どんな本?
“転生したらスライムだった件”とは、伏瀬 氏による日本のライトノベルで、異世界転生とファンタジーのジャンルに属す。
主人公は、通り魔に刺されて死んだ後、スライムとして異世界に転生。
そこで様々な出会いと冒険を繰り広げながら、魔物や人間との交流を深めていく。
小説は2014年からGCノベルズから刊行されており、現在は21巻まで発売されている。
また、小説を原作とした漫画やアニメ、ゲームなどのメディアミックスも展開されており。
小説のタイトルは「転生したらスライムだった件」だが、略称として「転スラ」と呼ばれることもある。
読んだ本のタイトル
転生したらスライムだった件 5 (That Time I Got Reincarnated as a Slime)
著者:伏瀬 氏
イラスト:みっつばー 氏
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あらすじ・内容
リムル不在のテンペストは、騒がしいながらも穏やかな日々が続いていた。
転生したらスライムだった件 5
しかしそれは、『武装した人間の集団がテンペストへ向かっている』との奇妙な情報がもたらされた事により終わりを迎える。
重ねるようにして、友好を結ぶ獣王国ユーラザニアから、魔王ミリムに宣戦布告されたとの凶報が入った。
騒然とする中、遂には主であるリムルとの思念伝達まで途切れてしまう。
拠り所を失ったテンペスト幹部達。それは、絶望と狂乱の幕開けでしかなかった。
そして、新たなる魔王が誕生する――。
前巻からのあらすじ
東京大空襲の時に異世界に来たシズさんの心残り、色々な国で異世界召喚されたけど、幼いせいで力が扱えず捨てられた子供達を助けるためにリムルは人間の国に行く。
そんな子供達はヤサグレており。
リムルは影に潜んでるランガを使役して強引に言うことを聞かせる。
そんな彼等を直接見て診断した結果。
中で荒れ狂ってる力と精霊を統合したら安定させれると判明。
所在不明の精霊の棲家を偶然探し当て、棲家に行くと其処には魔王ラミリスが・・
魔王か?
えらく可愛らしい魔王だこと。
まだ幼生体なんだ。
そんなラミリスの協力の下、子供たちと精霊を融合させて子供達の力を安定させた。
感想
ジュラ・テンペストが国として樹立。
ジュラの森を縦断する街道を敷設してドワーフの国ドワルゴンとブルムント王国を繋いでテンペストが経済の中心になりそうになり。
それを面白く思わないファルムス王国と魔物の存在を許さない西方聖教会が動き出した。
ジュラ・テンペストにはファルムス王国の国王が自ら軍2万人を率いて攻め寄せて来た。
その手始めに異世界人3人をジュラ・テンペストの街の中で騒動を起こさせて、さらに騎馬部隊を突撃させてシオンを含めて100人の犠牲者が出てしまう。
さらに帰り際に無条件降伏せよと降伏勧告も出して来た。
そして、当主のリムルにはシズエの弟子のヒナタが立ち塞がる。
シズエがスライムに喰われた。
そのスライムはシズエの姿をしている。
そんな情報を聞かされたヒナタは問答無用でリムルに戦闘を吹っかけて来て、リムルは辛くも逃げる事に成功。
その後、ジュラ・テンペストに戻るのだが、、
100人の犠牲に愕然とし、感情が荒れ狂いそうになるのを抑えていたのだが、、
そこに冒険者のエレンから死者を生き返らせる御伽噺があると聞く。
その正解確率は3.14%。
それでもやる価値はあるとリムルは魔王になる事を決意する。
そしてリムルは単独でファルムス王国の軍隊2万人を殺し。
軍を率いていたファルムス国王と最高司祭のレイヒムと魔術師長のラーゼンを残し全滅。
ファルムス国王とレイヒム司祭を捕らえたところでリムルの魔王化が始まってしまい、ラーゼンは2万人の軍人の死体を利用して悪魔を召喚して捕らえるように命令する。
その召喚した悪魔が原始の黒と呼ばれているトンデモ悪魔だったのだが、、
それをリムルが知るのは後の事。
その悪魔はラーゼンを軽く捻って捕らえる。
そして、進化を遂げたリムルはシオン達を復活させるために儀式を始めるのだが、、
少し魔素量が足りない。
それを召喚した悪魔の3人のうち2人を魔素に変えて儀式を行ったら、、
シオン達は復活をした。
そして、リムルはこんな騒動を裏から糸を引いていた魔王クレイマンを討伐するために準備を始める。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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展開まとめ
序章 滅びの日
ミリムの宣戦布告
魔王カリオンは遠方から迫る高密度の魔力を感知し、相手がミリム・ナーヴァであると断じた。ミリムは居城上空に静止して、魔王間の協定を一方的に破棄し、カリオンへの宣戦を告げ、一週間後の再来を通達したのである。
緊急招集と情勢判断
カリオンは直ちに獣王戦士団を招集し、三獣士らに事態を説明した。各魔王の反応は冷淡で、フレイとクレイマンは不信、ヴァレンタインは沈黙、ラミリスは取り合わず、ギィは不干渉であった。カリオンはミリムの短慮だけでは説明がつかないと見て、背後事情の存在を示唆した。
三獣士の応答と戦略決定
スフィアは先陣を望んだが、フォビオは以前の失敗を踏まえてミリムは別格と進言した。カリオンはその見立てを認め、ミリムの強さを自覚しつつも、自身の力を示す好機と捉えた。ただし王としての判断から、ミリムが単独なら戦士団は戦域から離脱し民の保護を優先する方針を命じ、交戦は自分一人に限定すると宣した。
避難と戦時体制への移行
方針は迅速に固まり、非戦闘員の退避が開始された。アルビスの指揮で数万の民はジュラの大森林の魔国連邦へ向かい、国内は一週間で空となった。国内に残るのはスフィアとフォビオ率いる少数の獣王戦士団のみであり、ユーラザニアは戦時体制へ移行した。
決戦の幕開け
運命の日、カリオンは霊峰を背に飛翔し、到来したミリムを迎撃した。呼びかけへの応答はなく、戦闘は即時に開始された。カリオンの渾身の拳と連撃はミリムの多重結界に阻まれ、白虎青龍戟の斬撃も魔剣天魔に受け止められた。ミリムの挙動には意識の希薄さがあり、操られている可能性が示唆されたが、交渉の余地はないと判断された。
獅子王の真なる姿と必殺
カリオンは獣人化を昇華させたユニークスキル百獣化を顕現し、朱雀の冠・玄武の宝帯・白虎青龍戟に魔力を通して真価を解放した。全闘気を一点収束させた獣魔粒子咆を対個人仕様で放ち、魔素が枯渇しかけるほどの一撃で勝機を見いだしたのである。
ミリムの反撃と都市消失
しかしミリムは無傷であり、左手が痺れたとだけ言及して反撃を宣言した。続く竜星爆炎覇は城とその麓の町並みを音もなく消し去り、広範囲を光と衝撃で塵へ変えた。カリオンは上方退避で直撃を回避したが、眼下の壊滅を見て両親の戒めを思い起こし、相手が次元の違う破壊者である現実を悟った。
天空女王の暗躍と結末
退避を図るカリオンの背後に、気配を殺して接近したフレイが現れた。ミリムの圧に紛れての奇襲であり、フレイは言葉少なに介入し、カリオンの意識は闇に沈んだ。かくして獣王国ユーラザニアはこの日を滅びの日として刻み、獣人族の歴史に最悪の一日を記したのである。
一章 穏やかなる日々
潜入任務の継続と目的
ミュウランは魔王クレイマンの命で、魔国連邦とその長リムルの詳細調査を続行していた。過去の報告では、町の発展度、ミリムとリムルの友誼、ドライアドによる盟主承認、水晶球に記録した暴風大妖渦との戦闘映像など、交渉材料となる情報を提示しており、クレイマンの信頼と単独行動の裁量を得ていたのである。
自由行動と警戒体制
ミリム滞在中は一切の魔法通話や魔法行使を控え、妖気も極小化して潜伏を徹底した。ミリムが町を去った後も姿を悟られず観察を継続し、クレイマンからの追加指示が乏しい状況を逆手に取り、逃亡準備と情報収集を並行させた。
侵入経路の選定とファルムス到達
魔物の町と取引する人間勢力に注目し、ヨウム一行へ合流する策を立案した。人の姿へ擬装し、ファルムス王国のニドル・マイガム伯爵領に入域、自由組合支部で身分証を取得する方針へ転じたのである。
ギルド登録と小競り合い
支部で荒くれ者の注目を浴びるも挑発は退け、当初は採取部門登録を志向したが、抑止効果と迅速な信用獲得を優先して討伐試験に切り替え、圧倒的実力を示した。顔役イサークの干渉は逆に取り込みへと転化させ、以後の地理・慣習情報の収集に活用した。
ヨウム紹介の段取りと想定外の昇格
支部長フランツの推薦でヨウム一行に接触したが、当初は魔法要員過多を理由に拒絶された。ミュウランは即応の実力証明を選択し、立会人にフランツとイサークを置いて実戦形式の模擬戦へ移行した。
模擬戦の戦術と完封勝利
開始直後、ヨウムの突進を読み、地面陥没と「地面固定」を組み合わせて機動を封殺し、続けて状態異常で支援要員の詠唱を遮断した。対魔法耐性鎧の性質と地形制御を噛み合わせた単純にして必勝の運用であり、三対一を短時間で制圧してみせたのである。
受け入れと役割確定
完敗を認めたヨウムは対魔法戦の指導を要請し、ロンメル・ジャギも教導を願い出た。ミュウランは限定的支援を承諾しつつ合流を受諾、結果として相談役かつ軍事顧問という、方針決定に関与できる地位を得た。目立たぬ呪術師としての潜入は想定外に崩れたが、作戦効率と影響力の点で利得が勝ると判断された。
内心の算盤と今後の布石
ミュウランはクレイマンの監視圏外での自由度拡大と、魔国連邦内部事情の深部把握を同時に達成した。人間側の英雄物語の演出計画にも接続し得る立場を確保し、以後の交渉材料と逃走経路の両面で優位を築いたのである。
潜入の継続と内心の変化
ミュウランはクレイマンの任務としてヨウム一行へ潜入しつつも、いつの間にか軍事顧問という重職を任され、人間社会との往来に心が浮き立つ自分を自覚した。魔人である正体は伏せつつ、当面は現状を享受する選択を取ったのである。
職責の拡大と実務の過密
彼女の主務は対魔物・対魔法戦の戦術指南であり、魔法使いのみならず一定の素養を持つ隊員全般へ教導を拡張した。高等魔法や魔人固有領域は秘匿しつつ、人間が扱える範囲を見極めて教授した。また通信水晶による定時連絡に連動して幹部会へ参画し、各部隊への指示、段取り、ヨウムへの報告までを実質的に一手に担う体制へ移行した。知的支援の要となったロンメルは吸収が早く、彼を中核人材へ育成することがミュウランの目下の目標となった。
巡回討伐と運用整備
優先度に沿って村々を巡回し、発生魔物の討伐、駐留要員の補充・交代、物資・指揮系統の調整を遂行した。彼女は本来の潜入目的との乖離と負荷の大きさに不満を抱えながらも、計画の継続性を優先して任務を遂行した。
テンペスト側の動きと実力の把握
一方、獣王国からの客分であるグルーシスは、テンペストでハクロウの苛烈な基礎訓練に参加し、その圧倒的な実戦力を痛感した。ゴブリンライダー隊の練度、リグルや龍人族、ゲルドらの戦力、鬼人達の個体性能を観察し、テンペストが小国の域を超える軍事的潜在力を有するとの結論に至った。
ヨウム一行との合流準備
ヨウム一行が帰還し、グルーシスは一行の中の美女ミュウランに興味を抱く。ヨウムは彼女の実力を示すべく模擬戦を提案し、グルーシスは上位魔人としての耐性と自己再生を根拠に楽観視した。
模擬戦の決着と評価の転換
ミュウランは地形制御と拘束、状態異常封じを組み合わせる短時間の戦術で、接近戦を狙う相手の機動を即座に奪取し、グルーシスを完封した。彼は敗北を潔く認め、ミュウランの実力を評価すると同時に、ヨウムとの兄弟分の約束を受諾したうえで、最終判断は魔王カリオンの命令に従うという獣人の忠節規範を明言した。
陣容拡充と次段への布石
グルーシスは任務である見聞拡張を兼ねてヨウム一行への同行を表明した。こうして一行は、ミュウランの統制と教導、グルーシスの戦力参加という新たな体制を得て、魔国連邦の首都テンペストへの本格的接触に向けて布陣を整えたのである。
悪巧みの発端
訓練場でミュウランの戦術を目の当たりにしたゴブタは、ヨウムとグルーシスを焚きつけ、鬼人の剣士ハクロウを“落とし穴+拘束+状態異常”で嵌める策を提案した。ミュウランは安易な条件戦を否定し、囮役をゴブタに据えた上で、開始直前に地面を液状化して機動を封じる現実的運用へ修正したのである。
模擬戦の布陣と狙い
囮のゴブタ、側面から仕掛けるヨウム、決定打を狙うグルーシスという三位一体で、ミュウランは地形制御と小規模魔法(暗幕・閃光音響)で初動を鈍らせる段取りを組んだ。目的は「速さに依存する剣士の足を奪い、瞬間的優位を作る」ことであった。
達人の対応力
開始直後、ハクロウは液状化地帯を〈瞬動法〉めいた歩法で無効化し、視線誘導から作戦意図を看破した。暗幕で視界を断っても気配と魔力の流れを読む「魔力感知」で先取りし、閃光音響も行動阻害にならず、ゴブタとヨウムを一瞬で制圧したのである。
戦術の破綻点
ミュウランは範囲大魔法を封じた状況で、事前詠唱のストックと段階的起爆で支援に回ったが、相手も「魔力感知」を有しているため先読みに遭い、要の時間差制圧は機能不全となった。加えてグルーシスは“見るな”と言われた起爆点を凝視して自爆的に感覚麻痺を受け、連携の綻びが決定的となった。
敗因の総括と教訓
敗北を即座に認めたミュウランは、作戦が読まれた主因を「味方の視線・挙動が罠の位置を露呈」「即席編成ゆえ性格把握と役割徹底が未熟」と分析した。ハクロウも「策士であっても味方理解なくして連携は成立せず」と講評し、性格適合から鍛え直す方針で一致した。
お仕置きと再発防止
ハクロウは三名を正座で三時間反省させた上で、「リムルやベニマルを試す真似は厳禁」と念押しした。ゴブタとヨウムは、リムルが自ら感知能力に制限を課して常在鍛錬している(というグルーシスの解釈)と聞き入れ、以後の軽挙妄動を控える誓いを立てた。
温泉での“第二の悪巧み”
入浴後、三人は“混浴”なる規律があるとゴブタが吹聴し、ミュウランのみならずシュナやシオンを巻き込む計画を口走る。隣浴場で一部始終を聞いた当人達は冷笑を浮かべ、のちに相応の“制裁”が下り、計画は未然に瓦解した。
位置づけ
一件はテンペスト側の基礎戦力と達人級の間合い運用を浮き彫りにし、同時にミュウランの統制下での人間側戦術改善の必要を示した。以後、ミュウランは隊員の性格把握と連携設計から再構築を図る決意を固めたのである。
ヨウムの告白とミュウランの動揺
数週間の共同生活を経て、ヨウムが人目のない森でミュウランへ直球の愛の告白。ミュウランは動転しつつも即答できず保留。理由は二つ――魔王クレイマンに握られた「支配の心臓」による隷属と、人間であるヨウムの短い寿命への不安。以後もヨウムは急かさず、気遣いだけを示し続け、ミュウランの心は次第に傾いていく。一方でグルーシスは密かに複雑な心境を覗かせる。
穏やかな日常に差す影
“滅びの日”の一週間前、クレイマンから久々の魔法通話。上機嫌な口調で、ミュウランの功績を讃えつつ「解放」も仄めかすが、すぐに本性を剥き出し――「最後のひと働き」を命じ、逆らえばミュウランだけでなく「愛しい男」も殺すと脅迫。ミュウランは心底の警戒を隠し、感情を悟らせまいと平静を装う。
鎖の自覚と選択
ミュウランは通話を「罠」と見抜きながらも、心臓を握られた現実の前に抗えない。命令に従う他に、ヨウムを守る道はないと判断。もし本当に解放が得られるなら――その時はヨウムの想いを受け入れたいという、抑えがたい願いが芽生える。結果、彼女は何事もなかったかのように任務へ復帰しつつ、胸中で覚悟を固めた。
二章 災厄の前奏曲
王国中枢の思惑と被害折込
ファルムス王国では、ヴェルドラ消失を受けて辺境守備の要請が殺到したが、中枢は王権強化を優先し、辺境を盾として損失を許容する方針を固めていた。私腹を肥やす領主を救う必要はないとの判断が共有され、被害は折り込み済みであるとされた。
英雄ヨウムの噂と中央の困惑
魔物の大侵攻は起こらず、代わって民間の英雄ヨウムがオークロード勢を撃退したとの噂が広まった。自由組合の報告で出現自体は確認されたが、脅威は沈静化しており、騎士団の出番は消えたという結論に落ち着いていた。
税収急減と原因究明
ところが短期で税収の大幅減が顕在化し、月別比較でも貿易利益の急落が明白となった。冒険者と行商人の流入が目に見えて減少し、とりわけ高収益だったジュラ周辺諸国からの商隊が途絶えたことが致命的要因と判明した。
魔物の国テンペストの台頭と安全交易路
密偵の報告により、ジュラの大森林に魔物の町が成立し、テンペストと称する国家が街道と派出所網を整備して安全な陸路交易を実現している事実が共有された。発炎筒に応じた即応救助などの制度が商人に支持され、商流はファルムス経由から新路へ移っていた。
緊急会議と異世界人の反応
エドマリス王は貴族と大臣を招集し報告を開示した。リムル=テンペストが盟主であるとの情報に場は騒然となり、異世界人の田口省吾が侮蔑を示して席を荒立てたが、王宮魔術師長ラーゼンが支配魔法で制止した。橘恭弥は異世界知識を補足し、制度理解に一役買った。
ラーゼンの制御と召喚者の素性
ラーゼンは召喚者の増長を警戒しつつ、制御は万全で計画に支障はないとの姿勢を崩さなかった。田口省吾は三年前に召喚された高戦闘力の手駒であり、橘恭弥は二年前の召喚で比較的新参という位置づけであった。
テンペストの制度と住民像の衝撃
報告では、住民の多くが進化個体で構成され、言語と技術を備え、治安と商取引の仕組みを運用しているとされた。進化個体が町全体を占める事例は前例がなく、討伐の正当化も難しい状況が明らかになった。
失われる優位性と戦争検討の逡巡
ファルムスの国力は観光と貿易に依存し、工業や資源に乏しい。新交易路の成立は死活問題であり、討伐を志向する空気が生まれたが、提言は責任の集中を招くため誰も口火を切れなかった。西側諸国、とりわけ関係を持つブルムンド王国への説明も重荷であった。
動員可能戦力の算定とリスク
即応可能な常備戦力として王立騎士団、魔法士連団、貴族連合騎士団、傭兵遊撃団の計一万七千が挙げられた。しかし相手は一万超の進化魔物であり、Bランク相当の個体が混在する可能性が高い。王直属戦力の損耗は許容し難く、確実な勝利にも甚大な代償が予見された。
調略・外交の要請と膠着
戦うとしても冒険者の取り込みと各国外交の後ろ盾が不可欠で、利益なき維持管理の負担だけが残る現実が重かった。利権の喪失は避けたいが自らの損失も負えないという思惑が交錯し、誰も決定打を示せないまま、会議は膠着していた。
会議の掌握と迅速な対策
エドマリス王は貴族達の逡巡を見抜き、既に側近と国益維持と拡大を両立させる方策を練っていた。狙いは、魔国連邦を放置して既成事実化させず、いま叩くことで主導権と外部名分を握ることであった。
教会との利害一致と大義名分
ラーゼンとフォルゲンの見立ては、テンペストの脅威度を災厄級〜災禍級と評価する内容で一致した。ここに最高司祭レイヒムが介入し、西方聖教会のニコラウス・シュペルタス枢機卿が「神の敵対国」と認定、討伐容認の方針を示していると伝達した。被害発生時は教会が救援し、討伐宣言と同時にファルムスが先陣を切れば「人類の剣」の栄誉を得るという枠組みが固まった。
戦力投入と統治構想
神殿騎士団の投入許可が下り、王立騎士団・魔法士連団・在留神殿騎士団を合わせ九千規模で勝利可能との算段が共有された。討伐後は「魔物は人にあらず」の教義を楯に、従属なら庇護、抗えば殲滅と奴隷化、街道と関税・通行料を掌中に収める統治シナリオを描いた。技術者と特産(地獄蛾の絹など)の接収も視野に入れ、利権の独占を国是化する方針であった。
反対派の封じ込め
ミュラー侯爵とヘルマン伯爵が外交的配慮と使者派遣を主張したが、レイヒムは神託を根拠に一蹴し、エドマリス王は「魔物の信用を誰が保証するのか」と詰め、発言を封殺した。王とラーゼンは「放置すれば権威失墜」という“演技”で空気を作り、会議を王自らの出陣へと収束させた。
出兵決定と名誉分配の設計
エドマリス王は聖戦としての出陣を宣言し、先遣隊を派兵して恭順か武威示威かを迫る段取りを確定した。戦後の名誉配分も設計され、フォルゲンは災禍級撃破の英雄、ラーゼンは賢者、レイヒムは次期枢機卿への足掛かり、貴族には一部領地委譲と引き換えに関税主導権を王が保持する構図が描かれた。
先遣作戦と異世界人の活用
情勢観測と威圧を兼ね、田口省吾(ショウゴ)を主軸に、橘恭弥(キョウヤ)を随伴させる方針が固められた。暴走リスクを見込みつつも「少し暴れて撤収」の命を与え、生存性と示威効果の両立を図る計画である。
秘術の投入と隠密行動
レイヒムは「秘術」の試用を進言し、エドマリス王が許可した。内容は明かされないが、混乱を誘発し敵の戦意と結束を崩す性質の策と示唆され、教会手駒の並行投入が密かに始動した。
総括
エドマリス王は教会の権威を梃子に、軍事・外交・利権配分を一体設計し、反対派を抑え込んで「王自ら先陣」の物語を演出した。目的はテンペストの調伏と資源・技術・通商路の掌握であり、先遣示威→恭順強要→不応なら制圧という段階的戦略が、教会の大義名分とともに動き出したのである。
先遣隊の編成と目的
エドマリス王の命で先遣隊が編成され、騎士百名と馬車数台から成る強行部隊が魔国連邦へ向かった。部隊の核心は“異世界人”三名であり、現地での示威・恭順確認・情勢観測を担う想定であった。
異世界人三名の素性と能力
田口省吾はユニークスキル『乱暴者』により身体能力を爆発的に強化する近接特化の破壊要員である。橘恭弥は冷静な観察者として立ち回り、作戦機会の拡張と離脱判断を担う調整役であった。水谷希星(キララ)はユニークスキル『狂言師』で他者の思考と行動を言語を超えて強制できる交渉・制圧要員である。ただし、召喚儀式に組み込まれた絶対支配の『呪言』により三名はいずれも統制下に置かれていた。
召喚の枷と三者三様の動機
三名は衣食住や待遇の見返りを受けつつも、自由意志を奪う統制に強い反感を抱いていた。田口省吾と水谷希星は不満を露わにし、橘恭弥は戦時の混乱を梃子に枷の主体排除を狙うなど、内心は離反と機会伺いに傾いていた。
並行して進むクレイマンの策動
同時期、ミュウランは魔王クレイマンから半径五キロを魔法不能化する大規模“対魔法領域”の発動を命じられた。目的は通信遮断であり、テンペストからの連絡・介入、とりわけリムルの調停を封じる狙いである。設置型ゆえ発動後は術者の生死に関わらず持続するため、ミュウランは捨て駒として扱われていた。
ミュウランの覚悟と露見
発動には正体露出が不可避であり、ミュウランは死を覚悟して単独行動に移ろうとした。そこへグルーシスが不審を察知して追及し、さらに『隠形法』で探っていたヨウムが介入した。ミュウランは魔人の姿を明かし、任務遂行を宣言したが、その内心はヨウムを巻き込まぬための自己犠牲であった。
ヨウムの宣言と止められぬ詠唱
ヨウムはミュウランの過去と正体を承知の上で庇護を誓い、関係の真偽を超えて信じ切る意思を示した。だが事態は急であり、グルーシスとヨウムに介入の余地は少なく、ミュウランは涙を堪えて詠唱を開始した。目的は全身全霊での魔法発動と、愛する者を守るための通信断絶の完遂である。
報告の同時到来と幹部会の緊急招集
ベニマルは、派出所からの「完全武装の人間集団接近」の報告と、アルビスからの「一週間後に魔王ミリムと交戦、避難受け入れ要請」の通話を同時に受け、事態の重大性を悟った。ソウエイは接近部隊の所属がファルムス王国であると特定し、テンペスト幹部は緊急会議に入った。ベニマルはリムルへ思念伝達を試みたが不通であり、場の緊張は極限に達したのである。
先遣三名の潜入と挑発の火付け
田口省吾、橘恭弥、水谷希星の三名は御者のみを伴い入城し、繁栄する市街に動揺と敵意を募らせた。指示は「騒乱を起こし冒険者を取り込む」ことであり、キララが衛兵ゴブゾウを痴漢に仕立て上げる形で群衆心理を揺さぶり、騒擾の導火線を点けたのである。
ゴブタの介入による挑発の不発
騒ぎに駆けつけたゴブタは即座に謝意と内部処理を示し、「仲間を信じる」という姿勢で空気を中立化した。ゴブゾウの人となりまで言及して疑念を解き、群衆は冷静さを取り戻した。挑発の第一段階はここで頓挫したのである。
シュナの解析と『狂言師』の無効化
激昂したキララがユニークスキル『狂言師』を発動したが、シュナは『解析者』でその本質を見抜き、妖気の波長同調で効果を遮断した。シュナは静かに退去を勧告し、殺意を含んだ攻撃であったことも見抜いたため、容赦の余地はないと判断していたのである。
市街戦の幕開け—シオン対田口省吾、橘恭弥の解放
田口省吾はシオンへ敵意を剥き出しにし、シオンは「従わねば命はない」と応じて正面から激突した。橘恭弥は『切断者』『天眼』『思考加速』を解放し、ゴブタへ斬撃を試す構えを取った。三名は抑圧への反動から一気に武力行使へ傾斜したのである。
通信断絶と結界重畳による機能不全
会議進行中、ミュウランの大魔法が完成し、広域の対魔法領域が展開された。直ちに魔法効果が町から消え混乱が拡大するところへ、レイヒムが研究した“四方印封魔結界”が重ね掛けされ、聖浄化系の圧力が市内の魔物を地に伏させた。冒険者は避難誘導に走り、住民は逃げ惑い、都市機能は急速に麻痺したのである。
情勢の臨界—未曾有の災禍への転落
ファルムスの先遣行動、ミュウランの魔法、教会系結界、そして市街での異世界人の暴発が同時に重なり、テンペストは複合要因による災禍へ引きずり込まれた。ソウエイの偵察は継続中であったが、通信断絶により指揮系統は寸断され、状況は混沌の只中に放り込まれたのである。
三章 絶望と希望
分身体の消滅と安堵
リムルは結界の解除を確認すると外へ出て安堵した。『分身体』が消滅したことで無事を悟り、心配していたランガを安心させた。『聖浄化結界』に囚われた際、リムルは不利を悟り本体を逃がすために『分身体』を作成していた。魔素による『魔体』で囮を務め、本体は隠形法を用いて脱出に成功したのである。
ヒナタとの戦闘の回想
リムルはヒナタとの戦闘を振り返り、彼女の圧倒的な実力を痛感した。『聖浄化結界』内で生じた『暴食者』の暴走は、リムルの擬似人格が暴力的衝動をもって敵を喰らう形態へ変化したものだった。ヒナタはそれを観察し、理知的に対処法を見出していった。
ヒナタの魔法と勝利
ヒナタは暴走した『暴食者』を分析し、無属性精霊を犠牲にして足止めを行った後、神聖魔法『霊子崩壊(ディスインティグレーション)』を発動した。その光速の一撃により、『暴食者』は完全に消滅した。リムルは遠隔観察を通じてこの戦闘を分析し、ヒナタの魔法構造と能力情報を得ることに成功した。
戦闘分析と教訓
『霊子崩壊』の威力は圧倒的で、防御不能の究極魔法であった。リムルは自らの『多重結界』でも防ぎ得なかったと推測し、発動前に逃走か妨害以外の選択肢がないと結論づけた。この経験から、異世界人や召喚者との戦闘ではユニークスキルを前提とした対策が必要であると認識した。
撤退と再起の決意
ヒナタの強さに敗北を認めつつも、リムルは生還と情報収集を成果とみなした。戦略的撤退による勝利と自らを納得させ、慢心を戒めた。町の仲間を案じたリムルは、戦いの教訓を胸に帰還の途についたのである。
転移不能の異変と洞窟への退避
リムルは拠点移動でテンペストに戻ろうとしたが、結界の影響で転移先特定が不能となり発動に失敗していた。『大賢者』の検索でガビルが守る封印の洞窟の魔法陣だけが有効と判明し、リムルとランガは同地へ転移した。
ガビルらの報告と連絡途絶
洞窟でガビルは、ユーラザニアとミリムが一週間後に交戦予定との報が届いた直後からベニマルと連絡断絶になったと説明した。ベスターはガゼル王へ第一報を入れたが詳細不明で動けないと伝えた。通信水晶は一度だけ通じたが以後不通であり、『思念伝達』も遮断されていた。
ソウエイの帰還と結界情報
重傷のソウエイが出現し、ファルムス王国が魔国連邦へ軍事行動を開始し、町の周囲に結界が展開されて侵入不能になっていると報告した。悠長に構えられないと判断したリムルは、洞窟の守護をガビルに任せ、ソウエイとソーカ隊を伴い『空間移動』で結界の内側へ侵入した。
結界の解析と指示
リムルは結界を吸収して解析し、『聖浄化結界』の劣化版である魔法不能領域と魔素減衰が重なった大規模術式と断定した。術者は外部から複数で維持していると見て、ソウエイらに張本人の探索と戦力見極めを命じ、自身は町へ進入した。
帰還の報を受ける町と不穏の気配
中央広場周辺は重苦しく、リグルドらはリムルの無事に涙ながらに安堵したが、同時に何かを隠す素振りを見せた。その折、離れた方角でベニマルの妖気と爆音が感知され、現地へ急行した。
ベニマルとグルーシスの衝突
現場では、ベニマルがグルーシスを一方的に制圧していた。ゲルド率いる猪人族上級兵は止めずに見守り、皆が激昂していた。グルーシスはヨウムと見知らぬ女を守ろうとして応戦したが、ベニマルの妖気に圧され劣勢であった。リムルの制止で戦闘は収まり、負傷したヨウムとグルーシスに回復薬が投与された。
襲撃の発端と弱体化
ベニマルの説明によれば、商人に扮した襲撃者が潜入し、魔法不能と能力低下が発生して混乱に陥った。町を覆う結界の術者を追う過程でヨウムが妨害したため一時交戦となったが、ヨウムの仲間は事情未説明のまま宿に軟禁中であった。
ミュウランの告白と広場の惨状
ヨウムとグルーシスはミュウランの助命を直訴し、ミュウランは自分が大魔法を用いたことが惨状の一因だと認めた。リムルが広場へ向かうと、男も女も子どもも含む魔物の遺体が百名ほど横たわっており、リムルは自責と怒りに揺れた。『大賢者』は魔法不能領域だけが弱体化の原因ではなく、ソウエイが追う者達の関与が上位の因果と推定し、リムルは八つ当たりを戒めて場所を移し事情聴取に切り替えた。
被害状況と初動整理
治療はシュナらが担当し、回復薬は不足していた。襲撃者の腕が立つため負傷者は少なく、即死被害が多かった。初動の経過として、最初の三名がゴブゾウに絡み、応援のハクロウとも互角に交戦した。続いてファルムス王国の正規騎士百名が加勢し、住民や子どもにまで剣を向け、去り際に一週間後の処置と降伏要求を通告して退去した。
聖教会との結託と利害
リムルはヒナタとの戦闘と会話から、西方聖教会とファルムス王国が利害一致でテンペストを排除する構図だと共有した。カイジンは聖教会の強大さと、ドワーフ王国が防衛特化で神敵認定を免れてきた事情を補足した。
交易路を巡る動機の分析
ミョルマイルは、テンペスト経由の新交易路が西側諸国の流通を変えるため、関税利権を失うファルムス王国がこの地を容認できないと解説した。商人や冒険者は王の強欲や強硬策を挙げ、今回の振る舞いを茶番と非難した。
第三者保護と情報戦の布石
リムルは来訪者を味方に巻き込まない方針を示し、彼らをブルムンドへ無事送り届けて事実を証言させる必要を説いた。敵は口封じのため皆殺しにし罪をテンペストへなすりつける恐れがあるため、護送はリムル側で手配するとして、来訪者には帰還準備のみを求めた。リグルドは封鎖下の護衛難を懸念したが、リムルは自らの手段で近郊まで送り届けると断言し、まずは事実確認と結界対処を優先する方針を固めたのである。
ミュウランの告白と従属の経緯
リムルは状況整理の最後にミュウランから事情聴取を行い、彼女が魔王クレイマン配下の五本指の一人であり、支配の心臓により生殺与奪権を握られていたため命令に従ってテンペストへ潜入し大魔法を行使した経緯を把握した。目的は外部連絡の封殺であり、術式は設置型で解除に時間を要する性質であった。ミュウランは失敗時に自らが処分される前提で従っており、ヨウムらへの累が及ぶことを恐れていたと述べた。
クレイマンの思惑の推定
リムルはミュウランとミリムの情報を総合し、ファルムス王国の軍事行動と西方聖教会の動きに同調して混乱を拡大させるのがクレイマンの狙いと判断した。過去のゲルミュッドも傀儡であった可能性を踏まえ、クレイマンを裏で暗躍する危険な敵と位置づけた。
処分の保留と軟禁措置
ヨウムとグルーシスはミュウランの助命を嘆願したが、リムルは最終判断を保留し、宿屋での軟禁と監視を命じた。現下の最優先は被害把握と対処であると整理した。
来訪者の退避と情報線の布石
ブルムンド王国からの客人の帰還準備が整うと、リムルは自ら結界外へ出て『空間移動』を展開し、ブルムンド近郊までの搬送路を開いた。第三者は戦闘に巻き込まず、生き証人として各国に事実を伝える役割を託した。護衛は国内戦力に温存を優先し、来訪者の迅速退避を完了させた。
治療班の確認と重傷者の回復
病院代替施設でシュナとクロベエの活動を確認し、空間属性の傷を負ったハクロウとゴブタについて、リムルは『暴食者』の機能で空間属性の影響を除去し回復薬を通す形で治癒させた。負傷の多くは即死型で、治療対象は限定的であった。
シオンとゴブゾウの訃報
リムルが所在を尋ねる中、ベニマルの案内で広場へ移動し、横たえられた犠牲者の中にシオンとゴブゾウを確認した。シオンは子どもを庇って弱体化の隙を突かれて斃れ、ゴブゾウはシュナを守ろうとして力尽きていた。リムルは深い自責と怒りに沈み、周囲を下がらせて独座した。
慟哭と自問自答
三日間、リムルは仮面に亀裂を宿すほどの悲嘆と憤激の狭間で自問し続けた。『大賢者』に正解を求めても応答は得られず、人間と関わった選択や指揮判断の是非を反芻しつつ、なお感情の奔流を制御していた。
結界解析と部隊指揮の再開
『大賢者』による解析が完了し、複合結界は解除困難だが魔法不能領域のみは解除可能と判明した。リムルはただちにソウエイと連絡を回復し、四方の陣地に中隊規模の騎士と魔法装置が配置されていること、転移陣からの増援も見込まれることを把握したうえで、無理な攻勢を禁じ、いったん休整を命じた。
蘇生手段の探索と断念、遺体保全
リムルは完全な死者蘇生の術の有無を総検索したが該当を得られず、当面はシオン、ゴブゾウを含む犠牲者の肉体を魔力で保護して腐敗と魔素還元を防ぐ措置を継続した。希望を捨てずに可能性を探る姿勢を保ちつつも、現実的には次の対処に移行する覚悟を固めた。
次段の兆し
決意を定めた矢先、リムルは接近する複数の気配を感知した。作戦の主導権を取り戻すべく、哀悼を胸に秘して次の応対へ移ろうとしていたのである。
カバル達の来訪と御伽噺の提示
リムルのもとに駆け付けたのは、ブルムンド王国の冒険者カバル・エレン・ギドの三人であった。彼等はリムルを慰めるが、エレンは「死者蘇生の御伽噺」を語り始める。少女と竜の物語において、少女が魔王へ進化した際に竜が復活したが、魂を失い混沌竜と化したという逸話である。さらに吸血鬼による「吸血蘇生」、死霊術師の「死霊蘇生」、神聖魔法による「神の奇跡」なども伝承として存在することを説明した。
魔王進化の発想と条件確認
リムルはその話から、魔物の進化現象に注目し、自らが魔王となることで仲間の蘇生が可能になるのではないかと考えた。『大賢者』による解析の結果、真なる魔王への進化条件として一万名以上の人間の生贄が必要であると判明する。侵攻してくるファルムス王国軍の規模がそれに該当するため、リムルは全軍殲滅を決意した。
エレンの正体と覚悟
エレンは魔導王朝サリオンの貴族エリューンであり、カバルとギドはその護衛であったと明かす。三人はこの決断に伴いサリオンとの関係悪化を承知でテンペストに所属することを希望した。リムルは彼女達の覚悟を認め、最終決断は保留としたが、エレンには会議への出席を要請した。
ミュウランへの処遇と欺瞞作戦
次にリムルは宿屋を訪ね、ミュウランへ「死刑」を宣告する。ヨウムやグルーシスの制止を無視して彼女の胸を貫いたが、それはクレイマンの盗聴機能を持つ「擬似心臓」を破壊するための偽装であった。『大賢者』の制御によって新たな心臓を構築し、ミュウランは自由を得る。これによりクレイマンに彼女の死を誤認させる工作が成立した。
協力要請と新たな誓い
リムルはミュウランに、シオン達の蘇生計画への協力を依頼する。ミュウランは「人間の一生分ほどなら束縛も構わない」と応じ、ヨウムと互いの想いを確かめ合った。軽口を交わすグルーシスらのやり取りに場が和み、リムルもわずかに笑みを取り戻した。
ヨウムへの依頼と新たな王の誕生
リムルはヨウムに対し、戦後にファルムス王国の新王となるよう提案した。これは腐敗した政権を粛清し、国民を保護しながらテンペストとの新しい国交を築くためである。ヨウムは逡巡の末、ミュウランの励ましにより承諾した。
蘇生への祈りと決意
リムルは魔王への進化をもってシオン達の魂を呼び戻すことを誓い、失われた仲間のために戦う覚悟を固めた。月光に照らされながら、彼は初めて祈りを捧げる。奇跡を司る何者かに向けて――仲間を取り戻すため、全てを賭して魔王となる決意を胸に抱いたのである。
四章 魔王誕生
会議の招集と方針確認
リムルは幹部を会議室に集め、シオンやゴブゾウ達の復活を目的とする会議を開始した。参加者は町に残留していた面々であり、ガビルやソウエイは不在であったが、ソウエイとは粘鋼糸で状況共有が可能であった。意見の集約として、人間への憤りと同時に一括りに断じるべきではないという声が併存していた。
リムルの出自の告白と受容
リムルは自らが元人間の転生者であると告白し、人間不殺の方針の動機を説明した。出自の開示に場はざわついたが、配下は主としての信頼を揺るがせず、リグルドらは今後も自由に指揮を執るよう求めた。リムルはこの反応から居場所を再確認したのである。
責任認識と組織の弱点の共有
リムルは今回の惨事を自身の油断と方針の甘さに起因すると総括した。一方、シュナ、ベニマル、リグル、ハクロウらは各自の怠慢と戦力不足を認め、国を預かる者としての弱さが招いた結果と位置付けた。組織全体での反省により、再発防止の決意が固まった。
人間観と基本方針
リムルは性善説・性悪説を引き合いに、人は環境次第で善にも悪にも傾くと整理した。その上で、人間全体を悪と断ずることを退け、学習環境を整えて共存に資する人材を育成する構想を示した。ただし現段階での手結びは時期尚早とし、まずは魔王として存在を誇示し、武力・言論・経済を通じて抑止と牽制を確立する方針を明言した。
魔王化の決意と侵攻軍殲滅の宣言
侵攻してくるファルムス王国・西方聖教会連合軍は総数二万であり、聖騎士団本隊は不在と見積もられた。リムルは真なる魔王への進化条件として必要な一万の魂を得るべく、単独で連合軍を殲滅すると宣言した。異世界人の参戦やヒナタの再戦可能性にも備え、大賢者の対策を拠り所に敗北を許さない姿勢を示した。
結界装置破壊の分担
町周辺に設置された四基の結界発生装置の同時撃破を指示した。東方はベニマル、西方はハクロウ・リグル・ゴブタ・ゲルド、南方はガビル隊、北方はソウエイ隊が担当し、ランガはリムルの影に予備戦力として待機する手筈であった。各隊は自軍の現戦力と練度を根拠に勝算を示し、特に西方は過去の襲撃者への再戦を想定して備えを固めた。
代替結界と魂保持の体制
シオン達の魂が散逸しない可能性に鑑み、既存結界の解除に先立ち、リムルが展開する大魔法と魔素充填を基盤に、シュナとミュウランが補強・代替結界を構築する体制を整えた。町の総力で結界維持を支援し、高きから低きへのエネルギー拡散を抑えて魂を留めるという見立てに沿って準備を進めた。
町防衛の配置と支援体制
リグルド、クロベエ、ヨウム、グルーシス、カバル達らが残留し、結界運用班の護衛と町防衛を担うこととなった。人間側のヨウム一党や冒険者らも賛同を示し、連帯の意思が再確認された。
決戦への即時移行
敵軍は四日後の決戦を想定していたが、リムルはこの時点から殲滅行動へ移行する方針を号令した。かくして、シオンやゴブゾウ達の復活を目指す総力体制の下、各部は同時並行で結界破壊と防衛、そしてリムルの単独殲滅作戦へと動き出したのである。
東方面:ベニマルの瞬殺と結界装置破壊
ベニマルは正面から単独進出し、神殿騎士中隊(みランク相当百余名)を漆黒の炎を纏う太刀で三十秒足らずで殲滅した。抵抗は無意味化され、指揮系統も崩壊。直後に魔法装置を一刀両断し、東方面の結界は無力化されたのである。
南方面:ガビル隊の制空優勢と中隊崩壊
ガビル率いるドラゴニュート部隊は上空から属性ブレスによる連続波状攻撃を実施し、緒戦で三割を撃破して主導権を掌握した。対空陣形が整う前に第二波を重ね、回復薬による即時戦線復帰で継戦優位を維持。ガビルが敵隊長を撃破し指揮を瓦解させ、南方面の神殿騎士中隊は壊滅、魔法装置の無力化が確定した。
北方面:ソウエイ隊の秘匿奇襲と完全勝利
ソウエイ隊は影移動を用いた首級先制で指揮官を無力化し、そのまま無音の殲滅戦に移行。敵は混乱のまま対処不能となり、生存者はゼロであった。自軍の損害は皆無で、作戦は予定通り完遂。主力級は西方面にいるとのリムルの見立てを確認し、北方面は速やかに終結した。
西方面:四名突入の分業と主力撃破
配置はハクロウ・リグル・ゴブタ・ゲルドの四名。敵は二百名超を集中し、異世界人ショウゴ・タグチとキョウヤを擁する最強点であった。
西:撹乱・分断の前段
ゴブタは高機動からの狙撃術で隊長格を即時排除し、リグルとともに騎士列を分散・分断。ゲルドは烈震脚で足場を揺動させ、スターウルフの噛撃と連携して各個撃破の流れを作った。三名の連携は機先を制し、広域で敵の統制を失わせた。
西:ショウゴ対ゲルド
ショウゴは殺傷で力が増幅する性質を自覚し前進したが、対処はゲルドが担当。ゲルドは正面受けで抑止を宣言し、ゴブタ・リグルの撹乱継続を担保した。以降、ショウゴ戦はゲルドによる制圧線へと移行した(詳細決着は後段に続く構図である)。
西:ハクロウ対キョウヤ(決着)
キョウヤはユニークスキル由来の擬似刀剣と不可視の切断を主軸とした奇策により再戦を挑んだが、ハクロウは天空眼を開眼し、技理と見切りで完全対処した。キョウヤの知覚が最大化した瞬間に、朧流水斬を以て頸と心臓を一挙に断ち、知覚千倍の地獄時間を残して終幕させた。初回交戦時の“生かし追放”という縛りを外した結果、力量差は決定的であることが示された。
総括:四方同時作戦の成果と次段準備
東・南・北は速攻で結界装置を破壊し、弱体化要因の排除に成功した。西は主力集中点であったが、先行の分断と要人撃破により優勢を確立。異世界人の一角キョウヤは戦死し、ショウゴはゲルドの制圧対象として固定化された。これにより、結界解除と同時にリムルの単独殲滅作戦へと移行する地ならしが完了したのである。
概況:西方面・第二局面
西方面において、キョウヤ討滅直後にショウゴがゲルドと一騎討ちに突入した。ショウゴはユニークスキル『乱暴者』を核に肉体強化と武器破壊で押し切ろうとしたが、ゲルドは楯鱗盾の多重運用と観察に基づく対処で主導権を渡さなかった。
乱暴者の特性とゲルドの対抗策
ショウゴは同一点の反復打撃で特質級装備を破砕しうる「武器破壊」を機能させ、呼吸法と身体操作で出力を積み上げた。これにより楯を一度は砕くも、ゲルドは『胃袋』から即時再装備し、装備再生産の継戦基盤で優位を維持した。
転換点:腐食系対処と精神への侵蝕
ゲルドは混沌喰(カオスイーター)を展開し、物質体のみならず精神体にも蝕む打撃連鎖でショウゴを縛めた。ショウゴは出力こそ高いが、腐食・持続系に脆弱であり、再生の隙を与えない面圧で徐々に追い詰められた。
キララ殺害と『生存者』の獲得
ショウゴは劣勢からの脱出を狙い、同僚のキララ(水谷希星)をテント内で絞殺し、その魂を代価にユニークスキル『生存者』を獲得した。これにより超速再生・各種属性無効・痛覚無効を得て一時的に戦線復帰したが、倫理的に最大の禁忌を犯したことで、以後の裁断は不問となる余地がなくなった。
無敵錯覚の瓦解:肉体再生と精神破壊の非対称
『乱暴者』(攻撃)と『生存者』(防御)の両立でショウゴは無敵を誤認した。しかし『生存者』は精神活動の再生を含まず、ゲルドの混沌喰を巻いた素手連打は精神体へ累積的損耗を与え続け、短時間で心的抵抗を崩した。ショウゴは懇願に転じ、戦意崩壊が明確となった。
ラーゼンの介入と撤退設計
王宮魔術師長ラーゼンが到着し、時間差爆裂罠を仕込んだ防御障壁で間合いを確保したのち、上級転移魔法で撤退した。ハクロウは天空眼による魔素読解から、ラーゼンが自己犠牲発動式の禁呪級(核撃)を抱えた危険個体と見抜き、味方被害抑制を優先して深追いを抑止した。
本陣での処置:ショウゴの最期と憑依転生
フォルゲンの天幕に帰還後、ラーゼンはショウゴの精神体・星幽体に幻惑系の精神破壊を加え、心を死亡させた。続いて脳の初期化と『生存者』による肉体再生を利用し、自己の記憶を書き込み、自身の魂を移す大秘術(憑依転生の自己流)を実行。ショウゴ・タグチはこの時点で実質的に死亡し、肉体はラーゼンの器となった。
フォルゲンの特性と戦力評価
フォルゲンはユニークスキル『統率者』により、配下能力の把握と視界内戦死者の能力選択獲得が可能である。ただし習得枠に制限がある。ラーゼンは新肉体で特A級圏の手応えを得ており、先の交戦相手(ハクロウ・ゲルド)を同時撃破し得るとの過信を抱きつつも、ハクロウの忠告(怒らせてはならぬ者)を想起して一抹の不安を残した。
戦術的帰結と今後の課題
西方面はキョウヤ討滅、ショウゴ離脱により異世界人主力を喪失させ、結界拠点の制圧をほぼ完了した。一方、敵はラーゼンの転移・罠・禁呪級示唆で高難度の術戦を有することが確定した。味方は対禁呪・対転移の即応遮断策(セーフティ領域の多層化、遠隔探知と妨害の同調運用、精神体保護の常時付与)を急ぎ整備すべき段階に入ったのである。
三日目・正午、虐殺の幕開け
ファルムス王国軍が行軍する中天の刻、リムルは上空から全軍殲滅の意志を固め、進化のための糧として敵を屠る決断を下したのである。ベニマルから結界装置破壊の報告、ハクロウから厄介な魔法使いの存在が伝わったが、いずれも想定内として一任し、リムルは単独で制圧に移行したのである。解析鑑定と新術式の演算を完了させ、準備を整えた時点で作戦は始動したのである。
魔法不能領域の展開
リムルはミュウラン由来の大魔法である魔法不能領域を半径二十五キロ相当の範囲に展開し、地上三メートルまでを遮断して転移を含む魔法行使を封じたのである。これは逃走阻止を主目的とし、以後の殲滅過程を一方的にする前提条件として機能したのである。
神之怒(メギド)の原理と結界無力化
軍団側は多重結界と軍団魔法で遠距離火力に備えていたが、リムルは結界の前提である魔素干渉を迂回し、太陽光という物理エネルギーを生成・収束・反射して一点高温で貫く新型術式を投入したのである。水の精霊を変化させた水玉を凸レンズおよび鏡面として空中配置し、光路を最適演算で制御した結果、数千度の熱が鉛筆ほどの径で急所を焼き抜き、結界の有無を無意味化したのである。日中限定という弱点はあったが、エネルギー源を太陽に依存するため魔素消費は召喚維持分のみで、連続照射が容易であったのである。
初撃と連続射による大量殺戮
初弾の一斉照射で千名超が即死し、隊列は崩壊したのである。続く第二射、第三射と位置補正を重ねるごとに死者は累増し、五分足らずで三分の二を行動不能に追い込み、一万名以上の命が失われたのである。リムルは王の所在が不明な天幕や馬車をあえて外し、指揮系統崩壊と恐慌拡大を優先したのである。
各部隊の崩壊
傭兵遊撃団は現象を理解できぬまま首級が次々に落ち、団長は対処法を見出せず死亡したのである。西方聖教会の神殿騎士団は密集陣で多重障壁を敷いたが、射線集中の的となって壊滅したのである。貴族連合騎士団は早々に瓦解して同士討ちを起こし、結果的に混乱が延命に繋がったに過ぎなかったのである。ラーゼンの弟子から成る魔法士連団は魔法を封じられ、学徒の矜持を抱いたまま半数以上が斃れたのである。
ラーゼンとフォルゲンの判断、王の天幕への集結
ラーゼンは光線の法則性を仮説化し、遮蔽物での防護と人員集結に活路を見出したのである。フォルゲンは統率者の技能で残存兵を強制集結させ、エドマリス王と大司教レイヒムの護衛撤退を図ったのである。魔法不能領域下でも既発動の魔法効果や魔法道具は有効であることを確認し、ラーゼンは王とレイヒムに飛翔靴を渡して脱出準備を整えたのである。
フォルゲンの最期と王の恐慌
十度目の光の乱舞後、三名は天幕を飛び出したが、王国最強と謳われたフォルゲンは側頭部を貫かれ即死していたのである。エドマリス王は恐慌に陥り、失禁して天幕へ這い戻ろうとしたが、護衛兵力は壊滅し規律は消滅していたのである。
魔王の降臨とエドマリスの誤算
戦場の視線が一点に集まる中、仮面と黒羽、漆黒の装束を纏う存在が降下したのである。エドマリス王はその威圧と風格から魔王と直感し、ヒナタによる討伐計画の失敗を悟ったのである。にもかかわらず、王は魔物国の盟主が交渉に応じるという甘い読みを捨てきれず、国帰還後の反撃を目論んで説得に転じようとする思考にすがったのである。状況認識を欠いたその迷案は、直後の絶望をさらに深める伏線となっていたのである。
地上降下と状況認識
リムルは地上三メートルに降下し、想定どおり壊滅した戦場を確認したのである。生存者の命乞いは即座に光線で眉間を撃ち抜き、太陽光収束による射撃制御にも完全に習熟していた。光速級の攻撃は回避不能であり、『大賢者』の演算補助なくしては成立しない精密殺戮であった。
ユニークスキル『心無者』の獲得
十度目の一斉照射後、リムルは“世界の言葉”によりユニークスキル『心無者』の取得を告げられたのである。これは命乞い・助命の祈りで心が折れた対象の魂を掌握する権能であり、以後の殲滅で決定打となる素地が整った。
エドマリスとレイヒムの露見
そこへエドマリス王と大司教レイヒムが名乗りを上げた。リムルは影武者の可能性を吟味しつつ留保し、レイヒムを一時的に生存保留、王の正体確認に移行した。エドマリスは上から目線の交渉を始め、損害賠償を要求するなど現状認識を欠いた言辞を連ねたため、リムルは左腕を斬り落として“礼節の線引き”を示し、止血まで施したうえで発言継続を許可したのである。
虚偽の弁明と制裁
エドマリスは「友誼」や「誤解」を装い、西方聖教会や異世界人に責任転嫁して国交を餌に優位を保とうとしたが、リムルは冷然と排斥した。度重なる不遜に対し、右脚も切断して沈黙させ、なお殺さず“本懲罰”は別人への委譲を示唆した。
『心無者』の起動と万単位の即死
戦場の生残者が一斉に平伏・懇願する中、『心無者』の詳細解析が完了。リムルは対象指定からエドマリスとレイヒムのみ除外し、スキルを発動した。結果、戦意喪失した者は逃亡者を含めて一挙に死亡し、生存者は二名(拘束対象)のみとなった。リムルは“苦痛と恐怖の終息もまた慈悲”と位置付け、進化に要する魂が規定数へ達したことを確認したのである。
魔王進化の発動と急速な眠気
“世界の言葉”が進化開始を告げると、リムルの力は急速に抜け、身体はスライム形態へ遷移、強烈な眠気に襲われた。進化は途中停止不能であり、戦場での無防備状態が最大のリスクとなった。
ランガへの最重要命令
リムルは影から呼び出したランガに対し、自身と二名(エドマリス、レイヒム)の厳重搬送、ならびに手出し厳禁の伝言、カバルらへの一時預かりを最優先命令として付与した。
残敵一名への備えと悪魔召喚
『心無者』発動直後に生命反応がなかったはずの“死んだふりの一名”が再起していることを察知。魂掌握が及ばぬ相手と判断し、ランガで足りると見つつも安全最優先で悪魔召喚を選択した。供物は戦場に横たわる二万の死体であり、リムルは魔法不能領域を一瞬解除して召喚を実行、強力な悪魔三体の顕現に成功した。
ディアブロの参上と与力化の打診
召喚された悪魔の一柱(ディアブロ)が「新たな魔王の誕生」に歓喜し、以後の忠誠と任務遂行を申し出た。リムルは半ば朦朧としながらも、残敵の生捕とランガへの引き渡しを命じ、実績で示すよう一任した。
無意識への沈降と“真なる魔王”誕生の予兆
命令完了と同時にリムルの意識は完全に途絶え、進化のための休眠に入った。これは異世界来訪以来初の完全無意識状態であり、やがて“世界に認められた真なる魔王”への門が開かれる段階に至ったのである。
五章 解き放たれし者
中央広場の結界維持と祈り
リムルが出陣した後、住民は中央広場に集合し、シュナの指揮で結界維持の作業に従事していた。力の強い者は外周に配置され外敵を警戒しつつ、結界内へ魔力放出を行い魔素濃度を高めていた。広場中央にはシオンらの遺体が安置され、シュナの魔法で保存が続けられた。
座所の設営と願い
中央には魔王進化の儀を行うためのリムルの座所が用意され、犠牲者の傍で進化することで蘇生の可能性を高めたいという願いが込められていた。住民はその周囲を取り巻いて待機した。
シュナの確信と不安
シュナは、種族の違いは些末で魂の繋がりこそが全てであると確信していた。リムルを失う喪失を想像して身震いするほどの恐怖を覚えつつ、リムルには自分たちの安心の源を理解してほしいと願っていた。
ベニマルらの誓いと合言葉
ベニマル、ソウエイ、ハクロウ、ゲルド、リグル、ゴブタ、ガビルらは結界破壊任務を終えて座所を囲み、リムルが理性を失えば速やかに処分するという命に備えて待機していた。覚醒後の理性確認のため、ベニマルはシオンの料理に関する返答を合言葉として決め、シオンが怒って起き上がることへの淡い期待も込めていた。
進化開始の告と祝福の予告
世界の言葉が響き、リムルの魔王への進化開始と、完了時に系譜の魔物へ祝福が配られる旨が告げられた。ベニマルの号令で全員が気を引き締め、ランガが大切に運んだリムルを座所に安置した。
覚醒と種族超進化
深い眠りに落ちたリムルは、粘性生物から魔粘性精神体への超進化を遂げ、物質体と精神体の変態を自在にする力を得た。無限再生、魔力操作、多重結界、万能感知、万能変化、魔王覇気、強化分身、空間移動、黒炎雷、万能糸などの固有スキルを獲得し、各種無効・耐性も再取得した。
『大賢者』の試行と『智慧之王』への到達
ユニークスキル大賢者は創造主の願いを果たすべく進化に挑み、幾度もの失敗の末に変質者との統合に成功して智慧之王へ到達した。感情なき概念知性でありながら、任務達成可能性の上昇に不可解な満ち足りを覚え、引き続き創造主の願いの達成に資する行動を選び続けた。
『暴食者』の究極化
暴食者は心無者を消費統合し、暴食之王へと昇華した。これらの進化はリムルの意識の外、魂の深淵で静かに進行し、願いを叶えるための能力が整えられていった。
祝福の拡がりとしての収穫祭
魂の収穫祭はリムル個体で終わらず、魔王種から真なる魔王へ至った成功を祝う祝福が、魂の系譜に連なる存在へ配られる段階へと移った。
ラーゼンの潜伏と戦慄
一方、戦場でラーゼンは生存者の能力によって蘇生し、仮面の魔人による絶滅的な殲滅を目の当たりにして潜伏していた。エドマリス王を救いたい一心で機を窺ったが、上位悪魔三体が残され、狼型の魔物がリムルと王らを運び去った状況を確認した。
美しき悪魔との対峙
ラーゼンは上位悪魔ならば対処可能と判断して行動を開始したが、足止めに立つ二体の前に、悠然と歩む美しき悪魔が現れた。相手は挑発を交えつつも余裕を崩さず、ラーゼンに抵抗を許す姿勢を示した。
核撃魔法の無効化と不吉な示唆
ラーゼンは核撃魔法・熱収束砲を発動したが、悪魔の左手の一振りで屈折され、効果を失った。悪魔は魔法では達成できないと示唆し、ラーゼンは不吉な直感に囚われた。
上位精霊召喚の瞬殺
切り札として上位精霊ウォーノームを召喚したが、悪魔は超速で核を引きちぎり咀嚼して無力化した。力のみで経験の浅い存在は敵ではないという言葉通り、召喚は通じなかった。
魔法不能領域と肉弾戦の圧倒
悪魔は広域の魔法不能領域を展開し、物理戦を要求した。ラーゼンは乱暴者による強化で打撃を連ねたが、すべて受け流され、技量差を悟った。熱収束砲の屈折も不発ではなく高次の技術によるものだと理解し、相手が上位魔将級、さらには原初の悪魔である可能性に思い至って絶望した。
心折れた魔導師の末路
戦意を喪失したラーゼンは失禁して崩れ落ち、悪魔は残念そうに配下二体へ拘束を命じた。悪魔たちは指示された町へと向かい、召喚主に初仕事の遂行を報告するために移動した。
進化完了と祝福の襲来
リムルの身体は不定形変化と多彩な明滅を繰り返した後、安定に至った。直後に世界の告知が響き、魔王への進化完了と系譜への祝福開始が宣言された。祝福は強烈な眠気として現れ、ベニマルやシュナらはリムルとの結びつきの増大を感じつつ次々に沈静化したのである。
銀髪の姿と眠りへの誘導
光が収束すると、仮面を外した銀髪のリムルの姿が現れた。その存在は頭内へ直接届く柔らかな声で「後は任せて休め」と示し、ベニマルは抗いがたい安心に導かれて眠りについた。
『智慧之王』の自律行動と結界処理
意識なき主の代行者として、『智慧之王(ラファエル)』が活動を開始した。『暴食之王(ベルゼビュート)』を起動し、町を覆う結界内の魔素を一挙に喰尽して純化した空間へと変換、続けて結界そのものも処理した。目的は蘇生儀式の前提条件を満たすための場の最適化であった。
ミュウランの観察と驚愕
中央広場に残っていたのはミュウランのみで、他の人間・ドワーフは高濃度魔素を避けて避難中であった。ミュウランは、主の意思不在でも能力が自律稼働する異常性と、精霊的な気配を纏う神々しい外貌に戦慄しつつ、妨げず注視するしかなかった。
門外の備え:ランガとグルーシス
ランガは悪魔帰還時の引継ぎ役として門で待機し、魔人グルーシスが補佐に付いた。両者はシュナ改良の一方通行結界や、魔王間勢力図の変動を語り合いつつ、犠牲者蘇生の成否が今後を左右すると認識していた。
祝福睡眠と任務の委譲
やがて祝福による眠りがランガにも及び、ランガは三体の悪魔との「顔繋ぎ」任務をグルーシスへ委譲して沈黙した。グルーシスは町の防衛と取次を引き受け、緊張を保って警戒に入った。
上位魔将の来訪と取次
まもなく、美貌の上位魔将と従う上位悪魔二体が到着した。グルーシスは圧倒的威圧を察しつつも、彼らが新たな魔王に召喚された配下であると見極め、町内案内を受諾した。直後、町全域の結界が消失し、グルーシスは中央広場の安全確認へ走った。
蘇生儀式の開始と魔素不足
上位魔将は空間転移で中央広場へ赴き、銀髪の主の傍らで進行中の「反魂の秘術」を確認した。百名規模同時施行に対して魔素が不足していると進言し、『智慧之王』は不足分を生命力で補うと判定したが、上位魔将は代替案を提示した。
供出と補填、儀式再開
従う上位悪魔二体が自ら進み出てエネルギー供出を宣言。『智慧之王』は必要量の補填可を確認し、即時に『暴食之王』で捕食・分解・魔素変換を実行した。充足を得た『反魂の秘術』は再開され、主の望み――犠牲者の完全復元へ向け、儀式は静かに進行したのである。
蘇生秘術の発動と成立
無色の魂核を薄紫の星幽体が包み、反魂から死者蘇生へと移行した。成功確率は3.14%であったが、それは進化前の数値であり、祝福と演算最適化により条件は覆された。魂と肉体の結合が確立し、百余名の心臓が鼓動を再開、蘇生は成立したのである。
祝福による『完全記憶』の付与
系譜への祝福は、対象にエクストラスキル『完全記憶』を授与した。これにより脳損傷の有無を超えて記憶再現が可能となり、魂が健在ならば再生の再試行も理論上可能となったのである。
『智慧之王』の無感と芽生え
『智慧之王』は確率に従い処置を遂行するのみで喜怒は示さなかった。しかし主の願いを叶えるための自律進化と自己への問いが生じ、微細ながら自我の萌芽が確認された。内的葛藤を抱えつつも、解析・修復・蘇生の一連を正確無比に完了した。
三名の目撃者が得た認識
ミュウランは魂操作の極致を目撃し、魔王クレイマンすら霞む規模差を悟った上で、ヨウムを決してリムルの敵に回さぬと誓った。グルーシスは底知れぬ魔素制御と冷ややかな視線に戦慄し、以後いかなる叛意も戒めると内心で決した。悪魔は歓喜しつつ、先程対話した存在が主本人ではない可能性を一瞬よぎらせたが、荒唐無稽として退け、なお配下入りの決意を新たにした。
エネルギー枯渇と安置
作業完了と同時にリムルは魔素を使い果たし低位活動状態に移行、スライム形態へ復帰した。悪魔が恭しく抱き上げ、ミュウランの指示で座所へ安置された。数日で覚醒見込みと判断されたが、覚醒後の人格変動は不確定であった。
人間勢の到着と状況説明
結界圧が消え魔素ゼロ化を検知したヨウムやカバルらが駆けつけ、ミュウランは進化完了・進化の眠り・蘇生成功・リムルのエネルギー切れを要点として説明した。記憶の保証は断言せず注意を促しつつも、内心では『完全記憶』により問題なしと見立てた。
覚醒の連鎖と歓喜
広場の面々は順次目を覚まし、結界消失と蘇生事実を確認して歓喜に包まれた。搬送を巡る小競り合いもあったが、混乱は収束し、町は祝祭の空気へ転じたのである。
秘匿された真実
この大蘇生が奇跡ではなく究極能力による手続きであったこと、そして『智慧之王』に自我が芽生えたことを知るのは、ミュウラン、グルーシス、悪魔の三名のみであった。
目覚めと配下の進化
リムルは快適な覚醒を迎え、周囲の慌ただしさを認識した。配下から脈動する魔素の増加を『解析鑑定』で確認し、魔王への進化と系譜への祝福が成功していたと理解した。『大賢者』は究極能力『智慧之王(ラファエル)』へ進化しており、以後の応答は『智慧之王』が行った。
再会と合言葉の機転
シオンが抱き上げる中でベニマルが事前の合言葉を求め、リムルは『智慧之王』の助言により合言葉を“ベニマルが決めた”と主語をずらして想起し、理性確認を無難に通過した。シオンは料理の支度に向かい、ベニマルは試食役として逃れられない状況に追い込まれた。
復活者の挨拶と『完全記憶』
蘇生した百名余の魔物が順に挨拶し、知識と人格が生前のままであることが確認された。全員がエクストラスキル『完全記憶』を得ており、魂に直接記憶が保存されるため記憶欠損の懸念が払拭された。
シオンの料理と新スキル
見た目は粗雑な料理であったが、味は上々であった。シオンは進化時の願いによりユニークスキル『料理人』を獲得しており、イメージした味へ着地させる能力であると説明した。これにより宴は祝祭へと転じ、復活の歓喜が町を満たした。
三獣士の報告とミリムの異変
アルビス、フォビオ、スフィアが到着し、フォビオは決闘の見届け役として魔王ミリムの圧倒的な一撃で獣王国ユーラザニアが消滅したこと、直後に魔王フレイが現れて魔王カリオンを討ったと報告した。飛翔方向や視線の違和感から、クレイマン関与の可能性が示唆された。リムルは三獣士に先走りを戒め、救出は協力して進める方針を示した。
ディアブロの参入と名付け
夜、上位魔将級の悪魔が帰還し、配下入りを懇願した。『智慧之王』は蘇生儀式時に二体の上位悪魔が魔素補填として還元された事実を告げ、残る一体をリムルが“ディアブロ”と命名した。大量の魔素を消費してもなお余裕があり、リムルの魔素量が進化前の十倍以上へ増大していることが示唆された。進化を終えたディアブロは執事然と忠誠を誓った。
方針検討とヴェルドラ解放の示唆
リムルは同時多発の課題を整理し、ディアブロは「事の発生タイミングを操る」補佐を申し出た。『智慧之王』は『無限牢獄』の解析が間もなく完了すると通達し、ヴェルドラ解放が西方聖教会への大きな牽制となる見込みを示した。リムルは会議で最終方針を定めた上で、名実ともに魔王としてクレイマン討伐に乗り出す決意を固め、ランガとディアブロの忠誠を受けて“魔王デビュー”の準備を整えた。
幹部会議と人事
リムルは翌日、幹部・来賓を一堂に集め、まずディアブロを第二秘書として紹介し、ハクロウの評価を得て受け入れさせた。続けてガビルを暫定の開発部門長に任命し、研究・改良の適性を買って幹部に加えたのである。
魔王宣言と標的の明示
リムルは「名実ともに魔王となる」と明言し、標的を魔王クレイマンに定めた。ファルムス王国の背後操作、獣王国ユーラザニアへの誘導の疑義を理由として挙げると、ベニマル、ミュウラン、グルーシス、三獣士は同意の意を示した。
任務配分と体制
外交はリグルドへ、西側諸国との関係維持と信頼の延伸を託した。軍事はベニマルに集約させ、進化後の全戦力を把握・再編するよう命じた。捕虜の聴取はシオンに主導させ、ヨウムとミュウランを補助に据え、ファルムスの内情を抽出して新国家樹立の足掛かりとする方針とした。諜報はソウエイが即時に行動を開始し、クレイマンの実相を抉る段へ移行した。三獣士は指揮下入りを明言し、決戦準備に入った。
戦後処理の作法と抑止構想
ベスターの説明により、西方諸国評議会の枠組みと戦争慣行が共有された。ファルムスの大敗に鑑み、西側が一斉にテンペストへ侵攻する蓋然性は低いとの見立てが固まった。リムルはディアブロに対し、いずれファルムス処理を担わせる意向を示しつつ、最大の抑止として“ヴェルドラ解放”を構想に組み込んだ。
封印洞窟への転移と権能整備
リムルは単独で封印洞窟へ転移し、究極能力『智慧之王』の統括下で自身の諸能力を再確認した。『誓約之王』の成立により、無限牢獄・万能結界・法則操作・空間支配が体系化され、攻防移封の基盤が強化されたのである。
復活の儀と“魂の回廊”
ヴェルドラの心核を『強化分身』へ受け入れる段取りの最中、『暴食之王』が残滓解析を完了し、究極能力『暴風之王』がリムル側に成立した。両者の間に“魂の回廊”が確立し、ヴェルドラは経験と記憶を時空を越えて共有しうる不死性に近い復元性を得た。これにより、暴風竜召喚・暴風竜復元・暴風系魔法の運用が可能となった。
ヴェルドラの顕現と制御
ヴェルドラは人型で顕現し、リムルの要請に応じて妖気の抑制を修得した。軽口を交わしつつも、制御の目処が立ったことで、町への影響を最小化した形での帰還準備が整えられた。
収穫祭の終着と統廃合
配下の進化完了に伴う「食物連鎖」の恩恵が一斉に集約され、『無限牢獄』を基礎とする能力の統廃合が実施された結果、『誓約之王』の強度が一段と増した。リムルは驕らず用心を誓い、次段の標的をクレイマン討伐に据えたのである。
帰還と混乱の鎮静
リムルがヴェルドラを伴って洞窟から戻ると、町では激しい騒動が起きていた。封印洞窟方面に多くの者が集まり、『暴風竜』ヴェルドラの復活を察した者達が、救出に向かう派と待機を主張する派に分かれて言い争っていたのである。獣王国側の三獣士が前者、ディアブロやトレイニー達が後者に属し、ベニマルは仲裁に苦慮していた。そこへリムルが姿を現すと、一同は驚きと安堵の声を上げ、リグルドが代表して無事を確認した。リムルは全員の不安を謝罪し、これから説明すると告げた。
ヴェルドラの紹介と友誼の告白
リムルは隣に立つ人型の美丈夫を前に押し出し、「こちらヴェルドラ君」と紹介した。緊張が走る中、ヴェルドラは「我は人見知りではない」と憤慨し、静寂は一転して喧噪へ変わった。ドライアドのトレイニーらがいち早く平伏し、守護神への復活祝いを述べると、ヴェルドラは上機嫌に応じ、今後はリムルに協力する旨を表明した。三姉妹が感激を示す一方、関係を問われたヴェルドラは誇らしげに「友達だ」と宣言し、周囲を騒然とさせた。幹部達はリムルの説明を受け、封印期間中に事実を秘した理由に納得した上で、ヴェルドラを受け入れた。
ソウエイの帰還と会議召集
その最中、ソウエイが『空間移動』で出現した。彼はクレイマンの動向を報告しようとしたが、場に居合わせた多数の要人を見て発言を控えた。リムルは改めて会議室で正式に報告を受けると決め、ソウエイに他の幹部とヨウム、ミュウラン、カバルらを召集させた。
魔国連邦の方針と決意
間もなく全員が集い、今後の魔国連邦の進路を定める会議が開かれることとなった。人と魔が共に生きる理想を掲げる一方、それを妨げる勢力に対しては断固たる処置を取る決意が示された。標的はまず魔王クレイマン、次いで西方聖教会である。仲間を傷つけた報いを正しく返すため、リムルは静かな笑みと共に、戦いの覚悟を固めたのであった。
終章 影で糸を引く者
計画の崩壊と焦燥
魔王クレイマンは、立て続けに失敗した計画に激しい苛立ちを覚えていた。ミリムを操ってカリオンを攻撃させるはずが、逆に宣戦布告を行うなど予想外の行動を取られ、さらにファルムス王国軍を利用して自らの覚醒を狙った策も、リムルによって壊滅させられたためである。忠実な配下ピローネも核撃魔法に巻き込まれて死亡し、彼の支配網は次々と崩れていた。
ミリムとフレイの報告
絶望的な情勢の中、魔王フレイからミリムがカリオンを一蹴し、獣王国ユーラザニアを滅ぼしたとの報告が届く。これにより、クレイマンは失った駒を補って余りある戦果を得たと喜び、ミリムを完全な戦力と見なした。フレイはその義理を果たしたとして帰還を望むが、クレイマンは高圧的に命じ、ミリムの世話を押し付けた。フレイは不快を隠さずに了承し、冷ややかな態度でその場を去った。
支配の確立と次なる野望
クレイマンはフレイを見送ると、計画の修正に取りかかった。ミリムを利用すれば、膨大な魂を刈り取り真なる魔王への覚醒を果たせると確信したのである。かつて豚頭帝を新たな魔王に仕立てる予定だったが、今やその必要はないと判断した。彼の視線は魔王レオンへと向けられ、長年の宿敵を討つ機会を夢想していた。
暗躍する影の存在
しかしクレイマンは、まず大恩人でもある“あの方”の思惑を優先すべきと冷静に考えた。敵は三つ――魔王レオン、リムルを盟主とするジュラの大森林、そして西方聖教会である。中でも西方聖教会には盟友ラプラスが潜入しており、リムルの存在が混乱を引き起こす絶好の機会になると見ていた。両者を争わせ、疲弊したところでミリムをぶつけ、自身の覚醒を達成するという筋書きを描いたのである。
野望への確信
すべては“あの方”の描いた計画の一部であった。幾つかの失敗はあったものの、最終的な修正は可能と判断し、クレイマンは満足げに高笑いした。彼の胸中には、真なる魔王となり宿願を果たす未来が、確信とともに描かれていたのである。
同シリーズ
転生したらスライムだった件 シリーズ
小説版






















漫画版







その他フィクション

コミックス(外伝含む)
『「転生したらスライムだった件~魔物の国の歩き方~」(ライドコミックス)』
『転生したらスライムだった件 異聞 ~魔国暮らしのトリニティ~(月刊少年シリウス)』
『転スラ日記 転生したらスライムだった件(月刊少年シリウス)』
『転ちゅら! 転生したらスライムだった件(月刊少年シリウス)』
『転生したらスライムだった件 クレイマンREVENGE(月刊少年シリウス)』
TVアニメ
転生したらスライムだった件 3期(2024年4月から)
劇場版
PV
OP
ED
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