小説【ダンまち】ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 7 感想・ネタバレ

小説【ダンまち】ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 7 感想・ネタバレ

ダンジョンに出会いを求めるのは 間違っているだろうか 7の表紙画像(レビュー記事導入用)

ダンまち 6巻
ダンまち 8巻

どんな本?

元々は小説の投稿サイトArcadiaで読んでいた小説だった。

大賞を取れたと書かれた後に消されて、書籍化されたら買おうと思い出版されたのが10年前。

もう10年経つんだ、、

その後、コミック化され遂にアニメ化された。

この作品への感情移入感はハンパない。

3巻まで紙の本、Kindle、BOOK⭐︎WALKERでそれぞれ買って保存してる。
それ以降は電子書籍のみのだがKindle、BOOK⭐︎WALKERで購入している。
もちろん、外伝の方も買っている。

読んだ本のタイトル

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 7
(Is It Wrong to Try to Pick Up Girls in a Dungeon?
著者:大森藤ノ 氏
イラスト:ヤスダスズヒト 氏
出版社:SBクリエイティブGA文庫

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あらすじ・内容

新生【ヘスティア・ファミリア】始動!
『戦争遊戯(ウォーゲーム)』という激戦を乗り越え新に眷族となったリリ、ヴェルフ、そして命。
ベルのもう一つの家族。深まる絆。だが、「ここは私達のホーム、女主の神娼殿さ」命を追ってベルが迷い込んでしまったのはオラリオの歓楽街。【イシュタル・ファミリア】が管理する『夜の街』。
「私はこの歓楽街に買われた身です」
そこで少年は囚われの身である極東の少女、春姫と出会う。
蠢く陰謀に呑み込まれるベルが下す選択は──。
『これっきりでいい、なろう、あの人の英雄に──』これは、少年が歩み、女神が記す、── 【眷族の物語(ファミリア・ミィス)】──

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか7

前巻からのあらすじ

アポロンに尻を狙われたベルは、下手な因縁を付けられてアポロン・ファミリアと戦争になってしまった。

解決策は戦争遊戯。

決め方は神会でのくじ引きで攻城戦と決まる。そしてアポロン・ファミリアに協力する事になったソーマ・ファミリアはリリを回収して彼女を監禁してしまう。

彼女を救出するために弱小ファミリア連合でソーマファミリアに突入してリリを解放しようとしたら、リリがソーマの神酒の誘惑に打ち勝って、リリはソーマから改宗を承諾してもう。

そして、ヴォルフもへファイストにお別れを言ってヘスティア・ファミリアに改宗。

タケミカヅチからミコトが志願して1年間の約束でミコトをヘスティア・ファミリアに改宗する。

リューも。
神ヘルメスが、主神アストレアが外部に居るリューに助っ人をお願いして、後押しにシル(フレイヤ)が豊穣の女主人のミアにお願いしてリューも参戦が決まる。

感想

レベル3になったベルくん。
戦争遊戯に勝利してファミリアのホームを手に入れて。

アポロン・ファミリアに戦争遊戯で勝利したベル君を今度はイシュタル・ファミリアが付け狙う。

最初はコソコソしているミコトが夜に出かけたので、心配になりヴォルフとリリとで尾行していたら歓楽街へ来てしまい。

人の流れに押されて逸れてしまい。
偶然にその場で出会ったヘルメスに精力剤を渡されたのが悪かった。

イシュタル・ファミリアの副団長でアマゾネスのアイシャに女を求めて来たのかと言われ。

ベルくんは否定していたが、ヘルメスに渡された精力剤を持っていたから恥ずかしがって否定してるだけだと思われてしまい。
イシュタル・ファミリアのホームの遊郭へと連れて行かれてしまう。
そこにイシュタル・ファミリアのトップ、レベル5のフリュネがベルくんを寄越せと言って来て、アイシャ達と取り合いになる。

それでも何とか逃げ出して数人の客を轢いて、、
ある部屋に入ると、狐人の春姫と出会う。

彼女に匿われてアイシャ達から逃れる事が出来たのだが、、

朝帰りしたのをヘスティアに責められるが、、
罰として街への奉仕活動をさせられる。
そして、神ヘルメスがイシュタルからベルくんの事を聞かれて全て白状してしまったと、豊穣の女主人のミアからフレイヤに報告してくれとお願いする。
それを聞いたシル(フレイヤ)はヘルメスか現場を知るのだが、、

さらに奉仕活動をしていたベルくんとミコトは、春姫とミコト、タケミカヅチ達との縁を知る。

彼女を身請け出来るように稼ごうとミコトとベルくんが決意してダンジョンに潜っていたのだが、、

そんな彼等にイシュタル・ファミリアが襲いかかる。
目的はベル・クラネルを誘拐して女神フレイヤへの当てつけに女神イシュタルの魅了で陥落させる。

副団長のアイシャが春姫のウチデノコズチでレベル4となり、ベルくんを打ち倒して気絶させる。
それに気が付いて救援に来たミコトも昏倒させられて2人はイシュタル・ファミリアのホームに監禁されるのだが、、

フリュネがベルくんを秘密の部屋に連れて行ってしまった。
ベルくん、完全にピンチ!!

それを春姫に救われて、ベルくんは危機を逃れたが、、
春姫を連れて行くのは無理だった。
それでも諦めずにベルくんは、春姫を救うためにイシュタル・ファミリアに突貫するのだが、、

女神イシュタルの前に引きずり出されてしまった。
そんな女神イシュタルが魅了をかけようとするのだが、、、、
ベルくんには魅了が効かなかった。
原因はベルくんのスキル、憧憬一途。

彼のアイズへの思いが強いため、女神の魅了は全く効かない状態。
むしろ目を瞑って暴れる始末。
そしてイシュタルはベルくんの背中のステイタスを読んでしまう。
そして、憧憬一途のスキル能力を読んでしまい、自身の魅了が効かない理由を知る。

そんなイシュタルとベルくんが騒動を起こしている時に、ミコトは春姫を救出に動く。
一回は拒まれて、フリュネ達主導で春姫の魂を殺生石に封印して彼女の能力で全員のレベルを上げてフレイヤ・ファミリアとの戦争に勝とうとしていたのだが、、

ベルくんにイタズラしようとしたら、女神フレイアがブチ切れてイシュタルファミリアの本拠にカチカコミ。

レベル6の小人族のガリバー4兄弟、猫獣人のアレン、白黒エルフのヘディン、ヘグニ、猪獣人のオッタル達が暴れ、イシュタル・ファミリアの戦闘娼婦達が蹂躙される。

レベル3のベルくんを襲っていた、レベル5のフリュネは、レベル6のオッタルにボコボコにされて。
フリュネは女神フレイヤを侮辱したとして他のレベル6の連中の猛攻を受けてフリュネは、、
合掌。

そんな大派閥同士の抗争の隅っこをチョロチョロしていたヘスティア・ファミリア達は春姫を回収して自身のファミリアに連れて帰ってしまう。

お陰でイシュタル・ファミリアの主神イシュタルはフレイヤに神界に強制送還されて、イシュタル・ファミリアは解散。

歓楽街を仕切っていた大手クランが消えてしまった。
歓楽街が機能停止して号泣する歓楽街に通っていた男神達。
恥ずかしいので回収しに来る眷属達。

春姫はヘスティア・ファミリアに加入。
戦闘娼婦のアイシャも加入しようとしたのだが、ヘスティアが拒否して別のファミリアに行く。

ベルくんにイタズラしようとしたイシュタルはフレイヤ・ファミリアに潰された。

マジで恐ろしい。
フレイヤのベルくんへの執着。

ダンまち 6巻
ダンまち 8巻

最後までお読み頂きありがとうございます。

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ダンまち 6巻
ダンまち 8巻

展開まとめ

プロローグ 神は無慈悲な淫都の王

迷宮での採掘依頼

湿った空気が漂う迷宮の岩窟では、ヘルハウンドやアルミラージなどの怪物が獲物を求めて徘徊していた。そんな迷路状の洞窟の奥で、ヴェルフとリリは岩壁を削りながら鉱石の採掘を行っていた。ベルと命は周囲の警戒を担当し、袋小路の空間で四人のパーティは作業を続けていた。しかし目的の鉱石はなかなか見つからず、掘り跡ばかりが増えていく状況であった。

紅縞瑪瑙の発見

作業を見守っていたベルは、ヴェルフの足元にあった予備の鶴嘴を手に取り、試しに岩壁を打ち付けた。すると崩れた壁面から光沢のある鉱石が転がり落ち、それが依頼品である紅縞瑪瑙であることが判明した。パーティは歓喜し、見つけた鉱石を回収してすぐに撤退した。

依頼達成とベルの幸運

袋小路から安全な通路へ移動した一行は、紅縞瑪瑙を二つ以上確保したことで冒険者依頼の達成を確認した。さらに先の戦闘でアルミラージの毛皮も入手しており、もう一つの依頼も完了していた。ヴェルフは、ベルと行動すると鉱石や戦利品がよく見つかると語り、ベルは昇格時に発現した能力「幸運」の影響を思い出していた。

新生ヘスティア・ファミリアの初探索

ベル達は、戦争遊戯を経て新たに結成されたヘスティア・ファミリアとして初めてダンジョン探索を行っていた。命が仲間に加わったことで隊列の役割が整い、ベルが前衛として攻撃に専念できる体制が整っていた。実際にモンスターの群れが現れると、ベルとヴェルフが先陣を切り、命が槍で援護しながら瞬く間に敵を殲滅した。

怪物進呈による混乱

戦闘が終わり、リリが戦利品の回収を始めようとしたその時、通路の奥から大きな足音と叫び声が近づいてきた。やがて現れたのは、大量のモンスターに追われながら逃げてくる冒険者達であった。彼らはベル達を見ると、追ってきた怪物を押し付ける形で逃げ去ろうとし、怪物進呈が行われた。三十を超えるモンスターを押し付けられたベル達は慌てて撤退を決断し、ダンジョンから全力で逃走することになった。

迷宮都市オラリオの夜

夜の迷宮都市オラリオは、弦月の下で無数の魔石灯に照らされていた。ギルド本部である万神殿を中心に冒険者通りが賑わい、工業区では鉄を打つ音が響き、繁華街では歓声が上がっていた。ダンジョンの恩恵によって繁栄する都市の喧騒は、夜になっても止むことがなかった。

夜の街と娼館街

都市の一角には、他の区域とは異なる雰囲気を持つ娼館街が存在していた。そこでは男と女が快楽を求めて交わり、無数の娼館が欲望を金へと変えていた。灯りを抑えた通りは妖しげな空気に包まれ、都市の他の場所とは切り離されたような退廃的な世界が広がっていた。

女神イシュタルの嫉妬

その娼館街の中でも最も高い宮殿の最上階に、美の女神イシュタルがいた。金銀の装飾をまとい、神の美貌を誇る彼女は都市中央にそびえる白亜の巨塔を見上げていた。そこにいる同じ美の神フレイヤが、都市で最も美しい存在として称えられ、さらに最強派閥を率いて頂点に立っていることをイシュタルは激しく憎んでいた。自分こそが美の頂点であると信じるイシュタルは、いつかフレイヤをその座から引きずり下ろすと決意していた。

イシュタル・ファミリアの娼婦達

イシュタルは宮殿の大広間に降り、団員である娼婦達に客をもてなすよう命じた。アマゾネスを中心とした団員達は歓声を上げて動き出し、色香で男達を誘い込んでいった。男達は快楽に酔いながら金や情報、さらには愛までも差し出し、彼女達の餌食となっていった。こうして娼館街では、退廃と享楽に満ちた宴が夜通し続いていた。

遊郭の少女

その娼館街の中、赤い柱と壁で造られた異国風の遊郭では、張見世に多くの娼婦が並んで客を誘っていた。しかし、その中で一人だけ静かに座っている少女がいた。鮮やかな紅の打掛をまとい、金の長髪と翠の瞳、獣の耳と尾を持つ彼女は、首に黒い輪をはめられていた。座敷牢のような場所に閉じ込められた少女は、夜空の上弦の月を見上げながら、静かに残された日数を数えていた。

あと七日である、と。

1章 順風満帆?

ベルの昇格による都市の騒動

迷宮都市オラリオでは、ある知らせによって都市中がざわめいていた。ギルド本部の巨大掲示板には、ベル・クラネルがわずか一ヶ月でレベル3に到達したという公式昇格の報せが貼り出されていたのである。戦争遊戯の興奮が冷めない中で伝えられたその情報は、冒険者達や神々を大きく騒がせることになった。

新生ヘスティア・ファミリアの新居

その頃ベルは、ヘスティアと共に引っ越し作業を行っていた。戦争遊戯の勝利によって手に入れた旧アポロン・ファミリアの館を改装し、新たな本拠として使うことになったのである。三階建ての石造りの屋敷は豪邸と言えるほど広く、前庭にはヘスティア・ファミリアの炎と鐘の紋章が掲げられていた。地下の教会に住んでいた頃を思い出しながらも、仲間と共に暮らせる広い家を得たことにベルは喜びを感じていた。

命の歓喜と極東式の風呂

屋敷の三階には命の要望によって設けられた風呂があり、彼女はその存在に感激していた。改装された浴室には極東式の檜風呂が設置されており、湯気の立つ大浴槽を前に命は誘惑に抗えなくなる。引っ越し作業の最中であるにもかかわらず、少しだけと自分に言い訳して湯船に浸かり、故郷を思い出しながら至福の時間を味わっていた。

ヴェルフの新しい鍛冶工房

屋敷の裏庭にはヴェルフのための工房も建てられていた。設備の整った鍛冶場を前にヴェルフは満足し、ヘファイストス・ファミリアから持ってきた道具や素材を配置していく。女神ヘファイストスから譲られた金槌を握りながら、彼は新しい環境で再び鍛冶師として歩み出す決意を固めていた。

広すぎる屋敷とリリの悩み

一方リリは屋敷の間取りを調べながら、部屋の多さに頭を悩ませていた。三階建ての広大な屋敷には地下室や屋根裏部屋まであり、五人しかいないヘスティア・ファミリアではとても管理しきれない広さだった。家政婦を雇うべきかと考えながらも、ベルが女性に目移りするのではないかという不安から、簡単には決断できずにいた。

カサンドラとダフネとの再会

引っ越し作業の途中、ベルは屋敷の外で言い争う二人の少女を見つけた。彼女達は戦争遊戯で戦った元アポロン・ファミリアの団員、カサンドラとダフネであった。カサンドラはこの館に置き忘れた枕を取りに来たと言い張っていたが、その理由は予知夢でここにあると見たからだというものだった。ダフネはその話を信じず止めようとしていたが、ベルは枕を探すことを引き受けた。

予知夢の通りに見つかった枕

ベルが館の中を探すと、カサンドラの言った通り柱の隙間に枕が挟まっているのを見つけた。予知夢の内容通りに枕が見つかったことにダフネは驚き、カサンドラはベルに深く感謝した。二人は礼を言ってその場を去っていったが、別れ際にダフネはまた来ると言い残していった。

入団希望者募集の開始

作業を続けていたベルは、ヘスティアに呼ばれて屋敷の二階へ向かった。そこで彼女から見せられたのは、ヘスティア・ファミリアの入団希望者募集を知らせる広告だった。ヘスティアは既にギルドの掲示板などにこの広告を貼り出しており、会合の時間も今日であると告げる。

集まり始める入団希望者

ベルが窓から外を見下ろすと、屋敷の正門前には多くの人々が集まり始めていた。様々な種族の亜人達が人垣を作り、新しく名を上げたヘスティア・ファミリアへの入団を希望して集まってきていたのである。

入団希望者の前で起きた異変

入団希望者の面接が始まろうとしていた頃、命は引っ越し作業中に木箱から一枚の紙を落とし、それを拾い上げて内容を確認した。一方、屋敷の前庭では五十人以上の入団希望者が集まり、ベルとヘスティアはその光景に大きな喜びを感じていた。戦争遊戯の勝利とベルの昇格によって、ヘスティア・ファミリアは都市で一躍注目を集めていたのである。集まった人々の中には、先ほど出会ったダフネとカサンドラの姿もあり、カサンドラはヘスティア・ファミリアへの入団を希望していた。ベルはその申し出を心から喜び、派閥が賑やかになる未来を思い描いていた。

面接開始直前の衝撃

ヘスティアが面接開始を宣言しようとしたその瞬間、屋敷から命が慌てて飛び出してきた。彼女は荷物の中から見つけた契約書を差し出し、その内容を叫ぶ。それは二億ヴァリスという莫大な借金の契約書であり、ヘスティアの署名とヘファイストス・ファミリアの名が記されていた。その事実が明らかになった瞬間、ベル達だけでなく入団希望者達も衝撃を受け、騒然となる。やがて入団希望者達は一斉に去り、前庭に残ったのはベル達だけとなった。ショックを受けたベルはその場で倒れ、入団式は完全に崩壊した。

借金の事情の説明

その後、屋敷の居室でヘスティアは事情を説明することになった。借金はベルの武器である《神様のナイフ》を作ってもらう際に生じたものであり、鍛冶神ヘファイストスに依頼した代償として二億ヴァリスの負債を背負うことになったのだという。貴重な武器であるこのナイフは特別な一振りであり、その価値ゆえに莫大な金額が必要になったのだった。だが、この借金はあくまでヘスティア個人のものであり、眷族であるベル達に背負わせるつもりはないと彼女は語った。

厳しい現実

しかし現実として、借金の存在は都市中に噂として広まり、ヘスティア・ファミリアは危険な派閥と見られてしまった。そのため入団希望者は完全に消え、派閥は再び少人数のまま活動することになった。さらに戦争遊戯の勝利とベルの昇格により派閥の等級が上がり、ギルドへ納める税金も増加していた。改装費で資金の大半を使い果たしている現状では、迷宮探索によってこれまで以上に稼がなければ生活すら難しくなることが明らかとなった。

ベルの決意

事情を聞いたベルは、自分のために作られたナイフの借金をヘスティア一人に背負わせることはできないと考えた。これまで幾度も命を救ってくれたその武器は、神と眷族の絆そのものであると感じていたからである。ベルはヘスティアに対し、借金返済を手伝わせてほしいと真剣に願い出た。

ヘスティアの願い

ベルの申し出を受けたヘスティアは、借金は自分の責任として必ず返すと改めて宣言した。その代わり、眷族達には自分を支えてほしいと頼んだ。温かな食事や家族の団欒、そしてこのホームという居場所を守り、共に過ごしてほしいという願いであった。その言葉を受け、ベル達は主神を支えながら共に歩んでいくことを誓った。

新たな目標

話し合いの末、ヘスティア・ファミリアの当面の目標は生活費の確保と税金への備え、そして資金集めであると決まった。迷宮探索を中心に活動を続けながら、団員の勧誘も可能な限り行う方針が確認された。最後に全員で手を重ね、これからの努力を誓い合った。

家族としての時間

その夜、ささやかながらもごちそうを囲むことになった。鳥肉の網焼きや魚の丸焼き、御握りやジャガ丸くんなどを食卓に並べ、ベル達は笑いながら食事を楽しんだ。賑やかな食卓の光景を見ながら、ベルはこの仲間達こそがもう一つの家族なのだと実感する。祖父を失い孤独だった自分が、この場所で新しい家族と出会えたことに、深い感謝を抱くのだった。

引っ越し作業の続き

ヘスティア・ファミリアの小さな宴会から一夜が明け、翌朝を迎えた。ヘスティアが朝早くからバイトに出かけた後、ベル達は屋敷に残り、引っ越し作業の続きを進めていた。ダンジョン探索を再開するためにも、その日中に作業を終わらせる必要があり、ベル達は屋敷中を駆け回りながら荷物の整理に取り掛かっていた。

千草の来訪

作業中、リリが命を呼びに来て、タケミカヅチ・ファミリアの千草が訪ねてきていると告げた。命が玄関へ向かうと、前庭には落ち着かない様子の千草が立っていた。命と同じ極東出身で幼馴染でもある千草は、何かを急いでいる様子で命に話しかけた。

慌ただしい会話

ベル達は窓からその様子を見守っていたが、会話の内容は聞き取れなかった。ただ、話が進むにつれて命が大きく驚いた声を上げたことから、何か重要な知らせであることだけは伝わってきた。やがて千草は慌ただしくその場を去り、命も屋敷の中へ戻ってきた。

動揺する命

ベルが事情を尋ねると、命は何でもないと答え、はっきりした説明を避けた。そしてどこか動揺した様子のまま、作業を急ごうと言って再び荷物を運び始めた。そのぎこちない態度に、ベル、リリ、ヴェルフは互いに顔を見合わせ、何かが起きているのではないかと感じていた。

2章 走れクラネル

命の不自然な行動

夕食を終えた夜、命は突然、早めに就寝すると告げてリビングを後にした。その頃ヘスティアは借金返済のためにバイトの残業に励んでおり、屋敷にはベル、ヴェルフ、リリ、命の四人だけが残っていた。命は三階の自室へ向かうように見せかけながら、途中で進路を変え、二階の窓から裏庭へ飛び降りて密かに屋敷を抜け出した。

尾行を開始するベル達

命の行動を不審に思っていたヴェルフとリリは、あらかじめ屋敷の外で待機しており、ベルも巻き込んで尾行を開始した。朝に千草と話して以降、命は一日中落ち着きなく街の方を見ていたため、二人は夜に何か行動を起こすと予想していたのである。命は街の南へ向かい、ベル達は距離を保ちながら追跡した。

歓楽街への到着

やがて命は千草と合流し、二人でさらに街の奥へ進んでいった。追跡するベル達は、二人の進路が都市南東部へ向かっていることに気付き、ヴェルフとリリはベルに引き返すよう命じた。そこは歓楽街であり、ベルには早すぎる場所だと判断したためであった。しかし説得している間に命達を見失いかけ、三人はそのまま追跡を続けることになった。

歓楽街に足を踏み入れたベルは、娼婦達が客を誘う光景を目の当たりにし、強い衝撃を受けて大きく動揺した。昼間は静まり返るこの区画は夜になると賑わう場所であり、ベルはこれまでその存在すら知らなかったのである。

命と千草の困惑

命と千草は歓楽街の中を進み、やがて第三区画で男神達に囲まれてしまった。遊びに誘う神々に困り果てているところへヴェルフとリリが介入し、神々を追い払うことで二人を解放した。そこで命は、ベル達に尾行されていたことを知って驚くことになった。

歓楽街に来た理由

事情を問われると、千草が口を開き、極東出身の知人によく似た人物が歓楽街にいるという話を聞いたことを説明した。その人物は数年前から行方不明となっていたため、真偽を確かめるために二人で探しに来たのだという。歓楽街という場所のため仲間に相談することをためらい、秘密にして行動していたのであった。

また千草は、幼馴染である桜花を歓楽街へ連れてきたくなかったため、命だけに相談したことも明かした。事情を理解したヴェルフとリリは二人の軽率さを注意し、この区画が特定の派閥の勢力圏であるため不用意に動くべきではないと警告した。

ベルの失踪

一行がその場を離れようとしたとき、ヴェルフはベルの姿が見当たらないことに気付いた。命と千草もベルを見ていなかったと答え、場の空気が一瞬で凍り付く。歓楽街の喧騒の中で、ベルがどこへ行ったのか誰も分からないまま、不安が広がっていった。

歓楽街で仲間とはぐれるベル

命達を追って歓楽街を進んでいたベルは、娼婦と男性客の人波に呑まれ、ヴェルフ達とはぐれてしまった。何とか元の道へ戻ろうとしたものの、入り組んだ街路で方向を見失い、どこにいるのかもわからないまま一人で彷徨うことになった。四方から漏れ聞こえる艶めいた声や、行き交う娼婦達の姿は、ベルの羞恥と不安をさらに強めていった。

遊郭で出会った狐人の少女

歓楽街を当てもなく走り続けた末、ベルは極東風の建物が並ぶ遊郭に辿り着いた。そこは赤い柱や壁、提灯や蒼桜によって彩られた異国的な一角であり、ベルは祖父から聞いた知識を思い出しながら進んでいった。やがて張見世に並ぶ娼婦達の中で、紅の着物をまとい、金の髪と翠の瞳を持つ狐人の少女と目が合った。首輪を付けたその少女は、他の娼婦達とは異なる儚げな笑みを浮かべており、ベルはその姿に強く心を奪われた。

ヘルメスとの遭遇と誤解

その時、ベルは背後からヘルメスに声をかけられた。ヘルメスはベルが張見世を見ていたことから、歓楽街に遊びに来たのだと完全に誤解し、からかい半分に話を進めた。ベルが必死に否定しても聞き入れず、最後には精力剤の小瓶まで渡して去っていった。ベルはそれを返そうと慌てて追いかけ、結果としてさらに歓楽街の奥へと迷い込んでいった。

アイシャによる捕縛

ヘルメスを追っていたベルは、曲がり角で褐色肌の美しいアマゾネスとぶつかりかけた。彼女はアイシャと名乗り、強引にベルを抱き寄せると、その容姿と反応に強い興味を示した。さらに周囲から多数のアマゾネスが集まってきて、ベルが戦争遊戯で活躍したレベル3のベル・クラネルであると気付くと、その価値に色めき立った。彼女達は強い男を欲する種族としての本能を剥き出しにし、ベルを奪い合うように取り囲んだ末、アイシャが主導して彼を連れ去った。

イシュタル・ファミリアの本拠へ

ベルはアマゾネス達に引きずられるまま、歓楽街の中心にそびえる巨大な宮殿へ連れ込まれた。そこは娼婦を象った徽章を掲げるイシュタル・ファミリアの本拠地であった。内部は豪奢な宮殿そのものであり、ベルは他派閥の本拠に踏み込んでしまったことに青ざめた。さらに上階には、美貌と魔性を備えた女神イシュタルの姿があり、その場にいた団員達は女神の魅了がベルに及ばぬよう慌てて彼を隠した。

貴賓室で明かされるアマゾネスの本性

三階の貴賓室に通されたベルは、アイシャ達に囲まれながら帰してほしいと必死に頼んだ。しかしアイシャはその願いを取り合わず、アマゾネスは気に入った強い男を自ら攫い、子を成すために貪る種族であると語った。ベルは自分がまさにその獲物にされていると理解し、絶望に沈んだ。そこへフリュネという巨体のアマゾネスが現れ、ベルを自分にもよこせと要求したことで、貴賓室の空気は一気に険悪なものへ変わっていった。

フリュネとの対立

フリュネは圧倒的な威圧感を持つ強者であり、アイシャ達とは同じファミリアでありながら激しく反目していた。彼女はベルを気に入り、無理やり奪おうとしたが、アイシャ達は自分達が見つけた獲物だとして譲らなかった。互いに罵り合いながらも、最終的にはアマゾネス流の力ずくで決着をつける流れとなり、その場は一触即発の状態に陥った。

命懸けの逃走開始

アイシャとフリュネ達がベルを巡って争い始めた隙を突き、ベルはこっそりその場から離れようとした。しかし、両者が同時にベルへ視線を向けたことで、彼は再び狩りの標的となった。次の瞬間、アマゾネス達が一斉に動き出したため、ベルは全力で窓へ駆け、体当たりでそれを突き破って宮殿の外へ飛び出した。こうしてベルの命懸けの逃走劇が始まった。

歓楽街からの逃走

ベル・クラネルは、【イシュタル・ファミリア】の本拠「女主の神娼殿」から飛び降り、歓楽街へ逃走した。背後からは二十人以上のアマゾネスの女戦士が追跡してきた。街路を全速力で駆け抜けながら追手を振り切ろうとするが、レベル3となったベルの敏捷に匹敵する速度で巨体のアマゾネス、フリュネが追いつく。フリュネは建物を破壊するほどの怪力で攻撃を繰り出し、ベルを地面へ叩きつける。しかし他のアマゾネス達がフリュネを抑え込み、その隙にベルは再び逃走した。

アイシャとの戦闘

逃走を続けるベルの前に、イシュタル・ファミリアの幹部アマゾネス、アイシャが立ちはだかった。屋根から奇襲を仕掛けた彼女は、長い脚を活かした体術でベルを圧倒する。連続する蹴り技によりベルは足払いで倒され、馬乗りにされて動きを封じられてしまう。しかしフリュネが拘束を破って暴れ始めたため、アマゾネス達が混乱し、その隙にベルは再び逃走することに成功した。

歓楽街の包囲網

ベルは歓楽街の通りを逃げ続けるが、この区画がすべて【イシュタル・ファミリア】の支配下であることに気付く。娼婦たちまでが追跡に協力し、箒や鍋を持って行く手を塞ぐ。建物や屋根を駆け抜けながら必死に逃げるベルに対し、女戦士達は矢や鎖まで使って捕縛しようとする。捕まれば蹂躙されるという恐怖に駆られ、ベルは死に物狂いで加速し、歓楽街の一角にある極東風の遊郭へ飛び込んだ。

遊郭への侵入

ベルは遊郭の巨大な娼館に窓から突入し、館内を走り回る。建物は複雑な構造で、庭には迷宮蛍が舞い、館は静かな雰囲気を保っていた。追手が分散した隙に、ベルは敷地の端にある別館へ逃げ込み、五階の部屋の一つに身を隠した。

春姫との遭遇

部屋の奥に進んだベルは、襖の先に座る狐人の少女と出会う。金髪と狐耳を持つ少女は春姫と名乗り、ベルを客と勘違いして夜伽の相手として迎え入れようとした。動揺するベルをよそに、春姫は着物を脱いで奉仕しようとするが、ベルの鎖骨を見た瞬間に恥ずかしさで気絶してしまう。倒れ込んだ春姫に押し倒される形となったベルは、そのまま彼女の胸に顔を埋めた状態になった。

追手の誤解

そこへ追跡してきたアマゾネス達が部屋に踏み込む。しかし二人が絡み合っているように見えたため、状況を誤解し、そのまま退室してしまった。騒動が去った後、ベルは気絶した春姫を横に見ながら、何が起きたのか理解できないまま呆然とするのであった。

春姫との謝罪と事情の共有

目を覚ました春姫は、客と勘違いして夜伽の準備をしてしまったことを深く詫びた。ベルもまた、娼館に忍び込んだ自分に非があるとして謝罪し、二人は向かい合って気まずくも穏やかな空気の中で話し始めた。春姫はベルが侵入者であることを察しながらも他人を呼ばず、事情を話すよう静かに促したため、ベルは歓楽街で追われている経緯を打ち明けた。すると春姫は態度を変えることなく同情を示し、時間になれば抜け道まで案内すると申し出た。

会話を望む春姫

春姫は逃がす手助けをする代わりに、刻限まで自分と話してほしいと願い出た。ベルがそれを受け入れると、春姫は嬉しそうに笑みを浮かべ、二人は窓辺で静かに語り合い始めた。春姫はベルの故郷や北方の景色に強い興味を示し、知らない世界の話を聞くたびに表情を変えた。ベルはその無邪気な反応から、彼女が箱入り娘のように外の世界を知らずに育ってきたのではないかと感じた。

春姫の故郷と高貴な生まれ

ベルが春姫の出身を尋ねると、彼女は極東の島国で生まれたと語った。海に囲まれ、四季の移ろいがはっきりした土地で育った春姫は、何代も続く高貴な家系の娘であり、父は国に仕える役人であった。母はおらず、多くの使用人に囲まれて不自由なく育てられたが、その生活は屋敷の外を知らない閉ざされたものであった。

勘当と転落の始まり

しかし十一歳の時、春姫は寝惚けて父の客人が持っていた神饌を食べてしまったという理由で家を勘当された。父は激怒したが、客人であった小人族の役人が取りなしたことで命だけは助かり、そのまま彼に引き取られた。だがその帰路、春姫は鬼の群れに襲われ、客人は彼女を置き去りにして逃亡した。殺されかけた春姫は盗賊に拾われ、生娘であることを確認された後、売り払われることになった。

オラリオへの売却と歓楽街での生活

春姫は貿易商の手を経て、その珍しい狐人という種族と美しい容姿を高く買われ、オラリオへ商品として運ばれた。迷宮都市では歓楽街が冒険者達の欲望の受け皿として容認されており、その中で春姫も娼婦として扱われる存在となった。商人管轄の娼館に送られるはずだったが、途中でイシュタルの目に留まり、さらに買い取られてイシュタル・ファミリアの一員となったのだと春姫は説明した。ベルはその経緯を聞き、歓楽街の裏にある人身売買の現実と、春姫の過酷な境遇に強い衝撃を受けた。

物語を通じた心の交流

重い過去を語った後、春姫は話題を変えるように、かつてからオラリオの物語に憧れていたと明かした。ベルが迷宮神聖譚の名を挙げると、春姫は嬉しそうに反応し、二人は英雄譚やお伽噺の話で一気に打ち解けていった。春姫は本の中でしか外の世界を知らなかったため、そうした物語を宝物のように愛しており、ベルもまた祖父から教えられた多くの物語を知っていたため、二人は次々と題名や内容を語り合った。現実の痛みから目を逸らすように、二人はしばし物語の世界に浸った。

春姫が抱く救済への憧れ

会話の中で春姫は、自分は助けを必要とする娘を英雄が救い出す話が好きだと明かした。そしてかつては、自分もそんな英雄に手を引かれ、憧れた世界へ連れ出されたいと夢見ていたことを打ち明けた。ベルはその言葉に強く反応し、春姫のような人を英雄が見捨てるはずがないと訴えた。しかし春姫は微笑みながら、自分は可憐な王女でも聖女でもなく、ただの娼婦であると告げた。

娼婦である自分への断念

春姫は、自分はこれまで多くの男に体を委ねてきた娼婦であり、英雄譚に救われる資格などないのだと静かに語った。娼婦は英雄にとって破滅の象徴であり、汚れた自分が美しい物語を読むことも、憧れを抱くことも許されないのだと、彼女は既にその現実を受け入れていた。ベルはその言葉に何も返せず、春姫との間に越え難い距離があることを思い知らされた。

別れと歓楽街からの脱出

やがて刻限が来ると、春姫は楽しい時間だったと礼を述べ、ベルに厚手の頭巾を渡して部屋を出た。彼女は音を立てずにベルを裏口まで導き、遊郭の外れにある細い路地へ案内した。その先はダイダロス通りに繋がっており、大通りを避ければアイシャ達にも見つからずに歓楽街を抜けられると説明した。春姫はその場から先へは進まず、迷宮街の入口で立ち止まったままベルを見送った。ベルは彼女の微笑みを背に、一人で歓楽街を脱出した。

イシュタルとヘルメスの密会

月夜を望む宮殿の高階にある私室で、イシュタルはヘルメスを迎えた。豪奢な応接間兼寝室で行われた密会において、ヘルメスは依頼されていた荷物を無事に届けたと告げ、密封された黒檀の箱を卓上に差し出した。イシュタルはそれを満足げに受け取り、この件を外に漏らさぬよう釘を刺した。ヘルメスもまた、依頼を引き受けた以上は秘密を守ると応じた。

殺生石とフレイヤへの敵意

届けられた荷物の中身が殺生石であることをヘルメスが口にすると、イシュタルはそれを否定せず、遠くない内に面白いものを見せると告げた。その内容は、美の神フレイヤを頂点から引きずり下ろし、地に這いつくばらせることであった。イシュタルはフレイヤに対して激しい敵意と憎悪を抱いており、その転落を何よりも望んでいたため、情報通であるヘルメスからさらに弱みを引き出そうとした。

ヘルメスから情報を搾り取るイシュタル

ヘルメスは道化を演じて話をかわそうとしたが、イシュタルはその態度を許さず、自身の肉体を武器にして彼を追い詰めた。抗おうとするヘルメスを問答無用で押し倒し、従者が黙々と衣服を片付ける中で、イシュタルは彼から知りたい情報を根こそぎ引き出した。こうしてヘルメスは、フレイヤが最近執心している相手についても語らされることになった。

ベル・クラネルへの標的変更

ヘルメスから得た情報により、フレイヤが最近強い関心を寄せている相手がベル・クラネルであると知ったイシュタルは、今夜宮殿で見かけた白髪の少年を思い出した。フレイヤがそのような若い少年に執着していることを嘲笑しつつ、同時にそこに利用価値を見出した。フレイヤを傷つけるためには、彼女が目をかけている存在を奪えばよいと考えたのである。

ベルを奪う決意

情報を得たイシュタルは、フレイヤへの報復としてベルを寝取ることを決意した。美の神同士の対立は、ここで一人の少年を巻き込む形で新たな段階へ進み始めたのであった。

3章 狐兎憂悶

ヘスティアの尋問

歓楽街から朝帰りしたベルは、帰宅直後に【竈火の館】でヘスティアに捕まり、正座させられて厳しい尋問を受ける。体に娼館の香りが残っていたため、ヘスティアやリリはベルが遊びに行ったと疑う。さらにヘルメスから渡された精力剤まで見つかり、状況は最悪になる。ベルは必死に潔白を主張するが、歓楽街に行った事実そのものは許されず、罰として一日中の奉仕活動を命じられる。

罰としての奉仕活動

ベルの罰は、街の住民の手伝いをする社会奉仕だった。清掃や荷物運び、街灯の補修などを次々に手伝いながら街を走り回る。戦争遊戯の影響で「リトル・ルーキー」として有名になっており、住民や子供たちから声をかけられることも多い。途中で酒場「豊穣の女主人」の店員にも捕まり、屋根の修理まで頼まれることになる。

リューやシルと会話するが、体に残る娼館の香りに気付かれそうになり、ベルは慌てて逃げ出してしまう。

春姫のことが頭から離れない

奉仕活動を続けながらも、ベルの頭からは春姫のことが離れない。彼女の過去や、自分ではどうすることもできない現実が心に重く残っていた。悩みを抱えたまま歩いているうちに、ベルは無意識にギルドへ向かっていた。

エイナへの相談

ギルドで担当官エイナに会ったベルは、悩みを察した彼女に相談室へ連れて行かれる。最初は歓楽街の話を聞いて激怒されるが、事情を説明すると落ち着き、ベルの求めに応じて【イシュタル・ファミリア】の情報を教えてくれる。

  • 歓楽街を支配する大派閥
  • 構成員の多くはアマゾネス
  • 団長フリュネ・ジャミールはLv.5の第一級冒険者
  • 戦闘娼婦と呼ばれる強力な戦闘集団
  • 派閥ランクはA

さらに、過去にギルドと他派閥がイシュタル派の実力を疑った事件についても語られる。調査の結果は「問題なし」だったが、その後イシュタル派は告発した派閥を次々と潰してしまい、ギルドも強く介入できなくなったという。

エイナは最後に、絶対にイシュタル・ファミリアには近づくなとベルに強く忠告する。

ギルドの立場

ベルは歓楽街の問題についてギルドの姿勢を尋ねる。エイナは悲しい表情で、ギルドは歓楽街で何が起きているか理解しているが、都市の治安維持のため黙認していると答える。ベルは現実の重さを改めて突きつけられる。

ヘルメスの焦り

一方その頃、酒場「豊穣の女主人」ではヘルメスが慌ててミアに助けを求めていた。
理由は、イシュタルがベルに目をつけたことをフレイヤに伝えなければならないからだった。

しかしフレイヤ本人に直接言えば自分が危険だと恐れ、ミアを通して伝言を頼もうとしていたのである。

そこへシルが現れ、ベルのことを巡ってヘルメスを問い詰める。
店員たちに囲まれ、ヘルメスは必死に弁解する羽目になる。

書店で春姫の正体を打ち明ける

夕暮れの中、ベル達はヘスティアの手伝いとして、かつてベルが眷族となった書店の蔵書整理に取りかかっていた。作業を続けながらも春姫のことが頭から離れなかったベルは、書庫で命に春姫の名を出し、自分が歓楽街で出会った狐人の少女について語り始めた。春姫がオラリオへ流れ着いた経緯まで聞かされた命は強い衝撃を受け、ベルの求めに応じて、自分達と春姫の関係を語ることになった。

命達と春姫の過去

命は、春姫が自分達の故郷である極東の高貴な家の娘であったこと、そしてタケミカヅチの指示で幼い頃の自分達が彼女を屋敷から連れ出し、山や川で共に遊んでいたことを明かした。春姫は命達にとって短いながらも確かな友であり、幼馴染と呼べる存在であった。しかし社の生活が苦しくなって屋敷に行けなくなる中、久しぶりに訪ねた時には既に春姫は勘当され、姿を消していた。命達は行方を探したが何も掴めず、そのまま現在に至っていたのである。

救出を否定するリリの現実論

春姫の事情を知ったベルと命に対し、リリは彼女を助けに行くことは考えるべきではないと厳しく言い渡した。戦争遊戯を終えたばかりのヘスティア・ファミリアは、手の内を多くの派閥に知られており、イシュタル・ファミリアのような大派閥と正面からぶつかえば到底太刀打ちできないからであった。しかも今のヘスティアは派閥拡張直後で立場も不安定であり、これ以上負担をかけるべきではないとリリは冷徹に言い切った。その言葉は正論であり、ベルも命も反論できずに沈黙するしかなかった。

ヴェルフの支える姿勢

リリの言葉で場が冷え込む中、ヴェルフは彼女があえて悪者を演じていることを見抜き、それをやんわりと指摘した。その上で、ファミリアの一員としてはリリの判断に賛成しつつも、もしベル達が何かしたいと本気で思うなら、自分は最後まで付き合うと告げた。現実を見据えつつも気持ちを切り捨てないヴェルフの言葉は、ベルと命の胸を強く打ったが、二人はなお答えを出せずにいた。そこへヘスティアが作業を急かしに来たため、話は一旦打ち切られ、リリは春姫の件をヘスティアには話さないよう念押しした。

英雄譚の中の娼婦とベルの揺らぎ

一人で二階の書庫に入ったベルは、かつて読んだ英雄譚を手に取った。その挿絵には、英雄が娼婦を糾弾し、破滅の象徴として切り捨てる場面が描かれていた。春姫が語った、娼婦は英雄に救われる資格がないという言葉は、まさに物語の中でも裏付けられていた。英雄達は娼婦を助けず、むしろ侮蔑や哀れみの対象として扱っていたのである。ベルは春姫に憐憫を抱いた自分の感情や、彼女と出会った意味を問い直しながらも、出会わなければよかったとは思いたくないと夕陽を見つめていた。

春姫の淡い期待と諦念

その夜、遊郭の張見世に座る春姫は、昨夜出会った白髪の少年の姿を無意識に探していた。ベルと交わした物語の話や優しいやり取りは、春姫の胸に温かな余韻を残しており、かつて物語の英雄に抱いた憧れに似た気持ちすら芽生え始めていた。だが同時に、娼婦である自分にそんな夢を見る資格はないと自嘲し、首輪に触れながら諦観を深めていた。歓楽街には成り上がりを夢見て自ら来る娼婦も多いが、春姫はそうではなく、稀少な狐人として価値を付けられ売られてきた身であることをあらためて思い知らされていた。

命との再会と拒絶

そこへ、張見世の格子窓の前に男装した命が現れた。命は春姫を見るなり自分の名を叫び、再会を喜ぼうとしたが、春姫はその姿を見た瞬間、激しい羞恥と絶望に襲われた。幼い頃の友に、娼婦として身を落とした今の自分を見られたくなかったのである。春姫は震えながらも、他人の空似だと告げ、自分はそのような人物を知らないと命を拒絶した。命が泣きそうな顔で呼び止めても、春姫は顔を背けたまま張見世を去り、男が待つ部屋へ向かっていった。再会の喜びではなく、自分の現実を突きつけられた苦しみだけを抱えたまま、春姫はその夜も静かに仕事へ赴いた。

イシュタルの命令

イシュタル・ファミリアの宮殿二十階にある大広間に、アイシャをはじめとする幹部級の戦闘娼婦達が召集された。主神イシュタルは集まった眷族達に対し、フレイヤ・ファミリアに気付かれないようベル・クラネルを攫ってくるよう命じた。イシュタルは、フレイヤがベルに執着していることを知っており、その少年を横から奪うことでフレイヤに屈辱を与えようとしていた。

ベル誘拐の方針

イシュタルは、ベルを最初に自分のものとした後で、眷族達にも好きにさせると宣言した。ただしフリュネにだけは、つまみ食いを禁じた。彼女が手を出せばベルが使い物にならなくなるからである。さらにイシュタルは、殺生石の準備が整い次第フレイヤ達と戦争を起こすつもりであり、ベルもその挑発材料として使う考えを明かした。眷族達はその計画に獰猛な笑みを浮かべた。

迷宮での誘拐計画

ベルを攫う場所についての話し合いでは、地上で事を起こせば目立ちすぎるため、人目につきにくい迷宮中層で狙うべきだという結論に至った。アイシャはその場の中心となって意見をまとめ、ベルの速さを踏まえた上で捕獲方法を相談していった。昨夜の一件でベルの敏捷が本物であるとアマゾネス達は痛感しており、慎重な策が必要だと認識していた。

春姫を利用する案とアイシャの提案

ベルを誘き出すため、春姫を利用する可能性も話題に上がった。フリュネ達はベルを追い詰める餌として春姫を使えばよいと考えていたが、アイシャは逆に、春姫もファミリアのために尽くしてきたのだから最後くらい外に出して羽を伸ばさせてもよいのではないかと提案した。しかしフリュネは、春姫を外に出せば逃げられる危険があると嘲笑し、他の団員達もアイシャに同調しなかった。イシュタルもその提案を即座に退け、アイシャの意見はなかったことにされた。

アイシャの沈黙

春姫を巡るやり取りの中で、アイシャはそれ以上言葉を重ねることはなかった。主神や他の団員達が冷淡に春姫を扱う中、彼女だけは窓の外に広がる歓楽街の夜空を見つめ、満ちつつある月を黙って眺めていた。

フレイヤの苛立ち

一方、白亜の巨塔の最上階では、フレイヤが従者オッタルを前に不機嫌な様子を見せていた。ヘルメスからの情報により、イシュタルがベルの存在を知ったことを把握していたのである。フレイヤは、イシュタルに詮索されるのを嫌ってしばらく大人しくしていたにもかかわらず、結局ベルが標的として知られてしまったことに苛立っていた。

ベルを巡る警戒

オッタルは、先にベルを確保するべきではないかと進言したが、フレイヤはまだ待つよう命じた。ただしイシュタル達の動向は厳重に監視するよう指示し、他の眷族達にもその旨を伝えるよう命じた。さらに自分もしばらくは本拠に移ると告げ、ベルを巡る両派閥の緊張が静かに高まっていくことが示された。

4章 ヨシワラ×ウタカタ

春姫に拒絶された命

朝の食堂で、命はほとんど食事も喉を通らない様子で席を立った。心配したベルが追いかけて話を聞くと、命は昨夜、遊郭で春姫に会いに行ったものの、自分のことを知らないと拒絶されたのだと打ち明けた。突然の再会に動揺した春姫の事情を思いながらも、命は深く傷ついていた。

命が語る春姫との思い出

ベルに促され、命は春姫との過去を語り始めた。春姫は極東で高貴な家に育ちながら、貧しい神社で暮らす命達のことを案じ、父親に頼んで食料を届けさせていた。命達はその恩に報いようと、タケミカヅチの後押しも受けて春姫を屋敷から連れ出し、山や川や田畑を共に駆け回った。春姫はその中で外の世界の楽しさを知り、命達を物語の英雄のようだと笑ってくれた。命にとって春姫は、恩を返したい相手であると同時に、笑顔を取り戻してやりたい大切な友となっていた。

再会した今も消えない願い

だが春姫はその後に家を追われ、オラリオへ売られ、娼婦となった。一方で命達は神社を支えるため冒険者となり、オラリオで力を得て頭角を現した。そして今になって再会したものの、立場はあまりにも変わり過ぎていた。命は、あの頃のような関係に戻りたい、もう一度春姫の笑顔を見たいと涙ながらに本心を吐露した。ベルは何も慰めの言葉を返せなかったが、その想いの深さだけは痛いほど伝わっていた。

ヘルメスが示した身請けという道

命とともにギルドへ向かおうとしていたベルは、途中でヘルメスに呼び止められた。春姫の現状を相談すると、ヘルメスはイシュタル・ファミリアに刃向かって連れ出すのは不可能だと前置きしつつ、娼婦であるならば身請けという手段があると教えた。娼婦が非戦闘員の下位構成員であり、本人も望むなら、大金を払うことで歓楽街から落籍させられるという制度である。金額は高額だったが、ベルと命は、今の自分達なら決して届かない額ではないと判断し、希望を見出した。

殺生石という不穏な名

さらにヘルメスは、自分が以前イシュタルのもとへ運んだ荷物が「殺生石」という道具であったと明かした。ただし、それ以上は語れないと告げ、どこか重い空気を残したまま立ち去った。ベルと命は意味を測りかねながらも、その名を胸に留めることしかできなかった。

商会からの高額依頼

ホームへ戻ると、ヘスティア達の前には巨大商会アルベラ商会からの依頼書が届いていた。内容は十四階層の食料庫で石英を採掘するというものだったが、報酬は破格の百万ヴァリスであった。将来性を見込んだ商会が、ヘスティア・ファミリアに唾をつける意図で出した依頼であることは明らかだった。利害関係を嫌うヘスティアは断ろうとしたが、春姫の身請け資金が必要なベルと命は必死に受諾を願い出た。二人の剣幕に押される形で、ヘスティアは最終的にその依頼を受ける方針を認めた。

春姫を救うための第一歩

こうしてベルと命は、抗争ではなく正当な手段で春姫を助けるための道筋を得た。まずは依頼をこなし、身請けに必要な資金を集めることが新たな目標となった。殺生石という不穏な要素は残っていたが、少なくともこの時の二人には、暗闇の中にようやく差し込んだ一筋の光に思えた。

アルベラ商会の依頼受託

話し合いの末、ヘスティア・ファミリアはアルベラ商会からの冒険者依頼を正式に受託した。春姫の身請けについてヘスティアは渋い顔を見せたが、命の想いを聞き入れ、最終的には許可した。リリとヴェルフも異論を挟まず、一行は百万ヴァリス獲得のために動き出した。

十四階層への進軍

準備と受託手続きを終えた二日後、ベル達はダンジョンに潜入し、順調に十四階層を目指して進んでいた。命は春姫を助けるための資金稼ぎに意気込んでおり、先頭に立って仲間を引っ張っていた。ベル達もまた、身請けに必要な金額を現実的な目標として捉え、今後はさらに深い階層への進出も視野に入れつつ、まずは目の前の依頼に集中しようとしていた。

ライガーファングとの遭遇

進行中、命の索敵によって下層から上がってきたライガーファングの存在が察知された。ベル達は即座に戦闘態勢を整え、周囲に集まり始めた怪物達とも交戦することになった。異常な出現状況ではあったが、一行は連携して対応に当たった。

イシュタル・ファミリアの罠

一方その頃、別の広間では外套で正体を隠したアマゾネス達が待機していた。彼女達はアルベラ商会の依頼そのものに手を回し、ヘスティア・ファミリアを特定の食料庫へ誘導する罠を仕掛けていた。そこには春姫も連れてこられており、彼女は事情を知らされぬまま従わされていた。アイシャ達はベル達の到着を確認し、計画通り動き始めた。

三方向からの怪物進呈

ベル達が進んでいた通路には、外套姿の冒険者達が怪物を引き連れて現れた。ベル達は怪物進呈だと判断して撤退を図ったが、逃げ込んだ十字路では左右からも別の集団が怪物を押し寄せ、さらに最初の集団まで合流したことで三方向からの怪物進呈に包囲された。混戦の最中、外套の集団は怪物だけでなくベル達そのものにも襲いかかり、計画的な襲撃であることが明らかになった。

ベルとリリ達の分断

ベルはリリを守りながら応戦したが、混戦の中でアイシャに蹴り飛ばされ、リリ達から引き離された。そのまま横穴の奥へ蹴り込まれ、一対一でアイシャと対峙することになった。通路の奥ではなおも剣戟音と怪物の咆哮が響き、仲間達との距離は完全に隔てられた。

強化されたアイシャの猛攻

外套を脱いだアイシャは、大朴刀を手にベルへ襲いかかった。彼女の体には無数の光粒がまとわりついており、その影響か三日前とは比較にならないほどの速度と力を発揮していた。ベルは応戦しながらも、その異常な強化が公式の能力値では説明できないことに気付き、エイナから聞いたイシュタル・ファミリアの不気味さを思い出した。アイシャの攻撃は速さだけでなく怪力まで伴っており、ベルは追い詰められていった。

縦穴への転落

激しい攻防の中で、ベルはアイシャに壁際まで追い込まれ、そのまま縦穴へ叩き落とされた。アイシャもろとも十五階層へ真っ逆さまに落下する中、ベルは拘束を振り払い、どうにか受け身を取って着地した。だが装備はほとんど失われ、武器も落としてしまい、完全に劣勢へ追い込まれていた。

命の追撃と敗北

そこへ命がベルを追って十五階層まで降りてきた。二人は前後からアイシャを挟撃したが、アイシャはそれを難なく捌き、命を一撃で沈めた上に、ベルも蹴り飛ばして圧倒した。戦力差は明白であり、二対一であってもまるで太刀打ちできなかった。

フリュネによる制圧

追い詰められたベルの前に、さらにフリュネが現れた。彼女は凄まじい速度と怪力でベルの腹部を打ち抜き、続けて顔面を掴んで壁へ叩きつけた。ベルは全身に致命的な衝撃を受け、そのまま意識を失った。

ヴェルフとリリの絶望

同じ頃、残されたヴェルフとリリは、怪物と外套の集団を相手に辛うじて戦い抜いたものの、ベルと命の姿を失っていた。敵は嵐のように去り、仲間二人だけを連れ去っていた。満身創痍の二人が呆然とする中、周囲では騒ぎが広がっていった。

春姫の崩落

一方、春姫の前には意識を失ったベルと命が運び込まれてきた。彼女は二人が今回の標的であったことを知り、アイシャからそれがイシュタルの命令であると告げられた。春姫は、自分の知らぬところでベルと命が狙われていた現実に打ちのめされ、その場に崩れ落ちた。

5章 殺生石

拷問部屋で目覚めたベル

ベルは全身の痛みとともに意識を取り戻し、自分が石造りの薄暗い部屋に拘束されていることを知った。両手首は頭上で何重もの銀鎖に縛られ、武器も防具も奪われていた。室内には鞭や足枷など不穏な道具が並び、牢屋と拷問部屋を兼ねたような異様な空間が広がっていた。リリやヴェルフ、命の安否もわからぬまま、ベルは自分がイシュタル・ファミリアに捕らえられたのだと悟った。

フリュネの暴走と宮殿の混乱

その頃、イシュタル・ファミリアの本拠では、団長フリュネが見張りを殴り飛ばしてベルを連れ去ったことで大騒ぎとなっていた。本来ベルはイシュタルの命令で秘密裏に運び込まれていたが、フリュネはそれを無視して独断で動いたのである。イシュタルは不機嫌さを隠さず、従者のタンムズにフリュネの捜索を命じた。フリュネがベルを先に喰おうとしていることは誰の目にも明らかであり、宮殿全体がその捜索に駆り出されていた。

命を逃がすために動く春姫

宮殿内の騒動の中で、春姫は自分の前に横たえられていた命を見つめ、鍵束を倉庫の中へ投げ入れて密かに脱出の手助けをした。そして誰にも見つからぬよう、その場を離れた。春姫は既に、ベルと命が今回の標的であったこと、自分がその計画に利用されていたことを知っており、償いのように動き始めていた。

秘密の地下通路とフリュネの脅威

ベルのもとに現れたのは、予想通りフリュネであった。彼女はこの地下牢が誰にも知られていない自分だけの愛の部屋であり、宮殿地下の秘密通路と繋がっているのだと明かした。さらに、ベルを拘束している鎖がミスリル製であり、力でも魔法でも容易には逃れられないと告げた上で、自分の獲物として好き放題にするつもりを隠さなかった。ベルは必死に抵抗したが、恐怖のあまり完全に追い詰められていた。

春姫による救出

フリュネが精力剤を取りに一度部屋を離れた隙に、春姫が地下牢へ駆け込んできた。彼女はフリュネが落としていった鍵束を使い、ベルを拘束していた鎖を解いた。解放されたベルは極度の恐怖から春姫に泣きつき、子供のように取り乱した。春姫はそんなベルを抱きしめ、落ち着かせながら地下通路を通って逃がそうとした。

春姫の覚悟とフリュネの怒り

通路を進む中で、春姫はフリュネが秘密通路を使っているところを以前に見ていたため、この場所を知っていたのだとベルに明かした。本来は口外を禁じられていたが、それでもベルを助けるために動いたのである。だが同時に、自分がベルを逃がしたと真っ先に疑われることも理解していた。それでも構わないと微笑む春姫の姿に、ベルは言葉を失った。一方、戻ってきたフリュネはベルが消えていることに気付き、落ちていた金色の毛を見て、春姫が関わったことを察して激怒した。

フレイヤ・ファミリアの監視

同じ頃、フレイヤ・ファミリアもまたイシュタル側の動きを監視していた。フレイヤは眷族ヘルンから、歓楽街で娼婦達が普段と違う動きをしているとの報告を受ける。そして別行動を取っていた猫人の眷族アレンは、歓楽街に潜入し、イシュタル・ファミリアの娼婦からベルが宮殿に連れ込まれた情報を引き出していた。だがその娼婦に対してアレンは冷酷で、彼女の好意を利用していただけであることを突きつけた上で、侮蔑して切り捨てた。歓楽街の各所では、アレン達を含むフレイヤの眷族が密かに監視を続けており、ベルを巡る両派閥の緊張は水面下でさらに高まっていた。

命の脱出

命は騒がしい物音で目を覚まし、自分が手枷と足枷で拘束された状態で閉じ込められていることを知った。外から聞こえてくる断片的な会話から、ここがイシュタル・ファミリアの本拠であり、ベルが脱走した可能性が高いと推測する。状況を整理していた命は、鉄扉の前に落ちている鍵束を見つけ、それで枷を解くことに成功した。根拠はないながらも、春姫が自分のために鍵を投げ入れてくれたのだと確信した命は、彼女に感謝しつつ脱出を開始した。

命の潜行と装備の確保

命は倉庫の中から極東の民族衣装を見つけ、傷だらけの服を隠すためそれに着替えた。その後、忍術を駆使して宮殿内を人目を避けながら移動し、仲間の位置を探るために味方探知のスキル【八咫白鳥】を使用した。探索の末に辿り着いた宝物庫で、命はベルの《ヘスティア・ナイフ》や《牛若丸》などの装備を発見し、それらを回収した。さらに脱出に備えて回復薬や精神力回復薬、閃光弾や煙玉なども調達し、最低限の準備を整えた。

アイシャの疑念

その頃、アイシャは命が拘束を解いて逃げ出したことを知った。見張り役の少女から、枷が綺麗に解錠されており、鍵まで消えていたと報告を受けると、アイシャはすぐに春姫のことを思い出した。春姫が身を清めると言って部屋に戻ったまま姿を消していたことも知らされ、彼女が何らかの形で関わっているのではないかという疑念を抱き始めた。

地下通路を進むベルと春姫

一方ベルは、春姫に助けられた後、秘密の地下通路を通って宮殿から離れようとしていた。春姫はこの通路を、フリュネが密かに使っているところを以前から知っていたが、口外を禁じられていたため誰にも話していなかった。ベルは自分を助けたことで春姫に責任が及ぶことを心配したが、春姫はそれでも構わないような儚い笑みを浮かべるだけであった。その言葉の端々に、ベルは言い知れぬ不安を感じ始めていた。

身請けの話を伝えるベル

不安を振り払うように、ベルは春姫に、自分達が彼女を身請けしようとしていることを打ち明けた。命がヘスティア達を説得し、ファミリアとして春姫を救うために動き出していること、資金を貯めれば娼婦の仕事から解放できることを伝えたのである。ベルは、命も自分も春姫を助けたいと本気で思っているのだと必死に伝えた。

春姫の涙と不吉な言葉

その話を聞いた春姫は、大きく目を見開いた後、静かに涙を流した。彼女は命とベルからそこまで想われていることに深く心を揺さぶられ、自分は幸せだと告げた。しかしその言葉は喜びに満ちたものというより、何かを諦めた者のような響きを含んでいた。もう思い残すことはないと微笑む春姫の姿は、まるで今生の別れを告げているかのようであり、ベルは強い胸騒ぎを覚えながら、ただ彼女の背を追うことしかできなかった。

命の覚醒と脱出の確信

命は、部屋の外から響く激しい足音と喧騒によって意識を取り戻した。全身には戦闘の痛みが残っており、両手両足には銀色の手枷と足枷がはめられていた。状況を整理した命は、自分がイシュタル・ファミリアに捕らえられたこと、そしてベルも同様に狙われたことを悟った。さらに、外から漏れ聞こえる断片的な会話から、ベルが逃走した可能性が高いことも推測した。脱出のための手段を探る中、命は扉の前に落ちていた鍵束を見つけ、それを使って拘束を解くことに成功した。誰が助けてくれたのかを思い、彼女は春姫の名を口にして感謝した。

命の潜伏と宝物庫での発見

自由になった命は、まず状況を立て直すため、倉庫内にあった極東風の衣装に着替えた。その後、気配を消して宮殿内を移動し、仲間の気配を探るために【八咫白鳥】を発動した。探索の過程で宝物庫に辿り着いた命は、そこにベルの《ヘスティア・ナイフ》や《牛若丸》などの武器が保管されているのを発見した。《ヘスティア・ナイフ》は命の神血にも反応し、仲間の武器であることを改めて実感させた。命はベルの装備一式を回収し、さらに回復薬や煙玉など脱出に使えそうな道具も確保した。罪悪感を覚えつつも、それほどまでに状況は切迫していたのである。

資料室で知る殺生石の真相

その後、通気口を伝って移動していた命は、資料室らしき部屋に入り込み、机上に置かれていた文書の束を見つけた。その中に『殺生石の儀式について』と記された資料があり、命はその内容を読み始めた。一方、ヘスティア達の前では、タケミカヅチが『殺生石』の名に激しく反応し、その正体を語っていた。殺生石とは、狐人の遺骨から作られる『玉藻の石』と、月光によって力を増す『鳥羽の石』――すなわち月嘆石――を融合させた禁忌の魔道具であった。それは狐人の妖術を第三者に与える代償として、生きた狐人の魂を抜き取るものであり、生贄となった者は魂の抜け殻に変えられるのだった。

殺生石がもたらす戦争の道具

タケミカヅチとアスフィ、そしてヘルメスの説明から、砕けた殺生石の欠片一つ一つが妖術を行使できる発動装置となることが明かされた。それは詠唱を要さず、万人に狐人の魔法を与えるものであり、軍勢に行き渡れば圧倒的な戦力となる危険な代物であった。しかもその代償として、魂を奪われた狐人はほとんど死に等しい状態へと追いやられる。イシュタルがこれを用意しているという事実は、単なる陰謀ではなく、明確な戦争準備を意味していた。ヘスティア達は愕然とし、春姫の身に迫る運命の重さを知ることとなった。

ベルと春姫の地下通路での会話

その頃、ベルは春姫に助けられ、秘密の地下通路を通って逃走していた。ベルは、自分を逃がしたことで春姫が責められるのではないかと案じたが、春姫はそれを意に介さぬように微笑んだ。そこでベルは、自分達が春姫を身請けしようとしていることを打ち明けた。命がヘスティア達を説得し、ファミリアとして金を貯めて彼女を救おうとしているのだと伝えたのである。ベルは命の想いも代弁しながら、春姫を助けたいと率直に語った。

春姫の歓喜と不穏な言葉

ベルの言葉を聞いた春姫は、静かに涙を流した。彼女は、自分がそこまで思われていることに深く心を動かされ、幸せだと微笑んだ。しかしその言葉は、希望を得た喜びというより、すべてを受け入れてしまった者のような響きを帯びていた。彼女は「もう思い残すことはない」とまで口にし、ベルに礼を述べて再び歩き始めた。その姿に、ベルは強い胸騒ぎを覚えた。救いの言葉を伝えたはずなのに、春姫の様子はまるで別れを告げているかのようであり、その違和感は消えなかった。

殺生石の生贄としての春姫

一方、資料を読んだ命は、春姫が殺生石の儀式の生贄にされようとしていることを知った。彼女はただの娼婦ではなく、狐人であるがゆえに魂を奪われる対象として囲われていたのである。春姫の妖術が殺生石に封じ込められれば、彼女は魂を失い、もはや元の存在ではなくなってしまう。ベルと春姫、そして殺生石の真相が一本に繋がった瞬間、命の心からは平静が消え去った。彼女は資料室を飛び出し、ただ一心にベルと春姫の名を叫びながら走り出した。

命の脱出と殺生石の真相

命は拘束された倉庫で目を覚ました後、春姫が残した鍵束によって枷を外し、自力で脱出を開始した。宮殿内を忍ぶように移動した彼女は、宝物庫でベルの武器と道具を回収し、さらに資料室へ辿り着く。そこで命は、『殺生石』が狐人の魂を生け贄として妖術を封じ込める禁忌の魔道具であり、その儀式が今夜行われることを知った。しかも生け贄となるのが春姫であることを悟り、ベルと春姫を探すため即座に走り出した。

地下通路からの脱出

一方、ベルは春姫の案内で秘密の地下通路を進み、ようやく歓楽街の路地裏へ脱出した。夕暮れの空の下でベルは安堵するが、春姫はここから先へは行けないと告げた。彼女の首には居場所を常に知らせ、歓楽街の外に出れば作動する首輪型の魔道具が付けられていたからである。ベルは春姫が単なる下位の娼婦ではなく、何らかの重要な役目を負わされているのではないかと疑い始めた。

命の合流と犠牲の発覚

そこへ命が現れ、春姫に『殺生石』という言葉を突きつけた。春姫は何も否定せず、彼女が今夜の儀式の犠牲になることが明らかとなった。ベルが愕然とする中、アイシャが現れて春姫を確保し、イシュタル・ファミリアの計画を語り始めた。春姫の魂を殺生石に封じ、その力を砕いて多数の破片に分けることで、狐人の妖術を自在に使える軍勢を作り上げる。それをもってフレイヤ・ファミリアとの全面戦争に臨むつもりであると告げたのである。

春姫の力と計画の本質

ベルと命は当初、春姫をただの娼婦だと思っていたが、アイシャはそれを否定した。春姫の妖術こそ、以前アイシャ自身を異常な強化状態にした力であり、その力を大量の戦闘娼婦へ分配すれば、都市最強級の派閥にも対抗しうると説明した。春姫は自らの存在が戦争のための道具にされていることを知りながらも、何も言い返せず涙をこらえていた。ベルはそこでようやく、春姫が置かれていた絶望の深さと、自分達の見立ての甘さを思い知らされた。

アイシャの告白

アイシャはさらに、自分がかつて殺生石を壊したことでイシュタルの凄惨な報復を受けた過去を打ち明けた。彼女は魅了によって心身を徹底的に支配され、今では主神の命令に逆らえない身となっていた。戦闘娼婦達の多くもまた、イシュタルへの恐怖によって統制されており、表面上は一枚岩に見えても、内実は強制と屈服で成り立っているのだとベル達に伝えた。彼女の言葉はイシュタルの執念と狂気の深さを示していた。

ベルの逡巡と逃走

それでもベルは春姫を見捨てられず、しかし同時に神様や仲間達を危険に晒すこともできず、決断を下せずに立ち尽くしていた。アイシャはそんなベルを見抜き、彼には春姫のために全てを投げ出す覚悟がないと断じた。ベルは何も言い返せず、命もまた同じ葛藤に縛られていた。やがて追手のアマゾネス達が迫ると、春姫は身を挺してアイシャにしがみつき、命にベルを連れて逃げるよう叫んだ。命はベルの腕を引いてその場を離れ、ベルは春姫を残したまま逃げ出すことになった。

無力感と自責

薄暗い小径に逃れた後、ベルは壁に両手をつき、激しい自己嫌悪に襲われた。春姫を助けたいと願いながらも、ファミリアを危険に巻き込む現実を恐れ、結局その場では彼女を奪い返せなかったからである。命もまた、春姫との絆とヘスティア・ファミリアの仲間達との絆の狭間で苦しみ、何も決断できなかった自分を責めていた。二人はともに涙をこらえながら、どうすればよいのか答えを見出せずにいた。

ベルの決意

その中でベルは、祖父なら何と言うかを自問した。そして脳裏に浮かんだ祖父の笑顔と「行け」という声に背を押され、自分の本心を見つめ直した。ベルは春姫を助けたいという想いを、もはやごまかさなかった。たとえ都市から追われても、ファミリアに迷惑をかけても、春姫を救い出し、いったん都市を離れた後で、必ずもっと強くなって戻ってくると決意したのである。それは仲間も憧れも春姫も、どれ一つ諦めないという誓いでもあった。

命の同意と再出発

ベルの覚悟を聞いた命は涙を浮かべながら、それでも彼と同じファミリアであることを誇りに思うと告げた。そして自分もまた、そのわがままに付き合い、後で神様達に共に土下座して謝ろうと笑った。こうして二人は意志を一つにし、格好悪くても泥だらけでも構わないから、春姫にとっての『英雄』になろうと決めた。夕闇へ変わり始めた空の下、二人は再びイシュタルの宮殿を見据え、春姫を救うために戻る決意を固めた。

ベル達逃亡へのフリュネの激怒

イシュタル・ファミリアの宮殿の広間では、フリュネがベル達を逃したことに激怒していた。彼女は大声で責任を追及し、春姫を背に庇うアイシャを激しく責め立てた。フリュネは、神命に背いた春姫がベル達を逃がしたために計画が面倒な事態になったと主張し、さらにベル達が殺生石の存在を知ってしまった以上、絶対に生かして帰すことはできないと断言した。そして、このまま逃げられた場合の責任をどう取るつもりなのかと、アイシャに詰め寄ったのである。

広間の外では戦闘娼婦達が慌ただしく動き回っていた。彼女達は、殺生石の儀式の準備を進める者と、計画を知ったベル達を追跡する者とに分かれ、宮殿中を奔走していた。その騒ぎは最上階付近の広間にも届いていた。

アイシャの確信

フリュネの怒声を受けながらも、アイシャは冷静な態度を崩さなかった。彼女は窓の外を見下ろしながら、ベルは必ずここへ来ると淡々と告げた。訝しむフリュネに対し、アイシャは理由を語らず、歓楽街の街並みへ視線を向けたまま、ベルの目は諦める者のものではなかったと述べた。雄としての覚悟はまだ足りなかったが、その瞳は諦めの悪い冒険者のものであったと静かに断言したのである。

春姫の動揺

アイシャの言葉を聞いた春姫は、複雑な感情に揺れる表情を見せた。彼女もまた窓の外へ目を向け、魔石灯が灯り始めた歓楽街の街並みを見下ろした。その場所にはベルと命がいるかもしれないという思いが、彼女の胸に去来していた。

宮殿を目指すベルと命

同じ頃、ベルと命は荒廃した路地裏からイシュタルの宮殿を見上げていた。夕暮れの空は次第に闇へと変わり、やがて満ちた黄金の月が姿を現し始めていた。二人は壮麗な宮殿と対峙し、一人の娼婦である春姫を救い出すため、わずか二人で宮殿へ挑もうとしていたのであった。

6章 英雄切望

歓楽街入口での対峙と包囲網の確認

日が沈み都市が夜に包まれる中、ヘスティアはヴェルフ、リリ、タケミカヅチとともに歓楽街の入口へ赴き、ベルと命がそこにいるはずだと訴えて通行を求めた。しかし、イシュタル・ファミリアの女戦士達は証拠がないことを理由にこれを拒み、逆に言いがかりなら相応の処置を取ると威圧した。ヘスティアが怒りをあらわにする一方、リリとヴェルフは相手が図太くしらを切っていると見ていた。

その間、タケミカヅチは戻ってきた桜花達から、イシュタル派の領域全体に厳重な包囲網が敷かれ、鼠一匹通さない状態であると報告を受けた。タケミカヅチは、これは殺生石の儀式に誰も近づけず、かつベルと命も逃がさないための封鎖だと推測し、少女達の身を案じた。

ベルと命の突入準備

同じ頃、ベルと命は歓楽街の小径に身を潜め、宮殿突入の準備を整えていた。春姫を救うため、二人だけで宮殿へ乗り込むほかないと悟っていたのである。命は高性能の回復薬をベルに渡しつつ、自身もベルの予備武装である牛若丸を装備し、忍者じみた軽装に整えた。その過程で、タケミカヅチから忍術は汚く、奇襲や騙し討ちや罠を辞さぬ術であり、生真面目なお前には向かないと言われながらも教えられた過去を思い返した。

命は資料から得た情報をもとに、儀式は今夜八時頃に別館の空中庭園で行われることを確認しつつ、場所そのものにはこだわらず、まずベルが宮殿へ侵入して敵の注意を引きつけ、その間に命が春姫を救出するという作戦を説明した。さらに、春姫との接触時には閃光弾で合図を送り、緑が成功、赤が失敗を意味すること、失敗時には殺生石そのものを破壊するしかないことを確認した。二人は短い言葉を交わして別れ、それぞれの持ち場へ向かった。

ベルの正面突破と囮作戦の開始

ベルは宮殿正門前まで進み、敵の本拠地に一人で突入する緊張の中、英雄願望の力を意識しつつ覚悟を固めた。そして物陰から飛び出し、宮殿正面に躍り出ると、門兵達が驚き武器を構えるより早くファイアボルトを放った。炎雷は正面入口を大爆発させ、複数の門兵を吹き飛ばした。ベルは爆風と煙に紛れて正面玄関から宮殿へ侵入し、命のための囮役として陽動を開始した。

この爆発は歓楽街入口にいたヘスティア達にも届いた。遠方で咲いた爆炎を見て一同は驚愕したが、リリとヴェルフはこれをベルの魔法だと言い立て、アマゾネス達に通行を迫った。相手が抗争をちらつかせて威圧すると、一歩前に出た桜花が敵の胸ぐらを掴んで投げ飛ばし、道を開けと叩きつけた。これをきっかけにタケミカヅチ・ファミリアの面々も武器を抜き、ヴェルフも加わって第三区画入口で戦闘が勃発した。ヘスティアとタケミカヅチも、時間がないと悟って歓楽街へ踏み込んだ。

フレイヤの決断

一方で、フレイヤはこれまで自分を一方的に敵視してきたイシュタルを思い返していた。イシュタルの敵意は同族嫌悪か妬みかは判然としないが、フレイヤにとっては戯れのようなものであり、これまでは笑って流せる範囲の悪戯にすぎなかった。しかし、今回ばかりは線を越えたと判断した。

フレイヤはオッタルに武器を執るよう命じさせ、自らの眷族達を一斉に動員した。銀の屋敷の庭には百を超える眷族が集結し、フレイヤの神意のもとに戦いの準備を整えた。フレイヤはこの流れそのものに気に食わなさを覚えつつも、準備ができ次第出るよう命じ、自らも動き出した。

宮殿内でのベルの攪乱

宮殿内部では、ベルが広大な吹き抜け構造の館内を駆け回り、上へ上へと登っていた。戦闘娼婦達が次々と駆けつけ、前後左右から怒号が飛ぶ中、ベルは足を止めたら終わりだと判断し、まともな近接戦を避けながらファイアボルトを連発して進路を切り開いた。詠唱も装填も不要な速攻魔法は、矢より速く、戦闘娼婦達を吹き飛ばし続けた。

やがて斜め上階から十以上の矢が斉射され、ベルは一部をナイフで弾き落としたものの姿勢を崩した。さらに前後から敵が迫ったため、通路脇の窓へ飛び込み、外へ脱出した。宮殿外壁や屋根を利用して上階を目指しつつ、追ってくるアマゾネス達から逃れ続けた。心臓は激しく打ち、既に三本目の回復薬を使うほど消耗していたが、命のために囮役を全うしようと走り続けた。

命の潜入と春姫の居場所の特定

命はベルが正面で騒ぎを起こした隙を突き、宮殿裏口側から侵入していた。警備が薄くなった館内を風のように走り抜け、気配が近づけば隠れ、戦闘娼婦達を避けながら進んだ。途中、単独行動していたLv.2の戦闘娼婦を水晶の玉で油断させ、背後から取り押さえて喉元に牛若丸を突きつけ、春姫の居場所を吐かせた。居場所が四十階の空中庭園近くだと知ると、その女戦士を気絶させて別室に放り込み、四十階を目指した。

さらに命は宮殿の外壁を伝いながら、明かりの漏れる一室を見つけた。それが春姫のいる部屋であった。

春姫の監視とアイシャとフリュネの対立

その部屋では、春姫が極東の赤い装束に着替えさせられ、二人の戦闘娼婦に挟まれながら不安の中に置かれていた。ベルが一人で宮殿に乗り込んできたという報告を聞き、春姫はなぜ、どうして、止めてと掠れた声を漏らし、動揺していた。

アイシャは他の戦闘娼婦達に増援へ向かうよう指示し、自分が春姫の護衛に残るつもりであった。しかしフリュネはこれを阻んだ。以前、アイシャが殺生石を壊した過去を持ち出し、今回も春姫を逃がすつもりではないかと疑ったのである。春姫を利用する計画よりもベル狩りを優先し、アイシャを連れていくと強硬に告げた。アイシャは命を危険視して反論したが、フリュネは聞き入れず、さらに以前と同じように他の少女達まで巻き添えにすると脅した。これにより、アイシャは従わざるを得なくなった。

フリュネは時間になったら春姫を祭壇へ移動させるよう指示し、アイシャとともにベルのもとへ向かった。主神イシュタルもまた、ベルが宮殿内を荒らし回っている報告を聞き、なぜ危険を冒してまで戻ってきたのかに興味を抱き、自ら階下へ向かうことを決めた。

ベルの逃走とフリュネの追撃

ベル・クラネルは宮殿三十階へと到達しようと、大階段を駆け上がっていた。地上から百メートル近い高さに達する中、戦闘娼婦たちの攻撃を回避しながら必死に前進を続ける。長く持てば捕らえられると理解しながらも、春姫と命を救うという使命感がベルを突き動かしていた。速攻魔法を盾に爆風を突き抜けながら追撃を振り切り、次々と増援を引き寄せつつ上階へ進んでいく。

その最中、頭上から大戦斧が投げ込まれた。回転する斧は廊下を破壊し、床や壁を貫通する。攻撃を放ったのは第一級冒険者フリュネであった。さらにその側にはアイシャの姿もあり、ベルは強敵の出現を悟る。フリュネが飛び降りて追撃を開始すると、ベルは通路へ逃げ込み距離を取ろうとする。アイシャは他の団員に三十階への集結を命じ、フリュネに追撃を任せた。

第一級冒険者との戦闘

フリュネは巨大な戦斧を振るいながら猛追し、ベルは窓からの脱出を試みるが再び投げられた斧に阻まれる。接近戦となり、フリュネの一撃を辛うじて回避したベルは速攻魔法ファイアボルトを放つ。しかしフリュネは至近距離の魔法を回避し、ベルはその反応速度に愕然とする。巨体に似合わぬ俊敏さで繰り出される斧撃にベルは防戦一方となり、第一級冒険者の実力差を思い知らされた。

ベルはヘスティア・ナイフと牛若丸式の双刀を抜き、防御しながら攻撃を逸らす。だが完全には防ぎきれず、衝撃で吹き飛ばされて通路の先の広間へ転がり込んだ。

アマゾネスの包囲

広間に入ったベルを待っていたのは、四方を埋め尽くす戦闘娼婦たちであった。その中央には大朴刀を担いだアイシャが立ち、ベルの奮闘を認めつつも退路を封じる。やがてフリュネも広間へ到着し、完全に包囲されたベルは逃げ場を失った。

その時、大階段の奥からイシュタルが姿を現す。美貌の女神は配下に下がるよう命じ、さらに全員に殺生石の儀式へ向かうよう命令した。神命に従い、アマゾネスたちは次々と広間を去っていく。アイシャもまたベルを一瞥して退場し、最後にフリュネも舌打ちしながら撤退した。

イシュタルとベルの対峙

広間に残ったベルの前には、タンムズが立ちはだかった。イシュタルはベルの勇気を評価しながら近づき、魅了して自分のものにすると宣言する。ベルは動揺しつつも、春姫を救うために彼女へ問いを投げかけた。

ベルは、なぜ春姫を犠牲にするのかと尋ねる。イシュタルは春姫を買い取った経緯を語り、自分が拾った命である以上、春姫は自分に尽くすべき存在だと主張した。また春姫の力を利用し、フレイヤを倒すための切り札にすると明かす。フレイヤへの強い嫉妬を露わにしながら、春姫の力は都市最強派閥に対抗できる可能性を秘めていると語った。

ベルは春姫を利用することを非難し、娼婦として縛りつけることを問いただす。しかしイシュタルは、ファミリアでは主神の意志が掟であると答える。さらに性愛を司る神としての価値観を語り、娼婦という行為を不浄とは考えていないと断言した。

それでもベルは、苦しんでいる者がいると訴え春姫の解放を求めた。しかしイシュタルはその願いを拒絶する。

ベルの拘束と魅了の宣言

議論が平行線のまま終わると、イシュタルは指を鳴らしタンムズに命じる。ベルは油断を突かれて押さえつけられ、LV.4の力の前に抵抗できなかった。

その後イシュタルはベルを魅了するため自ら衣服を脱ぎ、彼を自分のものにすると宣言する。強烈な色香に圧倒されたベルの前で、美神は彼の心と身体を奪うことを告げながら迫っていった。

春姫の移送と儀式への道

女主の神娼殿には宮殿の裏手に別館が存在しており、その石造の館は表向きには新しい娼館、実際には殺生石の儀式のために造られていた。春姫は三人の戦闘娼婦に護衛されながら、宮殿四十階から別館へ続く空中廊下を進まされていた。満ちかけた月と空中庭園の青白い光を見上げた春姫は、それを自分を殺す光として受け止め、表情を消したまま歩みを速めた。

命の奇襲と護衛の排除

空中廊下の見晴らしの良さに油断していた護衛たちは、橋の下に張り付いていた命の接近に気付かなかった。命は背後を取ると、三人の護衛を次々に橋の外へ投げ落とした。最後の一人が長剣を抜くと、命は強風に反応して床に伏せた後、相手の顎を蹴り上げて落下させた。春姫は突然現れた命に驚き、命は春姫を連れ出すために来たと告げて手を取った。

春姫の拒絶と命の説得

命は春姫にここから逃げようと促したが、春姫はその場に踏みとどまり、自分のことはいいから一人で逃げてほしいと告げた。自分がいれば命たちまで危険に晒してしまうと語る春姫に対し、命はベルが春姫を守ると決めたことを伝え、彼の行動は哀れみや罪悪感ではなく本気の覚悟によるものだと訴えた。しかし春姫は、自分は娼婦であり、好きでもない相手に体を売ってきた身である以上、ベルに助けを求めることも側に置いてほしいと縋ることもできないと涙ながらに叫んだ。命はその言葉を否定できず、立ち尽くすしかなかった。

戦闘娼婦の介入と命の落下

そこへ宮殿側から戦闘娼婦が魔剣による雷撃を放ち、命の肩を撃ち抜いた。さらに二射目が放たれると、命は紅刀で防いだものの、その反動で空中廊下から落下した。春姫は手を伸ばしたが届かず、その場に泣き崩れた。落下する命は悔しさを噛み締めながら閃光弾を取り出し、上空へ赤い光を打ち上げて失敗を知らせた。

イシュタルの苛立ちとベルの抵抗

一方、イシュタルは全裸となってベルを魅了しようとしていたが、ベルは目を閉じたまま激しく抵抗し続けていた。タンムズに押さえつけられてもなお暴れるベルに対し、イシュタルはなぜ魅了されないのか理解できず苛立った。そこでタンムズにベルの服を剥がさせ、その背中のステイタスを確認した。

憧憬一途の発覚とイシュタルの動揺

イシュタルはベルのステイタスに記された憧憬一途の効果を読み取り、ベルが魅了を受け付けない理由を知った。ベルの純粋で一途な憧れが、神々すら抗えない美神の魅了を唯一はねのけていたのである。その事実に戦慄したイシュタルは、ベルの異常性に激昂し、馬鹿だと叫んで取り乱した。

ベルの脱出とイシュタルの追撃命令

イシュタルが動揺している隙に、ベルはタンムズの拘束を振り解いた。彼は主神の奇声を背後に聞きながら窓へ走り、背中を露出させたまま外へ飛び出して脱出した。タンムズが階下の団員に追撃を命じる中、イシュタルは自らも平静を失って怒鳴り、ベルを絶対に逃がすなと命じた。そして、自分の美が通じなかった存在への怒りと屈辱に震えながら、少年を自分の前に引きずり出すよう命じて広間を後にした。

空中庭園での決闘の続行

命は空中庭園でサミラとの戦いを続けていた。サミラは命の体術を面白がりながら攻め続け、命は格上である第二級冒険者との力量差を痛感しつつも、春姫を救うために倒れず立ち向かった。命は冒険者として正面から戦っても勝てないと悟り、誇りや礼節を捨ててでも目的を果たす覚悟を固めた。

煙玉と忍術による反撃

命は宝物庫から持ち出していた煙玉を地面に叩きつけ、庭園を白煙で覆った。視界を失ったサミラが警戒する中、命は気配を絶ち、短衣を身代わりにする空蟬によって相手の意表を突いた。そして背後から肉薄し、両脚でサミラの顔を挟み込んで後方宙返りし、円月投で石畳に頭から叩きつけた。サミラの頭は地面に埋まり、周囲のアマゾネス達はその一撃に言葉を失った。

サミラの復帰と命の劣勢

しかしサミラは倒れ切らず、自力で首を地面から引き抜いて立ち上がった。命は渾身の技をもってしても撃破に至らなかった事実に絶望し、レベル差の無慈悲さを思い知らされた。直後にサミラの反撃を受け、命は再び一方的に殴打され始めた。春姫が涙を流して見守る中、命はなおも戦意を失わなかった。

ベルへの呼びかけと時間切れの接近

その最中、フリュネはベルが近くで見ていると見抜き、大声で命がこのままでは壊されると挑発した。実際、ベルは別館外壁を登って空中庭園に辿り着き、塔の基部に身を隠しながら殺生石破壊の機会を窺っていた。しかし命は春姫を見つめながら、ベルにまだ出てくるなと叫ぶように戦い続けた。空中庭園の石板と祭壇は徐々に赤く変色し、儀式の時刻が迫っていた。フリュネは祭壇のアマゾネスに頃合いを見て春姫を刺すよう命じたが、アイシャは巨体に進路を塞がれ、動けなかった。

魔法発動を見越した敵の油断

命は殴られ続けながらもサミラにしがみつき、詠唱を始めた。サミラは、命の魔法は詠唱が長く、ここで魔法に縋るのは素人だと断じて見下した。そして肘打ちを何度も命の背に叩き込み、周囲のアマゾネス達も情けない姿だと嘲笑した。だが命は、タケミカヅチから教わった忍の本質を思い出していた。相手の予測を超えることこそが極意であり、大切な者を守るためなら誰よりも忍になれるという教えである。

魔力暴走による自爆攻撃

命は抱きついたまま魔力を制御せず暴走させ始めた。サミラは異変に気付き、離れようとして肘打ちを繰り返し、周囲の仲間にも命を引き剥がすよう叫んだが間に合わなかった。命は詠唱を最後まで紡ぎ切り、暴走した魔力を解き放った。大爆炎が巻き起こり、命とサミラを中心に空中庭園を飲み込んだ。直撃を受けたサミラは全身を黒焦げにして墜落し、周囲の戦闘娼婦の半数以上も再起不能に陥った。フリュネやアイシャ、春姫もその爆風に晒された。

落下する命の願い

命自身も魔力暴発の反動で上空へ弾き飛ばされ、そのまま空中庭園の外へ落下していった。体は煙を上げ、皮膚は内側から焼け焦げ、意識も薄れていった。それでも命は、春姫を助けられなかった悔しさと悲しさの中で、ベルの名を呼んだ。そして、自分ではなれなかった春姫の英雄になってほしいと願いながら、春姫から呪縛と破滅と涙を取り払ってほしいという思いを託した。

祭壇への突破

命の魔力暴発が起きた瞬間、ベルは誰よりも速く塔の陰から飛び出し、爆炎の向こうから届いた命の叫びに応えるように祭壇へ向かって全身全霊で疾駆した。戦闘娼婦達はその超速に反応できず、アイシャでさえ振り返ることしかできなかったが、フリュネだけは進路上に立ちはだかった。ベルは威力の乗り切らない一撃を受けながらもその横を突破し、勢いのまま祭壇の目前まで到達した。

殺生石の破壊

フリュネはシャレイに春姫を刺すよう絶叫し、儀式剣はすでに春姫の心臓を穿とうとしていた。祭壇は満月の光を浴びて真紅に輝き、殺生石の力は最高潮に達していたが、ベルは不安定な着地の直後に跳躍し、祭壇へ飛び込んだ。そして《ヘスティア・ナイフ》を抜いて、狙いを定めた最後の紅石を破壊した。

破壊後の包囲と現実の確認

祭壇の石柱は壊れ、放出されていた光の粒子は途切れ、不気味な紅光も弱まり始めた。しかしベルの周囲には五十以上の戦闘娼婦が怒気を孕んで半円形に包囲網を敷いていた。フリュネは春姫を髪ごと掴んで地面に投げつけ、殺生石も儀式も台無しにされた怒りを露わにした。命の魔力暴発で空中庭園は壊滅し、多数の戦闘娼婦も再起不能となっていたが、ベルは殺生石を壊しても新しい石が用意されれば同じことの繰り返しになると理解し、春姫を真に救うには【イシュタル・ファミリア】から解放するしかないと悟った。

春姫への解放要求と拒絶

ベルは戦闘娼婦達に対し、春姫を解放するよう要求した。だがフリュネは、春姫は【フレイヤ・ファミリア】を潰すための道具であり、役立たずの娼婦を養ってやった以上、自分達に体を張って尽くす義務があると怒鳴った。そして春姫に自分の口から言わせようとし、春姫は怯えながらもベルに帰るよう頼み、自分のことは気にしないでほしいと告げた。

ベルの英雄宣言

それに対しベルは、英雄譚を思い出して春姫を助けると決めたのだと語った。娼婦であっても破滅が待っていても、英雄は見捨てないと叫び、自分と春姫が憧れた英雄はそんなものではないと断言した。さらに、汚れていることは恥ではなく、一番恥ずかしいのは何も決められず動けないことだと告げ、春姫の本当の願いを教えてほしいと訴えた。その言葉は空中庭園に響き渡り、春姫は涙を流した。

春姫の決断と魔法発動

そのときフリュネは春姫にわかっているだろうなと圧力をかけたが、春姫は唇を震わせた末に詠唱を始めた。フリュネはそれをベルへの敵意と受け取って哄笑し、戦闘娼婦達もベルを取り囲んで武器を構えた。しかしアイシャは、春姫の歌が仲間ではなくベルに向かって流れていることに気づいた。やがてベルの頭上には巨大な光の槌が現れ、春姫は【ウチデノコヅチ】を発動した。

階位昇華と形勢逆転

光の奔流はベルの全身を包み込み、ベルには夥しい光粒が付与された。その魔法の効果は、対象のレベルを一段階上昇させる【階位昇華】であった。ベルはその力によってLV.4の力を得て、飛びかかってきた戦闘娼婦達をまとめて吹き飛ばした。春姫の魔法こそが、イシュタル達が秘匿し続けてきた最強の妖術であり、【フレイヤ・ファミリア】打倒の切り札であったことが、ここで明らかになった。

春姫の本心と再奪還

フリュネは激昂し、春姫の首を掴み上げて魔法を解くよう強要した。だが春姫は、もう体を売りたくない、誰も傷つけたくない、死にたくない、助けてほしいと、自らの本心をついに口にした。ベルはその願いを聞き届けて突撃し、フリュネを大剣で弾き飛ばして春姫を救おうとした。しかし宙に舞った春姫は、横から飛び込んできたアイシャに抱きかかえられ、そのまま後方へ連れ去られた。

フリュネの激昂と爆音

一方のフリュネは、自らの頬に傷を負わされたことに逆上し、ベルに死んで償えと叫んで猛攻を加えた。ベルとフリュネは激しい剣戟を交わしながら空中庭園から宮殿側へと移動していった。アイシャは気を失った春姫を石板の上に静かに横たえ、動揺する戦闘娼婦達に指示を出そうとしたが、その直後、歓楽街の方角から爆音が轟き、異変に振り向いた。

歓楽街での激戦とヘスティア達の進軍

空中庭園で発生した大爆炎を見たヘスティア達は、ベル達が女主の神娼殿にいると確信し、歓楽街を突き進んだ。道中では何度もアマゾネス達に阻まれたが、桜花やヴェルフを前衛に、リリや千草らの援護と連携で敵を押し返していった。警備に当たる敵の多くは高位ではなく、儀式とベル達の捕獲のために主力が宮殿内へ回されていることがうかがえた。

連続爆発とイシュタルの動揺

その最中、歓楽街の各所で相次いで爆発が発生し、悲鳴と爆音が夜空に広がった。宮殿内でベルを追っていたイシュタルも異変を知って高階のバルコニーへ出たが、眼下では歓楽街の各所に火と煙が上がり、多数の冒険者が領域内へ侵入していた。娼館街では戦闘娼婦達が次々に倒され、非戦闘員の娼婦達は逃げ惑い、イシュタルは自派閥が攻め込まれている現実に愕然とした。

フレイヤ・ファミリアの強襲

歓楽街を蹂躙していたのは【フレイヤ・ファミリア】であった。多種族の団員達は武器や魔法や魔剣を用いて抵抗する戦闘娼婦達だけを撃破し、非戦闘員や客には目もくれず進撃した。ギルド本部でもその異変は確認され、エイナをはじめ職員達は歓楽街の炎上に動揺した。都市の各所で神々も南東の空を見上げ、ロキもまた動いたのはフレイヤだと察した。

フレイヤの進軍と神意

フレイヤは団員達から歓楽街包囲とオッタル達の侵入を報告されると、護衛を不要とし、ベルがいる場所へ向かうよう団員達に命じた。邪魔をする者はすべて蹴散らせと命じ、自らも歓楽街を悠然と北上した。そして女主の神娼殿の正面に至ると、高階のバルコニーに立つイシュタルを見上げ、冷たい微笑を向けた。その視線を受けたイシュタルは顔を蒼白にした。

オッタル達の侵入

一方その少し前、オッタルは空中庭園から落下してきた命を受け止めていた。命が仲間を守るために自爆同然の魔力暴発を起こしたことを察したオッタルは、敬意をもって彼女を地面に寝かせ、万能薬を使って一命を取り留めさせた。そこへアレンら他の団員達が現れ、ベルを助ける気はないが神意には従い、神イシュタルは逃がさないと告げた。オッタルはそれを認めつつ、イシュタルの退路を断ち、邪魔者は根絶やしにするよう命じ、都市最強の第一級冒険者パーティは宮殿へ侵入した。

ヘルメスの告白と狙い

歓楽街を市壁の上から見下ろしていたヘルメスは、ベルの存在をイシュタルに知らせたこと、自分がこの騒動の一端を担ってしまったことを口にした。アスフィにどこまで計算通りだったのかと問われると、最初からこの規模を望んでいたわけではなく、面白いことが起こりそうだったので火種を放っただけだと語った。そして、イシュタルの嫉妬もフレイヤの愛も自分の予想を超えて大きく、事態は想定以上に早く動いたと認めた。

英雄への賭け

さらにヘルメスは、ベルが狐人の少女を見捨てず助けに向かったことを、自分の予想以上のお人好しであったと評した。ベルが逃げていればフレイヤは動かなかったはずであり、状況は大きく変わっていたはずだったが、ベルはそうしなかったのである。ヘルメスは、人も神々も、そして春姫のような少女も英雄を求めていると語り、世界が望む悲願のためにベルを選ぶと断言した。そしてゼウスに代わってこの地で使命を果たすと語り、ベルを最後の英雄へ押し上げるために、女神とその眷族達を礎にすると冷酷な笑みを浮かべた。最後に、銀髪の女神の視線を感じ取ると、その場から退きつつ、白い光にすべてを賭けると独白し、燃え盛る戦場に背を向けた。

7章 ゴッデス・ウォー

歓楽街の崩壊とヘスティア達の到着

歓楽街は阿鼻叫喚に包まれ、異国情緒ある街並みも遊郭も破壊の爪痕に満たされていた。戦闘音は第三区画中心の女主の神娼殿へ集まりつつあり、ようやく宮殿の玄関ホールに辿り着いたヘスティア達は、砕けた白大理石の床や壁、重傷を負って倒れるアマゾネス達を見て息を呑んだ。リリは因縁ある派閥による抗争だと推測し、ヘスティアはフレイヤが動いたのだと察した。

フレイヤ・ファミリアによる宮殿内制圧

宮殿内では【フレイヤ・ファミリア】の団員達が戦闘娼婦達を一方的に蹂躙していた。ヘグニとヘジンは容赦なく敵を倒し、【炎金の四戦士】と呼ばれる四つ子の小人族も階段を破壊しながらイシュタルの退路を断っていた。広大な宮殿に残っていた戦闘娼婦達は有効な抵抗もできず、次々と倒されていった。

ヴェルフと桜花、アレンとの遭遇

ベル達を案じたヴェルフと桜花は女神達から先行し、混乱に乗じて宮殿内を進んでいた。そこで手負いのLV.3戦闘娼婦に遭遇し苦戦するが、突如壁を砕いて現れた猫人の青年がその敵を瞬殺した。その青年はアレン・フローメルであり、ヴェルフを鍛冶師ごときと侮蔑して去っていった。桜花は相手がLv.6【女神の戦車】であることを見抜き、ヴェルフは圧倒的な差を思い知らされた。

イシュタルの動揺とフレイヤの侵入

イシュタルはバルコニーで歓楽街の異変を目にした後、宮殿内へ戻って『殺生石』とフリュネ達の状況を確認しようとした。しかし連絡役は一人も戻らず、彼女はフレイヤがベル・クラネルのためにここまで動いたのかと理解して激しく動揺した。どう動くべきか判断できないまま立ち尽くしていたところ、周囲の喧騒が途絶え、階下の広間にフレイヤ本人が現れた。イシュタルは団員達にフレイヤの拘束を命じたが、二人の団員はフレイヤの『魅了』によってあっさり無力化され、フレイヤは可愛い子達ねと告げながら階段を上がってきた。イシュタルは恐怖に駆られ、一人で上階へ逃げ出した。

歓楽街全域への攻撃とイシュタル派の敗勢

歓楽街ではヘスティア達がさらに進軍していたが、その最中に各所で新たな爆発が連続して起こった。歓楽街は【フレイヤ・ファミリア】の総攻撃を受けており、戦闘娼婦達は各所で撃破され、非戦闘員の娼婦達は逃げ惑っていた。ギルドのエイナや都市中の神々もその異変を目撃し、ロキもまたフレイヤが動いたと察していた。フレイヤ本人も堂々と歓楽街を進み、正面玄関の壊れた女主の神娼殿に到達してイシュタルと視線を交わした。

空中庭園での敗北認識とアイシャの決断

一方、空中庭園では歓楽街全体の崩壊を目にしたアマゾネス達が動揺していた。宮殿へ向かった味方も次々と倒され、イシュタルにも連絡がつかず、さらにフレイヤ自身も宮殿へ侵入したと伝えられた。そうした報告を受けたアイシャは、【イシュタル・ファミリア】はもう終わりだと告げ、レナ達には逃げるよう命じた。自分は逃げず、意識を失っている春姫を見つめながら、けじめをつけるべき相手を待つと決めた。そしてその視線は、激しい剣戟音が響く宮殿屋上へ向けられていた。

ベルとフリュネの屋上決戦

ベルは女主の神娼殿最上階の屋上でフリュネと交戦していた。春姫の妖術による階位昇華でベルはフリュネに食らいついていたが、力も速度もなお相手が上であり、第一級冒険者の壁は越えられなかった。フリュネは春姫の力を称揚しながら、ベルの戦い方にアイズの面影を見て憎悪を募らせ、その怒りのまま猛攻を加えた。ベルも憧憬の存在を貶められた怒りから反撃に出たが、最後は蹴り飛ばされて屋上から落下した。

歓楽街襲撃の発覚とオッタルの登場

ベルを追撃しようとしたフリュネのもとに二人の戦闘娼婦が現れ、ホームと歓楽街が攻め込まれていると告げた。フリュネがようやく異変に気付いたところへ、東の階段から巨大な獣人が現れた。その正体はオッタルであり、駆け寄った戦闘娼婦二人を一瞬で叩き潰した。フリュネは歓楽街の異変とともに、自派閥が先に攻め込まれていたことを悟り、オッタルの出現に恐怖した。

フリュネの敗北

フリュネは逃げ場のないまま前進するしかなく、大戦斧を振るってオッタルに挑んだ。しかしオッタルはその一撃を左手だけで受け止め、斧ごと右手を握り潰した上で、巨体のフリュネを投げ飛ばした。さらに怒りに駆られて再び突進してきたフリュネの顔面を殴り飛ばし、彼女を宮殿下の前庭へと叩き落とした。瀕死のまま地上に落ちたフリュネの前には、オッタルに加え、アレン、ヘグニ、ヘディン、ガリバー兄弟が現れ、【フレイヤ・ファミリア】の最強戦力が揃った。

命乞いと断罪

完全に戦意を失ったフリュネは、許しを乞い、体を差し出すことまで口にして命乞いした。しかしその過程でフレイヤを見下す発言をしたことで、オッタル達の怒りは決定的なものとなった。オッタルはフリュネが自分達の崇高な女神を汚したと断じ、死刑を宣告した。第一級冒険者達は一斉にフリュネへ迫り、歓楽街上空には凄まじい断末魔が響き渡った。

ベルの再突入とアイシャの待機

屋上から落下したベルは、高階の屋根に着地した後、追撃が来ないことを不審に思いながらも、歓楽街に無数の煙が上がる光景を目にした。敵対勢力の強襲が起きていると察したベルは、その混乱に乗じて春姫を救うため、再び別館の空中庭園を目指した。辿り着いた庭園は既に人気がなく、戦闘の痕跡だけが残されていた。祭壇にはアイシャが立ち、傍らには意識を失った春姫が寝かされていた。ベルが春姫を連れていくと告げると、アイシャは彼の表情の変化を認めつつも、それを簡単には許さないと応じた。

春姫の現実とベルの決意

アイシャは、ベルが春姫を助けようとする理由を問いただした。ベルが春姫は娼婦の仕事に苦しんでいるから助けるのだと答えると、アイシャは春姫が実際には男を知らぬ生娘であり、客の裸を見ただけで気絶してしまうのだと明かした。さらに、春姫が現実と夢の区別もつかぬほど追い詰められていた可能性に触れた上で、それでも春姫の力を狙う者は今後も現れると告げた。主神の呪いにも縛られている以上、自分達のもとにいた方がまだましだとするアイシャは、春姫を本当に守れるのかとベルに問いかけた。ベルは答えの代わりに剣を構え、アイシャも大朴刀を抜いて応じた。

制限時間を見越した対峙と近接戦

アイシャは、春姫の階位昇華の効果があと一分で切れると明かし、その間ならベルは自分を力でねじ伏せて春姫を連れ去れると告げた。しかしベルはすぐに攻め込まず、時間の経過を待った。光粒が消え、祭壇の石柱が崩れ落ちた瞬間、二人は同時に踏み込んだ。付与効果を失った後もベルは退かず、アイシャもその意志を好ましく思いながら激しく斬り結んだ。戦いの中でアイシャは歓喜をあらわにし、雄の強さこそが女達の血を騒がせるのだと叫びながら、並行詠唱を開始した。

フレイヤとイシュタルの対峙

一方、歓楽街の異変から逃げ惑っていたイシュタルは、屋上でフレイヤに追いつかれた。イシュタルはベルの件は出来心だったと弁明し許しを請うたが、フレイヤは今までの悪戯は笑って済ませてきたが、今回は許さないと告げた。ベルは自分のものだと言い切り、手を出した女神は潰すと断言した。そこへ崖下から駆け上がってきたタンムズを見たイシュタルは、ベルには美神の魅了が効かないという情報で時間を稼ごうとした。しかしフレイヤはその言葉に価値を認めず、背後から襲いかかったタンムズさえ一瞬で魅了した。自分の寵児までも奪われたイシュタルは、何が違うのかと叫び、フレイヤから品性と断じられて激昂した。

アイシャの魔法とベルの反撃

空中庭園では、並行詠唱を完成させたアイシャが魔法ヘル・カイオスを放った。紅の斬撃波が地を走り、ベルは春姫を背後に庇う形で回避せず、英雄願望の蓄力を開始した。五秒分の蓄力で放った白光の大斬撃は紅の斬撃波と正面から衝突し、押し負けかけたが、ベルは命から託された願いと春姫を守る意志を燃やして剣を振り抜いた。両者の攻撃は相殺され、爆風の中をベルは砕けた大剣を捨てて突進した。英雄願望の反動で動きの鈍ったベルに対し、アイシャは勝機を見て上段蹴りを叩き込んだが、ベルはその一撃を受けながら懐に踏み込み、白兎の牙で腹部を殴りつけた。さらに零距離からファイアボルトを放ち、アイシャを撃破した。

イシュタルの最期と決着

その頃、イシュタルはなおもフレイヤに襲いかかったが、フレイヤはそれを軽く躱して突き放し、最後には頬を張って崖下へ落とした。地上に叩きつけられたイシュタルは致命傷によって神の力を発動させたが、それは下界の規則に抵触する行為であった。フレイヤはその光を見届けた上で指を鳴らし、イシュタルを天界へ送還させた。巨大な光の柱が夜空に立ち上り、敗北した女神は下界から退場した。フレイヤはもう遅いかもしれないが悪戯はするなと一笑し、光の柱に背を向けた。こうして決着がついた。

神の送還とベルの目撃

アイシャを撃破したベルは、ふらつく体で春姫を抱き起こした。その時、歓楽街の空に立ち昇る巨大な光の柱を目撃する。神が天界へ送還されたのだと察したベルは、その壮大な光景に目を奪われた。やがて光は収まり、震動のような響きも止み、下界には静寂が戻った。春姫を抱えたまま呆然としていたベルは、宮殿屋上に立つ一柱の女神を視界に捉える。それは銀髪の美神フレイヤであった。彼女は遠くからベルを見つめ、微笑みながら唇の動きで愛していると告げた。ベルは、自分をこれまで観察していた視線の正体がフレイヤであったと確信する。やがて彼女は姿を消し、ベルは夢のような感覚のままその場に残された。

春姫の目覚めと解放

その後、ベルの腕の中で春姫が目を覚ました。ぼんやりとベルを見上げる春姫に対し、ベルは彼女を支えながら首にはめられていた黒い首輪を引きちぎった。長い間春姫を縛っていた呪縛は、この瞬間に解かれた。何が起きたのか理解した春姫の瞳には涙が浮かび、ベルは彼女を見下ろしながら言葉を探した。英雄譚を思い出しながら考えた末、ベルは最も単純な言葉を口にする。自分はあなたを助けに来たのだと告げた。

春姫の感謝と再会の予感

その言葉を聞いた春姫は涙を流しながら笑顔を浮かべ、英雄様と呼んで感謝を伝えた。ベルもまた照れながら笑い、二人は喜びを分かち合った。やがてベルを呼ぶ声が近付く中、月夜に照らされた空中庭園で、ベルと春姫は互いの温もりを感じながらその時を待っていた。

エピローグ 優しさにつつまれた なら

抗争の余波と都市の動揺

【フレイヤ・ファミリア】と【イシュタル・ファミリア】の抗争から二日後、都市はなお衝撃の中にあった。歓楽街を支配していた大派閥が完全に消滅したことで、冒険者、神々、商人、ギルドなどあらゆる勢力に影響が及んでいた。特に歓楽街を利用していた男神達は嘆き悲しみ、第三区画の破壊された街路で絶叫する姿を見せた。死者こそ出なかったものの被害は大きく、歓楽街の復旧には時間がかかる状況であった。抗争を引き起こした【フレイヤ・ファミリア】には罰金などの罰則が科されたが、主神フレイヤはそれを淡々と受け入れ、再び白亜の塔へ戻った。一方、主神を失った【イシュタル・ファミリア】の団員達は、それぞれ新たな道を歩み始めていた。

春姫とタケミカヅチ達の再会

晴れ渡る空の下、春姫はタケミカヅチと再会した。タケミカヅチは望むなら極東へ帰すこともできると告げたが、春姫は自分は大丈夫だと微笑んで答えた。タケミカヅチはその意思を尊重し、これからも気軽に訪ねてくるよう伝えた。千草や桜花達とも再会を喜び合い、再び会う約束を交わした春姫は、彼らに別れを告げて走り出した。

アイシャとの別れ

館の前ではベル達とアイシャが話をしていた。春姫が礼を述べようとすると、アイシャはそうした話は嫌いだと言って遮った。代わりに、春姫の魔法のことは幹部達に口止めしておいたと告げ、使う場合は人目を避けるよう忠告した。イシュタルが送還されたことで魅了の呪縛も消えたアイシャは、これから新しい【ファミリア】を探すと語り、背を向けて去っていった。春姫はその後ろ姿に礼を述べ、アイシャは振り返らず手だけを振って館の敷地を後にした。

ヘスティア・ファミリアへの加入

その後、春姫はベル達の前で自己紹介を行った。ヴェルフやリリルカも名乗り、互いに挨拶を交わす。ヘスティアも春姫を眷族として歓迎すると宣言したが、同時にベルへの危険な感情を抱いてはならないと釘を刺し、リリルカと口論になった。その様子を見た春姫は、この【ファミリア】ならうまくやっていけそうだと感じた。

命との再会と和解

そこへ命がふらつきながら現れ、階段で転んで春姫に抱き留められた。春姫は自分のせいで迷惑や怪我をかけたと謝罪したが、命は春姫に笑ってほしいと告げ、昔のように笑い合いたいと願った。その言葉に春姫は涙を流しながら笑顔を見せ、命もまた涙を浮かべて笑った。二人はかつてのような笑顔を交わした。

新しい家族としての始まり

最後に春姫はベルへ感謝を伝えた。ベルは照れながら、今日から自分達は家族だと告げた。春姫は深く頭を下げ、これからよろしく頼むと応じた。その後、歓迎の宴を開こうという話になり、館の前には笑い声と賑やかな声が広がった。春姫も涙をこらえながら心から笑い、晴れ渡る空の下で新しい仲間達と共に歩み始めた。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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