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フィクション(Novel)凶乱令嬢ニア・リストン読書感想

小説「凶乱令嬢ニア・リストン11」感想・ネタバレ

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凶乱令嬢ニア・リストン11の表紙画像(レビュー記事導入用) フィクション(Novel)

凶乱令嬢10巻 レビュー
凶乱令嬢まとめ
凶乱令嬢12巻 レビュー

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  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
    3. ■ あらすじ
  2. 書籍情報
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
  5. 考察・解説
    1. 弟子たちの武芸修行
    2. 迎冬祭と機兵戦
    3. 機兵孤児の支援
    4. 次世代乗り物機馬
    5. 王国開国への展望
  6. 登場キャラクター
    1. アルトワール王国関係者・リストン家
      1. ニア・リストン
      2. リノキス
      3. シグ
      4. バルジャ
      5. カルア
      6. ミト
      7. リグナー
    2. マーベリア王国 王族・重臣
      1. ハザール・シルク・マーベリア
      2. リビセィル・シルク・マーベリア
      3. クランオール・シルク・マーベリア
      4. シィルレーン・シルク・マーベリア
      5. エンデヴァー
    3. 不忍(密偵)
      1. アカシ・シノバズ
      2. サクマ・シノバズ
    4. 機兵学校 掃討科
      1. イース
      2. ミケ・エンカード
      3. ダイオン・イベース
      4. ホロウ・ギブンス
    5. 機兵学校 機兵科
      1. クワイト・サブリ
      2. エーゲ・ロージス
      3. ジーゲルン・ゲート
      4. ロック・フリック
      5. サンエ・ギブンス
    6. 機兵学校 機兵技師科
      1. サーキッズ・ハーバー
    7. 魔犬機士団・東の砦
      1. イルグ・ストーン
    8. フライヒ工房
      1. ジート・フライヒ
      2. フーゴ
      3. アルゴ
      4. ジャンゴ
      5. ジートの奥さん
    9. 商業ギルド
      1. ガッダム
      2. リプレ
    10. セドーニ商会
      1. ダロン
    11. その他
      1. 孤児院の子供たち
      2. 魔法医
  7. 展開まとめ
    1. プロローグ
    2. 第一章 気に入らない話
    3. 第二章 二輪試作機と三輪試作機
    4. 第三章 機兵と戦う
    5. 第四章 次の段階へ
    6. 第五章 イルグの独断
    7. 第六章 王様の進退
    8. エピローグ
    9. 特典ショートストーリー『とある夜の現状確認』
  8. 凶乱令嬢ニア・リストン 一覧
  9. その他フィクション

物語の概要

■ 作品概要

『凶乱令嬢ニア・リストン11』は、圧倒的な武力と前世の記憶を持つ令嬢ニア・リストンが、異世界で独自の覇道を突き進む痛快ファンタジーアクション小説である 。本作の舞台となるマーベリア大陸では、人類の生存を脅かす強大な「虫」との長きにわたる戦いが続いており、人型兵器「機兵」の乗り手が崇拝される特異な文化が形成されている 。

物語は、アルトワール王国から留学生としてマーベリアへやってきて数か月が経過し、現地での生活基盤を固めたニアの動向を中心に展開する 。ニアは、独自の身体技法「氣」を用いた修行に励む傍ら、魔兵器である機兵を「お掃除科」と嘲笑されながらも生身で機兵に挑もうとする掃討科の少年少女たちと出会い、彼らの無謀とも言える挑戦に興味を抱く 。その一方で、ニアが主導する新規事業「機馬」の開発利権を巡り、マーベリアの軍部を統括するエンデヴァー総武局長が法的な罠と武力行使を交えて強引に権利を強奪するという事件が発生する 。理不尽な国家権力の横槍に対し、ニアは王族をも巻き込みながら、力と才覚をもって制裁を下すべく動き出す 。

■ 主要キャラクター

  • ニア・リストン: 本作の主人公。アルトワール王国の公爵令嬢でありながら、最強の武人が転生した前世の記憶と、常識外れの戦闘能力を持つ 。マーベリアでは留学生として過ごしながら、自身の「氣」の技術を弟子たちに伝授している 。理不尽を嫌う苛烈な性格だが、身内や子供、弱者に対しては相応の面倒見の良さを見せる 。
  • リノキス: ニアの一番弟子であり、リストン家に仕える優秀な使用人 。若くして「氣」や「氣拳」を習得した高い武才を持つが、本人は修行よりも家事や子供の世話、美味しいおやつ作りに精を出す日常を好んでいる 。
  • シィルレーン: マーベリア王国の第三王女であり、ニアの弟子 。生身で虫に対抗できる力を得るため、ニアの指導のもとで一心不乱に「氣」の鍛錬に打ち込んでいる 。生真面目な性格で、国家の悪しき風習や不正に対しても毅然とした態度を示す 。
  • イース: 掃討科の七年生に所属する、日焼けした肌と異国風の佇まいを持つ少女 。独自の戦士としての誇りを持ち、非常に高い身体能力と呑み込みの早さで「氣」の感覚を即座に掴む 。機兵科に馬鹿にされたことをきっかけに、迎冬祭で生身のまま機兵と戦う約束を取り付ける 。
  • ミケ・エンカード: 掃討科に所属する中肉中背の少年 。冒険家の父親から剣術を習っており、暴走しがちなイースをなだめる年上のお兄さん的な立ち位置として、学科の仲間を支えている 。
  • サクマ・シノバズ: マーベリアの密偵であり、ニアの屋敷で完璧に家事や給仕をこなす有能な執事 。妹のアカシと共にニアの動向を監視する立場にあるが 、軍部の最高権力者である総武局長の命令には逆らえず、苦渋の決断として屋敷からニアの契約書を盗み出す役目を担う 。
  • アカシ・シノバズ: 元機兵科で現在は普通科に所属する、サクマの妹 。へらへらとした軽薄な態度が目立つが、機兵技術を応用した「馬なし馬車」などの開発に情熱を注いでいる 。ニアには多大な恩義を感じており、技術開発の仲介役として奔走する 。
  • クランオール: マーベリア王国の三女で、機士団の隊長代行を任されている新米機士 。かつてニアと対立した経緯から彼女を恐れていたが、シィルレーンと共にニアの厳しい修行に加わり、「氣」の習得を目指すようになる 。
  • リビセィル: マーベリア王国の第一王子で、魔犬機士団の隊長 。東の砦の調査から帰還後、過去の夜襲騒動のけじめとしてニアに潔く殴られることで和解し、彼女の弟子となって「氣」の修行に励む 。
  • イルグ・ストーン: 魔犬機士団の副隊長 。実直な軍人であり、リビセィルと共にニアの弟子となる 。リノキスをニアの師匠であると勘違いしており、彼女を「リノキス師匠」と呼び慕って熱い信頼を寄せている 。
  • エンデヴァー総武局長: マーベリアの軍部を統括する恰幅の良い老人 。機兵の技術流出や国家の権威失墜を恐れ、法の網目をかいくぐりながら、フライヒ工房を襲撃してニアの「機馬」の開発利権を強引に奪い取った本作の障壁となる人物 。

■ あらすじ

病弱な令嬢に転生した元武人のニア・リストンは、留学先のマーベリア王国で波乱の日々を過ごしていた。彼女は、同国の王族であるシィルレーンや第一王子リビセィルなどに「氣」の技術を指導し始める。国家の主力兵器「機兵」に依存することなく、生身で巨大な虫と戦えるように弟子たちを育成していく。また、機兵孤児を救うための支援策を練るなど、マーベリアの社会問題にも介入していく。さらに、魔力の少ない者でも扱える新たな乗り物「機馬」の開発を町の工房に依頼し、実用化へ向けて動き出す。

だが、機兵至上主義を掲げる軍部のエンデヴァー総武局長がその技術を危険視し、開発の権利を強奪する事件が勃発。事態の解決を図るため、ニアはマーベリア国王との直談判に臨む。旧体制からの脱却と開国を見据えていた国王の介入により、ニアは無事に機馬の開発権を取り戻した。

その後も弟子たちの実戦訓練を見守りつつ、孤児院の子供たちのために手作りのお菓子を届けるなど、マーベリアでの充実した日常を楽しむのである。

書籍情報

凶乱令嬢ニア・リストン 11 病弱令嬢に転生した神殺しの武人の華麗なる無双録
者:南野海風 氏
イラスト:磁石  氏
出版社:ホビージャパン
レーベル:HJ文庫
出版日:2026年6月1日

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あらすじ・内容

ようやく迎えた機兵王国での落ち着いた日々。
自重を辞めたことで機兵王国とのゴタゴタに一区切りつけたニア。 アカシ発案の機馬開発に乗り出したり、弟子に修行を付けたり、子供たちとお菓子作りをしたりとニアは機兵王国を楽しみ始める。 そして迎えたのは現役機士同士の一騎打ちで盛り上がる迎冬祭。 しかし、ニアが機兵ごと虫を相手に無双し破壊したことで、今年は機兵学校の生徒たちが機士の代役を担うことになって―― 「シィルを賭けて機兵と勝負すればいいのね?」 天使のような凶乱令嬢の最強無双譚、機兵王国を楽しむ第11弾!!

凶乱令嬢ニア・リストン 11

感想

最も強く印象に残ったのは、緊迫した情勢の裏側で描かれるニアたちの温かな日常パートである。表紙のデザイン通り、孤児院の子供たちのために手作りのお菓子を届ける場面が非常に微笑ましかった。お揃いのエプロンを身に着けた子供たちが並ぶ姿を、ぜひ詳細な描写やイラストでもっと見てみたいと感じるほど魅力的である。病弱な令嬢に転生した元武人という特異な肩書きを持つニアが、こうして異国の地で充実した日常を楽しむ様子には、独特の癒やしが感じられた。

一方で、本作は「修行」に大きなウエイトが置かれているためか、これまでの巻に比べて時間の流れが非常に早く感じられた。生身で巨大な虫と戦えるよう、王族であるシィルレーンたちを育成していくプロセスは読み応え十分である。特に、かつては対立していた第一王子リビセィルがニアにビンタされてピクピクと卒倒する場面は、コミカルでありながらも強烈なインパクトを残した。そこから彼が潔くニアの弟子となり、真摯に「氣」の指導を受け始めるという人間関係の変化には、意外性と可笑しさが詰まっている。

さらに、物語に大きな起伏をもたらすのが、甲冑(機兵)の技術を流用して開発された新たな車両「機馬」を巡るエピソードである。魔力が少ない者でも扱える画期的な乗り物として実用化へ動き出した矢先、機兵至上主義の軍部を統括するエンデヴァー総武局長から横槍が入り、開発権利が強奪されてしまう展開には”やっちまったな”と思えざる得ない。しかし、そこでニアがマーベリア国王との直談判に臨み、旧体制からの脱却と開国を見据えていた国王の介入によって権利を無事に取り戻す流れは、非常にスッキリとした。今回の騒動に関しては、まさに王様が美味しいところをすべて持っていったという印象が強い。

国家の社会問題や軍部の闇に介入しつつも、着実に周囲を自分のペースに巻き込んでいくニアの最強ぶりは健在である。今巻では国の上層部とのゴタゴタや技術開発、そして弟子たちの育成がメインだったため、ニアが虫相手に大暴れする爽快な「ヒャッハー」シーンは次巻以降にお預けとなった印象だ。彼女の圧倒的な武力が実戦でどのように炸裂するのか、迎冬祭の勝負の行く末も含めて、早くも次なる展開が待ち遠しくてならない。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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凶乱令嬢12巻 レビュー

考察・解説

弟子たちの武芸修行

第11巻におけるニアの弟子たちの武芸修行は、マーベリア王国が抱える「機兵至上主義」を根本から変えるための重要なプロセスとして描かれている。彼らはニアの指導のもと、「氣」を習得し、生身で巨大な虫や機兵を凌駕する強さを身につけつつある。

弟子たちの修行の様子と進展は以下の通りである。

各弟子の修行の様子と成長

・シィルレーン
迎冬祭で機兵と戦うという目標に向け、限られた時間の中で熱心に槍と「氣」の鍛錬に打ち込んでいる。毎日真面目に修行を重ねた結果、「氣」の安定感は群を抜いており、実戦訓練へ移行する許可を得た。

・クランオール
最初はニアに怯えていたが、「機兵より強くなりたい」という強い意志を見せた。ニアからメイス(棍棒)を使った内部破壊と外部破壊の打撃理論を教わり、屋敷に入り浸って熱心に「氣」の修行に没頭している。

・リビセィルとイルグ
東方の未開拓地調査から帰還後、自ら望んで新たにニアの弟子となった。元々戦場を意識して鍛えてきた武人としての土台があるため、「氣」を掴むのが早く、自主鍛錬も欠かさないため順調に力を伸ばしている。

・イース(掃討科)
ニアに「氣」の基本を教わった後、いつの間にか屋敷の修行に紛れ込むようになった。ニアが教えていない技術まで見様見真似で習得するなど、弟子たちの中でも頭一つ抜けた異常な成長速度を見せている。

・ミト(仮弟子)
年齢や経験は不足しているが、「内氣」の身体強化だけで弟弟子たちを圧倒するほどの実力を見せている。ただし、技術や精神面が未熟であり、戦う目的も護身であるため、ニアの判断で実戦や殺生事からは遠ざけられている。

・リノキス(一番弟子)
武闘大会優勝後は目標を見失い、家事やおやつ作りに熱中して修行をサボり気味であった。しかし、マーベリア勢の急成長に危機感を覚え、再び修行に打ち込むようになっている。

次の段階:実戦訓練と氣の維持

基礎的な「氣」の習得が進むと、修行は次の段階へと移行した。

・長距離走による「氣」の維持
王都から東の砦まで、街道を無視して「氣」による身体強化を維持したまま走り抜く修行が行われた。最初は疲労と「氣」の乱れに悪戦苦闘していたが、次第に慣れ、休憩なしで長距離を駆け抜けられるようになった。

・巨大虫との実戦
東の砦の周辺で、実際に巨大なダンゴムシなどを相手にした実戦訓練が始まった。最初は硬い外殻に苦戦し、リビセィルが囮になり、シィルレーンが槍で坂を作って横転させ、イースが柔らかい部分を突くという、3人がかりの連携でようやく討伐に成功した。しかし、実戦を重ねるにつれて高度な連携を見せるようになり、ニアの助言なしで立ち回れるまでに成長している。

今後の指標

実戦訓練が進む中、ニアとリノキスは未開の地で機兵をも壊滅させた過去を持つ巨大なネズミの群れ(数百匹)に遭遇し、殲滅した。ニアは、この凶暴なネズミの群れを単独で相手にできるかどうかを、弟子たちが一人前になったかを測る新たな実力の指標と定めている。

まとめ

実戦訓練や長距離走などの過酷な修行を通じ、弟子たちは着実に実力を向上させている。各々が明確な目的や危機感を持ちながら鍛錬に励むことで、彼らは「機兵に頼る時代」を終わらせるかもしれないほどの力を、自らの生身の肉体に宿しつつある。

迎冬祭と機兵戦

マーベリア王国における「迎冬祭」を目前に控えた時期に行われた「機兵戦」は、同国の「機兵絶対主義」を根底から覆す歴史的な大事件となった。

迎冬祭に向けた機兵戦の背景、対決の展開、そしてその意義について解説する。

迎冬祭と機兵戦の背景

マーベリア王国の年末行事である「迎冬祭」は、宿敵である巨大な虫との一年の戦いを乗り切り、最も平和な冬を迎えることを歓迎する特別なお祭りである。
シィルレーンはこの迎冬祭で機兵と戦うことを目標に、「氣」と槍の過酷な鍛錬を積んでいた。また、機兵科から「お掃除科」と蔑まれていた掃討科の4人(イース、ミケ、ダイオン、ホロウ)も、迎冬祭で機兵と戦うことを目指して特訓を重ねていた。

勝負の発端と経緯

勝負の直接の発端は、シィルレーンが機兵科から普通科へ転属したことを逆恨みした機兵科のクワイトらが、ニアに対して「シィル様を返せ」と絡んできたことであった。ニアは「シィルを賭けて機兵と勝負する」という条件を即座に承諾し、迎冬祭の2日前(冬期休暇の終業日)に勝負が行われることになった。

本来、機兵で生身の人間を傷つけることは退学レベルの重罪であるが、機兵科の実力者ジーゲルンからの提案により、物理的影響のない魔法弾を放つ「機兵連砲」と、背負うタイプの「感知装置」を用いた安全なルールに変更された。当初は秘密裏に行われる予定であったが、噂が広まり、全校生徒や教師、さらにはお忍びの現役機士たちまでが見守る大舞台となった。

機兵戦の展開と結果

勝負は3戦行われ、すべて生身の人間側が勝利するという衝撃的な結果に終わった。

・第1戦:掃討科 vs 機兵(クワイト)
掃討科はダイオンの大盾を犠牲にして距離を詰め、ホロウの魔法「暗照明」で機兵の視界を奪った。ミケが機兵の注意を引いた隙に、イースが膝関節の隙間に剣を突き立て、全開の「氣」を流し込んで内部の魔腱ワイヤーを破壊し、機兵を転倒させて完全勝利を収めた。

・第2戦:シィルレーン vs 無人機兵(エーゲ)
機兵科のエーゲは「王族に機兵の武器は向けられない」として、無人の機兵を倒せばシィルレーンの勝ちという条件を出した。シィルレーンは体重移動と渾身の「氣」を込めた槍の突きを正面装甲に放ち、圧倒的な重量差がある機兵を宙に浮かせ、後方へ倒してみせた。

・第3戦:ニア vs 機兵(ジーゲルン)
学年代表であるジーゲルンの機兵に対し、ニアは丸腰で立ち向かった。ニアは至近距離からの魔法弾や鉄棒による猛攻を、まるで遊んでいるかのようにひょいひょいと躱し続けた。結果として、機兵を翻弄し続けて燃料を枯渇させ、活動限界に追い込んで勝利した。

まとめ

マーベリアにおいて「機兵は絶対強者であり、生身の人間が敵うはずがない」というのは、誰もが信じて疑わない常識であった。
しかし、機兵が子供や見下していた掃討科の生徒に全敗したこの事件は、その根幹を激しく揺さぶった。この戦いを目の当たりにした生徒や教師、現役機士たちに機兵の立場がぐらつくほどの計り知れない衝撃を与え、マーベリアの認識が大きく変わるきっかけとなったのである。

機兵孤児の支援

マーベリア王国における「機兵孤児の支援」は、ニアが同国の抱える暗部(機兵至上主義の弊害)に直面し、一時的な救済から国家の根幹を揺るがす根本的解決へと動き出す重要なエピソードである。

資料に基づき、機兵孤児の現状とニアたちが行った支援、そして根本的な解決策について解説する。

機兵孤児とは

機兵孤児とは、機兵の操縦者を輩出したい上流階級が、適性(識別色)を持つ子供を得るために多くの子供を作り、適性がなかったために捨てられた子供たちのことである。マーベリアは長年、巨大な虫から国を守るために機兵乗りを必要としており、こうした非人道的な行為が暗黙の了解として続けられていた。
国から孤児院へ法に則った支援金は支給されていたが、想定以上に子供の数が多く(50名以上)、生活費が枯渇し、定員から溢れた子供たちが冬を越せずに命を落とす危険な状態にあった。

ニアによる応急処置(冬越えの支援)

元孤児院出身であるシグが、「一生お嬢様に仕えるから、冬の間だけでも子供たちを助けてほしい」と懇願したことが発端となる。ニアはシグの人生を犠牲にすることを拒否し、「自分がどうにかしたいからする」という理由で支援を決定した。
ニアは商業ギルド(リプレやガッダム)を通じ、裏社会のドン・ダージョルから慰謝料として強奪したマーベリアの資金を使って大きな家を借り、食費や衣類などの生活環境を整えた。王族としての責任を感じたシィルレーンもこの話し合いに参加するが、これはあくまで一時しのぎの応急処置に過ぎなかった。

自立への模索と「機馬」の活用

支援を続ける中で、孤児たちをどう自立させるかが課題となった。

・教育の提供
ニアはアルトワール王国の理念に倣い、子供たちに読み書きや計算を学ばせる学校教育の機会を与えることを提案し、シィルレーンもこれに賛同した。

・「機馬」による雇用創出
アカシは、魔力が少なくても運転できる「三輪馬車」や「機馬」を開発し、荷物運びや配達といった仕事を生み出すことで、子供たち自身が生活費を稼げる手段にしようと画策している。

根本的解決へのアプローチ(機兵の価値低下)

ニアは、今いる孤児を救っても、「機兵の価値が高すぎる」という現状が変わらない限り、機兵孤児は今後も増え続けると指摘する。単に国からの助成金を増やせば、適性を持つ子供を当てるためにさらに多くの子供が作られ、捨てられるという悪循環が拡大しかねない。

そこでニアが導き出した根本的な解決策は、「機兵の価値そのものを下げること」であった。
シィルレーンに加え、第一王子リビセィル、第三王女クランオール、魔犬機士団副隊長イルグなどを「氣」で鍛え上げ、国のトップが「生身で機兵や虫より強くなる」ことで、機兵への絶対的な依存を終わらせようとしている。

まとめ

一時的な資金援助や教育の提供、そして新たな雇用創出に向けた動きを見せつつも、ニアは「機兵の価値を下げる」という国家の根幹を揺るがす解決策を導き出した。最終的に彼女は、自身が外国人でありこれ以上の政治介入はマーベリアの面子を潰すとして、政治的な事後処理と機兵孤児の抜本的解決を次期国王であるリビセィルに託したのである。

次世代乗り物機馬

次世代の乗り物である「機馬(キバ)」は、マーベリア王国における機兵至上主義を揺るがし、社会に新たな産業と可能性をもたらす重要な発明品として描かれている。

「機馬」の開発経緯、画期的な特徴、そして社会に与える影響について解説する。

「機馬」の誕生と開発経緯

・発端は「馬なし馬車」
アカシが、出力が落ちて廃棄処分になった機兵の動力部を再利用し、馬なしで走る馬車(三輪試作機)を作ろうとしたことが始まりである。

・二輪型への進化と命名
機兵技師科の優秀な生徒サーキーが、前後の二輪だけで走り、車体を斜めに傾けて旋回するアイデアを提案した。彼がこれを「機兵の動力を使った馬」という意味で「機馬」と名付けた。

・市井の工房での本格開発
その後、ニアが出資し、市井のフライヒ工房にて本格的な開発がスタートした。野外での長距離走行を想定し、四輪型の機馬なども試作されている。

機馬の画期的な特徴

単なるレジャー用の乗り物にとどまらず、実用性に優れた多くの利点を持っている。

・魔力が少なくても操縦可能
機兵や従来の単船を動かせないような、魔力がほとんどない子供(ニアを含む)でも、魔力色さえ合っていれば高速で動かすことができる。

・操作性と燃費の良さ
構造が単純で操作が簡単であり、必要な部品も少なく、燃料である魔石の持ちも良いという利点がある。

・機兵技術の応用(柔軟性)
開発が進む中で、車体と車輪を繋ぐ伸縮機構に、機兵で使われている「圧縮した油スライム」の技術が組み込まれた。これにより、野外の悪路でも衝撃を吸収する高い柔軟性を獲得している。

社会的意義とマーベリアに与える影響

機馬の存在は、マーベリア王国の根幹に関わる大きな影響力を秘めている。

・機兵孤児の雇用創出
魔力が少なくても運転できるため、荷物運びや人の送迎、配達などの仕事に利用できる。これは、適性がないために見捨てられた機兵孤児たちが自立して生活費を稼ぐための重要な手段として期待されている。

・機兵技術の一般化
機馬が世に出回ることで、これまで国家機密とされてきた機兵の技術や部品が一般に広まることになる。これはマーベリアが機兵だけに頼る時代の終わりを象徴している。

・世界への普及
セドーニ商会のダロンが機馬を商品として扱うことを決めており、完成すればマーベリア国内にとどまらず、世界中に普及する可能性を持っている。

利権を巡る強奪事件

機馬に機兵の技術が流用されていること、そしてその有用性に目をつけた軍部のエンデヴァー総武局長によって、フライヒ工房から機馬の開発権利や試作機、設計図が合法的な手段を装って強奪される事件が起きた。技術の流出を防ぐという名目であったが、ニアがハザール国王に直談判し、王との話の決着がつくまでは販売しないが開発は続けると主張したことで、無事に全権が返還された。

まとめ

機馬は、ニアの個人的な趣味やアカシの好奇心から始まったが、結果的にマーベリアの旧体制(機兵への絶対的依存と鎖国)を打ち破る開国と新しい時代の象徴となる可能性を秘めた次世代の乗り物である。

王国開国への展望

マーベリア王国の開国への展望は、ニア・リストンの来訪と彼女がもたらした圧倒的な個人の武力である氣、そして新技術である機馬の登場によって、これまでの鎖国体制から劇的に動き出そうとしている。

王国開国に向けた各陣営の思惑や展望を解説する。

ニア・リストンの目的:魔法映像の導入と開国
ニア自身はマーベリアの機兵や国政には深く興味を持っていないが、彼女の目的はマーベリアの開国、そしてその次がアルトワール王国の政策である魔法映像(マジックピジョン)のマーベリアへの売り込みである。この目標のために、マーベリアの機兵の価値を相対的に下げ、外の世界へ目を向けさせようとしている。

次期国王リビセィルの意識変化
ニアという常識外れの強者と出会い、実際に彼女から氣の教えを受けている第一王子リビセィルは、もはや他国を敵に回したくないと考えるようになっている。国外にはニアのような存在がいる可能性を身をもって知り、虫の問題が片付けば、諸外国と友好関係を築くべきだと開国に前向きな姿勢を見せている。また、リビセィルらマーベリア側の関係者による秘密会合でも、執事のサクマからニアの目的は開国であると指摘され、リビセィルはそれを国としての報酬の方向性として父王に伝えることを決めている。

国王ハザールの危機感と開国シナリオ
開国への最大の原動力となっているのは、国王ハザール自身の決断である。

・国王の危機感
マーベリアが機兵と鎖国による妥協の平和に浸りすぎた結果、外国の技術力や変化に取り残されていることに強い危機感を抱いていた。彼はアルトワール国王がニアを送り込んできた真の意図を、虫の駆除、マーベリアの開国、魔法映像の導入を迫ることだと正確に見抜いている。これ以上国を閉ざし続ければ、想像もできない理由で国が崩壊するかもしれないと恐れた国王は、旧体制の象徴であるエンデヴァー総武局長らに対し、若い世代に国を託すことを提案する。

・開国シナリオ
具体的には、国王らがニアと勝負をして意図的に負け、その責任を取る形で引退し、次の代であるリビセィルに玉座を譲るという破天荒なシナリオを企てた。これにより、王の失策で躓いたマーベリアを、新国王の思い切った開国政策で立て直すという構図を作り出し、世代交代と開国を一気に推し進めようとしている。

旧体制の抵抗と今後の展開
一方で、軍部を預かるエンデヴァー総武局長は、長年マーベリアを守ってきた機兵の技術が国外へ流出することを恐れ、依然として鎖国と旧体制の維持を強く主張している。彼がニアの機馬開発を強奪したのも、その技術流出を防ぐためであった。
しかし、国王の介入とニアの圧力により機馬は無事返還され、総武局長も王の真意に揺さぶりをかけられている。

まとめ
マーベリア王国の開国は、もはや時間の問題となりつつある。ニアの圧倒的な力と新技術がきっかけとなり、国王自らが自身の失脚を演じてでも新時代を切り開こうとしている。今後、ニアとマーベリア国家を巻き込んだ大勝負が行われ、それが開国と世代交代の決定的なターニングポイントとなることが予想される。

凶乱令嬢10巻 レビュー
凶乱令嬢まとめ
凶乱令嬢12巻 レビュー

登場キャラクター

アルトワール王国関係者・リストン家

ニア・リストン

アルトワール王国からの留学生である。マーベリアの開国と魔法映像の導入を目的とする。圧倒的な武力を持ち、弟子たちを育成する。

・所属組織、地位や役職
 アルトワール王国の留学生。機兵学校普通科生徒。

・物語内での具体的な行動や成果
 夜襲を撃退する。ダージョル・サフィーを降伏させて18億クラムを奪う。東の砦で大量の蟻を殲滅した。掃討科の勝負を見守った後、ジーゲルン機を翻弄する。機馬の開発を支援する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 マーベリア王族などを弟子とし、国に強い影響力を持つようになる。

リノキス

主人公の侍女である。一番弟子として忠誠を誓う。家事やおやつ作りも担う。

・所属組織、地位や役職
 リストン家の侍女。

・物語内での具体的な行動や成果
 東の砦での蟻討伐に同行した。ネズミの群れと戦う。ダロンとの会食の間に別室で待機する。子供たち用のお揃いエプロンを作る。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 他の弟子たちの成長に危機感を覚え、再び修行に熱を入れるようになる。

シグ

主人公に雇われた孤児の少年である。兄弟たちの面倒を見る。

・所属組織、地位や役職
 屋敷の使用人。元機兵孤児。

・物語内での具体的な行動や成果
 孤児院の現状を伝えて支援を懇願した。料理の手伝いをする。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき地位の変化はない。

バルジャ

シグの弟である。カルアと双子として生活する。

・所属組織、地位や役職
 屋敷の使用人。元機兵孤児。

・物語内での具体的な行動や成果
 簡単な計算を覚える。市場で買い物をする。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき地位の変化はない。

カルア

バルジャと双子の少女である。

・所属組織、地位や役職
 屋敷の使用人。元機兵孤児。

・物語内での具体的な行動や成果
 お揃いのエプロンを着てお菓子作りに参加した。簡単な計算を覚える。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき地位の変化はない。

ミト

病弱だった少女である。シグの妹として暮らす。

・所属組織、地位や役職
 屋敷の使用人。元機兵孤児。シィルレーンの仮弟子。

・物語内での具体的な行動や成果
 自力で氣を扱い始めた。大きな水たらいを運ぶ。槍を教わり丸太に深く突き刺す。お揃いのエプロンを着る。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 氣の才能を開花させ、仮弟子となる。

リグナー

元空賊の船長である。

・所属組織、地位や役職
 セドーニ商会の飛行船船長。

・物語内での具体的な行動や成果
 三ヶ月周期でマーベリアへやって来る。主人公からの手紙を受け取る。ダロンを連れてきた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき地位の変化はない。

マーベリア王国 王族・重臣

ハザール・シルク・マーベリア

マーベリア王国国王である。落ち着いた態度を保つ。開国と世代交代を視野に入れている。

・所属組織、地位や役職
 マーベリア王国国王。

・物語内での具体的な行動や成果
 主人公と面会して虫の現状を説明した。シィルレーンを500億クラムで渡す。総武局長に若い世代へ国を託すよう促す。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 自ら退位し王位を譲るシナリオを企図する。

リビセィル・シルク・マーベリア

マーベリア王国第一王子である。国で一番の機兵乗りとして活動する。厳格な性格を持つ。

・所属組織、地位や役職
 マーベリア王国第一王子。魔犬機士団隊長。次期国王。主人公の弟子。

・物語内での具体的な行動や成果
 夜襲事件を狂言として処理しようとした。東の砦で虫と戦闘する。主人公の力を見て驚愕する。謝罪して平手打ちを受ける。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 機兵への絶対視を改め、弟子として氣の修行を始める。

クランオール・シルク・マーベリア

マーベリア王国第三王女である。機兵乗りとして戦う。

・所属組織、地位や役職
 マーベリア王国第三王女。主人公の弟子。

・物語内での具体的な行動や成果
 兄と共に現場へ駆けつけた。メイスを用いた打撃理論を教わる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 主人公の屋敷に入り浸り、氣の修行に没頭する。

シィルレーン・シルク・マーベリア

マーベリア王国第四王女である。誠実な性格を持つ。優秀な機兵乗りとして知られていた。

・所属組織、地位や役職
 マーベリア王国第四王女。機兵学校普通科生徒。主人公の弟子。

・物語内での具体的な行動や成果
 マーベリアの虫の事情を説明した。自ら交渉の場へ進み出て500億クラムで身受けされる。機兵科を辞めて普通科へ移る。無人の機兵を突き倒す。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 機兵を降り、弟子として生身の強さを目指すようになる。

エンデヴァー

軍部を預かる老人である。機兵と旧体制の維持を強く主張する。

・所属組織、地位や役職
 マーベリア王国軍部総武局長。

・物語内での具体的な行動や成果
 工房から機馬の開発権や試作機を強制的に徴収した。王との話し合いの末に機馬の返還を約束する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 王から引退を促される。

不忍(密偵)

アカシ・シノバズ

王族に仕える密偵である。飄々とした態度を持つ。

・所属組織、地位や役職
 不忍の密偵。機兵学校普通科生徒。シィルレーンの護衛。

・物語内での具体的な行動や成果
 機馬の開発を主導した。クワイトを言葉巧みに追い詰める。主人公と同行して情報をもたらす。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき地位の変化はない。

サクマ・シノバズ

不忍の密偵である。無表情で鍛えられた肉体を持つ。

・所属組織、地位や役職
 不忍の密偵。執事兼護衛。

・物語内での具体的な行動や成果
 主人公の屋敷に派遣されて家事や子供たちの世話を行う。工房との契約書を盗み出して総武局長側へ渡した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき地位の変化はない。

機兵学校 掃討科

イース

異国出身の少女である。勝気な性格を持つ。ガイスト・イースの子孫を自称する。

・所属組織、地位や役職
 機兵学校掃討科七年生。

・物語内での具体的な行動や成果
 機兵科の生徒に怒り勝負を提案した。主人公から氣の感覚を教わる。機兵の膝関節を破壊して倒す。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 主人公の修行へ自ら参加するようになる。

ミケ・エンカード

掃討科のリーダー格である。仲間思いの性格を持つ。

・所属組織、地位や役職
 機兵学校掃討科七年生。冒険家の息子。

・物語内での具体的な行動や成果
 機兵との勝負に向けた訓練を行った。機兵との戦いでは盾で腕を殴って注意を引く。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき地位の変化はない。

ダイオン・イベース

大柄な少年である。大人しい性格を持つ。

・所属組織、地位や役職
 機兵学校掃討科七年生。兵士の息子。

・物語内での具体的な行動や成果
 機兵との勝負で大盾を構えて味方の射線を防いだ。機兵に盾を弾き飛ばされて失格となる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき地位の変化はない。

ホロウ・ギブンス

無口な小柄な少女である。治癒魔法が使える。

・所属組織、地位や役職
 機兵学校掃討科七年生。

・物語内での具体的な行動や成果
 機兵との勝負で魔法を使う。機兵の視界を奪った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき地位の変化はない。

機兵学校 機兵科

クワイト・サブリ

機兵科の実力者である。血気盛んな性格を持つ。

・所属組織、地位や役職
 機兵学校機兵科。

・物語内での具体的な行動や成果
 主人公に絡んでシィルレーンを賭けた勝負を約束した。アカシに追い詰められて後悔する。勝負で掃討科に敗北する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき地位の変化はない。

エーゲ・ロージス

機兵科の最年少生徒である。立派な機士を目指す。

・所属組織、地位や役職
 機兵学校機兵科四年生。

・物語内での具体的な行動や成果
 王族に武器を向けられないとして機兵から降りた。無人の機兵を倒す条件を提示する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき地位の変化はない。

ジーゲルン・ゲート

機兵科の学年代表である。シィルレーンを慕う。

・所属組織、地位や役職
 機兵学校機兵科九年生。

・物語内での具体的な行動や成果
 転科を巡り主人公に詰め寄るが500億クラムの事実を知り引き下がる。掃討科との勝負のルールを変更した。勝負で機兵を活動限界に追い込まれ敗北する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき地位の変化はない。

ロック・フリック

機兵科の生徒である。

・所属組織、地位や役職
 機兵学校機兵科七年生。

・物語内での具体的な行動や成果
 掃討科の訓練を邪魔した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき地位の変化はない。

サンエ・ギブンス

機兵科の女子生徒である。ねちっこい口調を持つ。ホロウの親戚として振る舞う。

・所属組織、地位や役職
 機兵学校機兵科七年生。

・物語内での具体的な行動や成果
 掃討科の訓練を邪魔した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき地位の変化はない。

機兵学校 機兵技師科

サーキッズ・ハーバー

機兵技師科の科長である。優秀な職人気質を持つ。

・所属組織、地位や役職
 機兵学校機兵技師科八年生。

・物語内での具体的な行動や成果
 三輪馬車の調整に協力した。二輪で走る機馬のアイデアを提案する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき地位の変化はない。

魔犬機士団・東の砦

イルグ・ストーン

魔犬機士団の副隊長である。真面目で責任感が強い。

・所属組織、地位や役職
 魔犬機士団副隊長。東の砦の責任者。主人公の弟子。

・物語内での具体的な行動や成果
 砦での虫の戦闘を見守った。拠点跡地のネズミ調査を独断で依頼する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 主人公の弟子となり氣の修行を始める。

フライヒ工房

ジート・フライヒ

フライヒ工房の所長である。金に目が眩みやすい。

・所属組織、地位や役職
 フライヒ工房所長。

・物語内での具体的な行動や成果
 主人公の依頼で試作機を開発した。機馬の権利を奪われて意気消沈する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき地位の変化はない。

フーゴ

ジートの長男である。威勢が良い性格を持つ。

・所属組織、地位や役職
 フライヒ工房作業員。

・物語内での具体的な行動や成果
 兄弟と開発方針で揉める。機馬の権利を奪われて落ち込んだ。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき地位の変化はない。

アルゴ

ジートの次男である。

・所属組織、地位や役職
 フライヒ工房作業員。

・物語内での具体的な行動や成果
 兄弟と開発方針で揉める。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき地位の変化はない。

ジャンゴ

ジートの三男である。四輪型を推す。

・所属組織、地位や役職
 フライヒ工房作業員。

・物語内での具体的な行動や成果
 兄弟と開発方針で揉める。四輪機馬を製作し主人公へ説明した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき地位の変化はない。

ジートの奥さん

ジートの妻である。堂々とした微笑みを浮かべる。

・所属組織、地位や役職
 フライヒ工房関係者。

・物語内での具体的な行動や成果
 主人公にお茶とお菓子を出す。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき地位の変化はない。

商業ギルド

ガッダム

商業ギルドのギルド長である。商魂たくましい性格を持つ。

・所属組織、地位や役職
 商業ギルド・ギルド長。

・物語内での具体的な行動や成果
 孤児院の住居手配に協力した。ダロンと正式に顔を合わせる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき地位の変化はない。

リプレ

商業ギルドの受付嬢である。主人公に親切に接する。

・所属組織、地位や役職
 商業ギルド・受付嬢。

・物語内での具体的な行動や成果
 孤児院の問題解決に向けた話し合いに参加した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき地位の変化はない。

セドーニ商会

ダロン

セドーニ商会のお偉いさんである。慎重かつ丁寧な性格を持つ。

・所属組織、地位や役職
 セドーニ商会。

・物語内での具体的な行動や成果
 マーベリアを調査し支店設立を決定した。商業ギルド長と顔を合わせる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき地位の変化はない。

その他

孤児院の子供たち

孤児院で暮らす子供たちである。

・所属組織、地位や役職
 孤児院。

・物語内での具体的な行動や成果
 シグたちからフルーツタルトの差し入れを受けた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき地位の変化はない。

魔法医

魔法で治療を行う医師である。

・所属組織、地位や役職
 魔法医。

・物語内での具体的な行動や成果
 強奪の際に怪我をした工房の作業員たちを治療した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき地位の変化はない。

凶乱令嬢10巻 レビュー
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展開まとめ

プロローグ

弟子たちの朝の鍛錬

寒さが増し、冬の気配を強く感じる朝、彼女は温かなベッドを離れて一日を始めた。庭へ出ると、まだ暗い空の下でシィルレーンがすでに修行を始めていた。シィルレーンは迎冬祭で機兵と戦う可能性に備え、限られた時間の中で懸命に槍の鍛錬へ打ち込んでいた。彼女はその熱意を頼もしく思いながらも、対戦相手の決定権は自分にないため、望みを叶えられるかどうかは不透明な状況であった。

東の果てへの関心

自身も修行を始めた彼女は、大陸東部の壁の向こう側について思いを巡らせていた。虫たちの生息地のさらに奥には、この大陸最強の存在がいるはずだと考えていたのである。それが強大な虫なのか、あるいは別の生物なのかは分からなかったが、生態系の頂点に立つ存在の正体を確かめたいという興味を抱いていた。

ミトの成長

やがてミトが元気よく現れた。現在はシィルレーンの仮弟子であり、槍の指導も彼女に任せていた。病弱だった過去を持ちながらも、ミトは数日前に槍を習い始めたとは思えないほど優れた動きを見せていた。彼女はその才能を認めつつ、自分は自身の修行へ集中することにした。

リノキスへの悩み

その後、一番弟子であるリノキスがようやく姿を現した。最近は修行への意欲が低下しており、起床も遅くなっていた。彼女はその様子を見て、リノキスには強くなりたいという目標が欠けていることを改めて感じた。武闘大会で優勝を果たし、日々は家事や子供たちの世話に追われているため、修行への熱意が薄れているのも無理はなかった。

師としての課題

リノキスには優れた武の才能があり、若くして「氣」や「氣拳」を習得した実力も持っていた。しかし本人は修行そのものを好んでおらず、そのことが成長への意欲を妨げていた。彼女は、弟子に新たな目標を与え、やる気を引き出すことも師の務めだと考えたが、その難しさを痛感していた。謝罪しながら声を掛けてくるリノキスを前に、弟子の育成の難しさを改めて実感していた。

第一章 気に入らない話

学校生活と今後の展望

ニアは朝の修行と朝食を終え、それぞれが日課へ向かう中、自身も留学生として学校へ向かった。シィルレーンは王族としての公務のため別行動となり、屋敷の管理や子供たちの世話はリノキスと密偵サクマ・シノバズに任されていた。通学中のニアは、マーベリアへ来てからの三か月間を振り返り、多くの出来事を経験したことで基盤が築かれたと感じていた。そして今後は魔法映像の技術普及や、アルトワールとの連携について考えを巡らせていた。

イースとの出会い

校門でニアは、異国風の少女イースから掃討科で戦わないかと声を掛けられた。言葉の意味を理解できず戸惑う中、周囲の機兵科生徒が掃討科を「お掃除科」と嘲笑していることに気付いた。ニアはその態度に反発して機兵科の生徒を問い詰めたが、イースは弱い者を守るのが戦士だと諭し、その生徒を許すよう求めた。ニアはイースの考え方に興味を抱き、彼女の話を聞くことにした。

掃討科の実情

昼休み、ニアは掃討科の教室を訪れた。そこにはイースのほか、ミケ・エンカード、ホロウ・ギブンス、ダイオン・イベースの四人が在籍していた。掃討科は兵士の訓練生を育成する学科であったが、機兵科の活躍の陰で戦場の後始末を担うことから「お掃除科」と蔑まれていた。イースは機兵科からの侮辱に怒り、迎冬祭で機兵と戦うことを提案していた。正式決定ではなかったものの、四人は生身で機兵へ挑戦するつもりでいた。

機兵への挑戦に込めた思い

ミケは、自分が笑われることは耐えられても仲間が嘲笑されることは許せず、長年積み重なった悔しさを晴らしたいと語った。たとえ敗北しても一度は反撃したいという思いを抱いており、兵士を志す者として戦う覚悟を持っていた。ニアはその怒りと覚悟に共感し、彼らの挑戦に強い関心を抱いた。

イースの出自

会話の中で、イースは自身が伝説の英雄ガイスト・イースの子孫であると語った。証拠は存在しないとミケは説明したが、イース自身は真実がどうであれ自らの心の中に答えがあると語った。その姿勢にニアは強い興味を抱き、今後も彼女たちを見守りたいと考えた。

帰宅後の依頼

下校後、アカシから試作機の実験を頼まれながら帰宅したニアは、屋敷の前でシグに呼び止められた。シグは孤児院の状況を見てきたことを語り、冬を越せないかもしれない子供たちを救ってほしいと懇願した。機兵孤児である子供たちが過酷な環境で暮らしている現実を聞いたニアは、自身が忘れかけていた問題を思い出した。

孤児院支援の決意

シグは一生仕えることを条件に助けを求めたが、ニアはその申し出を拒否した。そして、これはシグの願いだからではなく、自分自身が解決したい問題だから支援すると伝えた。恩を返す必要はないと告げ、孤児たちを救うことを決意した。

商業ギルドでの相談

ニアはアカシと共に商業ギルドを訪れ、受付嬢リプレやギルド長ガッダムと相談を始めた。目的は孤児院から溢れつつある子供たちが冬を越せる住居の確保であった。資金によって衣食住の提供は可能であるものの、機兵孤児の問題そのものはマーベリアの政治的課題であり、外国人であるニアには根本的な解決はできないと理解していた。それでもまずは冬を乗り切るための支援を行おうと考えていた。

アルトワールからの飛行船来訪

マーベリアへ来てから三か月が経過し、約束通りリグナー船長が飛行船で訪れた。ニアはリノキス、シィルレーン、アカシと共に港へ向かったが、リグナーは荷物を渡すとすぐに船へ戻り、慌ただしく出航準備に移った。ニアは要望を手紙にまとめて渡していたため、直接話す必要はなく、再会は短時間で終わった。

機兵孤児問題の相談再開

港を後にしたニアとシィルレーンは商業ギルドを訪れ、リプレやガッダムと共に機兵孤児の問題について話し合った。ニアの資金提供によって住居や食事など当面の生活環境は整えられたものの、それは応急処置に過ぎず、根本的な解決にはなっていなかった。シィルレーンは王族として責任を感じ、この問題に関わる意思を示した。

孤児院の現状と解決策の検討

孤児院には五十名以上の子供がおり、国から支援金は支給されていたが、人数の多さから十分な運営ができていなかった。シィルレーンは職業訓練による自立支援などの案を検討したが、決定的な解決策には至らなかった。そこでニアは、子供たちをアルトワールへ送り、学校教育を受けさせる案を提示した。シィルレーンも、学ぶことは将来の財産になるとしてその考えに賛同した。

機兵孤児が生まれる根本原因への言及

ニアは、今いる孤児を救っても機兵孤児は今後も増え続けると指摘した。その原因は機兵の価値が高すぎることにあり、機兵へ乗る才能の有無で子供の人生が左右されている現状を問題視した。シィルレーンもその指摘を受け止め、機兵崇拝が生み出した歪みを認識した。

機兵文化の変化への展望

ニアは、虫の存在が公表されたことに加え、機兵より強い人間が現れることで機兵文化は衰退へ向かうと語った。そのためシィルレーンだけでなく、リビセィル王子、クランオール王女、イルグ副隊長なども鍛え、機兵に依存しない力を持つ人材を増やそうと考えた。機兵の価値が下がれば、機兵孤児の問題も変化すると見込んでいた。

王族への協力要請

ニアは、王族や有力貴族を自身のもとで鍛えるため、シィルレーンに協力を求めた。機兵の価値低下をより望ましい形で進めるためには、社会的影響力を持つ者たちが強くなる必要があると考えていた。シィルレーンはその意図を理解し、兄姉たちへ話を通すことを約束した。

掃討科の話題

相談を終えた帰路で、ニアは学校で出会った掃討科の生徒たちについてシィルレーンへ話した。迎冬祭で機兵との戦いを目指していることを聞いたシィルレーンは、奇妙な者たちだと評しながらも興味を示していた。

試作馬車の騒動

屋敷へ戻ると、アカシが開発していた馬なし馬車の試作機が塀を壊していた。シィルレーンは再び被害を受けたことに呆れ、アカシは責任を取るようニアまで巻き込もうとした。ニアはそのやり取りに呆れながらも、馬なし馬車が機兵技術を転用した新たな産業となり得る可能性に気付いた。

クランオールへの伝言

翌日、シィルレーンは王城へ戻り、魔犬機士団の隊長室でクランオールと面会した。リビセィルとイルグが調査任務で不在のため、クランオールが留守を預かっていた。シィルレーンはニアからの伝言として、クランオール、リビセィル、イルグに対し、自分のもとで鍛えて機兵より強くならないかという誘いを伝えた。そして自身も機兵より強くなる予定であると付け加えた。

第二章 二輪試作機と三輪試作機

クランオールの鍛錬開始

シィルレーンは王城での話し合いの翌日、姉のクランオールを連れてきた。クランオールはニアに対して強く萎縮していたが、虫を殲滅するために力が欲しいという意志だけは揺らがなかった。ニアはその意思を認め、さっそく鍛錬を始めることにした。

打撃技術の指導

ニアはクランオールに訓練用の棍棒を振らせ、その一撃を確認した。強くなりたいという気持ちが反映された良い攻撃だったが、まだ武の入り口に過ぎないと判断した。そこでニアは棍棒を借り、打撃には外部破壊と内部破壊の二種類があることを説明した。

まず衝撃を内部へ伝えて破壊する内部破壊を実演し、続いて打撃面そのもので破壊する外部破壊を見せた。丸太を容易く破壊するその技術を目の当たりにしたクランオールは大きく驚き、ニアはマーベリアが機兵だけに頼っていて本当に大丈夫なのかと問い掛けた。

クランオールの修行への没頭

その後、クランオールは屋敷へ頻繁に通うようになり、「氣」の修行へ熱心に取り組んだ。強くなりたいという気持ちは非常に強く、シィルレーンにも劣らない熱意を見せていた。ニアはそのひたむきな姿勢を好ましく感じていた。

馬なし馬車の新設計

ある日、アカシとバルジャが新たな設計図を持ってきた。以前の試作機の欠点だった旋回性能を改善し、前輪で方向転換する三輪構造へ変更したという。ニアは設計そのものには可能性を感じたが、街中での試験運転には危険が伴うため、街の外で試すべきだと主張した。

しかしアカシは学校を試験場に使う案を提案した。ニアは呆れながらも、その提案を完全には否定できなかった。

掃討科の訓練見学

ニアは放課後、掃討科の四人を訪ねた。イース、ミケ、ダイオン、ホロウは校庭の片隅で訓練を続けており、互いに一対一で実戦形式の鍛錬を繰り返していた。

ニアは彼らの実力を確認し、年齢を考えれば十分優秀だと評価した。しかし機兵との戦いを考えると、このままでは勝機は薄く、対機兵に特化した作戦が必要だとも感じていた。

イースとの模擬戦直前

ニアはイースたちへさらに上の世界を見せようと考え、イースとの模擬戦を受けることにした。イースも喜んで応じ、木剣を構えて向き合った。

しかしその直後、機兵科の訓練用機兵二機が現れ、掃討科を侮辱しながら訓練の邪魔を始めた。

機兵科との騒動

機兵科の生徒たちはシィルレーンが普通科へ移った責任をニアへ押し付け、不満をぶつけた。イースはニアを守ろうとしたが、ニアは彼女の背後へ回り込み、「氣」を流し込んで身体を操作した。

そのままイースの木剣を振らせ、飛ぶ斬撃を発生させて機兵へ叩き込んだ。機兵は大きく吹き飛ばされ、さらに続けて放たれた斬撃によって装甲へ多数の傷を刻まれた。

最終的に機兵科の生徒たちは、自分たちが邪魔をしたことを認めて謝罪し、その場から退散した。

騒動の結末

機兵科が去った後、掃討科の三人は怯えた様子でニアを見つめていた。無表情だったホロウまでもが恐怖を隠せない状態であった。

一方でイースは、強制的に大量の「氣」を使わされた影響で意識を失っていた。ニアは特に気にすることなく騒動を終え、掃討科へ訓練を続けるよう告げると、アカシの試作機を見に向かったのであった。

機兵学校の工房見学

ニアはシィルレーンと合流し、機兵学校の工房を訪れた。シィルレーンは機兵が使用者ごとに細かく調整されることや、機兵技師科が修理や整備を担っていることを説明した。工房へ入ろうとしたニアは、機密性の高い施設であるため立ち入りを止められたが、シィルレーンの案内でアカシたちを待つことになった。

サーキーとの出会い

工房では機兵技師科の科長であるサーキッズ・ハーバーと再会した。サーキーは、廃棄予定の機兵動力を再利用して馬なしで走る馬車を開発する計画に好意的だった。役目を終えた機兵が別の形で役立つことを歓迎しており、機兵修理で多忙な中でも試作機の調整に協力していた。

三輪試作機の完成

やがてアカシたちが三輪試作機を押して現れた。前輪を操舵輪とし、後方に荷台を備えた構造であった。アカシは完成した試作機に飛び乗り、勢いよく走らせたが、曲がる際に減速せず横転した。サーキーは雑な扱いを厳しく叱責したが、その後技師が運転した試作機は狙い通りの性能を発揮し、小回りの利く実用的な乗り物であることが確認された。

孤児たちへの活用案

試作機の性能を見たニアは単船で十分ではないかと考えたが、アカシは魔力の少ない者でも扱える利点を説明した。荷物運びや配達などの仕事にも利用でき、子供たちでも働ける可能性があると語った。機兵孤児の問題を意識した発言を聞き、ニアはアカシが当初から別の目的も見据えていたことを理解した。

ニアによる試乗

ニアは自身の魔力では動かせないと思っていたが、試作機へ魔力を流し込むと動力が反応した。実際に運転すると操作性や速度に優れ、非常に楽しめる乗り物であることが分かった。魔力消費も少なく、子供でも扱える可能性を実感したニアは、この試作機を完成させるべきだと強く考えるようになった。

二輪案の提案

三輪試作機の検証中、サーキーはさらに前後二輪だけの構造を提案した。走行中であれば倒れず、車体を傾けることで鋭く曲がれるという考えだった。ニアたちは想像できなかったが、サーキーは試作機を製作すると約束し、その日の作業は終了した。

二輪試作機の完成

翌日、工房には二輪試作機が用意されていた。競技用単船に似た構造で、鞍に跨って乗る形式だった。試乗を巡ってニアとアカシが競い合う中、シィルレーンが先に乗り込んだ。しかし魔力を流し込み過ぎたことで試作機が急加速し、シィルレーンは振り落とされてしまった。技師たちは姫であるシィルレーンよりも試作機の挙動に注目し、改良点を議論し始めた。

機馬の誕生

その後の試乗は成功し、ニアは二輪試作機の性能を高く評価した。車体を傾けながら曲がる感覚は三輪試作機以上に優れており、開発継続を決意した。サーキーは本格的な開発は専門工房へ任せるべきだと語り、自身は発案者として一歩引く姿勢を示した。

ニアが名前を求めると、サーキーは機兵の動力を使った馬という意味から「機馬」と名付けた。ニアはその名称を採用し、三輪型も含めて改良と開発を進めることを決めた。

機馬開発への期待

機馬は単船より構造が単純で、操作も容易であり、魔力の少ない者でも扱える乗り物であった。孤児たちの仕事や生活を支える可能性も秘めており、ニアとアカシは市井の工房と協力しながら開発を続ける方針を固めた。こうして機馬は、新たな乗り物として大きな可能性を示したのであった。

第三章 機兵と戦う

掃討科からの相談

ニアは授業の休憩時間に、掃討科のミケ・エンカードとダイオン・イベースから声を掛けられた。機兵科との騒動以来の接触だったため、ニアは何か問題が起きたのかと考えた。

ミケは言葉を選びながら、先日の件に関して頼みたいことがあると切り出した。そして、まずイースに会ってほしいと頼んだ。

イースの無理な鍛錬

放課後、ニアは掃討科の訓練場所を訪れた。そこではイースが一心不乱に剣の振り下ろしを繰り返していた。

ミケによれば、イースは先日の飛ぶ斬撃を自分の力で再現したいと考え、授業以外の時間をほとんど鍛錬に費やしていた。機兵と戦うためには必要な力だと考えており、周囲が止めても諦めようとしなかった。

ミケは、もはや止めるよりも教えられる者に導いてもらった方が良いと判断し、ニアへ協力を求めた。

「氣」の感覚の伝授

ニアはイースの背後へ回り、背中に手を当てて「氣」を流し込んだ。そして彼女の体内にある「氣」を呼び起こし、その流れを整えた。

荒々しくまとまりのなかった流れは徐々に落ち着き、身体の中を巡る感覚へと変化していった。ニアはこの感覚をしっかり覚えるよう伝えた。

イースの才能

感覚を尋ねられたイースは、身体の中心や骨の中から何かが出ているように感じると答えた。

その返答を聞いたニアは、イースがすでに「氣」の感覚を掴み始めていることを理解した。本来なら感覚を得るだけでも困難であるにもかかわらず、イースは短時間でその変化を認識し、自分なりの言葉で表現していた。

ニアはその呑み込みの早さと武の才能に感心し、突出した資質の片鱗を感じ取っていた。

基本修行の指導

ニアは、飛ぶ斬撃を放つためにはまず基本を身につけることが先決だと説明した。そして身体の中へ「氣」を蓄え、それを自在に扱えるようになることを目標として示した。

それだけを伝えると、それ以上の干渉はせず、修行の邪魔をしないようその場を後にした。

帰路につくニア

ニアはミケたちに、また何かあれば声を掛けるよう伝えた。そして屋敷で待つ弟子たちやおやつのことを思いながら帰路についた。

その直後、ニアは新たな面白い話に出会うことになるのであった。

機兵科の模擬戦とクワイトの不満

校庭では訓練用機兵による模擬戦が行われていた。機兵同士の戦いは迫力があったが、故障すれば自分たちで修理しなければならず、機兵科の生徒たちにとっては気の抜けない訓練であった。

模擬戦を終えたクワイト・サブリは、最近の状況に強い不満を抱いていた。普通科の留学生ニア・リストンの噂が広まり、機兵科の筆頭であったシィルレーンが普通科へ移ったことをきっかけに、掃討科や商業科からも軽く見られていると感じていたのである。

エーゲとの意見の対立

クワイトは後輩のエーゲ・ロージスに不満をぶつけたが、エーゲは機兵科の立場や他科との対立には興味を示さなかった。彼は立派な機士になることだけを目標にしており、周囲が誰を舐めているかなど気にしていなかった。

さらにクワイトがニアの力を疑い、機兵を指一本で壊したという噂には必ず裏があると主張しても、エーゲは冷淡な態度を崩さなかった。

ニアへの関心

そんな中、二人の前をニア・リストンが歩いていた。エーゲも彼女の存在や数々の噂は知っていたが、その力の正体までは理解できていなかった。

ロック・フリックとサンエ・ギブンスの機兵が壊されたという話も耳にしていたが、真相は不明であり、自分の想像を超える何かがあるのだろうと考えていた。

シィルレーンへの思い

クワイトはこの機会にシィルレーンを返せとニアへ言いに行こうと考えた。エーゲは乗り気ではなかったが、シィルレーンには大きな恩があった。

機兵の扱い方や戦い方を丁寧に教えてくれたのはシィルレーンであり、王女という身分に関係なく一人の機兵科生徒として接してくれた存在であった。エーゲにとって彼女は目標とする機兵乗りでもあった。

そのため、機兵科へシィルレーンを取り戻すという話には完全には無関心でいられなかった。

ニアへの接触

もっとも、エーゲが考えをまとめる暇はなかった。クワイトはエーゲの意思など構わず引きずるように連れて行き、そのままニアへ声を掛けたのであった。

機兵との勝負の決定

掃討科と別れた直後、ニアは機兵科の生徒二人に絡まれた。シィルレーンを返してほしいという話から、シィルレーンを賭けて機兵と勝負する案が持ち上がると、ニアは即座に承諾した。

屋敷へ戻ったニアはその話をシィルレーンに伝えた。シィルレーンは、自分が勝負に出るのは本末転倒ではないかと疑問を抱いたが、ニアは機兵科へ戻りたいなら負ければよく、戻りたくないなら勝てばよいと告げた。さらに、虫との実戦を考えれば、この程度のリスクはあって当然だと語った。

シィルレーンの修行への熱意

その話を聞いたシィルレーンは強くやる気を見せた。クランオールを呼び出し、詳しい説明も後回しにして鍛錬への協力を求めた。

ニアは二人を修行へ向かわせ、自分だけおやつを食べようとしたが、シィルレーンから面倒を見る約束をしたのだから付き合うよう求められた。その結果、ニアも修行に参加することとなった。

マーベリアの豊かな食糧事情

修行の合間、クランオールはマーベリアの食糧事情について語った。小麦や果実の出来が非常によく、長い歴史の中でも不作が少なかったという。

そのため、虫との戦いが続いていても食糧不足に悩まされることはなく、迎冬祭のような祭りも維持できていたのであった。

クランオールとシィルレーンの成長

ニアはクランオールに「氣」の修行を続けていたが、まだ感覚を掴み切れていなかった。一方でシィルレーンは素振りを繰り返しながら「氣」を発現させ始めており、不安定ながらも維持できる時間を徐々に伸ばしていた。

その様子を見たニアは、迎冬祭までに間に合う可能性を感じていた。

リビセィルへの感情と優先事項

修行中、クランオールはニアにリビセィルへの怒りが残っているのか尋ねた。

ニアは怒っていないとは言わなかったが、それよりもマーベリアの将来や機兵孤児の問題を優先すべきだと考えていた。リビセィルを含め、強くなりたい者には力を貸すつもりであったが、何らかの形で決着やけじめは必要かもしれないとも感じていた。

掃討科との勝負準備

翌日、ニアは掃討科を訪れ、機兵との勝負について伝えた。

イースは即座に戦うと答え、ミケ、ダイオン、ホロウも反対しなかった。こうして勝負への参加が決まり、アカシの調整によって迎冬祭の二日前、冬休み前の終業日に秘密裏に対戦する予定となった。

しかし秘密のはずだった話は広まり、当日には機兵学校の全生徒が知るところとなっていた。

機兵科に広がった噂とジーゲルンの動揺

迎冬祭を目前に控えた機兵学校では、機兵科と他科の対立に関する噂が広まっていた。そして冬期休暇直前になり、シィルレーンの転属を賭けてクワイト・サブリとエーゲ・ロージスが勝負をするという具体的な内容が学校中に知れ渡った。

その噂を聞いたジーゲルン・ゲートは激しく動揺した。最近は気力を失っていたが、この件によって久しぶりに感情を露わにしたのであった。

クワイトの後悔と事情説明

空き教室に呼び出されたクワイトは、ジーゲルンとエーゲに事の経緯を説明した。

クワイトは当初、ニア・リストンとの約束を冗談だと思っていた。しかし翌日からアカシが具体的な段取りを進め始め、さらに噂が広まったことで引き返せなくなっていた。

機兵と生身の人間が戦うなど本気にしていなかったクワイトは、自分が軽率な発言をした結果、取り返しのつかない状況になったことを後悔していた。

機兵科が抱える板挟み

ジーゲルンは状況を整理し、機兵科が極めて厳しい立場に置かれていることを理解した。

機兵で人を傷つければ重罪となり、放校や機士資格の剥奪にも繋がりかねない。一方で、交わした約束から逃げれば機兵科全体が臆病者として笑われる可能性があった。

約束を守っても問題があり、破棄しても問題がある状況に、クワイトは追い詰められていた。

ジーゲルンの支援表明

クワイトが望んでこの事態を招いたわけではないと理解したジーゲルンは、共に解決策を考えると約束した。

最悪の場合はシィルレーンを通じてニアへ謝罪する方法も考えられたが、それは最後の手段であり、まずは別の解決策を探ることにした。

アカシの来訪

重苦しい空気の中、アカシ・シノバズが空き教室へ現れた。

クワイトは、自分をここまで追い詰めた張本人だと非難したが、アカシはニアに頼まれたため断れなかったと説明した。そして、この騒動は単なる危機ではなく、機兵文化を変えるきっかけになる可能性があると語った。

ジーゲルンとクワイトは半信半疑だったが、現状を打開するにはアカシの話を聞くしかなかった。

迎冬祭前日の対決へ

こうしてアカシの企みによって話は進み続けた。

誰もが半ば噂話だと思っていた勝負は現実のものとなり、迎冬祭二日前の終業日を迎えた。

機兵用訓練所には二機の機兵、掃討科の四人、ニア・リストン、そしてシィルレーンが集結した。さらに学校中の生徒たちが遠巻きに見守り、何かが始まろうとする異様な雰囲気に包まれていたのであった。

機兵対掃討科の勝負開始

冬期休暇に入った機兵学校には、多くの生徒や教師、さらに部外者までが集まり、噂の真相を確かめようとしていた。

訓練所には二機の機兵、掃討科の四人、ニア・リストン、シィルレーンが姿を見せた。詳細は知られていなかったものの、これから何かが始まることだけは誰の目にも明らかであり、集まった者たちは固唾を呑んで見守っていた。

機兵科の事情と謝罪

ニアはクワイトとエーゲと再会し、シィルレーンから機兵で人を傷つけることが機兵乗りにとって重大な禁忌であり、今回の勝負が本来なら退学に繋がる行為であることを知った。

クワイトはシィルレーンに謝罪したが、シィルレーンを機兵科へ戻したいという気持ちは曲げなかった。ニアもその点については問題視しなかった。

その後、アカシが三輪試作機でサーキーとジーゲルンを連れて現れた。ジーゲルンは先日の件と今回の騒動について謝罪し、その上で勝負の方法を変更してほしいと申し出た。

新たな勝負方法の提案

ジーゲルンは訓練用の機兵連砲と感知装置を持ち込み、新しいルールを説明した。

機兵連砲は物理的な被害を与えない魔法弾を発射し、感知装置に命中すると光と音で判定される仕組みだった。掃討科四人全員が撃たれれば機兵側の勝利、弾切れか機兵の行動不能で掃討科側の勝利となるルールである。

ニアは変更を受け入れたうえで、手加減せず本気で勝負することを求めた。双方が勝つために鍛錬してきた以上、情けによる勝利は不要だと告げ、機兵科側もそれを了承した。

エーゲによる対戦形式の変更

エーゲは勝負を二戦に分けることを提案した。

クワイトが掃討科四人と戦い、自分はシィルレーンと対戦するという形式である。シィルレーンも了承し、勝負はその形で行われることになった。

掃討科とクワイトの戦い

掃討科はダイオンの大盾を盾にして前進し、機兵との距離を詰めた。

クワイトは盾を弾き飛ばしてダイオンを脱落させたが、その隙にミケ、ホロウ、イースが接近した。ホロウが暗照明で視界を妨害し、ミケが注意を引き付ける間に、イースが機兵の膝関節へ剣を突き立てた。

さらに「氣」を全開にして力を込めた結果、膝関節内部を破壊し、機兵は支えを失って倒れた。こうして掃討科が勝利を収めた。

エーゲの決断

二戦目の準備が整うと、エーゲは機兵に乗らないと宣言した。

どのような事情があろうと、王族であるシィルレーンへ機兵の武器を向けることはできないと考えたためである。その代わり、無人の機兵を倒せればシィルレーンの勝利とする条件を提示した。

シィルレーンは、機兵科の生徒の将来を左右することは許されないとして、この提案を受け入れた。

シィルレーンの一撃

シィルレーンは私物の槍を構え、全身全霊の力を込めて石突による突きを放った。

体重移動と「氣」を乗せた渾身の一撃は、機兵の正面装甲を捉えた。そのまま押し込み続けた結果、巨大な機兵を浮かせ、後方へ倒してみせた。

あまりにも常識外れの光景に、観客たちは歓声ではなく驚きと困惑のざわめきを上げた。

勝負の決着

掃討科の勝利に続き、シィルレーンも無人機兵を倒して勝利した。

勝負の形は当初の想定とは異なったものの、掃討科の戦いもシィルレーンの戦いも見応えのある内容となり、ニアは満足していた。

機兵敗北による衝撃

機兵学校の教師たちは、事前にアカシから話を通されていたこともあり、校舎から離れた場所で勝負を見守っていた。

彼らは機兵と生身の人間の実力差から、勝敗は最初から決まっていると考えていた。しかし結果は機兵側の二敗だった。特に掃討科が機兵に勝利した事実は大きな衝撃となり、絶対的な強者と信じられていた機兵への認識を揺るがした。

ジーゲルン機とニアの対戦

勝負が終わったと思われた直後、学年代表の印を持つジーゲルンの機兵が訓練所へ姿を現した。

その前に立ったのはニアだった。機兵は訓練用の機兵連砲と剣型の鉄棒を装備していたが、ニアは感知装置を背負っている以外は丸腰だった。

こうして機兵とニアの勝負が始まった。

ニアによる機兵の翻弄

ニアは至近距離から放たれる魔法弾を軽々と回避し、機兵が振るう鉄棒も難なく避け続けた。

さらに機兵の攻撃範囲内に留まりながら距離を自在に調整し、まるで遊んでいるかのように立ち回った。重量ゆえに機動力で劣る機兵は、ニアを捉えることができず翻弄され続けた。

やがてジーゲルン機は活動限界を迎え、正面装甲が開いてジーゲルンが降機した。誰の目にも三戦目はニアの勝利だった。

機兵への認識の変化

ニアは終始余裕を保ったまま戦い続けたため、もし攻撃に転じた場合どうなっていたのかという疑念を周囲に残した。

この光景は教師たちだけでなく、密かに見守っていた現役機士たちにも大きな衝撃を与えた。東の砦で虫との戦いに巻き込まれた機士たちも、ニアの実力が本物であることを改めて認識した。

この出来事はすぐにマーベリアの要人や国王の耳にも届き、絶対的な存在と考えられていた機兵への認識を少しずつ変化させていった。

第四章 次の段階へ

冬休み明けと修行の継続

迎冬祭や機兵との勝負を経て冬休みに入ったが、それ以外に大きな出来事はなく、ニアはこれまでになく穏やかな休暇を過ごした。

二学期が始まってからも生活に大きな変化はなく、放課後にはシィルレーン、クランオール、ミトが屋敷に集まり修行を続けていた。クランオールは「氣」を掴み始め、ミトも才能を発揮して成長していた。特にシィルレーンは迎冬祭前の勝負以降さらに意欲を高め、ひたすら鍛錬を重ねていた。

工房選びとアカシへの警告

ニアは三輪馬車や機馬の開発を進めるため、アカシと工房選びについて相談していた。

大規模工房は機兵関連の仕事で多忙であり、小規模工房は設備や人手に不安があったため、中規模工房が有力候補として挙がった。

またアカシは修行を教えてほしいと頼んだが、ニアはマーベリア側の人間には自ら教えないと告げた。そのうえで、「氣」の技術を軽々しく広めないよう釘を刺した。

リビセィル帰還の報告

相談の最中、アカシはリビセィルとイルグが東方調査から帰還したことを伝えた。

アカシはニアの怒り具合を気にしていたが、ニアはシィルレーンやクランオールから繰り返し謝罪や弁明を聞いていたため、すでに怒りは収まっていると答えた。一方で、リノキスの怒りはまだ消えていないだろうと考えていた。

リビセィルとの和解

翌日、リビセィルたちは屋敷を訪れた。リノキスの冷たい視線に足を止めながらも、リビセィルはニアへ謝罪した。

ニアは謝罪を受け入れる代わりに、一発殴らせればすべて水に流すと告げた。リビセィルは覚悟を決めて受け入れ、ニアの強烈な平手打ちを受けて倒れ込んだ。

その後、ニアはこれで禊は終わりだと宣言し、リビセィルたちを屋敷へ招き入れた。

夜襲事件の後始末

応接室での会話の中で、ニアは夜襲事件に使われた機兵について尋ねた。

リビセィルは、機兵の部品が少しずつ持ち出されて組み立てられていたことや、夜襲に使われた四機を含む計六機を回収したことを明かした。また、ダージョルが拘束され、機兵の横流しに関与した貴族や憲兵の調査が進められていると説明した。

ニアはその話を聞き、マーベリアそのものは腐敗していないと改めて感じた。

孤児問題への協力

続いて機兵孤児の問題が話題となった。

リビセィルは孤児支援のためにニアが私財を投じたことに触れたが、ニアは必要なら後で補填してほしいと答えた。

さらに、助成金を増やすだけでは問題の根本解決にならず、むしろ孤児を増やす可能性もあると指摘した。そのうえで、自分にできることがあれば協力すると申し出た。

東方調査の成果と土壌の推測

ニアは東の砦の向こう側の調査結果について尋ねた。

リビセィルは詳細を話せないとしながらも、これまで見たことのない虫や巨大な自然が存在したことだけを伝えた。

それを聞いたニアは、マーベリアの作物や果実の出来の良さから、この地の土壌そのものが非常に豊かであり、その環境が巨大な植物や虫を生み出したのではないかと推測した。

リビセィルは、その考えが学者たちの有力な説と一致していると認めた。

機兵を超える力への提案

話が進む中で、ニアは本題としてリビセィルとイルグを呼んだ理由を明かした。

シィルレーンやクランオールの成長を例に挙げ、このまま修行を続ければ機兵や虫を超える力を得られる可能性があると説明した。そして、自分は機兵の価値を相対的に下げ、マーベリアに外の世界へ目を向けさせたいと語った。

リビセィルは、虫の問題が解決した後は周辺国との友好関係も考えるべきかもしれないと話し、そのためにも機兵や虫を超える力が必要だと認めた。

新たな弟子の誕生

ニアはリビセィルとイルグにも修行を施すことを約束した。

二人は日頃から鍛錬を積み、戦場を意識して生きてきたため、成長する素地が十分にあるとニアは評価した。

こうしてリビセィルとイルグは新たにニアの弟子となり、虫を超える強さを目指して修行を始めることになった。

二か月後の修行の成果

二か月が経過し、ニアの弟子たちは着実に成長していた。シィルレーンとクランオールは引き続き修行を続け、仕事で忙しいリビセィルとイルグも交代で屋敷に通っていた。二人はもともとの実力が高かったこともあり、「氣」を掴むのが早く、自主鍛錬も欠かさなかったため順調に力を伸ばしていた。

また、ミトの成長も著しく、体格や経験の不足を補うように「内氣」の身体強化だけで弟弟子たちを圧倒する場面もあった。

イースの急成長

イースはいつの間にか修行の場へ顔を出すようになり、その成長速度は弟子たちの中でも際立っていた。

一方で、イースは相変わらずニアへ勝負を挑み続けており、そのたびに平手打ちを受けていた。その様子を見るたびに、かつて同じように平手打ちを受けたリビセィルは複雑な表情を浮かべていた。

三輪馬車と機馬の開発

工房が決定したことで、三輪馬車と機馬の開発も本格的に始まっていた。

三輪馬車は試作機が完成し、すでに屋敷で試乗と運用が行われていた。乗り心地や性能への意見を集めながら改良が進められていた。

機馬の開発も進行していたが、工房内では三輪馬車と機馬のどちらを優先するべきかを巡って職人同士が熱く議論していた。アカシは、それはより良い物を作ろうとする前向きな衝突であり、悪いことではないと説明した。

リノキスの修行再開

リノキスにも変化が生まれていた。

シィルレーンたちの成長を見て危機感を覚えたことで、自ら積極的に修行へ取り組むようになったのである。ニアはその姿勢を歓迎しながらも、おやつ作りに支障が出ないかを気にしていた。

おやつを巡る師弟のやり取り

ニアは修行に励むリノキスへ、おやつを作る体力は残しておくよう念を押した。

マーベリアの食材で作られる菓子はニアのお気に入りとなっており、修行後のおやつは欠かせない存在になっていた。リノキスは、自分がおやつ担当のように扱われていることへ不満を漏らしたが、ニアは使用人としての仕事でもあると返した。

最終的にリノキスは修行へ向き合うことを受け入れ、ニアもやる気を見せた一番弟子を少し厳しく鍛えようと考えた。ただし、おやつ作りも続けてもらうつもりであった。

元空賊リグナーの来訪

初春を迎えた頃、元空賊のリグナーが再びマーベリアを訪れた。しかし滞在時間は短く、ニアからの手紙を受け取るとすぐに帰っていった。

ただし今回は置き土産があり、セドーニ商会のダロンがマーベリアへ派遣されてきた。ダロンは商会から現地活動の全権を任されており、調査結果次第ではマーベリア支店の設立を決定する権限まで与えられていた。

支店設立に向けた商談

ニアは以前セドーニ商会へ支店設立を提案しており、その結果としてダロンが派遣されていた。ダロンはニアの話は常に大きな商機を伴うと考えており、現地調査だけでも価値があると判断していた。

ニアはダロンを高級店へ案内し、食事をしながらマーベリアでの活動を説明した。機兵関係の騒動を経て商業ギルドや王族との繋がりを得たこと、支店設立に必要な条件が整いつつあることを伝えた。

ダロンは、王族と商業ギルドの後ろ盾があれば十分な勝算があると評価した。

マーベリアの食材への注目

商談の中でニアは、マーベリアの食材の質の高さを輸出品の候補として挙げた。

ダロンも実際に料理を味わい、その素材の質や調理の完成度を高く評価した。ニアは農作物だけでなく酒などにも将来性があると考えており、マーベリアの食文化そのものが商売になる可能性を見出していた。

さらに、まだ正式な認可は下りていないものの、今後の構想についてもダロンへ説明した。

商業ギルドとの引き合わせ

翌日、ニアはダロンと再び合流し、マーベリア商業ギルドへ案内した。

そこでダロンは商業ギルド長ガッダムと正式に顔を合わせた。今後はダロン自身がマーベリアを調査し、商機の探索や支店候補地の選定、人材確保などを進めていくことになった。

ニアは王族との繋がりと商業ギルド長という強力な後ろ盾が揃っているため、支店設立は可能だと考えていた。そして自身は必要な時に助力する立場に留まり、商人たちの活動には深く介入しない方針を示した。

しかし、ダロンの活動には後に予想外の横槍が入ることになるのだった。

エプロンの披露とお菓子作りの誘い

ある夜、ニアが宿題に取り組んでいると、カルアとミトが部屋を訪れた。二人は自分たちで作った子供用エプロンを見せに来ており、リノキスの手伝いを受けながら完成させたことを報告した。

さらに二人は、翌日の休日にニアと一緒にお菓子作りをしたいと申し出た。当初リノキスは反対したものの、ニアはたまにはこういう時間も良いと考え、子供たちの誘いを受け入れた。

ヒルデトーラの新しいエプロン

リノキスの説明によって、エプロンの見本になったものが、セドーニ商会から届けられたヒルデトーラの新しい番組用エプロンであることが判明した。

ヒルデトーラが番組で使用するエプロンを新調し、それが商品化されたため送られてきたのである。ニアはその話を聞き、ヒルデトーラが今も魔法映像の世界で努力を続けていることを感じ取り、自身もやるべきことを果たそうと考えた。

子供たちとのお菓子作り

翌日、ニアはお揃いのエプロンを身につけ、カルアやミトとともに果物のタルト作りを行った。

小さなタルトをたくさん作るため、タルト生地を焼き、冷やし、クリームや様々な果実を盛り付けていった。焼き上がる香りに皆が空腹を覚えながらも作業を続け、生地を冷やす工程ではニアが団扇を使って素早く熱を取る様子を見せ、子供たちを驚かせた。

楽しい休日の締めくくり

こうしてタルト作りは無事に完成した。ニアにとっても楽しい時間となり、いつかヒルデトーラと並んで何かを作ってみたいと思うようになった。

また、リノキスが子供たちとお揃いにするため、一晩で自分用のエプロンを作り上げていたことも明らかになった。ニアはその熱意を修行にも向けてほしいと考えながら、一番弟子の姿を見守っていた。

春の訪れとダロンの調査

ダロンがマーベリアに来てから一か月ほどが過ぎた。ニアは時折ダロンと情報交換を行い、マーベリアの事情や調査の進捗を聞いていた。

調査自体は順調であり、支店を出しても利益は見込めると判断されていた。しかし外国人への風当たりの強さは依然として懸念材料であり、利益予測は良好でも十分な客足が得られるか不安が残っていた。そのため、表向きはマーベリア人の店として運営する案も検討されていた。

シィルレーンへの実戦許可

虫の活動が活発になる春を迎え、ニアはシィルレーンに実戦経験を積ませることを決めた。

長期間にわたり修行を続けた結果、シィルレーンの「氣」は安定しており、実戦へ進むだけの準備が整っていた。シィルレーン自身も虫との戦いを望んでおり、その提案を受け入れた。

一方でクランオールはまだ早いと判断された。本人も未熟な部分を自覚しており、焦らず修行を続けることになった。

ミトと孤児たちへの考え

シィルレーンからミトについて問われたニアは、子供に実戦を経験させるつもりはないと答えた。

ミトは弟子たちの中でも高い実力を持っていたが、そもそも戦うために強くなろうとしているわけではなかった。護身の力を求めているだけであり、生き物を殺すことを目的としていなかったため、実戦参加は慎重に判断する考えだった。

また、ミトの兄シグは料理や家事を学び、バルジャとカルアも計算や文字を覚え始めるなど、それぞれが将来に向けて力を身につけていた。

イースの同行決定

ニアは次の休みに東の砦へ向かい、シィルレーンへ実戦経験を積ませることを決めた。

その際、イースをどうするかが話題となった。イースは呼ばれなくても修行へ参加するようになっており、シィルレーンに匹敵する実力を持つまで成長していた。教わっていない技術まで見様見真似で身につけるほど才能に恵まれていたが、何のために強くなろうとしているのかはニアにも分からなかった。

それでもニアは理由を詮索せず、本人の意思を尊重することにした。そして参加の意思を確認すると、イースは即座に行くと答えた。

第五章 イルグの独断

工房視察と実戦修行の準備

実戦修行と試作機運用の計画

シィルレーンとイースの修行は新たな段階へ進むことになった。マーベリアでは虫の生息地が明確で数も多いため、実戦相手として虫を選ぶことになった。

ニアは、シィルレーンたちを現地まで走らせて修行させる一方、自身は三輪馬車や機馬の野外性能試験と試乗訓練を行うつもりだった。長距離かつ野外での運用を想定した試行であり、魔力運用の訓練も兼ねていた。

野外運用への課題

ニアはアカシから、開発中の試作機が依然として街中での運用を前提に改良されていると聞かされた。

王都の石畳は車輪に適していたが、野外は未整地の地面ばかりであり、街道も踏み固められた程度だった。ニアは将来的に機馬で野外を走ることを想定していたため、街中向けの設計だけでは不十分だと考えていた。

フライヒ工房の訪問

ニアはアカシに案内され、初めて開発を担当するフライヒ工房を訪れた。

出迎えた所長のジート・フライヒは非常に低姿勢で歓迎し、応接室へ案内した。工房は小規模ながら熱意にあふれており、三輪馬車の改良も順調に進んでいた。ニアはここへ依頼して良かったと伝え、ジートも感謝を示した。

熱意あふれる職人たち

応接室の外からは職人たちの激しい言い争いが聞こえていた。やがて現れたのはジートの三人の息子たちであり、彼らは三輪車や二輪車、四輪車の開発方針について激しく対立していた。

父親が慌てて取り繕う一方で、兄弟たちは開発への強い情熱を隠さなかった。ニアは彼らの様子から、工房内で方向性の違いによる対立が起きているという話が事実であることを理解した。

野外用試作機の優先指示

兄弟たちのやる気を認めつつも、ニアは現時点で必要な方向性を示した。

野外で長距離走行が可能な試作機を優先して製作し、二輪でも四輪でも構わないので実際に試乗を重ねながら最適解を探るよう依頼したのである。

職人たちはその指示を受け入れ、わずか二日後には野外用試作機を届けた。完成したのは四輪型だったが、ニアが理想とする機馬の完成までは、まだ時間が必要であると感じられた。

実戦修行への準備

東の砦まで走る修行の発表

実戦的な修行の日程が決まり、ニアは弟子たちに東の砦まで走って向かうことを伝えた。シィルレーンは距離の長さに驚き、徒歩では一日以上かかると反論したが、ニアは街道を無視して直線的に進むことや、「氣」による身体強化を維持しながら走ることで実現可能だと説明した。

さらに、この長距離走そのものが修行であり、それができなければ実戦訓練も行えないと告げた。シィルレーンは半信半疑ながらも受け入れ、ニアは事前に短距離で試してみることを提案した。

クランオールへの予告と機馬利用の方針

ニアはクランオールにも将来的に同じ修行を行わせるつもりであることを伝えた。クランオールは東の砦までの距離を知っているだけに気が重そうだったが、ニアは構わず走らせるつもりだった。

一方でニア自身は機馬の試作機に乗って向かう予定だった。弟子たちと同じ速度で走っても修行にならないためであり、自分は単船や機馬より速いと語った。クランオールとアカシはその意見に一定の理解を示した。

四輪機馬試作機の完成

予行演習の日、フライヒ工房の三兄弟が新たな機馬試作機を持ち込んだ。従来の二輪型よりも大きく、四輪構造となっていた。

ジャンゴは、車輪を大きくすることで段差や石を乗り越えやすくしたと説明した。一方で車体全体が金属製で柔軟性に欠けるため、小さな衝撃もそのまま伝わってしまう問題があるとも語った。

ニアはそれも試乗で確認すべき課題だと考えた。

予行演習の実施

準備運動を終えたシィルレーンとイース、荷物運搬役のアカシとともに予行演習が行われた。

短距離の試走だったが、シィルレーンとイースは修行の手応えを感じていた。一方でニアは、四輪機馬の座席が硬く、地面の凹凸が直接伝わるため尻が痛くなったことを痛感した。そのためフライヒ工房へ座席に厚いクッションを追加するよう要望することにした。

修行当日の出発

事前練習を経て修行当日を迎えた。改良された機馬を持参したフライヒ工房の三兄弟に別れを告げ、ニアは四輪機馬に乗り込んだ。

シィルレーンとイースは自らの足で走り始め、アカシも同行した。早朝の王都を出発し、一行は東の砦を目指して修行の旅へと向かった。厚いクッションが取り付けられた機馬の乗り心地は快適であり、ニアは満足しながら出発したのであった。

実戦訓練初日

東の砦への移動訓練

ニアは四輪機馬に乗り、シィルレーンとイースは「氣」を用いて走りながら東の砦を目指した。二人は当初こそ速度が安定しなかったものの、次第に一定の速度を維持できるようになった。

機馬は高速で進み、アカシの操縦する単船が後方から追従した。長距離を走る中で二人は「氣」の維持に慣れ、身体能力の向上を実感していた。

機馬の故障とニアの対応

順調に進んでいた途中、四輪機馬の左前輪を固定していた部品が破損し、車輪が外れた。車体は大きく跳ね上がって縦回転したが、ニアは即座に対応した。

ハンドルを引き寄せて車体を制御し、「重氣」と体重移動によって落下の衝撃を殺したうえで、四輪機馬ごと安全に着地した。

駆け寄ったシィルレーンやイースを安心させた後、ニアは故障した機馬を担ぎ上げ、自ら走って砦へ向かうことを決めた。アカシには外れた車輪や部品の回収を任せ、一行は移動を再開した。

東の砦への到着

一行は予定より遅れながらも東の砦へ到着した。ニアは故障した四輪機馬を担いだまま現れ、その姿に駐在していたリビセィルは驚愕した。

ニアは試作機が故障したため担いで運んできたと説明した。リビセィルは「氣」の概念を理解していてもなお驚きを隠せなかったが、ニアは自分も修行を積めば同じことができるようになると語った。

その後、リビセィルは体調万全であるとして実戦訓練への参加を申し出た。毎日の修行も欠かしていないことを伝え、ニアは参加を認めた。

実戦訓練の開始

砦で休憩を取った後、ニアはシィルレーン、イース、リビセィルを連れて実戦訓練の場へ向かった。砦の兵士や機士たちは、生身で虫と戦う訓練を見学するため窓から様子を見守っていた。

ニアは近辺を探索し、安全を確認したうえで巨大なダンゴムシを発見した。動きは遅いが硬い外殻を持つため、三人がかりなら良い訓練相手になると判断し、石を投げて砦の近くまで誘導した。

巨大ダンゴムシとの戦い

シィルレーン、イース、リビセィルは巨大ダンゴムシとの戦闘を開始した。しかし槍や剣、大剣による攻撃は硬い外殻にほとんど通用しなかった。

そこでニアは真正面から攻めるのではなく、ひっくり返して柔らかい部分を狙うよう指示した。リビセィルは作戦を考案し、自ら囮となってダンゴムシを誘導した。

シィルレーンは槍を利用して坂を作り、突進してきたダンゴムシを持ち上げた。そこへリビセィルが槍を弾いてダンゴムシを横転させた。

その瞬間を待っていたイースは跳躍し、露出した柔らかい部分へ剣を何度も突き立てた。致命傷には至らなかったものの、弱点へ攻撃が通じることを確認し、三人は連携しながら攻撃を続けた。

初勝利と新たな課題

時間はかかったものの、三人はついに巨大ダンゴムシの討伐に成功した。砦から見守っていた兵士や機士たちは、生身の人間が三人だけで虫を倒した光景に大きな歓声を上げた。

イースは無邪気に喜び、シィルレーンとリビセィルは虫の強さを知っているだけに、勝利の実感にしばらく呆然としていた。

しかしニアは満足せず、まだ始まったばかりだとして次の虫を連れてくると告げた。こうして弟子たちの実戦訓練初日は本格的に幕を開けたのであった。

実戦訓練と機馬開発の進展

弟子たちの成長と実戦訓練の定着

実戦訓練と機馬試作機の開発は大きな問題もなく進み、春が過ぎて夏を迎えていた。機兵学校の一年も終わりに近づき、ニアは四年生への進級を控えていた。

シィルレーン、イース、リビセィル、クランオール、イルグたちは継続的に実戦訓練を重ねており、近頃は優れた連携を見せるようになっていた。複数の蟻を相手に立ち回れるほど成長し、ニアの助言がなくても自分たちで考えて行動できる段階に達していた。

ニアは彼らだけで訓練を任せられるか考えたものの、実戦には命の危険も伴うため、もう少し様子を見ることにした。

リノキスへの気遣い

ニアはマーベリア勢の修行を優先する一方で、リノキスの修行がやや滞っていることを気にしていた。

リノキスは家事や子供たちの世話、料理や菓子作りなど多忙な日々を送っており、実戦訓練への参加回数も少なかった。そのためニアは、いずれリノキス専用の修行を行わせるつもりでいた。

進化した四輪機馬試作機

休憩中、アカシは四輪機馬試作機十一号の出来栄えを高く評価した。これまでの試作機と比べて故障がなく、乗り心地も大きく改善されていたのである。

特に大きな変化は柔軟性であった。車体と車輪を繋ぐ部分に伸縮機構が組み込まれ、衝撃を吸収できるようになっていた。この技術には機兵で使用されている機構が応用されており、圧縮した油スライムを利用していた。

機兵技術の広まりへの展望

ニアが機兵の技術流出を懸念すると、アカシは近い将来、機兵の動力部以外は一般技術として広まるだろうと語った。

その背景には、ダロンが長期間の調査を経てマーベリアへの支店設置を決断したことがあった。ダロンは機馬も商品として扱う予定であり、完成後にはフライヒ工房と契約を結ぶ見込みだった。

機馬が市場に流通すれば、その技術や部品も国内外へ広がり、類似製品の開発も進むだろうと考えられていた。

時代の変化への認識

機兵でなければ対抗できなかった虫に対し、生身の人間が戦えるようになった現状を見て、アカシは機兵だけに頼る時代が終わりつつあると語った。

ニアも、今起きている変化がマーベリアにとって新たな時代の始まりであることは理解していた。しかし、それはあくまでマーベリアの人々が決めることであり、自分は力を教えただけだと考えていた。

力をどう使うかは彼ら自身が決めることであり、ニアはその選択に深入りするつもりはなかった。

二輪機馬への期待

機馬開発は現在四輪型を中心に進んでいたが、ニアとアカシは二輪機馬への愛着を捨てていなかった。

野外用機馬の開発を急がせた結果として四輪型が先行していたものの、二人はやはり二輪機馬こそ理想だと考えていた。フライヒ工房の職人たちもその思いを理解しているため、いずれ理想の二輪機馬を完成させてくれるだろうとニアは期待していた。

ネズミの脅威と拠点跡地の調査

長距離修行による弟子たちの成長

シラフェと東の砦を何度も往復する修行を重ねる中で、弟子たちは長距離走と「氣」の維持に慣れていった。当初は距離の長さに戸惑い、体力面でも苦戦していたが、次第に休憩なしで片道を走り切れるようになった。

特にイースは「氣」の習得速度が際立っており、他の弟子たちを一歩リードする存在となっていた。一方でミトはこの修行に参加していないため、成長には差が生じていた。

イルグからの密談

東の砦で休憩していたニアのもとへ、イルグが二人きりで話したいと申し出た。イルグは自らの責任で依頼したいことがあると告げ、ニアを人目のない場所へ連れ出した。

話を聞いたニアは内容に興味を示し、修行後にリノキスへ伝えることにした。その依頼はリノキスへの指名でもあった。

過去の失敗した開拓計画

修行後、ニアとリノキスは砦の東側にある未開地へ向かった。移動しながらニアは、数十年前にマーベリアが虫の勢力を押し返し、新たな拠点を築こうとした計画について語った。

当時は多くの機士や機兵、物資を投入して拠点建設を進めたものの、巨大なネズミによって壊滅させられたという。その失敗以降、現在まで膠着状態が続いていた。

イルグは過去の資料からその事実を知り、将来調査隊が同じ場所へ到達した際の危険を懸念していた。そのため、ネズミの脅威が今も残っているか調べてほしいと依頼していたのである。

放棄された拠点跡地の発見

ニアとリノキスは大岩を目印に森を進み、人の手で加工された石や放置された武器などの痕跡を発見した。

さらに奥へ進むと、緑に覆われた半壊状態の石造建築や朽ちた機兵を見つけた。そこはかつて建設途中だった拠点跡地であり、長い年月を経て森の一部となっていた。

ネズミの包囲網

拠点跡地へ到達した頃には、周囲に多数の気配が集まっていた。姿は見えなかったが、森の中に潜んだ巨大なネズミたちが二人を包囲していたのである。

ネズミたちは猫以上の大きさを持ち、巧妙に距離を保ちながら包囲網を形成していた。ニアはその狡猾さと知能の高さに感心しつつ、戦闘の準備を整えた。

リノキスによる迎撃

ニアは一対多の戦いでは有利な場所を確保することが重要だと教え、半壊した建物の上へ移動した。

ネズミの群れが一斉に襲いかかる中、リノキスは前衛として迎撃を開始した。頭部を狙った攻撃で次々と仕留めていったが、長時間の実戦によって徐々に疲労が蓄積していった。

ニアは蹴り技による体勢の乱れを指摘し、一撃で確実に仕留めながら消耗を抑えることの重要性を説いた。

ニアの介入と戦闘終結

リノキスの「氣」が乱れ始めると、ニアは前衛を交代した。襲い来るネズミたちを高速の拳で次々に仕留めながら、継戦能力を意識した戦い方を実演した。

やがて大量のネズミを倒したことで群れは撤退し、戦闘は終結した。リノキスは激しく消耗していたが、ニアはほとんど疲労を見せなかった。

新たな強さの指標

戦場に転がる大量のネズミの死骸を見ながら、ニアはイルグの判断が正しかったと認識した。この群れは現在の弟子たちでは対処が難しく、事前に排除できた意義は大きかった。

同時にニアは、このネズミたちを単独で相手にできるかどうかを弟子たちの実力を測る新たな基準にすることを決めた。

将来、砦の先へ進むならば、この程度の脅威を自力で突破できなければならないと考えたのである。

マーベリアの謎への興味

戦闘後、ニアは巨大な虫や好戦的なネズミが存在するマーベリアの生態系について思いを巡らせた。

さらに東の果てには、これらを上回る強者が存在するかもしれないと考え、いつか大陸の最果てまで行ってみたいという興味を抱いた。

その後、十分に休息したリノキスとともに帰路へ就いた。

第六章 王様の進退

機馬強奪事件

平穏な日常を揺るがす報告

ニアとリノキスがマーベリアへ来てから一年が過ぎ、生活や修行も安定しつつあった。ニアは今後の見通しを考え、魔法映像導入の準備も視野に入れていた。

そんな中、夏休み中のある日、普段と様子の違うアカシが訪れた。二人きりで話したいと切り出したアカシは、機馬の開発と販売権が奪われたと告げた。

サクマによる事情説明

報告に怒りを覚えるニアの前に、執事のサクマが現れた。サクマは、フライヒ工房とニアが交わした契約書が工房側から取り上げられ、新たな契約へ差し替えられたことを説明した。

さらに、ニアが保管していた契約書はサクマ自身が屋敷から持ち出し、相手方へ引き渡したと明かした。契約自体は法的に問題のない形で進められており、機馬の権利は書類上すでに奪われていた。

黒幕の判明

ニアは状況を整理し、背後にシノバズでも対処できない大物がいることを察した。

サクマたちの説明によって、今回の件の黒幕が軍部を統括するエンデヴァー総武局長であることが判明した。夜襲騒ぎの際に国王の側にいた老人の一人であり、極めて高い権力を持つ人物だった。

また、フライヒ工房は契約変更を拒んで抵抗したが、その結果として三兄弟が負傷し、開発中の機馬や設計図もすべて持ち去られていた。

サクマへの評価

契約書を渡した事実を認めたサクマに対し、ニアは処分を下さなかった。

契約書を渡さなければ工房や屋敷の人間に被害が及んだ可能性が高く、さらにサクマ自身が黒幕を明かした時点で、自分に情報を提供する側に立っていると判断したのである。

ニアはサクマの判断を間違いではないと認めた。

国王への直談判を決意

事態を把握したニアは、問題解決のため国王ハザールに直接会うことを決めた。

シィルレーンに案内を求めると、シィルレーンは理由を深く問わず了承した。ニアはできる限り穏便に済ませるつもりだと語ったが、シィルレーンとイースは不安を隠せなかった。

フライヒ工房の被害確認

その後ニアはアカシと共にフライヒ工房を訪れた。

所長ジートは深く謝罪したが、ニアは工房側に責任はないと考えていた。ジートは機馬の成功を信じており、権利を奪った者たちは利益目的で開発品を横取りしたのだと憤っていた。

工房内では試作機や設計図を失った職人たちが大きく落ち込み、三兄弟も以前の活気を失っていた。彼らが本気で開発に取り組んでいたことが伝わる状況だった。

開発品奪還への約束

ニアは工房の職人たちを前に、奪われた開発品は必ず取り返すと宣言した。

慰めの言葉ではなく、失われた成果を取り戻すことこそが彼らの望みだと考えたためである。その言葉を残し、ニアは工房を後にした。

国王との再会へ

屋敷へ戻ったニアは、準備を終えたシィルレーンと合流した。

同行を望むイースを制し、ニアはシィルレーンと共に試作機へ乗り込んだ。そして機馬強奪事件の解決を求め、マーベリア国王ハザール・シルク・マーベリアとの二度目の謁見へ向かったのであった。

王城での対面

国王との再会

ニアはシィルレーンの案内で王の執務室を訪れた。突然の来訪にもかかわらず、国王は気の抜けるような態度で迎えたため、ニアの怒りは少し和らいだ。

国王は以前の賠償金の話やリビセィルの食欲などを語り続け、終始自分のペースを崩さなかった。

機馬強奪事件の報告

話が脱線し続ける中、シィルレーンがエンデヴァー総武局長の行為を指摘した。

国王は詳細を知らないとしながらも、総武局長がニアとシィルレーンを怒らせるようなことをしたのは間違いないと認め、事情を説明するよう求めた。

総武局長の介入

ニアが事情を説明しようとした直後、エンデヴァー総武局長が執務室へ現れた。

総武局長は、機馬にはマーベリアの技術や機兵の技術が使われており、それを国外へ流出させるわけにはいかないため徴収したと主張した。また、工房関係者への暴力については命令しておらず、部下の不手際なら処罰すると述べた。

さらに契約書や証拠の不存在を指摘し、ニアやシィルレーンの主張を退けようとした。

国王による追及

国王は総武局長に対し、先にニアへ危害を加えたのかを問い質した。

総武局長は最終的にそれを認めたため、国王は状況を理解した。そして機馬を徴収しながら販売も利用もしないという総武局長の方針を確認し、その考えに疑問を示した。

旧世代と新世代の対立

国王は、若い頃には虫を殲滅し国を発展させようという夢を総武局長と共有していたことを語った。

しかし現実に妥協し、機兵による安定と平和を守る道を選んできたと認めた上で、そろそろ若い世代へ国を託すべきではないかと問い掛けた。

一方の総武局長は、機兵によって国の平和が守られてきたと主張し、技術流出の危険性を訴え続けた。

ニアの反論

議論が続く中、ニアは機兵や国家の将来には興味がなく、自分の開発品を返してほしいだけだと告げた。

さらに、機兵の技術が漏れただけで滅ぶ国なら元々脆い国であり、自分に迷惑を掛けないでほしいと総武局長へ言い放った。

その言葉を受け、国王は機兵が絶対ではなくなりつつあり、外国との関係を築く必要があると語った。

国王の構想

国王は、外国との交流や開国が必要な時代になったと考えていた。

そして自分たち旧世代が退き、若い世代へ国を託すべきだと述べた。総武局長に対しては、ニアとの勝負に敗れた責任を取る形で引退し、次世代へ席を譲る案を示した。

それはリビセィルを中心とした新しい時代への移行を見据えた提案だった。

機馬返還の要求

ニアは国の大きな話よりも機馬の返還を優先し、開発継続のために試作機や設計図を返すよう求めた。

機馬は魔力の少ない者でも利用できる画期的な技術であり、マーベリアにとっても利益になる発明だと説明した。

国王も総武局長へ返還を命じたが、総武局長はなおも機馬が世に広まることを警戒した。

そこでニアは、当面は販売せず開発だけ続けると約束し、その代わりに機馬を返すよう求めた。

機馬の返還と今後

最終的に総武局長は翌日までに機馬を返すと約束した。

王城を後にしたニアは、国王が今後機兵に頼らない新たな方向へ国を導こうとしているのではないかと考えた。また、迎冬祭前に行われたような機兵と生身の者との勝負が再び行われる可能性についても話し合った。

そして翌朝、フライヒ工房から機馬試作機や三輪馬車試作機、設計図などがすべて返還されたとの連絡が入り、ニアはようやく夏の計画へ集中できるようになったのであった。

エピローグ

孤児院への出発

三輪試作機への評価

ニアは家の前で三輪試作機を試乗し、その乗り心地を高く評価した。二輪や四輪とは異なる魅力があり、機馬という魔道具の可能性に改めて期待を抱いていた。

機馬の開発は再開され、届けられた最新型の三輪試作機はすでに屋敷で買い物や外出に利用されていた。アカシは、それを町で走らせることで新しい文化を広める宣伝にもなると説明した。

エプロン姿のまま外出準備

ニアはお菓子作りの途中だったため、可愛らしいエプロンを着けたままだった。本来は着替えるつもりだったが、リノキスにお揃いのままでいてほしいと泣いて頼まれたため、そのまま出掛けることにした。

アカシはその格好を褒めたが、ニアはリノキスの本性を知っているため、可愛らしいエプロン姿に違和感を覚えていた。

家族同然の一行の集合

やがてリノキス、サクマ、シグ、ミト、バルジャ、カルアが姿を見せた。全員が同じエプロンを身に着け、大きなバスケットを手にしていた。

その光景を見たニアは壮観だと感じた。アカシはサクマを邪魔者扱いしたが、ニアは一行全体の統一感を好意的に受け止めていた。

孤児院への出発

子供たちは三輪試作機の荷台に乗り込み、リノキスは荷物の積み込みを手伝った。サクマは留守番のため見送り役に回った。

一行が向かう先は孤児院だった。孤児院で働く職員の誕生日を祝うため、シグたちは朝から菓子作りをしていたのである。

誕生日祝いの準備

用意したのはフルーツタルトだった。孤児院の子供たちにも振る舞う予定であり、誕生日祝いであると同時に差し入れでもあった。

アカシはサクマのエプロンを欲しがって絡んでいたが、ニアはサクマの方が似合うと評した。そうしたやり取りをしながら、一行を乗せた三輪試作機は孤児院へ向けて走り出した。

夏の終わりの強い日差しと涼しい風の中、一行は秋の気配を感じながら目的地へ向かったのであった。

特典ショートストーリー『とある夜の現状確認』

マーベリア側関係者の秘密会合

身内による情報共有の場

リビセィルは、ニア・リストンの屋敷に集まったマーベリア側の関係者たちとの会合を開いた。参加者はイルグ、シィルレーン、クランオール、サクマ、アカシであり、全員がニア・リストンと関わりの深い立場だった。

会合の前には使用人のミトが紅茶を運んできたが、リビセィルは自分があまり好意的に見られていないことを改めて感じていた。

「氣」の普及を巡る議論

リビセィルは、ニア・リストンから学び始めて一か月が経過し、「氣」の有用性を強く実感していた。生身で虫や機兵に対抗できる可能性を秘めた技術であるため、機士たちへ広めるべきではないかと提案した。

しかしシィルレーン、クランオール、アカシ、サクマは全員が反対した。理由は、「氣」を教えられる者が存在しないからだった。現在の修行法はニア・リストンが相手の「氣」を操作して感覚を覚えさせる方法であり、彼女以外には同じことができなかった。

そのため、まずは自分たちが十分に習得し、人に教えられる段階に達するまで待つべきだという結論に至った。

ニア・リストンへの報酬の検討

続いて話題は、ニア・リストンへどのような報酬を与えるべきかへ移った。

虫退治や「氣」の指導など、彼女がマーベリアにもたらした利益は極めて大きく、国として何らかの形で報いる必要があると考えられていた。

サクマは、ニア・リストンの望みはマーベリアの開国であると述べ、クランオールも同意した。リビセィルはその意見を受け入れ、父王へ伝えることを決めた。

リノキスからの苦情

会合の終盤、サクマはリノキスからの苦情を伝えた。

その対象はリビセィルであり、一同は緊張したが、内容はリビセィルの食事量に関するものだった。リビセィルは頻繁におかわりを求めており、屋敷での食費負担が問題視されていたのである。

リビセィルは食費を納めるべきだと認め、シィルレーンとクランオールも自分たちも同様に負担を考える必要があると理解した。

会合の締めくくり

こうして会合は終了した。

「氣」の普及は保留となり、ニア・リストンへの報酬として開国が有力視されることになった。そして最後に共有された実務的な結論は、世話になっている以上、まず食費を納めるべきだというものであった。

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