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棚架ユウ転生したら剣でした

小説【転剣】「転生したら剣でした 9」感想・ネタバレ

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転生したら剣でした 9の表紙画像(レビュー記事導入用) 棚架ユウ

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物語の概要

■ 作品概要

本作は、意思を持つ魔剣「師匠」と、彼を装備する黒猫族の少女「フラン」の冒険を描く無機物転生ファンタジーの第9巻である。
黒猫族の村を救うために戦い続けるフランたちの前に、かつて邪神を崇拝し一族に呪い(神罰)をもたらした元凶「雷帝」ミューレリアが黒幕として立ちはだかる。
獣王国を征服すべく動き出す彼女を止めるため、フランは同じく十始族へ進化していた獣王の娘メアと共に共闘を開始する。
アースラースら規格外の強者たちが集う境界山脈のダンジョンを舞台に、悲しき過去と一族の悲願が交錯する激しい死闘が幕を開ける。

■ 主要キャラクター

  • フラン:黒猫族の少女で、「黒雷姫」の異名を持つランクC冒険者である。同胞を守り抜くため、圧倒的な邪気を纏うミューレリアやゼロスリードに立ち向かう。
  • 師匠:フランが装備する意思を持つ魔剣である。暴走するアースラースから奪った「狂鬼化」スキルに蝕まれ、自らも巨大な鋼の狼(フェンリル)に変貌して暴走した結果、耐久値を限界近くまで減らす大ダメージを負ってしまう。
  • メア(ネメア・ナラシンハ):獣王リグディスの長女である。神剣「暴竜剣リンドヴルム」を所持し、フランの良き友達(ライバル)として共に戦場を駆け抜ける。
  • クイナ:メアに仕える灰族の達人女中である。幻影魔術や夢幻陣を駆使してサポートし、緊迫した戦場であっても完璧にお茶会を給仕する。
  • キアラ:黒天虎への進化を遂げた黒猫族の英雄である。フランたちを逃がすために自らの命を燃やし、ゼロスリードとの死闘の果てに静かに息を引き取った。
  • ミューレリア:五百年前に黒猫族に神罰をもたらしたとされる元第二王女である。実際は愛する子孫のロミオをバシャール王国の生贄から救い出すためにすべてを偽って行動しており、最期はゼロスリードに討たれる。
  • ゼロスリード:魔人化手術と共食いスキルにより、ミューレリアに匹敵する強大な邪力を得た戦士である。アースラースやキアラとの戦いを純粋に楽しむ、極め付きの戦闘狂だ。
  • アースラース:神剣「大地剣ガイア」を所持するランクS冒険者である。固有スキル「狂鬼化」による暴走の呪いに苦しみながらもダンジョンに潜入し、フランたちと共闘する。
  • アリステア:メアやリンドとも顔見知りの高名な女性神級鍛冶師である。ボロボロになった師匠に応急処置を施し、自らの館へ一行を案内する。

■ 物語の特徴

本作で最も引き込まれるポイントは、極限状態の戦場で描かれる重厚な人間ドラマと激化するバトルである。
極悪非道な元凶として登場したミューレリアの行動原理が、実は「愛する子・ロミオを救い出すための狂おしいほどの母性」であったという悲哀に満ちた真実が胸を打つ。
また、アースラースの大地剣ガイアによる神剣開放や、狂鬼化によってフェンリルと化した師匠の暴走など、戦いの規模は過去最大級にスケールアップしている。
何より、進化したキアラが命を賭して繰り出した「黒雷神爪」の威容と、血の繋がらない孫のような存在であるフランに「優しく、格好よく、自由に生きろ」と言い残して逝く最期のシーンは、涙なしには読めない名場面だ。
後半に登場する神級鍛冶師アリステアによる救済など、絶望から新たな希望へとバトンが繋がれていく構成も見事というほかない。

書籍情報

転生したら剣でした 9
著者:棚架ユウ 氏
イラスト:るろお
出版社:マイクロマガジン社(GCノベルズ
発売日:2020年3月30日
ISBN:9784896379907

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

あらすじ・内容

雷帝vs黒雷姫!黒猫族に掛かった神罰、その要因を作ったとされる災厄の王女に師匠とフランが立ち向かう!
黒猫族の村を守る為、戦い続けるフラン。
助けに来たメアと共に襲撃者を撃退するのだが、黒幕ミューレリアが姿を現す。
彼女は雷帝という二つ名で呼ばれるほどの実力者であり、
邪神を崇拝し黒猫族に呪いをもたらした元凶だった。
獣王国を征服すべく動き出していたミューレリアを止めるため、
師匠とフランは再び激しい戦いへと赴くのであった

転生したら剣でした 9

感想

前巻から続く、獣人国を襲う大規模な侵攻。

万を超える魔獣と邪人を相手に、フランと師匠は限界ギリギリまで戦い続ける。

そこへメア、クイナ、リンドが援軍として現れる序盤からかなり熱い。

それだけでも十分大規模な戦いなのに、本巻はここからさらにミューレリア、キアラ、アースラース、ゼロスリードまで登場してくる。

読み終えてみれば、

「最初の大軍との戦いすら前座だったのか」

と思ってしまうほど濃い一冊だった。

メアが来た時の安心感がすごい

フランが邪人と魔獣の大軍に追い詰められる中、駆けつけてきたのがメアだった。

しかも彼女の正体は、獣王リグディスの娘ネメア・ナラシンハ。

さらに十始族《金火獅》へ進化済みで、《金炎絶火》まで使用できる。

フランと同年代なのに普通に強すぎる。

ワルキューレ相手にフランとメアが並んで戦う場面は、初めて組んだとは思えないほど息が合っている。

フランが相手の隙を作り、メアが圧倒的な火力を叩き込む。

ライバルでありながら、そのまま最高の仲間にもなれる関係がよかった。

そして激戦が終わった直後。

焼け焦げた魔獣の死体や溶岩が残っている戦場で、クイナが突然テーブルと椅子を出してお茶会を始める。

戦場なんだけど?

と思わずツッコミたくなる。

しかしクイナからすれば、「戦場だからこそ休める時に休む」という極めて真っ当な判断でもある。

フランも限界寸前だったので、結果的には必要な休息だった。

この殺伐とした状況で普通にスコーンまで出てくる温度差が妙に好きだった。

やっと一息ついたと思ったらミューレリア登場

ところが、当然これで終わらない。

次に現れたのがミューレリア。

五百年前の黒猫族王家の第二王女であり、黒猫族が神罰を受ける原因とも深く関わっている人物だった。

しかも二人のワルキューレと二体のデュラハンまで連れている。

さっき倒したワルキューレ一体でもかなり苦戦したのだが。

それより強そうなのが二体。

さらにミューレリア本人は、それとは比較にならないほどの邪気を放っている。

おまけに転移まで封じられる。

逃げることすらできない。

ここまで来ると、

「いや、もう無理だろ」

と思ってしまった。

しかもミューレリアは魔術の技量まで異常に高い。

師匠が使う《カンナカムイ》をさらに狭い範囲へ収束させ、威力を集中させて撃つ。

極大魔術すら自在に調整してしまう技量を見て、師匠自身が自分より遥かに上だと認めるほどだった。

強いというより、これまで積み重ねてきたフランと師匠の常識を一段上から踏み潰してくる感じが怖かった。

黒雷を纏ってキアラが来た!

そんな絶体絶命の状況で現れたのがキアラである。

しかも、ただのキアラではない。

《黒天虎》へ進化している。

黒雷を纏い、メアと戦っていたロスヴァイセを一撃で倒す。

ここは本当に格好よかった。

前巻では病床にありながら、フランから進化条件を聞いて「自分も進化する」と飛び出そうとしていた老戦士である。

それが本当に進化して戦場へ戻ってくる。

口だけでは終わらない。

自分の残された時間と身体を使って、本当に黒天虎へたどり着いた。

さらに傷だらけのウルシもフランのもとへ帰還。

グエンダルファまで以前とは比べ物にならないほど成長して戦線へ加わる。

特にグエンダルファには驚いた。

前巻では王都の門前でフランに喧嘩を売り、一撃で吹き飛ばされた人物である。

慢心もあり、精神的にも未熟だった。

それが今回は恐怖を感じながらも逃げず、

「俺も行きます」

と危険なダンジョン攻略への同行を申し出る。

強くなったというより、格好悪い自分を認めた上で、それでも前へ出られるようになったことが印象に残った。

キアラとフランは、本当に祖母と孫のようだった

キアラが加わってから特に好きだったのが、フランとの関係である。

同じ黒猫族。

先に生まれ、進化方法を探し続けながらも、その答えへたどり着けなかったキアラ。

その答えを持って現れたのが、幼いフランだった。

だから師弟というだけでもない。

仲間というだけでもない。

ダンジョンへ向かう馬車の中では、眠ってしまったフランがキアラの膝を枕にする。

キアラはその頭を撫でる。

戦闘中の二人は凄まじく格好いいのに、こういう場面では本当に祖母と孫のように見えた。

だからこそ、終盤はきつかった。

ランクS冒険者アースラース。

《大地剣ガイア》。

ゼロスリード。

そして《狂鬼化》。

戦いはさらにインフレしていき、ついには師匠まで狂鬼化を奪った影響で暴走してしまう。

巨大な鋼の狼へ変貌し、敵味方の区別すら危うくなる師匠。

そんな状況でキアラは残る。

フランたちを逃がし、ゼロスリードと暴走した師匠を相手に一人で戦い続ける。

最後には師匠と再び共闘し、《黒雷神爪》を叩き込んでゼロスリードを撤退させる。

しかし、その代償は大きすぎた。

「自由に生きろ」があまりにも重い

戦いが終わった時、キアラにはもうほとんど生命力が残っていない。

フランは必死に回復魔術を使う。

それでも間に合わない。

キアラはフランを血の繋がらない孫のように思っていたと伝え、

復讐に囚われず、

強く、

優しく、

格好よく、

そして自由に生きるように言い残す。

ここはかなり辛かった。

黒猫族は長い間、進化できないという呪いに縛られてきた。

キアラ自身も、その進化方法を探すことに人生の多くを使ってきた。

そんな彼女が最後にフランへ託すのが、

「黒猫族のために生きろ」

ではなく、

「自由に生きろ」

という願いなのがよかった。

フランに黒猫族の希望としての役割を背負わせるのではない。

自分の人生を生きてほしい。

だからこそ、本当に孫へ言葉を残す祖母のように感じた。

フランがキアラの胸に縋って泣く場面は、本巻で一番心に残った。

読後の感想

『転生したら剣でした 9』は、とにかく戦い続ける一冊だった。

魔獣の大軍。

ワルキューレ。

ミューレリア。

バシャール王国。

アースラース。

ゼロスリード。

次から次へと強敵が現れ、フランと師匠も限界を超えていく。

その中でも一番印象に残ったのは、やはりキアラだった。

黒天虎となって黒雷を纏い、絶体絶命の戦場へ飛び込んでくる姿は最高に格好いい。

だからこそ、その格好良さを最後まで貫いて散っていく姿が辛い。

そしてフランもまた、キアラに守られるだけでは終わらない。

彼女から黒天虎の戦い方を学び、その想いを受け継いでいく。

戦闘力が上がるだけではない。

出会った人たちから何かを受け取り、それを次へ持っていく。

そこにフランの成長を感じた。

さらに戦いの代償として、師匠もボロボロになってしまう。

自己修復すらまともにできない状態の師匠を救ってくれそうなのが、最後に登場した神級鍛冶師アリステアである。

キアラを失った直後に、今度は師匠まで失うのではないか。

そんな不安の中で、

「必ず直せる」

と言ってくれたアリステアの存在には少し救われた。

次巻では、このボロボロになった師匠がどう修復されるのか。

そして神級鍛冶師が、謎だらけのインテリジェンス・ウェポンである師匠から何を見つけ出すのか。

戦争の行方以上に、そちらが気になっている。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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考察・解説

黒猫族の奮起

黒猫族の奮起と精神的自立の全貌

『転生したら剣でした』第9巻において描かれる「黒猫族の奮起」について、避難路での絶体絶命の危機、サリューシャの覚醒と初陣、同胞たちの誇りを呼び覚ます鼓舞、および奮起がもたらした奇跡と物語的な意味の各点から解説する。

避難路での絶体絶命の危機

魔獣軍の急襲を受け、シュワルツカッツェの黒猫族たちはグリンゴートへと夜の森を避難していたが、道中でゴブリンの群れに包囲されてしまった。

・これまで黒猫族を守って最前線で戦ってくれていた他種族(赤犬族や白兎族など)の衛兵たちが、圧倒的な数の前に傷つき、劣勢に立たされた。
・このとき、ゴブリンは重傷を負った衛兵にわざとトドメを刺さず、助けようとする周囲の焦りを誘うという卑劣な悪知恵を見せ、黒猫族たちを恐怖に陥れた。

サリューシャの覚醒と初陣

絶望が広がる中、立ち上がったのは黒猫族の少女サリューシャであった。

・彼女は、以前村を訪れたフランから本物の武具(槍)を託され、みんな(同胞)を頼むと言葉をかけられていたことを思い出した。
・恐怖を押し殺したサリューシャは、ゴブリンに向かって槍を突き刺し、自らの手で初めて敵を討ち取った。
・この初陣を通して、彼女は、ゴブリンも自分たちと同じように、攻撃されれば恐怖を感じて怯む存在なのだ、と身をもって理解した。

同胞たちの誇りを呼び覚ます鼓舞

サリューシャは、敵を前にして未だ怯え、守られるのを待つばかりの黒猫族の男たちに向かって強く訴えかけた。

・姫様(フラン)から授けられた本物の武器を手にしながら、なぜ戦おうとしないのかと問いかけた。
・黒猫族の希望の星であるフラン様が命懸けで戦っているのに、同胞である私たちが臆病者のままであれば、フラン様まで周囲から馬鹿にされてしまうと言い放った。
・この言葉は、長年の迫害や、黒猫族は進化できない最弱の雑魚種族である、という諦めから卑屈になっていた同胞たちの誇りを強烈に刺激した。
・男たちの目から怯えが消え、彼らは自らの意志で戦う戦士として武器を構え、ゴブリンの軍勢に立ち向かう決意を固めた。

奮起がもたらした奇跡と物語的な意味

黒猫族たちが退路を断って一矢報いる覚悟を決めたその瞬間、王都からフランたちの加勢へとひた走っていた黒天虎のキアラと、傷だらけのウルシが戦場に駆けつけた。

・キアラの圧倒的な雷撃とウルシの闇魔術により、襲撃してきた邪人軍は瞬く間に壊滅した。
・これまで黒猫族は、約500年前の先祖の大罪による神罰を受け、進化の可能性すら忘れて他種族の奴隷や囮として甘んじてきた。
・しかし、フランという進化した存在に触れ、魔術や戦い方の初歩を学び、本物の武器を贈られたことで、彼らの心には変わりたいという種火が灯されていた。
・サリューシャの叫びに応じた同胞たちの奮起は、彼らがただ保護されるだけの弱者から、自らの手で罪を償い、誇りを取り戻すために戦う主体へと精神的に自立した歴史的な瞬間である。

まとめ

黒猫族の奮起と精神的自立を巡る一連の全貌は、夜の森でのゴブリン包囲による絶体絶命の危機から始まり、サリューシャの初陣と敵の脆弱性の見極め、同胞の誇りを刺激する強い鼓舞、そして決意に答えるようなキアラ達の駆け付けと邪人軍の壊滅に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
弱者としての呪縛や諦めという不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、種族の自立と誇りの再獲得の記録である。
迫害の記憶から、少女の覚醒、同胞の奮起、加勢の到着、そして主体的な戦士への脱皮へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

金炎の王女

金炎の王女メア(ネメア・ナラシンハ)の全貌

『転生したら剣でした』において、金炎の王女とは、獣人国(獣王国)の王リグディス・ナラシンハの長女であり、十始族へと進化した王女メア(ネメア・ナラシンハ)を指す。彼女の立場、能力、そして作中での役割について解説する。

宿命と王女の真実(ネメア・ナラシンハ)

メアの真の名はネメア・ナラシンハであり、現獣王リグディスの第1王女である。

・生まれつき白神子と呼ばれる、極めて稀な全身が真っ白な容姿と真紅の瞳を持って生まれ、強力なユニークスキル「白火」を神から授けられていた。
・その強すぎる力と王族としての立場から、周囲の期待や政治的重圧に晒され、幼少期は同年代の友人に恵まれなかった。
・この状況を懸念した獣王リグディスにより、彼女に王宮外での自由を与えるための影武者の王女ネメアが別に立てられ、彼女自身はお目付け役の侍女クイナと共に、偽名を使って旅の美少女剣士メアとして自由に世界を冒険することが許されていた。

十始族「金火」の力と「金炎」の支配

メアは父リグディスと同じく、赤猫族の上位種族である十始族「金火」へと進化を遂げている。

・旅の間は十始族であることを隠すために魔道具の首飾りを身につけていたが、本気を出す際にはこれを外して固有スキル「金炎絶火」を発動する。
・金炎絶火状態の彼女は、全身から金色の炎を噴き上げ、圧倒的な魔力と王者の風格を漂わせる。
・この金炎はオート防御機能を有しており、ワルキューレが放った神速の矢でさえもメアに届く前に一瞬で燃やし尽くすほどの防御力を誇る。
・さらに、金炎を剣に圧縮して放つ必殺の金殲火や、自身の白火と金炎絶火を融合させた白金炎による広範囲の殲滅攻撃など、一国を左右するほどの絶大な戦闘能力を有している。

神剣「暴竜剣・リンドヴルム」の使い手

メアの所持する愛剣「竜剣リンド」の真の銘は、世界に26本しか実在を許されていない神剣の一振り「暴竜剣・リンドヴルム」である。

・メアが遺跡の隠し部屋で発見したものであり、普段は剣に宿る子供の竜の姿をした竜魂リンドを召喚して戦わせるなど、高い自律戦闘スキルを発揮する。
・現時点ではメア自身の技量不足により神剣リンドヴルムの真の力を完全に解放できていないものの、彼女はその本来の真価を引き出すための修行と挑戦を続けている。

フランとの対等な絆と共闘

金炎の王女メアは、主人公フランにとって初めてできた同年代の対等な友人であり、最大のライバルである。

・蠍獅子の森でのマンティコアの横取りをきっかけに出会い、白熱した模擬戦を通じて互いの強さを認め合った。
・その後、シュワルツカッツェを襲った魔獣と邪人の大軍にフランが単独で立ち向かい絶体絶命の危機に陥った際、メアは赤竜リンドを駆ってクイナと共に戦場に駆けつけた。
・メアは十始族としての圧倒的な金炎の力を惜しみなく解放し、フランと息の合った見事な連携を展開してワルキューレやデュラハンといった強大な邪人の指揮官たちを撃破した。

まとめ

金炎の王女メア(ネメア・ナラシンハ)を巡る一連の全貌は、第1王女としての宿命と影武者を立てた冒険から始まり、十始族「金火」としての金炎絶火や白金炎の行使、神剣「暴竜剣・リンドヴルム」の保持、そしてフランとの絆と邪人指揮官撃破に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
王族の重圧や血脈の宿命という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、圧倒的な武威と気高き友情の記録である。
血脈の葛藤から、固有スキルの解放、神剣の行使、ライバルとの共闘、そして戦場での勝利へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

邪神の巫女

邪神の巫女ミューレリアの全貌

『転生したら剣でした』において、邪神の巫女とは、五百年前の黒猫族の王家(クリシュナ家)の第二王女であり、雷帝の異名を持っていたミューレリアを指す。彼女が邪神の巫女となった経緯やその後の運命、本心について解説する。

邪神の巫女誕生の悲劇

ミューレリアが人間(マグノリア家)と恋愛関係になったことを契機に、獣人国の中で人間排斥を訴える他の獣人たちから圧力が生じた。

・これを受けた王家により、彼女は邪神の封印の地へと連れて行かれ、生贄として捧げられてしまった。
・当時、邪神は完全に復活できる状態ではなかったが、生贄となったミューレリアに自らの代わりに魂を集めるよう命じ、力を与えて蘇らせた。
・これが、彼女が邪神の巫女となった瞬間である。

理性を失わない圧倒的な邪術の才能

通常の人間や獣人は邪神の力を得ると理性を失って暴走するが、ミューレリアには生まれつき優れた邪術の才能があったため、理性を保ったまま邪神の力を支配した。

・彼女はその強大な力で父親である当時の獣王を洗脳して支配し、自分を裏切った獣人たちへの復讐を開始した。
・しかし、かつての恋人たちが彼女を裏切ってバシャール王国へと逃亡し、その子供を人質にされたことで、ミューレリアは子の安全のために獣人国を陥れるための裏切り行為に手を貸さざるを得なくなった。
・最終的に彼女は、神々が下した神罰の光によって命を落とし、封印されることとなった。

五百年後の再召喚と隷属の屈辱

五百年後、邪術師リンフォードが、獣人国に封印されている邪神の欠片と交信して力を得る目的で、ダンジョンの魔力を利用した召喚儀式によりミューレリアを現世に完全召喚した。

・彼女は邪神の巫女として凄まじい邪気と戦闘力を誇っていたが、この召喚に伴いダンジョンのシステムに強制的に組み込まれてしまった。
・その結果、サブマスターという立場に固定され、格下であるはずのリンフォードや、無能なダンジョンマスターの命令と誓約に逆らえないという屈辱的な支配下に置かれた。

悲哀に満ちた本心とロミオへの愛

表向きはバシャール王国やリンフォードと共謀し、獣人国の滅亡や邪神の復活を企む狂気の邪人として振舞っていたが、それらはすべて彼女の真意を隠すための方便であった。

・彼女の唯一の願いであり真の目的は、かつて愛した子の血を引き、現在はバシャール王国で邪神復活の生贄として利用されようとしている少年ロミオ・マグノリアを救い出し、幸せにすることだけであった。
・最後は、自らを裏切ったゼロスリードに心臓を貫かれて討たれるという最期を迎えるが、それすらも死にゆく憐れな女の最期の願いとして、対峙していたフランやメアたちにロミオの保護を義務付けるための冷徹かつ悲哀に満ちた策略であった。

まとめ

邪神の巫女ミューレリアを巡る一連の全貌は、恋心をきっかけとした生贄の悲劇と邪神の巫女への変貌から始まり、圧倒的な邪術の才能による逆襲と人質を取られた苦悩、五百年後の再召喚とダンジョンシステムによる屈辱的な拘束、そして愛する子孫ロミオ救出のために裏で策を巡らせた悲哀の最期に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
裏切りや拘束という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、悲しき巫女の執念と愛の記録である。
生贄の過去から、洗脳による復讐、偽りの隷属、真意の秘匿、そして命を賭した救出工作へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

狂鬼化の暴走

アースラースと師匠の狂鬼化の暴走の全貌

『転生したら剣でした』第9巻における「狂鬼化の暴走」について、固有スキル「狂鬼化」の性質、アースラースの暴走、師匠によるスキルの奪取とさらなる大暴走、および暴走の凄惨な代償の各点から解説する。

固有スキル「狂鬼化」の性質(祝福と呪い)

狂鬼化は、ランクS冒険者アースラースが「禍ツ鬼(まがつき)」という鬼人族の変異体に変わった際に得た、強力無比な固有スキルである。

・圧倒的な戦闘力:発動すると、一部の能力やスキルが数倍に跳ね上がり、回復力も桁違いに上昇する。戦闘力は数倍になり、神剣「地剣ガイア」の真の力を引き出すことが可能になる。
・理性なき破壊衝動:しかし発動中は、凄まじい破壊衝動に支配されて理性が完全に吹き飛び、敵味方の区別なく周囲を殺戮・破壊する暴走状態に陥る。
・制御不能の自動発動:最大の問題は、アースラース自身の意思で発動をコントロールできず、戦闘を繰り返すことで自動的に発動してしまうという点にある。一度発動すれば、自力で止めることは不可能とされている。

アースラースの暴走

境界山脈のダンジョンにおいて、ミューレリアの罠により退路を断たれたアースラースは、戦うほどに狂鬼化が近づくことを自覚しながらも共闘を余儀なくされた。

・時間稼ぎを目論むミューレリアらとの戦闘を重ねた結果、アースラースの額の角が赤く染まり、赤い魔力のオーラが立ち上って理性を喪失した。
・ついに狂鬼化が発動してしまった。
・暴走したアースラースは神剣開放により「大地剣ガイア」を顕現させ、その圧倒的な余波だけでゼロスリードの半身を潰すほどの武威を見せるが、結界内のダンジョンそのものを崩壊させ、味方であるフランたちをも命の危機に晒す壊滅的な暴走となった。

師匠によるスキルの奪取と、さらなる大暴走

この絶望的な状況を解決するため、師匠は「スキルテイカー」を使い、アースラースから狂鬼化スキルを奪い取るという危険な賭けに出た。

・スキルの強奪とアースラースの救出:強奪は成功し、アースラースは理性を取り戻して停止した。
・魔剣「師匠」の狂乱:しかし、奪った狂鬼化の衝動は今度は師匠の中に宿ってしまい、師匠自身が凄まじい破壊衝動に呑まれて暴走を開始した。
・人知を超えた破壊力の解放:暴走した師匠は「潜在能力解放」まで発動させ、本来は無詠唱では使えないはずの極大雷撃魔術(カンナカムイ)を連続で放ち、形態変形による無数の鋼糸でゼロスリードを包囲、さらに剣王技「天断」を放ってダンジョンごと空間を切り裂くという、凄まじい暴威を振るった。
・鋼の狼(フェンリル)への変身:暴走の極致において、師匠は自らの体高を5メートルほどの巨大な鋼の狼(フェンリルに酷似した姿)へと変貌させ、黒い魔力を放ちながら狂い暴れた。

まとめ

アースラースと師匠の狂鬼化の暴走を巡る一連の全貌は、戦闘の累積により自動発動する制御不能な固有スキルの脅威から始まり、アースラースの狂鬼化と神剣ガイア解放によるダンジョン全壊、師匠のスキルテイカー行使によるスキル奪取と更なる暴走、そして鋼の狼変貌を経て耐久値100以下まで劣化・機能停止に至る過酷な代償まで、その歩みを明瞭に示している。
制御不能な呪いや自滅的な破滅という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、命を賭した狂乱とスキルの代償の記録である。
狂鬼化の発動から、神剣の暴威、スキルの強奪、フェンリル化、そして師匠の沈黙へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

黒天虎の最期

黒天虎(黒猫族の英雄キアラ)の最期の全貌

『転生したら剣でした』第9巻における黒天虎(黒猫族の英雄キアラ)の最期について、絶望的な戦場での三つ巴の足止め、師匠との共闘と戦士の覚悟、命を削った最後の一撃「黒雷神爪」、およびフランの腕の中での安らかな最期の各点から解説する。

絶望的な戦場での「三つ巴」の足止め

境界山脈のダンジョンにおいて、固有スキル「狂鬼化」により巨大な鋼の狼となって暴走した師匠と、強大な邪気を得たゼロスリードの双方が暴れ狂う中、キアラはフランやメアたちを逃がすための時間を稼ぐべく、一人その場に踏みとどまった。

・キアラは「閃華迅雷」を維持し、極限の老体に鞭打って二つの脅威を執拗に引きつけた。
・互いの攻撃を誘導しながら命懸けの三つ巴の戦いを展開した。

師匠との共闘と「戦士の覚悟」

暴走を使い果たした師匠が鋼の狼からヒビだらけの剣へと崩壊して理性を取り戻した時、キアラの肉体もすでに疲労と激痛で限界を迎えていた。

・師匠は念話で、閃華迅雷を解け、さもないと死んでしまう、と懇願したが、キアラは解いた時点で斬られて終わると拒否した。
・彼女はどうせ老い先短い命、最後は恰好よく、戦士として死にたいと微笑み、自らの残り命をすべて師匠に託して共闘を求めた。
・キアラは最後の力を振り絞って「黒雷転動」による高速移動を繰り出し、ゼロスリードの背後を取って師匠を投げつけた。
・投げられた師匠は形態変形で複数の鋼糸となり、ゼロスリードの体に深く食い込んでその動きを拘束した。

命を削った最後の一撃「黒雷神爪」

その場に戻ってきたフランが悲鳴を上げる中、キアラは黒天虎の力を極限まで高め、自らの命を削る奥の手「黒雷神爪」を放った。

・この瞬間、キアラの白髪は黒く染まり、瞳はネコ科のように変化し、全身から邪気とは対照的な神聖な破邪の魔力が立ち上った。
・キアラにはすでに踏み込む力も残っておらず軌道が僅かに逸れたが、師匠が残る念動のすべてを使って軌道を修正した。
・黒雷神爪はゼロスリードの左腕を根元から斬り飛ばした。
・破邪の力を秘めたこの一撃の傷は再生せず、ゼロスリードは敗北を認めて撤退を余儀なくされた。

フランの腕の中での安らかな最期

すべての力を使い果たして倒れたキアラに対し、フランは涙を流しながら「グレーター・ヒール」を連発したが、すでに生命力が完全に尽きていたため傷が癒えることはなかった。

・キアラは、血の繋がらない孫のような存在であるフランに、復讐なんて馬鹿なことは考えるな、強くなれ、優しく恰好よく、自由に生きて、という最期の言葉を遺し、静かに息を引き取った。
・彼女の亡骸は、心残りのない満足げな穏やかな笑みを浮かべていた。
・その後、付き従っていたミアノアがキアラの顔を拭い、遺体はのちに獣人国で正式な葬儀を執り行うため、大切にフランの次元収納へと保管された。

まとめ

黒天虎(黒猫族の英雄キアラ)の最期を巡る一連の全貌は、仲間を逃がすための三つ巴の引きつけから始まり、限界の肉体を押しての師匠との共闘受諾、命を削る奥義「黒雷神爪」によるゼロスリードへの致命傷と退散、そしてフランの腕の中での遺言と安らかな眠りに至るまで、その歩みを明瞭に示している。
死の運命や老いの限界という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、英雄の威厳と次世代への想い継承の記録である。
絶望的な足止めから、命懸けの連携、奥義の行使、言葉の伝承、そして次元収納への安置へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

転剣8レビュー
転剣まとめ
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登場キャラクター

主人公一行

師匠

意思を持つ魔剣である。フランを装備者として支える立場にある。

・所属組織、地位や役職
 インテリジェンス・ウェポン。フランの装備。

・物語内での具体的な行動や成果
 アースラースから狂鬼化スキルを奪い取った。その結果として自らも暴走状態に陥る。極限状態で潜在能力解放などを使い、敵に大きな打撃を与えた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 魔力を使い果たしたことで、全身にヒビが入る。自力で会話や魔力回復ができない機能停止状態になった。

フラン

黒猫族の少女である。師匠を装備して戦う。同胞の地位向上を目指している。

・所属組織、地位や役職
 ランクC冒険者。異名は「黒雷姫」。

・物語内での具体的な行動や成果
 シュワルツカッツェの村人たちを安全な場所へと避難させる。その間に単独で魔獣の軍勢を足止めした。その後、襲来したミューレリアやゼロスリードと激しい死闘を繰り広げる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 戦闘を通じて「剣王」の職業を解放する。機能停止した師匠を救うため、アリステアの館へと向かった。

ウルシ

フランの従魔であるダークネスウルフ。フランや師匠の指示に従い、影に潜んで戦う。

・所属組織、地位や役職
 フランの従魔。

・物語内での具体的な行動や成果
 魔獣軍のクリムゾンウルフを撃破した。グリンゴートを狙う別動隊を単独で足止めする。悪魔の強力な呪詛を受けながらも、別動隊の指揮官を倒した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 激戦により瀕死の重傷を負う。キアラによって救出された。顔に消えない傷跡が残った。

メア一行

メア(ネメア・ナラシンハ)

白神子と呼ばれる白い獣人の少女である。フランの対等なライバルとなる。お互いの秘密を明かすことで、親しい友人となった。

・所属組織、地位や役職
 獣王リグディスの長女。第1王女。赤猫族の上位種族である十始族の金火。

・物語内での具体的な行動や成果
 赤竜リンドに乗ってフランの戦場へ駆けつける。十始族の力である「金炎絶火」を使い、邪人たちを圧倒した。フランと連携してワルキューレを撃破する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 別動隊を殲滅したことで、レベルを大幅に上げた。戦闘後はダンジョンの奥へと進み、危険なダンジョンコアの破壊を果たす。

クイナ

メアに仕える獣人の女性である。メアを心から敬愛している。

・所属組織、地位や役職
 灰族の達人女中。メアの従者。

・物語内での具体的な行動や成果
 夢幻陣や幻像魔術を使用する。これらを使い、戦場でメアたちを強力にサポートした。ワルキューレの背後を取り、心臓を潰す奇襲を成功させる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 達人女中としての技能を遺憾なく発揮する。戦場においても完璧な給仕とお茶会を執り行った。

リンド(暴竜剣・リンドヴルム)

メアの持つ神剣に宿る竜魂である。メアの呼びかけに応じて実体化する。

・所属組織、地位や役職
 神剣「暴竜剣・リンドヴルム」に宿る竜魂。

・物語内での具体的な行動や成果
 メアの命令に従い、上空から邪人たちに強力な炎を吐く。敵の攻撃を避けながら、広範囲の敵を足止めした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 メアのレベルアップに伴い、以前よりも大型の体に成長を果たす。

シュワルツカッツェ(黒猫族の村)

サリューシャ

シュワルツカッツェに住む黒猫族の少女である。同胞たちの卑屈な態度に不満を感じている。

・所属組織、地位や役職
 黒猫族の村人。

・物語内での具体的な行動や成果
 避難中にゴブリンに包囲された際、立ち上がる。フランから託された槍を手に、自らの手でゴブリンを倒した。怯える同胞たちに強く呼びかけ、戦う決意を促す。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 黒猫族全体の奮起を促す立役者となった。

黒猫族の村長

シュワルツカッツェをまとめる老人である。フランを希望の星として深く敬う。

・所属組織、地位や役職
 シュワルツカッツェの村長。

・物語内での具体的な行動や成果
 フランから黒猫族の歴史と進化の条件を聞く。種族の罪を償う決意を村人に促した。魔獣軍の接近を知ると、迅速に村の避難を指揮する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

モロス

シュワルツカッツェの避難を護衛していた衛兵である。

・所属組織、地位や役職
 衛兵。

・物語内での具体的な行動や成果
 ゴブリンの群れに襲われ、背中を斬られて重傷を負った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 他の衛兵がポーションで助けようとした。

赤犬族の衛兵たち

シュワルツカッツェの避難を護衛していた赤犬族の兵士たちである。

・所属組織、地位や役職
 獣人国の兵士。

・物語内での具体的な行動や成果
 ゴブリンの群れから黒猫族を守るために戦った。圧倒的な数の前で傷つき、劣勢に立たされた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

白兎族の衛兵たち

シュワルツカッツェの避難を護衛していた白兎族の兵士たちである。

・所属組織、地位や役職
 獣人国の兵士。

・物語内での具体的な行動や成果
 ゴブリンの群れから黒猫族を守るために戦った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

黒猫族の村人たち

シュワルツカッツェに暮らす黒猫族の人々である。長年の迫害により卑屈になっていた。

・所属組織、地位や役職
 シュワルツカッツェの住民。

・物語内での具体的な行動や成果
 フランの指導を受けてゴブリンを倒し、戦う自信を身につけた。サリューシャの言葉に奮起し、自らの手で戦う決意を固める。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 保護されるだけの弱者から、自立した戦士への一歩を踏み出した。

獣人国・王宮関係者

キアラ

黒猫族の英雄であり、高齢ながら凄まじい実力を持つ女性である。獣王やゴドダルファの師匠でもある。

・所属組織、地位や役職
 元奴隷。獣王リグディスの師匠。黒天虎。

・物語内での具体的な行動や成果
 病み上がりの身でフランの戦場へ駆けつける。ウルシと共に別動隊を殲滅した。狂鬼化した師匠を抑えるために立ち塞がる。命を燃やしてゼロスリードを巻き込む三つ巴の戦いを展開した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 最後は命を削る奥の手である「黒雷神爪」を放つ。ゼロスリードを撤退させた。フランの腕の中で静かに息を引き取った。

ミアノア

キアラの世話をする召使いの少女である。キアラを心配し、強硬な態度で彼女を制止することもある。

・所属組織、地位や役職
 王宮の召使い。

・物語内での具体的な行動や成果
 病み上がりのキアラを静養させるために力ずくで取り押さえた。キアラの最期を看取り、遺体を丁寧に拭いた。戦闘後はグエンダルファと共にキアラを弔う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 キアラから「ミア」と呼ばれている。王宮の召使いでありながら、高い戦闘力を備えている。

グエンダルファ

白犀族の長子であり、ゴドダルファの甥である。大柄で脳筋だが、一度認めた相手には深い敬意を払う。

・所属組織、地位や役職
 白犀族の族長の息子。冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 キアラたちと共に戦場へ駆けつける。かつてフランに一撃で敗北した姿から、別人のように成長した。邪人軍を相手に盾役として勇敢に戦い抜いた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 白犀族の力を受け継ぎ、進化を果たす。戦闘後はキアラを看取り、彼女の死を深く悲しんだ。

バシャール王国・襲撃者

ヨハン・マグノリア

バシャール王国の副騎士団長であり、隠密や暗殺に長けた騎士である。愛する息子ロミオをバシャール王国から救い出すために、ミューレリアと血の契約を結んでいた。

・所属組織、地位や役職
 バシャール王国副騎士団長。マグノリア家の当主。

・物語内での具体的な行動や成果
 気配を完全に殺して戦場へ潜入した。隙を突いてフランを奇襲する。右目に埋め込んだ邪神石を解放され、邪人化した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 師匠の破邪顕正により邪神石を砕かれる。これにより正気を取り戻した。クイナの夢幻陣による催眠を受ける。バシャール王国の計画やミューレリアの真実をすべて白状した。

サンホーク・ゴールディ

バシャール王国の騎士であり、暴風魔術を操る。

・所属組織、地位や役職
 バシャール王国征獣軍の暴風騎士。

・物語内での具体的な行動や成果
 集団隠蔽のスキルを使い、部隊を率いて戦場に潜伏していた。カマイタチの魔術でフランを奇襲し、ミューレリアを援護する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ミューレリアの手によって邪人へ変えられた。戦闘後はクイナの催眠を受ける。ヨハンと同じく情報を提供した。

バシャール王国の騎士たち

ヨハンやゴールディに率いられた、バシャール王国の兵士たちである。

・所属組織、地位や役職
 バシャール王国征獣軍の騎士。

・物語内での具体的な行動や成果
 集団隠蔽に隠れて潜伏した。ミューレリアを守るために戦った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ミューレリアの手によって全員が理性のない邪人へと変えられる。戦闘後は師匠の破邪顕正によって全員が浄化された。これにより正気を取り戻した。

邪神・ダンジョン勢力

ワルキューレ

ミューレリアの配下を名乗る戦乙女の指揮官である。邪人軍を率いてフランたちを執拗に攻め立てた。

・所属組織、地位や役職
 邪人軍の指揮官。脅威度B。

・物語内での具体的な行動や成果
 進軍の戦乙女の称号を使い、軍勢の気配を消して接近した。神速の狙撃でフランに重傷を負わせる。ダメージを配下に肩代わりさせる能力で何度も致命傷を回避した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 フランとメアの息の合った連携により、ダメージの肩代わりが追いつかなくなる。最期はメアの金火の炎で跡形もなく焼き払われた。

デュラハン

ワルキューレと共に邪人軍を率いる無貌の騎士である。

・所属組織、地位や役職
 邪人軍の指揮官。死霊魔獣。

・物語内での具体的な行動や成果
 ワルキューレを守る盾となり、師匠の放ったカンナカムイを受け止めた。高い防御力と瞬間再生能力でフランたちの猛攻を防ぎ続けた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 メアとフラン、クイナの連携によって追い詰められる。最期はフランの「天断」によって魔石ごと両断され、消滅した。

ゴブリンの群れ

シュワルツカッツェの避難民を夜の森で包囲した邪人たちである。

・所属組織、地位や役職
 野生の魔獣、邪人。

・物語内での具体的な行動や成果
 数で衛兵たちを圧倒した。傷ついた衛兵を囮にする悪知恵を見せる。サリューシャを皮切りに奮起した黒猫族たちに立ち向かわれ、怯みを見せた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 キアラとウルシの参戦により、十分ほどで全滅させられた。

邪人の軍隊

ワルキューレに統率された、白銀の武具を装備した邪人たちの精鋭部隊である。

・所属組織、地位や役職
 ミューレリアの配下。

・物語内での具体的な行動や成果
 高い連携と自己犠牲の戦法でフランを包囲した。ワルキューレやデュラハンのダメージを肩代わりして盾となる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 最後はメアの極大炎によって、魔獣ごと跡形もなく殲滅された。

魔獣の軍勢

北の荒野からグリンゴートを目指して南下した、一万を超える魔獣の大群である。

・所属組織、地位や役職
 何者かに統制された魔獣の大群。

・物語内での具体的な行動や成果
 統制された行軍で南下したが、フランたちの先制攻撃を受けて混乱した。隘路に追い込まれ、多数が討ち取られた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 邪人の軍隊と共に、メアの極大炎によって一挙に殲滅された。

ミューレリア

五百年前に黒猫族に神罰をもたらしたとされる「雷帝」の元第二王女である。かつて邪神の生贄とされたことで「邪神の巫女」となった。

・所属組織、地位や役職
 元黒猫族の第二王女。ダンジョンのサブマスター。

・物語内での具体的な行動や成果
 バシャール王国やリンフォードと共謀し、獣人国への侵攻を主導していた。戦闘ではアースラースを罠にかけて狂鬼化へ追いやる。その真意は、愛する子孫ロミオを救い出すことであった。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 最後はゼロスリードに心臓を貫かれて消滅した。死の間際、敵であったフランやメアに対し、ロミオを救うよう最期の願いを託す。

ジークルーネ

ミューレリアの配下である戦乙女の一人である。

・所属組織、地位や役職
 邪人軍の指揮官。戦乙女。

・物語内での具体的な行動や成果
 ミューレリアの命令に従い、戦場でフランを襲撃した。邪神石の槍を装備して高い戦闘力を見せる。ウルシに足首を噛まれて動きを封じられた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 フランの剣技と、師匠の破邪顕正を帯びた鋼糸の全方位攻撃を受ける。全身を切り刻まれて消滅した。

ロスヴァイセ

ミューレリアの配下である戦乙女の一人である。

・所属組織、地位や役職
 邪人軍の指揮官。戦乙女。

・物語内での具体的な行動や成果
 ジークルーネと共に、捕らえたフランを嘲笑していた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 作中での詳細な戦闘や結末については記述されていない。

ボルガース

境界山脈のダンジョンのマスターを務める、元盗賊の小男である。

・所属組織、地位や役職
 ダンジョンマスター。

・物語内での具体的な行動や成果
 偶然ダンジョンマスターになったが、能力が低く、リンフォードに支配されていた。ミューレリアを奴隷のように扱い、アースラースの排除を命じる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ミューレリアの依頼を受けたゼロスリードによって殺害された。これによりダンジョンの所有権を失う。

ゼロスリード

強者との命懸けの戦闘を純粋に楽しむ、極め付きの戦闘狂である。魔人化手術に加え、同族を喰らうスキルによって強大な力を得ている。

・所属組織、地位や役職
 邪術師リンフォードの元配下。魔人。

・物語内での具体的な行動や成果
 ミューレリアからの依頼を受け、ボルガースを殺害した。瀕死のミューレリアの力を喰らい、強大な邪気を得る。暴走するアースラースと互角に打ち合い、キアラとも死闘を繰り広げた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 キアラの命懸けの「黒雷神爪」を左腕に受け、再生不能な重傷を負う。敗北を認めて戦場から撤退した。

境界山脈・ダンジョン攻略者

アースラース

放浪中のランクS冒険者である。「同士討ち」の異名を持ち、神剣・大地剣ガイアを所持している。

・所属組織、地位や役職
 ランクS冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 神託に従って境界山脈 of ダンジョンへ侵入し、魔獣を次々と圧殺した。ミューレリアの罠により、戦闘中に固有スキルである「狂鬼化」が発動して暴走する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 師匠が「スキルテイカー」で狂鬼化スキルを奪い取った。これにより理性を取り戻して停止する。戦闘後はアリステアに担がれ、彼女の館へ運ばれた。

獣人国軍(南部戦線)

リグダルファ

白犀族の族長代理であり、南部戦線でバシャール王国軍と対峙していた。

・所属組織、地位や役職
 白犀族の族長代理。臨時将軍。

・物語内での具体的な行動や成果
 敵の動きの不自然さを感じながらも、攻勢に出ることを決断した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

リュシアス・ローレンシア

「ローレンシアの悲劇」によって没落した王族の末裔であり、獣人国の宮廷魔術師である。

・所属組織、地位や役職
 獣人国の宮廷魔術師。

・物語内での具体的な行動や成果
 南部戦線において、大規模な大地魔術を使って城壁を一瞬で構築した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 邪術師リンフォードの息子である。父を自らの手で討つために捜し続けている。

神級鍛冶師

アリステア

世界に数人しか存在しない「神級鍛冶師」の一人である。メアやリンドとも顔見知りの、筋肉質な女性である。

・所属組織、地位や役職
 神級鍛冶師。

・物語内での具体的な行動や成果
 激闘で完全にボロボロになり、消滅の危機に瀕した師匠に応急処置を施した。アースラースを担ぎ、フランたちを安全な自らの館へと導く。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 神剣に認められたわけではない師匠の性能に強い興味を抱く。

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展開まとめ

第一章 金炎の子獅子 

黒猫族の避難

サリューシャたち黒猫族は、北から迫る大量の魔獣を避けるため、シュワルツカッツェからグリンゴートへ夜の森を進んでいた。道中で魔獣に遭遇しない時間が続き、村人たちに油断が生まれた頃、ゴブリンの群れに包囲された。

サリューシャの初陣

護衛の衛兵たちは黒猫族を守って戦ったが、圧倒的な数のゴブリンに押されて負傷者が出た。さらに別方向からも敵が迫り、サリューシャは救援を求めようとしたものの、衛兵たちにも余裕がないことを悟った。

何もできない自分を悔やんだサリューシャは、フランから託された槍と、自分たちを頼むと言われた言葉を思い出した。恐怖を押し殺してゴブリンへ槍を突き刺し、初めて邪人を倒したことで、相手も恐怖を感じる存在なのだと理解した。

黒猫族の奮起

サリューシャは仲間たちに、フランから授けられた武器を持ちながら戦わないのかと訴えた。さらに、フランが戦っている中で同族が臆病者では彼女まで馬鹿にされると鼓舞すると、黒猫族の男たちも恐怖を抱えながら武器を構えた。彼らは守られるだけではなく、自分たちも戦うことを選んだ。

メアの参戦

一方、魔獣と邪人の大軍に追い詰められていたフランの前には、メアとクイナ、リンドが現れた。メアはワルキューレと戦うことを決め、クイナにはデュラハン、リンドには周囲の邪人たちを任せた。

メアは自らを獣王リグディス・ナラシンハの長女ネメア・ナラシンハだと明かした。その正体にフランたちは驚いたが、フランは王女という立場よりもメアの強さに関心を向けた。

クイナとメアの過去

クイナは幼少期から王宮侍女として育成され、十四歳で生まれたばかりのメア付きとなった。メアは白神子として生まれ、強力な白火を授かっていた。十三歳の頃には暴走した白火でランクEダンジョン内部の魔獣を殲滅し、暴虐者の称号まで得ていた。

強すぎる力と王族としての立場から同年代の友人に恵まれなかったメアにとって、フランは初めて対等に張り合える相手となった。メアたちはフランを追って北上し、グリンゴート周辺で組織化された邪人部隊を発見して撃破した後、さらに北で大軍と戦うフランを見つけて参戦したのである。

金炎絶火

メアは十始族の金火へ進化していたことを明かし、固有スキル金炎絶火を発動した。金色の炎を纏ったメアは圧倒的な威圧感と攻撃力を示し、ワルキューレの矢さえ炎で焼き払った。

フランは限界に近づいていた閃華迅雷を解除し、メアの補助に回った。二人は初めての共闘とは思えない連携を見せ、メアの火炎攻撃とフランの斬撃でワルキューレを追い詰めた。

ワルキューレの邪人化

ワルキューレは配下へダメージを移す盾技を使っていたが、邪人たちの消耗によって次第に機能しなくなった。フランが左腕を切断し、メアが胴を焼き裂くと、追い詰められたワルキューレは邪神石の槍を取り出した。

槍の力を受け入れたワルキューレは半邪人へ変化し、肉体能力と再生能力を大幅に高めた。傷を負うたびに黒く異形の肉体へ変貌し、理性を失いながらフランたちへ襲いかかった。

金殲火とワルキューレの最期

フランがワルキューレを引きつける間に、メアは金炎を圧縮した金殲火を準備した。メアの炎剣が背中からワルキューレを貫き、体内から金炎で焼き上げたところへ、フランが師匠を巨大化させて追撃した。

師匠はワルキューレを両断して魔石を吸収し、弓聖技や弓聖術など複数のスキルを獲得した。しかし邪術は引き継がれず、得られた魔石値もわずかであった。

邪神石の暴走

死亡したワルキューレから邪気が消えず、邪神石の槍が死体へ力を送り始めた。切断された死体は触手で繋ぎ合わされ、邪神人として再び立ち上がった。

フランは閃華迅雷を再発動し、メアも白火を使用した。師匠のカンナカムイ二連発、フランの黒雷、メアの白火を同時に叩き込み、邪神石の障壁ごとワルキューレの残骸を消滅させた。

デュラハンとの決着

邪神石の剣を持つデュラハンと戦っていたクイナには、すでに邪気酔いの症状が現れていた。フランたちは邪神石の危険性を警戒し、メアとクイナの連携を軸にデュラハンを追い詰めた。

クイナが盾を封じ、メアの白火とフランのカンナカムイで障壁を破壊したところへ、フランが剣王技・天断を放った。師匠は刀身に大きな損傷を受けながらもデュラハンを両断し、その魔石を吸収したことで魔石値を進化直前まで増やし、精神異常耐性も得た。

邪人と魔獣の殲滅

フランたちは残存する邪人と魔獣をグレイト・ウォールで囲い込み、逃げ道を塞いだ。メアは覚醒ポーションを使って再び力を引き出し、金炎絶火と白火を同時に使用した。

クイナやフランたちが巻き込まれないよう退避した直後、金と白の巨大な火柱が立ち上がった。城壁すら溶岩のように溶かす一撃によって、千匹以上残っていた魔獣と邪人は一挙に殲滅された。

再び迫る邪人軍

ゴブリンを退けたサリューシャたちは再び避難を続けたが、平原で騎乗した邪人の軍勢に遭遇した。オークやミノタウロスだけでなく人間の騎士も混じり、人間至上主義を掲げていたことから、バシャール王国の軍勢であることが明らかになった。

逃げ切れないと悟った衛兵たちは黒猫族を逃がすために残ろうとしたが、サリューシャは弱いまま逃げて死ぬことを拒んだ。黒猫族も武器を構え、最後まで戦士として戦う覚悟を決めた。

キアラの救援

邪人軍が迫ったその時、キアラと傷だらけのウルシが現れた。キアラの雷撃とウルシの闇の攻撃によって邪人たちは次々と倒され、十分ほどで軍勢は壊滅した。

キアラは逃げる騎士たちを追うと告げ、さらに元々フランの援護へ向かうつもりだったことをサリューシャへ伝えた。サリューシャはフランとキアラという二人の英雄が力を合わせることに希望を抱き、北へ走り去る二人の無事を祈った。

第二章 邪なる猫 

戦場のお茶会

魔獣と邪人を殲滅したメアは勝利を誇ったが、クイナから仲間を攻撃に巻き込みかけたことを叱責された。クイナは戦場だからこそ休息が必要だとして魔法茶と菓子を用意し、疲労の限界に近かったフランも師匠に説得されて休憩を取った。クイナは達人女中の固有スキルを使い、女中の仕事に必要と認識した道具を特殊な収納空間から取り出していた。

暴竜剣リンドヴルム

メアは改めて自らを獣王の娘ネメア・ナラシンハと名乗り、フランと互いの秘密を明かすことにした。メアが持つ竜剣リンドの真の銘は神剣・暴竜剣リンドヴルムであり、メアの技量不足によって本来の力はまだ解放されていなかった。

フランも師匠が意思を持って話すインテリジェンス・ウェポンであることを明かした。メアとクイナは実在すら確認されていなかった存在に驚き、フランは奴隷だった頃に師匠と出会って以来、ともに旅を続けてきた経緯を語った。

師匠とリンドの競争

フランは師匠が魔石を吸収して成長することや、出生の記憶を失っていることも明かした。メアは、使い手の成長に合わせて本来の力が解放されるリンドとは違い、師匠自身が成長している点に驚き、いつか神剣を超える可能性まで口にした。

フランは師匠が最強の剣になると断言し、メアも自分がリンドヴルムの真価を引き出す方が先だと対抗した。二人は互いの剣を成長させる競争をする形となった。

フランとメアの友情

メアはフランと自分が年齢や種族、強力な剣を持つこと、戦いを好むことまで似ていると話したものの、友達になりたいとは素直に言えなかった。クイナがその意図を明かすと、フランはすでに一緒に戦ったから友達だと答えた。友人に恵まれてこなかったメアは、その言葉を強く喜んだ。

ミューレリアの出現

休憩を終えたフランたちは別動隊を救うため移動しようとしたが、北から凄まじい魔力が接近した。その力はさらに濃密な邪気へ変わり、フランとメアさえ恐怖を覚えるほどであった。

現れたのは黒猫族の少女ミューレリアと、二人のワルキューレ、二体のデュラハンであった。ミューレリアは周囲の死骸から力を吸収し、自らを五百年前の黒猫族王家第二王女、雷帝ミューレリアと名乗った。

黒猫族を裏切った王女

メアによれば、ミューレリアはかつて邪神の加護を得て強大な力を手にし、黒猫族の獣王に邪神の力を利用させるきっかけを作った人物であった。王家の尖兵として邪神の力を受け入れない黒猫族や他種族を弾圧し、黒猫族が神罰を受ける一因となったと伝えられていた。

しかしミューレリアは黒猫族の復権を望んでいたのではなく、自分を裏切った獣人たちへの復讐を目的としていた。現在の黒猫族さえ誇りを失った存在として蔑み、シュワルツカッツェも滅ぼすつもりだったと明かした。

ミューレリアの勧誘

ミューレリアは進化したフランだけは利用価値があると考え、自分の奴隷になるよう命じた。フランは仲間や同族を殺そうとするミューレリアへの怒りから、死んでも従わないと拒絶した。

ミューレリアは圧倒的な威圧を放ったものの、フランは恐怖に震えながらも屈しなかった。側近のジークルーネとロスヴァイセもフランを嘲ったが、フランの意思は変わらなかった。

収束されたカンナカムイ

ミューレリアは力を示すため極大雷鳴魔術カンナカムイを詠唱した。フランたちは阻止を試みたが、側近たちと強力な障壁に阻まれ、発動を許してしまった。

しかしミューレリアのカンナカムイは師匠のものとは異なり、攻撃範囲を狭めて威力を一点へ集中させた形であった。極大魔術そのものを自在に改変する制御力を見せつけられ、師匠はミューレリアの魔術技量が自分を遥かに上回ると理解した。

逃走を阻む結界

フランが再び従属を拒むと、ミューレリアは側近たちをけしかけた。フランとメアはワルキューレ、クイナとリンドはデュラハンと戦い始め、個々の戦いでは次第に優勢となった。

師匠は隙を見て転移による逃走を狙ったが、ミューレリアは周囲に転移だけを妨害する巨大な結界を展開した。さらに戦闘を観察して師匠の正体を見抜き、インテリジェンス・ウェポンであることや次元魔術まで持つことを知った。

奪われた師匠

ミューレリアは未知の能力で師匠をフランの手元から一瞬で奪い取った。フランは激しく動揺し、ワルキューレとの戦いでも隙を見せたが、師匠はミューレリアに自分を装備させて反撃する機会だと伝え、戦いに集中させた。

師匠は装備時の雷撃や神罰を利用しようとしたが、ミューレリアには雷撃がほとんど通じなかった。さらに神罰の危険を伝えて装備を誘ったものの、過去に神罰を受けた経験を持つミューレリアは警戒して応じなかった。

ダンジョンとリンフォード

師匠は会話を続けて情報を引き出した。ミューレリアはダンジョンマスターではなく、権限の一部を持つサブマスターであり、ダンジョンが生物の死や地脈の魔力から得るゴッデスポイントを使って拡張や魔獣召喚を行えると説明した。

さらにミューレリアは、数年前に邪術師リンフォードが生まれたばかりのダンジョンを支配し、その力を利用した召喚術によって自分を邪神のもとから呼び戻したと明かした。完全召喚後はダンジョンのサブマスターとされ、リンフォードとダンジョン双方の支配を受けていた。

獣人国侵攻の計画

リンフォードは獣人国に封印された邪神の欠片を求めていたが、神々の封印を破れなかった。そのため戦争で大量の魂を集め、邪神へ捧げて封印を弱める計画を立てた。

リンフォードは獣人排斥思想を持つバシャール王国と手を組み、バシャール軍とダンジョンから生み出した戦力で獣人国を挟撃する準備を進めていた。奴隷の魂もダンジョンの成長やミューレリアの召喚に利用されていた。

その後リンフォードが死亡したことで彼の支配は弱まり、ミューレリアは大幅な自由を得ていた。彼女はダンジョンの支配からも抜け出し、最終的に獣人国を滅ぼすことを望んでいた。

失敗した支配

ミューレリアは師匠にも邪神の力を流し込み、魂を支配したつもりになった。しかし師匠には苦痛も支配の影響もなく、自由に動くことができた。

師匠は支配されたふりを続けたことで、ミューレリアからロミオという愛しい存在の護衛にするつもりだという情報まで得た。やがてミューレリアは師匠にフランを刺し殺すよう命じたが、その命令も全く効かなかった。

破邪顕正

反撃手段を探した師匠は、新たに取得可能となっていた破邪スキルを発見した。邪神の眷属への攻撃力を高め、邪気を封じる能力に可能性を見いだし、自己進化ポイントを使ってさらに破邪顕正へ進化させた。

破邪顕正の獲得によってミューレリアは師匠の能力を読み取れなくなり、支配が成功していなかったことにも気づき始めた。師匠はフランたちへ逃走の準備を伝え、白い力を纏わせてミューレリアへ突撃した。

ミューレリアへの一撃

破邪顕正を纏った師匠はミューレリアの障壁を容易に突破し、その腹を深く貫いた。攻撃によってミューレリアの邪気は大きく減少し、邪神の力を封じる効果が確かに発揮された。

反撃を受けた師匠は刀身を半ばまで砕かれたが、密かに伸ばした飾り紐を無数の棘へ変え、再びミューレリアを貫いた。激痛によって集中を乱されたミューレリアの転移阻害結界は消滅し、師匠は即座に転移してフランのもとへ戻った。

逃走の好機

主であるミューレリアが傷ついたことで、フランと戦っていたジークルーネも動きを止めた。師匠は生まれた隙を逃さず、フランに逃げるよう告げた。

第三章 黒雷纏いし老猫 

キアラの参戦

ミューレリアの隙を突いて逃走しようとしたフランたちのもとへ、黒雷を纏ったキアラが駆けつけた。キアラはメアと戦っていたロスヴァイセを一撃で倒し、黒天虎へ進化していたことを明らかにした。さらにクイナにはミアノア、リンドには進化したグエンダルファ、フランには傷だらけのウルシが加勢し、残っていたデュラハンも撃破された。

黒雷転動

仲間を失ったミューレリアは激怒し、師匠を再び奪おうとしたが、破邪顕正によってその力を阻まれた。戦闘が始まると、キアラは黒雷と化したかのような高速移動技を使い、ミューレリアの背後を取って傷を負わせた。

その動きを見た師匠は、黒天虎の閃華迅雷にはフランがまだ使えていない技が存在すると理解した。キアラはミューレリアとの斬り合いでは地力の差で不利だったものの、フランも加勢し、二人でミューレリアを追い詰めていった。

メアの砲火

ミューレリアがフランと師匠への警戒を強めた隙に、クイナたちの援護を受けたメアが攻撃の準備を整えた。メアは金炎と白火を融合させた砲火を放ち、ミューレリアの下半身を消し飛ばした。

再生を始めたミューレリアに対し、フランと師匠は心を一つにして青白い光を纏い、剣王技・天断を放った。斬撃は邪気の霧ごとミューレリアを切り裂き、左肩から右脇まで深い傷を与えた。さらにキアラも追撃し、ミューレリアを地面へ叩き落としたが、閃華迅雷の負担によって力尽きた。

ジークルーネの最期

ミューレリアを守るため、ジークルーネは邪神石の槍を使って強化された。彼女は邪神が戦神だった時代から続く戦乙女の系譜であるため、邪神の力を受けても理性を失わなかった。

しかし破邪顕正を宿す師匠との相性は悪く、打ち合うたびに槍と邪気を削られた。ウルシが足を止めた隙に、フランが邪神石の槍を破壊し、師匠の鋼糸が全身を切り刻んだことでジークルーネは倒された。

ヨハンとバシャール騎士団

回復途中のミューレリアを守るため、バシャール王国副騎士団長ヨハン・マグノリアが現れた。さらに暴風騎士サンホーク・ゴールディと部下たちも加わり、ミューレリアを守る壁となった。

ヨハンは危険を見抜く能力を使ってフランの攻撃を防ぎ続け、ミューレリアへの奇襲にも自らの体を盾として割り込んだ。胸を貫かれてもフランを拘束し、仲間に自分ごと攻撃させるほどの覚悟を見せた。

ミューレリアの撤退

戦闘中、ミューレリアは何者かからダンジョンへ戻るよう命じられた。命令に逆らえない彼女は撤退を決め、ヨハンの眼帯を外して右目に埋め込まれていた邪神石を解放したうえ、残った騎士たちまで邪人へ変えた。

フランは逃げるミューレリアに迫り、片腕を切り落としたが、ミューレリアは決着は次だと言い残して転移した。残されたヨハンたちは激しく抵抗したものの、最終的にフランたちによって拘束された。

破邪顕正による浄化

ミューレリアの邪気に支配されていたグエンダルファは、破邪顕正を発動した師匠に触れられると激しく苦しみながら邪気を完全に祓われ、正気を取り戻した。

同じ方法はヨハンたちにも有効であり、ヨハンの右目に埋め込まれていた邪神石まで砕けた。捕虜となった騎士たちは全員正気に戻ったが、獣人への憎悪と強い覚悟を保ち、尋問にも一切口を割ろうとしなかった。

クイナの夢幻陣

通常の尋問では情報を得られなかったため、クイナは固有スキル・夢幻陣を使った。衰弱していたヨハンを催眠状態にし、フランが他の騎士たちの声を遮断したことで、ようやく情報を聞き出せるようになった。

ヨハンは自分たちがバシャール王国に仕えるマグノリア家であり、ミューレリアとは五百年前から深い因縁を持っていると語った。

ミューレリアの過去

マグノリア家に伝わる話では、五百年前のミューレリアは高慢ではあったものの、人間差別を憎み、人間の冒険者と恋に落ちた王女だった。だが獣王家は二人を引き離し、恋人に別の人間女性との子を作らせたことで、ミューレリアの獣人への怒りは憎悪へ変わった。

その後、ミューレリアは邪神への生贄にされ、邪神から力を与えられた。彼女は獣王家を支配して人間排斥派を粛清し、恋人をバシャール王国へ逃がしたが、最終的には神罰によって死亡したという。恋人はバシャール王国で暮らし、その子孫がマグノリア家となった。

ただしこの伝承はバシャール王国に都合よく語られており、獣人国側の伝承とも大きく異なっていたため、どこまでが真実なのかは不明であった。

バシャール王国の思惑

バシャール王国では獣人排斥思想が地下で広がり、国内不満が高まっていた。リンフォードは邪術で国王たちの欲望を増幅させ、ミューレリアとダンジョンの力を利用すれば獣人国に勝てると持ちかけた。

勝てば獣人国を支配でき、負けても過激派を前線で処分できるうえ、最悪の場合は邪神の欠片を復活させて周辺国ごと滅ぼす計画まで立てられていた。

マグノリア家の大願

しかしヨハン自身の目的はバシャール王国の勝利ではなかった。マグノリア家は邪気への高い適性を持つため代々国に利用され、初代が結んだ血の契約によって自由を奪われていた。

ヨハンの息子ロミオは特に強い邪気適性を持つ先祖返りであり、バシャール王は彼を犠牲にして邪神の欠片を復活させるつもりだった。まだ契約を刻まれていないロミオだけでも国外へ逃がすため、ヨハンはミューレリアと血の契約を結んでいた。

ミューレリアにはマグノリア家の血を使ってリンフォードの支配から逃れる目的があり、その代償として獣人国を滅ぼした後にロミオを逃がすと約束していた。ヨハンにとってミューレリアは信用できる相手ではなかったが、他に希望が残されていなかった。

境界山脈のダンジョン

ヨハンから、ミューレリアはダンジョンマスターの命令によって境界山脈のダンジョンへ戻ったことが判明した。ダンジョンは元々バシャール王国側にあったが、現在は獣人国側にも巨大な出入口が造られていた。

内部は洞窟型ながら砦に近い構造で、ダンジョンマスターは元人間の男であり、リンフォードの配下であった。ただし内部の正確な戦力まではヨハンたちも知らなかった。

ダンジョンへの追撃

ミューレリアを放置できないと判断したキアラは、回復途中の身でありながらダンジョン攻略への同行を決めた。メアとフランも強敵との戦いを避ける考えはなく、グエンダルファも迷いを振り切って同行を申し出た。

移動手段に困った一行に対し、クイナは収納スキルから六人乗りのゴーレム馬車を取り出した。こうしてフラン、メア、クイナ、キアラ、ミアノア、グエンダルファに、師匠、ウルシ、リンドを加えた一行は、ミューレリアが戻った境界山脈のダンジョンへ向かうことになった。

第四章 呪われし狂鬼 

馬車での休息

フランたちはゴーレム馬車で境界山脈へ向かった。夜通し戦っていたフランは強い眠気に襲われ、キアラと話したがって抵抗したものの、休息も戦士の仕事だと諭されるとすぐに眠り込んだ。フランはキアラの膝を枕にして眠り、キアラも孫を可愛がるようにその頭を撫でた。

クイナは種族特性によって半分眠りながら活動できるため御者を続け、他の者たちも休息を取った。師匠は周囲を警戒しながら、一行の回復を助けた。

ボルガースとミューレリア

一方、ダンジョンではマスターのボルガースがミューレリアを呼び戻していた。ボルガースは偶然ダンジョンマスターとなった元盗賊で、後にリンフォードに支配され、ミューレリアへの命令権を与えられていた。

ミューレリアはボルガースを嫌悪していたが、命令には逆らえなかった。彼女はヨハンたちの血を利用してダンジョンの支配から逃れ、ロミオを連れて脱出することだけを望んでいた。しかしボルガースは、ダンジョン周辺の魔獣を圧倒して侵入する鬼人を見せ、ミューレリアに排除を命じた。相手はリンフォードさえ手を出すなと警告していたほどの強者であり、ミューレリアも勝ち目が薄いと理解していた。

境界山脈への到着

四時間ほどで一行は境界山脈近くまで到達した。目覚めたフランはキアラから黒天虎の戦い方や黒雷転動について教わり、まだ使えない技があることを知った。

やがて前方に数百もの魔獣や邪人の死骸が現れた。全てが広範囲にわたって上から押し潰され、大地まで平らに圧縮されていた。キアラはその痕跡から、ランクS冒険者・同士討ちのアースラースの仕業である可能性を指摘した。

大地剣ガイア

アースラースは敵味方を巻き込みながら戦う逸話から同士討ちと呼ばれていたが、普段は悪人ではなかった。問題は戦闘時に見境を失うことであり、キアラは遭遇して逃げろと言われた場合は必ず従うよう念を押した。

さらにアースラースが神剣・大地剣ガイアの使い手であることも明かされた。道を進むにつれて、岩壁で魔獣を挟み潰した痕跡などが現れ、キアラはアースラースがダンジョンへ向かっていると確信した。

もう一人の虐殺者

さらに先では、圧殺ではなく斬撃や怪力によって邪人たちが惨殺されていた。魔石は残っていたものの、師匠が吸収しても得られる魔石値は異常に少なかった。

師匠は邪神石の影響を受けたワルキューレと同じ状態だと考え、邪人たちの魂か力を何者かが奪った可能性を警戒した。アースラースとは異なる強者も付近にいると判断した一行は、さらに慎重に進んだ。

ダンジョンへの潜入

ヨハンから聞いた目印を頼りに、一行は境界山脈の山肌に開いた巨大な洞窟を発見した。内部には多数の魔獣が出入りした痕跡があり、さらに奥へ進むと天然洞窟から石造りの砦のような構造へ変化した。

そこにもアースラースに圧殺された邪人たちが残されていた。やがて人間用の狭い階段と複雑な迷宮が現れ、ヨハンから得た情報とは違う構造になっていた。師匠は、アースラースを足止めするためダンジョン側が急遽迷宮を拡張した可能性を考えた。

迷宮の突破

クイナは幻像魔術で囮を作り、罠を探りながら進んだ。しかし多くの罠は先行したアースラースによってすでに作動させられ、魔獣もほとんど倒されていた。

一行は圧殺された魔獣を辿って迷宮を進み、巨大な扉へ到達した。その先からは凄まじい魔力が感じられたため、キアラはアースラースに不用意に近づけば殺される可能性があると改めて警告した。

アースラースとの遭遇

扉の先では、巨大な魔獣と鬼人の大男が戦っていた。鬼人は傷一つ負わず、瀕死の巨獣を見えない力で左右から押し潰して仕留めた。その男こそアースラースであった。

アースラースは獣王に並ぶほどの能力を持ち、大地剣ガイアを所持するランクS冒険者だった。キアラとは旧知であり、再会すると気さくに話したため、フランたちもひとまず敵対の危険はないと判断した。

狂鬼化の呪い

アースラースは、自身が固有スキル・狂鬼化を封じる方法を探して各地を巡っていると語った。狂鬼化は戦闘を続けると勝手に発動し、能力を数倍に高める一方、理性を失わせて敵味方の区別なく殺戮させるものだった。

スキル消去や奪取も試したが、禍ツ鬼という存在そのものに結び付いた能力であるため、短期間で復活してしまった。アースラースは永久に封じる方法を求め、ダンジョンを巡っていた。

神剣使いへの神託

アースラースがこのダンジョンを訪れたもう一つの理由は、神から場所を知らされたことだった。神剣使いは神々から監視されており、邪人などが関わる事件では神託によって動くことを求められる場合があった。

アースラースは過去に神託を無視したこともあったが、命令ではない場合は問題ないと神の使徒から聞いていた。神々は人間とは時間感覚が異なり、必要に応じて連絡しやすい神剣使いを利用しているのだと説明した。

ローレンシアの悲劇

神々の時間感覚の例として、アースラースはローレンシアの悲劇を語った。二百年前、ローレンシア国王は獣人国への対抗を目的に邪術へ手を出し、国民を犠牲にして邪人を召喚しようとした。

内乱によって王家は倒され、奴隷となった元王族は辺境開拓に従事した。その後は改心し、長年にわたり国へ尽くして民からも認められたが、罪から約五十年後に突然神罰が下り、直系は滅ぼされた。神々にとって五十年は短い時間なのだとアースラースは考えていた。

北部戦線の書簡

その頃、バシャール王国との戦線では、白犀族のリグダルファと宮廷魔術師リュシアス・ローレンシアが、各国へばら撒かれた書簡について協議していた。

書簡には、五百年前の正統王家クリシュナ家がナラシンハ家に王位を奪われ、その王女が邪神の巫女となったという内容が記されていた。バシャール王国はクリシュナ家の復権を掲げ、自らの侵攻に正当性を持たせようとしていた。

リュシアスは邪術師の末裔として差別されて育ち、父リンフォードを自ら討つため捜していることも明かした。戦況自体は獣人国が有利だったが、書簡による外交的な影響が新たな問題となっていた。

迫る狂鬼化

話を終えたアースラースは、フランたちに帰るよう告げた。狂鬼化の発動が近づいていたためであり、キアラもその危険を理解して撤退を決めた。

しかし扉は閉ざされ、師匠の転移も妨害された。そこへミューレリアが現れ、自ら結界を張って逃走を封じたことを明かした。

アースラースとの共闘

逃げられない以上、アースラースは狂鬼化する前にミューレリアを倒すことを決めた。フランたちはその指示に従い、破邪顕正を切り札として共闘した。

しかしミューレリアは無詠唱の転移を繰り返し、攻撃よりも時間稼ぎを優先した。目的がアースラースの狂鬼化を待つことだと気付いた師匠は、時間切れになる前に自分たちで決着をつける必要があると判断した。

鋼糸の包囲

師匠は全身を鋼糸へ変え、破邪顕正を一本一本に行き渡らせて広間を覆った。激しい負担を受けながらもミューレリアを捕らえ、右腕と左脚を切断し、邪気を大幅に削った。

フランも傷つきながら鋼糸の隙間を突き進み、師匠をミューレリアへ突き刺した。しかしミューレリアは寸前で転移し、瀕死に近づきながらも生き延びた。

ダンジョンの悲鳴

突然ダンジョン全体が激しく揺れた。キアラとアースラースは、それがダンジョンマスター死亡時に起きるダンジョンの悲鳴だと気付いた。

ミューレリアは歓喜し、ボルガースが死んだことで自分は自由になったと告げた。彼女はダンジョンとの結び付きが完全ではないため即座には消えないと語り、残された力を自爆させれば全員を巻き込み、アースラースの狂鬼化まで誘発できると脅した。

ロミオを救う取引

ミューレリアは自爆を止める代わりに、マグノリア家の嫡男ロミオをバシャール王国から救い出してほしいと頼んだ。ロミオを奴隷や生贄にされる前に国外へ逃がし、可能なら別大陸のランクA冒険者が営む孤児院へ預けてほしいという願いだった。

ミューレリアは王家の再興も獣人への復讐も今ではどうでもよく、ロミオに出会ってからは彼の幸せだけが望みだったと明かした。フランも、その言葉に偽りはないと感じ取った。

ゼロスリードの裏切り

ミューレリアが願いを伝え終えた直後、ゼロスリードが背後から彼女を刺した。ゼロスリードはミューレリアの邪気を吸収し、その力を奪った。

瀕死となったミューレリアは最後までロミオの幸福を願いながら手を伸ばし、そのまま力尽きた。

五百年前の真実

ミューレリアの記憶では、人間の恋人への愛は早くに冷めていた。彼女が本当に愛したのは、元恋人と別の女性との間に生まれた男児だった。ミューレリアはその子を見た瞬間に強い愛情を抱き、その幸福だけを願うようになった。

父である獣王は権力維持のため邪神の封印を解き、ミューレリアを生贄にした。邪神の巫女として蘇った彼女は、その力を利用して人間排斥派を弾圧し、愛する子が安心して暮らせる国を作ろうとした。

しかし元恋人たちは子供を連れてバシャール王国へ逃亡し、王国はその子を人質としてミューレリアを利用した。彼女は子供を守るために獣人国の軍事情報を渡し、主戦派を敗北させ、バシャール王国に有利な戦後処理まで行った。

神罰と再召喚

ミューレリアは子供を取り戻す直前に神罰を受けて死亡した。邪神の力を受けた黒猫族も滅ぼされ、残った黒猫族は進化を禁じられた。

五百年後、リンフォードによって召喚されたミューレリアは、愛した子の血筋であるマグノリア家が残っていることを知った。やがて新たに生まれたロミオを見た瞬間、かつての子供と同じ愛情を抱き、彼を守ることを新たな生きがいとした。

ロミオのための計画

バシャール王国がロミオを邪神復活の生贄にしようとしていると知ったミューレリアは、王国、リンフォード、マグノリア家の目的を利用して戦争を進めた。

バシャール王にはロミオを儀式に利用すると偽り、マグノリア家にはヨハンの血を得る代わりにロミオを逃がすと約束した。誰にもロミオへの本当の執着を知られないようにしながら、最終的には国外の安全な孤児院へ送り届けるつもりだった。

ミューレリアの最期の策

アースラースの出現によって自分の死を悟ったミューレリアは、ゼロスリードと取引していた。自らの力を与える代わりに、ボルガースを殺して束縛を解くこと、自分がロミオの保護を頼んだ直後に殺すこと、そしてロミオを救うことを依頼していた。

ミューレリアは死にゆく自分の願いであれば、アースラースやメアたちもロミオを見捨てにくいと考えていた。ゼロスリードに討たれた最期さえ、ロミオを救う可能性を少しでも高めるための計画の一部だった。

第五章 黒猫たち 

ゼロスリードの異変

ミューレリアが消滅した直後、ゼロスリードは彼女から吸収した力によって以前とは比べ物にならないほど強大な邪気を放っていた。邪人化と魔人化に加え、共食いによって力を奪い続けた結果、アースラースさえ警戒するほどの存在へ変貌していた。

ゼロスリードは神剣使いであるアースラースに強い興味を示し、戦いを挑んだ。転移が使えないためフランたちは逃げられず、キアラが出口を開けようとする中、二人の戦闘が始まった。

狂鬼と邪鬼の激突

アースラースとゼロスリードは巨大な剣を打ち合わせ、衝撃だけで周囲を揺るがす戦いを繰り広げた。剣技ではアースラースが勝り、神剣による攻撃はゼロスリードの邪気を確実に削っていった。

しかし戦闘を重ねるほどアースラースの狂鬼化が進み、角が赤く染まり始めた。やがて理性が薄れ、攻撃の余波だけでダンジョンを破壊するほど力が高まったため、フランたちも巻き込まれる危険に晒された。

神剣開放

アースラースは狂鬼化したまま神剣開放を発動し、地剣ガイアを真の姿である大地剣ガイアへ変化させた。その力は飛躍的に上昇し、一撃でゼロスリードの半身を潰した。

戦闘の余波もさらに激しくなり、ウルシがフランを庇い、グエンダルファは仲間を守って重傷を負った。クイナが出口を開けられないまま時間が過ぎ、キアラはアースラースを攻撃して狂鬼化を解除する案を考えた。

狂鬼化の奪取

師匠はスキルテイカーで狂鬼化そのものを奪えば、アースラースの暴走を止められる可能性があると考えた。確実ではなかったが、キアラは実行を認めた。

狂鬼化の奪取は成功し、アースラースは理性を取り戻した。しかしその直後、狂鬼化の影響は師匠へ移った。師匠は激しい破壊衝動に呑まれ、フランの手を離れて自らゼロスリードへ襲い掛かった。

師匠の暴走

暴走した師匠は極大級の雷撃を連発し、潜在能力解放まで発動した。さらに鋼糸へ変形してゼロスリードを包囲し、天断によってダンジョンごと切り裂いた。

師匠の力はさらに増し、やがて全身を巨大な鋼の狼へ変化させた。その姿と力はフェンリルを思わせるほど凶悪であり、メアたちは恐怖で身動きすら難しくなった。

ダンジョンからの脱出

クイナがようやく出口を開いたため、キアラはメアたちに負傷者とアースラースを連れて逃げるよう命じた。フランは師匠を置いて行くことを拒んだが、メアは今の師匠にはフランさえ認識できない可能性があると説得した。

キアラはフランたちを逃がすため、その場に残ってゼロスリードと暴走した師匠の双方を引き受けた。

キアラの三つ巴

キアラは閃華迅雷を使い続け、ゼロスリードと鋼の狼の攻撃を互いにぶつけさせながら戦った。力では到底かなわなかったが、長年の戦闘経験を生かし、双方の動きを読みながら攻撃を誘導した。

狼の破邪顕正による攻撃はゼロスリードの邪気を削った。キアラは自らを狙わせ続けることで、ゼロスリードへのダメージを積み重ねたが、連戦と閃華迅雷の負担によって肉体は限界を超えていた。

鋼の狼の崩壊

戦闘の途中、鋼の狼は突然崩れ始めた。金属の体は砂のように崩壊し、最後には全身に亀裂が入った師匠の剣だけが残された。

狂鬼化は解除され、師匠は理性を取り戻したが、潜在能力解放と暴走による負荷で耐久値も魔力もほとんど残っていなかった。自己修復すらできない状態だった。

師匠とキアラ

師匠は念話でキアラに閃華迅雷を解除するよう求めたが、キアラは解除すればゼロスリードに殺されるため拒んだ。すでに自分の死を悟っており、フランたちを守れるなら命を失っても構わないと決めていた。

師匠はキアラに、自分を使ってゼロスリードを倒すことを提案した。キアラは残された命を好きに使えと応じ、師匠を拾って再びゼロスリードへ向かった。

最後の連携

キアラは正面から斬り掛かると見せかけ、黒雷転動でゼロスリードの背後へ回り、師匠を投げつけた。

師匠は残った力で体を複数の紐状に変化させ、ゼロスリードの体に絡みついた。十分な威力は出せなかったが、破邪顕正を持つ体でゼロスリードを拘束し続けた。

フランの帰還

師匠の悲鳴を感じ取ったフランは、メアたちの制止を振り切って戻ってきた。キアラはフランを師匠に任せられると知り、最後の奥の手を使う決意を固めた。

キアラは自らの命を削りながら黒天虎の力を極限まで高め、黒雷を剣へ収束させた。

黒雷神爪

キアラが放った黒雷神爪には、通常の黒雷とは異なる神聖な力が宿っていた。疲労によって軌道が逸れたため、師匠が念動で修正し、ゼロスリードの左腕を斬り落とした。

その傷は再生せず、ゼロスリードの邪気も大きく失われた。黒雷神爪は破邪顕正以上の破邪の力を持っていた。

ゼロスリードはこれ以上の戦闘を避け、キアラに敗北を認めると言い残して撤退した。

キアラの最期

戦いを終えたキアラは、黒天虎の力を全て出し切り、最後に良い戦いができたことへ満足していた。師匠から格好よかったと告げられると、それを最高の褒め言葉として受け取った。

フランは必死に回復魔術を使ったが、キアラの生命力はすでに尽きていた。キアラはフランを血の繋がらない孫のように思っていたと伝え、復讐に囚われず、強く、優しく、格好よく、自由に生きるよう言い残した。

キアラは穏やかな笑みを浮かべたまま息を引き取り、フランはその胸に縋って激しく泣いた。

キアラとの別れ

メア、ミアノア、クイナ、グエンダルファたちも戻り、キアラの死を知った。メアはキアラがフランを家族のように気にかけていたと語り、ミアノアは涙を流しながらキアラの顔を拭った。

キアラは満足げな表情を残しており、師匠はその死に様を見て、自分もいつか笑って終われるような生き方をしたいと考えた。

アリステアとの出会い

メアたちと共に現れた銀髪の女性アリステアが、損傷した師匠に興味を示した。彼女はメアから信頼され、神剣リンドの整備も行っている人物だった。

アリステアは解析眼で師匠を調べ、厳重な装備者登録や神の残滓、異常な構造を見抜いた。さらに魔力回路が大きく損傷し、このままでは修復も危うい状態だと判断した。

師匠の応急処置

アリステアは師匠に魔力を流して応急処置を施した。自己修復までは戻らなかったものの、痛みは大きく和らぎ、これ以上悪化する危険も抑えられた。

アリステアは必ず直せると断言した。その言葉を聞いたフランは、キアラに続いて師匠まで失うのではないかという不安から解放され、涙を流した。

師匠もフランを心配させていたことを謝り、互いの存在を確かめ合った。

ダンジョンコアの破壊

キアラを失った後、一行をまとめる役目はメアが担った。メアは国境をまたぐ大型ダンジョンを残せば、いずれ獣人国とバシャール王国の争いの種になると考え、コアの破壊を決断した。

メアとクイナが奥へ進み、アリステアはフランたちと負傷したアースラースを預かることになった。フランはキアラの遺体を次元収納へ収め、後に正式な葬儀を行うため大切に預かった。

ダンジョンの終焉

一行が出口へ向かう途中、ダンジョン全体が大きく震えた。後から追いついたメアたちは、ダンジョンコアを破壊して完全に機能を止めたと報告した。

これによって国境を越えるダンジョンはただの地下建造物となり、戦争に利用される危険も失われた。

メアとの別れ

ダンジョンを脱出した後、メアたちは戦争が続く最前線へ戻ることになった。フランは師匠の修復のためアリステアに同行し、キアラの遺体もしばらく預かることになった。

フランとメアは互いを励まし、再会を約束して別れた。メアはキアラの弟子として、そして王女として再び戦場へ向かい、フランはその背中を見送った。

エピローグ 

神級鍛冶師アリステア

メアたちを見送った後、アリステアは自らを神級鍛冶師と名乗り、フランが黒雷姫であることや、師匠がインテリジェンス・ウェポンであることも見抜いていると明かした。フランは黒天虎のランクC冒険者として、師匠とウルシもそれぞれ自己紹介した。

師匠への関心

アリステアは師匠という名前をフランが付けたものだと知り、神から名を与えられたネームドではないことに驚いた。それでも師匠の性能はネームド級に見えるらしく、その存在に強い興味を示した。

神級鍛冶師の館へ

アリステアは自分の館なら師匠の詳しい解析と修理ができると告げ、ゴーレム馬車を取り出した。意識を失ったアースラースも馬車に乗せられ、フラン、師匠、ウルシはアリステアの館へ向けて出発した。

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