物語の概要
■ 作品概要
本作は、異世界に貧乏貴族の八男として転生した主人公・ヴェンデリンの活躍を描くファンタジー小説の第9巻である。 隣国アーカート神聖帝国で勃発したニュルンベルク公爵によるクーデターに巻き込まれたヴェンデリン一行は、帝都を脱出し、安全な北方のフィリップ公爵領を目指して逃走する。その途中で日本風の文化を持つ半独立国「ミズホ伯国」に立ち寄り、温泉や和食を満喫して平穏なひとときを過ごす。しかし、国王からの密命や恩義もあり、結局はテレーゼ率いる反乱鎮圧軍(解放軍)に傭兵として加わり、過酷な内乱の最前線に身を投じることとなる。戦場では、ヴェンデリンの亡き師匠アルフレッドが敵として召喚されるという最大の試練が待ち受けている。
■ 主要キャラクター
- ヴェンデリン:バウマイスター伯爵。日本的文化を持つミズホ伯国での観光や買い物に歓喜する。戦場では亡き師匠と再会し、命がけの死闘を繰り広げることとなる。
- テレーゼ:フィリップ公爵にして、反ニュルンベルク公爵派の総大将。ヴェンデリンを味方に引き入れようと度々誘惑を仕掛ける。
- ニュルンベルク公爵(マックス):クーデターの首謀者。強大な中央集権帝国を目指す野心家であり、戦場では冷徹な戦術でヴェンデリンたちを追い詰める。
- ターラント:ニュルンベルク公爵の側近である、存在感の薄い不気味な魔法使い。聖魔法「英霊召喚」により死者と融合してその能力を操る。
- アルフレッド・レインフォード:ヴェンデリンの亡き師匠。ターラントの魔法によって召喚され、生前を凌ぐ圧倒的な技量でヴェンデリンたちの前に立ちはだかる。
- エル(エルヴィン):ヴェンデリンの親友であり護衛。ミズホ伯国の女剣士ハルカに一目惚れし、彼女の兄との決闘騒動を経て無事に婚約を果たす。
- ハルカ・フジバヤシ:ミズホ伯国軍の精鋭「抜刀隊」に所属する美少女剣士。エルの誠実さに惹かれ、彼の婚約者となる。
- トヨムネ・ミズホ:ミズホ伯国を治める上級伯爵。ニュルンベルク公爵の脅威に対抗するため、テレーゼとの共闘を決断する。
■ 物語の特徴
本作の大きな魅力は、西洋風ファンタジーの世界観の中に、侍や日本食、温泉、魔刀といった本格的な「和風要素(ミズホ伯国)」が組み込まれている点である。これにより、緊迫した逃走劇や内乱の最中にユーモラスな観光・日常パートが生まれ、凄惨な戦争描写との間にメリハリのある展開を作り出している。 また、物語後半のソビット大荒地会戦では、かつてヴェンデリンに魔法を教えた亡き師匠アルフレッドが敵として召喚されるという衝撃的な展開が描かれる。師弟対決という熱いシチュエーションと、ヴェンデリン、ブランターク、アームストロング導師の三人掛かりでも手も足も出ないほどの圧倒的な強敵との絶望的な死闘は、本作屈指の読みどころとなっている。
書籍情報
八男って、それはないでしょう! 9
著者:Y.A 氏
イラスト:藤ちょこ 氏
出版社:KADOKAWA(MFブックス)
発売日:2016年8月25日
ISBN:9784040684611
(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。
あらすじ・内容
内乱? クーデター? そんなことよりお団子食べたい。
八男って、それはないでしょう!9
アーカート神聖帝国で起こったクーデターに巻き込まれたヴェルは、首都バルデッシュを脱し、フィリップ公爵領を目指して馬車を走らせる。
そんな中、途中立ち寄ったミズホ伯国で「和」の文化がヴェルを待ち受けていた。
「き、来たぁー! 日本的文化来たぁー!」
西洋風ファンタジーな世界に、日本風の文化を持つ国家があったことに感激し、ヴェル一行はこれを満喫する。
大満足なまま帰りたい、戦いに協力するなど真っ平御免なヴェルは、フィリップ公爵領到着後、なんとかしてヘルムート王国へ帰る手立てを探すのだが……。
『可能な限り、ヘルムート王国の利となるように動くべし』
という王国からのお達しがあり、計画は見事に瓦解。意気消沈のまま戦場へと赴くヴェル一行を、まさかの脅威が待ち受けているのだった――。
感想
本巻は、アーカート神聖帝国で発生したクーデターから逃げ出したヴェンデリンたちが、北部にあるミズホ伯国へ向かう場面から始まる。
帝都ではニュルンベルク公爵が反乱を起こし、瞬間移動や飛翔、通信の魔法まで封じられている。
ヴェンデリンたちは自国へ戻るどころか、ヘルムート王国とは反対方向へ逃げるしかない。
かなり緊迫した状況である。
ところがミズホ伯国へ到着すると、物語の雰囲気は一気に明るくなる。
日本によく似た町並み。
団子や蕎麦、味噌、醤油といった懐かしい食べ物。
畳敷きの城や温泉宿。
命からがら逃げてきたはずのヴェンデリンが、観光客のようにはしゃぐ姿には思わず笑ってしまった。
しかし、平和な観光だけで終わるはずもない。
ヴェンデリンたちは帝国の内乱へ参加することになり、最後には死んだはずの師匠アルフレッドと戦うことになる。
前半の楽しい異文化体験と、後半の過酷な戦争との落差が印象に残る一冊だった。
日本を思わせるミズホ伯国
ミズホ伯国は、アーカート神聖帝国内にありながら、独自の文化と強い自治権を持つ半独立国である。
住民には黒い髪と黒い瞳の者が多く、米作りや工芸、魔道具の製造技術に優れている。
帝国は過去に何度も征服しようとしたが、サムライと呼ばれる戦士たちの激しい抵抗によって大きな損害を受けてきた。
その結果、朝貢と外交権の委任を条件として、ミズホ伯国の自治を認めることになった。
普段は温厚で、交易や観光にも積極的である。
しかし侵略者に対しては、一切の容赦をしない。
穏やかに暮らしたいが、自分たちの土地や文化を奪おうとする者とは徹底的に戦う。
その姿勢が非常に分かりやすかった。
ニュルンベルク公爵は、帝国を一つの民族と一つの権力によって統一しようとしている。
独自の制度や文化を持つミズホ伯国は、彼にとって排除すべき存在である。
すでにニュルンベルク公爵領や帝都では、ミズホ人の資産が没収され、住民も拘束されていた。
ミズホ伯国がテレーゼへ協力するのは、単なる友情ではない。
自分たちが生き残るための戦いでもあった。
逃亡中とは思えない観光の楽しさ
ミズホ伯国へ入ったヴェンデリンは、目に入るものすべてに興奮する。
峠の茶屋を見つければ団子を食べたがる。
城へ入れば畳や襖、障子、掛け軸に懐かしさを覚える。
町へ出れば団子、饅頭、蕎麦、汁粉などを次々と食べ歩く。
さらに味噌、醤油、昆布、鰹節、海苔、麺つゆ、味醂、乾麺、酒まで大量に買い込む。
クーデターから逃げている途中とは思えない買い物ぶりだった。
ヴェンデリンにとって、ミズホ伯国は前世の日本を思い出せる貴重な場所である。
これまで自分の記憶を頼りに味噌や醤油を再現してきたが、専門の職人が作る品には敵わない。
知識があることと、実際に美味しく作れることは別である。
自分が試行錯誤していたものの完成形を目の前にして、夢中になるのも無理はないと感じた。
ミズホ伯国の産品を楽しむだけではなく、料理人や着付けのできるメイドを雇い、伯爵領との交易を始めようと考えるところもヴェンデリンらしい。
本人は美味しい和食を食べたいだけなのだろう。
しかし、その個人的な欲望が新しい交易や産業へつながっていく。
食い意地が領地の発展を後押しする構図が面白かった。
導師とヴィルマの恐ろしい食欲
ミズホ伯国の食事場面では、導師とヴィルマの食欲も相変わらずだった。
茶屋へ入ると、導師はメニューを端から端まですべて注文する。
しかも一巡しただけでは足りず、同じ内容をもう一度注文する。
蕎麦屋でも同じように全種類を食べ尽くす。
ヴィルマも当然のように同行し、大量の料理を平然と完食している。
それだけ食べた後に「腹八分」と言い出す姿には、何を基準に八分と判断しているのか分からず笑ってしまった。
戦場では頼れる二人だが、食事の場面でも別の意味で圧倒的である。
緊迫した逃走の後に、このような気楽な場面が挟まれることで、読んでいる側も少し肩の力を抜くことができた。
エルが出会った女剣士ハルカ
ミズホ伯国では、エルにも新しい出会いがある。
その相手が、抜刀隊に所属する女剣士ハルカ・フジバヤシである。
ハルカは十六歳でありながら、抜刀隊に三人しかいない女性隊員の中でも特に強い。
長い黒髪をまとめ、刀を携えた真面目な美少女である。
カルラとの恋に敗れたばかりのエルは、ハルカを見た瞬間に再び一目惚れする。
失恋で妄想の新婚生活へ逃げ込むほど傷ついていたのに、立ち直るとすぐに次の恋を始める。
その切り替えの早さには感心するしかない。
ただし、今回のエルは以前よりも少し成長している。
単に外見を褒めて近づくだけではない。
同じ護衛役として警備の相談をし、ハルカが大役へ緊張していることにも気づく。
さらに彼女から真剣に刀術を学び、短期間で抜刀隊に入れるほどの腕前へ成長していく。
動機には不純な部分もある。
それでも好きな相手へ認めてもらうため、実際に努力して強くなっている。
カルラの時には、自分に都合よく相手の行動を解釈していた。
今回は、ハルカと同じものを見て、同じ技術を学ぶことで距離を縮めている。
その違いが印象に残った。
妹を溺愛する兄との決闘
エルとハルカの関係を阻むのは、ハルカを溺愛する兄タケオミである。
タケオミはエルの才能を認めながらも、妹を外国へ嫁がせることに反対する。
エルが自分と互角に戦えるほど強ければ認めると言うが、短期間でそこまで成長するのは難しい。
そこでタケオミは、エルの主君であるヴェンデリンが自分を倒せば、ハルカを預けてもよいと提案する。
なぜエルの結婚のためにヴェンデリンが戦うのかと思ってしまうが、エルはヴェンデリンの大切な家臣であり親友でもある。
ヴェンデリンは、エルのために決闘を受ける。
タケオミは魔刀を使い、ヴェンデリンの魔法を次々と切り払う。
最後には奥義の牙狼突によって、魔法障壁の一点突破を狙う。
ヴェンデリンが嫌な予感を覚えて障壁を厚くしていなければ、本当に敗北していたかもしれない。
ミズホ伯国の剣士と魔刀の強さを見せつけられる戦いだった。
勝負に敗れたタケオミは、ヴェンデリンのもとならハルカを任せられると判断する。
これでようやく、エルの恋が成就するかと思われた。
求婚だと気づいていないハルカ
兄の許しを得たエルは、戦いが終わったらバウマイスター伯爵領へ来てほしいとハルカへ伝える。
ハルカも迷わず了承する。
周囲の誰もが、二人の結婚が決まったと思う場面である。
ところがハルカは、エルの剣術指南役として同行するのだと受け取っていた。
妹を溺愛するタケオミが、恋愛や結婚に関する知識からハルカを遠ざけ、近づく男性も排除してきたためである。
エルは真剣に求婚したつもりなのに、本人へまったく伝わっていない。
またエルの恋が空回りするのかと不安になったが、ヴェンデリンがタケオミへ説明を命じたことで、最終的には二人の婚約が認められる。
ハルカも、エルが自分を女性として扱い、真面目に刀術を学ぶ姿に好意を抱いていた。
カルラとの失恋では悲惨な姿を見せたエルだったが、今度こそ相手からも好意を向けられている。
長く遠回りした末に、ようやく相性のよい相手を見つけたように感じた。
逃げるつもりが戦争へ参加させられる
ヴェンデリンは当初、テレーゼとミズホ伯国が軍を集めている間に、船でヘルムート王国へ逃げるつもりだった。
他国の内乱へ深入りしても、よいことはない。
大金を使って船を用意し、海路で帰ればよいと考えていた。
しかし、船は内乱による輸送の混乱で確保できない。
さらに教会の伝令役ユーファが、ヘルムート国王からの命令を届ける。
その内容は、可能な限りヘルムート王国の利益となるように動けというものだった。
ヴェンデリンは領地へ帰りたいだけなのに、国王命令によって帝国内乱へ参加させられる。
しかも正式な王国軍ではなく、テレーゼに雇われた傭兵という立場である。
問題が起きれば、王国は無関係だと言える。
成功すれば、王国の利益として利用できる。
国にとっては都合のよい扱いだが、ヴェンデリン本人には迷惑な話である。
地位や能力を得たことで、本人の意思とは無関係に大きな争いへ利用される。
伯爵になっても自由から遠ざかるヴェンデリンの苦労は、本巻でも続いていた。
ソビット大荒地に築かれる巨大防衛陣地
ヴェンデリンたちは先遣隊と共に、ソビット大荒地へ向かう。
そこでニュルンベルク公爵軍の北上を防ぐため、巨大な野戦陣地を築くことになる。
ヴェンデリン、ブランターク、カタリーナの魔法によって、石壁、堀、柵、住居が短期間で作られる。
もはや野戦陣地というより、小さな城塞に近い。
さらに戦いが長期化することを考え、荒れ地へ馬の飼料となるバカダイコンまで植える。
目の前の戦闘だけではなく、馬の餌や土壌改良まで考えているところが興味深かった。
戦争では、強い兵士がいるだけでは勝てない。
兵士や馬を食べさせ、装備を整え、負傷者を治療しなければならない。
ヴェンデリンの土木魔法や物資調達能力は、直接敵を倒す魔法以上に戦争へ大きな影響を与えている。
本人は領地へ帰りたいと言いながら、結局どこへ行っても開発や建設をしている。
その働きぶりには同情しつつも、妙な安心感を覚えた。
第一次ソビット大荒地会戦
完成した防衛陣地には、フィリップ公爵家とミズホ伯国を中心に約二万五千の兵が集まる。
対する反乱軍は約四万。
兵力では劣っているが、防衛側には堀や石壁がある。
さらに、ミズホ伯国の魔銃と抜刀隊という強力な戦力も存在している。
反乱軍は多数の魔法使いに広域魔法障壁を張らせ、攻撃を防ぎながら前進する。
しかし、障壁を張っている間は自分たちも攻撃できない。
ヴェンデリンたちは兵士に変装している敵の魔法使いを見抜き、ヴィルマの鉄矢やイーナの投槍を魔法で強化して狙撃する。
障壁を維持する魔法使いたちが倒れると、ミズホ伯国軍の魔銃が一斉に火を噴く。
敵軍が次々と倒れていく場面は迫力があった。
ただし、反乱軍の兵士たちも好んで戦っているわけではない。
主君や家族を人質に取られ、退けば処罰されるため、死ぬまで前進するしかない。
ニュルンベルク公爵は、反抗的な貴族や不要な軍勢を戦場で消耗させようとしている。
味方でさえ自分の帝国を作るための材料として扱う。
その合理性には、冷たさと恐ろしさを感じた。
勝利しても残る戦場の重さ
反乱軍の総大将クラーゼン将軍が討たれると、敵軍は崩壊する。
ヴェンデリンたちは勝利するが、戦場には大量の死体と負傷者が残される。
戦闘中は必死だったヴェンデリンも、戦いが終わると恐怖で震え始める。
強大な魔法が使えても、人を殺すことへ慣れきっているわけではない。
勝利を喜ぶより、目の前に広がる死者の数に圧倒されてしまう。
治療所では、魔力が不足して助けられない負傷者もいる。
すべての人を救いたいと思っても、次の戦いのために魔力と魔晶石を残さなければならない。
誰を助け、誰を諦めるのか。
その判断を迫られるエリーゼたちの苦しさも印象に残った。
戦争は勝敗が決まれば終わるものではない。
負傷者の治療、死者の処理、壊れた陣地の修復、食料や装備の補充まで続いていく。
派手な魔法戦だけではなく、戦後の泥臭い作業まで描かれている点に現実味があった。
勝手に帝国へ攻め込んだ王国軍
内乱が続く中、ソビット大荒地の陣地へ、ぼろぼろになった約千五百人の兵士が現れる。
彼らは、帝国の混乱に乗じて勝手に侵攻したヘルムート王国軍の敗残兵だった。
指揮しているのは、かつてブロワ辺境伯家の後継者争いを起こしたフィリップとクリストフである。
帝国へ攻め込んだレーガー侯爵は、ニュルンベルク公爵の軍に敗れ、本人も直接斬り殺されていた。
魔導飛行船が使えないため、軍勢はロープでギガントの断裂を渡ったという。
補給や撤退の方法も十分に考えず、相手国の内乱へ便乗して攻め込む。
無謀としか言いようがない。
それでもフィリップとクリストフは、生き残った兵士たちをまとめ、敵中を北上してヴェンデリンのもとへたどり着く。
以前は家臣や外戚に振り回されて失敗した二人だが、軍人としての能力は低くない。
特にフィリップは、敗残兵をまとめて生還させ、その後の防衛戦でも指揮官として働く。
過去の失敗を抱えた人物が、別の場所で能力を発揮する展開が興味深かった。
ただし、彼らが合流したことで、ヴェンデリンは千五百人分の武器、防具、衣服、食料、小遣いまで準備することになる。
帰国するどころか、新しい軍勢まで抱え込む。
困っている同国人を見捨てられないヴェンデリンの性格が、また自分の負担を増やしていた。
十五万の反乱軍による総攻撃
物語の終盤では、ニュルンベルク公爵自身が約十五万の軍勢を率いて現れる。
ヴェンデリンたちが築いた防衛陣地へ、前衛四万人が一斉に突撃する。
しかし、その前衛はニュルンベルク公爵にとって不要な貴族や、忠誠心を疑われている兵士たちで構成されている。
彼らは敵を消耗させるための捨て駒だった。
退却すれば、後方の督戦隊に殺される。
前へ進めば、魔銃、魔法、弓矢を浴びる。
兵士たちには、生き残る道がほとんどない。
ニュルンベルク公爵は敵だけではなく、自分に従う者まで選別している。
理想の帝国を作るためなら、現在の帝国人が何人死んでも構わない。
国を愛しているように見えながら、実際には自分の理想へ合わない国民を切り捨てている。
その矛盾が恐ろしかった。
存在感のない魔法使いターラント
ニュルンベルク公爵の側近として現れるのが、ターラントという魔法使いである。
彼は高い魔力を持っているが、異常なほど存在感が薄い。
一度目を離すと、顔や姿の記憶まで曖昧になる。
戦場を歩いていても、兵士たちは彼を敵として認識できず、攻撃しようとしない。
この存在感の薄さこそが、ターラントの使う聖魔法「英霊召喚」の条件だった。
ターラントは死者の魂と融合し、その人物の姿、記憶、能力を再現する。
最初に召喚したのは、初代アームストロング伯爵だった。
導師以上の力を持つ伝説的なパワーファイターである。
しかし、ヴェンデリン、導師、ブランタークの三人との戦いには相性が悪いと判断すると、ターラントは別の英霊へ切り替える。
そこで現れた人物が、アルフレッド・レインフォードだった。
死んだはずの師匠アルフレッド
アルフレッドは、幼いヴェンデリンへ魔法を教えた最初の師匠である。
魔の森でアンデッドとなっていた彼をヴェンデリンが浄化し、その後は残された魔法の道具や知識を受け継いだ。
ヴェンデリンにとって、現在の自分を作ってくれた恩人である。
そのアルフレッドが敵として現れる。
姿や声を真似ているだけではない。
ヴェンデリンの魔力操作の癖。
ブランタークとの思い出。
導師やブランタークしか知らない呼び名。
本人の記憶と人格まで再現されている。
アルフレッド自身も、自分が死んだ後に呼び出されたことを理解している。
しかし、ターラントの支配には逆らえない。
大切な弟子や友人を殺したくないと思いながら、それでも全力で攻撃しなければならない。
あまりにも残酷な再会だった。
ヴェンデリンにとっては、懐かしい師匠に会えた喜びより、自分の手で再び倒さなければならない苦しみの方が大きかったと思う。
三人がかりでも届かない圧倒的な技量
アルフレッドは、単純な魔力量だけで戦う人物ではない。
複数の魔法へわずかな威力差をつけ、相手の魔法障壁を効率よく崩していく。
大技を連発するのではなく、小さな違いを積み重ねて確実に相手を追い込む。
ヴェンデリンは魔力量では師匠を超えているかもしれない。
しかし技術と経験では、まだ遠く及ばない。
さらにアルフレッドは、古代魔法文明の遺産である「木偶」を二体投入する。
木偶は相手の姿や能力を複製できる。
導師には、攻撃の癖まで理解した導師自身の分身が立ちはだかる。
ブランタークには、アルフレッドの能力を持つ分身が襲いかかる。
ヴェンデリンは本物のアルフレッドと一対一で戦う。
三対一であったはずの戦いが、三対三へ変わってしまう。
導師は自分の攻撃を読まれ、ブランタークは魔力量の差で押され、ヴェンデリンも次々と傷を負う。
これまで強敵を圧倒することが多かった三人が、全く余裕を見せられない。
特にヴェンデリンが師匠の魔法を知っているのに、それでも対応できないところに絶望感があった。
知っている技だから防げるのではない。
同じ魔法でも、使い方と組み合わせによって別物になる。
師匠の壁がどれほど高いのかを、改めて見せつけられる戦いだった。
補給拠点を焼き払うヴェンデリンの機転
正面からアルフレッドを倒すことは難しい。
ヴェンデリンたちは三人がかりでも押され続ける。
そこでヴェンデリンは、アルフレッド本人を倒すのではなく、反乱軍の補給拠点を狙う。
十五万の軍勢を動かすには、膨大な食料と物資が必要である。
どれほど強い兵士や魔法使いがいても、食べ物がなければ戦い続けることはできない。
守りの薄い補給拠点は、魔法障壁ごと焼き払われる。
大量の物資を失ったニュルンベルク公爵は、攻撃を続けられなくなり、全軍へ撤退を命じる。
アルフレッドも命令へ従い、戦闘を中断する。
木偶二体は過度の負荷によって故障し、アルフレッド自身の手で破壊される。
結果として、戦いはヴェンデリンたちの勝利でも敗北でもない。
反乱軍を撤退させることには成功した。
しかし三人がかりでも、アルフレッド本人には全く届かなかった。
辛うじて戦場から生き残っただけの痛み分けだった。
師匠から学び続けるヴェンデリン
アルフレッドが撤退した直後、消耗したヴェンデリンを狙って敵の魔法使いが現れる。
そこでヴェンデリンは、先ほどアルフレッドが使っていた、複数の攻撃へ威力差をつける方法を試す。
敵の魔法障壁を崩し、一撃で倒すことに成功する。
命を狙われながらも、ヴェンデリンは師匠の技術を観察し、自分のものにしようとしていた。
敵として戦っても、アルフレッドはヴェンデリンの師匠であり続けている。
戦闘を通じて新しい技術を見せ、それを弟子が学ぶ。
本来なら喜ばしい師弟関係のはずなのに、互いに殺し合わなければならない。
その状況が悲しかった。
アルフレッドはターラントに操られている。
このままでは、何度でも敵として召喚される可能性がある。
ヴェンデリンは、ターラントとニュルンベルク公爵への怒りを強める。
師匠を利用され続けないためには、自分の手でアルフレッドを倒し、再び成仏させなければならない。
尊敬する師匠を上回ることが、ヴェンデリンの新しい目標となった。
安らぎと戦争が同居する一冊
『八男って、それはないでしょう! 9』は、ミズホ伯国の楽しい観光から、大軍同士がぶつかる戦争まで、非常に幅の広い一冊だった。
日本風の文化へ興奮し、食材や調味料を買い込むヴェンデリン。
新しい恋を見つけ、ハルカと婚約するエル。
温泉や和食を楽しむ妻たち。
このままミズホ伯国で平和に過ごしてほしいと思うような場面が続く。
しかしヴェンデリンたちは、国王の命令によって帝国内乱へ参加させられる。
ソビット大荒地では多くの兵士が死に、救いたくても救えない負傷者が生まれる。
勝手に帝国へ攻め込んだ王国軍の敗残兵まで合流し、ヴェンデリンの責任はさらに重くなっていく。
そして最後には、死んだはずのアルフレッドが最強の敵として現れる。
本巻で最も印象に残ったのは、ヴェンデリン、ブランターク、導師の三人がかりでも、アルフレッドへ届かなかったことである。
ヴェンデリンは数々の竜や魔物を倒し、大軍まで制圧してきた。
導師も王国最強クラスの魔法使いである。
ブランタークにも長年の経験がある。
その三人を同時に相手にしても、アルフレッドは余裕を失わない。
ヴェンデリンがどれほど成長しても、師匠はまだ遥か先にいる。
その圧倒的な強さには絶望感がありながら、同時に再戦への期待も高まった。
次にアルフレッドと戦う時、ヴェンデリンは師匠の技術へどこまで近づいているのか。
ターラントの英霊召喚を破り、アルフレッドを解放できるのか。
エルとハルカは無事に結婚できるのか。
そして、長期化する帝国内乱からヴェンデリンたちはいつ帰国できるのか。
ミズホ伯国という新しい居場所を見つけながら、過去最大級の強敵との戦いが始まった第9巻だった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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考察・解説
ミズホ伯国
ミズホ伯国の成り立ちと帝国内乱における役割の全貌
『八男って、それはないでしょう! 8・9』において、アーカート神聖帝国の北方に位置する「ミズホ伯国」について、ミズホ伯国の成り立ちと軍事力、豊かな和風文化と高い技術力、クーデターにおけるテレーゼとの共闘、およびヴェンデリン一行との関わりの各点から解説する。
ミズホ伯国の成り立ちと軍事力
ミズホ伯国は、帝国が成立する以前から存在する黒髪・黒目の民族が統治する自治領である。
・過去に帝国は彼らを征服しようと何度も討伐の兵を出したが、その度にサムライたちの死に物狂いの抵抗に遭い、帝国軍は数万規模の甚大な被害を受けた。
・時の皇帝が折れ、外交権を帝国に委ねて年に一度朝貢することを条件に、上級伯爵という特別な爵位を与えて自治を認めたという歴史を持つ。
・精鋭である抜刀隊は、刀身に魔力を纏わせる高度な魔道具である魔刀を装備しており、圧倒的な戦闘力を誇る。
・魔銃や魔大砲と呼ばれる新兵器の開発、夜襲を得意とする戦術、クサの者と呼ばれる忍者集団やミズホツバメを用いた独自の迅速な情報網を持つなど、極めて高い軍事力と情報収集能力を有している。
豊かな和風文化と高い技術力
気候の寒暖差が激しく水が豊富なアキツ大盆地を生存圏としており、美味しい米の産地として知られている。
・領主のトヨムネ・ミズホが住むミズホ城は五稜郭と大阪城を合わせたような巨大な要塞で、内部は土足厳禁の畳敷きであり、襖や障子、生け花、掛け軸などが飾られている。
・独自の通貨が流通しており、手先が器用なミズホ人が作る工芸品や魔道具は、帝国製や王国製よりも小型で省エネ性能に優れた最高品質を誇る。
・食文化も、醤油、味噌、蕎麦、日本酒であるミズホ酒、団子など、前世が日本人であるヴェンデリンを大いに歓喜させる本格的な和食が根付いていた。
クーデターにおけるテレーゼとの共闘
強力な中央集権国家を目指す国粋主義者のニュルンベルク公爵にとって、独自の技術と独立性を保つミズホ伯国は排除すべき対象であった。
・クーデター発生直後、公爵は領内のミズホ資本や資産を没収し、ミズホ人を女子供も含めて収容所送りにするという強硬な弾圧を行った。
・このままでは各個撃破されると判断したミズホ上級伯爵は、テレーゼからの共闘の呼びかけに即座に応じ、自ら一万の軍勢を率いてソビット大荒地の防衛陣地へ出兵した。
・ミズホ伯国軍にとって外征はこれが初めてであったが、抜刀隊や魔銃隊の活躍により反乱軍に大打撃を与えた。
ヴェンデリン一行との関わり
帝都でのクーデターから逃れる道中、テレーゼの案内でミズホ伯国に立ち寄ったヴェンデリン一行は手厚い歓待を受けた。
・ヴェンデリンは懐かしい和食やミズホ製の魔道具を大量に買い込み、大いに満喫した。
・この国でヴェンデリンの親友エルは、護衛として出会った抜刀隊の美少女剣士・ハルカに一目惚れした。
・彼女を溺愛する兄タケオミから自分に勝てる男でなければ妹はやらんと猛反対されたが、エルからの頼みでヴェンデリンが代理としてタケオミと決闘を行って勝利し、無事に二人の婚約が成立した。
・ヴェンデリンが提供した希少なオリハルコンを用い、ミズホ家のお抱え鍛冶師・八十七代目カネサダの手によって、エルとハルカのための最高級のオリハルコン刀が作刀されるなど、バウマイスター伯爵家と深い縁を結ぶこととなった。
まとめ
ミズホ伯国の成り立ちと帝国内乱における役割を巡る一連の全貌は、高い軍事力に裏打ちされた歴史的自治の確立から始まり、洗練された和風文化と優れた技術の展開、反乱軍の弾圧に対抗するテレーゼとの共闘、そしてヴェンデリン一行との交流や婚約を通じたバウマイスター伯爵家との深い連携に至るまで、その歩みを明瞭に示している。外部からの侵略や抑圧的な支配という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、強固な独立心と優れた文化の結集の記録である。自治の死守から、文化の発展、弾圧への反撃、異文化との協調、そして新しい同盟関係の構築へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
ニュルンベルク公爵の反乱
ニュルンベルク公爵の反乱と内乱の展開の全貌
『八男って、それはないでしょう! 8・9』において、ニュルンベルク公爵(マックス)が起こしたクーデターおよびそれに続く内乱について、新帝国樹立の野望と選帝侯の排除、ヘルムート王国軍の独断侵攻と壊滅、解放軍の結成とソビット大荒地での激突、ならびに亡き師匠アルフレッドの召喚と撤退の各点から解説する。
新帝国樹立の野望と選帝侯の排除
クーデターによって帝都と帝国の中央・南部を掌握したニュルンベルク公爵は、自らを聖アーカート一世と名乗り、強力な中央集権国家の樹立を目指した。
・皇帝の力を強化するために選帝侯制度を廃止しようと目論み、帝都にいた選帝侯の大半を殺害または軟禁した。
・独自の技術と文化を持つミズホ伯国や、テレーゼ率いるフィリップ公爵領を帝国統一の障害とみなした。
・帝都や自領内にいるミズホ人やラン族の資産を没収し、収容所へ送るなどの苛烈な弾圧を行った。
ヘルムート王国軍の独断侵攻と壊滅
帝国の通信・交通が麻痺した混乱に乗じ、ヘルムート王国の対帝国強硬派であるレーガー侯爵が独断で帝国領内へと侵攻する事件が発生した。
・魔導飛行船が使えない中、ローペでギガントの断裂を渡るという強行軍であったが、ニュルンベルク公爵軍の奇襲に遭い部隊は壊滅した。
・レーガー侯爵はニュルンベルク公爵自身に斬られ、生き残った王国兵は敵中を北上し、最終的にヴェンデリンたちに合流することとなった。
解放軍の結成とソビット大荒地での激突
帝都を脱出したテレーゼは、ミズホ伯国や北方諸侯をまとめ上げ、反ニュルンベルク公爵派である解放軍を組織した。
・両軍は北方への入り口となるソビット大荒地で激突することとなった。
・反乱軍の先鋒として現れたのは、クラーゼン将軍率いる約四万人の前衛部隊であった。
・この部隊は、ニュルンベルク公爵にとって忠誠心の低い貴族や邪魔な兵士を集めた損害担当部隊であり、解放軍を消耗させるための捨て駒であった。
・防衛陣地に籠もる解放軍は、ヴェンデリンたちの魔法狙撃やミズホ伯国軍の魔銃を用いて敵前衛を壊滅させ、クラーゼン将軍を討ち取った。
亡き師匠アルフレッドの召喚と撤退
前衛部隊をすり潰したのち、ニュルンベルク公爵本人が約十五万の反乱軍主力を率いて進軍してきた。
・側近の魔法使いターラントは、聖魔法である英霊召喚を用いてヴェンデリンの亡き師匠アルフレッド・レインフォードを召喚した。
・生前を凌ぐ圧倒的な力で立ち塞がるアルフレッドに対し、ヴェンデリン、ブランターク、アームストロング導師の三人がかりでも追い込まれる事態となった。
・ヴェンデリンは導師に自分を上空へ投げ上げてもらうと、ニュルンベルク公爵本陣を狙うと見せかけて、十五万の軍勢を支える後方の補給拠点に向けて巨大な火球を放ち、魔法障壁ごと焼き払うことに成功した。
・物資を失ったニュルンベルク公爵は進軍継続を諦めて全軍に撤退を命じ、アルフレッドも退いたことで、ヴェンデリンたちは辛くも死地を脱することとなった。
まとめ
ニュルンベルク公爵の反乱と内乱の展開を巡る一連の全貌は、新帝国樹立を掲げた権力集中と異民族弾圧から始まり、王国強硬派の独断侵攻と壊滅、テレーゼ主導の解放軍結成とソビット大荒地での前哨戦、そして英霊召喚された亡き師匠の脅威に対する補給線途絶による辛くも勝ち得た防衛戦に至るまで、その歩みを明瞭に示している。国家の混迷や過去の英霊を用いた不条理な攻勢という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、危機的戦況下での戦術的機転と冷徹な状況判断の記録である。権力の掌握から、前線の激突、英霊の襲来、補給拠点の撃砕、そして北方防衛線の死守へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
魔法妨害装置の影響
魔法妨害装置の影響と内乱への波及の全貌
『八男って、それはないでしょう! 8・9』において、ニュルンベルク公爵がクーデターの切り札として使用した古代魔法文明の遺産である魔法妨害装置について、移動系・通信系魔法および魔道具の封殺、アーカート神聖帝国におけるクーデターの成功と混乱、ヘルムート王国への甚大な被害と軍事的緊張、およびヴェンデリン一行への影響と過酷な逃避行の各点から解説する。
移動系・通信系魔法および魔道具の封殺
魔法妨害装置は、特定の魔法や魔道具の機能を帝都バルデッシュを中心に半径約二千キロメートルという広範囲で阻害する効果を持っていた。
・瞬間移動や飛翔といった移動系の魔法、そして遠距離通話などの通信魔法が一切使用不可能となった。
・使用しようとすると、術者の頭に引き裂かれるような激痛が走る仕様であった。
・魔導携帯通信機などの魔道具も完全に沈黙した。
アーカート神聖帝国におけるクーデターの成功と混乱
ニュルンベルク公爵がこの装置を使用した最大の目的は、魔法使いの優位性の無効化と国内の分断にあった。
・魔法使いの真の脅威は空を飛ぶことや一瞬で移動・通信できることにあり、それを封じれば通常の軍隊でも対処可能になると計算した。
・新皇帝の即位直後で帝都に多くの貴族の当主が集まっていたため、通信と移動が封じられたことで各地の貴族領は当主不在のまま情報から孤立して機能不全に陥った。
・ニュルンベルク公爵は容易に帝国の中央と南部を平定することに成功した。
・物流のコスト高騰を意図的に引き起こすことで、大商人たちの首根っこを押さえることにも繋がった。
ヘルムート王国への甚大な被害と軍事的緊張
妨害装置の効果は国境を越え、ヘルムート王国の北部一帯にも及んだ。
・空軍の大型魔導飛行船は運良く飛行していなかったが、貴族などが運用していた小型船7隻が空中で突如制御を失って墜落し、89名の死者を出した。
・飛翔で脱出を試みて失敗し死亡した2名の魔法使いも含まれていた。
・王国の北部では物流と通信が麻痺し、馬車や早馬による伝令に頼らざるを得なくなった。
・事態を重く見たヘルムート三十七世は、200年ぶりとなる準戦時体制を発令して警戒を強めた。
・魔導飛行船の運航が制限されたことで、バウマイスター伯爵領の開発資材の輸送にも遅れが生じる懸念が出た。
ヴェンデリン一行への影響と過酷な逃避行
帝都でクーデターに巻き込まれたヴェンデリンたちは、瞬間移動や飛翔で一気に自国へ逃げ帰ることができなくなった。
・下水道や馬車を使った泥臭い逃走劇を余儀なくされた。
・自国との連絡も絶たれ孤立無援となった彼らは、追撃を躱しながらミズホ伯国、そしてフィリップ公爵領へと逃げ延びた。
・妨害対象外である聖魔法快速を用いて国境を越えてきた教会の伝令から、可能な限り王国の利となるように動けという国王の密命を受けた。
・帝国の内乱における反乱軍に対する防衛戦へ傭兵として身を投じることとなった。
・戦場においても飛翔による空中からの偵察や爆撃が封じられているため、地上に留まって泥臭い防衛戦や夜襲を行うことになり、戦術の選択肢が大きく制限された。
まとめ
魔法妨害装置の影響と内乱への波及を巡る一連の全貌は、広範囲に及ぶ移動・通信魔法の完全封鎖から始まり、帝国内部における情報遮断によるクーデターの成功、隣国ヘルムート王国への墜落事故と準戦時体制の誘発、そしてヴェンデリン一行の帰絶と地上戦への限定に至るまで、その歩みを明瞭に示している。古代遺産による技術的封鎖や不意の混乱という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、制約下での適応力と地上戦における粘り強い対応の記録である。装置の発動から、帝都の平定、王国の混乱、地上逃避行の完遂、そして制約下での戦術展開へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
フィリップ公爵との同盟
テレーゼとヴェンデリンの同盟成立と展開の全貌
『八男って、それはないでしょう! 8・9』において、選帝侯フィリップ公爵であるテレーゼと、主人公ヴェンデリンとの間に結ばれた同盟・共闘関係について、帝都脱出時の利害の一致、ミズホ伯国との同盟成立、解放軍の結成と王国の密命、テレーゼの誘惑と血の同盟の模索、およびソビット大荒地での防衛戦の各点から解説する。
帝都脱出時の利害の一致
新皇帝即位直後に勃発したニュルンベルク公爵のクーデターにより、帝都の迎賓館は包囲された。
・皇帝権力の強化を目指し選帝侯の排除を目論むクーデター軍から逃れるため、テレーゼはヴェンデリン一行と合流した。
・事前に調べていた下水道の逃走ルートと、ヴェンデリンたちの圧倒的な魔法・戦闘力を掛け合わせることで、絶体絶命の死地からの脱出に成功した。
ミズホ伯国との同盟成立
北方へ逃れる道中、テレーゼたちは半独立国であるミズホ伯国に立ち寄った。
・ニュルンベルク公爵が極端な国粋主義を掲げ、帝都や自領内で独自の文化を持つミズホ人やラン族の資産を没収し収容所送りにしている事実が判明した。
・ミズホ上級伯爵は各個撃破される前にフィリップ公爵家と共闘するべきだと即断し、強固な同盟が結ばれた。
解放軍の結成と王国の密命
自領に帰還したテレーゼは、北方諸侯をまとめ上げて反ニュルンベルク公爵派である解放軍の総大将となった。
・ヴェンデリンは内乱に巻き込まれることを嫌って密かに海路での帰国を模索していたが、教会の伝令ユーファを通じて、可能な限りヘルムート王国の利となるように動くべしという国王からの密命を受けた。
・帰国の道を絶たれたヴェンデリンたちは、傭兵という立場でテレーゼの陣営に加わって戦うこととなった。
テレーゼの誘惑と血の同盟の模索
テレーゼはヴェンデリンとの結びつきをより強固にするため、露骨な色仕掛けで接近を図った。
・女性当主ゆえに国内貴族から婿を取ると外戚の専横を招く恐れがあり、しがらみのない外国貴族であるヴェンデリンの子を成すことが最も安全で手っ取り早いと考えていた。
・将来的な両国の通商拡大や不戦条約を見据えた高度な政治的駆け引きでもあったが、ヴェンデリンの正妻エリーゼたちの徹底的なガードと牽制により肉体関係の構築は阻止され続けた。
ソビット大荒地での防衛戦
傭兵となったヴェンデリンたちは、北方への入り口であるソビット大荒地にテレーゼの従兄アルフォンスが率いる先遣隊と共に赴いた。
・魔法による圧倒的なスピードで強固な野戦陣地を構築した。
・陣地を拠点として、ミズホ伯国軍や合流した王国軍の敗残兵たちと共に、北上してくるニュルンベルク公爵の反乱軍を迎撃する防衛戦の中核を担うこととなった。
まとめ
テレーゼとヴェンデリンの同盟成立と展開を巡る一連の全貌は、クーデター下での死地脱出から始まり、ミズホ伯国との共闘体制の確立、解放軍結成と王国の密命による傭兵参加、政治的思惑を含む血の同盟の打診、そしてソビット大荒地における防衛陣地での反乱軍迎撃に至るまで、その歩みを明瞭に示している。国家の混迷や他国の政変という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、確固たる利害一致に基づく強力な政治・軍事同盟の記録である。脱出劇から、同盟締結、密命の受諾、政治的駆け引き、そして最前線での共同防衛へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
アルフレッドの再臨
アルフレッドの再臨と師弟対決の全貌
『八男って、それはないでしょう! 9』における「アルフレッドの再臨」について、ターラントの英霊召喚と恩師の復活、絶望的な実力差と3対1の死闘、起死回生の策と一時撤退、およびヴェンデリンの決意の各点から解説する。
ターラントの英霊召喚と恩師の復活
ソビット大荒地での防衛戦において、ニュルンベルク公爵の側近である魔法使いターラントが聖魔法英霊召喚を発動した。
・英霊召喚は、存在感が無に近いターラント自身を器として過去の死者と融合する魔法であった。
・最初に初代アームストロング伯爵を召喚して導師と交戦したが、別の英霊へと切り替えた。
・雷光の中から現れたのは、ヴェンデリンの亡き恩師であり、ブランタークの元弟子、導師の親友であったアルフレッド・レインフォードであった。
・姿や声が同じであるばかりか、ヴェンデリンの魔力操作の癖を指摘し、昔の呼び名まで記憶していたことから、ターラントは完全にアルフレッドの能力と人格を引き継いでいることが判明した。
絶望的な実力差と3対1の死闘
アルフレッドはターラントの支配下にあり命令に逆らえないため、容赦なくヴェンデリンたちに殺意を向けた。
・ヴェンデリン、ブランターク、アームストロング導師の三人掛かりで挑むものの、アルフレッドの圧倒的な技量の前に翻弄された。
・アルフレッドは多数の氷弾に威力差をつけ、ダミーの中に混ぜた威力の高い一つを魔法障壁に貫通させてヴェンデリンの頬や肩を負傷させた。
・姿や能力を複製する古代魔法文明の遺産である木偶を2体投入し、導師とブランタークを足止めした。
・巨大魔晶石と銀色の魔道具を用いて遠距離から魔力供給を行いながら、3体で連携魔法トライアングルストリームを放って魔法の嵐を巻き起こし、ヴェンデリンの腹に風の槍を突き刺して致命傷寸前まで追い込んだ。
起死回生の策と一時撤退
敗北寸前の窮地において、テレーゼの許可を得たカタリーナが竜巻でアルフレッドを妨害し、その隙にエリーゼがヴェンデリンを治療したことで防御は安定した。
・正面からアルフレッドを倒す手段がないと悟ったヴェンデリンは、後方にある補給部隊と物資保管所を破壊して敵軍に撤退を強いる作戦を提案した。
・ブランタークとカタリーナが時間を稼ぐ間、導師がヴェンデリンを上空へ投げ上げた。
・ヴェンデリンは巨大な火球を敵本陣に落とすと見せかけて軌道を変え、数キロ後方の補給拠点へ直撃させた。
・15万の軍勢を維持する物資を魔法障壁ごと焼き払われたニュルンベルク公爵は、全軍に撤退を命じた。
・撤退命令に従い、アルフレッドも負荷で故障した木偶2体を破壊すると、戦闘を打ち切って反乱軍へと戻っていった。
ヴェンデリンの決意
結果的に死地は脱したものの、自分たち3人がかりでも恩師一人に手も足も出なかった事実にヴェンデリンたちは打ちのめされた。
・死者を操り恩師を戦場に立たせたターラントとニュルンベルク公爵に対し、ヴェンデリンは強い怒りを覚えた。
・アルフレッドを自らの手で必ず討ち倒し、再び成仏させるという強い決意を固めることとなった。
まとめ
アルフレッドの再臨と師弟対決を巡る一連の全貌は、禁忌の英霊召喚による恩師の復活から始まり、圧倒的な戦術技量と分身道具を駆使した3対1の死闘、補給拠点撃滅という奇策による敵全軍の撤退誘導、そして師の魂を救済するための新たな決意に至るまで、その歩みを明瞭に示している。死者の利用やかつての師匠との対立という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、過酷な試練の克服と精神的成長の記録である。英霊の現出から、絶望的苦戦、補給線の破壊、敵軍の後退、そして再戦への決意へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
エルの婚約
エルの婚約とハルカ・フジバヤシとの出会いの全貌
『八男って、それはないでしょう! 9』におけるエルの婚約について、ハルカ・フジバヤシとの出会いと一目惚れ、刀術修行とシスコンの兄タケオミ、ヴェンデリンとタケオミの異種格闘決闘、およびすれ違うプロポーズと婚約の成立の各点から解説する。
ハルカ・フジバヤシとの出会いと一目惚れ
クーデターが勃発した帝都から脱出し、ミズホ伯国の温泉宿に滞在していた際、エルはミズホ伯国軍抜刀隊の女剣士ハルカ・フジバヤシと出会った。
・ハルカはカルラに似た雰囲気を持つ和風の美少女剣士であり、エルは一目惚れをした。
・エルは警備の打ち合わせを口実に積極的に話しかけた。
・彼女が後継ぎではなく料理などの女性らしい嗜みも持っていると知ると、結婚の可能性を見出して猛アピールを開始した。
刀術修行とシスコンの兄タケオミ
エルはハルカとの距離を縮めるため、彼女からミズホの刀術を教わるようになった。
・エルの刀の才能は目覚ましく、短期間で抜刀隊に入れるほどに上達した。
・二人の前にはハルカの兄であるタケオミという大きな壁が立ちはだかった。
・同じく抜刀隊に所属するタケオミは妹を溺愛する重度のシスコンであり、妹が外国へ嫁ぐことに猛反対していた。
・タケオミは自分に勝てる男でないと駄目だと主張し、ハルカに近づく男たちを日頃から排除していた。
ヴェンデリンとタケオミの異種格闘決闘
タケオミを納得させるため、エルの主君であるヴェンデリンが彼と決闘を行うこととなった。
・タケオミはハルカを預ける男は強くないといけないとし、エルの主君であるヴェンデリンの強力な魔法と戦うことを望んだ。
・ミズホ刀を持ったタケオミの鋭い剣技に対し、ヴェンデリンは魔法の連発と強固な魔法障壁で対抗した。
・タケオミは奥義牙狼突で障壁の一点突破を狙ったが、ヴェンデリンが薄皮一枚の差でこれを防ぎ切った。
・タケオミは敗北を認め、ヴェンデリンの配下であるエルにハルカを任せることを承諾した。
すれ違うプロポーズと婚約の成立
タケオミから許しを得たエルは、ハルカに戦いが終わったらバウマイスター伯爵領に来てくれるかとプロポーズし、ハルカも即座に承諾した。
・周囲は結婚が決まったと祝福したが、直後にハルカがエルさんの剣術指南役ですねと発言し、事態が発覚した。
・タケオミが恋愛や結婚の知識から妹を遠ざけていたため、ハルカはプロポーズの意味をまったく理解していなかった。
・ヴェンデリンは決闘の勝者としての権限を行使し、抵抗するタケオミに対してハルカへ婚姻の意味を説明するよう強要した。
・事の次第を理解したハルカも、自分を女性として扱い真面目に刀を学んでくれたエルに好意を抱いていたため、縁談を喜んで受け入れた。
・ミズホ上級伯爵からの許可も下り、エルとハルカの婚約は無事に成立することとなった。
まとめ
エルの婚約とハルカ・フジバヤシとの出会いを巡る一連の全貌は、異国の地ミズホ伯国での運命的な一目惚れから始まり、熱心な刀術修行と過保護な兄タケオミの立ちはだかり、主君ヴェンデリンによる代闘と決闘の勝利、そして婚姻への認識のズレの解消と婚約成立に至るまで、その歩みを明瞭に示している。過去の失恋や文化・身分の壁という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、青年の情熱と仲間たちの助力を通じた成就の記録である。一目惚れから、修練の重ね、強敵との決闘、誤解の解明、そして確固たる将来の約束へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
登場キャラクター
バウマイスター伯爵家
ヴェンデリン・フォン・ベンノ・バウマイスター
本作の主人公である。異世界に転生した貧乏貴族の八男から成り上がった。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
クーデターからミズホ伯国へ逃れた。テレーゼ率いる解放軍に傭兵として加わった。英霊召喚で現れた師匠アルフレッドと交戦した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
通信妨害下でも国王から王国の利益のために動くよう命じられた。
エリーゼ・カタリーナ・フォン・ホーエンハイム
ヴェンデリンの正妻である。教会の司祭としての顔も持つ。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・正妻。治癒魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
負傷兵の治療に専念した。ヴェンデリンに接近するテレーゼを牽制した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
他宗教であるミズホ伯国軍の兵士も分け隔てなく治療した。
カタリーナ・リンダ・フォン・ヴァイゲル
ヴェンデリンの妻の一人である。魔法使いとしての高い実力を持つ。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・妻。魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
風の魔法で敵の魔法使いを狙撃した。本陣の防衛で飛来する魔法を防いだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ヴィルマエトル・フォン・アスガハン
ヴェンデリンの妻の一人である。英雄症候群による怪力を持つ。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・妻。
・物語内での具体的な行動や成果
鉄弓や大斧で敵兵を倒した。試作の大型魔銃を使いこなした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ルイーゼ・ヨランデ・アウレリア・オーフェルヴェーク
ヴェンデリンの妻の一人である。魔闘流の使い手である。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・妻。
・物語内での具体的な行動や成果
投石で敵兵を倒した。魔力探知で男女の違いを見分けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
イーナ・ズザネ・ヒレンブラント
ヴェンデリンの妻の一人である。槍術を得意とする。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・妻。
・物語内での具体的な行動や成果
投擲用の槍で敵の魔法使いを狙撃した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
エルヴィン・フォン・アルニム
ヴェンデリンの親友である。剣術や刀術の修練に励む。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・家臣、護衛。
・物語内での具体的な行動や成果
ハルカに一目惚れした。彼女の兄であるタケオミに認められて婚約を果たした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
オリハルコン刀を入手した。
ローデリヒ
バウマイスター伯爵家の代官である。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・家宰。
・物語内での具体的な行動や成果
通信が途絶した領地の開発を任されていると作中で言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
マシュー
バウマイスター伯爵家の家臣である。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・家臣。
・物語内での具体的な行動や成果
帰還後に温泉設備の改良を命じられる対象として名前が挙がった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
バートン
バウマイスター伯爵家の家臣である。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・家臣。
・物語内での具体的な行動や成果
マシューと共に温泉設備の改良を命じられる対象として名前が挙がった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
クルト
ヴェンデリンの亡き兄である。
・所属組織、地位や役職
元バウマイスター騎士爵家・長男。
・物語内での具体的な行動や成果
実家で乗馬の訓練を受けていた人物として回想内で言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ヘルマン
ヴェンデリンの兄である。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター騎士爵家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
クルトと同じく乗馬の訓練を受けていた人物として回想内で言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
エーリッヒ
ヴェンデリンの兄である。
・所属組織、地位や役職
王都の役人。
・物語内での具体的な行動や成果
領地で乗馬を習えなかったため王都で習ったと回想された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アマーリエ・フォン・ベンノ・バウマイスター
ヴェンデリンの義姉である。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家の関係者。
・物語内での具体的な行動や成果
魔法使いの素養がなかったため魔力が増えなかったと言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ヘルムート王国政府・貴族・その他
ヘルムート三十七世
ヘルムート王国の国王である。
・所属組織、地位や役職
ヘルムート王国・国王。
・物語内での具体的な行動や成果
帝国の通信妨害を察知した。ヴェンデリンに王国の利となるよう行動する命令を出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
軍を準戦時体制に移行させた。
アームストロング導師(クリムト)
王宮筆頭魔導師である。巨躯と筋肉を誇る。
・所属組織、地位や役職
ヘルムート王国・王宮筆頭魔導師。
・物語内での具体的な行動や成果
前線で投石や六角棒による打撃で敵を倒した。重傷兵を聖魔法で治療した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ブランターク・リングスタット
ヴェンデリンの魔法の師匠である。
・所属組織、地位や役職
ブライヒレーダー辺境伯家・お抱え魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
敵の魔法使いを索敵して排除した。本陣の防衛で飛来する魔法を防いだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
エドガー軍務卿
ヘルムート王国の軍務卿である。
・所属組織、地位や役職
ヘルムート王国・軍務卿。
・物語内での具体的な行動や成果
レーガー侯爵の勝手な出兵に関連して言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ホーエンハイム枢機卿
ヘルムート王国の教会の重鎮である。エリーゼの祖父にあたる。
・所属組織、地位や役職
ヘルムート王国・枢機卿。
・物語内での具体的な行動や成果
国王の意向を受けて伝令のユーファを派遣した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ユーファ
教会の伝令を務める少女である。
・所属組織、地位や役職
教会・伝令。
・物語内での具体的な行動や成果
快速の魔法を用いて妨害下を走り抜けた。ヴェンデリンに国王の命令を伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
レーガー侯爵
ヘルムート王国の軍務閥の重鎮である。
・所属組織、地位や役職
ヘルムート王国・侯爵。
・物語内での具体的な行動や成果
内乱に乗じて独断で帝国領に侵攻した。ニュルンベルク公爵に討たれた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
戦死した。
フィリップ
元ブロワ辺境伯の嫡男である。
・所属組織、地位や役職
王国軍組・指揮官。
・物語内での具体的な行動や成果
レーガー侯爵の敗北後、残党を率いてヴェンデリンたちに合流した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
クリストフ
元ブロワ辺境伯の次男である。
・所属組織、地位や役職
王国軍組・指揮官。
・物語内での具体的な行動や成果
兄のフィリップと共に王国軍の残党を率いて逃れてきた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アーハント・ミハイル・フォン・アームストロング
初代アームストロング伯爵である。
・所属組織、地位や役職
元アームストロング伯爵家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
ターラントの英霊召喚によって呼び出された。導師の攻撃を受け流した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アルフレッド・レインフォード
ヴェンデリンの亡き師匠である。
・所属組織、地位や役職
元ブライヒレーダー辺境伯家・お抱え魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
英霊召喚で現れ、ヴェンデリンたちを魔法で圧倒した。補給拠点が焼かれたため撤退した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
王国軍組
レーガー侯爵の敗北後に逃れてきた兵士の集団である。
・所属組織、地位や役職
解放軍・一部隊。
・物語内での具体的な行動や成果
フィリップの指揮下で防衛戦に参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
王国軍の兵士たち
王国軍組を構成する人員である。
・所属組織、地位や役職
解放軍・兵士。
・物語内での具体的な行動や成果
装備を捨てて逃れてきたため、ヴェンデリンから支援を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アーカート神聖帝国(解放軍・反ニュルンベルク公爵派)
テレーゼ・ジークリット・フォン・フィリップ
フィリップ公爵家の当主である。解放軍の総大将を務める。
・所属組織、地位や役職
アーカート神聖帝国・選帝侯。
・物語内での具体的な行動や成果
北方諸侯をまとめて解放軍を組織した。ヴェンデリンを味方に引き入れるため誘惑を繰り返した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
次期皇帝の最有力候補とされている。
アルフォンス
テレーゼの従兄である。
・所属組織、地位や役職
解放軍・先遣隊大将。
・物語内での具体的な行動や成果
ソビット大荒地での防衛戦を指揮した。クラーゼン将軍の討伐を命じた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アンスガー・ヘルガー・フォン・バーデン公爵公子
バーデン公爵家の公子である。
・所属組織、地位や役職
解放軍・指揮官。
・物語内での具体的な行動や成果
戦功を求めて強引な攻勢を主張した。占領した都市で敵軍に包囲された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
エッボ
テレーゼに仕える家臣である。
・所属組織、地位や役職
フィリップ公爵家・家臣。
・物語内での具体的な行動や成果
馬車の中でテレーゼに同乗した。ヴェンデリンから小間使いにされそうになった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
フィリップ公爵家諸侯軍
テレーゼが率いる軍勢である。
・所属組織、地位や役職
解放軍・主力。
・物語内での具体的な行動や成果
ソビット大荒地で反乱軍の北上を防いだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
解放軍
反ニュルンベルク公爵派の軍勢の総称である。
・所属組織、地位や役職
アーカート神聖帝国・軍勢。
・物語内での具体的な行動や成果
防衛陣地を構築して反乱軍を迎撃した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
北方諸侯
帝国北部に領地を持つ貴族たちである。
・所属組織、地位や役職
解放軍・諸侯。
・物語内での具体的な行動や成果
テレーゼの呼びかけに応じて兵を派遣した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
フィリップ公爵家お抱えの魔法使いたち
フィリップ公爵家に仕える魔法使いである。
・所属組織、地位や役職
解放軍・魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
各部隊に配置されて攻撃と防御を支援した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アーカート神聖帝国(反乱軍・ニュルンベルク公爵派)
マックス・エアハルト・アルミン・フォン・ニュルンベルク
ニュルンベルク公爵である。クーデターの首謀者として行動する。
・所属組織、地位や役職
反乱軍・首謀者。
・物語内での具体的な行動や成果
魔法妨害装置を稼働させて帝都周辺を制圧した。補給拠点を焼かれて全軍に撤退を命じた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
自らを聖アーカート一世と名乗る。
ターラント
ニュルンベルク公爵の側近である。極端に存在感が薄い。
・所属組織、地位や役職
反乱軍・魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
英霊召喚を用いてアルフレッドたちを呼び出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
クラーゼン将軍
帝国軍の将軍である。
・所属組織、地位や役職
反乱軍・前衛部隊総大将。
・物語内での具体的な行動や成果
広域魔法障壁を用いた前進を命じた。ヴェンデリンのナイフで討たれた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
戦死した。
アレン
突風のアレンと名乗る魔法使いである。
・所属組織、地位や役職
反乱軍・魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
夜襲の際にブランタークに背後から討たれた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
戦死した。
フランク
戦闘で重傷を負った少年兵である。
・所属組織、地位や役職
兵士。
・物語内での具体的な行動や成果
瀕死の状態で母親の幻覚を見た。導師の聖魔法で一命を取り留めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
リヒテル
フランクの戦友である。
・所属組織、地位や役職
兵士。
・物語内での具体的な行動や成果
重傷を負ったフランクに励ましの声をかけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
コンラート
フランクの戦友である。
・所属組織、地位や役職
兵士。
・物語内での具体的な行動や成果
フランクの回復後に導師の治療について説明した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
フォーゲル大隊長
戦闘に参加した指揮官である。
・所属組織、地位や役職
大隊長。
・物語内での具体的な行動や成果
櫓の破壊に伴って戦死したことが報告された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
戦死した。
リンツ中隊長
戦闘に参加した指揮官である。
・所属組織、地位や役職
中隊長。
・物語内での具体的な行動や成果
フォーゲルの戦死に伴って指揮を引き継いだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
フット子爵
反乱軍の先鋒を務める貴族である。
・所属組織、地位や役職
反乱軍・指揮官。
・物語内での具体的な行動や成果
ニュルンベルク公爵の捨て駒として前線に配置された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ピーチュ四兄弟
ニュルンベルク公爵の配下であった魔法使いの兄弟である。
・所属組織、地位や役職
反乱軍・魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
過去にヴェンデリンたちに倒されたと回想された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
『鉄壁』『硬壁』兄弟
クラーゼン将軍の護衛を務める魔法使いである。
・所属組織、地位や役職
反乱軍・護衛魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
強固な魔法障壁を展開した。ヴェンデリンの攻撃に障壁を破られて倒れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
戦死した。
ニュルンベルク公爵家諸侯軍
ニュルンベルク公爵直属の精鋭軍である。
・所属組織、地位や役職
反乱軍・主力。
・物語内での具体的な行動や成果
温存され、初期の攻勢には投入されなかった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
帝国軍
反乱軍に加担した正規軍の一部である。
・所属組織、地位や役職
反乱軍・軍勢。
・物語内での具体的な行動や成果
クーデターにおいて重要拠点の制圧に協力した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
反乱軍
クーデターを起こした軍勢の総称である。
・所属組織、地位や役職
アーカート神聖帝国・軍勢。
・物語内での具体的な行動や成果
ソビット大荒地で大規模な攻勢を仕掛けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
督戦隊
反乱軍の後方に配置された部隊である。
・所属組織、地位や役職
反乱軍・督戦隊。
・物語内での具体的な行動や成果
前衛部隊が逃亡しないように監視した。導師の投石によって被害を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
護衛魔法使い部隊
ニュルンベルク公爵を守る魔法使いの集団である。
・所属組織、地位や役職
反乱軍・護衛。
・物語内での具体的な行動や成果
飛来した火球を防ぐために魔法障壁の準備を命じられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ミズホ伯国
トヨムネ・ミズホ
ミズホ伯国を治める上級伯爵である。
・所属組織、地位や役職
ミズホ伯国・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
テレーゼの要請に応じて兵を出した。ヴェンデリンに茶会や魔銃の試射を勧めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ハルカ・フジバヤシ
抜刀隊に所属する女性剣士である。
・所属組織、地位や役職
ミズホ伯国軍・抜刀隊。
・物語内での具体的な行動や成果
ヴェンデリンたちの護衛を務めた。エルヴィンと婚約してオリハルコン刀を贈られた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
タケオミ
ハルカの兄である。妹を溺愛するシスコンとして描かれる。
・所属組織、地位や役職
ミズホ伯国軍・抜刀隊。
・物語内での具体的な行動や成果
エルヴィンの修練を厳しく指導した。ヴェンデリンとの決闘に敗れて妹の婚約を認めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
オリハルコン刀を貸与された。
テルアキ・ムラキ
ミズホ伯国軍のサムライである。
・所属組織、地位や役職
ミズホ伯国軍・警備兵。
・物語内での具体的な行動や成果
国境の検問所でヴェンデリンたちを出迎えた。ミズホ城まで一行を案内した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
イエノリ・キラ・ミズホ
ミズホ家の分家に連なる人物である。
・所属組織、地位や役職
ミズホ伯国・陪臣。
・物語内での具体的な行動や成果
ミズホ城でヴェンデリンたちをトヨムネの元へ案内した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ハンゾウ
ミズホ伯国の諜報機関を束ねる人物である。
・所属組織、地位や役職
ミズホ伯国・諜報機関長。
・物語内での具体的な行動や成果
帝都や敵軍の動向を探って報告した。夜襲の際に連絡役を務めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
八十七代目カネサダ
ミズホ家のお抱え鍛冶師である。
・所属組織、地位や役職
ミズホ伯国・鍛冶師。
・物語内での具体的な行動や成果
ヴェンデリンが提供した材料でオリハルコン刀を鍛え上げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ミズホ伯国軍
ミズホ伯国が保有する軍勢である。
・所属組織、地位や役職
ミズホ伯国・軍勢。
・物語内での具体的な行動や成果
夜襲や防衛戦で反乱軍に大きな被害を与えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
抜刀隊
魔刀を装備したミズホ伯国軍の精鋭部隊である。
・所属組織、地位や役職
ミズホ伯国軍・部隊。
・物語内での具体的な行動や成果
敵の偵察隊を繰り返し全滅させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
魔銃隊
試作段階の魔銃を運用する部隊である。
・所属組織、地位や役職
ミズホ伯国軍・部隊。
・物語内での具体的な行動や成果
防衛戦や夜襲で敵陣に銃撃を加えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
従軍鍛冶師や魔道具職人たち
ミズホ伯国軍に随伴する職人たちである。
・所属組織、地位や役職
ミズホ伯国軍・職人。
・物語内での具体的な行動や成果
野戦工房で武器や防具の製造と手入れを行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
クサの者たち
ミズホ伯国の諜報員たちである。
・所属組織、地位や役職
ミズホ伯国・諜報員。
・物語内での具体的な行動や成果
早馬や走りによって敵地からの情報を集めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
茶屋の看板娘
ミズホ伯国の町にある茶屋で働く少女である。
・所属組織、地位や役職
茶屋・店員。
・物語内での具体的な行動や成果
エルヴィンにナンパされた。導師たちの大量の注文に応対した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
蕎麦屋の女給
ミズホ伯国の蕎麦屋で働く女性である。
・所属組織、地位や役職
蕎麦屋・店員。
・物語内での具体的な行動や成果
ミズホ酒の種類についてヴェンデリンに説明した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
魔道具店の店員
ミズホ伯国の魔道具店で働く人物である。
・所属組織、地位や役職
魔道具店・店員。
・物語内での具体的な行動や成果
全種類を購入したヴェンデリンに展示品以外の品も勧めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
旅館の従業員たち
トヨムネが手配した温泉宿のスタッフである。
・所属組織、地位や役職
温泉宿・従業員。
・物語内での具体的な行動や成果
ヴェンデリンたちに混浴の案内をした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
仲居たち
温泉宿で客室の世話をする女性たちである。
・所属組織、地位や役職
温泉宿・仲居。
・物語内での具体的な行動や成果
ヴェンデリンたちが散らかした布団の片付けを担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
展開まとめ
第一話 ミズホ上級伯爵
ミズホ伯国への逃走
バルデッシュを脱出したヴェンデリンたちは、北方街道からミズホ伯国へ続く支線に入り、反乱軍の追撃を受けながら馬車を走らせた。追撃部隊は通信妨害によって連携が取れておらず、カタリーナが竜巻や風の刃で退けた。高位の魔法使いが現れないことから、反乱軍は帝都周辺の制圧を優先していると推測された。
半独立国ミズホ
テレーゼは、ミズホ伯国が黒髪と黒い瞳を持つ民族によって統治され、米作りや工芸、魔道具の製造で栄える半独立国であると説明した。帝国は過去に何度も征服を試みたが、サムライたちの激しい抵抗によって甚大な損害を受け、最終的に朝貢と外交権の委任を条件に自治を認めていた。
ミズホ人は帝国内で商業や漁業にも進出し、魚の保存、養殖、海藻や鰹の加工などに優れた知識を持っていた。日本に似た文化を知ったヴェンデリンは、荒んでいた気分を忘れて観光や食事への期待を膨らませた。
ニュルンベルク公爵の脅威
テレーゼは、中央集権化を目指すニュルンベルク公爵が、独自の制度と技術を持つミズホ伯国を必ず敵視すると考えていた。実際にニュルンベルク公爵領ではミズホ人やミズホ資本への圧迫が進み、彼は犠牲を払ってでもミズホ伯国を征服し、技術と生産力を帝国へ組み込もうとしていた。
さらに、ヘルムート王国で大型魔導飛行船が増え、軍事力の差が拡大したことも、ニュルンベルク公爵に危機感を与えていた。テレーゼは彼を討つため、ヴェンデリンたちにも傭兵として参戦してほしいと望んだが、勝敗次第では自分たちが滅ぼされる可能性も認めていた。
ミズホ伯国の守り
ミズホ伯国の国境では、刀と魔刀を携えた精鋭の抜刀隊が警備に就いていた。魔刀は属性を切り替えて刀身に魔力を纏わせる高度な魔道具であり、過去には少数の抜刀隊が大軍を壊滅させていた。帝国は鹵獲品の解析や複製を試みたものの、特殊な整備技術を再現できずにいた。
検問所では、サムライのテルアキ・ムラキが一行を出迎えた。ミズホ人は魔法通信が封じられた場合に備え、高速で飛ぶミズホツバメによる独自の情報網を維持しており、すでにバルデッシュの異変を把握していた。
ミズホ城への到着
山道を進んだヴェンデリンは、峠の茶屋で団子を食べたがったが、独自通貨を持っていなかったため立ち寄れなかった。山を下ると、日本の農村に似た田園や家屋が広がり、その先には巨大な天守閣と三重の堀を備えたミズホ城が姿を現した。
城内は畳敷きで土足厳禁となっており、襖、障子、生け花、掛け軸など、ヴェンデリンには懐かしく、他の者たちには珍しい文化が広がっていた。一行は分家の家臣イエノリ・キラ・ミズホに案内され、ミズホ上級伯爵トヨムネ・ミズホと面会した。
ミズホ伯国の参戦
テレーゼが事情を説明すると、トヨムネは即座に兵を出すと答えた。ニュルンベルク公爵はすでに領内のミズホ人やラン族を拘束し、資産を没収しており、ミズホ伯国とフィリップ公爵領を滅ぼす意思を明確にしていたためである。
トヨムネは、各個撃破される前にフィリップ公爵家と共闘する方がよいと判断した。テレーゼも北方諸侯をまとめ、東西の諸侯にも協力を求めることを決めたが、ヴェンデリンは内戦への参戦を明言せず、密かに海路でヘルムート王国へ帰還することを考えていた。
聖アーカート一世の野望
一方、バルデッシュではニュルンベルク公爵が皇宮を制圧し、選帝侯の大半を殺害していた。彼は選帝侯制度を廃し、皇帝に権力を集中させた新帝国を築こうとしていた。南部や中央の貴族を従わせた後、テレーゼとミズホ伯国を討つ計画を進めていた。
ニュルンベルク公爵は、ヴェンデリンたちを将来の脅威と見ながらも、ピーチュ四兄弟を倒した実力を十分に理解していなかった。強力な魔法使いも数で圧倒できると考え、最大の敵はフィリップ公爵家諸侯軍であると判断した。
また、古代魔法文明の魔法妨害装置を稼働させ、通信、飛翔、瞬間移動、魔導飛行船を広範囲で封じていた。経済への被害よりも、貴族や軍を孤立させ、魔法使いの機動力を奪う利点を優先し、自らを聖アーカート一世と名乗って大陸統一を目指していた。
ヘルムート王国の警戒
ヘルムート王国北部でも通信と魔導飛行船が使えなくなり、小型船の墜落によって多数の死者が出ていた。国王は妨害範囲から帝国内の反乱を察し、王国軍を準戦時体制へ移行させた。
帝国の混乱に乗じた侵攻を唱える貴族も現れたが、国王は補給や統治の負担、帝国を外敵に対して結束させる危険を理由に退けた。帝国領を占領すれば王国の国力を消耗し、反乱者を利するだけだと判断していた。
国王はヴェンデリンや導師の生存を確信し、ホーエンハイム枢機卿の教会網を使って連絡を試みた。そしてヴェンデリンに、可能な限りヘルムート王国の利益となるよう行動せよとの指示を伝えることを決めた。
第二話 ミズホ伯国観光
ミズホ伯国の甘味巡り
ヴェンデリンはテレーゼへの協力を即断せず、王国へ戻ってから判断すると装いながら、内心ではそのまま逃げるつもりでいた。一泊しかできないミズホ伯国を満喫するため大量の貨幣を両替し、茶屋で団子や饅頭を味わった。導師とヴィルマは店の甘味をすべて二度ずつ注文し、周囲を驚かせた。
蕎麦とミズホ酒
一行は蕎麦屋に入り、ヴェンデリンは久しぶりの蕎麦と麺つゆに感動した。ブランタークはミズホ酒を気に入り、導師とヴィルマは再び全メニューを食べ尽くした。エルは店員へのナンパを続けたが、エリーゼたちから未熟さを責められ、蕎麦をやけ食いした。
ミズホ産品の買い占め
ヴェンデリンは妻たちに櫛や小物を買い、魔道具店では小型で省エネ性能に優れた商品を全種類購入した。さらに食料品店で多種類の味噌と醤油、昆布、鰹節、麺つゆ、海苔、米、乾麺、味醂、酒などを大量に買い込んだ。ミズホの料理人や着付けのできるメイドも雇い、伯爵領との交易を築きたいと考えた。
温泉宿の宴会
夜はミズホ上級伯爵が用意した高級温泉宿で宴会が開かれた。刺身、天ぷら、肉料理、鍋などの和食を前に、ヴェンデリンは専属料理人を雇いたいという思いを強めた。ミズホ上級伯爵とテレーゼは、内乱による観光客の減少や、ニュルンベルク公爵の中央集権策が帝国を衰退させる危険を語った。
ハルカとの出会い
宴会場では、抜刀隊に属する十六歳の女剣士ハルカ・フジバヤシが護衛として紹介された。エルはカルラに似た雰囲気を持つハルカに一目惚れし、警備の打ち合わせを口実に接近した。真面目なハルカも会話に応じ、料理が趣味で後継ぎではないと知ったエルは、結婚の可能性を感じて積極的に振る舞った。
露天風呂の攻防
ヴェンデリンは妻たちと混浴の露天風呂に入った。そこでルイーゼの魔力探知能力が向上し、周囲の護衛が全員女性であると判別できるほどになっていることがわかった。
やがて湯着姿のテレーゼが現れ、ヴェンデリンとの結婚や子種の提供を再び求めた。エリーゼたちは夫婦の時間を理由に強く牽制し、テレーゼを引き離した。ヴェンデリンは双方の争いに挟まれ、露天風呂を楽しめないままのぼせかけた。
テレーゼ封じの夜
ヴェンデリンがブランタークに相談すると、未経験のテレーゼは夫婦の夜に割り込めないため、妻たちと毎晩過ごせばよいと助言された。部屋に戻ったヴェンデリンは、浴衣の帯を解くミズホ風の遊びを妻たちと楽しみ、そのまま六人で夜を過ごした。
翌朝、部屋は再び惨状となっていたが、ヴェンデリンは治癒と洗浄の魔法で後始末をした。テレーゼは朝食の席で負け惜しみを口にしたものの、夜の乱入には失敗していた。
フィリップ公爵領への出発
朝食後、一行はミズホ上級伯爵の見送りを受け、フィリップ公爵領へ向かった。北方でも飛翔魔法は妨害されており、妨害装置の影響が帝国全土に及んでいる可能性が高まった。
道中、テレーゼはヴェンデリンに寄り添って気を引こうとしたが、エリーゼたちが隙なく囲んで遠ざけた。一方、エルはハルカと警備や魔の森、甘味について親しく会話し、良好な関係を築き始めた。一行は半日後、無事にフィリップ公爵領へ到着した。
第三話 嫌々、出陣
フィリップ公爵領への帰還
一行は広大な農地が広がるフィリップ公爵領へ入り、中心都市フィーリンへ向かった。領内では穀物やジャガイモ、テンサイの栽培に加え、漁業、牧畜、鉱業、工業も盛んであり、フィリップ公爵家は選帝侯の中でも最大級の力を持っていた。
領主館ではテレーゼの兄二人が出迎えた。二人は能力を持ちながら肌が白いため公爵位を継げず、テレーゼも彼らの胸中を警戒していた。テレーゼが北方諸侯の招集に動く間、ヴェンデリンたちは密かに船で王国へ逃げる計画を立てた。
失敗した脱出交渉
ヴェンデリンたちは大商人に大型船の提供を求めたが、内乱による物資輸送の混乱や船不足を理由にすべて断られた。港町で漁師と直接交渉する方針へ切り替え、フィリップ公爵領を離れようとした。
疾風のユーファ
町外れのカソリック教会で、エリーゼは知人の修道女ユーファと再会した。ユーファは移動妨害の影響を受けない快速の魔法を使い、一日に千キロを走れる伝令役であった。
ユーファは国王から、可能な限りヘルムート王国の利益となるよう動き、領地開発より帝国内乱での活躍を優先せよとの命令を伝えた。命令に逆らえなくなったヴェンデリンたちは、帝国内乱への参加を余儀なくされた。
傭兵としての参戦
ヴェンデリンたちは公式な王国軍ではなく、テレーゼに雇われた傭兵として行動することになった。第一目標は北方との境にあるソビット大荒地であり、先遣隊五千人と共に野戦拠点を築いてニュルンベルク公爵軍の北上を防ぐ任務を負った。
先遣隊を率いるアルフォンスは、テレーゼの従兄で幼馴染でもあった。北方諸侯の結集には時間がかかり、補給も困難であったため、先遣隊は大量の物資を運びながら拠点建設を急いだ。
馬上の交流
飛翔魔法を封じられたヴェンデリンは、エリーゼと同じ馬に乗りながら乗馬を学んだ。アルフォンスとは妻を後ろに乗せる喜びや裸エプロンについて意気投合し、互いを心の友と認めた。
妻たちも乗馬の訓練を受け、エルはハルカから教わることを口実に同乗していた。ハルカが熱心に密着して指導する様子を見て、ヴェンデリンたちはエルが内心で喜んでいることを見抜いていた。
ソビット大荒地の陣地
先遣隊はソビット大荒地に到着し、ヴェンデリン、ブランターク、カタリーナの魔法によって急速に野戦陣地を築いた。ミズホ上級伯爵も一万の兵を率いて合流し、北部や周辺諸侯も次々とテレーゼ側への参加を表明した。
敵の偵察隊は、ミズホ伯国の抜刀隊によって繰り返し全滅させられた。魔刀は鋼の武器や盾ごと敵兵を斬り裂き、抜刀隊の精鋭ぶりを示した。
南北に分かれた帝国
諜報機関を率いるハンゾウから、ニュルンベルク公爵が帝国南部と中央をほぼ掌握し、多くの貴族当主を人質にしているとの情報が届いた。一方、北部の大半はテレーゼ側につき、ソビット大荒地で両軍が激突する可能性が高まった。
ヴェンデリンは両勢力が拮抗すれば王国へ戻れると考え、廃鉱から鉱物を抽出しながら魔法の鍛錬も続けた。導師はルイーゼ、イーナ、ヴィルマを同時に相手にしても圧倒し、来る戦いへの期待を高めていた。
陣地での暮らし
ヴェンデリンたちは自ら築いた石造りの家で生活し、妻たちが交代で料理を作った。軍の単調な食事に飽きたアルフォンスも頻繁に訪れ、エリーゼの料理を楽しんだ。
アルフォンスは戦後、テレーゼが皇帝になれば宮廷とフィリップ公爵領の両方を支える必要があると語り、彼女との結婚には消極的であった。
エルの刀術修行
エルはハルカから刀術を学び、自分用のミズホ刀も注文した。ハルカを溺愛する兄はエルを厳しく鍛えたが、エルも予想以上の腕前を見せ、互いに対抗心を強めていた。
エルはハルカに婚約者がいないことも確認し、刀術を身につけて兄に勝てば恋が成就すると意気込んだ。しかし導師は、その自信に不吉な予感を口にした。
迫る戦いと眠れない夜
ブランタークとアルフォンスは、数日以内にニュルンベルク公爵軍が到着すると予測した。戦いが迫る中、ヴェンデリンたちは男女別の寝室で休むことになった。
男性部屋では導師の激しいいびきと物騒な寝言、ブランタークの歯ぎしりが響き続けた。ヴェンデリンとエルは眠れず、最後には睡眠魔法を使うしかなかった。
第四話 第一次ソビット大荒地会戦
ソビット大荒地の対陣
フィリップ公爵家とミズホ伯国を中心とする二万五千の軍勢は、ソビット大荒地の防衛陣地で反乱軍四万と対峙した。数では劣っていたが、塹壕や石柵を備えた防衛側が有利であり、ミズホ兵も中央のアーカート族至上主義者への敵意から高い戦意を見せていた。
ヴェンデリン、導師、ブランターク、カタリーナたちは本陣に配置された。移動魔法が封じられているため、魔法使いたちは各部隊へ分散され、増援へ向かえない状況で戦うことになった。
分かれた救護部隊
エリーゼは後方の野戦治療所へ配属されたが、教会と異なるミズホ教を信仰するミズホ伯国軍とは救護部隊を分けると告げられた。過去の宗教対立を避けるため、教会とミズホ教は互いの領域で布教しない秘密協定を結んでいたのである。
教会で育ったエリーゼは複雑な思いを抱いたが、宗派の違いより負傷者の治療を優先すると受け入れた。限られた魔力で誰を先に救うか判断しなければならない戦場の現実を聞き、柔軟にミズホ側とも協力すると決めて治療所へ向かった。
クラーゼン将軍の挑発
反乱軍の総大将クラーゼン将軍は、豪華な鎧姿で前線へ現れ、テレーゼや北方民族を侮辱して降伏を迫った。アルフォンスは同じく挑発で応じ、血筋だけで将軍となった無能者だと切り返した。
怒ったクラーゼン将軍は全軍に攻撃を命じた。反乱軍は多数の魔法使いに広域魔法障壁を展開させ、矢や魔法を防ぎながら前進を始めたが、その間は自軍も攻撃できず、魔法使いたちも障壁の維持に拘束されていた。
魔法使いたちへの狙撃
ヴェンデリンたちは反乱軍の魔法使いが兵士に変装していることを見抜いた。ヴェンデリンとカタリーナが標的を指示し、ヴィルマの鉄矢やイーナの投槍にブーストを重ね、広域魔法障壁を貫通させた。
上級魔法使い二名と中級魔法使いたちが次々と即死し、障壁は大きく弱体化した。それでもクラーゼン将軍は解除を命じず、貴重な魔法使いたちは力を発揮できないまま狙撃され続けた。
ミズホ伯国の魔銃
弱まった障壁に対し、ミズホ伯国軍は新兵器の魔銃を一斉に発射した。魔晶石の魔力で弾丸を撃ち出す魔銃は連射性能にも優れ、反乱軍右翼の前衛を壊滅させた。
反乱軍がようやく障壁を解除すると、防衛側も弓と魔法による一斉攻撃を開始した。双方の本格的な戦闘が始まり、反乱軍は陣地へ押し寄せたが、防衛側の攻撃によって多数の死傷者を出した。
終わらない突撃
戦闘は数時間に及び、反乱軍の死者は一万近くに達した。それでも攻撃が止まらないのは、主力となる選帝侯家の諸侯軍が主君を人質に取られ、敗北すれば処罰される立場にあったためである。
クラーゼン将軍は他家の軍勢を消耗させ続けていた。ニュルンベルク公爵にとっては、選帝侯軍が壊滅すれば領地を奪いやすくなり、敗北すれば無能なクラーゼン将軍を処断できるため、どちらに転んでも都合のよい戦いであった。
クラーゼン将軍の最期
夜戦を避けるため、アルフォンスはヴェンデリンにクラーゼン将軍の討伐を命じた。導師、ルイーゼ、イーナ、ヴィルマが巨石や槍、鉄矢を浴びせ、護衛の上級魔法使い二人に障壁を張らせた。
その隙にヴェンデリンとカタリーナは複数のナイフへブーストを重ね、障壁を一点から突破した。ナイフは護衛二人とクラーゼン将軍を貫き、三人は大量出血で倒れた。
総大将の死によって反乱軍の士気は崩れ、各部隊が勝手に撤退を始めた。アルフォンスは敵の再編を防ぎ、今後の味方の犠牲を減らすため、温存していた騎士隊に追撃を命じた。
勝利の代償
魔力を使い果たしたヴェンデリンとカタリーナは、その場に座り込んだ。眼下には無数の死体が残され、戦闘中は感じなかった恐怖と震えが一気に襲ってきた。
アルフォンスや兵士たちも同様に動揺しており、負傷した仲間に泣きながら呼びかける者もいた。勇んで追撃へ向かう兵士たちも、出世や褒美を理由に恐怖を押し隠しているだけであった。
エルは武勲を得るため、ハルカや抜刀隊と共に追撃へ参加した。ヴェンデリンは無事の帰還を願いながら、戦場の後始末をアルフォンスたちに任せ、エリーゼのいる後方へ下がった。
第五話 テレーゼ様、前線に出る
野戦治療所のフランク
戦闘後、ヴェンデリンは回復した魔力と魔晶石を使い、エリーゼたちと負傷者の治療に当たった。しかし、今後の戦闘に備えて魔晶石を残す必要があり、重傷の少年フランクを救う余力はなかった。
母親の幻を見ながら死にかけるフランクを前に、ヴェンデリン、エリーゼ、カタリーナは助けられない無力感に苦しんだ。そこへ魔力を温存していた導師が追撃から戻り、抱きつかなければ発動しない聖の治癒魔法でフランクを救った。
意識を取り戻したフランクは、母親ではなく血まみれの筋肉質な導師に抱かれていた現実に悲鳴を上げた。導師は続けて他の重傷者たちも治療し、多くの命を救ったが、治療を受ける兵士たちは複雑な反応を見せた。
戦場の後始末
翌日、ヴェンデリンたちは損傷した石塀の修復と増築に取り組んだ。反乱軍は四万人のうち約二万人を失い、味方にも二千五百人を超える死傷者が出ていた。
反乱軍の兵士たちは主君や家族を人質に取られていたため、降伏せずに戦死する者が多かった。治療も味方が優先され、多数の負傷兵が命を落とした。
アルフォンスは、敵兵を減らすほど帝国の国力も失われる現状に頭を抱えていた。ヴェンデリンたちは戦闘よりも土木工事の方がましだと考え、防衛拠点の拡張に専念した。
バカダイコンの畑
ヴェンデリンたちは荒地を耕し、馬の飼料となるバカダイコンの種を蒔いた。バカダイコンは硬くて人間には不味かったが、寒さと荒地に強く、短期間で育つ作物であった。
収穫後には牧草や穀物を植え、馬糞を混ぜながら土壌を改良する計画であった。長期戦を見越して飼料を現地生産し、防衛陣地を恒久的な拠点へ変える準備が進められていた。
テレーゼ本軍の到着
テレーゼは北部諸侯の大半を味方にまとめ、大軍を率いて防衛陣地へ到着した。緒戦を指揮したアルフォンスを称賛し、金貨を褒美として与えた。
テレーゼは敵軍の半数を討った成果を評価したが、クラーゼン将軍の軍勢がニュルンベルク公爵にとって捨て駒だった可能性を警戒した。敵軍を減らしたことで、ニュルンベルク公爵の中央集権化を助けた面もあったためである。
バーデン公爵公子の派閥
捕らえられた父を見捨てて反ニュルンベルク派に参加したアンスガー・バーデン公爵公子は、外国貴族であるヴェンデリンが大功を立てたことに焦りを見せた。
テレーゼが次期皇帝の最有力候補である一方、アンスガーにも皇帝位を狙う余地があった。そのため味方内部には早くも二つの派閥が生まれたが、ニュルンベルク公爵に対抗するため、当面は陣地整備と軍勢の再編を優先することで一致した。
テレーゼへの反撃
会議後、テレーゼはヴェンデリンたちの家を訪れ、ベッドで慰めてほしいと迫った。これに対しエリーゼは、六人目として全員と一緒にヴェンデリンの相手をするよう誘い返した。
経験のないテレーゼは一気に動揺し、いつかヴェンデリンと二人きりになって既成事実を作ると宣言して逃げ出した。エリーゼたちは、実際にはボードゲームの相手を意味していただけだと笑い、テレーゼの思い込みを利用して撃退した。
ヴェンデリンたちは戦場での緊張を和らげるため、夫婦でゲームを楽しんだ後、翌日に備えて休息を取った。
第六話 シスコンサムライとの死闘
エルの刀術
早朝、エルはミズホ服を着て刀の鍛錬に励んでいた。ハルカによれば、エルは剣よりも刀に適性があり、短期間で抜刀隊に入れるほど上達していた。ハルカから手拭いを渡されたエルは喜び、二人の距離も縮まっているように見えた。
オリハルコン刀の依頼
エルが使う量産刀は、ヴェンデリンが魔法で精製した高品質な鉄から作られていた。ハルカは、最高級のミズホ刀がミスリルとオリハルコンを特殊加工して作られ、魔刀に匹敵する切れ味を持つと説明した。
ヴェンデリンは所有するオリハルコンをエルに渡し、代わりにエルの剣を受け取ることにした。ミズホ家のお抱え鍛冶師である八十七代目カネサダは、大小五組と懐刀を打つ依頼を喜んで引き受けた。
大量のオリハルコンが持ち込まれた情報はすぐに広まり、ミズホの重臣たちは大金や娘との婚姻まで提示して、完成予定の刀を譲ってほしいとヴェンデリンに迫った。
刀に宿る誇り
夕食の席で、ハルカはミズホ刀が剣士にとって誇りであり、命を預ける相棒であると説明した。エルが同じ考えを口にすると、ハルカは嬉しそうに同意した。
ヴェンデリンが二人の関係を尋ねると、エルは結婚の見込みがあると答えた。しかし、妹を溺愛するハルカの兄が、自分と互角に戦える男でなければ認めないと反対していた。
ハルカの兄との交渉
ヴェンデリンはエルとハルカを伴い、抜刀隊の陣屋でハルカの兄と話し合った。兄はエルの才能を認めながらも、未熟であることやハルカを外国へ嫁がせる不安を理由に拒絶した。
ヴェンデリンが数年後の成長を考慮するよう求めても、兄は今の強さでなければ認めないと譲らなかった。やがて兄は、エルの主君であるヴェンデリンが自分を倒せば、ハルカを預けてもよいと提案した。
魔法と魔刀の決闘
ヴェンデリンとハルカの兄の決闘には、テレーゼやミズホ上級伯爵をはじめ、多くの見物人が集まった。ヴェンデリンは距離を保ちながら石礫や火球、風や氷の魔法を連発したが、兄は魔刀で次々と斬り払い、属性を変えて魔法を消滅させた。
魔刀の魔力切れを狙ったヴェンデリンであったが、内蔵する魔晶石は交換可能であった。兄は新しい魔晶石を装填して一気に接近し、奥義の牙狼突で魔法障壁の一点突破を狙った。
嫌な予感に従って障壁を厚くしていたヴェンデリンは、薄皮一枚の差で攻撃を防いだ。渾身の一撃が届かなかったため、兄は敗北を認め、ヴェンデリンの下ならハルカを任せられると判断した。
すれ違ったプロポーズ
兄の許しを得たエルは、戦いが終わった後にバウマイスター伯爵領へ来てほしいとハルカに伝えた。ハルカも即座に了承し、周囲は結婚が決まったと思った。
しかし、ハルカはエルの剣術指南役として同行する話だと受け取っていた。兄が恋愛や結婚の知識から妹を遠ざけ、近づく男たちも排除してきたため、ハルカは自分が求婚されていると理解していなかったのである。
ヴェンデリンは決闘に勝った立場から、兄に婚姻の意味をハルカへ説明するよう命じた。兄は最後まで抵抗したが、ついに承諾し、エルとハルカの結婚にはミズホ上級伯爵の許可だけが残された。
第七話 結局、尻拭いをする羽目になる
バカダイコンの料理研究
膠着状態が続くなか、ヴェンデリンは馬の飼料であるバカダイコンを食用にできないか試していた。味噌煮込みを作ったものの味は今ひとつであり、導師だけが完食した。ヴェンデリンたちは鍛錬所の端で甘酒も振る舞い、戦況を焦らず待つ時間を過ごした。
エルとハルカの婚約
エルとハルカの婚約は、ミズホ上級伯爵と兄のタケオミにも認められていた。ハルカは自分が結婚相手に選ばれるとは考えていなかったが、女性として扱い、真面目に刀を学ぶエルに好意を抱いていた。
一方、妹を溺愛するタケオミは婚約成立後も二人を恨めしそうに見つめ続け、抜刀隊の空気まで悪くしていた。ヴェンデリンは彼の気を逸らすため、完成したオリハルコン刀の試し斬りを任せた。
オリハルコン刀の試し斬り
カネサダが打ったオリハルコン刀は、鋼製の鎧と案山子を容易に斬り裂く威力を示した。タケオミは試し斬りの役目に歓喜し、不機嫌な様子を忘れて刀に夢中になった。
完成した刀はエルとハルカが一組ずつ持ち、さらに一組がタケオミへ貸与された。ミズホ上級伯爵は残りの刀を欲しがったが、ヴェンデリンは戦後の交易条件に利用するつもりで即売を避けた。
バーデン公爵公子の攻勢
緒戦の大勝によってテレーゼ側の功績が高まると、バーデン公爵公子は主導権を得るため攻勢を強く主張した。テレーゼとアルフォンスは罠を警戒して反対したが、多数決により商業都市ハーバットと周辺拠点の攻略が決まった。
ヴェンデリンとミズホ伯国軍は、外国貴族と半独立国に戦功を奪われたくないという理由から作戦に加えられず、留守を任された。
茶会と魔銃
ヴェンデリンたちはミズホ上級伯爵の茶会に参加し、抹茶や菓子を楽しんだ。ヴェンデリンは茶碗を贈られ、戦後の交易やオリハルコン刀を巡る駆け引きにも利用できる関係を築いた。
続く魔銃の試射では、多くの者が反動と重量に苦戦したが、ヴィルマだけは正確に的を撃ち抜いた。さらに大型の試作魔銃も使いこなし、実戦試験のため貸与された。
罠に落ちた攻勢軍
攻勢に出たバーデン公爵公子たちは、抵抗の少ないハーバットや周辺砦を占領した。しかし食料や物資は撤去されており、戻ってきた反乱軍に包囲された。テレーゼは軍を見捨てられず、アルフォンスをハーバットへ、ヴェンデリンとミズホ伯国軍をターベル山地砦へ派遣した。
ターベル山地砦への夜襲
ヴェンデリンたちは山上の砦を包囲する敵軍の後方へ回り込んだ。ブランタークの指揮で魔力反応を隠し、夜襲に慣れたミズホ伯国軍が敵に気づかれず接近した。
魔銃と火矢による奇襲で敵陣は混乱し、導師や抜刀隊が突入した。ヴェンデリンとカタリーナは小規模な電撃を放ち、エルとハルカはオリハルコン刀で敵兵を斬り倒した。反乱軍は連携を失って敗走し、救援は成功した。
即時撤退
砦に籠城していた味方は敵の残した物資や装備を欲しがったが、ミズホ上級伯爵は新たな敵軍の到来を警戒して即時撤退を決めた。ヴェンデリンは同じ帝国貴族ではない立場を利用され、撤退命令を伝える役を押しつけられた。
帰路では疲労と眠気が全員を襲い、エルはハルカへ一緒に寝ようと口走ってタケオミの怒りを買った。ハルカも新婚生活への憧れを漏らしたが、戦況そのものは好転していなかった。
決着のない内乱
ターベル山地砦では敵に大損害を与え、味方を救出できた。一方、ハーバット方面ではバーデン公爵公子が援軍を待たずに決戦を始め、アルフォンスの到着で戦術的には勝利したものの、多数の犠牲を出した。
補給も続かなかったため、占領したハーバットは放棄された。両軍とも決定的な勝利を得られず、帝国の内乱は終わる兆しを見せなかった。
第八話 貴族は戦争(戦闘)に勝つとデカい顔ができる
ターベル山地砦の戦果
ターベル山地砦から帰還したヴェンデリンたちは、少ない犠牲で敵軍に大きな損害を与えたとしてテレーゼから称賛された。ミズホ上級伯爵は戦後の褒賞を求めたが、内乱で資金が枯渇しているテレーゼは即座に報いることができなかった。
テレーゼはヴェンデリンへの褒美として自分を差し出そうとしたが、ヴェンデリンは帝国内乱へさらに深入りする危険を避けるため拒絶した。エリーゼもテレーゼの誘惑を警戒し、二人のやり取りは日常化していた。
責任を巡る会議
テレーゼは、敗戦したバーデン公爵公子派との会議にヴェンデリンたちとミズホ上級伯爵を参加させた。会議では、損害を出しても敵により大きな打撃を与えたという主張と、ニュルンベルク公爵の主力を傷つけていないため戦略的敗北だという批判が衝突した。
テレーゼ派とバーデン公爵公子派は責任を押しつけ合い、ヴェンデリンたちは発言を求められないまま、テレーゼの威圧材料として利用されていた。ヴェンデリンは、派閥を統一して反対者を排除するニュルンベルク公爵に比べ、内輪への配慮を捨てられないテレーゼ側が不利だと感じた。
会議中の茶会
無意味な争いに呆れたヴェンデリンは、ミズホ上級伯爵と煎茶を淹れ、妻たちと菓子や果物を並べて会議を無視した。導師やブランタークも加わり、妻たちはヴェンデリンに果物を食べさせるなど、あえて敗戦した貴族たちを刺激する態度を取った。
若い貴族が不真面目だと非難すると、ヴェンデリンは会議が敗戦の責任をなすりつけ合っているだけだと指摘した。さらに、勝たなければニュルンベルク公爵に後で始末される可能性がある状況で、内輪揉めを続ける余裕はないと告げた。
その言葉で貴族たちは危機を自覚し、連合軍の編成を検討し始めた。テレーゼはヴェンデリンの功績だと喜んだが、抱きつこうとしたところをルイーゼに阻止された。
謎の王国兵
会議後、野戦陣地の外に千人を超える小汚い集団が現れた。隊列や動きから訓練を受けた兵士だと分かり、その指揮官二人はヴェンデリンの名を呼んだ。
二人の正体は、以前の紛争で戦った元ブロワ辺境伯家のフィリップとクリストフであった。彼らは重要な情報を持っているとして保護を求め、テレーゼの許可を得て陣地へ迎え入れられた。
王国軍の壊滅
フィリップたちは、対帝国強硬派のレーガー侯爵が内乱に乗じて帝国領へ侵攻したと説明した。魔導飛行船が使えないなか、軍勢はロープでギガントの断裂を渡ったが、ニュルンベルク公爵が率いる軍に襲撃されて壊滅した。
レーガー侯爵はニュルンベルク公爵に直接斬られ、フィリップとクリストフは生き残った王国兵を率いて敵中を北上した。エドガー軍務卿からヴェンデリンたちの存在を聞いていたため、合流できる可能性に賭けたのであった。
新たな手勢
テレーゼは、手勢を持たなかったヴェンデリンに約千五百人の王国兵が加わったことを好都合だと喜んだ。ヴェンデリンは内乱から脱出する機会を窺っていたが、同国の兵士を見捨てることはできなかった。
兵士たちは逃走中に武器や防具、着替えまで捨てており、ヴェンデリンは装備や衣食住、小遣いまで用意する必要に迫られた。こうして帰国はさらに遠のき、ヴェンデリンは軍勢を維持する多額の出費まで背負うことになった。
第九話 なぜ敵の親玉は、決戦前にこちらと話したがるのか?
反乱軍十五万の集結
ソビット大荒地の野戦陣地に、ニュルンベルク公爵率いる約十五万の反乱軍が集結した。前衛約四万人は、彼にとって邪魔な貴族や忠誠心の低い兵で構成された損害担当部隊であり、解放軍を消耗させるための捨て駒であった。テレーゼは完成した防衛拠点で敵兵力を削る方針を取り、迎撃態勢を整えた。
ニュルンベルク公爵の勧誘
ニュルンベルク公爵は白旗を掲げ、側近の魔法使いターラントと共にテレーゼの前へ現れた。降伏を求めた後、ヴェンデリンを自らの片腕として大陸統一に協力させようと勧誘したが、ヴェンデリンは領地へ戻りたいとして拒絶した。
ターラントは高い魔力を持ちながら存在感が極端に薄く、目を離すと顔の記憶すら残らない不気味な男であった。ニュルンベルク公爵は、ヴェンデリンや導師でもターラントには勝てないと断言し、交渉が決裂すると自陣へ戻った。
野戦陣地への総攻撃
反乱軍の前衛四万人が一斉に突撃し、堀や柵を犠牲を出しながら突破して石壁へ迫った。解放軍は魔大砲、魔銃、弓矢、魔法を浴びせ、王国軍残党もフィリップの指揮で迎撃した。
ニュルンベルク公爵は逃亡者を督戦隊や魔法使いで処罰する態勢を敷き、前衛を後退できない状況に追い込んでいた。導師は遠方の督戦隊へ巨岩を投げつけ、ヴィルマは試作魔銃で指揮官や魔法使いを狙撃したが、攻勢は容易には衰えなかった。
ターラントの英霊召喚
ターラントは戦場を歩いて正面門へ近づいたが、その存在を認識できる兵は少なく、攻撃もほとんど向けられなかった。ヴェンデリン、導師、ブランタークが対峙すると、ターラントは自らの存在感の薄さが聖魔法英霊召喚の条件だったと明かした。
ターラントは死者と融合する英霊召喚を発動し、初代アームストロング伯爵の姿となった。初代は導師を上回るパワーファイターであったが、三人の攻撃を受けると、戦闘特性が合わないとして別の英霊へ切り替えた。
アルフレッドとの再会
次に現れたのは、ヴェンデリンの師匠アルフレッド・レインフォードであった。姿や声だけでなく、ヴェンデリンの魔力操作の癖や、ブランタークと導師しか知らない呼び名まで記憶しており、本物の人格と能力を備えていた。
アルフレッドはターラントの支配に逆らえないと告げ、ヴェンデリンたちを殺すために攻撃した。少数の魔法に威力差を仕込み、魔法障壁を効率よく貫く熟練の技でヴェンデリンを負傷させ、導師とブランタークの動きも封じた。
木偶との三対三
アルフレッドは古代魔法文明の遺産である木偶を二体投入した。木偶は姿だけでなく能力まで複製し、導師には攻撃パターンを把握した分身を、ブランタークにはアルフレッドの能力を持つ分身をぶつけた。
導師は攻撃を読まれ、ブランタークは魔力量の差で防戦一方となった。ヴェンデリンもアルフレッドとの一対一で傷を増やし続け、三人は圧倒的な技量差によって追い詰められた。
魔力供給と魔法の嵐
アルフレッドは大型魔導飛行船から回収した巨大な魔晶石を置き、銀色の網状魔道具を通して遠距離から自分と木偶へ魔力を供給した。三体は回復した魔力でトライアングルストリームを放ち、風の刃と岩礫が飛び交う魔法の嵐で三人を負傷させた。
続いてアルフレッドはブランタークを狙うと見せかけ、救援に入ったヴェンデリンの腹へ風の槍を突き刺した。ヴェンデリンは致命傷を避けたものの戦闘不能に近い状態となり、三人は敗北寸前まで追い込まれた。
エリーゼとカタリーナの救援
テレーゼの許可を得たカタリーナが竜巻でアルフレッドたちを妨害し、その隙にエリーゼがヴェンデリンを治療した。二人の参戦によって防御は安定したが、魔力を外部から補充できるアルフレッドたちを倒す手段は見つからなかった。
ヴェンデリンは、ニュルンベルク公爵を直接狙うのではなく、後方の補給部隊と物資保管所を破壊して撤退を迫る策を思いついた。ブランタークと導師も、現状ではアルフレッドを倒せないと認め、その作戦に賭けた。
補給拠点への火球
ブランタークとカタリーナがアルフレッドたちを足止めし、エリーゼが木偶の攻撃を防いだ。導師はヴェンデリンを肩に乗せ、ニュルンベルク公爵を攻撃すると見せかけて上空へ投げ上げた。
ヴェンデリンは巨大な火球を本陣へ向けた後、軌道を変えて後方の補給部隊へ落とした。守備の薄い補給拠点は魔法障壁ごと焼き払われ、十五万の軍勢を維持する物資が失われたため、ニュルンベルク公爵は全軍に撤退を命じた。
アルフレッドの撤退
撤退命令に従い、アルフレッドも戦闘を打ち切った。木偶二体は過度の負荷で故障し、アルフレッドはそれらを破壊すると、ヴェンデリンたちを見逃して反乱軍へ戻った。
ヴェンデリン、導師、ブランタークは三人がかりでもアルフレッドに翻弄された事実に打ちのめされた。直後に消耗したヴェンデリンを狙った敵魔法使いが現れたが、ヴェンデリンはアルフレッドから学んだ威力差を仕込む攻撃で魔法障壁を貫き、一撃で倒した。
師匠を討つ決意
反乱軍は撤退し、エルとハルカは前衛部隊への追撃に参加した。ヴェンデリンは戦況よりも、死者を操って師匠を戦わせるターラントとニュルンベルク公爵への怒りを強くした。
エリーゼに支えられて落ち着きを取り戻したヴェンデリンは、アルフレッドを必ず倒して再び成仏させると決意し、師匠を上回る方法を考え始めた。
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