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Y.Aフィクション(Novel)八男って、それはないでしょう!読書感想

小説【八男】「八男って、それはないでしょう! 15」感想・ネタバレ

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Y.A

八男14巻レビュー
八男まとめ
八男16巻レビュー

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  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
    3. ■ 物語の特徴
  2. 書籍情報
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
  5. 考察・解説
    1. 冒険者予備校の学園祭
    2. 地下遺跡での若返り
    3. 伝説の髪神探索
    4. 後継者争いの調停
    5. 予備校の卒業式
  6. 登場キャラクター
    1. バウマイスター伯爵家・関係者
      1. ヴェンデリン・フォン・ベンノ・バウマイスター
      2. エリーゼ・カタリーナ・フォン・ホーエンハイム
      3. イーナ・ズザネ・ヒレンブラント
      4. ルイーゼ・ヨランデ・アウレリア・オーフェルヴェーク
      5. ヴィルマエトル・フォン・アスガハン
      6. カタリーナ・リンダ・フォン・ヴァイゲル
      7. テレーゼ・ジークリット・フォン・フィリップ
      8. カチヤ・フランク・フォン・オイレンベルク
      9. リサ・クレメンテ・ウルリーケ・エクスラー
      10. アマーリエ・フォン・マインバッハ
      11. エルヴィン・フォン・アルニム
      12. ローデリヒ
      13. ドミニク
      14. レーア
      15. アンナ
    2. 冒険者予備校バウルブルク支部(生徒・講師)
      1. アグネス・フュルスト
      2. シンディ
      3. ベッティ
      4. アーネスト・ブリッツ
    3. バウマイスター準男爵家・本家関係者
      1. パウル・フォン・ベンノ・バウマイスター
      2. アルトゥル・フォン・ベンノ・バウマイスター
      3. ヨハンナ
      4. オットマー
    4. マッテゾン子爵家
      1. デニス・フォン・マッテゾン
      2. アルバン・フォン・マッテゾン
    5. ヘルムート王国(王宮・貴族・その他)
      1. クリムト・クリストフ・フォン・アームストロング
      2. ブランターク・リングスタット
      3. エーリッヒ・フォン・ベンノ・バウマイスター
      4. エーレンフリート伯爵
      5. ルーカス・ゲッツ・ベッケンバウアー
      6. アルテリオ
      7. 老漁師
  7. 展開まとめ
    1. 第一話 学園祭をやってみる
    2. 第二話 ヴェンデリンの受難
    3. 第三話 決死の脱出劇
    4. 第四話 髪は長い友達
    5. 第五話 兄と弟、弟と兄
    6. 第六話 卒業とその後の進路
    7. 巻末おまけメイド、修学旅行に同行する
  8. 同シリーズ
    1. 八男って、それはないでしょう!シリーズ
    2. 異世界帰りのパラディンは、最強の除霊師となるシリーズ
    3. 異世界帰りの勇者は、ダンジョンが出現した現実世界で、インフルエンサーになって金を稼ぎます!シリーズ
  9. その他フィクション

物語の概要

■ 作品概要

本作は、異世界に転生した貧乏貴族の八男・ヴェンデリンの波乱に満ちた活躍を描くファンタジー小説の第15巻である。
物語は、ヴェンデリンの臨時講師生活が終盤を迎える中、新設された冒険者予備校バウルブルク支部での「学園祭」や「修学旅行」といった賑やかな行事から幕を開ける。
しかし、見学実習のために訪れた地下遺跡で、ヴェンデリンは古代の魔道具の罠により「5歳前後の子供の姿」に変えられてしまう。
魔力も体力も著しく制限される過酷な状況下で、魔族の考古学者アーネストや愛弟子である予備校の女子生徒3人(アグネス、シンディ、ベッティ)と共に、古代の強力な防衛システムが起動した遺跡からの決死の脱出劇に挑むこととなる。
さらに、薄毛に悩む王国の大物貴族たちを巻き込む「髪神の体液」の争奪戦や、領主としての外交手腕を問われるマッテゾン子爵家の後継者争いなど、領地の発展と大家族の賑やかな日常が描かれる。

■ 主要キャラクター

  • ヴェンデリン・フォン・ベンノ・バウマイスター
    • 本作の主人公である。 彼は妻たちの同時懐妊に伴って冒険を一時休止し、予備校の臨時講師として指導を続けている。 地下遺跡では古代の罠にかかり、5歳前後の「子供の姿」にされてしまうが、低下した魔力でも工夫次第で戦えることを愛弟子たちに実演して見せた。
  • アーネスト・ブリッツ
    • 魔族の国から来た考古学者である。 地下遺跡の調査中に事件に巻き込まれ、子供になったヴェンデリンを背負って逃げたり、囮になったりする。 攻撃魔法は使えないものの、強固な「魔法障壁」を展開して敵の攻撃を防ぐなど、過酷な脱出劇において意外な大活躍を見せる。
  • アグネス・フュルスト
    • ヴェンデリンの魔法使いクラスの愛弟子である。 クラス委員長のような立場であり、優秀な魔力と冷静な頭脳を備えている。 地下遺跡の戦闘ではリーダーとして仲間を牽引し、自爆の罠も見抜いたヴェンデリンの指示に従ってドラゴンゴーレムの撃破に大きく貢献した。
  • シンディ
    • 12歳でクラス最年少の愛弟子である。 明るく素直な性格をしており、実家は老舗の生花店を営んでいる。 地下遺跡での戦闘では、ゴーレムに魔力を供給していた台座の機構を破壊し、敵の活動を弱める決定的な役割を果たした。
  • ベッティ
    • 勝気でしっかり者な愛弟子である。 実家は困窮していたレストランから、ヴェンデリンのアドバイスによって立ち飲み屋として大繁盛している。 実戦経験のなさに当初は焦るものの、ヴェンデリンの助言で呼吸を整えて魔力を回復させ、強力な「魔法障壁」でパーティーの盾として貢献した。
  • デニス・フォン・マッテゾン
    • 石細工の特産地であるマッテゾン子爵家の長男である。 異母弟のアルバンとの後継者争いに巻き込まれていたが、自ら泥を被るのを躊躇っていた。 ヴェンデリンから「弟を廃するか、領地を出るか」と覚悟を迫られたことで決意を固め、正式に家督を継承する。

■ 物語の特徴

  • 「子供化」したヴェンデリンと、実戦で大きく成長する愛弟子たちの死闘
    古代の魔道具によって5歳児の姿にされ、魔力も初級レベルまで激減したヴェンデリンを、アグネス、シンディ、ベッティの3人が必死に守りながら戦う。 それまで安全な講義しか経験していなかった生徒たちが、実戦の過酷さや「魔力コントロールの工夫」を体験し、一流の魔法使いへと急成長していく姿が本作の大きな見どころである。
  • 「髪神の体液」を巡る、薄毛に悩む貴族たちの凄まじい執念とドタバタコメディ
    失った髪を確実に復活させる伝説の生物「髪神(カミカミ)」が領内に出現し、大物貴族や大商人たちが血眼になって探索に乗り出す。 おとりとなって金髪ロンゲの不気味な姿に変貌した導師をはじめ、ヴェンデリンが考案した極細の「魔法の網」で大量の体液を採取することに成功する一連の流れが、極めてコミカルに描かれている。
  • お家騒動への介入と、無能なバカ殿候補を排除する領主としての冷徹な政治劇
    マッテゾン子爵家の出来損ないの次男アルバンが、ヴェンデリンを「兄を排除して家督を得た似た者同士」と侮辱し、石細工の取引停止をチラつかせて愛人の押し付けを図る。 ヴェンデリンは一切の妥協を拒否し、優秀な長男デニスに覚悟を促してアルバンを教会送りにさせるなど、貴族社会の冷酷な駆け引きと決断が丁寧に描写されている。

書籍情報

八男って、それはないでしょう! 14
著者:Y.A 氏
イラスト:藤ちょこ 氏
出版社:KADOKAWAMFブックス
発売日:2018年12月25日
ISBN:9784040653891

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あらすじ・内容

蘇る悪夢! 地下遺跡の冒険再び!
冒険者予備校の臨時講師を引き受けたヴェルの講師生活はなおも続いている。
バウルブルクに新設された冒険者予備校も軌道に乗り始め、ヴェル発案による講義での挨拶や帰りの掃除などといった独自ルールが導入されていく。
さらには、学習の成果を発表するといった場を設けない、純然たる祭り要素強めの学園祭を催すに至るのだった。
そんなある日、ヴェルは特別講師として招いたアーネストへの報酬として、探索済みの地下遺跡にて学術調査の手伝いをすることに。
ヴェルは、護衛役として弟子の三人とエルを連れて遺跡に入るも、調査は小一時間で終了し、若干肩透かしを食わされる。
だが、帰りがけに造り物のネズミを発見し捕らえようとした際、そのネズミに魔法をかけられヴェルは子供の姿へと変えられてしまう。
しかも、この地下遺跡が実は広大なものであると判明した瞬間、冒険者デビューをはたしたあの地下遺跡の悪夢がヴェルの脳裏を過るのであった……。

八男って、それはないでしょう! 15

感想

今回は全体として短編的なエピソードが多い一冊だったが、その中でも一番印象に残ったのは地下遺跡の探索である。

軽い調査のつもりだった。

すでに安全確認まで済んでいる地下遺跡に入り、アーネストの学術調査に付き合うだけ。

ところが、そこで見つけたネズミ型のゴーレムによって、ヴェンデリンが子供の姿に戻されてしまう。

しかも見た目だけではない。

体力も魔力量も子供時代まで退化する。

最強戦力をいきなり戦力外にする。

この罠、かなりエグい。

最強のヴェンデリンを子供にするのが一番恐ろしい

発端は、地下遺跡で見つけたネズミ型の魔道具だった。

不用意に近付いたシンディを庇い、ヴェンデリンが謎の魔法を受ける。

痛みもない。

怪我もない。

ところが気付けば、周囲のみんなが大きく見える。

自分が子供になっていた。

アグネスたちから、

「可愛い」

と言われている場合ではない。

さらに恐ろしいのが、魔力量まで大幅に減っていたことだ。

試しに放った《フレイムアロー》では、ネズミ型ゴーレムすら破壊できない。

普段ならヴェンデリンがいれば、

「まあ、なんとかなるだろう」

と思えてしまう。

その安心感を最初に潰してくる。

軍事施設として考えると非常に合理的でもある。

強い侵入者が来たのなら、その強さそのものを奪ってしまえばいい。

しかも体力まで子供に戻るため、長時間歩くだけでも消耗する。

魔力だけを封じるより厄介では?

と思ってしまった。

また「逆さ縛り殺し」かよ

元に戻るには、魔法を放ったネズミ型ゴーレムを破壊する必要があるらしい。

そこで逃げたゴーレムを追おうとしたところ、今度は遺跡の罠が発動する。

足元に浮かぶ魔法陣。

この光景、どこかで見たことがある。

そう。

ヴェンデリンが冒険者になったばかりの頃に引っかかった、

《逆さ縛り殺し》

である。

またこれか。

しかも今回は、ヴェンデリンが子供になっているという最悪の状態で発動。

アグネス、シンディ、ベッティ、アーネストと共に、地下遺跡の奥へ飛ばされてしまう。

後にアーネストは、この施設が古代魔法文明時代の軍事施設だったと推測する。

侵入者を子供にして戦力を削る。

《逆さ縛り殺し》で最下層へ送り込む。

大量のゴーレムをぶつける。

休む暇を与えず、徐々に消耗させて確実に殺す。

宝物を守るダンジョンというより、

侵入してきた人間を生きて帰さないための施設

なのである。

そう考えると、これまでの遺跡とは怖さの種類が違った。

ゲームのダンジョンなら攻略されることも前提にしていそうだが、この施設にはそんな優しさがない。

「機密を見た奴は死ね」

くらいの思想で作られている。

軍事施設の罠としては正しいのだろうが、巻き込まれた側からすればたまったものではない。

まさかのアーネスト大活躍

そして今回、頼りになったのがアーネストだった。

普段のアーネストといえば、

遺跡。

研究。

論文。

考古学。

興味があるものを見つけると周囲が見えなくなる学者という印象が強い。

ところが今回はヴェンデリンが戦力にならない。

アグネスたちもまだ学生。

必然的にアーネストの存在が大きくなる。

ヴェンデリンを守りながら進み、古代施設について考え、状況に応じて判断する。

これまで、

「この魔族、本当に研究以外で役に立つのか?」

くらいに思うこともあったのだが、ちゃんと強かった。

魔族で魔力量も多い。

知識もある。

そして何より、ヴェンデリンが動けない状況だからこそ、その能力が目立つ。

普段ヴェンデリンが強すぎるせいで、周囲の戦力が目立ちにくかっただけなのかもしれない。

先生が弱くなったからこそ、生徒たちの成長が見えた

もう一つよかったのが、アグネス、シンディ、ベッティの三人である。

これまでの三人は、優秀ではあるものの、基本的にはヴェンデリンから教えてもらう生徒だった。

ところが今回は、その先生が守ってくれない。

むしろ自分たちが先生を守らなければならない。

最初は子供になったヴェンデリンを気にしすぎて、前方警戒がおろそかになる場面もある。

そこでヴェンデリンから、

今は決めた役割に集中すること。

勝手な行動は全員を危険にすること。

と注意される。

姿は子供でも、先生は先生なんだよな。

そして進むにつれ、三人も少しずつ自分たちで判断して動けるようになっていく。

ゴーレムと戦う。

罠を突破する。

疲労するヴェンデリンを守る。

教室で習っていた知識を、命がかかった実戦で使う。

これまで臨時講師として教えてきたものが、ここで形になったように感じた。

最強のヴェンデリンが敵を全部吹き飛ばしたら、この成長は見えなかったと思う。

主人公を弱体化させたからこそ、アーネストと生徒たちが活躍できた。

今回の遺跡編では、そこが一番面白かった。

それ以外は、かなり短編集っぽい

一方で、地下遺跡以外はかなり細かなエピソードが続いていく。

その代表が《髪神》だった。

なんと、その体液を頭へ塗ると、死滅した毛根からでも髪が生える。

そんなものが本当にあったら、ものすごい利権になりそうである。

実際、薄毛だった人間に使うと髪が復活する。

そして導師も髪神の体液を浴びることになるのだが……。

結果、

マッチョ仙人みたいになる。

ただでさえ筋肉の塊みたいな導師なのに、そこへ髪まで盛大に生える。

絵面が強すぎる。

髪神の体液は大量に採取され、一人分を少量と考えれば千人規模に使えるほどの量になっている。

地下遺跡では命懸けだったのに、この落差である。

こういう振り幅も『八男』らしい。

修学旅行まで始めるヴェンデリン

冒険者予備校関連では、今度はヴェンデリンが「修学旅行」をやろうとする。

学園祭の次は修学旅行。

前世の学校行事をどんどん持ち込んでいるな。

しかも行き先は魔の森。

普通の学校なら絶対に許可されないだろ。

当然、費用も問題になる。

ところがヴェンデリンは、

船員訓練中の船を利用。

冒険者ギルドから補助。

現地で狩猟して旅行費へ充当。

バウマイスター伯爵家の保養所を利用。

と、かなり本気で予算を削って実現へ持っていく。

そこまでして修学旅行したいのか。

前世でできなかったことを、この世界の学校で楽しんでいるようにも見える。

しかも本人は領主であり、予備校の運営側。

思いついた学校行事を本当に実現できてしまう立場なのが恐ろしい。

子供が生まれるまでは、こんな感じが続くのかな

『八男って、それはないでしょう!15』を読んで感じたのは、シリーズ全体が少し大きな区切りに入っていることだった。

帝国内乱のような大事件は終わった。

領地開発も進んでいる。

妻たちは出産を控えている。

だから今は、その間を埋めるように小さな事件が次々と起きている印象がある。

学園祭。

修学旅行。

髪神。

遺跡探索。

貴族絡みの面倒事。

どれも単独で大長編になる話ではない。

ただ、その中でも地下遺跡編はかなり面白かった。

何より、

ヴェンデリンが強ければ解決する

という本作のいつもの安心感を、子供化によって強制的に封じてしまったのがよかった。

魔力量も体力も大幅低下。

エルもいない。

頼れるのはアーネストと、まだ学生の三人。

その状態で《逆さ縛り殺し》に落とされる。

かなり酷い。

しかし、そのおかげでアーネストの意外な頼もしさや、生徒たちの成長を見ることができた。

先生が守るだけではなく、今度は生徒が先生を守る。

冒険者予備校編を続けてきたからこそ、この展開が効いていたように感じる。

妻たちの出産までは、しばらくこうした短編寄りの話が続くのかもしれない。

それでも、たまに今回の地下遺跡のような命懸けの話が入る。

日常なのか冒険なのか、相変わらずヴェンデリンの生活は落ち着かない。

もうすぐ父親になるというのに、子供より先に本人が子供へ戻るとは思わなかった第15巻だった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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八男14巻レビュー
八男まとめ
八男16巻レビュー

考察・解説

冒険者予備校の学園祭

バウルブルク冒険者予備校における学園祭の全貌

バウルブルクに新設された冒険者予備校において、ヴェンデリンの発案により初めての学園祭が開催されることとなった。この学園祭は、単なる娯楽やレクリエーションに留まらない深い目的を持って企画された。

学園祭を開催した背景と目的

ヴェンデリンは予備校の授業に起立、礼、掃除当番といった独自のルールを導入し、学校の体制を整えていった。その流れの中で、彼は純粋な祭り要素の強い学園祭の開催を提案する。周囲からは当初、予備校で祭りを行う意義について疑問の声が上がったが、ヴェンデリンは冒険者たちの将来を見据えた現実的な目的を説明した。

・セカンドキャリアへの社会勉強:冒険者を引退した後に飲食店などを始める者は多いが、十分な計画性がないために失敗する事例も後を絶たない。学園祭で屋台や店舗を運営させることで、仕入れ、帳簿、接客といった商売の基礎を事前に学ばせることを目的とした。
・住民との相互理解:世間からガサツに思われがちな冒険者のイメージを向上させるため、バウルブルクの一般住民を招いて交流する場とした。
・エリーゼからは普段の学習成果の発表も提案されたが、勉強から離れて楽しむレクリエーションでもあるとして、屋台中心の学園祭を進めた。

魔法を活用したユニークな屋台

魔法使いクラスでも10チームほどに分かれて出店内容を考えることになった。しかし、当初はほぼ全てのチームが仕入れが容易なジュースを希望し、ヴェンデリンからダメ出しを受けた。彼は魔法の修行でもあるのだから、魔法を利用したものを販売するようにと指導した。その結果、生徒たちの特性を活かしたアイデアが次々と生まれた。

・シャーベットの屋台:氷魔法が得意な男子生徒が、果物を使って作る。
・肉の串焼き屋台:火魔法で肉を焼いているところを見せながら販売する。
・割果実酒の屋台:魔法で生成したほぼアルコール分のみのお酒を、魔の森産の果汁で割って提供する。
・その他にも、ウィンドカッターを活用したカットフルーツの販売や、川魚を火魔法で焼く屋台などが企画された。

「悪魔の使い」の捕獲とタコ焼き屋台の誕生

学園祭の目玉として、ヴェンデリンはアグネス、シンディ、ベッティ、エルの4人を連れて南の海岸へ食材の調達に向かった。市場で大量に買い占めると現地の物価に悪影響を与えるため、自力で採取する方法を選んだのである。

・彼らはそこで地元の老漁師から、八本の足を持つ悪魔の使いと呼ばれる生物の話を聞いた。
・その正体がタコであると理解したヴェンデリンは、アグネスたちに飛翔や魔法障壁を応用した潜水を行わせて捕獲させた。
・タコに全身を絡みつかれながらもアグネスたちが大量に確保した大ダコは、茹でて試食され、全員がその美味しさを認めて学園祭に投入されることとなった。
・学園祭当日、アグネスたちの班はヴェンデリンが直々にプロデュースしたタコ焼きの屋台を出店した。
・特注の鉄板と仕入れ:ヴェンデリンが領主権限で特注の丸穴鉄板を用意し、材料となる紅ショウガや青海苔、カツオブシなどはミズホから、ソースやマヨネーズはアルテリオ商会から安く仕入れた。
・最高峰の魔法訓練:タコ焼きの調理はすべて魔法で行わせた。火力調整、油塗り、具材の投入、そして焼き上がったタコ焼きをひっくり返す動作に至るまで、すべてを魔力操作で行うルールとした。これは生徒たちにとって、極めて精密な魔力コントロールを鍛える素晴らしい実戦訓練となった。

学園祭の結末と面白いオチ

学園祭は開始の花火と同時に多くのバウルブルク住民が押し寄せ、大盛況となった。安価で美味しい屋台料理は昼過ぎにはほぼ完売し、初めての学園祭は大成功を収めた。

・売り上げの表彰も行われ、アグネスたちのタコ焼き屋台は圧倒的な売上を記録した。
・ただし、領主が直接プロデュースしたため賞金レースからは除外され、正式な優勝は猪やウサギの串焼きを販売した班となった。
・この大盛況を視察した王都予備校のヘリック校長も非常に気に入り、王都や他の予備校にも学園祭の行事が導入されるきっかけとなった。
・しかし、このエピソードにはバウルブルクならではの面白いオチがつく。
・お土産としてタコ焼きを持ち帰ったヴェンデリンだったが、試食したエリーゼたちから、なぜ中身がタコ(悪魔の使い)でなければならないのか、肉やチーズでも良いのではないか、と素朴な疑問をぶつけられた。
・ヴェンデリン自身もそれに答える明確な理由を思いつけなかった。
・結果、バウルブルクでは丸く焼く料理そのものは普及したものの、中身には肉や魚、チーズを具材にしたものが主流となり、本物のタコ焼きが一般に普及するのにはまだ長い時間がかかる結果となった。

まとめ

バウルブルク冒険者予備校における学園祭の全貌を巡る一連の全貌は、冒険者の引退後を見据えた経営・社会勉強と住民交流を目的とした開催決定から始まり、魔法を組み込んだユニークな屋台の考案、南の海岸でのタコ捕獲と魔力操作によるタコ焼き屋台の実戦訓練、学園祭の大成功と全国への広がり、そして中身が肉やチーズへとアレンジされた地域独自の食文化普及に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
旧態依然とした冒険者教育や食の偏見という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、内政・教育的工夫と食文化革新の記録である。
セカンドキャリア支援の提案から、魔法屋台の指導、未知の食材の採掘、精密な魔力コントロールの完遂、そして独自の調理文化の定着へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

地下遺跡での若返り

地下遺跡での若返り(子供化)騒動の全貌

『八男って、それはないでしょう! 15』において、主人公ヴェンデリンを心身ともに最大の危機に陥れ、同時に女性陣による争奪戦を引き起こした「地下遺跡での若返り(子供化)」のエピソードについて、発生の経緯から過酷な身体制限、逆さ縛り殺しの発動と脱出劇、および生還後に待ち受けていた騒動の各点から解説する。

若返りの罠にかかった経緯

バウルブルクに新設された冒険者予備校の臨時講師を務めていたヴェンデリンは、特別講師として招いた魔族の考古学者アーネストへの報酬として、バウルブルク近郊で発見された安全確認済みの地下遺跡の学術調査(下見)を手伝うことになった。

・護衛役としてエルのほかに、魔法使いクラスの優秀な愛弟子3人(アグネス、シンディ、ベッティ)を伴って遺跡に入ったが、調査自体は1時間ほどで順調に終了した。
・帰りがけにシンディが1匹の造り物のネズミを発見した。それは古代魔法文明時代に作られた極めて精巧な魔道具であった。
・シンディが不用意に近づいた瞬間、ネズミの口から未知の魔法が放たれ、ヴェンデリンは彼女を突き飛ばして身代わりとなり、その光線魔法を全身に浴びてしまった。
・その直後、ヴェンデリンは服もローブもブカブカになるほど体が縮み、5歳前後の幼い子供の姿へと変えられてしまった。

「子供化」による過酷な身体制限

この魔法は、単に見た目が子供になるだけでなく、冒険者として致命的な制限をもたらすデバフの罠であった。

・魔力量の極端な低下:魔力量も5歳当時の魔法を習い始めたばかりの初期状態へと退化し、初級魔法使いレベルの実力しか発揮できなくなった。高威力の魔法や便利な瞬間移動が完全に封じられてしまった。
・体力の激減と疲労の蓄積:歩幅が狭く、少し歩くだけで子供特有の激しい疲労感に襲われるようになったため、移動時には魔族のアーネストに背負ってもらう必要が生じた。
・魔晶石による回復制限:魔晶石を使用すれば魔力そのものは回復できるものの、肉体が子供であるため、急激な魔力補充に伴う精神的な疲疲労に耐えきれず、何度も繰り返し魔力を充填することが困難であった。

「逆さ縛り殺し」の発動と絶体絶命の脱出劇

アーネストの推測により、魔法をかけたネズミを破壊すれば数日で元の姿に戻れることが判明した。しかし、焦ったアグネスたちが魔法を使ってネズミの逃げ込んだ穴を強引に広げようとした瞬間、遺跡の防衛システムが作動してしまう。

・足元に転移魔法陣が出現し、一行はかつてヴェンデリンが冒険者デビュー戦で苦しめられた悪夢の罠「逆さ縛り殺し」によって、遺跡の最深部へと閉じ込められてしまった。
・魔力も体力も失われたヴェンデリンであったが、ここで予備校の先生として培ってきた知恵と経験が真価を発揮した。
・ドラゴンタンクの足止め:無限軌道で階段を上ってくる巨大戦車に対し、魔法の袋から取り出したシーツに大量の調理油を染み込ませて階段に敷くことで、キャタピラを滑らせて無駄な魔力を使わずに足止めすることに成功した。
・徹底した魔力の節約とサポート:迫り来る無数の小型ドラゴンゴーレムのブレスに対し、敵の同士討ちを誘導して数を減らしたり、攻撃が通用しないアーネストを魔法障壁による盾役に専念させるなど、的確な指揮をアグネスたちに与えた。
・決死の一撃による生還:最後のフロアで巨大な竜の頭の猛攻に晒され、子供の肉体が疲労の限界を迎えた際、ヴェンデリンは眠気を払うために自分の太ももに矢を刺して自傷し、魔力を込めた魔晶石付きの矢を飛翔で接近して竜の目に直接放ち、大爆発させてシステムを完全に沈黙させた。

生還後に待ち受けていた「もう一つの戦場」

アグネスたちのサポートとアーネストの防衛もあり、一行はパウルブルク南の丘陵地帯から無事に地上への生還を果たした。

・救出に駆けつけたエルは涙を流し、家宰ローデリヒからは領主としての命の重さを涙ながらに説教された。
・しかし、ネズミを完全に破壊したものの、魔法の効果が完全に切れるまでにはあと2〜3日子供の姿のままで過ごさねばならないという事実が告げられた。
・屋敷に戻った5歳児姿のお館様を見た妻たちの反応は、ヴェンデリンの憂鬱を加速させるものであった。
・妻たちの狂乱と争奪戦:エリーゼ、ルイーゼ、ヴィルマ、カタリーナをはじめ、アマーリエやテレーゼ、リサまでもが、小さく可愛らしいヴェンデリンを大絶賛し、こぞって頭を撫でたり抱き上げたりして完全にオモチャのように甘やかした。
・添い寝問題による徹夜:そして夜になると、今夜は誰がこの可愛いヴェンデリンと一緒に寝るかという議題を巡って、正妻エリーゼをはじめとする妻全員が一切妥協せず激しい大論争を開始した。
・その結果、妻たちの間で一歩も譲らない不毛な話し合いが朝まで続き、ヴェンデリンは寝る場所と時間を完全に奪われ、ただの寝不足のまま翌朝を迎えることとなった。
・翌朝には無事に16歳の元の姿に戻り、ヴェンデリンの子供化騒動はようやく幕を閉じた。

まとめ

地下遺跡での若返り(子供化)騒動を巡る一連の全貌は、考古学者アーネストの調査随行から精巧なネズミ型魔道具の罠による子供化、魔力・体力の激減という過酷な身体制限、逆さ縛り殺し発動による遺跡最深部からの油活用・自傷指揮による脱出、そして地上生還後の妻たちによる愛玩争奪戦と添い寝問題による徹夜に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
古代遺跡の防衛システムや身体制限という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、機転と知恵による生存の確保および家庭内での賑やかなオチの記録である。
油断からの縮小、最深部への落破、知恵を絞った指揮、決死の生還、そして妻たちの甘やかしと不眠へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

伝説の髪神探索

伝説の髪神探索と頭髪再生の全貌

『八男って、それはないでしょう! 15』の「髪は長い友達」において描かれた伝説の髪神探索について、伝説の生物「髪神」とその効能、探索のきっかけと貴族たちからの圧力、探索の開始と導師の変貌、奇跡の大量体液回収、および妻たちの美髪復活と薄毛貴族たちへの大セールの各点から解説する。

伝説の生物「髪神」とその驚異的な効能

髪神とは、動物なのか魔物なのかも分かっていない、目にも留まらぬ速さで移動する伝説の生き物である。

・驚異の毛生え効果:危険を感じると、逃げ去るのと同時に特殊な体液をばら撒く。この液体を浴びると、たとえ毛根が完全に死滅しているツル頭であっても、たちまち髪が完全に復活し、死ぬまでフサフサのままでいられるという奇跡の効能を持っている。
・天文学的な希少価値:過去の記録では324年前にわずか24人分しか入手された例がなく、当時の相場は1人分で実に約1千万セントという、王侯貴族や大商人だけが手を出せる超高価な幻の存在であった。

探索のきっかけ:薄毛に悩む貴族たちからの凄まじい圧力

バウマイスター伯爵領と、実兄パウルの準男爵領との境界にある森で、この髪神が目撃されたという報告が入った。

・これを聞きつけた農務閥の大貴族エーレンフリート伯爵がバウマイスター邸を訪れ、髪神の捕獲と体液の確保をヴェンデリンに強く依頼した。
・これだけでなく、薄毛に悩む多くの大物貴族たちから同様の依頼書という名の圧力が殺到した。
・断れば器の小さい男として領地開発などの政治的な嫌がらせをされかねないため、ヴェンデリンは成功の保証はできないという条件で嫌々ながら探索を引き受けることとなった。

探索の開始と、導師の「マッチョ金髪ロンゲ仙人」化

ヴェンデリンは、親友のエル、ブランターク、アームストロング導師、さらにはパウル領の従士長で自身も薄毛に深刻に悩むオットマーたちを動員し、現地でアルバイトの予備校生徒たちを配置して大規模な探索を開始した。

・オットマーなどは、自分の髪を復活させたい一心から領民たちを動員して森中に網や罠を仕掛け、鬼気迫る必死さを見せていた。
・探索二日目、一行は高速で通過する髪神の気配を感じ取るが、あまりの速さに探知魔法でも捕捉できなかった。
・その時、近くにいた導師が勘でその気配に向かって拳を繰り出した。これが髪神の怒りを買い、導師は髪神の体液を頭からまともに浴びてしまうこととなった。
・結果、普段は綺麗に剃り上げている導師の頭から、腰まで届くサラサラの美しい金髪と、仙人のような豊かな髭が猛烈な勢いで伸びるというハプニングが発生した。
・筋肉隆々の巨体に金髪ロングヘアーをなびかせる導師の不気味さは凄まじく、周囲に大きなトラウマを植え付けた。
・しかし、これによって髪神の効能が本物であること、そして導師がわずかに体液を回収できたことが実証された。

奇跡の「大量体液回収」:魔法の網と20リットルの壺

導師が体液を入手したことで王都の薄毛貴族たちの期待は極限に達し、探索期間の延長を余儀なくされた。

・一週間近くが経過し、目撃情報も途絶えてアグネスたち生徒も退屈の限界に達した頃、ヴェンデリンは一勝負に出た。
・彼は極めて網の目が細かく、色を透明にして見えにくくした魔法の網を頭上に展開した。さらに、下でかつて塩を入れていた約20リットルサイズの大きな壺を抱えて待ち構えた。
・その瞬間、再び髪神が高速で頭上を通過した。
・変幻自在に形を変えて網の目をすり抜けようとした髪神であったが、ヴェンデリンの作った網があまりにも細かすぎたため、通り抜けるための自重制限として、体内の水分を大量に排出しなければならなくなった。
・この体液が抱えていた壺に見事に降り注ぎ、約20リットルという前代未聞の大量の体液を奇跡的に確保することに成功した。

妻たちの美髪復活と、薄毛貴族たちへの「1億円大セール」

この驚異的な成果により探索は終了し、バウルブルクへ帰還した。

・屋敷に戻ったヴェンデリンは、妊娠初期に入り、栄養を赤ちゃんに取られて髪がボロボロになってきたから出産前に短く切ろうと相談している妻たちの寂しげな姿を目にした。
・愛する妻たちのために、ヴェンデリンは躊躇なく壺から体液を取り出し、彼女たちの髪に薄く塗り拡げた。
・これによって、妻たちの髪は一瞬にして妊娠前のツヤツヤとした美しい状態に完全復活した。
・これを見たブランタークは顔を真っ青にして絶叫したが、ヴェンデリンは見知らぬ他人の頭がフサフサになるより、自分の奥さんたちが綺麗な方が重要と言い放ち、残りの体液を魔法の袋に隠した。
・数日後、情報を聞きつけた大物貴族や大商人たちが殺気立った目でバウマイスター邸へ大挙して押し寄せた。
・彼らの頭部が太陽光を反射して門前が直視できないほど眩しい中、ヴェンデリンは1人分100万セントという破格の価格で大セールを開始した。
・集まった大物たちは即金で支払っては頭に塗り、次々と豊かな頭髪を取り戻して歓喜の声をあげて帰っていった。
・こうして、表向きの在庫は完売し、導師は自分用の予備としてキープし、ヴェンデリンも自分用に隠し持つことで、この世知辛くも凄まじい髪をめぐる男たちの戦いは幕を閉じた。

まとめ

伝説の髪神探索と頭髪再生の全貌を巡る一連の全貌は、死ぬまでフサフサが維持される髪神の驚異的効能から始まり、薄毛に悩む大物貴族たちからの政治的圧力、導師のマッチョ金髪ロングヘアー化による効能の実証、透明な魔法の網と20リットル壺による大量体液の確保、そして妊娠中の妻たちの髪質完全復活と貴族たちへの破格セールに至るまで、その歩みを明瞭に示している。
頭髪の悩みや貴族社会の理不尽な圧力という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、圧倒的な魔法の応用と家族最優先の選択の記録である。
圧力の殺到から、探索の開始、導師の事故、大量の捕獲、妻の救済、そして歓喜の販売へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

後継者争いの調停

後継者争いの調停と解決劇の全貌

『八男って、それはないでしょう!』の物語において、主人公ヴェンデリンが直面し、時には直接介入することになった後継者争いの調停(および解決劇)について、マッテゾン子爵家、ブロワ辺境伯家、およびバウマイスター本家と一門の再編の各点から解説する。

マッテゾン子爵家の後継者争い:甘えを排した「冷徹な二者択一」

石細工の特産地として知られるマッテゾン子爵家では、当主の病床化に伴い、深刻な後継者争いが勃発していた。

・対立の構図:後継者に指名されているものの、極めて出来が悪い正妻の子である次男アルバンと、実務能力が圧倒的に優れ、領民や家臣からの人望も厚い側室の子である異母兄デニスが対立していた。
・ヴェンデリンの激怒と決裂:アルバンは自らの立場に箔を付けるため、ヴェンデリンとの会見をセッティングした。しかし会見の席で、アルバンはヴェンデリンの妻たちを公然と侮辱し、自分の妹二人を代わりに愛人として差し出すなどという無礼な交渉を行い、ヴェンデリンを激怒させて取引停止に至った。
・ヴェンデリンによる非情な調停(介入):困り果てたデニスが取引再開を求めてヴェンデリンを極秘に訪ねた際、ヴェンデリンはデニスの「泥を被りたくない」という甘い姿勢を見抜いた。そして、心を鬼にしてアルバンを廃して自分が当主になるか、領地を出るか、どちらか二つに一つだ、と厳しい覚悟を迫った。
・結末:覚悟を決めたデニスが領地に戻り、家臣や領民有志の支持を集めてアルバンを廃嫡へと追い込んだ。デニスが正式にマッテゾン子爵を継承し、アルバンとその母親を教会へ送ったことで、このお家騒動は幕引きを迎えた。

ブロワ辺境伯家の後継者争い:瞬間移動による「電光石火の襲爵劇」

東部の雄であるブロワ辺境伯領の相続を巡る争いは、ブライヒレーダー辺境伯との大規模な紛争をも長期化させる原因となっていた。

・対立の構図:病床の先代辺境伯が後継者を指名していなかったため、軍人肌の長男フィリップと、文官肌の次男クリストフによる激しい家督争いが発生していた。先代の死後、両派の家臣が遺体を挟んで領主館で睨み合い、葬儀すら行えない機能不全に陥っていた。
・泥沼の戦況と調停の模索:フィリップやクリストフは、戦場で手柄を挙げて相続を有利にしようとするあまり、紛争での無理な夜襲を仕掛けたり、大敗しているにもかかわらず妥協を拒んで裁定交渉を泥沼化させていた。そこでヴェンデリンたちは、辺境伯の隠し子であるカルラや老名主クラウスの知恵を借り、第三の後継者候補である辺境伯の年の離れた弟ゲルトの存在に着目した。ゲルトは、相続に必須となる印綬を持った印綬官ハイモを極秘に匿っていた。
・圧倒的スピードによる解決:ヴェンデリンはゲルトと主だった家臣たちを自身の瞬間移動魔法で強引に王都へと運び、国王ヘルムート三十七世に直訴して即座に辺境伯位をゲルトに授けさせた。
・結末:国王からの正式な任命とマントの下賜、そして印綬の確保という、法的に抗いようのない圧倒的な既成事実を突きつけられ、領内に残された家臣たちはゲルトへの忠誠を誓うほかなくなった。フィリップとクリストフは交渉権限を完全に失い、暴走した重臣たちとともに拘束・処分され、後継者争いは一瞬にして鎮圧された。

バウマイスター本家と一門の再編:自滅を契機とした「王命による調停」

ヴェンデリンの生まれ故郷である僻地のバウマイスター騎士爵領でも、長年潜在的な家督争いの火種が燻っていた。

・対立の構図:長男クルトを後継者としながらも、あまりにも有能な魔法使いである八男ヴェンデリンや、極めて聡明な五男エーリッヒの存在にクルトは猜疑心と劣等感を募らせていた。名主クラウスがヴェンデリンを次期当主に担ごうと暗躍したことも、クルトの憎悪を加速させた。
・最悪の暴走と破滅:しかし、この柵(しがらみ)は最終的に、ヴェンデリンを自分の地位を脅かす敵と逆恨みしたクルトの暴走と、魔道具「怨嗟の笛」による自滅という悲劇的な結末を招いた。
・王家による強制的な調停と再編:主犯クルトの自滅に伴い、現当主アルトゥルは引退に追い込まれ、本家から分家に婿入りしていた次男ヘルマンが、バウマイスター騎士爵領と爵位を正式に継承することとなった。さらに王国政府の調停命令により、長年放置されていた広大な未開地が没収され、伯爵へと昇進したバウマイスター伯爵家(ヴェンデリン)へと分与された。
・結末:これにより、本家(ヴェンデリンの伯爵領)と分家(ヘルマンの騎士爵領、パウルの準男爵領など)の立場が正式に交代し、実家を取り巻く血族のしがらみや相続問題は、王国の公的な枠組みの中で完全に解消・再編されることとなった。

まとめ

後継者争いの調停と解決劇を巡る一連の全貌は、マッテゾン子爵家での覚悟を迫る二者択一の介入、ブロワ辺境伯家での瞬間移動を用いた王都での電光石火のゲルト即位、バウマイスター本家でのクルト自滅に伴う王命での未開地没収と本家・分家の立場交代に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
血族の因習や既得権益の執着という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、現実的な覚悟の要求と強大な法・政治・魔法権勢の行使の記録である。
非無礼の断絶から、覚悟の提示、王命の獲得、既成事実の提示、そして公的枠組みによる領内再編へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

予備校の卒業式

バウルブルク冒険者予備校の卒業式の全貌

『八男って、それはないでしょう!』第15巻で描かれるバウルブルク冒険者予備校の卒業式(修業式)について、冒険者予備校における卒業の独特なシステム、卒業式でのコミカルな温度差、生徒たちから贈られた感謝と胴上げ、卒業式後に浮き彫りになったローデリヒの懸念、およびアグネスたち3人の卒業後の進路と内政協力の各点から解説する。

冒険者予備校における「卒業(修業)」の独特なシステム

この世界において、冒険者予備校の卒業は一般的に修業とも呼ばれる。

・予備校での必要単位自体は1年で無理なく取得できるが、未成年者は法律上まだ魔物の領域に入ることができないため、非常に融通の利くシステムが用意されている。
・卒業後の継続受講:未成年の卒業生は、成人(15歳)になるまでの間、通常の講義と時間が被らない午後や夕方の時間帯を利用して、必要単位以外の応用講習(野営など)を後から履修することができる。
・プロへの支援:現役のプロ冒険者であっても、領地からの補助金制度を利用して、必要な講義を非常に安価に単発受講できるシステムになっている。

卒業式でのコミカルな「温度差」

卒業式当日、ヴェンデリンは自分が初めて一から教え、無事に育て上げた魔法使いクラスの生徒たち(61名)の旅立ちに深く感動し、会場で1人だけ涙を流した。

・しかし、肝心の生徒たちは、これからの冒険者生活や追加講習の予定について、成人したら同期と魔の森に挑む、それまでは周辺で狩りをしながら野営実技を学ぼう、と将来への希望に満ちあふれて非常に楽しそうに談笑しており、涙を浮かべている者は誰一人いなかった。
・この様子を見た親友のエルから、なんでお前が一人で泣いているんだ、生徒たちは嬉しそうに見えるぞ、と呆れられてしまった。
・ヴェンデリンは心の中で、前世のテレビの影響だ、と思いつつもそれを口にはできず、自分自身の学生時代を振り返って、そういえば俺も卒業式で泣いた記憶がなかった、と気づいてきまり悪そうに頭をかくこととなった。

生徒たちから贈られた感謝と「胴上げ」

泣いている生徒こそいなかったものの、ヴェンデリンへの感謝の気持ちは本物であった。

・生徒たちは次々と彼の元へ集まり、先生のおかげで魔法が上達した、教え方がとても分かりやすかった、また魔法を教わりに来てもいいか、と口々に感謝を伝えた。
・これに対し、ヴェンデリンも、当たり前だ、いつでも俺を頼ってほしい、と力強く答えた。
・最後には、彼を慕う魔法使いの卵たちによってヴェンデリンが盛大に胴上げされ、式は熱烈な拍手と確かな絆の中で幕を閉じ、ヴェンデリンの常勤に近い臨時講師としての役目は一区切りを迎えることとなった。

卒業式後に浮き彫りになった「ローデリヒの懸念」

感動的な式が終わった後、ヴェンデリンが家臣のローデリヒにこの件を嬉しそうに報告すると、有能な家宰からは即座に現実的な釘を刺されることとなった。

・「いつでも頼れ」という言葉の重み:ローデリヒは、領主であるヴェンデリンが放った「いつでも頼れ」という言葉が、生徒たちから将来の仕官(雇用の保証)まで約束してくれた、と受け取られかねないと指摘した。
・他領との人材摩擦:魔法使いはどの領地でも喉から手が出るほど欲しい超希少な存在であるため、バウマイスター伯爵家が卒業生全員を高待遇で囲い込むような動きを見せれば、他領や他家との間で深刻な人材獲得競争や政治的な反発を引き起こしてしまう。
・ローデリヒは、麗しい師弟愛なのは結構ですがご自身の立場による発言の影響力を考えてください、と冷ややかに忠告し、ヴェンデリンは貴族のしがらみの厄介さを改めて痛感した。

アグネスたち3人の卒業後の進路と内政協力

ヴェンデリンが特に目をかけていた優秀な3人娘(マジカルトライアングル)は、それぞれの将来を見据えて極めて堅実な進路を選んだ。

・アグネス:見習い魔法使いとして他の実戦パーティに加入し、経験を積む道を選んだ。
・シンディとベッティ:まだ未成年のため、予備校で応用講習を受けながら、バウルブルク周辺で狩猟を行って自立して稼ぐ道を選んだ。
・3人は、全員が成人した後に、改めてかつてのように一緒にパーティを組んで活動することを約束している。
・さらに、彼女たちは予備校で土木魔法(工事魔法)にも強い関心を示し、卒業後もヴェンデリンから直接指導を受けながら、領内のインフラ整備を依頼として請け負うようになった。
・これにより、当時出産を控えて産休中だったカタリーナやリサの抜けた穴を見事に埋め、バウマイスター領の開発スピードをさらに加速させるという成果を残した。

まとめ

バウルブルク冒険者予備校の卒業式の全貌を巡る一連の全貌は、冒険者予備校特有の融通の利く修業制度から始まり、1人感涙するヴェンデリンと楽しげな生徒たちの温度差、生徒たちからの深い感謝と胴上げ、ローデリヒから指摘された領主発言の重みと他領との人材摩擦への警鐘、そして3人娘による堅実な進路選択と土木魔法による産休穴埋め内政協力に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
貴族社会の政治的制限や人材確保の壁という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、温かな師弟愛の結実と実践的育成の記録である。
修業制度の運用から、式の挙行、胴上げの祝福、家宰の忠告、そして内政協力への接続へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

八男14巻レビュー
八男まとめ
八男16巻レビュー

登場キャラクター

バウマイスター伯爵家・関係者

ヴェンデリン・フォン・ベンノ・バウマイスター

彼は本作の主人公である。
彼は貧しいバウマイスター騎士爵家の八男として生まれた。
彼は強大な魔力を有している。
彼はエリーゼをはじめとする多数の妻を迎えた。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家の当主だ。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼はアンデッド古代竜や老地竜を討伐した。
 彼はリーグ大山脈を貫くトンネルを発見する。
 彼は冒険者予備校の臨時講師を務めた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼は竜退治の功績により準男爵へ叙任された。
 その後、彼は男爵を経て伯爵へと昇進する。

エリーゼ・カタリーナ・フォン・ホーエンハイム

彼女はヴェンデリンの正妻である。
彼女はホーエンハイム枢機卿の孫娘に当たる。
彼女は「聖女」と呼ばれる高名な治癒魔法使いだ。
彼女は誰に対しても優しい性格をしている。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家の正妻を務める。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼女は教会や孤児院で奉仕活動を行った。
 彼女は怪我をした多くの人々を治療する。
 彼女は地下遺跡での戦闘に回復役として同行した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼女はヴェンデリンと婚約し、後に結婚した。
 彼女はヴェンデリンとの子供を妊娠した。

イーナ・ズザネ・ヒレンブラント

彼女はヴェンデリンの妻の一人である。
彼女は赤い髪としなやかな体が特徴だ。
彼女は槍術の使い手である。
彼女は真面目な性格をしている。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家の妻だ。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼女はヴェンデリンのパーティで前衛を務めた。
 彼女は魔の森の探索や魔物の討伐に参加する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼女は陪臣の家系からヴェンデリンの家臣となった。
 その後、彼女は彼の妻となる。

ルイーゼ・ヨランデ・アウレリア・オーフェルヴェーク

彼女はヴェンデリンの妻の一人である。
彼女は青い髪をした小柄な女性だ。
彼女は魔闘流という武術の使い手である。
彼女は明るく活動的な性格をしている。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家の妻だ。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼女はパーティの前衛として魔物と戦った。
 彼女は魔闘流の技術で敵を圧倒する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼女はヴェンデリンの家臣となった。
 その後、彼女は彼の妻となる。

ヴィルマエトル・フォン・アスガハン

彼女はヴェンデリンの妻の一人である。
彼女はエドガー軍務卿の養女だ。
彼女は「英雄症候群」という特異な体質の持ち主である。
彼女は小柄だが、戦斧を軽々と操る。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家の妻を務める。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼女は戦斧を用いてヴェンデリンの護衛を務めた。
 彼女は魔の森や未開地での狩猟で活躍する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼女はエドガー軍務卿の推薦によって、ヴェンデリンの護衛となった。
 のちに、彼女は彼の妻となった。

カタリーナ・リンダ・フォン・ヴァイゲル

彼女はヴェンデリンの妻の一人である。
彼女は風魔法を得意とする優秀な魔法使いだ。
彼女は没落したヴァイゲル家の再興を願っている。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家の妻を務める。名誉準男爵だ。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼女は魔の森の探索や地下遺跡の調査に参加した。
 彼女はヴェンデリンとともに魔法の訓練に励む。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼女は功績を認められ、名誉準男爵に叙せられた。
 その後、彼女はヴァイゲル家を再興し、ヴェンデリンの妻となった。

テレーゼ・ジークリット・フォン・フィリップ

彼女はヴェンデリンの愛人となった女性である。
彼女は知略に優れた魅力的な美女だ。
彼女は褐色の肌を持っている。

・所属組織、地位や役職
 元フィリップ公爵だ。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼女は帝国内乱において解放軍の指導者を務めた。
 彼女はバウマイスター伯爵領へ移住する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼女は公爵位を退き、バウマイスター伯爵領に隠居した。
 彼女はヴェンデリンの愛人の立場となった。

カチヤ・フランク・フォン・オイレンベルク

彼女はヴェンデリンの妻の一人である。
彼女はオイレンベルク領の出身だ。
彼女は「神速」の二つ名を持つ優秀な冒険者であった。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家の妻だ。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼女は武芸大会に参加した。
 彼女は新婚旅行で魔の森を探索する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼女はヴェンデリンと結婚し、彼の妻となった。

リサ・クレメンテ・ウルリーケ・エクスラー

彼女はヴェンデリンの妻の一人である。
彼女は「ブリザードのリサ」と呼ばれる優秀な魔法使いだ。
彼女は普段は強気な姿で武装している。
しかし、彼女の素顔は極度の人見知りだ。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家の妻だ。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼女は王太子の護衛を務めた。
 彼女はヴェンデリンと決闘を行う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼女はヴェンデリンに敗北し、彼の屋敷に居候することになる。
 その後、彼女は彼の妻となった。

アマーリエ・フォン・マインバッハ

彼女はヴェンデリンの亡き兄クルトの未亡人である。
彼女はカールとオスカーの母親だ。
彼女は温和で世話好きな性格をしている。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家の侍女長を務める。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼女はバウマイスター伯爵家で給仕役を務めた。
 彼女はテレーゼに料理を教える。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼女はクルトの死後、バウマイスター伯爵家で侍女長となった。
 彼女は実質的にヴェンデリンの側室となった。

エルヴィン・フォン・アルニム

彼はヴェンデリンの親友であり、家臣である。
彼はアルニム家の出身だ。
彼は剣術に優れた才能を持っている。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家の従士長を務める。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼は魔の森の探索や魔物の討伐に参加した。
 彼はハルカとの結婚のために夫婦巡礼をやり遂げる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼はアルニム騎士爵家の五男として生まれた。
 のちに、彼はバウマイスター伯爵家の従士長となった。
 彼はハルカ、アンナ、レーアの三人を受け入れ、複数の妻を持つ身となった。

ローデリヒ

彼はバウマイスター伯爵家の家宰である。
彼はルックナー財務卿の弟の私生児だ。
彼は極めて高い事務処理能力と多才な能力を持っている。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家の家宰を務める。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼は領地開発や城下町の建設を取り仕切った。
 彼は採用不可人材リストを作成する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼は多くの採用試験を落ち続けた末に、ヴェンデリンに仕えた。
 のちに、彼はバウマイスター伯爵家の家宰となった。

ドミニク

彼女はエリーゼの幼馴染である。
彼女はバウマイスター伯爵家のメイド長だ。
彼女はしっかり者で、新人の教育や屋敷の管理を行っている。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家のメイド長だ。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼女はエリーゼにお供として仕えた。
 彼女は従妹のレーアに対して厳しいメイド教育を行う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼女の母親はホーエンハイム家のメイド長である。
 のちに、彼女は産休に入った。

レーア

彼女はドミニクの従妹である。
彼女はバウマイスター伯爵家の新人メイドだ。
彼女は少し調子に乗りやすい性格をしている。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家のメイドだ。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼女はエルヴィンとの初めてのデートに出かけた。
 彼女はアグネスたちに家事の基本を教える。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼女はエルの側室(三人目の妻)としての婚約を成立させた。

アンナ

彼女はエルの幼馴染である。
彼女はエルの故郷の商店の娘だ。
彼女は六十歳近い名主の後妻にされそうになり、王都へ逃げてきた。

・所属組織、地位や役職
 エルの妻だ。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼女は長距離馬車を乗り継いでバウルブルクに到着した。
 彼女はエルヴィンと涙ながらに再会を果たす。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼女はエルの二人目の妻として迎えられた。

冒険者予備校バウルブルク支部(生徒・講師)

アグネス・フュルスト

彼女は冒険者予備校の魔法使いクラスの生徒である。
彼女は眼鏡をかけた真面目な美少女だ。
彼女は実質的な学級委員長を務めている。

・所属組織、地位や役職
 冒険者予備校の生徒だ。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼女は野外遠足で優れた成績を収めた。
 彼女の実家の眼鏡店で「サングラス」を開発する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼女はベイヤー男爵家の嫌がらせから逃れるため、バウルブルク支部へ転校した。
 彼女はヴェンデリンを強く慕っている。

シンディ

彼女は冒険者予備校の生徒である。
彼女は十二歳でクラス最年少の少女だ。
彼女はアグネスに次ぐ魔力を持っている。

・所属組織、地位や役職
 冒険者予備校の生徒だ。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼女は野外遠足で活躍した。
 彼女はヴェンデリンから「チグリジア」の花を贈られる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼女は花言葉の誤解により、彼女の家族からヴェンデリンの婚約者候補とみなされた。

ベッティ

彼女は冒険者予備校の生徒である。
彼女は勝気でしっかり者な少女だ。

・所属組織、地位や役職
 冒険者予備校の生徒だ。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼女は野外遠足で優秀な成績を収めた。
 彼女の実家のレストランを立ち飲み屋に改装する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼女は実家の借金保証人となっており、それを契機にヴェンデリンの側室になる計画を密かに抱いていた。

アーネスト・ブリッツ

彼は魔族の国の考古学者である。
彼はちょび髭とモノクルが特徴だ。
彼は研究を最優先するマイペースな性格をしている。

・所属組織、地位や役職
 魔族の国の一員だ。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼はニュルンベルク公爵に協力し、古代の兵器を修復した。
 彼は捕らえられたのち、バウマイスター伯爵領に匿われる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼は監視付きながら、領内で地下遺跡の調査を行っている。

バウマイスター準男爵家・本家関係者

パウル・フォン・ベンノ・バウマイスター

彼はヴェンデリンの三男の兄である。
彼は王都の警備隊員であった。
彼はエドガー軍務卿の紹介により結婚した。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター準男爵家の当主だ。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼はエチャゴ草原の紛争に諸侯軍として参戦した。
 彼は新たに与えられた領地開発に努める。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼は警備隊員から、新たに創設された準男爵家の当主となった。

アルトゥル・フォン・ベンノ・バウマイスター

彼はヴェンデリンの父親である。
彼は良くも悪くも平凡な領主であった。

・所属組織、地位や役職
 前バウマイスター騎士爵家当主だ。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼は領内の開墾作業を日々自ら行った。
 彼はクルトの死後、引退を決意する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼は当主の地位をヘルマンに譲り、隠居した。

ヨハンナ

彼女はヴェンデリンの母親である。
彼女はバウマイスター騎士爵の当主夫人であった。
彼女は貴族としての身分差を弁えている。

・所属組織、地位や役職
 前バウマイスター騎士爵家の夫人だ。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼女は実家の内政を支え、縄作りに精を出した。
 彼女はパウル兄さんの新領地へ移住する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼女は夫の隠居に伴い、ともに隠居生活に入った。

オットマー

彼はバウマイスター準男爵家の従士長である。
彼は大木槌の使い手として知られている。
彼はパウル兄さんの実直な部下だ。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター準男爵家の従士長だ。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼は警備隊小隊長として勤めていた。
 彼はヴェンデリンの護衛としてバウマイスター領に同行した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼は新たに創設されたパウルの家臣(従士長)となった。

マッテゾン子爵家

デニス・フォン・マッテゾン

彼はマッテゾン子爵家の長男である。
彼は実務能力に優れている。
彼は領民や家臣から厚い信頼を得ている。

・所属組織、地位や役職
 マッテゾン子爵家の当主だ。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼は出来の悪い弟との後継者争いに悩んでいた。
 彼はヴェンデリンの説得を受けて覚悟を決める。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼は弟のアルバンを廃し、正式に家督を継承した。

アルバン・フォン・マッテゾン

彼はマッテゾン子爵の次男である。
彼は出来が悪く、傲慢な性格をしている。

・所属組織、地位や役職
 マッテゾン子爵家の一族だ。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼はヴェンデリンとの会見の席で、彼の妻たちを侮辱した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼は後継者争いに敗れ、廃嫡となったのちに教会へと送られた。

ヘルムート王国(王宮・貴族・その他)

クリムト・クリストフ・フォン・アームストロング

彼は王宮筆頭魔導師である。
彼は一個軍団に匹敵する強大な魔力を持つ。
彼は身体強化を用いた近接戦闘を得意としている。

・所属組織、地位や役職
 王宮筆頭魔導師、子爵だ。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼はヴェンデリンとともに地竜や古代遺跡の探索に携わった。
 彼は帝国内乱においても多くの戦闘に貢献した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼はエリーゼの叔父にあたり、ヴェンデリンの師匠の一人となった。

ブランターク・リングスタット

彼はブライヒレーダー辺境伯のお抱え魔法使いである。
彼は経験豊富なベテラン魔法使いだ。
彼はヴェンデリンの良き相談相手となっている。

・所属組織、地位や役職
 ブライヒレーダー辺境伯家の筆頭お抱え魔法使いだ。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼はアンデッド古代竜退治や魔の森の探索に参加した。
 彼は地下遺跡の探索で魔法の障壁や指揮を行った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼は長年独身であったが、若いアガーテと結婚した。

エーリッヒ・フォン・ベンノ・バウマイスター

彼はヴェンデリンの五男の兄である。
彼は非常に知的で、優秀な人物だ。

・所属組織、地位や役職
 ブラント準男爵家(のちに男爵家)の当主だ。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼は王都の下級官吏試験に合格した。
 彼はバウマイスター準男爵家軍の副将兼参謀を務める。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼はブラント家の一人娘ミリヤムの婿養子となった。
 彼は後に準男爵から男爵へと昇進する。

エーレンフリート伯爵

彼は王国の大貴族である。
彼は頭髪が寂しい状態に悩んでいた。

・所属組織、地位や役職
 農務閥の大貴族だ。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼はヴェンデリンを訪ね、「髪神」の捕獲を依頼した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼は農務閥としての地位と権力を握っている。

ルーカス・ゲッツ・ベッケンバウアー

彼は魔導ギルドの研究部門トップである。
彼は魔法陣の研究に没頭している。
彼は実家が下着専門の服飾店であったため下着に詳しい。

・所属組織、地位や役職
 魔導ギルドの研究部長を務める。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼は引き寄せの魔法陣を研究していた。
 彼はヴェンデリンが召喚した下着の家紋を特定する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼は魔法陣の研究における優れた技術者だ。

アルテリオ

彼は王都の大商人である。
彼はヴェンデリンと深い商業的信頼関係を築いている。

・所属組織、地位や役職
 マーシェン商会の当主だ。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼はアンデッド古代竜退治の交渉に携わった。
 彼はヴェンデリンが開発したマヨネーズなどの商業化を行う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼はヴェンデリンの冒険者活動や商業活動を支える有力な商人だ。

老漁師

彼はバウルブルク近郊の海岸に住む老人である。

・所属組織、地位や役職
 現地の漁師だ。

・物語内での具体的な行動や成果
 彼はヴェンデリンたちに「悪魔の使い」と呼ばれるタコについて教えた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼は現地の海の生態に詳しい。

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展開まとめ

第一話 学園祭をやってみる

予備校の挨拶と掃除当番

ヴェンデリンは、パウルブルクの冒険者予備校に講義前後の起立と礼、挨拶を導入した。短時間で区切りがつき、最低限の礼儀を教えられるため生徒にも定着し、視察したヘリック校長も王都の予備校への導入を決めた。

さらに人手不足を補うため掃除当番制も始め、魔法使いクラスでは掃除そのものを魔法の鍛錬に利用した。生徒たちは念力で机や椅子、ホウキや雑巾を操り、精密な魔力操作を練習した。一方、魔法を使わないクラスでは掃除が訓練になりにくく、制度はあまり定着しなかった。

妊娠した妻たちの休養

エリーゼたちの妊娠は安定期に入り、お腹も目立つようになった。これまで予備校で臨時講師を務めていたが、負担を考えて休ませることになった。

パウルブルクの予備校では、エルや家臣たちも武器、野営、狩猟などを教えており、実戦的な内容が評判となっていた。そのため翌年以降の志願者増加が予想され、パーチオ校長は受け入れ準備を進めていた。

学園祭の提案

ヴェンデリンは、予備校で学園祭を開催しようと思いついた。周囲から学校で祭りを行う理由を問われると、冒険者引退後に飲食店などを始める者も多いため、店舗運営や仕入れ、帳簿、接客を経験する社会勉強になると説明した。

さらに住民を招いて交流することで、冒険者への印象を改善し、引退後の生活にも役立てられるとした。エリーゼから学習成果の発表も提案されたが、ヴェンデリンは普段の勉強から離れるレクリエーションでもあるとして、屋台中心の学園祭を進めた。

魔法を使った屋台

魔法使いクラスでは十組ほどに分かれて出店内容を考えた。当初は多くの組がジュースを希望したため、ヴェンデリンは魔法を活用した商品にするよう指導した。

その結果、氷魔法で作るシャーベット、火魔法で焼く肉、魔法で作った酒と果汁の飲み物、ウィンドカッターを利用したカットフルーツなど、各自の特性を活かした案が次々と生まれた。

海産物の調達

学園祭用の食材を確保するため、ヴェンデリンはエル、アグネス、シンディ、ベッティと南の海岸へ向かった。魚介類を市場で大量購入すると物価に影響するため、自分たちで採取して安価な屋台料理に使う方針であった。

アグネスたちは魔法障壁で顔の周囲に空気を確保して潜水し、エビや貝を採った。さらに飛翔を使いながら網を引く訓練も行い、大量の魚を確保した。

悪魔の使い

地元の老漁師から、人間ほどの大きさで八本の足を持つ悪魔の使いと呼ばれる生物がいると聞き、ヴェンデリンはタコだと理解して捕獲を決めた。

アグネスが最初に潜ったが、大ダコに全身を絡みつかれた状態で戻ってきた。ヴェンデリンは長いキリで急所を突いてタコを締め、その後シンディとベッティも同じように捕獲へ挑み、やはり大ダコに絡みつかれながら戻ってきた。

捕獲した大ダコは内臓などを取り除き、塩でヌメリを落として茹でた。ショウユをつけて食べると淡白で歯ごたえがあり、全員がその美味しさを認めたため、学園祭用にも大量に確保した。

初めての学園祭

学園祭当日、ヴェンデリンがファイヤーボールを打ち上げて開始を告げると、多くのバウルブルク住民が訪れた。各屋台では魔法を利用したカットフルーツ、串焼き、海産物、焼き鳥、かき氷などが販売され、安価なこともあって盛況となった。

生徒たちは調理や接客、仕入れを実践しながら収益を競った。昼過ぎにはほぼすべての商品が売り切れ、学園祭は予想以上の成功を収めた。

タコ焼きの屋台

アグネスたちの班では、ヴェンデリンが考案したタコ焼きを販売した。特注の鉄板を使い、火力調整から油塗り、具材投入、焼き上げまでを魔法で行わせたため、販売そのものが魔法の鍛錬となった。

珍しい料理だったこともあり客が殺到し、最も高い売り上げを記録した。ただしヴェンデリンが直接企画したため売上競争からは除外され、正式な優勝は猪やウサギの串焼きを販売した班となった。

広がる学園祭

学園祭終了後には、生徒たちだけで残った食材を使う後夜祭も行われた。アグネスたちはヴェンデリンにタコ焼きを振る舞い、妻たちへの土産も用意した。

学園祭は翌年以降も続けられることになり、視察したヘリック校長が王都の予備校にも導入したことで、他の冒険者予備校にも広がっていった。

タコ焼きへの疑問

屋敷に持ち帰ったタコ焼きはエリーゼたちにも好評だったが、なぜ中身がタコでなければならないのかという疑問が出た。ヴェンデリン自身も理由を考えたことがなく、美味しいからではないかと答えるしかなかった。

その後、パウルブルクでは丸く焼く料理そのものは普及したものの、中身には肉、魚、チーズなどが使われ、タコはなかなか定着しなかった。タコ焼きそのものが広まるのは、まだ先のこととなった。

第二話 ヴェンデリンの受難

地下遺跡の見学実習

ヴェンデリンは、魔法使いクラスの生徒たちをパウルブルク内に残る古代魔法文明時代の地下遺跡へ連れていった。遺跡には財宝も重要な資料もなく、改装後は警備隊の駐屯地として再利用される予定であった。講師役を務めたアーネストは、実際の地下遺跡の雰囲気を知る機会として生徒たちを案内した。

新たな地下遺跡

見学後、アーネストは新しく発見された地下遺跡の調査をヴェンデリンに求めた。しかしエリーゼたちは妊娠中で参加できず、本格的な探索は延期するしかなかった。

そこでアーネストは、安全確認済みのパウルブルク近郊の地下遺跡を学術調査する案を出した。護衛にはアグネス、シンディ、ベッティが選ばれ、三人も喜んで引き受けた。

竜に覆われた遺跡

地下遺跡へ入ると、壁や天井、石柱には無数の竜が彫られ、竜の石像も並んでいた。アーネストは宗教施設ではなく、竜を装飾として用いた施設だと推測し、興奮しながら調査を続けた。

下見は短時間で終わり、ヴェンデリンたちは帰ろうとしたが、シンディが一匹のネズミを発見した。そのネズミは生物ではなく、古代魔法文明時代に作られた精巧な魔道具であった。

子供になったヴェンデリン

シンディがネズミに近づくと、ネズミは未知の魔法を放った。ヴェンデリンはシンディを突き飛ばして代わりに魔法を受け、その直後、幼い子供の姿へと変わった。

身体だけでなく魔力量も幼少期まで低下し、初級魔法使い程度の実力しか残らなかった。アグネスたちは子供姿のヴェンデリンを可愛いと評したが、本人は一刻も早く元に戻ることを望んだ。

逃げたネズミと転移魔法陣

アーネストは、ネズミを破壊すれば魔法を解除できる可能性が高いと推測した。アグネスたちは捕まえようとしたが、ネズミは石柱の根元に開いた穴へ逃げ込んだ。

三人が穴を広げようと魔法を使った瞬間、石柱に彫られた竜がその魔力に反応した。足元に転移魔法陣が出現し、ヴェンデリン、アーネスト、アグネス、シンディ、ベッティは別の場所へ飛ばされた。

地下深部への転移

ヴェンデリンは転移の影響で気絶し、目覚めるとアグネスに膝枕をされていた。幼児の体では体力も大幅に低下しており、しばらく休まなければ歩くことも難しかった。

回復後は子供時代の服と軽い杖に着替え、地上への帰還を目指した。ヴェンデリンは三人に決められた隊列と役割を守るよう厳しく指示し、子供の姿でも教師として冷静に行動しようとした。

ドラゴンゴーレム

長い通路の先には、石の台座と三メートルほどの竜像があった。その頭上には、ヴェンデリンを子供にしたネズミが陣取っていた。

竜像はドラゴンゴーレムであり、ネズミと連携して侵入者を排除する仕組みであった。ヴェンデリンは戦闘力を失っており、アーネストの闇魔法も人工物には効かなかったため、アグネスたち三人が主力として戦うことになった。

三人の初実戦

アグネスが指揮を執り、ベッティが魔法障壁による防御を担当し、アグネスとシンディが攻撃を行った。ドラゴンゴーレムは高速で飛行しながら爪とブレスを使い、三人を苦戦させた。

ヴェンデリンは敵の魔力を監視し、役割分担して戦うよう助言した。さらに弱い魔力でも有効な手段として、魔石を取りつけた矢を使って強烈なフラッシュを放ち、ネズミとドラゴンゴーレムの視覚機能に障害を与えた。

弱点への攻撃

視界を奪われたドラゴンゴーレムは、ネズミとの連携で死角を補った。ヴェンデリンは正面から攻撃を続けるのではなく、損傷した視界を利用して左右から狙うよう指示した。

アグネスたちは翼や尻尾に損傷を与えたが、慣れない実戦で次第に余裕を失った。ベッティも防御に集中するあまり魔晶石で魔力を補給する機会を逃したため、アーネストが一時的に盾役を引き受け、三人は態勢を立て直した。

魔力供給の遮断

ヴェンデリンは、ドラゴンゴーレムが定期的に台座へ戻り魔力を補給していることに注目した。アグネスがネズミの視界を再びフラッシュで妨害し、シンディが台座の機構を破壊したことで、ドラゴンゴーレムは魔力を補充できなくなった。

追い詰められたドラゴンゴーレムは激しい連続攻撃に出たが、アーネストの魔法障壁で凌いだ。魔力切れが近づいたところで、三人は最後の攻撃に移った。

ネズミとドラゴンゴーレムの撃破

アグネスが風圧でドラゴンゴーレムとネズミの動きを封じ、シンディがフレイムアローでネズミを破壊した。続いてベッティの攻撃がドラゴンゴーレムを貫き、戦闘は決着した。

三人が勝利を喜ぶ中、ヴェンデリンは残骸に残る魔力を察知し、すぐに魔法障壁を張るよう命じた。直後にドラゴンゴーレムは自爆し、飛び散った破片が周囲を襲ったが、三人は防御に成功した。

数日残る子供の姿

ネズミは完全に破壊されたものの、ヴェンデリンの体は元に戻らなかった。アーネストによれば、ネズミが維持していた魔法への魔力供給は止まったため、数日後には自然に解除される見込みであった。

ヴェンデリンは低下した魔力でも工夫次第で戦えることを実戦で示し、アグネスたちはその教えを改めて理解した。

地下遺跡の警戒態勢

アーネストは、ネズミが単なる防衛装置ではなく、地下遺跡全体のシステムで上位に位置する存在だった可能性を指摘した。その直後、地下遺跡全体に警報音が鳴り響いた。

ネズミの破壊によって侵入者への警戒が強化され、遺跡そのものが新たな排除機構を起動したとアーネストは推測した。ヴェンデリンたちは、脱出までさらに危険な試練が続くことを覚悟することになった。

第三話 決死の脱出劇

ドラゴンタンクからの逃走

ネズミの破壊によって遺跡の警戒態勢が強まり、壁の奥から無限軌道で走るドラゴンタンクが出現した。ヴェンデリンは戦闘による消耗を避けるため撤退を選び、子供の体では逃げ切れないためアーネストに背負わせた。

ドラゴンタンクは階段まで追ってきたが、ヴェンデリンは油を染み込ませたシーツを階段に敷き、無限軌道を滑らせて足止めした。破壊に魔力を使わず、そのまま置き去りにして上階へ進んだ。

小型ドラゴンゴーレムの迷宮

次の階では、小型ドラゴンゴーレムが天井のハッチから次々と現れた。ヴェンデリンはすべてを倒せば消耗すると判断し、左側の壁に沿って迷路を進みながら、進路を塞ぐ個体だけを排除するよう指示した。

アーネストがヴェンデリンを背負い、ベッティとアーネストが前後の防御を担当し、アグネスとシンディが必要な敵だけを撃破した。さらにヴェンデリンは前後のゴーレムが互いにブレスを浴びる位置を見極め、同士討ちさせて数を減らした。

迫る壁と休息の選択

第三層では入口が消え、四方の壁がゆっくりと迫る罠に閉じ込められた。壁は魔法で破壊可能だったが、すぐ進むか、一時間ほど休んでから突破するかという選択を迫られた。

アグネスたちは、休めば追手が増える危険と、休まなければ疲労が蓄積する危険を比較した。シンディは、子供の体になってもヴェンデリンの経験と判断力が重要な戦力だと考え、彼を休ませるためにも休憩を主張した。三人は一時間休むことを選び、短い仮眠を取った。

膝枕を巡る乙女心

ヴェンデリンを休ませようと、アグネス、シンディ、ベッティはそれぞれ膝枕を申し出た。しかしアーネストが短時間の仮眠なら机に伏せる方が合理的だと指摘し、ヴェンデリンは小机を出して眠った。

先生に膝枕をする機会を失った三人は、アーネストに不満をぶつけた。アグネスたちはヴェンデリンを男性として意識しており、それぞれ自分を印象づける機会を狙っていたが、結局は脱出を優先して自分たちも休息した。

冷水の階層

壁を破壊して進んだ先には、腰ほどまで水が張られた巨大な空間があった。水は極端に冷たく、さらに飛翔魔法が封じられていたため、全員が水中を歩いて渡るしかなかった。

ヴェンデリンは体力の少ない子供の体で水に入れば動けなくなると判断し、再びアーネストに背負われた。そこへ下階から大量の小型ドラゴンゴーレムが追いつき、前方にも別の群れが待ち構えていたため、アーネストとベッティが前後のブレスを魔法障壁で防ぎながら進んだ。

鉄扉への到達

長時間冷水を進んだ一行は、ようやく出口の巨大な鉄扉へ到達した。しかし扉は非常に重く、アーネスト、アグネス、シンディが身体強化を最大限使ってようやく人一人通れる隙間を作った。

全員が通過したあと再び扉を閉じたが、追ってきた小型ドラゴンゴーレムたちが反対側から扉を押し始めた。ヴェンデリンは岩や重量物を積んで扉を塞ぎ、短時間の休息を確保した。

冷え切った体の回復

冷水で足腰が冷え切っていたため、ヴェンデリンは微弱な火魔法を使ってアグネスたちとアーネストの体を温め、簡単な治癒魔法も施した。

魔力消費自体は少なかったが、子供の体では魔晶石から何度も魔力を補充することに耐えられず、ヴェンデリン自身も強い疲労を感じていた。一行は、この遺跡が魔力だけでなく体力と精神力まで削るよう設計されていることを痛感した。

最終階への突入

休息後、一行は次の広大な階層へ進んだ。約五百メートル先の出口上部には巨大な竜の頭があり、周囲の壁には多数の射出口が設けられていた。

竜の頭が小型ドラゴンゴーレムを統率する中枢だと判断したヴェンデリンは、後方から追手が来る前に全力で破壊する作戦を選んだ。アーネストが防御を担当し、アグネスたちが攻撃役となり、一行は一直線に竜の頭へ向かった。

竜の頭の猛攻

竜の頭は強力なブレスを放ち、一行は何度も足止めされた。さらに小型ドラゴンゴーレムが射出口から次々と現れ、アグネスたちは処理に追われた。

ヴェンデリンは大量の小石を風魔法で弾丸のように飛ばして敵を減らし、アーネストを囮にして竜の頭の注意を引かせた。しかし後方からも敵が迫り、一行の疲労は限界に近づいていった。

ヴェンデリンの決死の一撃

子供の体で限界を迎えつつあったヴェンデリンは、眠気を振り払うため自分の腿に矢を刺し、最後の攻撃に出た。飛翔で竜の頭まで接近し、魔力を大量に蓄えた魔晶石を矢じり代わりにした特製の矢を放った。

矢が竜の目に命中すると、ヴェンデリンは魔力の糸を通じて魔晶石を爆発させた。凄まじい爆発が起こり、ヴェンデリン自身も巻き込まれて意識を失った。

アーネストの救出

ヴェンデリンは死を覚悟したが、アーネストが飛翔で回収し、魔法障壁で爆発から守っていた。竜の頭は完全に破壊され、小型ドラゴンゴーレムも活動を停止した。

竜の頭の奥にある扉も開き、一行はさらに上階へ移動した。そこは地下遺跡の最上階であり、地上へ通じる出口も確認された。

地下遺跡からの生還

最上階はパウルブルクから南へ約十キロ離れた丘陵地帯に埋まっていた。アグネスたちが出口を塞ぐ土砂を取り除き、一行は無事に地上へ脱出した。

地下では通信阻害が働いていたため魔導携帯通信機は使えなかったが、外へ出ると連絡が可能になった。救援隊もすぐに到着し、ヴェンデリンたちの予想外の地下遺跡探索は終わった。

屋敷への帰還

ヴェンデリンの失踪で責任を感じていたエルは、生還した彼を見ると涙を流した。ローデリヒも、ヴェンデリンに自身の立場と命の重さを自覚するよう説教した。

アグネス、シンディ、ベッティは自分たちの軽率な行動が原因だったと謝罪したが、ヴェンデリンは今回の経験で三人が成長したとして責任を追及しなかった。エリーゼも失敗を次へ生かせばよいと三人を庇い、この件は収められた。

子供姿のヴェンデリン

魔法はまだ切れておらず、ヴェンデリンは子供の姿のままであった。ルイーゼたちは普段より小さなヴェンデリンを面白がり、アマーリエやテレーゼ、リサも頭を撫でたり抱き上げたりして子供扱いした。

翌朝には戻る見込みだったため、妻たちは今夜だけでも子供姿のヴェンデリンと一緒に寝たいと主張し始めた。正妻のエリーゼをはじめ全員が譲らず、議論は決着しなかった。

その結果、ヴェンデリンは寝る時間を失い、翌日に寝不足となった。ただし体そのものは、朝には無事元の姿へ戻っていた。

第四話 髪は長い友達

髪神の探索依頼

ヴェンデリンのもとを農務閥のエーレンフリート伯爵が訪れ、バウマイスター伯爵領で伝説の生物・髪神が目撃されたと告げた。髪神は目にも留まらぬ速さで移動し、危険を感じると失った髪を完全に再生させる体液を撒くとされていた。

髪に悩む大物貴族たちは髪神の捕獲か体液の確保をヴェンデリンに依頼しており、彼は断れば領地経営に影響しかねない圧力を感じ、成功の保証はできないという条件で探索を引き受けた。

パウル領との共同探索

目撃地点はパウルの領地との境にある森であった。ヴェンデリンはパウルから探索許可を得て、エル、ブランターク、導師、冒険者予備校の生徒たちなどを動員した。

パウルの従士長オットマーも薄毛に悩んでおり、髪神の体液を求めて探索へ加わった。体液を巡って争いが起こる可能性に備え、商人のアルテリオも参加したが、探索初日は何の成果も得られなかった。

導師を襲った体液

二日目、ヴェンデリンとブランタークは高速で通過する髪神らしき気配を感じたが、探知魔法でも捕捉できなかった。直後、髪神へ拳を繰り出した導師が体液を浴び、剃っていた頭から腰まで届く金髪と豊かな髭が一気に生えた姿で現れた。

導師はわずかに体液を回収しており、その効果が本物であることも証明された。しかし髪と髭は翌日も異常な速度で伸び続け、導師は髪神への敵意を募らせた。

長引く髪神探し

導師が体液を入手したことで期待が高まり、探索期間は延長された。パウル領には髪神を求める冒険者が集まり、宿泊や食事による利益も生まれた。

一方、オットマーは領民まで動員して網や罠を仕掛け、髪神の捕獲に執念を燃やした。ヴェンデリンたちは一週間近く監視を続けたものの、新たな目撃情報すら途絶え、探索参加者たちの集中力も限界に近づいていた。

大量の髪神の体液

探索を打ち切ろうとしていたヴェンデリンは、試作した極めて目の細かい魔法の網と、大きな壺を用意していた。その時、再び髪神が高速で通過し、頭上から大量の液体が降り注いだ。

液体は偶然にも壺へ収まり、約二十リットルもの髪神の体液を確保する結果となった。ブランタークは、髪神が魔法の網を通過するために体液を大量に排出したのではないかと推測した。

オットマーの髪の復活

体液が本物か確認するため、薄毛に悩んでいたオットマーの頭に塗ったところ、細くなっていた髪は太くなり、薄かった頭頂部にも完全に髪が戻った。

大量の体液を得たことで探索は終了し、ヴェンデリンたちはバウルブルクへ帰還した。パウルは体液そのものの権利を得られなかったが、探索者たちの滞在によって十分な利益を得ていた。

妻たちの髪の回復

屋敷へ戻ると、妊娠中のエリーゼたちは栄養を子供に取られて髪の状態が悪化し、出産前に短く切ろうと相談していた。

ヴェンデリンは髪神の体液をエリーゼの髪に塗り、妊娠前の美しい金髪を復活させた。ブランタークは貴重な体液の無駄遣いだと止めたが、ヴェンデリンは妻たちの髪が綺麗になる方が大切だとして、イーナ、ルイーゼ、ヴィルマ、カタリーナ、テレーゼ、カチヤ、リサにも使用した。

髪神の体液を求める人々

数日後、髪神の体液を求める大物貴族や大商人たちがバウマイスター伯爵邸へ押しかけた。過去の記録では、一人分が約一千万セントで取引された例もあり、それほど希少な品であった。

ヴェンデリンは今回大量に入手できたため、一人分を百万セントで販売すると決めた。集まった者たちは誰一人高いとは言わず、その場で購入して頭に塗り、失われた髪を次々と取り戻していった。

髪を巡る騒動の終幕

体液を求めて集まった人々への販売を終え、表向きの在庫はなくなった。導師は将来髪が薄くなって伝統の髪型を維持できなくなる場合に備え、自分が回収した分を保存することにした。

ヴェンデリンは髪が薄くなったらその時に考えると答えたが、実際には自分用として髪神の体液を少量だけ密かに残していた。一連の騒動を通じ、彼は髪に対する人々の執着の強さを実感した。

第五話 兄と弟、弟と兄

マッテゾン子爵家との会見

ローデリヒは、石細工の主要な仕入れ先であるマッテゾン子爵家の跡取りアルバンとの会見をヴェンデリンに依頼した。病床の現当主に代わって実質的に家を代表するアルバンは、異母兄デニスとの後継者争いを抱えており、ヴェンデリンとの会見によって自らの立場に箔を付けようとしていた。

妊娠中のエリーゼたちは慣習上同席できず、過去にアルバンから侮辱されたヴィルマも辞退したため、リサが妻として、アマーリエがメイド役として同席することになった。

アルバンの愛人提案

会見当初のアルバンは礼儀正しく、石細工の取引やヴェンデリンの妻子について無難に話していた。しかし、やがてヴェンデリンに若い愛人を増やすよう勧め、自分の異母妹二人を差し出そうとした。

アルバンはリサとアマーリエを年増扱いし、妹たちを二人の代わりに使えばよいとまで口にした。さらに、自分とヴェンデリンは兄を排除して家督を得た似た者同士だと言い放ち、ヴェンデリンを激怒させた。

凍ったマテ茶

リサもアルバンの言動に腹を立て、彼のマテ茶だけを密かに凍る寸前まで冷やした。驚いたアルバンにアマーリエが新しい茶を出すと、今度はリサが温度を上げ、アルバンは再び熱さに驚いてカップを落とした。

アルバンはアマーリエの過去まで持ち出して罵倒し、なおも異母妹たちを愛人にするよう勧めたため、ヴェンデリンはついに会見を打ち切った。アルバンも石細工を売らないと宣言し、両家は完全な喧嘩別れとなった。

石細工の取引停止

ヴェンデリンはローデリヒに、マッテゾン子爵家との関係修復はせず、石細工は他領から調達するよう命じた。必要量をすぐ確保できなくても、橋や街道を先に完成させ、装飾用の石細工は後から設置すればよいと考えた。

ローデリヒも、アルバンと妥協すれば今後さらに増長すると判断し、他領からの仕入れへ切り替えることになった。

商務卿への報告

ヴェンデリンはアマーリエと王都へ向かい、ゲーペル商務卿に事情を説明した。商務卿によれば、アルバンは以前から他の貴族とも同様の問題を起こし、揉めるたびに石細工を売らないと脅していた。

マッテゾン子爵領は代々石細工職人を育成して豊かになった土地であり、アルバンの振る舞いで取引先を失えば、領地そのものが再び困窮しかねなかった。商務卿もアルバンではなくデニスに継がせるべきだったと考えていた。

アマーリエとの会話

王都で時間が空いたヴェンデリンは、アマーリエと喫茶店に立ち寄った。アマーリエは、アルバンから兄を排除した者同士だと言われたことで、ヴェンデリンが過去を気にしているのではないかと心配した。

ヴェンデリンは、自分が結果的にクルトとの家族を壊し、アマーリエやカール、オスカーに悪いことをしたという思いを打ち明けた。しかしアマーリエは、現在の生活を自分自身が気に入っているため、ヴェンデリンが責任を感じる必要はないと伝えた。

妊婦用下着の受け取り

ヴェンデリンとアマーリエは、エリーゼたちから頼まれていた妊婦用下着を受け取りに高級下着店へ向かった。そこでは、兄の急死により家業を手伝っていたベッケンバウアーが対応した。

ヴェンデリンはアマーリエにも新しい下着を贈ることにしたが、ベッケンバウアーは最後に加齢による体形の変化を補整する下着だと余計な説明を加え、アマーリエと自分の妻から叩かれることになった。

マッテゾン子爵家の事情

その後、ヴェンデリンはエーリッヒからマッテゾン子爵家の事情を聞いた。現当主の正妻には長く子供ができなかったため側室が迎えられ、その側室からデニスと二人の妹が生まれた。しかし直後に正妻がアルバンを産んだため、家中は二人の後継者候補を巡って分裂していた。

能力ではデニスが圧倒的に優れていたが、アルバンには正妻の子という立場しか優位な点がなく、それゆえデニスたちを身分の低い者として攻撃していた。

デニスへの決断要求

翌日、デニスがヴェンデリンを訪れ、石細工の取引再開を求めた。しかしヴェンデリンは、問題を起こしたアルバンではなく自分に頼みに来たデニスの姿勢を批判した。

デニスが弟を支える優秀な兄という評価を失いたくないのだと見抜いたヴェンデリンは、アルバンを廃して自ら当主になるか、領地を去るかのどちらかを選ぶよう迫った。このままではデニス自身だけでなく、異母妹たちもアルバンに利用され続けると指摘した。

デニスは妹たちを守るために泥を被る覚悟を決め、領地へ戻った。

アルバンの廃嫡

一週間後、家臣や領民有志が病床の現当主にデニスを後継者とするよう迫り、アルバンは廃嫡された。さらに一週間後、デニスは正式にマッテゾン子爵を継ぎ、アルバンとその母親を教会へ送った。

デニスは石細工の取引再開と一時的な値引きを申し出た。前当主からは、デニスの背中を押してくれたことへの感謝の手紙も届き、前当主自身も以前からアルバンではなくデニスに継いでほしいと考えていたことが明らかになった。

出産を待つ日々

一連の騒動が収まった後、アマーリエはヴェンデリンを優しい人物だと評した。ヴェンデリン自身は厳しいことを言ったつもりだったが、結果としてマッテゾン子爵家の問題は収束していた。

二人はマテ茶を飲みながらエリーゼたちの出産について話した。エリーゼの出産予定日まで、すでに二か月を切っていた。

第六話 卒業とその後の進路

講師としての手応え

ヴェンデリンは、冒険者予備校バウルブルク支部で魔法使いクラスの指導を続けていた。アグネス、シンディ、ベッティをはじめとする生徒たちは順調に成長し、ヴェンデリン自身も熱心で教え方がわかりやすい講師として評価されていた。

ヘリック校長との相談から、冒険者予備校でも講師向けの教育方法を整備する話が進み、魔法使い用のマニュアルも作成することになった。ヴェンデリンはアルフレッドの著述を基礎として整理し、その功績を後世に残そうと考えた。

三人の弟子

ヴェンデリンは授業だけでなく、狩猟や実地訓練でも生徒たちを指導していた。特にアグネス、シンディ、ベッティには時間を惜しまず教え、休日には食事や菓子を楽しむこともあった。

三人を妹のように可愛がっていたヴェンデリンは、卒業後も弟子として指導を続け、優れた魔法使いに育てたいと考えていた。

愛人の噂

アマーリエは、ヴェンデリンが三人を特別に可愛がりすぎていると指摘した。ヴェンデリンは純粋な師弟関係だと主張したが、王都ではすでに三人がヴェンデリンの愛人候補として噂され、彼女たちの親も将来嫁ぐものと期待していた。

エリーゼたちからも、ベイヤー男爵家から三人を守り、予備校まで新設して側に置いた行動が囲い込みに見えると説明された。ヴェンデリンはあくまで師匠として育てたいだけだと訴えたが、テレーゼは将来三人を妻にしても問題ないと述べた。

妻たちへの配慮

アマーリエが本当に問題視していたのは、ヴェンデリンが弟子たちばかり連れ出し、妻たちとの外出を控えすぎていたことであった。安定期に入った妊婦なら短時間の外出は問題なく、むしろ気分転換が必要だと教えられた。

ヴェンデリンは自分の配慮不足を認め、エリーゼたちをパウルブルクへ連れ出した。しかし町の住民からも、普段一緒にいるアグネスたちが将来妻になると思われていることを知り、自分の行動が周囲からどう見えていたのかを実感した。

予備校の卒業式

翌春、冒険者予備校の生徒たちは卒業を迎えた。ヴェンデリンは初めて教え子を送り出すことに感動して一人涙を流したが、生徒たちはそれぞれの将来に期待を膨らませていた。

魔法使いクラスの生徒たちはヴェンデリンに感謝を伝え、今後も教えを請いたいと申し出た。ヴェンデリンは困った時にはいつでも頼るよう答え、最後には生徒たちから胴上げされた。

教え子への約束

卒業後、ヴェンデリンが生徒たちにいつでも頼れと言ったことを知ったローデリヒは、その発言が将来の仕官まで保証したと受け取られかねないと指摘した。魔法使いは希少であり、バウマイスター伯爵家が高待遇で引き受ければ、他家との人材獲得競争にも影響するためであった。

ヴェンデリンは単なる師弟愛のつもりだったが、自分の立場では何気ない言葉にも大きな意味が生じることを改めて知った。

卒業後のアグネスたち

卒業後、アグネスは見習い魔法使いとしてパーティに入り、シンディとベッティは未成年のため追加講習を受けながら周辺で狩猟を続けることになった。三人は成人後に再び一緒に活動する予定であった。

さらにシンディとベッティは土木魔法にも関心を持ち、アグネスも時間がある時に参加した。ヴェンデリンは三人に工事魔法を教え、その成長によってカタリーナやリサの産休中の穴も補われ、領内開発は順調に進んだ。

臨時講師の終了

一年の予定期間を終え、ヴェンデリンは常勤に近かった臨時講師の役目を終えた。予備校の体制も整い、今後は必要に応じて教壇に立つ形となった。

妻たちの出産が迫る中、ヴェンデリンは再び領内開発に力を注ぎながら、弟子たちの成長を見守った。ローデリヒは三人の将来に別の期待も抱いている様子だったが、ヴェンデリンはまだ幼い弟子たちとの関係を師弟のものとして考え、まずは妻たちの出産を待っていた。

巻末おまけメイド、修学旅行に同行する

修学旅行の提案

ヴェンデリンは、卒業を控えた予備校生たちを旅行へ連れていく修学旅行を提案した。エルは費用や目的に疑問を示したが、ヴェンデリンは実現を諦めず、未就航の魔導飛行船による移動、冒険者ギルドからの補助、現地での狩猟収入、伯爵家の保養所利用を組み合わせて費用を抑えた。

レーアとアンナも、引率するヴェンデリンとエルを補佐するため同行することになった。

魔の森での研修

一行は魔の森近くの港へ向かい、冒険者ギルド魔の森支部や獲物の解体施設を見学した。生徒たちは荒っぽい冒険者や負傷者、巨大な魔物の実物を見ることで、冒険者としての現実や振る舞いを学んだ。

その後は魔の森近くの草原で狩猟を行い、これまでの訓練の成果を確かめた。獲物をギルドへ納めた結果、修学旅行の旅費を賄うことにも成功した。

温泉保養所

生徒たちは伯爵家の保養所に宿泊した。当初レーアとアンナは食事や掃除を手伝う予定だったが、保養所の人員が十分だったため、ヴェンデリンから翌日の帰宅まで休むよう言われた。

二人はアグネス、シンディ、ベッティと同室になり、温泉を楽しむことにした。

家族風呂を巡る勝負

レーアとアンナは、エルと家族風呂に入る権利を賭けてリバーシで勝負した。一方、アグネス、シンディ、ベッティも、ヴェンデリンと家族風呂に入る権利を賭けて勝負を始めた。

しかし勝者が決まった頃には、ヴェンデリンとエルはすでに二人で大浴場へ入り終えていた。結局、五人は一緒に大浴場へ入り、互いの体型や将来について話しながら夜遅くまで盛り上がった。

一泊の思い出

わずか一泊の修学旅行だったが、レーアは仕事だけでなく温泉や会話も楽しみ、来年以降も続いてほしいと願った。

帰宅後、レーアはドミニクに旅行の様子を報告した。家族風呂について話すと、ドミニクから、レーアとアンナはどちらも将来エルの妻になるのだから三人で一緒に入ればよかったと指摘された。レーアは、勝負そのものが不要だったことにようやく気づいた。

アグネスたちの混浴願望

料理を習いに来ていたアグネスたちもその話を聞き、三人でヴェンデリンを誘えばよかったと悔やんだ。しかしドミニクは、正式に婚約していないアグネスたちがヴェンデリンと一緒に入浴することは認めなかった。

レーアは相変わらず厳格なドミニクに内心で堅物だと感じ、その考えまで見抜かれて再び叱られるのであった。

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