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とある魔術の禁書目録フィクション(Novel)読書感想鎌池和馬

小説「新約 とある魔術の禁書目録 (10)」感想・ネタバレ

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新約とある魔術の禁書目録 10の表紙画像(レビュー記事導入用) とある魔術の禁書目録

新約 とある魔術の禁書目録(9)レビュー
新約 とある魔術の禁書目録まとめ
新約 とある魔術の禁書目録(11)レビュー

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  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
    3. ■ 物語の特徴
  2. 書籍情報
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
  5. 考察・解説
    1. 上条当麻とオティヌス
    2. デンマークの逃避行
    3. 世界全人類との対立
    4. 世界規模の追跡
    5. 連続する防衛戦
    6. 学園都市第一位の襲撃
    7. 魔神の救済と罰
  6. 登場キャラクター
    1. 学園都市
      1. 上条当麻
      2. 御坂美琴
      3. 一方通行
      4. ミサカネットワークの総体
      5. 雲川鞠亜
      6. カエル顔の医者
    2. グレムリン
      1. オティヌス
      2. トール
      3. マリアン=スリンゲナイヤー
      4. 投擲の槌(ミョルニル)
      5. ヘル
      6. ヨルムンガンド
      7. フェンリル
    3. イギリス・イギリス清教・騎士派・王室派
      1. エリザード
      2. キャーリサ
      3. 騎士団長
      4. ウィリアム=オルウェル(アックア)
      5. インデックス
      6. 神裂火織
      7. ステイル=マグヌス
    4. ローマ正教
      1. ローマ教皇
      2. アニェーゼ=サンクティス
      3. ルチア
      4. アンジェレネ
    5. ロシア成教
      1. ロシア成教の総大主教
      2. サーシャ=クロイツェフ
      3. ワシリーサ
    6. アメリカ合衆国
      1. ロベルト=カッツェ
      2. イングリット=マーティン
    7. フランス
      1. 傾国の女
    8. 魔術結社「明け色の陽射し」
      1. レイヴィニア=バードウェイ
    9. 魔術結社「新たなる光」
      1. レッサー
    10. オッレルス勢力
      1. オッレルス
      2. シルビア
      3. ブリュンヒルド=エイクトベル
    11. 真のグレムリン
      1. 僧正
      2. ネフテュス
      3. 娘々
      4. ゾンビ少女
      5. キメラちゃん
    12. その他の個人
      1. アレイスター=クロウリー
      2. フレイヤ(豊穣神フレイア)
      3. 三毛猫
  7. 展開まとめ
    1. 序章とある少年は人類の敵となりて Introduction_00. 
    2. 第九章 V.S. 『白と黒の翼携え世に抗う者』 Round_01. 
    3. 第一〇章 V.S.『二〇億の猛威』 Round_02. 
    4. 第一一章 V.S.『神威にたゆたう修道女達』 Round_03. 
    5. 第一二章 V.S.『魔を屠る四つの刃』 Round_04. 
    6. 第一三章 V.S.『魔剣を解放せし鍛冶師』 Round_05. 
    7. 第一四章 V.S.『表舞台の警察』 Round_06. 
    8. 第一五章 V.S.『無慈悲なる科学の尖兵』 Round_07. 
    9. 第一六章 V.S.『電子に愛されし申し子』 Round_08. 
    10. 第一七章 V.S.『図書館の主と魔術の女王』 Round_09. 
    11. 第一八章 V.S.『魔神に対する者』 Round_10. 
    12. 第一九章 V.S.『槌振るいし全能神』 Round_11. 
    13. 第二〇章 V.S.『???』 Round_12 (Secret). 
    14. 終章 争いの果てに、右手が掴むものは Finale_8. 
  8. 同シリーズ
    1. 新約 とある魔術の禁書目録
    2. とある魔術の禁書目録
    3. 外伝
    4. とある暗部の少女共棲
    5. 同著者シリーズ
    6. ヘヴィーオブジェクトシリーズ
  9. その他フィクション

物語の概要

■ 作品概要

『新約 とある魔術の禁書目録(10)』は、科学と魔術が交差する世界を描いた大人気ライトノベルシリーズの一作である。物語は、魔神オティヌスを救うため、上条当麻が全世界を敵に回してデンマークを横断する過酷な逃避行を中心に展開する。オティヌスから魔神の力を奪って無力化し、世界の混乱を穏便に収めるため、二人はオティヌスの目が沈む「ミミルの泉」を目指す。しかし、その行く手には学園都市の超能力者、巨大宗教の精鋭、合衆国軍、そして『グレムリン』の面々など、かつて頼もしかった味方や強敵たちが次々と立ちはだかる。上条は絶望的な状況の中で満身創痍になりながらも、たった一人の少女の命と笑顔を守るために戦い抜いていく。

■ 主要キャラクター

  • 上条当麻:右手に異能を打ち消す「幻想殺し(イマジンブレイカー)」を持つ高校生。オティヌスが正義の名の下に殺されることを良しとせず、彼女に正当な裁きを受けさせるために世界を敵に回す決意を固める。
  • オティヌス:『グレムリン』を束ねる魔神の少女。妖精化の術式によって体内崩壊が進む中、自らの力を放棄するためミミルの泉を目指す。自らが救われることを拒んで最後に上条を突き放そうとするが、最終的に15センチほどのサイズになって生き残る。
  • 一方通行(アクセラレータ):学園都市第一位の超能力者。世界を破壊する可能性を持つオティヌスを排除し、自分の知る者達を守るため、最初の刺客として上条の前に立ち塞がる。
  • 御坂美琴:学園都市第三位の超能力者。無人兵器ファイブオーバーの群れをハッキングして上条の前に現れ、彼の真意を問いただして激突する。
  • オッレルス:魔神になり損ねた青年。オティヌスへの復讐に燃える聖人たちの間に割って入り、両腕を破壊されながらも身を呈して事態を収拾する。

■ 物語の特徴

本作の最大の魅力は、かつて世界を崩壊させた巨悪であるオティヌスを救うため、主人公が自ら「人類の敵」となり、全世界を相手に戦うという逆転の構図にある。かつての仲間であるイギリス清教の聖人たちや学園都市の超能力者たちが、もっとも困難な壁として立ちはだかる絶望感は圧巻と言える。どんなにボロボロになっても己の信念を貫く上条の姿や、戦いの果てにオティヌスが人類から与えられる「幸せな世界を一番近い場所で永遠に眺め続ける」という特異な罰の形も、読者に強烈な印象を残すポイントとなっている。

書籍情報

新約 とある魔術の禁書目録 10
(A Certain Magical Index)
著者:鎌池 和馬 氏
イラスト:はいむらきよたか 氏
出版社:株式会社KADOKAWA電撃文庫
発売日:2014年5月10日
ISBN:9784048665322

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あらすじ・内容

史上最強の味方たちが、もっとも困難な壁として立ちはだかる。
魔神オティヌスを救うため、全世界を敵にまわした上条当麻。 今まで頼もしい味方だった、指折りの権力者、超能力者、魔術師、それらすべてが“強敵”として上条に襲いかかってくる。 この闘いは、上条の人生の中でも生存確率がもっとも低く、もっとも絶望的だと思われた。 ……つまり、上条が帰った世界は、まるで『あの地獄』と同じ光景だったのだ。 だが彼は屈しない。今度は一人ではなかったから。 オティヌスを全世界から救う方法。それは『魔神オティヌスの無力化』だった。 魔神から人に戻るためには、デンマークの古城にある『ミミルの泉』から魔神の片目を取り出す必要がある。 さあ、目的は決まった。 上条は戦う。たった一人の少女の命と笑顔を守るために。

新約 とある魔術の禁書目録(10)

感想

読んでまず感じたのは、ここまで孤独な戦いを続ける主人公を見たことがあっただろうか、ということである。

魔神オティヌスを救うため、上条当麻は全世界を敵に回す。

その目的は、デンマークにある「ミミルの泉」で彼女が失った「目」を取り戻し、魔神の力を手放させること。ただ、それだけのために、これまで積み重ねてきた信頼や絆までも敵に回して進まなければならない。

この状況だけでも十分につらかった。

特に印象に残ったのは、次々と立ちはだかるかつての仲間たちである。

一方通行や御坂美琴をはじめ、魔術師たちや巨大宗教勢力、さらにはアメリカ軍までが上条の前へ現れる。

これまでなら共に戦ってきた相手ばかりだからこそ、「敵として戦わなければならない」という状況がとても苦しかった。

まさに歴代ボスとの連戦を見ているような感覚だった。

それでも上条は諦めない。

何度倒されても立ち上がり、拳を交え、言葉をぶつけながら少しずつ前へ進んでいく。

力でねじ伏せるだけではなく、相手と本気で向き合い続ける姿は、やはり上条らしいと思った。

そんな張り詰めた空気の中で、インデックスとの決着が結局いつもの「噛みつき」だった場面には思わず笑ってしまった。

ここまで壮絶な物語でも、こうした禁書らしいやり取りがあると少し安心する。

終盤は、とにかく胸が苦しかった。

ようやくミミルの泉へたどり着いたにもかかわらず、今度はオティヌス自身が上条を守るため、自ら命を絶とうとする。

彼女なりの優しさだと分かるからこそ、見ていてつらかった。

そんな彼女を救うため、上条が迷わず飛び込み、命懸けで術式を壊して抱き止める場面は、本当に印象深い。

ここまで積み重ねてきた物語が、あの一瞬にすべて詰まっていたように感じた。

そしてラストには心から安心した。

一度は消滅したように見えたオティヌスが、十五センチほどの小さな姿になって上条の前へ現れた時は、「本当に良かった」と素直に思えた。

最初は世界を滅ぼす恐ろしい魔神だった彼女が、こんな形で生き続けることになるとは想像もしなかった。

特に興味深かったのは、彼女に与えられた「罰」である。

死ではなく、自分が理解できなかった幸せな世界を、これから先ずっと上条の隣で見続けること。

復讐でも断罪でもない、とても禁書らしい結末だったように思う。

読んでいて感じたのは、この二冊は上条とオティヌスの物語だったということだ。

敵として出会い、何度も殺し合い、最後には誰よりも深く理解し合う存在になる。

その関係の変化が丁寧に描かれていたからこそ、最後の結末には大きな余韻が残った。

壮絶な戦いの末にたどり着いた、小さくも温かいハッピーエンドがとても印象的な一冊だった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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新約 とある魔術の禁書目録(9)レビュー
新約 とある魔術の禁書目録まとめ
新約 とある魔術の禁書目録(11)レビュー

考察・解説

上条当麻とオティヌス

『新約 とある魔術の禁書目録 10』における上条当麻とオティヌスの関係は、前巻の無限の死闘の果てに結ばれた「理解者」としての絆を証明し、世界と彼女自身にどう落とし前をつけるかを描く、過酷な逃避行として展開される。

問答無用の殺害を拒み人間に戻すための全世界への敵対、罪を償った後の人生の選択肢の提示、これ以上傷つけないためのオティヌスによる救済の拒絶と弩の展開、光の杭の破壊と抱擁、そして15センチの姿での生存と一番近い場所で世界を眺め続ける刑罰にいたる全容は以下の通りである。

ミミルの泉に沈む目の回収と魔神の力を永遠に奪うための全世界への敵対

上条当麻は、オティヌスの罪を無条件で帳消しにしようとしたわけではない。

・正義の狂乱の中で彼女が問答無用で殺されることを許さず、彼女を無力化して正当な裁きを受けさせるために、かつての味方を含む全世界を敵に回す決断を下した。

・目的は、デンマークのミミルの泉に沈むオティヌスの目を回収し、魔神から人間に戻して世界を脅かす力を永遠に奪うことである。

・上条は、彼女が何十年牢獄に入ろうとも必ず笑顔で迎えに行き、共に陽の当たる場所を歩くというその先の未来を見据えて戦い続けた。

妖精化の進行による感覚消失と罪を償った後の人生を選ぶ権利の断言

道中、オティヌスは妖精化の進行により痛覚や寒さの感覚すら失うほどボロボロになっていた。

・しかし、彼女のために文字通り血反吐を吐きながら世界中の強敵の猛攻に立ちはだかる上条の姿は、オティヌスの心に大きな影響を与えていく。

・学園都市の超能力者、魔術サイドの聖人、多国籍連合軍などの追撃の中で、上条は自らの意志を告げる。

・全てが終わって罪を償った後、どんな人生を選ぶかはお前自身が決めるんだ、と告げ、世界や平和のために彼女が未来まで奪われる理由はないと断言し、オティヌスの頬を緩ませた。

上条の背負う業への拒絶に伴う目の投棄と自らの死による解放の弩

ついにミミルの泉へ辿り着いた時、オティヌスは自ら目を泉に落とし、救われることを拒否してしまう。

・彼女は、自分が救われるために理解者である上条当麻がこれ以上傷つき、一生消えない業と世界の憎悪を背負い続けることを良しとしなかった。

・オティヌスは自らを罰し、上条を足止めするために、命と引き換えにしてでも残された力で弩を展開した。

・自らの死によって彼を解放しようと試みる。

罪を償うことから逃げるなという絶叫と光の杭の破壊による抱擁

その真意を悟った上条は、罪を償う事からも幸せになる事からも逃げるな、と叫び、絶対に回避不可能と言われた必殺の一撃に真正面から飛び込む。

・そして彼女の胸に刺さっていた妖精化の光の杭を砕き、命懸けでオティヌスを抱き留めた。

・オティヌスは、その言葉を受けた時にはもう、きちんと救われていた、と幸せそうに笑い、光の粒子となって崩壊する。

・しかし、魔神としての性質上完全には死滅せず、彼女は15センチほどの小さな妖精のような姿となって上条の病室で目を覚ました。

死刑ではなく上条当麻の隣にあり続ける自殺を封じる刑罰の決定

最終的に、アメリカ大統領と英国女王をはじめとする人類が彼女に下した刑罰は、死刑ではなかった。

・それは、自殺してでも目を背けようとした幸せな世界を、一番近い場所で永遠に眺め続けること、であった。

・こうして魔神オティヌスは、上条当麻の一番近くに寄り添う理解者として、彼と共に生きていくという唯一無二の結末を迎えた。

まとめ

新約10巻における上条当麻とオティヌスの逃避行は、神としての力を剥奪し、一人の人間として未来を歩ませるために全世界の正義と対峙した、壮絶な救済の記録である。上条は単なる延命ではなく罪の清算とその先の共生を見据えて戦い、オティヌスは少年の自己犠牲に胸を痛めて自ら死を選ぼうとしたものの、その絶望を拒絶した上条の執念によって二人の命は繋ぎ止められた。15センチの妖精という異形の姿となり、一番近い場所で世界を見続けさせる刑罰を言い渡された結末は、大国や社会の法をも超越した、個と個の「理解者としての絆」の絶対的な不変性を厳密に証明している。

デンマークの逃避行

『新約 とある魔術の禁書目録10』における「デンマークの逃避行」は、魔神オティヌスを救うために全世界を敵に回した上条当麻が、彼女に正当な裁きを受けさせるべくミミルの泉を目指す過酷な旅である。この逃避行の全容と意味は以下の通りである。

問答無用の殺害を拒み人間に戻すためのデンマーク行き、かつての味方や強敵たちが次々と立ちはだかるボス・ラッシュ、満身創痍の肉体で行われる国家首脳や宗教勢力との対話説得、そして救済を拒むオティヌスの弩の破壊と15センチの姿での共生にいたる全容は以下の通りである。

ミミルの泉に捧げた目の回収と魔神の力を永遠に奪うための人間化

オティヌスは自らが作り出した完璧な世界を否定し、上条当麻がいる元の世界を復元した。

・しかし、帰還した世界において彼女は巨悪として全人類から命を狙される存在となっていた。
・上条は彼女が正義の名の下に問答無用で殺されることを良しとせず、彼女を魔神から人間に戻し、無力化した上で裁きを受けさせることを決意する。
・その方法とは、彼女が魔神になる際にデンマークのミミルの泉(イーエスコウ城の湖)に捧げた目を回収し、眼窩に戻すことであった。

マイナス15度の雪原を追う学園都市の超能力者やイギリス最高戦力らの猛攻

この旅は、マイナス15度の雪原を徒歩やヒッチハイクで進む極限環境での逃避行となった。

・さらに上条を絶望させたのは、彼を追うのがかつて頼もしかった味方や強敵たちによるボス・ラッシュだった点である。
・学園都市:第一位の一方通行が最初の刺客として爆撃と共に降下し、後には無人兵器ファイブオーバーの群れをハッキングした第三位の御坂美琴が立ちはだかる。
・三大宗教勢力:ローマ正教はアニェーゼ達が二〇億人分の力を重ねた術式「晩餐の魚」で街中から上条を狙い、ロシア成教はサーシャとワシリーサが七つの大罪に見立てた遠隔術式で上条の力を削ぎ落とそうとする。
・イギリス勢力:神裂火織、アックア、キャーリサ、騎士団長ら最高戦力が、移動要塞「ホテルエアリアル」から強襲を仕掛ける。
・グレムリンの残党:マリアン=スリンゲナイヤーが戦乱の剣で各神話の終末の王を召喚し、雷神トールが全能神としての力で世界を動かしながら襲いかかる。

体内崩壊が進む妖精化の極限状態とアメリカ合衆国大統領への投降交渉

上条は肩の脱臼や肋骨の損傷など満身創痍になりながらも、決して歩みを止めなかった。

・一方のオティヌスも妖精化の進行により体内崩壊が始まり、寒さや痛みの感覚すら失っていく極限状態にあった。
・上条はただ拳を振るうだけでなく、追っ手との対話を通じて道を切り開いていく。
・ロシア成教には、オティヌスをただ殺しても恐怖と憶測が残るだけだ、と罪の反転を突きつけた。
・アメリカ合衆国大統領ロベルト=カッツェに対しては、オティヌスを生かして聴取すればグレムリン残党の鎮圧に繋がり、彼女の力を永遠に奪って投降させれば脅威はなくなる、と説得する。
・この上条の決死の訴えにより、アメリカ軍の作戦は一時中断され、人類はオティヌスを許す可能性について問い直すこととなる。

上条の業を憂う救済の拒絶と一番近い場所で世界を眺め続ける刑罰

幾多の死線を越え、ついにミミルの泉へと辿り着いた二人であったが、オティヌスは自ら目を落とし、救われることを拒絶する。

・自分が救われるために上条がこれ以上の業を背負うことを憂い、彼女は残された命を燃やして究極の兵器である弩を発動し、上条を足止めしようとした。
・しかし上条は、罪を償うことからも幸せになることからも逃げるな、と叫び、不可避の死の閃光に真っ向から飛び込んで術式を破壊し、彼女を抱き留める。
・崩壊したかに見えたオティヌスであったが、魔神の残滓が再統合され、15センチほどの妖精のような姿となって生き残る。
・世界を敵に回した逃避行の果てに、人類が彼女に下した最大の罰は死刑ではなかった。
・自殺してでも目を背けようとした幸せな世界を、一番近い場所(上条のそば)で永遠に眺め続けること、であった。

まとめ

デンマークの逃避行は、神の力を剥奪して一人の人間として世界と向き合わせるために、全世界の強大な正義と対峙した究極の救済劇である。上条は魔神の力を永遠に奪うためにミミルの泉を目指し、かつての味方を含むボス・ラッシュや極限の雪原環境に肉体を破壊されながらも、各国首脳や宗教勢力を言葉と執念で説得し、世界の選択を変えさせた。己の犠牲を厭うオティヌスの死の拒絶すらも「幸せから逃げるな」と正面から粉砕し、15センチの妖精として彼女を繋ぎ止めた結末は、世界が下した奇妙な刑罰と共に、個と個の「理解者としての絆」が世界の理さえも変革させていく過程を厳密に証明している。

世界全人類との対立

『新約 とある魔術の禁書目録 10』における上条当麻とオティヌスが直面した「世界全人類との対立」は、魔神オティヌスが自らの理想を捨てて元の世界を復元した結果、帰還した世界で彼女が世界を崩壊の危機に陥れた巨悪として全人類から命を狙われる存在となったことから始まっている。

国連本部による殺害依頼の一斉送信から始まった地球人口60億人との対峙、科学と魔術の最高戦力が牙を剥く史上最強の味方たちとの遭遇、氷点下15度の雪原環境における拳と対話による突破、そして大統領による演説と人類が下した刑罰による対立の終息にいたる全容は以下の通りである。

国連本部での首脳協議と少女へ正当な裁きを受けさせるための殺害依頼送信

ニューヨークの国連本部ビルでは、アメリカ大統領ロベルト=カッツェや英国女王エリザード、ロシア成教やローマ正教の指導者たちが協議を行い、魔神オティヌスと、共に行動する上条当麻の殺害依頼、を世界中の勢力に向けて一斉送信した。

・上条が魔神と共に行動しているという事実は世界の不安を煽るものであった。

・これにより、上条当麻はたった一人の少女に正当な裁きを受けさせるための行動を開始する。

・地球人口およそ60億人、すなわち世界全人類を敵に回す過酷な逃避行が幕を開けた。

第一位の一方通行や150機の無人兵器および移動要塞から投下される最高戦力

二人が目指すデンマークのミミルの泉への道中には、科学サイドと魔術サイドの最高戦力が次々と立ちはだかった。かつて頼もしかった味方たちが、最も絶望的な強敵として牙を剥いたのである。

・学園都市:爆心地に降下してきた第一位の一方通行や、無人兵器ファイブオーバーを150機以上従えて立ちはだかった第三位の御坂美琴。

・三大宗教勢力:ローマ正教は20億人分の力を重ねて市街地から上条だけを狙い撃つ術式「晩餐の魚」を展開。ロシア成教は上条の力を削ぎ落とす遠隔術式「七つの大罪」と実働部隊のサーシャ、ワシリーサを投入。イギリス勢力は高度1500メートルに浮かぶ移動要塞「ホテルエアリアル」から、神裂火織、アックア、キャーリサ、騎士団長という4人の聖人級を同時投下した。

・アメリカ軍:イングリット=マーティン軍曹ら精鋭コマンド部隊が隠密行動で接近し、背後から上条の頸動脈を圧迫して気絶させ、盾にする確実な制圧作戦を実行した。

・かつての仲間とグレムリン残党:10万3000冊の魔道書の知識を持つインデックスと、その知識を引いて魔神の一撃を再現するレイヴィニア=バードウェイ。さらに、各神話の終末の王を召喚するマリアンや、全能神の力を振るうトールも襲いかかった。

氷点下15度の満身創痍の連戦とアメリカ大統領との直接通信による作戦中断

氷点下15度の雪原で連戦を強いられ、右肩を脱臼し、肋骨を痛め、側頭部を殴打されるなど満身創痍になりながらも、上条は決して屈しなかった。彼はただ拳を振るうだけでなく、追っ手との対話を通じて道を切り開いていく。

・最も決定的な転機となったのは、アメリカ大統領ロベルト=カッツェとの直接通信であった。

・上条は、オティヌスの魔神としての力を永遠に奪い、無害化した上で投降させ、正当な裁判を受けさせるという目的を必死に訴える。

・この説得を受けた大統領は、追跡作戦の一時中断を決断した。

テレビ演説が問いかけた許す強さと上条のそばで永劫に眺め続ける最大の罰

上条当麻の決死の行動は、世界の指導者たちの心を動かした。ロベルト大統領はテレビ演説を通じて世界に語りかけ、苛烈な復讐を遂げる事で救われる心もあるだろう。だが、あんな彼女が多くの苦難の果てに今一度のチャンスが与えられる事で、救われる心だってある、と人類に許す強さを問いかける。

・ロシア成教の総大主教やローマ教皇、英国女王もこれに同調し、ただ恐怖に駆られて殺害するだけの狂乱を収束させた。

・最終的に、上条は自身の命と引き換えにしてでもオティヌスを救う道を選んだ。

・生き残って15センチほどのサイズになった彼女に対し、人類は死刑を下さなかった。

・自殺してでも目を背けようとした幸せな世界を、上条当麻のそばで永劫に眺め続けること、という最大の罰を与えた。

・こうして、世界全人類との苛烈な対立は終息を迎えたのである。

まとめ

世界全人類との対立は、たった一人の少女に正当な裁きを受けさせるため、一個人が世界の全最高戦力と60億人の抹殺命令に正面から立ち向かった壮絶な防衛戦である。第一位の超能力者や移動要塞からの聖人同時襲撃といった絶望的なボス・ラッシュに対し、上条は極限環境で肉体を破壊されながらも屈せず、アメリカ大統領との直接対話によって「無害化と裁判」という人道的な選択肢を提示した。大統領の演説が人類に復讐を超えた寛容さを問い直させ、最終的に15センチの姿となったオティヌスへ「上条のそばで幸福な世界を見続けさせる」という刑罰を下した結末は、狂乱の正義を対話で収束させ、個の絆を世界の理として認めさせた歴史的転換を厳密に証明している。

世界規模の追跡

『新約 とある魔術の禁書目録 10』における「世界規模の追跡」は、魔神オティヌスに正当な裁きを受けさせるために上条当麻が全世界を敵に回してデンマークを逃避行する中で展開された、前代未聞の包囲網である。科学と魔術、双方の勢力が総力を挙げて二人を追い詰める過酷な追跡劇の全容は以下の通りである。

全人類を相手にした殺害依頼の送信、宗教勢力や国家軍隊および学園都市の無人兵器が入り乱れる包囲網、マイナス15度の氷点下で精度を増していく猛追、そしてアメリカ大統領への説得と作戦中断放送にいたる全容は以下の通りである。

国連本部による協議と魔神および共に行動する上条当麻への抹殺命令

オティヌスが世界を崩壊の危機に陥れた直後、彼女と上条当麻が姿を消したことを受け、ニューヨークの国連本部では各国首脳や宗教指導者達が対応を協議した。

・上条が魔神と共に行動しているという事実は世界の不安を煽るものであった。

・結果として世界各地の勢力に向けて、魔神オティヌスと、共に行動する上条当麻の殺害依頼、が一斉に送信された。

・これにより、60億人とも言える全人類を相手にした追跡劇が幕を開けた。

標的のみを焼き切る術式や150機の無人ガトリングレールガンによる林の掃射

二人が目指すミミルの泉への道中には、かつての味方を含む各勢力が次々と立ちはだかり、独自の手段で網を広げた。

・ローマ正教:オールボーの街で、多数のシスターを耳目として配置。20億人分の力を重ねた術式「晩餐の魚」により、建物や民間人をすり抜けて標的のみを焼き切る狙撃で上条達を追い詰めた。

・ロシア成教:「七つの大罪」に見立てた遠隔術式で上条の力を7分の1ずつ削ぎ落としつつ、サーシャとワシリーサの実働部隊が雪原で直接襲撃を仕掛けた。

・イギリス清教、騎士派:高度1500メートルに浮かぶ移動要塞「ホテルエアリアル」を投入。神裂火織やキャーリサ、騎士団長といった音速を超える怪物たちが、空からの強襲や全次元同時切断による追跡を行った。

・アメリカ軍:50両以上の戦車隊を陽動として展開させつつ、雪と同化するギリースーツを着たイングリット軍曹らコマンド部隊が隠密行動で接近。背後から上条を拘束して盾にし、無力化を図るという軍隊らしい確実な制圧を試みた。

・学園都市:第三位の能力を再現した無人兵器「ファイブオーバー・モデルケース・レールガン」を150機投入。生体認証走査によって位置を特定し、容赦のないガトリングレールガンの掃射で針葉樹の林ごと薙ぎ払う猛追を見せた。

・グレムリンの残党:マリアンやトールなど、オティヌスに夢を奪われたかつての部下達も、復讐のために独自に二人を追跡、襲撃した。

マイナス15度の雪原環境における体内崩壊と二次関数的に跳ね上がる妨害精度

この追跡は、マイナス15度にもなる氷点下の雪原を徒歩やヒッチハイクで進むという極限環境で行われた。

・オティヌスは妖精化の進行で寒さや痛みの感覚を失い、上条も連戦で満身創痍となっていた。

・時間の経過とともに追っ手の目撃情報が増えていく。

・妨害の精度と頻度が二次関数的に跳ね上がっていく状況は、まさに絶望的な逃走劇であった。

大統領無線による魔神の無害化訴えと作戦「北欧の風」の停止放送

武力だけではどうにもならないこの世界規模の追跡に対し、上条当麻はアメリカ大統領ロベルト=カッツェと直接無線で対話を行った。

・上条は、オティヌスの魔神としての力を永遠に奪い、無害化した上で正当な裁判を受けさせるという目的を訴えた。

・この必死の説得を受けた大統領は、追跡作戦「北欧の風」を一時中断する。

・さらにこの対話を世界へ向けて放送し、オティヌスを許す余地があるかを人類に問いかけることで、血みどろの追跡網に終止符を打つきっかけを作ったのである。

まとめ

世界規模の追跡は、一人の少女の正当な裁判を求めた少年に対し、科学と魔術の全最高戦力が牙を剥いた前代未聞の包囲網である。殺害依頼を受けた学園都市の150機の無人兵器やイギリス清教の移動要塞、大国アメリカの戦車隊による猛追は、マイナス15度の極限環境も相まって上条を肉体的な死の寸前まで追い詰めた。しかし、武力の限界を悟った上条がアメリカ大統領との直接無線対話によって「無害化と投降」の価値を証明し、その訴えが世界へ放送されたことで、正義の狂乱に陥っていた人類に問い直しを迫り、血みどろの追跡劇を政治的、人道的な終息へと導く決定的な転換点となった。

連続する防衛戦

『新約 とある魔術の禁書目録 10』における上条当麻の「連続する防衛戦」は、魔神オティヌスを救うために全世界を敵に回した上条当麻が、彼女の力を放棄させるべくデンマークのミミルの泉を目指して逃避行を続ける中で、かつての頼もしい味方や世界中の強敵たちが次々と立ちはだかる絶望的なボス・ラッシュの展開である。

科学と魔術が入り乱れる最高戦力らとの連戦、氷点下10度以下の雪原という極限環境における満身創痍の行軍、そして単純な武力を超えて国家首脳やかつての仲間へと向けられた言葉による突破にいたる全容は以下の通りである。

第一位の一方通行や移動要塞から強襲するイギリス最高戦力らの波状攻撃

上条当麻の行く手には、少しでも立ち止まれば命を落とすような強敵たちが息つく暇もなく襲いかかった。

・学園都市:爆心地から現れた第一位の一方通行との激突に始まり、無人兵器ファイブオーバーの群れ、さらにはそれらをハッキングして従えた第三位の御坂美琴と対決する。

・三大宗教勢力:ローマ正教は20億人分の力を重ねた術式「晩餐の魚」で街中から上条を狙い、ロシア成教は七つの大罪に見立てた遠隔術式で上条の力を削ぎ落とそうとする。

・イギリス勢力:移動要塞「ホテルエアリアル」から、神裂火織、アックア、キャーリサ、騎士団長という4人の最高戦力が同時攻撃を仕掛けてきた。

・かつての仲間とグレムリン残党:インデックスの魔道書図書館の知識を利用して魔神の一撃を再現しようとするレイヴィニア=バードウェイ、終末の王たちを召喚するマリアン=スリンゲナイヤー、全能神の力を振るうトールなどが次々と立ち塞がった。

防寒具のない氷点下の行軍と体内崩壊が進む妖精化の少女の庇護

これらの連戦は、氷点下10度以下の雪原という極限環境で行われた。

・上条は防寒具も満足にないまま、連戦の中で肩を脱臼し、肋骨を痛め、側頭部を殴打され、体中を傷だらけにしながらも戦い続けた。

・彼が守るオティヌスも妖精化の進行によって寒さや痛みの感覚を失っていく極限状態にあり、上条は彼女を庇いながら進む必要があった。

ロシア成教への罪の反転提示と拳を交えた超能力者たちとの信念のぶつかり合い

この連続する防衛戦において、上条は単純な武力のみで相手を退けたわけではない。

・ロシア成教に対しては、オティヌスをただ殺しても恐怖と憶測が残るだけだと罪の反転を突きつけた。

・アメリカ合衆国の大統領ロベルト=カッツェに対しては、無力化し投降させることの意義を説き、軍の作戦を一時中断させることに成功する。

・また、一方通行や御坂美琴に対しては、自身のエゴや本音を真正面からぶつけ合い、拳と言葉を交えることで互いの信念を認めさせた。

まとめ

上条当麻の連続する防衛戦は、ただの高校生が満身創痍になりながらも、全世界の猛攻を拳と対話によって防ぎきった人間賛歌の死闘である。第一位の超能力者や宗教勢力の決戦魔術、かつての仲間たちの戦術が次々と押し寄せる絶望的なボス・ラッシュに対し、上条は極限の雪原環境で傷つきながらも一歩も引かずにオティヌスを守り抜いた。武力による抵抗だけでなく、ロシア成教やアメリカ大統領への論理的な説得、そして一方通行や美琴とのエゴのぶつかり合いを経て道を切り開いたプロセスは、彼らの逃避行が単なる逃亡ではなく、世界と彼女の双方に正当な落とし前をつけるための戦いであることを厳密に証明している。

学園都市第一位の襲撃

『新約 とある魔術の禁書目録 10』における「学園都市第一位(一方通行 / アクセラレータ)の襲撃」は、オティヌスに正当な裁きを受けさせるため、上条当麻が全世界を敵に回してデンマークを逃避行する中で、最初に立ちはだかった史上最強の味方との死闘である。

軌道上防衛兵站輸送システムによる爆撃と爆心地からの降下、大切な人間を巻き込ませないための第一位の参戦理由、あさましくも純粋な本音の叫びと納得のための殴り合い、反射の無効化に重ねた左手の石による心臓への打撃、そしてミサカネットワーク総体が指摘した偶像化とただの人間として見る意識の落差にいたる全容は以下の通りである。

純水爆撃によるクレーター生成と神話的大樹のきのこ雲からの無傷の降下

デンマークのイエリング近郊の雪原を歩いていた上条たちの頭上に、学園都市の軌道上防衛兵站輸送システム「S5」による水の爆撃が放たれた。

・音速を遥かに超える速度で激突した純水は大規模な水蒸気爆発を引き起こし、直径15キロに及ぶクレーターとガラスの大地を生み出した。

・その爆心地で神話的な大樹のようなきのこ雲を内側から引き裂き、金属製の運搬装置とともに無傷で降下してきたのが一方通行であった。

60億超の人類に混じる特定の個人を守るための魔神抹殺宣言と上条の理解

激突の中で、一方通行は自身が戦う理由を語った。彼は世界を救うといった大義名分で動いているわけではない。

・世界を破壊する可能性を持つ魔神オティヌスを放置すれば、60億とも70億とも言われる人類の中に混じっている自分の知る何人か(打ち止めなど)が巻き込まれて死ぬかもしれないと危惧する。

・無意味な情に流されて背中を刺されるくらいなら、とりあえずオティヌスを殺す、と宣言した。

・この理屈は、かつて上条当麻自身も通ったことのある思考であり、上条は一方通行の聡明さと責任感を前に彼を恨むことはできなかった。

輪の中に入れた方が面白くなるという本音と納得を得るための激突

一方通行からオティヌスを助ける理由を問われた上条は、あさましくも純粋な本音を叫んだ。

・あいつがいてもいなくても同じ人間っていうなら、輪の中に入れた方が絶対に面白くなる、とぶつける。

・全く納得のいかない理屈をぶつけられた一方通行は苛立つが、上条は、納得ってヤツを得られるまで殴り合う、と真っ向から挑みかかった。

白い翼による時速最高速度の突撃に対する右手反射無効化と左手による石の打撃

無数の白い翼を展開した一方通行は、上空5000メートルから最高速度で突撃を仕掛けた。

・上条は、今の打たれ強くなった一方通行に対して、右拳で反射を打ち消すだけでは一撃で仕留めきれず、そのまま挽肉にされると判断した。

・そこで彼は、激突の瞬間に足元にあった赤ん坊の頭ほどの石を左手に拾い上げる。

・衝突の瞬間、上条は右手で一方通行の反射を無効化し、それに重ねるように左手の石を一方通行の心臓へ力任せに叩き込んだ。

・生身 of 拳では与えられない強烈な衝撃を受けたことで、第一位の意識は刈り取られ、上条はこの絶望的な初戦を突破した。

最強の敗北がもたらした他能力者投入躊躇の恩恵とシステム偶像化の克服助言

一方通行が雪の中で目を覚ますと、すでに上条たちは立ち去った後であり、代わりにミサカネットワークの総体がクローンの体を借りて彼の前に現れた。

・総体は、最初に最強である一方通行が負けたことで、学園都市の上層部が損耗を恐れて他の超能力者の投入を躊躇する恩恵があったと指摘した。

・そして最後に、総体は一方通行に対し、アンタと上条ちゃんの違いは、私達というシステムを善性の象徴として偶像化しているか、本当にただの人間として見ているかってトコだ、と告げる。

・もし本当に妹達と向き合うつもりがあるなら、その意識を克服する必要があると助言を残して去っていった。

まとめ

学園都市第一位の一方通行による襲撃は、全世界を巻き込んだ逃避行の苛烈な幕開けを告げると同時に、互いのエゴと信念が最高レベルで激突した重要な一戦である。軌道上からの純水爆撃という圧倒的な科学の武力をもって降下した一方通行は、身内の安全という極めて現実的な責任感から魔神の排除を試みたが、上条の「納得のための殴り合い」と右手・左手を駆使した決死の戦術によって意識を刈り取られた。この最強の敗北が学園都市の追撃を心理的に抑制する結果を生み、総体が遺した「システムとしての偶像化と生身の人間としての視点」という意識の落差に関する指摘は、一方通行が今後クローンたちと真に向き合うための決定的な課題を厳密に証明している。

魔神の救済と罰

『新約 とある魔術の禁書目録 10』における「魔神の救済と罰」は、世界を崩壊させた巨悪である魔神オティヌスに対し、どのような形で「救済」と「罰」が与えられるべきかが、物語の最大のテーマとして描かれている。

無条件の免罪ではなく力を放棄させた上での正当な裁きの追求、各国指導者が人類に問いかけた復讐の連鎖を断つ許す強さ、少年の自己犠牲を憂い自らを罰しようとしたオティヌスの自死の選択、そして通常の懲役刑が意味を成さない存在へ下された一番近い場所で幸せな世界を眺め続ける刑罰にいたる全容は以下の通りである。

ミミルの泉での力放棄と罪の清算の先にある未来を見据えた投降の決意

上条当麻は、オティヌスの犯した罪を無条件で帳消しにしようとしたわけではない。

・彼が許せなかったのは、正義という名の狂乱の中で、彼女が問答無用で殺害されることであった。

・彼が目指したオティヌスの救済とは、デンマークのミミルの泉で彼女の魔神としての力を永遠に放棄させて無害化し、その上で国際社会に投降して正当な裁きを受けさせることであった。

・彼女が何十年牢獄に閉じ込められようとも、罪の清算が終わったその日には必ず笑顔で迎えに行き、共に陽の当たる場所を歩くという「未来」を示すことこそが、彼なりの救済の形であった。

アメリカ大統領の演説による作戦中断と人類に求められた復讐なき寛容

上条のこの覚悟は、オティヌスを絶対悪として殺害しようとしていた追跡者たちにも波及する。

・アメリカ合衆国大統領ロベルト=カッツェは、上条との対話を経て作戦を一時中断し、苛烈な復讐を遂げることで救われる心もあるだろう。だが、多くの苦難の果てに今一度のチャンスが与えられることで救われる心だってある、と世界に向けて演説を行った。

・ロシア成教の総大主教やローマ教皇、英国女王エリザードといった各国の指導者たちもこれに同調した。

・ただ魔神を殺して恐怖を払拭するのではなく、許す強さを持てるかどうかを人類に問いかけた。

救済の鍵である目の投棄と少年の背負う苦難から解放するための自死

しかし、当のオティヌス自身は、自分が救われることを拒否しようとした。

・自分が救われるために、上条当麻が仲間と戦い、傷つき、今後も消えない業を背負い続けることを良しとしなかったためである。

・彼女は自らを罰し、上条をこれ以上の苦難から解放するために、救済の鍵である目を泉に落とし、自らの命を絶つ道を選んだ。

・結果として彼女の肉体は崩壊を迎えるが、最期の瞬間に上条から、世界の全てと戦ってでも助ける、という言葉を受けたことで、彼女の心はすでにきちんと救われていたと笑顔を見せた。

通常の懲役刑が通じない体躯への刑罰新設と上条のそばでの永劫の監視

肉体の崩壊後、魔神の残滓が再統合され、オティヌスは15センチほどの小さなサイズとなって上条の病室で目を覚ます。

・生き残った彼女に対し、世界の指導者たちは冷徹な分析を下した。

・体躯が変わり、魔神に近い性質を持つ彼女には、通常の重刑務所への収監や懲役刑は意味を成さない。

・そこで人類は、魔神オティヌス専用の、最も効き目のある刑罰を新設した。

・それは、自殺してでも目を背けようとした幸せな世界を、一番近い場所(上条のそば)で永劫に眺め続けること、であった。

まとめ

魔神の救済と罰は、絶対的な加害者となった神の存在を、私刑や復讐によって抹殺するのではなく、人道的な寛容と固有の刑罰によって社会に繋ぎ止める再生の結末を描いている。上条の提示した「罪の清算とその先の未来」という覚悟は、大国や宗教サイドの指導者たちを動かし、人類全体へ復讐を乗り越える許す強さを問い直させた。己の犠牲を厭うオティヌスの自死という抵抗を経て、最終的に下された「上条のそばで幸せな世界を永遠に眺め続ける」という刑罰は、魔神としての脅威を完全に無力化する厳格な罰であると同時に、一人の少女として生きることを許す最大の救済として機能している。

新約 とある魔術の禁書目録(9)レビュー
新約 とある魔術の禁書目録まとめ
新約 とある魔術の禁書目録(11)レビュー

登場キャラクター

学園都市

上条当麻

右手に異能を打ち消す「幻想殺し」を宿す高校生である。魔神オティヌスに正当な裁きを受けさせるため、全人類を敵に回す決断を下す。

・所属組織、地位や役職
 学園都市の学生。

・物語内での具体的な行動や成果
 『船の墓場』で魔神オティヌスと対峙し、無限の地獄を乗り越えた。オティヌスを救うために彼女と共にデンマークへ向かい、次々と襲い来る強敵を退けた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 オティヌスの良き理解者となり、彼女を守り抜くために世界中の勢力と戦った。

御坂美琴

学園都市の第三位の超能力者であり、「超電磁砲」の異名を持つ少女である。上条当麻を気にかけており、彼を支援するために独自の行動を起こす。

・所属組織、地位や役職
 常盤台中学の生徒。超能力者。

・物語内での具体的な行動や成果
 ハワイ諸島の騒乱後、上条当麻の行方を追って行動を開始した。デンマークでの逃避行では、ファイブオーバーの群れをハッキングして上条当麻の前に立ちはだかり、彼と激突した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 上条当麻と拳を交えたのちに彼を抱きしめ、最後には彼を見送る決断を下した。

一方通行

学園都市第一位の超能力者であり、あらゆるベクトルを操る存在である。過去の罪と向き合いながら、守るべき者のために戦いに身を投じる。

・所属組織、地位や役職
 学園都市の学生。超能力者。

・物語内での具体的な行動や成果
 第二位である垣根帝督だったものと対峙し、これを粉砕した。デンマークでは上条当麻とオティヌスを襲撃し、上条当麻と激突して敗北した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ミサカネットワークからの演算サポートを受けており、自身が犯した罪と向き合い続けている。

ミサカネットワークの総体

二万人以上の妹達の脳波ネットワーク全体を統括する、生者と死者の情報が入り混じった一つの大きな意思である。上条当麻を助けるために助言を与える。

・所属組織、地位や役職
 ミサカネットワークの全体意志。

・物語内での具体的な行動や成果
 オティヌスが作った完璧な世界の矛盾を指摘し、絶望する上条当麻を立ち上がらせた。一方通行に対しても、彼と上条当麻の違いを指摘して助言を残した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 オティヌスの世界改変の支配から外れた異物として現れ、最後は上条当麻に別れを告げて消えかけた。

雲川鞠亜

メイド服を着た少女であり、恩人である木原加群を慕っている。彼の遺志を継ぎ、事態に立ち向かおうとする。

・所属組織、地位や役職
 繚乱家政女学校の生徒。メイド候補生。

・物語内での具体的な行動や成果
 木原加群の遺体を守るため、超音速旅客機から投げ出された後も東京で行動した。大統領の演説を病室のテレビで聞き、豊穣神フレイヤを守ろうとしていた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 オティヌスによって先生を操られたことに憤り、魔神に挑もうとした。

カエル顔の医者

学園都市の病院に勤務する医師である。優れた医療技術を持つ。

・所属組織、地位や役職
 学園都市の医師。

・物語内での具体的な行動や成果
 ボロボロになった上条当麻を治療し、人間離れした処置で命を繋ぎ止めた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 高度な医療技術によって、重傷を負った者を救い続けている。

グレムリン

オティヌス

科学と魔術の融合組織であるグレムリンを束ねる魔神の少女である。世界を自在に作り変える力を持つが、その力故に孤独を抱えている。

・所属組織、地位や役職
 グレムリンのリーダー。魔神。

・物語内での具体的な行動や成果
 『主神の槍』を完成させて世界を破壊し、上条当麻の精神を折るために無数の世界を作り出した。無限の死闘の果てに彼を理解者と認め、元の世界を復元した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 妖精化の術式によって力を失い、15センチほどのサイズとなって生き残る。

トール

グレムリンの直接戦闘担当であり、戦争代理人である。経験値を獲得するために戦いを楽しむ一面を持つ。

・所属組織、地位や役職
 グレムリンの正規メンバー。雷神。

・物語内での具体的な行動や成果
 全能神としての力を解放し、デンマークで上条当麻と激突した。世界そのものを動かして必ず勝てる位置に自分を配置する術式を駆使したが、貨物列車を利用した上条当麻の奇襲を受けた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 オッレルスに変装されて利用されるなどしたが、純粋な闘争を求めて行動している。

マリアン=スリンゲナイヤー

黒小人と呼ばれる魔術師の少女である。神話的な武具を作る技術を持つ。

・所属組織、地位や役職
 グレムリンの正規メンバー。魔術師。

・物語内での具体的な行動や成果
 船の墓場でオティヌスと共に『主神の槍』の製造を手伝っていた。東京湾では、各神話の終末の王を召喚する術式を用いて戦った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 オティヌスに人生を奪われたことへの報いとして戦い続けていた。

投擲の槌(ミョルニル)

全長一メートル強の黒いドラム缶のような外見を持つ少女である。どんな魔術の穴埋めも一つだけ通せる存在として機能する。

・所属組織、地位や役職
 グレムリンの正規メンバー。魔術師。

・物語内での具体的な行動や成果
 ハワイ諸島で得た火山性エネルギーを管理し、『主神の槍』の製造における起動部分を担当した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 トールと接続され、純白の閃光を生み出す攻撃に利用された。

ヘル

グレムリンの直接戦闘担当である。女性の魔術師。

・所属組織、地位や役職
 グレムリンの正規メンバー。魔術師。

・物語内での具体的な行動や成果
 イーエスコウ城の湖のほとりで、魔神オティヌスを倒すために他のメンバーと共に集結した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 裏切ったオティヌスに対して強い憎悪を抱いている。

ヨルムンガンド

グレムリンの直接戦闘担当である少年の魔術師。

・所属組織、地位や役職
 グレムリンの正規メンバー。魔術師。

・物語内での具体的な行動や成果
 イーエスコウ城の湖のほとりで、オティヌスを待ち伏せしていた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 他のメンバーと共にオティヌスへの復讐を企てる。

フェンリル

グレムリンの直接戦闘担当である青年の魔術師。

・所属組織、地位や役職
 グレムリンの正規メンバー。魔術師。

・物語内での具体的な行動や成果
 イーエスコウ城の湖のほとりで、オティヌスを待ち伏せしていた。空間を歪める力を使い、上条当麻を迎え撃った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 オティヌスを倒すための代表者を決める争いに参加した。

イギリス・イギリス清教・騎士派・王室派

エリザード

イギリスの女王であり、王位継承の剣カーテナ・セカンドを用いる実力者である。

・所属組織、地位や役職
 英国女王。

・物語内での具体的な行動や成果
 国連本部ビルでの非公式会議に参加し、グレムリンの脅威に対抗するための総攻撃に同意した。大統領の演説に同調し、オティヌスを許す道を模索した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 自国を守りながらも、地球規模の危機に対して指導者として決断を下す。

キャーリサ

英国第二王女であり、かつて王位簒奪の革命を企てた人物である。

・所属組織、地位や役職
 英国第二王女。

・物語内での具体的な行動や成果
 移動要塞ホテルエアリアルの甲板で上条当麻と対峙し、地上のオティヌスを全次元同時切断で狙おうとした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 反逆罪で幽閉されていたが、緊急事態のため一時的に解放されている。

騎士団長

イギリスの騎士派のトップを務める男である。

・所属組織、地位や役職
 騎士派の長。

・物語内での具体的な行動や成果
 移動要塞ホテルエアリアルの甲板で、キャーリサやアックアと共に上条当麻を待ち受けていた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 イギリスの魔術的戦力の一翼を担う存在として最前線に立つ。

ウィリアム=オルウェル(アックア)

かつて後方のアックアと呼ばれた傭兵である。

・所属組織、地位や役職
 傭兵。

・物語内での具体的な行動や成果
 移動要塞ホテルエアリアルの甲板で上条当麻と遭遇した。大統領の演説後、悪竜を救った上条当麻の行いを認め、攻撃を止めた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 聖人としての力は失われたが、魔術を操る技量は健在である。

インデックス

10万3000冊の魔道書の知識を持つ完全記憶能力のシスターである。上条当麻と同居している。

・所属組織、地位や役職
 イギリス清教のシスター。

・物語内での具体的な行動や成果
 船の墓場でオティヌスを倒すため、レイヴィニア=バードウェイと共に『槍』の攻撃を再現しようとした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 上条当麻がオティヌスを守ろうとしていることに戸惑いながらも、最後は彼を信じた。

神裂火織

イギリス清教に所属する東洋人の魔術師であり、世界に20人といない「聖人」の一人である。

・所属組織、地位や役職
 イギリス清教「必要悪の教会」の魔術師。女教皇。

・物語内での具体的な行動や成果
 移動要塞ホテルエアリアルから空中の作戦に参加し、甲板が崩落した際は七閃を応用して上条当麻の落下を減速させた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 上条当麻が全人類を敵に回したことに動揺しつつも、彼と戦うことになった。

ステイル=マグヌス

イギリス清教の魔術師である。

・所属組織、地位や役職
 イギリス清教の魔術師。

・物語内での具体的な行動や成果
 クルーザーの甲板で神裂火織からの通信を受け、上条当麻が魔神と共に消えたことを知った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 上条当麻と殺し合う命令を待機しながら、煙草をくわえて静かに状況を分析していた。

ローマ正教

ローマ教皇

ローマ正教の指導者であり、ペテロ=ヨグディスという名の老人である。

・所属組織、地位や役職
 ローマ正教の教皇。

・物語内での具体的な行動や成果
 ニューヨークの国連本部ビルでの非公式会議に参加し、魔神の力が永遠に続く可能性について懸念を示した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 第三次世界大戦の渦中で代替わりし、教皇の座に就いている。

アニェーゼ=サンクティス

イギリス清教に出向中の修道女である。

・所属組織、地位や役職
 ローマ正教の修道女。

・物語内での具体的な行動や成果
 デンマークのオールボーの街で、20億人分の力を重ねた術式「晩餐の魚」を用いて上条当麻を追い詰めた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 上条当麻の言葉を受け、密かに彼を逃がす選択をした。

ルチア

アニェーゼと行動を共にする長身で金髪の修道女である。

・所属組織、地位や役職
 ローマ正教の修道女。

・物語内での具体的な行動や成果
 国連本部ビルの図書館で、出版物に魔術的な仕掛けがないか調べる作業を行っていた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ローマ正教復興のためにイギリス清教から出向している。

アンジェレネ

アニェーゼと行動を共にする猫背で金髪の三つ編みの修道女である。

・所属組織、地位や役職
 ローマ正教の修道女。

・物語内での具体的な行動や成果
 国連本部ビルの図書館でルチアやアニェーゼと共に作業を行っていた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ローマ正教復興のためにイギリス清教から出向している。

ロシア成教

ロシア成教の総大主教

ロシア成教のトップを務める少年である。

・所属組織、地位や役職
 ロシア成教の総大主教。

・物語内での具体的な行動や成果
 遠隔から「七つの大罪」に見立てた術式を用いて上条当麻の力を削ぎ落とそうとした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 大統領の演説に同調し、殺害依頼の解除へ向けた動きを見せた。

サーシャ=クロイツェフ

ロシア成教の修道女であり、かつて大天使「神の力」を宿した人物である。

・所属組織、地位や役職
 ロシア成教の修道女。

・物語内での具体的な行動や成果
 デンマークの雪原で拘束衣のような修道服を着て上条当麻を襲撃した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ワシリーサと共に行動し、最前線で標的の討伐にあたる。

ワシリーサ

ロシア成教の修道女であり、サーシャと共に行動する。

・所属組織、地位や役職
 ロシア成教の修道女。

・物語内での具体的な行動や成果
 デンマークの雪原で上条当麻と対峙したが、彼の反論を受けて術式の影響を考慮し、手を引いた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 常に気楽な態度を崩さず、状況を冷静に判断する。

アメリカ合衆国

ロベルト=カッツェ

アメリカ合衆国の大統領である。砕けた態度を取りながらも、国家のリーダーとしての判断力を持つ。

・所属組織、地位や役職
 アメリカ合衆国大統領。

・物語内での具体的な行動や成果
 国連本部ビルで各国首脳と協議し、グレムリンへの総攻撃を決定した。のちに上条当麻の説得を受け、作戦を中断して世界に演説を行った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 オティヌスを許す余地があるかを世界に問いかけ、殺戮の流れを食い止めた。

イングリット=マーティン

アメリカ軍のコマンド部隊を率いる軍曹である。

・所属組織、地位や役職
 アメリカ軍の軍曹。

・物語内での具体的な行動や成果
 デンマークの雪原でギリースーツを着て潜伏し、上条当麻を背後から拘束しようと接近した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 レッサーやサーシャの出現に混乱し、任務を遂行できなかった。

フランス

傾国の女

フランスの地下深くから政治を掌握する、血色の悪い女である。

・所属組織、地位や役職
 フランスの要人。

・物語内での具体的な行動や成果
 国連本部ビルでの非公式会議に参加し、魔神オティヌスの逃亡を許さない立場を示した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 他国と異なり刺客を差し向けていないことを誇らしげに語った。

魔術結社「明け色の陽射し」

レイヴィニア=バードウェイ

魔術結社「明け色の陽射し」を束ねる金髪の少女である。

・所属組織、地位や役職
 魔術結社「明け色の陽射し」のボス。

・物語内での具体的な行動や成果
 上条当麻を船の墓場へ連れて行き、グレムリンの計画を妨害しようとした。船の墓場ではインデックスと共にオティヌスへ攻撃を仕掛けた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 上条当麻がオティヌスを守る道を選んだことで、彼と敵対することになった。

魔術結社「新たなる光」

レッサー

魔術結社「新たなる光」に所属する少女である。

・所属組織、地位や役職
 魔術結社「新たなる光」のメンバー。

・物語内での具体的な行動や成果
 上条当麻と共に船の墓場へ向かい、オティヌスを倒すための作戦に参加した。デンマークでも上条当麻の前に立ちはだかった。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 上条当麻をイギリスのために役立てようと誘導を企てていた。

オッレルス勢力

オッレルス

魔神になるはずだった男と呼ばれる青年である。絶大な魔術の力を持ちながら、博愛の精神を持つ。

・所属組織、地位や役職
 魔術師。

・物語内での具体的な行動や成果
 雷神トールに変装して船の墓場に潜入し、右方のフィアンマと共にオティヌスへ「妖精化」の術式を打ち込んだ。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 妖精化を打ち返されて弱体化し、魔神としての可能性を放棄した。

シルビア

「聖人」であり、メイドのシルエットを象る衣服を着た女性である。

・所属組織、地位や役職
 魔術師。聖人。

・物語内での具体的な行動や成果
 学園都市で雷神トールと激突し、天使の力を導く結界を用いて戦った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 オッレルス側について行動し、彼の準備を支援した。

ブリュンヒルド=エイクトベル

「聖人」であり、「ワルキューレ」の特異体質も兼ね備えた女性である。戦乙女のような衣装を着ている。

・所属組織、地位や役職
 魔術師。聖人。

・物語内での具体的な行動や成果
 多層陸橋の最上部で御坂美琴と激突し、音速を超える踏み込みと大剣クレイモアによる衝撃波で彼女を圧倒した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 かつて高純度のグングニルを作り上げた経験を持つ。

真のグレムリン

僧正

世界のどこにもない場所でわだかまる、真のグレムリンと呼ばれる魔神の一人である。

・所属組織、地位や役職
 真のグレムリン。魔神。

・物語内での具体的な行動や成果
 オティヌスから生じた乱れを修正した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アレイスター=クロウリーの侵入を受けた。

ネフテュス

世界のどこにもない場所にいる、真のグレムリンの一人である。淑やかな女性の声を持つ。

・所属組織、地位や役職
 真のグレムリン。魔神。

・物語内での具体的な行動や成果
 実存する世界へ介入する影響を懸念しつつ、他の魔神と会話を交わしていた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 オティヌスの行動を異質なものとして評価している。

娘々

世界のどこにもない場所にいる、真のグレムリンの一人である。

・所属組織、地位や役職
 真のグレムリン。魔神。

・物語内での具体的な行動や成果
 薄皮一枚隔てた永遠の距離で、オティヌスの行動について文句を言っていた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 世界の強度を保ちつつ、好き勝手やったオティヌスに不満を漏らした。

ゾンビ少女

世界のどこにもない場所にいるとされる、真のグレムリンの一人である。

・所属組織、地位や役職
 真のグレムリン。魔神。

・物語内での具体的な行動や成果
 娘々の会話の中で、その場所にいる存在として言及された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 他の魔神たちと共に世界の外側に居座っている。

キメラちゃん

世界のどこにもない場所にいるとされる、真のグレムリンの一人である。

・所属組織、地位や役職
 真のグレムリン。魔神。

・物語内での具体的な行動や成果
 娘々の会話の中で、その場所にいる存在として言及された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 他の魔神たちと共に世界の外側に居座っている。

その他の個人

アレイスター=クロウリー

学園都市の統括理事長であり、「人間」と呼ばれる魔術師である。

・所属組織、地位や役職
 学園都市統括理事長。

・物語内での具体的な行動や成果
 存在しない数字で埋め尽くされた座標を変換し、真のグレムリンがいる隠された「位相」へ侵入した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 歪んだ位相に生きる魔術師達とは違うものを統べるために自身を調整している。

フレイヤ(豊穣神フレイア)

グレムリンのメンバーであり、臨月の妊婦のような姿をした女性である。

・所属組織、地位や役職
 グレムリンの魔術師。

・物語内での具体的な行動や成果
 地下鉄の列車上で上条当麻と交戦した。母親を救うために魔神の力を求めていた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 上条当麻の提案によって、母親への依存状態を解除する術式を受けることになった。

三毛猫

インデックスが飼っている「スフィンクス」という名の猫である。

・所属組織、地位や役職
 ペット。

・物語内での具体的な行動や成果
 インデックスに抱えられたまま空中移動に翻弄されたり、小さくなったオティヌスに飛びかかったりした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 インデックスの行動に巻き込まれながらも気楽に過ごしている。

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新約 とある魔術の禁書目録(9)レビュー
新約 とある魔術の禁書目録まとめ
新約 とある魔術の禁書目録(11)レビュー

展開まとめ

序章とある少年は人類の敵となりて Introduction_00. 

魔神オティヌスの救出

少女を救う戦い

上条当麻は、オティヌスが招いた事態であっても、彼女が一人で死に絶える結末を許せなかった。正義の名の下に裁きもなく殺されるのではなく、償いの機会を与えられるべきだと考えた。

たとえ何十年牢獄に入ることになっても、上条当麻はオティヌスを見捨てず、面会に通い続け、罪の清算が終わった後には陽の当たる場所を一緒に歩くつもりだった。

無策の救出宣言

オティヌスは、船の墓場からどう逃げるのかと上条当麻へ尋ねた。だが上条当麻は具体策を考えておらず、オティヌスは見得を切った割に何もないのかと怒った。

二人は言い合いになりながらも、問題を整理した。オティヌスは世界中から追われており、さらに妖精化のせいで体内崩壊が進んでいた。

ミミルの泉

オティヌスは、妖精化は対魔神用の術式であり、人間に戻れば崩壊は止まると説明した。そのためには、魔神になる際に抉って捧げた自分の目を、デンマークの地にあるミミルの泉から回収し、眼窩に戻す必要があった。

上条当麻は、それが実現すればオティヌスを助けられると知り、思わず彼女を抱き締めた。オティヌスの力を失わせれば、彼女を担ぎ上げようとする者への対策にもなるため、二人の当面の目的はミミルの泉へ向かうことになった。

骨船の移動

船の墓場から逃げる方法として、オティヌスは骨船という魔術の品を取り出した。それはオティヌスに由来する道具で、世界中の海を一瞬で渡るものだった。

上条当麻は空間移動なら右手で無効化してしまうと懸念したが、オティヌスは二人を移動させるのではなく、二人以外の惑星そのものを動かすのだと告げた。直後、景色は丸ごと歪み、二人は船の墓場から消えた。

消えた二人

船の墓場に残されたインデックス、御坂美琴、レイヴィニア=バードウェイ、レッサーは周囲を捜索し、上条当麻とオティヌスが消えたと判断した。美琴は、到着した途端に上条当麻の態度が一変したことへ混乱した。

バードウェイは、魔神から上条当麻を引き離す必要があると考えた。そんな中、美琴の携帯にメールが届き、彼女はその内容に絶句した。

世界の殺害依頼

ニューヨークの国連本部では、各国首脳や宗教指導者達がオティヌスと上条当麻の消失を受けて対応を協議していた。上条当麻が魔神と共に行動しているという疑惑は、世界の不安を抑えるためにも放置できない問題になっていた。

やがて、魔神オティヌスと共に行動する上条当麻の殺害依頼が各所へ送信された。学園都市の超能力者達や魔術サイドの者達も、その通知を受け取った。

追われる上条当麻

ステイル=マグヌスは、神裂火織から上条当麻が魔神と共に消えたと聞かされた。魔術サイドも科学サイドも、表も裏も、グレムリンさえも、二人を追う流れになっていた。

ミサカネットワークの総体は、その展開を笑っていた。予想はしていなかったが、予想を超えるのが上条当麻らしいと受け止め、彼が再び自分の足で進み出したことを歓迎した。

北極圏の寒さ

上条当麻とオティヌスは、北極圏近くの雪景色へ移動していた。気温はマイナス一五度で、上条当麻は寒さに震えながらコートを探そうとした。

ほぼビキニのような格好のオティヌスは涼しい顔をしていたが、上条当麻が現地の男性と身振りで意思疎通を試みた結果、誤解を招いた。怒ったオティヌスを羽交い絞めする羽目になり、上条当麻は不覚にも人肌で少し暖を取った。

第九章 V.S. 『白と黒の翼携え世に抗う者』 Round_01. 

デンマークの逃避行

雪原の道

上条当麻とオティヌスは、雪に埋もれたデンマークの道を歩いていた。目的地はクヴェンドロップ近郊のイーエスコウ城であり、オティヌスの目が沈むミミルの泉がそこにあった。

しかし二人がいる地点から目的地までは三、四〇〇キロも離れていた。上条当麻は道も言葉も分からず、徒歩とヒッチハイクで進むしかないと考えた。

骨船の誤差

オティヌスは、骨船での移動は地球規模では誤差だと主張した。上条当麻は、なぜもっと近くへ移動できなかったのかと疑ったが、オティヌスは海やヒマラヤに放り出されなかっただけでも自分の腕を称賛しろと返した。

二人は言い合いながらも、世界中から追われている状況を意識していた。だが周囲には車も民家もほとんどなく、寒さに耐えながら雪原を進むしかなかった。

軌道上の天埜郭夜

学園都市の衛星ひこぼしⅡ号では、天埜郭夜が軌道上防衛兵站輸送システムS5を地球へ向けていた。S5は本来、惑星開拓のために栄養剤を混ぜた大量の水を他天体へ打ち込む施設だった。

しかし今回は、カーゴに荷物を詰め、地表へ向けた兵器として使われた。天埜郭夜は、木原唯一からの要望があったことを口にしながら、上条当麻達を初手からラスボスで潰すような状況だと見ていた。

水の爆撃

上条当麻とオティヌスの頭上に、白い光が瞬いた。オティヌスが危険を察し、上条当麻は彼女の手を掴んで洞穴へ飛び込んだ。

直後、デンマークの片田舎に水の塊が落下し、直径一五キロの巨大なクレーターを作った。衝撃波と熱波が雪を溶かし、大地を赤熱させ、表面は半透明のガラスに覆われた。

きのこ雲の向こう

上条当麻は、粉塵の中にそびえるきのこ雲を見て呆然とした。オティヌスは核ではなく大規模な爆発によってもきのこ雲は発生すると説明したが、上条当麻は学園都市ならここで終わらないと察した。

彼は、軍用クローン、AIM思考生命体、駆動鎧、サイボーグ、恋査など、学園都市の底知れなさを思い出した。爆撃は本命ではなく、ここからが本番だと判断した。

第一位の降下

爆心地から放たれる力がきのこ雲を破壊し、中心には学園都市第一位の一方通行が立っていた。金属製の運搬装置も一緒に投下されており、一方通行はそれを蹴って上条当麻達へ飛ばした。

上条当麻はオティヌスを伏せさせ、自分が一方通行を止めると叫んだ。しかし一瞬目を離した隙に、一方通行はすぐ目の前まで迫り、反射の掌で上条当麻を襲った。

第一位の理由

上条当麻は一方通行に、グレムリンの被害を受けたとしても、人を殺すほどの理由があるのかと問いかけた。一方通行は、世界を救うためではなく、自分の知る者達を守るために戦っているのだと返した。

一方通行にとって、六〇億や七〇億の中に自分の知る何人かがいるなら、それだけでオティヌスを殺す理由になった。上条当麻はその理屈を恨めず、むしろ自分も通った道だと理解した。

輪に入れる理由

一方通行は、オティヌスを殺しても殺さなくてもよいなら、安全のために殺すべきだと告げた。上条当麻は、オティヌスがいてもいなくても同じなら、輪の中に入れた方が絶対に面白くなると叫んだ。

それは合理的でも効率的でもない、本音の理由だった。一方通行は納得する気がないと苛立ったが、上条当麻は納得が得られるまで殴り合うだけだと返した。

白い翼との決着

一方通行は白い翼で上空へ飛び、地表へ向けて高速で突撃した。上条当麻は右拳だけでは一撃で仕留められないと判断し、足元の石を左手で拾った。

衝突の瞬間、上条当麻は右手で反射を無効化し、重ねるように石を振り下ろして一方通行の心臓へ衝撃を叩き込んだ。その一撃で一方通行の意識は途切れた。

総体の助言

一方通行が目を覚ますと、上条当麻とオティヌスは消えており、代わりにミサカネットワークの総体がクローンの体を借りて現れていた。総体は、第一位が最初に倒れることで、他の超能力者の投入をためらわせる効果があると見抜いていた。

総体は、一方通行が妹達を善性の象徴として偶像化しているのに対し、上条当麻はただの人間として見ていると告げた。そこを何とかしなければ本当に向き合えないと言い残し、借りた体は雪の中へ倒れた。

失われる感覚

一方通行との戦闘で肩と手首を痛めた上条当麻は、痛みに叫びながらも歩き続けた。オティヌスは雪で冷やせばよいと助言したが、上条当麻は彼女が素手で雪を掴んでも震えていないことに気づいた。

オティヌスは痛みや寒さの感覚を失っていた。骨船を使った後、魔神としての力はほとんど残っておらず、内部崩壊が進んでいるため、体の危機にさえ気づけなくなっていた。

必ず助ける決意

上条当麻はオティヌスに肩を貸した。彼女の体は冷たく、自分の意思で支えていないほど重かった。

それでも上条当麻は、イーエスコウ城へ辿り着けば終わると信じて進んだ。どんな追っ手が待っていても、必ずオティヌスを助けると告げた。

第一〇章 V.S.『二〇億の猛威』 Round_02. 

オールボーの晩餐の魚

雪道のヒッチハイク

上条当麻とオティヌスは、低体温症の危険があるため暖かい場所を探していた。予想に反して、隕石騒ぎと勘違いした人々が車で集まっており、二人は屋台車両をヒッチハイクしてオールボーへ移動した。

車内の暖かさとスープでオティヌスの血色は少し戻ったが、感覚が麻痺しているため油断はできなかった。二人は街に着くと、防寒具を買うために両替と店探しを始めた。

オールボーの街

オールボーの街は煉瓦や石造りの建物が多く、上条当麻はヨーロッパらしい古い街並みに戸惑っていた。オティヌスは街の通りやオーディン像について説明したが、二人はまた言い合いになった。

防寒具の店では、上条当麻が価格の高さに驚いた。さらにオティヌスの服装について下着から調達するべきではないかと口にし、彼女の怒りを買った。

集結する宗教勢力

その三〇分前、オーフス郊外の野戦飛行場には、アニェーゼ=サンクティス達ローマ正教の修道女を中心に、イギリス清教やロシア成教の精鋭も集まっていた。

彼らは、魔神オティヌスと上条当麻を追うため、車両、列車、航空機など様々な移動手段で網を広げようとしていた。しかし各勢力は疑心暗鬼に陥っており、魔神の力や手柄を巡って警戒し合っていた。

日本語の警告

オールボーの街中に、災害用スピーカーから日本語の警告が流れた。上条当麻と魔神オティヌスに対し、一〇分以内にアンスガー教会へ投降しなければ攻撃すると告げる内容だった。

上条当麻は、警告が日本語であり、呼びかけがオティヌスではなく自分を主格にしていることに違和感を覚えた。相手は、オティヌスから上条当麻を切り離そうとしている可能性があると考えた。

晩餐の魚

街中には黒い修道服のシスター達が散っており、彼女達はローマ正教の目として機能していた。上条当麻は戦闘を避け、情報を集めながら街を抜け出そうとしたが、時間を正確に数えていなかったため攻撃を受けた。

閃光の術式は建物や通行人をすり抜け、標的だけを焼き切るものだった。上条当麻は右手で受け止めようとしたが、膨大な威力に弾き飛ばされ、肩を脱臼した。

二〇億倍の術式

オティヌスは、攻撃が人の魔力に基づく術式であり、落雷と神罰の逸話を攻撃的に解釈したものだと見抜いた。だが威力が異常であり、ローマ正教の二〇億人分の力が重ねられている可能性があった。

上条当麻は、シスター達が単なる耳目ではなく、一人一人が主砲でもあると気づいた。全員が晩餐の魚を撃てるなら、オールボータワーを砲台と見る予想は外れており、まともに逃げても撃ち抜かれるだけだった。

地下通路の奇襲

上条当麻は、街の地下に広がる古い通路を使い、アンスガー教会の床下から現れた。アニェーゼは突然の出現に驚き、上条当麻は二〇億倍の術式を使うローマ正教へ文句をぶつけた。

上条当麻は、ローマ正教には必ず中心や仲介役を置く癖があり、アニェーゼ部隊の名を冠する以上、彼女が晩餐の魚のブレーカー役だと見抜いていた。協力しなければ術式を壊し、オティヌスに任せると告げた。

オティヌスの武装解除

上条当麻は、船の墓場に到着してから世界が戻るまでの間に、長い時間が挟まっていたと説明しようとした。アニェーゼはすぐには信じなかったが、オティヌスが槍を放棄してデンマークへ来た理由には疑問を抱いた。

上条当麻は、オティヌスが魔神の力を恐れ、自らその力を放棄しようとしているのだと語った。世界もオティヌスも助けられる可能性に賭けたいと訴えた。

逃がしたアニェーゼ

アニェーゼは蓮の杖を構え、二〇億倍の術式で教会の床を押し潰した。しかし完全な手応えはなく、上条当麻が逃げた可能性があった。

彼女は表向き、上条当麻が魔神オティヌスと完全に行動を共にしており、切り離しは不可能だと報告した。その一方で、床下の上条当麻には、さっさと逃げるよう促した。

荒唐無稽な可能性

アニェーゼは、晩餐の魚がローマ教皇の解除命令と二〇億人共通の憎悪によって起動していると説明した。オティヌスは世界の恐怖を一点に集める存在であり、ここから巻き返すのは容易ではないと告げた。

それでも上条当麻は、狂乱を必ず終わらせると答えた。アニェーゼは、魔神オティヌスを投降させるという荒唐無稽な考えも、上条当麻なら本気で実現しようとするかもしれないと思った。

第一一章 V.S.『神威にたゆたう修道女達』 Round_03. 

ロシア成教の七つの大罪

廃車の休息

上条当麻とオティヌスは、オールボーを脱出したものの防寒具も車も確保できず、雪道を徒歩で進んでいた。寒さに耐えきれず、途中で放置された廃車へ逃げ込み、しばらく休むことになった。

オティヌスは強い眠気を訴えた。上条当麻は体への異常を疑ったが、彼女は短い休憩が必要だと説明し、そのまま眠りに落ちた。上条当麻は、眠る彼女を見て、魔神という肩書きの奥にある素顔は普通の少女と変わらないのだと思った。

赤い修道服

上条当麻は、廃車の外に赤い修道服の二人組を見つけた。彼はオティヌスを起こさず、一人で外へ出た。

現れたのは、ロシア成教のサーシャ=クロイツェフとワシリーサだった。上条当麻は戦い以外の道を尋ねたが、二人は応じず、上条当麻がオティヌスと接触して何らかの影響を受けたと見ていた。

正義への疑問

上条当麻は、相手がオティヌスを絶対悪と決めつけ、問答無用で暴力を振るえる結論を欲しがっているのだと指摘した。もしオティヌスに良心があったら、正義の側に立つ彼女達が困るのではないかと告げた。

その直後、上条当麻とサーシャは衝突した。上条当麻は釘抜きの霊装を右手で破壊したが、サーシャの足払いとワシリーサの炎に翻弄され、同時攻撃へ対処を迫られた。

見えない攻撃

戦闘中、無線機からロシア成教の総大主教らしき声が響いた。相手は対魔神用の術式を上条当麻にも適用し、彼の力を削ぎ落としていった。

その術式は、七つの大罪に当てはめて相手の力を七分の一ずつ奪うものだった。上条当麻は心臓の上へ右手を押し当てて一時的に解除したが、傲慢、憤怒、怠惰、強欲、色欲、嫉妬と次々に罪を突きつけられ、体の自由を奪われていった。

暴食の失敗

最後に総大主教は、上条当麻が自分に酔っているとして暴食を当てはめようとした。しかし上条当麻は、野菜くずのスープ以外ほとんど何も口にしていない自分に暴食を当てるのは無理があると見抜いた。

術式は、戦場で自然発生した罪を裁いているのではなく、総大主教が外から難癖をつけて価値を再設定するものだった。最後の暴食に自信がなかったため、七つ目は完成せず、上条当麻は再び立ち上がった。

罪の反転

上条当麻は、個人の意見を組織の力で押さえ込めると思う方が傲慢だと反論した。魔神オティヌスを殺せば混乱が終わるという考えにも異を唱え、彼女をただ始末すれば、真実が伝わらずに恐怖と憶測だけが残ると語った。

さらに、ロシア成教が焦って魔神撃破の栄誉を欲しがるなら強欲であり、他勢力に手柄を譲れないなら嫉妬でもあると突きつけた。上条当麻は、相手がオティヌス本人と向き合わず、殺した方が楽だと考えたことこそが罪だと断じた。

六つで止まった術式

総大主教は沈黙し、上条当麻の体には力が戻った。色欲だけはこじつけられず、術式は六つで止まったのである。

ワシリーサは、ロシア成教側がこれ以上手を出せば総大主教自身が七つの罪に縛られる可能性があると判断し、戦闘継続を避けた。ただし、ロシア成教徒以外の刺客が上条当麻を殺しても総大主教には影響しないと告げた。

別の刺客

上条当麻は、ワシリーサの言葉の意味に気づくのが遅れた。直後、ロシア成教とは別の刺客による一撃が側頭部へ叩き込まれ、上条当麻の意識は一瞬で刈り取られた。

第一二章 V.S.『魔を屠る四つの刃』 Round_04. 

ホテルエアリアルからの脱出

空の移動要塞

上条当麻は、気を失った後、高度一五〇〇メートルに浮かぶ移動要塞ホテルエアリアルの甲板で目を覚ました。そこには後方のアックア、キャーリサ、騎士団長、神裂火織がいた。

キャーリサは、ホテルエアリアルが英国外でもカーテナの力を限定的に使うためのブースターであり、地上のオティヌスを遠距離から全次元同時切断で切り分けるつもりだと告げた。

甲板の破壊

上条当麻は、オティヌスが切り刻まれる前に止める必要があると判断し、右拳を甲板へ叩きつけた。魔術で動く移動要塞の甲板は崩れ、上条当麻を含む全員が内部へ落下した。

内部には巨大な箱型の装置が並んでいた。着地に失敗した上条当麻は足首を痛めたが、キャーリサ達は何の動揺も見せず、敵対行動ありとして上条当麻へ襲いかかった。

神裂火織の魔法名

上条当麻は、まともに戦っても勝ち目がないと理解していた。だから彼は、四人の中から神裂火織だけを狙った。

上条当麻は、神裂の刀の軌道へわざと身を置き、殺される位置へ飛び込んだ。救われぬ者に救いの手をという魔法名を持つ神裂は人を殺せず、上条当麻はその性質を逆手に取った。

怪物同士の衝突

神裂火織は、上条当麻を斬れずに急停止しようとした。上条当麻はさらにその場でうずくまり、神裂の動きを乱した。

その結果、神裂は勢いを殺しきれず、対角線上から迫っていた騎士団長へ激突した。上条当麻はその隙に再び床を破壊し、さらに下層へ落ちて移動要塞の端を目指した。

空への飛び降り

上条当麻の狙いは、ホテルエアリアルの端まで進んで高度一五〇〇メートルの空へ飛び降りることだった。幻想殺しでは落下を防げないが、彼は神裂火織なら自分を見捨てられないと読んでいた。

上条当麻が空へ身を投げると、神裂も後を追って飛び出した。上条当麻は、敵味方を問わず目の前の命を救ってしまう神裂こそ、ヒーローに向いていると告げた。

殺すという言葉

落下しながら、上条当麻は神裂へ、オティヌスを殺す作戦に加われば神裂自身が苦しむと訴えた。神裂は、オティヌスを始末する以外に解決手段があるのかと問い返した。

上条当麻は、始末ではなく殺すと言えと迫り、オティヌスも一人の人間から始まった存在だと思い出せと告げた。神裂は、殺さずに終わらせる道があるのかと叫び、上条当麻は自分達がまさにその道を進んでいたのだと返した。

カーテナへの対処

神裂火織は、まず安全に着地することを優先すると決めた。鋼糸を使って翼のように揚力を得て減速するつもりだった。

そこへキャーリサのカーテナの力が、ホテルエアリアルから一キロ級の光の剣となって伸びてきた。神裂は、鋼糸で三次元的な陣を張り、カーテナの伝送ルートを乱して力をUターンさせ、ホテルエアリアル自体を破壊した。

雪原への落下

巨大な閃光がオールボー近郊の雪原に走り、ホテルエアリアルの残骸が散らばった。衝撃を考慮していなかった神裂の対処により、上条当麻は吹き飛ばされ、針葉樹の林へ突っ込んだ。

上条当麻は全身を枝で切り裂かれ、太股には細い枝が突き刺さった。彼は痛みに耐えて枝を引き抜いたところで、オティヌスが近づいてくるのを見つけた。

再会と逃走

オティヌスは、行方不明になっていた上条当麻を見つけると怒って殴った。上条当麻は必死に謝りながら、周囲にホテルエアリアルの残骸が散らばっている状況を説明しようとした。

その時、神裂火織がアックアやキャーリサの足止めをしている金属音が響いた。上条当麻は、神裂や他の強敵達の怒りを想像し、ここはまだ危険だと判断して、歩きながら話そうと提案した。

第一三章 V.S.『魔剣を解放せし鍛冶師』 Round_05. 

戦乱の剣と投擲の槌

ストウリングの補給

上条当麻とオティヌスは徒歩でストウリングへ辿り着いた。コートは見つからなかったが、魔法瓶を手に入れ、さらにビルン方面へ向かう長距離トラックをヒッチハイクできた。

しかし途中でトラックがエンストし、二人はバッテリーを探すため、雪原の先にある無人のガスステーションへ向かった。そこではバッテリーや食料を確保できたものの、充電の必要があり、しばらく足止めされた。

ガスステーションの爆発

バッテリーを抱えて外へ出た直後、ガスステーションは見えない刃によって両断された。上条当麻はオティヌスを庇い、地下のガソリン貯蔵タンクが破れたことに気づいて、彼女の手を引いて逃げ出した。

その直後、気化したガソリンに火花が触れ、ガスステーションは内側から爆発した。二人は衝撃波で雪の上へ投げ出され、そこでマリアン=スリンゲナイヤーと投擲の槌の姿を見つけた。

マリアンの怒り

マリアンは、ベルシをはじめとするグレムリンの犠牲を語り、彼らが叶えられない願いをオティヌスに託していたのだと告げた。だがオティヌスは槍を放棄して逃げ出し、その夢を踏みにじったと責めた。

彼女は主神の槍の余った部品から作られた万象の金を使い、神を殺すための力を得ていた。黄金の腕輪は戦乱の剣ダインスレーヴへと変わり、マリアンはオティヌスを確実に仕留めると宣言した。

終末の王達

上条当麻は、魔術を使えないオティヌスの代わりに前へ出た。マリアンは戦乱の剣を振るい、ギリシア神話のティターン、アステカ神話の食人獣、北欧神話のスルトなど、各宗教の終末を象徴する存在を次々と呼び出した。

それは神々の位相を切り離し、加護に抑えられていた災厄を解き放つ技術だった。オティヌスは仕組みを理解したが、力を失った今の自分では、上条当麻へ向けられる災厄を止められなかった。

折られた戦乱の剣

上条当麻はスルトの炎の剣へ右拳を叩きつけ、巨大な刀身をへし折った。そのまま崩れる剣の上を走るが、マリアンはさらにイナゴの群れと黄泉津醜女を呼び出し、上条当麻を迎え撃った。

上条当麻は黒い髪の大波を右手で割り、マリアンの横薙ぎの一撃にも拳を合わせた。戦乱の剣は根元から折れ、刀身は空中で分解していった。

奪われた希望

マリアンは、オティヌスが自分達の希望だったと語った。叶えられない願いを抱えた者達が、魔神という裏技に手繰り寄せられ、世界の果てまで連れてこられたのに、オティヌスは一人で逃げたのだと叫んだ。

上条当麻は、オティヌスが悪党であることは認めながらも、その話に乗ったのはマリアン自身の意思だと返した。オティヌスの罪が裁かれるなら、グレムリンの罪もまた裁かれるべきだと告げた。

最後の閃光

マリアンは、折れた戦乱の剣でもすでに術式を発動していた。彼女はインド神話のヴィシュヌ=アヴァターラを呼び出し、最高神級の閃光を放った。

上条当麻は、その攻撃が自分だけでなくマリアン自身をも巻き込むものだと察し、彼女を突き飛ばして覆い被さった。閃光は上条当麻の背を焼き、周囲の終末の王達さえ消し飛ばした。

投擲の槌の選択

戦いが終わると、マリアンは意識を失っていた。投擲の槌は、マリアンの言葉を聞いて、自分がかわいそうな存在だと見られていたことに気づいた。

それでも投擲の槌は、マリアンを支えて連れていった。上条当麻は、何かあれば連絡しろと自分の電話番号を渡し、今度は彼女達の側に立つと告げた。投擲の槌は答えなかったが、マリアンを乗せたまま白い世界を去っていった。

第一四章 V.S.『表舞台の警察』 Round_06. 

北欧の風と学園都市の兵器

ビルンへの到着

上条当麻とオティヌスは、ガスステーションで手に入れたバッテリーを持ち帰り、長距離トラックで半島中央のビルンへ到着した。だが街にはデンマーク軍らしき特殊部隊が展開しており、ヒッチハイクによる移動は難しくなっていた。

オティヌスの目が沈むミミルの泉のあるイーエスコウ城までは、まだ約一〇〇キロ残っていた。次はフレデリシアを目指す必要があったが、時間が経つほど包囲網は濃くなっていた。

雪原の戦車隊

上条当麻とオティヌスの前方に、五〇両以上の戦車隊が現れた。魔術や超能力ではない純粋な兵器であり、幻想殺しでは対処できない相手だった。

しかし戦車隊は陽動であり、実際には雪原に潜むイングリット=マーティン軍曹らコマンド部隊が二人を捕捉していた。彼らは上条当麻を先に制圧し、オティヌスの思考と動きを封じる作戦を取った。

合衆国の拘束

上条当麻は背後から頸動脈を圧迫され、意識を失った。コマンド部隊は彼を盾にし、オティヌスへ接近してナイフの柄をぶつけ、彼女も気絶させた。

目を覚ました上条当麻は、うつ伏せで押さえ込まれていた。兵士達は、オティヌスをカメラの前で処刑し、脳と心臓を破壊した上で毒や神経切断まで行い、遺体を保存する計画を進めていた。

ロベルトとの交渉

上条当麻は、ロベルト=カッツェ大統領と無線で話した。ロベルトは、世界の混乱を抑えるためにはオティヌスを殺す必要があると考えていた。

上条当麻は、オティヌスを殺してもグレムリンは解体されず、むしろ正規メンバーが無秩序に散ってアメリカや世界を狙うと訴えた。オティヌスを生かして聴取すれば、グレムリンの行動原理や潜伏先を知る手がかりになるとも主張した。

力を奪う目的

上条当麻は、自分達の目的が逃亡ではなく、オティヌスの力を永遠に奪った上で投降することだと説明した。未知数の魔神の力をゼロにすれば、たとえ身柄を奪われても脅威にはならないと語った。

さらに、オティヌスの罪を踏み倒す気はなく、正当な裁判の末に長い懲役を受けることは拒まないと伝えた。ロベルトは、彼女の罪は重いが、戦争犯罪の適用には法的な余地があり、無罪はあり得ないものの生存の可能性は残ると答えた。

一時中断された作戦

上条当麻は、わずかでも希望があるならそれで納得できると告げた。狂乱の中でオティヌスが殺され、その罪悪感を世界が忘れる結末よりは、正当な手続きを経る方がずっとましだと考えた。

ロベルトは、合衆国の国益と世界の安定を考慮し、北欧の風作戦を一時中断した。コマンド部隊は上条当麻とオティヌスの拘束を解き、潜伏状態で待機することになった。

アメリカの敵対

国連本部では、ロベルトが他国や宗教勢力の重鎮達の視線を浴びていた。彼は、彼らの敵になったと認めた。

上条当麻は意識を取り戻したオティヌスへ肩を貸し、再びフレデリシアへ向かおうとした。戦車隊は陽動だったため、作戦中断後なら突破できるはずだった。

Five_OVER

しかしその直後、戦車隊が白い爆発に呑まれた。続く第二波で戦車は次々と内側から破裂し、兵士達が慌てて脱出した。

空には、カマキリのような形状で、レールガンの砲身を束ねた兵器群が浮かんでいた。そこにはFive_OVER Model Case “RAIL_GUN”と刻まれており、上条当麻は次の敵が学園都市だと悟った。

第一五章 V.S.『無慈悲なる科学の尖兵』 Round_07. 

ファイブオーバーと御坂美琴

ファイブオーバーの改造

ファイブオーバー・モデルケース・レールガンは、学園都市第三位の超電磁砲を工業技術で再現し、さらに高出力化する兵器だった。かつて浜面仕上が戦った時は人間を操縦体系に組み込む駆動鎧だったが、バゲージシティ以降は無人兵器として改造されていた。

学園都市は、一月も経たない短期間で兵器の骨子を作り替えていた。その異常な技術進化は、常識を覆す学園都市の危うさを示していた。

生体認証走査

ファイブオーバーは、オティヌスと上条当麻への生体認証走査を開始し、阻害する者を物理的に排除すると警告した。警告音声は戦車のスピーカーをハッキングして流されており、空の兵器だけでなく地上側の設備も支配されていた。

ファイブオーバーの一部は地上へ降下し、武装解除したデンマーク軍兵士を無視しながら、戦車だけを次々と破壊していった。上条当麻は、その兵器が自分達だけでなくアメリカ軍も排除対象にしていることを理解した。

一時的な共闘

アメリカ軍のコマンド部隊は、学園都市が自分達まで攻撃する理由を測りかねていた。オティヌスは、上条当麻と自分は抹殺対象であり、アメリカ軍も武装解除しない限り排除対象になると整理した。

コマンド部隊は捕虜になることを許されていないため、オティヌスは手を結ぶべきだと提案した。上条当麻は学園都市の超音速旅客機やファイブオーバーの威力を説明し、相手が極めて危険な無人兵器であることを伝えた。

曖昧な位置情報

オティヌスは、ファイブオーバーが正確な位置を掴んでいるなら戦車隊を無視して二人へ向かうはずだと指摘した。つまり学園都市は、この地域に二人がいるという曖昧な情報だけを得ており、正確な座標はまだ特定していなかった。

その原因として、アメリカ軍の通信が傍受された可能性が浮かんだ。上条当麻達は、完全に補足される前にこの場を離れるべきだと判断し、コマンド部隊と共に雪原から逃げ出した。

針葉樹林の逃走

上条当麻は、オティヌスに肩を貸し、ギリースーツの兵士達に先導されながら針葉樹林へ入った。だがファイブオーバーはすぐに走査を進め、レールガンの掃射で木々をまとめて薙ぎ倒した。

上条当麻はオティヌスへ覆い被さって木片から庇った。ファイブオーバーのレールガンは距離があるため弾道がぶれていたが、兵器側もその欠点を分析し、有効射程まで一斉に接近してきた。

投降するコマンド部隊

上条当麻は、コマンド部隊に投降するよう叫んだ。彼らは越境作戦を担うため捕虜にはなれないと反論したが、ファイブオーバーは両手を挙げた者を素通りしているため、今なら生き残れる可能性があった。

兵士達は逡巡した末に立ち止まり、両手を挙げた。上条当麻は彼らを追い抜き、オティヌスを支えたまま逃げ続けた。

オティヌスの人生

オティヌスは、自分を見捨てれば上条当麻は一般人に戻れると叫んだ。だが上条当麻は、すでに自分も名指しで標的にされており、同じ場所に立っているのだから後戻りはできないと返した。

上条当麻は、オティヌスが目を取り戻し、力を捨て、投降して罪を償った後の人生は、彼女自身が決めればよいと叫んだ。世界や平和という名目で、その先の人生まで奪われる理由はないと告げた。その言葉に、オティヌスはわずかに頬を緩めた。

ハッキングされた軍勢

ファイブオーバーは、生体情報の走査を終え、標的を本人と断定した。さらにレールガンの誤差を分析し、完全殺害射程へ入るまであとわずかとなった。

だがその時、何者かがシステムへ侵入した。ファイブオーバーは次々と墜落し、上条当麻達の周囲に落下した後、なぜか攻撃を止めた。

御坂美琴の登場

停止したファイブオーバー達は、一機へ注目するように向きを変えていた。その機体の上には、常盤台中学の制服にダッフルコートをまとった御坂美琴が立っていた。

御坂美琴は、無条件で味方するわけではないと告げた。自分自身とハッキングしたファイブオーバー全てを戦力として示し、死にたくなければ勝って先へ進めと言った。上条当麻はオティヌスを雪の上へ下ろし、御坂美琴が怒っているのかと尋ね、彼女は上条当麻がいつからグレムリンのスパイになったのかと怒りをぶつけた。

第一六章 V.S.『電子に愛されし申し子』 Round_08. 

御坂美琴との決着

支配を外された一機

上条当麻は、御坂美琴がファイブオーバーを電子操作で支配しているなら、右手で触れれば解除できると賭けた。彼が近くの一機に触れると、その機体は美琴を排除対象とみなし、ガトリングレールガンを向けた。

美琴は別のファイブオーバーを盾にし、砂鉄の剣で暴走機を破壊した。だが上条当麻はその隙に次々と機体へ触れ、支配を外された機体は美琴を狙い始めた。

ファイブオーバー同士の戦争

御坂美琴は、味方と敵の見分けがつかなくなったため、疑わしい範囲の機体をまとめて破壊せざるを得なくなった。数では美琴が優勢だったが、余計な機体まで壊すことで自分の戦力を削っていった。

その間に上条当麻は、美琴と同じ機体の背中へ乗り上げていた。ファイブオーバーのレールガンは至近の美琴ごと撃ち抜く危険があるため、彼女のそばが最も安全な場所になっていた。

八本の砂鉄

御坂美琴は、砂鉄を八本の鞭のように操って上条当麻へ向けた。上条当麻にとって、軌道を自在に変える砂鉄の剣は雷撃や超電磁砲よりも厄介な攻撃だった。

しかし八本の鞭は背後の砂鉄の塊でつながっていたため、上条当麻が一本を右手で掴むと、すべてがまとめて消えた。美琴は一瞬拍子抜けしたが、すぐに怒りを燃やし、直接の殴り合いへ移った。

滅びた世界の告白

御坂美琴は、オティヌスを倒すはずだった話がどこへ行ったのかと問い詰めた。上条当麻は、船の墓場に到着してから世界が戻るまでの間に長い時間があり、世界は一度滅びたのだと説明した。

彼は、妹達が一人も死なず、御坂美琴も友達と笑っていた幸せな世界を見たと語った。そして自分は六〇億人すべてが救われた世界を否定して戻ってきたのだと告げた。

完全な世界への反論

御坂美琴は、そんな都合の良い世界に誰がすがるのかと怒った。幸せの定義を一つに決めた時点で、次の不幸や差別が始まると考えたのである。

彼女は、たとえ世界が作り直され、何も知らない御坂美琴が笑っていたとしても、自分が一万人以上の命を奪った事実から逃げたくないと叫んだ。上条当麻はその言葉を受け、一瞬思考を止められた。

戻って来た世界

御坂美琴は、完全な世界などどこにもなく、一面から幸せに見えても別の視点では歪みがあると語った。六〇億人が一つの価値を押しつけられて笑うしかない世界を見たなら、間違っていると拳を握るのが上条当麻の役割だったと叩きつけた。

さらに、上条当麻がやるべきことは、戻って来た世界を羨むことではなく、不完全でも未完成でも、この世界で良かったと胸を張ることだったと告げた。

変わる言葉

上条当麻は、美琴が幸せそうに笑っていたから考えを変えたのだと叫んだ。自分はただの高校生であり、信念や理念が途中で変わっても、最後に誰かが笑っていればそれでよいと吐き出した。

それを聞いた美琴は、上条当麻が分かっていると受け止めた。彼が御坂美琴の未来や六〇億人の運命を、破滅するまで背負い続ける必要はないと告げた。

美琴の勝利

御坂美琴は、上条当麻を優しく抱きしめた。直後、全身から高圧電流を放ち、上条当麻の意識を吹き飛ばした。

目覚めた上条当麻の隣には美琴が座っていた。上条当麻は、世界を一面的に都合よく作り直しても、それだけで人間が幸せになれるほど単純ではないことを学んだ。

行きたいから行く

上条当麻は、オティヌスのもとへ行くと告げた。行かなければならないからではなく、自分がそうしたいからだと答えた。

御坂美琴は、それなら行けばよいと送り出した。彼女は一〇分前の上条当麻には勝てても、今の上条当麻には勝てる気がしないと感じていた。

美琴の戦場

上条当麻は、片手を振りながら白い世界へ歩き出した。御坂美琴は同行せず、反対方向へ向かった。

彼女の前には、支配を破ろうとしている多数のファイブオーバーが残っていた。御坂美琴は、自分のやるべきこととして、上条当麻を狙う兵器群と向き合うことを選んだ。

第一七章 V.S.『図書館の主と魔術の女王』 Round_09. 

橋上のインデックスとバードウェイ

戦車での移動

上条当麻とオティヌスは、フレデリシアへ向かうため、アメリカ軍の陽動に使われていた戦車を一両拝借して進んでいた。上条当麻は不慣れなレバー操作に苦戦し、最終的に戦車を海へ落としてしまった。

二人は戦車を捨て、フレデリシアの街へ入った。街中には検問も軍用車両も見当たらず、上条当麻達は妨害がないうちにヒュン島へ続く大橋を渡ろうとした。

橋の上の二人

巨大な橋の中ほどに、インデックスとレイヴィニア=バードウェイが立っていた。上条当麻は、魔道書図書館であるインデックスと、それを現実の力として扱えるバードウェイの組み合わせを危険視した。

インデックスは、上条当麻を自分達の世界の理屈に巻き込むのは良くないが、オティヌスは自分達のルール内にいる脅威だと告げた。バードウェイも、事情は後で聞けばよく、今は倒して拘束すると言い切った。

空気を壊す上条当麻

上条当麻は、御坂美琴と似た話を済ませたばかりだとぼやき、御坂に電話して説明してもらえばよいと言い出した。バードウェイは、インデックスの知識があれば、短時間に起きた異常を推測できたはずだと怒りを爆発させた。

上条当麻が、無限の地獄の話を理解してもらえるのかと気づいた時には、バードウェイの怒りは頂点に達していた。インデックスも、上条当麻はしばらく病院で養生した方がよいと判断した。

人間用の主神の槍

バードウェイは一〇万三〇〇〇冊の知識を受け、掌から主神の槍に似た武器を生み出した。それは本物のグングニルではなく、人間用に歪めた模倣の槍だった。

その槍は魔神の力を整えるものでも世界を作り直すものでもなかったが、主神の一撃という現象だけを再現する破壊の武具だった。上条当麻は、その一撃が放たれれば世界が壊れると知っていたため、バードウェイを止めようとした。

歌うインデックス

上条当麻は、槍を持つバードウェイではなく、その術式を支えるインデックスを狙った。インデックスは可聴域外の歌声でバードウェイに知識を伝えており、その歌を止めれば槍は安定を失うと見抜いたのである。

上条当麻はインデックスの口を塞ごうと飛び込んだが、目測を誤って胸元に触れてしまった。インデックスの絶叫で詠唱は途切れ、バードウェイの槍は爆発四散したが、上条当麻はインデックスに噛みつかれて動けなくなった。

女の子としてのオティヌス

倒れたまま、上条当麻はバードウェイに、彼女達が自分達の身に何が起きたかをどこまで掴んでいるのか尋ねた。バードウェイは、魔神が全力を振るえば世界を書き換える程度は可能だと推測していたが、無限の地獄までは想像していなかった。

上条当麻は、新しいものを見たというより、当たり前のことを思い出しただけだと語った。彼はもう、オティヌスを殺すことはできず、一人の女の子を殺して笑う結末は受け入れられないと告げた。

貸しを作るバードウェイ

バードウェイは、上条当麻がオティヌスを一人の女の子として見ているのだと理解し、謀略を考えていた自分が馬鹿らしくなったとこぼした。上条当麻は、オティヌスを無力化した上でアメリカに引き渡すつもりだと説明した。

バードウェイは、インデックスを連れていけば魔神への切り札を完璧に記憶してしまい、彼女を取り巻く脅威が増すと判断した。彼女はインデックスを押さえる役を引き受け、上条当麻とオティヌスを橋の向こうへ進ませた。

第一八章 V.S.『魔神に対する者』 Round_10. 

王様公園の聖人達

ヒュン島の道

上条当麻とオティヌスは大橋を渡り、ヒュン島へ入った。目的地のイーエスコウ城は同じ島にあり、途中のオーデンセを経由すれば辿り着ける距離だった。

ヒュン島は半島ほど混乱しておらず、二人は観光客のレンタカーに同乗してオーデンセへ向かった。街に着いた上条当麻は防寒具を探そうとしたが、観光地価格で手が出ず、駅前で次の車を探すために公園を通ることにした。

人払いの公園

王様公園には人影も足跡もなく、上条当麻とオティヌスは人払いが仕掛けられていると察した。直後、二人の前後を塞ぐようにシルビアとブリュンヒルド=エイクトベルが現れた。

シルビアは、オッレルスが来られない理由をオティヌスなら分かるはずだと告げ、強い私怨をにじませた。ブリュンヒルドは私怨とは無縁だとしながらも、オティヌスが守るべき者の害になるなら倒すと宣言した。

聖人の猛攻

シルビアは一瞬で上条当麻へ迫り、彼を一〇メートル以上吹き飛ばした。上条当麻は肺を震わせ、血を吐きながらも、オティヌスを狙わせまいと立ち上がった。

だがシルビアはさらに上条当麻を打ち据えた。彼女にとって、上条当麻がオティヌスの側に立っているだけで殺意の対象であり、彼の事情や理由は問題ではなかった。

潰れたベンチのオティヌス

ブリュンヒルドは、ベンチに叩き込まれたオティヌスを観察し、本来の魔神の力を使えない状態だと判断した。彼女は殺せるうちに殺すのが最良だと考え、大剣を構えた。

オティヌスは、上条当麻が自分の罪の外にいる者であり、彼に罪を背負わせる必要はないと必死に訴えた。しかしシルビアは、正常に戻ればオティヌスを許してしまいそうだから、あえて狂ったままで復讐したいのだと吐き捨てた。

オッレルスの介入

シルビアとブリュンヒルドが決定的に動こうとした瞬間、オッレルスが二人の間に割って入った。妖精化で特別な力を失っていた彼は、意志だけでブリュンヒルドの大剣を両腕で受け、軌道を逸らした。

その代償としてオッレルスの両腕は破壊されたが、彼はシルビアとブリュンヒルドを正面衝突させた。二人の聖人は倒れ、上条当麻とオティヌスは命を拾った。

弱体化の関係性

オティヌスは、オッレルスも自分を殺しに来たのかと問うた。オッレルスは、オティヌスを倒せるなら何でもよいという考えに変わりはないが、今ここで上条当麻が死ねば、オティヌスはより恐ろしい怪物になるだろうと答えた。

同じように、オティヌスが死ねば上条当麻も大きく変わるかもしれなかった。だからオッレルスは、二人の関係がオティヌスを最も弱体化させるなら、それを維持するために動くのも悪くないと考えていた。

理解者の答え

オティヌスは礼を言わず、オッレルスも自分は攻撃しているつもりだと返した。オティヌスは意識の薄い上条当麻に肩を貸し、警戒しながらその場を離れた。

最後にオッレルスは、探し物は見つかったのかと尋ねた。オティヌスは、理解者はオッレルスではなく、上条当麻の方がもっと強かったと答えた。

第一九章 V.S.『槌振るいし全能神』 Round_11. 

イーエスコウ城の最後の敵

湖畔のグレムリン

イーエスコウ城の湖畔には、ヘル、ヨルムンガンド、フェンリルをはじめとするグレムリンの正規メンバー達が集まっていた。彼らは、オティヌスが湖に隠した鍵を自分達にも伏せた本当の計画だと考え、裏切りへの報復を望んでいた。

そこへ雷神トールが現れた。彼は代表者を決めようと提案し、実力主義の肉弾戦を始めた結果、湖畔に集まっていたグレムリンの面々をまとめて倒していた。

血まみれの到着

上条当麻とオティヌスは、互いを支え合いながら吹雪の中を進んだ。上条当麻は、すべてが終わった後にオティヌスが何をしたいのかを尋ね、彼女は本当にどんな夢を追ってもよいのかと確認した。

上条当麻は、よいに決まっていると即答した。オティヌスはわずかに笑みを見せたが、具体的な夢は語らず、二人はイーエスコウ城の湖畔へ辿り着いた。

全能神トール

湖畔には、倒されたグレムリン達の山の上にトールが座っていた。彼は味方ではなく敵として上条当麻達を迎え、オティヌスではなく上条当麻との一対一を望んだ。

オティヌスは、今のトールが投擲の槌の補助を失った雷神ではなく、全能神としての力を表に出していると警告した。上条当麻はオティヌスを制し、一対一で戦うと告げた。

必ず勝てる位置

トールは、世界そのものを動かして自分を必ず勝てる位置へ配置する術式を使っていた。彼自身が移動しているのではなく、世界が彼のために歪み、上条当麻の死角や攻撃可能な位置を自動で差し出していた。

上条当麻は何度も殴られ、雪の上を転がされた。距離を取っても意味はなく、トールは常に有利な位置から攻撃できるため、上条当麻は一方的に追い詰められていった。

グレムリンの責任

トールは、グレムリンの正規メンバー達が願いを叶える報酬をオティヌスに期待していたのだと語った。だから、報酬を払わずに消えたオティヌスを恨む資格があると考えていた。

上条当麻は、それを止められる立場にいたグレムリン達にも責任があると叫んだ。オティヌスを理解しようとせず、恐ろしい魔神という枠に押し込め、夢を押しつけた結果をすべて彼女に背負わせるのは間違いだと断じた。

貨物列車の奇襲

トールは、上条当麻の指摘を認めながらも、それとこれとは別だとして攻撃を続けた。だが上条当麻は、トールの術式が上条当麻との戦闘に勝てる位置を作るものであり、戦闘に関係ないものには対応できないと見抜いた。

上条当麻は貨物列車の通る位置へトールを誘導していた。列車は猛烈な速度で通過し、トールを巻き込んだが、彼はぎりぎりで直撃を避け、血まみれながら生き残った。

救われることへの拒絶

トールは、最後の敵は自分ではないと告げた。その頃、オティヌスは一人で湖に膝をつき、自分の目である蒼い宝石を掬い上げていた。

だが彼女は、上条当麻にすべてを背負わせたまま自分だけが救われることを拒んだ。救われたい気持ちはあっても、その重圧まで上条当麻のせいにしてしまうような甘えはできないと考え、目を足元へ落とした。

十の弩

オティヌスは、自分を救うことはできないと宣言した。直後、周囲には凄まじい震動が走り、彼女の背後に十本の弩が現れた。

それは、かつて上条当麻を殺した究極の兵器だった。妖精化で崩壊しかけた体をさらに削り、自分を罰するため、そして上条当麻を確実に足止めするために、オティヌスは魔術を使ったのである。

逃げるな、オティヌス

トールは、オティヌスが救われることを拒み、上条当麻に業を背負わせないために死を選ぼうとしているのだと告げた。上条当麻はその真意を知り、右拳を握り締めた。

彼は、オティヌスが普通にも平凡にもなろうと決めたなら、罪を償うことからも幸せになることからも逃げるなと叫んだ。死ぬことで上条当麻を救えるという考えを否定し、もう一度魔神オティヌスへ挑むと宣言した。

第二〇章 V.S.『???』 Round_12 (Secret). 

人類の問いと救われたオティヌス

世界への問いかけ

上条当麻とオティヌスの戦いは、黒猫や無人偵察機、天埜郭夜、イングリット=マーティン軍曹達にも見られていた。ロベルト=カッツェは、その映像を世界へ公開し、オティヌスが許される余地を人類に問う決断をした。

ワシリーサ、サーシャ=クロイツェフ、レッサーも同じ場所で状況を見守っていた。国連本部では、ロベルトの記者会見に合わせ、英国女王エリザード、ロシア成教の総大主教、ローマ教皇もそれぞれの立場から世界へ働きかけることになった。

人類の強さ

ロベルトは、オティヌスが悪党であることは否定しなかった。だが、罪を悔い、自分の命で誰かを救おうとする者をなお処刑することが正しいのかを、人々へ問いかけた。

ロシア成教の総大主教やローマ教皇、エリザードも、それぞれの言葉で復讐だけが答えではないと示した。現場で戦っていた者達もその声を聞き、世界はオティヌスを殺す以外の選択肢へ向き始めた。

十の弩への突撃

オティヌスは、上条当麻を拒むために十の弩へ力を蓄えていた。上条当麻は、弩の一発でも当たれば惑星ごと吹き飛ぶとトールへ告げ、振り返らずにオティヌスへ走り出した。

オティヌスはまだ目を眼窩へ戻しておらず、妖精化による亀裂が全身へ広がっていた。上条当麻は、まず胸の杭を破壊すればよいと考え、彼女の懐へ飛び込もうとした。

迫る不可避の死

オティヌスは上条当麻へ照準を合わせ、十の破壊を放った。矢は上条当麻の進路を削り取り、最後の一本で確実に仕留める形へ追い込んでいった。

上条当麻は、かつて自分を殺した攻撃だと分かっていても走り続けた。オティヌスが間違った自己犠牲を正解だと思っているはずがないと叫び、その答えに抗った。

越えた弩

最後の矢が迫った時、上条当麻は回避ではなく正面から右拳をぶつけた。幻想殺しでも完全には消せず、腕は壊れかけたが、彼は軌道をわずかに逸らした。

その真下を潜り抜けた上条当麻は、オティヌスの懐へ飛び込んだ。彼は拳で殴らず、両腕で彼女を抱き寄せ、背中側から胸の杭へ触れた。

砕かれた杭

上条当麻は、最後の力で胸の杭を引き抜き、粉々に砕いた。彼は、世界の全てと戦ってでも助けると約束したのだから、もう逃がさないとオティヌスへ告げた。

オティヌスは、その言葉を受けた時点でもう救われていたと笑った。だが直後、彼女の体は光の粒子となって崩れ始めた。

届かなかった一歩

上条当麻は、あと一歩のところで間に合わなかった。オティヌスの体は雪に落ちる前に光となって風へ流れ、彼の腕の中から消えた。

最後に、ありがとうという声が聞こえたように上条当麻は感じた。その真偽を確かめる間もなく、限界を迎えた上条当麻は雪の中へ倒れ込んだ。

終章 争いの果てに、右手が掴むものは Finale_8. 

小さなオティヌス

隠された魔神達

オティヌスが消えた後、世界のどこにもない場所で、僧正、ネフテュス、娘々達が会話していた。彼らはオティヌスの結末が上条当麻の今後に悪影響を与えると見て、介入の必要を語っていた。

そこはオティヌスでも破れなかった薄皮のような位相であり、グレムリンの本質に関わる場所だった。だが、アレイスター=クロウリーがその位相を外から裂き、魔神達の安全地帯へ踏み込んできた。

アレイスターの侵入

アレイスターは、オティヌスの問題よりも魔神達の所在を突き止めることを優先していた。彼は存在しない座標を変換し、魔神達が隠れていた場所へ到達した。

魔神達は、アレイスターの偏執的な魔術潰しを指摘した。アレイスターは、自分は歪んだ位相に生きる魔術師達とは違うものを統べるために調整していると返したが、エイワスが失敗作だと告げられ、表情を消した。

学園都市の病室

上条当麻が目を覚ますと、そこはデンマークの病院ではなく、学園都市の病室だった。全身は包帯やチューブだらけで、カエル顔の医者は、人間離れした処置をしなければ命が繋がらないほど上条当麻の体は壊れていたと説明した。

やがて面会謝絶が解かれ、インデックスが見舞いに来た。彼女は上条当麻に謝罪を求めたが、包帯に固められた彼は土下座もできなかった。

救いへの疑問

上条当麻は、オティヌスを助けられなかったと語った。彼女が救いを拒んで最後の戦いを始めた時点で、もう体の亀裂は致命的に広がっていたのだと考えていた。

それでもオティヌスは最後に笑って、自分はすでに救われていたと言った。上条当麻は、人を救うとは何なのか、本人が笑っていれば救いになるのか分からず、あの笑顔を違う形で見たかっただけだったと漏らした。

枕元のオティヌス

上条当麻がオティヌスの死を受け入れようとした時、枕の下から小さなオティヌスが現れた。身長は一五センチほどになっていたが、彼女の意思は確かに残っていた。

オティヌスは、目を戻していなかったため本質的にはまだ魔神であり、弩の最後の一本を撃つ前に幻想殺しで妖精化を破壊されたため、完全な崩壊には至らなかったと説明した。さらに魔神は五体が砕けた程度では死滅せず、残った部分が再統合したのだと語った。

再び交わす言葉

上条当麻は、右手で触れてもオティヌスが消えないのかを確認した。オティヌスは、ニュートラルな魔神に触れても問題はなかったはずであり、小さくなっても性質は変わらないだろうと答えた。

上条当麻は、オティヌスが目の前にいて、もう一度言葉を交わせるという事実に追いついた。彼はただ、そうかと繰り返し、オティヌスは少し目を逸らした。

魔神への刑罰

上条当麻は、オティヌスが罰を受ける話はどうなったのかと尋ねた。彼女が答えようとした時、インデックスの三毛猫が小さくなったオティヌスに飛びかかった。

猫に咥えられたオティヌスは、デンマークで意識を失った上条当麻の後に交わされた大統領や英国女王との会話を思い出していた。小さな体では通常の重刑務所に収監しても脱獄の恐れがあり、寿命の概念も曖昧であるため、通常の懲役刑は意味をなさなかった。

最も効く罰

大統領と英国女王は、オティヌスを友人として扱ったのではなく、冷徹に分析した上で刑罰を決めていた。彼女に与えられた罰は、自殺してでも目を背けようとした幸せな世界を、最も近い場所で永遠に眺め続けることだった。

それは、魔神との戦いに勝利した人類がオティヌスに与えた最大の罰であり、上条当麻のそばで生き続けることでもあった。

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