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Y.Aフィクション(Novel)八男って、それはないでしょう!読書感想

小説【八男】「八男って、それはないでしょう! 4」八男、故郷に錦を飾る

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Y.A

八男3巻レビュー
八男まとめ
八男5巻レビュー

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  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
    3. ■ 物語の特徴
  2. 書籍情報
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
  5. 考察・解説
    1. バウマイスター家の継承
    2. クルトの劣等感
    3. ヴェンデリンの未開地開発
    4. クラウスの画策と独白
    5. 魔の森の浄化
    6. ヴィルマの護衛加入
  6. 登場キャラクター
    1. バウマイスター男爵家(ドラゴンバスターズ・家臣・護衛)
      1. ヴェンデリン・フォン・ベンノ・バウマイスター
      2. エリーゼ・カタリーナ・フォン・ホーエンハイム
      3. エルヴィン・フォン・アルニム
      4. イーナ・ズザネ・ヒレンブラント
      5. ルイーゼ・ヨランデ・アウレリア・オーフェルヴェーク
      6. ヴィルマエトル・フォン・アスガハン
      7. ローデリヒ
      8. ドミニク
      9. ジークハルト・フォン・ヴィクトール・ルンマー
      10. オットマー・フォン・ブライブトロイ
      11. ゴットハルト・テオドリヒ・フィリップス
      12. ルーディ・ウルバーン・ライスター
      13. 腕の立つ警備員たち
      14. 若い男性店員
      15. 大工たち
      16. 農業志望の若者たち
    2. バウマイスター騎士爵家(本家・領民)
      1. アルトゥル・フォン・ベンノ・バウマイスター
      2. ヴェンデリンの母
      3. クルト
      4. アマーリエ
      5. カール
      6. オスカー
      7. クラウス
      8. レイラ
      9. レイラの婚約者
      10. クラウスの跡取り息子
      11. ユルゲン
      12. エックハルト
      13. マイスター
      14. ヘレナ
      15. ロブス
      16. 職人たち
      17. 遺族たち
      18. 領民たち
      19. 村人たち
    3. バウマイスター分家(従士長家)
      1. ヘルマン
      2. マルレーネ
      3. レオン
      4. クラーラ
      5. 先代従士長
      6. 分家の女性陣
      7. 分家の婿たち
      8. 分家の使用人
    4. その他のバウマイスター家兄弟
      1. パウル
      2. パウルの妻
      3. ヘルムート
      4. エーリッヒ
    5. ブライヒレーダー辺境伯家
      1. ブライヒレーダー辺境伯
      2. 先代ブライヒレーダー辺境伯
      3. ブランターク・リングスタット
      4. アルフレッド
      5. 商隊の人たち
      6. 老齢の農民たち
    6. ヘルムート王国政府・中央貴族
      1. 国王
      2. エドガー軍務卿
      3. ルックナー財務卿
      4. ルックナー男爵
      5. ホーエンハイム枢機卿
      6. アームストロング導師
      7. ワーレン
      8. エドガー軍務卿の家臣
      9. ルックナー男爵の使者
    7. 魔導ギルド
      1. ベルント・カールハインツ・ヴァラハ
      2. ルーカス・ゲッツ・ベッケンバウアー
      3. デリア
      4. 研究部門の職員たち
      5. ギルド職員たち
    8. その他・街の人々
      1. レンブラント
      2. オーガス・リネンハイム
      3. デリアの父親
    9. アンデッド・魔物・動物
      1. ブライヒレーダー家諸侯軍のアンデッド
      2. バウマイスター家諸侯軍のアンデッド
      3. 飛竜のアンデッド
      4. ワイバーンのアンデッド
      5. ゾンビたち
      6. グール
      7. スケルトン
      8. レイス
      9. サーペント
      10. 巨大熊
      11. 草原ウサギ
      12. 鹿
      13. ホロホロ鳥
      14. 海亀
  7. 展開まとめ
    1. 第一話 バウマイスター家嫡男の憂鬱 
    2. 第二話 魔導ギルド 
    3. 第三話 始まった冒険者生活と、新たな依頼 
    4. 第四話 久々の帰郷 
    5. 第五話 クラウス再び 
    6. 第六話 依頼達成と、バウマイスター家の混乱 
    7. 第七話 バウマイスター領滞在と、クルトとのトラブル 
    8. 第八話 未開地を開発してみる 
  8. 同シリーズ
    1. 八男って、それはないでしょう!シリーズ
    2. 異世界帰りのパラディンは、最強の除霊師となるシリーズ
    3. 異世界帰りの勇者は、ダンジョンが出現した現実世界で、インフルエンサーになって金を稼ぎます!シリーズ
  9. その他フィクション

物語の概要

■ 作品概要

本作は、異世界に貧乏貴族の八男として転生した主人公ヴェンデリンの成り上がりを描くファンタジー小説の第4巻である。
前巻での過酷な古代地下遺跡探索を乗り越え、国家予算並みの莫大な報酬を得たヴェンデリンとパーティメンバーたち。多額すぎる報酬の扱いに困り、寄親であるブライヒレーダー辺境伯に相談した結果、彼らは「魔の森への慰霊討伐(アンデッド浄化)」という名目で、かつて先代辺境伯の無謀な遠征で命を落とした兵士たちの鎮魂に向かうこととなる。
しかしその裏には、大陸南端の広大な未開地開発を目論む王国や大貴族たちの政治的思惑が絡んでいた。
かくして、数年ぶりに故郷であるバウマイスター騎士爵領へ帰還したヴェンデリンであったが、彼を待っていたのは、彼に激しい嫉妬と憎悪を抱く長男クルトとの対立や、領地を巡る実家の泥沼の御家騒動であった。

■ 主要キャラクター

  • ヴェンデリン:男爵として独立した本作の主人公。莫大な資金と規格外の魔法力を駆使して実家領内の未開地を強引に開発し、長男クルトを経済的・社会的に追い詰めていく。
  • クルト:バウマイスター本家の長男であり次期当主。弟であるヴェンデリンの圧倒的な活躍や富に激しく嫉妬し、あからさまな敵意を向けて自滅の道を突き進む。
  • クラウス:バウマイスター領本村落の名主。かつて自分の息子などを不審な事故で失ったことから現当主に恨みを抱いており、クルトを排除してヴェンデリンに領主の座を継がせるべく暗躍する。
  • ヴィルマ:エドガー軍務卿の思惑により、ヴェンデリンの護衛兼側室候補として送り込まれた13歳の少女。筋肉に魔力が絡みつく「英雄症候群」の体質により、巨大な戦斧を操り巨大熊や海竜を一撃で倒す怪力を持つが、常に空腹を訴える大食漢である。
  • パウル:ヴェンデリンの兄(三男)。王都の警備隊に勤めていたが、王国政府から「地方巡検視」という名目を与えられ、ヴェンデリンの護衛およびクルトへの牽制役として故郷に同行する。
  • アルトゥル:バウマイスター騎士爵家の現当主(ヴェンデリンの父)。領地の発展を優先し、ヴェンデリンの未開地開発を黙認するが、長男クルトの暴走やクラウスの策謀に対しては静観の構えを見せる。

■ 物語の特徴

本巻の最大の特徴は、華やかな冒険やモンスター討伐よりも、主人公の実家であるバウマイスター家の「御家騒動」と「領地開発(内政)」に焦点を当てている点である。 長男クルトが抱く鬱屈した嫉妬や、名主クラウスの長年にわたる策謀といった生々しい人間ドラマが展開される。
ヴェンデリンが直接的な武力や魔法でクルトを攻撃するのではなく、領民向けのバザー開催や何でも屋の設立、最新の稲作の導入など、「圧倒的な資金力と魔法による経済的アプローチ」で領民の支持を奪い、クルトの存在価値を失わせていく過程がエグくも興味深く描かれている。
単なるファンタジーバトルにとどまらず、田舎の零細貴族の閉鎖的な環境や、中央貴族の政治的駆け引きが色濃く描かれているのが本作ならではの魅力である。

書籍情報

八男って、それはないでしょう! 4
著者:Y.A 氏
イラスト:藤ちょこ 氏
出版社:KADOKAWAMFブックス
発売日:2015年1月23日
ISBN:9784040673561

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

あらすじ・内容

お金があってもいいことない! ヴェンデリンの受難は続く!?
ヴェンデリンのパーティ『ドラゴンバスター』の初めての冒険は、あわや全滅の危機に瀕しながらもメンバー各員の活躍でどうにか終了。その結果、パーティの全員が国家予算並みの莫大な報酬を得ることとなった。――そして、その莫大な報酬が物語の新しい局面を開く。
多額すぎる報酬金の使い途に困り果てたエル、イーナ、ルイーゼの3人は、ブライヒレーダー辺境伯に相談を持ちかける。ブランタークの助言もあり、余分なお金はすべてヴェンデリンに押し付けようという結論となった。
その使い途のない資金を何かに役立てようと考えたブライヒレーダー辺境伯は、大陸南端の広大な大地の開拓に目を付ける。その意図が思いっきり込められた『魔の森への慰霊討伐』という依頼が舞い込み、ヴェンデリンは難色を示すものの、断りづらい背景もあってこれを承諾。
こうして、物語は古巣のバウマイスター騎士爵領に舞台を移し、実家の御家騒動に巻き込まれていくヴェンデリンなのであった。

八男って、それはないでしょう! 4

感想

本巻では、ヴェンデリンたちが王都での修行と古代地下遺跡の探索を終え、ブライヒブルクへ戻ってくる。

ようやく普通の冒険者として狩猟や採集を始められると思ったのも束の間、寄親であるブライヒレーダー辺境伯から新しい依頼が持ち込まれる。

依頼の内容は、先代辺境伯が魔の森へ送り込み、全滅させてしまった約二千人の遠征軍を浄化することだった。

死んだ兵士たちは長い年月を経て、ゾンビなどのアンデッドになっている可能性が高い。

しかも魔の森は、ヴェンデリンの実家であるバウマイスター騎士爵領のさらに南にある。

任務を遂行するためには、数年ぶりに実家へ顔を出さなければならない。

第4巻の面白さは、魔の森でのアンデッド討伐だけではない。

むしろ印象に残ったのは、ヴェンデリンが故郷へ帰還したことで、これまで表面上は保たれていた領内の均衡が一気に崩れていく点である。

領民から支持される八男ヴェンデリン。

次期当主として立場を守りたい長男クルト。

老いを感じながらも家を守ろうとする父アルトゥル。

本家に不満を抱える分家や領民たち。

そして、何を考えているのか分からない名主クラウス。

それぞれの感情と思惑が絡み合い、辺境の小さな領地が中央政府から見れば内紛に近い状態へ変わっていく。

魔法や魔物以上に、人間同士の嫉妬や不信感の方が恐ろしい。

そう感じさせられる一冊だった。

長男クルトの視点から始まる物語

本巻の冒頭では、バウマイスター家の長男クルトの心情が詳しく描かれる。

これまでのクルトは、ヴェンデリンに対して敵意を向けるだけの人物に見えていた。

しかし彼の視点を読むと、なぜここまで弟を恐れているのかが分かってくる。

クルトは長男として、幼い頃から家を継ぐことが決まっていた。

特別に優れた武力があるわけではない。

エーリッヒのような頭脳もない。

ヴェンデリンのような魔法の才能もない。

それでも長男だから、領地と爵位を継げる。

その立場だけが、クルトの自信と将来を支えていたのだと思う。

ところが弟たちは、クルトにはない能力を持っていた。

次男ヘルマンは武勇と人望に優れている。

五男エーリッヒは計算や書類仕事が得意で、領主としての適性を感じさせる。

八男ヴェンデリンには、規格外の魔法の才能がある。

クルトにとって弟たちは家族ではなく、自分の立場を奪うかもしれない競争相手だった。

父アルトゥルも、ヴェンデリンの魔法を領地開発に使えば、領民たちが彼を次期当主に望む可能性があると理解していた。

そのためヴェンデリンを領地に残して利用するのではなく、穏便に外へ出すことを選ぶ。

この判断は、ヴェンデリンを守るためでもあり、クルトの立場を守るためでもあった。

しかしクルトは、父から守られていることに感謝しない。

むしろ「自分は弟より劣っているから、哀れまれている」と受け取ってしまう。

父の正論が、クルトの劣等感をさらに刺激する。

その感情のねじれが、後の暴走につながっていく。

ヴェンデリンが何をしても気に入らない

幼いヴェンデリンは、自分で狩った鳥や獣を領民の大豆と交換していた。

無料で配ったわけではない。

領民にも利益がある、公平な物々交換である。

領民にとっては、普段なかなか手に入らない肉や毛皮を得られる貴重な機会だった。

ところがクルトは、それを領民への人気取りだと受け取る。

ヴェンデリンが義姉の手紙代を負担したことにも腹を立てる。

兄の妻が実家へ手紙を出せずに寂しい思いをしている。

その事情を知り、費用を負担しただけである。

しかしクルトには、自分よりも妻へ気を配る弟の存在が、自分の至らなさを見せつけているように感じられたのだろう。

ヴェンデリンは、クルトを追い落とそうとしていない。

領民を扇動したわけでもない。

ただ、目の前の人が困っていたから少し手を貸しただけである。

その小さな善意すら、クルトには自分への攻撃に見える。

読んでいて感じたのは、劣等感が強くなると、相手の行動を悪意として受け取ってしまう怖さである。

ヴェンデリンが何もしなくても、存在しているだけでクルトを刺激する。

竜を倒せば、自分の評判を落とすためだと思う。

領民から人気を得れば、家督を奪うつもりだと思う。

未開地を開発する可能性が出れば、自分の未来を奪う計画だと思う。

クルトの中では、すべてが自分を中心に動いている。

その思い込みが、少しずつ現実との距離を広げていた。

ヴェンデリンの死と遺産を期待してしまう

古代地下遺跡の探索でヴェンデリンたちが戻らなかった頃、クルトのもとへルックナー会計監査長の使者が訪れる。

使者は、ヴェンデリンが死んだ可能性があると伝える。

未婚で子どももいないヴェンデリンが死ねば、男爵位や莫大な財産を誰が受け継ぐのか。

クルトの息子にも、相続の可能性があるのではないか。

そう持ちかける。

実際には、ヴェンデリンは遺言状を作成している。

第一順位はエーリッヒの子どもであり、その後にパウルやヘルムートの子どもが続く。

クルトの子どもに相続権はない。

しかし、王都から遠く離れたクルトには、正確な情報が届いていない。

クルト自身も、使者の話が確実ではないと理解している。

それでも、ヴェンデリンが死ねば自分に利益があると考えてしまう。

弟の死を悲しむよりも、爵位や財産、未開地の開発資金を手に入れられる可能性に心を躍らせる。

さらに、ルックナー会計監査長がヴェンデリンを暗殺してくれないかとまで考える。

ここまで来ると、単なる兄弟への嫉妬では済まない。

ヴェンデリンは、クルトの領地を奪っていない。

長男の地位も否定していない。

それでもクルトは、弟が生きて成功していること自体を許せなくなっている。

人間の感情が一線を越えてしまう瞬間を見せられたようで、重い気持ちになった。

普通の冒険者生活がようやく始まる

一方のヴェンデリンたちは、王都からブライヒブルクへ戻っていた。

地下遺跡の攻略では、全員が莫大な報酬を得ている。

しかしエル、イーナ、ルイーゼは、あまりに大きな金額が自分たちの身を危険にすると考え、大半をヴェンデリンへ譲っていた。

親族から金を要求される。

金目当ての縁談を持ち込まれる。

詐欺や暗殺の標的になる。

大金は生活を豊かにする一方で、人間関係を壊す原因にもなる。

一人一億セントだけでも十分すぎる財産である。

三人がそれ以上を手放した判断は、現実的だったと思う。

ブライヒブルクへ戻った後は、近くの魔物の領域で獲物を狩る。

熊や狼、猪に似た魔物を倒し、素材を持ち帰る。

地下遺跡のような国家規模の強制依頼ではない。

本来の冒険者らしい仕事である。

エルとイーナが張り切る姿には、ようやく普通の冒険者生活が始まったのだと感じた。

ただし、二人には「ヴェンデリンについていただけで大金を得た」という陰口が向けられていた。

命懸けでゴーレムと戦った事実を知らない者ほど、結果だけを見て批判する。

大金を得ても、それを辞退しても、結局は何かを言われる。

人の嫉妬は面倒なものだと感じる。

魔の森に残された約二千人の兵士たち

そんな中、ブライヒレーダー辺境伯から新しい依頼が持ち込まれる。

先代辺境伯は、魔の森を攻略するために約二千人の兵士を送り込んだ。

しかし遠征は失敗し、兵士たちは全滅している。

遺体は回収されず、長い間放置されていた。

死者がアンデッドとなり、魔の森に残っている可能性は高い。

時間が経てば、アンデッド同士が共食いをして強化されることもある。

将来、魔の森へ入る冒険者にとって大きな脅威になる。

ヴェンデリンとエリーゼには浄化魔法がある。

ヴェンデリンは瞬間移動で魔の森の入口まで移動できる。

依頼を受ける人物として、これ以上の適任者はいない。

しかし、魔の森はバウマイスター騎士爵領の書類上の領地に含まれている。

そのため、正式に実家へ挨拶し、活動の許可を得る必要がある。

ヴェンデリンにとっては、アンデッドよりも実家との交渉の方が面倒だったかもしれない。

数年ぶりの実家で浴びせられた言葉

ヴェンデリンが実家へ戻ると、使用人たちは彼の帰還を喜ぶ。

竜を倒した英雄。

男爵となった八男。

広大な未開地を開発できるかもしれない人物。

使用人たちが期待を寄せるのも理解できる。

しかし、その期待はクルトにとって危険なものだった。

クルトはヴェンデリンを見るなり、なぜ生きているのかという意味の言葉を口にしてしまう。

前日に、ヴェンデリンが地下遺跡で死んだ可能性があると聞かされていたからである。

弟の無事を喜ぶのではない。

死んでいなかったことを残念がっている。

ヴェンデリンは、その反応からクルトが自分の死を望んでいたと悟る。

兄弟の関係が、完全に壊れた瞬間だった。

さらにクルトは、魔の森で得た素材や遺品の五割を本家へ納めるよう要求する。

亡くなった兵士たちの遺品回収についても、手間や利益を理由に必要ないと主張する。

先代従士長をはじめ、領民たちの家族が多く死んでいる。

遺骨すら戻らなかった遺族にとって、武器や所持品は家族の死を受け入れるために必要なものだ。

それを利益にならないから不要だと言う。

クルトの考え方は、領民の感情から完全に離れていた。

家臣と婚約者を侮辱されて反撃するヴェンデリン

クルトは、エルをチンピラのように扱う。

エリーゼに対しても、失礼な態度を取る。

ヴェンデリンは、それまで実家と正面から争おうとはしていなかった。

自分は別家の当主であり、実家とは距離を置けばよいと考えていた。

しかし、自分の家臣や婚約者を侮辱されれば話は別である。

ヴェンデリンは、自分は独立した男爵家の当主であり、騎士爵家の跡取りに見下される立場ではないと明言する。

家の中では長男のクルトが年上である。

だが貴族社会では、男爵であるヴェンデリンの方が上位だ。

クルトは、ヴェンデリンをいつまでも実家の八男として扱おうとしている。

しかし現実には、爵位、財産、功績、人脈のすべてで大きな差がついている。

その現実を突きつけられたことで、クルトの敵意はさらに強くなったのだと思う。

ヴェンデリンも、兄を見下したかったわけではない。

ただ、大切な人を守るためには、自分の立場をはっきり示す必要があった。

この場面には、彼が一つの家を背負う当主になったことが表れていた。

分家で初めて知る実家の異常さ

本家での交渉を終えたヴェンデリンたちは、次男ヘルマンが婿入りした分家へ泊まる。

分家では、狩猟や養蜂を行っている。

ハチミツ酒がある。

食事も本家よりはるかに豊かである。

贅沢をしているわけではない。

生活を壊さない範囲で倹約しているだけだ。

ヴェンデリンはここで、自分が育った本家の極端な節制が普通ではなかったと気づく。

本家では、ボソボソの黒パンと薄い塩スープが中心だった。

金を使わないことが最優先され、生活の楽しみはほとんどなかった。

一方の分家は、限られた環境の中でも狩猟や養蜂を工夫し、少しでも暮らしを良くしようとしている。

同じ領地に住んでいても、考え方によって生活は変わる。

本家が貧しいのは、立地だけが原因ではない。

変化を避け、金を抱え込むことだけを優先してきた結果でもある。

この違いが、後の領地開発にもつながっていく。

領民のために開かれたバザー

名主クラウスは、ヴェンデリンへ領民向けのバザーを開いてほしいと依頼する。

バウマイスター領へ来る商隊は、年に三回しかない。

荷物の多くは、生きるために必要な塩で占められる。

そのため、布、裁縫道具、菓子、酒、調味料、本、玩具などを買う機会はほとんどない。

クラウスは、無料で配ってほしいとは言わない。

値下げも求めない。

ブライヒブルクで仕入れた価格に利益を加えて構わないから、領民が自由に買い物できる場所を作ってほしいと頼む。

ヴェンデリンは、魔法の袋に保管していた品物を並べる。

塩。

砂糖。

酒。

調味料。

布や裁縫道具。

菓子。

本。

玩具。

弓矢や生活用品。

領民たちは、長年貯めていた現金を持って集まる。

売上額は八十一万セントを超えた。

領民たちは金を持っていなかったのではない。

金を使う場所がなかった。

現金を得ても、次の商隊が来るまで何も買えない。

必要な品が運ばれてくる保証もない。

そのため金が領内を循環せず、経済が止まっていた。

物がないから買えない。

売る場所がないから生産を増やせない。

収入が増えないから生活も変わらない。

バウマイスター領の貧しさは、単に資源がないからではない。

流通が止まっていることも大きな原因だった。

クラウスが領主家へ忠誠を失った理由

バザーの後、クラウスは自分の過去と、本家に対する不信感を語る。

若い頃のクラウスは、自分たちで荷車を引き、ブライヒブルクまで産物を運んでいた。

道中で狼に襲われる。

事故で仲間が死ぬ。

助からない仲間から頼まれ、自ら止めを刺したこともある。

塩や生活用品を手に入れるだけで、命懸けだった。

だからこそクラウスは、領内へ定期的に商隊を呼ぶことに力を注いだ。

領民を同じ危険にさらしたくなかったのである。

一方で、クラウスはアルトゥルにも強い疑念を抱いていた。

クラウスの息子と、娘レイラの婚約者が、アルトゥルに同行した狩猟中に同時に死亡する。

その後、アルトゥルはレイラを妾として差し出すよう要求する。

クラウスは、二人の死にアルトゥルが関わっていたのではないかと疑っている。

確かな証拠はない。

他の村落の者が関わった可能性もある。

レイラを妾にしたことにも、村落間の対立を抑える政治的な理由があったのかもしれない。

真相は分からない。

それでもクラウスにとって、歴代の領主は自分を人間として扱ってくれなかった。

働け。

徴税しろ。

娘を差し出せ。

領民をまとめろ。

命令には従わせるが、意見は聞かない。

クラウスは、領主家への忠誠を失っていた。

彼が守りたいのは、バウマイスター家ではない。

領民と領地である。

そのためなら、クルトを追い落とし、ヴェンデリンを新しい領主にすることもためらわない。

クラウスは善人とは言い切れない。

ヘルマンやエーリッヒを目立たせ、クルトの継承を脅かす存在として利用したことも認めている。

人を動かし、噂を流し、領主家同士を競わせる。

しかし、その目的は自分の出世や財産ではない。

領民の生活を少しでも良くすることにある。

手段は危うい。

それでも、何も変えようとしない本家より、クラウスの方が領地の未来を考えているように見えた。

魔の森で始まる二千体のアンデッド浄化

実家での騒動を抱えながらも、ヴェンデリンたちは本来の依頼を遂行するため魔の森へ向かう。

作戦は、エリーゼの浄化魔法を中心にしたものだった。

エリーゼが浄化の障壁を展開する。

ヴェンデリンが、その効果を広範囲へ拡大する。

ブランタークが魔力を補助する。

エル、イーナ、ルイーゼが周辺の敵を排除する。

先代辺境伯への恨みを残すアンデッドを集めるため、生前の失策を拡声器で罵倒するという方法まで使う。

死者への扱いとしてどうなのかと思うが、効果は大きかった。

約二千体のゾンビが集まり、次々と浄化されていく。

ヴェンデリンたちは、遺族へ返すために武器、防具、所持金などを回収する。

死者を倒して終わりではない。

残された家族のもとへ、その人が生きていた証を持ち帰る。

この点に、単なる魔物退治とは違う重さを感じた。

消えていたバウマイスター家の兵士たち

最初のアンデッド集団を浄化した後、ヴェンデリンたちは違和感に気づく。

倒した者の多くは、ブライヒレーダー辺境伯家の兵士だった。

一緒に遠征へ参加したはずのバウマイスター家の兵士たちが見当たらない。

生前、両軍の仲は悪かった。

バウマイスター領の兵士たちは、先代辺境伯の無謀な命令によって死地へ送られたと感じていたはずである。

その反感が死後も残り、別の集団として行動していた可能性がある。

やがて探知範囲の外から、数千体のアンデッドが動き始める。

バウマイスター家の兵士だけではない。

ワイバーンや飛竜など、遠征中に倒された魔物のアンデッドまで加わっている。

死者が魔物を倒し、その死体を仲間へ加えながら勢力を拡大していた。

最初の二千体を浄化して終わると思っていただけに、この第二陣には驚かされた。

大叔父がリッチとなって立ち塞がる

第二陣を率いていたのは、バウマイスター家の先代従士長だった。

ヴェンデリンにとっては大叔父にあたる人物である。

彼はゾンビよりも上位のアンデッドであるリッチとなり、兵士や魔物を統率していた。

生前の記憶や感情も残っている。

遠征で多くの家族や仲間を失った悲しみ。

無謀な作戦への怒り。

故郷へ戻れなかった無念。

それらが、長い年月を経ても消えずに残っていた。

ヴェンデリンは、大叔父の孫娘やひ孫たちが無事に暮らしていると伝える。

家族が生きていると知った大叔父は、戦うことをやめる。

最後に家族を頼むと言い残し、ヴェンデリンの聖光によって浄化される。

印象に残ったのは、彼が単なる強敵として倒されなかった点である。

魔物になっても、最後まで家族を気にかけていた。

ヴェンデリンが故郷の人々と向き合う決意をするきっかけにもなる。

短い場面ではあるが、戦死者一人ひとりにも人生や家族があったことを感じさせる、切ない場面だった。

兄たちとの相談で領主になる覚悟を固める

魔の森の依頼を終えたヴェンデリンは、そのまま王都へ向かい、エーリッヒ、パウル、ヘルムートへ実家の状況を伝える。

クラウスの話がすべて事実なのかは分からない。

アルトゥルが人を殺した証拠もない。

クルトを廃嫡すれば、領民同士が争う可能性もある。

単純に悪人を倒して終わる問題ではなかった。

エーリッヒが指摘したのは、過去の真相よりも、ヴェンデリンが帰還したことで領内の均衡が崩れ始めたという現実である。

領民たちは、ヴェンデリンが領主になれば生活が豊かになると期待している。

瞬間移動がある。

魔法の袋がある。

豊富な資金がある。

土地を整備する魔法がある。

中央貴族や教会との人脈もある。

クルトが何十年かけても実現できないことを、ヴェンデリンなら短期間で行える。

本人に領地を奪う意思がなくても、領民が期待してしまえば争いは避けられない。

エーリッヒは、混乱を終わらせるためには、最終的にヴェンデリン自身が領地を治めるしかないと告げる。

ヴェンデリンは領主になりたいわけではない。

冒険者を続けたい。

それでも領地運営をローデリヒたちへ任せれば、自分は冒険者を続けられる。

大叔父から家族を頼まれたこともあり、ヴェンデリンは故郷の問題へ介入する覚悟を固めていく。

護衛兼側室候補として現れたヴィルマ

ヴェンデリンの安全を守るため、エドガー軍務卿から護衛隊が派遣される。

地方巡検視となったパウル。

剣士のジークハルト。

大木槌を使うオットマー。

細剣とナイフを扱うゴットハルト。

従兵のルーディ。

そして、十三歳の少女ヴィルマである。

ヴィルマは「英雄症候群」と呼ばれる特殊な体質を持っている。

筋肉へ微量の魔力が常に絡みつき、小柄な体からは想像できない怪力を発揮する。

魔法使いのように自由に魔力を操るわけではない。

しかし対人戦闘では、並の大人を圧倒できるほど強い。

その代償として、大量の食事が必要になる。

普通の家庭では、食費だけで生活が破綻しかねない。

ヴィルマは実家の負担にならないよう、自らエドガー軍務卿へ売り込み、保護されていた。

悲しい事情ではあるが、本人は必要以上に暗くならない。

食べることが好き。

狩猟が好き。

強い相手と戦える。

竜の肉も食べてみたい。

その素直さが可愛らしい。

エドガー軍務卿は、ヴィルマを養女にしたうえで、ヴェンデリンの護衛として送り込む。

ただし、本当の狙いは護衛だけではない。

将来の側室候補としてヴェンデリンの近くへ置き、自分の派閥とのつながりを作ろうとしている。

イーナとルイーゼに続き、またしても政治的な思惑によって女性が増える。

ヴェンデリンにとっては頭の痛い話だろう。

ただ、ヴィルマは実際に強い。

巨大熊の首を戦斧で一撃のうちに刎ねる。

海に現れたサーペントの首も、投げた戦斧で切断する。

食べる量は多いが、自分で狩猟や採集を行える。

護衛としては非常に頼もしい。

強さと腹ぺこという組み合わせが、重くなりがちな実家騒動の中でよい息抜きになっていた。

遺品を奪おうとするクルト

ヴェンデリンたちは、魔の森で回収した遺品を遺族へ直接返す。

長い間、家族の遺骨すら戻らなかった。

錆びた剣。

壊れた防具。

残された所持金。

それでも遺族にとっては、亡くなった家族が故郷へ帰ってきた証である。

ところがクルトは、その武器や防具を鍛冶屋へ渡すよう命じる。

鉄資源として再利用するためである。

所持金にも五割の税をかけようとする。

遺族は、遺品を墓へ納めたいと訴える。

クルトは、役に立たない物を埋めるより再利用すべきだと考える。

理屈だけなら、資源の少ない領地で鉄を再利用することには意味がある。

しかし、人の感情を完全に無視している。

家族を失った領民にとって、錆びた剣はただの鉄ではない。

クルトには、その違いが分からない。

ヴェンデリンは、魔法で巨大な鉄塊を作り、鍛冶屋へ渡す。

鉄が必要なら、遺品を奪う必要はない。

同時に、鍛冶屋の技術では王都で通用しないと指摘する。

今後、外部の商品が入ってくれば、努力をしない職人は仕事を失う。

クルトと既存の職人にとって、ヴェンデリンは自分たちの立場を壊す存在に見える。

しかし領民からすれば、安くて質のよい物を手に入れられる方がありがたい。

ここでも、既得権益を守る者と、生活を改善したい者の対立が生まれている。

六百人を超える慰霊の食事会

戦死者の遺品は、エリーゼと神父によって墓へ納められる。

その後、ヴェンデリンやヘルマンたちは、遺族を慰めるための食事会を開く。

参加者は六百人を超える。

狩った獣の肉。

海で捕った魚や貝。

サーペントの肉。

子どもたちには水飴も配られる。

長年苦しんできた領民たちが、亡くなった家族を偲びながら、同じ料理を囲む。

ヴェンデリンは領主になると宣言していない。

クルトを排除するとも言っていない。

それでも、この食事会だけで両者の差がはっきりと見えてしまう。

クルトは遺品を鉄や税金として扱った。

ヴェンデリンは遺品を遺族へ返し、家族を弔う場を作った。

領民がどちらへ心を寄せるかは明らかである。

この慰霊会は、亡くなった人々を悼む場であると同時に、クルトへの政治的な圧力にもなっていた。

善意だけではない。

ヴェンデリンも、事態を動かすために意図的に領民との関係を見せている。

ただ、クルトと違うのは、領民の利益とヴェンデリンの目的が同じ方向を向いていることだ。

クルトの妻アマーリエとの約束

慰霊会には、クルトの妻アマーリエと、息子のカール、オスカーも現れる。

アマーリエは、クルトの態度が変わっていることに気づいている。

ヴェンデリンが帰還し、領民たちが期待を寄せている。

中央政府まで動き始めている。

この流れをクルトが止められないことも理解している。

彼女が心配しているのは、自分と子どもたちの将来である。

クルトが廃嫡された場合、妻子まで処罰される可能性はないのか。

ヴェンデリンは、混乱が起きた時には子どもたちを守ると約束する。

クルトと対立しても、妻や子どもまで敵と見なすつもりはない。

この姿勢は大切だと思う。

御家騒動では、当事者以外の家族まで巻き込まれる。

勝った側が相手の血筋を残さないために、子どもまで排除することもあり得る。

ヴェンデリンは、そうした粛清を望んでいない。

クルトを倒すことが目的ではなく、領民や家族の被害を減らすことを優先している。

その違いが、彼を単なる簒奪者に見せない理由だと感じた。

魔の森の利益で本家の借金を清算する

魔の森で得た素材や遺留品の査定が終わると、バウマイスター家にも取り分が支払われる。

ところが、その金は本家の手元にほとんど残らない。

王都バウマイスター家から受けた援助金。

エーリッヒの結婚祝い。

パウルとヘルムートの結婚に関する費用。

これまで本家が支払わず、ブライヒレーダー辺境伯が立て替えていた借金が差し引かれるからである。

クルトは、返済時期は自分たちで決めると言って怒る。

しかし父アルトゥルは、借金が消えたのだからよいと受け入れる。

クルトは金を貯めることを重視してきた。

祝儀も払わない。

援助も返さない。

領民への見舞金まで開墾資金へ回す。

金を守るためなら評判を捨てても構わないと考えていた。

ところが、外部に作った借金は消えない。

支払いを先延ばしにしても、いずれどこかで清算される。

クルトの節約は、家を豊かにするどころか、信用を失わせていただけだったのではないかと思う。

未開地に屋敷と商店を移築する

ヴェンデリンたちは、バウマイスター領と未開地の境へ活動拠点を移す。

ブライヒブルクにあった屋敷を、特殊な魔法によって丸ごと移築する。

さらに十数軒の家や商店も運び込む。

ヴェンデリンたちの住居。

ローデリヒや使用人の家。

警備員やパウルたちの住む場所。

短期間で一つの小さな居住区が完成する。

普通なら、建物を建てるだけでも長い時間と費用がかかる。

資材を運ぶ。

職人を集める。

道路を整える。

水を確保する。

しかしヴェンデリンには、資金、魔法、瞬間移動、魔法の袋、人脈がある。

クルトが不可能だと諦めていたことを、次々と実現していく。

この圧倒的な速度が痛快だった。

一方で、クルトから見れば恐怖でしかない。

昨日まで何もなかった未開地に、屋敷と商店と人が現れる。

領民たちは、クルトではなくヴェンデリンの拠点へ集まり始める。

武力で領地を奪われているわけではない。

それでも、実質的な影響力は少しずつ移っていく。

何でも屋が商隊を不要にする

ヴェンデリンは、定期的にバザーを開く手間を減らすため、何でも屋を開店する。

店の管理はローデリヒが担当する。

塩。

砂糖。

調味料。

酒。

菓子。

布。

生活雑貨。

農具。

肉や魚。

必要な物は、ヴェンデリンが瞬間移動で仕入れる。

魔法の袋があるため、大量の商品を劣化させずに運べる。

さらに、領民が作った酒や採集物なども買い取る。

物を売るだけではない。

領内の産物を外へ売り、現金収入を作る。

これによって、領内に金が循環し始める。

商店ができた結果、ブライヒレーダー辺境伯は、年三回送っていた商隊を廃止する。

ヴェンデリンの店の方が、品数も多く、価格も安い。

領民にとっては困る理由がない。

クルトは、ヴェンデリンに領地を乗っ取られると反発する。

しかし父アルトゥルから、自分で代わりの商隊を用意できるのかと問われ、何も答えられない。

ヴェンデリンは、商隊を無理に追い出したわけではない。

より便利な仕組みを作った結果、古い仕組みが必要なくなっただけである。

変化へ対応できないクルトの立場が、目に見えて弱くなっていく。

未開地で始まる稲作と農地開発

ヴェンデリンは、未開地で稲作を始める。

理由は、新米を食べたいからである。

莫大な財産と魔法を使いながら、目的が米を食べることなのが、いかにもヴェンデリンらしい。

ブライヒレーダー辺境伯領から、稲作経験のある農民を招く。

王都で農業をしたい人も集める。

経験者が新しい住民を指導する。

ヴェンデリンは土木魔法を使い、田畑や用水路を整える。

土質を調整し、肥料も作る。

本来なら何年も必要な開墾が、数日で形になっていく。

この圧倒的な開発力を見れば、領民がヴェンデリンへ期待するのも当然だと思う。

クルトは、未開地を将来の子どもや孫が開発すればよいと考えていた。

何世代も先の夢として、広大な土地を所有し続けようとしていた。

しかしヴェンデリンは、今すぐ生活できる土地へ変えてしまう。

土地は持っているだけでは価値を生まない。

人が住み、働き、物を作り、商売をして初めて領地になる。

クルトが未来の可能性として抱えていたものを、ヴェンデリンは現実へ変えていく。

武力を使わずにクルトの存在価値を奪う

終盤で特に痛快だったのは、ヴェンデリンがクルトを直接攻撃しない点である。

決闘を申し込まない。

魔法で屋敷を破壊しない。

クルトを暗殺しない。

ただ、領民に必要なものを提供する。

商品を売る。

産物を買い取る。

農地を作る。

食事会を開く。

戦死者を弔う。

新しい仕事を作る。

その結果、クルトが何もしてこなかった事実が浮かび上がってくる。

クルトは、長男であることを自分の価値だと考えていた。

いつか領地を継げる。

未開地も自分のものになる。

その権利があるから、特別な努力をしなくてもよいと思っていた。

しかし領民が求めているのは、長男という肩書ではない。

塩を安定して買えること。

作った物を売れること。

家族を弔えること。

子どもが腹いっぱい食べられること。

働けば生活が良くなること。

ヴェンデリンは、それを短期間で実現してしまう。

武力ではなく、経済力と利便性によってクルトを追い詰める。

この展開は、本作ならではの面白さだった。

敵を倒すのではなく、相手が必要とされない状況を作る。

クルトにとっては、魔法で攻撃されるよりも残酷かもしれない。

クルトにも同情できる部分はある

彼の行動は、褒められるものではない。

弟の死を願う。

財産を奪おうとする。

遺族の感情を無視する。

家臣や婚約者を侮辱する。

変化を拒み、自分の立場だけを守ろうとする。

しかし、すべてを単純な悪人として片づけることもできなかった。

クルトは、特別な才能を持たない。

辺境の貧しい領地から逃げる道もなかった。

長男として家を継ぎ、厳しい環境を守ることだけが人生の役割だった。

そこへ、自分より優れた弟たちが次々と現れる。

家を出た弟は成功し、王都で地位と財産を得る。

自分は貧しい領地に残り、徴税や村落対立といった地味な仕事を続ける。

領民たちは、外で成功した弟ばかりを褒める。

その状況に苦しさを感じるのは理解できる。

問題は、その苦しさを努力へ変えず、弟への憎悪へ変えてしまったことだ。

領民の生活を改善する。

新しい産物を探す。

商隊との条件を交渉する。

分家や名主との関係を整える。

クルトにも、できることはあったはずである。

しかし彼は、自分が長男であることへ甘えてしまった。

その結果、ヴェンデリンとの能力差よりも、行動する者としない者の差が大きくなっていった。

領地を変えたのは魔法だけではない

ヴェンデリンには、規格外の魔法がある。

瞬間移動。

魔法の袋。

土木魔法。

浄化魔法。

強大な戦闘力。

確かに、普通の人には真似できない。

しかし、領地が変わり始めた理由は魔法だけではない。

クラウスが問題を言葉にした。

エリーゼが遺族を癒やした。

ヘルマンや分家が協力した。

ローデリヒが商店や開発を管理した。

経験のある農民が新しい住民を指導した。

パウルたちが治安を守った。

ヴィルマが護衛として加わった。

多くの人が、それぞれの役割を果たしている。

ヴェンデリン一人ですべてを運営しているわけではない。

自分にできない仕事は、できる人へ任せる。

領主になっても、実務はローデリヒたちへ任せ、自分は冒険者を続ける。

この柔軟さが、クルトとの大きな違いだと感じた。

クルトは、自分が当主だからすべてを支配しなければならないと考える。

ヴェンデリンは、自分が不得意なら得意な人へ任せればよいと考える。

能力の差以上に、人を信頼して任せられるかどうかが、二人の差を広げていた。

実家の御家騒動が本格的に動き始める

『八男って、それはないでしょう! 4』では、これまで少しずつ積み重ねられてきた実家の問題が、一気に表面化する。

クルトの劣等感。

アルトゥルの過去。

クラウスの不信。

分家の反発。

戦死者の遺族が抱える怒り。

未開地を巡る利権。

中央政府や大貴族の思惑。

それらが、ヴェンデリンの帰還によって動き始める。

ヴェンデリンは領地を奪うために帰ってきたわけではない。

魔の森のアンデッドを浄化するだけの予定だった。

しかし、領民の生活を目の当たりにし、大叔父から家族を頼まれ、クルトの暴走を知ったことで、見て見ぬふりができなくなる。

結果として、未開地の開発へ手をつける。

商店を作る。

農地を作る。

人を集める。

生活を豊かにする。

その行動が、クルトの立場をさらに弱くしていく。

善意で動いても、誰かにとっては脅威になる。

正しいことをしても、争いが避けられるとは限らない。

その複雑さが、人間臭くて面白かった。

腹ぺこ少女ヴィルマが新しい空気を運んでくる

重い御家騒動が続く中で、ヴィルマの存在は大きな救いだった。

小柄で無口。

しかし怪力。

狩猟が得意。

何より、常にお腹を空かせている。

政治的には、エドガー軍務卿が送り込んだ側室候補である。

ヴェンデリンの周囲へ新たな派閥が入り込むための人物でもある。

それでも本人は、複雑な政治よりも、ヴェンデリンと一緒に狩りができるか、竜の肉を食べられるかを気にしている。

その素直さが可愛らしい。

ヴェンデリンの婚約者や側室候補は、単に守られる女性ではない。

エリーゼは治癒と浄化を担当する。

イーナは槍で戦う。

ルイーゼは魔闘流を使う。

ヴィルマは怪力と戦斧で前線に立つ。

ヴェンデリンの冒険者生活についていくには、相応の実力が必要である。

その点で、ヴィルマは政治的に送り込まれた人物でありながら、パーティーの戦力としても自然に加われそうだった。

今後、イーナやルイーゼとどのような関係を築くのかも楽しみである。

今後のクルトがどこまで暴走するのか

本巻の終わりでは、ヴェンデリンたちによる未開地開発が始まったばかりである。

まだ正式に領地を与えられたわけではない。

クルトが廃嫡されたわけでもない。

アルトゥルも当主の座に残っている。

しかし、実質的な力関係は変わり始めている。

領民はヴェンデリンの店を利用する。

未開地では新しい農地が作られる。

外から人が集まる。

ローデリヒが経済を管理する。

パウルたちが治安を守る。

中央政府や大貴族もヴェンデリンを支援する。

対するクルトには、長男という立場以外に対抗手段がない。

このまま黙っているとは思えない。

すでにルックナー会計監査長とのつながりもできている。

追い詰められたクルトが、どこまで危険な行動へ出るのか。

アマーリエや子どもたちは無事でいられるのか。

父アルトゥルは、最後にどのような判断を下すのか。

クラウスは、さらに何を仕掛けるのか。

次巻への不安と期待が大きく残る終わり方だった。

力で倒すよりも、生活を豊かにする方が強い

第4巻を読んで最も印象に残ったのは、ヴェンデリンが力でクルトを倒そうとしなかった点である。

竜を倒す魔法がある。

数千体のアンデッドを浄化できる。

本気になれば、小さな騎士爵家など簡単に制圧できるだろう。

しかし、それをすればヴェンデリンは侵略者になる。

領民にも犠牲が出る。

クルトの妻や子どもまで巻き込まれる。

だからヴェンデリンは、別の方法を選ぶ。

領民が必要とする物を届ける。

働ける場所を作る。

産物を買い取る。

田畑を整える。

死者を弔う。

生活を豊かにし、領民自身にどちらが領主として相応しいか判断させる。

派手な魔法戦闘ではない。

それでも、相手の存在価値を根本から失わせるほど強い方法である。

領主の価値は、爵位や血筋だけでは決まらない。

そこに住む人の生活を守り、少しでも良くできるかどうかで決まる。

クルトとヴェンデリンの対立を通して、そのことがはっきりと描かれていた。

魔の森でのアンデッド討伐。

大叔父との別れ。

ヴィルマとの出会い。

領民の慰霊会。

未開地で始まる商売と稲作。

戦闘、政治、日常、領地経営が詰め込まれた、非常に読み応えのある一冊だった。

次巻では、この御家騒動がどのような形で決着するのか。

クルトが自分の過ちに気づくのか、それともさらに深いところまで堕ちてしまうのか。

続きが気になって仕方がない。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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考察・解説

バウマイスター家の継承

バウマイスター家の継承問題と背後にある思惑の全貌

『八男って、それはないでしょう!』における「バウマイスター家の継承問題と跡継ぎを巡る暗闘」について、長子継承の原則と兄弟たちの自立、魔法の才能が招く御家騒動の懸念、次期当主クルトへの不満とクラウスの暗躍、ルックナー会計監査長の謀略、およびヴェンデリンの決断と金による排除の各点から解説する。

長子継承の原則と兄弟たちの自立

バウマイスター家では、長男であるクルトが次期当主として決定していた。

・次男のヘルマンは万が一の予備として扱われた後に分家へ婿入りした。

・三男パウル、四男ヘルムート、五男エーリッヒは成人後に実家から支度金をもらって王都へと旅立ち、自立の道を歩んだ。

・八男のヴェンデリンは魔法の才能に恵まれていたため、自力で冒険者として独立することが期待されていた。

魔法の才能が招く御家騒動の懸念

父アルトゥルや家族は、ヴェンデリンの魔法の才能を知っていたが、それを領地の開発などに利用することは意図的に避けていた。

・魔法の力で領民の生活を豊かにすれば、無能なクルトよりもヴェンデリンこそが次期当主にふさわしいと領民たちが直訴し、凄惨な跡継ぎ争いが勃発する恐れがあった。

・アルトゥルは長子継承の秩序を守るため、ヴェンデリンに領地の仕事を与えず、家を出るまで放置するという対応をとった。

次期当主クルトへの不満とクラウスの暗躍

長男クルトは、読み書きや計算ができない上に保守的であり、領民への配慮に欠ける人物であった。

・過去に行われた魔の森への無謀な遠征によって多くの働き手を失ったにもかかわらず、領民に過酷な開墾を強いたことで領民からの不満が高まっていた。

・本村落の名主であるクラウスはクルトを見限り、ヴェンデリンにバウマイスター家を継がせようと暗躍した。

・クラウスはヴェンデリンに領民向けのバザーを開かせたり、未開地での事業に関わらせることで、クルトの存在価値を失わせようとした。

ルックナー会計監査長の謀略

ヴェンデリンが古代竜討伐などで男爵に陞爵し、莫大な富を得たことで、中央の貴族たちもバウマイスター家と未開地の利権に目を付けた。

・ヴェンデリンが地下遺跡探索で行方不明になった際、彼と敵対するルックナー会計監査長は、クルトに「ヴェンデリンが死ねば、クルトの息子が男爵位と莫大な遺産を継げる可能性がある」と唆す使者を送った。

・これを聞いたクルトは、弟の財産と未開地開発の利権を奪って大貴族へ成り上がるという欲望に憑りつかれ、ますます暴走の兆しを見せるようになった。

・実際には、ヴェンデリンが残した遺言状において、継承権の第一位は五男エーリッヒの長男イェルン、次に三男や四男の子供たちに指定されており、クルトの子供たちには継承権は一切与えられていなかった。

ヴェンデリンの決断と金による排除

ヴェンデリン自身は、面倒な実家の領主になるつもりは毛頭なかった。

・クルトの横暴が目に余るようになり、領民からの期待も高まる中で、最終的にクルトを廃嫡させ、現在の領地を次男ヘルマンに継がせ、広大な未開地は自らの資金で開発するという方針を固めた。

・ヴェンデリンは武力を使うのではなく、未開地に開発特区を設けて何でも屋を開き、圧倒的な経済力と利便性を領民に提供することで、クルトの支持を奪い、彼を自滅へと追い込んでいくこととなった。

まとめ

バウマイスター家の継承問題を巡る一連の全貌は、長子継承のルールと八男の隔離から始まり、能力差が引き起こす御家騒動の懸念、名主クラウスの暗躍、中央貴族による利権を巡る陰謀、そして経済力を駆使した当主排除の決断に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
封建的な規律や血統の因習という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、権謀術数と経済的解決の記録である。
才能の隠蔽から、家臣の離反、欲望の爆発、遺言状の真相、そして経済力による引導へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

クルトの劣等感

クルトの劣等感と自滅への全貌

『八男って、それはないでしょう!』において、バウマイスター本家の長男にして次期当主であるクルトの劣等感と、それが引き起こした行動について、クルトの劣等感の根源、弟たちへの恐れと嫉妬、ヴェンデリンへの憎悪と暴走、および劣等感が招く孤立と自滅への道の各点から解説する。

クルトの劣等感の根源

クルトの劣等感の根底には、次期当主である自分自身にこれといった取り柄がないという事実が存在する。

・彼は読み書きや計算が苦手で、貴族の嗜みである剣の腕前も平凡であり、領民への配慮にも欠ける人物であった。

・ただ長男に生まれたからという理由だけで跡継ぎの座にいるに過ぎず、彼自身も無意識のうちにその頼りなさを理解していた。

・自らの能力の低さを自覚していたからこそ、有能な弟たちに対して過剰な警戒心を抱くこととなった。

弟たちへの恐れと嫉妬

クルトの劣等感は、八男ヴェンデリンが台頭する前からすでに芽生えていた。

・次男ヘルマンへの警戒:自分よりも腕っ節が強く、見た目は怖いが話すと面白いため、領民を率いて人気を集めるヘルマンに対して、長子相続の脅威になると警戒していた。

・五男エーリッヒへの嫉妬:弓術に優れ、読み書きや計算ができ、領内の女性にも人気があるエーリッヒが、名主クラウスの提出した徴税報告書のミスを見抜いた際、クルトはエーリッヒが父に取り入って次期当主になろうとしているのではと強く疑い、彼が王都へ出るまで警戒を続けていた。

ヴェンデリンへの憎悪と暴走

圧倒的な魔法の才能を持つ八男ヴェンデリンの存在が、クルトの劣等感と恐怖を決定的なものにした。

・もしヴェンデリンがその魔法を使って領地を豊かにすれば、領民たちは無能なクルトよりもヴェンデリンを当主にと望むようになると恐れた。

・そうなれば自分は次期当主の座を追われ、20歳も年下の弟に頭を下げて生きていくしかなくなると激しく危惧した。

・家を出たヴェンデリンが竜討伐などの功績で男爵に成り上がり莫大な富と名声を得ると、クルトの感情は恐怖から自分の未来と未開地開発の夢を弟に奪われるという逆恨みと憎悪へと変わっていった。

・ヴェンデリンが地下遺跡探索で行方不明になった噂を聞いた際、クルトは弟を心配するどころか、ヴェンデリンが死ねば自分の息子がその遺産と男爵位を継げるかもしれないと歓喜し、暗殺や遺産強奪の期待に心を躍らせるほど悪意を膨らませていった。

劣等感が招く孤立と自滅への道

劣等感と余裕のなさは、クルトの行動をますます狭量で冷酷なものにしていった。

・エーリッヒたち弟の結婚祝儀を出し渋ったり、魔の森遠征で戦死した領民たちの錆びた遺品を、遺族から鉄資源として再利用すると言って強引に奪い取ろうとしたりするなど、領民の心を痛めつける愚行に走った。

・自分よりも遥かに強大になった弟への劣等感から自らの立場にしがみつくクルトに対し、ヴェンデリンは直接的な武力を使うのではなく、未開地に開発特区を設けて商店や農地を開き、圧倒的な経済力と利便性を見せつけた。

・領民の支持を奪い、クルトの存在価値を失わせて自滅へと追い込む対抗策をとられることとなった。

まとめ

クルトの劣等感と自滅を巡る一連の全貌は、長男としての無能さに対する潜在的な自覚から始まり、有能な弟たちへの猜疑心と暗闘、ヴェンデリンの飛躍に対する逆恨みと暴走、そして経済力と利便性によって領民の支持を完全に失う自滅に至るまで、その歩みを明瞭に示している。血統への執着や自らの劣等感という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、愚行の果ての破滅と世代交代の記録である。
能力不足の露呈から、嫉妬の肥大化、悪意の爆発、民心の離反、そして存在価値の喪失へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

ヴェンデリンの未開地開発

未開地開発と経済的包囲網の全貌

『八男って、それはないでしょう!4』における「ヴェンデリンの未開地開発」について、未開地のポテンシャルと圧倒的な事前準備、開発特区の設立と魔法によるインフラ整備、何でも屋による経済的支配、開発の真の目的である長男クルトの経済的排除、および王国と大貴族の思惑の各点から解説する。

未開地のポテンシャルと圧倒的な事前準備

バウマイスター騎士爵領の南側に広がる未開地は、百年以上放置されていたが、実際には農地や河川に恵まれ、鉄、銅、金、銀、ミスリル、オリハルコンなどの鉱脈まで存在する宝の山であった。

・ヴェンデリンは幼少期から魔法の訓練を兼ねて単独で探索を行った。

・未開地のほぼ全域を瞬間移動で移動できるポイントを把握した。

・詳細な地図を完成させていた。

開発特区の設立と魔法によるインフラ整備

ヴェンデリンは実家領地と未開地の境界にある平地を父アルトゥルから無償で借り受け、利益の2割を納める条件で開発特区を設立した。

・移築魔法の活用:移築魔法を得意とするレンブラント氏を雇い、王都で購入した中古の家屋や商店、ブライヒブルクの豪邸を一瞬で未開地に移築させ、居住区や商業区を即座に作り上げた。

・稲作の開始と農地開拓:王都で農業志望の若者を集め、辺境伯領からベテラン農夫を指導役として呼び寄せた。土木魔法で田畑や用水路を一気に整備し、魔法で土質改良や肥料作成まで行い、通常なら長期間を要する開墾をわずか数日で形にした。

・害獣対策:未開地に生息する巨大熊などの猛獣や害獣の侵入を防ぐため、農地との間に魔法で幅3メートル、深さ5メートルの堀と土塁を二重に築き、安全を確保した。

何でも屋による経済的支配

移築した店舗を利用し、実務能力に長けたローデリヒを店長とする何でも屋を開業した。

・瞬間移動と魔法の袋を使ってヴェンデリン自らが商品を仕入れるため輸送コストがほとんどかからず、塩や砂糖、生活雑貨、農機具などを安価かつ豊富に供給できた。

・これによりブライヒレーダー辺境伯は赤字だった商隊の派遣を中止した。

・領民の生活物資の供給はヴェンデリンの商店に完全に依存することになった。

開発の真の目的:長男クルトの経済的排除

この開発の真の狙いは、長男クルトを武力ではなく圧倒的な経済力と利便性によって自滅に追い込むこといであった。

・ヴェンデリンがもたらす豊かな生活を領民が享受すればするほど、無能で時代の変化に対応しようとしないクルトの存在価値や支持は失われていった。

・直接手を下すことなく、金と利便性で兄の立場を奪うという非常に冷酷かつ効果的な策であった。

王国と大貴族の思惑

ヴェンデリンが地下遺跡の報酬として国家予算並みの莫大な資金を得た背景には、国王やルックナー財務卿の政治的意図が隠されていた。

・彼らは、ヴェンデリンにその自己資金を使ってこの広大な南端未開地を開発させるつもりであった。

・もし失敗しても王国の腹は痛まず、成功すれば新しい大領地が誕生する計算であった。

・そこに必要となる家臣、教会、商人といった新たな利権を、中央や南部の貴族たちが得ることができるという強かな思惑が存在した。

まとめ

未開地開発と経済的包囲網を巡る一連の全貌は、手付かずの膨大な資源と徹底した事前準備から始まり、魔法を用いた高速インフラ整備、流通の独占による何でも屋の展開、長男クルトの不全を浮き彫りにする経済的排除、そして王国中央を巻き込んだ国策的プロジェクトに至るまで、その実態を明瞭に示している。
旧態依然とした身分制や領主権の停滞という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、近代的な開発手法と戦略的経済戦の記録である。
事前準備の完了から、インフラの急拡大、流通の制覇、民心の掌握、そして国家規模の利権形成へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

クラウスの画策と独白

クラウスの画策と独白の全貌

『八男って、それはないでしょう!4』における「バウマイスター領本村落の名主クラウスの画策と独白」について、過酷な過去と領主への不信、息子たちの不審死と消えた忠誠心、兄弟たちを利用したクルトへの精神的包囲、およびバザーの提案とクルト排除への誘導の各点から解説する。

過酷な過去と領主への不信

クラウスは名主の次男として生まれ、若い頃は喋る荷駄馬のように扱われ、ブライヒブルクへの命がけの塩の買い出しを強制されていた。

・道中で仲間が命を落とす過酷な環境を経験し、先々代当主の命令で従軍して手柄を立てた際にも、目立ちすぎたという理不尽な理由で叱責を受けた。

・名主を継いだ後、彼は商隊を誘致して領民の生活を向上させたが、バウマイスター家に対する不信感は昔から根付いていた。

息子たちの不審死と消えた忠誠心

クラウスが領主アルトゥルに対して決定的な憎悪を抱くようになった原因は、彼の跡取り息子と、娘レイラの婚約者が、アルトゥルとの狩猟中に同時に崖から転落死した事件であった。

・葬儀の直後、アルトゥルはクラウスに対し、レイラを妾として差し出せ、ただし自分の方から差し出したことにしろと命じた。

・アルトゥルが領内の人妻に手を出す悪癖の事後処理まで押し付けられ、他の村落の名主たちから娘を差し出して徴税権を独占した男として嫌悪されるようになった。

・二人同時に転落死したのは事故ではなく、レイラを手に入れ生まれた子を名主の跡取りにしようとしたアルトゥルの陰謀であると確信した。

・この事件を機に忠誠心は完全に消え失せ、自らを喋る荷駄馬以下の存在と定義し、ただ名主としての義務と領地発展のためだけに冷徹に動くようになった。

兄弟たちを利用したクルトへの精神的包囲

クラウスは、無能な次期当主であるクルトを排除するため、長年にわたり静かな画策を行ってきた。

・過去にはわざと計算ミスのある徴税報告書を提出し、それを優秀な五男エーリッヒに指摘させることで、クルトにエーリッヒが次期当主を狙っているという疑心暗鬼を抱かせた。

・結果的にエーリッヒやヴェンデリンは実家を出ることになったが、有能な彼らを無能なクルトの下から逃がしたとも言える行動をとっていた。

バザーの提案とクルト排除への誘導

竜殺しの英雄となり莫大な財力を持って帰還したヴェンデリンに対し、クラウスは当初当主になってほしいと直接懇願した。

・それを断られると、今度は領民のためにバザーを開いてほしいと提案した。

・この提案は、商隊が年に数回しか来ず娯楽や物資に飢えている領民を救う大義名分があったが、真の狙いはヴェンデリンの圧倒的な経済力と利便性を領民に見せつけ、何もできないクルトの支持を奪うことであった。

・クラウスはわざとオーバーアクションでヴェンデリンを称賛し、クルトの怒りや焦りを煽った。

・領地が発展し領民が豊かになるのであれば領主がバウマイスター家でなくても構わないとすら考えており、クルトが嫉妬と劣等感から自滅するのを静かに待ち望んでいた。

まとめ

クラウスの画策と独白を巡る一連の全貌は、理不尽な労働体験と領主への深い不信から始まり、親族の不審死と娘の強奪による忠誠心の決壊、クルトを揺さぶる長年の精神的謀略、そしてバザーを通じた領主権力の解体工作に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
身分制の横暴や領主一族的支配という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、怨嗟と計算に満ちた裏の生存戦略の記録である。
過酷な体験から、絶望の深まり、冷徹な暗躍、民心の誘導、そして旧支配層の排除へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

魔の森の浄化

魔の森の浄化と遺品返還を巡る全貌

『八男って、それはないでしょう! 4』において描かれる「魔の森の浄化」について、依頼の背景と目的、少数精鋭による浄化作戦、第二陣の襲来と先代従士長、および遺品返還とクルトの暴挙の各点から解説する。

依頼の背景と目的

地下遺跡探索によって国家予算並みの莫大な報酬を得たヴェンデリンたちは、その扱いに困り寄親であるブライヒレーダー辺境伯に相談を持ちかけた。

・辺境伯は資金を大陸南端の未開地開発に充てるという王国側の思惑を察知した。

・開発の足掛かりとして魔の森への慰霊討伐をヴェンデリンたちに依頼した。

・約15年前に先代ブライヒレーダー辺境伯が無謀な遠征を行って戦死した、約2000名の兵士たちのアンデッド化を防ぎ成仏させるための後始末でもあった。

少数精鋭による浄化作戦

大軍を送り込めば魔物の大群を呼び寄せてしまうため、ヴェンデリン、エリーゼ、エルヴィン、イーナ、ルイーゼ、ブランタークという少数精鋭で作戦が実行された。

・エリーゼが布の上に描かれた浄化の補助魔法陣に立って直径100メートルほどの浄化魔法障壁を展開した。

・拡声器でブライヒレーダー辺境伯の戦下手などの悪口を叫び、生前の感情を残すアンデッドをおびき寄せた。

・集まってきたゾンビたちは障壁に触れると次々と溶けるように消滅し、残された武具や所持品は遺品としてヴェンデリンが魔法の袋に回収していった。

・先代辺境伯のゾンビが現れたところで、ヴェンデリンが広域拡散魔法を用いて浄化魔法障壁を半径500メートルまで広げ、一気にアンデッドを殲滅した。

第二陣の襲来と先代従士長

第一陣で浄化されたのはブライヒレーダー家の諸侯軍ばかりであり、バウマイスター家の諸侯軍の姿はなかった。

・探知範囲外にいた数千のアンデッド軍団が一斉に襲いかかってきた。

・この集団にはバウマイスター家の兵士だけでなく、かつて師匠アルフレッドが討ち取った飛竜やワイバーンなどの魔物のアンデッドも含まれていた。

・激戦の末に最後に残ったのは、バウマイスター家の先代従士長が上位アンデッドであるリッチと化した姿であった。

・理不尽な遠征で命を落とした深い恨みから短期間でリッチになったが、血縁者であるヴェンデリンからひ孫などの無事を聞くと戦意を喪失した。

・言い残して自ら剣を下ろし、ヴェンデリンの聖光によって浄化された。

遺品返還とクルトの暴挙

浄化後、ヴェンデリンたちは回収した遺品を遺族に返還するため実家に戻った。

・次期当主である長男クルトは遺品は鉄資源として再利用すると主張し、取り巻きの鍛冶屋エックハルトに安値で買い取らせようとした。

・アンデッド化により遺骨のない遺族にとって遺品は墓に埋める大切なものであったが、クルトは一切の慈悲を見せなかった。

・見かねたヴェンデリンは自ら精製した巨大な鉄塊を鍛冶屋に放り投げて遺品の没収を阻止し、領民の前でクルトたちを強く非難した。

・この出来事は領民たちが非情なクルトに見切りをつけ、未開地開発と豊かな生活をもたらす可能性を持つヴェンデリンへの支持をさらに高める決定的なきっかけとなった。

まとめ

魔の森の浄化と遺品返還を巡る一連の全貌は、慰霊と開発を目的とした遠征依頼から始まり、少数精鋭による高効率な浄化作戦、無念を残した先代従士長との決着、そして遺品回収を通じたクルトの冷酷さの露呈に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
過去の因縁や不条理な領主支配という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、英霊の救済と領民の民心掌握の記録である。
慰霊討伐の決行から、大規模浄化、先祖との対話、遺品の防衛、そして指導者としての資質証明へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

ヴィルマの護衛加入

ヴィルマの加入と政治的思惑の全貌

『八男って、それはないでしょう! 4』において、エドガー軍務卿の縁戚であるヴィルマがヴェンデリンの護衛および側室候補として加入するエピソードについて、ヴィルマの素性と英雄症候群、エドガー軍務卿の思惑、圧倒的な戦闘力と食への執着、ならびにヴェンデリンとヒロインたちの反応の各点から解説する。

ヴィルマの素性と英雄症候群

ヴィルマエトル・フォン・アスガハンは、エドガー軍務卿の縁戚にあたる法衣貴族アスガハン準男爵家の三女である。

・英雄症候群という、一千万人に一人と言われる原因不明の特異体質の持ち主であった。

・筋肉密度が過剰で、筋肉繊維に極小の魔力が効率よく絡みつくことで、常人を圧倒するパワーを長時間発揮できる体質である。

・対人戦闘能力に限れば最強クラスの実力を持つが、代償として過剰なカロリー摂取を必要とし、すぐに飢えてしまう危険を抱えていた。

・実家では莫大な食費を賄いきれなかったため、10歳の頃に自らエドガー軍務卿の屋敷へ売り込みに行き、戦斧術や勉学を教わりながら私的に保護されていた。

エドガー軍務卿の思惑

ヴェンデリンが実家のバウマイスター領の御家騒動に対処するため帰郷する際、ヴィルマはパウルが率いる地方巡検視の護衛隊に紛れる形で、ヴェンデリンの私的な護衛として送り込まれた。

・背景には、エドガー軍務卿の強い政治的野心が存在していた。

・王国がヴェンデリンの豊富な資金を使って南端未開地を開発させるつもりであると察知しており、利権に食い込むための足がかりを欲していた。

・冒険者として活動するヴェンデリンに対し、深窓の令嬢を側室として押し付けても足手まといになるだけだが、狩猟や戦闘に優れたヴィルマであれば自然に同行させることができると判断した。

・護衛として既成事実を作り、最終的に彼女をヴェンデリンの側室に据えて強力な繋がりを得るというのが、軍務卿の真の狙いであった。

圧倒的な戦闘力と食への執着

常に空腹を訴える小リスのような外見とは裏腹に、ヴィルマの戦闘力は桁外れであった。

・未開地での狩猟では、遭遇した全長4メートル近い巨大熊の首を戦斧で一撃のもとに刎ね飛ばした。

・南方の海岸で全長20メートルに及ぶサーペントに襲われた際にも、自らの魔力を一時的に爆発させて戦斧を投擲し、一撃でその首を切断する驚異的な実力を見せた。

・行動原理も極めて現実的であり、甲斐性があって自分にたくさん食べさせてくれる相手であるヴェンデリンを好ましく思っていた。

・彼からの食事の提供に対して強い関心を示していた。

ヴェンデリンとヒロインたちの反応

ヴィルマがエドガー軍務卿から伽の相手も頼まれていると発言したことで、ヴェンデリンの婚約者たちは様々な反応を示した。

・正妻のエリーゼは穏やかに飲み物や食事を与えて受け入れ、イーナは新たな側室候補の登場にため息をつき、ルイーゼは自分よりも胸の大きいヴィルマに危機感を抱いた。

・ヴェンデリンは、軍や通常の政略結婚では居場所を見つけにくいヴィルマの境遇に同情するとともに、素直な性格と護衛としての確かな実力を高く評価した。

・大食いという難点も自身の財力と魔法による狩猟能力で十分にカバーできると判断し、彼女を正式に私的護衛として引き取り、面倒を見ることを決意した。

まとめ

ヴィルマの加入と政治的思惑を巡る一連の全貌は、英雄症候群という特異体質と過酷な食糧問題から始まり、未開地利権を狙う軍務卿の強かな思惑、圧倒的な戦斧術と現実的な価値観、そして周囲の受容とヴェンデリンによる保護の決意に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
身体的な特異性や政治的な利用価値という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、生存の保障と新たな絆の形成の記録である。
特異体質の庇護から、政略的配置、戦闘での活躍、周囲との打ち解け、そして新たな居場所の獲得へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

八男3巻レビュー
八男まとめ
八男5巻レビュー

登場キャラクター

バウマイスター男爵家(ドラゴンバスターズ・家臣・護衛)

ヴェンデリン・フォン・ベンノ・バウマイスター

バウマイスター騎士爵家の八男で、独立してバウマイスター男爵家を立ち上げた。強大な魔法の才能を持つ。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター男爵家・当主。ドラゴンバスターズ・リーダー。
・物語内での具体的な行動や成果
 ブライヒレーダー辺境伯の依頼で魔の森のアンデッドを浄化した。実家領内でバザーを開催し、後に何でも屋を開いて領地開発を始めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地下遺跡攻略で莫大な報酬を得た。未開地開発の中心人物として期待されている。

エリーゼ・カタリーナ・フォン・ホーエンハイム

ホーエンハイム枢機卿の孫娘で、ヴェンデリンの婚約者。聖魔法による浄化を得意とする。

・所属組織、地位や役職
 ドラゴンバスターズ・後方支援。助司祭。
・物語内での具体的な行動や成果
 魔の森で浄化の補助魔法陣を展開し、多数のゾンビを消滅させた。戦死者の埋葬儀式では祝詞を唱えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ヴェンデリンの正妻としての地位を確立している。

エルヴィン・フォン・アルニム

ヴェンデリンの冒険者予備校時代からの友人。剣術に長けている。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター男爵家・従士長。ドラゴンバスターズ・前衛。
・物語内での具体的な行動や成果
 地下遺跡攻略の報酬の大半を辞退し、ヴェンデリンに上乗せした。魔の森でアンデッドの排除を担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 実家の相続権を放棄している。

イーナ・ズザネ・ヒレンブラント

槍術指南役の娘で、ヴェンデリンの友人。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター男爵家・側室候補。ドラゴンバスターズ・前衛。
・物語内での具体的な行動や成果
 魔導ギルドの実験で自分の下着が召喚され、ヴェンデリンに抗議した。魔の森で魔物の排除を担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地下遺跡攻略の報酬の大半を分配金異議申し立て制度を利用して辞退した。

ルイーゼ・ヨランデ・アウレリア・オーフェルヴェーク

魔闘流指南役の娘で、ヴェンデリンの友人。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター男爵家・側室候補。ドラゴンバスターズ・前衛。
・物語内での具体的な行動や成果
 魔導ギルドで自身の下着を召喚された。魔の森でアンデッド飛竜の頭部を粉砕した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地下遺跡攻略の報酬を分配金異議申し立て制度により辞退した。

ヴィルマエトル・フォン・アスガハン

アスガハン準男爵家の三女。筋肉に魔力が絡む英雄症候群という特異体質を持つ。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター男爵家・私的護衛。側室候補。
・物語内での具体的な行動や成果
 戦斧を投擲してサーペントの首を切断した。未開地で巨大熊を討伐した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 エドガー軍務卿の推薦でヴェンデリンの護衛として派遣された。

ローデリヒ

バウマイスター男爵家の家宰を務める。実務能力に優れている。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター男爵家・家宰(開発特区管理者)。
・物語内での具体的な行動や成果
 未開地の開発特区に開いた「何でも屋」の店長を務めた。大工たちを指揮して家屋の修理を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ヴェンデリンの代理人として開発特区の管理を任された。

ドミニク

バウマイスター男爵家のメイド。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター男爵家・メイド。
・物語内での具体的な行動や成果
 本文内に具体的な行動の記載はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 移築された屋敷に住み込んでいる。

ジークハルト・フォン・ヴィクトール・ルンマー

ルンマー騎士爵家の三男。金髪碧眼の剣の達人。

・所属組織、地位や役職
 王都警備隊・小隊長。地方巡検視の護衛。
・物語内での具体的な行動や成果
 パウルの部下としてバウマイスター領へ同行した。ヴィルマの実力を認めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 護衛任務終了後、パウルの陪臣として世襲可能な職を得る予定である。

オットマー・フォン・ブライブトロイ

ブライブトロイ準男爵家の四男。大木槌と剣の使い手。

・所属組織、地位や役職
 王都警備隊・小隊長。地方巡検視の護衛。
・物語内での具体的な行動や成果
 パウルの部下としてバウマイスター領へ同行した。手紙を読み、パウルに退職と陪臣任官の事実を伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 護衛任務終了後、パウルの陪臣として職を得る予定である。

ゴットハルト・テオドリヒ・フィリップス

フィリップス子爵家の三男。細剣とナイフの扱いに長けている。

・所属組織、地位や役職
 王都警備隊。地方巡検視の護衛。
・物語内での具体的な行動や成果
 パウルの部下として同行し、視察後の食事を促した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 護衛任務終了後、パウルの陪臣となる予定である。

ルーディ・ウルバーン・ライスター

実家が食料品店の平民。入隊以来二十年間従兵を務めている。

・所属組織、地位や役職
 王都警備隊・従兵。地方巡検視の護衛。
・物語内での具体的な行動や成果
 パウルの部下としてバウマイスター領へ同行した。夕食の量の多さに驚いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 護衛任務終了後、パウルの陪臣となる予定である。

腕の立つ警備員たち

ローデリヒが選抜して雇い入れた警備員。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター男爵家・警備員。
・物語内での具体的な行動や成果
 本文内に具体的な行動の記載はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 移築された家に居住している。

若い男性店員

王都で雇用された店員。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター男爵家・何でも屋の店員。
・物語内での具体的な行動や成果
 開発特区の店舗で商品の陳列や販売を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

大工たち

ローデリヒに雇われた職人。

・所属組織、地位や役職
 大工。
・物語内での具体的な行動や成果
 移築された古い家の修理作業を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 作業終了後、王都へ送り届けられる予定である。

農業志望の若者たち

王都で募集された開墾の要員。

・所属組織、地位や役職
 農業従事者。
・物語内での具体的な行動や成果
 指導役の指示に従い、土起こしや用水路の補強、ガラス製ハウスの組み立てを行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

バウマイスター騎士爵家(本家・領民)

アルトゥル・フォン・ベンノ・バウマイスター

バウマイスター騎士爵家の当主。領地の保全を第一に考える。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター騎士爵家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 ブライヒレーダー辺境伯からの遺品回収依頼と上納金の条件を受け入れた。ヴェンデリンに未開地での活動と商店の営業を許可した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 クルトへ実権の移譲を進めている。

ヴェンデリンの母

アルトゥルの正妻。外部から嫁入りした。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター騎士爵家・当主の妻。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンとパウルに対し、今後の混乱による犠牲者が少なくなることを願うと伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 領内の政治的権力を持たず、静観の立場を取っている。

クルト

バウマイスター家の長男で次期当主。弟たちに劣等感と強い嫉妬を抱く。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター騎士爵家・長男。
・物語内での具体的な行動や成果
 遺品から五割の税を取ろうとし、鍛冶屋エックハルトに遺品を再利用させようとした。ヴェンデリンに敵対的な言動を取り続けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 遺品回収の対応により、領民たちからの支持を失いつつある。

アマーリエ

クルトの妻。地方都市に近い騎士爵家の次女。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター騎士爵家・長男の妻。
・物語内での具体的な行動や成果
 クルトの代理として戦死者遺族慰労の食事会に出席し、祭壇に供物を捧げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ヴェンデリンから将来の保護を約束された。

カール

クルトとアマーリエの長男。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター騎士爵家。
・物語内での具体的な行動や成果
 慰霊の食事会に同行し、ヴェンデリンから竜退治の話を聞いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ヴェンデリンから土産のお菓子や玩具を受け取った。

オスカー

クルトとアマーリエの次男。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター騎士爵家。
・物語内での具体的な行動や成果
 慰霊の食事会に同行し、ヴェンデリンから竜退治の話を聞いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

クラウス

本村落の名主。過去の出来事からアルトゥルを憎んでいる。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター騎士爵家・本村落名主。
・物語内での具体的な行動や成果
 バザーの開催をヴェンデリンに依頼した。遺品返還や上納金の明細確認を補佐した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 クルトを排除し、ヴェンデリンに領地を継がせるべく暗躍している。

レイラ

クラウスの娘。アルトゥルの妾となった。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター騎士爵家・妾。
・物語内での具体的な行動や成果
 本文内に具体的な行動の記載はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 婚約者の死後、アルトゥルの妾として差し出された。

レイラの婚約者

レイラと結婚する予定だった青年。

・所属組織、地位や役職
 本村落の住人。
・物語内での具体的な行動や成果
 アルトゥルに同行した狩猟中に崖から転落して死亡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 死亡の真相は不明のままである。

クラウスの跡取り息子

クラウスの息子。

・所属組織、地位や役職
 本村落の住人。
・物語内での具体的な行動や成果
 アルトゥルに同行した狩猟中に崖から転落して死亡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ユルゲン

他の村落の名主。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター騎士爵家・村落名主。
・物語内での具体的な行動や成果
 遺品の提供を強要するクルトに対し、説得を試みた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 遠征で子供を失っている。

エックハルト

本村落の鍛冶屋。クルトの取り巻きの一人。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター騎士爵家・鍛冶屋。
・物語内での具体的な行動や成果
 クルトの指示で遺品を買い叩こうとした。ヴェンデリンから鉄塊を投げ落とされて腰を抜かした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 独占状態にあぐらをかいていたが、ヴェンデリンの警告で廃業の危機を悟らされた。

マイスター

バウマイスター領の神父。高齢である。

・所属組織、地位や役職
 教会・神父。
・物語内での具体的な行動や成果
 戦死者の埋葬儀式を取り仕切った。慰霊の食事会で焼いた魚を食べた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 腰を痛めたため、エリーゼの介助を受けた。

ヘレナ

バウマイスター本家の使用人である老婆。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター騎士爵家・使用人。
・物語内での具体的な行動や成果
 帰郷したヴェンデリンを出迎えた。クラウスを屋敷に呼びに行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ロブス

バウマイスター本家の執事である老人。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター騎士爵家・執事。
・物語内での具体的な行動や成果
 帰郷したヴェンデリンを出迎え、その功績を喜んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

職人たち

本村落出身の職人。

・所属組織、地位や役職
 職人。
・物語内での具体的な行動や成果
 バザーで売られていた外部の品を見て、クルトに言いつけに行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

遺族たち

魔の森遠征で戦死した領民の家族。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター領民。
・物語内での具体的な行動や成果
 遺品を持ち帰り、埋葬の儀式を行った。慰霊の食事会に参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 遺品を奪おうとしたクルトに反感を抱いた。

領民たち

バウマイスター領に住む人々。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター領民。
・物語内での具体的な行動や成果
 バザーに集まり、長年蓄えていた現金で塩や生活雑貨を買い漁った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ヴェンデリンが領主になることを期待している。

村人たち

本村落に住む人々。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター領民。
・物語内での具体的な行動や成果
 岩茸採集に出向き、死亡事故と同時期に森へ入っていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

バウマイスター分家(従士長家)

ヘルマン

バウマイスター本家の次男。従士長家へ婿入りした。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター分家・当主。従士長。
・物語内での具体的な行動や成果
 遺品回収の件で本屋敷に乗り込み、クルトと口論になった。ヴェンデリンたちを分家の屋敷に宿泊させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 将来的に領地の一部を割譲され、ヴェンデリンの支援を受ける予定である。

マルレーネ

ヘルマンの妻。分家の事実上のトップ。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター分家・当主の妻。
・物語内での具体的な行動や成果
 クルトを非難し、ヴェンデリンたちを歓迎した。慰霊の食事会で料理や準備を手伝った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

レオン

ヘルマンとマルレーネの長男。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター分家・跡取り。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンから土産を受け取り、竜退治の話を聞いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

クラーラ

ヘルマンとマルレーネの娘。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター分家。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンから土産を受け取った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

先代従士長

アルトゥルの叔父。魔の森遠征で息子たちと共に戦死した。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター諸侯軍・主将。
・物語内での具体的な行動や成果
 リッチ化してヴェンデリンたちの前に現れたが、家族の無事を聞いて戦意を喪失した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ヴェンデリンに家族を頼むと言い残し、浄化された。

分家の女性陣

戦死した分家の男性たちの未亡や娘たち。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター分家。
・物語内での具体的な行動や成果
 反本家の姿勢を崩さず、慰霊の食事会で料理を手伝った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

分家の婿たち

分家の女性たちと結婚して入り込んだ男性たち。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター分家。
・物語内での具体的な行動や成果
 バザーの設営や値札付けを手伝った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

分家の使用人

分家で働くリタイアした老人たち。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター分家・使用人。
・物語内での具体的な行動や成果
 分家に戻ってきたヘルマンを出迎えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

その他のバウマイスター家兄弟

パウル

バウマイスター家の三男。王都警備隊に所属している。

・所属組織、地位や役職
 王都警備隊・小隊長。地方巡検視。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンの護衛としてバウマイスター領へ同行し、領内を視察した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 警備隊を退職し、護衛任務成功の報酬として準男爵位と領地を得る予定である。

パウルの妻

パウルの妻。

・所属組織、地位や役職
 パウルの妻。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴィルマの食欲に対応するため、追加の食事を作らされた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ヘルムート

バウマイスター家の四男。王都バウマイスター家へ婿入りした。

・所属組織、地位や役職
 王都バウマイスター家。
・物語内での具体的な行動や成果
 エーリッヒと共にヴェンデリンから実家の情勢を聞いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

エーリッヒ

バウマイスター家の五男。ブラント家へ婿入りした。

・所属組織、地位や役職
 ブラント家。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンの訪問を受け、実家の情勢に関する推論を語った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ブライヒレーダー辺境伯家

ブライヒレーダー辺境伯

王国南部の有力貴族。バウマイスター家の寄親である。

・所属組織、地位や役職
 ブライヒレーダー辺境伯家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンに魔の森のアンデッド浄化を依頼した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ヴェンデリンが商店を開業したため、バウマイスター領への商隊派遣を中止した。

先代ブライヒレーダー辺境伯

現辺境伯の父。無謀な魔の森遠征で戦死した。

・所属組織、地位や役職
 ブライヒレーダー家諸侯軍・総大将。
・物語内での具体的な行動や成果
 ゾンビとなって魔の森を彷徨っていたが、ヴェンデリンの広域拡散魔法で浄化された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ブランターク・リングスタット

元一流冒険者のお抱え魔法使い。

・所属組織、地位や役職
 ブライヒレーダー辺境伯家・お抱え魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
 魔の森浄化作戦に同行し、魔法で魔物を退治した。クルトの暴言に怒りを露わにした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アルフレッド

ヴェンデリンの魔法の師匠。魔の森遠征で戦死した。

・所属組織、地位や役職
 元ブライヒレーダー辺境伯家お抱え魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
 生前、魔の森で命尽きるまで数千の魔物を倒し続けたことが判明した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

商隊の人たち

ブライヒレーダー辺境伯の補助金で年三回バウマイスター領を訪れる商人。

・所属組織、地位や役職
 商隊。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンの活躍を伝える号外を領内へ持ち込んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

老齢の農民たち

ブライヒレーダー辺境伯領から雇われた米作りの指導役。

・所属組織、地位や役職
 農民。
・物語内での具体的な行動や成果
 開発特区の田んぼで農業志望の若者たちに稲作の指導を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ヘルムート王国政府・中央貴族

国王

ヘルムート王国の統治者。

・所属組織、地位や役職
 ヘルムート王国・国王。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンに莫大な報酬を支払い、未開地開発のための資金を集めさせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

エドガー軍務卿

王国軍のトップ。

・所属組織、地位や役職
 軍務卿。
・物語内での具体的な行動や成果
 パウルの護衛任務にヴィルマを追加で派遣し、未開地開発の利権に食い込もうと図った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ルックナー財務卿

王国の財務卿。

・所属組織、地位や役職
 財務卿。
・物語内での具体的な行動や成果
 未開地開発のため、ヴェンデリンに報酬という形で資金を集めさせる計画に同意した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ルックナー男爵

ルックナー財務卿の弟。会計監査長を務める。

・所属組織、地位や役職
 会計監査長。男爵。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンが死亡したという噂を流し、クルトをそそのかそうとした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ホーエンハイム枢機卿

聖教会の有力者でエリーゼの祖父。

・所属組織、地位や役職
 聖教会・枢機卿。
・物語内での具体的な行動や成果
 本文内に具体的な行動の記載はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アームストロング導師

王宮筆頭魔導師。

・所属組織、地位や役職
 王宮筆頭魔導師。
・物語内での具体的な行動や成果
 本文内に具体的な行動の記載はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ワーレン

近衛騎士団の中隊長。

・所属組織、地位や役職
 近衛騎士団・中隊長。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンから王都で挨拶を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

エドガー軍務卿の家臣

エドガー軍務卿に仕える者。

・所属組織、地位や役職
 エドガー軍務卿の家臣。
・物語内での具体的な行動や成果
 パウルの家にヴィルマと食費の銀板を置いていった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ルックナー男爵の使者

ルックナー男爵の使いとして冒険者が赴いた。

・所属組織、地位や役職
 冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
 クルトにヴェンデリン死亡の可能性と遺産相続の話を伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

魔導ギルド

ベルント・カールハインツ・ヴァラハ

魔導ギルドの会長。平凡な魔法使いである。

・所属組織、地位や役職
 魔導ギルド・会長。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンに名誉役員の会員証を渡し、研究部門へ案内させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ルーカス・ゲッツ・ベッケンバウアー

魔導ギルド研究部門のトップ。実家が下着専門の服飾店である。

・所属組織、地位や役職
 魔導ギルド・研究部門長。
・物語内での具体的な行動や成果
 別の場所から物を引き寄せる魔法陣の実験を行い、女性職員のパンツを召喚した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 女性職員やイーナ、ルイーゼから平手打ちを受けた。

デリア

魔導ギルドで受付や案内を担当する女性職員。

・所属組織、地位や役職
 魔導ギルド・職員。
・物語内での具体的な行動や成果
 ベッケンバウアーにパンツを召喚され、平手打ちをして取り戻した。召喚されたクロマグロを見事に解体した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 腕前を認められ、後にバウマイスター領に魚屋を出店した。

研究部門の職員たち

魔導ギルドの地下で研究に従事する魔法使い。

・所属組織、地位や役職
 魔導ギルド・研究員。
・物語内での具体的な行動や成果
 魔法陣の試作や解析を行い、ヴェンデリンが召喚した海産物を試食した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ギルド職員たち

魔導ギルドの運営に携わる者たち。

・所属組織、地位や役職
 魔導ギルド・職員。
・物語内での具体的な行動や成果
 北方の海産物召喚に関する緘口令を敷かれた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

その他・街の人々

レンブラント

移築魔法を得意とする法衣男爵。

・所属組織、地位や役職
 法衣男爵。建築家。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンの依頼を受け、王都から家屋や商店をバウマイスター領へ移築した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

オーガス・リネンハイム

王都の不動産業者。

・所属組織、地位や役職
 リネンハイム不動産。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンのために、格安の古い家屋や倒産した商店の物件を手配した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

デリアの父親

王都で魚屋を営む男性。

・所属組織、地位や役職
 魚屋・店主。
・物語内での具体的な行動や成果
 バウマイスター男爵邸から入った大量の注文について、デリアに理由を尋ねた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アンデッド・魔物・動物

ブライヒレーダー家諸侯軍のアンデッド

先代辺境伯が率いた軍勢がアンデッド化したもの。

・所属組織、地位や役職
 魔の森のアンデッド。
・物語内での具体的な行動や成果
 悪口に惹きつけられ、エリーゼの浄化魔法障壁に触れて消滅した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

バウマイスター家諸侯軍のアンデッド

大叔父が率いた軍勢がアンデッド化したもの。

・所属組織、地位や役職
 魔の森のアンデッド。
・物語内での具体的な行動や成果
 ブライヒレーダー諸侯軍とは別行動を取り、魔物のアンデッドと混ざって第二陣として襲撃した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

飛竜のアンデッド

アルフレッドに倒されアンデッド化した飛竜。

・所属組織、地位や役職
 魔の森のアンデッド。
・物語内での具体的な行動や成果
 第二陣としてヴェンデリンたちに襲いかかったが、ルイーゼに頭部を粉砕された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ワイバーンのアンデッド

アルフレッドに倒されアンデッド化したワイバーン。

・所属組織、地位や役職
 魔の森のアンデッド。
・物語内での具体的な行動や成果
 第二陣として襲来したが、ヴェンデリンとブランタークの火矢で頭部を破壊された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ゾンビたち

魔の森で発生した死体のアンデッド。

・所属組織、地位や役職
 魔の森のアンデッド。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンたちを餌と認識して襲いかかったが、浄化魔法で消滅した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

グール

ゾンビから進化するアンデッドの一種。

・所属組織、地位や役職
 アンデッド。
・物語内での具体的な行動や成果
 本文内に具体的な行動の記載はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

スケルトン

ゾンビから進化するアンデッドの一種。

・所属組織、地位や役職
 アンデッド。
・物語内での具体的な行動や成果
 本文内に具体的な行動の記載はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

レイス

悪霊化したアンデッド。

・所属組織、地位や役職
 アンデッド。
・物語内での具体的な行動や成果
 本文内に具体的な行動の記載はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

サーペント

大型の海生肉食動物。

・所属組織、地位や役職
 野生動物。
・物語内での具体的な行動や成果
 海辺のヴェンデリンたちを捕食しようと現れたが、ヴィルマに戦斧で首を切断された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 肉は慰霊の食事会で領民たちに振る舞われた。

巨大熊

未開地に生息する全長四メートルの熊。

・所属組織、地位や役職
 魔物。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴィルマに遭遇し、戦斧で首を刎ね飛ばされた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

森や未開地に現れる野生動物。

・所属組織、地位や役職
 魔物・野生動物。
・物語内での具体的な行動や成果
 本文内に具体的な行動の記載はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

森や未開地に現れる野生動物。

・所属組織、地位や役職
 魔物・野生動物。
・物語内での具体的な行動や成果
 本文内に具体的な行動の記載はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

森や未開地に現れる野生動物。

・所属組織、地位や役職
 魔物・野生動物。
・物語内での具体的な行動や成果
 ルイーゼの攻撃により、脳天へ一撃を受けて仕留められた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

草原ウサギ

未開地に生息するウサギ。

・所属組織、地位や役職
 野生動物。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンとエルヴィンの弓で狩猟された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

鹿

未開地に生息する野生動物。

・所属組織、地位や役職
 野生動物。
・物語内での具体的な行動や成果
 イーナの投擲槍によって仕留められた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ホロホロ鳥

森で狩猟の対象となる鳥。

・所属組織、地位や役職
 野生動物。
・物語内での具体的な行動や成果
 本文内に具体的な行動の記載はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

海亀

南方の海に生息する亀。

・所属組織、地位や役職
 野生動物。
・物語内での具体的な行動や成果
 地引き網にかかり、ヴィルマによって止めを刺された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

八男3巻レビュー
八男まとめ
八男5巻レビュー

展開まとめ

第一話 バウマイスター家嫡男の憂鬱 

徴税報告とクラウスへの警戒

実権を引き継ぎ始めたクルトは、名主クラウスから徴税報告書を受け取った。クラウスは領内の徴税を一任される一方、ヴェンデリンを評価する発言を漏らしており、クルトは不正の可能性も含めて強く警戒していた。

弟たちへの劣等感

クルトは、武勇と人望のあるヘルマン、頭脳に優れたエーリッヒを、長男としての立場を脅かす存在と見ていた。特にエーリッヒが徴税報告書の誤りを見抜くと、クラウスが彼を次期当主に推す噂を流したと疑い、王都へ出るまで警戒を続けていた。

ヴェンデリンの魔法

幼いヴェンデリンに魔法の才能があると判明すると、クルトは領地開発に利用すべきだと父へ進言した。しかし父は、ヴェンデリンが領民の生活を豊かにすれば、クルトに代わって次期当主に望まれると指摘した。クルトは自らの立場が逆転する恐怖を知り、ヴェンデリンを穏便に領外へ出すしかないと理解した。

次期当主への実権移譲

父は家を出ない男子が減ったことで、クルトへ領主の仕事を徐々に任せ始めた。クルトは父の衰えを感じ、情によってエーリッヒやヴェンデリンへ継承権を移される前に、自らの立場を確立しようと考えた。

領内に残る不信

クルトが引き継いだ領地には、出兵で家族を失った領民の不満や、三つの村落の対立が残っていた。父は戦死者への見舞金を開墾資金として取り上げ、返還を拒んでいたが、クルトも僻地で頼れるのは金だけだという理屈に納得していた。

領民との物々交換

ヴェンデリンは自ら狩った鳥や獣を大豆と交換し、領民たちに喜ばれていた。クルトは媚を売る行為だと憤ったが、父から正当な交換であり、領民にとって数少ない娯楽でもあると諭され、止めることができなかった。

義姉への手紙

ヴェンデリンはクルトの妻が実家へ送る手紙を年一回から三回へ増やすよう父に頼み、その費用まで獲物の換金で負担した。妻が喜ぶ姿を見たクルトは反対できず、弟が自分を差し置いて家族へ気遣いを示したことに苛立ちを募らせた。

ヴェンデリンの出立

ヴェンデリンが十二歳で冒険者予備校へ進むと、クルトは最大の脅威が去ったと安堵した。しかし、エーリッヒの結婚に必要な祝儀を父が用意しようとした際には、辺境伯から借金することを拒み、寄親が代わりに負担すればよいと主張した。

竜殺しの英雄

家を出たヴェンデリンは古代竜を倒して準男爵となり、その後も老属性竜の討伐、男爵への陞爵、エリーゼとの婚約など功績を重ねた。領民たちは号外を通じて彼の活躍を喜び、クルトは辺境伯が自分を排除するために評判を広めていると疑った。

未開地への執着

父は、長年開発していない広大な未開地がヴェンデリンへ与えられる可能性を指摘した。現領地は失わないと説得したが、クルトは将来大貴族へ成長する希望を奪われると受け取り、ヴェンデリンと兄弟たちが自分の未来を奪おうとしていると憎悪を深めた。

会計監査長の使者

ヴェンデリンが地下遺跡から戻らない頃、ルックナー会計監査長の使者がクルトを訪ねた。使者はヴェンデリンが死亡した可能性と、未婚で子供がいないため、クルトの息子が男爵位と遺産を継げる可能性を伝えた。

遺産への期待

クルトは情報の確実性が低いと理解しながらも、会計監査長がヴェンデリンの敵であることを重視した。息子が爵位と財産を継げば未開地開発へ着手でき、自らの権力も強まると期待し、父には相談せず会計監査長へ対応を任せた。

膨らむ悪意

クルトは会計監査長から今後も情報を得る約束を取り付け、ヴェンデリンの暗殺や財産の奪取まで期待するようになった。普段の領地経営よりも弟の死と遺産を巡る策謀に心を躍らせ、自らの欲望へ深く踏み込んでいった。

第二話 魔導ギルド 

魔導ギルドへの招待

地下遺跡攻略後、ヴェンデリンはブランタークと共に魔導ギルド本部へ招かれた。魔導ギルドは魔道具ギルドと研究予算を巡って対立しており、高名な魔法使いを会員として抱えることで存在感を保とうとしていた。

名誉役員への登録

ヴェンデリンは本人が書類を書くこともなく会員登録され、同時に名誉役員へ任命された。仕事や会費はなく、優れた魔法使いである彼の名前をギルドの宣伝に使うことが目的であった。

魔法陣研究部門

地下の研究室では、研究部門長ベッケンバウアーが強制転移魔法陣を改良していた。完成した試作品は、使用者が想像した別の場所の物体を魔法陣上へ引き寄せる効果を持っていたが、対象の位置や姿を正確に思い描く必要があった。

女性職員の下着

ベッケンバウアーは実験として、案内役の女性職員が身に着けていた下着を魔法陣へ引き寄せた。女性職員は激怒して彼を平手打ちし、下着を取り戻したが、研究者たちは魔法陣の効果自体は確認できた。

イーナのパンツ

ヴェンデリンも屋敷内の物を曖昧に想像して魔法陣を使ったところ、イーナが身に着けていたパンツを引き寄せてしまった。魔導ギルドへ駆け込んできたイーナは下着を取り戻し、ヴェンデリンは次に下着を買う際に同行すると約束して許された。

ルイーゼのブラジャー

次の実験では、ルイーゼの黒いブラジャーが召喚された。ルイーゼは下着を観察しながら余計な発言をしたベッケンバウアーを平手打ちし、ヴェンデリンも買い物へ付き合う約束をして怒りを収めた。

北方産クロマグロ

遠距離から自然物を引き寄せようとしたヴェンデリンは、アーカート神聖帝国北方海域から巨大なクロマグロを召喚した。魚屋の娘である女性職員デリアが解体し、職員たちはヴェンデリンの醤油と共に高級な刺身を味わった。

北方の海産物

実験は試食会へ変わり、ヴェンデリンはホタテ、ウニ、イカ、タコ、タイなどの北方産海産物を次々と召喚した。遠距離から高級食材を直接取り寄せられる可能性が示され、魔法陣は実用的な価値を持つことが判明した。

フィリップ公爵家の下着

最後の召喚では、北方海域から紫色の豪華な女性用下着が現れた。ベッケンバウアーは刺繍された家紋から、アーカート神聖帝国の選帝侯フィリップ公爵家の品だと見抜いた。

証拠隠滅

外国の有力公爵家から下着を奪った事実が外交問題になることを恐れ、一同は実験結果を隠蔽した。公式記録には北方の海産物召喚に成功した事実だけを残し、ヴェンデリンは下着を魔法の袋へ仕舞った。

デリアの魚屋

試食会で魚を見事に捌いたデリアの実家には、後日バウマイスター男爵邸から大量の注文が入った。彼女は腕前を認められ、後年にはバウマイスター領で魚屋を開くことになった。

第三話 始まった冒険者生活と、新たな依頼 

瞬間移動による往来

ブライヒレーダー辺境伯は、ヴェンデリンの瞬間移動を利用して週の半分を王都で過ごし、中央貴族との交渉や人脈作りを進めていた。高額な報酬を支払っても、それ以上の利益を得られるためであった。

三人の莫大な報酬

エルヴィン、イーナ、ルイーゼは、地下遺跡攻略で一人二百億セントを得たことに悩んでいた。大金が知られれば、親族からの要求や縁談、詐欺、暗殺などを招く恐れがあり、特に女性であるイーナとルイーゼは実家や道場に利用される可能性を警戒していた。

分配金異議申し立て

報酬の辞退は王国への不敬と受け取られるため、ブランタークは冒険者ギルドの分配金異議申し立て制度を利用するよう勧めた。三人は一億セントだけを受け取り、残りをヴェンデリンへ上乗せすることで、大金を持つ危険と世間からの注目を避けた。

ヴェンデリンへの資金集約

ブライヒレーダー辺境伯は、国王やルックナー財務卿がヴェンデリンへ資金を集める状況を予想していたと考えた。王国は地下遺跡の資産を得ながら、南端の広大な未開地をヴェンデリンに開発させるための資金を用意した可能性が高かった。

南端未開地の利権

未開地がヴェンデリンの領地となれば、新たな家臣団、教会、商会、労働者が必要となり、南部貴族や教会に多くの利権が生まれることになる。一方、現在その土地を保有するバウマイスター本家の扱いが問題となり、辺境伯は状況を動かすためヴェンデリンへ新たな依頼を出そうと考えた。

エドガー軍務卿の思惑

エドガー軍務卿も、王国がヴェンデリンに南端未開地を開発させる意図を察していた。新領地には軍を率いる人材が必要になるため、自家や寄子の三男以下を家臣として送り込み、将来の諸侯軍や警備隊の地位を確保しようと考えた。

ヴィルマの養女入り

エドガーは寄子から預かっていたヴィルマを養女にし、ヴェンデリンの護衛として送り込むことを決めた。狩猟と戦闘に優れたヴィルマなら冒険者として同行でき、関係を深めて将来は側室となる可能性もあると見込んでいた。

ブライヒブルクへの帰還

ヴェンデリンたちは王都で世話になった人々へ挨拶し、二年半ぶりにブライヒブルクへ生活拠点を戻した。エルヴィンたちから譲られた報酬とエリーゼから預かった資金は王国札として保管され、ヴェンデリンの財産はさらに増えていた。

普通の冒険者生活

一行はブライヒブルク支部へ移転届を出し、近郊の魔物の領域で熊や狼、猪に似た魔物を狩り始めた。地下遺跡のような異常な依頼ではなく、獲物を狩って素材を売る本来の冒険者生活に、エルヴィンとイーナは張り切って取り組んだ。

報酬への嫉妬

地下遺跡で大金を得たことで、エルヴィンやイーナにはヴェンデリンに付いていただけだという批判が集まっていた。二人は実力を示すため前線で積極的に魔物を狩り、ルイーゼは補佐に回っていた。

領地経営への消極姿勢

エルヴィンは得た資金で良質な剣を購入したが、領地を開拓して貴族になる考えはなかった。ヴェンデリンも、領地経営には人材統率や長期的な資金が必要であり、失敗すれば財産を失うため、手を出さない方がよいと考えていた。

辺境伯からの招待

狩りを終えた一行は、ブランタークに呼び止められ、ブライヒレーダー辺境伯邸へ招かれた。辺境伯は冒険者としての評判を称えた後、ヴェンデリンに新たな討伐依頼を持ちかけた。

先代遠征軍の後始末

依頼の内容は、先代ブライヒレーダー辺境伯が魔の森へ送り込み、全滅させた約二千人の遠征軍の浄化であった。遺体はアンデッド化している可能性が高く、長期間放置すれば共食いによって強大化し、将来森へ入る冒険者を襲う恐れがあった。

魔の森への再訪

魔の森はバウマイスター騎士爵領のさらに南にあり、通常は到達するだけでも困難であった。しかしヴェンデリンは幼少期の探索で場所を把握しており、瞬間移動で入口まで移動できた。父も寄親からの依頼を拒まないと見込まれたため、ヴェンデリンは断れないと悟り、危険なら撤退するつもりで依頼を受けることになった。

第四話 久々の帰郷 

魔の森への極秘依頼

ヴェンデリンたちは、先代ブライヒレーダー辺境伯の遠征で魔の森に残された約二千体のアンデッドを浄化する依頼を受けた。エリーゼの浄化魔法をヴェンデリンが広域拡散し、ブランタークが魔力を補い、残る三人が魔物を排除する作戦であった。

実家への挨拶

魔の森は書類上バウマイスター騎士爵領に属するため、一行は先に領主の許可を得ることになった。ヴェンデリンは実家との淡白な関係から気乗りしなかったが、仕事として数年ぶりに屋敷を訪れた。

帰還を喜ぶ使用人たち

ヘレナとロブスはヴェンデリンの功績と婚約を喜び、未開地を開発すれば領地も豊かになると期待した。しかし、その言葉は次期当主であるクルトを刺激しかねず、ヴェンデリンは急いで本来の依頼の話へ切り替えた。

クルトの失言

姿を現したクルトは、ヴェンデリンを見るなり、なぜ生きているのかと口走った。前日にヴェンデリンが地下遺跡で死亡した可能性を伝えられていたためであり、その残念そうな反応から、ヴェンデリンは兄が自分の死を望んでいたと悟った。

上納金の交渉

魔の森で得た遺留品や魔物素材の取り分を巡り、クルトは五割を要求した。だが当主であるアルトゥルと名主クラウスは、遺品を除いた売却益の三割が妥当と判断し、現金で納める条件に決まった。

遺品を拒むクルト

分家当主のヘルマンは、遠征で戦死した先代従士長や領民たちの遺品回収を求めた。クルトは供養は済んでいるとして不要だと拒み、手間賃によって上納金が減ることを惜しんでいると受け取られた。

兄弟の決裂

クルトはエルヴィンをチンピラ扱いし、エリーゼにも侮辱的な態度を取った。ヴェンデリンは家臣と婚約者を守るため、自分は独立した男爵であり、騎士爵家の跡取りに侮られる立場ではないと言い返した。

分家での宿泊

交渉後、一行は本家を離れ、クラウスの提案でヘルマンの屋敷へ泊まることになった。ヘルマンは近年のクルトの変化を謝り、分家の都合を優先することで家に受け入れられた経緯を語った。

反本家の分家

ヘルマンの妻マルレーネをはじめ、分家の女性たちは、魔の森遠征で男手を失ったことから本家へ強い反感を抱いていた。彼女たちは遺品回収へ向かうヴェンデリンたちを歓迎し、クルトの態度を厳しく非難した。

分家の暮らし

分家では狩猟や養蜂を行い、ハチミツ酒やまともな食事を楽しんでいた。本家の極端な節制とは異なり、生活を損なわない範囲で倹約していたため、ヴェンデリンは実家の暮らしだけが異常だったと知った。

子供たちとの交流

ヴェンデリンはヘルマンの子供たちや分家の子供たちに土産を渡し、竜退治の話を聞かせた。これまで継承争いを疑われないよう接触を避けてきたが、別家の当主となった今は気兼ねなく交流できた。

クラウスの新たな依頼

団欒の最中、クラウスが分家を訪れ、冒険者の仕事とは少し異なる頼みがあると申し出た。危険はないと説明されたものの、ヴェンデリンは裏の読めない名主の意図を警戒した。

第五話 クラウス再び 

クラウスのバザー依頼

クルトとの交渉を終えたヴェンデリンたちは、クラウスから領民向けのバザーを開いてほしいと頼まれた。領内では商隊が年三回しか訪れず、塩を優先して運ぶため、生活用品や嗜好品を買う機会がほとんどなかった。

塩不足への不安

商隊は遠征の償いもあって辺境伯の補助金で維持されていたが、将来も続く保証はなかった。領内では塩を自給できず、人口の回復によって必要量も増えていたため、クラウスは新たな供給手段を確保しようとしていた。

バザーを受ける理由

クラウスは無料配布や値下げを求めず、ブライヒブルクの相場に利益を加えた価格で構わないと説明した。エリーゼたちは領民の助けになり利益も得られると賛成し、エルもクルトへの警戒を強めるため、領民に恩を売るべきだと助言した。

豊富な商品

ヴェンデリンは魔法の袋から塩、砂糖、調味料、酒、菓子、生地、裁縫道具、本、玩具、弓矢などを取り出した。贈答品として集まり、使い切れず保管していた品が多く、分家の人々も準備と販売を手伝った。

初めての自由な買い物

領民たちは蓄えていた現金を持ち寄り、塩や砂糖、生活用品を次々と購入した。特に塩は将来の不足に備えて大量に買われ、王都やブライヒブルクと同程度の価格で売られた商品は飛ぶようになくなった。

領内産品の買い取り

クラウスは、商品を売るだけでは領外へ金が流出すると考え、領民が持つ産物の買い取りも提案した。分家のハチミツ酒などを外で販売できれば、新しい現金収入が生まれ、領内で貨幣が循環すると見込んでいた。

八十一万セントの売り上げ

バザーは暗くなるまで続き、売上額は八十一万二千五百六十七セントに達した。領民は貧しく見えても金を使う機会がなく、長年蓄えていたため、初めて自由に買い物ができる機会に大金を支払っていた。

停滞した領内経済

分家の子供たちは現金を渡されても使い道がわからず、菓子や玩具の方を喜んだ。ヴェンデリンたちは、領民が貨幣の価値を理解しながら王国の経済から切り離され、金が循環しない状態に置かれていると気付いた。

クラウスの過去

クラウスは若い頃、荷車を引いてブライヒブルクまで産物を運び、塩を買い戻す生活を送っていた。道中では仲間が狼や事故で命を落とし、助からない者から頼まれて自ら止めを刺したこともあった。

初めての従軍

クラウスは偶然ブライヒブルクにいた際、臨時の従士長として東部との境界紛争へ参加させられた。戦闘で功績を挙げて褒賞を得たが、領地へ戻ると目立ちすぎたとして先々代当主や家族から叱責された。

商隊誘致への奔走

兄の死によって名主を継いだクラウスは、領民を過酷な買い出しから解放するため商隊の定期派遣を求め続けた。先代辺境伯の時代にようやく年二回の商隊が実現し、領内の人口と農地は少しずつ増えていた。

息子たちの転落死

クラウスの跡取り息子と、娘レイラの婚約者は、アルトゥルに同行した狩猟中に崖から落ちて死亡した。父は事故だと説明し、領内で口外しないよう命じたが、クラウスは二人が同時に死んだ経緯に疑念を抱いていた。

レイラへの要求

葬儀後、アルトゥルはレイラを妾として差し出し、クラウス自身が申し出た形にするよう命じた。クラウスは従うしかなく、娘を利用して徴税権を得た男だと他の名主たちから嫌われることになった。

アルトゥルへの疑念

クラウスは、アルトゥルがレイラを手に入れ、彼女に産ませた子を名主家へ入れるため、二人の死に関わったと疑っていた。決定的な証拠はなかったが、他にも領内の人妻へ手を出し、その後始末をクラウスへ押し付けていたと明かした。

兄弟たちへの策

クラウスは、ヘルマンやエーリッヒをクルトの継承を脅かす存在として意図的に目立たせたことを認めた。両者を危険にさらした点を謝りつつも、クルトの下に残るより領外や分家で生きる方が安全だったと説明した。

クルトへの評価

クラウスはアルトゥルの領主としての能力は一定程度認めながら、クルトは評価する価値もないと断じた。彼にとって重要なのはバウマイスター家への忠誠ではなく、領民の生活と領地の発展であった。

ヴェンデリンへの期待

クラウスはヴェンデリンに現領地と未開地を治めてほしいと改めて望んだ。ヴェンデリンが別家の当主だと否定しても、王国や大貴族がその形式を気にするとは限らないと返した。

忠誠を失った名主

クラウスは、自分を喋る荷駄馬以下として扱った歴代当主に心から忠誠を誓うことはできないと告げた。それでも名主として領民を守る義務だけで動いており、告発されても恨まないと言い残して立ち去った。

翌日への警戒

ヴェンデリンたちは、クラウスの話が事実か判断できず、アルトゥルやクルトと衝突する危険も考えた。ヘルマンは本家を助ける意思はないと明言し、ヴェンデリンたちは魔の森の依頼を早く終えて戻るため、その夜は休息を取った。

第六話 依頼達成と、バウマイスター家の混乱 

魔の森への再訪

ヴェンデリンたちは、実家で起きた騒動を気にしながら魔の森へ移動した。ブランタークはクルトを廃嫡してヘルマンに領地を継がせる案を口にしたが、ヴェンデリンは領民同士の衝突を招くとして拒んだ。エリーゼは、未開地を与えられてもローデリヒを家宰に据え、ヴェンデリン自身は冒険者を続ければよいと助言した。

先代辺境伯への挑発

魔の森へ入った一行は、エリーゼを浄化の補助魔法陣に立たせ、拡声器で先代ブライヒレーダー辺境伯を罵倒した。生前の感情を残すアンデッドをおびき寄せ、エリーゼの浄化魔法障壁に触れさせて一気に消滅させる作戦であった。

二千体のアンデッド

集まったゾンビは、腐敗した肉体と錆びた装備を残しながら次々と浄化された。ヴェンデリンたちは遺族へ返すため、武器、防具、所持金などを魔法の袋へ回収した。やがて先代辺境伯のゾンビも現れ、ヴェンデリンが浄化魔法を広域化すると、残るアンデッドと共に消滅した。

消えたバウマイスター諸侯軍

遺品を確認すると、浄化した者の大半はブライヒレーダー家の兵士であり、バウマイスター家諸侯軍の姿が見当たらなかった。ブランタークは、生前の反感から別集団となり、優れた統率者の下で倒した魔物をアンデッドへ加えて勢力を拡大した可能性を挙げた。

数千体の第二陣

探知範囲の外にいた数千体の反応が一斉に動き出し、一行へ襲いかかった。その軍団にはバウマイスター家の兵士だけでなく、ワイバーンや飛竜など、アルフレッドが遠征中に倒した魔物のアンデッドも含まれていた。エリーゼの浄化障壁を中心に、エル、イーナ、ルイーゼが接近戦を担い、ヴェンデリンとブランタークが火矢で大型の敵を仕留めた。

先代従士長の願い

最後に残ったのは、先代従士長である大叔父のリッチであった。彼は家族の死を嘆きながらも、ヴェンデリンから孫娘やひ孫が無事だと聞くと剣を下ろし、家族を頼むと言い残した。ヴェンデリンは聖光で彼を浄化し、装備品を分家へ返すことを決めた。

兄たちとの相談

一行はそのまま王都のブラント邸へ移動し、エーリッヒ、パウル、ヘルムートに実家で起きた出来事を伝えた。三人は、クラウスの息子とレイラの婚約者が同時に転落死した事件や、アルトゥルの女性関係に関する噂を知っていたが、いずれも確かな証拠はなかった。

事件を巡る複数の疑惑

二人の死には、アルトゥルが関与した可能性だけでなく、レイラを狙った村人や、名主家の継承へ介入しようとした他村の者が関わった可能性もあった。レイラを妾にした件も、アルトゥルの欲望だけではなく、村落間の対立を収めるための政治的判断だった可能性が示された。

領主となる宿命

エーリッヒは、真相よりもヴェンデリンの帰還によって領内の均衡が崩れ始めたことが重要だと述べた。領民たちは、ヴェンデリンが領主になれば商隊を待つ生活から解放され、未開地開発も進むと期待していた。混乱を止めるには、最終的にヴェンデリン自身が領地を治めるしかないと告げた。

地方巡検視の護衛隊

翌朝、パウルは地方巡検視の名目で五人の護衛を連れてきた。剣士のジークハルト、大木槌を使うオットマー、細剣とナイフを扱うゴットハルト、従兵のルーディに加え、エドガー軍務卿から十三歳のヴィルマが派遣されていた。

英雄症候群のヴィルマ

ヴィルマは小柄な少女ながら、筋肉へ微量の魔力が絡み付く英雄症候群の体質を持ち、対人戦では最強級の力を備えていた。その代わり大量の食事を必要とし、常に空腹を訴えていた。彼女はヴェンデリンを守るよう命じられ、護衛だけでなく側室候補として近付けられていた。

新たな側室候補

ヴィルマがヴェンデリンの伽の相手をする役目まで与えられていると明かすと、エリーゼは穏やかに世話を始め、イーナは溜息をつき、ルイーゼは年下ながら自分より胸の大きい彼女に危機感を抱いた。こうして一行は、内乱の可能性があるバウマイスター領へ戻る準備を整えた。

第七話 バウマイスター領滞在と、クルトとのトラブル 

バウマイスター領への帰還

ヴェンデリンは大叔父のリッチから家族を頼まれたことを受け、実家の騒動へ介入すると決めた。エーリッヒたちとの相談を経て、領地と未開地を手に入れても運営は有能な家臣へ任せ、自身は冒険者を続ける方針を固めた。王国側も事態への介入を進め、地方巡検視となったパウルと五人の護衛が同行した。

ヴィルマの境遇

英雄症候群を持つヴィルマは、幼い頃から莫大な食費が必要で、実家の負担を減らすため自らエドガー軍務卿へ売り込んでいた。軍務卿は彼女に戦斧術や学問を身に付けさせ、ヴェンデリンの護衛兼側室候補として派遣した。ヴィルマは頭の回転も速く、護衛計画にも加わっていた。

地方巡検視の来訪

パウルは王国政府の任命状を父アルトゥルへ示し、地方巡検視として領内へ入った。表向きは治安視察であったが、実際には王国政府がバウマイスター領の統治を注視していることを示す圧力でもあった。ヴェンデリンは魔の森での浄化成功と、遺品を遺族へ直接返す方針を伝えた。

遺品返還を巡る対立

クルトは回収した遺品をすべて自分に預けるよう求めたが、ヴェンデリンはブライヒレーダー辺境伯から遺族へ直接返すよう命じられているとして拒絶した。アルトゥルは遺族を広場へ集め、クラウスを補佐に付けることを認めた。クルトには仕事を任せられないと判断した結果でもあった。

母との再会

ヴェンデリンとパウルは母と久しぶりに対面し、エリーゼ、イーナ、ルイーゼ、ヴィルマを紹介した。母はクルトの異常さを理解しながらも、この閉鎖的な領地では自分に発言力がないと語った。これから起こる混乱を避けるのは難しいと悟り、ヴェンデリンたちに犠牲を少なくするよう願った。

狩猟とヴィルマの怪力

一行は本屋敷近くの空き家を拠点とし、待機中の食料を得るため未開地で狩猟を行った。ヴィルマは採集や獲物の解体にも慣れており、巨大熊の首を戦斧で一撃のうちに刎ねた。その強さは他の護衛たちを驚かせ、私的な護衛として十分な実力を示した。

兄弟と分家の食事会

パウルたちの視察後、ヘルマンや分家の者たちも空き家へ集まり、狩った獲物を使った食事会が開かれた。兄弟と反本家の分家が親しく集う姿は、クルトにとって脅威となった。ヴェンデリンは事態を動かすため、あえてヘルマンたちとの関係を領内へ示していた。

遺品を奪うクルト

戦死者の遺族が遺品を持ち帰ると、クルトは錆びた武器や防具を鍛冶屋へ差し出し、金銭には五割の税を納めるよう命じた。遺族は遺骨の代わりに遺品を墓へ納めたいと訴えたが、クルトは鉄資源として再利用すべきだと退けた。

鉄塊と鍛冶屋への警告

ヴェンデリンは遺品を奪う必要をなくすため、自ら精製した巨大な鉄塊を鍛冶屋エックハルトへ渡した。さらに、彼の製品は王都では通用しない品質だと告げ、今後もバザーを開けば腕を磨かない者は廃業すると警告した。クルトとエックハルトは怒りを露わにしたが、遺族たちは両者へ敵意を向けた。

未開地での活動許可

アルトゥルはヴェンデリンたちによる定期的なバザーと、未開地や魔の森での狩猟・採集を認めた。自家消費分は無税とし、外部で換金した成果の税率は後日交渉することになった。クルトは反発したが、代わりの冒険者を呼べないため黙るしかなかった。

戦死者の埋葬

エリーゼは高齢の神父を助け、戦死者の遺品を墓へ埋める儀式を執り行った。遺族たちは武器や所持品を土へ納め、ようやく家族を故郷へ迎えられたことに安堵した。その後、ヘルマンとヴェンデリンが中心となり、遺族を慰める食事会を開くことになった。

海辺の漁

ヴェンデリンは宴の食材を得るため、ヴィルマと南方の海へ移動した。二人で地引き網を引き、魚や海亀を大量に捕らえ、岩場では巨大なエビ、カニ、貝類も採取した。ヴィルマは初めて食べる海産物を喜び、仲間たちの分も集めようと積極的に漁を続けた。

サーペントの首

海岸へサーペントが近付くと、ヴィルマは魔力を一時的に爆発させ、巨大な戦斧を投げて首を切断した。戻ってきた戦斧も難なく受け止め、その圧倒的な戦闘能力を見せた。ヴェンデリンは彼女を護衛として引き取り、今後も面倒を見ることを決めた。

六百人の慰霊会

食事会には六百人を超える領民が集まり、肉料理や魚介類、サーペントの肉を囲んで戦死者を偲んだ。ヴェンデリンは水飴を作って子供たちに配り、領民の支持をさらに集めた。この集まりは慰霊であると同時に、クルトと保守派を刺激する明確な挑発となった。

アマーリエと子供たち

クルトの妻アマーリエは、息子のカールとオスカーを連れて慰霊会へ現れた。彼女はクルトの統治では領地の変化を止められないことを理解しており、子供たちの将来を案じていた。ヴェンデリンは混乱が起きた際には二人を守ると約束し、クルトを廃嫡しても家族まで粛清するつもりはないと示した。

第八話 未開地を開発してみる 

魔の森の収益と借金清算

魔の森で得た遺留品や魔物素材の査定が終わり、バウマイスター家には取り分として二十万セント以上が支払われた。ただし、過去に返していなかった援助金や、エーリッヒ、パウル、ヘルムートの結婚祝儀をブライヒレーダー辺境伯が立て替えていたため、そこから借金が清算された。クルトは返済時期は自分たちが決めると怒ったが、アルトゥルは借金が消えたことを受け入れた。

冒険者活動の契約

ヴェンデリンたちはバウマイスター領を拠点とし、瞬間移動で魔の森へ向かって狩猟や採集を行うことになった。獲得物はブライヒブルクの冒険者ギルドで換金し、その二割をバウマイスター家へ納める契約となった。定期的なバザーや領内での商取引も認められ、クラウスが明細の確認を担当した。

クルトを外した交渉

アルトゥルは領地の発展と領民の利益を優先し、ブライヒレーダー辺境伯と事前に決められた条件を次々と承認した。クルトは交渉から外され、ヴェンデリンやクラウスを睨み続けた。クラウスもクルトの排除を望んでおり、喜びを大げさに表して彼をさらに刺激した。

屋敷と居住区の移築

滞在者の増加に対応するため、ヴェンデリンはブライヒブルクの屋敷をバウマイスター領と未開地の境へ移築した。特殊な移築魔法を使うレンブラントは、屋敷に加えて十数軒の家や商店も運び込んだ。ヴェンデリンたちのほか、ローデリヒ、使用人、警備員、パウルたちが暮らせる居住区が短期間で整えられた。

パウルたちの新たな地位

パウルたちは警備隊を退職し、引き続きヴェンデリンの護衛を務めるよう命じられた。任務を成功させれば、パウルには準男爵位と領地が与えられ、同行する四人もその陪臣として世襲可能な地位を得る予定となった。四人は将来が開けたことを喜び、ヴェンデリンの護衛に一層意欲を見せた。

何でも屋の開店

ヴェンデリンはバザーを繰り返す手間を省くため、移築した商店で何でも屋を開いた。ローデリヒが店長となり、調味料、生活雑貨、農機具、菓子、肉類などを販売し、領民から売却可能な産物も買い取る仕組みを整えた。商品の仕入れはヴェンデリンが瞬間移動で行い、魔法の袋で保存と輸送を担った。

商隊の廃止

商店の開業により、ブライヒレーダー辺境伯は長年続けていた商隊の派遣を中止した。ヴェンデリンの店は商隊より品数が多く、価格も安いため、領民は塩を含む生活物資を彼の店に頼るようになった。クルトは領地を乗っ取られると反発したが、アルトゥルから自分で代替の商隊を用意するよう求められ、何も答えられなかった。

稲作の開始

ヴェンデリンは新米を食べるため、未開地の一部で稲作を始めた。ブライヒレーダー辺境伯領から経験豊かな農民を招き、王都で集めた農業志望者を指導させた。ヴェンデリンは土木魔法で田畑や用水路を整備し、土質を調整して肥料まで作ったため、本来なら長期間を要する開墾は数日で形になった。

開発特区

ヴェンデリンは自らの影響下で商店や農地を運営する地域を開発特区と呼び、ローデリヒに管理を任せた。未開地との境には堀と土塁を築き、猛獣や害獣の侵入を防いだ。ローデリヒは商店、農地、税収を管理しながら、将来の領地運営に備えることになった。

金によるクルトの排除

開発特区が利益を上げるほど、何もしてこなかったクルトの評価は低下することになった。ヴェンデリンは武力ではなく、商業と開発の成果によってクルトの支持を失わせようとしていた。ローデリヒも、クルトは継承できる領地に甘えて努力せず、時代の変化にも対応しなかったと評価し、ヴェンデリンの方針を支持した。

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