どんな本?
『望まぬ不死の冒険者』は、丘野優 氏による日本のライトノベル作品。
小説家になろうにて2016年9月22日より連載されており、オーバーラップノベルスより刊行されている。
イラストはじゃいあん 氏が担当。
物語は、銅級冒険者のレント・ファイナが水月の迷宮で龍に食われて不死の魔物として蘇るところから始まる。
レントは魔物をの存在を食らうことで存在進化していき、骨人から屍食鬼、下級吸血鬼となる。
レントは自分の境遇に苦しみながらも、冒険者としての夢を捨てずに、魔物と人間の狭間で生きることを決意する。
しかし、レントの存在は世界の秩序を揺るがす危険なものとして、様々な勢力の注目を集めてしままう。
この作品は、コミカライズやテレビアニメ化もされており、人気の高いファンタジー作品。
コミカライズは中曽根ハイジが作画を担当し、コミックガルドにて連載中。
テレビアニメは2024年1月より放送予定。
読んだ本のタイトル
#望まぬ不死の冒険者11巻
著者:#丘野優 氏
イラスト:#じゃいあん 氏
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あらすじ・内容
不死者、《刺客》と交戦する。
王都でオーグリーと臨時パーティーを組んだレントとロレーヌは、村娘フェリシーの助けを得て順調に依頼を消化していく。
望まぬ不死の冒険者 11
最後の依頼を終え、村へ戻ろうとした矢先、老人と遭遇。
不審に思ったレントが声をかけたその瞬間、突如として老人の襲撃を受け、吹き飛ばされてしまう。
それは、《ゴブリン》と《セイレーン》の次に派遣された第三の刺客だった。
応戦するロレーヌとオーグリーに《分化》して復活したレントも加わり、巨大化した腕をふるう老人を相手に奮戦を続ける。
だが、さらに老人は全身を巨大化する『巨人』の姿で襲いかかってきて……!?
巨体に打ち勝つべく、三人は一計を案じることに。
眼前に迫る『死』にレントが取る手は――!?
強大な魔物と戦い、多くの謎を解き、そして強くなる。
死してもなお遙かなる神銀級を目指す、不死者レントの『冒険』、第11弾――!
感想
手に汗握る死闘と、ギルドをめぐる複雑な人間関係が描かれた、非常に読み応えのある一冊であった。
序盤は、泥魔導人形から泥を採取する依頼から始まる。
ドロドロになりながら湖で泥を洗い流し、村娘フェリシーの協力もあって依頼をこなしていく流れは、どこか日常的で温かかった。こういう小さな依頼を丁寧に描いてくれるところが、本作らしい魅力だと感じる。
しかし、その帰り道で空気は一変する。
暗殺組織からの第三の刺客である老人が現れた瞬間、一気に緊張感が高まった。
特に印象に残ったのは、スプリガンとの戦闘である。
いきなりレントが殴り飛ばされる幕開けには驚かされた。老人とは思えない体術に加え、巨大化した腕から放たれる一撃は凄まじい。
さらに全身を巨大化させ、巨人のような姿になった時は、本当に絶望感があった。
ただ大きいだけではない。
巨体なのに俊敏で、戦い慣れている。
当たれば終わりという状況の中で、レントとオーグリーが連携して立ち向かう姿には胸が熱くなった。
ロレーヌがフェリシーを守りつつ、雷魔法で援護する場面も頼もしい。それでもなお立ち上がってくるスプリガンの執念には、敵ながら圧倒されるものがあった。
最後にレントがどうにか老人を倒し、その気絶中にロレーヌが魔術契約を結んで巨人化を封じる流れも見事だった。
力押しだけではなく、戦いの後の処理まで抜かりがないところにロレーヌらしさを感じる。
戦闘後の展開も面白かった。
目を覚ました老人から事情を聞くと、互いの情報が食い違っていたことが判明する。
命を狙ってきた相手でありながら、依頼取り下げのために暗殺組織の長と交渉する流れになるのは意外だった。
敵だった相手と奇妙な協力関係が生まれていく展開には、本作らしい人間関係の面白さがある。
その後、暗殺ギルドの本拠地である闘技場へ向かう展開もスリリングだった。
スプリガンの敗北を信じない二人組と戦う場面は痛快である。ここまで大変な戦いを潜り抜けてきたレントたちだからこそ、相手をきっちり撃破する姿には安心感があった。
そして何より驚かされたのは、暗殺ギルドの長ジャンの正体である。
冒険者ギルドのグランドマスターと同一人物だったと分かった時は、思わず「そう来たか」と唸ってしまった。
冒険者ギルドと暗殺ギルド。
その両方を束ねる人物が同じだったという事実には、王都の裏側の深さを感じる。
そんな重大な秘密を知ったレントに対し、ジャンがあっさり同行の日程まで決めてしまう底知れなさも印象的だった。
終盤の日常パートも良かった。
王都を旅立つ日が決まり、エルザ僧正を訪ねる流れはほっとする。土産を買いに行ったり、孤児院で交流したりする場面には、戦闘後の穏やかな空気があった。
そこで登場した巨大な犬の魔物・ポチには笑ってしまった。
レントの顔を舐め回し、「こんにちはワフワフ」と喋りかけてくる姿は、完全に不意打ちだった。レントが何事もなかったように流そうとするのに、エルザに気づかれてしまうやり取りも微笑ましい。
ただの愉快なモフモフ枠かと思えば、ポチが聖獣だったという事実にも驚かされた。
孤児院のメルを守るために聖気を与えていたことや、過去にエルザやリリアンもポチから聖気を受け取っていたことが明かされ、何気ない日常の中に大きな謎が隠れていたことが分かる。
今巻は、スプリガンとの死闘、暗殺ギルドの秘密、そして聖獣ポチの存在と、見どころが非常に多かった。
激しい戦闘と穏やかな日常。
その両方がしっかり描かれているからこそ、レントたちの旅をもっと追いかけたくなる。
王都での出来事に一区切りがつき、次にどんな展開が待っているのか。続きを読むのが楽しみになる一冊であった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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望まぬ不死の冒険者10巻
望まぬ不死の冒険者まとめ
望まぬ不死の冒険者12巻
考察・解説
泥魔導人形の採取
『望まぬ不死の冒険者』第11巻において、レントたちが王都で受けた依頼を達成するため、ペトレーマ湖周辺の窪地で泥魔導人形(ルトウム・ゴーレム)の群れと戦い、素材となる泥を収集するエピソードは、魔物の特性に合わせた戦術と不死者の肉体的優位性によって効率的に任務を完遂する重要な局面である。
魔術による素材変質を避けるための物理攻撃への限定、呼吸不要の特性を活かして窒息罠を逆手に取った核破壊戦術、泥まみれの作業を前向きに進めたフェリシーの逞しさと全員による採取、そして王都の錬金術工房から高く評価された高品質な泥の大量納品にいたる全容は以下の通りである。
魔術攻撃による素材変質の回避と気を用いた前衛二人の物理攻撃への限定
レントたちは窪地に集まる数十匹の泥魔導人形を発見したが、その素材特性ゆえに攻撃手段が制限された。
・泥魔導人形の泥は魔力豊富で錬金術の素材として重宝される反面、変質しやすく、魔術による攻撃を当てると使い物にならなくなるという特徴があった。
・そのため、強力な魔術師であるロレーヌの援護攻撃には頼れず、レントとオーグリーの二人が気を用いた物理攻撃のみで群れに挑むこととなる。
呼吸不要な不死者レントの包囲突入とオーグリーの囮連携による核の直接破壊
泥魔導人形はスライムのように体内の核を潰すことで倒せるが、土系統の魔術である土の矢を使ったり、相手を包み込んで窒息死させようとしたりする厄介な魔物であった。
・しかし、不死者であり呼吸を必要としないレントにとっては窒息の危険がない。
・そのためレントは、泥魔導人形が体を崩して包み込もうとしてきたところにあえて自ら飛び込み、むき出しになった核を直接破壊するという、普通の人間には不可能な戦法で効率よく敵を倒していった。
・オーグリーが距離を取って囮となり、レントが横から入り込んで核を潰すという連携により、二人は被害を出さずに群れを全滅させる。
泥山からの掬い取り作業と泥遊びと捉えたフェリシーの逞しさに伴う効率回収
戦闘を終えたレントとオーグリーは泥だらけになっており、窪地には泥の山がいくつも残されていた。
・戦わなかったロレーヌや案内役のフェリシーも窪地に降りて泥を掬い、容器に詰める作業に参加する。
・泥だらけになることに顔をしかめていたロレーヌに対し、フェリシーは「泥遊びのようだ」と楽しげに作業を進めた。
・その逞しさに感化されたレントたちも遊び感覚で精を出し、無事に依頼品の採取を終える。
量指定のない錬金術工房への納品と最高品質陶磁器魔道具素材としての高額報酬獲得
この泥の収集依頼には量の指定がなく、依頼主である王都の錬金術工房(陶器や磁器の魔道具を製作している工房)が「いくらでも引き取る」と申し送りを入手していた。
・後日、王都の冒険者組合に大量の泥を納品した際、組合職員によって、ペトレーマ湖周辺の綺麗な水と豊富な魔力によって育まれた非常に高品質な素材であることが確認される。
・結果として、レントたちはこの依頼でも満足のいく報酬を得ることに成功した。
まとめ
泥魔導人形の採取エピソードは、対象の価値を損なわないための厳格な戦闘制約を、レントの不死者としての特性とオーグリーとの高度な連携によって見事に克服した記録である。魔術を封じられた状況下で、敵の窒息攻撃を無効化して核を破砕したレントの立ち回りは彼の戦術的優位性を示している。難航が予想された泥の手作業をフェリシーの快活さによって乗り越え、王都の錬金術工房が求める最高品質の素材を大量に確保して高額な報酬を勝ち取った顛末は、レントたちが各地の環境や魔物の生態を正確に掌握し、いかなる特殊条件下でも確実に成果を挙げる一級の冒険者集団であることを厳密に証明している。
老巨人との死闘
『望まぬ不死の冒険者』第11巻において、レントたちが暗殺組織の工作員であるスプリガンの老人が変貌した「巨人」と繰り広げた激戦のエピソードは、圧倒的な質量を誇る強敵に対し、各々の特性と高度な連携、そして切り札の融合術を駆使して勝利を収める重要な局面である。
異能による巨人の出現に伴う散開戦術とレントの囮突撃、左肩大破の致命傷を無視した進撃と巨大な竜の翼による握り潰し回避、地面陥没と金属槍および古代魔術の雷を叩き込んだロレーヌの連続大魔術、そして聖魔気融合術の首筋一撃と分化能力を用いた完全無傷の肉体再構成にいたる全容は以下の通りである。
異能による圧倒的質量の巨人化発動と一網打尽を回避する散開およびレントの足元突撃
レントたちの実力を認めた老人はついに本気を出し、異能によって全身を巨大化させて巨人の姿となった。
・歴史上の巨人にも匹敵するような圧倒的な質量と力を持つ老巨人に対し、レントたちは固まっていれば一網打尽にされると判断し、瞬時に散開する。
・レントは自らの不死性を活かして囮となり、機動力を削ぐために老巨人の足元へ真正面から突撃した。
踏み潰しによる左肩先完全損壊の無視と掌での握り潰しを回避した背中の巨大な竜の翼展開
老巨人はその巨体に見合わない素早さで連続して踏み潰し攻撃を行い、避けきれなかったレントは左肩から先を完全に潰されてしまう。
・しかし、痛みを感じないレントは致命傷を無視して老巨人の腕に飛び乗り、肩まで駆け上がって顔面を狙うという人間離れした反撃を行った。
・老巨人が掌で防いでレントを握り潰そうとした瞬間、レントは背中から巨大な竜の翼を展開して空中に軌道をそらし、ロレーヌの氷流星の援護もあって難を逃れる。
大地陥による足元地面陥没転倒と大盾の絶望による金属槍および古代魔術鳴神の嘆きの雷撃
レントの攻撃だけでは致命傷を与えられないと悟った一行は、ロレーヌが罠を張る地点まで老巨人を誘導する作戦に出た。
・オーグリーの先導で森を抜け、指定の場所に老巨人が踏み込んだ瞬間、ロレーヌは大地陥(テツラ・カウウス)を放って足元の地面を陥没させ、巨体を転倒させる。
・さらに大盾の絶望(イエウーシュガドールマゲン)で巨大な金属槍を無数に突き立て、とどめに古代魔術鳴神の嘆き(ハズイナバラクラスール)で極太の雷を叩き込んだ。
一軍匹敵の猛攻を耐えた老巨人への聖魔気融合術発動と下敷き圧壊からの分化影再構成
一軍にも匹敵する大魔術の直撃を受け、全身黒焦げになりながらも、老巨人は雄叫びを上げて再び立ち上がった。
・もはや余裕がない老巨人に対し、レントは武器が壊れる覚悟で切り札の「聖魔気融合術」を使うことを決断する。
・オーグリーが囮となって老巨人を引きつける間、レントは分化の能力を使って森の暗がりに完全に同化し、老巨人の意識から消え去った。
・老巨人がオーグリーに向かって前傾姿勢になった瞬間、レントは一気に飛び出してその背中から首筋へと駆け上がり、ありったけの魔力、聖気、気を込めた剣を弱点である首筋に叩き込む。
・この一撃でついに老巨人は倒れ込み、その際、レントは巨体の下敷きになり完全に潰されてしまう。
・しかし、レントは分化によって影の状態から自らの体を再構成し、全くの無傷で復活を果たした。
・その後、気を失って元の姿に戻った老人は、ロレーヌが用意した魔術契約書によって異能の使用を封じられ、拘束されることとなった。
まとめ
老巨人との死闘エピソードは、個人の武力を超越した異能の巨人に対し、レントの不死者としての肉体特性とロレーヌの戦術級大魔術、そしてオーグリーの正確な誘導を噛み合わせることで打破した極限の戦闘記録である。左肩を失いながらも前進を止めず、竜の翼で窮地を脱したレントの執念や、罠の地帯へ誘い込んで連続魔術を叩き込んだロレーヌの制圧能力は一行の卓越した連携力を示している。聖魔気融合術による致命一撃の後に巨体の下敷きとなりながらも、分化能力によって影から無傷の肉体を再構成して帰還した顛末、そして魔術契約書で異能を封殺して完全拘束した事後処理の実態は、レントたちが王都の放つ最高峰の暗殺工作員を力と知略の双方で完全に圧倒し、事件の背後に迫るための決定的な戦果を挙げたことを厳密に証明している。
異能者組織との交渉
『望まぬ不死の冒険者』第11巻において、レントたちが暗殺の刺客として差し向けられた異能者たちの所属する組織と接触し、事態の収束を図るエピソードは、度重なる襲撃の背景にある誤解を解き、国家規模の陰謀の真相を突き止める重要な局面である。
ゴブリンを連絡役とした面会約束の取り付け、組織の拠点である大闘技場地下でのヴァサおよびフアナとの模擬戦による実力証明、組織の長であり総冒険者組合長でもあるジャン・ゼーベックの登場と偽指令の真相、そして誤解の氷解に伴うジゼル女伯爵との契約終了とマルトへの同行了承にいたる全容は以下の通りである。
ゴブリンの派遣による面会要求と責任追及を恐れるスプリガンの同意に伴う約束の取り付け
老巨人であるスプリガンのギリーを打ち倒したレントたちは、今後も異能者の刺客が送られてくる事態を防ぐため、組織の責任者と直接交渉して手を引かせたいと考えた。
・任務に失敗したスプリガンも、このまま組織に戻れば責任を問われて殺される危険があったため、この提案に同意する。
・レントたちはセイレーンとスプリガンを人質として手元に残し、ゴブリンを連絡役として組織の長の元へ派遣した。
・これにより、面会の約束を取り付けることに成功する。
ヴィステルヤ大闘技場地下での剛鉄のヴァサおよび魔賢のフアナとの模擬戦における圧倒的勝利
翌日、レントとロレーヌはスプリガンの案内で組織の拠点であるヴィステルヤ大闘技場の地下へ向かった。
・そこには老人の敗北を信じない剛鉄のヴァサと魔賢のフアナが待ち受けており、話し合いの前に彼らと戦うこととなる。
・レントは人間離れした体の可動域と不死者の特性を活かして、空中に金属の武器を発生させるヴァサを圧倒した。
・一方のロレーヌも、古代魔術や多重魔術を駆使し、他人の魔術の弱点を見抜くフアナを打ち破り、二人に実力を認めさせる。
長ジャン・ゼーベックの正体露見とジゼル女伯爵へのスパイ内通に基づく暗殺指令の真相
模擬戦の後、二人の前に組織の長であるジャン・ゼーベックが現れた。
・彼の正体は王都の「総冒険者組合長」でもあり、レントを強く驚愕させる。
・ジャンによれば、組織がレントたちを狙ったのは内部での情報伝達の不備が原因であった。
・王族周辺に送り込んでいたスパイが第一王女の後援者であるジゼル・ジョルジュ女伯爵に通じていた。
・第二王女が新しい王杖を手に入れ、国王に渡さず自身の即位に利用しようとしているため、その運搬役であるレントたちを消せ、という偽情報に基づく指令が出されてしまっていた。
副長らの処理による身辺整理と新造迷宮調査を兼ねたジャンのマルト同行了承
ジャンが拠点に戻った時にはすでに指令が出ており、止める間もなかったとのことであった。
・ジャンはすでにそのスパイと、ジゼルに通じていた組織の副長を処理していた。
・レントから第二王女にそのような企みはないと聞いたジャンは、ジゼルとの契約を終了し、今後レントたちを狙うことはないと約束する。
・さらに、本来の目的であった「総冒険者組合長をマルトへ迎えに行く」というウルフからの依頼についても、ジャンはマルトの新造迷宮や、塔、学院による迷宮核探索の進捗に興味を持っていた。
・翌々日にマルトへ同行することを了承し、交渉は無事に成立した。
まとめ
異能者組織との交渉エピソードは、レントたちを狙った暗殺計画が、第一王女派のジゼル女伯爵による偽情報と組織内の裏切りに端を発した誤解であったことを解明した重大な転換点である。拠点で待ち受ける実力者を不死者の肉体特性や古代魔術によって圧倒し、交渉の席につかせたレントたちの戦闘力は彼らの格の高さを示している。組織の長が目的の人物である総冒険者組合長ジャン・ゼーベックであるという衝撃の事実を突き止め、ジゼルとの契約破棄とマルトへの同行という最高の形で交渉を結実させた顛末は、この接触が単なる和解にとどまらず、レントたちが王都の権力闘争の裏側を掌握し、マルトの次なる展開へ向けて中央の最高権力者を巻き込む絶対的な契機となったことを厳密に証明している。
銀級昇格試験の資格
『望まぬ不死の冒険者』第11巻において、レントがついに長年の目標であった銀級へ昇格するための試験を受ける権利を得るエピソードは、地道な積み重ねと高難易度依頼の完遂が結実し、冒険者としての次なる高みへ挑戦する足がかりを得る重要な局面である。
ペトレーマ湖における三つの高難易度依頼達成に伴う大幅な功績点加算と受験資格の獲得、約10年間にわたる銅級時代の苦闘を振り返るレントの感慨とロレーヌらの祝福、魔物の素性を隠すための大器晩成型という弁明への老人の納得、そして残された課題と試験の厳しさを考慮して即座の受験を見送った冷静な決断にいたる全容は以下の通りである。
銀級以上を想定した高難易度ターゲットの完遂による大幅な功績点加算と受験資格の付与
王都の冒険者組合で、レントとオーグリーがペトレーマ湖でこなした三つの依頼(水猫の生け捕り、泥魔導人形の泥の収集、飛竜天麻の採取)の達成報告を行った。
・受付職員から、レントが銀級昇格試験の受験資格を満たしたと突然告げられる。
・これらの依頼は需要があるにもかかわらず捕獲や採取の難易度が高く、受注者が不足していたため、達成時の功績点が非常に高く設定されていた。
・本来は銀級以上の冒険者を想定した依頼であったため、銅級のレントが達成したことで大幅に功績点が加算され、一気に受験資格を得るに至った。
10年間の銅級時代を巡る驚愕と現実感の獲得に伴うロレーヌらとの酒盛りの約束
約10年もの間、銅級冒険者としてスライムやゴブリンを狩る地道な依頼をこなし、先が見えない日々を送っていたレントにとって、銀級昇格のチャンスはまさに夢のような出来事であった。
・彼は驚き茫然としたが、オーグリーからの手放しの祝福と職員の言葉で現実であることを実感し、着実に階段を上れていることにじんわりとした喜びを感じる。
・宿に戻って報告を受けたロレーヌも自分のことのように喜び、酒盛りを提案した。
強敵スプリガンを圧倒する実力に対する老人の疑問と異能目覚めへの解釈による納得
同席していた異能者組織の老人(スプリガン)は、自分のような強敵を打ち倒したレントの実力であれば、銀級昇格試験の資格など簡単に得られたはずだと不思議がった。
・レントが魔物であることを明かせないため、「偶然強くなったのだ」とぼかして説明する。
・老人は彼が「最近になって異能に目覚めた大器晩成型の人間なのだ」と自ら解釈して納得した。
総冒険者組合長の送迎任務や異能者組織との対話を優先した即座の受験見送りと職員の高評価
資格を得たレントに対して、職員は銀級昇格試験が銅級の時と同様に非常に厳しいものであると忠告した。
・レント自身も、総冒険者組合長をマルトへ送迎する任務や、異能者組織との話し合いといった課題が残っていること、そして何より万全の準備なしに試験に挑むべきではないと冷静に判断する。
・即座の受験は見送って日を改めることにした。
・この浮き足立たない思慮深い決断に対し、職員は彼を「良き冒険者である」と高く評価した。
まとめ
銀級昇格試験の受験資格獲得エピソードは、レントが辺境マルトでの10年に及ぶ不遇の銅級時代を越え、王都での卓越した功績によってついに宿願の切符を手にした象徴的な転換点である。想定以上の功績点によって唐突にもたらされた好機に驚きつつ、オーグリーやロレーヌと喜びを分かち合ったプロセスは、彼の歩んできた道のりの正当性を示している。実力と階級の乖離を不審がるスプリガンの老人に大器晩成と誤認させて隠蔽し、中央の重要任務や準備不足を考慮して即座の受験を保留した慎重な顛末は、レントが能力の肥大化に慢心せず、大局的な判断力と冒険者としての強固な理性を維持している最高の証明となっている。
聖女と孤児院の訪問
『望まぬ不死の冒険者』第11巻において、レントとロレーヌが東天教の僧正であり聖女でもあるエルザの案内で王都を巡り、彼女の育った孤児院を訪問するエピソードは、リリアンの近況を伝えるとともに、聖獣の存在やレントの隠された能力が明らかになる重要な局面である。
聖女エルザが街着に着替えて裏口から抜け出したお忍びの王都案内、幼少期に育った王都第三孤児院への訪問と院長メルへのリリアン病気完治の報告、20年以上住み着く巨大な白い犬ポチの言葉によるメルのつまみ食い暴露、そして聖気の加護によって明かされたポチの神獣としての正体とレントの聖気露見にいたる全容は以下の通りである。
聖女エルザによる街着での裏口脱出とお忍びによる評判のケーキ屋案内
レントとロレーヌは、冒険者組合を通じてエルザから直々の指名依頼を受け、エフェス大寺院を訪れた。
・エルザからマルトにいるリリアン宛ての聖気によって封印された手紙を受け取った二人は、リナから頼まれたお土産を買うために王都を回る予定だと伝える。
・するとエルザは自ら案内役を買って出た。
・彼女は僧侶の服ではなく街の服に着替え、他の僧侶の目を盗んで大寺院の裏口からこっそりと抜け出してくる。
・道中では評判のケーキ屋に立ち寄り、エルザが聖職者らしからぬ見事な食欲を見せるなど、気さくで親しみやすい一面が描かれた。
王都第三孤児院の訪問と竜血花によるリリアンの邪気蓄積病完治に伴う院長メルの安堵
買い物を終えた後、エルザが最後に二人を案内したのは、彼女とリリアンが幼い頃に育った「王都第三孤児院」であった。
・そこでは、二人の妹分であり、現在孤児院の院長を務めているメルが働いていた。
・メルは長らくリリアンと連絡が取れず心配していたが、レントとロレーヌから、リリアンがマルトで患っていた邪気蓄積病が竜血花を使った薬によって完治し、元気に働いているという報告を聞いて涙ぐむほど喜ぶ。
・レントはこの出来事を通じ、自分がマルトで竜血花を採ってきた依頼がリリアンを救うことにつながっていたと実感した。
巨大犬ポチの突然の発話とメルのつまみ食い暴露によるエルザの叱責
孤児院には、20年以上前から住み着いている人間よりも巨大な白い犬「ポチ」がいた。
・ポチはレントに飛びついて顔を舐めた後、突然言葉を喋り出す。
・レントとロレーヌにはその言葉がはっきりと理解できたが、長年ポチの世話をしてきたメルにはただの犬の鳴き声にしか聞こえていなかった。
・しかし、ポチが、メルがお菓子のつまみ食いをして太ったか気にしている、と暴露し、それを聞いたエルザがメルを注意したことで、メルはエルザとリリアンが昔からポチは喋ると言っていたのが冗談ではなかったのだと悟り取り乱した。
神獣ポチから放たれた聖気の加護と聖女エルザによるレントの聖気能力看破
自分だけ声が聞こえないと泣きつくメルに対し、エルザはポチに合図を送った。
・するとポチの体から聖気の光が放たれ、それがメルに移ると、メルにもポチの声が聞こえるようになる。
・エルザは、ポチの正体が神獣または聖獣と呼ばれる神霊の仲間であり、その声は聖気の加護を宿した者にしか聞こえないという秘密を明かした。
・そしてエルザはレントに向かって「貴方もそうなのですね?」と語りかけ、レントが隠し持っていた聖気の力が聖女に見抜かれるという重要な場面で締めくくられている。
まとめ
聖女と孤児院の訪問エピソードは、かつてマルトでレントが遂行した竜血花採取の依頼が巡り巡ってリリアンを救い、王都の孤児院に安堵をもたらしたという、因果の美しさを描いた重要な展開である。聖女としての立場を離れて気さくに王都を案内するエルザの人間味や、孤児院の絆が描かれる一方で、20年以上隠されてきた聖獣ポチの秘密が明かされたプロセスは、物語に流れる聖なる力の系譜を示している。加護を持つ者にしか聞こえない聖獣の声を通じ、レントが隠し持っていた「聖気」の存在がエルザによって確信的に見抜かれた顛末は、レントが単なる不死の魔物にとどまらず、聖なる領域の力をも引き出す特殊な存在として、中央の主要勢力に認識され始めたことを厳密に証明している。
望まぬ不死の冒険者10巻
望まぬ不死の冒険者まとめ
望まぬ不死の冒険者12巻
登場キャラクター
主人公とそのパーティー
レント・ファイナ
不死者の冒険者である。骸骨仮面を被っている。
・所属組織、地位や役職
冒険者組合・銅級冒険者。不死者。
・物語内での具体的な行動や成果
王都で三つの依頼をこなし、銀級昇格試験の受験資格を得た。老巨人と化した《スプリガン》との戦いでは、自らが潰されながらも《分化》によって復活し、魔力や聖気を込めた剣で首筋を斬って勝利を収めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
聖気の加護を宿しており、神獣であるポチの言葉を聞き取ることができる。
ロレーヌ・ヴィヴィエ
レントの相棒であり、天才的な頭脳を持つ学者兼魔術師である。
・所属組織、地位や役職
冒険者組合・銀級冒険者。学者。魔術師。錬金術師。
・物語内での具体的な行動や成果
老巨人を倒すため、古代魔術を連発して致命的なダメージを与えた。地下闘技場でのフアナとの戦いでは、多重魔術や二重の《盾》を駆使して彼女を圧倒し、勝利を収めている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
魔眼を持っており、相手の魔力量などをある程度把握することができる。
オーグリー
レントたちの友人の銀級冒険者である。派手な男だが気遣いができる。
・所属組織、地位や役職
冒険者組合・銀級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
ペトレーマ湖での依頼に同行し、レントと共に泥魔導人形を全滅させた。老巨人との戦いでは囮となってレントを支援した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
異能者組織の《長》に会うため、一人で王都の宿に残る役目を引き受けている。
異能者《組織》
ギリー・フラッド
異能者組織の《副長》の指示でレントたちを襲った刺客である。
・所属組織、地位や役職
異能者組織・刺客。《スプリガン》。
・物語内での具体的な行動や成果
レントたちを強襲して老巨人に変化したが、敗北してロレーヌと魔術契約を結んだ。《長》との交渉を仲介し、地下闘技場ではレントたちの試合の審判を務めている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
組織内でも相当な実力者として知られている。敗北を受け入れ、部下たちを守るために交渉を提案した。
ヤツール
異能者組織の構成員であり、ギリーの部下である。
・所属組織、地位や役職
異能者組織・構成員。《ゴブリン》。
・物語内での具体的な行動や成果
連絡役として組織の拠点へ向かい、《長》との面会を取り付けた。ギリーの敗北を信じない仲間と喧嘩になり、傷だらけになって宿へ戻ってきた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ゴブリンを使役する異能を持っている。今回の任務を最後に引退を考えている。
《セイレーン》
異能者組織の構成員であり、若く自信家な少女である。
・所属組織、地位や役職
異能者組織・構成員。
・物語内での具体的な行動や成果
宿のベッドに拘束されていたが、ロレーヌに脅されておとなしくなった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
人の心や動物に緩やかな影響を与える異能を持っている。連絡用の鳩に頭を止まり木にされていた。
門番たち
ヴィステルヤ大闘技場の地下へ通じる入り口を警備する者たちである。
・所属組織、地位や役職
異能者組織・門番。
・物語内での具体的な行動や成果
帰還したギリーを迎え入れた。ヴァサの言いつけ通りに彼らを地下へ通している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
レントたちにはあまり興味を示さなかった。
ヴァサ
異能者組織の構成員であり、ギリーの敗北を信じない男である。
・所属組織、地位や役職
異能者組織・構成員。《剛鉄》。槍術師。
・物語内での具体的な行動や成果
地下闘技場でレントと模擬戦を行った。空間に金属の武器を生み出す異能を使ったが、レントの動きに対応できず気絶させられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
金属以外の物質も生み出せた可能性があるが、本人の認識によって金属しか扱えなくなっている。魔術が効きにくい体質を持つ。
フアナ
異能者組織の構成員であり、小柄な少女である。
・所属組織、地位や役職
異能者組織・構成員。《魔賢》。魔闘師、魔術師。
・物語内での具体的な行動や成果
ロレーヌと模擬戦を行い、他人の魔術の弱点を見抜く異能を駆使して戦った。他人の魔術をまとう《魔吸鎧》を利用したが、敗北している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ロレーヌから古代魔術を学ぶ約束を取り付けた。《魔吸鎧》の改良に取り組む意欲を見せている。
ジャン・ゼーベック
異能者組織を統べる人物であり、余裕と人を惹きつける存在感を持つ男である。
・所属組織、地位や役職
異能者組織・《長》。総冒険者組合長。
・物語内での具体的な行動や成果
組織の伝達不備でレントたちを狙ったことを認め、今後は手を出さないと約束した。迷宮核の進捗確認と個人的な興味から、マルトへの同行を了承している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
裏切ったスパイや《副長》をすでに処理している。国王や第二王女とも顔見知りである。
使用人と思しき女性
ジャンの執務室で働く人物である。
・所属組織、地位や役職
異能者組織・使用人。
・物語内での具体的な行動や成果
ギリーの合図を受け、レントたちに高級な紅茶とお茶請けを用意した。全員にお茶が行き渡ったことを確認し、一礼して部屋を退出している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項は記載されていない。
ルーザ村
フェリシー
ルーザ村に住む娘であり、オーグリーに強い信頼を寄せている。
・所属組織、地位や役職
ルーザ村の住人。
・物語内での具体的な行動や成果
泥魔導人形の泥の採取を手伝い、泥遊びのように楽しんで作業を行った。レントたちが老人を拘束した事情を尋ね、冒険者の事情として納得している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
レントたちが王都へ出発する際に見送りを行った。
冒険者組合・王都の住人
宿の亭主
王都の宿を経営する人物である。
・所属組織、地位や役職
宿の亭主。
・物語内での具体的な行動や成果
村から戻ってきたレントたちを追い出さず、歓迎して迎え入れた。朝食中のレントたちに、冒険者組合からの呼び出しを伝えている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項は記載されていない。
冒険者組合職員の女性
王都の冒険者組合の受付を担当する人物である。
・所属組織、地位や役職
王都冒険者組合・職員。
・物語内での具体的な行動や成果
レントたちの依頼達成手続きを行い、非常に高品質な素材だと評価した。レントが銀級昇格試験の資格を満たしたことを伝え、試験の厳しさについて忠告している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項は記載されていない。
東天教・王都第三孤児院
年輩の僧侶
エフェス大寺院の入り口に立つ僧侶である。
・所属組織、地位や役職
東天教・僧侶。
・物語内での具体的な行動や成果
寺院を訪れたレントとロレーヌをすぐに応接室へと案内した。応接室に二人を通した後、深く頭を下げて辞去している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項は記載されていない。
エルザ・オルガド
東天教の高位聖職者であり、気さくで食欲旺盛な女性である。
・所属組織、地位や役職
東天教・僧正、聖女。
・物語内での具体的な行動や成果
僧侶の目を盗んで寺院を抜け出し、レントたちに王都を案内した。ポチが神獣であることを明かし、レントが聖気の加護を持っていることを見抜いている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
リリアンやメルとは幼なじみのような関係である。
メルパティッシュ
王都第三孤児院の責任者であり、清楚で穏やかな女性である。
・所属組織、地位や役職
王都第三孤児院・院長。僧侶。
・物語内での具体的な行動や成果
レントたちがもたらした手紙によって、リリアンが力を取り戻したことを知り歓喜した。エルザの計らいによってポチの加護を与えられ、犬の言葉を理解できるようになった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項は記載されていない。
子供たち
王都第三孤児院で暮らす孤児たちである。
・所属組織、地位や役職
王都第三孤児院・孤児。
・物語内での具体的な行動や成果
孤児院の前に現れたエルザを見つけて駆け寄り、彼女に飛びついた。ロレーヌからお土産のケーキを受け取り、台所へ走り去っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項は記載されていない。
ポチ
王都第三孤児院に二十年以上前から住み着いている白い犬である。
・所属組織、地位や役職
王都第三孤児院の飼い犬。神獣(聖獣)。
・物語内での具体的な行動や成果
レントに飛びついて顔を舐め、人語を話して彼を驚愕させた。メルのつまみ食いを暴露し、エルザの合図でメルに聖気を与えている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
聖気の加護を宿した者にしかその言葉は聞こえない。
その他の人物・魔物
泥魔導人形たち
窪地に生息し、ドロドロとした体を持つ魔物である。
・所属組織、地位や役職
魔物(ルトウム・ゴーレム)。
・物語内での具体的な行動や成果
土の矢などの土系統の魔術を使用し、敵を包み込んで窒息させようとした。レントとオーグリーによって核を潰され、全滅している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項は記載されていない。
水猫
透明な水で構成された猫の姿を持つ魔物である。
・所属組織、地位や役職
魔物(アクア・ハトウール)。
・物語内での具体的な行動や成果
ロレーヌが用意した魔道具の首輪をつけられ、魔法のかごの中に捕獲された。依頼の品として冒険者組合の受付へ提出されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項は記載されていない。
ヒルデ
過去にロレーヌへ護衛依頼を出した妙齢の女性である。
・所属組織、地位や役職
依頼人。
・物語内での具体的な行動や成果
毎年、ルック岬で番になる氷竜の歌を聴くために護衛を雇っていた。目的を果たした後、来年もマルトにいたら依頼をしたいとロレーヌに伝えている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項は記載されていない。
氷竜
クゥイア湖に生息する強大な魔物である。
・所属組織、地位や役職
魔物。
・物語内での具体的な行動や成果
夜のルック岬で、歌声のような鳴き声で求愛を行った。氷の翼を持つ別の氷竜と番になり、湖の底へと沈んでいった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項は記載されていない。
望まぬ不死の冒険者10巻
望まぬ不死の冒険者まとめ
望まぬ不死の冒険者12巻
展開まとめ
第一章 襲擊
泥魔導人形の採取と老巨人の襲撃
泥魔導人形の窪地
レントたちは最後の依頼である泥魔導人形の泥を採取するため、窪地に集まる数十匹の泥魔導人形を見つけた。魔術を使うと素材が変質するため、ロレーヌの攻撃魔術には頼れず、レントとオーグリーが気を中心に戦うことになった。泥魔導人形は水分の多い泥状の個体ばかりで、二人は泥だらけになる覚悟を決めた。
核を狙う戦い
レントとオーグリーは窪地へ降り、泥魔導人形の土の矢を避けながら、体内の核を狙って攻撃した。泥魔導人形は包み込んで窒息させる攻撃をしてきたが、呼吸を必要としないレントはあえて内部へ飛び込み、核を直接破壊した。オーグリーは危険な攻撃を避けつつ戦い、二人は連携して泥魔導人形を全滅させた。
泥の採取
戦闘後、レントとオーグリーは泥だらけになっていた。ロレーヌとフェリシーも窪地へ降り、崩れた泥魔導人形の泥を容器に詰めた。フェリシーは泥遊びのようだと楽しげに作業し、三人もその逞しさを見習うように、依頼品の採取を終えた。
湖での水浴び
三つの依頼を終えた後、レントとオーグリーは湖で泥を落とした。二人は、フェリシーの協力があったからこそ短時間で依頼を終えられたと話した。オーグリーはレントの青白いが人間らしい体を見て、骨人や屍食鬼だった頃の話に興味を示し、レントは魔物とは何かという答えの出ない疑問について考えた。
村への帰路
泥を落とした一行は、村へ戻る道を進んだ。水色飛竜の繁殖地も、フェリシーのおかげで往路ほど緊張せず通り抜けられた。しかし村が近づいたところで、レントたちは道の先に不自然な人影を見つけた。避けようとしても相手は進路上に現れ、三人は警戒しながら近づいた。
老人の一撃
ローブ姿の痩せた老人に話しかけた瞬間、レントは腹部に強烈な衝撃を受け、森へ吹き飛ばされた。ロレーヌは老人を危険な相手だと即座に判断し、フェリシーを抱えて自分たちに《盾》を張った。だが老人は一瞬で距離を詰め、ロレーヌの《大地の槍》を弾き飛ばした。
巨大化する腕
老人の攻撃の正体は、腕を瞬間的に巨大化させて叩きつける異能だった。オーグリーはロレーヌを守ろうと前に出たが、老人の巨腕に吹き飛ばされた。ロレーヌはフェリシーに強力な《盾》の魔道具と追跡用の目印を渡し、隠れて待つよう頼んで、森へ向かった。
オーグリーの防戦
オーグリーは森の中で老人と対峙した。老人は《ゴブリン》や《セイレーン》よりも明らかに強く、間者よりも闘技場向きの物理特化の戦士だった。オーグリーは巨腕の攻撃を受け流しながら時間を稼いだが、背中に傷を負い、追い詰められていった。
分化からの復帰
一方、吹き飛ばされたレントは、骨が折れ、体内から突き出すほどの損傷を負っていた。彼は《分化》によって体を再構成し、見た目を元通りに戻した。完全な無傷ではないことを理解しつつ、オーグリーの血の匂いを辿って戦場へ急いだ。
間に合ったレント
老人がオーグリーへとどめを刺そうとした瞬間、レントが駆けつけ、オーグリーを巨腕の軌道から外した。レントは軽口を叩きながら、聖気で密かにオーグリーを癒した。老人は、最初の一撃で殺したはずのレントが戻ってきたことに驚きつつも、油断せず再び戦いを仕切り直した。
巨腕への反撃
レントとオーグリーは二人で老人に挑んだ。老人の体は剣を弾くほど硬く、巨腕の攻撃は視界の悪い中でも広範囲を薙ぎ払った。レントは《分化》で攻撃をすり抜け、魔力と気を込めた剣で老人の巨腕を斬りつけ、内側から破裂させるような傷を負わせた。
ロレーヌの合流
老人が本気を出そうとしたところへ、ロレーヌが合流した。老人は、自分の仲間である《ゴブリン》と《セイレーン》の失敗を語り、上から与えられた情報が不十分だったと不満を漏らした。彼はレントたちを普通の銅級と銀級の組み合わせだと思っていたが、実際は想定外の相手だったと認めた。
巨人の正体
老人はこれ以上三人を侮らず、本気を出すと宣言した。レントたちが攻撃しようとした瞬間、老人の体から強烈な圧力が広がり、三人は吹き飛ばされた。そこに現れたのは、老人の姿ではなく巨人だった。ロレーヌは、それが本物の巨人なのか、異能によって巨人化した人間なのか判断できなかった。
老巨人との戦闘
老巨人は圧倒的な質量で突進し、レントたちは散開して対処することにした。レントは盾役となるため正面から向かい、機動力を削ぐため足を狙った。しかし老巨人は連続して踏み潰すように攻撃し、知恵と経験を持つ巨大な敵としてレントを追い詰めた。レントは左肩から先を失いながらも、それを致命傷ではないと受け止めた。
老巨人との決着と異能者組織
老巨人への反撃
レントは潰された肩から先をものともせず、老巨人の拳を避けて腕に飛び乗った。そのまま肩まで駆け上がり、顔を狙って剣を振るったが、老巨人は掌で防いだ。レントは翼を使って握り潰しを逃れ、ロレーヌの《氷流星》が老巨人の体勢を崩した隙に地上へ戻った。
森への誘導
レントとオーグリーは、ロレーヌが大技を放てる位置へ老巨人を誘導することにした。老巨人は森を破壊しながら二人を追い、ロレーヌは気配を隠して魔力を練った。レントの合図に合わせ、ロレーヌは《大地陥》で老巨人の足元を陥没させ、巨体を転ばせた。
ロレーヌの連続魔術
ロレーヌは倒れた老巨人へ《大盾の絶望》を放ち、巨大な金属槍をいくつも突き立てた。さらに《鳴神の嘆き》で極太の雷を落とし、老巨人の体を焼いた。レントとオーグリーはその威力に戦慄し、熟練の魔術師が一軍に匹敵すると言われる理由を実感した。
立ち上がる老巨人
老巨人は黒焦げになり、全身に傷を負いながらも再び立ち上がった。動きは鈍っていたが、なお戦意は消えていなかった。レントは切り札として聖魔気融合術を使うことを決め、オーグリーが囮になることを引き受けた。
首筋の一撃
オーグリーが老巨人の注意を引き、レントは《分化》で森の暗がりに紛れた。老巨人が前傾した瞬間、レントはその背に飛び乗り、首筋まで駆け上がった。ありったけの魔力、聖気、気を込めた剣を振るい、老巨人の首筋に傷を与えた。
潰れたレント
首筋を斬られた老巨人は倒れ込み、レントはその巨体に完全に潰された。レントは《分化》によって影の状態から体を再形成し、元の姿へ戻った。ロレーヌとオーグリーは、レントの復活ぶりに人間離れしたものを感じていた。
老人への拘束
巨人化が解けた老巨人は、痩せた老人の姿に戻って倒れていた。ロレーヌは話を聞くために殺さず拘束することを選び、オーグリーが持っていた魔術契約書を使った。老人には許可なく異能を使えないこと、レントたちに嘘をつけないことが契約として課された。
襲撃の理由
目覚めた老人は、第二王女ジアに招かれたことが襲撃の理由だと明かした。彼らはレントたちが王杖の運搬役に選ばれたと見て、危険人物として殺すよう命じられていた。情報源には精度の高い占術師が使われており、会話の一部は把握されていたが、預言に関わる細部までは掴めていなかった。
ジゼル・ジョルジュ女伯爵
老人は、襲撃を主導したのが第一王女ナディア本人ではなく、その最大の後援者であるジゼル・ジョルジュ女伯爵だと語った。彼ら三人は女伯爵に雇われていたが、もとは《異能》や《特異能力》を持つ者たちで構成された組織に所属していた。組織は異能者を救い、刺客として育てて仕事を与える場でもあった。
組織との交渉
レントたちは、今後も異能者の刺客を送られてはたまらないと考え、組織の責任者と交渉したいと老人に頼んだ。老人は失敗したまま戻れば自分たちも危険だと判断し、意外にもそれを受け入れた。《ゴブリン》を連絡役にし、老人と《セイレーン》を人質として残す方針が決まった。
フェリシーへの説明
レントたちはフェリシーのもとへ戻り、敵を倒したのだと最低限の説明をした。フェリシーは拘束された老人に戸惑ったが、オーグリーの説明を信じ、事情のある相手だと納得した。宿へ戻ると、亭主は一行を追い出さず迎え入れた。
三人の工作員
ロレーヌの部屋では、《セイレーン》が拘束されたまま不満を示していた。老人は彼女をすぐ解かず、《ゴブリン》を呼ぶよう求めた。《ゴブリン》は老人の敗北に驚きながらも、組織の長へ連絡を取る役目を引き受けることになった。
セイレーンの反発
《セイレーン》は解放されると、組織との交渉などできるはずがないと反発した。しかしロレーヌが再び何かをすると示唆すると、彼女は怯えて泣き出した。レントたちは、ロレーヌが尋問で何をしたのかを想像して恐れたが、誰も本人に尋ねることはできなかった。
第二章 出発
異能者組織との面会準備と銀級への道
ルーザ村の見送り
レントたちは依頼品の採取を終え、ルーザ村を出発することになった。フェリシーや宿の亭主、操られていた村人たちは温かく見送ってくれた。《セイレーン》と老人は事情を知られないよう馬車に隠れ、《ゴブリン》は御者として王都へ向かった。
王都への同行
異能者組織の《長》は王都にいる可能性が高く、いなければ王都から呼ぶ方が早いと老人は説明した。そのため一行は王都へ戻り、そこから《ゴブリン》を拠点へ向かわせる段取りにした。道中、老人は異能が本人の性質にも影響すると語り、《ゴブリン》や《セイレーン》の力も人や動物に緩やかに作用している可能性を示した。
王都への帰還
王都までの旅は順調に進んだ。《ゴブリン》たちは大人しく、老人の威圧感や《セイレーン》の思考誘導のおかげで、魔物もほとんど近づかなかった。王都の門では老人たちが行商人の身分証を使い、協力的に振る舞ったため、大きな問題なく入ることができた。
依頼品の納入
王都冒険者組合で、レントとオーグリーは水猫、泥魔導人形の泥、飛竜天麻を納品した。水猫はロレーヌ製のかごと首輪で安全に捕獲されており、泥は量も質も十分だった。飛竜天麻も新鮮で状態が良く、通常より高い報酬で買い取られることになった。
銀級昇格試験の資格
依頼達成によって、レントは銀級昇格試験の受験資格を得た。レントは十年近く銅級として伸び悩んだ日々を思い出し、本当にここまで来られたのかと茫然とした。オーグリーは喜び、職員は試験の難しさを伝えたため、レントはすぐには受けず、準備を整えてから挑むことにした。
マルトの採取技術
職員は、マルト出身の冒険者は植物採取が上手いと話した。オーグリーは、それがレントが新人たちに教えていた成果だと指摘した。レントは大したことは教えていないと考えたが、丁寧に採取する姿勢が王都でも評価されていることを知った。
戻らない総冒険者組合長
レントは総冒険者組合長が戻っているか確認したが、まだ帰還しておらず、時期も不明だった。職員は長引くようならマルトに戻ってもよいよう処理すると申し出たが、レントは王都で用事があるため、しばらく待つことにした。戻った際は宿へ伝言を残すよう頼んだ。
異能者の歴史
宿に戻ると、ロレーヌと老人は異能について語り合っていた。老人は、異能は誰の中にも眠る可能性があるが、魔術や気と違って得体の知れない力として異物扱いされてきたのだと考えていた。ロレーヌはその話を聞き、異能者が歴史の中で迫害や崇拝の対象になってきた可能性を理解した。
レントの昇格祝い
オーグリーは、レントが銀級昇格試験の資格を得たことをロレーヌに伝えた。ロレーヌは自分のことのように喜び、酒盛りを提案するほどだった。老人はレントほどの実力なら当然ではないかと不思議がったが、レントが長く銅級で伸び悩んでいたと聞き、最近異能に目覚めたのだと解釈した。
化け物と友人
老人は、後天的に異能へ目覚めた者は、突然化け物になったように周囲から見られ、特に厳しい扱いを受けると語った。ロレーヌとオーグリーは、友人の姿が変わっても心が変わらないなら友であり続けると答えた。レントはその言葉を受け、自分が人でいられるのは受け入れてくれる人々がいるからだと感じた。
伝書鳩の知らせ
窓に《ゴブリン》の連絡用の鳩が来た。ロレーヌが危険な細工がないことを確認し、老人が暗号文を読んだ。内容は、《長》との面会を取りつけたというもので、翌日、組織の拠点へ向かうことになった。
残る役目
老人は、全員で拠点へ行くのは危険だとして、《セイレーン》と誰か一人を宿に残すべきだと提案した。王都の地理に詳しく、逃げ隠れしやすいという理由から、オーグリーが残ることになった。レントとロレーヌは、老人に案内されて《長》に会いに行く方針を固めた。
傷だらけのゴブリン
翌日、《ゴブリン》が迎えに来た。彼は老人が銀級二人と銅級一人に敗れたことを仲間に説明したが信じてもらえず、取っ組み合いになって傷だらけになっていた。《ゴブリン》は、拠点には老人の敗北を信じない者もいるため注意するよう伝えた。
スプリガンの名
《ゴブリン》は、老人を《スプリガン》と呼んだ。老人はそれが自分の符丁であり、能力に由来する名だと説明した。《ゴブリン》や《セイレーン》も同じく能力からつけられた名であり、組織内の主だった者にはこうした名前があるという。
長の能力
ロレーヌは《長》にも能力に由来する名があるのか尋ねた。老人は、《長》は《長》と呼ばれるだけで、その呼び名は特定の能力を示していないと答えた。さらに《長》の能力についても、老人自身が知らないため答えられないと語った。
第三章 《組織》
ヴィステルヤ大闘技場の異能者たち
闘技場の拠点
レントとロレーヌは、《スプリガン》に案内され、ヴィステルヤ大闘技場へ向かった。そこは王都でも有数の巨大施設であり、裏仕事を請け負う異能者組織の拠点があるとは思えないほど堂々とした場所だった。《スプリガン》は、目立つからこそ疑われにくいのだと説明した。
ヴァサの横槍
門番は《スプリガン》を丁重に迎え、地下へ通すようヴァサから言われていると告げた。《ゴブリン》と《スプリガン》は、その名を聞いて警戒した。ヴァサは《スプリガン》の敗北を信じていない者であり、《長》との面会前に邪魔をしてくる可能性が高かった。
先に潰す懸念
ロレーヌは罠に飛び込む危険を考えたが、《スプリガン》は、後で交渉を妨げられるより先に黙らせた方がよいと話した。ヴァサは攻撃的で単純な性格であり、叩きのめせば納得する相手だという。さらに、魔術が効きにくい体質のため、ロレーヌよりレントの方が相性はよいと見られた。
ヴァサとフアナ
地下闘技場に着くと、《剛鉄》のヴァサと《魔賢》フアナが大げさに登場した。二人は《スプリガン》や《ゴブリン》を裏切り者と呼び、老人が銀級程度に負けるはずがないと決めつけていた。《スプリガン》は説得を試みたが、二人は口では納得せず、戦って証明するよう求めた。
組み合わせの誘導
《スプリガン》は、最後に自分を倒したのはレントの剣だと告げ、ヴァサがレントを選ぶよう誘導した。フアナはロレーヌの古代魔術に興味を持ち、結果としてレント対ヴァサ、ロレーヌ対フアナの組み合わせになった。地下闘技場には観客席を守る《盾》の装置があり、《ゴブリン》が操作を担当した。
剛鉄の能力
ヴァサは槍を構え、レントとの模擬戦を始めた。レントが距離を詰めると、ヴァサは槍の攻撃に合わせて空中に短剣を生み出し、逃げ場を塞いだ。彼の《剛鉄》は、好きな場所に金属を発生させ、消すことができる異能だった。
人間離れした体
レントは人間ではありえない角度まで体を反らし、短剣を避けた。そのまま不自然な姿勢から剣を振り上げ、ヴァサの槍と打ち合わせて吹き飛ばした。ヴァサはレントの虫のような動きに恐怖し、《スプリガン》もその異能の正体を測りかねていた。
認識に縛られる異能
観客席で《スプリガン》は、ヴァサの異能は本来、金属に限らず別の物質も生み出せた可能性があると語った。しかしヴァサ自身が金属武器こそ最強だと思い込んだため、現在は金属しか扱えなくなっているらしい。ロレーヌは、異能には本人の認識が強く関わるのだと理解した。
槍術と金属防御
仕切り直したヴァサは槍術で攻め、胸元に金属板を生み出してレントの斬撃を防いだ。さらに板を小さな矢へ変化させて射出し、レントを追い詰めた。レントは矢を受ける覚悟で動き、隙を作ってヴァサの槍の穂先を斬り飛ばした。
棒術への切り替え
ヴァサは異能で槍の穂先を作り直しつつ、棒術のような動きで戦い続けた。レントは通常の人間では想定できない角度とタイミングで攻撃を重ね、徐々にヴァサへ傷を与えた。持久力でもレントが優位に立ち、ヴァサは追い詰められていった。
最後の穂先
ヴァサは最後の賭けとして、異能で作った槍の穂先を矢のように飛ばし、レントの腹へ突き刺した。普通なら動きが鈍る傷だったが、レントはほとんど反応せず前進した。動揺したヴァサの頭に、レントは剣の平を叩き込み、気絶させた。
レントの勝利
《スプリガン》はヴァサの意識を確認し、レントの勝利を認めた。レントは自分の不死者としての性質で押し切ったことに釈然としなかったが、《スプリガン》はそれも含めて実力であり、事前情報を集めず真正面から挑んだヴァサの敗北だと断じた。彼はヴァサに学ばせるため、レントを教材にしたことも認めた。
震えるフアナ
フアナはレントの異常な動きと、腹に槍が刺さっても平然としていた姿に衝撃を受けていた。ロレーヌはいつでも戦えると告げたが、フアナは強がりながらも声を震わせた。地下闘技場では、次にロレーヌとフアナの対決が始まろうとしていた。
ロレーヌとフアナの魔術戦、迷宮核を巡る事情
魔術師同士の試合
地下闘技場では、ロレーヌと《魔賢》フアナの試合が始まった。審判は《スプリガン》が務めたが、魔術師同士の戦いは範囲攻撃が多いため、観客席側から見守る形になった。フアナは開始直後に無詠唱で火弾を放ち、ロレーヌはそれを避けながらフアナへ接近した。
魔賢の異能
フアナは自分に迫った火弾を、手のひらから魔力を放って消滅させた。《スプリガン》は、フアナの異能は完成した魔術の構成の弱点を一瞬で見抜く力だと説明した。ロレーヌは各属性の基本魔術を放ってその能力を確認し、フアナはそれらを次々とかき消した。
多重魔術の突破口
ロレーヌは火弾と岩弾を重ねた多重魔術を使い、フアナに避けさせた。複数の魔術を重ねることで弱点の位置がずれ、フアナが一度に破壊することを難しくしたのである。フアナはやがて拳で魔術を物理的に貫き、弱点まで到達して消すという手段に出た。
魔闘師フアナ
フアナは魔術師であると同時に、拳で戦う魔闘師でもあった。彼女は肉食獣のような勢いでロレーヌへ迫ったが、ロレーヌは二重の《盾》で拳を誘導し、もう一枚の《盾》を手枷のように閉じて拘束した。そこへ雷撃を浴びせ、フアナに大きなダメージを与えた。
雷を纏う拳
フアナは倒れず、ロレーヌの雷を鎧のように纏って攻撃に転じた。拳と蹴りには雷撃が宿り、ロレーヌの《盾》を打ち抜く威力を持っていた。ロレーヌはその術を未完成だと見抜き、空中で姿勢を制御して回避した後、《雷嵐》でフアナを包み込み、雷と風で打ち倒した。
魔吸鎧への興味
勝者はロレーヌとなり、フアナは回復水薬で治療された。フアナは自分が《魔吸鎧》まで使って負けたことを認めたが、ロレーヌは《長》への案内よりもその魔術に強い関心を示した。フアナは対価として、《スプリガン》を傷つけた古代魔術を教えるよう求め、ロレーヌは迷わず受け入れた。
古代魔術の披露
ロレーヌは地下闘技場で、以前《スプリガン》に大きな損傷を与えた古代魔術を実演した。その規模と破壊力にフアナは圧倒されたが、魔術師として観察を続けた。すぐに習得するのは無理だと理解しながらも、約束通り《魔吸鎧》についてロレーヌの疑問に答えた。
長ジャン・ゼーベック
そこへ現れたのは、異能者組織の《長》であるジャン・ゼーベックだった。彼は総冒険者組合長でもあり、レントはその正体に強い危機感を覚えた。ジャンは、レントたちを殺すつもりはなく、ウルフのお気に入りであるレントを消せば面倒になると笑って答えた。
組織の誤情報
ジャンは、レントたちを狙ったのは組織内部で情報伝達の不備が起きたためだと説明した。王族周辺に送り込んでいたスパイと《副長》がジゼル・ジョルジュ女伯爵に通じており、第二王女が王杖を自分の即位に利用するという偽情報を流したのである。ジャンはすでにその二人を処理していた。
王杖修復の素材
ジャンは、王杖の修理には特殊な素材が必要であり、《塔》がそれを迷宮核だと解析したと語った。さらに、マルトの新しい迷宮は生成されたばかりで、迷宮核を持つ者がまだ内部にいると見られているという。レントとロレーヌは、実際には迷宮核がラウラに取り込まれていることを知っていたため、内心で計画の破綻を察した。
塔と学院の探索
《塔》と《学院》がマルトの迷宮に入っているのは、迷宮核を探すためだった。《塔》は第一王女側、《学院》は第一王子側の思惑を受けており、どちらが先に迷宮核を見つけるか競っていた。ジャンは、《学院》が先に見つけても奪うつもりだったと説明した。
殺害命令の真相
レントたちが殺されかけたのは、第二王女ジアが新しい王杖を手に入れ、国王に渡さず自分の即位に使うと誤解されたためだった。レントはジアがそのような人物には見えなかったと否定し、ジャンもその誤情報がすでに誤りだと認めた。ジゼルとの契約は終了し、ジャンは改めて第二王女と話すつもりだった。
マルト行きの了承
ロレーヌは、ジャンがマルトへ来るつもりがあるか確認した。ジャンは、第二王女との面会を済ませた翌々日にマルトへ向かうと答えた。レントは、これで総冒険者組合長をマルトへ連れていくという依頼も果たせる見込みになった。
王都での別れ前夜
宿に戻ったレントとロレーヌは、オーグリーに一連の事情を報告した。《スプリガン》と《セイレーン》は組織へ戻っており、部屋には三人だけが残った。オーグリーは、不運ではあったが貴重な経験でもあったと受け止め、翌日にレントたちと別れる寂しさを口にした。
第四章 聖女と孤児院
エルザの王都案内と神獣ポチ
聖女からの指名依頼
翌朝、レントとロレーヌは宿の亭主から、冒険者組合へ顔を出すよう伝えられた。用件はエルザ僧正からの指名依頼であり、二人は冒険者組合を経由してエフェス大寺院へ向かった。大寺院では年配の僧侶に案内され、前回と同じ応接室でエルザと再会した。
エルザの手紙
エルザは、リリアンへの返事を直接渡すつもりだったが、レントたちが依頼で王都を離れていたため待っていたのだと話した。ロレーヌは明日マルトへ発つことを伝え、王都で土産を買い回る予定だと語った。するとエルザは、自分が王都を案内すると申し出た。
僧正の脱出
エルザは僧侶の服ではなく街人の服に着替え、大寺院の側面の扉から現れた。彼女は仕事を済ませ、置き手紙を残して静かに出てきたと説明したが、実際には周囲の僧侶たちを撒いてきたような様子だった。レントとロレーヌは不安を覚えつつも、本人が問題ないと言うため案内を任せることにした。
リナの土産帳
レントは、リナから渡された細かい土産指定の小冊子をエルザに見せた。そこには骨人や吸血鬼の絵が描かれており、エルザは二人の趣味なのかと疑った。エルザは、生粋の王都育ちとして道案内を引き受け、最後に自分が寄りたい場所へ同行してほしいと頼んだ。
菓子屋の休憩
三人はリナの指定に従って王都を回り、奥まった場所にある評判の菓子屋にも立ち寄った。ロレーヌは保存魔術で日持ちしないケーキを土産として持ち帰ることにし、エルザにも礼として好きなだけ食べさせた。エルザは聖職者らしからぬ食欲でケーキを楽しみ、さらに行き先への土産も買った。
第三孤児院
エルザが最後に案内したのは、王都第三孤児院だった。そこはエルザとリリアンが育った場所であり、子供たちはエルザを姉のように慕っていた。レントたちは孤児院の院長メルパティッシュと出会い、白く巨大な犬のような存在ポチにも迎えられた。
喋るポチ
ポチはレントに飛びついて顔を舐めたあと、犬の鳴き声のように挨拶した。レントとロレーヌにはその言葉が意味を持って聞こえたが、メルには聞こえていなかった。レントは動揺しつつも自己紹介し、メルは王都第三孤児院の院長であり、ポチは二十年以上前から孤児院にいる魔物らしき存在だと説明した。
リリアンの手紙
エルザはメルに、リリアンから託された手紙を見せた。メルはそこに残るリリアンの聖気を感じ、彼女が力を取り戻したことを知って涙ぐむほど喜んだ。エルザは、リリアンがいずれ王都を訪ねることもできるだろうと語り、メルは再会を心待ちにした。
リリアンの思い出
エルザは、メルがリリアンにとって妹か娘のような存在だったと説明した。レントとロレーヌは、マルトでのリリアンの様子や邪気蓄積病が治ったこと、竜血花の薬で回復したことを話した。エルザとメルも、孤児院時代のリリアンが活発で面倒見のよい姉御のような存在だったと語った。
封印された返事
話が一段落したところで、エルザはリリアンへの返事をレントたちに託した。手紙には聖気による封印が施されており、勝手に開けば分かるようになっていた。ポチは手紙の匂いを嗅ぎ、問題ないとでも言うように鳴いた。
聖気を持つ者
エルザは、レントにポチの言葉が聞こえていることを見抜いた。メルは、エルザとリリアンが昔からポチは喋ると言っていたのを冗談だと思っていたが、ポチが自分のつまみ食いを暴露したことで真実だと知った。エルザは、ポチが神獣または聖獣と呼ばれる神霊の仲間であり、その声は聖気の加護を宿した者にだけ聞こえるのだと明かした。
ポチの加護
メルが自分だけ声を聞けないことに取り乱すと、エルザはポチに合図した。ポチの体から聖気の光が放たれ、それがメルへ移ると、彼女にもポチの声が聞こえるようになった。エルザは改めて、レントも聖気の加護を宿しているのだと確認した。
番外編 不穏な女性
ルック岬の氷竜の歌
奇妙な護衛依頼
数年前、人間だった頃のレントは、ロレーヌからルック岬への護衛依頼について聞いた。依頼人のヒルデは景色を見たいと言っていたが、ルック岬は身投げの名所でもあり、ロレーヌは彼女にその意図があるのではないかと警戒していた。レントも心配したが、ロレーヌは当日に止める覚悟もして依頼へ向かうつもりでいた。
欠員の代役
翌朝、レントは冒険者組合で急な欠員が出た依頼を頼まれた。内容はロレーヌが話していたルック岬行きの護衛であり、御者役の冒険者が来なくなったためだった。レントは引き受け、馬車乗り場でロレーヌと依頼人ヒルデに合流した。
身投げへの誤解
レントとロレーヌは、旅の途中でヒルデに身投げを疑っていたことを打ち明けた。ヒルデは笑い、自分は死ぬためではなく、毎年この日にだけ見られるものを楽しむためにルック岬へ向かっているのだと説明した。彼女は普段は知り合いの冒険者に頼んでいたが、その者たちが王都へ行ったため、今回初めて別の冒険者に依頼していた。
湖から現れた氷竜
夜のルック岬で、三人は身を隠しながらクゥイア湖を見つめた。やがて湖から強大な魔物である氷竜が現れ、美しい歌のような鳴き声を響かせた。ロレーヌは、一部の竜が求愛のために歌うという話を思い出し、実際にその光景を目にして驚いた。
氷の翼の番
ヒルデが促すと、空からもう一体の氷竜が舞い降りた。その氷竜は氷の翼を持ち、湖にいた雌の歌を頼りに現れたようだった。二体の氷竜は番となり、やがて湖の底へ沈んでいった。ヒルデは、ひいおばあちゃんの代から伝わるこの光景を毎年見に来ており、歌を聴ければ満足だと語った。
満足した帰路
ヒルデは氷竜の邪魔をせず、目的を果たしたとして帰ることにした。マルトへ戻った後、彼女は来年もマルトにいるならまた依頼したいとロレーヌに伝え、ロレーヌもそれに同意した。ロレーヌは辺境だからこそ新しい発見があると満足し、レントは身投げの名所である湖に竜がいる事実を考えてしまったが、二人はそれ以上深く考えないことにした。
望まぬ不死の冒険者10巻
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望まぬ不死の冒険者12巻
同シリーズ
望まぬ不死の冒険者
小説版














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