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ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えりフィクション(Novel)読書感想

小説「ゲート外伝4.白銀の晶姫編〈下〉」感想・ネタバレ

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ゲート外伝4下  自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり  白銀の晶姫編の表紙画像(レビュー記事導入用) ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり
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  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
    3. ■物語の特徴
  2. 書籍情報
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
  5. 考察・解説
    1. 門の再建工事
    2. レレイの解任と挫折
    3. レディの陰謀と敗北
    4. フォルマル家の内紛
    5. 日本との再接続
  6. 登場キャラクター
    1. 自衛隊・日本政府
      1. 伊丹耀司
      2. 倉田
      3. 栗林
      4. 江田島
      5. 狭間
      6. 健軍
      7. 用賀
      8. 柘植
      9. 出雲
      10. 剣崎
      11. 加茂
      12. 富田
      13. 菅原
      14. 統合幕僚長
    2. アルヌス協同生活組合・神殿関係者
      1. レレイ・ラ・レレーナ
      2. スマンソン
      3. フォルテ
      4. カトー
      5. ロゥリィ・マーキュリー
      6. テュカ
      7. ヤオ
      8. ベルライン
      9. リュドー
      10. ケイネス
      11. メイア
      12. ジゼル
      13. モーター
    3. 職工・街の住民・悪所の住民
      1. ドム
      2. ホッファ
      3. ツム
      4. ミザリィ
    4. 帝国(皇族・貴族・関係者)
      1. ピニャ
      2. モルト
      3. レディ・フレ・カエサル(レディ・フレ・ランドール)
      4. アン・ルナ・リーガー
      5. ブザム
      6. レナ
      7. ハミルトン
      8. ヴィフィータ
      9. ヴェスパー
      10. ガルフ・ス・トリーム
      11. ペディオン男爵
      12. ユイ
      13. メル
      14. アウレア
      15. ゾルザル
      16. グレーン
      17. カティ・ソル・カエサル
      18. ブレンデッド
      19. ディタ
    5. フォルマル家・イタリカ関係者
      1. ミュイ・ロゥ・フォルマル
      2. アルペジオ・エル・レレーナ
      3. アイリ
      4. ルイ
      5. ローバッハ・フレ・ローエン
      6. カイネ
      7. マミーナ
      8. ペルシア
      9. モーム
    6. その他
      1. マルキ
      2. メイベル
      3. 葵梨紗
      4. イフリー
      5. エフリー
      6. 蟲獣
  7. 展開まとめ
    1. 12
    2. 13
    3. 14
    4. 15
    5. 16
    6. 17
    7. 18
    8. 19
    9. 20
    10. 21
    11. エピローグ
  8. ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 一覧
    1. ゲート外伝 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり
    2. ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
  9. 本編
    1. その他フィクション

物語の概要

■ 作品概要

『ゲート外伝4<下>自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり<白銀の晶姫編>』は、現代の自衛隊が異世界(特地)で活躍する姿を描いた『ゲート』シリーズの外伝第四弾の後編にあたる、自衛隊×異世界ファンタジー作品である。 本作は、皇姪レディの策謀によって『門(ゲート)』の再建が度重なる妨害を受ける中、自衛隊と異世界の美少女たちが知恵と奇策を用いて困難を乗り越えていく物語となっている。石工のストライキや賠償金の支払い停止による兵糧攻めの危機に直面しながらも、魔導師レレイは塩精(塩酸)で大理石を溶かす加工法や、無尽蔵な雪と氷を建材とする前代未聞の建設作戦を考案する。帝国の権力闘争やイタリカの政変が複雑に絡み合う中、日本との繋がりを取り戻すための激しい謀略戦と大工事の結末が描かれている。

■ 主要キャラクター

  • 伊丹耀司:陸上自衛隊の二等陸尉。門の再開通において自身の記憶(同人誌の光景)を探査信号の鍵として提供し、日本へと繋がる決定的な役割を果たす。
  • レレイ・ラ・レレーナ:銀髪の魔導師であり、門再建計画の主導者。組合の代表を解任され、過労で倒れながらも決して諦めず、雪と氷を用いた門の建設や化学的な彫呪法を編み出す。
  • レディ・フレ・カエサル(ランドール):帝位奪還と復讐を誓う皇姪。自衛隊の弱体化を狙い、人質を利用したストライキの強要や亜神メイベルを使った金剛石破壊など、執拗な妨害工作を実行する。
  • ピニャ・コ・ラーダ:帝国の皇太女。次期皇帝として日本との友好関係維持に努める。レディの陰謀を察知し、自ら騎馬隊を率いてローバッハの反乱軍勢を鎮圧する勇敢な指導者である。
  • ミュイ・ロゥ・フォルマル:フォルマル家の幼い当主。親族に領地を乗っ取られて投獄されるが、誇りを取り戻す決意を固め、アルペジオやメイドたちと共に脱出を図る。

■物語の特徴

本作の特徴は、異世界ファンタジーの枠組みに、魔法と現代科学・土木技術が融合した問題解決のプロセスを取り入れている点である。大理石の加工に塩酸を用いたり、北海道の雪祭りから着想を得て雪と氷で巨大な門を建設したりと、現実的かつ規格外のアイデアが物語を牽引する。 また、皇位を巡るレディの陰湿な謀略や、それに翻弄されながらも誇りを取り戻していくミュイたちの泥臭い人間ドラマが、読者に深い没入感を与えている。一方で、無数の世界線の中から日本を見つけ出すための鍵が「伊丹が愛読する同人誌の記憶」であったり、帰還後に「最大の罰として激務を伴う一等陸尉への昇進を命じられる」という自衛隊特有の皮肉な結末が用意されていたりする。シリアスな展開の中にコミカルな要素が絶妙なバランスで織り交ぜられている点も、他作品と一線を画す大きな魅力となっている。

書籍情報

ゲート外伝 4<下>自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり<白銀の晶姫編>
著者:柳内たくみ 氏
イラスト:黒獅子
出版社:アルファポリス
発売日:2015年12月23日

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あらすじ・内容

超人気の自衛隊×異世界ファンタジー、外伝文庫化第四弾・後編! イタリカ政変による『門』再建資材の欠乏を、伊丹の機転を用いて何とか克服した自衛隊と異世界の美少女達。しかし工事を妨害せんとする皇姪レディの策略は、次々とアルヌスに忍び寄っていた。限られた食糧や燃料、人質を取られ動けない工人達、そしてレレイを襲う逆境の数々……刻一刻と悪化する状況の中で、伊丹達は無事日本への道を開くことができるのか!?

ゲート外伝4<下>自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり<白銀の晶姫編>

感想

次から次へと襲いかかる妨害や陰謀を、知恵と執念で乗り越えていく過程が非常に印象的な一冊だった。

本巻で特に印象に残ったのは、レディによる執拗な妨害工作である。

イタリカでの政変だけでも十分な脅威だったが、石材加工を担うドワーフたちの家族を人質に取り、仕事を妨害させる手口には驚かされた。さらに帝国では賠償金停止の議論まで持ち上がり、自衛隊が兵糧攻めの危機に直面する。

武力ではなく政治や経済を利用して相手を追い詰めていくやり方には、戦場とは違った恐ろしさを感じた。

そんな状況の中でも『門』の再建を諦めないレレイの姿も印象深い。

資金不足や人員不足だけでなく、組合幹部たちから責任者の座を追われそうになるなど、次々と問題が発生する。それでも前を向き続ける姿には強い意志を感じた。

特に興味深かったのは、精製施設の廃棄物から着想を得て、新たな彫呪法を生み出す場面である。

塩精を利用して大理石を加工する発想は、魔法というよりも技術開発や研究開発に近い面白さがあった。異世界ファンタジーでありながら、現実のものづくりにも通じる試行錯誤が描かれている点が本作らしいと感じる。

さらに、自衛隊の協力によって雪や氷を建材として利用しながら極秘裏に工事を進める展開も面白かった。

圧倒的な力で問題を解決するのではなく、限られた条件の中で工夫を重ねていく姿には思わず引き込まれてしまう。

一方で、ミュイたちの物語も見どころの一つだった。

レディの策略によって領地を追われたミュイが、再び立ち上がろうとする姿には強く共感した。アルペジオやメイドたちと共に誇りを取り戻そうとする姿は応援したくなるものがある。

また、ローバッハ軍との戦いでは、自衛隊の砲撃とピニャ率いる騎馬隊の連携が見事だった。追い詰められていた状況をひっくり返していく展開には大きな爽快感があった。

そして、本巻最大の見どころはやはり『門』の開通を巡る最終局面だろう。

ようやく完成したと思われた矢先、レディに脅された職工によって門柱が崩壊し、さらに亜神メイベルによって重要な金剛石まで破壊されてしまう。

ここまで積み上げてきた努力が一瞬で崩れ去るような展開には、読んでいて思わず言葉を失った。

しかし、そこからの解決策が実に『ゲート』らしい。

レレイが伊丹の愛読する同人誌の記憶を利用して別世界への接続を試みる展開は予想外で、思わず笑ってしまった。シリアスな状況にもかかわらず、こうしたユーモアが自然に入り込んでくるところが本シリーズの魅力だと改めて感じる。

そして最終的に日本の同人誌即売会会場へと繋がる結末は、驚きと楽しさに満ちていた。

読んでいて感じたのは、本巻は単なる異世界戦記ではなく、「絶望的な状況でも諦めずに工夫を重ねる人々の物語」だったということである。

政治的な陰謀や権力争いが描かれる一方で、最後にはどこか笑える展開が待っている。その絶妙なバランスが心地よく、最後まで楽しく読むことができた。

シリーズ全体に繋がる伏線も描かれており、ファンにとっては非常に満足度の高い一冊だった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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考察・解説

門の再建工事

『ゲート外伝4』における門(ゲート)の再建工事の具体的なプロセスや、現場で発生した困難、そしてそれを乗り越えた奇策について解説する。

1. 基礎工事と自衛隊の機械力
門の建設予定地はアルヌス駐屯地内の旧門跡地とされ、陸上自衛隊施設科部隊によって基礎工事が進められた。現代の土木技術が用いられ、具体的には以下の作業が行われた。

・割栗石を敷き詰める
・鉄筋を組んでセメント(モルタル)を流し込む

また、運び込まれた巨大な大理石の荷下ろしにはトラッククレーンが投入され、特地の石工たちはその圧倒的な機械力に驚嘆した。

2. 滑走路を巨大なヤスリにする奇策
大理石を正立方体に成形し、真っ平らに削る作業は、特地の職人の手作業では困難を極めた。そこで伊丹耀司と倉田は、自衛隊の高機動車に三百キロ超の大理石をロープで繋ぎ、航空自衛隊の滑走路を引きずり回すという奇策を実行した。空自隊員たちは滑走路を傷つけられたと激怒したが、均等に力がかかるため石の接地面を見事に平らに削ることができる合理的な方法であった。

3. 彫呪作業の停滞と塩精(塩酸)の利用
大理石の表面に魔法の回路(呪紋)を刻む彫呪は、宮石工の熟練技術が必要だったが、ドムら職人たちのストライキにより作業が完全に停止してしまった。レレイは自ら鑿(のみ)とハンマーを振るって彫呪に挑むも、過労で腱鞘炎になり倒れてしまう。
そんな中、伊丹が雪の塊を誤って食事のパンの上に落とし、パンが溶けた様子を見たレレイは、酸で大理石を溶かす方法を思いつく。以下の手順により、専門職でなくても一度に大量の彫呪を施すことが可能となった。

・溶かしたくない部分を蝋で覆う
・野外浴場セットを転用した塩精(塩酸)のプールに大理石を漬け込む

4. 雪と氷を用いた前代未聞の門柱建設
資金と大理石が枯渇し、レレイが組合の代表を解任される事態に陥る中、アルヌスには本格的な冬が到来し大雪が降った。伊丹と倉田は、自衛隊が北海道の雪祭りで培ってきた雪像造りのノウハウを提案する。

・雪でブロックを作り、表面を体温で溶かして凍らせることで大理石並みの硬度を持たせる
・雪と氷は光を透過するため、魔導の良導体として機能させる

狭間陸将の号令のもと、手先の器用な隊員一千人が極秘裏に動員され、無尽蔵な雪と氷を建材とした門の建設が昼夜を徹して行われた。

5. 妨害を乗り越えた門の開通
事前の石造りの門は上棟式の際にドムたちの細工によって崩壊してしまったが、秘密裏に建設された雪の門は無事に完成を迎えた。落成式の日、レディの差し金で亜神メイベルが乱入し、門を開く鍵となる金剛石を破壊するという絶望的な妨害を受ける。しかし、レレイは伊丹の愛読する同人誌の記憶を情報の鍵として利用し、無数の世界線の中から日本の同人誌即売会会場を見事探し当てた。

まとめ
このように、数々の妨害工作を知恵と奇策で乗り越え、門の再建工事は成功裏に幕を閉じたのである。

レレイの解任と挫折

『ゲート外伝4』において、魔導師レレイ・ラ・レレーナを襲った最大の精神的危機である組合代表からの解任と挫折、そしてそこからの立ち直りについて解説する。

1. 門柱の崩壊と組合代表からの解任
資金や資材が枯渇する中、レレイは塩精(塩酸)を用いて大理石を溶かす加工法を考案し、強引に門再建の工事を進めていた。しかし、迎えた上棟式の日、皇姪レディの配下に家族を人質に取られて脅迫されていた職工(ドムとホッファ)の細工により、完成間近だった門柱は崩壊してしまう。
レレイは意識を取り戻した後も瓦礫を片付けて工事を続行するよう命じた。だが、これ以上の出費はアルヌス協同生活組合の破綻を招くと判断した重役たち(ベルライン、リュドー、ケイネスら)は、組合員総会を招集する。そして以下の者たちの賛同も得て、レレイの組合代表(最高経営責任者)からの解任が決議されたのである。

・旧コダ村出身の元避難民たち

2. レレイの深い絶望と挫折
これまでどんな困難にも立ち向かってきたレレイだったが、解任が可決された瞬間、もう私は要らないのねと呟き、自宅に引きこもってしまう。彼女は、自分が陥った状況を以下のように解釈し、涙を流すほど深く打ちひしがれたのである。

・自分が門を完成させられなかったことは失敗である
・他人に利益をもたらせなくなった自分は不要になった
・成果を出せなかった努力は無価値である
・代表を解任されたことで組合の仲間たちとも他人になってしまった

3. 挫折の背景にある子供時代の欠落
レレイがここまで深く絶望した理由について、カトー老師はレレイには子供だった時期がないからだと語っている。レレイの過去には以下のような背景があった。

・幼い頃から、病弱な母クーを養うために魔導で日銭を稼ぎ続ける過酷な生活を送っていた
・無条件の愛情や庇護を受けた経験がないため、感情だけで結ばれている人間関係は容易に壊れてしまうと考え、形のない繋がりを信用できずに育った

カトーによれば、レレイが組合を創設したのは、赤の他人同士がバラバラにならないための家族のような紐帯(器)を形として作るためだったという。だからこそ、その組合から解任されたことは、レレイにとって自らの居場所と大切な繋がりを完全に失うことを意味していたのである。

4. 伊丹の励ましと再起
絶望するレレイに対し、伊丹はレレイの失敗ではなく妨害した奴らのせいだと語り、決して見放したり嫌いになったりしないと強く伝えた。しかし、何かを得たら対価を支払うべきだという価値観を持つレレイは、伊丹の無償の好意をそのまま受け取ることができなかった。そこで伊丹は、以下のように対応した。

・対価としてレレイの笑顔を要求する
・ロゥリィやテュカ、仲間たちの姿を思い浮かべるよう促す

これを受けて穏やかな笑顔を見せたレレイは、ようやく心の救済を得たのである。

まとめ
この後、伊丹や倉田が雪で作っていた雪だるまをヒントに、レレイは雪と氷を用いた門柱の建設という前代未聞の解決策を閃き、再び立ち上がることになる。レレイの挫折と再起は、彼女の孤独や不器用な内面を浮き彫りにし、仲間たちとの本当の繋がりを見出すための重要な転機となったのである。

レディの陰謀と敗北

レディ・フレ・ランドール(真の名はレディ・フレ・カエサル)が企てた陰謀と、その最終的な敗北の経緯について解説する。

1. 陰謀の背景と目的
レディの陰謀は、自身の出生の真実と立て続けに起きた悲劇が発端となっている。彼女は以下の事実と悲報を受け、心に深い絶望を負った。

・自分が前皇帝グレーンの直系であるカティの遺児であり、正統な皇位継承権を持つと知らされたこと
・直後に養父ブレンデッドを失ったこと
・モルト皇帝の差し金と疑われる賊によって屋敷を焼かれたこと
・秘密裏に交際していた恋人ディタが日本側との戦いで戦死したこと

これらの出来事により、冷酷な復讐鬼として覚醒した彼女は、ディタの仇である日本軍(自衛隊)への復讐と、モルトやピニャからの帝位奪還を決意したのである。

2. 自衛隊と門に対する多角的な妨害工作
帝位奪還の準備を進めるため、レディはモルト皇帝の退位を先延ばしにさせようと画策し、以下の戦略を実行した。

・賠償金の支払い凍結(経済封鎖)
配下のヴェスパーの進言により、自衛隊が帝国からの賠償金に依存している弱点を突いた。支払いを凍結させることで、自衛隊を兵糧攻めにし、戦力と治安の低下を狙ったのである。

・門再建の妨害と職工のストライキ
補給線を回復させないため、配下のブザムをアルヌスに派遣し、門の建設に携わるドワーフの職工たちの家族を人質に取った。そして彼らに理不尽な賃上げを要求するストライキを起こさせ、工事を完全に停滞させた。さらに、再建の中心人物であるレレイを徹底的に追い詰めるよう指示したのである。

3. 落成式での破壊工作と正体の暴露
レディの執拗な妨害にもかかわらず、レレイと自衛隊は塩精(塩酸)による石材加工や、雪と氷を建材とする奇策を用いて門を完成間近まで漕ぎ着けた。するとレディは、人質を利用して職工のドム達を脅し、門柱の基礎部分に細工を施させて門を崩壊させたのである。
崩壊の混乱の中、レディはピニャや来賓の前で自らがカティの娘であることと、帝位を取り戻すための破壊工作であったことを高らかに宣言した。さらにダメ押しとして、潜伏させていた亜神メイベルを操り、門を開く鍵である金剛石を粉砕させた。

4. 陰謀の崩壊と完全な敗北
勝利を確信したレディであったが、事態は彼女の思惑通りには進まなかった。その理由は以下の通りである。

・門の開通
金剛石を失ってもレレイと伊丹は諦めず、伊丹の同人誌の記憶を情報の鍵として代替することで、見事に日本へと通じる門を再開通させた。

・元老院からの拒絶
帝都へ戻ったレディは、カティの娘として帝位を要求した。しかし、彼女の策謀が帝国と日本の外交関係を深刻な危機に陥れたとして、元老院議員達から激しく非難され、誰の賛同も得られなかった。

・モルト皇帝とヴェスパーの裏切り
最も決定的な敗北は、腹心だと思っていたヴェスパーの裏切りであった。ヴェスパーは最初からモルト皇帝の忠実な臣下であり、レディを利用していただけであった。モルトは退位を先延ばしにするために門の再建を妨害したかったものの、日本からの報復を避けるため、すべての責任をレディに背負わせる捨て駒として彼女を泳がせていたのである。

まとめ
最終的に、すべてを失い策謀の責任を被らされたレディは、モルトの命令により、遠く離れた島国であるアトランティア王国への嫁入りという事実上の追放(配流)処分を下される。彼女はヴェスパーへの恨みを口にするが、嘲笑されるばかりで、完全な敗北と屈辱を味わいながら謁見の間を去っていく結末を迎えたのである。

フォルマル家の内紛

『ゲート外伝4』においてイタリカで発生した、フォルマル家の乗っ取りとそれに伴う内紛の経緯について解説する。

1. 内紛の発端とフォルマル家の乗っ取り
フォルマル伯爵領であるイタリカは、アルヌス協同生活組合の免税特権により大陸の物流拠点(ハブ)として大いに繁栄し、莫大な税収を得ていた。しかし、その豊かさに嫉妬した幼い当主ミュイの姉、アイリ(ローエン伯家)とルイ(ミズーナ伯家)が、私兵を率いてイタリカへ侵攻した。フォルマル家の乗っ取りには以下のような動きがあった。

・二人はミュイに対し、ローエン家三男のローバッハとの結婚を強要し、フォルマル家を事実上乗っ取った
・この背景には、皇姪レディの配下である秘書レナが、皇太女ピニャへの報告書を意図的に隠蔽する陰謀が働いていた
・これにより、イタリカの代官ガルフを孤立させることに成功していたのである

2. ローバッハの圧政とイタリカの混乱
ミュイの婚約者を名乗り実権を握ったローバッハは、代官ガルフを帝都へ追放し、フォルマル家の私兵を解散させ、自らの軍勢で街を制圧した。そして領地経営の合理化と称して、以下のような理不尽な賦課金(税金もどき)を次々と新設した。

・道路使用料
・倉庫使用手数料
・猫観察料

支払いを拒む商人を利益窃盗として不当に拘束し、レレイの姉であるアルペジオもこれに巻き込まれ投獄されてしまう。この暴政により商人はイタリカを避けるようになり、交易路は崩壊の危機に陥ったのである。

3. ミュイの投獄と脱出の決意
姉達とローバッハは贅沢三昧な日々を送り、領民や使用人達を虐げていた。ミュイはそんな彼らの振る舞いに反発し、強引に宝石を押し付けようとしたローバッハを平手打ちしたことで、貴賓檻房に投獄されてしまう。
しかし、向かいの牢に囚われていたアルペジオから、戦わないことで領民の誇りを奪い、卑怯者という汚名を残すことになると諭され、ミュイは姉達と決別してフォルマル家と街を取り戻す決意を固める。その後の脱出計画は以下の通りである。

・ミュイはアルペジオを顧問賢者として迎え入れ、共に牢を脱出してメイド達と合流した
・勝ち目のない正面衝突を避けた
・皇太女ピニャや自衛隊の助けを求めてアルヌスへ逃れる計画を立てたのである

4. 雪原の追撃戦と内紛の終結
深雪の雪原を逃げるミュイとメイド達を、ローバッハの軍勢が執拗に追撃する。メイド長カイネらが囮となって立ちはだかり、絶体絶命の危機に陥るが、そこへ伊丹の指示による自衛隊の迫撃砲による精密な威嚇射撃が降り注ぐ。この反撃は以下のような結果をもたらした。

・死傷者を出さない配慮がなされた砲撃であったが、至近距離での爆発にローバッハ軍は戦意を喪失し壊乱状態に陥った
・そこへピニャ率いる親衛隊の騎馬隊が側面から突撃し、ローバッハ軍は完全に抵抗を諦めて降伏した

これによりローバッハは囚われの身となり、フォルマル家の内紛は鎮圧され、イタリカに再び平安が訪れることとなったのである。

まとめ
イタリカの繁栄を狙った親族による理不尽な乗っ取りは、当主ミュイの覚悟と仲間たちの協力、そして自衛隊とピニャの迅速な介入によって幕を閉じた。この事件は、物流拠点としてのイタリカの重要性と、周囲を取り巻く権力闘争の複雑さを浮き彫りにしたのである。

日本との再接続

『ゲート外伝4』における日本との再接続(門の再開通)のプロセスと、その後の自衛隊および帝国への影響について解説する。

1. 奇策による門の再開通
亜神メイベルによって門を開く鍵である金剛石を破壊され、万策尽きたかに見えたが、レレイは以下の奇策に出た。

・伊丹の記憶を情報の鍵として利用し、無数の世界線の中から日本の存在する世界を探し出す
・伊丹が自ら愛読する同人誌のイラストの記憶を鮮明に思い浮かべる
・それを手掛かりにレレイが高位次元で探査信号を発する

その結果、一つの世界線が反応を示した。レレイの合図でテュカが最後の氷を雪の門柱の鍵穴に差し込むと、光が門の内部に集中し、ついに二つの世界が再び接続されたのである。

2. 日本(同人誌即売会会場)への接続
門が開いたものの、向こう側が本当に日本かどうか確認するため、伊丹が偵察役として足を踏み入れた。すると伊丹は出会い頭に何かに衝突し、以下のものと遭遇した。

・向こう側から現れた大量の同人誌や段ボール箱
・元妻である葵梨紗

接続先が日本の同人誌即売会会場の搬入口付近であることを悟った伊丹は、銀座ではないものの間違いなく日本であると皆に報告し、自衛官たちは歓喜の声を上げたのである。

3. 発覚した時差と自衛隊への影響
日本との連絡が再開され喜びに沸いた特地派遣部隊だったが、間もなく門が閉じている間に日本と特地の間で2年半もの時差が生じていたことが判明した。特地での1年半の間に日本では4年が経過しており、隊員たちは年齢や契約期間、免許更新など様々な問題に直面することとなった。この時差と帰還に伴い、自衛隊の主要人物には以下のような変化があった。

・狭間陸将は時差の影響で定年の60歳を迎えており、閉門騒動以降の全ての責任を自ら負うとして、幕僚長への昇進を固辞し退任の道を選んだ
・伊丹は退職願を提出したものの、レレイたちとの関係を維持する上で必要不可欠な存在として統幕長に却下された
・さらに伊丹は最大の罰として、責任ある立場での激務を強いられる一等陸尉への昇進を言い渡され、顔面蒼白となった

4. 帝国の結末とレディの失脚
門の再開通により、講和条約通りモルト皇帝の退位とピニャの即位が規定路線となった。帝位奪還を目論んでいた皇姪レディ・フレ・ランドールは、帝都の謁見の間に進み出て帝位を要求したが、以下の理由から完全な敗北を味わうこととなった。

・日本との関係を危機に陥れたとして元老院議員たちから激しく非難された
・腹心のヴェスパーにも裏切られ、彼が皇帝の忠実な臣下として自分を利用していただけだと悟った
・事実上の配流となる遠国アトランティア王国への嫁入りを命じられた

まとめ
金剛石の破壊という絶望的な状況から、伊丹の同人誌の記憶という奇策によって見事に果たされた日本との再接続は、自衛隊員たちに時差という新たな問題を突きつけた。一方で、妨害を続けてきたレディの陰謀は完全に潰え、彼女は帝都を追放されるという結末を迎えたのである。

登場キャラクター

自衛隊・日本政府

伊丹耀司

自衛隊の幹部であり、重度のオタクである。部下や周囲の女性たちと関わりながら、特地で様々な事件の解決に奔走する。

・所属組織、地位や役職
 陸上自衛隊・二等陸尉。第三偵察隊隊長、後に資源状況調査担当。
・物語内での具体的な行動や成果
 炎龍を討伐し、特地の人々から英雄として称賛された。拉致被害者の救出や、門再建計画に関する任務など、多岐にわたる活動を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特地で「卿」や「名誉族長」の称号を得た。退職願を提出したが却下され、一等陸尉への昇進を言い渡された。

倉田

自衛隊の隊員であり、伊丹の部下である。特地での生活や任務に適応し、現地の女性と親しい関係を築く。

・所属組織、地位や役職
 陸上自衛隊・三等陸曹。
・物語内での具体的な行動や成果
 フォルマル家のメイドであるペルシアに自腹で短刀を贈った。門が閉じることになった際、特地に残留する希望を出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

栗林

自衛隊の女性隊員である。好戦的な性格を持ち、戦闘能力が高い。

・所属組織、地位や役職
 陸上自衛隊・二等陸曹。
・物語内での具体的な行動や成果
 富田に好意を寄せており、婚姻届を用意して迫った。門の閉鎖に伴う撤収時、残留を希望して鉄条網の設置作業に従事した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

江田島

海上自衛隊の幹部である。情報収集や政治的な交渉に関与し、冷静な判断を下す。

・所属組織、地位や役職
 海上自衛隊・二等海佐。
・物語内での具体的な行動や成果
 自衛隊祭の実行委員長を務めた。門再建の妨害工作について、背後にいる勢力の意図を分析し、狭間陸将に報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

狭間

特地派遣部隊の最高指揮官である。部隊を統率し、日本政府の命令と現場の状況の間で決断を下す。

・所属組織、地位や役職
 陸上自衛隊・陸将。特地方面派遣部隊指揮官。
・物語内での具体的な行動や成果
 門の閉鎖に伴う撤退命令と残留希望者の編成を指示した。蟲獣の侵入を防ぐための防御態勢を構築した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 閉門騒動の全責任を自ら負うとして、退任の道を選んだ。

健軍

第四戦闘団を率いる部隊長である。実戦経験が豊富で、部下からの信頼も厚い。

・所属組織、地位や役職
 陸上自衛隊・一等陸佐。第四戦闘団長。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヘリボーン戦術を駆使して帝国軍の拠点を次々と陥落させた。イタリカでピニャ率いる騎士団と連携し、帝国軍を撃破した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

用賀

幹部自衛官の一人である。

・所属組織、地位や役職
 陸上自衛隊・二等陸佐。
・物語内での具体的な行動や成果
 幹部会議に出席し、富田とボーゼスの間に生まれた子供の国籍や法的保護の問題について懸念を述べた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

柘植

幹部自衛官の一人である。

・所属組織、地位や役職
 陸上自衛隊・二等陸佐。
・物語内での具体的な行動や成果
 ストライキを起こしたドムとホッファがレレイに接近した際、私服隊員にレレイの身辺警護と二人の拘束を命じた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

出雲

特殊作戦群の隊員である。

・所属組織、地位や役職
 特殊作戦群。
・物語内での具体的な行動や成果
 帝都の悪所事務所で、剣崎とともに帝国軍の動向やレディの陰謀に関する情報を収集した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

剣崎

特殊作戦群の隊員である。

・所属組織、地位や役職
 特殊作戦群・三等陸尉。
・物語内での具体的な行動や成果
 帝都の悪所事務所に滞在し、出雲とともに情報収集活動を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

加茂

第一戦闘団を率いる部隊長である。

・所属組織、地位や役職
 陸上自衛隊・一等陸佐。第一戦闘団長。
・物語内での具体的な行動や成果
 伊丹の資源探査支援のために部隊の待機と準備を命じられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

富田

自衛隊の隊員である。帝国貴族のボーゼスと関係を持ち、家族を形成する。

・所属組織、地位や役職
 陸上自衛隊・二等陸曹。
・物語内での具体的な行動や成果
 ボーゼスとの間に娘の舞をもうけた。大祭典に合わせて、森の礼拝堂でボーゼスとの結婚式を挙げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ボーゼスの父親であるパレスティ侯爵に認められるため、幹部への昇進を目指すよう求められた。

菅原

日本政府の外交官である。帝国との講和交渉を担い、現地の貴族と交流を持つ。

・所属組織、地位や役職
 外務省・事務担当秘書官。
・物語内での具体的な行動や成果
 ピニャ主催の午餐会で日本の産物を手土産として配り、貴族たちとの関係構築に努めた。シェリーから好意を寄せられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

統合幕僚長

自衛隊の制服組トップである。

・所属組織、地位や役職
 統合幕僚長。海上自衛隊出身。
・物語内での具体的な行動や成果
 銀座騒乱事件の際、国家安全保障会議のメンバーに被害状況を報告した。伊丹の退職願を却下し、昇進を言い渡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アルヌス協同生活組合・神殿関係者

レレイ・ラ・レレーナ

銀髪の少女であり、優秀な魔導師である。伊丹たちと行動を共にし、通訳や交渉でも活躍する。

・所属組織、地位や役職
 リンドン派魔導師。アルヌス協同生活組合の設立者。
・物語内での具体的な行動や成果
 炎龍討伐に貢献し、帝国人から英雄として喝采を浴びた。門の再建計画を主導し、新たな魔法陣を構築した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 若くして導師号の審査に挑むほどの実力を持つ。

スマンソン

アルヌスで生活する学徒である。

・所属組織、地位や役職
 学徒。
・物語内での具体的な行動や成果
 レレイを「老師」と呼んで声をかけた。ブザムの誘いに乗って接触した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

フォルテ

アルヌスで生活する学徒である。

・所属組織、地位や役職
 学徒。
・物語内での具体的な行動や成果
 徹夜明けのレレイが衝動的に着替えようとするのを制止した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

カトー

レレイの師匠である老魔導師。

・所属組織、地位や役職
 魔導師・賢者。
・物語内での具体的な行動や成果
 レレイに対して料理の腕前を暴露し、彼女を怒らせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ロゥリィ・マーキュリー

暗黒神エムロイに仕える使徒である。戦闘能力が極めて高く、常に巨大なハルバートを持ち歩く。

・所属組織、地位や役職
 エムロイの使徒。亜神。
・物語内での具体的な行動や成果
 盗賊や帝国軍の兵士を相手に圧倒的な力で戦闘を行った。伊丹を自身の眷属とし、大祭典で富田とボーゼスの結婚式を執り行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

テュカ

金髪碧眼の精霊エルフである。伊丹を父親と重ね合わせ、深く依存する。

・所属組織、地位や役職
 エルフ。
・物語内での具体的な行動や成果
 月琴を演奏し、精霊魔法を用いて蟲獣の退治に貢献した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ヤオ

ダークエルフの女性である。一族を救うため、伊丹たちに助けを求める。

・所属組織、地位や役職
 ダークエルフ・デュッシ氏族。
・物語内での具体的な行動や成果
 伊丹に炎龍退治を依頼した。アルヌスで警備隊を指揮し、住民の保護と防衛態勢の構築に尽力した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 自らを伊丹の所有資産と宣言し、彼に仕えることを選んだ。

ベルライン

組合の幹部である。

・所属組織、地位や役職
 アルヌス協同生活組合・地域支配人。
・物語内での具体的な行動や成果
 ロゥリィからミュイの件に関する対応を任された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

リュドー

組合の幹部である。

・所属組織、地位や役職
 アルヌス協同生活組合・支配人。
・物語内での具体的な行動や成果
 フォルマル家のお家騒動について、他の支配人たちと状況を話し合った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ケイネス

組合の幹部である。

・所属組織、地位や役職
 アルヌス協同生活組合・支配人。
・物語内での具体的な行動や成果
 退出するロゥリィの様子を見て、昔の思い出を語った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

メイア

PXで働く猫耳の女性である。

・所属組織、地位や役職
 アルヌス駐屯地購買部(PX)・店員。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヤオに対して日本語の日常会話手引き書である赤本の存在を教えた。ディアボの企みを看破し、住民に警告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ジゼル

冥王ハーディに仕える使徒である。竜人種の姿を持つ。

・所属組織、地位や役職
 ハーディの使徒。亜神。
・物語内での具体的な行動や成果
 無銭飲食の罰としてアルヌスの食堂で働かされていた。蟲獣が溢れ出た際、眷属の翼竜を率いて討伐に加わった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

モーター

鍛冶神ダンカンに仕える使徒である。白髪のドワーフ老人。

・所属組織、地位や役職
 ダンカンの使徒。亜神。
・物語内での具体的な行動や成果
 ロゥリィのハルバートを鍛えた。大祭典のためにアルヌスを訪れ、ロゥリィたちと再会した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

職工・街の住民・悪所の住民

ドム

誇り高いドワーフの宮石工棟梁である。

・所属組織、地位や役職
 宮石工・棟梁。
・物語内での具体的な行動や成果
 妻を人質に取られ、法外な賃上げを要求してストライキを扇動した。落石事故の直前に自衛隊に拘束された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ホッファ

ドワーフの宮石工であり、ドムの腹心である。

・所属組織、地位や役職
 宮石工。
・物語内での具体的な行動や成果
 娘を人質に取られ、ドムと共にストライキに加担した。自衛隊に拘束された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ツム

ドワーフの少年である。

・所属組織、地位や役職
 宮石工・弟子。
・物語内での具体的な行動や成果
 同人誌に釣られて無人の区画へ誘い込まれ、伊丹たちに捕らえられて尋問を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ミザリィ

悪所街で働く翼人の女性である。

・所属組織、地位や役職
 娼婦。
・物語内での具体的な行動や成果
 帝都の悪所事務所で自衛隊に協力し、食糧の配給や荷馬車への案内を手伝った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

帝国(皇族・貴族・関係者)

ピニャ

帝国の皇女であり、後に次期皇帝となる。自衛隊と講和を結び、帝国の存続を図る。

・所属組織、地位や役職
 帝国・皇女。次期皇帝。
・物語内での具体的な行動や成果
 イタリカ防衛戦を指揮し、自衛隊と協定を結んだ。ゾルザル派との内戦において正統政府軍を率いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 皇帝モルトの退位に伴い、次代の帝位に就くことが規定路線となった。

モルト

帝国の現皇帝である。権謀術数に長けた老練な指導者。

・所属組織、地位や役職
 帝国・皇帝。
・物語内での具体的な行動や成果
 連合諸王国軍をアルヌスに送り込んで疲弊させ、帝国の優位を保とうとした。講和条約の締結に同意した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 病に倒れて実権をゾルザルに奪われ、後に退位することとなった。

レディ・フレ・カエサル(レディ・フレ・ランドール)

帝位奪還を企む皇姪である。冷酷な策謀家。

・所属組織、地位や役職
 帝国・皇姪。
・物語内での具体的な行動や成果
 自衛隊への賠償金支払い凍結を提案し、ブザムを使って門再建の妨害工作を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 陰謀が露見し、アトランティア王国への嫁入りという事実上の追放処分を受けた。

アン・ルナ・リーガー

レディの側近である女性。

・所属組織、地位や役職
 帝国・リーガー男爵家令嬢。
・物語内での具体的な行動や成果
 レディと行動を共にし、彼女の陰謀を支持した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ブザム

出世欲の強い帝都の警部である。汚れ仕事を請け負う。

・所属組織、地位や役職
 帝国・衛士隊警部。
・物語内での具体的な行動や成果
 レディの指示でアルヌスに潜入し、職工の家族を人質にとってストライキを扇動した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

レナ

ピニャの第二秘書を務める女性。レディの息がかかっている。

・所属組織、地位や役職
 皇太女府・第二秘書。
・物語内での具体的な行動や成果
 ピニャ宛の報告書を意図的に隠蔽し、イタリカの代官ガルフを孤立させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ハミルトン

ピニャの側近である女性騎士。

・所属組織、地位や役職
 帝国・侍従武官。
・物語内での具体的な行動や成果
 ピニャの秘書官として実務をこなし、自衛隊との交渉や宴席の準備に奔走した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ヴィフィータ

ピニャの部下である男装の女性騎士。

・所属組織、地位や役職
 帝国・白薔薇隊長。
・物語内での具体的な行動や成果
 健軍に好意を持ち、深夜に彼の部屋を訪れて兵棋演習を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ヴェスパー

枢密院の分析官である。レディの策謀に加担する。

・所属組織、地位や役職
 帝国・枢密院書記局分析官。
・物語内での具体的な行動や成果
 レディに自衛隊への賠償金支払い凍結を提案した。最終的にレディを裏切った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ガルフ・ス・トリーム

フォルマル家の代官である。

・所属組織、地位や役職
 帝国・代官。
・物語内での具体的な行動や成果
 イタリカの統治を行っていたが、ローバッハの乗っ取りに抗議して追放された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ペディオン男爵

帝国の貴族である。

・所属組織、地位や役職
 帝国・男爵。
・物語内での具体的な行動や成果
 ピニャに対して予算縮小を命じた儀式の件で面会を求めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ユイ

ピニャの第一秘書を務める女性。

・所属組織、地位や役職
 皇太女府・第一秘書。
・物語内での具体的な行動や成果
 ピニャの政務を補佐した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

メル

ピニャの秘書を務める女性。

・所属組織、地位や役職
 皇太女府・秘書。
・物語内での具体的な行動や成果
 ピニャの政務を補佐した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アウレア

フォルマル家に仕えるメデュサ種のメイドである。

・所属組織、地位や役職
 フォルマル家・メイド。
・物語内での具体的な行動や成果
 皇帝の寝室でハリョの戦士に首を刎ねられて死亡した。触手髪で別の戦士の精気を吸い取った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ゾルザル

帝国の第一皇子である。主戦派を率いてクーデターを起こす。

・所属組織、地位や役職
 帝国・第一皇子。皇太子。
・物語内での具体的な行動や成果
 モルト皇帝の病に乗じて実権を掌握し、講和派を弾圧した。自衛隊との戦争を継続しようとした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

グレーン

帝国の先代皇帝である。

・所属組織、地位や役職
 帝国・先代皇帝。
・物語内での具体的な行動や成果
 レディの祖父にあたる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 故人である。

カティ・ソル・カエサル

先代皇帝の直系であり、レディの母親である。

・所属組織、地位や役職
 帝国・皇族。
・物語内での具体的な行動や成果
 モルトの陰謀により命を落としたとされる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 故人である。

ブレンデッド

モルトの弟であり、レディの養父である。

・所属組織、地位や役職
 帝国・皇族。
・物語内での具体的な行動や成果
 レディの出生の秘密を隠し、彼女を守り続けていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 故人である。

ディタ

レディの恋人であった青年。

・所属組織、地位や役職
 エファン伯爵公子。
・物語内での具体的な行動や成果
 日本軍との戦いで戦死したことが、レディの復讐の引き金となった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 故人である。

フォルマル家・イタリカ関係者

ミュイ・ロゥ・フォルマル

フォルマル家の幼い当主である。

・所属組織、地位や役職
 フォルマル家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 親族によって領地を乗っ取られ投獄されたが、メイドたちと共に脱出し、自衛隊の助けを借りてイタリカを取り戻した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アルペジオ・エル・レレーナ

レレイの義姉であり、フォルマル家の顧問魔導師である。

・所属組織、地位や役職
 フォルマル家・顧問魔導師。
・物語内での具体的な行動や成果
 ミュイの脱出を助け、自衛隊へ援軍を求めるようメイドたちに指示した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アイリ

ミュイの姉である。

・所属組織、地位や役職
 ローエン伯家・夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
 私兵を率いてイタリカに侵攻し、ミュイにローバッハとの結婚を強要した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ルイ

ミュイの姉である。

・所属組織、地位や役職
 ミズーナ伯家・夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
 アイリと共にイタリカに侵攻し、ミュイの身辺を自らのメイドで固めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ローバッハ・フレ・ローエン

ローエン伯家の三男である。

・所属組織、地位や役職
 ローエン伯家・三男。
・物語内での具体的な行動や成果
 ミュイの婚約者を名乗りイタリカを制圧したが、自衛隊とピニャの軍勢に敗れて捕らえられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

カイネ

フォルマル家のメイド長である。

・所属組織、地位や役職
 フォルマル家・メイド長。
・物語内での具体的な行動や成果
 ミュイを庇い、彼女の脱出とイタリカ奪還を支援した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

マミーナ

ヴォーリアバニー種のメイドである。

・所属組織、地位や役職
 フォルマル家・メイド。
・物語内での具体的な行動や成果
 ミュイの命令でアルヌスへ走り、自衛隊に援軍を要請した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ペルシア

キャットピープル種のメイドである。

・所属組織、地位や役職
 フォルマル家・メイド。
・物語内での具体的な行動や成果
 マミーナと共にアルヌスへ援軍を呼びに走った。自衛隊の倉田と交際している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

モーム

ヒト種のメイドである。

・所属組織、地位や役職
 フォルマル家・メイド。
・物語内での具体的な行動や成果
 伊丹の専属メイドの一人として奉仕した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

その他

マルキ

帝都の商人である。

・所属組織、地位や役職
 マルキ商会。
・物語内での具体的な行動や成果
 ゾルザルの皇太子府開設祝いに駆けつけ、取り入ろうとした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

メイベル

ズフムートの使徒である。蒼い髪を持つ少女。

・所属組織、地位や役職
 ズフムートの使徒。亜神。
・物語内での具体的な行動や成果
 ロゥリィが執り行う結婚式に乱入し、門を開く鍵となる金剛石を破壊した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

葵梨紗

伊丹の元妻である。

・所属組織、地位や役職
 同人作家。
・物語内での具体的な行動や成果
 特地からやってきたテュカたちを自宅に匿った。日本の同人誌即売会会場で、門を通ってやってきた伊丹と再会した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

イフリー

空自が運用する飛竜である。

・所属組織、地位や役職
 航空自衛隊(備品扱い)。
・物語内での具体的な行動や成果
 瑞原を乗せてアルヌス周辺の哨戒飛行を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

エフリー

空自が運用する飛竜である。

・所属組織、地位や役職
 航空自衛隊(備品扱い)。
・物語内での具体的な行動や成果
 航空機の代替として警戒任務に用いられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

蟲獣

門の向こう側から現れる怪異である。

・所属組織、地位や役職
 怪異。
・物語内での具体的な行動や成果
 門から大量に溢れ出し、自衛隊やアルヌスの住民たちに襲いかかった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

展開まとめ

12

職工たちの動揺とドムの不安

冬の訪れとともに、『門』再建工事では伊丹の発案による滑走路を利用した石材加工が本格化した。空自隊員たちは自ら作業を担い、滑走路への損傷を均等に抑えながら石の成形を進めていた。

その光景を見た職工たちは衝撃を受けた。自分たちにしかできないと思っていた作業が代替されつつあることに動揺し、存在価値を脅かされたと感じたのである。

ホッファは不安を口にしたが、ドムは石材加工の一部が機械化されても、メソンの繊細な手仕事は機械では代替できないと断言した。しかしレレイが諦めず工事を進める姿を見たドムは、本当に何とかしてしまうのではないかという不安を拭いきれずにいた。

組合重役たちの解任計画

工事再開を見守っていたベルライン、リュドー、ケイネスは、『門』再建へのレレイの執着に危機感を強めていた。

彼らは、組合が既に多くの人々の生活を支える巨大組織になった以上、失敗の危険が大きい『門』再建よりも安定経営を優先すべきだと考えていた。

そのため、旧コダ村の住民たちの賛同を集めて組合総会を開き、レレイ、ロゥリィ、テュカを解任する案まで検討し始めた。ベルラインは、必要であれば命を懸けてでも諫言すると語り、三人は計画について話し合いながら丘を後にした。

伊丹たちの調査方針

一方、伊丹たちは完成した石材を保管しながら、依然としてストライキの原因解明に頭を悩ませていた。

栗林は力ずくで事情を聞き出すべきだと主張したが、伊丹は職工たちに何らかの事情があると考え、より穏便な方法を模索した。

その時、図書館へ通う見習い職工のツムの存在に着目した伊丹は、新たな作戦を思いついた。

ツムを誘い出す罠

職工たちが宿舎に引きこもる中、見習いのツムだけは頻繁に外出し、駐屯地の図書館で絵や同人誌を読むことを楽しみにしていた。

その帰り道、ツムは路地に落ちていた同人誌を発見した。さらに先にも次々と同人誌が落ちており、誘惑に抗えなくなったツムはそれらを拾い集めながら無人区画へと入り込んでいった。

そして最後の一冊を拾った瞬間、大きな籠が落とされ、ツムは捕獲された。

伊丹による事情聴取

目を覚ましたツムは、自分を捕らえた相手が伊丹、栗林、倉田であることを知った。

伊丹は単刀直入にブザムとは誰なのか、そして職工たちの罷業と関係があるのかを尋ねた。しかしツムは、話せば破門されるとして口を閉ざした。

伊丹はドムたちから口止めされていると察し、テュカの精霊魔法で無理やり話させる案を持ち出した。だがツムは、それなら舌を噛むとまで言って抵抗した。

羽箒による尋問開始

強硬手段が使えないと判断した伊丹は、二本の羽箒を取り出した。

自分は卑怯者だからこういう手も使うと告げた伊丹は、羽箒を使ってくすぐることで話を聞き出そうとした。さらに、協力すれば秘蔵の同人誌を譲ると持ち掛けた。

こうして倉庫の中には、ツムの悲鳴にも似た笑い声が響き渡ることとなった。

石工たちへの妨害工作の判明

伊丹はツムから得た情報を狭間へ報告した。報告を受けた幹部たちは、石工たちのストライキが何者かの扇動による妨害工作であり、イタリカで起きた政変も同一人物による謀略の可能性があることを共有した。

江田島は、これまで確証が得られなかったため情報を限定していたが、状況から見て自衛隊に敵対的な意図を持つ存在がいることが明確になったと説明した。

黒幕の正体と目的の推測

会議では、妨害工作を行う人物が帝国の政界に影響力を持つ存在である可能性が議論された。

『門』の再建を阻止することで、日本の影響力拡大を防ぎ、帝国を中心とした既存の秩序を維持しようとしている可能性が指摘された。また、帝国内部の政治闘争や講和条約の履行停止、さらには皇帝退位問題との関連も推測された。

しかし狭間は、憶測だけで帝国や皇帝を敵視することは危険であり、自衛隊側が誘導されている可能性も考慮すべきだと警告した。

人質救出の難しさと今後の方針

石工たちの家族が人質になっている以上、『門』再建は進まないという問題が改めて確認された。

別の石工を雇う案や人質救出作戦も検討されたが、帝国領内への介入はできず、人質の居場所も不明であるため即座の実行は困難だった。

情報担当者は、人質がケルン周辺の広範囲に分散している可能性を説明し、現地捜索よりも黒幕や工作員ブザムの足取りを追うべきだと提案した。

その結果、自衛隊は帝都の菅原と連携しつつ、通常の外交的手段を優先して問題解決を図る方針を固めた。

皇太女となったピニャの苦闘

一方帝都では、ピニャが皇太女府を開設して政務に追われていた。

帝国は戦争や内乱、亜人種の登用など大きな変化を経験したばかりであり、ピニャはさらなる混乱を避けるため、父の時代の官僚や制度を可能な限り維持しながら統治を進めていた。

その結果、全ての案件を自ら把握しなければならず、多忙な日々を送っていた。

菅原との会談

菅原はピニャとの面会を求め、昼食の時間に会談することとなった。

ピニャは当初、菅原が賠償金支払い停止を巡る元老院の議論について来たものと考えていた。元老院では、日本政府と直接連絡できない現状を理由に、賠償金支払いを一時停止し、『門』再開後にまとめて支払うべきだとの意見が勢いを増していたのである。

菅原は表面上は冷静に応じたが、賠償金が自衛隊の運営や食糧調達を支えている現状から、支払い停止が重大な問題であると認識していた。

『門』再建妨害の報告

会談の本題として、菅原は『門』再建に携わる石工たちの家族が人質に取られ、それによってストライキが強要されていることを説明した。

さらにイタリカでの政変や妨害工作が連動している可能性があり、帝国内の有力者が関与している疑いがあると伝えた。

この報告を受けたピニャは強い衝撃を受け、自身もイタリカの異変を把握していなかったことに気付いた。直ちに調査を命じるとともに、人質を利用した卑劣な工作を行う者を徹底的に調べ、処罰すると約束した。

菅原はその言葉に礼を述べ、会談を終えて宮殿を後にした。

13

レレイの決意と伊丹の後押し

伊丹がレレイの家を訪れると、レレイの護衛を任されたヤオが出迎えた。レレイは既にドムたちの事情を把握しており、伊丹から家族救出のため帝国側に調査を依頼する方針を聞かされると落胆を見せた。

しかしレレイは諦めておらず、石工たちに頼らず『門』を完成させる方法を探していると語った。魔法による彫呪の代替手段を模索しており、自ら試行錯誤を続ける決意を示した。

伊丹は当初無理をしないよう言いかけたものの、その言葉がレレイの望むものではないと悟った。そして彼女の挑戦を認め、応援すると伝えた。レレイはその言葉を受けて力強く頷いたのである。

賠償金停止問題による危機

一方、自衛隊幹部たちは菅原から届いた報告によって緊張状態に陥っていた。

帝国で賠償金支払い停止が検討されており、それが実行されれば食糧購入資金が失われることになる。試算の結果、手持ち資金と備蓄を合わせても約七十日しか維持できず、その後は部隊組織が徐々に瓦解していく状況であることが確認された。

借金や手形発行といった手段も現実的ではなく、結局は『門』を再建する以外に活路はなかった。狭間はピニャによる元老院説得に期待するとともに、出雲たちを悪所事務所へ配置し、ブザムや人質に関する情報収集を急がせた。

レレイによる彫呪への挑戦

レレイはヤオと共に作業場へ向かった。机上で考えるだけではなく、実際に作業を行うことで突破口を見つけようとしていたのである。

作業場に残されていた道具を用い、自ら石を彫ることを試みたが、そこへドムが現れた。ドムは素人にできる仕事ではないと忠告し、歴代の職人たちが積み重ねてきた試行錯誤の末に現在の方法が確立されたのだと説明した。

それでも諦めないレレイに対し、ドムは彼女でも扱える小型の道具を渡した。さらにツムから事情を聞き出したことを知ると、自衛隊が家族救出のため動いていることを聞かされ、複雑な反応を示しながらも礼を述べた。

ドムによる指導と見守り

その後もドムは毎日のように作業場を訪れた。

当初はレレイが思いもよらぬ方法で『門』を完成させることを警戒していたが、彼女が正面から職人の技術を学ぼうとしている姿を見て安心した。付け焼き刃の技術では成功しないと確信していたのである。

しかしその一方で、ドムはレレイに道具の使い方や作業方法を教え続けた。表向きは怪我や失敗を防ぐためと言いながらも、次第に弟子を指導するような態度になっていった。

失敗を乗り越えるレレイ

四日目、レレイはついに本番用の石へ彫呪を施し始めた。

伊丹も手伝おうとしたが、ドムは素人が増えれば失敗も増え、かえってレレイの負担になると制止した。

その最中、疲労から手元が狂ったレレイは石に大きな傷をつけてしまった。しかし彼女は落ち込まず、自ら傷を活かす形で呪紋の回路を修正する方法を考え始めた。

その姿を見たドムは、なぜそこまで頑張れるのかと尋ねた。レレイは必要だからとだけ答え、伊丹へ視線を向けた。

ドムは再び手助けを申し出て作業場を後にした。礼を言われる資格などないと呟きながら去っていったその言葉は、伊丹とヤオの耳にも届いていたのであった。

14

イタリカ政変の隠蔽発覚

菅原からイタリカの政変を知らされたピニャは、ハミルトンに調査を命じた。その結果、代官ガルフは何度も皇太女府を訪れ、報告書も提出していたことが判明した。

フォルマル領では高額な使用料や罰金によって領民が苦しみ、経済も深刻な状態に陥っていた。しかし帝国の制度上、他家の内政には容易に介入できず、ガルフが追放された以上、ピニャにも打てる手はほとんどなかった。

それでも報告が届かなかった理由を追及した結果、誰かが意図的に報告を握り潰していた可能性が浮上したのである。

第二秘書レナの逮捕

ハミルトンが秘書たちを確認すると、第二秘書レナの姿が消えていた。直ちに親衛隊へ逮捕命令が出され、皇城全体を巻き込む捜索が開始された。

半日をかけた捜索の末、レナは倉庫に隠れているところを発見された。調査によって、ガルフの報告書や救済を求める嘆願書、さらには住民誘拐事件の報告書まで彼女の机から見つかり、政務妨害の証拠が次々と明らかになった。

ピニャはレナに黒幕を問い質したが、レナは一切口を開かなかった。

レディの介入と対立

レナへの追及が続く中、レディが執務室へ現れた。レナはレディに縋り付き、レディも彼女を友人として庇った。

ピニャがレナの行為はレディの指示によるものかと問うと、レディは事実上それを認めた。そしてフォルマル家への介入は皇太女による他家支配と見なされており、多くの貴族が危機感を抱いていると主張した。

さらに、フォルマル家の姉たちから相談を受け、ミュイに婿を迎えさせるよう助言したことや、レナに書類を隠すよう依頼したことも認めた。

ピニャは激怒したが、皇姪であるレディを自ら裁く権限はなく、皇帝へ判断を仰ぐことにした。

モルト皇帝との対面

ピニャとレディはモルト皇帝のもとを訪れた。

そこでレディは、父の死後に屋敷が襲撃され、家屋や財産を失ったことを語った。ただし本当に重要な遺産は別の場所に保管していたため無事だったと説明した。

モルトはその言葉に強い関心を示し、遺産の隠し場所を尋ねたが、レディは秘密であるとして明かさなかった。両者は互いに探り合うようなやり取りを交わした末、モルトは追及を打ち切り、レディを皇城に迎えることを決めた。

その様子を見たピニャは、レディに対してモルトが極めて好意的であることを悟り、自分の訴えが通らないことを理解した。

レディの勝利とレナの解放

予想通り、モルトはレディを厳しく罰することなく譴責処分で済ませた。

その結果、レナも解放されることとなった。ピニャは第二秘書の職を解き、今後永久に官職へ就けないと宣告したものの、それ以上の処罰はできなかった。

レナはレディとアンに守られながら去っていき、ピニャは皇太女府内部にもレディの影響が及んでいる可能性を警戒した。そこで親衛隊から信頼できる従卒を秘書見習いとして採用し、残る秘書たちの監視を行う方針を決めた。

さらにピニャは、今回の陰謀の首謀者がレディであると判断し、枢密院の密偵を使って調査を進めることを決断した。

レディ陣営の思惑

一方のレディ、アン、レナは、自分たちの策が成功したことを喜んでいた。

レディは、自らが表に立って注目を集めることで周囲の目を引き付け、その間にヴェスパーが議会工作を進められると考えていた。

ただし、モルトとの対面では遺された書簡の存在をほのめかし過ぎたと反省していた。秘密を握っていることを匂わせた結果、モルトに疑念を抱かせた可能性があると感じていたのである。

それでもアンは、相手が百戦錬磨の皇帝であることを考えれば十分な成果だったとレディを励ましたのだった。

フォルマル家の浪費生活

フォルマル家の館では、ミュイの結婚式まで滞在するつもりのアイリとルイが、豪華な衣装や贅沢品に囲まれて満足げな日々を送っていた。商人たちは二人の虚栄心を煽りながら高価な商品を売り込み、姉妹は気に入った品を巡って口論するほどであった。

食事の席では大量の豪華な料理が並べられた。食べきれない量を見たミュイは違和感を覚えたが、ローバッハは金を使うことで商人や農民、料理人たちが潤うのだと説明した。アイリとルイもその考えを支持し、これまでのミュイの倹約こそ問題だったと非難した。

ローバッハは自らの手腕によって伯爵家の収益が三倍以上になったと誇り、姉たちも将来を称賛した。しかしミュイはその理屈に納得できず、不安と不満を募らせていた。

ミュイの孤立

ミュイは館内に自分の知る使用人の姿がないことに気付いた。ペルシアたち旧来の使用人は別の仕事へ回され、メイド長カイネも亜人たちの監督役にされていた。

ルイは主と使用人の距離が近すぎたため矯正しているのだと説明し、ローバッハも穏やかな態度でそれを肯定した。しかしミュイは自宅にいながら他人の家にいるような孤独感を覚えていた。

亜人メイドへの嫌がらせ

一方、ヴォーリアバニーのマミーナはミズーナ家のメイドたちから露骨な嫌がらせを受けていた。足を払われて転倒させられた上、汚れた床の掃除や雑用を押し付けられたのである。

それでもマミーナは反発しなかった。自分が抵抗すれば、さらに弱い仲間たちへ被害が及ぶと理解していたからである。

メイド長は現在の帝国では亜人も取り立てられているにもかかわらず、このような差別が続いていることを嘆いた。そしてローバッハや姉たちの浪費によってフォルマル領の経済が悪化し、住民の逃散すら話題になっている現状を憂慮していた。

フォルマル家を守りたい思い

マミーナは命令さえあれば戦う覚悟を示した。しかしメイド長は、それでは反乱になってしまうと制した。武装蜂起すればローバッハは反徒として討伐に動き、最終的にメイドたちは正規軍に押し潰されるだろうと考えていたのである。

マミーナはミュイに姉たちへ逆らう決断は難しいと感じていたが、メイド長はあくまでミュイ自身の決断を待つべきだと諭した。

マミーナにとってフォルマル家は故郷であり誇りであった。そのためミュイのために命を懸けることも惜しくないと考えていたが、今は耐えるしかなかった。

貴賓囚アルペジオとの会話

仕事を思い出したマミーナは、貴賓囚用の食事を運ぶため北舎の檻房へ向かった。

現在収監されている貴賓囚はアルペジオ・エル・レレーナただ一人であった。アルペジオは冷えた食事に不満を漏らしながらも、監獄生活への愚痴を語った。

さらに裁判がいつ始まるのかを尋ねたが、ローバッハが徴税と贅沢ばかりに気を取られて政務を放置しているため、マミーナにも分からなかった。その結果、檻房には未決囚が増え続けていた。

アルペジオは、自分を閉じ込めた妹への恨み言を漏らしながら、不満を募らせていたのであった。

15

『門』再建の突破口

ドムたちに頼らず『門』を完成させると決意したレレイは、自室へ戻ることをやめ、作業場で生活するようになった。伊丹が用意した簡易ベッドを使い、疲れたら眠り、目覚めたら作業を再開する生活へ没入していった。

石材の成形や下絵作業は順調に進み、高機動車やトラックによる運搬も滞りなく行われていた。しかし彫呪作業だけは遅れ続け、レレイはひたすら鏨とハンマーを振るい続けていた。

疲弊するレレイとスマンソンの怒り

工事開始から六十日が経過し、アルヌスには雪が積もり始めていた。レレイは長期間の作業によって腱鞘炎を患い、手は肉刺や傷だらけとなり、全身も疲労で衰弱していた。

その姿を見たスマンソンは激怒し、伊丹に対してどうして止めないのかと詰め寄った。そしてレレイ本人にも休息を求めたが、レレイは仕事を続けなければならないと言って聞き入れなかった。

スマンソンは、自衛隊が『門』完成のためにレレイを酷使しているのだと非難した。しかし伊丹は、レレイが何としてもやり遂げたいと望んでいる以上、その意思を尊重して見守ることも思いやりだと考えていた。スマンソンはその答えに納得できず、作業場を飛び出していった。

ドムと伊丹の対話

スマンソンが去った後、ドムもレレイの状態を案じ、休ませるべきではないかと意見した。

伊丹は、自分も身体を壊してほしくない気持ちはあるが、それを押し付けるべきではないと語った。そしてレレイがやりたいことを最後までやり遂げられるよう支えることが、自分の役目だと説明した。

さらに伊丹は、一気に彫呪を進める方法がないかドムに尋ねたが、ドムは地道に削る以外に方法はないと答え、食事のために作業場を後にした。

塩精による新たな発想

その後、伊丹がレレイの腕を冷やしていた雪を誤って食事の上に置き、パンを水浸しにしてしまった。レレイはその様子を見つめながら、雪が熱で溶けることに着目した。

そこからレレイは、大理石が緑礬油や塩精で溶けることを思い出した。そして大理石を削る代わりに薬品で溶かせばよいという着想に至ったのである。

レレイは興奮しながら、大量の塩精を作るために石油精製施設へ行く必要があると説明した。伊丹は内容を完全には理解できなかったものの、重要な発見だと察し、最優先で健軍一佐のもとへレレイを連れて行った。

レディの茶会とレナの顕彰

一方、レディは皇城西館で茶会を開き、多くの令嬢たちを招待していた。

そこでレディはレナを皆に紹介し、自らの隣の主賓席へ座らせた。参加者たちは驚きながらも拍手で迎え、レナは羨望の視線を浴びて誇らしげな表情を浮かべた。

レディは、この姿を見せることで周囲の令嬢たちに競争心を抱かせ、自らの派閥へ引き込もうとしていた。

『門』再建成功の報告

茶会の最中、ヴェスパー男爵が急報を持って現れた。

彼は、日本の外交官がピニャへ『門』再建の落成予定日を伝えたことを報告した。調査の結果、その情報は事実であり、レレイが新たな手法を考案したことが判明した。

その方法とは、大理石の表面を蝋で覆い、塩精の中へ浸して不要部分だけを溶かすというものであった。これにより大量の石へ一度に彫呪を施すことが可能となり、自衛隊も設備を提供して全面的に協力していた。

報告を聞いたレディは、『門』再建が進んでいる事実に強い怒りを覚えた。

ピニャからの招待

そこへ突然ピニャが現れ、レディにアルヌスへの同行を誘った。

ピニャは『門』の落成式へ元老院議員たちと共に出席し、異世界への道が再び開かれる瞬間を見届けるつもりだと説明した。そしてレディにも、日本との友好の成果を見せたいと語った。

レディは、この誘いが自分への意趣返しであり、失敗を見せつけようとしているのだと即座に理解した。しかし感情を抑え込み、最後まで結果は分からないと答えて同行を受け入れた。

ピニャが去った後も、レディは怒りを隠しきれず、ハンカチを握り締めて悔しさに震えていた。

レディの新たな命令

茶会終了後、レディは怒りを爆発させた。ピニャやレレイへ思い知らせたいと叫ぶレディに対し、ヴェスパーは逆に好機だと語った。

もし落成式で『門』が崩壊したり開かなかったりすれば、日本やピニャの威信は失墜し、レレイの評価も地に落ちると説明したのである。

そのためヴェスパーは、人質となっている石工たちの家族を利用する案を提示した。するとレディは、人質の一部を実際に殺害し、その死体の一部を石工たちへ見せつけることで恐怖を与え、必死に妨害工作をさせるよう命じた。

アンはその命令に反対したが、レディは聞き入れなかった。ヴェスパーは命令を受け入れて退出し、アンはレディを止められない自分の無力さに愕然としていた。

悪所での情報収集

出雲と剣崎は帝都の悪所にある酒場デマーンを訪れた。店へ入る直前、少年の掏摸に遭ったが、剣崎がすぐに取り押さえた。しかし出雲の財布には小石しか入っておらず、少年は失敗に終わった。

出雲は以前、同じような年頃の少年が無理に獲物を追った末に死体となっていたことを語り、今回も少年を危険から遠ざけるつもりだったと明かした。しかし結果的には恨みを買っただけだと苦笑した。

グレイとの会談

酒場ではピニャ配下の騎士グレイと合流した。

グレイは、襲撃されたケルンの生存者から話を聞いたものの、住民たちの監禁場所までは判明しなかったと報告した。三人は捜索方法を検討したが決定的な手掛かりは得られなかった。

その後グレイは、レディが陰謀の中心人物である可能性が高まっていることを説明した。レディの動機は、日本側によって想い人を失ったことへの私怨だと判明していた。

さらにピニャが『門』再建の落成式を利用してレディを挑発した結果、レディ配下のヴェスパーがならず者と密会する動きを見せたため、疑惑はさらに強まったのである。

レディ陣営への疑念

グレイはヴェスパーが帝国の密偵組織である枢密院所属の分析官だと明かした。

しかし出雲は、ピニャ陣営へ情報を流す者とレディ側で活動する者が同じ組織に属していることに違和感を覚えた。レディを黒幕として印象付けようとする意図すら感じたため、人質救出については独自調査も進めるべきだと判断した。

剣崎も、救出作戦が罠である可能性を警戒し、その意見に同意した。

娼婦ネットワークによる調査

悪所事務所へ戻った出雲と剣崎は、ミザリィを通じて娼婦たちの情報網を利用した。

娼婦たちは客との会話から集めた断片的な情報を共有し、悪所の動向を把握していた。その情報によると、ならず者ゴンゾーリは近年急速に勢力を拡大しており、定期的に帝都の外へ手下を送り出していることが判明した。

特にある手下が八日周期で行動していることから、帝都から四日ほど離れた場所に拠点がある可能性が浮上した。

剣崎はこの情報を有力な手掛かりとして持ち帰った。

ゴンゾーリへの尋問決定

剣崎の調査結果と、グレイが追跡したヴェスパーの接触先が一致したことで、特殊作戦群はゴンゾーリが人質事件に関与していると判断した。

出雲は隊員たちに対し、ゴンゾーリを尋問して人質の監禁場所を明らかにするよう命令した。

リニエの正体

一方、悪所で暮らす掏摸のリニエは、十二歳のハリョであった。仲間に舐められないよう十四歳と偽り、ヒト種の少年として生活していた。

守ってくれる存在を失ったため、盗みを生業として一人で生きていたが、以前から目を付けていた獲物である出雲たちを尾行していた。

ゴンゾーリ制圧と情報入手

尾行の末、リニエは出雲たちがゴンゾーリの屋敷を急襲する場面を目撃した。

武装した部下たちはあっという間に制圧され、ゴンゾーリ自身も引きずり出された。出雲はベッサーラの末路を引き合いに出して説得し、ゴンゾーリは観念して質問に答え始めた。

尋問終了後、出雲たちは秘密を守ると約束して立ち去ったが、ゴンゾーリは報復を恐れてその場から逃亡した。

リニエへの誘い

帰路についた出雲は、隠れて様子を窺っていたリニエを見つけた。

リニエは強がって見張っていたと答えたが、出雲は面白い奴だと笑った。そして、この街を出たいなら自分について来い、もっとまともな生き方を教えてやると誘ったのであった。

16

ミュイの苦悩と朱尖晶の選択

ミュイは、イタリカを救うためには姉達に逆らわなければならないと理解しながらも、戦いによる犠牲を恐れ、その決断を下せずにいた。

その頃も姉達は宝石商を招いて贅沢を楽しんでいた。ミュイは数ある宝石の中から朱尖晶のネックレスに惹かれたが、姉達はそれを紅玉の偽物として興味を失った。

ローバッハも朱尖晶を偽物だと断じたが、ミュイは石そのものの美しさに価値があると考え、朱尖晶を選んだ。

ローバッハとの衝突と投獄

ローバッハはミュイの選択を認めず、自分の選んだ紅玉のネックレスを無理やり着けさせようとした。

ミュイが拒絶すると、ローバッハはさらに強引になったため、ミュイは反射的に彼を平手打ちした。その一撃でローバッハは尻餅をつき、激怒して衛兵にミュイを拘束させた。

衛兵隊長の進言によってローバッハは処罰を教育と位置付け、ミュイを貴賓檻房へ収監したうえで食事を禁じる処分を命じた。

牢内での自問自答

檻房に入れられたミュイは、商人から譲られた朱尖晶のネックレスを見つめながら、自身の考えを整理していた。

商人はミュイに審美眼があると語ったが、ミュイには自信がなかった。しかし父が亜人達を受け入れた結果、多くの人々がイタリカやフォルマル家のために戦った事実を思い返し、その在り方こそ正しいのではないかと考えた。

一方で、その正しさを守るために姉達と争うべきかどうかについては答えを出せずにいた。

アルペジオとの出会い

そんなミュイに、向かいの檻房にいた女性が声をかけた。その女性は妹に見捨てられた哀れな姉だと名乗り、ミュイは姉達に家を乗っ取られた哀れな妹だと応じた。

女性は、ミュイが人々の命を大切にしていることは理解できるが、皆が誇りを持って生きることについて考えが足りないと指摘した。

この街の人々は、自分達で街を守り育ててきた誇りと、ミュイが街を取り戻してくれるという希望を支えに踏みとどまっているのだと語った。そして戦わない選択がもたらす屈辱についても考えるべきだと説いた。

ミュイの決意

アルペジオの言葉を聞いたミュイは、姉達に屈すればマミーナ達だけでなく多くの者が再び誇りを失うことになると悟った。

そして、自分のためなら我慢できても、仲間達を惨めなままにしておくことだけは耐えられないと気付いた。

その結果、ミュイは街と家を取り戻すことを決意し、それが姉達との決別を意味しても構わないと宣言した。

アルペジオはその決断を尊重し、自らが顧問賢者として力を貸すと申し出た。そして自らの正体がアルペジオ・エル・レレーナであることを明かした。

メイド達との合流

その後アルペジオは通風口を利用して脱出し、ミュイを連れてメイド達の大部屋へ向かった。

大部屋では劣悪な環境に耐える亜人メイド達が暮らしていた。そこへ突然ミュイが現れたことで館中に噂が広まり、多くのメイド達が集まった。

やがてメイド長カイネも到着し、ミュイとの再会を喜んだ。さらにミュイはアルペジオを紹介し、顧問賢者として迎え入れた。

アルヌスへの退避計画

戦闘メイド達はすぐにローバッハ追放を提案したが、アルペジオは現有戦力では勝ち目がないと冷静に分析した。

議論の末、ミュイをまず安全な場所へ逃がし、そこから支援を求める方針が検討された。帝都へ向かう案には不確定要素が多かったため、ペルシアはアルヌスへの退避を提案した。

アルヌスには頼れる縁者や協力者がおり、安全を確保したうえで皇太女ピニャへの連絡も可能であると考えられた。皆がその方針に賛同し、行動計画がまとまった。

『門』再建工事の進展

一方アルヌスでは、レレイが考案した塩精による加工法によって『門』再建工事が順調に進んでいた。

塩精プールで大理石を加工する方法により、多くの作業を専門職以外でも行えるようになり、自衛官や学徒、傭兵達も参加して作業は滞りなく進められていた。

その様子をドムとホッファは複雑な思いで見守っていた。

ドム達による破壊工作

ドムとホッファは、家族を人質に取られていることからブザムの要求に従わざるを得なかった。

ブザムは将来必要になった時に『門』を破壊できるよう細工を施せと命じていた。

雪が降り続く夜、二人は警備の目をかいくぐって建設現場へ侵入した。そして門柱予定地の敷石を持ち上げ、その下の層に細工を施した。

翌朝には雪が積もり、その痕跡は完全に覆い隠されたため、誰にも気付かれることはなかったのである。

17

アルヌス到着とレディの不満

ピニャ率いる一行は雪景色の中を進み、アルヌスへ到着した。ピニャはこれまで何度も訪れた土地でありながら、雪に覆われた景色に新鮮な楽しさを感じていた。

一方のレディは寒中の旅を不満に思い、日本への敵意もあって終始不機嫌であった。アルヌス到着後、ピニャはボーゼスの屋敷へ向かうことにしたが、レディは旅の疲れを理由に旅亭で休むことを選んだ。

またピニャは護衛を付けたが、レディは監視目的だと皮肉を述べた。ピニャもそれを否定しつつ監視の意図を隠そうとせず、両者の対立は周囲の者達を疲弊させていた。

駐屯地訪問と皇位を巡る会話

翌日、ピニャやレディは元老院議員達とともにアルヌス駐屯地を表敬訪問し、自衛隊による歓迎を受けた。

儀式終了後、疲労を見せるレディに対し、ピニャは将来王座に就くならこの程度で疲れていては務まらないと語った。その言葉からレディは、自身の野心を見抜かれたのではないかと警戒した。

さらにピニャは、自分は皇帝になりたいから皇太女になったのではなく、ゾルザルに帝国を任せられないと考えて行動した結果だと明かした。皇位を巡って多くの人々が命を落としてきたことを知るレディは、その発言に強い憎悪を抱き、帝位獲得への決意をさらに固めた。

『門』再建現場の視察

アルヌス滞在二日目、一行は『門』再建現場を訪れた。

レディは工事そのものではなく、自身の妨害を乗り越えたレレイという少女に会うことを目的としていた。そのため衣装や装飾に細心の注意を払い、万全の姿で臨んでいた。

しかし現場に入るためには全員が『へるめっと』を着用しなければならず、レディは苦渋の末にそれを受け入れた。

完成間近の『門』

現場へ入った一行は、巨大な門柱を目の当たりにして驚嘆した。

アーチ部分もほぼ完成しており、あと少しで『門』が完成することは誰の目にも明らかであった。スガワラは、この状況から日本と特地の連絡は間もなく回復し、議員達が懸念している事態は起こらないと説明した。

賠償金支払い停止を支持していた議員達も、実際の工事の進捗を見て考えを変え始めていた。

レレイとの対面

スガワラに呼ばれたレレイは、作業員との打ち合わせを終えて一行のもとへやって来た。

レディは威厳によって相手を圧倒しようと考え、自ら前へ出た。しかし大理石に映った自分の姿が『へるめっと』によって滑稽に見えたことで動揺した。

さらにレレイが頭を下げた際、『へるめっと』が転がり落ちるという失敗を見せたものの、その慌てる姿を見たレディは思わず可愛らしいと感じてしまった。

自尊心の強いレディにとって、他者の魅力を認めることは大きな精神的打撃であり、深い動揺を受けた。

レレイとの会話による屈辱

レディは気を取り直して挨拶しようとしたが、レレイから以前の叙勲式で会っていると指摘された。

レディは全く覚えていなかったため、ピニャからも指摘されて羞恥に襲われた。

話題を変えようと門柱について尋ねたが、レレイから帝都の建築でも同じ原理が使われていると返され、再び言葉に詰まった。

レディは終始レレイに主導権を握られ、精神的な劣勢から抜け出せなかった。

上棟式への誘いとレディの企み

その後、スガワラはアーチの要石を嵌める上棟式への参加を一行に勧めた。

上棟式は作業者への慰労と建物の安全を祈願する儀式であり、完成前の節目として行われるものであった。

レディは要石が嵌められ、アーチが自立する瞬間を見ることができると知ると、門柱を倒壊させる計画は明日に実行されるのだと確信した。

そして、門柱が崩れた時に日本側やレレイ、ピニャが狼狽する姿を想像し、その光景を楽しみにしながら上棟式への参加を決めたのである。

上棟式当日の決行命令

アルヌス書海亭に滞在していたレディは、自室へ戻るとブザムを呼び出し、作戦の決行を落成式ではなく翌日の上棟式に変更すると告げた。

突然の変更にブザムは戸惑ったが、準備は整っていると答え、石工達への指示を出すためにその場を後にした。

上棟式への期待と警備への不安

上棟式当日、自衛官達は『門』再建の大きな節目を迎えたことに喜びを感じていた。作業現場には多くの自衛官や関係者が集まり、完成間近の門柱を見守っていた。

しかし江田島二等海佐だけは、人が集まることで妨害工作への防御が弱まることを懸念していた。柘植に警戒強化を求めたが、現場には武装隊員や狙撃手、警務隊員が配置されており、これ以上の対策は難しい状況であった。

それでも江田島は不安を拭えず、私服の警務隊員を作業員の中へ紛れ込ませるよう依頼した。

要石設置と門柱の完成

やがてクレーンによって要石がアーチの頂上へ運ばれ、慎重に設置された。

続いて支えとなっていた足場が取り外され、集まった人々は固唾を呑んで見守った。ドムとホッファも人混みの中からその様子を見つめていた。

二人は職人としてレレイの成果を認めながらも、自分達の事情によって妨害を続けなければならない現実に苦しんでいた。

そしてレレイがアーチの自立を宣言すると、現場は歓声に包まれた。ロゥリィやテュカはレレイを祝福し、作業員達も互いの努力を称え合った。

妨害工作の開始

上棟式の盛り上がりを見つめながら、レディはブザムに満足げな言葉をかけた。ブザムは頃合いだと判断し、ドムとホッファへ合図を送った。

二人は餅栗を拾う人々に紛れながら門柱へ近づいた。

その頃、伊丹は餅栗を撒きながら周囲を監視していた。集まった者達の顔を把握していた伊丹は、ドムとホッファの存在にも気付いていたが、二人が工事の結果を見届けに来たのだと考えていた。

しかし二人の様子を見た瞬間、伊丹は強い違和感を覚えた。家族を人質に取られた二人が、最後の妨害工作に利用されている可能性へ思い至ったのである。

門柱崩壊の予兆

伊丹は柘植に二人を止めるよう叫んだが、その時には既に二人は行動を開始していた。

レレイの周囲には護衛や私服隊員が集められたものの、伊丹は二人の真の狙いが分からなかった。

そして二人が地面へ身をかがめた瞬間、伊丹は門柱の土台が崩れる未来を幻視した。

門柱の崩壊を悟った伊丹はレレイ達へ逃げるよう叫び、倉田と柘植を足場から突き落として避難させた。さらに自らも飛び降りながら周囲へ警告を発した。

その直後、門柱の基礎部分が傾き始め、巨大なアーチは崩壊へ向かった。

崩れ落ちる『門』とレレイの決断

レレイは逃げることを選ばず、魔法によって落下する石材を支えようとした。

しかし崩れ始めた石材は膨大な数に及び、一人で支え切れる量ではなかった。足場は押し潰され、巨大な石塊が豪雨のように降り注いだ。

ロゥリィ、テュカ、ヤオも仲間を守ろうとしたが、門柱全体の崩壊は止められなかった。

レレイは最後まで天蓋を見上げ続けたまま、『門』は内側へ向かって完全に崩れ落ちた。

崩壊後の混乱とレディの告白

現場は騒然となり、狭間や健軍をはじめ多くの者が呆然と立ち尽くした。

その中で元老院議員達は、賠償金支払い停止や対日政策の見直しをピニャへ進言した。

そんな状況を見ていたレディは高らかに笑い、自らが今回の破壊工作を仕組んだと認めた。そしてディを殺した日本への復讐であると語った。

ピニャは激しく非難したが、レディは門の崩壊によって講和条約破棄の口実ができたと主張した。

さらに元老院議員達もレディに同調し、日本との対立を主張したため、ピニャは苦悩しながらも反論することができなかった。

瓦礫の下からの救出

伊丹は落下の衝撃で負傷しながらも立ち上がり、レレイ達の捜索を始めた。

レレイが最後に魔法を使っていたことを信じ、隊員や作業員達とともに瓦礫の撤去作業を進めた。

やがてロゥリィのハルバートが発見され、生存の希望が生まれた。さらに瓦礫を取り除くと、ロゥリィ達の声が聞こえ始めた。

ロゥリィが岩を吹き飛ばしたことで、ロゥリィ、テュカ、ヤオの三人は無事に救出された。

しかしレレイは意識を失い、額から血を流していた。三人を守るために魔法を使い続けた結果であり、衛生科によって医療施設へ搬送された。

伊丹は三人の無事を確認すると、安堵しながら彼女達を抱きしめた。

組合によるレレイ解任

夕方になると雪が激しく降り始め、建設現場は沈鬱な空気に包まれていた。

その中でレレイは意識を取り戻し、瓦礫の撤去と工事続行を命じた。しかし組合幹部達は、これ以上工事を続ければ組合そのものが破綻しかねないと判断した。

ケイネス、ベルライン、リュドーらは協議を重ねた末、組合を守るために行動を起こす決意を固めた。

そしてその日の組合員総会において、アルヌス協同生活組合はレレイ・ラ・レレーナの解任を決議したのであった。

18

レレイの療養と深い落胆

診療施設での検査の結果、レレイは額の裂傷や打撲、捻挫、内出血を負っていたものの、安静にしていれば回復すると診断された。そのためレレイは自宅へ戻り、静養することになった。

雪が降り続く中、倉田は食料を届けるためレレイの家を訪れた。伊丹はレレイを元気づけようと餅栗を勧めたが、レレイは窓の外を見つめたまま口にしなかった。伊丹の気遣いも届かないほど、レレイは深く落ち込んでいたのである。

組合食堂で語られる解任の衝撃

倉田が組合食堂へ向かうと、自衛官や住民、ロゥリィ、テュカ、学徒達が集まっていた。しかし普段の賑わいはなく、食堂には沈鬱な空気が漂っていた。

倉田はレレイの様子を尋ねられ、昨日の出来事が大きな打撃になっていると語った。

レレイは意識を取り戻した後も『門』再建の続行を主張したが、ベルラインやリュドー、ケイネスらは組合にそれ以上の負担は耐えられないと説明した。そして旧コダ村出身の組合員達によって解任動議が提出され、可決されたのである。

子供達からも少し休むべきだと諭され、ロゥリィやテュカも反対を取り下げた。だがレレイは、自分はもう必要とされていないのだと受け取り、家へ引きこもってしまった。

レレイの苦悩に気付く仲間達

レレイが見せた打ち拉がれた表情は、周囲の者達に大きな衝撃を与えた。

どんな困難にも動じず目標へ向かい続けてきたレレイが、自分は不要だと思い込み傷つく姿を見て、皆は自分達の決定が与えた影響の大きさを痛感した。

しかし自分達の判断にも理由があったため、誰も後を追うことができず、その苦しみを見守るしかなかったのである。

カトーが語るレレイの過去

ロゥリィやテュカの求めに応じ、カトーはレレイの過去を語り始めた。

カトーによれば、レレイには子供として過ごした時代が存在しなかった。物心がついた頃から母親を支えるために大人として振る舞わなければならなかったからである。

レレイはアルハンプラ・ルルドの女性集団の中で生まれ育った。病弱な母クーを養うため、幼い頃から魔導の才能を使って鑑定を行い、稼いだ金で食料や薬を買い続けていた。

古物商モイはレレイの才能を高く評価し養女に迎えようとしたが、レレイは母親を支えるために断ったのであった。

母を支えるため働き続けた幼少期

レレイは幼くして物体の記憶を読み取る能力を発揮し、盗品かどうかを見抜く鑑定を仕事にしていた。

しかし稼ぎは全て病弱な母の生活費と薬代に充てられ、自分のために使うことはなかった。

やがてクーはモイ・ハ・レレーナとの結婚を決め、レレイにも子供らしい生活を送らせたいと語った。周囲はそれによって状況が改善すると思ったのである。

結婚後も変わらなかった生活

しかし現実は違っていた。

モイは損得勘定を重視する人物であり、病弱な妻にかかる費用を惜しんで不満をぶつけた。そのためレレイは結婚後も変わらず働き続け、母を支える生活を続けることになった。

この経験が、他人に甘えず、欲しいものには必ず対価を支払うというレレイの価値観を形成したのである。

人との繋がりを形に求めたレレイ

カトーは、レレイが形のない感情的な繋がりを信用できないまま育ったと説明した。

そのためレレイは、師弟関係や組合、雇用関係といった明確な形を持つ繋がりを重視していた。協同生活組合も、皆が離れ離れにならないための家族のような繋がりを形にしたものではないかとカトーは語った。

だからこそ、その組合から解任されたことは、単なる役職喪失ではなく、大切な繋がりを失うことを意味していたのである。

スマンソンの反発と新たな問い

重苦しい空気の中、スマンソンだけは解任を前向きに捉えた。

組合との関係がなくなれば、レレイは導師として学徒達に専念できると主張し、自分達が支えれば良いと言い切った。そしてレレイのもとへ向かうため食堂を飛び出していった。

残されたフォルテは、レレイがなぜ学徒の道を志したのかをカトーへ尋ねた。

それに対しカトーは、一言で言えばレレイの母親が亡くなったからだと語り、さらに過去を語ろうとしたのであった。

レレイの母との別れ

レレイの母クーは無理がたたり、ほどなくして亡くなった。

市場から戻ったレレイは、いつものように薬を母へ差し出したが、クーはもう応えることはなかった。レレイは必死に薬を飲ませようとしたものの叶わず、七歳にして母の死を理解したのである。

そんなレレイに対し、モイは投資する相手を間違えたと語り、自分を投資先にするよう勧めた。レレイはその言葉を呆然と聞くしかなかった。

アルペジオとの家出

その様子を見ていた義姉アルペジオは、モイの発言に激怒した。

元々モイとアルペジオの関係は険悪であり、絶えず罵り合いが続いていた。だが母への思いまで投資と呼び、それを失敗扱いしたモイの言葉によって、アルペジオの怒りは限界に達した。

アルペジオはレレイの手を引いて家を飛び出し、その後はマルキの集団に身を寄せた。二人は各地を流浪しながら成長し、やがてカトーの弟子となったのである。

カトーが語るレレイの性格形成

カトーは、レレイが弟子になった頃には既に現在の性格が固まっていたと説明した。

幼い頃から母を支えるために生きてきた経験が深く根付いており、自分でも矯正できなかったと語ったのである。

レレイの涙と自己否定

一方、自宅で療養していたレレイは雪景色を眺めながら伊丹へ謝罪した。

レレイは『門』を完成できなかったことを失敗と考え、自分は利益をもたらせなくなったため不要だと言われたのだと思い込んでいた。そして涙を流しながら、自分は何も差し出せなくなったと訴えた。

伊丹は嫌いになどならないと伝えたが、レレイは成果を出せなかった努力は無価値であり、組合の仲間とも他人になってしまったと考えていたのである。

伊丹の励ましとレレイの笑顔

伊丹は『門』の崩壊はレレイの責任ではなく、妨害工作をした者達のせいだと語った。そして感謝こそすれ、恨んだり嫌ったりすることはないと断言した。

しかしレレイは、好意には対価を支払わなければならないという考えを変えられなかった。そのため伊丹は、自分への対価として笑顔を見せてほしいと頼んだ。

レレイは最初こそ上手く笑えなかったが、伊丹に促されてロゥリィやテュカ、ヤオ、仲間達の姿を思い浮かべた。その結果、穏やかで優しい笑顔を見せることができたのである。

その光景を偶然見たスマンソンは、伊丹へ向けられた笑顔に激しい嫉妬を抱いた。

安らぎの眠りと笑顔の練習

その後レレイは深い眠りについた。

目を覚ますと、伊丹が椅子に座ったまま眠っていた。自分が伊丹の手を握っていたため、伊丹はその場を離れず付き添っていたのである。

レレイは伊丹の好意への対価として笑顔を見せようと考えた。そして手鏡を使いながら一人で笑顔の練習を続けた。

翌朝、目覚めた伊丹へレレイは微笑みながら挨拶した。伊丹は手鏡を見て事情を察し、レレイは恥ずかしさのあまり毛布に潜り込んだのであった。

雪の街で見つけた新たな可能性

二人が食事へ向かうため外へ出ると、街は深い雪に覆われていた。

レレイは組合へ雪下ろしや除雪の指示を出そうと考えたが、自分が既に代表者ではないことを思い出した。

街では倉田達が雪かきの合間に巨大な雪だるまを作っていた。倉田は北海道の雪祭りの話をしながら、雪で『門』を作ればよいのではないかと冗談交じりに提案した。

その言葉から、倉田と伊丹は雪のブロックに呪紋を刻み始めた。レレイが魔法を流してみると、雪は優れた魔導の伝導性を持つことが判明した。

さらに伊丹が透明な氷を持ち出したことで、レレイは雪と氷を用いた新たな『門』の建設方法を思いついたのである。

雪の門再建計画の始動

雪と氷でも『門』を再建できると確信したレレイは、その可能性を伊丹へ伝えた。

これを受けて狭間は極秘裏に千人の隊員を選抜し、新たな建設作戦を開始した。

狭間は、積雪を日本へ帰るための最後の機会だと語り、自衛隊が長年培ってきた雪像建設の技術を活用すれば不可能ではないと説明した。また妨害工作を避けるため、完成直前まで工事を秘密にする方針も示した。

こうして雪と氷を材料とする新たな『門』建設が始まった。既に設計図や模型は存在し、材料も豊富であったため、これまでレレイを苦しめていた資材や労働力の問題は解消され、残された課題は建設そのものだけとなったのである。

19

『門』再建の発表とレディの動揺

陸上自衛隊とレレイによる『門』再建の情報は、工事開始から三週間後、完成間近となった段階で初めて公開された。

狭間は書海亭を訪れ、レディへ落成記念式典の招待状を手渡した。レディは『門』建設が続いていたことを初めて知り、自衛隊が妨害に屈せず工事を進めていた事実に衝撃を受けた。

レディはレレイを組合から追放し、資金や労働力も断ったはずだと困惑したが、ブザムらから雪を利用して『門』を建設したと説明される。雪によってこれまでの妨害策が無効化されたことを理解したレディは激しく憤ったのである。

レディの焦燥と新たな妨害計画

レディは『門』が再開通すれば、講和条約に従ってモルト皇帝が退位し、ピニャが即位することになると知らされた。

元老院工作があと一歩のところまで進んでいると聞いたレディは、レレイの命を奪うことまで口にした。しかしアンとベルラインは、それを行えば日本側の報復を招くと諫めた。

レディは忠告を受け入れたものの、『門』の再開通だけは阻止しなければならないと命じ、新たな妨害工作を指示したのである。

追跡から逃れるミュイ一行

一方、ミュイ達は追跡者に追われながら移動を続けていた。

ペルシアとマミーナは後方に残って足止めを申し出ようとしたが、ミュイはそれを許さなかった。二人を大切な戦力だと考えていたためである。

そこでアルペジオは、二人にアルヌスへ先行し援軍を求める役目を与えた。ペルシアとマミーナはその指示を受け、全力でアルヌスへ向かった。

残されたミュイ達は、背後から迫る追手の気配を感じながら進み続けたのであった。

スマンソンとレディの密会

スマンソンはレディ達と接触し、『門』の再開通を阻止したいと告げた。

彼はレレイが自分の気持ちを理解せず伊丹ばかりを見ていることに不満を抱いており、自分の価値を思い知らせたいと考えていた。

レディ達はその協力を歓迎し、誰も傷つけずに『門』を妨害する方法を尋ねた。そこでスマンソンは、『門』の開通に必要な金剛石を破壊すればよいと説明したのである。

金剛石破壊計画

スマンソンは金剛石が伊丹の私物として組合倉庫の金庫に保管されていることを明かした。

ブザム達は金剛石やハーディの護符の存在に難色を示したが、レディは問題ないと断言した。そして、それらを解決できる人物に心当たりがあると語った。

さらに以前同行していた蒼髪の少女が現在もアルヌスに潜伏していることを明かし、その人物を利用する考えを示したのである。

疲労した学徒達とスマンソンの葛藤

レディとの会談を終えたスマンソンは組合食堂へ向かった。

そこには雪製の『門』建設に参加していた学徒達が集まっており、三週間にわたる極秘工事と撤収作業によって疲労困憊していた。

伊丹は彼らの労をねぎらい、好きなだけ飲食するよう伝えた後、レレイと共に食堂を後にした。

スマンソンはレレイを呼び止めたが、レレイは伊丹に呼ばれると何事もなかったかのようにトラックへ乗り込んだ。その姿を見たスマンソンは、自身の裏切りへの罪悪感を抱きながらも見送るしかなかった。

援軍要請とペルシア達の到着

移動中のトラック内で、伊丹はスマンソンの態度について尋ねた。しかしレレイは彼の行動を理解できないと答えた。

その時、トラックが急停止した。前方には疲労しきったペルシアとマミーナが倒れ込んでいたのである。

伊丹が駆け寄ると、二人は助けを求めながら倉田の名を口にした。そして安心したように伊丹へ抱きついた後、そのまま意識を失ったのであった。

20

雪原での逃走劇

フォルマル家のメイド達は、膝まで埋まる深雪の中を懸命に走り続けていた。疲労によって何度も転倒しながらも互いに支え合い、後方から迫るローバッハ軍から逃れようとしていた。

やがて高齢のメイド長カイネが力尽きて膝をつくと、他のメイド達も座り込み始めた。彼女達は囮となってミュイだけでも逃がそうと申し出たが、ミュイはそれを許さず、全員に生き延びる努力を続けるよう命じた。

カイネが抱えていた先代ゆかりの箱まで捨てさせ、自らの命を最優先するよう強く求めたことで、メイド達は再び立ち上がり前進を続けたのである。

ローバッハ軍の執拗な追撃

ローバッハは馬上から兵達を叱咤しながら追撃を続けていた。

深雪によって軍の進撃速度は著しく低下していたが、メイド達との距離は徐々に縮まっていた。焦ったローバッハは兵を鞭打ち、さらにはミュイを捕らえた者への褒賞や昇進を約束し、兵士達の欲望を煽った。

その結果、兵士達は獲物を追う獣のような様相を見せながら追撃を続けたのである。

カイネの決断とメイド達の覚悟

状況の悪化を悟ったカイネは、このままでは全滅すると判断した。

ミュイだけでも生き残らせるため、戦闘能力の高いメイド達に主君を連れて先行するよう密かに指示した。そしてアルペジオにもミュイを託した。

その直後、メイフラワー達はミュイを抱えて前進し、カイネを含む他のメイド達はその場に残った。

ミュイは必死に制止したが、残されたメイド達は両手を広げてローバッハ軍の前に立ちはだかり、主君を逃がすための盾となる覚悟を示したのである。

迫撃砲による救援

ローバッハは残ったメイド達を無視して突撃を命じた。

その瞬間、白煙が雪原を覆い、軍勢の視界を奪った。勢いを止められなかった兵達が白煙の中へ突入すると、遠方から伊丹の指示による迫撃砲射撃が開始された。

陸上自衛隊による精密な砲撃はローバッハ軍の周囲へ着弾し、爆風によって軍勢を混乱させた。死者を出さないよう配慮された射撃だったが、その効果は絶大であり、ローバッハ軍は統制を失って壊乱状態に陥った。

その隙にメイド達は再び前進を開始したのである。

ピニャの突撃とローバッハ軍の降伏

砲撃によって敵軍が混乱する中、ピニャは親衛隊を率いて出撃した。

加茂が武力行使を制止したものの、ピニャは構わず突撃を命じた。騎馬隊が側面から襲いかかると、砲撃と挟撃によって完全に戦意を失っていたローバッハ軍は抵抗を放棄した。

兵達は武器を捨てて降伏し、追撃戦は終結したのである。

ブザムの最後の妨害計画

翌朝、ブザムは新聞で『門』の落成式の記事を読みながら、なおも妨害を諦めていなかった。

彼は手下のボニー達に、組合事務所から『門』の起動に必要な金剛石を盗み出すよう命じた。警務隊の捜査が迫っていることから、自身は帝都へ逃れるつもりであった。

しかし計画を指示した直後、江田島が現れたのである。

ブザムの逮捕

江田島はドムが描いた似顔絵を示し、ブザムの正体を追及した。

さらにドムとホッファが現れ、脅迫の犯人としてブザムを指差した。加えて、誘拐されていたドワーフ達も特戦群によって救出されていたため、ブザムは言い逃れできなくなった。

ブザムはイタリカで裁かれるなら問題ないと強気な態度を見せたが、ローバッハが既に捕らえられていることを知らされると狼狽した。

そのまま警務隊に拘束され、連行されていったのである。

ロゥリィへの新たな疑惑

ブザム逮捕後、江田島はロゥリィと会話を交わした。

ロゥリィは組合運営から手を引き、本来の神殿の務めに専念すると語った。すると江田島は、石油精製施設で発見された鉄管の損傷と、『門』崩落時にロゥリィが切断した足場材の傷が一致していると指摘した。

その傷がロゥリィのハルバートによるものだと説明し、石油精製施設破壊への関与について事情を聞こうとした。

ロゥリィはその指摘を受け、意味深な笑みを浮かべたのであった。

21

『門』落成記念式典

厳重警備の中で迎えた式典当日

『門』の完成を祝う記念式典当日、アルヌスは晴天に恵まれた。自衛隊による除雪作業によって会場は整備されていたが、『門』周辺には鉄条網や対戦車バリケードが設置され、完全武装の自衛官や戦車まで配備される厳重な警備体制が敷かれていた。

組合の新執行部は来賓席が『門』から遠く離されていることに不満を抱いたが、リュドーは組合が途中で支援を打ち切った以上、自分達に関係者を名乗る資格はないと諭した。

一方でレレイは開門の準備を進め、テュカは氷塊を抱えて門柱上部で待機した。伊丹は金剛石を取りに向かい、式典は開始の時を迎えたのである。

ピニャとレディの対立

会場にはピニャとレディが到着した。

ピニャはミュイとアルペジオ、さらに捕らえられたローバッハをレディに紹介した。レディは、自らの策によって追い詰めたはずのミュイや、重要な協力者だったローバッハがそこにいることに動揺した。

ピニャはレディの策謀は全て失敗したと宣言し、自らが帝位に就いた暁にはレディ派を一掃すると告げた。しかしレディはまだ終わっていないと応じた。

その直後、伊丹が慌てて戻り、狭間へ報告を行ったことで会場には不穏な空気が広がったのである。

レディによる妨害の宣言

レディは来賓達の前で、『門』の落成式は失敗すると宣言した。

『門』を開くために必要な鍵が失われたため、二度と日本へ通じる『門』は開かれないと説明したのである。

その言葉に続いて会場の一角で騒ぎが起きた。人々が逃げ惑う中心には剣を持ったニカブ姿の少女がおり、その切っ先は金剛石へ向けられていた。

少女が素顔を見せると、その正体は蒼髪の亜神メイベルだった。ピニャはレディの企みを理解し、激しく非難した。

さらにレディは、自らがカティ・ソル・カエサルの娘であり、本来なら帝位は自分のものだったと明かした。そのため帝位を取り戻そうとしているのだと宣言したのである。

ロゥリィとメイベルの対峙

ロゥリィ、レレイ、テュカはメイベルへ近づき説得を試みた。

しかしメイベルはズフムートへの忠誠を理由に拒絶し、話し合いの余地はないと断言した。そしてレディが自らの出自を公表する瞬間を待っていたことも明かした。

レディの宣言が響き渡った瞬間、メイベルは金剛石へ向けてディーヴァを振り下ろした。

レレイは空間隙を開き、ロゥリィはその中を駆け抜けてディーヴァを受け止めた。さらにテュカも矢を放ったが、メイベルはあえてディーヴァを折り、折れた刀身を金剛石へ叩き込んだ。

神器の威力を受けた金剛石は粉々に砕け散ったのである。

砕かれた希望と伊丹の行動

金剛石が破壊されたことで、レレイは全ての希望が失われたと感じた。

自衛官達にも絶望と落胆が広がった。しかし伊丹だけは諦めていなかった。

伊丹は砕け散った金剛石の欠片を拾い集め始めた。その姿を見たレレイも思考を取り戻し、伊丹と共に欠片を集め始めたのである。

ロゥリィによるディーヴァ奪取

一方ロゥリィは激怒し、メイベルへ猛攻を加えた。

激しい争奪戦の末、ロゥリィはディーヴァを奪い取ることに成功した。だがメイベルは、ディーヴァは血液によって養われなければ朽ち、いずれ自分の胸に心臓が再生すると説明した。

それを聞いたロゥリィは不敵に微笑み、ディーヴァで自らの胸を切り裂いた。そしてディーヴァを自分の体内へ押し込んだのである。

ディーヴァは心臓と血管の姿へ戻り、ロゥリィの体内へ根付いていった。

メイベルへの宣告

激しい苦痛に耐えた末、ロゥリィは立ち上がった。

そしてディーヴァはもう朽ちることがなく、メイベルの胸に心臓が再生することもないと告げた。

それはメイベルが今後、心臓を持たぬまま生き続けることを意味していた。喜びや高揚を失った存在として生きる運命を突きつけられたメイベルは、必死にディーヴァを返すよう求めた。

しかしロゥリィはそれを拒絶し、取りすがるメイベルを払いのけた。そして鬱陶しいと言い放ち、ハルバートによる一撃を叩き込んだのである。

『門』再開通への挑戦

金剛石の代替案の発見

ロゥリィとメイベルの戦いが終わる頃、伊丹とレレイは金剛石の破片を集め終えていた。

伊丹は集めた破片で修復できないかと期待していたが、この世界の魔法では不可能だった。落胆する伊丹を見たレレイは何かを思いつき、大丈夫だと告げた。

その後レレイは主賓席へ向かい、レディに対してこれから『門』を開くと宣言した。金剛石以外でも代用可能であることを明かし、伊丹にもその方法が実現可能であると説明したのである。

伊丹の記憶を利用した儀式

レレイは伊丹を本来金剛石を安置するはずだった台座へ座らせた。

そして『門』を開くために、伊丹の記憶を利用して日本の存在する世界を探すと説明した。伊丹は記憶を直接共有することに強く抵抗したが、レレイは意識を接続し、五感を伴う正確な記憶を思い出すよう求めた。

意識が繋がったことで伊丹はレレイの膨大な思考や感情を直接感じ取り、レレイもまた伊丹の感情を共有した。二人は互いの本心を隠せない状態となりながらも、協力して作業を続けたのである。

記憶の選定と世界線探索

伊丹は日本を象徴する風景を思い浮かべようとしたが、十分な精度で再現できなかった。

そこでレレイは、人間の記憶に強く残る好きなものを使うよう助言した。伊丹は自らが愛読していた作品のイラストを思い浮かべ、その記憶を鮮明に再現した。

レレイはその情報を手掛かりに探査魔法を発動した。『門』の宝石が強く輝き始め、伊丹の記憶を基準に無数の世界線へ探索信号が放たれたのである。

スマンソンの妨害

会場では学徒達がレレイの成功を願う中、スマンソンだけは失敗を望んでいた。

彼はレレイが失敗して絶望すれば、自分が支えることで振り向いてもらえると考えていた。その執着は次第に伊丹への憎悪へ変わっていた。

そんな時、ロゥリィとメイベルの戦いで飛び散ったディーヴァの破片を見つけたスマンソンは、それを利用して伊丹を襲撃しようとした。

魔法で浮かせた破片は伊丹へ向かって飛んだが、レレイの警護を続けていたヤオが五円玉のお守りを投げて弾き落とした。

スマンソンは警務隊に取り押さえられ、抵抗しながら連行された。江田島はさらに警戒を強化するよう指示したのである。

高位次元での探索

伊丹とレレイは意識を共有したまま、無数の世界線が交差する高位次元の光景を見ていた。

そこでは世界線が光の筋として無限に広がり、『門』が開閉するたびに世界同士が接触していた。レレイは探査信号を繰り返し発し、伊丹は記憶の精度を高め続けた。

やがて一つの翠色に輝く世界線が反応を示した。レレイはその反応を確認し、日本の存在する世界を発見したと確信したのである。

『門』の再開通

レレイの合図に従い、テュカは最後の氷を門柱へ差し込んだ。

すると光が『門』の内部へ集中し、水面のような光景が出現した。二つの世界が再び接続されたのである。

伊丹とレレイは慎重に『門』へ近づき、周囲の自衛官や亜神達も警戒態勢を取った。レディは遠くからその様子を見つめ、自らの敗北を認めた。しかし復讐は目くらましに過ぎず、次は帝都で皇帝になると宣言して立ち去った。

日本への通路の確認

『門』が開いたものの、向こう側が本当に日本かどうかは分からなかった。

そのため伊丹が偵察役を引き受けることになった。過去の経験から不安を抱きながらも、伊丹は『門』へ足を踏み入れた。

しかし直後に何かと衝突し、その場へ尻餅をついた。『門』の向こう側から現れたのは大量の同人誌や段ボール箱であり、さらに一人の女性が姿を見せた。

その女性は伊丹の元妻である葵梨紗だった。散らばった荷物や状況から、伊丹は接続先が日本の同人誌即売会会場付近であることを理解した。

そして振り返った伊丹は、向こう側が確かに日本であると皆へ告げたのであった。

エピローグ

日本との再接続と歓喜

『門』が日本へ繋がったことで、自衛官達は歓声を上げた。多くの隊員が我先にと『門』を渡ったが、向こう側で大勢の人々を目にして圧倒され、すぐに引き返してきた。

狭間は日本政府や防衛省への連絡を指示した。その一方で伊丹やレレイ達の姿が見当たらず、伊丹が日本側へ渡ったままであることを知らされて頭を悩ませた。

レレイの偉業への称賛

伊丹は日本側の会場で好きな作品の同人誌を集めて回っていた。ロゥリィ、テュカ、ヤオも同行しながらレレイの成功を称えた。

ロゥリィはレレイが無限に存在する世界同士を結ぶ道を切り開いたことで、人類に無限の可能性を与えたのだと語った。レレイは自らが見た無数の世界線を思い出し、その言葉を受けて誇らしげに微笑んだ。

帝都での報告とレディの失脚

二週間後、帝都に戻ったピニャはモルト皇帝へ『門』再開通の成功を報告した。

続いてレディも謁見の間に進み、自身がカティの娘であることを理由に帝位を要求した。しかし元老院議員達は賛同せず、むしろレディの策謀によって帝国と日本の関係が危機に陥ったことを厳しく非難した。

レディはヴェスパーへ助けを求めたが、彼は皇帝の忠実な臣下として振る舞った。レディは、自分が利用されていたことを悟ったのである。

モルトとヴェスパーの真意

議員達が退出した後、モルトとヴェスパーはレディに真相を語った。

モルトは『門』が開かなければ退位せずに済み、自衛隊を帝国へ取り込むつもりだったと明かした。また妨害工作の責任は全てレディに負わせるつもりだったと告げた。

レディは遠国であるアトランティア王国への嫁入りを命じられた。悔しさを抱えながらも命令を受け入れ、ヴェスパーへの恨みを口にした。しかし嘲笑するヴェスパーを前に、自らの敗北を痛感しながら謁見の間を去っていった。

その後モルトは、カティ暗殺の証拠となる書簡の捜索をヴェスパーへ命じた。

時差がもたらした影響

五週間後、日本と特地の連絡は完全に再開された。

しかし調査の結果、『門』が閉じていた期間中に日本と特地との間で二年半もの時差が発生していたことが判明した。特地で一年半が経過する間に、日本では四年が過ぎていたのである。

そのため隊員達は年齢や契約期間など様々な問題に直面した。銀行口座には四年分の給与が積み上がっていた一方で、免許や契約、人事面で多くの問題が発生していた。

狭間の退任決意

狭間もまた時差の影響で定年を迎えていた。

防衛省は幕僚長への昇進を提案したが、狭間は閉門騒動以降の責任を自ら負うため、その申し出を辞退した。特地派遣部隊が行った様々な問題行動についても、自分一人が責任を背負う代わりに他者を不問とするよう求めたのである。

健軍と加茂はその決断を惜しみながらも受け入れていた。

伊丹への処分

伊丹は統合幕僚長室へ呼び出された。

統幕長は退職願を提出した理由を問いただした。伊丹は、自らの行動を間違いだとは思わないが、自衛官として同じ状況で再び同じ行動を取ってしまうため不適格だと考えたと説明した。

しかし統幕長は退職願を却下した。日本政府と自衛隊は、レレイ達との関係を築くうえで伊丹を必要としていたのである。

さらに伊丹の功績と問題行動を同時に公表する方針が決まり、処分として一等陸尉への昇進が言い渡された。責任ある立場で大量の仕事を任せることこそ最大の罰だと説明され、休暇も期待するなと告げられた。

それを聞いた伊丹は顔面蒼白となり、統幕長はその反応を見て満足げに笑ったのであった。

ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 一覧

ゲート外伝 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり

ゲート外伝1上 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 南海漂流編の表紙画像(レビュー記事導入用)
ゲート外伝1<上> 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり<南海漂流編>の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
ゲート外伝1下 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 南海漂流編の表紙画像(レビュー記事導入用)
ゲート外伝1<下> 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり<南海漂流編>の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
ゲート外伝2上 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 黒神の大祭典編の表紙画像(レビュー記事導入用)
ゲート外伝2<上> 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり<黒神の大祭典編>の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
ゲート外伝2下 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 黒神の大祭典編の表紙画像(レビュー記事導入用)
ゲート外伝2<下> 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり<黒神の大祭典編>の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
ゲート外伝3上 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 黄昏の竜騎士伝説編の表紙画像(レビュー記事導入用)
ゲート外伝3<上> 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり<黄昏の竜騎士伝説編>の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
ゲート外伝3下 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 黄昏の竜騎士伝説編の表紙画像(レビュー記事導入用)
ゲート外伝3<下> 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり<黄昏の竜騎士伝説編>の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
ゲート外伝4上  自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり  白銀の晶姫編の表紙画像(レビュー記事導入用)
ゲート外伝4<上> 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり<白銀の晶姫編>の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
ゲート外伝4下  自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり  白銀の晶姫編の表紙画像(レビュー記事導入用)
ゲート外伝4<下> 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり<白銀の晶姫編>の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

ゲート0 -zero-  自衛隊 銀座にて、斯く戦えり  〈前編〉の表紙画像(レビュー記事導入用)
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり【前編】の表紙。
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ゲート0 -zero-  自衛隊 銀座にて、斯く戦えり  〈後編〉の表紙画像(レビュー記事導入用)
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり【後編】の表紙。
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本編

ゲート1<上>自衛隊 彼の地にて、斯く戦えりの表紙画像(レビュー記事導入用)
ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり〈1〉接触編〈上〉の表紙。
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ゲート1下  自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり  接触編の表紙画像(レビュー記事導入用)
ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり〈1〉接触編〈下〉の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
ゲート2上 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 炎龍編の表紙画像(レビュー記事導入用)
ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり〈2〉炎龍編〈上〉の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
ゲート2下 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 炎龍編の表紙画像(レビュー記事導入用)
ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり〈2〉炎龍編〈下〉の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
ゲート3上 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 動乱編の表紙画像(レビュー記事導入用)
ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり〈3〉動乱編〈上〉の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
ゲート3下 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 動乱編の表紙画像(レビュー記事導入用)
ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり〈3〉動乱編〈下〉の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
ゲート4上 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 総撃編の表紙画像(レビュー記事導入用)
ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり〈4〉総撃編〈上〉の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
ゲート4下 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 総撃編の表紙画像(レビュー記事導入用)
ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり〈4〉総撃編〈下〉の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
ゲート5上 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 冥門編の表紙画像(レビュー記事導入用)
ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり〈5〉冥門編〈上〉の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
ゲート5下 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 冥門編の表紙画像(レビュー記事導入用)
ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり〈5〉冥門編〈下〉の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。

その他フィクション

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