。

単なる害鳥駆除のはずなのに、なぜか外交問題まで考えなければならない。

『魔導具師ダリヤ』らしい、妙に面倒くさい問題である。

魔鳩対策にランドルフの知識が役立つ

そこで頼りになったのがランドルフだった。

グッドウィン家では魔鳩を扱っているため、その生態にも詳しい。

ランドルフによれば、魔鳩は餌場の情報を群れで共有する。

しかも仲間を殺されると、場合によっては群れで報復してくるらしい。

鳩なのに怖すぎる。

そんなランドルフから得られた情報が、

魔鳩はワイバーンを恐れる。

空蝙蝠の肉を嫌う。

不規則な風が苦手。

というものだった。

これを聞いたダリヤ達が考えたのが、魔鳩にとって「二度と入りたくない場所」を作ること。

フェルモが改良した乾燥小屋には、温風と冷風、風の強弱や方向を不規則に変える仕組みが組み込まれる。

さらに、まずい罠餌まで用意。

入ってから出るまで、とにかく嫌な思いをさせる。

その名も、

「魔鳩恐怖小屋」。

名前がそのまますぎる。

最後はワイバーンの匂いまでつけられる魔鳩

そして極めつけがワイバーンである。

これまで本作ではワイバーン素材がいろいろなところで利用されてきた。

革や素材として使われるだけでも便利なのに、今回はまさかの、

鳩避け。

ワイバーンも自分がこんな使われ方をするとは思っていなかっただろう。

小屋から逃げるときにワイバーン由来の匂いをつける。

さらに強烈な一羽には、ジャンが温めたブラックワイバーンの皮で直接匂いをつける。

そこまでやるのか。

結果として魔鳩は寄りつかなくなる。

殺さず、怪我もさせず、

「ここに来るとロクなことがない」

と学習させる。

ダリヤ達らしい解決方法だった。

ただしワイバーン臭をつけられた魔鳩が仲間から避けられてしまうのは、ちょっとかわいそうだった。

最後にはランドルフが丁寧に洗って匂いを落としてやる。

そして、その魔鳩がランドルフになつく。

あれだけ怖かった魔鳩なのに、最後には少しかわいく見えてくるのが面白い。

人工魔剣、ついに一つの完成形へ

そして13巻でもう一つ印象に残ったのが魔剣作りである。

これまで何度も人工魔剣を作ってきたダリヤ。

勝手に動いたり。

凍りついたり。

いろいろと危ないものまで作ってきた。

そんな試行錯誤の末に完成したのが、

「黒風の魔剣」。

きっかけはヴォルフが普段使っている剣を、

「少し丈夫にしてあげよう」

くらいの話だった。

ダリヤとしては、あくまで通常剣の強化。

ところがダリヤがやると、当然ながら「少し」で終わらない。

一角獣の角による魔力遮断。

首長大鳥の嘴による硬質化。

これらを薄く、何層にも重ねていく。

後に「ミルフィーユ付与」と呼ばれる技術である。

完成した剣をヴォルフが実戦で使うと、

岩山蛇を斬る。

斬る。

まだ斬る。

20匹以上斬っても刃こぼれしない。

切れ味もほとんど落ちない。

そしてヴォルフ本人は楽しそう。

そりゃ周囲から「魔王」と呼ばれるわ。

騎士達が目を輝かせる姿が想像できる

この黒風の魔剣の面白いところは、単に「すごい剣ができました」で終わらないことである。

王城魔導具制作部まで話が伝わる。

そこで注目されたのが、ダリヤのミルフィーユ付与だった。

高い魔力を一気に付与するのではない。

少ない魔力を薄く重ねていく。

ダリヤ本人としては、自分の魔力が高くないから工夫しているだけ。

しかし王城の魔導具師からすると、

「そんな方法があったのか」

という話になる。

しかも一人で全部やる必要もない。

魔力の違う魔導具師達が、それぞれ薄く付与を重ねればいい。

結果として、王城魔導具制作部で共同研究される技術にまで発展していく。

騎士達が目をキラキラさせながら、

「俺の剣にも!」

「もっと強いのを!」

となっている姿が簡単に想像できる。

若い騎士だけではない。

この作品の場合、老騎士まで一緒になって目を輝かせそうなのが怖い。

男はいくつになっても魔剣が好きなのかもしれない。

そして発覚するダリヤの特殊な身体

王城魔導具制作部を訪れたことで、さらに大きな事実も判明する。

ダリヤが首無鎧の殻へ手を入れたところ、

反応した。

これまでほとんど反応しなかったものが、ダリヤの手にだけ反応する。

当然、

「ダリヤは魔物なのか?」

「魔付きなのか?」

という話になる。

いやいやいや。

本人からすれば怖すぎる。

調べた結果、原因は昔の怪我だった。

学生時代、ダリヤはブラックスライムの粉末で火傷をしている。

その治療の際、完全には取り除けなかったごく微量の粉末と魔力が、治癒魔法によって皮膚の下に残ってしまったらしい。

つまりダリヤの手は、

ブラックスライムがごく薄く付与されたような状態。

そんなことある?

以前のスライムの反応も、これが原因だったのか?

ここで思い出したのが、以前のスライム養殖場である。

スライム達がダリヤに妙な反応をしていた。

特にブラックスライムの反応は印象に残っている。

当時は、

「ダリヤだから?」

くらいに思っていた。

しかし今回、両手にブラックスライム由来の微細な魔力が残っていることが判明した。

そう考えると、

あのときの反応もこれが関係していたのでは?

と思ってしまう。

もちろん現時点では、どこまで影響しているのか分からない。

ただ、これまで何気なく描かれていた出来事に別の意味が生まれてくるのは面白い。

しかも首無鎧まで反応した。

ダリヤの手に残ったブラックスライムが、今後の魔導具作りや魔物素材の研究にどう関係してくるのか。

かなり気になるところである。

ローザリアは家族の顔を見ることができなかった

終盤では、ダリヤがスカルファロット家本邸を訪れる。

そこで出会うのが、グイードの妻であり、ヴォルフの義姉であるローザリア。

彼女には特殊な目があった。

人の魔力が光のように重なって見えてしまう。

そのため魔力の強い人ほど、顔が分からない。

つまりローザリアは、

家族の顔をはっきり見ることができなかった。

これは想像するとかなりつらい。

声は分かる。

そこにいることも分かる。

愛していることも分かる。

それなのに顔が見えない。

夫であるグイードの顔すら、魔力の光に覆われてしまう。

「見る側」ではなく「見られる側」に眼鏡をかける

そこでダリヤが考えた方法が面白かった。

ローザリアの目をどうにかするのではない。

家族側の魔力を隠せばいい。

妖精結晶の眼鏡を利用して、外部魔力を隠す。

つまり、

ローザリアに眼鏡をかけさせるのではなく、グイード達が眼鏡をかける。

この発想の転換がダリヤらしい。

本人の身体を無理に変えようとしない。

周囲の道具を変えることで、困っていることを解決する。

そして完成した眼鏡によって、

ローザリアはグイードの顔をはっきり見ることができた。

これは温かい。

派手な魔剣も面白い。

魔鳩との戦いも笑える。

でも魔導具によって、今まで見ることのできなかった家族の顔が見えるようになる。

こういう使い方こそ、ダリヤが作る魔導具の魅力なのかもしれない。

ダリヤは「できないこと」を別の方向から解決する

13巻を読んでいて感じたのは、

ダリヤは正面から解決できない問題に対して、別の方向から考えるのが得意なのだということ。

魔鳩を殺せない。

だったら殺さず、嫌な場所だと覚えさせる。

高い魔力を一度に付与できない。

だったら薄く何度も重ねればいい。

ローザリアの目そのものを変えるのが難しい。

だったら見る対象の魔力を隠せばいい。

本人にとっては、

「できないから別の方法を考えただけ」

なのだと思う。

でも、その工夫が周囲からすると新しい技術になる。

ミルフィーユ付与がまさにそれだった。

自分に足りないものがあるから工夫する。

その工夫が、結果として今までになかったものを生み出す。

ダリヤの魔導具師としての面白さがよく出ていた巻だった。

まとめ

『魔導具師ダリヤはうつむかない』13巻。

最初は、

スライムを食べる鳩をどうにかしよう。

という話だった。

それが気づけば、

ワイバーンの匂いを鳩避けに使い、

黒風の魔剣が完成し、

ミルフィーユ付与が王城の研究対象になり、

ダリヤの手にブラックスライムの魔力が残っていることが判明し、

最後にはローザリアが夫の顔を見られるようになる。

今回も話が広がりすぎである。

個人的には、やはり魔鳩のアグレッシブさが忘れられない。

金網を突破。

強化ガラスまで破壊。

追い払っても戻ってくる。

仲間を殺せば報復する可能性まである。

こんな鳩が日本にいたら、公園でのんびりパンなんて食べていられない。

そんな魔鳩を追い払う最終兵器が、

ワイバーンの匂い。

本作ではワイバーン素材が本当にいろいろなことに使われる。

まさか鳩避けにまでなるとは思わなかった。

一方で、物語として気になったのはダリヤの両手である。

ブラックスライムの粉末が残っている。

首無鎧がそれに反応する。

以前のスライム達の反応まで思い返したくなる。

単なる昔の怪我なのか。

それとも今後、何かにつながっていくのか。

そして最後は、ローザリアが家族の顔を見るための眼鏡。

魔剣のような派手さはない。

でも、

「今まで見えなかった大切な人の顔が見える」

という魔導具の方が、ずっと心に残った。

戦うための魔導具。

仕事を楽にする魔導具。

生活を便利にする魔導具。

そして誰かの悩みを少し軽くする魔導具。

13巻はいろいろな魔導具が登場したからこそ、

ダリヤが何のために魔導具を作っているのか。

そこが改めて見えた巻だったように感じた。

魔導具師ダリヤ 12巻レビュー
まとめ
魔導具師ダリヤ 14巻レビュー

最後までお読み頂きありがとうございます。

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考察・解説

ストーリー・プロット

第1幕:スライム養殖場の魔鳩被害と対策の着手

ダリヤ・ロセッティはロセッティ商会会長や王城騎士団魔物討伐部隊相談役として多忙な日々を送りつつ、職人仲間と交流を深めていた。ある日、ガンドルフィ工房長のフェルモとともにスカルファロット伯爵家別邸の武具工房へ招かれる。

  • 発端となった出来事:冒険者ギルド副ギルド長のアウグストから、スライム養殖場で屋外乾燥中のグリーンスライムが烏や魔鳩に荒らされている被害について相談を受ける。連絡用の魔鳩も混ざっており、誤って撃ち落とせば情報漏洩や外交問題へ発展する恐れがあった。
  • 登場人物の行動:フェルモは自身の工房名を伏せる条件で協力を引き受ける。事前の危険性説明を怠った武具工房長のヨナスへフェルモが苦言を呈すると、ヨナスも不備を認めて反省し、二人は互いを「先輩」「仲間」と認め合う。ダリヤとフェルモは対策の検討を開始する。
  • それによって起きた変化:ダリヤ達が魔鳩対策に本格的に乗り出すこととなる。
  • 次の展開につながった原因:従来の鳥避けや威圧では身体強化や隠蔽魔法を使う魔鳩を防ぎきれず、魔鳩の習性や弱点を詳しく知るため、実家で魔鳩を扱っていたランドルフに協力を仰ぐことになる。
第2幕:魔鳩の弱点解明と「魔鳩恐怖小屋」の完成

魔鳩はグリーンスライムの乾燥物を強く好み、捕まえて威圧しても数日で繰り返し飛来するなど強い執着を見せていた。

  • 発端となった出来事:ヴォルフが連れてきたランドルフから、魔鳩はワイバーンを恐れ、空蝙蝠の肉を嫌い、不規則な風を苦手とすること、そして群れで餌場情報を共有するという習性を聞き出す。
  • 登場人物の行動:ダリヤの設計をもとにフェルモが不規則に温冷風・強弱を切り替える大型ドライヤーや風車を備えた乾燥小屋(魔鳩恐怖小屋)を製作。空蝙蝠の粉末と舞踏花の花粉を混ぜた罠餌、小扉でのワイバーン成分の噴霧、ジャンのワイバーン皮による匂い付けなどの複合対策を実施する。
  • それによって起きた変化:嫌悪と恐怖を重ねて学習した魔鳩は再訪しなくなり、スライム養殖場の被害が劇的に改善される。また、ワイバーンの匂いで孤立した王城の魔鳩をランドルフが消臭石鹸で丁寧に洗い流して救い、「魔鳩使い」と呼ばれるきっかけが生まれた。
  • 次の展開につながった原因:魔鳩問題が解決したことで、ダリヤは自身の技術開発やヴォルフへの贈り物制作へと意識を移す。
第3幕:多重付与による「黒風の魔剣」の制作と実戦検証

ダリヤは自身の誕生日にヴォルフから花籠やペンダントなどの祝福を受ける。そのお返しとして、ヴォルフが使う魔物討伐部隊の通常剣を少しだけ丈夫にする付与を約束する。

  • 発端となった出来事:ダリヤは黒い支給剣を分解し、先端に紅金を貼り、風魔法(緑冠の羽根)を付けた上で、一角獣の角(魔力遮断)と首長大鳥の嘴(硬質化)を極めて薄く交互に重ねる付与を試みる。
  • 登場人物の行動:ダリヤは極限の集中と魔力ポーションの補給によって「ミルフィーユ付与(多重付与)」を完遂し、「黒風の魔剣」を完成させる。ヴォルフはこの剣を携えて連なりの岩山での岩山蛇討伐遠征に臨む。
  • それによって起きた変化:ヴォルフは硬い表皮を持つ岩山蛇を20匹以上斬っても刃こぼれや切れ味低下を一切起こさず無傷で倒し続け、隊員たちから「魔王」と評される圧倒的な戦果を挙げた。
  • 次の展開につながった原因:この驚異的な耐久性と切れ味が王城内で話題となり、魔導具制作部での技術検証へつながる。
第4幕:「ミルフィーユ付与」の共有と王城魔導具制作部三課の調査

王城でスライム製新型戦闘靴の報告会が行われ、ヴォルフの「黒風の魔剣」の付与構造が注目を集める。

  • 発端となった出来事:ウロス部長やカルミネ副部長に剣を確認された際、ダリヤが少ない魔力刻みで何層も重ねる「ミルフィーユ付与」を行っていたことが明らかになる。
  • 登場人物の行動:ウロスらは従来の単独高魔力付与の限界を認識し、異なる魔力値の魔導具師が共同で層を重ねる開発・練習体制への刷新を決定する。その後、ダリヤとヴォルフはセラフィノ・ザナルディ大公に招かれ、自由な研究が行われる魔導具制作部三課を見学し、保管されていた首無鎧の「殻」に触れる。
  • それによって起きた変化:首無鎧の「殻」の内側がダリヤの手にだけ赤く反応。エラルドの鑑定により、過去にブラックスライムの粉で火傷した際の微細な残滓魔力が手に残っているため(人間であり魔付きではない)と判明する。
  • 次への展開につながった原因:ザナルディ大公との交流や安全確認を経て、ヴォルフの義姉ローザリアへの挨拶のためスカルファロット家本邸を訪問することになる。
第5幕:スカルファロット本邸訪問と「妖精結晶の眼鏡」の完成

ダリヤはヴォルフとともに、グイードの妻ローザリアへの挨拶のためスカルファロット家本邸を訪れる。ヴォルフは変装のため妖精結晶の眼鏡(緑の目)を着用していた。

  • 発端となった出来事:ローザリアは「人の魔力が重なって視える」特殊な目を持っていたため、外部魔力を遮断したヴォルフを擬態した魔物と誤解し、家族を守るため即座に廊下に氷壁を展開して警戒する。
  • 登場人物の行動:誤解が解けた後、ローザリアの悩みが「家族の強い魔力の光で顔がはっきり視えないこと」だと知ったダリヤは、「見る側ではなく、対象(家族)側の外部魔力を隠す」という発想の転換を提案。専属魔導具師コルンパーノに技術を伝授し、コルンパーノ自身も過去の嫉妬や葛藤を乗り越えてグイード用の「妖精結晶の眼鏡」を完成させる。
  • それによって起きた変化:ローザリアは完成した眼鏡により、初めて夫グイードの顔をはっきりと見ることができ、感涙してダリヤと深く打ち解けた。
  • 次への展開につながった原因:ダリヤはスカルファロット家との絆をより強固にし、周囲の協力と成果を確かめながら、魔導具師としての新たな一歩を踏み出してゆく。

4. 主要な転換点

転換点1:スライム養殖場への魔鳩飛来問題の発生
  • 初期状況:  スライム養殖場では、屋外でグリーンスライムを太陽光と風に当てて乾燥させていたが、通常の小鳥被害に対しては網や臭いスプレー、金属音等で対応していた。
  • 出来事:  野生の魔鳩のみならず、貴族や王城の足環付き連絡用魔鳩が飛来。身体強化で金網を突き破り、上空から急降下して天窓の強化ガラスを砕いて干しスライムを食い荒らす事態が発生した。
  • 変化:  捕獲や撃ち落としを行えば情報遮断や国際問題・貴族間紛争に発展するため、傷つけることなく学習によって二度と近寄らせない特殊な撃退手段(魔鳩恐怖小屋)の開発が必要となった。
  • 次への影響:  ランドルフの生態的助言とジャンのワイバーン皮による強烈な匂い付けが実行され、魔鳩被害が完治。グッドウィン家との正式な情報提携や、全天候型大型送風乾燥場の設置計画へと発展した。
転換点2:ダリヤによる長剣への「ミルフィーユ付与(8回重ね掛け)」
  • 初期状況:  ヴォルフが使用する部隊支給品の長剣は、岩山蛇などの硬い魔物を数匹切断すると刃こぼれや摩耗が生じ、現場での頻繁な交換が不可欠であった。
  • 出来事:  ダリヤは魔力ポーションを服用して限界を超えた集中状態を作り出し、先端に風魔法付きの紅金を取り付けた上で、首長大鳥の嘴(硬質化)と一角獣の角(魔力遮断)を、微小な魔力差で8回交互(計16層)に付与した。
  • 変化:  金属本来の「しなり」を殺すことなく、耐久性と切れ味が飛躍的に向上した「黒風の魔剣」が完成した。
  • 次への影響:  ヴォルフが岩山蛇討伐戦において20匹以上を刃欠け・刃こぼれ一切なしで単身切断する圧倒的戦果を記録。この実話が王城魔導具制作部を揺るがす技術革命の契機となった。
転換点3:王城魔導具制作部における「ミルフィーユ付与」の解明と採用
  • 初期状況:  王城では、魔力10以上の付与を施すと「剣が硬くなりすぎて脆くなり、オーガ戦等で容易に折れて騎士が大怪我を負う」というウロス部長のトラウマから、単独職人による8〜9程度の付与が絶対的上限とされていた。
  • 出来事:  ウロスとカルミネが「黒風の魔剣」を自ら鑑別し、ダリヤから「低魔力者が微小な魔力差で薄紙を重ねるように何十回も滑らせて付与する(ミルフィーユ付与)」という原理の開示を受けた。
  • 変化:  高魔力者が単独で強く付与する従来の技術体系の限界が証明され、複数の魔導具師が魔力差を利用して薄い付与をチームで重ねる手法(共同ミルフィーユ付与)の有効性が立証された。
  • 次への影響:  ウロスが自ら責任を負う形で規程を改定。王城魔導具制作部の全魔導具師が意識を改め、共同多重付与の大規模な研究と猛鍛練を開始した。
転換点4:首無鎧の反応と「ブラックスライム残滓魔力」の判明
  • 初期状況:  三課に保管されている「首無鎧の殻」は、誰が触れても何らの反応も示さず、属性魔法の照射でも表面が削れる程度の完全な不活性状態であった。
  • 出来事:  ダリヤが首無鎧の内側に深く腕を差し入れた際、内側のラインがぼんやりとした赤い光を描いて反応した。
  • 変化:  一時的な魔物・魔付きの疑惑が浮上したが、神官エラルドの鑑定により、学生時代に素手でブラックスライムの粉に触れて負った火傷を治療した際、消え残った微細粉末と魔力が治癒魔法で皮膚下に閉じ込められ、手自体にブラックスライムの魔力が宿っていることが特定された。
  • 次への影響:  ダリヤの人間性が証明されて疑惑が晴れ、無理な解呪が付与感覚を半年以上狂わせるリスクを避けるため状態の維持が決定。ザナルディ大公の指示により関係者への絶対的な口外禁止と鑑定書の発行がなされ、安全が保たれた。

ダリヤを中心とした人物関係の変化

ダリヤ ⇔ ヴォルフレード・スカルファロット
  • 開始時:  互いに全幅の信頼を寄せる親しい友人関係。
  • 変化のプロセス:  ダリヤが作業に没頭して足が痺れ倒れていた際、ヴォルフがドアを破って飛び込み深く心配したエピソードや、一日早い誕生日に送られた赤い花籠・氷結晶のペンダント・罠パイの進呈、ダリヤが伝える「ヴォルフは十分かっこいいです」という言葉、そして何より彼の生還と安全を祈って極限の集中で打たれた「黒風の魔剣」の制作を通じて、情愛と信頼が深化。
  • 巻末時:  ヴォルフは完成した魔剣の先端に宿る微かな赤みを「ダリヤの赤だ」と呼んで強い愛着を深め、王城内や三課の探索においても常にダリヤの公式な護衛として至近距離に寄り添い、守り抜く存在として関係性を確固たるものとした。
ダリヤ ⇔ ヨナス・ドラーツィ
  • 開始時:  スカルファロット家武具工房の責任者と相談役というビジネス上の協力関係。
  • 変化のプロセス:  スカルファロット家武具工房での魔鳩対策協議時、ヨナスが事前リスクの全貌をダリヤに開示していなかった点について、フェルモから「先にロセッティ会長に説明しておくのが筋だ」と厳しく喝破される。ヨナスは自身の甘えとミスを素直に認めて謝罪。フェルモから「巻き込まれて巻き込む間柄」と表現されたことで、双方が対等な仕事の仲間であることを深く再確認した。
  • 巻末時:  薬草煎餅の発明に伴う周囲の不審や欲望からダリヤを守るため、ヨナスがすべての問合せの防波堤となることを申し出る。ダリヤが過去の「貸し」を引き合いに出して相殺を試みた際、ヨナスは「全力でお断り申し上げます」と拒絶。対等な開発仲間としての礼儀、保護関係、そして対等な友情に基づく強固な信頼関係を再構築した。
ダリヤ ⇔ セラフィノ・ザナルディ(ザナルディ大公)
  • 開始時:  面識なし(雲の上の存在である王の甥・大公)。
  • 変化のプロセス:  王城の廊下で書類を抱えて階段を踏み外したザナルディをダリヤが手助けしたことで遭遇。ザナルディは即座に「不敬を一切問わない」直筆の手記を与え、同じ技術者・研究者としてダリヤを三課の見学へ招待した。地下倉庫で首無鎧が反応した際も感情的に害することなく、冷静かつ公平な事実検証を主導し、エラルドの鑑定をアレンジしてダリヤの身の安全と秘密を完全に保護した。
  • 巻末時:  身分差を超え、自由に技術的意見を交わせる「同業者(魔導具師)」として互いを認識。ダリヤにとって三課の広範な研究設備や知見へアクセスできる貴重な後見的知己となった。

6. 主人公の認識と周囲の評価

主人公(ダリヤ)自身の自己認識
  • 自分は魔力が低く(10〜11程度)、高魔力者が持つような派手で華やかな付与技術を持たない庶民の魔導具師である。
  • 自身が行っている「ミルフィーユ付与」は、高い魔力で一気に強力な付与を行えないため、仕方がなく「微小な魔力差で薄い魔法を何十回も地道に重ねているだけ」の不格好な工夫・試行錯誤に過ぎない。
  • 自身の開発品(乾燥中敷き、五本指靴下、泡ポンプ、温熱座卓等)はあくまで日々の生活を便利にする庶民向けのアイデア商品であり、国家や技術体系を揺るがすような大層な実績ではないと考えている。
周囲(専門家・貴族・騎士等)からの客観的評価
  • ウロス・カルミネ(王城魔導具制作部):  高魔力の熟練者たちが数十年間試行錯誤しても到達できなかった「しなりを損なわず、オーガ戦でも折れない16層の多重付与」を、驚異的な魔力制御精度で完璧に成功させた不世出の技術者。王城魔導具制作部に兼任で引き抜きたいほどの稀有な才能。
  • ヴォルフ・グラート・部隊員:  圧倒的な切れ味と耐久性を兼ね備えた魔剣を作り出し、最前線の騎士の生存率と戦術体系を一変させる極めて優秀な魔導具師。
  • ザナルディ大公・神官エラルド:  大公や高位神官の前でも飾らず誠実であり、手にブラックスライムの残滓魔力という特異な性質を宿しながらも、ひたむきに優れた魔導具制作へ打ち込む一目置くべき研究者。
認識の差が明確に現れた場面
  • 該当場面:  王城魔導具制作部・ウロスの作業室にて、ヴォルフの長剣への付与回数を尋ねられたダリヤが「八掛け(実質16回掛け)」と答えた場面。
  • ドラマチック・アイロニーの表れ:  ダリヤは「自分の魔力が低いので、細かく刻んで薄く重ねただけです」と謙遜気味に説明した。しかし、ウロスは「16掛けなどを行えば普通は破綻する」「たった一本のポーションでそれを完璧に制御し切ったのか」と激昂・驚愕。過去に単独の高魔力付与で剣を硬化させすぎて折ってしまった己のトラウマと照らし合わせ、ダリヤの「薄い魔力を重ねてしなりを残す」という発想と精度が、王城の技術体系の欠陥を打ち破る天才的なブレイクスルーであることを痛感した。この劇的な認識のギャップがきっかけとなり、ウロスは王城魔導具制作部の規程を改定し、全魔導具師を巻き込んだチーム制多重付与の大改革へと踏み出すこととなった。

登場キャラクター

主要キャラクター

ダリヤ・ロセッティ

前世の記憶を持つ転生者であり、ロセッティ商会の商会長を務める魔導具師である。王城騎士団魔物討伐部隊の相談役も兼任し、魔導具開発を通じて周囲と信頼関係を築いている。

  • 所属組織、地位や役職ロセッティ商会・商会長。王城騎士団魔物討伐部隊・相談役。
  • 物語内での具体的な行動や成果スライム養殖場の魔鳩被害に対し、仲間と共に「魔鳩恐怖小屋」を作り解決した。ヴォルフレードのために「黒風の魔剣」を制作し、王城魔導具制作部との共同研究のきっかけを作った。また、スカルファロット家でローザリアのために妖精結晶の眼鏡を提案し、技術共有を行った。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項王城魔導具制作部第三課の長であるザナルディ大公に目をかけられる。首無鎧への接触により、過去の怪我に由来するブラックスライムの魔力残滓が手に残っていることが判明した。

ヴォルフレード・スカルファロット

スカルファロット伯爵家の四男であり、魔物討伐部隊に所属する騎士である。ダリヤとは深い信頼関係にあり、公私ともに彼女を支える存在だ。

  • 所属組織、地位や役職スカルファロット伯爵家・四男。魔物討伐部隊・隊員。
  • 物語内での具体的な行動や成果ダリヤが制作した人工魔剣を使用し、岩山蛇の討伐で多大な戦果を挙げた。ダリヤがザナルディ大公に魔物や魔付きと疑われた際、必死に擁護し人間であることを保証した。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項圧倒的な戦闘力から、周囲の騎士より「魔王」と評されるようになった。家族の平和のため、実家の庭で「魔物ごっこ」に参加し、庭を荒らす一因となった。

フェルモ・ガンドルフィ

ガンドルフィ工房の工房長であり、腕利きの職人である。貴族への対応に不安を抱きつつも、仕事には真摯に取り組む実直な性格を持つ。

  • 所属組織、地位や役職ガンドルフィ工房・工房長。
  • 物語内での具体的な行動や成果自身の工房名を伏せる条件で、スライム養殖場の魔鳩対策に個人として協力した。乾燥小屋に風や匂いのギミックを追加し、魔鳩撃退の仕組みを完成させた。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項スカルファロット家武具工房の仲間として、ヨナスやダリヤとの信頼関係を深めた。

ヨナス

スカルファロット家武具工房の工房長であり、グイードやヴォルフレードの護衛も務める。魔付きであり、冷静な判断力で場を収める役割を担う。

  • 所属組織、地位や役職スカルファロット家武具工房・工房長。
  • 物語内での具体的な行動や成果魔鳩対策の連絡不備についてフェルモに謝罪し、関係を修復した。ローザリアがヴォルフレードを敵と誤認して作った氷壁を、火魔法で溶かし事態を収拾した。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項魔鳩対策の情報共有不足を反省し、フェルモを正式な仲間として迎え入れた。

ランドルフ・グッドウィン

魔物討伐部隊の騎士であり、国境付近の事情や魔物の生態に詳しい。過去の人質経験から、孤独な存在に対して強い共感を抱く。

  • 所属組織、地位や役職魔物討伐部隊・隊員。
  • 物語内での具体的な行動や成果魔鳩の生態や弱点に関する知識を提供し、対策の立案に貢献した。群れから孤立した魔鳩を丁寧に洗浄して匂いを消し、群れへ帰還させた。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項助けた魔鳩に懐かれ、「魔鳩使い」という新たな二つ名が加わった。

セラフィノ・ザナルディ

オルディネ王国の王位継承権第三位を持つ大公であり、王城魔導具制作部第三課の課長である。研究熱心な性格で、身分にとらわれず有能な技術者を評価する。

  • 所属組織、地位や役職王城魔導具制作部第三課・課長。大公。
  • 物語内での具体的な行動や成果ダリヤとヴォルフレードを第三課へ招待し、不敬を問わない書付を渡した。「おいしいポーション」の開発や、首無鎧の解析など独自のプロジェクトを推進している。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項ダリヤの手に残る魔力残滓に興味を示したが、彼女の立場を守るために深入りを避ける配慮を見せた。

グイード・スカルファロット

スカルファロット伯爵家の当主代行(または実質的な当主)であり、ヴォルフレードの兄である。家族を深く愛し、政治的な駆け引きにも長けている。

  • 所属組織、地位や役職スカルファロット伯爵家。
  • 物語内での具体的な行動や成果ダリヤに対し、第三課へ引き抜かれないよう忠告し、貴族後見人として守る姿勢を示した。ローザリアの目の能力についてダリヤに守秘の神殿契約を求めた。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項妻ローザリアのために作られた眼鏡をかけ、彼女と見つめ合うことで夫婦の絆を再確認した。

ローザリア・スカルファロット

グイードの妻であり、強力な氷魔法の使い手である。魔力を光として認識する特異な目の持ち主で、人の顔を判別できない悩みを抱えていた。

  • 所属組織、地位や役職スカルファロット伯爵家。
  • 物語内での具体的な行動や成果擬態眼鏡をかけたヴォルフレードを敵と誤認し、氷壁を展開して攻撃態勢をとった。ダリヤの提案による妖精結晶の眼鏡を受け入れ、家族の顔を見るという願いを叶えた。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項眼鏡の完成により、夫や娘の顔をはっきりと認識できるようになった。

コルンバーノ

スカルファロット家の魔導具部門長を務める魔導具師である。当初はダリヤに対し対抗心を抱いていたが、その技術と姿勢を知り意識を改めた。

  • 所属組織、地位や役職スカルファロット家魔導具部門・長。
  • 物語内での具体的な行動や成果ダリヤから妖精結晶の眼鏡の製法を教わり、幻覚の副作用と闘いながら付与を成功させた。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項自身のプライドよりも主の笑顔を優先する職人としての誇りを取り戻した。

ウロス

王城魔導具制作部の部長であり、高魔力を持つ熟練の魔導具師である。部下の安全管理に厳しく、責任感の強い人物だ。

  • 所属組織、地位や役職王城魔導具制作部・部長。
  • 物語内での具体的な行動や成果ダリヤの「ミルフィーユ付与」を見学し、低魔力での多重付与の危険性を叱責した。その後、共同研究の可能性を認め、制度の壁を越えて協力体制を構築した。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項ダリヤの技術に触発され、カルミネと共に薄い付与の猛練習を開始した。

カルミネ

王城魔導具制作部の副部長である。柔軟な思考を持ち、新しい技術や素材の導入に積極的である。

  • 所属組織、地位や役職王城魔導具制作部・副部長。
  • 物語内での具体的な行動や成果スライム成形戦闘靴の改良を行い、魔物討伐部隊への導入を進めた。ダリヤに特製の靴を贈呈し、彼女を魔導具制作部の見学へ誘った。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項ウロスと共に多重付与の研究に没頭し、制作部内の技術基準を引き上げた。

ヴァネッサ・スカルファロット

ヴォルフレードの母であり、元護衛騎士である。息子が騎士として生き残るために力を尽くしたいと願っている。

  • 所属組織、地位や役職スカルファロット伯爵家。
  • 物語内での具体的な行動や成果炎の魔剣のオークションに参加したが、起動条件を満たせず入手を断念した。幼いヴォルフレードに剣の稽古をつけ、共に鍛錬に励んだ。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項攻撃魔法を持たない息子のため、強力な魔剣を探し求める執念を見せた。

ドリノ・バーティ

魔物討伐部隊の騎士であり、ヴォルフレードの友人である。花街の女性に対し、複雑な感情を抱いている。

  • 所属組織、地位や役職魔物討伐部隊・隊員。
  • 物語内での具体的な行動や成果岩山蛇討伐後の解体作業で、ヴォルフレードとの実力差を痛感した。花街の「宵闇の館」に通い、想い人であるファビオラに救護院への寄付金を手渡した。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項ファビオラとの関係を「半分夢の中」と割り切りつつも、大切に想い続けている。

戦闘 一覧

スカルファロット家別邸での相談

連絡用魔鳩への攻撃(過去の事例)
  • 戦闘者:魔鳩 vs 連絡用魔鳩
  • 発生理由:干したグリーンスライムを狙う魔鳩が、誤って連絡用魔鳩を攻撃対象としたため。
  • 結果:連絡用魔鳩が撃ち落とされる被害が発生した。

スライム養殖場の魔鳩対策

ジャン所長による魔鳩の捕獲
  • 戦闘者:ジャン所長 vs 侵入した魔鳩
  • 発生理由:スライム養殖場への侵入を防ぐため。
  • 結果:ジャン所長が魔鳩を捕まえて威圧し放したが、四日目で再挑戦してくる個体が出るなど効果は限定的であった。

魔鳩恐怖小屋と国境の騎士

身体強化を持つ魔鳩による施設襲撃
  • 戦闘者:魔鳩(身体強化個体) vs スライム養殖場(研究員)
  • 発生理由:魔鳩が餌(グリーンスライム)を求めて上空から急降下し、施設へ侵入しようとしたため。
  • 結果:魔封銀で補強された金網を突破し、天井強化ガラスを割って侵入した。研究員が負傷した。
魔鳩恐怖小屋での撃退
  • 戦闘者:魔鳩 vs 罠(魔鳩恐怖小屋の仕掛け)
  • 発生理由:魔鳩を撃退し、二度と来たくないと思わせるための実験として、罠餌や不快な環境を用意した小屋へ誘導したため。
  • 結果:魔鳩は不規則な風に妨害され、罠餌で体調を崩し、最終的にワイバーンの匂い付きの水を浴びせられ、トラウマを植え付けられて撃退された。
ジャン所長による王城の魔鳩への制裁
  • 戦闘者:ジャン所長 vs 王城の魔鳩(過去にガラスを割った個体)
  • 発生理由:対策の効果を確認中に現れた魔鳩が、以前強化ガラスを割った個体だと判明し、ジャンの怒りを買ったため。
  • 結果:ジャンが魔鳩を捕獲し、加熱して匂いを強めたブラックワイバーンの皮で全身を念入りに撫で回し、恐怖を与えて放した。
ランドルフによる魔鳩の洗浄時の攻防
  • 戦闘者:ランドルフ・グッドウィン vs 屋根の魔鳩
  • 発生理由:ワイバーンの匂いをつけられ孤立した魔鳩を群れに戻すため、ランドルフが洗浄を試みた際、魔鳩が抵抗したため。
  • 結果:魔鳩がランドルフの指を噛み続け流血させたが、ランドルフは身体強化で耐えきり、洗浄を完了させた。

誕生日と赤い花籠

ヴォルフレードによるドア破壊
  • 戦闘者:ヴォルフレード・スカルファロット vs ダリヤの部屋のドア
  • 発生理由:ダリヤが足の痺れで倒れていたのを緊急事態(発作や怪我)と誤認し、救助のために突入しようとしたため。
  • 結果:ドアが蝶番ごと破壊された。

岩山蛇と魔王

上級冒険者と岩山蛇の戦闘(過去)
  • 戦闘者:上級冒険者 vs 大型変異種の岩山蛇
  • 発生理由:岩山蛇の討伐のため。
  • 結果:火魔法で仕留めようとしたが息が長く暴れ回り、周囲の岩山蛇も誘発された。
山裾での岩山蛇との戦闘
  • 戦闘者:冒険者たち vs 岩山蛇の群れ
  • 発生理由:中域火魔法で山を焼いた結果、岩山蛇が山裾へ流出し、街道封鎖の必要が生じたため。
  • 結果:冒険者が腕を囓られる被害が発生した。
魔物討伐部隊による岩山蛇殲滅戦
  • 戦闘者:魔物討伐部隊(主にヴォルフレード・スカルファロット) vs 岩山蛇の群れ
  • 発生理由:人の味を覚えた個体が出たため、山裾に流出した岩山蛇を殲滅する必要があったため。
  • 結果:ヴォルフレードが黒風の魔剣を用いて一方的に岩山蛇を次々と切り刻み、刃こぼれもさせず連戦して殲滅した。

戦闘靴の報告会とミルフィーユ付与

付与見学時の魔力圧迫
  • 戦闘者:ウロス(の魔力) vs ダリヤ・ロセッティ
  • 発生理由:ウロスが高負荷の付与(剣壊しへの身体強化・耐久性上げ)を行った際、強風のような魔力の余波が発生したため。
  • 結果:ダリヤは強風に押される錯覚と陽炎のような魔力の圧力を感じ、呼吸が浅くなるほどの負荷を受けた。

大公と王城魔導具制作部三課

魔羊フランドフランの暴走(過去)
  • 戦闘者:魔羊フランドフラン vs 騎士二人
  • 発生理由:跳躍力の研究対象である魔羊が暴れたため。
  • 結果:騎士二人が跳ね飛ばされ、魔羊の蹄が扉にめり込んだ。
首無鎧接触時の護衛による威嚇
  • 戦闘者:護衛騎士・メイド vs 首無鎧(の殻)
  • 発生理由:ダリヤが首無鎧に触れた際、鎧が赤く発光するという予期せぬ反応を示したため、護衛たちが危険と判断した。
  • 結果:護衛たちが抜剣し制止したが、ザナルディの指示とヴォルフレードの擁護により戦闘には発展せず、未遂に終わった。

魔剣の再検証とオルディネ大公の独白

グイードによるザナルディへの拒絶(過去)
  • 戦闘者:グイード・スカルファロット vs セラフィノ・ザナルディ
  • 発生理由:ザナルディが研究目的でヨナスの体を借りたい(腑分けして治癒する)と言い出したため。
  • 結果:グイードが冗談交じりに床が鏡面になるほど凍結させて拒絶し、ザナルディを退けた。

閑話 宵闇の館と甘い夢

ドリノによるテーブル破壊(過去)
  • 戦闘者:ドリノ・バーティ vs テーブル
  • 発生理由:王城騎士団入団の祝宴で出自を侮辱され、怒りが爆発したため。
  • 結果:テーブルを叩き割って相手を黙らせた。

スカルファロット家への訪問

ローザリアによる防衛行動
  • 戦闘者:ローザリア・スカルファロット vs ヴォルフレード・スカルファロット(誤認)
  • 発生理由:ローザリアが、擬態眼鏡をかけたヴォルフレードを「魔物か魔付きの刺客」と誤認したため。
  • 結果:ローザリアが即座に氷壁を展開して廊下を封鎖したが、ヨナスが火魔法で氷壁を溶かし、誤解が解けたため戦闘には発展しなかった。
裏庭での魔物ごっこ
  • 戦闘者:ヴォルフレード、グイード、ヨナス、護衛騎士たち vs 互い(参加者全員)
  • 発生理由:親睦を深めるための「遊び」として始まったが、実力者同士が本気で身体強化を用いたため。
  • 結果:実質的な狩りの様相を呈し、庭の芝生が抉れ花々が倒れるなど荒れ果てた。ローザリアの怒りを買う結果となった。

スカルファロット家の妖精結晶の眼鏡

コルンバーノによるレンズ破壊
  • 戦闘者:コルンバーノ vs 妖精結晶・水晶レンズ
  • 発生理由:妖精結晶への付与を試みたが、幻覚の副作用と魔力制御の難しさに敗北したため。
  • 結果:妖精結晶は微塵となり、水晶レンズは四枚ひび割れた(コルンバーノの惨敗)。

番外編 母と息子の鍛錬と魔剣話~炎の魔剣~

ヴァネッサによる家と家族の防衛(過去)
  • 戦闘者:ヴァネッサ・スカルファロット vs 誘拐を狙う魔物 / 襲撃者 / 侵入者
  • 発生理由:スカルファロット家の家族を守るため。
  • 結果:魔物を斬り、襲撃者を氷漬けにし、侵入者と打ち合って撃退した。
ヴァネッサの父と兄と森大蛇の戦闘(過去)
  • 戦闘者:ヴァネッサの父と兄 vs 森大蛇
  • 発生理由:森大蛇との戦いが発生したため。
  • 結果:父と兄が亡くなり、村が移転することとなった。
ヴァネッサとバーレットの剣の指導(過去)
  • 戦闘者:ヴァネッサ vs バーレット
  • 発生理由:ヴァネッサがバーレットに弟子入りし、剣の指導を受けたため。
  • 結果:初日は徹底的に転がされ叩き込まれ、ヴァネッサは動けなくなるまで倒された。

魔導具師ダリヤ 12巻レビュー
まとめ
魔導具師ダリヤ 14巻レビュー

展開まとめ

スカルファロット武具工房顔合わせ

魔鳩対策の依頼

ダリヤとフェルモ、イヴァーノはスカルファロット家別邸の武具工房へ招かれた。ドラーツィ侯爵家の養子となり、スカルファロット家相談役となったヨナスは新しい立場に合わせた言葉遣いに苦労していた。

冒険者ギルド副ギルド長アウグストは、スライム養殖場で乾燥中のグリーンスライムを狙う烏や魔鳩への対策を依頼した。魔鳩には野生だけでなく王城や貴族、商会が通信に利用する個体も交じっており、誤って撃ち落とせば情報漏洩や外交問題へ発展する恐れがあった。

ダリヤとフェルモは開発への協力を引き受けたが、フェルモは危険性を事前にダリヤへ説明しなかったヨナスへ苦言を呈した。ヨナスも、自分なら無条件で協力してもらえるという甘えがあったと認めた。フェルモは、ダリヤとは巻き込まれ、巻き込む間柄なのだから最初から事情を伝えるべきだと助言し、ヨナスも後輩を気遣う先輩職人として彼を認めた。

スライム養殖場の魔鳩対策

グリーンスライムの餌場化

研究主任イデアは、スライム養殖場に来る魔鳩が増え、金網や鳥避けにも慣れている状況を説明した。グリーンスライムは屋外で日光と風に当てて乾燥させると品質が高くなるため、完全な室内化も難しかった。

身体強化や隠蔽魔法を使う魔鳩もおり、金網を破る個体まで現れていた。ジャンは侵入した魔鳩を捕らえて威圧し、傷つけずに帰していたが、数日後には同じ個体が再び現れていた。

対策に行き詰まる中、ヴォルフはグッドウィン家出身のランドルフを連れてきた。実家で魔鳩を扱っていたランドルフは、魔鳩が魔力を含む植物や小動物を好み、餌場の情報を群れで共有すると説明した。グリーンスライムの乾燥物は、魔鳩にとって非常に魅力的な餌となっていたのである。

魔鳩の弱点

ランドルフによれば、魔鳩は仲間を殺されると群れで報復する場合があり、駆除は避けるべきであった。最も確実な方法として、翼を一度折ってからポーションで完全治癒させ、恐怖を覚えさせる方法もあったが、ダリヤとヴォルフはより穏便な対策を望んだ。

魔鳩がワイバーンを恐れること、空蝙蝠の肉を嫌うこと、不規則な風を苦手とすることがわかり、ダリヤはワイバーンの皮や匂い、空蝙蝠の粉を塗った罠餌、温風と冷風を組み合わせた送風機を使う案をまとめた。

さらに、捕まえた魔鳩へワイバーンの匂いを付ければ、仲間から避けられることでスライム養殖場を嫌うのではないかと考えた。ランドルフも、グッドウィン家とスカルファロット武具工房で魔鳩に関する情報を共有することを提案した。

魔鳩恐怖小屋
不規則な風と罠餌

数日後、ダリヤとヴォルフはスライム養殖場を訪れた。フェルモはダリヤの案をもとに、大型ドライヤーを複数設置し、温風と冷風、強弱、方向を不規則に切り替える乾燥小屋を完成させていた。

内部には回転して光を反射する風車も置かれ、グリーンスライムには空蝙蝠の粉と舞踏花の花粉を混ぜた罠餌が用意された。舞踏花の花粉には身体を勝手に踊らせる作用があり、侵入した魔鳩を疲労させる狙いだった。

イデアの父であるニコレッティ商会長も薬草と毒草の知識を提供していた。勘当されていたイデアは父との再会を果たし、今後は互いに薬草とスライムの知識を教え合いながら定期的に会うことになった。

魔鳩恐怖小屋の完成

実験では魔鳩が不規則な風に翻弄され、まずい罠餌を食べたうえ、舞踏花の効果で踊り続けた。さらに出口にはフェルモが仕掛けた小扉があり、通過するとワイバーンの抜け殻を漬け込んだ水を霧吹きされる構造になっていた。

侵入から退出まで嫌な経験を重ねる仕組みは、ヴォルフから魔鳩恐怖小屋と評された。

特に強力な一羽は王城所有の魔鳩であり、強化ガラスまで破壊していた。ジャンはその個体を捕まえると、温めて匂いを強めたブラックワイバーンの皮で全身を丁寧に撫で、強烈な匂いを付けて帰した。

対策後、再訪する魔鳩はほぼいなくなり、乾燥小屋によってグリーンスライムの品質も向上した。

孤立した魔鳩

しかし、ワイバーンの匂いを付けられた王城の魔鳩は仲間から完全に避けられ、餌も十分に食べなくなった。

ダリヤ達はさすがに気の毒になり、ヴォルフが捕獲し、ランドルフが石鹸と消臭剤で洗うことになった。ランドルフは、かつて隣国へ人質同然の留学をして孤独を経験した自分と魔鳩を重ね、仲間へ戻れるよう丁寧に世話をした。

匂いが消えた魔鳩は仲間に迎えられ、無事に鳩小屋へ戻った。その後、その魔鳩はランドルフになつき、後に彼へ魔鳩使いという新たな呼び名が加わることになった。

誕生日と赤い花籠

ダリヤの誕生日

誕生日を迎えたダリヤは、父レナートへの贈り物としてヴォルフから注文された魔導ランタンを制作していた。作業へ熱中して長時間正座した結果、足が痺れて動けなくなったところへヴォルフが訪れた。

物音と声を聞いたヴォルフはダリヤが負傷したと思い、玄関のドアを破壊して飛び込み、そのまま抱き上げて神殿へ運ぼうとした。単なる足の痺れだとわかると安堵したものの、慌てた際に誕生祝いとして持ってきた花籠や菓子を傷めてしまっていた。

ヴォルフは赤い花籠と、叙爵式で使えるよう氷の結晶を意匠にしたペンダントを贈った。ダリヤは誕生日当日に祝ってもらえたことを心から喜んだ。

二人は夕食を共にし、兵舎で流行している罠パイやチーズケーキ、ワインを楽しんだ。ヴォルフは自分の失敗をかっこ悪いと落ち込んだが、ダリヤは勇気を出して、ヴォルフは十分かっこいいと伝えた。

スカルファロット家への招待

ヴォルフは、兄グイードの妻ローザリアから本邸へ招かれていることを話した。グイードがダリヤの貴族後見人であるにもかかわらず、ローザリアとダリヤが会っていないため、ダリヤも昼食へ招かれることになった。

その後、ヴォルフの誕生日の話から欲しい物を尋ねると、彼は結局魔剣しか思いつかなかった。ダリヤは魔物討伐部隊の通常剣へ追加の付与を施し、少しだけ丈夫にした剣を贈ることを提案した。数%程度の強化のつもりだったが、ヴォルフはダリヤが作る自分専用の魔剣だと大喜びした。

人工魔剣制作九回目~黒風の魔剣~

黒い剣への多重付与

ダリヤは魔物討伐部隊で使われる黒い剣を分解し、先端へ紅金を追加した。さらに炎龍の鱗の粉で紅金を接着し、緑冠の羽根を使った風魔法を付与した。

続いて一角獣の角による魔力遮断と、首長大鳥の嘴による硬質化を交互に何度も重ねた。魔力を薄く何層にも重ねることで、元の剣より耐久性を高めようとしたのである。

完成した剣は、先端の重みによって振り下ろしやすくなり、魔力を流せば弱い風の加速も得られるものとなった。

ダリヤは、あくまで少し丈夫な通常剣だと考えていたが、ヴォルフにとっては大切な魔剣であった。黒い刀身の先に残る赤い紅金の輝きを見たヴォルフは、それをダリヤの赤だと喜んだ。

岩山蛇と魔王

岩山蛇の殲滅

上級冒険者が大型の岩山蛇を討伐した際、火魔法によって多数の岩山蛇が山から逃げ出し、冒険者が負傷する事態となった。一匹が人間を食べたため、群れへ人間が餌だと認識される危険が生じ、魔物討伐部隊へ殲滅依頼が出された。

黒風の魔剣を初めて実戦で使ったヴォルフは、硬い岩山蛇を次々と切り裂いた。剣は刃こぼれも切れ味の低下も起こさず、ヴォルフ自身も楽しげに斬り続けたため、ドリノ達はその姿を魔王と評した。

ヴォルフはダリヤからかっこいいと言われたことを仲間へ嬉しそうに話したが、それ以上の進展が何もなかったことを知った隊員達は揃って落胆した。

ドリノの恋

夜営では、ドリノが花街のファビオラへ想いを寄せていることが話題となった。

先輩達から花街の夢はいずれ醒めると忠告される中、グラートは若い頃、花街の女性へ本気で恋をし、その女性が別の男のために自分へ毒を飲ませた過去を明かした。

それでもグラートは、恋に身分や剣の腕は関係ないと語った。ドリノは失恋するかもしれない恐怖を抱えながらも、もし砕け散ったときはまた酒を飲ませてほしいと頼み、少しだけ覚悟を固めた。

戦闘靴の報告会とミルフィーユ付与

新型戦闘靴

魔物討伐部隊では、廃棄革とスライム素材から作られた新型戦闘靴の報告会が行われた。改良品はさらに軽量化されながら耐久性を増し、爪先と踵には補強も加えられていた。

その席で黒風の魔剣の性能も話題となり、グラートは通常剣への付与強化を検討した。

十六掛けとミルフィーユ付与

ダリヤはヴォルフと共に王城魔導具制作部を訪れ、ウロスの剣への付与を見学した。

そこでダリヤが黒風の魔剣へ魔力遮断と硬質化を何層も交互に重ね、合計十六回もの付与を行ったことが判明した。ウロスは魔力枯渇を心配して驚いたが、ダリヤは少ない魔力を薄く均一に重ねる方法に慣れていた。

この方式はミルフィーユ付与と呼ばれることになった。

高魔力の者が一度に強い付与をする従来の考え方とは異なり、異なる魔力値の魔導具師が協力し、一層ずつ重ねることで強力な魔導具を作れる可能性が生まれた。

王城の魔導具師達は薄い魔力制御を身につける鍛錬へ熱中し、魔力の高低ではなく、それぞれの差を利用して協力する新たな技術として研究が進められることになった。

大公と王城魔導具制作部三課

ザナルディとの出会い

王城魔導具制作部でダリヤは階段から転びかけた男を助けようとした。その男はオルディネ大公セラフィノ・ザナルディであり、王位継承権を持ちながら、王城魔導具制作部三課で研究を続ける人物だった。

ザナルディには五要素魔法がなく、生家では評価されにくかったが、身分や魔力値を問わず研究者を集め、様々な研究を進めていた。

ダリヤとヴォルフは三課へ招かれ、空を飛ぶ研究、魔羊の飛行能力、言葉を記憶するオウム、おいしいポーションなど、個性的な研究の数々を見学した。

首無鎧の反応

三課には、出所不明の首無鎧も保管されていた。ダリヤが内部を確認しようとして手を入れると、鎧の内側にある魔法陣のような線が赤く光った。

これまで人間には反応しなかったため、ダリヤが魔物や魔付きである可能性まで疑われた。

呼ばれたエラルドが鑑定した結果、ダリヤは間違いなく人間であり魔付きでもなかった。ただし、両手にはブラックスライムの魔力がごく薄く残っていた。

過去にブラックスライム素材を扱った影響が残っており、それへ首無鎧が反応した可能性が考えられた。ザナルディはさらに研究を進めようとし、ダリヤもブラックスライムの粉末を使った検証を提案した。

魔剣の再検証とオルディネ大公という者

グイードへの報告

三課を出たダリヤとヴォルフは、迎えに来たグイードとヨナスへ出来事を報告した。

グイードは、ザナルディが王位継承順位第三位でありながら外部魔力を持たず、血統や魔力を重視する者達から厳しい目を向けられていると説明した。一方で身分を問わず能力を評価するため、三課には独身の貴族研究者も多く、ダリヤが縁談を持ちかけられる可能性まで心配した。

ダリヤは首無鎧とブラックスライムの残滓についても報告した。さらに黒風の魔剣が岩山蛇を多数斬っても切れ味を失わなかったことを伝えると、一行は別邸へ向かって再検証することになった。

ヨナスは剣を確認し、多重付与によって想定以上のしなやかさと耐久性が生まれた可能性を認めた。

ザナルディの研究者観

一方のザナルディは、三課の研究者を身分ではなく成果で見てくれたダリヤとヴォルフを好意的に振り返っていた。

貴族の多くは自分の利益になりそうな研究だけを称賛し、実際に研究した者を見ようとしなかった。しかしダリヤ達は研究者本人へ素直に感嘆し、成果を褒めていた。

ザナルディは首無鎧の謎を解く次の研究を楽しみにし、再びロセッティと縁があれば面白いと考えた。

閑話 宵闇の館と甘い夢

ファビオラとの時間

遠征後、ドリノは花街を訪れ、想いを寄せるファビオラと過ごした。

周囲からは花街の女性へ本気になるなと何度も忠告され、自分でもいつか夢が終わることは理解していた。それでもファビオラと会える時間はドリノにとってかけがえのないものだった。

ファビオラはドリノのために小物を縫い、次に会うときまでにまた作ると約束した。

ドリノは、自分が今、いつか醒めるかもしれない甘い夢の中にいると理解しながらも、その時間だけは絶対に忘れたくないと願った。

スカルファロット家への訪問

ローザリアの誤解

ダリヤはヴォルフと共にスカルファロット家本邸を訪れた。

途中、女性客と遭遇する可能性を考え、ヴォルフは妖精結晶の眼鏡で金の目を緑へ変えていた。しかしグイードの妻ローザリアには、人の顔より魔力が重なって見える特殊な目があった。

妖精結晶によって外部魔力を隠されたヴォルフの顔を初めてはっきり見たローザリアは、ヴォルフへ擬態した魔物だと誤解した。娘グローリアを守らせ、自らグイードの前へ立ち、廊下を氷壁で封鎖した。

誤解が解けるとローザリアは謝罪した。ダリヤは、家族を守ろうと迷わず前に出たローザリアを嫌うどころか、その姿を美しいと感じた。

家族を見るための眼鏡

ローザリアは、生まれてから家族の顔をはっきり見ることができなかった。魔力のない者だけは顔が見えるが、魔力のある家族は光に覆われてしまうためである。

ダリヤは、妖精結晶の眼鏡を使い、見る側ではなく見られる家族側の外部魔力を隠せば、ローザリアにも顔が見えるのではないかと考えた。

ローザリアはその提案を心から喜び、グイードや娘、家族全員分の眼鏡制作を願った。

昼食後、ヴォルフ達は幼少期の魔物ごっこの話を始め、そのまま大人達による本気の鬼ごっこへ発展した。グイード、ヨナス、護衛騎士達まで参加し、庭の芝生や花壇を荒らすほど全力で走り回った。

スカルファロット家の妖精結晶の眼鏡

家族の金の目

ダリヤはスカルファロット家別邸で、専属魔導具師コルンパーノへ妖精結晶の眼鏡の作り方を教えた。

まずヴォルフ自身の金の目を妖精結晶へ写し取り、眼鏡をかけても本来の金色に見えるよう付与することになった。

付与中、妖精結晶が見せる悪夢によって、ダリヤは魔物に倒され冷たくなったヴォルフの姿を見た。それでも、現実のヴォルフは温かく笑う人間であり、ローザリアへその顔を見せたいという思いで付与を完成させた。

コルンパーノの挑戦

コルンパーノは以前からローザリア用の眼鏡を研究していたが、成功できずにいた。ダリヤが発想を逆転させ、見る側ではなく対象者へ妖精結晶を使う方法を示したことで道が開けた。

しかし妖精結晶の付与では、コルンパーノも悪夢に苦しめられた。彼はグイードが傷つき倒れる幻を何度も見ながら、それでも主の顔をローザリアへ見せるため付与を続けた。

完成を知ったヨナス達は、コルンパーノの努力を称える祝い酒を準備した。ヨナスは、自分も先輩達から学び続けている身であり、先輩はいつまでも先輩であると語った。

スライムの名付けと温かな夕食

ミズマリとアオマリ

眼鏡制作を終えたダリヤは疲労を理由にヴォルフとの外食を断り、緑の塔へ戻った。

ヴォルフは彼女を心配して夕食を買い、塔まで届けた。妖精結晶の眼鏡越しでも変わらない金の目を見たダリヤは、付与中に見た悪夢を少しずつ振り払った。

塔ではブルースライムが二匹に分かれており、ダリヤは先に名付けたミズマリに合わせ、もう一匹をアオマリと名付けた。

その際、ヴォルフならどのような名前を付けるか、将来自分の子供へどのような名前を付けるのかまで考えてしまい、慌てて思考を打ち切った。

間近に迫ったヴォルフの誕生日には、好物とワイン、甘さ控えめのケーキを用意しようと考えた。自分が祝ってもらったように、今度はヴォルフを祝えることを楽しみにした。

番外編 母と息子の鍛錬と魔剣話~炎の魔剣~

炎の魔剣への願い

幼いヴォルフの母ヴァネッサは、夫レナートと共に冒険者ギルドの武具オークションへ向かった。

目当ては炎の魔剣だったが、参加条件は実際に魔剣を起動できることであり、二人には扱えなかった。

ヴァネッサとレナートが魔剣を求めたのは、攻撃魔法を持たず身体強化しかないヴォルフの将来を心配していたためだった。貴族の騎士は攻撃魔法を持たなければ飾り扱いされることもあり、強い騎士を目指す息子の可能性を狭めたくなかったのである。

二人はヴォルフが成人するまでに、彼が扱える魔剣を探し続けようと約束した。

母子の鍛錬

ヴァネッサは幼いヴォルフへ剣を教え続けた。

ヴォルフが騎士になりたいと願う気持ちは、幼少期のヴァネッサ自身と同じだった。氷魔法を継がせることはできなかったが、自分の剣技なら息子へ受け継がせることができた。

騎士として邪道と呼ばれようとも、魔法や魔剣を利用してでも強くなり、生き残ってほしいというのが母としての願いだった。

ヴァネッサは、いつか龍さえ斬れる魔剣を息子へ与えたいと思いながらも、まず必要なのは剣の腕だと考え直し、今日もヴォルフとの鍛錬を始めた。

魔導具師ダリヤ 12巻レビュー
まとめ
魔導具師ダリヤ 14巻レビュー

魔導具師ダリヤはうつむかない 一覧

その他フィクション

フィクションのまとめページの表紙画像(導入用)
フィクション あいうえお順

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