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フィクション(Novel)望まぬ不死の冒険者読書感想

小説「望まぬ不死の冒険者 8巻」感想・ネタバレ

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望まぬ不死の冒険者 8の表紙画像(レビュー記事導入用) フィクション(Novel)

望まぬ不死の冒険者7巻
望まぬ不死の冒険者まとめ
望まぬ不死の冒険者9巻

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どんな本?

望まぬ不死の冒険者』は、丘野優 氏による日本のライトノベル作品。
小説家になろうにて2016年9月22日より連載されており、オーバーラップノベルスより刊行されている。
イラストはじゃいあん 氏が担当。
物語は、銅級冒険者のレント・ファイナが水月の迷宮で龍に食われて不死の魔物として蘇るところから始まる。
レントは魔物の存在を食らうことで存在進化していき、骨人から屍食鬼、下級吸血鬼となる。
レントは自分の境遇に苦しみながらも、冒険者としての夢を捨てずに、魔物と人間の狭間で生きることを決意する。
しかし、レントの存在は世界の秩序を揺るがす危険なものとして、様々な勢力の注目を集めてしままう。
この作品は、コミカライズやテレビアニメ化もされており、人気の高いファンタジー作品。
コミカライズ中曽根ハイジが作画を担当し、コミックガルドにて連載中。
テレビアニメは2024年1月より放送予定。

読んだ本のタイトル

#望まぬ不死の冒険者8巻
著者:#丘野優 氏
イラスト:#じゃいあん  氏

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あらすじ・内容

――不死者、吸血鬼を狩る。

眷属エーデルの異変を感じ取り、ハトハラーの村から都市マルトへと戻ったレントたち。そこで目にしたのは、火に包まれ、屍鬼が闊歩する光景だった。
孤児院の地下でエーデルの無事を確認したレントは、街に潜む小鼠たちの力を借り、屍鬼を作り出した吸血鬼の捜索へ向かうことに。
金級冒険者のニヴ、聖女のミュリアスと合流し、屍鬼を討伐しつつ、犯人の潜むであろう《新月の迷宮》へ。
そこで特殊能力《分化》を使う吸血鬼との戦闘になるが、本命を達成するための囮と発覚。ニヴに相手を任せたレントは街に繰り出し親玉を捜すが――そこで遭遇したのはラトゥール家の使用人、イザーク・ハルトで……!?
強大な魔物と戦い、多くの謎を解き、そして強くなる。
死してもなお遙かなる神銀級を目指す、不死者レントの『冒険』、第8弾――!

望まぬ不死の冒険者 8
望まぬ不死の冒険者特設サイト

感想

物語は、孤児院での主人公レントとその仲間たちの状況から始まる。
レントは、使い魔エーデルからの記憶を共有され、以前「新月の迷宮」で遭遇した吸血鬼ヴァンパイアがマルトの混乱を引き起こしていることを悟る。
彼は孤児院を守りつつ、屍鬼しき(低級吸血鬼)の掃討に着手する。

屍鬼しきの掃討任務中、生け捕りにして情報を得ようとするレントの計画は、金級冒険者のニヴによって変更される。
彼女は聖術で屍鬼しきを浄化し、レントとの協力を求めるが、レントは独自に行動を続ける。

そして、吸血鬼ヴァンパイアが「新月の迷宮」にいることがわかる。
レントは彼らの計画を阻止するために行動を続ける。

不死者アンデッドについての哲学的考察が行われ、永遠の命を得る代償としての人格喪失が判明し。
宗教関係者による不死者アンデッドへの見解や、不死者アンデッドとなった少年の悲劇が描かれる。

レントは、不死者アンデッドとなった少年が冒険者組合長ギルドマスターによって退治される様子を目撃する。
この出来事は吸血鬼ヴァンパイヤとなってるレントに深い影響を与える。

ニヴ・マリスが吸血鬼ヴァンパイアと戦い、彼らを撃退する。
一方、レントたちは屍鬼しきを聖気で浄化し、彼らの苦しみを和らげる。

最終的に、レントたちは吸血鬼ヴァンパイアの計画を阻止するために、街へ戻り、主犯格の追跡を開始する。
街に戻ると、冒険者たちが重傷を負っていることが判明し、レントたちは主犯の探索を急ぐ。

そんな中、イザークが、過去の仲間であるシュミニとの対立に直面する。
彼らの関係は過去の絆によって複雑であり、シュミニの自己犠牲によるテロ行為が描かれる。

ゴブリンとの遭遇を経て、シュミニによる「迷宮化の魔術」の問題にレントたちが気づき立ち向かう。
街の地下でゴブリンに遭遇し、地上では魔物で溢れる状況になっていた。

魔物の発生源を探していたレントたちは、シュミニに変貌した巨大な魔物と対峙する。
シュミニは《迷宮核》を支配し、街の人々を魔物に変える計画を進めるが、レントたちは彼の計画を阻止するために行動する。

その《迷宮核》には、リナがレッサー・ヴァンパイアにされ、レントが彼女を救出するために自らの血を彼女に流し込む。
この行動により、リナはシュミニの眷属から解放された。

シュミニという魔物を倒した後、《迷宮核》をラウラが吸収して街の危機を救う。
その代償として、ラウラは永い眠りについてしまった。

シュミニを倒した事で、魔物の消滅を冒険者組合ギルドに報告して終わる。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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望まぬ不死の冒険者7巻
望まぬ不死の冒険者まとめ
望まぬ不死の冒険者9巻

考察・解説

屍鬼の掃討

マルトの屍鬼掃討における探索と討伐の成果

マルトの街に放火し混乱をもたらした下級吸血鬼「屍鬼(グール)」たちを、レントやマルトの冒険者たちが総出で討伐した。その探索方法や討伐の様子、そして直面した悲劇について解説する。

エーデルの小鼠ネットワークを活用した探索

屍鬼たちは魔術で人間の姿に擬態し、見た目や匂いをごまかして街中に潜伏していた。しかし、レントの眷属であるエーデルは、街中に散らばる小鼠たちの視点を共有する能力を持っており、不審な放火や徘徊を繰り返す屍鬼たちの位置を正確に把握していた。レントはこれを利用し、親玉の吸血鬼を追う前に、まずは街の被害を食い止めるべく屍鬼狩りを開始した。

避難民に紛れた屍鬼とニヴの介入

レントが最初に見つけた屍鬼は、広場で火災から逃げてきた一般人を装う髭面の男であった。男は流暢に言葉を話し人間のふりをし続けたが、レントに服を脱ぐよう迫られると逃げ出し、周囲の避難民に襲い掛かろうとした。

そこへ、吸血鬼狩りの金級冒険者ニヴ・マリスが現れ、青白い聖術の炎で男を燃やした。ニヴは驚く周囲の人々に対し、男が人間に紛れた魔物であることを宣言し、レントと共に男を討伐した。首を落とされ、聖炎で灰にされた屍鬼からは、高値で取引される魔石だけが残った。

冒険者の屍鬼とウルフの引導

屍鬼の総数は50から100体に上り、その中には最近マルトで頻発していた新人冒険者失踪事件の被害者たちも含まれていた。レントが遭遇した屍鬼の一人は、ティータ・ウェルという鉄級冒険者の少年であった。彼は故郷の家族に仕送りをするという生前の記憶をうわ言のように繰り返していたが、すでに意識は混濁し、人を襲って冒険者たちに取り押さえられている状態であった。

ティータの仲間だった少女は、まだちゃんと喋っているのに助けられないのかと泣きすがった。しかし、冒険者組合長のウルフ・ヘルマンは、彼がすでに人を襲う魔物に成り果てている現実を突きつけた。ウルフはマルトの冒険者をまとめる長としての重い責任と矜持を背負い、自らの手でティータの首を斬り落として聖水で浄化し、事態に引導を渡した。

街ぐるみの掃討と親玉捜索への移行

マルトの街では、冒険者組合の指示のもと、冒険者たちや街に滞在していたロベリア教などの聖者・聖女たちが総出で屍鬼の討伐を進めていた。掃討戦における主な要点や今後の展開は以下の通りである。

  • 生前の自我を装う屍鬼を倒すことには後味の悪さもあったが、放置すれば吸血鬼になってしまうため、レントも感情を押し殺して浄化を続けたこと
  • 街の各勢力と冒険者が連携したことにより、潜伏していた屍鬼の掃討が着実に進んだこと
  • エーデルの視覚共有によって、屍鬼を作り出した親玉の吸血鬼が《新月の迷宮》を拠点にしている可能性が浮上したこと

これにより、レントたちは事態の元凶を断つため、精鋭部隊として迷宮へと向かうこととなった。

まとめ

マルトを襲った屍鬼の掃討は、エーデルの索敵能力や金級冒険者ニヴの加勢、そしてウルフの迅速な決断によって、街の壊滅という最悪の事態を免れる成果を上げた。生前の記憶を残す元冒険者の討伐という悲劇を乗り越え、レントたちは街の安全を完全に取り戻すため、事件の首謀者が潜む《新月の迷宮》への進撃を開始する。

新月の迷宮

新月の迷宮における吸血鬼の拠点化と掃討戦の成果

新月の迷宮は、都市マルトの郊外に存在する迷宮であり、マルトを揺るがした「屍鬼(グール)襲撃事件」の元凶である吸血鬼たちの拠点として描かれている。迷宮で起きた主要な出来事や戦闘の様子、そしてその結果について解説する。

新人冒険者失踪事件と吸血鬼の拠点

マルトで頻発していた新人冒険者の失踪事件は、主にこの《新月の迷宮》で起きていた。レントの眷属である小鼠のエーデルは、手下の鼠の視覚を共有することで、迷宮内でローブ姿の人物が冒険者の血を吸っている場面を目撃した。その声を聞いたレントは、過去にこの迷宮でライズとローラの近くを通り過ぎた怪しい人物と同じ声だと気づき、吸血鬼たちが迷宮を拠点にしていることを突き止めた。

捕らわれた冒険者たちの救出と浄化

親玉である吸血鬼を討つため、レント、ロレーヌ、吸血鬼狩りのニヴ、聖女ミュリアスの4人は精鋭として特急馬車で《新月の迷宮》へ突入した。第一階層の奥の広場では、行方不明になっていたライズやローラを含む6人の新人冒険者たちが、吸血鬼たちによって魔術で拘束されていた。

レントたちはまだ人間であった彼らを救出することに成功したが、すでに屍鬼へと変化しつつあり手遅れとなっていた者たちには、ニヴの意向により苦しまないよう聖気による浄化で引導が渡された。

吸血鬼の少年少女との死闘

広間では、親玉であるシュミニに仕える吸血鬼の少年少女、ウーゴンとジジューが立ち塞がった。彼らは中級吸血鬼の特権である体を蝙蝠に変えて攻撃を無効化する《分化》や、赤い刃を持つ《血武器》を駆使してニヴに応戦した。

しかし、ニヴは彼らの《分化》に使用限界があることを見抜き、限界を迎えて砂のように崩れ始めた二人を容赦なく討伐した。彼らはシュミニに使いすぎの危険性を教えられておらず、事実上の捨て駒にされていた。

時間稼ぎの鬼人化吸血鬼

さらに迷宮の奥へ進んだレントたちは、別の広場で新たな少年吸血鬼と屍鬼の群れに遭遇した。レントとロレーヌの連携で屍鬼たちを掃討したが、少年吸血鬼は《血武器》の細剣を使って自らの肉体を鬼人のように巨大化・強化させた。ニヴはこれがマルトの街にいる親玉(シュミニ)が計画を進めるための時間稼ぎであると看破し、自身がこの強力な吸血鬼を足止めしている間に、レントとロレーヌをマルトへ急行させた。

番外編における石化の魔物

なお、番外編においても《新月の迷宮》は登場している。探索において発生した事件と治療の過程は以下の通りである。

  • 王都から来た銀級冒険者ファジラが、貴族からの依頼で素材採取のために潜っていたこと
  • ファジラが迷宮内の特殊な魔物によって石化状態にされてしまったこと
  • レントとロレーヌが拝錬教のアデラ司祭から不足していた素材を譲り受けて治療薬を完成させ、間一髪で彼の命を救ったこと

まとめ

新月の迷宮における掃討作戦と出来事の要点は以下の通りである。

  • エーデルの能力とレントの記憶により、失踪事件の犯行現場と吸血鬼の拠点が新月の迷宮であると特定したこと
  • 精鋭部隊の突入により、生存していた新人冒険者の救出と、手遅れとなった者への適切な対応を行ったこと
  • 敵の能力の隙を突いて少年少女の吸血鬼を討伐し、後方で進行する本隊の計画を看破したこと
  • 番外編の危機に対しても、適切な薬の調合により石化された銀級冒険者を救命したこと

新月の迷宮での激闘は、潜伏する吸血鬼勢力の戦力を削り、捕らえられた人々を救い出す大きな成果を上げた。ニヴが敵の足止めを引き受けたことで、レントとロレーヌは事件の完全な解決を目指し、首謀者の待つマルトの街へと急行することとなった。

吸血鬼の襲撃

上位吸血鬼シュミニの襲撃と都市迷宮化計画の阻止

都市マルトで大量の屍鬼が暴れ回った事件の裏では、上位吸血鬼シュミニ・エッセルによる都市の迷宮化計画が進行していた。新人冒険者失踪事件の真相からシュミニの真の目的、巨大魔物との激戦、そして事件の結末について解説する。

新人冒険者失踪事件の真相と新月の迷宮

マルトで頻発していた新人冒険者の失踪事件は、吸血鬼シュミニ・エッセルとその部下たちが冒険者を捕らえ、屍鬼に変えていたことが原因であった。レントたちは小鼠エーデルの監視網により、《新月の迷宮》が彼らの拠点であることを突き止めた。迷宮に突入したレントたちは、捕らえられていた冒険者たちを救出し、親玉の部下である中級吸血鬼たちを討伐した。

陽動とマルトの迷宮化魔術

しかし、《新月の迷宮》での吸血鬼たちの戦いは、シュミニがマルトの街で計画を進めるための時間稼ぎに過ぎなかった。シュミニの真の目的は、マルト全体を迷宮へと変える大規模魔術を発動させることであった。

彼は屍鬼となった者たちや犠牲者の血、さらに自らの身を対価として巨大な魔法陣を展開し、街を内外から透明な壁で遮断してしまった。この魔術の影響により、街の住人が突然魔物へと変異してしまうという事態が発生した。

イザークとの因縁と巨大魔物化

シュミニは、吸血鬼だけの世界を作るという悲願のため、かつての同志であり現在はラトゥール家の使用人であるイザーク・ハルトを再び仲間に引き入れようとしていた。しかし、イザークは過去の因縁を断ち切るためにこれを拒絶し、マルトを守るべくシュミニと対峙した。説得を諦めたシュミニは、自らの胸に黒いナイフを突き立てて贄となり、腹部に自身の顔が浮かぶ巨大な直立ワニ型の魔物へと変貌を遂げた。

迷宮化の阻止とシュミニの最期

迷宮化を止めるためには、迷宮核を破壊するのではなく、現在の支配者であるシュミニを倒して支配権を奪う必要があった。討伐戦における主要な戦闘経過と結果は以下の通りである。

  • レント、ロレーヌ、イザーク、そして合流したラウラ・ラトゥールの四人が、強大な力と再生能力を持つ巨大魔物と激戦を繰り広げたこと
  • ラウラの魔術によって巨大魔物の体を粉砕したこと
  • 残った肉片に浮かぶシュミニの顔を、イザークが大剣で両断して引導を渡したこと

まとめ

上位吸血鬼シュミニによるマルト襲撃事件と都市迷宮化計画は、レントたちとラトゥール家の連携によって阻止された。

今回の事件における重要な成果と展開は以下の通りである。

  • 新月の迷宮に潜伏していた吸血鬼の戦力を排除し、捕らえられていた冒険者を救出したこと
  • 都市全体を遮断した大規模な迷宮化魔術の脅威に対し、元凶であるシュミニを討伐することで発動を止めたこと
  • イザークが過去の因縁に決別を告げて街を守り、シュミニの最期を見届けたこと
  • 破壊不可能な迷宮核の支配権をラウラが引き継ぎ、マルトの安全を確保したこと

シュミニの野望は潰え、彼の遺した迷宮核はラウラへと引き継がれることとなった。レントたちの死力を尽くした戦いは、マルトを未曾有の危機から救う決定的な一歩となった。

過去の因縁

イザークとシュミニの過去の因縁における決別と結末

ラトゥール家の使用人であるイザーク・ハルトと、マルトで屍鬼騒動を引き起こした吸血鬼シュミニ・エッセルとの間には、かつての同志としての過去と深い因縁が存在していた。二人の関係性から袂を分かった理由、そしてその因縁が迎えた決定的な結末について解説する。

イザークとシュミニのかつての関係

イザークとシュミニは、かつて偉大なる王に仕える反逆騎士として共に戦った仲間であった。友人であり兄弟のような強い絆で結ばれた同志でもあった二人は、吸血鬼だけの世界を作るという悲願を共有していた。人間を殺し、街を滅ぼし、血を啜る日々を共に過ごす過酷な関係性を築いていた。

袂を分かった理由とラウラとの賭け

しかし、イザークはラウラ・ラトゥールと出会ったことでその破滅的な道を外れることとなった。イザークは彼女と、殺せたらイザークの勝ち、殺せなければラウラの勝ちとなり目的をきっぱりと諦めるという賭けを行い、結果として敗北してラトゥール家の使用人となった。

イザークは何も知らなかった過去の過ちを悔い、もう二度と繰り返さないと決意していたが、シュミニはイザークが人間に騙されているだけだと思い込み、彼を再び仲間に引き戻そうと執着し続けた。

屋根の上の対峙と血武器の目覚め

マルトを迷宮化しようと暗躍するシュミニに対し、イザークは主であるラウラの言葉を受け、自らの手で因縁を断ち切る決意を固めた。彼は長年使っていなかった愛剣である一角獣の紋章が刻まれた銀の細剣を帯び、屋根の上でシュミニと対峙した。

説得に応じずマルトを滅ぼそうとするシュミニに対し、イザークは自らの血を剣に吸わせて吸血武具《血武器》を目覚めさせ、細剣を巨大な大剣へと変化させてかつての友に刃を向けた。

因縁の決着と引導

戦いの最中、シュミニはイザークの説得を諦め、自らの胸に黒いナイフを突き立てて贄となり、迷宮化の魔術を進行させた。その結果、シュミニは腹部に自身の顔が浮かぶ巨大なワニ型の魔物へと変貌した。イザークはレント、ロレーヌ、そしてラウラと共にこの強大な魔物と死闘を繰り広げた。

ラウラの魔術によって魔物が粉砕された後、イザークはただ一つ残ったシュミニの顔が浮かぶ肉片の前に立った。親しい友人を見るような瞳を向けるシュミニに対し、イザークはどこで間違えたと問いかけ、最後にさらばだと告げて自らの大剣で両断し、過去の因縁に完全なる引導を渡した。

まとめ

イザークとシュミニが辿った因縁の歴史と、その決着における主要な要点は以下の通りである。

  • かつて吸血鬼の世界を作るために共闘した兄弟同然の同志であったが、ラウラとの出会いを経て別々の道を歩むことになったこと
  • 執着を捨てきれずマルトの滅亡を目論むシュミニに対し、イザークが血武器を覚醒させて立ち向かったこと
  • レントたちとの共闘の末、魔物化したシュミニの最期の肉片をイザーク自らが両断して因縁に決別を告げたこと

かつての強い絆は悲劇的な形での決着となったが、イザークが自身の過去に正面から向き合い、大剣の一撃によって呪われた因縁を断ち切ったことは、マルトの安全を守ると同時に彼の誓いをより強固なものとする結果となった。

鼠を通じた情報収集

小鼠を通じた情報収集におけるネットワークの構築と成果

マルトでの屍鬼(グール)襲撃騒動において、レントの眷属である小鼠のエーデルが構築したネットワークを駆使し、敵の潜伏先や正体を的確に暴いた。その仕組み、擬態した屍鬼の特定、吸血鬼の拠点の発見、そして冒険者組合への影響について解説する。

エーデルの特殊能力と小鼠の監視網

レントの眷属となった黒い小鼠エーデルは、マルトの街中にいる多数の普通の小鼠たちを手下として従えている。エーデル自身は、これら手下の小鼠たちの五感に乗っかる形で視点を次々と切り替え、街全体を俯瞰するように情報を集める特殊な能力を持っている。小鼠は日常的に街の至る所に存在するため人間に警戒されにくく、マルト中に広がる強力で隠密性の高い監視網として機能した。

擬態した屍鬼の正確な特定と防衛

マルトを襲撃した屍鬼たちは、魔術によって一般市民の姿に擬態しており、見た目や会話だけでは人間の目で見分けることが困難であった。しかし、エーデルのネットワークは、街のあちこちで放火や徘徊といった奇妙な行動をとる者たちを監視し、的確に捕捉していた。

レントが街中を走る際も、エーデルは視点を切り替えながら、避難民に紛れ込んでいる屍鬼の居場所をピンポイントでレントに伝え、効率的な屍鬼狩りを可能にした。また、レントはアリゼやリリアンがいる孤児院の周囲にもエーデルの手下を配置させ、屍鬼が近づいた際にすぐ防衛できるよう手配した。

吸血鬼の拠点新月の迷宮の発見

エーデルの視覚共有は、街中にとどまらず、郊外の《新月の迷宮》にまで及んでいた。エーデルはある小鼠を通じて、迷宮内でローブ姿の男が冒険者の血を吸っている場面を目撃し、その映像と声をレントの頭の中に直接伝えた。

その声を聞いたレントは、彼が以前迷宮ですれ違った怪しい人物と同一人物であることに気づく。これにより、一連の新人冒険者失踪事件の犯人であり、街を襲う屍鬼たちの親玉が《新月の迷宮》を拠点にしている可能性が高いことを突き止めた。

冒険者組合長ウルフの驚愕

レントは、吸血鬼が屍鬼を操れる距離を考察する中で、エーデルを通じてマルト中から《新月の迷宮》に至るまでの広範囲で意思疎通や情報収集が可能であることを冒険者組合長のウルフに明かした。

ウルフは、警戒されずにどこにでも入り込める小鼠の視覚を共有できるという事実に、この街で起こることはお前には全部筒抜けになるということだろとその途方もない情報収集能力に驚愕した。そして、この情報が裏付けとなり、ウルフは親玉を討つべく《新月の迷宮》へ精鋭部隊を派遣する決断を下した。

まとめ

エーデルの小鼠ネットワークがもたらした成果の要点は以下の通りである。

  • 警戒されにくい小鼠の特性を活かし、マルト全域に隠密性の高い広域監視網を確立したこと
  • 人間に擬態していた屍鬼の正確な位置を割り出し、孤児院の防衛や効率的な討伐に貢献したこと
  • 郊外の《新月の迷宮》での犯行現場を捉え、失踪事件および屍鬼騒動の首謀者の拠点を特定したこと
  • 途方もない情報収集能力が組合長ウルフに認められ、迷宮への精鋭部隊派遣を決定づける根拠となったこと

この小鼠ネットワークは、個人の能力を超えた戦略的な情報源となり、マルトの街を未曾有の危機から救うための重要な基盤となった。

望まぬ不死の冒険者7巻
望まぬ不死の冒険者まとめ
望まぬ不死の冒険者9巻

登場キャラクター

主人公とその関係者

レント・ヴィヴィエ

お人好しな性格の冒険者である。ロレーヌとは親しい関係にある。エーデルを眷属としている。

・所属組織、地位や役職
 冒険者組合・銅級冒険者。不死者。

・物語内での具体的な行動や成果
 孤児院の地下で気絶していたエーデルを救出した。ニヴやミュリアスと合流して迷宮へ向かっている。ラウラの血を飲んで存在進化を果たした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 吸血鬼に近い存在だが同族の気配を持たない。

ロレーヌ・ヴィヴィエ

レントの友人である。魔物学の学者でもある。

・所属組織、地位や役職
 冒険者組合・銀級冒険者。魔術師。錬金術師。

・物語内での具体的な行動や成果
 迷宮で氷の槍や雷嵐を放って戦った。ファジラの治療薬を作成している。図書室に籠って本を読んだ。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は記載されていない。

エーデル

レントの眷属である。小鼠たちを束ねる親分となっている。

・所属組織、地位や役職
 レントの眷属。小鼠たちの親分。

・物語内での具体的な行動や成果
 迷宮で吸血鬼の行動を監視してレントに伝えた。マルトの地下を探索してレントを案内している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 手下の小鼠と視覚を共有する能力を持つ。

アリゼ

レントとロレーヌの弟子である。孤児院で暮らす少女だ。

・所属組織、地位や役職
 マルト第二孤児院・孤児。

・物語内での具体的な行動や成果
 短杖を持って孤児院の防衛を担った。迷子のミミルをレントのもとへ連れてきている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 魔術を学んでいる。

リリアン

孤児院の責任者である。聖術の使い手となっている。

・所属組織、地位や役職
 マルト第二孤児院・責任者。聖術使い。

・物語内での具体的な行動や成果
 孤児たちを守るために籠城した。槍を構えて出入り口を警備している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 武術の研鑽を積んでいる。

孤児たち

マルト第二孤児院で暮らす子供たちである。

・所属組織、地位や役職
 マルト第二孤児院。

・物語内での具体的な行動や成果
 孤児院の中で保護されていた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は記載されていない。

小鼠たち

エーデルの手下として動く存在である。

・所属組織、地位や役職
 エーデルの手下。

・物語内での具体的な行動や成果
 街中の屍鬼を監視した。気絶したエーデルの元へレントを案内している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 マルトの至る所に存在している。

冒険者組合・冒険者

ウルフ・ヘルマン

マルトの冒険者組合をまとめる存在である。責任感の強い人物だ。

・所属組織、地位や役職
 マルト冒険者組合・冒険者組合長。

・物語内での具体的な行動や成果
 レントに屍鬼と吸血鬼の捜索を依頼した。ティータを浄化して引導を渡している。重傷を負いながらも指示を出し続けた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 レントが吸血鬼であることを知っている。

ニヴ・マリス

吸血鬼を狩ることに執着している。冷酷さと慈悲の二面性を持つ。

・所属組織、地位や役職
 冒険者組合・金級冒険者。吸血鬼狩り。

・物語内での具体的な行動や成果
 広場で屍鬼を聖術の炎で焼いた。迷宮で吸血鬼の少年少女と戦って討伐している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 吸血鬼の匂いを嗅ぎ分ける能力を持つ。

ティータ・ウェル

新人冒険者である。失踪事件の被害者だ。

・所属組織、地位や役職
 冒険者組合・鉄級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 屍鬼となって広場で暴れた。ウルフによって首を落とされている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 故郷の両親に仕送りをして妹に嫁入り道具を持たせる夢を持っていた。

ティータの仲間の少女

ティータの仲間である。

・所属組織、地位や役職
 冒険者組合・冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 屍鬼となったティータを助けてほしいと訴えた。ティータの遺品に抱きついて泣いている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は記載されていない。

ライズ

レントと共に試験を受けた冒険者である。ローラの幼馴染だ。

・所属組織、地位や役職
 冒険者組合・冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 迷宮で吸血鬼に捕らえられた。レントの聖気によって拘束から解放されている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は記載されていない。

ローラ

レントと共に試験を受けた冒険者である。ライズの幼馴染だ。

・所属組織、地位や役職
 冒険者組合・冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 迷宮で吸血鬼に捕らえられた。レントの治癒を受けて意識を取り戻している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は記載されていない。

リナ・ルパージュ

レントの知人である新人冒険者である。

・所属組織、地位や役職
 冒険者組合・冒険者。下級吸血鬼。

・物語内での具体的な行動や成果
 迷宮核と融合させられていた。レントの血を飲んで彼の眷属になっている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 屍鬼ではなく下級吸血鬼になっている。

ファジラ

ミミルの父親である。王都から来た冒険者となっている。

・所属組織、地位や役職
 冒険者組合・銀級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 迷宮で石化状態になった。ロレーヌの作った薬で完治している。アデラに過去の行いを謝罪した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 過去にアデラをパーティーから追放している。

ラトゥール家

イザーク・ハルト

ラトゥール家に仕える使用人である。シュミニのかつての同志だ。

・所属組織、地位や役職
 ラトゥール家・使用人。吸血鬼。

・物語内での具体的な行動や成果
 シュミニの魔術を妨害して街の冒険者を助けた。血武器の大剣を振るってシュミニと戦っている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 吸血鬼だけの世界を作るという目的を捨てている。

ラウラ・ラトゥール

マルトの権力者である。イザークの主人だ。

・所属組織、地位や役職
 ラトゥール家・当主。吸血鬼。

・物語内での具体的な行動や成果
 鳥の視点をレントたちに共有させた。リナと融合していた迷宮核を自らに取り込んでいる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 迷宮核を限界まで取り込んで眠りについた。

ラトゥール家の使用人たち

ラトゥール家で働く者たちである。

・所属組織、地位や役職
 ラトゥール家・使用人。

・物語内での具体的な行動や成果
 レントが壊したドアノブを無言で交換した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 人間なのか魔物なのかは不明である。

ロベリア教

ミュリアス・ライザ

ロベリア教に所属する聖女である。

・所属組織、地位や役職
 ロベリア教・聖女。

・物語内での具体的な行動や成果
 ニヴを追いかけて迷宮に入った。なりかけの屍鬼を浄化している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 身体強化の魔術を受けて戦闘を支援した。

拝錬教

アデラ

拝錬教の司祭である。ファジラに恨みを持っている。

・所属組織、地位や役職
 拝錬教・司祭。錬金術師。

・物語内での具体的な行動や成果
 金属製品のゴミを喜捨として受け取った。ファジラを殺害しようとしてレントに止められている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 過去にファジラのパーティーから追放されている。

吸血鬼とその配下

シュミニ・エッセル

マルトで屍鬼騒動を起こした黒幕である。イザークのかつての友人だ。

・所属組織、地位や役職
 偉大なる王に仕える反逆騎士。吸血鬼。

・物語内での具体的な行動や成果
 マルト全体を迷宮化する魔術を発動させた。自らを贄として巨大な魔物に変貌している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 吸血鬼だけの世界を作ることを目的にしている。

ウーゴン

シュミニの部下である。ジジューの仲間となっている。

・所属組織、地位や役職
 シュミニの部下。吸血鬼(中級吸血鬼)。

・物語内での具体的な行動や成果
 迷宮でニヴと戦った。血武器を使って反撃している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 分化の使いすぎによって体が崩壊して消滅した。

ジジュー

シュミニの部下である。ウーゴンの仲間となっている。

・所属組織、地位や役職
 シュミニの部下。吸血鬼(中級吸血鬼)。

・物語内での具体的な行動や成果
 人間を屍鬼に変える行為に迷いを抱いていた。迷宮でニヴと戦っている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 分化の使いすぎによって体が崩壊して消滅した。

少年吸血鬼

シュミニの部下である。

・所属組織、地位や役職
 シュミニの部下。吸血鬼(中級吸血鬼)。

・物語内での具体的な行動や成果
 マルトの街でシュミニが計画を進めるための時間稼ぎをした。血武器を使って鬼人のような姿に変化している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ウーゴンとジジューを捨て駒として扱っていた。

少年少女たち

シュミニに従う者たちである。

・所属組織、地位や役職
 シュミニの部下。

・物語内での具体的な行動や成果
 迷宮の奥で屍鬼を操るために瞑想していた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 シュミニによって力を与えられている。

屍鬼たち

人間が変異した魔物である。

・所属組織、地位や役職
 魔物。

・物語内での具体的な行動や成果
 人間に擬態して街に火を放った。冒険者たちと戦って倒されている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 人間としての意識や記憶は失っている。

マルトの住人・その他

髭面の男

広場にいた男である。

・所属組織、地位や役職
 屍鬼。

・物語内での具体的な行動や成果
 避難民に紛れ込んでいた。服を脱ぐよう言われて逃げ出している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ニヴの聖炎によって焼かれた。

妊婦

マルトの住人である。

・所属組織、地位や役職
 マルトの住人。

・物語内での具体的な行動や成果
 魔物に変化した住人に襲われそうになった。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は記載されていない。

ミミル

ファジラの娘である。

・所属組織、地位や役職
 平民。

・物語内での具体的な行動や成果
 父親とはぐれて迷子になっていた。孤児院で父親を待っている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は記載されていない。

マルトの住人たち

都市マルトに住む人々である。

・所属組織、地位や役職
 マルトの住人。

・物語内での具体的な行動や成果
 街の火災から逃げ回った。透明な壁に阻まれて街から出られなくなっている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 魔物に変化してしまう者もいた。

魔物

骨人

迷宮や街中に現れる魔物である。

・所属組織、地位や役職
 魔物。

・物語内での具体的な行動や成果
 ニヴの鉤爪で倒された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は記載されていない。

スライム

迷宮や街中に現れる魔物である。

・所属組織、地位や役職
 魔物。

・物語内での具体的な行動や成果
 街中で冒険者たちと戦った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は記載されていない。

ゴブリン

どこにでもいる魔物である。

・所属組織、地位や役職
 魔物。

・物語内での具体的な行動や成果
 マルトの地下に現れてレントたちを襲った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 通常は人間の街に侵入できない存在である。

蜥蜴人

鉄製の武具を身に付けた魔物である。

・所属組織、地位や役職
 魔物。

・物語内での具体的な行動や成果
 地下道でレントたちに襲いかかった。ラウラの力によって圧縮されている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は記載されていない。

望まぬ不死の冒険者7巻
望まぬ不死の冒険者まとめ
望まぬ不死の冒険者9巻

展開まとめ

第1章 マルトの状況 

屍鬼狩りと新月の迷宮の吸血鬼

ウルフの信頼

ウルフは、レントが吸血鬼であると知りながら、屍鬼と吸血鬼の捜索を任せた。レントは同族の味方をする可能性を問うたが、ウルフはレントがマルトと街の人々に尽くしてきたことを知っており、街を壊す者に協力するはずがないと断言した。レントはその信頼を受け、独自の当てを使って捜索に加わることにした。

孤児院の無事

レントはまずエーデルのいるマルト第二孤児院へ向かった。道中で逃げ遅れた人々を助けながら進み、孤児院ではアリゼとリリアンが子供たちを守るために籠城していた。二人は無事だったが、エーデルが姿を見せていないことが分かり、レントは地下室へ向かった。

気絶したエーデル

地下室ではエーデルの子分鼠たちがレントを案内し、倒れているエーデルのもとへ導いた。エーデルに外傷はなく、魔力と気が大きく減っているだけだったため、レントは力を流し込んで目覚めさせた。エーデルは警戒しながら目を覚まし、視覚を通じて見た出来事をレントに伝えた。

新月の迷宮の目撃

エーデルは、手下の鼠の視点を通じて、《新月の迷宮》で冒険者の首筋に噛みつくローブ姿の人物を見ていた。その人物は覗きに気づき、火炎を放って鼠を殺した。レントはその声に聞き覚えがあり、以前《新月の迷宮》でライズとローラの近くを通った人物と同じだと気づき、新人冒険者失踪事件の犯人だと見た。

鼠の監視網

エーデルは、街中の鼠たちから放火や徘徊をする不審者の情報を集め、屍鬼の位置をかなり把握していた。レントは、まず街中の屍鬼を掃討し、親玉である吸血鬼が出てくるか、逃げるかを見極める方針を決めた。孤児院にはエーデルの手下を残し、リリアンとアリゼに異変を伝えられるようにした。

人に紛れた屍鬼

レントはエーデルを肩に乗せ、鼠たちの視点を頼りに街を走った。最初に見つけた屍鬼は、広場で避難民に紛れる髭面の男だった。男は自然に会話し、人間のふりをしたが、レントが服を脱ぐよう求めると逃げ出し、周囲の人間に手を伸ばそうとした。

ニヴの聖炎

レントが男を斬ろうとした瞬間、ニヴが現れ、青白い聖術の炎で男を焼いた。ニヴは周囲の人々に、男が屍鬼であると説明し、自分とレントが討伐すると宣言した。男は炎に焼かれながらも動き続け、屍鬼であることが明らかになった。

屍鬼の討伐

レントとニヴは屍鬼に攻撃を仕掛けた。レントが腕を斬り落とし、ニヴが鉤爪で首を落とした後、聖術の炎で首を焼き尽くした。屍鬼の体も灰となって消え、魔石だけが残った。ニヴは金銭目的ではなく吸血鬼狩りが目的だとして、その魔石をレントに渡した。

聖女ミュリアス

屍鬼討伐後、ロベリア教の聖女ミュリアスがニヴを追って現れた。ニヴは軽口を叩きながら、レントとの連携で屍鬼を倒したと説明した。レントはニヴと行動を共にすることを避けるため、他の屍鬼を探す仕事があると言ってその場を離れた。

続く屍鬼狩り

レントはエーデルの案内で屍鬼を次々に見つけ、正体を明らかにしてから討伐していった。屍鬼たちは人間のように話したが、問答を重ねると矛盾が出るため、生前の自我を保っているわけではないと考えられた。レントは後味の悪さを感じながらも、人を襲う脅威として浄化を続けた。

新月の迷宮の男

《新月の迷宮》のどこかでは、ローブ姿の男が少年少女たちに屍鬼を操らせていた。彼らは疲弊しながらも、男を希望として信じていた。男は、屍鬼を使って探している相手がこの街にいると確信しており、その者の力を借りることが目的に近づく道だと語った。

屍鬼ティータ

レントは、冒険者たちに囲まれた少年の屍鬼に遭遇した。少年は新人冒険者ティータ・ウェルであり、失踪事件の被害者だった。ティータは自分を鉄級冒険者だと名乗り、故郷の家族への仕送りを語ったが、自分が屍鬼になったことは理解できていなかった。

ウルフの引導

ティータの仲間だった少女は、彼が以前と同じように話しているため助けられないのかと泣いた。ウルフは、ティータがすでに暴れて周囲を襲おうとした事実を告げ、目を閉じるよう促した。ウルフはマルト冒険者組合長として、自分の組合の冒険者に引導を渡す責任を負い、ティータを斬って聖水で浄化した。

屍鬼を戻す方法

ウルフはレントに、屍鬼を人に戻す方法を知らないかと小声で尋ねた。レントは、自分が屍鬼だった頃は意識もはっきりしており、今見た屍鬼たちとは在り方が違うため、戻す方法は知らないと答えた。ウルフは失望しながらも、浄化が間違いではなかったと受け止めた。

冒険者組合の分析

ウルフは、屍鬼の総数が五十から百体に上りそうであり、その中には失踪した新人冒険者も含まれていると説明した。屍鬼はマルト全体に満遍なく配置されており、親玉の居場所は分布からは特定できなかった。ウルフは、吸血鬼が屍鬼を操れる距離についてレントに尋ねた。

使い魔エーデルの情報

レントは屍鬼を作った経験はないが、エーデルとの繋がりから、マルト全域や《新月の迷宮》程度の距離なら意思疎通が可能だと説明した。さらに、エーデルが小鼠たちの視点を共有し、《新月の迷宮》で吸血鬼が人に噛みつく姿を見たと明かした。ウルフは、親玉の本拠地が《新月の迷宮》である可能性を認めた。

迷宮への選抜

ウルフは、街の混乱が続く中で多くの人員は割けないため、精鋭を選んで《新月の迷宮》へ向かわせることにした。レントは同行を求められ、ロレーヌも必要だと判断された。そこへニヴが現れ、自分も同行すると申し出た。

血薬の可能性

ニヴは、《新月の迷宮》程度なら吸血鬼が屍鬼を操れる距離だと認めたうえで、今回の屍鬼の数と質から、親玉は単独ではなく複数、または血薬を得ている可能性があると推測した。血薬は吸血鬼の吸血衝動を抑える特殊な薬であり、提供元があるなら、その先に大量の吸血鬼の群れがいるかもしれないと考えた。ニヴは吸血鬼狩りの機会に笑みを浮かべ、レントは彼女との同行を避けられないと悟った。

閑話 イザーク・ハルト 

イザーク・ハルトの因縁

ラウラとの賭け

イザークは、かつてラウラに何のために戦うのかと問われ、迷いなく答えた。ラウラはその目的を無理だと断じ、イザークが自分を殺せるかどうかを賭けにした。イザークは反逆騎士として彼女を殺せると思っていたが、結局それは果たせず、賭けは今も続いていた。

箪笥の中の愛剣

イザークは久しぶりに愛剣を取り出した。銀色の細い刀身には、一角獣の紋章が刻まれていた。その剣は限定された相手に振るうためのものであり、ラトゥール家の使用人となった今のイザークには不要なものだった。それでも、かつて抱いた誇りと剣の意味を忘れられず、手放せずにいた。

断てない過去

イザークは、過去の因縁はすでに断たれたのだと理解しながらも、それを割り切ることができなかった。ラウラなら、今さら相対する意味はないと言うかもしれないが、イザークは自分がまだ愚か者のままだと悟った。変わったつもりでも、心の奥には燻り続けるものが残っていた。

少年の証言

少し前、ラトゥール家を訪ねてきた少年は、里の外へ誘った仲間からイザーク・ハルトという名を知っているかと聞かれたと語った。その問いは雑談のようでありながら、少年の目には重要な確認に見えた。イザークは、自分を探している者がいるのだと知り、その相手が過去の因縁に関わる存在だと考えた。

屋敷を出るイザーク

イザークは剣を腰に差し、屋敷の正門へ向かった。するとラウラが現れ、行くのかと問いかけた。イザークは賭けが終わるかもしれないと告げたが、ラウラは頑固だと言い、幕を他人の手で引かせず、終わらせるなら自分の手で終わらせるよう命じた。

街へ向かう背中

イザークはラウラの言葉に従う意思を示し、踵を返して街へ向かった。彼は長く燻り続けてきた因縁を、ここで断つのだと決意した。

第二章 吸血鬼のいるところ 

新月の迷宮の救出と親玉吸血鬼の襲撃

ロレーヌとミュリアス

《新月の迷宮》へ向かう前、ロレーヌはニヴとミュリアスに挨拶した。ロレーヌは吸血鬼狩りのニヴを警戒し、聖女ミュリアスには帝国出身者らしく丁寧に接した。ミュリアスは過度に遜る必要はないと伝え、ロレーヌは彼女が一般的な聖女より庶民的な人物だと見て、普通に話すことにした。

特急馬車

ウルフは《新月の迷宮》へ向かうための特急馬車を用意し、レントたちに乗るよう指示した。探索班はレント、ロレーヌ、ニヴ、ミュリアスだけでなく、他の精鋭冒険者たちも含まれていた。馬車の中でロレーヌは不安な面子だと漏らし、レントとミュリアスもそれに頷いた。

迷宮突入

ニヴは高いテンションで《新月の迷宮》に突入した。ロレーヌは走りながらミュリアスに身体強化をかけ、彼女が遅れないよう補助した。ニヴは先頭で骨人やスライムを次々に倒し、レントたちはその後を追って迷宮の奥へ進んだ。

捕らわれた冒険者たち

迷宮の広間には、行方不明になっていた冒険者たちがいた。人形のように立つ者たちと、縛られて座り込む者たちに分かれており、レントはその中にライズとローラを見つけた。ニヴは座り込んでいる者たちはまだ人間だが、無表情に立つ者たちは屍鬼になりかけていて手遅れだと判断した。

吸血鬼の少年少女

広間には、ウーゴンとジジューという吸血鬼の少年少女が現れた。二人はシュミニという人物の指示で動いており、人間を屍鬼にする行為に迷いを抱きながらも従っていた。ニヴは二人を吸血鬼だと断じ、問答を避けて即座に戦闘へ入った。

ライズとローラの救出

ニヴが吸血鬼二人を引き受ける間、レントはライズとローラを助けた。二人は衰弱し、魔術で拘束されていたが、レントの聖気とロレーヌの解呪で意識と動きを取り戻した。レントは、かつてライズが自分を仲間だと言ってくれたことを覚えており、仲間を助けるのは当然だと告げた。

分化と血武器

ニヴは吸血鬼二人を圧倒したが、二人は《分化》で体を蝙蝠に変えて再生し、さらに血武器を操って反撃した。ニヴは二人が中級以上の吸血鬼の技を使っていることに興味を示したが、技術そのものは未熟だと見抜いた。何度も斬られた二人は、やがて《分化》の限界によって指先から砂のように崩れ始めた。

捨て駒の真実

ニヴは、《分化》には使用限界があり、二人にそれを教えなかったシュミニは彼らを捨て駒にしたのだと告げた。ウーゴンとジジューは、いつか自分たちの国を作って幸せに暮らせると信じていたが、ニヴはそれを甘い夢だと切り捨てた。最後に二人はニヴの鉤爪で斬られ、砂となって消滅した。

静かな浄化

ニヴは、屍鬼になりかけていた者たちについて、まだ完全な屍鬼ではないため自分ではなく聖気で安らかに浄化したいと語った。レントとミュリアスは列の両端から一人ずつ浄化を行い、なりかけの屍鬼たちは悲鳴もなく灰へ変わった。レントの聖気によって小さな苗木が生え、ニヴはそれを聖樹になるかもしれない素材として譲り受けた。

救出班の分担

他の精鋭冒険者たちが合流し、ライズやローラたち救出者を街へ連れ帰る役目を引き受けた。ニヴたちは探索を続け、第一階層のさらに奥へ進んだ。ニヴは地図を確認しながら進み、再び吸血鬼と屍鬼のいる広場を見つけた。

二度目の戦闘

広場には吸血鬼の少年と数体の屍鬼がいた。ニヴは少年吸血鬼を相手取り、レントとロレーヌは屍鬼たちを足止めして倒した。二人は十年の付き合いによる連携で、レントが前衛を務め、ロレーヌが後衛から魔術で支援し、屍鬼を一体ずつ減らしていった。

時間稼ぎ

少年吸血鬼は、ジジューとウーゴンが死んだことを知っても余裕を失わなかった。ニヴはその態度から、彼が時間稼ぎをしており、本当の目的はマルトの街にあると見抜いた。少年は、シュミニならマルトの冒険者たちでは止められないと語り、親玉が街にいることを示した。

血武器の強化

少年吸血鬼は血武器の細剣を使い、自身の肉体を鬼人のように変化させた。ニヴはその力が中級吸血鬼を上級級の力へ引き上げる危険なものだと判断した。彼女は自分が少年を引き受け、レントとロレーヌに街へ戻って親玉吸血鬼を止めるよう命じた。

中央広場の惨状

レントとロレーヌはマルトへ戻り、轟音のした中央広場へ向かった。そこでは多くの冒険者が傷つき倒れ、治癒術師たちが走り回っていた。ウルフも重傷を負っていたが、レントが聖気で止血すると少し持ち直し、親玉と思われる強力な吸血鬼が飛び去った方向を伝えた。

ウルフの指示

ウルフは、自分の治療よりも重傷者の治療と街の指揮を優先した。彼はレントたちに、飛び去った吸血鬼を追い、マルト冒険者の底力を見せてやれと命じた。レントはウルフに死ぬなと告げ、ロレーヌと共に親玉吸血鬼を追うことにした。

閑話 イザーク・ハルト 

イザークとシュミニの再会

屋根の上の対峙

イザークは、マルトの街の端にある建物の屋根で、かつての仲間シュミニと対峙した。シュミニは今回の騒動をイザークのために起こしたと語ったが、イザークは頼んでもいないことだと切り捨て、街から去るよう命じた。かつては友人であり同志だった相手に対し、イザークはもう関係がないと告げた。

戻れない過去

シュミニは、昔のように笑って戻ってきてほしいと訴えた。計画は進み、かつて夢物語だったものも今なら叶えられると言ったが、イザークの心は動かなかった。イザークにとって過去の日々は色褪せた思い出でしかなく、その中に戻りたいとは思わなかった。

冒険者への魔術

下から冒険者たちが矢や魔術を放ち、シュミニを狙った。シュミニは大規模な魔術で冒険者たちを屠ろうとしたが、イザークは詠唱が終わる前に火球を放ち、その狙いを逸らした。魔術は建物に命中したものの、人々は避難済みであり、冒険者たちは救われた。

分かり合えない二人

シュミニは、人間を助けたイザークに困惑し、かつて人間を殺し、街を滅ぼし、血を啜った日々を思い出すよう迫った。イザークは、当時は何も知らなかったが、もう繰り返すつもりはないと断言した。シュミニは、イザークが人間に騙されていると思い込み、その相手を殺せば戻るはずだと叫んだ。

抜かれた血武器

イザークは、この街の人間にこれ以上手を出すなら、かつての友であっても敵対すると告げて剣を抜いた。シュミニも血のように赤い剣を取り出し、二人の血武器が打ち合った。イザークは、かつて隣で頼もしく見ていたシュミニの剣を、今は敵として受け止めることになった。

鈍った剣技

シュミニは、昔の肉食獣のような剣捌きを忘れたのかと挑発しながら斬撃を重ねた。イザークは長く戦闘から離れ、ラトゥール家の執事として過ごしてきたため、防戦に回らされた。長年戦い続けたシュミニとの差が、剣の重さと速さに表れていた。

血を吸う愛剣

イザークは自らの血を剣に吸わせ、眠っていた血武器の力を目覚めさせた。銀の細剣は赤い刃を広げ、巨大な大剣へと変化した。シュミニは、それがイザーク本来の戦い方であることを知っていたため距離を取った。

沈めた闘争心

イザークは、かつての闘争心や憎しみが今も心の底に残っていることを自覚した。しかし、それをもう一度掬い上げるつもりはなかった。過去の感情は沈めたままにし、永遠にそこへ置いておくと決めていた。

大剣の一撃

イザークは大剣を構え、シュミニに向かって加速した。振り下ろした一撃は受け流されたが、すぐに回転して横薙ぎに変え、シュミニを吹き飛ばした。さらに追撃しようとしたところへ、地上から冒険者たちの矢と魔術が飛んできた。

戦場の移動

シュミニは冒険者たちの妨害を煩わしがり、再び魔術を放とうとした。イザークは横合いから斬撃を加えて止め、邪魔されたくないなら場所を移そうと提案した。シュミニは冒険者たちが増えていることを見て了承し、イザークは気を引き締めながら、彼を別の場所へ誘導した。

第三章 吸血鬼と銀髪の男 

地下の魔物とラウラの視点

消えた吸血鬼

レントとロレーヌは、ウルフが示した方向へ走り、吸血鬼と銀髪の凄腕が戦っていたという冒険者たちに出会った。二人は突然姿を消したらしく、冒険者たちは行方を見失っていた。そこへ轟音が響き、エーデルが反応したため、レントたちはその案内に従った。

マルトの地下

エーデルに導かれた先は、古い下水道のようなマルトの地下だった。そこには半球状の広間があり、四体の女性像が中心を見つめるように立っていた。広間の中心では、ローブ姿の男が銀髪の男を踏みつけており、レントはその銀髪の男がラトゥール家の使用人イザークだと気づいた。

シュミニ・エッセル

ローブ姿の男は、吸血鬼シュミニ・エッセルと名乗り、偉大なる王に仕える反逆騎士の一人だと語った。イザークは、シュミニを滅ぼせば屍鬼は増えないのかと問うた。レントが《新月の迷宮》にいた部下たちは滅ぼしたと告げると、シュミニは怒りを露わにした。

吸血鬼だけの世界

イザークは、シュミニがまだ吸血鬼だけの世界を作る夢を見ているのかと問うた。シュミニは、それは夢ではなく目途が立ったのだと答え、イザークと喜びを分かち合いたかったと語った。イザークは改めて街から出ていけと告げたが、シュミニは今さら退くつもりはなかった。

黒いナイフ

シュミニは、イザークを諦めると言い、胸元から真っ黒なナイフを取り出した。そして不足分は自分の身を贄に捧げて補うと叫び、自らの胸に突き立てた。シュミニの体には罅が広がり、青白い光が漏れ出し、爆発のような現象が起きた。

ワニ型の魔物

レントたちは広間から逃れ、爆発後に再び様子を確認した。広間の中心には、竜にもワニにも似た十メートル近い巨大な魔物がいた。その腹部にはシュミニの顔のようなものが浮き出ており、彼が取り込まれたのか、魔物そのものになったのかは分からなかった。

一時撤退

イザークはシュミニをどうにかしたい気持ちを抱えていたが、マルトをこれ以上危険に晒すわけにはいかないと判断した。レントとロレーヌも、三人だけで挑んで倒せるとは限らず、情報を持ち帰る方が先だと考えた。三人は魔物に気づかれないよう、地下道を戻ることにした。

地下のゴブリン

出口へ向かう途中、三人は地下道でゴブリンに襲われた。マルトの街中にゴブリンがいるのは異常であり、通常なら結界や捜索で排除されるはずだった。三人は油断せずに連携し、現れたゴブリン三匹を倒した。

街に湧く魔物

地上へ戻ると、マルトの街中ではゴブリン、スライム、骨人などの魔物が冒険者たちと戦っていた。冒険者に尋ねると、魔物は突然現れ始めたのだという。レントたちは、地下でのシュミニの行動が原因である可能性が高いと考え、冒険者組合へ報告に向かった。

冒険者組合への報告

冒険者組合は怪我人と職員で混乱していた。ウルフは、レントを見るなり何かやったのかと問い詰めたが、レントたちは地下で見たシュミニと巨大な魔物について説明した。ウルフはその魔物が原因だろうと見て、レントたちに討伐を期待した。

再び地下へ

レントたちは再び地下へ向かうことを決めた。イザークは報酬を辞退しようとしたが、ウルフは命を張った者には対価が必要だとして、臨時の組合員として扱うと告げた。三人は街に湧く魔物を倒しながら、地下への入り口へ急いだ。

住人の魔物化

街中で逃げ惑う人々の中から、突然一人の住人が魔物へ変化した。変化した住人は妊婦に襲いかかろうとし、レントはためらう間もなく斬り捨てた。周囲の人々は怯えの目を向け、レント自身も人だったものを手にかけた事実に苦しんだが、イザークは一人の女性と子供の未来を守ったのだと告げた。

地下入口のラウラ

地下への入り口がある民家の前には、黒いドレスを着たラウラ・ラトゥールが立っていた。彼女は、今のマルトの状態を正確に認識しなければ解決できないとして、三人に手を重ねるよう求めた。イザークは迷わず従い、レントとロレーヌも手を乗せた。

鳥の視点

ラウラが不思議な力を発すると、レントたちの視界は空高くに切り替わった。そこからは山々や森、平原、そして都市マルトの全景が見えた。ラウラは、空を飛ぶ鳥の視点を借りているのだと説明し、レントがエーデルの視点を借りるのと同じようなものだと告げた。

第四章 説明と解決 

迷宮核の移譲とレントの存在進化

巨大魔法陣

ラウラは、鳥の視点を通じてマルト全体を見せた。街の地面には淡い光が走り、それをつなぐと巨大な魔法陣になっていた。ラウラは、それが古い時代の魔法陣であり、屍鬼となった者たちや犠牲者の血、さらにシュミニ自身の身を対価にして発動したものだと説明した。

迷宮化の魔術

シュミニが発動した魔術は、マルトを《迷宮》へ変えるものだった。完成まで街の内外は透明な壁で遮断され、外から戻ったニヴでさえ中に入れなかった。魔術は発動後に術者から独立して進み、シュミニを倒すだけでは止まらなかった。

迷宮核の支配

ラウラは、迷宮化を止めるには《迷宮核》を破壊せず、支配する必要があると説明した。現在の支配者はシュミニである可能性が高く、彼を滅ぼした上で《迷宮核》に触れれば所有者を書き換えられるという話だった。レントたちは、シュミニを倒して迷宮核を確保する方針を固めた。

同行するラウラ

ラウラは自分も同行すると申し出た。レントは彼女が戦えるようには見えなかったが、イザークはラウラの方が自分より遥かに強いと明かした。レントとロレーヌはそれを受け入れ、ラウラも加えた四人で再び地下へ向かった。

変化した地下道

地下道は迷宮化によって姿を変えていた。道は曲がりくねり、壁や床には血管のようなものが脈動していた。途中で鉄製の武具を身に着けた蜥蜴人が現れたが、レント、イザーク、ロレーヌ、ラウラは連携してこれを倒した。ラウラは黒い空間で蜥蜴人を圧縮し、圧倒的な力を見せた。

迷宮主の部屋

四人はシュミニのいた広間の前にたどり着いた。そこには階層主の部屋のような扉が生まれており、ラウラは覚悟を確認してから扉を開いた。中には一回り大きくなった直立ワニ型の魔物が待ち構えており、腹にはシュミニの顔が浮かんでいた。

シュミニだった魔物

戦いが始まると、イザークが最初に斬りかかった。魔物は巨体に似合わぬ速さで動き、口から光線を放った。レントは尻尾や頭部へ斬撃を入れ、ロレーヌは上級魔術《雷嵐》で魔物を焼いたが、魔物は再生を始めた。

再生の限界

完全には見えた再生にも、焦げたまま残る部分があった。レントたちは、再生能力が無限ではないと見て攻勢を続けた。魔物は四足の姿勢になって動きを速めたが、ラウラが黒い球体で押さえつけ、レントとイザークが斬撃を加えた。

爆炎獄

魔物の腹に浮かぶシュミニの顔が目を開き、《爆炎獄》を発動した。広間全体が灼熱の炎に包まれ、レントは火傷を負ったがすぐに再生した。ラウラとロレーヌは無事で、イザークも焼けた体を再生させた。魔物も大きく消耗しており、決着を急ぐべき状況になった。

ラウラの一撃

ロレーヌが氷の槍で魔物を凍らせ、ラウラが黒い球体を魔物の体内へ撃ち込んだ。魔物の体は爆ぜ、肉片となって広間に散った。しかし破片は再び集まろうとしており、ラウラは肉片を燃やすよう指示した。

シュミニへの別れ

大きな肉片の中には、シュミニの顔が残っていた。その目は憎しみではなく、親しい友人を見るような光を宿していた。イザークは、どこで間違えたのかと問いかけたが、シュミニだったものは何も答えなかった。イザークは血色の大剣を掲げ、さらばだと告げて両断した。

迷宮核の部屋

シュミニだった魔物が灰になると、四人は奥へ進み、《迷宮核》のある部屋へ向かった。青い扉の先には、黒い球体と、それを左手に埋め込まれたリナの姿があった。ラウラは、リナと黒い球体が一体となって《迷宮核》として機能していると判断した。

下級吸血鬼になったリナ

ラウラはリナの血と傷の治り方を確認し、リナがシュミニの眷属にされ、屍鬼ではなく下級吸血鬼になっていると告げた。シュミニは迷宮核を支配させるため、リナを直接下級吸血鬼にしたらしい。ラウラは、リナを人間に戻すことはできないが、シュミニの眷属から外して助けることはできると説明した。

レントの眷属

ラウラは、リナを自分やイザークではなく、レントの眷属にするべきだと判断した。レントはやり方を知らなかったが、ラウラは血を吸い、自分の血を牙から流し込めばよいと簡潔に説明した。レントはリナに噛みつき、血を吸い、自分の血を流し込んで、リナをシュミニの眷属から自分の眷属へ移した。

ラウラの迷宮核吸収

リナと一体化した《迷宮核》は、レントたちには扱えなかった。ラウラはレントに自分の血を飲ませた後、《迷宮核》へ触れ、黒い光を自分の中へ取り込んだ。彼女はレントに古い時代の神殿や遺跡を巡って伝承を集めるよう伝え、ロレーヌにはレントを支えるよう告げ、イザークには後のことを託した。

ラウラの眠り

《迷宮核》を吸収すると、リナの左手から黒い球体は消え、リナは地面に横たわった。ラウラは力を使い果たしたように倒れ、イザークに支えられた。イザークは、ラウラがこれで四つ目の迷宮核を取り込み、限界を超えたため眠りについたのだと説明した。

レントの存在進化

ラウラの血を飲んだ影響で、レントは急なめまいに襲われた。イザークは、それが《存在進化》だと告げ、レントは意識を失った。目覚めたレントはラトゥール家の屋敷の一室におり、体の調子は悪くなかったが、力の加減が難しくなっていた。

ラトゥール家の目覚め

レントはエーデルに案内され、イザークとリナのいる部屋へ向かった。途中でドアノブを握り潰してしまい、存在進化による筋力の変化を実感した。部屋では、吸血鬼になったことを説明されたリナが待っており、人が食べ物に見える瞬間があると語った。

眠り続けるラウラ

イザークは、ラウラが《竜血花》から採った花竜血を原液で摂取し続け、力を弱めていたと説明した。ただし、レントに会ってからは摂取を控え、力は戻りつつあったため、いずれ目覚めるだろうと見ていた。しかしそれは数日ではなく、数か月から数年かかるかもしれなかった。

古い伝承への道

レントは、ラウラが言い残した神殿や遺跡、古い伝承を集める意味をイザークに尋ねた。イザークは、自分やシュミニはその解釈を誤った側であり、レント自身が調べて考えるべきだと答えた。レントは旅に出る必要を感じ、マルトを離れる寂しさと新しい道への高揚を覚えた。

吸血鬼ではない二人

イザークは、レントもリナも吸血鬼そのものではなく、近縁種か亜種の可能性があると話した。二人は血を求める性質を持っているが、吸血鬼同士が感じる同族の気配がないという。正確な種族は鑑定神に尋ねるしかなく、イザークは庭で力を見て、吸血鬼に換算した場合の格や使える技を確認することにした。

図書室のロレーヌ

レントたちは、ラトゥール家の図書室に籠もっていたロレーヌを呼びに行った。ロレーヌは膨大で貴重な蔵書に感激しており、住みつきたいほどだと語った。イザークがレントとリナの力を見て、吸血鬼の技も教えると聞くと、ロレーヌは高位吸血鬼本人から話を聞ける得難い機会だとして強い興味を示した。

番外編 復讐と無意識 

迷子のミミルとアデラ司祭の過去

いつもの朝

レントはロレーヌに頼まれ、玄関にまとめられた金属製品のゴミを捨てに出た。ロレーヌとの暮らしでは、二人がその時々にできることを自然に分担しており、十年の付き合いから互いに無理のない距離感ができていた。

拝錬教の喜捨

金属製品の回収場所には、拝錬教のアデラ司祭が来ていた。拝錬教は錬金の神デイラを信仰し、金銭より素材を喜捨として受け取ることがある宗教団体だった。アデラは、ロレーヌが出す素材には高価で珍しいものが多く、教会内でも重宝されていると礼を述べた。

アデラ司祭の立場

朝食の席で、レントはアデラ司祭の話をロレーヌに伝えた。ロレーヌは、アデラが王都や帝国でも職を得られるほどの錬金術師であり、マルトで燻っているような人物ではないと語った。二人は、拝錬教の中で冷遇されている可能性を考えたが、本人が留まっている以上、外から口を挟むことではないと受け止めた。

迷子の少女ミミル

後日、アリゼがロレーヌの家を訪ね、迷子の少女ミミルを連れてきた。ミミルは父と二人でマルトに来ていたが、気づけば父がいなくなっていたという。アリゼはレントなら探してくれると考え、ミミルを連れてきた。レントは父親の名前や特徴を聞き、二人を孤児院に送ってから捜索を始めた。

新月の迷宮の父親

レントはエーデルの情報網を使い、ミミルの父ファジラが王都から来た銀級冒険者であり、《新月の迷宮》に潜っていると突き止めた。ファジラは貴族から急ぎの素材採取を頼まれており、娘の捜索を冒険者組合に依頼した上で仕事へ向かったらしい。ミミルは孤児院で待つことになり、レントは冒険者組合へ連絡した。

石化した冒険者

夕方、冒険者組合に戻ってきた一団の中にロレーヌがいた。特殊な魔物によって仲間の一人が石化し、通常の治癒魔術や聖気では治せない状態になっていたのである。ロレーヌは治療薬の素材を急いで用意しようとし、レントも手伝うことにした。

足りない素材

治療薬の調合中、ロレーヌは必要な素材が足りないことに気づいた。それは少し前に拝錬教へ喜捨した素材だったため、レントは教会へ頼みに行くことを提案した。アデラ司祭は快く素材を提供し、しかも保存のために適切な処理まで済ませていたため、ロレーヌはすぐに治療薬を完成させた。

ファジラの回復

治療院では、石化が首筋まで進んでいたファジラに薬が間に合い、彼は無事に回復した。ミミルは父の無事を喜び、ファジラは豪快に笑っていた。依頼の品もすでに手に入れていたため、彼は確認のためにしばらく入院することになった。

アデラ司祭の違和感

治療院を出る際、レントとロレーヌはアデラ司祭から妙な気配を感じた。二人は短い会話で違和感を確認し、ファジラの様子を見に来る可能性を考えた。レントは自分が適任だと判断し、夜に治療院で見張ることにした。

暗闇のナイフ

暗い病室で、アデラ司祭は眠るファジラへナイフを向けた。レントはそれを止め、なぜ殺そうとするのか尋ねた。アデラは、かつてファジラと冒険者をしていたが、錬金術師は役に立たないとしてパーティーを追放され、その後苦労して拝錬教に拾われた過去を語った。

抑えきれなかった憎しみ

アデラは、ファジラの顔を見た瞬間に憎しみを抑えられなくなったと語った。しかしレントは、もし本当に殺したいだけなら、治療薬の素材を渡さなければよかったはずだと指摘した。アデラはその矛盾に気づき、自分がすでに司祭として人を助ける道を選んでいたことを認め、涙を流した。

ファジラの謝罪

眠っていたはずのファジラは目を覚ましており、話を聞いていた。彼は、自分は殺されるべきかもしれないと思って黙っていたと明かし、若い頃に錬金術師の価値を理解せずアデラを追い出したことを謝罪した。アデラは自首しようとしたが、ファジラは何もされていないとして止め、自分の娘の未来もアデラが助けたのだと語った。

静かな和解

アデラとファジラは、過去のわだかまりを抱えたまま言葉を交わした。はっきり和解したわけではなかったが、少しずつ感情はほどけていくようだった。レントはもう自分の出る幕はないと判断し、静かに病室を後にした。

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