どんな本?
“転生したらスライムだった件”とは、伏瀬 氏による日本のライトノベルで、異世界転生とファンタジーのジャンルに属す。
主人公は、通り魔に刺されて死んだ後、スライムとして異世界に転生。
そこで様々な出会いと冒険を繰り広げながら、魔物や人間との交流を深めていく。
小説は2014年からGCノベルズから刊行されており、現在は21巻まで発売されている。
また、小説を原作とした漫画やアニメ、ゲームなどのメディアミックスも展開されており。
小説のタイトルは「転生したらスライムだった件」だが、略称として「転スラ」と呼ばれることもある。
読んだ本のタイトル
転生したらスライムだった件 6 (That Time I Got Reincarnated as a Slime)
著者:伏瀬 氏
イラスト:みっつばー 氏
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あらすじ・内容
魔王種へと進化を遂げたスライム――リムルの元に「魔王達の宴(ワルプルギス)」が発動されたと報せが入った。 それは10人全ての魔王が集う特別な会合。しかもその議題は魔王を僭称するリムルに処罰をというもの。 発起人は、テンペストに災いを呼び寄せた元凶「魔王クレイマン」。クレイマンの謀略を全て理解したリムルは、このワルプルギスを逆手に取り、一気にクレイマンを叩き潰す計画を立てる。 そう、彼がが企てた全ての出来事に終止符を打つために……。
転生したらスライムだった件 6
前巻からのあらすじ
最弱のスライムが魔王に進化。
その理由が殺された配下を蘇生復活させるため。
その為に侵攻して来た2万人の侵略者達を殺し、その魂を供物にして魔王へと進化。
配下達は不死の存在となって復活。
その遺体は悪魔(原子の黒)召喚に使い、自身も魔王へ進化した事により能力も進化して、体内に封印していた暴風竜の無限牢獄の解析も完了し暴風竜を復活させる。
次なる目標は、侵略を裏で操っていた魔王を潰し、その魔王の地位も奪う。
感想
「魔王達の宴(ワルプルギス)」が開催される。
そう迷宮妖精の女王のラミリスから知らされた覚醒魔王に進化したリムルは正々堂々と魔王達の宴に殴り込む事を決める。
ただ、魔王達の宴に連れて行ける配下は2人だけ。
それで選んだのは、ランガとシオン。
ラミリスは悪魔のベレッタとドライアードのトレイニーを連れて行く。
それをボッチ脱出と無邪気に喜ぶラミリス、、(涙)
ちなみに復活したヴェルドラさんは聖典(マンガ)を読むのに忙しいため不参加。
そして、魔王達の宴に行ったら主催者のギィは中立で迷宮妖精のラミリスを凄く大事にしていたりする。
魔王達の宴が始まるのだが、、
ミリムを支配下に置いたと思って調子に乗ってた魔王クレイマンはリムルを都合の良いように攻めるが証拠が何一つ無い。
ただの状況証拠を言い並べるだけ。
それをリムルはクレイマンの城をベニマル達に襲わせて映像証拠を揃えて魔王達の宴に晒させる。
それに反論が出来ないクレイマンは、ミリムを使って力尽くで解決を図るが、、
さらにクレイマンの部下の妖狐と操り人形を繰り出す。
それに対して、リムルはシオン、ランガとで対抗するが、、
数的に不利になってしまう。
そこにラミリスの従者として宴に参加したベレッタが参戦を申し込むが、ギィがラミリスに生涯の忠誠を捧げる事を条件に出す。
それにベレッタは快諾して参戦するとクレイマンの操り人形をあっという間にバラし。
ランガは妖狐を保護。
そしてシオンはクレイマンをボコボコにする。
リムルはミリムと闘いながら洗脳を解こうするが、、
ラファエルさん曰く。
洗脳されていないという。
それに絶望的になったリムルだったが、、
聖典(マンガ)の最終巻を取りに来たヴェルドラさんが飛び入り参加して来て形勢が逆転。
終いにはミリムが支配されたフリをしてたと激白して終了。
クレイマンに支配されてるフリにピーマンを食して無表情になるとかかなり努力しているww
トントン拍子にリムルが出世して、ついには魔王になった。
これから世界が、話が大きくなって来るんだよな・・
最後までお読み頂きありがとうございます。
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展開まとめ
序章 魔人達の策謀
ラプラスの帰還と報酬の確認
ラプラスは満身創痍の状態で黒髪の少年の下へ戻り、西方聖教会の正体解明に失敗したと報告した。少年は動じず、意識の定着が完了して体内の魔王を人造人間に移したと明かし、約束通りの報酬支払いを示して場を掌握していた。
カザリームの登場と不完全復活
秘書に扮した女性が入室し、その正体がカザリームであることが明かされた。カザリームは十年を費やしてホムンクルスに星幽体を移し替えたが、肉体が脆弱で全盛期には程遠く、当面は少年に従う契約関係にあると述べた。少年は力量不足を理由に、表向きの演技継続とクレイマンの後見に徹するよう命じていた。
潜入任務の目的と情勢
少年は西方聖教会の裏を見極めて地位を貶める策を練っており、ラプラスは留守中のヒナタ・サカグチ不在を好機と見て潜入を実施した。西方聖教会はヒナタの下で聖騎士団を擁し独立性を強め、神聖法皇国ルベリオスの法皇直属近衛師団にもヒナタの影響が及ぶという力学が説明された。
聖地での違和感と奥の院への進出
ラプラスは聖神殿で微弱な精神干渉をユニークスキルが自動検知したため警戒を強め、より核心に近いと判断した霊峰頂の奥の院へ向かった。大聖堂の神聖な圧力に耐えつつ撤退リスクを測り、ヒナタ不在の今を最大の機会と見て調査を優先した。
吸血鬼の王の出現と壊滅的敗北
社への侵入の刹那、豪奢な装いと犬歯を備えた存在が出現し、真紅の光線でラプラスを圧倒した。ラプラスは逃走手段で辛くも生還したが、相手は準魔王級を超えた格であり、魔王と断じるほかなかったと回想した。
ヴァレンタイン特定と法皇正体の推理
カザリームはラプラスの描写と血刃閃紅波に該当する技から、その存在を魔王ヴァレンタインと断言した。ヴァレンタインは古き魔王の一人で人間や亜人を餌と見る性質であり、人類の守護者には不適合であると評した。この整合から、法皇しか入れない奥の院にヴァレンタインがいた事実をもって、法皇の正体がヴァレンタインである可能性が高いと結論づけた。
撤収判断と情報の価値
カザリームとラプラスはこれ以上の現地調査は危険と一致し、少年は西方聖教会切り崩しの切り札になる情報として高く評価した。少年は得た事実を基に次の一手を練る意図を示し、策謀を先へ進める姿勢を明確にした。
クレイマン作戦の振り返りと失敗要因
ラプラスの報告後、少年はクレイマン関連の一連の策が頓挫したと明かした。まず、カザリーム製の支配の宝珠でミリムを懐柔し、実戦検証としてカリオンを標的にしたが、ミリムが独断で宣戦布告し、避難猶予を与えたことで魂の回収計画が崩壊した。魔王を魔具で制御するには厳密な条件付けが要ることが露呈した。
第二段階:ファルムス王国の誘導と誤算
続いて少年とカザリームはファルムス王国を煽ってテンペストへの侵攻を仕掛けさせ、大量の死を“魂”として収穫しクレイマン覚醒に転用する構図を描いた。しかしリムルがヒナタとの交戦から生還し、戦場に単独で介入。ファルムスの二万の軍勢は一体により壊滅し、戦死体は痕跡なく消失、魂も回収不能で計画は瓦解した。カザリームは創造魔法の観点から“準魔王級”すら生む条件が揃っていたと分析するも、実利は得られなかった。
損益評価:部分達成と戦略の立て直し
完全敗北ではなく、ミリムによるカリオン撃破で支配の宝珠の効果実証、ファルムス弱体化、西側諸国の結束促進、ジュラ大森林の対帝国防波堤化といった副次効果は確保した。よって少年とカザリームはクレイマンへ当面の自重を指示し、二正面作戦を避けて優先敵を西方聖教会(背後に神聖法皇国ルベリオス)に絞る方針へ転換した。魔物の国はあえて存続させ、教会の視線をそちらへ誘導する“緩衝材”として利用する意図である。
脅威評価:ヒナタとヴァレンタイン
西方聖教会を正面から崩すには、聖人ヒナタに加え、聖地に潜む魔王ヴァレンタインの存在が最大の不確定要素である。ヒナタの性格から魔王との協働は考え難いが、奥の院に魔王がいた事実は重い。少年とカザリームは両者の関係性を測りかねつつも、拙速な正面衝突は避け、互いを煽って消耗を待つ消耗戦術を選好した。
対処策:魔王達の宴の発動案
ラプラスは調査継続のための撹乱策として、クレイマン主導でフレイとミリムを連名に加えた「魔王達の宴(ワルプルギス)」の発動を進言。これにより全魔王を招集し、ヴァレンタインを聖地から誘い出す狙いである。少年とカザリームはこの提案を採用し、ヒナタを聖地から引き離す別働策と併走させる方針を決定した。
任務再付与:ラプラスの再潜入
最終的に、撹乱と実地偵察の役回りは再びラプラスに委ねられた。本人の難色にもかかわらず、少年とカザリームは意に介さず準備を進め、魔人達は西方聖教会の切り崩しに向けた新段階の計画立案へ移行した、というのが概要である。
第一章 人魔会談
クレイマンの地盤と方針
クレイマンは、カザリーム敗北後にその領土・人脈・貿易網を継承し、一大財力を背景に武具と魔法装備で配下を増強していた。各国に協力者を散布し、情報と金で勢力を伸長させたが、自身の不足を「純粋な力」と認識していたため、外部火力の確保を最優先としたのである。
覚醒の近道としてのミリム依存
クレイマンは支配の宝珠によりミリムを行動させ、カリオン撃破という実績をもって威圧効果を確保した。次段として、聖教会とリムルを争わせ両陣営を消耗させる構図を採用し、同時に自らの覚醒条件を魂の大量供犠で満たす算段を進めた。
ワルプルギス発動計画と議題の偽装
聖地の警備を薄める目的で、ミリム・フレイを連名に巻き込み「魔王達の宴」を新月の夜に発動する計画を決定した。表向きの議題は「ジュラに新勢力が誕生し魔王を僭称」とし、裏では「ミュウラン殺害とカリオン裏切り」を口実に獣王国の残余を掃討して魂を集める腹積もりであった。
ラプラスの諫言と決裂
ラプラスは「覚醒条件の不確実性」「過剰虐殺の無効性」「ミリム暴走のリスク」を挙げて制止した。だがクレイマンは切り札を温存せずに用いる姿勢を崩さず、支配への過信と功名心から強行を宣言した。ラプラスは最終確認として意思決定の自由を質したが、クレイマンは自律判断を主張し、両者は袂を分かった。
クレイマンの内面と歪み
クレイマンはかつての仲間への情を表層では見せず、ミュウランの死を「道具の損耗」と位置づけて報復を正当化した。独白では「覚醒達成と世界掌握、皆で愉快に暮らす」という歪んだ理想を吐露し、自己正当化と抑え難い苛立ちの揺れが示された。
テンペスト側の意思決定:クレイマン討伐
リムルはクレイマンを牽制と見せしめの標的に定め、因果応報として討つ方針を確定した。同時に、ヨウムの名声を梃子にファルムス王国の王を解放・交渉に導き、戦後処理と各国への立場表明、西方聖教会対応を議題化して大規模会議に臨む体制を整えた。
フューズ来訪と戦況の齟齬
会議直前、リムルは感知で来客を把握。ブルムンド自由組合支部長フューズが五十名の戦士を率いて条約に基づく援軍として到着した。フューズは二万のファルムス軍に備えた持久戦・ゲリラ戦を提案したが、既にリムルが単独で本隊を全滅させた事実を知らされ、衝撃の中で状況を受容した。
疲弊部隊の受け入れと整理
援軍の戦士達は森中を重装備で強行軍しており疲労困憊であったため、テンペスト側は宿泊と休養を手配した。フューズも休息に向かおうとしたが――。
次なる来客:ガゼル・ドワルゴ
間を置かず、ドワーフ王ガゼル・ドワルゴが来訪した。テンペストの戦後局面は、友好国の首脳級を交えた新たな会談段階へ移行しつつあったのである。
リムルの感知能力強化と来訪者の連続
リムルの『魔力感知』は『万能感知』へ進化し、遠距離の個体識別まで可能に。天翔騎士団を率いるガゼル・ドワルゴの接近を把握し、到着後はリムルが“魔王”となった件を共有、ガゼルも会議への参加を即決する。続いてブルムンドのフューズが援軍を伴って来訪するが、リムルが既にファルムス軍二万を単独殲滅したと知って茫然。ガゼルとバーンは「行方不明」という公式処理で各国への波紋を抑える方針を示し、フューズも黙認のうえ会議参加を表明。ディアブロが“記憶の整理”の後始末を引き受ける。
サリオン使節の来訪と“親馬鹿”大公
魔導王朝サリオンの使者エラルド・グリムワルト(大公・エレンの父)が到着。挑発的に超高等爆炎術式で揺さぶるが、エレンの張り手で収束。ベニマルら幹部は術式未完成を見抜いて不動、シュナはエラルドの肉体がホムンクルス(星幽体憑依)であることを看破。エラルドは「娘を誑かした魔王」へ過剰反応しただけでなく、テンペストの力量見極めが真意だと明かす。
情報統制と信頼線引き
ガゼルは核兵器級の抑止力になり得る“個で二万殲滅”の事実を隠すべしと助言。ベスターは空気を読み「原因不明の消失」と報告ラインを整える。フューズは部下の保全を条件に沈黙を受け入れ、リムルは彼を“信頼できる同盟窓口”として会議に招く。
会議(人魔会談)へ
ガゼル、フューズ、サリオン使節団を加えた拡大会議を急遽開催。根回しなしの“言葉の戦争”として、テンペストの戦後処理(ファルムス王の扱い・ヨウムの活用)、対西方聖教会方針、周辺諸国への立場表明を本番で詰める段取りに。後世、この場は「人魔会談」と呼ばれることになる。
来賓の着座と紹介
大会議室にリムルが入室すると参列者は起立し、三獣士、フューズ、ガゼル・ドワルゴ、エラルド・グリムワルトらが来客席に案内されて着席した。リムルが最奥に座すと全員が続き、シュナが順に来賓とテンペスト側幹部を紹介した。森の管理者であるトレイニーも挨拶し、ヨウム一行やミュウラン、グルーシスの同席が示された。
暴風竜の告知による混乱
リムルが盟友としてヴェルドラを紹介すると場は凍りつき、フューズやエレンが気絶して会議は中断となった。ヴェルドラは尊大な口上を述べたが、周囲の妖気調整は概ね可能であり、混乱は介抱と鎮静で次第に収束した。
密談での合意
応接室でガゼルとエラルドがリムルと密談し、ヴェルドラ復活は隠蔽困難ゆえ最終的に公表する方針が確認された。一方で西方聖教会の強敵視は避けられないと整理され、対処の主戦場を外交に置く認識で一致した。
戦場の事実と情報統制
ファルムス軍二万の殲滅については、死体も証拠も残らぬ状況を踏まえ、公式筋では「行方不明」として扱う筋立てが採択された。ガゼルは世論と各国の反発を和らげる現実策としてこれを提案し、エラルドも為政者の立場から脚色に同調した。リムルは清濁併せ呑む覚悟を示し、負った罪を背負った上で民を守る決意を明言した。
立場表明と会議再開
ガゼルは中立を保ちながらテンペストとの国交維持を約した。エラルドは宗教一色ではない国家利益の観点から、テンペストとの友好を選ぶと明言した。会場に戻ると介抱は終わり、フューズは会議参加の継続を望み、ディアブロが必要な後始末を引き受け、ヴェルドラは顧問的立場で同席する手はずが整った。こうして戦後処理と西方聖教会対応を詰める本会議が、混乱を乗り越えて再開された。
事情説明の開始とヒナタ情報の共有
リムルはクレイマンへの対処を後回しにし、各国首脳との会談準備として一同へ経緯説明を行った。ヴェルドラとの邂逅と自身が異世界人である事実を明かし、イングラシア王国でのヒナタとの交戦を重視して伝達した。ヒナタの戦闘力と聖浄化結界の危険性を共有し、思念伝達で自身の記憶と認識を配下に展開した。
ヒナタの人物像と教義背景の確認
フューズはヒナタが冷酷に見えて実際は理性的で、頼った者には手を差し伸べると説明した。ガゼルも情報の一致を証言し、エラルドはルミナス教の教義に魔物との取引禁止があるため、ヒナタが対話を拒んだと補足した。召喚問題については各国が禁忌を公にできないため聖教会の内政干渉に限界があると整理され、ヒナタの怠慢と断ずるのは早計だと結論づけられた。
挑発的な進言の抑制と対外関係の基本線
ディアブロが先制排除を進言し、シオンが応じて対立しかけたが、リムルは両名を制止し、西方聖教会との敵対は望まない方針を明言した。ヴェルドラの出撃意欲も抑え、相手の出方を見て慎重に対応する線で会議を収めた。
内通者の可能性と保留
ヒナタがリムルの詳細を把握していた点から、密告者の存在が示唆された。智慧之王が候補を導出したが、確証なき断定を避け、心に留めた上で当面は保留とした。
魔王化経緯の共有と公表筋書きの再構成
ファルムス王国の異世界人による襲撃により犠牲が出たため、リムルは魔王化を選択した事実を説明した。公表に際しては覚醒を伏せ、ファルムスの戦争が最悪の封印を解きヴェルドラが復活、英雄ヨウムと盟主リムルが犠牲を払い説得して守護者として祀った、という筋書きへ編集する方針を示した。ガゼルは天災たる暴風竜の仕業とする方が人々の理解を得やすいと論証し、リムルは自らへの過度な警戒を避けつつ、敵対魔王には脅威をヴェルドラと誤認させる狙いを明確にした。
利害調整と国内外への効果
ガゼル、エラルド、リムルの利害は一致し、交易や外交の継続性が担保される見込みとなった。西方聖教会の影響下でも各国が一枚岩になりにくく、魔国連邦への無用な干渉を抑止できる点が評価された。ヴェルドラは三文芝居への協力を快諾し、リグルドは経済面の不安の軽減に安堵した。
配下と同盟側の反応、対クレイマン戦への収束
シオンは方針を称賛し、スフィア・フォビオ・アルビスはガゼルへの謝意を示した。ベニマル、ソウエイ、ゲルドはクレイマンへの集中戦略に戦意を高め、リムルは会議終結後の出陣を示唆して応えた。こうして、対聖教会は静観・抑止、対クレイマンは主攻という作戦枠組みが固まったのである。
方針協議の再開と骨子
公表用の筋書きが承認されたのち、リムルは「今後の行動」を議題化した。現状としてファルムス国王と西方聖教会の大司祭を拘束中であること、ヨウムを王に擁立して新王国樹立を目指す計画を提示したのである。
賠償を楔にした内乱誘発の設計
現王を一旦解放し、テンペスト侵攻の賠償を命じることで王権と貴族層の利害対立を先鋭化させ、内乱を誘発する構図を示した。二万の兵力喪失で国庫は逼迫し、強欲な貴族は拠出を拒む公算が高いと智慧之王が予測した。賠償履行なら擁立は棚上げ、拒否・先送りならヨウムが「信義にもとる」を旗印に蜂起する筋である。
最終到達点の確認
内乱で支配層が分裂した時機に、テンペストは抑止力として武力衝突を防ぎつつ敵味方を選別し、反抗勢力を後段で一挙掃討する計画であった。短期建国は想定せず、二〜三年の助走を見込む方針である。
ガゼルの試験とヨウムの覚悟
ガゼルは威圧でヨウムの胆力と「民を負う覚悟」を試し、ヨウムは託された役目を全うすると明言した。ミュウランとグルーシスも保証人を買って出て、ガゼルは「困れば頼れ」と承認した。これによりドワルゴンの後ろ盾が確定した。
復興軸としての農政提携
ガゼルは新国家に「農作物生産」の強化を要請し、輸入依存の是正と交易の安定を図る提案を行った。リムルも穀物の供給線拡充を要望し、ヨウムはファルムスの農地・技術基盤を梃子に受け入れる意向を示した。
ブルムンドの賭けとフューズの告白
フューズは国家の立場で参画しており、王直属の全件委任を受けていると明かした。小国として西方聖教会に賭けるより、テンペストと信義を結ぶ方が生存確率が高いという上層部の判断を共有した。ミュラー侯爵・ヘルマン伯爵はブルムンド系統の有力窓口であり、ヨウム決起の内応基盤として活用可能であると提案した。
エラルドの試問とリムルの統治理念
エラルドは警戒を解かず、フューズの判断理由を抉り出したのち、リムルに「力の扱い」を問うた。リムルは「力なき理想は戯言、理想なき力は空虚」と述べ、皆が笑って暮らせる世界を創るために力を用いると明言した。これに大公爵は満足し、サリオンとしてテンペストとの国交樹立を正式表明した。
同盟網の拡張と地図の更新
歓声と共にサリオンとの国交が成立し、人類国家として三カ国目の承認が加わった。ファルムスは内乱を経て瓦解し、ヨウムが導く新国家が台頭する見通しとなった。テンペストは抑止・仲裁・経済支援を担い、対クレイマン戦へ主力を集中する体制が整ったのである。
第二章 ラミリスの報せ
ラミリスの乱入と制圧
ラミリスが「テンペストは滅亡する」と宣言して乱入したが、ディアブロが即時に拘束した。ラミリスは自称「十大魔王最強」と豪語したが周囲の反応は薄く、ヴェルドラを侮る発言をした直後、ヴェルドラの前で気絶して沈静化した。
軍事方針の再確認
リムルはベニマルに対クレイマン戦の主攻を指示し、アルビス・フォビオ・スフィアら三獣士もテンペスト指揮下での参戦を明言した。ガゼルはリムルの判断を信任し、エラルドの数的優位懸念に対しリムルは「戦は質で決する」と明言した。ソウエイはクレイマン軍の移動が緩慢であり当面は情報帰還後に作戦会議を行う方針とした。
ファルムス王国の処理と擁立演出
王を一旦解放し賠償を楔として王権と貴族を分断、ミュラー侯爵とヘルマン伯爵に責任追及させ反応を見極め、ヨウムの決起を「英雄王」台頭として演出する流れを確認した。保護先としてミュラー侯爵邸に王を受け入れさせ、ヨウムの後ろ盾に据える段取りである。
捕虜訊問の成果と黒幕特定
シオンの取り調べで、侵攻の扇動は「王の欲を煽った商人」に端を発する可能性が示唆され、教会側の実働ではレイヒム大司祭の背後にニコラウス・シュペルタス枢機卿が存在すると判明した。西方聖教会は最終決定前であり、外交余地が残る。
対外工作:評議会・聖教会の牽制
フューズは評議会でテンペストを国家承認へ推す声明を準備し、世論・交易双方から聖教会に揺さぶりをかける策を提示した。ガゼルはドワルゴンとの貿易を加速し露出を高めることで後押しする。サリオンは既に国交樹立を表明済みで、三国連携により承認圧力を強める。
復興設計:農政と産業連携
ガゼルは新ファルムスを農業国家として再設計することを提案し、リムルも穀物流通の拡充を要望した。サリオンの魔導科学とドワルゴンの精霊工学がテンペストで接合し、新産業を創出する構図が示された。
ブルムンドの役割定義
フューズは小国としてのリスクを自覚しつつも、テンペストと信義を結ぶ方針を堅持。リムルはブルムンドに「世界初の総合商社」機能――各国の輸出入を俯瞰して配分する流通中枢の役割――を依頼する意向を伝えた。将来的にブルムンドが流通の心臓部となる構想である。
最終確認:当面の優先順位
一、クレイマン討伐を最優先として戦力集中。
二、ヨウムの新国家樹立を段階的に進め、評議会・聖教会を情報戦で牽制。
三、ドワルゴン・サリオン・ブルムンドと経済連携を走らせ、テンペストの有用性を可視化して対立の先延ばしと軟化を図る。
捕虜三名の再確認と正体の発覚
会議終盤、リムルは捕虜の内訳を整理する中で、三人目の人物を思い出せずにいた。シオンの報告によれば怯えた若い男であったが、ガゼルの指摘でそれが「騎士団長フォルゲン」ではないかと推測される。だが、ディアブロの報告によりその男は魔法を使う者であり、単なる兵士ではなかった。シオンが誤って「ラーメン」と答えたことで場が混乱するが、実際は「ラーゼン」と呼ばれる英雄級の魔導師であることが判明する。ハクロウの証言と智慧之王の分析によって、ラーゼンは精神魔法で若者の肉体を乗り換えて生き延びていたと確定した。
ディアブロの実力と配下の再配置
ラーゼンがディアブロに一蹴された事実に、各国首脳は衝撃を受ける。ディアブロはリムルに絶対の忠誠を示し、その力はヴェルドラに次ぐと判断された。リムルはこの信頼を基に、ヨウムが王国樹立のために行動を開始する際の随行者としてディアブロを任命する。ヨウムの護衛および捕虜三名の監視、そして新国家樹立の補佐を命じられたディアブロは、誇らしげにその命を拝命した。これにより、ファルムス方面の安全は保証され、テンペスト本隊は対クレイマン戦に専念できる体制が整った。
エラルドの提案と街道整備計画
その後、エラルドが魔導王朝サリオンとテンペストを直線で結ぶ新街道の建設を提案する。これにより距離を大幅に短縮し、交易の効率を飛躍的に高められるという。しかし、エラルドの真意は建設費用の負担をテンペスト側に押しつけることであった。リムルはこれを見抜き、条件として街道の警備・宿泊運営権および通行税徴収権を要求。エラルドは通行税の交渉権を一定周期で認める提案を返し、双方の利害が一致して合意が成立した。
ゲルドの参加と意気込み
リムルは街道整備をゲルドに一任する。ゲルドは土木技術と兵站の両面に優れており、この仕事を「軍事訓練の一環」として喜びをもって引き受けた。リムルはその熱意を評価し、戦後速やかに工事へ着手するよう命じた。
会議の終結と人魔会談の意義
こうして捕虜処理から街道整備までの方針がすべて確定した。各国代表はそれぞれの立場で協力を誓い合い、人と魔が共に歩む未来への第一歩が築かれた。この会議は後に「人魔会談」と呼ばれ、歴史の転換点として語り継がれることになる。
対クレイマン作戦会議への移行とラミリスの再確認
各国首脳との会議が終わり、対クレイマンの作戦会議へ移行する段となった。ソウエイの報告準備を指示したリムルは、忘れていた用件としてラミリスを思い出し、ヴェルドラのもとへ向かったところ、ラミリスは気絶から回復しマンガに没頭していた。ヴェルドラと意気投合し、ベレッタが給仕する中で、場は一時的に和やかであった。
ベレッタの進化と新特性
ベレッタはリムルの魔王進化の余波を受け「魔将人形」から「聖魔人形」へ進化したと報告した。ユニークスキル『天邪鬼』の影響で相反属性を自動獲得し、体内に生成された『聖魔核』により聖属性すら操れるようになった旨を説明した。これにより、堅牢な魔鋼の肉体と耐性に弱点補完が加わり、総合的な戦闘能力が大幅に向上したのである。
「この国は滅亡する」の真意と告知の促し
ラミリスはマンガに没頭して要件を失念していたが、リムルの“ネタバレ”を餌にした促しで本来の報せを思い出した。居合わせた来賓も足を止め、聴取体制が整った。
魔王達の宴の発動告知
ラミリスは魔王クレイマンの提案により「魔王達の宴(ワルプルギス)」が発動されたと通達した。魔王三名以上の承認で開催される全魔王会合であり、強制力を持つ拘束事項であると説明した。古文書の記録に基づき、西方聖教会は過去の大規模会戦期を「魔王達の宴」と結び付けて呼称してきたが、実際の開催目的は近況共有から議題処理まで幅広いと補足された。
天魔大戦の周期と各勢力の構図
エラルドは歴史的知見として、五百年周期で「天魔大戦」が起こると説明した。天使族の地上侵攻に呼応して魔物勢力が活性化し、人間側も東方帝国の覇権主義が絡むなど、天・魔・人が複合的に衝突する構図であると整理された。ドワルゴンやサリオンは防衛に徹し、西方諸国評議会は相互連携で生存を図ってきた経緯が示された。
今回の議題の核心とクレイマンの思惑
今回の発議に賛同したのはクレイマン、フレイ、ミリムの三名であった。議題は「ジュラの大森林に新勢力が誕生し、その盟主が魔王を僭称した件」であり、名目は制裁であったが、実際の狙いは「ミュウラン殺害の責任転嫁」と「カリオン領およびジュラの大森林の制圧」であると推測された。ミュウラン本人の名乗りにより冤罪は即時に否定され、犯人はクレイマンであるとの結論に場が収束した。
三獣士の反応と戦略的影響
カリオンの「裏切り」扱いに三獣士は激昂し、クレイマン討伐の意思を鮮明にした。魔王間の戦力バランス変動は各国来賓にも衝撃を与えたが、リムルは想定内として受け止め、対クレイマンの主攻を変えずに進める姿勢を示した。
開催期日の確定と作戦順序の見直し
魔王達の宴は三日後の新月の夜と判明した。この期日では先行してクレイマン本隊を叩くのは困難であるため、宴後を主戦期とする再調整が必要と判断された。以降の詳細はソウエイの続報を受けた上で詰める方針となった。
ラミリスの来訪理由と「迷宮入口」提案
ラミリスの来訪理由は、リムルが討たれた場合のベレッタの処遇への不安と、リムル側への与同の意思表示であった。あわせてテンペスト内への「迷宮入口」設置を求めたが、リムルは即時却下し、ベレッタの意志尊重および都市防衛上の懸念から拙速な受け入れを拒んだ。議論は平行線のまま持ち越しとなった。
来賓の解散と警戒の共有
会合は解散となり、フューズは小国としての最大警戒を助言しつつ一泊後に帰国予定とした。エラルドとガゼルは旅館に逗留し、以後はテンペストを媒介に交流を深める見込みとなった。リムルは八名近い魔王が敵となる最悪の事態も視野に入れつつ、まずは魔王達の宴を起点とする情報戦と戦略再構築に移る段取りを整えたのである。
ラミリスの居住申し出は保留となった
食事後の再集合において、ラミリスはドライアド三姉妹の厚遇に気を良くしてテンペスト居住を宣言したが、リムルは治安と対外関係への影響を理由に即答を避け、トレイニーらの支援を受けつつも判断を保留としたのである。
作戦会議の再開と参加者の編成が整った
会議には三獣士とミュウラン、さらに準備を要しないと語るディアブロが参加した。ヨウムとグルーシスは別任務の準備に移行し、ミュウランはクレイマン情報の一次ソースとして残留したのである。
偵察報告により敵司令官ヤムザを特定した
ソウエイの報告で、クレイマン軍はミリム領内で再編中であり、軍を率いるのは本人ではなく五本指最強格の「氷結魔剣士ヤムザ」であると判明した。配下戦力は三万規模で、主体はBランク相当、上位でもゲルミュッド級のAランク止まりと見積もられた。
敵の狙いはテンペストではなくユーラザニアであった
ベニマルの指摘を端緒に、クレイマンの初動目標はテンペストではなく獣王国ユーラザニアであるとの結論に至った。避難で残存した戦士は一万強と精強であるが、数の劣勢は否めず、現状の行軍では救援が間に合わない公算が高かった。
クレイマンの真意は大量虐殺による覚醒であった
ミュウランの洞察と智慧之王の推定により、クレイマンはユーラザニアの生命を狩り尽くして「真なる魔王」へ覚醒する計画であると断じられた。三獣士の激昂を抑えつつ、リムルは虐殺の断固阻止を宣言したのである。
地形・兵力制約下での遅滞策は効果薄と判定された
平野と緩丘陵が多い地形上、少数の飛行戦力やゲリラ運用は焼け石に水と判断された。可能な施策は住民の迅速な集約避難と、機動戦力による退避支援、そして主力の迎撃準備という基本に回帰したのである。
新術式の開発により全軍同時投入の道が開かれた
リムルは転送と転移の原理差を精査し、智慧之王が開発済みの完全保護型「軍団転送」術式(空間支配併用)を初行使する決断を下した。危険性の説明を受けたうえで、ベニマル以下の幹部と三獣士は迷いなく同意し、命を預ける覚悟を示した。
指揮体系と出撃方針が確立した
ベニマルを総指揮として獣王国防衛戦を立案し、リムル、ベニマル、シュナ、ソウエイ、シオン、ゲルド、ランガの七名を中核に、軍団転送で主力を一挙展開する方針が決した。ディアブロは対ファルムス任務の後備とされ、最悪時のみ召喚する体制である。
不確定要素として「竜を祀る民」の動向が浮上した
ソウエイはミリムを敬う「竜を祀る民」約百名がクレイマン軍に同行した事実を報告した。総数は十万規模とされるが、実態は監視随行に等しく、現段階では保留情報として監視継続となった。
奇襲展開で虐殺を未然に断つ体制が整った
かくして、クレイマンの覚醒企図を折るための奇襲的全軍展開案が確立した。街道監視を無意味化する軍団転送により、ユーラザニアへの即時投入が可能となり、会議は「必ず勝利せよ」とのリムルの下命で締めくくられたのである。
索敵結果と転移奇襲の断念
リムルはクレイマンの居所が不明である以上、空間転移による強襲は困難と判断した。ソウエイは高濃度の魔素霧に阻まれて探索を中止したが、敵本拠地の方角を把握できたため、慎重対応を是とする方針が共有された。リムルは自国防衛の観点からも、無用な強襲は避けるべきだと認識していた。
強襲案の抑制と現実的方策への収斂
シオンが魔王達の宴での一斉討伐を提案したが、リムルは現実的でないとして退け、各個撃破の原則を再確認した。ハクロウはベニマルに軍勢統率を求め、ベニマルの偵察・急襲案はシュナによりクレイマン不在の可能性から退けられ、場は拙速な実力行使を避ける空気に傾いた。
参加条件の確認と随伴制限
リムルはラミリスに魔王達の宴への参加可否を問合せ、参加可能だが随伴は二名までという取り決めを把握した。過去の前例から、力なき多数随伴は禁じられていることが共有され、会場での不用意な武力誇示は避けるべきだと理解された。
参加動機の明確化――ミリムの真意
ベニマルとソウエイは、ミリムがクレイマンに操られている可能性や発議に名を連ねた不自然さを指摘した。リムルもミリムの裏切りは考えにくいと見て、真意確認のために宴へ赴く必要性を強調した。ラミリスはクレイマン関与の線を支持し、場は情報収集を主目的とする参加へと収斂した。
随行者の選定と役割分担
ディアブロとシオンは武力解決に前のめりとなったが、リムルはディアブロにファルムス王国対応を命じて同行を外した。一方、シオンはクレイマン策により死亡に至った経緯への決着機会も踏まえ同行が確定した。もう一名は護衛適性と退避性を評価し、ランガが選ばれた。
街の防衛と切り札の配置
ヴェルドラは同行を希望したが、リムルは全軍出動下の本国防衛を最重要任務として残留を要請した。懸念に対してリムルは自らの能力でヴェルドラを召喚可能であると明かし、非常時の遅れて現れる援軍としての運用を示したことで、場は安全策を確保したとの理解で一致した。
ラミリス配下枠の調整とトレイニーの参加
ラミリスは自身の安全確保と体裁から随伴枠を求め、ベレッタの同行が前提とされたうえで、トレイニーが自ら志願して認められた。これにより、ラミリス側の配下はベレッタとトレイニーで確定した。
最終方針と目標設定
最終的に、リムルはシオンとランガを随え、ラミリス側はベレッタとトレイニーを伴って魔王達の宴に参加する方針を確定した。標的はクレイマンであり、可能であれば決闘形へ誘導して決着を図る意図が共有された。他方で、ミリムが敵対状態にある最悪の事態も想定し、被害の再発を断固阻止する覚悟が示された。リムルは逡巡を退け、為すべきを見据えたうえで出立準備に入った。
第三章 会戦前夜
クレイマンの策動と狙い
クレイマンはワルプルギスの開催提案を「魔王カリオンの協定違反」と「ミリムによる断罪」を大義名分として通した。実際には宴までの時間稼ぎで覚醒(万超の魂の収奪)を果たし、当日にはミリムを従える姿を示して他魔王の反論を封じる算段であった。これを実現するため、配下ヤムザに三万の魔人軍を与え、ユーラザニア方面へ出立させたのである。
竜を祀る民の都での軋轢
ミリムの領にある「忘れられた竜の都」では、神官長ミッドレイと側近ヘルメスがヤムザ軍の横暴な「協力要請」を受け入れざるを得なかった。竜を祀る民は平和主義だが統率の取れた共同体で、成人はC級相当、神官団はさらに強力という実力を隠し持っていた。ヤムザは挑発まがいの物資徴発に加え、反論したヘルメスの腕を切断して威圧し、回復要員目当てに神官団の従軍を強要した。ミッドレイは怒りを抑えて事を荒立てず、事実上ヤムザの思惑に呑まれた。
リムル側の初動――避難民の一括救出
リムルはソウエイの分身網とソーカ隊の情報を基に、避難民が各地に分散している問題を確認し、新型転送術式を用いた一括収容に踏み切った。転送先はミリムが更地にした元首都で、ゲルド隊が野営地を先行設営。リムルは各集落を巡回し避難民転送を完了させ、会戦に先立つ人的被害の最小化と軍展開の自由度を確保した。
戦力整備と進化の可視化
リムルの進化に伴う祝福の波及で、国内戦力は質的に跳ね上がった。
・狼鬼兵部隊(隊長ゴブタ):星狼と人鬼のエクストラスキル『同一化』により合体機動を獲得。対個体戦でトランク相当、百名が高錬度の連係を誇った。
・紅炎衆(ベニマル直属):大鬼族精鋭三百。個々がトランク相当の親衛集団。
・緑色軍団(ベニマル本隊):ホブゴブリン四千が『炎熱操作』と『熱変動耐性』を獲得し、B相当の強襲打撃能力を得た。
・黄色軍団(ゲルド隊):『剛力』『鉄壁』『全身鎧化』で防御特化、指揮層は『土操作』も有し、特質級楯鱗装備により対物理・対魔法とも鉄壁の五千。
・飛竜衆(ガビル隊):ドラゴニュート百。『竜戦士化』と各種黒属性ブレス、飛行・高耐性・高防御で万能急襲力を備えた。
・紫克衆(シオン親衛):蘇生者百が『完全記憶』『自己再生』を得て、将来的に不死性へ至る潜在を持つ再生特化の近衛となった。
加えて一般住民にも体力向上や若返りの効果が観測され、恒常戦力は一万弱ながら、総合戦力は従前の正規軍を凌駕する水準に達した。
会戦前夜の布陣と目的
リムルはユーラザニア首都跡野営地への自軍転送を進め、明後夜のワルプルギスに向けた準備と並行してクレイマン軍の侵攻迎撃体制を整えた。目的は二点である。第一に避難民保護とユーラザニアの戦域掌握、第二に宴での真相究明と可能ならクレイマンを決闘形へ誘導しての決着である。ミリムの真意を見極めることを最優先課題としつつ、戦端が開けば即応できるよう戦力を配備して、会戦前夜は静かに、しかし確実に戦の地ならしを終えたのである。
総勢二万の出立準備と指揮系統
テンペスト軍一万と獣人戦士一万が整列し、転送待機に入った。シオン配下の紫克衆は親衛任務ゆえ留守番として待機した。リグルドは徹夜で集結・整列・動線を整え、リムルはアルビスに現地での編成伝達と運用を託した。スフィアはクレイマン討伐への強い意志を表明し、連合側の士気は高かった。
作戦再設計と誘引地点の選定
ベニマルは避難民の一括転送により当初計画を簡素化し、敵の狙いを逆手に取る遅延・誘導策へ再設計した。ゲルドは決戦地をジュラの大森林外縁、滅びたオーク王国オービック跡に指定し、追撃してくるクレイマン軍を奥へ誘い込んだ後に殲滅する方針で一致した。智慧之王によるシミュレーションは成功率を裏付け、各隊へ思念伝達で共有された。
戦力比と勝算
数は三万対三万で拮抗させつつ、質で上回る連合側優位を確認した。ベニマルは「二度と逆らえぬ地獄」を見せると明言し、シオンとディアブロはそれぞれ士気を煽ったが、両名は別任務(ワルプルギス随行/ファルムス作戦)につき不参加である。
大規模転送の実施
リムルは超大規模な積層式転送術式で二万を一括転送し、ユーラザニア首都跡の野営地へ安全に送致した。初回は発光で警戒を招く恐れがあったため暗幕弾で可視光を遮断する教訓を得ており、今回は演算・魔素とも余裕の範囲で完了した。
情報戦と外交通行
ヴェルドラは抑止力としてテンペストに残置し、噂流布(ヨウム隊による街道宣伝)でクレイマン側の盗聴経路へ「リムル=ヴェルドラ不在」と誤認させる布石を打った。ディアブロはファルムス攻略に出立、ガゼルは国内事情により帰国した。
非戦闘員の後送と機動確保
移動に伴う制約を解消するため、戦闘員以外の避難民はテンペストへ後送。これにより前線の機動と後背の補給・保護体制を同時に確保した。
トレイニーの聖魔核移植と可搬肉体の創造
ワルプルギスの特殊空間に備え、リムルはトレイニーの大霊樹本体から霊核を新造の「聖魔核」へ移し替えた。器となる宝珠に霊気と妖気を等量封入する精密手術を成功させ、さらに旧本体材と魔鋼芯で人形躯体を彫刻・仕立てて「ドリュアス・ドール・ドライアド」を完成させた。結果、トレイニーは聖魔両属性を獲得し魔素量が飛躍的に増大、準魔王級相当の存在感へ強化された。これによりラミリスの随伴二名(ベレッタ+トレイニー)の実効戦力が大幅に向上した。
周辺勢力の観察と安全配慮
樹人族の集落ではアピト(女王麗蜂)とゼギオンの成長を確認しつつも、現状は招集せず抑止・警戒の戦力として温存した。ヴェルドラの結界下でテンペストの秘匿性と防諜を維持し、無用な攪乱を避けた。
開戦前夜の到達点
転送・布陣・後送・強化・随行体制のすべてが所定計画どおり完了し、連合軍は決戦域での誘引準備を整えた。新月の夜、前線ではベニマルが敵主力の誘導殲滅を開始する刻を計り、同時にリムルは星影を背にワルプルギスへ向けた自らの戦場へ歩を進める体勢を固めたのである。
幕間 魔王達
クレイマンの焦燥と過信
クレイマンは、ワルプルギスを目前にしてワインを傾けながら思索に耽っていた。友であるラプラスの忠告を無視してユーラザニアへ侵攻したものの、住民はすでに避難しており、魂の収穫という目的は果たせなかった。報告を受けたクレイマンは激怒し、ヤムザに追撃を命じるが、避難民は囮を使って巧みに逃走していた。作戦の失敗を悟ったクレイマンは不機嫌ながらも冷静を装い、残る手段を練っていた。
『操演者』による情報掌握と誤算
クレイマンはユニークスキル『操演者』を駆使し、地脈と磁気を利用して膨大な情報を監視していた。その中で「暴風竜ヴェルドラの復活」という報告を得たが、魔素反応の減衰を理由に、力を失った状態だと誤認する。リムルは暴風竜の威を借りているだけの小物に過ぎないと結論づけ、ワルプルギスでの公開処刑を夢想した。友ラプラスの「今は無茶をするな」という警告は頭を過ぎるが、クレイマンは自信を崩さず、己の策こそ完璧だと信じていた。
フレイの回想と“支配の宝珠”
一方、天空女王フレイは沈静した表情で宴の夜を迎えていた。彼女の脳裏に蘇るのは数ヶ月前、クレイマンから託された任務である。クレイマンは“支配の宝珠”をフレイに渡し、ミリムへ贈り物として装着させるよう求めた。訪れたミリムは上機嫌でリムルとの交流を語り、フレイは“友達の証”と称してペンダントを渡す。禁呪《操魔王支配》が発動すると、ミリムの瞳から光が失われ、クレイマンは歓喜に満ちた笑いを上げた。
フレイの違和感と決別の決意
しかし、フレイはその瞬間にミリムの瞳にわずかな意志の光を見て取った。クレイマンは支配を確信して暴力的に彼女を殴打するが、フレイは冷ややかにその光景を見据え、「無様な男」と心中で断じた。自己防衛回路の存在を告げて暴走を回避させたのち、彼女は内心で完全にクレイマンを見限る。もはやこの男は自らの慢心に溺れて滅びる運命にあると悟り、密かに行動の時を待つことにしたのである。
運命の夜への収束
こうしてクレイマンは過信に酔い、フレイは沈黙の裏で決断を固めた。ミリムの“支配”にはわずかな綻びがあり、真実を見抜けないクレイマンだけがそれに気づかぬまま、ワルプルギスという舞台へと歩み出す。勝利を信じる者と、結末を見通す者。魔王達の宴は、いよいよその幕を開けようとしていた。
第四章 因縁の地で
出撃前の連絡とベニマルの進化
リムルはヴェルドラに釘を刺し、ラミリスと共に案内を待っていた。場所を知らぬ二人は迎えを想定していたが、二十三時過ぎにベニマルから連絡が入り、戦況報告を受けた。ベニマルはリムルの覚醒による祝福で妖鬼へ進化しており、同じくシュナ、ソウエイ、ハクロウも高位種へ進化していた。
『大元帥』の効果と勝機の把握
ベニマルはユニークスキル大元帥を得て、予測演算により個人戦から軍団戦まで力の流れを完全に制御できるようになっていた。率いる三万の連合軍には軍勢鼓舞が働き、個々の能力が三割向上していたため、彼は開戦直後に勝利を見通していた。
敵本陣急襲案とシュナの同行志願
勝機を確信したベニマルは、霧の向こうにあると見られるクレイマンの城への急襲を立案した。ソウエイとハクロウを送り込む案に対し、シュナが思念伝達に割り込み、人心掌握を行うクレイマンの危険性を理由に自らの同行を強く志願した。ソウエイとハクロウも加わってリムルを説得し、シュナの参加が前提となった。
強襲隊の編成と作戦時刻の決定
リムルは危険を考慮しつつ、ソウエイとハクロウにシュナの安全最優先と、敵戦力が想定を超える場合は情報持ち帰りを命じた。カリオンを発見しても安全確認までは不介入とし、作戦開始は魔王達の宴の直後の時刻に定められ、三名による本拠探索が決定した。
魔王勢力の整理と迎えの到来
待機の間、リムルはラミリスとヴェルドラから魔王達の顔ぶれを整理した。ヴァレンタイン、ダグリュール、ギィ、フレイ、ディーノなどの名が挙がり、実力者が多いことを再認識した。やがて空間が歪み、禍々しい門が開いて迎えが到来した。
ギィ配下ミザリーの来訪と転移
門から現れた緑髪の美女ミザリーは、ギィ配下の悪魔公であった。強大な威圧を放つ案内役にラミリスは気安く応じ、リムル達は置いていかれぬよう門へ入った。ギィの傲慢さと警戒すべき潜在戦力を悟りつつ、リムルはこの場にディアブロを連れなかった判断を内心で反芻した。
会場へ向かう覚悟
これから相対するのは世界の支配者達であったが、リムルは自らも最強の一角へ至った自覚を持ち、気負いなく扉を潜った。
戦場の俯瞰と総大将の任命
一方、戦場ではベニマルが上空から戦況を俯瞰し、ゲルドの罠へ敵軍が吸い込まれる様を計画通りと見定めていた。アルビスが接近して賛辞を述べ、獣王国側が指揮権を委ねていることを明言すると、ベニマルはこの戦に限りアルビスを副官に任じ、連合軍の総大将として采配を執った。
三獣士の出撃志願と許可
スフィアとフォビオも加わり、獣王国としての責務を理由に敵の首魁討伐を志願した。アルビスの狙いに気づいたベニマルは苦笑しつつも了承し、勝てぬと判断した場合は即時退却を命じた。敵中には未知の強者が含まれると見て、慎重さを併せ持つ方針であった。
捕虜方針と勝利前提の自信
アルビスが罠に落ちた敵の処遇を問うと、ベニマルは獣人側の判断に委ねつつ、逆らう意思を失った者は捕虜とする意向を示した。都の再建に労働力を用いるという見通しに、三獣士は勝利を当然視した上で戦後処理まで描く自信に戦慄した。
罠の発動と命令系統の破壊
ベニマルの合図でソーカ隊が敵の隊長格を各個に葬り、クレイマン軍の命令系統が崩壊した。直後にゲルドの号令で地面が陥没し、偽装平地の下に仕掛けられた巨大な落とし穴が一斉に開いた。飛行可能な者は飛竜衆と鳥獣型部隊が迎撃し、地上の敵は分断された。
落とし穴作戦の目的と効果
落とし穴の底は液状化した土でダメージを与えず拘束する構造であり、縁に殺到する強者を各個撃破することで弱者の心を折り、従順な捕虜化を促す狙いであった。短時間で敵軍は各所で釘付けとなり、黄色軍団と紅炎衆が縁を固めて着実に制圧していった。
趨勢の決定と三獣士の発進
後方の残存部隊だけでは戦況は覆らず、趨勢は決したとベニマルは断じた。彼は三獣士に自由行動での首魁討伐を命じ、スフィア、フォビオ、アルビスはそれぞれの獲物を定めて出撃した。ベニマルは予兆を察知すれば敗北はないと確信し、作戦を遂行していた。
スフィアの突進とガビル合流
スフィアは〈飛翔走〉で敵後方へ疾駆し、非武装に見える神官戦士団(神官長ミッドレイ率いる)を最強勢力と直感して標的と定めた。上空制圧を終えたガビルと“飛竜衆”百名が合流し、後方抑え込みのため同行したのである。
ミッドレイ陣の動揺と出撃決断
後方医療班として隔離されていたミッドレイは、クレイマン軍の瓦解と罠の多用により敗色濃厚を認識した。参謀役ヘルメスの進言を受け、強敵接近を察知して前に出る決断を下した。かくして最後方で本戦最大級の衝突が始まったのである。
フォビオ対“中庸道化連”の遭遇
フォビオは監視役フットマンとティアを発見し、面子の決着を挑んだ。二人の挑発にも乱されず間合いを詰めるが、戦力差を冷静に測った結果、援軍を拒まず受け入れる構えであった。
ゲルドの助勢と戦線分離
ゲルドが転移参戦し、フットマン級への対抗に幹部クラスが必要と判断。フォビオと共闘して丘陰で別戦場を形成した。主戦場の制圧は副官で賄える段階にあり、連合側の作戦優位は揺らがなかった。
ヤムザの動揺と逃走策
ヤムザは劣勢を悟り、アダルマン合流による反撃を目論んだが、時間稼ぎを命じて自らは撤退する腹づもりであった。そこへ本陣正面にアルビスと獣王戦士団、さらに高火力の紅衣部隊が接近し、状況は壊滅的となった。
アルビスの制圧と空間封鎖
アルビスは『天蛇眼』で視界内の敵へ麻痺・毒・発狂・石化を一斉付与し、ユニークスキル『制圧者』により『思考加速・空間制御・空間移動』を展開。戦域の座標を固定化して転移逃走を封殺した。これにより本陣の大半は戦闘不能となり、百に満たぬ精鋭のみが残存したのである。
卑手の不意討ちとゴブタの介入
ヤムザは部下の特攻でアルビスの注意を引いた刹那、背後から斬撃を狙ったが、アルビスの影に潜んでいたゴブタが弾き、狼鬼兵の“ゴブリンライダー”が一斉に襲撃した。ヤムザはゴブタの無詠唱魔法(ケースキャノンによる追撃含む)を見て脅威と認識するも、なお上位者として優位を自負した。
一騎討ちの成立と役割分担
ヤムザは思念でアルビスに一騎討ちを提案し、アルビスが受諾。ゴブタは立会人を名乗って戦闘から身を引き、アルビスは“獲物”を譲らず最前線に立った。こうして、空間封鎖下でヤムザ対アルビスの決戦が確定し、周辺ではスフィア隊と神官戦士団、フォビオ・ゲルド対フットマン・ティアの戦いが並行して進行したのである。
後方戦線の概況
敵最後尾で神官長ミッドレイ率いる神官戦士団とガビル率いる飛竜衆が激突し、両軍合わせて二百名近くが戦闘不能となった。ミッドレイは無傷で健在を誇示し、戦場の主導権を掌握していたのである。
ミッドレイ対スフィア&ガビル
スフィアは〈飛翔走〉と半人半獣の変身で肉薄したが、ミッドレイは独特の投げ技で体力を奪い続け、外傷を与えず疲労のみを蓄積させる戦術で圧倒した。会話の中でミッドレイが竜を祀る民の龍人族であることが判明し、努力に裏打ちされた技量を信条とする価値観を示した。挑発を受け、スフィアとガビルは同時攻撃に踏み切り、最強格の一角たるミッドレイへの総力戦が開始されたのである。
ヤムザ対アルビス:空間制圧と鏡身の破砕
アルビスは『天蛇眼』で広域に状態異常を付与し、『制圧者』で空間座標を固定して転移を封殺、上位魔人の大半を無力化した。ヤムザは“鏡身の腕輪”で完全分身を展開して優位を狙ったが、アルビスは獣身化から黄金の角を顕現する二段階の変身で近接戦の本領を発揮し、睨みだけで鏡身を破砕して分身を消滅させた。降伏勧告に傾いた瞬間、クレイマンの“操り人形”が作動し、ヤムザは暴風大妖渦の欠片を強制摂取させられたのである。
災厄顕現とベニマルの討滅
欠片の暴走により未完成体カリュブディスが再出現し、死体を取り込み超速再生で急速に肥大化した。アルビスの攻撃は抑止に留まり、戦場拡大の危機が迫る中、総大将ベニマルが跳来。太刀の斬撃にまとわり付く『黒炎』で再生を阻害し、広範囲焼滅“黒炎獄”で魔素の流れごと焼き切って瞬時に消滅させた。これによりベニマルが災禍級相当へ到達した事実が明確となり、直後にアルビスへ全軍指揮の委任が下されたのである。
フットマン&ティア対ゲルド&フォビオ:情報優先の持久
別線ではフットマンとティアがゲルド・フォビオと交戦した。フォビオはカリュブディス由来の『超速再生』で粘り、ティアに対し被弾を恐れぬ蓄積ダメージ戦を遂行。ゲルドは大盾と包丁でフットマンの“肉鎧”を見極めつつ防御寄りに運用し、作戦目的である「手の内の観測」と「フォビオの保護」を達成した。カリュブディス討滅後、フットマンは極大魔力弾で両名を行動不能寸前まで追い込みつつも任務外を理由に撤退。ゲルドは全戦闘記録をベニマル経由でリムルの解析へ回す見通しを確認した。
戦略的帰結
最後尾戦域では、ミッドレイが人的消耗に比してほぼ無傷で戦場支配を継続し、三獣士側は実戦を通じた技量課題を認識した。中核戦域では、アルビスの空間制圧と状態異常により敵指揮系統が瓦解、クレイマンの禁じ手が露呈し、ベニマルの一撃で災厄要因が即時排除された。情報面では、フットマン/ティアの火力閾値と防御特性の一端が取得され、次戦に向けた対策に資する成果を確保したのである。
後方戦線の収束と合流
ミッドレイは遠距離から異様な魔素の波動を察知し、神官戦士団と飛竜衆に回復・再武装を即時許可。対象が「カリュブディスの残滓」であると見抜き、囮機動で被害抑制を図ろうとした矢先、ベニマルが現着し“黒炎獄”で未完成体を瞬時に焼滅。直後にベニマルがミッドレイと対面し、両者は力比べの誘いを笑って流して交戦回避。竜を祀る民が味方回復を施していた事実も共有され、後方戦域は衝突なく終息した。
湿地潜入と三方向の迎撃
同時刻、シュナ・ソウエイ・ハクロウは霧の湿地に侵入。霧が感覚撹乱と「方位結界」による空間誘導を兼ねる罠だとシュナが解析する中、守護者アダルマン(ワイトキング)が顕現。周囲には万単位の不死系が蜂起し、ハクロウは死霊騎士、ソウエイは死霊竜の足止めへ。シュナは粘鋼糸での連絡線を確保しつつ、主を落とす方針を即断した。
シュナの結界展開と主導権奪取
シュナは『対魔属性結界』を展開して半径百メートルを聖域化。魔法阻害と浄化を兼ねる自作の融合術式で雑兵の干渉を遮断し、アダルマンとの一騎討ちに持ち込む。アダルマンは侵蝕魔酸弾・呪怨束縛などを繰り出すが、シュナは『解析者』の千倍思考と詠唱破棄で逐次対処、さらには神聖魔法「聖なる福音」を行使して悪霊を成仏させる。
〈神聖魔法〉の本質とアダルマンの覚醒
シュナは「神聖魔法は契約者の種ではなく“信じ願う心”が媒介」という真理を提示。ルベリオスの枢機卿にして“仙人”へ至った過去、七曜の老師の奸計で殉死し死霊へ堕ちた経緯、カザリーム製の拠点防衛機構に魂を縛られた現状――その全てを抱えるアダルマンは言葉に揺さぶられ、眠っていた信仰心を呼び覚ます。
禁呪の激突と浄化の反転
アダルマンが積層陣で最終禁呪「霊子崩壊」を発動、巻き添えで自滅と同胞解放を狙う。だがシュナは法則操作で術式を上書きし「霊子暴走」へと反転。アダルマンの膨大な霊子収束を逆用して一帯を聖光で満たし、主を含む不死系群を一挙に浄化する。ハクロウ対死霊騎士、ソウエイ対死霊竜の攻防も、核たる主の消失で決着した。
結果と示唆
後方はベニマルの災禍級火力で最大脅威が除去、交戦回避で竜を祀る民と衝突を回避。前線裏の拠点は、シュナの解析と結界・上書き術式で機構ごと無力化。三獣士側は「技量で削るミッドレイ」「空間制圧に長けるアルビス」「解析で術式を制すシュナ」という個性が鮮明となり、次局面(魔王達の宴)へ向けた戦略的優位と情報を確保した。
湿地戦後の収束と城攻略
ハクロウとソウエイがシュナのもとへ合流。アダルマンの浄化で死霊騎士は骸骨剣士へ退化し停止、死霊竜も消滅して戦闘は終息。三人は「最初からアダルマンが本気なら敗れていた」と反省し、慢心を戒めたのち作戦を継続する。
クレイマン城の無力化
霧の結界が消えた後、三人は城内を制圧。残っていたのは非戦闘員が大半で忠誠心は乏しく、降伏が相次ぐ。シュナが呪詛を解いて拘束を解除し、抵抗は鎮静化。カリオン不在も再確認し、証拠探索へ移行する。
アダルマンの願い
力を大きく失ったアダルマンが骸骨剣士を伴って出頭し、シュナに拝謁。浄化で束縛から解かれた礼を述べ、「失われたルミナス信仰に代わる新たな信を得たい」としてリムルとの引き合わせを懇願する。シュナは困惑しつつも受諾(内心は“実物を見れば諦めるはず”と算段)。
戦果と編成上の変化
アダルマンおよび生き残りの不死系数千体がシュナの指揮下に入る。これにより拠点防衛機構は崩壊、クレイマン城は完全に無力化。ハクロウとソウエイは死霊上位への対処経験と情報を得て撤収準備へ。
――後方の脅威は排除され、次段階(ワルプルギス/本隊合流)へ進む足場が整った。
第五章 魔王達の宴
会場到着と席次
ミザリーの案内で円卓へ。椅子は十二脚、現存魔王は十。カリオン行方不明ゆえ二席空き。着座は就任順で、リムルは末席。
ギィの“偽装”と底知れなさ
真正面には妖艶な赤髪のギィ。『解析鑑定』に偽情報を混ぜる巧妙な隠蔽で、見る者を篩いにかけるタイプと見抜く。見せ札だけでカリオン級の魔素量、実力は測れず“別格”。
ダグリュール入場
巨人族の魔王ダグリュールがギィの右隣(ミリム席を一つ空けて)に着座。魔素量は桁外れ。ただし量より質・技量が肝要と警戒を継続。
ヴァレンタインと“従者”の違和感
ラミリス左隣にヴァレンタイン。執事は達人級で気配皆無。銀髪の金銀妖瞳の美少女メイドは、主よりも魔素量が多く波長を可変させる“露骨な隠し玉”。先代クラスの真なる魔王格と推測し要警戒。
ディーノの登場と緩い応酬
ディーノがラミリスと軽口を交わし、ヴァレンタイン隣で即就寝。やる気は皆無だが妨害で解析を弾くため、底は見えず。無用な敵対は避けたい相手。
フレイと二人の随伴者
有翼族の女帝フレイが入場。魔素量は突出しないが“隠し手”の多さを示唆。従者は巨乳の美少女と獅子仮面の大男(大鷲の翼持ち)。波長はカリオンと別物と判断し“人違い”扱いに。
レオンとシズの話
白金の悪魔レオンがリムルに接近。「姿が懐かしい」と語り、シズの死は“彼女自身の選択”と断言。リムルは憤り「一発殴らせろ」と返すも、レオンは拒否。代わりに「招待する、罠と思えば断れ。生き残れたらな」と一言残し、リムル左隣へ。少なくともこの場で敵対の意はなし。
現状まとめ
ギィ=最上位クラスの底知れなさ/ダグリュール=量も格も化け物級/ヴァレンタイン陣営の“銀髪メイド”が真の牙/ディーノ=解析不能の怠惰な古参/フレイ=手札多し+従者が不穏/レオン=中立的に様子見。
――クレイマン本戦前、会場の力学は“ギィ頂点”を軸に緊張が張り詰め、リムルは観察と警戒を最優先とした。
戦況報告と証拠収集の完了
リムルは会場入りから一時間が経過する中、ベニマルから思念伝達を受け、戦争が一方的に計画通り終結したと確認していた。テンペスト側は負傷者多数ながら死者はなく、クレイマン軍は千名の戦死と三千以上の負傷者を出していた。ヤムザがカリュブディス化した件はベニマルが黒炎獄で焼却して対処しており、リムルは配下の成長を認めつつ、自身の戦力見積もりの甘さを反省していた。続いてソウエイからクレイマン本拠攻略と宝物庫確保の報が届き、シュナが不死系を取り込む働きを見せたこと、そして中庸道化連との繋がりを示す証拠が胃袋に送達済みであることが共有され、建前を固める準備が整っていた。
魔王入場と究極能力への警戒
クレイマンが入場し、腕に強大な妖気を宿す狐を抱えていたことが確認された。続いてミリムとレオンが着座し、リムルはレオンの解析不能を通じて、相手が究極能力の所持者であると判断した。ギィが偽情報を流していた意図を究極能力対策と看破し、リムルは智慧之王ラファエルの存在を秘匿しつつ、暴食之王ベルゼビュートのみを公開する戦法に切り替える方針を固めていた。
ミリムへの暴行と内心の決意
クレイマンがミリムを殴打し命令に従わせる異常事態が発生した。ミリムは抵抗せず着座し、他の魔王達にも動揺が走った。リムルは激怒を抑え、形式に則った宣言の機を待ちながら、クレイマンの死を内心で確定させていた。
参列者の概況と開会宣言
ラミリスの同席で先に入場していたリムルを含め、カリオン不在を除く魔王が出揃っていた。ギィ、ミリム、ラミリス、ダグリュール、ロイ・ヴァレンタイン、ディーノ、フレイ、クレイマン、レオン、そして新参としてのリムルである。ギィ配下のレインが紹介を終えると、主催者クレイマンが開会を宣言し、演説に入った。
クレイマンの長広舌とリムルの反証方針
クレイマンはカリオンがリムルを唆したこと、ファルムス侵攻とテンペストの反撃を結び付けたこと、リムルの僭称を糾弾することを主張した。時系列無視の詭弁に対し、リムルは証言偏重である弱点を見抜き、ミュウランが生存している事実と共に、直接的な物証で論破する方針を維持していた。
映像記録の提示と黒幕の輪郭
リムルは水晶球に記録された戦場俯瞰やゲルミュッド視点の映像、ヤムザの変質場面、フットマンとティアの会話などを提示した。そこにはラプラスの名と“あの方”への言及が含まれ、クレイマンの背後にさらに上位の黒幕が存在する構図が浮かび上がった。リムルは西方聖教会との対立誘導やファルムスの扇動が一連の工作であると理解し、破砕の決意を強めていた。
覚醒条件の自白と詭弁の破綻
ダグリュールの問いに窮したクレイマンは、人の魂集積による覚醒条件を自ら開示した上で、リムルがヴェルドラを利用して虐殺に及んだと糾弾した。しかしリムルは証拠の不在を突き、詭弁であることを再度明示した。
実力行使の宣言と精神支配の摘発
リムルは円卓を暴食之王で収納して決闘空間を作り、テンペストの理想と人間保護の方針を明言した。同時に、クレイマンが演説中に精神支配を仕掛けていた事実を指摘し、大義名分を確保した。ギィはこの場の公平性を確認した上で、クレイマンに自力での決着を命じ、リムルに魔王を名乗る意思を質した。リムルが肯定すると、ギィは見届け人の前でクレイマンに勝利すれば魔王を名乗ることを許可すると宣言し、決戦の舞台が整ったのである。
開戦宣言と“奥の手”の提示
クレイマンは失敗を認めつつ冷笑し、援軍としてミリムを指名した。ギィはミリムが自意志で助力するなら黙認すると告げ、場は一気に緊迫した。リムルはミリム救出を最優先としつつ、挑発でクレイマンの隙を誘う方針を固めたのである。
シオンの先制とクレイマンの反撃
リムルの合図より早く、シオンが超速の連打でクレイマンを中心域へ吹き飛ばした。クレイマンは濃い妖気で瞬時に再生し、従者である九頭獣と魔人形ビオーラを投入。リムル側はシオンとランガが応戦したが、結界の隔離発動により、当初想定のベレッタが入場不能となり数的不利に陥った。
隔離結界下の乱戦と各戦況
ランガは星将狼を二体まで同時召喚し、九頭獣とその眷属(白猿・月兎)の連携を分断して互角へ持ち込んだ。シオンはクレイマン+ビオーラの多様な属性攻撃に被弾しつつも、超速再生で耐え続け、怒りを蓄積していた。リムルはミリムの相手を引き受け、洗脳解除の糸口を探ったが、呪法は検出不能であり、解析は徒労に終わった。
ラミリスの嘆願とベレッタ参戦の許可
外周ではラミリスがギィに直訴し、ギィはベレッタの忠誠の在り方を問い質した上で、主をラミリスに定めることを条件に一度限りの介入を許可した。ベレッタは即答で承諾し、結界に開けられた小孔から侵入。これによりシオン側は当初計画の布陣を回復し、形勢は安定へ向かった。
リムル対ミリム:吸収戦法への転換
リムルは正攻法での勝機を捨て、暴食之王による魔素吸収を“受け流し”に組み込む持久戦へ移行。竜気で保護された攻撃から少しずつ魔素を削り、時間を稼ぐ選択を取った。ただし決定打は放てず、手の内の露出を避けつつ粘る消耗戦となった。
決定的危機とヴェルドラの乱入
ミリムの誘い込みに反応したリムルが致命的な隙を晒した瞬間、ヴェルドラが割って入り、直撃を受けて事態を中断させた。来訪目的は漫画の“続き”という呆れた理由であったが、リムルは好機と見て、ヴェルドラに「ミリムの相手をしつつ絶対に傷付けない」時間稼ぎを依頼。ヴェルドラは快諾し、リムルは自由行動を得た。
方針確定:先にクレイマンを討つ
ミリムの解放が最終勝利条件であることは変わらないが、時間を得たリムルは戦域の主導権奪取を優先し、まずクレイマン本体の撃破へ舵を切った。ベレッタ合流で前線は安定、ヴェルドラの抑えで最大脅威は拘束中。状況は当初の勝ち筋へ回帰しつつあった。
九頭獣の解放
ミリムとの交戦中、リムルは戦況確認に移り、ランガの苦戦を察知した。九頭獣から「助けて」という幼子の思念を受信し、支配の呪法が原因であると判明。智慧之王ラファエルによって即座に解呪を行い、九頭獣は子狐の姿に戻り安らかに眠りについた。リムルはこの小さな命をランガに託し、保護を命じた。
ベレッタの勝利と成長
次に視線を向けると、ベレッタは既に戦闘を終えていた。特質級兵装を磨きながら、倒した魔人形ビオーラの残骸を並べていたのである。リムルの問いに対し、ベレッタはそれらを戦利品として献上する意図を語り、ラミリスと共にテンペストへ居住する許可を求めた。経緯を尋ねると、ギィから主を定めよと命じられた際に、ラミリスを主としながらもリムルに仕える抜け道を見出していたことが判明した。リムルは呆れつつも、その狡知を評価し、後日検討を約した。
シオン対クレイマンの決戦
戦場の中心では、シオンとクレイマンの戦いが終盤を迎えていた。シオンは『超速再生』による継戦力で優位を保ち、クレイマンは次第に疲弊していった。追い詰められたクレイマンは五体の魔人形を召喚するが、シオンは大太刀“剛力丸・改”で一撃のもとに斬り伏せた。動揺したクレイマンは“操魔王支配”を発動させたが、シオンの『完全記憶』により一切の精神支配は通じなかった。逆にその無力さを露呈したクレイマンは、恐慌状態から狂笑し、己の理性を失った。
喜狂の道化の覚醒
クレイマンは上半身の衣を捨て、背から二対の腕を生やした異形へと変貌。道化の仮面を装着し、“喜狂の道化クレイマン”として本性を顕にした。四腕を駆使し、魔法と物理を同時に操る多角攻撃を仕掛けるが、シオンは“闘鬼化”とユニークスキル『料理人』の“確定結果”“最適行動”によって完全対応。クレイマンの武器を粉砕し、四腕をへし折った上で、拳を叩き込んだ。
崩壊する支配構造
満身創痍のクレイマンは、助けを求めてミリムとフレイに呼びかけるが、ミリムはヴェルドラと互角の戦闘を楽しみ、フレイは冷笑で拒絶した。追い詰められたクレイマンは狂化命令を叫ぶが、ミリムはその支配を否定。「友を殺す理由はない」と明言し、洗脳が虚偽であったことを明かした。さらにクレイマンの口から黒幕の存在、“あの方”の名が出たことで、自らの罪を証言してしまう。
真実の露見と審判の一撃
その瞬間、隔離結界の外から声が響き、仮面を外したカリオンが現れた。生存を確認したリムルに礼を述べた後、クレイマンに冷笑を向け、真相を確定させた。フレイもまた、「味方であった覚えはない」と告げ、クレイマンは完全に孤立した。
リムルの「シオン、やれ」の一声で決着は下された。
シオンは渾身の力を込めて“剛力丸・改”を振り下ろし、クレイマンの全ての腕を断ち切り、袈裟懸けに斬り裂いた。精神までも切断されたクレイマンは、断末魔を上げることも出来ず、そのまま倒れ伏したのである。
クレイマンの回想と後悔
クレイマンは致命傷を負い、命の灯が尽きかける中で、これまでの過ちを省みていた。ラプラスの忠告を無視し、ミリムの力に酔い、仲間達の助言を軽視した己を悔いていたのである。フットマンとティアの声を思い出しながら、彼は仲間に頼ることを忘れた自分の愚かさを悟っていた。
さらに、彼の脳裏には“あの方”との出会いが蘇る。魔王カザリームの名を口にした少年――それがクレイマンを中庸道化連の表舞台へと導いた存在であった。彼はその少年の野望に共鳴し、「魔王カザリームの復活」という報酬を条件に協力を誓った。以後、クレイマンはカザリーム復活を果たしたものの、自身の軽率な独断がすべてを崩壊へ導いたのである。
復讐と執念の覚醒
クレイマンは死を前にしてもなお執念を失わず、魂を燃やしていた。カザリームの「悪い面を真似るな」という忠言を思い出しつつも、自らの失態を挽回する力を渇望した。彼は「まだ死ねぬ」と叫び、魂を魔素に変換することで肉体の再構築を試みた。その願いに世界の言葉が応じ、再び立ち上がる力を得たクレイマンは、極大魔力弾による混乱に乗じた脱出を決意したのである。
脱出の策と魔王達の再会
クレイマンが退避を図る直前、結界が解除され、フレイが戦場へと現れた。彼女はミリムに歩み寄り、互いに約束の履行を確かめ合う。ミリムはリムルから贈られたドラゴンナックルを受け取り、笑顔を見せた。その様子を見た他の魔王達も、ミリムの演技であったことを理解したのである。
クレイマンへの真実の宣告
血を吐きながらもなお立ち上がったクレイマンは、ミリムを見て問いかけた。「いつから私を欺いていた」と。しかしミリムは堂々と、「最初からだ」と告げた。支配の宝珠“オーブ・オブ・ドミネイト”を用いた呪法は、ミリムの意思によって無効化されていたのである。ミリムはリムルの怒りが嬉しかったと笑い、フレイはその演技の稚拙さを指摘した。こうして“支配”の全てが虚構だったと暴かれた。
ミリムとカリオンの応酬
次にカリオンが問いを投げかけた。自分を殺しかけた戦いは演技ではなかったのか、と。ミリムは動揺しつつも逆上し、「小さなことだ」と開き直った。カリオンは怒りを抑えつつも、リムルの仲裁によって事態は収まった。リムルはクレイマンの配下を再建労働に充て、獣王国復興を支援すると提案した。これに感銘を受けたカリオンはテンペストとの永世友好を誓ったのである。
魔王達の評価と断罪
ギィはリムルの姿勢を面白がり、「原初の黒が懐いたのも納得だ」と評した。フレイは冷静な怒りを込めてクレイマンを糾弾し、カリオンも恨みを晴らす意志を示した。誰一人としてクレイマンを庇う者はなく、魔王達の間でその命運は完全に断たれた。
クレイマンは孤立無援のまま、滅びを待つ存在となった。リムルの号令とともに、シオンの大太刀が振り下ろされ、喜狂の道化クレイマンは完全に滅び去ったのである。
後悔と仲間の記憶
クレイマンは死を自覚しつつ、ラプラスやティア、フットマンの忠告を思い出し、自尊心が判断を曇らせた過ちを悔いたのである。中庸道化連に認められたいという渇望が、肝心な場面で仲間を頼れなかった原因であったと悟った。
“あの方”との邂逅と野望への合意
クレイマンは過去に、魔王カザリームの紹介で現れた少年と出会い、その世界掌握の野望と力を知って協力を決意した。報酬として約されたのはカザリーム復活であり、それは既に成就していたが、今回の失態で戦略基盤を崩しかけていると彼は認識した。
力への渇望と覚醒の起動
死ねぬと焦がれる執念から、クレイマンは圧倒的な力を求めた。世界の言葉がそれに応じ、魂の変換と肉体再構築が始まり、限定的な覚醒が起動した。彼はまず脱出と報告を最優先とし、極大魔力弾で混乱を作り出す策を選んだ。
リムルの作戦と狙い
リムルはクレイマンの魂に付随する怨念を観察し、智慧之王の提案どおり、覚醒のエネルギーを暴食之王で捕食して魔素を回復する計画を採用した。新参魔王としての武威を示す狙いもあり、覚醒後のクレイマンにも優位であるとの演算結果を信じて対処に臨んだ。
極大魔力弾の無効化と隔離戦域の展開
クレイマンは会話の隙に極大魔力弾を放ったが、リムルは暴食之王で空間ごと捕食し、被害を遮断した。続けてギィの術式を模した隔離戦域を展開し、周囲を巻き込まぬ単独決闘の場を確保した。
龍脈破壊砲の破綻
クレイマンは地脈を操って龍脈破壊砲を放ち、魔素配列を乱して内部から破壊する対魔攻撃で突破を図った。しかしリムルはそれすらも暴食之王で呑み込み、光すら逃れぬ暗黒渦のごとく無効化した。ここでクレイマンの心は大きく揺らいだ。
恐怖の刻印と尋問
リムルは思考加速をクレイマンにも及ぼし、現実の数秒を体感で数十日に引き延ばして打擲し、恐怖を魂へ刻みつけた。協力者の名を質したが、クレイマンは中庸道化連のルールを理由に依頼主を裏切らないと拒絶した。
星幽体逃亡策の看破
クレイマンは妖死族の特性を利用し、星幽体を地脈へ接続して記憶と自我を保ったまま死を偽装する逃走を狙っていた。リムルはその目論見を智慧之王の解析で看破し、暴食之王で捕食された場合は無限牢獄以上に復活不能であると告げて動揺を引き出した。
処刑の承認と執行
リムルは魔王達に処刑の可否を問うて異議なしの回答を得た。クレイマンは助命を叫びフットマンやティア、さらにカザリームへ縋ったが、リムルは躊躇なく暴食之王で魂ごと捕食し、純粋な魔素へ変換した。クレイマンは最期にラプラスの正しさを悔いる心声を残したかのように消えた。
余波と総括
リムルは黒幕情報を得られなかったものの、クレイマンの城や人間勢力との繋がりなど追跡可能な手掛かりの残存を見て、後続の捜索で尻尾を掴む方針であった。こうしてクレイマンは野望を潰えさせ、リムルの糧となったのである。
第六章 八星魔王
承認と祝辞
ギィがリムルの実力を認め、異論なく魔王として承認した。ラミリスとミリムは軽口を交えつつ祝意を示し、ディーノとレオンも不干渉の姿勢で了承した。ダグリュールは戦闘解説を聞いたヴェルドラと共に、リムルの魔素制御を評価したのである。
バレンタインの正体露見
沈黙を守っていた魔王ヴァレンタインに対し、ヴェルドラとミリムの不用意な発言から、侍女ミルスこそ真なる魔王バレンタインである事実が露見した。バレンタインは正装へ魔法換装し、影武者ロイに撤収を命じて再び正統な魔王として座に返り咲いた。
カザリームを巡る情報整理
レオンは「殺した魔王」がカザリーム(呪術王)であると回想した。カリオンはカザリームが妖死族であり、クレイマンと繋がっていた経緯を補足した。ギィは妖死族の復活難度を踏まえ、カザリーム存命には協力者が必要との見解を示し、リムルは人間への憑依の可能性を指摘した。結論として、カザリーム復活を前提に警戒を継続する方針となった。
フレイとカリオンの帰趨
フレイはミリムとの約束と信頼を理由に、自らの力不足を自認して魔王位返上を願い出、ミリム配下入りを表明した。続いてカリオンもミリムとのタイマン敗北を受けて軍門に下る決断を示し、「新体制」を構想すると述べた。ギィがこれを裁可し、両名は正式に魔王を退いた。
呼称問題と命名の委任
魔王数の減少に伴い「十大魔王」の呼称が不適合となったため、場は新名称の検討に移行した。ギィはリムルに命名を強く要請し、リムルは渋々ながら引き受けた。新月の夜空から着想し、リムルは「八星魔王(オクタグラム)」を提案、満場一致で採択された。
八星魔王の布陣
採択と同時に、八名の顔触れが確定した。ギィ・クリムゾン、ミリム・ナーヴァ、ラミリス、ダグリュール、バレンタイン、ディーノ、レオン・クロムウェル、そしてリムル=テンペストである。これにより新たな魔王時代の幕が上がった。
領域分配と通信手段
支配領域の再配分が行われ、リムルはジュラの大森林全域を受領した。ミリムはフレイ・カリオン・クレイマンの旧領を統合支配するが、実務はフレイとカリオンおよび信仰共同体が担うことになった。魔王相互の連絡は「魔王の指輪」に備わる『超時空通話』機能で行う体制が確認され、個別・多人数の秘匿会話も可能であることが共有された。
終章 聖なる場所で
侵入計画の破綻
ラプラスは魔王達の宴の開催時刻に合わせて聖都へ潜入し、“奥の院”を目指した。だが大聖堂で坂口日向と遭遇し、即座に撤退を選んだ。雇い主の陽動は不発に終わり、作戦は開始直後に崩壊した。
連続する不運と新たな脅威
命からがら逃げ延びたラプラスの前に、空間の歪みとともに魔王バレンタインが出現した。続く災厄に嘆息する彼の耳に、クレイマンの死を告げる言葉が届く。バレンタインは「逃げ惑いながら泣き叫んで死んだ」と愉快そうに語り、ラプラスの怒りを買った。
嘲笑への報復
クレイマンを侮辱されたラプラスは怒号と共に殴りかかり、拳を止めずに打ち据えた。バレンタインは超速再生を発動し、『血刃閃紅波』を放って反撃に転じたが、力の発動は途絶する。新月の夜、魔力の低下を補えぬまま、バレンタインは動きを封じられた。
一瞬の決着
ラプラスの手には、脈打つバレンタインの心臓が握られていた。魔王は恐怖を自覚し、絶望の表情を浮かべる。ラプラスは狂笑を漏らしながらその心臓を握り潰し、戦いは一瞬で終わった。
撤収と嗤い
警備兵を皆殺しにし、脱出を図りながらラプラスは独り言を呟く。フットマンは怒り、ティアは泣くだろう。だが自分は嗤うのだと。泣きも怒りもせず、ただ友クレイマンの代わりに嗤う――それが喜狂の道化に相応しい報いだと信じて。
同シリーズ
転生したらスライムだった件 シリーズ
小説版























漫画版










その他フィクション

コミックス(外伝含む)
『「転生したらスライムだった件~魔物の国の歩き方~」(ライドコミックス)』
『転生したらスライムだった件 異聞 ~魔国暮らしのトリニティ~(月刊少年シリウス)』
『転スラ日記 転生したらスライムだった件(月刊少年シリウス)』
『転ちゅら! 転生したらスライムだった件(月刊少年シリウス)』
『転生したらスライムだった件 クレイマンREVENGE(月刊少年シリウス)』
TVアニメ
転生したらスライムだった件 3期(2024年4月から)
劇場版
PV
OP
ED
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