概要
本作は、異世界転生を題材としたファンタジーライトノベルである。かつて神をも討った大英雄が、病弱な貴族令嬢ニア・リストンとして転生し、再び戦いの道を歩む物語である。新たな肉体では病弱であるものの、前世の膨大な戦闘経験と技術を駆使し、数々の試練や陰謀を打ち破る。
主要キャラクター
• ニア・リストン:主人公。かつて神をも討った大英雄であり、転生後は病弱な貴族令嬢として生きる。外見とは裏腹に圧倒的な戦闘力を秘め、強者との戦いを求めている。
• リノキス・ファンク:ニアの専属侍従。病弱な頃からニアの面倒を見ており、護衛を兼ねて高い戦闘力を持つ。
• アンゼル:裏社会のボディガード。仕事の関係でニアと出会い、彼女の戦闘力に驚愕する。
• フレッサ:酒場「薄明りの影鼠亭」で働くウエイトレス。裏の仕事もしているらしい。
• ガンドルフ:ニアが通う学院に天破流道場を構える師範代代理。
• ヒルデトーラ・アルトワール:アルトワール王国の第三王女。魔法映像のスターで、「意外と会えるお姫様」がキャッチフレーズ。
• レリアレッド・シルヴァー:シルヴァー家の末娘。ニアをライバルだと思っている。
物語の特徴
本作の最大の特徴は、病弱な少女に転生したにもかかわらず、かつての武勇を発揮して無双する痛快さにある。内に秘めた力をあえて隠しながら状況を打開していく展開が続き、読者にカタルシスをもたらす。また、繊細な人間関係の描写や、政治的陰謀の中でニアが柔軟に立ち回る姿も見どころであり、単なる戦闘ものに留まらない深みを持つ。
出版情報
凶乱令嬢ニア・リストン 8
病弱令嬢に転生した神殺しの武人の華麗なる無双録
著者:南野海風 氏
イラスト:刀 彼方 氏
出版社:HJ文庫(ホビージャパン)
発売日:2025年5月1日
価格:836円(税込)
ISBN:978-4-7986-3823-2
形式:文庫
関連メディア展開:コミカライズがスクウェア・エニックスの「マンガUP!」にて連載中。
(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。
あらすじ・内容
武闘大会本選、ついに王国一の強者が決まる!
王国中を熱狂の渦に巻き込み、予選から大盛り上がりの武闘大会。
ニアの弟子たち、勇星会の男女や剣鬼、敗者復活から舞い戻った挑戦者など、本選ではさらなる激戦が繰り広げられる!!
そんな中、武に関して妙に詳しく、試合の解説が抜群に上手いと評判になったニアは、王令で全試合の解説担当に任命され大活躍!
それはそうと、見ているだけでニアが満足するはずもなく――
「魔王じゃないわ。さっき言ったじゃない。魔王より強いって」
天使のような凶乱令嬢の最強無双譚、全編書き下ろしの第8弾!!
凶乱令嬢ニア・リストン8
病弱令嬢に転生した神殺しの武人の華麗なる無双録
感想
本巻は、武闘大会の本戦を舞台に、王国中を巻きこんだ大熱狂が描かれていた。
にぎやかさの中でも特に目立ったのが、ニアによる実況解説である。
普段の無双ぶりとはまた違った、言葉による”戦い”を楽しむ姿が新鮮だった。
ニアは、解説者という立場にありながら、時おり放送禁止用語を垂れ流すのが笑えた。
その奔放さがむしろ受け入れられ、やがて彼女の解説は絶大な信頼を得ていった。
ついには裏社会のマフィアたちまでが、賭博の参考にするほど浸透してしまうありさまで。
その時に動く金額に戦慄する。
武闘大会そのものがエンターテイメントであるなら、ニアの存在はその華であったといえる。
戦い自体も見ごたえ十分であった。
ニアの弟子たち、勇星会の面々、剣鬼たち、敗者復活組など、多彩な参加者たちが熱戦を繰り広げ、飽きさせなかった。
本戦が進むにつれ、勝者たちの個性と背景が明らかになり、それぞれの戦いに厚みを持たせていた。
また、単なるバトルにとどまらず、日常とのコントラストも印象的であった。
大会の盛り上がりと同時に、裏社会の動きや人々の生活のにぎわいが細やかに描かれ、世界の広がりを感じさせた。
こうした日常描写があったからこそ、戦いの重みや緊張感がいっそう際立ったのであった。
終盤には、ニア自身の見せ場もきっちりと用意されていた。
彼女は、ただ戦いを外から眺めるだけでは終わらなかった。
武に生きる者としての誇り、そして凶乱令嬢としての本質を、改めて読者に印象づける場面であった。
魔王以上と評される強さをもって、なお愛らしさを失わないニアの存在感は、シリーズを通してますます輝きを増している。
完全書き下ろしの本巻は、単なる大会編の後編ではない。
笑いと熱狂と、そして武の美学が交差する、まさに「ニア・リストン」の名にふさわしい一冊であった。
次に彼女がどんな舞台で、どんな無双劇を繰り広げるのか、期待せずにはいられない。
最後までお読み頂きありがとうございます。
(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。
備忘録
プロローグ
敗者たちの王都への流入と冒険家ギルドの混雑
アルトワール王国武闘大会の予選が終了し、敗者たちは会場の島から撤収した。王都へ流入した彼らにより、冒険家ギルドはごった返し、テーブルは満席となり、酒宴が繰り広げられた。話題はもっぱら予選の反省会であり、湿っぽい空気が漂った。予選で派手に敗北したアバンを筆頭に、各テーブルでは同様の話題が続出した。虎獣人兄弟も予選敗退に意気消沈し、敗者たちの群れは冒険家ギルドだけでは収まりきらず、王都中に広がった。
敗者復活戦への諦念と強者への恐怖
敗者たちは敗者復活戦への参加をためらい、リーノの圧倒的な実力を目の当たりにして心を折られていた。アバンの試合を例に、リーノが手を抜きつつも圧倒的であると認識され、武器を持たせれば優勝確実とまで評された。こうした話題は王都全体に拡散し、街は敗者たちの酒宴と騒動で眠れぬ三日間を迎えることとなった。
裏社会の混乱と「本家」の帰還
敗者の放出騒動は裏社会にも波及し、「脚龍」の頭領ダウ・ザンシーたちは、騒ぐ連中の排除に追われた。乱闘を避けるため最低限の暴力で対処しつつ、裏社会の施設周辺の警戒を強化した。そんな中、「本家脚龍」からダウ宛に「用事が済んだから帰る」という簡潔な手紙が届き、大きな懸念材料が消えたことにダウは安堵した。「本家」の存在は腫れ物であり、深入りすれば裏社会全体に災厄をもたらしかねないため、これを避けられたことは朗報であった。
アンゼルへの期待と裏社会の行方
カフス・ジャックスが五百億クラムを賭けたアンゼルの優勝により、裏社会の今後が左右される状況となっていた。アンゼルが予選を勝ち抜いたことで、賭けが成立し、裏社会には荒れる兆しが生まれた。カフスが消えた場合、外国勢の進出や内部抗争が激化する可能性が高まるため、成り行きに注目が集まった。
剣鬼アスマ・ヒノキと過去の記憶
ダウは、予選を勝ち抜いた剣鬼アスマ・ヒノキの姿に、かつて闇闘技場で脚龍を翻弄した少年の姿を重ねた。年端もいかぬその少年は、脚龍の黒服たちすら圧倒する実力を持ち、ダウにとって屈辱と畏怖を同時に刻み付けた存在であった。彼は「本家」の精鋭よりも圧倒的に強く、対峙すれば百戦しても勝てないと確信していた。少年がこの大会に絡むことをダウは恐れており、再び遭遇しないことを心から祈った。
第一章 本戦の前に
武闘大会予選終了後の登校と敗者復活戦に向けた動き
登校再開と学院での再会
武闘大会予選の終了を受け、ニアとレリアレッドは学院への登校を再開した。登校初日、クラスメイトたちに囲まれながら、準放送局局員キキリラ・アモンと再会した。キキリラは武闘大会関連の活動により知名度を高めていたが、現場の忙しさを軽減する要員として歓迎された。
敗者復活戦に向けた打ち合わせ
昼休みにヒルデトーラ主導で敗者復活戦に向けた打ち合わせが行われた。準放送局も敗者復活戦に正式参加することが決まり、ニアたちの業務負担が軽減される見込みとなった。準放送局員たちは意欲を見せたが、経験者であるニアたちは過度なやる気による息切れを懸念した。
ニールのウィングロード計画
打ち合わせの中で、ニアの兄ニール・リストンが登場した。彼は武闘大会開会式におけるウィングロード編隊飛行の広告塔役を依頼されたと説明した。ニールは学院生チームによる独自編隊案を提案し、セドーニ商会から単船を確保するなど、周到な準備を整えていた。この案は概ね好意的に受け止められ、ヒルデトーラは上層部への確認を行うこととなった。
敗者復活戦準備と採寸・撮影の様子
採寸とインタビュー撮影
敗者復活戦に向け、選手たちの採寸と広報用撮影が浮島で行われた。参加者は約三千人に上り、ニアたちは男女別に作業を分担して進めた。ラフィネ・シルヴァー率いる服飾スタッフによる迅速な採寸作業が行われ、ニアたちは主にその様子を撮影した。
男性選手たちの撮影
男性選手たちは筋骨隆々な肉体を惜しげもなく晒し、明るい雰囲気で撮影に応じた。だがニアは、見た目に反して実力不足を感じ、内心失望した。お調子者たちの筋肉アピールを受け流しつつ、撮影は順調に進行した。
女性選手たちの撮影
女性選手たちは仮合わせ用の布を身にまとい、リラックスした様子で待機していた。ニアは特に傷跡の目立つ女冒険家ジナタンに注目し、彼女の生き様を称賛するコメントを付け加えた。ジナタンは照れながらも許可を与え、撮影は順調に進んだ。
有力選手への注目
ニアは、青狐獣人トーハゥロウと冒険家レストラに注目した。トーハゥロウは勇星会に所属する勇者候補と思われ、レストラは高い魔力を持つ魔法使いであった。両者とも予選を勝ち抜いた実力者として、今後の展開において警戒すべき存在と目された。
本戦に向けた準備と医師団の登場
健康診断と旧知の再会
医師団が現れ、選手たちに健康診断を実施した。ニアは医師団の中に、かつて闇闘技場で出会った女医を見つけた。互いに認識しつつも、特に騒ぎにはならず静かにやり過ごした。
ケンカ騒動の気配
健診を終えた医師団の発言から、他会場で小規模ないざこざが発生していたことが明らかとなった。ニアは、力自慢の武闘家たちが集まれば衝突は避けられないと考え、帰路で詳細を聞こうと興味を抱いた。
武闘大会と裏社会の思惑
広間での騒動とアンゼルの決断
約百人の選手が集められた広間で、男女に分かれる指示が出た際、一部の選手たちが騒ぎ出した。スタッフが慌てて対応する中、アンゼルは傍観し、リネット・ブランから「点数を稼げ」と助言を受けた。人気を得れば罪を覆せる可能性を示唆されたアンゼルは、逮捕回避の手段として「目立つ」ことを決意し、騒動の仲裁に動いた。最終的には冒険家リーノの一声で場が収まり、アンゼルも目立つ行動で存在感を示した。
グリーグ・クレットとカフス・ジャックスの会合
アルトワール王都の倉庫街で、飛行皇国ヴァンドルージュの裏の顔グリーグ・クレットが、裏社会の支配者カフス・ジャックスと会談した。国営イベントである武闘大会の規模が予想以上に拡大していることを確認し、賭けに絡めた暗躍が語られた。両者は利害一致のもと、直接対立を避ける立場を取った。
グリーグ一行の行動方針
グリーグは滞在中のホテルに戻り、部下たちに敗者復活戦の観戦と選手データ収集を指示した。護衛のロアとオルターを手元に置き、裏で進行する賭けに備えた。カフスの狙いは、集まった悪党たちを賭けによって破産させることであり、グリーグもその一端を担うことを選択した。
オルターの葛藤と裏社会への適応
オルターは軍を離れ、グリーグの元で働く中で、裏社会のほうが自身に適していると感じ始めた。現場判断を縛る規則のない世界で、目的のために柔軟に動けることを実感しつつ、カフス主催の賭けに関わる情報収集を開始した。
敗者復活戦に挑むジオンの奮闘
敗者復活戦が開かれたアルトワール王都の広場で、冒険家ジオンは初戦を余裕で突破した。観客の声援に心を動かされ、普段は好まない目立つ行動にも前向きになった。キキリラ・アモンによるインタビューでは、予選敗退への謝罪と、もう一度対戦相手と正面から戦いたいという復讐心を語った。ジオンは己の信念と応援してくれる者たちのため、本戦進出を誓った。
武闘大会予選後の敗者復活戦と学院生活の様子
敗者復活戦の観戦とジオンの変化
レリアレッドと共に敗者復活戦の映像を観賞し、ジオンの強さと敗退の理由について考察した。ジオンは以前と異なり、本戦出場を誓う強い意志を見せていた。一方、ジオンに勝利したガンドルフの評価が急上昇したが、その勝因は「氣」による筋肉硬化にあった。
撮影と学院生活の両立
授業前に敗者復活戦の放送を確認し、眠気と戦いながら学院に向かった。授業後、学院放送局との打ち合わせのため、準放送局の詰め所へ向かった。ワグナスらと打ち合わせを行い、ウィングロードの撮影協力を依頼された。
ウィングロード編隊飛行チームの紹介
ニール・リストン率いるウィングロード編隊飛行チームの顔見せ撮影が行われた。現役学院生のみで構成され、開会式での披露に向けて活動を開始した。見学客は主にニール目当てで集まり、撮影現場は賑わった。
ウィングロードの練習と撮影体制
チームの単船紹介を行い、シャール・コールの修復した特別な単船についても取り上げた。撮影は準放送局が主導し、練習風景を中心に進める方針となった。ニアも一部映像出演を続けながら、撮影に協力した。
プロ選手エミュとカイの合流
ヴァンドルージュからウィングロードのプロ選手であるエミュとカイが到着し、ニールたちの練習指導に当たることとなった。彼らの合流により、編隊飛行チームの完成度向上が期待された。
シャールの単船の正体
シャールの単船について、プロ選手たちは海に沈んだ初期型単船と判明させた。重大な秘密や密輸品ではなかったことが確認され、撮影班は安堵した。
撮影番組第一回の放送と反響
撮影されたウィングロードの第一回番組が放送され、視聴者に好意的に受け止められた。学院生中心の構成や、今後の活躍を期待させる内容であった。なお、練習風景やメンバー紹介を中心とした構成となった。
今後のスケジュールと武闘大会本戦への準備
敗者復活戦は順調に進み、本戦までの準備期間へと移行しつつあった。敗者復活戦終了後は選手紹介やイベントを挟み、最終的に自由時間を設ける方針であった。武闘大会本戦に向けて、アルトワールの熱気はさらに高まる見通しであった。
ウィングロード第一回放送とレリアレッドの興奮
レリアレッドは、朝早くから寮部屋に飛び込み、興奮気味に話し始めた。寝ていた主人公は戸惑いながらも応じ、鍵をかけ忘れたことを少し後悔した。レリアレッドは前夜放送された「ウィングロード」の番組内容に感激していた。
レリアレッドの情熱と主人公の対応
レリアレッドは、兄・ニールが番組内で活躍したことに感動し、言葉にならない興奮を見せた。主人公は彼女を宥めつつも、眠いながらも期待に応えようと努めた。レリアレッドにとって、現場に行けない無念が映像への強い感情に繋がった。
今後の放送予定と大会進行状況
主人公は、番組が今後も数回放送される予定であることを伝えた。第一回放送が終わり、次回以降にもニールが登場する見通しであった。本戦までは三週間となり、撮影は続行中であり、武闘大会はいよいよ終盤に差し掛かった。
第三章 本戦が始まる
武闘大会本戦直前の動向
敗者復活戦と本戦進出
敗者復活戦を勝ち上がった選手たちは、港で盛大に迎えられた。彼らの入場は大歓声の中で行われ、英雄の出征のような雰囲気に包まれていた。撮影班による乱雑な映像も、臨場感を引き立てた。若い学院生たちの努力の跡がうかがえたが、計画性に欠ける面も散見された。撮影の選択が意図的なものだった可能性もあり、スタッフの成長が垣間見えた。
優勝候補と注目選手の分析
レリアレッドとニアは優勝予想を交わした。武器なし部門ではリーノが本命視され、対抗馬にガンドルフが挙げられた。さらに、勇者候補トーハゥロウや音速のジオンへの注目も集まった。武器あり部門ではリネット・ブラン、アンゼル、フリーズ、剣鬼アスマ、サウザン・フラミン、レストラの六人に注目が集まり、特にアスマの成長に期待が寄せられた。
リクルビタァとアンゼルの関係
レリアレッドはリクルビタァの恋心を推測した。リクルビタァがアンゼルを多数スケッチしていたことから、興味を抱いていると感じ取った。しかし、身分差と立場の違いから、恋愛が実を結ぶ可能性は低いと判断された。それでも、リクルビタァの恋愛を純粋に応援したいという気持ちは共有された。
立食パーティーと選手間の緊張
本戦前の立食パーティーでは、正装の勝者と私服の敗者が一堂に会し、明確な格差が演出された。和やかな雰囲気は徐々に緊迫し、睨み合いや小競り合いが発生した。規則による抑止力で大乱闘は防がれたが、因縁と闘志は高まった。リストン撮影班は意図的に緊張を煽るインタビューを敢行し、選手たちの対立を映像に収めた。
賭博と本戦への期待
本戦は一週間後に開始される予定となり、公式賭博も開設された。優勝者に賭ける形式であり、闇賭博には注意が促された。武器なし部門ではリーノの一強ムードが漂い、武器あり部門では混戦模様が予想された。
自己鍛錬に励む選手たち
選手たちは本戦までの一週間を、静かに、かつ真剣に過ごした。リノキスはランニングと「氣」の鍛錬に励み、トーハゥロウとの実力差を意識した。リネットは基本訓練、フレッサは情報収集、アンゼルは自己鍛錬に集中し、ガンドルフは正拳突きに没頭した。リノキスは特にガンドルフとの対決を強く意識し、絶対に負けられないという決意を固めた。
静寂と覚悟の一週間
本戦までの間、選手たちは浮島で静かに過ごした。予選を通過した者たちは皆本気で勝ちを狙い、それぞれの理由と野望を胸に、自己鍛錬と調整に励んだ。次に始まる本戦に向け、誰もが全力を尽くす覚悟を固めていた。
第四章 本戦第一試合
公女殿下の家庭教師4 氷炎の姫君と夏休みに王国を救います
敗者復活戦後の熱狂と撮影班の観察
敗者復活戦を終えた選手たちが本戦会場へ向かう様子を、魔法映像を通してニアとレリアレッドが鑑賞していた。港は大群衆で埋め尽くされ、現場にいないことに安堵するほどの混雑であった。準放送局の撮影は混乱の中で行われ、雑で粗いながらも臨場感に満ちた映像を生み出した。ニアはその映像に、スタッフの成長と工夫の跡を感じ取った。
優勝予想と武闘大会参加者の分析
ニアとレリアレッドは本戦の優勝候補について語り合った。リノキスが優勝本命とされる一方で、ニアはガンドルフにも勝機があると見ていた。特に武器なしの部門では、堅牢な防御力を持つガンドルフが脅威とされ、敗者復活組からもジオンらが注目株として挙げられた。武器ありの部門では、リネットをはじめとする堅実な選手たちが上位進出を予想された。
リクルビタァの恋愛疑惑とアンゼルの存在
レリアレッドは、姉リクルビタァがアンゼルに好意を抱いているのではないかと推測した。リクルビタァがアンゼルのスケッチを多く描いていたためである。ニアは身分差や性格の違いからその恋が成就する可能性は低いと考えたが、姉の成長を感じ、心のどこかで応援したい気持ちも抱いていた。
立食パーティーと本戦開幕直前の緊張感
敗者復活戦終了後、正装の勝者たちと私服の敗者復活組が一堂に会する立食パーティーが開催された。意図的に勝者と敗者の対比が演出され、会場には次第に険悪な空気が広がった。ニア率いるリストン撮影班はその緊張を煽り、闘争心を炙り出すようなインタビューを敢行した。暴力沙汰こそ起こらなかったが、各選手の闘志と確執はより鮮明となった。
リクルビタァとアンゼルの急接近疑惑
パーティーの映像の中で、アンゼルがリクルビタァらしき人物を抱えている様子が映り込んだ。これにレリアレッドは大興奮し、姉に春が訪れたのではないかと期待を膨らませた。ニアは懐疑的であったが、若干の可能性を否定しきれなかった。
本戦前の静かな鍛錬と選手たちの集中
本戦までの一週間、選手たちは自由に時間を使えるようになり、各自が黙々と鍛錬に励んだ。リノキスは島を走り込み、「氣」を鍛える努力を続けた。周囲の選手たちもそれぞれの方法で自己研鑽に励み、浮島は静かな緊張感に包まれた。
リノキスとトーハゥロウの邂逅
鍛錬中のリノキスは、獣人トーハゥロウに遭遇した。トーハゥロウはリノキスに組手を申し込んだが、リノキスは大会規定を理由に断った。両者の間には静かな火花が散り、互いに本戦での対決を意識することとなった。
本戦に向けた各選手の覚悟と野望
リノキスやリネット、アンゼル、ガンドルフらニアの弟子たちも、それぞれに課題を抱えながら自己鍛錬に励んだ。他の選手たちも同様に、人生を賭けた大勝負に向けて準備を進めていた。勝利への渇望と名声獲得への野望を胸に、本戦開幕の日が迫っていた。
武闘大会本戦前夜と裏社会の動き
浮島での組み合わせ発表と虎獣人兄弟
本戦前日、アルトワール王国では魔法映像によって本戦組み合わせ表が公開された。映像には虎獣人兄弟ザルタとゲゲルが登場し、明るく観客を煽った。彼らの映像映えする姿は評判となり、本戦への期待を一層高めた。
リアルタイム放送への驚きと市民の熱狂
魔法映像によるリアルタイム放送が実施されることが発表され、市民の間で驚きと歓喜が広がった。労働者たちも魔晶板の前に集まり、仕事を忘れて観戦しようとする者が続出する気配を見せた。
裏社会による非合法賭博の開始
カフス・ジャックスは、近隣諸国の裏社会の大物たちを集め、優勝者当ての違法賭博を開催した。飛行皇国ヴァンドルージュのグリーグ・クレットらが集い、掛け金は五百億クラムに達した。裏社会の面子を賭けた重い賭けが始まった。
カフスとグリーグの駆け引き
グリーグはカフスに対し挑発を繰り返し、カフスも全財産五百億クラムを掛けることで応じた。裏の世界における信頼と威信を賭けた勝負が始まり、場の緊張感は最高潮に達した。
本戦直前の選手たちの動向
選手たちの試合組み合わせ確認
選手たちは掲示板で試合組み合わせを確認した。第一ブロック第一試合にはフレッサが、第四ブロックにはガンドルフが名を連ねた。それぞれ初戦への意気込みを新たにした。
ニアの弟子たちの意気込み
フレッサ、リノキス、ガンドルフ、アンゼル、リネットの五人は、互いに初戦で当たらないことを確認し、安堵した。全員がニアの期待に応えようと決意を新たにしていた。
フレッサの葛藤と引き際の模索
フレッサは目立ちすぎる現状に危機感を抱きながらも、五億クラムという優勝賞金に惹かれ、棄権できずにいた。リスクを承知しつつ、上位入賞を目指す決意を固めた。
大会を支える王族と来賓たち
ヒュレンツ国王の準備と覚悟
アルトワール国王ヒュレンツは、開会式や大会運営に向けた最終確認を行っていた。リアルタイム放送の準備も進み、イベントの失敗は自身の責任であると覚悟していた。
ウィングロード代表への激励
ヒュレンツは、ウィングロードの代表エミュ・イランとニール・リストンに対し、激励の言葉を送った。特に幼いニールには温かい言葉をかけつつも、内心では失敗を許されないと厳しく考えていた。
武闘大会開会と来賓の到着
闘技場には次々と各国からの来賓が到着し、空席だった観客席も徐々に埋まっていった。ヒュレンツ王は各国要人と挨拶を交わし、情報交換を行った。開会式では、王自ら簡潔な挨拶を行い、即座に催しが始まった。
ウィングロードの編隊飛行と観客の熱狂
王の合図とともに、五隻による編隊飛行が行われ、鮮やかな五色の煙が空を彩った。続いてヴァンドルージュからの十三隻編隊が複雑な飛行演目を披露し、観客を魅了した。飛行が終わると、リングには第一試合の選手がすでに立っていた。
本戦第一試合の開始とフレッサの勝利
第一試合では、女性武闘家フレッサと冒険家ギグザラスが対戦した。ギグザラスが重い棍棒を振り下ろしたが、フレッサは巧みに避け、急所を外して全身に二十二回の斬撃を加えた。出血による審判の判断で試合は終了し、フレッサの勝利となった。
フレッサへの解説依頼と試合の実況
試合後、撮影班のニアはフレッサに試合解説への協力を依頼し、渋々ながら承諾を得た。ニアとフレッサは以後、試合の進行に合わせて解説を行った。武器として登場した九節棍に驚きつつも、試合の展開を的確に伝えた。
ジナタンの圧勝と午前中の試合終了
九節棍使いと冒険家ジナタンの試合では、ジナタンが力強く相手を打ち倒し、圧倒的な勝利を収めた。午前中の試合が全て終了し、ニアはフレッサに感謝しつつも、午後の解説は別の者に依頼することを決めた。
撮影班スケジュールの変更とニアの解説続投
翌日、ニアは王からの手紙を受け取り、昨日の解説が好評だったため今後も担当するよう要請された。これによりスケジュールは急遽変更となり、ニアは撮影と解説を引き続き担うこととなった。
トーナメント形式への移行と選手たちの勝ち上がり
本戦二日目では第四から第六ブロックの試合が行われ、リノキス、リネット、ガンドルフが順当に勝利した。三百人いた選手は約百五十人に絞られ、次回からはトーナメント形式での戦いに突入する運びとなった。
第五章 裏の賭け事
武闘大会三日目と新ルールの施行
家族との再会と仕事への専念
本戦三日目、ニア・リストンは家族と短い食事を共にした。父オルニット、母アリュー、兄ニールとの再会は久しぶりであったが、ニアは撮影と解説の仕事に専念せねばならず、団らんには加われなかった。家族旅行の話も出たが、結局、後に頓挫した。
トーナメント形式への移行と治療制限ルール
本戦はトーナメント式勝ち抜き戦へ移行した。ここからは魔法治療が禁止され、選手たちは応急処置のみで次戦に臨むこととなった。このルール変更は無理な戦いを防ぎ、命を守るための措置であった。
アンゼルの苦悩と覚悟
宿舎で新ルールを知ったアンゼルは、自らの戦略が破綻したことに愕然とした。相打ち狙いの作戦は不可能となり、彼は正攻法で勝利を目指す覚悟を決めた。
リネットの対戦相手と不安
リネット・ブランはトーナメント初戦の対戦相手、エン・タイリに対して油断はなかったが、注目していたのは二試合目のサウザン・フラミン対レストラ戦であった。サウザンは自分と同じ堅実な剣士であり、リネットにとって大きな脅威となる存在であった。
サウザン対レストラの試合
試合前の期待と分析
リング脇ではニアたち撮影班が撮影を行い、サウザンとレストラの試合に注目していた。サウザンは安定感のある剣士、レストラは美貌の冒険家で魔法も使う特異な選手であった。
試合の展開と決着
試合開始直後、レストラは身体強化魔法を使い猛攻を仕掛けた。しかし、サウザンは冷静に対応し、彼女の魔法効果を打ち消して勝利した。サウザンは実力を隠しており、今後さらに力を発揮する可能性が示唆された。
裏社会のマネーゲーム
賭けの開始と参加者たち
武闘大会本戦三日目終了を機に、裏社会の面々による優勝者予想の賭けが始まった。参加者はカフス・ジャックスを筆頭に、グリーグ・クレット、フローゼン・ガイツ、レステン、ケヤ・キン、ゼン・フォワーらであった。賭け金は五百億クラムという巨額であり、命懸けの真剣勝負であった。
白髪の予想者と選手選び
彼らは試合解説を担当する白髪の少年ニアの予想を重視し、彼の指摘した選手を中心に賭けを行った。レステンはサウザンに、フローゼンはフリーズに賭け、ウーハイトンの爺たちはリネットとアスマに賭けた。
カフスとグリーグの選択
最後にカフスとグリーグも同じ選手に賭けた。カフスは、部下であるアンゼルの優勝を本気で信じ、賭けに臨んでいた。裏社会に生きる者たちの中でも、彼の覚悟は群を抜いていた。
第六章 見所の試合
本戦四日目、リノキスとジオンの対戦
魔法薬による化粧と試合への備え
リノキスは本戦四日目の試合に備え、魔法効果を持つ高級化粧品で身だしなみを整えた。この化粧は汗や擦れに強く、一週間効果が持続するため、試合中も素顔を晒す心配がなかった。リノキスは万全の態勢で宿舎を後にし、午後から始まるトーナメント二回戦に向けて会場へ向かった。
観客で賑わう会場とリノキスへの注目
会場には既に大勢の観客が集まり、リノキスの登場に歓声が上がった。島は祭りのような賑わいを見せ、敗退選手たちも観客との交流でイベントを盛り上げていた。リノキスも観客に笑顔で応えつつ、闘技場へ入場した。
対戦相手ジオンの異様な気配
闘技場でリノキスはジオンと遭遇した。ジオンは狼獣人であり、殺気をまとって歩くその姿は、ただならぬ気迫に満ちていた。リノキスはその危険な気配に警戒を強めつつ、今日の試合の過酷さを覚悟した。
武器なし部門の試合と観客の期待
トーナメントは武器なしの部門から始まり、リノキスとジオンの試合は第三試合として注目を集めた。リノキスはこれまで安定した強さを見せてきたが、ジオンは異様な気合を漲らせており、観客も固唾を呑んで試合の開始を待った。
リノキスとジオンの激闘
試合開始後、ジオンは瞬間的なスピードと鋭い攻撃でリノキスを追い詰めた。リノキスは冷静に対応しつつ、密着戦でジオンの噛みつきを受けながらも、渾身のボディブローを叩き込み、勝利を収めた。ジオンはその場に倒れ、試合はリノキスの勝利で終わったが、リノキスも左肩に深い傷を負った。
医務室での応急処置
試合後、リノキスは医務室でドリスラ医師らの診察を受けた。怪我は深刻であったが、棄権する意志はなく、魔法を使わずに縫合処置を受けた。治療を担当したのは、以前闇闘技場でリノキスの腕を治療した若い魔法医であった。リノキスは不安を抱きながらも治療を受け、次戦に備えた。
次なる期待と武器あり部門の試合
リノキスとジオンの試合は「事実上の決勝戦」と称されるほど観客に強い印象を残した。今後の武器なし部門決勝はリノキスとガンドルフとの対戦が予想され、怪我の影響も含め、試合展開に注目が集まった。
リネット対剣鬼アスマの試合
続いて武器あり部門では、リネットと剣鬼アスマの試合が始まった。リネットは初めて盾を使用し、堅実な構えを取った。一方、アスマは古式剣術に基づく独特の構えで応じ、木刀ながらも本気の一撃を狙っていた。両者は互いの技量を試し合い、静かな緊張感の中で戦いが進行した。
リネットとアスマ・ヒノキの激闘とその後の動き
リネットの危機と本能的回避
リネットはアスマ・ヒノキとの接近戦において、異様な違和感を覚えた。直感に従い盾を構えたことで、アスマの一閃を防いだが、盾は無残に切断された。彼女は木刀でも対象を斬る技術があることを改めて認識し、下手に動けば危険と判断して動きを制した。
剣技の応酬とリネットの覚悟
アスマ・ヒノキは続く二の太刀を振るったが、リネットは辛うじて回避した。彼女は自身の優先順位を再確認し、ニールへの信頼と護衛としての責任から試合放棄を思いとどまった。切り札を温存するか否か迷った末、今使うべきと決断した。
リネットの反撃と氣技の発動
リネットは剣技を駆使してアスマを押し返した。盾を失いながらも防御と間合い管理に優れ、膠着状態に持ち込んだ。アスマは破片を踏んで体勢を崩し、リネットは隙を逃さず氣技「歌掌」を放った。飛ぶ斬撃を受けたアスマは木刀を折り、右腕を負傷しながらも防御に成功した。
試合の決着と両者の成長
アスマ・ヒノキは潔く降参を宣言し、リネットの勝利が決まった。彼の高い剣技と防御力、そして新たに氣を感じ取る能力が認められた。試合後、リネットは軽傷ながら無事であり、解説者からも両者の技量が称賛された。
夜の密会と剣鬼との再会
夜、ニアは変装して港へ向かい、剣鬼アスマ・ヒノキと密かに再会した。リネットを介して伝えた伝言に応じたアスマと短い対話を交わし、彼の成長を認めた。さらにアスマから一手指南を求められ、互いに言葉よりも剣で語ることを選んだ。
トーナメントの進行と選手たち
翌日、トーナメントは三回戦に入り、選手は三十二名に絞られた。運営は試合の間引きやスケジュール調整を行い、残り数日の本戦を滞りなく進める準備を整えた。弟子たちは順調に勝ち残っており、注目は獣人トーハゥロウとガンドルフの試合に集まった。
観客との交流とリクルビタァの活動
ニアは闘技場に向かう途中、リクルビタァが似顔絵を描く企画に参加している場面に遭遇した。護衛として同行していたアンゼルの姿に違和感を覚えつつも、干渉を避けた。リクルビタァの絵描きとしての活躍と、企画の盛況ぶりを確認し、その場を後にした。
武闘大会五日目、ガンドルフとトーハゥロウの戦い
試合前の状況と注目カード
大会五日目を迎え、実力者たちによる試合が進行した。特に注目されたのは、天破流師範代代理ガンドルフと、青狐の獣人トーハゥロウの対決であった。ガンドルフには予選での勝利に疑惑が残っており、今回の試合で真価が問われることとなった。
ガンドルフとトーハゥロウの対峙
試合が始まると、トーハゥロウは素早い動きでガンドルフに飛びかかり、絞め技を仕掛けた。しかし、ガンドルフの異様な首の硬さにより技は通じなかった。互いに全力を出す覚悟を固め、改めて戦闘に臨んだ。
トーハゥロウの猛攻とガンドルフの耐久
トーハゥロウは高速移動と爪による引っ掻き攻撃でガンドルフを少しずつ削った。ガンドルフは防御を崩さず、致命傷を避けながらタイミングを待った。トーハゥロウは全速力を維持したため体力を急速に消耗していった。
勝負の決着
体力を削られたトーハゥロウが膝をついたのを合図に、ガンドルフは攻撃に転じた。トーハゥロウも反撃を試み、ガンドルフの顔面を狙ったが、ガンドルフはこれをかろうじて回避した。続いてガンドルフはトーハゥロウを掴み、床に叩きつけ渾身の一撃を放った。これにより審判が試合を止め、ガンドルフの勝利が宣言された。
試合後のトーハゥロウの様子
激しい攻撃を受けたトーハゥロウであったが、命に別状はなく、自力で立ち上がった。裏ではサウザンが迎えに現れ、トーハゥロウを医務室へ運んだ。彼女は敗北の悔しさをにじませつつも、ガンドルフの名を強く記憶に刻むこととなった。
第七章 武闘大会、最終日
武闘大会準々決勝と撮影班の活動
試合数が減ったにもかかわらず観客数は減らず、浮島は大盛況であった。リストン撮影班は試合前の様子を撮影し、選手や観客へのインタビューを行った。選手たちは敗北後も明るく振る舞い、大会を盛り上げていた。ニア、ヒルデトーラ、レリアレッドの三人は似顔絵を描いてもらい、その様子も撮影された。
準々決勝・サウザン対リネットの激闘
サウザンとリネットは堅実な戦いを見せたが、リネットが息切れし、持久力の差でサウザンが勝利した。サウザンは無傷で試合を終え、その実力を印象づけた。
フリーズの棄権とアンゼルの勝ち上がり
フリーズは棄権を発表し、アンゼルの勝ち上がりが決定した。ニアはこれが裏取引によるものと推測し、その後の裏でのやり取りも描写された。アンゼルはフレッサに一億の支払いを約束し、彼女の棄権を買収していた。
準決勝の順当な結果と観客の熱気
準決勝では予想通りの結果が続き、大きな波乱はなかった。リストン撮影班はファンサービスを行い、観客たちを楽しませた。観客の熱気は高く、明日の決勝への期待感が高まった。
決勝戦・リーノ対ガンドルフの死闘開始
決勝戦当日、満員の観客が見守る中、リノキスとガンドルフが対峙した。開始直後から激しい攻防が繰り広げられ、互いの必殺技が応酬される。リノキスは「氣拳・雷音」、ガンドルフは「氣拳・轟雷」を繰り出し、互いに致命打を避けながら真剣勝負を展開した。
武闘大会決勝戦とその後の展開
泥臭い殴り合いとなった武器なしの部決勝戦
武器なしの部決勝はリノキスとガンドルフの一騎打ちとなり、苛烈な殴り合いが展開された。リノキスは体格差をものともせず、鋭い拳と蹴りでガンドルフを追い詰めた。双方とも満身創痍となる中、リノキスの蹴りがガンドルフに決定打を与え、審判によって試合が終了した。勝者はリノキスと告げられた。
リノキスとガンドルフの治療
試合後、重傷を負ったリノキスとガンドルフは医務室へ運ばれた。そこでは、かつて闇闘技場で出会った女性医師シャインが治療を担当していた。ガンドルフの内臓と視力に危機があったが、シャインとニアの連携による魔法治療により、視力まで回復した。リノキスも治療を受けたのち、会場へ戻ることを希望した。
秘密の隠蔽とシャインとの再会
ニアが医務室にいた理由については、リノキスが咄嗟に「遺言を聞くために呼んだ」と説明し、場を収めた。ニアとシャインは互いに再会を認め、今後また出会う可能性を残しつつも、それぞれの道を歩むこととなった。
武器ありの部決勝戦に向けて
リノキスが控え室へ向かう一方、ニアはリストン撮影班に合流し、次なる武器ありの部決勝戦の準備が進められた。悪党たちの違法ギャンブルも最終局面を迎え、巨額の掛け金を賭けた者たちは固唾を呑んで見守った。
アンゼルとサウザンの決戦前夜
控え室でそれぞれ準備を整えたアンゼルとサウザンは、決勝のリングへと歩みを進めた。アンゼルは場違い感を覚えつつも腹を括り、サウザンは冷静に闘う姿勢を崩さなかった。
武器ありの部決勝戦開始
試合開始とともに、アンゼルは持ち前の直線的な攻撃を仕掛けたが、サウザンに冷静にいなされた。アンゼルはたびたび攻撃を受けるも、倒れることなく前進を続けた。
戦いの中での成長と苦境
打たれながらも、アンゼルは徐々にサウザンの剣技に対応し始めた。技の精度を高め、無駄な動きを削ぎ落とすことで応戦するものの、ダメージの蓄積と「氣」の消耗が進み、劣勢に立たされていった。
勝負の行方への緊張感
アンゼルは限界が迫る中、戦局を打開する一手を求めていた。サウザンは依然として安定した強さを維持し、油断のない構えを崩さなかった。アンゼルにとって、今まさに最後の勝機を掴むべき局面が訪れようとしていた。
エピローグ
夏季休暇と東都への帰省
王立学校の前期試験で優秀な成績を収めたティナたちは、ご褒美としてアレンの夏季休暇に同行することを望んだ。リディヤもその願いに加わり、一行は東都への帰省を決定した。彼らは実家での滞在を楽しみつつ、夏祭りや湖での水遊びを満喫し、穏やかな時間を過ごした。
アレンと家族との再会
アレンは久方ぶりに家族と再会し、温かく迎え入れられた。特に母リサの存在は、ティナたちにも深い印象を与えた。家族の絆や日常の温もりが、登場人物たちの心に変化をもたらした。アレン自身もまた、過去の苦悩と向き合いながら、自らの在り方を改めて見つめ直した。
ジェラルドの動向と謀反の兆し
一方、軟禁状態に置かれていたジェラルドは、オルグレン家の監視下からの脱出を試みた。彼は周囲の隙を突き、謀反のための動きを開始した。この動きは、王国全体に新たな不穏な影を落とすこととなった。
教え子たちとの関係深化
夏季休暇を通じ、アレンと教え子たちとの絆は一層深まった。ティナは子供らしい未熟さを見せながらも、成長の兆しを見せた。リディヤは実家でも自然に馴染み、アレンとの間に確固たる信頼関係を築いた。ステラは今回は控えめな役回りにとどまったが、その存在感は依然として健在であった。
戦闘と物語の緊張感
物語中盤では、戦闘描写も挿入されたが、一部は分かりづらさも残した。それでも全体としては、日常の温かさと裏腹に、刻一刻と高まる緊張感が描かれ、読者に先の展開を期待させる構成となった。
物語の展望
夏の一時の安寧の中に潜む不穏な空気は、今後の物語に新たな波乱を予感させた。リディヤの正妻としての存在感は際立っており、今後の展開においても彼女の活躍が期待される状況であった。
同シリーズ




その他フィクション

Share this content:
コメントを残す