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フィクション(Novel)望まぬ不死の冒険者読書感想

小説「望まぬ不死の冒険者 7巻」王都ヴィステルヤ 感想・ネタバレ

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望まぬ不死の冒険者 7の表紙画像(レビュー記事導入用) フィクション(Novel)

望まぬ不死の冒険者6巻
望まぬ不死の冒険者まとめ
望まぬ不死の冒険者8巻

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どんな本?

望まぬ不死の冒険者』は、丘野優 氏による日本のライトノベル作品。
小説家になろうにて2016年9月22日より連載されており、オーバーラップノベルスより刊行されている。
イラストはじゃいあん 氏が担当。
物語は、銅級冒険者のレント・ファイナが水月の迷宮で龍に食われて不死の魔物として蘇るところから始まる。
レントは魔物を食らうことで進化していき、骨人から屍食鬼、下級吸血鬼となる。
レントは自分の境遇に苦しみながらも、冒険者としての夢を捨てずに、魔物と人間の狭間で生きることを決意する。
しかし、レントの存在は世界の秩序を揺るがす危険なものとして、様々な勢力の注目を集めてしままう。
この作品は、コミカライズやテレビアニメ化もされており、人気の高いファンタジー作品。
コミカライズ中曽根ハイジが作画を担当し、コミックガルドにて連載中。
テレビアニメは2024年1月より放送予定。

読んだ本のタイトル

#望まぬ不死の冒険者 7巻
著者:#丘野優 氏
イラスト:#じゃいあん  氏

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あらすじ・内容

不死者、王都にて旧知と再会する

転移魔法陣での移動を経て、ヤーラン王国・王都ヴィステルヤに潜入したレントたち。
素性を隠すためロレーヌの魔術で変装したレントは、冒険者組合本部を見学することに。
依頼掲示板を覗いていると、かつてマルトで冒険者稼業を共にした銀級冒険者オーグリーから、依頼を受けるよう要請される。
受けた依頼を難なく終えるも、その戦いぶりから変装を見抜かれてしまったレントとロレーヌ。
王都の滞在を秘密にするべく魔術契約を結んだその時、なんと契約の神『ホゼー神』が顕現し……!?
契約を終えハトハラーの村に戻ったレントは、師匠であるカピタンにしばらく修業をつけてもらおうとするが、マルトにいる眷属・エーデルの異変を感じ取り――。
強大な魔物と戦い、多くの謎を解き、そして強くなる。
死してもなお遙かなる神銀級を目指す、不死者レントの『冒険』、第7弾――!

望まぬ不死の冒険者 7
望まぬ不死の冒険者特設サイト

感想

物語は、主人公レントとその仲間たちがヤーラン王国の王都ヴィステルヤに到着するところから始まる。

彼らは古い下水道を通り、高度な魔術で隠された出口から王都に潜入する。
王都に到着後、身分を隠すために冒険者証を使用し、ロレーヌは偽造された身分証明書を利用。

その後、彼らは王都で様々な場所を観光する一方で、オーグリーという銀級の冒険者と再会し、彼の依頼を受けることになる。
オーグリーは特定の薬草を求め、レント達はその依頼を手伝うことに同意する。

レントたちは依頼をこなす途中、襲われている馬車を発見し、ヤーラン王国の第二王女ジア・レギナ・ヤーランとその護衛である近衛騎士団を助けてしまう。

助けた後、王女と騎士団長は主人公たちを王宮への招待を申し出ますが、彼らは依頼を優先し、王宮への招待を一旦断ってしまう。
ロレーヌの魔術のおかげで、馬車を起こし、王女たちが王都に戻ることができた。

レントたちは後日、王女からの招待を受けることに同意し、現場を離れる。

物語は、レントとその仲間たちが冒険を通じて様々な問題を解決し、成長していく様子を中心に展開していく。

彼らは王都で目立たないように行動し、必要に応じて他人の手助けをした。

最終的には、彼らは魔術契約書を使ってお互いの秘密を守ることに同意し、それぞれの道を歩むことになる。
レントは、オーグリーに自分が魔物(吸血鬼ヴァンパイア)になったことを告白。
彼は迷宮で龍に襲われ、骨人スケルトンになった後、吸血鬼ヴァンパイアへと存在進化した。

彼らはホゼー神殿で、レントの秘密を守るための特別な魔術契約書を用いて契約を結び。
その後、レントはガルブ、カピタンと合流し、特殊な魔道具「アカシアの地図」について話し合う。

この地図は、転移魔法陣の出口をマッピングする能力を持ち、使用することでその出口が詳細に記載されることが明らかになる。
しかし、転移魔法陣のリスクについても議論された。

レントはカピタンとの試合に臨み、自分の能力、特に吸血鬼ヴァンパイアとしての身体能力と気の力を駆使し。
試合は激しい攻防が続き、レントは自分の成長を感じる。

レントは吸血鬼ヴァンパイアに変わった後の生活と、彼の周囲の人々とのやり取りについて述べた。
レントは人間に戻る方法を探しつつ、現状を最大限利用する姿勢を見せる。

その後、レントはカピタンから気の物質化の技術を学び。
この技術は気の力を物質化し、防御や攻撃に利用するものだった。
カピタンはレントにその練習方法を教え、レントは自分の成長とこれからの修行について考察する。

物語の終盤では、レントとその仲間たちがマルトに急いで戻る様子を描いていた。
レントの義理の父・インゴが亜竜リンドブルムを使って急速に移動し、マルトに近づくと、町が火事で混乱していることが明らかになる。
レントとロレーヌはそれぞれ消火活動と情報収集に取り組む。

レントはマルトに現れた屍鬼しきの存在を知り、この問題に対処する。
彼は屍鬼しきを探すために単独行動をとり、孤児院へ向かい、使い魔の鼠エーデルの安否を確認する。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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望まぬ不死の冒険者6巻
望まぬ不死の冒険者まとめ
望まぬ不死の冒険者8巻

考察・解説

王都見物と変装

王都見物と変装は、レントとロレーヌが転移魔法陣を用いてヤーラン王国の王都ヴィステルヤへ秘密裏にやってきた際に、身元を隠しながら街を探索したエピソードである。その経緯と変装の様子、そして思いがけない遭遇についての詳細は以下の通りである。

王都への入都とアバウトな身分照合

王都への入り口における検問と、身分確認の状況は以下の通りである。

・ヤーラン王国の身分照合は比較的アバウトであり、レントは「レント・ヴィヴィエ」の冒険者証を提示し、観光と下見目的だと伝えることで問題なく通過した

・ロレーヌは帝国の身分証を提示したため、衛兵から大国に対する過剰な気遣いと丁重な扱いを受けることとなった

冒険者組合本部見学のための変装

目立つ外見を隠し、秘密裏に調査を進めるために行った変装の工夫は以下の通りである。

・普段の漆黒のローブと派手な骸骨仮面は非常に目立つため、そのまま赴けば秘密裏の訪問が露見するリスクがあった

・ロレーヌが魔術を用いてレントのローブの表面を染色し、紫の地に複雑な文様が描かれた帝都で流行のデザインへと変えた

・骸骨仮面に対しても布をかぶせて隠す処置をとっている

・ロレーヌ自身も幻惑魔術を使わずに化粧と髪型、きらびやかな服装を変更することで、一癖ある都会的な女魔術師へと変化した

旧知の冒険者との遭遇と偽名の使用

変装した後に遭遇したハプニングと、その際の機転を利かせた対応は以下の通りである。

・冒険者組合本部を訪れて依頼掲示板を見学していた際、マルトで活動していた頃のレントの顔見知りである銀級冒険者オーグリー・アルズに声をかけられる

・変装の効果により相手は二人の正体には全く気づかなかった

・正体を隠し通すため、レントは紫色のローブにちなんで「パープル」、ロレーヌは「オルガ」という偽名を名乗った

・ロレーヌが機転を利かせてレントの腕に絡みつき、帝国から新婚旅行でやってきた夫婦という設定を演じてその場をやり過ごした

まとめ

この王都ヴィステルヤでのエピソードは、レントとロレーヌの隠密行動における高い機転と連携力が描かれた場面である。魔術を用いた衣服の変更や設定の作り込みにより、旧知の冒険者であるオーグリーの目さえも完全に欺き、正体を隠したままでの王都探索と情報収集に成功している。

王女ジアの救出

王女ジアの救出における遭遇と正体隠匿の顛末

王都ヴィステルヤの郊外でレントたちが偶然遭遇し、期せずして王族の命を救うことになった。襲撃現場への遭遇から救出、そして正体を隠したまま立ち去るまでの顛末について解説する。

襲撃現場への遭遇と圧倒的な加勢

王都への帰路、吸血鬼としての鋭敏な嗅覚で人の血の匂いを嗅ぎつけたレントは、ロレーヌとオーグリーと共に匂いの元へ急行した。そこには横転した馬車があり、森魔狼(フォレスト・ウルフ)と岩狼(ロックウルフ)の群れが、馬車を守る騎士たちを襲っていた。

騎士たちは多勢に無勢で押されていたが、ロレーヌが風刃の魔術で狼の群れを吹き飛ばして道を開き、レントとオーグリーも白兵戦に加わった。結果として魔物の数を一気に減らし、最後の一匹をレントが斬り伏せて騎士たちの救出に成功した。

救出された者たちの正体

助けられたのは、ヤーラン王国第二王女であるジア・レギナヤーランと、近衛騎士団長ナウス・アンクロらであった。彼らのような実力者が狼の群れに苦戦していた背景には、以下のような切実な事情が存在していた。

  • ここに至る前の段階で、すでに別の何者かによる襲撃を受けていたこと
  • 連続した戦闘により、魔力も体力もほぼ尽きかけている状態であったこと

王宮への招待と正体隠匿のための辞退

ジア王女とナウスは命の恩人である三人に対し、謝礼をするため王宮へ招きたいと強く申し出た。しかし、レントとロレーヌはパープル、オルガという偽名で身分を隠して活動しており、王宮などで素性を調査される事態は絶対に避けなければならなかった。

そのためレントは、現在依頼の最中であることや、派手な変装衣装が王宮に上がるには不適切であることを理由に、訪問を後日に先延ばしするよう交渉した。ナウスはこれを了承し、後日王宮を訪ねる際の証として、彼の一族の紋章である「魔物を突き刺す一角獣(ユニコーン)」が刻まれたメダルをレントたちに託した。

馬車の復旧と王都までの護衛

疲弊した騎士たちに代わり、ロレーヌが植物系統の魔術を使って地面から緑色の太い蔦を這い出させ、横転した馬車をあっという間に引き起こした。さらにジア王女が口笛を吹いて森から二体の真っ白な一角獣(ユニコーン)を呼び戻し、手慣れた様子で自ら馬車に繋ぎ直した。

その後、レントたちは王女の安全を期すため、目立たないよう馬車の後方から王都の正門まで護衛を行った。正門が近づくと、貴族用の列を通って記録に残ることを避けるため、レントたちはナウスに別れを告げ、平民用の列に紛れて王女一行と密かに離れた。

まとめ

レントたちの機転と実力によって、王女ジアの救出劇は無事に幕を閉じた。

今回の遭遇と救出における主な成果は以下の通りである。

  • 危機に陥っていた第二王女ジアの一行を速やかに救出し、無傷で王都まで送り届けたこと
  • 自身の偽名や素性が露見するリスクを回避するため、王宮への即時訪問を巧みに辞退したこと
  • 後日の後ろ盾や証明となる、近衛騎士団長ナウスの一族の紋章入りメダルを確保したこと

偶然の遭遇から始まったこの事件は、レントたちに王族との重要な繋がりをもたらすとともに、隠密行動を維持したまま安全に王都へ入る契機となった。

吸血鬼の正体告白

吸血鬼の正体告白における秘密の共有と信頼関係の構築

主人公レントが自身の「不死者であり吸血鬼である」という重大な秘密を、旧知の冒険者オーグリー、そして故郷の師匠であるガルブとカピタンに打ち明けた。それぞれの告白の経緯と相手の反応、そして秘密を共有することへのレントの思いについて解説する。

オーグリー・アルズへの告白

王都ヴィステルヤで偶然再会したオーグリーに対し、レントたちは王都での行動を秘密にするため魔術契約を結ぶこととなるが、契約の条件を細かく設定するにはオーグリーに事情を説明する必要があった。

レントは、迷宮で龍に食われて骨人となり、そこから存在進化を経て現在は吸血鬼のような存在になっていることを打ち明けた。最初は冗談だと思っていたオーグリーであるが、レントが自らの腕を傷つけ、それが瞬時に治癒する様を見て事実だと悟った。オーグリーは魔物に対して特別な憎しみを持っておらず、友人が魔物になったからといって軽蔑や憎しみを抱くことはないとレントをあっさりと受け入れた。さらに、人の血を主食にしていると聞くと、足りないなら自身も提供してもよいと申し出るほどの友情と度量の広さを見せた。

ガルブとカピタンへの告白

故郷ハトハラー村に帰省した際、薬師である大叔母のガルブは、最初に会った時点でレントの魔力の質が変質していることに気づいており、彼が人族ではなくなっていることをすでに見抜いていた。さらに、狩人の師匠カピタンとの模擬戦を通じて、レントの人間離れした動きが明らかになる。

隠し切れないと悟ったレントは、自身が魔物の体になり、羽や眷属を持ち、人の血を主食にする下級吸血鬼のような不死者であることを告白した。ただし、聖気が使えたり太陽の光が平気だったりするため、ロレーヌは通常の吸血鬼とは異なる亜種ではないかと補足した。

これに対する師匠たちの反応や背景は以下の通りである。

  • ガルブ:過去に吸血鬼を見た経験があり、吸血鬼が恐れられる理由には不老への嫉妬もあると語るなど、強い偏見を持たずに受け入れたこと
  • カピタン:龍に食われたという経緯には驚いたものの、レントの神銀級冒険者になるという目標が魔物になっても全く変わっていないことを確認し、呆れつつも安心した様子で受け入れたこと

まとめ

吸血鬼であるという事実は、発覚すれば討伐の対象となりかねない危険な秘密である。しかしレントは、自身の抜けを補ってくれる存在として、秘密を共有できる仲間を必要としていた。

今回の告白と周囲の対応における要点は以下の通りである。

  • 王都で再会したオーグリーに対し、魔術契約の必要性から真実を明かし、血の提供すら申し出られるほどの強い絆を確認したこと
  • 故郷の師匠であるガルブとカピタンに対し、能力の変質を見咎められたことを機に告白し、目標が変わらない姿勢を示して安心させたこと
  • 偏見のない信頼できる人々へ秘密を明かしたことが、魔物となったレントにとって大きな精神的救いとなったこと

魔物になって最初に頼ったロレーヌをはじめ、今回秘密を打ち明けたオーグリー、ガルブ、カピタンといった理解者たちが、魔物となった彼を以前と変わらず受け入れてくれたことは、レントが今後も正体を隠しながら神銀級を目指す上で強固な支えとなった。

気の物質化修行

気の物質化修行における高度な技術と実践的な特訓の成果

故郷ハトハラー村に帰郷したレントは、師匠であるカピタンから《気》の高度な技術を身につけるための特訓を受けた。カピタンとの模擬戦で目にした、生身で剣を弾き返す気の鎧の秘密がここで明かされることとなる。この修行の背景、気の物質化の特徴、そして過酷な修行の様子について解説する。

修行の背景とレントの現状

ロレーヌがガルブから魔術の座学を受けている間、レントは森でカピタンから《気》の修行を受けた。カピタンはまずレントの練度を確認し、レントは剣に気と魔力を込めて木を爆砕する魔気融合術を披露した。カピタンはこれを気の強化版と評価しつつも、これから教えるのは模擬戦で見せた全く別のアプローチの技術であることを告げた。レントは10年間の努力により気の練度が上がっていたため、カピタンは数週間、場合によっては数日で身に付く可能性があると期待を寄せた。

気の物質化の性質と強み

カピタンがレントに教えようとしたのは、気の物質化と呼ばれる技術である。その具体的な特徴やメリットは以下の通りである。

  • 反発力を持つ装甲:腕に《気》を凝縮させると、皮膚の上にもう一枚膜があるような、静電気に似た斥力(反発力)が生まれる。力を込めて短剣で突いても、弾き返されて飛んでいくほどの強固な防御力を持つ
  • 形状の自由度と不可視の刃:防御だけでなく形状も自由に変えられる。カピタンは拾った木の枝の先に気の刃を伸ばし、落ちてくる木の葉を切り裂いてみせた。目に見えないため、不意打ちや暗殺にも使える強力な技である
  • 魔術との違い:魔術で盾を作る場合は緻密な理論と構成が必要であり頭脳が求められるが、気は感覚的な力である。理屈よりも感覚で操るため、愚直に使い続ければ誰でもできるようになるという特徴を持つ
  • 技術の欠点:非常に消耗が激しいという難点がある。普通に戦うのであれば武器に気を込める方が効率的であり、あくまで切り札や最後の手段として使うべき技術とされている

過酷なスパルタ修行と気の手袋

理屈より感覚という性質上、修行は叩き込んでやるからただひたすらにやれというカピタンの指示のもと、過酷な実践形式で行われた。

レントはカピタンのように全身を覆うことはできず、手のひらを覆う不格好で脆い気の手袋を作るのが精一杯であった。カピタンは容赦なく気を込めた木の棒でその手袋を叩き壊し、レントは壊れるたびに修復を繰り返すというスパルタ指導を受けた。最終的にレントは完全に気を使い果たし、初日の修行は終了した。

寿命を削る裏技とレントの拒否

気が尽きたレントに対し、カピタンは無理に気を出す方法として、寿命を削る技法もあると明かした。いざという時の切り札としてハトハラーの役職持ちに伝えられてきた物騒な技法であった。しかし、自身の寿命がどうなっているのかすら分からない不死者(吸血鬼)であるレントは、変なことをしたら危険かもしれないと考え、この技法の習得を全力で拒否した。

まとめ

カピタンによる気の物質化修行の要点は以下の通りである。

  • 10年間の下地があったことで、通常よりも早いペースで気の物質化という上位技術の習得へ進んだこと
  • 不可視の刃や反発する装甲といった、魔術とは異なる感覚的な力の有用性と消耗の激しさを理解したこと
  • 限界まで気を使い果たす実戦形式の特訓により、部分的ながら気の手袋を形成する感覚を掴んだこと
  • アンデッドとしての自身の肉体特性を考慮し、寿命を削る危険な裏技の導入を回避したこと

この特訓は、レントにとって従来の魔気融合術とは異なる新たな戦闘の選択肢をもたらし、次なる実力向上への確かな一歩となった。

マルトの屍鬼襲撃

マルトの屍鬼襲撃における発生状況と犯人の正体

レントたちがハトハラー村から帰還した際、都市マルト全体を巻き込む大規模な魔物襲撃事件に遭遇した。その発生状況、襲撃の犯人である屍鬼の性質、そして今後の捜索体制について解説する。

炎上するマルトへの帰還

レントとロレーヌが、インゴの従える流星亜竜リンドブルムに乗って空からマルトへ帰還すると、夜にもかかわらず街が朱色に輝き、至る所から火の手が上がっているのを発見した。街の中は熱風が吹き荒れ、人々が逃げ惑う阿鼻叫喚の惨状となっていた。被害の拡大を防ぐため、ロレーヌは水属性魔術が足りていない正門付近の消火活動へ向かい、レントは状況を把握するために冒険者組合へと走った。

襲撃の犯人である屍鬼とその手口

冒険者組合では、組合長ウルフ・ヘルマンが自ら陣頭指揮を執っていた。レントが彼から事情を聞くと、街に火を放ち暴れ回っている犯人が吸血鬼の群れであることが判明する。

現在確認されているのは、吸血鬼としては最下級種に当たる屍鬼であった。彼らは魔術で顔を人間のように見せかけ、長袖を着て魔物特有の朽ちた体を隠すことで、街の中に潜伏していた。

屍鬼の性質と親玉の存在

屍鬼は、人間に血を吸われ、少量の吸血鬼の血を与えられることで変異する魔物である。その具体的な特徴や危険性は以下の通りである。

  • 血も飲むが、犬や猫、虫、死体など何でも食べる悪食の性質を持つこと
  • 人の血を多く必要とする上位の吸血鬼などと比べて、街の中で最も増殖しやすい厄介な性質があること
  • 発見されたのは十体前後であるが、実際には百体単位で潜伏している可能性があること

ウルフは、屍鬼とそれを作り出した大元の吸血鬼が街に潜んでいると仮定し、冒険者総出での大捜索を開始していた。

レントへの疑いと捜索への参加

ウルフはレントが吸血鬼であることを知っていたため、一瞬、今回の件にお前は関係していないよなと確認した。しかし、たった今街に戻ってきたばかりのレントが街を燃やす利点などないと思い至り、すぐに疑いを解いた。そしてレントに対し、この屍鬼と吸血鬼の大捜索へ直ちに参加するよう命じた。

まとめ

マルトを襲った大規模な襲撃事件と、それに伴う対策の要点は以下の通りである。

  • 帰還したレントとロレーヌがマルトの炎上を目撃し、それぞれ消火と情報収集に動いたこと
  • 襲撃の主犯が最下級の吸血鬼である屍鬼であり、人間へ擬態して街に潜伏していた事実が発覚したこと
  • 悪食で増殖しやすい屍鬼の背後に、それらを生み出した上位の吸血鬼が存在すると推測されたこと
  • ウルフの命令により、レントも街の安全を取り戻すための大規模な捜索活動へ合流したこと

この未曾有の危機に対し、レントは自身の秘密を共有するウルフの要請を受け、街に潜む脅威を排除するための戦いへと身を投じることとなった。

望まぬ不死の冒険者6巻
望まぬ不死の冒険者まとめ
望まぬ不死の冒険者8巻

登場キャラクター

主人公とその関係者

レント・ファイナ

お人好しな性格の冒険者である。ロレーヌとは親しい関係にあり、インゴの義理の息子にあたる。

・所属組織、地位や役職
 冒険者組合・銅級冒険者。不死者(下級吸血鬼)。

・物語内での具体的な行動や成果
 王都でオーグリーと再会し、火精茜の採取を手伝った。王都の郊外で魔物に襲われていたジアたちを救出している。カピタンとの模擬戦で相打ちになった。マルトの酒場でカートの護衛を請け負った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 龍に喰われて骨人となり、現在は吸血鬼のような存在へと進化を遂げている。

ロレーヌ・ヴィヴィエ

レントの友人であり、魔物を専門とする学者である。

・所属組織、地位や役職
 冒険者組合・銀級冒険者。魔術師。錬金術師。魔法薬師。

・物語内での具体的な行動や成果
 レントのローブを染色し、自身の姿も変装させて王都に潜入した。植物系統の魔術で馬車を引き起こしている。千年樹霊の弱点を見抜いた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 魔力を直接視認できる魔眼を持っている。

エーデル

レントの眷属となった小鼠である。

・所属組織、地位や役職
 レントの従魔。小鼠たちの親分。

・物語内での具体的な行動や成果
 マルトの小鼠たちを支配下に置き、情報網を広げた。迷宮で吸血鬼の調査をしていたが、火炎攻撃を受けて意識を失っている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 レントと繋がったことで存在の格が上がり、強大な力を得た。

小鼠たち

エーデルに従う存在である。

・所属組織、地位や役職
 エーデルの手下。

・物語内での具体的な行動や成果
 エーデルの指示に従い、マルトの情報を集めていた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 普通の鼠のままであり、特別な力は持っていない。

ヤーラン王国

ジア・レギナヤーラン

ヤーラン王国の王族である。

・所属組織、地位や役職
 ヤーラン王国・第二王女。

・物語内での具体的な行動や成果
 王都の郊外で魔物に襲われていたところをレントたちに助けられた。自ら一角獣を馬車に繋ぎ直している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 一角獣を手懐けている。

ナウス・アンクロ

ジアを護衛する騎士である。

・所属組織、地位や役職
 ヤーラン王国・近衛騎士団長。

・物語内での具体的な行動や成果
 魔物の群れから馬車を守って戦っていた。レントたちに命を救われ、自家の紋章が刻まれたメダルを渡している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は記載されていない。

冒険者組合

ウルフ・ヘルマン

マルトの冒険者をまとめる存在である。

・所属組織、地位や役職
 マルト冒険者組合・冒険者組合長。

・物語内での具体的な行動や成果
 街に火をつける屍鬼の捜索を指揮していた。レントに屍鬼の捜索へ参加するよう命じている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 レントが吸血鬼であることを知っている。

オーグリー・アルズ

派手な服装を好む冒険者である。レントとはマルトで活動していた頃からの顔見知りであった。

・所属組織、地位や役職
 冒険者組合・銀級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 レントたちに火精茜の採取を手伝ってもらった。少女に火精茜を無償で渡している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 レントが魔物になった事実をあっさりと受け入れた。

ヘイデン

豪快な性格の冒険者である。カートの護衛を務めている。

・所属組織、地位や役職
 冒険者組合・金級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 マルトの酒場で吹き飛ばされてきた男を受け止めた。千年樹霊との戦いで幹に大剣を突き込んでいる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は記載されていない。

ホゼー神殿

ジョゼ・メイエ

ホゼー神殿を管理する人物である。

・所属組織、地位や役職
 ホゼー分神殿・神殿長。神官。

・物語内での具体的な行動や成果
 魔術契約書の部屋に満ちた神気を感じ取って驚愕した。レントたちにホゼー神殿長への面会証を渡している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 神気を敏感に感じ取ることができる。

ハトハラー村

インゴ・ファイナ

ハトハラー村の代表者である。レントの義父にあたる。

・所属組織、地位や役職
 ハトハラー村・村長。「国王」の役職の継承者。従魔師。

・物語内での具体的な行動や成果
 指笛で流星亜竜リンドブルムを呼び寄せた。レントとロレーヌを乗せてマルトの近くまで送り届けている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 普通なら手懐けられない魔物を従える技術を受け継いでいる。

ジルダ

レントの義母である。

・所属組織、地位や役職
 ハトハラー村・村長夫人。

・物語内での具体的な行動や成果
 リリとファーリに料理を教えた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は記載されていない。

ガルブ

村の歴史を伝える存在である。

・所属組織、地位や役職
 ハトハラー村・薬師。「魔術師」の役職の継承者。

・物語内での具体的な行動や成果
 レントの魔力の質が変わったことから、彼が魔物になったと察した。ロレーヌにハトハラーの技術を伝授している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 魔力の波形を感覚的に判別する特殊な技能を持つ。

カピタン

村の歴史を伝える存在である。レントに戦いの基礎を教えた師匠にあたる。

・所属組織、地位や役職
 ハトハラー村・狩人頭。「騎士団長」の役職の継承者。

・物語内での具体的な行動や成果
 北の森でレントと模擬戦を行った。レントに気の物質化の技術を教えている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 気を凝縮させて生身で剣を弾くことができる。

リリ

ハトハラー村に住む少女である。

・所属組織、地位や役職
 ハトハラー村・村人。

・物語内での具体的な行動や成果
 ジルダから料理を教わった。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 狩人の修行をしている。

ファーリ

ハトハラー村に住む少女である。

・所属組織、地位や役職
 ハトハラー村・村人。

・物語内での具体的な行動や成果
 ジルダから料理を教わった。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 薬師の修行をしている。

ラトゥール家

ラウラ・ラトゥール

マルトのはずれにある屋敷の当主である。十二、三歳の不健康そうな姿をしている。

・所属組織、地位や役職
 ラトゥール家・当主。

・物語内での具体的な行動や成果
 屋敷を訪れた少年に竜血花の薬液を渡した。少年にマルトから離れて里へ戻るよう勧めている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は記載されていない。

イザーク

ラトゥール家に仕える使用人である。

・所属組織、地位や役職
 ラトゥール家・使用人。

・物語内での具体的な行動や成果
 ラウラの指示で少年の仲間へ連絡をとる手配を行った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は記載されていない。

ロビスタ伯爵とその関係者

カート(ロビスタ伯爵)

中央の貴族である。娘を救うために辺境まで足を運んだ。

・所属組織、地位や役職
 ロビスタ領・領主(伯爵)。

・物語内での具体的な行動や成果
 身分を隠してマルトを訪れ、レントに医薬素材の案内を依頼した。ヴィロゲトの分霊から神託を受けている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 深い薬学の知識を持っている。

エレイン

カートの娘である。

・所属組織、地位や役職
 ロビスタ伯爵家・令嬢。

・物語内での具体的な行動や成果
 顔に紫がかった黒い斑点が浮かぶ原因不明の病に苦しんでいた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 千年樹霊の葉を使った薬で病から回復した。

医師

エレインの治療に当たっている人物である。

・所属組織、地位や役職
 医師。

・物語内での具体的な行動や成果
 エレインの症状が既知の病と異なるため、治療法を見つけられずにいた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は記載されていない。

その他

少年

ラウラのもとを訪れた人物である。里からの家出者にあたる。

・所属組織、地位や役職
 不明。

・物語内での具体的な行動や成果
 自分たちの存在を世に示すためラウラに協力を求めた。ラウラから竜血花の薬液を受け取っている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 衝動を抑える薬を持っていたため、血の匂いはしなかった。

ヤンガ村から来た男

田舎の村から野菜を売りに来た男である。

・所属組織、地位や役職
 ヤンガ村・村人。

・物語内での具体的な行動や成果
 王都の正門で衛兵の簡単な質問に答え、入都を許可された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は記載されていない。

路地裏の店の店主

王都の路地裏にある落ち着いた雰囲気の店を営む男である。

・所属組織、地位や役職
 路地裏の店・店主。

・物語内での具体的な行動や成果
 レントたちを店内の奥まった席へ案内した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は記載されていない。

マルトの逃げ惑う人々

火災に見舞われたマルトの住民たちである。

・所属組織、地位や役職
 都市マルト・住民。

・物語内での具体的な行動や成果
 街のあちこちから火の手が上がり、熱風の中を走り回っていた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は記載されていない。

神霊・魔物

ヴィロゲトの分霊

植物と肥沃を司る神から分かれた存在である。

・所属組織、地位や役職
 神霊。

・物語内での具体的な行動や成果
 木彫りの人形に宿り、カートに娘の病名と治療法を教えた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は記載されていない。

流星亜竜リンドブルム

インゴに手懐けられた亜竜である。

・所属組織、地位や役職
 インゴの従魔。魔物。

・物語内での具体的な行動や成果
 インゴの指示でレントとロレーヌを乗せ、空を飛んでマルトまで運んだ。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 魔力で空気抵抗を防ぐことができる。

森魔狼の群れ

馬車を襲撃した魔物である。

・所属組織、地位や役職
 魔物。

・物語内での具体的な行動や成果
 岩狼の群れと共に騎士たちを襲っていた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ロレーヌの風刃によって吹き飛ばされた。

岩狼の群れ

体中が岩のような外皮に覆われた魔物である。

・所属組織、地位や役職
 魔物。

・物語内での具体的な行動や成果
 森魔狼の群れと共に馬車を襲撃していた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は記載されていない。

屍鬼の群れ

吸血鬼の中では最下級種にあたる魔物である。悪食の性質を持つ。

・所属組織、地位や役職
 魔物。

・物語内での具体的な行動や成果
 魔術で顔を人間に見せかけ、マルトの街に火を放って暴れ回った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 吸血鬼の血を少量与えられた人間が変異した存在である。

千年樹霊(エンシェント・エント)

ラスタ古代林の奥地に生息する巨大な樹木の魔物である。

・所属組織、地位や役職
 魔物。

・物語内での具体的な行動や成果
 地面から立ち上がり、槍のような樹木を生やして攻撃した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 体のどこからでも針のような枝を生やすことができる。

望まぬ不死の冒険者6巻
望まぬ不死の冒険者まとめ
望まぬ不死の冒険者8巻

展開まとめ

第一章 王都ヴィステルヤ 

王都見物と火精茜の採取

王都の正門

レントとロレーヌは、ヤーラン王国の王都ヴィステルヤの正門へ向かった。正門の身分照合はかなり大雑把で、田舎村から来た男も簡単に通されていた。レントはレント・ヴィヴィエの冒険者証を出し、観光と下見が目的だと説明して入都した。ロレーヌは帝国の身分証を見せ、衛兵から過剰に丁重な扱いを受けた。

変装した二人

レントは王都の冒険者組合本部を見たいと考えたが、派手な仮面とローブで記憶されることを警戒した。そこでロレーヌは魔術でレントのローブの表面を染め、紫地に複雑な文様のある帝都風の衣装に変えた。ロレーヌ自身も髪型、化粧、服装を変え、別人のような都会的な女魔術師の姿になった。

冒険者組合本部

二人は王都の冒険者組合本部を訪れた。建物はマルトの組合よりも巨大で洗練され、受付や酒場、解体所、鑑定カウンター、依頼掲示板なども高級感があった。レントは掲示板で薬草採取の依頼を見つけ、マルトならすぐに取られる依頼が三日も残っていることに驚いた。

派手な銀級冒険者

レントとロレーヌが依頼掲示板を見ていると、虹色の服を着た銀級冒険者オーグリー・アルズに声をかけられた。彼は以前マルトで活動していたソロ冒険者で、レントの顔見知りだったが、変装した二人には気づかなかった。レントはパープル、ロレーヌはオルガと名乗り、新婚旅行中の夫婦という設定で話を合わせた。

服のための依頼

オーグリーは、掲示板に残っていた火精茜の採取依頼を手伝ってほしいと頼んだ。火精茜は彼が注文した新しい衣装の染色に必要な薬草だったが、王都では見分けられる者が少なく、依頼が放置されていたのである。レントは冒険者組合を通した依頼受注を避けたいと断ろうとしたが、オーグリー個人の頼みという形なら記録が残らないため、手伝うことにした。

ロレーヌへの埋め合わせ

レントは勝手に依頼を受けたことをロレーヌに詫びた。ロレーヌは王都には何度も来ているため構わないと答えつつ、レントだけでは不用意なことをしそうだとして同行を決めた。レントが埋め合わせを申し出ると、ロレーヌはマルトの高級店《オル フレヴネ》のフルコースを冗談交じりに望み、レントは本当に奢ると約束した。

森の群生地

レント、ロレーヌ、オーグリーは、王都の壁外にある森へ向かった。オーグリーは事前に群生地を調べており、道中で魔物に遭うこともなかった。王都近くの森では、新兵の訓練のために魔物が常に駆除されているため、地方とは事情が違っていた。

火精茜の見分け方

群生地には、火精茜に似た植物がいくつも生えていた。オーグリーには違いが分からなかったが、レントは花と葉の形、葉の枚数、茎、香り、根を見て判別できると説明した。何度も見分け方を教え、オーグリー自身にも選別させた結果、彼も火精茜を判別できるようになった。

採取の完了

レントたちは、染色に使うには十分な量の火精茜を採取した。レントは、オーグリーが知識を後進に伝えれば、王都でも同じ依頼が放置されにくくなるだろうと考えた。必要な量を確保したため、三人は森から戻ることにした。

第二章 助太刀 

王女ジアの救出とホゼー神の契約

血の匂い

王都へ戻る途中、レントは人の血の匂いに気づいた。吸血鬼もどきとなった嗅覚で人の血だと判断したレントは、ロレーヌとオーグリーに確認し、三人で匂いの方へ向かった。辿り着いた先には横転した馬車があり、森魔狼と岩狼の群れが騎士たちを襲っていた。

馬車の救援

ロレーヌは風刃で狼たちを吹き飛ばし、レントたちは馬車を守る騎士たちに加勢した。騎士たちはすでに疲弊していたが、三人の助太刀によって魔物の数は減り、最後の一匹をレントが斬って戦いは終わった。レントは馬車が貴人のものだと察してすぐ去ろうとしたが、騎士と少女に引き止められた。

第二王女ジア

騎士の男はヤーラン王国近衛騎士団長ナウス・アンクロと名乗り、少女は第二王女ジア・レギナヤーランだと明かした。レントたちは跪いたが、ジアは街道でそのような礼は不要だと告げた。ジアは命を救われた礼として王宮へ招きたいと申し出たが、レントは依頼中で服装も不適切だとして、後日の訪問に先延ばしした。

王宮への面会証

ナウスは、王宮を訪ねるための証として、自家の紋章が刻まれたメダルをレントたちに渡した。その後、横転した馬車をどうするかが問題となり、ロレーヌは植物系統の魔術で蔦を伸ばして馬車を引き起こした。ナウスは、彼らが先に別の者に襲われ、体力も魔力も尽きかけていたことを明かした。

一角獣の馬車

ジアは口笛で二体の一角獣を呼び戻し、自ら馬車につないだ。馬車は走行可能な状態に戻り、レントたちは王都まで後方から護衛することにした。道中は何事もなく進み、正門が近づくと、レントたちは記録に残ることを避けるため、王女一行から離れて平民用の列へ向かった。

路地裏の店

王都に戻ったレントとロレーヌは、依頼達成の報告を終えたオーグリーと合流するため、路地裏の店へ向かった。外観は怪しかったが、中は落ち着いた雰囲気の良い店だった。後から現れたオーグリーは、店や二人への配慮から地味な服装に着替えており、レントとロレーヌを驚かせた。

報酬と正体

オーグリーは火精茜の依頼料に自分の上乗せを加え、金貨三枚をレントたちに渡した。三人は食事をしながら雑談したが、別れ際、オーグリーはレントの名を呼んだ。彼は戦闘時の剣筋から、パープルがレントであり、オルガがロレーヌだと見抜いていたのである。

秘密の共有

レントは、王都にいることを記録に残せない事情があると説明した。オーグリーは黙っていると約束したが、確実を期すために魔術契約書を使うことになった。三人は契約の神ホゼーの分神殿へ向かい、行動の強制力を持つ特別な魔術契約書を求めた。

魔物になったレント

契約内容を正しく定めるため、レントはオーグリーに自分の正体を打ち明けた。レントは迷宮で龍に襲われ、骨人となり、存在進化を経て吸血鬼のような存在になったと説明した。傷をすぐに治す様子を見せられたオーグリーは驚いたが、友人が魔物になったからといって憎む気はないと受け入れた。

吸血鬼の事情

オーグリーは血が必要なのかと尋ね、レントはロレーヌから少しずつ提供してもらっていると答えた。オーグリーは自分の血も差し出せると言ったが、レントは今は足りているとして断った。レントは、人間に戻ることを目標に動いていることも話し、オーグリーは王都での秘匿が必要な理由を理解した。

ホゼー神の加護

ロレーヌが契約条項を整え、レントとオーグリーが署名すると、契約書から通常ではありえない光が放たれた。そこには天秤と錫杖を持つホゼー神らしき像が現れ、契約書へ光を注いだ。契約文はやがて消え、署名もぼやけて見えなくなったため、三人は神官を呼ぶことにした。

神殿長ジョゼ

部屋に来た神官は、神気が満ちていることに驚き、何が起きたのかを尋ねた。神官は契約書を確認し、ホゼー神が直々に加護を授けたものだと判断した。彼女はヴィステルヤのホゼー分神殿の神殿長ジョゼ・メイエであり、三人にホゼー神殿長へ面会できる証を渡した。

ガルブたちへの報告

契約を終えたレントとロレーヌは、オーグリーと別れ、ガルブとカピタンの集合場所へ急いだ。二人は王都での出来事を説明したが、レントが吸血鬼であることは伏せた。ガルブとカピタンは、転移魔法陣の管理を任せる以上、誰に話すかもレントたちが決めてよいと告げ、必要ならハトハラー側の転移魔法陣を消せるとも説明した。

火精茜の行方

王都の正門へ向かう途中、レントとロレーヌはオーグリーが少女に火精茜を渡している場面を見かけた。少女は母のために火精茜を必要としていたが金がなく、オーグリーは余り物だと言って無償で渡していた。レントは、派手な服装との落差を感じつつも、オーグリーが昔からそういう男だったと納得した。

第三章 数々の秘客

転移魔法陣の検証とカピタンとの模擬戦

地下都市への帰還

レントたちは王都を出て、下水道の転移魔法陣から《善王フェルトの地下都市》へ戻った。王都の出立検査は入都時よりさらに緩く、レントは改めてヤーラン王国の大雑把さを感じた。ロレーヌは、王都から帝国の迷宮へ一瞬で戻った事実に、転移魔法陣の規模を実感した。

アカシアの地図

レントは、ここが迷宮なら《アカシアの地図》が使えるのではないかと気づいた。地図を広げると、転移魔法陣の行き先が表示され、使ったことのある転移先は詳しく、未使用のものは国名や都市名まで大まかに記された。ガルブたちはその性能に興味を示し、カピタンは欲しがったが、レントは決闘の賭けにされそうになって慌てて拒んだ。

転移先の危険

レントたちは、未知の転移魔法陣を使って出口を調べるべきか話し合った。ロレーヌとガルブは、出口側が塞がれていた場合、使用者は障害物と融合せず、その上に転移する可能性があると説明した。場合によっては城や玉座の間に出る危険があり、帰還できない恐れもあったため、エーデルたちを使った慎重な調査案が浮かんだ。

師匠たちの覚悟

レントは、エーデルを従魔のような存在だと説明しようとして、自分の秘密に触れかけた。ガルブとカピタンは、弟子の抱えるものは師匠も背負うと言い、レントが罪を犯したのではなく何かに巻き込まれたのだろうと受け止めた。ガルブは少ない情報からレントの変化を察し、カピタンには実際に戦えば分かると告げた。

村長宅の夜

ハトハラーに戻ったレントたちは、村長宅に戻った。インゴはレントが村の秘密を知ったことを確認し、地下都市と転移魔法陣を自由に使えと告げた。レントは、その力が冒険者として大きな財産になる一方、公開すればハトハラーやヤーランが危険に晒されると考えた。

北の森の決闘

翌朝、レントとカピタンは村人に見られないよう、北の森の砦近くで模擬戦を行うことになった。ガルブは審判をロレーヌに任せ、カピタンは本気でレントの成長を見極める姿勢を示した。ロレーヌは、勝敗に関係なくレントの価値は変わらないと答え、カピタンはその言葉に笑った。

カピタンの初撃

レントが先手を取ろうとした瞬間、カピタンはそれ以上の速度で間合いを詰めた。逆手に持った剣鉈は視線から隠され、拳と剣鉈の二段構えでレントを襲った。レントは吸血鬼の視覚で辛うじて攻撃を見切り、片手剣で受け止めたが、師であるカピタンの技量と相性の悪さを痛感した。

気の防御

レントはカピタンに追いついて剣を当てたが、カピタンは体表に凝縮した気で剣撃を弾いた。生身で剣を防ぐようなその技に、レントは気の扱いの奥深さを知った。魔力を込めた剣では通じにくいと見たレントは、剣に込める力を気へ切り替え、別の突破口を探った。

吹き飛ばされたカピタン

レントは気の力と魔物の身体能力、さらに背中からの推進力を合わせて突きを押し込み、カピタンを木へ叩きつけた。だがカピタンは土煙の中でも空気の動きからレントの位置を読み、斬撃を避けた。さらにレントが狙った魔気融合術も糸の罠へ誘導され、カピタン自身には届かなかった。

羽の機動

レントは羽を使って空中を飛び、聖気、魔力、気を込めた一撃を準備した。カピタンは空を飛ぶ相手にも狩人として対応し、レントは自分が力に頼りすぎ、工夫を忘れかけていたことに気づいた。それでも残る力をすべて注ぎ、最後の打ち込みに賭けた。

相打ちの結末

最後の衝突の末、レントとカピタンは互いに膝をつき、勝負は相打ちとなった。カピタンは限界まで弱みを見せずに戦い抜いており、レントは師の力量を改めて思い知った。カピタンはレントに強くなったなと告げ、その言葉は、長く銅級に留まってきたレントの胸を温かくした。

師への告白

模擬戦を終えたカピタンは、レントの羽や人間離れした動きの理由を尋ねた。レントは、もはや隠しきれないことを理解した。ガルブはすでに察しており、カピタンも戦いを通して、レントが普通の人族ではなくなっていることを感じ取っていた。

第四章 在りし日の吸血鬼 

ガルブへの告白とハトハラーの修行

変質した魔力

模擬戦を終えた後、ガルブはレントの魔力の質が以前と大きく変わっていたため、最初に会った時点で違和感を覚えていたと話した。ロレーヌは、それが普通の魔術師にはできないほど繊細な判別であり、ガルブが長年魔力を隠し続けて磨いた特殊技能だと説明した。ガルブは、魔力の変化、戦闘能力、体質、従魔の存在などから、レントが普通ではなくなったと察していた。

吸血鬼の告白

レントは、現在の自分が人族ではなく魔物の体であり、羽があり、夜に眠らなくても平気で、眷属がいて、人の血を主食にしていると打ち明けた。ガルブはその特徴から吸血鬼かと尋ね、レントはおそらく不死者の一種である下級吸血鬼だと答えた。ただし聖気を使え、教会や聖水、太陽も平気であるため、ロレーヌは通常の吸血鬼とは断定しにくいと補足した。

吸血鬼への見方

ガルブは、若い頃には隊商に混じる吸血鬼を見かけたことがあり、本質的には人族と大きく変わらないと語った。吸血鬼が四十年ほど前から念入りに狩られるようになった背景には、ロベリア教の過激化があるとロレーヌは説明した。ガルブは、人々が吸血鬼を恐れる理由には血を吸う嫌悪感だけでなく、不老に近い寿命への嫉妬もあると話した。

龍に喰われた経緯

ガルブに理由を問われ、レントは迷宮で《龍》に喰われ、気づいた時には骨人になっていたと説明した。その後、存在進化によって今の吸血鬼に近い姿へ変わったのだと語った。ガルブとカピタンは《龍》には驚いたが、レントが嘘をついていないことは受け入れた。

変わらない目標

ガルブは、これからどうするつもりなのかと尋ねた。レントは、人間に戻る方法は探すが、神銀級冒険者を目指す目標は変わらないと答えた。吸血鬼であることを知る者は限られており、レントは自分だけでは抜けがあるため、信頼できる者に支えてもらう必要を感じていた。

ロレーヌへの信頼

カピタンに問われ、レントは魔物になって最初にロレーヌを頼ったと話した。魔物に詳しく、レントが魔物になっても変わらないと信じられる相手だったからである。ロレーヌも、レントが魔物になった程度で疎遠になる関係ではなく、研究協力を得られる立場でもあるため拒む理由はなかったと答えた。

ガルブとロレーヌの内緒話

ガルブはロレーヌに耳打ちし、何かを話し込んだ。レントは内容を気にしたが、カピタンはガルブの内緒話に首を突っ込むとろくなことがないと忠告した。かつて自分の妻とガルブの会話に割り込んで、昔の女性からもらった品をめぐる話を宴席で説明する羽目になったためである。

ハトハラーの技術継承

ガルブは、レントとロレーヌにしばらく村で修行していくよう提案した。教えるのは通常の修行ではなく、ハトハラーの役職持ちに受け継がれてきた門外不出の技術だった。カピタンも、転移魔法陣を守るために残された技術であり、管理者となるレントたちに教えるのは適切だと認めた。

古い資料への興味

ロレーヌは、古代都市について残された資料がないかを気にした。ガルブは、歴代の役職持ちが残した資料、とくに魔術師の資料はかなりあるが、古い文字や欠損が多く、読み解くには時間がかかると説明した。ロレーヌは、むしろそういう作業こそ楽しいとして、後で見せてもらうことを望んだ。

カピタンの気の修行

レントはカピタンと森へ入り、模擬戦で見た気の技法を教わることになった。カピタンは、まずレントが今どの程度の気を使えるのか確認した。レントは、身体強化、治癒力強化、武器強化はできるが、気そのものは魔物になってからも大きく変わっていないと話した。

魔気融合術

レントは、魔力と気を剣に込めて木を斬り、幹の反対側を爆発させる魔気融合術を見せた。カピタンはそれを気の強化版のようなものだと見たが、模擬戦で剣鉈を壊した技とは違うと気づいた。レントは、あちらは聖気、魔力、気を融合させた聖魔気融合術であり、武器も壊れるため気軽には使えないと説明した。

第五章 当主ラウラ·ラトゥール

ラトゥール家の少年と気の物質化

ラウラの客人

マルトの外れにあるラトゥール家の屋敷で、ラウラは若い少年と向き合っていた。少年は自分たちの存在を世に示すため協力してほしいと訴えたが、ラウラは今の世界情勢では危険だと諭した。彼女は竜血花の薬液を渡し、衝動を抑えながらマルトを離れて里へ戻るよう勧めた。

里への連絡

少年は隠れて生きることへの悔しさを語ったが、ラウラは生き延びることを優先すべきだと伝えた。ラトゥール家には彼の仲間へ連絡する手段があり、イザークが手配に向かった。ラウラは少年を裏切らないと約束し、宿を引き払って屋敷に滞在するよう勧めた。

別の存在の気配

少年が去った後、ラウラはイザークに、彼が新人冒険者失踪の犯人ではない可能性が高いと話した。少年は里からの家出者であり、衝動を抑える薬も持っていたため、まだ血の匂いはしなかった。ラウラは、マルトには別の危険な存在が入り込んでいる可能性を考え、調査を命じた。

聖魔気融合術の限界

一方、レントはカピタンに魔気融合術と聖魔気融合術を説明していた。カピタンはその技に興味を示したが、魔力や聖気を持たない自分には教えられないと話した。ハトハラーの民は古王国の末裔ではあるものの、魔力持ちは村でも限られており、現在はガルブ、レント、ファーリ程度であった。

気の奥義

カピタンは、気の基礎は身体強化、治癒力強化、武器強化であり、模擬戦で見せた技はその上位技術だと説明した。レントは長く村に滞在できないと心配したが、カピタンは十年の努力で気の練度が上がっているため、数日から数週間で身につく可能性があると話した。

気の物質化

カピタンは気を体表に凝縮し、腕に見えない鎧のようなものを作った。レントが触れると、腕そのものではなく斥力を持つ膜のような感触があった。短剣で斬りつけても刃は弾かれ、レントはそれが気を物質化して防御に使う技術だと理解した。

見えない気の刃

カピタンは、気の物質化は鎧だけでなく刃にも使えると示した。枝の先に見えない気の刃を伸ばし、落ちてきた木の葉を切り裂いたのである。レントが触れると、そこには見えない刀身が確かに存在していた。ただし消耗が激しいため、切り札や最後の手段として使うべき技だった。

気の手袋

カピタンはレントに気の物質化を実践させた。レントは全身を覆うことはできず、手のひらを厚手の手袋のように覆う不格好な気の鎧を作るのが精一杯だった。カピタンは木の棒でそれを何度も叩き、壊れては修復させる練習を繰り返させた。

寿命を削る技法

レントは気を使い果たし、修行はその日で終わった。カピタンは、寿命を削れば気を無理に引き出せる技法もあると話したが、命を削るため勧めないと説明した。レントは自分に寿命があるかも不明であり、変なことをして死ぬ危険もあるとして試すことを拒んだ。

ハトハラーの夕食

村長宅に戻ると、食卓には豪華な料理が並んでいた。そこにはレント、ロレーヌ、義両親、カピタン、ガルブに加え、リリとファーリもいた。二人はガルブとジルダから料理を教わっており、ロレーヌも一緒にハトハラーの伝統料理を作っていた。レントはマルトに戻ってからも作れるように感想を伝えることになった。

第六章 小鼠 

エーデルの異変とマルト炎上

小鼠エーデルの過去

エーデルは、弱肉強食の世界で搾取されながら生きてきた小鼠だった。大きく強く育ったことで、群れを追われた鼠たちが周囲に集まり、エーデルは親分のような立場になっていった。ある日、孤児院の地下に現れたレントに挑み、敗北しかけたことで、エーデルの体は大きく変質した。

レントとの繋がり

エーデルはレントの血を受け、眷属となった。繋がったことで、レントが孤児院の子供たちを守るために地下へ来たことを知り、彼に従うことを受け入れた。エーデルは地下室を守り、さらにマルトの小鼠たちを支配下に置いて、レントの情報網を広げる役割を担うようになった。

吸血鬼の手がかり

エーデルは、レントが関心を持つニヴや吸血鬼について、手下の鼠たちを使って情報を集めていた。やがて、迷宮に潜る怪しい人影と、血を流す冒険者に噛み付くローブ姿の何者かを見つけた。だが相手は覗きに気づき、火炎を放ったため、視界を共有していたエーデルは衝撃を受け、孤児院の地下で意識を失った。

レントの頭痛

ハトハラーでカピタンと気の修行をしていたレントは、突然頭痛を覚えた。不死者の体になってから普通の頭痛とは無縁だったため、レントはエーデルに異常が起きたのだと判断した。カピタンは従魔師の従魔とは違う繋がりに驚いたが、レントはマルトへ戻ってエーデルの無事を確認する必要があると考えた。

マルトへの帰還手段

レントは馬車ではマルトまで五日かかると焦ったが、カピタンは半日ほどで戻れる方法があると告げた。村長宅に戻ると、インゴは《国王》に受け継がれた技術として、普通なら従えられない魔物を従える力を持つと明かした。そして森の広場で指笛を吹き、流星亜竜リンドブルムを呼び寄せた。

流星亜竜リンドブルム

インゴはリンドブルムを完全に手懐けており、レントとロレーヌを乗せてマルトへ向かう準備をした。ロレーヌは認識阻害の魔術をかけ、地上から見つからないようにした。リンドブルムは魔力で空気抵抗を防ぎながら高速で飛び、レントとロレーヌは空からの景色に圧倒された。

燃えるマルト

マルトに近づいたレントたちは、夜の街が朱色に輝いていることに気づいた。それは魔力灯ではなく、街の各所で上がる火の手だった。ロレーヌは消火活動に加わることを決め、レントには街で情報収集をするよう指示した。二人はマルト近くの森に降ろしてもらい、インゴと別れて燃える街へ走った。

街の混乱

マルトの中は熱風と悲鳴に満ち、住民たちは何が起きたのか分からず逃げ惑っていた。レントは一般人から情報を得ようとしたが、冒険者の方が詳しいと言われた。消火活動中の冒険者に声をかけると、火をつけているのは魔物であり、詳しい対策は冒険者組合で行われていると知らされた。

冒険者組合の緊急事態

レントが冒険者組合へ向かうと、組合長ウルフが職員たちに指示を飛ばしていた。ウルフはレントを執務室へ連れていき、今回の件に関係していないか確認した。レントが戻ったばかりだと答えると、ウルフはマルトで吸血鬼の群れが暴れ、街中に火をつけていると説明した。

屍鬼の群れ

ウルフによれば、確認されているのは最下級の吸血鬼である屍鬼だった。屍鬼たちは魔術で顔を人間に見せ、長袖で体を隠して街に紛れていたらしい。冒険者組合は、屍鬼とそれを作り出した吸血鬼が街にいると見て総出で捜索しており、ウルフはレントにも参加を命じた。

番外編 貴族の神託 

ロビスタ伯爵の依頼と千年樹霊の葉

二日酔いのロレーヌ

レントは、飲み過ぎて動けないロレーヌのために具なしのスープと粥を用意し、一人で冒険者組合へ向かった。ロレーヌは研究疲れも重なって二日酔いになっており、レントは遠出を避けるつもりで家を出た。

マルトを訪れた伯爵

ロビスタ伯爵は、素材探しのため護衛の金級冒険者ヘイデンと共にマルトを訪れていた。ロートネル子爵との交流も目的の一つだったが、伯爵の本当の狙いは、中央では見つからない医薬素材を辺境で探すことだった。ヘイデンはマルトの荒っぽさと面白さを語り、伯爵を酒場へ案内した。

酒場のレント

酒場で喧嘩した冒険者が伯爵の席へ吹き飛ばされたが、ヘイデンと仮面の男レントが即座に対処した。レントは伯爵の身分を見抜き、お忍びであることにも配慮した。伯爵はレントの腕と気配りを見て、医薬素材の案内を依頼したいと申し出た。

ロレーヌへの相談

レントはロレーヌに、カートと名乗る貴族らしき男から素材探しの依頼を受けたことを話した。ロレーヌは、その男が高位貴族であり、金級冒険者を連れて辺境に来ている点を怪しんだ。レントも不自然さは感じていたが、悪人には見えず、切羽詰まった様子だったため助けたいと考えていた。

伯爵令嬢エレイン

ロビスタ伯爵の娘エレインは、原因不明の病に苦しんでいた。体には紫がかった黒い斑点が広がり、医師たちにも病名が分からなかった。伯爵は薬師としての知識も持っていたが治療法を見つけられず、娘を救うために新たな素材を探していた。

素材案内の開始

翌日、レントはロレーヌを連れて伯爵とヘイデンに合流した。ロレーヌは銀級冒険者であり魔法薬師でもあると名乗り、伯爵は彼女の力量を見て案内役として信頼した。二人はマルトの露店や裏路地の店を案内し、中央には流通しにくい有用な素材を紹介した。

ヴィロゲトの分霊

伯爵は、植物と肥沃を司る神ヴィロゲトを信仰していた。そこへ人形に宿ったヴィロゲトの分霊が現れ、伯爵の娘の病は風土病である魔虫侵食病の一種だと告げた。通常の薬では伯爵令嬢には効かず、薬効を虫下しにまで高めるため、ラスタ古代林の奥にいる千年樹霊の葉が必要だと示した。

ラスタ古代林への出発

レントは、伯爵への案内依頼はまだ終わっていないとして、翌日ラスタ古代林へ向かうことを決めた。伯爵は神霊の言葉を聞き、娘を救うための手段が残されていることに希望を見出した。レント、ロレーヌ、ヘイデンは千年樹霊の葉を得るため、古代林へ向かうことになった。

千年樹霊との戦い

ラスタ古代林の奥で、三人は巨大な千年樹霊と対峙した。千年樹霊は樹木の巨人のように立ち上がり、巨腕や魔術で襲いかかった。伯爵はその規模に圧倒されたが、ヘイデン、ロレーヌ、レントは怯まず戦いに入った。

弱点への一撃

ヘイデンは大剣で幹へ斬り込み、ロレーヌは千年樹霊の攻撃方法や弱点を観察した。ロレーヌは魔力の集約点が額にあると見抜き、植物魔術で太い蔓を出して千年樹霊の枝を押さえた。開かれた道をヘイデンが突き進み、弱点へ一撃を叩き込む流れが作られた。

伯爵の正体

戦いを終えて街に戻った後、伯爵は三人に深く感謝した。ロレーヌは会話から、カートがロビスタ伯爵であると見抜いた。伯爵は、娘の病だけでなく、病の拡大を防ぐためにも薬を作る必要があり、ヴィロゲトの神託はそのためだったのだろうと考えた。

無茶への注意

伯爵が去った後、ロレーヌはレントの戦い方が無茶だったと指摘した。レントは千年樹霊相手に善戦できたと考えていたが、ロレーヌはヘイデンに正体を疑われる危険を心配していた。レントはローブの効果でごまかせると思っていたが、今後はより注意すると認めた。

ロビスタ領からの手紙

一月後、ロビスタ伯爵から手紙が届いた。エレインには薬が効き、その後に出た罹患者にも大量生産した薬を投与できたと書かれていた。感染は一時続いていたが、正しい対処法を得た伯爵なら終息させられるだろうとロレーヌは見た。

終息の知らせ

さらに二週間後、ロビスタ伯爵から再び手紙が届いた。そこにはロビスタ領での魔虫侵食病の終息と、エレインからの礼が記されていた。レントとロレーヌは良いワインを開け、無事に救われた命と依頼の成功を祝った。

望まぬ不死の冒険者6巻
望まぬ不死の冒険者まとめ
望まぬ不死の冒険者8巻

同シリーズ

望まぬ不死の冒険者

小説版

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望まぬ不死の冒険者 1巻
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望まぬ不死の冒険者 2巻
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望まぬ不死の冒険者 3
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望まぬ不死の冒険者  4
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