物語の概要
■ 作品概要
『領民0人スタートの辺境領主様 XII 奇蹟の湧水』は、風楼による異世界開拓ファンタジー作品であり、辺境領地を舞台にしたスローライフと領地運営、異種族交流を描くライトノベルである。
戦場で「救国の英雄」と称えられながらも、褒賞として人口ゼロの辺境領地を与えられた主人公ディアスが、多種多様な種族と交流しながら村を発展させていく物語である。
本巻では、荒野に現れた奇蹟の湧水を中心に、メーア神殿に関わる人々の活動や、ゴブリン族との交流、領地の発展、そして領民達の日常が描かれる。さらに盗賊や外部勢力への対応も進み、メーアバダル領が一つの共同体として成熟していく様子が丁寧に綴られている。
戦いや陰謀だけでなく、食事、祭り、交易、文化交流といった生活描写に重点が置かれている点が、本シリーズの大きな特徴である。
■ 主要キャラクター
- ディアス:本作の主人公。元は戦場で活躍した英雄であり、現在は辺境領主として領地運営に励んでいる。豪快かつ誠実な性格で、多種族から深い信頼を寄せられている。
- アルナー:蒼角を持つ鬼人族の女性。ディアスの最も近しい存在であり、村の生活を支える中心人物でもある。面倒見が良く、家庭的な一面を持つ。
- セナイ:森人族の双子姉妹の一人。活発で好奇心旺盛な性格であり、植物や自然に関する特別な才能を持つ。
- アイハン:セナイの双子の妹。姉と共に行動することが多く、素直で感受性豊かな少女である。
- エイマ:砂漠出身の女性。独特な文化や哲学を持ち込み、領地に新たな価値観をもたらしている。
- フランシス:イルク村のメーア達を率いる長。高品質な毛を持つメーア達の代表的存在であり、ディアス達と深い信頼関係を築いている。
- イービリス:海からやってきたゴブリン族の長。豪快な性格ながら知識も豊富であり、海の世界について語る場面が印象的である。
- モント:ディアスの旧友であり、義足を付けた隻脚の鬼教官。領兵達の鍛錬や関所の管理を担当している。
- クラウス:東側関所を任されている実務担当者。商人達への対応や関所運営を堅実にこなしている。
■ 物語の特徴
本作最大の特徴は、「辺境開拓」と「多種族共生」を中心に据えた穏やかな異世界運営描写である。
一般的な異世界ファンタジー作品では、戦闘や冒険が中心となることが多いが、本シリーズでは村づくりや文化交流、食事や祭りなどの日常描写に大きな比重が置かれている。鬼人族、犬人族、森人族、洞人族、ゴブリン族、メーアなど、多様な種族が自然に共存している点も魅力である。
また、本巻では「奇蹟の湧水」を巡る交流や、「砂見」と呼ばれる文化的行事、メーア達の日常などが丁寧に描かれており、異世界の生活文化そのものを楽しめる内容となっている。
さらに、ディアス自身が圧倒的な武力を持ちながらも、力だけではなく人との繋がりや信頼を重視している点も本作の魅力である。
書籍情報
領民0人スタートの辺境領主様 Ⅻ 奇蹟の湧水
著者:風楼 氏
イラスト:キンタ 氏
出版社:アース・スターノベル
発売日:2024年9月13日
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あらすじ・内容
アクアドラゴンとの戦いに苦戦するも、まさかの闖入者、巨大メーアの出現によって勝利を掴んだディアス達。「メーアバダル領に神様が降臨した!」と国内外で話題になる一方でディアスはいつもと変わらず暮らしていたが、ある日野生の妊娠したメーアが夫とはぐれて困っている姿を発見する。放ってはおけないと村をあげての捜索が始まるが、まだ幼いメーアのフランがまさかの提案をして……!?エルダンが久しぶりにメーアバダル領を来訪するが、彼に同行していた猪人族の男、グリンは人間族であるディアスを信用しておらず――グリンが起こしたトラブルを受け、ディアスの伯父であるベンディアは『教誨』を行うこととなり……!?エルダンの滞在中に、今度は獣人国からオクタドが旅芸人の一座を伴い現れ、領民達は大いに楽しむが、一方で森の中の関所ではクラウスが盗賊の集団と対峙していて……。メーアバダル領、神の降臨でさらに発展中!?
感想
奇蹟と神話の誕生がもたらす、圧倒的なカタルシス
ベンの祈りによって荒野に湧水が発生し、海へと続く新たな川が生まれる。かつてザリガニを倒した巨大メーアの出現に続き、今度はトカゲの神が顕現して川を作るという展開はなかなかにスケールが大きい。
そして、海の民であるゴブリン達が川を下って海へ帰る準備を始め、そのための船をドワーフ達がザリガニの殻で作るという多種族の連携は、この領地ならではのクリエイティブな内政の面白さに満ちあふれている。
一方で、これほどの奇蹟が起きるメーアバダル領に対し、王都(首都)では人族至上主義を掲げる新道派の教義が蔓延しているという政治的背景が、物語に絶妙な緊迫感を与えていた。神の降臨を面白く思わない勢力が多数存在するなかの混沌とした世界情勢は、単なるスローライフに留まらない骨太なドラマとしての深みを引き出している。
誠実さが結ぶ絆と、多角的に進化する領地インフラ
領内の施設整備や経済基盤が、生活の知恵と外交の成果によって多角的に進化していくプロセスは、読んでいて非常に心地が良い。
特に印象深かったのは、ナルバントが完成させた「氷溜め池」である。冬の寒気を利用して氷を作り貯蔵するだけでなく、浄化効果や避難施設まで備えているという合理的な設計には驚かされた。これにより、冬支度が本格化するイルク村において、物資の保存や新たな交易の可能性が劇的に広がる予感を抱かせてくれる。
また、各関所を守る者たちの自立した動きも頼もしい。西側関所のモントが輸入依存からの脱却を目指して水源を活用した畑の拡充を構想する姿や、東側関所のクラウスがドラゴン素材を狙う商人たちを冷徹に見極め、節度ある商人とは確かな信頼関係と情報交換を進めていく様子からは、領地が組織として確実に成熟していることが伝わってくる。
これらを支えるのは、領主であるディアスの成長と誠実な人柄に他ならない。領民数は237人と変化はないものの、ディアス自身が礼儀作法を身につけたことで、悪意を持って来訪する貴族に対しても平和的かつ毅然と対処する姿には、確かな風格が漂い始めていた。その実直さは外部にも響き渡り、獣人国の商人ペイジンがアースドラゴン討伐と避難民保護への謝礼として、治癒の力を宿す家宝の絨毯を贈る展開には、ディアスが積み重ねてきた人徳の重みを感じずにはいられない。
命を救う温かい日常と、その裏で光る防衛の刃
妊娠した野生のメーアを保護し、はぐれてしまった伴侶を捜索するエピソードは、本作のなかでも特に優しい光を放っていた。鷹人族の協力を得て、まだ幼いメーアのフランが飛行カゴに乗って空から懸命に聞き込みを行い、負傷した父メーアを発見するプロセスには深く感情移入させられた。発見後、重傷を負った父メーアに対し、家宝の絨毯が持つ治癒の力を起動する前に「まずは異物を除去してから」という的確な治療手順を踏んで完治させるリアリティのある描写も、物語の説得力をより高めている。
この救出劇に対し、鬼人族のモールから感謝として金塊が贈られ、家畜の増加や移動商人の導入といった領内物流の拡大へと話が進む流れは、優しさがそのまま領地の豊かさへと還元される本作らしい素晴らしいサイクルである。
しかし、イルク村が歓喜に沸く祝宴やダンスパーティの裏では、容赦のない現実も動いていた。ドラゴン素材を目当てに森の中の関所を襲撃してきた盗賊の集団に対し、クラウスや神官兵らが一切の油断なく立ち回り、完全に壊滅させる戦闘シーンのキレ味は見事という他ない。捕らえた盗賊の一部から背後関係が疑われるなか、マーハティ公エルダンと連携して処遇を進める方針をとるなど、大人の外交劇としての手際の良さにも深く感心させられた。
広がる世界観と、未来への確かな期待が残る読後感
本編の後に描かれた書き下ろしや付録のエピソードは、この物語の世界観をさらに立体的で魅力的なものにしてくれている。
書き下ろしエピソードにおいて、エイマが語る砂漠文化「砂見」の情緒深さや、奇蹟の湧水地へと遠征して催された宴の描写は、辺境の荒野が持つ独特の美しさを鮮烈に伝えてくれた。過酷だったはずの荒野が、今や新たな未来への期待に満ちた聖地へと変わりつつあることに、深い感動を覚えざるを得ない。
また、付録として収録された群れの長フランシスの一日も、非常に興味深い内容であった。メーアたちが自らの毛を重要な資源として誇りを持って手入れし、それによって村の暮らしを支えているという生態が丁寧にまとめられており、人間と動物がただ飼育関係にあるのではなく、対等なパートナーとして共生していることが改めて伝わってきた。
鷹人族のサーヒィが救助した海からの一団との出会いをきっかけに、海との交易を見据えた水路や街道を荒野に通す壮大な計画も立ち上がり、メーアバダル領の未来はどこまでも広がっている。エルダンの来訪によって王都の不穏な情勢が絡み合い、ディアスの存在感が周辺諸国の政治・外交に波及していくなかで、この温かくも力強い理想郷がどのように進んでいくのか、次巻への期待が止まらない。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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考察・解説
辺境領の発展
『領民0人スタートの辺境領主様』第12巻において、辺境領(メーアバダル領)の発展は、単なる村のインフラ整備にとどまらず、防衛拠点の要塞化や新たな資源の獲得、さらには海への交易ルート開拓という国家規模のプロジェクトへと大きく飛躍している。本稿では、第12巻における辺境領の発展状況について解説する。
関所の要塞化と領内の自給体制強化
東西に築かれた関所は、単なる検問所の枠を超えて発展している。
- 東側関所は物見櫓や地下通路を備え、大軍の展開を阻む砦のような規模にまで拡張されており、訪れたマーハティ公エルダンを驚愕させるほどの防衛力を誇っている。
- 獣人国と接する西側関所では、モントの指揮のもと領兵たちが有事に備えた開墾(畑作り)を行っている。
- 領内の人口増加に伴う食料需要を満たすため、水源を活用したさらなる農地拡大や兵士の増員計画も進められている。
氷溜め池の完成と保存技術の向上
洞人族のナルバントたちによって、冬の寒気を利用して氷を作る氷溜め池と大規模な地下貯蔵庫が完成した。
- 洞人族の髭が持つ浄化作用を利用することで非常に綺麗な氷を作ることができ、来年の夏には果実水や酒を冷やすだけでなく、他領へ高値で売れる特産品になると期待されている。
- 氷を利用して食材の保存期間を延ばすことで備蓄を増やし、将来的な海産物輸送にも役立つとされている。
- さらに地下にはドラゴン襲撃時用の巨大な避難施設も併設され、領民や家畜の安全も確保された。
荒野の奇跡の湧水と海への交易ルート開拓
ベン伯父さんが荒野で神(喋る巨大トカゲ)に祈りを捧げたことで、地面から大量の水が湧き出し、海まで続く新たな川が誕生した。
- これにより過酷だった荒野に、大雨や強風の被害がない気候と葉肥石を活かした畑作(葡萄や砂糖葦など)の可能性が生まれ、セナイとアイハンたちが種を撒いて緑化を進めている。
- この川を利用してゴブリン族(魚人)が海へ帰るための道が開かれた。
- 洞人族が彼ら専用の交易船(水中からの牽引や乗り込みに対応)の建造を開始するなど、海運を利用した一大物流ネットワークの構築が一気に現実味を帯びてきた。
経済の活性化と領内移動商人の誕生
近隣勢力との交流も経済の発展を後押ししている。
- エルダンから大量の食料や家畜、宝石などが贈られ、獣人国の商人ペイジン・オクタドからは特産品の高級布や武器、貴重な装丁の書物などが持ち込まれた。
- 経済規模が拡大する中、孤児ギルド出身のアイサとイーライが領内移動商人として独立を宣言した。
- 彼らは領内の各施設や村を巡って物資を輸送・販売し、外部から来る商人の管理も担うことで、メーアバダル領の物流と経済活動をより円滑に、そして強固に支える役割を果たすことになる。
まとめ
このように、第12巻における辺境領の発展は、関所の要塞化や氷溜め池の建設、領内移動商人の誕生といった内政の強化にとどまらない。荒野への奇跡の湧水出現を契機として、未知の海運を利用した巨大な物流・交易ネットワークの構築という、国家規模の壮大なプロジェクトへと確実に歩みを進めているのである。
ドラゴン討伐
『領民0人スタートの辺境領主様』において、ドラゴン討伐は主人公ディアスの規格外の強さを示すだけでなく、領民や異種族との絆を深め、領地発展の大きな契機となる重要なイベントである。本稿では、作中で描かれている特徴の異なる様々なドラゴンとの激闘について解説する。
アースドラゴン討伐(亀型)
アースドラゴンは巨大な亀のような姿をしたモンスターである。
- ディアスが最初に遭遇した際は、相手が強固な甲羅に籠もる中、自己修復する戦斧で日没まで叩き続けた。
- アルナーが狙われたことに激怒して甲羅を叩き割り、一撃で討伐を果たした。
- この圧倒的な武勇は男気の証明としてアルナーとの婚約の決定打となり、必殺技である戦斧竜甲断を生み出すきっかけとなった。
- 後の大侵攻時には、モントの指揮下でジョー達領兵が投槍器や大網を駆使し、巨大な落とし穴に突き落として討伐するという、人間ならではの道具と知恵を使った組織的な討伐も成功させている。
ウィンドドラゴン討伐(トンボ型)
ウィンドドラゴンは巨大なトンボのような姿をした空を飛ぶモンスターである。
- 最初はディアスがゾルグと共闘して5匹を討伐したが、この時は傷が化膿し生死の境を彷徨った。
- その後、再び5匹のウィンドドラゴンが現れた際は、攻撃を自動で弾くオリハルコンの全身鎧と手元に戻る投げ斧を装備し、鷹人族のサーヒィと共に挑んだ。
- 空中戦で不利になったサーヒィに投げ斧を掴ませて反撃させるなど、種族を超えた見事な連携で犠牲者ゼロの討伐を達成した。
- この手柄により、サーヒィは一族の悲願であるドラゴン狩りを成し遂げ、婚約者達と正式に結婚することができた。
フレイムドラゴン討伐
フレイムドラゴンは空を飛び強力な火炎を吐く、まさに伝承にあるような姿の強敵である。
- ディアスはこの強敵に対し、単独ではなくイルク村と鬼人族の総力戦で挑んだ。
- 隠蔽魔法で雪原に潜んだ鬼人族の弓で翼の腱を断って墜落させ、ナルバント達が作った戦闘用ソリであるメーアワゴンによる突撃で足止めした。
- ディアスとクラウスが接近戦で腹部に猛攻を加えたが、フレイムドラゴンは驚異的な再生能力で傷を癒やし激しく抵抗した。
- 最終的に鬼人族の援護射撃とメーアワゴンの再突撃で体勢を崩した隙を突き、ディアスが炎の中に飛び込んで首を戦斧で斬り落とし、見事討伐を果たした。
アクアドラゴン討伐
アクアドラゴンは水を好む多脚のドラゴンで、強烈な水流攻撃や瘴気魔法、高い再生能力を誇る。
- ゴブリン族や獅子人族など多種族の連携で討伐に成功したが、直後に二体目が現れ撤退を余儀なくされた。
- しかしその絶体絶命の危機に地中から突如巨大メーアが出現し、圧倒的な力で二体目を瞬殺した。
- この出来事により、巨大メーアが陸の神として崇められる決定的な出来事へと繋がった。
まとめ
ディアスのドラゴン討伐は、当初は個人の圧倒的な腕力によるものであったが、次第に仲間との連携や、新たな防具・兵器を用いた総力戦へと進化している。これらの討伐で得られた貴重な魔石や素材は、イルク村に莫大な富をもたらし、ディアスが公爵として王国で確固たる地位を築く原動力となっているのである。
聖地と奇跡
『領民0人スタートの辺境領主様』において、聖地と奇跡は単なる宗教的な崇拝の対象ではなく、登場人物たちの純粋な想いや誠実な在り方に対して未知の存在(神々)がもたらす恩恵として描かれている。同時に、人々の信仰や欲を試すような厳しい一面も持ち合わせている。本稿では、作中で描かれる聖地の真実と、もたらされた奇跡について解説する。
伝説の薬草サンジーバニーによる奇跡
どんな病でも治すとされる伝説の薬草サンジーバニーは、かつて建国王を救った逸話があるほどの神の奇跡の象徴である。
- ディアスがウィンドドラゴンからメーアを救った対価として、人語を話す喋るメーア(メーアモドキ)から下賜された。
- この薬草は、ディアスの化膿した深い傷を一晩で治癒させ、隣領主エルダンの先天的な大病をも快方に向かわせるという本物の奇跡を起こした。
- しかしこの薬草には、売って儲けよう、悪用しようといった邪念を抱くとたちまち枯れてしまうという厳しい条件があった。
- ディアスやエルダンといった大人たちは、その絶大な価値を知って心の隅に欲(邪念)を抱いてしまったが、純粋に家族を心配したセナイとアイハンが善意のみで扱ったため、枯れることなく無事に育った。
- この奇跡は、子供たちの純粋な愛情によって守られたと言える。
荒野における湧水と川の奇跡
南の荒野の開拓と、ゴブリン族の海への帰還ルート開拓が課題となる中、ベン伯父さんが荒野で神々に祈りを捧げることで巨大な奇跡が起こる。
- ベンが聖地に至りし神官として祈ると、地面が割れて巨大な茶色い鱗を持つトカゲ(神に連なる存在)が現れた。
- トカゲは一生に一度どころか数百年に一度、その国に一度だけのものと思うが良いと念を押し、地面から大量の水を噴き出させ、海まで繋がる新たな川を作り出した。
- これにより不毛だった荒野の緑化や畑作が可能となり、ゴブリン族が故郷の海へ帰る道が開かれるという、多種族に恩恵をもたらす奇跡となった。
ベン伯父さんが至った聖地の真実
王国の神官たちが何代にもわたり目指し、誰も到達できなかったとされる聖地であるが、実はベン伯父さんは聖地巡礼に成功し、神々と邂逅を果たしていた。
- しかしベンがそこで見たものは、神殿で語り継がれているような慈悲深い神々の姿ではなく、醜悪でろくでもない場所であり、彼は深く絶望し落胆したとディアスに明かしている。
- もしディアスが神々を無闇に頼れば、自分と同じように落胆することになると忠告している。
- ベンは周囲には数十年の修業を経た神官にしかたどり着けない過酷な場所と嘘をついて誰も近付かせないようにしているが、ディアスはベンの口ぶりから実は意外と近く、簡単に行ける場所にあるのではないかと推測している。
まとめ
本作における聖地と奇跡は、盲目的な信仰によって都合よく与えられるものではない。ベン伯父さんが聖地の醜悪な真実を知りつつも、その力を一度だけ借りて人々のために使ったことや、セナイとアイハンの無私無欲な善意がサンジーバニーの奇跡を保ったように、人々の誠実さや家族を思いやる絆に対して応える形で現れるものとして描かれているのである。
野生メーア保護
『領民0人スタートの辺境領主様』において野生メーアの保護は、単なる家畜の獲得にとどまらず、未知の存在(陸の神)からの使命であり、メーアバダル領の発展と豊かな共生社会の象徴となる重要なテーマとして描かれている。本稿では、野生メーア保護の経緯とその展開について解説する。
喋るメーアからの使命と奇跡の報酬
ウィンドドラゴンを討伐した直後、ディアスの前に人語を話す喋るメーア(メーアモドキ)が現れた。
- その存在は、我が主を害さんとするドラゴンを退治し、我が子ら(メーア)を保護するよう努めなさいとディアスに告げた。
- これまで無自覚に行っていたメーア保護とドラゴン退治の対価として、どんな病も治す伝説の薬草サンジーバニーを下賜した。
- これにより、メーアの保護は神聖な使命としての意味を持つようになった。
はぐれた母メーアの保護と避難所構想
厳しい冬が近づく中、伴侶(父メーア)とはぐれて疲弊した野生の母メーアが、イルク村に保護を求めてやって来た。
- ディアスは、彼女が出産を終え子供が大きくなるまで滞在して構わないと温かく受け入れ、滞在費をメーア毛で支払うという条件で専用のユルトと手厚い世話を提供した。
- この出来事をきっかけに、野生のメーアがいざという時に逃げ込める避難所を街道沿いに作る計画も進められることになった。
空からの呼びかけと冬季滞在の拡大
行方不明になった父メーアを捜索するため、六つ子の長男フランは鷹人族のサーヒィに抱えられて空から捜索を行った。
- その際、見つけた野生のメーアの群れに対し、イルク村が避難所を作ることや、体毛を対価とした村への一時滞在を歓迎しているというディアスの伝言を伝えた。
- 無事に父メーアが保護された後、ヒューバートの提案により、冬の間の食料と宿を提供する代わりにメーア毛を受け取る交易として、本格的に野生メーアを呼び集めることになった。
- その結果、5家族16頭もの野生メーアが冬の仮住まいを求めてイルク村へやって来た。
正式な領民としての迎え入れ
野生のメーア達は、雪の中に隠れて敵を避け、乏しい草を食べて過酷な冬を生き抜いている。
- ディアスはその過酷さを知り、来年以降も駆け込み宿としてユルトを開放し、多くのメーアが安全に冬を越せるようにしたいと誓った。
- 冬の終わり、強大なフレイムドラゴンを一切の犠牲なく討伐したディアス達の力と優しさを目の当たりにした16頭の野生メーア達は、野生の誇りを捨てて正式なイルク村の住民になりたいと申し出た。
- 彼らはフランシスを群れの長として認め、ディアスからメアタックやメァレイアなどの名を与えられ、新たな家族として迎え入れられた。
まとめ
このように、野生メーアの保護は、イルク村の経済を支えるメーア布の増産をもたらすだけでなく、厳しい自然環境の中で種族を超えた助け合いを体現する、メーアバダル領の理念そのものとなっているのである。
隣国との外交
『領民0人スタートの辺境領主様』において、隣国である獣王国との外交は、単なる商人との取引から始まり、国境線の確定や大規模な鉱山開発への投資を伴う国家間交渉へと発展していく。本稿では、隣国(獣王国)との外交の経緯とその詳細について解説する。
ペイジン商会との交易と血無しの受け入れ
獣王国との関係は、フロッグマンの行商人であるペイジン商会との取引から始まった。
- 交渉の過程で、ペイジン側から獣王国内で差別されている血無し(獣の力や特徴を失い、人間族に近い姿となった獣人)の移住受け入れについて打診された。
- ディアスがこれを無条件で受け入れることを許可し、さらに隣領カスデクス領(マーハティ領)が獣人に理解のある豊かな領地であることを伝えた。
- これにより、ペイジンはイルク村を拠点として王国と獣王国を結ぶ巨大な新交易ルートを構築する構想を打ち立てた。
獣王参議ヤテン・ライセイとの国境・鉱山交渉
交易関係が深まる中、獣王国から正式な使者として、獣王直属の臣下である参議ヤテン・ライセイがイルク村の迎賓館を訪れた。
- ヤテンは獣王国西方最奥部に住むテン人族であり、優れた調停能力と冷徹な外交手腕を持つ重鎮であった。
- 会談ではまず、両国間の国境を確定させ、関所を設けることで侵入問題などのトラブルを防ぐことが合意された。
- 続いて、エリーが提案していた獣王国からの鉱山開発への投資についての交渉が行われた。
ヤテンの巧妙な罠とディアスの誠実な対応
鉱山投資の交渉において、ヤテンはあえて獣王国側が丸損をし、ディアス達だけが得をするような破格の譲歩案を提示した。
- これは、友好を名目にしながら利益に飛びつく相手の油断に付け込み、罪悪感を植え付けて将来的な主導権(外交的優位)を握るための巧妙な罠であった。
- しかしディアスは、私達だけが得をするような条件は受け入れられない、お互いの利益になる長く続けていきたいと思う条件にしたいと、この不公平な提案をきっぱりと拒絶した。
- 相手を金銭的に追い詰めるなどの手段を取らず、あっさりと罠を突っぱねられたヤテンはその思惑を完全に外され、ディアスの誠実な人柄を認めざるを得なくなった。
ペイジン商会の決断と強固な関係構築
この交渉の裏で、ヤテンの冷徹な本性や思惑を盗み聞きしていたペイジン・レは、自分たちペイジン家がどちらに付くべきかを決断した。
- ディアスはペイジン商会に対し、関所完成後も通行税や積荷確認を免除し、自由な通行を認めるという将来的に莫大な利益を生む破格の特権を約束していた。
- ペイジン・レは、自分たちを使い走りとして扱うヤテンよりも、十分な対価と信頼を与えてくれるディアスへの忠誠を選び、ヤテンの真意を記した密書をディアスへと送った。
まとめ
隣国である獣王国との外交は、ディアス側の無欲さと誠実さが、相手の老獪な政治的思惑や罠を結果的に粉砕する形で進展した。これにより、国境の平穏な確定や鉱山開発の始動だけでなく、ペイジン商会という強力なパイプを通じた強固な友好・交易ネットワークが構築されることになったのである。
領内の冬支度
『領民0人スタートの辺境領主様』において、イルク村が位置する過酷なネッツロース草原の冬は何もかもが凍りつくほど厳しいため、秋の訪れとともに村人総出で本格的な冬支度(冬備え)が行われる。本稿では、領内の冬支度の全貌について解説する。
冬備えの始まりと鬼人族のルール
イルク村の冬備えは、秋を告げる渡り鳥が姿を見せたことを合図に始まる。作業はアルナーが教える鬼人族の伝統的なルールに従って進められ、そこには自然の恵みを持続させ、他者と共存するための知恵が込められている。
- 狩りの際に繁殖期のメスに手を出さない
- 他の家との資材や獲物の取り合いを避ける
- 飼葉は村から遠い場所に生えている固い草を使い、必要以上に作りすぎない
といったルールが徹底されている。
食料と飼料の確保
冬を越すための備蓄として、多種多様な食料や飼料が集められる。
- 森での採取:セナイとアイハンを中心に、くるみやキノコ、森芋などを採取する。森芋は増える力のあるものを別の場所に植え直すなど、森の知識が駆使される。また、冬の寒気にさらして毒を抜くことで肉や魚の保存剤となるローワンの実も大量に収穫される。
- 狩猟と干し肉作り:クラウスやマスティ氏族を中心に山鹿などを狩猟する。山鹿の肉は干し肉に適しており、アリダ婆さんやチーマ婆さん達によって塩やハーブをまぶした美味しい干し肉に加工され、各ユルトに吊るされる。また、犬人族は南の荒野での岩塩拾いも担当する。
- 草のチーズの作成:シェップ氏族の若者たちが、革袋に草を詰めて踏み固め、発酵させた草のチーズを作る。これは厳しい冬を越すメーアや馬たちにとって滋養たっぷりのご馳走となる。
厳しい寒気と雪を防ぐ冬囲い
厳しい寒気と雪から村の施設や作物を守るため、冬囲いが行われる。
- ユルトの冬囲い:ディアスが全てのユルトの柱や布の破れを点検・補修した後、村人全員でユルトの冬囲いを行う。柱を木材で補強し、外布を二重にし、雪が自然に流れ落ちるよう屋根の傾斜を強くすることで、冷気の侵入を劇的に防ぐことができる。
- 苗畑の冬囲い:セナイとアイハンが育てている若木を寒波から守るため、ディアスやエイマも協力して畑の冬囲いを行う。土に干し草を敷き詰め、木材で作った三角形の骨組みに干し草を被せて屋根にする、植物のための小さなユルトのような構造である。
命を守る冬着・冬寝間着の作成
冬の夜は凍死の危険があるほど冷え込むため、衣服の準備も徹底される。
- 山鹿の毛皮は汗が凍って凍傷になるため寝間着には不適とされ、汗を吸ってすぐ乾き、外気を寄せ付けないメーア布で作られた特別な冬寝間着が老人や赤ん坊のために用意される。
- エリーの指揮のもと、機能性だけでなく気分を明るくするようなお洒落な王国風のデザインを取り入れた冬服作りも進められた。
- 急な寒波の際には、エリーや犬人族の女性たちが協力して即席の防寒布やマントを作成し寒さを凌いだ。
まとめ
このように、イルク村の冬支度は、鬼人族の自然の知識とルールを土台とし、犬人族の労働力、棄民の老婆たちの経験、そしてディアスやエリーたちの力が結集することで、大量の備蓄を築き上げる一大行事となっている。
荒野の開拓計画
『領民0人スタートの辺境領主様』において、メーアバダル領の南に広がる不毛の荒野は、当初は岩塩が拾えるだけの場所であったが、人々の知恵と努力、そして神々の奇跡が重なることで、壮大な開拓プロジェクトの舞台へと発展していく。本稿では、荒野の開拓計画の経緯と構想について解説する。
領地化のための調査と資源確保
開拓の第一歩として、文官のヒューバート主導で荒野を正式なメーアバダル領とするための測量と地図作りが行われた。
- 無人の荒野には、価値の高い岩塩鉱床や、船などの防水・防腐塗料である瀝青の原料となる黒水が湧く一帯が存在している。
- これらを他国より先に確保することは、領地の将来にとって極めて重要だと判断されたためである。
森人族の双子による地道な緑化計画
人口増加に伴う将来の食糧不安や、馬が荒野を越えられるようにするための環境整備として、森人族の双子セナイとアイハンが独自の緑化案を提案した。
- それは乾燥に強い名もなき雑草を少しずつ植え、魔力で補助するという地道なものであった。
- どんなに小さな草でも一度根付けば、土が柔らかくなり虫が集まり、少しずつ植物が生えやすい環境へと変化していくという理屈である。
- 塩に弱い植物の特性を考慮し、岩塩鉱床を避けて南へと少しずつ植え進めることになった。
喋るトカゲの導きと奇跡の湧水
開拓と調査を進める中、セナイ達はメーアモドキによく似た喋る巨大なトカゲと遭遇した。
- トカゲは、古の約定通りその水で森を造り只人(ディアス)を守ってくれと告げ、川を引くべき最適な場所を教えて姿を消した。
- その後、ベン伯父さんがその場所で祈りを捧げると地面が割れ、巨大なトカゲが再び姿を現して大量の水を噴き出させ、荒野から海まで続く新たな川が誕生するという奇跡が起きた。
荒野の農地化と新たな特産品への期待
奇跡の湧水によって最大の問題であった水不足が解消されたことで、荒野を巨大な農地にする構想が一気に現実味を帯びた。
- セナイとアイハンは、荒野は大雨や大風の被害がなく、土壌改良に役立つ葉肥石が豊富に転がっているため、水さえあればすくすくと作物が育つ素晴らしい畑になると大喜びした。
- ダレル夫人やエイマ達も、乾燥して水はけが良い気候を活かしてワインの原料となるブドウや、隣領の名産品である砂糖葦などを栽培し、メーアバダル領の新たな特産品にできるのではないかと大きな期待を寄せている。
まとめ
このように、不毛であった荒野の開拓計画は、資源確保のための地道な調査や緑化計画から始まり、神々の奇跡による湧水の出現を経て、巨大な農地と新たな特産品を生み出す壮大なプロジェクトへと発展を遂げている。人々の知恵と奇跡が融合することで、荒野はメーアバダル領の豊かな未来を支える重要な土地へと変貌しつつあるのである。
登場キャラクター
メーアバダル領
ディアス
メーアバダル領の領主であり、救国の英雄と呼ばれる人物である。周囲から深く慕われ、彼自身も領民を大切にしている。アルナーと婚約している。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領主。公爵。
・物語内での具体的な行動や成果
エルダンと毎朝の実戦形式の鍛錬を行った。絨毯を使って重傷を負った父メーアの怪我を治療した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ペイジンから治癒の力を持つ絨毯を贈られた。王都の貴族達からもその動向が注目されている。
エイマ
砂漠出身の人物である。ディアスの頭の上に乗って行動することが多い。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
荒野での砂見を提案し、砂漠の文化や哲学を皆に語った。捕らえた盗賊の処遇について、マーハティ領のエルダンに任せることを提案した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
優れた聴覚を持っており、逃走した盗賊の捕縛に貢献した。
ダレル夫人
王都での暮らしが長かった人物である。貴族の流行や演芸の知識を持つ。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
ディアスとアルナーの仲を進展させるため、ダンスパーティを提案し準備を指揮した。旅芸人のティローと王都や獣人国の演芸について情報交換を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ディアス達のダンス指導も行い、見事な完成度へと導いた。
ヒューバート
メーアバダル領の文官である。仕事熱心であり、ラクダに乗って荒野の作業を進めている。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の内政官。
・物語内での具体的な行動や成果
荒野の全域を領地にすべきと主張した。獣人国の文字で書かれた本や辞書を受け取り、感激のあまり動けなくなった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ラクダと気が合い、丁寧に世話をしている。
エリー
商人として活動している。現実的な視点を持ち、利益や影響を冷静に判断する。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の商人組。
・物語内での具体的な行動や成果
広場でセナイ達が転ばないようフォローしながら芸に見入っていた。アルナーのパーティ用衣装の準備を手伝った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
行商で忙しく、アイサ達に仕事の分担を提案されている。
ゴルディア
酒場を運営する人物である。アイサやイーライからギルド長として半隠居状態であると指摘されている。
・所属組織、地位や役職
商人ギルドの長。酒場の店主。
・物語内での具体的な行動や成果
酒場で大きなホウキを使って掃除をしていた。ディアスから金塊を受け取り、家畜購入の資金として扱うことを承諾した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
アイサ達に生意気だと言いつつも、彼らの提案を受け入れている。
アイサ
イーライと共にゴルディアの手伝いをしている。領内を移動する商店を始めることを計画している。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
酒場でゴルディアの働きぶりについて厳しい指摘をした。広場の宴では皆に酒や食べ物を配った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
イーライと共に、領内の物流や商人管理を担う移動商人を目指している。
イーライ
アイサと共に行動している。アイサをなだめる役割を担うこともある。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
領内各地を巡り、物資輸送や商人管理を担う移動商店の構想をディアスに説明した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ディアスの金塊による支援を受け、馬車や馬を揃えることになった。
クラウス
東の関所の主を務めている。カニスの夫である。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領兵隊長。東側関所の主。
・物語内での具体的な行動や成果
アースドラゴン装備を身にまとい、関所へ押し寄せる商人達の対応を行った。関所を襲撃した盗賊達の武器を槍で叩き落とし、捕縛に貢献した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ディアスの戦い方や性格を理解し、盗賊の処罰の程度に迷う場面があった。
カニス
クラウスの妻である。クラウスと共に関所で働いている。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
クラウスがエルダンを案内している間、関所に残り代理を務めた。サーヒィからのパーティの知らせを関所内の皆に伝えて回った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
盗賊の襲撃に不安を抱きつつも、クラウスと共に留まることを選んだ。
モント
西側関所で見張りを担当する義足の男である。元帝国兵としての経験を持つ。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領兵。西側関所の見張り。
・物語内での具体的な行動や成果
関所と王国側の畑の巡回を行い、領兵達に指示を出した。エルダンに対し、戦場でのディアスの苛烈な一面について語った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
食料事情を懸念し、ため池周辺の開墾を考えている。
ジョー
領兵としてディアスに従う人物である。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領兵。
・物語内での具体的な行動や成果
直接の目立った行動は描写されていない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
鬼人族の女性との結婚準備などで忙しくしている。
ロルカ
ジョーと同じくディアスに従う領兵である。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領兵。
・物語内での具体的な行動や成果
ディアス達の鍛錬後、エルダンにタオルと果実水を渡した。ディアスの禁欲的な態度についてエルダンに説明した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
鬼人族の女性との結婚関係で忙しい。
リヤン
ディアスに従う領兵の一人である。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領兵。
・物語内での具体的な行動や成果
直接の目立った行動は描写されていない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
アイサ達の買い出しの護衛としてリヤン隊が指名された。
マヤ婆さん
イルク村に住む老人である。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
荒野の砂見で淹れたての茶と砂糖菓子を持ってきた。アルナーの準備ができるまでディアスに皆の様子を見るよう促した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
長椅子に座って歌声に聴き惚れるなど、宴を楽しんだ。
ピソン婆さん
イルク村の老人である。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
迎賓館での仕事をこなしていると言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
来客の世話を仕切る能力がある。
ジメチ婆さん
イルク村の老人である。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
ピソン婆さんと共に迎賓館での仕事をこなしていると言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
来客の世話を任せられる存在である。
ヒィア婆さん
イルク村の老人であり、医療に関する知識を持っている。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
重傷を負った父メーアの傷口を火酒で洗い、異物や汚れがないか確認した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
治療の可否を判断する重要な役割を任されている。
婆さん達
イルク村の老人達である。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
エルダン達の小休憩の際に茶を淹れて持ってきた。荒野の砂見でアルナー達の場所作りを手伝った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ダンスパーティでも婆さん同士でダンスを楽しんだ。
セナイ
森人族の双子の姉である。荒野の開拓に意欲を見せている。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
荒野の川辺に種を撒いた。ディアスの手を引いて広場を巡った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
荒野が畑に向いている土地だと判断し、ディアスにその利点を説明した。
アイハン
森人族の双子の弟である。姉のセナイと共に行動することが多い。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
セナイと共に荒野の川辺に種を撒いた。ディアスにナイフ投げの芸を見るよう促した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
セナイと共に荒野の開拓に意欲を見せている。
ナルバント
洞人族の老人であり、工作技術と建築に長けた人物である。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領民。洞人族。
・物語内での具体的な行動や成果
冬の寒気を利用した氷溜め池を完成させ、ディアスに披露した。地下に避難所を建設した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
野生メーアが滞在するための避難所を作ることを快諾した。
サナト
洞人族の若者である。治水や建築の計画を立てる能力がある。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領民。洞人族。
・物語内での具体的な行動や成果
荒野に湧き出した水を誘導し、水路やため池を作る治水計画を立案した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
計画を図面として地面に書き記した。
サーヒィ
空を飛ぶことができる鷹人族の戦士である。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領民。鷹人族。
・物語内での具体的な行動や成果
荒野で遭難していたゴブリン族を発見した。フランが乗ったカゴを足で掴んで空を飛び、父メーアの捜索を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
イルク村と関所間の連絡役も務めている。
リーエス
鷹人族の女性である。サーヒィの妻である。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領民。鷹人族。
・物語内での具体的な行動や成果
サーヒィと共に空からの捜索に参加した。父メーアが倒れているのを発見しディアスへ報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
索敵において重要な役割を果たした。
ゲラント
鷹人族の男性である。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領民。鳩人族。
・物語内での具体的な行動や成果
エルダンの先触れとしてイルク村を訪れ、来訪の予定と祝いの品について伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
少し太ったとディアスに指摘された。
サーレ
犬人族の青年である。ディアスを深く慕っている。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領民。犬人族。
・物語内での具体的な行動や成果
グリンの発言に怒り、威嚇の唸り声を上げた。ベンに撫でられて表情を和らげた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ディアスへの強い忠誠心を持っている。
領兵達
ディアスの下で働く兵士たちである。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の兵士。
・物語内での具体的な行動や成果
関所周辺の畑の世話を行った。砂見の準備を手伝った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
平時にも怠けないようモントから指導を受けている。
ジョー隊
領兵の部隊の一つである。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の部隊。
・物語内での具体的な行動や成果
イルク村で警備を行い、荷運びを手伝った。宴では肩を組んで大喜びした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
朝の餌場に向かうメーア達の護衛についている。
ロルカ隊
領兵の部隊の一つである。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の部隊。
・物語内での具体的な行動や成果
朝の餌場に向かうメーア達の護衛についていると言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
詳細は描写されていない。
リヤン隊
領兵の部隊の一つである。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の部隊。
・物語内での具体的な行動や成果
アイサ達が買い出しに行く際の人手として指名された。朝の餌場に向かうメーア達の護衛についていると言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
詳細は描写されていない。
婦人会
イルク村の女性たちで構成される集団である。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
砂見の際に茶を沸かすための焚き火の準備を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
氷と雪の貯蔵庫をありがたがっている。
マスティ氏族
犬人族の氏族の一つである。戦闘や警備を得意とする。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領民。犬人族。
・物語内での具体的な行動や成果
関所の門に近づこうとした馬車に対して唸り声を上げた。荒野での砂見に護衛として同行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
若者がディアスに宝石の入った箱を届けた。
センジー氏族
犬人族の氏族の一つである。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領民。犬人族。
・物語内での具体的な行動や成果
荒野の湧水を飲んでも問題ないとディアスに報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
詳細は描写されていない。
アイセター氏族
犬人族の氏族の一つである。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領民。犬人族。
・物語内での具体的な行動や成果
荒野への遠出に御者や馬の世話係として同行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
詳細は描写されていない。
シェップ氏族
犬人族の氏族の一つである。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領民。犬人族。
・物語内での具体的な行動や成果
母メーアの世話係を担当した。荒野で初めて虫を見つけてディアスに嬉しそうに報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
出産の知識を持っている者がいる。
洞人族
北の山の鉱山開発や建築を担う種族である。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
ゴブリン達のための船造りを進めた。洗濯用の樽の開発に取り組んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
髭に毒を浄化する作用がある。
鷹人族
空を飛ぶ能力を持つ種族である。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
一族総出で父メーアの捜索を行った。王都からの手紙をヒューバートに届けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
空を飛んで索敵や情報伝達を行う。
犬人族
様々な氏族に分かれ、多種多様な作業をこなす種族である。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
エルダンの来訪を村中に知らせて回った。逃走した盗賊を森の中で追跡し捕らえた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
嗅覚が鋭く、追跡能力に優れている。
フランシス
メーアの群れのリーダー格である。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の動物。メーアの長。
・物語内での具体的な行動や成果
群れを率いて草を食べに走り回った。水浴びをして毛の手入れを行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ディアス達のユルトで一緒に眠っている。
フランソワ
フランシスと行動を共にするメーアである。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の動物。メーア。
・物語内での具体的な行動や成果
六つ子達と共にフランシスの後ろを走った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ユルトでディアス達と共に眠っている。
エゼルバルド
イルク村にいるメーアの一頭である。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の動物。メーア。
・物語内での具体的な行動や成果
フランシスに続いて草原を駆けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
妻達の何人かは妊娠している。
フラン
六つ子の一頭である。臆病なメーアの中では珍しく勇気がある。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の動物。メーア。
・物語内での具体的な行動や成果
カゴに乗って空を飛び、野生のメーア達に事情を説明した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
父メーアの捜索に大きく貢献した。
フランツ
六つ子の一頭である。のんびり屋な性格である。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の動物。メーア。
・物語内での具体的な行動や成果
ディアスの頭の上に乗って、野生メーアの夫婦の言葉を通訳した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
マイペースな行動をとる。
フラニア
六つ子の一頭である。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の動物。メーア。
・物語内での具体的な行動や成果
直接の目立った行動は描写されていない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
過去にはぐれた経験がある。
六つ子達
メーアの子供たちである。群れの皆から可愛がられている。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の動物。メーア。
・物語内での具体的な行動や成果
母メーアを歓迎し、一緒に眠った。空を飛ぶフランに頭突きをして激励した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
フランシス達と共にユルトで眠っている。
メァタック
イルク村に新しく加わったメーアである。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の動物。新参のメーア。
・物語内での具体的な行動や成果
他のメーア達と共に駆けて草を食べた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
詳細は描写されていない。
メァレイア
イルク村に新しく加わったメーアである。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の動物。新参のメーア。
・物語内での具体的な行動や成果
他のメーア達と共に駆けて草を食べた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
詳細は描写されていない。
リュアグイン
イルク村に新しく加わったメーアである。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の動物。新参のメーア。
・物語内での具体的な行動や成果
他のメーア達と共に駆けて草を食べた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
詳細は描写されていない。
リュアキリ
イルク村に新しく加わったメーアである。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の動物。新参のメーア。
・物語内での具体的な行動や成果
他のメーア達と共に駆けて草を食べた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
詳細は描写されていない。
父メーア
野生のメーアである。無謀な行動で母メーアから説教を受けた。
・所属組織、地位や役職
野生の動物。メーア。
・物語内での具体的な行動や成果
妻を捜して北の山へ向かい、重傷を負って倒れた。絨毯で治療され意識を取り戻した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
村での冬越しを受け入れ、毛で滞在費を支払うことに同意した。
母メーア
野生のメーアである。妊娠しており、父メーアを心配している。
・所属組織、地位や役職
野生の動物。メーア。
・物語内での具体的な行動や成果
イルク村に現れて助けを求めた。父メーアの無事を喜びつつも説教をした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
出産まで村に滞在することになった。
新参のメーア達
イルク村に新しく加わったメーア達である。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の動物。
・物語内での具体的な行動や成果
フランシス達に続いて草原を駆け回った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
詳細は描写されていない。
客のメーア達
イルク村に滞在しているメーア達である。
・所属組織、地位や役職
イルク村に滞在している動物。
・物語内での具体的な行動や成果
広場で芸を見て鳴き声を上げて喜んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
詳細は描写されていない。
巨大なメーア
地中から現れた巨大な白いメーアである。
・所属組織、地位や役職
不明。
・物語内での具体的な行動や成果
アクアドラゴンを倒した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
神として崇められるようになった。
メーア達
羊のような姿をした動物である。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の動物。
・物語内での具体的な行動や成果
白い草を求めて草原を駆け回った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
冬服用の毛や交易用資源を提供している。
神殿
ベン(ベンディア)
ディアスの伯父である。神殿の管理者として振る舞う。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の神殿。神官。
・物語内での具体的な行動や成果
荒野で祈りを捧げ、トカゲを呼び出して湧水を発生させた。グリンに対して教誨を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
過去に聖地へ至ったが、そこで見たものに落胆している。
フェンディア
メーア神殿の女神官である。建国王の物語に精通している。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の神殿。
・物語内での具体的な行動や成果
荒野に湧き出た水を見て歓声を上げた。ディアスとアルナーのダンスを見て感動した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
宴を心から楽しんでいた。
パトリック
神殿を守る神官兵である。力任せに杖を振るう戦い方を得意とする。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の神殿。神官兵。
・物語内での具体的な行動や成果
盗賊達を杖で打ち据え、逃げる者の足を打って捕縛した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
盗賊へ神々の教えを叩き込むことを目的としている。
ピエール
神殿を守る神官兵である。理知的な顔立ちだが戦い方は荒っぽい。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の神殿。神官兵。
・物語内での具体的な行動や成果
関所を襲撃した盗賊達を杖で打ちのめした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
メガネをかけている。
プリモ
神殿を守る神官兵である。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の神殿。神官兵。
・物語内での具体的な行動や成果
盗賊達に襲いかかり、杖で攻撃した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
眉毛や髪をきっちり整えている。
ポール
神殿を守る神官兵である。肌の色が濃く鋭い目つきをしている。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の神殿。神官兵。
・物語内での具体的な行動や成果
パトリック達と共に盗賊達を打ちのめした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
眉毛がない。
オリアナ
神殿の教育係を務める人物である。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の神殿。
・物語内での具体的な行動や成果
ヒューバートと共に王都からの手紙を確認し、エルアー伯爵の働きを評価した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
王都の知人達から情報収集を行っている。
神官兵
神殿に仕える兵士たちである。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の神殿。
・物語内での具体的な行動や成果
パトリック達4人が該当し、連携して盗賊を討伐した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
相手を殺さず制圧する独特の戦闘術を持つ。
鬼人族
アルナー
ディアスの婚約者である。面倒見が良く、村の運営に携わっている。
・所属組織、地位や役職
鬼人族。ディアスの婚約者。
・物語内での具体的な行動や成果
父メーアの傷の周りの毛を刈り取った。パーティでディアスとダンスを踊った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ディアスと共にヤギなどの家畜を増やす計画を立てた。
ゾルグ
鬼人族の戦士である。アルナーの兄。
・所属組織、地位や役職
鬼人族の戦士。次期族長候補。
・物語内での具体的な行動や成果
ディアスにモールの伝言を伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
詳細は描写されていない。
モール
鬼人族の族長である。大昔に家族を失った経験がある。
・所属組織、地位や役職
鬼人族の族長。
・物語内での具体的な行動や成果
ディアスにこれまでの感謝として巨大な金塊を贈った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ひ孫が生まれ、族長を引退することを考え始めている。
鬼人族
鬼人族の村に住む人々である。
・所属組織、地位や役職
鬼人族。
・物語内での具体的な行動や成果
父メーアの捜索隊として馬に乗って草原を駆けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
村が豊かになり、人口や家畜が増加している。
ゴブリン族(鮫人族)
イービリス
ゴブリン族のリーダーである。
・所属組織、地位や役職
ゴブリン族の頭目。
・物語内での具体的な行動や成果
荒野に海まで続く川ができたことを大いに喜んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
神が道を作ってくれたと感動していた。
ゴブリン族
海から来た鮫人族である。
・所属組織、地位や役職
ゴブリン族。
・物語内での具体的な行動や成果
水中での呼吸の仕方を思い出すため、泳ぎの練習を始めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
海へ帰還するため、専用の船の完成を待っている。
マーハティ領
エルダン
マーハティ領の領主である。ディアスを盟友として尊敬している。
・所属組織、地位や役職
マーハティ領の領主。公爵。
・物語内での具体的な行動や成果
神殿建立祝いとして大量の品を贈り、ディアスと毎日鍛錬を行った。ディアスとアルナーの仲を進展させようと画策した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
妻達の安産を祈願するためイルク村を訪れた。
ジュウハ
エルダンの部下である。改革を推進する知恵者である。
・所属組織、地位や役職
マーハティ領の兵学者。
・物語内での具体的な行動や成果
マーハティ領内の改革を成功させ、犯罪減少や経済の好転を実現した。盗賊を鉱山送りにし、偽情報を流す策を提案した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
自領にもメーア神殿を建立する計画を立てた。
カマロッツ
エルダンの部下である。冷静に状況を判断する。
・所属組織、地位や役職
マーハティ領の所属。
・物語内での具体的な行動や成果
エルダンの指示を受け、ディアス達へ贈る祝いの品や目録を準備した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
マーハティ領が好景気であることをディアスに説明した。
スーリオ
獅子人族の戦士である。
・所属組織、地位や役職
マーハティ領の使者。獅子人族。
・物語内での具体的な行動や成果
ペイジンと共に戦利品などを持ち帰るため帰還した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
王へ届ける魔石や手紙を託された。
パティ
エルダンの妻の1人である。
・所属組織、地位や役職
マーハティ領。
・物語内での具体的な行動や成果
妊娠しており、留守番をしている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
詳細は描写されていない。
グリン
エルダンの護衛である猪人族。人間族至上主義の拡大を恐れている。
・所属組織、地位や役職
マーハティ領の護衛。猪人族。
・物語内での具体的な行動や成果
犬人族達にマーハティ領へ戻るよう勧誘し、反感を買った。荒野で神の奇跡を目の当たりにし、涙を流した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ベンから教誨を受け、信仰心を高めた。
エルダンの妻達
エルダンの妻達である。何人かが妊娠している。
・所属組織、地位や役職
マーハティ領。
・物語内での具体的な行動や成果
安産祈願のためセナイ達と共に神殿の祈禱室へ入った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
詳細は描写されていない。
護衛の獣人達
マーハティ領の獣人達である。
・所属組織、地位や役職
マーハティ領の護衛。
・物語内での具体的な行動や成果
エルダンの馬車を護衛してイルク村へやってきた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
旅芸人の芸に夢中になった。
サンセリフェ王国
リチャード王子
サンセリフェ王国の第一王子である。
・所属組織、地位や役職
サンセリフェ王国の第一王子。
・物語内での具体的な行動や成果
地下倉庫で上納品を確認し、エルアー伯爵の行動を歓迎して裏から支援するよう指示した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
外交文書でディアスの存在を誇示している。
シルド
老齢の騎士である。
・所属組織、地位や役職
サンセリフェ王国の騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
リチャード王子にエルアー伯爵が名代のように振る舞っていると報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
リチャード王子から騎士団領の運営資金を受け取った。
エルアー伯爵
古風ながら堅実な貴族である。
・所属組織、地位や役職
サンセリフェ王国の貴族。伯爵。
・物語内での具体的な行動や成果
王都でディアスの名代のように振る舞い、メーア布を宣伝して評判を高めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ヒューバート達から一定の権限を与える価値があると評価された。
獣人国・ペイジン商会・旅芸人
ペイジン・オクタド
ペイジン商会の長である。大きなカエルのような亜人。
・所属組織、地位や役職
ペイジン商会の長。
・物語内での具体的な行動や成果
ディアスの神殿建立を祝うため、商売を放り投げて旅芸人を連れて駆けつけた。獣人国の本や辞書をヒューバートに贈った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
エルダンと交流を持つことになった。
ペイジン・ド
ペイジン商会の商人である。オクタドの息子。
・所属組織、地位や役職
ペイジン商会。
・物語内での具体的な行動や成果
アクアドラゴンの素材などの戦利品を持ち帰るため帰国した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
詳細は描写されていない。
ペイジン・ドシラド
ペイジン・ドの長男である。
・所属組織、地位や役職
ペイジン商会。
・物語内での具体的な行動や成果
セナイ達からハチミツを受け取った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
詳細は描写されていない。
キコ
獣人国の参議である。
・所属組織、地位や役職
獣人国の参議。
・物語内での具体的な行動や成果
獣人国から王国への武器の持ち込み許可を得るために尽力したと言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
直接の登場はない。
ティロー・アン
旅芸人一座を率いる獣人である。鹿やヤギに似た顔立ちをしている。
・所属組織、地位や役職
旅芸人一座の座長。
・物語内での具体的な行動や成果
ディアスに年二回の公演依頼を引き受け、ダレル夫人と演芸について情報交換を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
詳細は描写されていない。
ペイジン商会の者達
ペイジン商会で働く者達である。
・所属組織、地位や役職
ペイジン商会。
・物語内での具体的な行動や成果
荷下ろしを行い、倉庫の前に品々を並べた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
詳細は描写されていない。
旅芸人達
オクタドに連れられてやってきた芸人達である。
・所属組織、地位や役職
旅芸人一座。
・物語内での具体的な行動や成果
イルク村の広場で歌や踊り、寸劇などを披露し、村人達を熱狂させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
獣人や亜人の特性を活かした超一流の芸を持つ。
帝国
若い重騎士
帝国の騎士である。ディアスを恐れつつもその強さを評価している。
・所属組織、地位や役職
帝国の重騎士。ニャーヂェン族。
・物語内での具体的な行動や成果
王国に対抗するため海軍の整備が必要だと主張した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
猫に似た耳を持つ獣人であり、場合によってはディアス側につくことも考えている。
従者
若い重騎士に仕える人物である。勘が鋭い。
・所属組織、地位や役職
帝国の従者。ニャーヂェン族。
・物語内での具体的な行動や成果
ディアスが海すら制するようになる気がすると語った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
猫に似た耳と長い尻尾を持つ獣人である。
盗賊
狼獣人
盗賊の1人である。
・所属組織、地位や役職
盗賊団。狼獣人。
・物語内での具体的な行動や成果
仲間を囮にしてただ1人森を抜け、犬人族の子供を狙おうとしたがディアスに捕縛された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
恐怖のあまり失神した。
盗賊達
メーアバダル領を狙う盗賊の集団である。
・所属組織、地位や役職
盗賊団。
・物語内での具体的な行動や成果
メーアバダル領の情報を求めて関所を襲撃したが、クラウスや神官兵達に制圧された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
エルダンに引き渡され、鉱山送りにされる予定である。
モンスター・その他
トカゲ
不思議な生物である。神々に類する存在として描かれている。
・所属組織、地位や役職
不明。
・物語内での具体的な行動や成果
荒野の地面を割って現れ、勇者達に免じて川を作ると告げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
詳細は描写されていない。
アクアドラゴン
山中の地下水脈などに生息する特殊なドラゴンである。
・所属組織、地位や役職
モンスター。
・物語内での具体的な行動や成果
過去の戦いでディアス達を苦しめた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
直接の登場はない。
アースドラゴン
過去にディアス達が倒したドラゴンである。
・所属組織、地位や役職
モンスター。
・物語内での具体的な行動や成果
過去に討伐された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
その素材がクラウス達の装備に使われている。
展開まとめ
エイマのレポート
領民:237人→237人
【辺境の領主】ディアスは、貴族としての立ち居振る舞いや礼儀作法を学び、悪意を持って訪れた貴族達の対応を平和的に成功させた。
【獣人国の商人】ペイジンは、幼い長男【ペイジン・ドシラド】を伴って来訪した。アースドラゴン討伐と避難民保護への感謝として、ペイジン家に代々伝わる家宝の絨毯を贈呈する。その絨毯には、ディアスが力を込めることで傷を癒やす不思議な力が宿っていた。
【鷹人族の英雄】サーヒィは哨戒中、荒野で遭難していた鮫の魚人達を発見した。報告を受けたディアス達は、彼ら【海から来た勇者】ゴブリン族を救助し、荒野を越えてきた彼らを歓迎する盛大な宴を開く。
帰りの水が尽きてもなお荒野を進み続けたと聞いた時は、本当に驚きました!! 無茶すぎると思いましたけど、それでも海からここまで辿り着いたのは、本当にすごいことだと思います!
ディアス達は、ゴブリン族を安全に海へ帰還させるため、さらに将来的な海との交易を目指し、荒野へ水路と街道を通す計画を立案した。
その後、北の山へドラゴンが現れるという予言がもたらされる。ディアス達だけでなく、村へ滞在していたスーリオ、ペイジン・ドシラド、ゴブリン族達までもが討伐参加を申し出た。
討伐対象であるアクアドラゴンは、素早い動きと驚異的な再生能力を持っており、ディアス達はかつてない苦戦を強いられる。しかし戦いの最中、突如として地面を割って現れた巨大なメーアによって、アクアドラゴンは討ち倒された。
超常的な「神」と出会うことになった領主様。次なる物語は――
西側関所で モント
モントによる関所と食料事情の確認
アクアドラゴン討伐から十日ほどが経過し、季節が秋へ移り始めた頃。西側関所では、モントが義足の音を響かせながら歩廊を巡回していた。
見張りの領兵達はその音を聞くだけで緊張感を取り戻し、気を引き締めていく。モントはそんな様子に満足しながら、獣人国側と王国側双方の見張りを確認して回っていた。
関所自体は平時であれば大きな問題が起こる場所ではなかったが、隣国との境界である以上、いつ何が起きるか分からない。さらにモンスターの脅威もあるため、警戒を怠る訳にはいかなかった。
領兵達による畑仕事
巡回の途中、モントは領兵達が世話をしている畑へ目を向ける。
その畑は、セナイとアイハンの加護によって豊穣が期待されている場所であり、モントは領兵達へ手を抜くなと檄を飛ばした。
領兵達に農作業をさせている理由は、平時に怠けさせないためだけではない。イルク村は依然として食料の多くを外部からの輸入へ頼っており、将来的な危機に備える必要があったのである。
黒ギーや白ギー、畑の野菜や森の恵みだけでは人口増加を支えきれず、家畜も今後の繁殖と備蓄を優先していたため、食料事情は決して余裕がある訳ではなかった。
モントは、さらに畑を増やし、水源を活用すれば人口も兵士も増やせると考え、溜め池周辺の開墾計画まで思案していた。
東側関所へ押し寄せる商人達
一方その頃、東側関所ではクラウスが大量の商人対応に追われていた。
アースドラゴンやアクアドラゴン討伐の噂が広まり、ドラゴン素材を求める商人達が押し寄せていたのである。
クラウスは毅然とした態度で対応し、虚偽の身分を騙る者や無理な要求をする者を厳しく制止していく。
その一方で、過去に反乱騒動の際ディアスへ助けられた恩義を忘れず、誠実な取引を続けている商人には門を開いていた。
信頼関係を築いた商人
その商人は、関所内でのみ商売を行い、宿泊費や食事代もきちんと支払い、余計な詮索もせず節度を守っていた。
本心ではディアスへ会いたい気持ちもあるようだったが、迷惑を掛けたくないという思いから自重していたのである。
商談の合間、商人はディアスの近況について尋ねる。
それに対しクラウスは、ディアスは元気であり、最近の騒動でも鎧が濡れた程度だったと冗談交じりに答えた。
そのやり取りを通じ、互いは表向き雑談を交わしながらも、水面下では情報交換を行い、今後必要となる動きを探っていた。
商売を終えた後、クラウスは商人達を宿泊用ユルトへ案内し、自身は関所の主として与えられた立派な家へ戻る。
そこで待っていたカニスと共に、購入した品々を確認しながら穏やかな時間を過ごすのだった。
暗闇の中の会話
その頃、どこか暗闇の中では、一人の男が苛立った様子で何者かへ問い詰めていた。
男は、現れた巨大な存在について説明を求めるが、返ってくる答えは曖昧で理解しづらいものだった。
それでも男は、どうやらその存在が何らかの集団から離れた個体であり、敵対する可能性はないらしいことだけは理解する。
そして最後に、敵対しないことだけは絶対に間違えるなと念押ししながら、目の前の何かを黙って見つめ続けるのだった。
イルク村の西端で初秋の風を感じながら――ディアス
秋の訪れと別れ
ザリガニとの戦いと盛大な宴を終えた後、季節は徐々に秋へと移り変わっていった。そんな中、ペイジン達とスーリオ達がそれぞれの拠点へ帰還することとなる。
ペイジン達は戦利品や報告を持ち帰るために帰国し、ザリガニ素材やメーア布、さらにセナイとアイハンがドシラドへ贈った蜂蜜を抱えて満足そうに去っていった。
一方スーリオ達も、今回は報告のための一時帰還であり、また戻って来たいと語りながら旅立っていく。さらに王へ届ける魔石や手紙も託され、ディアス達との関係がより深いものとなっていた。
冬支度へ向けて駆け回るメーア達
秋の到来と共に、イルク村では冬支度への準備が本格化していく。
特にメーア達は、冬服用の毛や交易用資源を確保するため、白い草を求めて草原を駆け回っていた。フランシス達を先頭に、大量のメーアが護衛の犬人族を伴って草原を疾走し、白い草を食べ続けることで大量の毛を生産していたのである。
妊娠中のメーア達まで参加していたが、白い草の効果もあってか体調はむしろ良好であり、アルナーも問題なしと判断していた。
ディアスはその光景を見守りながら、頼もしさと微笑ましさを同時に感じていた。
ナルバントが完成させた氷溜め池
そんな中、ナルバントがディアスを呼び出し、完成したばかりの「氷溜め池」を見せる。
それは冬の寒気を利用して大量の氷を生産し、地下貯蔵庫へ保存するための大規模施設だった。さらに床材には洞人族の髭が混ぜ込まれており、水を浄化する効果によって、他地域より高品質な氷を作れるという。
ナルバントは、氷によって保存技術や交易の可能性が大きく広がると熱弁し、果実水や酒の味まで変わると胸を張る。
さらに地下には巨大な避難施設も建設されており、ドラゴン襲撃時には村人や家畜を守れるよう設計されていた。
ディアスはその完成度に感心し、街道沿いにも避難所を増やしてほしいと頼む。ナルバントは快く引き受け、野生のメーアまで保護できる場所を作ると豪快に笑うのだった。
野生の母メーアとの出会い
その直後、近くの草むらから一頭の野生メーアが姿を現す。
妊娠したそのメーアは、伴侶とはぐれてしまい、疲弊し切った末にイルク村周辺へ辿り着いていた。ナルバントが根気強く会話を行ったことで事情が判明し、ディアスはすぐに捜索協力と村での保護を約束する。
メーアは安心したようにディアスへ顎を預け、ディアスは彼女専用のユルトを用意して休ませることにした。
翌日からはシェップ氏族の女性が世話係となり、白い草や薬湯、ブラッシングや絨毯治療など、徹底した世話が始まる。
フランによる空からの捜索提案
そんな中、鷹人族が伴侶メーア捜索へ協力を申し出る。
しかし問題は、野生メーアとの会話だった。そこで六つ子の長男フランが、自分も空へ行って事情説明をすると言い出す。
皆が驚く中、アルナーは工夫次第で可能だと判断し、ナルバント達が専用の飛行用カゴを製作する。
頑丈なカゴにクッションを詰め込み、落下時には布傘が開く仕掛けまで用意されたことで、ついにフランの初飛行が決定する。
広場ではフランシス達や村人達、さらには神官達まで集まり、神聖な儀式のような空気の中でフランを送り出した。
そしてサーヒィがカゴを持ち上げ、フランは大空へ飛び立っていく。
空の旅と野生メーア達との交流
空を飛ぶ景色は、フランにとって未知そのものだった。
波打つ草原、駆ける鬼人族の捜索隊、そして空気の流れを利用して飛ぶ鷹人族の技術。その全てがフランの冒険心を刺激していた。
やがて野生メーアの群れを発見したフランは、自ら事情説明を行い、行方不明の父メーアについて聞き込みを開始する。
さらにイルク村が野生メーア向け避難所を建設予定であることまで伝え、野生メーア達もその話を受け入れていった。
しかし父メーアは中々見つからず、捜索は四日目へ突入する。
そしてついに、イルク村からそう遠くない場所で、血塗れになって倒れている父メーアが発見されるのだった。
ヒューバート達による王都情勢の確認
その頃イルク村では、荒野開発から帰還したヒューバートのもとへ、鷹人族によって王都からの手紙が届けられていた。
手紙には、エルアー伯爵の近況が記されている。エルアー伯爵は正式な名代ではない立場ながら、ディアスの評判を高めるために王都で誠実に社交活動を続けていた。
ディアスを未熟ながら礼儀を重んじる人格者として語り、さらにメーア布まで宣伝することで、王都貴族達の興味を集めていたのである。
ヒューバートとオリアナは、その報告を受けてエルアー伯爵へ一定の権限を与える価値があると判断する。
その直後、ヒューバートのラクダが世話を要求し始め、ヒューバートは苦笑しながらラクダの相手をするのだった。
父メーアの下へと駆けながら――ディアス
父メーア救出と絨毯治療
フラン達による捜索の末、父メーアは氷溜め池の近くで血まみれの状態で発見された。報告を受けたディアスは即座に倉庫へ向かい、治療用の絨毯を担いで現場へ急行する。
現場ではフランが寄り添い、サーヒィ達が周囲を警戒していた。ディアスは父メーアを絨毯へ寝かせるが、すぐには起動させず、アルナーやヒィア婆さんの到着を待つ。
彼らはまず毛を刈り、火酒で傷口を洗浄し、異物や汚れがないか徹底的に確認していく。絨毯は傷を完璧に治療できる反面、汚れや異物ごと閉じ込めてしまう危険性があったためである。
準備を終えた後、ディアスが絨毯へ力を込めると、父メーアの重傷は瞬く間に塞がっていく。ヒィア婆さんの確認も問題なく終わり、父メーアは穏やかな寝息を立て始めるのだった。
再会した父メーアと母メーア
父メーアは絨毯ごとイルク村へ運ばれ、母メーアの待つユルトへ連れて行かれる。
数日間不安と疲労に苛まれていた母メーアは、無事な父メーアを見た瞬間に安堵し、涙を浮かべながら怒り混じりの声を上げた。どうしてこんな怪我をしたのか、どうしてはぐれたのかと問い詰めていたのである。
ディアスはまず休むよう促し、父メーアを干し草の寝床へ寝かせる。母メーアは父メーアへ寄り添いながら、その顔を見続け、やがて安心したように眠りへ落ちていくのだった。
鬼人族への礼とモールの贈り物
翌日、父メーアは意識を取り戻したものの、まだ安静が必要だった。ディアスは捜索へ協力してくれた鷹人族や鬼人族へ礼金を支払うため、鬼人族の村へ向かう。
以前より大きく賑やかになった村では、子供達まで働き、誰もが忙しさを楽しんでいるようだった。
モールとの会話の中で、鬼人族とイルク村の結びつきがさらに深まっていることが語られる。ジョー達の結婚話も進み、村全体が豊かになりつつあった。
そしてモールは突然、大きな布袋をディアスへ渡す。その中には巨大な金塊が入っていた。
それは鬼人族が非常時に備えて蓄えていた財産だったが、今ではその必要がなくなったため、ディアスへの感謝として贈るのだという。
ディアスは受け取りを躊躇するが、モールは礼であり税のようなものだと言って押し切る。さらに、ひ孫が生まれたことまで語り、豪快に笑い続けるのだった。
父メーアが負った傷の理由
その頃ユルトでは、目覚めた父メーアが怪我の経緯を語っていた。
母メーアを探し回った父メーアは、モンスターへ襲われたのではないかと考え、北の山まで捜索へ向かっていた。そしてモンスターを発見すると、母メーアを返せと思い込み、そのまま突撃してしまったのである。
母メーアは無謀さに呆れ果て、前足で父メーアの額を叩きながら説教を始める。
しかし同時に、自分達を助けてくれたイルク村とディアスへ深く感謝していた。
ヤギの増加計画と備蓄への喜び
イルク村への帰路、ディアスはアルナーがヤギ達を観察している場面に遭遇する。
アルナーは、ヤギが馬やメーアと違い、硬い草や森の葉でも平気で食べることに注目していた。そのため草資源を奪い合わずに済み、増やしても問題ない可能性が高かったのである。
ディアスは金塊を活用してヤギやロバを増やすべきだと提案する。
アルナーは、冬備えや備蓄を増やせることへ大きな喜びを感じており、以前の苦しい冬を思い出しながら、幸せそうに今後の計画を考え始めるのだった。
アイサとイーライの新たな商売
その後ディアス達は酒場を訪れ、金塊を利用した家畜購入について相談する。
そこでアイサとイーライは、自分達が領内移動商人を始めたいと打ち明ける。彼らは領内各地を巡り、物資輸送や商人管理を担う仕事を目指していた。
エリー達だけに負担をかけず、領内物流を支える役割を担いたいという思いだった。
ディアスはその考えを歓迎し、馬車や馬の購入も支援することを決める。ゴルディアも人員補充を条件に協力を約束し、イルク村の経済基盤はさらに広がっていくのだった。
野生メーア夫婦の滞在継続
その後、母メーアは改めてディアス達へ感謝を伝える。
父メーアがまた無茶をするかもしれず、不安なため、出産まで村へ滞在したいという願いだった。ディアスとアルナーは当然のように受け入れ、子供が育つまで滞在しても構わないと告げる。
その直後、ユルトから再び父メーアの強がった声と、母メーアによる制裁の音が響く。
そのやり取りを聞きながら、ディアス達は苦笑するのだった。
王都でのエルアー伯爵評価
一方王都では、リチャード王が地下倉庫で今年の上納品を確認していた。
そこへ老騎士シルドが現れ、エルアー伯爵がメーアバダル公の名代のように振る舞っていると報告する。
しかしリチャードは、ディアス本人が王都で社交するより遥かに安全だと判断し、むしろ歓迎する姿勢を示す。
エルアー伯爵は古風ながら堅実な貴族であり、問題行動も起こしていなかった。リチャードは暗に支援するため、適当な貴族を使って伯爵を褒めさせる方針を決めるのだった。
ジュウハの改革成功とエルダンの決意
マーハティ領では、ジュウハが反乱後の改革をようやく完成させていた。
大量の資金を投じ、領民の生活や娯楽を充実させた結果、犯罪は減少し、経済まで好転し始めていたのである。
その一方でエルダンは、妊娠した妻達の安産を強く願っていた。
現在の神殿は新道派の影響が強く、亜人の妻達を歓迎しない。しかしエルダンは、メーアバダル領の新神殿で祈祷を受けさせようと考える。
サンジーバニーや薬湯の恩恵を実際に受けた経験から、ディアス達の下には本当に神の加護があるのではないかと信じていたのである。
そして神殿建立祝いとして、宝石や特産品、神像の設計図まで贈ろうと決意するのだった。
イルク村の案内をしながら――ディアス
父メーアの落ち着きと変化
母メーアから妊娠の報告を受けた翌日、ディアスは改めて父メーアの様子を見に行った。父メーアは前日までと違い、母メーアから説教された影響もあってか、落ち着いた態度を見せていた。イルク村で冬を越すことや、毛を対価として支払うことにも納得しており、意外なほど話の分かる様子だった。
母メーアによれば、父メーアが暴走気味だったのは、初めての結婚と子供という未経験の状況に心を乱されていたかららしかった。本来メーアは臆病な生き物だが、時折こうした性格の個体が現れ、群れに迷惑をかける場合もあれば、英雄的な長へ成長する場合もあるという。
ディアスは、六つ子のフランにも同じ気質があるかもしれないと感じ、今後気を配る必要があると考えるのだった。
洗濯場への驚きとメーア布への誇り
ディアスは父母メーアへ村を案内し、その途中で洗濯場を紹介した。そこでは洞人族が考案した洗濯設備や、犬人族達が働く様子、そして大量のメーア布が干されていた。
夫婦メーアは、自分達の毛から作られた布が大切に扱われ、専用の洗濯施設まで存在することに強い驚きを示す。
父メーアは、自分達の毛がそこまで価値あるものならもっと優遇されるべきだと調子に乗るが、母メーアが即座に叱り飛ばした。ディアスはそのやり取りを見ながら、父メーアにとって母メーアの存在こそ最大の幸運なのだろうと感じていた。
ゲラントの来訪とエルダン来訪の知らせ
そこへ鳥人族のゲラントが飛来し、エルダンの先触れとして訪れたことを伝える。エルダンは神殿建立祝いのため、妻達や護衛を連れて翌日に来訪予定であり、多くの祝いの品も持参するという内容だった。
ディアスは祝いの品の多さを恐縮するが、ゲラントは反乱騒ぎを最小限で収められたことへの感謝も込められていると説明した。
その後ゲラントは報告のため飛び去り、頭上で寝ていたフランツが驚いてディアスへ抗議するという、穏やかなやり取りが続くのだった。
エルダンが驚愕した関所の防備
翌日、エルダン一行は森の街道を進み、メーアバダル領の関所へ到着する。
そこには巨大な木造の壁や物見櫓、地下通路らしき設備まで備わっており、単なる関所ではなく砦と言うべき規模だった。エルダンは、自軍でも突破が難しいほどの防備だと驚愕する。
関所ではクラウスが正装姿で迎え、礼儀正しく歓待を行った。犬人族達による馬の世話や茶の提供も丁寧であり、エルダンは以前より遥かに洗練されたイルク村の成長を実感する。
さらに、整備された街道や快適な馬車旅、草原から漂う香辛料の匂いなどから、イルク村が急速に発展していることを強く感じ取っていた。
イルク村総出の歓迎準備
一方イルク村では、エルダン来訪に向けて村全体が慌ただしく動いていた。歓迎の指揮はダレル夫人が執り、神殿建立祝いということもあり、ベンやフェンディア達も張り切って準備を進めていた。
ディアスは既に力仕事を終えており、正装を汚さないよう父母メーア達のブラッシングをしながら待機していた。
やがてシェップ氏族の犬人族達がエルダン到着を知らせ、村中がさらに活気づく。その後、豪華な黒塗りの馬車を先頭にエルダン一行が姿を現した。
エルダンとの再会と神殿参拝
馬車から現れたエルダンは、以前より遥かに痩せ、成長した姿となっていた。大人びた表情へ変化したエルダンに、村人達は驚きを隠せない。
エルダンは格式張った挨拶を行い、ディアスも同じ調子で応じる。しかし互いに違和感を覚え、結局吹き出して笑い合うことになる。
その後エルダンは、本来の目的が妻達の安産祈願と祈禱依頼であることを打ち明けた。するとベンが神殿の案内役を買って出て、ディアスには客人や馬の世話を任せるのだった。
大量の祝いの品とマーハティ領の繁栄
エルダンが持参した祝いの品は想像以上の量だった。
神殿用とディアス個人用に分けられた目録には、大量の物資や食料、宝石、家畜などが記されていた。カマロッツによれば、現在のマーハティ領は戦後復興と豊作によって好景気に沸いており、その感謝も込めた贈り物だという。
さらに現在王都で主流となっている教えに疑問を抱く者達にとって、神の降臨と新神殿建立は救いそのものだったとも語られた。
ディアスは家畜の贈与や食料供給への配慮に感謝し、今後もマーハティ領との交易を続ける意向を示すのだった。
グリンの敵意とディアスへの恐怖
その頃、猪人族の護衛グリンは、ディアスへ強い警戒心を抱いていた。
人間族至上主義が広がる王都情勢の中、力を付けるディアスを放置すれば、再び獣人達が虐げられる時代に戻るのではないかと恐れていたのである。
しかし実際に対面したディアスからは凄まじい威圧感が放たれ、グリンは何も言い返せなくなる。敵意を向けた瞬間だけ殺気に近い圧力を受けたことで、戦場でのディアスの恐ろしさを実感してしまう。
その後グリンは犬人族達へ接触し、マーハティ領へ戻るよう勧誘するが、ディアスを深く慕う犬人族達の怒りを買い、騒動へ発展する。
ベンによる収拾と教誨
騒ぎの場へ現れたベンは、犬人族達を優しく諭し、グリンへも穏やかな態度で接した。
しかしその笑顔の裏にはディアスに似た威圧感があり、グリンは思わず後退してしまう。
グリンは、自分が人間族支配への不安から行動したことを吐露する。するとベンは、その恐れ自体は理解できると受け止めた上で、心を軽くするため教誨を受けるよう勧めるのだった。
モントが語る戦場のディアス
神殿では、エルダンがベンと歓談していた。
そこへ現れたモントは、戦場でのディアスについて語り始める。ディアスは正面から挑んでくる相手には情けをかける一方、裏から味方を害する敵には徹底的に容赦しなかったという。
特に女子供や弱者を狙われた際の怒りは凄まじく、敵兵達の間ですら恐れられていた。
その話を聞いたエルダンは、ディアスが草原で穏やかに暮らしている現状こそ、多くの者にとって幸運なのだと痛感するのだった。
荒野で グリン
ベンの教誨と新道派への答え
ベンはエルダン達を荒野へ案内し、この地にはいずれドラゴン騒動によって生まれた新たな川が流れ着くはずだと説明した。
そしてグリンの不安に対し、ディアスを害することは新道派の思う壺であり、獣人達が危険だという偏見を強めるだけだと語る。仮にディアスを排除しても次の領主が来るだけであり、それを繰り返せば大乱になると指摘した。
さらにベンは、問題の根源は新道派そのものであり、ディアスではなく誤った教えを改めさせるべきだと説く。グリンは、新道派は既に王都で巨大な勢力となっており、どうにも出来ないと反論するが、ベンは神々の力を借りれば正道が示されると断言するのだった。
荒野に現れた神と新たな川
ベンは荒野の地面へ跪き、神々へ祈りを捧げ始めた。すると地面が割れ、巨大な茶色の鱗を持つトカゲが姿を現す。
その存在は、自らが力を貸すのは極めて稀なことだと語りつつ、今回だけは勇者達に免じて川を与えると告げた。そして新道派への争いには直接関わらないとも釘を刺す。
直後、地面の奥から凄まじい振動と轟音が響き、割れ目から大量の水が噴き出した。水は新たな地割れを削りながら南へ流れ、瞬く間に小川を形成していく。
その光景に一同は圧倒され、エルダンは腰を抜かし、護衛達も呆然とする。グリンは恐怖と感動の入り混じった感情に襲われ、涙を流して神の存在を確信するのだった。
イルク村に伝わった奇跡
一方イルク村では、犬人族が荒野で起きた異変を興奮しながら報告していた。地面が割れ、水が湧き出し、海まで続く川が出来たという内容に、ディアス達は半信半疑となる。
しかしベンやエルダン達が戻り、さらにサーヒィ達の確認も入ったことで、奇跡が事実だと判明する。
ゴブリン達は、自分達の故郷へ帰還できる道が神々によって作られたのだと歓喜し、神殿ではパトリック達が涙を流して祈り始める。洞人族のサナトも、新たな水路やため池の構想を語り始め、村全体が熱狂に包まれるのだった。
荒野開拓への期待
セナイとアイハンは、荒野へ水が流れ込んだことで畑が作れるようになると目を輝かせた。
荒野は大雨や強風が少なく、葉肥石も多い土地であるため、水さえあれば良い農地になる可能性があるという。特に葡萄や砂糖葦など、乾燥地向きの作物栽培への期待が高まっていく。
ダレル夫人やエイマ達も新たな名産品の可能性へ強い興味を示し、ゴブリン達との交易や交通路整備まで含めた未来図を描き始めるのだった。
ベンが語った聖地の真実
その後ディアスは、ベンを追ってユルトへ向かい、聖地について問いただす。
するとベンは、自分が本当に聖地へ辿り着き、神々と邂逅したことを認めた。だがそこで見たものは、神殿で語られる理想の神々とは異なる存在であり、ベン自身は強い失望を味わったのだと語る。
ディアスは、神々が本当に慈悲深い存在なら、あれほど悲惨な戦争を放置するはずがないと静かに応じる。
ベンは、今のディアスへ聖地の真実を伝えるのは危険だとして詳細を伏せつつ、いずれ時が来たら連れていくと約束する。そして今回の奇跡も、神々へ何度も頼れるものではないと強調した。
ベンが去った後、ディアスは聖地が実は意外と近く、行こうと思えば行ける場所なのではないかと考え始める。しかし答えは出ず、今はベンを信じるしかないと結論づけるのだった。
ゴブリン達の帰還準備
翌日以降、イルク村は新たな川の話題で持ち切りとなる。
ゴブリン達は海への帰還準備として、水中呼吸を思い出すための泳ぎの練習を始めていた。洞人族達は、ゴブリン達専用の船の建造を開始し、水中から乗り込みやすい構造や牽引用設備など、細かな工夫を凝らしていた。
交易路としても利用可能なその船に、村人達は大きな期待を寄せていた。
荒野に広がる未来
ディアス達は新たな水源を確認するため荒野へ赴く。
エイマは、荒野は乾燥地出身者から見れば十分可能性のある土地だと語り、葉肥石が置かれていたことにも意味があるのではないかと推測する。さらに、以前トカゲがセナイ達へ森作りを依頼していたことから、この土地自体が何らかの目的で守られていた可能性も浮かび上がる。
そこへ犬人族の若者が、荒野で初めて虫を見つけたと嬉しそうに報告する。水が生まれたことで、生き物達も集まり始めていたのである。
ディアスは、荒野が今後さらに豊かな土地へ変わっていくのだろうと実感するのだった。
帝国側が恐れるディアスの存在
場面は変わり、帝国北西部の城塞では若い重騎士が従者と共にディアスについて語っていた。
彼らは、帝国がディアス暗殺を何度試みても失敗したことを冷静に分析し、今のディアスはもはや止められない存在だと断言する。
若い騎士は、ディアスが公爵となったことで以前以上に自由に軍を動かせるようになり、王国との再戦になれば帝国が敗北しかねないと危機感を抱いていた。
さらにリチャード王子が外交文書で頻繁にディアスの存在を誇示していることを挙げ、それ自体が帝国への強力な脅迫になっていると語る。
海軍構想と獣人一族の決断
若い騎士は、王国へ対抗するには海軍整備が必要だと主張する。陸戦ではディアスを避けられないが、海なら対抗可能かもしれないと考えていた。
しかし従者は、自分の勘ではディアスは海すら制するようになる気がすると語る。従者の勘は昔からよく当たっていたため、若い騎士も否定しきれない。
そして二人は、自分達ニャーヂェン族の将来を考え、場合によってはディアス側へ移る準備を進めるべきかもしれないと話し合うのだった。
ある日の昼食後、広場で鍛錬をしながら――ディアス
冬支度と穏やかな滞在
アクアドラゴン討伐から数日が経ち、イルク村では冬支度や治水工事、船造りなどが順調に進んでいた。ゴブリン族の水中生活への訓練も順調で、村は来客を抱えながらも穏やかな日常を維持していた。
エルダン達も村での生活を満喫しており、カマロッツ達は、戦いや政務続きだったエルダンへ休養を取らせることを優先していた。アルナーはエルダンの妻達との交流を楽しみ、モント達も護衛同士で鍛錬を重ねるなど、それぞれが充実した時間を過ごしていた。
ディアスとエルダンの鍛錬
ディアスとエルダンは、毎朝実戦形式の鍛錬を行うようになっていた。エルダンは健康を取り戻し、獣人としての強大な力を発揮していたが、それでも勝負は毎回ディアスの勝利で終わる。
しかしその勝利は余裕によるものではなく、ディアスは経験と勘で辛うじて優位を保っている状態だった。象人としての力を解放したエルダンは圧倒的な怪力と速度を誇り、鼻を第三の腕のように扱う戦法まで備えていた。
エルダン自身も、ディアスの強さに圧倒され続ける中で、自らの未熟さを痛感する。あと一歩まで追い詰めても、そこから先へ進めない。ディアスは戦いながら回復し、経験に裏打ちされた動きで全てを見切っていたのである。
達観したディアスと悩むエルダン
鍛錬後、アルナーがディアスへ世話を焼く姿を見たエルダンは、二人の関係性へ強い違和感を抱く。婚約しているにもかかわらず、二人の間には男女らしい空気がほとんど存在していなかった。
ロルカへ尋ねたエルダンは、ディアスが長年戦争と責務へ人生を捧げ、欲望よりも民や仲間を優先し続けてきたことを知る。ディアスの禁欲的な生き方は部下達の信頼の源でもあり、皆にとって当たり前の光景になっていたのだった。
その話を聞いたエルダンは、自分こそが二人の仲を進展させるべきだと決意する。
エルダンの苦闘
翌日以降、エルダンはディアスとアルナーを二人きりにする方法を考え続けていた。だが、二人は村の中心人物であり、人望も厚く、常に誰かが周囲にいた。
さらに犬人族から、二人は草原へ出掛けても狩りや競争ばかりしていると聞かされ、エルダンは頭を抱える。
どうにかアルナーへ直接話を聞こうとした矢先、洞人族達が新型船の試作品を抱えて広場へ現れ、その直後には犬人族達が大勢の客人の到着を知らせに駆け込んできた。
何度も邪魔が入り続け、エルダンは半ば意地になりながらも、二人の関係改善を諦めない決意を固めるのだった。
獣人国から来た芸能集団
その頃、西側街道から賑やかな楽器と歌声が響き始める。太鼓や笛、金属音、そして大人数による合唱が村へ近付いてきていた。
現れたのは、獣人国の商人ペイジン・オクタド率いる大規模な芸能集団だった。彼らは、ディアスが神々と邂逅したことを祝うため、商売を投げ出してまで駆けつけたのである。
芸人達は村中へ散らばり、歌や踊り、寸劇、演奏を披露し始める。内容はディアスの功績を大げさに脚色したものであり、イルク村の住民達は熱狂した。
亜人達による超一流の芸
芸人達は、それぞれの種族特性を最大限に活かした芸を見せ始める。怪力で人を投げ飛ばし、柔軟な肉体を自在に折り曲げ、尻尾や鼻まで使って演奏を行い、鳥人族は美しい歌声を響かせていた。
その芸は王都の劇場にも劣らぬ超一流であり、エルダン達までも完全に魅了される。
特に、人間族の国では決して見られない獣人・亜人ならではの芸は、エルダン達の心を深く打った。
ペイジンとの出会い
盛り上がる広場の中、ディアスは大柄なカエルの亜人をエルダンへ紹介する。彼こそ獣人国の商人、ペイジン・オクタドであった。
ディアスは、ネハの故郷でもある獣人国との繋がりが、エルダンにとって良い縁になるだろうと語る。
ペイジンは涙ぐみながらエルダンへ深く頭を下げ、エルダンもまた、自分達と同じ獣人国家の民との出会いを素直に喜び、丁寧に自己紹介を返すのだった。
広場へと向かいながら ディアス
芸に魅了されるイルク村
エルダンとオクタドの会話が盛り上がる様子を見たディアスは、自分がいても邪魔になるだけだと考え、その場を離れて広場へ向かった。そこでは旅芸人達の芸に、村中の者達が夢中になっていた。
セナイとアイハン、メーアの六つ子達は飛び跳ねながら芸を楽しみ、エリーやパトリック達は子供達を支えながら見入っていた。マヤ婆さん達は長椅子に座り、美しい歌声へ聴き惚れていた。
犬人族達は氏族ごとに集まり、芸人達の動きに合わせて右へ左へと大騒ぎしており、洞人族達は酒を飲みながら芸を堪能していた。ゴブリン族達はここが楽園なのかと震え、ジョー隊の面々も肩を組みながら歓声を上げていた。
メーア達も大興奮で、フランシス達から新参メーア達までが一緒になって鳴き声を響かせていた。アルナーまでもが完全に夢中となっており、ディアスはそんな皆の姿に強い喜びを覚えるのだった。
旅芸人ティローとの会話
そこへ旅芸人一座を率いるティロー・アンが現れ、自分達の芸を楽しんでもらえているかとディアスへ尋ねる。
ディアスは素直に芸を称賛しつつ、呼ぶなら年二回程度が良いだろうと答える。何度も見れば飽きが来るが、間を空ければ期待も高まり、その間に芸も磨かれると語った。
ティローはその考えに驚き、芸について一家言あるのかと問いかける。ディアスは、かつて旅芸人好きの戦友がいたこと、その男から旅芸や娯楽について多くを学んだことを明かす。
そこへダレル夫人が加わり、王都の流行や演芸を教える代わりに獣人国の流行を知りたいと提案する。ティローは喜んで応じ、二人は意気投合して会話を始めるのだった。
セナイ達との楽しい時間
役目がなくなったディアスの元へセナイとアイハンが駆け寄り、面白い芸を見せたいと手を引いていく。ディアスはそのまま二人と共に広場を巡り、楽しい時間を過ごす。
その最中、エルダンやティロー、オクタド、ダレル夫人達が一箇所に集まり、何やら熱心に話し込んでいる姿が視界へ入る。しかも時折ディアスを見ながら、何か企んでいるような表情を浮かべていた。
だが次の芸が始まると、セナイ達に促されたディアスはそちらへ意識を向けるのだった。
獣人国からの贈り物
やがて六つ子達が疲れて眠そうになり、セナイ達が抱きかかえてユルトへ戻っていく。その後、オクタドがディアスへ声をかけ、運び込んだ品々の説明をしたいと申し出る。
ディアスが倉庫へ向かうと、そこには黒塗りで金装飾が施された巨大な箱が並べられていた。オクタドは次々と箱を開け、琥珀や翡翠、珊瑚細工、厄除け人形、高級布、獣人国製の武器などを説明していく。
さらに本が入った箱を開けた瞬間、ヒューバートは目を輝かせる。だがその本は獣人国の文字で書かれており、一度は落胆する。しかしオクタドが、自身が王国語を学ぶために使った辞書を差し出したことで、ヒューバートは感激のあまり動けなくなるのだった。
ダンスパーティの準備
その頃広場では、エルダンとダレル夫人を中心にダンスパーティの準備が進められていた。エルダンが考えていた二人きりの作戦よりも、皆の前で良い雰囲気になってもらう方が良いとダレル夫人が提案したためだった。
旅芸人達の楽器や、エリーが少しずつ用意していた品々も加わり、広場はこれまでにない豪華な空間へ変わっていく。
森の関所と盗賊達
一方、森の関所ではクラウスが見張りを続けていた。最近、森の奥から不審な者達が様子を窺っており、クラウスは盗賊だろうと見ていた。
カニスとの会話の中で、クラウスは盗賊団の実情を語る。大規模な盗賊団を維持するのは極めて難しく、多くは生活に困った普通の人間が一時的に盗賊へ身を落とすだけなのだという。
そこへサーヒィが飛来し、イルク村で旅芸人達による盛大な宴とダンスパーティが開かれることを伝える。クラウス達は関所を離れず、後日こちらへ来る旅芸人達を楽しみに待つことを決めるのだった。
メーアバダル領を狙う盗賊達
その頃、街道を進む馬車の中では盗賊達が会話を交わしていた。彼らはメーアバダル領の情報が高値で売れると知り、情報収集を試みていたのである。
だが森の関所は極めて厳重で、商人や旅芸人を装っても突破できなかった。さらにクラウスは法律にも詳しく、偽装や嘘も通じない。
盗賊達は、国内貴族や帝国までもがメーアバダル領の情報を求めていることを知り、他の盗賊団とも協力しながら攻略を目指す決意を固めるのだった。
盛大なパーティの始まり
日が沈み始めた頃、イルク村の広場は完全にパーティ会場へと変貌していた。色鮮やかな布や花で飾られ、大きな焚き火が中央で燃え、ダンス台や酒場、芸の舞台まで整えられていた。
東西関所の者達まで加わり、かつてない規模の賑わいとなった村を、正装姿のディアスは感慨深く見守る。
マヤ婆さんに促されたディアスは、アルナーの準備が整うまで皆の様子を見て回ることにし、まずはナイフ投げ勝負で盛り上がるセキ達の元へ向かうのだった。
野生メーア達の思惑
その宴を見守っていた野生メーアの夫婦もまた、自分達を祀る神殿建立を祝う盛大な宴へ強い感動を覚えていた。
父メーアは、自分達もまとまって代表を立て、冬季滞在について交渉すべきではないかと考え始める。
そんな中、母メーアは東へ向かう四人の神官兵へ気付く。彼らは周囲に気付かれぬよう静かに村を離れており、母メーアは不審に思いながらも、その動向を静かに見守るのだった。
森の中で 盗賊達
盗賊達の関所襲撃
日が暮れ始めた森の中で、盗賊達は関所の警備が薄くなったことに気付き、好機が訪れたと興奮していた。宴のために関所から人が減ったと考えた彼らは、関所を突破して村へ潜入し、情報を盗み出そうと企んでいた。
しかし誰も先陣を切りたがらず、互いの様子を窺いながらじりじりと前進していく。そのまま盗賊達は、気付かぬうちに関所が定めた境界線を越えてしまう。
すると関所の篝火が灯り、そこから警告の声が響く。だが盗賊達はその言葉を最後まで聞かず、一斉に襲撃を開始した。
クラウスの迎撃
門を破ろうとする盗賊達の前へ、アースドラゴン装備をまとったクラウスが飛び込む。クラウスは槍を振るい、盗賊達の武器や盾を次々叩き落としていった。
それは命を奪うためではなく、自分達では勝てないから退けという警告でもあった。しかし盗賊達は数の優位を信じて攻撃を続ける。
森へ逃げようとした者達には犬人族が放たれ、悲鳴が森へ響き渡る。それでも盗賊達は百人いると威勢を張り続けたが、クラウスは千でも万でも来いと叫び、ドラゴン狩りが日常だと言い放ちながら槍を振るい続けるのだった。
神官兵達の参戦
その最中、暗闇の中から獣人の盗賊達が現れ、クラウスへ鋭い連携攻撃を仕掛けてくる。獣人特有の身体能力を活かした動きに、クラウスは歯噛みする。
そこへ突然、パトリック達四人の神官兵が関所上から飛び降りてきた。
彼らは杖を振り回しながら豪快に盗賊達へ襲いかかる。相手を殺すのではなく、神々の教えを叩き込むために戦っているらしく、急所を避けながらも容赦なく叩きのめしていった。
神官兵達は互いを守り合う連携戦術に長けており、その洗練された動きにクラウスは驚かされる。ディアスと共に戦う時とはまた違う、高度な集団戦闘技術だった。
盗賊達の敗走
戦況が不利になると、盗賊達は逃走を図り始める。しかしパトリック達はすぐにそれを察知し、逃げる者達の足を打ち据えていった。
一部はクラウス側へ突破を試み、一部は森へ逃げ込む。しかし森には犬人族達が潜んでおり、逃げた者達は傷だらけになって戻ってくる。
やがて半数は降参し、残る者達も鬼人族による援護射撃とクラウス達の挟撃によって制圧されていく。
それでもなお、数名の獣人盗賊達は高度な連携で突破を試みた。だが鬼人族の矢が飛び、犬人族達も戻ってきたことで完全に包囲され、ついに盗賊達は壊滅するのだった。
ディアスとアルナーのダンス
一方その頃、イルク村の広場ではパーティが最高潮を迎えていた。篝火に照らされた中央で、正装姿のディアスと赤いドレスをまとったアルナーが手を取り合い、ダンスを披露していた。
不器用ながら身体能力に優れた二人の踊りは、ダレル夫人の指導による練習の成果もあって見事な完成度となっていた。
その光景を見つめるフェンディアは、建国王の秘話に酷似した場面だと感じ、強い感動を覚える。
ダレル夫人もまた満足そうに二人を見守っていたが、同時に神官兵達の姿が見えないことを気にしていた。
するとフェンディアは、彼らは盗賊退治へ向かったのだと笑いながら答える。悪人を正しい道へ戻すことこそ、彼らにとって最大の喜びなのだという。
最後の盗賊
戦いから数時間後、一人の狼獣人の盗賊だけが森を突破し、草原へ逃げ延びていた。仲間達を囮に使い、自分だけが生き残ったことに満足しながら、彼はイルク村への潜入を目指す。
そんな中、街道を駆け回る小さな犬人族の子供を発見した盗賊は、情報を聞き出すため捕らえようとする。
しかしその瞬間、筋骨隆々の金髪の男が現れ、凄まじい殺気を放ちながら盗賊へ迫る。
狼獣人は必死に逃走し、森の中で何度も隠れ場所を変える。泥の中、川の中、木の上、大木の洞まで使って逃げ回ったが、その男は全て見抜いて追跡してくる。
ついに追い詰められた狼獣人は、大木の陰で震えながら息を潜める。しかし男の大きな手が枝の間から伸び、首を掴まれた瞬間、恐怖のあまり失神してしまう。
男は首を傾げながらも盗賊を担ぎ上げ、クラウスへ向かって盗賊を捕まえたと大声で知らせるのだった。
関所に向かいながら ディアス
宴の余韻と盗賊騒動の報告
ディアスとアルナーのダンスが終わると、村人達も次々に踊り始め、広場は大いに盛り上がった。犬人族や洞人族、鬼人族と親しくなった領兵達、さらには婆さん達までが思い思いにダンスを楽しみ、踊らない者達も酒や料理、旅芸人の芸を満喫していた。
これほど盛大な宴はイルク村でも初めてであり、皆は限界まで楽しみ抜いた末に倒れるように眠りについた。
翌朝になっても村には昨晩の高揚感が残っており、住民達は宴の話をしながら身支度や朝食を進めていた。そんな中、東の関所で騒動があったとの報告が届き、ディアスは状況確認のため関所へ向かうことを決める。
同行したのはエイマと、関所勤務の父親達に会いたがった犬人族の子供達だった。
最後の盗賊の捕縛
関所へ向かう途中、ディアス達は盗賊らしき男と遭遇する。男は子供を狙っていたため、怒ったディアスが捕まえようとすると、その盗賊は森へ逃げ込んだ。
だがエイマの聴覚と犬人族の嗅覚の前では逃げ切れるはずもなく、盗賊は疲労困憊の末に捕縛される。
関所へ到着したディアスは、クラウスやパトリック達が大量の盗賊を拘束している光景を目にする。パトリック達は杖を片手に厳しい説教を行っており、クラウス達は盗賊達の処遇について話し合っていた。
不審な盗賊集団
クラウスの説明によると、盗賊達の中には明らかに普通の盗賊ではない一団が混じっていたという。装備は上質で腕も立ち、クラウスですら多少苦戦する程だった。
尋問の結果、彼らがメーアバダル領の情報を狙っていたことまでは判明したものの、それ以上の目的は掴めなかった。
そこでエイマは、この件はマーハティ公エルダンへ任せるべきだと提案する。メーアバダル領だけで対処するには人手も勢力も不足しており、ジュウハを抱えるマーハティ領に任せた方が良い結果になるだろうと判断したのである。
また、百人近い盗賊を自領で抱え込むのは危険であり、管理負担も大きすぎると指摘する。
その意見にディアスも納得し、エルダンへ相談した上で引き渡す方針を固めるのだった。
父親達への尊敬
話し合いが終わると、同行していた犬人族の子供達が関所で勤務する父親達の下へ駆け寄る。
子供達は盗賊を大量に捕まえた父親達を尊敬の眼差しで見つめ、ドラゴン装備を格好良いと褒め称えた。
そんな光景に盗賊達の一部は舌打ちをしたが、すぐさまパトリック達が厳しく叱責する。
ディアスは、子供達の前であまり激しくし過ぎないようパトリック達へ釘を刺しつつ、クラウス達への報奨金について考え始めるのだった。
エルダンへの報告
十日後、メラーンガルの領主屋敷へ戻ったエルダンは、ジュウハへ隣領で起きた出来事を報告していた。
グリンが神々との邂逅を経て強い信仰心を抱くようになったこと、ディアスの伯父ベンディアが奇跡を見せたこと、ゴブリン族との交流や船造り、獣人国との交易計画など、多くの成果が語られる。
さらに盗賊達についての報告を受けたジュウハは、頭目や危険人物だけを見せしめとして処刑し、残りは鉱山送りにする案を提示する。
加えて、盗賊の侵入成功を装った偽情報を各地へ流し、敵対勢力を混乱させる策も提案した。
新たな神殿構想
ジュウハはさらに、メーア神殿の存在が今後の政治と外交において大きな意味を持つと考えていた。
亜人との共存を掲げる新たな信仰が広まれば、獣人差別を掲げる新道派への対抗勢力となり得るからである。
そのためマーハティ領にもメーア神殿を建立し、グリン達獣人へ教えを学ばせる計画を打ち出す。さらに獣人国との交流や交易にもこの信仰を活用し、西方商圏を拡大させようとしていた。
エルダンはその提案へ強く賛同し、自分達には天運が味方しているのではないかと感じる。
一方ジュウハは、こうも都合良く事態が進み過ぎていることに僅かな不気味さを覚えながらも、まずは現実的な利益を優先し、次々と新たな計画をまとめ上げていくのだった。
書き下ろし 奇蹟の湧水
荒野を進みながら
砂漠出身であるエイマは、過ごしやすい季節になると砂漠へ出かけ、美しい景色を眺めながら食事を楽しむ「砂見」という文化があると語った。砂や土は人が死んだ後に還る場所であり、その砂から陶器が作られることから、砂を眺める行為には祈りや哲学的な意味合いも含まれているのだという。メーアバダル領
エイマは、神の使いが現れて湧水が生まれた荒野で砂見をしようと提案した。メーア神殿に関わる者として一度は見ておくべき場所でもあるという意見に皆が賛同し、イルク村の住民達は大規模な遠出を行うことになる。
留守番を務めるクラウスやモント、ゴブリン族達を除き、婆さん達や子供達、メーア達まで含めたほとんど全員が参加した。荒野は遠方にあるため、子供や高齢者は馬車へ乗せられ、一行は途中でユルトを建てて一泊しながら南へ向かった。
旅の途中では整備された道や休憩所を楽しみ、普段村から出る機会の少ない婆さん達も秋の景色を満喫していた。
奇跡の湧水への到着
翌日の昼過ぎ、一行は目的地へ到着する。割れた地面から大量の水が湧き上がり、新たな川が形成されつつある光景を見て、皆から歓声が上がった。
真っ先に声を上げたのはフェンディアであり、神々の奇跡を目の当たりにして感激していた。フランシスやフランソワ達メーアもまた、自分達にとっての聖地のような場所を訪れたことを喜び、一部のメーア達はその場で湧水を飲み始める。
ディアスは水質を気にするが、犬人族の若者達は既に何度も飲んで問題がなかったと説明した。これを聞いた住民達も安心し、次々と湧水を口にしていく。
砂見の準備
到着後、住民達はそれぞれ役割を分担して砂見の準備を始める。アルナーとダレル夫人は絨毯を敷き、婆さん達や婦人会は焚き火や茶の準備を進めた。
ベン伯父さんやパトリック達はフェンディアと共に祈りを捧げ、犬人族達は周辺を走り回る。セナイとアイハンは持参した種を川辺へ撒き、サーヒィ達も空から種を撒いていった。
ゴルディア達は酒宴の準備を進め、領兵達もそれを手伝い、あっという間に宴の場が完成していく。
砂見の宴
準備が整うと、エイマが砂見の開始を宣言した。彼女は、砂の美しさとは長い歴史と風が作り上げた芸術であり、砂から生まれた陶器に料理や酒を盛ることにも意味があるのだと語る。
住民達は陶器の器を掲げ、メーア達も皿を咥えて応じた。そこにはアルナーが用意したパイ包みや大量のパン、壺で煮込んだ肉料理、大きなハミウリなど豪勢な食事が並べられていた。
ディアスは荷運びを手伝った後、エイマの近くへ腰を下ろし、改めて荒野の景色を見渡す。
荒野の美しさ
ディアスは当初、草原や森、花畑の方が美しいと思っており、荒野の魅力を理解できずにいた。
しかし改めて周囲を観察すると、岩山には不思議な模様が刻まれ、骨のようなものが埋まっていることに気付く。地面にも何かが流れた跡や砂の川のような模様が存在し、長い歴史の積み重ねがそこに刻まれていた。
エイマの説明を聞きながら景色を眺めるうちに、ディアスは荒野にも独自の美しさがあることを理解していく。
そこへマヤ婆さんが淹れた茶と砂糖菓子を持ってきてくれたことで、ディアスはさらに穏やかな気持ちで荒野を楽しむようになった。
荒野での踊り
やがて犬人族の一人が立ち上がり、思いつくままに踊り始める。決まった型も意味もない、ただ楽しさのまま身体を動かすだけの踊りだった。
その様子につられて、手拍子をする者、歌う者、踊り出す者、箱を叩いて音を出す者が現れ、宴はさらに賑やかになっていく。
エイマはその光景を本当に嬉しそうに眺めながら、砂見の素晴らしさを噛み締めていた。
ディアスもまた、こうした時間をまた作っても良いかもしれないと語り、それを聞いたエイマは笑顔を浮かべながら、犬人族の踊りに合わせて身体を左右へ揺らすのだった。
群れの長フランシスの一日 フランシス
フランシスの一日
イルク村のメーア達を率いる長であるフランシスは、アルナー達が目覚めることで一日を始めていた。夜明け前、家事のために起きたアルナーに気付いてアイハンとエイマも起床し、それに合わせてフランシスやフランソワ、六つ子達も目を覚ます。
ユルトの中で唯一眠り続けているのはディアスだけだったが、誰もそれを咎めようとはしなかった。ディアスが誰よりも働き、遅くまで領地を守り続けていることを皆が理解していたからである。
アルナー達は静かにユルトを出て挨拶を交わし、竈場へ向かう。一方フランシスとフランソワは、まず広場へ向かい、護衛の犬人族達と合流して村の見回りを行う。
群れを率いる役目
フランシス達の見回りは、ディアスのように領内全体を巡るものではなかった。メーア達が暮らすユルトや厩舎を回り、仲間達の無事を確かめ、困り事や要望を聞いていくことが目的だった。
見回りが終わると、フランシスは群れを率いて餌場へ向かう。その際には犬人族だけでなく、ジョー隊やロルカ隊、リヤン隊、あるいはパトリック達神官が護衛として同行し、メーア達を安心させていた。
時には馬や白ギーと一緒に餌場へ行くこともあった。馬達とは餌の好みが近く、表情による意思疎通も出来たため、仲間というより盟友に近い関係を築いていた。危険な獣が近付けば、馬達は目や耳で素早く察知し、その存在を知らせてくれる。
朝食会と昼の休息
朝の餌場では軽く食べる程度に留め、フランシス達は早めに村へ戻る。戻った後はディアス達との朝食会があり、その場で群れから出た要望や問題をディアスへ報告していた。
朝食後は休憩時間となり、毛刈りやブラッシングなどもこの時間に行われる。その後、六つ子達を連れて再び餌場へ向かい、昼の間はゆっくりと草を食べながら休息を取る。
食べては眠り、水を飲んではまた草を食べる。そうして上質な毛を育てるための栄養を体へ蓄えていった。
毛を守る誇り
昼過ぎになると、フランシス達は川へ向かい水浴びを始める。
メーアの毛はイルク村の生活を支える重要な資源であり、その品質を守ることはメーア達の誇りそのものだった。そのため水浴びは丁寧に行われ、互いの毛を食みながら汚れを落としていく。
そこへアルナーやエリー、アイサ、老婆達もやってきて、水浴びを手伝った。エリーが調合した専用の石鹸やブラシを使い、メーア達の毛は隅々まで丁寧に洗われていく。
洗い終えた後は、川辺に作られた風通しの良い休憩所で日向ぼっこをしながら毛を乾かす。太陽の光を浴びせてふっくらと仕上げることもまた、大切な仕事だった。
この手入れを怠れば毛の価値が落ち、自分達の存在価値まで揺らいでしまう。そのためフランシス達は夕暮れまでじっくりと時間をかけて毛を整えていた。
夜の安息
夕方になるとフランシス達は夕食会へ参加し、その後ユルトへ帰宅する。
夜のユルトでは、ディアス達の雑談へ耳を傾け、六つ子達と遊び、メーアとしての役割を教えていた。セナイやアイハンともじゃれ合い、ディアスとも穏やかな時間を過ごしてから眠りにつく。
大切な家族と群れの仲間、そしてディアス達の側で眠れることは、フランシスにとって何よりも幸福なことだった。不安も恐怖もない安眠は、かつて知らなかったほど心地良いものとなっていた。
そして眠りについたフランシスは、巨大な身体を得てドラゴン達を踏み潰し、イルク村と家族を守る夢を見ながら、朝まで静かに鼻を鳴らし続けるのだった。
同シリーズ
領民0人スタートの辺境領主様














その他フィクション

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