新約 とある魔術の禁書目録(7)レビュー
新約 とある魔術の禁書目録まとめ
新約 とある魔術の禁書目録(9)レビュー
物語の概要
■ 作品概要
『新約 とある魔術の禁書目録(8)』は、科学と魔術が交差する世界を描いた異能バトル・ファンタジーである。物語は、魔術と科学の融合組織『グレムリン』が、東京湾に浮かぶ本拠地『船の墓場(サルガッソー)』にて、魔神オティヌスを完全な存在とするための『主神の槍(グングニル)』製造を進めるところから展開する。世界の危機を察知したアメリカやイギリスなどの連合勢力は、総攻撃の準備を開始した。上条当麻は、異能を打ち消す「幻想殺し(イマジンブレイカー)」を持つため、槍の完成を食い止める「楔」として戦場へ投入される。東京が戦場と化す中、上条らは魔術師フレイヤなどの強敵と激闘を繰り広げ、ついに船の墓場へと到達する。一方で、魔神になり損ねた男オッレルスも潜入し、右方のフィアンマと共にオティヌスの魔神の力を奪う「妖精化」の奇策を放つ。しかし、それすらもオティヌスの掌の上であり、彼女は自らの眼窩から「主神の槍」を取り出して世界を破壊するという、絶望的な結末を迎える。
■ 主要キャラクター
- 上条当麻:右手に異能を打ち消す「幻想殺し(イマジンブレイカー)」を持つ高校生。「主神の槍」の完成を阻止するため、東京湾の「船の墓場」を目指す。道中で『グレムリン』の魔術師フレイヤと地下鉄の屋根の上で死闘を繰り広げ、苦しむ彼女と母親を救い出した。
- オティヌス:『グレムリン』を束ねる魔神の少女。成功と失敗が常に半々となる『無限の可能性』をねじ曲げ、成功100%を手に入れるために「主神の槍」を求めている。オッレルスによる「妖精化」の攻撃すら自らの完成への道標として利用し、圧倒的な力で世界を終わらせる。
- オッレルス:魔神になり損ねた青年。雷神トールに変装して『グレムリン』の本拠地に潜入し、情報収集を行う。オティヌスから魔神の力を奪う「妖精化」の術式を叩き込むが、彼女の真の狙いに気づけず敗北を喫した。
- フレイヤ:『グレムリン』に所属する魔術師。腹の中の胎児が母体を操り、母を守るために戦い続けている。複数の怪物を生み出して上条を追い詰めるが、彼の決死の説得とインデックスの魔術的支援によって呪縛から解放された。
- 御坂美琴:学園都市第三位の超能力者。インデックスと共に上条を追いかけ、戦場と化した東京を駆け抜ける。圧倒的な危機の中でも上条の助けに応じ、彼を支援して強敵の突進を食い止めた。
- レイヴィニア=バードウェイ:魔術結社「明け色の陽射し」のボス。上条を戦場へ導き、東京を襲う『グレムリン』の自動戦力や大鷲の怪物を的確な魔術で迎撃する。
■ 物語の特徴
本作の最大の特徴は、世界規模の連合勢力と『グレムリン』の全面戦争が、首都・東京を舞台に繰り広げられるという圧倒的なスケールの大きさにある。地下鉄トンネルでの息詰まる激戦や、上空での巨大兵器同士の衝突など、息をつかせぬアクションが連続する。また、強大な敵であるフレイヤが抱える悲痛な背景と、それを救おうとする上条当麻の人間ドラマも読者の心を打つ。しかし何よりも読者に強い衝撃を与えるのは、主人公達のあらゆる努力とオッレルスらの緻密な奇策すらも、魔神オティヌスにとっては「自らを完成させるための手段」に過ぎなかったという点だ。主人公が世界を救えずに「世界が終わる」という衝撃的なラストシーンは、これまでのシリーズにおける勧善懲悪のカタルシスを根底から覆し、次巻への強い興味を引きつける要素となっている。
書籍情報
新約 とある魔術の禁書目録 8
(A Certain Magical Index)
著者:鎌池 和馬 氏
イラスト:はいむらきよたか 氏
出版社:株式会社KADOKAWA(電撃文庫)
発売日:2013年9月10日
ISBN:9784048919043
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あらすじ・内容
『グレムリン』の頂点に立つ『魔神』オティヌスが、ついに動き出す。
全世界を、陰から操る『グレムリン』。その科学と魔術の融合組織が起こした様々な『脅威』――ハワイでのテロ行為、バゲージシティでの『実験』、学園都市に眠る『不死の存在』の奪取――には、全て理由があった。 『グングニル』。 魔神オティヌスの最終目的であるその神槍製造を止めるため、『魔神になり損ねた男』オッレルスは、姿形を雷神トールと偽り、『グレムリン』の本拠地・サルガッソーへ侵入、調査を開始する。 世界崩壊のカウントダウンは、間近に迫っていた。 ところで一方の上条当麻なのだが、彼が朝自宅で目覚めたら、幼い少女にエロい少女が同じ布団に入っていた。 うーんやっぱそうだよな! 世界の危機が迫っていても上条サンはそうだよな! な第8巻登場!
感想
読んでまず感じたのは、「ここまでスケールを大きくするのか」という驚きである。世界各国の軍や魔術勢力が総力を挙げて『グレムリン』へ挑む展開は、シリーズの中でも屈指の大規模な戦いだった。
その一方で、冒頭はいつもの禁書らしい空気から始まる。
上条のベッド代わりのバスタブに少女二人が入り込んでいるという、不幸体質の彼らしい日常には思わず笑ってしまった。大事件の前だからこそ、こうした肩の力が抜ける場面があると安心できる。
今回は、これまで少し出番が控えめだったインデックスや御坂美琴がしっかり活躍してくれたのも嬉しかった。
特に印象に残ったのは、フレイヤとの戦いで上条が二人へ「力を貸してくれ」と頼む場面である。
これまでの上条は、誰かを危険へ巻き込まないように一人で背負い込むことが多かった。それだけに、自分から助けを求めた姿には彼の変化を感じた。
そして、その言葉を待っていたかのように「任せて」と応えるインデックスと美琴の姿が本当に格好いい。
ようやく三人が肩を並べて戦えたような気がして、読んでいて自然と胸が熱くなった。
中盤からは、物語のスケールが一気に世界規模へ広がっていく。
科学と魔術が入り混じる『グレムリン』に対し、各国の軍や魔術勢力が総攻撃を仕掛ける展開は圧巻だった。
東京湾の「船の墓場」へ向かう道中も緊張感に満ちており、交通網が麻痺した首都を駆け抜ける場面からは、世界そのものが危機に陥っていることが伝わってくる。
その中でも印象深かったのは、地下鉄で立ちはだかるフレイヤとの戦いである。
母親を守るため、胎児が母体を操って戦うという事情はあまりにも悲しく、単純な敵とは思えなかった。
だからこそ、上条たちが力を合わせて彼女を止める展開には、勝敗以上の重みがあったように感じる。
そして終盤は、ここまで積み上げてきた希望をすべて叩き潰すような展開が待っていた。
オッレルスや右方のフィアンマが「妖精化」によって魔神の力を奪おうとした時は、「ついに勝てるのかもしれない」と期待した。
しかし、それすらオティヌスの計画の一部だったという真実には言葉を失った。
巨大な槍の製造施設すら囮に過ぎず、本物の『主神の槍』を自らの眼窩から取り出す場面は、まさに圧倒的というほかない。
あそこまで徹底して希望を打ち砕かれるとは思っておらず、読んでいて鳥肌が立った。
そして、主人公が世界を救えないまま終わるという結末も衝撃的だった。
禁書シリーズでは数々の強敵が登場してきたが、「どうすれば勝てるのか全く想像できない」と感じたのは、この巻が初めてだったかもしれない。
読後に残ったのは爽快感ではなく、圧倒的な絶望だった。
それでも、不思議と続きを読む手を止められない。
この絶望的な状況を上条当麻がどう乗り越えるのか。その答えを知りたくて、すぐに次の巻を手に取りたくなる一冊であった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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新約 とある魔術の禁書目録(7)レビュー
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考察・解説
サルガッソーの魔神
『新約 とある魔術の禁書目録8』における「サルガッソーの魔神」ことオティヌスと、その本拠地について解説する。
東京湾中央に浮かぶ船の墓場の概要から、無限の可能性がはらむ致命的なジレンマ、妖精化を巡るオッレルスとフィアンマの奇策、そして主神の槍の顕現による世界の終焉にいたる全容は以下の通りである。
軍用艦などの残骸が積み重なった地図にない島と組織の頂点に立つ隻眼の少女
船の墓場(サルガッソー)は、海流や暗礁によって漁船から軍用艦にいたるまでの残骸が積み重なって形成された、地図にも載らない島である。
・科学と魔術の融合組織であるグレムリンはここを本拠地とし、東京湾のほぼ中央に位置取っていた。
・この組織の頂点に君臨するのが、魔神オティヌスである。
・彼女は14歳程度の金髪碧眼の少女で、片目を黒い革の眼帯で覆い、魔女を思わせる装束を身に纏っている。
成功と失敗が常に均等であるという致命的なジレンマと絶対的な確率の追求
魔神である彼女は、無限の可能性という強大な力を持っている。
・しかし、それはプラスとマイナスの可能性を均等に内包するものであった。
・何を行っても成功と失敗の確率が常に50パーセントになってしまうという致命的なジレンマを抱えており、彼女自身も力を完全に制御できずにいた。
・この不確定な確率をねじ曲げ、成功100パーセントの確証を手に入れるため、彼女は主神の槍(グングニル)の完成を求めていた。
トールへの変装潜入と十字教の歴史的事実を応用した魔神解体術式
オティヌスを止めるため、魔神になり損ねた青年オッレルスは雷神トールに変装してサルガッソーへ潜入した。
・彼は右方のフィアンマと結託し、オティヌスから魔神の力を奪う、妖精化、の術式を放つ機会を窺う。
・妖精化とは、十字教が異教の神を矮小化して妖精へと変容させた歴史的事実を術式化したものである。
・これにより、魔神を人の領域へと引きずり下ろす力を持つ。
・オッレルスは自らの犠牲を伴う特攻を仕掛けるが、オティヌスは認識を騙してそれを防ぎ、逆にオッレルスを妖精化して無力化した。
・しかしその直後、背後に潜んでいたフィアンマが放ったもう一つの妖精化の杭が、オティヌスの心臓を正確に貫くことに成功する。
失敗100パーセントを逆手に取った完全化と眼窩から引き抜かれた真の槍
妖精化の術式を受け、失敗100パーセントに追い込まれたかに見えたオティヌスであったが、それこそが彼女の真の狙いの一つであった。
・常に失敗(裏目)が出ると確証できれば、常に逆の選択をすることで百発百中の成功を収められる。
・そのため、勝っても負けても魔神として完成する構図を最初から作り上げていた。
・さらに、マリアン達にサルガッソーで進めさせていた槍の製造作業も、世界中の目を惹きつけるための囮(デコイ)に過ぎなかった。
・真の主神の槍は、彼女自身の眼帯の下の眼窩から引きずり出され、世界に顕現する。
・成功100パーセントと失敗100パーセントの双方を同時に手に入れ、完全なる存在となったオティヌスは、ちまちま戦うなんて面倒臭せえな。世界でも終わらせてやるか、と宣言した。
・これにより、文字通りに世界を崩壊させるという絶望的な結末を迎えた。
まとめ
オティヌスとサルガッソーを巡る動機は、囮の槍で世界中を欺きながら、敵の放った妖精化の術式をも自身の完全化に利用したオティヌスの圧倒的な知略と強大さが描かれたエピソードである。50パーセントのジレンマを、失敗100パーセントという極端な形に変えさせることで逆に絶対的な成功へと昇華させ、自らの眼窩から真の主神の槍を顕現させた。オッレルスやフィアンマの命懸けの奇策すらもすべて手のひらの上で転がし、完全な魔神として完成した直後に世界を無造作に終わらせた結末は、物語にこれまでにない絶対的な絶望感をもたらしている。
グレムリンの槍製造
『新約 とある魔術の禁書目録(8)』における『グレムリン』の『主神の槍(グングニル)』製造について解説する。
成功と失敗が拮抗するジレンマを打破するための製造目的、世界各地から集められた必要な材料、本拠地サルガッソーで進められた魔術と科学の融合プロセス、そして大規模な計画の裏に隠されていたオティヌスの真の罠にいたる全容は以下の通りである。
成功確率を100パーセントにするための完全な魔神の象徴
グレムリンの頂点に君臨する魔神オティヌスは、無限の可能性という強大な力を持っていた。
・しかし、それは何を行っても成功と失敗の確率が常に50パーセントで拮抗してしまうという致命的なジレンマを抱えていた。
・この不確定な不都合をねじ曲げ、成功100パーセントの確証を手に入れる必要があった。
・彼女が完全な魔神となるために不可欠だったのが、主神の槍(グングニル)の完成である。
火山性エネルギーと全体論の実証および第二位の抜け殻の確保
グレムリンは槍を製造するため、世界各地で必要となる様々な要素を集めていた。
・炉心のエネルギー:ハワイ諸島で取得した莫大な火山性エネルギー。
・全体論の検証:東欧のバゲージシティで行われた、全体論超能力の開発に関する実証試験。
・素体の確保:学園都市に眠る不死の少女フロイライン=クロイトゥーネの強奪には失敗したが、代替物として学園都市第二位である垣根帝督の抜け殻(未元物質)を入手した。
プールを製造場とした魔術と科学による大規模な並列演算と儀式
東京湾上に位置する本拠地である船の墓場(サルガッソー)の、豪華客船の成れの果てにあるプールが具体的な製造場となった。
・槍の製造は基本的に魔術ベースの儀式であるが、魔術だけでは完成しないため、科学サイドの技術で穴埋めをする必要があった。
・魔術側の担当:黒小人マリアン=スリンゲナイヤーが製造の主軸を担い、あらゆる魔術の穴埋めができるジョーカーである投擲の槌(ミョルニル)がハワイで得たエネルギーを管理した。
・科学側の担当:死者の軍勢として動く元研究者の木原加群(ベルシ)が、船の残骸から集めたコンピュータを繋いで大規模な並列演算装置を構築し、第二位の抜け殻から作った素体の調整を行った。
・儀式は、魔術の自動作業が詰まるタイミングで的確に全体論を人の手で放り込み、切り替えを行うという極めてデリケートなものであった。
・途中で素体が崩壊しそうになるトラブルもあったが、オティヌスが強引に素体を維持することで再切り替えに成功し、槍は完成まであと50センチという大詰めまで進んだ。
世界を欺くための巨大な囮と眼窩から引きずり出された真の槍
この大規模な槍の製造計画には、世界を巻き込む決定的な裏が存在していた。
・オッレルスと右方のフィアンマによる奇策である妖精化の術式を打ち込まれたことで、マリアンによる槍の製造は最終的に失敗に終わる。
・しかし、オティヌスにとってマリアンを軸とした槍の製造は、世界中の敵対者の目を惹きつけるための巨大な囮(デコイ)に過ぎなかった。
・本当であればオティヌス一人でも槍は作れたものの、妨害を防ぐためにあえて大がかりな計画を同時進行させていたのである。
・さらにオティヌスは、妖精化によって失敗100パーセントを得ることで、常に選んだ道と逆を行くという裏技によって百発百中の成功を獲得できると気づいていた。
・結果として、彼女は自らの眼帯の下の眼窩から赤黒い真の主神の槍を引きずり出し、世界を終わらせる絶大な力を振るうことになった。
まとめ
主神の槍の製造計画は、マリアンや木原加群らの魔術と科学の粋を集めた大規模な儀式でありながら、その実態は世界中の敵対者を一所に釘付けにするためのオティヌスの壮大な欺瞞作戦であった。ハワイの火山エネルギーや垣根帝督の未元物質を利用した製造プロセスが佳境を迎えたところで敵の防衛策によって破綻したように見えたが、それすらもオティヌスにとっては織り込み済みのシナリオであった。失敗100パーセントという極端な状況を逆手に取って完全な制御権を掌握し、自らの身体から本物の主神の槍を顕現させた一連の顛末は、魔神の絶対的な強さと世界崩壊の引き金となる絶望的な幕引きを象徴している。
連合勢力の総攻撃
『新約 とある魔術の禁書目録(8)』における「連合勢力の総攻撃」について解説する。
主神の槍の完成阻止を狙う総攻撃の目的から、国家と宗教が結集した連合勢力の構成、グレムリンが仕掛けた利害の分散という政治的罠、そして大統領の決断と上条当麻を要とした作戦の展開にいたる全容は以下の通りである。
世界崩壊を阻止するための本拠地サルガッソーへの決戦
連合勢力の目的は、魔神オティヌスが主神の槍(グングニル)を完成させるのを阻止することである。
・槍が完成してしまえばオティヌスは完全な魔神となり、世界の歴史を永遠に支配されるか、あるいは世界そのものを終わらせられてしまう。
・そのため、槍の完成前に決着をつける必要があった。
・攻撃の具体的な標的は、グレムリンの本拠地である船の墓場(サルガッソー)である。
巨大国家と世界宗教の結集および潜入協力者による位置特定
この作戦のために、世界規模の軍事力と宗教組織が非公式に手を組んだ。
・アメリカ、ロシア、イギリス、フランスといった通常軍事力を持つ国家が結集する。
・同時に、イギリス清教、ローマ正教、ロシア成教などの巨大宗教勢力がニューヨークの国連本部ビルで非公式会議を開き、同盟を結んだ。
・船の墓場の位置は巧妙に隠蔽されていたため、イギリスは地球の表面をブロックに分けて魔術師を送り込む。
・ローマ正教は世界に散らばる教会や信徒のネットワークを利用するなどの索敵システムを構築した。
・さらに彼らは、グレムリン内部に潜り込んでいる協力者であるオッレルスからの位置特定信号を待っていた。
学園都市至近への配置と群衆による人肉バリケードが招いた決断の停滞
協力者からの情報修正により、真の船の墓場が日本の東京湾のほぼ中央、学園都市の目と鼻の先にあることが判明した。
・これはグレムリンが仕組んだ狡猾な罠であった。
・学園都市の至近に本拠地を置くことで、連合勢力が攻撃を仕掛ければ学園都市への敵対行動と見なされる懸念を生じさせた。
・さらに、グレムリンは東京の交通網を麻痺させて道路を群衆で埋め尽くし、人肉のバリケードとも言える人の壁を作り出した。
・これにより日本政府は、首都を戦場にすることを恐れて連合戦力の投入承諾を渋る。
・他国の首脳たちも、大規模な流血の責任を恐れて決断を鈍らせた。
・グレムリンは明確な敵でありながら、各国の守りたいものの違いや政治的リスクを突くことで、連合勢力の結束を乱す利害の分散を図ったのである。
大統領の進撃宣言と精密誘導爆弾として期待された幻想殺しの陸路突破
停滞する状況の中、アメリカ大統領ロベルト=カッツェが、死ぬのが本当に怖くない本物の馬鹿野郎だけ俺について来い、と宣言し、賛成した勢力だけで総攻撃を強行した。
・先鋒としてロシア空軍の爆撃機編隊が日本上空へ向かって牽制を行う。
・イギリスのキャーリサや騎士団長などの部隊も、海路から突撃を開始した。
・そして、この作戦の最大の要とされていたのが、上条当麻の幻想殺し(イマジンブレイカー)である。
・彼は長期戦をこなすのではなく、槍が完成する瀬戸際で精密誘導爆弾のように投下され、一発でグレムリンの関節をへし折る役割を期待されていた。
・しかし、彼を運ぶ超音速旅客機がグレムリンの怪物に撃墜されてしまう。
・これにより、上条たちは戦場と化した東京を陸路で突破し、東京湾を目指すこととなった。
まとめ
連合勢力の総攻撃は、世界の命運を賭けた未曽有の大規模作戦でありながら、グレムリンの利害の分散作戦によって各国の政治的思惑やリスクが浮き彫りになった緊迫の攻防劇である。人肉バリケードや学園都市への配慮から機能不全に陥りかけた連合軍であったが、ロベルト大統領の強行突破の決断によって一気に全面戦争へと突入した。作戦の切り札である上条当麻が移動手段を絶たれ、混乱の東京を陸路で進まざるを得なくなる展開は、槍の完成が刻一刻と迫る中での戦況をより過酷で予測不能なものにしている。
上条当麻の受難
『新約 とある魔術の禁書目録(8)』における上条当麻は、日常的なトラブルから世界規模の危機にいたるまで絶え間ない受難に見舞われている。また、その受難の背景には、彼の持つ「幻想殺し(イマジンブレイカー)」の能力を「精密誘導爆弾」として利用しようとする、連合勢力の冷徹な招集計画が存在していた。
日常における誤解と理不尽な制裁から、免税モールでの精神的苦痛、世界規模の討伐作戦の全容、そして魔神の完成に伴う世界の終焉にいたる詳細は以下の通りである。
自室のバスタブでの目覚めと川へ吹き飛ばされる理不尽な移動
物語序盤、上条当麻は日常生活の場において、極めて不条理なトラブルに巻き込まれる。
・自室のバスタブでレイヴィニア=バードウェイとレッサーに両隣を挟まれて目覚める。
・誤解を避けるため慎重に抜け出そうとするも失敗に終わった。
・ドアの外にいたインデックスに最悪の誤解を与え、ユニットバスの壁が崩壊すると共に頭を噛みつかれる制裁を受ける。
・その後、学校へ行こうとするがバードウェイに引きずられて第二三学区へ向かう羽目になり、バス停のベンチでは少女たちにもみくちゃにされた。
・さらに御坂美琴にその現場を目撃され、食蜂操祈の介入から逃れるために美琴がベンチを磁力で川へ吹き飛ばす。
・その結果、ベンチごと水面を跳ねて移動させられるという理不尽を味わった。
水着専門店での場違いな圧と重ね着による対策が生んだ致命的な誤解
空港の免税ショッピングモールでは、レッサーの提案で水着専門店へ入ることとなる。
・男子高校生として場違いな圧に苦しむ。
・試着室の陰でレッサーから露出の激しい水着の選択を迫られた。
・二着を重ねて透けなくする策を絞り出すが、周囲からは、上条自身がそれを着たいのだ、という壮絶な誤解を受ける。
・店員などから妙に優しい態度を取られることに頭を抱えることとなった。
連合勢力の結成と少女たちによるいつでも出撃できるための確保
世界規模の討伐作戦が進む裏で、上条の身柄は政治的な意図によってキープされていた。
・イギリス清教、ローマ正教、ロシア成教といった巨大宗教勢力や、アメリカ軍をはじめとする通常軍事力を持つ国家群は、グレムリンを討伐するための連合勢力を結成していた。
・彼らはグレムリンの本拠地である船の墓場(サルガッソー)を世界中で捜索しており、発見次第、総攻撃を仕掛ける手はずを整えていた。
・作戦の準備が進む中、上条の部屋のバスタブにバードウェイとレッサーが潜り込んでいた。
・レッサーは、彼女たちがやってきた目的が、幻想殺しをいつでも出撃できるように確保しておくためであると漏らした。
主神の槍の完成を阻止する楔と精密誘導爆弾としての役割
連合勢力から求められているのは、上条当麻という人物ではなく、異能を打ち消す幻想殺しの能力そのものであった。
・魔神オティヌスと上条が正面から戦えば上条が即死することはバードウェイも認めており、彼が長期の戦闘を一から十までこなすことは期待されていない。
・作戦の最大の要所となるのは、オティヌスが主神の槍(グングニル)を完成させるか否かの瀬戸際であった。
・上条はその決定的な瞬間に投入され、一発でグレムリンの関節をへし折る楔(くさび)として利用される計画だった。
・すなわち上条は、航空機から投下される精密誘導爆弾のような扱いであり、プロの魔術師の手で的確に標的のもとへ誘導され、最適なタイミングと場所で右手を振るうことだけが求められていたのである。
ニーズヘッグによる機体切断と地下鉄列車の上での決死のフレイヤ戦
中盤以降は、作戦の遅れと敵の妨害により、より命に関わる受難が連続する。
・チャーターした超音速旅客機に乗り込むが、直後に、地の底這う悪竜(ニーズヘッグ)、によって機体を真っ二つにされる。
・上空300メートルから東京の中心地へ放り出されてしまった。
・パラシュートを開くも上手く減速できず、建設中のビルのクレーンに引っ掛かって宙吊りになる。
・再び現れた悪竜にクレーンごと吹き飛ばされてビルに叩きつけられるという、絶体絶命の危機に直面した。
・大混乱の地上を避けて地下鉄トンネルへ潜り、走行する列車の屋根へ飛び乗るが、着地の衝撃で激痛に見舞われる。
・そこでグレムリンの魔術師フレイヤが生み出す多数の怪物と対峙した。
・天井が低くなるトンネル内で巨大猪ヒルディスビニの突撃による暴風に吹き飛ばされそうになる。
・列車の側面に指だけでしがみつき、脱いだ学生服を振り回してフレイヤの視界を塞ぐという決死の機転で、辛くも生き延びた。
船の墓場での孤立無援と主神の槍の顕現による世界の崩壊
そして終盤、東京湾の船の墓場へ辿り着くが、周囲の仲間は姿を消し、単独で魔神オティヌスと向き合うことになる。
・これまでの激闘すらオティヌスの囮であったという事実を突きつけられた。
・彼女の眼窩から主神の槍が取り出されるのを目の当たりにする。
・精密誘導爆弾としての機能を発揮する間もなく、世界を終わらせる、というオティヌスの宣言を聞く。
・最終的に、すべてが壊れていく絶望的な結末を迎えるのだった。
まとめ
本作における上条当麻の受難は、滑稽な日常のトラブルに始まり、最終的には世界崩壊の絶望へ至る凄惨な軌跡である。彼の持つ幻想殺しは、世界中の国家や宗教が結託した連合勢力によって、主神の槍の完成を阻む精密誘導爆弾としてキープされ、決定的な瞬間にのみ消費される駒として扱われていた。しかし、移動手段である旅客機の撃墜や地下鉄での怪物との死闘など、過酷な障壁によって作戦は狂い、最終的に単身たどり着いた決戦の地で、これまでの奮闘すら囮であったという圧倒的な現実を突きつけられる。完全な魔神として完成したオティヌスの手によって世界が理不尽に終わるのを見届けるしかないという結末は、上条当麻にとって最大にして究極の受難となっている。
東京の戦場化
『新約 とある魔術の禁書目録8』における「東京の戦場化」について解説する。
本拠地設置に伴う戦場化の背景から、交通網の麻痺が生んだ人肉のバリケード、社会機能の停止に伴う各所の混乱、怪物と戦闘機による空中戦の被害拡大、そして目的地を目指す上条当麻たちの過酷な移動にいたる全容は以下の通りである。
学園都市至近への本拠地設置と利害の分散を狙った二三区の戦場化
グレムリンは、魔神オティヌスを完全な存在とするための主神の槍(グングニル)を製造する本拠地である船の墓場(サルガッソー)を、東京湾のほぼ中央に設置した。
・これは学園都市の目と鼻の先であり、連合勢力が攻撃を仕掛ければ学園都市への敵対行動と見なされる懸念を生じさせるためであった。
・日本政府も首都を戦場にすることを恐れて連合戦力の投入許可を渋り、結果として各勢力の決断を縛り上げる利害の分散が図られた。
・レイヴィニア=バードウェイは、今回の戦場が日本の首都である東京であり、行政機関が集中する都心二三区全域であると宣言している。
幹線道路の破壊による群衆の立ち往生と通信網の意図的な遮断
グレムリンは都内の幹線道路を適度に破壊し、交通網を完全に麻痺させた。
・車が迂回し人々が徒歩に切り替えた結果、歩道も車道も老若男女の群衆で埋め尽くされ、都市全体が身動きの取れない状態に陥る。
・バードウェイはこれを、民衆の圧死すら厭わない、人の壁(人肉のバリケード)、であると看破した。
・同時に通信網も意図的にパンクさせられ、電話やインターネットは一切繋がらず、災害時専用の伝言板サービスしか機能しなくなった。
政府中枢を守る道路封鎖とサーバー停止や生ゴミ袋への現金隠蔽
大空を赤い怪物が飛び交う異常事態の中、警察は発砲を禁じられ、将棋倒しや圧死を防ぐための避難誘導を優先せざるを得なかった。
・装輪装甲車が地下鉄トンネルを通って現れ、霞ヶ関方面への人の流れを押し返すなど、政府中枢を守るための道路封鎖が強行される。
・民間企業も混乱を極め、保険会社は首都崩壊による大量の保険金請求と倒産を恐れてサーバーの電源を落とした。
・現金輸送員は億単位の現金を抱えたまま動けなくなり、襲撃を避けるために生ゴミの袋へ札束を隠して偽装する事態に追い込まれていた。
大鷲の怪物と超大型戦闘機の激突と学園都市へ向く民衆の怒り
連合勢力の先鋒として、ロシア空軍の爆撃機編隊が日本政府を牽制するために日本上空へ向かった。
・東京上空では、学園都市製の超大型戦闘機と、グレムリンが放った大鷲の怪物フレースヴェルグによる激しい空中戦が繰り広げられる。
・怪物が撃墜されて街へ落下すると、それまで立ち往生していただけの群衆の不満は、明確に命の危機を感じたパニックへと変わった。
・しかし、攻撃を仕掛けてきたのはグレムリンであるにもかかわらず、群衆の怒りの矛先は迎撃を行った学園都市の方へ向き始めていた。
ニーズヘッグによる機体切断と地下鉄や高層ビルを伝う進撃
上条当麻たちを乗せて第二三学区を飛び立った超音速旅客機は、東京上空で、地の底這う悪竜(ニーズヘッグ)、に真っ二つにされ、彼らは上空300メートルから放り出された。
・地上は人で溢れ返り移動が不可能なため、上条当麻は地下鉄の構内へ入り、走行する列車の屋根に飛び乗って東京湾を目指した。
・御坂美琴は磁力を使って高層ビルの壁面を飛び移りながら進む。
・バードウェイたちは下水道を通って川へ抜け、奪取した軍用ゴムボートで海を目指すという過酷な移動を強いられた。
まとめ
東京の戦場化は、グレムリンの狡猾な陣地選定によって日本の首都機能と市民そのものが人質(人肉のバリケード)にされた、きわめて凄惨な都市型テロの様相を呈している。政治的決断の遅れや社会インフラの停止、経済活動の麻痺に乗じるように始まった空中戦は、パニックに陥った群衆の心理を誘導し、怒りの矛先を学園都市へと歪める結果を招いた。この大混乱と怪物の襲撃によって移動手段を完全に絶たれた上条当麻、御坂美琴、バードウェイらは、地下鉄の屋根や高層ビルの壁面、下水道といった極限のルートを選択せざるを得なくなり、東京湾への進軍は困難を極めるものとなった。
新約 とある魔術の禁書目録(7)レビュー
新約 とある魔術の禁書目録まとめ
新約 とある魔術の禁書目録(9)レビュー
登場キャラクター
学園都市
上条当麻
右手に異能を打ち消す「幻想殺し」を宿す高校生である。世界的な危機を回避するための要として、各勢力から切り札として戦場へ投入される。
・所属組織、地位や役職
学園都市の学生。
・物語内での具体的な行動や成果
超音速旅客機で東京湾を目指したが、怪物の襲撃を受けて東京中心部へ投げ出された。地下鉄トンネル内でフレイヤと交戦し、彼女の魔術を打ち破った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
船の墓場へ辿り着くも、魔神オティヌスが槍を顕現させ、世界を終わらせる場面を目撃した。
御坂美琴
学園都市第三位の超能力者である。上条当麻と共に戦い、彼を支援する。
・所属組織、地位や役職
常盤台中学の生徒。超能力者(レベル5)。
・物語内での具体的な行動や成果
上条当麻たちと同じ超音速旅客機に乗り、空中で撃墜された後はインデックスを助けながら新宿へ降り立った。地の底這う悪竜に対して超電磁砲を連射し、突進を食い止めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
磁力を利用した空中移動で高層ビル群を駆け抜け、上条当麻の窮地を救った。
食蜂操祈
派手なスーツの女性を操り、御坂美琴の前に姿を現す少女である。
・所属組織、地位や役職
学園都市第五位の超能力者(レベル5)。
・物語内での具体的な行動や成果
バス停のベンチで御坂美琴に接触し、上条当麻への干渉を匂わせて揺さぶりをかけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
心理掌握の能力を持ち、複数の少女を同時に操ることができる。
垣根帝督
かつて学園都市第二位と呼ばれていた存在の抜け殻である。グレムリンによって兵器の素材として利用される。
・所属組織、地位や役職
学園都市の超能力者(レベル5)。
・物語内での具体的な行動や成果
ケーブルを逆流して未元物質で電子機器や動力源を侵食し、白い少年の姿となって船の墓場を覆う殺戮の檻を形成した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
オティヌスに首を掴まれ、バレーボール大の塊に圧縮されて槍製造の材料にされた。
雲川鞠亜
メイド服を着た少女である。亡き恩人である木原加群の遺体を取り戻そうと行動する。
・所属組織、地位や役職
繚乱家政女学校の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
空港で上条当麻たちに合流し、共に超音速旅客機へ乗り込んだ。木原加群の真意に気づき、妊婦であるフレイヤの母体を預かって見届ける決意を固めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
恩人の死を受け入れ、彼の行動の結末を見守る立場となった。
グレムリン
オティヌス
科学と魔術の融合組織であるグレムリンを束ねる魔神の少女である。成功と失敗が均等に混在する無限の可能性をねじ曲げ、世界を支配しようと目論む。
・所属組織、地位や役職
グレムリンの頂点に立つ魔神。
・物語内での具体的な行動や成果
船の墓場で主神の槍を製造する儀式を進め、オッレルスの妖精化の術式をあえて受け入れた。自らの眼窩から真の槍を引きずり出し、世界を崩壊させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
妖精化による失敗を利用し、常に成功を手に入れる完全な魔神へと至った。
マリアン=スリンゲナイヤー
黒小人と呼ばれる魔術師である。船の墓場にて、主神の槍を製造する役割を担う。
・所属組織、地位や役職
グレムリンに所属する魔術師。
・物語内での具体的な行動や成果
豪華客船のプールで儀式を行い、オティヌスの指示に従って槍の製造を進めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
彼女の行う槍製造は、世界中の目を惹きつけるための囮であったことが後に判明する。
ミョルニル
黒いドラム缶の形をした少女である。あらゆる魔術の不足を補うジョーカーとして機能する。
・所属組織、地位や役職
グレムリンのメンバー。投擲の槌。
・物語内での具体的な行動や成果
ハワイ諸島で獲得した火山性エネルギーを取り込み、主神の槍の製造において管理を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
マリアンの隣でガタゴトと揺れる姿が描かれている。
木原加群
ベルシと名乗る陰気な男である。かつては学園都市の元研究者であり、現在は死者の軍勢として動いている。
・所属組織、地位や役職
グレムリンのメンバー。
・物語内での具体的な行動や成果
船の墓場で船舶のコンピュータを繋ぎ、大規模な並列演算装置を構築した。東京湾岸で地の底這う悪竜を光の刃で切り刻み、人命の損失を防ぐように行動した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
生前に仕込んだ半導体の設定により、木原加群らしい行動を取って人々を救った。
フレイヤ
豊穣神を名乗る魔術師である。母体を操りながら、母を守るために戦う胎児である。
・所属組織、地位や役職
グレムリンの魔術師。
・物語内での具体的な行動や成果
地下鉄トンネル内で大量の怪物を生み出し、上条当麻と交戦した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
インデックスの魔術によって母体との依存状態を絶たれ、意識を失った。
ロキ
シルクハットと燕尾服をまとった老兵である。偽りの星空を作り出し、連合勢力を騙す役割を担った。
・所属組織、地位や役職
グレムリンのメンバー。奇術師。
・物語内での具体的な行動や成果
空の船の墓場でキャーリサたちを待ち受け、首を貫かれながらも偽の拠点に誘い込んだことを明かした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
敵味方を欺く幻影の術式を展開し、消滅した。
ヨルムンガンド
世界を囲む大蛇の名を持つ少年である。ロシアの爆撃機を相手に魔術戦を展開する。
・所属組織、地位や役職
グレムリンのメンバー。
・物語内での具体的な行動や成果
高度一万メートルを飛ぶ爆撃機の主翼に張り付き、魔女狩りの王の攻撃を毒の息で海へ撃ち落とした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
生身で亜音速の暴風に耐え、強力な魔術を行使する。
フェンリル
神を喰らう獣の名を持つ青年である。通信網を断ち切るためにレーダー基地へ向かう。
・所属組織、地位や役職
グレムリンのメンバー。
・物語内での具体的な行動や成果
アラスカの雪原を歩き、オリアナ=トムソンの放つ風の刃を空間の亀裂で飲み込んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地脈や龍脈のエネルギーを飲み込む溝を作り出す能力を持つ。
ヘル
血に染まったつぎはぎのドレスを着た少女である。死因を入れ替えて敵を攻撃する術式を使う。
・所属組織、地位や役職
グレムリンのメンバー。ニヴルヘイムの女王。
・物語内での具体的な行動や成果
太平洋上の海を凍らせて補給艦隊を封じ、リボルバーで軍用艦を炎上させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
シルビアやブリュンヒルドと交戦状態に入った。
イギリス・イギリス清教・騎士派
エリザード
英国女王である。王位継承の剣を用いて一国の中央に立つ。
・所属組織、地位や役職
英国女王。
・物語内での具体的な行動や成果
国連本部ビルでの会議に参加し、地球全土をブロックに分けて魔術師を送り込む探査方法を提案した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
他国の首脳陣に対して毅然とした態度で意見を述べる。
キャーリサ
赤いドレスをまとった英国第二王女である。船の墓場へ上陸して攻撃を指揮する。
・所属組織、地位や役職
英国第二王女。
・物語内での具体的な行動や成果
軍用ボートで囮の船の墓場へ乗り上げ、ロキの首を貫いて部下に進軍を命じた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
本来は処刑塔に幽閉されているが、緊急事態のため一時的に解放されている。
ウィリアム=オルウェル
かつて後方のアックアと呼ばれた傭兵である。キャーリサに従って戦地へ赴く。
・所属組織、地位や役職
傭兵。
・物語内での具体的な行動や成果
キャーリサや騎士団長と共に軍用ボートに乗り、囮の船の墓場へ突撃した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
聖人や神の右席としての力は失ったが、強力な魔術の技量は残している。
騎士団長
騎士派の長である。イギリスの魔術的戦力の一翼を担う。
・所属組織、地位や役職
騎士派の長。
・物語内での具体的な行動や成果
北海の軍港から移動要塞の準備を進め、囮の船の墓場でロキと対峙した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
エリザードの護衛を外れ、前線での指揮を任されている。
インデックス
完全記憶能力を持つシスターである。上条当麻と共に行動し、魔術の知識で彼を助ける。
・所属組織、地位や役職
イギリス清教のシスター。
・物語内での具体的な行動や成果
フレイヤの魔術を解析し、強制詠唱によって母体と胎児の依存状態を解除した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
魔道書の知識を駆使し、戦闘において上条当麻を強力にサポートする。
神裂火織
世界に二十人といない聖人の一人である。国連本部ビルでエリザードの護衛を務める。
・所属組織、地位や役職
イギリス清教の魔術師。聖人。
・物語内での具体的な行動や成果
会議室の外で待機し、ワシリーサの独断専行に対して驚きと呆れの声を上げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
過去に槍のプロトタイプを持つブリュンヒルドを撃破した経歴を持つ。
アニェーゼ=サンクティス
赤い修道服を着た修道女である。国連本部の図書館で出版物の調査を行う。
・所属組織、地位や役職
イギリス清教の修道女。ローマ正教復興のため出向中。
・物語内での具体的な行動や成果
魔術的な仕掛けが紛れていないか出版物を調べ、協力者の情報について意見を交わした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ローマ正教への段階的な復帰プロセスの一環として業務を任されている。
ルチア
長身で金髪のショートヘアを持つ修道女である。アニェーゼと共に行動する。
・所属組織、地位や役職
イギリス清教の修道女。ローマ正教復興のため出向中。
・物語内での具体的な行動や成果
図書館での調査任務に従事し、アニェーゼの会話に耳を傾けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
直立不動の姿勢で任務をこなす。
アンジェレネ
猫背で金髪の三つ編みを持つ修道女である。アニェーゼと共に行動する。
・所属組織、地位や役職
イギリス清教の修道女。ローマ正教復興のため出向中。
・物語内での具体的な行動や成果
図書館での調査任務に従事し、一般人には危機が理解できないとこぼした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
アニェーゼたちの会話に相槌を打つ。
オルソラ=アクィナス
ロンドンの国立図書館で情報整理を行う修道女である。
・所属組織、地位や役職
修道女。
・物語内での具体的な行動や成果
船の墓場の位置が東京湾であるという報告を受け、シェリーと顔を見合わせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
後方支援用の情報分析を担当している。
シェリー=クロムウェル
ゴーレムの扱いを得意とする褐色の魔術師である。オルソラと共に情報整理にあたる。
・所属組織、地位や役職
イギリス清教の魔術師。
・物語内での具体的な行動や成果
ロンドンの国立図書館で、東京湾の船の墓場についての報告を聞いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
オルソラと共に後方支援を担当している。
ロシア成教
ワシリーサ
真っ赤な修道服を着た女性である。総大主教の護衛としてニューヨークへ同行する。
・所属組織、地位や役職
ロシア成教の魔術師。
・物語内での具体的な行動や成果
会議室の外で待機し、命令系統を無視してロシア国内の陽動部隊を叩くよう独自の指示を出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
サーシャに釘抜きで殴られても平然と復活する。
サーシャ=クロイツェフ
拘束衣や拷問具で体を固めた金髪の少女である。総大主教の護衛を務める。
・所属組織、地位や役職
ロシア成教の魔術師。
・物語内での具体的な行動や成果
ワシリーサの独断専行を咎め、腰から抜いた釘抜きで彼女の頭を殴りつけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ロシア成教徒として裏切りを見過ごせないという強い信念を持つ。
総大主教
背の小さな童顔の少年である。ロシア成教のトップとして会議に参加する。
・所属組織、地位や役職
ロシア成教の総大主教。
・物語内での具体的な行動や成果
国連本部ビルでの会議で、オティヌスが魔神として完成した際の危険性を指摘した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
護衛の二人が個性的すぎるため、存在感が薄れがちである。
ローマ正教
ペテロ=ヨグディス
代替わりによって就任したローマ正教の新しい教皇である。
・所属組織、地位や役職
ローマ正教の教皇。
・物語内での具体的な行動や成果
国連本部ビルの会議に参加し、学園都市が魔術を敵と見なした場合の混乱を懸念した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
老人の姿をしており、第三次世界大戦後に教皇の座に就いた。
魔術結社「明け色の陽射し」
レイヴィニア=バードウェイ
魔術結社を束ねる金髪の少女である。上条当麻を戦地へ導く役割を果たす。
・所属組織、地位や役職
魔術結社「明け色の陽射し」のボス。
・物語内での具体的な行動や成果
上条当麻の部屋に潜り込み、彼を超音速旅客機へ乗せて東京湾を目指した。下水道では短剣でムスペルの熱風を逸らした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
強力な魔術を行使し、部下たちを的確に指揮する。
マーク=スペース
レイヴィニア=バードウェイの部下である。
・所属組織、地位や役職
魔術結社「明け色の陽射し」のメンバー。
・物語内での具体的な行動や成果
バードウェイからの水着選びの多数決メールに対し、馬鹿に付き合っている暇はないと返信した。船の墓場の位置が東京湾であるという第二報を伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ボスに対しても率直な意見を述べる。
魔術結社「新たなる光」
レッサー
小悪魔系の少女である。上条当麻を自らの結社に取り込もうと企む。
・所属組織、地位や役職
魔術結社「新たなる光」のメンバー。
・物語内での具体的な行動や成果
空港の免税店で上条当麻に露出の激しい水着を選ばせようとした。下水道では機械の腕を使ってムスペルを切り裂いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
上条当麻の機転によって籠絡作戦を失敗させられた。
アメリカ合衆国
ロベルト=カッツェ
アメリカ合衆国大統領である。フランクな態度で首脳たちと接する。
・所属組織、地位や役職
アメリカ合衆国大統領。
・物語内での具体的な行動や成果
国連本部ビル前でホットドッグを食べながら会議を待ち、グレムリンへの総攻撃を強行する採決を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
日本政府の及び腰な態度に激怒し、電話の受話器を砕いた。
ローズライン=クラックハルト
大統領補佐官である。ロベルトの破天荒な行動に頭を悩ませる。
・所属組織、地位や役職
大統領補佐官。
・物語内での具体的な行動や成果
会議の進行を整理し、魔術の用語を自らの常識に置き換えて理解しようと努めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
大統領の背中にハイヒールを突き刺すなど、容赦ない突っ込みを入れる。
リンディ=ブルーシェイク
合衆国の情報網を掌握する幼い少女である。
・所属組織、地位や役職
インターネットサービスを掌握する女王。
・物語内での具体的な行動や成果
上条刀夜と契約書を交わし、東京周辺の通信障害が作為的な誘導によるものだと分析した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ビッグデータの解析から、混乱を望む者たちの存在を指摘した。
その他の魔術師・聖人
オッレルス
魔神になり損ねた青年である。雷神トールに変装してグレムリンに潜入する。
・所属組織、地位や役職
魔術師。
・物語内での具体的な行動や成果
妖精化の術式でオティヌスから魔神の力を奪おうとしたが、反撃を受けて重傷を負い、妖精化を打ち込まれた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
彼が妖精化を行ったことが、オティヌスの完成を決定づける結果となった。
右方のフィアンマ
赤い衣装に隻腕の青年である。オッレルスと共にオティヌスを狙う。
・所属組織、地位や役職
魔術師。
・物語内での具体的な行動や成果
戦場の影に隠れ、オティヌスの心臓を正確に貫く妖精化の光の杭を放った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
かつての第三次世界大戦を引き起こした張本人であるが、今回は世界を救うために行動した。
シルビア
聖人の一人であり、イギリス王家の近衛侍女を務める金髪の女である。
・所属組織、地位や役職
イギリス清教の魔術師。聖人。
・物語内での具体的な行動や成果
ブリュンヒルドと共に太平洋上に現れ、ヘルの攻撃を結界で防いだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
作業着姿でありながら、メイドのシルエットを感じさせる。
ブリュンヒルド=エイクトベル
聖人であり、ワルキューレの特性を持つ女性である。
・所属組織、地位や役職
魔術師。聖人。
・物語内での具体的な行動や成果
鉄塊のような剣を持ち、シルビアと共に太平洋上でヘルと対峙した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
聖人とワルキューレの力が周期で入れ替わる特異体質を持つ。
オリアナ=トムソン
金髪でグラマラスな運び屋の女性である。
・所属組織、地位や役職
魔術師。運び屋。
・物語内での具体的な行動や成果
アラスカの雪原でフェンリルと交戦し、速記原典から風の刃を放った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
自動的に術式を繰り出す暗記カードを武器とする。
その他の個人
上条刀夜
上条当麻の父親である。外資系のサラリーマンとして世界を飛び回る。
・所属組織、地位や役職
会社員。
・物語内での具体的な行動や成果
シリコンバレーでリンディと契約を結びながら、東京にいる家族を心配し、ネットの動向を分析した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
金融の知識から、戦争準備の売り買いが進んでいることを察知した。
上条詩菜
上条当麻の母親である。東京の屋内プールで騒ぎに巻き込まれる。
・所属組織、地位や役職
主婦。
・物語内での具体的な行動や成果
御坂美鈴と共に災害時伝言板へ無事を伝えるメッセージを残した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
外の大混乱に気づかず、のほほんとした態度を保っている。
御坂旅掛
御坂美琴の父親である。ロンドンの酒場で仕事と家族への心配に挟まれる。
・所属組織、地位や役職
会社員。
・物語内での具体的な行動や成果
日本へ帰る手段を探して弾道ミサイルにまで乗ろうとしたが、衛星電話の相手に止められた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
世界的な取引中止の煽りを受け、プロジェクトの進行が妨げられている。
御坂美鈴
御坂美琴の母親である。東京の屋内プールに滞在している。
・所属組織、地位や役職
主婦。
・物語内での具体的な行動や成果
上条詩菜と共に災害時伝言板を利用し、家族へ無事を伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
娘から強く心配されている。
フランスの女
金髪の女性である。フランスの重要政策決定の要として機能する。
・所属組織、地位や役職
フランスの代表。
・物語内での具体的な行動や成果
国連本部ビルでの会議に参加し、オティヌスが肥大化する前に止めるべきだと主張した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
大深度地下に幽閉されていた過去を持つ。
サングラスの大男
黒系のスーツを着た筋肉質の男性である。リンディの護衛を務める。
・所属組織、地位や役職
リンディの護衛。
・物語内での具体的な行動や成果
上条刀夜との契約の場で、人材の汚染対策は確立していると告げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
低い声で刀夜と視線を交わした。
スフィンクス
インデックスに飼われている三毛猫である。
・所属組織、地位や役職
ペット。
・物語内での具体的な行動や成果
上条当麻たちと共に超音速旅客機から投げ出され、インデックスに抱えられて空中を移動した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
インデックスから食事を取り上げられそうになるなど、不憫な目に遭う。
怪物・術式
モックルカールヴィ
粘土を固めて作られた山のような巨人である。船の墓場を警戒する役割を持つ。
・所属組織、地位や役職
グレムリンの人工生命体。
・物語内での具体的な行動や成果
船の墓場の周囲を歩き、学園都市の爆撃機を巨大な腕で叩き落とした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
オッレルスによって核である心臓を握り潰され、崩壊した。
フレースヴェルグ
死者を貪る大鷲である。東京上空で威圧と破壊を行う。
・所属組織、地位や役職
グレムリンの自動戦力。
・物語内での具体的な行動や成果
学園都市の戦闘機と空中戦を繰り広げ、頭部を失って公園に落下した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
赤い糸を束ねて作られた筋肉の塊で構成されている。
ムスペル
炎の人影である。特定条件に抵触した人物を自動で攻撃する。
・所属組織、地位や役職
グレムリンの自動戦力。
・物語内での具体的な行動や成果
下水道でバードウェイたちに熱風を吐き出し、美琴の周囲にも現れて攻撃を仕掛けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
高速移動する対象には追いつけず、自然消滅する。
ヒルディスビニ
赤黒い糸の束で作られた巨大な猪である。フレイヤによって生み出される。
・所属組織、地位や役職
フレイヤの怪物。
・物語内での具体的な行動や成果
味方の大男たちを捕食してトンネルを埋め尽くすほどに巨大化し、上条当麻を吹き飛ばした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
フレイヤを落下時のクッションとして守る役割を果たす。
地の底這う悪竜
トカゲに蝙蝠の翼を足したような赤い怪物である。
・所属組織、地位や役職
フレイヤの怪物。
・物語内での具体的な行動や成果
上条当麻たちが乗る超音速旅客機を輪切りにし、後に列車ごと彼らを破壊しようと突進した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
美琴の超電磁砲と木原加群の刃によって進路をねじ曲げられ、河川へ墜落した。
スバジルファリ
赤い竜巻に似た糸の奔流から形成される巨大な馬である。
・所属組織、地位や役職
フレイヤの怪物。
・物語内での具体的な行動や成果
トンネルの天井に頭をこすりつけながら上条当麻へ突撃し、幻想殺しで粉砕された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
宝石を核として生み出される。
ムニン
巨大な鳥の怪物である。
・所属組織、地位や役職
フレイヤの怪物。
・物語内での具体的な行動や成果
フレイヤが上条当麻に視界を塞がれた際に呼び出され、幻想殺しで吹き飛ばされた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
フギンと共に左右から突撃する役割を持つ。
フギン
巨大な鳥の怪物である。
・所属組織、地位や役職
フレイヤの怪物。
・物語内での具体的な行動や成果
ムニンと共に上条当麻へ突撃した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
宝石を弾くことで瞬時に生み出される。
ラタトスク
リスに似た筋肉状の小動物である。
・所属組織、地位や役職
フレイヤの怪物。
・物語内での具体的な行動や成果
大男や巨馬を狂乱させて上条当麻の方へ突っ込ませた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
上条当麻に足で踏み潰された。
フルングニル
赤黒い大男の怪物である。
・所属組織、地位や役職
フレイヤの怪物。
・物語内での具体的な行動や成果
他の怪物と共に上条当麻へ殺到したが、将棋倒しに巻き込まれて列車から落ちた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
多数の同種が量産される。
ヒミル
赤黒い大男の怪物である。
・所属組織、地位や役職
フレイヤの怪物。
・物語内での具体的な行動や成果
上条当麻に向かって突進したが、ヒルディスビニに捕食された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
フレイヤの弾幕の一つとして使われる。
スリム
赤黒い大男の怪物である。
・所属組織、地位や役職
フレイヤの怪物。
・物語内での具体的な行動や成果
トンネル内で量産され、上条当麻の行く手を阻んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ヒルディスビニの肥大化のための餌となった。
魔女狩りの王
イノケンティウスと呼ばれる、人の形をした三メートル大の炎の怪物である。
・所属組織、地位や役職
術式。
・物語内での具体的な行動や成果
竜巻に乗せられたルーンカードから発現し、爆撃機上のヨルムンガンドを攻撃しようとした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ダメージという概念を持たないとされるが、毒の息で海へ撃ち落とされた。
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新約 とある魔術の禁書目録(7)レビュー
新約 とある魔術の禁書目録まとめ
新約 とある魔術の禁書目録(9)レビュー
展開まとめ
序章 魔術の神の帰還 None_Signal_Island.
船の墓場のグレムリン
船の墓場
地図にも海図にも載らない船の墓場は、海流や暗礁によって漂流物や船の残骸が集まってできた島だった。漁船や輸送船、軍艦までが流れ着き、腐った木材や錆びた鋼鉄が積み重なって完全な足場を形成していた。
魔神オティヌスは、その船の墓場の一つへ帰還した。彼女はマリアン=スリンゲナイヤーに準備状況を確認し、主神の槍を作るために必要な材料が揃ったことを聞いた。
槍の材料
マリアンは、ハワイ諸島で火山性エネルギーを、バゲージシティで全体論超能力の思考実験を、学園都市でフロイライン=クロイトゥーネの代替物を得たと説明した。第一目標は逃したものの、空いた穴は埋められていた。
船の墓場が拠点に選ばれた理由には、魔術的立地や隠匿性、要塞化のしやすさがあった。さらに、科学サイドの力を借りるため、船に残されたコンピュータを繋げて大規模な並列演算装置として利用できる点も重要だった。
未元物質の抜け殻
グレムリンは、学園都市から持ち出した第二位の内臓を使い、未元物質を目的に沿う形で吐き出させようとしていた。それはすでに生身の垣根帝督ではなく、搾りかすや抜け殻に近いものだった。
それでも、グレムリンにとって重要なのは第二位本人ではなく、目的に必要な力を引き出せるかどうかだった。かつて木原加群だったベルシは、死者の軍勢として加工され、並列演算装置と未元物質の調整を続けていた。
迎撃役のトール
オティヌスは甲板にいた雷神トールへ、槍の製造中は自分達が動けないため、近づく者を全て破壊するよう命じた。マリアン、投擲の槌、ベルシ以外は自由に使ってよく、女神フレイヤや巨人モックルカールヴィも貸し与えると告げた。
トールは、敵が都合よくこのタイミングで来るのかと尋ねた。オティヌスは、自分が魔神として無限の可能性を持つ以上、成功の努力を積み重ねるほど、失敗の手札もどこかで膨らむと語った。
魔神の不幸
オティヌスは、これから来る敵は自分が呼び込む不幸であり、それを蹴散らせとトールに命じた。並の努力でどうにかなるものではなく、魔神を縛り付けるほど有能なものだと見ていた。
そう言って、オティヌスはマリアンを連れて、槍の製造場所となる客船の方へ向かった。屋外プールを備えたそこは、主神の槍を作るには適した場所だった。
潜入したオッレルス
甲板に残った雷神トールは、心の中で本格的に引っかき回す時が来たと考えた。その正体は雷神トールではなく、顔形を変えてグレムリンに潜り込んだオッレルスだった。
オッレルスの目的は、グレムリンによる主神の槍の製造を阻止することだった。オティヌスは魔神として成功と失敗を半々に抱えており、槍を得ればその不安定な確率をねじ曲げ、世界を完全に支配できる存在になるはずだった。
一瞬の機会
オッレルスは、オティヌスと正面から戦って勝つのは難しいと理解していた。そのため、彼女が槍の製造で両手を塞がれるこの時を待っていた。
まずは船の墓場の位置を把握し、イギリス清教やローマ正教の戦力を引き込む必要があった。大戦力でオティヌスの注意を逸らせば、オッレルス自身が脇を刺す一瞬の機会を得られる可能性があった。
第一章 平穏の裏の準備 A_Terrestial_Globe.
バスタブの朝と国連会合
不幸な上条当麻
上条当麻は、数々の不幸に巻き込まれてきた人間だった。計画通りに物事が進まないことが常識になっているため、彼は予測不能な状況をその場のアドリブで切り抜けることに慣れていた。
その上条当麻は、ユニットバスのバスタブの中で目を覚ました。両隣にはレイヴィニア=バードウェイとレッサーが眠っており、彼は絶叫すればインデックスに見つかって破滅すると理解し、必死に冷静さを保とうとした。
バスタブからの脱出
上条当麻は、二人が武器や霊装を持っていないかを慎重に確認した。バードウェイもレッサーも危険な魔術師であるため、彼は誤解を招かないよう細心の注意を払いながら毛布から抜け出そうとした。
彼は時間をかけて体育座りの体勢まで移行し、あと少しでバスタブから出られるところまで進んだ。しかし屋外から廃品回収の大音量が響き、二人が目を覚ましかけたことで、上条当麻の理性は限界に達した。
開いた地獄の蓋
上条当麻は錯乱して絶叫したが、バードウェイとレッサーは眠気の方が勝っており、面倒そうに寝直そうとした。上条当麻は助かったのか疑いながらも、二人がバスルームにどう侵入したのかを問い詰めようとした。
その時、ユニットバスの外から空腹を訴えるインデックスの声がした。上条当麻は慌てて扉を押さえたが、バスルームの壁そのものが外側へ倒れ、インデックスに最悪の誤解を与える結果になった。
ニューヨークの国連本部
場面はアメリカ合衆国ニューヨークへ移った。国連本部ビルの前では、アメリカ大統領ロベルト=カッツェが屋台のホットドッグを食べながら、補佐官ローズライン=クラックハルトと会話していた。
今回の会合は、表向きにはG一一四の緊急金融協力会合だった。実際には各国首脳を不自然なく集めるため、株式市場へ秘密裏に介入して作られた口実だった。
集まる各国代表
英国女王エリザードは、護衛の神裂火織を伴って到着した。ロベルトは相変わらず砕けた調子で迎え、エリザードもそれに応じたため、ローズラインは各国首脳達の癖の強さに疲弊していた。
さらにロシア成教の総大主教や、真っ赤な修道服の女性、拘束衣や拷問具をまとった金髪の少女も現れた。各勢力の代表が集まる中、ローズラインは常識人として場を取り繕う苦労を背負っていた。
グレムリンへの総攻撃
ロベルトは、他の参加者の到着状況を確認しながら、今回の本題がグレムリンへの総攻撃であることを口にした。ハワイ諸島で被害を受けたアメリカとしては、今回の討伐でも学園都市に主導権を奪われるわけにはいかなかった。
しかし学園都市の統括理事長アレイスターからは応答がなかった。学園都市が独自に動けば、手柄を横取りされるだけでなく、連携不足による衝突の危険もあるため、その沈黙は不気味なものだった。
非公式会議の開始
ロベルトとローズラインは、秘密主義の学園都市に振り回されすぎても仕方がないと考え、作戦会議へ向かうことにした。ローズラインは大統領の下品な態度を容赦なく制裁し、彼を国連本部ビルの入口へ促した。
会議には正式な各国代表だけでなく、記録に残らない回線を通じてイリーガルな勢力も参加する予定だった。最優先はグレムリンであり、そのためなら今は何でも使う方針だった。
幻想殺しの招集
バードウェイの準備
学園都市の学生寮では、バードウェイが携帯電話で国連本部の会合と繋がっていた。彼女は準備完了と呟き、グレムリン討伐に向けた連合勢力の動きに関わっていた。
一方、上条当麻はユニットバスの壁が破壊された件とインデックスから受けた制裁でぼろぼろになっていた。バードウェイ、レッサー、インデックスが朝食をとる中、彼は世界規模の騒乱よりも自室の修理を心配していた。
幻想殺しのキープ
レッサーは眠気に負けながら、幻想殺しをいつでも出撃できるように確保するために来たと漏らした。上条当麻は自分が巻き込まれる流れに気づき、説明を求めた。
バードウェイは、イギリス清教、ローマ正教、ロシア成教、アメリカ軍などがグレムリンを目障りと判断し、一堂に会していると説明した。連合勢力はグレムリンの本拠地を捜索し、発見次第、総攻撃を仕掛ける手はずだった。
主神の槍への楔
上条当麻は、魔神オティヌスと正面から戦うのは無理だと訴えた。バードウェイも、彼をオティヌスの前に放り出せば即死すると認めた。
しかし彼女は、上条当麻ではなく幻想殺しを作戦の要所に投入するつもりだった。主神の槍が完成する瀬戸際など、決定的な瞬間に右手を使わせ、長期戦ではなく一発限りの楔として利用する計画だった。
船の墓場への出撃
上条当麻は、自分が魔術の素人であり、グレムリンの怪物達にまともに勝った試しがないと念を押した。それでもバードウェイは、彼が怪物相手に生き残ってきたことも事実だと返した。
連合勢力は、グレムリンの本拠地を船の墓場と呼んでいた。場所はまだ特定されていないが、統括理事会の一人に話をつけ、第二三学区から超音速旅客機で向かう準備が進められていた。
国連本部の会議
ニューヨークの国連本部では、ロベルト=カッツェが対グレムリン連合勢力の首脳達へ状況を確認していた。会議室には各国代表が集まり、護衛達は外に控えていた。
ロベルトは、グレムリンが主神の槍を製造するためにハワイ諸島、バゲージシティ、学園都市で行動してきた流れを整理した。首脳達は、槍が完成する前に本拠地を見つけ、決着をつける必要があると考えていた。
魔術師達の警戒
会議室の外では、神裂火織、ワシリーサ、サーシャ=クロイツェフが状況を見守っていた。神裂は、魔神オティヌスという存在自体が信じ難いものの、もはや自分の常識で測る段階ではないと受け止めていた。
ワシリーサは、情報源が明け色の陽射し、シルビア、オッレルスといったイリーガルな大物達であることを警戒していた。神裂は、明け色の陽射しは十字教系の資料を失えば致命的になるため、利害が見える分だけ動きは読めると見ていた。
学校へ行けない上条当麻
朝食後、上条当麻は学校へ行こうとしたが、バードウェイは第二三学区へ向かうと告げた。上条当麻は出席日数を理由に抵抗したが、バードウェイは彼のそばを離れず、必要なら膝の上で授業を受けると脅した。
インデックスも、上条当麻が止まらないことを理解しており、自分なりの考えがあるとだけ告げた。結局、上条当麻はバードウェイに引きずられるようにして寮を出ることになった。
通学路から第二三学区へ
上条当麻は、制服姿の学生達が学校へ向かう中、バードウェイ、レッサー、インデックスを連れて別方向へ歩かされた。周囲から浮いている状況に強い場違い感を覚え、第二三学区行きのバス停で待つことになった。
バードウェイは冷えたベンチを嫌がり、上条当麻の膝に座った。さらに眠気に負けたレッサーがしなだれかかり、上条当麻はインデックスの怒りを目前にして、再び危機的状況へ追い込まれていた。
ベンチの逃走
御坂美琴の困惑
インデックスは、上条当麻の後頭部へ再び噛みつき、制裁の頻度を巡る上条当麻の訴えも一蹴した。その様子を見た御坂美琴は、頬を引きつらせながら、上条当麻の周囲で起きている状況を処理しきれずにいた。
御坂美琴は、レッサーが上条当麻にしなだれかかり、バードウェイが膝の上に乗り、インデックスが噛みついている光景を見て、自分がどこから怒ればよいのか分からなくなっていた。
食蜂操祈の横槍
そこへ食蜂操祈が、派手なスーツ姿の女性を操って現れた。彼女は御坂美琴が上条当麻を気にしていることをからかい、声をかければよいと揺さぶった。
御坂美琴が全力で否定すると、食蜂操祈は自分は気になると言い、操った複数の女性や少女を使って上条当麻へ接触しようとした。御坂美琴は、これ以上状況をかき乱されることを防ぐため、磁力でバス停のベンチを狙った。
図書館のアニェーゼ達
ニューヨークの国連本部ビルに併設された図書館では、アニェーゼ=サンクティス、ルチア、アンジェレネが出版物に魔術的な仕掛けが紛れていないか調べていた。国連本部は中立であるため、宗教側が一方的に出版物の流入を止めるわけにはいかなかった。
三人は、グレムリンへの総攻撃について話し合った。船の墓場の位置を特定できるかどうかが鍵であり、グレムリン内部に潜り込んでいる協力者の信号が重要になると見ていた。
協力者への疑念
アニェーゼ達は、協力者をどこまで信じられるかに疑問を抱いていた。グレムリンの本拠地に潜入済みという話は疑わしいが、神出鬼没のグレムリンを欺ける人材が他にいないのも事実だった。
仮に船の墓場の位置を特定できても、その先には魔神と尖った魔術師達との本気の削り合いが待っていた。犠牲なく倒せる相手ではないが、蛇を恐れて藪を放置するわけにもいかなかった。
飛ばされたベンチ
上条当麻が状況の説明を求めようとした瞬間、御坂美琴が磁力でベンチを吹き飛ばした。上条当麻、バードウェイ、レッサー、インデックス、三毛猫はベンチごと川へ飛ばされた。
ベンチは水面を跳ねるように進み、対岸まで渡り切った。上条当麻は、インデックスが噛みついたまま体を支えていたことも含め、理不尽すぎる状況に叫んだ。
御坂美琴の追撃
バードウェイとレッサーは、学園都市ではベンチが空を飛んで川を渡るのが常識なのかと誤解しかけた。上条当麻にはその誤解を解く余裕もなかった。
そこへ御坂美琴が空から降ってきて、ベンチの背もたれに着地した。彼女は上下逆さまに上条当麻を睨み、説明してと迫った。上条当麻は、それはこちらの台詞だと返した。
行間 一
船の墓場の木原加群
求道者の代償
音楽家が美しい音を追い求めるほど耳を酷使するように、何か一つの道を極めようとする者は、その道によって自分自身を削り取られていくものだった。
学園都市で木原加群、グレムリンでベルシと名乗る男も同じだった。彼は目的を果たした結果、感覚器官を摩耗させ、刺激を受け取る心を失っていた。
死者の軍勢
木原加群は、船の墓場で黙々と作業を続けていた。十一月の冷気の中でも白い息はなく、そもそも呼吸すらしていなかった。
彼は生命力ではなく、外部から注ぎ込まれる魔力によって動く死者の軍勢だった。心臓や脳が動いていても、本質的にはすでに死亡した何かであった。
並列演算装置
木原加群の役割は、船の墓場に集まった無数の船舶に残る無線機、魚群探知機、航行管制システムなどを繋ぎ、並列演算装置として機能させることだった。
その大規模な計算装置は、学園都市から回収した第二位の抜け殻を扱うために必要だった。木原加群は、グレムリンにおける科学サイド技術の要として据えられていた。
槍の製造準備
木原加群は、槍の製造に必要な最終準備を進めていた。だが彼には、その作業が何を意味するのかを考える心は残っていなかった。
かつて守りたかったものすら呑み込むことになるはずの作業を終え、彼は無線機へ完了を告げた。冷蔵された臓器を使い、第二位の抜け殻を槍の製造機械へ組み替える準備は整っていた。
第二章 探査の内の箱庭 Area_No.23.
水着店のレッサー
第二三学区への到着
上条当麻は、揉め事を経ながらもバスで第二三学区の国際空港へ到着した。インデックス、バードウェイ、レッサー、三毛猫に加え、御坂美琴まで同行していた。
バードウェイは、超音速旅客機は完全チャーターであり、受付や検査を素通りして搭乗員用の出入口から滑走路へ向かえると説明した。御坂美琴は、学園都市の技術流出を考えれば異常な特別待遇だと驚いたが、バードウェイは今も戦争級の危機が続いているからだと返した。
免税モールの水着
指示待ちの時間を自由時間と見なしたレッサーは、免税ショッピングモールで水着を買いたいと言い出した。彼女は、グレムリンとの決着後に連合勢力が次の敵を探す可能性を見越し、居場所を知られている自分達が南国へ身を隠す準備だと説明した。
一行は広大なショッピングモールへ入り、レッサーとバードウェイは水着店を探した。上条当麻は露出の激しい店を避けようと多数決を提案したが、バードウェイの増援策は部下に雑に拒まれ、結局比較的まともそうな水着専門店へ向かうことになった。
水着店の圧
水着専門店に着いた上条当麻は、男子高校生として入りにくい圧を感じて立ち止まった。御坂美琴とインデックスは普通に店へ入っていき、上条当麻だけが過剰に身構えていた。
店内には大量の水着が並び、レッサーはすぐに露出の激しい水着を見つけて喜んだ。バードウェイも牛柄の水着について上条当麻へ感想を求め、彼が不用意に答えた結果、制裁を受けた。
御坂美琴の水着
御坂美琴は、屋内プールへ行くきっかけになるかもしれないとして、自分も水着を見ることにした。彼女は上条当麻に覗かないよう強く釘を刺して、別のコーナーへ向かった。
やがて御坂美琴はスポーティなワンピース水着を選んで戻ってきた。上条当麻が学校の水着とあまり変わらないと評すると、彼女は違いを熱弁したが、その水着には布を大きく外せる仕掛けがあり、御坂美琴は慌てて買うのをやめた。
地蔵モード
上条当麻は、水着店では余計な反応をすれば即座に命の危機へ繋がると考え、できる限り大人しくする地蔵モードに入ろうとした。彼は試着室という危険地帯から距離を取り、壁際の椅子へ移動した。
しかしその直後、上条当麻は背後から首根っこを掴まれ、装飾用カーテンの裏へ引きずり込まれた。そこにはレッサーが潜んでおり、彼女は防犯カメラの死角で上条当麻へ接近していた。
レッサーの籠絡作戦
レッサーは、上条当麻を有効に使うのは新たなる光であり、明け色の陽射しに主導権を握らせるわけにはいかないと語った。試着室を警戒されていたため、彼女は別の手段で籠絡作戦を仕掛けたのだった。
彼女は上条当麻に、自分が着る水着を選ぶよう迫った。選択肢は、黒のワイヤードビキニと白のスケルトンワンピであり、どちらもまともな水着とは言い難いものだった。
二つの選択肢
レッサーは、ワイヤードビキニはほぼワイヤーだけで構成された水着だと説明した。スケルトンワンピは一見普通のワンピース水着だが、水に濡れるとほとんど透ける仕様だった。
上条当麻は、どちらを選んでもろくでもない結末になると悟った。レッサーは小悪魔のように迫り、黒か白か、あるいは第三の選択肢かを選ばせようとした。
船の墓場への総攻撃
船の墓場の探索
オッレルスは雷神トールに変装したまま、グレムリンの本拠地である船の墓場を歩いていた。GPSを使えない以上、位置を知るには星や太陽の配置を調べる必要があったが、余計な魔術を使えばオティヌスに察知される危険があった。
オッレルスは、正規の行動に紛れて情報を得ることにした。マリアン=スリンゲナイヤーに接触し、槍の製造に支障を出さないための確認という名目で、彼女の手帳にある地形や星の情報を読み取った。
皿の上の心臓
オッレルスは、マリアンからモックルカールヴィや皿の上の心臓に関する情報も引き出した。モックルカールヴィは巨大な体によって周辺の地脈や龍脈を変動させるため、槍の製造中には注意が必要だった。
その後、オッレルスはベルシとの接触を避けながら、手に入れた情報をどう外部へ流すかを考えた。彼は、モックルカールヴィを遠隔操作するための皿の上の心臓のラインを利用し、イギリス清教の窓口へ通信を送ろうとした。
会議での整理
ニューヨークの国連本部では、ローズライン=クラックハルトが各国代表の議論を整理していた。グレムリンは船の墓場に潜み、槍と呼ばれる大量破壊兵器の開発を進めており、完成すれば交渉抜きで使用する危険が高いとまとめた。
ローズラインにとって、魔術や魔神、霊装といった言葉は現実味が薄かった。それでも第三次世界大戦やハワイ諸島、バゲージシティの事実を踏まえ、自分達の理解できる言葉に置き換えなければ危機感を維持できなかった。
主神の槍の危険性
英国女王エリザードは、槍が半日以内に完成する可能性があり、完成すれば六〇億人に勝ち目はないと告げた。ロベルト=カッツェが核兵器のようなものかと問うと、エリザードはそれ以上の新兵器と考えればよいと返した。
ロシア成教の総大主教やローマ正教の教皇ペテロ=ヨグディスも、オティヌスが魔神として完成した場合、個人の思想が世界を覆う危険を指摘した。力を持つ者の方針が歪めば、誰にも止められない圧政が続く可能性があった。
最後の猶予
エリザードは、まだ槍が完成していない今こそ最後のチャンスだと示した。船の墓場の位置を特定し、世界中の力で叩けば、繊細な槍の製造を失敗へ追い込める可能性があった。
ただし、船の墓場は通常の衛星や無人偵察機では見つからないよう隠されていた。そこでイギリスは、地表の海域を多数のブロックに分け、各所に魔術師を送り込む索敵網を構築していた。
内側からの信号
外側からの索敵だけでは、グレムリンの隠匿をすり抜けられる危険があった。そのため、船の墓場の内部に潜り込んだ間者が信号を発し、それを世界各地の魔術師達が感知する手順になっていた。
各国代表は、通常戦力と魔術戦力を分担して動かす方針を確認した。魔術側はイギリス、ローマ、ロシア、フランスが担当し、通常戦力はアメリカ、ロシア、イギリス、フランスを中心に動かすことになった。
通常戦力の準備
ロベルト=カッツェは、ハワイ諸島の件でアメリカ国内に報復論が高まっているため、船の墓場への攻撃は即時認可できると説明した。在外基地の四軍や弾道ミサイルも、状況次第で運用可能だった。
ただし、船の墓場が中立国や敵対的な国の近海にある場合は外交的な問題が生じる。ロベルトは、必要なら各国の太い柱へ圧力をかけてでも道を通すしかないと述べた。
汚れ役の覚悟
ローズラインは、その強引な手段が一〇〇年の遺恨にならないかを危惧した。ロベルトは、今日世界の滅びが決定するのとどちらがよいかという話だと返した。
不幸中の幸いは、攻撃対象が大都市ではなく海上の船の墓場であることだった。公式には、世界中の兵力を集めて海上のゴミの山を攻撃するという形になるため、余計な二次被害は少ないと見込まれていた。
船の墓場への上陸
水着の論理
上条当麻は、レッサーが迫る二つの水着の選択肢から生き残るため、白のスケルトンワンピの上に黒のワイヤードビキニを重ねる案を出した。ワイヤー部分で隙間を作れば、水に濡れても透けにくくなると考えたのである。
レッサーは、二つの水着を組み合わせながら露出を抑える答えに衝撃を受けた。上条当麻は勝利を叫んだが、そこへインデックス、御坂美琴、バードウェイが現れ、彼が水着を自分で着たいと誤解した。
静かな誤解
上条当麻は必死に説明しようとしたが、三人は怒るのではなく、妙に優しい態度で彼を受け入れようとした。激しい制裁が来ないことが、逆に上条当麻を追い詰めた。
誤解は解けたはずだったが、上条当麻は皆の優しすぎる反応に不気味さを覚えた。レッサーもまた、自分のお色気包囲網を切り抜けられた敗北感で立ち直れずにいた。
北海の戦力
スコットランド最北端の軍港には、キャーリサ、ウィリアム=オルウェル、騎士団長が集まっていた。二人は本来なら処刑塔に幽閉されていた身だが、グレムリン討伐のため一時的に解放されていた。
彼らは、北海かアイスランド近海に船の墓場があると見ていた。移動要塞はクイーンマーメイドとホテルエアリアルが使える見込みであり、フライ・ザ・ヘヴンは調整が間に合わない可能性が高かった。
北欧の海
キャーリサ達は、グレムリンの基盤が北欧神話にある以上、北海やアイスランド近海に重要な拠点があってもおかしくないと考えていた。陸地で失われた北欧神話系の資料も、船の残骸として海に集まっている可能性があった。
エリザードが女王の護衛から騎士団長を外したのも、この戦場を優先したからだった。魔術に明るい各勢力も、具体的な探査の前から同じ海域へ当たりをつけているはずだった。
シルビアとブリュンヒルド
北海近くのログハウスでは、シルビアとブリュンヒルド=エイクトベルが出撃を待っていた。二人はサンドイッチと水を前にしながら、連絡が済んだことを確認した。
テーブルには妖精に関わる絵本が並べられており、それらは魔神への切り札とされていた。シルビアとブリュンヒルドは、それ以上深く問わず、武器を手にして戦場へ向かった。
船の墓場への接近
北海の冷たい夜、キャーリサ達は軍用ゴムボートで船の墓場へ迫っていた。アメリカとロシアの戦力は第二波として投入される予定であり、第一波の彼らは先に手柄を奪う気で進んでいた。
右腕である上条当麻は、第二波に間に合わせる計算だった。キャーリサ達は、まず船の墓場を更地にし、最後に幻想殺しを投下して槍の製造設備を破壊するつもりだった。
燃料気化爆弾
白い霧の向こうに船の墓場が見えると、頭上から航空爆弾が投下された。燃料気化爆弾は膨大な光と熱と爆圧で船の墓場を包み込み、一三発もの爆撃が同じ場所へ叩き込まれた。
続いて、爆風で大量の金属杭を打ち下ろす兵器も投下された。キャーリサは爆撃だけでグレムリンを全滅させられるとは考えず、防御に力を割かせた隙に接近して殲滅するつもりだった。
黒く焼けた上陸地
有毒物質が検出されていないことを確認し、キャーリサ達はボートを減速させずに船の墓場へ乗り上げた。周囲は黒く焼け、プラスチックが溶けるような異臭が漂っていた。
そこへ、シルクハットと燕尾服の老人が現れた。老人はロキと名乗ろうとしたが、キャーリサは最初から相手にせず、片手を挙げて空飛ぶ刃を放ち、老人の首を真正面から貫いた。
東京湾の船の墓場
ロキの罠
キャーリサは、ロビンフッドによってロキを貫いた。騎士派の術式で誘導されたその霊装は、確実に敵を殺すために作られた力であり、ロキの首を真正面から撃ち抜いた。
しかしロキは致命傷を受けてもなお笑い、自分の強さや敗北は事態の趨勢に関係ないと語った。彼は内通者を疑い、星や太陽を使って船の墓場の位置を特定する可能性を読んで、偽りの星空を映す術式で敵味方を騙していた。
空の船の墓場
ロキは、マリアンの手帳にも細工を施していた。キャーリサ達が攻め込んだ船の墓場は、本物ではなく、グレムリンの痕跡も槍の製造設備も存在しない空の拠点だった。
騎士派からも、魔神や槍の痕跡は一切見つからないと報告が入った。キャーリサは脱出ではなく防備に全力を注ぐよう命じようとしたが、その前に船の墓場は爆圧に呑まれて消えた。
修正された位置情報
ニューヨークやロンドン、学園都市にも、作戦の失敗と第二報が伝わった。グレムリンに潜り込んだ協力者は罠に気づき、情報を修正してきた。
本物の船の墓場は、日本の東京湾中央にあった。バードウェイは、地脈や龍脈、歴史的下地すら関係なくするために、グレムリンが世界各地で下準備をしていたのだと気づいた。
東京の戦場化
第二三学区の国際空港には、遠雷のような爆発音が届き、天井から破片が落ちた。バードウェイは、グレムリンが学園都市近くの東京湾に本拠地を置き、学園都市の沈黙と軍事的特殊性を突いたのだと説明した。
グレムリンと学園都市が衝突すれば、間にある東京二三区が主戦場になる。バードウェイは、東京がバゲージシティの再来になる可能性を示し、上条当麻を超音速旅客機へ急がせた。
空港の避難
第二三学区の空港では、全便が緊急キャンセルされ、地下シェルターへの避難案内が流れていた。上条当麻は、戦争の匂いが簡単に広がっていく状況に怒りと焦りを覚えながら走った。
御坂美琴は東京に母がいるため、黙って見ていられずに後を追った。インデックスも魔術師との戦いに専門家を頼らないのかと訴え、結局彼女達も上条当麻に続いた。
雲川鞠亜の決意
雲川鞠亜は、グレムリンと木原加群のことを考えていた。彼女は、死んだはずの木原加群の体がオティヌスに使われていることを許せず、先生の名誉をこれ以上汚させないために動こうとしていた。
上条当麻は、木原加群へ繋がる細い糸だった。雲川鞠亜は、ここを逃せば一生引きずると覚悟し、上条達の後を追って電動カートへ強引に乗り込んだ。
超音速旅客機
上条当麻達は職員ゲートを突破し、電動カートで超音速旅客機へ向かった。バードウェイは、上条当麻を学園都市の外へ送り出せば、グレムリンの狙いが幻想殺しだった場合に学園都市との直接衝突を避けられるかもしれないと考えていた。
雲川鞠亜は、自分にとってここが人生を左右する分岐点だと語った。上条当麻は彼女の詳しい事情を知らなかったが、その瞳にある光を見て、彼女の思いを受け止めた。
空の竜
超音速旅客機は、乗客達が座席につく前に離陸した。上条当麻が窓の外を見ると、すでに学園都市を離れ、新宿付近の景色が広がっていた。
その直後、旅客機に匹敵する大きさの竜のような怪物が窓の外に現れた。怪物は巨大な翼を羽ばたかせ、最新鋭の旅客機を真ん中から輪切りにした。上条当麻達は、上空三〇〇メートルから東京の中心地へ投げ出された。
行間 二
未元物質の再利用
第二位の抜け殻
グレムリンは、学園都市第二位の超能力である未元物質を利用しようとしていた。垣根帝督の本質や主格がどこにあるかは別として、船の墓場には、脳を含む臓器の塊として残った第二位の抜け殻が置かれていた。
臓器は不自然に蠢き、白い粘質の物体を集めながら、美しい少年の姿へ変貌した。彼は船の墓場の上で目覚め、自分の体に複数のケーブルが繋がれていることに気づいた。
道具扱いへの怒り
垣根帝督は、グレムリンが未元物質を兵器素材として狙っていることを察した。彼らは電気信号で肉体を支配できると考えていたが、それはかつて暗部に沈んでいた頃の垣根帝督にしか通じない発想だった。
垣根帝督は、時代は変わったと告げた。彼の未元物質はケーブルを逆流し、接続された電子機器や動力源を侵食しながら、船の墓場全体へ広がっていった。
殺戮の檻
垣根帝督は、自分を道具扱いした者に相応しい末路を与えると叫んだ。彼の背から純白の翼が広がり、船の墓場全体を包み込むほどの巨大なドームを形成した。
それは殺戮の檻だった。状況は誰も想定しない方向へ傾き、制御不能の混沌が始まろうとしていた。
オティヌスの制圧
その直前、眼帯の少女オティヌスが垣根帝督の首を片手で掴んだ。彼女の指は未元物質の肉体へ食い込み、わずかに力を増しただけで激痛を与えた。
一撃で、船の墓場を覆っていた殺戮の檻は粉々に砕け散った。オティヌスは、垣根帝督に戦闘能力を期待しているわけではなく、槍の製造に必要な欠けたピースとして使うだけだと告げた。
従属の強制
オティヌスは、垣根帝督に自分の役に立てと命じた。できなければ、できるようになるまで全てを作り変えると告げ、彼の脊椎へ指を潜り込ませた。
垣根帝督は意志と関係なく返事を強制され、かしこまりましたと歪んだ声で答えさせられた。直後、彼の体は全方位から圧縮され、バレーボールほどの塊へ変えられた。
槍の大詰め
オティヌスは、圧縮された垣根帝督を陰気な男へ投げ渡し、必要な作業を進めるよう命じた。その表面には、人の顔を無理やり押し付けたような歪んだ模様が浮かんでいた。
その時、頭上から竜の咆哮のような轟音が響いた。オティヌスは、モックルカールヴィと地の底這う悪竜の出番だと見なしながらも、迫る敵には関心を示さなかった。彼女は、槍の製造が大詰めであるとして、マリアン=スリンゲナイヤーを連れて来るよう命じた。
第三章 確定の隅の疑念 Turning_Point.
東京中心部の混乱
落下する上条当麻
上条当麻達は、超音速旅客機から投げ出される前に軽量型パラシュートを背負っていた。しかし高度三〇〇メートルでは十分な減速が難しく、上条当麻は空中で回転しながら紐を掴むのにも苦労した。
何とかパラシュートを開いたものの、布は絡まり、減速は足りなかった。上条当麻は死を覚悟しかけたが、建設中の高層ビルのクレーンに落下傘が絡まり、地表への激突だけは免れた。
クレーンの崩壊
上条当麻は宙吊りの状態からクレーンへ登ろうとしたが、腕だけで体を引き上げることはできなかった。落下傘の布は裂け始め、彼は再び転落の危機に陥った。
その時、旅客機を輪切りにした竜のような怪物が再び現れた。怪物はクレーンごと上条当麻を吹き飛ばし、彼は建設途中のビルのフロアへ叩き込まれた。
通信不能
上条当麻は痛みに耐えて起き上がり、インデックス達の安否を確認しようと携帯電話を使った。しかし回線は混雑しており、通話もメールも繋がらなかった。
彼は、通信網が遮断されているかのような状況から、都内で大規模な異常事態が起きていると察した。窓の外を見ることに強い拒否感を覚えながらも、情報を得るためにビルの縁へ近づいた。
御坂美琴とインデックス
御坂美琴は落下中、インデックスがパラシュートを使えずに落ちていくのを見つけた。美琴は自分のパラシュートを諦め、インデックスと三毛猫を掴んだ。
美琴は磁力を使い、駅ビルの壁面に靴底を押し付けて滑ることで落下速度を殺した。彼女達は新宿駅東口付近にたどり着いたが、地上には異様なほど大量の人々が溢れていた。
新宿の人波
新宿の道路や広場は、老若男女の群衆で埋め尽くされていた。車も渋滞し、歩道も車道も人で溢れ、都市全体が詰まっているような光景だった。
インデックスは、グレムリンが何かをしたのだと呟いた。美琴も母の美鈴を心配して連絡を試みたが、回線はパンクしており、災害時伝言板にも情報はなかった。
歌舞伎町の三人
バードウェイ、レッサー、雲川鞠亜は、空中で冷静に姿勢を制御してパラシュートを開き、怪我なく路上へ降り立っていた。彼女達は歌舞伎町付近に落ちたらしく、周囲の雑多な街並みを見て状況を確認した。
三人は、足元から響く低い振動によって大量の人間が押し寄せてくることを察知した。彼女達はすぐに近くの雑居ビルの非常階段へ逃げ、直後に二つの人波が十字路でぶつかるのを見下ろした。
人の壁
バードウェイは、グレムリンが都内の幹線道路を適度に潰し、交通網を麻痺させていると見抜いた。車が迂回し、人々が徒歩に切り替えることで、歩道まで群衆に埋まり、都市全体が固まってしまう仕組みだった。
レッサーは、それを生肉のバリケードと表現した。雲川鞠亜は、グレムリンなら建物を倒して道を塞ぐ方が確実ではないかと疑問を抱いたが、バードウェイは、この人の壁が誰を牽制するためのものなのかが重要だと告げた。
東京を縛るグレムリン
赤い怪物の威圧
東京スカイタワーの頂点に、赤い糸を束ねたような巨大な翼ある怪物が降り立った。怪物は直接攻撃をしていなかったが、その威容と襲う側の眼光だけで、東京の広範囲に強い精神的圧力を与えていた。
警察官達は発砲を禁じられ、怪物を刺激しないよう命じられていた。倒せない敵に手を出すより、群衆の将棋倒しや圧死を防ぐ避難誘導を優先するしかなかった。
分散された利害
グレムリンの狙いは、人々の利害を分散させることだった。第三次世界大戦では多くの勢力が一つの目的に結集したが、今回は東京という首都を人質にすることで、誰もが自分の守りたいものへ意識を奪われる状況が作られていた。
今ならまだ刺激しなければ見逃されるかもしれないという甘い幻想が、結束を乱していた。その間に危険な因子を潰していけば、残るのは逆転できない弱者の群れだけとなり、主神の槍の完成と同時に滅びへ追い込まれる流れだった。
首都機能の防衛線
東京の街では、装輪装甲車が地下鉄トンネルを強引に使って現れ、主要道路を塞いだ。砲塔はスカイタワーの怪物ではなく、押し寄せる群衆の方へ向けられていた。
警察官達は、それが霞ヶ関方面へ向かう人の流れを押し返すためのものだと悟った。非常時であっても、政府中枢を守るための道路封鎖が優先されているように見えた。
保険会社の停止
ある保険会社のコールセンターでは、外部対応を止めるためにサーバーやコンピュータの電源を落とすよう命じられていた。社員達は、東京全体が被害を受ければ大量の保険請求が同時に発生し、会社が倒れる可能性を話し合っていた。
窓の外を赤い怪物の影が横切り、事態の異常さはさらに明確になった。契約書に想定されていない災害が現実に起きつつあり、社員達は会社に留まるしかないと判断していた。
現金輸送員の判断
路地裏では、警備会社の現金輸送員達が、億単位の現金を抱えたまま動けなくなっていた。現金輸送車へ戻ることも、支店まで三キロ歩くことも、人混みの中ではほぼ不可能だった。
彼らは、頑丈な装備で目立つよりも、ゴミを漁る者に見えるよう偽装することを選んだ。札束を小分けにして制服の中へ隠し、生ゴミ袋に紛れさせることで、少しでも狙われる危険を減らそうとした。
国際会議の停滞
ニューヨークでは、ロベルト=カッツェが日本政府へ連合戦力の投入許可を求めていた。しかし日本側は、首都を戦場にできないという理由で承諾を渋り、実際には政府中枢の避難時間を稼いでいるように見えた。
ロベルトは怒りを露わにしたが、エリザードは学園都市の動向を確認するべきだったと指摘した。学園都市がどう動くか分からない以上、連合勢力の反攻が学園都市への敵対行動と誤解される危険があった。
決断を縛る恐怖
ローマ教皇ペテロ=ヨグディスは、学園都市がグレムリンと連合勢力を識別できなければ、魔術を使う者全てを敵と見なして戦況を混乱させると懸念した。フランスの女も、グレムリン以外の魔術勢力が学園都市を狙っていると判断されれば、無意味な多面攻撃が起こると見ていた。
連合勢力は東京湾の船の墓場を叩く必要を理解していたが、学園都市、日本政府、首都東京という複雑な条件が決断を鈍らせていた。グレムリンは、流血の責任を恐れる心理まで計算に入れ、対抗できる全勢力を縛り上げていた。
分断された戦場
賛成者だけの決断
ニューヨークの国際会議では、ロベルト=カッツェが採決を提案した。彼は責任を分散するためではなく、本当に死を恐れない者だけが自分について来ればよいと告げた。
一方、東京の上条当麻は建設途中のビルを下りながら、学園都市へ戻る選択肢はないと考えていた。東京湾の船の墓場へ向かい、槍の製造を止める以外に騒ぎを収める方法はなかった。
地下鉄への道
上条当麻は、人で埋まった道路を進むのは不可能だと判断し、地下鉄を使うことを考えた。建設途中のビルから見えた景色を頼りに、地下鉄のトンネルへ入る道を探し始めた。
御坂美琴は、インデックスを抱えたまま磁力でビルからビルへ飛び移っていた。彼女も、上条当麻が撤退ではなく船の墓場へ向かうと読み、同じ目的地を目指せば合流できると考えていた。
ムスペルの出現
美琴達の前には、火の粉から生まれた炎の人影が現れた。インデックスは、それを北欧神話に基づくムスペルの術式群と見て、特定条件に反応して自動攻撃する仕組みだと推測した。
炎の人影はガラスを溶かすほどの高熱を持っていた。美琴は、上条当麻へ向かう道が一筋縄ではいかないと理解し、攻撃に備えた。
下水道の三人
バードウェイ、レッサー、雲川鞠亜は、道路や鉄道ではなく川を使うため、下水道へ入った。そこで火の粉が現れ、移動速度に応じて怪物が出現する罠だとバードウェイは見抜いた。
炎の人影は熱風を吐き出したが、バードウェイは風の属性を見抜き、短剣へ変えた杖で熱風を渦にして水へ逃がした。続いてレッサーは、フレイの鹿の角に基づく術式でムスペル達を切り裂いた。
船の墓場への方針
バードウェイ達は、同じ敵ばかり出るとは限らず、倒せばより強力な敵が来る可能性があると見た。長居はせず、河川への出口を目指して走り続けた。
上条当麻の右手が使えるかは分からないが、船の墓場を目指す以外に建設的な手はなかった。彼女達は、目指す場所が同じならいずれ合流できると考えていた。
プールの母親達
都内の屋内プールでは、上条詩菜と御坂美鈴が外の騒ぎを見ていた。表の通りは人で混み合い、インストラクターは施設から出ないよう呼びかけていた。
二人は携帯電話が繋がらないことを確認し、災害時伝言板へ無事を残そうとした。外では世界を賭けた戦いが始まっていたが、二人はまだ状況の深刻さを掴み切っていなかった。
ロシア爆撃機の牽制
東京湾へ連合勢力を動かすため、ロシア空軍の爆撃機編隊が日本上空へ向かっていた。任務は、日本政府へ連合勢力がすでに動いたと示し、道を開けさせるための恫喝に近いものだった。
その最中、爆撃機の主翼にヨルムンガンドと呼ばれる少年が張り付いた。護衛機は異常を報告し、少年が主翼を切り落とそうとしていると判断した。
ヨルムンガンドと魔女狩りの王
ヨルムンガンドの前には、竜巻で運ばれたルーンカードから発動した魔女狩りの王が現れた。遠隔から攻撃する魔術師は、自分は小者に構う暇はないと告げた。
しかしヨルムンガンドは、竜巻の発生地点から本体の位置を割り出せると見抜いた。彼は紫色の光球を生み出し、ヨルムンガンドの象徴である毒の息を日本海へ放った。
フレイヤの釣り堀
市ヶ谷の釣り堀では、マタニティドレス姿の女性が釣りをしていた。彼女は通信霊装で、トールやモックルカールヴィ、ムスペルの状況を確認していた。
女性は、自分が産んだ地の底這う悪竜が東京上空を旋回し、ムスペルも予定通り反応していると語った。通信用の木札を携帯電話と勘違いした男が手を掴むと、釣り堀の中から現れた何かが男を水中へ引きずり込んだ。
豊穣神フレイヤ
女性は、ムスペルの撃破報告が多い場所へ自分が出ると決めた。彼女は釣竿を近くの客へ投げ渡し、臨月の妊婦のような姿のまま人混みへ向かった。
その正体は、豊穣神フレイヤを名乗るグレムリンの一員だった。彼女は強敵を相手にすると告げ、戦場へ向かっていった。
地下鉄の上条当麻
上条当麻は、地下鉄駅の防災出口から構内へ入り、人で埋まったホームへたどり着いた。列車は止まらずに通過しており、彼はダクトを通ってホーム上へ移動し、列車の屋根へ飛び乗る方法を選んだ。
一度目はタイミングを逃したが、二度目で列車の屋根へ落下した。激痛に耐えながら、上条当麻は東京湾方面へ向かう道筋を得た。
列車上のフレイヤ
列車が地上へ出た時、上条当麻の前にマタニティドレス姿の女性が立っていた。彼女は、ムスペルの撃破数から標的を選び、この路線だけ破壊せずに残して強敵を誘導していたと語った。
女性はフレイヤと名乗り、グレムリンにとって上条当麻が最も厄介で真っ先に倒すべき敵だと告げた。直後、彼女の背後から闇を圧倒する何かが噴き出した。
行間 三
船の墓場の迎撃
槍の製造装置
船の墓場では、白い少女を中心に八枚の花弁のような未元物質が広がっていた。それは主神の槍の製造に必要な技術的な穴を、科学の領域で無理やり埋めるための装置だった。
人の形をしていても心や生命はなく、目的を果たせば破裂して消えるだけの空虚な人形であった。木原加群は最後のケーブルを接続し、自分の作業を終えた。
オティヌスの指示
木原加群は、全体論を含む残りの作業はマリアン=スリンゲナイヤーの領分だと告げ、次の指示を求めた。オティヌスは彼の顔も見ず、迎撃に向かい、必要なものを必要なだけ破壊して時間を稼げと命じた。
船の墓場の位置はすでに世界へ知られていたが、グレムリンにとって問題ではなかった。船の墓場は籠城する場所ではなく、槍を完成させるための施設であり、槍が完成すれば直後に崩壊しても構わなかった。
岸壁の有志
木原加群は船の残骸を渡り、使えるモーターボートに乗って東京側の港湾地帯へ向かった。海の白い湯気の向こうには、山のようなモックルカールヴィの影が見えていた。
岸壁には、警察官、機動隊、自衛隊など、所属の異なる治安維持関係者が集まっていた。正式な命令を待たず、危機を前にした一部の有志が独自に集結していたのである。
抜け殻の突入
岸壁からは、船の墓場と、その周囲を警戒するモックルカールヴィの巨影が見えていた。集まった者達は互いに発破をかけているようだったが、木原加群には何の感慨も湧かなかった。
彼はすでに情動を司る機能を失い、復讐を完璧に終えた抜け殻でしかなかった。ただ磨き上げた膨大な魔術だけを携え、木原加群は躊躇なく集団へ飛び込んでいった。
第四章 豊穣の奥の災厄 Goddess_of_Fertility.
列車上のフレイヤ
護衛達の緊張
国連本部では、神裂火織、ワシリーサ、サーシャ=クロイツェフ達にも動揺が広がっていた。東京湾に本拠地があると知れたことで、護衛として会議場に留められている状況さえグレムリンの思惑ではないかと疑念が生じていた。
ワシリーサは疑心暗鬼に陥るより、いつも通り動くべきだと判断した。彼女はロシア国内に潜むグレムリンの陽動部隊を叩くよう独自に命じ、通常戦力が日本へ向かえる余地を作ろうとした。
ロシア成教の独断
神裂は、ワシリーサが命令系統を無視した手駒を動かしていることに驚いた。サーシャもロシア成教徒として裏切りを見過ごせないと反応し、釘抜きでワシリーサを叩きつけた。
それでもワシリーサは平然と立ち直り、ロシア側の魔術師達へグレムリンの陽動部隊を潰すよう改めて命じた。神裂は、その異様なやり取りに呆れていた。
フレイヤの召喚
地下鉄の列車上で、上条当麻はフレイヤと対峙した。フレイヤは距離を取り、宝石を核として赤い糸のようなものを巻きつけ、巨大な馬を作り出した。
上条当麻は幻想殺しで巨馬を打ち消した。しかしフレイヤはすぐに次の宝石を投げ、巨大な鳥や大男、馬、リスのような小動物を次々に生み出した。
弾幕への対応
上条当麻は、怪物を一体ずつ幻想殺しで潰していては間に合わないと悟った。そこで、他の怪物を狂乱させている小動物を足で潰し、大男を幻想殺しで破裂させた衝撃を利用して、周囲の怪物を将棋倒しにした。
彼はその隙にフレイヤへ接近しようとした。だが地下鉄トンネルの高さが急に低くなり、フレイヤの生み出した大男は天井に潰され、上条当麻も慌てて身を伏せた。
ヒルディスビニ
フレイヤは大量の大男を生み出した後、ヒルディスビニという猪を作り出した。上条当麻は大男達を倒せば突破できると考えたが、フレイヤは猪へ捕食を命じた。
猪は味方である大男達を喰らい、核となる宝石ごと取り込むたびに巨大化していった。フレイヤは、北欧神話の共倒れの構造を利用し、善悪や白黒が互いに喰らい合う術式へ結びつけていた。
フレイヤの子
巨大化したヒルディスビニは、地下鉄トンネルの空間を埋め尽くすほどに膨れ上がった。フレイヤは、自分の怪物達を外部から呼び出しているのではなく、自らの魔力を子宮へ導き、宝石を核として即興で作っていると語った。
さらにフレイヤは、自分には魔術の才能がなく、腹の中に閉じ込めた子に魔術を肩代わりさせていると明かした。上条当麻は、人の命を何だと思っているのかと怒りを露わにした。
猪の突撃
上条当麻は幻想殺しでヒルディスビニを打ち消そうとしたが、巨大な猪が突撃する前に、押し出された空気の塊だけで体を吹き飛ばされた。ヒルディスビニはトンネルを削りながら迫り、上条当麻を列車の最後尾から突き落とそうとしていた。
上条当麻は空中で体勢を変えることもできず、巨大猪に追いつかれれば肉塊にされる状況に追い込まれた。それでも彼は、何とか乗り越える方法を探そうとしていた。
ロンドンの御坂旅掛
ロンドンの酒場では、御坂旅掛がノートパソコンと衛星携帯電話を使い、取引中止が相次ぐ状況に苛立っていた。戦争準備の気配によって資源や宝石類の取引が止まり、彼の海底水道プロジェクトにも影響が出ていた。
御坂旅掛は、東京が激戦区になっていると聞き、家族のもとへ向かう手段をすでに試していた。しかし航空会社も空軍のつても使えず、電話もメールも届かないため、仕事に戻るしかなかった。
船の墓場の儀式
ロンドンの御坂旅掛
ロンドンの酒場では、御坂旅掛が日本へ戻る手段を探し続けていた。航空会社も軍のつても使えず、彼は旧ソ連の軍用機や中古の弾道ミサイルまで考え始めていた。
衛星携帯電話の相手は、旅掛が家族思いの暴走王であることを理解しつつ、今は仕事に集中するよう促した。しかし旅掛は、東京にいる家族の危機を思い、なおも日本へ戻る方法を諦めきれずにいた。
太平洋のヘル
太平洋上では、血に染まったドレスを着た縫い痕だらけの少女が小舟に立っていた。彼女は包丁を海へ投げ、半径一〇〇キロ以上の海を一瞬で凍らせ、補給艦隊の進路を封じた。
少女はニヴルヘイムの女王ヘルを名乗るにふさわしい術式を使っていた。死者の残留情報から死因を取り出し、既存の武器に組み込むことで、拳銃で焼死を引き起こすなど、死因を入れ替えて攻撃する力だった。
シルビアとブリュンヒルドの介入
ヘルは拳銃を使い、補給艦を炎に包んだ。しかしシルビアが結界で乗組員を守り、炎を吹き散らした。
通信越しに、シルビアとブリュンヒルド=エイクトベルがヘルへ名乗った。ヘルは周囲に浮かぶ一万以上の死因を全て使って殺せると告げたが、ブリュンヒルドは不吉な冥界の女王を名乗る相手に呆れ、戦いを終わらせようとした。
美琴とインデックスの空中移動
御坂美琴はインデックスと三毛猫を抱え、磁力で高層ビルの壁面を飛び移りながら東京湾を目指していた。火の粉から生じるムスペルは高速移動に追いつけず、標的を見失って自然消滅していた。
その途中、学園都市製の超大型戦闘機と、赤い糸で形作られた大鷲の怪物フレースヴェルグが空中戦を繰り広げていた。大鷲は風を操ってミサイルを吹き散らしたが、戦闘機の攻撃で頭部を失い、広い公園か競技場の方へ落下した。
人々の怒り
美琴は、学園都市とグレムリンが東京上空で本気で戦っていることに危機感を覚えた。人口密集地に防衛線を作れば、どれほど多くの人が巻き込まれるか分からなかったからである。
一方、バードウェイ、レッサー、雲川鞠亜は下水道から川へ出て、軍用ゴムボートで東京湾を目指していた。空中戦の残骸が街へ落ちたことで、群衆の不満は命の危機を感じた怒りへ変わり、その矛先は学園都市へ向き始めていた。
利害の分散
雲川鞠亜は、襲っているのはグレムリンなのに、なぜ学園都市が悪者になるのか疑問を抱いた。レッサーは、普通の人間には学園都市が余計な刺激をしたから怪物が暴れ始めたように見えると説明した。
バードウェイは、それもグレムリンの利害の分散策だと見抜いた。正しい迎撃をしている学園都市へ大多数の怒りを向けることで、現場の判断を鈍らせ、あらゆる人間を絡め取ろうとしているのだった。
主神の槍の儀式
船の墓場では、豪華客船の成れの果てに、透明で粘つく高温の液体を満たした巨大なプールが用意されていた。元は純金だったが、グレムリンの技術によって武具の材料としての側面だけを極限まで抽出され、もはや通常の金とは呼べないものになっていた。
プールサイドには、オティヌス、マリアン=スリンゲナイヤー、投擲の槌であるミョルニルがいた。主神の槍の製造は始まっており、難しい点は起動部分で、今はミョルニルがハワイ諸島で得た火山性エネルギーを管理していた。
全体論の切り替え
ミョルニルは、どんな魔術の穴埋め問題も一つだけ通せるジョーカーのような存在だった。しかし主神の槍は、魔術だけでは完成できないため、魔術の範囲内で不足を埋めるだけでは越えられない壁があった。
その不足を補うため、学園都市第二位の残りかすから作った少女の形の素体に、木原加群が加工を施していた。儀式は魔術を基盤にしながら、途中で全体論を人の手で放り込む必要があり、オティヌス達はその切り替えの時を待っていた。
フレイヤの正体
アメリカの上条刀夜
アメリカのシリコンバレーでは、上条刀夜が東京の妻と息子を心配していた。航空会社の窓口は封鎖され、東京で起きている混乱は氷山の一角にすぎず、金融市場にも大きな影響が出ていると刀夜は見ていた。
刀夜はリンディ=ブルーシェイクと契約書の確認を進めていた。リンディは、東京周辺の通信障害が通常の混雑では説明できず、人々が一斉に通信網を詰まらせるよう誘導されている可能性を示した。
混乱を望む者達
刀夜は、鉄鋼、自動車、航空機、石油、穀物などの市場で、混乱が大きくなるほど利益が出る取引が増えていることを考えていた。死の商人だけでなく、一般の投資家まで混乱の長期化を望むような流れが見え始めていた。
リンディは、ネット上の検索結果やSNS、掲示板の情報から危険な方向へ動く社会の矢印を読み取っていた。刀夜は、真の扇動者は自ら目立つ悪事をせず、赤の他人が勝手にそう動くよう誘導するものだと考えた。
列車に残った上条当麻
地下鉄の屋根の上では、フレイヤがヒルディスビニの突撃で上条当麻を仕留めたと判断していた。彼女は通信用霊装を取り出し、次の標的を探そうとした。
しかし上条当麻は、列車の側面に指だけでしがみついて生き残っていた。彼はヒルディスビニの暴風を学生服の上着で受け流し、列車の縁へ逃れていたのである。
学生服の目隠し
上条当麻は、フレイヤが覗き込んだ瞬間を狙い、脱いでいた学生服の上着を振り回して彼女の視界を塞いだ。列車の縁に立っていたフレイヤは一瞬恐怖を覚え、その隙に宝石を足元へ落としてムニンを呼び出した。
上条当麻は列車の屋根へ戻り、現れた鳥を幻想殺しで打ち消した。彼は、攻撃の起点がブリーシンガメンという宝石にあると見抜き、ポケットの中の宝石を壊して決着をつけようとした。
母に触るな
上条当麻がフレイヤのポケットへ手を伸ばした瞬間、恐ろしく低い声が響いた。声は、母に触るなと叫び、フレイヤの体は上条当麻の腹へ踵を叩き込んだ。
上条当麻は吹き飛ばされ、フレイヤは学生服を払いのけた。その時、彼はマタニティドレスの内側から浮かび上がる複雑な光の紋様を見た。
腹の中のフレイヤ
上条当麻は、自分が大前提を間違えていたことに気づいた。母体には魔術の才能がなく、胎児が魔術を使っているというフレイヤの言葉を思い出したのである。
彼が戦っていた相手の本質は、マタニティドレスの女性ではなかった。上条当麻は、膨らんだ腹そのものへ向けて、お前がフレイヤだったのかと呟いた。
主神の槍の完成間近
胎児の記憶
腹の中のフレイヤは、言葉の意味を完全には理解できなくても、母へ向けられる感情を感じ取っていた。彼女は、自分が望まれて生まれる子ではなく、母が自分のせいで世間から押し潰されるように生きてきたことを理解していた。
それでも母は、すべてを失いながらも子を恨まず、守ろうとしていた。今日眠る場所や明日の食事すら保証されない中でも、毛糸を編み、昔話を聞かせ、子が無事に生まれるよう祈っていた。
母を救うための選択
フレイヤは、どうやっても救えない人がいると上条当麻へ告げた。母体はすでに自力で立つこともできず、フレイヤがへその緒を通して操ることで辛うじて動いていた。
フレイヤは、オティヌスの槍が完成すれば、通常では救えない母を救える可能性があると信じていた。上条当麻はそれが利用されているだけだと訴えたが、フレイヤは他に母を守る手段がないとして譲らなかった。
地の底這う悪竜
フレイヤは、上条当麻との戦闘中に列車内で大量の怪物を生み出し、それらを喰わせて本命の怪物を肥大化させていた。列車が地上に出て上条当麻の目が眩んだ瞬間、車両の内側から巨大な赤い竜の顎が突き出した。
その攻撃で車両は破裂し、上条当麻は空中へ投げ出された。フレイヤは前方車両へ移っており、上条当麻はこのままでは何も掴めないまま終わると感じた。
御坂美琴の合流
落下する上条当麻を救ったのは御坂美琴だった。美琴はインデックスを片手で抱えたまま、もう片方の手で上条当麻を掴み、残った列車の屋根へ着地した。
美琴は、一人で突っ込んで追い詰められる上条当麻を叱った。インデックスも、上条当麻が止めても今回は関わると告げた。
助けを求める言葉
列車の屋根には、美琴の携帯電話が落ちていた。そこからは、御坂美鈴の災害時伝言板のメッセージが流れ、表で騒ぎが起きているが自分は大丈夫だと家族へ伝えていた。
上条当麻は、その当たり前の母の声を聞き、フレイヤと母親が一度も互いの顔を見ることすら許されなかった理不尽を思った。そしてインデックスと美琴に、フレイヤ達二人を助けるため力を貸してほしいと頼んだ。
任せて
インデックスと美琴は、上条当麻の願いを聞いてしばらく黙った。だが二人は、その言葉をずっと待っていたかのように受け止めた。
二人は任せてと答え、上条当麻を守るために一歩前へ出た。前方にはフレイヤ、後方には地の底這う悪竜が迫っていたが、彼女達は恐れず、夢にまで見た場所へ立っていた。
全体論の崩壊
船の墓場では、白い少女と八枚の花弁で構成された素体が、槍の製造を支えていた。プール内の槍はすでに人の腕ほどの長さまで伸び、魔術から科学への一時的な切り替えは順調に進んでいた。
しかし、科学から魔術へ再び切り替える直前に、素体が崩れ始めた。マリアン=スリンゲナイヤーは再切り替えまで一〇分必要だと焦ったが、オティヌスは第二位の搾りかすに頼るより、自ら素体を無理やり保たせることを選んだ。
槍の再切り替え
オティヌスは、崩れゆく花弁を踏み潰し、少女の胸へ指を突き入れて肺にあたる部分を掴み、強引に音声を維持させた。素体は腐敗するように崩れ、オティヌス自身も血を流しながら耐え続けた。
やがて素体の頭部は落ち、歌声は途切れたが、再切り替えは成功した。槍は黙っていても完成する段階に入り、オティヌスは修繕のためにその場を離れた。
あと五〇センチ
マリアンは、プールの中で槍が二メートルに達し、穂先の形成に入っているのを見た。想定される全長は二五〇センチであり、残るのは五〇センチだけだった。
マリアンは、あと少しでオティヌスの手間も省けると呟いた。その五〇センチで、世界は変わろうとしていた。
地の底這う悪竜の迎撃
最後のヒルディスビニ
フレイヤは、敵が増えても戦局を決める鍵は自分にあると見ていた。彼女はヒルディスビニを生み出し、列車から飛び降りる際のクッションに使い、自分だけは無傷で脱出するつもりだった。
その上で、地の底這う悪竜 Vol.2に列車を破壊させれば、上条当麻達を全滅させられるはずだった。だが御坂美琴は自ら列車の最後尾から飛び出し、ゼロ距離の超電磁砲を連射して悪竜の突進を止めた。
インデックスの解析
フレイヤは大量の宝石をばら撒き、怪物を次々に生み出そうとした。しかしインデックスは強制詠唱によってフレイヤの術式へ割り込み、その制御を乱した。
上条当麻は、フレイヤの魔術の元になったものが、母親が子を安全に産むために用意した術式やおまじないだったと見抜いた。フレイヤはそれを攻撃用に作り替えていたのである。
母を救すための術式
フレイヤは、元の術式が何であっても母を救えなかったと叫んだ。自分が外へ出れば母は死に、留まり続ければ母の自我が薄れていくため、魔神の力でしか救えないと考えていた。
上条当麻は、インデックスが一〇万三〇〇〇冊の魔道書によって術式を完成させると断言した。胎児と母体の関係が逆転しているだけなら、母体が再び自力で心臓を動かせるように切り替えられるはずだと告げた。
信じることへの恐れ
フレイヤは、母を守るために母体を乗っ取り、母親が子を思って繰り返したおまじないを戦闘用の魔術へ組み替えていた。彼女は親を助けるために、魔神に魂を売ってでも戦う覚悟をしていた。
上条当麻は、母を一人で守らなくてはならない理不尽は終わったと告げた。フレイヤにはもうグレムリン側で戦う理由はなかったが、人を信じる方法が分からないため、なおも怪物を前へ進ませた。
フレイヤの解放
上条当麻は、インデックスが準備する時間を稼ぐため、迫る怪物達へ正面から突っ込んだ。彼は幻想殺しで怪物を打ち消しながら、フレイヤへ終わりだと告げた。
暗いトンネルを抜け、列車は白い陽差しの中へ出た。そこにはもうグレムリンの魔術師フレイヤではなく、弱々しく目覚めた一人の母親と、胎児であるフレイヤの母娘だけが残っていた。
東京駅の貨物列車
上条当麻達は、フレイヤの母体を抱えたまま東京駅へ到着した。駅構内は人の気配がなく、列車は木箱を積んだ物資輸送用のようで、運転席には迷彩服の男がいた。
上条当麻はフレイヤを置いていくことも考えたが、グレムリン側にも防衛側にも狙われる危険があるため連れていくことにした。彼らは別の列車へ乗り換え、東京湾に近い操車場へ向かった。
港湾地帯の合流
上条当麻とインデックスは、操車場近くでバードウェイ、レッサー、雲川鞠亜の乗る軍用ゴムボートと合流した。さらに御坂美琴も磁力で上空から降り立った。
誤解混じりのやり取りをする余裕もなく、周囲にはムスペルの火の粉が大量に発生した。バードウェイと美琴はすぐに応戦し、自動戦力を吹き飛ばした。
船の墓場への突入方針
バードウェイは、東京湾上にある船の墓場へこのまま突っ込むと告げた。道路や鉄道は人の波で塞がれていたが、海の上なら人肉のバリケードは機能しなかった。
魔神オティヌスを力で殺せるかは不明だったが、槍の製造という大規模儀式を破綻させれば、行き場を失ったエネルギーが術者へ牙を剥く可能性があった。全員に共通しているのは、グレムリンを止める必要があるという認識だった。
悪竜の急降下
その直後、地の底這う悪竜が上条当麻達の近くへ滑空してきた。悪竜はフレイヤの救出命令に従っている可能性があったが、乱暴な突入では敵味方を問わず粉砕しかねなかった。
御坂美琴、バードウェイ、レッサーは攻撃を加えたが、悪竜は構わず突っ込んできた。逃げても追われるだけで、遮蔽物も意味をなさない状況だった。
木原加群の刃
悪竜の前に割り込んだのは、木原加群だった。彼は自ら悪竜の顎に噛まれ、致命傷を無効化する術式と、傷を負うほど切れ味を増す剣の術式を組み合わせ、口の中から青白い光の刃を伸ばした。
木原加群は悪竜を完全に分断せず、空気抵抗と姿勢制御だけを崩すように切り刻んだ。その結果、悪竜は操車場ではなく河川へ進路を変えて突っ込み、壊滅的な衝突は避けられた。
死んだままの木原加群
木原加群は一〇メートル以上の高さから砂利の地面へ着地し、光の刃を消した。雲川鞠亜は、そのシルエットに見覚えがあり、彼が木原加群だと気づいた。
木原加群はバゲージシティで確実に死亡した後、オティヌスの力で動かされているだけだった。彼は今も死んでおり、外部から魔力を注がれて動く腐らない人形に過ぎなかった。
雲川鞠亜の見届け
木原加群の傷痕
木原加群を見たバードウェイとレッサーは、魔術師として警戒を強めた。しかし雲川鞠亜は、バゲージシティで見た操り人形のような状態とは違うものを感じ取り、木原加群の首の後ろに小さな傷痕を見つけた。
木原加群は、自分が木原病理に敗れ、肉体を操られて望まない相手を攻撃する可能性まで想定していた。その対策として、木原加群らしく振る舞うための行動リストを封入した半導体を埋め込んでいた。
木原加群らしい行動
半導体は木原加群の脳を動かしているわけではなく、彼がらしくない行動を強いられた時だけ効果を発揮するものだった。そこには、木原病理を倒すこと、人命の損失を可能な限り抑えること、そのためなら人命以外の損害を許容することが設定されていた。
木原加群は、今回の地の底這う悪竜だけでなく、東京湾岸で何度も人命を守るために戦っていた。彼はかつて子供達を守るために通り魔の前へ立ち塞がった時と同じように、無差別に人を救っていたのである。
雲川鞠亜の決断
雲川鞠亜は、岸壁へ飛び移り、自分はここに残ると告げた。妊婦であるフレイヤの母体を危険な船の墓場へ連れていくわけにはいかず、ただ置いていくこともできないため、自分が預かると決めた。
上条当麻が確認すると、雲川鞠亜は木原加群が死んでいることを受け入れていると答えた。今動いている彼は残滓であり、遺言状のようなものだと考えていた。
別々の道
雲川鞠亜は、木原加群が誰か一人を助けようとしたのではなく、手当たり次第に救おうとしているだけだと見ていた。その馬鹿なわがままに応える人間がいてもよいと考え、フレイヤの母体を受け取った。
上条当麻は彼女に頼んだぞと告げ、インデックスや御坂美琴と共にゴムボートへ乗り込んだ。バードウェイの操舵で、彼らは湯気の舞う東京湾を船の墓場へ向けて進んだ。
岸壁の倒れた有志
雲川鞠亜は、妊婦を抱えたまま木原加群の後を追った。周囲には機動隊や自衛隊らしき者達が倒れていたが、装甲車や自走砲が切り刻まれている一方で、人々にはほとんど傷がなかった。
木原加群の行為は明確な破壊だったが、結果として敵対者の命を守っていた。雲川鞠亜は、もし彼らが攻撃していればグレムリンの反撃で大破壊が起きていたことを理解した。
人間臭い先生
雲川鞠亜は、木原加群をどうしようもない人だと思った。家庭にも社会にも向かず、夢や理想を大真面目に語り、現実的な問題で多くを失いながらも、小さな成果に笑うような人間だったのだと見ていた。
それでも失望はなかった。雲川鞠亜は、神格化せず歪めることもなく、失われた一人の男を人間として語り継げることを幸運だと思っていた。
遺言への返答
雲川鞠亜は木原加群の隣に立ち、不器用な遺言に振り回されてやる人間が一人くらいいてもよいと語った。彼が肉の一片まで削ぎ落とされても目的をまっとうするなら、自分はそれを見届けると決めた。
木原加群は何も答えなかった。それでも雲川鞠亜にとって、その言葉は墓前に声をかける行為と同じであり、決して無意味ではなかった。寒空の下で、彼女はようやく大切な人の死を呑み込み、その隣に立つことができた。
終章 槍 Lance_of_”Gungnir”.
魔神オティヌスの完成
東京湾のゴムボート
バードウェイの操る軍用ゴムボートは、湯気に煙る東京湾を船の墓場へ向けて進んでいた。一定以上の速度に反応する火の粉が周囲を舞っていたが、ボートが速すぎるため、炎の人影は標的を見失って海へ落ちていった。
その途中、上条当麻達の前に五〇〇メートルを超える巨人モックルカールヴィが現れた。バードウェイは片足を集中攻撃して移動能力を奪う方針を示したが、巨人は突然いくつもの塊に分断され、海へ崩れ落ちた。
皿の上の心臓
船の墓場では、雷神トールに偽装していたオッレルスが、皿の上に置かれたモックルカールヴィの心臓を掴み取っていた。彼はその心臓を握り潰し、巨人の機能を停止させた。
そこへオティヌスが現れ、何の真似だと問いかけた。オッレルスは頃合いだと答え、投擲の槌ミョルニルとマリアン=スリンゲナイヤーのいる一角を閃光で包み、槍の製造を妨害した。
オッレルスの妖精化
オッレルスは正体を現し、オティヌスと対峙した。彼は魔神の領域に触れた者だからこそ作れた天敵として、異教の神を妖精へ矮小化する術式を用意していた。
オッレルスは自らの負傷を顧みず、オティヌスの胸へ妖精化の杭を打ち込もうとした。しかしオティヌスは認識を騙しており、杭はまだ彼女に届いていなかった。
奪われた妖精化
オティヌスはオッレルスの手首を掴み、その術式を利用して逆に彼の胸へ妖精化の杭を叩き込んだ。オッレルスは魔神に近い特別性を失い、圧倒的な存在感を霧散させた。
だが、その直後、右方のフィアンマが背後から現れ、もう一つの妖精化の杭をオティヌスの心臓へ打ち込んだ。オッレルスは、自分を妖精化した時点で勝負が決したと思い込んだオティヌスの読み違いを突いたのだった。
敗北による完成
オティヌスは妖精化され、魔神としての力を失ったはずだった。しかし彼女は笑っていた。彼女が求めていたのは成功一〇〇%であり、槍はそのための手段だったが、失敗一〇〇%でも逆の道を選べば同じく成功へ進めると気づいていたのである。
オティヌスは、妖精化による完全な敗北もまた魔神として完成するための道標だと告げた。勝っても負けても魔神として完成する構図を作った時点で、彼女はすでに世界との勝負を終わらせていた。
船の墓場への到着
上条当麻達は船の墓場の端へ接岸した。上条当麻が一歩踏み出すと、得体の知れない感覚が足元から突き上げ、そこが現世の一部とは思えないほど歪んだ場所に変わっていることを感じた。
そこへ血まみれのオッレルスが客船の甲板から落ちてきた。上条当麻はインデックス達の姿も声も確認できず、魔神オティヌスだけが笑いながら、彼が間に合わなかったと告げた。
囮だった槍の製造
上条当麻は主神の槍が完成したのかと問うたが、オティヌスはマリアンの製造は失敗したと答えた。しかし、それは問題ではなかった。
オティヌスは、槍の製造方法は一つではなく、マリアンを軸にした方法は囮だったと明かした。ハワイ諸島、バゲージシティ、フロイライン=クロイトゥーネを巡る作戦も、すべて本当のタイムリミットを隠すために配置された情報だった。
眼窩から現れた槍
オティヌスの眼帯の下から、赤黒い液体にまみれた突起物が現れた。それは彼女の眼窩を押し広げながら伸び続け、幅広の刃を持つ主神の槍として世界に顕現した。
オティヌスは、自らの体内から生じた槍を掴み、上条当麻を見下ろした。彼女は成功一〇〇%と失敗一〇〇%の二つを同時に得たことで、もはやただの魔神では収まらない存在になったと宣言した。
世界の終わり
上条当麻は恐怖に硬直したが、叫びながら拘束を振りほどき、オティヌスへ向かって走ろうとした。だが崖のようにそびえる客船があり、彼の足だけでは届かなかった。
オティヌスは槍を軽く回し、穂先を天へ掲げた。彼女は、ちまちま戦うのは面倒だから世界を終わらせると告げ、その宣言通り、直後にすべてが壊れた。
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