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フィクション(Novel)読書感想領民0人スタートの辺境領主様

小説「領民0人スタートの辺境領主様 Ⅲ(3) 家族の絆」感想文・ネタバレ

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フィクション(Novel)

領民0人2巻レビュー
領民0人まとめ
領民0人4巻レビュー

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  1. どんな本?
  2. 読んだ本のタイトル
  3. あらすじ・内容
  4. 前巻からのあらすじ
  5. 感想
  6. 考察・解説
    1. イルク村の開拓と多種族の協調
    2. 亜人種・獣人との共生社会の構築
    3. イルク村における行商人との交易実態と今後の展望
    4. クラウスとカニスの種族を超えた結婚
    5. ディアスとかつての家族との再会
    6. アルナーと兄ゾルグの確執とその結末
    7. 伝説の薬草サンジーバニーとウィンドドラゴン討伐
  7. 登場キャラクター
    1. イルク村
      1. ディアス
      2. アルナー
      3. クラウス
      4. カニス
      5. マヤ
      6. チルチ
      7. ターラ
      8. セナイ
      9. アイハン
      10. エイマ・ジェリーボア
      11. フランシス
      12. フランソワ
      13. エゼルバルド
      14. エゼルティア
      15. エゼルグー
      16. エゼルファナ
      17. エゼルミィ
      18. エゼルリーラ
      19. ベイヤース
      20. カーベラン
      21. シーヤ
      22. グリ
      23. アイーシア
      24. マーフ・ティベ・マスティ
      25. セドリオ・バー・センジー
      26. ライハートゴードフニャディシェフ・オースン・シェップ
      27. 婦人会
      28. 老婆たち
      29. 犬人族達
      30. 犬人族の子供達
      31. マスティ族
      32. センジー族
      33. シェップ族
    2. 孤児の互助組織(ギルド)
      1. イーライ
      2. アイサ
      3. エリック(エリー)
      4. ゴルディア
    3. 鬼人族
      1. モール
      2. ゾルグ
      3. ルフラ
      4. アルナーの父
      5. アルナーの母
      6. アルナーの弟妹達
    4. カスデクス領
      1. エルダン・カスデクス
      2. カマロッツ
      3. ゲラント
      4. ジュウハ
      5. マーテル
    5. 行商人一行
      1. ペイジン・オクタド
      2. ペイジン・ド
      3. ペイジン・レ
    6. サンセリフェ王国
      1. リチャード
      2. マイザー
      3. イザベル
      4. ヘレナ
      5. ディアーネ
      6. ナリウス
    7. 帝国
      1. 将軍
      2. 防諜長
      3. 内政長
      4. 議長
      5. 書記
      6. 廷臣達
    8. その他
      1. ディアスの父
      2. ディアスの母
      3. ベン
      4. 聖人ディア
      5. 建国王
      6. ゴードン
  8. 展開まとめ
    1. 夏風が吹き渡る草原でフランシスとフランソワ
    2. イルク村の倉庫の前でディアス
    3. 交渉を終えて
    4. 三日後の昼過ぎ、ユルトの中で
    5. 翌日、ユルトの中で
    6. 祝宴当日
    7. 王都にて エルダン
    8. とある街の片隅で
    9. 夏の日差しが降り注ぐイルク村で――ディアス
    10. 五日が経って
    11. カスデクス領 領主屋敷エルダン
    12. イーライ達が去り、一週間が経ったイルク村で エリー
    13. 同じ頃、倉庫の中でディアス
    14. トンボ達との戦いを終えてディアス
    15. それぞれのこれから
    16. 『エイマの日記』
    17. 書き下ろし家族の絆
    18. 皆で湖へ、ピクニックに
    19. 特別書き下ろし。王国風のアルナー
    20. ある日のイルク村でディアス
  9. 同シリーズ
    1. 領民0人スタートの辺境領主様
  10. その他フィクション

どんな本?

舞台はファンタジーの草原。

戦争で、孤児から救国の英雄に成ったディアス。

それを面白く思わない王族が横槍を入れて。

王から拝領した広大な草原には領民がおらず、住む家も無く、食料すら無い。

領地を与えると言いながらやってる事は流刑にしたような物。

その誰一人いないはずの草原で、ディアスは少女アルナーに出会う。

彼女は額に角がある鬼人だった。
そこから始まる領地発展の物語。

読んだ本のタイトル

#領民0人スタートの辺境領主様  III 家族の絆
著者:風楼 氏
イラスト:キンタ  氏

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あらすじ・内容

草しかなかった領地に“イルク村”を作り
領民らと共に開拓をはじめた領主ディアス。
開墾は思い通りに進まず、王族の逆恨みにより
戦に巻き込まれたりとピンチを迎えるが
領民の皆の力を借りて苦難を乗り越え
少しずつ、でも着実に領地を発展させ
近隣にその名を響かせはじめるのだった!

そんな彼らの村にある日訪れたのは
ディアスの『子供』、『婚約者』を名乗る人物たち!
そして妻アルナーが存在をひた隠してきた
彼女の兄も現れて何故かディアスに敵意剥き出し!!
さらには何匹ものドラゴンが村に
向かってきて緊急事態に…!?

イルク村に訪れる新たな問題の数々。
まだまだ新米の領主様はこの危機を乗り越えられるのか?

Amazonより引用

前巻からのあらすじ

国の中枢の国王と第一王子には完全に信用されてるディアス。

理不尽に辺境に飛ばされたと思ったら、国境沿いでの防衛を期待されての領地の下賜らしい。

それを妨害してる第二王子と第三姫?

遂には第三姫から侵攻を受けてしまう。

でも関わろうとしない第一王子。。。

そして明かされる第一王子とディアスとの関係。

調子にノってた王子は敵に包囲されて絶体絶命だったのだが、ディアスが助けに入って包囲を突破して王子を救出。

その後に拳骨をされて、一時期ディアスの補佐官をさせられていた。

ちなみにディアス本人は第一王子とは知らなかったらしいww

感想

孤児時代の仲間達とディアスの叔父と数匹のメアー達が登場して、両親がかなり高位の神官だったと判明。

その両親の子供が人殺しで功績を得て領主になった事に腹を立てるのがなかなかに豪快w

説教するためにわざわざディアスの領地に行って拳骨1発で終わらせる。 

その後、新旧のメアー達のマウンティングが始まるのだが、、
歌なのが平和的で良い。
孤児時代の仲間は2人は商人で村に足りない物を把握して、それを調達しにあっという間に村から出発したが、、
最後の1人のエリックことエリーがディアスの妻になるアルナーに突っかかるのだが、、
アルナーとは何故か仲良くなって親友となる。
まぁ、彼女は性別の障害だからな、、
ちょっと気の毒になってくる。

あと、ギャグキャラっぽい鬼人アルナーの兄ゾルグも出て来た。

その後でディアスとゾルグとてトンボ型のドラゴンの群を大量に討伐して漢気を上げて、ダメ人間と判断されていたゾルグは族長候補に格上げ。

ディアスも中央で爵位が格上げされてしまう。

そして話が盛り上がりそうだと思ったら今巻は終わる。

まだ、ディアスは爵位が上がったのを知らない。
辺境だから権力を大きくしないとね。。
でも、人間の領民はほとんどいない村サイズだけど貴族では辺境を守る侯爵家か、、

何ともアベコベ感がある。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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領民0人2巻レビュー
領民0人まとめ
領民0人4巻レビュー

考察・解説

イルク村の開拓と多種族の協調

見渡す限り草しか生えていない過酷な「ネッツロース草原」でゼロからスタートしたイルク村の開拓は、領主ディアスの熱意を起点とし、多様な種族の知恵と労働力が結集することで急速に進められている。

1. 種族の垣根を越えた農業の開拓
ネッツロース草原は過去に何人もの開拓者が失敗してきた土地であるが、村の皆が協力して畑作りに挑戦し、見事に成功を収めた。農業開拓における主な要素は以下の通りである。

  • 鬼人族から譲り受けた「葉肥石」を砕き、獣の骨と混ぜて土を寝かせるという土壌改良の知恵が活かされた
  • 隣領のエルダンから贈られた最新農具「プラウ」と力の強い家畜「白ギー」を用いることで、事前の草刈りも不要なまま広大な土地を耕すことが可能になった
  • 畑仕事の経験が豊富な老婆たち(チルチやターラ)が指導役となり、草木灰を用いた土作りが行われた
  • 夏場の水不足に備え、犬人族(センジー氏族など)の献身的な労働によって小川から水を引く「溜池」も建設された
  • 森人族の双子セナイとアイハンが、大耳跳び鼠人族のエイマの案内で夜の畑へ赴き、植物の成長を早め、病や瘴気を防ぐ結界を張るという秘密のサポートを行って開拓を裏から支えた

2. 生活インフラと共同施設の拡充
当初はディアスの住むユルトしかなかった村であるが、徐々にユルト、倉庫、厠、井戸、飼育小屋、集会所、広場、厩舎といった多様な施設が整えられていった。

  • 行商人からガチョウを購入することになった際、マヤ婆さんたちと犬人族は自発的に動き、使っていなかった小屋を移動させ、小川から水を引いて小さな池と水路を作り上げた
  • 各ユルトでの調理が手狭になったため、アルナーたちの提案で共同の「竈場」が建設された
  • 隣領から手配した職人たちによって、レンガ造りのパン窯や休憩用の広い空間、冬場に寒気を防ぐ屋根などを備えた立派な施設が完成し、村人たちの生活をさらに豊かなものにしている

3. 商業と交易拠点の形成
村が発展するにつれ、外部との交易網も形作られようとしている。

  • フロッグマンの行商人ペイジン・レが訪れた際、獣王国内で差別されている「血無し」と呼ばれる獣人たちをイルク村へ移住させる案が浮上した
  • ディアスが彼らの受け入れを許可したことで、彼らに商売を教え込み、イルク村を拠点として獣王国と隣領とを結ぶ新たな交易ルートを構築する計画がまとまった
  • 村には新たなメーアの群れ(エゼルバルドと妻たち)も加わっており、将来的な特産品(メーア布など)の増産を見据えた準備も進められている

まとめ
このように、イルク村の開拓はディアスの圧倒的な武力と優しさを傘としながら、鬼人族の魔法や知識、人間族の老婆たちの経験、犬人族の労働力など、各種族がそれぞれの長所を持ち寄り、助け合うことによって不可能を可能にしているのが最大の特徴である。

亜人種・獣人との共生社会の構築

『領民0人スタートの辺境領主様』において、人間族と多種多様な亜人種・獣人たちとの「共生」は、物語の根幹をなす重要なテーマである。主人公ディアスの領地「イルク村」や隣領カスデクス領を中心に、種族の壁を越えた共生社会がどのように築かれているのか、いくつかの視点から解説する。

1. ディアスの信念と「家族」としての受け入れ
ディアスは両親の遺言である「弱い者を守る」という信念のもと、種族や身分、境遇による差別を一切しない。

  • 過去の戦争体験から奴隷制を強く拒絶しており、金や権力で人を支配するのではない
  • 行き場を失った者たちを無条件で保護し、単なる領民ではなく「家族」として迎え入れている
  • この圧倒的な優しさと思いやりが、多様な亜人種が集い、対話によって結びつく共生社会の土台となっている

2. 多種多様な亜人種との共同生活と協力体制
イルク村では、それぞれの種族が持つ特性や知恵を活かし、互いに助け合いながら村を開拓している。各種族の特性や役割は以下の通りである。

  • 鬼人族:隣人として強固な協力関係にあり、葉肥石を用いた薬草栽培の知識や、魔力を活用した強力な武具の加工技術を提供している
  • 森人族の双子(セナイとアイハン):植物の成長を早め、結界を張る秘密の魔法を持っている。人間族に力を知られてはならないという両親との約束を守りながらも、大好きなディアスの畑作りを裏から密かにサポートし、不可能とされた開墾を成功に導いた
  • 大耳跳び鼠人族(エイマ):過去に人間族から悪質な奴隷狩りに遭ったため強い人間不信を抱いており、一部の者はディアスを襲撃する事件を起こした。しかし、襲撃に反対していたエイマは、その高い知能と読み書きや算術の知識を活かし、双子の教育係として村に受け入れられた
  • 犬人族:隣領からマスティ族、センジー族、シェップ族などが多数移住し、村の防衛から溜池作り、ガチョウの池の整備まで、献身的な労働力として活躍している。ディアスは彼らからの敬愛に対し、金貨だけでなく自ら手作りした骨細工の首飾りを褒美として贈るなど、深い信頼関係を築いている
  • 家畜(メーア)の尊重:人間の言葉を完全に理解するメーアを、ディアスは家族として愛情深く扱っている。新たなメーアの群れが加わった際にも、彼らが歌による合唱で群れの長を決めるという独自の平和的な文化を尊重し、口出しせずに見守った

3. 異種族間の結婚と文化のすり合わせ
ディアス(人間)とアルナー(鬼人族)の夫婦だけでなく、元部下のクラウス(人間)とカニス(犬人族)が種族の違いを越えて結ばれるなど、新たな絆が生まれている。

  • 彼らの生活や祝宴の中では、犬人族の伝統である新郎を担ぎ上げる儀式を行ったり、鬼人族の伝統的な魔除けの化粧を施したりと、互いの文化を尊重し合う姿が描かれている
  • アルナーが未成年のため酒を隠したディアスに対し、鬼人族では馬乳酒が体に良い栄養飲料として親しまれていることが判明するなど、日々の対話を通じて価値観の違いを学び、独自のルールを作り上げている

4. 他領・他国への「共生」の広がり
共生の輪はイルク村の外にも広がっている。

  • 隣領のカスデクス領主エルダンは半亜人であり、人間と亜人が種族の垣根を越えて平和に暮らせる世界を目指す同志としてディアスと協力している
  • エルダン自身も、かつて奴隷として過酷な砂糖作りを強いられていた獣人たちを解放し、農園の土地を与えて自由な生活を保障している
  • 獣王国内で血無しと呼ばれる、獣の力や特徴を失い人間に近い姿となったために差別されている獣人の移住を受け入れる話も進んでいる
  • ディアスは彼らを受け入れ、行商人ペイジンの指導のもとで交易を生業とさせることで、新たな居場所と役割を与えようとしている

まとめ
このように本作における亜人種との共生は、互いの違いや過去の傷を受け入れ、それぞれが自分にできることを持ち寄って支え合う、温かく活気に満ちた関係性として描かれている。金や権力による支配ではなく、対話と尊重によって築かれる共生社会は、過酷な辺境の地を豊かな理想郷へと変える原動力となっている。

イルク村における行商人との交易実態と今後の展望

『領民0人スタートの辺境領主様』における行商人との交易は、当初の単なる物資の売買から、村の発展や他国を巻き込む巨大なビジネス計画へと大きく発展している。イルク村の交易の実態と今後の展望について解説する。

1. ペイジン・レの来訪とアルナーの交渉術
当初イルク村を訪れていたフロッグマンの行商人ペイジン・ドが謹慎処分となったため、代わりに弟である次男のペイジン・レが商隊を率いて来訪する。彼は注文されていた食料や日用品だけでなく、螺鈿の器や象嵌の箱といった多種多様な高級工芸品を大量に持ち込み、ドラゴン討伐で財を得たディアスに売り込もうとした。取引における主な経緯は以下の通りである。

  • ディアスは生活に不要な工芸品を買う気はなかったが、アルナーは「金貨をただ抱えていても腹は膨れない」「行商人に儲けさせてやり、再び来る価値のある上客だと教えるべきだ」とディアスを説得する
  • アルナーは自身の魔法「魂鑑定」を駆使してペイジンの言葉から嘘や悪意を見極め、粗悪品や法外な値段の品を完璧に看破しながら白熱した値引き交渉を展開した
  • 結果として、金貨一袋と引き換えに食料や日用品、ガチョウ6羽、工芸品などを手に入れ、行商人にもしっかりと利益を出させるという「引き分け」の良好な取引を行った

2. 「血無し」の移住と新交易ルートの構想
この取引の際、ペイジン・レから獣王国内で差別されている「血無し」と呼ばれる獣人たちの移住についての相談が持ちかけられる。血無しとは、獣人でありながら獣の力や特徴を失い、人間族に近い姿となってしまった者たちのことである。

  • ディアスは彼らを無条件で受け入れることを許可した
  • さらに隣領カスデクス領の領主エルダンが獣人や亜人を保護して豊かな領地を築いていることをペイジンに教えた
  • これを聞いたペイジン・レは、王国に獣人に理解のある豊かな領主がいることに大興奮し、移住してくる「血無し」たちに商売を仕込むことを考案した
  • イルク村を拠点として王国側と獣王国を結ぶ新たな交易ルートを構築する壮大な計画を提案し、合意に至った

3. エリー(孤児ギルド)による販売網の補完計画
さらに、この交易計画をより強固なものにするため、ディアスを追って村にやってきた孤児ギルドの幹部であるエリー(エリック)が裏で動き出す。エリーは、獣人に排他的な王国内で血無し達に商売をさせるのはトラブルの元だと危惧した。

  • 獣人が普通に生活し商売ができるカスデクス領に「ギルドの支部」を設立し、そこから先の王国内での販売網をギルドの人員で補うというアイデアを思いつく
  • 獣王国(カエル人の国)の品物やイルク村のメーア製品をギルドが買い取って国内で売る
  • その資金で王国の品々を獣王国に売るという巨大な流通網を作り出すことで、莫大な利益と安定した人の流れを生み出そうと計画している

まとめ
このように、行商人との交易は単にイルク村の物資を潤すだけでなく、差別された亜人の救済や、カスデクス領、獣王国、商人ギルドを巻き込んだ巨大な経済圏の形成へと繋がり、イルク村を開拓の最前線から重要な「交易拠点」へと成長させる原動力となっている。

クラウスとカニスの種族を超えた結婚

元王国兵の人間であるクラウスと、犬人族のカニスによる種族を超えた結婚は、多様な種族が共に暮らすイルク村における「家族の絆」を象徴する出来事である。結婚に至る経緯や結納の準備、そして温かな祝宴の様子は以下の通りである。

1. 惹かれ合いと結婚の決意
カニスはイルク村に滞在して以来、クラウスが犬人族たちと行う訓練を毎日見学していた。ある日、怪我をした犬人族に対してクラウスが真摯に手当てをする姿を見て、カニスは心を動かされる。

  • カニスからの積極的なアピールに対し、当初は種族の違いから戸惑っていたクラウスも次第に心を開く
  • ディアーネ軍との戦いを経て「帰りを待っていてくれる存在の大切さ」を痛感し、二人は共に生きる決意を固めた
  • その後、カニスは里帰りをして自身の両親から結婚の許しを得る

2. 結納品の準備と「独力」へのこだわり
結婚の許しを得たクラウスは、カニスの両親に贈る結納品についてディアスに相談する。自分の力で得たものを贈りたいと願うクラウスに対し、ディアスは「黒ギーを狩って鬼人族と取引し、質の高いメーア布を手に入れて贈る」ことを提案した。

  • クラウスはマタビの粉や仲間の助けを一切借りず「独力」で狩ることに固執し、5日で2頭しか狩れないという苦戦を強いられる
  • 里帰りから戻ったカニスに「今まで築いてきた縁の力もクラウスさんの力」と叱責されたことで意地を張り続けるのをやめた
  • 皆の協力を得ることでわずか3日で十分な黒ギーを確保し、大量のメーア布を手に入れて挨拶へと旅立った

3. イルク村での温かな結婚祝宴
隣領での挨拶を終えて帰還した翌日、村の広場で祝宴が開かれた。クラウスは白いクルタ、カニスは茜色のシルクドレスを纏い、カニスの顔にはアルナーが施した鬼人族の伝統的な魔除けと子宝祈願の化粧がされていた。祝宴では以下のような祝福が行われた。

  • ディアスの進行と聖句の暗唱:ディアスはアルナー手製の神官服を着て進行役を務め、聖人ディアの「人を愛し、家族を作り、人生を謳歌せよ」という祝福の聖句を暗唱した。
  • 犬人族の伝統儀式:クラウスは犬人族の男たちに担ぎ上げられて村中を回った後、地面に放り投げられて独身者たちから叩かれるという儀式(嫉妬を紛らわせる名目のじゃれ合い)を受けた。そこでクラウスは笑顔で犬人族たちを抱きしめ、「このイルク村で幸せな、愛に溢れた家庭を築く」と大声で誓った。
  • 心のこもった贈り物:孤児の双子(セナイとアイハン)からは双葉と月を模した手製の刺繍布が贈られ、他の村人からも懸命に集めた食材や綺麗な石などが贈られた。さらにディアスからは、鬼人族の長モールのアドバイスを受け、魔除けや病除け, 子宝・安産祈願の刺繍が施された上質な寝具が贈られた。

まとめ
このように、クラウスの結婚は彼自身の誠実な人柄が実を結んだものであり、村人全員が種族や文化の違いを互いに尊重し合いながら祝福するという、イルク村の温かい関係性を体現する出来事となっている。

ディアスとかつての家族との再会

救国の英雄である主人公ディアスは、辺境の領地イルク村にて、かつて戦場へ赴く前に親代わりとして育てていた孤児たちや、死別したと思われていた身内との劇的な再会を果たす。その詳細な内容は以下の通りである。

1. かつての家族(孤児たち)との涙の再会
ある夏の日、イルク村にやってきた馬車から降りてきたのは、ディアスがかつて孤児の互助組織(ギルド)を作って育て上げたイーライ、アイサ、エリックであった。

  • ディアスは、かつて一緒に暮らした子供たちが元気に生きているだけでなく、それぞれが店を構え、結婚して立派に自立していることを知る
  • 嬉しさのあまり涙ぐみながら抱き合って喜びを分かち合った
  • 赤いドレス姿で現れたエリックに対し、ディアスが「エリック」と元の名前で呼んでしまったため、エリックがショックで崩れ落ちるというコミカルな一幕もあった

2. 死んだはずのベン伯父さんとの再会と明かされる両親の秘密
馬車からはさらに白髪の老人が姿を現した。それはディアスが10歳の頃に行方不明になり、両親から死んだと聞かされていた父の兄、ベン伯父さんであった。

  • ベン伯父さんは、自分を死人扱いしていたことに激怒するとともに、ディアスに驚くべき事実を告げた
  • ディアスの両親は単なる神殿の雑用係などではなく、東の大神殿における神官長(第一席・第二席)という最高位の人物であった
  • ベン伯父さんは、神官長の息子であるディアスが戦場で人殺しに励んでいたと聞いて殴ってやろうと考えていたが、彼がイルク村で多様な種族を家族として迎え入れ、真っ当で温かい暮らしをしているのを見て怒りを収めた

3. エリックの勘違いとディアスの親であり続けるという信念
再会の喜びの最中、エリックがアルナーを妻と認めず、ディアスと結婚するのは自分であると主張する騒動が起きる。幼い頃にディアスから「大人になったら好きな指輪を買ってやる」と言われたことを、プロポーズだと思い込んでいたためである。

  • ディアスは、エリックの想いに応えることは絶対にないと明言した
  • その理由は、誰かの想いに応えてしまえば、その瞬間に親ではなくなってしまうからであった
  • ディアスは、彼らが何歳になろうと親として見守り、叱り飛ばす存在であり続けることを何よりも大切にしていた
  • その確固たる信念を聞いたエリックは、ついに本来の地声で「お父様」と泣きつくことになった

まとめ
このように、救国の英雄ディアスの再会は、彼が戦場に出る前に築いていたもう一つの家族との絆の深さを証明する出来事であった。立派に成長した子供たちやベン伯父さんが合流したことで、イルク村はさらに賑やかで温かい共同体へと発展していくことになる。

アルナーと兄ゾルグの確執とその結末

『領民0人スタートの辺境領主様』におけるアルナーと彼女の兄・ゾルグの確執は、ゾルグの素行不良と家族への迷惑、そして兄妹の不器用な関係性が絡み合ったエピソードである。その経緯と結末について解説する。

1. 「穀潰し」の兄と確執の原因
アルナーの兄であるゾルグは、アルナーによく似た外見(銀髪、青い角、赤い瞳)を持つ実家の長子であるが、アルナーからは「男気がない」「穀潰し」として酷く嫌われていた。確執の主な原因は以下の通りである。

  • 遠征班として村の外で働きながら、稼いだ金を全て村の外の女に貢いでいた
  • 実家の財産にまで手を出して借金を作った
  • その結果、実家が困窮して幼い弟妹が飢える事態に陥った
  • 本来は女性がやらない狩りや見回りなどの仕事をアルナーが引き受け、家族を支えなければならなくなった

2. 勘違いによる襲撃と「魂鑑定」の限界
ある日、遠征から帰還したゾルグは、妹が年上の王国領主(ディアス)に嫁いだと知り、「実家が貧しいことに付け入られ、悪徳領主に騙されて嫁がされた」と激しく勘違いをして、アルナーを救い出そうとイルク村へ乗り込んでくる。その際の経緯と発覚した事実は以下の通りである。

  • 実家が貧しくなった原因を作った張本人にそのような言葉を投げかけられたアルナーは激怒し、彼に馬乗りになって平手打ちを浴びせた
  • 兄妹の言い合いの中で、ゾルグが貢いでいた女は病気だと嘘をついて金を巻き上げ、最終的にゾルグから逃げていた(結婚詐欺だった)ことが発覚した
  • ゾルグは相手の敵意を見極める魔法「魂鑑定」で「青(無害・好意的)」だったため女を信じ切っていたが、魂鑑定は強い魔力や技術によって結果を誤魔化すことが可能であった
  • 生まれつき魔力の少ないゾルグは、その限界を見抜けずに騙されていた

3. ウィンドドラゴン討伐とアルナーの冷淡な態度の真意
その後、鬼人族の村へ帰る途中でゾルグは飛行型モンスター「ウィンドドラゴン」5匹に遭遇し、見送りに来ていたディアスの無茶苦車な戦い方に呆れながらも、共に協力してすべてを討伐する。その後の展開とアルナーの真意は以下の通りである。

  • ドラゴン討伐という多大な「男気」を示したことでアルナーに見直してもらえると考え、ゾルグは意気揚々とイルク村へ戻った
  • しかしアルナーの態度は非常に冷淡であり、怪我をしたディアスを心配する一方で、ゾルグには素材の半分を渡して早々に追い返した
  • この冷たい態度の裏には、「今のアルナーはイルク村の家族であり、ゾルグが男気を示すべき相手はもう自分ではない」という厳しい考えがあった
  • 寄りかかりたいなら鬼人族の村で伴侶を見つけ、実家の弟妹たちや家長となる一番下の弟(ルフラ)を想うべきだという、彼女なりの教育的配慮でもあった
  • 兄がドラゴンを狩って相応の価値(男気)を示したこと自体は、アルナーにとっても内心喜ばしい出来事であった

4. ゾルグのその後
失意のまま鬼人族の村へ帰還したゾルグは、族長モールに呼び出される。その後の処遇は以下の通りである。

  • これまでの素行の悪さから手放しで褒められはしないものの、ウィンドドラゴンを狩った功績が認められた
  • ディアス(ドラゴン殺し)の義理の兄であるという立場も評価され、族長候補の証である宝を与えられた
  • 遠征班の仕事を辞めさせられ、モールの下で族長としての覚悟と経験を学ばされることになった
  • 強制的に嫁取りも決められることとなった

まとめ
このように、アルナーとゾルグの確執はゾルグの身勝手な行動が引き起こしたものであったが、ディアスとの共闘やウィンドドラゴンの討伐を経て、ゾルグが男気を示すきっかけとなった。アルナーの冷徹な態度も兄の自立と実家への責任を促すためのものであり、最終的にゾルグが鬼人族の次期族長候補として歩み出すという、前向きな結末を迎えている。

伝説の薬草サンジーバニーとウィンドドラゴン討伐

『領民0人スタートの辺境領主様』において、どんな病も治すとされる伝説の薬草「サンジーバニー」と、空の脅威である魔物「ウィンドドラゴン」の討伐は、思いがけない形で結びつく重要なエピソードである。

1. 伝説の薬草「サンジーバニー」と双子の願い
森人族の双子セナイとアイハンは、両親の「芽」との意思疎通を通じて「サンジーバニー」という伝説の薬草の存在を知る。その背景と双子の想いは以下の通りである。

  • サンジーバニーはどんな病でも治すことができる究極の薬草であり、草木に詳しい森人族ですら過去に一度も目にしたことがない幻の存在である
  • 両親を病で失っているセナイとアイハンは「もう二度と病で家族を失いたくない」という強い思いを抱いており、存在するかどうかも分からないこのサンジーバニーを見つけ出すことを自らの目標としている
  • サンジーバニーの伝説は広く知られているようで、隣領の領主エルダンに仕える従者カマロッツも、激務で身を削るエルダンを案じ「あらゆる病を治すという伝説のサンジーバニーを、何故神々はエルダン様に与えてくださらないのか」と独り言を漏らしている

2. 脅威の魔物「ウィンドドラゴン」の襲来と討伐
アルナーの兄であるゾルグを鬼人族の村へと見送る道中、ディアスとゾルグは5匹の「ウィンドドラゴン」に遭遇する。激闘の様子は以下の通りである。

  • ウィンドドラゴンは巨大なトンボのような姿をした飛行型モンスターで、鋭い牙と刃のような羽で獲物を切り裂く厄介な魔物である
  • ゾルグはアルナーが作ったアースドラゴン素材の強弓で応戦する
  • ディアスは空を飛ぶ敵に対して戦斧を豪快に投擲したり、隙を突いて素手で殴りつけたりするという規格外の戦い方を展開する
  • 二人の連携により、空を舞う5匹のウィンドドラゴンをすべて討伐することに成功した

3. 喋るメーアとの遭遇と、伝説の薬草の入手
ウィンドドラゴン討伐を祝う宴の最中、ディアスは村の外れでコソコソと歩く見知らぬメーアを発見する。その遭遇と取引の詳細は以下の通りである。

  • 驚くべきことにそのメーアは人の言葉を話し、「我が主を害さんとするドラゴンを退治し、我が子らを保護するよう努めなさい」とディアスに告げる
  • ドラゴン退治とイルク村でのメーア保護の対価(主からの下賜品)として、「サンジーバニーの葉三枚、種一つ」が入った麻袋をディアスに投げ渡した
  • メーアは「売って儲けようとしたり悪用しようとしたりすれば、たちまち枯れてしまう」と強い警告を残し、幻のように気配もなく姿を消した

まとめ
このように、セナイとアイハンが切望していた伝説の薬草は、ディアスが無自覚に行った「メーアの保護」と「魔物(ウィンドドラゴン)の討伐」に対する未知の存在からの報酬として、突然イルク村にもたらされることになった。

領民0人2巻レビュー
領民0人まとめ
領民0人4巻レビュー

登場キャラクター

イルク村

ディアス

辺境の地ネッツロース草原の領主である。孤児たちを親代わりとして育てた過去を持つ。
・所属組織、地位や役職
 ネッツロース草原の領主。
・物語内での具体的な行動や成果
 戦斧を投擲し、ウィンドドラゴンを討伐した。犬人族に自身の手で作った骨細工の首飾りを褒美として贈る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 かつて育てた孤児たちと再会を果たし、親であり続けることを宣言した。

アルナー

鬼人族の少女であり、ディアスの妻である。服の仕立てや料理などの家事全般を担う。
・所属組織、地位や役職
 イルク村の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
 魂鑑定を用いて行商人のペイジン・レと交渉を行う。アイサが仕立てた王国風のドレスを身に纏い、化粧を施す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 鬼人族の弓を自作し、高い命中率で的を射る技術を持つ。

クラウス

元王国兵であり、イルク村の防衛を担う青年である。真面目で勤勉な性格をしている。
・所属組織、地位や役職
 イルク村の領兵隊長。
・物語内での具体的な行動や成果
 結納品としてメーア布を用意するため、黒ギーを狩る。イルク村の広場でカニスと結婚の祝宴を挙げる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 カニスと結婚し、新たな家庭を築いた。

カニス

犬人族の女性である。クラウスと結婚し、イルク村の住民となる。
・所属組織、地位や役職
 イルク村の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
 クラウスとの結婚の許しを得るため、里帰りを行う。茜色のシルクドレスを纏い、祝宴に参加する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 マーテルの娘である。

マヤ

隣領から追放された老婆たちのまとめ役である。ガチョウの飼育計画を立てる。
・所属組織、地位や役職
 イルク村の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
 フランシスたちの小屋を移設し、ガチョウ用の池を掘る作業を指揮した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

チルチ

畑仕事の経験が豊富な老婆である。
・所属組織、地位や役職
 イルク村の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
 ディアスに対してプラウの使い方を指導した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

ターラ

畑仕事を特技とする老婆である。
・所属組織、地位や役職
 イルク村の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
 草木灰と水を用いた土作りに取り組んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

セナイ

長い耳を持つ森人族の双子の一人である。アイハンの姉妹にあたる。
・所属組織、地位や役職
 イルク村の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
 エイマの案内で夜中に畑へ向かい、結界を張る。広場の脇に小さな畑を作り、薬草の栽培を行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

アイハン

長い耳を持つ森人族の双子の一人である。セナイの姉妹にあたる。
・所属組織、地位や役職
 イルク村の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
 セナイと共に畑の結界を張る作業を行う。クラウスとカニスに手製の刺繍布を贈る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

エイマ・ジェリーボア

大耳跳び鼠人族の女性である。日記をつけている。
・所属組織、地位や役職
 イルク村の領民。教育係。
・物語内での具体的な行動や成果
 セナイとアイハンの秘密の畑作りを手伝う。羊の毛刈りを行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

フランシス

メーアのオスである。フランソワの番にあたる。
・所属組織、地位や役職
 イルク村の家畜。メーアの群れの長。
・物語内での具体的な行動や成果
 妊娠中のフランソワのために柔らかい草を運ぶ。長決めの歌の勝負でエゼルバルドに勝利する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 新たに加わったメーア達を含めた8人の群れの長となる。

フランソワ

メーアのメスである。フランシスの番にあたる。
・所属組織、地位や役職
 イルク村の家畜。
・物語内での具体的な行動や成果
 出産を控え、一日の大半をユルトの中で眠って過ごす。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

エゼルバルド

大柄なメーアのオスである。
・所属組織、地位や役職
 イルク村の家畜。
・物語内での具体的な行動や成果
 長決めの歌の勝負でフランシスに敗北する。自らの歌を捨ててフランシスの歌に合流した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ディアスからエゼルバルドという名前を与えられる。

エゼルティア

エゼルバルドの妻であるメーアの一頭である。
・所属組織、地位や役職
 イルク村の家畜。
・物語内での具体的な行動や成果
 ディアスから名前を与えられた後、エゼルバルドに寄り添う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

エゼルグー

エゼルバルドの妻であるメーアの一頭である。
・所属組織、地位や役職
 イルク村の家畜。
・物語内での具体的な行動や成果
 ディアスから名前を与えられ、エゼルバルドに寄り添う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

エゼルファナ

エゼルバルドの妻であるメーアの一頭である。
・所属組織、地位や役職
 イルク村の家畜。
・物語内での具体的な行動や成果
 ディアスから名前を与えられる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

エゼルミィ

エゼルバルドの妻であるメーアの一頭である。
・所属組織、地位や役職
 イルク村の家畜。
・物語内での具体的な行動や成果
 ディアスから名前を与えられる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

エゼルリーラ

エゼルバルドの妻であるメーアの一頭である。
・所属組織、地位や役職
 イルク村の家畜。
・物語内での具体的な行動や成果
 ディアスから名前を与えられる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

ベイヤース

黒毛の牡馬である。
・所属組織、地位や役職
 イルク村の馬。
・物語内での具体的な行動や成果
 エルダンからディアスへ譲渡された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

カーベラン

赤毛の牡馬である。
・所属組織、地位や役職
 イルク村の馬。
・物語内での具体的な行動や成果
 エルダンから譲渡され、アルナーの乗馬として扱われている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

シーヤ

白毛の牝馬である。
・所属組織、地位や役職
 イルク村の馬。
・物語内での具体的な行動や成果
 エルダンから譲渡され、セナイの乗馬として扱われている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

グリ

灰色毛の牝馬である。
・所属組織、地位や役職
 イルク村の馬。
・物語内での具体的な行動や成果
 エルダンから譲渡され、アイハンの乗馬として扱われている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

アイーシア

月毛の牝馬である。
・所属組織、地位や役職
 イルク村の馬。
・物語内での具体的な行動や成果
 ディアーネが乗っていた馬であり、人を乗せることを拒んでいる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アルナーからアイーシアと名付けられる。

マーフ・ティベ・マスティ

マスティ族の氏族長である。
・所属組織、地位や役職
 マスティ族の氏族長。
・物語内での具体的な行動や成果
 クラウスの祝宴において、クラウスを担ぎ上げる儀式を率いる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

セドリオ・バー・センジー

センジー族の氏族長である。
・所属組織、地位や役職
 センジー族の氏族長。
・物語内での具体的な行動や成果
 溜池の建設や水路の作業に従事する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

ライハートゴードフニャディシェフ・オースン・シェップ

シェップ族の氏族長である。
・所属組織、地位や役職
 シェップ族の氏族長。
・物語内での具体的な行動や成果
 厩舎の掃除や動物たちのブラッシングを行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

婦人会

イルク村の女性たちによる集まりである。
・所属組織、地位や役職
 イルク村の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
 戦場から戦利品を拾い集める。アルナーと共に鬼人族風の料理を作る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

老婆たち

隣領カスデクスから追放された棄民である。
・所属組織、地位や役職
 イルク村の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
 糸を紡ぎながら歌を歌う。メーアの毛の加工を担う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

犬人族達

多様な氏族からなる獣人の一団である。
・所属組織、地位や役職
 イルク村の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
 ガチョウ用の池を掘る作業を行う。ディアスから骨細工の首飾りを受け取る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

犬人族の子供達

イルク村で暮らす犬人族の子供である。
・所属組織、地位や役職
 イルク村の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
 広場で遊ぶ。セナイやアイハンの小さな畑作りを手伝う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

マスティ族

黒毛でがっしりした体つきを持つ氏族である。
・所属組織、地位や役職
 イルク村の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
 イルク村へ移住し、領兵として活動する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

センジー族

茶毛で短い毛を持つ氏族である。
・所属組織、地位や役職
 イルク村の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
 イルク村へ移住し、溜池の建設などを行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

シェップ族

白黒毛で長い毛を持つ氏族である。
・所属組織、地位や役職
 イルク村の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
 イルク村へ移住し、動物たちの世話を行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

孤児の互助組織(ギルド)

イーライ

ディアスが育てた孤児の一人である。アイサの夫にあたる。
・所属組織、地位や役職
 ギルドの商人。
・物語内での具体的な行動や成果
 馬車でイルク村を訪れ、ディアスと再会する。村の需要を調べる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

アイサ

ディアスが育てた孤児の一人である。イーライの妻にあたる。
・所属組織、地位や役職
 ギルドの商人。
・物語内での具体的な行動や成果
 アルナーに王国風のドレスを作り、化粧を教える。羊の毛刈りを手伝う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

エリック(エリー)

ディアスが育てた孤児の一人である。女性の心を持つ。
・所属組織、地位や役職
 ギルドの幹部。
・物語内での具体的な行動や成果
 カスデクス領にギルドの支部を設立する計画を立てる。酒場で騒動を起こし、自警団に捕縛される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 イルク村に残り、交渉役を担当すると宣言する。

ゴルディア

王都にあるギルド本部を仕切る人物である。ディアスの戦友にあたる。
・所属組織、地位や役職
 ギルド長。
・物語内での具体的な行動や成果
 孤児たちをまとめ、ギルドを王国中に拡げる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

鬼人族

モール

鬼人族の族長である。
・所属組織、地位や役職
 鬼人族の族長。
・物語内での具体的な行動や成果
 クラウスの結納品として寝具を贈るようディアスに助言する。ゾルグに族長候補の証を与える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

ゾルグ

アルナーの兄である。銀髪、青い角、赤い瞳を持つ。
・所属組織、地位や役職
 鬼人族の村の住人。族長候補。
・物語内での具体的な行動や成果
 アルナーを連れ戻すためにイルク村を訪れ、アルナーに平手打ちを受ける。ディアスと共にウィンドドラゴンを討伐する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 遠征班の仕事を辞め、モールの下で族長としての教育を受ける。

ルフラ

アルナーの一番下の弟である。
・所属組織、地位や役職
 アルナーの実家の末子。
・物語内での具体的な行動や成果
 アルナーの結婚式の際、家の代表として儀式を務める。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 将来の家長となる予定である。

アルナーの父

アルナーとゾルグの父親である。
・所属組織、地位や役職
 鬼人族の村の住人。
・物語内での具体的な行動や成果
 アルナーの結婚式に出席する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 普通の男気を持つ人物とされる。

アルナーの母

アルナーとゾルグの母親である。
・所属組織、地位や役職
 鬼人族の村の住人。
・物語内での具体的な行動や成果
 アルナーの結婚式に出席する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

アルナーの弟妹達

アルナーとゾルグの弟妹である。
・所属組織、地位や役職
 鬼人族の村の住人。
・物語内での具体的な行動や成果
 過去にゾルグの借金が原因で飢える事態に陥る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

カスデクス領

エルダン・カスデクス

カスデクス領の領主である。人間と亜人が共に暮らせる世界を目指す。
・所属組織、地位や役職
 カスデクス領の領主。半亜人。
・物語内での具体的な行動や成果
 領内の防壁を撤去し、巡警隊を設立する。王都で情報収集を行い、ジュウハと面会する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 王から信頼を得て、免税措置を勝ち取る。

カマロッツ

エルダンの従者である。
・所属組織、地位や役職
 カスデクス領の従者。
・物語内での具体的な行動や成果
 エルダンの情報収集を補佐し、マイザーの動向を報告する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

ゲラント

鳩人族伝書隊の長である。
・所属組織、地位や役職
 カスデクス領の鳩人族伝書隊。
・物語内での具体的な行動や成果
 王都での情報収集に参加し、諜報活動を行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

ジュウハ

自らを王国一の兵学者と自称する人物である。ディアスの元戦友にあたる。
・所属組織、地位や役職
 記載なし。
・物語内での具体的な行動や成果
 公営娼館で無銭飲食をして捕縛される。エルダンと面会し、仕官を希望する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 エルダンから破格の値段を付けられる。

マーテル

カニスの母親である。
・所属組織、地位や役職
 カスデクス領の住民。犬人族。
・物語内での具体的な行動や成果
 カニスのシルクドレスを仕立てる。クラウスとカニスの祝宴に参加する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

行商人一行

ペイジン・オクタド

ペイジン家の八代目当主である。
・所属組織、地位や役職
 ペイジン家の当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 七人の息子を持つ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

ペイジン・ド

フロッグマンの行商人である。
・所属組織、地位や役職
 ペイジン家の長兄。行商人。
・物語内での具体的な行動や成果
 行商中に大事な物を無くして謹慎処分となる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

ペイジン・レ

ペイジン・ドの弟である。
・所属組織、地位や役職
 ペイジン家の次男。行商人。
・物語内での具体的な行動や成果
 兄の代理としてイルク村を訪れる。血無しと呼ばれる獣人たちの移住と交易を提案する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

サンセリフェ王国

サンセリフェ王国の統治者である。
・所属組織、地位や役職
 サンセリフェ王国国王。
・物語内での具体的な行動や成果
 献上されたアースドラゴンの魔石を自身の装飾品に加工しようとする。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

リチャード

サンセリフェ王国の第一王子である。
・所属組織、地位や役職
 第一王子。
・物語内での具体的な行動や成果
 戦後復興を進めながら派閥の拡充に注力する。ナリウスに西方でマイザーを見張るよう命じる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 王国最大の派閥を築く。

マイザー

サンセリフェ王国の第二王子である。
・所属組織、地位や役職
 第二王子。
・物語内での具体的な行動や成果
 派閥の立て直しをせず、資金集めに執着する。復讐のために帝国へ支援を求めていると疑われる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ディアーネの暴走を止められず窮地に立たされる。

イザベル

サンセリフェ王国の第一王女である。
・所属組織、地位や役職
 第一王女。
・物語内での具体的な行動や成果
 元帝国領土で好き勝手に振る舞っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

ヘレナ

サンセリフェ王国の第二王女である。
・所属組織、地位や役職
 第二王女。
・物語内での具体的な行動や成果
 特に目立った動きを見せていない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

ディアーネ

サンセリフェ王国の第三王女である。
・所属組織、地位や役職
 第三王女。
・物語内での具体的な行動や成果
 ディアスを討つためにイルク村を襲撃する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 反省の色が見られないため、遠方の神殿への移送が決まる。

ナリウス

リチャードの密命を受ける人物である。
・所属組織、地位や役職
 リチャードの部下。
・物語内での具体的な行動や成果
 リチャードからマイザーの監視と妨害を命じられる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

帝国

将軍

皇帝直下軍将であった人物である。女性の父親にあたる。
・所属組織、地位や役職
 元皇帝直下軍将。
・物語内での具体的な行動や成果
 戦場にてディアスと正々堂々と打ち合い、戦死する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

防諜長

帝国外廷定例会議に参加する廷臣である。
・所属組織、地位や役職
 帝国の防諜長。
・物語内での具体的な行動や成果
 マイザー派閥を利用してディアスを害する計画を提案する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

内政長

帝国外廷定例会議に参加する廷臣である。
・所属組織、地位や役職
 帝国の内政長。
・物語内での具体的な行動や成果
 工作の失敗原因が民衆の帝国への忠誠心の喪失にあると指摘する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

議長

帝国外廷定例会議を進行する人物である。
・所属組織、地位や役職
 会議の議長。
・物語内での具体的な行動や成果
 書記に対して特定の議事録を残さないよう指示を出す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

書記

帝国外廷定例会議の記録を行う人物である。
・所属組織、地位や役職
 会議の書記。
・物語内での具体的な行動や成果
 議長の指示に従い、特定の記録を残さないように対応する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

廷臣達

帝国外廷定例会議に参加する人物たちである。
・所属組織、地位や役職
 帝国の廷臣。
・物語内での具体的な行動や成果
 王族の暗殺や予算の確保などについて様々な議論を交わす。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

その他

ディアスの父

東の大神殿で神官長を務めていた人物である。
・所属組織、地位や役職
 東の大神殿・神官長(第二席)。
・物語内での具体的な行動や成果
 ディアスが幼い頃に様々なことを教えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ディアスが10歳の頃に流行り病で死亡したとされる。

ディアスの母

東の大神殿で神官長を務めていた人物である。
・所属組織、地位や役職
 東の大神殿・神官長(第一席)。
・物語内での具体的な行動や成果
 ディアスが幼い頃に様々なことを教えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ディアスが10歳の頃に流行り病で死亡したとされる。

ベン

ディアスの父の兄にあたる人物である。
・所属組織、地位や役職
 神官。
・物語内での具体的な行動や成果
 神の教えを乞うために聖地へ旅立ち、行方不明となっていた。イルク村を訪れ、ディアスと再会する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 神殿には戻らず、イルク村で余生を過ごすことを決める。

聖人ディア

建国記の時代に活躍した人物である。
・所属組織、地位や役職
 聖人。
・物語内での具体的な行動や成果
 聖地で神から知識と神具を賜り、神殿を作って教えを広めた。結婚や出産を奨励する教えを残す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 生涯独身で子を残すことなくこの世を去った。

建国王

王国の基礎を築いた人物である。
・所属組織、地位や役職
 王国の建国王。
・物語内での具体的な行動や成果
 聖人ディアの知識と神具の力で国を興し、領土を平定した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

ゴードン

傭兵の隊長である。
・所属組織、地位や役職
 傭兵隊長。
・物語内での具体的な行動や成果
 ディアーネの襲撃において、左翼の部隊を率いていたが、全軍を撤退させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載なし。

領民0人2巻レビュー
領民0人まとめ
領民0人4巻レビュー

展開まとめ

エイマによるネッツロース領報告

大草原ネッツロースを治める【辺境の領主】ディアスは、友好関係を結んだ【亜人の未来を憂う領主】エルダンから、多くの食料や資材、家畜を譲り受けた。

当初16人だった領民は、大耳跳び鼠人族のエイマが【イルク村の教育係】として加わったことを皮切りに増加していく。

ディアス達はネッツロースの開墾へ取り組み、畑作りへ挑戦した。エイマは、【神秘の力を持つ森人族の双子】セナイとアイハンに助けられた恩返しとして、双子達と共に畑へ特別なおまじないを施し、ネッツロースでは不可能と言われていた開墾を成功させた。

さらに隣領カスデクスからは、【働き者の小さき犬人族】マスティ族23人、センジー族25人、シェップ族30人が移住し、領民として迎え入れられる。

その結果、ネッツロース領の人口は16人から95人へと大きく増加した。

第三王女ディアーネとの戦い

【野心に溺れた第三王女】ディアーネは、ディアスを討つためイルク村へ襲撃を仕掛けた。

しかしディアス達は、ネッツロースの住民達の力と、エルダンによる協力を受けてこれを撃退する。

戦いの後には、多くの戦利品がイルク村へともたらされた。

発展したイルク村

ネッツロース領イルク村には、生活基盤となる様々な施設が整備されていった。

村には【ユルト】【倉庫】【厠】【井戸】【飼育小屋】【集会所】【広場】【厩舎】が建設され、さらに【畑(野菜・樹木)】や【溜池】も整備されている。

加えて、ディアーネとの戦いによる戦利品も村へ運び込まれ、イルク村は着実に発展を続けていた。

政略争いへ巻き込まれる辺境領

ディアスは、草原での開墾や村作りを進めながらも、周囲の貴族達による政略闘争へ巻き込まれていく。

それでもディアスは変わらず、自らの歩調を崩さぬまま、仲間達と共にネッツロース領を築き続けていくのだった。

夏風が吹き渡る草原でフランシスとフランソワ

フランシス達の不可解な行動

ディアス達がディアーネ軍と対峙していた頃、フランシスとフランソワは、セナイ達と共にイルク村の外へ出ていた。

しかし二頭は、イルク村から離れ過ぎるのは怖いとして、セナイ達とは別行動を取ることを望み、数人のマスティ氏族の犬人族を護衛役に連れて草原西部へ向かっていく。

普段は慎重で臆病な二頭が迷いなく草原を進んでいく様子に、護衛役の犬人族達は驚きを隠せなかった。

草原の果てとの会話

フランシスとフランソワは、周囲に草しか見えない草原の真ん中まで進んだ所で足を止め、西の彼方をじっと見つめ始める。

そして、まるで誰かと会話をするかのように鳴き声を交わし始めた。

普段なら二頭の鳴き声の意味を理解できる犬人族達も、この時ばかりは内容を読み取ることが出来なかった。

やがて、一陣の風が草原の彼方から吹き込み、その風に紛れるように低く重い声が響いてくる。

その声は、まだ早い、まだ足りないと告げているように聞こえ、さらに、そろそろ家へ帰りなさいとも語りかけているようだった。

犬人族達は、その意味を理解できず困惑と恐怖を覚える。

イルク村への帰還

謎の声を聞いた後、フランシスとフランソワは鳴くのを止め、犬人族達へ向き直って帰村を促した。

二頭は、付き合ってくれたことへの感謝を伝えるような穏やかな鳴き声を上げ、犬人族達も護衛役として気持ちを立て直しながらイルク村へ戻り始める。

しかし犬人族達の胸には、あの声は何だったのか、フランシス達は何をしようとしていたのかという疑問と混乱が残り続けていた。

勝利報告による忘却

イルク村へ戻った犬人族達は、ディアス達が無傷で勝利したとの報せを耳にする。

その知らせによる喜びと安堵は非常に大きく、犬人族達の心を一気に満たしていった。

そして、先程まで抱いていた不可解な出来事への疑問や不安は、喜びの中へ完全に埋もれてしまい、誰の記憶にも残らぬまま忘れ去られていくのだった。

イルク村の倉庫の前でディアス

戦利品整理と村の発展

ディアーネ達との戦いから二日後、ディアスはようやく戦利品と賠償品の整理を終え、達成感に浸っていた。

婦人会が戦場から回収した武器類の多くは質が悪く、鬼人族へ譲渡されることとなった。鬼人族の職人達は、それらを鉄器や鉄具へ作り替える予定であった。

戦鐘は広場へ設置され、食事や緊急事態を知らせる連絡用の鐘として利用されることになる。また、ディアーネが乗っていた月毛の牝馬は、人を乗せることを拒み続けたため、騎乗用ではなく世話をしながら心を開くのを待つ方針となった。アルナーはその馬を「アイーシア」と呼び、大切に扱っていた。

エルダンから贈られた布類は、犬人族達の服へ作り替えられることとなり、イルク村の生活基盤はさらに整っていく。

新たなペイジン来訪

片付けを終えたディアスが草原で休んでいると、見回りへ出ていたセンジー氏族達が駆け戻り、西から奇妙な馬車が近付いていると報告した。

その正体は、以前訪れたフロッグマンの行商人ペイジン・ドではなく、その弟を名乗るペイジン・レだった。ペイジン・ドは失態によって謹慎処分となり、代わって次男のペイジン・レが商隊を率いてきたのである。

ペイジン・レは、注文された品物だけでなく大量の工芸品まで持ち込み、ドラゴン討伐で財を得たディアスへ売り込もうとした。

アルナーとペイジンの交渉戦

当初ディアスは工芸品購入へ消極的だったが、アルナーは金貨を抱えているだけでは意味が無く、行商人へ利益を与えて交易を継続させる方が重要だと説く。

さらにアルナーは魂鑑定を用い、粗悪品や法外な値段の商品を見抜きながら値引き交渉を進めていった。

ペイジンも巧みな話術で対抗したが、最終的には双方が利益を得る形で交渉は決着する。イルク村は食料や雑貨、工芸品、ぶどう酒、さらに六羽のガチョウを手に入れた。

ガチョウ騒動

市場を見て回っていたディアス達は、檻へ押し込められたガチョウ達を発見する。

センジーの一人が不用意に手を伸ばしたことで檻が開き、ガチョウ達は一斉に飛び出してセンジーを追い回し始めた。

その騒ぎを見たマヤ婆さん達は、ガチョウ達の丈夫さや羽毛の質を高く評価し、すぐに飼育計画を立て始める。ガチョウは卵、肉、羽毛をもたらし、さらに番犬代わりにもなる「恵みの鳥」と呼ばれる存在であった。

血無し達の話

交渉後、ペイジン・レは領民募集について報告を行った。獣王国の獣人達は、わざわざ王国側の草原へ移住しようとは考えていなかったが、「血無し」と呼ばれる者達の中には移住希望者が存在するという。

血無しとは、獣人でありながら獣の力や特徴を失い、人間族に近い姿となった者達のことであった。彼らは獣王国内で差別を受けており、逃げ出したいと考える者も少なくなかった。

ディアスは受け入れに前向きな姿勢を示しつつ、隣領カスデクスではエルダンが獣人や亜人を保護していることも説明する。

するとペイジン・レは大興奮し、新たな交易路と商機の可能性へ夢中になり始めた。草原と獣王国、そして王国を繋ぐ交易構想まで語り始め、話は長時間に及ぶこととなるのだった。

交渉を終えて

血無し達の受け入れ準備

ペイジンとの話し合いの結果、血無し達の中で交易を望む者には、ペイジンが商売を教え込み、交易を生業とさせる方針が決まった。イルク村を拠点として、獣王国と隣領を行き来する形で交易を担わせる予定となった。

その際ディアスは、イルク村へ住む条件として、犯罪者や悪人、悪意を持つ者は受け入れないと明言した。アルナーの人を見る目は極めて正確であるため、問題人物を連れて来ればすぐに見抜かれるとも忠告する。ペイジンはその言葉を重く受け止め、必ず相応しい人物を選ぶと誓った。

また、犬人族向けの商品や馬の手配も依頼され、今後の交易に向けた準備が進められていった。

ガチョウ飼育の開始

ペイジン達が去った後、ディアスはガチョウ用の水場や小屋を整備しなければならないと考えていた。ところが、既にマヤ婆さん達と犬人族達が先回りして動いていた。

フランシス達が使っていなかった小屋を移設し、その側に小さな池を掘り、水路まで整備していたのである。さらに柵の資材を鬼人族へ依頼し、エイマや犬人族用の厠の増築まで話を進めていた。

ディアスは皆の働きに感謝し、犬人族達を一人一人撫でながら礼を述べた。

戦勝褒美の配布

ディアスは、戦場へ出た者だけでなく、村を守った全員にも褒美を与えるべきだと考え、広場へ皆を集めた。

戦場へ出た者には金貨二枚、それ以外の者には一枚ずつ配られ、セナイやアイハン、フランシス達にも渡された。

しかし犬人族達は、その金貨を使うつもりはなく、首から下げてずっと持っていたいと願い出る。彼らにとって重要なのは金貨の価値ではなく、「ディアスから貰った褒美」であるという事実だった。

ディアスは困惑するが、アルナーが助け舟を出す。ディアス自らが狩った獣の骨や牙を加工した首飾りを褒美として与えてはどうかと提案したのである。

犬人族達はその案に大喜びし、楽しみにしながら仕事へ戻っていった。

黒ギーの骨とアルナーの助言

その後、セナイとアイハンも首飾りを欲しがったが、素材が黒ギーの骨だと知ると途端に興味を失った。普段ゴミとして捨てている骨だからである。

ディアス自身も、そんな骨を褒美にして良いものか迷っていたが、アルナーは気持ちを込めて丁寧に加工し、宝石を埋め込めば十分価値ある品になると励ました。さらに加工技術も教えてやると申し出る。

ディアスが、自分はそんなに考えが顔へ出ているのかと尋ねると、アルナーは笑みを浮かべたまま何も答えなかった。セナイ達も笑いを堪えきれず、ディアスは自分の分かりやすさを皆に悟られていたのだと理解することになる。

三日後の昼過ぎ、ユルトの中で

骨細工の首飾り作り

ディアスはアルナーから教わりながら、黒ギーの骨を加工した首飾り作りに取り組んでいた。粗雑な物を想像していたものの、実際に作ってみると、白く磨き上げられた骨に模様と「勲章」の文字を刻み、小さな宝石を埋め込んだ見事な品へと仕上がっていた。

さらに鮮やかな赤い紐を通すことで、犬人族達が喜ぶに相応しい出来栄えとなる。しかし、骨は脆く加工が難しく、一つ作るだけで三日を要していた。ディアスは失敗した骨の山を思い浮かべながら、皆の分を作り終えるまでの長さに頭を悩ませる。

そんなディアスに対し、アルナーは焦らず一つ一つ積み重ねれば良いと励まし、いつか気付けば全て終わっているものだと穏やかに語った。

竈場建設の計画

アルナーは続けて、廁の増設と共同の竈場作りを進めたいと相談する。

現在は各ユルトで料理をしているため、道具や食材のやり取りが不便になっており、エイマから共同調理場を作る案が出されたのである。複数の竈やパン焼き窯を並べ、洗い場や井戸、薪置き場まで備えた大規模な施設を構想していた。

ディアスは料理に詳しくないため、細かなことはアルナー達へ任せると快諾した。屋根については、カマロッツから厩舎用の物を購入し、厩舎の増設も同時に頼む予定となる。

さらに、カニスが近いうちに里帰りを行い、その際にカマロッツへの伝言も頼む予定だと説明された。

クラウスとカニスの関係

ディアスがカニスの帰還について尋ねると、アルナーは当然のように、カニスはクラウスと共に暮らすつもりだと答えた。

ディアスは初耳だったため激しく動揺する。

アルナーによれば、カニスは以前から犬人族達の訓練を見学し続けており、その中心に居たクラウスへ想いを寄せるようになったという。ある日、怪我をした犬人族へ真摯に手当てを施すクラウスの姿を見たことで、カニスの想いは決定的なものとなった。

その後、カニスは積極的に距離を縮め、最初は戸惑っていたクラウスも徐々に心を開いていった。そしてディアーネとの戦いを経て、二人は共に生きる決意を固めたのである。

今回の里帰りは、その関係を両親へ報告するためであり、今後は正式な許可を得て結婚する予定だと語られた。

ディアスは食事中の二人の様子をまるで覚えておらず、アルナーから呆れられる。だが、驚きながらも、二人の関係を嬉しく感じていた。

首飾りへの反響

アルナーは、完成した首飾りをそのまま身につけてユルトを出て行った。

ディアスは、アルナーへ渡すつもりではあったものの、まさかそのまま持って行かれるとは思っておらず、それだけ気に入ってくれたのだろうかと考える。

やがてユルトの外から騒がしい声が聞こえ始める。セナイやアイハン、犬人族達が、アルナーの身につけた首飾りを見て、自分達も欲しい、格好良い、可愛いと騒いでいたのである。

その様子を耳にしたディアスは、皆が喜んでくれているのだと実感し、これからも頑張って作り続けようと決意するのだった。

翌日、ユルトの中で

イルク村の賑わいと首飾り作り

イルク村はいつになく活気に満ちていた。カニスの里帰りを案じて落ち着きを失っているクラウス、結婚式の準備に張り切るマヤ婆さん達、廁と竈場の建設を進めるアルナー達、首飾りを欲しがってそわそわする犬人族達など、村全体が騒がしくも楽しげな空気に包まれていた。

そんな中、ディアスはユルトに籠もり、犬人族達へ贈る骨細工の首飾り作りを続けていた。そこへセナイとアイハンが顔を覗かせ、無言で熱い視線を送り続ける。二人が首飾りを欲しがっていることを察したディアスは、二人の分もちゃんと作ると約束し、セナイ達は喜びながら飛び跳ねて去っていった。

クラウスの結納品相談

その後、クラウスが真剣な表情でユルトを訪れ、カニスの両親へ贈る結納品について相談を持ちかけた。ディアスは、自分がアルナーの両親へアースドラゴンの素材を贈った話を語るが、クラウスは自分の力で得た物を贈りたいと強く望む。

そこでディアスは、黒ギーを狩って鬼人族と交換し、メーア布を手に入れて結納品にしてはどうかと提案した。質の高いメーア布なら喜ばれるだろうと考えたのである。提案を聞いたクラウスはすぐに行動を起こし、鬼人族へ相談しに飛び出していった。

独力にこだわるクラウス

クラウスは独力で黒ギーを狩ることへ強くこだわった。マタビの粉も使わず、犬人族達の助けも借りず、一人で草原を駆け巡りながら黒ギーを追い続ける。五日かけて狩れた黒ギーは二頭だけだったが、それでも怪我無く成果を上げていることは十分立派なことだった。

一方、ディアスの首飾り作りは順調に進み、あと数日で必要数を作り終えられそうなところまで来ていた。

カニスの帰還と叱責

やがてカニスが里帰りから戻り、両親から結婚の許しを得られたことを報告する。さらに、エルダンは既に王都へ向かっており、留守中はカニスの父が領主代行を務めていること、竈場用の資材や職人達も手配済みであることが伝えられた。

しかし、クラウスが独力で危険な狩りを続けていると聞いたカニスは怒りを露わにする。皆との繋がりもクラウス自身の力なのだから、素直に頼れば良いのにと叱り、帰って来たら頬を叩いてでも目を覚まさせるつもりだと息巻いていた。

その様子を見ていたアルナーは、無言でディアスの頬を見つめ、自分も必要なら妻として叩くべきなのかと冗談めかして語る。さらに、クラウス達への祝いの品を用意しているのかと問いかけられたディアスは、その準備を完全に忘れていたことに気付かされる。

モールへの相談と祝いの品

焦ったディアスは鬼人族の長モールの下を訪れ、畑の件や交易の話、ディアーネとの戦いの戦利品を渡しつつ、祝いの品について相談した。モールは、新婚夫婦には寝具を贈れば良いと提案する。

病除けや子宝、安産祈願の刺繍が施された寝具一式は、新婚祝いとしても実用性としても申し分ない物だった。さらにモールは子作り用の薬草まで渡そうとしたが、ディアスは以前の騒動を思い出し、断固拒否した。

竈場完成とクラウス達の帰還

その後、隣領から職人達と資材が到着し、竈場と屋根、厩舎の増設工事が進められた。完成した竈場にはレンガ造りのパン窯や休憩用の空間まで備えられ、冬用の布を吊るす工夫も施されるなど、非常に立派な施設となった。

工事を終えた職人達へ報酬を支払い、アルナー達が新しい竈場で祝宴料理の準備を始めた翌日、クラウスとカニスは大量の土産を積んだ荷車と共にイルク村へ帰還するのだった。

祝宴当日

クラウスとカニスの結婚祝宴

クラウス達が隣領から帰還した翌日、イルク村の広場では戦鐘が鳴らされ、クラウスとカニスの結婚祝宴が始まった。広場には村人達や犬人族達、そしてカニスの母マーテルが集まり、円の中心には新郎新婦であるクラウスとカニスが並んでいた。

クラウスは白いクルタを纏い、緊張した様子で背筋を伸ばしていた。一方のカニスは茜色のシルクドレスを身に纏い、穏やかにクラウスへ寄り添っていた。その対照的な姿を見た皆は笑顔となり、広場は温かな空気に包まれていた。

ディアスによる祝福の聖句

進行役を務めることになったディアスは、アルナーが仕立てた神官服のような衣装を身に纏い、聖人ディアの祝福の聖句を暗唱した。人を愛し、家族を作り、人生を謳歌せよという教えを語り終えると、皆は歓声を上げて祝宴を始める。

その後、犬人族達がテーブルや食器を運び込み、アルナー達が用意した豪華な料理が次々と並べられていった。王国風の料理、鬼人族風の料理、焼いただけの肉塊など、数え切れないほどの料理が広場を埋め尽くし、皆の食欲を刺激した。

祝宴の食事とセナイ達のくるみパン

セナイとアイハンは、自分達で焼いた大量のくるみ入りパンをディアスへ差し出した。ディアスが美味しいと褒めると、二人は嬉しさを抑え切れず飛び跳ね始める。しかし注意されると、今度は行儀よく座り直し、大人びた笑顔を見せた。

一方でクラウスとカニスは、豪華な料理を前にしながらも、緊張と衣装を汚したくない気持ちからほとんど手を付けず、周囲の様子を静かに眺めていた。

犬人族の結婚儀式

食事が一段落すると、犬人族達がクラウスを担ぎ上げて村中を回る儀式が始まった。これは新郎を皆へ見せ、既婚者であることを広く知らせる犬人族の伝統だった。

村を一周した後、クラウスは地面へ放り投げられ、独身の犬人族達に囲まれて叩かれる。嫉妬を紛らわせる儀式らしいが、実際には楽しげなじゃれ合いにしか見えなかった。ようやく緊張が解けたクラウスは大笑いしながら犬人族達へ抱きつき、自分達は幸せな家庭を築くと大声で宣言した。カニスもまた、それに応えるように幸せになると宣言し、場はさらに盛り上がっていく。

歌と踊りの祝宴

マヤ婆さん達が祝いの歌を歌い始め、犬人族達は自由気ままに踊り出した。さらにセナイ、アイハン、エイマの三人が広場中央へ飛び出し、以前とは比べ物にならないほど上達した歌を披露する。

その歌声に驚くディアスへ、アルナーは耳の良い三人だから上達も早いのだと説明する。そしてアルナーはディアスの手を取り、踊りへ誘った。ディアスは苦手だと抵抗しながらも、必死に踊り切り、どうにか人前で披露できる程度には形にする。

その後、皆の視線を受けたクラウスとカニスも踊り始めた。静かで丁寧な二人の踊りは決して華やかではなかったが、互いを大切に想う気持ちに満ちており、周囲の者達は自然と笑顔になって祝福していた。

首飾りの配布

祝宴が落ち着きを見せ始めた頃、ディアスはユルトから木箱を運び出した。その中には完成した骨細工の首飾りが収められていた。

首飾りを見た犬人族達は歓声を上げたが、ディアスに一列に並ぶよう言われると素直に従い、順番に首飾りを受け取っていく。皆は大切そうに抱えたり、その場で首に掛けたりして喜びを露わにした。

ディアスはセナイとアイハン、マヤ婆さん達、フランシス達、そしてエイマにも首飾りを渡した。エイマ用は大きさの都合で壁飾りのようになってしまったが、エイマ本人は大喜びで受け取った。

セナイ達の祝いの刺繍

最後に残った首飾りをクラウスとカニスへ渡すと、そこへセナイとアイハンが駆け込んできた。二人は自分達で刺繍した布を祝いの品として差し出す。

布には双葉と月を模した刺繍が施されており、その不器用ながらも真心の籠もった出来栄えを見たクラウスとカニスは、この日一番の笑顔を浮かべた。

それをきっかけに、村人達も次々と祝いの品や祝福の言葉を贈り始める。食材や綺麗な石、岩塩、メーアの角の欠片、エイマの詩など、それぞれが自分なりの形で二人を祝福していった。

祝いの寝具と祝宴の終わり

そこでようやくディアスは、自分が祝いの品として用意していた寝具を思い出す。慌てて倉庫から持ち出した寝具には、病除けや魔除け、子宝と安産を願う刺繍が施されていた。

その意味を理解したアルナー達は満足げな表情を浮かべ、ディアスへ見直したと声を掛ける。ディアスは寝具をクラウス達の新居へ運び込み、そのまま広場へ戻った。

すると広場では、なぜか片付けが始まっていた。アルナー達は、寝具の意味を理解したことで、新婚夫婦を早く二人きりにしてやろうと考えたのである。こうして祝宴は予定よりかなり早く終了となり、クラウスとカニスの新たな生活が始まるのだった。

王都にて エルダン

王都での情報収集

ディアーネの騒動から一ヶ月余りが経過し、エルダンは王との謁見を無事に終えていた。しかし謁見後もすぐには領地へ戻らず、礼儀を理由に王都へ滞在を続けていた。表向きには気楽な貴族の若者を装いながら、商店や酒場、高級食堂を巡って情報収集を行っていたのである。

その裏ではゲラント率いる諜報隊も活動しており、エルダンは王都周辺の情勢や経済、王族達の動向について膨大な情報を集めることに成功していた。

王位継承候補達への評価

エルダンは収集した情報を整理しながら、第一王子リチャードは戦後復興と派閥の拡充に励み、第二王子マイザーは派閥再建を放棄して資金集めに執着していると分析していた。また、他の派閥は状況を静観し、ディアーネは反省の色を見せず遠方の神殿へ移送されることが決まったと確認する。

王との謁見で後継者について意見を求められた際、エルダンは咄嗟にリチャード支持を表明していた。これはディアスとの縁やリチャードの評判を踏まえての判断だったが、結果として正解だったようだと安堵していた。

カマロッツによれば、リチャードはエルダンへの免税措置に当初は反対していたものの、決定後は妨害せず、むしろカスデクス領への投資や交易拡大へ動いていた。また突然支持を表明したエルダンへ驚きはしたものの、現在は寛容な姿勢を見せているという。エルダンは、その器量と人格が想像以上だったと評価を改めていた。

マイザーと帝国への疑惑

その後、カマロッツは特殊な小声で、諜報隊がマイザーと帝国との繋がりを疑っていると報告した。まだ確証は得られていないものの、可能性は高いという。

しかしエルダンは、その件には深入りしないよう命じた。不慣れな王都で無理をして怪我や問題を起こすべきではないと考え、調査はほどほどで止めるよう指示したのである。

アースドラゴンの魔石と王の反応

さらにカマロッツは、エルダンが献上したアースドラゴンの魔石について報告した。王はその莫大な魔力を利用するのではなく、自身の装飾品へ加工しようとしているという。

それは魔石そのものの価値よりも、ディアスから贈られた品であることに意味を感じているためらしかった。しかし周囲の者達は、国家級の価値を持つ魔石を装飾品にすることへ反対しており、説得を試みている最中だった。

その話を聞いたエルダンは深く困惑しながらも、王の深謀遠慮は自分には理解できないと結論づけ、その問題には関わらず領地へ帰還することを決める。そうして支度を整えたエルダン一行は、王都を後にするのだった。

とある街の片隅で

兄弟との再会を目指す旅立ち

イーライは兄貴と慕うディアスの下へ向かうため、妻のアイサと共に旅支度を進めていた。アイサはディアスの妻への贈り物として、生地や化粧品、仕立て道具など大量の荷物を積み込んでおり、イーライは呆れながらもその準備を待っていた。

イーライ達はかつて孤児として暮らしていたが、ディアスが作り上げた孤児達の互助組織によって人生を立て直していた。ディアスは読み書きや働くことの大切さを教え、孤児達を真っ当な人間へ導いた存在であり、イーライ達にとって兄であり父でもあった。アイサもまたそのギルドで出会った仲間であり、二人は長年を共に過ごした末に夫婦となっていた。

ディアスの英雄譚とカスデクス領の宣伝

旅の途中、宿場町で王国兵による演説に遭遇したイーライ達は、ディアスがディアーネ軍を相手に慈悲深く戦った英雄として語られている様子を耳にする。兵士はディアスが敵兵を殺さぬよう手加減していたことや、カスデクス公までもがディアスへ心服したことを熱弁していた。

しかしアイサは、その兵士が本物ではなく、カスデクス公が雇った役者ではないかと推測した。悪評の多かった旧カスデクス領の印象を払拭するため、英雄譚に領地の宣伝を混ぜ込んでいるのだろうと分析したのである。

ディアスの自称婚約者エリーとの再会

その後、別の宿場町で騒ぎを起こしていたエリーと再会する。エリーはディアスの自称婚約者であり、酒場でディアスを侮辱した男達に激昂し、大暴れして自警団に拘束されていた。

イーライとアイサは謝罪と賠償を済ませてエリーを引き取り、宿で事情を聞き出す。エリーは依然として感情的だったが、アイサから冷静に振る舞うよう厳しく釘を刺され、ようやく大人しく従うことを約束した。こうして三人は再び共に旅を続けることになった。

変貌したカスデクス領

カスデクス領へ近づくにつれ、大街道は人と馬車で溢れ返るほど賑わっていた。イーライ達が領境の街へ到着すると、そこには防壁も門も存在せず、人々と商人達が自由に行き交う光景が広がっていた。さらに多種多様な獣人達が人間と共に笑顔で商談を交わしており、その光景は王国の常識から大きく外れていた。

宿の主人から話を聞いたイーライ達は、新領主エルダンが防壁を撤去し、税を廃して交易を活発化させたことを知る。また巡警隊という機動力重視の兵士組織を作り、盗賊や魔物への対応を迅速に行っていることも聞かされた。巡警隊の活躍により治安は大きく改善され、領内経済も発展していた。

砂糖葦農園と獣人達の解放

さらにイーライ達は、巡警隊を支える資金源だという巨大な砂糖葦農園を訪れる。そこには果てが見えないほど広大な畑が広がっており、その規模に三人は圧倒される。

農園で出会ったサイの獣人の老人は、かつて獣人達が奴隷として砂糖作りを強いられていた過去を語った。しかしエルダンが農園主達を追放し、獣人達を解放したことで、今では土地も収穫物も自分達の物として扱えるようになったという。さらに搾りカスから紙を作る新産業まで生み出されており、老人はエルダンへ深い感謝を抱いていた。

老人から茶砂糖を分けてもらったイーライ達は、その濃厚な甘さに驚きながら、カスデクス領の豊かさを実感するのだった。

旅の神官と不思議な羊達

その後、道中で様子のおかしな老人を見つけたイーライ達は、声をかけて事情を聞く。老人は旅の神官であり、ディアスの領地を目指して旅をしている最中だった。また共にいた羊達は非常に高い知能を持ち、人語を理解して会話も可能な存在だった。

神官という立場ながらも、その老人は権威を振りかざすことなく穏やかで、羊達にも優しく接していた。その姿に警戒心を解いたイーライ達は、老人と羊達を旅へ同行させることにした。エリーとアイサは羊達の毛刈りを楽しげに行い、イーライは茶を淹れて一行をもてなした。こうして旅は賑やかなものとなっていった。

草原への到達

やがてイーライ達はカスデクス領を抜け、果ての見えない大草原へと辿り着く。しかし広大な景色を前に、ディアスがどこに居るのか分からず呆然とする。すると草をかき分けて小柄な犬人族達が現れ、盗賊なら噛み付くと警戒しながら声をかけてきた。突然の遭遇に、イーライ達はさらに困惑するのだった。

夏の日差しが降り注ぐイルク村で――ディアス

夏を迎えたイルク村

クラウスとカニスの結婚祝いから数日が過ぎ、イルク村は本格的な夏を迎えていた。畑の作物は順調に育ち、ガチョウの雛も孵り、馬や白ギー達も元気に草を食んでいた。暑さによる体調不良を防ぐため、アルナーは薬草と岩塩と蜂蜜を混ぜた飲み水を用意し、マヤ婆さん達は草を編んだ日除け帽子を作っていた。村人達はそれらを活用しながら夏を乗り切っていたが、セナイとアイハンだけは蜂蜜をもっと増やして欲しいと不満を漏らしていた。

フランソワを見守る日々

ディアスは日課や仕事を終えると、出産を控えたフランソワの側で過ごすようになっていた。大きく膨らんだ腹を抱えたフランソワは、一日の大半を幸せそうに眠って過ごしており、ディアスが撫でてやると安心した様子を見せていた。

フランシスもまた、フランソワのために柔らかい草を探しては噛み砕き、何度も運び続けていた。アルナーは、それは本来の習性ではなく、フランシス自身が考えて行っている行動だと説明していた。ディアスはそんなフランシスも労うようになっていた。

メーアを連れた来訪者

ある日、犬人族の若者が駆け込んできて、メーアを多数連れた客人が来たと報告した。フランソワは若者と言葉を交わし、その客人達がメーアと良好な関係を築いていることを確認すると、ディアスを村の東端へ導いた。

やがて犬人族達に先導された馬車が現れ、その御者台に座る男女の顔を見た瞬間、ディアスは懐かしさを覚え、大声でアイサとイーライの名を呼んだ。再会した三人は涙を浮かべながら抱き合い、互いの無事を喜び合った。

エリックとの再会

その直後、馬車の荷台から赤いドレス姿の人物が飛び出してきた。ディアスはその人物をエリックと呼び、元気そうで何よりだと声を掛ける。しかしエリックは膝から崩れ落ち、悔しげに地面を叩き始めた。どうやら名前を間違えられたことに強い衝撃を受けたらしかった。

その様子を見たメーア達はエリックを囲み、慰めるように鳴き声を上げていた。ディアスはそこで、フランソワ達がメーアと親しい者達なら危険はないと判断していたことを理解する。

白髪の老人の正体

再会を喜び合っている最中、馬車から白髪の老人が姿を現した。老人はディアスを鋭く睨みつけながら近づいてきた。その立ち振る舞いと顔立ちを見たディアスは、老人の正体に気付き、死んだと思っていたと驚愕する。

老人はベン伯父さんと呼ばれる人物であり、ディアスの父の兄だった。ベンは自分を勝手に死人扱いしたことへ怒りを露わにしながらも、長年探し続けたディアスとの再会を果たしていた。アルナーも隠蔽魔法を解除して姿を現し、ディアスから事情を聞いて事態を理解する。

大神殿の神官長だった両親

ユルトへ移動した後、ベンは驚くべき事実を語り始めた。ディアスの両親は、東の大神殿で五席しか存在しない神官長の第一席と第二席を務めていた人物だったのである。しかしディアス本人は、そのことを全く理解していなかった。

ベンは神殿について説明し、建国王と聖人ディアの歴史、神殿が果たしてきた役割を語った。そして神殿内部では、聖人ディアの教えを守ろうとする古道派と、教えを都合よく改変しようとする新道派の争いが続いていたことを明かした。ディアスの両親とベンは古道派に属していたが、やがて新道派が台頭し、古道派は消え去ってしまったのだという。

聖地へ向かっていたベンが帰還した頃には、弟夫婦の家も古道派も消え去っており、神殿は腐敗しきっていた。さらに、ようやく消息を掴んだディアスが戦場で人を殺していたと知った時には、殴ってやりたい気持ちになったと吐露した。しかし今こうして家族を築き、穏やかな生活を送る姿を見て、その怒りも収まったと語るのだった。

エリックの誤解

穏やかな空気が流れ始めたところで、エリックが突然声を荒げた。アルナーがディアスの妻として自然に振る舞っていたことへ激しく反発し、自分こそがディアスと結婚する存在だと言い始めたのである。

その理由は、幼い頃にディアスから「大人になったら好きな指輪を買ってやる」と言われたことだった。エリックはそれをプロポーズだと思い込んでいたが、ディアスとイーライは揃って困惑する。エリックは男でありながら女として振る舞っていたが、アルナーは魂と心が女性なのだろうと静かに受け止めていた。

賑やかな家族達

アイサはセナイ達を新しい妹達だと思い込み、抱きしめて可愛がり始めた。フランシスとフランソワは呆れたように鳴き声を上げていたが、その様子もどこか楽しげだった。

再会した仲間達、新たな家族、メーア達、そして長年行方不明だった伯父まで加わり、イルク村はますます賑やかな場所となっていくのだった。

五日が経って

イルク村で過ごす家族達

イーライ達がイルク村へ来てから五日が経過し、それぞれが村での暮らしを満喫していた。イーライは村中を見て回り、住民達の話を聞きながら、どのような商品に需要があるのかを調査していた。商人としての視点で村を観察する姿は板についていた。

アイサはアルナーやセナイ達、犬人族達やメーア達を可愛がり続け、王国風のドレスを作ったり化粧を教えたりしていた。エリックは意外にもアルナーと親しくなり、家事や針仕事を手伝いながら過ごしていた。アルナーがエリックを否定せず、親身に接していたことが理由だった。

ベン伯父さんは日陰で静かに村人達を見守り、時折助言を与えながら穏やかな時間を過ごしていた。

新たなメーア達の受け入れ

イルク村へ来た新たなメーア達は、かつて王国の悪漢達に誘拐され、酷い環境で監禁されていた者達だった。処刑される危機から逃げ出した彼らは、西方にメーアと共に暮らす勇者がいるという噂を頼りに旅を続け、善良な旅人の助けを受けながらイルク村へ辿り着いたのだった。

ディアス達は彼らを快く受け入れたが、そこで問題となったのが、群れの長を誰にするかという点だった。これまでイルク村ではフランシスが群れの長を務めていたが、新たに来たメーア達にも大柄なオスの長が存在していたのである。

歌による長決め

メーア達は争いではなく、歌によって長を決める習慣を持っていた。広場に現れたフランシスと大柄なメーアは向かい合い、自らの想いを込めた歌を歌い始める。その歌には、群れをどう導くかという覚悟と信念が込められていた。

支持するメーア達は、どちらが長に相応しいかを歌から感じ取り、選んだ側へ加わって合唱する仕組みだった。最初は誰も動かなかったが、長い歌合戦の末、一頭のメーアが大柄なメーアの側から離れ、フランシスの側へ移ったことで流れが変わる。

その後、次々とメーア達がフランシスの側へ移り、最後にはフランソワも加わった。孤立した大柄なメーアは、それでも最後まで歌い続けたが、やがて敗北を認め、自らフランシスの歌へ合流した。こうしてフランシスが新たな群れの長として認められることになった。

エゼルバルドの誕生

戦いを終えた大柄なメーアを、ディアスは静かに称賛した。そして名前を与えようと提案し、最終的に「エゼルバルド」という名を授ける。その名を聞いた大柄なメーアは嬉しそうに鳴き声を上げ、正式にその名を受け入れた。

さらにエゼルバルドの妻達にも、エゼルティア、エゼルグー、エゼルファナ、エゼルミィ、エゼルリーラという名前が与えられた。妻達は皆その名を喜び、夫であるエゼルバルドへ寄り添っていた。

こうしてイルク村のメーアは八頭となり、フランシスがその群れを率いることになった。

新しいユルトの建設

翌日、ディアスはエゼルバルド達のため、新しいユルトの建設を始めていた。自分達のユルトと通路で繋ぎ、自由に行き来出来る構造にする予定だった。アルナーは、エゼルバルド達も近いうちに子を持つだろうから、今のうちに準備しておいた方が良いと考えていたのである。

作業中、イーライはそろそろ帰ろうと思うと打ち明けた。ディアスは当然のことだと受け止め、商売と責任を持つ大人として送り出そうとする。その言葉を聞いたイーライは、少し引き止められると思っていたと漏らすが、ディアスは親として当然だと答えた。

親であり続けるという決意

ディアスは物陰から様子を窺っていたエリックへ向け、自分が誰とも結婚しない理由を語った。誰かの想いに応えれば、その瞬間に親ではなくなってしまうからだと。自分は子供達の親であり続けたいのだと、はっきりと言葉にした。

その言葉を聞いたエリックは、ついに感情を抑えきれず、太い地声で「お父様」と叫びながら泣きついてきた。ディアスはそんなエリックの頭を撫で、いつか相応しい相手を見つければ良いと諭した。

そこへアイサやセナイ達も集まり、皆が撫でて欲しいと頭を押し付けてくる。ディアスは子供達全員の頭を、それぞれが満足するまで撫で続けることになった。

イルク村へ残る者達

完成した新しいユルトの前で休んでいたディアス達の元へ、ベン伯父さんがやって来た。セナイ達はイーライ達が帰ると知って寂しそうにしていたが、ベンは自分が残るから心配するなと優しく慰めた。

ディアスが神殿へ戻らなくて良いのかと尋ねると、ベンはもう戻るつもりはないと断言する。古道派も神殿も失われ、自分はここで余生を過ごし、ディアスを見張りながら暮らすつもりだと語った。

さらにエリックも、自分の店も家も手放したから戻る場所はないと言い、イルク村に残ると宣言する。交渉役として役に立つと胸を張るエリックを見て、ディアスは後でしっかり叱ろうと決意するのだった。

カスデクス領 領主屋敷エルダン

ジュウハとの面会

王都から帰還したエルダンは、ある男と面会する為にカマロッツと共に応接室へ向かっていた。その男の名はジュウハ。自らを王国一の兵学者であり、文化人であり、色男であると称する男だったが、公営娼館で無銭飲食を行い捕縛された人物でもあった。

しかしジュウハは、かつてディアスと共に戦争を戦い、ディアスの頭脳として活躍した人物だとも名乗っていた。その話に興味を持ったエルダンは、直接会うことを決めたのである。

異様な風格を持つ男

応接室へ入ったエルダン達を迎えたジュウハは、罪人とは思えぬ洗練された所作で挨拶を行った。その姿にエルダンは驚きを隠せなかった。

ジュウハは、自らの割れ顎や太い眉、長い黒髪を誇らしげに語り、自分の魅力を大仰に自慢してみせた。その軽薄な態度に呆れながらも、エルダンは本題へ入る。ディアスと共に戦ったという話は本当なのかと尋ねると、ジュウハは酒と女を巡ってディアスと何度も殴り合った仲だと答えた。さらに、ディアスが「戦地で女を抱きたければ結婚しろ」という軍規を作った話を挙げ、それを伝えれば自分の正体が本物だと分かるはずだと語った。

それを受け、エルダンはカマロッツに確認を命じ、ゲラントをディアスの元へ向かわせることにした。

仕官を望む理由

エルダンは、ジュウハが何故わざわざ無銭飲食などという手段を取ったのかを問いただした。するとジュウハは、当初はディアスの元へ向かうつもりだったが、カスデクス領の街並みを見て考えを変えたのだと明かした。

街には美味い酒と飯があり、人々の笑顔に溢れていた。そして何より、エルダンが整備した「公園」に感銘を受けたのだという。民や子供達の為に遊び場を作るという発想に、文化人として価値を感じたのだった。

そのためジュウハは、エルダンに仕えることを望むようになった。しかし普通に仕官を願い出ても相手にされないと考え、あえて目立つ方法を取ったのだと語る。

エルダンの評価

エルダンは、普通にディアスの知人だと名乗れば良かっただけだと呆れながらも、ジュウハの発想と胆力に一定の理解を示した。

さらにジュウハは、自分をどう評価するのかと問いかけた。ディアスは戦争を終わらせる為に自分を「タダ同然」で使ったが、エルダンは違うだろうと語り、自分に高値を付けるよう迫った。

その言葉を受けたエルダンは、ジュウハという男をどう扱うべきか深く思案する。そして、もし話が全て真実ならばという前提付きで、ジュウハへ破格の価値を与える決断を下したのだった。

イーライ達が去り、一週間が経ったイルク村で エリー

エリーの商売計画

イーライとアイサがイルク村を去って七日が経過し、エリーは自分がギルドへ送った提案について考えていた。ディアスの考えた「血無し」達へ馬車を貸し与えて交易させる案は悪くないものの、獣人に排他的な王国内で彼らだけに商売を任せるのは危険だと感じていた。

そこでエリーは、ギルドのカスデクス領支部を設立し、王国内での販売網をギルドが補うという案を出していた。カスデクス領と西方のカエル人の国との交易を繋ぎ、双方の商品を流通させることで大きな利益と人の流れを作り出そうとしていたのである。

さらにエリーは、鳩人族による情報網と、広大な土地、多数の砦、精強な常備軍を持つカスデクス領の強さを改めて認識し、敵ではなく味方で良かったと痛感していた。

活気に満ちたイルク村

洗濯物を干しながら耳を澄ませると、村中から歌声が聞こえてきた。糸を紡ぐ老婆達は、メーアの毛が増えて忙しくなったことを喜ぶ歌を歌い、竈場では犬人族達が美味しい料理を願う歌を歌っていた。子供達も意味のない歌を楽しげに歌い始め、村全体が活気と笑顔に満ちていた。

そんな様子を見たエリーは、この村は本当に素晴らしい場所だと実感する。毎日が祭りのようであり、きっと父イーライがいなくても、自分はこの村を助けたいと思っただろうと感じていた。

卵と雛の話

そこへアルナーが、ガチョウの卵を抱えて現れた。魂の入っていない卵だけを選び、夕食用に持ってきたのだという。アルナーは魂を見る魔法を使い、孵らない卵を見分けていた。

さらに今朝、新たに二羽の雛が孵ったことも教えてくれた。ディアスやセナイ達は、その雛を夢中になって追いかけて遊んでいるらしく、エリーは呆れながらも微笑ましく感じていた。

アルナーの過去

エリーは以前から気になっていた「男気」という価値観についてアルナーへ尋ねた。アルナーは、本来その言葉は働き者の男へ向けられるものだと説明しつつ、自分も昔はそう呼ばれていたと明かした。

その理由は、実家が貧しかったからだった。父親は普通に働いていたが、長兄が遠征先で稼いだ金を全て女へ貢ぎ、実家の財産にも手を付けるような男だったのである。そのためアルナーは、狩りや見回りなど本来女性がやらない仕事まで引き受けて家族を支えていたのだった。

そしてモールの取り計らいもあり、そうした生活の中でディアスと出会ったのだという。エリーはその話を聞き、自分達孤児と似た境遇だったのだと感じ、ますますアルナーを嫌えなくなっていく。

竈場でのゆで卵作り

アルナーが竈場でガチョウの卵を茹でようとしているのを見たエリーは、自分が作り方を教えると言って手伝い始めた。二人は一緒に卵を茹で、そのまま夕食の準備を進めていった。

鬼人族の弓の秘密

休憩中、エリーは弓の稽古をするアルナーを見ながら、そのショートボウの威力に驚いていた。木材を簡単に破壊するその弓は、王国の弓とは全く異なる構造をしていた。

アルナーによれば、その弓は木だけでなく骨や角、腱など様々な素材を組み合わせて作られており、さらにアースドラゴンの素材まで使用されていた。引く際には魔力を込める必要があり、矢を放つ瞬間に魔力を抜くことで凄まじい威力を発揮するのだという。

さらに鬼人族は、馬上でその弓を扱う技術まで持っていた。セナイとアイハンは、すでに馬上から飛ぶ鳥を射落とせるほどの腕前だと聞き、エリーは末恐ろしい才能だと驚愕していた。

不穏な来訪者

そんな話をしている最中、村の西の方から男の怒鳴り声が響いてきた。アルナーの名を叫ぶその声を聞いた瞬間、アルナーの表情は険しく変わる。

アルナーは舌打ち混じりに、生きて戻ったのかと低い声で吐き捨てた。その反応から、エリーはその男こそ、先程話に出ていたアルナーの兄なのだろうと察するのだった。

同じ頃、倉庫の中でディアス

ゾルグの来訪と倉庫での会話

ディアスは、生まれたばかりのガチョウの雛と遊んだ後、倉庫の掃除と整理を行っていた。そこへ結婚後ますます幸福そうになったクラウスが現れ、嬉々として掃除を手伝い始める。クラウスは終始笑顔を絶やさず、鼻歌まで歌いながら作業を進めていた。

作業が一段落すると、クラウスはディアスへ、アルナーとの結婚式について尋ねた。ディアスは、アースドラゴンの素材を結納品としたため鬼人族でも最大級に盛大な式になったこと、豪華な衣装を何枚も重ね着したアルナーの姿、村総出での宴や演劇などについて語っていった。

さらに鬼人族には末子相続の文化があり、末子が家を継ぎ、兄姉はそれを支える役目を担うと説明した。クラウスはその文化へ感心しつつ、演劇を取り入れた結婚式を自分達でもやりたいと話した。

アルナーの兄との衝突

その最中、シェップ氏族の若者が慌てて飛び込んできた。角のある鬼人族の男が現れ、アルナーを家へ連れ戻すと言い出したため、アルナーがその男へ襲いかかったというのである。

現場へ向かったディアス達が目にしたのは、鬼人族の男へ馬乗りになって平手打ちを続けるアルナーの姿だった。男は必死に話を聞いてくれと訴えていたが、アルナーは激怒したまま手を止めようとしなかった。

エリーの説明によって、その男がアルナーの兄・ゾルグであることが判明する。ゾルグは、年上の王国領主へ妹が嫁がされたと勘違いし、ディアスを悪徳領主と思い込んでアルナーを助けに来たのだった。

しかし実際には、ゾルグこそが家を困窮させた張本人だった。遠征で稼いだ金を女へ貢ぎ、家の財産にも手を付けていたため、アルナーは長年苦しめられてきたのである。

兄妹の確執

アルナーは、家族を苦しめ続けたゾルグへ怒りを爆発させた。一方のゾルグは、自分は妹を救うために来たのだと訴える。だが話が進むうち、ゾルグが貢いでいた女に逃げられたこと、魂鑑定で「青」と出た相手を信じ切っていたことが明らかになる。

そこでディアスは、魂鑑定で青が出た相手でも騙されることがあるのかと尋ねた。アルナーは、魂鑑定も魔法である以上、より強い魔力や技術で結果を誤魔化される可能性があると説明した。魂鑑定は万能ではなく、慎重に扱わねばならない魔法だったのである。

ゾルグは結局、その後も言葉を失ったまま黙り込んでしまった。ディアスは夜の草原へ追い出す訳にもいかず、ゾルグをイルク村へ一泊させることにした。

早朝の見送り

翌朝、ディアスはゾルグを鬼人族の村まで見送るため、戦斧を担いで草原を歩いていた。ゾルグは、ディアスが魔力を持たないにもかかわらず魂鑑定で真っ青だったことへ強い苛立ちを抱いていた。

ディアスは、自分も子供の頃は魔法が使えないことを悩み苦しんだが、両親や伯父に支えられ、自分に出来ることをやるしかないと考えるようになったと語った。

ゾルグは、自分は中途半端に魔力が少ないせいで見下され続けてきたのだと吐露する。そんな中でも、自分を馬鹿にしなかったのはアルナーと、騙した女だけだったという。

ウィンドドラゴン襲来

その直後、ゾルグが空の異変へ気付いた。現れたのは五匹ものウィンドドラゴンだった。ゾルグによれば、それは牙と刃のような羽で獲物を切り裂く危険な飛行型モンスターだった。

ディアスには遠目では巨大なトンボにしか見えなかったが、ゾルグは必死に弓を構え、アルナー特製の弓矢で応戦を始める。しかし通常の矢では傷一つ付けられず、ディアスの助言でアースドラゴン素材の矢へ切り替えたことで、ようやく一匹を撃ち落とすことに成功した。

怒ったウィンドドラゴン達は急降下し、ディアスへ襲いかかる。ディアスは戦斧を振るって迎撃するが、その素早さに翻弄され、戦斧を回避されてしまう。それでも素手で頭を掴み、地面へ叩きつけ、首を斬り落として一匹を倒した。

しかし残る三匹は空中を舞いながら反撃し、鋭い羽でディアスの腕や脇腹を切り裂いた。服まで傷付けられたディアスは、アルナーに怒られる未来を想像して深刻な顔になる。

戦斧投擲による逆転

空中へ逃げたウィンドドラゴン達を見上げながら、ディアスは戦斧を投げてみると言い出した。ゾルグは呆れ果てたが、ディアスは本気で巨大な戦斧を振り回し始める。

凄まじい回転と共に放たれた戦斧は、空中で光の円を描きながら飛翔し、ウィンドドラゴンの一匹を真っ二つに切断した。その光景に残るウィンドドラゴン達は混乱し、半狂乱のまま突撃してくる。

ディアスは拳と蹴りでウィンドドラゴンを叩き落とし、そこへゾルグの矢が突き刺さる。こうして五匹全てのウィンドドラゴンを討伐することに成功した。

ゾルグは、自分が憧れていたドラゴン狩りがこんな無茶苦茶な形で達成されてしまったことへ困惑する。そして平然とウィンドドラゴンの死体を積み上げ始めるディアスを見て、素材を傷付けるなと怒鳴りながら駆け寄っていくのだった。

トンボ達との戦いを終えてディアス

ウィンドドラゴン討伐後の帰還

ディアスとゾルグは、討伐したウィンドドラゴンの死体や戦斧、散らばった矢を回収し、鬼人族の村ではなくイルク村へ向かっていた。距離が近かったこともあるが、何よりゾルグ自身が、ドラゴン討伐の功績をアルナーへ見せれば見直してもらえると考えていたのである。

ウィンドドラゴンの首や羽を切り離して丁寧に抱え込むゾルグは、朝とは打って変わって意気揚々としていた。一方ディアスは、戦闘中に回し蹴りを放ったせいでアルナー手製のズボンまで破いてしまったことを気に病み、暗い表情を浮かべていた。

そんなディアスを見て、ゾルグは服が破けた程度で怯える領主など変わっていると笑う。ディアスは、今の自分があるのはアルナーのおかげであり、毎日のように世話になっている以上、頭が上がらないのは当然だと答えた。ゾルグは、名前も中身も王国人らしくない変わり者だと呆れ混じりに語るのだった。

アルナーの冷淡な対応

イルク村へ戻ると、アルナーはまずディアスの怪我を心配した。傷が深くないと分かると、服など替えがあるのだから気にするなと笑って許し、ウィンドドラゴン討伐を称賛した。

しかしゾルグへの態度は冷たかった。アルナーは一応礼こそ述べたものの、討伐したウィンドドラゴンの素材を半分渡すと、それ以上感情を見せず、用が済んだなら鬼人族の村へ帰れと言わんばかりの態度を貫いた。

アルナーによれば、ゾルグが男気を示すべき相手はもう自分ではなかった。今のアルナーはイルク村の住民であり、ディアス達の家族である。ゾルグが本当に家族を想うなら、向き合うべきは実家の弟妹達であり、家長となるルフラだったのである。

とはいえ、ゾルグがウィンドドラゴンを討伐した功績そのものについては認めていた。ドラゴン素材は高価であり、二匹半分でも家や家畜、結納品に困らぬほどの価値があった。そのためアルナーは、ゾルグが男として成果を示したこと自体は喜ばしく感じていたのである。

ドラゴン討伐祝いの宴

ゾルグを追い返した後、アルナーは大きな声で宴の開催を宣言した。夕刻になっても宴は大いに盛り上がり、歌や踊りの中心には常にアルナーの姿があった。

ディアスは、これは自分のドラゴン討伐祝いというより、アルナーが元気でいることを皆で祝う宴なのだろうと感じ、小さく笑う。やがて休憩がてら村を歩き回っていると、見知らぬメーアが村外れをこそこそ歩いているのを見つけた。

謎のメーアとサンジーバニー

ディアスが近づくと、そのメーアは露骨に動揺した。ディアスは迷い込んだのかと話しかけ、撫でようと手を伸ばす。しかしメーアは驚くほど素早く飛び退き、人の言葉で喋り始めた。

メーアは、騒ぎに紛れてこっそり荷物を置いていくつもりだったのに面倒なことになったと愚痴を零しながら、麻袋をディアスへ投げ渡す。そして、主の命令により「サンジーバニーの葉三枚と種一つ」を下賜すると告げた。

さらに、これからも主を害するドラゴンを倒し、子供達を守るよう努めよと命じる。そしてサンジーバニーを金儲けや悪事に使おうとすれば、葉も種もたちまち枯れると警告した。

あまりに不可解な出来事にディアスが呆然としている間に、メーアは音も気配もなく姿を消してしまった。残された麻袋だけを見つめながら、ディアスは一体何が起きたのか理解できず、しばらく立ち尽くすのだった。

それぞれのこれから

帝国外廷会議とディアスへの警戒

帝国外廷の定例会議では、敗戦後の帝国再建について重苦しい議論が続いていた。そんな中、防諜長はサンセリフェ王国の第二王子マイザー派が、ディアスへの復讐のため帝国へ支援を求めていると報告した。

廷臣達は、内通者支援が発覚すれば王国との戦争再燃に繋がると危惧し、始末すべきだとの意見を出す。一方、防諜長は彼らを利用してディアスへ害を及ぼす案を示したが、過去の内乱工作失敗を引き合いに出され、帝国へ更なる損害を与える気かと批判された。

その議論の最中、皇帝直下軍将の地位を継いだ女性が口を開く。彼女は、ディアスは父の仇でありながら同時に大恩人でもあると語った。帝国側の卑劣な罠を正面から踏み抜き、武人として誇りある戦いを与えたディアスのおかげで、父は名誉ある死を遂げられたのだという。彼女は、ディアスを害するなど論外だと断言し、マイザー派の処分を強く求めた。

結局この会議では結論が出ず、問題は次回へ持ち越されることとなった。しかし数日後、一部廷臣達は予算を確保し、マイザー派への支援を進め始める。王位争いだけしていればよいものを余計な行動ばかりするマイザーへの苛立ちを見せつつも、王国を内側から揺さぶろうとしていたのである。

リチャードによる利用策

一方、リチャードはマイザー達の動きを既に把握していた。ナリウスが帝国の支援は大問題ではないかと驚くと、リチャードは冷静に、把握している以上は脅威ではなく利用可能だと語る。

リチャードは、マイザー達には西方へ意識を向け続けてもらい、帝国の金を浪費させることが理想だと考えていた。そのためナリウスへ、西方でマイザー達を監視し、必要に応じて妨害あるいは誘導するよう命じる。

報酬を釣り上げようとしたナリウスだったが、リチャードは既に彼の動向まで把握しており、カスデクス領への新支部設立計画まで知っていた。その情報量と先読みの恐ろしさに戦慄したナリウスは、結局依頼を受けざるを得なくなるのだった。

エルダンの過労と決意

カスデクス領では、エルダンが王都滞在中に溜まった膨大な政務を処理していた。報告書や計画書、新事業の立案書、各地からの手紙などを凄まじい勢いで片付け、夕刻には全てを終わらせる。

妻達やカマロッツは、働きすぎるエルダンを心配していた。しかしエルダンは休もうとせず、翌朝にはディアスの下へ向かうと宣言する。王からの言葉や免税、家名と叙爵の件を、一刻も早く直接伝えなければならないからだった。

さらにエルダン自身、ディアスの村をどうしても見たかった。無理を押してでも向かおうとするエルダンの姿に、カマロッツは深い心痛を抱く。そして廊下で夕日を見つめながら、あらゆる病を癒すというサンジーバニーが、なぜエルダンには与えられないのかと、神々への恨み言を零すのだった。

ゾルグの族長候補入り

その頃、鬼人族の村へ戻ったゾルグは、族長モールに呼び出されていた。ウィンドドラゴン三匹を討伐した功績を認められたゾルグへ、モールは族長候補にのみ与えられる宝である角細工を渡す。

突然のことに混乱するゾルグへ、モールは今までの素行が酷かったため、いきなり族長にはできないが候補には相応しいと告げた。ドラゴン殺しであるディアスと縁を持ち、さらに自身もドラゴンを討伐したゾルグは、鬼人族にとって極めて価値ある存在となっていたのである。

モールは、今後は遠征班を辞め、自分の下で族長として必要な覚悟と経験を学べと命じる。さらに嫁取りについても、自分が相応しい相手を決めると断言した。モールの圧力に逆らえなかったゾルグは、頷いて全てを受け入れるのだった。

『エイマの日記』

エイマによる夏の日記と双子達の成長

夏の盛り、エイマはセナイとアイハンの世話に追われる日々を送っていた。二人は勉強にも遊びにも全力で取り組み、その活力に付き合うだけでも大変だったが、さらに周囲へ秘密にしながら進めなければならない「仕事」も抱えていたため、エイマの疲労は大きかった。

その「仕事」とは、ディアスの畑へ施された「円」を増やすことと、セナイ達が作った畑にも新たな「円」を設置することであった。特に広場に作られた畑は人目が多く、隠れて作業するのは非常に苦労した。しかし、その成果もあって畑の作物達は順調に育っていた。

セナイとアイハンの願い

双子達の畑には、両親の芽、アルナーが扱う薬草、そして二人の好きな果物の種などが植えられていた。作物が育つ様子を、セナイとアイハンは毎日心から楽しそうに眺めていた。

特に薬草への執着は強かった。二人の両親は病によって命を落としており、その経験から病という存在を深く憎み恐れていたのである。だからこそ、人を癒やす薬草を育てられることに大きな喜びを感じていた。

二人は毎日のように薬草の世話をし、アルナーから薬草知識を熱心に学んでいた。その姿には、もう二度と病で家族を失いたくないという強い決意が宿っていた。

森人族の知識とサンジーバニー

セナイとアイハンは時折、両親の「芽」に触れて意思疎通を行っていた。まだ芽の段階であるため完全な会話は不可能だったが、それでも僅かな知識を受け取ることは出来るようだった。

その知識の中で語られていたのが、「サンジーバニー」という伝説の薬草であった。それはどんな病でも治せるとされる究極の薬草であり、森人族ですら一度も実物を見たことがない存在だった。誰も見たことがないにもかかわらず、その名だけは伝承として残っていたのである。

こうしてセナイとアイハンは、サンジーバニーを見つけ出すことを目標として抱くようになった。森人族の秘密を守るため事情を他人へ話すことも出来ず、存在するかも分からない薬草を探すという無謀な挑戦であったが、それでも二人が諦めることはないだろうと、エイマは感じていた。

そしてエイマは、神々の気まぐれでも偶然でも良いから、その伝説の薬草が二人の前へ現れてくれないものかと、密かに願うのだった。

書き下ろし家族の絆

皆で湖へ、ピクニックに

暑気払いの湖遊び

夏の盛り、風も吹かず湿気と熱気がこもり続ける日々に耐えきれなくなったアルナーは、イルク村中へ響く声で湖へ泳ぎに行くと宣言した。その提案に村人達は大いに盛り上がり、ディアス達は北西にある湖へ向かうことになった。

同行したのはディアス、アルナー、セナイ、アイハン、エイマ、フランシス、フランソワ、クラウス、カニス、エリー、ベン伯父さん、それに犬人族達であった。一方でマヤ婆さん達やエゼルバルド達は村に残ることを選んだ。

ディアスは着替えや昼食を準備し、鬼人族の村から釣り道具まで借り受けて出発した。セナイ達は早く行きたいと騒いでいたが、ディアスは景色を楽しみながらゆっくり歩いて湖へ向かった。

湖で過ごす穏やかな時間

湖へ近付くにつれ冷たい空気が流れ込み、それを感じたセナイとアイハンは歓声を上げて駆け出した。湖は澄んだ青色に染まり、穏やかな水面を広げていた。

ディアスが腰より深い場所へ入るなと注意すると、セナイ達はすぐに湖へ飛び込み、犬人族達も続いた。エイマは水へ漂い、フランシスとフランソワは水草を食み、クラウスとカニスは釣りを始め、それぞれが自由に湖を楽しみ始めた。

ベン伯父さんは岸辺で休憩し、エリーはセナイ達の脱ぎ散らかしたビレーシャを丁寧に畳んでいた。その中にアルナーの衣装が混ざっていることに気付いたディアスが湖を見ると、アルナーは湖畔で髪を解き、水を通して静かに楽しんでいた。ディアスは、誰よりもアルナー自身がこの湖遊びを楽しみにしていたのかもしれないと思い、小さく笑った。

賑やかな湖畔の風景

湖では様々な楽しみ方が広がっていた。セナイとアイハンは泥で顔を塗り、髪を角のように整えてアルナーの真似をしてはしゃいでいた。

エイマは水面に浮かびながら冷たい水を満喫し、クラウスは大物を釣り上げようと奮闘していた。カニスやフランシス達はその応援に熱中し、ベン伯父さんとエリーは岸辺で茶を飲みながら穏やかな時間を過ごしていた。

一方で犬人族達は水泳競争を繰り広げ、アルナーはその喧騒から少し離れた場所で静かに時を楽しんでいた。

そうした平和で穏やかな時間は、昼食を挟みながら夕刻まで続いた。

帰路と夏の終わりの風

十分に遊び尽くし、疲れ切ったセナイとアイハンが眠ってしまう頃、北の山から強い風が吹き込み、湿気を払う乾いた涼風が草原を駆け抜けた。

まるで暑気払いの終わりを見計らったような風に、ディアス達は大笑いした。そして眠る双子と大量の釣果を抱えながら、気怠さと満足感を抱いてイルク村への帰路につくのだった。

特別書き下ろし。王国風のアルナー

ある日のイルク村でディアス

アルナーによる王国文化の研究

イーライとアイサがイルク村を去った翌日、ディアスが仕事を終えてユルトへ戻ると、アルナーがアイサの残したドレスや化粧品、仕立て道具を並べて熱心に調べていた。

アルナーはドレスの縫い目や構造を細かく確認しながら、独り言のようにその技術を分析していた。ディアスは、既に十分な技術を持ちながらなお学ぶことを止めないアルナーへ改めて感心する。

ディアスが邪魔をしないよう静かに外へ出ようとすると、アルナーは気配を察して、いつも通り休んでいて構わないと声をかけた。そこでディアスは静かに腰を下ろし、アルナーの作業を眺めることにした。

外の文化への感心

アルナーは、外から来た血や知識は金にも勝るという言葉を口にしながら、王国文化の優秀さを語り始めた。

ドレスには、部位ごとに針や糸の扱いを変えることで強度や動きやすさを調整する工夫が施されており、それはディアスやクラウスの鎧にも共通している技術だとアルナーは評価した。

王国の技術者達は、ただ美しいだけでなく、実用性と機能性まで追求している。その発想と知識量に、アルナーは強い興味を抱いていたのである。

王国風の姿へ変わるアルナー

ドレスの観察を終えたアルナーは、今度は化粧道具を使い始めた。目元を彩り、頬紅と口紅を施し、髪を整え、最後にアイサの仕立てた麻布のドレスをゆっくりと身に纏う。

そうして手鏡で姿を確認したアルナーは、ディアスへ向き直って「どうだ」と問いかけた。

その姿は、肌や髪の色こそ変わらないものの、まるで王国の少女そのもののようであった。服装と化粧だけでここまで印象が変わるのかと、ディアスは思わず見惚れてしまう。

アルナーは、そんなディアスの反応に気付くと、少女らしい悪戯っぽい笑みを浮かべた。そして、たまにはこういう格好も悪くないと楽しげに語る。

慌てて我に返ったディアスが、よく似合っていると告げると、アルナーはさらに嬉しそうな笑みを見せるのだった。

領民0人2巻レビュー
領民0人まとめ
領民0人4巻レビュー

同シリーズ

領民0人スタートの辺境領主様

「領民0人スタートの辺境領主様 1巻 蒼角の乙女」の表紙画像(レビュー記事導入用)
「領民0人スタートの辺境領主様 1巻 蒼角の乙女」
「領民0人スタートの辺境領主様  2巻  双子の祈り」の表紙画像(レビュー記事導入用)
「領民0人スタートの辺境領主様  2巻  双子の祈り」
「領民0人スタートの辺境領主様 III 家族の絆」の表紙画像(レビュー記事導入用)
「領民0人スタートの辺境領主様 III 家族の絆」
「領民0人スタートの辺境領主様 IV 絆の結実」の表紙画像(レビュー記事導入用)
「領民0人スタートの辺境領主様 IV 絆の結実」
「領民0人スタートの辺境領主様 V 白雪の日々」の表紙画像(レビュー記事導入用)
「領民0人スタートの辺境領主様 V 白雪の日々」
「領民0人スタートの辺境領主様 VI 蒼穹の狩人 」の表紙画像(レビュー記事導入用)
「領民0人スタートの辺境領主様 VI 蒼穹の狩人 」
「領民0人スタートの辺境領主様 VII 旅宿の香風」の表紙画像(レビュー記事導入用)
「領民0人スタートの辺境領主様 VII 旅宿の香風」
領民0人スタートの辺境領主様8の表紙画像(レビュー記事導入用)
領民0人スタートの辺境領主様 Ⅷ 救国の英雄達
領民0人スタートの辺境領主様9の表紙画像(レビュー記事導入用)
領民0人スタートの辺境領主様  Ⅸ 春暁の盃事
領民0人スタートの辺境領主様10の表紙画像(レビュー記事導入用)
領民0人スタートの辺境領主様  Ⅹ 貴人の風儀
領民0人スタートの辺境領主様11の表紙画像(レビュー記事導入用)
領民0人スタートの辺境領主様 XI(11) 碧海の旅人
領民0人スタートの辺境領主様12の表紙画像(レビュー記事導入用)
領民0人スタートの辺境領主様 XII(12) 奇蹟の湧水
領民0人スタートの辺境領主様13の表紙画像(レビュー記事導入用)
領民0人スタートの辺境領主様 XIII(13) 賢鼠の冒険
領民0人スタートの辺境領主様14の表紙画像(レビュー記事導入用)
領民0人スタートの辺境領主様 XIV(14) 次代の旗手

その他フィクション

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