望まぬ不死の冒険者8巻
望まぬ不死の冒険者まとめ
望まぬ不死の冒険者10巻
どんな本?
『望まぬ不死の冒険者』は、丘野優 氏による日本のライトノベル作品。
小説家になろうにて2016年9月22日より連載されており、オーバーラップノベルスより刊行されている。
イラストはじゃいあん 氏が担当。
物語は、銅級冒険者のレント・ファイナが水月の迷宮で龍に食われて不死の魔物として蘇るところから始まる。
レントは魔物を食らうことで進化していき、骨人から屍食鬼、下級吸血鬼となる。
レントは自分の境遇に苦しみながらも、冒険者としての夢を捨てずに、魔物と人間の狭間で生きることを決意する。
しかし、レントの存在は世界の秩序を揺るがす危険なものとして、様々な勢力の注目を集めてしままう。
この作品は、コミカライズやテレビアニメ化もされており、人気の高いファンタジー作品。
コミカライズは中曽根ハイジが作画を担当し、コミックガルドにて連載中。
テレビアニメは2024年1月より放送予定。
読んだ本のタイトル
#望まぬ不死の冒険者9巻
著者:#丘野優 氏
イラスト:#じゃいあん 氏
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あらすじ・内容
不死者、新たな力を得る。
マルトの街を襲った吸血鬼を、ニヴやイザークたちと共闘し、見事事態を収めたレントたち。
望まぬ不死の冒険者 9
眠りについたラウラの血を飲むことで存在進化したレントは、事件に巻き込まれ眷属となったリナとともに、さらに身体能力が上昇したことを確認していく。
そして、吸血鬼の代表的な特殊能力である《分化》をイザークから教わることに。
蝙蝠の姿となったイザークを参考に訓練を行う二人。リナは猫の姿に。かたやレントは移動できない樹木の姿をとり始め……!?
そしてマルトの街は、新たに発生した迷宮の調査をすべく《塔》や《学院》の人間が大挙して押し寄せ、にぎわいを見せはじめる。レントもまた、冒険者組合長ウルフから専用の仕事を依頼され――。
強大な魔物と戦い、多くの謎を解き、そして強くなる。
死してもなお遙かなる神銀級を目指す、不死者レントの『冒険』、第9弾――!
感想
物語はマルトの街と新たに出現した迷宮の変化に焦点を当てて開始される。
新しい迷宮の発生は、冒険者の増加と資源競争をもたらし、研究者たちの関心も引く。
この発見は、迷宮の発生がもたらす影響と、キャラクターたちの対応を描く。
リナは、パーティーメンバーのライズとローラが吸血鬼ヴァンパイアに攫われていたことを知り、ニヴ・マリスが《聖炎》を用いて彼らが吸血鬼ヴァンパイアでないことを確認。

リナ、レントにも《聖炎》を用いて、ニヴの吸血鬼狩りとしての執着と彼女の人々を守る思いが描かれていた。
ニヴはマルトでの吸血鬼の主犯格について情報を求め、翌日にはマルトを去ることをレント達に話す。
その後、レントとロレーヌはリナの吸血鬼化についてイザークに相談し、リナの体質変化などの講習を受ける。
ついでに、レントもリナと「分化」能力について学び、リナが最初に行い猫を分化する。
その後、レントは最初は植物になりそうになり、その後、森に生息する多様な動物に変化することに成功する。
イザークはレントの分化能力の特殊性に驚き、リナには基本を学ぶことを勧める。
マルトの街では、馬車乗り場で物資搬入の忙しさと、物資不足の話が出て。
レント達は《学院》の生徒と商人の間でのトラブルに遭遇し、騒ぎが大きくなる前に介入し解決する。
その騒動の中心となったノエル・クルージュ。
その後、ノエルを止めに入ったエリーゼ・ジョルジュとリナの関わりも書かれており。
カフェでの会話は、リナとエリーゼにマルトの冒険者としての経験を共有し、一緒に行動を始めることを決める。
そして宿に帰ったノエルは《学院》の教授アデリーナから安全を優先するよう忠告を受ける。
物語の終盤では、ウルフがレントに総冒険者組合長グランドギルドマスターの迎えに行く任務を依頼し、レントがこれを受け入れる。
彼らは「這蛇はいだ」という特別な馬車で王都へ向かう。
物語全体を通して、新しい迷宮の発生が冒険者や研究者に及ぼす影響、キャラクター間の関係性の変化、主人公と仲間たちの成長と新たな力の獲得に焦点を当てている。
また、レントの未知の力と彼の進化、リナの吸血鬼化、そして彼らが直面するさまざまな課題や対立が描かれていた。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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望まぬ不死の冒険者8巻
望まぬ不死の冒険者まとめ
望まぬ不死の冒険者10巻
考察・解説
レントの能力把握
『望まぬ不死の冒険者』第9巻において、ラウラの血を飲んで存在進化を果たしたレントが、イザークやロレーヌの立ち会いのもと、ラトゥール家の庭で自身の身体能力や魔術、聖気などの変化を確認するエピソードは、彼の規格外な成長を示す重要な局面である。
無意識にドアノブを握り潰すほどの腕力向上と生活魔術が巨大な火柱と化す魔力の激増、眷属への能力引き出し共有と雑草を急成長させる聖気の異常出力、吸血鬼の気配を排した巨大な竜の翼の発現、そして自身の体を森や多種多様な動物の集合体へと変化させ完璧に制御する前代未聞の分化能力にいたる全容は以下の通りである。
無意識のドアノブ握り潰しに伴う腕力向上と生活魔術点火が引き起こす家屋炎上規模の火柱
存在進化後のレントは、自身の内割に秘められた肉体的な出力と魔力の劇的な変貌を体感することとなった。
・無意識にドアノブを握り潰してしまうほど腕力が上昇しており、その辺りの石を軽く握っただけで砕いてしまうほどの力を得ていた。
・魔力についても、初歩的な生活魔術である点火を使っただけで、家一軒を焼き尽くすほどの巨大な火柱を発生させてしまう。
・魔力量自体は金級冒険者の平均値ほどに激増したものの、魔術の制御技術が銅級クラスのままであるため、このような異常な威力となって現れた。
眷属リナへの魔力聖気引き出し許容と浄化魔術による雑草の急成長発光現象
レントの眷属となったリナは、小鼠のエーデルに教わることで、レントから能力を共有される形となった。
・リナはレントから魔力と聖気を引き出して使えるようになったが、気については魔力や聖気と異なり、身体を鍛える修行によって身につける力であるためか、引き出すことができなかった。
・また、レント自身の聖気も出力が異常になっており、彼が地面の雑草に浄化をかけると、雑草が数十センチも急成長したうえに、ぼんやりと聖気を発し始めるという特殊な現象を引き起こした。
蝙蝠の翼膜に緑色の鱗が混じる片翼身長越えの翼とイザークによる吸血竜人の仮称
背中から生える羽を出してみたところ、以前のような小さなものではなく、形態が大きく変化していた。
・片翼だけでレントの身長よりも大きい、蝙蝠の翼膜に緑色の鱗が混じったような巨大な翼が現れた。
・イザークによれば、これは上位の獣人である「竜人」の翼に似ているとのことである。
・吸血鬼の気配を持たず、竜の翼を持つレントの正確な種族は依然として謎であり、イザークからは仮に「吸血竜人」と名付けられた。
自らの体を植物の森へ変貌させ多種多様な動物群を出現させる異質複雑な変身制御
能力の確認後、レントはイザークから吸血鬼の代表的な技能である分化(自分の体を別の動物などの集合体に変える技術)を教わった。
・一般的な吸血鬼は蝙蝠や猫など単一の動物に分化するが、レントの場合は自らの体を森(植物)へと変化させる。
・さらにその森の中から鳥、兎、猪、小型の竜、鼠など多種多様な動物を飛び出させるという、極めて異質で複雑な分化を行った。
・初めての分化で数十体分に意識を分けながらも、それらを完璧に制御して元の姿に戻ったレントの姿に、本来の分化を熟知するイザークも深く驚愕した。
まとめ
レントの能力把握エピソードは、存在進化によってもたらされた莫大なエネルギーと、吸血鬼や竜人の特性を混交させた未知の種族特性を検証する極めて重要な転換点である。制御技術が追いつかずに点火が巨大な火柱となる魔力暴走や、浄化によって雑草を変異させる聖気の異常性は彼の底知れぬポテンシャルを示している。この変革のなかで、本来の常識を完全に逸脱し、自らの肉体を植物の森とそのなかに息づく無数の動物群へと分化させ完璧に統合帰還させた顛末は、レントが単なる上位不死者にとどまらず、既存の生態系や階梯の枠組みを完全に超越した独自の存在へと至ったことを厳密に証明している。
冒険者組合への報告
『望まぬ不死の冒険者』第9巻において、マルトを襲った屍鬼騒動と都市の迷宮化事件を収束させた後、レントたちが冒険者組合長のウルフに事の顛末を報告するエピソードは、事件の事後処理と今後の街の動向を左右する重要な局面である。
ラウラの吸血鬼露見を防ぐための秘密保持とリナの魔物化隠蔽、迷宮主となったラウラによるマルト住民の悲惨な記憶のすり替え、組合長ウルフへのシュミニの巨大な魔石提出と報告の受領、そして屍鬼残党狩りの進展と新迷宮誕生に伴う研究者らの大挙押し寄せにいたる全容は以下の通りである。
ラウラの吸血鬼露見を防ぐための迷宮核融合同調の隠蔽と捕らえられたリナの救出劇への偽装
報告に向かう前、レントたちはイザークも交えてどのような報告にするかを相談した。
・最大の懸念事項は、ラウラ・ラトゥールが迷宮核を取り込んで「迷宮主」となったことであった。
・この事実を明かせば彼女が吸血鬼であることが露見する危険があるため、真実は伏せ、元凶であるシュミニを倒したことで全てが収まった、という簡潔な事実に留めることに決めた。
・また、シュミニに捕らえられて下級吸血鬼のような存在になってしまったリナについては、奥の部屋で捕まっていたところを救出された、とだけ説明し、魔物になった事実を隠す方針をとった。
住人が家族の魔物化を受け入れられない現実を考慮したラウラによる記憶操作の推測
冒険者組合へ向かう道中、レントとロレーヌは街の様子に違和感を覚えた。
・騒動の最中、マルトの住人の一部が魔物に変異するという悲惨な出来事があったにもかかわらず、住人たちはその事実を誰一人覚えていなかった。
・認識は、迷宮から魔物が溢れ出して犠牲になった、という内容にすり替わっていた。
・ロレーヌは、迷宮主となったラウラが、住人たちが家族や友人が魔物になったという事実を受け入れられないだろうと考え、記憶をいじったのだろうと推測した。
・レントも、マルトを守ろうとする彼女の計らいに納得する。
金級あるいは白金級相当の魔石提出と現実主義者ウルフによる細かい追及の回避
激務に追われるウルフの執務室を訪れたレントは、元凶を討伐した証拠として、シュミニの灰から残った巨大な魔石を提出した。
・金級、あるいは白金級相当にも近い大きさと質を持つ魔石を見たウルフは、シュミニが相当な存在であったことを悟る。
・ウルフは目の前の問題処理を優先する現実主義者であるため、細かい追及をしてくることはなく、レントたちの報告をすんなりと受け入れた。
シュミニ討伐に伴う屍鬼残党狩りの進展と誕生したばかりの新迷宮調査に伴う研究者の大挙襲来
ウルフによれば、シュミニが倒されたことで屍鬼の動きが鈍り、残党狩りも順調に進んでおり、街に出現していた魔物も唐突に姿を消したとのことであった。
・マルトの地下に発生したものは正式に「迷宮」であると結論付けられつつあり、今回の騒動も迷宮発生時の不安定性が原因で魔物が溢れ出したものと推測されていた。
・事態は落ち着きを見せていたが、ウルフは誕生したばかりの新しい迷宮の噂を聞きつけ、これから大量の冒険者や王都の学院、塔の研究者たちがマルトへ大挙して押し寄せるため、更なる激務が待っていると頭を悩ませていた。
まとめ
冒険者組合への報告エピソードは、マルトを揺るがした大災厄の表向きの収束を描きつつ、水面下で重大な秘密を保持するための政治的交渉が完了した重要な転換点である。ラウラの迷宮主化やリナの変異を伏せるための精緻な口裏合わせ、そしてラウラの記憶操作によって住民の精神的崩壊を未然に防いだプロセスは、レントたちの配慮の深さを示している。シュミニの巨大な魔石を提出することで現実主義の組合長ウルフを納得させ、報告を受領させた顛末、そして新迷宮の誕生によってマルトに王都の研究者や大量の冒険者が流入する未来が提示された実態は、今回の騒動が単なる一過性のテロに終わらず、マルトという都市の重要性を引き上げ、レントたちの今後の活動環境を一変させる絶対的な引き金となったことを厳密に証明している。
吸血鬼の技術訓練
『望まぬ不死の冒険者』第9巻において、ラトゥール家の庭でイザークからレントとリナへ行われた、吸血鬼特有の技術である《分化》などの指導に関するエピソードは、不死者としての戦闘技術と生存戦略を深める重要な局面である。
聖気への耐性限界と血武器を用いた吸血鬼同士の戦闘手段、指先を黒い影の猫に分化させたリナの初期成功、自らの体を植物の森や多種多様な動植物の集合体へ変貌させ完璧に統率したレントの規格外な制御能力、そして不死性に甘んじる危機感の消失に対する警告と反復練習の継続にいたる全容は以下の通りである。
聖気による再生能力の阻害と使い手の血から精製される魔剣血武器を用いた対抗手段
訓練の導入として、イザークは吸血鬼の弱点と対抗手段について解説した。
・吸血鬼は聖気に触れると火傷を負い、武器に聖気を込められれば再生速度や回数を削ることができると語る。
・また、吸血鬼の鍛冶師が使い手の血を用いて作り出す魔剣「血武器(サン・アルム)」を披露した。
・これを用いれば吸血鬼相手でも通常の戦いのようにダメージを与えられることを示した。
自己の肉体を異物と捉える分化の概念と指先を黒い影の猫に変貌させたリナの初期成功
吸血鬼の代表的な能力である分化は、自分の体を別のものの集合体だとイメージし、その一部を独立させる技術である。
・初心者は視点や意識が分かれることへの負担を減らすため、部分的な分化から始める。
・先に挑戦したリナは、指先を黒い影の「猫」に分化させることに成功した。
・ひどく疲労し、自分が二人いるような感覚、と語ったが、イザークからは初回としては見事な成功だと評価された。
自らを邪悪な動く樹木へと変化させ無数の動物群を完全統率したレントの超絶制御
続いて挑戦したレントは、植物の集合体である森をイメージし、自らを動く樹木へと変化させた。
・さらにその森から、鳥や兎、猪、小型の竜、鼠といった多種多様な動物を飛び出させる。
・レントの体は巨大で邪悪な森のように膨れ上がったが、彼は細かな魔力制御の経験を活かし、分かれた意識を指揮官と兵士のように統率することで、暴走させることなく人間の姿へと戻った。
・本来、全身を分化させるのは熟練の吸血鬼でも難しいため、初回から複数の動植物への複雑な分化を完璧に制御したレントの姿に、イザークは深く驚愕した。
肉体再生能力に依存する傲慢の戒めと聖術使いによる消滅を回避するための反復継続
分化を習得し、ほぼ不死身に近い肉体を得たレントたちであるが、イザークは危機感の消失を戒めた。
・切られても死なないからと無茶をすれば、聖術使いなどに目をつけられ、あっけなく消滅してしまう危険があるためである。
・他にも吸血鬼の技能はあるが、まずは分化をしっかり身につけることが重要であるとして、この日の訓練は終了した。
・しばらくは反復練習を続けることとなった。
まとめ
イザークによる吸血鬼の技術訓練は、新世代の不死者たちが種族特有の生存技能を体系的に学び、特にレントが吸血鬼の常識を遥かに凌駕する潜在能力を証明した決定的なエピソードである。部分的な分化で疲弊するリナに対し、初段階から自らを巨大な動植物の森へと複雑に分化させ、無数の意識を完全に統率して帰還したレントのプロセスは、彼の魔力制御技術の異常さを示している。不死身の肉体に慢心せず、聖術使いなどの脅威に備えて危機感を維持するよう求めたイザークの警告と反復訓練の顛末は、この指導が単なる技術習得にとどまらず、レントたちが裏社会や強敵の追跡を潜り抜け、真に強固な存在へと至るための絶対的な基礎となったことを厳密に証明している。
学院生の騒動
『望まぬ不死の冒険者』において、新たに発生した迷宮を調査するためにマルトへやってきた王都の学院の生徒たちが、到着早々に馬車乗り場で起こした揉め事と、ロレーヌの介入による鮮やかな解決を描いたエピソードは、都市の環境変化と新たな登場人物の思惑が交錯する重要な局面である。
王都の首席生徒ノエル・クルージュとアリアナ自由海洋国の商人による魔術効果減衰を巡る口論の発生、リナの友人であるエリーゼ・ジョルジュの登場と商人が有する危険な背景の露見、ロレーヌの魔力歪み看破と耳打ちによる賠償謝罪の成立、そしてローブを破損させた真の原因である魔道具の魔力を乱す呪物の正体にいたる全容は以下の通りである。
王都の首席生徒ノエル謹製のローブ魔術効果減衰を巡る行商人との弁償口論の勃発
王都からマルトに到着した学院の首席生徒である少年ノエル・クルージュは、行商人風の男とぶつかった直後、自身が着ている高価な学院謹製のローブの魔術効果が減衰していることに気づいた。
・ノエルは商人がローブを壊したと主張して弁償を求める。
・商人は、少しぶつかっただけで高度な魔術加工が壊れるはずがない、と反論した。
・これにより、周囲に見物人が集まる口論へと発展してしまった。
リナの友人エリーゼの窘めと短剣の紋章から露見したアリアナ商会組合幹部という脅威
そこへ、学院でノエルと成績を争う次席の少女エリーゼ・ジョルジュが現れ、学院の品位を損なうとしてノエルを咎め始めた。
・彼女は、リナが王都で駆け出し冒険者として苦労していた頃に気遣い、別の学院生から馬鹿にされた際にも言い返してくれた友人であった。
・一方、行商人風の男を観察していたロレーヌは、彼の短剣に「アリアナ自由海洋国」と「商会組合」の紋章があることに気づく。
・アリアナの商会組合は金儲けのためなら暗殺者すら使うと言われる危険な組織であり、短剣を持つ男はその幹部クラスであるため、揉め事を続けるには非常に厄介な相手であった。
ロレーヌによるローブの魔力歪み看破と幹部商人への耳打ちによる迅速な賠償謝罪成立
友人を助けたいというリナの頼みを受けたロレーヌは、部外者ながら仲裁に入った。
・凄腕の魔術師の気配を放つロレーヌにノエルは身動きが取れず、ロレーヌはノエルのローブに触れて魔力が歪められていることを看破し、ノエルの主張が正しいと証明する。
・さらにロレーヌが商人の耳元で何かを告げると、商人は顔色を変え、学院への賠償を約束して謝罪した。
・ノエルも学院長から品位ある振る舞いを求められていたためそれを受け入れ、事態は無事に収束した。
近隣の魔道具を妨害するマルト持ち込み禁止指定の呪物短剣による魔術加工歪曲
騒動後、カフェに移動したレントたちに対し、ロレーヌはローブの魔術効果が低下した真の原因を説明した。
・ロレーヌは商人が持っていた小さな短剣を取り出してみせる。
・それはマルトでは本来持ち込みが禁じられている「呪物」であり、近くにある魔道具の魔力を乱すという特殊な性質を持っていた。
・この呪物の影響により、通常の手段では破られない高度な防御対策が施されていたはずの学院のローブは、ぶつかっただけで魔術加工を歪められてしまった。
まとめ
学院生の騒動エピソードは、新迷宮の誕生に伴いマルトの外部から強力な権力や技術を有する勢力が流入し始めたことを示す、治安と勢力図の変動を象徴する出来事である。一見すると学生の言いがかりに見えたトラブルに対し、アリアナ自由海洋国商会組合の危険性を察知し、高度な鑑定眼で魔力の歪みを看破して場を収束させたロレーヌの立ち回りは彼女の博識さと交渉力を示している。騒動の核心に持ち込み禁止の「呪物」が関与していた事実を突き止め、都市の防衛網の隙や外部勢力の不穏な動向を裏付けた顛末は、この騒動が単なる学生同士の小競り合いにとどまらず、マルトが今後直面する多国籍な陰謀と新たな混乱の幕開けを厳密に証明している。
王都への使者
『望まぬ不死の冒険者』第9巻において、レントがマルトの冒険者組合長ウルフから、ヤーラン王国の総冒険者組合長を王都ヴィステルヤからマルトへ迎えに行くという大役を任されるエピソードは、事件の事後処理から新たな舞台へと物語が展開する重要な局面である。
新迷宮調査を巡る研究者と冒険者の対立による組合の機能不全、王都本部に向けたマルト視察要請という名目を伴う総冒険者組合長迎入任務の提示、厄介事を押し付けようとするウルフの本音と王都の王女を訪ねるレントの思惑の一致、そして高性能な這蛇の馬車を用いた出発と骸骨仮面の呪い偽装による王都入城にいたる全容は以下の通りである。
新迷宮調査を巡る塔の研究者と地元冒険者による組合執務室の修羅場化とウルフの限界
屍鬼襲撃と迷宮出現による騒動、巷でマルト大乱やマルト迷宮事変と呼ばれ始めていた事件から三日後、休養を取っていたレントが冒険者組合を訪れた。
・そこは新迷宮の調査にやってきた塔の研究者たちとマルトの冒険者が探索の失敗を巡って怒鳴り合う修羅場と化していた。
・冒険者組合長であるウルフは、山積みの書類仕事や両者の仲裁、さらに人手不足による職員の現場派遣などで激務を極め、限界に近づいていた。
国の冒険者を元締める最高権力者の視察要請を名目とした下っ端レントへの大役依頼
大量の書類を抱えたウルフに捕まったレントは、断りきれない状況を作られた上で、王都にいるヤーラン王国総冒険者組合長をマルトへ迎えに行くという依頼を受ける。
・総冒険者組合長といえば国の冒険者の元締めであり、下っ端のレントには荷が重すぎる役目であったが、ウルフは、自分が忙しくてマルトを離れられない、と説明する。
・さらに、マルトに新迷宮ができた現状を王都本部へ直接報告し、その問題を理由に総冒険者組合長へマルト視察を要請するという、対外的な名目も用意されていた。
こじつけの理由による厄介事押し付けと王女訪問の用事を兼ねた依頼の受諾
報酬を弾むことや、王都へ向かうための馬車、面会用の書類の準備など、至れり尽くせりのウルフの対応に対し、レントやロレーヌは、こじつけのような理由だ、と違和感を覚えた。
・実際にレントが執務室を退室した後、ウルフは、暇でも自分で行きたくなかった、と本音をこぼし、勘の鋭いレントに厄介事をうまく押し付けられたことに安堵していた。
・しかしレント自身も、王都には以前行きがかりで助けた王女たちを訪ねるという用事があったため、この依頼を受けることにした。
高性能な這蛇の馬車を用いた出発と仮面の呪い説明による王都ヴィステルヤの門番突破
レントと同行するロレーヌは、留守中の弟子アリゼの修行をリナに任せ、ウルフが手配した水陸両用の高性能な馬である「 la 這蛇(はいだ)」の馬車で王都へと出発した。
・御者を務めるのはラトゥール家の下級吸血鬼であった。
・彼の助言とラウラから借りた特殊な魔道具のボタンによる偽装のおかげで、王都の厳しい結界や警戒設備をすり抜ける。
・五日後、王都ヴィステルヤの門での入城検査では、門番に骸骨仮面を怪しまれはした。
・しかし、呪いで外れない、と実際に引っ張らせて説明し、マルト冒険者組合から総冒険者組合長への報告という目的を伝えたことで、無事に入城を果たした。
まとめ
王都への使者エピソードは、マルト大乱の混乱が続く冒険者組合の逼迫した現状を描きつつ、レントが国家規模の重要人物と交渉するための外交役として王都へ派遣される重大な転換点である。ウルフが激務を理由に厄介事を隠蔽してレントに大役を委ね、レントもまた独自の目的を持ってこれに応じたプロセスは、両者の利害の一致を示している。高性能な這蛇の馬車を駆り、ラウラの魔道具や骸骨仮面の呪いという虚偽の弁明によって王都の厳重な警戒網を突破して入城を果たした顛末は、この任務が単なる伝書鳩にとどまらず、レントが中央の権力構造や未解決の人間関係に介入し、自身の存在をさらに大きな舞台へ押し上げる絶対的な契機となったことを厳密に証明している。
望まぬ不死の冒険者8巻
望まぬ不死の冒険者まとめ
望まぬ不死の冒険者10巻
登場キャラクター
主人公とその関係者
レント・ファイナ
お人好しな性格の冒険者である。ロレーヌとは親しい関係にあり、リナやエーデルを眷属としている。
・所属組織、地位や役職
冒険者組合・銅級冒険者(冒険者組合職員の臨時手伝い)。不死者。
・物語内での具体的な行動や成果
ラトゥール家の庭で身体能力や魔術の変化を確認した。《分化》の訓練において、複数の動植物の姿を含む森へと変化し、それを制御しきっている。ウルフから王都へ総冒険者組合長を迎えに行く依頼を引き受け、マルトを出発した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
存在進化により腕力と魔力が大幅に向上した。背中には竜人のものに似た巨大な翼が生えるようになっている。
ロレーヌ・ヴィヴィエ
レントの友人であり、魔物学を専門とする学者である。
・所属組織、地位や役職
冒険者組合・銀級冒険者。魔術師。錬金術師。
・物語内での具体的な行動や成果
レントの能力確認に立ち会い、的確な分析や助言を行った。馬車乗り場で起きたノエルと商人の揉め事に介入し、呪物によるローブの魔術効低下を見抜いて事態を収拾している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
魔眼を持っており、魔力の流れを直接視認することができる。
リナ・ルパージュ
レントやロレーヌの弟子のような立場にある新人冒険者である。
・所属組織、地位や役職
冒険者組合・鉄級冒険者。下級吸血鬼(レントの眷属)。
・物語内での具体的な行動や成果
ラトゥール家の庭で《分化》の訓練を行い、指先を影の猫に変化させた。コーム治療院でライズとローラに再会し、自身の無事を伝えている。アリゼの修行に付き合うことになった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
レントの眷属となったことで、石を握り潰せるほどの腕力を得ている。レントから魔力と聖気を引き出して使うことが可能だ。
エーデル
レントの眷属である小鼠である。
・所属組織、地位や役職
レントの眷属。小鼠の親分。
・物語内での具体的な行動や成果
リナの頭に乗って意志を伝え、レントから魔力を引き出す方法を教えた。リナの迷宮探索にお目付役として同行している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項は記載されていない。
ラトゥール家
イザーク・ハルト
ラトゥール家に仕える使用人である。
・所属組織、地位や役職
ラトゥール家・使用人。吸血鬼。
・物語内での具体的な行動や成果
レントとリナに吸血鬼の弱点や《血武器》について説明した。二人に《分化》の基礎を教え、訓練の指導を行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
自身の体を小さな蝙蝠の群れに分化させることができる。
下級吸血鬼の御者
ラトゥール家に仕える使用人である。
・所属組織、地位や役職
ラトゥール家・使用人。下級吸血鬼。
・物語内での具体的な行動や成果
ウルフが手配した這蛇の馬車で御者を務め、レントたちを王都まで送り届けた。王都の結界や警戒設備に関する注意をレントたちに伝えている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項は記載されていない。
冒険者組合・冒険者
ウルフ・ヘルマン
マルトの冒険者組合をまとめる存在である。
・所属組織、地位や役職
マルト冒険者組合・冒険者組合長。
・物語内での具体的な行動や成果
レントからシュミニを倒した報告と魔石を受け取った。レントに対し、王都にいる総冒険者組合長をマルトへ迎えに行くよう依頼している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
迷宮の発生と《塔》や《学院》からの要求により、大量の書類仕事と対応に追われている。
シェイラ
マルト冒険者組合で働く職員である。
・所属組織、地位や役職
マルト冒険者組合・職員。
・物語内での具体的な行動や成果
冒険者組合を訪れたレントたちに声をかけた。冒険者と《塔》の人間との口論の様子をレントに説明している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
激務により疲労困憊の状態にある。
ニヴ・マリス
吸血鬼を狩ることに強い執着を持つ冒険者である。
・所属組織、地位や役職
冒険者組合・金級冒険者。吸血鬼狩り。
・物語内での具体的な行動や成果
コーム治療院の前でリナを《聖炎》で包み、吸血鬼の眷属になっていないか確認した。病室でライズとローラにも《聖炎》を放ち、問題がないことを確かめている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
マルトを離れることを決め、ミュリアスと共に旅立った。
ライズ
リナとパーティーを組む新人冒険者である。ローラの幼馴染だ。
・所属組織、地位や役職
冒険者組合・銅級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
《新月の迷宮》で保護された後、コーム治療院に入院していた。見舞いに来たリナと再会し、無事を喜び合っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項は記載されていない。
ローラ
リナとパーティーを組む新人冒険者である。ライズの幼馴染だ。
・所属組織、地位や役職
冒険者組合・銅級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
《新月の迷宮》で保護され、コーム治療院に入院していた。リナの無事を知って安心し、ライズに無理をしないよう注意している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項は記載されていない。
ロベリア教
ミュリアス・ライザ
ロベリア教に所属する聖女である。
・所属組織、地位や役職
ロベリア教・聖女。
・物語内での具体的な行動や成果
マルトで乱れた人心を慰撫するため、教会で説教や治癒を行った。大教父庁からの命令で、ニヴの旅に同行することになっている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項は記載されていない。
王都の《学院》・《塔》
ノエル・クルージュ
王都からマルトへやってきた少年である。
・所属組織、地位や役職
《学院》・生徒(首席)。クルージュ家・次期当主。
・物語内での具体的な行動や成果
馬車乗り場で商人にぶつかられ、ローブの魔術効が低下したと主張して口論になった。ロレーヌによって自身の主張が証明され、商人からの謝罪と賠償の約束を受け入れている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
伯爵家の跡継ぎとして、商人との交渉経験を持っている。
エリーゼ・ジョルジュ
リナの元同級生である。正義感が強い性格をしている。
・所属組織、地位や役職
《学院》・生徒(次席)。
・物語内での具体的な行動や成果
馬車乗り場で商人と口論するノエルを咎めた。ロレーヌによって呪物の存在が証明されると、ノエルに謝罪している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ノエルとは学院の成績で首位を争う関係にある。
アデリーナ・モスカ
《学院》の生徒たちを引率する人物である。
・所属組織、地位や役職
《学院》・教授。魔術師。
・物語内での具体的な行動や成果
宿に戻ったノエルに対し、馬車乗り場での騒ぎについて事情を聞いた。危険な相手には自分だけで解決しようとせず、教授陣に連絡するよう諭している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
冷たく厳しい雰囲気を持っており、生徒たちから恐れられている存在だ。
ピエルパオロ・ブランカ
ノエルの同級生であり、宿で同室となった少年である。
・所属組織、地位や役職
《学院》・生徒。子爵家・長男。
・物語内での具体的な行動や成果
ノエルから馬車乗り場での出来事を聞き、大笑いした。ロレーヌの実力を知り、迷宮調査の成果を他者に奪われないようノエルに注意を促している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ノエルが対等に接している数少ない友人である。
《学院》の生徒たち
迷宮の調査のために王都からマルトへ来た若者たちである。
・所属組織、地位や役職
《学院》・生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
十台ほどの馬車の列をなしてマルトに到着した。マルトの宿を貸し切りにして滞在している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
多くが貴族や商人の子供であり、魔術を使える者が大半を占めている。
《塔》の人間たち
王都の研究機関からマルトへ来た者たちである。
・所属組織、地位や役職
《塔》・研究者。
・物語内での具体的な行動や成果
冒険者組合で、マルトの冒険者と迷宮探索の失敗を巡って怒鳴り合った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
機材の運搬に日数がかかるため、《学院》よりも遅れてマルトに到着している。
マルト第二孤児院
アリゼ
マルト第二孤児院で暮らす少女である。レントとロレーヌを慕っている。
・所属組織、地位や役職
マルト第二孤児院・孤児。レントとロレーヌの弟子。
・物語内での具体的な行動や成果
孤児院の応接室でリナと顔を合わせた。リナと話し合い、一緒に修行を頑張ることで合意している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項は記載されていない。
リリアン
マルト第二孤児院を運営する女性である。
・所属組織、地位や役職
マルト第二孤児院・院長。
・物語内での具体的な行動や成果
レントたちに、リナとアリゼの相性は悪くないだろうと伝えた。王都の東天教の教会施設へ手紙を届けてほしいとロレーヌに依頼している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
孤児院長としての経験から、他人の人となりを見抜く能力に長けている。
マルトの住人・その他
商人
アリアナ自由海洋国から来た中年男である。
・所属組織、地位や役職
アリアナ自由海洋国・商会組合。
・物語内での具体的な行動や成果
馬車乗り場でノエルにぶつかり、責任を逃れようとして口論になった。ロレーヌに耳元で何かを告げられると、態度を一変させて謝罪と賠償を約束している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
マルトへの持ち込みが禁じられている呪物の短剣を所持していた。
門番
王都ヴィステルヤの入り口を警備する兵士である。
・所属組織、地位や役職
王都ヴィステルヤ・門番。
・物語内での具体的な行動や成果
馬車の幌を開けてレントたちの身分証を確認した。レントの仮面が呪いで外れないことを確かめ、入城を許可している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項は記載されていない。
望まぬ不死の冒険者8巻
望まぬ不死の冒険者まとめ
望まぬ不死の冒険者10巻
展開まとめ
第一章 能力の把握
ラトゥール家の庭での力の確認
生垣迷宮の庭
レントたちは、ラトゥール家の庭で存在進化後の力を確認することになった。イザークは、生垣迷宮は本物の迷宮を模した古い魔道具であり、多少壊しても修復できると説明した。レントはそれを聞き、安心して力を試すことにした。
腕力の変化
レントは石を握るだけで砕き、身体強化なしでも腕力が大きく上がっていることを確認した。リナも石を握り潰し、下級吸血鬼相当の身体能力を得ていると分かった。イザークは、リナの腕力は通常の人間よりかなり高いが、屍鬼の方が単純な力では強い場合もあると説明した。
点火の火柱
レントは生活魔術《点火》を使ったが、発生したのは小さな火ではなく火柱だった。ロレーヌは、それは生活魔術であって生活魔術ではないと評し、リナにレントを平均値として扱わないよう忠告した。レントは、魔力そのものは大きく増えたが、魔術師としての技量はまだ低いと考えた。
リナの受け止め方
リナは、自分が下級吸血鬼のような存在になったことを比較的落ち着いて受け止めていた。彼女は、レントと出会ったことで、魔物や不死者になっても優しい者は優しいと知っていたからだと話した。イザークは、人が吸血鬼になると感情の起伏が小さくなり、合理的になる傾向があると説明した。
普通の点火
リナも《点火》を使い、親指ほどの火を出した。ロレーヌとイザークは、それを普通だと判断した。リナは疲労をほとんど感じておらず、イザークは、下級吸血鬼なら生活魔術程度では魔力が尽きず、人族の中堅魔術師ほどの魔力量を持つと説明した。
眷属の力のやり取り
レントは、リナが自分の眷属として魔力などを引き出せるか確認した。エーデルがリナに方法を伝え、リナはレントから魔力を引き出すことに成功した。エーデルによれば、慣れればより多く引き出せるが、レントの許可がなければ無理だということだった。
聖気の共有
リナはレントから聖気も引き出すことができた。イザークは聖気の気配を苦手とし、燻されているようだと表現した。リナは浄化を試し、雑草を少し綺麗にして成長させたが、レントが同じことをすると雑草は大きく伸び、聖気を帯びた。
使えない気
リナは魔力と聖気を引き出せたが、気はうまく引き出せなかった。ロレーヌは、気は身体を鍛える中で身につける力であり、魔力や聖気とは違って修行が必要なのだろうと考察した。レントは、今後リナに気の使い方を教えることも考えた。
竜の翼
レントは羽を出してみたが、以前よりはるかに大きな竜の翼のようなものが現れた。ロレーヌは竜の翼に見えると困惑し、イザークは竜人の翼に近いと説明した。ただし、竜人は誇り高く、吸血鬼もどきが似た翼を持つことを許さない可能性があるため、軽々しく見せない方がよいと忠告した。
吸血竜人という仮称
レントの翼や性質を見ても、正確な種族は分からなかった。イザークは、見た目と特徴だけで名付けるなら吸血竜人のようなものだと仮に表現した。レントは、いずれ鑑定神に種族や仮面のことを確認する必要があると考えた。
迷宮化の後始末
レントは、マルトの迷宮化が止まっているのかを確認した。イザークは、ラウラが迷宮を制御しているため拡大は止まっていると答えた。ただし、冒険者組合への報告では、ラウラが迷宮主になったことや迷宮核を取り込んだことは伏せる必要があった。
報告内容のすり合わせ
ロレーヌは、シュミニを倒したことで騒動が収まったと報告するのがよいと提案した。イザークもそれに同意し、リナについては奥の部屋で捕らわれていたが無事だったことにする方針となった。リナは、ライズとローラを探している途中で捕まり、血を吸われたことを説明した。
冒険者組合への準備
レントは、今回の騒動では屍鬼や魔物化した人々がいたため、しばらく姿を消していたリナが尋問される可能性を指摘した。リナは、正体が露見しないよう気をつけると頷いた。レントたちは細かい点はその場で対応することにし、冒険者組合へ報告に向かうことにした。
第二章 吸血鬼狩りと確認
迷宮発生後の報告とニヴの別れ
冒険者組合への報告準備
レントたちは、吸血鬼の技術を教わる前に冒険者組合へ報告へ向かうことにした。イザークは、冒険者組合にニヴがいる可能性を考え、同行しないことになった。リナはレントと同じく聖気を苦にしないため、ニヴに遭遇しても判別をすり抜けられる可能性が高いと考えられた。
落ち着いたマルト
レントは、マルトの住人たちが想像より落ち着いていることに違和感を覚えた。住人たちは迷宮から魔物が溢れたことや家族を失ったことは語ったが、住民が魔物に変じた事実には誰も触れなかった。ロレーヌは、ラウラが迷宮主の力で住人の記憶を一部変えた可能性が高いと説明した。
ラウラの力への不安
レントは、街一つ分の記憶を操作できるラウラの力に恐ろしさを感じた。それでも、彼女がいなければマルトは迷宮化して失われていた可能性が高く、今は街を守る意思を信じるしかなかった。ロレーヌも、迷宮主の力や制限について、ラウラが目覚めたら詳しく聞く必要があると考えた。
混雑する冒険者組合
冒険者組合は、屍鬼や魔物の討伐報酬、魔石の換金、街の後処理で混雑していた。職員たちは疲弊し、シェイラも消耗しながら働いていた。レントたちはシェイラに案内され、ウルフの執務室へ向かった。
シュミニ討伐の報告
レントは、シュミニだった魔物を倒した証拠として大きな魔石をウルフに渡した。ウルフはその魔石の大きさと質に驚き、相当な魔物だったのだろうと判断した。レントたちは、ラウラや迷宮核については伏せ、シュミニを倒したことで騒動が収まったという形で報告を進めた。
街の収束
ウルフは、シュミニが倒された後、屍鬼の動きが鈍くなり、討伐が容易になったと説明した。街に出現していた魔物もやがて消え、建物の修復や怪我人の治療も進んでいた。領主や参事会、教会関係者、冒険者組合が動いており、マルトは少しずつ元の姿に戻りつつあった。
新しい迷宮
ウルフは、マルト地下に発生したものは迷宮だとほぼ結論づけられていると話した。魔物がそこから溢れたことで今回の事件が起き、シュミニは迷宮の発生を予測して暗躍していたのではないかと見られていた。ロレーヌは、迷宮発生時の不安定性によって周囲に異常が起きたのだろうと説明した。
忙しくなる街
新しい迷宮ができたことで、マルトには冒険者や研究者が集まる可能性が高くなった。ウルフは、冒険者組合が受け入れや管理で忙しくなるだろうと見ていた。ロレーヌは発生直後の迷宮に強い研究欲を示し、王都の《学院》や《塔》の研究者たちも来るだろうと予想された。
ライズとローラの居場所
リナは、《新月の迷宮》で保護されたライズとローラの様子をウルフに尋ねた。ウルフは二人がコーム治療院に入院していると教え、地図で場所を示した。報告を終えたレントたちは、リナのパーティーメンバーを見舞うため、治療院へ向かった。
治療院前の聖炎
コーム治療院に入ろうとしたところ、リナが青白い《聖炎》に包まれた。現れたのはニヴであり、彼女はリナが吸血鬼に攫われた可能性を聞き、眷属化していないか確認したのだった。リナには聖炎が効かず、ニヴは吸血鬼ではないと判断して疑いを解いた。
ライズとローラとの再会
治療院の病室で、リナはライズとローラに再会した。二人はリナの無事を喜び、リナも自分が吸血鬼に攫われてレントとロレーヌに助けられたと説明した。レントはロレーヌを紹介し、ライズは銀級冒険者であるロレーヌに憧れを見せた。
金級冒険者ニヴ
ロレーヌは、銀級への道を聞かれたライズに、自分よりニヴの方が冒険者としての助言に向いていると示した。ニヴは金級冒険者として名乗り、吸血鬼狩りで実績を積んだと語った。ライズはそれが自分には遠すぎる道だと落胆したが、ニヴは無茶な功名心を抑え、自分に見合った依頼をこなすことが大切だと助言した。
二人への判別
ニヴは、ライズとローラが吸血鬼の眷属になっていないか確認したいと申し出た。二人が同意すると、ニヴは青白い聖炎で二人を包んだ。二人に苦痛や火傷はなく、ニヴは吸血鬼になる心配はないと穏やかに告げた。
ニヴの後悔
病室の外で、ニヴは《新月の迷宮》にいた吸血鬼を倒したが、尋問前に相手が自ら消えたため情報は得られなかったと話した。彼女はマルトの親玉吸血鬼を自分で滅ぼせなかったことを悔やんでいたが、結果としてレントたちが倒し、冒険者たちも救えたため最善だったとも認めた。
去りゆく吸血鬼狩り
ニヴは、高位吸血鬼が滅ぼされた場所には当分吸血鬼が近寄らないため、マルトはしばらく安全だと語った。彼女は《学院》や《塔》の人間が押し寄せる前に旅立つつもりだと明かした。レントが別れを惜しむようなことを言うと、ニヴはそれが完全な本心ではないと見抜きつつ、レントへの興味を残したまま去る準備を進めていた。
勘違いの距離
ニヴはレントが吸血鬼ではないことを不思議がり、顔を近づけて観察した。そこへ病室から出てきたリナが二人を見て、男女の関係だと勘違いして騒ぎ出した。ロレーヌはそれを面白がって茶化し、ニヴも冗談を重ねたが、レントは否定して距離を取らせた。
ニヴの見送り
ニヴは、明日あたりに街を出るため、見送りに来てもよいと言い残して治療院を去った。つかみどころのない彼女に対し、レントは見送りに行くべきか迷った。
第三章 吸血鬼の技術
吸血鬼の技術とレントの分化
ラトゥール家への帰還
レントたちは冒険者組合への報告を終え、ラトゥール家の庭へ戻った。イザークは報告の結果を尋ね、レントはウルフが現実的に目の前の問題を片づける姿勢だったため、深く追及されなかったと話した。ロレーヌは、王都の人間や他地域の冒険者が来る前に、レントとリナが力を身につけるべきだと考えた。
分化の実演
イザークは吸血鬼の代表的な技術である《分化》を実演した。彼の体は漆黒の蝙蝠に分かれ、庭を飛び回った後、再び集まってイザークの姿に戻った。ロレーヌは、吸血鬼の恐ろしさを改めて認識し、相手にするなら密室でまとめて燃やすような手段が必要だと考えた。
吸血鬼への対抗手段
イザークは、吸血鬼には聖気が有効だと説明した。聖気に触れると火傷のようなダメージを受け、武器に込められれば再生速度や再生回数を減らせるという。ただし、それだけで一撃死するわけではなく、吸血鬼との戦いは持久戦になりやすいとも語った。
血武器
イザークは、何もない空間から剣を取り出し、それを血色の大剣へ変化させた。それは吸血鬼の鍛冶師が使い手の血を用いて作る《血武器》であり、吸血鬼の体内に収納できる魔剣だった。これを使えば、吸血鬼相手でも通常の戦いのように傷を与えられると説明された。
分化の基礎
イザークは、《分化》は自分の体を別のものの集合体だと捉え、その一部を独立させるイメージで行うと説明した。初心者は部分的な《分化》から始めるのが基本であり、全身を分化すると意識や視点が大きく分かれるため難しいという。危険な場合はイザークが強制的に戻せるため、まずリナが試すことになった。
リナの影猫
リナは指先を黒い影の猫へと分化させることに成功した。猫は輪郭こそあるものの、目や口はなく、立体化した影のような姿だった。イザークによれば、慣れれば本物の動物のようにもできるが、初歩では影の形が作りやすいという。リナは強い疲労を覚えたが、初回としては成功だった。
分かれた感覚
リナは、《分化》中の感覚を、右目と左目で別のものを見るようで、自分が二人いるようだったと話した。イザークは、リナの飲み込みは早く、練習を重ねれば全身の《分化》も可能になるだろうと見た。ロレーヌはその感覚に強い興味を示したが、疲れたリナを質問攻めにはしなかった。
吸血鬼生活の重さ
イザークは、吸血鬼として生きることは寿命がない点では悪くないが、長い年月の中で周囲に置いていかれる苦しさや、同じ場所に留まる難しさがあると語った。リナがその生き方をどう受け止めるかはすぐには決められないため、今はレントの《分化》を試すことになった。
植物への変化
レントは《分化》を試そうとしたが、ロレーヌが植物でも可能なのかと尋ねたことで、木になるイメージが強く浮かんでしまった。指先から枝や葉のようなものが生え、腕まで変化し始めたため、レントは慌てて別の方向へ意識を向けた。植物の集合体を森と捉え、その中に住む動物まで含めることで、兎や鳥の影が指先から飛び出した。
森としての分化
レントは、分化する対象が一種類でなければならないとは言われていないことに気づいた。さらに、植物であっても灌木霊やドライアドのように動ける存在があるなら、移動する植物になってもよいと考えた。その想像はレントの体を奇妙な存在へ変えていき、イザーク、ロレーヌ、リナは驚きながらその変化を見守った。
閑話 吸血鬼イザーク
レントの異質な分化と訓練の継続
イザークの困惑
イザークは、レントの《分化》を見て強く困惑した。《分化》は個性が出る技術ではあるが、多くは先達の影響で蝙蝠に落ち着き、リナのように猫になる程度なら珍しくはなかった。しかしレントは植物へ変化し、さらに鳥や兎、猪、小型の竜、鼠など複数の存在を生み出していたため、通常の範囲を大きく外れていた。
森への分化
レントの体は、黒に近い深緑色の邪悪な森のように膨らみ、元の数倍の大きさへ変化した。その姿はシュミニの化け物を思わせ、イザークは失敗ではないかと一瞬考えた。だが、周囲に飛び出した生き物たちはやがて森へ戻り、森も黒い人型を経てレントの姿へ戻った。
制御しきったレント
イザークは、レントが初めての《分化》で複数の視点と意識を分けながら、それをすべて元に戻したことに驚いた。《分化》を身につけた吸血鬼でなければ、その難しさは理解できないほどだった。レントの力の大きさとは別に、制御力の高さは賞賛すべきものだった。
普通ではない分化
レントは、自分の《分化》がきちんとできていたのかイザークに尋ねた。イザークは、できてはいたが極めて奇妙だったと答えた。レントにとっては、複数に分かれた意識を大きな指揮官と兵士のように整理する感覚で制御しており、細かな制御を磨いてきた経験が役に立っていた。
参考にならない例
ロレーヌは、レントの制御を指揮官と兵士の関係として理解した。イザークはそれが《分化》の一般的な制御法ではあるが、本来は体を二つ三つに分けた場合に使う方法だと説明した。そのためイザークは、リナにレントのやり方を真似しないよう忠告した。
死ににくい体
ロレーヌは、《分化》によってレントがいっそう死ににくくなったと見た。レントも、人間に戻る目的から遠ざかっているように感じたが、方法を見つけるまでは消滅しにくい方がよいと割り切った。イザークは、吸血鬼でも聖気を宿す武具や聖術には弱く、油断すれば消滅につながると警告した。
危機感の消失
イザークは、なりたての吸血鬼が消滅する原因として、切られても突かれても死なないという油断を挙げた。好き勝手に暴れた結果、聖術使いに目をつけられ、焦りと混乱の中で消滅する者が多いという。レントは、冒険者が強くなったと勘違いして危険な場所に踏み込み死ぬのと似ていると受け止めた。
次の訓練
イザークは、《分化》以外にも吸血鬼の技能はあるが、まずは《分化》をしっかり身につけるべきだと告げた。他の技術には《分化》が前提となるものもあり、一度に教えるとかえって疎かになるためだった。レントはリナと共に、しばらく《分化》の訓練を続けることになった。
第四章 塔と学院
ニヴの旅立ちと学院生の騒動
混雑する馬車乗り場
レント、ロレーヌ、リナは、ニヴを見送るために馬車乗り場へ来ていた。マルトでは迷宮出現による復旧作業が進み、建材や人手、生活物資の需要が増えていた。そのため馬車乗り場には多くの荷馬車や人が集まり、以前より大きく混雑していた。
学院への苦手意識
ロレーヌは、出来立ての迷宮を見に来る研究者や冒険者が増えており、《塔》や《学院》の関係者も本格的に来るだろうと話した。リナは《学院》の生徒に嫌な印象を持っており、王都で友人と再会した際、別の学院生からみすぼらしい姿を馬鹿にされた経験を語った。その友人はリナをかばい、成績の良さで相手を黙らせたという。
ニヴの見送り
レントたちの前に、旅立つニヴとミュリアスが現れた。ニヴは見送りに来たことを意外がり、レントに惚れたのかと冗談を言った。ミュリアスは見送りではなく、大教父庁の命令でニヴに同行するのだと不満を漏らした。
学院の馬車
ニヴとの別れ際、馬車乗り場に《学院》の馬車の一団が到着した。ロレーヌは《学院》の馬車だと見抜き、《塔》の到着は機材が多いため遅れるだろうと見た。ニヴは、これからマルトで一波乱ありそうだと不吉なことを言い残し、ロベリア教の馬車でミュリアスと共に去っていった。
不死者心得
ニヴが去った後、レントはリナに、不死者として怪しまれないための心得を教えた。夜中に出歩かないこと、感じよく振る舞うこと、近所に挨拶することなどである。リナはそれを真面目にメモし、ロレーヌはまるで初めて外泊する子供への注意のようだと評した。
学院生の怒声
馬車乗り場に、学院の制服を着た少年と行商人風の男の言い争いが響いた。少年は、男がぶつかったせいで《学院》のローブが壊れたと主張し、男は少しぶつかっただけで高度な魔術加工が壊れるはずがないと反論した。周囲には見物人が集まり、騒ぎは大きくなりかけていた。
エリーゼの登場
そこへ学院生の少女エリーゼ・ジョルジュが現れ、少年ノエル・クルージュをたしなめた。彼女は学院の品位を損なう行動をやめるよう訴えたが、ノエルは尊大な態度で突き放した。リナは、エリーゼが以前話していた自分の友人だと気づき、驚いた。
アリアナの商人
ロレーヌは、行商人の短剣にアリアナ自由海洋国と商会組合の紋章があることを見抜いた。その短剣を持つ者は商会組合でもそれなりの地位にあり、揉めると厄介な相手だった。リナがエリーゼを助けたいと願ったため、ロレーヌは仲裁に入ることにした。
壊れたローブ
ロレーヌはノエルのローブを調べ、彼の主張が正しいと判断した。ローブの魔術加工は確かに歪められており、商人の難癖ではなく、ノエルの言い分に根拠があったのである。エリーゼは自分の誤解を認め、ノエルに謝罪した。
商人の謝罪
商人は納得できずに抗議したが、ロレーヌが耳元で何かを告げると顔色を変えた。商人は後で《学院》へ賠償すると言い、謝罪した。ノエルも学院長から品位ある振る舞いを求められているとしてそれを受け入れ、騒ぎは収まった。
カフェでの再会
騒動の後、レント、ロレーヌ、リナ、エリーゼはカフェへ移った。リナは王都からマルトへ来た経緯を、危険な秘密を伏せながら説明した。エリーゼは、レントとロレーヌがリナの冒険者としての先輩だと理解し、ロレーヌの実力にも興味を示した。
ノエルとの関係
エリーゼは、ノエルとは学院の成績で首位を争う関係だと語った。ただし、これまで一度も勝てておらず、その競争が今のような険悪な態度につながっているという。リナはノエルの態度を強く非難したが、エリーゼは彼が普段から筋の曲がったことをするわけではないとも話した。
呪物の短剣
ロレーヌは、商人が持っていた小さな短剣を取り出した。それはマルトでは本来持ち込みを禁じられている呪物であり、近くの魔道具に宿る魔力を乱す性質を持っていた。ノエルのローブの魔術加工が歪んだのは、その呪物が原因だった。
呪物の研究機会
エリーゼは呪物を初めて目にし、《学院》でも学生が簡単に見られるものではないと驚いた。ロレーヌは、安全な場所と機会を設けて呪物に触れる経験をさせてもよいと提案した。エリーゼは予定を確認して連絡すると答え、リナと再会を喜びながら宿へ向かった。
短剣の性質
エリーゼが去った後、ロレーヌは短剣が魔道具の防護を越えて魔力を乱すのだと説明した。通常の技術でも似た効果を作る方法は考えられるが、《学院》のローブの対策を突破している以上、呪物特有の異常性があると見られた。レントとロレーヌが触れても平気なのは、祠の分霊の加護があり、聖気の布越しに触れているのと同じ状態だからだった。
閑話 ノエル・クルージュ
学院首席ノエルと迷宮調査の始まり
馬車乗り場の失敗
王都ヴィステルヤからマルトに到着したノエル・クルージュは、商人にぶつかられた直後、自分のローブに施された魔術効が減衰していることに気づいた。ノエルは商人が原因だと論理的に判断したが、最近のストレスもあり、普段なら避けるはずの口論を起こしてしまった。
怪しい商人
ノエルは伯爵家の跡継ぎとして商人との交渉に同席した経験があり、目の前の商人の態度に不審さを感じていた。商人は過剰に反論しながらも逃げる隙を探しており、ノエルはこの場で逃がすべきではないと考えた。しかしローブを傷つけた方法までは分からず、事態は膠着していた。
エリーゼの介入
そこへ《学院》次席のエリーゼ・ジョルジュが現れ、正義感からノエルを止めようとした。そのため、商人との口論はノエルとエリーゼの言い争いへ変わった。ノエルは、彼女の行動が事態をややこしくしていると思いながらも、その時間を使って商人の不審さを観察していた。
ロレーヌへの警戒
さらに人混みから現れたロレーヌを見て、ノエルは強い実力を持つ魔術師だと察した。彼女の魔力の淀みない構成と即座に魔術を放てる気配は、かつて家庭教師だった帝国出身の高位魔術師を思い出させた。そのためノエルは、ロレーヌに近づかれても動けず、ローブを調べられるままになった。
解決した騒動
ロレーヌはローブの魔術効低下を見抜き、商人にも非を認めさせた。ノエルは、自分の望んでいたことを鮮やかに実現したロレーヌに興味を抱いたが、揉め事を収めるため、その場を去ることにした。エリーゼが謝罪しようとした際、ノエルは皮肉を返してしまったが、彼女の成績上昇を意識し、負けるつもりはないと考えた。
アデリーナの説教
宿に戻ったノエルは、《学院》教授アデリーナ・モスカから馬車乗り場での騒ぎについて問われた。事情を説明すると、アデリーナは非難を引っ込めたが、危険な相手に無理に関わらず、教授陣に連絡すべきだったと諭した。ノエルは、商人を逃がしたくないという自分の行動に正義感があったことを認め、アデリーナの言葉を受け入れた。
同室のピエルパオロ
ノエルは宿の部屋で、同級生のピエルパオロ・ブランカに迎えられた。ピエルパオロは子爵家の長男で、成績も優秀な生徒であり、ノエルに対して砕けた態度を取れる珍しい友人だった。ノエルは彼に、迷宮調査の準備や冒険者の確保について尋ねた。
ロレーヌへの疑念
ピエルパオロは、ロレーヌが触れただけで学院のローブの異常を見抜いたことに強い関心を示した。彼は、誕生したばかりの迷宮を狙って、他国や他機関の人間がマルトに入り込んでいる可能性を指摘した。ノエルはロレーヌがマルトの人間だと言っていたため疑いを否定したが、ピエルパオロは調査成果を横取りされないよう注意すべきだと考えていた。
迷宮調査への意気込み
ノエルたち生徒に期待されているのは、教授や研究者の補助として細かな情報を集めることだった。それでも、誕生したての迷宮には世紀の発見があるかもしれず、ノエルはピエルパオロの幸運に期待すると口にした。馬車乗り場での不運を思い出すノエルを見て、ピエルパオロは笑った。
第五章 ギルドからの頼まれごと
王都への使者と不穏な依頼
仕事への復帰
レントは、マルト大乱やマルト迷宮事変と呼ばれ始めた騒動から三日ほど休んだ後、本業に戻ろうと考えた。身体的な疲労はなかったが、精神的には疲れていたため休んでいたのである。しかし長く働き続けてきた性分から、三日も休むと罪悪感を覚え、冒険者組合の様子を見に行くことにした。
荒れる冒険者組合
冒険者組合では、《塔》の人間と冒険者が探索失敗を巡って怒鳴り合っていた。シェイラは、《塔》の人々が来てから組合はずっとこの調子だと説明した。口論はやがて互いの謝罪で収まったが、冒険者組合は迷宮関係の仕事と《塔》《学院》の要求で限界に近づいていた。
ウルフの捕獲
大量の書類を抱えたウルフは、レントを見つけると嬉しそうに近づいた。嫌な予感を覚えたレントは逃げようとしたが、ウルフに腕をつかまれた。ウルフは、冒険者組合職員として働くよう迫り、周囲の職員たちも懇願するような顔でレントを見ていた。
専用の仕事
ウルフは、レントに雑用依頼の処理も頼みたいとしつつ、本題は別にあると告げた。冒険者組合では《塔》や《学院》への冒険者斡旋で人手が足りず、本来の仕事にしわ寄せが来ていた。そこへ、新しい迷宮の情報を聞きつけたヤーラン王国の総冒険者組合長を迎えに行く必要が生じたのである。
王都への迎え
ウルフは、総冒険者組合長が王都にいるため、レントに王都まで行って連れてくるよう依頼した。レントは自分のような下っ端に任せるのはおかしいと考えたが、ウルフは自分がマルトを離れられない状況だと訴えた。報酬を弾み、馬車や面会に必要な書類も用意すると言われ、レントは引き受けた。
ウルフの本音
レントが執務室を出た後、ウルフはうまく押しつけられたと安堵した。彼は、暇でも自分では行きたくないほどの用件だったらしく、レントの健闘を祈りながら書類仕事へ戻った。
旅支度と疑念
ロレーヌの家で旅支度をするレントに、ロレーヌはウルフの依頼が怪しいと指摘した。レントもこじつけのような理由に違和感は覚えていたが、王都にはもともと行く用事があり、ウルフへの恩もあるため受けることにした。ロレーヌも、王都での約束やリナの問題を考えつつ同行することにした。
リナとアリゼ
レントとロレーヌは、留守中のアリゼの修行をリナに任せることを考えた。リナは最近、エーデルと共に迷宮で訓練を積んでおり、アリゼより冒険者としても魔術の扱いでも上だった。孤児院で二人を会わせると、リナは緊張しながら自己紹介し、アリゼも応じた。
孤児院での相談
レントとロレーヌは、リナとアリゼの相性を確かめるため、二人だけで話させた。リリアンは、リナが素直で純粋な娘に見えるため、少しひねくれたところのあるアリゼとも相性は悪くないだろうと見た。リリアンはさらに、王都の東天教の教会施設へ手紙を届けてほしいとロレーヌに依頼した。
二人の合意
リナとアリゼは話し合いを終え、一緒に修行を頑張ることになった。アリゼは何を話したのかを秘密にし、ロレーヌは女性同士の話だとしてレントを遠ざけた。レントは少し疎外感を覚えたが、二人の関係に問題がないと分かり、安心して王都へ旅立てることになった。
王都土産の地図
孤児院を出た後、リナはレントたちに王都土産を期待していると伝えた。さらに徹夜で作った王都の地図を渡し、店の名前や名物を書き込んでいた。レントは観光ではないと釘を刺したが、ロレーヌはリナの中に無意識のホームシックがあるのかもしれないと考え、土産を買ってくることにした。
這蛇の馬車
馬車乗り場には、忙しいはずのウルフが待っていた。彼は総冒険者組合長に会うための書類を渡し、王都行きの馬車を手配していた。馬車を引くのは這蛇という巨大なトカゲのような《馬》で、水中でも活動できる高性能な生き物だった。
五日後の王都
レントたちは這蛇の馬車で移動し、五日後に王都ヴィステルヤへ到着した。御者はラトゥール家の下級吸血鬼であり、王都の結界や警戒設備に注意するよう忠告した。レントはラトゥール家から渡されたボタンを身につけ、正体が反応しないよう対策していた。
王都の入城検査
門番は、骸骨仮面をつけたレントを怪しんだが、レントは顔に傷を負い、呪いで仮面が外れないと説明した。門番は実際に仮面が外れないことを確認し、冒険者証も本物だと認めた。レントは、マルト冒険者組合から総冒険者組合長への報告のために来たと伝え、ロレーヌと共に王都へ入った。
望まぬ不死の冒険者8巻
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