物語の概要
本書は、日本における青春サッカー漫画の金字塔たる作品『アオアシ』の最終第40巻である。愛媛県在住の中学3年生・青井葦人(アシト)が、強豪Jクラブ「東京シティ・エスペリオン」のユースチームに招かれてからの成長と葛藤、そしてクライマックスに挑む姿を描いた物語。シリーズは2015年に連載開始され、2025年8月29日に完結巻が発売された。
主要キャラクター
- 青井アシト:主人公。粗削りながらも圧倒的な才能を秘めた青年。仲間との絆と自らの成長を象徴する存在。
- 福田達也:東京シティ・エスペリオンのユース監督。アシトの才能を見抜き、彼を強豪チームへ導いた存在。
物語の特徴
本作最大の魅力は、本格的な戦術描写と激闘の臨場感にある。最終巻では、バルサユースとの死闘がアディショナルタイムにもつれ込み、一時は1‑3と劣勢だったエスペリオンがアシトを中心に追い上げる展開に緊迫感がみなぎっている。さらに“アシトに訪れる異変”が物語を劇的に揺るがし、シリーズの集大成として強い感動を呼び起こす構成となっている。
書籍情報
アオアシ 40
著者:小林有吾 氏
出版社:小学館(ビッグコミックス)
発売日:2025年8月29日
ISBN:9784098635337
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あらすじ・内容
大ヒットサッカーコミック、堂々完結!!
運命のバルサユース戦はついにアディショナルタイムに突入!
一時は1-3とリードされていたものの、アシトが中心となり追いついたエスペリオン。
この勢いのまま勝ち切ろうと気炎を吐く。
一方、王国の誇りにかけて負けられないバルサもまったく譲らず、死闘は最高潮に。
そんな中、なんとアシトに異変が…!?
感想
ついに『アオアシ』が終わってしまった。
アシトが母のためにプロサッカー選手になるという夢を抱き、ユースに入団してから、たった一年間の物語。その終わりを見届けた。
物語は完結したが、アシトの人生はまだまだ続いていく。
彼はこの先、プロになれるのだろうか?
もしかすると、平のように、挫折を味わうことになるかもしれない。
もしくは怪我で…
それでも、アシトがエスペリオンで経験したことは、かけがえのない宝物になるはずだ。
この作品は、そう教えてくれているように思えた。
40巻では、バルサとの激闘、仲間たちとの絆、そして何よりも、アシト自身の成長。
この一年間は、彼にとって、人生を大きく変えるほどの濃密な時間だったに違いない。
サッカーを通して、彼は多くのことを学び、人間として大きく成長した。
『アオアシ』は、サッカーの技術や戦術だけでなく、Jリーグの厳しさユースという世界。
ユースから昇格して定着できなかった選手の苦悩。
人間関係、特に混血の子供の描写は魅力的だった。
アシトと仲間たち、コーチや家族との繋がりが、彼の成長を支え、物語に深みを与えていた。
日常の何気ない会話や出来事も、キャラクターたちの個性を際立たせ、作品をより魅力的なものにしていたと思う。
この作品は、夢を追いかけることの難しさ、そして、それを乗り越えることの素晴らしさを教えてくれた。アシトのひたむきな姿は、わたし自身の心にも火を灯してくれたように感じる。
『アオアシ』を読み終えて、少し寂しい気持ちになった。
しかし、それと同時に、アシトの未来に希望を抱いている。彼がどんな道を選んだとしても、エスペリオンで得た経験は、必ず彼の力になるはずだ。
この作品は、わたしにとって、忘れられない作品になった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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展開まとめ
第402話「その国名は」
PKストップと試合の継続
秋山がバルセロナのPKを阻止し、観客は驚愕した。このセーブにより試合は3-3のまま進み、アシトは「休めた分、残り時間を走れる」と認識していた。試合は残り6分となり、緊張感が一層高まった。
両チームの決意
エスペリオンの阿久津は「引き分けでは意味がない、あと1点を取って決着をつける」とチームを鼓舞した。一方でバルセロナも「この形で終わらせられない、王国の誇りにかけてゴールを奪う」と攻撃を宣言し、双方が勝利を狙う姿勢を明確にした。
大友の動きとアシトの前進
試合再開後、バルセロナはエスペリオンのボールを奪い速攻に転じた。整ったポジショニングで攻め込むバルセロナに対し、大友が中盤でボールを奪取した。そして「攻守の負担をすべて一人で抱える必要はない」とアシトに伝え、自身が中盤の底に落ちて走り回ることでアシトを支えると示した。これによりアシトはゴールへ向けて前進した。
バルセロナ守備の突破
バルセロナの選手たちは大友のパスコースを消し、攻撃を封じようとした。しかし大友は、かつてバルセロナに実演された動きを再現し、その守備網を掻い潜った。これによりエスペリオンは再び攻撃の糸口をつかんだ。
大友から浅利への展開
大友はバルセロナの守備を掻い潜り、浅利へとパスを繋げた。これにより三角形の基本形が形成され、エスペリオンは確実なパスコースを作り出した。浅利と高杉は連携しながら相手の守備網を突破していった。
高杉の内面と学び
高杉は「この試合のピッチに立てて良かった」と強く実感し、バルセロナを「井の中の蛙であった自分たちに実力と手本を示してくれた存在」と捉えた。彼にとってこの一戦は「人生最高の授業」であり、成長の機会であった。
浅利の認識とチームの覚醒
浅利もまた、バルセロナを「敵でありながら、同時に先生である存在」と認め、この一戦で得られた経験を噛み締めた。エスペリオンの選手たちは共通して、対戦相手から学ぶ姿勢を持ち、その思いを力に変えてプレーした。
バルセロナ側の驚愕
バルセロナのコーチ・マルコは、エスペリオンが自らのチームの戦術を逆手に取り突破していく様子に「馬鹿な」と驚愕し、予想外の展開に焦りを見せた。ユーリもまた、アシトにボールが渡った瞬間に衝撃を受けた。
日本サッカーの歴史的文脈
ここで場面はナレーションに切り替わり、日本サッカーの歴史が描かれた。イラク戦での悲劇的な敗戦、ワールドカップ初出場への苦闘、そして世界の壁に何度も跳ね返された挫折の歴史が示された。ブラジル戦での大敗も例に挙げられ、日本が世界との差を突き付けられてきたことが語られた。
敗北からの学びと立ち上がり
しかし、日本はそのたびに立ち上がり、敗北から学び続けてきたと強調された。どれほど厳しい現実であっても、その積み重ねが現在の成長と挑戦に繋がっていると描かれた。
現在への回帰と決意
アシトはその歴史を背負うかのように走り続け、観客席には日本国旗を掲げる姿が描かれた。「必ず一つは学び、そのつど立ち上がる」という言葉が重ねられ、チーム全体が積み上げてきた経験が結実しようとしていた。
第403話「見届ける者」
バルセロナ側の焦りと警戒
バルセロナのコーチ・マルコは、エスペリオンの選手達が試合を通じて成長を遂げ、本来できなかったプレーを実行していることに驚愕した。「気色悪すぎる」「ここで潰せ」と指示を飛ばし、さらに「日本の人間は危険すぎる」と差別的な発言を交えつつ選手を鼓舞した。
エスペリオンの選手達の決意
エスペリオンの面々は「バルサは最高の強敵であり、最高の先生」と心中で語り、さらに学び続けようと決意していた。彼らは「もっと見せてみろ」「もっと成長させてくれ」と願い、闘志を燃やした。
観客と仲間からの声援
スタンドや中継を通して観戦する人々は、エスペリオンの奮闘に声援を送った。「すごい」「勝てる」との声が広がり、残り時間4分を切った緊迫の状況で、観客は「あと1点取って!」と祈るような思いで応援していた。
平と父のやり取り
場面は日本に切り替わり、警察官を目指して勉強中の平が登場した。父から「勉強の手を休めろ」と声をかけられるが、平は中継を見ながら「ちょうどサボっていた」と答えた。父との会話の中で「敬礼」の意味を問われた平は、選手たちに敬意を込めて画面越しに敬礼を送った。
応援の広がりと繋がり
愛媛のかつての仲間達もアシトを応援しており、双海高校の同級生達はテレビの前で「頑張れ」と声を張り上げた。さらに、かつて母を侮辱され怒りに駆られ、相手にヘッドバットをして退場になった試合を経験したアシト自身の過去が示され、その成長した姿を中継を通して見守る人々が「すごい」と感嘆していた。
ユーリの奮闘と意地
アシトはユーリのスライディングでボールを奪われてしまった。ユーリは「エスペリオンに負けたくない」と強く心で叫び、仲間に「スピードを上げろ、速攻ならエスペリオンは対応できない」と檄を飛ばした。
阿久津の奮闘とアシトの追走
ユーリの突破に対し、阿久津が体を入れてボールを奪い取った。そのこぼれ球をアシトが全力で追い、試合を中継で見守る兄はその姿に感動を覚えた。
母の想い
一方、母はテレビの前で「真剣に観てもサッカーはよく分からない」と語りつつも、「見守ることしかできないのは寂しいが、あんたを育てた私を誇りに思う」と心情を吐露していた。
阿久津のシュートとネイソンのセーブ
アシトはボールを拾い、阿久津へと繋げた。阿久津は渾身のシュートを放つが、バルセロナのGKネイソンが見事にキャッチした。観客はそのプレーに驚嘆し、試合の緊張感はさらに高まった。
死力を尽くす22人と突出する存在
両チームが最後の力を振り絞る中、観客も熱狂に包まれた。だがその中で一人、際立って抜け出したのはバルセロナのエース、デミアンであった。彼がボールを持ち、決定的な局面が訪れようとしていた。
第404話「Like a Ghost」
デミアンの突破と残り時間
ロスタイムはすでに4分を経過し、残りは2分となった。この局面で突出してきたのはバルセロナのデミアンであった。彼は桐木と遊馬を次々と突破し、その圧倒的な存在感を示した。遊馬は「どの星から来た宇宙人なんだ」と内心で嘆くしかなかった。
ユーリの指示と大友の対応
ユーリは守備陣に「ラインを上げろ!デミアンを孤立させるな!」と指示を飛ばし、エースを前線で支援するよう求めた。その中で大友は釣り出されず、絶妙な間合いを保ちながらスピードを削ぐ守備を行い、時間を稼いでチームに希望を繋いだ。
阿久津の合流とデミアンとの競り合い
大友が稼いだ時間で阿久津が戻り、デミアンと正面から競り合う展開となった。バルセロナのコーチ・マルコは「そいつがエスペリオンの心臓だ、抜け、仕留めろ」と檄を飛ばし、デミアンに決定打を求めた。
アシトの決断と信頼
栗林は阿久津を助けに戻ろうとするが、アシトは「これ以上戻れば阿久津がボールを奪ったときに攻撃を組み立てられない」と制し、「阿久津を信じる」と心に決めて前線に残った。この姿勢に栗林も感心し、攻守の切り替えを託す決意を固めた。
両者の心理描写
デミアンは競り合いの中で亡き祖母や若き母、幼い姉、さらに幼い自分自身の幻影を見ていた。一方の阿久津には亡き母の姿が現れ、「なかなかうまいのねぇ、あんた」と語りかけてきた。両者はそれぞれの過去と向き合いながら、死力を尽くした競り合いを続けた。
阿久津の覚醒とボール奪取
亡き母の幻影を見た阿久津は「夢だ、くだらねえ」と自らを現実に引き戻し、集中を取り戻した。そして執念の守備でデミアンからボールを奪取し、素早く栗林へ縦パスを送った。
栗林とアシトの連携
ユーリは「栗林を前に向けさせるな」と叫ぶが、栗林は反転せずに後ろを向いたまま走り出していたアシトの動きに合わせてパスを出した。この連携により、エスペリオンは一気にカウンターの形を作り出した。
ジャカの妨害とノーファール判定
アシトが前線へ突破しようとした矢先、FWジャカが激しく体をぶつけてアシトを吹き飛ばし、ボールは再びデミアンの足元へと渡った。観客や仲間たちはファールを訴えたが、主審の判定はノーファールであった。
バルセロナの再攻撃と残り時間
流れを完全に引き戻したバルセロナは即座に体制を整え、再びゴールに迫る攻撃を展開した。会場は熱気に包まれ、観客は「これがおそらくラストワンプレーだ」と口にした。時計は95分を越え、残りは1分を切っていた。
アシトの限界
一方、ジャカに吹き飛ばされたアシトはピッチに倒れ込み、完全に体力を使い果たして動けなくなっていた。最後の力を振り絞ろうとしても、指一本さえ動かせない状態に陥っていた。
第405話「青き華たちへ」
アシトの限界とバルサの総攻撃
ジャカのファールまがいのプレーで吹き飛ばされたアシトは、完全に体力を失いピッチに倒れ込んでしまった。立ち上がろうとしても、指一本動かせない状態であった。
一方、バルセロナは「これがラストチャンス」と総攻撃を仕掛け、デミアンが猛然と前線に突進した。
大友の対応とデミアンの突破
大友は必死に遅らせようと立ちはだかったが、視界にスザクが入り一瞬目を逸らした隙にデミアンに突破されてしまった。会場は悲鳴と歓声に包まれる。
シノへのパスと守備の甘さ
デミアンはゴールエリア手前で、エスペリオン守備陣の寄せが遅れてパスコースを限定できなかった隙を突き、シノへワンツーを仕掛けた。シノからのリターンを受けたデミアンは完全にシュート体勢に入った。
秋山のセーブと富樫のカバー
デミアンの渾身のシュートに対し、GK秋山は片手一本で辛うじて弾いた。しかしボールはゴール方向へ吸い込まれていった。勝利を確信したデミアンとユーリ。だがその瞬間、富樫がゴールライン際で身体を投げ出し、ボールを弾き出した。
富樫のクリアと波状攻撃
富樫がゴールライン際で渾身のクリアを見せ、失点を防いだ。しかしバルセロナは攻撃の手を緩めず、再びゴールに迫る波状攻撃を仕掛ける。エスペリオン守備陣は圧倒的に不利な状況の中で必死に食らいついていた。
作者からのメッセージ
試合の描写と並行して、ナレーションが重なる。
「もしもあなたが、日常の中でサッカーをする子供たちを見かけたとしたら――」
小学生か中学生か、高校生かもしれない。今までは視界に入らなかっただけで、実際にはすぐ近くでサッカーをしている。夢中でボールを追いかけ、いつか世紀の戦いに挑む者がそこから現れるのだ、と。
読者に対し、「少しだけ足を止めて彼らを見守り、心の中でエールを送ってほしい」という願いが綴られる。
戦いの連続性
「人生を懸けて」という言葉とともに描かれるのは、汚れたボールを追いかける無数の子供たちの姿。それが、未来の戦士へと繋がっていくという普遍的なメッセージが語られた。
阿久津の奪取とアシトの復活
現実の試合に場面が戻る。阿久津がボールを奪取して振り向いた先には、先ほどまで倒れて動けなかったはずのアシトが再び立ち上がっていた。仲間たちはその姿に驚愕し、ラストワンプレーに向けて息を呑んだ。
第406話「無心拍数」
最後のカウンターの始動
阿久津からのロングボールを受けたアシトは、残された力を振り絞ってバルセロナのゴールへ突進した。スタジアムは「ラストワンプレー! エスペリオンが決死のカウンターに出た!」と総立ちで沸き立った。
限界を超える願い
身体は思うように動かず、呼吸も乱れ、筋肉は悲鳴を上げていた。それでもアシトは心の中で「頼む、俺の足…あと10秒でいい、止まらないで走ってくれ」と必死に祈りながらドリブルを続けた。
オブシダンの立ちはだかり
バルセロナの守備陣も必死に戻り、特にオブシダンが進路を塞ごうと迫る。観客席の視線はすべてアシトへと集まり、固唾を飲んでその一挙手一投足を見守った。
観客と仲間の声援
エスペリオンの控えメンバーやサポーターは「アシトさん!」「葦人ォー!」と叫び、仲間たちはその背中を信じて声援を送り続けた。観客席のハナも、彼が限界を超えて走る姿を知りつつ、それでも力になりたいと願っていた。
ハナの決意
ハナは「応援するって、勝ってほしいって、無責任な言葉かもしれない」と自問しながらも、アシトに届けるべきはその言葉しかないと悟る。そして涙を浮かべながら叫んだ。「がんばれ――っ!!!」と。
魔法の言葉の力
その声援はスタジアム全体に響き渡り、アシトの耳にもしっかり届いた。仲間や観客も呼応し、「アシトがんばれ!」と次々に声を上げる。選手が最後に立ち上がるための唯一の言葉――それが「がんばれ」だった。
日本からの声援
テレビ中継を通じて、日本でも多くの人々がアシトに声援を送っていた。「アシト君!」「青井君、がんばれ!」と、かつて関わった仲間や関係者の声が続々と届き、彼の背中を強く押していた。
栗林との連携
アシトはゴールエリア前までボールを運び、待ち構えていた栗林へパスを送った。栗林は即座に浮き球でリターンを返し、アシトに決定的なチャンスを作り出す。
胸トラップからの突破
アシトはその浮き球を胸でトラップし、迫り来るバルセロナ守備陣を掻い潜るようにして突破。ゴール目前でついにシュート体勢に入った。
アシトの名言
その瞬間、アシトは「福田達也の生まれ変わり、それが俺である。……福田達也、死んでないけど」と口にして。
決定的なシュート
アシトは渾身の力でシュートを放ち、ボールはバルセロナGKネイソンの脇を抜けてゴール左隅に突き刺さった。観客席もピッチも、その瞬間、歓喜と驚愕に包まれた。
第407話「はじまりの終わり」
試合終了の瞬間
アシトのゴール直後、レフリーが笛を吹き、激闘の試合は終了した。スコアは4-3でエスペリオンの勝利が確定した。ピッチに転がったボールと静止する選手たちが、試合の終結を象徴していた。
エスペリオンの歓喜と疲労
アシトは力尽きてその場に倒れ込み、富樫も疲労と安堵から崩れ落ちた。他の選手たちも座り込み、全身からエネルギーを使い果たした様子を見せていた。一方、ベンチにいた選手たちは歓喜の声を上げながらピッチに駆け込み、勝利を祝福した。
観客と視聴者の反応
スタジアムの観客席からは大歓声が湧き上がり、手を取り合って喜ぶ者や涙ぐむ者まで現れた。日本で中継を見ていた人々も同じように喜びを爆発させ、家族や友人と抱き合いながらエスペリオンの勝利を称えた。
敗れたバルセロナ
バルセロナの選手たちは呆然と立ち尽くし、デミアンは幼い頃に敗北した記憶を思い出すように、悔しさの中でどこか吹っ切れた笑顔を浮かべていた。
阿久津はデミアンとの対峙の中で見えていた母の幻影を探したが、その姿はもう見えなかった。
喜びと安堵の表情
アシトは立ち上がれずにいる中、栗林が近づき「よく決めてくれた。よく勝った」と称える。アシトは「何十回撃って一度入るかどうかのシュート」と笑い、栗林に「もっと喜んでくださいよ」と促す。栗林は「こみ上げるものがあると思ったが、そうでもないな。次に行こう」と冷静に応じた。
仲間との共有と歓喜
その後、阿久津が「整列しろ」と声をかけるが、栗林はアシトと阿久津を抱き寄せ「やったぞおぉおぉ!! どうやぁぁ!!」と叫び、選手全員で喜びを分かち合う。観客席のハナも拳を掲げてアシトを讃え、アシトは「喜びが追いついてきた」と噛みしめながら「今日の俺たちすごいよ。喜ぼう」と栗林に告げた。
大会での快進撃
この勢いのままエスペリオンはその後のグループリーグも突破し、大会に旋風を巻き起こした。バルセロナのデミアンは敗戦に肩を落としつつも、幼少期の記憶を重ねながら最後には笑みを見せた。
日本での動き
日本ではトップチーム監督ガルージャが動き、青井葦人を含む「富樫、大友、浅利、桐木、秋山、阿久津、望月、高杉」をトップの練習に参加させるよう通達した。ガルージャは「私は約束を守る男だ」と言い、彼らに新たな試練を予告した。
第408話 Blue Diary
エスペリオンの練習場と報道陣
エスペリオンの練習場では、多くの記者や関係者が集まっていた。番記者の金子が現場からの様子を伝え、ガルージャ監督が囲み取材を受けていた。
ガルージャ監督の方針転換
ガルージャは「これからはアカデミー選手を積極的に試していく」と宣言し、ユースの9名をトップチームの練習に参加させると発表した。さらに3日間で誰がJリーグで戦えるかを判断し、その場で即決でプロ契約を結ぶ方針を示した。記者たちは、アルカスカップでの快進撃がガルージャにとって大きな驚きだったのかと問いかける。
アルカスカップの成果と望の旅立ち
エスペリオンの事務所には「アルカス国際カップ準優勝」のトロフィーが飾られていた。決勝ではバイエルンに惜敗したが、その戦いぶりは国内外から高く評価されていた。
その中でユースのヘッドコーチ望は、U-18日本代表のヘッドコーチ就任のためクラブを去ることを決断。月島に理由を問われると、「福田はクラブから育成を支える。私は代表から育成を支える」と語り、二人が最高のコンビなら離れても最高の仕事ができるはずだと背中を押した。
トップチーム練習合流の緊張感
ユースの9名がトップチームに合流する日が始まる。大友は緊張でガチガチになり、阿久津はトップに先に合流していた義経に抱きつかれる。周囲の観客やスタッフからも「がんばれユース!」と声援が飛ぶ。
福田と望の想い
望は「福田はクラブから、私は代表から育成を支える」と再度強調し、「この国の育成のために身を尽くす」と語る。そして月島に「自分が信じた役割を貫け、福田を頼む」と託した。
トップチーム合流と記事報道
ユースの選手たちは緊張と期待の中でトップ練習に臨み、各自が意気込みを見せる。スポーツ紙には「エスペリオンユース9名がトップチーム練習参加」という見出しが躍り、異例の人数に注目が集まっていた。
新たな動き
一方、成宮監督は新聞を見つめながら何かを考え込んでいた。息子のもとにはスマホの着信が入り、物語は次の展開を示唆して終わる。
冴島と成宮監督の再会の予兆
電話をしてきたのは、スペインでコーチをしていた冴島であった。彼は帰国直後の空港から成宮監督に連絡し、自分はどこかで間違ったのかもしれないと弱音を吐いた。成宮監督はそれを否定し「会いに来てくれ。スペインでの経験は素晴らしいことだ。たくさんサッカーの話をしよう」と呼びかけ、冴島に会うことを強く望んだ。
花の旅立ち
その頃、花はスペインに向けて出発する準備を整えていた。両親や友人たちに見送られ、笑顔で「行ってくるね」と告げた。空港では多くの人々が彼女の門出を祝福し、別れを惜しむ姿が描かれていた。
金子とアシトの対比
記者の金子は花に電話をかけ、見送りに行けないことを詫びた。さらに、アシトもユーストップ練習初日のため見送りに行けないことを残念に思っていた。金子は練習場に向かうアシトを見つけて声をかけたが、アシトは集中しておりその呼びかけに気付かず、自分の道を突き進んでいた。
第409話「カラーリリィの恋文」
アシトとハナの告白
ハナは空港へ向かう前、アシトへの想いを電話越しに伝えた。彼女は「君を好きになってしまったから」と率直に告白し、アシトも「俺も好きだ。ずっと好きだった」と応じた。二人の気持ちは初めて会った日から続いていたことが明かされ、互いに支え合ってきた時間を振り返る場面となった。
交際の約束
ハナは「それって付き合うってこと?」と確認し、アシトも真剣に応えて「付き合おう」と言葉を交わす。互いに照れと緊張で汗をかきながらも、関係を正式に進める決意をした。
象徴的な鐘のシーン
二人は散歩の途中で鐘を見つける。届かない高さに苦戦するが、アシトがハナを持ち上げることで鳴らすことに成功する。この鐘の音が、二人の新たな関係の門出を象徴していた。
抱擁の動揺
アシトはハナを抱きかかえた際、その柔らかさや香りに強く動揺し、リア充の感覚を初めて体感する。ハナもまた恥ずかしさからアシトの腕を振り払い、二人は転倒してしまう。
夢の邪魔にならないかという不安
倒れ込んだアシトを心配するハナは、自分がアシトの夢の邪魔にならないかと問いかける。しかし彼女は、重荷を背負いながらも夢に向かって走り続けるアシトを尊敬しており、その傍にいたいと強く願う。
同じ夢を見られる存在
アシトは「お前となら同じ夢を一緒に見られる」と断言する。ハナはその言葉に涙ぐみ、二人が共に未来を見据えていることを確信する。
未来への誓い
アシトは「プロになってエスペリオンで勝ち、世界に出る」と宣言し、ハナに待っていてほしいと頼む。ハナは涙ながらに「うん」と応え、二人は互いの気持ちを強く確認し合った。
別れの約束
ハナは「ずっと好きだった」と想いを伝え、アシトは「浮気するな」と返し、互いに強く結びつく。アシトは「スペインに行っても献立表を忘れず送れ」と冗談めかしつつも、二人の関係を日常に根付かせようとする。
旅立ちと誓い
ハナは空港から飛び立ち、飛行機の中で「行ってきます!」と笑顔で宣言する。一方、練習場のアシトは空を見上げ、指を突き上げながら「待ってろ」と誓いを立てた。
最終話「Presence」
トップチーム練習の余波
エスペリオンのトップチーム練習初日が終わり、冨樫はそのハイレベルさに疲弊していた。遊馬は「厳しい練習だ」と声をかけ、自身はプロ契約を掴むと意気込んだ。冨樫は反発しつつも奮起して再び挑もうと決意した。アンリはその様子を見守り、遊馬から将来国内外のどちらで監督を目指すかを問われた。
阿久津の献花
阿久津は河原に赴き、母に献花を捧げて静かに祈りを捧げた。彼は過去を胸に抱えながらも前進する姿を示していた。
ユースの新戦力
一方ユースのコートでは、新入生がAチームに合流した。橘は「この時期にAへ加わる一年生は優秀」と評価し、黒田もトップチームに人材を取られても戦力として期待できると語った。新人たちはトップ練習に九人も呼ばれたと聞いて興奮し、早くもプロデビューを夢見る者もいた。その中でリンドウは「自分を差し置いて認められるはずがない」と強い闘志を燃やした。
新入生の登場と騒動
ユースの初日練習で小泉桜石(DF・1年)が紹介される中、場が騒然とする場面があった。そこへ青井葦人が現れ、他の選手たちから驚きをもって迎えられた。桜石はアシトを尊敬の対象として見ており、彼を目標とする意志を明言した。
葦人の存在感
アシトは新チームの練習参加を宣言し、明るく振る舞った。桜石の靴ひもを結ぶ姿や自然体の態度が周囲に印象を残した。周囲の選手たちは、アシトが既に特別な存在であることを再認識していた。
注目される選手たち
栗林や阿久津と並び、アシトは海外からも注目を集める存在として描写された。彼らは既に「別格」とされ、スカウトや獲得調査の対象になっていると示された。
福田監督の方針
エスペリオンユース監督の福田達也が新Aチーム始動を宣言した。彼は、ここに集まる全員がプロを目指していることを認めつつも、全員がプロになれるわけではないと告げた。その上で、サッカー以外の人生の可能性を伝え、厳しい競争が始まることを強調した。
希望の言葉
福田は最後に「今の年齢のお前たちなら何者にもなれる」と語り、新入生たちに大きな可能性を信じさせた。これにより、新たなユースAチームの戦いが本格的に幕を開けた。
福田監督の言葉
福田監督はユースの選手たちに向けて、自分が「育つ者」であることを信じてほしいと語った。監督自身は「育成者」として選手たちを導き、世界に彼らの存在を証明できると強調した。
育成の始まり
福田は「育成だ」と宣言し、新チームの始動を告げた。アシトを含む選手たちは、その言葉を真剣に受け止め、これから始まる厳しい競争に挑む覚悟を新たにした。
未来への宣言
監督の「始めよう」という言葉とともに、アシトは前を見据えた。物語は「世界へ、連れていってやる」という力強い締めくくりで幕を閉じ、選手たちの未来が示された。
同シリーズ






































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