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Y.Aフィクション(Novel)八男って、それはないでしょう!読書感想

小説【八男】「八男って、それはないでしょう! 5」感想・ネタバレ

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Y.A

八男4巻レビュー
八男まとめ
八男6巻レビュー

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  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
    3. ■ 物語の特徴
  2. 書籍情報
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
  5. 考察・解説
    1. 未開地の開墾
    2. エリーゼの治癒魔法
    3. 料理と調味料
    4. クルトの廃嫡
    5. 怨嗟の笛
    6. 伯爵への陞爵
    7. 筆頭家臣ローデリヒ
  6. 登場キャラクター
    1. バウマイスター伯爵家(旧男爵家・ドラゴンバスターズ・家臣・領民)
      1. ヴェンデリン・フォン・ベンノ・バウマイスター
      2. エリーゼ・カタリーナ・フォン・ホーエンハイム
      3. エルヴィン・フォン・アルニム
      4. イーナ・ズザネ・ヒレンブラント
      5. ルイーゼ・ヨランデ・アウレリア・オーフェルヴェーク
      6. ヴィルマエトル・フォン・アスガハン
      7. ローデリヒ
      8. ドミニク
      9. トリスタン
      10. オットマー
      11. 移民希望者たち
      12. 農夫たち
      13. 大工たち
      14. 作業員たち
      15. 測量技師
      16. 警備隊の人員
      17. 退役したベテラン空軍軍人たち
      18. 新人たち
      19. 調理人
      20. 洗濯屋
      21. 鉱山技師
    2. バウマイスター騎士爵家(本家・領民)
      1. アルトゥル・フォン・ベンノ・バウマイスター
      2. ヨハンナ
      3. クルト
      4. アマーリエ
      5. クルトの子供たち
      6. クラウス
      7. レイラ
      8. ゴードン
      9. ハイン
      10. エックハルト
      11. マイスター
      12. ヘルマン
      13. ヘルマンの従士たち
      14. ディルク
      15. インゴ
      16. ルーカス
      17. 豪農たち
      18. 職人たち
      19. 職人たちの子弟
      20. 本村落の若者たち
      21. 領民たち
    3. その他のバウマイスター家兄弟
      1. パウル
      2. パウルの部下たち
      3. ヘルムート
      4. エーリッヒ
    4. ブライヒレーダー辺境伯家
      1. ブライヒレーダー辺境伯
      2. ブランターク・リングスタット
      3. アルフレッド
      4. 通信用の魔法使い
    5. ヘルムート王国政府・中央貴族
      1. 国王
      2. エドガー軍務卿
      3. ルックナー財務卿
      4. ルックナー男爵
      5. ルックナー男爵の正妻
      6. ルックナー男爵の跡取り息子
      7. ルックナー男爵の娘
      8. ルックナー財務卿の孫娘
      9. ホーエンハイム枢機卿
      10. クリムト・クリストフ・フォン・アームストロング
      11. アームストロング伯爵
      12. 導師の父
      13. 導師の兄
      14. 導師の妻たち
      15. 導師の子供たち
      16. ワーレン
      17. コンラート
      18. ベッカー内務卿
      19. 実務長
      20. モンジェラ子爵
      21. ブルーメンタール準男爵
      22. ブルーメンタール準男爵の子供
      23. ビューロー卿
      24. クリスティアン
      25. レンブラント男爵
      26. ルックナー男爵の家臣たち
      27. 警備兵たち
      28. 財務系の法衣貴族たち
      29. 貴族たち
      30. 門番
    6. アーカート神聖帝国(過去)
      1. アーカート神聖帝国皇帝
      2. 敵兵
    7. 冒険者・商人・街の人々
      1. カタリーナ・リンダ・フォン・ヴァイゲル
      2. アルテリオ
      3. オーガス・リネンハイム
      4. アルノー
      5. 陰気な冒険者
      6. ギルドの所長
      7. 若い職員たち
      8. 冒険者たち
      9. お菓子職人たち
      10. 行商人
      11. 飲食業者
      12. 水商売の女性
      13. メイド
    8. アンデッド・魔物・動物
      1. 怨念の巨人(クルトのレイス)
      2. ゾンビたち
      3. 飛竜
      4. ワイバーン
      5. サーベルタイガー
      6. ライノー
      7. ダチョウ
      8. ヘルコンドル
      9. グレードグランド
      10. ナンポウマス
      11. 巨大熊
      12. 鹿
      13. ホロホロ鳥
  7. 展開まとめ
    1. 第一話 魔の森初探索 
    2. 第二話 追い詰められたクルト 
    3. 第三話 竜使いの笛? 
    4. 第四話怨嗟の笛 
    5. 第五話 ルックナー兄弟 
    6. 第六話 バウマイスター男爵暗殺未遂事件始末記 
    7. 第七話 バウマイスター伯爵 
    8. 第八話 バウマイスター伯爵領開発開始 
    9. 第九話 ローデリヒ、奮闘す! 
    10. 第十話 謎の女魔法使い 
    11. 巻末おまけ マヨネーズとアームストロング伯爵家 
  8. 同シリーズ
    1. 八男って、それはないでしょう!シリーズ
    2. 異世界帰りのパラディンは、最強の除霊師となるシリーズ
    3. 異世界帰りの勇者は、ダンジョンが出現した現実世界で、インフルエンサーになって金を稼ぎます!シリーズ
  9. その他フィクション

物語の概要

■ 作品概要

本作は、異世界に貧乏貴族の八男として転生した主人公ヴェンデリンの成り上がりを描くファンタジー小説の第5巻である。 本巻では、前巻から続く長男クルトとの対立が、呪いの魔道具『怨嗟の笛』を用いた暗殺未遂事件によって凄惨な結末を迎える。自滅したクルトの怨霊が引き起こした王都での大量殺戮事件を経て、実家の御家騒動はようやく終結する。 その後、ヴェンデリンはパウマイスター伯爵へと陞爵し、広大な未開地を下賜される。筆頭家臣となったローデリヒの有能な指揮のもと、ヴェンデリンの規格外の魔法力と莫大な資金を駆使した、怒涛の領地開発が幕を開ける。

■ 主要キャラクター

  • ヴェンデリン:主人公。過去の功績などが認められ伯爵へと陞爵し、未開地の大半を治めるバウマイスター伯爵家の当主となる。開発のため過酷な土木作業に魔法で酷使される。
  • クルト:バウマイスター家の長男。ヴェンデリンを逆恨みし魔道具で暗殺を目論むが自滅し、怨念の巨人(アンデッド)と化してしまう。
  • ローデリヒ:ヴェンデリンの筆頭家臣にして代官。実父ルックナー男爵の死による相続問題を回避し、鬼気迫る情熱で猛スピードの開発計画を推し進める。
  • アームストロング導師:王宮筆頭魔導師。ヴェンデリンの護衛として活躍し、アンデッド化したクルトとの戦いでは独自の聖魔法を披露する。
  • ルックナー男爵(会計監査長):クルトを唆し魔道具を渡した黒幕。自らの策で生み出したクルトの怨霊に襲われ、一族もろとも凄惨な最期を遂げる。
  • カタリーナ・リンダ・フォン・ヴァイゲル:魔の森でヴェンデリンたちの前に現れた、派手な装備を纏う謎の若き女魔法使い。

■ 物語の特徴

本巻の大きな魅力は、前半のダークな御家騒動の決着と、後半の爽快な領地開発という対照的な展開である。 クルトの嫉妬と中央貴族の陰謀が絡み合った御家騒動は、アンデッドによる大虐殺という凄惨かつ因果応報な結末を迎え、読者に強い衝撃を与える。一方、後半では一転して、有能すぎる代官ローデリヒにこき使われながら、ヴェンデリンが魔法で山を削り、川を浚渫し、都市を築き上げていく「内政・開拓無双」がコミカルなトーンで描かれている。 また、明太マヨネーズなどの調味料開発や、魔の森の巨大フルーツ採取など、主人公の「食」への飽くなき執着も健在であり、ファンタジー世界での生活感や内政要素を存分に楽しめる点が他作品と差別化される魅力である。

書籍情報

八男って、それはないでしょう! 5
著者:Y.A 氏
イラスト:藤ちょこ 氏
出版社:KADOKAWAMFブックス
発売日:2015年6月25日
ISBN:9784040676968

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

あらすじ・内容

「お館様、今日も張り切って頑張りましょう!」
クルト最後の悪あがきが襲いかかる。それは、辺境と王都、それぞれにおける兄弟喧嘩の終焉を告げる引き金となった。
蜂の巣をつついたような騒ぎとなった王都を横目に、ヴェンデリンたちによる未来の伯爵領開拓はスムーズに進む。しかも、ローデリヒの手腕によって、ヴェンデリンの開発無双は真価を発揮。恐ろしいスピードで未開の地が開けていくのだった。
順調すぎる開発と、さらに高まる地位と名声が、民と人材、そして、新たな火種を呼び寄せる!? 泥沼を脱し、開拓で脳汁弾けるヴェンデリン! 柵の中なりのフリーダム、第五幕の登場!

八男って、それはないでしょう! 5

感想

本巻の前半では、第4巻から続いていたバウマイスター家の御家騒動が、ついに最悪の形で決着する。

長男クルトは、ヴェンデリンによって自分の支持基盤を奪われ、父アルトゥルからも見放されつつあった。

領民たちは、生活を豊かにしてくれるヴェンデリンへ期待する。

本村落でクルトを支えていた職人や豪農たちも、少しずつ彼のもとから離れていく。

中央では、広大な未開地を早く開発したい王国や大貴族たちが動き始めている。

クルトの居場所は、日に日に狭くなっていた。

そんな彼に接触したのが、ルックナー会計監査長の使者である。

使者は、ヴェンデリンを暗殺できる魔道具だと偽り、古びたオカリナをクルトへ渡す。

しかし、その正体は使用者自身の命を代償にして、標的を呪い殺す「怨嗟の笛」だった。

クルトは、自分が助かると信じたまま笛を使う。

その結果、味方として連れてきた者たちを死なせ、自分自身もアンデッドへと変わってしまう。

「人を呪わば穴二つ」という言葉を、これほど直接的に体現した展開も珍しい。

暗殺を企てたクルト。

彼を利用したルックナー会計監査長。

その周囲で利益を得ようとした貴族たち。

誰もが他人を道具として扱い、最後には自分たちも呪いに飲み込まれていく。

その因果応報の重さに圧倒される一冊だった。

一方、後半では雰囲気が大きく変わる。

御家騒動が終わり、ヴェンデリンは未開地の大半を与えられて伯爵へ陞爵する。

そして始まるのが、家宰ローデリヒ主導による本格的な領地開発である。

領主となったヴェンデリンが優雅に指示を出すのかと思えば、実際には逆だった。

有能なローデリヒが次々と計画を立て、ヴェンデリンは膨大な魔力を使って土木作業に追われる。

領地が発展するほど、ローデリヒの肌はツヤツヤになる。

その一方で、ヴェンデリンは日に日にゲッソリしていく。

前半の凄惨な暗殺事件と、後半の働きすぎ領主コメディ。

落差は激しいが、その両方が本作らしい魅力になっていた。

魔の森の西部で発見される未知の資源

本巻の冒頭では、ヴェンデリンを除いたドラゴンバスターズの仲間たちが、魔の森西部の調査へ向かう。

ヴェンデリンはクルトを追い落とすため、未開地の開墾や用水路の整備、土壌改良に追われている。

領主争いの工作と言いながら、本人が行っているのは田畑や道路を作る土木作業である。

武力や陰謀ではなく、生活環境を改善することで領民の支持を集める。

第4巻から続く、ヴェンデリンらしい追い落とし方だと思う。

ヴェンデリンが不在のため、魔の森の探索にはブランタークが同行する。

森の西部には、これまで見たことのない植物が広がっていた。

人の身長ほどあるバナナ。

巨大なマンゴーやドリアン。

両手で抱えるほどのコーヒーの実。

カカオ、パイナップル、パパイヤ、マンゴスチン、ココナッツなど、ヴェンデリンの前世ではおなじみの南方果実が次々と発見される。

ただし、その大きさは常識外れだった。

魔の森はマナが濃いため、植物も半ば魔物化しているらしい。

巨大化しているだけでなく、魔物たちに食べ尽くされないほどの速度で実をつけている。

普通の果樹園では考えられない生産力である。

当然、それを食べる魔物たちも巨大だった。

サーベルタイガー。

ライノー。

巨大なダチョウ。

ワイバーンに匹敵するヘルコンドル。

経験豊富なブランタークですら、初めて見る魔物が多い。

危険ではあるが、同時に希少な素材や食料が眠る宝の山でもある。

これまで魔の森は、死者や危険な魔物が集まる恐ろしい場所として描かれてきた。

しかし調査が進むと、果物、コーヒー、カカオ、魔物素材など、領地を豊かにする資源が大量に存在していることが分かる。

危険な土地だからこそ、誰も手をつけていない。

それを安全に利用できれば、バウマイスター伯爵領にとって大きな産業になる。

御家騒動の裏で、新しい領地の可能性が少しずつ広がっていることが感じられた。

食べ物への執念が産業を生み出していく

魔の森の探索中には、ヴェンデリンが王都で広めた料理や食品についても語られる。

カタクリ粉。

唐揚げ。

フライ。

串揚げ。

ケチャップ。

タルタルソース。

味噌。

醤油。

豆腐。

納豆。

前世の知識を使って、次々と新しい食べ物を生み出している。

ヴェンデリンは、料理の達人というわけではない。

包丁さばきは雑で、味付けも濃い。

しかし、食材の加工や製造方法に妙に詳しい。

その理由が、前世で食品関係の仕入れを担当していた経験にあると明かされる。

有名商社へ勤めていたものの、華やかな海外事業ではなく、国内の農家や漁港、酒蔵、食品メーカーと取引する部署にいた。

職人や技術者と話すためには、商品の製造方法や原材料を理解しなければならない。

その仕事で身につけた知識が、異世界で大きな価値を持っている。

前世では目立たない仕事だったかもしれない。

しかし、そこで覚えた知識が今の生活と領地開発を支えている。

この点はとても興味深かった。

人生の中で無駄に思えた経験でも、環境が変われば大きな武器になる。

ヴェンデリンの魔法ばかりが注目されるが、彼の強みは前世の実務経験にもあるのだと思う。

また、ヴェンデリンは新しい食品をすべて自分で製造・販売しようとはしない。

教会や商人のアルテリオへ作り方を教え、量産や経営を任せる。

自分で商売を独占すれば、もっと利益を得られるかもしれない。

しかし経営や流通は専門家に任せ、自分は安く普及した商品を買う。

無理にすべてを抱え込まない考え方が、後の領地経営にもつながっている。

本人の動機が「安く味噌や醤油を買いたい」「美味しい物を食べたい」という点も、ヴェンデリンらしくて面白い。

大きな社会変化が、食い意地から始まっている。

その妙な現実感が、本作の魅力である。

発展する開発特区と追い詰められるクルト

ヴェンデリンが未開地の開発を始めてから、わずか三か月ほど。

開発特区には水田や用水路が広がり、人口は三百五十人を超えていた。

本村落よりも大きな集落になりつつある。

開墾済みの農地。

一年目の最低限の給金。

ベテラン農民による指導。

安く生活用品を買える商店。

移住希望者にとって、これほど条件の良い開拓地はない。

通常の開拓では、土地を与えられても自分で木を切り、石を除き、土を耕さなければならない。

最初の収穫まで何年もかかることもある。

ヴェンデリンの開発特区では、魔法で整えられた田畑から農業を始められる。

応募者が殺到するのも当然だと思う。

一方のクルトは、その成長を領地の発展とは受け取らない。

ヴェンデリンが自分の領地を乗っ取ろうとしていると考える。

開発特区から税金が納められても、帳簿を誤魔化していると疑う。

三か月で六十万セントほどの税収が増えているにもかかわらず、まだ足りないと主張する。

さらに、ヴェンデリンの全財産から半分ほどを税として取り上げるべきだと言い始める。

クルトの頭の中では、ヴェンデリンの財産は領地を発展させるために自由に使える金になっている。

自分では資金も技術も人脈も用意できない。

だから、持っている者から奪えばよい。

それを領主の権利だと思い込んでいる。

父アルトゥルは、開発には移築費、農具代、技術者の給金、移民への生活保障など、多額の経費がかかっていると説明する。

魔法による土木作業だけを見れば無料に近い。

しかし、村を作るには人や物が必要である。

クルトは、その現実を理解しようとしない。

成功した結果だけを見て、簡単にできたと思ってしまう。

この考え方が、彼をますます孤立させていった。

エリーゼの治療が領民の心を動かす

領地唯一の神官が腰を痛めたため、エリーゼは代理として教会の仕事を行う。

医師のいない土地では、病気や怪我は民間療法に頼るしかない。

熱を出した子ども。

開墾中に腕を切った者。

木から落ちて骨折した者。

エリーゼは、訪ねてくる領民を断らず、無償で治療する。

領民たちは、彼女を聖女として慕うようになる。

そして、エリーゼの婚約者であるヴェンデリンへの信頼も高まっていく。

クルトからすれば、これも領民への人気取りに見える。

しかし、病気や怪我で苦しんでいる人にとって、誰が治療してくれるかは重大な問題である。

治療費も取らずに助けてくれる人物を慕うのは当然だろう。

クルトは、領民の心がヴェンデリン側へ動く理由を理解できない。

魔法や金で誘惑されていると考える。

しかし本当は、これまで放置されていた困り事を解決してくれるから支持されている。

領主として必要なのは、支配を強めることではなく、人々の生活を守ることだと改めて感じた。

本村落の支持者まで離れていく

クルトは、本村落の有力者だけを集めた会合を開く。

本村落は、代々バウマイスター家を支持する代わりに、他の二村落よりも優遇されてきた。

領主家にとっては、安定した支持基盤である。

本村落の豪農や職人たちにとっても、競争相手が少ない環境で利益を守れる仕組みだった。

ところが、その会合へ参加する人数が大きく減っていた。

以前は二十人ほど集まっていたが、今回は八人しか来ない。

領内の職人たちは、ヴェンデリンの商店で売られる質の高い商品に客を奪われていた。

しかしヴェンデリンは、彼らを単純に廃業へ追い込んだわけではない。

職人の子どもたちを王都やブライヒブルクの工房へ修行に出す。

親世代には、工房を維持しながら開発特区で農業をする道を用意する。

技術を身につけた子どもが戻れば、外部の商品と競争できる工房を再開できる。

今の仕事を失っても、次へ進む道を残している。

クルトから見れば、これは支持者を奪う卑劣な策略である。

しかし職人たちからすれば、自分たちの子どもが技術を学び、将来も仕事を続けられる可能性が生まれた。

古い利権を守るだけのクルトと、新しい選択肢を与えるヴェンデリン。

どちらを選ぶかは明らかだった。

豪農たちも、他村落の農地が拡大したことで、以前ほど特別な存在ではなくなっている。

本村落の住民の中にも、クルトを支持し続けるより、中立を保った方が安全だと考える者が増えていた。

ヴェンデリンが直接「自分を支持しろ」と言わなくても、クルトの支持基盤は崩れていく。

その様子は、武力による戦いよりも静かで残酷だった。

クルトへ渡された暗殺用の魔道具

支持者を失い、父からも見放されたと感じたクルトの前に、ルックナー会計監査長の使者が再び現れる。

使者は、中央でも未開地開発の利権を巡る争いが起きていると説明する。

開発を主導するのは、ブライヒレーダー辺境伯とルックナー財務卿である。

財務卿と敵対する会計監査長は、利権から外される可能性が高い。

クルトもまた、未開地開発を妨げる邪魔な存在として扱われている。

立場を失いかけている二人が協力し、ヴェンデリンを排除する。

使者はそのように持ちかける。

クルトは、古代遺跡から出土したという魔道具を受け取る。

見た目は古びたオカリナである。

使者は、それを何かを呼び寄せて標的を殺す道具だと説明する。

クルトは「竜使いの笛」だと信じる。

山脈に住む飛竜やワイバーンを大量に呼び寄せれば、ヴェンデリンたちを倒せる。

そう考えたのだ。

ここで恐ろしいのは、クルトがヴェンデリンだけを狙っていない点である。

竜の大群が来れば、領民や家族にも被害が出る。

同行者たちは、自分たちの妻や子どもも死ぬのではないかと心配する。

クルトは、新しい妻や子どもを作ればよいと答える。

自分が生き残り、領主になれればよい。

父も母も妻も子どもも領民も、すべて交換可能な存在として扱っている。

かつては、長男として家を守りたいという思いがあったのかもしれない。

しかし追い詰められた結果、守りたかったはずの家族まで切り捨てるようになってしまった。

この時点で、クルトは領主になる資格だけでなく、人として大切なものまで失っていたのだと思う。

偶然来ていたアームストロング導師

クルトが暗殺を企てていた頃、ヴェンデリンたちのもとにはアームストロング導師が訪れていた。

王都から高速飛翔で山脈を越え、途中で邪魔をした飛竜を首の骨を折って仕留めている。

飛竜を宿泊のお土産として持ってくる時点で、相変わらず規格外である。

クルトは、飛竜やワイバーンを大量に呼び寄せればヴェンデリンたちを倒せると考えていた。

しかし現地には、飛竜を単独で倒せる者が複数いる。

ヴェンデリン。

ブランターク。

アームストロング導師。

ルイーゼ。

ヴィルマ。

エルとイーナも協力すれば戦える。

仮に本物の竜使いの笛だったとしても、簡単に全滅する戦力ではない。

クルトはヴェンデリンの力を知っているつもりで、実際には何も理解していなかった。

一方で、導師とヴィルマが朝食の席で大食い勝負を始める場面には笑ってしまった。

圧倒的な戦闘力を持つ二人が、食事量で真剣に競い合う。

そして英雄症候群のヴィルマに導師が敗北する。

暗殺事件直前とは思えないほど平和な光景であり、重い展開の前のよい息抜きになっていた。

竜使いの笛ではなく怨嗟の笛だった

未開地の奥で、クルトはヴェンデリンたちを待ち伏せする。

彼が笛を吹くと、飛竜やワイバーンは現れない。

周囲の地面や空間から、黒い煙のようなものが集まり始める。

その正体は、長い年月の間に土地へ染み込んだ怨念だった。

虫が踏み潰される。

動物が捕食される。

子どもが育たずに死ぬ。

人が日常生活で怒りや不満を抱く。

一つひとつは小さくても、広大な土地から集めれば膨大な量になる。

怨嗟の笛は、それらを使用者の強い憎悪へ集める魔道具だった。

クルトが連れてきたエックハルトたちは、黒い怨念に包まれて死ぬ。

そしてゾンビとして起き上がり、肉を求めながらクルトへ近づいてくる。

クルトは、自分だけが笛に守られていると思っていた。

しかし笛は口から離れない。

手も離れない。

息を止めても音は止まらない。

彼は、最初から生き残る予定ではなかった。

怨嗟の笛は、使用者自身を強力なアンデッドに変え、命と引き換えに標的を殺す道具である。

ルックナー会計監査長にとって、クルトは使い捨ての駒でしかなかった。

ヴェンデリンを殺せればよい。

失敗しても、クルトが死ねば未開地開発の障害が消える。

どちらに転んでも都合がよい。

クルトは最後になって、自分が利用されていたことに気づく。

しかし、それまでクルト自身も家族や領民、同行者たちを使い捨てにしようとしていた。

他人を道具として扱った者が、最後には自分も道具として捨てられる。

あまりにも皮肉な結末だった。

クルトの怨念が巨大な怪物となる

クルトは、ゾンビとなった同行者たちに食い殺される。

しかし怨嗟の笛の効果は終わらない。

クルトの強い憎悪を中心に、未開地中から怨念が集まり続ける。

黒い煙は巨大な竜巻となり、やがて人型の巨人へ変わる。

その内部には、クルトと五人のアンデッドが取り込まれていた。

アームストロング導師によれば、通常の怨嗟の笛でここまで巨大な存在が生まれることはない。

クルトの憎悪が、それほど強かったということだ。

彼は死んでも、なおヴェンデリンを殺そうとする。

ヴェンデリン本人からすれば、理不尽な逆恨みでしかない。

ヴェンデリンは、クルトの領地を奪おうとして家を出たわけではない。

むしろ揉め事を避けるため、幼い頃から実家と距離を置いてきた。

それでもクルトは、自分がうまくいかない原因をすべてヴェンデリンへ押しつける。

自分が努力しなかったこと。

領民の声を聞かなかったこと。

家族を大切にしなかったこと。

現実を認めず、変化を拒んだこと。

それらを振り返らず、弟が存在するから自分は不幸なのだと思い込む。

その歪んだ感情が、死後には巨大な怪物として現れているように感じられた。

魔法ではなく浄化が必要な戦い

アームストロング導師は、巨大な怨念の巨人へ火炎魔法を放つ。

強烈な火柱によって、取り込まれていた五人のアンデッドは消滅する。

しかし怨念を主体とする巨人には、通常の攻撃魔法がほとんど効かない。

魔力弾を撃ち込んでも、黒い煙が集まって修復される。

物理的な肉体を持たないため、倒すには聖魔法や浄化魔法が必要になる。

ヴェンデリンとエリーゼは、範囲を狭めて威力を高めた浄化魔法を放つ。

少しずつ巨人は小さくなる。

しかし怨嗟の笛が周囲から新しい怨念を集めるため、消滅させる速度が追いつかない。

長期戦になれば、先にエリーゼの魔力が尽きる。

一歩間違えれば、ヴェンデリンたちも全滅しかねない危険な状況だった。

特に印象に残ったのは、エリーゼがヴェンデリンへ、自分も将来の妻として責任を背負うと伝える場面である。

クルトを追い詰め、暴発を誘った判断には、ヴェンデリン側にも責任がある。

クルトが暗殺を企てたのは本人の意思であり、自業自得ではある。

それでも人の死を完全に割り切ることは難しい。

エリーゼは、ヴェンデリンだけにその重さを背負わせない。

戦いだけでなく、決断の責任まで共に引き受けようとする。

婚約者としての彼女の強さを感じた。

聖光を纏って怪物へ抱きつく導師

浄化魔法を使えるヴェンデリンとエリーゼだけでは、怨念の供給を上回れない。

そこでアームストロング導師は、その場で聖魔法を習得し直そうとする。

師匠の本を読み、聖光の矢を放つ。

しかし、できたのは小さくて遅い光の矢だった。

普段の導師からは想像できないほど弱い。

巨大な怨念の怪物には、ほとんど効果がない。

それでもヴェンデリンの助言を受け、導師は聖光を自分の体へ纏う方法に切り替える。

全身を青白い聖なる炎で包み、そのまま巨人へ抱きつく。

最終的に力技へ持ち込むのが、いかにも導師らしい。

普通の人なら、怨念の塊へ近づくことすら危険である。

しかし導師は、聖光を纏って直接内部から浄化する。

ヴェンデリンとエリーゼも出力を高め、三人がかりで怪物を消していく。

クルトは最後までヴェンデリンの名を叫び続ける。

謝罪も反省もない。

自分の失敗を認めることもなく、弟への憎悪だけを残して消えていく。

救いのない最期である。

しかし、これ以上犠牲者が増えなかったことには安堵した。

長く続いた御家騒動が、ようやく終わった瞬間だった。

逃げ出した呪いの残りカス

怨念の巨人を浄化した後、黒焦げになった怨嗟の笛から、黒い煙が飛び出す。

それは王都の方向へ逃げていった。

ヴェンデリンたちは戦闘で魔力を消耗しており、追跡できない。

残った怨念は、笛を用意した人物のもとへ向かっていた。

ルックナー会計監査長は、クルトへ怨嗟の笛を渡した張本人である。

彼は、クルトを暴発させて処分させる。

暗殺が成功すれば、未開地開発の利権を得る。

失敗しても、自分はクルトの計画を兄へ報告した情報提供者として責任を逃れる。

さらにローデリヒを自分の庶子として認知し、血縁関係を利用して未開地開発へ入り込もうとしていた。

非常に悪辣な人物である。

彼にとって、クルトもローデリヒも自分の利益のための道具だった。

しかし、怨嗟の笛に残ったクルトの憎悪は、ヴェンデリンだけでなく、自分を利用した会計監査長にも向けられていた。

会計監査長が家族や派閥の貴族たちと成功を祝っている最中、黒い怨念が屋敷へ侵入する。

警備兵。

家臣。

使用人。

家族。

派閥の貴族たち。

八十人以上が殺され、ゾンビへ変えられる。

会計監査長だけは、すぐに殺されない。

ゾンビとなった家族や仲間たちに襲われ、全身を食い破られて死ぬ。

自分がクルトへ与えた運命と、ほとんど同じ末路である。

クルトを笑いながら使い捨てた人物が、クルトの怨念によって同じように食い殺される。

あまりにも皮肉で、恐ろしい因果応報だった。

暗殺に関わった貴族一党が全滅する恐ろしさ

ルックナー会計監査長の屋敷で起きた惨劇は、単なる悪人への罰では終わらない。

その場にいた家族や使用人、派閥の貴族たちまで大量に死亡している。

全員が暗殺計画の中心人物だったとは限らない。

事情を知らなかった者もいたはずである。

それでも怨念は区別しない。

強い憎悪に触れた者を次々と巻き込み、被害を広げていく。

呪いを利用すれば、標的だけを都合よく消せるわけではない。

一度制御を失えば、周囲の無関係な人々まで犠牲になる。

この事件からは、呪いや陰謀の恐ろしさを感じた。

会計監査長は、自分なら安全な場所からクルトを操れると思っていた。

自分は直接手を下さない。

証拠も残さない。

失敗しても責任を逃れられる。

そう計算していた。

しかし、怨念は距離や身分を越えて本人のもとへ戻ってくる。

人を呪えば、自分のための穴も必要になる。

その言葉を、クルトと会計監査長の二人が最悪の形で証明していた。

父アルトゥルが語る過去の真相

事件後、ヴェンデリンたちは父アルトゥルへ報告する。

クルトと共犯者たちは死亡した。

王国は、罪を犯した者以外へ連座責任を問わない。

母やアマーリエ、子どもたちが処罰されないことには安心した。

ただしアルトゥルは当主を退き、騎士爵家は次男ヘルマンが継ぐ。

未開地の一部はパウルへ与えられ、大半はヴェンデリンの領地となる。

ここで、クラウスの息子ゴードンと、娘レイラの婚約者ハインが死亡した事件の真相も明かされる。

クラウスは、アルトゥルがレイラを妾にするために二人を殺したのではないかと疑っていた。

しかし実際には、ゴードンとハインが名主の後継を巡って争い、狩りの最中に互いを殺そうとして崖から転落した。

アルトゥルは、領内の有力者同士が後継争いで殺し合った事実を公表できず、事故として処理した。

さらに、他村落の名主たちがレイラとの結婚を利用して本村落へ介入しようとしたため、争いを防ぐ目的で彼女を妾に迎えた。

アルトゥルの行動が正しかったとは言い切れない。

クラウスへ真相を説明せず、娘を妾として差し出させた。

その結果、クラウスは長年領主家を疑い続けることになった。

しかし、単純な欲望だけでレイラを奪ったわけでもなかった。

閉鎖された小さな領地では、一つの婚姻や後継問題が村落間の争いへ発展する。

領主として、最悪の事態を避けるために強引な判断をした。

その事情が分かると、アルトゥルもまた、未熟で不器用な統治者だったのだと感じる。

悪人ではない。

しかし説明をせず、力で問題を押さえ込んだため、次の世代へ大きな不信を残した。

クルトの暴走も、クラウスの暗躍も、過去の不透明な処理の積み重ねから生まれている。

御家騒動が一人の悪人だけで起きたわけではない点に、物語の人間臭さを感じた。

アマーリエと子どもたちの今後

ヴェンデリンは、クルトの妻アマーリエと母ヨハンナへ事件の結末を伝える。

アマーリエは、以前からクルトの様子がおかしくなっていたと語る。

ヴェンデリンへの不満。

自分だけが正しいという思い込み。

現実離れした領地開発の計画。

家族でも近づきにくい状態になっていた。

彼女は、夫がいつか取り返しのつかないことをするのではないかと覚悟していたのだと思う。

それでも、夫がアンデッドとなって消滅したと聞くのは辛いはずである。

アマーリエが最も心配しているのは、自分ではなく子どもたちの将来だった。

罪人の息子として扱われるのではないか。

クルトの血筋を理由に処分されるのではないか。

ヴェンデリンは、甥たちの処遇を最大限考慮すると約束する。

後に彼らへ爵位と領地を与え、分家として独立させる考えも持つ。

父親が罪を犯したからといって、子どもまで未来を奪われるべきではない。

クルトとは決定的に対立したが、その妻子まで敵として扱わない。

ヴェンデリンの判断に安心した。

なぜか伯爵へ陞爵するヴェンデリン

王都で事件の処分が行われ、ヴェンデリンは伯爵へ陞爵する。

本人にとっては、あまり望んでいない出世である。

しかし王国からすれば、広大な未開地を開発させるには、それに相応しい爵位が必要だった。

ヴェンデリンの実家である騎士爵家から、未開地部分が切り離される。

大半は伯爵領としてヴェンデリンへ与えられる。

ヘルマンが継ぐ騎士爵家。

パウルへ与えられる準男爵領。

ヴェンデリンの伯爵領。

広大だった旧バウマイスター家の領地は、兄弟たちによって分割される。

長年続いてきた相続問題と未開地の帰属争いが、ようやく決着した。

さらに、エーリッヒとヘルムートも準男爵へ陞爵する。

国王は、クルトの暴走や中央貴族の陰謀で迷惑を受けたヴェンデリンへの配慮として、兄たちにも褒賞を与えた。

本人へ褒賞を集中させると、ヴェンデリンが嫌がると理解しているのも面白い。

英雄として功績を重ねるたびに、本人の望みとは関係なく地位と責任が増えていく。

冒険者として自由に活動したいのに、とうとう伯爵になってしまった。

第1巻で貧乏騎士爵家の八男だった少年が、第5巻で大領地を持つ伯爵になる。

成り上がりの速度が、相変わらず凄まじい。

ルックナー男爵家の遺産まで押しつけられる

暗殺事件へ関与したルックナー男爵家は取り潰しとなる。

その全財産は、被害者であるヴェンデリンへ与えられる。

屋敷。

金貨。

美術品。

魔道具。

総額は五千万セントほどに達する。

またしても、ヴェンデリンの財産が増えてしまう。

さらに、跡取りがいなくなった準男爵家一つと騎士爵家三つについて、適任者へ爵位を与える権利まで得る。

ヴェンデリンは、その爵位を将来アマーリエの子どもたちへ与えることを考える。

クルトが残した問題を、次の世代の再出発へ変えようとしている。

一方、ルックナー会計監査長によって庶子として認知されたローデリヒには、男爵家を継ぐ可能性が生まれていた。

しかしローデリヒが男爵家を継げば、ヴェンデリンの筆頭家臣として働けなくなる。

未開地開発にも大きな支障が出る。

最終的にルックナー男爵家は取り潰され、ローデリヒは爵位を継がずに済む。

本人も、過去に自分を捨てた家を継ぐより、将来性のあるバウマイスター伯爵家で働くことを選ぶ。

この選択には納得できた。

血縁だけで家族や居場所が決まるわけではない。

自分を必要としてくれる場所で、自分の能力を発揮する。

ローデリヒにとって、ヴェンデリンの家臣団が本当の居場所になっているのだと思う。

伯爵領の本拠地候補は三百五十六か所

御家騒動が終わり、ヴェンデリンはようやく冒険者生活へ戻れると思う。

しかし現実は、それほど甘くない。

伯爵領の本格的な開発が始まるからである。

筆頭家臣兼代官となったローデリヒは、本拠地候補を三百五十六か所まで絞っていた。

ヴェンデリンはエルと共に、瞬間移動を繰り返しながら一日ですべてを視察する。

地盤。

水源。

将来の拡張性。

交通の便。

魔導飛行船の発着地。

ローデリヒは、各地の条件を次々と確認していく。

ヴェンデリンとエルは疲れ果てる。

しかしローデリヒは、夜中まで資料を整理し、翌朝には結論を出していた。

選ばれたのは、未開地中央部にある広大な草原である。

将来の町の拡張がしやすく、地盤も安定している。

魔導飛行船による交通にも向いている。

新しい町の名前は、バウルブルクとなる。

ヴェンデリン本人は、できれば無難な名前で済ませたい。

そのため、自分の家名を少し変えただけの名称に決まる。

派手な名前をつけないところも、彼らしい。

ローデリヒの能力が一気に開花する

本巻後半で最も面白かったのは、ローデリヒが生き生きと領地開発を進める姿である。

これまでの彼は、有能でありながら活躍する場所を得られなかった。

私生児として扱われ、実家にも居場所がない。

槍の腕もある。

帳簿、税務、法律、領地経営にも詳しい。

それでも、その能力を十分に使える立場がなかった。

ヴェンデリンに雇われ、広大な伯爵領の開発を任されたことで、ようやく本領を発揮する。

魔導飛行船の港。

道路網。

河川の治水。

農業用水路。

沿岸部の港。

村や町の配置。

家臣団の編成。

作業員の宿営地。

警備や食事の手配。

大量の仕事を整理し、人員へ的確に割り振っていく。

忙しいはずなのに、ローデリヒは元気である。

むしろ仕事が増えるほど、肌がツヤツヤしていくように見える。

今まで能力を持て余していた人物が、自分に合った仕事を得て生き生きとする。

その姿は見ていて気持ちがよかった。

ただし、その情熱によって最も酷使されるのが、主君であるヴェンデリンである。

当主なのに家宰から強制依頼を受ける

ヴェンデリンは、冒険者として魔の森へ向かおうとする。

しかしローデリヒから、建築用の石材や木材を集めるよう命じられる。

形式上は、冒険者への強制依頼である。

主君であるはずのヴェンデリンが、家宰から仕事を割り振られている。

岩山から石を切り出す。

木を伐採する。

建築資材として加工する。

魔法の袋へ収納し、建設予定地まで運ぶ。

冒険者の仕事だと自分へ言い聞かせながら、実際にしているのは資材調達である。

仲間たちが魔の森で魔物を狩っている間も、ヴェンデリンだけは土木作業を続ける。

この主従関係の逆転が面白い。

形式上は、ヴェンデリンが伯爵家の当主である。

ローデリヒは家臣であり、命令を受ける側だ。

しかし実務では、ローデリヒが計画を立て、ヴェンデリンへ指示を出す。

ヴェンデリンも、自分が領地経営に詳しくないと理解しているため従う。

権限を持つ者が、何でも自分で決める必要はない。

得意な人物へ任せ、その指示に従うことも必要である。

クルトは、領主だから自分がすべてを支配すべきだと考えた。

ヴェンデリンは、家宰の方が詳しいなら任せればよいと考える。

この違いが、領地の発展速度へ直結している。

領主がゲッソリするほど町が発展する

ヴェンデリンの土木魔法によって、バウルブルクの建設は驚異的な速度で進む。

地面を平らにする。

屋敷や役所の基礎となる穴を掘る。

主要道路を固める。

排水溝を作る。

魔導飛行船港の基礎を整える。

野生動物の侵入を防ぐ堀や土塁を築く。

岩盤を掘り抜いて井戸を作る。

河川の流れを調整する。

川底を浚渫する。

堤防や遊水地を作る。

農業用水路を延ばす。

通常なら、何年もかかる大工事である。

それをヴェンデリンは、魔法で次々と終わらせる。

作業員たちは、彼が大まかに作った場所を人力で仕上げる。

魔法と人力を組み合わせることで、工事が恐ろしい速度で進む。

領地が発展する様子には、大きな爽快感があった。

何もなかった草原に、道路や建物が現れる。

人が集まり、商店が並び、魔導飛行船が到着する。

地図の上の計画が、現実の町へ変わっていく。

ヴェンデリン自身も、自分の魔法で町が形になることに少しずつ楽しさを感じている。

ただし、ローデリヒは遠慮しない。

ヴェンデリンができると分かれば、次の仕事を追加する。

今日はここまで整地した。

なら明日は、さらに先まで道路を作れる。

井戸ができた。

次は用水路である。

港の基礎ができた。

次は河川と海岸を整備する。

ヴェンデリンが働けば働くほど、ローデリヒの計画は加速する。

その結果、ヴェンデリンは魔力を使い果たし、屋敷へ帰れない日まで増えていく。

主君がゲッソリと痩せる。

家宰は生き生きと輝く。

そして領地は発展する。

この三者の関係が、絶妙なコメディになっていた。

現場で魔力切れになる伯爵

ヴェンデリンは、屋敷から百キロ以上離れた道路工事の現場で魔力を使い果たす。

瞬間移動で帰る魔力すら残っていないため、そのまま作業員たちと野営する。

伯爵になったのだから、豪華な屋敷でゆっくり休めると思っていた。

現実には、土と汗にまみれ、工事現場で寝泊まりしている。

この世知辛さが、本作らしい。

現場の食事や待遇は、王国軍よりも良い。

ローデリヒは、作業員が倒れれば工事が遅れると理解している。

十分な食事。

休息。

給金。

安全対策。

必要なものをきちんと用意する。

人を酷使するだけではない。

働ける環境を整えたうえで、最大限の成果を求めている。

だからこそ作業員たちもついてくるのだと思う。

ヴェンデリンも不満を口にしながら、領地が発展すること自体は嬉しい。

完全に嫌なら断ることもできる。

それでも働き続けるのは、自分の領地に住む人々の生活が良くなると分かっているからだろう。

伯爵という肩書よりも、現場で魔法を使っている姿の方が、彼には似合っているように感じた。

開発は一人の力では進まない

ヴェンデリンの魔法は、領地開発にとって大きな力である。

しかし、彼一人では町は作れない。

ローデリヒが計画を立てる。

トリスタンたちが警備を担当する。

作業員が細かな工事を仕上げる。

測量技師が土地を測る。

料理人が食事を作る。

エリーゼが怪我人を治療する。

エルやイーナ、ルイーゼ、ヴィルマが野生動物を駆除する。

レンブラントが建物を移築する。

リネンハイムが安い物件を探す。

王国や貴族たちが人員や資材を送る。

多くの人が、それぞれの仕事を担当している。

ヴェンデリンの魔法は、作業時間を大幅に短縮する。

しかし、何をどこに作るのかを決め、完成後に維持していくのは人である。

第5巻では、強大な魔法だけでは領地を経営できないことがよく分かる。

だからこそ、ローデリヒの存在が重要になる。

ヴェンデリンは資金と魔法を提供する。

ローデリヒは、それを現実的な計画へ変える。

二人の能力がかみ合うことで、伯爵領は急速に発展していく。

クルトとヴェンデリンの決定的な違い

本巻を読んで感じたのは、クルトとヴェンデリンの違いは、単純な能力差だけではないということだった。

クルトには、ヴェンデリンほどの魔力がない。

莫大な資金もない。

中央貴族との人脈もない。

その不利は確かに大きい。

しかし最大の違いは、自分にない能力を持つ人間をどう扱うかにある。

クルトは、弟たちの能力を脅威と考えた。

エーリッヒが頭脳に優れていれば、家督を奪う敵だと思う。

ヘルマンに人望があれば、支持を奪う敵だと思う。

ヴェンデリンに魔法があれば、排除しなければならない敵だと思う。

自分より優れた者を遠ざけ、自分だけで支配しようとした。

一方のヴェンデリンは、自分にできない仕事を人へ任せる。

領地経営はローデリヒ。

商売はアルテリオ。

建物の移築はレンブラント。

治療はエリーゼ。

警備や戦闘は仲間たち。

本人は、自分が最も役立てる魔法や資金の提供に集中する。

有能な人間が近くにいることを、脅威ではなく助けとして受け入れている。

その結果、ヴェンデリンの周囲にはさらに人が集まる。

クルトの周囲からは人が離れていく。

二人の結末は、才能だけでなく、人との関わり方によって分かれたのだと思う。

泥沼の御家騒動が終わった安堵

第1巻から続いてきたバウマイスター本家の問題は、第5巻で大きな決着を迎える。

クルトは死亡する。

アルトゥルは隠居する。

ヘルマンが騎士爵家を継ぐ。

パウルには準男爵領が与えられる。

ヴェンデリンは伯爵となり、未開地の大半を治める。

アマーリエと子どもたちも、連座で処罰されずに済む。

クラウスが望んでいた領地の変化も始まる。

あまりにも多くの犠牲が出た。

クルトが別の選択をしていれば、ここまで悲惨な結末にはならなかったはずである。

父へ頭を下げる。

弟たちの力を借りる。

領民の意見を聞く。

自分に足りない知識を学ぶ。

どこかで考え方を変えられていれば、家族と共に領地の発展を見守れたかもしれない。

しかし最後まで、自分が正しいという考えを捨てられなかった。

その結末は悲しい。

同時に、これ以上クルトの憎悪によって家族や領民が傷つかなくて済むことには安堵した。

長く続いた御家騒動が終わり、ヴェンデリンたちが新しい領地へ進める。

物語が大きく次の段階へ移った巻だった。

領主になって自由が増えるとは限らない

ヴェンデリンは、冒険者として自由に生きることを望んでいる。

しかし、功績を重ねるたびに爵位が上がり、責任が増えていく。

準男爵。

男爵。

そして伯爵。

領地も家臣も増える。

守る人も増える。

自由になるために力をつけたはずなのに、力があるから仕事を任される。

この構図は、第1巻から変わっていない。

ただし第5巻では、これまでのように王国や大貴族から一方的に仕事を押しつけられるだけではない。

自分の領地を作るための仕事である。

道路を作れば、人が移動しやすくなる。

井戸を掘れば、住民が水を得られる。

堤防を作れば、洪水の被害を減らせる。

港を作れば、交易が始まる。

働いた成果が目に見える。

大変ではあるが、これまでの理不尽な強制依頼とは少し違う。

ヴェンデリンが土木作業へ次第に楽しさを感じるのも、そのためだと思う。

自分が魔力を使った分だけ、町が形になる。

人が暮らせる場所が増える。

現場仕事のような達成感がある。

ローデリヒに酷使されてゲッソリしながらも、完全には嫌がっていない。

その姿が印象的だった。

今後の火種もすでに見え始めている

御家騒動は終わった。

しかし、新しい伯爵領が生まれれば、当然新しい問題も起こる。

未開地開発の利権を求める中央貴族。

家臣として入り込もうとする貴族の子弟。

結婚や側室を通じてヴェンデリンとつながろうとする家々。

ローデリヒの縁談。

エルの結婚問題。

魔の森に眠る希少資源。

南部海岸の港と、その先に広がる島々。

発展する領地には、人も金も集まる。

同時に欲望や争いも集まってくる。

本巻の最後には、魔力を完全に抑えて接近する謎の女魔法使い、カタリーナも登場する。

高価な装備を身につけ、明らかに普通の冒険者ではない。

没落貴族らしい雰囲気もあり、ヴェンデリンたちは早くも面倒事の気配を感じている。

クルトとの争いが終わったばかりなのに、もう次の火種が現れる。

ヴェンデリンに平穏な冒険者生活が戻る日は、まだ遠そうである。

凄惨な因果応報と爽快な開拓が同居した一冊

『八男って、それはないでしょう! 5』は、前半と後半で大きく印象が変わる巻だった。

前半では、クルトが怨嗟の笛を使い、自分の命まで失う。

彼を利用したルックナー会計監査長も、逃げ出した怨念によって家族や派閥ごと全滅する。

人を呪い、利用し、使い捨てようとした者たちが、自分たちの悪意によって滅びていく。

因果応報ではある。

しかし無関係に近い人々まで大量に巻き込まれたため、単純に痛快とは言えない。

呪いや陰謀の恐ろしさが強く残る展開だった。

一方の後半では、伯爵領の開発が本格的に始まる。

何もなかった草原に町が作られる。

道路、井戸、用水路、港、飛行船の発着地が整っていく。

有能なローデリヒが実務能力を発揮し、ヴェンデリンは魔法による土木作業へ追い立てられる。

領主と家宰の立場が逆転したような日常には、思わず笑ってしまった。

ヴェンデリンがゲッソリするほど、領地は豊かになる。

ローデリヒが元気になるほど、仕事が増えていく。

その関係は気の毒でもあるが、見ていて楽しい。

泥沼だった実家の御家騒動が終わり、物語は新しい領地を一から作る段階へ進んだ。

ヴェンデリンが、伯爵としてどのような家を作っていくのか。

ローデリヒの開発計画は、どこまで広がっていくのか。

そして、ようやく戻れると思った冒険者生活に、カタリーナがどのような騒動を持ち込むのか。

次巻がますます楽しみになる第5巻だった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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八男4巻レビュー
八男まとめ
八男6巻レビュー

考察・解説

未開地の開墾

未開地の開墾と内政無双の全貌

『八男って、それはないでしょう!』における「未開地の開墾」について、人力による開墾の限界と領民の不満、魔法による常識外れの開発特区開墾、他村落の再開発によるクルトの孤立化、およびバウマイスター伯爵領・バウルブルクの本格開発の各点から解説する。

人力による開墾の限界と領民の不満

過去の魔の森遠征で多くの成人男性を失ったバウマイスター騎士爵領では、損害を回復するために父アルトゥルが自ら陣頭に立ち、領民に過酷な開墾作業を強いていた。

・農地と麦の収穫量は増えたものの、狩猟や採集を行う余裕が失われ、領民の食生活は貧相なものになっていた。

・人力で開墾可能な土地はすでに底を尽きていた。

・未開地に広がる平原を開拓するには野生動物の脅威を排除する必要があったため、これ以上の拡張はバウマイスター本家の力では不可能な状態に陥っていた。

魔法による常識外れの開発特区開墾

実家へ帰還したヴェンデリンは、未開地と領地の境界に開発特区を設け、独自の開墾を開始した。

・強力な土木魔法を駆使して巨石や巨木を取り除き、真四角の田畑や用水路を一瞬で整備した。

・刈り取った雑草や生ゴミなどを魔法で発酵させて大量の肥料を作り出し、土壌の改良まで魔法で行った。

・米作りを始めるために辺境伯領からベテランの農夫を指導役として招き、開墾不要・用水路完備という好条件を提示したため、王都などからの移民希望者が殺到し、瞬く間に新たな農村が形成された。

他村落の再開発によるクルトの孤立化

ヴェンデリンは開発特区だけでなく、他の二つの村落の再開発にも手を貸した。

・育成中の麦を魔法で土ごと空中に浮かせて別の畑へ移動させ、いびつだった畑を真四角に区画整理し、農道や用水路を整備した。

・農作業は劇的に楽になり、領民からの支持は完全にヴェンデリンへと移った。

・次期当主であるクルトの支持基盤は崩壊していくこととなった。

バウマイスター伯爵領・バウルブルクの本格開発

クルトの自滅後、未開地の大半を下賜されてバウマイスター伯爵となったヴェンデリンは、代官ローデリヒの計画のもと、新本拠地バウルブルクの本格的な開発をスタートさせた。

・整地作業:広大な草原の草を魔法で刈り取り、町や飛行船港の基盤となる巨大な平地を造成した。

・道路と井戸の建設:幅の広いメインストリートの地面を踏み固め、排水溝を設置し、強固な岩盤を魔法で一〇〇メートル以上貫いて飲用可能な水が出る井戸を各所に掘削した。

・河川と港の工事:河川の流路変更や川底の浚渫、ため池の造成を実施し、南部海岸では海底の泥や砂を魔法で引き上げて塩分を抜き、大型船が接岸できる港の岸壁材料として活用した。

・過酷な土木工事により、ヴェンデリンは連日のように魔力切れを起こして工事現場で野営を余儀なくされるほど酷使された。

・圧倒的な魔法土木作業と王都から移築された大量の家屋や施設により、通常であれば何十年もかかる未開地開拓が、わずかな期間で巨大な都市と穀倉地帯へと変貌を遂げていった。

まとめ

未開地の開墾と内政無双を巡る一連の全貌は、人力による開墾の限界と領民の不満から始まり、魔法を駆使した常識外れの開発特区の立ち上げ、既存村落の再開発を通じたクルトの支持基盤の解体、そして伯爵領の新本拠地バウルブルクにおける大規模インフラ整備に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
過酷な労働や領地の停滞という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、圧倒的な内政能力と領地発展の記録である。
人力の不全から、魔法による開墾、民心の掌握、都市基盤の造成、そして巨大穀倉地帯の完成へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

エリーゼの治癒魔法

エリーゼの治癒魔法と作中での活躍の全貌

『八男って、それはないでしょう!』に登場するエリーゼ・カタリーナ・フォン・ホーエンハイムの治癒魔法や浄化魔法について、ホーエンハイム家の聖女としての絶大な治癒力、パルケニア草原での過酷な救護活動、最上級治癒魔法奇跡の光による窮地の打開、および強力な浄化魔法の使い手の各点から解説する。

ホーエンハイム家の聖女としての絶大な治癒力

エリーゼの魔力量は中級から上級の間に位置するが、治癒を中心とした聖属性の魔法に極端に特化している。

・王都では見習い修道女として、孤児院での活動や貧しい人々への無償治療を献身的に行っていた。

・美貌と心優しさ、確かな治癒能力からホーエンハイム家の聖女と称されていた。

・ヴェンデリンと共にバウマイスター騎士爵領を訪れた際も、腰を痛めた司祭の代理として領民たちの怪我や病気を次々と無償で完治させ、女神のように慕われた。

パルケニア草原での過酷な救護活動

パルケニア草原の魔物討伐および掃討作戦において、エリーゼは従軍神官として救護所で治療にあたった。

・連日のように運ばれてくる数百人規模の重傷者を治療し続けるという過酷で凄惨な現場環境であった。

・そのような環境の中でも決して弱音を吐かず、聖女としての笑顔を保ちながら負傷者たちを救い続けた。

最上級治癒魔法奇跡の光による窮地の打開

エリーゼの治癒魔法の最大の切り札が、最上級治癒魔法である奇跡の光である。

・瀕死の重傷であっても生きていれば完全回復させる魔法であり、広大な教会の組織内でも使える者はわずか50人ほどしかいない極めて高度なものであった。

・対象者の魔力を半分ほど回復させるという強力な副次効果が存在した。

・古代地下遺跡の逆さ縛り殺しにおける二体目のドラゴンゴーレム戦において、ヴェンデリンが魔力切れを起こし死を覚悟した絶体絶命の状況下で、エリーゼは背後から彼に抱きついて口づけを交わしながらこの魔法を発動した。

・自身の残存魔力をすべて使い果たす代わりにヴェンデリンの魔力を回復させた。

・息を吹き返したヴェンデリンがドラゴンゴーレムを撃破し、パーティを全滅の危機から救う決定的な要因となった。

強力な浄化魔法の使い手

治癒魔法の裏返しとも言える、アンデッドを成仏させる浄化魔法においても彼女の能力は圧倒的であった。

・魔の森でのアンデッド浄化作戦では、彼女が展開した直径100メートルに及ぶ浄化魔法障壁に触れたゾンビたちが次々と溶けるように消滅した。

・2000体ものアンデッドを安全に処理する作戦の要となった。

・王都の悪霊が取り憑く瑕疵物件の浄化においても、彼女の聖障壁とエリア浄化が不可欠な役割を果たした。

まとめ

エリーゼの治癒魔法と作中での活躍を巡る一連の全貌は、聖女としての無償の治療活動から始まり、戦場での献身的な救護、絶体絶命の窮地を救った奇跡の光の行使、そして広範囲におよぶアンデッドの浄化に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
戦傷や死の危機という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、後方支援としての真価と強い絆の記録である。
献身的な活動から、戦場での不屈、極限状態での秘術行使、広大な浄化の遂行、そして絶対的な後方支援の要としての確立へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

料理と調味料

料理と調味料の開発および商業展開の全貌

『八男って、それはないでしょう!』における「料理と調味料」について、貧しい食生活と前世の知識、基本調味料の魔法精製、日本の味と画期的な料理の再現、アルテリオや教会を通じた商業展開、および周囲のキャラクターへの影響の各点から解説する。

貧しい食生活と前世の知識

ヴェンデリンの実家であるバウマイスター騎士爵家は非常に貧しく、毎日の食事は硬い黒パンと、少量の塩だけで味付けされた肉の細切れ入りの野菜スープという味気ないものであった。

・ヴェンデリンの前世である一宮信吾は、商社で国内の食品仕入れを担当していた。

・酒蔵や味噌蔵、食品メーカーとの取引を通じて食品製造の知識を身につけていた。

・自炊で凝った料理を作るなど食への強いこだわりを持っていた。

・美味しいものが食べたいという渇望が、魔法による食材集めと調味料開発の原動力となった。

基本調味料の魔法精製

ヴェンデリンは魔法の修行を兼ねて未開地や海へ赴き、食材や調味料を自力で調達するようになった。

・塩と砂糖:海水を魔法で精製して白くて純度の高い塩を作り出し、サトウキビから真っ白な高級砂糖を精製した。

・味噌と醤油:大豆と塩を材料に、魔法で醸造や発酵の工程を再現しようと試みた。

・材料が腐敗してしまう失敗を何千回も繰り返し、およそ1年の試行錯誤の末に味噌と醤油の完成にこぎつけた。

日本の味と画期的な料理の再現

独自の調味料を手に入れたヴェンデリンは、米を購入し、前世の日本の味や現代的な料理を次々と異世界に再現していった。

・唐揚げとカタクリ粉:肉を魔法で熟成させて軟らかくし、醤油や砂糖、ショウガの調味液に漬け込んだ。ジャガイモから自作したカタクリ粉や小麦粉を衣にして二度揚げする強いこだわりを見せた。

・豆腐と大豆食品:大豆を砕いて煮た豆乳に、ニガリの代用品を入れて豆腐を作った。納豆、油揚げ、がんもどき、おからなども開発し、厳格な神官たちを中心に大人気となった。

・マヨネーズとその派生:卵黄、酢、塩、胡椒に油を少しずつ足しながら魔法で攪拌してマヨネーズを作成した。ワサビ、マスタード、シソ、ユズ、カレー粉などを混ぜた派生型や、明太マヨネーズなども開発した。

・その他の展開:フライや串揚げ、テリヤキソース、ケチャップ、タルタルソース、バジルオイル、柚子胡椒、ラー油、豆板醤、タバスコ、カレー粉とカレーライスなど、多岐にわたる料理と調味料を生み出した。魔法陣を用いてクロマグロなどの海産物を召喚し、醤油を用いた刺身の試食会も行った。

アルテリオや教会を通じた商業展開

ヴェンデリンは自ら経営して儲けを独占するのではなく、実務を専門家に任せる方針を取った。

・教会との協力:ジャガイモから作ったカタクリ粉と、それを用いたイモモチなどの製法を教会に提供した。教会はこれを寡婦や孤児の自立支援事業として屋台で販売し、ヴェンデリンは安価に美味しいものを食べられる環境を手に入れた。

・アルテリオの商会:串揚げの屋台や店舗の展開、カレー粉を使用した高級レストランの運営、各種ソースやケチャップ、豆腐や納豆の量産などを商人アルテリオに委託した。

・アルテリオは莫大な利益を上げ、ヴェンデリンにも巨額の対価とアイデア料がもたらされた。

・醤油については魔法以外での醸造が難しいため、酒蔵と提携して数年がかりの研究が進められた。

周囲のキャラクターへの影響

ヴェンデリンの料理は仲間たちにも大好評であったが、特に影響を受けたのがアームストロング導師であった。

・仕留めた魔物をただ血抜きして塩焼きで食べる野趣あふれる食事を好んでいた導師は、ヴェンデリンのマヨネーズを知ってからは重度のマヨラーと化した。

・焼いた肉や野菜、御飯やパンにまでマヨネーズをかけるようになった。

・導師は自身で作ろうとしても不器用で失敗するため、定期的にヴェンデリンの屋敷にマヨネーズをもらいに来るようになった。

・特にカレー粉入りマヨネーズと唐揚げの組み合わせを絶賛して山のように平らげる姿が描かれた。

まとめ

料理と調味料の開発および商業展開を巡る一連の全貌は、前世の食知識と素朴な食生活のギャップから始まり、魔法を用いた基本調味料の精密な再現、食文化を革新する多様な料理の完成、組織的・商業的な流通の確立、そして強烈な愛好者を生み出す文化的影響力に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
異世界の貧熟な食環境や味覚の停滞という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、知識の発露と食の発展の記録である。
試行錯誤の開始から、味の再現、商業的展開、周囲の巻き込み、そして異世界における豊かな食基盤の完成へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

クルトの廃嫡

クルトの廃嫡とバウマイスター領再編の全貌

『八男って、それはないでしょう!』における「クルトの廃嫡」について、王国と大貴族の思惑、ルックナー会計監査長の暗躍、暗殺未遂事件とクルトの自滅、事件後の領地再編と処罰、およびクルトの遺族の処遇の各点から解説する。

王国と大貴族の思惑

ヴェンデリンが莫大な資金を得たことで、王国政府や寄親のブライヒレーダー辺境伯は、その資金を使って南端の広大な未開地を開発させる計画を立てた。

・開発を進める上で、保守的で無能な次期当主クルトの存在が障害となった。

・クルトを廃嫡して次男ヘルマンに実家を継がせ、未開地をヴェンデリンに下賜する方針が中央の権力者たちの間で秘密裏に決定された。

・王国側は他の領主への影響を考慮して強権を発動するのではなく、クルト自身が暴発を起こすよう誘導し、それを理由に処分するシナリオを描いた。

ルックナー会計監査長の暗躍

クルトの暴発の引き金となったのは、ルックナー財務卿の弟であるルックナー会計監査長の暗躍であった。

・未開地開発の利権から外されていた会計監査長は、クルトを唆してヴェンデリンを暗殺させ、その遺産と利権を奪い取ろうと画策した。

・使者を通じて周囲の竜を呼び寄せる竜使いの笛だと偽り、クルトに怨嗟の笛という古代の魔道具を渡した。

暗殺未遂事件とクルトの自滅

ヴェンデリンから搾取して未開地を自ら開発するという妄想に憑りつかれていたクルトは、邪魔なヴェンデリンたちを始末するため未開地で魔道具を使用した。

・怨嗟の笛の真の効果は、使用者自身の命を代償にして怨念を集め、強力なアンデッドと化して標的を殺すものであった。

・笛を吹いたクルトは黒い煙のような怨念に包まれて自滅し、自らもアンデッドと化してヴェンデリンたちに襲いかかった。

・クルトの怨念が核となった黒い巨人は、ヴェンデリン、エリーゼ、アームストロング導師の三人の聖魔法によって完全に浄化および消滅させられた。

事件後の領地再編と処罰

クルトの死後、この事件は次期当主による王国法衣男爵への暗殺未遂事件として処理された。

・父アルトゥルの強制隠居とヘルマンの継承:アルトゥルは当主の座を退き、次男のヘルマンがバウマイスター騎士爵家と縮小された領地を継いだ。

・未開地の分与とヴェンデリンの陞爵:未開地の一部は三男パウルに準男爵領として与えられ、大半の未開地はヴェンデリンに下賜された。ヴェンデリンは功績と迷惑料としてバウマイスター伯爵へと陞爵し、別家として独立および本家化した。

クルトの遺族の処遇

クルトの妻アマーリエと二人の息子であるカールとオスカーは、暗殺未遂犯の家族として領内に残ることも実家に戻ることも困難となった。

・隠居したアルトゥル夫婦や共犯者の遺族たちと共に、パウルが新しく開発する準男爵領へと移住した。

・ヴェンデリンは彼らの処遇を最大限考慮し、甥たちが成人した際にはアマーリエの実家であるマインバッハ姓を名乗らせて騎士爵領を分与し、分家として独立させる約束を取り付けた。

まとめ

クルトの廃嫡とバウマイスター領再編を巡る一連の全貌は、王国中央による開発計画とクルト排除の謀略から始まり、ルックナー会計監査長による陰謀、怨嗟の笛によるクルトの自滅、事件を受けた厳格な領地再編、そして遺族への現実的な救済措置に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
血統への固執や愚行という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、権謀術数の決着と新たな領地体制構築の記録である。
中央の思惑から、魔道具の罠、暴発と浄化、伯爵家への陞爵、そして遺族の生活保障へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

怨嗟の笛

怨嗟の笛の効果と凄惨な結末の全貌

『八男って、それはないでしょう!』に登場する怨嗟の笛について、怨嗟の笛の概要、クルトによる使用と自滅、怨念の巨人の誕生と浄化、王都での惨劇の各点から解説する。

怨嗟の笛の概要

怨嗟の笛とは、古代魔法文明時代に製造された仇討ち専用の呪われた魔道具である。

・見た目は古ぼけたオカリナのようであるが、一度息を吹き込んで稼働させると、使用者の命を代償にして標的を殺すまで笛の音が鳴り続ける。

・笛の音は周辺に溜まった人や動物の負の感情の蓄積である怨念を黒い煙として呼び集め、使用者自身の命を奪って強力なアンデッドへと変貌させる。

・自分の命を犠牲にしてでも憎い相手を確実に殺すための魔道具であり、王国では厳重に管理されるべき危険物とされている。

クルトによる使用と自滅

バウマイスター騎士爵家の長男クルトは、ヴェンデリンの暗殺と未開地開発の利権を狙うルックナー男爵の使者から、この魔道具を裏市場経由で受け取った。

・クルトは、これが周辺の竜を呼び寄せて敵を襲わせる竜使いの笛だと完全に騙されていた。

・未開地の視察に訪れたヴェンデリンたちに向けてクルトが笛を吹くと、飛竜ではなく無数の黒い煙が集まってきた。

・黒い煙はまずクルトの取り巻きたちを包み込んで殺害し、ゾンビ化させた。

・異常に気付いたクルトは笛を離そうとしたが、魔道具の呪いによって笛は口と手から離れず、自分が騙されたことに絶望しながら、ゾンビ化した取り巻きたちに生きたまま食い殺された。

怨念の巨人の誕生と浄化

クルトの死後、彼の異常なまでのヴェンデリンへの恨みと、広大な未開地や魔の森から集まった怨念が融合し、全高50メートルにも及ぶ黒い煙の巨人が誕生した。

・巨人の胸部にはオカリナを咥えたままのクルトの死体がコアとして埋め込まれ、怨念を操るレイスへと進化してヴェンデリンたちに襲いかかった。

・この巨人は物理攻撃や火の魔法が一切通じない強敵であった。

・最終的にアームストロング導師が直接巨人に抱きついて聖光で焼き、ヴェンデリンとエリーゼが最大出力の浄化魔法を重ねがけしたことで、ついに完全に浄化および消滅させられた。

王都での惨劇

巨人が浄化され笛が黒焦げになって事態は収束したかに見えたが、笛の中にわずかに残っていた黒い煙の塊であるクルトの怨念の残りカスが突如王都方面へと逃走した。

・普通であればすぐに消滅するはずの残りカスであったが、クルトの異常な執念により王都へ到達し、購入直後に笛に触れていたルックナー男爵の匂いと魔力を辿って彼の屋敷を襲撃した。

・折しもルックナー男爵邸では、クルトを謀殺して未開地の利権を得たと思い込んだ男爵が、派閥の貴族たちを集めて祝賀パーティーを開いていた。

・突如現れたクルトの怨霊は、ルックナー男爵の家族や派閥の貴族、使用人など80名以上を黒い煙で殺害してゾンビへと変えた。

・ルックナー男爵自身は、自分が使い捨てにしたクルトの怨霊に見下ろされながら、ゾンビ化した自分の家族や家臣たちに生きたまま食い殺されるという、クルトと全く同じ凄惨な最期を迎えた。

まとめ

怨嗟の笛の効果と凄惨な結末を巡る一連の全貌は、仇討ち専用という呪われた魔道具の基本構造から始まり、騙されて笛を吹いたクルトの自滅、怨念の巨人との熾烈な浄化戦、そして王都へ波及したルックナー男爵一族の全滅劇に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
他者を陥れようとする陰謀や怨嗟という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、悪意の因果応報と破滅の記録である。
欺瞞の道具の譲渡から、呪いの発動、巨人の討滅、執念の飛来、そして首謀者の自業自得へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

伯爵への陞爵

バウマイスター伯爵への陞爵と領地再編の全貌

『八男って、それはないでしょう!』における「ヴェンデリンの伯爵への陞爵」について、領地再編と伯爵位の下賜、圧倒的な功績の蓄積、王国側からの迷惑料、兄たちの陞爵による配慮、およびバウマイスター伯爵家の成立と開発の幕開けの各点から解説する。

領地再編と伯爵位の下賜

クルトが怨嗟の笛を用いて引き起こした暗殺未遂事件と、それに続くルックナー男爵一家らの惨殺事件が収束した後、王国政府はバウマイスター騎士爵家の領地再編を決定した。

・クルトの不祥事を理由に、実家の領地からこれまで放置されていた広大な未開地部分が没収された。

・その大半がヴェンデリンに下賜されることとなった。

・広大な未開地を統治および開発するにふさわしい地位として、ヴェンデリンは一気に伯爵へと陞爵した。

圧倒的な功績の蓄積

男爵から伯爵へと二階級の陞爵を果たした背景には、ヴェンデリンがこれまでに積み上げてきた多大な功績が存在していた。

・アンデッド古代竜の討伐。

・パルケニア草原の老地竜グレードグランドの討伐。

・莫大な富と兵器をもたらした古代地下遺跡の探索。

・王都における多数の瑕疵物件の浄化。

・不祥事を起こしたヘルター公爵との決闘での勝利。

・すでに伯爵に値する実績が十分に貯まっていたため、王国側もこの機会を待って陞爵を行ったとされている。

王国側からの迷惑料

アームストロング導師が語るように、この陞爵には王国からの迷惑料という裏の側面も含まれていた。

・未開地開発を推し進めるために、邪魔なクルトの廃嫡や排除を実質的にヴェンデリンに押し付けた側面があった。

・その結果、クルトの暴走を招き、中央の要職にあるルックナー男爵までが暗殺計画に関与する大事件に巻き込んでしまった。

・これらに対する王国側の負い目と配慮が込められていた。

兄たちの陞爵による配慮

国王は、ヴェンデリンへの褒賞をこれ以上増やしすぎると、彼が重圧から受け取りを拒否するのではないかと考えた。

・ヴェンデリンへの配慮として、王都で真面目に働いていた兄のエーリッヒとヘルムートを、日々の職務を評価するという名目で準男爵へと陞爵させた。

・ヴェンデリンの護衛として暗殺阻止に貢献した三男のパウルにも、近く準男爵位と新領地が与えられることが約束された。

バウマイスター伯爵家の成立と開発の幕開け

ヴェンデリンはバウマイスター伯爵となり、実家の領地と未開地の帰属を巡る長年の問題は決着を見た。

・次男ヘルマンが継いだ旧本家であるバウマイスター騎士爵家や、パウルが開発する準男爵家は、バウマイスター伯爵家の寄子という形に再編された。

・莫大な資金と規格外の魔法力を持つヴェンデリンは、実務能力に優れる代官のローデリヒに開発計画を委任した。

・自らは強力な土木魔法を過労になるまで駆使して、本拠地バウルブルクの建設や広大な未開地の開発へと本格的に乗り出していくこととなった。

まとめ

バウマイスター伯爵への陞爵と領地再編を巡る一連の全貌は、不祥事を受けた領地没収と伯爵位の下賜から始まり、積み重ねられた圧倒的な功績の精算、王国側の政治的配慮と補償、身内への配慮による勢力基盤の強化、そして新たな伯爵家の成立と未開地開発の本格始動に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
実家との葛藤や王国の思惑という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、地位の急上昇と新時代切り拓く開発の記録である。
騒動の決着から、二階級陞爵、功績の評価、親族の引き上げ、そして新都建設への邁進へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

筆頭家臣ローデリヒ

ローデリヒの生い立ちと代官としての活躍の全貌

『八男って、それはないでしょう!』に登場するローデリヒについて、不遇な生い立ちと槍術大車輪、ヴェンデリンへの仕官と実父への逆撃、ルックナー男爵家の相続拒否、および異常なまでの仕事熱心さと開発無双の各点から解説する。

不遇な生い立ちと槍術大車輪

ローデリヒは、ルックナー財務卿の弟であるルックナー会計監査長が、商人の娘に産ませた庶子である。

・父親からは長年認知されずに放置され、母方の商家で育てられた。

・帳簿付けや税金計算、決算処理から法律に至るまで、商人としての高い実務能力を完璧に身につけていた。

・幼い頃に体が弱かったため鍛錬として槍術を学び、武芸大会でイーナを破るほどの実力と独自技の槍術大車輪を有していた。

・商家では跡継ぎを巡る問題で伯父から邪魔者扱いされ、認知もされていない貴族の庶子という立場から貴族に敬遠され、二百回以上も就職面接に落ち続ける不遇な浪人時代を過ごした。

ヴェンデリンへの仕官と実父への逆撃

武芸大会での活躍と多才さに目をつけたヴェンデリンに王都屋敷の管理人候補として拾われ、ローデリヒはようやくバウマイスター家への就職を果たした。

・ヴェンデリンへの忠誠心は極めて高く、主君を支える柱となった。

・ヴェンデリンたちが地下遺跡探索で行方不明になった際、実父であるルックナー男爵が主君の死の噂を流して暗躍した。

・ローデリヒはルックナー男爵が権力を使って危険な依頼へ誘導したのではないかという噂を流し返し、実父を社会的に追い詰める容赦ない逆撃を行った。

ルックナー男爵家の相続拒否

クルトによる暗殺未遂事件において、ルックナー男爵は未開地開発の利権に食い込むため、死の直前に突然ローデリヒを息子として認知した。

・クルトの怨霊によってルックナー男爵とその正妻や嫡男らが全滅したため、ローデリヒはルックナー男爵家の最有力後継者となった。

・あんな男が持っていた潰れかけの法衣男爵家や何をして稼いだかわからない遺産など不要であり、バウマイスター伯爵家の家臣の方が希望が持てると言い放った。

・男爵位の相続を明確に拒否し、ヴェンデリンの筆頭家臣に留まることを選択した。

異常なまでの仕事熱心さと開発無双

バウマイスター伯爵領の開発が本格化すると、ローデリヒは代官としてその並外れた実務能力と指揮能力を遺憾なく発揮した。

・自らは睡眠時間を削って大量の書類仕事や各方面との交渉をこなした。

・主君であるヴェンデリンを巧みに乗せ、過労で魔力切れになるまで土木作業で徹底的に使い倒した。

・情熱的かつ容赦のない開発計画と指示により、通常なら何十年もかかる新都市バウルブルクや領内のインフラ整備を驚異的なスピードで進展させた。

・有能な筆頭家臣として周囲の貴族からも一目置かれ、二百枚以上のお見合い写真が殺到し、旧ルックナー男爵家を復活させるための政略結婚まで持ち込まれる状況となった。

まとめ

ローデリヒの生い立ちと代官としての活躍を巡る一連の全貌は、不遇な不採用の連続と隠された実技能力から始まり、ヴェンデリンへの抜擢と実父への冷徹な逆襲、爵位相続の蹴飛ばし、そして主君を酷使しながら達成する爆速の内政開発に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
血統の呪縛や就職難という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、忠義と卓越した実務能力の記録である。
浪人時代からの脱却、仕官の成功、過去の絶縁、都市の急速な建設、そして王国有数の家臣としての台頭へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

八男4巻レビュー
八男まとめ
八男6巻レビュー

登場キャラクター

バウマイスター伯爵家(旧男爵家・ドラゴンバスターズ・家臣・領民)

ヴェンデリン・フォン・ベンノ・バウマイスター

魔法の才能に優れた青年である。未開地開発の資金と労力を提供する。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家・当主。ドラゴンバスターズ・リーダー。
・物語内での具体的な行動や成果
 未開地の開墾や土木工事を魔法で進めた。調味料や料理の製法を考案し、王都で普及させた。クルトの暗殺計画を防いだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 過去の功績が認められて伯爵に陞爵した。未開地の大半を下賜された。

エリーゼ・カタリーナ・フォン・ホーエンハイム

ヴェンデリンの婚約者である。高い治癒魔法と浄化魔法の能力を持つ。
・所属組織、地位や役職
 ドラゴンバスターズ・後方支援。教会・臨時代理司祭。
・物語内での具体的な行動や成果
 領民の病気や怪我を無償で治療した。ヴェンデリンとともにクルトの怨霊を浄化した。建設現場で食事の準備を担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 領民からの支持と評判を高めた。

エルヴィン・フォン・アルニム

ヴェンデリンの友人である。剣士として護衛を務める。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家・家臣。ドラゴンバスターズ・前衛。
・物語内での具体的な行動や成果
 魔の森で魔物の牽制や狩猟を行った。建設現場で野生動物の駆除に参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 護衛を統率するための教育を受けている。

イーナ・ズザネ・ヒレンブラント

ヴェンデリンの友人である。槍を扱う。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家・側室候補。ドラゴンバスターズ・前衛。
・物語内での具体的な行動や成果
 魔の森で魔物の牽制や狩猟を行った。建設現場で書類整理や食事の準備を手伝った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ルイーゼ・ヨランデ・アウレリア・オーフェルヴェーク

ヴェンデリンの友人である。魔闘流を修めている。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家・側室候補。ドラゴンバスターズ・前衛。
・物語内での具体的な行動や成果
 魔の森で魔物を仕留めた。建設現場で炭火焼きの準備や野生動物の駆除を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ヴェンデリンから贈られた指輪を杖の代わりに使用している。

ヴィルマエトル・フォン・アスガハン

英雄症候群の体質を持つ少女である。大食いである。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家・護衛兼側室候補。
・物語内での具体的な行動や成果
 大斧を振るって巨大熊などの魔物を狩猟した。建設現場で魚の網引きや食事の手伝いを行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ローデリヒ

ルックナー男爵の庶子である。実務能力に優れている。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家・代官にして筆頭家臣。
・物語内での具体的な行動や成果
 本拠地バウルブルクの選定や建設指示を行った。未開地開発の計画を立て、人員や物資の手配を進めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 父から認知されたが、バウマイスター伯爵家の家臣に留まった。

ドミニク

屋敷で働くメイドである。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家・メイド。
・物語内での具体的な行動や成果
 朝食の調理や給仕などを担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

トリスタン

エドガー軍務卿の四男である。父親のコネで仕官した。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家・警備部隊長。
・物語内での具体的な行動や成果
 警備部隊を率いて王都から未開地へ到着した。ローデリヒに中央貴族の動向を伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

オットマー

ヴェンデリンの護衛の一人である。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家・護衛。
・物語内での具体的な行動や成果
 屋敷で朝食の席に着いていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

移民希望者たち

バウマイスター伯爵領へ移住を希望する人々である。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵領・領民。
・物語内での具体的な行動や成果
 開発特区へ移住し、農夫の指導を受けて稲作を始めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

農夫たち

稲作の指導を行うために雇われた人々である。
・所属組織、地位や役職
 農夫。
・物語内での具体的な行動や成果
 移民希望者たちに稲の世話や水田の管理を指導した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

大工たち

家屋の建設や補修を行う職人である。
・所属組織、地位や役職
 大工。
・物語内での具体的な行動や成果
 王都で買い取られた物件を補修した。区分された住宅地で新しい家を建築した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

作業員たち

土木工事などに従事する人々である。
・所属組織、地位や役職
 建設作業員。
・物語内での具体的な行動や成果
 魔導飛行船で未開地へ到着し、荷降ろしやテントの設営を行った。ヴェンデリンが掘った土台や道路の基礎を仕上げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

測量技師

土地の測量を行う技術者である。
・所属組織、地位や役職
 測量技師。
・物語内での具体的な行動や成果
 未開地へ到着し、開発のための測量作業に従事した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

警備隊の人員

未開地の安全を守るために編成された部隊である。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家・警備隊。
・物語内での具体的な行動や成果
 作業員間のいざこざを監視した。野生動物の駆除や狩猟を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

退役したベテラン空軍軍人たち

船の運航経験を持つ元軍人である。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家・運航要員。
・物語内での具体的な行動や成果
 王都から提供された魔導飛行船の運航を担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 新人の訓練を行う予定である。

新人たち

船の運航を学ぶために雇用された人々である。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家・運航要員。
・物語内での具体的な行動や成果
 ベテラン空軍軍人たちから訓練を受ける予定である。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

調理人

建設現場で食事を用意する人々である。
・所属組織、地位や役職
 調理人。
・物語内での具体的な行動や成果
 作業員や警備隊のために現場で食事を作った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

洗濯屋

建設現場で衣類の洗濯を請け負う人々である。
・所属組織、地位や役職
 洗濯屋。
・物語内での具体的な行動や成果
 現場で作業員たちの洗濯を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

鉱山技師

鉱山を探し出す専門家である。
・所属組織、地位や役職
 鉱山技師。
・物語内での具体的な行動や成果
 本文内に具体的な行動の記載はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

バウマイスター騎士爵家(本家・領民)

アルトゥル・フォン・ベンノ・バウマイスター

バウマイスター騎士爵家の当主である。領地の存続を第一に考えている。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター騎士爵家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンの未開地開発を容認した。クルトの事件後にゴードンとハインの死の真相を語った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 当主の座を退き、パウルの新領地へ移住した。

ヨハンナ

アルトゥルの正妻である。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター騎士爵家・当主の妻。
・物語内での具体的な行動や成果
 クルトの死と事件の真相を聞き、アルトゥルとともに隠棲することを受け入れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 パウルの新領地へ移住した。

クルト

バウマイスター家の長男である。ヴェンデリンに強い劣等感と嫉妬を抱く。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター騎士爵家・次期当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 ルックナー男爵の使者から魔道具を受け取り、ヴェンデリンの暗殺を企てた。魔道具の力で怨霊となった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 自滅して死亡し、浄化された。

アマーリエ

クルトの妻である。子供たちの将来を案じている。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター騎士爵家・長男の妻。
・物語内での具体的な行動や成果
 クルトの不満や異常な言動に怯えていた事実を語った。再婚を望まず子供を育てると決意した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 パウルの新領地へ移住した。

クルトの子供たち

クルトとアマーリエの息子たちである。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター騎士爵家。
・物語内での具体的な行動や成果
 父の異常な言動を怖がっていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 将来マインバッハ姓で騎士爵領を分与される予定である。

クラウス

本村落の名主である。クルトの排除を企んでいた。
・所属組織、地位や役職
 本村落・名主。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンの税収計算を確認した。クルトが次期当主として不適格だと判断し、他の兄弟へ継がせようと動いていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

レイラ

クラウスの娘である。アルトゥルの妾となった。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター騎士爵家・妾。
・物語内での具体的な行動や成果
 本文内に具体的な行動の記載はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ゴードン

クラウスの息子である。ハインの幼馴染であった。
・所属組織、地位や役職
 本村落の住民。
・物語内での具体的な行動や成果
 狩りの最中にハインと争いになり、ともに崖から転落死した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ハイン

豪農の長男である。レイラの婚約者に指名されていた。
・所属組織、地位や役職
 本村落の住民。
・物語内での具体的な行動や成果
 名主の座を狙ってゴードンを事故に見せかけて殺そうとし、ともに崖から転落死した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

エックハルト

本村落の鍛冶屋である。クルトの支持者であった。
・所属組織、地位や役職
 鍛冶屋。
・物語内での具体的な行動や成果
 クルトの会合に出席した。ヴェンデリン暗殺計画に同行し、怨嗟の笛の力でゾンビ化した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ゾンビとなりクルトを襲った末に消滅した。

マイスター

バウマイスター領の神父である。老齢で腰を痛めている。
・所属組織、地位や役職
 教会・司祭。
・物語内での具体的な行動や成果
 腰を痛めてベッドから起き上がれなくなった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 エリーゼや導師に代理を任せた。

ヘルマン

バウマイスター家の次男である。分家の当主を務めていた。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター分家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 クルトの会合を欠席した。視察の際にヴェンデリンの周囲を固めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 クルトの死後、本家を継いで準男爵になる予定となった。

ヘルマンの従士たち

ヘルマンに仕える兵士である。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター騎士爵家・従士。
・物語内での具体的な行動や成果
 未開地の視察に同行し、周辺を警戒した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ディルク

本村落の皮革職人である。
・所属組織、地位や役職
 皮革職人。
・物語内での具体的な行動や成果
 クルトの会合を欠席し、休業状態となった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

インゴ

本村落の服飾職人である。
・所属組織、地位や役職
 服飾職人。
・物語内での具体的な行動や成果
 クルトの会合を欠席し、休業状態となった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ルーカス

本村落の木工職人である。
・所属組織、地位や役職
 木工職人。
・物語内での具体的な行動や成果
 クルトの会合を欠席し、休業状態となった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

豪農たち

広い農地を持つ農家の人々である。
・所属組織、地位や役職
 農家。
・物語内での具体的な行動や成果
 クルトの会合に出席していたが、徐々に参加者が減っていった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 四名がクルトの暗殺計画に同行して死亡した。

職人たち

領内で仕事をする職人である。
・所属組織、地位や役職
 職人。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンの商店に客を奪われて休業し、開発特区で稲作を始めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

職人たちの子弟

職人の子供たちである。
・所属組織、地位や役職
 見習い職人。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンの紹介で王都やブライヒブルクの工房へ修行に出た。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

本村落の若者たち

本村落の若い住民である。
・所属組織、地位や役職
 本村落の住民。
・物語内での具体的な行動や成果
 ゴードンたちの滑落死事件の際、近くで岩茸採りをしていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

領民たち

バウマイスター領に住む人々である。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター領民。
・物語内での具体的な行動や成果
 エリーゼの治癒魔法による治療を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

その他のバウマイスター家兄弟

パウル

バウマイスター家の三男である。王都の警備隊に所属していた。
・所属組織、地位や役職
 王都警備隊。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンの視察に護衛として同行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 功績が認められて準男爵へ陞爵し、新領地を与えられた。

パウルの部下たち

パウルの指揮下にある警備隊員である。
・所属組織、地位や役職
 王都警備隊。
・物語内での具体的な行動や成果
 パウルに連れられてアルテリオの店で食事をした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ヘルムート

バウマイスター家の四男である。水源地の警備を行っている。
・所属組織、地位や役職
 水源地警備員。
・物語内での具体的な行動や成果
 導師の屋敷で昼食をとった。森の警備員を募集した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 準男爵へ陞爵した。

エーリッヒ

バウマイスター家の五男である。優秀な文官である。
・所属組織、地位や役職
 予算執行委員。
・物語内での具体的な行動や成果
 導師の屋敷で昼食をとった。就職の陳情をかわしてルックナー財務卿に回した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 準男爵へ陞爵し、未開地開発の補助金を管理する役目についた。

ブライヒレーダー辺境伯家

ブライヒレーダー辺境伯

王国南部の有力貴族である。ヴェンデリンの寄親を務める。
・所属組織、地位や役職
 ブライヒレーダー辺境伯家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 未開地開発の監視役を担当した。港の拡張工事を進めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ブランターク・リングスタット

元一流冒険者の魔法使いである。経験豊富で面倒見が良い。
・所属組織、地位や役職
 ブライヒレーダー辺境伯家・お抱え魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
 魔の森での調査に協力した。クルトの動向を探り、暗殺未遂の際には魔法障壁を展開した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アルフレッド

ヴェンデリンの魔法の師匠である。故人。
・所属組織、地位や役職
 元ブライヒレーダー辺境伯家お抱え魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
 生前に遺した魔導書が導師の聖魔法発動に役立った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

通信用の魔法使い

通信魔道具を扱う魔法使いである。
・所属組織、地位や役職
 ブライヒレーダー辺境伯家・魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
 怨念の残りカスが王都方面へ向かったという緊急連絡を王都へ送った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ヘルムート王国政府・中央貴族

国王

ヘルムート王国の統治者である。
・所属組織、地位や役職
 ヘルムート王国・国王。
・物語内での具体的な行動や成果
 クルトの処分とバウマイスター家の所領再編を決定した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ヴェンデリンを伯爵へ陞爵させた。

エドガー軍務卿

軍務閥を率いる大物貴族である。
・所属組織、地位や役職
 ヘルムート王国・軍務卿。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴィルマを養女にしてヴェンデリンへ嫁がせるよう圧力をかけた。王国軍の保養所を格安で引き渡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ルックナー財務卿

財務系の要職を世襲する名門貴族である。弟と対立していた。
・所属組織、地位や役職
 ヘルムート王国・財務卿。侯爵。
・物語内での具体的な行動や成果
 弟から暗殺計画の通報を受けた。弟の死後、陳情者の対応や後任人事に奔走した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ルックナー男爵

ルックナー財務卿の弟である。野心家で狡猾な性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
 会計監査長。
・物語内での具体的な行動や成果
 クルトに怨嗟の笛を渡し、その情報を兄へ通報して利権を得ようとした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 クルトの怨霊に襲われて死亡し、御家断絶となった。

ルックナー男爵の正妻

ルックナー男爵の妻である。
・所属組織、地位や役職
 ルックナー男爵家。
・物語内での具体的な行動や成果
 屋敷のパーティーに参加し、怨霊の襲撃を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 怨霊によって殺害された。

ルックナー男爵の跡取り息子

ルックナー男爵の長男である。
・所属組織、地位や役職
 ルックナー男爵家・跡取り。
・物語内での具体的な行動や成果
 父の策謀について話し合っていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 怨霊によって殺害された。

ルックナー男爵の娘

ルックナー男爵の長女である。
・所属組織、地位や役職
 ルックナー男爵家。
・物語内での具体的な行動や成果
 屋敷のパーティーに参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 怨霊によって殺害された。

ルックナー財務卿の孫娘

ルックナー財務卿の孫である。
・所属組織、地位や役職
 ルックナー侯爵家。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローデリヒの婚約者候補として写真が送られた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ホーエンハイム枢機卿

教会の有力者である。エリーゼの祖父。
・所属組織、地位や役職
 聖教会・枢機卿。
・物語内での具体的な行動や成果
 ルックナー男爵邸の浄化を神官たちに命じ、財務卿の対応を非難した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ルックナー財務卿の孫娘をヴェンデリンの側室にする計画を阻止した。

クリムト・クリストフ・フォン・アームストロング

王宮筆頭魔導師である。通称は導師。戦闘能力が極めて高い。
・所属組織、地位や役職
 王宮筆頭魔導師。子爵。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンの警備として未開地へ到着し、怨念の巨人を聖魔法を纏って浄化した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アームストロング伯爵

導師の先祖である。
・所属組織、地位や役職
 アームストロング伯爵家・元当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 三百年前の戦争で殿を務め、六角棒で多数の敵を倒して戦死した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

導師の父

アームストロング家の先代当主である。
・所属組織、地位や役職
 アームストロング伯爵家・前当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 戦争の準備を怠っていないことが言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

導師の兄

アームストロング家の現当主である。エドガー軍務卿と親しい。
・所属組織、地位や役職
 アームストロング伯爵家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 戦争の準備を怠っていないことが言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

導師の妻たち

導師の四人の妻である。
・所属組織、地位や役職
 アームストロング子爵家。
・物語内での具体的な行動や成果
 本文内に具体的な行動の記載はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

導師の子供たち

導師の十八人の息子たちである。
・所属組織、地位や役職
 アームストロング子爵家。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンたちに土産や話をねだった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 軍人や冒険者として自立している者もいる。

ワーレン

王城内で剣を教える人物である。
・所属組織、地位や役職
 近衛騎士団。
・物語内での具体的な行動や成果
 エルヴィンに剣の指導をした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

コンラート

ルックナー財務卿の秘書官である。優秀な若者である。
・所属組織、地位や役職
 秘書官。
・物語内での具体的な行動や成果
 ルックナー男爵の来訪を財務卿に報告し、予定の変更作業を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ベッカー内務卿

貴族籍の管理を行う役職の長である。
・所属組織、地位や役職
 内務卿。
・物語内での具体的な行動や成果
 死亡した貴族の後釜を狙う陳情者の対応に追われた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

実務長

内務卿のもとで働く官吏である。
・所属組織、地位や役職
 実務長。
・物語内での具体的な行動や成果
 陳情者の対応に追われた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

モンジェラ子爵

ルックナー財務卿の寄子である。
・所属組織、地位や役職
 子爵。
・物語内での具体的な行動や成果
 陳情者が屋敷に押しかけて対応に追われた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ブルーメンタール準男爵

事件で死亡した貴族である。
・所属組織、地位や役職
 準男爵。
・物語内での具体的な行動や成果
 本文内に具体的な行動の記載はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ルックナー男爵邸の事件で死亡した。

ブルーメンタール準男爵の子供

ブルーメンタール準男爵の子を名乗る人物である。
・所属組織、地位や役職
 平民。
・物語内での具体的な行動や成果
 認知を求める親族に連れられてルックナー財務卿の屋敷前に現れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ビューロー卿

事件で死亡した貴族である。
・所属組織、地位や役職
 貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
 本文内に具体的な行動の記載はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ルックナー男爵邸の事件で死亡した。

クリスティアン

ビューロー卿の後釜を狙う貴族である。
・所属組織、地位や役職
 貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
 ルックナー財務卿の屋敷前で役職を求めて声を上げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

レンブラント男爵

移築魔法を得意とする法衣男爵である。
・所属組織、地位や役職
 建築家。法衣男爵。
・物語内での具体的な行動や成果
 王都で買い取られた家屋や保養所をバウルブルクへ移築した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ルックナー男爵の家臣たち

ルックナー男爵に仕える者たちである。
・所属組織、地位や役職
 ルックナー男爵家・家臣。
・物語内での具体的な行動や成果
 冒険者の始末に向かったり、屋敷の警備を行ったりした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 屋敷にいた者は怨霊によって殺害された。

警備兵たち

ルックナー男爵邸を警備していた兵士である。
・所属組織、地位や役職
 ルックナー男爵家・警備兵。
・物語内での具体的な行動や成果
 パーティー会場へ侵入した怨霊に斬りかかった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 怨霊によって殺害された。

財務系の法衣貴族たち

ルックナー男爵の派閥に属する貴族たちである。
・所属組織、地位や役職
 法衣貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
 ルックナー男爵邸のパーティーに参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 怨霊によって殺害された。

貴族たち

王都で活動する貴族たちである。
・所属組織、地位や役職
 貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
 死亡した貴族の役職を求めてルックナー財務卿の屋敷などに押しかけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

門番

ルックナー侯爵邸の門番である。
・所属組織、地位や役職
 ルックナー侯爵邸・門番。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンたちの身分に気づき、屋敷の中へ案内した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アーカート神聖帝国(過去)

アーカート神聖帝国皇帝

三百年前の帝国を統治していた皇帝である。
・所属組織、地位や役職
 アーカート神聖帝国・皇帝。
・物語内での具体的な行動や成果
 敵将であるアームストロング伯爵の奮闘を称え、遺体を返還した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

敵兵

アーカート神聖帝国の兵士である。
・所属組織、地位や役職
 アーカート神聖帝国軍。
・物語内での具体的な行動や成果
 アームストロング伯爵に撲殺された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

冒険者・商人・街の人々

カタリーナ・リンダ・フォン・ヴァイゲル

魔の森でヴェンデリンたちの前に現れた女魔法使いである。
・所属組織、地位や役職
 魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
 魔力を抑えてヴェンデリンたちに接近し、挨拶をした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アルテリオ

ヴェンデリンの取引先である商人である。
・所属組織、地位や役職
 商人。
・物語内での具体的な行動や成果
 カレー粉やチョコレートの製造販売を手掛け、カカオの買い取り依頼を出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

オーガス・リネンハイム

王都の不動産業者である。
・所属組織、地位や役職
 不動産業者。
・物語内での具体的な行動や成果
 取り壊し予定の物件や王国軍の保養所などを格安で手配した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アルノー

街道工事の最前線でモツ焼き屋を営む店主である。
・所属組織、地位や役職
 モツ焼き屋・店主。
・物語内での具体的な行動や成果
 狩猟で出た獲物の内臓を買い取り、串焼きにして作業員たちへ提供した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

陰気な冒険者

ルックナー男爵の依頼を受けたフリーの冒険者である。
・所属組織、地位や役職
 冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
 クルトに怨嗟の笛を渡し、その情報をルックナー男爵へ伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ルックナー男爵の家臣に口封じのため始末される予定であった。

ギルドの所長

魔の森出張所の責任者である。
・所属組織、地位や役職
 冒険者ギルド・所長。
・物語内での具体的な行動や成果
 掘っ立て小屋の支部でヴェンデリンたちを出迎えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

若い職員たち

魔の森出張所で働く職員である。
・所属組織、地位や役職
 冒険者ギルド・職員。
・物語内での具体的な行動や成果
 出張所で冒険者たちの対応をした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

冒険者たち

一攫千金を求めて集まった人々である。
・所属組織、地位や役職
 冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
 魔の森周辺で活動し、野宿などをしながら稼いでいた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

お菓子職人たち

アルテリオに雇われた職人である。
・所属組織、地位や役職
 お菓子職人。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンの知識をもとにココアやチョコレートの製造を成功させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

行商人

建設現場などで商売を行う人々である。
・所属組織、地位や役職
 商人。
・物語内での具体的な行動や成果
 工事の最前線へ出向いて商売をした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

飲食業者

建設現場で屋台などを出す人々である。
・所属組織、地位や役職
 飲食業者。
・物語内での具体的な行動や成果
 工事関係者を目当てに食事や酒を提供した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

水商売の女性

ルックナー財務卿の屋敷前に集まった女性である。
・所属組織、地位や役職
 平民。
・物語内での具体的な行動や成果
 死亡した貴族の子供を認知するよう求めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

メイド

ルックナー財務卿の屋敷前に集まった元メイド、またはバウマイスター家のメイドである。
・所属組織、地位や役職
 メイド。
・物語内での具体的な行動や成果
 死亡した貴族の子供を認知するよう求めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アンデッド・魔物・動物

怨念の巨人(クルトのレイス)

怨嗟の笛の力でクルトの怨念が実体化したアンデッドである。
・所属組織、地位や役職
 アンデッド。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンたちを襲撃し、浄化から逃れた残滓が王都で大量殺戮を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 神官たちによって完全に浄化された。

ゾンビたち

怨嗟の笛の黒い煙に触れて死亡した人間が変化した姿である。
・所属組織、地位や役職
 アンデッド。
・物語内での具体的な行動や成果
 クルトやルックナー男爵を襲い、その肉を食いちぎった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

飛竜

リーグ大山脈に生息する強力な魔物である。
・所属組織、地位や役職
 魔物。
・物語内での具体的な行動や成果
 導師の飛行経路を妨害し、首をへし折られて仕留められた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ワイバーン

リーグ大山脈に生息する魔物である。
・所属組織、地位や役職
 魔物。
・物語内での具体的な行動や成果
 本文内に具体的な行動の記載はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

サーベルタイガー

魔の森に生息する巨大な肉食の魔物である。
・所属組織、地位や役職
 魔物。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンたちを餌と見なして襲撃したが、返り討ちにされた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ライノー

頭部に二本のツノを持つ巨大な魔物である。
・所属組織、地位や役職
 魔物。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンたちを襲撃し、仕留められた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ダチョウ

空を飛べない全長五メートル超の怪鳥である。
・所属組織、地位や役職
 魔物。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンたちを襲撃し、仕留められた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ヘルコンドル

ワイバーンと同程度の大きさを持つ巨鳥である。
・所属組織、地位や役職
 魔物。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンたちを襲撃し、仕留められた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

グレードグランド

過去に討伐された強力な魔物である。
・所属組織、地位や役職
 魔物。
・物語内での具体的な行動や成果
 本文内に具体的な行動の記載はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 導師が討伐して褒賞を得た。

ナンポウマス

未開地の河川に遡上するマスである。
・所属組織、地位や役職
 野生動物。
・物語内での具体的な行動や成果
 浚渫作業中に捕獲され、調理や保存食として加工された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

巨大熊

未開地に生息する熊の魔物である。
・所属組織、地位や役職
 魔物。
・物語内での具体的な行動や成果
 ルイーゼやヴィルマに襲いかかり、討伐された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 味噌煮込みにして食べられた。

未開地に生息する野生動物である。
・所属組織、地位や役職
 野生動物。
・物語内での具体的な行動や成果
 建設予定地で駆除の対象となった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

未開地に生息する野生動物である。
・所属組織、地位や役職
 野生動物。
・物語内での具体的な行動や成果
 建設予定地で駆除の対象となった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

未開地に生息する野生動物である。
・所属組織、地位や役職
 野生動物。
・物語内での具体的な行動や成果
 建設予定地で駆除の対象となった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

鹿

未開地に生息する野生動物である。
・所属組織、地位や役職
 野生動物。
・物語内での具体的な行動や成果
 建設予定地で駆除の対象となった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ホロホロ鳥

狩猟対象となる鳥である。
・所属組織、地位や役職
 野生動物。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンが料理のために魔法で肉を熟成させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

八男4巻レビュー
八男まとめ
八男6巻レビュー

展開まとめ

第一話 魔の森初探索 

ヴェンデリン不在の探索

ヴェンデリンはクルトを次期当主から退けるため、未開地の開墾や用水路整備、土壌改良に専念していた。領民たちは急速に発展する開発特区へ期待を寄せ、教会ではエリーゼが負傷者や病人を無償で治療したため、二人の評判はさらに高まっていた。その間、ルイーゼたちはブランタークを加え、魔の森西部の調査へ向かった。

図解魔物産物大全

魔の森西部には、ほかの地域では見られない植物が密生していた。ブランタークが持参した図鑑には、ナンゴクシダをはじめとする植物が掲載されており、半ば創作と見なされていた内容が実在すると判明した。森はマナが濃いため、果物や植物が図鑑の記述を遥かに超える大きさへ成長していた。

巨大な南方果実

一行は、人の身長ほどあるバナナや巨大なマンゴー、ドリアン、コーヒーの実などを採取した。さらにカカオ、パイナップル、パパイヤ、マンゴスチン、ココナッツなども見つかり、いずれも味を損なわず巨大化していた。珍しい食材を好むヴェンデリンへの土産として、採取物は魔法の袋へ収められた。

ヴェンデリンの食品開発

探索中、ルイーゼたちはヴェンデリンが王都で広めた料理や食品を振り返った。ヴェンデリンはカタクリ粉、唐揚げ、フライ、串揚げ、各種ソース、味噌、醤油、豆腐、納豆などの製法を教会やアルテリオへ提供していた。自ら経営するよりも専門家へ製造と販売を任せ、安価に普及した商品を利用する方針を取っていた。

巨大魔物との戦闘

豊富な果実を餌とする魔物も異常に巨大化しており、一行はサーベルタイガー、ライノー、ダチョウ、ヘルコンドルなどに襲われた。エルとイーナが牽制し、ブランタークの魔法とルイーゼの魔闘流で仕留めたものの、経験豊富なブランタークでさえ初めて見る危険な魔物ばかりであった。

魔の森の希少資源

巨大な植物は濃密なマナによって半ば魔物化し、食べ尽くせないほどの速度で成長していると推測された。図鑑にしか記録のない果実や魔物は希少価値が高く、換金すれば多額の利益が見込まれた。ただしブランタークは調査途中であることを理由に売却を保留し、クルトが次期当主である間は税収を増やさない意向を示した。

拡大する開発特区

夕方、土木作業を終えたヴェンデリンが瞬間移動で迎えに現れた。開墾済みの農地と一年目の生活保障を提示した募集には応募が殺到し、三週間ほどで家屋四十五戸、人口約百八十人の集落が形成されていた。ヴェンデリンは開発した地域を将来ヘルマンへ渡し、クルト排除への協力を確実にしようとしていた。

未知の成果の持ち帰り

一行はヴェンデリンに、魔の森西部で未知の果実と魔物を多数発見したと報告した。ブランタークは未踏地にはまだ未知の生物が数多く存在すると説明し、調査の継続を決めた。ルイーゼたちは採取物と魔物の素材を持ち、瞬間移動で開発特区の屋敷へ帰還した。

第二話 追い詰められたクルト 

ヴェンデリンへの危機感

ヴェンデリンがパウマイスター騎士爵領に拠点を移して三か月が経ち、未開地には大規模な水田や用水路、開発特区が築かれていた。クルトは、父アルトゥルが自分を無視してヴェンデリンに土地の使用を許し、豪華な屋敷まで移築させたことに強い不満を抱いた。開発特区の人口は三百五十人を超えて本村落より大きくなったが、アルトゥルは領地が発展するなら問題ないと取り合わなかった。

開発特区の税収

ヴェンデリンは魔の森で得た利益と未開地開発の経費を合算し、その利益の二割を税として納めていた。クラウスが帳簿を確認し、三か月で六十万セントほどが納められていたが、クルトは税を誤魔化していると疑った。さらにヴェンデリンの総資産から半分ほど徴収すべきだと主張したが、アルトゥルは移築費や人件費、農具、移民への給金など多額の経費がかかっていると説明し、クルトを退けた。

領民への支援

エリーゼは腰を痛めた司祭の代理を務め、治癒魔法で領民たちの病気や怪我を無償で治していた。ヴェンデリンも他の二村落から依頼を受け、畑の区画整理、用水路や農道の整備、家屋の移築を進めた。育成中の麦も土ごと移して損失を出さず、耕作地を拡大したため、領民たちの支持はさらに高まった。

本村落の孤立

開発特区には元領民や土地を相続できない農家の子供たちが移り、クルトは人口と税収が奪われていると訴えた。しかしアルトゥルは、将来は開発特区も領地に加わるうえ、現在も税収は増えていると反論した。クルトは本村落の有力者だけを集めた会合でヴェンデリンへの増税を企てたが、出席者は二十人ほどから八人まで減っていた。

職人たちの転身

領内の職人たちは、ヴェンデリンの商店で売られる質が高く安い商品に客を奪われていた。ヴェンデリンは職人の子供たちを王都やブライヒブルクの工房へ修行に出し、親たちには開発特区で稲作をしながら工房を維持する道を示していた。豪農たちも他村落の農地拡大によって立場を失い、本村落の住民たちは次第にヴェンデリンへ期待を寄せていた。

崩れる支持基盤

クルトは本村落の優遇を守り、ヴェンデリンを領地の秩序を壊す存在として訴えた。しかし出席者たちは関心を示さず、ヘルマンも会合に姿を見せなかった。クルトは長年支えてきた職人や豪農まで離れていく現実を受け入れられず、ヴェンデリンが自分の支持基盤を意図的に切り崩していると考えた。

ルックナー男爵の使者

森で怒りを鎮めようとしていたクルトの前に、以前ルックナー男爵の手紙を届けた冒険者が現れた。男は、未開地開発の利権から排除されそうなルックナー男爵も追い詰められていると説明した。開発を主導するブライヒレーダー辺境伯とルックナー財務卿は、敵対するルックナー男爵を利権に加えるつもりがなく、クルトも中央では開発を妨げる存在として扱われていた。

暗殺用のオカリナ

冒険者は、クルトがヴェンデリンを殺して財産と未開地開発の権利を継ぎ、代わりにルックナー男爵へ将来の利権を与える計画を持ちかけた。クルトは起死回生の策として受け入れ、古代遺跡から発掘された魔道具を受け取った。それは見た目こそ古びたオカリナだったが、何かを呼び寄せてヴェンデリンを殺せる道具だと説明された。クルトは三日後、ヴェンデリンが未開地の奥へ向かう機会に使用すると決めた。

第三話 竜使いの笛? 

明太マヨネーズの試作

ヴェンデリンは屋敷で明太マヨネーズを試作し、パウルやヘルマンたちと朝食を取りながら味を確かめた。北方から取り寄せた高価なタラコを辛子明太子に加工したため商品化には向かなかったが、御飯にもパンにも合う味に仕上がっていた。ヴェンデリンが調味料作りに詳しいのは、前世で食品関係の仕入れを担当し、酒蔵や食品メーカーとの取引に必要な知識を身につけていたためであった。

クルト排除の準備

ヴェンデリンは未開地の視察に向かう予定であり、将来ヘルマンに分与する領地の境界を確認することになっていた。クルトを廃嫡し、ヘルマンに本家を継がせる方針は中央で固まりつつあった。ブランタークはクルトを監視し、本村落の有力者へ中立を勧めて支持基盤を切り崩していた。

外部の冒険者との接触

ブランタークは、クルトが会合の後に外部の冒険者と密会したことを突き止めていた。冒険者は既に山脈へ戻っており、出口で捕縛される予定であった。クルトには何らかの魔道具が渡された可能性が高く、視察は彼を動かすための餌でもあった。

導師の到着

視察の助っ人としてアームストロング導師が現れ、飛行中に邪魔をした飛竜を仕留めて土産として持参した。ヴェンデリンたちには飛竜を倒せる者が複数おり、クルトが用意した魔道具で勝つ可能性は低いと見られていた。導師は朝食に加わり、明太マヨネーズを大量に食べたうえ、ヴィルマと大食いを競って敗れた。

竜使いの笛

クルトは鍛冶屋のエックハルトと四人の豪農を伴い、未開地の奥でヴェンデリンたちを待ち伏せしていた。彼は竜使いの笛で山脈の飛竜やワイバーンを呼び寄せ、ヴェンデリンだけでなく領民や家族まで犠牲にして領地を作り直すつもりであった。同行者たちが家族への被害を心配しても、クルトは新しい妻や子供を得ればよいと切り捨てた。

黒い煙の群れ

クルトが笛を吹くと、飛竜ではなく黒い煙のような無数の小さな存在が四方から集まってきた。エックハルトたちは逃げようとしたが黒い群れに包まれ、悲鳴を上げて倒れた。クルトは想定と違っていてもヴェンデリンを殺せるなら構わないと考え、笛を吹き続けた。

ゾンビ化した同行者たち

倒れたエックハルトたちは再び起き上がり、食べ物や肉を求めながらクルトへ近づいた。黒い群れは人間を殺してゾンビへ変えるものであり、クルトはようやく笛の危険性を理解した。しかし笛は口や手から離れず、息を止めても音は鳴り続けた。

クルトの最期

ゾンビとなった五人はクルトの手足や首に噛みつき、その肉を食いちぎった。クルトは逃げることも笛を止めることもできず、中央の貴族に利用されたと悟った。ヴェンデリンの遺産で領地を発展させる夢が崩れる中、彼は最後までヴェンデリンや兄弟たちの死を願いながら、エックハルトに喉元を襲われた。

第四話怨嗟の笛 

怨嗟の笛

ヴェンデリンたちは、未開地の視察を装ってクルトの暴発を誘った。クルトがオカリナ型の魔道具を使うと、周囲から黒い煙状の怨念が集まり、彼らの潜伏場所を巨大な竜巻のように包んだ。エックハルトたちの悲鳴に続いてクルトの断末魔も聞こえ、ヴェンデリンたちは魔法障壁を展開して黒い煙を防いだ。

怨念の巨人

アームストロング導師は、魔道具が使用者を強力なアンデッドへ変えて標的を殺す怨嗟の笛であると説明した。集められた怨念はクルトの強い憎悪を核として膨れ上がり、やがてクルトと五人の取り巻きのゾンビを体内に埋め込んだ巨大な黒い巨人となった。クルトは既に死亡していたが、笛によってアンデッド化し、ヴェンデリンを殺すまで活動を続ける状態になっていた。

クルトの逆恨み

ヴェンデリンは、自分を殺そうとしたクルトの死を自業自得と受け止めた。エリーゼは将来の妻として、その決断と責任を共に背負うと告げた。黒い巨人はヴェンデリンだけを狙って拳を振り下ろしたが、ブランタークとヴェンデリンの魔法障壁を破れなかった。

導師の火炎魔法

導師は巨大な火柱で黒い巨人を焼いたが、怨念を主体とするアンデッドには効果がなかった。巨人に取り込まれていた五人は消滅したものの、クルトはレイスへと変化し、さらに激しい憎悪を向けた。導師は高速飛翔と高集束弾でも攻撃したが、黒い煙はすぐに修復され、聖魔法でなければ倒せないことが明らかになった。

浄化の攻防

ヴェンデリンとエリーゼは、範囲を絞って威力を高めた浄化魔法を重ねた。黒い巨人は縮小し始めたが、クルトは笛の力で未開地や魔の森から新たな怨念を集め、消滅を食い止めた。エリーゼの魔力が先に尽きる恐れがあり、長期戦になればヴェンデリンたちが不利になる状況であった。

導師の聖光

魔力補充が使えない導師は、自ら聖魔法を習得し直すことにした。師匠の本を読みながら放った聖光の矢は小さく遅く、巨人にはほとんど効果がなかった。しかしヴェンデリンの助言で聖光を体に纏う方法へ切り替えると、導師の全身を青白い炎が包んだ。

三人の浄化

導師は聖光を纏ったまま黒い巨人に抱きつき、直接怨念を焼き始めた。ヴェンデリンとエリーゼも浄化魔法の出力を高め、三人の聖魔法によって巨人は足元から消滅していった。クルトは最後までヴェンデリンの名を叫び続けたが、レイスも巨人の頭部も完全に浄化された。

逃げ去った怨念

戦闘後、導師は黒焦げになった怨嗟の笛を回収しようとした。だが内部に残っていた黒い煙が飛び出し、王都方面へ逃げ去った。全員が魔力を消耗して追跡できなかったため、残りの処理は教会に任せることになった。

遺族への報告

クルトの暗殺未遂と死亡を、父や母、アマーリエや子供たちへ伝える役目がヴェンデリンに残された。ヘルマンはエックハルトたちの家族への説明を引き受けたが、彼らも暗殺未遂の共犯であるため事実を隠すことはできなかった。クルトを巡る騒動は最大の山場を越えたものの、遺族への報告という重い仕事が残された。

第五話 ルックナー兄弟 

兄弟の対面

財務卿のもとを、長年対立してきた実弟のルックナー会計監査長が訪れた。会計監査長は、バウマイスター家の長男クルトがフリーの冒険者から古代の魔道具を入手し、ヴェンデリンの暗殺を企てていると報告した。財務卿は弟の自作自演を疑ったが、証拠がないため追及できなかった。

怨嗟の笛

会計監査長は、クルトが竜使いの笛だと信じて受け取った品が、使用者自身をアンデッドに変えて標的を殺す怨嗟の笛であると明かした。財務卿は、弟がクルトを暴発させて処分を促しながら、自身は情報提供者として責任を逃れようとしていると見抜いた。未開地では怨念が少なく、ヴェンデリンとエリーゼなら容易に浄化できると、会計監査長は暗殺失敗を確信していた。

ローデリヒの認知

財務卿が未開地開発の利権を拒むと、会計監査長はローデリヒを自分の庶子として認知すると告げた。貴族法では父親側の認知を子供が拒絶できないため、ローデリヒとの血縁を理由に利権へ介入する狙いであった。財務卿はその悪辣な策に気づき、一定の利益を認めざるを得ないと判断しながら、弟を政敵として必ず失脚させると決意した。

成功を祝う宴

会計監査長は家族や派閥の貴族たちを集め、クルトを怨嗟の笛で死なせ、財務卿から利権を引き出した成功を祝った。魔道具を運んだ冒険者も口封じのため始末する予定であり、クルトを利用価値のある駒にすぎなかったと嘲笑した。さらに、ローデリヒを認知すれば、本人が拒絶しても世間の圧力によって便宜を図らせられると語った。

クルトの怨霊

宴の最中、窓の外に黒い煙でできた巨大な顔が現れ、会場へ侵入した。煙は警備兵や家臣、家族、派閥の貴族たちを次々と殺し、八十人以上をゾンビへ変えた。クルトの怨霊はヴェンデリンと会計監査長への憎悪を叫び、会計監査長だけを生かしたまま、ゾンビとなった家族や仲間たちに襲わせた。会計監査長は全身を食い破られ、死亡した。

弟の訃報

財務卿は、弟の屋敷で大量の死者とゾンビが発生したとの報告を受け、現場へ向かった。そこではホーエンハイム枢機卿が待機しており、会計監査長の遺体はゾンビに食われて骨だけになっていた。事前にヴェンデリンたちから怨念の残滓が王都へ逃げたとの連絡があり、神官と魔法使いたちが待機していたため、被害は宴の参加者だけに留まった。

財務卿への非難

ホーエンハイム枢機卿は、会計監査長の策によってエリーゼとヴェンデリンが命を狙われたにもかかわらず、財務卿が処分より利権調整を優先しようとしたことを厳しく非難した。未開地開発には財務卿の協力が必要であるため追及は控えたものの、相応の誠意を示すよう求めた。財務卿は反論できず、肩を落として枢機卿を見送った。

第六話 バウマイスター男爵暗殺未遂事件始末記 

クルトの死と王国への報告

怨嗟の笛を使ったクルトの暗殺計画は、ヴェンデリンたちによって辛うじて阻止された。本来は小規模なアンデッドしか生まれない魔道具であったが、クルトの強い執念が未開地中の怨念を集め、巨大な怨念の巨人へと変えていた。

戦闘後、アームストロング導師は王宮筆頭魔導師として父アルトゥルへの報告を引き受けた。ブランタークはブライヒレーダー辺境伯を通じ、国王やエドガー軍務卿、ホーエンハイム枢機卿へ事件を知らせる手配を整えた。

アルトゥルへの処分通告

導師はアルトゥルに、クルトと共犯者五名が暗殺未遂の末に死亡したことを説明した。王国は罪を犯した六名だけを処罰対象とし、アルトゥルや他の家族に連座責任を問わない方針であった。

ただし、アルトゥルは当主を退き、騎士爵家と残された領地はヘルマンが継ぐことになった。未開地の一部はパウルの準男爵領となり、大半はヴェンデリンに与えられた。ヴェンデリンも過去の功績を評価され、伯爵へ陞爵する予定となっていた。

クラウスの思惑

ヴェンデリンは、クルトの暴発を促したクラウスに満足したかと問いかけた。クラウスは、仇討ちよりもクルトでは今後の領地統治が務まらないと考え、他の兄弟に継がせようとしただけだと答えた。

クラウスは以前からクルトに兄弟を活用するよう助言していたが、クルトは弟たちに実権を奪われると疑い、かえって彼らを敵視した。クラウスは領地の発展を望む名主である一方、息子を失った父としてバウマイスター家の衰退を受け入れる面も持っていた。

ゴードンとハインの死

アルトゥルは、クラウスの息子ゴードンとレイラの婚約者ハインが死んだ事件の真相を語った。二人は幼馴染であったが、ハインがレイラとの結婚を通じて名主の座を狙い始めたため、互いに憎み合うようになっていた。

アルトゥルは関係修復を願って二人を狩りに誘ったが、ハインは崖際でゴードンを事故に見せかけて殺そうとし、抵抗された末に二人とも転落した。アルトゥルが真相を隠したのは、本村落の名主家を巡る殺し合いを公表できなかったためであった。

その後、他村落の名主たちがレイラとの婚姻を利用して本村落へ介入しようとしたため、アルトゥルは領内の争いを防ぐ目的で彼女を妾に迎えていた。

母とアマーリエへの説明

ヴェンデリンは母ヨハンナとアマーリエに、クルトの暗殺未遂と死を伝えた。ヨハンナはクルトを唆したルックナー男爵に怒りを示したが、アルトゥルとともに隠棲することを受け入れた。

アマーリエは、クルトが以前からヴェンデリンへの不満と妄想的な計画を口にし、家族も近寄れない状態であったと明かした。彼女は夫の結末を覚悟しており、自分よりも子供たちの将来を案じた。ヴェンデリンは王国の判断が出るまで屋敷に留まるよう伝え、甥たちの処遇を最大限考慮すると約束した。

王都の惨殺事件

事件後、ヴェンデリンたちは領地開発と魔の森での仕事に戻った。ところが数日後、ブランタークから、未開地から逃げた怨念の残滓が王都で大惨事を起こしたとの報告が届いた。

クルトの怨念は王都まで辿り着き、ルックナー男爵の屋敷で新たな怨念を吸収した。怨嗟の笛に残っていた匂いや魔力を手掛かりにルックナー男爵を見つけ出し、その家族や派閥の貴族、家臣、使用人ら八十人以上を殺害していた。

王都への出立

ルックナー男爵だけでなく、役職を持つ多数の法衣貴族が死亡したため、王都では後任人事や爵位の相続、財産管理を巡る混乱が生じていた。犠牲者の遺族たちは、事件の原因を作ったルックナー財務卿やバウマイスター家に責任を求め、未開地開発の利権を要求する可能性があった。

さらに、クルトの妻子であるアマーリエと甥たちを王都で生活させる計画も難しくなった。姓を変えても事件との関係が知られれば、中傷や嫌がらせを受ける恐れがあったためである。事態を収拾するため、ヴェンデリンは三日後に王都へ向かった。

第七話 バウマイスター伯爵 

ルックナー侯爵邸の混乱

クルトの怨念による大量殺戮から四日後、ヴェンデリンはアームストロング導師とともにルックナー侯爵邸を訪れた。正門前には、全滅した貴族家の爵位や役職を狙う縁戚、認知を求める女性や子供、後任への口添えを望む貴族たちが殺到していた。

疲労困憊のルックナー財務卿は、クルトの妻アマーリエと子供たちの処遇には協力すると約束した。しかしその前に、死亡したルックナー男爵がローデリヒを庶子として認知していたため、正妻の子供が全滅した現在、ローデリヒが男爵家の最有力後継者になったと告げた。

ローデリヒの相続問題

貴族法では、当主が子供を認知する際に本人の同意を必要としなかった。ルックナー男爵はローデリヒとの血縁を利用して未開地開発の利権へ介入するつもりであったが、一族の全滅によって、意図せず爵位まで継がせる状況を作っていた。

ヴェンデリンは、ローデリヒが男爵家を継げば筆頭家臣兼代官にできず、未開地開発が遅れると訴えた。既に国王や閣僚たちから責められていた財務卿は、ルックナー男爵家を取り潰すと決断した。

ルックナー派閥への処分

翌日、王城で正式な処分が発表された。ルックナー男爵はヴェンデリン暗殺未遂の共犯として御家断絶となり、全財産を没収された。魔道具を運んだ冒険者や、その口封じに向かった家臣を捕らえれば、関与を裏付ける証拠も得られる見込みであった。

死亡した十二名の法衣貴族については役職を取り上げ、下位の有能な官吏を昇進させることになった。跡取りがいない準男爵家一つと騎士爵家三つについては、貴族法に従って処理されることとなった。

兄たちの陞爵

謁見の間には、ヘルムートとエーリッヒも呼ばれていた。二人は日々の職務を評価された名目で準男爵へ陞爵したが、実際にはクルトの暴走と中央貴族の関与によって迷惑を被ったヴェンデリンへの配慮であった。

パウルも暗殺阻止への貢献を理由に、近く準男爵位と新領地を与えられる予定となった。エーリッヒは未開地開発の補助金を扱う予算執行委員に加わり、将来的には財務系の上位職へ進む可能性も示された。

バウマイスター伯爵領

クルトの不祥事を理由に、実家の騎士爵領から未開地部分が没収された。その大半は、伯爵へ陞爵したヴェンデリンに与えられた。これにより、長く続いた実家の相続問題と未開地の帰属を巡る混乱は、ひとまず決着した。

導師は、一連の褒賞を王国がヴェンデリンに負わせた負担への迷惑料であると説明した。国王はヴェンデリンへの褒賞を増やしすぎれば本人が拒むと考え、代わりに兄たちを陞爵させて配慮を示していた。

未開地を巡る陳情

未開地開発の噂が広がり、エーリッヒは上司や同僚から子供をヴェンデリンの家臣にしてほしいと頼まれていた。ヘルムートが警備員を一人募集した際にも、伯爵家や侯爵家の子弟を含む三百人以上が応募していた。

二人は人事権が自分たちにないとして、陳情をルックナー財務卿へ回していた。その結果、財務卿やその寄子である貴族たちのもとには、さらに多くの希望者が押しかけていた。

ルックナー男爵家の遺産

ヴェンデリンには追加の褒賞として、取り潰されたルックナー男爵家の全財産が与えられた。屋敷や金貨、美術品、魔道具を合わせた資産は五千万セントほどに達しており、未開地の開発資金に充てられることになった。

さらに、跡取りがいなかった準男爵家一つと騎士爵家三つの爵位を、適任者へ与える権利も得た。ヴェンデリンは将来、アマーリエの子供たちが成人した際に爵位と領地を分け、分家として独立させるつもりであった。

導師の家族

褒賞の儀式後、ヴェンデリンと兄たちは導師の屋敷で昼食を取った。導師には四人の妻と十八人の息子がおり、子供たちは平等に教育と財産分与を受け、自ら軍人や冒険者、商人として生きる方針で育てられていた。

導師は王宮筆頭魔導師の収入に加え、今も飛竜を狩って莫大な利益を得ていた。自分の死後は財産を子供たちに分け、家を普通の法衣子爵家へ戻す考えであった。

冒険者生活への復帰

未開地開発の実務はローデリヒに任せ、ヴェンデリンは資金を提供するだけの方針を変えなかった。実家の問題と爵位の整理が終わったことで、ヴェンデリンはようやく本来の冒険者生活へ戻れると安堵した。

第八話 バウマイスター伯爵領開発開始 

バウマイスター伯爵家の成立

実家を巡る騒動が収束し、ヴェンデリンは未開地の大半と伯爵位を与えられ、バウマイスター家の本家当主となった。ヘルマンが継いだ騎士爵家とパウルの準男爵家はその寄子となり、将来はアマーリエの子供たちにもマインバッハ姓で騎士爵領を与える予定であった。

アマーリエは再婚せず、クルトのようにならないよう子供たちを教育すると決めた。実家へ戻れば疎まれる可能性があるため、隠居したアルトゥル夫妻やクルトの共犯者の遺族とともに、パウルの新領地へ移住した。ヴェンデリンは湿地帯の開墾や家屋の移築を手助けすることになった。

本拠地候補の視察

伯爵領開発の開始にあたり、ヴェンデリンたちは本拠地の選定に着手した。代官となったローデリヒは、ヴェンデリンの簡易地図をもとに候補地を三百五十六箇所まで絞り、一日ですべて視察すると宣言した。

ヴェンデリンとエルはローデリヒに同行し、瞬間移動を繰り返して各地を確認した。ローデリヒは地盤や拡張性を素早く評価し、宣言どおり一日で視察を終えた。疲れ果てた二人とは対照的に、ローデリヒは夜中まで選定作業を続けた。

バウルブルクの決定

翌朝、ローデリヒは未開地中央部の広大な草原を本拠地に選んだ。地盤が安定し、将来の町の拡張が容易で、魔導飛行船による交通にも適していたからである。

ローデリヒは王宮との交渉を進め、王都、ブライヒブルク、新本拠地を結ぶ定期航路も決めていた。新しい町は無難な命名として、バウルブルクと名付けられた。

先遣隊の受け入れ準備

魔導飛行船を受け入れるには、発着地や作業員の滞在場所を事前に整える必要があった。ヴェンデリンたちは瞬間移動で現地へ向かい、屋敷兼政庁となる城塞の位置を決める作業を始めた。

ヴェンデリンは草を刈って地面を平らにし、エル、イーナ、ルイーゼ、ヴィルマは周辺の猪や熊、狼などを狩った。エリーゼは食事を担当し、ブランタークは一行を警護した。ローデリヒは測量を進め、屋敷の中心となる地点を決定した。

基点の杭

ローデリヒが選んだ場所に、ヴェンデリンとエリーゼが本拠地の基点となる杭を打ち込んだ。これは町の建設開始を示す儀式であり、ローデリヒはバウマイスター伯爵家の新たな歴史が始まったと感激した。

一方、ヴェンデリンたちは連日の整地と狩りで疲れ切っていた。夕方には開発特区の屋敷へ戻ったが、ローデリヒだけは王宮への連絡や雇用関係の書類作成を続けていた。

終わらない整地作業

先遣隊の到着まで一週間あるため、ローデリヒは少しでも広い平地を作るよう求めた。ヴェンデリンは毎日草刈りと整地を続け、仲間たちは絶えず現れる野生動物を狩った。

五日間の作業によって、バウルブルク建設予定地には広大な平地が完成した。ヴェンデリンの魔法により、通常なら長期間を要する準備が大幅に短縮された。

先遣隊の到着

北方から数隻の巨大魔導飛行船が到着し、仕官予定者、建設作業員、測量技師、警備隊員、滞在用の物資が運び込まれた。作業員たちは既に整えられた広大な平地に驚いた。

ヴェンデリンは、ようやくローデリヒの指示を受ける仲間が増えたことを喜び、新たな家臣たちを心から歓迎した。

第九話 ローデリヒ、奮闘す! 

バウルブルク開発の本格化

王都から人員と物資を載せた魔導飛行船が到着し、バウマイスター伯爵家の家臣団と建設部隊が揃った。エドガー軍務卿の四男トリスタンも警備部隊を率いて加わり、ローデリヒは荷下ろし、宿営地の設営、警備、測量、炊事などを的確に割り振った。伯爵家の筆頭家臣兼代官として開発を主導する彼の能力に、ヴェンデリンたちは改めて感心した。

中央貴族の思惑

ヴェンデリンの結婚式は本屋敷完成後へ延期されていたが、その間にルックナー財務卿が孫娘を側室に送り込もうとしていた。さらにローデリヒへ旧ルックナー男爵家を継がせる案も考えていたが、いずれもホーエンハイム枢機卿に阻止されていた。ローデリヒ自身も、旧男爵家の爵位や遺産より、将来性のあるバウマイスター伯爵家の家臣であることを選んだ。

領内交通網の計画

ローデリヒは、バウルブルク周辺を含む十箇所以上の魔導飛行船港、領内道路、沿岸部の港、河川の治水工事を順次進める計画を示した。ヘルマンやパウルの領地、将来建設される町や村とも道路で結び、王国から提供される船と退役軍人を利用して独自の輸送体制を築く方針であった。莫大な費用と時間を要する事業であったが、ローデリヒはヴェンデリンの資金と魔法があれば成功できると家臣たちを鼓舞した。

建築資材の現地調達

魔の森へ行こうとしたヴェンデリンは、ローデリヒから強制依頼として石材と木材の採取を命じられた。ヴェンデリンは岩山で石を切り出し、森の木を伐採して加工し、魔法の袋で建設予定地へ運んだ。冒険者としての活動だと自分を納得させたものの、仲間たちが魔の森で狩猟を楽しむ中、建築資材ばかり集める状況には不満を抱いた。

急速に進む基礎工事

ヴェンデリンは本屋敷の土台を埋める巨大な穴を掘り、町の主要道路を固め、排水溝や魔導飛行船港の基礎を整えた。さらに野生動物を防ぐ堀と土塁を築き、百メートル以上の岩盤を貫いて飲用可能な水が出る井戸を各所に作った。仲間たちは書類整理、救護、警備や野生動物の駆除を分担し、作業員たちはヴェンデリンが大まかな工事を終えた場所を人海戦術で仕上げていった。

河川と用水路の整備

続いてヴェンデリンは河川の流路調整、浚渫、堤防や遊水地、農業用水路の造成を行った。工事中に逃げ出した魚は仲間たちが捕らえ、食料や肥料として活用された。ナンポウマスの身は味噌漬けにされ、卵は醤油や酒、ミリンを使って保存された。

建物の大量移築

バウルブルクに住居や役所を早急に揃えるため、ヴェンデリンたちは王都の不動産屋リネンハイムを訪ねた。取り壊し予定の家、破産した商人の屋敷、使われていない貴族の別荘などを安く買い、レンブラント男爵の魔法で移築する計画であった。さらに王国軍が維持費に苦しんでいた豪華な保養所も、エドガー軍務卿の了承を得て格安で引き取った。

形を成す新都市

移築された役所、警備隊の駐屯所、家臣の屋敷、一般住民向けの家が次々と並び、バウルブルクには領民の移住も始まった。港には定期的に魔導飛行船が到着し、人員と物資を降ろした。作業部隊は領内各地へ向かい、道路、町、村、港、河川の工事へ着手した。ヴェンデリンも、自分の魔法で町が形になっていくことに次第に楽しさを感じるようになった。

終わらない開発作業

ヴェンデリンは魔力を限界まで使って工事を進めた結果、屋敷から百キロ以上離れた道路工事現場で魔力切れとなり、作業員たちと野営することになった。現場の食事や待遇は王国軍より良好であったが、ローデリヒは夜も書類を処理し、翌日にはさらに長い道路を整備できると期待していた。以後、ヴェンデリンは工事現場で魔力を使い果たし、屋敷へ戻れない日々を送ることになった。

第十話 謎の女魔法使い 

加速する伯爵領開発

ローデリヒの計画を上回る速度で、バウマイスター伯爵領の開発は進んでいた。ヴェンデリンの多彩な魔法と膨大な魔力により、バウルブルクの城下町、道路網、飛行船港、用水路、井戸、海港、製塩や鉱山開発などの準備が次々と進められていた。一方、ヴェンデリンの予定は開発作業で埋まり、魔力切れで屋敷へ戻れない日も増えていた。

工事現場の夜

帰還できない夜、ヴェンデリンはローデリヒやトリスタンたちと街道沿いのモツ焼き屋で酒を飲んだ。家臣たちはバウマイスター伯爵家で世襲可能な地位を得たため、今後は結婚して家を残す必要があると話し合った。筆頭家臣となったローデリヒには二百枚を超える見合い写真が届いていたが、その中には旧ルックナー男爵家を将来復活させるため、ルックナー財務卿の幼い孫娘との婚約案も含まれていた。

エルヴィンの立場

エルヴィンは、ヴェンデリンが貴族になる以前からの友人であるため、主君の精神を支える特別な重臣として期待されていた。今後増える護衛を統率するため軍式の教育を受けながら、ヴェンデリンの護衛を続けた。ただしローデリヒから友人の少なさを指摘されたヴェンデリンは、過去の孤独を思い出して落ち込んだ。

南部港の建設

ヴェンデリンは南部海岸で港を造るため、海底を浚渫し、掘り出した砂や泥から塩分を除いて岸壁の材料にした。エリーゼたちは採れた魚介で鍋や炭火焼きを作り、作業員たちへ振る舞った。港は南方諸島群やその先への進出にも使えるため、将来の領地拡大に繋がる重要な拠点であった。

休暇中の依頼

翌日の休暇に魔の森へ行く予定を立てたヴェンデリンだったが、ローデリヒから冒険者ギルド周辺に建設する村の調査まで頼まれた。魔の森出張所には多くの冒険者が集まっていたものの、建物は粗末で宿泊施設も解体所も不足していた。魔物の血や残骸に野生動物が寄ってくる危険もあり、早急な村と防衛設備の整備が必要であった。

エルヴィンの見合い

狩りへ向かう前、エルヴィンにも多数の見合い写真が届いていた。彼は写真では女性の体格が分からないと不満を漏らし、ヴェンデリンとブランタークに叩かれた。さらに女遊びを望むような発言をしたため、エリーゼ、イーナ、ルイーゼ、ヴィルマから厳しく牽制され、近いうちに結婚相手を検討するよう求められた。

カカオ採集の依頼

魔の森では希少な魔物や果物が高値で取引され、冒険者たちが一攫千金を求めて集まっていた。ヴェンデリンが製法を教えたココアとチョコレートも人気を集め、アルテリオは不足するカカオを高値で買い取る依頼を出していた。一行は安全性と収益性を考え、カカオの採集へ向かうことにした。

カタリーナとの遭遇

出発直前、一行は魔力を完全に抑えて接近していた若い女性魔法使いに声をかけられた。カタリーナ・リンダ・フォン・ヴァイゲルと名乗る彼女は、魔晶石を多数身につけ、竜素材の豪華な装備と長杖を持つ実力者であった。

しかし彼女は、正式な資格がない者には認められないマントを着用していた。ヴェンデリンとエリーゼは、彼女が名を上げようとする没落貴族である可能性に気づき、面倒事を警戒した。

巻末おまけ マヨネーズとアームストロング伯爵家 

マヨネーズの派生調味料

王都留学中、エルとイーナが訓練から戻ると、ヴェンデリンは魔法でマヨネーズを作っていた。導師との修行で魔力を消耗しながらも、ワサビ、マスタード、シソ、ユズ、カレー粉を加えた派生品を試作し、既に大量の唐揚げとともに導師へ試食させていた。

導師はどの味も気に入り、特にカレー粉入りを絶賛した。以前から肉や野菜、御飯やパンにまでマヨネーズを使っており、自作が不得意なためヴェンデリンから定期的に分けてもらっていた。

カレー粉の高級商品化

ヴェンデリンが作ったカレー粉は、高価な南方産香辛料を多数必要とした。アルテリオはその製法を買い取り、高級調味料として販売するとともに、カレー料理を出す高級店を開いた。

価格が高くても店には常連客が集まり、持ち帰り用のカレー粉も売れていた。その利益はヴェンデリンにも還元されていたが、エルは彼が得た大金を何に使うのか疑問に思った。

魔法使いと杖

エルは、ヴェンデリンが普段杖を使わないことに気づいた。ヴェンデリンによれば、師匠から受け継いだ杖は新しい魔法の習得を助けるものや、公式の場で実力を示す典礼用として使うものであり、通常の魔法には必要なかった。

導師は、中級以下の魔法使いは杖がないと魔法の威力や効率が落ちるが、上級になると杖なしでも力を発揮できると説明した。ルイーゼは格闘の邪魔にならないよう、ヴェンデリンから贈られた指輪を杖の代わりにしていた。杖は魔道具の一種であり、条件を満たせば装飾品や武具でも代用できた。

導師の巨大な杖

導師の杖は全てミスリルで作られ、巨大な魔晶石が埋め込まれていた。魔力を込めると大きなハンマーへ変化し、魔力切れの際には魔晶石から補給もできた。

導師は常に重い杖を持つことで体も鍛えていた。彼の戦闘方法は、魔法で身体能力を強化し、杖を武器として直接相手を打ち倒すものであった。

アームストロング家の六角棒

アームストロング家は代々体格に恵まれ、剣よりも棒で敵を撲殺する戦い方を得意としていた。三百年前の当主は撤退する王国軍の殿を務め、百人を超える敵兵を倒した末に戦死した。

その功績を称え、王家は跡を継いだ当主へオリハルコン製の六角棒を与えた。以後、歴代当主は敵の剣を折り、そのまま相手を打ち倒す戦法で恐れられ、六角棒は家伝の武器となった。

アームストロング家の髪型

導師の頭頂部だけを残して周囲を剃った髪型も、戦死した先祖に由来していた。戦場で首を討たれた際に敵が持ち運びやすくするためであり、当主がその覚悟を持つ証でもあった。

以後、一族の男子は同じ髪型にする習わしとなった。もっとも、王国では二百年ほど大きな戦争がなく、家伝の六角棒も長く実戦では使われていなかった。

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