凶乱令嬢9巻 レビュー
凶乱令嬢まとめ
凶乱令嬢11巻 レビュー
物語の概要
■ 作品概要
本作は、かつて神を殺したとされる大英雄が、遥か未来の世界で病弱な貴族令嬢に転生し、再び最強の武を振るう異世界無双ファンタジーである。魔法映像(マジックビジョン)という放送技術が普及しつつある独特な世界観の中、可憐な幼女の外見とは裏腹に、戦闘を至上の喜びとする主人公の破天荒な活躍が描かれる。 第10巻では、留学(という名の国外追放)先である機兵王国マーベリアでの物語がさらに加速する。複数の機兵による襲撃を退けたニアに対し、マーベリアの第一王子リビセィルが「君の狂言ではないのか?」と言いがかりをつけたことで、ついにニアは自重を完全に放棄する。度重なる厄介事に業を煮やした彼女は、鬱憤晴らしとして機兵王国が他国に隠していた“戦いの最前線”へと単身乗り込み、容赦のない無双劇を展開する。
■ 主要キャラクター
- ニア・リストン: 本作の主人公。前世は「神殺し」の異名を持つ最強の武人であったが、今世では病弱な公爵令嬢に転生した。自らの「氣」で病を克服し、魔法映像の広告塔として活躍する一方、強者との死合いを渇望する戦闘狂である。本巻では、理不尽な言いがかりをつけてきた機兵王国に対し、ついに抑えていた凶乱な本性を解放する。
- リノキス: リストン家に仕えるニアの専属侍女であり、一番弟子。マーベリアへの留学にも同行し、生活から戦闘のサポートまでニアを支える忠実な腹心である。
- リビセィル: 機兵王国マーベリアの第一王子。機兵による襲撃を退けたニアに対し、事件が彼女の狂言であると疑いをかけ、ニアの逆鱗に触れる引き金となる。
- シィル・マーベリア(シィルレーン): 機兵王国マーベリアの第四王女。ニアの力を警戒し、交渉での解決を模索するが、兄の介入によって事態の悪化に直面する。
- アカシ・シノバズ: シィルレーンの密偵であり、ニアの監視や交渉の窓口を担う人物。本巻でもニアと王族の間に立つ役回りを演じる。
■ 物語の特徴
本作の最大の魅力は、天使のように愛らしい幼女が、己の拳一つで理不尽な権力や強大な兵器を粉砕していく圧倒的なカタルシスにある。ファンタジー世界における「魔法映像による世論操作」といった現代的な要素と、純粋な武による無双劇が融合している点が他作品と一線を画す。 特に第10巻では、これまで曲がりなりにも抑えていたニアの「自重」が完全に取り払われる点が大きな見どころである。国家の陰謀や王子の傲慢に対し、交渉や政治ではなく「ただの鬱憤晴らし」として戦いの最前線へ殴り込むという、彼女らしい凶乱ぶりが爽快に描かれている。
書籍情報
凶乱令嬢ニア・リストン 10 病弱令嬢に転生した神殺しの武人の華麗なる無双録
著者:南野海風 氏
イラスト:刀 彼方 氏
レーベル/出版社:HJ文庫/ホビージャパン
発売日:2026年1月30日
ISBN:9784798640808
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あらすじ・内容
複数の機兵による襲撃を退けたニア。これでようやくマーベリア側も交渉のテーブルに着くかと思われたが、第一王子リビセィルがニアに告げたのは「君の狂言ではないのか?」という、とんでもないもので――!! 「――悪いが鬱憤晴らしだ。付き合え」 度重なる厄介ごとについに自重をやめたニアは、機兵王国が他国に隠していた〝戦いの最前線〟へとその拳を振り下ろす!! 天使のような凶乱令嬢の最強無双譚、誰にも止められない第10弾!!
感想
ニアの突き抜けた行動力と爽快な展開に大きな満足感を得た。今回は特に、彼女のやりたい放題な無双っぷりが存分に発揮されており、本国にいた時よりも生き生きしているように感じられた。
物語の序盤、ニアが借りている屋敷を地上げしようと企む裏社会のボス、ダージョル・サフィーが、複数の機兵を用いて襲撃を仕掛けてきた。しかし、ニアはそれを機兵ごとあっさりと返り討ちにしてしまう。ここからすでに彼女の規格外な強さが示された。
だが、その後の展開がえげつない。第一王子リビセィルによって襲撃事件そのものが隠蔽され、憲兵の手で家財を奪われた挙句、家屋と周辺の修繕費までニアに請求されるという理不尽な仕打ちを受けたのである。この幼女に対する大人たちの腐敗した対応は、絵面として非常に悪い。しかし、それがかえってその後のニアの反撃を際立たせる良いスパイスに昇華された。
怒りに火がついたニアは、ダージョルの屋敷に単身カチコミをかけた。手下を全滅させ、彼から直接金品を巻き上げるくだりは、もはや悪役と見紛うほどの迫力であった。さらに、賞金首の盗賊を狩りつつ、虫の領域を隔てる「リューリエの壁」と東の砦へ向かう。そこで魔犬機士団副隊長のイルグ・ストーンら生意気な機兵乗りたちを拳で沈黙させ、彼らの目の前で虫の大群を蹂躙していく姿には、武人としての本性が剥き出しになっていた。
そして、王都への帰還時に印象深い事件が起きた。ダージョル襲撃の容疑で、代表格の憲兵ヘーデンらに包囲されてしまうのである。ニアは、虫を蹂躙したことで生態系のバランスが崩れ、いずれ虫の大侵攻が始まると予測していた。そのため、裏で繋がっている憲兵たちの腐敗を利用し、あえて大人しく逮捕される道を選んだ。表紙の絵柄の意味がここで腑に落ちた。牢屋に入れられながらも、鉄格子を素手で曲げて出入り自由という状況は、もはやホラーの領域である。
案の定、虫の大侵攻が始まり、第一王子リビセィルや砦の部隊だけでは対応できなくなった。ニアを牢屋に入れたヘーデンらが手のひらを返して「出てきてください」と懇願する流れは、痛快というほかない。その後の国王や重臣たちとの面会でも、ニアのペースは全く崩れなかった。「老人の目つきが気に入らないから」という理由だけで慰謝料を百億追加する先制パンチには、思わず笑ってしまった。
最終的に、第四王女であるシィルレーンを身請けするという形で金額を有耶無耶にした。そして、大侵攻してきた虫たちを「仕分けが面倒だから」という理由で味方の機兵ごと蹂躙する展開は、まさに本作の真骨頂であった。さらに、その手柄をあっさりと機士たちに譲ってしまう潔さにも、彼女なりの美学が感じられた。
度重なる厄介事に対し、ついに自重をやめて暴れ回るニアの姿は、読んでいて非常に清々しい。次巻以降も、この異国で彼女がどのような騒動を巻き起こしていくのか、期待が高まるばかりである。
凶乱令嬢9巻 レビュー
凶乱令嬢まとめ
凶乱令嬢11巻 レビュー
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登場キャラクター
ニア・リストン
アルトワール王国から機兵王国マーベリアへ留学した留学生である。襲撃事件の揉み消しや不当請求に対して激怒する。単独で裏社会のボスを制圧する行動力を持つ。虫の脅威に対しては自ら王族と交渉し、巨額の報酬を得て事態を解決に導く立場にある。
・所属組織、地位や役職 アルトワール王国の留学生。機兵学校普通科の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果 自身を襲撃したダージョル・サフィーの屋敷へ乗り込んだ。その場で組織を壊滅させて十八億クラムを奪取する。さらに虫の領域で蟻の大群を全滅させる。砦に押し寄せた他の虫や機兵を単独で蹂躙して戦局を収束させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 国王との交渉でシィルレーンを身請けした。彼女を機兵科から普通科へ転科させる影響力を持つ。
リノキス
ニアに仕える専属侍女である。ニアのマーベリア留学に同行する。屋敷の防衛や生活の支援を担う立場にある。高い戦闘能力を備え、迫る敵を容赦なく排除する性格を持つ。
・所属組織、地位や役職 リストン家の専属侍女。
・物語内での具体的な行動や成果 屋敷を不法占拠していた大人たちや夜襲を仕掛けてきた賊を撃退した。リューリエの壁の砦では、通行を拒否するイルグや機士たちを瞬時に殴り倒す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ニアの買い物の際には下着選びに固執した。その結果、店に置き去りにされる扱いを受ける。
シィルレーン・シルク・マーベリア
マーベリア王国の第四王女である。学校一の機兵乗りとして知られている。ニアの危険性を理解し、国を守るために奔走する立場にある。
・所属組織、地位や役職 マーベリア王国の第四王女。機兵学校普通科の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果 ニアの怒りを鎮めるために自ら独房へ赴いた。五百億クラムの身請けという形でニアとの交渉を成立させる。その後、ニアの命令に従い機兵科を辞めて普通科へ移籍した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ニアの弟子となった。機兵に頼らず生身で強くなるための修行を開始する。
リビセィル
マーベリア王国の第一王子である。国家機密を守るため、強引な手段に出る傾向がある。虫の脅威に対しては前線で指揮を執る責任感を持つ。
・所属組織、地位や役職 マーベリア王国の第一王子。
・物語内での具体的な行動や成果 ニアの屋敷が襲撃された事件を狂言として揉み消そうとした。虫の大侵攻が起きた際は、自ら砦へ出向いて機兵に搭乗する。最前線で防衛戦に参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 戦場でニアが虫と機兵を同時に蹂躙する姿を目撃した。彼女に対する恐怖を心に刻み込まれる。
アカシ・シノバズ
不忍と呼ばれる密偵の家系に属する青年である。シィルレーンの護衛を務めている。飄々とした態度でニアと王族の間の連絡役を担う立場にある。
・所属組織、地位や役職 シィルレーンの護衛。密偵。機兵学校の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果 ニアの屋敷に潜入したところを見つかった。ニアに制圧されて身分を明かす。機兵の動力を転用した馬なしで走る馬車を試作した。走行実験で事故を起こして大破させる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 シィルレーンの転科に伴い、自身も普通科へ移籍した。
ダージョル・サフィー
マーベリアの裏社会を牛耳るボスである。屋敷の地下げを狙ってニアに嫌がらせを仕掛ける。冷酷な行動をとるが、ニアの圧倒的な力の前には屈する。
・所属組織、地位や役職 サフィー・ファミリーのボス。
・物語内での具体的な行動や成果 ニアの借りた屋敷に機兵や賊を送り込んだ。不当な修繕費を商業ギルド経由で請求させる。屋敷に乗り込んできたニアに部下を全滅させられた。自らは命乞いをする。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 金庫の現金十八億クラムと貴金属をニアに奪われた。その結果、組織は壊滅状態に陥る。
ガッダム
商業ギルドの長である。上位者の圧力に屈しやすい性格を持つ。事態の悪化に焦り、保身を図る行動をとる。
・所属組織、地位や役職 商業ギルド長。
・物語内での具体的な行動や成果 ニアから十八億クラムの資金預託を受けた。証文に署名して取引を成立させる。その後、ダージョルの命令でニアへ不当請求を行っていたことを告白した。ニアの前で土下座して謝罪する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ニアから粛清を免除された。代わりに商業ギルドとしてニアの住居手配などに全面協力することになる。
イルグ・ストーン
砦の防衛を担う副隊長である。規則に忠実で、職務に誇りを持つ人物として描かれる。虫の脅威を深く理解する立場にある。
・所属組織、地位や役職 魔犬機士団副隊長。
・物語内での具体的な行動や成果 リューリエの壁でニアたちの通行を拒否した。しかしリノキスに殴り倒される。その後、ニアの蟻殲滅に同行した。千匹以上の蟻が瞬時に粉砕される光景を目撃する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ニアの規格外の力を知った。王国上層部へその脅威と戦果を報告する役割を担う。
ミト
ニアが借りた屋敷に住み着いていた孤児の少女である。病弱であったが、ニアの保護を受けて回復する。無意識のうちに未知の才能を開花させる特異な存在だ。
・所属組織、地位や役職 ニアに雇われた屋敷の使用人。
・物語内での具体的な行動や成果 ニアが日課として行っていた氣の循環を自ら意識した。その結果、無意識に氣を扱うようになる。訓練用の槍で丸太に深々と突きを刺した。異常な威力を披露する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 シィルレーンの仮弟子となった。槍の指導を受けることになり、ニアも将来的な本弟子として見据え始める。
ソーベル・レンズ
憲兵隊の部隊長である。職務には真面目な性格を持つ。ニアの破天荒な行動に振り回される立場にある。
・所属組織、地位や役職 六番憲兵長。
・物語内での具体的な行動や成果 ニアの屋敷での監禁事件を捜査した。正当防衛として罪に問わない判断を下す。ニアが賞金首狩りに向かう際、大型単船の運転手として同行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ニアやリノキスからの依頼を受けた。戦果の換金手続きなどを代行する立場となる。
ヘーデン
憲兵隊の一員である。裏社会と癒着している描写が存在する。権力を笠に着て高圧的な態度を取る人物だ。
・所属組織、地位や役職 マーベリア王国の憲兵。
・物語内での具体的な行動や成果 ダージョル襲撃の容疑でニアを包囲した。彼女を詰め所へ連行する。取調室でニアに威圧された。ダージョル壊滅の実績をほのめかされて恐怖し、謝罪する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 釈放時にニアから頼み方を強要された。屈辱を味わいながら懇願させられる。
ジーゲルン・ゲート
機兵学校の上級生である。シィルレーンに恋心を抱いている。ニアに対して強い敵対心を持つ行動をとる。
・所属組織、地位や役職 機兵学校機兵科の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果 シィルレーンが普通科へ転科した理由をニアのせいだと考えた。仲間を引き連れて教室へ乱入する。ニアを詰問した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 シィルレーンから五百億クラムの身請けの事実を突きつけられた。完全に論破されて退去を余儀なくされる。
サクマ・シノバズ
不忍の家系に属する密偵である。無表情で細身の体つきを持つ。執事として屋敷に派遣される。
・所属組織、地位や役職 シィルレーンの護衛兼ニアの屋敷の執事。
・物語内での具体的な行動や成果 国王の命令によりニアの屋敷へ派遣された。シィルレーンの引っ越し手伝いと護衛役を務める。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ニアの屋敷の同居人となった。監視役としての側面も持ち合わせる。
リプレ
商業ギルドの受付嬢である。外国人軽視の風潮の中で密かにニアへ助力する。機転の利く性格を持つ。
・所属組織、地位や役職 商業ギルドの受付嬢。
・物語内での具体的な行動や成果 ニアに城下町での住居情報を提供した。仕立て屋や大工などの信頼できる店を紹介する。ニアが逮捕された際は、子供たちを実家に預かって保護した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ニアから深い信頼を得た。その後も彼女の活動を商業面から支援する。
出来事一覧
プロローグ
襲撃の終息と事件の隠蔽
- 当事者: ニア・リストン vs 第一王子リビセィル、憲兵たち
- 発生理由: ニアの借りた屋敷が機兵と賊に襲撃されたが、リビセィルが国家機密(機兵の存在)や体面を守るため、現場の証拠がないことを理由に事件を「狂言」として処理し揉み消そうとしたため
- 結果: ニアはシィルレーンの顔を立てて折れ、「勘違いだった」という念書に署名して事件はなかったことにされた
第一章 マーベリアの敵
家財の略奪と修繕費の不当請求
- 当事者: ニア・リストン vs 商業ギルド(リプレ)、憲兵(略奪の実行犯と推測される者たち)
- 発生理由: 襲撃事件が「なかったこと」にされた結果、半壊した屋敷周辺の修繕費の請求先がなくなり、居住者であるニアに回されたため。さらに事件の混乱に乗じて憲兵らしき者たちに荷物や現金一億クラムが奪われた
- 結果: ニアは激怒しつつも支払いの証文に血判を押し、自力で稼いで取り返すとともに報復行動を開始する決意を固めた
第二章 砦にて
裏街での情報収集と尋問
- 当事者: ニア・リストン vs 裏街の男たち
- 発生理由: 襲撃事件の黒幕を探り出すため
- 結果: ニアが複数の男を痛めつけて尋問し、黒幕が「ダージョル・サフィー」であるという情報を引き出した
ダージョル邸へのカチコミと門番・部下の排除
- 当事者: ニア・リストン vs 門番の黒服たち、ダージョルの部下たち(五十人以上)
- 発生理由: ダージョルが襲撃の黒幕であり、奪われた金と修繕費を回収(慰謝料として強奪)するため
- 結果: ニアが門番を瞬殺し、屋敷内にいた部下五十人以上を殴り倒して壊滅させた
ダージョルへの制裁と降伏要求
- 当事者: ニア・リストン vs ダージョル・サフィー
- 発生理由: ニアがダージョルに襲撃と略奪の責任を取らせるため
- 結果: ニアがダージョルを圧倒し、命と引き換えに金庫の全額(十八億クラムと金塊等)を差し出させ、サフィーファミリーを壊滅させた
商業ギルドへの牽制と証文への追加
- 当事者: ニア・リストン vs ガッダム(商業ギルド長)
- 発生理由: 強奪した現金の預託において、後から取引を反故にされる危険を警戒したため
- 結果: ニアが「証文と合わなければ商業ギルドを潰す」という条項を追加させ、さらにダージョルの名を出して暗に脅迫しつつ取引を完了させた(威嚇)
シィルレーンによるリビセィルへの非難
- 当事者: シィルレーン vs 第一王子リビセィル
- 発生理由: ニアの荷物が奪われ、修繕費までニアに請求されたこと(憲兵の腐敗・暴走)を知り、ニアを激怒させる極めて危険な対応だと抗議するため
- 結果: シィルレーンがリビセィルを痛烈に非難し、責任を持って片付けるよう言い残して退室した(口論)
盗賊団アジトの襲撃と無所属機の破壊
- 当事者: ニア・リストン vs 盗賊団(三十人規模)、無所属機(機兵三機)
- 発生理由: 賞金首狩りと資金稼ぎのため
- 結果: ニアが盗賊を制圧し、機兵三機を素手で完膚なきまでに破壊した。心を折られた盗賊たちは裸で縛られ連行された
リューリエの壁(砦)での通行拒否と乱闘
- 当事者: ニア・リストン、リノキス vs イルグ・ストーン(副隊長)および砦の機士たち
- 発生理由: ニアが虫の領域へ入ろうとしたが、イルグが許可証や命令書がないことを正論で拒否したため。ニアが腹いせに挑発して強行突破を図った
- 結果: 激怒した機士たちが襲い掛かったがリノキスが瞬殺。増援や仲裁に入った者も含め、全員が殴り飛ばされて屍の山となり、砦側の抵抗は沈黙した(死者はなし)
第三章 蟻の群れ
第一ブロックでの蟻の大群の殲滅
- 当事者: ニア・リストン vs 蟻の大群(女王蟻含む千匹以上)
- 発生理由: ニアが「氣拳・拾震」で地中の蟻を炙り出し、襲い掛かってきたため
- 結果: ニアが女王蟻を含む大群を瞬時に粉砕し、全滅させた
王都門前での包囲とニアの逮捕
- 当事者: ニア・リストン vs ヘーデンら憲兵隊(30〜40名、機兵3機)
- 発生理由: ダージョル・サフィーを襲撃し金品を奪った容疑で、憲兵がニアを待ち伏せていたため
- 結果: ニアは憲兵と裏社会の癒着を指摘しつつも、自らの計画のためにあえて抵抗せず逮捕され、詰め所へ連行された
取調室での若い憲兵への反撃とヘーデンへの脅迫
- 当事者: ニア・リストン vs 若い憲兵、ヘーデン
- 発生理由: 取調室で若い憲兵が激昂し、ニアの胸倉を掴んで威嚇したため
- 結果: ニアが逆に憲兵の腕を握り込んで骨が折れるかのような痛みを与え、さらにヘーデンにダージョル壊滅の実績をほのめかして脅迫。ヘーデンは恐怖して謝罪した
第四章 仕分けが面倒臭い蹂躙
アカシの取調室乱入
- 当事者: アカシ vs ニア・リストン
- 発生理由: アカシがニアの解放を要求して強行突入したため
- 結果: ニアが「もう遅い」「これ以上怒らせるな」と制止し、アカシは深刻な顔で一礼して退去した(口論・威嚇)
独房での王女への法外な要求
- 当事者: ニア・リストン vs シィルレーン、アカシ
- 発生理由: シィルレーンが独房を訪れ、ニアに頭を下げて国(虫の脅威)への助力を懇願したため
- 結果: ニアは鉄格子を素手で曲げて外に出た上で、慰謝料と報酬として五百億クラムを要求し、再び独房へ戻った
釈放時の「頼み方」の強要
- 当事者: ニア・リストン vs ヘーデン
- 発生理由: ヘーデンが独房の鍵を開けて「出ろ」と横柄に命じたが、ニアが不当な態度を拒否したため
- 結果: ニアが「頼み方」を示せと迫り、ヘーデンが屈して「お願いします」と懇願した
国王との面会と理不尽な上乗せ要求
- 当事者: ニア・リストン vs 国王、重臣たち
- 発生理由: 虫の脅威に対処するため国王がニアと面会したが、ニアが「重臣たち(老人二人)の目つきが気に入らない」として難癖をつけたため
- 結果: ニアが「百億上乗せ」を宣言して主導権を握る。交渉が停滞した末、シィルレーンが自らの身請けを申し出、国王が逆に値を吊り上げて五百億クラムで応じる形で決着した
砦での虫と機兵の蹂躙
- 当事者: ニア・リストン vs 虫の大群(蛾、ダンゴムシ、カマキリなど)、および機兵たち(リビセィルたち)
- 発生理由: 蟻の激減により生態系の均衡が崩れ、他の虫が砦へ大侵攻してきたため。リビセィルたち機兵隊が絶望的な防衛戦を行っていたところにニアが乱入した
- 結果: ニアが虫を全滅させたが、「仕分けが面倒臭い」という理由で味方の機兵もまとめて蹴り飛ばし、半壊・全壊させた。戦場はニア一人によって蹂躙され、機士たちは圧倒的な恐怖を味わった
第五章 栄誉の凱旋
シィルレーンへの命令と転科の強要
- 当事者: ニア・リストン vs シィルレーン
- 発生理由: ニアが魔法映像文化を広めるための緩衝材としてシィルレーンを利用し、機兵至上主義に基づく外国人軽視を打破するため
- 結果: ニアがシィルレーンに対し、機兵科を辞めて普通科へ移るよう命令し、シィルレーンは致命的な経歴の転落を受け入れた
ガッダムの謝罪と不当請求の真相判明
- 当事者: ニア・リストン vs ガッダム(商業ギルド長)
- 発生理由: 不忍の粛清を恐れたガッダムが、ニアへの一億クラムの不当請求がダージョルの命令(地下げ工作)であったことを告白し、土下座して謝罪したため
- 結果: ニアは怒りを覚えつつも、商業ギルドを味方にする実利を取り、証文を破棄して新しい屋敷の手配を命じた
機兵科生徒の教室乱入とジーゲルンの糾弾
- 当事者: ニア、シィルレーン vs ジーゲルンら機兵科生徒(二十名超)
- 発生理由: シィルレーンが機兵科から普通科へ転科した原因がニアにあると考えたジーゲルンたちが、教室に押し入ってニアを詰問したため
- 結果: シィルレーンが、ニアが自身に五百億クラムを出した事実を突きつけて論破し、全員を退去させた(口論)
機兵科生徒による出場強要
- 当事者: シィルレーン vs アガッセ、ターメリン(機兵科生徒)
- 発生理由: 迎冬祭の機兵一騎打ちにシィルレーンを出場させるため、元同級生が迫ったため
- 結果: シィルレーンは機兵を返上済みであることなどを理由に不出場の意思を変えず、二人を帰した(口論・押し問答)
第六章 弟子の目標
試作一号「機馬」の暴走事故と未亡人からの説教
- 当事者: アカシ(運転手)、ニア、シィルレーン vs 向かいの屋敷の未亡人
- 発生理由: アカシが木造馬車に機兵動力を積んだ試作機で走行実験を強行し、暴走して向かいの屋敷の壁に激突・大破したため
- 結果: 事故の謝罪に赴いたが、未亡人から長時間の強烈な嫌味と説教を受け、精神的に消耗した(突発的な事故・トラブル)
『凱旋の横で』(書き下ろし)
リノキスの買い物の暴走と置き去り
- 当事者: ニア・リストン vs リノキス
- 発生理由: 衣服の買い出し中、リノキスがニアの下着選びに過剰なこだわりを見せ、ニアの意見を無視して理屈を並べ立てたため
- 結果: 呆れたニアがリノキスを店内に置き去りにして帰宅した。リノキスは夕方に泣きながら戻ってきた
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展開まとめ
プロローグ
襲撃の終息と憲兵の到着
ニア・リストンは屋敷に突入してきた機兵を外へ蹴り飛ばし、賊を殴り倒して制圧していた。夜の騒ぎは静まり、屋敷には大きな破壊痕が残った。やがて憲兵が到着し、ニア・リストンは両手を上げて無抵抗を示した。六番憲兵長ソーベルの保証により身分は確認され、現場では実況見分が始まった。だが事情聴取は翌日に回され、現場保存を理由にニア・リストンらはそのままホテルへ移動させられた。
王族の現場確認と違和感
その後、第一王子リビセィルと第三王女クランオール、さらにシィルレーンとアカシが現場に駆けつけた。屋敷や塀、門扉は大きく破壊されていたが、死者の痕跡は見当たらなかった。リビセィルは機兵や賊が現場にいなかったことを確認し、襲撃自体を疑問視した。機兵は国が管理している以上、襲撃などありえないとし、外国人であるニア・リストンの証言を信用すべきかと示唆した。
事件揉み消しの意図
リビセィルはこの事件を狂言として処理する可能性を示し、憲兵たちは証拠を回収しているだけだと述べた。破壊の痕跡があるにもかかわらず、国の関与を否定する姿勢は明らかであった。シィルレーンはその不自然さを理解し、事態が危険な方向へ進むことを察した。
謝罪を決意するシィルレーン
リビセィルの判断がニア・リストンに伝われば重大な問題になると考えたシィルレーンは、アカシに居場所を探らせ、自ら会いに行く決意を固めた。王女であっても権限を持たない彼女にできるのは、直接謝罪し、矛を収めてもらうことだけであった。事態はすでに瀬戸際にあった。
第一章 マーベリアの敵
王族の介入と「襲撃はなかった」扱い
ニア・リストンはホテルで寝起きのまま、第一王子リビセィルとクランオール、憲兵たちの訪問を受けた。リビセィルは機兵も賊も現場に存在しなかったとして襲撃そのものを疑い、ニア・リストンの狂言の可能性を示した。ニア・リストンが機兵の部品などの証拠を問うても、現場からは何も見つからなかったと断じ、最終的に「なかったことにする」と宣言した。ニア・リストンは襲撃は勘違いだったという念書に署名し、リビセィルは不問を提示しつつ、折れろと圧力をかけて退散した。
シィルレーンの謝罪と取引
隣室で一部始終を聞いていたシィルレーンとアカシ、子供たちが合流し、シィルレーンは謝罪した。シィルレーンは事前にリビセィルの来訪と交渉内容を伝え、受け入れてほしいと頭を下げていたため、ニア・リストンはシィルレーンとアカシの顔を立てて署名した。ニア・リストンは貸しを作ったと捉え、最終目標であるマーベリアへの魔法映像導入のため、国への損害を無暗に広げない判断をした。
国家機密「虫」と機兵の成立理由
ニア・リストンはシィルレーンから、マーベリアが大地を侵食する進化した「虫」と長年戦ってきた国家機密を聞いた。機兵はその「虫」と戦うために必要な戦力として生まれ、冬に虫が弱まる間に戦線を立て直す形で戦争状態が続いてきたという。さらにマーベリアは飛行船技術が弱く、国外から襲撃されれば対処が難しいため、弱味を見せられず、外交・国際問題を避けるために強硬になりやすい事情が示された。ニア・リストンはその説明を誠意として受け取り、リビセィルの行動も国を守る必死さから来た面があると理解した。
帰宅後の略奪と修繕費請求
ニア・リストンはソーベルの付き添いで半壊した屋敷へ戻ったが、荷物や家具、寝具まで一切が消えていた。リノキスが持ち込んだ一億クラムも失われ、残ったのは隠していた特注魔晶板と映像入り魔石など最低限だけだった。そこへ商業ギルド受付嬢リプレが、周辺一帯の修繕費請求書を届けた。襲撃が「なかったこと」になったため請求先がなく、ニア・リストンに請求が回った形となり、ニア・リストンは激怒しつつも支払いを受け入れ、今日一日で返済できるだけ稼ぐと決めた。
子供の保護と行動開始
ニア・リストンは子供たちの安全確保を優先し、リプレに夜まで子供を預けるよう頼み、請求書には血判で署名して責任を示した。リノキスには冒険家ギルドで賞金首情報を集めるよう指示し、ニア・リストン自身は「挨拶」と称して別行動に出た。ソーベルは危ないことをするなと言い残してリノキスを追い、ニア・リストンは遠慮は不要だとして行動を開始した。
第二章 砦にて
裏街での聞き取りと標的の特定
ニア・リストンは単独で夜の店が集まる区画へ向かい、裏社会で自分の存在が知られていることを確認した。襲撃に関わった連中や事情を知る者が逃げ回る中、ニア・リストンは黒幕の名としてジョーダル・ザフィーを思い出し、情報を得るため複数の男を痛めつけて尋問した。男たちの言い間違いから、黒幕の名がダージョル・サフィーであると判明し、貴族街の大屋敷に住むという噂を手掛かりに現地へ向かった。
屋敷突入と門番の排除
貴族街の屋敷で門番の黒服に声を掛けると、彼らはニア・リストンを見て動揺し、即座に武器を抜いた。ニア・リストンは拳と蹴りで二人を瞬時に倒し、その過剰な反応からダージョル・サフィーが屋敷内にいると判断した。時間を惜しみ、静かに速やかに制圧する方針で屋敷へ踏み込んだ。
ダージョルへの制裁と降伏要求
ニア・リストンは扉を蹴り破って寝室へ入り、女といたダージョル・サフィーに名乗って対面した。ダージョルは敵襲を叫んで部下を呼んだが応答はなく、灰皿で殴りかかったところをニア・リストンに手首を捕らえられた。ニア・リストンは昨夜の件で金が失われた責任を取れと迫り、命を取る代わりに自発的に有り金を差し出せば勘弁すると告げた。これは裏社会の支配者としての破滅を意味する降伏要求であり、拒めば殺すという選択を突きつける形であった。
部下壊滅の提示と決着
ダージョルが反発すると、ニア・リストンは彼を投げ捨て、破壊した扉の向こうを見せた。廊下には倒れた部下たちが多数転がり、床や壁には血が広がっていた。ニア・リストンは屋敷にいた者を五十人以上殴り倒しており、逃げる者にも容赦しなかった。ダージョルに対し、命を失うか金を失うかを急いで選べと迫り、仲間外れは寂しいだろうと脅しを重ねた。この結果、マーベリアの裏を支配していたサフィーファミリーは壊滅した。
冒険家ギルドの異様な静けさ
ニア・リストンが冒険家ギルドへ行くと、リノキスとソーベルが出迎えた。ギルド内は冒険家も受付も俯き、物音一つしない異様な空気だった。ニア・リストンが理由を問うと、リノキスは「少し撫でたくらい」と答え、怪我人は出ていないと受け取られた。リノキスは使用人服を調達し、ニア・リストン用の服も用意した。
十八億クラムの持ち込みと当面の立て直し
ニア・リストンは背負った袋に現金十八億クラムと金塊・魔石が入っていると明かした。これはダージョル・サフィーが命乞いの末に金庫から差し出したもので、慰謝料と小遣いだとされた。ニア・リストンは屋敷にいた女に宝石を渡して手切れ金とし、土地や権利証は面倒を避けて受け取らなかった。午前中だけで資金面の危機は立て直され、午後は別の目的も含めて動く意志が示された。
賞金首狩りの段取りと大型単船の確保
ニア・リストンはギルドで部屋を借り、子供用の作業服に着替えた。リノキスが集めた近場の賞金首情報を確認し、移動ルートを組み立てた。マーベリアは地続きの大陸で賞金首が点在し、徒歩圏の対象がいる点は有利だが、討伐後の運搬が課題となった。解決策として、街と街を航行する荷運び用の大型単船が挙げられ、元は機兵輸送用だったため積載量は十分と判断された。免許制のためリノキスは操縦不可だったが、ソーベルが免許を持つため運用が可能となった。
虫のテリトリーを見据えた楕円ルート
地図上で、ある地点以降が空白となっている区域が示され、表向きは未開の地として開拓中とされていた。ニア・リストンはそこを虫のテリトリーと捉え、北東へ進みつつ賞金首を仕留め、東の砦付近で虫の領域に踏み込んで遊び、復路は南西から王都へ戻る楕円形の行程を想定した。一日で済ませる前提で計画し、子供たちから長く離れない方針を確認した。リノキスは大型単船の手配へ向かい、ソーベルが同行することになった。
商業ギルドでの子供保護確認と資金預託交渉
ニア・リストンは商業ギルドへ行き、受付嬢リプレに子供たちの安否を確認した。子供たちはリプレの実家に預けられており、下位とはいえ貴族の家であるため安全性が高いと判断された。ニア・リストンは十八億クラムと貴金属を商業ギルドで預かるよう求め、報酬として五千万クラムを提示した。リプレは上の者を呼び、ギルド長ガッダムが対応した。
証文への追加条項とギルドへの牽制
ガッダムが中身を確認した後、預託を快諾し、証文を作成して署名を求めた。ニア・リストンは「一クラムでも証文と合わなければ商業ギルドを潰してもいい」という条項を追加し、ガッダムに承諾させた。これは取引を「なかったこと」にされる可能性を警戒した措置であり、拒むならごまかす意図があると見做す構えでもあった。ガッダムは動揺を見せず受け入れ、双方が署名して取引は完了した。
ダージョルの名を出した告知と含意
ニア・リストンは世間話の体でダージョル・サフィーを知っているかと問うたが、ガッダムは知らないと答えた。ニア・リストンはそれを嘘と見なしつつ追及せず、最後に「彼から貰ったお金だ」と告げて退出した。これによりガッダムが裏で状況確認に動くことを見込み、取引反故を選ぶなら商業ギルドを物理的に潰すという警告も同時に残した。
アカシの続報とシィルレーンの限界
昼休憩のシィルレーンは、ニア・リストン襲撃の後始末で神経をすり減らしていたところへ、アカシ・シノバズが早々に戻ってきた。機兵は見つかったが既に解体されており、証拠として残りにくい状態だった。シィルレーンはそれ以上の悪報を直感し、聞きたくないと言いながらも続報を促した。
王城への直行と第一王子への怒号
報告の内容を聞いたシィルレーンは激怒し、王城へ帰還して第一王子リビセィルの執務室へ押し入った。リビセィルとクランオールは、昨夜の件は「政治的に無難な決着」として終わった認識であり、シィルレーンの怒りの理由を理解できなかった。シィルレーンは、昨夜頭を下げて収めた件を即座に蒸し返す形になったとして、リビセィルを強く非難した。
荷物と現金の消失、憲兵の持ち去り疑惑
アカシは、ニア・リストンの屋敷から荷物・着替え・貴重品が消え、現金一億クラム相当も失われたと説明した。リビセィルは自分の命令ではないと否定しつつ、アカシは「リビセィル退去後に憲兵が持って行ったらしい」と示唆し、部下統制の失敗として痛烈に責めた。忠臣筋のシノバズが見せた黒い瞳の圧により、リビセィルは反射的に冷や汗を覚える形となった。
修繕費の請求がニアに回った異常
さらにアカシは、屋敷その他の修繕費の請求がニア・リストンへ送られたと伝えた。本来は商業ギルド保険や国税で処理すべきだとリビセィルは憤り、誰かが懐に入れる意図がある可能性まで示された。シィルレーンは、兄がそこまで腐っていない点には安堵しつつ、下の現場が外国人に強い敵意を向けている現実を突きつけ、責任を持って片付けるよう言い残して退室した。
機兵情報秘匿の論理と「想定外」の腐敗
リビセィル側の判断は、実戦用機兵の情報流出が国家の生命線を脅かすため、昨夜の事件を「消す」必要があったという論理に基づいていた。ただし、ニア・リストン個人を追い込む意図はなく、憲兵や請求の動きは想定外として混乱を深めた。部下を信じたい気持ちと足元の腐敗を疑う現実、そして留学生の心情の板挟みが描かれた。
追加報告:ダージョルの泣きつき
アカシは最後に、裏社会の支配者ダージョル・サフィーが憲兵へ泣きついたと報告した。白髪の子供に襲撃され金を奪われたため何とかしてほしい、という訴えであり、リビセィルとクランオールはニア・リストンの異常性をまだ理解し切れていないことが示された。
同時進行:ニアの盗賊団制圧と無所属機の確保
一方その頃、ニア・リストンは王都外の盗賊団アジトを襲撃し、三十人規模の賊を制圧して金品を強奪した。噂程度で聞いていた「無所属機」を盗賊団が実際に三機所持していたことも確認された。ニア・リストンは賊を裸で縛った状態のまま見せしめにしつつ、機兵を殴打と蹴りだけで完膚なきまでに破壊し、内部機構を根こそぎ奪い取った。賊はその光景で完全に心を折られ、逆らう意思も逃げる気力も失ったまま、貨物用大型単船に乗せられて移送された。
単船での仮眠と荷台の異様な積荷
ニア・リストンは大型単船の荷台で仮眠していたが、リノキスに起こされ目的地が近いと知る。荷台には引き抜いた機兵の動力や魔獣の亡骸が載り、その横で裸で縛られた盗賊たちが身を寄せ合って震えていた。盗賊はニアが眠っている間も動かず、機兵を素手で破壊する相手に逆らえば死ぬと理解していた。
リューリエの壁と砦の到着
進行方向には、大陸を分断するような果ての見えない石積みの壁と砦が現れる。リューリエの壁と呼ばれ、虫の領域を隔てる最前線であるとニアは認識する。砦側からは正規機士が機兵二機を伴って出迎え、荷台の「ジャンク・魔獣の亡骸・裸の男三十名」という不審な積荷に警戒を示した。
ソーベルの身分提示と副隊長イルグの正論
運転手役のソーベル・レンズが六番憲兵長として身分証を見せ、詳細は荷台のニアたちに聞くよう促した。砦の責任者は魔犬機士団副隊長イルグ・ストーンであり、第一王子リビセィル不在の間、砦を預かっていた。ニアは「第四王女シィルレーンの命令で虫と遊びに来た」と主張するが、イルグはシィルレーンに通行許可権限がない点、命令書や契約書がない点を挙げて通行を拒む姿勢を崩さない。ニアは正論ゆえにやりづらさを覚えつつ、腹いせの対象にする方針へ切り替える。
虫の戦線情報の提示と挑発
ニアは虫の区画が四ブロックに分けられているという説明を示す。第一が巨大蟻、第二が蛾、第三が混合、第四が未知で、毎年第二までが限界という状況である。巨大蟻は数が多いが単体は弱く、常駐機兵で間引ける一方、第二以降は難航している。冬は虫が弱り戦局が動くなど、長年一進一退の戦争が続いているとも整理される。リノキスはニアの強さを根拠に通すよう押し、ニアも「機兵より強い」と挑発し、さらに「無能の機兵乗り」と罵倒して通行を強要した。
殴り合いの連鎖と砦側の制圧
イルグは怒りを露わにし、砦の機士たちも反発する。リノキスは前に出て、怒るべきは自分たちだと突き返し、さらに「ぐだぐだ言うなら全員殴り飛ばす」と通告する。結果として、飛び出してきた機士たちをリノキスが瞬殺し、逆上して増援が来るたびに秒殺し、仲裁に入ろうとしたイルグや穏健派まで含めて殴り飛ばしていく。死者は出していないが、屍が積み上がる形で砦側の抵抗は沈黙した。
虫との対面へ
妨害が消えたことで、ニアはこれから虫の領域へ踏み込み、最前線の先で直接対峙する段階へ移る。
第三章 蟻の群れ
イルグ副隊長の追跡と同行要請
砦を抜けて第一ブロックへ向かうニアとリノキスを、イルグ・ストーン副隊長が鼻血を押さえながら追ってきた。乱闘で倒されていたにもかかわらず責任感で追跡し、止められないならせめて同行して見届けたいと申し出る。虫の危険性を強調しつつ、万一ニアたちが死ねば報告義務もあると述べ、同行の許可を求めた。ニアは道案内と虫の情報のため、同行を認める判断を下す。
第一ブロックの戦場跡と蟻の外殻の評価
砦の外は長年の激戦で森が失われ、蟻の体液の甘ったるい臭いが地面に染みついていた。周囲には黒い欠片が散らばり、それが蟻の外殻であると知る。硬質で厚みがあり、普通の武闘家では複数同時に相手をするのは困難だと見積もる。リノキスは技「雷音」で対処可能としつつ、外殻そのものを狙わず関節や継ぎ目を攻める合理性を示した。
氣拳・拾震による地中への誘発と蟻の大群の出現
ニアは「自重しない」と決め、リノキスとイルグを後方に下げさせた上で、地中の蟻を炙り出すために右足へ柔氣・重氣・獣氣を込めて地面を踏む。技は「氣拳・拾震」であり、地中へ衝撃を走らせて潜伏個体を誘発する性質を持つ。直後、地中から多数の蟻が湧き出し、黒い波となって砦方向へ押し寄せた。
蟻の殲滅と女王蟻の初撃撃破
ニアは接触した蟻を瞬時に粉砕し、群れは怯まず突撃を続けたため、結果として短時間で大量の蟻が全滅した。戦場には外殻と体液が広範囲に散り、蟻の“カーペット”のような光景が残る。ニアは最初の一撃で最大個体、すなわち女王蟻と思われる存在と周辺個体を潰したと推定し、そのため群れが一斉に襲いかかったと説明した。
戦後処理の指示と魔石回収の方針
大量の残骸は放置できず、腐敗や別の虫の発生が懸念されるため後始末が必要となる。さらに残骸から魔石が露出しており、資源として回収すべきだと判断する。イルグは砦の人員が休憩中で動けないと渋るが、ニアは連行してきた裸の盗賊たちに作業を命じ、盗賊は恐怖から無言で従って作業を開始した。卒倒者も出るが、ニアは氣で起こして作業を継続させた。
次の方針転換とリビセィルへの要求
時間的制約から、その日のうちに虫領域をさらに押し進めるのは難しいと判断する。代わりにニアは、次回の虫討伐作戦でリビセィルが頭を下げ、同行を申し出る形にさせる方針を示す。砦の機士たちは腐敗ではなく誇りで戦っていると見直し、彼らの誇りを踏みにじるより、武人として誇りをもって応えるべきだと考えを改めた。
帰路での追加狩りと王都への帰還
イルグに盗賊と現場を預け、ニア一行は大型単船で南西方面へ戻る。帰り道でも盗賊の確保や賞金対象の魔獣討伐を行い、夕陽に染まる霊峰キンゼリンの景観も目にしつつ戦利品を荷台に積み上げた。夜、夕食には遅い時刻にマーベリア王都へ帰還した。
王都門前の包囲と過剰戦力
大型単船と荷を街外れに預け、徒歩で門をくぐったニアは、待ち構えていた憲兵30〜40名に包囲された。サーチライトで照射され、さらに憲兵所属の機兵が3機展開している。子供一人の拘束としては過剰であり、リノキスは愚かさに言葉を失う。同行していたソーベルは状況を理解できず、代表格のヘーデンに事情を問いただした。
ダージョル襲撃容疑の提示とニアの弁明
ヘーデンは、ニアが今朝ダージョル・サフィーを襲って金品を奪った極悪人だと断じ、証言や目撃情報が多数あると主張する。ニアは「襲った」という表現を否定し、売られた喧嘩を買っただけで正当防衛であり、金は慰謝料だと説明する。さらに、証言の出所はダージョル側の身内に偏っているはずで信用できないと反論し、地下から百人規模の関係者を憲兵が連行した事実も引き合いに出して、憲兵と裏社会の癒着を示唆した。
逮捕の受容と意図的な流れ
ニアは憲兵が事情聴取ではなく逮捕を先に決めている点を指摘し、賄賂や繋がりの可能性を問い詰める。憲兵が自分の言い分を聞かないことも含めて、事態は予想通りの展開だと捉え、両手を広げて逮捕を促す。結果、ニアはそのまま逮捕され、憲兵の詰め所へ連行された。
取調室での対立と身分の主張
取調室でニアは前手を縄で縛られ、ヘーデンと若い憲兵に向き合う。ヘーデンは来訪目的を追及し、ニアは留学だと答えるが、行動が留学生の範疇を超えると糾弾される。ニアは、発端は常に相手側の挑発であり、段階的に勢力がエスカレートして今は憲兵が出張っているだけだと整理する。さらに自分は国王が貴族と認めた身分であり、本来この取り調べ自体が不当だと述べ、譲歩として応じているのだから相応の誠意を要求した。
脅しへの反撃と“仕返し”の明示
若い憲兵が激昂して机を叩き、胸倉を掴んで威嚇すると、ニアは逆に相手の腕を握り込み、骨が折れるかのような痛みを与えて主導権を奪う。ヘーデンが制止しても、ニアは口調や態度の非礼を指摘し、必要なら憲兵全員でかかってきてもよいと挑発する。ダージョル壊滅の実績を想起させる形で圧をかけ、ヘーデンは恐怖を思い出した様子で謝罪と解放を求める。ニアは「ごめんなさい」を要求し、すでに仕返しが始まっていると突きつけた。
逮捕直後の動揺と“想定内”の一言
ニアが大掛かりな包囲網のもとであっさり逮捕される様子を見て、事情を知らされていないソーベルは狼狽する。一方リノキスは落ち着き払い、「想定内」だと断言し、まずは荷の処理を優先するよう求める。大型単船には魔獣の死体や生け捕りの盗賊が積まれており、早急な対応が必要だった。
戦果の換金と周囲の騒動
リノキスはソーベルに出稼ぎの戦果の換金を依頼する。外国人である自分たちでは不利になると見込み、マーベリア人かつ憲兵である彼に託したのだ。冒険家ギルドで手続きを済ませると、賞金首や盗賊の件で内部が騒ぎ始める。換金査定を待つ間、ソーベルは改めて説明を求める。
逮捕は計画の一部だったという告白
夜の街を歩きながら、リノキスは王都帰還前のやり取りを語る。ニアは「王都に戻れば逮捕される」と予測しており、裏の黒幕と憲兵の繋がりから法的手段に出ると読んでいた。リノキスが反発すると、ニアはあえて逮捕を受け入れ、黙って見送るよう指示する。そのうえで今後の流れを説明した。
虫の生息域と均衡の理論
ニアは、マーベリアの敵は虫だが、虫同士も敵対関係にあると指摘する。生息域が第一ブロックの蟻、第二ブロックの蛾、第三ブロックの混合ときれいに分かれているのは、虫同士が縄張り争いをしている証拠だと推測した。第四ブロック以降にはさらに強い存在がいる可能性があり、各勢力が三すくみ、四すくみの均衡を保ってきたのだという。
蟻激減による均衡崩壊の危機
しかし現在、蟻は激減している。蟻が蛾を睨んでいた抑止力が失われれば、蛾は生息域を拡大する。空中戦を苦手とする機兵では蛾に苦戦しており、蛾が蟻の区域を素通りして砦を越え、王国全土に広がる可能性もある。さらに第三、第四ブロックの虫まで流出すれば、長年保たれてきた均衡が崩れ、王国壊滅の危険すらある。
答えは明白だという示唆
動揺するソーベルに、リノキスは淡々と告げる。機兵なしで虫を瞬殺できる存在がいる、と。今日一日で見てきた圧倒的な力――それがニアとリノキス自身である。しかしその当人は今、憲兵に逮捕されている。
国家の命運と“嫌悪”
もし虫の脅威が現実化すれば、王国は彼女らに頭を下げるしかない。だが問題は、ニアがマーベリアを嫌っていることだ。どれほど懇願されても、王国のために戦うつもりはないとリノキスは明言する。
国の命運を握る存在に、すでに嫌われている――それこそが最大の危機であった。
地図上で語られた均衡崩壊の仮説
大型単船の荷台でランプを灯し、ニアは地図を広げて説明を始める。砦の先、白紙の領域を指し示しながら、虫の行動範囲が変化する可能性を語った。蟻という一角を落とせば、縄張り争いの均衡が崩れ、他の虫がその空白を埋めるために動き出す。結果として、その圧力がマーベリアへ向かう――策士のような見立てである。
智謀と“らしくなさ”への反発
リノキスは、その分析の鋭さに驚きを隠せない。日々宿題に苦しんでいたニアが、ここまで構造的な推測をするとは思っていなかったからだ。しかし当のニアは、深く考えて蟻を狩ったわけではなく、後から振り返って思い至っただけだと軽く流す。「私らしからぬ」という言葉には釘を刺しつつも、確信は持ち過ぎない態度を崩さない。
均衡が崩れた後の連鎖
蟻が蛾を押さえていたなら、蟻の激減は蛾の拡張を招く。蛾が動けば第三、第四ブロックの虫も影響を受ける。縄張り争いとはそういう連鎖だ。筋が通っている以上、動きは起こる可能性が高い。リノキスはそう判断する。
滅びは許さないという宣言
それでもニアは断言する。マーベリアが滅ぶことはない、と。自分がいるからだ、と。もし王国が愚かにも協力を拒み滅亡を選ぶなら、シィルレーン以外の王族を排除し、彼女を王位に据え、あとはアルトワール王に任せるだけだと語る。その口調は冗談めいていながら、現実味を帯びている。
王国の選択と試金石
イルグ副隊長が無能でなければ、蟻壊滅の好機に戦力を集中し、王国へ報告し、総力で掃討を図るはずだ。その際、機兵なしで蟻を狩れる存在――ニアとリノキスへの協力要請は不可避となる。長年の戦の一角を終わらせる好機を逃す指揮官なら、とっくに国は滅んでいる、とニアは笑う。
逮捕という“餌”
そして問題はそこだ。作戦の要となるニアが逮捕されていた場合、王国はどう動くのか。無罪放免を条件に協力を求めるのか、謝罪と報酬を提示するのか、それとも人質を取るのか。もし後者なら、現王とリビセィルは虫の犠牲になるだろう、とニアは淡々と告げる。
マーベリア王国は、均衡崩壊という外的危機と同時に、ニア・リストンという内なる試金石に直面しようとしていた。
第四章 仕分けが面倒臭い蹂躙
アカシの強行突入と忠告
取調室に連行されて間もなく、アカシが怒鳴り込み、鍵を開けて乱入する。機兵学校の制服姿で、普段とは違う凛々しい表情のままニアの解放を要求するが、ニアは「もう遅い」と制する。これまで幾度も許してきたが、国は変わらなかったと告げ、「頼み事があるなら素直に頼め。これ以上怒らせるな」と忠告する。アカシは深刻な顔で一礼し、去っていった。
揺らぐ憲兵側の動揺
取り調べは続くが、ヘーデンは金の流れやアルトワール王国との関係を探ろうとするものの、核心には迫れない。若い憲兵は腕を折られかけた恐怖から大人しくなり、場の空気は変わる。ニアは「今更解放しても許さない」と宣言し、不正の証拠を処分する時間ももうないと暗に示す。ヘーデンの動揺は隠せない。
独房への移送と奇妙な再会
地下の独房へ移されたニアは、檻越しに声を掛けられる。名乗ったのは喧嘩師ゲンダイ。かつてワンパンで倒された相手である。彼は主君にしてくれ、あるいは姉貴と呼ばせてくれと熱望する。周囲の囚人は嘲笑するが、ニアの実力を知る者は笑わない。思わぬ忠誠心の芽生えに、独房内の空気は奇妙に揺れる。
王女の来訪と跪き
やがて夜のうちに、アカシとシィルレーンが現れる。王女自ら独房へ足を運び、鉄格子越しに「力を貸してくれ」と膝を突き、頭を下げる。本来それをさせたかった相手は別だと皮肉を述べつつ、ニアは鉄格子を素手で曲げて外へ出る。
五百億クラムの要求
シィルレーンの前に跪き返したニアは、冷静に条件を提示する。慰謝料と報酬として五百億クラム。上乗せはあっても減額はない、と。絶句する二人を残し、ニアは再び独房へ戻り、歪んだ鉄格子を戻して告げる。払えるかどうかは国王と相談しろ、と。
王女の懇願、鉄格子の歪み、そして巨額の条件。
王国は、誇りか、財か、それとも滅びか――選択を迫られていた。
王族と機士が集う異様な深夜
憲兵詰め所の前に、通常なら顔を揃えるはずのない面子が集まる。第一王子リビセィル、第三王女クランオール、魔犬機士団副隊長イルグ、第四王女シィルレーン、そして護衛アカシ。重苦しい空気の中、シィルレーンは沈んだ表情で「慰謝料と依頼料で五百億クラム」と告げる。場が凍りつく。
怒りと危機感の温度差
クランオールは「吹っ掛けている」と露骨に怒るが、アカシは冷ややかに否定する。ニアは本気で怒り始めている、今度こじれれば終わりだ、と。だがクランオールは「何が終わるのか」と理解していない。ニアが切り札であると同時に、最悪の敵にもなり得るという現実を。
砦からの報告――千匹超の殲滅
イルグは昼の事実を告げる。ニア一人で蟻千匹以上を瞬時に殲滅した。千個超の魔石がその証拠である。しかも同行していた侍女も同等の実力を持つ可能性が高い。機兵なしで虫を圧倒する二人の存在は、戦局を変える戦力だ。信じ難くとも事実である。
本来の目的は蟻掃討作戦
イルグは本来、蟻掃討の好機を報告し、即時の作戦実行を進言するために来た。長年の悲願に王子も乗るはずだと考え、できればニアと侍女の同行を要請したいと考えていた。実利を取るべき局面だ。だが報告の場は妙に騒がしく、王族が揃い、留学生が独房にいるという不自然な状況に変わっていた。
不自然さの正体
海外からの貴族の娘が独房にいること自体が異常であり、それに王族が関与しているのも異常だ。砦に突然現れたことも含め、すべてが噛み合っていない。明快なはずのリビセィルは沈黙し、誰も説明しない。
イルグはようやく気づく。
この場の違和感は偶然ではない。
「――あなた方は彼女たちに何をしたんだ」
その問いは、戦局よりも先に、王国の選択を突きつけるものだった。
釈放命令と「頼み方」の強制
明け方、ヘーデンが牢を開けてニアに「出ろ」と命じるが、ニアは拒否する。逮捕して収監した側が都合よく命令を変えるのは筋が通らないと突き、物を頼むなら「頼み方」を示せと迫る。ヘーデンは屈して「お願いします」と言い直し、ニアは応じて動き出す。ニアはこれを、上層の呼び出しと見て交渉の時間だと捉える。
国王との面会と先制の上乗せ要求
詰め所の外で待っていたアカシに導かれ、ニアは国王との会談に向かう。城の応接間には国王と重臣が揃っており、ニアは彼らの視線を「軽視と蔑視」と断じ、老人二人の目つきが気に入らないとして「百億上乗せ」を宣言する。受け入れなければ帰国すると言い切り、主導権を奪う。
「交渉ではない」という定義の押し付け
国王は感情を表に出さず、落ち着くよう諭す。ニアは「これは交渉ではない。謝罪と支払いが先で、その上で頼みがあるなら頼め」と言い切る。周囲の反発が出る中でも国王は沈黙を保ち、場が落ち着くのを待って話を進める。
国王が語る現状
国王は、ニアが蟻を壊滅させた結果、その死骸を狙って蛾などの虫が砦付近へ出現していると説明する。記録にない虫も混じり、戦闘力が未知なため手出しできないが、砦が落ちれば虫の生息域が拡大し、王都にも到達し得るという。砦から報告が連続し、現場が急速に悪化していることが示される。
値引き交渉の停滞とニアの転換
国王は六百億の減額を打診するが、ニアは拒否する。国王は重臣が金を出したがらないと明かし、議論は埒が明かなくなる。ニアは、交渉が決裂しても自分は虫を止めるつもりだと腹を決める一方、屈辱を受けたまま無償で動くのは納得できないため、別の落としどころを探し始める。
「シィルレーンをよこせ」という強硬案
ニアは「三百億でシィルレーンをください」と提示し、場は騒然となる。重臣は王族への侮辱として激昂するが、国王は意味を確認し、即断は避けて考える姿勢を見せる。ニアは、金を出さず首も差し出さず口だけ出す重臣を一喝し、沈黙させる。
シィルレーンの自発的申し出と国王の値上げ
シィルレーンは「自分が行く」と進言する。命令で差し出されるのではなく、自ら歩み出ることで意味が変わると判断し、「三百億の値が付いたと言われれば納得できる」と理屈を立てる。国王はそれを受け、「安い。五百億なら応じる」と逆に値を吊り上げ、ニアも受諾して決着する。
出陣命令と最終警告
ニアは「私の物になった」としてシィルレーンに同行を命じ、害虫駆除へ向かう意志を示す。去り際に、侍女や子供を人質に取らなかったのは正解だと国王側へ告げる。もし人質策が取られていれば、命じた者をその場で殺していたと示唆し、力関係を釘刺して会談を終える。
アカシの先手と「人質未遂」の封じ
応接間を去ったニアとシィルレーンに続き、殿に残ったアカシは年寄りたちへ軽口混じりに釘を刺した。侍女と子供を匿っていなければ、人質に取る動きが出ていたはずだと断じ、実行していればニアは殺す気だったと告げた。アカシは取調室に乗り込んだ直後、ニアの忠告を受けて即座に関係者を保護し、隠れ家に匿っていた。結果として「弱点確保」に失敗したまま交渉が始まり、それが国を救う形になった。
リビセィルの現場出動と危機の自覚
交渉の場にいなかったリビセィルは、砦からの虫の異変報告を受けて王都を離れ、現場指揮のために出動していた。戦場か交渉かの二択で戦場を選び、そこでようやく「ニアを怒らせた」ことの意味と、シィルレーンやアカシが過剰に警戒していた理由を実感し始める。
砦の戦況悪化と統率崩壊
リューリエの壁から虫除けの煙が上がり、砦正面ではすでに戦闘が開始されていた。蟻前提の陣形と装備しか想定していない機兵隊は、蛾や他の虫が乱入したことで統率を失う。戦場には蟻残党、蛾、ダンゴムシ、カマキリに加え、見たことのない虫まで混在し、虫同士の争いも起きて混沌が増していた。数は機兵の二十倍級で、虫の狙いが集中すれば即崩壊という絶望的状況であった。
戦友たちの遺言とリビセィルの覚悟
部下たちは死を覚悟し、遺言めいた言葉を音声で残しながら出撃した。リビセィルは返答できず、撤退命令を出してしまいそうな自分を抑え、戦友と共にここで死ぬ決意を固めて出陣する。
ニアの乱入と「蹂躙」の開始
戦場の只中、リビセィル機の足元に白髪の少女が現れ、笑いながら見上げていた。後にその言葉は「仕分けが面倒臭いからついでにやるね?」だったと判明する。イルグが到着し「機兵を引け、巻き込まれる」と叫ぶが、リビセィルの意識は異常な光景へ奪われる。
投擲と打撃による全域殲滅
ニアは機兵を蹴り飛ばして戦場を転がし、虫も機兵もまとめて巻き込んだ。空中の蛾は、地上から投げられる石や金属片、虫の欠片で次々に撃ち落とされる。ダンゴムシは外殻を拳で粉砕され、近くの機兵まで殴打で装甲を破砕された。四枚鎌の巨大カマキリは、襲撃動作の最中に鎌が折れ、首が飛んで終わる。色違いの白蟻やテントウ虫、蝶、毒々しいカミキリムシなど、記録外と思しき虫も接触即死していった。
「虫全滅」なのに機兵も壊滅する戦場
ニアの進行方向にいた機兵は虫ではなくニアにより行動不能となり、戦友たちの覚悟は意味を失う。死体と残骸が積み上がる中で立っているのはニアだけとなり、残った機兵は進行方向外にいたリビセィル機とイルグ機だけであった。虫は全滅し、機兵は半壊・全壊が続出する。
戦後の会話と「怒らせた恐怖」の確定
イルグは「ニアは風呂に入っていない寝不足で不機嫌」と報告し、リビセィルは「風呂とベッドを用意しないとな」と返す。だが内心では、死を覚悟した戦場が十歳の少女一人で塗り潰された現実を受け入れきれず、震えと嫌な汗が止まらない。シィルレーンも砦から一方的な戦場を目撃し、アカシは「脅威を認識するため」に彼女を止めて見せた。虫の脅威を乗り越えた日に、マーベリアは虫以上の脅威が来たことを思い知る形で終わる。
第五章 栄誉の凱旋
虫掃討後の「日常」への復帰と王都の熱狂
夜襲から始まった長い一日が終わり、ニアは留学生としての普段の生活に戻った。一方、王都のメインストリートでは「マーベリア万歳」「機兵万歳」と民衆が狂喜し、大型単船の荷台に積まれた虫の死骸を戦果として見物していた。王国は前夜のうちに虫の存在と長年の戦い、機兵と壁の成立理由、そして機兵が大量の虫を退治したという筋書きを公表し、緘口令が解かれた関係者や冒険家も話を広めたことで、翌朝には英雄凱旋の空気が王都を覆った。
功績の押し付けと情報操作の狙い
ニアはこの熱狂を「印象操作が成功した結果」と捉え、自分が表に出る面倒を避けるため、功績を機士たちに寄せる形を選んだ。外国人がやったという構図より、機兵の偉業にした方が民衆の受け止めが自然であり、真実を知らされても混乱するだけだという判断である。ニア自身は虫を大して強くない相手として扱い、誇る気もないまま、無関係な顔で学校へ向かった。
機兵学校での盛り上がりとニアの孤立
学校でも虫討伐と凱旋の話題が支配し、普通科にまで噂が波及した。だがニアに対するクラスメイトの冷淡さは変わらず、放課後には機兵科が自慢に来ることを内心期待するも、誰も来ず、教室内で孤立感だけが増した。
買い物合流と生活再建
帰路でリノキス、カルアらと合流し、夜襲で失った荷物の補填として衣類や日用品を買いに出た。支払いはマーベリア持ちで、ニアは財布の心配なく動ける。買い物は人数の多さ、とくに女性陣の吟味の長さで想定以上の長丁場となり、夕方から夜にかけて疲労困憊で帰宅した。
仮住まいの屋敷と「全員密偵」の居心地
現在の滞在先はアカシの家族が所有する屋敷で、ニア逮捕後にリノキスと子供たちを保護していた場所でもある。要人用の宿泊施設として整っており快適だが、侍女も含めて全員が密偵であるため、リノキスは長居を避けるつもりでいる。ニアの旧屋敷は夜襲で半壊し、荷物も失われたため、次の住処が決まるまでここで世話になる状況である。
虫の件の総括と「機兵の手柄」にした理由
夜の部屋でアカシが「虫の件はこれでよかったのか」と確認する。ニアは混乱回避のため、機兵の戦果として処理するのが最善だと答え、実際に虫退治後に情報操作を依頼した経緯を明かした。国の中枢だけが真実を知っていれば十分であり、民衆は英雄譚で満足すべきだという整理である。
シィルレーンの立場確認と不穏な会話
シィルレーンは「自分はニアのものになったが、どう振る舞えばよいか」と問う。侍女として付き添うのか、恋人関係を望むのか、身体の要求まで含めて踏み込むが、ニアは十歳であることを理由に制止する。アカシも茶化しつつ、ニアの戦いの生々しさを引き合いに出し、場の空気は軽口と緊張が混じる。
ニアの目的提示と「緩衝材」としてのシィル
ニアは目的を「魔法映像文化を広めるために来た」と説明し、シィルレーンを自分の人質であり、王家と自分を繋ぐ橋渡しだと位置付ける。自分が強引に動けば国が壊れかねないため、シィルを緩衝材として入れ、双方が笑って終われる結末へ尽力せよと迫る。もはやマーベリアに遠慮する気はなく、壊す意図はなくても壊れても仕方ない、という覚悟で進めると通告した。
最初の命令「機兵科を辞めて普通科へ」
シィルレーンが粉骨砕身で務めると応じると、ニアは即座に命令を出す。明日から機兵科を辞め、普通科へ来い、という内容である。ニアは機兵という存在そのものが外国人軽視の根拠になっていると見なし、排除を求めた。
シィルレーンの経歴と転落の重さ
シィルレーンはマーベリア第四王女であり、学校一の機兵乗りとして実戦経験も積み、卒業後は「姫機士」の称号と女性だけの機士組織を率いる予定だった。人気も高く、機兵科女子の目標でもある存在である。さらに機兵搭乗の影響で成長が遅く、小柄で魔力不足気味という欠点も抱える。そうした将来設計が固まった彼女にとって、機兵引退は予想外の大転倒であり、致命傷級の転機として章の幕が下りる。
商業ギルドでの再会とリプレの不安解消
ニアが商業ギルドを訪れると、受付嬢リプレが客対応を中断して駆け寄り、侍女と子供たちが「国の迎え」で連れられた件を報告した。リノキスと子供たちはニア逮捕後にリプレ宅へ匿われており、アカシが引き取った流れである。夜襲騒動の余波もあり、リプレは迎えが正当か、陰謀の材料として連れて行かれないかを不安に思っていたが、ニアはそれで良いと告げ、これ以上の不用意な発言は商業ギルド内では危険だとして打ち切った。
資金引き出しと住居相談の目的
ニアの本題は、預けていた金の一部(約二億クラム)を受け取り、次に住む屋敷の相談を進めることであった。機士の凱旋から翌日で王都は浮かれているが、商人は虫素材や虫の魔石を巡って既に金勘定に動いており、ニアも「虫退治は機士の手柄にした以上、自分の中では終わった」と切り替え、生活基盤の再整備を優先した。
ギルド長ガッダムの豹変と“不忍”の影
ギルド長ガッダムが異様な低姿勢で出迎え、奥へ通して過剰な接待を指示したため、ニアは態度の変化を詰める。ガッダムはニアと不忍(密偵家系)の関係を確認し、現在、不忍が総力で「ニアに関わった者全員」の調査に入り、憲兵の減俸・謹慎・解雇・投獄まで発生する粛清の嵐が吹いていると明かした。ニアはアカシの動きを理解しつつ、荷物返還の可能性にも思い至る。
不当請求書の告白と黒幕の名前
ガッダムは、ニアの血判が押された書類を提示し、夜襲で半壊した屋敷と周辺修繕費として一億クラムを要求した“不当請求”が、自分の独断ではなくダージョル・サフィーの命令だったと土下座して謝罪した。ニアは意外な名を聞き、事情を一から説明するよう命じる。
ダージョルの目的「屋敷の地下げ」と夜襲への接続
話を聞いたニアは、ダージョルが当初からあの屋敷を狙い、無宿者を住まわせて価値を下げ、相場より安く買い叩く「地下げ」を進めていたと理解する。そこへ事情を知らないニアが借り、居座り連中を追い出して住み始めたことで、持ち主の判断が変わり交渉が崩れ、ダージョルはニアを屋敷から追い出そうとしてちょっかいを出し続けた。部下が戻らず(ニアが監禁していたため)引くに引けなくなり、憲兵の動きも操作していたが限界が来て憲兵を動かし、最終的に夜襲へ繋がった、という因果が整理された。
ガッダムの“やらざるを得なかった”とニアの判断
不当請求は「追い込める範囲で追い込め」という命令の具体化であり、夜襲失敗後に法で追い詰めようとした動きでもあった。ニアはガッダムの再度の「許してくれるか」に怒りを覚えつつ、リプレの評価を確認し、サフィー・ファミリーと揉める商業への影響や憲兵内の同調者の存在から、断りにくい圧力があった可能性を認める。書面がわざとらしい点も踏まえ、ガッダムは本気で金を取る意図ではなく、命令に従った“形”だったと結論付ける。
証文破棄と新居手配の命令
ニアは血判付きの証文を破り捨て、ガッダムを粛清対象から外す方向で扱う代わりに、商業ギルドを味方に付ける実利を選ぶ。そして「新しい家を借りたい。用意してくれるか」と命じ、関係の再構築に踏み込んだ。
アカシによる荷物回収と「レシピ」消失
翌日、アカシが呼び出し、回収できた荷物として大きなスーツケースを提示する。現金は使い込まれていたが国が補填し、仕立ての良い服は古着屋へ流れた可能性があり、衛生面から戻していない。ニアは本命としてアルトワール由来の料理レシピ(魔法映像「料理のお姫様」由来で、リノキスが蓄積した分厚いメモ)を探すが見当たらない。アカシは料理人方面に流れた可能性を示し探索を約束し、その後数日でレシピが断続的に戻り始め、料理人同士の敬意で丁寧に扱われていたことが示される。
屋敷選びの難航と「元の屋敷に戻りたい」
住居探しはガッダムが過剰に良物件を大量提示したことで逆に難航し、リノキスと子供たちは馴染みのある元の屋敷を望む。半壊の規模から修繕には時間が掛かると見込まれるが、他物件も大きすぎ小さすぎなど決め手に欠け、ニアは商業ギルドへ相談に行く。
修繕停滞の理由とニアの全額負担提案
商業ギルドは、屋敷が半分近く崩れており、修繕より建て替えの方が安い可能性があるため、持ち主(レンター家)が決断を迷っていて工事が始まっていないと説明する。修繕なら一〜二か月、建て替えなら三か月以上の見込みである。ニアは全額負担して修繕し、再度貸してもらうよう伝達を依頼する。
異常な工期短縮と機士たちの介入
五日後、「修繕完了、入居可能」と連絡が届き、ニアとリノキスは早すぎると驚く。アカシが説明し、ニアと一緒に戦った機士たちが総出で修繕を進めた結果であり、機士の間でニアの人気が高まっていると明かす。ニアは即座に内見と引っ越しを決め、再び元の屋敷へ戻る流れとなる。
アカシ邸への牽制
アカシは引き留めるが、ニアは「見張りが楽だからだろう。使用人が密偵ばかりだ」と指摘し、アカシは黙る。ニア側は監視構造を把握した上で距離を取る姿勢を明確にした。
普通科での孤立と諦観
ニアは機兵学校に通い始めて約二か月となり、普通科の少人数クラス(自分を含め五人)で打ち解けることを諦めていた。クラスメイト四人は害意ではなく畏怖で距離を取り、ニアも歩み寄るほど怖がられるため気にしない方針に切り替える。訓練用機兵を指一本で倒した程度が原因だと自覚しつつ、季節は冬に入り、夜襲・逮捕・虫駆除・王女の取り込みなど濃密な二か月を「楽しかった」と振り返る。
昼休みの計画整理と開国方針
昼、教室に一人残って「お嬢様大好き弁当」を食べながら、アルトワール側へ送る情報と要望を整理する。三か月周期で来訪予定の元空賊に備え、商業ギルドを味方にしたことを前提に、セドーニ商会へマーベリア支店開設を打診する方針を固める。一方で閉鎖的なマーベリアでは高価な魔法映像の導入が困難であり、実現には開国が必要だと判断するが、具体策はまだ見えない。
機兵科の集団突入とシィルレーン問題
突然、二十名超の機兵科生徒が教室に押し入り、代表ジーゲルンが「シィル様に何をした」と詰問する。ニアはシィルを呼び捨てにしたことで無礼と糾弾され、弁当を払い落とそうとした動きには即座に回避し、喧嘩なら応じる姿勢を示す。騒ぎの最中、シィルレーンとアカシが現れ、ジーゲルンは「シィルが機兵科から普通科へ移ったのはニアのせい」と訴える。
転科の事実確認とジーゲルンの失恋
シィルレーンは手続き完了を告げ、今日から普通科所属になったと宣言し、アカシも同様に普通科へ移ったと続く。ジーゲルンは動揺しながらシィルレーンに詰め寄り、自身が目標としてきた存在が普通科へ移る理由を問い、さらに「相応しい男になるために努力してきた」と告白めいた発言まで口にする。シィルレーンは逆に「値段を付けるならいくら出す」と問答を仕掛け、ジーゲルンは百億クラムと答える。そこへシィルレーンは、ニアが三百億、最終的に五百億を出した事実を突き付け、教室の迷惑として全員退去を命じる。機兵科一同は納得できない表情のまま引き上げ、再来の気配を残す。
同居体制の開始と王城との往復
シィルレーンは「自分はニアのものなので傍にいる」と宣言し、週の半分ほどニアの屋敷に泊まり、残りは王城に戻る運用となる。屋敷は修繕が完了しており、現役機士たちが直したらしいことが語られ、ニアは縁があれば挨拶を考える。
不忍の執事サクマ登場と護衛の名目
屋敷前でシィルレーン到着を待つニアの前に、アカシが兄サクマ・シノバズを連れてくる。サクマは無表情で鍛えられた細身の体つき、執事服を纏い、シィルレーンの引っ越し手伝いと護衛役として派遣されたと名乗る。国王命令であり、屋敷の男手不足や王女外泊の体面確保が理由とされるが、ニアは見張りも兼ねていると理解しつつ、生活上問題はないとして受け入れる。給金は国持ちで、住み込みで使ってよいという条件で、気難しい侍女(リノキス)と折り合いが悪ければ解雇もあり得ると釘を刺し、サクマは了承する。こうして同居人が増える。
早朝稽古とミトの異変「氣」の兆候
歓迎会翌日、早朝の庭でシィルレーンが長槍を振るう姿が描かれ、ニアも型稽古、続いてリノキスが来て修行が始まる。そこへ風呂準備のためにミトが水を運ぶが、以前は小桶を休み休み運んでいたはずのミトが、体より大きなたらいを軽々と持って歩いていることにニアとリノキスが気づく。シィルレーンも異常と判断し、リノキスは耳打ちで「あれは『氣』では」と推測する。ニアも否定できず、ミトの回復を喜びつつ、仕事配分を見直す必要を感じる。
シィルレーン転科の真意と弟子入り
ニアはシィルレーンに、機兵科から普通科へ移したのは意地悪ではなく理由があると告げる。将来的にはマーベリアを去る際に王へ返し、機兵に乗りたければその後にすればよい、ただし今は都合で我慢してほしいと説明する。目的は「機兵より強くなってもらうこと」であり、機兵崇拝からの解放と開国を進め、魔法映像導入へ繋げるため、改革の象徴として王女自身が“機兵より強い存在”を体現する必要があるとする。シィルレーンは強くなることを望み、弟子入りを宣言し、修行が始まる。
ミトの「氣」自覚と日課の卒業
夜、ニアはミトにたらいの件を問う。ミトは、ニアが日課で行っていた「氣」の循環を自分でも意識していたら力が入るようになったと答え、ニアはミトが「氣」を使っていると確信する。ニアはこれまで病弱なミトの循環を外部から整える日課を続けていたが、もはや卒業だと判断し、自力でできるだろうと告げる。ミトはその時間がなくなる寂しさを口にし、ニアは同居している以上大丈夫だと寝かしつける。ニアは、ミトに正式に「氣」を教えるべきか、そもそもミトが強さを望むのか、判断の難しさを抱える。
企画相談と“馬なしで走る馬車”の発端
朝食の席でアカシが、以前ニアが「マーベリアで撮影できそうなもの」を探していた話を持ち出し、機兵の動力源を別用途に転用する発想として「馬なしで動く馬車」を提案する。ニアは単船がある以上不要ではと疑うが、ニアの指摘で風力・水力に代わる動力としての可能性が一瞬見える。アカシの狙いはあくまで乗り物の速度であり、機兵や単船より軽く魔力消費が少なく速い移動手段を作れると主張し、「飛ばなくていい」と地上移動にこだわる。ニアは半信半疑ながら、魔法映像のネタにもなり得るとして試すことを許可し、この思い付きが後に二輪機動車「機馬」誕生へ繋がる予告で章が締まる。
第六章 弟子の目標
寒中稽古と弟子たちの温度差
冬の寒さが増し、ニアは寒中稽古こそ心身を研ぎ澄ませるとして好む。一方、リノキスは寒さへの愚痴を繰り返し、ニアは修行への姿勢そのものを疑い、弟子としての位置づけすら揺らぐ感覚を抱く。
シィルレーンの焦りと「強くなる期限」
稽古後、シィルレーンは「今のペースでいつ強くなれるか」と率直に問い、急いで強くなりたい理由があることを匂わせる。ただし子供に聞かせられない話として、ミトの姿が見えた時点で説明を後回しにする。
登校準備と屋敷の同居体制
朝風呂と朝食を経て登校する場面では、子供たちの弁当が恒例となり、ニアは「お嬢様好き好き弁当」を受け取る。シィルレーンには「これからお姫様も好きになるかも弁当」が渡され、微妙な間が生まれる。サクマはアカシが「例のブツ」準備で不在だと告げ、馬なしで走る馬車の計画をニアが思い出す。
虫討伐の冬季攻勢とシィルレーンの参加願望
徒歩通学中、シィルレーンは東の砦の外を調査した結果、未開地に虫(蟻や蛾)がまだ残っていたと語る。冬で虫の活動が鈍い今のうちに狩り尽くす方針が王国として固まり、今年の冬は攻勢に出るという。シィルレーンは戦力として同行したいが、普通科に転科したため機兵の一時免除が外れ、免許制度の都合で機兵に乗れない立場となっている。結果、生身で戦える力を求め、修行を急ぐ理由が明確化する。
ニアの判断と修行強化の合意
ニアは、今年の冬に間に合わせるのは不可能だと断言し、「なんとなく使える」では命懸けの実戦に足りないと釘を刺す。シィルレーンはニアの助力を求めたい気持ちを抑え、虫問題は自国が解決すべきだと述べる。ニアは覚悟を認めつつ、可能な限り鍛えると約束し、夕方も稽古を行う流れになる。
帰宅と報酬金の受け渡し
放課後、屋敷前でアカシが憲兵長ソーベルと会っており、賞金首の魔獣退治や盗賊退治の換金分として約四千万クラムを渡しに来たと説明する。ニアは忘れていたほど無頓着で、半額を手間賃として渡そうとするが、賄賂扱いを避けたい事情(不忍絡みの調査や王族同席)があり、別の形で礼を考えることになる。
試作一号「馬なしで走る馬車」の暴走事故
アカシは木造馬車に機兵の動力を積んだ試作機一号を披露し、起動して走行実験を強行する。シィルレーンは木造の強度不足を懸念し止めようとするが、アカシは計算済みと主張し、馬車は初動からトップスピードで加速する。直後に左側の車輪が外れて木材が折れ、車体が傾いて向かいの屋敷の外壁に激突し、馬車は大破する。アカシは脱出して無傷で戻り、結果として人命が無事だった点だけが救いとなる。
謝罪対応と淑女の長時間説教
事故後、ニア・シィルレーン・アカシは向かいの屋敷へ謝罪に赴く。家主は六十代の未亡人で、荒れていた向かいの屋敷の迷惑、無宿者の出入り、騒がしさ、壁破壊が二度目である点を、丁寧だが強い嫌味を交えて長時間語り続ける。アカシが不忍の実験だと口を挟んだことで説教はさらに激化し、シィルレーンの弁護も逆に揚げ足を取られる形となり、場は精神的に消耗する。現場処理はソーベルに任せ、彼は露骨に面倒そうな顔をする。
修行の日々と年末行事の噂
数日後もアカシは試作作りを懲りずに続け、ニアはシィルレーンの修行に集中する。シィルレーンは覚えが早く、春には「氣」の基礎に届く可能性が示唆される。そんな折、普通科の教室でクラスメイトの会話から、年末の祭りで現役機士が機兵の一騎打ちを行う恒例行事があり、今年は機兵科の訓練生が出るかもしれないという噂をニアが聞き取る。背景には虫討伐で機士が祭りどころでないことや、機兵不足(修理未完やニアが壊した影響)の可能性がにじむ。
ニアの機兵観の露呈とクラスの壁
クラスメイトに「機兵が好きか」と問われたニアは、機兵は大嫌いであり、機兵頼みの国の在り方がマーベリアを駄目にしていると断言する。その発言で教室内の距離感がさらに強まった気配があるが、ニアはもはや馴染むこと自体を諦めており、気にしない姿勢で締める。
迎冬祭の由来と今年の変更点
ニアが普通科で迎冬祭の噂を聞いていた同時刻、シィルレーンも自分の教室で迎冬祭について聞いていた。迎冬祭は、長年虫の脅威に晒されてきたマーベリアが「冬だけは安心して眠れる」ことを祝う古い伝統行事であり、現代では由来が薄れ年越しの祭りとして定着している。恒例の見どころは機兵同士の戦いだが、今年は正規機士ではなく機兵科の生徒が出場するらしい。
シィルレーン不出場と機兵科の来訪
普通科の生徒から、シィルレーンが出場しないのかと問われ、シィルレーンは機兵を返上済みで、王城の専用機も緊急運用中、さらに免許もないため出られないと答える。そこへ機兵科時代の同級生アガッセとターメリンが訪れ、迎冬祭への出場を迫る。シィルレーンは普通科のクラスメイトが怖がっているとして二人を帰し、機兵科以外が機兵科を快く思っていない現実を初めて自覚する。機兵への誇りは捨てられず本音では出たいが、不出場の意思は変えないと通告する。
ニアの提案「生身で出る」
帰り道、迎冬祭の話を共有したニアは、シィルレーンに出場を勧める。ただし機兵ではなく「生身で」、普通科の生徒として出る案である。シィルレーンは衝撃を受け、現状では機兵に勝てないと反発するが、ニアは決めるのもやるのも本人で、自分は鍛えるだけだと言い切る。目標を置いて進捗を測る重要性を語り、迎冬祭を「丁度いい目標」と位置づける。
三週間という期限と覚悟の確定
迎冬祭は約三週間後であり、屋敷前でシィルレーンは間に合うかを確認する。出場許可の不確実性を認めつつも、機兵より強くなりたいという目的に沿うとして、勝てる道を模索する姿勢を固める。ニアは覚悟を評価し、基礎が未完成でも勝機を作るため「氣拳」を一つ発する可能性に賭ける方針を示す。
槍の奥義と単純な突きの極致
稽古場でニアは訓練用の槍を借り、武器の奥義として「単純な突きを極める」方向性を実演する。丸太を突きの連発だけで削り落とし、初歩の無駄のない技があらゆる状況の基盤になると説く。今後は「氣」を使いながらこの突きを徹底的に磨けと指示し、いつかニアの域を越えることを期待する。シィルレーンは直後から突きの反復に没頭し、周囲の声が入らない状態になる。
日常の差し込みとアカシ再始動
カルアが「おやつの時間」でニアを呼びに来て、ニアは子供の反応を受けつつも自分のおやつは譲らない。その直後、アカシが次の試作機完成を告げて現れ、シィルレーンは前回の事故を繰り返さないため「まず自分に見せろ」と強く釘を刺す。
エピローグ
シィルレーンの追い込みと迎冬祭の現実味
ニアの実演以降、シィルレーンは新しい壁に挑み始め、ニアが起きた時点ですでに汗だくで槍を振っていた。努力の早さと集中度から、三週間後の迎冬祭に間に合う可能性が現実味を帯びる。ニアは「氣」はきっかけさえ掴めば伸びると見ており、シィルレーンの資質と熟練度を評価する。一方で、アルトワールに残した弟子たちのことが気に掛かり、シィルレーンには「心残りがないように続けろ」と促す。
リノキスへの“活”と師弟の体裁維持
欠伸混じりで遅れて起きたリノキスに対し、ニアは気の緩みを責め、徹底的に鍛える方針に切り替える。静止の型に全力の「氣」を満たして維持させる苛烈な稽古で追い込み、解除すれば最初からやり直しと告げる。さらに、表向きは「ニアがリノキスの弟子」という体裁を通すため、リノキスに“導く側の振る舞い”を求めるが、近頃の腑抜けぶりに苛立ちを募らせる。
ミトの申し出と“選ばれた師匠”
風呂の準備を終えたミトが、シィルレーンに「槍の使い方を教えてほしい」と頼む。ニアは自分ではなくシィルレーンが選ばれたことに内心衝撃を受けるが、ミトは「ニアとリノキスは忙しそう」「桁が違う」と理由を述べる。ミトが「氣」を使い始めているため、三者の“強さの差”を感覚的に捉えている可能性が示唆され、シィルレーンが最も“教わりやすい相手”として選ばれた構図になる。
ミト指導の方針決定と仮弟子化
ニアはミトへの指導を悩んでいたが、本人が武を望んだことで結論を出す。稀有な才に中途半端な我流の「氣」を覚えさせたくないため、体系立てて教える必要があると判断する。ただしニアは武具の扱いが得意ではなく、素人に技術の肝を伝えるのは難しいとして、基礎の槍指導はシィルレーンに任せる提案をする。こうしてミトはシィルレーンの“仮弟子”となるが、ニアは将来的に自分が本弟子として引き取る腹づもりを固める。
ミトの異常な一撃と才能の危険性
教えられた通りに素振りしたミトが、指示されて丸太を全力で突くと、訓練用の先が尖っていない槍が丸太に深々と刺さる。女児の力ではあり得ない威力と速度であり、兄すら超える才の可能性が示される。ニアは、下手に「氣」を扱わせれば暴発による被害が出かねないとして、本人と周囲のためにも“ちゃんと教える”必要性を強く確信する。
シィルレーンの敗北宣言と修行の新段階
シィルレーンはミトの一撃を見て笑い、「合格だ。私が教えられることはもうない」と告げる。理由は「すでに私より強いから」であり、ミトの成長速度がシィルレーンの想定を越えたことが明確になる。こうして、朝の稽古の場ではシィルレーンの迎冬祭への追い込みに加え、ミトの「氣」の修行も始まる段階へ移行する。
『凱旋の横で』
凱旋の喧騒と買い物計画
凱旋行列の熱狂が続くメインストリートを横目に、ニア、シィルレーン、アカシ、リノキス、子供たちは今後の予定を打ち合わせた。夜襲で荷物を失ったため、まず衣類を買い直す方針となり、支払いはマーベリア持ちである。子供たちは「なんでも買ってくれる」と聞いて目を輝かせ、ニアも高い紅茶を買わせるつもりで動き出した。
古着屋での待ちぼうけと買い物の停滞
一行は品数の多い大きな古着屋に入ったが、到着直後に子供たちとアカシ、リノキスが散開し、休憩スペースに残されたニアとシィルレーンは長時間待たされる。男児のシグとバルジャは早く戻ったのに対し、女側が戻らず、待つ側だけが疲弊していく。ニアは自分の服はリノキスが選ぶため手を出せないとし、状況確認のため売り場へ向かった。
アカシの“護衛忘れ”とニアの号令
ニアが見つけた三人組は、カルア、ミト、アカシで、楽しそうに服を試していた。アカシは護衛の立場にもかかわらず高そうな毛皮コートを着込み、カルアは謎柄のシャツを見せ、ミトは白いニット帽で可愛くまとめていた。しかし三人の買い物かごの中身は、時間の割にほとんど増えていない。ニアは子供に聞こえないようアカシを引き寄せ、「迷ったものは全部買え」と強く命じ、ウィンドウショッピング状態を強制的に終わらせた。
リノキスの暴走と“下着哲学”
次にニアが見つけたリノキスは、真剣な顔で女児用下着売り場に立ち尽くし、ニアの下着を吟味していた。ニアが「間に合わせでいい」と主張しても、リノキスは強硬に否定し、現在の下着を「ダサい」と断じる。さらに「ニアには色気とミステリアスさがある」「白無地はありえない」など過剰な理屈を並べ、シノバズの用意した下着まで罵倒した。ニアは呆れ、状況改善を諦めてリノキスを店内に置き去りにする判断を下した。
撤収と置き去りの結末
ニアが休憩スペースへ戻ると、女の子たちとアカシはすでに合流しており、買い物が終わったと判断してそのまま全員を連れて店を出た。シィルレーンに侍女の所在を問われても、ニアは「まだ掛かりそう」とだけ答える。リノキスが戻ったのは夕方で、置いて行くなと少し泣いていた。
凶乱令嬢9巻 レビュー
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凶乱令嬢11巻 レビュー
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あらすじと考察は本文で詳しく解説。

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あらすじと考察は本文で詳しく解説。

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