物語の概要
■ 作品概要
本作は、アース・スター ルナから刊行されたファンタジー小説である。
セレスティア王国唯一の名門サンチェス公爵家には二人の姉妹がいた。
姉のフローラは才色兼備な聖女候補として称賛される一方、妹のカロリーナは地味で才能もない「出来損ない」と嘲笑されて育つ。
ある日、隣国マルコシアス帝国との国際問題(無礼トラブル)を解決する和解条件として、カロリーナに第二皇子エドワードとの政略結婚の縁談が舞い込む。
エドワードは「戦好きで残虐」と噂される恐ろしい人物であったが、実際に嫁いでみると噂に反して非常に紳士的であった。
カロリーナは帝国において、エドワードや義理の父母となる皇帝夫妻にその優しい人柄や努力を正当に評価され、少しずつ自分を認められるようになっていく。
一方、カロリーナが王国を去った時期から、聖女候補であった姉フローラの力は急激に衰え始め、セレスティア王国では不作や疫病、魔物の増加といった異変が相次ぐようになる。自らの強大な力に無自覚な少女が、新しい環境で愛されながら本物の聖女として運命を切り拓いていく物語である。
■ 主要キャラクター
- カロリーナ:本作の主人公。サンチェス公爵家の次女。優秀な姉と比較され「出来損ない」として不当な劣等感を抱えていたが、実は祈るだけで重傷を一瞬で完治させるなど、無自覚に強大な神聖力を秘めている。
- フローラ:カロリーナの姉で、才色兼備の聖女候補。対外的には「妹思いの姉」を演じているが、裏ではカロリーナを激しく見下し敵視している。母親がカロリーナの出産直後に病死したため、妹が母を殺したと憎んでいる。
- エドワード:マルコシアス帝国の第二皇子であり、皇家直属騎士団「烈火の不死鳥」の団長。戦を愛する残虐な人物と噂されていたが、実際は礼儀正しく誠実であり、傷ついた部下や婚約者となったカロリーナを深く気遣う心優しい人物である。
- テオドール:エドワードの補佐(「烈火の不死鳥」団副団長)を務める子爵家の次男。全属性持ちの天才魔導師であり、非常に頭が切れるが、笑顔が胡散臭く腹黒い一面を持つ。エドワードの幼馴染でもある。
- マリッサ:キッシンジャー伯爵家の三女で、帝国で一、二を争うほどの完璧な美女。建国記念パーティーに向けカロリーナの専属侍女となった。実直で冷静に職務をこなすが、心に諦めや憂いを抱えている。
- オーウェン:クライン男爵家の私生児であり、「烈火の不死鳥」団に所属する騎士。実力は高いが破天荒な性格で、貴族社会への抵抗としてマナーを拒んでいた。カロリーナから未完成のハンカチを渡されたことで本気で変わることを決意し、跪いて忠誠を誓う。
■ 物語の特徴
- 「無自覚な聖女」による無意識の奇跡と評価の回復 主人公のカロリーナは魔力検査で「魔力なし」と診断されており、自分には何の才能もないと思い込んでいる。しかし、彼女の祈りには、致命傷を負った騎士コレットを一瞬で完治させるなど、周囲を驚愕させる「奇跡」を引き起こす力がある。彼女の優しさや真摯な姿勢が帝国の人々に正当に評価され、自己肯定感を取り戻していく過程が温かく描かれている。
- 姉妹の立場と国家の運命の鮮やかな「逆転劇」 セレスティア王国に豊かな恵みや魔物除けをもたらしていたのは、実は姉フローラではなく、妹カロリーナの無自覚な神聖力であった。そのため、カロリーナが王国を去った瞬間からフローラの聖女としての力が極端に衰え、国に不作や疫病、魔物の増加といった災厄が降りかかる。完璧なはずの姉が焦燥を募らせ、出来損ないと呼ばれていた妹が他国で深く愛され尊ばれていく「逆転」の対比が本作の大きな魅力である。
- 帝国の派閥争いと、不器用ながら深まるキャラクターたちの絆 単なる恋愛劇に留まらず、第一皇子派の過激派による暗殺や毒殺未遂、襲撃事件といった緊迫した「派閥問題(王位継承権争い)」が物語に絡み合っている。こうした陰謀に巻き込まれながらも、エドワードが誠実にカロリーナを庇い、破天荒な護衛オーウェンが主従の強い絆を結ぶなど、周囲のキャラクターたちとの丁寧な関係構築と成長が緻密に描かれている。
書籍情報
無自覚聖女は今日も無意識に力を垂れ流す 1
著者:あーもんど 氏
イラスト:あんべよしろう 氏
出版社:アース・スター(アース・スター ルナ)
発売日:2021年6月16日
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あらすじ・内容
優秀なサンチェス公爵家には二人の姉妹がいた。
姉のフローラは才色兼備な聖女候補。
妹のカロリーナは地味で才能もない落ちこぼれ……
そんなカロリーナのもとに隣国との関係調整のため第二皇子との縁談が舞い込む。
ただし皇子は、野蛮で残酷無比と噂の人物。
「私でも役に立てるなら」と政略結婚を受け入れるカロリーナだったが、
嫁いでみると人生が一変。
噂に反して紳士的な皇子や皇后に正当に評価され、自分を認められるように。
一方王国に残されたフローラは不調続きで――
第2回アース・スターノベル大賞、奨励賞受賞
感想
本作は、名門公爵家の中で「出来損ない」と呼ばれてきたカロリーナが、政略結婚をきっかけに祖国を離れ、新しい土地で愛情と自信を取り戻していく物語である。
虐げられてきた令嬢が隣国で大切にされるという、いわゆるシンデレラストーリーではある。しかし、単に優秀な力が判明して周囲を見返すだけではない。
カロリーナが少しずつ「自分は生まれてきてもよかった」「誰かに愛されてもよい」と思えるようになる過程が丁寧に描かれており、読んでいて強く心を動かされた。
姉の言葉によって傷つけられてきたカロリーナ
カロリーナは、セレスティア王国唯一の公爵家に生まれながら、特別な才能を持たない少女として扱われていた。
努力しても勉強では一番になれず、ダンスもすぐには上達しない。そのため、周囲からは公爵家唯一の出来損ないと呼ばれている。
しかし読んでいて感じたのは、カロリーナは決して何もできない人間ではないということだ。
結果が出なくても努力を続けられる。
自分が傷ついていても相手を気遣える。
危険な状況でも、目の前の現実から逃げずに向き合おうとする。
目立つ才能とは違うが、彼女には簡単には身につかない強さがある。
それにもかかわらず、姉のフローラは人前では優しい姉を演じながら、二人きりになるとカロリーナを徹底的に否定する。
特に残酷だったのは、母親が亡くなった原因をカロリーナの出産へ結びつけ、母を殺した存在だと責め続けていたことである。
幼い頃からその言葉を浴びせられれば、自分には愛される価値がないと思ってしまうのも無理はない。
フローラの行為は単なる姉妹間の意地悪ではなく、長い時間をかけてカロリーナの自己肯定感を奪う精神的な虐待だったと感じた。
不器用な父から伝えられた愛情
帝国への結婚が決まった後、カロリーナと父レイモンドが本音を交わす場面が印象に残った。
カロリーナは、自分が姉や王女の代わりとして選ばれたことに寂しさを感じながらも、国や家の役に立てるなら結婚を受け入れる。
そこには覚悟だけでなく、自分には結婚以外に役立てることがないという諦めも混ざっていたように思う。
しかし父は、娘が望むなら国王を説得して結婚を白紙に戻すとまで言い切る。
普段のレイモンドは仕事ばかりで、愛情表現も得意ではない。
そのためカロリーナは、自分が父に愛されていることへ気付けずにいた。
けれど父は、出来損ないかどうかに関係なく、娘である限り無条件に愛すると伝える。
旅立ちの日には、生まれてきてくれてありがとうと抱き締める。
この言葉によって、カロリーナが長年抱えていた「自分の誕生は間違いだったのではないか」という苦しみが、少しだけ解けていく。
派手な奇跡よりも、この親子の不器用な会話の方が胸に残った。
もっと早く言葉を交わしていればとも思うが、旅立つ前に気持ちを確かめられたことは大きな救いだった。
悪評とは正反対だったエドワード
カロリーナの結婚相手となる第二皇子エドワードは、戦好きで残酷な人物として恐れられていた。
カロリーナ自身も、どのような扱いを受けるのか分からないまま帝国へ向かっている。
ところが実際のエドワードは、無愛想で威圧感こそあるものの、非常に誠実で優しい人物だった。
馬車に酔ったカロリーナを気遣い、危険が迫れば自ら助けに入り、誤解や失敗があれば皇子という立場に甘えず頭を下げる。
外見や噂だけでは分からない彼の人柄が、旅を通じて少しずつ見えてくる構成が面白かった。
二人は最初から激しく恋に落ちるわけではない。
カロリーナは、愛がなくても互いを尊重する夫婦になれればよいと考えている。エドワードも当初は、聞き分けのよい飾りの妻として彼女を見ていた。
しかし、重傷を負った騎士から目を背けず、逃げずに向き合おうとする姿を見て、エドワードはカロリーナへの認識を変えていく。
旅の終わりを寂しく感じたり、再び一緒に出掛ける約束をしたりする二人の距離感が微笑ましかった。
急激に燃え上がる恋ではなく、安心と信頼が少しずつ好意へ変わっていく関係だからこそ、素直に応援したくなる。
本人だけが気付かない奇跡
本作の題名にもある通り、カロリーナは自分の力をまったく自覚していない。
山賊の襲撃によって騎士コレットが瀕死の重傷を負った時、カロリーナは何もできない自分を悔やみながら、ただ助かってほしいと願う。
すると、治癒魔導師でも止められなかった出血が止まり、傷が跡形もなく消えてしまう。
さらに、彼女の近くにいた騎士たちの魔法まで強化されていたことが分かる。
カロリーナは幼い頃の検査で魔力なしと診断されているため、自分が奇跡を起こしたとは考えない。
それでも読者から見れば、国や周囲へ恩恵を与えてきた本物の力がカロリーナにあることは明らかである。
ただし、彼女の魅力は強大な力だけではない。
もし治癒の力がなかったとしても、カロリーナはコレットの死から目を逸らさず、その場に残ろうとした。
奇跡が起きる前に、自分のできることを探して行動している。
だからこそ、彼女の祈りが人を救う展開にも納得できた。
力を持っているから優しいのではなく、優しい人間だったからこそ、その力が人を救う方向へ流れているように感じた。
新しい家族から与えられる肯定
帝国へ到着したカロリーナは、皇帝夫妻から温かく迎えられる。
特に皇后ヴァネッサとの関係には、読んでいて安心した。
カロリーナが嫌っていた赤い瞳を、ヴァネッサたちは幸運の象徴であるルビーのようだと褒める。
さらに、姉や誰かと比べるのではなく、カロリーナ本人を見ていると伝える。
これまで自分の欠点だと思っていたものを、新しい家族は美しいものとして受け入れてくれる。
同じ特徴でも、見る人や環境が変われば価値は大きく変わる。
カロリーナに欠陥があったのではなく、彼女を否定し続ける環境の方に問題があったのだと分かる場面だった。
また、厳しい花嫁修業や大量のドレスに振り回されながらも、義娘を迎えられたことを喜ぶヴァネッサの姿には温かさがある。
実家では息を潜めるように暮らしていたカロリーナが、帝国では家族として歓迎され、少しずつ笑顔を取り戻していく。
その変化に、読者としても救われる思いがした。
過去に縛られていたオーウェン
護衛騎士オーウェンとの関係も印象深い。
当初のオーウェンは礼儀を嫌い、反抗的な態度を取る人物だった。
さらに毒殺未遂事件では、証拠もないままカロリーナの父を犯人と決めつけてしまう。
カロリーナが怒るのも当然である。
しかし、彼が幼少期に家族から虐待され、父親からも見捨てられた過去を知ることで、反抗的な態度の理由が見えてくる。
それでもカロリーナは、過去が辛かったから何をしても許されるとは言わない。
同情されたくないなら、辛い過去が霞むほど幸せになればよい。
貴族社会へ反抗するだけではなく、誰もが認める騎士になればよい。
この言葉はかなり厳しいが、オーウェンを可哀想な被害者のまま扱わず、一人の人間として未来を選ばせる言葉でもあった。
カロリーナ自身も姉から傷つけられ、劣等感に苦しんできた。
だからこそ、過去に縛られ続ける苦しさを理解しながらも、そこから進む道を示せたのだと思う。
オーウェンが初めて跪き、騎士として忠誠を誓う場面には胸が熱くなった。
カロリーナは、自分には特別な才能がないと思っている。
しかし、彼女の言葉や行動は、確実に周囲の人間を変えている。
それもまた、目には見えにくい彼女の力なのだろう。
祖国で失われ始める恩恵
一方、カロリーナが国を離れたセレスティア王国では、作物の成長低下、魔物の増加、疫病などの異変が起こり始める。
これまで国の豊かさや魔物除けは、次期聖女と呼ばれるフローラの力だと考えられていた。
しかしカロリーナが出国した時期と重なるように、フローラの治癒能力まで急激に衰えている。
第1巻では、カロリーナの力がどのような仕組みでフローラや国へ影響していたのか、まだ完全には明かされていない。
それでも、本当に国を支えていた存在が誰だったのかは想像できる。
カロリーナを出来損ないとして扱い、聖女候補の姉を守るために国外へ送り出した結果、国を守る恩恵まで失ってしまう。
あまりにも皮肉な展開である。
ただ、個人的には祖国の崩壊そのものを痛快に感じるというより、カロリーナの価値を誰も正しく見られなかったことに空しさを覚えた。
父だけは娘を愛していたものの、その力には気付いていない。
国王もフローラを国外へ出せないと判断し、代わりにカロリーナを選んだ。
誰もが目に見える評判や肩書きを信じ、静かに国を守っていた存在を手放してしまった。
人の価値は、分かりやすい成績や評判だけでは測れないということを強く感じさせる展開だった。
読後の感想
『無自覚聖女は今日も無意識に力を垂れ流す1』は、虐げられてきた少女が新天地で幸せになる物語である。
しかし、本当の面白さは、カロリーナが聖女としての力を発揮することだけではない。
父から愛情を伝えられる。
エドワードから一人の女性として尊重される。
皇帝夫妻から家族として迎えられる。
オーウェンから守るべき主として認められる。
そうした経験を重ねることで、カロリーナ自身が少しずつ自分の価値を認めていく。
これまで姉に否定され続けてきたため、誰かに褒められてもすぐには信じられない。
それでも、帝国の人々が繰り返し彼女を大切にすることで、固くなっていた心がゆっくりと解けていく。
その過程が温かく、読み終えた後には安心感が残った。
エドワードとの関係も、まだ恋愛の始まりに立ったばかりである。
互いに不器用で、自分の気持ちを恋だとは理解していない。それでも、離れたくないと思うほど相手が大切な存在になり始めている。
今後、カロリーナの力が正式に判明した時、周囲や祖国がどのような反応を見せるのか。
そして彼女自身が「出来損ない」ではなく、本物の聖女だと知った時、どのように変わっていくのか。
力を誇るのではなく、人を思う気持ちによって無意識に奇跡を起こすカロリーナだからこそ、これからも自分らしい形で周囲を救っていくのだろう。
虐げられた主人公が見返す爽快感と、傷ついた心が愛情によって回復していく温かさの両方を味わえる一冊であった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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考察・解説
カロリーナの政略結婚
カロリーナとエドワードの政略結婚の全貌
セレスティア王国とマルコシアス帝国の間で交わされた、カロリーナ・サンチェスと第二皇子エドワードの政略結婚について、政略結婚の契機と王国の思惑、婚約者エドワードの悪評と意外な素顔、「お飾り妻」から「真のパートナー」への心情変化、および結婚がもたらした両国の決定的な逆転の各点から解説する。
政略結婚の契機と王国の思惑
この婚姻は、セレスティア王国の人間がマルコシアス帝国皇帝の妹である公爵夫人に無礼を働いたという、深刻な国際問題の和解条件として帝国側から提示されたものである。
・王家には一人娘のエステル王女がいたが、他国との婚約が内定していた。
・サンチェス公爵家の長女フローラは、豊かな恵みをもたらす聖女候補として国外へ出すわけにはいかなかった。
・次に身分の高い未婚女性として、公爵家の次女であり出来損ないと蔑まれていたカロリーナに白羽の矢が立った。
・優秀な姉の引き立て役として自己評価の極めて低かったカロリーナは、自身が姉の代替品であることを自覚しつつも、家の役に立てるならとドライに割り切り、国のためにこの政略結婚を受け入れた。
婚約者エドワードの悪評と意外な素顔
婚姻の相手である帝国の第二皇子エドワードは、国内外において戦好きで残虐、血も涙もない黒の英雄と恐れられている人物であった。
・実際にカロリーナが合流してみると、エドワードは威圧的な外見に反して極めて礼儀正しく、女性である彼女を対等な立場として扱った。
・旅路においても、激しい乗り物酔いに苦しむ彼女のために窓を開けて風を入れ、速度を落とそうとするなど、細やかな気遣いを見せた。
・エドワードの悪評は、実は帝国内における第一皇子派(過激派)の工作によるデマであった。
・エドワードが女性と子供を容赦なく斬り捨てたという噂の真相は、敵国民の親子が周囲を巻き込んで自爆しようとしたのを咄嗟に防ぐため、魔法の発動を阻止すべくその腕を斬り落としたというのが事実である。
過激派は、エドワードの支持率を下げるためにこの事実から最も重要な理由を伏せて流布していた。
「お飾り妻」から「真のパートナー」への心情変化
当初、エドワードと補佐のテオドールは、カロリーナを身の程を弁え余計な自己主張をしない都合の良いお飾り妻として見ていた。
・旅の途中で山賊の奇襲に遭い、護衛のコレットが重傷を負った際、彼女は死の危険から目を背けずに現実と向き合う強さを示した。
・この真っ直ぐで芯の強い姿勢に心を打たれたエドワードは、彼女をか弱い令嬢と侮っていたことを深く謝罪し、一人の女性としてもっと深く知りたいと認識を改めた。
・生まれつき周囲から気味が悪いと言われ続けてきた赤い瞳を、皇帝夫妻やエドワードから帝国で幸運の象徴とされるルビーのようだと称賛され、自分のことを少しだけ好きになるきっかけを得た。
・ヴァネッサ皇后から礼儀作法の指導を受けた際、物覚えが良く優秀な自慢の義娘だ、甘えてよいと抱き締められたことで、長年渇望していた無条件の愛情と評価に涙を流した。
・帝国内の派閥争いに巻き込まれ狙撃や毒殺未遂に遭いながらも、エドワードは彼女の恐怖を否定せず優しく寄り添い、カロリーナもまた怖さはあるが白紙に戻すつもりはなくエドワードの隣に立ちたいと本心から終生寄り添う覚悟を告げた。
結婚がもたらした両国の決定的な「逆転」
この政略結婚は、両国の力関係と命運を完全に逆転させる結果となった。
・セレスティア王国で聖女フローラの恩恵と信じられていた豊作や魔物除けは、実際にはカロリーナが無自覚に垂れ流していた強大な神聖力によるものであった。
・そのため、カロリーナが王国を去った時期からフローラの力は急激に衰え、王国は深刻な不作、魔物の急増、原因不明の疫病といった国家存亡の危機に直面する。
・一方で、カロリーナが足を踏み入れた帝国では、彼女の祈りによって致命傷の騎士が一瞬で完治するなどの奇跡が引き起こされ、後に彼女の力が本物の聖女のものであることが証明されていくこととなった。
まとめ
カロリーナとエドワードの政略結婚を巡る一連の全貌は、外交問題に起因する代替品としての輿入れから始まり、デマに覆われた皇子の真実の姿の露見、温かい接遇による自己肯定感の獲得と絆の深まり、そして真の聖女の不在がもたらした両国の決定的な国力逆転に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
蔑みや冷遇という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、真実の価値と愛がもたらした運命逆転の記録である。
冷酷な政略から、人間性の理解、相互の信頼構築、聖女の覚醒、そして国家の衰亡と繁栄の逆転へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
聖女の力の転移
聖女の力の転移と真実の全貌
本作における聖女の力の転移、あるいはその真実と力の移動にまつわる現象について、聖女の力の真の源泉、カロリーナの出立に伴うフローラの力の喪失、魔力確定(安定期)という魔法学的背景、および国家間における恩恵の転移の各点から解説する。
聖女の力の真の源泉(カロリーナの無自覚な神聖力)
セレスティア王国において、姉のフローラは才色兼備の次期聖女として崇められ、負傷者を一瞬で治癒する聖魔法の使い手とされていた。
・国に豊かな恵みや魔物除けをもたらしているのもフローラの力であると信じられていたが、その実態は全く異なっていた。
・真の源泉は、妹のカロリーナが無自覚に周囲に垂れ流していた強大な神聖力であった。
・カロリーナが生まれてから野生の魔物を一度も見たことがなかった王都や公爵領の異常な安全環境も、すべては彼女の力が無意識に魔物を退けていたためである。
カロリーナの出立に伴うフローラの「力の喪失」
カロリーナが政略結婚のために王国を出立した瞬間から、フローラの聖女としての力は急激に衰退し始めた。
・聖女試験を目前に控えながら、フローラの力は擦り傷を治す程度にまで激減した。
・周囲は最愛の妹が去ったことによる精神的ショックと好意的に解釈していたが、フローラ自身は妹を単なる引き立て役としか思っておらず、不調の時期がカロリーナの旅立ちと完璧に一致していることに不審を抱いた。
・フローラがこれまで自身の聖女の才能として示してきた奇跡は、彼女自身の魔力ではなく、カロリーナの垂れ流す神聖力を何らかの形で間接的に利用していたに過ぎないという事実が浮き彫りになった。
魔力確定(安定期)という魔法学的背景
カロリーナは幼少期の魔力検査で魔力なしと診断され、自らを落ちこぼれだと思い込んでいた。
・帝国の魔法学によれば、子供の魔力や属性適性は極めて不安定であり、14歳から16歳頃の安定期を経てようやく確定する。
・カロリーナは16歳を迎えつつある旅の途中で、ピンチに陥った護衛コレットの命を救いたいと祈った瞬間、致命傷を一瞬で完治させる本物の奇跡を発現させた。
・これは、彼女の眠っていた神聖力がこの年齢に達したことで、初めて彼女自身の意志(祈り)をトリガーとして明確に顕在化したことを示している。
国家間における恩恵の「転移」
力の源流であるカロリーナという存在そのものが物理的に帝国へと転移したことにより、聖女の恩恵(神聖力の効果範囲)もまた王国から帝国へと移動した。
・カロリーナを失ったセレスティア王国では、作物の成長スピードが激減して枯死が相次ぎ、国境付近の魔物被害が急増し、さらには原因不明の疫病まで発生する国家存亡の危機に陥った。
・反対に、カロリーナが足を踏み入れたマルコシアス帝国では、後に魔力の暴走や作物の成長速度および収穫高の向上、魔物の出現率低下といった、彼女の神聖力がもたらす規格外の恩恵が次々と確認されるようになった。
まとめ
聖女の力の転移と真実を巡る一連の全貌は、カロリーナが保持していた無自覚な神聖力の存在から始まり、彼女の出立に伴うフローラの力の急激な衰退、年齢による魔力確定に伴う真の能力の発現、そして存在の移動が引き起こした国家間の恩恵と国力の転移に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
虚構の称賛や過小評価という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、真実の神聖力が導いた世界の再編の記録である。
偽りの聖女の露見から、本物の覚醒、能力の確定、恩恵の移動、そして国家の衰亡と発展の逆転へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
帝国の皇位継承争い
マルコシアス帝国における皇位継承争いと派閥対立の全貌
マルコシアス帝国における皇位継承争いについて、皇太子未定と三つの派閥、第一皇子ギルバートの資質とマナ過敏性症候群、第二皇子エドワードの台頭と葛藤、および第一皇子派過激派による陰湿な工作の各点から解説する。
皇太子未定と三つの派閥
マルコシアス帝国では、第一皇子ギルバートと第二皇子エドワードが共に成人しているものの、未だに皇太子が決定していない。
・このため、帝国内の貴族や勢力は第一皇子派、第二皇子派、中立派の三つに分裂し、激しい対立が続いている。
第一皇子ギルバートの資質と「マナ過敏性症候群」
第一皇子ギルバートは、賢く人望もあり、本来であれば多くの貴族や民から圧倒的な支持を集める立場にあった。
・彼は四歳の頃に発症したマナ過敏性症候群を患っており、その病状は大人になっても改善するどころか悪化の一途をたどっている。
・症状は極めて深刻であり、教皇聖下の加護なしには出歩くことすらできず、特殊な結界が施されたダイヤモンド宮殿の外では生活できない状態である。
・ギルバートの目には魔力やマナの流れがはっきりと見えるが、一度に入る情報量が多すぎて脳が負荷に耐えきれずに気絶してしまう。
・深刻な体調不良により彼が表舞台に立つ機会が激減したことで、貴族や民の間には体調不良続きで王としての公務や義務を果たせるのかという不信感と不安が広がることとなった。
第二皇子エドワードの台頭と葛藤
一方、第二皇子エドワードは、自身について事務仕事は苦手であり周囲の評判も良くないため皇帝に相応しくなく兄上が皇帝になるべきだと考え、皇太子や次期皇帝になる意思を全く持っていない。
・しかし、彼がいくつかの戦争で最前線に立ち、武勲を重ねて功績を挙げたことで状況は一変した。
・ギルバートの健康状態に不安を抱いた貴族や民の一部が、頑丈な体を持つエドワードを次期皇帝に担ごうとした。
・これにより第二皇子派が急速に支持を集め、派閥の対立が激化することとなった。
第一皇子派過激派による陰湿な工作
エドワードの意向にかかわらず彼の支持率が高まる中、第一皇子派の過激派と呼ばれる者たちは、エドワードの評判を落として彼の次期皇帝への道を閉ざそうと躍起になっている。
・悪評の流布:エドワードが女子供も容赦なく斬り捨てる残虐な男と恐れられている噂は、過激派の工作によるデマである。実際には、敵国民が避難所の仲間を巻き込んで自爆しようとするのを防ぐために、咄嗟に魔法の発動を阻止すべく腕を斬り落としたという正当な理由があった。過激派はその理由をあえて伏せ、残虐な印象のみを広めてエドワードの支持率を削いでいた。
・カロリーナを標的とした暗殺・妨害工作:カロリーナが体験した山賊による奇襲、渡り廊下での狙撃、建国記念パーティーでの毒殺未遂の黒幕は、いずれも第一皇子派の過激派であるとされている。これらの狙いは、他国からの使者でありエドワードの婚約者であるカロリーナを害することで、エドワードに責任を負わせて婚姻や王位継承において彼を不利な立場に追い込む、あるいは結婚を破談にすることであった。
まとめ
マルコシアス帝国における皇位継承争いと派閥対立を巡る一連の全貌は、皇太子不在による帝国内部の三派分裂から始まり、第一皇子の病弱に起因する資質への疑念、第二皇子の意図せぬ武功に伴う支持拡大、そして第一皇子派過激派によるデマの流布や暗殺未遂という過激な工作に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
病患や陰謀という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、権力闘争の現実と運命に立ち向かう人々の記録である。
皇太子の未定から、病状の悪化、支持層の拡大、過激な妨害工作、そして国家を揺るがす政治闘争へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
親子の情愛と葛藤
登場人物たちの親子の情愛と葛藤の全貌
本作『無自覚聖女は今日も無意識に力を垂れ流す1』における登場人物たちの親子の情愛と葛藤について、カロリーナと父レイモンドの不器用なすれ違いと無条件の愛、オーウェンと父ドミニクの恩返しを求めた情愛と道具としての非情な決別、フローラと亡き母カレンの神格化された母と妹への歪んだ憎悪、およびマルコシアス皇家の血の繋がらない義娘を包み込む真の家族の情愛の各点から解説する。
カロリーナと父レイモンド:不器用なすれ違いと無条件の愛
カロリーナと父レイモンド公爵の関係は、互いに口下手で不器用な性格ゆえに、長年の深い誤解と葛藤を抱えていた。
・カロリーナの葛藤と罪悪感:自身の出産直後に母カレンが病死したため、自分が母の命を奪ってしまったという深い罪悪感を背負って育った。優秀な姉フローラから母を殺した貴方を許さないと存在を否定され、周囲からも出来損ないと蔑まれる中で、自分は愛される価値がなく母からも産まなければ良かったと思われているのではないかという葛藤に長年苦しんできた。
・父レイモンドの不器用な情愛と後悔:レイモンドは国政に忙殺され、娘たちに十分なことをしてやれなかった後悔を抱えつつも、亡き妻カレンを今なお深く愛し、彼女の生き写しであるカロリーナを無条件に愛していた。
・政略結婚が決定した際、彼は宰相としてではなく一人の父親としてカロリーナに向き合い、後悔しているなら国や家の利益を捨ててでも白紙に戻すと涙ながらに告げた。
・出立の朝、彼はカロリーナを抱き締め、お前が娘であることを誇りに思う、生まれてきてくれてありがとうと言葉を送った。この言葉によって、カロリーナは長年の呪縛から救われ、自分の誕生を肯定して前を向く勇気を得た。
オーウェンと父ドミニク:恩返しを求めた情愛と、道具としての非情な決別
護衛騎士オーウェンの過去に描かれる親子関係は、カロリーナの救済とは対照的に、決定的な破滅と裏切りによる葛藤の極みを体現している。
・父への純粋な感謝と恩返しへの願い:クライン男爵とメイドの間に生まれた私生児であるオーウェンは、義母から激しい虐待を受け、家族や使用人からも忌み嫌われるという凄惨な幼少期を過ごした。外交官である実父ドミニク男爵が自分を引き取ってくれたことに深い恩義を感じており、いつか父に認められ役に立ちたいという一心で勉強に励んでいた。この一方的な情愛と敬愛こそが、彼の過酷な日々を支える唯一の生きる理由であった。
・道具としての切り捨てと絶望による決別:長男が成人して代替品としての役目を終えた瞬間、父ドミニクは彼に対し生かしておく価値もないと冷酷に言い放ち、躊躇なく火炎魔法を放った。この決定的な裏切りにより、オーウェンの父への情愛と努力は無慈悲に粉砕され、彼は精神的な絶望の中で結界魔法に目覚めて出奔することとなった。それ以来、彼は貴族社会そのものへの抵抗と深い人間不信の葛藤を抱えて生きるようになった。
フローラと亡き母カレン:神格化された母と、妹への歪んだ憎悪
姉のフローラが抱える葛藤もまた、亡き母カレンへの極端な執着と情愛から端を発している。
・完璧な母への憧憬と妹への簒奪的敵意:フローラにとって母カレンは優しく思いやりに溢れ、人を惹きつける才能に満ちた聖母のような完璧な存在であり、神聖不可侵の対象であった。それゆえ、その素晴らしい母親を死に至らしめる原因となったカロリーナを母を殺した大罪人として激しく憎み、妹の全てを否定することで自らの母への愛を証明しようとしていた。
・その裏で、彼女は完璧な令嬢としての評価を維持することに異常な焦燥感を抱いており、カロリーナが自分より高い立場へ嫁ぐことへの強い嫉妬と、自身の力の衰えという自らの完璧さの崩壊に対する恐怖と葛藤に苛まれていった。
マルコシアス皇家:血の繋がらない義娘を包み込む「真の家族の情愛」
サンチェス公爵家における歪んだ親子関係に対し、マルコシアス帝国の現皇帝夫妻(エリックとヴァネッサ)が見せる情愛は、カロリーナにとって最大の精神的救済となる。
・無条件の肯定と温かい受け入れ:エリック皇帝とヴァネッサ皇后は、不器用な実息子エドワードと同様に、新しく迎える義娘カロリーナを家族として無条件に慈しむ。
・ヴァネッサは、カロリーナが長年他者と比較され完璧でなければ認められないという環境で苦しんできたことを見抜き、他の誰かと比べる必要はない、貴方は貴方自身として優秀であり自慢の義娘だ、遠慮なく甘えなさいと優しく抱き締めた。この無条件の肯定の情愛こそが、カロリーナが長年渇望し得られなかった真の親の愛そのものであった。
まとめ
登場人物たちの親子の情愛と葛藤を巡る一連の全貌は、不器用な父・レイモンドとのすれ違い解消と自己の誕生の肯定から始まり、父・ドミニクの冷酷な裏切りによるオーウェンの絶望的出奔、神格化した母への囚われが招いたフローラの激しい憎悪と自己崩壊の恐怖、そして帝国皇帝夫妻による無条件の受容と精神的救済に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
血縁の呪縛や理不尽な否定という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、真の情愛の有無が織りなす人間模様の記録である。誤解の氷解から、非情な別離、精神の歪曲、温かな包容、そして真の自己価値の獲得へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
騎士の忠誠と成長
騎士たちの忠誠と成長の全貌
本作において、騎士たちの忠誠と成長について、オーウェンの屈折と真の騎士への覚醒、コレットの献身と導く力、および未完成のハンカチが象徴する双方向の成長の各点から解説する。
オーウェンの屈折と「真の騎士」への覚醒
護衛騎士オーウェン・クラインは、本作で最も劇的な成長と忠誠の誓いを見せる人物である。
・彼は男爵家とメイドの間に生まれた私生児であり、義母からの陰湿な虐待に耐えながら、実父への恩返しを夢見て必死に努力を重ねていた。
・しかし、長男の代替品としての役目を終えた瞬間、実父から冷酷に切り捨てられ、殺されかけるという壮絶な過去を持つ。
・九死に一生を得て結界魔法に目覚め出奔した彼は、貴族のルールに従えば負けだという投げやりな反発心から、わざと礼儀や作法を拒み、何事にも執着しない生き方で周囲を困らせていた。
・カロリーナの護衛に選ばれた後もその不遜な態度は変わらず、建国記念パーティーでは物証もないままカロリーナの父レイモンドを襲撃の首謀者として糾弾する軽率な騒動を引き起こした。
・この失態を契機として、カロリーナとの間に本音の対峙が生まれた。彼の悲惨な過去をテオドールから聞いたカロリーナは、オーウェンに対して私は貴方に同情したと正直に告げた。
・その上で、同情されたくないなら辛い過去が霞むほど幸せになり成功者になりなさい、今の自由に見える振る舞いはただ貴族社会と過去に縛られ駄々を捏ねて足掻いている子供の抵抗に過ぎないと烈烈に叱咤した。
・この言葉は、過去の絶望を言い訳に立ち止まっていたオーウェンの心を激しく揺さぶった。
・カロリーナが差し出した未完成のハンカチを受け取った彼は、完璧な護衛騎士になってお嬢を守ってやると決意を新たにした。
・それまで誰の前でも決して跪くことのなかったオーウェンが、初めて彼女の前に跪き、剣と忠誠を捧げた騎士の誓いは、彼が歪んだ執着から脱却し真の騎士として歩み始める決定的な瞬間であった。
コレットの献身と「導く力」
もう一人の主要な騎士であるコレットは、平民出身でありながらも、身分の貴賎に関わらず誠実に対応する温かい人間性を備えている。
・彼は旅の途中で山賊の奇襲に遭った際、自身の安全を顧みずに身を挺してカロリーナを守り、瀕死の重傷を負った。
・この凄惨な出来事は、カロリーナが現実から目を背けずに戦うと決意するきっかけとなり、彼女の無自覚な祈りによってもたらされた奇跡の治癒を直接引き起こすこととなった。
・コレットの成長は、自らの役割に対する深い理解と、仲間を思いやる心に表れている。
・彼は代理護衛を務める中で、過去に囚われて頑なに前へ進もうとしない先輩オーウェンの心を案じていた。
・帝国の伝統である未完成のハンカチが持つ意味をカロリーナに教え、オーウェンに手を差し伸べるよう彼女を促したのはコレットであった。
・さらに、オーウェンが反省なく皇族教育の質や団長を揶揄する軽率な発言をした際には、身分は下でありながらも団の評判に関わる、不敬罪に問われかねないと毅然とした正論で彼を厳しく諫めた。
・こうした行動からは、彼が単なる戦闘員としてだけでなく、騎士としての誇りと規律、そして仲間を育てる責任感を伴った存在へと成長していることが窺える。
「未完成のハンカチ」が象徴する双方向の成長
本作における騎士の忠誠は、一方的な隷属ではなく、主と従者が共に未熟さを認め、共に成長していくという極めて人間的な双方向の絆によって成り立っている。
・カロリーナからオーウェンへ手渡されたライラックの刺繍が施されたハンカチは、技術的にも人間的にも未完成な二人の象徴である。
・完璧ではない二人が、それでも一流の護衛騎士になったら刺繍の続きをしてあげるという約束を交わし、不器用ながらも未来へ進もうとする姿は、形式的なマナーや血統だけに囚われない真の騎士道精神の美しさを体現している。
まとめ
騎士たちの忠誠と成長を巡る一連の全貌は、過去のトラウマからくるオーウェンの屈折と主君からの真摯な叱咤による覚醒、献身的な身挺と仲間を正道へ導くコレットの人間的成長、そして未完成のハンカチを交わした主従の双方向的な絆の形成に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
血統の不平増や過去の傷痕という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、騎士道精神と人間的誇りの再獲得の記録である。
歪んだ反発から、主君への服膺、自己犠牲の奉仕、仲間の啓発、そして互いを補い合う双方向の誓約へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
登場キャラクター
セレスティア王国
レイモンド・サンチェス
カロリーナとフローラの父親である。
彼はセレスティア王国の政治を支える立場にある。
娘のカロリーナに対して不器用ながら深い愛情を注いでいる。
・所属組織、地位や役職
セレスティア王国・サンチェス公爵家当主。宰相。
・物語内での具体的な行動や成果
ネイサン国王のお忍びの訪問に協力した。
カロリーナに政略結婚を白紙に戻す提案を行う。
娘の門出に生まれてきてくれてありがとうと伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
建国記念パーティーに国王の付き添いとして参加した。
妻であるカレンの死後も彼女への変わらぬ愛を持ち続けている。
カレン・サンチェス
レイモンドの妻である。
彼女はフローラとカロリーナの母親にあたる。
真面目で努力家な人物であったとされている。
・所属組織、地位や役職
セレスティア王国・サンチェス公爵夫人(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果
他者との間に深い人徳を築いていた。
公爵領の発展やあらゆる事業の成功に大きく貢献する。
カロリーナを出産した直後に病気にかかった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
娘の出産直後に発症した病がもとで亡くなっている。
死の瞬間まで誰も恨むことはなかった。
フローラ・サンチェス
カロリーナの姉である。
彼女は美貌と才能に恵まれた令嬢とされている。
妹のカロリーナを激しく見下している。
・所属組織、地位や役職
セレスティア王国・サンチェス公爵家の長女。次期聖女候補。
・物語内での具体的な行動や成果
夜会で怪我をした男女を自身の治癒魔法で完治させた。
妹のカロリーナに対して母親を死なせた張本人として責め立てている。
カロリーナが去った後に自身の力の衰えに焦りを募らせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
妹が王国を出発した時期から聖女としての力が急激に衰退した。
完璧な令嬢としての評判が崩れることに強い恐怖を抱いている。
カロリーナ・サンチェス
サンチェス公爵家の次女である。
彼女は自分の才能に自信を持てずにいる。
姉のフローラから強い敵意を向けられて育った。
夫となるエドワードやその家族から温かく迎えられる。
・所属組織、地位や役職
セレスティア王国・サンチェス公爵家の次女。マルコシアス帝国第二皇子妃。
・物語内での具体的な行動や成果
国のために第二皇子エドワードとの政略結婚を受け入れた。
移動中の野営地で重傷を負った騎士コレットの傷を祈りによって完治させている。
護衛騎士であるオーウェン・クラインに未完成のハンカチを手渡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
出来損ないと呼ばれていたが実は強大な神聖力を秘めている。
彼女が国を離れたことでセレスティア王国は魔物の増加などの異変に見舞われた。
ネイサン・フィリップス
セレスティア王国の現国王である。
彼は気分屋な性格として知られている。
親友であるレイモンドを深く信頼している。
・所属組織、地位や役職
セレスティア王国・国王。
・物語内での具体的な行動や成果
非公式にサンチェス公爵家を訪れた。
カロリーナに第二皇子エドワードとの政略結婚を依頼する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
建国記念パーティーにレイモンドを伴って出席している。
国で発生した作物の成長低下や魔物被害などの大問題に頭を悩ませる。
エステル・フィリップス
セレスティア王国の王女である。
彼女はネイサン国王の娘にあたる。
・所属組織、地位や役職
セレスティア王国・王女。
・物語内での具体的な行動や成果
病弱であるため表舞台にはあまり顔を出していない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
隣国の第三王子との婚約が既に内定している。
ジョナサン
セレスティア王国の大司教である。
・所属組織、地位や役職
セレスティア王国・大司教。
・物語内での具体的な行動や成果
カロリーナの神聖力を知り彼女を取り戻そうと画策している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
後にエドワードやギルバートによって失墜させる策を練られる。
マルコシアス帝国
エリック・ルビー・マルティネス
マルコシアス帝国の現皇帝である。
彼は最強と名高い魔法剣士とされる。
家族を温かく迎え入れる優しい一面を持っている。
・所属組織、地位や役職
マルコシアス帝国・皇帝。
・物語内での具体的な行動や成果
建国記念パーティーでエドワードとカロリーナの婚約を正式に宣言した。
カロリーナを新しい家族として歓迎している。
ピジョンブラッドのルビーを手に入れる交渉を約束した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
雷帝という異名で人々から呼ばれている。
民衆から厚い信頼を集める指導者である。
ヴァネッサ・ルビー・マルティネス
マルコシアス帝国の現皇后である。
彼女は感情の読めない無表情が特徴とされる。
義娘となったカロリーナを家族として深く慈しんでいる。
・所属組織、地位や役職
マルコシアス帝国・皇后。
・物語内での具体的な行動や成果
カロリーナに対して帝国式の礼儀作法やマナーを厳しく指導した。
パーティーに向けて二百着のドレスを用意する。
カロリーナを他の誰とも比べずに甘えるよう促した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
氷の才女という異名で知られている。
彼女の無表情は美しいとして多くの人々から称賛された。
ギルバート・ルビー・マルティネス
マルコシアス帝国の第一皇子である。
彼は芸術的な美貌を備えているとされる。
弟のエドワードとは異なる穏やかな性格をしている。
・所属組織、地位や役職
マルコシアス帝国・第一皇子。
・物語内での具体的な行動や成果
建国記念パーティーに出席してカロリーナと対面した。
自身の不調について教皇の神聖力で一時的に抑えていると明かしている。
ジョナサン大司教を失墜させるための策をエドワードと共に練った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
マナ過敏性症候群という障害を患っている。
加護がなければダイヤモンド宮殿の外で倒れるほど深刻な状態とされる。
エドワード・ルビー・マルティネス
マルコシアス帝国の第二皇子である。
彼は威圧的な外見を持つが礼儀正しい性格をしている。
婚約者となったカロリーナを深く気遣っている。
・所属組織、地位や役職
マルコシアス帝国・第二皇子。皇家直属騎士団「烈火の不死鳥」団長。
・物語内での具体的な行動や成果
山賊の襲撃の際に燃える馬車からカロリーナを救出した。
移動中に馬車の不足が生じたためカロリーナを自身の馬に乗せている。
カロリーナから不死鳥の刺繍が施されたハンカチを受け取った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
戦好きの第二皇子や黒の英雄として人々に恐れられていた。
皇太子になる意思はないが多くの武勲により支持を集めている。
テオドール・ガルシア
エドワードの幼馴染である。
彼は非常に頭の切れる優秀な補佐を務めている。
笑顔が胡散臭く腹黒い一面を持つ。
・所属組織、地位や役職
マルコシアス帝国・子爵家次男。皇家直属騎士団「烈火の不死鳥」副団長。
・物語内での具体的な行動や成果
カロリーナに対して帝国史や魔法学の講義を行った。
空間魔法を利用してレイモンドからの手紙を亜空間に収納している。
カロリーナに対して護衛騎士オーウェンの過去を説明した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
全属性持ちの天才魔導師として他国にも名が知られている。
エドワードの意向を汲んで様々な場面で実務や根回しを担当する。
ドミニク・クライン
オーウェンの実の父親である。
彼は実の息子であるオーウェンを長男の替え玉として扱った。
・所属組織、地位や役職
マルコシアス帝国・クライン男爵。外交官。
・物語内での具体的な行動や成果
メイドとの間に生まれたオーウェンを男爵家に引き取った。
用済みとなったオーウェンに対して火炎魔法を放ち殺害を試みる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
仕事のために各地を飛び回っており家を空けることが多い。
ナターシャ・クライン
ドミニク・クラインの妻である。
彼女は夫の私生児であるオーウェンを激しく憎んでいる。
・所属組織、地位や役職
マルコシアス帝国・クライン男爵夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
幼いオーウェンに対してヒステリックに喚き散らした。
オーウェンを汚れた平民の子供と呼び何度も蹴りつける。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
オーウェンに対して部屋に閉じこもって勉強をするよう命じていた。
ドレイク・クライン
クライン男爵家の長男である。
彼は腹違いの弟であるオーウェンに対して無関心を貫いていた。
・所属組織、地位や役職
マルコシアス帝国・クライン男爵令息。
・物語内での具体的な行動や成果
実母がオーウェンに暴力を振るう姿を見ても全く意に介さず立ち去った。
父親の外交官としての仕事を引き継いでいる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
彼が成人したことでオーウェンは替え玉としての役目を終えることとなった。
オーウェン・クライン
クライン男爵家の次男である。
彼は自由奔放で礼儀作法を拒む態度を取る。
カロリーナから自身の過去を指摘されたことで真の忠誠を誓う。
・所属組織、地位や役職
マルコシアス帝国・クライン男爵家次男(私生児)。皇家直属騎士団「烈火の不死鳥」騎士。カロリーナの護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
渡り廊下でカロリーナが狙撃された際、結界魔法を瞬時に展開して弾き返した。
カロリーナの部屋に毒を仕込もうとした暗殺者を取り押さえている。
カロリーナの前に初めて跪き、自身の剣と生涯の忠誠を捧げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
父親から殺されかけた瞬間に自身の結界魔法に目覚めた。
何事にも執着しない生き方をしていたがカロリーナを守るために変わる決意をする。
マリッサ・キッシンジャー
キッシンジャー伯爵家の三女である。
彼女は冷静沈着で実直な性格をしている。
過去の経験から心に諦めや憂いを抱えている。
・所属組織、地位や役職
マルコシアス帝国・キッシンジャー伯爵家三女。カロリーナの専属侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
建国記念パーティーに向けてカロリーナの化粧をものの数分で完成させた。
専属の侍女としてカロリーナの生活やお世話を一身に支えている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
帝国で一、二を争う完璧な美女として多くの男性から注目されている。
幼少期に読んだシンデレラに憧れ、素敵な王子様を夢見ていた過去がある。
コレット
平民出身の騎士である。
彼は正義感が強く、根っからの良い子として描かれている。
同じ騎士団に所属するオーウェンを先輩として気にかけている。
・所属組織、地位や役職
マルコシアス帝国・皇家直属騎士団「烈火の不死鳥」騎士。カロリーナの臨時護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
野営地での奇襲の際、自身の防御を捨ててカロリーナへ放たれた矢を切り落とした。
この戦闘で瀕死の重傷を負うがカロリーナの祈りにより傷口が完治する。
未完成のハンカチの持つ意味をカロリーナに説明してオーウェンへの贈呈を促した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
平民であるため苗字を持たない。
不敬な言動を取るオーウェンに対して毅然とした態度で注意を行っている。
ロン
平民出身の魔導師である。
彼は傷ついたコレットの治療に必死に取り組んだ。
・所属組織、地位や役職
マルコシアス帝国・皇家直属騎士団「烈火の不死鳥」治癒魔導師。
・物語内での具体的な行動や成果
奇襲後に重傷を負ったコレットの治療へ懸命にあたった。
コレットの傷が一瞬で完治した際、自身ではなくカロリーナの祈りが起こした奇跡だと証言している。
建国記念パーティーで乱入騒ぎの後、レイモンドを別室へ案内した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
治癒魔法と薬草を用いて騎士団員の命を繋ぐ役割を担っている。
展開まとめ
プロローグ
名門サンチェス公爵家
サンチェス公爵家は、セレスティア王国で唯一の公爵家であり、代々優秀な騎士や宰相を輩出して王家と国を支えてきた名門であった。
落ちこぼれのカロリーナ
次女のカロリーナは、優れた頭脳も特別な才能も持たず、努力を重ねても勉強やダンスで結果を残せなかった。そのため、公爵家唯一の出来損ないと呼ばれていた。
才能への願い
カロリーナは、誰かに誇れる才能を一つでも得たいと切望していた。これは、平凡な彼女が幸せを掴み取るまでの物語であった。
第一章
夜会のフローラ
華やかな夜会で、フローラは美貌と才能を備えた公爵令嬢として人々の注目を集めていた。一方、カロリーナは陰で出来損ないと嘲笑されていた。フローラは彼女を庇う姿を演じて令嬢たちに謝罪させたが、人目がなくなると、カロリーナを自分の評判を高めるための引き立て役だと嘲った。
次期聖女の治癒
会場で男女が転倒し、女性が骨折などの怪我を負った。次期聖女と目されるフローラは聖魔法で二人を完治させ、周囲から称賛を浴びた。カロリーナは姉の性格を知りながらも、その才能と恵まれた人生を羨んだ。
母を巡る憎しみ
帰りの馬車で、フローラはカロリーナの灰色の髪と赤い瞳を嘲り、母カレンに似ているという周囲の言葉も否定した。さらに、カロリーナの出産後に母が病死したことを持ち出し、母を殺したカロリーナを決して許さず、その存在すべてを否定すると告げた。
国王の密かな訪問
屋敷へ戻ったカロリーナは、父レイモンドに客室へ呼ばれ、非公式に訪れていたネイサン国王と対面した。国王は、セレスティア王国の人間がマルコシアス帝国皇帝の妹である公爵夫人に無礼を働き、国際問題へ発展したと説明した。
第二皇子との結婚
帝国側は和解の条件として、第二皇子エドワードとの婚姻を求めていた。王女エステルには既に婚約者がおり、フローラは聖女候補として国外へ出せないため、次に身分の高い未婚女性であるカロリーナが選ばれた。エドワードは優れた剣士でありながら、戦好きの第二皇子として恐れられる人物であった。
カロリーナは自分に恋人がいないと答え、家の役に立てるなら相手は誰でも構わないとして、国のために結婚を受け入れた。国王は三日後に帝国から迎えが来ると告げ、発表までは秘密にするよう命じた。
父の愛情
国王を見送った後、レイモンドはカロリーナに、後悔しているなら結婚を白紙に戻すと申し出た。国や家の利益を重んじる父の意外な言葉に、カロリーナは自分が娘として愛されていたことを知った。
レイモンドは、カロリーナがどのような娘でも無条件に愛すると断言した。カロリーナは結婚そのものに不満はなく、誰かの代わりとして選ばれたことだけが寂しいと答えた。父は彼女の無頓着さや優しさ、努力家なところが母カレンに似ており、生き写しのようだと語った。
母の思い出
カロリーナは帝国へ行く前に母をもっと知りたいと願い、レイモンドから夜通し思い出を聞いた。母は努力家で真面目でありながら、悪戯好きな一面も持ち、死の瞬間まで誰も恨まなかった人物であった。
姉への反抗
翌日、父と母の話をしたことや墓参りの予定を知ったフローラは、カロリーナの部屋へ押しかけた。母を死なせた者に墓参りをする資格はないと責め、従うよう命じたが、カロリーナは父へ報告すると告げて初めて反抗した。フローラは脅しを残して退室し、カロリーナは震えながらも達成感を覚えた。
カレンの墓前
カロリーナはレイモンドと共に、青と白のヒヤシンスに囲まれたカレンの墓を訪れた。父は亡き妻への変わらぬ愛と、娘たちに十分なことをしてやれなかった後悔を語った。
カロリーナは第二皇子との結婚を報告した後、母に自分を産んで良かったと思っているかと問いかけた。自分には才能がなく、母の死にも関わっているため、産まなければ良かったと思われているのではないかと長年苦しんでいたのである。返事が届かないことを承知しながらも疑問を口にし、今後は自分の運命から逃げないと墓前で誓った。
父との別れ
旅立ちの日、カロリーナは見送りに来た父へ十六年間の感謝を伝えた。レイモンドは彼女を抱き締め、娘であることを誇りに思い、生まれてきてくれてありがとうと告げた。その言葉によって、カロリーナは自分の誕生が間違いではなかったと感じた。
レイモンドは特別な存在にならなくてもよいから、ただ元気で健やかに暮らしてほしいと願った。カロリーナは父の愛情を胸に受け止め、後悔を残さず前を向いて馬車へ乗り込み、住み慣れた屋敷と父の元を離れた。
第二章
エドワードとの合流
カロリーナは、身分を隠して帝国へ移動するため、遠征帰りの皇家直属騎士団「烈火の不死鳥」団と合流した。団長で婚約相手でもある第二皇子エドワードは威圧的な外見に反して礼儀正しく、カロリーナを対等に扱って握手を求めた。
馬車での気遣い
軍事用馬車に酔ったカロリーナに、エドワードは窓を開けて風を入れ、速度を落とすことも提案した。副団長のテオドールもブランケットを渡し、帝国での予定を説明した。婚約発表は二週間後、結婚式は一か月後に決まっており、カロリーナには花嫁修業や帝国式の作法、歴史、魔法の勉強が課せられていた。
野営地への奇襲
その夜、騎士団が森で野営していると、山賊が弓矢で奇襲を仕掛けた。護衛のコレットはカロリーナを守って矢を切り落としたが、一本が彼女へ迫った。エドワードの炎が矢を焼き尽くしたものの、火は馬車へ燃え移り、カロリーナは逃げ場を失った。
炎からの救出
死を覚悟したカロリーナのもとへエドワードが駆けつけ、馬車の扉を破壊して彼女を抱き上げた。エドワードは炎の威力を誤ったことを謝罪したが、カロリーナは自分を救った事実に感謝し、それ以上謝る必要はないと告げた。
重傷のコレット
戦闘後、カロリーナは自分を守ろうとして重傷を負ったコレットを発見した。エドワードは彼女に傷を見せまいとしたが、カロリーナは死から目を背けず、現実と向き合うと決意した。
祈りの奇跡
治癒魔導師ロンの処置でもコレットの出血は止まらなかった。何もできないことを悔やんだカロリーナが助命を祈ると、コレットの傷は跡形もなく塞がった。魔力を持たないはずのカロリーナは自分の力ではないと否定したが、ロンは彼女が祈った瞬間に治癒が起きたと証言した。
カロリーナへの謝罪
戻ってきたエドワードとテオドールは、コレットが完治した事実に驚いた。エドワードは、カロリーナを人の死に耐えられないか弱い令嬢だと決めつけていたことを謝罪した。カロリーナはその誠実さから、エドワードが噂とは異なる善良な人物だと確信した。
謎の力
騎士団では奇襲の際、エドワードやテオドールを含む十二人が温かな力に満たされる感覚を覚えていた。その影響で魔法が強まり、馬車を破損させた者もいたため、テオドールはコレットを治した力と併せて調査する必要があると考えた。
エドワードの関心
エドワードは当初、カロリーナを聞き分けのよい飾りの妻に適した存在と見ていた。しかし、彼女が重傷者から目を逸らさなかったことで、真っ直ぐで芯の強い女性だと認識を改め、もっと知りたいと思うようになった。
二人乗りの旅
馬車が不足したため、エドワードはカロリーナを自分の馬に乗せた。速度についていけず落馬しそうになった彼女を抱き寄せ、婚約者なのだから困った時は頼るよう告げた。カロリーナは、愛がなくても彼となら良い夫婦関係を築けるかもしれないと感じた。
帝都への到着
一週間後、騎士団はマルコシアス帝国の帝都へ到着した。旅の終わりを寂しく思うカロリーナに、エドワードは国内であれば再び旅へ連れていくと約束した。カロリーナも共に様々なものを見たいと答え、エドワードは初めて穏やかな笑顔を見せた。カロリーナは、彼が自分に心を許し始めたことに幸福を感じた。
第三章
皇城での歓迎
カロリーナはエドワードに伴われ、マルコシアス帝国の皇城へ入った。皇帝エリックと皇后ヴァネッサとの謁見では、旅の間に学んだ帝国式の礼儀作法を披露し、二人から歓迎された。緊張するカロリーナに、エドワードは大丈夫だと静かに声を掛け、不安を和らげた。
新しい家族との昼食
謁見後、カロリーナは皇帝夫妻とエドワードの昼食に招かれた。三人から見つめられて食事が進まなかったが、正直に緊張していると打ち明けると、皇帝夫妻は義娘となる彼女を見ていたかったのだと明かした。
ヴァネッサはカロリーナの赤い瞳を帝国で特別視されるルビーになぞらえ、エリックとエドワードも幸運の象徴だと称えた。気味が悪いと言われ続けてきた瞳を褒められたカロリーナは、自分を少し好きになれそうだと感じた。
侍女マリッサと護衛騎士オーウェン
客室で過ごすカロリーナには、伯爵令嬢の侍女マリッサと、「烈火の不死鳥」団の騎士オーウェンが付けられた。カロリーナは一人で世話を担うマリッサを気遣ったため、二人は彼女が高慢な令嬢ではないことに驚いた。
マリッサは冷静で実直な美女であり、オーウェンは礼儀に欠けるものの、自由奔放で率直な青年であった。カロリーナは対照的な二人と共に、皇城での生活を始めた。
ヴァネッサの礼儀作法
翌朝、カロリーナの礼儀作法を教える講師としてヴァネッサが現れた。娘に何かを教えることが夢だったヴァネッサは、カロリーナを義娘として迎えられることを喜び、熱心に帝国式の作法を教え込んだ。
厳しいレッスンを終えたヴァネッサは、カロリーナの理解力と物覚えを褒め、自慢の義娘だと告げた。さらに、誰かと比べる必要はなく、自分はカロリーナ自身を見ているため、家族として遠慮せず甘えてよいと伝えた。長年欲しかった言葉を与えられたカロリーナは、堪えきれず涙を流した。
帝国史と魔法学
午後、カロリーナは騎士団本部でテオドールから帝国史と魔法学を学んだ。エドワードも隣の席で講義を受け、答えに詰まったカロリーナへ密かに助言した。
帝国では、初代皇帝が母から贈られたルビーを守り石としていたことから、ルビーが勝利の象徴となり、皇族のミドルネームにも受け継がれていた。また、子供の魔力や魔法適性は不安定で、十四歳から十六歳頃に確定するため、帝国では五歳と十六歳に魔力検査を行っていた。
幼少期に魔力なしと診断されたカロリーナにも、後から魔力を得た可能性は僅かに残されていた。テオドールは期待しすぎないよう忠告したが、カロリーナは再検査への小さな望みを抱いた。
魔物の消失
旅の襲撃者は、両国間の緊張で獲物を失い、金に困った山賊であったことが判明した。一方、道中で魔物にほとんど遭遇しなかった話から、カロリーナは王都や公爵領でも野生の魔物を見たことがないと語った。
エドワードとテオドールは、障壁があっても魔物が全く現れない状況は異常だと驚いた。テオドールは密かに、これも聖女の力による恩恵ではないかと考えた。
マリッサの憧れ
自室で読書をしていたカロリーナは、マリッサが幼い頃にシンデレラを好み、いつか王子に助けてもらうことを夢見ていたと知った。既に夢を諦めたような彼女の瞳に、自分と似た絶望を感じたカロリーナは、無理に事情を聞き出さず、知らないふりをした。
二百着のドレス
翌日、ヴァネッサは建国記念パーティーに向け、カロリーナのために二百着ものドレスを用意していた。自分の衣装だと思わなかったカロリーナは驚いたが、ヴァネッサの着せ替え人形となり、五時間にわたって試着を続けた。
渡り廊下の銃撃
騎士団本部へ向かう途中、カロリーナは何者かに狙撃された。護衛のオーウェンが即座に結界を張ったため銃弾は防がれ、カロリーナは無傷で済んだ。
オーウェンは、襲撃の目的はカロリーナを殺すことではなく、傷つけて責任問題を起こすことにあり、自分が護衛に選ばれた事情も帝国内の派閥争いに関係していると明かした。しかし、詳しい説明は拒み、団長たちに聞くよう告げた。
エドワードの抱擁
約束の時間を過ぎても姿を見せないカロリーナを心配したエドワードは、会議室の扉を開けて彼女を捜そうとしていた。無事を確認すると、彼はカロリーナを強く抱き締めた。
狙撃を知ったエドワードは激怒し、犯人への極刑を口にしたが、テオドールに止められた。二人は安全を優先して、今後の講義をカロリーナの自室へ戻すと決めた。
父からの手紙
テオドールは、父レイモンドから届いた手紙をカロリーナに渡した。手紙には娘の体調や暮らしを案じる言葉と共に、セレスティア王国で作物の成長低下、魔物被害の増加、原因不明の疫病が起きていることが記されていた。
王国では、これまでフローラの聖女の力による恩恵と考えられていた豊作や魔物除けが急速に失われていた。レイモンドは建国記念パーティーへ出席するため、近くカロリーナと再会できることも伝えていた。
亜空間の保管
情報漏洩を防ぐため、手紙は建国記念パーティーまでテオドールが預かることになった。彼は空間魔法による亜空間収納へ手紙を保管し、紛失や盗難の危険がないことを説明した。
狙撃の恐怖で体の震えが止まらないカロリーナに、エドワードとテオドールは無理をせず休むよう勧めた。カロリーナは自分の弱さを責めたが、エドワードは恐怖を我慢する必要はないと優しく告げた。テオドールは再び渡り廊下を通らずに済むよう、転移魔法で彼女を自室へ送り届ける準備を始めた。
第四章
建国記念パーティーの支度
建国記念パーティー当日、カロリーナは淡い青のドレスとムーンストーンの装飾を身に着け、マリッサの化粧によって華やかな姿へ変わった。迎えに来たエドワードは彼女を美しいと率直に褒め、誰にも見せたくないとテオドールに漏らすほど心を奪われていた。
社交界への入場
カロリーナは大勢の視線に怯みながらも、ヴァネッサから学んだ作法を守り、エドワードと堂々と会場へ入った。二人の関係を探ろうとする令嬢たちには、小鳥のように賑やかだと遠回しに皮肉を返し、騒がしい一団を退けた。
兄との比較
第一皇子ギルバートが入場すると、その美貌に会場の注目が集まった。エドワードは、令嬢たちが皆自分より兄を好むため、カロリーナも同じではないかと不安を口にした。カロリーナは、ギルバートには惹かれず、優しく頼りになるエドワードの方が魅力的だと本心を伝えた。
婚約と結婚の発表
皇帝エリックは参加者の前で、エドワードとカロリーナの婚約および結婚を正式に宣言した。会場から大きな反発は起こらず、二人は多くの祝福を受けた。カロリーナとエドワードは改めて互いに末永い関係を誓い、乾杯した。
ギルバートの病状
パーティーの途中、ギルバートは教皇の力で一時的に症状を抑えているだけで、病状が悪化していると明かした。特殊な加護がなければ宮殿の外で倒れるほど深刻であり、カロリーナは彼の回復を願った。
父との再会
休憩中、テオドールと共にレイモンドが現れた。カロリーナはエドワードが噂とは異なる優しい人物であり、彼の妻になれることを誇りに思うと父へ語った。レイモンドは娘の言葉に安堵し、離れて暮らす彼女の健康を頻繁に確認したいほど心配していると明かした。
刺客と濡れ衣
そこへオーウェンが、カロリーナの部屋へ毒を仕込もうとした男を連れて乱入した。男が依頼人としてレイモンドの名を挙げたため、オーウェンは彼を犯人と断定した。しかし、カロリーナは物証も動機もなく父を疑うことを拒み、刺客が東洋人であることから、交流のないセレスティア王国の人間が雇った可能性も低いと反論した。
エドワードとテオドールはオーウェンの軽率な行動を謝罪し、刺客と共に拘束させた。カロリーナは父を別室へ送り、自分に隠されてきた事情を聞く決意を固めた。
帝国の派閥争い
テオドールは、帝国に第一皇子派、第二皇子派、中立派の三勢力があり、皇太子が決まっていないため対立が続いていると説明した。ギルバートは賢く人望もあるが、マナ過敏性症候群が悪化し、特殊な結界の外では生活できない状態であった。
一方、エドワードは皇帝になる意思を持たないものの、戦場で武勲を重ねたことで支持を集めていた。そのため、第一皇子派の過激派は彼の評判を落とし、次期皇帝への道を断とうとしていた。
悪評の工作
カロリーナを狙った山賊や狙撃、毒殺未遂は、エドワードに責任を負わせ、婚姻や皇位継承で不利にするための過激派の工作と考えられた。また、戦好きの第二皇子という悪評も、事実から重要な事情だけを省き、残虐な印象を広めた結果であった。
エドワードが女性と子供を斬ったという噂も、自爆から周囲を守るために魔法を使う腕を切り落とした出来事が歪められたものであった。カロリーナは、彼の優しさと噂が食い違っていた理由を理解した。
護衛騎士の条件
カロリーナの護衛には、貴族出身で実力があり、実家が第一皇子派ではなく、買収に利用される大切なものを持たない人物が必要だった。すべての条件を満たしたのはオーウェンだけであり、問題のある性格を承知しながら任命されていた。
カロリーナは事情を理解しても、物証なく父を犯人扱いしたオーウェンを許せず、護衛から外すか迷った。そこでテオドールは、判断を変えさせるためにオーウェンの過去を語った。
オーウェンの過去
オーウェンはクライン男爵とメイドの間に生まれた私生児であった。母の死後、男爵家へ引き取られたが、義母から虐待され、家族や使用人にも見捨てられて育った。それでも父への恩返しを願い、長男の代替品として懸命に勉強を続けていた。
しかし、父はオーウェンを長男の替えとして引き取っただけであり、役目を終えた彼を殺そうとした。その瞬間、オーウェンは結界魔法に目覚めて逃亡し、後にエドワードと出会って「烈火の不死鳥」団へ入った。以来、貴族社会への抵抗として礼儀や作法を拒み、何にも執着しない生き方を続けていた。
未完成のハンカチ
翌日、カロリーナはオーウェンを護衛に残した判断を振り返り、自分の未熟さを痛感していた。代理護衛のコレットから、未完成の刺繍入りハンカチには、未熟ながら努力を評価し、さらなる精進を願う意味があると教えられた。
コレットは、過去に囚われたオーウェンが前へ進むきっかけとして、作りかけのハンカチを渡してほしいと頼んだ。カロリーナは、進むかどうかは本人が決めることだと考えながらも、彼に手を差し伸べることにした。
オーウェンへの叱咤
取り調べ室を訪れたカロリーナは、オーウェンの過去を聞いて同情したと正直に明かした。反発する彼に対し、同情されたくないなら辛い過去が霞むほど幸せになり、可哀想な子供ではなく成功した人間になればよいと訴えた。
さらに、自由に見えたオーウェンこそ貴族社会と過去に縛られ、子供のような抵抗を続けているだけだと指摘した。カロリーナは未完成のハンカチを差し出し、一流の護衛騎士になれば刺繍の続きをすると告げた。
騎士の誓い
オーウェンは、カロリーナに可哀想な子供と思われ続けるのは不本意だとして、本気で変わることを決めた。誰もが認める護衛騎士となり、彼女を守ると宣言した。
彼は初めてカロリーナの前に跪き、剣と忠誠を捧げ、命が尽きるまで守り抜くと誓った。カロリーナはその決意を受け入れ、彼の成長に期待すると答えた。この誓いは、オーウェンが過去から前へ進む最初の一歩となった。
最終章
不死鳥のハンカチ
オーウェンが騎士の誓いを立ててから数日後、カロリーナは花嫁修業で完成させた刺繍入りのハンカチをエドワードへ渡すため、騎士団本部を訪れた。ハンカチには「烈火の不死鳥」団の象徴である不死鳥が刺繍されていた。
カロリーナ不足
大量の書類に追われていたエドワードは疲労のあまり、訪ねてきたカロリーナを使者と勘違いした。本人だと気づくと、しばらく会えなかったためカロリーナ不足だったと漏らし、本物であることを確かめるように彼女を見つめた。
カロリーナは休息を勧めたが、エドワードはテオドールたちが刺客の真犯人確保に動いているため、自分だけ休めないと拒んだ。それでも不死鳥のハンカチを受け取ると、宝物のように丁寧に扱い、その出来栄えを喜んだ。
結婚への恐怖
花嫁修業を続けるカロリーナを見たエドワードは、自分との結婚が怖くないのかと尋ねた。カロリーナは、婚約後に狙撃や毒殺未遂に遭ったため、結婚によって危険が続くことを恐れていると正直に答えた。
しかし、カロリーナは結婚を白紙に戻すつもりはなく、それでもエドワードの隣に立ちたいと告げた。エドワードも彼女を切り捨てることはないため、ずっと傍にいてほしいと願った。二人は互いに離れないことを約束し、カロリーナはしばらく彼の隣で近況を話すことになった。
フローラの焦燥
カロリーナが帝国で穏やかな時間を過ごす一方、フローラは自室に閉じこもっていた。彼女の聖女としての力は、カロリーナが王国を去った時期から急激に衰えていた。
周囲は、大切な妹が離れた精神的な衝撃が原因だと考えていた。しかし、フローラはカロリーナを邪魔者としか思っておらず、その説明を否定した。彼女が苦しんでいたのは、カロリーナが皇子妃となり、自分より高い立場を得ることへの嫉妬であった。
崩れ始めた完璧
フローラは、妹思いの姉という評判を保ってきたため、カロリーナの不在を悲しんでいると誤解され続けていた。力の衰えによって豊作や魔物除けの恩恵まで失われれば、国を危険に晒す悪女と見なされる可能性があった。
聖女試験を目前に控えながら、フローラの力は擦り傷を治す程度まで弱まっていた。彼女は完璧な令嬢として築いてきた評価を守るため、試験までに原因を解明しなければならないと焦った。
カロリーナ出立後の異変
フローラは、自身の不調が始まった時期とカロリーナの出立が一致していることに注目した。しかし、魔力を持たないカロリーナが呪術や悪魔契約を使ったとは考えにくく、他者の仕業であれば王国全体を危険に晒す理由も分からなかった。
考えても答えを出せなかったフローラは、過去に似た事例がなかったか調べることを決めた。
書き下ろし番外編 ~ある夜の二人~ エドワード視点
夜の散歩
帝国へ向かう旅の途中、エドワードはカロリーナへの関心が強まっていることを自覚していた。夜の見回り中、彼女のことを考えているうちに、カロリーナのテント前まで来てしまった。
幽霊への恐怖
眠れず外に出ていたカロリーナは、団員から若い男の幽霊が現れると聞き、怖くて眠れないと打ち明けた。エドワードは彼女の怯える姿を見て胸を締め付けられるような感覚を覚えたが、その正体を理解できなかった。
婚約者のための見張り
エドワードは幽霊から守るため、カロリーナのテント前で一晩見張ると申し出た。身分の高い彼に頼めないと拒むカロリーナへ、婚約者のために動くのは当然であり、自分を頼ってほしいと告げた。
カロリーナは無理をしないことを条件に申し出を受け入れ、テントへ戻った。エドワードは彼女の役に立てることを喜びながら地面に座り、美しい星空の下で夜を明かした。
特別書き下ろし 勉強嫌いな第二皇子
幼いエドワードの逃走
七歳のエドワードは、父から贈られた短剣を携え、講義を避けるために講師役のテオドールから逃げ回っていた。実技以外を嫌うエドワードに対し、テオドールは皇族教育を終えるまで講義を受けるよう強く迫った。
生垣迷路の暗殺者
エドワードはテオドールを撒くため、生垣迷路へ逃げ込んだ。しかし、気を緩めた隙を暗殺者に狙われた。短剣で攻撃を受け止めたものの、大人との力の差は大きく、火炎魔法も結界によって防がれた。
テオドールの参戦
そこへ風魔法で飛んできたテオドールが現れた。暗殺者を前にしても動じず、講義をサボったエドワードへの苛立ちを晴らすように竜巻を発生させた。
テオドールはエドワードにも協力を求め、竜巻へ最大火力の炎を放つよう指示した。二人の魔法は火災旋風となり、暗殺者の結界を破壊して、その体を焼いた。
初めての共闘
エドワードは複雑な混合魔法を制御したテオドールの才能を素直に称賛した。テオドールも、七歳とは思えない火力を持つエドワードを評価し、互いの実力を認め合った。
講義への連行
エドワードはテオドールを意外に良い人物だと評したが、その言葉遣いが気に障り、講義時間を延ばすと告げられた。暗殺者の処理を理由に逃れようとしたものの通用せず、手首を掴まれて皇城へ連れ戻された。
同シリーズ




その他フィクション

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