物語の概要
■ 作品概要
本作は、アース・スターノベルから刊行されている、不毛の地を切り拓く内政・領地経営ファンタジー小説の第8巻である。かつて戦争で「救国の英雄」と称されながらも、領民も家も食料もない過酷なネッツロース草原を与えられた領主・ディアスが、多様な種族の領民たちと共に理想の村を築いていく物語が描かれている。 第8巻のあらすじとしては、入植から一年が経過し、関所や迎賓館の完成、新技術の導入、元戦友たち34人の移住によりイルク村が交易拠点として目覚ましい発展を遂げる姿が描かれる。そんな中、北の山に飛行型モンスター「ウィンドドラゴン」5匹が出現し、ディアスは完成したばかりの「オリハルコンの全身鎧」を身に纏い、鷹人族のサーヒィと共に犠牲者ゼロの討伐に挑む。さらに、メーアバダル公(ディアス)の名を騙り暴れ回る悪辣な反乱軍を鎮圧するため、仲間たちと共に出陣し、圧倒的な武勇と見事な連携で砦を陥落させていく。 世界観としては、人間族のほかに鬼人族、犬人族、大耳跳び鼠人族、森人族、鷹人族、洞人族など、独自の文化や生態を持つ多様な亜人種・異種族が息づくハイファンタジー世界が舞台である。差別や奴隷制が根強く残る社会において、主人公の治めるイルク村は「弱い者を守る」という信念のもと、種族の壁を超えて全員が家族として支え合う、温かく活気に満ちた共生社会を形成している。
■ 主要キャラクター
- ディアス(ディアス・メーアバダル): 本作の主人公。20年間志願兵として戦い続けた元王国兵で、現在は公爵位を授かり「メーアバダル」の家名を名乗る。圧倒的な膂力と武勇を誇るが、性格は極めて優しく素朴であり、行き場を失った棄民や亜人たちを「家族」として無条件で保護する。
- アルナー: ディアスの妻であり、隣人である鬼人族の少女。他者の嘘や悪意を見極める魔法「魂鑑定」の使い手であり、優れた交渉術や聡明さでディアスの内政面を最も近くで支える頼もしいパートナーである。
- エイマ: 大耳跳び鼠人族の少年。高い知能と読み書き・算術の知識を活かしてイルク村の教育係や連絡役を務める。自慢の鋭い聴覚を駆使し、戦闘時には敵の伏兵や罠を看破してディアスを強力にサポートする。
- セナイとアイハン: 植物の成長を早め、病や瘴気を防ぐ結界を張る秘密の魔法を持つ森人族の双子。前巻でディアスと和解して秘密から解放されたため、第8巻では村の畑や森を豊かにしていく活動に生き生きと励む。
- サーヒィ: ディアスを慕って領民となった鷹人族の英雄。第8巻では、鷹人族の家訓である「ドラゴン狩り」の偉業を達成して3人の婚約者と結婚するため、ウィンドドラゴン討伐に志願し、ディアスとの見事な連携を披露する。
- モント: かつてディアスと戦い、捕虜として行動を共にした元帝国軍人の男性。第8巻で正式に領民となり、ディアスを慕って一斉に移住してきた元志願兵(戦友)たち34人をまとめ、領兵として組織化する小隊の指揮官として活躍する。
- エルダン: 隣領であるマーハティ領の領主で、半亜人の青年。「人間と亜人が種族の垣根を超えて平和に暮らせる世界」を目指す同志としてディアスと固い友情で結ばれており、王都での政治的暗躍や領地売買を通じてディアスを全面的に支援する。
- エリー: 孤児ギルドの幹部であり、ディアスの自称婚約者。商売や衣服デザインの経験が豊富で、第8巻では木材輸入のための岩塩販売や、夏の交易品「氷」の流通計画など、イルク村の巨大な交易構想を経済面から牽引する。
■ 物語の特徴
- ・多種多様な異種族との「泥臭くも温かい共生」 本作の最大の魅力は、主人公が金や権力で人を支配するのではなく、対話と尊重によって信頼関係を築いていく点にある。人間族の老婆たちの経験、犬人族の献身的な労働力、森人族の魔法など、それぞれの種族が持つ特性や知恵を活かし合いながら、過酷な辺境の地を豊かな理想郷へと変えていく過程が泥臭くも温かく描かれている。
- ・ロジカルかつ緻密な内政・経済発展の描写 ディアスの規格外の戦闘力による爽快な無双劇が展開される一方で、第8巻では気化熱を利用した「冷却ツボ」の量産、特殊な粘土で覆った地下貯蔵庫と「氷の道」の整備、メーア布を通貨代わりにする貨幣経済の基礎作りなど、生活インフラや独自の経済圏が形成されていく過程が非常にロジカルかつ丁寧に描写されており、他の領地経営作品との大きな差別化要素となっている。
- ・「秘密の解放」と、王国中に轟く「英雄譚のカタルシス」 これまでは周囲に隠さざるを得なかった双子の魔法が村のサポート体制のもとで解放され、森が豊かな姿へと劇的に変化していく描写が心地よい。また、公爵の名を騙る反乱軍の砦を一撃で粉砕し、被災地への経済支援までをも犠牲者ゼロで成し遂げたディアスの武勇が、半ば伝説的な「救国の英雄譚」として王国中、さらには国外にまで急速に広まっていく構成は、読者に圧倒的なカタルシスを与える興味深いポイントである。
書籍情報
領民0人スタートの辺境領主様 Ⅷ 救国の英雄達
著者:風楼 氏
イラスト:キンタ 氏
出版社:アース・スターノベル
発売日:2022年8月18日
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あらすじ・内容
できたての迎賓館に千客万来!!ある日、メーアバダル領の関所へと現れた来客。それはディアスにも見覚えのある顔──かつて孤児院でともに孤児たちのとりまとめをしていた男、ゴルディアだった。現在はギルドの長をしているゴルディアから、迎賓館の必要性を説かれたディアスは、早速迎賓館の建築を進める。迎賓館が出来上がると、次々と貴族たちの来訪があり、対応に追われるディアス。一方、かつてディアスと戦場をともにした仲間たちが、次々とイルク村へと足を向け始める。さらにはかつての敵国の将であり、ディアスたちの捕虜だった男までもがイルク村を訪れ……。懐かしい顔ぶれが次々と集い、思い出話に花が咲く!
感想
入植から一年が経過したイルク村の目覚ましい発展ぶりには、目を見張るものがある。インフ(インフラ)の整備や新技術の導入、さらには酪農の開始や経済システムの定着など、単なる開拓村から強固な防衛力と経済基盤を持つ先進的な交易拠点へと着実に進化を遂げていく姿は、読んでいて非常にワクワクさせられた。
特に日常パートにおける異種族たちの輝きが印象深い。秘密から解放された双子のセナイとアイハンが、イルク村の仲間たちの温かいサポートを受けながら森人族の力を存分に発揮する場面は実に微笑ましかった。彼女たちの健やかな活動が森や畑に劇的な変化をもたらし、新たな特産品の開発へと繋がっていく流れは、村の明るい未来を予感させる。また、新しく建設された迎賓館の描写も非常に興味深かった。単なる宿泊施設に留まらず、領の現状を正しく伝えるための政治的な意図や、村の秘密を部外者から守るための工夫が凝らされた重要な拠点として機能している点が素晴らしい。ゴルディアらの知恵と領民の経験を活かした運営体制からは、村全体の強い連帯感が伝わってきた。
エリーやヒューバートらの知恵が結集した交易の描写も、本作の大きな魅力だと言える。単なる物資の売買に留まらず、領内のインフラ整備や他領との連携、さらには被災地への経済支援にまで発展していくスケールの大きさに圧倒された。領民たちの主体的な活動が実を結び、過酷な開拓地が周辺地域を巻き込む一大拠点へと成長していく様子には、領地経営ファンタジーとしての醍醐味が凝縮されている。
一方で、戦闘シーンの迫力と興奮も健在である。かつて生死を彷徨う原因となったトンボ型の魔物・ウィンドドラゴンの討伐では、ディアスとサーヒィの種族を超えた見事な連携が窮地を救う展開に胸が熱くなった。新装備であるオリハルコンの全身鎧の活躍も見逃せない。加工や魔力管理の難しさという厄介な欠点はありつつも、ディアスの驚異的な体力や戦闘力と組み合わさることで、あらゆる攻撃を弾き、単騎で砦の城門を打ち破る破城槌のような恐るべき力を発揮する描写には、最強装備ならではのロマンが詰まっていた。
物語の終盤、かつてディアスと共に過酷な戦争を生き残った連中が次々と領地へ押し寄せてくる展開は、人間関係の広がりを感じさせて実にエキサイティングだった。幼馴染のゴルディアや、義足を持つ元敵軍の軍人モント、そして100人の兵士たちとその妻たちが合流し、一気に住民が増えていく様子は、ディアスの人徳の賜物に他ならない。彼らと共に隣の領地で勃発した反乱の鎮圧へと向かう流れは、非常にドラマチックであった。
メーアバダル公の名を騙る反乱軍の鎮圧が、ディアスの圧倒的な武勇と仲間たちの優れた連携によって、完全な無敗かつ無犠牲で達成された結末には深いカタルシスを覚えた。さらに、単なる武力行使に留まらず、被災地の地域経済を回す形での支援を行う描写からは、ディアスの底知れない優しさが窺える。この一件により、彼の名声が王国中だけでなく国外にまで轟く結果となったのも納得である。
ディアスの純粋な人助けの精神と、見見返りを求めない高潔な姿勢は、多くの人々の心を動かさずにはいられない。村の仲間たちがそれぞれの長所と強い絆を武器に、領地と周辺地域の平和を守る大きな力となっていく姿に、深い感動と読後の爽快感を味わうことができる一冊だった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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考察・解説
イルク村の発展
『領民0人スタートの辺境領主様』第8巻において、入植から一年が経過したイルク村は、新たな技術の導入や施設の拡充、そして人員の大幅な増加により、目覚ましい発展を遂げている。その具体的な発展の実態は以下の通りである。
1. 施設の拡充:関所と迎賓館の完成
村の玄関口となる施設が本格的に整った。
- 関所の完成:クラウスの指揮のもと、隣領からの出稼ぎ職人や犬人族たちが協力し、門、木杭防壁、物見櫓、取り調べ小屋、宿舎などが完成し、立派な軍事・防衛施設として機能し始めた。
- 迎賓館の建設:旧友ゴルディアの指揮と、アイサやイーライの協力により、関所の近くに迎賓館が建てられた。大きなユルトを中心に、倉庫、控室、宿泊用ユルト、井戸、厠などが木柵で囲われ、内部には立派な机や椅子、メーア布の装飾品などが並べられ、辺境とは思えない格式ある空間が完成している。
2. 生活基盤の強化と新技術「冷却ツボ」
夏の暑さや食料保存に備えた新たな設備や技術が導入された。
- 水源小屋と氷の貯蔵庫:ベン伯父さんとナルバントたちの計画により、小川の水源を守る小屋が完成した。さらにその近くの地下を掘り、灰や石灰、メーアの毛、卵白などを混ぜ合わせた「水と熱を通さない特殊な粘土」で覆った氷の貯蔵庫が建設された。冬の雪や氷を保存し、食料の長期保管や隣領への氷販売を目指している。
- 不思議な冷却ツボ:洞人族のオーミュンが考案した素焼きの不思議な水瓶を、ヒューバートとエイマが改良した。大小二つのツボの隙間に焼いた砂を詰めて水を吸わせ、水が染み出して蒸発する際の気化熱を利用して内部を冷やす仕組みで、夏へ向けて量産が始まっている。
3. 農業・畜産の発展と「酪農」の開始
農業や畜産においても、環境の変化に伴う新たな一歩を踏み出している。
- 森の開拓とアザミの群生:森人族の双子セナイとアイハンが育てた苗木が森へ植え替えられた。以前に間伐を行ったことで森に太陽の光が差し込むようになり、チーズ作りや食用、油の原料にもなるアザミなどの薬草や花が群生し、虫たちも元気に育つ豊かな森へと変化している。
- 白ギーの安産とチーズ作り:十分な食事と犬人族のマッサージのおかげで、白ギーが驚くほどの安産で仔を産み、大量のミルクを出すようになった。これを機に、スーク婆さんがアザミなどの植物を活用した、果物のように爽やかな香りがするチーズやバター作りを開始し、村の食卓はさらに豪華になっている。
4. 経済活動と役割分担の定着
人口の増加に伴い、効率的な労働環境と独自の経済圏が形成されつつある。
- 犬人族の経済活動:シェップ氏族はロバに荷車を引かせ、岩塩鉱床から岩塩鉱を集めて鬼人族の村へ運び、運搬賃としてメーア布の端材を受け取るという独自の交易を始めた。また、犬人族たちの間ではメーア布を通貨代わりにするというヒューバートの経済構想が自然と広まり定着しつつある。
- 家畜の世話の専業化:馬の世話はアイセター氏族が中心となるなど、村人が増えたことでそれぞれの得意分野に特化した仕事の分担が進んでいる。また、鷹人族のサーヒィ達には、ウィンドドラゴンの素材で作られた魔力で開閉する翼の防具(滑空補助にもなる)などの新装備が支給された。
5. 領民と軍事力の飛躍的な増加
村の安全を保障する防衛力と労働力が劇的に強化された。
- モントと元戦友たちの移住:かつてディアスと戦い、のちに捕虜として行動を共にした元帝国軍人のモントが正式に領民となった。さらに、ディアスを慕う元大工のジョー、元石工のロルカ、元鍛冶職のリヤンをはじめとするかつての志願兵(戦友)たち34人が一斉にイルク村へ移住してきた。
- 領兵の組織化:大勢の元志願兵たちは全員が領兵となることを望み、モントの指揮によって11人編成の3つの小隊(ジョー小隊は関所勤務、ロルカ小隊は巡回と訓練、リヤン小隊は畑仕事)に組織化された。これにより、イルク村は強大な防衛力と労働力を手に入れることになった。
まとめ
このように、入植から一年が経過したイルク村は、インフラの整備、新技術の導入、酪農の開始、経済システムの定着、そして頼もしい元戦友たちの合流により、目覚ましい発展を遂げている。単なる開拓村から、強固な防衛力と経済基盤を持つ先進的な交易拠点へと、着実な進化を果たしている。
ウィンドドラゴンの討伐
『領民0人スタートの辺境領主様』第8巻におけるウィンドドラゴンの討伐は、ディアスの新たな専用装備のお披露目であると同時に、鷹人族のサーヒィがドラゴン狩りの勇者としての名誉を勝ち取り、婚約者たちとの結婚を決定づける重要な戦いとして描かれている。討伐の経緯と戦闘の様子は以下の通りである。
1. ウィンドドラゴンの出現とオリハルコンの鎧
水源小屋の建設準備を進めていた矢先、偵察に出ていたサーヒィから「北の山にウィンドドラゴンが5匹うろうろしている」という報告が入る。
- 過去の戦いでウィンドドラゴンの攻撃によって傷が化膿し、高熱に苦しんだ経験があるディアスは警戒する
- ナルバントが完成したばかりの「オリハルコンの鎧」を身につけるよう強く勧める
- この鎧は、不思議な石を鉄に混ぜて作られた特殊な合金製で、太陽の光と着用者の魔力を吸収し、攻撃を受けると魔力を放出して衝撃や熱を弾き返すという驚異的な防具である
- ディアスはこの黄金色に輝く全身鎧とメーア角兜を装備し、北へと向かった
2. サーヒィの決意と同行
討伐には、案内役としてサーヒィも肩に乗って同行した。
- 危険な戦いであるにもかかわらず彼が同行を強く望んだ理由は、鷹人族の家訓である「ドラゴン狩り」を成し遂げるためであった
- 勇者として胸を張って3人の婚約者(リーエス、ビーアンネ、ヘイレセ)と結婚するという強い決意があった
3. 投げ斧と鎧の力を駆使した激闘
戦場となる荒野に到着すると、トンボそっくりな姿のウィンドドラゴンたちが飛び回っていた。
- ディアスはエルダンへの母ネハから貰った不思議な投げ斧を全力で投擲し、まずは1匹目を真っ二つに引き裂く
- この投げ斧は念じれば手元に戻ってくる特性があり、サーヒィの助言を受けて、戻ってくる軌道上にある2匹目の胴体にも直撃させて討伐した
- 残るドラゴンたちはディアスに接近戦を仕掛けてくるが、噛みつこうとした瞬間にオリハルコンの鎧が閃光と衝撃を放って敵を弾き飛ばした
- その隙を突いてディアスが戦斧で次々と討伐していった
4. 最後の1匹との死闘と見事な連携
最後の1匹は知能が高く、ディアスたちと直接戦うことを避け、背後にあるイルク村へ向かおうとする嫌らしい動きを見せた。
- それを阻止しようとサーヒィが空中で立ち向かったが、一方的に攻撃されて劣勢に陥ってしまう
- ディアスの投げ斧の攻撃も完全に見切られてしまうが、ディアスはゆっくりと手元に戻る状態の投げ斧を空中のサーヒィに掴ませるという機転を利かせた
- サーヒィは空中で投げ斧を受け取り、ドラゴンの背中を激しく斬りつけた
- 疲労とダメージで落下し始めたドラゴンをディアスが戦斧で粉砕し、見事犠牲者ゼロでの討伐を達成した
5. 討伐の成果とサーヒィたちの結婚
一番の大物は戦斧で粉砕されてしまったが、魔石は無さに5個すべて回収された。
- この戦いで最後のドラゴンをイルク村へ向かわせず、果敢に立ち向かったサーヒィの功績は誰の目にも明らかであり、見事ドラゴン狩りの偉業を達成した
- この手柄により、リーエスたち3人も惚れ直し、数日後には正式にサーヒィと彼女たち3人の結婚が成立することになる
- 回収されたドラゴンの素材の軽くて硬い特性を活かし、サーヒィたち鷹人族のために、魔力で開閉する翼の防具などの新しい専用装備が作られることになった
まとめ
このように、ウィンドドラゴンの討伐はイルク村の強固な防衛力と、領民たちの強い絆を示すものとなった。新たな装備の力だけでなく、ディアスとサーヒィの種族を超えた見事な連携が窮地を救い、村に新たな名誉と幸せをもたらしたのである。
オリハルコンの全身鎧
『領民0人スタートの辺境領主様』第8巻に登場する「オリハルコンの全身鎧」は、ディアスの新たな専用装備であり、強大なモンスターや反乱軍を相手に圧倒的な防御力を発揮する驚異的な防具である。その特徴や活躍について解説する。
1. 誕生の経緯とオリハルコンという名前
この鎧は、洞人族の鍛冶職人であるナルバント達が、ディアスの使っていた鉄鎧を元に作り直したものである。
- 神の使いであるメーアモドキから討伐の褒美として授けられた不思議な石を鉄に混ぜ込んでいる
- 特殊な合金で作られており、ナルバントは古い言葉から取ってこの合金をオリハルコンと名付けた
2. 太陽の光と魔力を吸収する黄金の輝き
この合金は、完成した直後は普通の鉄と同じ鈍い色をしているが、特殊な特性を持っている。
- 太陽の光と触れている者の魔力をたっぷりと吸収すると、眩しいほどに煌めく黄金色に変化する
- ディアスが身につけることで彼の魔力を吸い上げ、見る角度によっては目が潰れそうなほど派手な金色に輝く
3. 攻撃を自動で弾き返す絶対防御の力
この鎧の最大の特性は、太陽の光と魔力を十分に蓄えた状態であれば、攻撃を受けそうになった瞬間に魔力を放出し、自動的に衝撃や熱を弾き返すことができる点である。
- フレイムドラゴンの炎でさえ弾いてくれるとナルバントが太鼓判を押すほどの防御力を誇る
- ウィンドドラゴンとの戦闘や反乱軍の砦攻略戦では、敵の噛みつきや飛んでくる無数の矢を、まるで見えない壁があるかのように次々と弾き飛ばす無双の活躍を見せた
4. 蛇の腹のような滑らかな構造
防御の特性だけでなく、鎧自体の構造も極めて優秀である。機能性の詳細は以下の通りである。
- 鋲で留められた何枚もの金属板が綺麗に折り重なる蛇の腹のような仕組みになっている
- ディアスが走ったりしゃがんだり腰を捻ったりしても、パーツが生き物のように滑らかに連動して動きを妨げない
- 耳障りな金属音も鳴らず、かなりの重量があるものの全身に重さが分散されるため、着用者の負担が少ない
5. 厄介な欠点と加工の苦労
一方で、この鎧にはいくつかの欠点や運用の難しさもある。
- 加工の困難さ:攻撃を弾くという特性ゆえに、鍛冶作業中の槌の衝撃や炉の熱まで弾いてしまうため、加工が非常に困難であった。ナルバント達は、泥で壁の隙間を塗りつぶして太陽の光を完全に遮断した作業場を作り、夜の闇を活用することでようやく完成にこぎつけた。
- 魔力切れのリスク:攻撃を弾き続けると魔力を消耗し、魔力を吐き出すほどに元の鈍い鉄色へと戻っていく。太陽の光か魔力のどちらかが不十分になると特性が失われてしまう。反乱軍の親玉との戦闘では、相手が自棄になって投げつけた大量の金貨を一枚一枚律儀に弾いてしまったことで魔力を激しく消耗し、黄金色を失って一時的な機能停止に陥るという弱点も露呈した。
まとめ
このように、オリハルコンの全身鎧は加工や魔力管理の難しさはあるものの、ディアスの驚異的な体力や戦闘力と組み合わさることで、単騎で砦の城門を打ち破り軍勢を圧倒する破城槌のような恐るべき力を発揮する最強の装備となっている。
迎賓館の建設
『領民0人スタートの辺境領主様』第8巻における迎賓館の建設は、イルク村が外部の貴族や使者を正式に迎え入れるための重要な国家事業として描かれている。旧友ゴルディアの知見とギルドの協力によって完成したこの施設について解説する。
1. 建設のきっかけと立地の選定
隣領のエルダンから迎賓館の必要性を説かれていたものの、ディアスはイルク村に帰還後すっかりその準備を忘れていた。王都からの使者が数日後に迫る中、イルク村を訪れた旧友のゴルディアがその遅れを指摘し、彼が建設の指揮を執ることになる。立地の選定理由は以下の通りである。
- メーアの群れや多くの獣人たちなど、部外者に見られたくないものが多いイルク村の内部を避けるため、森と村の中間地点である関所の近くに決定した
- アルナーの提案により、元々街道の休憩所として造る予定だった井戸と廁の周辺を活用している
2. ゴルディアの設計思想:ユルトの活用
ギルド長として各地の領主を見てきたゴルディアは、迎賓館は領の規模に見合った程々のものが一番良いとアドバイスする。無理に立派すぎると余計なトラブルを招き、貧相すぎると見下されてしまうためである。
- あえてイルク村の標準的な住居であるユルト(幕家)をそのまま用いる設計とした
- これにより、この領が遊牧・牧畜を主体としていることや、現在の領の規模を相手に正しく察知してもらうという高度な政治的意図が込められていた
3. 充実した設備と格式ある内装
ゴルディアの指揮と、事前に必要なものを推測して準備していたアイサとイーライの協力により、迎賓館は短期間で形になった。設備と内装の詳細は以下の通りである。
- 配置:道から井戸や廁が見えないように大きなもてなし用のユルトで隠し、その左右に倉庫や控室用の小さなユルトを設置した。さらに宿泊用のユルトを二つ設け、一帯を木柵で囲うことで独立した空間を作っている。馬を休ませる馬房や、料理を用意する炊事場(竈場)も整備された。
- 内装:ユルトの内部には、アイサたちが持ち込んだ立派なテーブルや椅子、メーア布のテーブルクロス、花瓶の台座などが配置された。最奥にはメーアの横顔刺繍の旗とディアスの大戦斧が飾られ、辺境とは思えない格式と威厳を備えた空間に仕上がっている。
4. 経験豊富な運営体制
迎賓館の管理と給仕は、過去に村や食堂で似たような経験があるという棄民の老婆たち(ピソン婆さんとジメチ婆さん)が担当することになった。
- ゴルディアも、変に若い者に任せると色恋沙汰などのトラブルが起きる可能性があるとして、経験豊かな老婆に任せる案に強く賛同している
- 普段は犬人族の若者たちが裏方として彼女たちを手伝い、客人が来た際には隠れるか村へ戻るという体制が整えられた
- 実際にシグルザルソン伯爵家のエーリングやサーシュス公が訪れた際には、この迎賓館が大いに役立った
- マヤ婆さん特製の香辛料が効いた豪華な黒ギー肉のスープやホットワインが振る舞われ、使者たちを大いに満足させた
まとめ
このように、イルク村の迎賓館は単なる宿泊施設にとどまらず、領の現状を正しく伝えるための政治的な意図や、村の秘密を部外者から守るための工夫が凝らされた重要な拠点である。ゴルディアらの知恵と領民の経験を活かした運営体制により、外部からの重要人物を迎え入れる準備が万全に整えられている。
近隣領地との交易
『領民0人スタートの辺境領主様』第8巻において、施設の拡充や領民の増加に伴い、イルク村では近隣領地や外部組織と連携した本格的な交易計画が動き出している。イルク村の交易の実態と今後の展望について、以下のポイントから解説する。
1. 建設ラッシュに伴う木材輸入と岩塩の期間限定販売
関所や迎賓館、さらに酒の醸造所などの建設が進んだことで、イルク村では木材が不足し始めている。森の環境を保つために過度な伐採を避ける必要があり、外部から木材を定期的に輸入することが提案された。その資金源としてエリーが目をつけたのが岩塩である。
- ゴルディアの情報により、南方の港町で豊漁が続いており、魚の塩漬け保存に必要な塩が不足していることが判明した
- 煮出し不要で質の良い岩塩は需要が高いため、エリーは高く売れる今だけギルドを相手に販売して木材購入の資金を稼ぐ計画を立案した
- 後述する氷売りなどに移行するまでの時間を稼ぐという狙いもあり、ディアスもこの商売の全権を彼女に委ねている
2. 夏の新たな交易品「氷」と「氷の道」の整備
ヒューバートとエリーは、冬の間に北の山から雪や氷を集めておき、夏になったら暑い隣領であるマーハティ領へ売り込むという計画を立てている。
- 運搬中に氷が溶ける懸念に対しては、冷気を内側に封じ込める特性を持つメーア布と鞣し革で氷を包むというアイデアが出された
- この計画に向けて、村の北側や関所、迎賓館の周辺に特別な粘土で覆った地下貯蔵庫が次々と建設されている
- 特殊な粘土は灰、石灰、メーアの毛、卵白などを混ぜたものであり、水と熱を通さない性質を持つ
- 隣領への運搬ルートを意識した氷の道作りも着実に進められている
3. ギルド拠点と迎賓館の取引所
旧友のゴルディアは、マーハティ領にギルドのほぼ本部並みの規模となる拠点を新設し、アイサとイーライを責任者に据えた。
- これにより、イルク村の産品を買い取り、必要な物資を販売する強力な商売のルートが確立された
- イルク村の内部にあるメーアの群れや多くの獣人などの秘密を外部の商人に見せないための対策も講じられている
- 森と村の中間地点に完成した迎賓館の近くに取引所を設け、無所属の行商人などとの取引はそこで完結させる体制が整えられた
4. シェップ氏族による岩塩の運搬交易
犬人族のシェップ氏族も独自の交易活動を始めている。
- 彼らはロバに荷車を引かせて岩塩鉱床で岩塩を集め、それを鬼人族の村へ運んで運搬賃としてメーア布の端材を受け取っている
- 鬼人族の許可を得た上で余った岩塩をシェップ氏族自身が溜め込み、いずれエリー達の行商で売ってもらって大きく稼ごうと計画している
- この活動により、村の中でメーア布を通貨代わりとする経済構想が自然と広まり定着する後押しとなっている
5. 反乱軍討伐における被災地への経済支援
ディアス達がマーハティ領の反乱軍の砦を次々と攻略した際、大量の物資である戦利品を獲得した。ディアスはこれらを無償で返還しようとしたが、ゴルディアの助言により、地域の経済を回す形での支援へと切り替えた。
- 周辺の村や町で物資を出来るだけ安く売り、逆に彼らが生産した食料や家具などを高く買い取ることで被害地域を支援した
- それでも余った資金や物資はギルドに投資として預け、地域経済に還元するという手法が取られた
まとめ
このように、イルク村の交易は単なる物資の売買に留まらず、領内のインフラ整備や他領との連携、さらには被災地への経済支援にまで発展している。エリーやヒューバートらの知恵と領民の主体的な活動が結集することで、イルク村は過酷な開拓地から周辺地域を巻き込む重要な交易拠点へと着実に進化を遂げている。
双子の秘密
『領民0人スタートの辺境領主様』第8巻において、前巻でディアスに「森人族」であるという秘密を知られ、両親の若木からの承認を得て和解したセナイとアイハンのその後の様子が描かれている。秘密が解放された後の双子の活動について解説する。
1. 秘密の解放と、イルク村での自由な力の行使
ディアスの誠意ある誓いと若木の承認を経て、セナイとアイハンは一切の隠し事をする必要がなくなり、いつも以上の元気さで村を駆け回るようになった。
- 村の外から客や商人が来ている時には、これまで通り力を隠す必要がある
- イルク村の仲間たちの前ではその必要はない
- 二人は自分たちの思う通りに、好きなように力を使える環境を手に入れた
2. 森や畑を「賑やかにしていく」活動とサポート体制
自由に力を使えるようになった二人は、村の畑や森を賑やかにしていくことで村の皆の役に立ちたいと張り切り、早速作業を開始する。彼女たちが安全に活動できるよう、以下のようなサポート体制も築かれている。
- 教育係のエイマが力の使いすぎを抑える
- 犬人族たちが外部の人間に見られないように周囲を警戒する
- 空からは鷹人族のサーヒィ達、関所からはクラウス達が見張ることで不測の事態を防ぐ
3. 双子の力による森の劇的な変化
森人としての力を思うように振るい始めた結果、森と畑には劇的な変化が現れ始めた。
- 以前に行った間伐の効果と双子の力が合わさることで、森には太陽の光がたっぷりと差し込むようになった
- チーズ作りや食用、油の原料にもなるアザミなどの花や薬草が一面に群生するようになった
- 虫たちも元気に飛び回り、まるで花畑のような豊かな森へと生まれ変わっている
- スーク婆さんによる新しいチーズ作りに大きく貢献するなど、村の生活をさらに豊かにしている
まとめ
このように、秘密から解放されたセナイとアイハンは、イルク村の仲間たちの温かいサポート体制のもとで森人族の力を存分に発揮している。彼女たちの健やかな活動は森や畑に劇的な変化をもたらし、新たな特産品の開発など、イルク村のさらなる発展に大きく貢献している。
反乱軍の鎮圧
『領民0人スタートの辺境領主様』第8巻における「反乱軍の鎮圧」は、メーアバダル公の名を騙る暴徒たちに対し、ディアスとその仲間たちが圧倒的な力と連携を見せつけ、被害地域の救済までを成し遂げた英雄的なエピソードである。その経緯と結末の全容を解説する。
1. 反乱軍の成り立ちと目的
今回の反乱は、旧カスデクス領で奴隷売買を禁じられ財産を没収された商人たちが、領主エルダンに反発して企てたものである。
- 当初はマイザー王子を後ろ盾にする予定であったが、彼が失脚したことでリチャード王子派に入れなかった悪辣な貴族や商人、元傭兵、盗賊などが合流した
- 組織は急速に肥大化し、巨大な砦を築くまでに成長する
- 反乱軍の砦の主の一人は、かつてディアスと共に戦った元志願兵の男であった
- 彼は強者には従うという信条からディアスに従っていたが、内心では深い嫉斗(嫉妬)と反抗心を抱いていた
- 老いて衰え始めたディアスを倒して自分が真の英雄になろうと妄信し、ディアスを呼び寄せるため、あえて「メーアバダル公の軍」を名乗って暴れ回った
2. イルク村からの出陣と「破城槌」作戦
メーアバダルの名を騙られたことにイルク村の面々は激昂し、ディアス、エイマ、モント、サーヒィ、ゴルディア一行、そして合流したばかりのジョーたちの三小隊が出陣することになる。
- 作戦会議において、敵が500人もの兵を抱えながら砦に引きこもっているという愚策をモントが指摘した
- モントは、ディアスを「破城槌」として単騎で突撃させて門を破壊する正面突破策を提案した
- サーヒィが歩廊の弓兵を妨害し、その隙にジョーたちが突入して制圧する手はずを整えた
3. 最初の砦の攻略と連携
ディアスは新たな専用装備「オリハルコンの全身鎧」を身に纏って単騎で砦に突撃し、降り注ぐ矢を鎧の魔力で弾き返しながら、見事に鉄門と隠蔽された扉を戦斧で叩き割った。
- 砦内部では、エイマが自慢の聴覚で敵の伏兵や罠を看破した
- ディアスは被害者への賠償労働をさせるために敵兵を殺さずに気絶させていった
- 最奥の部屋では、ディアスの動きを熟知している元戦友の男との一騎打ちが行われた
- 男は巧みな技術で攻撃を受け流すが、ディアスの圧倒的な体力と鎧の防御力の前に消耗していった
- 鎧の魔力が切れかけたところで男は猛毒の短剣で突っ込んできたが、懐から飛び出したエイマが男の手を麻痺毒の針で刺し、サーヒィが兜を弾き飛ばすという見事な連携を見せた
- 最終的にディアスが戦斧の腹で男を打ち倒し、砦を陥落させた
なお、砦から逃げ出した逃亡兵たちは、隠蔽魔法で待ち伏せしていたゾルグたち鬼人族の若者によって身ぐるみ剥がされている。
4. 他の砦の攻略と経済支援
最初の砦を落とした後、ディアスたちは西側一帯の砦を攻略して回った。
- アイサの助言を取り入れ、防御を捨てて壁や柱を全力の一撃で粉砕し、その圧倒的な力と恐怖を敵兵に見せつけることで、多くの敵を戦わずして降伏させた
- 結果として、わずか7日間でメラーンガル西方一帯の砦を死者ゼロ、自軍負傷者ゼロでこれらすべてを陥落させた
- 手に入れた大量の物資はジョーたちへの報酬に回された
- ゴルディアの助言に基づき、周辺の村や町で物資をできるだけ安く売り、逆に彼らが生産した食料や家具を高値で買い取るという、地域経済を回す形での支援が行われた
- それでも余った資金や物資は、ギルドへの投資として回された
5. 王国中に轟く英雄の伝説
マーハティ領の乱が収束すると、ディアスの活躍は王国中へ語り継がれることとなった。
- 金色の鎧を纏って無数の矢を弾き返し、一撃で砦を粉砕したことや、見返りを求めず被災地支援を行ったことが広く知れ渡った
- 自然や鷹までもが味方しているといった、半ば伝説のような英雄譚として人々がその名を称えた
- その噂は、国外の帝国にまで広まっていくことになる
まとめ
このように、メーアバダル公の名を騙る反乱軍の鎮圧は、ディアスの圧倒的な武勇と仲間たちの優れた連携によって、完全な無敗かつ無犠牲で達成された。さらに、単なる武力行使に留まらず、被災地の地域経済を回す形での支援を行うことで、ディアスの救国の英雄としての名声は王国中、さらには国外にまで轟くこととなった。イルク村の仲間たちが持つそれぞれの長所と強い絆が、再び領地と周辺地域の平和を守る大きな力となったと言える。
救国の英雄譚
『領民0人スタートの辺境領主様』第8巻において、ディアスたちがマーハティ領の反乱を圧倒的な力で鎮圧した後、その活躍は救国の英雄譚として王国中、さらには国外にまで広く語り継がれることとなった。その詳細な内容と各地の反応について解説する。
1. 英雄譚の誕生と広がり
マーハティ領の乱が静まり、戦後処理も落ち着いて人々が日常を取り戻した数十日後、ディアスの活躍に関する噂や詩、英雄譚が王国中を駆け巡った。
- その噂は国内のほぼ全ての人々の耳に届いた
- ディアスが知りもしない遠方の国外や帝国にまで広まっていった
2. 語り継がれた伝説的な内容
人々に語り継がれた英雄譚は、事実を基にしつつも、半ば伝説のような神秘性を帯びた内容となっていた。
- 圧倒的な武勇と疾さ:かつての戦友達を引き連れた英雄が、西方の乱が大きくなる前にこれ以上無い疾さで鎮圧した。金色の鎧であるオリハルコンの全身鎧を纏い、その剣気で無数の矢を弾き返し、一撃で堅牢な砦を粉砕したと語られた。
- 高潔な人柄:人々を救った後も一切の対価を要求せず、被害にあった土地が早く立ち直れるように様々な復興支援まで無償で行ったことが称賛された。
- 自然と獣の加護:肩には装具を纏った立派な鷹のサーヒィがおり、英雄の言葉を理解して危機を救い続けたとされた。さらには、空は常に晴れ渡り、風は常にその背を押し続け、獣や自然までもが英雄の味方をしていると、まるで自然界そのものが英雄に味方しているかのように語り継がれた。
3. 各地・各層の様々な反応
この英雄譚を耳にした王国各地の人々の反応は様々であったが、ほとんどの民衆はその活躍を心から喜んだ。各層の反応は以下の通りである。
- 好意的な反応:国王は笑みを浮かべて喜び、ある老公爵は手を叩いて笑った。また、ある王女は目を輝かせ、別の王女は高笑いをするなど、王族の中にも好意的に受け止める者がいた。
- 東部の王子の反応:王国東部を駆け巡り、汚職を叩き弱き人々を救って改革という名の希望となっている王子も、静かな笑みを浮かべてこの報せを聞き入れていた。
- 敵対者の悔恨:一方で、英雄の活躍を快く思わない者もおり、神殿の最奥にいるある女は、この噂を聞いてギリギリと歯ぎしりをして悔しがっていたと描写されている。
まとめ
このように、ディアスの純粋な人助けと圧倒的な戦果は、人々の間で理想的な英雄の姿として誇張も交えながら広まり、彼の名声を王国や大陸中に轟かせる結果となった。武勇のみならず、見返りを求めない高潔な姿勢が多くの人々の心を動かしている。
登場キャラクター
イルク村(メーアバダル領)
ディアス(ディアス・メーアバダル)
イルク村の領主である。アルナーの夫にあたる。
・所属組織、地位や役職
メーアバダル領の領主。公爵。
・物語内での具体的な行動や成果
オリハルコンの全身鎧を装備し、サーヒィと共にウィンドドラゴンを討伐した。単騎で反乱軍の砦の門を破壊し、反乱軍を鎮圧する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
救国の英雄としての名声が王国中や国外にまで轟くことになった。
アルナー
ディアスの妻であり、鬼人族の少女である。
・所属組織、地位や役職
イルク村の住民。代表者の一人。
・物語内での具体的な行動や成果
迎賓館の設置場所を提案した。フレイムドラゴン討伐では背後からの奇襲を担当する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ディアスと共にイルク村の運営を支えている。
セナイ
森人族の双子の一人である。アイハンの姉妹にあたる。
・所属組織、地位や役職
イルク村の住民。
・物語内での具体的な行動や成果
森人族としての秘密を隠す必要がなくなり、森や畑を豊かにする活動を始めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
アイハン
森人族の双子の一人である。セナイの姉妹にあたる。
・所属組織、地位や役職
イルク村の住民。
・物語内での具体的な行動や成果
森人族としての秘密を隠す必要がなくなり、森や畑を豊かにする活動を始めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
エイマ
大耳跳び鼠人族の若者である。セナイとアイハンの教育係を担当する。
・所属組織、地位や役職
イルク村の教育係。書記。
・物語内での具体的な行動や成果
反乱軍の砦攻略において、ディアスの補佐として同行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
クラウス
元王国兵である。カニスの夫にあたる。
・所属組織、地位や役職
イルク村の領兵隊長。代表者の一人。
・物語内での具体的な行動や成果
関所の建設を指揮し、軍事・防衛施設として機能させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
カニス
犬人族の女性である。クラウスの妻にあたる。
・所属組織、地位や役職
イルク村の住民。
・物語内での具体的な行動や成果
クラウスと結婚し、村の祝宴に参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
ベン(ベンディア)
ディアスの父の兄である。元神官にあたる。
・所属組織、地位や役職
イルク村の相談役。
・物語内での具体的な行動や成果
水源小屋と氷の貯蔵庫の建設を計画した。ディアスが反乱軍討伐で不在の間、イルク村の留守を預かる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
ナルバント
洞人族の老人である。オーミュンの夫にあたる。
・所属組織、地位や役職
イルク村の鍛冶職人。
・物語内での具体的な行動や成果
ディアスのためにオリハルコンの全身鎧を作成した。フレイムドラゴンとの戦闘でメーアワゴンに乗って突撃する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
オーミュン
洞人族の女性である。ナルバントの妻にあたる。
・所属組織、地位や役職
イルク村の鍛冶職人。
・物語内での具体的な行動や成果
不思議な冷却ツボを考案した。魔石炉の点火準備などを手伝う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
サナト
洞人族の若者である。ナルバントとオーミュンの息子にあたる。
・所属組織、地位や役職
イルク村の鍛冶職人。
・物語内での具体的な行動や成果
魔石炉の点火準備やフレイムドラゴンの解体作業を手伝った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
ヒューバート
王国から派遣された文官である。真面目な性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
イルク村の内政官。
・物語内での具体的な行動や成果
氷の貯蔵庫や氷の道作りの計画を進めた。不思議な冷却ツボを改良する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
エリー
孤児ギルドの幹部である。ディアスの育て子にあたる。
・所属組織、地位や役職
孤児ギルドの幹部。イルク村の交渉役。
・物語内での具体的な行動や成果
岩塩を販売して木材購入の資金を稼ぐ計画を立案した。冬服をデザインし完成させる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
サーヒィ
鷹人族の若者である。リーエス、ビーアンネ、ヘイレセの夫にあたる。
・所属組織、地位や役職
イルク村の領民。空の監視役。
・物語内での具体的な行動や成果
ウィンドドラゴン討伐に同行し、空中で投げ斧を受け取り敵を斬りつけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ドラゴン狩りの偉業を達成し、3人の女性英雄と結婚した。
リーエス
鷹人族の女性英雄である。サーヒィの妻にあたる。
・所属組織、地位や役職
イルク村の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
サーヒィの留守中にイルク村で見張りと連絡役を務めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
正式にサーヒィと結婚した。
ビーアンネ
鷹人族の女性英雄である。サーヒィの妻にあたる。
・所属組織、地位や役職
イルク村の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
サーヒィの留守中にイルク村で見張りと連絡役を務めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
正式にサーヒィと結婚した。
ヘイレセ
鷹人族の女性英雄である。サーヒィの妻にあたる。
・所属組織、地位や役職
イルク村の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
サーヒィの留守中にイルク村で見張りと連絡役を務めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
正式にサーヒィと結婚した。
スーク
棄民の老婆の一人である。
・所属組織、地位や役職
イルク村の住民。
・物語内での具体的な行動や成果
アザミなどの植物を活用し、チーズやバター作りを開始した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
マヤ
棄民の老婆達のまとめ役である。
・所属組織、地位や役職
イルク村の人間族代表者。
・物語内での具体的な行動や成果
迎賓館に訪れた使者たちに手料理を振る舞った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
ピソン
棄民の老婆の一人である。
・所属組織、地位や役職
イルク村の住民。迎賓館の給仕。
・物語内での具体的な行動や成果
迎賓館の管理と給仕を担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
ジメチ
棄民の老婆の一人である。
・所属組織、地位や役職
イルク村の住民。迎賓館の給仕。
・物語内での具体的な行動や成果
迎賓館の管理と給仕を担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
セキ
血無しの三兄弟の長男である。キコの息子にあたる。
・所属組織、地位や役職
イルク村の領民。行商人見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
エリーから商売のノウハウを学んでいる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
サク
血無しの三兄弟の次男である。キコの息子にあたる。
・所属組織、地位や役職
イルク村の領民。行商人見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
エリーから商売のノウハウを学んでいる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
アオイ
血無しの三兄弟の三男である。キコの息子にあたる。
・所属組織、地位や役職
イルク村の領民。行商人見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
エリーから商売のノウハウを学んでいる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
コルム
アイセター氏族の長である。馬の世話を得意とする。
・所属組織、地位や役職
イルク村の領民。厩番。
・物語内での具体的な行動や成果
軍馬や気位の高い馬の世話を一任されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
シェフ
シェップ氏族の族長である。好奇心旺盛な性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
イルク村の領民。家畜の世話係。
・物語内での具体的な行動や成果
ロバに荷車を引かせ、岩塩を運搬する交易を始めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
犬人族達
イルク村に移住してきた小型種の獣人たちである。
・所属組織、地位や役職
イルク村の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
関所や迎賓館の建設に従事した。氷の貯蔵庫づくりを手伝う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
マスティ氏族
犬人族の小型種の一族である。勇敢で力自慢である。
・所属組織、地位や役職
イルク村の領兵。
・物語内での具体的な行動や成果
反乱軍鎮圧のためにディアスと共に出陣した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
シェップ氏族
犬人族の小型種の一族である。働くことが好きである。
・所属組織、地位や役職
イルク村の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
岩塩鉱床から岩塩を集め、鬼人族の村へ運ぶ交易を行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
アイセター氏族
犬人族の小型種の一族である。馬の世話を得意とする。
・所属組織、地位や役職
イルク村の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
イルク村に増加した馬の世話を中心となって行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
バセンジー氏族
犬人族の小型種の一族である。真面目な性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
イルク村の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
草原や森の境界に杭を打つ仕事を手伝った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
婦人会の面々
犬人族の女性達などの集まりである。
・所属組織、地位や役職
イルク村の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
春の宴で料理を運び、皆に振る舞った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
犬人族の子供達
犬人族の子供達である。
・所属組織、地位や役職
イルク村の住民。
・物語内での具体的な行動や成果
村中を駆け回り、イタズラをして遊んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
棄民の老婆達
カスデクス領から追放された女性達である。
・所属組織、地位や役職
イルク村の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
完成した迎賓館の管理と給仕を担当することになった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
出稼ぎ職人達
隣領から出稼ぎにきた職人たちである。
・所属組織、地位や役職
イルク村の労働者。
・物語内での具体的な行動や成果
関所の建設作業に協力した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
フランシス
メーアの群れの長であるオスである。フランソワの番にあたる。
・所属組織、地位や役職
イルク村の家畜。メーアの長。
・物語内での具体的な行動や成果
六つ子の父親として世話を行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
エゼルバルド
大柄なメーアのオスである。
・所属組織、地位や役職
イルク村の家畜。
・物語内での具体的な行動や成果
草のチーズ作りの作業を厳しい視線で見張っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
ベイヤース
黒毛の牡馬である。
・所属組織、地位や役職
イルク村の馬。
・物語内での具体的な行動や成果
ディアスを背に乗せて歩く。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
シーヤ
白毛の牝馬である。
・所属組織、地位や役職
イルク村の馬。
・物語内での具体的な行動や成果
セナイを背に乗せて走る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
グリ
灰色毛の牝馬である。
・所属組織、地位や役職
イルク村の馬。
・物語内での具体的な行動や成果
アイハンを背に乗せて走る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
白ギー
山牛と呼ばれる家畜である。
・所属組織、地位や役職
イルク村の家畜。
・物語内での具体的な行動や成果
安産で仔を産み、大量のミルクを出してチーズ作りに貢献している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
黒ギー
獣の一種である。
・所属組織、地位や役職
野生の獣。
・物語内での具体的な行動や成果
エリー達に遭遇し、張り倒された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
メーア達
イルク村に住むメーア達である。
・所属組織、地位や役職
イルク村の家畜。
・物語内での具体的な行動や成果
広場で日光浴を楽しむ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
メーアの六つ子達
フランシスとフランソワの子供達である。
・所属組織、地位や役職
イルク村の家畜。
・物語内での具体的な行動や成果
村中を元気に駆け回る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
ガチョウ
卵や羽毛をもたらす鳥である。
・所属組織、地位や役職
イルク村の家畜。
・物語内での具体的な行動や成果
池で飼育されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
ロバ達
馬より小さく頑丈な家畜である。
・所属組織、地位や役職
イルク村の家畜。
・物語内での具体的な行動や成果
シェップ氏族と共に岩塩の運搬を行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
軍馬達
アルナーが購入した馬である。
・所属組織、地位や役職
イルク村の家畜。
・物語内での具体的な行動や成果
アイセター氏族から専門的な世話を受けている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
新領民(元志願兵達)
モント
元帝国軍人である。義足の男にあたる。
・所属組織、地位や役職
イルク村の領兵指揮官。
・物語内での具体的な行動や成果
元志願兵たちを3つの小隊に組織化した。反乱軍の砦攻略で作戦を立案する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
正式にイルク村の領民となった。
ジョー
ディアスの元戦友である。
・所属組織、地位や役職
イルク村の領兵。ジョー小隊の隊長。
・物語内での具体的な行動や成果
関所勤務を担当し、反乱軍討伐に出陣した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
イルク村に移住した。
ロルカ
ディアスの元戦友である。
・所属組織、地位や役職
イルク村の領兵。ロルカ小隊の隊長。
・物語内での具体的な行動や成果
領内の見回りと訓練を担当し、反乱軍討伐に出陣した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
イルク村に移住した。
リヤン
ディアスの元戦友である。
・所属組織、地位や役職
イルク村の領兵。リヤン小隊の隊長。
・物語内での具体的な行動や成果
畑仕事を担当し、反乱軍討伐に出陣した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
イルク村に移住した。
カペラ
リヤンの妻である。
・所属組織、地位や役職
イルク村の領民。
・物語内での具体的な行動や成果
婦人会に加入し、村の生活に馴染んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
イルク村に移住した。
ジョー小隊
ジョーが率いる小隊である。
・所属組織、地位や役職
イルク村の領兵。
・物語内での具体的な行動や成果
関所の警備を担当する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
ロルカ小隊
ロルカが率いる小隊である。
・所属組織、地位や役職
イルク村の領兵。
・物語内での具体的な行動や成果
領内の巡回と訓練を担当する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
リヤン小隊
リヤンが率いる小隊である。
・所属組織、地位や役職
イルク村の領兵。
・物語内での具体的な行動や成果
畑仕事を担当する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
元志願兵達
ディアスの元戦友たちである。
・所属組織、地位や役職
イルク村の領兵。
・物語内での具体的な行動や成果
反乱軍の砦攻略に参加し、勝利に貢献した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
総勢34人が一斉にイルク村に移住した。
ギルド
ゴルディア
孤児ギルドの長である。ディアスの旧友にあたる。
・所属組織、地位や役職
ギルド長。
・物語内での具体的な行動や成果
迎賓館の建設を指揮した。反乱軍鎮圧後には被災地の経済支援を立案する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
マーハティ領にギルドの拠点を新設した。
アイサ
イーライの妻である。孤児ギルドの幹部にあたる。
・所属組織、地位や役職
ギルドの商人。
・物語内での具体的な行動や成果
迎賓館の内装や家具の準備を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
マーハティ領のギルド拠点の責任者となった。
イーライ
アイサの夫である。孤児ギルドの幹部にあたる。
・所属組織、地位や役職
ギルドの商人。
・物語内での具体的な行動や成果
迎賓館の準備を手伝った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
マーハティ領のギルド拠点の責任者となった。
マーハティ領
エルダン(エルダン・マーハティ)
マーハティ領の領主である。ディアスの友人にあたる。
・所属組織、地位や役職
マーハティ領領主。公爵。
・物語内での具体的な行動や成果
ディアスの活躍を王都で喧伝した。反乱軍の鎮圧においてはディアスと共に事態の収拾にあたる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
ネハ
エルダンの母である。象人族の女性にあたる。
・所属組織、地位や役職
マーハティ領の住人。
・物語内での具体的な行動や成果
ディアスたちを歓待した。不思議な投げ斧をプレゼントする。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
ジュウハ
自称王国一の兵学者である。ディアスの戦友にあたる。
・所属組織、地位や役職
マーハティ領の客将。
・物語内での具体的な行動や成果
反乱軍の動向を監視し、エルダンに策を献じた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
スーリオ
獅子人族の青年である。
・所属組織、地位や役職
マーハティ領の住人。
・物語内での具体的な行動や成果
反乱軍の鎮圧後、罪人の身柄を受け取りに砦を訪れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
カマロッツ
エルダンの従者である。
・所属組織、地位や役職
マーハティ領の従者。
・物語内での具体的な行動や成果
エルダンの指示で諜報隊を動かし、マイザーの捜索を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
ゲラント
鳩人族の伝書隊の長である。
・所属組織、地位や役職
マーハティ領の伝書隊長。
・物語内での具体的な行動や成果
イルク村とマーハティ領の間で手紙や情報を迅速に伝達した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
獅子人族
マーハティ領の住人たちである。
・所属組織、地位や役職
マーハティ領の住人。諜報隊。
・物語内での具体的な行動や成果
諜報隊としてマイザーの捜索などに参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
鳩人族
マーハティ領の住人たちである。
・所属組織、地位や役職
マーハティ領の伝書隊。
・物語内での具体的な行動や成果
上空からの監視や情報の伝達を担った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
サンセリフェ王国
フレデリック(ク・サーシュス)
第一王女派閥の筆頭である。
・所属組織、地位や役職
サンセリフェ王国の公爵。
・物語内での具体的な行動や成果
迎賓館を訪れ、ディアスと面会した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
エーリング
シグルザルソン伯爵家の者である。
・所属組織、地位や役職
サンセリフェ王国の貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
迎賓館を訪れ、ディアスと面会した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
リチャード
第一王子である。
・所属組織、地位や役職
サンセリフェ王国第一王子。
・物語内での具体的な行動や成果
ナリウスにマイザーの監視と捕縛を命じた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
王宮を掌握し、王国最大の派閥を築いた。
イザベル
第一王女である。
・所属組織、地位や役職
サンセリフェ王国第一王女。
・物語内での具体的な行動や成果
占領地の開発を行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
ヘレナ
第二王女である。
・所属組織、地位や役職
サンセリフェ王国第二王女。
・物語内での具体的な行動や成果
文化芸術の振興を行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
マイザー
第二王子である。
・所属組織、地位や役職
サンセリフェ王国第二王子。
・物語内での具体的な行動や成果
反乱を企てたが失敗し、逃亡を図るもナリウスに捕縛された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ナリウスに捕縛され、王都へ連行された。
鬼人族
ゾルグ
アルナーの兄である。
・所属組織、地位や役職
鬼人族の警備班長。族長候補。
・物語内での具体的な行動や成果
フレイムドラゴンの討伐に協力し、陽動を担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
モール
鬼人族の族長である。
・所属組織、地位や役職
鬼人族の族長。
・物語内での具体的な行動や成果
ゾルグに族長候補としての証を与えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記載なし。
モンスター
ウィンドドラゴン
飛行型のモンスターである。
・所属組織、地位や役職
モンスター。
・物語内での具体的な行動や成果
北の山に出現したが、ディアスとサーヒィによって討伐された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
討伐された。
フレイムドラゴン
火炎を吐く巨大なモンスターである。
・所属組織、地位や役職
モンスター。
・物語内での具体的な行動や成果
イルク村を襲撃しようとしたが、村人たちの総力戦で討伐された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
討伐され、素材や魔石が回収された。
展開まとめ
一年目の春とイルク村の発展
ディアスが草原へ降り立ってから一年が経過し、イルク村では無事に冬を越え、春を迎えたことを祝う盛大な宴が開かれた。
領内の仕事が落ち着いた後、ディアス達は日頃世話になっているエルダンへの感謝と挨拶、そして家族旅行を兼ねてマーハティ領へ向かった。
ネハによる歓待
マーハティ領の隊商宿へ到着したディアス達は、エルダンの母ネハから盛大な歓迎を受けた。
ネハが用意した料理は豪華なだけでなく、それぞれの好みや体調に合わせて調整されており、エイマはその細やかな心配りに深く感心した。
スーリオとの勝負
エルダンへの挨拶を終えた後も歓待は続き、その最中、血気盛んな獅子人族の青年スーリオがディアスへ勝負を挑んだ。
ディアスはその勝負で見事な実力を見せ、周囲へ強い印象を残した。
双子の秘密
その後、ディアスは偶然にもセナイとアイハンが隠していた秘密を知ることとなった。
帰領後、ディアスは二人へ真摯に向き合い、その秘密について語り合った。双子は戸惑いを見せたものの、ディアスの誠意ある言葉と、両親の魂が宿る若木からの承認を受けたことで、自分達の力を隠さず使っていく決意を固めた。
イルク村の現状
イルク村では家族の絆も隣領との関係も良好な状態が続いていた。
施設も少しずつ整備が進み、関所は改良段階へ移行していた。
イルク村で、元気な2人の様子を見やりながら
若木の祝宴と双子の解放
セナイとアイハンの両親の若木が美しい花を咲かせ、その祝いとして盛大な宴が開かれた。翌日になると、秘密を隠す必要がなくなった双子は、これまで以上に元気よく村中を駆け回っていた。
外部の客が来た時には従来通り力を隠す必要があったが、イルク村の仲間達の前では自由に力を使えるようになり、二人は畑や森を「賑やかにしていく」ことで役立ちたいと考えていた。エイマと犬人族達が護衛と監視役を担い、関所のクラウス達や空を飛ぶサーヒィ達とも連携することで、安全体制も整えられていた。
投げ斧と日常の仕事
ディアスはいつもの仕事を続けながら、新たに腰へ下げた投げ斧を便利に使っていた。戦斧ほど大掛かりではなく、日常作業にも使えるその武器は、手入れをナルバント達に任せながら実用品として活躍していた。
水源保護計画
ベン伯父さんとナルバントは、犬人族達を率いて北の山へ向かい、小川の水源を守るための小屋建設を始めようとしていた。
水源を石材で囲み、小屋と屋根を設置することで、落石や泥による汚染を防ぐ計画であった。また、獣による水汚染対策として巡回体制を整え、代わりに溜池や支流を整備する構想も語られた。
さらに、山に残る氷を利用した貯蔵庫建設の計画も持ち上がっていた。ヒューバートとエリーは、メーア布と鞣し革を利用すれば隣領まで氷を運べるのではないかと提案しており、夏場の新たな交易品として期待されていた。
ウィンドドラゴンの出現
しかしその矢先、サーヒィ達が北部で五匹のウィンドドラゴンを発見したとの報告を持ち帰った。
ウィンドドラゴンは他のドラゴンに比べれば脆いものの、毒性を持つ危険な存在であり、ディアスには過去に傷が化膿して高熱に苦しんだ経験があった。そのため対応に迷う中、ナルバントは完成した新たな鎧の使用を強く勧めた。
オリハルコンの鎧
ナルバント達が完成させた全身鎧は、例の奇妙な石を混ぜた特殊な合金製であった。
その合金は太陽光と魔力を吸収することで黄金色に変化し、攻撃を受けると蓄積した魔力を放出して衝撃や熱を弾く性質を持っていた。加工は極めて困難であったが、夜間作業や遮光した工房を用いることで完成に至った。
ナルバントはこの未知の金属を、古い言葉から「オリハルコン」と名付けた。ディアスは黄金色に輝く鎧と簡素な角付き兜を装備し、サーヒィと共に北へ向かった。
ウィンドドラゴンとの戦闘
北部では五匹のウィンドドラゴンが空を飛び回っていた。
ディアスは投げ斧を用いた遠距離攻撃で奇襲を仕掛け、一匹目を真っ二つに切断した。さらに、手元へ戻る投げ斧の特性を利用し、戻しの軌道で二匹目にも致命傷を与えた。
残るドラゴン達は接近戦を仕掛けてきたが、オリハルコンの鎧は閃光と共に攻撃を弾き返し、ディアスは戦斧と投げ斧を使い分けながら敵を撃破していった。
サーヒィとの共闘
最後の一匹は特に知能が高く、ディアスとサーヒィの戦い方を見極めながら、イルク村へ向かおうとする嫌らしい動きを見せた。
空中戦ではサーヒィが囮となり、ディアスは地上から投げ斧で援護を続けた。やがてサーヒィは戻ってきた投げ斧を空中で掴み、それを武器として使い始める。
二人は連携しながら攻撃を重ね、最後にはサーヒィの援護によって隙を作り出し、ディアスの戦斧がドラゴンを粉砕した。素材は砕け散ってしまったものの、二人は無傷で戦いを終えることに成功した。
鷹人族の誇り
戦いを終えたサーヒィは、自らがドラゴン狩りを成し遂げたことに強い喜びを見せた。
鷹人族にとってドラゴン狩りは名誉ある偉業であり、それを果たしたことで、リーエス達との結婚にも胸を張れると語った。ディアスもまた、その活躍を認め、サーヒィの戦いを称賛するのであった。
素材が散らばる草原で
ドラゴン素材の回収
ウィンドドラゴンとの戦いを終えた後、サーヒィがイルク村へ勝利を知らせに戻り、すぐにナルバント達が荷車を引いて素材回収へ駆けつけた。
ナルバント、オーミュン、サナトを中心に、犬人族や鷹人族達が協力して素材を回収していき、ディアスとサーヒィは警戒役としてその様子を見守った。ナルバントは黄金の鎧の完成度に満足しつつ、五匹全てから魔石を回収できたことを喜んだ。特に最大個体の魔石は無傷に近い状態で残っており、変異途中の特殊個体だった可能性も語られた。
魔石と素材の使い道
ディアスは魔石四個をナルバント達に託し、最大の魔石のみを王への献上品として残すことに決めた。
さらにドラゴン素材を用いて、鷹人族用の武器や防具を作れないかと提案した。翼を守る防具や軽量武器という案に対し、サーヒィは空を飛ぶ者にとって翼の損傷が致命傷であることを語り、防具への強い期待を示した。
ナルバントもまた、空を飛ぶ鷹人族の特性を理解しながら制作を進めることを約束し、ドラゴン素材を活用した新たな装備作りが始まることとなった。
サーヒィの功績
回収作業が終わると、リーエス、ビーアンネ、ヘイレセの三人がサーヒィへ熱い視線を向け始めた。
今回の戦いでサーヒィは、最後のドラゴンをイルク村へ向かわせず、自ら危険を冒して空中戦を繰り広げた。その功績は誰の目にも明らかであり、鷹人族として誇るべき手柄となっていた。
三人に囲まれて後退するサーヒィを見ながら、ディアスはあえて助け舟を出さず、その場を離れていった。
サーヒィ達の結婚
数日後、水源小屋の建設が終わり、サーヒィとリーエス達三人は正式に夫婦となった。
さらに三人は正式な領民となり、彼らのために鷹人族向けの新しい住居が建設された。止まり木や巣を置く専用空間を備えた作りとなっており、サーヒィは三人の部屋を巡りながら生活する形となった。
行商の準備
ウィンドドラゴン素材の一部はエルダンへの贈り物として送られ、さらにエリー達が行商練習のために持ち出した。
セキ、サク、アオイの三兄弟はドラゴン討伐の話に驚愕しつつも、行商人として本格的に動き出す決意を固めていた。エリーには彼らを支援する秘策もあるらしく、将来的な販路拡大への期待も高まっていた。
ゴルディアの来訪
そんなある日、エリー達と共に「ゴリラ」と名乗る男がイルク村へやってきた。
その正体は、かつてディアスと孤児達をまとめていた旧友ゴルディアであった。筋骨隆々の体格をした彼は、再会早々ディアスへ力比べを挑み、昔と変わらぬ関係を見せつけた。
ゴルディアは既にセキ達を自分のギルドへ所属させており、マーハティ領に巨大な拠点を築く準備も進めていた。さらにアイサとイーライも新たな役目へ移行していることを明かし、ディアスへ近況を伝えた。
迎賓館建設計画
ゴルディアは、王都からの客人を迎えるための迎賓館が未完成であることを問題視した。
迎賓館とは領の顔であり、立派すぎれば余計な注目を集め、貧相すぎれば見下されるため、領の規模に見合った程々の施設が必要だと説明した。
ディアス達は、森とイルク村の中間地点に迎賓館と休憩施設を建設する案を採用した。そこには井戸、厠、馬房、炊事場、取引所なども設置される予定となり、管理役としてピソン婆さんとジメチ婆さんが名乗りを上げた。
酒造り計画
迎賓館の話から発展し、ナルバント達は酒造りへの意欲を見せ始めた。
酒は客人への重要なもてなしであり、領の顔にもなるというゴルディアの説明を受け、ナルバント達は醸造所建設の話題で大いに盛り上がった。
木材不足と新たな交易
しかし施設建設が増えたことで、木材不足が問題となり始めた。
ナルバントは定期的な木材輸入の必要性を訴え、エリーは現在の収支状況を説明した上で、岩塩販売によって資金を確保する案を提案した。
南方の港町では豊漁によって塩需要が急増しており、岩塩は高値で取引される状況となっていた。エリーは岩塩販売を一時的な資金源とし、その利益で木材を購入しながら、将来的には氷販売やメーア布生産へ移行する構想を描いた。
商売の役割分担
エリーの説明を受けたディアスは、自分には商売の管理が向いていないことを改めて理解した。
そのため、取引や商売に関することは全面的にエリーへ任せると決断し、利益だけを追い求めず、程々の規模で運営するよう頼んだ。
イルク村の面々もその決定へ自然に賛同し、ゴルディアはディアスの周囲に集う者達の結束と信頼関係へ驚きを隠せなかった。そうして最後には再び力比べが始まり、ゴルディアは以前以上の勢いでディアスへ挑みかかるのであった。
迎賓館で
迎賓館の完成
ゴルディアの指揮と、アイサやイーライの協力によって、迎賓館の建設は急速に進んでいった。
大きなユルトを中心に、倉庫や控室、宿泊用のユルト、井戸や厠なども整備され、周囲は木柵で囲われた。内部には立派な机や椅子、メーア布の装飾や工芸品も並べられ、辺境とは思えない格式ある空間が完成していった。
ゴルディアは内装の細部にまで拘り、王国風の彫刻入り棚や旗の飾り方についてもディアスへ意見を求めた。ディアスは、メーアの旗やドラゴン素材は屋内へ飾る方針を選び、棚についてはナルバント達へ依頼できると考えていたが、ゴルディアは王国風の意匠を重視し、外部職人ウェイズへ任せる案を語った。
孤児達の現在
ウェイズの名を聞いたディアスは、かつて世話していた孤児達の成長を懐かしく思い返した。
するとゴルディアは、孤児達がディアスの帰還を聞いた途端、仕事も投げ出してメーアバダル領へ向かおうとしたことを明かした。ゴルディアは彼らを抑え込み、後継者育成や引き継ぎを終えるまで待たせていたのである。
さらにゴルディアは、戦時中にディアスの評判を高めるため、吟遊詩人や演劇を利用した宣伝活動まで行っていたことを語った。ディアスは、自分の知らない場所で支援され続けていた事実へ驚きと感謝を抱いた。
関所建設の進展
一方クラウスは、関所建設の指揮を執り続けていた。
門、防壁、櫓、取り調べ小屋、宿舎などが次々と完成し、犬人族達も職人達の作業を真面目に支えていた。職人達は犬人族を完全に信頼するようになっており、現場には穏やかな空気が流れていた。
そんな中、マーハティ領側から一台の行商馬車が現れた。護衛達の装備や雰囲気から不穏さを感じ取ったクラウスは、警戒しながら対応へ向かうこととなった。
行商人とギルドの対立
関所で応対したアイサは、無所属の行商人を領内へ通さず、関所建設現場でのみ商売を許可する方針を告げた。
それを聞いた商人は、ギルドの存在に激怒した。彼は、ギルドによる「明朗会計」と読み書き教育によって旧来型の商売が成立しなくなり、自身が没落した過去を抱えていたのである。
さらにアイサがギルド幹部であると知ると、護衛達は彼女を「悪辣アイサ」と恐れ始めた。砂粒を弾丸のように飛ばしながら格闘戦を行う凶悪な戦い方で、ギルド襲撃者達を返り討ちにしてきたという噂が広まっていたのである。
セナイとアイハンの怒り
行商人がエリーを「怪物」と呼び、アイサを侮辱すると、セナイとアイハンは怒りを露わにした。
二人は犬人族用の隠し扉から外へ出ようとし、木屑へ魔力を込めてアイサの魔法を真似しようとした。しかしクラウスが制止の合図を送り、犬人族達が森全体から吠え声を上げることで威圧を行った。
それを受けた行商人達は恐怖し、慌てて逃走した。セナイ達はいたずらを実行できなかったことへ不満を漏らしていたが、職人の説得で素直に帰宅することとなった。
エーリングの来訪
その後、北方のシグルザルソン伯爵家から使者エーリングが迎賓館へ到着した。
エーリングは、第二王女ヘレナ派閥の一員として、文化芸術による平和を目指していると説明した。そしてディアスへ、ヘレナとの婚姻を提案した。
しかしディアスは、自分には既に婚約者がおり、どんな相手であっても結婚話は受けないと即答した。エーリングは説得を試みたが、古道派神官ベンディアの存在や、マヤ婆さんの名を知ることで、ディアス達の背景が想像以上に重いものだと悟り始めた。
第二王女派の理念
エーリングは、第二王女ヘレナ派が「文化芸術で争いを減らし、平和な世界を作る」という理想を掲げていることを語った。
武力ではなく文化によって人々を結びつけ、余った武力はモンスター討伐へ向けるという理念であり、長い年月をかけてでも後世の礎を築こうとしていた。
ディアスはその話を素直に受け止めていたが、それでも婚姻話だけは頑なに拒絶した。エーリングは、ディアスが名誉や権力欲では動かない人物であることを理解し始めた。
サーシュス公の来訪
続いて第一王女イザベル派の重鎮、サーシュス公フレデリックが訪れた。
彼は戦場でディアスの軍に助けられた経験を持っており、互いを戦友として認識していた。サーシュス公は終始穏やかに雑談を交わし、最後にイザベルとの婚姻話を切り出したが、ディアスは同様に即座に断った。
するとサーシュス公は、ディアスが王位争いへ深入りしない人物だと理解し、それだけで十分な成果だと判断した。
黄金の杖
帰り際、サーシュス公は一本の杖を返礼品として残していった。
ディアスが調べると、その杖は純金製の仕込み剣であった。サーシュス公は本来、その武器を抜いてディアスを驚かせるつもりだったが、ディアスが最初から警戒して距離を取っていたため、自分の負けだと認めて杖を譲ったのである。
ディアスは、サーシュス公を「いたずら好きの老人」と評したが、ヒューバート達はその評価に呆れ返るのであった。
サーシュス公の評価
帰路の馬車の中で、サーシュス公はディアスを高く評価していた。
犬人族達が心から忠誠を捧げていること、戦争後に物資を平等に分配したこと、王へ岩塩を提供して国家安定へ貢献しようとしていることなどを挙げ、ディアスを真の忠臣だと語った。
さらに彼は、ディアスが王位への野心さえ持っていれば別の未来もあり得たと漏らした。しかし同時に、ディアスは誰が王になろうと民のために尽くす人物なのだろうとも理解していた。そうしてサーシュス公は、メーアバダル領の将来性とディアスの器量へ、改めて深い関心を抱くのであった。
賑やかな広場で ディアス
白ギーの出産
迎賓館が初めて活躍した日から三日後の早朝、シェップ氏族の若者が厩舎で白ギーの出産を発見した。
妊娠していた白ギーは既に出産を終えており、その側では仔白ギーが弱々しく歩いていた。若者は慌てて一族へ知らせ、アルナーやマヤ婆さん達にもその報せが広まっていった。
ディアスが目を覚ました頃には世話や片付けはすべて終わっており、広場へ向かった彼は、ふかふかした毛並みを持つ仔白ギーと、それを見守る白ギーの姿を目にした。
ミルクとチーズ作りの準備
スーク婆さんは、白ギーが大量のミルクを出していることへ大喜びしていた。
毎日たっぷり食事を与え、犬人族達が丁寧に世話をした結果、驚くほど安産になったらしい。スーク婆さんは鍋いっぱいのミルクを見せながら、これでチーズやバター、シチューが作れると語った。
さらに彼女は、動物の胃だけでなく植物でもチーズが作れると説明した。セナイとアイハンはチーズ作りに使う薬草を採りに森へ向かっており、植物性のチーズは果物のような爽やかな香りになるのだという。
森の変化とアザミの花
やがてセナイとアイハンが森から戻り、大量のアザミを持ち帰った。
スーク婆さんは、アザミがチーズ作りだけでなく食用や油の原料、蜜源としても優秀であると語り、二人を褒め称えた。セナイ達は、以前伐採した木々のおかげで森へ日光が入るようになり、花や薬草、虫達まで元気になったと説明した。
さらにシェフは、森人としての力を使うようになったセナイとアイハンの影響もあるのではないかと語り、ディアスもその可能性を認めた。
豊かな朝食とディアスの過去
その日の朝食は、以前よりさらに豪華なものとなっていた。
肉料理や芋と卵のスープに加え、今後は乳製品も加わる予定となっており、栄養状態は大きく向上していた。ゴルディアは、辺境暮らしとは思えない食事内容だと驚き、ディアスが昔から食事を重視していたことを語り始めた。
孤児だった頃、ディアスはわずかな金が入るたびに仲間達へ豪勢な食事を振る舞っていた。他の孤児集団は貯金や武器を優先して粗末な食事を続けていたが、やがて栄養不足で衰弱し、集団は崩壊した。
ディアス達だけが健康を保ち続け、最終的に多くの者が彼をリーダーとして認めるようになったのである。
北の山で進む開発
朝食後、ゴルディア達は北の山で水源小屋や氷の貯蔵庫作りを進めていた。
地下室へ雪や氷を保存し、食材の長期保管や隣領への氷販売を目指しているらしい。ナルバント達は、灰や石灰、メーアの毛、卵白などを混ぜた特殊な粘土を作り、水や熱を通しにくい地下貯蔵庫を建設しようとしていた。
ディアスは、飢えを防ぐためには保存施設が重要だと考え、その取り組みを前向きに受け止めていた。
アルナーの視線
迎賓館で王女達との婚姻話が持ち込まれて以降、アルナーはディアスへ鋭い視線を向け続けていた。
ディアスは婚姻話を明確に断っていたが、それでもアルナーは王女達を「敵」のように認識してしまっているらしく、ちくちくとした視線を送り続けていた。
ディアスはその理由を理解しつつも、どう対応するべきか悩んでいた。
婚約の証という提案
工房で村人の証を作っていたディアスは、オーミュンからアルナーへの贈り物を提案された。
オーミュンは、アルナーが不安を抱えているなら婚約の証となる品を贈れば良いと助言した。ディアスは、アルナーと結婚したい気持ちはあるものの、まだ若い彼女に将来しっかり判断して欲しいとも考えていた。
しかしオーミュンは、手作りの贈り物なら安心にも牽制にもなると説得し、サーシュス公から渡された黄金の仕込み剣を加工材料として使う案を示した。
ディアスはその提案を受け入れ、アルナーへ贈るアクセサリー作りを始めることとなった。
アクセサリー作りと村の発展
アクセサリー作りを始めたことはすぐに村中へ広まり、皆はディアスの作業時間を確保しようと配慮するようになった。
その結果、アルナーも安心したのか以前通りの日常を過ごすようになっていった。
その間にも、セナイ達は苗木を森へ植え替え、ヒューバート達は領地境界の杭打ちを進め、シェップ氏族は岩塩運搬による交易を始めていた。
さらに犬人族達の間ではメーア布を通貨代わりに扱う文化も広まり始めており、イルク村は急速に発展していった。
冷却用の水瓶
ある日、オーミュンは大きな水瓶をディアスへ見せた。
その水瓶は胴体部分だけ釉薬を塗っていない特殊な構造となっており、水を染み出させて蒸発させることで、中の水を冷やす仕組みになっていた。
オーミュンは、氷保存や食材冷却に役立つと得意げに説明したが、ディアスには原理が理解できなかった。
それでも彼は、これは不思議な力で水を冷やす道具なのだと無理やり納得するのであった。
とある町の自らの部屋で元大工のジョー
ジョーの旅立ち
元大工のジョーは、妹の家で荷造りを進めながら、西方へ旅立つ準備をしていた。
妹は、このまま家族と共に暮らして欲しいと願っていたが、ジョーはディアスの下へ向かいたい気持ちを抑えきれないと語った。戦争で得た名声や財産はすべてディアスのおかげであり、その背を追いかける日々は何よりも楽しかったのである。
妹は、ようやく帰ってきた兄が再び旅立つことへ寂しさを覚えながらも、最後には諦めたように見送りの言葉を口にした。
ジョーは、手紙を書くことを約束しながら家を後にし、西へ向かって歩き出した。
ロルカの決意
元石工のロルカは、自ら作り直した両親の墓の前で静かに祈りを捧げていた。
石切り場の町は既に廃れ、無人同然となっていたが、ロルカは一年もの時間をかけて巨大な墓石を作り続けていたのである。
親孝行は十分に果たしたと考えたロルカは、これならディアスも自分を受け入れてくれるだろうと呟き、西へ向けて歩き始めた。
リヤン夫妻の出発
元鍛冶職のリヤンもまた、妻カペラと共に旅立とうとしていた。
リヤンは、西の果てへの旅へ妻を付き合わせて良いのか悩み続けていた。しかしカペラは、ディアスの下へ行きたいという後悔を抱え続けるくらいなら、迷わず進むべきだと背中を押した。
戦争中から彼を待ち続けていたカペラは、最初からこうなる覚悟で結婚したのだと語り、リヤンの迷いを断ち切った。
その言葉を受けてリヤンは決意を固め、用意していた馬車へ乗り込み、妻と共に西への街道を進み始めた。
サーシュス公と義足の男
マーハティ領メラーンガルの高級宿では、サーシュス公がある男と対面していた。
その男は義足を付けた長身の男で、粗野な口調ながらもサーシュスと旧知の仲である様子を見せていた。
サーシュスは、解放された直後にここまで来たことへ驚きを見せたが、男は自分はディアスへ挨拶しに来ただけだと返した。
さらに男は、自分はディアスへ八つ当たりなどしたことはなく、ただ正当な抗議をしているだけだと苛立ち混じりに語った。
そして義足を鳴らしながら部屋を去っていった男の後ろ姿を見送りつつ、サーシュスは、ディアスの下で今後どんな騒動が起きるのかと密かに胸を躍らせるのであった。
工房の作業机でディアス
不思議な冷却ツボの完成
オーミュンが作った不思議な水瓶を見たヒューバートとエイマは、その仕組みを応用すれば水以外の物も冷やせるのではないかと考えた。
三人は何度も話し合いを重ね、大きなツボと小さなツボを組み合わせた「不思議な冷却ツボ」を完成させた。外側のツボから水を蒸発させることで内部を冷やし、果物や野菜なども保存出来るようになったのである。
さらに検証の結果、隙間へ焼いた砂を詰めることで安定性と保水性を確保し、濡れた布を蓋代わりにすると冷却効果が高まることも判明した。こうして夏へ向けて、不思議な水瓶と冷却ツボの量産が始まった。
ディアスの婚約の証
その頃ディアスは、アルナーへ贈る婚約の証となるアクセサリー作りに励んでいた。
金を丸い板状へ加工し、中央にはメーアバダル家の紋章であるメーアの横顔、その下にはディアスとアルナーの頭文字、更にセナイとアイハンを示す花模様を刻み込んだ。
完成後、工房へ呼び出されたアルナーは、そのアクセサリーを嬉しそうに眺め、首へ掛けて満足そうな笑みを浮かべた。ディアスが三年の約束が終わるまで毎年何かを贈ると告げると、アルナーは弾んだ声で頷き、そのまま村中へ自慢しに走っていった。
発展するイルク村
その後もイルク村は順調に発展していった。水源小屋や氷の貯蔵庫が完成し、不思議な水瓶も各家庭へ配られ始めた。
また、サーヒィ達の新装備も完成した。ウィンドドラゴン素材で作られた防具は、魔力で開閉する翼用防具を備えており、防御だけでなく滑空補助にも使える便利な品となっていた。
ゴルディア達もすっかり村へ馴染み、工事や作業を積極的に手伝っていた。一方でアルナーは、婚約の証を毎日身につけては村中へ見せびらかしており、ディアスは恥ずかしさを覚えながらも止められずにいた。
ディアスを目指す戦友達
マーハティ領の街道宿では、ジョー率いる元志願兵達の一団が宿泊していた。彼らは皆、ディアスの下へ向かう途中で合流した者達であり、次々と西へ集まり始めていた。
宿の主人夫婦は、規律正しく気前も良い彼らを絶賛しつつ、ディアスとエルダンのおかげで街道が今後さらに賑わうだろうと期待を膨らませていた。
モントの来訪
森の関所では、突然モントが大声で門を叩き始め、クラウス達を騒がせていた。
モントはかつて帝国軍の軍人であり、ディアスと戦った際、義足を理由に手加減されたことを今なお根に持っていた人物だった。しかし戦時中は捕虜としてディアス達へ同行し、志願兵達の訓練や指揮を担当するなど、長年行動を共にしていた。
イルク村へ到着したモントは、相変わらずディアスへ文句を言い続けていたが、その魂を見たアルナーは、モントに悪意が全く無いことを理解していた。
やがてセナイとアイハンから薬湯を渡され、正式に領民として迎え入れられたモントは、村の動物達にも歓迎されるのであった。
サンジーバニーの力
翌朝、モントはディアスへ怒鳴り込みに来た。失った足の痛みが完全に消え、何十年ぶりかの熟睡が出来たからである。
ディアスは、昨夜セナイとアイハンが飲ませた薬湯に、サンジーバニーが使われていたことを説明した。サンジーバニーは病や毒を治療する不思議な薬草であり、その秘密は絶対に漏らしてはならないものだった。
事情を聞いたモントは、恩人である双子へ迷惑を掛けるつもりはないと誓い、その後はイルク村の役に立とうと必死に働き口を探し始めた。
モントの苦悩と戦友達の到着
しかしモントは、人間の軍隊には詳しくても、犬人族主体のイルク村では知識を活かせず苦悩することになった。人間と犬人族では戦い方も文化も違い、自分は役立たずではないかと嘆き続けたのである。
そんな中、関所からジョー、ロルカ、リヤンら旧友達が三十人近くを連れて到着したとの報告が入る。
その報告を聞いた瞬間、モントは満面の笑みで関所へ向かって走り出した。ディアスは呆れながらもベイヤースへ騎乗し、コルム達と共にその後を追うのであった。
草原で
モントへの馬の提供
モントは義足とは思えない速度で関所へ向かって走っていたが、馬には敵わず、ディアス達はすぐに追いついた。
追いつかれたモントは、用意された暴れ馬へ当然のように騎乗し、自ら「フィンツ」と名付けた。さらにコルムを前へ乗せると、そのまま森の道を勢いよく駆け抜けていった。
戦友達との再会
関所へ到着すると、ジョー、ロルカ、リヤンを始めとした元志願兵達が、ディアスへ一斉に声を掛けてきた。皆はディアスの昇爵や結婚を祝福し、故郷では退屈だったから来た、ここで雇って欲しいなどと騒ぎ立てた。
人数を確認すると、初対面の女性一人を含め総勢三十四人となっていた。ディアスは困惑しながらも全員を歓迎し、領兵として働く場合はクラウスが隊長であり、モントが教育係になると説明した。
それに対し皆は文句も言わず、むしろ公爵直属の兵になれることを喜び、故郷へ更に自慢出来ると盛り上がった。
モントによる軍編成
騒ぎ続ける元志願兵達を前に、モントは怒鳴り声で整列を命じた。するとジョー達は即座に反応し、重い荷物を背負ったまま見事な動きで列を整えた。
モントはその場でジョー、ロルカ、リヤンを小隊長に任命し、それぞれ十一人編成の小隊へ分けた。ジョー小隊は関所勤務、ロルカ小隊は領内巡回と訓練、リヤン小隊は畑仕事を担当すると決定した。
元志願兵達は力強く返事を返し、ディアスへ任せて欲しいと笑顔を向けた。ディアスもまた、大声で皆へ感謝を伝えたのであった。
増えた領民達
こうして新たな領民と戦力が加わった。アルナーによる魂確認でも全員が青判定となり、イルク村の住民達は純粋にその増員を喜んだ。
ディアス自身も、今後はモンスター相手の暇な仕事が増える程度だろうと、のんびりした未来を想像していた。
ゲラントの異変
しかしその考えは、数日後に届いた知らせで覆されることとなった。
朝食後、広場で体を動かしていたディアスの元へ、鳩人族のゲラントが飛来した。いつもなら明るく挨拶をするゲラントだったが、その日は痩せ細り、疲労と沈痛な表情を浮かべていた。
異変を察したディアスは、ただちに何があったのかを問いかけるのであった。
イルク村の広場で
イルク村の総動員
ジョー達元戦友とカペラは、十分な数のユルトが無かったため、旅用テントで生活していた。しかし水や食料は十分にあり、不便は少なかった。中でもカペラは婦人会へすぐに溶け込み、アルナーやマヤ婆さん達とも親しくなり、メーアの世話まで積極的に行っていた。
そんな中、ゲラントからもたらされた「メーアバダル公の名を騙る反乱軍」の話を聞いたイルク村の者達は激昂した。ジョー達だけでなく、フランシス達、犬人族、さらにはマヤ婆さん達までもが武器や農具を手に集まり、今にも出陣しそうな勢いとなった。
ディアスは全員を制止し、村や関所を守る者、畑や家畜を維持する者が必要だと説明した。その上でアルナー、セナイ、アイハンには後方支援を任せると告げた。
エイマもまた、前線へ食料を送り続けることの重要性を説き、三人へ狩猟や保存食作りを頼んだ。それを受けてアルナー達は不満を抱えながらも納得し、村全体もようやく落ち着きを取り戻した。
出陣準備
話し合いの結果、出陣するのはディアス、エイマ、モント、サーヒィとマスティ氏族の若者達、ゴルディア一行、そしてジョー、ロルカ、リヤン率いる三小隊となった。
村と関所の守備はベン伯父やクラウス達へ任され、エリー達には行商を中止して村の仕事を手伝わせることとなった。
また、エルダンからは進入許可と参戦許可が正式に送られており、多少の徴発すら許可されていた。しかしディアスは、反乱軍と同類になりたくないとして、必要物資は購入で賄う方針を示した。
準備が整うと、一行はまず関所へ向けて出発した。
関所へ逃げ込んだ商人
同じ頃、反乱軍から逃げてきた商人達が関所へ辿り着いていた。積荷を狙われ、命からがら逃げ出した彼らは、メーアバダル領の関所へ保護され、安堵していた。
そこへ森の奥から大勢の行軍音が響き渡る。現れたのは、黄金の鎧を纏い大戦斧を担ぐディアスと、その軍勢であった。
ジョー達は旅人同然の格好だったが、その行軍は見事に統率されており、商人は王都騎士団すら上回ると感じる程であった。
事情を聞いたディアスは、商人の積荷を市場価格そのままで全て買い取ると申し出た。予想外の申し出に商人達は驚きつつも歓喜し、商魂を燃やしながら商品の確認と計算を始めるのであった。
反乱軍誕生の経緯
今回の反乱は、旧カスデクス領で奴隷売買によって利益を得ていた商人達が発端であった。奴隷商売を禁じられ、財産まで没収された彼らは、エルダンへの反感から反乱を企てたのである。
当初はマイザー王子を後ろ盾にする計画だったが、王子の失脚によって方針が変化した。そこへリチャード王子派にも入れなかった悪辣な貴族や商人達が合流し、組織は急速に肥大化していった。
ジュウハは早い段階でその存在を察知していたが、不穏分子を一網打尽にするため、あえて成長を見逃していた。しかし予想を超える規模へ膨れ上がり、元兵士や盗賊まで加わった結果、反乱軍は巨大な砦を築き上げるまでに至った。
ディアスを憎む男
その反乱軍の中には、かつてディアスと共に戦った元志願兵の男もいた。ディアスから見れば忠実な戦友だったが、男は内心では常に反抗心と嫉妬を抱えていた。
男は略奪と名誉欲のために戦場へ来ており、強者には従うという信条からディアスへ従っていただけだった。しかし老いによってディアスが衰え始めていることへ気付き、自分こそが真の英雄になれると妄信するようになる。
戦争終結によってその機会を失った男だったが、反乱軍の存在を知ると、自分が再びディアスを超える機会だと狂喜した。
男はメーアバダル領へ近い砦の主となり、「メーアバダル公の軍」を名乗って暴れることで、必ずディアスを呼び寄せられると確信していた。そして五百の兵と堅固な砦があれば、今度こそディアスへ勝てると信じ込んでいたのであった。
牧畜村での宿営
ディアス達はゲラントの案内で反乱軍の砦を目指す途中、牧畜を営む小村へ辿り着いた。村人達は最初こそ警戒したが、ディアスとゲラントを見て態度を和らげ、快く協力してくれた。
村長は、反乱軍によって牛を奪われた悔しさを語り、どうか奴らを追い払って欲しいと懇願した。
その願いを受けたディアス達は、必ず勝たねばならないと決意を新たにしながら、陣営設営を進めていくのであった。
小高い丘の上に建てられたユルトの中で
砦攻略作戦会議
ディアス達は、敵砦を遠望できる丘へ陣を築き、ゲラントとサーヒィによる偵察結果を基に作戦会議を開いた。エイマは敵を弱らせる奇策をいくつも提案したが、モントは敵の行動を分析した上で、もっと単純かつ迅速な攻略法があると指摘した。
モントは、敵が五百もの兵を砦へ押し込めて引きこもっている時点で愚策だと断じた。本来なら三十人程度のディアス達を野戦で押し潰せるはずなのに、敵は砦内の罠へ固執していると見抜いたのである。
その上でモントは、「ディアスという破城槌」を使う正面突破策を提案した。ディアスが単騎で門を破壊し、サーヒィが歩廊の弓兵を妨害、その隙に全軍突入するという大胆な作戦であった。エイマは罠の看破役としてディアスに同行することとなり、ジョー達はマスティ氏族と共に砦内部を制圧する役目を与えられた。
ディアス本人は破城槌扱いに不満を抱いたものの、会議はそのまま終了し、翌日の総攻撃が決定された。
単騎による砦門破壊
翌日、ディアス達は砦へ接近した。敵は三十人程度の軍勢を前にしながらも出撃せず、モントの推測通り、罠へ頼るつもりであることが明白となった。
ディアスは鬨の声を上げ、単騎で砦へ突撃した。敵兵達は混乱しながら矢を放ったが、鎧の魔力によって全て弾き返された。ディアスはそのまま鉄門へ辿り着き、全力の戦斧で門を叩き始めた。
砦主の誤算
砦最奥で待機していた敵指揮官は、かつてディアスと共に戦った元戦友であった。彼は若い頃からディアスへ嫉妬と反抗心を抱き続け、老いた今なら超えられると妄信していた。
男は、砦へ誘い込んだ上で罠と兵力を使ってディアスを消耗させ、自ら止めを刺す計画を立てていた。しかしディアスは門だけでなく、隠蔽された扉まで次々に破壊していく。さらにサーヒィの鷹が歩廊の弓兵達を翻弄し、砦防衛の要を無力化してしまった。
敵兵達は密集した砦内部で数の優位を活かせず、ディアス達によって次々と制圧されていった。しかも男が頼りにしていた部下までもが軍資金を持って逃亡してしまい、男は完全に追い詰められていった。
エイマによる索敵と制圧
門を突破したディアスは、隊商宿時代の構造を思い出し、隠された通路の存在を見抜いた。エイマも耳で壁の向こうの気配を察知し、隠し扉を看破する。ディアスは戦斧で壁と扉を破壊し、ジョー達が別方向から突入できるようにした。
敵は奇襲を仕掛けてきたが、エイマの聴覚によって全て先読みされ、ディアスは一方的に敵を叩き伏せていった。ただしディアスは、エルダン達が賠償労働に使う可能性を考え、敵兵を極力殺さず昏倒させるに留めていた。
ジョー達も遠吠えによる連携を駆使して順調に制圧を進めており、エイマはその情報を聞き取りながらディアスへ進路を指示した。こうしてディアス達は、敵首領が待つ最奥部へ到達する。
鬼人族による逃亡兵狩り
一方その頃、砦から逃げ出した兵士達は、荒野で鬼人族の若者達による襲撃を受けていた。隠蔽魔法で姿を消していた彼らは、逃亡兵を次々と射殺し、荷車や金貨、食料を奪っていく。
族長候補ゾルグは、以前のような略奪ではなく、村へ持ち帰る食料を重視していた。ディアスなら逃亡兵を見逃すと読んで待ち伏せしていた彼らは、予想通りの成果を得て満足していた。
ディアスと元戦友の決闘
砦最奥でディアスと対峙した男は、斧槍、剣、盾を巧みに使い分ける達人であった。男はディアスの戦い方を熟知しており、戦斧の軌道を読み切って受け流し続ける。
しかし男の攻撃は、全て鎧の魔力によって弾かれた。ディアスは不器用ながらも圧倒的な体力で攻撃を繰り返し、長期戦へ持ち込む。やがて男は消耗し、金貨や酒瓶まで投げ付けて狂乱し始めた。
その最中、エイマは鎧の魔力が急速に減っていることへ気付く。金貨一枚弾くのにも魔力を消費していたためである。男は魔力切れを察知すると、猛毒を塗った短剣で最後の突撃を仕掛けた。
だがその瞬間、ディアスの懐から飛び出したネズミが男の手を麻痺毒の針で刺し、続いて甲冑を纏った鷹が兜を叩き落とした。完全に隙を作られた男は、最後にディアスの戦斧の腹で殴り倒される。
ディアスは、頼れる仲間達がいたからこそ勝てたのだと告げ、男の野望を完全に打ち砕くのであった。
砦の広場でディアス
砦制圧後の処理
ディアス達が砦を完全制圧すると、獅子人族のスーリオ率いる百人規模の部隊が到着した。スーリオはカマロッツの命令で捕虜の引き取りに来たことを伝え、砦内の物資や装備の所有権はディアス達にあると説明した。
ディアスは物資を返却しようと考えたが、ゴルディアが密かに制止した。ゴルディアは、ディアスが無償で全て返却してしまえばマーハティ公の面目が潰れ、今後の統治に悪影響を与えかねないと説明する。また、今回の戦果はジョー達への正当な報酬にすべきであり、被害地域を助けたいなら物資を買い支える形で経済を回す方が良いと助言した。ディアスはその意見を受け入れる。
その後、捕虜の連行と物資搬出が進められ、ディアスは歩廊からその様子を見守った。そこへアイサが現れ、鎧への魔力補充を行うと同時に、戦い方についての助言を与える。アイサは、新たな鎧は従来の量産鎧とは異なる特別な装備なのだから、防御や回避に頼らず、もっと全力を込めた攻撃を主体とした戦い方が可能なはずだと説いた。
各地の砦攻略
スーリオ達はメラーンガル防衛を優先するため出撃できず、代わりにディアスへ他砦攻略への期待を言外に託した。ディアスはそれに応え、仲間達と共に北方へ進軍する。
ディアス達は移動の途中で各地の村や町へ立ち寄り、砦を制圧したことや今後も守りに駆けつけることを伝えて回った。人々を安心させる一方で敵兵達には恐怖を植え付け、その士気を削いでいく。
実戦では、ディアスは単騎で門を破壊した後、アイサの助言を取り入れた戦い方を実践した。敵の前で壁や柱を全力の一撃で粉砕し、その衝撃を見せつけることで恐怖を与えたのである。その圧倒的な力と、敵兵を極力殺さず捕縛していた評判も相まって、多くの敵兵は戦う前に降伏するようになった。
こうした攻略を七日間繰り返した結果、ディアス達はメラーンガル西方一帯の砦を全て陥落させた。こちらに負傷者はおらず、敵にも死者を出さずに制圧を完了する。戦利品は大量となり、装備や金貨はジョー達への報酬に回され、それ以外の物資は周辺地域で安価に販売されたり、逆に食料や家具を高値で購入する形で地域経済へ還元された。
それでも余った物資は、ゴルディアのギルドへ投資という形で預けられることになった。モントはあまり良い顔をしなかったが、ディアスは反乱で利益を得続けるような生き方を望まず、イルク村で穏やかに暮らす方こそ自分の本来の望みだと考えていた。
イルク村での凱旋宴
十分な戦果を挙げたディアス達は、東部戦線へは向かわずイルク村へ帰還した。帰還後の村では、これまでにない大規模な宴が開かれた。大量の料理と酒が振る舞われ、人々は歌い騒ぎ、全員の無事を心から喜んだ。
宴は二晩続き、二日目には鬼人族の村からゾルグ達も参加した。鬼人族の女性達は結婚相手探しも兼ねて参加しており、ジョーを始めとした独身者達は良い関係を築き始める。
ディアスは、隣領の混乱という本来は気乗りしない戦いであったものの、仲間達全員が無事に帰還し、新たな縁まで得られたことを悪くない結果だと感じていた。こうしてイルク村の春は、賑やかで穏やかな空気の中で過ぎていく。
ジュウハの困惑
一方、東部で戦後処理に追われていたジュウハは、ディアスの戦果報告を受け取っていた。ディアスが予想以上の速度で西方の敵を鎮圧したことに驚きつつも、ジュウハは今回の反乱そのものに強い違和感を抱いていた。
反乱軍は商人、没落貴族、人間至上主義者など統一感のない集団だったにもかかわらず、全体の動きだけは異様に洗練されていた。首謀者らしき存在の痕跡はあるのに、誰一人その人物を認識していない。さらにディアスが最初の砦へ到着した頃から、反乱軍の動きは急激に鈍くなっていた。
ジュウハは、ディアスを戦場へ引きずり出すこと自体が目的だったのではないかと推測するが、結論には辿り着けない。やがて思考を切り替え、残る戦後処理と今後の対策へ頭を向けるのであった。
広がる英雄譚
数十日後、マーハティ領の乱が収束すると、ディアスの活躍は王国中へ語り継がれていった。金色の鎧を纏い、無数の矢を弾き返し、一撃で砦を粉砕する救国の英雄として、人々はその名を称えた。
さらに、ディアスが報酬を求めず被災地支援まで行ったこと、鷹や自然までもが彼へ味方しているかのように描かれたことから、その存在は半ば伝説のように語られるようになる。
王は喜び、老公爵は笑い、王女達はそれぞれ異なる反応を示し、多くの民衆は心からディアスを称賛した。その噂は国外にまで広がり、帝国へも届いていくのであった。
書き下ろし 救国の英雄達
ある日の草原で
ディアス
大演習の開催
雲一つない青空の下、イルク村では大演習が行われることになった。発端は昼食時の雑談であり、戦争中の活躍談が次第に張り合いへと変わっていった末、アルナーの「実際にやり合えばはっきりする」という一言が決定打となったのである。
演習は、ゴルディア、アイサ、イーライ、エリーの四人組と、モント率いるジョー隊、ロルカ隊、リヤン隊の三十四人による対決となった。武器は全て布を巻いた木製で、怪我を防ぐため全身にも厚い布が巻かれ、負傷者を出しすぎた側が敗北という特別ルールが設けられた。
ディアスはこの騒ぎに気乗りしていなかったが、アルナーやセナイ達を始め、村中が祭りのように盛り上がっていたため、止めることはできなかった。審判役はディアス、エイマ、そして空中監視を担当するサーヒィ達が務めることになる。
ゴルディア達の戦い方
演習開始と同時に、ゴルディアは魔力で身体能力を極限まで高め、巨大な拳を振るって突撃した。地面を揺らすほどの一撃に対し、エリーは対照的に柔軟性を活かした軽やかな戦法を見せる。敵の攻撃を舞うように避けながら、鞭のような拳で確実に相手を弱らせていった。
アイサは砂を操る魔法を用いながら巧みに支援を行い、さらにイーライは目立たぬ位置で魔力を細く伸ばし、相手の魔力を少しずつ奪い続けていた。ジョー達はイーライの脅威に気付いておらず、それが後々大きく響いていく。
エイマはその様子を観察しながら、ゴルディア達の戦法を丁寧に分析していた。特にイーライの魔法を見抜いた時には、四対三十四という人数差を気にしなかった理由を理解するのであった。
モント率いる部隊の奮戦
一方のジョー達は、モントの指揮の下で組織的に動いていた。囲み、疲弊させ、確実に仕留めるという王道の戦術を徹底しており、戦場で培った経験が随所に現れていた。
木製武器という条件のため決定打に欠けてはいたものの、人数差を活かして着実にゴルディア達の体力を削っていく。モントの怒号が飛ぶ度に隊員達の動きは蘇り、長年積み重ねた信頼関係がその奮戦を支えていた。
だがゴルディア達も粘り強く応戦し、時間経過と共に双方は限界まで消耗していく。
決着
最初に崩れたのはエリーだった。十数人に取り押さえられ退場となり、続いてアイサ、イーライも脱落する。
しかしジョー隊側も大きく削られ、最後にはモント、ジョー、ロルカ、リヤン、そしてもう一人だけが残る状況となっていた。そこからさらに脱落者が続き、最後にはモント対ゴルディアの一騎打ちへともつれ込む。
両者が睨み合う中、ゴルディアは一瞬だけモントの義足へ視線を落としてしまう。その隙をモントは見逃さなかった。
義足を侮られた怒りを込めた鋭い拳が、下から跳ね上がるようにゴルディアの顎へと突き刺さる。限界を迎えていたゴルディアは、その一撃で崩れ落ちた。
こうして、大演習はモント達の勝利で幕を閉じる。
演習後の宴
勝敗が決すると、観戦していた村人達は大いに盛り上がった。アルナーは両陣営の戦いぶりを称賛し、戦士はこうした悔しさを糧に強くなるものだと語る。
さらにアルナーは、婦人会総出で豪華な料理を準備していたことを明かし、戦いの後は皆で食べて飲んで騒ぐべきだと宣言した。
その様子を見たディアスとエイマは、今回の大演習そのものが最初からアルナーの掌の上だったのではないかと察し、揃って何とも言えない苦い表情を浮かべるのであった。
ゴルディアとモントの料理
ゴルディアとモントの料理対決
よく晴れた昼下がり、学びと仕事を終えて自由時間となったセナイとアイハンは、元気に村中を駆け回っていた。そんな中、普段は女性陣の場となっている竈場に男達の姿を見つけ、不思議に思って近付いていく。
そこでは、エプロン姿のゴルディアとモントが並んで料理をしていた。珍しい光景に興味を惹かれたセナイ達が声をかけると、ゴルディアは酒場主だった経験から料理は得意だと豪快に答え、モントは帝国人たるもの料理くらい出来て当然だと丁寧に返した。
王国風の贅沢なパン
セナイ達がまず覗き込んだのはゴルディアの作業台だった。そこには丸パン、ハム、薬草、チーズなどが並べられており、ゴルディアはそれらを使って豪華なパン料理を仕上げていく。
切れ目を入れた柔らかな丸パンへ、とろけたチーズを塗り込み、薬草とハムを挟み、さらに砕いた香辛料やクルミまで振りかける。パン生地にはハチミツが練り込まれていたらしく、甘い香りまで漂っていた。
完成したパンは柔らかく、甘みと香りに満ちており、具材の食感や風味が重なり合って最後まで飽きさせない贅沢な味わいとなっていた。
帝国風の完成されたパン
一方のモントは、一見すると硬いパンとバターだけを用意しているように見えたため、セナイ達は物足りなさそうな反応を見せた。
しかしモントは、細長いパンを切って中に練り込まれたクルミを見せつける。そのパンは外側こそ硬かったが、中はふんわりとしており、火で軽く炙って溶けたバターを染み込ませることで、香ばしさと旨味が際立つ料理となっていた。
皮のパリパリした食感と木の実のアクセントが特徴的で、無駄を削ぎ落とした完成度の高さを感じさせる一品だった。
勝敗なき満足
ゴルディアとモントは、それぞれ自分達の料理こそ大陸一だと主張しながら、セナイとアイハンへ食べ比べを頼む。
セナイ達は感謝の祈りを済ませると、両方のパンへ夢中でかぶりついた。どちらもまったく違う美味しさを持っており、優劣を付けることなど出来なかった。
食べ終えた二人は満面の笑みで感謝を伝え、また食べたいと無邪気に言葉を返す。肝心の勝負判定はすっかり忘れていたが、ゴルディアとモントは苦笑しつつも、二人に喜んでもらえたことを素直に嬉しく思うのであった。
その後、香りにつられて犬人族達やディアス達まで集まり始め、ゴルディアとモントは次々と料理を振る舞いながら、自慢の腕を存分に披露し続けるのであった。
同シリーズ
領民0人スタートの辺境領主様














その他フィクション

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