- 物語の概要
- 書籍情報
- あらすじ・内容
- 感想
- 考察・解説
- 飛行船の実戦投入
物語の概要
■ 作品概要
暗殺未遂による重傷から回復し、15歳を迎えて成人したアルス・ローベントは、軍事的な大変革の渦中に立たされた。
本作の核心を成すのは、技術者シン・セイマーロによる「飛行船」の実用化と、それに伴う広域戦術の劇的な変化に他ならない。
物語は、サイツ州総督アシュド・リンドヴァルがパラダイル州と秘密同盟を締結し、ミーシアン北部のルンド郡へ強襲を仕掛けたことで動き出す。
ミーシアン国王クランは敵兵力の分散を図るべく、アルス率いるカナレ軍へサイツ領プルレード郡への侵攻を命じた。アルスは新兵器たる飛行船を実戦投入し、従来の攻城戦の常識を根底から覆す「空中爆撃」を敢行する。
堅牢を誇ったプルレード砦をわずか数時間で無力化すると、続く要衝クアット郡の野戦でも、飛行船による敵の「大型触媒機」破壊が決定打となってアシュドを迅速な撤退へ追い込んだ。
結果としてサイツ州はミーシアンに従属を余儀なくされ、アルスはカナレ、プルレード、クアットの三郡を統括する「大領主」へと躍進を遂げる。
しかし、この急速な版図拡大は帝都の宰相シャクマを過度に刺激し、大陸規模の「ミーシアン征伐軍」計画を始動させる契機となった。
一領主の台頭が大陸全体の勢力均衡を大きく揺るがす、軍事面および政治面での重大な転換点を描き出している。
■ 主要キャラクター
アルス・ローベント(ローベント家当主・15歳/主人公):鑑定スキルによる適材適所を徹底し、飛行船運用を中心としたサイツ侵攻の総指揮を執った。
シン・セイマーロ(技術者・開発者/開発・投資関係):飛行船の設計と製造を主導した。実戦では操縦士として搭乗し、高度な機体制御を担当している。
リーツ(ローベント家筆頭家臣/側近・全軍指揮):築城適性を活かしてヘイネの丘での急速築城を指揮したほか、実務全般でアルスを補佐した。
ロセル(ローベント家軍師/家臣・参謀):飛行船の爆撃航程や敵大型触媒機を標的とする戦術立案を行い、兵站面でのリスクを管理している。
リシア(アルスの婚約者/パートナー):アルス出陣中のカナレ郡統治を代行した。安定した行政管理能力を示し、後方を支え続ける。
シャーロット(ローベント家魔法兵/家臣・主戦力):飛行船に搭乗した。上空から爆発魔法による精密爆撃を行い、敵の防御障壁と大型触媒機を破壊してみせる。
ミレーユ(ローベント家臣/家臣):ランベルクの統治を代行した。クアット郡制圧後は、同地の不安定な治安維持と反乱鎮圧を担う。
アシュド・リンドヴァル(サイツ州総督/敵対者):パラダイル州と同盟を結んでミーシアンを挟撃した。飛行船の脅威を論理的に分析し、兵力温存のために撤退を選択する。
バンバ(パラダイル州将/敵対者・対クラン軍):新兵器「爆殺龍石」を投入した。火薬と魔法の合成兵器でクラン軍に甚大な被害を与え、防衛戦を展開していく。
クラン(ミーシアン国王/主君):アルスにサイツ侵攻を命じ、勝利後は彼に三郡の統治を委託した。対サイツ平定の功労を高く評価している。
書籍情報
転生貴族、鑑定スキルで成り上がる 7 ~弱小領地を受け継いだので、優秀な人材を増やしていたら、最強領地になってた~
著者:未来人A 氏
イラスト:JIMMY 氏
出版社:講談社(Kラノベブックス)
発売日:2024年10月2日
ISBN:9784065373095
(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。
あらすじ・内容
ローベント家の若き当主・アルス。
転生者であるアルスは、「鑑定」という特別なスキルを使い
出自や年齢を問わず有能な人材を集め、重用していた。
その結果戦況を左右するほどの勢力となったローベント家だが、
アルスの力を危惧した敵方により暗殺者の凶刃を受けるも、
生命の危機から脱することができ、静養に努めていた。
そんな中で、スカウトし資金援助していたシン・セイマーロから
飛行船の開発に成功したと報せが入る。
それは、戦争のあり方を変えるすさまじい威力を発揮して――!
感想
飛行船無双。城も十万の大軍も空から攻撃されたらどうしようもない
7巻を一言でまとめるなら、
飛行船無双。
これに尽きる。
前巻でアルスを暗殺しようとしたサイツ州との戦いが本格的に始まるのだが、シンが完成させた飛行船によって戦争の形そのものが変わってしまった。
これまで城を落とすには大軍を集め、魔法を撃ち合い、城壁を突破する必要があった。
ところが飛行船なら、その城壁を無視して真上まで行ける。
しかも乗っているのがシャーロット。
地上から攻撃が届かない高さから、魔法兵適性Sのシャーロットが爆撃してくる。
これは酷い。
敵からすれば、どうしろというのだろう。
アルスが今まで鑑定スキルで集めてきた人材と、シンへ投資し続けてきた結果が、ようやくとんでもない形で実を結んだ巻だった。
ついに飛行船が完成。本当に飛んだ
前巻まで開発が続いていた飛行船が、ついに実用段階へ到達する。
15人ほどが乗れる中型の飛行船で、かなり高い場所まで上昇できる。
しかも全速力なら馬ほどの速度が出る。
最初に試乗する場面では、単純に新しい乗り物として面白かった。
リシアは空から見える景色に喜ぶ。
ロセルは高所を怖がる。
シャーロットは、
「ここから敵の城を攻撃したら気持ちよさそう」
みたいなことを考えている。
お前はまず爆撃を考えるのか。
ただ、実際に軍事利用を考えるとシャーロットの発想が正しい。
地上から届かない場所まで上昇できるなら、一方的に攻撃できる。
そして、この世界では空からの攻撃を想定した防御がほとんどない。
ここでロセルたちが、
「これ、戦争で使ったら相当強いのでは?」
と気付く。
その予想は正しかった。
シンだけではなく、エナンを連れてきたことまで効いてくる
興味深かったのは、飛行船がシン一人の成果ではないところである。
シンは以前から飛行船を作ろうとしていた。
しかし、速度を上げる部分で苦労していた。
そこへアルスが鑑定で見つけたエナンが加わる。
高い兵器適性を持つエナンの発想によって推進機構が改善され、実用的な速度を出せるようになった。
ここが『鑑定スキルで成り上がる』らしい。
アルス本人は飛行船を設計できない。
魔法で飛ばすこともできない。
でも、
シンを見つける。
投資する。
エナンを見つける。
シンのところへ送る。
その二人が組み合わさった結果、飛行船が完成する。
アルスが直接何かを作ったわけではないのに、鑑定による人材配置が何年も経って巨大な成果になって返ってくる。
この積み重ねが面白かった。
サイツを攻めることになったが、そもそも向こうから仕掛けている
今回の戦争は、単純にアルスが復讐心だけでサイツへ攻め込む話ではない。
サイツはパラダイル州と手を組み、ミーシアン北部へ侵攻する。
そこでクランが、
「手薄になったサイツ側を攻めろ」
とアルスへ命じる。
アルス軍がサイツへ入れば、敵も無視できない。
ミーシアンへ送り込んでいる兵を戻させる狙いである。
アルス本人は積極的に戦争をしたい人間ではないので、相変わらず嫌そうなのだが、国王命令なので仕方ない。
そして攻める以上、狙うのがプルレード砦。
ここで飛行船の初陣となる。
飛行船を使う前から築城速度までおかしい
いきなり飛行船を敵地まで飛ばすのは危険なので、途中のヘイネの丘に前線基地を作ることになる。
そこでリーツが築城を指揮する。
シャーロットたちが土魔法を使う。
そして五日ほどで、
「これ本当に急造した砦なのか?」
というレベルのものが出来上がる。
飛行船以前にこっちも酷い。
敵からすれば、
カナレ軍が侵攻してきた。
少し様子を見る。
いつの間にか敵地に立派な砦ができている。
その砦へ謎の飛行船が運び込まれる。
悪夢である。
プルレード砦、空から攻撃されたらどうしようもない
そして飛行船が実戦投入される。
プルレード側も飛行船の存在自体は把握している。
ただ、
「飛んでいても魔法で落とせばいい」
程度に考えている。
そりゃそう思う。
飛行船による戦争なんて誰も経験していないのだから。
ところが実際は、魔法も矢も届かないほど高いところまで上昇する。
そして真上へ移動。
そこからシャーロットが爆発魔法を撃つ。
城の魔法障壁は横方向からの攻撃を想定しているため、上からの攻撃には弱い。
結果、防御の要となる魔法塔や大型触媒機が破壊される。
城壁が堅いとか関係ない。
正門を突破する必要もない。
攻城戦とは?
という状態である。
これまであれだけ苦労して城や砦を攻略してきたのに、飛行船が一隻できただけで戦い方が完全に変わってしまった。
シャーロットを空に飛ばしてはいけない
しかも飛行船そのものに攻撃力があるわけではない。
あくまで、
「シャーロットを敵の攻撃が届かない場所まで運ぶ」
ための兵器でもある。
これが一番恐ろしい。
元々シャーロットはローベント家でも最大級の火力を持っている。
しかし地上にいる限り、敵から攻撃される可能性がある。
近づかれれば危険もある。
だから護衛も必要になる。
それを上空へ持っていく。
敵は攻撃できない。
シャーロットだけ攻撃できる。
酷い。
飛行船とシャーロットの相性が良すぎる。
飛行船無双というより、
「安全な場所からシャーロットを撃たせる装置」
に近い気もする。
十万の軍勢まで飛行船一隻に引かされる
さらに酷いのがクアット郡での戦いである。
ここではサイツ総督アシュド率いる十万もの軍勢が待ち構えている。
対するアルスたちは、それよりかなり少ない。
普通に正面から戦えば厳しい。
ところが、また飛行船が出てくる。
上空から敵の大型触媒機を狙い撃ちする。
一つ。
また一つ。
次々と破壊される。
サイツ軍は強力な魔法攻撃を行うための設備を失っていく。
しかも反撃方法がない。
アシュドはかなり優秀な人物なので、
「このまま戦ったら一方的に削られる」
と理解する。
そして撤退。
十万の大軍がいるのに。
飛行船一隻が上にいるだけで撤退。
飛行船無双すぎる。
アシュドが馬鹿ではないからこそ、飛行船の異常さが分かる
ここで敵側が、
「気合で戦うぞ!」
と突っ込んでこないのは良かった。
アシュドは飛行船を見て、どういう兵器なのかを冷静に分析する。
こちらには対空手段がない。
大型触媒機を壊されれば火力も落ちる。
このまま戦えば兵を無駄に失う。
なら撤退する。
正しい。
戦争なので、
「最後まで戦い抜く」
ことが必ずしも正しいわけではない。
どうしようもない兵器が出てきたら、兵を残して撤退する。
それができるから、アシュドも有能なのだと思う。
だからこそ、
「それでも撤退するしかない飛行船って、やっぱり酷い兵器だな」
と感じた。
一方のクラン軍は、新兵器に酷い目に遭っている
アルス軍が飛行船で無双している一方、クラン軍はパラダイル州の新兵器に苦しめられている。
こちらで出てくるのが「爆殺龍石」。
火薬と火の魔力水を利用した爆発兵器である。
投石器で撃ち込み、爆発によって岩の破片を広範囲に飛ばす。
これまで魔法対策を中心に防具を整えていた兵士に、物理的な破片攻撃が刺さる。
アルス側では空中爆撃。
敵側では火薬兵器。
この巻から急に兵器開発競争が始まった感じがする。
今まで魔力水と大型触媒機が戦争の中心だったのに、
「新しい技術を作った側が勝つ」
という時代へ変わり始めているのが面白かった。
サイツが降伏。アルスは三郡を治める大領主へ
飛行船への対抗策を持たないサイツは、最終的にミーシアンへ降伏する。
そしてアルスは、
カナレ郡。
プルレード郡。
クアット郡。
三つの郡を治めることになる。
出世しすぎである。
最初は弱小貴族の息子だった。
そこから領主になり、カナレ郡長になり、ついには三郡をまとめる大領主。
本人は相変わらず、
「自分にできるのか?」
と不安になっている。
まあ、普通はそうなる。
領地が増えれば収入も増えるが、仕事も増える。
治安維持。
税。
軍。
住民への対応。
しかもクアット郡ではミーシアンへの反発も強い。
単純に、
「領地が増えた。やった!」
では済まない。
領地が増えたら、今度は家臣が足りない
そして今まで集めた家臣を各地へ配置することになる。
ミレーユ。
トーマス。
フジミヤ家の三人。
ヴァージ。
ブラッハム。
せっかく人材を大量に集めてきたのに、領地が増えすぎて今度は分散させなければならない。
その結果、本拠地のカナレまで人手不足になる。
これも面白いところだった。
アルスはずっと、
「優秀な人材が欲しい」
と言い続けてきた。
かなり集まった。
これでもう十分だろうと思ったら、領地が増えてまた足りなくなる。
成り上がれば成り上がるほど必要な人材も増える。
鑑定スキル持ちなのに、永遠に人手不足である。
勝ちすぎた結果、今度は大陸中から警戒される
そして今回の勝利は、良いことばかりではない。
飛行船で砦を短時間で落とす。
十万の軍勢まで撤退させる。
サイツ州を降伏させる。
三郡を治める。
周囲から見たアルスは、
「何だこいつ」
という存在になっている。
本人としては、
シンが飛行船を作った。
ロセルが作戦を考えた。
シャーロットが魔法を撃った。
リーツたちが戦った。
自分は大したことをしていないと思っている。
でも他国から見ればそんな事情は関係ない。
アルス・ローベントという若い領主が、
異常に優秀な人材を集め、
未知の飛行兵器を開発し、
それを使って領土を急拡大している。
怖い。
そりゃ警戒される。
最後はミーシアン征伐軍。無双したら敵が増えた
最終的には、ミーシアンそのものを危険視する勢力が動き始める。
帝都。
パラダイル。
キャンシープ。
シューツ。
ローファイル。
それぞれ思惑は違うが、
「ミーシアンをこれ以上大きくするのはまずい」
という方向へ動いていく。
そしてローファイル州からは、16歳にして常勝無敗と呼ばれるエレノアまで参戦する。
前巻で少し名前が出ていた「戦術眼」を持っているかもしれない人物である。
アルスを殺すではなく、
「捕まえて連れて帰る」
というのも怖い。
飛行船無双した結果、今度は大陸規模でアルスが狙われ始めた。
勝ちすぎるのも問題なのだなと思ってしまう。
飛行船無双は気持ちいい。ただ、戦争の描写は少し追いにくかった
7巻で一番面白かったのは、やはり飛行船の実戦投入である。
これまでアルスが人材を見つけ、技術へ投資してきた積み重ねが、
「戦争の常識を変える兵器」
として完成した。
シンだけではない。
エナンがいる。
ロセルが運用方法を考える。
リーツが前線基地を築く。
ブラッハムやシャドーが飛行船を守る。
そしてシャーロットが上空から魔法を撃つ。
一つの才能だけで完成した勝利ではないところが、このシリーズらしかった。
その一方で、今回は戦争の規模がかなり大きくなったことで、少し読みづらさも感じた。
地名が次々と出てくるので、
「今どこで戦っていて、どちらへ進んでいるのか」
が分かりにくくなることがある。
会話が続く場面でも、誰の発言なのか一瞬迷うところがあった。
また、能力値や適性、新兵器などの説明が増えてくると、ゲームの戦争シミュレーションを文章で読んでいるような感覚になる時もある。
漫画なら地図やキャラクターの表情で分かりやすくなるのだろうな、と感じる場面もあった。
それでも7巻の、
「飛行船が一隻完成しただけで戦争の常識が崩れる」
という展開はかなり面白かった。
城壁も関係ない。
十万の兵も関係ない。
対空兵器がなければ、上から一方的に攻撃される。
飛行船無双。
ただし、あまりにも無双しすぎた結果、大陸中から危険視されることになった。
アルス本人は戦争なんてしたくないのに、強くなるほど戦争の中心へ近づいている。
そこが何とも皮肉である。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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考察・解説
ストーリー・プロット
ミーシアン王国の独立宣言に伴う緊張が高まる中、サイツ州およびパラダイル州の同盟軍による電撃的な侵攻を受け、戦況は大陸全土を巻き込む大規模な動乱へと発展した。新兵器である飛行船の戦場投入から、要衝をめぐる攻防戦、そして戦後処理に至る一連の軍事衝突の推移を以下に記録する。
第1幕:飛行船の完成と新兵器の軍事利用
暗殺未遂から回復し、15歳で成人を迎えたアルスは、技術者シン・セイマーロによる飛行船の完成視察を実施した。
- 性能と仕様:定員15名(操縦10名、戦闘員5名)を収容し、巡航速度で3日間、全速力で11時間の連続飛行を実現する。
- 技術的背景と課題:助手エナンの着想により推進効率が大幅に向上した一方、気圧変化に伴う魔力石の変容による高度制限が課題として浮き彫りとなった。
- 補給体制:推進燃料に不可欠な風の魔力水を確保するため、センプラーなどを経由する物流網の整備に着手した。
- 運用構想:軍師ロセルは水平方向の魔法障壁を無効化する垂直爆撃の有効性を着眼し、シャーロットを搭乗させた空挺爆撃部隊の運用を立案した。
- 生産体制:専用造船所の建設と機体の量産体制の構築が決定した。
第2幕:サイツ・パラダイル同盟の強襲
サイツ総督アシュドは、ミーシアン王国の王位継承戦に伴う間隙を突き、北部の強兵州パラダイルと秘密同盟を締結した。
- 北部奇襲:想定外の北方からの軍勢集結を受け、ミーシアン北部のルンド郡は防衛態勢を整える間もなく急襲を受けた。
- 迎撃指示:クランはアルカンテスで緊急軍議を開き、主力をルンド郡奪還へ向ける一方、手薄となったサイツ本国側のプルレード郡への侵攻をアルスへ命じた。
- 兵力編成:クランから派遣されたメイトロー傭兵団を含む一万五千の援軍と、アルスの直率部隊一万を合わせた総勢二万五千の兵力で進軍を開始した。
- 防諜警戒:アシュドが放った精鋭密偵による飛行船への破壊工作や火矢攻撃に対し、極限の警戒態勢を維持した。
第3幕:プルレード砦攻略戦
アルス軍はプルレード郡の要衝であるプルレード砦の攻略にあたり、中継地点ヘイネの丘を確保した。
- 急速築城:リーツの優れた築城技術とシャーロットの魔法効率を融合させ、わずか5日間で強固な石造砦を完成させた。
- 心理的打撃:想定を越える築城速度は、敵守備隊長のバース・ミクニスに強い衝撃を与えた。
- 空中爆撃の敢行:ヘイネの丘から発進した飛行船は、砦上空の脆弱な障壁を突破し、防衛火力の核である大型触媒機をピンポイントで破壊した。
- 砦の陥落:混乱による統制崩壊と天守の崩落に伴い、バースを捕縛した。
- 周辺制圧:ミレーユによる降伏勧告を活用し、近隣のクラックスの丘やオーロス城の守備隊を無血開城させた。
第4幕:ルンド城の攻防と新兵器「爆殺龍石」
クラン率いるミーシアン主力軍はルンド城を包囲したが、パラダイル将バンバが投入した新兵器の威力に直面した。
- 兵器構造:火薬と火の魔力水を配合した化学魔法兵器であり、投石器で射出された岩石が着弾時に爆発する仕組みを持つ。
- 攻撃特性:鋭利な破片を広範囲に飛散させる破片損害を主目的として設計された。
- 部隊損害:密集陣形を敷いていたクラン軍は甚大な被害を受け、戦術的な後退を強いられた。
- 戦況の推移:バンバは資材枯渇と戦略的合理性から城の放棄を選択し、クラン軍は多大な犠牲を払いながらルンド城の再確保を完了した。
- 戦訓:ミーシアン首脳部に対し、魔法体系とは異なる新兵器の脅威を強く認識させる結果となった。
第5幕:クアット郡への侵攻と野戦
プルレード制圧後、クランはアルスに対してサイツ第二の要衝であるクアット郡への進撃を命じた。
- 戦力対峙:撤退してきたアシュド率いる十万のサイツ主力軍と、五万のアルス・クラン連合軍が正面から対峙した。
- 戦術航空支援:飛行船が高度を下げて精密爆撃を展開し、サイツ軍の魔法投射の中核であった大型触媒機を次々と破壊した。
- 敵軍の判断:アシュドは飛行船への対空手段を欠く現状での交戦は主力全滅を招くと判断し、主力を本拠地ペンドラへ撤退させる方針を採った。
- 拠点の確保:クアット城に残された少数の抵抗部隊を排除し、最小限の損害で同城を制圧した。
第6幕:サイツ州の降伏と戦後処理
空中爆撃という未知の脅威に対抗手段を失ったサイツ州は、アシュドの主導により事実上の全面降伏を申し出た。
- 和平条件:ミーシアンへの完全従属、プルレードおよびクアット両郡の割譲、アシュドの総督辞任と新王カイルの擁立が取り決められた。
- 講和の成立:クランはこれらの条件を受託し、戦争を終結させた。
- 政治的策動:貴族評議会の一部は、反抗意識の強いクアット郡の統治を任せることでアルスの失脚を画策した。
- 領主の昇進:クランは思惑を承知の上でアルスに三郡の統治権を委託し、アルスは一郡の領主から三郡を統括する大領主へと昇格した。
第7幕:帝都の暗雲
戦火が一時的に収束する中、新たな政治的謀略が帝都を中心に動き始めた。
- 包囲網の提唱:パラダイル州総督マクファは将バンバの献策を受け、帝都の宰相シャクマに接近してミーシアンの軍事的脅威を説いた。
- 征伐令の利用:シャクマは幼き傀儡皇帝シャルルを利用し、ミーシアン征伐の大号令を発布する方針を固めた。
- 政治的意図:外征を名目としてアンセル州内の政敵を前線へ送り込み、権力基盤を固める粛清の好機と判断した。
- 情勢の激変:ローベント家の突出した軍事力が契機となり、大陸全土を巻き込む大規模な包囲網の形成へと情勢が急変した。
まとめ
新兵器である飛行船の投入は、プルレード砦およびクアット郡の戦いにおいて劇的な戦果をもたらし、サイツ州を早期の全面降伏へと追い込む決定打となった。アルスはこの戦功により三郡を束ねる大領主へと急速な躍進を果たした。しかし、突出した軍事技術と領地拡大は帝国中央や周辺諸州に強い警戒感を抱かせ、帝都の権力闘争と連動した大陸規模の反ミーシアン包囲網を形成させる直接的な要因となった。
主要な転換点
ミーシアン王国の独立宣言とサイツ州との軍事衝突は、戦術体系や兵器技術の刷新にとどまらず、大陸全土を巻き込む地政学的な大変動をもたらした。新兵器の実戦投入や想定外の同盟締結、さらには帝国中央の介入など、情勢を決定づけた重要な転換点について整理する。
飛行船「シン・セイマーロ号」の実戦投入成功
- それ以前の状況
- 攻城戦は多大な損害を前提とした長期の包囲戦や物理的な破壊を主としていた。
- 出来事
- 高度3000メートル以上から魔法障壁の死角を突く空挺爆撃が実施された。
- 変化と次への影響
- 防御側の堅牢な城壁と大型触媒機による魔法防衛が戦術的意味を消失した。戦術の軸が空へと移行した。
パラダイル・サイツ秘密同盟によるルンド郡強襲
- それ以前の状況
- サイツ州は単独勢力であり、ミーシアンは北方の脅威を軽視していた。
- 出来事
- アシュドの外交により、想定外のパラダイル側からの挟撃が実現した。
- 変化と次への影響
- クランが主力温存と陽動を兼ねて、アルスにサイツ領侵攻という異例の独断権限を与える契機となった。
新兵器「爆殺龍石」の戦場投入
- それ以前の状況
- 遠距離攻撃は魔法と矢に依存しており、触媒機の質が戦力を左右していた。
- 出来事
- バンバが火薬と火の魔力水を配合した化学兵器により、クラン主力に破片による面的制圧を与えた。
- 変化と次への影響
- 魔法耐性を高めた重装歩兵でも防げない物理衝撃武器の登場により、今後の兵装開発競争が激化した。
宰相シャクマによる「ミーシアン征伐軍」の始動
- それ以前の状況
- ミーシアン内の継承争いを中心とした地方紛争であった。
- 出来事
- 皇帝の名の下に、複数の州が参加する広域連合軍の結成が宣言された。
- 変化と次への影響
- 紛争の規模が地方レベルから大陸レベルへと拡大した。アルスは王国重鎮として世界規模の戦略に関与せざるを得なくなった。
空中爆撃という革新的な航空戦術の確立や爆殺龍石による物理兵器の登場は、従来の要塞防衛や重装歩兵の概念を根底から覆した。これら軍事技術の急速な進化と二州同盟の策動は、地方の武力衝突を大陸規模の動乱へと押し広げ、ミーシアン王国およびアルス・ローベントを国家存亡を懸けた広域戦争の渦中へと立たせる決定打となった。
主人公を中心とした人物関係の変化
サイツ州との軍事衝突と新兵器の実戦投入を経て、アルスを取り巻く重要人物との関係性は大きな進化を遂げた。戦時体制への移行と領地の急拡大に伴い、個人の結びつきは組織的かつ戦略的なパートナーシップへと昇華している。各主要人物との関係における変化と推移を以下に整理する。
アルスとリシアの関係性
- 開始時:精神的支柱としての存在であった。
- 巻末時:実戦中における留守中の統治委託に成功した。リシアが優れた行政手腕を発揮して後方を支えたことで、アルスが前線での軍事作戦に専念できる体制が確立された。これにより、公私双方において不可欠な統治パートナーとしての地位が確定した。
アルスとシンの関係性
- 開始時:資金を提供する投資者と、夢を追う技術者という関係であった。
- 巻末時:飛行船の実戦投入を通じて、既存の戦術概念を破壊する劇的な戦果を共有した。アルスはシンの開発環境を国家規模で保護する方針を固め、シン自身も自らの技術が持つ軍事的および社会的な影響力を再認識した。単なる主従の枠組みを越え、技術革新を共に推進する盟友としての絆を結んだ。
アルスとクランの関係性
- 開始時:有能な一地方貴族とその主君という関係にとどまっていた。
- 巻末時:航空戦力という軍事的な切り札を運用する、王国に欠かせない重鎮へと評価が引き上げられた。三郡に及ぶ広大な領地の統治権を委託された事実は、絶大な信頼の証であると同時に、クランがアルスを敵対勢力に対する最前線の防壁として配置するという政治的な意図が重なった結果である。
戦乱の激化は、アルスと周囲の人物たちとの結びつきをより強固で実利的なものへと再構築させた。後方を預かる統治の共同者、新たな戦力基盤を支える技術者、そして国家の命運を託す君主との間で築かれた新たな関係性は、今後激しさを増す大陸規模の動乱を乗り越えるための強固な足がかりとなる。
主人公の認識と周囲の評価
サイツ州との軍事衝突と新兵器の実戦投入を経て、アルス・ローベントの立場と周囲からの視線は劇的な変化を遂げた。一地方の領主から三郡を束ねる大領主へと急速に権勢を拡大させる中、本人の内面的な自己認識と、外部が抱く評価との間には大きな乖離が生じている。激変する戦局において形成された当主の自己認識、対外的な評価、およびその背景にある政治的思惑について以下に整理する。
アルス自身の認識
- 依然として自身に備わっているのは鑑定スキルのみであり、得られた成果のすべては家臣たちの優秀さによるものという極めて謙虚な自己認識を維持している。
- 三郡に及ぶ領地の拡大に対しても、自身の器量では手に余るのではないかという強い懸念を抱いている。
周囲からの評価
- 飛行船という未知の兵器を独自に運用し、数カ月を要するはずの要衝をわずか数時間で攻略してみせるなど、底知れない先見性と冷徹な軍事合理性を兼ね備えた規格外の存在として評価が定着している。
- 特に敵対勢力からは、単なる鑑定という能力の枠組みを越えて、対象の本質を完全に掌握する危険な人物として深い畏怖の対象となっている。
戦略的背景と政治的思惑
- クアット城の攻略後、ミーシアン貴族評議会において一部の反発勢力が統治困難なクアット郡の領有先としてアルスを推薦した。
- この決定の裏には、反ミーシアン感情の根強い土地の統治という難題を背負わせ、実務的な泥沼に引きずり込んで失脚を狙う政治的な意図が存在している。
急拡大を遂げた軍事的成果に対し、アルス本人は過信を排した慎重な姿勢を崩していない。しかし、圧倒的な戦果と新兵器の存在は外部に対して強烈な脅威として映り、敵対勢力からの警戒のみならず、国内の権力闘争による策略をも呼び寄せる結果となっている。自己認識と対外評価の摩擦を抱えながら、三郡を統べる重鎮としての手腕が問われる局面を迎えている。
クライマックス:クアット城攻略と野戦
サイツ州との戦役において決定打となったクアット郡での戦闘は、従来の野戦や攻城戦の概念を完全に刷新する象徴的な出来事となった。十万におよぶ大軍勢の迎撃体制に対し、新兵器である飛行船がもたらした軍事的衝撃と、開城に至る一連の経緯を整理する。
発生原因
- ミーシアン王クランによる、サイツ州最大の要衝であるクアット郡への直接侵攻命令が下されたことによる。
当初の状況
- サイツ州総督アシュド自らが率いる主力十万の軍勢が、街道沿いに強固な迎撃体制を構築した。
- 防衛線の要所には大型触媒機が配置され、濃密な魔法砲撃陣地が形成されていた。
飛行船の役割
- 高度3000メートルから降下して爆撃精度を最大化させ、サイツ軍の火力の核である大型触媒機を集中的に破壊した。
- 回避不可能な上空からの攻撃という心理的衝撃を与え、アシュドが構築した精緻な部隊統制を根底から動揺させた。
決着と戦果
- アシュドは、対空手段を持たない状態での継戦は無益な損耗を招くだけであると判断した。
- 主力部隊の温存を最優先とし、クアット城を放棄して本拠地ペンドラへ後退する戦略的撤退を選択した。
- 残された少数の抵抗部隊を排除した結果、クアット城は事実上の無血開城に至った。
十万の兵力を誇るサイツ軍の強固な防衛陣地は、飛行船による空中爆撃という未知の脅威を前にして実質的な機能を失った。総督アシュドの冷徹な撤退判断により要衝クアット郡の制圧が迅速に完了したこの戦いは、サイツ州を早期の全面降伏へと追い込む決定的な転換点となった。
巻末時点の状況
サイツ州との戦役が終結し、ミーシアン王国およびローベント家を取り巻く情勢は劇的な変貌を遂げた。一地方の領主から三郡を束ねる重鎮へと急速な躍進を果たしたアルス・ローベントの現況と、戦後処理の過程で生じた新たな課題、そして大陸全土へと拡大する戦乱の兆候を整理する。
アルスの立場と権勢
- カナレ、プルレード、クアットの三郡を統括する大領主としての地位を確立した。
- 飛行船による圧倒的な航空戦力を背景に、ミーシアン王国軍における筆頭戦力として認知されている。
サイツ州の政治的状況
- ミーシアン王国への完全従属を誓約する降伏文書を受諾した。
- アシュドが実質的な権力を保持しつつも、形式上は新王カイルを擁立する従属国へと立場を後退させた。
領内における継続課題
- 激しい空中爆撃を受けたクアット郡において、犠牲者遺族を中心とした根強い反ミーシアン感情が存在する。
- 占領地での不満が武装蜂起やゲリラ活動へと発展する危険性を常に孕んでいる。
- 飛行船の量産体制を維持・強化するために不可欠な、風の魔力水の継続的な補給経路の確保が急務となっている。
大陸規模で拡大する軍事的脅威
- 帝都の宰相シャクマが、傀儡である幼帝シャルルの権威を利用してミーシアン征伐軍の号令を発布した。
- アンセル州やパラダイル州をはじめとする周辺諸州を巻き込んだ、大規模な反ミーシアン包囲網が形成されつつある。
- 突出した軍事技術と影響力を持つアルス個人が、包囲網全体の主たる攻撃対象として標的に定められている。
サイツ州の屈服により軍事的な勝利を収めたものの、統治地域が拡大したことで内政上の火種はより深刻化した。さらに、新兵器の運用と急激な勢力拡大は帝都をはじめとする外部勢力に強い警戒感を与え、国家規模の包囲網との対峙という新たな戦火を招く要因となっている。拡大した三郡の安定化を図りつつ、大陸規模へと発展する大動乱に対処する極めて困難な舵取りが求められている。
飛行船の実戦投入
『転生貴族、鑑定スキルで成り上がる』第7巻において、アルス・ローベント率いるローベント家が成し遂げた飛行船の実戦投入は、これまでの攻城戦や野戦の常識を根底から覆し、大陸全体の軍事バランスに劇的なパラダイムシフトをもたらす決定打となった。この革新的な航空兵器がどのように戦場へ投入され、いかなる成果と地政学的な影響をもたらしたのか、その詳細を整理する。
飛行船「シン・セイマーロ号」の完成と運用思想
暗殺未遂の重傷から回復し、15歳で成人を迎えたアルスのもとに、スカウトして資金援助を続けていた職人シン・セイマーロから飛行船完成の報が届く。
- 機体スペックと技術:完成した飛行船は全長15人乗り(操縦に10名、戦闘員に5名)である。巡航速度で3日間の連続飛行が可能で、最高速度は馬と同等に達する。シンのアシスタントであるエナン・リュージェスの革新的な発想(推進効率の向上)により、実用的なスピードを得ることに成功した。動力源には風属性の魔力水を使用する。
- 空挺爆撃という基本戦術:軍師ロセル・キーシャは、敵の魔法や矢が届かない絶対安全な高度(高度約3000メートル)を維持し、城砦に張られた水平方向の魔法障壁の死角(脆弱な真上)から一方的に垂直爆撃を加える戦術を考案した。この爆撃手(主戦力)として、圧倒的な魔力を誇る魔法兵隊長シャーロット・レイスが搭乗することとなる。
初陣:プルレード砦攻略戦(初の空中爆撃)
サイツ州・パラダイル州の同盟軍によるミーシアン北部への奇襲に対し、国王クランはアルスに手薄となったサイツ領プルレード郡への侵攻を命じる。
- 中継拠点「ヘイネの丘」の急速築城:飛行船は風の魔力水の確保や天候リスクの関係から長距離飛行が難しいため、クメール砦と目標の中間地点に位置するヘイネの丘に即席の砦を築いて前進基地とする作戦が採られた。筆頭家臣リーツ・ミューセスの優れた築城指揮とシャーロットの土魔法により、わずか5日間で強固な石造砦を完成させる。
- 護衛任務と破壊工作の阻止:飛行船の輸送中、サイツの郡長バースが放った密偵による火矢や魔法攻撃を、護衛に就いたファム(シャドー)やブラッハム・ジョーの精鋭部隊が完璧に阻止した。
- 砦の一方的破壊と無血開城:飛行船はプルレード砦の真上に位置取りを完了した。高度3000メートル以上からシャーロットが放つ爆発魔法は、砦の対魔法防壁の天井を瞬時に貫き、防衛の核である魔法塔を次々と粉砕した。敵将バース・ミクニスアは混乱の中で転倒し意識不明となり、カナレ軍は無傷のまま砦へ突入して短時間で完全制圧する。その後、ミレーユによる降伏勧告を突きつけられた周辺要衝(クラックスの丘、オーロス城)も戦わずに無血開城に至った。
第二陣:クアット郡の野戦と大型触媒機の破壊
勢いに乗るクランは、さらにサイツ第二の要衝クアット郡への侵攻を命令する。
- ソーカン砦の速攻突破:囮として残された少数守備隊のソーカン砦を、地上部隊(ムーシャの魔法など)と飛行船の連携により、わずか一日で陥落させる。
- 十万の軍勢との街道野戦:サイツ総督アシュド・リンドヴァル自らが率いる主力十万の軍勢が街道を封鎖し、多数の大型触媒機を配備して強固な魔法砲撃陣地を構築していた。
- 火力の無力化とアシュドの戦略的撤退:飛行船は高度を下げて精密爆撃を展開し、サイツ軍の魔法砲撃の要であった大型触媒機を20以上もピンポイントで破壊した。さらに、上空から一方的に爆撃を受けるという未知の心理的恐怖は、アシュドが誇る一糸乱れぬ部隊統制を完全に崩壊させた。アシュドは対空手段を持たない現状での交戦は主力全滅を招くと冷静に判断し、本拠地ペンドラへ後退した。守備兵を最小限に減らされたクアット城は、事実上無血開城に近い形で占領された。
実戦投入がもたらした重大な結果と地政学的大激変
この二つの戦役での圧倒的な航空戦果は、サマフォース大陸全体の政治・軍事情勢を一変させた。
- サイツ州の全面降伏とアルスの大躍進:空中爆撃の前に勝ち目なしと悟ったサイツ州は、ミーシアンへ完全に従属を誓う形で全面降伏する。この戦功により、アルスはカナレ、プルレード、クアットの三郡を統括する大領主へと上り詰めた。
- 飛行船の量産化への国家投資:クランは飛行船の価値を極めて高く評価し、ミーシアン王国の国家予算を投じて量産化(目標5隻、のち6隻目を起工)と、シンの開発体制の保護を約束した。
- 大陸規模の「ミーシアン征伐軍(包囲網)」の始動:空を飛ぶ兵器の出現とミーシアン王国の覇権拡大は、周辺諸州に絶対的な危機感を抱かせた。パラダイル州の将バンバらの提案を受けた帝都の宰相シャクマは、幼き傀儡皇帝シャルルを利用し、他州を巻き込んだ大規模なミーシアン征伐軍(包囲網)の大号令を発布する。
- シューツ州の動向:自国での飛行船開発・模倣(ハイネス・ブラウンによる研究)を急ぎつつ参戦を検討する。
- ローファイル州の動向:常勝無敗と謳われる16歳の戦女神エレノア・ブレインドが一万の精鋭を率いて参戦を表明した。彼女は飛行船という新兵器と直接戦ってみたい、アルス・ローベントという者を捕まえて持ち帰ると、アルスへの直接的な対抗意識を露わにしている。
まとめ
アルスたちが実戦投入した飛行船は、目の前のサイツ州を屈服させる奇跡的な新兵器となった。しかし同時に、その圧倒的な軍事的優位性と脅威ゆえに、帝国中央や周辺諸州を強く刺激し、大陸全土を巻き込む巨大な包囲網を形成させる直接の契機となった。単なる地方紛争の枠組みを越え、大陸規模の戦乱へと情勢が拡大する中、ローベント家は新たな防衛体制と戦略の構築を迫られている。
サイツ侵攻と空中爆撃
『転生貴族、鑑定スキルで成り上がる』第7巻におけるサイツ侵攻と空中爆撃は、成人を迎えたアルス・ローベントが軍事史を塗り替える新戦術を主導した重要な局面である。カナレ領主時代からの地道な技術投資と適材適所の人材登用が結実した本戦役について、戦術、心理、政治の各側面から整理する。
飛行船シン・セイマーロ号と垂直爆撃の基本構想
アルスから資金援助を受けた技術者シン・セイマーロと、卓越した兵器適性を持つ助手エナン・リュージェスにより、定員15名で馬と同等の最高速度を持つ実用的な飛行船が完成した。軍師ロセル・キーシャは、この新兵器に魔法兵隊長シャーロット・レイスを搭乗させ、既存の防衛概念を打破する戦術を立案した。
- 真上という死角の活用:地上の城壁や魔法障壁は水平方向からの攻撃を防ぐ設計が主であり、上空に対する防御強度は極めて低い。
- 安全圏からの垂直爆撃:地上からの矢や魔法、バリスタが届かない高度約3000メートルを維持し、防壁の薄い真上から強力な爆発魔法を投下して防衛機能を一方的に破壊する。
プルレード砦攻略戦と拠点の無血開城
サイツ・パラダイル同盟軍による北部ルンド郡への奇襲を受け、クランはアルスに対して手薄となったサイツ領プルレード郡への侵攻を命じた。アルスは二万五千の軍勢を率いて出陣した。
- ヘイネの丘での急速築城:飛行船の燃料管理と天候リスクを考慮し、前進基地として中継地点に砦を築く必要が生じた。筆頭家臣リーツ・ミューセスの築城技術とシャーロットの土魔法を融合させ、わずか5日間で強固な石造砦を完成させて敵将バース・ミクニスアを大きく動揺させた。
- 初の空中爆撃と砦の制圧:密偵ファムやブラッハム隊の厳重な護衛により、敵の破壊工作を排除して飛行船を輸送した。砦上空から投下された垂直爆撃は魔法障壁を一撃で貫通し、防衛の要である魔法塔を次々と粉砕して短時間で砦を制圧した。
- 心理的圧力による周辺拠点の開城:壁の崩落に巻き込まれて気絶したバースを捕縛した。その後、ミレーユ・グランジオンが残存部隊に対し、抵抗を続ければ同様の爆撃を受けると通告し、クラックスの丘の守備隊5000名とオーロス城の兵士を戦わずに降伏させた。
クアット郡の戦いと十万の主力軍の後退
勢いに乗る軍勢は、サイツ第二の要衝であるクアット郡へ進撃した。
- 十万の防衛線との対峙:サイツ州総督アシュド・リンドヴァル自らが率いる主力十万が、多数の大型触媒機を配備した強固な魔法砲撃陣地を敷いて迎撃態勢を整えた。
- 精密爆撃による部隊統制の破壊:飛行船は高度を下げて精密爆撃を実施し、砲撃の核であった大型触媒機を20基以上ピンポイントで破壊した。回避不可能な空からの攻撃は、アシュドが誇る一糸乱れぬ精緻な部隊統制を動揺させた。
- アシュドの戦略的撤退:アシュドは対空手段を持たない状況での交戦は主力の全滅を招くと冷静に分析した。戦力の損耗を避けるため本拠地ペンドラへの戦略的後退を選択し、守備兵を減らしたクアット城は最小限の被害で制圧された。
空中爆撃がもたらした大陸規模の地政学的危機
飛行船による空中爆撃の威力は戦局を完全勝利に導いたが、同時に大陸全体の政治情勢を大きく激変させた。
- サイツ州の全面降伏とアルスの昇格:対抗策を欠くサイツは全面的に降伏し、ミーシアン王国への従属と二郡の割譲を受諾した。アルスはカナレ、プルレード、クアットの三郡を治める大領主へと急速に権勢を拡大させた。
- ミーシアン征伐軍の結成:空飛ぶ兵器の脅威とミーシアン王国の拡大は、周辺諸州に強い危機感を抱かせた。帝都の宰相シャクマは幼帝シャルルの権威を利用し、パラダイル州、キャンシープ州、シューツ州、ローファイル州を巻き込んだ広域連合軍の編成を進めた。
- 最強の敵エレノアの参戦:常勝無敗を誇るローファイル州の将軍エレノア・ブレインドは、飛行船との直接対決とアルス個人の確保を目的に掲げ、一万の精鋭を率いて参戦を表明した。
アルスが鑑定スキルを通じて集めた技術者、助手、軍師、魔法兵の能力を結集した飛行船は、堅牢な城壁や大軍を容易に屈服させる絶大な力を示した。しかし、その圧倒的な軍事的優位性は周辺諸州を恐怖によって結束させ、アルス自身を主標的とする大陸規模の包囲網を呼び寄せる結果を生み出した。
三郡統括の大領主
空中爆撃によるサイツ侵攻で劇的な勝利を収めたアルス・ローベントは、従来のカナレ郡に加え、新たに制覇したプルレード郡とクアット郡を合わせた三郡の統治権をクラン王から託された。一見すると若き当主としての華々しい栄達に見えるこの大領主への昇格だが、その内実は急激な権力拡大に伴う政治的、軍事的な三重の危機を孕んでいる。国内貴族の悪意、主君からの警戒、人材の極限的な分散、そして大陸全土を巻き込む包囲網という過酷な試練に直面するアルスの現状と課題を整理する。
大領主任命の裏に潜む政治的な思惑と主君の警戒
アルスへの三郡委託の決定プロセスには、単なる功績への報奨にとどまらない複雑な政治的背景が存在する。
- 国内貴族による失脚狙いの罠
- 成り上がりであるローベント家がミーシアン王国内で突出した影響力を持つ事態を、古参の貴族層は快く思わなかった。貴族評議会の一部は、アルスを新領地の支配者としてあえて強力に推挙した。特にクアット郡は、空中爆撃による民間被害を契機とした根強い反ミーシアン感情が渦巻き、レジスタンスが結成されるほど統治困難な土地であった。貴族側の狙いは、アルスを難航必至の統治実務に忙殺させ、内政失敗による失脚へ追い込む点にあった。
- 主君クランによる防壁としての配置
- 主君クランは周囲の思惑を把握しつつ、軍事的な合理性からアルスへの領地委託を決断した。度重なる敗北を通じてアルスに強い恐怖感を抱くサイツ州総督アシュドを牽制するため、最前線の防壁としてアルスを配備することが防衛上最も効果的であると判断した。
- 謀反を警戒した監視役の派遣
- 一方で、クラン自身もローベント家の急速な台頭に警戒心を抱き始めた。側近ロビンソンから、弱小領地を短期間で急成長させ新兵器の飛行船まで独占する勢力は、力を持つにつれて謀反を企てる可能性があるとの進言を受けた。クランは領地拡大に伴う人手不足への配慮という名目を掲げ、ローベント家へ信頼のおける監視役を派遣し、不穏な動きを未然に防ぐ体制を敷く方針を固めた。
広大な領地統治が招いた人材不足と家臣の分散
領地が一気に三倍以上に拡大した結果、ローベント家は深刻な人材不足に直面した。アルスはこれまで発掘してきた有能な家臣たちを要所へ分散配置せざるを得ない状況に追い込まれた。
- クアット郡への配置
- 治安維持と反乱組織の抑え込みを担う代官として、知略に優れたミレーユ・グランジオンを派遣した。さらに、ミレーユ自身の不穏な動きやサイツ側の間者を牽制する重しとして、武勇に長けたブラッハム・ジョーの精鋭部隊を同地に配置した。
- プルレード砦への配置
- 実直で軍律に厳しいトーマス・グランジオンを代官として派遣した。
- オーロス城への配置
- 国境付近の要衝である同城には、戦闘力と知謀のバランスに優れたフジミヤ三兄弟(リクヤ、マイカ、タカオ)を配置した。
- ランベルクへの配置
- 故郷である領地には、内政能力と折衝力に長けたヴァージ・サマードを代官として配属した。
- 本拠地カナレの機能逼迫
- カナレには主君の護衛と中枢統率のため、リーツ・ミューセス、ロセル・キーシャ、シャーロット・レイスが残った。しかし主力人員の分散により、カナレの内政業務を一手に引き受けたリーツの業務量は限界に達した。アルスや婚約者のリシア自らが連日書類仕事などの雑務に追われるほど、本拠地の行政機能は著しく圧迫された。
世界規模の包囲網と標的化されるアルス個人
三郡を束ねる大領主への昇進と飛行船の独占という情報はサマフォース大陸全土に伝播し、諸州に強い危機感を植え付けた。
- ミーシアン征伐軍の始動
- パラダイル州の将バンバからの進言を受けた帝都の宰相シャクマは、傀儡である幼帝シャルルの権威を利用し、大陸規模のミーシアン征伐軍の号令を発布した。
- 戦女神エレノアの参戦
- 常勝無敗を誇るローファイル州の十六歳の将軍エレノア・ブレインドは、アルスが二万の寡兵で八万を退け、飛行船を用いて短時間で二箇所の要衝を落とした戦功に着目した。エレノアは強い対抗心を燃やし、一万の精鋭を率いて包囲網への参戦を表明した。有能であるならば殺さずに生け捕りにして自国へ連れ帰る方針を掲げ、アルス個人を主たる捕縛対象に定めた。
カナレの小領主から三郡を統括する大領主へと登り詰めたアルスは、技術革新と武功の代償として、国内貴族の悪意、主君からの不信、そして大陸列強からの軍事的敵意という三重の圧力を一身に受ける立場となった。手に入れた広大な領地と分散した家臣団を維持しながら、世界規模で迫り来る包囲網をいかに切り抜けるかという、かつてない過酷な政治的・軍事的舵取りが求められている。
ミーシアン征伐軍
アルス率いる部隊が投入した飛行船によるサイツ侵攻の劇的な大勝利は、ミーシアン王国に最大の繁栄をもたらしたと同時に、大陸全土を揺るがす巨大な脅威の引き金となった。この結果として始動したミーシアン征伐軍(反ミーシアン包囲網)について、結成の背景や参加する各州の生々しい政治的思惑、そして立ちはだかる強敵の動向を整理する。
包囲網が結成された原因
大陸規模の包囲網が生まれた直接の契機は、アルスが主導した空中爆撃による要衝(プルレード郡・クアット郡)の速攻攻略と、サイツ州の全面降伏(従属国化)である。
これまでの攻城戦の常識を覆し、空から一方的に都市や障壁を破壊する飛行船という新兵器の出現、そしてそれを独占するミーシアン王国の急激な覇権拡大は、サマフォース大陸の周辺諸州に「今叩かなければ、次は自分たちが空から一方的に蹂躙される」という強い危機感を植え付けた。
包囲網の主導者と政治的思惑
征伐軍の構想は、表向きは皇帝の権威によるミーシアンの反逆断罪を掲げているが、その内情には利己的な政治的策略が絡み合っている。
- パラダイル州総督マクファと将バンバ:ミーシアンに直接接し、最も強く危機感を抱いたパラダイル州は、将バンバの献策を受けた総督マクファが帝都へ直接出向き、皇帝にミーシアン征伐の大号令を発するよう直訴した。
- 帝国宰相シャクマの思惑:実権を握る帝都の宰相シャクマは、傀儡である幼い第12代皇帝シャルルの権威を利用してこの大号令を可決した。シャクマの真の狙いはミーシアンの討伐そのものよりも、帝都(アンセル州)内で自身に反抗的な国内勢力を過酷な最前線へ送り込み、合法的に排除することで権力基盤を磐石にすることにある。
包囲網を構成する各州の多様な思惑
征伐軍の合議への参加を表明、あるいは検討している各州は一枚岩ではなく、それぞれが自国の利益を追求している。
- パラダイル州:ミーシアンの飛行船の脅威を訴える一方で、ミーシアンとの境界に位置し攻守の要となるルンド城の領有権を確保したいという実利的な目的を抱く。
- キャンシープ州(ウモンガス家):大陸屈指の海軍を保有する。ミーシアン随一の豊かな港湾都市であるセンプラーを獲得し、自領リャプターと結ぶ交易路を確立して莫大な経済権益を得るため、飛行船の情報を集めつつ合議への参加を決めた。
- シューツ州(ドルマーヌ家):気弱な総督ブランと優秀な軍師ヴァルトが治める。元々は隣国サイツの領土を奪う計画を進めていたが、ミーシアンに先を越されてサイツを従属させられたため、戦略を狂わされたとして反発している。対抗策として自国の技術者ハイネス・ブラウンに飛行船の模倣と開発を急がせている。
- ローファイル州(ブレインド家):総督セドリックは当初、ミーシアンとアンセルが共倒れする状況を静観する姿勢であった。しかし娘である16歳の常勝無敗の将軍エレノア・ブレインドが、飛行船という新兵器と直接戦ってみたい、アルス・ローベントを捕縛して連れ帰るという強い対抗心と好奇心を示し、一万の精鋭を率いて参戦を表明した。
ミーシアン内部に漂う二重の危機
外部からの脅威に対し、ミーシアン王国自体の足元も揺らいでいる。
- クラン王によるアルスへの警戒:側近ロビンソンから、ローベント家は飛行船を独占して急速に勢力を拡大しており、将来的に謀反を企てる恐れがあるとの進言を受けたクランは、アルスへの警戒を強めた。新領地統治の支援という名目でローベント家に監視役を送り込み、内密に動向を監視する体制を整え始めている。
- 復権を狙うサイツの元総督アシュド:降伏により辺境ハーバルの領主へと退いたアシュドだが、サイツ領内の貴族たちからは依然として忠誠を寄せられており、強い影響力を保っている。アシュドはこの大規模なミーシアン征伐軍がミーシアンを攻め立てて混乱に陥る瞬間を、再独立と反撃を果たす好機と見定め、他州へ密偵を放って動向をうかがっている。
まとめ
三郡の大領主となったアルスの前には、帝国宰相シャクマの権力闘争、ローファイル州の戦女神エレノアの進軍、主君クランによる監視、そしてサイツ州による再蜂起の画策という、四重の障壁が立ちはだかっている。新兵器の実戦投入が引き起こした軍事的な衝撃は、国家間の利害と思惑を複雑に絡み合わせ、大陸全土を巻き込む巨大な戦乱の構図を決定づけた。
兵器技術の革新
物語の軍事的および政治的局面を大きく変える契機となった要素が兵器技術の革新である。従来の魔法や剣、弓、攻城兵器を中心とした戦術体系から脱却し、空中爆撃と火薬兵器という戦場を一変させる二つの技術が登場した。これら兵器技術の革新における詳細と、各州に与えた地政学的影響を整理して記録する。
航空戦力と垂直爆撃の確立(ローベント家)
アルスが鑑定スキルで見出し、投資と支援を継続してきた技術者シン・セイマーロと、兵器適性の高い助手エナン・リュージェスの連携により、有人実用飛行船シン・セイマーロ号が完成した。
- 性能と仕様
- 定員は操縦10名と戦闘員5名を合わせた15名である。最高速度は全速力で馬と同等であり、約11時間の連続飛行が可能である。巡航速度であれば3日間の航続能力を持つ。
- 推進燃料には風属性の魔法を利用するため、風の魔力水を消費する。
- 気圧変化に伴う魔力石の性質変容により、高度を上げすぎると浮力を失い落下する高度制限が存在し、悪天候時の運用も困難という課題を抱える。
- 空挺垂直爆撃の戦術構造
- 軍師ロセルは、地上の魔法障壁が水平方向の防御に特化しており、上空からの防御強度が極めて薄い点に着目した。
- 地上からの攻撃が届かない高度約3000メートル以上の安全圏を維持し、魔法兵隊長シャーロットが船底の中型触媒機を通じて爆発魔法を投下する戦術を確立した。
- 戦場における戦果
- プルレード砦の攻略戦において、魔法障壁と防衛拠点の核である魔法塔を数時間で粉砕し、味方の犠牲を出さずに制圧を完了した。
- クアット郡の街道野戦では精密爆撃を実施し、サイツ主力軍の大型触媒機を20基以上破壊することで、対空手段を持たない敵総督アシュドを撤退に追い込んだ。
主君クランはこの軍事的価値を高く評価し、国家予算規模の資金や資材の提供、さらにミーシアン全土から技術者を招集した5隻から6隻規模の量産体制の構築を決定した。
化学魔法兵器「爆殺龍石」の誕生(パラダイル州)
ミーシアンの飛行船に対抗する形で、パラダイル州の将バンバ・ファナマーマフが新兵器である爆殺龍石を開発した。
- 構造と燃焼原理
- ミーシアン州が独占的に管轄する爆発の魔力水を用いず、パラダイル州で調達可能な炎の魔力水と火薬を掛け合わせ、強力な爆発力を引き出す配合を確立した。
- 面的制圧に特化した設計
- カタパルトによる射出や投下によって着弾時に大爆発を引き起こす。
- 爆発の衝撃によって鋭利な岩の破片を広範囲に飛散させ、破片損害を与える点に主目的がある。
- 魔法耐性を強化した重装歩兵の甲冑をも貫通する物理衝撃をもたらすため、密集陣形を敷くミーシアン主力軍の前衛部隊に甚大な損害を与え、クランの一時的な後退を招いた。
弾数の制限に加え、ミーシアン軍が散開陣形や防具の重装化といった対策を迅速に講じたことでルンド城は奪還された。しかし、魔法体系とは異なる火薬を用いた物理兵器の出現は、以後の兵器開発競争を激化させる要因となった。
周辺諸州への技術的波及と軍拡競争の激化
二つの技術革新、とりわけ飛行船による空中爆撃の衝撃は大陸の勢力均衡を崩し、周辺地域に強い危機感を生じさせた。
- シューツ州(ドルマーヌ家)
- 技術者ハイネス・ブラウンに飛行船の模倣開発を急がせ、自前の航空戦力獲得による対抗策を模索している。
- キャンシープ州(ウモンガス家)
- 兵器開発責任者のノイン・ウモンガスを擁し、優れた技術力と海軍力を維持しながら、飛行船の脅威度を分析して利権獲得の戦略を構築している。
- ローファイル州(ブレインド家)
- 常勝無敗と称される16歳の将軍エレノア・ブレインドが、新兵器である飛行船との直接交戦やアルスの捕縛を目的とし、一万の精鋭を率いてミーシアン征伐軍への参加を表明した。
兵器革新がもたらした戦場環境の変化
第7巻における兵器技術の革新は、上空からの垂直攻撃と火薬による破片飛散という、従来の要塞防衛や陣形を無力化する方向で進展した。
アルスが登用した技術者たちが完成させた飛行船は、領内戦役を優位に導いた半面、周辺諸国による急速な兵器開発や模倣を促し、大陸規模の包囲網形成を加速させる引き金として機能した。
登場キャラクター
ローベント家(カナレ郡・ランベルク領)
アルス・ローベント
アルスは異世界へ転生した少年である。彼はローベント家の当主に就任した。他人のステータスを可視化する鑑定スキルを保有している。自身の能力について凡人と評価する。
・所属組織、地位や役職 ローベント家当主。カナレ郡長を務める。
・物語内での具体的な行動や成果 シン・セイマーロの開発した飛行船を用いてプルレード砦の無血開城に成功する。サイツ軍との戦闘を有利に進めるため、クアット城の攻略を指示する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 クランからプルレード郡とクアット郡の二郡の統治を新たに任される。これにより、ミーシアン王国内で非常に強力な大貴族へと出世する。
・ステータス(能力値) 自身を鑑定することは不可能な仕様である。
リシア・ローベント(リシア・プレイド)
リシアはアルスの妻である。彼女は極めて優れた政治力を持つ。他者の感情を表情から読み取ることが得意だ。夫のアルスに対して深い愛情と信頼を抱いている。
・所属組織、地位や役職 ローベント家当主夫人。
・物語内での具体的な行動や成果 アルスが不在の間、義妹レンと義弟クライツの面倒を見て絆を深める。飛行船の完成をアルスとともに祝福する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 正式な郡長夫人として、領内の治安維持や人々の心のケアに大きく貢献する。
・ステータス(能力値) 11歳時のステータスは統率8/10、武勇6/10、知略52/73、政治84/100、野心80である。適性は計略B、他はDを示す。
リーツ・ミューセス
リーツはマルカ人の青年である。彼はローベント家の筆頭家臣である。アルスに対して絶対的な忠誠を誓う。武勇、統率、政治、知略のすべてにおいて傑出した実力を発揮する。
・所属組織、地位や役職 ローベント家・筆頭側近、歩兵隊長。
・物語内での具体的な行動や成果 飛行船を用いたプルレード砦の攻略作戦に同行する。領内での会議において、安全を第一に考えた堅実な意見を述べる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 全能力値が90を突破する成長を遂げている。他家の将たちからもその武勇と統率力を高く恐れられている。
・ステータス(能力値) 現在のステータスは統率97/99、武勇90/90(限界到達)、知略97/99、政治92/100、野心20である。適性は歩兵A、騎兵S、弓兵A、魔法兵C、築城S、兵器A、水軍D、空軍C、計略Sを示す。
シャーロット・レイス
シャーロットは魔法兵隊長を務める少女である。彼女はかつて奴隷であった。規格外の強力な魔力を誇る。
・所属組織、地位や役職 ローベント家・魔法兵隊長。
・物語内での具体的な行動や成果 飛行船に乗り込み、上空からの強力な魔法攻撃を担当する。その圧倒的な破壊力でプルレード砦の城壁や魔法塔を難なく破壊する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 「ランベルクの青い死神」の異名で戦場全体に恐れられている。
・ステータス(能力値) 現在のステータスは統率80/92、武勇104/116、知略45/45、政治37/40、野心1である。適性は魔法兵S、その他はDを示す。
ミレーユ・グランジオン
ミレーユはローベント家の軍師を務める女性である。酒と博打に溺れる破天荒な性格をしている。帝国屈指の知謀を誇る。
・所属組織、地位や役職 ローベント家・軍師兼相談役。ランベルク領主代行。
・物語内での具体的な行動や成果 サイツ軍の撤退後の情勢を冷静に分析する。アルスの領地拡大に伴い、代官の選定や統治方法について意見を述べる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 戦局を一変させる頭脳として重用され続けている。
・ステータス(能力値) 31歳時のステータスは統率82/90、武勇35/42、知略99/101、政治95/98、野心79である。適性は計略S、歩兵A、騎兵A、弓兵B、築城B、兵器B、水軍B、空軍B、魔法兵Cを示す。
ロセル・キーシャ
ロセルはローベント家の軍師を務める少年である。優れた記憶力と鋭い洞察力を併せ持つ。
・所属組織、地位や役職 ローベント家・軍師。
・物語内での具体的な行動や成果 シンの工房で完成した中型の飛行船を目撃して興奮する。アルスから戦術や地理の面で非常に頼りにされている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 11歳時で知略99まで成長を遂げている。
・ステータス(能力値) 現在のステータスは統率65/88、武勇22/32、知略99/109、政治77/95、野心21である。適性は計略S、築城A、兵器A、空軍A、弓兵C、魔法兵C、水軍C、歩兵D、騎兵Dを示す。
レン・ローベント
レンはアルスの実妹である。物静かで聡明な少女だ。知略と政治に関して類いまれな限界値を持つ。
・所属組織、地位や役職 ローベント家・長女。
・物語内での具体的な行動や成果 義姉のリシアと仲良く過ごし、おやつを一緒に食べる。兄のアルスが帰還するのを心待ちにする。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 将来の内政を支える頭脳としての潜在能力を秘めている。
・ステータス(能力値) 誕生直後のステータスは統率1/22、武勇1/21、知略1/91、政治1/85、野心33である。適性は計略A、兵器B、空軍B、築城C、水軍C、その他Dを示す。
クライツ・ローベント
クライツはアルスの実弟である。父譲りの金髪を持ち、活発に動き回る。統率と武勇に優れた潜在能力を持つ。
・所属組織、地位や役職 ローベント家・次男。
・物語内での具体的な行動や成果 リシアを「姉上」と呼んで懐く。ブラッハムに剣の稽古で相手をしてもらうよう詰め寄る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 将来の将帥として期待される成長を見せている。
・ステータス(能力値) 誕生直後のステータスは統率1/82、武勇1/89、知略1/33、政治1/21、野心77である。適性は歩兵S、騎兵B、弓兵A、魔法兵C、その他Dを示す。
リオ
リオは青い毛を持つキツネである。キングブルーと呼ばれる希少な品種だ。人間に非常によく懐く。
・所属組織、地位や役職 ローベント家の飼育動物。
・物語内での具体的な行動や成果 レンやクライツと楽しそうに戯れる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 成長すると馬並みの大きさと速度を持つ。非常に賢い頭脳を備えている。
ムーシャ・トリック
ムーシャはローベント家の魔法兵である。真面目で控えめな性格をしている。魔法兵適性Aの才能を秘める。
・所属組織、地位や役職 ローベント家・魔法兵。魔法兵部隊の副隊長格。
・物語内での具体的な行動や成果 新人魔法兵の実技指導を担当し、部隊の魔法威力を大幅に引き上げる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 指導の功績が認められ、アルスから金貨20枚の特別報酬を授与された。
・ステータス(能力値) 現在のステータスは統率60/76、武勇77/79、知略51/73、政治56/75、野心32である。適性は魔法兵Aを示す。
ブラッハム・ジョー
ブラッハムはカナレ軍の精鋭部隊を率いる武芸者である。単純で喧嘩っ早い性格をしている。統率の限界値が102に達する。
・所属組織、地位や役職 ローベント家・精鋭部隊隊長。
・物語内での具体的な行動や成果 自身の無知を恥じてトーマスの講義を熱心に受講した。訓練場でタカオと激しい模擬戦を行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 勉強により知略を45まで伸ばすなど、武将としての大きな成長を見せている。
・ステータス(能力値) 現在のステータスは統率68/102、武勇91/92、知略45/61、政治19/55、野心88である。適性は歩兵S、騎兵A、弓兵B、築城C、他はDを示す。
ザット・ブロズド
ザットは経験豊富な兵士であり、ブラッハムの副官を務める。実直で落ち着いた性格をしている。
・所属組織、地位や役職 ローベント家・精鋭部隊副隊長。
・物語内での具体的な行動や成果 新兵クッラの剣術の才能を見出して指導を行う。ブラッハムの過剰な訓練姿勢をいさめる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 実戦力の高い副隊長として、部隊の士気維持に欠かせない存在となっている。
・ステータス(能力値) 31歳時のステータスは統率51、武勇81、知略70台、政治70台、野心56である。適性は歩兵A、他はCかDを示す。
リクヤ・フジミヤ
リクヤはヨウ国の元王族であり、フジミヤ家の現当主である。非常に真面目で家族想いな性格だ。
・所属組織、地位や役職 ローベント家・家臣。
・物語内での具体的な行動や成果 ミレーユの指示に従って多くの内政実務を確実にこなす。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 万能型の能力を活かし、領地経営の即戦力として実績を重ねている。
・ステータス(能力値) 18歳時のステータスは統率60/75、武勇68/75、知略63/75、政治65/75、野心54である。適性は歩兵B、騎兵B、弓兵B、築城B、水軍B、計略B、他はDを示す。
タカオ・フジミヤ
タカオはヨウ国の元王族であり、リクヤの異母弟である。のんびりとした性格で、食事と昼寝を好む。卓越した反射神経と怪力を誇る。
・所属組織、地位や役職 ローベント家・家臣。
・物語内での具体的な行動や成果 訓練場でブラッハムと激しい模擬戦を行う。ミレーユの指示で力仕事を一手に引き受ける。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 武勇90(限界99)を誇る、近接戦闘の主戦力である。
・ステータス(能力値) 16歳時のステータスは統率44/79、武勇90/99、知略12/21、政治10/25、野心12である。適性は歩兵S、騎兵A、弓兵Aを示す。
マイカ・フジミヤ
マイカはヨウ国の元王族であり、リクヤの異母妹である。合理的で負けず嫌いな性格をしている。非凡な知謀を誇る。
・所属組織、地位や役職 ローベント家・家臣。
・物語内での具体的な行動や成果 アルスが毒に倒れた際、毒魔法に関する自身の知識を懸命に思い返そうとする。ミレーユの下で知的な事務作業を担当する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 知略90(限界99)を誇る、将来の軍師候補である。
・ステータス(能力値) 17歳時のステータスは統率12/22、武勇9/15、知略90/99、政治71/91、野心34である。適性は計略S、兵器Aを示す。
トーマス・グランジオン
トーマスはミレーユの実弟であり、元バサマーク派の軍師である。生真面目で厳格な性格をしている。
・所属組織、地位や役職 カナレ軍・兵士訓練担当。
・物語内での具体的な行動や成果 カナレ城で兵士たちに厳しい訓練を施す。講義室で戦術や魔法の属性を指導する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 試用期間中でありながら、指導力によって兵士の規律を高める。
・ステータス(能力値) 29歳時のステータスは統率85/91、武勇40/51、知略94/96、政治88/90、野心65である。適性は計略S、歩兵A、弓兵A、築城A、他はBかCを示す。
マイク・メインツ
マイクはカナレ城に常駐する医師である。冷静に患者の状況を診断する。
・所属組織、地位や役職 カナレ城・常駐医師。
・物語内での具体的な行動や成果 毒に冒されたアルスの応急処置や体調の検査を担当する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ローベント家の医療体制を支える役目を果たす。
・ステータス(能力値) 能力値の詳細は不明である。
ヴァージ・サマード
ヴァージは没落貴族の出身であり、非常に口が達者な青年である。極めて優れた政治力と卓越した弁舌を誇る。
・所属組織、地位や役職 ローベント家・家臣、内政官。
・物語内での具体的な行動や成果 リーツの補佐として領民の苦情処理や外部商人との商談を円滑に進める。アルスの解毒の鍵となる「毒の魔力水」を調達した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 交渉力の高さで、カナレの内政および外交業務を大きく円滑化させる。
・ステータス(能力値) 23歳時のステータスは統率31/44、武勇45/51、知略66/74、政治71/90、野心30である。適性は計略B、歩兵C、その他はDを示す。
レイヴン・ローベント
レイヴンはアルスの父親である。農民の出自から武勇を頼りに成り上がった。統率力と武勇に極めて秀でた領主である。
・所属組織、地位や役職 元ランベルク領主。元ローベント家当主。
・物語内での具体的な行動や成果 グライ病に侵されながらもサイツ軍との戦いで勝利を収める。アルスが精神世界で迷った際、夢の中に現れて力強い激励を送る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 39歳で息を引き取った。アルスの心の中に生き続けている。
・ステータス(能力値) 30歳時のステータスは統率 86/86、武勇 94/95、知略 44/56、政治 23/31、野心 67である。適性は歩兵A、騎兵S、弓兵B、他はDを示す。
セイマーロ工房
シン・セイマーロ
シンは飛行船の開発に生涯を捧げる技術職人である。背の低さを気にしている。操縦と開発に強い情熱を持つ。
・所属組織、地位や役職 ローベント家・技術顧問。
・物語内での具体的な行動や成果 アルスからの資金援助を得て、ついに人が乗れる大きさの飛行船の開発に成功する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 画期的な空戦兵器を完成させ、ローベント家の軍事技術を大きく進歩させた。
・ステータス(能力値) 24歳時のステータスは統率41/55、武勇30/41、知略81/86、政治25/38、野心18である。適性は空軍S、兵器A、計略C、他はDを示す。
サレマキア家(ミーシアン王国)
クラン・サレマキア
クランは前総督の長男であり、新たに建国されたミーシアン王国の国王である。豪胆で実力主義を貫く。
・所属組織、地位や役職 ミーシアン国王。サレマキア家当主。
・物語内での具体的な行動や成果 サマフォース帝国からの独立と、ミーシアン王国の復活を高らかに宣言する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ミーシアン全土を支配する国王となった。アルスを高く評価し、二郡の統治を新たに委ねる。
・ステータス(能力値) 45歳時のステータスは統率99/99、武勇97/97、知略78/79、政治80/81、野心93である。適性は騎兵S、歩兵A、築城A、水軍A、弓兵B、魔法兵B、空軍B、兵器C、計略Cを示す。
ロビンソン・レンジ
ロビンソンはクランが最も信頼する腹心の家臣である。冷静沈着で実務能力に長けている。
・所属組織、地位や役職 ミーシアン王国・重臣。クラン直属家臣。
・物語内での具体的な行動や成果 軍事同盟を狙うサイツ軍やパラダイル州との間で、裏の調整や交渉にあたる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 新体制となった王国の政務を一手に引き受けて統括する。
・ステータス(能力値) 知略88、政治91の高い知謀を誇る。
リーマス・アイバス
リーマスはバサマーク派に仕えていた老将であり、百戦錬磨の経験を持つ。
・所属組織、地位や役職 ミーシアン王国・重臣。
・物語内での具体的な行動や成果 クランに対し、ミーシアン独立直後の出兵には慎重であるべきだと意見を述べる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 軍事的な限界を冷静に見定め、王国の防衛に尽力する。
・ステータス(能力値) 35歳時のステータスは統率78/82、武勇91/93、知略35/40、政治20/28、野心50である。適性は騎兵S、歩兵A、他はDを示す。
サイツ州総督府(サイツ王国)
アシュド・リンドヴァル
アシュドは元サイツ州総督であり、現在はハーバル領主を務める名将である。冷静沈着に戦況を分析する。
・所属組織、地位や役職 元サイツ州総督。ハーバル領主。
・物語内での具体的な行動や成果 ルンド城を急襲し、見事に勝利を収める。プルレード郡の陥落を知り、速やかに撤退の判断を下す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 総督の座を退いた後も、実質的なサイツ国政の指導者として強い影響力を持つ。
・ステータス(能力値) 能力値の詳細は不明である。
ボロッツ・ヘイガンド
ボロッツはサイツ軍の総大将であり、軍略家として優れた才能を持つ。総督アシュドに絶対の忠誠を誓う。
・所属組織、地位や役職 サイツ軍総大将。現サイツ国王側近。
・物語内での具体的な行動や成果 アルスと直接会談を行い、彼の「鑑定眼」についての牽制を仕掛ける。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 アルス暗殺未遂の裏工作を主導し、ローベント家に大きな脅威を与えた。
・ステータス(能力値) 36歳時のステータスは統率85/91、武勇71/77、知略75/80、政治92/95、野心20である。適性は歩兵A、騎兵A、計略B、弓兵C、魔法兵C、築城C、兵器C、水軍C、空軍Cを示す。
ラダス・キーシアス
ラダスはサイツ州で最高の軍師と称される知謀の士である。
・所属組織、地位や役職 アシュド直属軍師。
・物語内での具体的な行動や成果 アシュドの右腕として、ミーシアン軍の動きや兵力増強の情報を的確に報告する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 サイツの国政と軍事作戦の状況について重要な参謀役を務める。
・ステータス(能力値) 能力値の詳細は不明である。
バース・ミクニスア
バースはプルレード砦の守備を任されていた将である。
・所属組織、地位や役職 プルレード砦守備隊長。
・物語内での具体的な行動や成果 飛行船による急襲を受け、砦の破壊を目の当たりにして降伏を拒むが、最終的に説得を受ける。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 実直に砦の守備を務めていたが、敗戦後に捕虜となる。
・ステータス(能力値) 40歳時、武勇70台、統率、知略、政治力は60台である。
ケルビム・クランパー
ケルビムはクラックス of 丘の防衛を任された武将である。
・所属組織、地位や役職 サイツ軍・防衛指揮官。
・物語内での具体的な行動や成果 敵の別動隊の動きに戸惑い、兵力差から丘に留まる判断を下す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 プルレード砦を奪還するための動きを封じられる。
・ステータス(能力値) 能力値の詳細は不明である。
傭兵団シャドー
ファム(マザーク・ファインド)
ファムは情報収集と工作活動を専門とする傭兵団シャドーの団長である。中性的な美貌を持つ青年である。
・所属組織、地位や役職 傭兵団シャドー・団長。ローベント家・家臣。
・物語内での具体的な行動や成果 アルスが毒に倒れた際、解毒の手がかりとなる情報を迅速に収集する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 アルスの直属家臣となり、諜報活動の指揮を一手に担う。
・ステータス(能力値) 23歳時のステータスは統率35/44、武勇92/92、知略88/90、政治22/23、野心45である。適性は弓兵S、歩兵A、魔法兵A、兵器Aを示す。
メイトロー傭兵団
クラマント・メイトロー三世
クラマントは水上傭兵団の頭領であり、槍と弓において無類の腕前を誇る。
・所属組織、地位や役職 メイトロー傭兵団・団長。
・物語内での具体的な行動や成果 クランの命令に従い、カナレ防衛やその後の攻略戦に援軍として参加する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 圧倒的な戦闘力で戦局を支える強力な傭兵部隊を率いる。
・ステータス(能力値) 31歳時のステータスは統率91/95、武勇110/112、知略65/68、政治55/61、野心50である。適性は騎兵S、弓兵S、空軍A、歩兵A、魔法兵D、攻城C、兵器C、水軍C、計略Dを示す。
パラダイル州総督府
バンバ・ファナマーマフ
バンバはパラダイル州の将であり、自作の兵器「爆殺龍石」を開発した。
・所属組織、地位や役職 パラダイル軍・前線指揮官。
・物語内での具体的な行動や成果 新兵器「爆殺龍石」を用いて、クラン軍の進軍を一度は撃退する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 戦闘での数々の活躍により、パラダイル州内で大きく出世している。
・ステータス(能力値) 22歳時のステータスは統率70/92、武勇52/69、知略83/100、政治84/98、野心11である。適性は歩兵C、騎兵B、弓兵B、魔法兵B、築城D、兵器S、水軍D、空軍D、計略Sを示す。
マクファ・サーカシア
マクファはパラダイル州総督の長男であり、実直な性格をしている。
・所属組織、地位や役職 パラダイル総督家・嫡男。
・物語内での具体的な行動や成果 バンバを伴い、サマフォース帝国の皇帝に謁見する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 同盟交渉を通じて、後継者としての地位を固めようとする。
・ステータス(能力値) 52歳時のステータスは統率78/79、武勇88/88、知略66/66、政治70/71、野心33である。適性は歩兵A、騎兵A、弓兵C、魔法兵D、築城B、兵器C、水軍D、空軍B、計略Dを示す。
皇帝家(サマフォース帝国)
シャルル
シャルルはサマフォース帝国の第12代皇帝である。気弱そうな顔つきをしている。
・所属組織、地位や役職 サマフォース帝国皇帝。
・物語内での具体的な行動や成果 パラダイル総督らの謁見に応じるが、主導権は宰相に任せている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 実質的な権力はなく、家臣たちの傀儡としての立場にある。
・ステータス(能力値) 17歳時のステータスは統率22/54、武勇55/65、知略46/54、政治34/56、野心0である。適性は歩兵C、騎兵D、弓兵D、魔法兵D、築城D、兵器C、水軍C、空軍D、計略Dを示す。
シャクマ
シャクマは帝国勅使に随行する護衛武官であり、宰相を務める。野心が極めて高い。
・所属組織、地位や役職 サマフォース帝国宰相。
・物語内での具体的な行動や成果 シャルルに代わって、パラダイル州の直訴や外交交渉の実務を執り行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 皇帝を意のままに操り、帝国の実権を握り続ける。
・ステータス(能力値) 28歳時のステータスは統率77/88、武勇62/76、知略87/96、政治72/77、野心90である。適性は歩兵C、騎兵B、弓兵D、魔法兵D、築城D、兵器D、水軍C、空軍C、計略Sを示す。
ウモンガス家(キャンシープ州)
トワク・ウモンガス
トワクはキャンシープ州を治める領主である。
・所属組織、地位や役職 キャンシープ州・総督。ウモンガス家当主。
・物語内での具体的な行動や成果 兄弟たちのミーシアン対策に関する議論を黙って聞き届ける。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 一族を束ねる総督として、慎重な情勢判断を崩さない。
・ステータス(能力値) 能力値の詳細は不明である。
ヤード・ウモンガス
ヤードはウモンガス家の兄弟の一員である。
・所属組織、地位や役職 ウモンガス家・一員。
・物語内での具体的な行動や成果 ミーシアンの脅威について、兄弟たちとともに軍議を交わす。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 一族の行動方針について発言権を持つ。
・ステータス(能力値) 能力値の詳細は不明である。
カイ・ウモンガス
カイはウモンガス家の長男であり、次期総督と目される。目つきが鋭い堅物である。
・所属組織、地位や役職 ウモンガス家・長男。次期総督候補。
・物語内での具体的な行動や成果 ノインに研究費用の打ち切りをちらつかせ、軍議へ出席させる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 35歳の年齢であり、実質的な次期統治者として動く。
・ステータス(能力値) 能力値の詳細は不明である。
オットー・ウモンガス
オットーはウモンガス家の四男であり、おっとりした優しい顔つきの青年である。
・所属組織、地位や役職 ウモンガス家・四男。
・物語内での具体的な行動や成果 アンセルの合議に対し、自分が代理として行くことを提案する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 24歳でありながら、一族の外交において積極的な役割を担おうとする。
・ステータス(能力値) 能力値の詳細は不明である。
ノイン・ウモンガス
ノインはウモンガス家の三男であり、兵器の研究に没頭する華奢な男性である。
・所属組織、地位や役職 ウモンガス家・三男。兵器開発責任者。
・物語内での具体的な行動や成果 研究以外の行事に関心がなく、軍議の席で退屈そうに過ごす。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 優れた技術者であり、キャンシープ州の様々な発明品を創り出している。
・ステータス(能力値) 能力値の詳細は不明である。
ドルマーヌ家(シューツ州)
ブラン・ドルマーヌ
ブランはシューツ州を治める総督である。
・所属組織、地位や役職 シューツ州総督。ドルマーヌ家当主。
・物語内での具体的な行動や成果 軍師ヴァルトから、飛行船と同様の兵器を製造できる可能性についての報告を受ける。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ミーシアンの急激な技術躍進に強い危機感を抱く。
・ステータス(能力値) 能力値の詳細は不明である。
ヴァルト・ロバーツ
ヴァルトはブランが最も重用する優秀な軍師であり、ブランとは幼馴染である。
・所属組織、地位や役職 ドルマーヌ家・軍師。
・物語内での具体的な行動や成果 ミーシアンが飛行船を導入した現状を報告し、不戦条約の締結を提案する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 40歳であり、シューツ州の戦略決定に決定的な影響力を持つ。
・ステータス(能力値) 能力値の詳細は不明である。
ブレインド家(ローファイル州)
セドリック・ブレインド
セドリックはローファイル州を治める総督である。
・所属組織、地位や役職 ローファイル州総督。ブレインド家当主。
・物語内での具体的な行動や成果 ミーシアン征伐軍の件について、娘のエレノアに作戦の指揮を任せる決定を下す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 他州の消耗を待ち、のちに帝国中央を狙う大局的な戦略を描く。
・ステータス(能力値) 能力値の詳細は不明である。
エレノア・ブレインド
エレノアはセドリックの娘であり、戦女神と称される16歳の美少女である。
・所属組織、地位や役職 ローファイル州・将、征伐軍指揮官。
・物語内での具体的な行動や成果 一万の兵を率いてミーシアン征伐軍に加わることを志願する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 百戦無敗の経歴を持ち、その高名はサマフォース大陸全土に轟いている。
・ステータス(能力値) 能力値の詳細は不明である。
ガット・ブレインド
ガットはセドリックの長男であり、重度のシスコンの気がある。
・所属組織、地位や役職 ブレインド家・長男。次期総督候補。
・物語内での具体的な行動や成果 エレノアを心配し、同行を強く求めるが、彼女に一蹴される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 25歳であり、次期総督としての訓練と情報収集を重ねている。
・ステータス(能力値) 能力値の詳細は不明である。
その他(民間など)
酒場のマスター
酒場のマスターはハーバルの町で酒場を営む店主である。
・所属組織、地位や役職 ハーバル町の酒場・店主。
・物語内での具体的な行動や成果 アシュドのために、地下の秘密軍議室への通路を提供する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 裏社会の情報や密会場所の管理を担う。
・ステータス(能力値) 能力値の詳細は不明である。
登場集団
サイツ州の有力な貴族たち
・所属組織、地位や役職 サイツ州・有力諸侯たち。
・物語内での具体的な行動や成果 アシュドの命令に従い、ミーシアン王国の動向について軍議を行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 アシュドへの忠誠を誓い続け、辺境に放逐された後も彼の支持基盤となる。
飛行船の船員たち
・所属組織、地位や役職 カナレ軍・飛行船操縦士および乗組員。
・物語内での具体的な行動や成果 完成した飛行船を巧みに操縦し、空中からの爆撃作戦を支える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 新たな空戦要員として、最新兵器の運用体制を支える。
カナレの魔法兵たち
・所属組織、地位や役職 カナレ軍・魔法兵部隊。
・物語内での具体的な行動や成果 ムーシャの指導を受けて魔法の命中精度や威力を飛躍的に向上させる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 飛行船に乗り込み、上空からの強力なアタッカーとして機能する。
クラン軍の軍議参加貴族・兵士たち
・所属組織、地位や役職 ミーシアン王国・諸侯および指揮官。
・物語内での具体的な行動や成果 クランの招集に応じ、サイツ州への軍事侵攻と「断罪戦争」の開始を可決する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 国王クランへの忠誠のもと、一致団結して対外戦争へと突入する。
メイトロー傭兵団の兵士たち
・所属組織、地位や役職 メイトロー傭兵団・団員。
・物語内での具体的な行動や成果 クラマントの指揮下でカナレ軍とともに出陣し、強力な白兵戦を展開する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 高い戦闘力を誇る精鋭として、主力戦闘を補佐し続ける。
リクヤたちの部隊の兵士たち
・所属組織、地位や役職 フジミヤ精鋭部隊・兵士。
・物語内での具体的な行動や成果 リクヤの指揮のもと、まとまりのある組織的行動で砦攻めに参加する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 新設された部隊として、実戦の中で練度を鍛え上げていく。
ヘイネの丘の築城部隊の兵士たち
・所属組織、地位や役職 カナレ軍・築城兵。
・物語内での具体的な行動や成果 ロセルやリクヤの指示に従い、戦を優位に進めるための前線砦の改修を突貫で行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 迅速な陣地構築によって軍の安全を確保する。
プルレード砦の守備兵たち
・所属組織、地位や役職 サイツ軍・砦守備部隊。
・物語内での具体的な行動や成果 飛行船からの上空爆撃に対処できず、砦の門や塔を次々と破壊されて混乱に陥る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 敗戦の将バースに従い、武器を捨ててカナレ軍に降伏する。
クラックスの丘の守備兵たち
・所属組織、地位や役職 サイツ軍・丘陵守備部隊。
・物語内での具体的な行動や成果 敵の別動隊に動きを牽制され、プルレード砦の救援に動けず静観を余意なくされる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 砦の陥落を知り、戦力の壊滅を防ぐため、アシュドの命令に従って退却する。
サイツ州の密偵・間者たち
・所属組織、地位や役職 サイツ州・工作員。
・物語内での具体的な行動や成果 ミーシアン王国内へ潜入し、カナレの情勢や飛行船の開発状況を調査する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 アシュドへの情報伝達経路を確保し、戦略的な対抗策を支援する。
オーロス城の守備兵たち
・所属組織、地位や役職 サイツ軍・オーロス城守備兵。
・物語内での具体的な行動や成果 カナレ軍の侵攻に対して備えを固めるが、アシュドの撤退決定に従い、兵を引く。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 無駄な消耗を避けるため、後方の防衛線へと移動する。
ルンド城のサイツ軍・パラダイル軍の兵士たち
・所属組織、地位や役職 サイツ・パラダイル同盟軍・守備部隊。
・物語内での具体的な行動や成果 クラン率いる大軍の攻城を、爆殺龍石などの新兵器を用いて退ける。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 圧倒的な兵力差を覆す堅固な籠城戦を徹底する。
キャンシープ州の軍議参加貴族たち
・所属組織、地位や役職 キャンシープ州・所属領主たち。
・物語内での具体的な行動や成果 ウモンガス家の呼びかけに応じ、ミーシアンの勢力拡大への対処法を議論する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 帝国中央との外交や同盟の必要性を検討する。
ローファイル州の軍議参加貴族たち
・所属組織、地位や役職 ローファイル州・所属領主たち。
・物語内での具体的な行動や成果 セドリックの提案する、ミーシアンとアンセルの共倒れを狙う作戦を承認する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 エレノア率いる一万の兵を征伐軍へと送り出す。
ミーシアン王国の軍議参加貴族たち
・所属組織、地位や役職 ミーシアン王国・所属諸侯。
・物語内での具体的な行動や成果 アルス暗殺未遂の報に怒り、サイツ断罪戦争の決定に大いなる士気を高める。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 新王クランのもとで確固たる軍事共同体を形成する。
現サイツ国王カイルの補佐・側近貴族たち
・所属組織、地位や役職 サイツ州・国王補佐。
・物語内での具体的な行動や成果 政治に興味を示さないカイルに代わって、アシュドやボロッツらと国政を主導する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 カイルを傀儡としながら、サイツ州の主導権を事実上維持する。
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展開まとめ
プロローグ
サイツ州の軍議
サイツ州都ペンドラでは、総督アシュド・リンドヴァルを中心に有力貴族たちが軍議を開いた。カナレ郡攻略とアルス暗殺に失敗したボロッツ・ヘイガントは、今後の暗殺がさらに困難になると報告した。軍師ラダス・キーシアスは、ミーシアン州が兵力を増強しており、近く攻勢に出る可能性を指摘した。
サイツ州は山地が多く、豊かなミーシアン州に比べて物資や兵力に劣っていたため、正面からの戦いには不安があった。そこでアシュドは、パラダイル州との同盟成立を明かし、パラダイル側からミーシアンへ奇襲を仕掛ける作戦を提示した。ラダスも同盟が続くうちに攻めるべきだと賛同し、サイツ州は戦争準備を開始した。
第一章 飛行船完成
完成した飛行船
アルスは飛行船完成の報告を受け、リーツ、ロセル、リシア、シャーロットとともにシン・セイマーロの工房を訪れた。完成した中型飛行船は十五人を乗せられ、馬並みの速度で飛行し、少量の魔力水で運用できた。
一同は試乗し、飛行船が高所から安全に移動できることを確認した。ロセルやリーツは軍事利用の価値を高く評価し、アルスは量産のための造船所建設を検討することにした。リシアは費用を賄うため、クランに資金援助を求める案を出した。
サイツとパラダイルの侵攻
飛行船運用を協議している最中、クランからサイツ州とパラダイル州が同盟し、ミーシアン北部へ侵攻したとの報告が届いた。すでにルンド郡が攻撃を受けており、カナレには防備を固めるよう命令が出された。
アルカンテス城でも軍議が開かれ、クランと軍師リーマスらはルンド郡の防衛が困難だと判断した。カナレを単なる陽動に使う案では効果が薄いとして、実際にサイツ州へ侵攻させ、敵軍を引き戻す作戦が検討された。
最終的にクランは、ローベント家にサイツ州侵攻を命じ、援軍一万五千とメイトロー傭兵団を派遣することを決めた。
第二章 プルレード砦攻略戦
サイツ州への侵攻
クランの命令を受けたアルスたちは軍議を開き、援軍を合わせた二万五千の兵でサイツ州へ攻め込むことにした。目標はプルレード郡であり、敵の兵力をミーシアン北部から引き戻すことが目的だった。
堅牢なプルレード砦を攻略するため、カナレと砦の中間にあるヘイネの丘へ即席の砦を築き、そこまで飛行船を運んで攻撃に使う作戦が立てられた。飛行船は攻撃用に改造され、ブラッハム隊とシャドーが輸送時の護衛を担当した。
ヘイネの丘の築城
リーツ率いる軍はヘイネの丘へ進み、シャーロットら魔法兵の土魔法を活用して砦を築いた。敵軍が妨害に出たものの、カナレ軍はこれを防ぎ、五日ほどで飛行船を運用できる拠点を完成させた。
一方、プルレード郡長バースは当初、飛行船をそれほど脅威とは考えていなかった。しかし、カナレ軍が短期間で砦を完成させ、飛行船を運び込もうとしていると知ると、密偵による破壊工作を命じた。
飛行船の輸送
アルスはリシアにカナレの留守を託し、シンや護衛部隊とともに飛行船をヘイネの丘へ運んだ。途中で火矢や密偵による妨害を受けたが、ファムやブラッハムたちがすべて阻止し、飛行船は無傷で到着した。
軍議では、クラックスの丘にいる敵軍を一部の兵で足止めし、主力をプルレード砦へ向けるロセルの案が採用された。飛行船はシャーロットを乗せ、砦上空から攻撃することになった。
飛行船による攻城戦
飛行船は砦からの攻撃が届かない高度を保ち、シャーロットの爆発魔法で対魔法防壁や魔法塔を破壊した。プルレード砦は上空から一方的に攻撃され、防御機能を失った。
郡長バースは混乱する砦内で指揮を立て直せず、避難中に転倒して意識を失った。カナレ軍は崩れた防御を突破して砦へ突入し、短時間で制圧した。
プルレード郡の制圧
捕らえられたバースに対し、アルス、リーツ、ミレーユは降伏を求めた。ミレーユは飛行船の戦力を示し、抵抗を続ければオーロス城やクラックスの丘でも犠牲が増えると迫った。バースは降伏を受け入れ、両拠点へ降伏命令を送った。
クラックスの丘はすぐに従い、オーロス城も数度の勧告を経て降伏した。これによりプルレード郡全域がカナレ軍の支配下に入った。
戦勝とサイツ軍の撤退
プルレード砦では祝勝会が開かれ、兵士たちは飛行船の活躍を喜んだ。クラマントやブラッハム、フジミヤ三兄弟らも飛行船に強い興味を示した。
一方、サイツ総督アシュドはプルレード郡陥落を確認し、ミーシアンへ侵攻していた軍の一部を撤退させる決断を下した。パラダイル側はルンド城の維持を求めたため、一部を残してサイツ州内の防衛に戻すことになった。
リシアと子供たち
カナレに残ったリシアは、レンの勉強を見ながらアルスたちの帰還を待っていた。クライツは戦に参加できなかった悔しさから無理な訓練を続けていたが、リシアに休息の必要性を諭された。
夜にはリシア、レン、クライツの三人で過ごし、戦場にいるアルスたちの無事を願った。数日後、プルレード砦攻略成功を知らせるアルスの手紙が届き、リシアは喜んで返事を書いた。
第三章 クアット郡攻略
ルンド城の奪還
サイツ軍の撤退を受け、クランはルンド城奪還へ動いた。パラダイル軍を率いるバンバは、火薬と炎の魔力水を利用した新兵器「爆殺龍石」を投入し、カタパルトから爆発する石を放ってクラン軍に大きな損害を与えた。
クラン軍は兵の間隔を広げて対策したが、なおも被害を受けた。しかし爆殺龍石の数には限りがあり、バンバは長期防衛が困難と判断して撤退した。残ったボロッツもクラン軍に押され、ルンド城は奪還された。
クアット郡への進軍
クランはアルスにクアット郡への進攻を命じた。アルスたちはまずソーカン砦を標的とし、飛行船を使って防壁を破壊した。地上部隊も爆発魔法で側面を突破し、砦を制圧した。
ソーカン砦にはクランも到着し、シンから飛行船の性能について説明を受けた。クランはその軍事的価値を高く評価し、今後の開発支援を約束した。
クアット城への攻勢
クラン軍はクアット城へ向けて進軍した。サイツ軍は大型触媒機を多数配備して街道を守っていたが、飛行船が上空から攻撃して二十以上を破壊したことで守備は崩れた。
総大将アシュドは兵を立て直しながら撤退し、街道には魔法罠を仕掛けた。追撃したミーシアン軍は罠によって損害を受けたため、クランは追撃を中止した。
アシュドは戦況を不利と判断してクアット城を放棄し、最低限の兵と密偵を残して撤退した。クラン軍は飛行船で城の防壁や魔法塔を破壊し、少ない抵抗でクアット城を占領した。
サイツの降伏
クランは新領地の安定を優先し、ミレーユやシャドーを治安維持に派遣した。同時に飛行船の量産を進め、五隻を揃えて戦力を強化した。
これ以上の戦争では勝てないと判断したアシュドは、ミーシアンへの従属を申し出た。サイツ州はサイツ王国として独立しながらミーシアンに従属し、プルレード郡とクアット郡はミーシアン領として残った。新国王には前総督の甥カイルが就き、クランの息子との政略結婚によって関係が強化された。
三郡の領主となったアルス
戦後、クランはプルレード郡とクアット郡の新たな領主を決める会議を開いた。アルスが候補として推薦され、最終的にクランも適任と判断した。
アルスはカナレ郡を含む三郡を治める大領主となった。領地拡大による責任の重さを感じながらも、家臣たちの力を借りて統治していく決意を固めた。
ミーシアン征伐の動き
ミーシアンの勢力拡大と飛行船の登場を受け、パラダイル州総督マクファはサマフォース皇帝に征伐軍の編成を求めた。宰相シャクマはこれを利用し、アンセル州内の反抗勢力を戦場へ送り込んで排除しようと企んだ。
キャンシープ州、シューツ州、ローファイル州でも征伐軍参加が検討された。各州はそれぞれセンプラー港の獲得、飛行船対策、アンセル攻略といった思惑を抱きながら参戦を進めた。ローファイル州ではエレノアが一万の兵を率いることを決めた。
一方、元サイツ総督アシュドは辺境領主として力を残し、各州へ密偵を送りながらミーシアンから離反できる機会を探っていた。
クランも飛行船の増産を進める一方、三郡を支配するまでになったアルスの影響力を警戒し、ローベント家へ監視役を送り込むことにした。
エピローグ
新領地の統治
カナレへ戻ったアルスは、家臣たちにプルレード郡とクアット郡を与えられたことを報告した。領地が一気に広がったため、すぐに統治体制を整える軍議が開かれた。
ミレーユはクアット郡代官となり、ブラッハム隊も治安維持と監視のため配置された。プルレード砦にはトーマス、オーロス城にはリクヤ、マイカ、タカオ、ランベルクにはヴァージが派遣された。
カナレにはリーツ、ロセル、シャーロットらが残り、アルスを支えることになった。人材不足はさらに深刻になったため、アルスは鑑定スキルを使って新たな有能な人材を集め、三郡の統治を安定させていく方針を決めた。
番外編 休暇
川辺の休暇
多忙な日々が続いたため、リシアの提案でアルスと家臣たちはカナレ郡の川へ遊びに出かけた。シャーロットやリーツ、ロセル、ムーシャ、レン、クライツらは泳ぎや釣りを楽しみ、アルスも仕事を離れて穏やかな時間を過ごした。
アルスとリシアは川岸で手をつなぎ、静かな時間を楽しんだが、シャーロットが魔法で魚を捕ろうとして大きな水しぶきを上げ、二人まで濡らしてしまった。
川辺の食事
リーツや子供たちが捕った魚をムーシャが料理し、焼き魚や貝入りのスープが振る舞われた。家臣たちは食事と会話を楽しみ、シャーロットはムーシャの料理を気に入って嫁にしたいと冗談を言った。
夜、アルスはリシアと一日の出来事を振り返った。久しぶりの休暇で心身を休めたアルスは、またこうした時間を持ちたいと考えながら、翌日からの仕事に向けて気持ちを新たにした。
同シリーズ
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その他フィクション

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