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Y.Aフィクション(Novel)八男って、それはないでしょう!

小説【八男】「八男って、それはないでしょう! 1」感想・ネタバレ

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Y.A

八男まとめ
八男2巻レビュー

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  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
    3. ■ 物語の特徴
  2. 書籍情報
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
  5. 考察・解説
    1. 異世界への転生
    2. 貧乏貴族の家系
    3. 魔法の修行
    4. 師匠との出会い
    5. 魔の森
    6. 古代竜の討伐
  6. 登場キャラクター
    1. パウマイスター家(バウマイスター家)
      1. ヴェンデリン・フォン・ベンノ・バウマイスター(一宮信吾)
      2. アルトゥル・フォン・ベンノ・バウマイスター
      3. ヨハンナ
      4. クルト
      5. アマーリエ・フォン・ベンノ・バウマイスター
      6. カール(クルトの長男)
      7. ヘルマン
      8. パウル
      9. ヘルムート
      10. エーリッヒ
      11. レイラ
      12. ヴァルター
      13. カール(七男)
      14. アグネス
      15. コローナ
      16. アーベル
      17. クラウス
      18. エベンス
      19. メイドたち
      20. 従士たち
      21. バウマイスター家諸侯軍の生存者たち
    2. ブライヒレーダー辺境伯家
      1. 先代ブライヒレーダー辺境伯
      2. ダニエル
      3. アマデウス・フライターク・フォン・ブライヒレーダー
      4. アルフレッド・レインフォード
      5. ブランターク・リングスタット
      6. ブライヒレーダー辺境伯軍
    3. アルニム家
      1. エルヴィン・フォン・アルニム
    4. ヒレンブラント家
      1. イーナ・ズザネ・ヒレンブラント
    5. オーフェルヴェーク家
      1. ルイーゼ・ヨランデ・アウレリア・オーフェルヴェーク
    6. 商会・ギルド関係者
      1. アルテリオ
      2. 商業ギルドの受付のお姉さん
      3. バザーを仕切るギルド職員の中年男性
      4. ウサギを買った商人風の男性
      5. 買取所のプロの解体人たち
      6. 買取所の受付の商業ギルドの職員
    7. 冒険者予備校
      1. ゼークト
      2. 魔法の講師の老人
      3. 予備校の生徒たち
    8. 魔導飛行船
      1. コムゾ・フルガ
      2. レオポルド・ベギム
      3. 船員たち
      4. 乗客の貴族や大商人たち
      5. 専属のメイドたち
    9. 教会
      1. マイスター
      2. 雑務を手伝うバアさんたち
    10. ヘルムート王国・王宮関係者
      1. ヘルムート王国国王ヘルムート
      2. 煌びやかな鎧姿の騎士
      3. 騎士の従者
    11. その他
      1. 小型ゴーレムたち
  7. 展開まとめ
    1. プロローグ 目が覚めてみると…… 
    2. 第一話 辺境最南端貧乏貴族家 
    3. 第二話 魔法を訓練してみる 
    4. 第三話 魔法のお師匠様 
    5. 第四話 跡取り長男の結婚と、イケメン兄さんとの別れ 
    6. 第五話 ボッチで探索と修行を行う 
    7. 幕間一 使い魔が欲しい 
    8. 幕間二 魔法の才能がある末っ子 
    9. 第六話 ブライヒブルクでの日々と極小な家督騒動 
    10. 幕間三 俺は出ていきたいのに 
    11. 第七話 冒険者予備校 
    12. 幕間四 同級生の魔法使い
    13. 幕間五 とある少女の主家と実家と 
    14. 第八話 当代ブライヒレーダー辺境伯 
    15. 幕間六 ロリ系ヒロイン? 
    16. 第九話 師匠はセレブだった 
    17. 第十話 王都行き魔導飛行船にて 
    18. 巻末 元日本人的に考えて、海には夢が詰まっていると思う 
  8. 同シリーズ
    1. 八男って、それはないでしょう!シリーズ
    2. 異世界帰りのパラディンは、最強の除霊師となるシリーズ
    3. 異世界帰りの勇者は、ダンジョンが出現した現実世界で、インフルエンサーになって金を稼ぎます!シリーズ
  9. その他フィクション

物語の概要

■ 作品概要

本作は、平凡な25歳の若手商社マンであった一宮信吾が、中世ヨーロッパ風の異世界に転生(憑依)し、底辺から成り上がる姿を描いた異世界転生ファンタジーである。 彼が目覚めたのは、辺境の貧乏な下級貴族・バウマイスター家の八男「ヴェンデリン」(5歳)の身体であった。家門や領地を継ぐ可能性は全くなく、内政を無双して領地を発展させるような知識も持ち合わせていないという絶望的な状況の中、彼は唯一自分に「魔法の才能」があることに気づく。ヴェンデリンは、この魔法の力を突破口にして独立を目指し、自分の力でお金を稼ぎ、しがらみを抜け出して自由に生きていくことを決意する。

■ 主要キャラクター

  • ヴェンデリン・フォン・ベンノ・バウマイスター(一宮信吾):本作の主人公。平凡な日本人商社マンから貧乏貴族の八男に転生した。過酷な環境から自立するため、卓越した魔法の才能を磨き冒険者を目指す。
  • アルトゥル・フォン・ベンノ・バウマイスター:ヴェンデリンの父でバウマイスター家の当主。過去の魔の森への遠征で多くの領民を失った負い目から、領地の開墾に執念を燃やしている。
  • エーリッヒ:バウマイスター家の五男。知理的で優しく、家族の中で唯一ヴェンデリンを気遣う良き理解者。後に家を出て王都で下級官吏となる。
  • アルフレッド・レインフォード:ヴェンデリンの魔法の師匠。元ブライヒレーダー辺境伯の筆頭お抱え魔法使いであったが、遠征で命を落とし「語り死人」となっていた。ヴェンデリンに魔法と莫大な遺産を託して成仏する。
  • エルヴィン・フォン・アルニム:ヴェンデリンが冒険者予備校で出会った初の同年代の友人。西部の小領主の五男で、剣や弓に優れた才能を持つ。
  • イーナ・ズザネ・ヒレンブラント:ブライヒレーダー辺境伯家の陪臣の三女。槍術に長けた赤髪のクール系美少女で、ヴェンデリンのパーティメンバーとなる。
  • ルイーゼ・ヨランデ・アウレリア・オーフェルヴェーク:同じく陪臣の三女で、魔闘流の使い手。水色の髪の小柄な少女。桁外れの魔力を秘めており、ヴェンデリンのパーティメンバーとなる。
  • ブランターク・リングスタット:ブライヒレーダー辺境伯の筆頭お抱え魔法使いであり、アルフレッドの元師匠。ヴェンデリンの並外れた実力に気付き、様々な場面で彼を導く。

■ 物語の特徴

本作の最大の魅力は、異世界転生作品でありながら、主人公がいきなり世界を救うようなチート展開ではなく、まずは「貧乏貴族の部屋住みの八男」という底辺の立場からの「自立」を現実的かつ世知辛く描いている点である。魔法という強大な力を得ても、それを下手に使えば凄惨なお家騒動や権力争いに巻き込まれてしまうため、実の家族からすら距離を置かれるなど、人間の「しがらみ」がリアルに描写されている。 また、元日本人である主人公が食に対する執着を見せ、魔法を駆使してホロホロ鳥を狩ったり、海水から塩を精製し、さらには何千回もの失敗を経て味噌や醤油を一から醸造して食生活を豊かにしていくなど、生活改善に向けた泥臭い努力の過程も読者にとって非常に興味深いポイントとなっている。

書籍情報

八男って、それはないでしょう!1
著者:Y.A 氏
イラスト:藤ちょこ 氏
出版社:KADOKAWAMFブックス
発売日:2014年4月25日
ISBN:9784040667195

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

あらすじ・内容

目覚めれば異世界で貴族の御曹司に! でも八男坊じゃ微妙…
――ある日の朝、目を覚ますと……平凡な若手商社マンである一宮信吾(25)は、僻地に領地を持つ貧乏貴族の八男ヴェンデリン(5)という存在意義さえ怪しい子供に憑依していた。
信吾は、家門と領地継承もなく、内政無双の知識もないこの身と己に絶望するも、魔法の才能に恵まれたという一点を突破口に独立を目指す。
この物語は、そんな若造が魔法で金を稼ぎ自由に生きる(もちろん世界なんて救わない)、当面は脱ボッチのお話である。
それと、結局人の営みで発生する柵(しがらみ)からは逃れられない……という話でもある。

八男って、それはないでしょう!1

感想

本作が出版されたのは2014年だが、私は書籍化以前の連載時代から長く親しんできた。

そのため、今回あらためて第1巻を読むと、作品そのものの面白さだけでなく、当時ネット小説を追いかけていた頃の記憶まで蘇ってきた。

現在では、異世界へ転生した主人公が特別な能力を手に入れ、冒険者や貴族として成り上がる物語は珍しくない。

しかし本作は、単純に強大な魔法を手に入れて自由に無双する物語ではない。

主人公が目覚めたのは、貴族とは名ばかりの貧しい騎士爵家である。

しかも、領地も家督も継げない八男だった。

魔法の才能はある。

前世の知識もある。

それでも、子どもである以上は家族や身分制度から簡単に逃れられない。

むしろ才能が知られれば、兄との家督争いへ利用される可能性まである。

強い力を得たから自由になれるのではない。

力を持ったことで、新しい面倒や責任まで引き寄せてしまう。

その世知辛さと、そこから抜け出そうとするヴェンデリンの執念が、本作の大きな魅力だと感じた。

目覚めたら貧乏騎士爵家の八男だった

主人公の一宮信吾は、二十五歳の平凡な会社員である。

商社に勤め、部下と上司の間で多少のストレスを抱えながらも、会社を辞めるほど追い詰められているわけではない。

独身で一人暮らしをしており、いずれは結婚して家庭を持つかもしれない。

そんな、ごく普通の人生を送っていた。

ところがある日、目を覚ますと体が五歳児になっていた。

彼が意識を宿したのは、辺境の下級貴族バウマイスター家の八男、ヴェンデリンである。

貴族の子どもと聞けば、恵まれた生活を想像する。

しかし、実際のバウマイスター家には、そのような華やかさはほとんどない。

領地は名目上こそ広いものの、大部分が魔物の住む未開地である。

実際に人が暮らしているのは三つほどの村だけで、人口は約八百人。

外部との行き来も少なく、冒険者ギルドから支部の設置を断られるほどの僻地だった。

朝食として出されるのは、ボソボソとした黒パンと、塩だけで味付けされた野菜と細切れ肉のスープである。

肉が入っているだけでも貴族らしいらしいが、現代日本の食生活を知る主人公にとっては、あまりにも寂しい。

さらに家には、男子八人と女子二人の子どもがいる。

領地を継げるのは基本的に長男だけである。

次男は長男に何かあった時の予備。

三男以降は、自分で仕事や居場所を探さなければならない。

八男であるヴェンデリンには、領地も家名も、将来の役職も用意されていなかった。

貴族に転生したはずなのに、最初に考えるのが「成人までに自立する手段を見つけなければ人生が詰む」という現実である。

この始まりからして、本作らしい厳しさがある。

家族の中にいるのに、ほとんど誰とも話さない

ヴェンデリンの家庭環境で印象に残ったのは、露骨な虐待ではなく、静かな放置である。

食事は与えられている。

寝る場所もある。

無理な労働を強制されるわけでもない。

しかし、家族の誰も彼にほとんど関心を向けていない。

長男はすでに二十歳を大きく超えている。

一番年齢の近い同腹の兄である五男エーリッヒでも、ヴェンデリンとは十歳以上離れている。

六男と七男は妾腹であり、本妻と妾の関係も悪いため、別の家で暮らしている。

そのため、同じ兄弟でありながら交流はほとんどない。

ヴェンデリンと会話をしてくれるのは、主にエーリッヒだけだった。

家族は魔の森への無謀な遠征で多くの働き手を失い、領地を立て直すための開墾に追われている。

末子に構う余裕がない事情は理解できる。

それでも、幼い子どもが一人で書庫へ入り、一人で森へ出かけ、夜まで戻らなくても深く心配されない。

食事を与える以外は、育児放棄に近い状態だと感じた。

ただ、家族が明確な悪意を持ってヴェンデリンを傷つけているわけではない。

余裕がないから放置する。

役に立たない幼児へ時間を割けない。

その乾いた距離感が、かえって現実的だった。

誰か一人の悪人を倒せば解決する話ではない。

貧困と忙しさの中で、家族関係そのものが薄くなっている。

ヴェンデリンが早く自立したいと考えるのも当然だろう。

魔法は夢ではなく自立するための手段

ヴェンデリンは、家の書庫で魔術書を発見する。

この世界では魔法を使える人間が極端に少ない。

その一方で、才能を持ちながら気づかずに一生を終える者を減らすため、魔術書は比較的安く流通していた。

ヴェンデリンは水晶玉を使い、自分に魔法の才能があることを確認する。

ここから、彼の生活は大きく変わっていく。

普通の子どもなら、魔法が使えることに夢を膨らませる場面だろう。

もちろんヴェンデリンも魔法そのものを楽しんでいる。

しかし根底にあるのは、これで独立できるという安堵である。

八男には領地がない。

親が就職先を用意してくれる可能性も低い。

だが、希少な魔法使いであれば、冒険者になることも、貴族や王宮へ仕えることもできる。

魔法は特別な力であると同時に、彼にとっては生きていくための職能だった。

家族に期待されていないことも、修行には好都合だった。

ヴェンデリンが毎日書庫へ籠もっても、森へ出かけても、誰も詳しく尋ねない。

彼は火、水、風、土の初級魔法を短期間で習得し、中級魔法や独自の応用魔法まで身につけていく。

半径一キロほどの人間や動物を感知する探知魔法。

石の矢を風で飛ばす、魔法のクロスボウ。

筋力強化や軽量化。

地面を掘る掘削魔法。

価値のある物を光で知らせる報告の魔法。

魔法を単なる攻撃手段ではなく、狩猟や採集、移動、生活改善へ使うところが面白い。

ヴェンデリンの目的は、派手な戦いで目立つことではない。

自分の食事を確保し、将来の選択肢を増やし、家を出る準備を整えることである。

その地道さに強く惹かれた。

魔法を使う最大の理由が肉である

ヴェンデリンは魔法によって、捕獲が難しいホロホロ鳥を仕留める。

夕食にその肉が並び、初めて家族全員から褒められる。

ここで彼が感じるのは、家族に認められた喜びだけではない。

久しぶりに美味しい肉を食べられた喜びの方が、むしろ大きいように見える。

それ以降、ヴェンデリンは毎日のように森へ入り、鳥や獣、山菜、果物、自然薯などを持ち帰る。

黒パンと塩スープだけだった食卓に、肉や副菜、ジャムが加わっていく。

家族からも、役に立たない末子ではなく、食料を持ち帰る存在として評価されるようになる。

魔法の才能を初めて家族に認められた場面ではない。

食料を持ち帰ったことで認められるというのが、この家の生活の厳しさを表している。

そしてヴェンデリン自身も、魔法を食生活の改善へ惜しみなく使う。

海岸まで飛んで塩を確保する。

味噌と醤油を作る。

米を探すため、遠く離れた商業都市ブライヒブルクへ向かう。

マヨネーズや餡子、カレーまで再現していく。

強大な魔力を持つ少年が、その力と時間を米や調味料の確保へ注ぎ込んでいる。

この泥臭さには思わず笑ってしまった。

ただ、幼少期に食べ続けた黒パンと塩スープを思えば、食への執念が強くなるのも理解できる。

食べることは、ヴェンデリンにとって単なる趣味ではない。

前世の自分を忘れないための行為であり、誰にも世話をされない生活の中で、自分を自分で満たすための手段でもあったように感じた。

語り死人となったアルフレッドとの出会い

本巻の中でも特に心に残ったのが、アルフレッド・レインフォードとの出会いと別れである。

アルフレッドは、生前ブライヒレーダー辺境伯家に仕えていた優秀な魔法使いだった。

魔の森への遠征で主君を守りながら魔力を使い果たし、命を落とす。

しかし、自分が身につけた魔法を誰にも伝えられなかったことが未練となり、語り死人として現世を彷徨っていた。

語り死人は、願いを叶えることで成仏する死霊系の存在である。

アルフレッドの願いは、自分の技術を受け継ぐ弟子を見つけることだった。

ヴェンデリンの才能を見抜いたアルフレッドは、彼を弟子として迎える。

二人が一緒に過ごしたのは、わずか二週間ほどである。

それでもヴェンデリンにとって、アルフレッドは唯一の師匠となった。

アルフレッドは魔力量を急速に高める「器合わせ」を行い、魔法の威力だけでなく、精度や制御の重要性も教える。

魔道具の製作。

属性によって刀身を変える魔力剣。

探知を欺く魔法。

魔力の圧縮や細かな操作。

ヴェンデリンが独学では何年もかかったかもしれない技術を、短期間で惜しみなく伝えていく。

その一方で、アルフレッドは自分が死者であることを忘れていない。

肉体は少しずつ崩れ始めていた。

このまま時間が経てば、理性を失ったゾンビになってしまう。

そこで彼は、最後の卒業試験として、ヴェンデリン自身の聖魔法で成仏させてほしいと頼む。

弟子の手で師匠を成仏させる卒業試験

師匠を成仏させるという展開は、魔法の修行を終えるための試験としては、あまりにも切ない。

ヴェンデリンは聖魔法を習得する。

アンデッドに対して強い効果を持つその魔法を、最初に本格的に使う相手が、自分へすべてを教えてくれた師匠だった。

アルフレッドは成仏する前に、高級なマテ茶を淹れる。

自分はすでに味を感じられない。

それでも、弟子のために丁寧に茶を用意する。

そして、自分の装備品や魔道具、財産の入った魔法の袋を卒業の餞別として託す。

孤児だった自分も、子どもの頃は魔法で狩りをして肉を手に入れていた。

魔法があれば生活には困らない。

外の世界は楽しい。

ヴェンデリンへ語りかける言葉は、師匠というより、これから旅立つ子どもを見送る親のようにも感じられた。

ヴェンデリンは涙を流しながら聖の光を放つ。

アルフレッドは痛みを感じることなく、温かな光に包まれて消えていく。

自分の技を伝えられた。

弟子を得られた。

だから満足している。

その言葉を残し、アルフレッドは成仏する。

短い交流だった。

それでも、家族からほとんど関心を向けられなかったヴェンデリンにとって、自分の才能を正面から認め、将来を信じてくれた初めての大人だったのではないだろうか。

卒業のためには、自分の手で師匠を消さなければならない。

悲しい別れである。

しかし、アルフレッドの願いを叶え、最後まで弟子として役目を果たしたからこそ、二人の関係は強く心に残る。

兄たちも家を出るしかない

長男クルトの結婚が決まると、成人していた兄たちは家を出ることになる。

次男ヘルマンは、長男に何かあった場合の予備として残されていた。

しかしクルトの結婚によって跡継ぎが生まれる可能性が高まったため、男子を失った分家へ婿入りする。

三男パウルと四男ヘルムートは、兵士や衛兵になるため王都へ向かう。

五男エーリッヒは、読み書きと計算の能力を生かして下級官吏を目指す。

貴族の息子であっても、次男以降に安定した未来が用意されているわけではない。

領地を分ければ家が弱体化する。

中央で役職を得られる保証もない。

結婚相手も自分で見つけなければならない。

貴族という身分を失わずに生きるには、軍人や官吏、冒険者として実績を作る必要がある。

この現実が淡々と描かれている点が面白かった。

特にエーリッヒは、ヴェンデリンへ最も親しく接してくれた兄である。

誕生日を祝ってくれたのも彼だけだった。

ヴェンデリンの魔法に気づきながら、家督争いを起こさないよう黙って見守ってくれた。

そんなエーリッヒまで王都へ旅立つ。

兄たちがいなくなった後、ヴェンデリンは兄嫁アマーリエ以外とはほとんど会話をせず、家には寝に帰るだけの生活を送るようになる。

孤独ではある。

しかし、家族と深く関われば、自分の才能を家督争いへ利用される可能性がある。

距離を取ることが、自分と兄の両方を守る方法でもあった。

有能だからこそ家督争いへ利用される

ヴェンデリンが魔法を使えることは、家族も薄々気づいていた。

それでも彼の力を領地開発へ使わせなかったのは、長男クルトの立場を守るためである。

強力な魔法を使えるヴェンデリンが鉱山を発見し、農地を広げ、魔物を倒せば、領民が彼を次期当主に望む可能性がある。

現在の当主や長男に不満を持つ者にとって、優秀な八男は都合のよい旗印になる。

実際、名主クラウスはヴェンデリンへ、バウマイスター家を継ぐよう持ちかける。

表向きは、無能な長男よりも有能なヴェンデリンが領主になった方が、領地は発展するという主張である。

しかし、その裏にはクラウス自身の一族を有力者へ押し上げたいという思惑もあった。

ヴェンデリンは提案を拒絶する。

領地を発展させても、自分の魔法に依存した仕組みでは、自分が死ねば維持できない。

それ以前に、父や長男を追い落として当主になれば、領内が二つに割れる。

八男として家を出たいだけなのに、周囲が勝手に後継者候補へ押し上げようとする。

強い力があれば自由になれると思っていたはずが、その力が新しい拘束になっている。

この展開には、本作の貴族社会の厄介さがよく表れていた。

ヴェンデリンはエーリッヒの助言に従い、領地の仕事に関わらず、変わり者の怠け者として家を出る道を選ぶ。

活躍しないことで争いを避ける。

能力を隠すことで自由を守る。

派手な無双とは正反対だが、非常に現実的な判断だった。

十二歳でようやく実家を出る

ヴェンデリンは十二歳になると、ブライヒブルクの冒険者予備校へ入学する。

ようやく、ほとんど会話のなかった実家から離れられる。

ここから物語の雰囲気も大きく変わる。

予備校の入学試験では、ヴェンデリンは実力を抑え、中級魔法が使える程度に見せかける。

それでも中級魔法を扱える者はほとんどおらず、特待生として学費を免除される。

高齢の魔法教師ですら、ヴェンデリンより実力が低い。

長年一人で修行を続け、アルフレッドから教えを受けた彼は、すでに予備校で学ぶ範囲を大きく超えていた。

圧倒的な力を持つがゆえに、周囲から浮いてしまう。

それでも実家にいた頃とは違い、同年代の仲間と出会うことができた。

最初に友人になったのが、騎士爵家の五男エルヴィンである。

エルヴィンも家を継げず、剣の才能を生かして冒険者を目指していた。

同じように貴族の次男以下として、自力で将来を作らなければならない立場にいる。

二人はヴェルとエルと呼び合い、一緒に狩りへ出かける。

家族の中でも孤独だったヴェンデリンに、ようやく同年代の友人ができる。

そのことに、読んでいて少し安心した。

半ば強引に結成された四人パーティ

狩りの途中、ヴェンデリンとエルヴィンは、狼の群れに囲まれていた二人の少女を救う。

槍を使うイーナと、魔闘流を使うルイーゼである。

二人とも辺境伯家の家臣の娘だが、三女であるため家を継ぐことはできない。

自分の力で生活するため、冒険者を目指していた。

ヴェンデリンたちは、前衛のイーナとルイーゼ、中衛のエルヴィン、後衛で魔法と弓を担当するヴェンデリンという、バランスのよい組み合わせになる。

ただし、パーティ結成の申請は、イーナとルイーゼが本人たちへ相談せずに済ませてしまう。

ヴェンデリンとエルヴィンは、半ば強引に仲間へ加えられた形である。

それでも四人で狩りを続けるうちに、それぞれの長所を生かした安定したパーティになっていく。

ここで興味深いのは、イーナたちも純粋な友情だけでヴェンデリンへ近づいたわけではない点である。

希少で優秀な魔法使いと組めば、冒険者として成功する可能性が高まる。

将来的には有力者へ仕えたり、婚姻によって安定した立場を得たりすることもできる。

家を継げない娘たちにとって、ヴェンデリンとの出会いは人生を変える好機だった。

打算があるから悪いのではない。

自立するために、使える縁をつかもうとする。

ヴェンデリンだけでなく、周囲の少年少女たちも、自分の将来を必死に考えている。

その現実的な人間関係が本作らしい。

自由な冒険者になっても貴族からは逃げられない

ヴェンデリンは実家を出て、冒険者として自由に生きるつもりだった。

ところが、彼がバウマイスター騎士爵家の八男である事実は消えない。

ブライヒレーダー辺境伯主催の園遊会へ招待され、バウマイスター家の代理として出席することになる。

礼服や装飾品を急いで用意しなければならず、思わぬ出費も発生する。

貴族の子どもである以上、主家の集まりを無視することはできない。

たとえ家督を継がなくても、貴族としての義務や関係は残り続ける。

ヴェンデリンは、自分は冒険者になるのだから関係ないと考えている。

しかし周囲は、希少な魔法使いであり、騎士爵家の息子でもある彼を放っておかない。

異世界転生作品では、実家を出れば身分から解放され、自由な冒険が始まることも多い。

本作では、家を出ても貴族社会の人間関係が追いかけてくる。

力があるほど、権力者との縁が増えていく。

この逃げ切れなさが面白い。

アルフレッドの師匠プランタークとの対面

園遊会でヴェンデリンは、当代のブライヒレーダー辺境伯アマデウスと、そのお抱え魔法使いプランタークに呼び出される。

プランタークは、ヴェンデリンの使う魔法や腰に下げた魔法の袋から、アルフレッドとの関係を見抜く。

実は彼こそ、アルフレッドへ魔法を教えた師匠だった。

ヴェンデリンは、語り死人となったアルフレッドから魔法を学び、最後には聖魔法で成仏させたことを説明する。

プランタークは、弟子が最後に自分の技術を伝え、満足して消えたことを知る。

ヴェンデリンにとって唯一の師匠だったアルフレッドにも、かつて教えを受けた人物がいた。

短い師弟関係が、さらに前の世代へつながっていく。

アルフレッドの存在が、ヴェンデリンの中だけに残っているのではない。

彼を覚えている人物へ最期を伝えられたことにも、救いを感じた。

軍事物資の返還と莫大な遺産

アルフレッドの魔法の袋には、魔の森遠征軍が使用する予定だった大量の物資が残されていた。

二千人の軍勢が数か月行動できる食料。

水や酒。

武器や防具。

天幕などの備品。

魔物の素材。

宝石や金貨。

アルフレッド個人の遺産だけでなく、辺境伯軍の所有物まで含まれている。

ヴェンデリンは記録を確認し、軍の物資を当代の辺境伯へ返還する。

その価値は非常に大きく、辺境伯家の財政を助けるほどだった。

アマデウスは回収報酬として、評価額の二割にあたる大金をヴェンデリンへ支払う。

さらに、アルフレッドがブライヒブルクに所有していた屋敷や、冒険者ギルドへ預けていた資金まで正式に相続することになる。

辺境伯家は、アルフレッドが死亡した後、その屋敷や資産を接収していた。

しかし厳重な魔法の仕掛けによって、屋敷の中へ入ることすらできなかった。

正式な遺産譲渡を受けたヴェンデリンは、そのセキュリティをあっさり解除し、屋敷を受け継ぐ。

貧乏貴族の八男として、黒パンと塩スープを食べていた少年が、十二歳で屋敷と莫大な財産を手に入れる。

この展開は非常に痛快だった。

ただし、幸運だけで財産を得たわけではない。

ヴェンデリンはアルフレッドの願いを叶え、教えを受け継ぎ、軍の物資も正直に返している。

その誠実さが認められた結果として、正式な報酬と遺産を得ている。

成り上がりの爽快感がありながら、筋を通している点にも好感を持てた。

五男エーリッヒの結婚を祝うため王都へ

ヴェンデリンは、王都で下級官吏となったエーリッヒの結婚式へ出席することになる。

家族の中で唯一親しくしてくれた兄である。

誕生日を祝ってくれた。

魔法の秘密を守ってくれた。

家督争いに巻き込まれないよう助言もしてくれた。

そのエーリッヒの結婚を祝うため、ヴェンデリンは魔導飛行船で王都へ向かう。

幼い頃、兄たちが商隊と共に遠い王都へ旅立つ姿を見送った。

今度は自分が、魔導飛行船へ乗って王都へ向かう立場になっている。

十二歳にして実家を出て、友人を得て、屋敷と財産まで手に入れた。

この時点でも、すでに十分な成り上がりを果たしているように見える。

しかし第1巻は、ここからさらに大きく動く。

空の上で襲来するドラゴンゾンビ

王都へ向かう魔導飛行船の前に、突如ドラゴンゾンビが現れる。

ただの竜ではない。

死霊となった伝説級の存在である。

飛行船には多くの乗客がいる。

逃げ場のない空中で襲われれば、大惨事は避けられない。

ヴェンデリンは、辺境伯家のお抱え魔法使いプランタークと共に戦うことになる。

幼い頃、語り死人となったアルフレッドを成仏させるために覚えた聖魔法。

一人で積み重ねてきた魔法の訓練。

師匠から受け継いだ知識と魔力量。

それらが、伝説の竜を倒す戦いへつながっていく。

ヴェンデリンは強い。

しかし、完全に一人で何もかも解決するわけではない。

経験豊富なプランタークと協力し、危険な相手へ立ち向かう。

幼少期には、自分の食事を確保するため鳥を狩っていた少年が、今度は飛行船に乗る大勢の命を守るため、ドラゴンゾンビと戦う。

成長の幅が大きすぎて、読んでいて圧倒された。

竜を討伐したヴェンデリンは、一躍王国の英雄となる。

本人は静かに冒険者として生きたい。

しかし、伝説の竜を倒した魔法使いを、王国や貴族たちが放っておくはずがない。

自由になるために身につけた魔法が、ますます彼を権力の中心へ近づけていく。

まだ第1巻なのに、すでに成り上がりすぎている

本巻を読み終えて最初に浮かんだのは、「まだ1巻なのに、もう充分成り上がっているぞ」という感想だった。

貧乏騎士爵家の八男として目覚める。

魔法の才能を発見する。

高名な魔法使いの技術と財産を受け継ぐ。

家を出て特待生になる。

仲間を得る。

辺境伯と知り合う。

莫大な報酬と屋敷を手に入れる。

最後にはドラゴンゾンビを倒し、王国の英雄になる。

普通の作品なら、数巻をかけて描いてもおかしくない内容である。

それを第1巻の中で一気に駆け抜けてしまう。

非常に展開が速い。

それでも、ただ出来事を詰め込んだだけには感じなかった。

幼少期の孤独。

食事への不満。

兄たちとの別れ。

アルフレッドとの修行。

家督問題への恐怖。

冒険者予備校で初めて得た友人。

一つ一つの経験が、ヴェンデリンの自立へつながっている。

早い展開の中でも、彼が何を恐れ、何を求めているのかが一貫しているからだと思う。

本当の敵は魔物よりも身分と人間関係

本作には、魔の森や死霊、ドラゴンゾンビといった危険な魔物が登場する。

しかしヴェンデリンが最も警戒しているのは、魔物だけではない。

家督争い。

領民の期待。

名主の野心。

貴族としての義務。

辺境伯家との関係。

強い魔法使いを利用しようとする周囲の思惑。

むしろ人間社会の方が厄介に見える場面も多い。

魔物であれば、探知して避けることも、魔法で倒すこともできる。

しかし人間の思惑は、簡単には見抜けない。

善意と打算が同時に存在する。

クラウスは領地の発展を願っているが、自分の一族を有力者にしたいとも考えている。

イーナとルイーゼはヴェンデリンに助けられたことを感謝しているが、将来性のある魔法使いとの縁も求めている。

辺境伯はヴェンデリンを正当に評価しているが、優秀な魔法使いとして囲い込みたい思惑もあるだろう。

完全な悪人ではないからこそ、対応が難しい。

ヴェンデリンは前世の会社員経験を持つ。

上司と部下の間で働き、人間関係の面倒を知っている。

その経験が、貴族社会で不用意に目立たず、相手の思惑を考える姿勢につながっている。

異世界の圧倒的な魔法使いでありながら、考え方の根底には会社員としての慎重さが残っている。

その組み合わせも、本作の魅力だと感じた。

ヴェンデリンが求めているのは権力ではなく生活である

ヴェンデリンは、最初から大貴族や英雄になろうとしているわけではない。

領地を奪いたいとも思っていない。

王国の頂点へ立ちたいわけでもない。

彼が求めているのは、自分の力で食べていける生活である。

家族に放置されても困らない。

兄と家督を争わずに済む。

好きな食事を作れる。

一人で安全に移動できる。

冒険者として仲間と活動できる。

その程度の自由を求めている。

しかし、ヴェンデリンの力があまりにも大きいため、周囲は彼を普通の少年として扱えない。

食事を改善するために使った魔法が、領地を発展させられる力として注目される。

自立するために磨いた魔法が、王国の英雄を生み出す。

師匠から受け継いだ遺産が、貴族社会とのつながりを強める。

本人の慎ましい望みと、周囲が期待する役割の差がどんどん広がっていく。

この先、ヴェンデリンが本当に自由な冒険者として生きられるのか。

それとも、望まないまま貴族社会の中心へ引き込まれていくのか。

第1巻の段階ですでに、その面倒な未来が見え始めている。

読み返しても勢いと世知辛さが面白い

『八男って、それはないでしょう! 1』は、異世界転生による爽快な成り上がりを楽しめる一冊である。

魔法を次々と習得する。

師匠の財産を受け継ぐ。

仲間を得る。

屋敷や大金を手に入れる。

最後にはドラゴンゾンビを倒す。

成功のスピードは非常に速い。

一方で、その土台には常に世知辛い現実がある。

八男には相続財産がない。

貴族の次男以下は、自分で仕事を探さなければならない。

能力を見せれば家督争いに利用される。

家を出ても、貴族としての義務からは逃れられない。

英雄になれば、さらに多くの権力者から注目される。

派手な成功と、逃れにくい人間関係が同時に描かれている。

だからこそ、ヴェンデリンの成り上がりが単純な幸運だけには見えない。

彼は家族から期待されない環境で、一人で本を読み、魔法を練習し、食料を集め、将来のために準備を続けてきた。

アルフレッドとの出会いという幸運はあった。

しかし、その教えを受け取れるだけの力は、すでに自分で磨いていた。

大きな成果の前に、地味で孤独な積み重ねがある。

その点に強く共感した。

読み終えた時には、爽快感と同時に、これだけ活躍してしまったヴェンデリンが、今後さらに面倒な立場へ追い込まれるのではないかという不安も残る。

それでも、魔法と前世の知識、そして何より食への執念があれば、何とか生き延びていくだろうと思わせてくれる。

長く親しんできた作品をあらためて読み返し、その勢いと面白さを再確認できる第1巻だった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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八男まとめ
八男2巻レビュー

考察・解説

異世界への転生

ヴェンデリンの転生と自立の決意の全貌

『八男って、それはないでしょう!』などの物語作品における「主人公一宮信吾の転生とヴェンデリンとしての自立の決意」について、転生の始まりと状況の把握、憑依という転生の形態、転生先の過酷な現実、および魔法との出会いと自立への決意の各点から解説する。

転生の始まりと状況の把握

平凡な25歳の若手商社マンであった一宮信吾は、ある朝目を覚ますと、見知らぬ四人部屋のベッドで子供の姿になっていた。

・彼は自身の体が縮んでいることに気づいた。

・この状況をネット小説などでよく見られる異世界への転生であると推測した。

憑依という転生の形態

彼は赤ん坊から生まれ直したわけではなく、5歳の少年の身体に一宮信吾の意識が乗り移った、いわゆる憑依に近い状態での転生であった。

・再び眠りに落ちた際に見たいわば睡眠学習のような夢の中で、少年ヴェンデリンが誕生した場面を映画のワンシーンのように目撃した。

・自分がその存在を乗っ取ったのだと理解するに至った。

転生先の過酷な現実

転生した先は、中世ヨーロッパに酷似した西洋ファンタジー風の世界であった。

・ヴェンデリンは、辺境の貧乏な下級貴族であるバウマイスター家の八男という立場であった。

・貴族とはいえ領地は非常に貧しく、長男が家を継ぎ、三男以降は自力で生きる道を模索しなければならない過酷な環境にあった。

・八男であるヴェンデリンには家門や領地を継ぐ可能性はほぼゼロであった。

・子供だからと遊んでばかりいると人生が詰むという強い危機感を抱くこととなった。

魔法との出会いと自立への決意

内政を無双して領地を発展させるような知識もなかった彼は絶望的な状況に置かれたが、唯一自分に魔法の才能があることに気づいた。

・ヴェンデリンは、この魔法の力を突破口にして生きる道を模索し始めた。

・将来的には冒険者などとして独立し、自分の力で自由に生きていくことを目指すようになった。

まとめ

ヴェンデリンの転生と自立の決意を巡る一連の全貌は、突然の異世界転生と自覚から始まり、憑依としての意識の定着、貧乏貴族の八男という過酷な立場の認識、そして魔法の才能発見による自立の決意に至るまで、その大きな転換を明瞭に示している。家柄や環境という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、生存戦略と自己確立の記録である。状況の把握から、意識の統合、危機感の抱いての努力、そして自由な未来への志向へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

貧乏貴族の家系

バウマイスター家の実態と抱える課題の全貌

『八男って、それはないでしょう!』などの物語作品における「主人公の転生先であるバウマイスター家の実態と抱える課題」について、領地の地理的環境と実態、過酷な家督相続と兄弟の立場、貴族とは名ばかりの貧しい生活水準、貧困を加速させた魔の森への遠征、およびお家騒動の火種と閉鎖的な環境の各点から解説する。

領地の地理的環境と実態

バウマイスター家は、ヘルムート王国の南端にある辺境を治める下級貴族(騎士爵)の家系である。

・広大な未開地や魔の森に隣接しているが、魔物の脅威や山脈による地理的隔離のため開拓は進んでいない。

・実態は人口約800人の貧しい三つの村を治めているに過ぎない。

過酷な家督相続と兄弟の立場

当主のアルトゥルには、正妻ヨハンナとの間に6人の男子、妾との間に2男2女の計10人の子供がいる。

・身分差が厳しく、跡取りとなるのは正妻の長男クルトのみである。

・次男ヘルマンは長男に子供ができるまでの予備として飼い殺された後に家臣の家へ婿入りする。

・三男以降の男子はわずかな支度金をもらって実家を出て、下級官吏や兵士、冒険者などとして自力で生きる道を模索しなければならない。

・妾の子供たちは貴族にはなれず、名主や豪農の家を継ぐか嫁ぐこととなる。

貴族とは名ばかりの貧しい生活水準

屋敷は豪農の家に毛が生えた程度であり、個室を与えられているのは両親と長男、次男のみで、三男以降は一つの部屋に押し込められている。

・食事はボソボソの硬い黒パンと、塩だけで味付けした野菜と肉の細切れスープが基本という質素なものである。

・中央の貴族が重んじる礼儀作法や読み書き、計算などの教育は軽視されており、当主でさえ文字の読み書きや税の計算がままならない状態である。

貧困を加速させた魔の森への遠征

バウマイスター家が極端な貧困と人手不足に喘いでいる最大の理由は、5年前に起きた痛恨の失政である。

・主君であるブライヒレーダー辺境伯の要請により魔の森への討伐軍に100名の領民を派兵したが、魔物の反撃に遭い77名もの成人男性を失った。

・激しい労働力不足を補うため、領主である父や兄たち自らが畑を耕し、開墾作業の先頭に立たざるを得ない状況に陥っている。

お家騒動の火種と閉鎖的な環境

主人公のヴェンデリンは卓越した魔法の才能を持っていたが、父アルトゥルはこれを領地開拓などに大々的に利用しようとはしなかった。

・八男が魔法で領民に貢献してしまえば、長男よりも優秀な八男を次期当主にという声が上がり、領内で凄惨なお家騒動が勃発する危険性が高かったためである。

・貧しさの中で労働に追われながらも、家門の存続と継承の秩序を守るために細心の注意を払わなければならないという閉鎖的な事情を抱えている。

まとめ

バウマイスター家の実態と抱える課題を巡る一連の全貌は、地理的孤立と過酷な家督相続から始まり、名ばかりの生活水準、魔の森での惨劇による貧困の加速、そして継承権を巡るお家騒動の危機に至るまで、その世知辛い実態を明瞭に示している。封建的な制約や地理的な不条理という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、家門存続の苦闘と現実の記録である。惨劇の発生から、貧困の常態化、継承の制約、そして才能の抑制へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

魔法の修行

ヴェンデリンの魔法修練と飛躍的な成長の全貌

『八男って、それはないでしょう!』などの物語作品における「主人公ヴェンデリン(一宮信吾)の魔法の修行と成長のプロセス」について、魔法の才能の発見と独学での修練、師匠アルフレッドとの出会いと飛躍的な成長、狩猟や生活への魔法の応用、および圧倒的な実力の獲得と次なる指導者の各点から解説する。

魔法の才能の発見と独学での修練

バウマイスター家には魔法を使える者はおらず、ヴェンデリンは父の書斎で埃を被った水晶玉と魔法の入門書を見つけた。

・この世界で魔法の才能を持つ者は千人に一人と言われる中、彼は水晶玉を使って自分の才能を確認した。

・家族からは労働力として期待されず放置されていたため、その境遇を逆手に取った。

・一人で本を読み、裏の森で初級魔法から中級魔法へと独学で修練を重ねていった。

師匠アルフレッドとの出会いと飛躍的な成長

森での修行中、彼は語り死人となった元天才魔法使い、アルフレッド・レインフォードと出会い、弟子入りした。

・アルフレッドから器合わせという短期間で魔力量を同調させる特殊な訓練を受け、ヴェンデリンの魔力量は師匠に匹敵するほど飛躍的に増大した。

・魔道具の作り方や魔法の集中・コントロールといった高度な技術も学んだ。

・卒業試験として生命力を魔力で再現する難関の聖魔法を習得し、アンデッド化が進み理性を失いかけていた師匠を浄化して成仏させた。

・師匠の遺産である魔法の袋や魔道具を受け継いだ。

狩猟や生活への魔法の応用

圧倒的な魔力を得た後も、ヴェンデリンは慢心せず日常的に魔法を実践した。

・探知や飛翔、瞬間移動などの魔法を駆使して広大な未開地や海へ足を運び、弓術と魔法を組み合わせて猪やホロホロ鳥などの獲物を効率よく狩ることで実戦的なコントロールを磨いた。

・前世の記憶を頼りに海水から塩を精製し、大豆から味噌や醤油を魔法で醸造することにも取り組んだ。

・何千回もの失敗を繰り返しながらも成功させたことで、結果的に彼の魔法の精度と技術はさらに向上した。

圧倒的な実力の獲得と次なる指導者

地道かつ規格外の修行の結果、12歳でブライヒブルクの冒険者予備校に特待生として入学する頃には、同級生を圧倒しベテランの魔法使いに匹敵する実力を身につけていた。

・予備校入学後にはアルフレッドの師匠であった高名な魔法使いブランターク・リングスタットと出会った。

・魔力の節約術など、より高度な魔法指導を受ける機会を得ていくこととなった。

まとめ

ヴェンデリンの魔法修練と成長を巡る一連の全貌は、独学での才能開花から始まり、師匠アルフレッドとの運命的な出会いと遺産の継承、生活や食文化への魔法の応用、そして冒険者予備校での圧倒的な実力発揮に至るまで、その歩みを明瞭に示している。貧乏貴族の八男という環境や身分の制約という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、努力と継承の記録である。才能の確認から、師との出会い、聖魔法の習得、魔法の生活応用、そしてさらなる高みへの指導獲得へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

師匠との出会い

ヴェンデリンと師匠アルフレッドの出会いと修練の全貌

『八男って、それはないでしょう!』などの物語作品における「主人公ヴェンデリン(一宮信吾)と魔法の師匠アルフレッド・レインフォードとの出会いと物語」について、語り死人との遭遇、師匠の未練と弟子入り、森での秘密の特訓と師匠の配慮、および悲しい別れと受け継がれた遺産の各点から解説する。

語り死人との遭遇

主人公のヴェンデリンと、彼の魔法の師匠となるアルフレッド・レインフォードとの出会いは、彼が日課としていた森での狩猟や採集の最中に訪れた。

・ある日、ヴェンデリンが森に入ると、突然青白い肌をした三十歳前後の男性に話しかけられた。

・彼の名はアルフレッド・レインフォードといい、生前は主君であるブライヒレーダー辺境伯の筆頭お抱え魔法使いであった。

・5年前の魔の森への遠征で主君を守るために魔力を使い果たして命を落とし、生前の未練からアンデッドの一種である語り死人となっていた。

・アルフレッドは探知魔法をすり抜けるほどの実力者であり、ヴェンデリンは突然の登場に驚かされた。

師匠の未練と弟子入り

語り死人は通常、生前の未練を果たそうと行動する存在である。

・アルフレッドの未練は、自分の魔法を伝える弟子を見つけ出すことであった。

・彼は有望な魔力を持つ者を探して5年以上も彷徨い続けており、ついにヴェンデリンの高い魔力と素質を見抜いて接触してきた。

・ヴェンデリンはこの紳士的で実力のある元天才魔法使いの頼みを受け入れ、彼を師匠として秘密の特訓を開始することとなった。

森での秘密の特訓と師匠の配慮

特訓は、ヴェンデリンが家族の目を盗んで森へ入る日中に行われた。

・アルフレッドは、ヴェンデリンが狩猟や採集にかける時間を魔法の訓練に回せるよう、あらかじめ獲物を魔法で仕留めておくという細やかな配慮を見せた。

・特訓の中で、アルフレッドは器合わせという方法で自身の膨大な魔力をヴェンデリンに同調させ、彼の魔力量を飛躍的に引き上げた。

悲しい別れと受け継がれた遺産

二人の充実した師弟関係は長くは続かなかった。

・語り死人としての限界が近づき、アルフレッドの肉体がゾンビ化して理性を失う恐怖が迫っていた。

・彼は最後の卒業試験として、生命力を魔力で再現する聖魔法を習得し、自分を成仏させてほしいとヴェンデリンに懇願した。

・ヴェンデリンは涙を流しながら見事に聖魔法を成功させ、アルフレッドを浄化して成仏させた。

・アルフレッドは満足して成仏できると言い残し、光となって昇天した。

・この出会いと別れを通じて、ヴェンデリンは圧倒的な魔法の実力だけでなく、師匠が遺した魔法の袋や莫大な財産、装備品を受け継ぎ、自立への道を大きく前進させることとなった。

まとめ

ヴェンデリンと師匠アルフレッドの出会いと修練を巡る一連の全貌は、語り死人との衝撃的な遭遇から始まり、弟子入りと森での密かな修練、聖魔法による感動的な浄化と成仏、そして遺産の継承に至るまで、その歩みを明瞭に示している。生と死の境目や過酷な運命という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、師弟の強い絆と継承の記録である。遭遇の開始から、技術の伝授、解呪と成仏、そして遺産の継承へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

魔の森

魔の森の概要と物語における影響の全貌

『八男って、それはないでしょう!』などの物語作品における「主人公ヴェンデリン(一宮信吾)が暮らすバウマイスター騎士領とその周辺における魔の森の存在と影響」について、魔の森の概要と特徴、過去の悲惨な討伐遠征、師匠アルフレッドとの因縁、ヴェンデリンの探索と南の海への道、および古代竜の出現の各点から解説する。

魔の森の概要と特徴

バウマイスター騎士領の東部から南部にかけて広がる未開地と海の間には、北海道の四分の一ほどの広さを持つ魔の森が存在している。

・食材や薬草、鉱物、宝石といった莫大な富が手付かずのまま眠っている。

・生態系から逸脱して巨大凶暴化した魔物の宝庫でもある。

・魔物たちは自らの縄張りから外に出ることはないが、侵入する人間に対しては容赦なく牙を剥くという習性を持っている。

過去の悲惨な討伐遠征

魔の森は、バウマイスター家や主君であるブライヒレーダー辺境伯家にとって痛恨の悲劇の舞台である。

・数年前、先代ブライヒレーダー辺境伯の主導により、魔の森の解放を目指して大軍が進軍した。

・魔物の群れを刺激してしまい、包囲された遠征軍は壊滅的な被害を受け、バウマイスター家の生存者はわずか23名であった。

・この遠征の真の目的は、不治の病に侵された辺境伯の長男ダニエルを救うため、魔の森の奥地に住むとされる古代竜の血を得ることであったことが後に判明した。

師匠アルフレッドとの因縁

ヴェンデリンの魔法の師匠であるアルフレッド・レインフォードも、この遠征軍に同行していた。

・彼は魔の森で主君を守るために魔力を使い果たして戦死し、その後語り死人となって森の周辺を彷徨うこととなった。

・遠征が失敗に終わったことで、魔の森の内部にはほとんど人が足を踏み入れておらず、入り口近くでさえ貴重な薬草などが残されたままとなっていた。

ヴェンデリンの探索と南の海への道

魔法の修行と探索を続けるヴェンデリンは、魔の森を視界に収めたが、子供の身で入るのは無謀であり成人するまでは足を踏み入れないと賢明な判断を下した。

・森の先にある南の海へ行くため、飛翔の魔法を使って魔の森の上空を超高速で飛び越える手段に出た。

・無事に海へ到達した彼は、手付かずの砂浜で豊富な海産物や塩を手に入れた。

・前世の知識を活かして味噌や醤油といった調味料の再現に成功した。

古代竜の出現

先代辺境伯が命懸けで求めた古代竜は実在していた。

・物語の後半でヴェンデリンたちが王都へ向かう魔導飛行船の航路上に、巨大なアンデッド化した骨竜として突如姿を現した。

・ヴェンデリンはこの強大な脅威と直接対峙することとなった。

まとめ

魔の森を巡る一連の全貌は、豊かな資源と危険が背中合わせとなった森の構造から始まり、悲惨な討伐遠征の真相、師匠アルフレッドの戦死と因縁、上空を越える飛行魔法による海への到達、そして骨竜としての古代竜の出現に至るまで、その大きな存在感を明瞭に示している。自然の脅威や過去の悲劇という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、生存戦略と冒険の記録である。過去の失政から、師の無念、知恵を用いた越境、そして因縁の竜との遭遇へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

古代竜の討伐

古代竜の討伐と英雄としての躍進の全貌

『八男って、それはないでしょう!』などの物語作品における「主人公ヴェンデリンによる古代竜の討伐とその後」について、巨大なアンデッド古代竜の襲来、実戦経験のない少年の決死のデビュー戦、飛翔と聖の魔法を駆使した空中戦、および桁外れの戦利品と英雄としての栄達の各点から解説する。

巨大なアンデッド古代竜の襲来

物語の大きな転機となる古代竜の討伐は、主人公ヴェンデリンが王都へと向かう魔導飛行船の中で突如として発生した。

・王都へ向かう魔導飛行船の後方から、船体とほぼ同じ大きさの骨だけになったアンデッド古代竜(ボーンドラゴン)が迫ってきた。

・通常、魔物は自らの縄張りの外に出ることはないが、古代竜クラスのアンデッドは例外的に人間の領域に姿を現すことがあった。

・普通の人間にとっては天災に等しい絶望的な脅威であった。

実戦経験のない少年の決死のデビュー戦

アンデッド古代竜を倒すための有効打は聖の魔法しかなかったが、同乗していた凄腕の魔法使いブランタークはこれを習得していなかった。

・唯一聖の魔法を使える12歳のヴェンデリンに討伐が託されることとなった。

・これまで熊や狼を倒した程度の彼にとって、魔物との実戦デビュー戦が伝説の古代竜という理不尽な状況であった。

・乗客全員の命と、亡き師匠アルフレッドの弟子としての誇りを守るために戦う決意を固めた。

飛翔と聖の魔法を駆使した空中戦

作戦は、ブランタークが船全体を魔法障壁で守る間に、ヴェンデリンが飛翔で空中に飛び出して討伐するというものであった。

・古代竜は周囲の植物を一瞬で枯らす黒い霧状の猛毒ブレスを吐き出したが、ヴェンデリンは自らも魔法障壁を展開してそれを防いだ。

・古代竜の腕や尻尾の攻撃を飛翔で巧みにかわしながら至近距離に接近し、高濃度の聖の光を浴びせ続けた。

・激しく抵抗していた骨竜はついに浄化され、活動を停止してバラバラになり落下していった。

桁外れの戦利品と英雄としての栄達

ヴェンデリンは落下する骨格一式と、竜の体内から直径2メートルにも及ぶ巨大な魔石を回収した。

・同乗していた大商人アルテリオの見立てによると、この魔石は国家の切り札である魔導飛行船を動かす魔晶石の4倍の大きさを誇る超希少品であった。

・最低でも白金貨1200枚以上の価値があり、オークションにすら出回らないレベルの品であった。

・船を救った英雄となったヴェンデリンたちは、船長からVIP専用の豪華な客室を与えられ、最高級の待遇で王都へ送り届けられた。

・王都に到着した直後には古代竜討伐の功績により国王から直々に謁見を命じられるという、彼の人生と社会的立場を劇的に変える事態へと発展していった。

まとめ

古代竜の討伐とその後を巡る一連の全貌は、魔導飛行船を襲う巨大な脅威から始まり、聖の魔法を用いた少年の決死の戦闘、空中戦での完全なる浄化、そして規格外の戦利品と国王との謁見に至るまで、その歩みを明瞭に示している。未熟さや突発的な天災という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、能力の発露と栄達の記録である。遭遇の瞬間から、覚悟の決断、空中戦の制覇、戦利品の獲得、そして王都での躍進へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

八男まとめ
八男2巻レビュー

登場キャラクター

パウマイスター家(バウマイスター家)

ヴェンデリン・フォン・ベンノ・バウマイスター(一宮信吾)

本作の主人公であり、25歳の商社マンから貧乏貴族の八男に転生した存在である。家門や領地を継ぐ可能性はない。卓越した魔法の才能を持つ。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター家・八男。冒険者予備校の特待生。

・物語内での具体的な行動や成果
 独学で魔法を習得し、語り死人のアルフレッドから魔法の手ほどきを受けた。彼を聖魔法で浄化し、その遺産を受け継いだ。冒険者予備校に入学し、エルヴィンたちとパーティを組んで魔導飛行船で古代竜を討伐した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 未開地で採集や狩猟を行い、食卓に豊富な食材を提供した。アルフレッドの家を相続し、ブライヒブルクに拠点を構えた。

アルトゥル・フォン・ベンノ・バウマイスター

バウマイスター家の当主であり、ヴェンデリンの父親である。読み書きや計算ができない。平凡な人物である。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター家・当主(第七位騎士爵)。

・物語内での具体的な行動や成果
 魔の森への出兵で多くの領民を失った。自ら畑を耕して開墾作業の先頭に立っている。ヴェンデリンの魔法の才能を知りつつも、後継者争いを防ぐため黙認した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 長男のクルトを後継者に定めている。領民からは強引な開墾作業によって不満を抱かれている。

ヨハンナ

バウマイスター家の正妻であり、ヴェンデリンの母親である。下級貴族の出身である。縄作りなどの作業を行っている。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター家・当主の正妻。

・物語内での具体的な行動や成果
 六人の男子を産んだ。四十歳近くになってからヴェンデリンを出産した。ヴェンデリンの魔法の才能を知りつつも、波風を立てないように彼を放置した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

クルト

バウマイスター家の長男であり、次期当主である。マインバッハ家のアマーリエと結婚した。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター家・長男(次期当主)。

・物語内での具体的な行動や成果
 父のアルトゥルと共に開墾作業に従事している。結婚して長男のカールをもうけた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 父に意見できず、開墾作業を強行するため領民からの評判は悪い。

アマーリエ・フォン・ベンノ・バウマイスター

マインバッハ家からパウマイスター家へ嫁いできた次期当主夫人である。クルトの妻である。漢字交じりの文章を読み書きできる。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター家・長男クルトの妻。

・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンとエーリッヒの間の手紙のやり取りを取り持った。義母のヨハンナからヴェンデリンを放置する理由を聞かされた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ヴェンデリンが実家に獲物を渡したことで、実家へ手紙を出す機会が増えた。

カール(クルトの長男)

クルトとアマーリエの間に生まれた長男である。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター家・クルトの長男。

・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に具体的な行動の記載はない。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 バウマイスター家の継承順位二位である。

ヘルマン

バウマイスター家の次男である。長男に万が一のことがあった時の予備として飼い殺されていた。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター家・次男。後に分家の当主。

・物語内での具体的な行動や成果
 開墾の手伝いをしていた。魔の森への出兵で当主を失った大叔父の孫娘と結婚し、婿入りした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 婿入りによって本家との縁が切れ、反本家の立場を表明している。

パウル

バウマイスター家の三男である。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター家・三男。後に王都の警備隊員。

・物語内での具体的な行動や成果
 クルトの結婚式の後、支度金をもらって家を出た。商隊に同行して王都へ旅立った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 王都の警備隊員として自立した生活を送っている。

ヘルムート

バウマイスター家の四男である。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター家・四男。後に王都の警備隊員。

・物語内での具体的な行動や成果
 クルトの結婚式の後、パウルやエーリッヒと共に家を出た。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 王都で警備隊員として働いている。

エーリッヒ

バウマイスター家の五男である。知理的で優しく、ヴェンデリンの良き理解者である。剣が苦手で、弓術と読み書きに優れている。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター家・五男。後に王都の下級官吏。

・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンに領地の実情や魔法の事情を教えた。家を出て王都へ向かい、下級官吏の試験に合格した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 上司の一人娘との結婚を視野に入れ、その家を継ぐ予定である。

レイラ

地元の名主の娘であり、アルトゥルの妾である。別邸に住んでいる。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター家・当主の妾。

・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンの前に、父親のクラウスと共に現れた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 正妻のヨハンナとは身分差から疎遠である。

ヴァルター

レイラの産んだバウマイスター家の六男である。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター家・六男。

・物語内での具体的な行動や成果
 クラウスたちと共にヴェンデリンの前に現れた。ヴェンデリンの発言に激怒したが、クラウスに制止された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 妾の子であるため貴族の継承権はない。

カール(七男)

レイラの産んだバウマイスター家の七男である。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター家・七男。

・物語内での具体的な行動や成果
 クラウスたちと共にヴェンデリンの前に現れた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アグネス

レイラの産んだバウマイスター家の長女である。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター家・長女。

・物語内での具体的な行動や成果
 クラウスたちと共にヴェンデリンの前に現れた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

コローナ

レイラの産んだバウマイスター家の次女である。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター家・次女。

・物語内での具体的な行動や成果
 クラウスたちと共にヴェンデリンの前に現れた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アーベル

先代からパウマイスター家に仕えている執事である。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター家・執事。

・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に具体的な行動の記載はない。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 年齢は七十一歳である。

クラウス

バウマイスター領近辺の村を管理する名主である。レイラの父親である。計算や税の徴収を担っている。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター領・名主。

・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンにバウマイスター家を継ぐよう求めた。過去にはエーリッヒにも同様の勧誘を行っていた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 領内の税収の計算や帳簿を任されており、領主一家に代わって実務を取り仕切っている。

エベンス

バウマイスター領の猟師である。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター領・猟師。

・物語内での具体的な行動や成果
 語り死人を目撃し、その情報をアルトゥルに伝えた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

メイドたち

バウマイスター家で働く村の老女たちである。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター家・メイド。

・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に具体的な行動の記載はない。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 合計で四名いる。

従士たち

バウマイスター家に仕える者たちである。普段は農夫や職人として暮らしている。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター家・従士。

・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に具体的な行動の記載はない。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

バウマイスター家諸侯軍の生存者たち

五年前の魔の森への出兵から生還した領民たちである。

・所属組織、地位や役職
 バウマイスター家諸侯軍。

・物語内での具体的な行動や成果
 生き残った者の半数は兵役を免除され、農作業や開墾の手伝いをしている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 出兵した百名のうち、生存者は二十三名であった。

ブライヒレーダー辺境伯家

先代ブライヒレーダー辺境伯

ブライヒレーダー辺境伯家の先代当主である。ダニエルとアマデウスの父親である。

・所属組織、地位や役職
 ブライヒレーダー辺境伯家・先代当主。

・物語内での具体的な行動や成果
 長男の病を治すため、魔の森へ二千人の軍勢を率いて遠征した。魔物の反撃に遭い、戦死した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼の死後、軍は壊滅的な被害を受けた。

ダニエル

先代ブライヒレーダー辺境伯の長男である。天才的な頭脳を持ち、父から溺愛されていた。

・所属組織、地位や役職
 ブライヒレーダー辺境伯家・長男。

・物語内での具体的な行動や成果
 不治の病に侵されていた。父の戦死を知り、無謀な遠征を批判して急死した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アマデウス・フライターク・フォン・ブライヒレーダー

当代のブライヒレーダー辺境伯である。先代の次男である。

・所属組織、地位や役職
 ブライヒレーダー辺境伯家・当主。

・物語内での具体的な行動や成果
 父と兄の死後、若くして家督を継ぎ、領内の統治を立て直した。園遊会でヴェンデリンを呼び出し、アルフレッドの遺産を譲渡した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ヴェンデリンに将来のお抱え魔法使いになるよう勧誘した。

アルフレッド・レインフォード

ブライヒレーダー辺境伯家の筆頭お抱え魔法使いであった人物である。ヴェンデリンの魔法の師匠である。

・所属組織、地位や役職
 元ブライヒレーダー辺境伯家・筆頭お抱え魔法使い。

・物語内での具体的な行動や成果
 魔の森遠征で戦死し、語り死人となった。ヴェンデリンを見出して魔法を教え、遺産を託した。ヴェンデリンの聖魔法によって浄化され、成仏した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 生前は魔法部隊隊長や補給部隊隊長などを務めていた。

ブランターク・リングスタット

ブライヒレーダー辺境伯家の現在の筆頭お抱え魔法使いである。アルフレッドの元師匠である。

・所属組織、地位や役職
 ブライヒレーダー辺境伯家・筆頭お抱え魔法使い。元冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 魔導飛行船でヴェンデリンたちに同行した。古代竜の襲撃に対し、魔法障壁を展開して船を守った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 遠方から他者の魔力を識別する特殊な探知能力を持っている。

ブライヒレーダー辺境伯軍

先代当主が率いた軍勢である。

・所属組織、地位や役職
 ブライヒレーダー辺境伯軍。

・物語内での具体的な行動や成果
 魔の森へ侵攻し、魔物の大群に包囲されて壊滅した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 千九百二十五名が未帰還となった。

アルニム家

エルヴィン・フォン・アルニム

西部の騎士爵家の五男である。ヴェンデリンの初めての友人である。剣や弓の才能に優れている。

・所属組織、地位や役職
 アルニム家・五男。冒険者予備校の特待生。

・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンと共に狩りを行い、狼の群れからイーナとルイーゼを救出した。彼女たちと四人でパーティを組んだ。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 剣の腕前は予備校随一と評されている。

ヒレンブラント家

イーナ・ズザネ・ヒレンブラント

ブライヒレーダー辺境伯家の陪臣であるヒレンブラント家の三女である。赤髪のスレンダーな少女である。槍術に優れている。

・所属組織、地位や役職
 ヒレンブラント家・三女。冒険者予備校の特待生。

・物語内での具体的な行動や成果
 狩猟中に狼の群れに囲まれ、ヴェンデリンたちに助けられた。ヴェンデリンたちとパーティの申請書を提出した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 魔力を身体強化に用いる技術を身につけている。

オーフェルヴェーク家

ルイーゼ・ヨランデ・アウレリア・オーフェルヴェーク

ブライヒレーダー辺境伯家の陪臣であるオーフェルヴェーク家の三女である。水色の髪を持つ小柄な少女である。魔闘流を修めている。

・所属組織、地位や役職
 オーフェルヴェーク家・三女。冒険者予備校の特待生。

・物語内での具体的な行動や成果
 イーナと共に狼の群れに囲まれ、ヴェンデリンたちに救出された。ヴェンデリンたちとパーティを組んだ。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 一般人よりも多くの魔力を持ち、ヴェンデリンの指導で魔力を鍛え始めた。

商会・ギルド関係者

アルテリオ

王都に本部を置く大規模な商会の当主である。元冒険者である。

・所属組織、地位や役職
 商会・当主。

・物語内での具体的な行動や成果
 魔導飛行船でヴェンデリンが回収した古代竜の魔石を評価した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 過去にブランタークと共に老火竜を倒し、その賞金を元手に商会を設立した。

商業ギルドの受付のお姉さん

ブライヒブルクの商業ギルドで働く若い女性である。事務的な対応をする。

・所属組織、地位や役職
 商業ギルド・受付。

・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンに会員証発行の手続きをさせ、バザーのルールを説明した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

バザーを仕切るギルド職員の中年男性

ブライヒブルクのバザーを管理する職員である。

・所属組織、地位や役職
 商業ギルド・職員。

・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンにウサギを売る場所を指定し、相場を教えた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ウサギを買った商人風の男性

バザーでヴェンデリンからウサギを購入した人物である。

・所属組織、地位や役職
 商人。

・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンが獲ったウサギを全て銀貨二枚で買い取った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

買取所のプロの解体人たち

冒険者ギルドが経営する買取所で働く専門の職員である。

・所属組織、地位や役職
 買取所・解体人。

・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に具体的な行動の記載はない。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

買取所の受付の商業ギルドの職員

買取所で働く職員である。

・所属組織、地位や役職
 買取所・受付。

・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンたちが持ち込んだ獲物を査定した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

冒険者予備校

ゼークト

冒険者予備校の担任教師である。元冒険者の中堅ギルド職員である。

・所属組織、地位や役職
 冒険者予備校・教師。

・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンたち四人のパーティ申請を受理した。ヴェンデリンたちに園遊会の招待状を渡した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 怪我で冒険者を引退した過去を持つ。

魔法の講師の老人

冒険者予備校で魔法を教える講師である。八十歳を超えている。

・所属組織、地位や役職
 冒険者予備校・魔法講師。

・物語内での具体的な行動や成果
 滅多に予備校に来ない。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

予備校の生徒たち

冒険者予備校に通う生徒たちである。

・所属組織、地位や役職
 冒険者予備校・生徒。

・物語内での具体的な行動や成果
 魔法で特待生になったヴェンデリンを羨ましがった。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 貴族の子弟が多く在籍している。

魔導飛行船

コムゾ・フルガ

魔導飛行船の船長である。

・所属組織、地位や役職
 魔導飛行船・船長。

・物語内での具体的な行動や成果
 古代竜の襲撃を受け、ブランタークに助けを求めた。船を救われた感謝として、ヴェンデリンたちを最高級の客室へ案内した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

レオポルド・ベギム

魔導飛行船の副長である。

・所属組織、地位や役職
 魔導飛行船・副長。

・物語内での具体的な行動や成果
 ブランタークに挨拶をした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

船員たち

魔導飛行船で働く乗組員である。

・所属組織、地位や役職
 魔導飛行船・船員。

・物語内での具体的な行動や成果
 航路変更に抗議する乗客たちを制止した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

乗客の貴族や大商人たち

魔導飛行船に乗船している客たちである。

・所属組織、地位や役職
 魔導飛行船・乗客。

・物語内での具体的な行動や成果
 突然の航路変更に抗議したが、ブランタークの姿を見て道を開けた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

専属のメイドたち

魔導飛行船のVIP客室でサービスを提供するメイドたちである。

・所属組織、地位や役職
 魔導飛行船・メイド。

・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に具体的な行動の記載はない。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

教会

マイスター

バウマイスター領内の教会に派遣されている神父である。

・所属組織、地位や役職
 教会・神父。

・物語内での具体的な行動や成果
 年のせいで腰が悪く、語り死人の捜索は不可能とされている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 八十歳を超えた老人である。

雑務を手伝うバアさんたち

教会の雑務を手伝う領内の老女たちである。

・所属組織、地位や役職
 教会・手伝い。

・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に具体的な行動の記載はない。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ヘルムート王国・王宮関係者

ヘルムート王国国王ヘルムート

ヘルムート王国の国王である。

・所属組織、地位や役職
 ヘルムート王国・国王。

・物語内での具体的な行動や成果
 古代竜を討伐したヴェンデリンとの謁見を命じた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

煌びやかな鎧姿の騎士

王城からの使者である。

・所属組織、地位や役職
 王城・騎士。

・物語内での具体的な行動や成果
 魔導飛行船を降りたヴェンデリンに対し、国王からの謁見の命令を伝えた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

騎士の従者

煌びやかな鎧姿の騎士に付き従う者である。

・所属組織、地位や役職
 王城・従者。

・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に具体的な行動の記載はない。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

その他

小型ゴーレムたち

アルフレッドの屋敷を警備する魔道具である。

・所属組織、地位や役職
 アルフレッドの屋敷・警備。

・物語内での具体的な行動や成果
 屋敷に入ったヴェンデリンを警告したが、暗号によって停止された。その後、ヴェンデリンを新たな主人として認識した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 古代魔法文明の遺産である。

八男まとめ
八男2巻レビュー

展開まとめ

プロローグ 目が覚めてみると…… 

平凡な会社員生活

一宮信吾は商社に勤める二十五歳の会社員であり、部下と上司の間でストレスを抱えながらも、平凡な生活に大きな不満はなかった。独身で一人暮らしを続け、いずれ結婚して家庭を持つような人生を想像していた。

見知らぬ四人部屋

ある朝、一宮信吾が目を覚ますと、そこは自宅のマンションではなく、古びたベッドが四つ並ぶ暗い部屋であった。周囲には何者かが眠っており、自身の体も五歳ほどの子供に変わっていたため、異世界の人間へ意識が乗り移った可能性を考えた。事情が分からないまま動くことを避け、明るくなるまで待とうとしたが、強い眠気に襲われて再び眠った。

八男ヴェンデリンの誕生

眠りの中で、一宮信吾は自分がヴェンデリンとして生まれた場面を見た。ヴェンデリンは辺境の小領地を治める下級貴族、パウマイスター家の八男であり、父アルトゥルと本妻の間に生まれた末子であった。

貧乏貴族の家族事情

パウマイスター家には、本妻と妾の間に男子八人と女子二人がいた。妾の子供たちは名主や豪農の家へ婿入りしたり、嫁ぎ先が決まったりしていたが、本妻の男子は身分の都合から平民の家へ入れなかった。領地は人口八百人ほどの貧しい土地であり、長男以外が家を継ぐ余地はほとんどなかった。

独立への危機感

一宮信吾は、五歳のヴェンデリンへ転生したことを受け入れた。八男である以上、貴族として生きられる可能性は低く、成人までに自力で生活する手段を得なければならなかった。剣や魔法の才能に望みを抱きながらも、まずは家族に不審がられないよう、ヴェンデリンの記憶とこれまでの人生を懸命に整理した。

第一話 辺境最南端貧乏貴族家 

貧しいパウマイスター家

ヴェンデリンは夢の中で得た記憶を頼りに、兄弟たちと朝食を取った。パウマイスター家の屋敷は部屋数こそ多かったが、実態は豪農の家に近く、個室を持つのは両親と長男クルト、次男ヘルマンだけであった。三男以下の兄弟は相部屋で暮らし、妾レイラとその子供たちは別邸に住んでいた。

辺境貴族の暮らし

屋敷には老執事と四人の年配のメイドしかおらず、従士たちも普段は農民や職人として生活していた。朝食は黒パンと薄味のスープであり、肉が入っていることだけが貴族らしさであった。領地が最貧層に属している現実を知り、ヴェンデリンは落胆した。

冒険者ギルドの拒絶

父アルトゥルは冒険者ギルド支部の設置を断られていた。領内の魔物は強力であったが、交通の便が悪く、冒険者にとっては他にも稼げる場所が多かったためである。かつてブライヒレーダー辺境伯が二千人の軍勢を率いて魔物を討伐しようとしたものの、縄張りを刺激して壊滅的な被害を受けていた。

広大な未開領域

朝食後、五男エーリッヒはバウマイスター騎士領の実情をヴェンデリンに説明した。領地は大公領に匹敵する広さを持っていたが、実際に開拓されているのは山脈の麓にある三つの村だけで、人口は約八百人であった。周囲には飛竜や魔物が生息する山脈と魔の森が広がり、外部との交易も数か月に一度訪れる商隊に限られていた。

魔の森の富と脅威

魔の森には食材、薬草、鉱物、宝石などの富が眠っていたが、普通の人間では敵わない魔物が多数生息していた。魔物は縄張りから出ない一方、侵入者を容赦なく排除した。領地は名目上広大であっても開拓は不可能に近く、関税を課せば商隊すら来なくなるほど孤立していた。

実用を重んじる教育

パウマイスター家の者たちは農地開拓や狩猟、漁、武芸、乗馬などを学んでいたが、礼儀作法や読み書き、計算にはあまり力を入れていなかった。王都へ行く機会がほとんどなく、地方の下級貴族には必要性が薄いと考えられていたためである。ヴェンデリンは将来に備え、書斎で知識を得ようとした。

書斎の蔵書

書斎には歴史、地学、数学、生物、魔物学、料理など幅広い本が収められていた。この世界の言葉は日本語に近かったが、庶民向けの文章では漢字が使われず、高位の者が使う文章には漢字や英単語、ローマ字が混じっていた。ヴェンデリンは前世の知識によって難しい文章も問題なく読めた。

魔術書との出会い

本棚には初級から上級までの魔術書や、錬金術、魔道具作りの本が並んでいた。魔法の存在を確信したヴェンデリンは、自分にも才能があるかもしれないと期待しながら本を手に取った。

希少な魔法使い

昼食時、エーリッヒは魔法の才能を持つ者が千人に一人ほどしかおらず、その半数は火種や少量の水を出す程度だと説明した。強力な攻撃魔法や身体強化、通信、移動、金属精製、魔道具作製を行える者はさらに少なく、王国は才能を見逃さないよう魔術書を安価で流通させていた。

独立への希望

ヴェンデリンは子供らしく魔法への憧れを示し、すぐに修練を始めようとした。家族の多くは開墾や剣の稽古に関心を向け、末子である彼をほとんど気に留めていなかった。最低限の生活は保障されていたものの、ヴェンデリンは一刻も早く自立する力を得たいと願った。

第二話 魔法を訓練してみる 

魔法の才能

ヴェンデリンは書斎の水晶玉を使い、自身に魔法の才能があることを確認した。魔力を体内で循環させる訓練によって魔力路と魔力袋を成長させられると知り、魔法を自立の手段にしようと考えた。

初級魔法の習得

ヴェンデリンは火、水、風、土の初級魔法を次々と成功させた。詠唱や魔法陣を必要とせず、頭の中で発動する光景を思い浮かべるだけで扱えたため、一週間後には中級魔法の訓練へ進んだ。

一人きりの修練

家族はヴェンデリンの魔法に期待せず、成果を尋ねることもなかった。彼は朝に武芸を学び、昼から夜まで読書と魔法の訓練を続け、明かりの魔法によって夜間にも本を読めるようになった。

森での中級魔法

屋敷内で攻撃魔法を使えないため、ヴェンデリンは裏手の森で中級魔法を試した。基本魔法だけでなく、応用魔法や独自の術も研究し、半径一キロほどの人間や動物を把握できる探知魔法を身につけた。

初めての森歩き

ヴェンデリンは木の実拾いを名目に父の許可を得て、森へ入った。探知魔法で熊や猪を避けながら、山菜や薪を集め、軽量化や筋力強化、回復魔法を使って五歳の体を補った。

魔法の石矢

ヴェンデリンは石で矢を作り、風の力で飛ばす独自の魔法を開発していた。何度も外しながら狙いを修正し、捕獲の難しいホロホロ鳥を二羽仕留めた。獲物は夕食に並び、彼は初めて家族全員から褒められた。

豊かになった食卓

ヴェンデリンは毎日のように森へ通い、ホロホロ鳥や山菜、野苺、自然薯を持ち帰った。黒パンと薄いスープだけだった食卓に肉や副菜、ジャムが加わり、家族からも役立つ存在として見られるようになった。

報告の魔法

森の奥でヴェンデリンは、価値のある物の場所を光で知らせる報告の魔法を試した。自然薯や毒草、果実の位置を見つけ、掘削魔法や毒を見分ける魔法も使いながら採集を進めた。

語り死人の噂

夕食の席で、父アルトゥルは猟師が語り死人を目撃したと明かした。それは五年前の魔の森討伐で死んだ者の一人と考えられ、当時はバウマイスター騎士領から七十七人、ブライヒレーダー辺境伯軍から千九百二十五人が戻らなかった。

死者の帰郷

語り死人は故郷へ戻ろうとする死霊系の魔物であり、理性を失って襲う者もいれば、願いを叶えることで成仏する者もいた。領内の老神父には捜索が難しく、アルトゥルはヴェンデリンに森で注意するよう告げたが、ヴェンデリンは語り死人に興味を抱いた。

第三話 魔法のお師匠様 

語り死人アルフレッド

森に入ったヴェンデリンは、探知魔法をすり抜けた語り死人アルフレッド・レインフォードと出会った。アルフレッドは生前、ブライヒレーダー辺境伯家のお抱え魔法使いであり、自身の魔法を継ぐ弟子を探し続けていた。ヴェンデリンの魔力と技量を見抜いた彼は、願いを叶えて成仏するためにも弟子になるよう求めた。

師弟の修練

ヴェンデリンはアルフレッドを師匠と呼び、森で秘密の修練を始めた。アルフレッドは家族に怪しまれないよう獲物や採集物を用意し、短期間で魔力量を高める器合わせを行った。その結果、ヴェンデリンの魔力量はアルフレッドに匹敵するまで増え、なお成長の余地を残していた。

魔道具の技術

アルフレッドは特殊魔法や魔力操作に加え、魔道具の仕組みも教えた。魔道具には魔法使いが魔力を注いで使う物と、魔力を蓄えた魔晶石によって誰でも使える物があり、後者ほど製作が難しく高価であった。ヴェンデリンは属性ごとの刀身を生み出す魔力剣や、魔晶石の作り方を習得した。

アルフレッドの最期

アルフレッドは孤児から冒険者となり、実力を認められて辺境伯に仕えたものの、魔の森への遠征で主君を守りながら魔力を使い果たして死亡していた。未練から語り死人となった彼は、自分の技を伝えられる魔法使いを探して彷徨い、ヴェンデリンとの出会いによって願いを果たしていた。

聖魔法の卒業試験

肉体の一部がゾンビ化し始めたアルフレッドは、理性を失う前に成仏させてほしいと頼んだ。ヴェンデリンは生命力を魔力で再現する聖魔法を学び、集中と制御を繰り返して青い光線を発動できるようになった。アルフレッドはそれを最後の卒業試験と定めた。

最後の茶会

成仏の前に、アルフレッドは高級なマテ茶を淹れ、ヴェンデリンと最後の時間を過ごした。彼は装備品や魔道具、財産の入った魔法の袋を卒業の餞別として託した。孤児だった自身の幼少期や、魔法で狩りや砂鉄集めをして暮らした思い出を語り、外の世界を楽しむよう助言した。

師匠との別れ

ヴェンデリンは涙を流しながら聖の光線を放った。アルフレッドは温かな光に包まれ、弟子へ技を伝えられたことに満足し、努力を続ければ歴史に名を残す魔法使いになれると言い残した。装備品と魔法の袋を残し、アルフレッドの肉体は光となって天へ昇った。

魔法の袋の遺産

ヴェンデリンが魔法の袋を調べると、アルフレッドの手紙と財産の一覧が見つかった。中には魔法の装備品、魔力剣、弓、希少金属製のナイフ、古代魔法文明の遺跡で得た魔道具などが収められていた。

壊滅した遠征軍

手紙には、アルフレッドが辺境伯へ大軍で魔の森に入る危険性を訴えていたことが記されていた。辺境伯軍は魔物の素材に恩賞を出したことで勢いづき、撤退せずに討伐を続けた結果、数十倍の魔物に包囲されて壊滅した。アルフレッドの魔法の袋は、二千人の軍勢が三か月行動できる食料と物資を運ぶ兵站にも使われていた。

封印された財産

袋には大量の食料、水、酒、武器、防具、天幕、魔物の素材や肉、採集品、宝石、金貨、銀貨まで残されていた。しかし五歳のヴェンデリンには活用できず、存在を知られれば命を狙われる危険もあった。彼は成長するまで財産を秘匿すると決め、アルフレッドが用意した獲物を持って家へ戻った。

第四話 跡取り長男の結婚と、イケメン兄さんとの別れ 

六歳のヴェンデリン

転生から約三か月が経ち、ヴェンデリンは六歳になっていた。魔法の才能とアルフレッドから受け継いだ技術や財産を支えに、将来の独立を目指して勉学や武芸、魔法の訓練を続けていた。家族で誕生日を祝ったのは、優しく接してくれる五男エーリッヒだけであった。

エーリッヒの進路

エーリッヒは剣を苦手としていたが、弓術と読み書き、計算に優れていた。彼は領地を継ぐ望みがないため、王都で下級官吏の試験を受けるつもりであり、ヴェンデリンと同じくパウマイスター家を出る未来を考えていた。

クルトの結婚

父アルトゥルは、長男クルトがマインバッハ家の次女アマーリエと結婚すると発表した。五年前の魔の森遠征による損失と領地の貧しさから結婚資金を用意できず、クルトは二十六歳まで婚姻を延期されていた。

兄たちの独立

跡取りであるクルトの結婚を機に、成人していた三男パウル、四男ヘルムート、五男エーリッヒは支度金を受け取って家を出ることになった。次男ヘルマンも、魔の森遠征で男子を失った分家の娘へ婿入りし、その家を継ぐ予定であった。

秘匿された魔法

結婚式の食材を集めるため、ヴェンデリンはエーリッヒと森へ入った。そこでエーリッヒは、家族全員がヴェンデリンの魔法を知りながら黙認していたと明かした。幼い八男の才能を領民に知られれば、クルトではなくヴェンデリンを後継者に推す者が現れ、御家騒動に発展する恐れがあったためである。

遠征失敗の余波

五年前の遠征では領民に多数の犠牲が出た一方、バウマイスター本家からは誰も出兵していなかった。増税や労働力不足も続いており、領民の不満が残る中でヴェンデリンの才能を公にすれば、父アルトゥルやクルトへの反発に利用される可能性があった。父はヴェンデリンが成人後に家を出る意思も把握し、森での修練を黙認していた。

結婚式の獲物

ヴェンデリンは探知魔法で獲物を見つけ、エーリッヒが放った矢を魔法で強化した。二人は猪や鹿、穴熊、ホロホロ鳥を大量に仕留め、結婚式の料理に必要な食材を確保した。エーリッヒの正確な弓術を見たヴェンデリンは、矢を一から魔法で作るより、既存の矢を強化した方が効率的だと学んだ。

魔の森遠征の真相

エーリッヒは、先代ブライヒレーダー辺境伯が未開地の開発よりも、魔物の素材や希少な薬草を求めて遠征を進めたのだろうと考えていた。大軍を動かす名分として開拓を掲げた結果、魔物を刺激して壊滅し、パウマイスター家にも長く続く負担を残していた。

二つの結婚式

アマーリエ一行が到着し、老司祭のもとでクルトとの結婚式が行われた。続いてヘルマンも分家の娘と結婚し、婿として家を継いだ。ヴェンデリンは兄たちとの年齢差や相続問題から距離を置かれており、式の後も親しい会話はほとんどなかった。

エーリッヒとの別れ

パウル、ヘルムート、エーリッヒは商隊に同行し、兵士や下級官吏を目指して王都へ旅立った。エーリッヒは成長したら王都へ来るようヴェンデリンに告げた。ヴェンデリンは唯一親しく接してくれた兄を見送り、あと九年ほど領地で孤独に過ごさなければならない現実を受け入れた。

第五話 ボッチで探索と修行を行う 

怠け者の八男

兄たちが家を出て一か月後、ヴェンデリンは領民から働かない末子と思われながら、広大な未開地を探索していた。その評判は、魔法を領地開発に使って後継者争いを招かないよう、父やクルトが意図的に広めたものであった。

未開地の探索

ヴェンデリンは飛翔と瞬間移動を使い、三週間かけて領内各地に移動地点を設定しながら地図を作った。未開地には農地や河川、森林のほか、鉄や金銀、宝石、ミスリル、オリハルコンの鉱床まで存在していたが、開発に必要な人口と資金がなく、活用できる見込みはなかった。

錬金術の修練

人のいない未開地は、上級攻撃魔法や錬金術の訓練場所となった。ヴェンデリンは鉱石から金属を抽出してインゴットを作り、銀に魔力を加えてミスリルを生成しながら、魔力量と技術を高めていった。

魔の森と南の海

ヴェンデリンは魔の森まで到達したが、師匠すら命を落とした危険を考え、成人するまで入らないと決めた。その後は上空を飛んで南の海岸へ到達し、塩を確保したものの、味噌と醤油の製造に一年を費やした。

米への渇望

七歳になったヴェンデリンは、大量に完成した味噌と醤油を前に米を求めた。領内では栽培されていなかったが、南方地域には存在すると知り、最大の商業都市ブライヒブルクへ向かうことにした。

山脈越え

ヴェンデリンは家族や領民に飛翔を目撃されないよう山道を進み、途中で瞬間移動の地点を増やしながら一週間で山脈を越えた。商隊なら片道でも半月以上かかる道を短縮し、人口約二十万人のブライヒブルクを目にして感激した。

偽りの身分

七歳の貴族の八男だと知られないよう、ヴェンデリンは近隣農村の平民を装った。入街税を払い、姓を持たないヴェンデリンとして商業ギルドへ登録し、身分証代わりとなる会員証を手に入れた。

初めての商売

ヴェンデリンは道中で狩った四羽のウサギを市場に並べた。魔法で適切に処理した肉と毛皮は商人に高く評価され、全て銀貨二枚で売れた。売上の一割をギルドへ納め、初めて自分の力で商売を成立させた。

念願の米

ヴェンデリンは父に頼まれたと偽り、米の相場を尋ねた。近くの店で十キロの米を購入すると、すぐに瞬間移動で家へ戻り、念願の米を炊こうとした。

幕間一 使い魔が欲しい 

使い魔探し

一人で過ごす時間が増えたヴェンデリンは、寂しさを紛らわせるため使い魔を得ようと考えた。使い魔には動物との高い親和性が必要であったが、試しに肉で狼を誘うと群れに襲われ、全て返り討ちにして毛皮へ変える結果となった。

相次ぐ失敗

ヴェンデリンは狼以外の動物にも接触を試みたが、猪や鹿まで好戦的に襲いかかってきた。使い魔となる動物は見つからず、魔法の袋に肉と毛皮の在庫が増えただけであったため、孤独を受け入れて魔法の鍛錬へ戻った。

銅鉱山の発見

飛翔と探知の魔法で未開地を調査していたヴェンデリンは、光を放つ岩山を見つけた。鑑定によって銅鉱石と判明し、翌日には金や銀も含む鉱山であることを確認した。鉱石の探索と精製は、魔力量と魔法の精度を高める訓練にもなっていた。

米を使った食生活

ヴェンデリンはブライヒブルクで購入した米を魔法で炊き、握り飯にして魔法の袋へ保存していた。味噌や醤油で煮た肉や魚を具にし、卵と酢を風魔法で混ぜてマヨネーズも作るなど、自分が食べる分だけ前世に近い食事を整えていた。

大熊との遭遇

銅のインゴットを作っていたヴェンデリンは、巨大な熊が襲わずに自分を見つめていることに気づいた。波長が合ったと期待し、使い魔にしようと肉を差し出したが、近づいた熊は突然牙を剥いて襲いかかってきた。

砕かれた期待

ヴェンデリンは熊の攻撃をかわし、魔法の矢で脳天を撃ち抜いた。熊は毛皮や肉、薬の材料となる胆を残したが、ヴェンデリンは再び使い魔を得られず、異種間の意思疎通の難しさと孤独な生活が続く現実を思い知った。

幕間二 魔法の才能がある末っ子 

アマーリエの疑問

パウマイスター家へ嫁いだアマーリエは、普段の行動が見えない義弟ヴェンデリンについて義母ヨハンナに尋ねた。ヴェンデリンは幼い頃から手がかからず、家族が開墾に追われる中で一人書斎に籠もり、読み書きや計算を身につけていた。

放置された八男

ヨハンナは、ヴェンデリンを放置してしまったことを認めた。予想外に生まれた八男であり、魔の森遠征の損害を補うため家族全員が忙しかったためである。それでもヴェンデリンは不満を漏らさず、六歳頃には年上のエーリッヒと対等に話せるほど成長していた。

ヴェンデリンの才能

ヴェンデリンは勉学だけでなく魔法の才能も持っていた。ヨハンナたちは実力の詳細を確かめていなかったが、成人後に家を出ても生活に困らないと考えていた。結婚式で振る舞われた大量の肉も、表向きはエーリッヒの功績とされていたが、実際にはヴェンデリンの魔法による成果であった。

御家騒動の危険

アマーリエはヴェンデリンの力を領地開発に使うべきだと考えたが、ヨハンナは御家騒動を招くと説明した。領民や名主たちが魔法に優れたヴェンデリンを次期当主に推せば、クルトを支持する者との対立が生まれ、外部の援軍も望めない領内で内乱に発展する恐れがあった。

次期当主夫人の立場

ヨハンナは、ヴェンデリンが当主になればアマーリエも次期当主夫人の地位を失うと指摘した。アマーリエは、領地の発展よりもクルトが家を継ぎ、自分と将来の子供たちの立場を守る必要があると理解した。

母としての選択

ヴェンデリン自身は領地に興味を持たず、成人後は外で生きるつもりであった。ヨハンナは、彼を自由にさせることがクルトとヴェンデリンの双方を争わせない最善の道だと考えていた。アマーリエはその判断を冷たさではなく、息子同士の争いを避けようとする母の愛情として受け止めた。

第六話 ブライヒブルクでの日々と極小な家督騒動 

四年間の孤独な生活

十一歳になったヴェンデリンは、家では魔法の才能を警戒されながら、未開地や海岸、無人島で魔法や錬金術の修練を続けていた。狩猟や採集、鉱石の精製、食品作りに没頭した結果、魔法の袋には大量の塩や砂糖、金属、食料が蓄えられていた。

ブライヒブルクでの日常

ヴェンデリンは数日ごとにブライヒブルクへ出向き、獲物を売って米や大豆などを購入していた。短粒種やもち米から飯や餅を作り、味噌、餡子、カレーなども再現した。街の図書館にも通い、正体を隠したまま知識を増やしていた。

兄たちの近況

エーリッヒは王都で下級官吏となり、上司の一人娘との結婚を視野に入れていた。パウルとヘルムートも王都の警備隊で働いており、それぞれ自立した生活を送っていた。ヴェンデリンは数か月ごとに届くエーリッヒの手紙へ返事を書き続けた。

冒険者予備校への進路

ヴェンデリンは十二歳から入学できる冒険者予備校の存在を知った。成績優秀者は学費を免除され、実習にも参加できるため、家を早く出る手段として入学を決意した。父アルトゥルも、学費と生活費を自力で賄うことを条件に反対しなかった。

森に現れた六人

森で瞬間移動を使おうとしたヴェンデリンは、探知魔法で六人の気配を察知した。姿を現したのは名主クラウス、父の妾レイラ、腹違いの兄姉であるヴァルター、カール、アグネス、コローナであった。

当主就任の要請

クラウスは、ヴェンデリンにバウマイスター家を継いでほしいと求めた。父アルトゥルは健在で、クルトとその長男もおり、ヴェンデリンの継承順位は低かったため、彼は荒唐無稽な提案として拒絶した。

魔の森遠征の真相

クラウスは、十年前の遠征が先代ブライヒレーダー辺境伯の病気の長男を救うため、古代竜の血から霊薬を得ようとした計画だったと明かした。アルトゥルは資金と開発への期待から協力し、領民百人を出兵させたが、生還者は二十三人にすぎなかった。

領民への裏切り

遠征後、新当主となったブライヒレーダー辺境伯は戦死者へ見舞金を出したが、アルトゥルはその一部を領地財政のために取り上げていた。さらに遠征の責任を自ら望んだ開拓事業だったことにする条件も受け入れたため、犠牲者の家族や分家の不信を深めていた。

過酷な開墾作業

労働力を失った後もアルトゥルは開墾を進め、自身の丈夫さを基準に領民へ重労働を課していた。クルトも父に意見できず、作業の効率や休息への配慮を欠いたため、二人への評判は悪化していた。

領地からの人口流出

領民たちは新たな開墾を避けるため子供を増やさなくなり、家を継げない男子や女子は商隊に同行して領外へ出るようになっていた。このままでは人口が減少し、バウマイスター騎士領は過疎化するとクラウスは危惧していた。

露見した魔法の才能

ヴェンデリンが魔法を使えることも領民に知られ始めていた。領地発展に利用せず、クルトへの相続を守るため遠ざけるアルトゥルの姿勢を見て、領民たちは将来よりも家の存続だけを重んじていると見限りつつあった。

継承争いの拒絶

ヴェンデリンは、魔法に依存して領地を発展させても、自身が死ねば維持できないと指摘した。強引に当主となればアルトゥルやクルトを支持する者との争いも避けられず、中央から処罰される危険もあったため、提案を聞かなかったことにすると告げた。

謀反への不安

クラウスたちから離れたヴェンデリンは、自身まで謀反の疑いをかけられる可能性を恐れた。しかし父へ相談することにも危険を感じ、ひとまずクラウスを無視すると決めた。苛立ちを紛らわせるため未開地で大規模な爆発魔法を放ち、巨大な穴を作った。

幕間三 俺は出ていきたいのに 

クラウスからの逃避

クラウスから家督相続を持ちかけられたヴェンデリンは、兄たちとの争いや謀反の疑いを恐れた。しかし相談できる相手もおらず、探知魔法で他人を避けながら、早朝に家を出て夜遅く戻る生活を始めた。食事も外で済ませるようになり、家では寝るだけとなった。

アマーリエとの交流

夜に帰宅したヴェンデリンは、義姉アマーリエからエーリッヒの手紙を受け取った。アマーリエは漢字を含む文章を読める数少ない家族であり、ヴェンデリンが父へ獲物を渡して手紙の送料を補ったことで、実家へ便りを出せる回数も増えていた。それ以来、二人は以前より会話を交わすようになっていた。

エーリッヒへの相談

ヴェンデリンはクラウスの提案についてエーリッヒに相談していた。届いた返事には、エーリッヒ自身も家を出る前に、クルトではなく領主になるようクラウスから勧められていたと記されていた。

クラウスの野心

エーリッヒは、クラウスが有能である一方、強い野心を持つ人物だと警告した。クラウスは他の名主より優位に立つため娘レイラを父の妾とし、領内の税収や帳簿を任される地位を得ていた。ヴェンデリンが当主になれば同腹の兄たちとの関係が悪化し、代わりにレイラの子供たちやその婚姻先へ頼るため、クラウス一族の影響力が増すと考えられた。

領地発展との結び付き

クラウスの主張には、優秀な者を領主にして未開地を発展させるという正当性もあった。しかし、その発展には自分の孫たちを有力者にする目的も含まれていた。エーリッヒは、領地とクラウス一族の繁栄を同時に実現しようとしていると見ていた。

沈黙という対策

クラウスの行動を父へ伝えれば処罰が必要になるが、領地は彼がいなければ税の計算すら満足にできなかった。処分による混乱はヴェンデリンへの恨みにもつながり、逆に領民と交流を深めれば新領主への期待を高めて家族から警戒される恐れがあった。

怠け者の八男

エーリッヒは、クラウスと接触せず、領地の仕事に関わらない変わり者の八男として家を出るのが最善だと助言した。ヴェンデリンはその言葉に従うと決め、相談に乗ってくれた兄へ礼状と宝石の原石を送った。

早まった独立

ヴェンデリンは一刻も早く家を離れる方法を探し、意外に身近な手段を見つけた。こうして彼は、十二歳になる直前にパウマイスター家を出ることに成功した。

第七話 冒険者予備校 

冒険者予備校への入学

十二歳になったヴェンデリンは、クラウスの勧誘を避け続けた末にバウマイスター家を離れ、ブライヒブルクの冒険者予備校へ入学した。領地経営に興味はなく、魔法を使って自由に生きる方が自分に合っていると考え、実家へ戻らないつもりであった。

特待生試験

入学試験では冒険者に必要な知識と武芸、魔法の技量が測られた。ヴェンデリンは弓術で高い評価を受け、魔法については実力を隠して中級程度に抑えた。それでも希少な魔法使いとして認められ、学費免除の特待生に選ばれた。

エルヴィンとの出会い

特待生クラスでヴェンデリンは、騎士爵家の五男エルヴィン・フォン・アルニムと知り合った。エルヴィンも家を継げず、剣の才能を生かして冒険者を目指していた。二人は互いをヴェルとエルと呼び合い、同年代では初めての友人となった。

初めての共同狩猟

生活費と実戦経験を得るため、ヴェンデリンとエルは街から離れた草原へ狩りに出た。探知魔法で猪を見つけ、ヴェンデリンが矢を風魔法で強化し、二人で仕留めた。その後は獲物の数を競い、エルがウサギ六羽、ヴェンデリンがウサギ二羽とホロホロ鳥三羽を狩った。

狼に囲まれた二人

帰路でヴェンデリンは、二人の人間が十二匹の狼に囲まれていることを察知した。身体強化と速度上昇を使ってエルを抱えたまま現場へ急行すると、襲われていたのは同じ特待生クラスの女子二人であった。

狼の群れの討伐

エルは二匹の狼を弓で倒し、ヴェンデリンは土壁で女子二人を守った後、魔力の矢で残りを一掃した。救出されたのは槍術を使うイーナ・ズザネ・ヒレンブラントと、魔闘流を修めるルイーゼ・ヨランデ・アウレリア・オーフェルヴェークであった。

イーナとルイーゼ

イーナとルイーゼは、いずれもブライヒレーダー辺境伯の陪臣家に生まれた三女であり、家を継げないため冒険者を目指していた。二人は救援に感謝し、ヴェンデリンの強力な魔法に驚いた。ヴェンデリンは久しぶりに同年代の少女と接し、戸惑いながらも交流を深めた。

狩猟の失敗

イーナたちは初めての狩りで猪を仕留めたものの、処理中の血の臭いによって二つの狼の群れを呼び寄せていた。最初の八匹は自力で倒したが、体力を使い果たして残りの群れに追い詰められていた。エルは前衛二人だけの組み合わせでは遠距離攻撃が不足すると指摘した。

四人での夕食

四人は獲物を買取所へ持ち込み、ヴェンデリンとエルは高額な報酬を得た。ヴェンデリンは助けた二人もレストランへ招き、狩りの反省や互いの能力について話した。イーナとルイーゼは、ヴェンデリンの魔法が既に熟練冒険者に匹敵すると評価した。

四人のパーティ

イーナは、自身とルイーゼが前衛、エルが剣と弓を使う中衛、ヴェンデリンが弓と魔法を担当する後衛となれば、均衡の取れた組み合わせになると考えた。翌日、二人はヴェンデリンとエルに相談せずパーティ申請を済ませていた。ヴェンデリンは戸惑いながらも、四人で行動することを受け入れることにした。

幕間四 同級生の魔法使い

ヴェンデリンへの驚き

イーナは、狼の群れに囲まれたところをヴェンデリンの土壁と魔法の矢に救われ、その実力に驚いた。彼の魔法は、ブライヒレーダー辺境伯家の筆頭魔法使いプランタークに匹敵するほどに見え、同年代の予備校生とは思えない力量であった。

噂の特待生

入学前から、貧しいバウマイスター家の八男が魔法で特待生になったという噂は広まっていた。しかし実力の詳細は隠され、魔法の講師もほとんど来なかったため、イーナたちはヴェンデリンの力量を確かめられなかった。彼はエルヴィンとばかり話し、女子には自分から近づかなかった。

狩猟での失敗

イーナは幼馴染のルイーゼと実績を上げ、ヴェンデリンの仲間候補として認められようとした。しかし初めての狩りで欲を出し、体力配分を誤って二つの狼の群れに襲われた。八匹を倒した時点で消耗し、残る狼に追い詰められたところをヴェンデリンとエルヴィンに救われた。

不器用な感謝

イーナはヴェンデリンへ素直に礼を言おうとしたが、緊張から既に知っている名前や身分を確認してしまった。ルイーゼが親しげに接する一方、ヴェンデリンは恩を着せることなく獲物の分配を気にし、夕食まで奢ったため、イーナは彼を変わったお人好しだと感じた。

三女たちの将来

イーナとルイーゼは陪臣家の三女であり、成人後も実家に残れば不本意な縁談を断れない立場であった。軍への道も狭いため、冒険者として自立することを望んでいた。予備校に通う貴族や陪臣の次男以下も、身分を失わないために名声や収入、婚姻相手を求めて必死であった。

優秀な魔法使いとの縁

イーナは、ヴェンデリンと組めば冒険者として成功し、将来は貴族や有力者の家臣となる道も開けると考えた。婚姻の可能性も意識したが、まずは友人となり、同じパーティに入ることを目標とした。ルイーゼも同じ考えを持ち、ヴェンデリンとの出会いを好機と捉えていた。

四人のパーティ申請

イーナとルイーゼは、二人とも成績上位者であり、ヴェンデリンとエルヴィンの足手まといにはならないと判断した。ルイーゼの提案で、本人たちに相談しないまま四人分のパーティ申請書を提出した。

受理された結成

担任のゼークトは、四人が入学順位上位で戦力の均衡も取れているとして申請を受理した。事情を知らされたヴェンデリンとエルヴィンも、合わなければ解散すればよいと受け入れた。イーナは得られた機会を逃さないため、ヴェンデリンたちの足手まといにならないよう努力すると決意した。

幕間五 とある少女の主家と実家と 

遠征失敗の真相

イーナは、ブライヒレーダー辺境伯家が優秀な魔法使いであるヴェンデリンへ既に注目している可能性を考えた。当代の辺境伯アマデウスは、先代が起こした魔の森遠征の失敗後、若くして家督を継ぎ、周囲の干渉に耐えながら領地を立て直した有能な人物であった。

古代竜の霊薬

先代辺境伯は、不治の病に侵された長男ダニエルを救うため、古代竜の血から作られる霊薬を求めて魔の森へ進軍したと噂されていた。しかし遠征軍は壊滅し、父の戦死を知ったダニエルも、弟アマデウスがいるのだから遠征は不要だったと叫んだ後に急死していた。

隠された責任

遠征は表向き、バウマイスター家からの開拓要請を辺境伯家が受けた結果とされていた。王宮も南部の混乱を避けるため真相を追及せず、バウマイスター家にも処罰を与えなかった。当代の辺境伯は、責任を押し付けた代償として戦死者への補償や交易面で便宜を図っていた。

槍術師範の家

イーナの実家であるヒレンブラント家は、代々ブライヒレーダー辺境伯家に槍術師範として仕える陪臣家であった。魔の森遠征では道場の弟子を数十人失っていたが、家族がバウマイスター家への恨みを表立って語ることはなかった。

戦場の槍術

騎士の象徴として剣が重視される一方、実際の戦場では遠距離攻撃が可能な弓と、間合いの長い槍が多くの死傷者を生んでいた。そのため槍術師範の待遇は比較的高かったが、陪臣家の三女であるイーナの将来まで保障されるほどの余裕はなかった。

身体強化の才能

イーナは自立するため幼い頃から槍術を学び、わずかな魔力を身体へ流して能力を強化する技を身につけた。その結果、実戦形式の模擬試合では父や兄にも負けない腕前となったが、女であるため師範として家に残れず、強すぎることは嫁入りにも不利に働いていた。

冒険者への道

イーナは家族から娘や妹として愛されていたものの、槍術の後継者にはなれなかった。育ててもらった実家へ迷惑をかけず、自分の力で生きるため、槍術の特待生として冒険者予備校へ入学し、ルイーゼと共に独立することを目指していた。

第八話 当代ブライヒレーダー辺境伯 

四人での狩猟

ヴェンデリン、エルヴィン、イーナ、ルイーゼは四人で狩りを続け、互いの能力を生かして安定した成果を上げていた。ヴェンデリンは探知で獲物を見つけ、適任者へ指示を出す役割から自然とリーダーになっていた。

園遊会への招待

四人はブライヒレーダー辺境伯主催の園遊会へ招待された。急遽礼服や装飾品を用意したため大きな出費となったが、ヴェンデリンはバウマイスター家の代理、他の三人も貴族や陪臣の子弟として参加することになった。

アマデウスとの対面

園遊会でヴェンデリンは、若き当主アマデウス・フライターク・フォン・ブライヒレーダーから声をかけられた。アマデウスは、遠方に住むバウマイスター家の者が集まりへ参加できない事情を理解し、ヴェンデリンが代理として出席したことを歓迎した。

プランタークの追及

ヴェンデリンは屋敷の私室へ招かれ、筆頭お抱え魔法使いプランタークと引き合わされた。プランタークはアルフレッドの師匠であり、ヴェンデリンが身につけた魔法と腰の魔法袋から、アルフレッドとの関係を見抜いていた。

アルフレッドの最期

ヴェンデリンは、語り死人となったアルフレッドから魔法を教わり、器合わせを受けた後、聖魔法で成仏させた経緯を語った。プランタークは弟子が未練を果たして満足して消えたと知り、その話を疑わず受け入れた。

遠征物資の返還

アルフレッドの魔法袋には、十二年前の魔の森遠征軍が使用する予定だった食料、武具、資金、魔物の素材などが残っていた。ヴェンデリンは記録に基づいて軍の所有物を返還し、プランタークの魔法袋へ移した。

一千万セントの報酬

返還された物資は白金貨五十枚分以上の価値があり、ブライヒレーダー辺境伯家の財政を助けるものとなった。アマデウスは回収報酬として評価額の二割に当たる一千万セントをヴェンデリンへ支払った。

アルフレッドの残された遺産

アマデウスは、アルフレッドがブライヒブルクに所有していた屋敷と、冒険者ギルドへ預けていた資金もヴェンデリンへ渡すと告げた。正式な遺産譲渡を受けた以上、領主自身も法に従って接収した財産を返す必要があったためである。

警備された屋敷

アルフレッドの屋敷には状態保存の魔法が施され、家具や設備も当時のまま残されていた。侵入や持ち出しを防ぐ小型ゴーレムが配置されていたため、誰も内部を処分できず、ヴェンデリンが新しい使用者として引き継ぐことになった。

将来への勧誘

アマデウスは、ヴェンデリンが将来冒険者を引退した後、プランタークの後任として辺境伯家に仕えることを望んだ。ヴェンデリンは確約を避けたが、将来の選択肢として受け止めた。こうして彼は住居と財産を得ただけでなく、ブライヒレーダー辺境伯との繋がりも築いた。

幕間六 ロリ系ヒロイン? 

ルイーゼとの休日

四人のパーティが始動して最初の休日、エルヴィンとイーナが武器を見に出かけたため、ヴェンデリンはルイーゼと二人でブライヒブルクを歩いた。ルイーゼに案内されて魔道具店を訪れたが、ヴェンデリンはアルフレッドから受け継いだ品より優れた物がなく、何も購入しなかった。

隠された魔力

ヴェンデリンは、ルイーゼが一般人より多くの魔力を持ちながら、意図的に鍛錬を避けていたことを見抜いた。ルイーゼの実家は魔闘流を伝える家であったが、彼女は幼い頃から父や兄を上回る強さを見せたため、道場で疎まれ、孤立していた。

止めていた成長

ルイーゼは父や兄との差を広げないため、魔力量を増やす訓練を控えていた。しかし狼の群れに追い詰められた経験から、実家への遠慮よりも自分の命を優先し、魔力を鍛えて魔闘流を極めると決意した。同じく強すぎることで孤独を味わったヴェンデリンの存在も、彼女の支えとなった。

魔闘流への特化

ヴェンデリンはルイーゼの鍛錬に付き合った。魔力量は急速に増え、魔闘流での戦闘力も向上したが、彼女は火や水などの魔法を一切発動できなかった。ルイーゼは、魔力を身体強化にしか使えない魔法武術家の適性を持っている可能性が高かった。

女性を縛る立場

ルイーゼの魔力量は辺境伯家に雇われる魔法使いたちを上回るほどになったが、女性であるため家臣として一家を立てる道は閉ざされていた。辺境伯が能力だけを理由に彼女を取り立てれば、実家や家臣団との秩序を乱す恐れもあり、才能があっても宮仕えは容易ではなかった。

家督への無関心

ルイーゼは実家の当主の座に興味がなく、冒険者として自由に生きることを望んでいた。ヴェンデリンもパウマイスター家の家督を価値あるものとは考えておらず、二人は家族が求める地位と自分たちの望みが一致しないという共通点を持っていた。

二人を巡る噂

ヴェンデリンはルイーゼの魔力鍛錬に頻繁に付き合い、二人の距離は近づいていった。その姿を見た予備校生たちの間では、二人が交際しているという噂が広まり、ヴェンデリンが小柄な少女や小さな胸を好むという話まで付け加えられた。

第九話 師匠はセレブだった 

アルフレッドの屋敷

園遊会の翌日、ヴェンデリンは正式に譲られたアルフレッドの屋敷を訪れた。広い庭と高い石塀に囲まれた豪邸で、門や玄関には所有者を識別する魔道具が組み込まれていた。

新たな所有者

ヴェンデリンはアルフレッドの残した手順に従い、門の暗号を解除して自分を新しい使用者に登録した。続いて屋敷を守る四体の小型ゴーレムも停止させ、所有者を変更すると、ゴーレムたちはヴェンデリンを新しい主人として認識した。

魔道具に満ちた暮らし

状態保存の魔法によって、屋敷の内部は十年以上前のまま清潔に保たれていた。上下水道、水洗トイレ、風呂、調理器具などには魔道具が使われ、地下には酒類を収めた倉庫もあった。ヴェンデリンは寮を出て、すぐに屋敷へ移り住むことを決めた。

仲間たちの本部

引っ越しはエルヴィンたちに知られ、三人は豪華な屋敷と設備に驚いた。エルヴィンは屋敷をパーティの本部にすると宣言し、イーナとルイーゼも食事や茶の準備を引き受けた。ヴェンデリンも一人暮らしより賑やかな方がよいと考え、片付けを条件に自由な出入りを認めた。

学期末試験

入学から三か月が経ち、四人は筆記と実技の学期末試験を終えた。冒険者に必要な歴史、地理、魔法、魔物の知識は命に関わるため、特待生である四人も油断せず試験に臨んでいた。

夏休みの計画

二か月間の夏休みを前に、イーナとルイーゼは装備資金を稼ぐため狩りを続けるつもりであった。エルヴィンも、剣の才能を理由に家督争いへ巻き込まれる恐れがある実家へ戻らず、ブライヒブルクに残ると決めていた。

実家との決別

ヴェンデリンも屋敷を得たことで、二度と実家へ戻らず、予備校卒業後もブライヒブルクを拠点にすると考えていた。未開地へは瞬間移動で行けるため、パウマイスター領に住み続ける理由はなかった。

プランタークの指導

ヴェンデリンは夏休みに、プランタークから魔法を学ぶ予定を立てた。膨大な魔力量を持つ一方、熟練者であるプランタークの魔力節約術や独自の魔法、探知技術には学ぶ価値があり、ヴェンデリンは狩りよりも修練を優先しようとしていた。

エーリッヒの結婚式

その計画の最中、エーリッヒから王都で行う結婚式への招待状が届いた。ヴェンデリンは王都を瞬間移動の目的地に登録する好機でもあると考え、出席を決めた。

魔導飛行船の旅

王都までは馬車なら往復一か月かかるが、魔導飛行船なら片道二日半で到着できた。運賃は高額であったため、ヴェンデリンはエルヴィン、イーナ、ルイーゼに代金を貸した。三人は狩りで返済すると約束し、四人は準備を整えて王都スタットブルク行きの魔導飛行船へ乗り込んだ。

第十話 王都行き魔導飛行船にて 

魔導飛行船の旅

エーリッヒの結婚式へ向かうため、ヴェンデリンたちは古代魔法文明の遺産である魔導飛行船に乗り込んだ。ブライヒレーダー辺境伯の代理として王都へ向かうプランタークも同行し、ヴェンデリンに魔物や古代竜について教えていた。

迫る禍々しい魔力

飛行中、プランタークとヴェンデリンは人間や通常の魔物とは異なる強大な魔力を察知した。飛行船は突然航路を変えて全速力で逃走し、乗客たちは説明を求めて騒ぎ始めた。プランタークは辺境伯家の代理人として船長から事情を聞くため、ヴェンデリンを連れて操舵室へ入った。

アンデッド古代竜

飛行船の後方には、船体に匹敵する大きさの骨だけとなった古代竜が迫っていた。プランタークでも正面から勝つのは困難であり、逃走を続けても飛行船の魔力が尽きるため、聖魔法を使えるヴェンデリンが討伐を担うことになった。

最悪の初陣

魔物との実戦経験すらないヴェンデリンは拒んだが、全乗客の命とアルフレッドの弟子としての誇りを背負い、戦うと決めた。プランタークは飛行船を守る魔法障壁を担当し、ヴェンデリンは飛翔、魔法障壁、聖魔法を同時に展開して古代竜へ接近した。

古代竜の聖光

骨竜が放った黒い霧状のブレスは周囲の植物を一瞬で枯らしたが、二人の魔法障壁によってヴェンデリンと飛行船は守られた。ヴェンデリンは骨竜の攻撃をかわしながら、全身を包む聖光を放ち続けた。激しい抵抗を耐え抜いた末、骨竜は浄化されて活動を停止した。

古代竜の遺骸

浄化された骨は美しい光沢を残したまま空中で崩れ始めた。ヴェンデリンはプランタークの指示で骨格一式を魔法の袋へ回収し、さらに直径二メートルほどもある巨大な魔石を手に入れた。戦闘後、彼の魔力はほぼ限界まで消耗していた。

巨大魔石の価値

大商人アルテリオは、魔石の価値を最低でも白金貨千二百枚と見積もった。それは飛行船を動かす魔晶石を大きく上回り、隣国にも存在しないほど希少なものであった。周囲の商人や貴族は、その規模では通常の競売すら行われないだろうと考えていた。

英雄への待遇

飛行船は航路へ戻り、一日半後に王都へ到着した。船を救ったヴェンデリンとプランターク、その同行者たちは最高級の客室へ移され、豪華な食事と待遇を受けた。プランタークは酒を存分に楽しみ、船長の感謝を素直に受け取るべきだと主張した。

アルテリオとの縁

アルテリオは、かつてプランタークと共に老火竜を倒した元冒険者であり、その賞金を元手に大商会を築いていた。ヴェンデリンは討伐を共同作業と考えて利益の半分をプランタークへ渡そうとしたが、彼は船を守った分として一割だけ受け取ると告げ、今後の取引をアルテリオに任せた。

王城からの召喚

王都へ到着すると、プランタークは仕事を理由に先に立ち去った。直後、豪華な鎧を着た騎士が現れ、古代竜討伐を労うため国王が直ちに謁見を望んでいると伝えた。ヴェンデリンは、プランタークが避けた面倒の正体を理解し、王城へ向かうことになった。

巻末 元日本人的に考えて、海には夢が詰まっていると思う 

南の海への挑戦

ヴェンデリンは砂浜と塩、海産物を求め、南方の海を目指した。東西の海岸は断崖と巨大な渦潮に阻まれていたため、魔の森の幅が狭く、飛行する魔物の少ない場所を探し、飛翔魔法で上空を一気に越えた。

無人の砂浜

魔の森の先には、透明な海と人の手が入っていない砂浜が広がっていた。危険な存在がいないことを探知で確かめたヴェンデリンは、魚を釣って鑑定と毒消しを施し、焼き魚にして食べた。岩場では貝やエビ、カニも採れ、久しぶりの海産物を満喫した。

塩の精製

ヴェンデリンはアルフレッドの本に記された魔法を応用し、海水から白く純度の高い塩を精製した。大量の塩を簡単に得られるようになり、その塩を使って味噌や醤油を作ろうと考えた。

味噌造りの失敗

ヴェンデリンは領民から肉と交換して大豆を集め、前世で祖母を手伝った経験を頼りに味噌造りを始めた。しかし魔法で発酵を再現しようとしても材料は腐敗し、何千回もの失敗と一年近い試行錯誤の末に、ようやく味噌を完成させた。

醤油への試行錯誤

味噌溜まりから醤油を作る工程でも失敗を重ねた。上級魔法や独自の魔法を短期間で習得してきたヴェンデリンにとって、味噌と醤油の醸造は予想以上に難しい課題であったが、最終的には両方の製造に成功した。

肉と大豆の交換

大量の大豆を必要としたヴェンデリンは、ウサギや猪の肉と領民の大豆を繰り返し交換した。領民たちは用途を不思議に思いながらも、肉を得られるため交換に応じ、次第に自分たちで大豆を食べず、ヴェンデリンとの取引へ回すようになった。

酒造りと保存甕

味噌や醤油とは対照的に、麦や果物を使った酒造りは容易に成功した。ヴェンデリンは麦焼酎、エール、果実酒を作り、保存用の甕も魔法で製造した。水漏れや破損を繰り返した末、見栄えは悪くても保存に使える丈夫な甕を完成させた。

砂糖の精製

南方の島で自生するサトウキビを見つけたヴェンデリンは、魔法で砂糖を精製した。砂糖は生産量が少なく高価であり、貧しいバウマイスター家ではほとんど使われていなかったが、彼は人目のない土地から自由に材料を得られた。

日本の味の再現

味噌、醤油、塩、砂糖を揃えたヴェンデリンは、サバの味噌煮、貝の醤油焼き、鮭に似た魚を使った料理やイクラの醤油漬けを作れるようになった。一年間の魔法修行で得た最大の成果は、日本人として望んでいた食材と調味料を再現したことであった。

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