のんびり農家11巻レビュー
のんびり農家全巻まとめ
のんびり農家13巻レビュー
どんな本?
異世界のんびり農家とは、内藤騎之介氏による日本のライトノベル。
小説家になろうにて連載されており、書籍版はKADOKAWAから刊行されている。
また、剣康之氏が作画をしている漫画版もあり。
月刊ドラゴンエイジにて連載されており、現在は11巻まで発売されている。
また、異世界のんびり農家の日常というスピンオフ作品もあり。
こちらの作画はユウズィ氏が担当している。
アニメ版もあり。
アニメ版は全12話。
2023年1月6日から3月24日まで放送された。
各話のタイトルやあらすじは[こちら]。
物語は、闘病の末に死んだ男性・火楽が、神によって異世界に転移し、農業生活を送るというもの。
彼は神から「万能農具」という特別な道具を授かり、死の森と呼ばれる危険な場所で農地を開拓していく。
そこで出会った吸血鬼や天使、エルフや竜などの様々な種族と交流し、やがて「大樹の村」というコミュニティを作り上げていく。
作品の特徴は、タイトル通りの「のんびり」とした作風であり、戦争や陰謀などのトラブルに巻き込まれるような展開は少なく、主人公が農業や料理を楽しんだり、仲間や家族と触れ合ったりする日常が描かれている。
また、主人公が前世で得た知識や技術を活かして異世界の文化や産業に革新をもたらす場面もある。
出版情報
• 出版社:KADOKAWA
• 発売日:2022年03月31日
• 判型:B6判/392ページ
• 定価:1,430円(本体1,300円+税)
• ISBN:9784047369832
読んだ本のタイトル
#異世界のんびり農家 12
著者:#内藤騎之介 氏
イラスト:#やすも 氏
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あらすじ・内容
学園生活を子供たちが平和に過ごせる…わけもなく!?
商会の問題に首を突っ込んだり、暗殺者に狙われたり、なかなか刺激的!王都での生活を楽しむ子供たちの前に、
暗殺者が現れて――
ヒラクはそばにいない、
この危機をどう切り抜ける!!五ノ村ではオークションが開催!
異世界のんびり農家 12
「金はあるかぁぁーっ!」「欲しい物はあるかぁぁぁっ!」
「おおおおおおおおおっ!」
なんとも暑苦しいテンションで行われているようです。
前巻からのあらすじ
天使族のタカ派の急先鋒のスアロウが遂に村長の軍門に降る!!
蚕に食べられてる世界樹を見て卒倒しちゃうのが何気に、、
妖精女王も完全に居着いて、ハンバーグにチーズが入ってないとギャン泣きw
更に世界樹の葉っぱで呪いを受けて重傷を負っていたドラゴン、グーロンデが復活して子供達がキラキラした目で大はしゃぎして他のドラゴン達が嫉妬するw
骸骨騎士達にも仲間が増えて、骸骨魔術師が加入したが色々とやらかしてたけど村長がやらかした?
そして、最初期に移住して来た獣人族の子供達が学園に通ってたら教師にされて、遂には結婚か、、
感想
フェニックスの雛が世界樹の葉を食べる蚕と模擬戦をしてやっと勝てるようになった。
いや、キミってばフェニックスだろ?
かなり強いはずだよな?
それが世界樹の葉を食べてるとはいえ、蚕と決闘って、、、
しかも初勝利。。
それまでは連敗していたとか、、
蚕がどんだけ強いんだ?
最近、影が薄かったニュニュダフネ達だったが、同じような植物系の魔物のトレントが出て来たのだが、、、
ニュニュダフネとトレントの力関係が、普段のポヤポヤした感じをかなぐり捨て、トレントにメンチを斬ってトレント達に地面の栄養分を全て吸うぞと脅すニュニュダフネに爆笑。
それに怯えて言うことを聞くトレントが何気に哀れというか、、
そんなニュニュダフネを訪問してエルダートレントが来て、村長の作った土を大変気に入っていつの間にか移住して来て、村長に枝を献上。
その枝をチェスの駒にするのだが、モデルを猫達にしたら、、
自動で動くコマになってチェス好きのクロヨンがお相手してるのが、、
まだ駒達は強く無いけど、チェスが大好きなクロヨンには良いのかも?
そして学園に入学したウルザとアルは、母親のルーに恨みを持つ連中から生命を狙われてしまう。
それが引き金になって魔王国の内乱へと発展してしまう。。
へ?何で?
最後までお読み頂きありがとうございます。
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のんびり農家11巻レビュー
のんびり農家全巻まとめ
のんびり農家13巻レビュー
展開まとめ
【序章】トーシーラ
トーシーラの立場と姉への認識
トーシーラは、混代竜族最強であるメットーラの数多い妹の一人であり、自身も混代竜族であった。メットーラは以前、メットーラの名で暴れると母に叱られるため、ダンダジィと名乗っていたが、トーシーラはその必要性に疑問を抱きつつも、姉には何を言っても通じないと理解して黙っていた。
ライメイレンのもとで働く日々
トーシーラとメットーラは、神代竜族の頂点である竜王ドースの妻ライメイレンのもとで働いていた。それは混代竜族の竜にとって非常に名誉あることであり、トーシーラはその立場を誇りに思っていた。友人たちから代わってほしいと決闘を挑まれることもあったが、彼女はそれを退けていた。ただし、ライメイレンのもとで求められるのは戦闘力ではなく内政力であり、その点を誰も勝負に持ち込まなかったことを不思議に思いながらも、トーシーラは日々の仕事に励んでいた。
メットーラの異動とトーシーラの反発
ある日、メットーラは母にダンダジィの名を使っていたことが知られ、叱られた末に戦闘禁止を約束させられていた。トーシーラは、その約束が長く守られるとは思っていなかったが、しばらくは平和になるだろうと受け止めていた。ところがその直後、メットーラは母の命令でライメイレンのもとを離れることになった。トーシーラはその決定に納得できず、自分と一緒に仕事を続けてほしいと強く思ったが、ライメイレンはすでに承知しており、当のメットーラも荷造りを進めていて、出発する気でいることを知った。
大樹の村に関係する差し入れで機嫌を直す
メットーラが向かう先について、食事の美味しさがある程度約束されていると聞いたトーシーラは、大樹の村を連想して強く羨んだ。結局、姉に対して拗ねた気持ちを抱きつつも、後日届いた大樹の村産の甘い果物や酒の差し入れによって、その感情は和らいでいった。トーシーラは意地を張り続けるのをやめ、姉に礼の手紙を書くことにし、もっと量が欲しいという催促も添えることにした。
手紙に綴った近況と新たな役目
トーシーラは手紙の中で、最近のライメイレンの機嫌が非常によく、一人で小躍りしていたことを伝えた。また、ライメイレンが留守のときには自分がその場を任されるようになったことを誇らしく感じており、それを努力の成果だと受け止めていた。ライメイレンの留守が多いことも信頼の証だと考え、さらに励もうとしていた。
姉の新たな赴任先への不安と決意
手紙の送り先が魔王国の王都であることを知ったトーシーラは、メットーラが変わった場所で働くことになったのだと感じた。それでも、どのような場所であっても姉なら大丈夫だと考えつつ、魔王国の王都で竜が暴れたという話を聞かずに済むことを願っていた。そうして最後には、自分も気合いを入れて日々の仕事を頑張ろうと気持ちを新たにしていた。
〔一章〕ティゼルの学園生活
1 野外学習と宴会と相談
野外学習の名目で始まった投石機の実演
昼過ぎ、村の南側の森近くでは、ハクレンやグーロンデ、村の子供たち、クロの子供たち、ザブトンの子供たちが集まり、野外学習が行われていた。学習内容はテコや滑車の原理など科学的な要素を含むものであったが、そこには投石機まで持ち出されており、村長は本当に実際に石を投げる必要があるのかと疑問を抱いていた。それでも子供たちの興味を引くためだと説明され、安全への配慮を念押しした。
ヨルと山エルフが関わる危険な兵装管理
その場には温泉地の転移門を管理しているはずのヨルもおり、兵装の管理は自分の仕事だと言い切っていた。どうやら投石機の組み立てと発射もヨルが担当しており、村長は取り上げずに安全第一を求めるに留めた。一方で山エルフたちは投石機用の弾を多数抱えており、子供たちの学習が優先であること、毒やガスのような危険なものは禁止であることを改めて確認された。
連鎖式爆炎弾の威力に村長が警戒する
実演が始まると、着弾地点ではクロたちの角を上回るほどの大爆発が起きた。山エルフの説明によれば、それはルー考案の連鎖式爆炎弾であり、爆炎の魔法を込めた石を適切に配置することで相乗効果を生む兵器であった。子供たちは次の発射を求めて歓声を上げたが、村長はその危険性に強い不安を覚えた。残っていた弾を保管するより使い切った方が安全と判断し、すべて発射させたうえで今後の生産を禁じた。
さらに危険な派生弾まで発覚する
ところが山エルフからは、連鎖式爆炎弾タイプⅡと連鎖式氷結弾も存在すると明かされた。タイプⅡは威力が二割増しであり、ハクレンとグーロンデの防御魔法があれば大丈夫だと確認されたため、村長はそれらも含めてすべて使い切るよう命じた。そして類似品も含めて今後の生産を禁止し、その旨をルーにも伝えるよう求めた。村長は、これほどの威力を持つ爆弾を何に使うのかと呆れていた。
爆発をきっかけに宴会へ発展する
大爆発の音を聞きつけて村の住人たちが集まり始め、ドワーフたちは酒樽を担いで現れたため、その場は自然と宴会の流れになった。妖精女王も甘味を求めてやって来たため、キャンピング馬車で菓子を作らせることになった。村長は子供たちを優先しつつ、投石機の発射で歓声が響く横で料理の準備に加わっていた。
ドーナツからカレーへ移った料理の流れ
もともとは甘味としてドーナツを作っていたが、鬼人族メイドたちが途中で交代したことで、村長はいつの間にかカレーの下拵えを手伝い、そのままカレー鍋まで任されていた。ドーナツは子供にも大人にも評判が良く、妖精女王も二十個ほど食べていた。村長は渡された自分の分のカレーを食べながら、外で食べるカレーの美味しさを改めて実感していた。
ヨウコが持ち込んだ五ノ村の学園問題
そこへ“五ノ村”から戻ってきたヨウコが現れ、村長は相談事を忘れていたことを詫びた。ヨウコは酒とドーナツとカレーを手に隣へ座り、まず“五ノ村”で進めている学園建設について報告した。希望者なら誰でも入学できる学園の校舎は完成していたが、教師が不足しており、ニーズやゴランドの伝手で集めているものの、開園にはまだ時間がかかる状況であった。住人たちの期待が大きいだけに早く開園したいが、村長は無理をしないようヨウコに念を押した。
麺屋ブリトアの人気拡大と支店構想
次にヨウコは、《麺屋ブリトア》でラーメンが大人気となり、弟子入り希望者が殺到していることを伝えた。レシピ自体は公開されていたが、材料の入手が難しく、代用品では客を満足させられないため、正式に弟子入りして技術を学ぶ者が増えていたのである。認められれば支店を任される可能性もあり、材料は本店から供給できる見込みであった。村長は店舗拡張を認めたうえで、味の違う店を並べてラーメン通りを作る案も示した。ただし、まずは現在の行列をさばくために本店の拡張を優先することになった。
地下商店通りの相談とヨウコの仕事終わり
その後も二人は地下商店通りの開発について相談を進めたが、ヨウコは話しながら三杯目の酒まで飲み進めていた。酒が空くたびにドワーフたちが注ぎに来る状況の中、やがてヨウコの娘ヒトエが狐姿で現れた。ヨウコはヒトエを膝に抱き、余っていたドーナツを渡したことで、仕事の空気はそこで途切れ、村長も今日の相談はそこまでにしようと考えた。
爆弾の本当の用途が明かされる
その直後、さらに大きな爆発音が響き、投石機の方を見るとルーが現れていた。期待した威力が出たらしく、ルーは小躍りし、周囲も大歓声を上げていた。村長は再び保管の危険を思って今後の生産禁止を伝えたが、ルーはそれが鉱山の採掘爆破用であると説明した。ヨウコも、そうした正当な理由があるからこそ協力したのだと補足したため、村長はようやく納得した。そして、今後は生産を完全に止めるのではなく、厳重に保管する方向で考えることにした。
2 野外学習その2とトウ
新たなため池の建設と渇水対策
村長は村の西側、水路に沿って二キロほど離れた場所に、新しい大きなため池を掘っていた。水路の南側にはエビの養殖池があるため、ため池は北側に作られていた。現状で水は足りていたが、万一の渇水に備えるための対策であり、川の水量に変化は見られないものの、用心しておくに越したことはないと考えていた。新しいため池は二百メートル四方で、最深部は二十メートルほどあり、将来的には最初のため池と繋ぐ予定であった。最初のため池を拡張しなかったのは、周囲に建物が増えすぎていたことに加え、そこに住み着いたポンドタートルへの配慮があったためであった。
連鎖式氷結弾の用途と危険性の確認
ため池と水路は十日ほどで完成していたが、ルーが実験に使いたいと言ったため、まだ水は流し込まれていなかった。今回使われたのは連鎖式爆炎弾ではなく連鎖式氷結弾であり、宴会のときに披露した際には爆音もなく地面が凍るだけだったため、観客の反応が鈍かったことをルーは気にしているようであった。村長がその用途を尋ねると、ルーは鉱山採掘中に水脈へ当たって現場が水没した際、流れ込んだ水を凍らせるために使うのだと説明した。水が湧き出る箇所以外の氷を砕いて運び出せば採掘を再開できるという発想であり、村長はその発想に感心した。
常温で融けない氷が抱える問題
ルーはさらに、連鎖式氷結弾で作られた氷は常温では融けないと明かした。村長はその危険性を強く感じたが、ルーは取り扱いに注意が必要だと前置きしたうえで、本来の問題は砕きにくさにあると説明した。氷結の魔法に加え、固着化の魔法も連鎖に組み込まれているため、外部からの影響に強すぎて砕くのが難しいのであった。宴会のときに氷が砕かれていたのは、連鎖式爆炎弾の威力が強く、氷結や固着化の魔法ごと霧散させていたからであった。
氷を融かす魔法という新たな方向性
採掘現場で使うには改良が必要であり、固着化を弱めすぎれば氷が自然に融けてしまい、逆に弱めなければ周囲を凍らせ続けるという難題を抱えていた。そこで村長は、氷結弾そのものを改良するより、氷結弾で作られた氷を融かす魔法を考えた方が早いのではないかと提案した。ルーは少し考えた後、細い炎を一メートルほど伸ばし、その炎で凍った巨大水球を切り刻んで綺麗な賽の目状の氷を作り出した。この時点でルーの実験は終わったようであった。
ハクレンとグーロンデによる風の野外学習
村長が水路を開通させようとすると、今度はハクレンとグーロンデから、その場所を野外学習に使いたいと頼まれた。村長は危ないことはしないよう条件をつけて了承し、自身も同行した。新しいため池までは馬車で移動し、子供たちは喜んでいた。馬車の周囲にはクロの子供たちが付き従い、その背には拳大のザブトンの子供たちが乗っており、護衛と生徒を兼ねていた。
巨大なつむじ風と魔法の原理の学習
今回の野外学習のテーマは風であった。ハクレンは魔法で直径十メートル、高さ百メートル以上にもなる巨大なつむじ風を発生させたが、それは暴れ始めたため、ハクレン自身が殴って消した。村長は、つむじ風が殴って消えることに感心しつつ、村から離れた場所で行っていて本当に良かったと胸をなで下ろした。その後、グーロンデは地面を温めて上昇気流を作り、風が双方向に通過することで自然につむじ風が発生する原理を子供たちに説明した。子供たちはその原理を踏まえて、小さなつむじ風を魔法で発生させていた。ハクレンは、自然発生の原理を知れば属性外の魔法も使いやすくなると得意げに語ったが、魔法を使えない村長には関係のない話であった。
ザブトンの子供たちの新しい遊び
この野外学習の影響で、一部のザブトンの子供たちは新しい遊びを始めた。大きな葉を持ってつむじ風を起こし、その中へ飛び込んで葉に乗り、空中をサーフィンするように舞い上がっていたのである。村長はそれを楽しそうだと思いつつも、つむじ風の魔法は広い場所で使うよう注意し、室内などで周囲に迷惑をかけないよう言い聞かせた。
世界樹の葉を巡るやり取りと代用品
ザブトンの子供たちはもっと大きな葉、特に世界樹の葉を欲しがった。しかし村長は、世界樹の葉は治療に使えるため遊びに使うのはためらわれると考えた。ドワーフたちが世界樹の葉を絞って酒を作ろうとしたり、鬼人族メイドたちが桜餅に使ったりしている例を思い浮かべつつも、それらは遊びではないと自分に言い聞かせた。結局、ザブトンの子供たちにはバナナの葉で我慢してもらい、あわせてバナナの実も与えた。
トウが運んできた試作果物
その場へ、“大樹の村”と太陽城こと“四ノ村”を往復している万能船がちょうど到着し、船長のトウが大きな荷物を持ってやってきた。荷物の中身は“四ノ村”で試作していた果物であり、熟したため持ってきたのだという。見たことのない果物ばかりで、村長は名前も食べ方も知らなかった。トウによれば、ベルとゴウが食べ方を研究する前にまず村長に届けたかったらしく、加熱や冷却による味の変化まで確かめようとしているとのことであった。
果物の量産とため池の利用相談
さらにトウは、ドワーフたちがいくつかの果物を酒にしたいので量産してほしいと言っていたことも伝えた。村長は一度に全部は無理だとしつつ、育てやすいものから増やすとベルとゴウに伝えるよう頼み、栽培場所が決まれば自分が耕すつもりであった。その後、トウは新しいため池に水が張られたら万能船を浮かべてもよいかと相談した。空を飛ぶ船であっても船は船であり、水に浮かべたいというのがその理由であった。村長は、当面は予備の水源として使うだけなので問題ないと答えたが、森が近いため周辺警戒が必要ではないかと懸念した。これに対しトウは、その点も訓練の一環と考えていると答えた。
船員たちへの評価と共同生活への適応
村長が船員たちの様子を尋ねると、トウは問題ないと答えた。万能船の船員は“四ノ村”の悪魔族や夢魔族が中心であり、我流の技術ではあるものの、閉じこもった生活を送っていた経験が逆に船内での共同生活への適応に繋がっていると見ていた。トウは、彼らとなら半年は船で生活できると頼もしく語り、船そのものの良さも口にしていた。
トウとヨルの関係、そしてミヨの噂
トウはその後ダンジョンへ向かい、おそらく転移門を使って温泉地へ行くのだろうと村長は考えた。トウは、温泉地の転移門管理をヨルに任せたことを気にしているらしく、手土産を持ってたびたび訪れていると、“五ノ村”の転移門を管理するフタが面白そうに語っていた。その様子から、村長は二人の間に特別な関係があるのかもしれないと感じていた。
シャシャートの街で広がるミヨの評判
また、シャシャートの街にいるミヨについては、仕事環境は大きく改善されたはずなのに、相変わらず仕事に埋もれていると聞かされていた。詳しく尋ねると、イフルス代官の仕事を手伝っているのだという。村長は、シャシャートの街にはこれまで色々と迷惑をかけてきたこともあり、手伝うこと自体を止めるつもりはなかったが、ほどほどにするよう思っていた。なお、ミヨはシャシャートの街の会計を握る謎の幼女メイドとして噂になっており、その話をゴロウン商会のマイケルから聞かされた村長は、どのような顔をすればよいのかわからなくなっていた。
3 戯れる
世界樹の葉の酒造り失敗と予想外の産物
ドワーフたちは、世界樹の葉を酒にしようとして失敗し、落ち込んでいた。どう作っても無味無臭のただの水にしかならず、酒にはならなかったのである。ただし、その水は砂糖と柑橘類を搾って加えると飲みやすくなったため、妖精女王やザブトンの子供たちも口にしていた。村長はその水に何らかの効果があるのではないかと考えたが、ドワーフたちの感想は疲労が少し取れ、肩こりが軽くなった気がするという程度であった。そのため村長は、これ以上の生産は中止し、世界樹の葉は葉のまま使った方がよいと判断した。
神への奉納と失敗作への再評価
ドワーフたちは研究を続けたがっていたが、最終的には“四ノ村”の新しい果実の研究へ力を向けることになった。村長は残った水を自分で飲むのではなく、創造神と農業神の像に酒とともに供えた。疲労回復の効果がある以上、それは失敗作ではなく、ただ望んだ結果にならなかっただけだと考えていたためである。
ため池でのポンドタートルとのやり取り
奉納を終えた村長は、ポンドタートルたちが住む最初のため池へ向かった。収穫量が多かったキャベツを与えると、ポンドタートルたちは喜んで丸ごと食べ始めた。その中にはレタス派の個体もおり、さらにハクサイも好みだと分かったため、村長はそれらも用意することにした。ポンドタートルたちが子供たちから様々な野菜の味を覚えていたことも明らかになった。
行方不明の牛の捜索
その後ろにはクロの子供たちが控えており、牛が一頭行方不明になったと村長に報告した。温泉地へ行ったと思われていたが、夜になっても戻らなかったのである。村長はクロの子供たちと遊んでいた際、ため池の近くで牛を見かけた記憶を思い出し、北側の果樹エリア付近にいたはずだと伝えた。自分も手伝おうとしたが猫たちに止められ、捜索は任せることになった。三十分後、牛は果樹エリアで迷っていただけだと判明し、無事に発見された。
アイギスと鷲の微笑ましい関係
猫たちが去ったあと、今度はアイギスと鷲がやって来た。アイギスはその日に行った特訓の内容を得意げに語り、鷲はそれを温かく見守っていた。村長は二人の様子を、種族は違っていても親子か、あるいはパートナーのようだと感じ、微笑ましく見ていた。
妖精女王の変化と神水の正体
翌日になると、妖精女王が大人の姿で現れた。以前よりもさらに大人びて見えたが、蔓はなく、その理由を尋ねた村長に対し、妖精女王は自分の位階が上がったのだと説明した。神に一歩近づいたようなものだという。その原因は前日に飲んだ世界樹の葉の水であり、妖精女王はそれが神水であると明かした。そして詳しいことは村長の妻たちに聞くよう告げるとともに、あの水の生産は禁止だと強く求めた。
位階上昇がもたらす新たな問題
妖精女王自身には大きな問題はなく、しばらくすれば元の状態に戻ると語ったが、別の問題があるとも指摘した。それは、位階の上がった自分がまだ力を十分に制御できず、その影響を村長が受けるということであった。結果として、また子供が増える可能性が高いと説明された。妖精女王は、自身の存在意義としては子供を生ませたい気持ちがある一方で、子育ての大変さも理解していたため、自分が力を制御できるようになるまで情事を避ければよいと助言した。村長は妻たちと相談すると答え、妖精女王はいつも通り甘い朝食を求めていた。
神水の影響と消えた供え物
神水を飲んだドワーフたちやザブトンの子供たちには特に変化が見られず、村長は安心した。しかし、神々に供えた神水はいつの間にか消えていた。供え物を盗み飲みする者がいるとは考えにくく、村長は蒸発したのだろうかと思ったが、大樹の木が少し元気になっているようにも感じていた。ただ、それも気のせいだろうと受け流していた。
4 神水とニュニュダフネ
神水を巡る追及と研究価値の判明
妖精女王が大人状態でいる理由を説明したことで、ルー、ティア、フローラから神水について問い詰められた。村長は在庫もなく今後も生産しないと答えたが、三人は大きく落胆した。神水は薬品研究において極めて貴重な素材であり、その価値は竜の鱗に匹敵すると説明された。ただし、この村では竜の鱗が日常的に手に入るため、価値の高さが実感しにくい状況であった。
神水生産の断念と世界樹の葉の制限
村長は神水を作らない理由として、妖精女王からの禁止と、世界樹の葉を大量に消費する点を挙げた。ドワーフの試算では中樽一つに二千枚もの葉が必要であり、効率が悪すぎた。三人は一滴でもよいからと研究用の確保やレシピ公開を求めたが、村長はレシピの公開のみを認め、葉の採取は禁止した。これは世界樹に住む巨大な蚕から採取しすぎだと苦情が来ていたためであった。代替として花畑横で育てている世界樹からの採取を許可したが、まだ若木であり、実際に使えるようになるのはかなり先であった。
位階上昇による影響と妻たちの会議
本題である妖精女王の位階上昇による影響について、妻および妻候補たちによる会議が行われた。村長は別室で監視付きの待機を命じられた。これは抜け駆け防止のためであり、村長自身の意思とは無関係に状況が進められていた。会議の結果とその後の詳細については語られなかった。
ニュニュダフネの同行と五ノ村の問題
ある日、ルーが切り株姿のニュニュダフネを連れて現れた。五ノ村で発生したトラブルの解決に必要だという。村長も同行し、現地の状況を確認することになった。五ノ村周辺には七つの採掘現場があり、そのうち四つは水脈に当たって水没していたが、連鎖式氷結弾によって再開を目指していた。今回の問題は残り三つの採掘現場であり、そこへ向かう道に魔物が出現し、採掘物の運搬ができなくなっていた。
トレントの脅威と交渉方針
出没していた魔物はトレントであり、見た目が普通の木と変わらないため識別が困難であった。トレントは近づいた生物を襲う性質を持つが、会話が可能であるため、討伐ではなく交渉による解決が選ばれた。この役割を担うためにニュニュダフネが呼ばれていた。
ニュニュダフネによる強硬な交渉
ニュニュダフネは人の姿に戻ると、森の木に対して乱暴な口調で威圧的に話しかけた。さらに地面に足を突き刺し、周囲の栄養を奪うと脅すことでトレントたちを追い込んだ。これによりトレントたちは抵抗の意思を見せず、従う姿勢を示した。ニュニュダフネはルーの意向を確認し、トレントたちに東への移動を命じた。
ウォーベア問題と対処方針
トレントたちは東に強力な魔物ウォーベアがいることを理由に移動を躊躇したが、ルーはガルフに討伐させる方針を示した。これにより、トレントは当面その場に留まりつつも馬車を襲わないことを約束し、十日後に移動を開始することとなった。
ウォーベア討伐隊の編成
ウォーベア討伐のため、ガルフを中心としたチームが編成された。警備主任ピリカ、修行中のチェルシー、白銀騎士、青銅騎士、赤鉄騎士も参加し、戦力は十分に整えられた。討伐の報奨金は村長が負担し、トレントは対象外とすることが明示された。討伐後には酒肉ニーズでの宴会も手配され、士気向上が図られた。
ダガの合流と戦いへの準備
出発直前にはダガも合流し、討伐隊はさらに強化された。村長は無理をしないよう釘を刺しつつ、ウォーベア討伐に向けた準備は万全の状態となっていた。
5 チェスのコマと討伐成果
酒スライムと静かな時間の喪失
村長はため池の近くで酒スライムを揉みながら静かに過ごしていた。隣にはクロの子供のマサユキが寄り添い、共に遠くを眺めていた。ポンドタートルたちはその様子を心配そうに見ていたが、村長は問題ないと考えていた。しかしその後、酒スライムは聖女セレスに、マサユキはパートナーたちに連れて行かれ、穏やかな時間は終わった。
神像からチェスのコマへと変わる制作
時間を持て余した村長は神様の像を彫り始めたが、始祖がそれを持ち出してしまうため、十体ほどで制作をやめ、チェスのコマ作りに切り替えた。通常の四セットに加え、神様を模した変わりコマも制作し、識別しやすいよう台座に差をつけた。出来栄えには満足したが、実際に使用するのは不敬に思えたため、飾り用とした。
各種バージョンのチェス駒の制作
さらに村長は、クロヨンとマルビットにちなんだインフェルノウルフ版と天使版のチェス駒も作成した。インフェルノウルフ版ではクロをキング、ユキをクイーンとし、冠を載せることでわかりやすくした。天使版ではキングをマルビット、クイーンをルィンシァとした。また、ザブトンの要望に応じてザブトン版も制作し、キングをザブトン、クイーンをアラクネのアラコに割り当てた。
ウォーベア討伐の成功と危機の回避
作業に没頭している最中、五ノ村からガルフたちの帰還報告が届いた。討伐は大成功であり、十日間でウォーベア二十七頭を討伐、その他の魔物や魔獣も多数駆除されていた。異常な密集状態であったため、放置していれば五ノ村や周辺の村、さらにはシャシャートの街にまで被害が及んでいた可能性があり、結果として大きな危機を未然に防いだ形となった。
周辺村への影響と今後の警戒体制
ヨウコはこの結果に安堵しつつも、周辺村の防衛体制に不安を感じていた。これらの村では畜産が推進されており、多額の投資が行われていたため、被害が出れば損失は大きかった。そこでヨウコは、冒険者を各村に巡回させる提案を行い、村長もそれに賛同した。
討伐対象の処分と権利の整理
討伐された魔物や魔獣は五ノ村に運ばれて解体されており、商人たちが販売を待っていた。通常は討伐者に権利があるが、今回は村長の依頼による討伐で報酬も支払われているため、権利は村長にあると整理された。村長は必要な部位をガルフたちに確認し、残りを販売することを許可した。
宴会と討伐隊の評価
討伐後、ガルフたちは酒肉ニーズで宴会を開いており、大きな怪我もなく無事であった。ただし青銅騎士はウッドキラーに三度騙されたことを悔やんで落ち込んでいたが、白銀騎士からは厳しい言葉で指摘されていた。村長は対応に困りつつも、武人同士の問題として任せることにした。
ピリカとチェルシーの成長
宴会の中で、ピリカとチェルシーの成長が話題となった。特にピリカは大樹の村の武闘会に参加させたいほどの実力に達しており、戦士の部であれば十分通用すると評価された。一方でチェルシーは参加を拒否しており、過去にウルザに敗北した経験が影響していた。
五ノ村での武闘会開催案
チェルシーから五ノ村での武闘会開催の希望が出され、村長はそれを了承した。ただしヨウコの負担を考えつつ、伝え方には注意しようと反省していた。しかし翌日、ヨウコはすでに武闘会開催を検討しており、問題はなかった。ガルフに挑戦する者が増え、野良試合が各所で問題となっていたため、それを統制する場として武闘会が必要とされていたのである。
武闘会開催の決定と急展開
武闘会は希望者が多く、開催時期は来年ではなく来月とされた。これは想定以上の需要の高さによるものであり、チェルシーの発言もその声を代表したものだったと村長は理解した。こうして五ノ村での武闘会は急速に実現へ向けて動き出した。
閑話 王都での生活 ティゼル編 食事会
食事会の準備とティゼルの優越感
ティゼルは学園内の自宅で食事会を開くことになり、魔王や学園長、ビーゼル、ランダン、ホウ、グラッツに加え、飛び入りでダルフォン商会のリドリーも参加することになった。リドリーは、魔王国の食糧生産や価格調整の話をティゼルに任せるのは不安だと考えていたが、ティゼルは昨日知り合ったばかりである以上、それも仕方ないと受け止めていた。一方で、自分の友人としてリドリーを紹介できることには満足しており、まだ食事会に招待できる友人がいないであろうアルフレートやウルザに対して、少し優越感を覚えていた。
屋内外に分かれた会場と警備体制
家がそれほど広くなかったため、食事会はリビングと野外の二箇所に分けて行われることになった。体の大きいミノタウロス族のグラッツは自ら野外へ移動し、部下たちとともに大掛かりなバーベキューの準備を進めていた。ティゼルは、魔王たちがいる家の警備が手薄になるのではないかと気にしたが、グラッツから、露骨に警備をすれば重要人物がいると知らせることになるため、目立たない形で要所を押さえていると説明された。それにより、ティゼルは見えない場所で警備が機能していることを理解した。
協力者たちと自然に集まる生徒たち
バーベキューの準備には、以前ティゼルたちと揉めた混代竜族のオージェス、ハイフリーグータ、キハトロイも参加していた。グラッツによれば、彼女たちは失点を取り戻すために自ら協力を申し出たらしかったが、ティゼルは単にバーベキューに参加したいだけではないかとも感じていた。また、生徒たちも何か行事があると自然に集まってくるようで、外周には見知った顔が集まり、ゴーたちが取りまとめていた。グラッツに野外を任せ、ティゼルはリビングへ戻ることにした。
リドリーの放置と貴族の紹介作法
リビングへ戻ると、リドリーが助けを求めるような顔をしていたため、ティゼルは一瞬いじめられたのかと思った。しかしアサに否定され、招待したゲストを放置するのはよくないと指摘されて、自分の落ち度に気づいた。アルフレートやウルザには紹介済みであっても、まだ到着していなかった魔王たちにはリドリーを紹介していなかったのである。貴族社会では、招待者が正式に紹介しなければ、その人物はいないのと同じ扱いになるため、ティゼルは面倒だと思いながらも、まず最上位の客である魔王から順にリドリーを紹介した。リドリーが小さく悲鳴を上げたものの、紹介自体は無事に終わった。
食事会の開始と席の整い
リドリーの紹介が終わったところで食事会が始まった。席にはアルフレート、ウルザ、ティゼル、魔王、学園長、ビーゼル、ランダン、ホウ、リドリーが着き、アサ、アース、メットーラが給仕役を務めていた。さらに魔王たちが連れてきた給仕も六人ほど加わり、あまり広くない家の中は人でいっぱいになっていた。
最初の飲み物と形式的な統一
最初の飲み物は全員同じ果実水で統一された。ホウはあからさまに落胆していたが、同じものを飲み食いするのがこの場のルールであったため、仕方がなかった。ただし、それはあくまで最初だけの形式であり、次からは希望者に酒が出せるとメットーラが伝えると、ホウはすぐに元気を取り戻した。ティゼルは、ホウが勢いよく果実水を飲み干す様子を見て呆れていた。
入学祝いとしての挨拶
食事会はティゼルたちの入学祝いを名目としていたため、最初にゲストたちから挨拶が行われた。学園長は改めて入学を歓迎し、よく学び励むよう伝えた。魔王は暴れすぎないよう注意を与え、ビーゼルは困ったことがあれば頼ってよいと告げて、自分の孫同然だと親しみを示した。続くランダンは、自分を頼れば多少の犯罪も誤魔化せると軽口を叩いたが、それに対してホウは犯罪の隠蔽は許されないとたしなめ、自分なら金の相談に乗れると述べた。ランダンがホウの年齢に触れかけて黙ったのを見て、ティゼルは女性の年齢に言及してはいけないという父の教えを思い出し、この場ではランダンが悪いと判断していた。
リドリーの挨拶とアルフレートの返答
最後にリドリーが、ダルフォン商会の一員としてアルフレート、ウルザ、ティゼルの入学を祝う挨拶を述べた。それを受けて、アルフレートは三人を代表し、丁寧な挨拶への礼と、自分たちがまだ未熟で迷惑をかけるかもしれないが指導を願いたいこと、そして今日は自分たちが育った村の料理を用意したので楽しんでほしいことを伝えた。用意していた文面をそのまま使えたことで、ティゼルは事前に悩みながら整えた言葉が無駄にならずに済んだと安堵し、リドリーを呼んでおいてよかったと感じていた。
料理の方針と村らしい献立
料理については、かしこまったコース料理にするかどうかで悩んだが、魔王国の流儀に従う姿勢を見せるなら本来はコース料理が適切であった。それでも、村での食事を知っている魔王たちに対して遠慮は不要だと考え、ティゼルたちはコース料理をやめた。その結果、出されたのはトンカツ、キャベツ、ご飯、味噌汁、漬物からなるトンカツ定食であり、父が喜びそうな献立であった。さらに、すべておかわり可能であるとアサが告げ、食事が始まった。
会話より食事が優先された食事会
本来であればホストであるティゼルたちが会話を回さなければならなかったが、ゲストたちは全員黙々と食べ続けていた。リドリーまで同じように食事に集中しており、聞こえてくるのはおかわりの声と酒の注文ばかりであった。ホウが、ティゼルたちが用意していた酒の種類を把握していることには驚かされたが、ティゼルはメットーラに許可を出して酒を提供させた。ただし、飲みすぎないようホウには釘を刺していた。結局、まずは食べることが優先であり、話はそのあとでよいとティゼルは判断していた。
閑話 王都での生活 リドリー編 問題提起
王都で発生したダルフォン商会の危機
リドリーはダルフォン商会の候補者の一人であり、代表不在時に王都での対応を任される立場にあった。通常は留守番のような役割であり大事が起きることは稀であったが、今回はその稀な事態が発生した。王都で危険な魔物リッチを匿っていたことに加え、王城からの通達を無視して要人に手を出し、その和解のために送った招待状に対して夜襲を受けるという事態に至った。候補者のルルサは防戦したものの敗れ、援軍も寝返って彼女を捕縛したため、商会の終わりを覚悟した。しかし結果的には事態は収束し、リドリーは日頃の行いのおかげだと考えていた。
食事会への参加と謝罪の決意
翌日、リドリーはガルガルド貴族学園にあるティゼルの家を訪れていた。ティゼルの兄アルフレートが主催する食事会に招かれたためであり、本来は遠慮したかったが、食糧生産や価格調整の件についてランダンに説明する必要があり、参加せざるを得なかった。リドリーは謝罪のために早めに到着し、アルフレートとウルザに謝意を示した。二人は謝罪を受け入れたうえでリドリーの身を案じ、迷惑料として金銭を渡そうとしたが、リドリーはそれを拒否した。
予想外の重鎮たちの集結による困惑
食事会の参加者が揃い始めると、リドリーはその顔ぶれに驚愕した。魔王、その妻、外交の重鎮クローム伯、軍の要であるグラッツ将軍、財務官レグ大臣、そして内政の要であるランダンと、魔王国の中枢が一堂に会していたのである。食事会の規模を超えた重要な場に感じられ、リドリーは強い困惑を覚えた。さらに、グラッツが自ら野外へ移動した際には、本来は自分が配慮すべきであったと反省していた。
魔王との対面と動揺
その直後、ティゼルによって魔王の前に連れて行かれ、友人として紹介された。魔王から友人と認められるという予想外の展開に、リドリーは強い動揺を覚えた。ティゼルと魔王のやり取りに翻弄される中、気づけば食事会が始まっていた。
トンカツ定食と食文化への感動
目の前に出されたのはトンカツ定食であり、シャシャートの街のビッグルーフで提供されている料理と同系統のものであった。リドリーはその味の要であるソースに強い関心を抱き、再現が困難とされていることを思い出していた。また、部位指定やチーズ巻き、アスパラ巻き、メンチカツといった多様な選択肢にも驚き、食事を楽しんでいた。箸の使用にも問題なく対応でき、自身の準備が役立ったことを実感していた。
調味料と商機への意識
食事の途中で、グラッツからバーベキューの肉と野菜が差し入れられ、それには醤油が使われていた。これはゴロウン商会の扱う調味料であり、リドリーはダルフォン商会としても新たな調味料の開発が必要だと考えるようになった。
食後の満足と新たな課題意識
食後、リドリーはこれまでの自分の美食への認識が甘かったと痛感し、ビッグルーフへ足を運ぶ必要性を感じていた。同時に五ノ村への訪問も視野に入れ、食文化の研究を進めようとしていた。
致命的な問題提起と絶望
食事会が解散に向かう中、リドリーはティゼルがランダンに食糧問題について話しかけようとするのを制止した。しかしその動きは間に合わず、ティゼルは問題があると発言してしまった。これによりランダンとレグ大臣が強い関心を示し、話の詳細を求める事態となった。リドリーはこれを決定的な失態と受け止め、ダルフォン商会の未来が終わったと絶望していた。
閑話 王都での生活 リドリー編 問題解決
ダルフォン商会が担ってきた食糧政策
ダルフォン商会は、長年にわたり魔王国の食糧生産と価格調整を担ってきた。魔王国は長く食糧不足に苦しみ、西方の人間の国との戦争も続いていたため、食糧はいくらあっても足りない状況であった。そのためダルフォン商会は、生産地から食糧を高値で買い取り、安値で販売し続けることで価格の急騰を防いでいた。大きな赤字を抱えていたが、その分は通行税や土地税の免除、一部商品の専売によって補填されていた。
食糧難解消後も続いた価格維持
ダンジョンイモによる畑の再生が本格化して以降、魔王国の食糧難は解消され、市場には食糧が溢れるようになった。それでも価格が大きく崩れなかったのは、ダルフォン商会が引き続き高値で買い支えていたためであった。買い集めた食糧はそのまま魔王国へ売却される一方で、ダルフォン商会は必要な作物を調べ、各地の領主へ生産量の調整を促すなど、単なる仲買ではなく全体の需給調整も担っていた。
ゴロウン商会の高値買い取りが生んだ問題
今回問題となっていたのは、シャシャートの街と五ノ村周辺に大きな影響力を持つゴロウン商会の存在であった。ゴロウン商会はダルフォン商会より高い価格で作物を買い取っており、その結果、シャシャートの街や五ノ村での作物価格が上昇していた。シャシャートの街は魔王都から各地へ向かう中継点であるため、そこでの値動きは魔王国全体に影響を及ぼす。ダルフォン商会は足並みを揃えるよう交渉していたが進展せず、このままでは食糧相場や各地の生産量に悪影響が出ると見込まれていた。
ティゼルによる要約と魔王の疑問
リドリーが長く説明した内容を、ティゼルは、ゴロウン商会が高値で作物を買いまくることで全体に影響が出て困っており、ダルフォン商会の推奨価格に合わせてほしいという話だと簡潔にまとめた。これに対し魔王は、なぜゴロウン商会が安く買わずに高値で買うのかと疑問を示した。
売り手も買い手もゴロウン商会である構図
その問いに答えたのは、突如その場に現れたゴロウン商会のマイケルであった。彼は、作物の売り手もゴロウン商会だからだと述べた。つまり、ゴロウン商会は売り手と買い手の両方を担っており、そのため買取価格を下げることに同意しづらかったのである。リドリーはその構図から、価格を自由に操作できる攻撃ではないかと気づきかけたが、その場にはクローム伯の転移魔法で呼ばれたマイケルのほか、ダルフォン商会代表デリンテッド、イフルス代官の筆頭秘書ミヨまで現れており、状況は急速に大事になっていた。
ミヨの立場と場の異様さ
ミヨは、自分がシャシャートの街のイフルス代官の筆頭秘書であると名乗ったうえで、本来は村長宅の使用人の一人であり、アサの同僚でもあると明かした。そして今はイフルス代官の代理として来ているため、それに相応しい扱いを求めた。リドリーは、食事会だったはずの場に魔王、学園長、クローム伯、レグ大臣、ランダン、アルフレート、ウルザ、ティゼル、さらに各商会と代官側の代表まで揃っている異様な状況に圧倒され、黙ってやり過ごすしかないと考えていた。
極秘案件として明かされた村長との取引
魔王が、売り手と買い手が同じなら価格はどうとでもなるはずであり、協調できない理由は何かと尋ねると、マイケルは極秘案件が絡むと答えた。クローム伯が手を打つ必要があると促し、魔王はこの場の内容を他言無用としたうえで、結果だけを持ち帰れと命じた。そこでマイケルは、ゴロウン商会が管理する畑の作物はすべて村長の所有物であると明かした。ゴロウン商会と村長の取引では金貨や銀貨の流出が激しく、それを防ぐために畑の作物などによる物納へ切り替えていたのである。
価格低下が村長の損失につながる仕組み
続いてミヨが、シャシャートの街と五ノ村近郊にあるゴロウン商会管理の畑の売り上げは、すべて村長への支払いに充てられていると説明した。問題は販売価格が固定されていない点にあり、価格が下がれば損をするのはゴロウン商会ではなく、作物の権利を持つ村長の側であった。そのため、ゴロウン商会は自分たちの都合で物納にしてもらったにもかかわらず、値下げによって村長に損をさせるわけにはいかないとして、価格引き下げに応じていなかったのである。
契約変更が難しい理由
魔王は、村長が損をしないよう契約を変更できないのかと尋ねたが、マイケルは自分からそんな提案はできず、言っても応じてもらえないだろうと答えた。アルフレートも、父なら損が出ても契約は契約だと言って変更に応じないはずだと述べた。さらにウルザは、父は魔王国が混乱することを望まないだろうとも付け加えた。つまり、契約変更ではなく別の形で解決するしかない状況であった。
ミヨの補填案による解決策
そこでミヨは、食糧相場については契約通り村長に損をしてもらい、その代わり損失分を別途補填する案を提示した。魔王がそれで大丈夫かと確認すると、ミヨはこの件については自分が村長に謝罪し、シャシャートの街で孤軍奮闘させられた体験談を語れば納得してもらえるはずだと自信を見せた。魔王はそれを認め、補填の細部はランダンとレグ大臣が詰めることになった。
価格引き下げの決着とリドリーの安堵
話がまとまったことで、マイケルはゴロウン商会がダルフォン商会と足並みを揃え、魔王国の発展に寄与したいと表明した。こうしてゴロウン商会の作物買い付け価格は引き下げられることになり、問題は解決へ向かった。長く交渉してきたデリンテッドはやや落ち込んでいたが、リドリーはダルフォン商会が無事で済んだことを何より喜ぶべきだと考えていた。
閑話 王都での生活 ミヨ編 問題解決の裏側
太陽城から外へ出たミヨの働き方の変化
ミヨは太陽城で働くために生まれたマーキュリー種の一人であった。しかし太陽城が“四ノ村”へと名前を変えたことで、職場も外に求めることになった。もともとは転移門の管理をする予定であったが、その転移門がなくなったため、文官仕事をすることになった。ミヨはその選択を間違いだったと思っていた。
ビッグルーフ・シャシャートでの過酷な会計業務
ミヨは“シャシャートの街”にあるビッグルーフ・シャシャートへ会計の応援として派遣されたが、いつの間にか責任者になっていた。そこでは終わりのない書類仕事に追われ、まともに眠ることもできず、机に伏せて気を失うような日々を送っていた。環境改善を粘り強く訴えた結果、ようやく文官の数が揃い、仕事が回るようになったが、その過程は非常に過酷であった。さらに、自分が育てた部下をルーに引き抜かれたこともあり、その恨みは今も忘れていなかった。
代官屋敷で秘書となった経緯
現在のミヨは、シャシャートの街の代官屋敷で秘書を務めていた。そのきっかけは、ビッグルーフ・シャシャートで食事を楽しんでいた際にイフルス代官と出会ったことであった。一緒に食事をし、舞台で歌っていた流れのまま、いつの間にか職場へ連れて行かれた。そして数字に強いことを見込まれ、書類を見せられたことから仕事に関わるようになった。内容自体はそれほど難しくなかったが、書式を揃えるところから手を付ける必要があり、余裕が出ていたこともあって引き受けてしまった。そうして働く代わりに、シャシャートの街の極秘情報を大量に得られるという利点もあったため、ミヨはその仕事を続けていた。
ゴロウン商会とダルフォン商会の対立構造
ある日、イフルス代官屋敷ではゴロウン商会とダルフォン商会の話し合いが行われた。ミヨは中立の立場であり、余計な口を挟まず、ただ代官屋敷の者としてそのやり取りを聞いていた。話し合いは何度も重ねられたが、まったく進展しなかった。原因は明確であった。ゴロウン商会は、すでにその地域一帯の作物の買取価格を基準として各取引を成立させていたため、その価格を下げれば広範囲に影響が出る状況にあった。一方のダルフォン商会は、魔王国のためという大義名分を掲げて価格引き下げを迫っていたが、そのやり方では簡単に納得できる相手ではなかった。
村長の利益が絡むため引けないゴロウン商会
ゴロウン商会が譲れない最大の理由は、作物の権利を持っているのが“大樹の村”の村長であったからである。ゴロウン商会は金貨や銀貨の代わりに作物の権利で支払うことを提案し、それを村長に受け入れてもらっていた。そのため、価格を下げることで村長に損をさせるわけにはいかなかった。村長自身は気にしないだろうとミヨは考えていたが、周囲がどう動くかわからず、ゴロウン商会としては危険すぎる賭けであった。だからこそ、ゴロウン商会は値下げに応じなかったのである。
説明できない事情とすれ違う交渉
しかし“大樹の村”の村長の存在自体が極秘事項であったため、ゴロウン商会はその理由をダルフォン商会へ説明できなかった。マイケルは言えない事情があることをやんわりと示していたが、ダルフォン商会代表のデリンテッドはそれを察せず、むしろゴロウン商会が魔王国に悪意を持っているのではないかと疑っていた。ミヨは、その状況を見て困っていた。
ビーゼルの介入と関係者の召集
そうした状況の中で、ビーゼルが現れた。ゴロウン商会のマイケルとダルフォン商会のデリンテッドを連れて行くためであり、ゴロウン商会の買取価格の問題が魔王の耳に入ったのだという。関係者を直接連れて行くという強引なやり方ではあったが、最も早い解決策でもあるとミヨは受け止めた。そしてミヨ自身も、イフルス代官に報告する役目として同行することになった。
学園の屋敷で見た顔ぶれと場の空気
ビーゼルに連れられて到着したのは、王都にあるガルガルド貴族学園の敷地内にあるアルフレートたちの住まいであった。ミヨは、その屋敷がアルフレートたちの住居としては小さいと感じていた。そこにはアルフレート、ウルザ、ティゼル、アサ、アースのほか、魔王、ランダン、ホウ、そして知らない顔も何人かいた。アサから、魔王の妻、ダルフォン商会のリドリー、そして混代竜族のメットーラであると教えられ、ミヨは把握した。また、魔王たちが連れてきた給仕の中には暗殺者のように見える者もいたが、それは護衛だと理解した。
ティゼルから渡された解決の筋書き
ティゼルはミヨにハイタッチを求め、その際に一枚のメモを渡した。そこには問題の流れと解決案が書かれていた。ミヨは、これがその通りに話を誘導しろということではなく、最終的にこの結果へ至ることを示したものだと理解した。実際、話し合いの途中でティゼルは、魔王、アルフレート、ウルザ、ホウ、ランダン、そしてマイケルにこっそり同様のメモを渡していた。一方で、ダルフォン商会の者には渡していなかった。ダルフォン商会の要求通りの結果になる以上、そちらの利害調整は不要だとミヨは判断した。
解決の場でミヨが担った役割
ミヨは、自分が最後の美味しいところをもらう形になると理解しつつ、その役目を引き受けることにした。ただし、そのためには村長に対して自分が持っている切り札を一つ使うことになるとも感じていた。しかもティゼルには、その切り札を減らすこと自体も目的の一つとして含まれているのではないかと、ミヨは疑っていた。
閑話 王都での生活 ティゼル編 食事会のあと
問題解決後の余韻とティゼルの考察
ゴロウン商会の問題は無事に解決し、ティゼルは安堵していた。ゴロウン商会と村長の関係性を踏まえると、契約の詰めの甘さや口約束に近い形で進んでいたことが問題の一因であったと考えていた。また、魔王国は現金重視で信用取引に対する取り決めが甘い傾向にあり、村長がそれを指摘しないのは何らかの意図があるのではないかと興味を抱いていた。
ミヨへの配慮と情報交換の様子
話し合いが終わり、場は談笑へと移っていた。アサとミヨは情報交換を行っており、ティゼルは今回の解決においてミヨに負担がかかったことを理解していた。そのため、村長にミヨを褒める手紙を送ろうと考えていた。
ダルフォン商会の内情とリドリーへの助言
その中で、ダルフォン商会の代表デリンテッドがランダンのもとへ向かう様子を見て、ティゼルはリドリーに注意を促した。候補者が二人減る事実を代表がまだ知らない可能性があり、このままでは問題が拡大する恐れがあったためである。リドリーにとっては自身の立場向上の機会でもあったが、商会全体への影響を考えれば放置は危険であると判断していた。
ホウによる代表への牽制と村長の評価
デリンテッドを止めたのはホウであった。ホウはレグ大臣の立場を借りて、今回の件でダルフォン商会に損はなく、これ以上関わる必要はないと忠告した。これに対しデリンテッドは面子の問題や補填の影響を懸念したが、ホウはそれを退けた。さらに村長について問われると、魔王国にダンジョンイモをもたらした大恩人であると説明し、デリンテッドもその重要性を理解した。
謝罪と表向きの収束
その後、ランダンを介してマイケルがデリンテッドに対し、言葉が荒くなったことを謝罪した。デリンテッドは内心に不満を抱えつつも、立場上これを受け入れ、表面的には穏やかな形で収束した。
リドリーの行動と強引な対応
ティゼルは、リドリーが代表に重要な情報を伝えるべきだと考え、急かして行動させた。リドリーは代表の隣に並び、強引な方法で注意を引いて状況を伝えようとしていた。多少乱暴であっても、代表を守るためには必要な行動であるとティゼルは受け止めていた。
野外の盛り上がりと魔王の影響力
屋外ではグラッツたちによるバーベキューが続いており、魔王と学園長が訪れたことで場の盛り上がりはさらに増していた。魔王の存在が周囲の士気を高める様子を見て、ティゼルはそのカリスマ性を実感していた。一方で、村長は前に出ることを良しとしないため、単純な比較はできないと考えていた。
料理の応用とビーゼルの依頼
バーベキューではトンカツが揚げられ、パンに挟んで食べるなど工夫がなされていた。そこへビーゼルがキャベツを持ち込み、さらに王城での接待のためにアサを料理人として貸してほしいと依頼した。ティゼルは了承する意向を示したが、アルフレートとウルザは反対した。
アサ不在による制約と判断
反対の理由は、ティゼルが学園外へ出る際にはアサに同行されることが条件となっているためであった。アサがいなければティゼルは外出できなくなるためである。アサ自身は依頼を受ける意思を示したが、その場合のティゼルの扱いを巡って問題が生じると指摘した。最終的にティゼルは、ビーゼルへの配慮も考慮しつつ対応を検討することになった。
数日後の変化と新たな役割
数日後、アサは王城へ料理人として出向することとなった。一方でティゼルは、魔王の執務室にて仕事を手伝う立場に置かれていた。魔王に繋がる紐付きの状態ではあったが、資料の整理などを任され、魔王の業務に関わるようになっていた。
〔二章〕ウルザの学園生活
1 アイギスの日
アイギスの日
アイギスと巨大な蚕の定期戦
フェニックスの雛であるアイギスは、地面で仮想戦闘の動きを繰り返していた。攻撃をかわし、クチバシで突く動作を磨いており、その様子を見守る鷲の反応から仕上がりは良好であった。一方で対戦相手となる巨大な蚕は、周囲の仲間やドワーフのドノバンの応援を受けながら、余裕を持って世界樹の葉を食べていた。この両者による戦いは定期的に行われるものであったが、今回はハクレンが子供たちを連れて到着するのを待って開始されることとなり、アイギスの自信の高さがうかがえた。
激しい攻防と影渡りによる決着
戦いは拮抗した展開となった。炎をまとったアイギスは突撃と分身による攻撃を仕掛け、巨大な蚕は糸による結界や身代わりで応戦し、さらに魔法による反撃も行った。攻防の均衡は巨大な蚕に傾くかと思われたが、アイギスは火の玉を放ち、それを囮として結界に触れさせ爆発を起こした。その瞬間に生まれた影を利用し、影の中を移動して奇襲を成功させた。この影渡りによる攻撃によって、勝負はアイギスの勝利に終わった。
勝利後の反応と影渡りへの評価
アイギスはクチバシでの攻撃を寸止めし、巨大な蚕も潔く敗北を認めた。勝利したアイギスは子供たちの前で飛行を披露し、満足げな様子を見せた。子供たちもその技量に感心していた。文官娘衆は影渡りの技術を高く評価していたが、その原理は複雑であり、簡単に真似できるものではなかった。ただし、クロの子供やザブトンの子供たちは容易に行っており、適性の違いが示されていた。
入浴問題と専用風呂の試行錯誤
戦闘後、アイギスは入浴することになった。水浴びや温泉は好むものの、長時間水に触れると水温を上昇させてしまう性質があり、以前には風呂を熱湯にしてしまったことがあった。そのため専用の風呂と水浴び場が作られたが、中庭に設置した最初の風呂は鶏に占領されてしまった。次に三メートルの高台に設置された風呂も、鶏が登って使用するようになり、さらに熱湯を周囲に撒き散らす危険性からアイギスの使用は禁止された。結果として、アイギスは村長と同じ風呂を使うことになり、水温を冷ます役割が新たに加わる形となった。
食事と器用な行動
入浴後、アイギスは村長と同じテーブルで食事を取った。クチバシを使って丁寧に食べるだけでなく、足や羽も使い分けるなど非常に器用であり、その様子はまるで中に小さな人間がいるかのようであった。
就寝場所の変化と生活習慣
食後のアイギスは寝室へ向かうが、専用の小屋ではなく屋敷の屋根に作った巣で眠ることが多くなっていた。ただし雨の日やその翌日は巣を使わず、村長の布団に潜り込むこともあった。安全面の問題からそれは好ましくなかったが、鷲が付き添っていることで把握されていた。最終的には鬼人族メイドがアイギスを抱き上げ、クロの背に乗せて外へ連れ出した。鷲もそれに続き、村長はクロとアイギス、鷲に挨拶をして一日を終えた。
2 仰向け寝とトレント
仰向け寝とトレント
様々な動物の仰向け寝の観察
動物たちの寝顔は癒やしを与えるものであり、とくにクロは仰向けで寝ることに強いこだわりを持っていた。過去に角でシーツを破った経験から、体は仰向け、首は横向きという独特の姿勢を習得していたが、気持ちよさそうに眠っているため咎められることはなかった。クロの子供たちも同様に仰向けで眠る者がいたが、藁の上であるため周囲を傷つけることはなかった。一方で猫たちはあまり仰向けで寝ることはなく、父猫のライギエルのみが枕を使って仰向けで熟睡していた。ライギエルは子猫に蹴られても魔法で防御しながら眠り続けるなど、高度な睡眠技術を見せていた。
異なる種族の睡眠習慣と特徴
アイギスが仰向けで眠るのは自然なことであったが、山羊や羊にはそのような習慣は見られなかった。馬が仰向けで寝ようとする様子も見られたが、体の構造上無理があると判断された。また、丸々と太った蜂の女王も仰向けで眠っており、一見すると死んでいるように見えるほどであったが、実際は転がってその姿勢になっただけであった。兵隊蜂たちはそれを恥じて謝罪したが、問題はなく、蜂なりの生活様式として受け止められた。
チェスのコマと動物たちの反応
屋敷に戻ると、クロヨンが自作のチェスのコマの前に立っていた。クロたちをモデルにした変わりコマを気に入っており、同じポーズを真似することもあった。姉猫たちがそれをからかう様子も見られたが、猫たちからは自分たちをモデルにしたコマの制作を求められた。ただしキングをライギエルにすると伝えた途端、興味を失う反応も見られた。
妖精女王とのやり取りと甘味作り
木材調達に向かおうとしたところで妖精女王に呼び止められた。妖精女王はまだ大人の姿のままであり、子供たちに好かれにくいため暇を持て余していた。鬼人族メイドに頼めば甘味は用意されるにもかかわらず、村長の作る甘味を求めたため、団子を作って与えることになった。その後、木材探しを再開した。
森での木材探索とトレントとの遭遇
作業場には適した木材が見つからなかったため、森へ移動して探索を続けたが、なかなか適した木は見つからなかった。さらに奥へ進んだところで、巨大なトレントと遭遇した。高さ十メートル、幹の直径五メートルほどの個体であり、五ノ村周辺のものとは別個体であった。当初は対処を考えたが、その姿に魅力を感じ、像の素材として適していると考えた。
トレントとの交流と案内
トレントは敵意を示さず、クロの子供たちを解放したうえで、ニュニュダフネのもとへ行きたいと意思を示した。五ノ村周辺のトレントから情報を得てここまで来たという。村長はそれを受けて一ノ村へ案内することにした。トレントは巨大ながら移動速度は速く、森の中では村長と同程度、あるいはそれ以上の速度で移動できた。ただし川や橋の通過は苦手であり、その際は移動が遅くなった。
再会と報酬としての枝
一ノ村に到着し、トレントはニュニュダフネと再会した。外見上はただ木が並んでいるようにしか見えなかったが、当人同士では意思疎通ができていた。村長が戻ろうとした際、トレントから礼として枝を受け取った。その枝は太さや長さがちょうどよく、チェスのコマ制作に適した素材であった。村長はそれをありがたく受け取った。
3 エルダートレント
枝の価値と用途を巡る対立
エルダートレントの枝を持ち帰ると、ルーとティアが強く興味を示した。通常のトレントの枝は珍しくないが、この枝はエルダートレントのものであり極めて貴重であった。ルーは杖の素材として使用することを提案したが、ティアはそれに見合う他の素材も必要になると指摘した。二人は枝を持ち去ろうとしたが、村長はチェスのコマを作る目的で譲らなかった。
枝に込められた意味と譲れない理由
村長は、この枝が単なる素材ではなく、エルダートレントから与えられたものだと考えていた。その価値は右腕に等しいものであり、本来の用途に使うべきだと判断していた。ルーの例えによりその価値を理解したうえで、なおさら目的外に使うことはできないとした。結果として、コマ制作後の余りや削りカスをルーとティアに渡すことで折り合いがついた。
チェスのコマ制作と猫たちの反応
村長は削りカスを無駄にしないため、布で囲まれた環境の中で作業を行い、猫をモデルにしたチェスの変わりコマを制作した。キングは父猫ライギエル、クイーンは母猫ジュエル、ポーンは姉猫と子猫が担当した。余った駒にはペルシャ猫やシャム猫などのイメージを彫り込んだが、それに対して猫たちは不満を示した。
魔法を宿したコマの異変
完成したコマには強い魔力が宿っており、条件が揃うと自律的に動く性質を持っていた。片側だけでは動かなかったが、対戦相手のコマが揃うとチェスのルールに従って一手だけ動く様子が確認された。その後は相手の行動を待つ状態となり、クロヨンとの対戦では敗北したことでコマたちは落ち込んでいた。
枝の再利用と治癒道具の生成
残された枝と削りカスはルーとティアによって加工され、固められた後に薄い板へと成形された。その板にはグーロンデの鱗の粉で文字が刻まれ、魔法によって定着された結果、強力な治癒魔法を発動できる道具となった。一枚につき数回使用可能な実用的な魔法具であり、各村に分配された。
エルダートレントの定住と環境整備
枝を提供したエルダートレントは一ノ村の北側の森に定住することを決め、用意された畑に根を張った。十分な栄養が得られるため移動する必要がなくなり、周囲の安全も確保されていることから満足している様子であった。
ニュニュダフネの要望と村の拡張
ニュニュダフネはエルダートレントのために用意された畑を羨み、自分たちにも土地を求めた。村長は要求に応じて畑を拡張し、さらにエルダートレントの子供たちが増えたことで追加の土地も整備された。その結果、一ノ村の規模はさらに広がることとなった。
4 模型
地下商店通り模型の制作開始
村長は木の板を『万能農具』で加工し、『五ノ村”で計画されている地下商店通りの模型を作り始めた。イメージ共有のために模型は有効だと考えていたが、幅六十センチ、長さ二メートルというサイズは大きすぎ、想定以上に作業が煩雑となっていた。それでも途中で投げ出すことはできず、作業を続けることになった。
山エルフの協力と設計の拡張
山エルフたちが加わったことで作業は急速に進んだが、防衛設備のような落とし穴や槍の仕掛けが提案されるなど、設計は本来の目的から逸脱しかけた。水路については排水用途として有用であるため採用された。また、トロッコ輸送のためのレールも導入され、板型と箱型のトロッコが試作された。
レール構造の検討と制約
レールは二本の精密な設置と摩耗の問題があり、導入には制約があった。モノレール案も検討されたが、通行の邪魔や構造強度、さらに人力運用時の抵抗増大といった問題から却下された。最終的にトロッコは一階部分に集中させる構造へと方針が固まった。
大型施設へと変貌した模型
完成した模型は四階建てで中央吹き抜けを持つ大型施設となり、商店は二階から四階に配置され、各階は橋で接続される構造となった。一階はトロッコ専用の物流空間として設計され、多数の階段も設けられた。結果として地下商店通りの模型は、大型ショッピングモールのような構造へと発展していた。
模型公開と計画の転換
完成した模型は『五ノ村”の関係者に披露されたが、ヨウコ以外は驚きで言葉を失った。ヨウコは模型を預かり、その後の号令によって計画は大幅に見直されることとなった。当初の計画では模型通りに建設できないため、逆に模型に合わせた形へと変更される方針が決定された。
土地不足問題と地下利用の意義
地下商店通りの本来の目的はトンネルの有効活用であり、背景には『五ノ村”の土地不足があった。小山上の立地により建築可能な土地が限られ、住民は高所に住むことを好むため、麓の開発は進まなかった。建て替えや増改築も困難であり、商業施設の新設が難しい状況を打開するための計画であった。
トンネル拡張と新たな構想
既存のトンネルは長さ百メートル、幅六メートルであり、これを拡張することで大型施設の収容が可能と判断された。通気や照明の問題も既存対策を活用できる見込みであった。村長はさらに上下移動の負担軽減のため、エレベーターやエスカレーターの導入を検討し始めた。
試作模型とザブトンの子供たちの遊び
別に制作していた試作模型は遊び心が強く残っており、ザブトンの子供たちが気に入って内部で生活するように遊んでいた。橋を渡る様子やモノレール型トロッコで遊ぶ姿が見られ、模型は実用だけでなく遊びの場としても機能していた。
最後の騒動と日常の一幕
その模型の横では、姉猫ミエルが箱型トロッコに頭を突っ込み、抜けなくなるという騒動が起きた。村長はその情けない声に応じて助けることになり、作業の合間に日常的な一幕が加わった。
5 特産品
地下商店通り建設と新たな発想
地下商店通りの建設は急速に進められており、村長はトンネルの拡張と補強を担っていた。高さを確保するため上部から掘り進める必要があり、作業はまだ時間を要する見込みであった。その中で、施設だけでなく中身も重要であると考え、『五ノ村”の特産品を新たに考案しようとした。
既存の特産品と文化資源の再認識
ヨウコから指摘され、『五ノ村”にはすでに多くの特産品が存在することを改めて認識した。調味料であるマヨネーズ、味噌、醤油、酒類、ドワーフの鉄製品、エルフの織物、各種家畜の肉や卵、さらに魔物素材など、多岐にわたる産品が揃っていた。加えて薬草院、図書館、劇場、大浴場などの文化施設も整備されており、これら自体が集客要因となっていた。
図書館の発展と創作文化の形成
中でも図書館は独自の発展を遂げていた。当初は利用者が少なかったが、読み聞かせを導入したことで子供だけでなく大人も集まるようになった。やがて演出や役割分担が取り入れられ、さらに創作活動へと発展した。物語制作の試行錯誤を重ねることで創作集団として評価され、劇場の成立にもつながっていた。
新規施設によるさらなる集客の可能性
現在進行中の学園、レース場、地下商店通りの建設は、さらなる人の流入を生む可能性があった。特にレース場は競技や賭けの要素によって外部からの来訪者を増やすと予想され、地下商店通りも将来的に大きな影響を持つ可能性があった。
新たな特産品としてのお稲荷さんの提案
こうした状況の中で、村長は新たな食品としてお稲荷さんを提案した。油揚げを甘く煮て酢飯を詰める簡易な料理であり、大豆と米という村で生産されている素材を活用できる点に価値があった。また、具材や味付けを変えることで多様な展開が可能であり、住民の好みに応じた改良も見込めた。
評価と導入決定
ヨウコはその味と手軽さを評価し、特産品として採用することを決定した。ただし生産体制が整うまでは大々的な販売は行わず、まずは村議会場の食堂で提供されるにとどめる方針となった。
普及前の人気と今後の展望
お稲荷さんはすでに一部で人気を得ており、ヨウコも確保に工夫を凝らすほど気に入っていた。しかし知名度の向上と本格的な特産品化には時間が必要であり、今後の生産と普及の進展が待たれる状況であった。
閑話 王都での生活 ウルザ編 暗殺者
王都での生活と警戒
ウルザはアルフレートやティゼルたちとともに王都で生活していたが、ティゼルや護衛役の不在が重なり、守りが手薄な状況にあった。その中でウルザは暗殺者の存在に気づき、メットーラにより最初の五人組を排除させた。さらに別の暗殺者の気配を察知し続け、警戒を強めていた。
暗殺者の目的と対処方針
後に捕縛された暗殺者は、ルールーシーに関係する報復でウルザたちを狙っていたことが判明した。直接本人を狙えないため子供を標的にしたものであった。ウルザは過剰な護衛を避けるため、事態を大きくしない方針を提案し、グラッツはそれを踏まえつつ報告内容を調整する形で対応した。その結果、表立たない護衛としてリグネが加わることになった。
森への外出と襲撃の発生
ある日、北の森に現れた魔獣の調査のため、ウルザとアルフレート、リグネたちは外出した。その途中で三十人規模の襲撃を受けたが、リグネの力で撃退した。しかし護送のために戦力が分散した隙を突かれ、さらに別の集団が現れた。
強敵による奇襲とウルザの負傷
混戦の中、商人風の男が現れ、ナイフによる奇襲を仕掛けた。ウルザはアルフレートを守るために攻撃を受け止め、さらに見えない一撃を受けて負傷した。アルフレートを逃がすことには成功したが、別の待ち伏せ部隊によりアルフレートは矢を受ける結果となった。
アルフレートの霧化と暴走
矢を受けたアルフレートは霧化能力を発動し、物理攻撃を無効化したが、その状態で制御を失い暴走した。影から兵を生み出し、周囲の敵味方を問わず攻撃を開始した。影の兵は数で圧倒し、敵を次々と制圧していったが、制御不能であったため状況は悪化していった。
影の魔法陣と召喚の発動
暴走状態のアルフレートは影を使って魔法陣を構築し、契約済みの存在を召喚しようとした。ウルザはその行動を見て、状況の打開を期待しつつ見守った。そして魔法陣から現れた存在の名を呼び、クロイチの召喚が成されたのであった。
閑話 王都での生活 ウルザ編 裏切り
クロイチの召喚と戦闘態勢への移行
アルフレートに呼び出されたクロイチは大きく吠え、その存在感で周囲の空気を震わせた。ウルザは、王都にまで影響が及ぶのではないかと危惧しつつも、呼び出されたのが状況を見て暴走しにくいクロイチであったことに安堵した。しかし、霧化したアルフレートの姿を見たことで、クロイチは主が襲われたと判断し、即座に戦闘態勢へ移行した。
剣を手にしたウルザと隠れていた敵の指摘
このままでは被害が拡大すると判断したウルザは、リグネに預けていた剣を返してもらった。剣を持つことで自分の力を発揮できる一方、振り回したくなるため普段は自制していたが、もはやその余裕はなかった。そして剣を手にした直後、七本目のナイフを投げた真の敵が地中に潜んでいることを見抜き、その位置を示してリグネに対処を任せた。先に現れていた商人風の男は囮にすぎなかったのである。
クロイチの暴走を止めるための説得
その間にもクロイチは、アルフレートを襲った武装集団へ突撃していた。相手は訓練された戦力であり、なお戦意を失わず抵抗していたが、クロイチとの力量差は歴然としていた。ウルザはクロイチが敵を殺してしまえば父が悲しむと考え、自ら剣で斬りかかって注意を引いた。クロイチは反撃しかけたものの、相手がウルザだと気づいて止まり、ウルザは父が悲しむから殺しては駄目だと伝えた。クロイチはそれを理解し、手加減するようになった。
影に包まれたアルフレートと闇の王の出現
ウルザが次に目を向けたとき、霧化したアルフレートはいつの間にか影に包まれていた。ウルザは目を覚まさせようと影へ斬りかかったが、反撃する影を切り捨てた先から現れたのは、影の服をまとった二十代ほどの男の姿をした成長後のアルフレートであった。彼は自らを闇の王と名乗り、片手で顔を隠しながら武装集団へ攻撃を加え始めた。さらにクロイチにも指示を出し、戦場は一層混乱した。
制御不能なアルフレートと撤退の判断
アルフレートの攻撃は見栄えこそ派手であったが命中精度は低く、いまはそれが幸いしていた。しかし本気の攻撃を使われれば手が付けられず、しかも即座に回復するため実質的に無敵に近かった。ウルザは、現在の自分ではアルフレートに大ダメージを与える方法しかなく、それは避けたいと考え、リグネと合流して王都へ逃げ込みティゼルを呼ぶことを決めた。
王都軍の出動と状況の悪化
だがその前に、王都から二千を超える騎兵が到着した。ウルザは当初、武装集団を捕らえに来たのかと思ったが、騎兵たちはクロイチを敵とみなして攻撃を始めた。クロイチ自身は大きな損害を受けなかったものの、その行為はアルフレートに友への攻撃と認識され、アルフレートは騎兵へ魔法を放って反撃した。さらに影の兵も再び生み出され、このままでは被害が拡大するとウルザは確信した。
ティゼルの到着と即時の状況把握
その後、王都からはさらに万を超える正規軍が現れ、その先頭には魔王がいた。そしてその背中にはティゼルが乗っており、ウルザに手を振っていた。ティゼルは到着と同時に状況を把握し、ウルザからの説明も最小限で済んだ。ウルザは魔王に頼んでティゼルを解放してもらい、ティゼルはすぐにアルフレートのもとへ走っていった。
裏切りを装ったティゼルの演技
ティゼルはアルフレートの前で片膝をつき、自分は兄の味方であり、一緒にあの軍を倒そうと持ちかけた。魔王にはそれが派手な裏切りのように見えたが、ウルザはそれが演技だと断言した。ティゼルは呪文を唱え、地面を軟化させて盛り上がらせ、全長十二メートルの巨大ゴーレムを創り出した。
ゴーレムを使った隔離作戦
ティゼルのゴーレムは巨大である一方、精密な操作ができず、創造時も維持時も制約が大きい欠点を持っていた。ただし、他者が内部から操作することでその欠点を補えることが知られていた。そしてアルフレートは以前からその仕組みに憧れていた。ティゼルはその心理を利用し、兄さま、合体よと誘ってゴーレムの胸部を開いた。中には人が入れる空間と椅子が用意されており、アルフレートは高笑いしながら乗り込んだ。だが胸部が閉じた直後、ティゼルはそのまま隔離完了と宣言し、アルフレートを中へ閉じ込めた。アルフレートがこの作戦に引っかかったのはこれで三度目であった。
取り残されたクロイチの困惑
こうして暴走したアルフレートは封じ込められたが、クロイチは事情がわからず、困ったようにゴーレムの周囲をうろついていた。状況はようやく収束へ向かったが、その終わり方はどこか拍子抜けでもあった。
閑話 王都での生活 ウルザ編 友だち
騎兵の誤認とティゼルの後始末
アルフレートを封じたあと、魔王はティゼルに本当に問題ないのかと確認した。ティゼルは、純粋な魔法勝負ではアルフレートに及ばなくても、ゴーレムの強度なら負けないと説明し、実際には二十分ほどで脱出されるが、そのころには冷静さを取り戻しているはずだと見込んでいた。その一方で、ティゼルは先行してきた二千の騎兵たちの被害を気にしていた。彼らは私たちを狙う集団の情報を受けて派遣されたが、北の森に現れた見慣れない魔獣だと誤認し、クロイチを攻撃してしまったのである。ティゼルはそれを計算外だったと受け止め、吠え声を聞いて止めるには遅すぎたため、慌てて一万の兵を集めて追ってきたのだと説明した。
魔王国への恩と襲撃の背景
ティゼルは、王都ではリッチの件をアースが片づけたことや、ほかにも騒動が起こる可能性を見越して、グラッツとアサが見張りに当たっていることを話した。そして、自分たちが魔王国の戦力として取り込まれているのではなく、むしろ魔王国に恩を売っているのだと言い、魔王もそれに同意した。魔王は、今回の襲撃者の数を見誤っていたことについて謝罪したが、私たちはもともと複数の組織から狙われていると知らされていた。学園内にも暗殺者が入り込んでいた以上、待ちに回るのは不利であり、ほかの学生に被害を出さないためにも、あえて北の森へ出て敵を誘い出したのであった。
ギリングとマスクンドの勢力による襲撃
ティゼルによれば、今回私たちを襲った者たちの大半は、以前ティゼルと揉めて捕まったギリングとマスクンドの関係者であった。二人はそれぞれ大きな勢力を率いており、その配下にかなりの武装組織を抱えていた。そのため、二人の拘束に納得できない者たちが暴走した形になっていたが、実際にはリッチの代わりに動かされていたらしかった。ティゼルは、ならば反撃すべきだと考えたが、アルフレートがそれを望むかどうかが問題であった。
暴走後の羞恥とアルフレートの決定
ゴーレムの中から出てきたアルフレートは元の姿に戻っていたが、両手で顔を覆ってしゃがみ込み、消えたいと漏らした。暴走中の言動をすべて覚えているため、恥ずかしさで深く落ち込んでいたのである。ティゼルは始祖の言葉を引き合いに出して慰めようとしたが、かえって追い打ちになっていた。私はそんなアルフレートに、落ち込むのはあとにして、襲ってきた相手をどうするか決めるよう求めた。するとアルフレートは、今回の件は全部なかったことにしたいと答えた。ただし、私の腹にナイフを投げた相手だけは別で死刑だと言ったが、私はその技量を褒めたうえで、傷はもう治してあるから死刑は不要だと伝えた。こうして、今回の件はなかったことにする方針が決まった。
口裏合わせとデッドリーウルフの利用
私はティゼルに、アルフレートの決定通りに事態を収めるため知恵を貸してもらった。魔王国や魔王にとっても、今回の件はなかったことにしたほうが都合がよいと考えられたが、そのためには二千の騎兵の負傷理由を整える必要があった。そこで、北の森に現れた見慣れない魔獣デッドリーウルフの討伐で負傷したことにする案が採られた。デッドリーウルフはこの地域には本来いない魔獣であり、リッチと同じく外部から持ち込まれたものと見られていた。ちょうどそのデッドリーウルフはクロイチの前で腹を見せていたため、代役として使うには都合が良かった。こうして、クロイチは存在しなかったことにされ、騎兵たちはデッドリーウルフとの戦いで傷を負ったことになった。
襲撃者たちへの新たな処分
残る問題は襲撃者たちの処分であった。すべてをなかったことにするなら、本来は全員を処刑するのが最も簡単であったが、私はアルフレートの決定によって血を流させるのはまだ早いと考えた。そこで翌日、北の森で襲ってきた者たちだけでなく、学園で襲ってきた者たちや後方支援者も含めた百五十七人を一か所に集めた。彼らは皆、後ろ手に縛られ、疲弊しており、すでに厳しい尋問を受けていたようであった。
友だちという名の選択
私は百五十七人の前に立ち、このまま死ぬか、私の友だちになるかを選べと宣言した。友だちになれば、あの襲撃は演習として処理され、罪には問わないうえに、仕事も用意すると伝えた。部下ではなく、あくまで友だちだと強調した結果、その日、私は一気に多くの友だちを得ることになった。ティゼルには、自分が友だちができたと自慢したことを気にしているのかと聞かれたが、私はしていないと答えた。
閑話 王都での生活 ウルザ編 報告
クロイチが帰還できない理由と北の森での待機
召喚魔法で呼ばれた魔獣は、活動時間を事前に定めていなければ自動では帰還しない。活動時間の設定は高度な魔術であり、アルフレートにはまだできなかった。そのため、召喚されたクロイチは帰還せずに残っていた。魔王から学園や王都に近づけないでほしいと求められたため、クロイチは北の森へ移動し、デッドリーウルフも従って同行していた。
デッドリーウルフの処置とクロイチの帰村準備
デッドリーウルフは、王都の正規軍に討伐された証拠を整えるため毛を刈られており、本来の灰色に黒の斑模様は見えなくなっていた。刈り方の不手際で地肌が見えている箇所もあり、笑われると落ち込む状態であった。一方のクロイチは自力で村へ戻ろうとしていたが、道中で見られれば騒動になるとして魔王に止められた。そのため、ビーゼルが戻り次第、転移魔法で温泉地へ送られ、そこから転移門で村へ帰る手はずとなった。北の森では、ザブトンの子供のフォーオと昔話を楽しんでいた。
デッドリーウルフの拒否とフォーオへの預け先変更
クロイチが帰る日、デッドリーウルフも同行するかと思われたが、本人は完全に拒否した。クロイチの命令にも従えず、アルフレートの背に隠れて怯えていたため、クロイチはそれに苛立った。デッドリーウルフは村へ行くことを死と同じだと感じており、最終的には北の森の奥に住むフォーオへ預けられることになった。フォーオは大きな存在であり、わざわざ迎えに来てくれた。デッドリーウルフは森の奥で静かに暮らすこととなり、できるだけ冒険者から逃げるようにと願われていた。
護衛の真意とリグネへの認識の修正
クロイチが帰ったあと、ウルザとアルフレートはリグネとともに学園へ戻った。少し前に襲撃されたばかりであっても問題はなかった。なぜなら、もう襲われないからではなく、襲われても大丈夫だと証明できたからである。その道中で、ウルザはリグネの役割を誤解していたことを知った。リグネは子供たちを守る護衛ではなく、彼らがやりすぎないよう見張るための護衛であり、グラッツからは暗殺者程度ではどうにもならない子供たちだから、むしろ暗殺者を殺さないように見張ってほしいと頼まれていたのであった。リグネの対処が遅かった理由も、そこにあった。
ティゼルの巨大ゴーレムへの対処観
帰路の途中、ウルザはリグネにティゼルの巨大ゴーレムへ対抗できるか尋ねた。リグネは、以前教えられた弱点通り、ティゼル本人を狙うと答えた。それは正解の一手ではあったが、ティゼルがその弱点を放置するはずはないとウルザは理解していた。実際には、ティゼルが地面から足を離しても巨大ゴーレムを維持する手段が存在しており、それを教えるかどうかはティゼル本人に任せることにした。
学園への帰還とアースの疲労
学園へ近づくと、ゴーたちが作った畑や牧場、そして軍の宿泊地が見えてきた。そこを抜けた先で、アースが出迎えた。アースとゴーたちは前夜遅くに戻っていたが、全員が怪我ではなく疲労でぼろぼろの状態であった。そのためアースには休みを与えていたが、本人は休みたがらなかった。アルフレートは帰宅後すぐに自室へ引きこもり、暴走の件から立ち直るにはまだ時間が必要な様子であった。前夜には魔王やアサ、メットーラが昔の失敗談で励ましたが、効果は薄かった。
父への手紙と友だちの近況
ウルザは父への手紙を書くことを考え、自分に友だちができたことは伝えようとしていた。その友だちは無罪になったものの、すぐに自由にはされず、ダルフォン商会のリドリーに預けられていた。襲撃者の大半がダルフォン商会の関係者だったため、その責任を負わせる形なのだろうと考えたが、本来なら代表のデリンテッドに預けるべきではないかとも思っていた。ただ、それ以上は考えても仕方がないとして流した。
アースが連れてきた二十六人のメイドたち
アースは帰還時に同行者を連れていた。反乱を起こした地方領主に仕えていたメイドたちである。彼女たちは反乱に加担していないため無罪であったが、実家からは巻き込まれを避けるために受け入れを拒否され、行き場を失っていた。本来はゴーたちに助けを求めたが、最終的にアースへ回された。人数は二十六人で、年齢はウルザたちと同じくらいから二十代半ばまでであった。年長者たちは実力があるため、すでに引き取り手が見つかっていた。
王都で始まる新たな店の準備
アースは、この二十六人を家で働かせるのではなく、王都で店を開かせる考えであった。そのため、彼女たちは現在王都の宿に泊まっていた。アースがクロイチの見送りに同行しなかったのも休養のためではなく、ダルフォン商会へ土地と建物の確保を依頼するためであった。返事はすでに得られており、次はどのような店にするかが課題となっていた。アースはメイドたちの技量を踏まえ、お茶を提供する店にしたいと考えていたため、お茶の仕入れが必要になる見込みであった。ウルザは、それを父に頼むのであればアース自身に手紙を書かせるべきだと考えていた。
静かな時間の裏で進んでいた報復計画
自分の分の手紙を書き終えたウルザは、アルフレートとティゼルにも書かせてまとめて送るつもりでいた。手紙を運んでくれるビーゼルへの感謝も忘れていなかった。転移魔法を自分で使えればよいのにと思いながら、メットーラの淹れたお茶を飲んで穏やかな時間を過ごしていた。しかしその裏で、ルーが王城を訪れ、私たちが襲撃されたことへの報復に魔王の協力を求めていたことを、ウルザはまったく知らなかった。
閑話 地方領主の意地
現実逃避する領主と容赦のないメイド
ギンドウは、自分を百年以上領地を治めてきた格の違う男爵だと自負しながら高笑いしていた。そこへメイドが声をかけたが、ギンドウが文句を言おうとする前に頬を叩き始め、さらに叩き続けた末に握り拳まで使った。メイドは、急に笑い出したギンドウが危険な状態に見えたため、緊急避難的に正気へ戻そうとしたのだと優雅に謝罪したが、ギンドウはそれを信じず、ただ暴力を振るいたかっただけだと見抜いていた。それでも周囲に他の者はおらず、自分では彼女に勝てないと冷静に判断したため、謝罪を受け入れざるを得なかった。
砦で続く不利な籠城戦
現在、ギンドウのいる砦では戦闘が続いていた。敵はおよそ千、味方は百ほどしかいなかったが、砦に籠もっていることもあり、正門前では何とか拮抗していた。しかし、このまま戦いが長引けば負傷者が増え、今日をしのげても明日は持たないことは明らかであった。ギンドウもその厳しい現実を理解していた。
反乱に包囲された領地の孤立
十日前、魔王国から複数の反乱が同時進行しているという急報が届いた。だが、具体的な命令はなく、ギンドウは自領を守るために住民へ避難指示を出し、戦力を集めて砦へ集結させた。ところが三日前、自領に隣接する三つの領地がすべて反乱側であることが判明し、自分の領地が完全に反乱勢力に囲まれている状況に置かれていると知った。しかも周辺領主にはゴールゼン王国から使者が来ていたのに、自分のもとには来ておらず、最初から計画に入っていなかったことまで思い知らされた。
侮辱への反発が招いた徹底抗戦
その事実に激怒したギンドウは、自分の領地は死んでも魔王国側だと宣言し、周辺領主たちの使者へ喧嘩を売った。それが原因で攻め込まれることになったのだとメイドに指摘されたが、ギンドウは、あそこまで馬鹿にされて反乱側の仲間になどなってやるものかと反発し、徹底抗戦を叫んだ。穏便に振る舞えば仲間に入れてもらえたかもしれないという可能性もあったが、彼にはその選択はできなかった。
領主として前に立とうとする覚悟
メイドは、正門がいつ破られてもおかしくないため、ギンドウにもっと奥の部屋へ移るよう勧めた。しかしギンドウは、自分が前に出ても戦力にならないことは承知していながら、それでも領主である以上、最後まで前に立ってけじめをつけるべきだと考えていた。メイドから今さらだと呆れられ、クビだと告げても、退職金をもらっていないからもう少し付き合うと言い返される始末であった。それでもギンドウは、自分が守ってやれるという期待だけはするなと虚勢を張っていた。
最後まで格好をつけきれない領主
やがて正門が突破された気配が伝わり、メイドは覚悟を促した。ギンドウは震えながらも、自分こそが領主ギンドウであり、手柄が欲しい者はかかってこいと叫んだ。自分に似合わない振る舞いだとわかっていながらも、これこそが領主としての生きざまだと奮い立っていた。だがその直後、敵兵がまだ来ない中で、彼は背後から押さえつけられていることに気づいた。メイドは、最後の最後で情けなく逃げ出さないように押さえているのだと告げた。ギンドウはその気遣いに感謝しつつも、せめてそれだけはやめてほしいと弱々しく頼むしかなかった。
閑話 王都からの援軍
不本意な出動と指揮官任命
ゴールは貴族学園の教師でありながら、魔王国の地方反乱鎮圧に駆り出されていた。本来は家庭を大事にすべき立場であったが、ティゼルの指示と魔王の依頼により従わざるを得なかった。自身を素人と自覚しつつも、指揮官として南方大陸へ送り込まれることになった。
圧倒的戦力差と不完全な情報
副官から提示された地図には、反乱軍を示す赤いコマが十八、魔王国側を示す白いコマが十、そして援軍である黒いコマが一つ置かれていた。しかし黒いコマの実態はゴールと副官の二人のみであり、戦力差は極めて大きかった。さらに赤と白のコマ一つが三十から三百の兵を示すため、正確な戦力は把握できず、情報も錯綜していた。反乱軍は戦力を惜しまず投入する一方、防衛側は戦力を温存するため、実質的な戦力差はさらに開いていた。
転移による制約と援軍不足の理由
王都から十分な兵力を送れなかった理由は、ビーゼルの転移魔法に制限があったためである。距離が離れるほど一度に転移できる人数や回数が制限され、さらに船での輸送には五十日以上かかる。結果として、迅速な対応として指揮官のみを現地へ送り、現地兵力をまとめる方針が採られていた。
反乱が長引く構造的理由
通常、反乱は周辺領主が鎮圧するが、地方貴族同士は横の繋がりが強く、互いに顔見知りであるため戦いが激化しにくい。そのため反乱は長期化しやすく、反乱側もそれを見越して行動していた。目的は魔王国打倒ではなく、講和を条件に税軽減などの要求を通すことにあった。
南方大陸で反乱が許されない事情
しかし今回の反乱は南方大陸で発生したため、状況が異なっていた。この地には『天秤山牢』が存在し、ライメイレンが管理している。彼女は多くの場合不干渉であるが、最近は忙しいため騒動を持ち込むなと魔王に釘を刺していた。このため反乱を放置すれば重大な問題に発展する可能性があり、迅速な鎮圧が必要とされていた。
ティゼルの戦略と分散配置された指揮官
この状況を受け、ティゼルは指揮官のみを送り込み現地兵力を統合させる案を提示し、それが採用された。ゴールのほかにシール、ブロン、アースも別地域へ派遣されており、相互支援は期待できない状態であった。
孤立した領主の発見と救援判断
進路を検討する中で、ゴールは周囲を反乱軍に囲まれた孤立した白いコマを発見した。その領主は反乱初期に魔王国側への忠誠を宣言し、徹底抗戦を続けていた。しかしこのままでは持たないと判断されていた。ゴールはその領主を見捨てたくないと考え、救援を決断した。
天秤山牢を頼る大胆な方策
しかし現状の戦力では救援は不可能であったため、ゴールは地図上にコマのない中央山脈、すなわち『天秤山牢』を指し示した。揉め事の早期解決を理由に協力を求めるという大胆な発想であった。副官は正気を疑ったが、ゴールはメットーラから預かった手紙を頼りに、なんとかなると判断していた。
閑話 トーシーラの質問
怪しい来訪者と疑念の発生
トーシーラはライメイレンの留守を預かる混代竜族として務めていた中、魔王国から来た獣人族の来訪を受けた。来訪者はライメイレンの不在を承知のうえで訪れており、その意図に強い不信を抱いた。さらに来訪者はトーシーラの姉であるメットーラの手紙を持参していたが、隠しサインが正しくとも偽造の可能性を疑い、容易に信用することはできなかった。
試験による真偽の確認
トーシーラは来訪者を試すため、質問による試験を課した。第一問として提示したのは、ライメイレンが大切にしている孫ヒイチロウの絵であった。正解そのものではなく反応を重視していたが、来訪者は絵の扱いを咎め、ライメイレンの知人であることを示す自然な反応を見せた。この時点で関係者である可能性は高まったが、トーシーラはさらに確認を続けた。
第二問による正体の判明
第二問では竜の姿を描いた絵を提示したところ、来訪者はそれをハクレンと即答し、さらに自身が“大樹の村”の出身であると明かした。この情報により、来訪者が重要人物であることが確定した。竜族にとって“大樹の村”は極めて重要な存在であり、その関係者であれば疑う余地はなかった。
誤解の発覚と対応の転換
トーシーラは、最初に“大樹の村”の関係者であると名乗らなかったことに強い不満を示したが、同時にメットーラの手紙の意図を理解した。重要人物としか書かれていなかったことで余計な疑念を抱いたものの、結果的に来訪者の正体は明らかとなった。
戦力要請と即応の決意
来訪者の目的は、南方大陸の騒動を早期に解決するため、戦力を借りたいというものであった。ライメイレンが不在の間に問題を収める必要があるという事情もあり、トーシーラはその要請を受け入れた。彼女は自らも参戦する意志を示し、ライメイレン配下の部族へも協力を求めることを決めた。
自責と協力の申し出
トーシーラは、今回の対応でライメイレンやメットーラから叱責される可能性を自覚しつつも、その際には来訪者に庇護を求めた。来訪者もそれを了承し、戦力提供の約束を取り付けたことで、南方大陸の反乱鎮圧に向けた体制が整えられた。
閑話 がんばる副官
突然の転移と理不尽な任務
魔王国軍に所属する副官は、上司に呼び出された末、獣人族の男性ゴールと共に転移魔法で南方大陸へ送り込まれた。地方反乱の鎮圧任務であることは理解できたが、戦力が自分とゴールの二人のみであることに強い理不尽さを感じ、思わず叫んでしまった。しかし状況は変わらず、命令を遂行するしかないと割り切った。
冷静なゴールと自身の役割の再認識
副官はゴールの落ち着いた態度を見て、自身の動揺を反省した。ゴールは見た目こそ若いが、貴族学園の教師であり実力者であると理解し、指示に従う決意を固めた。自分の役割として、出身地の利を活かし情報収集と戦力確保を担うべきだと判断した。
戦力確保の失敗と行き詰まり
周辺情報の収集には成功したものの、兄が治める領地から戦力を借りることには失敗した。隣接する有力領地が反乱側に加担していたため、戦力を外へ出す余裕がなかったのである。逆に自分たちが戦力として取り込まれそうになり、援軍としての立場も弱く、発言権を持てない状況に追い込まれた。
禁忌への挑戦と圧倒的戦力の獲得
行き詰まる中、ゴールは『天秤山牢』から戦力を借りるという大胆な方針を決定した。南方大陸では禁忌とされる場所であったが、実際に協力を取り付けることに成功した。トーシーラのもとには多種族の戦力が集結し、その数は万を超える規模に膨れ上がった。さらに、まだ半分にも満たないという発言に、副官はその規模の異常さを実感した。
圧倒的兵力による反乱鎮圧
集結した戦力は圧倒的であり、個の力と数を兼ね備えた軍勢によって南方大陸の反乱は短期間で鎮圧された。敵は抵抗らしい抵抗もできず、結果は一方的な勝利であった。徹底抗戦を宣言していた領主ギンドウも無事に救出され、戦いは終結した。
ギンドウの奮闘と副官の誤解
副官はギンドウの姿に感銘を受け、気骨ある領主だと評価した。さらに、彼がメイドを庇いながら戦っていたと解釈し、二人が恋仲であると確信した。しかし実際には、顔の腫れはメイドに殴られたものだと説明されていたが、副官はそれを好意的に受け止めていた。
他地域の鎮圧と共通する解決手段
南方大陸の反乱が収束した後、他地域の状況も確認された。シールやブロンの担当した地域でも反乱は鎮圧されており、しかも同様に竜の協力を得ていたことが判明した。副官はその共通点に驚きつつも、同じ経験をした者同士で語り合えることを楽しみに感じていた。
反乱終結と魔王国の安定
こうして各地の反乱は短期間で収束し、魔王国の情勢は安定した。副官は今回の任務を通じて、圧倒的戦力の前では反乱が一瞬で終わる現実と、非常時における判断の重要性を強く実感したのであった。
6 謝罪
王城での謝罪の場
ヒラクはルーに誘われ、魔王国の王都にある王城へと向かった。案内された大ホールには大勢の文官や武官が集まり、異様な緊張感が漂っていた。ステージ上にはヒラクとルー、向かいには魔王とアルフレート、ウルザ、ティゼルが着席し、その下には土下座したまま動かない一団が控えていた。そこで魔王から、アルフレートたちが事件に巻き込まれたことへの謝罪がなされた。
襲撃事件の背景
ヒラクは事情の説明を受け、魔王国に混乱をもたらそうとする勢力が、商会関係者を唆してアルフレートたちを襲わせたことを知った。標的とされた理由は、彼らがルーの子供であったためであり、ルーが報復に動くことで魔王国に混乱を引き起こす意図があった。さらに、その情報はルー自身が過去に治療した王子とのやり取りの中で漏れていたことも判明した。
責任の所在と処理方針
ヒラクは冷静に状況を整理し、魔王に直接の責任はないと判断した。学園の警備体制には問題があるものの、襲撃自体は外部勢力によるものであり、魔王国全体の責任ではないとした。また、襲撃者たちはすでに処罰を受けており、それ以上の対応は不要と判断した。一方で、黒幕側については王子のクーデターにより制圧されていることを知り、過度な報復ではなくその国の法に任せるべきだと結論づけた。
ルーへの叱責と真意の理解
その後、ヒラクはルーと別室へ移動し、今回の一件について問いただした。事前に情報が共有されていなかったことや、大規模な謝罪の場が用意されていたことから、怒りを抑え込む意図があったと見抜いたのである。ルーはそれを認め謝罪し、ヒラクもまた怒りを抱えつつも、事態の規模や関係者の努力を踏まえて一定の理解を示した。ただし、今回限りであると釘を刺した。
子供たちとの再会と安堵
そこへアルフレート、ウルザ、ティゼルが訪れ、ヒラクは無事を確認して抱き締めた。子供たちが危険な目に遭ったことへの怒りと安堵が入り混じり、思わず涙を流した。強さを持つ彼らであっても油断は許されないと改めて諭した。
今後への課題
ヒラクは、ティアには報告済みである一方、ハクレンやザブトンにはまだ伝えられていないことを知り、その対応に頭を悩ませた。魔王の案内でアースの店へ向かうことになり、そこで今後の対応策を考えることとなった。
7 《メイドの店》
王都の大通りにあるアースの店
王都の中央にある王城から南へ伸びる大通り沿いに、アースの始めた店があった。場所は商店街と住居エリアの中間あたりにあり、立地としては悪くなかった。店の名は《ウルザーズ》で、アースが名付けたものであったが、周囲にはあまり定着しておらず、《メイドの店》と呼ばれていた。その理由は、店で働く給仕が教育を受けたメイドたちであり、来客に対しておかえりなさいませ、ご主人さまと挨拶していたためであった。
店内の仕組みと放送設備
ヒラクはアースに案内されて店内へ入った。広い店内はいくつかの区画に分かれており、貴族向けのやや豪華な席や個室も用意されていた。ヒラクが案内された席にはメニューがなく、その席に座る代金の中に飲み放題と食べ放題が含まれていたため、客は希望を伝えるだけで料理や飲み物を出してもらえる仕組みであった。また店内には七つのスクリーンが設置され、野球や演劇、歌などが放送されていた。ヒラクの正面には野球の映像が流れており、数か月前にシャシャートの街で行われた試合だと魔王が説明した。
本題となった子供たちの今後
ヒラクがこの店を訪れた本当の目的は、店の見学ではなく、アルフレートたちの今後について魔王と話すことであった。ヒラクは、本来なら学園に通わせ続けたいと思っていたが、今回のように大きな事件へ巻き込まれるなら村へ戻したいとも考えていた。魔王も基本的には同じ意見であったが、当の子供たち本人が学園に残ることを望んでいたため、学園に通わせ続ける方向で話が進んだ。学園の警備については魔王が責任を持って強化を進めており、すでに軍の一部を学園内へ送り込んでいた。その結果、学園内ではなく外で襲撃が起こったのだと説明した。
魔王の謝罪とヒラクの怒り
魔王は、地方で同時多発的に反乱が起きたことで自分の周囲の戦力が減ったため、次に狙われるのは自分だと考えていたと語った。外部から入る情報もその予測を裏付けていたため、アルフレートたちが狙われるとは予想していなかったのである。その読み違いについて、魔王は改めて謝罪した。ヒラクは事情を理解しつつも、子供たちが狙われたことを思い出すと怒りがこみ上げ、お茶を一気に飲んで気持ちを落ち着けようとした。
突然始まったゴールゼン王国の映像
そのとき、控えていたメイドの合図でスクリーンの映像が切り替わった。そこに映ったのは、黒い布で目隠しをした始祖であり、謎の総合司会ヴァルヴァロイと名乗っていた。場所はゴールゼン王国であり、始祖はこれからクーデターを起こすコードル王子を紹介した。さらに、王城ダモクレス城を映し出した直後、上空に現れたマルビット、ルインシァ、スアルロウ率いる天使族の攻撃によって城は爆発し、そのまま崩壊した。
ゴーロック山脈への攻撃
続いて映像はゴーロック山脈へ切り替わり、今度は黒い布で目隠しをしたヘルゼルナークが謎の美少女ビューティと名乗って現れた。彼女が紹介したのは、ゴールゼン王国にとって重要な鉱山地帯であった。すでに避難が済んでいることを確認したうえで、真っ黒な竜の姿をしたマークスベルガークがブレスを放ち、山脈一帯を高火力で焼き融かした。その威力は圧倒的であり、ゴールゼン王国の経済基盤そのものを破壊するものであった。
旧政権崩壊の宣言
映像の最後で、始祖はコーリン教がクーデター側を支援すること、ただし国名は変えてもらうことを語り、この特別番組をゴールゼン王国が滅んだ日と締めくくった。ヒラクは、始祖だけでなくハクレンやザブトンまで今回の件を把握していたことを知った。ルーと魔王もこの映像の内容までは知らされておらず、知っていたのは撮影を担当したイレだけであった。イレによれば、この映像は十五日前に撮影されたものであり、現在はクーデター側が優位に進み、王と大臣もすでに捕らえられているということであった。
始祖とハクレンからの伝言
イレは、始祖とハクレンからヒラクへの伝言も伝えた。始祖は、アルフレートにちょっかいをかけるような国は滅んでいいと思うと述べ、ハクレンはあれではまだ手緩い、自分ならもっと連発できると語っていた。ヒラクは、ハクレンやザブトンへ今回の件をどう伝えるかという難題が、すでに解決していたことに安堵した。一方で、あの映像を見て少し胸が晴れた自分も自覚していた。子供に手を出す者は許してはならないと感じていたのである。
事件の伝達経路と今後への思い
最後に、ヒラクは誰がハクレンやザブトンへこの件を伝えたのかを確認した。オージェスたちではなく、メットーラがウルザのことは最優先で伝えるようハクレンから命じられていたため、彼女が知らせていたのであった。ヒラクはその判断を責めず、今後はウルザたちに関することなら自分にも知らせるよう求めた。そして、今回の件でルーを許した以上、ハクレンやザブトンを怒るわけにはいかないと考え、よく我慢したと褒めるべきだと結論づけていた。
【三章】オークション騒動
1 ゴーレム
報復のあとに残った複雑な思い
ヒラクは、自分が考えなしに暴走すると思われていないかを気にしながら、今回の件について考えていた。周囲が自分を煩わせる前に終わらせようとしていたことには感謝しつつも、相談してほしかったという思いも抱いていた。報復の映像を見たときには胸のすく気持ちもあったが、あとから城に住んでいた者たちの安否や、鉱山や山脈への被害、さらには気候への影響まで気にかかり、単純に喜べない心境になっていた。それでも、子供たちが再び狙われないためには、報復すべきタイミングで報復しておく必要があること自体には納得していた。
クロイチへの労いと像の制作
ヒラクは、事件を知りながら黙っていたクロイチの態度がどこか遠慮がちだったことを思い出し、その理由がアルフレートたちの件にあったのだと理解した。クロイチやそのパートナーのアリスを労い、特にクロイチを念入りに撫でて甘やかした。翌日には、学園にいるアルフレートたちの家へ飾るため、創造神と農業神の像、そしてクロイチを模した像を作った。クロイチの像には、子供たちを守る祈りが込められていた。
ゴーレムの仕組みへの関心
気分転換として、ヒラクはゴーレムについて考え始めた。ゴーレムには瞬間的に作り出す型と、事前に組み立てる型の二種類があり、それぞれ長所と短所があった。瞬間生成型は柔軟性が高いが高度な技術と大量の魔力を必要とし、組み立て型は魔力消費を抑えられる一方で用途が限定され、複雑な動作を苦手としていた。世の中で主流なのは後者であり、防衛装置として利用されることが多いと説明された。
硬貨に反応する試作ゴーレムの実演
ヒラクの前に用意されたのは、人型ではなく箱に棒がついたような単純なゴーレムであった。山エルフの説明によれば、ゴーレムは動力、命令受信装置、可動部、頭脳の四要素で構成されていた。この試作機は小さな魔石しか使っていないため、単純な命令しかこなせなかった。実際に小銅貨や中銅貨には反応せず、大銅貨だけに反応して棒を動かし、銀貨を置くとさらに別の動きを見せた。ヒラクは、その単純な動作の中に可能性を見出した。
硬貨計算機の完成
三日後、ヒラクと山エルフたちはスライダー式の硬貨計算機を完成させた。そこへ硬貨を流し込むと、小銅貨、中銅貨、大銅貨、銀貨、金貨ごとに反応するゴーレムがそれぞれを数え、同時に仕分けまで行う仕組みであった。硬貨以外の異物はすぐに弾き返すため、誤ってゴミを金として扱うこともなかった。二百回ほどの実験でも計算違いは一度も起きず、完成度は高かった。
自動販売機ゴーレムの開発
さらに三日後、今度はその計算機構を応用した自動販売機ゴーレムが完成した。投入された硬貨を数え、押されたスイッチに応じて商品とお釣りを出す仕組みであり、展示スペースを加えるなど改良も進められた。ヒラクはこれを自信作としてティアたちに見せたが、技術の無駄遣いだと評された。人を一人雇えば済むと言われると反論しづらかったが、ゴーレムは休まず一日中働けるという利点があると主張した。しかし、夜は客も寝ているという指摘を受け、自動販売機ゴーレムは不用品扱いされた。
五ノ村での実地試験
それでもヒラクと山エルフたちは諦めず、硬貨が流通している“五ノ村”なら有用性を示せると考えた。自動販売機といえば飲み物や食べ物であるが、保温や保存の問題から難しく、野菜販売も既存の店に迷惑がかかる可能性があった。薬草や薬、武器や防具も対面調整が必要で自動販売機には向かず、最終的に宝石を販売してみることになった。
宝石販売の失敗と今後の課題
しかし、設置から三日間、誰一人として宝石を買わなかった。人々は前を通っても立ち止まらず、値段が高すぎたのかとも考えられたが、価格自体はゴロウン商会から仕入れた額そのままであった。三日目の夜には二十人ほどの集団が自動販売機ゴーレムを奪おうとしたが、実際には展示された宝石が狙いであり、警備隊によって捕らえられた。こうして、自動販売機ゴーレムそのものの価値はまだ認められなかった。
研究継続の決意
自動販売機ゴーレムの評価には、さらに研究が必要だと判断された。ヒラクと山エルフたちは挫けずに研究を続けることを誓ったが、ちょうど収穫の時期が近づいていたため、まずは本業を優先することにした。収穫を終え、次の畑づくりを済ませたあとで、改めて研究を再開するつもりであった。
1 夏の村と自動販売機ゴーレム
収穫に追われる夏の始まり
収穫期に入ると、村は総出の共同作業となり、ヒラクは自動販売機ゴーレムのことをいったん忘れて作業に集中した。収穫は十五日ほど続き、その後もヒラクはすぐに新しい畑作りへ移ったため、ようやく一息つけたのは収穫開始から三十日後であった。年に何度も収穫できる便利さを実感する一方で、季節感が曖昧になることも感じていた。
夏の村の風景と住人たちの様子
季節感を取り戻そうと村を見回ると、プールには多くの人が集まり、水音と子供たちの声が夏らしさを漂わせていた。溺れる者が出ないよう監視を改めて指示すると、リザードマンたちは力強く応じた。ため池ではポンドタートルたちが泳いでおり、中央には彼らが育てた珍しい浮き草が浮かんでいた。その浮き草は水質の良い池でしか育たず、貴重な薬の材料にもなるため、ポンドタートルたちは一部をヒラクに渡した。牧場では馬や牛、山羊、羊たちが元気に動き回り、空ではアイギスと鷲が軽快に飛んでいた。
クロたちと猫たちの夏の過ごし方
ヒラクのそばにはクロとユキが常に控えていた。これは少し前にクロイチを特別に甘やかしたことへの対抗意識からであり、二頭は普段よりも強くヒラクのそばを離れなくなっていた。一方のクロイチは、パートナーのアリスとともに涼しい場所でくつろいでいた。屋敷の中では猫たちが涼しい場所の争奪戦を繰り広げており、もっとも涼しいベッドの上は母猫ジュエルが独占し、姉猫と子猫たちは机の上の場所取りで騒いでいた。父猫ライギエルは自分で魔法を使って部屋の隅を冷やし、そこに落ち着いていた。
マークスベルガーク親子の来訪と宴会
リビングにはマークスベルガークとヘルゼルナークの親子が来ており、ザブトンに黒い布を返していた。二人が村を訪れたのは、ゴールゼン王国での件をハクレンに報告するためであった。ヒラクは協力への礼としてもてなし、その夜は宴会が開かれた。ヘルゼルナークはヒイチロウやグラルと仲良く遊んでいたが、その背後ではハクレンとマークスベルガークがヒイチロウとヘルゼルナークの将来を勝手に話題にしており、ヒラクは子供の自由を尊重するよう釘を刺していた。
ザブトンの子供たちによる自動販売機の再現
宴会の最中、ザブトンの子供たちが板を組み合わせて箱を作り、ヒラクをその前へ誘導した。ヒラクがスリットに硬貨を入れると、箱の一部が開き、そこからザブトンの子供がコップを持って現れた。これはヒラクが以前作っていた自動販売機ゴーレムの真似であり、受け取ったコップには思いのほか強い酒が入っていた。ヒラクはその遊び心と可愛らしさを面白く感じていた。
魔石の流入とクロの子供たちの騒動
山エルフたちがゴーレム作りに取り組めた背景には、ルーがダルフォン商会からの謝罪金として持ち込んだ大量の魔石があった。魔石は小さな粒状で丁寧に梱包されて樽に詰められていたが、樽を見つけたクロの子供たちが半分ほどをおやつ感覚で食べてしまった。普段から魔石を食べているため、梱包が邪魔だと不満まで漏らしていた。ルーはその光景に複雑な表情を見せていたが、ヒラクは後で森の兎や猪から得られる魔石を融通することで許してもらおうと考えていた。
自動販売機ゴーレムへの反省と再挑戦の決意
収穫前に設置した自動販売機ゴーレムは失敗に終わっていた。購入者第一号を待って三日も費やした結果、現れたのは商品ではなく自販機を狙う窃盗団であり、逮捕で終わったのである。この結果から、ヒラクは売る物を決める前に自販機を作ったこと、自分と山エルフだけで進めてしまったこと、そしてティアたちに否定されたことで意地になっていたことを反省した。それでも、自動販売機ゴーレム自体には可能性があると考え、使い方が悪かっただけだと結論づけた。そして翌日からまた製作に取り組もうと決め、ザブトンの子供たちに促されるまま再び硬貨を入れて、酒入りのコップを受け取っていた。
3 ゴーレムの活用
ゴーレムと魔道具の違いと認識
ゴーレムは魔石を動力として事前に仕込まれた命令を実行する存在であり、魔石を用いて特定の魔法を発揮する魔道具とは本来別物であった。しかし実際には両者を同一視する者も多く、運用上も大きな問題はなかった。
会議への予想外の参加者と関心の広がり
自動販売機ゴーレムに興味のある者を集めたところ、山エルフだけでなく文官娘衆や獣人族の少女、ハイエルフ、ドワーフたちまで多数が集まった。ルーやティア、アンも参加していたが、目的はゴーレムそのものではなくヒラクの様子を見守るためであった。それでも人数の多さは議論の幅を広げるものとなった。
自動販売機ゴーレムの現状と課題
自動販売機ゴーレムは竹筒入りの酒を販売する形に変更されていたが、村では貨幣が流通していないため、前に置いた箱から硬貨を取り投入する形式となっていた。その結果、用意した商品はすぐになくなり、販売というより持ち去られる形となったものの、存在の認知と応用の可能性は広がったと評価された。
スライダー式硬貨計算機の需要拡大
文官娘衆からは、ゴーレムの一部である硬貨計算機の性能向上と量産が強く求められた。硬貨処理の効率化は商人や貴族の執事長にとって大きな負担軽減となるため需要が高く、受け口の拡張や詰まり防止機構の追加で性能向上はすでに達成されていた。生産は三日で一台とされ、『大樹の村』や“五ノ村”、ビッグルーフ・シャシャートへの配備が優先された。
自動販売機ゴーレムの構想と実演
ヒラクは自動販売機ゴーレムの発展として、ジュース販売型、大型商品販売型、そしてお湯注ぎ機能を持つ食品提供型の三つのモデルを構想した。ザブトンの子供たちによる実演では、商品棚の再現やお茶の提供が行われ、会場は盛り上がったが、実用性については慎重な評価もあった。
防犯と機動性の課題への対応
窃盗対策として、ゴーレムに自衛機能や移動能力を持たせる案が提示された。足をつけて移動させることで補充や管理の効率化も期待されたが、現行の魔石では複雑な行動を組み込むのが難しいという制約があった。
大型魔石による性能向上の可能性
ルーは大型の魔石を提示し、これを用いれば複雑な動作や長距離移動も可能になると示した。しかし高度な命令の組み込みには高度な技術が必要であり、現時点で対応できるのはルーやティア、フローラに限られていた。量産段階ではシャシャートの街の専門家に頼る計画が立てられ、実現性が見えてきた。
農業分野への応用提案
獣人族の少女たちからは、ゴーレムを脱穀や製粉といった農作業に活用する提案がなされた。これは単純作業の自動化として非常に有用であり、自動販売機より優先すべき課題と判断された。ヒラクは次の収穫までの導入を目標とし、各村への配備を進める方針を示したが、量産体制には山エルフたちの負担という新たな課題が浮上していた。
4 表の理由と裏の理由
魔獣に囲まれた冒険者たちの窮地
暗い森の中で、五人の冒険者は二十匹を超えるゴーラーテルに取り囲まれていた。ゴーラーテルは一メートルほどの大きさで、タヌキに似た外見ながら凶暴性が強く、しかも必ず群れで行動する魔獣であった。冒険者たちは応戦して何匹かに傷を負わせたが、傷ついた個体はすぐに下がり、別の個体が前に出てくるため、戦況は悪化していった。軽装の戦士が動揺を見せると、ゴーラーテルはそこを弱点と見て集中攻撃を始め、冒険者たちはこのままでは全滅すると悟った。
絶望の中で望んだ奇跡
リーダーは一瞬、狙われている仲間を囮にして逃げる案を考えたが、戦力がさらに減れば生き残る道がなくなると判断し、全員で戦い続ける道を選んだ。彼らは自分たちより強い者が助けに来る都合のいい展開などないと理解していたが、それでも諦めずに戦った。すると遠くから巨体の足音が三つ響き始め、冒険者たちはそこに活路を見いだした。ゴーラーテルの半数はその足音に向かって走り、数が減ったことに希望が生まれたが、次の瞬間、三メートルを超える巨大な人型の影が冒険者たちの前に降り立った。
敵かと思われた巨大な影の正体
その影は冒険者たちを守るのではなく、あたかも行く手を塞ぐように立ちはだかっていた。しかも続けて二体が左右に現れたため、冒険者たちは自分たちはさらに強い存在に狙われたのだと絶望した。一方でゴーラーテルたちは、その三体を見るなり冒険者たちを囮にして一斉に逃げ出した。しかし巨大な影たちはゴーラーテルを追わず、冒険者たちへ向かって冷たいジュースや温かい飲み物、簡単な食事を勧め始めた。冒険者たちを窮地から救ったその正体は、完全自律型自動販売機ゴーレムであった。
完全自律型自動販売機ゴーレム構想の拡大
この完全自律型自動販売機ゴーレムは、会議の中で話が大きくなった結果として計画されたものであった。自動販売機ゴーレムの議論が進むうち、山エルフたちの仕事は増え続けたため、発明と試作は山エルフが行い、量産は“五ノ村”へ回す案が出された。すると山エルフたちは本気を出し、さらにルーとティアが自律魔石回路を考案した。自律型ゴーレム自体は古くから研究されていたが、必要な魔石が不足していたため不可能とされていた。それが、森の兎の魔石を大量に使うことで実現可能だと判明した。
大量の魔石と新たな課題
ただし、必要な魔石の数は多く、さらに制御のためには別種の魔石も必要とされた。クロとユキは魔石の使いすぎに抗議し、実際に製作すると山エルフたちが半年ほど拘束されるうえ、技術的な問題も解決しなければならなかった。そのため、ヒラクは夢はあるが今すぐの実現は難しいと判断し、完全自律型の実用化はいったん先送りにした。結果として、山エルフたちが最初に試作するのは、ヒラクが思い描く普通の自動販売機に近い性能を持つものとなった。
王都で見た不便さが生んだ表向きの目的
ヒラクが自動販売機を強く考えるようになったきっかけには、少し前に訪れた魔王国の王都での経験があった。王都には多種多様な種族が集まって暮らしており、そのための工夫も多く見られたが、一部の種族や子供たちは共通語を十分に扱えず、自分たちの種族の言葉しか話せなかった。そのため生活圏が狭まり、買い物でも苦労し、騙されることも多いと知った。ヒラクは、そうした者たちでも安心して利用できる仕組みとして自動販売機を考えていた。これが表向きに自動販売機ゴーレムへこだわる理由であった。
子供たちへの遠慮をなくしたいという本音
しかし、ヒラクにはもう一つの理由があった。ウルザ、アルフレート、ティゼルが王都の学園へ行ってから、村の子供たちはヒラクへ遠慮しがちになっていた。これまでは三人が子供たちの代表として要望を伝えていたが、その三人がいなくなったことで、代わりに頼みごとを言える者がいなくなっていた。ナートは比較的遠慮が少なかったが、それも両親から注意されていた。ヒラクは、子供たちが欲しい物を欲しいと言えず、とくに飲み物や食べ物すら自由に求められない状況をよくないと感じていた。自動販売機ゴーレムにこだわった裏の理由は、そうした遠慮を解消したいという思いであった。
自分自身への反省と次への意欲
もっとも、ヒラクは本来なら自動販売機に頼るのではなく、自分から子供たちに歩み寄るべきだとも理解していた。その意味では、自動販売機ゴーレムへのこだわりは逃げでもあると自覚し、少し反省していた。それでも前に進もうと考え、自分から頑張ることを決めた。
缶詰案の却下
なお、自動販売機ゴーレムで販売する商品として、“四ノ村”で生産できる缶詰の案も出された。缶詰なら飲み物も食べ物も扱え、多少乱暴に扱っても問題ないため便利であった。しかし、缶切りが必要であることと、開封後の缶が危険であることの二点が問題となった。缶切りはまだ広く流通しておらず、扱いにも技術が必要であったため、缶詰の案は却下された。
閑話 ウィルコックス
夏の夕暮れに始まる静かな晩酌
ウィルコックスは夕食後、村の外に出て、設置された丸太の椅子とテーブルのある場所に腰を下ろした。昼間より涼しくなった風と、これから訪れる星空を待つ時間を楽しみながら、米から造った酒と、具を入れず塩だけで味付けした三角のおにぎりを用意した。鬼人族メイドにあえて具なしで作らせたそのおにぎりを口にし、酒を飲んだウィルコックスは、この瞬間のために生まれたのかもしれないと感じるほど満ち足りていた。
ドノバンとの酒肴談義
そこへドノバンが現れ、向かいに座って大根の漬物とキュウリの浅漬けを差し出した。米の酒にはそちらのほうが合うと言うドノバンに対し、ウィルコックスは塩のおにぎりこそ最良だと考えつつも、漬物の出来の良さは認めた。ぬか床を作り直したのかと察するほど味は向上していた。ウィルコックスはドノバンのコップに酒を注ぎ、おにぎりは半分に割らず、そのまま齧って米と塩と酒の調和を味わうべきだと教えていた。
村長の鮭の皮が加わる席
次にやってきた村長は、七輪で何かを炙り始めた。その匂いから、ドノバンもウィルコックスもすぐに鮭の皮だと気づき、ずるいと感じた。季節的には去年の鮭であったが、村長は冷蔵や冷凍の魔道具、さらには真空パックまで活用し、美味しさを落とさず保管していた。もっと量があるのかと期待したものの、大半は竜たち、とくにドースが食べてしまったと知り、文句を言いにくくなった。竜たちは自由に飲み食いする一方で代金はきちんと支払い、酒造りにも協力しているため、残っている分を楽しむしかなかった。
酒スライムの持参品と焼きおにぎり
三人で酒を楽しんでいると、酒スライムが酒の匂いにつられてやってきた。いつもなら酒を分けてもらえる立場であったが、その場の流れとして何か持参しなければ加われない雰囲気となっていた。ところが酒スライムは醤油を持ってきており、村長はそれを受け取って、残っていたおにぎりと七輪を見て焼きおにぎりを作る流れにした。こうして酒スライムも、その夜の席の一員となった。
ヨウコが持ち込んだ酒茶漬け
さらにやってきたヨウコは、“五ノ村”での務めを褒められながら、お櫃を抱えて席に加わった。中には炊いた米が入っており、最初は塩おにぎりと被るようにも見えたが、ヨウコは小さな器に米をよそい、そこへ温めた米の酒を注いだ。熱燗をそのまま飲むのではなく、酒茶漬けにするという発想にウィルコックスは驚いた。味の想像がつかなかったが、酒スライム、ドノバン、村長に続いて自分も手を伸ばした。飲んだ結果、好みの分かれる味だと感じつつも、冷たい米に冷たい酒をかける形も試してみたくなっていた。
星空の下で続く酒宴
こうしてウィルコックスたちは、星空の下で酒と肴を楽しみ続けた。村長だけは途中で妻たちに迎えに来られ、その場を離れることになったが、静かな夜に集った者たちは、それぞれの持ち寄った味を楽しみながら、ゆったりとした時間を共有していた。
5 変わった馬
牧場でのスイカの差し入れ
村長は牧場の馬たちにスイカを差し入れた。冷やしたものではなく常温のまま与えるのが好まれるため、畑から運んだスイカをそのまま置いた。馬たちは皮ごと食べるため切る必要はなく、遠くにいた馬も集まってきた。ザブトンの子供たちが運搬を手伝い、クロとユキも不器用ながら協力したことで、十分な量が用意された。
牧場の馬の構成と管理
牧場には十五頭の馬がおり、そのうち二頭はユニコーンであった。ユニコーンは毎年生まれているが、血の偏りを防ぐため“五ノ村”へ移動させているため数は増えているように見えなかった。最初に来た馬とそのパートナーの牝馬は牧場の主として留まり続けており、管理は獣人族の少女が担当していた。
異質な存在の発見
馬の数を確認していた村長は、報告と異なり十六頭いることに気づいた。再確認の結果、背に翼を持つペガサスが紛れ込んでいると判明した。そのペガサスは他の馬と同様にスイカを食べており、周囲の馬たちがルールを教えたため問題はないと判断された。怪我もなく、村長は受け入れることにした。
ペガサスの特徴と周囲の反応
ペガサスは翼を持つが、飛行は翼そのものではなく魔力によるもので、高さはおよそ二十メートル、速度は地上の馬と同程度であった。走行は可能だが翼が邪魔で速度は落ちる。魔王国では珍しい存在であるため、文官娘衆やエルフ、鬼人族メイドたちが見物に訪れた。乗用の可否については、人間の国では騎兵として用いられるが、飛行能力や持久力の制約から主に式典用途であるとルーが説明した。
ペガサスの来歴判明
調査の結果、このペガサスは“五ノ村”から送られてきた馬に紛れて転移門を通過していたことが判明した。さらにヨウコの調査により、“シャシャートの街”で輸入された個体が脱走したものであると特定された。輸入元のゴロウン商会のマイケルが他のペガサスを連れて訪れたため、村長は全六頭をまとめて購入した。
子供たちとペガサスの利用
子供たちはペガサスを気に入り、乗って飛ぶことを楽しみにしたが、安全のため獣人族の少女が同乗する形が取られた。ペガサスは長時間飛行できないため順番待ちが発生し、さらに数を望む声も上がった。村長自身も乗りたいと考えていたが、既存の馬やケンタウロス族、天使族が拗ねるため実現していなかった。
6 夏の散歩
工作室での一時と遊びの計画
山エルフたちの多くが“五ノ村”に出ていたため、工作室は静かで寂しい空気に包まれていた。作業中にクロとユキが甘えてきたため撫でてやり、気分転換として遊びに出ることにした。しかし暑さを理由に外遊びを嫌がられ、屋敷のホールで遊ぶ案に切り替えた。
ホールの荷物と状況確認
屋敷のホールには大量の部品が積み上げられていた。それは“五ノ村”での工房立ち上げに伴い、山エルフたちが職人候補に作らせた部品であり、検品を通過した高品質なものだった。ただし同一部品が過剰に集まっており、数の調整が課題であると判断された。
ため池周辺の散歩
ホールで遊ぶことが難しいため、ユキの提案でため池の外周を散歩することになった。麦わら帽子を被り外に出ると、ポンドタートルたちが日向ぼっこをしており、一部は魔法で氷を浮かべて涼を作っていた。リザードマンの産卵場所を避けながら進み、自然の中での穏やかな時間を過ごした。
警備と村の動きの確認
西側では巡回していたクロの子供たちと合流し労をねぎらった。さらにケンタウロス族による定時連絡の様子を見送り、護衛役のクロの子供たちにも感謝を伝えた。水路ではスライムが暑さを避けるため密集しており、交代利用を促すなど環境の管理も確認された。
居住エリアでの交流
居住エリアでは活動する者は少なく、多くが仕事や休息に入っていた。ニュニュダフネやザブトンの子供たちとのやり取りの中で、麦わら帽子の新たな要望が出され、後で対応することとなった。昼間は涼しい場所で休み、活動は夕方以降に行う生活様式が定着していた。
子供たちとヘルゼの発見
帰路でハクレンや子供たち、ヘルゼと合流した。ヘルゼは調査の結果、クロとユキが特別な存在であると判明し、クロは王を統べる者、ユキはその伴侶に相当する存在であると説明した。ただし村長はそれらの肩書きに関係なく、すべての個体を平等に扱う方針を改めて確認した。
屋敷帰還と今後の作業
屋敷に戻ると、山エルフたちが部品の整理を進めていた。外部委託の難しさと技術流出の危険性から、スライダー式硬貨計算機の量産は自分たちで行う方針が決まっていた。村長も作業に加わることを決める一方、帽子の制作など約束した対応も忘れず進めることにした。
閑話 硬貨計算機
初期型の誕生と配備争い
スライダー式硬貨計算機の初期型は、死の森で伐採された材木と大量の魔石を用いて作られた試作品であった。シンプルな外見ながらあらゆる硬貨に対応する性能を持ち、配備先を巡って争いが起きた結果、文官娘衆がこれを獲得した。
先行量産型の開発と配備拡大
強い需要に応えるため、山エルフたちは他の作業を後回しにして先行量産型を製作した。外装はさらに簡素化されたが、製作ごとに改良が重ねられ性能は初期型と同等以上となった。合計八台が生産され、“五ノ村”とビッグルーフ・シャシャートに三台ずつ、“大樹の村”に二台が配備された。
量産型Aの誕生と普及
魔王国の王族や貴族の要望により量産型Aの生産が開始された。量産効率とコスト削減のため一部機能が省略され、魔王国で流通する硬貨に特化した仕様となった。二十四台が生産され、その大半が魔王国に贈られ、残りはゴロウン商会に渡された。
贈答型の高級化と人気
量産型Aを基に外装を豪華にした贈答型が開発された。山エルフの新設工房が製作を担い、専用箱付きで販売されたこのモデルは高価でありながら常に品薄となり、入手には長期間の待機が必要となった。既存の量産型Aを改装した派生も存在した。
量産型Bの低価格化と課題
庶民向けとして耐久性や外装を削減した量産型Bが開発された。外部発注も取り入れ低価格化を目指したが、それでも一定の価格に留まり、普及には課題が残った。また、非正規の改造によって性能不良が発生する事例も確認され、正式な工房での改修の重要性が示された。
特殊型の用途と限定的利用
褒賞メダル専用の特殊型も存在し、屋敷に設置されていたが使用機会は少なく、主に配布時の補助として用いられる程度であった。
他国での評価と技術的障壁
他国でも硬貨計算機は注目されたが、魔石の大量使用や対応通貨の違いにより量産や導入は困難と判断された。技術的優位を認めることへの抵抗から導入を拒む動きもあったが、最終的にはカスタマイズされた製品が届けられ、実用性が評価された。
偽金発見と社会的影響
硬貨計算機の導入により、従来見抜けなかった精巧な偽金が発見された。王宮の硬貨検査において一定数の偽造貨幣が確認され、これを契機に流通経路の調査と対策が迅速に進められた。その結果、偽金による経済混乱は未然に防がれた。
7 財布袋と待ち時間
転移門での到着と準備
村長は“大樹の村”のダンジョン奥にある転移門を利用し、“五ノ村”のヨウコ屋敷へ到着した。管理役のフタに迎えられ、オークション参加の記録を行ったうえで、同行者であるガルフとダガとともに準備を整えた。護衛の必要性には疑問を抱きつつも、慣例として受け入れていた。
財布袋と現金払いへの変更
転移門近くに用意された財布袋に各種硬貨を詰め、買い物の準備を行った。これまで“五ノ村”では信用取引によるツケ払いが主流であったが、請求が来ない問題が発覚したため、“大樹の村”側の住人に対して現金払いへと変更された。その結果、市場に現金が流れる利点が生まれた一方、釣り銭を受け取らない配慮が必要となり、村長はその習慣に慣れない様子であった。
子供たちへの金銭教育
子供たちには自由に金を持たせず、上限を設けることで金銭感覚を養う方針が取られていた。村全体として現金の扱いに適応しつつある状況であった。
待ち時間の過ごし方の検討
ヨウコに挨拶した後、オークション開始までの時間の使い方を検討した。演劇や戦闘イベント、薬草院の訪問などが候補に挙がったが、いずれも事情により見送られた。特に薬草院は多くの患者で混雑しており、混乱を避けるため近づかない判断がなされた。
店舗での休息と会話
最終的に《クロトユキ》で時間を過ごすこととなり、飲み物を注文して休息した。ヨウコとの会話の中で、オークション開催が当初予定の場所から“五ノ村”へ変更された経緯が語られた。それは村長自身の発言がきっかけであり、責任を感じつつも楽しむ姿勢を見せていた。
現金払いへの適応の試み
店を出る際、村長は銀貨を置いて釣り銭を受け取らない行動を実践した。しかし自分の店であることを指摘され、あくまで習慣化のための練習であると説明した。現金払いへの適応は、まだ試行段階であった。
8 オークションの展示会
会場設営とオークション形式
“五ノ村”で開催されるオークションは、麓の野球グラウンドを整地して設営された会場で行われた。多数のテントが並び、その中で出品物が展示されていた。形式は競りと入札の二種類が併用されており、箱が置かれた品は入札、番号札のある品は競りに対応していた。開催は一日のみであり、翌日の野球試合の都合から日程の変更は不可能であった。
参加者と会場の様子
出品者や警備を含めた規模に対して、実際の参加者は三十人程度と少数であった。会場変更の影響も考えられたが、村長は成功を信じて見学を続けた。ヨウコ、ガルフ、ダガとともに展示品を巡り、全体の雰囲気を確認した。
貴族令嬢たちとの遭遇
見学中、ユーリと同行する貴族令嬢たちと出会った。彼女たちは親に同行して来訪しており、紹介が行われた。ガルフの名声に強い反応を示したが、節度を欠く振る舞いも見られ、村長は内心で注意を促した。彼女たちは“五ノ村”の宿泊施設や食事を高く評価しており、特に《麺屋ブリトア》の人気の高さが語られた。
貴族の行動と村の対応
貴族でありながら配達サービスを利用せず、一般客と同様に並んで食事を取ったことが明らかとなった。この姿勢は周囲への配慮によるものであり、村長は店舗側の負担を気遣い後に労う意向を持った。親である貴族たちとは会場で会えなかったが、事前にヨウコが挨拶を済ませているため問題はないと判断された。
魔王一行との合流
その後、魔王とビーゼル、そしてティゼルと合流した。ティゼルはアルフレートの指示で紐を付けられており、迷子防止の措置であった。魔王は翌日の試合の下見を兼ねて来訪していたが、オークションにも参加予定であり、狙いの品があると語った。
注目出品への示唆と期待
魔王は村長が欲しがるであろう出品物があると示唆し、その品は後半にあたる七十番であると伝えた。高額が予想される品であることから、村長は必要に応じて対応する覚悟を持った。オークション開始まで、魔王一行とともに会場を巡りつつ、村長は特にティゼルの様子に目を向けていた。
9 オークション
会場と参加条件
オークションは広いテント内で開催され、参加には招待状が必要であった。受付で招待状を提示すると、出入り用の札が渡された。テント内にはグループ単位で座れる席が配置され、村長は中央の席に案内され、魔王一行と同席することとなった。
競りの準備と役割分担
テーブルには競り用の番号札が置かれ、札を掲げて入札する仕組みであった。札は本人ではなく従者が持つのが通例であり、村長の札はティゼルが担当することになった。ヨウコは助言役として参加し、村長は相場や価値判断を任せることにした。
オークション開始と雰囲気
開始にあたり舞台が設営され、主催者のマイケルが挨拶を行った。形式的な挨拶の後、勢いのある掛け声で場を盛り上げ、競売が始まった。出品は一番から順に進み、欠番やシークレット出品の説明もなされた。
序盤の競りと慣習
序盤の出品物である星輝石は、小分けにされて出品された。資金力のある者同士で事前調整が行われており、不必要な競り合いを避ける慣習が存在していた。これにより競りは円滑に進行し、全体としてテンポよく進んでいった。
シークレット出品と魔王の影響
シークレット出品では競りが活発になったが、魔王が札を上げると競争は即座に終了した。魔王は影響力を考慮し、あらかじめ落札数を決めて参加を控えた。六十五番で入札を終え、以降は参加しない意思を示した。
七十番の出品と内容
七十番はシークレット出品であり、七百年前の農業研究者ロガット=マースリーンによる農業日記であった。農作物の研究資料として価値がある一方、裏表紙には解読不能とされた文字が記されていた。
落札の決断と結果
村長は裏表紙の文字を読み取り、その内容に興味を持ったため落札を決意した。競争相手は二人であったが、ティゼルが銀貨百枚と提示し、そのまま落札に至った。結果として金貨一枚での取得となり、比較的低額での入手となった。
10 オークション後半戦
子育てと金銭感覚の議論
オークションが進む中、村長たちは子供の金銭感覚について話し合っていた。魔王は労働によって対価を得る経験が重要だと説き、村長は褒賞メダルによる報酬がそれに該当するかを考えていた。
褒賞メダルの出品と高騰
九十番の出品として死白石製のメダルが登場したが、それは村で配布された褒賞メダルであった。外部では価値が低いと考えられていたが、競りは予想外に白熱し、価格は急上昇した。ティゼルや他の参加者も加わり、競争は激化していった。
ルーの介入と落札
競りが続く中、ルーが参戦し、一気に銀貨千枚を提示して落札を決めた。圧倒的な金額により他の参加者は撤退し、競りは終了した。
落札理由と価値操作
ルーは褒賞メダルの価値を外部で確立するために高額で落札したと説明した。オークション価格が基準となるため、意図的に価値を引き上げたのである。しかし、村長は量産可能な品であるため価値が維持できない可能性を懸念した。
出品物の不発と評価
後半の出品は村長側の品であり、蛇酒やグラップラーベアの骨などが出されたが、いずれも落札者は現れなかった。高額設定や用途の限定性が影響し、競りは成立しなかった。
オークション終了と後処理
オークション終了後、落札されなかった品に対して個別交渉が始まった。支払い期限や条件を調整し、提示額以上での取引が行われるのが通例であった。村長の出品物も、この交渉によって売れる可能性が残された。
11 オークションからの帰り道
落札後の手続きと翌日の予定
オークション終了後、村長は落札品の手続きのために時間を取られた。手続きは羊皮紙への署名のみであったが、受け渡しは代金支払い後となるため即時ではなかった。また、マイケルから相談を受けたことで、翌日も“五ノ村”へ訪れる必要が生じた。
夜の村と光源への疑問
会場を出た時点では深夜であったが、松明によって周囲は照らされていた。しかし、その光は不安定で煙も多く、消費量の多さも問題視された。村長は王都で見た魔法の街灯を思い出し、代替手段の必要性を考えた。
食事の誘いと同行者
その後、魔王から食事に誘われ、ヨウコ屋敷での会食に参加することとなった。料理は外部から手配されるため問題はなく、ルーやティア、ヨウコも同行を希望した。一方でリアとアンは先に村へ戻ることとなった。
盗賊団の襲撃と住民の介入
帰路の途中、武装した一団に取り囲まれる事態が発生したが、住民たちが即座に介入し、敵対者を制圧した。先頭に立ったガハ=ローガは、村の住人として当然の行動だと述べ、報酬を辞退したが、ヨウコは食券を報酬として与えた。
盗賊団の正体と問題点
拘束された者たちは遠方で活動する盗賊団であり、オークション帰りを狙った犯行と推測された。警備隊が対応し、取り調べが行われることとなったが、外部からの侵入を防ぎきれなかった点が課題として浮き彫りとなった。
帰路の警戒と余韻
その後、村長たちは徒歩でヨウコ屋敷へ向かい、警戒を強めながら移動した。住民による厳重な護衛も加わり安全は確保されたが、魔王が過剰に名乗りながら歩く様子に対し、村長は苦笑しつつ制止した。
閑話 盗賊団の足跡
正体不明の脅迫と任務の発端
アストラは盗賊団の団長として活動していたが、ある日正体不明の存在から脅迫を受けた。原因は部下が冒険者から盗んだ品であり、その品を回収するよう命じられたのである。従わなければ殺される状況であり、アストラは任務を受け入れざるを得なかった。
戦力の壊滅と追跡の決断
すでに多くの部下が壊滅しており、動ける人員は限られていた。残された戦力で盗品を売った商人を追跡することとなり、アストラは部下を率いてオークション開催地へ向かうことを決断した。
長期移動と情報の錯綜
商人の移動経路は不明瞭であり、アストラたちは日雇い仕事で資金を確保しながら追跡を続けた。二か月に及ぶ移動の末に目的地へ到着するも、オークション会場の変更により再び移動を余儀なくされた。
五ノ村への到着と準備
新たな開催地である“五ノ村”へ到着したが、警備は厳しく、隠し武器は没収された。情報収集のために周辺で行動しつつ、目的の商人との接触に成功した。
回収失敗と最終手段の選択
しかし、盗品はすでにオークションに出品されており、回収は困難となっていた。商人に落札を試みさせたが資金不足で失敗し、最終的に襲撃による奪取を選択した。
襲撃の失敗と捕縛
オークション後の一団を狙って襲撃を実行したが、予想に反して周囲の住民たちが介入し、盗賊団は逆に制圧された。結果としてアストラたちは捕らえられ、任務は完全な失敗に終わった。
12 オークションのあとの食事会
食事会の開始と参加者の構成
魔王の存在を示す振る舞いもあり、一行は問題なくヨウコ屋敷へ到着した。すでにユーリとフラウ、さらに貴族のお嬢さまたちも揃っており、魔王とビーゼルに対して礼節を尽くした挨拶が行われたことで場は安定した。リアとアンは所用により先に帰還し、食事は《酒肉ニーズ》の配達によるバイキング形式で開始された。
席順問題と形式の工夫
正式な席順は身分差によって複雑になるため、それを避ける目的でバイキング形式が採用された。俺は魔王、ヨウコ、ユーリと同席し、ルーやティアたちは別テーブルとなった。警備のためガルフとダガは食事に参加せず、周囲の警戒にあたっていた。
食事と会話の進行
料理は豊富に用意され、《五ノ村酒》も振る舞われた。会話は雑談から政治的な話題まで幅広く展開されたが、難しい内容はヨウコに任せ、俺は聞き役に回った。肉の切り分けに関する風習など、貴族社会の慣習についての話題も共有された。
来客対応と場の変化
食事中には複数の来客が訪れた。マイケルは襲撃の件について謝罪と確認に訪れ、そのまま食事に加わった。続いて白銀騎士らが現れ、魔王に対して礼節ある挨拶を行った後、給仕に加わった。さらに警備隊長が訪れ、盗賊団および関係者の処遇についてヨウコに報告と相談を行った。
貴族の来訪と混乱
貴族のお嬢さまたちの親である子爵と男爵たちが到着し、当初は魔王の存在に気づかずヨウコとユーリに挨拶した。その後、魔王の存在を知って驚きつつも正式な挨拶を行い、場は一時混乱したが大事には至らなかった。
食事の締めと新たな来客
食事はデザートへと進み、フルーツやアイスが提供された。そこへ最後の来客として、拘束された悪魔族の女性とそれを連行するグッチが現れ、新たな問題の気配を残したまま場は締めくくられた。
閑話 プラーダ
悪魔族としての立場と過去
プラーダは長命の悪魔族であり、かつては暴れていたが、現在は竜族に従う組織の一員として大人しく働いていた。特に神代竜族には敵わないと理解しており、無謀な挑戦は避けていた。
褒賞メダルとの出会いと執着
友人であるブルガとスティファノが所持していた褒賞メダルに強く惹かれたが、譲ってもらえず失意を味わった。その後、ラミアの首飾りに嵌め込まれた褒賞メダルを見つけ、自身のコレクションの大半と交換して入手することに成功した。
入手後の行動と規制
褒賞メダルを手に入れたことで満足し、仕事を怠った結果、上司に叱責された。またボスによる調査の際、外部流出は禁止と通達されたが、プラーダ自身は手放すつもりはなく、大切に保管していた。
宿での業務と娯楽
商人と冒険者が訪れる宿の運営を任され、接客や娯楽の提供を行っていた。特にゲームを好み、金銭を賭けた対戦にも積極的に参加していた。
ギャンブルによる失態
賭け事に熱中する性格が災いし、対戦の末に財布ごと相手に渡してしまう失態を犯した。その中には大切な褒賞メダルも含まれていた。
回収の試みとさらなる絶望
プラーダは財布を取り戻すために相手を追跡し、シャシャートの街で発見した。しかし対象は酔い潰れており、さらに財布自体が盗まれていたことが判明し、状況はより悪化した。
13 プラーダの得意なこと
事件の経緯とプラーダの関与
プラーダは褒賞メダルを失った後も諦めず、二年をかけて盗賊団を突き止めたが、すでに商人へ売却されていたため、盗賊団に奪還を命じた。その結果、オークション会場外での襲撃事件が発生したと判明した。
処罰の検討と判断
グッチは事件の責任を重く見て処罰を求めたが、俺は事故的な側面もあると判断し、処刑ではなく労働による償いを科すことにした。プラーダ本人もこれを受け入れた。
適性の確認と得意分野の判明
労働内容を決めるため適性を確認した結果、プラーダは書類作成や情報整理に適性があることが判明した。これにより、裏方業務での活用が検討された。
雇用先の競争と条件の変化
魔王やヨウコ、商会などが雇用を申し出たが、契約上の制約により“五ノ村”での勤務に限定された。最終的に待遇は競争の末に下がり、月給銀貨一枚と食事・住居支給という条件でヨウコ配下として働くことが決定した。
労働期間の設定と今後の展望
償いの基準として褒賞メダル一枚分の価値である銀貨千枚が設定され、現状の給与では長期間を要する見込みとなった。状況に応じて報酬の見直しも検討されることとなった。
プラーダの特性と注意点
プラーダは美術品収集を好み、特にギャンブル好きであるが勝負には弱いという特徴を持つ。一方で奪われた美術品は執念深く取り戻そうとするため危険性があり、代わりに知識を引き出す対象として有用な存在であると評価されていた。
[終章]発展する“五ノ村”
1 野球観戦
襲撃後の警備強化と村の反応
食事会後、貴族たちは挨拶を終えて帰路についたが、その裏ではハイエルフたちが厳重な警備体制を敷いていた。これは襲撃事件を受けた対応であり、リアとアンの行動により迅速に整えられたものであった。帰還後も村人たちは強い警戒心を示し、ドライムやグッチの行動によってプラーダの一件が発覚した経緯が共有された。
ヨウコの責任と周囲の動き
“五ノ村”の責任者であるヨウコは責任を感じており、ザブトンとの話し合いにも臨むこととなった。周囲の対応からも、今回の件が村全体に影響を与えた出来事であったことが示されていた。
野球観戦と五ノ村の発展
翌日、俺は再び“五ノ村”を訪れ、野球試合を観戦した。猛虎魔王軍と五ノ村鉄牛軍の試合は白熱した展開となり、戦術や連携の完成度から“五ノ村”の発展ぶりが感じられた。最終的には猛虎魔王軍が勝利したが、両軍の実力は拮抗していた。
オークション後処理と商談
観戦中、マイケルとの商談が行われ、ルーの出品物には高値での買い手がついていることが判明した。支払い方法や期限についての調整はマイケルに一任され、信頼関係に基づいた取引が進められた。
プラーダの働きと能力の発揮
その後訪れたゴロウン商会の施設では、プラーダが書類業務に従事しており、不備の指摘などで能力を発揮していた。罰としての労働でありながらも、その適性が有効に活かされている様子が確認された。
農業日記の真実と新たな発見
落札した農業日記を確認すると、裏表紙の一文に関する秘密が判明した。文章は古代悪魔語で記されており、特定の法則で読み解くことで種の隠し場所が示される仕組みであった。さらにその記述自体がプラーダによるものであると明かされ、意外な形で物語が繋がった。
2 種の隠し場所
プラーダの知識と日記の秘密
ドライムの巣では記憶力の高さから書類が不要であり、プラーダもその一員として高い知能を持っていた。プラーダは過去に〈農業日記〉を読み、その中に隠された仕掛けに気づいていたが、裏表紙の一文は元から存在していたものを薄れたため書き直したに過ぎなかった。
古代悪魔語への書き換えと違和感
元の一文は共通語で書かれていたが、プラーダが古代悪魔語で書き直したことで現在の形となっていた。この書き換えにより、日記の秘密はより解読しにくいものとなっていた。
種の所在と危険性の判明
プラーダの記憶を頼りに種の隠し場所を特定した結果、それは魔王国とフルハルトの交戦地域にあることが判明した。危険性の高さから、俺は自ら回収に向かうことを断念し、この情報を魔王に委ねる判断をした。
プラーダへの評価と今後の扱い
プラーダは知識面で有用であり、働き次第で待遇改善の余地があると判断された。本人は美術館運営への関与を希望したが、まずは現状の業務で信頼を積み重ねることが求められた。
五ノ村の警備状況と影響
“五ノ村”では襲撃事件の影響で警備が強化されており、村全体に緊張感が残っていた。一方で日常の活動も続いており、住人たちは通常通りの生活を維持していた。
ピリカの修行と成長の兆し
“大樹の村”ではピリカが修行を続けていたが、森の兎に苦戦し負傷を繰り返していた。しかし姉猫たちの指導を受けることで、戦い方を学び始めており、成長の兆しが見え始めていた。
3 木道計画
収穫作業とピリカの修行
村の住人が収穫を進める中、俺は畑作りを行い、ピリカも驚きながら手伝っていた。修行について尋ねられた俺は、戦闘の基本として観察の重要性を伝え、狩りと同様に相手をよく見ることが大切であると助言した。
地下商店通りの発展と交通問題
“五ノ村”では地下商店通りの建設が順調に進んでいたが、建設資材の搬入によって渋滞が発生していた。将来的にも商品搬入による同様の問題が懸念され、道の拡張が困難な土地事情から、新たな搬入手段の必要性が浮上した。
地下鉄構想と課題の発覚
問題解決のため、地下商店通りを拠点とした地下鉄構想が発案された。しかし鉄の確保や加工、脱線時の危険性、動力問題など多くの課題が浮上し、一度は計画は廃案とされた。
木道計画の成立
山エルフたちの提案により、ゴーレムを動力としたモノレール形式や木製レールの活用といった改善案が提示された。残る課題は作業負担であったが、最終的に計画は再始動し、鉄道ではなく木道計画として進められることになった。
他村の状況確認と優先順位の調整
“五ノ村”への対応に偏らぬよう、他の村の状況も確認されたが、重大な問題は報告されなかった。ただし“四ノ村”からはロクの救助信号に関する報告があり、書類仕事による苦戦が原因と判明した。
武闘会準備とトロフィー制作
木道計画の具体的作業は一時保留とされ、武闘会の準備が優先された。俺は優勝者用のトロフィーと冠を制作し、細部まで丁寧に仕上げた。木製であることに不安を抱いたが、手作りである点に価値があると評価され、自信を得た。
帽子制作と住人との交流
作業の合間にザブトンの子供たちへ帽子を制作し配布した。当初は投げて楽しむ用途として作られたが、安全性を考慮して麦わら帽子も追加で用意した。さらに子供たちから贈られた帽子を受け取り、交流を深めながら作業を終えた。
2 変なトウモロコシと夏祭りの思い出
異常なトウモロコシの発見
夏の収穫において、食用トウモロコシの一部に粒が小さく硬い異常が発生した。『万能農具』で作られた畑では初めての事例であり、炎や魔法、病気など様々な可能性が検討されたが、いずれも決定的な原因とは考えにくかった。観察の結果、通常とは異なる品種である可能性に気づき、過去の記憶からポップコーン用のトウモロコシであると判断された。
ポップコーンの再発見と調理
乾燥させた粒を鍋で加熱することで、予想通りポップコーンが完成した。かつて失敗した経験から専用品種の必要性を思い出した結果であり、『万能農具』の効果によって再現された形であった。音に驚いて集まった住人たちに振る舞われ、新たな菓子として紹介された。
住人たちの反応と評価
ポップコーンは大人から新食感として好評を得て、子供たちからも高い評価を受けた。一方でクロたちは満腹感の薄さや食べにくさを理由に好まなかったが、ザブトンの子供たちは喜んで食べていた。妖精女王も問題なしと判断し、追加生産が求められた。
保存性の問題と栽培方針
ポップコーンは時間が経つと品質が落ちるため、作り置きには向かないという問題が判明した。そのためイベント時の提供が適していると判断され、今後に向けて専用トウモロコシ畑の新設が決定された。
夏祭りの回想と競技の様子
ポップコーンを食べながら、少し前に行われた夏祭りを思い出した。今年の催しは徒競走であり、種族別や混合の競技が行われた。特にケンタウロス族と馬の競争は接戦となり、最後に馬が逆転勝利を収めた。また巨人族やミノタウロス族の競走は迫力があり、クロの子供たちの競走は混乱を伴いつつも盛り上がった。
馬たちの鍛錬と新たな競技
牧場では馬たちが走り込みを行っており、これは“五ノ村”で開催予定の本格的な競馬への参加準備であった。ペガサスも参加していたが、翼の影響で走りにくそうであった。外部からも馬が集まり、最速を競う大会として準備が進められていた。
牧場での騒動と平穏な日常
走り込み中の馬たちのもとへ山羊が乱入し妨害を試みたが、牛の突進によって追い払われた。その様子を豚たちが眺めるなど、牧場には平穏な光景が広がっていた。そんな中、ユニコーンがポップコーンを奪って逃走し、その俊足に改めて感心する結果となった。
5 出産と妊娠
クーデルとコローネの出産
クーデルとコローネがそれぞれ無事に出産し、両者ともに娘が誕生した。クーデルの娘はララーデル、コローネの娘はトルマーネと名付けられ、命名はラズマリアが担当した。出産祝いは本人たちの希望により控えめに行われたが、無事の出産を皆で喜び合う結果となった。
ドースの暴走とハクレンの妊娠発覚
ハクレンの妊娠が発覚し、さらに生まれてくる子が男児であると判明したことで、ドースは興奮して暴走気味となった。空を激しく飛び回る様子に対し、ライメイレンが制止する場面も見られた。ハクレン自身は以前から妊娠を把握していたが、公表は遅れていた。
周囲の反応と竜族の事情
妊娠発表後、竜族特有の事情により、生まれる前から結婚相手の話が持ち上がり、ヘルゼがハクレンのそばに居続ける理由もそこにあった。これに対して、早すぎる決定ではないかという疑問も生じた。マークは複雑な心境を抱きつつも、表立った反対はせず見守る姿勢を取った。
ドースの過剰な喜びと制止
ドースは喜びのあまり一晩中飛び続け、その結果ライメイレンに叩きのめされることとなった。既にヒイチロウという孫がいるにもかかわらず、次の孫への期待を強く抱いており、その執着の強さが周囲から注意される場面もあった。
ラスティの妊娠と竜族の集結
さらにドライムから、ラスティの第二子妊娠も報告された。これにより竜族が多数集まり、警戒すべき状況にも関わらず、祝いの空気が優先される形となった。竜族側は問題が起きても対応可能と楽観的であった。
宴会の開催と騒動
出産と妊娠が重なったことで自然と宴会が開催された。ララーデルとトルマーネは静かな場所へ移され、クーデルの体調にも配慮がなされた。一方で、宴会の最中にドースによる過剰な行動が見られ、騒がしい場面もあった。
来訪者の反応と日常の継続
途中で訪れたビーゼルは、集まった竜族の多さに驚いたが、実際には会議ではなく単なる宴会であった。混乱もありつつ、祝いの場としての時間が流れ、村の日常の中で新たな命の誕生と未来への期待が共有された。
6 名前と試作モノレール
竜の宴会と名前の相談
竜たちの宴会は続いており、収穫したばかりの食材と新しい酒が振る舞われていた。ドノバンたちは度数の高い酒にレモンの皮と砂糖を加えた新しい酒を試作し、竜たちはそれを勢いよく飲んでいた。ハクレンとラスティには飲酒を控えるよう伝えつつ、梅酒についても在庫を気にしながら我慢を求めた。
ライメイレンはヒイチロウが岩を受け止める訓練を見守りながら、ハクレンの次の子の名前について尋ねた。ヒラクは、ヒイチロウの弟ならヒジロウでは語呂が悪く、ヒノジロウやヒサブロウも候補だが、最終的にはハクレンと相談して決めたいと答えた。ライメイレンはそれを穏やかに受け止めたが、ドースは宴会の席で大量の名前候補を持ち出し、さらにギラルやマークまで加わって候補を増やし始めたため、ヒラクは一人三つまでと制限を設け、酒の席で決定しないよう釘を刺した。
輸送力低下への対応
ハクレンとラスティが妊娠したことで竜姿での輸送ができなくなり、村の輸送力は大きく落ちていた。近場は万能船で対応できても、ドースやライメイレンの住む場所への遠方輸送は難しく、最終的にはドライムとグラッファルーンに依頼する形となった。報酬は村の作物と酒の現物支給であり、竜たちにとっても納得できる条件であった。
ゴルフ場拡張の発想
ヒラクは村の西にあるゴルフ場を訪れた。開拓初期に作られたこの場所は今も使われていたが、周辺開発が進んだことで思い切った打ち方がしづらくなり、短いコースやパターゴルフ中心になっていた。鬼人族メイドたちも楽しんでいることから、現行の場所はパターゴルフ用に残し、少し南側に新しいコースを作る案を思いついた。
そこでプールやエビの養殖池に影響しないよう注意しながら木を伐採し、新たなコースを整備した。伐採した木の輸送にはドライムとクォルンが協力し、ゴルフ場の拡張は順調に進んだ。
試作モノレールの制作
ゴルフコースを完成させた後、ヒラクは伐採した木を使って“五ノ村”の木道計画に向けた試作モノレールのトロッコとレールを作り始めた。レールは丸太をT字型に加工した木製で、脱線防止のためトロッコが抱え込む構造とした。試作トロッコは横幅二メートル、縦幅四メートルで、屋敷前から東の薬草畑までを直線で結ぶようレールを設置した。
巨人族やミノタウロス族の協力でレールは設置され、まずはケンタウロス族に引かせて走行試験を行った。荷物がなければ問題なく動いたが、荷物を載せると初動の抵抗が大きく、予想以上に力が必要だった。そこで重さを分散するため車輪を増やし、小さな車輪を多数並べた新型トロッコを試作したところ、荷物を載せてもスムーズに動き、速度も十分に出るようになった。
試作から遊具への発展
改良を重ねる中で、山エルフたちは直線だけでなくカーブや高低差も検証すべきだと提案した。高所から自然落下で動かす案や、レールを輪のようにつなぐ案、小型トロッコの試作も進められ、その結果、五メートルほどの高さから滑り降りる簡易ジェットコースターが完成した。複数のカーブやアップダウンを含む構造で、終点のあと再び上へ戻すのは巨人族とミノタウロス族が担当した。
この試作品は子供たちに大人気となり、曲がれる角度や揺れ対策など、今後の木道計画に必要な課題も見えてきた。一方で、トロッコをさらに小さくして一人立ちできる程度にすれば急角度でも曲がれるという案や、縦に一回転させたいという山エルフの発想も出たが、ヒラクはあくまで“五ノ村”用の輸送手段であることを忘れないようにと制し、遊具化しすぎないよう釘を刺した。
武闘会への切り替え
こうして試作モノレールと簡易ジェットコースターの検証は大きな成果を得たが、ヒラクは本来の目的を思い出し、次は武闘会に集中することにした。
閑話 剣聖ピリカ
剣聖の名を捨てた理由
ピリカはかつて剣聖を名乗っていたが、自身がその称号に相応しい実力に達していないと判断し、名乗ることをやめた。先代剣聖や兄弟子たちの圧倒的な強さに比べ、自分は未熟であると自覚していたためであり、同時に余計な争いや面倒を避ける意図もあった。名を捨てたことで身軽になり、修行に集中できるようになった。
修行の日々と弱点の自覚
“五ノ村”の警備隊長としての役目を果たしながら、ピリカは魔物や魔獣との戦いを重ねて修行を続けた。対人戦に特化していた自分の剣技の弱点を克服するためである。日々の鍛錬の中で成長を実感しつつも、ガルフやダガにはまだ及ばない現実に焦りも抱えていた。
騎士たちとの試合と指導
白銀騎士、青銅騎士、赤鉄騎士との試合では危なげなく勝利を収めたが、それを自らの成長によるものと過信せず、彼らの未熟さにも気づいた。かつての自分を重ねて恥じつつも、指導を行い、逃げ出す者には捕縛訓練を課すなど厳しく鍛えた。
武闘会参加の決意
“大樹の村”で開催される武闘会への参加を打診され、ピリカは実力者の戦いを学ぶために出場を決意した。開催三十日前に現地へ移動し、環境に慣れるとともに修行を開始した。
圧倒的な戦力との遭遇
“大樹の村”ではデーモンスパイダーやインフェルノウルフをはじめとした強大な存在が多数おり、圧倒的な戦力差に驚かされた。修行相手として考えることすら困難であり、ガルフの助言によりキラーラビットを狙うことになった。
キラーラビットとの苦戦
兎と侮っていた相手はキラーラビットであり、何度も死にかけるほどの強敵であった。インフェルノウルフの護衛や高性能な薬草によって命を繋ぎながらも、満足に狩れない自分に劣等感を抱いた。しかし、猫や鳥の動きを観察し、学ぶ姿勢を持つことで成長の糸口を探った。
気づきと覚醒
村長の助言である「相手をよく見る」という言葉を改めて意識し、キラーラビットの動きを観察した結果、相手が未来を視て動いていることに気づいた。そこから自らの動きで誘導する戦法を編み出し、ついに無傷で討伐に成功した。この経験により、ピリカは大きな成長を実感した。
剣聖としての自覚の復活
竜であるマークスベルガークにその剣を認められ、剣聖の称号に相応しいと評価されたことで、ピリカは自らの立場を再認識した。そして、自身の剣を村長に捧げる決意を固めた。
武闘会への不安と覚悟
武闘会に向けて準備を進める中、自身が予定していた騎士の部ではなく、竜王や暗黒竜、吸血鬼の始祖などが参加する王の部に変更されていることを知る。圧倒的な実力差を前にしながらも、ピリカは覚悟を決め、強敵に挑む決意を固めた。
7 勝利した魔王
武闘会オープニングと攻防戦
武闘会のオープニングとして、ヘルゼの背から降下したリア率いるハイエルフたちが砦へ攻撃を仕掛けた。ラミア族と山エルフたちが籠もる簡易砦を巡る戦闘は、軍事訓練のような様相を呈していた。結果として、リアたちは所定時間内に旗を立てられず敗北し、守り切った側が勝利を収めた。
武闘会の開始と各部門
オープニング後、武闘会が正式に開始された。一般の部、戦士の部、騎士の部、英雄の部に加え、新設された王の部が行われた。王の部は模範試合の不足を補うために設けられ、強者同士の本格的なトーナメント戦となった。
騎士の部と英雄の部の戦い
騎士の部ではキアービットが優勝し、安定した実力を示した。英雄の部ではクロの子供たちやザブトンの子供たちの試合に加え、ルーとティアの戦い、グランマリアとラズマリアの試合が行われた。後者はラズマリアが試合運びを制し勝利し、指導的な意味合いを持つ内容であった。
王の部への参戦と顔ぶれ
王の部には竜族や強者が集結し、クロ、ユキ、ザブトン、ドース、ライメイレン、ギラルらに加え、魔王やピリカ、ヨウコも参加した。抽選による公平な組み合わせが行われ、激戦が予想された。
ピリカと魔王の一回戦
注目の一回戦でピリカは魔王と対戦した。魔王は終始余裕を見せつつも本気で戦い、ピリカも互角に近い戦いを見せた。最終的には魔王が勝利したが、ピリカの実力が高く評価される内容であった。
魔王の勝利と剣の威力
勝利した魔王は笑顔で治療を受けながらも、ピリカの剣の威力に驚きを示した。その剣はウィルコックスがグーロンデの鱗を素材に作ったものであり、高い攻撃力を持っていた。
王の部の決着
王の部はライメイレンが優勝した。ヒイチロウの応援もあり、安定した強さで勝ち抜いた。クロやユキも健闘したが、上位陣には及ばず敗退した。
フリーバトルとピリカの課題
大会後のフリーバトルで、ピリカはガルフに挑戦したが敗北した。敗因は決め手となる技の不足であり、先読みの技術だけでは勝てない現実を突きつけられた。ガルフはさらなる成長の余地を示し、ピリカはその課題を受け止めて修行を続ける決意を固めた。
8 武闘会の見送り
後片付けと見送りの開始
武闘会翌日、宴会を続ける者たちを屋敷へ移動させたのち、後片付けが行われた。使う前より綺麗にする方針のもと整備は順調に進み、作業を終えた村長は各村からの参加者や見学者を見送った。
一ノ村の成長と成果
一ノ村の住人たちは着実な成長を見せていた。とくにジャックは一般の部で活躍し、次回は戦士の部へ進むことになった。ほかの住人も一方的に敗れることはなく、全体として実力向上が確認された。
二ノ村の反省と支援活動
二ノ村のミノタウロス族は武闘会で目立った成果を出せなかったが、落ち込みから立ち直っていた。出場しなかった者たちは屋台の手伝いに回り、鬼人族メイドたちから高く評価された。
三ノ村の課題と支援役割
三ノ村のケンタウロス族は助走距離の問題から武闘会への参加に消極的であった。代わりに移動支援として人力車を担い、大会運営に貢献した。種族特性により参加が難しい状況は今後の課題として認識された。
四ノ村の非戦闘志向
四ノ村の悪魔族や夢魔族は実力不足と平和志向から出場を控え、応援や裏方に徹した。マーキュリー種も文官娘衆の補助として働き、運営面で大きく貢献した。
ダンジョン勢力の活躍と滞在
南のダンジョンのラミア族と北のダンジョンの巨人族は、選抜された精鋭として好成績を収めた。大会後もそれぞれ模擬戦や相撲で鍛錬を続け、秋の収穫支援のため村に滞在することとなった。
五ノ村の課題とピリカの帰還
五ノ村からはピリカが出場したが、参加者の少なさが課題として浮上した。住人が強者たちに萎縮する傾向もあり、無理強いできない事情があった。ピリカは警備隊任務のため帰還し、今後の参加体制が検討課題となった。
魔王の帰還と余韻
魔王はビーゼルとともに帰還し、戦いの負傷も回復していた。交流不足を惜しみつつも再訪を約束し、村側も王都の者たちへの配慮を依頼した。
竜族の滞在と各自の動き
竜族は宴会を継続し、帰還の気配はなかった。戦いの結果を受けて修行や交流を続ける者も多く、各々が自由に過ごしていた。
静かな余韻と日常への回帰
見送りを終えた村長は、クロやユキ、ザブトンとともに静かな時間を過ごした。冬の準備を控えつつも、武闘会後の余韻に浸るひとときとなった。
9 秋の”五ノ村”
定期訪問と備蓄準備
村長は十日に一度の頻度で“五ノ村”を訪れ、冬に備えた準備を進めていた。主な役割は、食糧や燃料を供給する商人たちとの関係構築であり、顔と名前、商売内容を把握することで有事に備える体制を整えていた。
商人たちとの交流と課題
訪れた商人は三十五人に及び、名前や店名が似通っているうえ、全員が同じ服装で現れたため混乱を招いた。その原因は過去に村長が何気なく服装を褒めたことにあり、商人たちがそれを共有して同様の服を仕立てた結果であった。商人同士の協力関係を理解しつつも、価格操作の懸念に対しては釘を刺す必要性を考えた。
対応の振り返りと改善
挨拶後、文官娘衆に応対の確認を行い、問題点を指摘されて改善に努めた。近頃は誤りを訂正されにくい傾向があるため、自ら積極的に確認し、発言にも注意を払う必要性を再認識した。
馬レースと賭けの様子
麓で開催されたレースでは、愛馬ベルフォードが出場したが、他の馬が前に出ようとせず競争にならなかった。その他のレースは賭けも含めて盛り上がりを見せ、プラーダは一時的に勝ちを重ねたものの、最終レースで全額を失い落胆した。
盗賊団の処分と労働体制
かつて襲撃してきた盗賊団の残党は全員捕縛され、強制労働に従事していた。冒険者として魔物討伐を行う者と、建設や飲食業に従事する者に分かれ、収入の一部を罰金として納めていた。生活は拘束的ではなく、集団生活を送りながら約五年で罰金を完済する見込みであった。
プラーダの管理役と再出発
プラーダは盗賊団の管理を任され、彼らの更生と運営に関与していた。盗賊団からの謝罪は受け入れられ、一定の秩序のもとで再出発が図られていた。
夜の舞台と音楽の盛況
夜にはユーリが舞台で歌を披露し、観客を大いに沸かせた。伴奏は音楽で成り上がった一族の若い女性たちによるもので、演奏と歌唱は高い完成度を見せた。音量を増幅する魔法の支援もあり、舞台は成功を収めた。
マスコットの人気とユーリの悔しさ
しかし、舞台に登場したファイブ君が圧倒的な歓声を集めたことで、ユーリは自身の評価との差に悔しさを感じていた。観客の反応の違いは、ユーリにとって今後の課題として残る結果となった。
10 最長老
天使族の爆撃訓練と帰還
天使族による急降下爆撃が村で行われ、クーデルとコローネは妊娠によるブランクを感じさせない精度で攻撃を成功させていた。しかし予定数を超えて続行されたため、村長は現場を離れて屋敷へ戻った。
最長老レギンレイヴの来訪と騒動
屋敷では天使族の最長老レギンレイヴが出迎えた。彼女は単独で訪問した際、一ノ村で好戦的な態度を取った結果、雷撃や糸による拘束、さらにクロの子供たちによる攻撃を受けて重傷を負った。その後、大樹の村へ運ばれ治療された。
周囲の警戒と評価
レギンレイヴは表面的には礼儀正しく友好的であったが、過去の経歴から周囲は警戒していた。彼女は武闘派であり、古い天使族の価値観を重んじる存在で、現体制に批判的な立場にあった。それでも村内では問題行動を起こさず、静かに過ごしていた。
村での生活と様子
村長はレギンレイヴを他の天使族と同様に扱い、必要であれば労働を依頼する方針を取った。レギンレイヴは料理ができるため、仕事を任されることになった。彼女は屋敷に控え、命令を待つ立場を取っていた。
レギンレイヴの覚醒と動機
レギンレイヴは長寿ゆえに長期間眠る性質を持っていたが、近年は長く目覚め続けるようになっていた。その理由を使命と解釈し、大樹の村と天使族の現状を見極めるため行動を起こした。
大樹の村での衝撃と認識の変化
大樹の村で世界樹を目にしたことで、彼女は過去の記憶と重なる光景に強い衝撃を受けた。さらに村の戦力や環境を見て、軽率な行動が危険であることを理解した。
村長への試みと抑止
村長に対して敵意を持って接近しようとした瞬間、不可視の槍に貫かれる未来を幻覚として体験した。これにより、村長の背後に神に匹敵する存在があることを察し、敵対を断念した。
価値観の転換と帰属
この体験により、レギンレイヴは一族の変化を堕落ではなく原点回帰と理解した。自身もその流れに従うことを決め、大樹の村での生き方を受け入れた。
再会と周囲の反応
その後訪れたマルビットたちとの再会では、態度の変化から別人のようだと驚かれたが、レギンレイヴは変わらぬ自分であると否定した。こうして最長老は村の一員として穏やかに過ごすようになった。
11 天使族の飲み会
旧知の再会と緊張の緩和
始祖とレギンレイヴは対峙すると互いに戦闘態勢を取ったが、すぐに構えを解いて握手を交わした。二人は過去に幾度も殺し合いを経験した旧知の関係であり、ここでは敵対しないと確認し合った。レギンレイヴはグッチやヨウコとも同様のやり取りをしており、長寿ゆえに多くの知己を持つことが示された。
宴会の継続と村の対応
武闘会後も竜族の宴会は続いており、村の余剰食材の消費や収入面では問題がなかった。村長は宴会の世話をする住人への追加報酬を検討し、褒賞メダルとは別に報いる必要を感じていた。
天使族の合流と意外な関係性
遅れて到着したマルビットたちは真面目に働き始め、村長はその姿に驚いた。レギンレイヴとの関係は対立的と思われていたが、飲み会の場では二人が肩を組んで酒を飲むほど親しくしていた。その様子にルインシァは不安を抱き、村長も状況の複雑さを認識した。
子供たちとの交流と価値観の変化
飲み会の途中でララーデルとトルマーネが連れて来られると、場は歓声に包まれた。レギンレイヴも二人を抱き上げ感情を露わにし、これまで警戒されていた態度に変化が見られた。天使族全体で子供が少ない現状もあり、その存在は特別な意味を持っていた。
天使族の制度変化と未来への期待
かつて存在した厳しい結婚の試練はすでに撤廃されており、今後は子供が増える可能性が示された。村長も自身の子供たちに同世代が増えることを喜び、将来への期待を抱いた。
宴会の拡大と文化的話題
宴会にはドワーフたちも加わり、酒の説明や評価が行われた。酒の備蓄量や製造技術の高さが語られる中、レギンレイヴは古の時代の宴会文化について言及した。記録を目的とした宴会は百三日続いた例があり、厳格な規定や芸の披露が求められていたことが明かされた。
宴会の終息と日常への回帰
長く続いた飲み会は翌日に終わり、マルビットはコタツに籠もって冬の準備に入っていた。村長はそれを許さずコタツを取り上げ、日常へ戻るよう促した。こうして騒がしかった宴会の時間は一区切りを迎えた。
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