どんな本?
『望まぬ不死の冒険者』は、丘野優 氏による日本のライトノベル作品。
小説家になろうにて2016年9月22日より連載されており、オーバーラップノベルスより刊行されている。
イラストはじゃいあん 氏が担当。
物語は、銅級冒険者のレント・ファイナが水月の迷宮で龍に食われて不死の魔物として蘇るところから始まる。
レントは魔物を食らうことで進化していき、骨人から屍食鬼、下級吸血鬼となる。
レントは自分の境遇に苦しみながらも、冒険者としての夢を捨てずに、魔物と人間の狭間で生きることを決意する。
しかし、レントの存在は世界の秩序を揺るがす危険なものとして、様々な勢力の注目を集めてしままう。
この作品は、コミカライズやテレビアニメ化もされており、人気の高いファンタジー作品。
コミカライズは中曽根ハイジが作画を担当し、コミックガルドにて連載中。
テレビアニメは2024年1月より放送予定。
読んだ本のタイトル
#望まぬ不死の冒険者 2
著者:#丘野優 氏
イラスト:#じゃいあん 氏
出版社:オーバーラップノベルス
発売日 2017年12月25日
ISBN 978-4-86554-292-9
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あらすじ・内容
リナやロレーヌの助けを得て、冒険者としての一歩を踏み出した不死者・レント。
望まぬ不死の冒険者 2
次の目標はランク昇格――銅級冒険者。
生前と同じ場所へ。そして、遙かなる神銀(ミスリル)級へ。
――あの日憧憬した『冒険』を今、不死者が歩み出す。
感想
ロネーヌの家に転がり込んで、街での生活拠点を獲得。
そして目標にしていた、かつて所属していたギルドへ行く。
だが自身が屍鬼になっているので、登録されているレントではなく、別人のレントとして新規登録する。
ただ、ファミリーネームだけ変えて・・
案の定。
付き合いの長い受付嬢のシェイラにバレたwww
そんなレントは、冒険者ギルドで怪しまれる行動が多すぎた。
永年やっていた冒険者としての活動に裏打ちされた行動。
そして、レントという名前。
ちょっと親しい人ならすぐバレる程度の偽名だった。
さらに、昇給試験は若い新人冒険者を2人引き連れながら完璧にこなし。
短期間で鉄級から銅級の冒険者へ昇格。
そんな新人冒険者がまずしない事をするから、付き合いの長いシェイラに完全にバレて、全ての秘密を打ち明ける事になる。
でも、そんなレントの無事(?)を喜びながらも、彼の秘密を共有したギルドの受付嬢のシェイラは、秘密をバラしたらレントの奴隷になるという制約までして秘密を守る事をしてくれた。
そこで、最近頻発する冒険者行方不明事件の犯人として外見が怪しいレントは、疑いを持たれていると教えてもらったレントは。
迷宮には潜らず、孤児院の依頼を受けることにする。
その依頼は孤児院を管理運営している司祭が罹患した病を治療するための《竜血花》の採取すること。
竜血花の生息地は怪物タラスクの縄張り《タラスクの沼》にあり。
危険極まりない所にレントは一計を案じて脅威を回避しつつ、採取へ向かう
人族が吸ったら麻痺してバケモノが喰われてしまう毒の沼に生息する。
竜種の亜種のタラスクを相手にして討伐してしまう。
その隠れ蓑の孤児院の地下倉庫の清掃で、倉庫を荒らしていた魔物のネズミをテイムして地下倉庫を荒らす奴は追い返せと命令してアッサリと解決する。
そのテイムされたネズミ、、
マスコットのクセに態度はデカいのが何気に癒しになってるw
最後までお読み頂きありがとうございます。
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考察・解説
新月の迷宮探索
新月の迷宮探索は、新たな身分であるレント・ヴィヴィエを得たレントが初めて挑んだ本格的な迷宮探索であり、屍鬼としての実力を証明し、銅級昇格への足がかりとなった重要な出来事である。新月の迷宮での探索の目的、戦闘の様子、そしてその結果について解説する。
探索の目的と迷宮の特徴
レントは鉄級冒険者として登録し直した後、最初の依頼として豚鬼の討伐および肉の納品依頼を選んだ。ターゲットである豚鬼や目的地の新月の迷宮には以下の特徴があり、一人で迷宮に入ろうとするレントは周囲の冒険者から珍しい目で見られていた。
- 森に生息する豚鬼は群れで行動し武装しているが、迷宮内に湧出したばかりの個体は知能が低く単独行動が多い
- 新月の迷宮は水月の迷宮よりも魔物が強力で複数体で襲ってくることが多い
- 基本的にはパーティでの探索が推奨される場所である
複数魔物との戦闘による実力確認
屍鬼となった自分の実力が格上の豚鬼に通用するか未知数だったレントは、まず浅い階層で骨人やスライムを相手に実力を確かめることにした。実際、骨人二体とスライム三匹の集団に囲まれると、一対一とは異なり弱点を突く隙をなかなか見つけられず、厄介な戦闘となった。しかしレントは、豚鬼戦に向けて魔力や気を温存しつつ、地道に敵の数を減らしてほぼ無傷で勝利を収めた。この戦いで、装備の高い耐久性と自身の成長した戦闘能力を確認できたレントは、豚鬼とも戦える確信を得てさらに深層へと進んでいった。
豚鬼との死闘と解体
迷宮の深層で遭遇した豚鬼は、絵本に描かれるような鈍重な姿ではなく、極限まで磨かれた筋肉の塊であり、剛力で棍棒を振るう危険な戦士であった。通常の攻撃では表面を傷つける程度にしかならないと判断したレントは、以下の対策を講じて戦闘に臨んだ。
- いざという時のために盾の魔術を準備する
- 気で身体能力を強化して一撃必殺の構えをとる
豚鬼の恐ろしい突進に対し、レントはかつての知識と存在進化によって研ぎ澄まされた戦闘勘を活かし、胸に大きな隙を作った一瞬を逃さず、剣を振り抜いて見事に一撃で討伐を果たした。
豚鬼の肉は最高級の豚肉を遥かに凌駕する味を持つ高級食材である。レントは討伐後すぐに血抜きを行い、ロースやヒレなどの部位を切り取って魔法の袋に収納し、無事に依頼分である三体分の肉を確保した。
まとめ
帰路の途中、レントは若き駆け出し冒険者であるライズとローラの二人組が堅実な連携でスライムとゴブリンを倒すのを見届け、介入することなく静かに迷宮を後にした。鉄級冒険者では討伐が困難な豚鬼を三体もほぼ無傷で狩ってきたレントの実績は、冒険者組合に高く評価された。その結果、彼は鉄級のまま留め置かれるべきではないと判断され、即座に銅級昇格試験の受験資格を与えられることになったのである。
銅級昇格試験
銅級昇格試験は、レント・ヴィヴィエという新たな名前で鉄級冒険者として再出発したレントが、上位の階級へ上がるために挑んだ重要な関門である。鉄級では困難な豚鬼を3体もほぼ無傷で狩ってきた実績が評価され、彼は特例で即座に試験の受験資格を得た。この試験の全容と合格までのプロセスを解説する。
筆記試験での満点合格
銅級昇格試験は、筆記試験(または口述試験)と実技試験で構成されている。筆記試験の出題範囲は、冒険者組合の規則や魔物、素材の種類などに関する基礎的な知識である。一般的な鉄級冒険者にとっては数週間の勉強が必要な内容であるが、生前に10年間冒険者として活動してきたレントにとっては完全に頭に入っている知識であり、彼は満点での合格を果たした。
実技試験の開始とパーティの結成
実技試験の内容は毎回異なり、今回は数名の受験者と協力して新月の迷宮の指定ポイントに、日が落ちるまでに到達することであった。受付のシェイラからは、他の受験者との競争であり早く着いた方が勝利と説明される。レントは、剣士の少年ライズと治癒術師の少女ローラという2人の若き鉄級冒険者とパーティを組み、試験に挑むことになった。
迷宮での罠と他の受験者による襲撃
冒険者組合が用意した試験には、冒険者に必要な判断力や危機察知能力を試すための様々な罠が仕掛けられていた。
- 古い地図の罠:組合から支給された地図は15年前のものであり、そのまま進めば迷うようになっていた。レントはこれを見抜き、怪しげな地図屋から最新の地図を購入して難を逃れた。
- 同業者からの襲撃:早く着けば勝利という説明を逆手に取り、競争相手を減らすために他の受験者を待ち伏せして襲撃する3人組の冒険者が現れた。これは組合が意図して発生させた試練でもあり、レントは自らが囮となって前衛を引き受け、ライズとローラの連携もあって襲撃者を無力化した。
ボス部屋での大スライム討伐
指定ポイントの直前には、ボス部屋が立ち塞がっていた。レントたちは、先に傲慢な4人組の受験者を部屋に行かせて戦い方を偵察し、彼らが惨敗するのを確認した上でボスに挑む。相手は巨大な大スライムであり、物理攻撃が効きにくく、強力な酸弾を放つ強敵であった。以下の連携によりボス討伐に成功する。
- ライズが自ら危険を冒して大スライムの注意を引きつける
- レントが背後から斬撃を加えて援護し、時間稼ぎをする
- ローラの大規模魔術である大火炎の詠唱が完了し、直撃によって大スライムの核が剥き出しになる
- レントの促しを受けたライズが核を突き刺す
ゴール手前の罠と試験の真意
ボス部屋を抜けた直後、扉の外には睡眠ガスの罠が仕掛けられており、戦闘を避けて先行していた他の受験者が倒れていた。ローラが風の魔術でガスを吹き飛ばしたことで、レントたちは安全に指定ポイントへ到達する。そこで待っていた組合職員から到達の証であるバッジを受け取るが、ここで早く到着した者が合格というのはひっかけであり、実際には期限内に指定ポイントへ到達し、依頼を達成できるかを試す試験であったことが明かされる。また、試験中は組合の監視員であるシェイラの弟が密かに追跡しており、実力だけでなく冒険者としての人柄や行動も評価されていた。
まとめ
帰路や街に戻るまでの間も襲撃の罠が続いたが、レントたちは油断することなくこれらを退け、無事に冒険者組合へバッジを提出した。不正や問題行動がなかったことも認められ、3人は見事銅級冒険者への昇格を果たした。
シェイラとの対峙
シェイラとの対峙は、銅級昇格試験を終えたレントが、長年の付き合いがある冒険者組合の受付職員シェイラ・イバルスから呼び出され、自身の正体と抱える秘密について告白し、新たな協力関係を結ぶことになった重要なエピソードである。対峙の経緯と契約、告白のプロセスについて解説する。
別室への呼び出しとレントの警戒
昇格試験を無事に終え、仲間と別れた直後、レントはシェイラに呼び止められた。その声はいつもの受付職員としてのものではなく、長い付き合いの相手に向けるような親しみのこもったものであった。レントは彼女の真剣な表情を見て、簡単には誤魔化せない状況だと察し、冒険者組合職員以外立ち入り禁止の別室へと案内される。
シェイラはレントがレント・ファイナ本人であることに気付いていた。しかしレントは、彼女が組合の職員である以上、以下の懸念から強い警戒心を抱いていた。
- もし自分が不死者(魔物)であるという事実を明かせば、組織への報告義務が発生する
- その結果、討伐対象にされかねない
シェイラの覚悟と魔術契約書の提示
レントが、組合として登録を咎めない保証がなければ何も話せないと要求すると、シェイラはまだ組合に正式な報告をしていないことを明かした。彼女は、自分が一人前の職員になれたのは新人時代から指導してくれたレントのおかげであり、組合の職員という立場を越えて個人的に彼の力になりたいという強い意思を持っていた。
その本気度を示すため、彼女は契約違反に重いペナルティを科すことができる魔術契約書を取り出す。レントの秘密を絶対に漏らさないという誓約に署名する覚悟を見せた彼女の姿勢に、レントはついに真実を打ち明ける決意を固めた。
異形の姿の公開と真実の告白
契約書への署名が終わると、レントはローブのフードを外し、骸骨の仮面の形状を変えて、自身の顔の下半分をシェイラに見せた。歯と歯茎がむき出しになった骸骨同然の姿に、シェイラは顔面蒼白になり床に膝をついてしまう。しかし彼女は何も知らないままでいる方が嫌だったと気丈に振る舞った。
レントは、自身が以下の常識外れな経緯を辿ったことを説明した。
- 水月の迷宮の未踏破区域で龍に遭遇して命を落とす
- 骨人として目覚める
- 魔物を倒し続け、屍鬼へと存在進化を果たす
まとめ
すべてを語り終えたレントは、いきなりこんな話を信じるのは難しいだろうからと、自分を信じられるかどうかゆっくり考えてほしいと告げ、部屋を去ろうとした。しかしシェイラは彼を引き留め、レントが魔物になったことも、人を襲わないことも信じると断言する。なぜなら、彼女が長年見てきたレント・ファイナはいつだっていい人だったからである。彼女はレントの手を強く握り、今後冒険者組合の関係で何かあれば必ず力になると約束した。こうしてレントは、ロレーヌに続き、冒険者組合の内部にも自身の秘密を共有し支えてくれる強力な協力者を得ることに成功した。
孤児院の依頼
孤児院の依頼は、銅級冒険者となったレントが新たに受注した特別な任務であり、彼の冒険者としての矜持と、新たな力である眷属化の覚醒をもたらしたエピソードである。依頼の背景、真の目的、そして孤児院地下での思わぬ出来事について解説する。
破格の報酬と依頼の受注
レントが冒険者組合の掲示板で目にしたのは、報酬が銅貨一枚という極めて低廉な依頼であった。
- 依頼内容は、危険なタラスクの沼にしか生息しない希少な植物である竜血花の採取
- 依頼主はマルト第二孤児院の孤児一同
あまりに割に合わないため誰も見向きもしない依頼であったが、十分な報酬を用意できない子供たちが精一杯の対価として出した依頼だと理解したレントは、迷わず受注を決めた。
孤児院の窮状と依頼の真の目的
レントが東天教の教会に併設されたマルト第二孤児院を訪れると、孤児の少女アリゼに迎え入れられる。孤児院の管理者である僧侶のリリアンは病の床に伏せりながらも、依頼内容は地下室の整理(魔物退治)だと説明した。しかしその後、レントはアリゼから以下の本当の事情を打ち明けられる。
- リリアンは聖気を長年酷使したことによる邪気蓄積症という病に冒されている
- その治療薬の材料として竜血花が必要である
- リリアン自身は高価な冒険者依頼に孤児院の資金を使うことを拒んでいたため、孤児たちが内緒で地下整理と偽って依頼を出した
事情を察したレントは、必ず竜血花を持ち帰ると約束した。
地下室の魔物退治と眷属化の覚醒
リリアンへのカモフラージュを果たすため、レントとアリゼは実際に地下室の魔物退治に向かう。そこで二人は、通常よりもはるかに巨大に成長した魔物である小鼠と遭遇した。レントはナイフで難なく小鼠を退けたが、以下の経緯でアクシデントが起きる。
- 戦闘中に小鼠の牙がレントの手に傷をつける
- 屍鬼であるレントの血を小鼠が取り込んでしまう
- 小鼠の体色は黒く変化し、レントの命令に従うようになる
これは、屍鬼となったレントに、吸血鬼系統の魔物が持つ自らの血を与えて眷属を作る能力が発現した瞬間であった。
まとめ
レントは正体を隠すため、アリゼには従魔師の技術で従えたと誤魔化した。そして、この眷属となった小鼠(後にロレーヌによってエーデルと名付けられる)が他の小鼠たちを統率する能力を持っていることが分かり、配下の小鼠たちを孤児院地下の安全を守る新たな番人として任命した。地下室の問題を解決したレントは、リリアンを救う竜血花を手に入れるため、親分格となったエーデルを連れて危険なタラスクの沼へと向かうことになる。
存在進化と実力
存在進化と実力の向上は、魔物となった主人公レント・ファイナが、不死系の最弱である骨人(スケルトン)から屍食鬼(グール)、そして屍鬼へと進化していく過程で、生前の万年銅級下位という評価を覆すほどの力を手に入れていく重要な要素である。存在進化に伴う実力の変化と、その確信のプロセスについて解説する。
身体能力の飛躍的な向上と戦闘勘の獲得
龍に食われて骨人として目覚めた直後のレントは、肉体がないため剣を振り下ろすことすら困難な状態であった。しかし、魔物を倒してその力を吸収し、存在進化を経ることで、彼の身体能力は劇的に向上する。生前はどれだけ修行しても思い通りに動かなかった体がイメージ通りに動き、相手の動きがはっきりと見えるようになった。強敵である豚鬼(オーク)との戦いにおける変化は以下の通りである。
- 極限まで磨かれた筋肉を持つ相手に対し、かつての知識と存在進化によって研ぎ澄まされた戦闘勘を活かす
- 一瞬の隙を突いて一撃で討伐することに成功する
万年銅級時代との圧倒的な実力差の自覚
レントは生前、スライムを倒すのに苦労し、1日1匹が限界という実力であった。しかし、魔物の力を吸収した結果、以下の変化が現れる。
- 骨人の状態では、気力と速度を上げてスライムを一撃で倒せるようになる
- 屍食鬼へと進化した直後、窮地に陥っていた少女リナを救出した際には、気力を込めた剣で骨人を一刀両断する
かつては考えられなかった自身の凄まじい成長にレント自身も大きく驚愕した。
格上の魔物である骨巨人討伐による劇的な強化
レントの強さをさらに押し上げたのが、脱出不可能型のボス部屋での骨巨人(ジャイアントスケルトン)との死闘である。通常であれば銀級冒険者クラスの実力がなければ倒せない強敵に対し、レントは不死系の天敵である聖気を剣に注ぎ込んで片足を切断し、頭部を砕いて勝利を収めた。この格上の魔物を倒したことでレントの体には莫大な力が流れ込み、彼が元々持っていた魔力、気力、聖気の3つの力が大幅に強化された。
洗練された剣技の証明
存在進化による恩恵は、単純な腕力の向上だけではない。レントが新たな剣を求めて鍛冶師クロープのもとを訪れた際、以下の出来事があった。
- 試し斬りとして魔力も気力も込めずに木の人形に剣を振るう
- 人形は抵抗なく真っ二つに両断され、その断面はつるつると滑らかな状態になる
これは、長年の地道な修行で培われた剣の技術と、存在進化によって得た身体能力が見事に融合した結果であり、クロープも驚くほどに剣士としての実力が向上していることが証明された。
まとめ
レントは魔物になるという絶望的な状況に陥りながらも、存在進化の仕組みを利用して力を吸収し続け、生前は手が届かなかった圧倒的な実力を身につけて神銀級冒険者という夢へと確実に歩みを進めている。
ロレーヌとの絆
ロレーヌとの絆は、本作において主人公レントと、彼を支える学者ロレーヌ・ヴィヴィエの間に築かれた、十年にも及ぶ深く特別な関係性である。単なる友人や冒険者仲間という枠を超え、互いの人生に欠かせない存在となっている彼らの絆について解説する。
出会いと開かれた世界
二人の出会いは約十年前、ロレーヌが14歳で大博士の号を得た直後にさかのぼる。あらゆる学問を容易に理解できる退屈な世界から逃れるように辺境都市マルトへやってきた彼女は、ひょんなことから駆け出し冒険者であったレントと森の探索に向かうことになった。知識はあっても実戦経験が皆無だったロレーヌは、魔物を前にして恐怖で硬直してしまうが、レントの的確な指示によって命を救われた。さらにレントから以下のことを教わったことで、ロレーヌは自分の見ていた世界がいかに狭かったかを思い知らされる。
- 森での歩き方
- 薬草の採取方法
- 戦闘のいろは
レントとの出会いによって視野が広がったロレーヌは、マルトという街を深く愛するようになり、ここに生活の拠点を構えることを決めた。
持ちつ持たれつの十年間
マルトで一人暮らしを始めたロレーヌだが、生活能力は皆無であり、二人は互いの不足を補い合う関係を築くことになった。
- レントが見かねて家事全般を引き受ける
- その代わりとして、ロレーヌが学者としての一流の知識や魔術を教える
この十年の間に彼らの絆は深く確かなものとなり、レントが迷宮で行方不明になった際、ロレーヌは金に糸目をつけずに捜索依頼を出そうとするほど取り乱した。彼がいつものノックの音で帰還したと分かっただけで、彼女は深い安堵に包まれている。
魔物化を受け入れる懐の深さ
レントが龍に食われ、不死者の魔物となって帰還した際も、この絆が途切れることはなかった。通常であれば恐怖して討伐対象とするような異形の姿になっても、ロレーヌは驚きはしたものの彼を頭から否定せず、冷静に状況を受け入れた。そして、以下の全面的なサポートを行う。
- 行き場を失った彼を研究対象という名目で自宅に保護する
- 存在進化の仕組みを共に考察する
レント自身も、一度は本能に負けて彼女の血肉を口にしてしまった自分を、変わらず対等な友人として扱ってくれるロレーヌに対し、「ロレーヌがいてくれるおかげでまだ人間でいられる」と心の底から感謝している。
秘密の共有と彼を守る覚悟
レントが再び冒険者として活動できるよう、ロレーヌは以下の行動をとった。
- 自身の親戚であるレント・ヴィヴィエという偽名と設定を提案し、家族に遠慮はいらないと彼を温かく迎え入れる
- 彼の身を案じて朝食の煮込み料理にこっそりと自身の血を一滴混ぜ、吸血衝動を和らげるという気遣いを見せる
さらに、冒険者組合のシェイラがレントの秘密を知ってしまった際には、ロレーヌはあえて冷徹で厳しい態度をとり、シェイラが「不死者の秘密を抱え、彼を信じ抜く覚悟」を持っているかを徹底的に試した。これは、レントの命に関わる秘密を中途半端な同情で共有させないための、ロレーヌなりの彼を守るための強い意志の表れであった。
まとめ
このように、レントとロレーヌの絆は、互いの命と人生を救い合った過去から始まり、魔物化という絶望的な試練を経てもなお揺るぐことなく、過酷な運命に立ち向かうための最大の支えとなっている。
登場キャラクター
冒険者
レント・ファイナ(レント・ヴィヴィエ)
本作の主人公である。神銀級冒険者を目指している。ロレーヌとは古い付き合いの友人関係にある。シェイラとは顔なじみである。
・所属組織、地位や役職
冒険者組合。鉄級から銅級へ昇格した冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
新月の迷宮で豚鬼を討伐し、肉を納品した。銅級昇格試験の実技試験でライズやローラを導いて合格を果たした。タラスクの沼でタラスクを討伐し、竜血花を採取した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
屍鬼である。鉄級から銅級冒険者へと昇格した。
ロレーヌ・ヴィヴィエ
学者兼冒険者である。レントの秘密を知り、彼を自宅に住まわせている。料理は普段しないが作ろうと思えば作れる。
・所属組織、地位や役職
冒険者組合。銀級冒険者。大博士。
・物語内での具体的な行動や成果
レントから新月の迷宮の探索報告を受けた。シェイラがレントの秘密を知った際、彼女の覚悟を試した。レントへ水面を歩く魔道具を貸し出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
レントが名乗る偽名の親戚という設定を受け入れている。
リナ・ルパージュ
若き冒険者の少女である。過去にレントから助けられた経験を持つ。レントの正体を知る数少ない人物の一人として挙げられている。
・所属組織、地位や役職
冒険者組合。冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
本作の本文中では、レントの正体を知る人物として言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ライズ・ダナー
赤髪の剣士の少年である。ローラとパーティを組んでいる。素直な性格をしている。
・所属組織、地位や役職
冒険者組合。鉄級から銅級へ昇格した冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
銅級昇格試験でレントやローラとパーティを組んだ。大スライムとの戦闘では自ら前衛として囮役を引き受けた。最後に大スライムの核を破壊してとどめを刺した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
試験を突破し、銅級冒険者へ昇格した。
ローラ・サティ
紫色の髪を持つ治癒術師の少女である。ライズと行動を共にしている。
・所属組織、地位や役職
冒険者組合。鉄級から銅級へ昇格した冒険者。治癒術と魔術を扱う後衛役。
・物語内での具体的な行動や成果
銅級昇格試験でレントやライズとパーティを組んだ。大スライム戦では大火炎の魔術を放って敵の核を露出させた。罠として噴出した睡眠ガスを風の魔術で押し戻した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
試験を突破し、銅級冒険者へ昇格した。
オーグリー
全身虹色の服を着て孔雀の羽のついた帽子を被る奇抜な冒険者である。レントとは何度か臨時パーティを組んだことがある。
・所属組織、地位や役職
冒険者組合。冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
王都の方へ移動していった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
腕は確かだが、変わり者として知られている。
依頼を断った中年冒険者
屈強な体格のベテラン冒険者である。マルトを拠点とする者ではなく流れ者と推測される。
・所属組織、地位や役職
冒険者組合。冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
リュントスからの個人的な依頼を断って苛立っていた。レントから銀貨を受け取ってその場を離れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
襲撃した三人組の冒険者
昇格試験の受験者を待ち伏せしていた冒険者である。他の受験者を脱落させる目的で行動していた。
・所属組織、地位や役職
冒険者組合。鉄級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
迷宮内でレントたちを襲撃した。レントとライズ、ローラの反撃を受けて全員気絶させられた。彼らは冒険者組合の関係者であり、試験の妨害役を担っていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
試験役として複数の受験者を脱落させていた。
四人組の冒険者
傲慢な態度をとる受験者の集団である。リーダー格の男は挑発的な言動をとる。
・所属組織、地位や役職
冒険者組合。鉄級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
ボス部屋の前でレントたちに絡んだ。レントに剣を突きつけられて引き下がった。レントたちより先にボス部屋へ入ったが、大スライムに敗北した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
戦闘不能になり、冒険者組合の職員に回収された。
冒険者組合
シェイラ・イバルス
冒険者組合の受付職員である。レントの新人時代から世話になっている。レントの正体を知り、彼を支援する意思を持つ。
・所属組織、地位や役職
冒険者組合。職員。
・物語内での具体的な行動や成果
レントの銅級昇格試験の手続きを行った。レントを別室に呼び出して魔術契約書を交わし、彼の秘密を聞き出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
レントの正体を知る数少ない協力者の一人となった。
シェイラの弟(監視員の青年)
シェイラの弟である。冒険者組合の監視員を務めている。
・所属組織、地位や役職
冒険者組合。斥候の仕事を担当する職員。
・物語内での具体的な行動や成果
銅級昇格試験中、受験者たちの人柄や行動を密かに追跡して評価していた。レントたちの合格を認める報告書を提出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
来週から王都へ転勤する予定である。
冒険者組合職員
冒険者組合で働く職員たちである。
・所属組織、地位や役職
冒険者組合。職員。
・物語内での具体的な行動や成果
実技試験の開始前に一組ずつ説明を行った。ボス部屋で敗北した四人組を黒装束姿で回収した。指定ポイントでバッジと回復水薬を受験者に手渡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
鍛冶屋
クロープ
鍛冶屋の店主である。レントとは長年の付き合いを持つ。ぶっきらぼうな口調をする。
・所属組織、地位や役職
鍛冶屋《三叉の話》。鍛冶師。
・物語内での具体的な行動や成果
魔力と気と聖気に耐えられる特殊な剣をレントのために製作した。中庭でレントの試し斬りを見守った。様々な力の複合に対する武器の限界を説明した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
植物を育てるのが趣味である。
ルカ
クロープの妻である。鍛冶屋の店員を務めている。
・所属組織、地位や役職
鍛冶屋《三叉の話》。店員。
・物語内での具体的な行動や成果
剣の代金を支払って店を出るレントに対し、機嫌良さそうに微笑みかけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
赤竜亭
ロリス
食堂の店主である。レントに恩義を感じている。
・所属組織、地位や役職
レストラン《赤竜亭》。店主。
・物語内での具体的な行動や成果
レントが他の客のいない時間帯に店を訪れることを許容している。彼に食事を提供している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
レントの顔の状態を呪いによるものだと信じている。
イサベル
ロリスの妻である。
・所属組織、地位や役職
レストラン《赤竜亭》。
・物語内での具体的な行動や成果
本文中に直接の登場や発言の描写は少ない。レントが店を訪れる際は彼女がいない時間帯を選んでいる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
マルト第二孤児院・東天教
リリアン・ジュネ
マルト第二孤児院を管理する東天教の僧侶である。孤児たちに優しく接している。
・所属組織、地位や役職
東天教。僧侶でありマルト第二孤児院の管理者。
・物語内での具体的な行動や成果
ベッドで伏せりながら、レントへ地下室の整理を依頼したと説明した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
聖気を酷使した反動で邪気蓄積症を患っている。
アリゼ
孤児院で暮らす少女である。しっかりとした性格を持つ。リリアンを慕っている。
・所属組織、地位や役職
マルト第二孤児院。孤児。
・物語内での具体的な行動や成果
レントを孤児院に招き入れた。リリアンの病気の真相と竜血花採集の真の依頼内容を明かした。レントと共に地下室へ入って魔物討伐を経験した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
冒険者に憧れを抱いている。
トッツ村
リュントス
トッツ村の青年である。妹を大切に思っている。彼女を救うために奔走する。
・所属組織、地位や役職
トッツ村。村民。
・物語内での具体的な行動や成果
冒険者組合で依頼を断られていたところをレントに助けられた。レントへ妹を救う依頼をした。祭りの護衛役の枠を利用してレントを潜入させる計画を立てた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アミリス
トッツ村の少女である。リュントスの妹に当たる。芯の強い性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
トッツ村。村民であり生け贄役。
・物語内での具体的な行動や成果
最初はレントを疑っていた。彼の言葉を受けて希望を持つようになった。祭りで湖の中心へ向かい、大王蛸の幻影に遭遇したがレントに救出された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
別れ際にレントの仮面越しに口づけをして感謝を伝えた。
その他
馬車の御者
迷宮や危険地帯へ向かう馬車を操る男性である。冒険者を気遣う一面を持つ。
・所属組織、地位や役職
馬車の御者。
・物語内での具体的な行動や成果
レントたちを新月の迷宮へ送り届けた。タラスクの沼へ向かうレントに対し、無理をせずに夕方までに戻るよう忠告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
怪しい地図屋の男
黒いローブを纏った小柄な男である。新月の迷宮前で地図を売っている。
・所属組織、地位や役職
地図屋。
・物語内での具体的な行動や成果
レントに新月の迷宮の一階層分の正確な地図を銅貨五枚で売却した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
レントが試験に合格しそうだと評価した。
湖の主を騙る行商人と魔術師の集団
トッツ村の伝承を利用して悪事を働く集団である。
・所属組織、地位や役職
行商人と魔術師。
・物語内での具体的な行動や成果
大王蛸の幻影を作り出した。湖の主を装って村娘たちを攫っていた。レントによって船上で全員倒されて捕縛された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
村人たちに真相を暴かれ、捕らえられた。
展開まとめ
第一章 《新月の迷宮》
依頼達成のための迷宮探索
レントは豚鬼討伐依頼を完遂するため、《新月の迷宮》へ向かった。迷宮内の豚鬼は地上の個体より戦いやすく、現在の実力を試す格好の相手だった。迷宮へ入ったレントは複数の骨人やスライムを相手に無傷で勝利し、自身の成長と装備の性能を確認した。
豚鬼との戦いと実力の証明
深層で遭遇した豚鬼は強大な怪力と耐久力を持つ危険な魔物だったが、レントは気と魔力による強化を駆使して戦った。豚鬼の隙を見抜いたレントは渾身の一撃を叩き込み、正面から撃破することに成功した。この勝利によって、存在進化後の力が実戦でも通用することを確信した。
豚鬼肉の回収と依頼達成
討伐後、レントは高級食材である豚鬼の肉を解体し、依頼に必要な三体分を集めた。魔法の袋や保存用の葉を活用しながら効率的に作業を進め、無事に依頼達成へとこぎつけた。その過程で《アカシアの地図》の有用性も再認識した。
若い冒険者との出会い
帰路の途中、レントはゴブリンと戦う若い冒険者のライズとローラを見かけた。二人は未熟ながらも堅実な連携を見せており、レントは手助けすることなく見守った。彼らの成長の可能性を感じながら、レントは迷宮を後にした。
ロレーヌとの語らい
帰宅したレントは、自身の登録名を「レント・ヴィヴィエ」にしたことをロレーヌへ報告した。親戚という設定を利用することで不審視される危険を減らそうと考えたのである。さらに、自分が不死者となった後も受け入れてくれたロレーヌへ感謝を伝え、自分が人間らしさを保てているのは彼女のおかげだと語った。ロレーヌもまた、レントを家族同然の存在として受け入れていた。
銅級昇格試験への挑戦
豚鬼討伐の実績が評価され、レントは銅級昇格試験の受験資格を得た。筆記試験は長年の経験によって難なく満点で突破する。一方、実技試験は複数人で指定地点を目指す内容であり、レントはライズとローラと組むことになった。
地図屋の助言
迷宮へ向かう途中、レントは組合支給の地図が十五年前の古いものであることに気付いた。そして怪しげな地図屋から最新の地図を購入する。支給地図には崩落箇所や危険区域が反映されておらず、これが試験の最初の罠だった。ライズとローラはレントの洞察力に感心し、信頼を深めた。
試験中の妨害と対人戦
迷宮内では魔物の異常な出現率や待ち伏せが続いた。やがて三人は冒険者による襲撃を受けるが、レントは冷静に後衛を無力化し、ライズとローラも協力して剣士を打ち倒した。実は彼らは組合側が用意した試験役であり、受験者の対応力を試していたのである。
ボス部屋攻略
指定地点直前にはボス部屋が待ち受けていた。レントは他の受験者の戦いを観察して情報収集を行い、その後ライズとローラと共に大スライムへ挑んだ。ライズが時間を稼ぎ、レントが援護し、ローラが大火炎を放つ連携によって大スライムを撃破した。最後の一撃はライズが決め、三人は見事に勝利を収めた。
試験の真意
ボス部屋突破後も睡眠ガスや奇襲などの罠が続いた。試験は単なる競争ではなく、冒険者に必要な判断力や警戒心を学ばせるためのものだった。ライズとローラは数々の試練を経て大きく成長し、レントもその変化を認めた。
銅級昇格と別れ
三人は最終的に指定地点へ最初に到達し、銅級昇格試験に合格した。組合職員から正式な認定を受けた後、ライズとローラはレントへ感謝を伝えた。レントもまた二人の成長を喜び、いつか再び共に冒険することを約束する。そして別れ際、受付嬢シェイラがどこか意味深な様子でレントを呼び止めるところで物語は幕を閉じた。
第二章 魔術契約
シェイラからの呼び出し
銅級昇格試験を終えたレントは、ライズとローラを見送った直後にシェイラから呼び止められた。普段とは異なる親しみのある呼び方に違和感を覚えたレントは、自分の正体に関する話だと察する。別室へ案内されたレントは、慎重にシェイラの意図を探った。
秘密を守るための条件提示
シェイラが何かを知っていると感じたレントは、自分の事情を話す前提として保証を求めた。冒険者組合に報告しないことを魔術契約書で明文化しなければ何も語れないと告げ、自身の秘密が命に関わる問題であることを示した。
シェイラの告白
シェイラは、実はまだレントについて正式な報告を行っていないと明かした。疑念は抱いていたものの確証がなく、独断で動くことを避けていたのである。さらに昇格試験中に監視していた職員へだけ相談していたことも打ち明けた。レントは、その告白に大きな驚きを覚えた。
恩返しのための協力
シェイラは、自分が一人前の職員になれたのはレントのおかげだと語った。そして個人として力になりたいと申し出る。魔術契約書への署名も辞さず、秘密を守る覚悟を示したことで、レントは次第に心を開いていった。
不死者である真実の告白
契約を結んだ後、レントは仮面を外し、自らの異形の姿を見せた。《水月の迷宮》で龍に殺され、スケルトンとして蘇り、存在進化を重ねて屍鬼になった経緯を説明する。あまりに常識外れの話にシェイラは衝撃を受けたが、それでもレントを信じると断言した。
新たな協力者の誕生
シェイラは、不死者となった事実を知った上でなおレントを人として認めた。そして今後、冒険者組合に関する問題が起きた際には必ず力になると約束する。レントは初めて組合内部に信頼できる協力者を得ることになった。
ロレーヌとの対面
その後、シェイラはロレーヌの家を訪れた。ロレーヌは事情を聞くと、シェイラがどこまで真実を理解しているのかを確かめるため厳しい問いを投げかけた。不死者であるレントの危険性を理解し、それでもなお信じられるかを試したのである。
シェイラの覚悟の証明
シェイラは恐怖を感じながらも、自分はレントを信じると明言した。その覚悟を確認したロレーヌは彼女を受け入れ、三人は同じ秘密を共有する仲間となった。ロレーヌは、レントを守るために必要な確認だったと説明した。
食卓での協力関係
三人は食事を共にしながら、今後の協力体制について話し合った。レントの正体を漏らさないための魔術契約書の内容も確認され、大きな問題がないことが分かる。シェイラは冒険者組合内部での支援役を引き受けることになった。
新人失踪事件の噂
シェイラは最近、都市マルト周辺で新人冒険者の失踪事件が相次いでいることを明かした。遺品も発見されず、組合内部では何者かが新人冒険者を狙っている可能性が疑われていた。そして急速に頭角を現したレントも、周囲から怪しまれ始めていることを伝えた。
目立たないための方針
三人は今後について協議し、失踪事件が解決するまでレントは目立つ行動を控えることに決めた。迷宮探索も一時的に自粛し、雑用や運搬依頼で時間を過ごす方針となる。しかし存在進化のために迷宮を完全に離れるつもりはなかった。
クロープの工房へ
今後の方針を決めたレントは、鍛冶師クロープへ依頼していた武具の完成時期が近いことを思い出した。迷宮へ潜れない今こそ受け取りに行く好機だと考え、クロープの工房へ向かうことを決意した。
第三章 新たな武器と力
クロープの新たな剣
レントはクロープの工房を訪れ、完成した特注の剣を受け取った。剣は魔力・気・聖気のすべてに耐えられるよう製作されており、試し斬りでは木人形を容易に両断した。さらに魔力や気、聖気を流して性能を検証した結果、それぞれ異なる特性を示し、レントは自身の成長と新たな課題を実感した。
迷宮探索の自粛
新人冒険者失踪事件の影響で疑いを向けられている現状を考慮し、レントはしばらく迷宮探索を控えることにした。雑用依頼を受けながら過ごそうと考えていたが、その最中に困り果てた青年リュントスと出会う。
トッツ村からの依頼
リュントスは東方のトッツ村出身であり、村で行われる奉神祭について語った。本来は形式的な儀式だった生贄の祭りであったが、最近になって生贄に選ばれた娘たちが帰らなくなったという。次の生贄には妹のアミリスが選ばれており、彼女を救ってほしいと依頼した。
トッツ村への到着
レントはリュントスと共にトッツ村を訪れた。妹のアミリスは当初レントを信用せず、祭りへの介入にも反対した。しかしレントは依頼人がリュントスである以上、簡単に引き下がるつもりはないと告げ、村に滞在することになった。
救出計画の立案
リュントスは奉神祭当日に護衛役へ成り代わる計画を提案した。祭りでは生贄を乗せた小舟を護衛が囲む習わしがあり、仮面を着用するため入れ替わりが容易だった。レントはその計画に協力し、アミリス救出の準備を進める。
アミリスとの夜の会話
夜、レントは一人涙を流すアミリスと出会った。表向きは生贄になる覚悟を示していた彼女だったが、本心では死を恐れていた。レントは最後まで諦めるなと励まし、自分が何とかすると約束した。その言葉はアミリスの心を動かした。
村の閉塞した現状
翌日、レントはアミリスと共に村を見て回った。生贄が本当に死ぬようになってから、村全体が重苦しい空気に包まれていた。誰も祭りを望んでいなかったが、湖の主の怒りを恐れて現状を変えられずにいたのである。
奉神祭の開始
祭り当日、アミリスは生贄として小舟へ乗り込んだ。レントとリュントスも護衛役として同行する。湖の中心へ到達すると、伝承通り湖の主が現れるはずだったが、湖面から姿を現したのは巨大な大王蛸だった。
湖上の戦い
アミリスを安全な場所へ移したレントは、大王蛸へ単身で挑んだ。ロレーヌから借りた魔道具を利用して水面を駆け回りながら戦う。しかし攻撃を重ねるうちに違和感を覚え、決定的な一撃を加えると大王蛸の姿は幻のように消え去った。
湖の主の正体
幻影の裏から現れたのは行商人と魔術師たちだった。彼らは村の伝承を利用し、生贄として選ばれた娘たちを攫って奴隷として売り飛ばしていたのである。大王蛸も湖の主もすべて幻術による偽装だった。レントは男たちを制圧し、事件の真相を暴いた。
攫われた娘たちの救出
男たちはこれまで攫った娘たちを船底へ監禁していた。幸い全員が生存しており、レントたちは娘たちを救出することに成功した。長年村を苦しめていた恐怖の正体が人間の犯罪だったことが明らかになる。
祭りの再生
村へ戻ったレントたちは事件の真相を説明した。村人たちは驚きながらも安堵し、本来の意味での奉神祭をやり直すことを決めた。祭りは生贄のためではなく、村を守る存在へ感謝を捧げるものとして再び行われた。
湖の主の姿
祭りの最中、レントは湖の遠方でケルピーと、その背に乗る美しい女性の姿を目撃した。それが本当の湖の主なのかもしれないと感じたが、あえて誰にも語らず胸の内に留めた。
兄妹との別れ
事件解決後、レントはマルトへ帰ることを決めた。アミリスとリュントスは深く感謝し、別れを惜しんだ。そして出発の直前、アミリスは感謝の気持ちとしてレントへ口づけを贈った。レントは驚きながらもその思いを受け取り、再会を約束して村を後にした。
マルトへの帰還
マルトへ戻ったレントはロレーヌへ一連の出来事を報告した。ロレーヌはアミリスの想いについて指摘したが、レントは流れの冒険者である自分に居場所はないと考えていた。それでも、いつか兄妹がマルトを訪れたなら案内しようと心に決め、再び冒険者としての日常へ戻っていった。
第四章 竜血花
孤児院の依頼を受諾
マルトへ戻ったレントは新たな依頼を探していた。その中で、マルト第二孤児院の孤児たちが銅貨一枚で出した依頼を見つける。依頼内容は希少植物《竜血花》の採取であり、レントは子供たちの願いを無視できず依頼を引き受けた。
アリゼとの出会い
孤児院を訪れたレントは、孤児院で暮らす少女アリゼと出会った。孤児院は老朽化が進んでいたものの、子供たちは明るく暮らしていた。レントはアリゼから依頼の詳細を聞くことになった。
竜血花を求める理由
レントが採取理由を尋ねると、アリゼは事情を説明するため孤児院の管理者リリアンのもとへ案内した。リリアンは病に伏していたが、自身では大したことはないと思い込んでいた。しかし実際には《邪気蓄積症》という病を患っており、その治療薬に《竜血花》が必要だったのである。
リリアンを救いたい願い
アリゼは、リリアンが自分のために金を使うことを拒否すると理解していた。そのため本人には病気の深刻さを隠したまま、孤児たちだけで依頼を出していた。レントは事情を知り、必ず《竜血花》を持ち帰ると約束した。
アリゼの夢
アリゼは本来、冒険者になることへ憧れていた。しかし孤児院とリリアンを支えるため、自分の夢を後回しにしていた。レントは、いつか冒険者を目指す時が来たなら力になると約束し、アリゼは感謝した。
地下室の魔物退治
依頼の名目にもなっていた地下室の整理を行うため、レントはアリゼと共に地下へ向かった。そこには巨大化した《小鼠》が棲みついており、レントは戦闘の末にこれを制圧した。
眷属エーデルの誕生
戦闘中にレントの血を浴びた《小鼠》は変異し、レントへ従う存在となった。レントは正体を隠すため従魔術によるものだと説明したが、実際には吸血鬼系統の眷属化能力によるものだった。後にロレーヌの提案で、その《小鼠》はエーデルという名前を与えられた。
地下室の守護者
エーデルは他の《小鼠》を従わせる能力まで獲得していた。レントは配下の《小鼠》たちを地下室の見張り役として残し、孤児院の安全確保に成功した。アリゼもその結果を喜び、孤児院の問題は一つ解決した。
ロレーヌへの報告
帰宅したレントはロレーヌへ一連の出来事を報告した。ロレーヌはエーデルの存在や眷属化能力に強い興味を示し、新たな研究対象として歓迎した。一方のエーデルは、自分が実験材料になる未来を察して落胆した。
出発前の朝食
《タラスクの沼》へ向かう朝、ロレーヌは旅の無事を願う郷土料理を用意していた。さらに自分の血を加えた料理によって、吸血鬼系統となったレントの味覚に合わせる工夫までしていた。レントはその気遣いに感謝しながら出発の準備を整えた。
タラスクの沼への到着
レントはエーデルを連れて《タラスクの沼》へ向かった。この地は強力な毒と瘴気に覆われ、主である亜竜タラスクをはじめ危険な魔物が多数生息していた。しかし不死者となったレントには毒が効かず、その特性を活かして探索を開始した。
ゴブリンとの戦闘
沼地を進む途中、レントは待ち伏せしていたゴブリンの群れに襲われた。湿地を利用した巧妙な罠だったが、レントは近接戦へ持ち込み群れを壊滅させた。戦闘後、エーデルはほとんど働かなかったため、レントは眷属としての忠誠心に疑問を抱いた。
橋の崩落と毒沼
老朽化した橋を渡っていたレントは、橋の崩落によって毒沼へ落下した。毒そのものは問題なかったが、水中では巨大魚の群れに襲われ苦戦した。それでも聖気を利用して切り抜け、結果的に対岸へ辿り着くことに成功した。
タラスクとの激突
群生地目前で、レントはついにタラスクと遭遇した。強固な鱗に守られた巨体に苦戦したが、魔気融合術による攻撃で首へ傷を負わせることに成功する。しかし決定打には至らず、戦闘は長期化した。
エーデルの活躍
戦闘中、エーデルは勝手にレントの聖気を吸収し、傷口へ体当たりを仕掛けた。その結果、タラスクに大きな損傷を与え、レントは聖気こそがタラスクの弱点であると見抜いた。
タラスク討伐
レントは聖気を込めた渾身の一撃を首の傷口へ叩き込み、ついにタラスクの首を切り落とした。こうして《タラスクの沼》の主を討伐するという大戦果を挙げることに成功した。
巨大な戦利品
タラスクの死体は高価な素材の塊であり、レントは大型の魔法の袋へ収納した。魔石、甲羅、鱗、毒腺などは莫大な価値を持ち、十年以上冒険者を続けてきた中でも最大級の収穫となった。
竜血花の群生地
タラスクの生息地を越えた先には、《タラスクの沼》とは思えない美しい楽園が広がっていた。そこは《竜血花》の群生地であり、花が周囲の毒と瘴気を浄化することで清浄な環境を作り出していた。
竜血花の採取
レントは孤児院の依頼を果たすため、《竜血花》を根ごと丁寧に採取した。依頼分だけでなく花屋や薬屋へ売る分も確保し、十分な成果を得る。こうして本来の目的は達成された。
謎の人影
帰還しようとしたレントは、花園の中で人影を発見した。ゴブリンでも魔物でもないその姿は、どう見ても人間だった。しかし危険地帯での遭遇である以上、油断はできない。レントは警戒しながら相手の正体を見極めようとした。
同シリーズ
望まぬ不死の冒険者
小説版












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