物語の概要
■ 作品概要
本作は、貧乏貴族の八男から男爵へと成り上がった元日本人商社マン・ヴェンデリンの活躍を描く異世界転生ファンタジーの第3巻である。 15歳になり成人を迎えたヴェンデリンと仲間たちは、パーティ「ドラゴンバスターズ」を結成し、本格的に冒険者としての活動を開始する。しかし、彼らに最初に与えられたのは、過去に一流の冒険者たちが全滅した危険な古代地下遺跡への探索という、王国からの強制依頼であった。強制転移の罠によって最下層へ飛ばされた「逆さ縛り殺し」と呼ばれる遺跡の中で、無数のゴーレム軍団や強大なドラゴンゴーレムとの死闘が幕を開ける。魔法と限界ギリギリの魔力消耗戦の果てに、仲間との絆を武器に活路を開く姿が描かれる。
■ 主要キャラクター
- ヴェンデリン・フォン・ベンノ・バウマイスター:本作の主人公。15歳になり男爵として独立する。アームストロング導師との2年半に及ぶ地獄の特訓で魔法戦闘能力を飛躍的に高め、規格外の魔力で巨大なドラゴンゴーレムに立ち向かう。
- エリーゼ・カタリーナ・フォン・ホーエンハイム:ヴェンデリンの婚約者。卓越した治癒魔法の使い手であり、地下遺跡の死闘では最上級治癒魔法「奇跡の光」を用いてヴェンデリンの危機を救う。
- エルヴィン・フォン・アルニム:ヴェンデリンの親友でありバウマイスター男爵家の従士長。ワーレンの元で剣の腕を磨き、前衛としてゴーレム軍団と渡り合う。
- イーナ・ズザネ・ヒレンブラント:パーティの前衛を務める赤髪の槍使い。遺跡探索でも冷静な判断と槍さばきで仲間を助け、強敵の動力源を断つ活躍を見せる。
- ルイーゼ・ヨランデ・アウレリア・オーフェルヴェーク:魔闘流の使い手。ヴェンデリンと共に過酷な特訓を乗り越え、驚異的な身体能力と魔力、そして自己治癒魔法「瞑想」を身につけた。
- ブランターク・リングスタット:元一流冒険者。新米パーティの指南役として強制同行させられ、豊富な知識と支援魔法でヴェンデリンたちを導く。
- アームストロング導師:王宮筆頭魔導師。ヴェンデリンとルイーゼに過酷な魔法格闘術を叩き込んだ規格外の筋肉魔法使い。
- ローデリヒ:独自の「槍術大車輪」を使う青年。複雑な血筋で仕官に苦労していたが、優れた実務能力と武術の腕を見込まれ、バウマイスター男爵家の家令となる。
■ 物語の特徴
本作の魅力は、単なるダンジョン探索にとどまらず、大金と名声を得たがゆえに巻き込まれる貴族社会の「しがらみ」がリアルに描かれている点である。王都で屋敷を探す際には胡散臭い不動産屋にいわくつきの瑕疵物件を押し付けられて除霊作業に追われ、エリーゼを狙う王族の縁者・ヘルター公爵からは魔物をけしかけられる理不尽な決闘を申し込まれるなど、主人公が政治的・社会的な厄介事に翻弄される姿が読者の興味を引く。 また、後半の地下遺跡探索では、これまでの順調な展開から一転し、全滅の危機に瀕する絶望的な消耗戦が繰り広げられる。古代魔法文明の遺産である魔導飛行船や巨大魔晶石といった国家機密レベルの戦利品を発見し、白金貨二万枚という莫大な報酬を得る代わりに王国との政治的駆け引きが発生するなど、冒険と内政・政治要素が巧みに絡み合う点が他の作品と差別化される大きな特徴となっている。
読んだラノベのタイトル
八男って、それはないでしょう! 3
著者:Y.A 氏
イラスト:藤ちょこ 氏
出版社:KADOKAWA(MFブックス)
発売日:2014年10月24日
ISBN:9784040671338
(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。
あらすじ・内容
「祝成人」で始まる本格冒険者稼業!
八男って、それはないでしょう! 3
身分に相応しい家を買わされ、武芸大会への強制参加、そして筋肉導師との二年半におよぶ修行……。
元少年ヴェンデリンは十五歳となり、成人した。仲間も一律成人し、本格的な冒険の日々がいよいよ幕を開ける!
だが、そんな新米冒険者パーティに与えられた初仕事は、一流冒険者パーティですら未だ帰還できていない遺跡への、強制依頼というとんでもないものであった。
規格外の敵に、洒落にならないトラップ、魔力が枯渇しそうなほどの窮地。はたして無事に攻略できるのか!?
名声と大金と美人の婚約者、そして新たに男爵となった人生の勝ち組ヴェンデリンだが、彼の物語と受難はなおも続く!
感想
本巻では、十二歳だったヴェンデリンが十五歳へと成長し、ついに正式な冒険者として活動を始める。
第1巻では、貧乏騎士爵家の八男として生き残るために魔法を学んだ。
第2巻では、二匹の竜を倒したことで男爵となり、王国や教会、貴族社会の思惑へ深く巻き込まれていった。
そして第3巻では、王都で積み重ねてきた修行を終え、ようやく本人が望んでいた冒険者生活が始まる。
ところが、初仕事として与えられたのは、ベテラン冒険者が何人も消息を絶った古代地下遺跡の探索だった。
新人として地道に狩猟や採集から始める余裕などない。
強いからという理由で、最初から国家規模の危険な依頼へ送り込まれてしまう。
ヴェンデリンは二匹の竜を倒せるほど強い。
しかし、その強さが本人を守るどころか、より危険な場所へ押し出している。
本巻でも、能力が高い人間ほど仕事を任され、断れなくなっていく世知辛さが強く描かれていた。
王都で男爵らしい屋敷を持つことになる
王都での生活が始まってから約一年。
ヴェンデリンは、エル、イーナ、ルイーゼ、エリーゼと共に暮らしながら、それぞれの修行を続けていた。
ヴェンデリンとルイーゼは、アームストロング導師から魔法格闘術を学ぶ。
さらにヴェンデリンは、ブランタークから通常の魔法についても教えを受けている。
エルは近衛騎士ワーレンから剣術を学び、イーナも高名な騎士から槍の指導を受けていた。
エリーゼは屋敷で料理や家事をこなし、婚約者としてヴェンデリンの生活を支えている。
修行ばかりではなく、買い物や食事、デートを楽しむ時間もある。
過酷な幼少期を送ったヴェンデリンが、仲間や婚約者と十三歳らしい生活を送っている様子には、少し安心した。
ところが、男爵が長期間借家に住み続けるのは相応しくないと指摘され、王都に屋敷を持つことになる。
単に家を買うだけの話に見える。
しかし、貴族社会ではそう簡単ではない。
上級貴族街に新しい屋敷を建てる土地はなく、中古の物件を探さなければならない。
立派すぎる屋敷を買えば、成り上がり者だと陰口を叩かれる。
安い屋敷には、政治的な思惑や縁談が付いてくる可能性がある。
家を一軒購入するだけでも、人間関係と面子を考えなければならない。
この面倒さが、いかにも本作らしい。
胡散臭い不動産屋と悪霊付き物件
エリーゼの祖父であるホーエンハイム枢機卿から紹介されたのが、リネンハイムという不動産屋だった。
派手な服装。
金縁眼鏡。
いかにも怪しい話し方。
ヴェンデリンだけでなく、仲間たちまで第一印象で胡散臭いと感じている。
しかも最初に案内されたのは、前当主の悪霊と大量の浮遊霊が住み着いた屋敷だった。
普通の不動産屋なら、購入希望者へ紹介するような物件ではない。
リネンハイムの狙いは、ヴェンデリンとエリーゼに悪霊を浄化させ、売れなかった屋敷を高額物件へ戻すことだった。
エリーゼは、経験のないヴェンデリンへ危険な浄化をさせようとする大人たちに本気で怒る。
普段は穏やかな彼女が、ヴェンデリンを守るために強く反対する姿が印象的だった。
ヴェンデリンの周囲には、彼の力を利用しようとする人物が多い。
国王も貴族も教会も、悪意だけで動いているわけではない。
それでも、強いのだからできるだろうと、次々に役割を押しつけてくる。
そんな中で、危険だからやめるべきだと本気で怒ってくれるエリーゼの存在は貴重である。
結局、二人は協力して浄化を行う。
エリーゼは悪霊を穏やかな光で天へ送り出す。
一方のヴェンデリンは、魔力が強すぎるため、悪霊を強制的に消滅させてしまう。
同じ浄化魔法なのに、聖女らしいエリーゼと、力技で押し切るヴェンデリンの違いが面白かった。
複数の瑕疵物件を浄化した結果、ヴェンデリンは男爵に相応しい屋敷を手に入れる。
ただし、その屋敷にも主人を八つ裂きにしたメイドの霊が残っていた。
最後まで油断できないオチには笑ってしまった。
エリーゼを巡る決闘騒ぎ
新しい屋敷での生活が始まると、今度はヘルター公爵が現れる。
彼はエリーゼを自分の二十五番目の妻にしようと考え、ヴェンデリンへ決闘を申し込む。
前国王の弟であり、公爵という高い身分を持っている。
しかし、莫大な借金を抱えながら二十四人の妻と多数の愛人を養い、王族や貴族の間でも問題人物として扱われていた。
エリーゼは以前から公爵に付きまとわれていた。
ホーエンハイム枢機卿や国王が拒絶しても、公爵は諦めない。
自分の身分なら、子爵家の孫娘を好きにできると考えている。
相手の意思をまったく考えていない点が不快だった。
ヴェンデリンは決闘を受けることになる。
自分のために無理をしなくてもよいと心配するエリーゼに対し、彼は婚約者を守ると告げる。
政治的に決められた婚約から始まった二人だが、王都で共に暮らすうちに、確かな信頼関係が生まれている。
ヴェンデリンがエリーゼを自分の婚約者として守ろうとする姿には、彼の成長を感じた。
公爵が用意した代理人は鎧を着た飛竜
決闘は、三万人を収容できる王立コロシアムで開催される。
観客を集め、賭けまで行われる大イベントになっていた。
ところが、公爵が用意した代理人は人間ではない。
ミスリルで加工された鎧を身につけた飛竜だった。
決闘の代理人は人間でなければならないとは規則に書かれていない。
その穴を突いたつもりなのだろう。
しかし飛竜は、人間の命令を聞くような生き物ではない。
ヴェンデリンへ襲いかかった飛竜は、魔法障壁に弾き飛ばされる。
すると今度は、近くにいたヘルター公爵たちを狙い始める。
公爵たちは、自分たちが用意した飛竜に食い殺されそうになる。
ヴェンデリンは敵である彼らまで魔法障壁で守り、鎧で覆われていない飛竜の目を正確に狙って倒す。
圧倒的な魔力で吹き飛ばすだけではない。
観客や公爵たちを守り、証拠となる飛竜の死体も確保する。
アームストロング導師との修行を通じて、戦闘中の判断力も大きく成長していたことが分かる。
公爵側は決闘を利用し、エリーゼやヴェンデリンの財産を奪おうとしていた。
さらにイーナとルイーゼまで取引材料にしようとしていた。
その結果、ヘルター公爵家と協力者の貴族家は断絶となり、当主たちは修道院へ送られる。
権力を持つ相手であっても、好き勝手が永遠に許されるわけではない。
後味の悪い騒動ではあったが、最後には相応の処分が下されたことで安心した。
兄たちが中央貴族へ取り込まれていく
本巻では、ヴェンデリンの兄たちの結婚も描かれる。
五男のエーリッヒは、すでにルックナー財務卿の派閥につながるブラント家へ婿入りしている。
三男のパウルは、エドガー軍務卿の派閥に属する貴族との婚姻が決まる。
四男のヘルムートも、王都にあるバウマイスター家の一人娘へ婿入りすることになる。
家督を継げない貴族の次男以下にとって、貴族家の娘と結婚し、婿養子になることは簡単ではない。
家柄だけでなく、人脈や上位貴族の推薦が必要になる。
パウルやヘルムートが好条件の縁談を得られたのは、ヴェンデリンが竜殺しの英雄となり、中央の有力者から注目された影響が大きい。
弟の活躍によって、家を出た兄たちの人生まで変わっていく。
一見すると、兄たちは幸運を得たように見える。
しかし同時に、中央政府の重鎮たちがヴェンデリンの兄弟を自分の派閥へ取り込み、彼との縁を作ろうとしているようにも見える。
エーリッヒはルックナー財務卿。
パウルとヘルムートはエドガー軍務卿。
ヴェンデリン本人はブライヒレーダー辺境伯の寄子であり、婚約者を通じて教会とも結ばれている。
血縁者が複数の派閥へ配置され、結果としてヴェンデリンを中心とした人脈が形成されていく。
本人が望んで作ったものではない。
それでも周囲から見れば、無視できない新興勢力に見えるだろう。
ヴェンデリンは冒険者になりたいだけなのに、気がつけば中央政治のしがらみに囲まれている。
その状況には同情してしまった。
王都のバウマイスター家との関係
ヘルムートの婿入り先となったのは、王都にあるバウマイスター騎士爵家だった。
ヴェンデリンたちの実家を開拓した初代は、この王都バウマイスター家の次男である。
王都側は、開拓に必要な資金や人材を支援した。
ところが領地が軌道に乗ると、辺境の本家側から連絡を絶ってしまった。
援助を受けるだけ受け、恩返しをしなかったことになる。
王都側には、その仕打ちが代々伝えられていた。
実家はエーリッヒの結婚祝いも出さなかった。
王都の親族への借りも返していない。
外部との関係を軽視し、自分たちの領地に引き籠もっている。
本巻でも、バウマイスター本家の閉鎖性が少しずつ問題として積み上がっている。
ただ、王都側はいつまでも恨み続けているわけではない。
ヘルムートを婿として迎え、ヴェンデリンたちとの関係を結び直す。
過去の問題を抱えながらも、現在を生きる人同士で新しい関係を築こうとしている点に救いを感じた。
一方で、ヴェンデリンを中心に、エーリッヒのブラント家、ヘルムートの王都バウマイスター家、将来独立する可能性のあるパウルが一門を形成し始める。
本来の本家が孤立し、分家であるはずのヴェンデリンが一族の中心になる。
後の争いを予感させる構図だった。
魔法禁止の武芸大会では一回戦敗退
ヴェンデリンは、王国主催の武芸大会へ出場することになる。
貴族家の当主は剣術部門へ参加するのが慣例だった。
しかし大会では、魔法や魔力による身体強化を使えない。
ヴェンデリンは強大な魔法使いだが、純粋な剣術にはほとんど自信がない。
結果は、予選一回戦でワーレンと対戦し、開始直後に敗北する。
二匹の竜を倒した英雄が、魔法を禁止されると一回戦で負ける。
この結果には思わず笑ってしまった。
ただし、ヴェンデリン本人は剣の専門家ではない。
魔法を使えない条件で近衛騎士のワーレンに勝てるはずもない。
何でもできる主人公ではなく、得意不得意が明確なのは好感を持てる。
一方、エルは六回戦まで勝ち進む。
イーナも槍術部門で六回戦へ進出する。
ルイーゼは魔力を使えない状態でも、純粋な格闘技術で四回戦まで進んだ。
王都で続けてきた修行の成果が、それぞれの成績に表れている。
ヴェンデリンだけが一回戦敗退だったが、仲間たちの成長を確認する場としては意味のある大会だった。
槍術大車輪ローデリヒとの出会い
武芸大会では、後にヴェンデリンの家令となるローデリヒと出会う。
ローデリヒは、槍術部門でイーナを破った実力者である。
独特な槍術を使うだけでなく、帳簿、決算、税務、法律にも詳しい。
戦えるうえに、貴族家の実務まで担当できる。
新しい男爵家を運営するヴェンデリンにとって、非常にありがたい人材である。
しかしローデリヒは、ルックナー会計監査長と商人の娘の間に生まれた私生児だった。
貴族籍がなく、父親からも認められていない。
母方の商会でも後継争いの邪魔になるとして扱われ、能力があるのに居場所を得られずにいた。
ヴェンデリンは、彼を王都屋敷の管理人として迎える。
本人に貴族社会の常識が足りないため、それを補える実務家が必要だった。
ローデリヒにとっても、自分の能力を正当に使える場所ができる。
家族や身分の問題で居場所を失っていた者同士が、新しい関係を作っていく。
その点では、ヴェンデリンの男爵家が、実家とは違う家になり始めていると感じた。
十五歳まで続いたアームストロング導師の修行
物語は、ヴェンデリンたちが十五歳になるまで進む。
アームストロング導師との修行は、二年半も続いていた。
ヴェンデリンは身体能力強化、高速飛翔、魔導機動甲冑を身につける。
ルイーゼも同じ技術を習得し、傷を癒やす独自の魔法まで開発していた。
二人は修行の最後に、アームストロング導師へ二対一の模擬戦を挑む。
ヴェンデリンが遠距離から大量の魔力弾を撃ち続け、導師の魔力を消耗させる。
動きが鈍ったところへルイーゼが接近し、渾身の蹴りで魔導機動甲冑を破壊する。
二人がかりとはいえ、あのアームストロング導師を地面へ叩き落とす。
第2巻では、導師に振り回されるだけだった二人が、ついに一撃を与えられるまで成長した。
過酷すぎる修行ではあったが、その成果は確かだった。
導師も二人を認め、合格を告げる。
ヴェンデリンとルイーゼが、ようやく地獄の特訓から解放されたと喜ぶ姿には共感した。
ただ、導師は再戦を望んでいる。
完全に逃げ切れたわけではなさそうなのが、本作らしいオチだった。
ついに正式な冒険者となる
十五歳になると、ヴェンデリンたちは王都の冒険者ギルドで正式に登録を行う。
ヴェンデリン。
エルヴィン。
イーナ。
ルイーゼ。
エリーゼ。
五人で結成したパーティー名は「ドラゴンバスターズ」である。
すでにヴェンデリンが二匹の竜を倒しているため、名前としては間違っていない。
ただし、冒険者としては全員が新人である。
個々の戦闘能力は高い。
王都で一流の指導者から修行も受けた。
それでも、五人でパーティーを組んで実戦へ出た経験はほとんどない。
本来なら、狩猟や採集などの仕事を重ねながら連携を磨くべきだろう。
ところが登録直後、王国から古代地下遺跡の探索を命じられる。
ベテラン冒険者が帰ってこなかった危険な場所である。
二匹の竜を倒した実績があるから大丈夫だと判断され、強制的に選ばれてしまった。
ヴェンデリンが危険ならすぐに撤退すると考えている点には安心した。
自分の強さを過信していない。
仲間を守るためには、逃げることも必要だと理解している。
指南役として同行するブランタークも、その判断を支持する。
しかし、実際の遺跡は逃げることすら許さない場所だった。
ドラゴンゴーレムとの遭遇
一行が向かったのは、パルケニア草原で発見された地下遺跡である。
先に探索したベテラン冒険者二十五人は、一人も戻っていない。
内部へ入ると、しばらくは罠も魔物も見つからない。
一本道の先にある大広間には、金属製の竜の像が置かれていた。
その正体は、古代魔法文明が作ったドラゴンゴーレムである。
ミスリルとオリハルコンによる装甲。
強烈なブレス。
巨大な魔晶石による豊富な魔力。
ヴェンデリンたちの攻撃は、ほとんど通用しない。
そこで正面から倒すのではなく、魔力が尽きるまで防御を続ける。
ヴェンデリンとブランタークが交代で魔法障壁を張り、半日かけて攻撃に耐える。
圧倒的な敵に対し、力比べではなく停止するまで待つ。
冷静な判断ではあるが、攻撃を防ぎ続けるだけでも莫大な魔力が必要になる。
初仕事とは思えない過酷さだった。
ようやく停止したドラゴンゴーレムを越えた先で、さらに転移の罠が発動する。
ヴェンデリンの探知魔法でも見つけられなかった魔法陣によって、全員が未知の場所へ送られてしまう。
ここから、本当の死闘が始まる。
恐ろしい名前の「逆さ縛り殺し」
転移した先は、地下の最下層だった。
地上へ戻るには、階段を上りながら十層近い迷宮を突破しなければならない。
後に「逆さ縛り殺し」と呼ばれる、侵入者を最下層へ送り込み、上へ向かわせながら消耗させる罠である。
瞬間移動を使おうにも、現在地を正確に把握できないため脱出できない。
進むしかない。
最初の階層から、大量の兵士型ゴーレムと騎馬騎士型ゴーレムが襲ってくる。
人間と違って恐怖を感じない。
疲れない。
降伏もしない。
破壊されるまで攻撃を続ける。
しかも、倒したゴーレムは回収され、修理されて再び戦場へ戻ってくる。
いくらヴェンデリンたちが強くても、終わりの見えない消耗戦では不利になる。
エル、イーナ、ルイーゼが前衛を担当する。
ヴェンデリンとブランタークは、魔法で敵の数と進路を制限する。
エリーゼは治療、食事、水の準備、眠っている仲間の護衛を受け持つ。
全員が役割を果たさなければ生き残れない。
エリーゼは直接敵を倒す役目ではない。
しかし、彼女が倒れれば負傷者を治せず、全滅へつながる。
後方支援の重要性がよく分かる戦いだった。
何日も続く終わりの見えない戦闘
一行は、睡眠魔法や疲労軽減を使いながら交代で休む。
三時間ほど眠る。
起きたら再び戦う。
ゴーレムを倒す。
階段を上る。
また大量のゴーレムが現れる。
この繰り返しが何日も続く。
食料や水は魔法で確保できる。
装備も強い。
治癒魔法もある。
それでも人間である以上、体力と精神には限界がある。
敵は修理され、補充される。
こちらは少しずつ疲労し、魔力を失っていく。
強いから簡単に突破できるのではない。
圧倒的な物量によって追い詰められていく。
読んでいて、いつ誰が倒れてもおかしくない緊張感があった。
ヴェンデリンたちは、それまで竜を倒すような大きな戦いを経験している。
しかし、短時間で決着する竜退治と、何日も続く消耗戦はまったく違う。
冒険者として初めての依頼で、強さだけでは解決できない戦いを経験することになる。
最上階で待つ二体目のドラゴンゴーレム
五日目、ようやく最上階へ到達する。
しかし、そこには一体目よりも強力なドラゴンゴーレムが待っていた。
さらに、下の階層からは修理された兵士型ゴーレムが押し寄せてくる。
前にはドラゴンゴーレム。
後ろには大量の兵士型ゴーレム。
逃げ道はない。
イーナが外部から魔力を送るケーブルを投槍で切断する。
それでも内部の巨大魔晶石によって、ドラゴンゴーレムは動き続ける。
持久戦を続ければ、先に人間側が力尽きる。
ヴェンデリンは、ドラゴンゴーレムの無属性ブレスを、同じ無属性魔法で押し返すことを決意する。
幼い頃、アルフレッドから教わった方法だった。
これまで実際に使えなかった魔法を、死の直前で再現しようとする。
ブランタークが魔法障壁を担当する。
ヴェンデリンは残る魔力をすべて無属性魔法へ注ぎ込む。
それでも、ドラゴンゴーレムのブレスを押し返し切れない。
ブランタークは自分の全魔力をヴェンデリンへ渡し、意識を失う。
師匠の師匠であり、長く指導してきたブランタークが、自分の命まで預ける。
それでも力は足りない。
ヴェンデリンは、自分だけが残って仲間を逃がす覚悟を決める。
この場面からは、これまで守られる側だった少年が、仲間を守るために命を差し出そうとするほど成長したことが伝わってきた。
エリーゼの「奇跡の光」
ヴェンデリンが死を覚悟した時、エリーゼが動く。
自分はヴェンデリンの妻になる。
ここで死なせるわけにはいかない。
そう訴え、彼へ口づけをする。
そして最上級の治癒魔法「奇跡の光」を使う。
奇跡の光は、傷を癒やすだけではない。
婚約指輪に蓄えられていた魔力と魔法の副次的な効果によって、ヴェンデリンの魔力まで回復させる。
エリーゼ自身は、残った魔力をすべて使い果たして意識を失う。
彼女は戦闘の中心にいる人物ではない。
しかし最後に全員を救ったのは、エリーゼの魔法だった。
第3巻では、エリーゼが聖女と呼ばれる理由が何度も描かれる。
悪霊を優しく浄化する。
屋敷を切り盛りする。
負傷者を癒やす。
仲間の食事を作る。
そして最後には、自分のすべてを使ってヴェンデリンを立ち上がらせる。
彼女は守られるだけの婚約者ではない。
パーティーの命を支える、欠かせない仲間だった。
すべてを使い切って勝利する
魔力を取り戻したヴェンデリンは、意識を失ったエリーゼを背負ったまま、無属性魔法を放ち続ける。
ドラゴンゴーレムのブレスを押し返す。
口の中まで押し込み、二つの魔力を内部で衝突させる。
最後には頭部が爆発し、ドラゴンゴーレムは停止する。
同時に、下から押し寄せていた兵士型ゴーレムも動きを止める。
遺跡全体を制御する人工人格が、ドラゴンゴーレムの頭部に入っていたからである。
勝利した直後、ヴェンデリンも力尽きる。
ブランタークもエリーゼも意識を失っている。
生き残ったエル、イーナ、ルイーゼが三人を安全な場所へ運ぶ。
誰か一人の力で勝ったのではない。
前衛が敵を止めた。
イーナが魔力ケーブルを切った。
ブランタークが魔力を渡した。
エリーゼがヴェンデリンを回復させた。
ヴェンデリンが最後の一撃を放った。
全員の力がつながったからこそ、死線を越えられた。
本巻で最も胸が熱くなる場面だった。
最奥に残されていた古代文明の遺産
死闘を終えた一行が遺跡を調査すると、そこは古代魔法文明の天才魔道具職人、イシュルバーク伯爵の工房だったことが分かる。
大量の研究資料。
保存された魔道具。
無人工房。
多数の兵士型、騎馬騎士型ゴーレム。
二体のドラゴンゴーレム。
巨大魔晶石。
魔力を回収する装置。
さらに、七隻の魔導飛行船と、それを建造・整備するための巨大な施設まで残されていた。
冒険者としての初仕事で発見する規模ではない。
一つの国家の軍事力や技術力を変えるほどの遺産である。
本来なら、発見した冒険者に所有権がある。
しかし、軍事利用できる魔導飛行船やゴーレムを、個人で自由に扱えるはずがない。
結局、王国が買い取ることになる。
危険な遺跡を命懸けで攻略した。
宝も見つけた。
しかし価値が高すぎるため、持ち帰って自由に使うことはできない。
冒険者稼業の世知辛さを感じる展開だった。
それでも王国は、単純に没収するわけではない。
正当な報酬を支払う方向で調整する。
国王も、自分の判断で若者たちを危険にさらしたことを認め、謝罪する。
権力者だから失敗を認めないのではなく、責任を取ろうとする姿勢には好感を持てた。
一人あたり白金貨二万枚という報酬
発見された遺産の価値は、王国が一度に支払えないほど大きかった。
最終的に、ドラゴンバスターズの五人には、一人あたり白金貨二万枚が支払われることになる。
金額が大きすぎるため、二十年間の分割払いである。
冒険者として初めての仕事で、一生どころか何代も遊んで暮らせそうな財産を得てしまった。
ヴェンデリンは、すでに竜退治で莫大な資産を持っている。
そこへ、さらに白金貨二万枚が加わる。
エル、イーナ、ルイーゼ、エリーゼも同額を受け取る。
もう金銭のために冒険者を続ける必要はない。
それでも、命を失いかけた代償だと思えば、単純に羨ましいとは感じにくい。
しかも、あまりに大きな財産は新しい争いや誘惑を招く。
ブランタークが、金によって身を持ち崩さないよう忠告するのも当然だろう。
一番気の毒なのはブランターク
地下遺跡では、ブランタークも他のメンバーと同じように命を懸けて戦った。
ドラゴンゴーレムの攻撃を防ぐ。
戦闘の指示を出す。
経験の浅い若者たちを支える。
最後には、自分の全魔力をヴェンデリンへ渡して意識を失う。
彼がいなければ、全滅していた可能性が高い。
ところがブランタークは、正式なパーティーメンバーではない。
新人冒険者を指導する指南役として同行しただけである。
そのため、遺跡から得た報酬の分配には加われない。
冒険者ギルドの規定により、受け取れるのは一日千セントの日当だけだった。
一週間近く死にそうな目に遭い、報酬はわずか七千セント。
あまりにも割に合わない。
国王やルックナー財務卿から、別の形で補償は受けている。
それでも規定上、遺跡の莫大な報酬へ加われないという事実には同情してしまった。
規則は必要である。
しかし、現場の働きと規則がまったく釣り合わないこともある。
元現場仕事をしていた立場から見ると、責任と危険だけが重く、報酬の算定から外されるブランタークの悲哀は妙に現実的だった。
冒険者ギルドの責任
今回の依頼では、冒険者ギルドの判断にも問題があった。
先に探索したベテラン冒険者たちは全滅している。
それにもかかわらず、新人パーティーへ十分な支援を付けず、危険な遺跡へ送り込もうとしていた。
ブランタークが指南役として同行したからこそ、生き残ることができた。
国王も、ヴェンデリンたちの強さを過大評価していたと認める。
竜を倒せるから、どのような遺跡でも攻略できる。
三人も魔法使いがいるから大丈夫。
その見積もりが甘かった。
強い人間へ難しい仕事を押しつけ、問題が起きてから責任の所在を探す。
組織でありがちな構図に見えた。
ヴェンデリンが王国と冒険者ギルドへ怒りを抱くのも当然である。
本人たちは、本当に死ぬところだった。
ただの経験不足では済まない。
国王やアームストロング導師が反論せず、判断ミスを認めている点は救いだった。
冒険者ギルドの幹部たちも、その後一斉に退職する。
表向きは健康上の理由だが、実質的な責任問題だろう。
命を懸ける現場と、依頼を出す側の距離が遠すぎれば、こうした失敗が起こる。
本巻では、冒険の爽快感だけでなく、組織の責任まで描かれていた。
ヴェンデリン死亡の噂を利用する人物
ヴェンデリンたちが地下遺跡から戻らない間、宮廷では彼が死亡した可能性を利用しようとする人物も現れる。
ルックナー会計監査長である。
彼は兄であるルックナー財務卿を憎んでおり、その関係者であるヴェンデリンにも敵意を向けている。
ヴェンデリンが死んだという噂を辺境のバウマイスター本家へ流し、家督を継いだ長男クルトの子どもを、男爵家の後継者へ押し込もうと画策する。
しかし、ヴェンデリンはすでに遺言状を作成していた。
第一順位はエーリッヒ兄さんの長男。
次にパウルやヘルムートの子どもが続く。
本家のクルトやその子どもには、継承権を与えていない。
法的には、会計監査長が何を言っても意味はない。
それでも彼の狙いは、正当な継承ではない。
クルトをその気にさせ、ヴェンデリンや王都にいる兄弟たちとの争いを起こすことである。
権利がなくても、自分には権利があると思わせれば火種になる。
ヴェンデリンが生還しても、疑いや欲望は残る。
その悪意のある種まきが、今後のバウマイスター本家へどう影響するのか不安になった。
実家との対立が避けられなくなっていく
第1巻から、実家のバウマイスター家には不穏な要素が積み重なっている。
ヴェンデリンの才能を隠し、家督争いを避けるために放置した。
エーリッヒの結婚祝いを出さなかった。
王都バウマイスター家から受けた援助を返さず、連絡を絶った。
家を出た兄たちが中央で人脈を作っても、関係を結び直そうとしない。
一方、ヴェンデリンを中心とする王都の兄弟たちは、有力貴族とつながり、新しい一門を形成している。
本家は辺境で孤立する。
分家は中央で力を持つ。
この差は、今後さらに広がっていくだろう。
ヴェンデリン本人は、実家の領地を奪いたいわけではない。
クルトを追い落としたいとも思っていない。
ただ距離を取り、自分の人生を生きたいだけである。
しかし外部の人間が、両者を争わせようとしている。
力や地位を持つほど、本人の意思とは関係なく争いの中心へ置かれる。
この先、実家との関係を完全に無視することは難しそうだ。
念願の冒険者生活は最初から過酷だった
『八男って、それはないでしょう! 3』では、ヴェンデリンがついに冒険者となる。
幼い頃から望んでいた自立の道である。
しかし、その第一歩は楽しい冒険ではなかった。
強制依頼。
ベテラン冒険者が全滅した遺跡。
無敵に近いドラゴンゴーレム。
脱出できない逆さ縛り殺し。
何日も続くゴーレムとの消耗戦。
仲間の魔力と体力が尽きていく恐怖。
全員が命を懸けなければ突破できない最終戦。
新人冒険者の仕事としては、あまりにも重すぎる。
それでも、王都で積み重ねた修行は無駄ではなかった。
エルの剣。
イーナの槍。
ルイーゼの格闘術。
エリーゼの治癒魔法。
ブランタークの経験。
ヴェンデリンの魔法。
それぞれの力が一つにつながり、全員で生還する。
単純な無双ではない。
強い仲間たちが、自分の役割を果たし、限界を越えて助け合う。
その過程に強く引き込まれた。
強さだけでは冒険者として生き残れない
本巻を読んで感じたのは、冒険者に必要なのは強さだけではないということである。
敵を倒す力。
罠を警戒する経験。
食料と水を確保する能力。
治療。
交代で休むための判断。
仲間を信頼すること。
危険な時には撤退する覚悟。
どれか一つが欠けても、生還できなかった。
ヴェンデリンは圧倒的な魔力量を持っている。
それでも、一人ではドラゴンゴーレムを倒せない。
ブランタークの魔力。
エリーゼの奇跡の光。
前衛の三人が稼いだ時間。
すべてが必要だった。
強い主人公が仲間を守るだけではない。
主人公も仲間に守られている。
その関係が、本巻の大きな魅力だと感じた。
冒険者としての初仕事は、あまりにも過酷だった。
その代わり、ヴェンデリンたちは自分たちが本当にパーティーとして戦えることを証明した。
莫大な報酬以上に、全員で生還できたことが最大の成果だったのではないだろうか。
次巻への不穏な火種も残る
古代地下遺跡を攻略し、莫大な報酬を得たことで、第3巻は大きな成功に終わったように見える。
しかし、問題は何も解決していない。
ヴェンデリンを利用しようとする中央貴族。
実家を唆そうとするルックナー会計監査長。
孤立を続けるバウマイスター本家。
新しく形成される王都の一門。
王国から期待される古代技術の活用。
一人あたり白金貨二万枚という莫大な財産。
成功したからこそ、新しい争いが起こる可能性が高まっている。
ヴェンデリンは、ただ冒険者として働きたい。
しかし、彼の発見や行動は、国家の軍事力や貴族社会の勢力図まで変えてしまう。
普通の冒険者として生きるには、力も立場も大きくなりすぎている。
強大な魔法を持ちながら、権力や制度、人間関係に振り回される。
その受難は、本巻でも健在だった。
ついに始まった冒険者生活が、今後どこへつながっていくのか。
そして、辺境のバウマイスター本家へまかれた火種が、どのような形で燃え上がるのか。
次巻の展開がますます気になる第3巻だった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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考察・解説
不動産屋と瑕疵物件
王都での瑕疵物件浄化と不動産屋との駆け引きの全貌
『八男って、それはないでしょう!』などの物語作品における「ヴェンデリンによる王都での瑕疵物件の浄化と背景」について、胡散臭い不動産屋オーガス・リネンハイム、厄介な瑕疵物件の数々、ヴェンデリンとエリーゼによる浄化、背後にあるホーエンハイム枢機卿の思惑、および報酬の屋敷と最強の瑕疵物件の各点から解説する。
胡散臭い不動産屋オーガス・リネンハイム
王都で男爵として独立し、上級貴族街で中古の屋敷を購入するため、エリーゼを通じてホーエンハイム枢機卿から紹介されたのがリネンハイム不動産のオーナーであるオーガス・リネンハイムであった。
・赤いラメ入りスーツに銀の蝶ネクタイ、特注の金縁眼鏡という前世の詐欺師のような非常に胡散臭い身なりをしていた。
・表の高級物件だけでなく、裏の瑕疵物件の売買でも王都有数の実績を持つ不動産業者であった。
厄介な瑕疵物件の数々
リネンハイムはヴェンデリンたちを、通常の教会では匙を投げるような厄介な瑕疵物件ばかりに案内した。
・悪霊が占拠する伯爵邸:家臣に惨殺された前当主のレイスが周囲の悪霊を従えて占拠しており、過去に教会の浄化が失敗したことでさらに凶暴化していた物件である。
・血痕が消えない侯爵邸:愛妾に惨殺された侯爵の書斎に、何度掃除しても生々しい血しぶきの跡が現れる不気味な屋敷である。
・未婚霊の伯爵邸:生涯独身であった伯爵の妹の霊が居座り、浄化に来た男性を興奮して追い回す物件である。
ヴェンデリンとエリーゼによる浄化
リネンハイムは言葉巧みに無料で浄化させようと目論んでいたが、ヴェンデリンは四軒の瑕疵物件を浄化する見返りとして、男爵に相応しい屋敷を無料で提供させる交渉を取りまとめた。
・エリーゼの聖障壁とエリア浄化による悪霊を優しく昇天させる浄化を行った。
・ヴェンデリンの圧倒的な魔力による強力な浄化を組み合わせた。
・彼らは見事に瑕疵物件を普通の物件へと戻した。
背後にあるホーエンハイム枢機卿の思惑
実はこの一連の出来事は、ホーエンハイム枢機卿の政治的な配慮によるものであった。
・新参者のヴェンデリンが有り余る財力でいきなり上級貴族街の屋敷を購入すれば、成り上がりとして周囲の貴族たちから反発を買う恐れがあった。
・誰も手を出せなかった性質の悪い瑕疵物件を浄化させることで周囲に恩を売った。
・悪評をあえて胡散臭いリネンハイムへ向かわせるという、枢機卿の強かな思惑が隠されていた。
報酬の屋敷と最強の瑕疵物件
ヴェンデリンは報酬としてブライヒレーダー辺境伯の王都屋敷の隣にある立派な屋敷を貰い受けた。
・そこにも生きたまま八つ裂きにすると笑顔で脅してくるメイドの霊が憑いており、自ら追加で浄化する羽目になった。
・その後、リネンハイムがお詫びとして持ってきた血塗れ王弟屋敷まで浄化させられた。
・拷問と虐殺を好んだ大量殺人者の屋敷で、数百の悪霊が飛び交う災厄クラスの物件であった。
・ヴェンデリンは不動産屋と貴族の思惑に振り回され続けることとなった。
まとめ
王都での瑕疵物件浄化を巡る一連の全貌は、胡散臭い不動産屋との接触から始まり、異常な瑕疵物件の数々、圧倒的な聖属性魔法と魔力による浄化、背後に隠された枢機卿の政治的配慮、そしてさらなる災厄級物件の処理に至るまで、その歩みを明瞭に示している。周囲の反発や怪異という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、圧倒的な実力と貴族社会での世渡りの記録である。業者との交渉から、除霊の遂行、恩義の獲得、政治的摩擦の回避、そして新たな課題の克服へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
聖魔法による浄化
聖魔法による浄化のメカニズムと展開の全貌
『八男って、それはないでしょう!』などの物語作品における「聖魔法による浄化のメカニズムと作中での展開」について、聖魔法の性質と希少性、語り死人アルフレッドの浄化、アンデッド古代竜の浄化、および瑕疵物件のエリア浄化と術者による違いの各点から解説する。
聖魔法の性質と希少性
聖魔法は水系統の魔法に近い性質を持ち、人間の生命力を自身の魔力で複製して発動する。
・生命力そのものをぶつけるため、アンデッド系の魔物に対して絶大な浄化効果を発揮する。
・修行を積んだ聖職者が微弱な魔力を帯びさせて扱うことが多いが、大規模な戦術や戦略クラスの聖魔法を発動できる魔法使いは極めて希少である。
語り死人アルフレッドの浄化
ヴェンデリンの魔法の師匠であるアルフレッドは、魔の森で命を落とした後、未練から語り死人というアンデッドになっていた。
・彼が理性を失いゾンビ化する前に、ヴェンデリンは卒業試験として青白い聖の光線を放ち彼を成仏させた。
・生前高位の魔法使いであったアルフレッドは強い対魔能力を持っていたため、ヴェンデリンの全力の浄化魔法を心地よい温かさとして受け入れ、光となって天へ昇っていった。
アンデッド古代竜の浄化
王都へ向かう魔導飛行船が、骨だけになったアンデッド古代竜に襲撃された際にも聖魔法が使用された。
・ヴェンデリンは空中で飛翔と魔法障壁を展開しながら、高濃度の聖光の魔法を古代竜に浴びせ続けた。
・古代竜は激しく抵抗したものの、やがて完全に浄化されて活動を停止した。
・美しい光沢を取り戻した骨格一式と巨大な魔石を残して崩れ落ちた。
瑕疵物件のエリア浄化と術者による違い
王都で男爵邸を探すことになったヴェンデリンは、悪霊やレイスが占拠する複数の瑕疵物件を浄化することとなった。
・婚約者であるエリーゼから、指定範囲を光で包むエリア浄化と、実体を持たない魔力の塊である悪霊の攻撃を防ぐ聖障壁を学んだ。
・エリーゼが放つエリア浄化は、不浄の魔物であっても元は人間であるという考えのもと、悪霊たちを心地よく天へ送る優しさに満ちたものであった。
・桁外れの魔力を持つヴェンデリンが同じ魔法を使用すると、威力が強すぎるため、悪霊たちは業火で焼かれるようにもがき苦しみながら強制的に消滅させられてしまう。
・過去の聖魔法使いを幾人も撃退し強力な対魔能力を身につけていた伯爵の妹の未婚霊だけは、アルフレッドの時と同様に、ヴェンデリンの強力な浄化を心地よさそうに受け入れて成仏した。
・同じ聖魔法による浄化であっても、術者の魔力量や対象の対魔能力によって、浄化される側の反応が大きく異なるのが特徴である。
まとめ
聖魔法による浄化とその展開を巡る一連の全貌は、生命力を複製する魔法の性質から始まり、師匠アルフレッドの感動的な昇天、アンデッド古代竜の空中浄化、そして術者の魔力差や対象の特性によって現れる浄化反応の違いに至るまで、その歩みを明瞭に示している。アンデッドの恐怖や悪霊の怨念という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確活たる意志によって完璧に確立するに至る、圧倒的な魔法の威力と救済の記録である。性質の把握から、恩師の成仏、天災の討滅、術式の応用、そして効果の差異の解明へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
決闘と公爵家断絶
決闘と公爵家断絶の経緯と結末の全貌
『八男って、それはないでしょう!3』における「決闘と公爵家断絶」について、決闘の背景と申し込み、王立コロシアムでの決闘、および公爵家の断絶と結末の各点から解説する。
決闘の背景と申し込み
主人公ヴェンデリンは、エリーゼとの婚約後、前国王の末弟であるヘルター公爵から決闘を申し込まれた。
・浪費家で借金まみれのヘルター公爵は、すでに24人の妻と多数の愛人を抱えていたが、エリーゼを25番目の妻に迎えるために以前からホーエンハイム枢機卿に執拗に迫っていた。
・公爵とその知恵袋であるバルシュミーデ男爵たちは、決闘でヴェンデリンを倒してエリーゼを奪うだけでなく、敗北の代償として大金や他の婚約者であるイーナとルイーゼまで奪い取って公爵家の借金返済に充てようと目論んでいた。
・決闘の申し込みである白手袋の投擲をヴェンデリンは2回ともかわしており、正式には決闘は成立していなかったが、今後の面倒を終わらせるため、アームストロング導師とブランタークの助言に従って受けて立つこととした。
王立コロシアムでの決闘
決闘は王立コロシアムで開催され、観客たちの間では大々的な賭けが行われていた。
・ヘルター公爵たちは自ら戦わず、代理人は人でなければならないとは定められていない決闘ルールの盲点を突いた。
・対魔法用のミスリルコーティング特注鎧を着せた中型竜である飛竜を代理人として檻から解き放った。
・人間が飛竜を飼い慣らし制御することなど不可能であり、飛竜はまずヴェンデリンに突進したが魔法障壁で弾き飛ばされ、今度は近くにいたヘルター公爵たちへ襲いかかった。
・ヴェンデリンは公爵たちを魔法障壁で保護しつつ、飛竜の鎧に覆われていない両目から脳へ土槍を突き刺して見事に討ち取った。
・制御不能な魔物を決闘の場に持ち込み、決闘を汚した犯罪行為により、公爵と取り巻きたちはコロシアムの警備兵に拘束された。
公爵家の断絶と結末
この前代未聞の不祥事に対し、国王は厳しい裁定を下した。
・ヘルター公爵家は断絶となり、公爵自身は地方の修道院へ幽閉、妻たちは実家に戻され、子供たちは貴族籍を剥奪された。
・共犯のバルシュミーデ男爵ら3名も同様の処分を受け、飛竜の捕獲や鎧の製作に協力した他の寄子たちにも多額の罰金が科された。
・ヘルター公爵家は元々年金で利息だけを支払う自転車操業の借金まみれであったが、超一流冒険者を雇っての飛竜の生け捕り費用、特注ミスリル鎧の費用、そして賭けの胴元としての支払いが致命傷となり財政が完全に破綻した。
・その後、ルックナー財務卿が債権者たちと交渉して債権放棄を取りまとめることで事態は収束し、迷惑のタネであった公爵家が消滅したことは公共の利益になったと評価された。
まとめ
決闘と公爵家断絶を巡る一連の全貌は、公爵らの野心による不正な決闘の申し込みから始まり、ルール破りの飛竜投入とヴェンデリンによる完全な制圧、そして前代未聞の不祥事に対する公爵家の断絶裁定に至るまで、その顛末を明瞭に示している。権力者の理不尽な要求や横暴という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、悪行の断罪と破滅の記録である。画策の発生から、違法な決闘、危機の即座の排除、厳罰の下向、そして利権の破綻へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
親族の婚姻と人脈
親族の婚姻と人脈構築の全貌
『八男って、それはないでしょう!』の世界における「親族の婚姻と人脈構築の実情」について、貴族社会における婚姻の基本と過酷な現実、地方零細貴族の現状、兄弟たちの王都における人脈構築、ヴェンデリンの婚約を巡る権力闘争の各点から解説する。
貴族社会における婚姻の基本と過酷な現実
この世界では、婚姻は親同士が決める政略結婚が基本であり、物語の中にあるような恋愛結婚は稀であるとされている。
・結婚相手は家格が釣り合うかどうかが重要視され、下級貴族や陪臣の次男・次女以下となると同格の家に嫁ぐことすら難しい。
・行き遅れた大物貴族の娘が下級貴族に押し付けられるケースや、逆に持参金目当てで商人へ降嫁させられるケースなど、世知辛い現実が蔓延している。
地方零細貴族の現状
バウマイスター本家のような辺境の小領主の場合、中央政界との人脈作りよりも、まずは家門と領地の維持が最優先される。
・長男クルトの結婚:マインバッハ家の次女アマーリエと結婚するが、過去の魔の森遠征の失敗による財政難や、弟たちを独立させるための資金作りの影響で26歳まで結婚が延期されていた。
・次男ヘルマンの婿入り:長男の予備としての役割を終えたヘルマンは、過去の出兵で跡取りを失った分家の孫娘のもとへ婿入りし、一族の家を存続させる役目を担う。
・祝儀の踏み倒しと孤立:王都の法衣貴族へ婿入りした五男エーリッヒの結婚披露宴に際し、本家は資金がないとして祝儀を弟たちに立て替えさせるという非常識な行動をとる。
・寄親であるブライヒレーダー辺境伯の顔をも潰す行為であったが、本家は中央との人脈作りに価値を見出さず意図的に孤立の道を選んでいた節があった。
兄弟たちの王都における人脈構築
実家を出て王都へ向かった兄弟たちは、それぞれの実力と婚姻を通じて中央の有力な人脈に組み込まれていく。
・エーリッヒと財務閥:下級官吏となった五男エーリッヒは、上司であるルートガー・ブラントに見込まれ一人娘ミリヤムの婿として迎えられる。
・ブラント家は代々財務関係の役職に就いており、寄親はモンジェラ子爵、さらに上にはルックナー財務卿が存在する。
・地方の小領主が中央に陳情を通すためには、こうした中央の法衣貴族との親戚付き合いによるコネが不可欠視されている。
・パウル・ヘルムートと軍務閥:王都警備隊に勤める三男パウルと四男ヘルムートも、ヴェンデリンが英雄となった影響からエドガー軍務卿の目に留まる。
・軍務卿の仲介により、ヘルムートはかつて本家と絶縁状態にあった王都バウマイスター家の一人娘フリーデと見合いを行い婿入りすることが決まり、パウルも同様に軍務卿の後ろ盾で独立した騎士爵家へ婿入りする予定となる。
ヴェンデリンの婚約を巡る権力闘争
古代竜を討伐し、莫大な富と準男爵の地位を得たヴェンデリンの存在は、中央や地方の貴族にとって是が非でも取り込みたい極上の人脈となる。
・殺到する縁談と仕官希望:出世を果たしたヴェンデリンのもとには、家臣志望者のみならず、娘や姉妹を正妻、側室、妾として押し込もうとする貴族や商人が殺到する。
・ホーエンハイム枢機卿の策謀:教会有力者のホーエンハイム枢機卿は、国王の承認を事前に得た上で、孫娘でありホーエンハイム家の聖女と呼ばれるエリーゼをヴェンデリンの婚約者に据える。
・エリーゼは王宮筆頭魔導師アームストロング導師の姪でもあり、ヴェンデリンはこの婚姻によって教会と王国最強の魔法使いという強力な後ろ盾を同時に得る形となった。
・出し抜かれた辺境伯の長期計画:本来であれば寄親であるブライヒレーダー辺境伯がヴェンデリンの正妻を一族から用意すべきであったが、年齢の合う女性がいなかったため枢機卿に先を越されてしまう。
・辺境伯はこれを教訓とし、将来ヴェンデリンに生まれる跡継ぎと一族の娘を婚姻させるという、数十年先を見据えた長期的な人脈構築へと方針を転換する。
・ヘルター公爵の決闘騒ぎ:エリーゼを自らの25番目の妻にしようと執着していた前国王の弟ヘルター公爵は、借金返済の思惑も絡めてヴェンデリンに決闘を申し込む。
・飛竜を用いた反則まがいの決闘に敗れ、公爵家は断絶へと追い込まれた。
まとめ
親族の婚姻と人脈構築を巡る一連の全貌は、貴族社会の厳格な婚姻規範から始まり、地方零細貴族の存続戦略、王都へ進出した兄弟たちによる財務や軍務の派閥形成、そしてヴェンデリンを巡る教会や辺境伯らの熾烈な権力闘争に至るまで、その実態を明瞭に示している。封建的な制約や打算的な思惑という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、家門の発展と生存戦略の記録である。過酷な婚姻の現実から、人脈の獲得、派閥への組み込み、権力闘争の勝ち抜き、そして新たな一門の形成へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
王国主催武芸大会
王国主催武芸大会の全貌と主要キャラクターの成績
『八男って、それはないでしょう!』において描かれる王国主催武芸大会について、大会の概要とルール、大会に参加する人々の目的、および主要キャラクターの成績の各点から解説する。
大会の概要とルール
王国主催武芸大会は、王都で3年に1度開催される大規模な武術の祭典である。
・大会は剣術、槍術、弓術、素手か手甲による格闘術の4つの部門に分かれている。
・最大の特徴は魔法や魔力の使用が一切禁止されている点である。
・純粋な技量と経験を競うための大会であり、判定員が魔力量を測定し、常人の平均を超える魔力の使用が確認された場合は失格となる。
・参加者は万を超えるため、予選は王都各地の道場や演習場で行われ、本選に出場できるのはわずか128名のみである。
・予選を突破して本選に進むには、最低でも7回勝ち抜く必要があり、本選は王立コロシアムで2日間かけて行われる。
大会に参加する人々の目的
大会は単なるスポーツの祭典ではなく、貴族社会の義務や就職活動、国家の資金集めなど、様々な思惑が絡み合う場である。
・貴族の義務:貴族家の当主や跡継ぎは叙任時の宣誓の慣習により、必ず剣術部門に出場する義務がある。一度出場して1回戦で負けるだけの記念出場で終わる貴族も少なくない。
・浪人や冒険者の就職活動:在野の浪人や冒険者にとっては、大会で好成績を残すことで貴族から護衛や私兵としてスカウトされるチャンスとなる。余所者が貴族家に仕官するための青田買いの場として機能している。
・王国主催の巨大なギャンブル:大会では王国が胴元となって盛大な賭けが行われており、観客たちは熱狂的に試合の勝敗に金を賭ける。この賭けの収益は慈善活動の資金に充てられている。
主要キャラクターの成績
大会に出場したヴェンデリンと仲間たちの成績は以下の通りである。
・ヴェンデリン(剣術部門):バウマイスター男爵家の新当主として剣術部門に強制参加となったが、魔法を封じられた状態では剣の才能のなさを埋められなかった。1回戦で近衛騎士団中隊長にして剣術の達人であるワーレンと当たり、開始数秒であっけなく敗退した。
・エルヴィン(剣術部門):ワーレンの指導を受けた成果を発揮し、予選6回戦まで順当に勝ち進んだが、6回戦で師匠であるワーレンに当たり敗退した。本選出場は逃したものの、従士長としての実力を示すには十分な成績であった。
・イーナ(槍術部門):槍術部門で予選6回戦まで進出したが、本選出場を目前にしてローデリヒに敗北した。この敗北がきっかけで、ローデリヒという多才な人物を後に王都屋敷の管理人として確保することに繋がった。
・ルイーゼ(格闘技部門):魔闘流の使い手である彼女にとって魔力使用禁止は大きな不利であったが、スピードと相手の力を利用する技で予選4回戦まで突破した。5回戦で同流派のベテランに敗れたが、13歳で初出場という条件を考えれば、貴族からスカウトの声がかかるほど高く評価される成績であった。
まとめ
王国主催武芸大会とその成績を巡る一連の全貌は、魔法禁止という厳格なルールの下で開催される武術の祭典から始まり、貴族の義務や仕官の好機といった参加者の多様な背景、そしてヴェンデリンたちの挑戦と結果に至るまで、その歩みを明瞭に示している。魔法の有無や身分の制約という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、技量の発露と新たな出会いの記録である。競技の開始から、予選の激闘、敗北と成長、優秀な人材の獲得、そして自己の立場の証明へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
古代地下遺跡の攻略
古代地下遺跡攻略と絶体絶命の死闘の全貌
『八男って、それはないでしょう!』における「主人公ヴェンデリンたちドラゴンバスターズの古代地下遺跡攻略と死闘」について、強制依頼と地下への突入、ドラゴンゴーレムとの遭遇と逆さ縛り殺し、ゴーレム軍団との過酷な消耗戦、二体目のドラゴンゴーレムと奇跡の光、および生還と莫大な戦利品の各点から解説する。
強制依頼と地下への突入
15歳になり冒険者登録を済ませた直後、ヴェンデリンたちと指南役のブランタークは、パルケニア草原にある古代魔法文明時代の遺跡探索を王国から強制的に依頼された。
・直前に調査へ向かった2組のベテラン合同パーティ計25名が誰一人として生還できなかった危険な場所であった。
・王国は、すでに2匹の竜を倒しているヴェンデリンたちの実力を見込んで、この過酷な任務を命じた。
ドラゴンゴーレムとの遭遇と逆さ縛り殺し
地下の広大な空間で彼らを待ち受けていたのは、ミスリルとオリハルコンの複合装甲を持ち、強烈なブレスを放つドラゴンゴーレムであった。
・正面からの攻撃を避け、ヴェンデリンとブランタークが交代で魔法障壁を展開してブレスを防ぎ続け、半日かけて魔力切れによる活動停止へと追い込んだ。
・奥の扉へ進んだ直後、探知不可能な魔力吸収型の強制移転魔法陣にかかり、遺跡の最下層へ飛ばされた。
・現在地の座標が不明なため瞬間移動での脱出もできず、自力で階層を上って地上を目指さなければならない逆さ縛り殺しと呼ばれる悪辣な大規模トラップであった。
ゴーレム軍団との過酷な消耗戦
上の階層へ向かう彼らの行く手を阻んだのは、ミスリルが混ざった鋼の装甲を持つ兵士型や騎馬騎士型のゴーレムの大軍であった。
・エルヴィン、イーナ、ルイーゼが前衛で各個撃破し、ヴェンデリンとブランタークが風の魔法障壁で敵の侵入数を制限し、エリーゼが後方から治癒や疲労軽減魔法で支える陣形をとった。
・ゴーレムは恐怖を感じないだけでなく、破壊されても無人工房で修理や再配備される仕組みを持っていた。
・ゴーレムの人工人格が組み込まれた頭部を完全に破壊し、残骸を魔法の袋へ回収しながら進むことを余儀なくされた。
・魔法と薬でドーピングし、1日にわずか3時間の仮眠しか取れない過酷な消耗戦を何日も続けながら、9つの階層を突破した。
二体目のドラゴンゴーレムと奇跡の光
5日目、最上階のフロアで彼らを待ち受けていたのは、外部ケーブルから魔力供給を受けてさらに威力の高いブレスを放つ二体目のドラゴンゴーレムであった。
・イーナの投槍でケーブルの切断には成功したものの、本体に内蔵された巨大魔晶石によりブレスは止まらなかった。
・下階から修復されたゴーレム軍団が押し寄せ、完全に挟み撃ちの絶体絶命の危機に陥った。
・ヴェンデリンは自らの魔力と魔晶石を用いて、無属性の魔法でドラゴンゴーレムの無属性ブレスを正面から押し返すという危険な賭けに出た。
・魔力が尽きかけ、ブランタークが全魔力を譲渡して気絶してもなお押し返せず、ヴェンデリンが死を覚悟した瞬間、背後のエリーゼが彼に口づけをして最上級治癒魔法奇跡の光を発動させた。
・この魔法の副次効果と、事前に彼女へ贈っていた魔晶石の指輪の力で魔力を回復させたヴェンデリンは、最後の一撃を放った。
・押し返された無属性魔法はドラゴンゴーレムの口腔内で炸裂して頭部を粉砕し、全ゴーレムが完全に活動を停止した。
生還と莫大な戦利品
激闘の末に遺跡を制圧した彼らは、奥の居住区画で古代の天才魔道具職人イシュルバーク伯爵の研究資料や無人工房を発見した。
・7隻の魔導飛行船が保管された巨大な建造および整備ドックも見つけ出した。
・これらの発見物は軍事や技術的に極めて重要な国家機密級の遺産であったため、王国がすべて買い取ることとなった。
・ドラゴンバスターズの5人には、一人あたり白金貨2万枚の20年分割払いという、一生使い切れないほどの莫大な報酬が与えられることとなった。
まとめ
古代地下遺跡攻略と絶体絶命の死闘を巡る一連の全貌は、王国からの強制依頼と悪辣な罠による最下層への転移から始まり、無限に再配備されるゴーレム軍団との過酷な消耗戦、絆と秘術で乗り越えたドラゴンゴーレムとの極限の戦闘、そして国家級遺産の発見と規格外の報酬獲得に至るまで、その歩みを明瞭に示している。死の罠や底知れぬ恐怖という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、生存への執念と偉業の記録である。強制招集の発生から、トラップの起動、持久戦の制覇、奇跡の一撃、そして莫大な富の獲得へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
登場キャラクター
ドラゴンバスターズ(バウマイスター男爵家)
ヴェンデリン・フォン・ベンノ・バウマイスター
15歳になり、冒険者としての活動を開始する。エリーゼと婚約している。アームストロング導師から過酷な魔法戦闘の特訓を受けた。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター男爵家・当主。冒険者パーティ「ドラゴンバスターズ」リーダー。
・物語内での具体的な行動や成果
王都で複数の瑕疵物件を浄化した。決闘でヘルター公爵の用意した飛竜を討伐した。地下遺跡でドラゴンゴーレムを破壊し、生還を果たした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
遺跡探索の成果により、王国から白金貨二万枚の報酬を得た。
エルヴィン・フォン・アルニム
ヴェンデリンの親友である。ワーレンから剣の指導を受けて実力を伸ばした。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター男爵家・従士長。ドラゴンバスターズ・前衛。
・物語内での具体的な行動や成果
武芸大会の予選六回戦まで進出した。地下遺跡で大量の兵士型ゴーレムを剣で破壊し続けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
通常の騎士団から勧誘を受けるほどの実力を身につけた。
イーナ・ズザネ・ヒレンブラント
ヴェンデリンのパーティメンバーである。近衛騎士団の槍術の達人から指導を受けた。
・所属組織、地位や役職
ドラゴンバスターズ・前衛。
・物語内での具体的な行動や成果
武芸大会の予選六回戦まで進出した。地下遺跡でドラゴンゴーレムの魔力供給ケーブルを投槍で切断した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
遺跡探索の成果により、白金貨二万枚の報酬を得た。
ルイーゼ・ヨランデ・アウレリア・オーフェルヴェーク
ヴェンデリンのパーティメンバーである。小柄な体格で魔闘流を扱う。
・所属組織、地位や役職
ドラゴンバスターズ・前衛。
・物語内での具体的な行動や成果
武芸大会の予選五回戦まで進出した。地下遺跡で一体目のドラゴンゴーレムの停止スイッチを発見した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
自らの傷を癒やす独自魔法の瞑想を習得した。
エリーゼ・カタリーナ・フォン・ホーエンハイム
ホーエンハイム枢機卿の孫娘である。ヴェンデリンの婚約者として行動を共にする。
・所属組織、地位や役職
ドラゴンバスターズ・後方支援。
・物語内での具体的な行動や成果
ヴェンデリンにエリア浄化と聖障壁を指導した。地下遺跡で奇跡の光を用いてヴェンデリンの魔力を回復させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ヴェンデリンの屋敷に居候し、家事全般を担っている。
ローデリヒ
ルックナー会計監査長の私生児である。槍術大車輪という独自の技を扱う。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター男爵家・家令。
・物語内での具体的な行動や成果
武芸大会でイーナに勝利した。王都屋敷の管理人として採用され、ルックナー会計監査長への牽制として噂を流した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
面接を二百七回受けてようやく仕官を果たした。
ドミニク
ホーエンハイム家のメイド長の娘である。エリーゼの年上の幼馴染にあたる。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター男爵家・メイド。
・物語内での具体的な行動や成果
屋敷に戻ったヴェンデリンたちにマテ茶を淹れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
使用人たち
バウマイスター男爵家で働く者たちである。ホーエンハイム家のツテで集められた。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター男爵家・使用人。
・物語内での具体的な行動や成果
ローデリヒの指示に従い、屋敷の維持や遺言状の管理を行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
バウマイスター本家
クルト
バウマイスター本家の長男である。平凡な人物とされる。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター本家・長男(次期当主)。
・物語内での具体的な行動や成果
弟たちの結婚式に祝儀を出さなかった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ルックナー会計監査長の謀略の標的とされている。
ヘルマン
バウマイスター本家の次男である。兄弟の中で一番剣に優れていた。
・所属組織、地位や役職
従士長家・婿。
・物語内での具体的な行動や成果
領内の警備で領民を率いている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
パウル
バウマイスター本家の三男である。実家を出て王都で働いている。
・所属組織、地位や役職
王都警備隊・隊員。
・物語内での具体的な行動や成果
結婚の予定が決まった。武芸大会の剣術部門で予選三回戦まで進出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
エドガー軍務卿の後ろ盾で独立した騎士爵家を得る予定である。
ヘルムート・フォン・ベンノ・バウマイスター
バウマイスター本家の四男である。エドガー軍務卿の仲介で見合いを行う。
・所属組織、地位や役職
王都警備隊・隊員。
・物語内での具体的な行動や成果
王都バウマイスター家のフリーデと見合いをした。武芸大会の剣術部門で一回戦を突破した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
森林警護の世襲職を持つ家へ婿入りする予定である。
長男の子供たち
クルトの息子たちである。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター本家。
・物語内での具体的な行動や成果
文書内に具体的な行動の記載はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ヴェンデリンの遺言状において、継承権は指定されていない。
パウルの婚約者
エドガー軍務卿の紹介でパウルと結婚する予定の女性である。
・所属組織、地位や役職
パウルの婚約者。
・物語内での具体的な行動や成果
エーリッヒの招待による夕食会に参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
パウルの部下たち
パウルの指揮下にある王都警備隊の隊員である。
・所属組織、地位や役職
王都警備隊。
・物語内での具体的な行動や成果
非番の日にパウルたちと森で狩りを行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ヘルムートの部下たち
ヘルムートの指揮下にある王都警備隊の隊員である。
・所属組織、地位や役職
王都警備隊。
・物語内での具体的な行動や成果
非番の日にヘルムートたちと森で狩りを行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ブラント家
エーリッヒ
バウマイスター家の五男である。ブラント家を継ぐ予定である。
・所属組織、地位や役職
ブラント家・次期当主。下級官吏。
・物語内での具体的な行動や成果
兄弟たちを夕食会に招待した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
自身の長男がヴェンデリンの遺言状で継承権第一位に指定された。
イェルン
エーリッヒの長男である。数ヶ月前に生まれたばかりである。
・所属組織、地位や役職
ブラント家・長男。
・物語内での具体的な行動や成果
文書内に具体的な行動の記載はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ヴェンデリンの遺言状で、バウマイスター男爵家の継承順位第一位に指定されている。
ルートガー
ブラント家の当主である。エーリッヒの上司にあたる。
・所属組織、地位や役職
ブラント家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
ヴェンデリンに男爵として屋敷を購入するよう勧めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
王都バウマイスター家
ヴィレム・ハンス・フォン・バウマイスター
王都バウマイスター家の当主である。バウマイスター本家の先祖が援助した相手の子孫である。
・所属組織、地位や役職
王都バウマイスター家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
ヘルムートと娘の見合いを執り行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
エドガー軍務卿の派閥に属している。
コリンナ
ヴィレムの妻である。
・所属組織、地位や役職
王都バウマイスター家・当主の妻。
・物語内での具体的な行動や成果
玄関でヘルムートたちを出迎えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
フリーデ
ヴィレムとコリンナの一人娘である。
・所属組織、地位や役職
王都バウマイスター家・令嬢。
・物語内での具体的な行動や成果
ヘルムートと見合いをし、デートに出かけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
メイド
王都バウマイスター家で働く使用人である。
・所属組織、地位や役職
王都バウマイスター家・メイド。
・物語内での具体的な行動や成果
ヴェンデリンたちに高級な森林マテ茶を淹れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ブライヒレーダー辺境伯家
ブライヒレーダー辺境伯
王国南部の有力貴族である。ヴェンデリンの寄親である。
・所属組織、地位や役職
ブライヒレーダー辺境伯家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
ヴェンデリンの兄たちの祝儀や返済金を立て替えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ブランターク・リングスタット
元一流の冒険者である。ブライヒレーダー辺境伯のお抱え魔法使いである。
・所属組織、地位や役職
ブライヒレーダー辺境伯家・お抱え魔法使い。ドラゴンバスターズ・指南役。
・物語内での具体的な行動や成果
ヴェンデリンたちの指南役として地下遺跡探索に同行した。ドラゴンゴーレムとの戦いでヴェンデリンに全魔力を渡して気絶した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
王宮と国王から追加の報酬を与えられた。
ホーエンハイム子爵家
ホーエンハイム枢機卿
聖教会の有力者である。エリーゼの祖父である。
・所属組織、地位や役職
ホーエンハイム子爵家・当主。聖教会・枢機卿。
・物語内での具体的な行動や成果
ヴェンデリンにリネンハイム不動産を紹介した。秘密会議に出席し、ギルド幹部たちに対して無言の圧力をかけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
メイド長
ホーエンハイム子爵家で働くメイドの長である。
・所属組織、地位や役職
ホーエンハイム子爵家・メイド長。
・物語内での具体的な行動や成果
自身の娘であるドミニクをヴェンデリンの屋敷に紹介した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ヘルター公爵家
ロマーヌス・アルベルト・フォン・ヘルター
前国王の弟である。多数の妻や愛人を抱え、多額の借金を持つ。
・所属組織、地位や役職
ヘルター公爵家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
エリーゼを妻にするため、ヴェンデリンに決闘を申し込んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
決闘での不祥事により爵位を剥奪され、地方の修道院へ送られた。
ディートハルト・フォン・バルシュミーデ
ヘルター公爵の知恵袋とされる人物である。
・所属組織、地位や役職
バルシュミーデ男爵家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
決闘において、飛竜を使った策を講じた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
爵位を取り上げられ、修道院へ送られた。
エンデルス
ヘルター公爵の寄子である騎士である。
・所属組織、地位や役職
ヘルター公爵家・寄子。
・物語内での具体的な行動や成果
決闘の場に同席した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
処罰の対象となり、爵位を剥奪された。
ヘプケン
ヘルター公爵の寄子である騎士である。
・所属組織、地位や役職
ヘルター公爵家・寄子。
・物語内での具体的な行動や成果
決闘の場に同席した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
処罰の対象となり、爵位を剥奪された。
公爵の妻たち
ヘルター公爵の二十四人の妻である。
・所属組織、地位や役職
ヘルター公爵家・妻。
・物語内での具体的な行動や成果
文書内に具体的な行動の記載はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
公爵家の断絶に伴い、実家へ戻された。
公爵の愛人たち
ヘルター公爵の愛人である。
・所属組織、地位や役職
ヘルター公爵家・愛人。
・物語内での具体的な行動や成果
文書内に具体的な行動の記載はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
妻の三倍ほどの数がいるとされる。
公爵の子供たち
ヘルター公爵の子供たちである。
・所属組織、地位や役職
ヘルター公爵家・子供。
・物語内での具体的な行動や成果
文書内に具体的な行動の記載はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
貴族籍を剥奪された。
ヘルムート王国・王国政府関係者
国王
ヘルムート王国の統治者である。
・所属組織、地位や役職
ヘルムート王国・国王。
・物語内での具体的な行動や成果
ヴェンデリンたちに地下遺跡探索を命じた。ヘルター公爵家を断絶させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ヴェンデリンに謝罪し、遺跡の発見物をすべて買い取ることを決定した。
エドガー軍務卿
王国の軍務卿である。パウルとヘルムートの寄親である。
・所属組織、地位や役職
軍務卿。法衣侯爵。
・物語内での具体的な行動や成果
ヘルムートに王都バウマイスター家への婿入りを紹介した。ヴェンデリンに武芸大会への出場を命じた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
エドガー軍務卿の家臣
エドガー軍務卿に仕える者である。
・所属組織、地位や役職
エドガー軍務卿・家臣。
・物語内での具体的な行動や成果
ヘルムートの見合いに同席し、案内を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ルックナー財務卿
王国の財務卿である。エーリッヒの寄親である。
・所属組織、地位や役職
財務卿。侯爵。
・物語内での具体的な行動や成果
秘密会議に出席し、ギルドの上納金辞退を取り決めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地下遺跡の買い取り査定を担当した。
ルックナー会計監査長
ルックナー財務卿の弟であり、ローデリヒの実父である。
・所属組織、地位や役職
会計監査長。男爵。
・物語内での具体的な行動や成果
ヴェンデリンが死亡したという噂を流し、バウマイスター本家長男を唆そうとした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ローデリヒの流した逆の噂により、行動を制限された。
クリムト・クリストフ・フォン・アームストロング
王宮筆頭魔導師である。エリーゼの伯父である。
・所属組織、地位や役職
王宮筆頭魔導師。
・物語内での具体的な行動や成果
ヴェンデリンとルイーゼに二年半にわたる魔法格闘の特訓を課した。秘密会議に同席した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ワーレン
近衛騎士団の中隊長である。エルヴィンの剣の師匠である。
・所属組織、地位や役職
近衛騎士団・中隊長。
・物語内での具体的な行動や成果
武芸大会の予選一回戦でヴェンデリンに勝利し、六回戦でエルヴィンに勝利した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
近衛騎士団の槍術の達人
近衛騎士団に所属する槍使いである。
・所属組織、地位や役職
近衛騎士団。
・物語内での具体的な行動や成果
イーナに槍術と実戦の指導を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ダウム男爵
エドガー軍務卿の実家の寄子である。
・所属組織、地位や役職
法衣男爵。
・物語内での具体的な行動や成果
王都バウマイスター家の当主から婿養子の斡旋を依頼された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
兵士たち
王国の兵士である。
・所属組織、地位や役職
王国軍・兵士。
・物語内での具体的な行動や成果
パルケニア草原の地下遺跡の入口を警備していた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
コロシアムの警備兵
王立コロシアムの警備を担当する兵士である。
・所属組織、地位や役職
コロシアム・警備兵。
・物語内での具体的な行動や成果
アームストロングの命令でヘルター公爵たちを捕らえた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
冒険者ギルド
ウェルナー
冒険者ギルドのトップである。小心な性格とされる。
・所属組織、地位や役職
冒険者ギルド・総帥。
・物語内での具体的な行動や成果
秘密会議に出席し、地下遺跡の報酬に対する上納金を辞退した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
秘密会議の一週間後、健康状態を理由に退職した。
副総帥
冒険者ギルドの副総帥である。
・所属組織、地位や役職
冒険者ギルド・副総帥。
・物語内での具体的な行動や成果
秘密会議でホーエンハイム枢機卿に寄付金の増額を申し出た。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
秘密会議の一週間後、退職した。
最高幹部たち
冒険者ギルドの運営を担う元冒険者たちである。
・所属組織、地位や役職
冒険者ギルド・最高幹部。
・物語内での具体的な行動や成果
ブランタークを冒険者ギルドから追い出そうとしていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
秘密会議の一週間後、一斉に退職した。
受付の若い金髪のお姉さん
冒険者ギルド本部で受付を担当する女性である。
・所属組織、地位や役職
冒険者ギルド本部・受付。
・物語内での具体的な行動や成果
ヴェンデリンたちの冒険者登録手続きを行った。地下遺跡の報酬額を伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
行方不明の冒険者たち
地下遺跡の探索に向かった二組の合同パーティのメンバーたちである。
・所属組織、地位や役職
冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
ドラゴンゴーレムのブレスによって全滅した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
爆炎のキンブリー
現役の有名冒険者である。
・所属組織、地位や役職
冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
決闘の代理人は受けないだろうとブランタークに推測された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ブリザードのリサ
現役の有名冒険者である。
・所属組織、地位や役職
冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
ヘルター公爵が出せる依頼金では雇えないだろうとブランタークに推測された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
その他・街の人々
オーガス・リネンハイム
リネンハイム不動産のオーナーである。派手な格好をした人物である。
・所属組織、地位や役職
リネンハイム不動産・オーナー。
・物語内での具体的な行動や成果
ヴェンデリンに瑕疵物件の浄化を依頼し、代わりに男爵邸を提供した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
浄化された物件を売却し、大きな利益を得た。
アルテリオ
王都で商会を営む人物である。
・所属組織、地位や役職
商会・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
休暇中のブランタークと飲み屋に通っていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アルフレッド
ヴェンデリンの魔法の師匠である。故人である。
・所属組織、地位や役職
元ブライヒレーダー辺境伯お抱え魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
過去にヴェンデリンへ無属性魔法の対処法を指導していた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
防具屋の主人
ヴェンデリンのローブのサイズ調整を行った人物である。
・所属組織、地位や役職
防具屋・店主。
・物語内での具体的な行動や成果
ローブの端切れをもらう代わりに、調整代金を無料にして金板を五枚渡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
紙切れを販売する男性
王立コロシアムで決闘の賭けを仕切っていた人物である。
・所属組織、地位や役職
賭けの元締め関係者。
・物語内での具体的な行動や成果
観客に賭けの紙切れを販売していた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
観客たち
王立コロシアムや武芸大会に集まった人々である。
・所属組織、地位や役職
観客。
・物語内での具体的な行動や成果
決闘の行方に賭けを行い、ヴェンデリンの勝利に拍手を送った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
地下遺跡・瑕疵物件(過去の人物・霊・魔物など)
イシュルバーク伯爵
古代魔法文明時代における魔道具作りの第一人者である。
・所属組織、地位や役職
古代魔法文明時代の伯爵。
・物語内での具体的な行動や成果
地下に巨大な遺跡や魔導飛行船専用ドックを建設した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
残された研究資料は現代の技術を進歩させる可能性がある。
伯爵のレイス
家臣に惨殺された前伯爵の霊である。
・所属組織、地位や役職
伯爵・悪霊の親玉。
・物語内での具体的な行動や成果
屋敷の購入希望者を脅して追い払っていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
エリーゼのエリア浄化によって成仏した。
悪霊たち
各瑕疵物件に取り憑いていた霊体である。
・所属組織、地位や役職
悪霊。
・物語内での具体的な行動や成果
屋敷の購入者を脅したり妨害したりしていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ヴェンデリンやエリーゼの浄化魔法によって消滅または成仏した。
八つ裂きメイドの霊
リネンハイムから提供された屋敷に取り憑いていた霊である。
・所属組織、地位や役職
屋敷のメイドの悪霊。
・物語内での具体的な行動や成果
生きたまま八つ裂きにすると笑顔で脅してきた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
エリーゼの説得と浄化により成仏した。
伯爵の妹の未婚霊
生涯独身だったため屋敷に居残った霊である。
・所属組織、地位や役職
伯爵の妹の悪霊。
・物語内での具体的な行動や成果
地下遺跡探索前にエルヴィンを追い回した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ヴェンデリンの浄化魔法によって成仏した。
王弟の屋敷の悪霊たち
大量殺人を犯した王弟の屋敷に澱んでいた犠牲者たちの霊である。
・所属組織、地位や役職
悪霊。
・物語内での具体的な行動や成果
教会も匙を投げるほどの災厄クラスの瑕疵物件となっていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ヴェンデリンとエリーゼの協力によって浄化された。
ドラゴンゴーレム
古代魔法文明が地下遺跡の防衛用に造った人工生命体である。
・所属組織、地位や役職
地下遺跡・防衛兵器。
・物語内での具体的な行動や成果
強力なブレスを放ち、侵入者である冒険者たちを焼き尽くした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ヴェンデリンの無属性魔法によって頭部を破壊され、活動を停止した。
兵士型ゴーレム
剣や盾、弓などを装備したゴーレムである。
・所属組織、地位や役職
地下遺跡・防衛兵器。
・物語内での具体的な行動や成果
地下遺跡のフロアを埋め尽くし、ヴェンデリンたちに襲いかかった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ドラゴンゴーレムの破壊に伴い、すべて停止した。
騎馬騎士型ゴーレム
馬に跨りランスを構えた指揮官クラスのゴーレムである。
・所属組織、地位や役職
地下遺跡・防衛兵器。
・物語内での具体的な行動や成果
兵士型ゴーレムを統率し、ヴェンデリンたちを攻撃した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ドラゴンゴーレムの破壊に伴い、すべて停止した。
運搬専用ゴーレム
地下遺跡の無人工房で働く作業用ゴーレムである。
・所属組織、地位や役職
地下遺跡・作業用ゴーレム。
・物語内での具体的な行動や成果
破壊されたゴーレムの残骸を修理用ゴーレムの元へ運搬した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
修理用ゴーレム
上半身だけの姿をした作業用ゴーレムである。
・所属組織、地位や役職
地下遺跡・作業用ゴーレム。
・物語内での具体的な行動や成果
運搬されてきたゴーレムの残骸を修理した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ミスリル装甲をまとった飛竜
決闘でヘルター公爵側が用意した魔物である。
・所属組織、地位や役職
決闘の代理人。
・物語内での具体的な行動や成果
檻から放たれてヴェンデリンや公爵たちを襲おうとした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ヴェンデリンの土槍によって脳を破壊され、討伐された。
展開まとめ
第一話 胡散臭い不動産屋
男爵家の屋敷探し
王都生活が始まって一年が過ぎ、ヴェンデリンは男爵が長期間借家で暮らすのは不相応だとルートガーに指摘された。資金には困っていなかったが、上級貴族街には新築用の土地がなく、中古の屋敷を購入して改装する必要があった。
リネンハイム不動産
エリーゼがホーエンハイム枢機卿へ相談すると、貴族向け物件を扱うオーガス・リネンハイムが紹介された。派手な服装で胡散臭く見えたものの、教会とも取引する実績のある不動産業者であった。
悪霊の伯爵邸
最初に案内された伯爵邸は、家臣に殺された前当主のレイスと多数の悪霊に占拠されていた。教会による浄化も失敗し、悪霊が強くなったため、封印されたまま買い手が付かずに放置されていた。
エリーゼの反対
リネンハイムはヴェンデリンに浄化を依頼しようとしたが、エリーゼは経験のない魔法をいきなり実戦で使わせるのは危険だと激怒した。ヴェンデリンは自分を本気で心配する彼女を頼もしく感じ、エリーゼの指導を受けながら二人で浄化することにした。
屋敷を巡る交渉
ヴェンデリンは、瑕疵物件を浄化する代わりに男爵邸を無料で提供するようリネンハイムへ要求した。他の不動産業者へ相談すると迫られたリネンハイムは、複数の屋敷を浄化することを条件に応じた。
聖障壁とエリア浄化
エリーゼは聖障壁で悪霊の攻撃を防ぎながら、屋敷全体を光で包むエリア浄化を実演した。前伯爵と悪霊たちは穏やかに浄化され、ヴェンデリンはエリーゼが聖女と呼ばれる理由を実感した。
ヴェンデリンの浄化
残る屋敷では、エリーゼが聖障壁を担当し、ヴェンデリンがエリア浄化を行った。彼の魔法は威力が強すぎたため、悪霊たちは苦しみながら強制的に消滅したが、浄化そのものには成功した。
いわく付きの屋敷
二人は、愛妾に殺された侯爵の血痕が何度拭いても現れる屋敷や、若い男性を追い回す未婚女性の霊が住み着いた伯爵邸も浄化した。いずれも通常の聖魔法使いでは解決できない物件であった。
不動産屋の利益
四軒の浄化によって高額物件が再び売却可能となり、リネンハイムはヴェンデリンへ男爵に相応しい屋敷を提供した。ブランタークは、処分困難な物件を安く確保していたリネンハイムが、浄化後の売却で大きな利益を得る仕組みだと説明した。
新しい屋敷
提供された屋敷はブライヒレーダー辺境伯の王都屋敷の隣にあったが、そこにも以前の主人を殺したメイドのレイスが残っていた。ヴェンデリンは追加の浄化を行い、ようやく自分の屋敷を手に入れた。
第二話 決闘騒ぎ
瑕疵物件の後始末
ヴェンデリンは新しい屋敷を得た後、ホーエンハイム枢機卿から、瑕疵物件の浄化が新参男爵への反発を抑え、下級貴族にも恩を売るための策だったと説明された。さらにリネンハイムから渡された別の屋敷も災厄級の悪霊に満ちており、エリーゼと協力して浄化した後、高額で売却した。
若奥様となったエリーゼ
エリーゼは改装された屋敷へ移り住み、使用人を手配して家事全般を担っていた。ヴェンデリンはイーナやルイーゼとも変わらず交流しながら、エリーゼが婚約者として屋敷を切り盛りする生活を送っていた。
門前の公爵
修行へ向かおうとしたヴェンデリンの前に、ヘルター公爵と三人の寄子が現れた。公爵はエリーゼを自分の二十五番目の妻にするため、ヴェンデリンへ決闘を申し込んだが、投げた白手袋を二度ともかわされたため、その場では成立しなかった。
エリーゼへの執着
ヘルター公爵は前国王の弟であり、二年前からエリーゼを妻に求め続けていた。ホーエンハイム枢機卿と国王から拒絶されても諦めず、莫大な借金を抱えながら二十四人の妻と多数の愛人を養う、王族内でも問題視される人物であった。
決闘の受諾
ブライヒレーダー辺境伯たちは、公爵が強力な代理人を用意した可能性があると推測した。ブランタークとアームストロングはヴェンデリンへ対人戦の指導を約束し、彼はエリーゼを守るため決闘を受け入れた。前夜には不安を抱きながらも、エリーゼに必ず勝つと告げて口づけを交わした。
王立コロシアム
決闘は三万人を収容する王立コロシアムで開催され、観客による賭けまで行われていた。ヴェンデリンが圧倒的な人気を集める一方、公爵側は代理人として、対魔法用のミスリル装甲をまとった飛竜を檻から放った。
制御不能の飛竜
飛竜はヴェンデリンへ突進したが、魔法障壁に弾き飛ばされたため、次にヘルター公爵たちを狙った。ヴェンデリンは四人も障壁で守り、制御できない魔物を決闘へ持ち込んだ証拠を確保するため、鎧に覆われていない両目から土槍を突き刺して飛竜を倒した。
汚された決闘
ヘルター公爵は障壁に守られながらヴェンデリンを攻撃しようとしたが、身動きすら取れなかった。決闘の代理人として危険な飛竜を放ち、観客まで危険にさらした四人は、アームストロングの命令によって警備兵に拘束された。
公爵家の断絶
国王はヘルター公爵家と協力した三家を断絶させ、当主たちを地方の修道院へ送った。妻たちは実家へ戻され、子供たちは貴族籍を失った。飛竜の捕獲や鎧の製作に協力した他家にも、多額の罰金が科された。
隠された金策
公爵側はヴェンデリンを敗北させ、エリーゼを要求する一方、婚約解消を避ける代償として大金を奪う計画も立てていた。さらにイーナとルイーゼまで交換材料にしようとしており、三人は勝手な企みに怒りを示した。
決闘の褒賞
ヴェンデリンは飛竜とその装甲の売却益、公爵家の財産整理や罰金から白金貨五十枚を受け取った。国王は、敵である公爵たちも飛竜から守り、装甲の弱点を見抜いて倒した判断力を高く評価していた。
騒動後の休息
決闘は、婚約者を守る少年男爵の物語として王都で評判となり、劇にする計画まで持ち上がった。処分と報告を終えたヴェンデリンは騒動を忘れ、エリーゼ、イーナ、ルイーゼ、エルヴィン、アームストロングと共に休暇を楽しみに出かけた。
第三話 ヘルムート兄さんの結婚
兄たちの婚姻
エーリッヒの招待による夕食会で、パウルは近く結婚し、ヘルムートもエドガー軍務卿の仲介で見合いを行うと明かした。貴族家の三男以下が婚姻によって身分を保つのは難しく、二人はヴェンデリンの活躍によって大物貴族から目を掛けられた結果、将来への道を得ていた。
王都の兄弟たち
パウル、ヘルムート、エーリッヒ、ヴェンデリンは、実家を離れた者同士で自然に結び付いていた。長男クルトは平凡ながら家を継ぐ一方、王都に出た兄弟たちはそれぞれの能力と人脈を生かして生きる道を築いていた。
絶縁された本家
バウマイスター本家は、王都バウマイスター家の支援によって開拓を始めながら、領地が軌道に乗ると連絡を絶っていた。王都側は代々その仕打ちを申し送っていたが、今では返済や優遇を求めることもなく、距離を置いていた。
王都バウマイスター家との見合い
ヘルムートの見合い相手は、王都バウマイスター家の一人娘フリーデであった。同家はエドガー軍務卿の派閥に属し、王都近郊の森林や水源地を守る世襲職を担っていたが、男子がいないため婿養子を求めていた。
森林警護の役職
当主ヴィレムは、密猟者や流民を取り締まりながら森林を管理し、そこで採れる高級な森林マテ茶などを副収入としていた。危険も伴う仕事であるため、警備隊で部下を率いた経験を持つヘルムートなら、真面目に勤めれば十分だと評価した。
ヘルムートとフリーデ
ヴィレムは過去の冷淡な対応が先祖からの申し送りによるものだったと説明し、本家への恨みを現在まで持ち続ける意思はないと伝えた。見合いは予定どおり成立し、ヘルムートとフリーデは今後の理解を深めるため二人で出かけた。
王都一門の形成
ヘルムートが婿入りすれば、王都バウマイスター家は事実上ヴェンデリンを中心とする一門へ加わることになった。そこにはブラント家を継ぐエーリッヒも属し、将来パウルが騎士爵家を与えられれば、彼も加わる見込みであった。
異なる寄親のつながり
ヴェンデリンはブライヒレーダー辺境伯、エーリッヒはルックナー財務卿、パウルとヘルムートはエドガー軍務卿の系統に属していた。兄弟を通じて複数の有力貴族と結び付く一方、ヴェンデリンは複雑な貴族社会のしがらみに縛られていった。
王国主催武芸大会
見合いの終わりに、ヴェンデリンはエドガー軍務卿の意向で王国主催武芸大会への出場を求められた。大会では魔法を使用できず、剣や格闘に自信のないヴェンデリンは一回戦敗退を予想しながらも、残された一週間で準備を始めようと考えた。
第四話 武芸大会前夜
本家に残された借金
ヴェンデリンはブライヒレーダー辺境伯へ、バウマイスター本家が王都バウマイスター家から受けた援助を返していない件を報告した。辺境伯は既に把握しており、両家が騒ぎを避けるため公表していないだけだと説明した。
兄たちへの祝儀
ヘルムートの婚姻に伴う返済金や、パウルとヘルムートへの祝儀は、辺境伯がヴェンデリン名義で負担することになった。ただし支出は本家の借金として記録され、将来本家を追い込む材料となる可能性を残していた。
剣術出場の義務
ヴェンデリンは、貴族家の当主として王国主催武芸大会への出場を求められた。大会には剣術、槍術、弓術、格闘術の部門があったが、当主や跡継ぎは剣術部門への参加が義務付けられ、魔法や魔力の使用も禁止されていた。
辺境伯の一回戦敗退
ブライヒレーダー辺境伯も若い頃に出場したが、剣の才能がなく予選一回戦で敗退していた。大会の成績は軍人の評価に多少影響するものの、上級指揮官には指揮や後方支援の能力が重要であり、ヴェンデリンは軍人になる予定もないため、成績を気にしすぎる必要はないと諭された。
予選突破の難しさ
本選へ進めるのは百二十八名だけであり、予選では最低七勝が必要であった。軍人や騎士、冒険者、仕官を望む浪人が多数参加するため、剣が不得意なヴェンデリンは一勝できれば十分だと考えた。
兄たちの大会成績
アームストロングは腕力を生かして予選四回戦、パウルは三回戦、エーリッヒとヘルムートは二回戦まで進んだ経験があった。いずれも対戦相手や組み合わせに恵まれた結果だと語り、ヴェンデリンは兄弟の中で自分だけ一回戦敗退になる可能性に重圧を感じた。
従士長エルヴィンの責任
エルヴィンは近衛騎士ワーレンから学んだ成果を示し、予選突破を目指していた。新興のバウマイスター男爵家では、従士長である彼の成績が悪いと、より腕の立つ浪人たちが仕官を求めて押しかける恐れがあったためである。
大会前の鍛錬
イーナとルイーゼも魔力を使わず、純粋な技だけで戦うための練習に励んでいた。ヴェンデリンは組み合わせの幸運に期待しながら一勝を目標とし、それぞれの思惑を抱えたまま武芸大会当日を迎えた。
第五話 武芸大会本番
武芸大会の初戦
武芸大会初日、ヴェンデリンは剣術部門の予選一回戦でワーレンと対戦した。魔法を使えない条件では剣技の差を埋められず、試合開始直後に喉元へ剣先を突き付けられて敗北した。
エルヴィンの順当な勝利
エルヴィンは初戦でベテラン冒険者と対戦したが、相手の剣を弾き飛ばして勝利した。王都でワーレンから指導を受けた成果は大きく、ヴェンデリンは一年余りで成長した友人の実力に驚いた。
ルイーゼの四回戦突破
格闘技部門に出場したルイーゼは、魔力を使えない不利を抱えながら、速度と相手の力を利用する技で四回戦まで勝ち進んだ。五回戦で同じ流派のベテランに敗れたものの、初出場の十三歳としては高く評価される成績であった。
イーナと槍術大車輪
イーナは槍術部門の六回戦まで進み、本選出場直前で槍術大車輪を名乗るローデリヒに敗れた。ローデリヒは独特な槍術だけでなく、商家で身に付けた帳簿、決算、税務、法律の知識も備えた多才な人物であった。
ローデリヒの境遇
ローデリヒはルックナー財務卿の弟と商人の娘の間に生まれたが、貴族籍を持たず、母方の商会でも後継争いを避けるため邪魔者扱いされていた。ヴェンデリンは、武力と実務能力を兼ね備えた彼を王都屋敷の管理人候補として確保することにした。
エルヴィンの六回戦敗退
エルヴィンも六回戦まで勝ち進んだが、師匠であるワーレンと対戦して敗れた。予選突破には届かなかったものの、従士長としての実力を示すには十分な成績を残していた。
技量を競う大会
武芸大会は魔法や強力な魔力を除外し、純粋な技量を評価する場であった。浪人や冒険者にとっては仕官先を得る機会となり、貴族にとっては将来の指南役や家臣候補を見つける場でもあった。
賭けと観戦
大会では王国が胴元となって賭けを行い、その収益は慈善事業へ使われていた。ヴェンデリンたちはボックス席でエリーゼの弁当や菓子、酒を楽しみ、試合よりも宴会を中心に三日間を過ごした。
大会で得た人材
大会は大きな騒動もなく終了し、ヴェンデリン自身は一回戦敗退に終わった。一方で、ローデリヒという屋敷管理に適した人材を見つけ、人は見かけだけでは判断できないと実感する結果となった。
第六話 十五歳になり
二年半の修行成果
十五歳になったヴェンデリンは、ルイーゼと共にアームストロングとの過酷な修行を続けていた。ヴェンデリンは身体能力強化、高速飛翔、魔導機動甲冑を実戦で使えるまで習得し、魔力量も成長を続けていた。
ルイーゼの新魔法
ルイーゼも身体能力強化、高速飛翔、魔導機動甲冑を身に付け、自らの傷を癒やす独自魔法の瞑想まで習得した。魔力量は上級に近い水準まで増え、魔闘流の技量と合わせて竜とも戦えるほどに成長していた。
最後の模擬戦
イーナの十五歳の誕生日を翌日に控え、冒険者活動の開始前に最後の模擬戦が行われた。ヴェンデリンとルイーゼは、二年半の恩返しと過酷な訓練への鬱憤を込め、二人がかりでアームストロングを倒すことを決めた。
高集束魔力弾の連射
ヴェンデリンは遠距離から大量の高集束魔力弾を放ち、アームストロングの魔力を消耗させた。アームストロングは魔力弾を次々と素手で弾いたが、長時間の攻撃によって魔導機動甲冑に亀裂が入り始めた。
ルイーゼの渾身の蹴り
アームストロングの動きが鈍った瞬間、ルイーゼは死角へ回り込み、残る魔力を込めた蹴りを放った。魔導機動甲冑は砕け、アームストロングは地面へ叩き落とされたが、身体能力強化によって無傷で立ち上がった。
修行の合格
アームストロングは二対一では分が悪かったと認め、二人に合格を告げた。さらに再戦を望み、冒険者としての成長を見守ると語った。ヴェンデリンとルイーゼは、ようやく過酷な修行から解放されることに安堵した。
第七話 冒険者登録
冒険者としての成人
ヴェンデリンたちは全員が十五歳となり、冒険者として活動を始めることになった。予備校には戻らないまま卒業扱いとなったが、王都ではそれ以上に厳しい訓練を受け、エルヴィンは剣、イーナは槍、ヴェンデリンとルイーゼはアームストロングから魔法戦闘を学んでいた。
ドラゴンバスターズ
王都の冒険者ギルド本部で、五人は個人登録とパーティ登録を行った。パーティ名はドラゴンバスターズとなり、リーダーは既に二匹の竜を倒していたヴェンデリンが務めることになった。
五人の装備と役割
エルヴィンは剣士として騎士団から勧誘されるほど成長し、イーナは槍と二刀の短剣を扱う戦士となった。ルイーゼは魔闘流と魔法防御に優れた装備を整え、エリーゼも治癒魔法に加えてメイスやナイフで自衛できる実力を身に付けていた。
エリーゼの同行
エリーゼはヴェンデリンの婚約者として共に冒険者になることを望み、パーティへ加わった。王都生活では屋敷を切り盛りしながら常にヴェンデリンを支えており、二人の生活は既に夫婦に近いものとなっていた。
冒険者の実績制度
冒険者には明確な階級がなく、依頼の達成数や失敗数、狩った動物や魔物、得た報酬がカードに記録された。主な仕事は狩猟や採集であり、他業種の仕事はそれぞれの専門ギルドが担当していた。
封印遺跡の探索
古代魔法文明の遺跡は、罠や強力な魔物が存在するため通常は封鎖されていた。探索は王国から冒険者ギルドへ依頼され、十分な実績を持つ冒険者やパーティだけが指名される仕組みであった。
最初の強制依頼
登録直後にもかかわらず、ドラゴンバスターズには王国から封印遺跡探索の強制依頼が下された。ヴェンデリンが竜を二匹倒した実績を理由に選ばれたが、五人は連携を含む実戦経験が不足しており、通常なら新人に任せる依頼ではなかった。
ブランタークの指南
新人パーティにはベテランの指南役が付く制度があり、ドラゴンバスターズにはブランタークが同行することになった。ヴェンデリンは危険なら即座に撤退すると決め、ブランタークも生き残ることを最優先とするその判断を支持した。
第八話 危険な冒険者デビュー戦
パルケニア草原の地下遺跡
ドラゴンバスターズとブランタークは、パルケニア草原で新たに発見された地下遺跡へ向かった。地上部分は学術調査を終えた安全な遺跡だったが、偶然開いた地下への入口を調べたベテラン冒険者二十五名は、誰一人戻っていなかった。
王国からの強制探索
冒険者ギルドは二度の失敗で探索を断念したが、王国は竜を倒せるヴェンデリンたちを指名した。三人の魔法使いと、元熟練冒険者のブランタークがいるため、地下に竜が存在しても対処できると判断されたのである。
無人の迷宮
地下遺跡には罠も魔物も見当たらず、一本道の先に巨大な広間があった。その最奥には金属製の竜像が置かれていたが、ブランタークが警戒を促すと、像は咆哮を上げて動き始めた。
ドラゴンゴーレム
金属竜の正体は、古代魔法文明が拠点防衛用に造ったドラゴンゴーレムであった。外殻はミスリルで覆われ、その内側にはオリハルコン装甲まで備わっていたため、ヴェンデリンたちの魔法や武器は通用しなかった。
魔力切れを待つ防御戦
ドラゴンゴーレムは巨大な魔晶石を動力とし、強烈なブレスや尾による攻撃を繰り返した。ヴェンデリンとブランタークは交代で魔法障壁を展開し、正面から倒そうとせず、蓄えられた魔力が尽きるまで半日耐え続けた。
停止スイッチ
魔力切れによってドラゴンゴーレムが停止すると、ルイーゼは腹部にある停止スイッチを発見して切り替えた。空気中の微量な魔力を集めて再起動する仕組みだったが、再稼働には数週間かかると推測された。
転移魔法陣
一行はドラゴンゴーレムの奥にある扉を開き、何もない石造りの小部屋へ入った。警戒を緩めた直後、床に探知できなかった魔法陣が浮かび、全員の足が動かなくなった。
未知の場所への転移
ブランタークは罠を見抜けなかったことを認め、転移先に備えて臨戦態勢を保つよう命じた。直後、六人は強制的にどこかへ引き込まれ、ヴェンデリンは意識を失った。
第九話 死闘、逆さ縛り殺し
逆さ縛り殺し
強制転移されたヴェンデリンたちは、最下層から地上を目指す逆さ縛り殺しと呼ばれる遺跡に閉じ込められていた。転移先だけは安全だったが、瞬間移動には現在地の正確な把握が必要なため脱出できず、階段を上って攻略するしかなかった。
ゴーレム軍団
最初の階層には、武装した兵士型と騎馬騎士型のゴーレムが大量に配置されていた。鋼にミスリルを混ぜた頑丈な敵は恐怖も疲労もなく、全滅するまで戦い続けるため、ブランタークは長期戦を想定して役割と休息の順番を決めた。
六人の防衛線
エルヴィン、イーナ、ルイーゼが前衛となり、ヴェンデリンとブランタークが魔法で敵の数と進路を制限した。エリーゼは後方で治療、食事と水の準備、仮眠中の仲間の護衛を担当し、回復役である自分が倒れれば全滅すると理解して支援を続けた。
終わらない消耗戦
一行は睡眠魔法や疲労軽減を使い、三時間ずつ仮眠を取りながら何日も戦い続けた。しかし倒したゴーレムは回収され、人工人格が無事なら修理されて再投入されていた。六人は頭部を完全に破壊して回収し、残骸も魔法の袋へ収めながら九つの階層を進んだ。
二体目のドラゴンゴーレム
五日目、最上階には前回より強力なドラゴンゴーレムが待ち構えていた。イーナが外部から魔力を送るケーブルを投槍で切断したが、内部の巨大な魔晶石によって高威力のブレスは止まらなかった。さらに修復された兵士型ゴーレムが下階から押し寄せ、六人は挟撃される危機に陥った。
無属性魔法の再現
持久戦では全滅すると悟ったヴェンデリンは、魔法障壁をブランタークに任せ、ドラゴンゴーレムの無属性ブレスを同じ魔法で押し返そうとした。幼い頃にアルフレッドから教わった対処法を思い出し、残存魔力と魔晶石の魔力を注ぎ込んで、初めて無属性魔法の発動に成功した。
ブランタークの魔力
ヴェンデリンの魔力が尽きかけると、ブランタークは自身の全魔力を渡し、意識を失った。それでも頭部まで僅かに届かず、ドラゴンゴーレムはさらにブレスの出力を高めたため、ヴェンデリンは自分だけが残って仲間を逃がす覚悟を固めた。
エリーゼの奇跡の光
ヴェンデリンが死を受け入れかけると、エリーゼは彼の妻になると訴えて口づけを交わし、最上級治癒魔法の奇跡の光を使用した。魔力を蓄えた婚約指輪と魔法の副次効果によってヴェンデリンの魔力は回復したが、エリーゼは残る魔力を使い果たして彼の背中で意識を失った。
ドラゴンゴーレムの破壊
ヴェンデリンはエリーゼを背負ったまま全魔力を放出し、無属性魔法でブレスを口腔内まで押し返した。二つの魔力が内部で炸裂してドラゴンゴーレムの頭部を爆散させると、兵士型ゴーレムも一斉に停止した。仲間の安全を確認したヴェンデリンも、すべてをエルヴィンへ託して意識を失った。
第十話 地下遺跡の戦利品
王城での懸念
ヴェンデリンたちが地下遺跡へ入って五日が過ぎ、国王はアームストロングと状況を話し合った。アームストロングは大規模遺跡なら数日の連絡途絶は珍しくないと考えたが、国王は宮廷内でヴェンデリンの死亡を前提に動く者たちを警戒していた。
ルックナー会計監査長の策動
ルックナー会計監査長は兄であるルックナー財務卿を憎み、その関係者であるヴェンデリンにも敵対していた。彼はヴェンデリンが死んだ可能性を利用し、南部の本家長男へ後継話を持ちかけ、家を出た兄弟との争いを引き起こそうとしていた。
男爵家の継承順位
ヴェンデリンは遺言状で、エーリッヒの長男イェルンを第一順位とし、続いてパウルとヘルムートの子供たちに継承権を与えていた。本家長男の子供には継承権がなく、遺言状の写しも貴族血統局に保管されていたため、会計監査長の働きかけに法的な意味はなかった。
南部に残る火種
国王は、会計監査長が本家長男を唆せば、ヴェンデリンが生還しても兄弟間の争いが起こると予想した。長男が外部の誘導に抗えず動く可能性を高く見積もり、将来の王国統治のために必要なら犠牲にする覚悟を固めていた。その二日後、ヴェンデリンたちの遺跡攻略成功が報告された。
居住区での休息
ドラゴンゴーレムの破壊後、エルヴィン、イーナ、ルイーゼは気絶したヴェンデリン、ブランターク、エリーゼを奥の居住区へ運んだ。そこには状態保存によって清潔なまま残された寝室や生活設備があり、三人を寝かせて交代で見張ることにした。
奇跡の光と口づけ
エリーゼの奇跡の光が全員を救ったと理解したルイーゼは、彼女をヴェンデリンの隣に寝かせた。イーナも反対側で眠り、ルイーゼは後からヴェンデリンの足元へ潜り込んだ。エルヴィンは、魔法の発動に口づけは不要だったと気付き、エリーゼの大胆さと献身に感心した。
イシュルバーク伯爵の工房
十分な睡眠を取った一行は、居住区と隣接する工房を調査した。書斎の日記から、この施設が古代魔法文明の天才魔道具職人イシュルバーク伯爵のものだと判明した。数千冊の研究記録や状態保存された設備は、現代の魔道具技術を大きく進歩させる可能性を秘めていた。
魔導飛行船の建造施設
もう一つの扉の先には、十以上の船渠と魔導クレーンを備えた巨大な建造・整備ドックがあり、七隻の魔導飛行船が保存されていた。再使用できるかは機関部の巨大魔晶石の状態次第であり、一行だけでは判断できなかった。
地下遺跡の防衛システム
遺跡は全十階層で、各階に兵士型や騎馬騎士型ゴーレムを供給する設備が配置されていた。地下には破損した個体を回収して修理し、新品を補充する無人工房もあり、ドラゴンゴーレムの頭部に全体を統括する人工人格が組み込まれていた。
莫大な遺産
防衛設備は巨大魔晶石から魔力を供給され、万を超えるゴーレムや二体のドラゴンゴーレムを動かしていた。イシュルバーク伯爵は全財産と研究成果をこの施設へ隠したと考えられたが、魔導飛行船や研究資料は国家機密級の価値を持つため、一行は独自調査を打ち切った。
岩山の出口
魔導飛行船用ドックの天井を開く装置から、遺跡がパルケニア草原の巨大な岩山内部に造られていたと判明した。ブランタークは王都へ戻って調査団を要請し、ヴェンデリンたちは遺跡を見張りながら、エリーゼが作った温かな食事で過酷な初仕事の疲れを癒やした。
第十一話 地下遺跡攻略後の後日談
遺跡攻略の責任
ブランタークは王城へ戻り、ヴェンデリンたちが逆さ縛り殺しと大量のゴーレムを辛うじて突破したと報告した。冒険者ギルドは戦力不足を理由に、新人パーティへ十分な指南役を付けず送り出そうとしており、ブランタークが同行しなければ全滅していた可能性が高かった。
ギルド幹部の弁明
秘密会議には国王、アームストロング、ルックナー財務卿、ホーエンハイム枢機卿、冒険者ギルド幹部らが集まった。幹部たちは一流冒険者を二十名以上失ったため、新たな戦力を出せなかったと説明したが、その損失自体が判断ミスによるものであり、責任を免れる理由にはならなかった。
会計監査長への疑惑
ルックナー財務卿は、弟のルックナー会計監査長が指南役の人選に介入した可能性を問いただした。ギルド総帥は関与を否定し、国王も今回の強制依頼は陰謀ではなく、アームストロングの評価を信じた自らの判断ミスだったと認めた。
莫大な発見物
ブランタークは、遺跡に七隻の魔導飛行船、建造・整備施設、無人工房、大量のゴーレム、ドラゴンゴーレム、巨大魔晶石、イシュルバーク伯爵の研究資料が残されていたと報告した。王国にとって軍事と技術の両面で極めて重要な発見であり、早急な調査と警備が必要になった。
報酬を巡る難題
発見物の所有権はヴェンデリンたちにあるため、王国は評価額に応じた報酬を支払う必要があった。しかし、その額は王家でも一括払いが難しく、大量の白金貨を市場から失わせる危険もあった。国王たちは没収を避け、分割払いと使用料を組み合わせる方向で検討した。
上納金の免除
冒険者ギルドは通常、冒険者の利益から二割を徴収していた。だがルックナー財務卿は、今回の支援不足と責任を踏まえて高額な上納金を辞退させ、代わりに王国から固定額を支払うことで、ヴェンデリンたちの手取りを減らさないよう調整した。
ヴェンデリンの怒り
ギルド幹部が退席すると、ブランタークはヴェンデリンが強制依頼を出した王国と、十分な支援をしなかったギルドの責任者へ強い怒りを抱いていると伝えた。国王とアームストロングは反論せず、自分たちの見通しが甘かったことを認めた。
指南役の取り分
遺跡の報酬はパーティの五人で分配され、指南役のブランタークは対象外であった。規定上、彼がギルドから受け取れるのは一日千セントのみであり、命を懸けた一週間に対して七千セントしか支払われなかった。
国王からの補償
あまりに少ない報酬を補うため、ルックナー財務卿は予備費から、国王も個人の年金から追加報酬を出すことにした。ブランタークは大金を受け取ったものの、その出所を知ったため気軽には使えず、若者たちにも事情を明かさないよう命じられた。
枢機卿の沈黙
会議中、ホーエンハイム枢機卿は孫娘とその婚約者を失いかけた怒りから、一言も発さずギルド幹部を見つめていた。神官冒険者や治療協力を引き揚げられることを恐れた幹部たちは怯え、寄付金の増額を申し出ても返答を得られなかった。
ギルド幹部の退職
会議から一週間後、ウェルナー総帥以下の最高幹部は健康上の理由で一斉に退職した。後任にはブランタークとも縁のある者たちが入り、組織の風通しは改善された。ブランタークは、この裏事情をヴェンデリンやエリーゼには話せないと考えた。
第十二話 多すぎる報酬
王城への帰還
地下遺跡で一週間近い死闘を生き延びたヴェンデリンたちは、警備隊へ現地を引き継いだ翌日、王国からの依頼結果と報酬について話を聞くため王城へ向かった。ヴェンデリンは依頼を出した王国と冒険者ギルドへの不満を抱えていたが、アームストロングはエリーゼとの生活を話題にして、宮廷内で感情を露わにしないよう気遣っていた。
ローデリヒの出迎え
屋敷へ戻った際、家令となったローデリヒはヴェンデリンの帰還を喜び、勢いよく抱きついた。二百七回目の面接でようやく得た職を失うことを恐れるほど、彼は主人の生死を心配していた。貴族の私生児という出自のため仕官できなかったが、家令としての能力は高く、使用人たちを適切に統率していた。
会計監査長への逆撃
ローデリヒは、実父であるルックナー会計監査長が、ヴェンデリンたちが死んだ可能性を噂として流していたと突き止めていた。そこで彼は、会計監査長が権力を使って危険な依頼へ誘導した可能性があるという噂を広めた。ヴェンデリンの生還で会計監査長側の噂だけが否定されたため、逆に彼への疑惑が貴族社会へ残り、しばらく活動を控えざるを得なくなった。
国王の謝罪
謁見でヴェンデリンが死にかけた経緯を率直に語ると、国王は戦力の見積もりを誤り、一行を危険にさらしたことを謝罪した。先に入った冒険者たちは全員ドラゴンゴーレムのブレスで焼き尽くされており、ヴェンデリンたちも失敗すれば同じ結末を迎えていた。
五人への評価
国王はエリーゼ、エルヴィン、イーナ、ルイーゼとも言葉を交わし、それぞれの成長と実力を評価した。エリーゼはヴェンデリンを優しい婚約者だと答え、エルヴィンとイーナは近衛騎士からの指導を認められ、ルイーゼもアームストロングから学んだ魔法格闘能力を高く見られた。
古代施設の買い取り
遺跡から発見された魔導飛行船用ドックは、王都近郊の空軍拠点として利用されることになった。保存されていた七隻の魔導飛行船は、機関部の魔晶石が無事であり、整備をすれば再使用可能であった。ドラゴンゴーレムや無人工房、イシュルバーク伯爵の研究資料も、王国による分解と解析が進められていた。
ゴーレムと魔晶石
遺跡には兵士型一万二千五百体と騎馬騎士型八百五十体のゴーレムが残されていた。それぞれに人工人格と魔晶石が組み込まれ、停止した個体や損傷した素材にも大きな価値があった。空気中の魔力を回収するパネルも、魔導街灯などの維持費を減らす技術として研究が始まっていた。
強制転移魔法陣
一行を逆さ縛り殺しへ送った魔力吸収型の強制転移魔法陣も、魔導ギルドが研究用に買い取ることになった。解析が進めば、複数人を魔法陣間で移動させる技術へ応用できる可能性があり、単なる罠にも高額な価値が認められた。
一人二万枚の報酬
王国は遺跡の発見物をすべて買い取り、ドラゴンバスターズの五人には一人あたり白金貨二万枚を支払うと決定した。金額が莫大なため二十年間の分割払いとなり、税金と冒険者ギルドへの上納金はあらかじめ処理されていた。
指南役の取り分
正式なパーティメンバーではないブランタークは、指南役として規定額だけを受け取る立場であり、遺跡の報酬分配には加われなかった。本人は大金に執着せず、ヴェンデリンたちへ財産によって身を持ち崩さないよう忠告した。
ブライヒブルクへの帰還
命を失いかけた初仕事は、七隻の魔導飛行船や古代技術、莫大な報酬を得る結果となった。ブランタークは実力だけでなく運も超一流の冒険者には必要だと評し、ヴェンデリンたちは二年半ぶりに活動拠点をブライヒブルクへ戻すことになった。
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