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とある魔術の禁書目録フィクション(Novel)読書感想

小説「新約 とある魔術の禁書目録 3」感想・ネタバレ

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新約とある魔術の禁書目録 3の表紙画像(レビュー記事導入用) とある魔術の禁書目録

新約 とある魔術の禁書目録(2)レビュー
新約 とある魔術の禁書目録まとめ
新約 とある魔術の禁書目録(4)レビュー

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  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
    3. ■ 物語の特徴
  2. 書籍情報
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
  5. 考察・解説
    1. 米国大統領の失踪
    2. 操られる一般人
    3. グレムリンの暗躍
    4. メディア王の陰謀
    5. ハワイ諸島での危機
    6. 魔術と科学の衝突
  6. 登場キャラクター
    1. 学園都市
      1. 上条当麻
      2. 御坂美琴
      3. 一方通行
      4. 浜面仕上
      5. 番外個体
      6. 黒夜海鳥
    2. 明け色の陽射し
      1. レイヴィニア=バードウェイ
      2. マーク=スペース
    3. グレムリン
      1. サローニャ=A=イリヴィカ
      2. サンドリヨン
      3. マリアン=スリンゲナイヤー
      4. オティヌス
      5. ブリュンヒルド=エイクトベル
    4. アメリカ合衆国政府・軍
      1. ロベルト=カッツェ
      2. ローズライン=クラックハルト
      3. バックス=シェルヴァ
      4. アルフレッド=サードマン
      5. マーティン=フラワーズ
      6. エルート=ラックス
      7. シャオロン=ハルヴァード
      8. ニケ=カノークス
      9. アーク=ダニエルズ
      10. シークレットサービス
    5. ブルーシェイク家
      1. オーレイ=ブルーシェイク
      2. リンディ=ブルーシェイク
      3. ハーザック=ローラス
    6. PMCトライデント
      1. キネシック=エヴァーズ
      2. レイモンド=カールマン
    7. 民間人・その他
      1. エドワード=トーキー
      2. ウェック=ルナサンド
      3. スティーブ
      4. ジェニー
      5. ジェニーの母親
  7. 展開まとめ
    1. 序章 五○番目の州で Crisis_of_Blue_Ocean.
    2. 第一章 先制攻撃はどっちがやる? First_Contact.
    3. 第二章起爆剤 Natural_Bomb.
    4. 第三章 灼熱の溶岩の狙い Case_to_War.
    5. 第四章 孤立とルールの崩壊 Trident.
    6. 第五章 その強さは何のためにあるべきか The_Old_Glory
    7. 終章 頼りになるバードウェイ Queen_Period.
  8. 同シリーズ
    1. 新約 とある魔術の禁書目録
    2. とある魔術の禁書目録
    3. 外伝
    4. とある暗部の少女共棲
    5. 同著者シリーズ
    6. ヘヴィーオブジェクトシリーズ
  9. その他フィクション

物語の概要

■ 作品概要

『新約 とある魔術の禁書目録(3)』は、KADOKAWAの電撃文庫より刊行されている、科学と魔術が交差する世界を描いたライトノベルである。 第三次世界大戦の終結後、新たに台頭した魔術組織「グレムリン」の陰謀を阻止するため、上条当麻、御坂美琴、一方通行、浜面仕上らの面々は、レイヴィニア=バードウェイの先導でアメリカのハワイ諸島へと向かう。しかし、到着直後から敵の襲撃を受け、常夏の観光地は戦場と化す。グレムリンは大規模な傭兵部隊「PMCトライデント」や米国メディア王オーレイと結託し、米国政府の中枢を魔術で侵食するだけでなく、活火山制御装置「起爆剤」を用いてキラウェア火山を人為的に噴火させようと企てていた。単独で抗戦を模索する米国大統領ロベルト=カッツェと合流した上条たちは、各所で激闘を繰り広げながら、ハワイ諸島と合衆国を揺るがす未曾有の危機に立ち向かっていく。

■ 主要キャラクター

上条当麻:あらゆる異能を打ち消す「幻想殺し(イマジンブレイカー)」を右手に宿す高校生である。ハワイでは敵の魔術により左腕の自由を奪われるが、持ち前の機転と右手を駆使して過酷な戦局を打破しようと奮闘する。

御坂美琴:学園都市第三位の超能力者(レベル5)である。上条のサポートとして同行し、強力な電撃を操って輸送機内での戦闘や敵戦車の足止めなどで活躍する。

一方通行(アクセラレータ):学園都市最強である第一位の超能力者(レベル5)である。大統領ロベルト=カッツェと共闘し、圧倒的な力で傭兵部隊や魔術師の包囲網を薙ぎ払う。

浜面仕上:無能力者(レベル0)の少年である。軍用のエアクッション船やモンスタートラックなどの乗り物を機転で操縦し、黒幕の娘であるリンディを救出・保護するために奔走する。

ロベルト=カッツェ:米国大統領である。ヒスパニック系の大男で、政府内に蔓延る異常事態に自ら気づき、失踪を装って現場でテロリストと戦う豪快で行動力のある人物である。

レイヴィニア=バードウェイ:魔術結社『明け色の陽射し』のボスである少女。上条たちをハワイへ導き戦闘を支援するが、その裏には学園都市と協力機関を対立させ、科学サイドの分断を狙う非情な思惑を隠し持っている。

サローニャ=A=イリヴィカ:グレムリンに所属する魔術師である。ロシアの妖精「レーシー」の伝承に基づく魔術を操り、植物や動物の生態系を利用して人間を支配し、上条たちを追い詰める。

オーレイ=ブルーシェイク:米国のメディア王である。強大な財力と情報網でトライデントを雇い、グレムリンと手を組んでアメリカを宗教国家に作り変えようと目論む黒幕の一人である。

リンディ=ブルーシェイク:オーレイの娘である。親の虐待から逃れてカウアイ島に匿われていたが、オーレイの弱点となるため各勢力から身柄を狙われることになる。

■ 物語の特徴

本作の大きな特徴は、これまでの学園都市内を中心とした戦いから、ハワイ諸島という広大なアメリカの観光地へと舞台を移し、より国際的かつスケールの大きい物語が展開される点である。魔術結社「グレムリン」と傭兵部隊「PMCトライデント」による「魔術と科学の混成部隊」が、米海兵隊や大統領と激突する様は、ハリウッドのパニック映画のようなド派手なアクションと政治的駆け引きに満ちており、読者の興味を強く惹きつける。 また、上条当麻、一方通行、浜面仕上という三人の主人公が本格的に同じ戦場に立ち、並行して行動する群像劇としての魅力が発揮されている。さらに、味方として共闘していたバードウェイの真の思惑によって科学サイドが内戦へと導かれるという、単純な勧善懲悪では終わらない重層的なストーリー展開も、他作品と一線を画す大きな差別化要素となっている。

書籍情報

新約 とある魔術の禁書目録 3
(A Certain Magical Index)
著者:鎌池 和馬 氏
イラスト:はいむらきよたか 氏
出版社:株式会社KADOKAWA電撃文庫
発売日:2011年12月10日
ISBN:9784048862400

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

あらすじ・内容

今度の舞台はハワイ――!
グレムリン。魔術と科学が融合した、世界規模の敵対勢力。第三次世界大戦後に突然現れた謎の組織が、アメリカ五〇番目の州・ハワイで暗躍しているらしい。イギリスの黄金系魔術結社 『明け色の陽射し』 のボスであるレイヴィニアの先導で、ハワイに向かう上条たち。そのメンバーは、上条当麻、御坂美琴、一方通行、浜面仕上、番外個体、黒夜海鳥である。そして、新ホノルル国際空港に到着した直後から、グレムリンの魔術師による襲撃は始まった。水面下で進行するグレムリンの陰謀。米国側で唯一それに気づいた男は、単独で抗戦を模索する。男はやたらハイテンションで、調子ぶっこいた野郎だった。名前は、ロベルト=カッツェ。誰もが知るアメリカ合衆国の大統領だった。

新約 とある魔術の禁書目録(3)

感想

読んでまず感じたのは、物語のスケールが一気に国家規模へ広がったということである。

これまでは学園都市や限られた地域での事件が中心だったが、本巻ではハワイを舞台に、アメリカという国家そのものを巻き込んだ大規模な騒動が描かれている。

科学サイドが勝ちすぎている現状を崩そうとする組織「グレムリン」。

そこに企業、メディア、アメリカ軍、そして大統領まで絡んでくるため、物語はかなり複雑だった。

読んでいて少し整理が必要になる場面もあったが、その分だけ大きな事件を追っている感覚が強かった。

また、本巻で特徴的だったのは、監視カメラのような視点で場面が細かく切り替わっていく描写である。

各地で同時に事件が進んでいることが伝わってくる一方で、視点の移動が多く、少し読みにくさを感じる部分もあった。

ただ、その忙しなさこそが、ハワイ全体が混乱に巻き込まれている雰囲気をよく表していたようにも思う。

敵側のやり方もかなり卑劣だった。

一般人を操り、家族を人質に取って利用する。

その手段には読んでいて強い不快感を覚えた。

だからこそ、上条当麻、一方通行、浜面仕上たちがそれぞれの場所で動き出し、事態をかき回していく展開には大きな爽快感があった。

そして本巻で最も印象に残ったのは、アメリカ大統領ロベルト・カッツェである。

最初は本当に大丈夫なのかと思うほど軽い人物に見えた。

セクハラ発言も多く、かなりクセが強い。

しかも自分で大統領だと名乗っているのに、相手にモノマネ芸人だと思われる場面には思わず笑ってしまった。

しかし、読み進めるほどに彼の格好良さが見えてくる。

軽口を叩きながらも、危機に陥った人々を自分の手で救おうとする。

安全な場所から命令するだけではなく、自ら前に出て動く。

その姿には、まさにアメリカンヒーローのような魅力があった。

読んでいて感じたのは、この巻の主役は上条たちだけではなく、大統領でもあったということである。

戦闘面でも見どころは多かった。

魔術、科学、そしてその両方を利用するグレムリンが入り乱れることで、これまでとは違う三つ巴の戦いになっている。

特に印象的だったのは、一方通行と御坂美琴が一時的に共闘する場面である。

普段はなかなか並び立つことのない二人が、同じ戦場で圧倒的な力を見せる展開には胸が熱くなった。

シリーズを読み続けてきたからこそ楽しめる組み合わせだったと思う。

本巻は、情報量も多く、視点も頻繁に変わるため、決して読みやすい巻ではなかった。

しかし、その複雑さも含めて、世界が大きく動き始めていることを感じさせる一冊だった。

読んでいて感じたのは、『新約』に入ってからの物語は、上条たち個人の戦いに加えて、国家や組織の思惑がより強く絡むようになっているということである。

その分だけスケールは大きくなり、敵の見え方も複雑になっている。

ハワイを舞台にした大混乱の中で、大統領という強烈なキャラクターが加わったことで、非常に印象に残る巻になった。

グレムリンの脅威が今後どのように広がっていくのか、続きが気になる一冊だった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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新約 とある魔術の禁書目録(2)レビュー
新約 とある魔術の禁書目録まとめ
新約 とある魔術の禁書目録(4)レビュー

考察・解説

米国大統領の失踪

『新約 とある魔術の禁書目録(3)』におけるアメリカ合衆国大統領ロベルト=カッツェの失踪事件と、ハワイ諸島を巡る一連の活躍について解説する。

ヒスパニック系として3番目、高校中退では初の大統領を自称する40代の大男ロベルト=カッツェは、気さくで豪快な振る舞いで失言すら支持率に繋げてしまう人物である。魔術組織が引き起こした国家中枢の異常事態を前に、自ら前線に立って危機に立ち向かった彼の行動の全容は以下の通りである。

1. 大統領失踪の経緯と政府中枢の異常

11月10日、オアフ島での記者会見を終えたロベルト=カッツェは、自らの意思で消息を絶った。

・車列に近づこうとしていた観光客の母娘からビデオカメラを借り、自らの顔を映して緊急声明を残す。
・失踪が第三者による誘拐ではなく自身の意思であること、警察への通報は不要であることを告げ、車道へ歩み出て姿を消した。
・失踪の理由は、合衆国政府の中枢において、昨日まで正常だった人間が突然内側から支配されるように合衆国の敵に切り替わる異常事態が進行していたためである。
・これは魔術組織グレムリンの魔術師サローニャ=A=イリヴィカが、議会や軍、情報機関などの関係者を操っていたことが原因であった。
・ロベルトは、ホワイトハウスに留まっていれば自分自身も操られる危険性があると判断し、単独で国内の危機に対処する道を選んだ。

2. インペリアルパッケージによる権限の維持

失踪の際、ロベルトは銀色のアタッシェケースを持ち出していた。

・これはインペリアルパッケージと呼ばれるもので、大統領権限で政府のクラウドシステムへアクセスし、どこからでも大統領命令を出せる装置である。
・大統領が消息不明となり職務執行能力がないとみなされれば、権限は副大統領に移譲されるが、副大統領も黒幕に利用される危険性があった。
・ロベルトがインペリアルパッケージを持ち続ける限り、彼がいる場所が大統領府として認識されるため、権限の委譲を防ぐ重要な意味があった。
・大統領補佐官のローズライン=クラックハルトもこの事態を把握しており、権限移行や黒幕による大統領暗殺を防ぐため、秘密裏にロベルトの捜索を命じていた。

3. 強い男としての信念と行動力

姿を消したロベルトはレンタカーで移動しながらインペリアルパッケージを使用し、政府クラウド内の怪しいアクセス履歴を調査した。

・その結果、黒幕がオアフ島に保管されている起爆剤(小規模誘発式活火山制御装置)の情報を狙っていることを突き止め、上条当麻や一方通行らと合流する。
・自分を襲撃してきた犯人が、実は家族を人質に取られて脅されているだけだと見抜くと、犯人に従うのではなく自分たちの手で人質を救い出す1%の可能性に賭けようと説得した。
・彼が語る強い男とは、保身のために非道な命令に従う者ではなく、窮地に立たされた国民や人質のために立ち上がる者であり、大統領としての強い責任感を示している。
・サローニャの魔術によって墜落の危機に陥った輸送機の中でも自分だけが脱出する道を選ばず、重傷を負ったパイロットを助けて海上不時着を成功させるために最後まで機内に残った。

4. リンディの救出と強いアメリカの体現

ハワイ諸島を巡る戦いの中で、大統領補佐官のローズラインらが、黒幕オーレイの急所として娘のリンディ・ブルーシェイクを誘拐し、交渉材料にしようと動く。

・しかしロベルトは、相手が黒幕の娘であっても、何の罪もない少女を犠牲にするようなやり方を合衆国大統領として許可しないと強く拒絶し、上条当麻らと共にリンディの救出に向かった。
・緊急保護として身柄を預かった以上、彼女を守るのは政府の責任であるというロベルトの姿勢は、一部の海兵隊員(マーティン・フラワーズ伍長ら)の心を打つ。
・マーティンは、虐待に苦しむ子供を生贄にして手に入れるのではなく、そうした人々の盾となるためにこそ強いアメリカはあるべきであり、それを最も体現しているのがロベルトであると語り、彼に協力を誓った。

5. PMCトライデントの制圧

戦いの終盤、ロベルトはグレムリンと結託していた巨大傭兵会社PMCトライデントの指揮官キネシック・エヴァーズと対峙する。

・サローニャが倒れたことで彼らの計画が破綻したことを突きつけ、裁判なしの禁固300年を出発点とした。
・迅速な部隊の撤収、混乱の終息、グレムリンの情報開示を条件に減刑の余地を示すという、大統領としての圧倒的な権威と交渉術でキネシックを追い込む。
・結果として、全軍の武装解除を命じさせることに成功した。

まとめ

ロベルト=カッツェの一連の行動は、国家の危機に際して安全な後方に留まるのではなく、自らリスクを背負って最前線へ赴くという、常識破りながらも確固たる信念に基づいたものであった。科学テクノロジーや魔術の力が激化する戦況において、インペリアルパッケージによる制度的な権限維持と、生身の人間としての言葉の力を武器に、大国大統領としての義務を果たした。彼の掲げる強い男のスタンスと、弱者を犠牲にしない強いアメリカの体現は、敵味方を問わず周囲の人間を動かし、ハワイ諸島を揺るがす未曾有の危機を終息へと導く大きな原動力となった。

操られる一般人

『新約 とある魔術の禁書目録(3)』において、魔術結社グレムリンが引き起こした「操られる一般人」を巡る非道な手口と、それがもたらした影響について解説する。

ハワイ諸島での騒乱において、グレムリンは生身の人間や社会の心理を巧みに利用した悪辣な戦術を展開した。魔術の制限を補うための脅迫や、政治的な自己保身にオカルトが利用される実態など、その全容は以下の通りである。

1. サローニャの魔術と直接的な操作の限界

グレムリンの魔術師サローニャ=A=イリヴィカは、ロシアの森の妖精レーシーの伝承を用いた術式で人間を森の動物に見立てて支配していた。

・しかし、人間のような複雑な大脳を持つ生物を完全に操り人形にすることは技術的に困難であった。
・実際の対象者である子供たちなどは、単純な認識のすり替えや、意志薄弱なゾンビのような状態に留めるのが限界であった。
・術式の効果を定着させるためのコストや条件からも、直接操れる人数には厳格な制限が存在していた。

2. 家族の命を盾にした間接的な操作

直接的な魔術の制限を補うため、サローニャは極めて悪辣な手法を選択した。

・魔術で意志薄弱にさせた子供たちに拳銃や爆弾を持たせて人質とする。
・その親である正気の一般人の大人を脅迫し、自分たちの手駒にするという方法である。
・ショッピングモールや路上で上条当麻、レイヴィニア=バードウェイ、ロベルト大統領らを襲撃してきたのは、魔術で操られた刺客ではなかった。
・家族の命を盾に取られ、やむを得ず引き金を引かされていた何の罪もない一般人たちであった。
・サローニャは、相手が魔力を持たない正気の一般人であればバードウェイらの魔術的な警戒網を素通りできるという計算のもと、彼らを使い捨ての道具として利用した。

3. 裏切り者の免罪符としてのオカルト

人がオカルトで操られるという状況は、ハワイ諸島だけでなくアメリカ合衆国政府の中枢でも悪用されていた。

・多数の政治家や軍関係者がグレムリンの魔術で操られていると思われていたが、ロベルト大統領は、実際には全員が魔術で操られているわけではないと見抜く。
・金や権力など現実的な方法で買収できる者は買収し、どうしても従わない者だけに魔術が使われていたのが実態であった。
・オカルトに操られているという事実は、自らの意志で国を裏切った者たちにとって、いざ造反が発覚した際に自分は魔術で操られていた被害者だ、と主張するための保険(免罪符)として機能しており、事態をより根深く悪質なものにしていた。

4. 操られる一般人を救うための決断

魔術や脅迫によって無理矢理加害者に仕立て上げられた一般人たちに対し、上条や一方通行、大統領は決して彼らを切り捨てることはしなかった。

・上条は自らの危険を顧みず人質の子供たちに右手で触れて魔術を打ち消す。
・ロベルト大統領は自身へ銃を向ける襲撃犯に対し、犯人の非道な命令に従うのではなく、一%の可能性に賭けて自分たちと一緒に人質を救出しないか、と説得を試みた。
・彼らは、操られている一般人を撃ち倒すのではなく、彼らを苦しめる根本の元凶であるサローニャを叩くための過酷な戦いへと挑んでいった。

まとめ

グレムリンによる一般人の操作は、単なる精神支配の魔術に留まらず、人間の家族愛を人質にした脅迫や、裏切り者の法的な言い訳に魔術の存在を利用させるという、人間の心理の隙を突いた極めて非道なものであった。しかし、上条当麻やロベルト大統領らは、眼前の襲撃者を敵とみなして排除するのではなく、脅迫されている被害者として救う道を選択した。この生身の人間に対する強い尊重と、元凶を直接叩くという強固な意志が、悪辣な魔術的テロの連鎖を断ち切る決定的な要因となった。

グレムリンの暗躍

『新約 とある魔術の禁書目録(3)』で判明した「魔術結社グレムリン」の詳細と、ハワイ諸島における彼らの動向について解説する。

第三次世界大戦の終結や新しい世界を否定する者たちから生まれたグレムリンは、世界規模の利害や思想、そして冷徹な組織構造を持つ魔術組織である。ハワイ諸島を舞台に展開された彼らの暗躍と、その裏に隠された真の目的の全容は以下の通りである。

1. アメリカ合衆国の掌握と起爆剤の強奪

グレムリンは、アメリカのメディア王オーレイ=ブルーシェイクや、東欧を中心に活動する巨大傭兵会社PMCトライデントと結託し、アメリカ合衆国を宗教大国へ作り変えようと目論んだ。

・実行役の魔術師サローニャ=A=イリヴィカがロシアの妖精レーシーの魔術を使用する。
・ホワイトハウスや軍関係者、情報機関など政府中枢の人間を密かに操ることで、国の機能を内部から侵食していった。
・彼らはその力で、活火山のエネルギーを人為的に解放する装置である起爆剤の情報を集め、ハワイ諸島最大級の活火山であるキラウェア火山を暴走させようと企てた。

2. 科学サイドの分断を狙う国際的テロ

キラウェア火山の噴火によってハワイ島全域を溶岩と火山灰で洗い流し、住民や観光客合わせて50万人規模の犠牲者を出すという未曾有のテロ計画が存在した。

・しかし、グレムリンにとってそれ自体はきっかけに過ぎなかった。
・アメリカが自国の設備(起爆剤)によって甚大な被害を出すことで、世界各国からアメリカへの糾弾や補償問題を巻き起こす。
・これにより科学サイドの国同士を争わせ、科学偏重の世界のバランスを崩すことが表向きの狙いであった。
・また、アメリカが自国の兵器で大打撃を受ける姿を見せつけることで、他の先進国に軍備増強をためらわせる(強い装備を持つほど逆用されるリスクを負うと認識させる)という政治的な空白や停滞を生み出すことも企図されていた。

3. 臨時雇用の魔術師たちと冷酷な組織構造

グレムリンは、全体の思想よりも個人の目的が優先される傾向にある。

・ハワイ諸島の作戦で前線に立ったサンドリヨン(灰被りの魔術師)やサローニャといった魔術師たちは、それぞれ敗戦をひっくり返す、ロシア再興のための基盤を取り戻す、といった個人的な目的のために動いていた。
・しかし、グレムリンの中枢から見れば、彼女たちや傭兵部隊トライデントは犠牲が必要な時に集められた臨時雇用に過ぎなかった。
・正規メンバーを消費しないための都合の良い捨て駒として利用されていたのが、組織の冷酷な実態である。

4. 計画の裏で進行していた真の目的

上条当麻らの活躍によってサローニャが倒れ、合衆国掌握計画やキラウェア火山の大噴火は阻止されたかに見えた。しかし、その裏側では現存する黒小人(ドヴェルグ)のマリアン=スリンゲナイヤーが密かに暗躍していた。

・キラウェアの噴火が本来のドロドロの溶岩ではなく大量の火山灰を噴出させたのは、彼女がキラウェアの炉心から必要なエネルギーを抽出・固化するための細工であった。
・マリアンはオティヌスと呼ばれる存在と通信し、アメリカの掌握などは雑務に過ぎず、主神の槍(グングニル)の創造という彼らの真の目的に向けた第一段階が着実に完了したことを確認していた。

5. 結果的にもたらされた科学サイドの隙

さらに、ハワイ諸島での騒動を解決に導いた上条当麻らの行動は、レイヴィニア=バードウェイの策略によって、グレムリンの中枢を表へ引き出すための釣り餌として利用された。

・学園都市の人間が一国の政治に介入したという事実が公になったことで、学園都市の協力機関27社が離反を表明し、協力関係を一方的に解消する共同声明を発表した。
・これにより科学サイドは内戦状態(分断)へと陥ることとなる。
・この分断は、グレムリンが科学技術を取り込みやすくなるという、彼らにとって非常に都合の良い隙を世界に生み出す結果となった。

まとめ

ハワイ諸島におけるグレムリンの動向は、50万人を犠牲にする大噴火やアメリカ政府の掌握すらも、すべては壮大な前座に過ぎなかったことを示している。表舞台で臨時雇用の魔術師たちに国際テロを実行させ、科学サイドの国々を政治的・軍事的に翻弄する一方で、その裏では主神の槍の創造という世界そのものを変変させかねない絶対的な計画が着実に進行していた。最終的に科学サイドの分断という致命的な隙を誘発した彼らの策略は、魔術と科学のバランスを崩壊させ、世界をさらなる混沌へと突き落とす極めて狡猾なものであったと言える。

メディア王の陰謀

『新約 とある魔術の禁書目録(3)』において描かれた、米国メディア王オーレイ=ブルーシェイクの陰謀と、その末路について解説する。

各種メディアや通信を掌握し、国家をも動かす影響力を持っていたオーレイ=ブルーシェイクであるが、独自のオカルト対策を国家に強いるための巨大な陰謀は、自身の弱点と政府側の超法規的措置によって完全に崩壊することとなる。その経緯と結末の全容は以下の通りである。

1. メディア王オーレイ=ブルーシェイクの力

オーレイ=ブルーシェイクは、各種メディア、通信、検索サービスなどを掌握し、大統領選挙にすら影響を与えるほどの強大な力を持つ米国のメディア王である。

・彼女はフリーコンパウンドアイズと呼ばれるカメラ監視網を秘密裏に悪用していた。
・これにより、米国内はおろかハワイ諸島における上条当麻たちの動きまで完全に監視・把握していた。

2. 陰謀の真の目的(合衆国の宗教大国化)

彼女の真の目的は、アメリカ合衆国を宗教大国へと作り変えることであった。

・オーレイは過去に行われたノーリッジ12というオカルト実験の情報を知っていた。
・それゆえ、現在のアメリカはオカルトに対する防備が手薄すぎると危惧する。
・政府中枢に新教ベースの儀礼を根付かせてオカルト攻撃への耐性を国家に与えるため、魔術結社グレムリンをオカルト対策顧問として迎え入れようと企てていた。

3. 陰謀の実行手段(PMCと魔術の混成部隊)

この計画を実現するため、オーレイは自身の圧倒的な資金力で東欧の巨大傭兵会社PMCトライデントを雇い入れ、グレムリンの魔術師サローニャ=A=イリヴィカらと手を結んだ。

・彼女たちはサローニャの魔術で政府や軍の中枢を内側から操る。
・ロベルト=カッツェ大統領をオカルトで掌握するか、銃弾で副大統領に権限を委譲させる計画を進めていた。
・同時に、ハワイ諸島をPMCの武力と対艦ミサイル網で孤立させる。
・活火山のエネルギーを人為的に解放する装置である起爆剤を用いてキラウェア火山を噴火させることで政治的空白を作り出し、合衆国掌握のための時間を稼ごうとした。

4. オーレイの急所リンディ

圧倒的優位に立っていたオーレイであったが、彼女には一つの大きな弱点が存在した。それは実の娘であり、ブルーシェイク家の次期継承者である8歳のリンディ=ブルーシェイクの存在である。

・リンディはオーレイの家庭内暴力から逃れるため、政府によって緊急保護されていた。
・名前や身元を変えてカウアイ島に匿われていた。
・合衆国の危機を救うため、大統領補佐官のローズラインがこのリンディを誘拐し、オーレイに対する交渉の切り札(人質)にしようと海兵隊有志を率いてカウアイ島へ向かう。
・オーレイもまた、血統とメディア網の世襲に固執していたため、娘を連れ戻そうとPMC部隊やサローニャをカウアイ島へ集中させた。

5. 陰謀の崩壊とすべてを失う末路

リンディを人質にしようとする海兵隊と、リンディを奪還しようとするPMC・魔術師の混成部隊から彼女を守るため、上条当麻、一方通行、浜面仕上やロベルト大統領らがカウアイ島で三つ巴の激戦を繰り広げた。

・結果として上条の活躍によりサローニャが倒され、指揮官を大統領に追い詰められたPMCトライデントも武装解除し降伏する。
・武力と魔術の要を失い計画が破綻したオーレイであったが、破滅はそれだけでは終わらなかった。
・ロベルト大統領を中心とした政府の動きにより、通常の裁判を介さない超法規的な措置が取られる。
・オーレイの資産や経済基盤が、生前相続という形で強制的に娘のリンディへ移行されたことが臨時ニュースで報じられた。
・メディア網、資金力、ネットワークのすべてを一瞬にして失い、自身の口座へのアクセス権すら奪われたオーレイは、側近から、出頭して刑務所へ収監されることが最も穏当な身の守り方だ、と提案されるという、すべてを失う末路を迎えた。

まとめ

オーレイ=ブルーシェイクの失脚は、強大な情報力と資金力を誇ったメディアの帝王であっても、国家の法を逸脱した陰謀と歪んだ家庭環境が生んだ弱点の前には無力であったことを示している。オカルトの脅威から国を守るという名目の裏で、大統領の排除や大規模テロを辞さない独善的な手段を選んだ結果、皮肉にも自らが執着した血統(娘)を大統領側に利用され、計画は根底から覆された。最終的に超法規的措置によってすべての資産を強制的に剥奪され、法に守られるために刑務所へ入るほかない状態へと追い込まれたその末路は、権力に溺れた黒幕の哀れな自滅を象徴している。

ハワイ諸島での危機

『新約 とある魔術の禁書目録(3)』において描かれた、ハワイ諸島における軍事・魔術的テロおよびキラウェア火山の危機について解説する。

本事件は、魔術結社「グレムリン」、東欧の巨大傭兵会社「PMCトライデント」、そして米国のメディア王「オーレイ=ブルーシェイク」が結託して引き起こした、合衆国の掌握および科学サイドの分断を狙う大規模な作戦である。その危機の全容と結末は以下の通りである。

1. ハワイ諸島の完全なる孤立と軍事侵攻

敵は偽装揚陸艦を用い、ハワイ諸島に数万人規模の傭兵部隊(PMCトライデント)を上陸させた。

・彼らはハワイ諸島の主要地域に対艦ミサイル(EU共同開発のNarwhal)を配備し、海上からの艦船や揚陸艦による支援を封じる。
・さらに、後述するキラウェア火山の人工的な噴火によって大量の火山灰を上空に発生させ、戦闘機などの航空機運用も不可能にした。
・これによりハワイ諸島を外部から完全に孤立させ、島内では魔術と近代兵器を組み合わせた混成部隊が米海兵隊の基地を次々と圧倒していった。

2. 魔術による政府と軍の内部侵食

この軍事侵攻を容易にしたのが、グレムリンの魔術師サローニャ=A=イリヴィカによる内部工作である。

・彼女はロシアの妖精レーシーの伝承を応用した魔術(ロシア産の針葉樹などを起点とする)を用いる。
・合衆国政府の中枢や軍の基地司令官などを秘密裏に操ることで、米軍の指揮系統を混乱に陥れた。
・大統領のロベルト=カッツェ自身も、ホワイトハウスにいれば自分も操られる危険があると判断し、単独で失踪・行動する事態に追い込まれていた。

3. 起爆剤の悪用とキラウェア火山の暴走

彼らの計画の核にあったのが、アメリカ軍が開発していた活火山制御装置である起爆剤の強奪と悪用であった。

・この装置は本来、特殊な爆薬で地下のマグマに刺激を与えて小規模な噴火を起こし、大噴火前に圧力を逃がすためのものであったが、使い方を誤れば意図的に大噴火を誘発させることが可能であった。
・敵はこの装置をキラウェア火山に設置し、意図的に大噴火を誘発させようとした。
・もしキラウェア火山が暴走した場合、地下で繋がっているマウナ・ロア山、マウナ・ケア山、フアラライ山までが連動して大噴火を起こし、ハワイ島全域が溶岩に洗い流され、推定50万人規模の犠牲者が出ると予測されていた。

4. 阻止作戦の展開と隠された真の目的

この危機を防ぐため、浜面仕上、番外個体、黒夜海鳥の三人はハワイ島へ向かい、巨大なカルデラの火口付近でドラム缶状の起爆剤が設置されているのを発見する。

・真正面からの戦闘で起爆剤を暴発させるのを避けるため、彼らは敵が立ち去った後に装置の固定具を破壊して倒すことで無力化を図った。
・しかし、全てを無力化する前に残りの起爆剤のランプが点灯し、大爆発が引き起こされてしまう。
・結果として起爆剤の作動は中途半端に終わり、溶岩が集落を呑み込む最悪の事態は免れたが、カルデラはマグマで満たされた溶岩湖と化し、上空には大量の火山灰が広がった。
・本来はドロドロの溶岩が噴出するはずのキラウェア火山から大量のサラサラした火山灰が舞い上がったのには裏の理由があった。
・ハワイ島の裏側で暗躍していた黒小人(ドヴェルグ)のマリアン=スリンゲナイヤーが、キラウェアの炉心からグレムリンの真の目的である主神の槍(グングニル)の創造に必要なエネルギーを抽出・固化するため、意図的に細工を施していたのである。

5. リンディを巡る三つ巴の激戦と結末

圧倒的劣勢の中、大統領補佐官ローズラインが率いる海兵隊有志が、オーレイの唯一の急所である娘のリンディ=ブルーシェイク(8歳)を誘拐して交渉材料にしようと動く。

・これに対し、リンディを回収しようとするトライデント・サローニャの部隊と、何の罪もない少女を守ろうとする上条当麻、一方通行、浜面仕上、そして大統領らの間で、カウアイ島を舞台に三つ巴の死闘が繰り広げられた。
・最終的に、上条当麻がサローニャの術式の起点を破壊して彼女を撃破し、ロベルト大統領の政治的交渉によって指揮官を失ったトライデントを武装解除させたことで、ハワイ諸島の武力衝突は終息した。
・オーレイも資産を生前相続の形で奪われ没落した。

まとめ

ハワイ諸島を襲った未曾有の危機は、上条当麻や大統領らの死闘によって最悪の大量虐殺こそ免れたものの、科学サイドに深い傷跡を残す結果となった。キラウェア火山の暴走から生じた大量の火山灰は、ハワイ諸島を孤立させる軍事的な足止めであると同時に、グレムリンの真の目的である主神の槍(グングニル)創造のためのエネルギー抽出の手段として利用されていた。さらに、この事件を解決するために学園都市の人間が一国の政治に介入したという事実が公になり、学園都市の協力機関27社が関係解消を表明する。これにより科学サイドは内戦状態(分断)へと陥り、結果としてグレムリンにさらなる隙を与えるという、巧妙かつ冷徹な結末を迎えることとなった。

魔術と科学の衝突

『新約 とある魔術の禁書目録』における「魔術と科学の衝突」および、それに伴う「科学サイドの分断」の変遷と構図について解説する。

この世界は、オカルトや神秘を扱う魔術サイドと、学園都市を筆頭に超能力開発や最新技術を推進する科学サイドに二分されている。第三次世界大戦の終結を経て、双方の対立は技術の融合や内部分断を伴う新たな局面へと突入している。その詳細な経緯は以下の通りである。

1. 科学と魔術の対立と第三次世界大戦

ローマ正教をはじめとする魔術サイドは、科学サイドの象徴である学園都市が世界のバランスを奪うことに強い恐怖を抱いていた。

・魔術サイドはロシア成教と交渉し、神の右席を表舞台へと引きずり出す。
・その結果として勃発した第三次世界大戦は、国家間の戦争という表層を超え、本質的には魔術と科学という大きな枠組みでの争いであった。

2. 魔術と科学の融合という新たな脅威

第三次世界大戦を経て、戦勝者となった科学サイドが世界に影響力を広げる中、終戦や科学偏重の新しい世界を否定する者たちが新たな魔術結社グレムリンを結成した。

・グレムリンの最大の特徴は、魔術と科学が融合した世界規模の敵対勢力であるという点である。
・彼らは純粋な魔術のみに依存せず、アメリカのメディア王や巨大傭兵会社PMCトライデントと結託する。
・最新鋭の軍事兵器やサイボーグ技術といった科学と、人を操る術式という魔術を組み合わせた混成部隊で戦場を席巻した。

3. 科学サイドの弱体化とハワイ諸島での画策

ハワイ諸島におけるグレムリンの目的は、単なる物理的破壊ではなく、科学サイドの支柱を担う先進各国への圧力とバランスの歪曲であった。

・アメリカ軍の活火山制御装置(起爆剤)を使ってアメリカ自身に大打撃を与える。
・これにより他の科学先進国に、軍備を増強すればするほど逆用されるリスクが増える、という恐怖を植え付け、軍備拡張をためらわせる政治的空白や停滞を生むことを狙った。
・さらに、アメリカを宗教大国に作り変え、魔術サイドと科学サイドのバランスを大きく崩す計画も進行していた。

4. 策略による科学サイドの分断と内戦状態の勃発

ハワイ諸島での騒乱が解決へと導かれた直後、学園都市の主要な協力機関27社が、学園都市との協力関係を一方的に解消するという共同声明を発表した。

・声明では、学園都市の人間(上条当麻ら)が一国の政治や大国の歴史を左右してしまった事実に対する強い憂慮が示された。
・協力機関側は、我々は学園都市の部下でも奴隷でもない、と主張し、自国を防衛するための措置として学園都市から離反した。
・この事態は偶然ではなく、上条らをハワイへと導いた魔術結社明け色の陽射しのボス、レイヴィニア=バードウェイが意図的に仕組んだ策略であった。
・彼女の真の狙いは、グレムリンの中枢にいる魔術師を表舞台へ引きずり出すための釣り餌を用意することであった。
・グレムリンは自らの魔術構造の中に科学サイドの技術を取り込もうとする性質がある。
・離反した協力機関27社は、第三次世界大戦時に学園都市から貸与された最新の無人兵器群を保有したまま宙ぶらりんの状態となったため、科学技術を必要としているグレムリンにとってこれ以上ない格好の餌として機能することとなった。

5. 上条当麻の絶望と第三の道への決意

ハワイの人々を救うという純粋な行動すらもバードウェイの計画に組み込まれ、結果的に科学サイドの分断とさらなる被害(学園都市製兵器同士の軍事衝突など)を生み出す隙を作らされたことに、上条当麻は激しいショックを受ける。

・自分が助かったせいで他の誰かが傷つくという重荷を、助けられたハワイの人々に背負わせるわけにはいかないと考えた上条は、この失敗を取り戻すまでは学園都市へ帰れない、と決意し、新たな戦いへと足を踏み出す。
・その一部始終を見ていた御坂美琴もまた、彼一人にすべてを背負わせず、同じ道を進んで重荷を共に背負うことを誓った。
・上条当麻は、科学と魔術が激突した際、どちらか片方のルールに傾けば双方が納得する結末には絶対にならないと考えている。
・彼が本質的な争いの解決を望むならば、科学にも魔術にも属さない三つ目の道を作る必要があると認識しており、それこそが彼自身の右手の力の正体を知り、過酷な戦いの中心へ再び向かっていく理由となっている。

まとめ

このように、魔術と科学の衝突は組織間の単純な対立から、互いの技術や思惑が複雑に絡み合う融合と内戦へと形を変えている。ハワイ諸島でのテロを阻止した上条当麻らの善意は、バードウェイの冷徹な策略によって協力機関27社の離反を招く釣り餌として利用され、科学サイドは致命的な内部分断へと追い込まれた。世界に生じたこの巨大な隙を前に、上条当麻は自身の甘さと向き合いながらも、科学でも魔術でもない第三の道を切り開くため、さらなる過酷な戦いへと身を投じる覚悟を固めるにいたったのである。

新約 とある魔術の禁書目録(2)レビュー
新約 とある魔術の禁書目録まとめ
新約 とある魔術の禁書目録(4)レビュー

登場キャラクター

学園都市

上条当麻

右手に「幻想殺し」を宿す少年である。御坂美琴や他のメンバーと共にハワイ諸島へ向かう。

・所属組織、地位や役職
 学園都市の学生。
・物語内での具体的な行動や成果
 大統領ロベルト=カッツェと共に起爆剤の確保やリンディの救出に動いた。サローニャの魔術の起点を見破り、彼女を打破する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 バードウェイの計画を知り、失敗を取り戻すまで学園都市に帰らないと宣言した。

御坂美琴

学園都市第三位の超能力者である。上条に同行し、彼を助けようとする。

・所属組織、地位や役職
 学園都市の学生。超能力者(レベル5)。
・物語内での具体的な行動や成果
 電撃を使って起爆剤の破壊を試み、大統領の救出などを手伝う。上条が一人で重荷を背負おうとした際に、同じ道を進むと宣言した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 上条への想いや、共に戦う決意を明確にしている。

一方通行

学園都市第一位の超能力者である。バードウェイと行動を共にする。

・所属組織、地位や役職
 学園都市の超能力者(レベル5)。
・物語内での具体的な行動や成果
 サンドリヨンの襲撃時や、ショッピングモールでの民間人救出などで能力を振るった。グレムリンの魔術師による罠で反射を奪われかけたが、大統領に助けられる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 魔術を使うと能力者に副作用が出る事実を身をもって知った。

浜面仕上

無能力者の少年である。黒夜海鳥や番外個体と行動する。

・所属組織、地位や役職
 学園都市の人間。
・物語内での具体的な行動や成果
 ハワイ島で起爆剤の無力化を試みた。リンディ救出のため、モンスタートラックを運転して大統領らと移動する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 黒幕の娘を助けるという等身大の目的を見つけ、行動の理由を掴んだ。

番外個体

一方通行に似た容姿の少女である。黒夜海鳥をからかいながら行動する。

・所属組織、地位や役職
 学園都市のクローン。
・物語内での具体的な行動や成果
 電気を操る力で黒夜海鳥のサイボーグ制御機構に干渉し、彼女を制御した。ハワイ島では磁力を使い、起爆剤の破壊やカルデラからの脱出に貢献する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 黒夜との相性の悪さを利用し、優位に立っている。

黒夜海鳥

サイボーグの少女である。浜面や番外個体と共にハワイへ連れてこられた。

・所属組織、地位や役職
 学園都市の暗部組織「新入生」の中核。
・物語内での具体的な行動や成果
 窒素爆槍を使ってハワイ島で起爆剤の破壊を行う。カウアイ島では即席の機械の腕を作り、魔術の副作用を地面へ逃がして断崖を崩落させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 第一位の思考の一部を移植されているため、致命傷への恐怖が薄い。

明け色の陽射し

レイヴィニア=バードウェイ

魔術結社「明け色の陽射し」のボスである。上条たちをハワイ諸島へ先導する。

・所属組織、地位や役職
 イギリスの黄金系魔術結社「明け色の陽射し」のボス。
・物語内での具体的な行動や成果
 サンドリヨンを撃破し、魔術師の情報を解析した。学園都市と協力機関を対立させるため、一連の事件を利用する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 自身の行動が正義の側ではないと認めている。

マーク=スペース

バードウェイの部下である。彼女の指示に従って動く。

・所属組織、地位や役職
 魔術結社「明け色の陽射し」の構成員。
・物語内での具体的な行動や成果
 ハワイの軍港でタロットカードを使い、傭兵たちを足止めした。バードウェイの指示でロシア成教へ情報を送るなどの補佐を行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

グレムリン

サローニャ=A=イリヴィカ

ロシア成教崩れの魔術師である。人間を操る魔術を使用する。

・所属組織、地位や役職
 魔術結社グレムリンの構成員。
・物語内での具体的な行動や成果
 政府関係者や軍人を操り、起爆剤の確保を試みた。カウアイ島で上条と戦うが、魔術の起点を破壊されて敗北する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ロシア再興の基盤を取り戻すという個人的な目的を持っていた。

サンドリヨン

フランス系の魔術師である。灰被りの童話をモチーフにした術式を使う。

・所属組織、地位や役職
 魔術結社グレムリンの構成員。
・物語内での具体的な行動や成果
 新ホノルル国際空港で上条たちを襲撃した。バードウェイに敗北後、口封じのために自殺を図る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 後にマリアンによって無力化され、改造の標的にされる。

マリアン=スリンゲナイヤー

褐色の肌を持つ少女である。現存する黒小人の一人として活動する。

・所属組織、地位や役職
 魔術結社グレムリンの構成員。黒小人(ドヴェルグ)。
・物語内での具体的な行動や成果
 キラウェア噴火からエネルギーを抽出した。サンドリヨンを「投擲の槌」で無力化し、生きたまま改造しようとする。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 オティヌスと通信し、主神の槍の完成が近い事実を示唆した。

オティヌス

マリアンと通信していた人物である。

・所属組織、地位や役職
 魔術結社グレムリンの構成員。
・物語内での具体的な行動や成果
 マリアンと通信を行い、計画の進捗を確認した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 主神の槍(グングニル)の完成を目指している。

ブリュンヒルド=エイクトベル

天然モノのワルキューレである。

・所属組織、地位や役職
 記載なし。
・物語内での具体的な行動や成果
 マリアンとの会話の中で、槍の片鱗として名が挙がった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アメリカ合衆国政府・軍

ロベルト=カッツェ

ヒスパニック系のアメリカ合衆国大統領である。事件解決のために単独行動をとる。

・所属組織、地位や役職
 アメリカ合衆国・大統領。
・物語内での具体的な行動や成果
 記者会見から失踪し、ハワイで上条たちと合流した。インペリアルパッケージを用いて敵の動向を探り、トライデントの指揮官を降伏させる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 国家と国民を守る強い意志を持つ。

ローズライン=クラックハルト

大統領補佐官の女性である。大統領の行動をサポートする。

・所属組織、地位や役職
 アメリカ合衆国政府・大統領補佐官。
・物語内での具体的な行動や成果
 政府内の異常事態を察知し、大統領の捜索を指揮した。オーレイを追いつめるため、海兵隊有志を率いてリンディの確保に動く。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 目的のためには強硬な手段も辞さない姿勢を見せる。

バックス=シェルヴァ

パールハーバー第三基地の司令官である。

・所属組織、地位や役職
 アメリカ海兵隊・パールハーバー第三基地司令官。
・物語内での具体的な行動や成果
 サローニャに操られ、大統領に銃を向けた。周囲の兵士に取り押さえられる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 操られていたため、自己の意志に基づく行動は描かれていない。

アルフレッド=サードマン

グランドアロー空軍基地の司令官である。

・所属組織、地位や役職
 アメリカ空軍・グランドアロー空軍基地司令官。
・物語内での具体的な行動や成果
 ハワイ諸島の孤立を受け、通常弾頭の弾道ミサイルで火山灰を吹き飛ばす案を検討した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 本土からの支援が絶望的な状況で、使える手段を模索する。

マーティン=フラワーズ

大統領に協力する海兵隊の伍長である。

・所属組織、地位や役職
 アメリカ海兵隊・伍長。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローズライン率いる少数派から大統領を守り、武装解除させた。大統領への協力を申し出る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 強いアメリカの体現者として大統領を支持する。

エルート=ラックス

大統領に協力する海兵隊の軍曹である。

・所属組織、地位や役職
 アメリカ海兵隊・軍曹。
・物語内での具体的な行動や成果
 フラワーズ伍長らと共に、大統領の味方についた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

シャオロン=ハルヴァード

大統領に協力する海兵隊の上等兵である。

・所属組織、地位や役職
 アメリカ海兵隊・上等兵。
・物語内での具体的な行動や成果
 フラワーズ伍長らと共に、大統領の味方についた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ニケ=カノークス

パールハーバー第三基地の警備兵である。

・所属組織、地位や役職
 アメリカ海兵隊・隊員。
・物語内での具体的な行動や成果
 西門ゲートでロベルトに押され、彼らの基地進入を許可した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 大統領の威圧に気圧され、道を譲る。

アーク=ダニエルズ

海洋巡視艇の操縦を行う海兵隊員である。

・所属組織、地位や役職
 アメリカ海兵隊・隊員。
・物語内での具体的な行動や成果
 不時着した輸送機から大統領らを救出した。対艦ミサイルの攻撃を受け、海へ飛び込んで難を逃れる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

シークレットサービス

大統領などの要人警護を行う組織である。

・所属組織、地位や役職
 アメリカ合衆国・シークレットサービス。
・物語内での具体的な行動や成果
 記者会見場で失踪した大統領を追った。ローズラインの指示でリンディの確保に動く。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ブルーシェイク家

オーレイ=ブルーシェイク

アメリカのメディア王である。事件の黒幕の一人として活動する。

・所属組織、地位や役職
 米国メディア王。
・物語内での具体的な行動や成果
 アメリカを宗教大国にする計画を進めた。監視網F.C.E.を使って情報の掌握を図るが、生前相続の手続きを利用されて全資産を失う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 最後には出頭を検討するまでに追い詰められる。

リンディ=ブルーシェイク

オーレイの娘である。家庭内暴力が原因で政府に保護されている。

・所属組織、地位や役職
 ブルーシェイク家の次期継承者。
・物語内での具体的な行動や成果
 カウアイ島のログハウスで暮らしていたが、傭兵や海兵隊に狙われた。上条たちに救出される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 オーレイの資産や経済基盤をすべて相続する形になった。

ハーザック=ローラス

リンディの保護者役を務める大男である。

・所属組織、地位や役職
 リンディの保護者。
・物語内での具体的な行動や成果
 カウアイ島でリンディと生活する。襲撃を受けた際、上条たちの指示に従ってリンディを連れて逃げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼が植えていた苗が、サローニャの魔術の起点として利用されていた。

PMCトライデント

キネシック=エヴァーズ

PMCトライデントの指揮官である。

・所属組織、地位や役職
 PMCトライデント・指揮官。元フランス海軍参謀。
・物語内での具体的な行動や成果
 カウアイ島の港で海兵隊に包囲された。大統領の交渉に応じ、ハワイ諸島全域の部隊にサローニャの支援を命じる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 サローニャの身柄を確保し、立場を逆転させようと目論んだ。

レイモンド=カールマン

PMCトライデントの傭兵である。

・所属組織、地位や役職
 PMCトライデント・所属兵。
・物語内での具体的な行動や成果
 軍港で米海軍を襲撃する。過剰な破壊を咎められ、グレムリンの魔術師に右手首を炭に変えられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 魔術の脅威に直面し、恐怖を植え付けられる。

民間人・その他

エドワード=トーキー

商談のためハワイを訪れた白人男性である。

・所属組織、地位や役職
 民間人。
・物語内での具体的な行動や成果
 サローニャに操られ、強盗としてホテルを襲撃させられそうになった。落下した電光掲示板の下から忽然と姿を消す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 一方通行によって下水道へ引きずり込まれた。

ウェック=ルナサンド

サーフインストラクターの男性である。

・所属組織、地位や役職
 民間人。サーフインストラクター。
・物語内での具体的な行動や成果
 逃げ遅れた子供を探して給油所に隠れる。銀の軍服に銃を突きつけられたが、一方通行と美琴に助けられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 お人好しな性格が描かれている。

スティーブ

ウェックのサーフィン教室の練習生である。

・所属組織、地位や役職
 民間人。
・物語内での具体的な行動や成果
 はぐれてしまい、銀の軍服たちに誘導されて砂浜を歩かされた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ジェニー

金髪の少女である。観光客としてハワイを訪れる。

・所属組織、地位や役職
 民間人。
・物語内での具体的な行動や成果
 記者会見場の近くで大統領を一目見ようとする。大統領から握手をされ、頭を撫でられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ジェニーの母親

ジェニーと共にハワイを訪れた女性である。

・所属組織、地位や役職
 民間人。
・物語内での具体的な行動や成果
 大統領の姿をビデオカメラで撮影しようとする。大統領にカメラを奪われ、緊急声明を録画された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

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展開まとめ

序章 五○番目の州で Crisis_of_Blue_Ocean.

オアフ島の大統領失踪

記者会見のロベルト

一一月一〇日、オアフ島の記者会見場で、米国大統領ロベルト=カッツェは記者達に向けて質問時間を始めた。彼はヒスパニック系で三番目の大統領であり、高校中退では初の大統領と呼んでくれと返すような人物だった。

ロベルトは、スーツやネクタイを支援者の品で固めながらも、押し付けられているような雰囲気を漂わせていた。だが、その抜けた印象を親近感に変えることができる点は、彼の稀有な才能だった。

黄金の堆積物

記者は、第三次世界大戦終盤に出現した黄金の輪や黄金の骨などを、なぜハワイ諸島近海へ投棄するのかと質問した。ロベルトは、大型物体を大量に投棄すれば海流が変わり、生態系や酸素供給に影響するため、世界中の海を調査した結果、条件に合う場所がハワイ近海だったと答えた。

地元の漁師やサーファーの懸念については、フロリダのスパコン、グラマラスデビルの演算結果を提示したと述べた。だが説明を受けた者達がすぐ眠っていたと冗談めかし、会見場を自分のペースに巻き込んでいた。

記者達との応酬

記者が、黄金の物体を自国領海へ引き込んだのは秘密裏に調査するためではないかと追及すると、ロベルトはそれを意見ではなく反米宣伝だと切り返した。さらにドイツの諜報部門の名までほのめかし、EUとの摩擦を自ら口にしかけた。

女性記者がEU圏の資金拠出の足並みについて尋ねると、ロベルトは合衆国の大統領には合衆国の質問をするべきだとかわした。その後もセクハラや離婚を巡る軽口を記者達と交わし、失言をしても支持率を上げる奇妙な政治家らしさを見せていた。

少女のビデオカメラ

会見場近くでは、観光客の母娘が大統領を一目見ようとしていた。五歳ほどの金髪の少女ジェニーは、小さな星条旗を振りながら大統領と握手できるかと母親に尋ねた。

母親は、戦後の警備態勢が厳しく、車列に近づくのは危険だと考えていた。だが、娘が大統領がこちらへ来ると言い出し、母親がレンズを向けようとした瞬間、何者かがビデオカメラを奪い取った。

大統領の緊急声明

カメラを奪ったのはロベルト本人だった。彼は母娘に謝りつつ、少女の手を握って頭を撫でた後、カメラに自分の顔を映して早口で語り始めた。

ロベルトは、政府中枢で異常事態が発生していると告げた。詳細は不明だが外的要因によるものであり、昨日まで正常だった人間が内側から支配されるように合衆国の敵になると説明した。ホワイトハウスにいれば自分もそうなる危険があるため、自らの意思で消息に関する情報を消すと宣言した。

自ら消える大統領

ロベルトは、この失踪は誘拐ではなく、自分の意思によるものだと繰り返した。そして、自分は合衆国政府の一員として、国内で進行している危機に対処すると語った。

彼はビデオカメラを母親へ返し、警察へ通報する必要はないと告げた。この映像が合衆国に残って読み込めることに意味があるとし、母娘には何事もなかったようにハワイを楽しむよう言い残した。

車道を渡る背中

ロベルトは小型のアタッシェケースを掴み、母娘を遠ざけると、車が行き交う車道を強引に渡っていった。すぐに会見場の裏口が開き、複数の黒服達がカメラの近くを横切って彼を追った。

母親は、ただ一目見るだけのはずがとんでもない映像を撮ってしまったことに興奮した。ジェニーが大統領のお嫁さんになれるかと口にしたため、母親はその不穏な一言で我に返った。

第一章 先制攻撃はどっちがやる? First_Contact.

ハワイ空港のサンドリヨン

空港の上条と美琴

一一月一〇日、オアフ島の新ホノルル国際空港は観光客や業者で混雑していた。その中に、上条当麻と御坂美琴がいた。上条はバードウェイ達との集合を待ちながら、飛行機に良い思い出がない様子を見せていた。

美琴は、今度は一人ではないと言った勢いで同行したものの、いきなり海外へ来た状況に動揺していた。空港アナウンスの英語が分からない上条を見て、美琴は自分が主導権を握れるのではないかと内心で揺れていた。

カフェのバードウェイ

空港内のカフェでは、レイヴィニア=バードウェイと一方通行が他の仲間との合流を待っていた。バードウェイは甘すぎる飲み物に顔をしかめ、一方通行は店名から分かるだろうと呆れていた。

バードウェイは、アレイスターの影響力が弱まっているとはいえ、大勢を学園都市の外へ出すだけでも苦労したため、全員を同じ便には乗せられなかったと説明した。グレムリンは幻想殺しの生存を確認したうえで、このハワイ諸島で何かを起こすはずであり、戦うには準備が必要だった。

浜面と黒夜

浜面仕上は空港の案内板の前で立ち尽くしていた。英語が使えないうえ、隣には黒夜海鳥がいたため、彼はなぜこの組み合わせなのかと嘆いていた。

黒夜は、学園都市に残せば再びフレメアを狙うかもしれず、かといって殺す決断もできないため、同行させられていた。浜面は、ハワイで土産を悩むどころか、空港内で命の危機に直面している状況を嘆いた。

番外個体の牽制

黒夜が浜面へ危険な態度を見せたところへ、番外個体が背後から近づき、黒夜の首に腕を回した。番外個体は、電気を操る力で黒夜のサイボーグ制御機構へ干渉した。

黒夜は体の自由を乱されて絶叫した。番外個体は、機械と電気系能力者の相性の悪さを指摘し、ハワイには学園都市の研究施設のような設備もないため、黒夜がすぐに弱点を塞ぐことも難しいと見ていた。

対テロ警報

空港内に流れたアナウンスに、一方通行はすぐ異変を察知した。表向きは床のワックス処理への注意だったが、該当箇所から離れた場所まで放送されていることから、対テロ警報だと判断した。

一方通行は、不自然に置かれたスーツケースが見つかったのだろうと推測した。だがバードウェイは、そのスーツケースを置いたのがグレムリンとは限らないと述べた。彼女は、思想型の組織であるグレムリンが、自分達の名を便乗犯や模倣犯に利用されることへ神経質に反応すると見越し、こちらから罠を仕掛けていた。

スーツケースの罠

上条は、バードウェイが爆弾を仕掛けたというメールを受け、ワックス処理の警戒区域へ美琴と共に走り込んだ。周囲の客は臭いや作業中の雰囲気で自然と離れていたが、上条達は制止を無視して進んだ。

上条はスーツケースを囲む警備員らしき男達を見つけたが、バードウェイへ連絡すると、グレムリンはもう来ていると告げられた。直後、バードウェイが術式を解除したことで、隠れていた黒服達とグレムリンの魔術師が姿を現した。

サンドリヨン

現れた魔術師は、金髪で色白の美しい女だった。薄い膜を重ねたようなドレスと、体を締め付ける現代的なコルセットをまとい、絵本のお姫様のようでありながら異物感を放っていた。

彼女はグレムリンに所属する魔術師であり、サンドリヨンを名乗る存在だった。上条は、ラジオゾンデ要塞を学園都市へ落とそうとした組織の一員であることを思い出し、本能的な異物感と理性的な嫌悪を覚えた。

ガラスの靴

サンドリヨンは、カボチャの馬車のお婆さんにガラスの靴の試練を求めるように詠唱した。直後、彼女へ殺到した黒服達は一斉に足をもつれさせ、床へ倒れ込んだ。

黒服達は革靴の先端を押さえて絶叫していた。サンドリヨンの術式は、自分の足のサイズである二二・五センチ以外を認めず、それより小さければ骨の間を伸ばし、大きければ指を切断して整えるものだった。ただし最初は警告として、関節を外す程度に留めていた。

距離と条件

一方通行は天井近くの鉄骨から状況を観察していた。サンドリヨンの攻撃は床の上にいる者全てではなく、一定の距離内にいる者へ影響するようだった。

しかし魔術である以上、距離やベクトルを無視して攻撃している可能性も捨てられなかった。一方通行は、サンドリヨンの術式条件を見極めようとしたが、未知の攻撃に自分の反射が通じる保証もないと考えていた。

滑走路のバードウェイ

バードウェイは空港の滑走路を歩きながら、携帯電話で上条へ指示を出していた。彼女は、サンドリヨンが灰被りに宗教的モチーフを上書きして攻撃術式に転化しているため、素人の少女が王子を感嘆させるほどのダンス技術を備える童話の性質から、高速回避も可能だと説明した。

バードウェイは、サンドリヨンが幻想殺し対策として用意された戦力だと見ていた。足を潰す術式と高速戦闘は、上条の右拳を当てさせないための露骨な対策だった。

即席ガス銃

浜面達は通路の角から、大型消火器を束ねた即席のガス銃でサンドリヨンを狙っていた。鋼鉄パイプから放たれる攻撃は、直撃すれば手足の骨を砕くほどの威力を持っていた。

しかしサンドリヨンには一発も当たらなかった。彼女は飛び道具を避けながら、社交ダンスのような動きで上条へ接近し、上条の右腕を絡め取った。

上条の盾

サンドリヨンは上条の体をリードするように動かし、浜面達の射線を遮った。さらに上条を盾にすることで、美琴の電撃も封じた。

サンドリヨンはカボチャの馬車を求める詠唱で衝撃波を放ち、浜面達のいる通路の角を破壊した。続けて再びガラスの靴の術式を起動し、距離五〇〇、人数無制限として、中央ロビーにいる敵をまとめて潰そうとした。

タンクローリーの突入

サンドリヨンが一方通行の伏兵にも気づいていると上条が悟った時、バードウェイは中央ロビーにいることを確認し、それだけ分かれば十分だと告げた。直後、中央ロビーの巨大なガラス窓が一斉に砕け散った。

五〇トンの航空燃料を積んだ超大型タンクローリーが、全速力で中央ロビーへ突っ込んできた。バードウェイは運転席ではなく屋根の上に立っており、上条にはサンドリヨンの足を押さえるよう指示した。

サンドリヨンの跳ね飛ばし

上条は必死に手を伸ばし、サンドリヨンの動きを数秒遅らせた。タンクローリーは上条と美琴の頭上すれすれを通過し、車高の差によって二人を車体の下へ逃がし、サンドリヨンだけを前方へ弾き飛ばした。

タンクローリーはそのまま壁へ激突し、運転席は空き缶のように潰れた。バードウェイは屋根から平然と降り立ち、車輪で隙間を縫わせるのが大変だったと言った。

灰被りの不死身

上条は、サンドリヨンから情報を聞き出す必要があるのに容赦がなさすぎると抗議した。しかしバードウェイは、グレムリンは一筋縄ではいかないと答えた。

潰れたタンクローリーと壁の間から、サンドリヨンの指が現れた。灰被りは王子の前では完全無欠のお姫様であり、失敗がありえないように外的要因が再調整されるため、ただの大質量では彼女を止めきれなかった。

夜明け

バードウェイは、灰被りのドレスには深夜一二時のリミットという機能制限があると見抜いていた。彼女は杖に絡みついた金の懐中時計を示し、夜明けという象徴を当てはめた。

直後、五〇トンの航空燃料が着火し、中央ロビーは凄まじい熱と光に包まれた。上条は美琴を抱えて柱の陰へ逃げ、美琴は磁力で鉄製品の壁を作って空港職員達を庇った。

前哨戦の終わり

爆発の後、中央ロビーは不自然な白に近い炎の海となっていた。その中で、バードウェイは杖を回しながら立ち、タンクローリーの残骸からボロボロになったサンドリヨンを引きずり出した。

サンドリヨンはドレスが溶け、火傷も負っていたが、爆発の中心にいながら五体満足だった。バードウェイは彼女の金髪を掴み、まずは前哨戦が終わったと退屈そうに告げた。

逃げた浜面

浜面は黒煙の上がる国際空港の外で息を切らしていた。爆発騒ぎで大勢が避難していたため、走り回る浜面を咎める者はいなかった。

浜面は、どちらがテロリストか分からないと嘆き、警察と揉める前に隠れていた方がいいと考えた。だが黒夜が番外個体とはぐれた可能性を示すと、浜面は別の危機を感じて絶叫した。そこへ上条が現れ、何をしているのかと声をかけた。

美琴と番外個体

美琴は、逃走の混乱で仲間とはぐれ、番外個体と鉢合わせていた。番外個体は、美琴の携帯電話の地図にキューピッドアロー本店のピンが刺さっていることを見つけ、彼女をからかった。

美琴は、ハワイでタグリングを買うつもりだったことを認めた。番外個体は、まだ付き合ってもいない相手へ指輪を渡すのは重いと突っ込み、さらにオリジナルがクローンに負けていると煽ったため、美琴は前髪から火花を散らした。

サンドリヨンの尋問

空港第三ターミナルの倉庫では、バードウェイと一方通行が倒れたサンドリヨンを見下ろしていた。サンドリヨンの半透明のドレスは奪われており、彼女は体型矯正用下着だけをまとっていた。

バードウェイは、サンドリヨンが肉体とドレスを合わせて一個の術式にしていたため、服を脱がせれば術式は使えなくなると説明した。彼女はサンドリヨンの顔に羊皮紙の符を貼り、質問への拒否感情から仲間や目的の情報を読み取ろうとした。

外部干渉

バードウェイがサンドリヨンの仲間と目的を読み取ろうとした時、サンドリヨンの口から別の声が発せられた。バードウェイは即座に杖を口の中へ突っ込んだが、サンドリヨンは外部から操られ、折れた歯の痛みを無視して霊装を噛み砕いた。

一方通行が瓦礫を蹴り飛ばしても、操られたサンドリヨンは難なく回避した。彼女は外部干渉者に待っていたと告げ、魔術系の解除キーを使って完全に体を預けるよう促された。

口封じ

バードウェイは杯に変わった杖で攻撃しようとしたが、サンドリヨンの体内で何かが承認され、彼女の目の色が変わった。外部干渉者は、グレムリンの情報は守ると告げた。

サンドリヨンは、自分の口の中にあった杖の鋭い破片を取り出し、その先端をこめかみへ突き刺した。彼女は驚いた顔のまま倒れ、声を失った。バードウェイは、聞き込みは難しくなったが、口封じのためにグレムリンが接触してきた以上、魚はかかったと判断した。

第二章起爆剤 Natural_Bomb.

起爆剤を巡るハワイの攻防

ホテルの補佐官

ホテルファイアフライの一室で、大統領補佐官ローズライン=クラックハルトは、ロベルト=カッツェの捜索状況を確認していた。彼女は、ホワイトハウスや議会、軍関係者の一部が正体不明の外的要因によって突然合衆国の敵へ切り替わる異常事態を把握していたが、その仕組みまでは掴めていなかった。

ローズラインは、大統領が自ら姿を消した理由を、国家規模の危機を個人で打開しようとしているためだと見ていた。副大統領にも黒幕に利用される危険がある以上、大統領の権限が移る事態は避けねばならず、彼女は黒幕に知られる前にロベルトを捜し出すよう命じた。

レンタカーの大統領

ロベルト=カッツェは銀色のアタッシェケースを持ち、レンタカーショップで車を借りようとしていた。店員は彼を大統領の物真似芸人だと思い込み、免許証の情報を読み取っても本物とは信じなかった。

ロベルトはボロボロのオープンカーに乗り、インペリアルパッケージを車載機器へ接続した。それは大統領権限で政府のクラウドシステムへアクセスできる装置であり、彼は怪しい人間達のアクセス履歴から、黒幕がオアフ島で保管されている起爆剤の情報を狙っていると突き止めた。

喫茶店の連絡

空港近くの日本茶専門喫茶店で、上条当麻、浜面仕上、黒夜海鳥はバードウェイから連絡を受けていた。バードウェイは、サンドリヨンを倒したことで、人間を操るタイプの魔術師を引きずり出せたと説明した。

その魔術師は自分が表に出ず、操った人間を使うタイプだった。バードウェイは、操られた被害者を採取し、術式を解析すれば、術者の位置やラインを辿れると語った。上条はその戦い方をえげつないと感じながらも、代案を出せなかった。

ホテル前のエドワード

ホテルファイアフライ前では、エドワード=トーキーが商談のために来たと思い込まされていた。実際にはホテル名も部屋番号も誤っており、彼が見知らぬ者を見れば、契約書と小切手を狙う強盗だと判断する状況が作られていた。

エドワードは銃を持っており、四九一一号室にいる者達を襲う可能性があった。しかし彼がホテルへ入る前に、上から落下した電光掲示板が彼を直撃した。救助隊が掲示板をどけた時、そこにいるはずのエドワードは忽然と消えていた。

雨水管の採取

一方通行は、エドワードを含む三人目の被害者を下水道へ引きずり込んだ。バードウェイは、操っている魔術師が被害者の五感を使って情報を得ているなら、自然な形で意識を失わせれば危機を察知されにくいと説明した。

三人の被害者を材料にすれば、術式の解析が可能になるはずだった。バードウェイは、これで操っている術者の居場所や手駒を割り出せると見込み、一方通行に見学するかと告げた。

喫煙所の魔術師

ショッピングモールの喫煙所では、短い金髪の少女の魔術師が携帯電話で連絡を取っていた。彼女は、補佐官グループへの襲撃が失敗したことを報告し、予定通り起爆剤を狙うと話した。

その後、彼女は相手から横槍が入っていた可能性を知らされ、確証が得られたと軽く受け止めた。彼女のそばには、操っている黒人の大男が立っており、魔術師は彼を裏技として使うつもりだった。

レーシーの解析

バードウェイは、パピルスを使って魔術師の術式を解析していた。彼女は、相手がロシア成教崩れであり、妖精レーシーの逸話を使っていると見抜いた。

レーシーは森の動物達の王であり、賭け事によって動物の支配権を奪う存在だった。今回の魔術師は周囲の環境を森、人間を動物と見立てて操っているとバードウェイは判断した。だが、その余裕の直後、彼女は背後から銃撃を受けた。

大統領への襲撃

同じ頃、ロベルトの車へステーションワゴンが突っ込んだ。大統領は無事だったが、相手は拳銃を向けてきた。

ロベルトは、襲撃犯が操られていないことを見抜いた。襲撃犯は人質を取られており、大統領を確保すれば家族を守れると信じていた。ロベルトは、同じ一%の可能性に賭けるなら、犯人に従うより自分達の手で人質を救う方に賭けるべきだと語った。

少女の人質

喫煙所の魔術師は、黒人の少女を人質にしていた。その少女はマイナスドライバーをこめかみに突きつけたまま静止しており、その父親を脅してバードウェイを撃たせていた。

魔術師は、自分の術式で直接操った人間はバードウェイに感知されるが、人質を使って正気の人間を脅せば警戒網をすり抜けられると考えていた。彼女は、銃弾一発で魔術師も死ぬという前提を利用していた。

吊られた男

銃撃を受けたはずのバードウェイは、倒れた床から顔を上げた。彼女はタロットの吊られた男を利用した身代わりの術式で、銃弾を自分ではなくカードへ受けていた。

一方通行は大男を攻撃しようとしたが、バードウェイは彼が魔術師に操られているのではなく、人質を取られて脅されているだけだと見抜いた。彼女は大男へ、今ならまだ取り返しがつくが、もう一度撃てば本当に自分を殺すことになると告げた。

大男の崩壊

黒人の大男は、自分の行為を正当化してきたが、一度撃って失敗したことで、その理屈は崩れていた。彼は自分の手で誰かを傷つけた衝撃を知り、再び引き金を引くことができなくなった。

大男は絶叫しながら銃口を自分の口へ向けた。一方通行とバードウェイは同時に蹴りを放ち、拳銃を弾き飛ばして彼を気絶させた。バードウェイは、グレムリンがこちらの解析を知って対策を練ったことに疑問を抱いた。

大統領の説得

ロベルトは襲撃犯に対し、犯人に従うより人質を救う道を選ばないかと提案した。彼は、黒幕が操っている人間の五感を通じて情報を集めているのではないかと考えていた。

襲撃犯は完全には操られておらず、ただ人質を取られているだけだった。そのため、彼の情報は黒幕に筒抜けではなく、人質救出の奇襲に使える可能性があった。ロベルトは、その一%に賭けるべきだと説いた。

カメラの監視網

喫茶店の上条達は、バードウェイが銃撃されたことで、敵がこちらの居場所を探知する別の手段を持っている可能性を考えた。バードウェイは、魔術ではなく科学サイドの方式、つまりカメラによる監視網の利用を疑った。

美琴と番外個体はショッピングモールへ走り込み、無線電波へのジャミングを始めた。敵がカメラ映像を利用しているなら、その情報網を断つ必要があった。

喫茶店襲撃

バードウェイは、上条の顔は敵に知られており、敵の方から近づいてくると告げた。その直後、拳銃を持った大男が喫茶店へ突入し、上条達へ発砲した。

上条は黒夜を突き飛ばして床へ飛び込み、浜面も慌てて障害物を越えて逃げた。敵にとって上条当麻は、ラジオゾンデ要塞で生存を確認した対象であり、専用の対策を講じられている存在だった。

子供達の罠

喫煙所の魔術師は、連絡が途絶えたことで自分の協力者達が戻らないと判断した。彼女は子供達へ機関拳銃と爆弾を渡し、警報ブザーやGPSだと偽って説明した。

子供達は感情の乏しい瞳で銃と爆薬を持たされていた。魔術師は大混乱を起こして逃げるつもりだったが、その直後に通信が圏外となり、かつて脅していた一般人達が拳銃を持って喫煙所へ突入してきた。

子供達の救出

魔術師は子供達を動かし、家族である一般人へ銃を向けさせた。しかし発砲の直前、一方通行が天井を崩して瓦礫の壁を作り、子供達が持つ爆弾入りのバッグを蹴り飛ばした。

爆発は有効圏外で起き、子供達は助かった。上条は喫煙所へ走り込み、人質の子供達へ右手で触れて正気に戻していった。一方通行は、ここは自分向きの戦場だとして、上条に子供達を連れて離れろと告げた。

銀色の武装集団

黒煙の中から、一方通行の前に銀色の特殊な軍服を着た五人組の武装集団が現れた。彼らは電子迷彩と思われる装備をまとい、特殊なアサルトライフルや無反動砲、情報収集機器を持っていた。

一方通行は反射で銃弾を跳ね返し、武装集団を次々に薙ぎ払った。しかし最後の女の襲撃犯は、一方通行に魔術的なトリガーを踏ませ、能力者が魔術を使った時の副作用を引き起こした。反射を奪われかけた一方通行へ銃口が向けられた。

大統領の銃声

女の襲撃犯が一方通行へ発砲しようとした瞬間、横合いから銃弾が飛び、彼女の体を撃ち抜いた。さらに追撃の銃声が響き、女は抵抗できなくなった。

銃を撃ったのはロベルト=カッツェだった。彼は、子供を助けるために来たのに見せ場を取られたと悪態をつき、一方通行に自分が大統領だと名乗った。

グレムリンと起爆剤

大統領は、ホワイトハウスや議会、軍、警察、情報機関にオカルトの影が広がっていると一方通行へ語った。一方通行は、それがグレムリンである可能性を伝えた。

二人は、グレムリンが政府中枢を乗っ取ろうとしている可能性を考えたが、途中から電子迷彩の武装集団が割り込んできた点に違和感を覚えた。最初から安定した兵隊を使えるなら、民間人を使う理由が薄いからである。

サローニャの素性

バードウェイのパピルス解析により、人間を操っていた魔術師の素性が判明した。名前はサローニャ=A=イリヴィカ、十五歳、エカテリンブルグ出身で、ロシア成教崩れだった。

サローニャは第三次世界大戦でウラジオストクに配備されたが、大した活躍はできず、終戦の混乱に紛れて失踪していた。浜面は、彼女が敗戦をひっくり返そうとしているのかと考えたが、バードウェイはグレムリン全体の思想と個人の目的は一致するとは限らないと釘を刺した。

キラウェアの危機

一方通行から、グレムリンが起爆剤を狙っているという連絡が入った。起爆剤とは、小規模誘発式活火山制御装置のことであり、地下マグマに刺激を与えて小規模噴火を起こし、大噴火前に圧力を逃がすための装置だった。

しかし使い方を誤れば、逆に大噴火を促すこともできた。グレムリンが狙っている以上、標的はハワイ諸島最大級の活火山であるキラウェアだと考えられた。起爆剤でキラウェアを暴走させれば、地下で繋がるマウナ・ロア山、マウナ・ケア山、フアラライ山まで連動し、ハワイ島全域が溶岩に洗い流される危険があった。

第三章 灼熱の溶岩の狙い Case_to_War.

キラウェア噴火とハワイ孤立

バスの作戦会議

上条当麻、美琴、バードウェイはバスで移動しながら、グレムリンがキラウェアを人為的に噴火させる狙いを整理していた。美琴は、政府関係者を操れるなら暴力に訴えず国の仕組みを変えられるのではないかと疑問を抱いた。

バードウェイは、キラウェア噴火がアメリカ一国ではなく科学サイド全体へ打撃を与えるためのものだと説明した。アメリカの装備と組織を使ってアメリカ自身に亀裂を入れ、観光客を含む多数の犠牲を出せば、各国の糾弾と補償問題によって国際的な混乱が広がる構図だった。

科学サイドへの圧力

バードウェイは、アメリカが自国の設備で被害を出せば、他の先進国も軍備増強をためらうようになると語った。強い装備を持てば持つほど、それを逆用されるリスクも増えるためである。

上条は、グレムリンが直接すべてを壊すのではなく、きっかけだけを作り、科学サイドの国同士に争わせようとしているのだと理解した。五〇万人の犠牲さえ、グレムリンにとっては世界の向きを変えるための起点に過ぎなかった。

パールハーバー

一方通行はロベルト=カッツェの電動カートに乗り、起爆剤の保管場所を尋ねた。ロベルトは、海兵隊が開発を主導していたこと、ハワイ諸島に多数の基地があることを踏まえ、目的地をパールハーバーだと告げた。

上条、美琴、バードウェイ、ロベルト、一方通行は、海兵隊パールハーバー第三基地付近で合流した。基地は広大であり、強行突破すれば火の海になり、起爆剤の有無も分からなくなるため、バードウェイは真正面から入る方法を選んだ。

ヨットの浜面達

浜面仕上、番外個体、黒夜海鳥は、ハワイ島へ向かうため私設ヨットハーバーで船を盗もうとしていた。浜面は操船経験がなく、人目や銃社会に怯えながら鍵を開けていた。

番外個体は黒夜に猫耳パーツをつけて闇の雰囲気を壊そうとし、黒夜は泣き出してしまった。浜面達は騒ぎながらも高級ヨットを出し、キラウェア方面へ向かった。

大統領の正面突破

ロベルトは西門ゲートで、自分が大統領であると名乗り、認証装置で本人確認を通した。警備兵ニケ=カノークスは状況を把握できず混乱したが、ロベルトは誘拐未遂の危機が続いており、自分を救出した民間人達も保護すべきだと押し切った。

ニケは大統領暗殺時の警備責任を持ち出され、気圧されるように道を譲った。こうして上条達は、大統領の権威と口先によって基地内へ踏み込んだ。

レーシーの条件

基地内で、バードウェイはサローニャ=A=イリヴィカの術式を説明した。彼女の魔術はロシアの森の妖精レーシーに基づき、ロシア産の針葉樹やその加工物に触れた人間を森の一員とみなして支配するものだった。

上条は、紙やコルクのような形で仕込まれれば気づけないと知り、嫌悪感を示した。バードウェイは、サローニャの支配には準備と人数の制限があるため、末端ではなく司令官だけを操って命令系統を利用していると見ていた。

基地司令官バックス

基地司令官バックス=シェルヴァが現れ、ロベルトを護衛すると申し出た。彼はサローニャに操られている可能性が高かったため、上条達は銃撃を警戒した。

しかしバードウェイは、バックスがここで大統領を殺せば、基地を間接操作する唯一の接点を失うため、今は殺せないと見抜いた。ロベルトが起爆剤の所在を問いただすと、バックスは滑走路で輸送機を使ってハワイ島へ向かう許可を出していると漏らした。

三機の輸送機

上条、美琴、ロベルトは一機の輸送機へ走った。一方通行とバードウェイはそれぞれ別の機に向かった。

上条達がカーゴスペースへ突入すると、輸送機は後部カーゴドアを開けたまま加速を始めた。ロベルトは外へ転がり落ちそうになり、美琴が片手で彼を掴んだが、機体はそのまま離陸し、落下すれば即死する状況になった。

サローニャの奇襲

コンテナの陰からサローニャが現れた。彼女は輸送機のパイロットを操り、大型機に異常なアクロバット飛行をさせ、機内の重力を変化させた。

サローニャは、幻想殺しへの対抗策として、異能の力が絡まない拳銃で上条を殺そうとした。上条はコンテナのロックを外して盾にし、美琴は大統領を支えながら一〇億ボルトの雷撃で反撃した。

偽の積み荷

美琴がコンテナを破壊すると、中から出てきたのは軍用生活キットだった。起爆剤ではなく、上条はサローニャ自身も偽情報で踊らされていたのだと見抜いた。

サローニャは自分も利用されていたと悟ったが、すぐに輸送機前部へ拳銃を撃ち込んだ。パイロットが撃たれた隙に、彼女はパラシュートを掴み、雷撃を受けながらも機外へ飛び出した。

本物の起爆剤

ハワイ島のキラウェア付近では、浜面達が複数の男達によって設置される巨大なドラム缶状の装置を目撃した。装置は火口を囲むように並び、四本足と杭で固定されていた。

番外個体は、本物の起爆剤は別ルートで運び込まれており、サローニャも真の計画を知らされていなかったのだと推測した。浜面は、正面戦闘では装置を暴発させかねないため、設置者達が去ってから無力化するしかないと判断した。

不時着への選択

輸送機では、パイロットが銃弾を受けて重傷を負っていた。彼は海へ機首を向け直すから上条達だけ飛べと促した。

しかし上条、美琴、ロベルトは逃げず、不時着を手伝うことを選んだ。パイロットの指示でカーゴハッチを閉じ、海上不時着に必要な操作を進めることになった。

起爆剤の無力化

浜面達は、男達が去った後、起爆剤の足や杭を破壊し始めた。黒夜の窒素爆槍と番外個体の磁力が実際の破壊に役立ち、浜面は倒れた装置を押して無力化していった。

だが全てを倒す前に、残った起爆剤の赤いランプが点灯した。番外個体は間に合わないと判断し、浜面を高圧電流で気絶させ、黒夜に担がせて撤退した。三人はカルデラの縁まで逃げ延びたが、その直後、腹に響く爆発音と巨大な熱、爆風が全てを覆った。

輸送機の不時着

ラナイ島近海では、軍用輸送機が海に浮かんでいた。上条達とロベルト、重傷のパイロットは生き残り、海兵隊の巡視艇が救助に向かった。

しかし彼らは生還を喜ばず、ハワイ島方面の空を見ていた。そこには火山灰と思われる黒い雲が広がっており、キラウェア噴火が起きたことを示していた。ただしロベルトは、キラウェア本来の噴火とは違い、膨大な火山灰が上がる様子に違和感を覚えた。

対艦ミサイル

救助の最中、ラナイ島方面から細長い白煙を引く対艦ミサイルが飛来し、巡視艇の一隻を直撃した。ロベルト達は海へ飛び込み、続くミサイルから逃れた。

ミサイルはEU共同開発のNarwhalと見られたが、ロベルトは型式や流通経路から、登録外軍旗や傭兵会社の関与を疑った。ハワイ諸島の主要地域に対艦ミサイルが配備されているなら、船舶による支援も困難になると判断した。

ハワイの孤立

ロベルトは、キラウェア噴火による火山灰で航空機が使えず、対艦ミサイルによって海からの支援も封じられると見た。ハワイ諸島は外部から孤立しつつあった。

敵は、オカルトによる人間操作だけでなく、常識的な大戦力も持っていることを示した。ロベルトは、計画が一線を越え、グレムリンにとって都合の良い段階へ進んだのだと判断した。

第四章 孤立とルールの崩壊 Trident.

ハワイ諸島の孤立とリンディ救出

空軍基地の焦燥

カルフォルニア州のグランドアロー空軍基地では、ハワイ諸島の異常事態が伝わり、基地司令官アルフレッド=サードマンが航空支援の可否を確認していた。ハワイには偽装揚陸艦から大量の兵士や兵器が上陸しており、火山灰の影響で航空機の運用も難しくなっていた。

アルフレッドは艦船支援も対艦ミサイルで封じられると知り、通常弾頭の弾道ミサイルで火山灰を吹き飛ばす案まで検討した。実現は難しいと分かっていたが、彼は万一の機会に備えて使えるカードを集めようとしていた。

軍港の傭兵達

オアフ島の海軍ブラックポート基地では、銀色の軍服を着た傭兵達がフェンスを越えて侵入していた。米海軍の艦艇は次々と爆発し、レイモンド=カールマン達は米軍の象徴が崩れていく光景に高揚していた。

戦場では、通常兵器だけでなくグレムリンの魔術師も動いていた。魔術は弾幕や遮蔽物をすり抜け、傭兵達の火器と組み合わさることで米軍を圧倒していた。

グレムリンの威圧

グレムリンの女性魔術師は、米軍を必要以上に破壊するなと傭兵達を制した。レイモンドが反発すると、彼女は彼の右手を炭に変え、すぐに元へ戻して恐怖だけを残した。

そこへ明け色の陽射しのマーク=スペースが現れた。彼は小アルカナのカードを構え、各地で魔術師同士の戦闘が始まっている中、撤退の時間を稼ごうとしていた。

燃えるパールハーバー

ローズライン=クラックハルトは政府専用車で追撃を受けながら、パールハーバー第三基地へ向かっていた。だが到着した先では、基地の防衛線はすでに破られ、傭兵と魔術師の混成部隊が米海兵隊を圧倒していた。

その危機の中、一方通行とバードウェイが現れた。一方通行は銀の軍服を蹴り飛ばし、バードウェイは魔術で傭兵達を薙ぎ払い、米軍の撤退と戦力温存のために時間を稼ぎ始めた。

サローニャの確認

モロカイ島のモーテルで、サローニャ=A=イリヴィカはハワイ諸島に広がる戦火を見ていた。彼女は、ようやく自分達の規模に近づいたと感じ、銀の軍服の兵士と作戦の進行を確認した。

サローニャは依頼人であるノーリッジ12と連絡を取り、合衆国掌握の準備が進んでいることを確認した。一方で、自分を陽動に使ったことへの不満を隠さず、次に騙せば大統領と一緒に相手の首も取ると警告した。

大統領の疑念

ラナイ島の無人のバーで、上条当麻、美琴、ロベルト=カッツェは身を潜めていた。ロベルトは、政府関係者がすべてサローニャの魔術で操られていたわけではないと気づいた。

彼は、現実的な方法で従わせられる者はそうし、どうしても従わない者だけに魔術を使っているのではないかと考えた。サローニャの力は、人間操作そのものではなく、別の本質を応用したものかもしれないという疑いが生まれた。

オカルトという免罪符

ロベルトは、サローニャの魔術が政府全体を操っているように見えたこと自体が、裏切り者達の保険になっていると考えた。いざ責任を問われた時、自分達はオカルトに操られていた被害者だと主張できるからである。

第三次世界大戦後、世界はオカルトの存在を認め始めていた。そのため、実際には少数しか操れなくても、政府全体が被害を受けているように錯覚させる効果があった。

オーレイ=ブルーシェイク

ロベルトは、現実的な力で政府を侵食しているもう一つの敵を探り、PMCトライデントを雇える資金力と情報網を持つ人物へ絞っていった。その結果、米国メディア王オーレイ=ブルーシェイクの名が浮上した。

オーレイは各種メディア、通信、検索サービスを掌握し、大統領選にすら影響を与える存在だった。ロベルトは、彼女がF.C.E.というカメラ監視網を秘密裏に動かし、上条達の動きを掴んでいる可能性を見抜いた。

溶岩のハワイ島

ハワイ島では、浜面仕上、番外個体、黒夜海鳥が火山灰と溶岩の中で状況を確認していた。起爆剤の効果が中途半端だったため集落は無事だったが、火山灰、硫化ガス、噴石が周囲を覆い、さらに麓では傭兵達の戦闘が進んでいた。

浜面は通話でオーレイの情報を聞き、上条達と合流する必要を感じた。彼は敵のエアクッション船に紛れ込むため、銀の軍服に偽装して移動する方針を立てた。

オーレイの宣言

ローズラインの携帯電話に、オーレイ=ブルーシェイクから連絡が入った。オーレイは、数時間後には米国掌握が完了し、ローズライン達は危険な反政府勢力にされると告げた。

オーレイは、ノーリッジ12という一二種のオカルト実験に触れ、アメリカはオカルトへの防備が手薄すぎると語った。彼女は合衆国を宗教大国へ作り変え、グレムリンをオカルト対策顧問として迎え入れるつもりだった。

リンディという急所

通話を切った後、ローズラインはオーレイの急所に気づいた。カウアイ島には、オーレイの娘でありブルーシェイク家の次期継承者であるリンディ=ブルーシェイクが保護されていた。

リンディは家庭内暴力の問題から政府に緊急保護され、名前も身元も変えて暮らしていたため、オーレイも居場所を把握できていなかった。ローズラインは、リンディをさらえばオーレイへの切り札になると考え、使える兵を集め始めた。

リンディ救出

ロベルトは、ローズラインがリンディを人質にしようとしていることを知り、激しく動揺した。上条は、リンディが何もしていない以上、黒幕の関係者というだけで命の保証を奪われるのは間違っていると断じた。

リンディは家庭内暴力で人生を壊され、ようやく静かに暮らせるようになった八歳の少女だった。上条は彼女を助けると決め、ロベルトも政府が保護した以上は守る責任があるとして同行を決意した。

美琴の同行

上条は美琴に、これは自分達の選択であり、隠れていてもよいと告げた。しかし美琴は、リンディに銃を突きつけて心の傷をこじ開けるような行為に怒りを覚えていた。

美琴は、ハワイ諸島を取り戻すために命を張るのはリンディの役目ではないと考えた。そして、それは自分達がやるべきことだとして、上条達と共に動くことを選んだ。

エアクッション船

浜面達は、敵から奪った軍用エアクッション船でラナイ島へ向かっていた。浜面は、黒幕の娘を助けるという等身大の目的ができたことで、ようやく自分が命を張れる理由を掴んでいた。

一方で、番外個体は黒夜をからかい続け、黒夜は操られて恥ずかしい動きをさせられていた。だが黒夜は、敵が自分達を騙されているのではなく、わざと泳がせて弱点へ案内させようとしていると見抜いていた。

サローニャの釣り出し

パールハーバー第三基地跡では、一方通行とバードウェイが戦闘後に合流していた。ローズラインが消え、リンディを狙いに行ったことも把握していた。

バードウェイは、リンディがオーレイにとって重要である以上、必ず敵が動くと見ていた。直接オーレイを釣ることは難しいが、オーレイとの関係に不信を抱くサローニャなら、主導権を握るためリンディ回収へ動く可能性が高かった。サローニャを叩けば、オーレイとグレムリンによる合衆国掌握計画は破綻するのだった。

第五章 その強さは何のためにあるべきか The_Old_Glory

カウアイ島の最終戦

カウアイ島上陸

上条当麻、一方通行、浜面仕上、御坂美琴、番外個体、黒夜海鳥、レイヴィニア=バードウェイ、ロベルト=カッツェは、浜面が調達したエアクッション船でカウアイ島へ上陸した。海兵隊はまだ来ていなかったが、サローニャ側のPMC部隊はすでに島へ展開しており、リンディの居場所を探して動き出していた。

バードウェイは、自分達の動きがリンディを追い詰める引き金になると告げた。それでも救出には一度リンディを窮地に立たせる必要があり、ロベルトはサニーウォッチャー4-19という居場所をあえて口にして、敵を誘い出した。

オーレイの余裕

オーレイ=ブルーシェイクは、豪華な部屋のように整えられた場所で、自分自身も盤面の駒だと意識するために撮影を続けていた。彼女はリンディを連れ戻すと断言し、ブルーシェイクの血筋へメディア網を継がせることに固執していた。

サローニャやトライデントが余計な動きをするのは、ハワイ諸島を制圧している余裕があるからだと考えたオーレイは、彼らを追い詰めて単純な行動しかできない状況へ追い込もうとした。そのために、ローズライン率いる海兵隊有志をサローニャ達へぶつけるよう誘導した。

三つ巴の始まり

浜面、バードウェイ、ロベルトはオフロードカーでカウアイ島東部の山岳地帯を進んでいた。リンディは北西部のナパリコーストにいるため、地形上、島を回り込む必要があった。

その最中、ローズライン率いる海兵隊有志が超低空を疾走する改造ステルス機で海岸線を空爆し、トライデントの対艦ミサイル網を破壊した。続いて揚陸艇から兵士達が上陸し、リンディを巡る三つ巴の戦場が本格化した。

逃げ遅れたウェック

サーフインストラクターのウェック=ルナサンドは、練習生達を避難させた後、はぐれた少年スティーブを探して給油所に隠れていた。彼は自分にできることなどないと何度も言い聞かせたが、子供を見捨てることには納得できなかった。

ウェックが救出のために動こうとした瞬間、銀の軍服に銃を突きつけられた。そこへ一方通行、美琴、番外個体が現れ、銀の軍服を吹き飛ばした。険悪な空気のままでも、一方通行と美琴は観光客達を助けるため戦場へ向かった。

サローニャの本音

サローニャ=A=イリヴィカは、リンディ回収班のエアクッション船に乗ってナパリコーストへ向かっていた。彼女は、グレムリンもトライデントも合衆国の宗教国家化もどうでもよく、最終的に自分がどれだけ得をするかが重要だと語った。

サローニャの目的は、第三次世界大戦後に自国を踏み台にした学園都市や合衆国から、ロシア再興のための基盤を取り戻すことだった。彼女はオーレイにも従う気はなく、リンディを利用して自分の目的を果たそうとしていた。

リンディのログハウス

ナパリコーストの断崖には、リンディ=ブルーシェイクと保護者役のハーザック=ローラスが暮らすログハウスがあった。リンディは教材を嫌がりながらも、ハーザックの話を好み、静かな生活を送っていた。

ハーザックは、カメラを備えたトンボ型機械を見つけ、リンディの居場所が知られたと悟った。直後、トライデントの兵に襲われたが、上条と黒夜が現れて彼を助け、リンディを連れて逃げるよう伝えた。

左腕の異変

上条と黒夜はログハウスを遮蔽物にして、上陸してきたトライデントとグレムリンの混成部隊を迎え撃った。だが、花の香りの直後に上条の左腕が突然力を失い、顔の左半分にも痺れが走った。

上条は、サローニャが自分の右手対策として調整した魔術を使っていると気づいた。彼は黒夜に即席の追加腕を作らせる一方、バードウェイへ連絡し、サローニャの術式の解析を急がせた。

モンスタートラックの救出

浜面達はモンスタートラックでリンディとハーザックを発見した。しかし銀の軍服がフロントガラスを潰し、リンディを奪って逃げようとした。

浜面はあらかじめ車のイグニッションとアースを細工しており、運転席へ乗り込んだ敵を高電圧で無力化した。彼はリンディを車内へ確保し、ロベルトは怯える彼女へ、必ずハーザックの元へ帰すと約束した。

黒夜の崖崩し

黒夜は自家発電用変圧器や給湯器を材料に、即席の腕を作り上げた。だが彼女の狙いは窒素爆槍の増設ではなく、能力者が魔術を使った際の副作用を、サイボーグの曖昧な体の範囲を利用して外部へ押し付けることだった。

黒夜は即席の腕を地面へ繋ぎ、拒絶反応のような破壊を断崖へ流した。その結果、断崖の一部が崩落し、上陸していた傭兵や魔術師達を海へ落とした。黒夜も腕を損傷したが、サローニャだけは崩落を逃れて上条の前に残った。

リンディを巡る襲撃

モンスタートラックで逃げる浜面達は、美琴と合流した。美琴は上空から車へ飛び乗り、リンディの無事を確認したが、その直後にトライデントの戦車が追ってきた。

美琴は車から飛び降り、真正面から戦車を止めた。しかし次に、海兵隊有志の砲撃が降り注ぎ、車は中破した。浜面とロベルトは引きずり降ろされ、海兵隊の少数派はリンディを交渉材料として連れ去ろうとした。

マーティンの合流

海兵隊の少数派は、ロベルトを不要な存在として撃とうとした。しかし別の海兵隊員が威嚇射撃を行い、彼らを取り囲んで武装解除させた。

その男はマーティン=フラワーズ伍長と名乗り、ロベルトへ敬礼した。彼は、虐待に苦しむ子供を生贄にして手に入れる強いアメリカではなく、そうした人々の盾となるための強いアメリカを信じると語り、ロベルトに協力する意思を示した。

レーシーの正体

バードウェイは、サローニャの術式がロシアの小さな森を支配するレーシーに由来し、植物と動物の酸素と二酸化炭素のサイクルを通じて飛び地を作るものだと推測した。通常なら効果を定着させるには数日必要であり、今日来た上条達へすぐ影響が出るのは不自然だった。

サローニャは植物の種や花粉を使い、森の所有物を傷つけた者へペナルティを与えるように上条の体を麻痺させていた。上条は、サローニャが昆虫や小動物などの単純な生物を支配し、森の住人からの排斥という形で攻撃していると見抜いた。

苗の起点

上条は、急造の飛び地には核となる植物が必要だと考えた。ハーザックが襲撃直前に菜園へ植えていた苗こそが、サローニャの術式の起点だと気づいたのである。

上条は右手だけで地面を這い、菜園へ辿り着いた。そして柔らかい土に植えられていた苗を幻想殺しの右手で引き抜いた。術式の起点を失ったことで、上条の四肢は動きを取り戻した。

サローニャへの拳

サローニャは、戦後のロシアが学園都市や合衆国に都合よく作り変えられていると訴えた。上条は、その話が本当なら戦うべき相手はサローニャではなく、正義を利用して彼女達を苦しめている者達だと返した。

術式を破られたサローニャは、得意の足技も通じなくなっていた。上条は、サローニャの立っている場所から見えるものも見ると告げた上で、命懸けで戦うべき相手は彼女ではないと言い、右拳を叩き込んだ。

トライデントの指揮官

ノヒリ港では、PMCトライデントの指揮官キネシック=エヴァーズが海兵隊に包囲されていた。ロベルトは、彼が元フランス海軍参謀であり、EUとの繋がりを持つ可能性を見抜いた。

ロベルトは、トライデントがこのまま戦えば合衆国と戦争をした集団として裁かれ、法で守られずに虐殺に近い扱いを受けかねないと迫った。キネシックは一度はサローニャ支援を全軍へ命じたが、サローニャが倒れたことで計画の前提は崩れた。

撤収への条件

サローニャ敗北の知らせを受けたロベルトは、キネシックに無線を拾わせた。サローニャを取り戻して立場を逆転させる道は閉ざされ、オーレイとグレムリンの合衆国掌握計画も崩れていた。

ロベルトは、裁判なしの禁固三〇〇年を出発点として、部隊の迅速な撤収、混乱の終息、グレムリンの情報開示を条件に減刑の余地を示した。つまり全軍を武装解除し、知っていることをすべて話せと命じたのだった。

終章 頼りになるバードウェイ Queen_Period.

ハワイ騒乱後の分断

消えた魔術師達

PMCトライデントとグレムリンからハワイ諸島を奪還した数時間後、上条当麻達はホノルルインターナショナルホテルへ集まっていた。ロベルト=カッツェは、トライデントの武装解除と投降を確認し、ハワイ諸島の問題は一段落したと告げた。

しかし、トライデントの兵士に紛れていたはずのグレムリンの魔術師達は、サンドリヨンとサローニャ=A=イリヴィカを除いて姿を消していた。上条達は、グレムリンが個々の異質さだけでなく、組織的な離脱の手際まで備えていることを思い知らされた。

オーレイの力

上条は、最後の黒幕であるオーレイ=ブルーシェイクがまだ手つかずであることを指摘した。ロベルトは、彼女本人を見つけるのは難しいが、リンディ=ブルーシェイクの協力があれば、オーレイを特別にしている力を奪えると語った。

一方、オーレイは隠れ場所で、トライデントの失敗とグレムリンとの協力関係の断絶を知った。彼女はまだ経済力が残っていると考え、政治空白を作って時間を稼ぎ、別の組織との接触で立て直そうとしていた。

生前相続

オーレイはニュースで、自分の資産や経済基盤が生前相続の形でリンディへ移されたことを知った。彼女はそんな意思表示をしていないと叫び、口座へアクセスしようとしたが、すでに閲覧権限を失っていた。

オーレイのメディア網、資金力、ネットワークは一気に崩れ始めた。側近は、大統領を中心とした動きによって、通常の裁判では解決できない手順が正当化されていると見ていた。資金を失えば味方も消え、敵だけが残るため、側近は出頭して刑務所へ収監されることが最も穏当な身の守り方だと提案した。

協力機関の離反

上条達はホテルの大型テレビで、学園都市協力機関二七社が学園都市との協力関係を一方的に解消するという共同声明を見た。声明では、学園都市の人間が一国の政治を左右したことへの憂慮が示され、協力機関は学園都市の部下でも奴隷でもないと主張していた。

上条は、ハワイ諸島での行動が学園都市と協力機関の分断に利用されたと悟った。協力機関が学園都市から離れれば、科学サイドの内側に隙が生まれ、グレムリンが科学技術を取り込む格好の機会になると考えたのである。

バードウェイへの疑念

上条は、ハワイ諸島でのグレムリン情報がすべて明け色の陽射しに集中していたことを思い出した。彼はバードウェイに電話をかけ、こうなると分かっていて自分達を動かしたのかと問い詰めた。

上条は、バードウェイもグレムリンだったのかと叫んだ。しかしバードウェイは、想像に任せるとだけ答え、通話を切った。上条は、自分達の行動が科学サイドの内戦へ繋がる可能性を知り、携帯電話を握り締めた。

美琴の制止

美琴は、上条がバードウェイに叫ぶ声を聞き、彼の異変に気づいた。上条の表情は、かつて美琴自身がクローン事件で追い詰められた時と同じ、破滅へ向かう者のものだった。

上条は、すべては仕組まれており、ハワイ諸島を救ったこともバードウェイの計画に組み込まれていたと悔やんだ。そして、失敗を取り戻すまでは学園都市へ帰れないと告げた。

同じ道

美琴は、ハワイ諸島の人々を救った事実まで失敗扱いすることは許さないと反論した。たとえ誰かに利用されていたとしても、上条達がグレムリンから人々を守ったことは否定できなかった。

上条は、それでも助けられた人々に重荷を背負わせたくないと考えていた。美琴は、もしハワイでの選択が間違いだったなら自分も選ぶ側にいたのだから、上条一人に背負わせないと告げた。そして、自分達は同じ道を進んでいるのだと上条に念を押した。

忘れられた指輪

美琴は、手の中にある二つのタグリングを思い出した。キューピッドアローのタグリングは、ペアごとに唯一の模様が刻まれるチタン製の指輪であり、浮気防止のおまじないという噂もあった。

美琴は基本的に非科学的なものを信じないが、ハワイ諸島で奇怪な現象を見ても、やはり簡単にオカルトだとは認められなかった。その指輪も、彼女の手の中に隠されたままだった。

黒小人マリアン

一方、褐色の肌と銀色の三つ編みを持つ少女は、スマートフォンの見本機を霊装とリンクさせていた。彼女はキラウェア噴火の時点で目的は終わっていたと語り、起爆剤だけでは説明できない火山灰の発生に、別の細工があったことを示した。

少女は、キラウェアから必要なエネルギーを抽出して固化し、第一段階は完了したと話していた。彼女はオティヌスと通話し、主神の槍への道は着実だと笑った。

臨時雇用の魔術師達

傷だらけのサンドリヨンは、グレムリンの目的は合衆国を宗教国家に変えることではなかったのかと問い詰めた。褐色の少女は、グレムリンは大戦の負け犬軍団ではなく、サンドリヨン達は犠牲が必要な時に集められた臨時雇用にすぎないと告げた。

怒ったサンドリヨンは攻撃しようとしたが、褐色の少女が作った投擲の槌に撃ち抜かれて無力化された。少女は自らを現存する黒小人の一人、マリアン=スリンゲナイヤーと示し、サンドリヨンを生きたまま別の形に改造しようとしていた。

バードウェイの釣り餌

バードウェイは空港で、マーク=スペースと共にハワイを離れようとしていた。マークは上条へ真意を話してもよかったのではないかと尋ねたが、バードウェイは、科学サイドを分断して協力機関を宙ぶらりんにしたのは、グレムリン中枢を表へ引き出すための釣り餌だと説明した。

しかしバードウェイは、それが正義の行いではないことも認めていた。協力機関二七社を学園都市から離反させ、世界を守る側から引き離したのは自分であり、負傷者やさらなる被害が出る可能性もある。彼女は、自分が正義の側に立っているとは一言も言っていないと、上条へ向けるように呟いた。

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