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とある魔術の禁書目録フィクション(Novel)読書感想

小説「新約 とある魔術の禁書目録 4」感想・ネタバレ

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新約とある魔術の禁書目録 4の表紙画像(レビュー記事導入用) とある魔術の禁書目録

新約 とある魔術の禁書目録(3)レビュー
新約 とある魔術の禁書目録まとめ
新約 とある魔術の禁書目録(5)レビュー

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  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
    3. ■ 物語の特徴
  2. 書籍情報
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
  5. 考察・解説
    1. 格闘大会ナチュラルセレクター
    2. 反学園都市組織
    3. 木原一族の襲撃
    4. 科学と魔術の対立
    5. 全体論の実験
    6. 魔神オティヌス
    7. 木原加群の復讐
    8. バゲージシティの惨状
  6. 登場キャラクター
    1. 学園都市
      1. 上条当麻
      2. 雲川鞠亜
      3. 麓洞龍一
      4. 学園都市側の兵士達
      5. 爆撃機部隊
      6. 警備員
    2. 木原一族
      1. 木原乱数
      2. 木原病理
      3. 木原円周
      4. 木原唯一
    3. 反学園都市サイエンスガーディアン
      1. ウェイスランド=ストライニコフ
      2. シャール=ベリラン
      3. サフリー=オープンデイズ
      4. オーサッド=フレイクヘルム
      5. ミストレイ=フレイクヘルム
      6. エールズ=ビッグアント
      7. グレッキー=リレッツマン
    4. グレムリン
      1. マリアン=スリンゲナイヤー
      2. 木原加群(ベルシ)
      3. ウートガルザロキ
      4. シギン
      5. オティヌス
      6. サンドリヨン
    5. 甲賀
      1. 近江手裏
      2. 坂田
      3. 浅井
      4. 野洲
    6. その他の勢力
      1. オッレルス
      2. 右方のフィアンマ
      3. ブリュンヒルド=エイクトベル
      4. レイヴィニア=バードウェイ
      5. 金髪のメイド姿の聖人
      6. 後天性ワルキューレの女性達
  7. 展開まとめ
    1. 第n章 たとえ死があったとしても Dead_to…
    2. 深刻な破損 ル9二1bカケrサ991 マ
  8. 同シリーズ
    1. 新約 とある魔術の禁書目録
    2. とある魔術の禁書目録
    3. 外伝
    4. とある暗部の少女共棲
    5. 同著者シリーズ
    6. ヘヴィーオブジェクトシリーズ
  9. その他フィクション

物語の概要

■ 作品概要

『新約 とある魔術の禁書目録(4)』は、KADOKAWAの電撃文庫より刊行されている、科学と魔術が交差する世界を描いたライトノベルである。 第三次世界大戦の終結後、反学園都市勢力である「反学園都市サイエンスガーディアン二七社」は東欧のバゲージシティにて、学園都市製の超能力を凌駕する「異能」を証明するための格闘大会『ナチュラルセレクター』を開催する。しかし、その背後では魔術と科学の融合組織「グレムリン」が暗躍し、彼らの企みを粉砕すべく学園都市からは狂気に満ちた科学者の一族「木原」が派遣される。上条当麻もまたこの理不尽で凄惨な戦場に介入し、バゲージシティのさらなる崩壊を防ぐために過酷な戦いへと身を投じていく。

■ 主要キャラクター

上条当麻:あらゆる異能を打ち消す「幻想殺し(イマジンブレイカー)」を右手に宿す少年。バゲージシティの危機を察知し、最悪の事態を食い止めるために奔走する。

サフリー=オープンデイズ:格闘大会『ナチュラルセレクター』に参加する少女。破壊に独自の美学を持ち、偶然出会った上条当麻と共にバゲージシティの騒乱を潜り抜ける。

雲川鞠亜:胡散臭い蛍光イエローのメイド服を着た少女。四肢を使った特異な体術を操る。かつての恩師である木原加群を追って、自らの意思でバゲージシティに乗り込む。

近江手裏:現代まで生き残った甲賀の忍び。組織を押し上げるための「財宝」として、未知の異能の力を観測・入手すべく大会に潜入する。

木原加群(ベルシ):学園都市から姿を消し、グレムリンに合流した元「木原」の男。かつて自分が殺めてしまった通り魔の少年の復讐を果たすため、因縁の相手である木原病理との相討ちを狙って戦場に立つ。

マリアン=スリンゲナイヤー:グレムリンの魔術師であり「黒小人(ドヴェルグ)」。生きた人間を家具や武器に改造する恐るべき技術と、世界を滅ぼすほどの力を持つ魔剣「戦乱の剣(ダインスレーヴ)」を操る。

木原病理・木原円周・木原乱数:学園都市から派遣された「木原」一族の者たち。各々が倫理を逸脱した異常な科学技術と戦術を駆使し、バゲージシティを破壊と混乱に陥れる。

オティヌス:グレムリンを束ねる純粋な「魔神」。上条当麻の右手をあっさりと切断するほどの絶大な力を持ち、「全体論」の超能力開発を進めるべく次なる標的を学園都市の「窓のないビル」へと定める。

■ 物語の特徴

本作の最大の特徴は、狂気を孕んだ科学の探求者である「木原」一族と、魔術と科学を融合させた「グレムリン」という二大勢力による、倫理観の欠如した凄惨な潰し合いが描かれる点である。従来の勧善懲悪の枠を超え、人間を平然と改造する魔術師や、幻覚で一般人を虐殺する科学者など、理不尽で圧倒的な暴力が交錯する極限状態のサバイバルが展開される。 また、恩師としての顔と復讐鬼としての顔を持つ木原加群の悲壮な決意や、魔神オティヌスや魔神になり損ねた男オッレルスといった次元の違う存在同士の激突など、今後の物語の核心に関わるスケールの大きな展開が連続し、読者に強烈なインパクトと興味を抱かせる構成となっている。

書籍情報

新約 とある魔術の禁書目録 4
(A Certain Magical Index)
著者:鎌池 和馬 氏
イラスト:はいむらきよたか 氏
出版社:株式会社KADOKAWA電撃文庫
発売日:2012年3月10日
ISBN:9784048863735

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

あらすじ・内容

全てを破壊蹂躙する木原一族と、全てを粉砕殲滅するグレムリンが激突!
──『11月13日より、我々反学園都市サイエンスガーディアン二七社は東欧のバゲージシティにおいて、格闘大会 「ナチュラルセレクター」 を開催します』── そのアナウンスが始まりだった。第三次世界大戦を契機とし、反学園都市勢力は各地で様々な抵抗運動を模索していた。この 『ナチュラルセレクター』 では、トーナメント制の異種格闘大会を通じ、『超能力を凌駕する 「異能」 を証明する』 こと目的としていた。それは、学園都市のアイデンティティを根本から破壊することに他ならない。魔術と科学の融合組織 『グレムリン』 の手を借り、その策謀は進む。そして。学園都市はそれを許さない。これは、たった三人の 『木原』 と、たった三人の 『グレムリン』。それだけでは済まない、最悪の騒乱。

新約 とある魔術の禁書目録(4)

感想

読んでまず驚いたのは、これまでのシリーズとは大きく異なる構成である。

物語の進み方や視点の切り替え方が独特で、まるで別作品を読んでいるような感覚になった。

同じ著者の『ヘヴィーオブジェクト』でも似たような構成を読んだ記憶があり、序盤は少し戸惑ってしまったが、読み進めるうちに独特のテンポにも慣れ、最後まで一気に楽しむことができた。

一方で、本作のメインヒロインであるインデックスがまったく登場せず、名前すら出てこなかったことには少し驚いた。

ここまで完全に出番がない巻は珍しく、物語の中心が完全に別の場所へ移っていることを実感させられる。

今回の舞台となるのは、反学園都市組織「サイエンスガーディアン二七社」が開催した東欧・バゲージシティでの異種格闘大会である。

しかし、その裏では魔術結社グレムリンが超能力実験を進め、さらに学園都市も木原一族や最新兵器を送り込むという、とんでもない状況になっていた。

結果として街全体が「木原」と「グレムリン」の戦場となり、まさに最狂同士の潰し合いが始まる。

新キャラクターも非常に多く登場し、短い時間で退場していく人物も少なくない。

慌ただしい展開ではあるものの、その分だけ「誰が生き残るかわからない」という緊張感が最後まで続いていた。

特に印象に残ったのは、木原加群と木原病理の戦いである。

木原という狂気の一族同士だからこその因縁があり、お互いに譲れない信念を抱えたまま相討ちへ至る流れは非常に重かった。

単純な善悪では割り切れない関係性だからこそ、最後まで目が離せなかった。

また、人間を家具や武器へ改造してしまう魔術師マリアンとの戦いも強烈だった。

彼女の能力は非常に不気味で、読んでいて嫌悪感すら覚えるほどだったが、その状況を打ち破るために現れた上条当麻の安心感はやはり別格である。

極限状態の中でも迷わず人を助けようとし、最後は空間そのものの異変まで打ち砕いて事件を終息へ導く姿は、改めて主人公らしい存在感を感じさせてくれた。

しかし、本巻はそれで終わらない。

終盤に現れた魔神オティヌスの存在は、それまでの戦いが前座だったと思えるほど圧倒的だった。

上条の右腕を何のためらいもなく切断し、マリアンを連れ去っていく姿には恐怖しかない。

これまで数々の強敵と戦ってきた上条ですら、まるで相手にならないほどの力の差が描かれており、新たな脅威の格が一気に示されたように感じた。

それでも、自ら再生した右腕とともに、生存者を救うため再び歩き始める上条の姿には胸が熱くなる。

どれほど理不尽な状況でも、人を助けることだけは決して諦めない。

その変わらない信念こそが、このシリーズ最大の魅力なのだと改めて感じた。

そしてラストでは、サイエンスガーディアンの首脳陣に対し、新たな木原である木原唯一が絶望的な現実を突き付ける。

事件が終わったように見えても、新たな混乱がすでに始まっているという締め方は実に『禁書目録』らしい。

本巻は、群像劇としての色合いが非常に強く、これまでとは異なる読み味の一冊だった。

狂気に満ちた木原一族、暗躍するグレムリン、そして魔神オティヌスという新たな脅威。

世界全体がさらに危険な方向へ動き始めたことを強く感じさせる内容であり、今後の展開がますます気になる一冊だった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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新約 とある魔術の禁書目録(3)レビュー
新約 とある魔術の禁書目録まとめ
新約 とある魔術の禁書目録(5)レビュー

考察・解説

格闘大会ナチュラルセレクター

『新約 とある魔術の禁書目録』に登場する、東欧のバゲージシティで開催された格闘大会「ナチュラルセレクター」の概要と、その裏に隠された複数の陰謀について解説する。

本大会は、第三次世界大戦後に学園都市から離反した協力機関の集合体である「反学園都市サイエンスガーディアン二七社」が主催した異種格闘大会である。単なる格闘技の試合に留まらず、各組織の思惑が複雑に絡み合う舞台となっており、その全容は以下の通りである。

過酷なルールと参加者の実態

試合は一対一のトーナメント制であり、直径30メートルの円形ステージを舞台として展開される。

・試合開始時に出入口は完全に塞がれ、相手の意識を奪うか降参させることで勝敗が決する。
・意識を奪う過程で対戦相手を殺害してしまっても罰則はないという、極めて過酷なルールが設定されていた。
・衣服を含め80キログラムまでの装備の持ち込みが許可されており、条約で禁止された火薬や毒物などでなければ、未知の兵器や物質も使用可能であった。
・そのため、純粋な打撃系格闘技を使うサフリー=オープンデイズのほか、電磁波攻撃を操るオーサッド=フレイクヘルム、魔術を操るグレッキー=リレッツマンなど、学園都市の科学から外れた能力を持つ者たちが数多く集結していた。

大会に隠された3つの目的と視点

この大会には、表向きの宣伝から裏の陰謀まで、三層の異なる狙いが存在していた。

・表向きの目的(アイデンティティの破壊):優勝賞品は、学園都市製の超能力に代わる、グローバルスタンダードの証明、とされていた。学園都市方式以外の異能の力を世界に認めさせることで、学園都市の優位性やアイデンティティを根本から破壊することを目的と謳っていた。
・主催者側の真の狙い(反学園都市勢力の拡大):実際の狙いは、最強の勝者を決めることではなかった。参加者は、病弱な家族のため、あるいは飢える故郷を救うため、といった絶対に退けない個人的な動機を背負っていた。主催者はその動機を調べ上げ、勝者には全面支援で協力関係を作り、敗者には、負け犬のままだと大切なものを失う、と脅迫して従わせる算段であった。大会を通じて参加者の背後にある100以上の組織や資金源を強引に巻き込み、支配圏を拡大させることが真の狙いであった。
・グレムリンの真の目的(全体論の超能力実験):大会の裏で暗躍し、サイエンスガーディアンに協力していた魔術結社グレムリンにとっては、この大会や学園都市側との激突すらも実験のピースに過ぎなかった。彼らは、極めて大規模な戦闘によってバゲージシティ全体を歪め、ミクロな異変を生み出すことで、全体論に基づく新しい超能力者の開発実験を行おうと目論んでいた。

大会の崩壊と観戦客に仕掛けられた罠

この大会が最後まで正常に遂行されることはなかった。バゲージシティの不穏な動きを許さない学園都市から、科学者の一族である木原(木原加群、木原病理、木原乱数、木原円周)が刺客として放たれたためである。

・さらに、この大会に集められた数百万人の観戦客は無関係な一般人ではなく、全員が反学園都市サイエンスガーディアンの関係者やその家族であったことが明かされる。
・これは、彼らを自然に一箇所へ集め、帰国の名目で要塞へ移送するための主催者側の罠でもあった。
・しかし、木原の襲撃によってナチュラルセレクターのルールは完全に崩壊する。
・バゲージシティ全体が、木原とグレムリンによる理不尽で凄惨な殺し合いの戦場へと変貌することとなった。

まとめ

反学園都市格闘大会ナチュラルセレクターは、学園都市の権威失墜を狙う表向きの目的の裏で、参加者の弱みに付け込んで支配圏を拡大しようとする主催者側の謀略、さらには全体論の超能力開発実験を目論むグレムリンの陰謀が何重にも重なった舞台であった。数百万人の関係者を巻き込む巨大な罠として機能していたが、学園都市が送り込んだ木原という狂気の刺客たちの介入により、大会そのものが完全に瓦解した。結果としてバゲージシティは、科学と魔術の過激な勢力が激突する凄惨な戦場へと突き落とされる結末を迎えたのである。

反学園都市組織

『新約 とある魔術の禁書目録』に登場する「反学園都市組織(反学園都市サイエンスガーディアン二七社)」の成り立ちから崩壊にいたる動向について解説する。

本組織は、第三次世界大戦後の世界のパワーバランスの変容に伴い、学園都市への反旗を翻した一大勢力である。その活動の実態と悲惨な結末の全容は以下の通りである。

1. 組織の成り立ち

第三次世界大戦後、ハワイ諸島で魔術結社グレムリンが引き起こしたテロ事件において、上条当麻ら学園都市の人間が一国の政治であるアメリカ合衆国に介入する事態が発生した。

・この事実が明るみに出たことで、学園都市の主要な協力機関二七社は、我々は学園都市の部下でも奴隷でもない、と主張し、協力関係を一方的に解消する共同声明を発表した。
・この離反を裏で仕組んだのは魔術結社明け色の陽射しのボス、レイヴィニア=バードウェイであり、彼女はグレムリンの中枢を表へ引きずり出すための釣り餌として科学サイドの分断を画策した。
・こうして学園都市から離反した二七社が結集し、反学園都市サイエンスガーディアン二七社を名乗る組織が誕生した。

2. バゲージシティにおける活動と真の目的

反学園都市サイエンスガーディアンは、東欧のバゲージシティを舞台に異種格闘大会ナチュラルセレクターを開催した。

・大会の表向きの目的は、学園都市製の超能力を凌駕する異能を証明し、超能力に代わるグローバルスタンダードを確立して学園都市の優位性を破壊することであった。
・しかし、主催者側の真の狙いは最強の一人を決めることではなかった。
・彼らは参加者が背負う絶対に退けない個人的な動機をあらかじめ調べ上げ、勝者には支援を、敗者には脅迫を与えることで、参加者の背後にある100以上の組織や資金源を強引に自らの枠組みへと取り込み、支配圏を拡大させようと企てていた。
・さらに、バゲージシティに集められた数百万人の観戦客や市民は、全員が反学園都市サイエンスガーディアンの関係者やその家族であった。
・彼らを帰国の名目で自陣営の要塞へ移送するという、大規模な情報・物流工作も水面下で進められていた。
・また、首脳陣の一角であるウェイスランド=ストライニコフは、食糧や資源の枯渇をちらつかせて世界の広い範囲を巻き込み、学園都市との戦争継続を阻むという、実体のない虚構の情報戦を思い描いていた。

3. グレムリンとの結託と学園都市からの制裁

反学園都市サイエンスガーディアンは、魔術と科学の融合組織であるグレムリンの手を借りてこの策謀を進めており、ウートガルザロキなどの魔術師が現地へ派遣されていた。

・しかし、学園都市はこうした不穏な動きを決して容認しなかった。
・学園都市は、木原加群、木原病理、木原乱数、木原円周からなる狂気に満ちた科学者の一族である木原を刺客として放った。
・加えて、カマキリ型の無人兵器ファイブオーバーや超音速爆撃機HsB-07といった最新鋭の兵器群を容赦なく投入し、苛烈な絨毯爆撃と殺戮を展開した。
・反学園都市サイエンスガーディアン側も学園都市から過去に貸与された無人兵器群を保有して応戦したが、科学技術の進歩速度が圧倒的に早い学園都市の前ではすでに型落ち品に過ぎず、一方的な蹂躙を受ける結果となった。

4. 組織の崩壊と敗北の契約

木原たちによる理不尽かつ圧倒的な攻撃によって、大会のルールや街の防衛網は跡形もなく崩壊し、バゲージシティの上層部も次々と手に掛けられた。

・騒乱の終盤、生き残ったウェイスランドのもとに、木原の一人である木原唯一が現れる。
・彼女は、反学園都市サイエンスガーディアンが発展して科学技術が世界に拡散すれば、科学の一分野を悪用しようとする際に現れる実行者である木原も世界中に自然発生し、学園都市にすら制御できなくなる、と宣告した。
・反学園都市の掲げた理想がかえって世界を危険にさらすという残酷な事実を突きつけられた老人は、自らの敗北を認める契約書に署名させられることとなった。
・これにより、反学園都市サイエンスガーディアンの戦いは完全に終焉を迎えた。

まとめ

反学園都市サイエンスガーディアン二七社の動向は、学園都市の独占体制に不満を抱く勢力の結集から始まったが、その本質は情報工作と参加者の弱みを利用した支配圏の拡大であった。さらに、裏で魔術結社グレムリンと結託して学園都市の優位性を揺るがそうとしたものの、学園都市が放った木原という狂気の刺客と圧倒的な最新鋭兵器の前に、組織の防衛網は完全に瓦解した。自分たちの掲げた技術拡散の理想が、かえって制御不能な狂気の科学者を世界中に生み出すという逆説的な絶望を突きつけられ、完全な敗北の契約を結ばされるにいたった結末は、学園都市という絶対的な存在の壁の厚さを物語っている。

木原一族の襲撃

『新約 とある魔術の禁書目録(4)』における「木原一族の襲撃」のエピソードについて解説する。

本襲撃は、東欧のバゲージシティにて反学園都市組織が開催した格闘大会ナチュラルセレクターを粉砕し、反乱分子を殲滅するために学園都市から行われた無慈悲な軍事・科学的作戦である。その全容は以下の通りである。

1. 無人兵器群と木原による殲滅戦

学園都市はまず、超音速爆撃機HsB-07による空爆や、カマキリ型の巨大駆動鎧ファイブオーバーなどの最新鋭無人兵器を大量に投入し、バゲージシティの防衛網を一方的に破壊した。

・しかし、真の恐怖は現地に降り立った木原たちであった。
・彼らはただ敵を倒すのではなく、独自の狂気的な科学技術を用いて街を地獄へと変えていった。

2. 各木原の狂気と戦術

襲撃の主力となったのは、以下の3人の木原である。

・木原乱数:人間の脳を混乱させる化学物質を載せたカビを散布し、対象に幻覚を見せて精神を破壊する専門家である。彼は反学園都市組織の首脳の一人であるウェイスランドに対し、家族の命を弄ぶ悪趣味なロシアンルーレットの幻覚を仕掛け、相手を徹底的に絶望させながら弄んだ。
・木原円周:自身には木原としての個性が足りないため、首に提げた複数の端末に表示されるグラフから他の木原の思考パターンを読み取り、自分の行動にインストールして戦う少女である。彼女は木原乱数が持ち込んだカビを利用し、野菜工場のブラックライト(紫外線)を使ってカビの遺伝情報を変異させ、街を全滅させる生物兵器を生み出そうと暗躍した。
・木原病理:他者を諦めさせることに執着する女性である。パジャマ姿で車椅子に乗った弱者を装っていたが、実際には自身の全身を第二位の超能力未元物質(ダークマター)で改造しており、車椅子を蜘蛛のような多脚ユニットに変形させるなど、圧倒的な戦闘力でグレムリンのマリアン=スリンゲナイヤーを追い詰めた。

3. 木原加群の復讐と木原同士の潰し合い

この学園都市からの襲撃に対し、バゲージシティ側にいたのが、学園都市から姿を消してグレムリンに合流していた木原加群(ベルシ)であった。

・かつて生徒を守るため通り魔を殺害し、学園都市を去った彼であるが、その真の目的は、何の変哲もない少年を追い詰めて通り魔に仕立て上げ、生徒たちを危機にさらした元凶である木原病理への復讐であった。
・バゲージシティでの凄惨な戦いは、最終的に木原加群と木原病理による木原同士の相討ちという形で決着を迎える。

4. 襲撃の結末と木原の本質

バゲージシティの戦場において、木原乱数はウートガルザロキの幻覚によって倒され、木原円周は雲川鞠亜たちに敗北し、木原病理は木原加群と相討ちになったことで、現地で暴れ回っていた木原たちは全滅した。しかし騒乱の事後処理として、反学園都市側の老人の前に木原唯一という新たな女が姿を現す。

・彼女は、4人の木原を失ったことを妥当なコストと切り捨て、老人に絶望的な真実を突きつけた。
・木原とは学園都市が作った精鋭部隊ではなく、科学の一分野を悪用しようとした時に自然発生する存在である、という事実である。
・もし反学園都市組織が発展して科学技術が世界に拡散すれば、それに伴って木原も世界中に溢れ返り、誰にも制御できなくなるという事実を突きつけられた。
・この言葉によって反学園都市の掲げた理想は完全に粉砕され、老人は敗北の契約書に署名させられる結末を迎えた。

まとめ

バゲージシティにおける木原一族の襲撃は、学園都市の圧倒的な科学力と、それを扱う者たちの倫理観の欠如を生々しく示す事件となった。科学の暴走や悪用そのものが木原という存在を形作るという特殊な設定のもと、木原同士の相討ちを含めた凄惨な殲滅戦が展開された。最終的に、技術の拡散がさらなる制御不能な狂気を生むという絶望的なシステムを突きつけ、反学園都市の意志を根底からへし折った結末は、学園都市の持つ闇の深さと絶対的な優位性を物語っている。

科学と魔術の対立

『新約 とある魔術の禁書目録』シリーズにおける「科学と魔術の対立」の構造変化と複雑化の変遷について解説する。

世界を二分する二大勢力の対立は、第三次世界大戦の終結を経て、単なる正面衝突から技術の融合や内部分断、そして凄惨な殲滅戦へとその形を変えている。その具体的な変遷の全容は以下の通りである。

1. 第三次世界大戦:科学と魔術の全面衝突

世界は大きく分けて、学園都市を筆頭に超能力開発や最新技術を推進する科学サイドと、オカルトや神秘を扱う魔術サイドに二分されている。

・ローマ正教などの魔術サイドは、科学サイドの力が世界のバランスを奪うことに恐怖を抱いた。
・その結果、ロシア成教と手を組んで最暗部である神の右席を表舞台へと引きずり出す。
・これにより勃発した第三次世界大戦は、単なる国家間の戦争にとどまらず、一番深い所では魔術と科学という大きな枠組みでの争いであった。

2. 新たな脅威グレムリン:魔術と科学の融合

大戦後、戦勝者となった科学サイドが広がりを見せる中、終戦や科学偏重の新しい世界を否定する者たちが新たな魔術結社グレムリンを結成した。

・彼らは純粋な魔術に頼るだけでなく、最新鋭の兵器やサイボーグ技術など科学の要素を取り込んでいる。
・魔術と科学が融合した世界規模の敵対勢力として活動を展開する。
・ハワイ諸島では、アメリカの設備である起爆剤を使ってアメリカ自身に大打撃を与えることで、他の科学先進国同士を争わせ、世界のバランスを崩そうと企てた。

3. 科学サイドの分断と内戦状態

ハワイでの事件解決後、学園都市の人間が一国の政治に介入したことを理由に、主要な協力機関27社が学園都市から離反した。

・離反した協力機関は、反学園都市サイエンスガーディアン二七社を結成する。
・この科学サイドの内部分断は、自らの魔術構造の中に科学技術を取り込もうとするグレムリンにとって、科学の力を吸収するための格好の餌となった。

4. バゲージシティの惨劇:狂気の科学と魔術の激突

反学園都市サイエンスガーディアンは、東欧のバゲージシティで格闘大会ナチュラルセレクターを開催し、学園都市の超能力に代わる異能の力を世界に証明しようとした。

・しかしその裏で、グレムリンは大規模な戦闘によってミクロな異変を生み出す全体論の超能力開発実験を企てていた。
・これに対し、不穏な動きを許さない学園都市は、狂気に満ちた科学者の一族である木原や最新鋭の無人兵器群を刺客として投入した。
・結果として、バゲージシティは倫理観の欠如した木原(科学)とグレムリン(魔術)による理不尽で凄惨な潰し合いの戦場と化した。

5. 上条当麻の目指す第三の道

このように、科学と魔術の対立は単純な組織間の戦争から、互いの技術や思惑が複雑に絡み合う融合や内戦へと形を変えている。

・その中心に立つ上条当麻は、科学と魔術が激突した際、どちらか片方のルールに傾けば双方が納得する結末には絶対にならないと考えている。
・本質的な争いの解決を望むならば、科学にも魔術にも属さない三つ目の道を作る必要があると認識している。
・そのために自らの右手である幻想殺し(イマジンブレイカー)の力の正体を知ろうと、再び過酷な戦いの中心へと向かっていくこととなる Lights。

まとめ

魔術と科学の衝突は、世界大戦という分かりやすい対立構図から、グレムリンによる科学技術の吸収や協力機関の離反に伴う科学サイドの内戦へとより根深く複雑なものへと変化した。科学と魔術が歪に融合し、互いの陣営を蝕み合う混沌とした戦況の中で、既存のルールに縛られない上条当麻の第三の道への決意は、この泥沼化する対立を根本から解決するための極めて重要な指標となっている。

全体論の実験

『新約 とある魔術の禁書目録(4)』において、魔術結社グレムリンがバゲージシティで密かに企てていた「全体論の実験」について解説する。

本実験は、学園都市の科学や従来の超能力開発の常識を根底から覆す異質な理論に基づいて展開された。その概念からバゲージシティでの推移、そして導き出された結論にいたる全容は以下の通りである。

全体論と従来の超能力の違い

学園都市が主導する超能力開発は、量子論、すなわち極めてミクロな世界を観測・操作することでマクロな現象を起こす手法をベースにしている。それに対し、全体論は全く逆の対となる理論である。

・全体論とは、膨張する全宇宙を一つの大きなシステムやネットワークとして捉える。
・宇宙の膨張速度を局所的に曲げるなど世界規模の大きな変化を起こすことで、その副作用として極めてミクロな超常現象(例えば掌から炎を生み出すなど)を引き起こすというアプローチである。
・これは、蝶の羽ばたきが嵐を生むとされるバタフライ効果の逆のプロセスと言える。

バゲージシティを舞台にした実験の展開

グレムリンは、この全体論を用いた全く新しい超能力開発の基礎理論を完成させるため、東欧のバゲージシティを巨大な実験場として利用した。

・彼らの狙いは、極めて大規模な戦闘によって、極めてミクロな異変を生み出せるかを試すことであった。
・バゲージシティで開催された格闘大会ナチュラルセレクターや、それに伴う木原とグレムリンの激突、さらには学園都市側からの無慈悲な制裁攻撃すらも、すべてはこの大きな世界を歪めるための実験のピースに過ぎなかった。

歪みの発生と上条当麻による破壊

グレムリンは自分たちが実験をコントロールしていると考えていたが、実際には事態は複雑化していた。

・彼らの準備によって未来で全体論の実験結果(歪んだ現象)が発動することが確定したため、その未来の歪みが現在のバゲージシティを強引に引っ張り、時間や空間を歪めてしまっていた。
・その結果、バゲージシティは、いつもの法則が通用しない、必要以上に悲劇が発生しやすい法則に縛られていた。
・しかし、その空間の歪みを座標のヒントとして追いついた上条当麻の右手(幻想殺し)が、その歪みそのものを破壊する。
・これにより、理不尽な悲劇の法則は打ち砕かれ、実験が彼らの想定通りに完遂されることはなかった。

実験の結論と次なる標的

上条の右手が何かを打ち消したということは、そこには確かに全体論の実験によって生み出された求めるべき何かが存在していた。しかし、魔神オティヌスは、この現象を普通の人間の脳で実行・管理するには限界がある(壁が生じる)と判断する。

・そのため、オティヌスは次の段階として全体論を使える素体の回収を決定した。
・魔術によって支えられた聖人やワルキューレではなく、学園都市の超能力開発も受けていない天然素材でありながら、並の人間を凌駕する性質を持ったその素体である。
・その素体は、学園都市の窓のないビルの基幹構造の一つで眠っているとされている。

まとめ

バゲージシティで行われた全体論の実験は、世界の歪みそのものをトリガーとして超常能力を発現させるという、世界規模の壮大な試みであった。戦闘による大規模な世界の歪みが時空の先触れとして現在のバゲージシティに悲劇をもたらしていたが、上条当麻の幻想殺しによってその基盤を破壊された。結果として実験は不完全な形で幕を閉じたものの、魔神オティヌスは全体論の可能性を確信し、その力を完全に制御するための次なる一手として、学園都市の中枢に眠る素体の回収へと目的を移行させることとなった。

魔神オティヌス

『新約 とある魔術の禁書目録』に登場する魔神オティヌスの概要と、その能力や目的について解説する。

オティヌスは、魔術と科学の混成組織グレムリンを束ねる、北欧神話の主神の名を冠した純粋な魔神である。その全容は以下の通りである。

1. 隻眼の魔女と圧倒的な暴力

外見は、先端の尖った鍔広の帽子を被り、右目を物々しい眼帯で覆った黒い革装束の隻眼の少女である。

・彼女の力は規格外であり、人間の精神を破壊する魔剣戦乱の剣(ダインスレーヴ)を鞘ごと握り潰す。
・あらゆる異能を打ち消す上条当麻の右腕(幻想殺し)をいとも簡単に握り潰して切断するほどの圧倒的な暴力を振るう。
・さらに、上条の切断された断面から吹き荒れた見えない力でさえ、血まみれの手で無造作に掴み取り握り潰してしまった。
・彼女は明確な理由や方向性を持たず、気紛れや退屈しのぎで殺しや救済を行う。
・そのため、その行動は予測不能であり、周囲の者のモラルすら破壊しかねない根源的な恐怖を与える。

2. 無限の可能性による50パーセントのジレンマ

世界を滅ぼすほどの力を持つ魔神であるが、魔神になり損ねた男オッレルスによって致命的な弱点が指摘されている。

・オティヌスは無限の可能性を持っているがゆえに、どのような行動を起こすにしても、成功する可能性、と、失敗する可能性、を両方抱え込んでしまう。
・常に成功率が50パーセント(五分五分)になってしまうというジレンマを抱えている。
・彼女がバゲージシティでの全体論の超能力の実験や、主神の槍(グングニル)の創造といった大仰な計画を進めているのも、この半々の確率を自分の意思で制御し、勝つ方向へ可能性を伸ばすためである。

3. 生死の境界への無関心と死者の軍勢(エインヘルヤル)

オティヌスにとって、生きているか死んでいるかの違いは些細なものでしかない。

・バゲージシティでの騒乱後、彼女は死亡した木原加群(ベルシ)の死体を腐らせずに意のままに操る。
・木原の遺体を死者の軍勢(エインヘルヤル)の一部へと作り変えた。
・部下のマリアン=スリンゲナイヤーにその遺体を担がせ、吹雪の中を悠々と撤退した。

4. 次なる標的と全体論の素体

バゲージシティでの実験結果を受け、オティヌスは全体論の超常現象を普通の人間の脳で実行・管理するには限界がある(壁が生じる)と判断した。

・そのため、次なる段階として全体論を使える素体の回収を決定する。
・魔術や学園都市の超能力開発の恩恵を受けていない天然素材でありながら、並の人間を領駕する性質を持つその素体である。
・その素体が、学園都市の中心である窓のないビルの基幹構造の中で眠っていると推測し、次なる標的を学園都市へ定めた。

まとめ

魔神オティヌスは、上条当麻の幻想殺しすら一蹴する圧倒的な戦闘力と、生死を意のままに操る冷徹さを併せ持つ存在である。しかし、あらゆる事象の成功率が五分五分になるという無限の可能性ゆえのジレンマを抱えており、これを克服するために主神の槍の創造や全体論の実験を画策していた。バゲージシティの実験を経て、次なる狙いを学園都市の中枢に眠る全体論の素体へと定めた彼女の動向は、科学と魔術の対立をさらに激化させる契機となっている。

木原加群の復讐

『新約 とある魔術の禁書目録(4)』における、木原加群(ベルシ)の復讐劇について解説する。

本エピソードは、狂気の科学者一族としての道を捨てた元教師が、教え子たちを巻き込んだ凄惨な事件の元凶へと挑む悲壮な復讐の物語である。その全容は以下の通りである。

1. 過去の悲劇と通り魔の真実

木原加群は、極めて高い知能を持つ狂気の科学者一族である木原の一人でありながら、その道を捨てて学園都市で落第防止(スチューデントキーパー)の教師として不登校の生徒たちを助けていた人物である。

・3年前の春、彼は教え子たちを守るため、学校に現れた刃物を持つ通り魔の少年を自らの手で殺害した。
・しかし、その通り魔は本当の悪人ではなく、何の変哲もない普通の少年であった。
・その少年は木原病理によって理性を焼き切られ、無理矢理に通り魔へと仕立て上げられた被害者だったことが後に判明する。

2. 復讐の動機と相討ちの覚悟

他者を諦めさせることを至上の目的とする木原病理の狙いは、子供たちから尊敬されるような善良な木原の可能性を木原加群に諦めさせることであった。

・自分が守るべき何の罪もない少年を悪の通り魔として葬り去り、死後もその名誉を汚してしまったことに気づいた加群は、激しい怒りと自責の念を抱く。
・そして、この悲劇を生み出した木原病理と、実際に手を下してしまった自分自身という二人の加害者が相討ちになって共に倒れることでしか、この復讐は成立しないと決意した。

3. 魔術の習得と決闘剣ヴィーティング

復讐を果たすため学園都市を去った加群は、魔術結社グレムリンに合流し、ベルシと名乗るようになる。

・彼は科学の力に加えて魔術を習得し、北欧神話の決闘剣ヴィーティングを体現する術式を編み出した。
・その術式は、致命傷を確実に回避しつつ、ダメージを負うほどに刃の切れ味が増す、というものである。
・これは木原病理を確実に削り合いの消耗戦へと引きずり込み、共倒れになるためだけに特化した極端な戦術であった。

4. 激突と先生の最期

バゲージシティの野菜工場群の上で、加群はついに因縁の相手である木原病理と激突する。

・木原病理は第二位の超能力未元物質(ダークマター)を体内に取り込んで巨大な怪物へと変化したが、加群は彼女の精神が作り物の体に耐えきれず自己崩壊を起こすタイムリミットを見越して戦い抜いた。
・最期は、落下しながら病理の頭部に右腕を深々と突き刺し、長年の復讐に決着をつける。
・復讐を遂げた加群自身も、致命傷は避けていたものの全身からの累積した出血により命を落とすこととなる。
・雪の中に倒れ伏した彼は、最期に駆けつけてきたかつての教え子である雲川鞠亜を見上げながら、済まなかった、という贖罪の一言を遺し、すべてを終わらせた満足そうな笑みを浮かべて息を引き取った。

まとめ

木原加群の復讐劇は、純粋な正義や保身からではなく、仕組まれた悲劇に対する激しい自責の念と、元凶である木原病理を道連れにするという不退転の覚悟によって遂行された。科学の一族としての知能とグレムリンで得た魔術を融合させ、己の命を削る決闘術式をもって宿敵を討ち果たした結末は、元教師としての贖罪の意思を物語っている。最期に教え子へ謝罪の言葉を遺して息を引き取った彼の生き様は、木原の血脈に抗い続けようとした一人の人間の悲壮な結末を示している。

バゲージシティの惨状

『新約 とある魔術の禁書目録(4)』において、反学園都市組織が格闘大会ナチュラルセレクターを開催した東欧のバゲージシティの惨状について解説する。

学園都市から派遣された狂気の科学者一族である木原と、魔術結社グレムリンが激突したことで、この街は倫理観の欠如した凄惨で理不尽な地獄へと変貌した。その惨状の具体的な内容は以下の通りである。

1. 学園都市の最新兵器と木原による無慈悲な蹂躙

学園都市は、バゲージシティの防衛網を突破するため、超音速爆撃機HsB-07による精密爆撃を行い、空港や滑走路、高架道路、トンネルなどを徹底的に破壊した。

・第三位の超能力者の力を超えるように設計されたガトリングレールガン搭載の駆動鎧ファイブオーバーを多数投入し、建物を貫通するほどの威力で街を絨毯爆撃した。
・木原乱数:人間の脳内分泌物と同じ効果を持つ微粒子をカビに乗せて散布し、警備陣や市民に幻覚を見せて棒立ちにさせた。そして、反学園都市組織の首脳であるウェイスランドに対し、家族の命を賭けたロシアンルーレットの幻覚を見せて弄ぶなど、悪趣味な精神的拷問と殺戮を展開した。
・木原円周:野菜工場のブラックライト(紫外線)を利用し、木原乱数が撒いたカビの遺伝情報を破壊・突然変異させ、街を壊滅させる生物兵器を無秩序にばら撒こうとした。また、何百トンものコンテナを雪崩のように落下させ、視聴者参加型アトラクションと称して広範囲を押し潰す大量破壊を行った。
・木原病理:車椅子から蜘蛛のような多脚ユニットに変形し、第二位の超能力未元物質(ダークマター)を応用した肉体改造と圧倒的な火力で、マリアンなどを徹底的に追い詰めた。

2. 黒小人マリアンによるグロテスクな人体改造

学園都市側の襲撃に対し、グレムリンの魔術師マリアン=スリンゲナイヤーは、ゴミ処理施設で防衛戦を展開したが、その手法は極めて猟奇的であった。

・彼女は黄金の鋸や金槌といった工具を使い、襲撃してきた学園都市側の兵士たちを生きたまま改造した。
・兵士の腹部を吹き飛ばして他の兵士にぶつけたり、切り落とした両足を車輪に作り変えて生ゴミのタンクへ走らせたりした。
・人間の両手を繋ぎ合わせて一つの蛇口に変え、そこから致死量の血を流し出させた。
・生きた人間をバラバラに分解し、椅子やフロアスタンド、テーブルといった癒し系の家具に作り変えた。彼らは内臓を格納された状態で表面に顔があり、呼吸も食事も睡眠もとる生きた家具として部屋に配置された。
・さらに、人間を壁と同じ質感と色彩の四角い柱に加工し、通路を塞ぐセンサー兼障害物として利用した。

3. インフラ崩壊によるマイナス20度の凍死の危機

バゲージシティはマイナス20度を下回る豪雪地帯に位置していたが、戦闘によって街の生命線である温水暖房施設の中核(ゴミ処理施設や石油精製施設など)が破壊されてしまった。

・これにより暖房効率が激減する。
・そのままでは半日足らずで建物の中も外気と同じ極寒の環境となり、バゲージシティにいる数百万人の人間全員が凍死するという絶体絶命の危機に陥った。

4. 惨状の事後処理と上条当麻の決意

凄惨な殺し合いが終わった後、バゲージシティには木原やグレムリンが残した深すぎる爪痕が残された。

・右手を切断されながらも復活を遂げた上条当麻はオッレルスと共に救済作業に臨む。
・マリアンに改造されてしまった兵士たちや、家具にされた人間たちを元の五体満足な状態に組み立て直すという、過酷な分解と再整備の作業に挑むこととなった。

まとめ

バゲージシティにおける木原一族とグレムリンの衝突は、科学と魔術の双方が持つ最も狂気的で非人道的な側面が引き起こした大惨事であった。学園都市の圧倒的な質量兵器と精神を破壊する木原の戦術、そして人間の尊厳を完全に否定するマリアンの猟奇的な人体改造魔術により、街は完全に破壊され生き地獄と化した。インフラの壊滅によって数百万人が凍死の危機に瀕するなど、勝者なき殺戮戦の爪痕は深く、事件後は切断から復活した上条当麻らが、家具に変えられた被害者たちを元の姿へ戻すという凄惨な救済作業への決意を固める結末となった。

新約 とある魔術の禁書目録(3)レビュー
新約 とある魔術の禁書目録まとめ
新約 とある魔術の禁書目録(5)レビュー

登場キャラクター

学園都市

上条当麻

右手に「幻想殺し」を持つ少年である。目についた者を片っ端から救い上げる性質を持つ。

・所属組織、地位や役職
 学園都市の高校生。
・物語内での具体的な行動や成果
 バゲージシティに侵入し、サフリーや雲川鞠亜と行動を共にした。マリアンと戦い、魔剣の鞘の能力を妨害して彼女を倒した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 オティヌスに右手首を切断されるが、右手が元に戻った。彼の存在によって世界の法則が変わり、悲劇が回避される。

雲川鞠亜

メイド服を着た少女である。木原加群を追ってバゲージシティへやってきた。

・所属組織、地位や役職
 学園都市側の人間。
・物語内での具体的な行動や成果
 近江手裏と接触して彼女を気絶させた。木原円周と戦い、四肢を使った打撃で彼女を倒した。木原加群の最期を看取った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 木原加群を先生と呼び、彼が助けた命の価値を叫んだ。

麓洞龍一

超音速爆撃機HsB-07のパイロットである。肉体の大半に冷凍処置を施している。

・所属組織、地位や役職
 学園都市・爆撃機部隊パイロット。
・物語内での具体的な行動や成果
 バゲージシティの空港や滑走路を爆撃した。ロキの投網の攻撃を受け、マリアンへ向けて突撃した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 脳から直接情報を引き出して機体を操縦する。

学園都市側の兵士達

学園都市から派遣された部隊である。

・所属組織、地位や役職
 学園都市の兵士。
・物語内での具体的な行動や成果
 ゴミ処理施設でマリアンに殺害や改造を施された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき地位の変化や影響力は記載されていない。

爆撃機部隊

学園都市の航空部隊である。

・所属組織、地位や役職
 学園都市の部隊。
・物語内での具体的な行動や成果
 バゲージシティの空港やトンネルを精密爆撃した。ロキの投網によって被害を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 無人兵器群を圧倒する力を持つ。

警備員

学園都市の治安維持専門部隊である。

・所属組織、地位や役職
 学園都市の治安維持組織。
・物語内での具体的な行動や成果
 過去の事件で木原加群が出頭した相手として言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 広範囲の生徒を守り切れない状況があった。

木原一族

木原乱数

軽薄な性質を持つ若い男である。幻覚を使って敵を翻弄する。

・所属組織、地位や役職
 木原一族。
・物語内での具体的な行動や成果
 カビを使った幻覚でバゲージシティの警備陣を無力化した。ウェイスランドに幻覚を見せて家族を殺させようとした。幻覚を使ったウートガルザロキに殴り倒された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 化学物質を使った幻覚を見せる技術を持つ。

木原病理

にこやかな態度で嘘をつく車椅子の女性である。学園都市の脅威となる計画を諦めさせる役割を持つ。

・所属組織、地位や役職
 木原一族。
・物語内での具体的な行動や成果
 ゴミ処理施設でマリアンと戦った。未元物質で両足を修復し、木原円周を不意打ちで倒そうとした。木原加群と激突し、敗北して死亡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 未元物質を使って体を改造している。

木原円周

オドオドした雰囲気の小柄な少女である。木原として足りない部分を他の木原の思考パターンで補っている。

・所属組織、地位や役職
 木原一族。
・物語内での具体的な行動や成果
 コンテナ型の野菜工場でカビを生物兵器へ変異させようとした。雲川鞠亜とサフリーをコンテナの雪崩で攻撃したが、雲川鞠亜に倒された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 幼少期に暗い部屋に閉じ込められていた過去を持つ。

木原唯一

安物のスーツを着た若い女である。

・所属組織、地位や役職
 木原一族。
・物語内での具体的な行動や成果
 騒動の後、反学園都市サイエンスガーディアンの老人の元を訪れた。敗北の契約書に署名させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 研究者用の白衣を羽織り、木原が世界中に自然発生する危険性を語る。

反学園都市サイエンスガーディアン

ウェイスランド=ストライニコフ

食糧資源などを掌握する老人である。悲劇を回避したいと考えつつも、必要性のある死には躊躇しない。

・所属組織、地位や役職
 反学園都市サイエンスガーディアン二七社の一角の長。
・物語内での具体的な行動や成果
 ダミー施設の最上階でウートガルザロキと会話した。木原乱数の幻覚に捕らわれた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 情報戦で時間を稼ぐ作戦を立てていた。

シャール=ベリラン

バゲージシティの警備を行うアルバイトである。

・所属組織、地位や役職
 バゲージシティのガードマン。
・物語内での具体的な行動や成果
 ナチュラルセレクターの参加者を毛嫌いした。学園都市の兵器の力を見て逃亡した。騒動の後、爆撃機の残骸を回収しようとしたが逃げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 猛吹雪の中で生き残った。

サフリー=オープンデイズ

格闘大会へ純粋な格闘技で挑む女性である。破壊を好む。

・所属組織、地位や役職
 ナチュラルセレクター参加選手。
・物語内での具体的な行動や成果
 オーサッドとの試合に勝利した。上条当麻を連れてウェイスランドと対峙した。雲川鞠亜と共闘して木原円周と戦った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 学園都市以外の技術を国際標準にする目的を持っていた。

オーサッド=フレイクヘルム

宇宙人の技術を解明したとされる巨漢である。

・所属組織、地位や役職
 ナチュラルセレクター参加選手。
・物語内での具体的な行動や成果
 サフリーと対戦し、電磁波攻撃を使おうとした。サフリーに娘の件を指摘されて動揺し、敗北した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 娘を脅迫材料にされていた。

ミストレイ=フレイクヘルム

オーサッドの娘である。

・所属組織、地位や役職
 民間人。
・物語内での具体的な行動や成果
 雲川鞠亜が目覚めた医務室で氷を詰めた袋を渡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 利益優先主義者に捕まっていたがサフリーに助けられた。

エールズ=ビッグアント

狭い部屋に隠れていた参加選手である。

・所属組織、地位や役職
 ナチュラルセレクター参加選手。
・物語内での具体的な行動や成果
 保安室に隠れていたが、木原円周に誘導されてコンテナを叩き込まれた。木原円周にショットガンでとどめを刺された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ショットガンに弾を装填するのを忘れていた。

グレッキー=リレッツマン

ボロ布を被った正体不明の人物である。

・所属組織、地位や役職
 ナチュラルセレクター参加選手。
・物語内での具体的な行動や成果
 通路を奇妙な足音を立てて通り過ぎた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 魔術を操る優勝候補だと噂されていた。

グレムリン

マリアン=スリンゲナイヤー

銀髪の三つ編みと褐色の肌を持つ少女である。木原加群をグレムリンへ引き入れた。

・所属組織、地位や役職
 グレムリンの正規メンバー。黒小人。
・物語内での具体的な行動や成果
 ゴミ処理施設で学園都市の兵士を改造した。木原病理や雲川鞠亜達と戦った。木原加群の死後、戦乱の剣を抜こうとしたが上条当麻に倒された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 黄金の鋸や金槌で人間を家具や武器に改造する。

木原加群(ベルシ)

臨死体験の研究をしていた元教師である。通り魔を殺した過去を持ち、復讐のために行動する。

・所属組織、地位や役職
 グレムリンの正規メンバー。元学園都市の暗部研究者。
・物語内での具体的な行動や成果
 木原病理と戦って彼女を倒した。自身の復讐を成し遂げて死亡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 致死傷を回避する術式を使っていた。

ウートガルザロキ

金髪の男である。幻覚を操る。

・所属組織、地位や役職
 グレムリンの正規メンバー。
・物語内での具体的な行動や成果
 ウェイスランドと作戦について会話した。木原乱数と戦い、幻覚を仕掛けて彼を殴り倒した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 五感の情報を別の五感へ移し替える魔術を使う。

シギン

他人に助言を与える人物である。相手の欠けた部分を満たす役割を担う。

・所属組織、地位や役職
 グレムリンの正規メンバー。
・物語内での具体的な行動や成果
 マリアンと通信で会話した。近江手裏達に押さえられ、マリアンとの会話を利用された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 自分自身には能力を使えない。

オティヌス

右目を眼帯で覆った少女である。純粋な魔神であり、成功と失敗の可能性を五分五分で抱える。

・所属組織、地位や役職
 グレムリン。魔神。
・物語内での具体的な行動や成果
 マリアンの戦乱の剣を握り潰した。上条当麻の右手首を切断した。金髪の青年や右方のフィアンマと対峙した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 全体論を使える素体を求めて学園都市を次の標的に定めた。

サンドリヨン

生きたままテーブルに改造された人物である。

・所属組織、地位や役職
 グレムリン。
・物語内での具体的な行動や成果
 マリアンの部屋でテーブルとして置かれていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 過去の出来事への言及として登場する。

甲賀

近江手裏

園芸シャベル型のくないを持つ小柄な少女である。異能の力の情報を甲賀へ持ち帰ろうとする。

・所属組織、地位や役職
 甲賀の忍者。
・物語内での具体的な行動や成果
 雲川鞠亜と行動を共にした。マリアンを特殊なアルコールで酔わせて撤退させた。木原円周の罠を解除しようとした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 初動を司る精鋭である。

坂田

近江手裏の仲間である。

・所属組織、地位や役職
 甲賀の部隊。
・物語内での具体的な行動や成果
 無線で近江手裏と連絡を取ったが、異常な事態に巻き込まれて通信が途絶えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 怪物の襲撃を受けた。

浅井

近江手裏の仲間である。

・所属組織、地位や役職
 甲賀の部隊。
・物語内での具体的な行動や成果
 無線の向こうで悲鳴を上げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 部隊ごと壊滅した。

野洲

近江手裏の仲間である。

・所属組織、地位や役職
 甲賀の部隊。
・物語内での具体的な行動や成果
 無線の向こうで状況を伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 怪物の襲撃を受けた。

その他の勢力

オッレルス

金髪の青年である。魔神になるはずで止まっている不純物である。

・所属組織、地位や役職
 その他の勢力。
・物語内での具体的な行動や成果
 オティヌスの前に現れ、彼女の性質について指摘した。上条当麻に声をかけ、マリアンに改造された人々を戻すと告げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 成功の可能性に偏りを持つ。

右方のフィアンマ

右腕を失った赤い装束の男である。世界を救う力を持つ。

・所属組織、地位や役職
 その他の勢力。
・物語内での具体的な行動や成果
 オッレルスと共にオティヌスの前に現れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 過去に特別な右手を求めて戦争を起こした。

ブリュンヒルド=エイクトベル

北欧の病院で少年を見守る長身の女性である。先天的なワルキューレと聖人の性質を併せ持つ。

・所属組織、地位や役職
 その他の勢力。
・物語内での具体的な行動や成果
 少年に眠りの刻印を施した。病院に現れた後天性ワルキューレ達を攻撃した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 過去に少年を傷つけた者へ復讐のテロを起こした。

レイヴィニア=バードウェイ

杖を持つ小柄な少女である。

・所属組織、地位や役職
 近代西洋魔術結社のボス。
・物語内での具体的な行動や成果
 病院に現れ、グレムリンの情報を得るために後天性ワルキューレ達を攻撃した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 グレムリンの行動に苛立ちを感じている。

金髪のメイド姿の聖人

ライダースーツを着た女性である。

・所属組織、地位や役職
 その他の勢力。聖人。
・物語内での具体的な行動や成果
 病院に現れて後天性ワルキューレ達を吹き飛ばした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 分かりやすいものが好きだと語る。

後天性ワルキューレの女性達

骨髄の移植などによってワルキューレの性質を取り込んだ者達である。

・所属組織、地位や役職
 不明。
・物語内での具体的な行動や成果
 ブリュンヒルドの精神防壁を薄くするため病院を襲撃した。ブリュンヒルドや聖人達に攻撃された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 主神の槍の情報を狙っていた。

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新約 とある魔術の禁書目録(3)レビュー
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展開まとめ

ナチュラルセレクター

反学園都市の大会

反学園都市サイエンスガーディアン二七社は、東欧のバゲージシティで格闘大会ナチュラルセレクターを開催すると発表した。大会は一対一のトーナメント制であり、直径三〇メートルの円形ステージで、意識を奪うか降参させることで勝敗が決まるものだった。

参加者には八〇キロまでの装備が許され、禁止物質以外なら危険な手段も認められていた。優勝者に与えられる賞品は、学園都市製の超能力に代わるグローバルスタンダードの証明であり、学園都市方式以外の力を科学として認めさせる狙いがあった。

ゲートのガードマン

バゲージシティの一七番ゲートでは、ガードマンのシャール=ベリランが、ナチュラルセレクターの参加者達をゲテモノ扱いしていた。彼は大会の警備員であり、学園都市を離反した協力機関から派遣されたアルバイトだった。

シャールは参加者達を軽蔑していたが、サフリー=オープンデイズに陰口を聞かれて冷や汗をかいた。その直後、ボロ布を被った異様な参加者グレッキー=リレッツマンが通り過ぎ、彼が魔術を操る優勝候補だと知らされて恐怖を覚えた。

控室の上条

サフリー=オープンデイズは選手控室で身支度を整えていた。彼女は派手なドレスに似た戦闘衣装をまとい、相手が掴みやすい取っ掛かりをあえて作っていたが、有利に使う装備はグローブだけだった。

そこへ迷い込んだ上条当麻は、着替えの最中に飛び込んだことでサフリーに叩きのめされていた。上条は、レイヴィニア=バードウェイがハワイ諸島の一件を利用し、協力機関の離反を促したこと、さらにグレムリンがサイエンスガーディアンと結びつくはずだと説明した。

逃げないサフリー

上条は、ナチュラルセレクターには表向き以外の理由があり、参加選手の利益にはならない可能性が高いと訴えた。サフリーは、それが人体実験の素材にされるような事態かと冗談めかして言ったが、上条が真顔で否定しなかったため、言葉に詰まった。

上条は逃げてほしいと頼んだが、サフリーはそれが一番難しいと返した。彼女は上条に賛同も反対もしないとし、自分の目的さえ達成されれば大会が中止されても構わないと語った。その目的は、学園都市の子供達が何気なく手にしているものだった。

バゲージシティ

バゲージシティは、東欧の地方都市が第三次世界大戦中に軍へ接収された後、反学園都市サイエンスガーディアンへ売却された都市だった。本来なら住民へ返されるはずの街には、不透明な利権と無人兵器が残され、不穏な空気が漂っていた。

街の中心には四つのドーム状競技施設があり、ナチュラルセレクターの会場もその一つだった。サフリーはトンネルのような通路を抜け、観客の歓声と照明が渦巻く円形リングへ進んだ。

サフリーとオーサッド

サフリーの対戦相手は、電磁波攻撃を使うオーサッド=フレイクヘルムだった。彼は宇宙人のインプラント技術を独自解明したとされ、パラボラやアンテナのような装備を持ち込んでいた。

観客達は、学園都市製ではない力を証明しようとする者達へ期待と嘲りを向けていた。サフリーは、世界の端へ追いやられた者達が一発逆転を狙う気持ちは分かると考えつつ、自分もこの大会を利用して国際標準をもぎ取るつもりだった。

爽快な破壊

オーサッドは、試合開始後にマイクロウェーブでサフリーの三半規管を揺さぶると宣告した。しかしサフリーは、その攻撃は地味で分かりにくく、眉唾扱いされる理由もそこにあるのではないかと指摘した。

サフリーは、破壊は何をどう壊すかで価値が変わり、爽快感を極めた破壊は安易な悪にはならないと語った。彼女は、オーサッドの娘が脅迫材料にされていたことを把握し、その利益優先主義者達をすでに倒していた。オーサッドは観客席に娘の姿を見つけて動きを止め、サフリーは破壊の爽快感を見せるとして試合に臨んだ。

ウェイスランドの玉座

バゲージシティの立入禁止区域では、ウェイスランド=ストライニコフがダミー施設の最上階にいた。彼は反学園都市サイエンスガーディアン二七社を三つのグループへ束ねる一角の長であり、食糧資源や微生物工学などを掌握する巨大な老人だった。

ウェイスランドは悲劇を避けたいと考えていたが、必要性のある死には躊躇しない人物だった。彼は、幸福を望む者達が対立し、敗北者が生まれる以上、悲劇を想定した主義を組み立てる必要があると語った。

ウートガルザロキ

ウェイスランドの前には、グレムリン正規メンバーのウートガルザロキがいた。彼は、サイエンスガーディアンの技術や無人兵器は強大だが、学園都市が速攻で攻めてくれば実用化の時間は足りないのではないかと指摘した。

ウェイスランドは、グレムリンやナチュラルセレクター、物流上の情報工作によって、学園都市に不気味さを与え、攻撃前の情報収集で時間を稼ぐつもりだった。学園都市は資源に弱く、サイエンスガーディアンの勝算を喧伝して世界を巻き込めば、戦争の継続を阻むこともできると考えていた。

資源を巡る闇

ウェイスランドは、食糧や資源の公平な利用法を模索していた。バイオ燃料のような政策は、ある国を救う一方で別の国を飢えさせる可能性があり、やめても別の飢えが生まれるため、彼は膨大な生死に関わり続けていた。

ウートガルザロキは、学園都市にダメージを与えられればよいと語ったが、ウェイスランドは互いに利用し合う点は同じだと受け止めた。その直後、ノートパソコンに新しい表示が出たため、ウェイスランドはウートガルザロキへ侵入者の排除を頼んだ。

ナチュラルセレクターの侵入者

辛勝の帰還

サフリー=オープンデイズは、オーサッド=フレイクヘルムとの試合に辛勝し、傷ついた体を引きずって選手控室へ戻っていた。彼女は電磁波攻撃で口の中まで切れた理由を理解できないまま、毎日この規模の連戦を続けられるのかと考えていた。

控室のロックパネルに見慣れない表示が出た直後、ガードマン達が駆け込んできた。彼らは侵入者騒ぎがあり、首脳陣と選手団の安否確認をしていると告げた。

射殺命令

ガードマンは、侵入者が学園都市に関係している可能性があるため、射殺すると説明した。サフリーは、上条当麻の言葉を思い出し、彼がバゲージシティの秘密を暴こうとしているのではないかと考えた。

ガードマン達は、サフリーを警護すると言いながら、将来的にサイエンスガーディアンの要となるかもしれないテクノロジーを学園都市関係者に奪われるのを防ぐためだと語った。サフリーはその考えに爽快感を見出せず、四人のガードマンを素早く無力化した。

サフリーの捜索

サフリーはガードマンの上着を奪い、試合用のドレスのまま吹雪の街へ出た。バゲージシティ上層部とグレムリンの繋がりを追うなら、上条は上層部の近くへ向かうはずだと考えたのである。

彼女の当面の目的は、妙な事に首を突っ込んだ上条がガードマンに射殺されるのを防ぐことだった。途中で制止してくるガードマン達を殴って黙らせながら、サフリーは元リゾートホテルへ向かった。

ラリアット

サフリーはホテル内で上条を見つけると、問答無用でラリアットを叩き込んだ。上条は首にまともに攻撃を受け、床へ叩きつけられた。

サフリーは、銃で撃たれるよりはましだと説明し、上条を立入禁止区域から連れ出そうとした。彼女は、まず安全を確保してから方針を固めるつもりだった。

ウェイスランドとの対峙

そこへ、ウェイスランド=ストライニコフが複数の護衛を従えて現れた。ウェイスランドは、サフリーも立入禁止区域へ入ったことを問題視し、対応次第では処分すると告げた。

サフリーは、上条を引き渡した後に彼が殺される可能性を問いただしたが、ウェイスランドは明言しなかった。護衛達が前へ出る中、サフリーは上条を見捨てる方が自分の強さを曲げると判断し、彼と運命共同体になることを選んだ。

曲がらない強さ

ウェイスランドは、サフリーがナチュラルセレクターで得たいものを捨てるのかと問うた。サフリーは、覆面で飛び入りしてでも自分が一番であることを証明できればよいと返した。

ウェイスランドは、その強さがバゲージシティを危機にさらす侵入者のために使っても曲がらないのかと尋ねた。サフリーは、ここで見捨てた方がよほど曲がると答え、護衛達との間に殺気が張り詰めた。

別の侵入者

衝突寸前、上条は、自分はウェイスランド達が言う侵入者ではないと告げた。彼は、自分が止めるために来た侵入者は別にいると説明した。

ウェイスランドはグレムリンのことかと尋ねたが、上条はそれも違うと否定した。学園都市が反学園都市サイエンスガーディアンの動きを黙って見ているはずがなく、虎の子を投入して迅速に決着をつけようとしているのだと語った。

本物の敵

上条は、自分のようにラリアット一発で倒れる高校生が学園都市の切り札であるはずがないと告げた。そして、バゲージシティにとって本物の敵が来ると呟いた。

その敵は、学園都市の奥にいるNo.990910991だった。サフリーがその言葉に怪訝な顔をした直後、上条の言葉通り、ヤツらが姿を現した。

木原乱数とバゲージシティ襲撃

覚醒したウェイスランド

ウェイスランド=ストライニコフは、立入禁止区域の通路で上条当麻とサフリー=オープンデイズを追い詰めていたはずだった。しかし気づくと、自分が利用している高層ホテル最上階の部屋で、床に倒れていた。

外のバゲージシティでは赤い炎が各所で上がっていた。ウェイスランドが市民や観客の安否を問うと、机の上に座る木原乱数は、そこに善良な一般人などいないと切り捨てた。

敵と見なされた街

木原乱数は、ナチュラルセレクターの観戦客も市民も、反学園都市サイエンスガーディアンの関係者やその家族にすぎないと語った。大会は、数百万規模の関係者を自然に一か所へ集め、後に各要塞へ移すための仕掛けでもあった。

木原乱数は、自分以外にも複数の木原が投入され、各地で好き放題に攻撃していると語った。ウェイスランドは、グレムリンの正規メンバーであるウートガルザロキを思い浮かべたが、木原乱数は名前すら意に介さず、重鎮達もまとめて潰したように軽く扱った。

幻覚の化学物質

木原乱数は、自分の専攻は世界平和だと語り、国際大会のような一体感を人工的に作る研究を説明した。彼は人間の脳内分泌物と同じ効果を持つ微粒子をカビに乗せて空気中に撒き、感情や体験を組み合わせて幻覚を見せていた。

ウェイスランドは、自分がいつから幻覚を見ていたのか判断できなくなった。サフリーやウートガルザロキとのやり取りすら本物だったのか分からず、バゲージシティ全体が既に木原達の攻撃下にあることだけが現実として残っていた。

家族を使った暇潰し

木原乱数は、ウェイスランドの家族が縛られた映像を見せた。五脚の椅子に一人ずつ座らされ、それぞれの前には拳銃が固定されていた。

木原乱数は、一丁だけ実弾が入っていると偽り、ウェイスランドに一つを選ばせた。ウェイスランドは涙を流しながら三番を選んだが、木原乱数は映像が過去のものであり、全ての拳銃に実弾が入っていたと明かした。

消えた人質

木原乱数が答え合わせとして映像を見せると、そこに人質の姿はなかった。椅子と拳銃、ロープだけが残され、ウェイスランドの家族は全員消えていた。

画面の端には、ツンツン頭の東洋人の少年が映っていた。少年は、ウェイスランドに安心するよう告げ、隣にいる木原乱数もすぐに倒すと言い残してカメラを壊した。

ウートガルザロキの幻覚

木原乱数は、この場面が現実ではなく幻覚だと気づいた。紙束の山を崩しながら、血まみれのウートガルザロキが起き上がっていた。

ウートガルザロキは、木原乱数に追い詰められながらも、最後に幻覚を仕掛けることに成功していた。彼の魔術は、五感の一つで得た情報を別の五感へ移し替えるものであり、長時間の精密な幻覚には多くの素材が必要だった。

紙束の殴打

ウートガルザロキは、安全を確保するため、幻覚に捕らわれて棒立ちになった木原乱数へ近づいた。彼は分厚い紙束を鈍器にして、木原乱数を床へ叩き倒した。

ウートガルザロキは、幻覚専門の自分に肉体労働をさせるなと叫びながら、何度も紙束を振り下ろした。木原乱数の体が痙攣し、ウートガルザロキはようやく生き残ったと笑ったが、その背後に上条当麻が立っていた。

駆動鎧の残骸

一方、ガードマンのシャール=ベリランは、雪の中に伏せたままバゲージシティの惨状を見ていた。学園都市から貸与された無人操縦の駆動鎧は、複合装甲を食い荒らされたような残骸となって各所に転がっていた。

空にはカマキリのような巨大兵器が飛び、ガトリングガンのような前脚で周囲を制圧していた。シャールは、反学園都市の兵器も参加者達の異能も通じず、敵であると認定された時点で死ぬ戦いなのだと悟った。

近江手裏の観測

近江手裏は、木原やグレムリン、怪物のような存在達がぶつかる状況を観測しようとしていた。彼女は、ナチュラルセレクターのリングやルールが壊れても、各選手や背景組織の目的が果たされない限り戦いは続くと考えていた。

甲賀の仲間達へ連絡を取ると、無線の向こうでは次々と悲鳴や断末魔が響いた。近江手裏は部隊が壊滅したと判断しながらも、ただでは死ねないと考え、この脅威の情報を財宝として持ち帰ろうとした。

背後の気配

近江手裏は、防犯ブザーに仕込んだカメラを使い、戦闘を撮影しようとした。勝つ必要も戦う必要もなく、叡智の欠片を持ち帰ることこそが甲賀のためになると考えたのである。

彼女は路傍の石のように存在感を消したが、背後で音がした。近江手裏は白い背景と光の反射で遠近感を誤らせ、初手を回避して反撃へ移った。しかし、くないの先は軍服の男へ届かなかった。

憧れた理不尽

近江手裏の攻撃を妨げたのは、軍服の男ではなかった。それは、近江手裏が最も憧れていた理不尽な異能の力の使い手だった。

雲川鞠亜と近江手裏

蛍光イエローのメイド

黒髪を縦ロールにした少女は、蛍光イエローの胡散臭いメイド服姿で現れた。彼女は軍服の男の足元を潜り抜けるように低い姿勢で近江手裏へ突撃し、園芸シャベル型くないを両手で押さえ込んだ。

少女はそのまま片足を伸ばして軍服の男の腕を絡め取り、くないを軸に回転した。近江手裏が反射的にくないを手放すと、少女は膝を軍服の男の顎へ叩き込み、さらに太股で頭を押さえつける形で倒して意識を奪った。

雲川鞠亜

少女は雲川鞠亜と名乗った。彼女は学園都市側の人間ではあるが、この街を襲っている者達とは繋がっておらず、近江手裏と同じように怪物同士の戦闘を覗き見に来たのだと説明した。

ただし、近江手裏がナチュラルセレクターを通じて安全に異能の情報を得ようとしていたのに対し、雲川鞠亜は最初から学園都市と反学園都市サイエンスガーディアンの激突を見越して乗り込んでいた。近江手裏は、自分の目的を知られていることに危機感を抱いた。

辛味の牽制

近江手裏は背後に手を回し、唐辛子を溶かした水鉄砲を使おうとした。しかし雲川鞠亜はそれを見抜き、そんなものでは自分の目は潰せないと告げた。

近江手裏が練り辛子やわさびの水鉄砲もあると返すと、雲川鞠亜は軽口を交えながらも、戦えば負けるのは近江手裏だと断言した。せっかく助けた命をもう一度殺すのは楽しくなく、自分のプライドも折れかねないと語った。

四肢を使う戦闘術

雲川鞠亜は、二本の手で戦う相手に対し、自分は四肢を使って肉弾戦を行えるため負けるとは思えないと語った。近江手裏が水鉄砲を撃つと、雲川鞠亜は頭の位置を一瞬でずらし、右手と右足で逆立ちするように回避した。

雲川鞠亜は、急所の位置を大きく変化させることで、二本足で立つ敵に最適化された戦闘術を狂わせるのだと説明した。さらに、本気なら近江手裏の足を掴んで脳天に足を落としていたと告げ、無料サービスは終わりだと釘を刺した。

遠慮する近江手裏

近江手裏は、雲川鞠亜の動きが単なる体術だけでは説明できないと分析した。回転運動や遠心力を利用しているようにも見えたが、それだけでは足りず、明らかに異能の力が関わっていた。

近江手裏は、ここで勝ちを取りに行くのではなく、異能の力という財宝を持ち帰ることこそが甲賀全体の利益になると判断した。彼女は雲川鞠亜との戦闘を避けることにした。

曲がり角の先

雲川鞠亜は、近江手裏に曲がり角の先を覗くのかと尋ねた。そこでは今も木原やグレムリンが席巻しており、人知を超えた戦いが続いていた。

近江手裏は、巻き込まれれば死ぬ危険を承知しながらも、甲賀を押し上げる足掛かりを得るために行くと答えた。ナチュラルセレクターの続行不能など関係なく、未来の誰かを同じ脅威に陥らせないため、自分が行くべきだと考えていた。

命を守る一撃

雲川鞠亜は、近江手裏の決意を聞いてため息をついた。彼女は、なら仕方がない、自分がプライドを傷つけて命を守ると告げた。

近江手裏が疑問を抱く暇もなく、雲川鞠亜の四肢がまとめて唸りを上げた。直後、近江手裏の意識は完全に落ちた。

ゴミ処理施設の黒小人

赤く染まる中核施設

バゲージシティのゴミ処理施設では、マリアン=スリンゲナイヤーが学園都市側の刺客達を迎え撃っていた。そこは温水暖房施設の中核でもあり、火力発電所や石油精製施設と並んで、マイナス二〇度以下の街を支える要の一つだった。

マリアンは銀髪の三つ編みと褐色の肌を持ち、黄金の金槌と鋸を手にしていた。本来なら柔らかいはずの黄金の工具は、彼女の手にかかると鋼やコンクリートを破壊し、人間の体すら別の形へ改造する凶器となっていた。

黄金の鋸

マリアンは壁に黄金の鋸を刺し、その上を滑らせるようにして敵陣へ走らせた。刺客達は鋸のリーチの変化に対応できず、血飛沫を上げて切り裂かれた。

しかし切断された兵士達は、すぐに五体満足の姿へ戻っていた。ただし体は別人の部位と無理矢理つながれた状態であり、マリアンは拒絶反応が始まる前に自分の部位を奪い合えと告げた。その異様な状況に周囲の兵士達は恐怖し、味方を敵と見なして撃ち始めた。

蛇口の両手

死体のそばに隠れていた刺客が近距離からマリアンへ拳銃を向けた。だがマリアンは振り向きもせず黄金の鋸を振るい、刺客の両手を一つの蛇口へ変えてしまった。

刺客が呆然とする中、マリアンは良く頑張ったが結果が出なければ零点だと笑い、蛇口をひねった。赤黒い液体が流れ出し、刺客は自分で止めることもできず意識を失った。

悲鳴と車輪

マリアンはさらに、床に倒れていた兵士の喉を抉り、人間の声とは思えないほどの悲鳴を発生させた。その音で物陰の刺客が硬直した隙に、彼女は黄金の金槌で別の刺客の腹部を吹き飛ばした。

さらに倒れた刺客の両足を鋸で車輪へ変え、堆肥用タンクまで一直線だと告げた。刺客は床を引きずられながら通路の奥へ消え、残った兵士達は死ぬより辛い光景に心を折られ、武器を落として動けなくなった。

車椅子の女性

物音が消えた後、パジャマ姿で車椅子に乗った柔和な女性が現れた。マリアンは最初、病院から逃がされたバゲージシティの患者だと考え、出口を教えた。

女性の車椅子がケーブルに引っかかると、マリアンは面倒がりながらも後ろに回って助けようとした。しかし彼女は、ケーブルだらけのゴミ処理場を車椅子でどうやって来たのかと疑問を抱き、相手が自分を待ち伏せしていたと見抜いた。

木原病理

マリアンが黄金の鋸を振り下ろすと、車椅子は高速で反転し、何かが鋸を弾いた。直後、車椅子の背から軽機関銃と大口径散弾銃が現れ、銃声と共にマリアンの体を真っ赤に崩した。

だがそれはデコイであり、別のマリアンもまた偽物だった。さらに真横から現れた本物のマリアンが一糸まとわぬ姿で鋸を振るったが、車椅子は超高速で動き、彼女の攻撃を防いだ。相手は木原病理と名乗り、諦めのプロとして、グレムリンにも諦めろと告げた。

諦めさせる者

木原病理は、学園都市へのテロ計画、技術情報の流出、大量破壊兵器の進化などを諦めさせる役割を担っていた。彼女自身も何かを諦め、その性質を社会と折り合わせていた。

マリアンは、木原は他にもいるが無数には来ていないと推測した。木原病理も、グレムリン側も似たようなものだと返した。マリアンは全力で潰しても問題ないと判断し、黄金の鋸で壁に偽装されていた兵士を破裂させ、脂肪と血を戦場へ撒いた。

蜘蛛の車椅子

木原病理は、マリアンの全力を寒いと評しながら、膝の上のボタンを押した。車椅子の車輪が分解され、スポークとゴムが組み替わり、蜘蛛のような多脚ユニットへ変形した。

マリアンはその仕組みに工作魂を刺激され、軽口を交わしながら黄金の金槌と鋸を構えた。木原病理も車椅子を戦闘形態へ変え、ゴミ処理施設の中核で、黒小人と木原の怪物同士が激突した。

木原円周とヘルメットの男

管制室の目覚め

近江手裏は、雲川鞠亜に気絶させられた後、広い管制室のような場所で目を覚ました。そこには同心円状に並ぶ机と大量のモニタがあり、温水暖房を管理する施設の一部と思われたが、職員の姿はなかった。

近江手裏は、木原とグレムリンの戦場から遠ざけられ、千載一遇の機会を失ったことに怒った。彼女は起き上がるなり雲川鞠亜へくないを突き立てようとしたが、雲川鞠亜は難なく押さえ込み、近江手裏では奥を覗き込まない方がよいと告げた。

バズーカの奇襲

雲川鞠亜の言葉は、突然撃ち込まれたバズーカ砲によって遮られた。彼女は反射的に身を反らして直撃を避けたが、壁に着弾した衝撃波までは避けられず、床を転がされた。

その隙に、第三者が管制室へ入り込んでいた。雲川鞠亜はバズーカが注意を引く囮だったと悟ったが、すでに襲撃者は空になった砲を鈍器として構え直しており、雲川鞠亜は一撃で意識を奪われた。

木原円周

襲撃者は、中学生ほどの小柄な少女だった。黒髪を左右のお団子にまとめ、もこもこしたセーターとミニスカートを身に着け、首から携帯電話や小型端末をいくつもぶら下げていた。

少女は、自分が木原である以上、戦うしかないと呟いた。管制室のモニタに無数のグラフが表示されると、彼女の瞳はそれを吸収するように動き、数多おじちゃんの戦闘パターンをなぞるように近江手裏へ突撃した。

まきびしの逆利用

近江手裏は靴下から小さな鉄板を引き抜き、床へまきびしのように撒いた。相手が足を止める隙を狙うつもりだったが、木原円周は速度を落とさず、まきびしを蹴り飛ばして近江手裏へ返した。

木原円周はさらに空中のまきびしを蹴って弾道を変え、近江手裏の腹部へ突き刺した。激痛で動きの鈍った近江手裏へ、木原円周は顕微鏡サイズで金槌の破壊力を制御するような精密な攻撃を仕掛けた。

白いコートの介入

木原円周の拳が、近江手裏のくないを彼女自身の顔面へ突き立てようとした瞬間、白いコートとフルフェイスヘルメットの人物が割り込んだ。彼は右拳でくないを弾き飛ばし、近江手裏の頭を守った。

木原円周は即座に標的を変え、ヘルメットの男へ拳を放った。だが男は同時に彼女の足へ蹴りを入れ、体重を乗せきれなくしたため、木原円周の一撃は浅く終わった。

外部入力の木原

ヘルメットの男は、少女を木原円周と呼んだ。木原円周は、数多、乱数、混晶、測量、解法、唯一といった名を口にしながら、モニタのグラフから足りない思考を補っていた。

ヘルメットの男は、彼女が外部からのスクリプト入力で木原として足りない部分を埋めていると見抜いた。木原円周は唯一お姉ちゃんのやり方をなぞり、体内の二酸化炭素を揺さぶって全身の血管を破壊すると叫んだ。

指向性地雷

ヘルメットの男は、木原円周の突撃に対し、白いコートの内側から凸式の指向性対人地雷を露出させた。それは扇形に散弾を撒き散らす地雷であり、至近距離で使えば本来なら自分も無事では済まないものだった。

男は躊躇なく地雷を起爆した。爆風と散弾が広がったが、木原円周は逃げており、男はコートの端を失いながらも生き残った。近江手裏は、爆薬を抱えたまま起爆して無事でいる男の異常さに息を呑んだ。

生き残る手段

ヘルメットの男は、近江手裏に戦うのはやめておけと告げた。彼は、近江手裏を軽んじているのではなく、彼女の威力が高すぎるため自分を殺せないのだと説明したが、その理屈は近江手裏には理解しきれなかった。

男は、自分は木原に特化しており、近江手裏達と戦っても得がないと語った。そして生き残るための手段として、必ず上条当麻を捜せと教えた。上条に会えなければ死ぬと、彼はあっさり断言した。

もう一人の木原

ヘルメットの男は、上条当麻をただの一般人の少年だとしながらも、目についた者を片っ端から救い上げる性質を持つ存在だと語った。木原が片っ端から破滅させるなら、それから逃れるには上条のような人物を使うしかないという考えだった。

男は雲川鞠亜の状態を確認し、大きな問題がないと判断すると、目覚めたら彼女にも同じことを伝えろと言い残した。近江手裏が彼の目的を尋ねると、男は自分も木原の一人だからだと告げ、出口へ向かって去っていった。

木原病理とマリアンの反撃

目覚めた雲川鞠亜

雲川鞠亜は目を覚まし、近江手裏から木原加群が現れた顛末を聞いた。彼女は木原加群を追っていたため、居場所が分かったことを進展と受け止めたが、まだ自分の目的を果たすには足りないと考えていた。

近江手裏は木原円周が戻ってくる可能性を警戒し、移動を促した。雲川鞠亜は意識を失っていた間に盗聴器や発信器を仕込まれた可能性を疑い、服に目に見えない化学系の情報送受信手段が付着している恐れまで考えた。

メイド服の処理

雲川鞠亜は、電波ではなく匂いや薬品による追跡の可能性を説明した。フェロモンのような化学情報なら電子回路を使わずに位置を伝えられるため、学園都市では電気や磁力を避ける追跡手段も開発されていると見ていた。

二人は職員用ロッカールームを見つけ、雲川鞠亜はメイド服を脱いでドライヤーの温風を当てた。化学薬品系の情報構造を壊すためであり、近江手裏は忍者用の試薬で自分の服を確認すればよいと考えていた。作業後、雲川鞠亜は熱くなったメイド服に苦戦しながら着直した。

追い詰められた木原病理

木原病理は、ゴミ処理施設の可燃処理区画までマリアン=スリンゲナイヤーに追い詰められていた。車椅子の脚部や武装は歪み、もはやまともに機能していなかった。

マリアンは、木原病理を手駒として改造しようとした。足が不自由なら八本足や回転する脚にしてやると軽く言ったが、木原病理は降参する理由はないと返した。

立ち上がる木原病理

木原病理は寝間着の下から、膝裏を中心に脚全体を覆う合成樹脂製の補助機構を見せた。彼女は車椅子が壊れても滑らかに立ち上がり、歩けないという前提そのものが嘘だったことを明かした。

木原病理は、マリアンが多くの素材と武器を消費し、改造に使える生者や新鮮な脂肪も乏しくなっていると見抜いた。単体での肉弾戦なら自分に分があると判断し、そろそろ諦めてもらうと告げた。

敵兵という素材

マリアンは、足元に落ちていた学園都市側の無線機を拾い、ゴミ処理施設でグレムリンを追い詰めたと偽の連絡を入れた。付近の戦闘要員へ火力支援を求め、敵を自分の周囲へ呼び込んだのである。

木原病理は、その意図を悟って表情を引きつらせた。マリアンにとって、一定以下の敵は脅威ではなく、改造のための素材だった。木原病理の部下達は恐怖で教育されているため、命令に従って急行するほど、逆に彼女を窮地へ追い込むことになった。

消火器の砲弾

木原病理は最短距離でマリアンへ突撃した。だが刃が喉元に届く直前、駆けつけた戦闘要員達の右腕が、マリアンの鋸によって異常に肥大した。

一回限りの投擲機械にされた腕は、消火器を掴むと、自己崩壊しながら砲弾のように撃ち出した。連続して放たれた消火器は木原病理を空中へ弾き飛ばし、彼女をゴミ処理用プールの中へ落とした。

反撃の準備

マリアンは木原病理を退けた後、痛みを自覚しながら自分の部屋へ戻った。彼女はゴミ処理施設を守る立場にあったが、バゲージシティ側の言い分を聞いているだけでは学園都市に対抗できないと判断した。

建物全体が揺さぶられ、部屋の結界も乱されていたため、マリアンはより大きな規模の道具を調達する必要を感じた。木箱から火箸のような霊装を取り出し、これ以上揺さぶられるのはつまらないとして、自分から反撃へ移ろうとした。

バゲージシティの罠とロキの投網

無人の通路

雲川鞠亜と近江手裏は、盗聴器や発信器の疑いを処理した後、地下通路を進んでいた。二人は、木原加群や学園都市の技術を追うにしても、危険すぎるバゲージシティに留まる理由は薄いと考えていた。

通路には人影も死体もなく、軍用ヘルメットや防弾ジャケット、アサルトライフルだけが散らばっていた。近江手裏は、血痕や死体まで消えていることを不審に思い、雲川鞠亜は学園都市側の装備である可能性を見た。

木原円周の罠

可愛らしい鼻歌が近づく中、近江手裏は床に落ちた装備品が罠であると見抜いた。防弾ジャケットの下には、ピンを抜いた手榴弾が隠され、ジャケットの重みでレバーが押さえられていた。

近江手裏は、戦場では罠も資源になるとして解除に取りかかった。雲川鞠亜は恐怖しながらも手伝ったが、解除して回収した防弾ジャケットは内部の繊維やプレートが薬品で溶かされており、解析にも利用できなかった。木原円周は罠に誰もかかっていないことを確認し、別の罠へ向かっていった。

超音速爆撃機

学園都市製の超音速爆撃機HsB-07が、バゲージシティ上空を突破していた。パイロットの麓洞龍一は肉体の大半を冷凍処置し、脳から直接情報を引き出す方式で機体を操っていた。

爆撃機部隊は空港や滑走路、高架道路、トンネルを精密爆撃し、バゲージシティ側の航空運用を封じていった。学園都市製の兵器群は、反学園都市サイエンスガーディアンの旧式化した借り物の戦力では対応できない圧倒的な差を示していた。

ワイヤーの航空機

戦果は理論通りに進むはずだったが、突然レーダーに複数の光点が現れた。地上から撃ち上げられたそれはミサイルではなく、ワイヤーを組み合わせた航空機のような存在だった。

その機体の周囲には、最先端技術は学園都市だけの特権ではないという文字が浮かび上がった。ワイヤーの群れはフランキスカ部隊を絡め取り、切り刻み、航行不能へ追い込んだ。

ロキの投網

敵の正体は、ロキの投網と呼ばれる霊装だった。悪神ロキが自分自身を捕らえるために考えた自滅の拘束具であり、それを本物の黒小人が現代的に改造していた。

理論や運命の抜け道すら塞ぐ魔術の網は、ただの速度では振り切れなかった。麓洞龍一は味方へレーザー兵器の投入を命じたが間に合わず、ゴミ処理施設の屋上に立つマリアン=スリンゲナイヤーを最優先目標と見て、機体を削られながら突撃した。

マリアンの退避

マリアンは、超音速爆撃機が迫る状況でも屋上で挑発するように立っていた。しかし、遠距離から航空機搭載レーザーがロキの投網の一機を焼き切ると、さすがに屋内へ退避した。

彼女は生き残ったロキの投網に航空戦力の殲滅を命じた。バゲージシティの上空では、魔術と科学が常軌を逸した戦争を続けていた。

地上への脱出

地下通路を進む雲川鞠亜と近江手裏は、上条当麻の名前について話していた。近江手裏は、木原加群が生き残るために上条を探せと言ったことを伝え、雲川鞠亜は名前だけなら知っていると答えた。

その直後、通路の天井が崩れ、ロシア製の戦車が落下してきた。戦車は無人で、タブレット端末による急造の遠隔操縦が施されていた。二人は戦車が開けた穴から地上へ出たが、そこは猛吹雪と戦闘の爆発が広がる危険地帯だった。

崩れる街

雲川鞠亜と近江手裏が身を寄せようとしたガソリンスタンドは爆発し、頭上ではワイヤーの航空機と壊れかけた学園都市の爆撃機が飛び交っていた。二人は倒壊するビルから逃れたが、地表の崩壊に巻き込まれて再び地下へ落ちた。

二人は潰れた地下通路の隙間を進み、かろうじて無事な場所へ辿り着いた。近江手裏は、上条当麻がこの状況で何をできるのか疑問を抱き、雲川鞠亜も生存を祈るしかないと答えた。

シギンへの通信

マリアンはゴミ処理施設内の私室へ戻り、秘密兵器に手を伸ばそうとしていた。彼女は麦のジュースを飲みながらスマートフォンを取り出し、敵側の科学技術を利用しつつ、自分の音声が電子化された場合に特化した暗号化を施して通信した。

相手は、シギンと呼ばれるグレムリンの正規メンバーだった。シギンは助言を与える存在であり、他人の欠けたものを満たすことで効果を発揮するため、自分自身には使えない性質を持っていた。

ナチュラルセレクターの裏

マリアンは、ナチュラルセレクターが本当に超能力に代わるグローバルスタンダードを決める大会ではないと語った。参加者達が何のために戦うのかを見極め、その動機を支援や脅迫に利用することが、主催者側の狙いだった。

勝者には全面支援を与え、敗者には個人的な目的を握って首輪をつける。大会の目的は最強の一人を選ぶことではなく、参加者の背後にある一〇〇以上の組織や資金源を反学園都市サイエンスガーディアンに取り込むことだった。

生きた家具

マリアンの私室には、椅子や照明、テーブルが置かれていた。しかしそれらは本物の家具ではなく、彼女が生きた人間を改造して作ったものだった。椅子にはテレリエ、フロアスタンドにはフランク、テーブルにはサンドリヨンという名があり、彼らは呼吸も食事も睡眠もできる状態だった。

シギンは悪趣味だと助言したが、マリアンは命一つで罪の重さが同じになる方が不公平だと考えていた。彼女は罰として、罪を償える形へ整え直しただけだと捉えていた。

迷い込んだ二人

シギンとの通話中、マリアンは部屋の外に誰かがいることに気づいた。通信機器を介さない肉声には暗号処理が効かないため、会話を聞かれたと判断したのである。

マリアンは瓶を扉へ投げつけ、半開きの扉を開かせた。そこにいたのは雲川鞠亜と近江手裏だった。マリアンは黄金の鋸を回しながら、椅子に合う足置きと小型冷蔵庫が欲しかったと語り、どちらがどちらになりたいかと問いかけた。

木原円周の罠と近江手裏の反撃

装備だけの通路

雲川鞠亜と近江手裏は、盗聴器や発信器の疑いを処理した後、地下通路を進んでいた。二人は木原加群や学園都市の技術を追う目的はあったが、危険すぎるバゲージシティに留まり続ける必要は薄いと判断していた。

通路には人も死体もなく、軍用ヘルメットや防弾ジャケット、アサルトライフルだけが散らばっていた。雲川鞠亜はそれらが学園都市側の装備だと見たが、近江手裏は血痕まで消えていることに不自然さを覚えた。

仕掛けられた手榴弾

木原円周の鼻歌が近づく中、近江手裏は装備品が罠であると見抜いた。防弾ジャケットの下には、ピンを抜いた手榴弾が隠され、ジャケットの重さでレバーを押さえていた。

近江手裏は、罠も資源になるとして解除を試みた。雲川鞠亜は恐怖しながら手伝ったが、回収した防弾ジャケットは内部の繊維やプレートが薬品で溶かされており、解析にも利用できなかった。木原円周は、罠に誰もかかっていないことを確認し、別の場所へ向かった。

HsB-07

学園都市製の超音速爆撃機HsB-07が、バゲージシティ上空を突破していた。パイロットの麓洞龍一は肉体の大半に冷凍処置を施し、脳から直接情報を引き出す方式で機体を操っていた。

爆撃機部隊は空港や滑走路、高架道路、トンネルを精密爆撃し、反学園都市サイエンスガーディアンの航空戦力を封じていった。学園都市側の兵器は、貸与品を中心とするバゲージシティ側の戦力を圧倒していた。

ロキの投網

順調だった爆撃作戦の前に、地上からワイヤーで構成された航空機のようなものが撃ち上げられた。それは学園都市の技術を知る麓洞龍一にも理解できない存在であり、最先端は学園都市だけの特権ではないという文字を浮かべていた。

その正体は、マリアン=スリンゲナイヤーが現代的に改造した霊装ロキの投網だった。理論や運命の抜け道すら塞ぐ魔術の網は、ただ速いだけの爆撃機を絡め取り、切り刻んでいった。

屋上のマリアン

麓洞龍一は、ゴミ処理施設の屋上に立つマリアンを優先目標と見なし、機体を削られながら突撃した。マリアンは超音速爆撃機が迫っても挑発するように立っていた。

しかし、遠距離から航空機搭載レーザーがロキの投網の一機を焼き切ると、マリアンは危険を察して屋内へ退避した。彼女は残ったロキの投網に航空戦力の殲滅を命じ、上空では科学と魔術の戦争が続いた。

地上への穴

地下通路を進む雲川鞠亜と近江手裏は、上条当麻について話していた。近江手裏は、木原加群が生き残るために上条当麻を探せと言ったことを伝え、雲川鞠亜は名前だけなら知っていると答えた。

その直後、通路の天井が崩れ、ロシア製の戦車が落ちてきた。戦車は無人で、タブレット端末を使った急造の遠隔操縦が施されていたため、二人は戦車が開けた穴から地上へ出ることになった。

崩壊する街

地上は猛吹雪の中で戦闘が続く地獄だった。二人が避難先にしようとしたガソリンスタンドは爆発し、上空では壊れかけた学園都市の爆撃機とロキの投網が飛び交っていた。

雲川鞠亜と近江手裏は倒壊するビルから逃げたが、その重量で地表が崩れ、再び地下へ落ちた。二人は潰れた地下通路の隙間を進みながら、この状況で上条当麻に何ができるのか疑問を抱いた。

シギンへの通信

マリアンはゴミ処理施設の私室へ戻り、麦のジュースを飲みながらスマートフォンでシギンと連絡を取った。シギンはグレムリンの正規メンバーであり、他者へ助言を与えることで相手の欠けた部分を補う存在だった。

マリアンは、シギンの助言があれば自分の苦手な直接戦闘を補えると考えていた。木原達との戦いを有利に進めるため、まずは迷子になっているシギンと合流しようとしていた。

大会の本当の狙い

マリアンは、ナチュラルセレクターが超能力に代わる新たな国際標準を決める大会ではないと語った。主催者側の狙いは、参加者が戦う理由を見抜き、その個人的な動機を支援や脅迫に使うことだった。

勝者には全面支援を与えて協力関係を築き、敗者には失いたくないものを握って首輪をつける。大会は最強の一人を選ぶ場ではなく、参加者の背後にある組織や資金源を反学園都市サイエンスガーディアンへ取り込む仕組みだった。

生きた家具

マリアンの私室には、テレリエという椅子、フランクというフロアスタンド、サンドリヨンというテーブルが置かれていた。だがそれらは家具ではなく、マリアンが生きた人間を改造したものだった。

シギンは悪趣味だと評したが、マリアンは死刑だけで罪を処理する方が不公平だと考えていた。彼女は命を奪うのではなく、罪を償える形に整え直しただけだと捉えていた。

逃走する二人

雲川鞠亜と近江手裏は、脱出ルート上で偶然マリアンの私室に辿り着き、シギンに関する会話を聞いてしまった。マリアンはそれに気づき、二人を足置きと小型冷蔵庫にしようと声をかけた。

二人は戦う選択を取らず、迷わず逃走した。だがマリアンは黄金の鋸と金槌を手に追い、通路内に人間を改造した障害物を出現させ、退路を断った。

人間の障害物

通路の壁や床と同じ質感に改造された人間達が、四角い柱のように突き出して二人の退路を塞いだ。マリアンは、それらの目や耳も生きており、センサーとして使っていたと語った。

雲川鞠亜と近江手裏は、そこを壊せば生きた人間の胴体を切断するのと同じだと理解しながらも、マリアンを倒して退路を作るしかないと判断した。マリアンは、その程度の先送りではグレムリンに届かないと笑った。

雲川鞠亜の反撃

マリアンが近江手裏へ突っ込むと、雲川鞠亜は近江手裏を蹴り飛ばして黄金の工具から遠ざけた。彼女は、工具に触れられた時点で人体改造が始まると見抜き、条件が分からない相手へ飛び込むなと警告した。

雲川鞠亜は、敵の駒から遠ざかるのではなく、敵の駒が動けない場所へ入ることが重要だと見切った。彼女は逆さまに回転しながらマリアンの顎を蹴り上げ、さらに右足へ関節技を仕掛け、腱にダメージを与えた。

建材の反撃

雲川鞠亜は八つの打撃点を使った変則的な攻撃でマリアンを追い詰めた。しかしマリアンは、床や壁、天井に待機させていた人間素材を利用し、黄色い脂肪を噴射させてボルトやナットを砲弾のように飛ばした。

雲川鞠亜はそれらを弾きながら懐へ入り、額で九つ目の打撃を叩き込もうとした。だが、マリアンは真後ろに投げた鋸で障害物の形を変え、背後からボルトを飛ばして雲川鞠亜を昏倒させた。

シギンの助言

マリアンは、右足を痛めた状態でシギンへ電話をかけようとしたが、返答はなかった。その時、近江手裏がシギンのような口調で、今は逃げて足を補強すべきだと呟いた。

マリアンは、近江手裏かその仲間がすでにシギンを押さえ、無理やり自分と会話させていた可能性に気づいた。直後、マリアンは舌が回らなくなり、自分がアルコールによって酔わされていることを悟った。

近江手裏の本命

近江手裏は、七〇度前後の特殊なアルコールを使っていた。それは本来、追跡犬を撒くための忍具だったが、周囲に隠された人間素材達をまとめて酔わせる目的で使われていた。

生きた人間を素材として使う以上、その思考回路も兵器の一部だった。酔った素材は思うように変化せず、命令にも従わなくなる。弱点を突かれたマリアンは、近江手裏を格下と見ていた判断を捨て、逃走を選んだ。

甲賀の追撃

近江手裏は、もっと異能の力を見せろとマリアンへ告げた。甲賀がその内側へ組み込むにふさわしい力を見せられないなら、用済みと判断するという冷たい言葉だった。

マリアンは右足を庇いながら逃げた。近江手裏は、現代まで生き残った忍者として、マリアンへ着実な追撃を開始した。

木原円周と木原加群

木原円周の捜索

木原円周は、大型集合住宅の中で反学園都市サイエンスガーディアンの関係者を探していた。彼女は木原として及第点に届かない少女だったが、首から下げた端末群に映るグラフを見ながら、木原ならどうするかを考え続けていた。

バゲージシティには、表向きの住人やナチュラルセレクターの観戦客を装った関係者が多数いるはずだった。しかし集合住宅の部屋には生活感だけが残り、人の姿はなかった。円周は、誰かがバゲージシティ側の人間だけを選んで隠していると考えた。

顔を出さないグレムリン

円周は、一般人を殺そうとすれば、バゲージシティの形を守りたいグレムリンが顔を出すはずだと見ていた。虐殺は目的ではなく、グレムリンを引きずり出すための手段だった。

しかし、いくら捜しても標的は見つからなかった。爆撃で街を更地にすれば早いが、グレムリンに死んだふりをされて逃げられる恐れがあるため、それもできなかった。円周は困ったように次の場所へ向かった。

木原加群の目的

雲川鞠亜は、近江手裏に木原加群を追っている理由を話した。木原加群は、学園都市の小学校で起きた未成年の死亡事案に深く関わっている人物であり、雲川鞠亜にとっては自分のプライドを折ってでも追わなければならない相手だった。

ただし、雲川鞠亜と近江手裏は、バゲージシティに留まる危険も理解していた。木原加群の追跡も異能の調査も、戦闘後に外から改めて行えるため、二人はいったん脱出して情報網を組み直す方針を取っていた。

偶然の真相

雲川鞠亜と近江手裏は、真相に近づこうとしたわけではなかった。むしろバゲージシティから離れようとしていたが、選んだ脱出ルートがマリアン=スリンゲナイヤーの私室へ続いていた。

魔術的な結界が壊れていたため、二人は偶然シギンに関する会話を聞いてしまった。マリアンはそれに気づき、二人を新しい家具へ変えようとし、二人は迷わず逃げ出した。

人間の障害物

雲川鞠亜と近江手裏が逃げる通路には、壁や床と同じ質感に改造された人間が仕込まれていた。四角い柱のような人間達が突き出し、二人の退路を塞いだ。

マリアンは、それらをセンサーとして使っていたと語った。障害物を壊せば生きている人間を切断することになるため、二人は追い詰められたが、最終的にマリアンを倒して退路を開くしかないと判断した。

雲川鞠亜の読み

マリアンが近江手裏へ突っ込むと、雲川鞠亜は近江手裏を蹴り飛ばして黄金の工具から遠ざけた。彼女は、黄金の工具に触れられた時点で人体改造が始まると見抜いていた。

雲川鞠亜は逆さまの体勢からマリアンの顎を蹴り上げ、さらに右足へ関節技を仕掛けた。骨までは破壊できなかったが、腱へダメージを与え、マリアンの動きを鈍らせた。

九つ目の打撃

雲川鞠亜は、拳、肘、膝を含めた八つの打撃点を使い、通常の格闘技ではありえない軌道で攻め込んだ。マリアンは肉弾戦に慣れておらず、右足も痛めていたため、回避は思うようにいかなかった。

しかしマリアンは、建材として待機させていた人間達から脂肪を噴射させ、金属部品を砲弾のように撃ち出した。雲川鞠亜はそれを弾きながら九つ目の打撃を狙ったが、背後から飛んだボルトを額に受けて倒れた。

近江手裏の仕込み

マリアンはシギンへ連絡しようとしたが、近江手裏がシギンの口調を真似て助言を呟いた。マリアンは、近江手裏かその仲間がすでにシギンを押さえ、自分との通話を操っていた可能性に気づいた。

直後、マリアンは舌が回らなくなった。近江手裏は、追跡犬を撒くための特殊な高濃度アルコールを使い、周囲に隠された人間素材ごと酔わせていたのである。生きた人間を素材にするマリアンの術は、素材の思考回路が酔えば命令通りに働かなかった。

追われるマリアン

マリアンは、近江手裏を格下と見ていた判断を改め、右足を庇いながら逃走した。近江手裏は、もっと異能の力を見せろと告げた。

近江手裏にとってマリアンは、甲賀が取り込む価値のある異能かどうかを見極める対象だった。相応しい力を見せられないなら用済みと判断すると告げ、近江手裏は逃げるマリアンを追撃した。

木原加群の過去

木原加群は、かつて臨死体験時に浮かぶ不可解なビジョンを研究していた。安全に心臓を止め、安全に再び動かす研究を重ね、人間の心臓を止めた回数では木原の中でも上位に数えられる存在だった。

しかし彼は二〇代に入る前に研究をやめ、成果があったとしても対価が見合わないとだけ答えた。その後は学園都市のセーフティネット制度に関わり、不登校生徒の学力を支える落第防止として活動していた。

スコップの正当防衛

三年前の春、木原加群は復帰に成功した生徒を連れて小学校へ向かった。その時、刃物を持った通り魔が現れ、木原加群は生徒達を守るために木原としての力を解放した。

彼は花壇のスコップで通り魔の懐へ入り、意識に干渉するような衝撃で動きを止め、痛みを与えないまま頭部を破壊した。裁判では正当防衛が認められたが、木原加群はその日のうちに退職し、姿を消した。

木原病理の復活

ゴミ処理施設では、木原円周が木原病理を発見した。病理はマリアンに敗れ、車椅子も脚力補助装置も壊されていたが、円周から通信装置を借りると、第二位の未元物質に関する処理を始めた。

木原病理は、あらかじめ未元物質で作っていた脚部のリミッターを解除し、潰れた脚を内側から作り直した。傷のない脚と刃や翼のような突起を持って立ち上がり、再びマリアンを追う準備を整えた。

木原の本質

木原病理は、木原という存在は血筋や人の形に縛られず、科学が純粋さを失った時に現れるものだと円周へ語った。木原が消える時は、人類が科学文明を捨てる時であり、相手がそこまでの力を持っているとは思えないとした。

円周は、木原の皆が力を合わせれば問題を乗り越えられると信じた。しかし病理に仲間意識はなく、第二位の細かな制御条件を独占するため、円周を不意打ちで始末しようとした。

上条当麻の思考

木原病理の一撃は、木原円周にあっさり避けられた。円周は、木原ならこの状況で不意打ちを仕掛けると読んでいたのである。

さらに円周は、上条当麻ならこうすると呟いた。彼女の解析対象は木原だけではなく、上条当麻の思考にも及んでいた。善性を悪用する木原らしい形で、木原円周は木原病理へ襲いかかった。

追い詰められたマリアン

傷だらけの逃走

マリアン=スリンゲナイヤーは片目を押さえ、通路の壁にもたれていた。手の隙間や口から赤黒い液体が溢れ、自分でも損傷の程度を把握できないほど追い詰められていた。

近江手裏を科学サイドでも魔術サイドでもない相手だと見て油断した結果、マリアンは完全に劣勢へ追い込まれていた。移動中に偶然出くわした人材を黄金の鋸と金槌で武器へ改造し、それをけしかけることで、どうにか逃走していた。

失われた助言役

マリアンは、助言役であるシギンを先に潰されたことが痛手だったと考えた。戦乱の剣は威力が高すぎ、一度使えば全てを壊してしまうため、扱いに困るものだった。

ウートガルザロキはすでにリタイアし、シギンも使い物にならないどころか粛清が必要な状態だった。グレムリン側で残っているのが戦闘職ではない自分という状況に、マリアンは苛立っていた。

ショッピングモールの薬局

マリアンは地下通路からショッピングモールへ入り、薬局のコーナーへ向かった。木原や学園都市の襲撃の影響で、客も従業員も見当たらなかったが、彼女はその生死を気にしなかった。

目は潰れておらず、まぶたの傷から流れ込んだ血が視界を塞いでいるだけだった。マリアンは包帯や消毒薬を探し、片目を覆うためのガーゼが必要だと判断した。

右足の手当て

マリアンは、雲川鞠亜の関節技で痛めた右足を手当てしようとした。逃走中に無理を重ねたせいで、右足には鈍痛だけでなく腫れのような感覚もあった。

彼女はテーピングの使い方を箱の説明で確認しながら、膝を固定した。五体満足の人間を家具や柱に変えられるマリアンでも、自分自身の処置には不慣れであり、痛みが少し和らいだ程度で成功かどうかも判断できなかった。

薬局の物音

痛み止めを探すマリアンの耳に、薬局コーナーの出入口から物音が聞こえた。彼女は即座に黄金の鋸を取り出したが、相手の顔を見ると警戒を解いた。

現れたのはベルシだった。マリアンは笑顔を浮かべ、そちらもそろそろ本番かと声をかけた。

消えた住人と生存者達

静まり返った街

シャール=ベリランは、凍りついた自販機の近くで雪を風除けにしながら隠れていた。バゲージシティ防衛よりも、自分が生き残ることだけを考えるようになっていたのである。

やがて彼は、戦闘音だけでなく都市としての生活音まで消えていることに気づいた。数百万人の住人がどこへ行ったのか分からず、学園都市側による単純な殲滅にしては静かすぎることも不気味だった。

広域観測

シャールは雪の中を這って移動し、交差点で学園都市側の兵士達を見つけた。彼らはカメラ付きの風船のような広域観測装置を上空へ飛ばしていた。

制空権を奪った学園都市が、わざわざ簡易的な観測装置を使っていることから、シャールは通常の衛星や偵察機では見つけられない何かを探していると考えた。そして、彼らもバゲージシティの数百万人を見つけられていないのではないかと思い至った。

医務室の雲川鞠亜

雲川鞠亜は医務室のような場所で目を覚ました。彼女を運んだのは、ナチュラルセレクターの参加者サフリー=オープンデイズだった。

サフリーは、雲川鞠亜が地下通路で倒れていたため救助したと説明した。近江手裏の姿はなかったが、通路に残った痕跡から、背の低い者が背の高い者を追っていたようだと語り、近江手裏が生きて戦っている可能性を示した。

失われる暖房

サフリーは、バゲージシティの温水暖房施設が破壊されつつあると説明した。中核であるゴミ処理施設や石油精製施設が壊され、火力発電所だけでは街全体を温めるには足りなかった。

外はマイナス二〇度以下であり、暖房が失われれば建物内も半日ほどで外と同じ環境になる。サフリーは、人々を集めて体温を利用すれば一時的にしのげる可能性を示したが、それには木原やグレムリンといった大ボス達を倒し、救助までの時間を稼ぐ必要があった。

木原円周の生物兵器

サフリーは、まず木原円周を止めるべきだと告げた。木原円周は、別の木原が持ち込んだ戦闘用のカビを応用し、人為的に突然変異を起こして生物兵器化しようとしていた。

その作業場所として使われているのは、コンテナ型の野菜工場だった。特殊なライトや空調、栄養液を利用する施設であり、太陽代わりの紫外線ライトを悪用すれば、カビの遺伝情報を破損させて変異を促すことができると見られていた。

木原加群の名

雲川鞠亜は、サフリーが木原円周の動きを読めていることを不審に思った。サフリーは、その知識はヘルメットにコートの男から助言されたものだと明かした。

その男の名が加群だと聞いた瞬間、雲川鞠亜は動きを止めた。彼女が追っていた木原加群が、バゲージシティの状況に関わっていることが、改めてはっきりしたのである。

野菜工場の鍵

木原円周は、猛吹雪の中でコンテナ型の野菜工場へ辿り着いた。そこは本来、豪雪地帯のバゲージシティに野菜を供給するための設備だった。

彼女はカビを変異させるために中へ入ろうとしたが、扉には鍵がかかっていた。そのため、鍵を管理している保安室へ向かった。

エールズの保安室

保安室には、ナチュラルセレクターの参加者エールズ=ビッグアントが隠れていた。彼は街の中にも外にも逃げ場がないと考え、誰にも気づかれない場所で事態の収束を待っていた。

木原円周は、扉の外から保安室の様子を探り、超音波で内部の影を捉えた。さらに遠ざかる足音を演出してエールズをドアスコープへ誘導し、クレーン車で吊った野菜工場のコンテナを鉄球のように扉へ叩き込んだ。

ブラックライト

扉ごと潰されたエールズはまだ動いていたが、木原円周はショットガンでとどめを刺した。彼女は保安室から鍵束を奪い、野菜工場のコンテナへ入った。

内部にはキャベツが並び、赤や緑のライトが照らしていた。木原円周は目的に合うブラックライトを見つけると、スマートフォンのカメラを光度計代わりにして角度を調整し、試験管を中央に置いた。彼女は、カビを変異させるには一時間ほどかかると見積もった。

変電設備の発見

雲川鞠亜とサフリーは、吹雪の中で野菜工場群へ向かった。何百ものコンテナが積み上げられており、どこで木原円周が作業しているか特定するのは困難だった。

そこで雲川鞠亜は、すべての野菜工場が外部電源で動いていることに着目した。電源を止めればブラックライトも止まり、カビの生物兵器化を阻止できると考えたのである。二人は、フェンスで囲まれた変電設備を見つけた。

木原円周との対峙

雲川鞠亜達が変電設備を見つけた直後、木原円周がコンテナから現れた。彼女は、変電施設が弱点だと気づかれることも織り込み済みだと告げた。

木原円周の首元の端末群には奇怪なグラフが表示され続けていた。彼女は、戦いを避けられないなら木原として相手を壊すだけだと言い、雲川鞠亜とサフリーとの激突が始まった。

木原円周の過去

木原円周は、幼少期に木原を憎む何者かによって連れ去られ、暗い部屋に閉じ込められていた。彼女を木原から切り離せば、木原らしさを失わせられると考えられていたのである。

しかし木原円周は、教科書や教師がなくても、部屋の埃やコップ、影から科学を学び続けた。彼女は部屋の壁や床に高度な式を描き、やがて牢を壊す方法を思いついた。彼女を閉じ込めていた者は、頭部以外が蠟のように変質した死体となった。

コンテナの雪崩

木原円周は紅茶を撒き、凍結による体積変化で牽制した後、多目的ライターで野菜工場のコンテナに火をつけた。油だけでなく、氷や雪の摩擦で生じる水膜を利用し、積み上げられたコンテナを滑らせたのである。

数百のコンテナが雪崩のように崩れ、雲川鞠亜とサフリーへ降り注いだ。木原円周は安全地帯を事前に設定し、玩具ヘリで上空から状況を確認しながら、第二波、第三波で押し潰そうとしていた。

雲川鞠亜の突破

木原円周の想定に反し、雲川鞠亜はコンテナを障害物として利用して木原円周の頭上へ回り込み、踵を叩き込んだ。木原という恐怖に縛られていれば不可能な動きだった。

木原円周は、自分の木原が不完全だから恐怖で縛る力が足りなかったと考え、五〇〇〇人の木原の戦闘パターンで支えられていると宣言した。しかし雲川鞠亜は、それが本当に完全な分析なのか疑い、木原加群の名を使った円周の再現を偽物だと切り捨てた。

デッキの限界

雲川鞠亜は、木原円周の戦闘パターンをカードゲームのデッキに例えた。どれだけ他人と同じカードを揃えても、実際にどのカードを切るかを選ぶのは木原円周自身であり、プレイヤーとして未熟なら意味がないと断じた。

木原円周は上条当麻や雲川鞠亜まで再現しようとしたが、雲川鞠亜はそれも同じデッキを組んだだけだと見抜いた。円周は最後に自分自身の木原を使おうとしたが、その匂いも戦闘中に読まれており、回し蹴りで迎撃された。

仲間のくない

追い詰められた木原円周は、多目的ライターを火炎放射器のようにして突撃した。雲川鞠亜は四肢で迎撃したが、円周は痛みを無視して進んだ。

その右腕に、近江手裏の園芸シャベル型くないが突き刺さった。さらにサフリーが、雲川鞠亜以外にも忍者や電磁波使いを勧誘していたことを明かした。雲川鞠亜は、仲間とはそういうものだと告げ、木原円周を完全に昏倒させた。

木原病理の狙撃

野菜工場の山の上では、木原病理が一連の戦いを見下ろしていた。彼女は円周が倒され、カビの生物兵器化が阻止されたことを確認しながら、雲川鞠亜達を狙撃しようとしていた。

木原病理は未元物質で全身を改造しており、腕の形態を変化させることで、鉄釘を超高速の狙撃弾として放てる状態だった。しかし狙撃直前、近くのコンテナを踏む足音を聞き、標的を変えた。

木原加群の登場

木原病理が撃った鉄釘は、フルフェイスヘルメットの男の眉間を捉えた。しかしヘルメットだけが砕け、素顔には傷一つなかった。

現れた男は木原加群だった。彼は、木原病理が安全装置を出し尽くし、むき出しの状態になる瞬間を待っていたと語った。普通に殺して満足するだけでは、木原病理の安全装置を全て破壊できた確証が得られないからだった。

通り魔の真相

木原加群は、かつて自分が殺した通り魔について問いただした。あの通り魔は、木原病理が自分に用意した駒であり、何の変哲もない少年を追い詰めて理性を焼き切り、通り魔に仕立てたものだと見抜いていた。

木原病理は、人の役に立つ木原や、生徒に尊敬される木原の可能性を諦めさせるためだったと認めた。木原加群は、通り魔にされた少年も被害者だったと悟り、自分と木原病理の二人が倒れることで成立する復讐だと語った。

木原同士の激突

木原病理は、木原加群が守りたいものは死んだ通り魔だけではなく、那由他や雲川鞠亜、サフリー、近江手裏のような者達にも及ぶのだと見抜いた。

彼女は、他人を諦めさせることだけは諦めたくないと笑った。対する木原加群は、かつて否定された先生として立ちはだかった。木原と木原の激突が始まった。

木原加群の決着と戦乱の剣

木原同士の激突

山積みされた野菜工場のコンテナ上で、木原加群と木原病理が激突した。木原病理はスカイフィッシュの構造を取り込んだ右腕から鉄釘を撃ち出し、木原加群の脳天と心臓を貫いたはずだった。

しかし木原加群には傷も出血もなかった。彼は青白い光の刃で木原病理の右腕を切断したが、木原病理は未元物質で腕を再形成し、イエティのような巨大な腕で木原加群をコンテナごと叩き潰した。それでも木原加群は傷一つなく現れた。

読めない木原加群

木原病理は、木原加群の力にどんな科学が根付いているのか読めなかった。木原であれば相手の科学的な土台をある程度推測できるはずなのに、木原加群の力だけは見えなかったのである。

木原病理はさらに攻撃を重ねたが、木原加群は急所への直撃を受けても無傷だった。木原病理は、彼が科学ではなく魔術を扱っているのではないかと考えた。

致命傷を避ける術式

木原病理は、木原加群が致命傷となる攻撃だけを無効化していると見抜いた。そこで急所を外し、肩の皮膚を削るような軽傷を狙うと、木原加群には出血が生じた。

木原加群は、自分の術式が致命傷の回避しか再現できないものだと認めた。同時に、傷を負うほど刃の切れ味が増す術式も組み合わせており、消耗戦になれば自分の刃はさらに強くなると示した。

木原病理の崩壊

木原加群は、木原病理が第二位の未元物質を御しきれていないと見抜いた。木原病理は肉体を修復できるが、その作り物の体は彼女の意識を追い出そうとしており、長く使い続ければ精神が崩壊する状態だった。

木原病理はネッシーの構造を参照し、巨大な怪物のような姿へ変化していった。彼女は、自分は回復できるが木原加群は傷を引きずるため、相討ちでも自分が有利だと考えた。

復讐の目的

木原加群は、勝敗ではなく相討ちこそが目的だと告げた。木原病理によって通り魔に仕立てられた少年と、その少年を殺してしまった自分のために、加害者である二人が共に倒れることが復讐の完成だった。

木原病理は悪竜のように膨張し、木原加群は決闘剣ヴィーティングを体現する騎士のように立ち向かった。両者は互いを削り合い、救いのない相討ちへ進んでいった。

先生の最期

地上の雲川鞠亜は、コンテナ上で続く怪物同士の戦いを見ていた。やがて木原病理が怪物の姿で落下し、雲川鞠亜を見据えたが、真上から落ちてきた木原加群が右腕を怪物の頭へ突き刺して決着をつけた。

木原病理は動かなくなり、白く透けるように崩れて雪へ溶けた。木原加群もまた致命傷こそ避けていたが、全身からの出血によって命を失いかけていた。雲川鞠亜が先生と呼びかける中、木原加群は済まなかったと告げて動かなくなった。

雲川鞠亜の叫び

雲川鞠亜は、木原加群が何をしてきたのか知っていると叫んだ。彼が生徒達を守るために通り魔を殺したこと、生徒達が人殺しに憧れないよう姿を消したこと、通り魔が誰かに用意された存在だったことを調べていたのである。

彼女は、木原加群が助けた命は無駄ではなく、皆がそれぞれの道を歩み、彼に感謝し心配していたと伝えた。しかし木原加群は答えず、満足したような顔のまま雪に埋もれていった。

マリアンの動揺

片足を引きずり、片目をガーゼで覆ったマリアン=スリンゲナイヤーは、木原加群の死を目撃した。彼女にとって木原加群はベルシであり、何だかんだで死なないと思っていた仲間だった。

マリアンは、自分が教えた技術が彼の死に必要なピースを揃えてしまったのかと動揺した。それでも、ベルシは自分が何もしなくても別のピースで同じ結末へ辿り着いたはずだと考え、だからこそ回避したかったのだと嘆いた。

戦乱の剣

マリアンの周囲で空間がおかしな音を立て始めた。スマートフォンからオティヌスの声が届き、出力が高すぎる、このままでは実験が全て潰れると警告した。

しかしマリアンは、ベルシを失った怒りで聞く耳を持たなかった。彼女はオーバーオールの中から黄金の工具ではなく、戦乱の剣ダインスレーヴを取り出した。それはラグナロクの始まりまで戦争を続けるとされる魔剣であり、マリアンは数百万の頭蓋骨でベルシの墓を作ると叫んだ。

全体論の実験と上条当麻

木原加群とマリアン

木原加群がマリアン=スリンゲナイヤーと出会ったのは三年ほど前だった。当時はまだ第三次世界大戦もグレムリンも存在せず、木原加群はマリアンにとってグレムリンの魔術師よりも近しい腐れ縁の相手だった。

マリアンは黒小人の工具を進歩させるため、必要な人材として木原加群に目をつけた。しかし木原加群は、彼女の技術はすでに黄金比として完成しており、木原の手を加えれば純度が下がると指摘した。

魔術を学ぶ木原加群

木原加群は、魔術が存在する確証だけを得ると、魔力の精製や術式の構築をほぼ自力で積み上げていった。マリアンは彼に教えるというより、落ちていく爆弾の軌道を尾翼で修正するように、わずかな修正を与えるしかなかった。

グレムリンに加わった木原加群の貢献は、魔術師としてよりも科学サイドの異端研究者としての知識にあった。グレムリンが科学技術を利用する根幹には彼の知識があり、彼が死んでもそれは組織を動かす力として残るものだった。

復讐のための術式

木原加群は魔術師として強くとも、使い所のない存在だった。彼の術式は、ただ一人の仇敵と完璧な相討ちを果たすためだけに磨かれていたからである。

マリアンは木原加群を科学者としてグレムリンへ引き入れ、多忙にさせることで復讐を遅らせようとしていた。しかし木原加群は仕事の合間にも術式を改良し、復讐へ向かう意志を強め続けた。

助けられなかった仲間

マリアンは、復讐が終わって何もなくなったら自分の所へ来ればよいと何度も告げていた。だが木原加群は曖昧に笑うだけで、一度も頷かなかった。

マリアンは、木原加群を圧倒的に強くすれば、復讐の結末をねじ曲げて生還させられると考えていた。しかし何も変えられず、彼が死へ向かうのを眺めることしかできなかった。そのため彼女は、木原加群を死に追いやった原因全てへ牙をむこうとしていた。

戦乱の剣

雲川鞠亜、近江手裏、サフリー=オープンデイズは、負傷したマリアンが現れるのを見た。彼女は片足を引きずり、片目をガーゼで覆い、鞘に収まった洋風の剣を手にしていた。

三人は、その剣に危険な気配を感じた。近江手裏は剣なら間合いが限られると考え、三方へ散って狙いを分散し、隙を突く方針を立てた。サフリーは遠心力を使う投擲具を使おうとし、近江手裏も飛び道具で対応するつもりだった。

天空からの閃光

マリアンが充填と告げ、鞘に収めた剣を掲げると、天空から閃光が降り注いだ。黄金の剣に突き刺さった光は巨大な爆発を起こし、衝撃波で地面を揺らし、野菜工場のコンテナ群を倒壊させた。

分厚い雲が吹き飛ばされ、青空にはノイズのような歪みが生じていた。雲川鞠亜は、光が別次元から青空を突き破ったかのような異変を感じた。

心臓を止める恐怖

マリアンは剣を数センチだけ鞘から覗かせた。すると、近江手裏は外傷もないまま力を失い、白い雪の上に崩れ落ちた。彼女の息は止まっており、心臓が停止していた。

続いてサフリーも同じように倒れた。剣が直接何かをしたのではなく、剣の本領を前にした者が、それに直面するより死んだ方がましだと本能的に判断し、自ら心臓を止めてしまうほどの恐怖に襲われていた。

雲川鞠亜の生存

マリアンは次に雲川鞠亜へ鞘を向けた。雲川鞠亜も恐怖に捕らわれかけたが、意識が別の異常へ向いたため、恐怖の受け取り方が鈍り、心停止を免れた。

その原因は、マリアンのすぐ横に走った黒い亀裂だった。何もない空間に亀裂が生じ、その中から少年の右手が飛び出して、マリアンの手首を掴んだ。

上条当麻の到着

マリアンは初めて焦り、剣を奪われることを警戒して少年の手を振り払った。亀裂の中からは、グレムリンの空間の歪みが座標を教えたことで追いつけたという少年の声が響いた。

その少年は上条当麻だった。彼は、ここまではグレムリンがルールを支配していた世界だと告げ、これから先は自分のルールでやらせてもらうと言い、この世界へ踏み込んだ。

砕ける歪み

上条当麻が現れた直後、それ以外の全てに亀裂が入り、砕け散った。雲川鞠亜には、これまで見てきたもの全てが大きな幻想だったかのように見えた。

学園都市の超能力開発は量子論を基にしていたが、グレムリンがバゲージシティで完成させようとしていたのは、全体論を使った超能力開発だった。大きな世界を歪め、その影響で小さな超常現象を起こせるかを試す実験だったのである。

全体論の実験

バゲージシティの格闘大会、木原とグレムリンの激突、科学と魔術の戦争は、すべて大規模な戦闘によってミクロな異変を生み出せるかを試す作業だった。学園都市側の制裁さえ、グレムリンにとっては実験のピースだった。

木原加群は学園都市から派遣される部隊の規模を傍受し、グレムリンに有益な結果が出るよう最終調整していた。ただし木原病理が動くことを知った彼は、シナリオを誰にも開示しない条件を逆手に取り、実行直前で計画を大きく変更していた。

右手が壊した法則

グレムリンは、自分達が全体論の実験を操っていると思っていた。しかし未来側に発生した歪みは、現在のバゲージシティそのものを引っ張り、時間や空間を未来の方向へ歪めていた。

そのため、木原とグレムリンが激突した場所では、いつもの法則が通用せず、悲劇が起こりやすい状態になっていた。上条当麻の右手がその歪みを破壊したことで、冷たい法則はもう通用しなくなった。起きた悲劇は戻らないが、ここから先は上条当麻の右手が席巻することになった。

第n章 たとえ死があったとしても Dead_to…

A_Cardinal_Error.34 上条当麻と戦乱の剣

同じ地点の別の世界

雲川鞠亜が見た世界は、砕け散った先でもバゲージシティだった。しかし死の匂いや木原、グレムリンの重圧は消え、上条当麻の存在によって世界の法則が変わっていた。

場所も屋外の野菜工場ではなく、ナチュラルセレクターの競技施設内に移っていた。金網に囲まれたリングの中に、上条当麻、マリアン=スリンゲナイヤー、雲川鞠亜が立っていた。

届かなかった救い

マリアンは、ベルシこと木原加群が死んだことを上条当麻に告げた。上条当麻は、止められなかった事実は否定できないと認めた。

マリアンは、幻想殺しの性質を知っていたからこそ、それでも救えない者がいることに怒りを向けていた。彼女は躊躇なく戦乱の剣の鍔を押し上げ、禍々しい刃をわずかに世界へさらした。

恐怖を越える右手

戦乱の剣は、刃そのものが攻撃する前に、対象の恐怖によって心臓を止めさせる魔剣だった。しかし上条当麻は倒れなかった。

上条当麻は、魔術は一方的に受けるものではなく、右手で打ち消せると知っていた。その認識が恐怖を和らげ、戦う前に諦めて死ぬという選択肢を消していた。雲川鞠亜もまた、上条当麻がそこにいることで恐怖を押し返され、冷静さを取り戻していた。

死者を巡る戦い

マリアンは、上条当麻がいれば木原加群は死なずに済んだかもしれないという可能性を拒絶した。ベルシが満足して死んだ行動を、優しいルールで否定されることを許せなかったのである。

上条当麻は、それでも死者に絡んで凝り固まった者達と戦ってきたと告げた。こうして、死者の尊厳を守ろうとするマリアンと、これ以上の悲劇を止めようとする上条当麻の戦いが、ナチュラルセレクターのリングで始まった。

鞘の大剣

マリアンは戦乱の剣の恐怖が通じないと見ると、鞘の別の力を使った。鞘は重力を封じ込め、空気中の塵や埃を一点から押し出すことで、灰色の巨大な刃を作り出した。

その大剣は魔術そのものではなく、歪められた重力が生む物理現象だった。そのため上条当麻の幻想殺しでは防げず、右手にも裂傷が生じた。上条当麻は防御を諦め、懐へ潜り込むしかないと判断した。

球体の封印

マリアンは重力の大剣で上条当麻を追い詰めた後、今度は上条当麻自身を透明な球体の中へ封じ込めた。全方位からの圧縮や、出口から押し出される危険を察した上条当麻は、足元に右拳を叩きつけて球体を破壊した。

だが、マリアンはすかさず黄金の鋸で上条当麻を狙った。上条当麻はそれを幻想殺しで砕いたが、その動きで胴体が無防備になり、マリアンは重力の大剣で両断する準備を整えた。

先生を奪わないでくれ

雲川鞠亜は、戦いの規模が大きすぎて介入できず、ただ見ているしかなかった。それでも彼女は、木原加群がベルシやグレムリンだけでできた人物ではないと叫んだ。

彼には、多くの生徒の悩みを聞いていた先生の時代が確かにあった。雲川鞠亜は、破壊と殺戮を慰めとする言葉で、木原加群の墓標から先生という面を奪わないでほしいと願った。

布切れの一手

上条当麻は雲川鞠亜の願いに了解と答えた。体勢は崩れ、右手で殴ることも回避することもできなかったが、彼は砕けた黄金の工具の破片で自分の袖を切り取り、布切れを投げた。

狙いはマリアンではなく、鞘の下端にできた透明な球体だった。球体の開口部に布がかぶさることで、重力で押し出される塵や埃の流れが乱れ、大剣は形を保てなくなった。結果として爆発が起こり、マリアンは吹き飛ばされた。

抜けない魔剣

上条当麻は、鞘の仕組みを見破った以上、マリアンは勝てないと告げた。マリアンはなお戦乱の剣を抜こうとしたが、上条当麻は抜けるはずがないと言い切った。

もし自由に抜けるなら、彼女は最初から使っていたはずだった。上条当麻は、マリアンが本当は抜きたくなかったのだと見抜いた。戦友を失っても、戦友と過ごした場所までは失いたくないと思っていたからである。

決着の拳

マリアンは戦乱の剣を充填し、今度こそ抜くと宣言した。だが上条当麻は、復讐を遂げた先に何も残らなければ、誰が木原加群を弔うのかと告げた。

その言葉の後、上条当麻はまっすぐ踏み込んだ。マリアンには魔剣を抜く猶予があったが、それでも抜けなかった。黄金の鞘と少年の拳が交差し、鈍い音と共に決着がついた。

終わらない戦い

砕けたリング

雲川鞠亜は、ズタズタに引き裂かれたリングの中で、戦いが終わったのかと呟いた。ドーム状の競技施設は天井を大きく破られ、外の冷気が流れ込み始めていた。

上条当麻は、マリアン=スリンゲナイヤーの手から離れた戦乱の剣へ歩いていった。彼は、マリアンが抜けなかったとしても、他の誰かが抜く可能性がある以上、野放しにはできないと考えていた。

ベルシの後始末

雲川鞠亜が、上条当麻がここへ辿り着いた理由を尋ねると、彼はベルシの名を出した。木原加群はバゲージシティへ至る道にヒントを置き、上条当麻がここへ来る流れまで整えていた可能性があった。

上条当麻は、自分がもっと早く全てを終わらせていれば、木原加群も違う結末を迎えられたかもしれないと考えた。だが木原加群は、上条当麻が成功しても失敗しても、自分なりの結論へ辿り着くように全てを組み立てていた。

先生だった人

上条当麻は、木原加群がどんな人間だったのかを雲川鞠亜に尋ねた。雲川鞠亜は、善悪の本性までは分からないが、自分を含めたいくつかの命を救った恩人であり、謎を追う価値のある先生だったと答えた。

上条当麻は、木原加群を助けられなかったと呟いた。雲川鞠亜は、あれ以上引き延ばしても木原加群の幸福の純度を落とすだけだったと返し、彼が満足そうに死んだことを受け止めようとしていた。

戦乱の剣への右手

上条当麻は立ち止まっていても何も変わらないと考え、戦乱の剣を壊すために右手を伸ばした。バゲージシティで続いた戦いに区切りをつけるためだった。

しかし、その右手首を細い女性の手が掴んだ。いつ現れたのか分からないほど近くに、毛皮のコートと黒い革の装束をまとい、魔女のような帽子と眼帯をつけた少女が立っていた。

隻眼の少女

上条当麻は、その少女を魔術サイドの関係者だと判断して警戒した。だが少女は、まだ終わらないと静かに告げた。

直後、少女は躊躇なく握力を込めた。上条当麻の右手首は握り潰され、そのまま切断された。

深刻な破損 ル9二1bカケrサ991 マ

バゲージシティ騒乱の終わり

切断された右手

上条当麻は、オティヌスに右手首を握り潰され、激痛と大量出血で意識を失った。雲川鞠亜はその惨状と、隻眼の魔女が発する異質な恐怖の前に動けなくなっていた。

オティヌスは倒れた上条当麻を気にも留めず、戦乱の剣を鞘ごと握り潰した。魔剣は黄金の輝きを失い、錆びついたように効力を失った。

魔神オティヌス

雲川鞠亜が正体を問うと、少女はオティヌスと名乗った。彼女は純粋な魔神であり、理解できないなら理解を諦めろと告げた。

その直後、上条当麻の切断面から見えない力が吹き荒れた。だがオティヌスはそれを血まみれの手で掴み、無造作に握り潰した。そして倒れていたマリアン=スリンゲナイヤーを拾い上げ、連れ去ろうとした。

金髪の青年

オティヌスの前に、いつの間にか金髪の青年が現れた。青年は、今回はオティヌスに用はなく、用があるのは幻想殺しだと告げた。

オティヌスと金髪の青年の間では、雲川鞠亜には把握できない衝突が起きた。青年は、純粋な魔神であるオティヌスは成功と失敗の可能性を五分五分で抱える存在であり、自分は魔神になり損ねた不純物だからこそ、その均衡から外れていると説明した。

右方のフィアンマ

さらに、リングを囲む柱の上には、右腕を失った赤い装束の男が現れた。彼は右方のフィアンマであり、かつて世界を救う力を持ちながら、それを外に出すための特別な右手を求めていた者だった。

金髪の青年は、自分とフィアンマの存在によって、オティヌスの五分五分の可能性へ変動を与えられると示した。オティヌスは一度は立ち去ろうとしたが、やはり殺すかと気を変え、再び次元の違う衝突が始まった。

病室のブリュンヒルド

場面は北欧の小さな病院へ移った。ブリュンヒルド=エイクトベルは、かつて自分が守ろうとした少年の病室にいた。

彼女は異変を察知すると、少年に眠りの刻印を施し、幸せな夢を見るようにと囁いた。病室の外には、後天的にワルキューレの性質を取り込んだ女性が現れていた。

後天性ワルキューレ

ブリュンヒルドは、少年を狙う存在に一切容赦せず、最初の後天性ワルキューレを蹴り飛ばして破裂させた。しかし相手はまだ死なず、壁に広がった赤黒い汚れから顔を作って言葉を発した。

廊下にはさらに十人以上の後天性ワルキューレが待ち構えていた。ブリュンヒルドは少年を守る必要があるため、本来なら勝てる相手にも不利な状況へ追い込まれていた。

聖人とバードウェイ

そこへ、金髪のメイド姿の聖人が現れた。彼女は、落ち度のない者を狙って利益を得ようとする輩が嫌いだと語り、ブリュンヒルド側に立った。

さらに反対側からは、レイヴィニア=バードウェイが現れた。彼女は、グレムリンに好き放題され続けたことへの苛立ちを口にし、情報を得るためにも後天性ワルキューレ達と戦う姿勢を見せた。

主神の槍の狙い

ブリュンヒルドは、敵の本当の狙いが自分の精神防壁を薄くして、主神の槍に関する情報を抜き取ることだと見抜いた。主神の槍は、かつて彼女が少年のための復讐に使った北欧神話最大級の霊装だった。

金髪の聖人は、奪われた情報はグレムリンの本拠地を叩き潰せば取り返せると言い切った。こうして、グレムリンの次の動きに繋がる戦いが病院でも始まっていた。

死者の軍勢

オティヌスはマリアンを連れてバゲージシティを出ていた。マリアンは誰かに担がれており、その懐かしい匂いと感触から、それがベルシであると悟った。

しかしそのベルシは生者ではなく、死者の軍勢に加えられた存在だった。オティヌスは、生死の違いなど些細なものだと語り、マリアンはそれに抗うだけの力を失っていた。

次の標的

マリアンは、全体論の実験がどうなったのかをオティヌスに尋ねた。オティヌスは、幻想殺しが何かを砕いた以上、求めるべき何かはあったが、普通の人間の脳で実行するには壁があると判断していた。

次に必要なのは、全体論を使える素体だった。魔術によって支えられた聖人やワルキューレではなく、学園都市製の超能力開発も受けていない天然素材。その素体は、学園都市の窓のないビルの基幹構造の一つで眠っていると、オティヌスは告げた。

戻った右手

上条当麻は、激痛と失血の中で意識を明滅させていた。だが、切断されたはずの右手は繋がっていた。

オッレルスと右方のフィアンマは、今代の幻想殺しが上条当麻の右手として定着しているため、右肩から生えているものが右手として意味を成すのだと説明した。治癒や鎮痛は右手に打ち消されるため、できることは少なかった。

まだ助けを待つ人達

上条当麻は、痛みの中でも、バゲージシティにはまだ助けを待っている人達がいるはずだと訴えた。木原やグレムリンが撤退しても、彼らが残した爪痕は消えていなかった。

オッレルスは、ならば遠慮なく酷使すると答えた。マリアンに改造された兵士達や、家具にされたサンドリヨンも、上条当麻の右手と自分達の叡智があれば五体満足に戻せる可能性があった。

生き残ったシャール

シャール=ベリランは、猛吹雪の中で生き残っていた。戦闘中断の命令が無線から流れたが、彼は反学園都市サイエンスガーディアンに戻る気はなかった。

彼は学園都市側の爆撃機の残骸らしきものを見つけ、退職金代わりにしようとした。しかし駆動鎧のような異形の回収部隊が現れ、部品をすべて集めるよう命じていたため、シャールはすぐに手を引いて姿を消した。

木原唯一

騒動の後、安物のスーツを着た若い女が、反学園都市サイエンスガーディアンの老人の元を訪れた。組織の上層部は木原によって壊滅し、老人に決定権が回ってきていた。

女は、学園都市がどれだけ危険なものを抱えているかを理解できたはずだと語った。さらに、木原は学園都市が作った精鋭部隊ではなく、科学の一分野を悪用しようとした時に現れる実行者であり、科学技術が世界へ拡散すれば木原も世界中に自然発生すると説明した。

敗北の契約

女は、反学園都市サイエンスガーディアンが発展すれば、科学技術と共に木原が世界中へ溢れ、学園都市にも制御できなくなると告げた。老人はそれを聞き、反学園都市の理想がかえって世界を危険にすることを突きつけられた。

老人は契約書に署名し、戦いは敗北という形で終わった。女は自分も木原の一人、木原唯一だと名乗り、四人もの木原の損失を多少の犠牲として切り捨てながら、バゲージシティを去った。

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