のんびり農家 全巻まとめ
のんびり農家 2巻レビュー
どんな本?
異世界のんびり農家とは、内藤騎之介氏による日本のライトノベル。
小説家になろうにて連載されており、書籍版はKADOKAWAから刊行されている。
また、剣康之氏が作画をしている漫画版もあり。
月刊ドラゴンエイジにて連載されており、現在は11巻まで発売されている。
また、異世界のんびり農家の日常というスピンオフ作品もあり。
こちらの作画はユウズィ氏が担当している。
アニメ版もあり。
アニメ版は全12話。
2023年1月6日から3月24日まで放送された。
各話のタイトルやあらすじは[こちら]。
物語は、闘病の末に死んだ男性・火楽が、神によって異世界に転移し、農業生活を送るというもの。
彼は神から「万能農具」という特別な道具を授かり、死の森と呼ばれる危険な場所で農地を開拓していく。
そこで出会った吸血鬼や天使、エルフや竜などの様々な種族と交流し、やがて「大樹の村」というコミュニティを作り上げていく。
作品の特徴は、タイトル通りの「のんびり」とした作風であり、戦争や陰謀などのトラブルに巻き込まれるような展開は少なく、主人公が農業や料理を楽しんだり、仲間や家族と触れ合ったりする日常が描かれている。
また、主人公が前世で得た知識や技術を活かして異世界の文化や産業に革新をもたらす場面もある。
出版情報
• 出版社:KADOKAWA
• 発売日:2017年10月30日
• 判型:B6判/424ページ
• 定価:1,430円(本体1,300円+税)
• ISBN:9784047348486
読んだ本のタイトル
#異世界のんびり農家 01
著者:#内藤騎之介 氏
イラスト:#やすも 氏
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あらすじ・内容
闘病の末に命を落とした青年・火楽(ヒラク)は、神様によって蘇生され、若返って異世界に転移した。
第二の人生、のんびり農業を楽しむために!
神様に授けられた『万能農具』を手に、自由気ままに異世界を切り拓く!
そこに天使や吸血鬼、エルフに竜まで現れて……。
あっという間に村になり、気付けば俺が村長に!?
スローライフ・農業ファンタジー、ここに開幕!
感想
農家と言いながら、ボッチな開拓民だよなこれ。
森の中にいきなり放り込まれて神から与えられた万能な農具でサクサクと土を良く耕す。
その農具を持ってる限り疲れないから畑が直ぐ出来て、襲い掛かってくる魔獣も鍬の一撃で倒せ肥料にしてしまう。
そんな彼の側には、、
弱った犬2匹と、犬の知り合いの蜘蛛1匹のみ。
後々にコイツ等がインフェルノウルフとデーモンスパイダーという出会ったら死ぬと言うほど恐れられてる魔獣だと分かるが、、
懐いてるから良いのかなって感じで一緒に住んでしまう。
孤独にはモフモフが重要だし?
そのあと犬と蜘蛛達は増えて行くが、、
増え方が凄かった。
犬が5頭増えて、5頭がそれぞれ伴侶を外で見付けて、25頭になって、、、
って感じで年々増えて行く。
そんな増えていく犬と蜘蛛を見て寂しいと思ったら。
犬の警戒網に貴族から逃亡してる吸血鬼が引っ掛かり、、
その吸血鬼と一緒に住むようになったが主人公の孤独感が埋まらず、吸血鬼自身の体力もキツいので、彼女を追いかけて来た天使族も巻き込んで、、
何気にコレ、、
かなり強引だな。
そんな住民も吸血鬼と天使が加わって、吸血鬼の世話をするために鬼人族が増えて、、
森の中を彷徨っていた人の肝を食べると言われているハイエルフ達が住み着き。
ドラゴンが出て来たら、、
果物を贈り物をしたら、向こうからは財宝の返礼が来て、仲良くなって交流を持つようになる。
そして、近隣の村と交流を持つが、、
そこは魔王領で魔王の部下が税金を徴収しに来たが、、
住民の種類があまりにも酷いくて来た魔王の部下はガクブル状態。
((((;゚Д゚)))))))←魔王の部下
って感じになって、、
そしたら吸血鬼が主人公の子供を妊娠した事が判る。
遂に彼にも家族が出来た。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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のんびり農家 全巻まとめ
のんびり農家 2巻レビュー
大樹の村に主要な住民たちがやって来た理由は以下の通りである。
- クロとユキ(インフェルノウルフ) 身重のユキを連れていた際、森の王者グラップラーベアに遭遇し、一撃を受けて重傷を負った 。負傷と飢えで窮地に立たされていたところ、街尾火楽が切り拓いた拠点に行き着いた 。火楽が敵意を示さずに猪の肉や安全な出産の場を提供したため、その圧倒的な強さと恩から彼を主と認めて定住したのである 。
- ザブトン(デーモンスパイダー) 火楽が越冬の準備をしていた頃、水路付近に現れた巨大な蜘蛛である 。敵意はなく、自らの糸で高品質な布を織って提供したことで受け入れられ、寝床近くの大木に住み着いた 。
- ルー(吸血鬼) 天使族のティアから逃れて死の森に迷い込んだところ、クロたちインフェルノウルフの群れやザブトンに囲まれ、魔力を失い幼児化して消滅寸前となっていた 。そこを火楽に助けられ、血を与えられて完全に回復したうえ、吸血鬼である自身を恐れずに受け入れてもらったため、伴侶として共に生きる決意をしたのである 。
- ティア(天使族) 街で騒ぎを起こして賞金首となっていたルーを追って死の森へやって来た 。しかしクロの群れに甚振られていたところを火楽に助けられ、ルーからの提案で争いを停止した 。その後、ルーの強引な主導によりそのまま同居することになったのである 。
- リアたち(ハイエルフ) 二百年前に人間の戦争で集落を失い、死の森を流浪していた 。森で出会ったティアから定住可能な場所として案内され、火楽の圧倒的な力と、無償で受け入れてくれる寛大さに感銘を受け、一族存続のために定住を決意した 。
- スライム 春を迎え、排泄物貯留部の強烈な悪臭問題に対処するため、ティアが都市から掃除屋として捕獲して連れてきたのが始まりである 。
- 巨大蜂(女王蜂) ザブトンの子供が糸で縛って連れてきた個体である 。ザブトンの子供が飼育を希望したため、安全性を確認したうえで果実エリアに専用の小屋を与えられて定住した 。
- フローラ(吸血鬼)とアンたち(鬼人族メイド) フローラは従姉妹のルーを探して村を訪れ、ザブトンや作物の豊かさに驚き定住を決めた 。その後、旧居から連れてきたのがアンをはじめとする二十名の鬼人族メイドであり、村の生活環境を改善するために加わったのである 。
- グランマリアたち(天使族)とダガたち(リザードマン) 村の規模拡大に伴い、勢力の均衡を図る目的でティアが連れてきた従者たちである 。天使族は森の警備を担い、リザードマンたちは手土産として鶏を持参し、力仕事や家畜管理を担うために定住した 。
- セナたち(獣人族) ハウリン村との交易後、食料不足に悩むハウリン村から口減らしを目的とした移住打診がきっかけである 。火楽が彼女たちを奴隷同然の扱いではなく、大樹の村の仲間として迎え入れることを明言したため移住してきた 。
- ドノバンたち(ドワーフ) ドノバンは酒を求めて村を訪れ、自らの酒造技術を対価として提供することで定住を決めた 。その後、彼を追って別のドワーフたちも作物の質を評価し、自然に定住するようになった 。
- ラスティ(竜族) 父ドライムが村に家を建てたことなどを浮気と誤解し、村を襲撃した 。誤解が解けた後、母グラッファルーンから、火楽の力を監視し竜族へ矛先が向かないようにするよう命じられ、村に住むことになったのである 。
- フラウレム(魔族) 魔王国の幹部である父ビーゼルの命により村へ赴いた 。当初は「魔王国の命運を左右する」とだけ告げられていたが、後に魔王国に対するポーズとしての名目上の「代官」に任命されての移住であったことが判明した 。彼女自身は村の規格外な実態を知り、村長である火楽に忠誠を誓っている 。
のんびり農家 全巻まとめ
のんびり農家 2巻レビュー
キャラクター紹介
街尾火楽(ヒラク)
ブラック企業で体を壊し、三十九歳で病死した後に異世界へ転移した男性である。神から「健康な肉体」と「万能農具」を授かり、死の森を切り拓いて生活基盤を築いた。村の創設者として、多種族が共存する村をまとめる役割を担っている。
・所属組織、地位や役職
大樹の村・村長。
・物語内での具体的な行動や成果
万能農具を使い、一人で広大な畑や水路を完成させた。襲来したワイバーンを槍投げで撃退した。近隣の竜族や魔王領との間に友好関係や交易体制を確立した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
死の森の支配者として周辺勢力から認識されている。吸血鬼や天使族を妻に迎え、長男アルフレートを授かった。魔王領からは実質的な独立領主として扱われている。
神
複数の世界を管理する立場にある上位の存在である。手違いで街尾火楽に苦行の人生を与えたことを悔やみ、救済措置として異世界への転移を提案した。火楽の願いを聞き入れ、特別な加護と道具を授けている。
・所属組織、地位や役職
神。
・物語内での具体的な行動や成果
街尾火楽に病気にならない体と万能農具を授けた。彼を人が少ない異世界の森へ送り届けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
火楽の精神状態を安定させるために健康な肉体の機能を調整した。常に火楽の動向を見守っている。
クロ
死の森に生息していたインフェルノウルフの雄である。身重の伴侶を連れて街尾火楽の拠点に現れ、彼を主と認めて定住した。非常に高い知能を持ち、群れのリーダーとして村の防衛を担っている。
・所属組織、地位や役職
大樹の村・警備および狩猟担当。インフェルノウルフの長。
・物語内での具体的な行動や成果
街尾火楽と共に畑の害獣を駆除した。森で獲物を狩り、村の食料確保に貢献した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
当初は火楽に犬と誤認されていた。現在は百頭を超える群れの頂点として村を統率している。
ユキ
クロの伴侶であるインフェルノウルフの雌である。クロと共に街尾火楽のもとに身を寄せ、村で最初に出産を行った。穏やかな性格で、火楽や生まれた子犬たちに深い愛情を注いでいる。
・所属組織、地位や役職
大樹の村・警備および狩猟担当。
・物語内での具体的な行動や成果
村の拠点で四匹の子犬を産み育てた。クロと共に村の周囲を見張り、安全を確保している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
出産を通じて群れの規模を拡大させる起点となった。火楽からフライングディスクを投げてもらうことを好んでいる。
ザブトン
死の森に住むデーモンスパイダーの個体である。街尾火楽が拠点とする大木に住み着き、糸を紡いで布や衣服を製作している。言葉は発しないが非常に賢く、村の見張り役としても機能している。
・所属組織、地位や役職
大樹の村・衣類製作および警備担当。デーモンスパイダー。
・物語内での具体的な行動や成果
村の住民に高品質な衣服や防寒着を提供した。木を叩く合図で周囲の異変を知らせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
数百匹の子蜘蛛を産み、その子らも村の作業を補助している。魔王軍からは世界的な危険種「イリーガルデーモンスパイダー」として認識されている。
ルールーシー=ルー(ルー)
人間の国で賞金首となっていた吸血鬼の女性である。死の森でクロたちに追い詰められていたところを街尾火楽に救われた。魔法や薬学の知識が豊富で、村の知的な活動を支えている。
・所属組織、地位や役職
大樹の村・住民。街尾火楽の第一夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
吸血鬼の能力で街尾火楽と血の契約を結んだ。井戸から塩を発見し、村の食生活を改善した。長男アルフレートを産んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
自身の体の大きさを自在に変えることができる。村の女性陣のリーダー的な役割を果たしている。
ティア
「殲滅天使」の異名を持つ天使族の女性である。賞金首のルーを追って死の森に現れたが、街尾火楽に敗北し、彼の二人目の妻となった。後にハイエルフやリザードマンを村に招き入れ、人口増加に大きく寄与した。
・所属組織、地位や役職
大樹の村・警備および外部折衝担当。街尾火楽の妻。
・物語内での具体的な行動や成果
ゴーレムを操り、村の建築作業を大幅に加速させた。清掃用にスライムを村に導入した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
物語の後半で懐妊が判明した。村の防衛体制の構築に深く関わっている。
リア
ハイエルフの一族を率いる女性である。戦争で故郷を失い、死の森を彷徨っていたところをティアに誘われて村に移住した。建築や土木、鍛冶に精通しており、村の施設を次々と完成させている。
・所属組織、地位や役職
大樹の村・建築および製造担当。ハイエルフの代表。
・物語内での具体的な行動や成果
村長の家やメイド寮を建設した。小麦の脱穀や製粉、パン作りを村に定着させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
街尾火楽と種族存続のための関係を結んでいる。村の工業および農業技術の向上に中心的な役割を果たしている。
アン
吸血鬼フローラに従う鬼人族の女性である。フローラの移住に伴い、二十名のメイドを率いて村にやってきた。家事全般を完璧にこなし、村の生活水準を飛躍的に向上させた。
・所属組織、地位や役職
大樹の村・家事および調理担当。メイド長。
・物語内での具体的な行動や成果
村の食事管理や清掃を統括している。街尾火楽から学んだ調理技術を他のメイドに伝授している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
街尾火楽の世話を最優先とする体制を築いた。村の食文化の発展において重要な役割を担っている。
フローラ=サクトゥ(フローラ)
ルーの従姉妹にあたる吸血鬼の女性である。ルーを探して村を訪れ、環境の良さを気に入って定住を決めた。発酵食品の研究に熱心で、味噌や醤油の製作に尽力している。
・所属組織、地位や役職
大樹の村・研究および医療担当。
・物語内での具体的な行動や成果
村に食用牛四頭を持ち込んだ。納豆や味噌、醤油の製造工程を確立させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
村の科学的・医学的な知見を支えている。二十名の鬼人族メイドを従えて村に合流した。
ビーゼル
魔王の側近を務める四天王の一人である。村に税の徴収や外交交渉のために訪れる。街尾火楽の能力や村の戦力を正しく評価し、魔王城との橋渡しを行っている。
・所属組織、地位や役職
ガルガルド魔王国・四天王(外務担当)。
・物語内での具体的な行動や成果
大樹の村を魔王の勢力圏として認め、納税の契約を交わした。村から献上された果実や布を魔王城に持ち帰った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
娘のフラウレムを村に移住させた。大樹の村を「決して敵対してはならない勢力」として魔王城に報告している。
ドライム
南の山に住む門番竜と呼ばれる竜族の男性である。村の近隣住民として挨拶に訪れ、以来頻繁に村へ遊びに来るようになった。非常に強力な存在だが、村では一人の常連客として親しまれている。
・所属組織、地位や役職
竜族。門番竜。
・物語内での具体的な行動や成果
大樹の村に高級な装飾剣を贈った。村の交易のために重量物の運搬を支援した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
街尾火楽と友人関係を築いている。村の風呂や酒を非常に好んでいる。
ラスティスムーン(ラスティ)
ドライムの娘である竜族の女性である。当初は父の浮気を疑って村に襲来したが、和解した。現在は村に定住し、その知性と能力を活かして外交や通信の任務にあたっている。
・所属組織、地位や役職
大樹の村・外交および通信担当。
・物語内での具体的な行動や成果
小型ワイバーンを用いた通信網を各勢力との間に構築した。商人マイケルとの価格交渉を担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
当初は監視役として送られたが、現在は村に不可欠な外交官となっている。
フラウレム(フラウ)
ビーゼルの娘であり、魔王国の才媛として知られる女性である。父の命で大樹の村に派遣され、現在は代官として村の行政に関わっている。当初は自身の地位に自信を持っていたが、村の規格外な実態を知り、忠誠を誓った。
・所属組織、地位や役職
大樹の村・代官(行政担当)。
・物語内での具体的な行動や成果
村の収支管理や魔王国との公的な手続きを担っている。港町シャシャートとの交易を提案した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
村長に従う立場であることを自覚している。村の農業戦力としても高く評価されている。
マイケル=ゴロウン
港町シャシャートの有力な商人である。フラウの案内で村を訪れ、作物の品質に感銘を受けて取引を開始した。大樹の村の御用商人として、海産物や家畜などを村に供給している。
・所属組織、地位や役職
ゴロウン商会・会頭。
・物語内での具体的な行動や成果
大樹の村の作物を外部に流通させる販路を確立した。村の要望に応じて昆布や馬などを調達した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
村との独占的な取引を通じて、商会に多大な利益をもたらしている。村長を「金の匂いがする存在」として尊敬している。
ドノバン
酒造りを得意とするエルダードワーフの男性である。酒を求めて村を訪れ、農業環境の良さに惹かれて定住を決めた。村の酒造技術を飛躍的に向上させた功労者である。
・所属組織、地位や役職
大樹の村・酒造担当。エルダードワーフ。
・物語内での具体的な行動や成果
大麦やトウモロコシを用いた新たな酒の醸造を提案した。村の酒用畑の拡張を主導した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
自身を追ってきた他のドワーフたちと共に村の醸造部門を支えている。
アルフレート
街尾火楽とルールーシーの間に生まれた長男である。村で最初に誕生した人間(および吸血鬼)の子供であり、住民全員から祝福を受けている。
・所属組織、地位や役職
大樹の村・村長の長男。
・物語内での具体的な行動や成果
竜族が襲来した際も動じずに眠り続けていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
村の次世代を担う存在として期待されている。
セナ
ハウリン村の村長の娘である獣人族の女性である。物々交換市を通じて大樹の村との関係が深まり、移住者の代表として村にやってきた。誠実な性格で、新参の獣人族たちをまとめている。
・所属組織、地位や役職
大樹の村・獣人族代表。
・物語内での具体的な行動や成果
二十五名の移住者を率いて村に合流した。村の脱穀や油搾りなどの作業を担っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
大樹の村の仲間として受け入れられ、住民として定着した。
ダガ
十五名のリザードマンを率いて村に移住した男性である。武術に優れ、力仕事や家畜の管理を担当している。非常に生真面目な性格で、村長からの信頼も厚い。
・所属組織、地位や役職
大樹の村・家畜管理および警備担当。リザードマンの長。
・物語内での具体的な行動や成果
シャシャートへの遠征で護衛兼荷運びとして活躍した。村に産み落とされた卵の管理を統括している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
村の力仕事を支える重要な戦力として重宝されている。
アルバート、グラ、メサ
死の森の古木に安置された神像の加護により、知性に目覚めた巨大な蜂たちである。果実エリアに巣を構え、受粉を助けながら蜂蜜を生産している。
・所属組織、地位や役職
大樹の村・養蜂担当。
・物語内での具体的な行動や成果
村に蜂蜜の供給をもたらした。果実の結実率向上に貢献している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ザブトンの子供たちと連携して森の探索も行っている。
のんびり農家 全巻まとめ
のんびり農家 2巻レビュー
展開まとめ
【序章】よくある異世界転移
街尾火楽の死と神との対面
ブラック企業で体を酷使し、三十九歳で病死した街尾火楽は、神と対面していた。神は異世界への転移を告げ、病魔を取り除き臓腑を再生し、若返らせたうえで生き返らせると説明した。街尾火楽は長年病床にあったため文句はなく、健康な体を与えられることに感謝した。神は利があるから転移させると語りつつ、第二の人生を楽しめと告げた。
願いと健康な肉体の授与
神はいくつか願いを叶えると申し出た。街尾火楽はまず二度と病気にならない体を望み、健康な肉体を授けられたことを実感した。さらに人の少ない場所での生活を願い出た。過去に親族や職場での経験から人間関係に不安を抱いていたためである。神は転移先を調整すると約束した。
農業への憧れと万能農具
剣と魔法の世界で何をしたいか問われた街尾火楽は、冒険者や王ではなく農業を希望した。病床で見た番組や幼少期の体験から抱いていた夢であった。神は管轄外だとしつつ、別の存在と連絡を取り、万能農具を授けた。それは用途に応じてクワやカマなどに変化し、常に傍にあり体内に収納もできる専用の道具であった。
森への転移と新たな始まり
移動の時が来ると、街尾火楽は感謝を述べて転移した。目覚めた場所は森の中であった。体は若返り、痛みもなく自由に動いた。見知らぬ服を身に着け、万能農具も問題なく扱えた。周囲は見渡す限り森であり、人の少ない場所という願いは叶えられていたが、そこは人が皆無に近い環境であった。
〔一章〕 異世界生活の始まり
1 異世界
森での危機と硬い大地
森に立った街尾火楽は、水と食料と寝床を確保しなければ死ぬと理解した。移動を試みるが、太い木々に囲まれ視界は悪く、迷う危険を感じた。足を踏み入れた森の地面は異様に硬く、農業への不安を抱く。そこで万能農具をクワにして振るうと、驚くほど容易に地面が耕され、木の根さえ土へと変わった。しかも疲労を感じなかったため、耕しながら移動する方法を思いつき、実行した。
万能農具の検証と寝床の確保
移動速度は遅かったが、街尾火楽は万能農具の能力に着目した。斧に変形させれば大木を容易に切断でき、ドリルに変えれば幹の内部に空間を掘れると判明した。木の内部を整え、巨大な巣のような寝床を確保する。次に水を得るため、川を探す代わりに井戸を掘ることを選んだ。
井戸掘りと水の確保
シャベルに変形させた万能農具で地面を掘り進めたが、縦穴の危険や酸素不足に気づき、斜めに掘る工夫を施した。光の問題も抱えつつ作業を続け、約十メートルで湧き水を得る。すぐには飲まず、水が落ち着くのを待つことにした。
火の失念と夜の作業
日暮れとともに火の必要性に気づき、万能農具を変形させて方法を模索する。機械類は再現できなかったが、虫眼鏡には変形できると判明した。しかし既に日が沈み、火起こしは断念する。街尾火楽は寝床に入り、万能農具を小刀に変えて木製の食器や道具を作り続けた。万能農具を使う間は空腹や眠気も感じなかった。月明かりの下、二つの月を見上げながら、異世界での夜を迎えたのである。
2 万能農具
万能農具の効果の限界
街尾火楽は、万能農具を使っている間は喉も渇かず空腹や眠気も感じないと理解していたが、その効果は作業中のみであると気づいた。道具を持っていない短い時間でも効果は切れ、その積み重ねで実際に喉の渇きと空腹、眠気を覚えていた。朝日を浴びた後、斜めに掘った井戸へ向かい、昨晩作った木のコップで水を汲んだ。
井戸水の確認と現状把握
井戸には一メートルほど水が溜まっていた。街尾火楽は覚悟を決めて水を口に含み、異常がないことを確かめたうえで飲み干した。味に問題はなく、腹痛が起きないか様子を見ることにした。その後、寝床、大木の内部の空間、斜め井戸、五メートル幅に耕された道、そして一晩で作った木製の小物類という現状を整理した。
火の確保と拠点拡張
食料を探す前に火を確保するため、木屑を集め、万能農具を虫眼鏡に変えて着火した。火を見える範囲に保つため、寝床を中心に耕地を広げることにした。結果として二百メートルほどの空間ができ、倒した木材も確保できた。万能農具は木材の移動にも役立ち、拠点は拡張された。
兎との遭遇と狩猟
耕作中、犬ほどの大きさで牙を持つ兎が現れた。街尾火楽は咄嗟に振るったクワでそれを仕留めた。首から上は肥料となり、体は残った。衝撃を受けつつも食料として解体し、内臓を傷つけないよう取り除き、肉を串焼きにした。
初めての食事と課題
焼いた肉は血生臭く不味かったが、街尾火楽は入院生活を思い出しながら食べきった。余った分は全て焼いて保存し、内臓や毛皮は耕して肥料にした。井戸水にも異常はなく、ひとまず水と食料は確保できたのである。
3 トイレ
トイレ設置の決意
街尾火楽は食事の後、排泄の問題に直面した。耕した土地や将来耕す可能性のある場所で用を足すことに抵抗を覚え、糞尿は発酵させなければ肥料にならないと理解した。万能農具で処理できる可能性はあったが気が進まず、寝床と井戸から離れた場所にトイレを設けることを決めた。
地下空間の掘削と基礎固め
井戸と反対側に斜め穴を掘り、内部に空間を確保した。酸素や明かりに注意しながら作業を進め、床と壁はハンマーで叩いて固め、汚物が地下水へ染み出さないようにした。これにより地下部分は完成した。
地上部分の構築
地下空間の上に木板で床を作り、中央に穴を開けて便座を設置した。便座は木を輪切りにして加工し、洋式仕様とした。周囲には柱を立て、溝を彫った木板をはめ込んで壁を形成した。出入口には扉を設けず、衝立で目隠しを行った。
使用準備と屋根の設置
井戸水を運び、手洗いと洗浄用に備えたが、紙の代わりとなる葉を用意していなかったことに気づき、森で草を探して対応した。問題は起きなかった。その後、天井を設置し、明かり取りの窓を設けた。夜間用に簡易火鉢も用意し、水を溜める木製タンクも設置した。往復の労力に文明の不在を実感しつつ、街尾火楽はトイレ完成に満足したのである。
4 食料確保
防備の強化と夜への備え
トイレ完成後、街尾火楽は短時間眠り、今後の食料不足と夜の危険を案じた。森の獣を警戒し、寝床の出入口に重い扉を設置する。しかし内部は暗闇となり、空気穴の必要性に気づき慌てて加工した。さらに寝床・井戸・トイレを囲う丸太柵を築き、翌朝にはその外側に幅一・五メートル、深さ二メートルの堀を掘って橋を架け、防備を固めた。
畑作りと現実逃避
食料確保に向かうはずが、日没までの時間を使い畑作りに着手した。五十メートル四方の区画を整え、畝を作りながら農業への願望を膨らませたが、種や苗がない事実に気づく。万能農具を使い続ければ疲労を感じないため、現実逃避のように夜通し畑を拡張し、拠点の外周まで耕地を広げた。
兎の再遭遇と食料確保
森を耕しながら植物を探したが、草木は肥料となり収穫には至らなかった。その代わり、再び牙を持つ兎が飛び出し、クワで仕留める結果となる。最終的に三体の兎の肉を確保し、一体は誤って体を肥料にしてしまった。兎の運搬も万能農具の力で容易であった。
一日の締めくくり
兎肉を食し、防備と畑を備えた拠点を確認した街尾火楽は、ようやく安心して眠りについた。万能農具への感謝を抱きながら、次なる食料確保と農業の可能性を模索する日々が続くのであった。
5 ご都合主義と出会い
芽吹きと神への感謝
朝目覚めた街尾火楽は、兎肉を食べてから畑を確認し、畝から等間隔に芽が出ていることに驚いた。種を蒔いた覚えはなく、成長も早すぎるため、神の加護だと考えた。感謝の念から木材を加工し、出会った神と農業担当と思しき神の像を彫り、寝床の木に粗末な社を作って祀った。そして目標を畑を守ることへと改めた。
防衛強化と畑の拡張
街尾火楽は畑の周囲を丸太柵と堀で囲い、森に近い部分は耕して侵入経路を断った。作業は五日間に及び、その間に芽は順調に成長した。侵入した牙のある兎やネズミは肥料となった。さらに巨大な猪が現れたが、クワで首を落とし、食料として確保した。
新たな脅威と不安
獣対策は整ったものの、鳥や虫の存在を懸念した。また芽の正体が分からず、農業知識の不足を痛感する。それでも出来ることから始めようと案山子を考えていた時、畑の外から獣の声が響いた。
黒い犬との出会い
丸太柵の向こうに、大型の黒い犬が二匹立っていた。一匹は怪我を負い、もう一匹は腹の大きい雌であった。雄らしき犬は街尾火楽を睨みつつも敵意は薄く、雌を気遣っている様子であった。街尾火楽はクワを構えたが、やがて構えを解き、堀に板を渡して二匹を内側へ招き入れたのである。
6 犬たち
犬たちへの食料と生活改善
街尾火楽に従って内側へ入った二匹の犬は、焚き火ではなく倒してあった猪の肉へ向かった。空腹と察した街尾火楽は、必要分を確保したうえで残りを骨ごと与えた。犬たちは勢いよく食べ尽くした。その様子を見ながら、地面生活からの改善を思い立ち、丸太を加工して長テーブルと椅子を作った。さらに収穫物保管用の小屋を建てたが、高床にはできず、広さ八畳ほどで床は地面のままとした。
出産の兆し
食事を終えた後、腹の大きい雌犬が苦しげな声を上げた。出産だと気づいた街尾火楽は、小屋へ誘導した。雌犬は隅で落ち着きなく動き、雄犬は不安げに見守った。知識のない街尾火楽は、気温低下を考え小屋内に囲炉裏を作り火を焚き、水も用意した。
出産場所の準備
地面に直接産ませることを案じた街尾火楽は、スコップ状に変えた万能農具で小屋の隅を柔らかく掘り起こした。雌犬はその場所をさらに整え、自ら出産床を作った。街尾火楽は見守ることを控え、雄犬に任せて外へ出た。
夜の不安と見守り
夜は完全に更け、焚き火と小屋の灯りだけが周囲を照らしていた。無事な出産を祈りつつ、街尾火楽は焚き火の傍で小物作りを続けた。猪の骨は恐ろしく感じられたため、耕して肥料に変えたのである。
7 犬たちとの生活
子犬の誕生と世話
翌朝、倉には真っ黒な子犬が四匹生まれていた。雌犬も無事であり、街尾火楽は猪の良い肉を与え、水や火の管理を行った。火傷防止に囲いを作り、傷の回復も確認したうえで、雄犬に留守を任せて食料探しに向かった。やがて十日が経ち、犬たちは完全に拠点へ定着した。
犬たちの能力と協力
親犬は丸太柵や堀を軽々と飛び越え、森で兎を狩って持ち帰った。子犬は急速に成長し、七日ほどで肉を食べ始めた。排泄も指定場所で行い、畑では虫を見つけると吠えて知らせた。犬たちは畑の守り手となった。
生活基盤の拡充
街尾火楽は食料確保を続けながら、新たな倉を建てて自らの寝床とした。床には角材と木板を組み、木釘で固定した。食器も作り直し、木組みに挑戦して軽量化を目指した。草を集めてベッドを作り、犬小屋にも敷いた。
畑の成長と試行錯誤
畑の芽は急速に成長し、ニンジンやジャガイモなど想像していた作物に近い姿を見せ始めた。街尾火楽は水や肥料の有無で区画ごとに試し、育成方法を探った。害虫対策では、万能農具をジョウロに変えて撒いた水が虫を退けると判明した。こうして街尾火楽は、犬たちと共に農業生活を着実に築いていったのである。
8 犬たちの名前
子犬たちの命名
街尾火楽は犬たちに名前を付けることにした。子犬四匹にはすでにクロイチ、クロニ、クロサン、クロヨンと名付けていた。クロイチは活発、クロニは慎重、クロサンは力強く唯一の雌、クロヨンは独自の行動を取る性格であった。続いて親犬の命名を考え、地面に候補を書いて選ばせることにした。
親犬の決定
書いた文字は見知らぬ文字に変わっていたが問題なく読めた。雄犬はシュバルツを選びかけたが、雌犬が強く抗議し、最終的にクロに決まった。雌犬はユキを選び、こうしてクロとユキという名が定まった。犬たちの理解力の高さに街尾火楽は改めて驚いた。
犬たちとの日常
クロたちは自由に森や畑を行き来しつつ、常に一匹が街尾火楽の傍に付き添った。孤独は薄れた。遊び道具として木製のフライングディスクを作ると、子犬だけでなくクロやユキも競い合った。全員分を用意して順番に投げることで落ち着いたが、そのたびに全力で投げる必要があり、街尾火楽の腕は痛んだのである。
9 犬?
角の発見
子犬誕生から三十日が経過し、子犬たちは大きく成長した。額には角が生え始め、クロとユキの額にも折れた跡があると判明した。頭を触らせなかった理由に気づき、街尾火楽は彼らが普通の犬ではないと理解する。それでも異世界である以上受け入れ、じゃれ合いの際の突進だけを警戒した。
豊作と労働
畑は順調に育ち、イチゴやトマトが赤く色づき始めた。水と肥料を与えた区画ほど成長が良い結果となったが、何もしない区画でも収穫は可能であった。大量の収穫物に眩暈を覚えつつ、六日かけて全てを刈り取った。保管場所は不足し、住居にも置くことになった。
保存と課題
トマトやイチゴは急いで消費する必要があり、犬たちも好みを示した。だが調味料や調理道具の不足が問題となる。塩の必要性や米作りへの構想を抱きつつ、道具不足に直面した。
調理道具の制作
街尾火楽は石板を作り加熱調理を可能にし、石製の包丁や鍋も製作した。万能農具により加工は容易であったが、重量や温度管理の問題が残った。木製の蓋を用意しつつ、クロたちが遊び道具と誤解する様子を見ながら、生活改善への試行錯誤を続けたのである。
閑話 クロ
名なき森の生
名も持たず、森を徘徊し獲物を狩るだけの日々。それが当然であり、これからも続くはずであった。だが同じ姿の雌と出会い、力の差を見せつけられて従うこととなる。やがて伴侶となり、子を宿した。
森の王者との遭遇
身重の雌を連れていた時、森の王者グラップラーベアと遭遇する。逃げ場はなく、庇い合いながら一撃を受けて重傷を負う。だが王者は気まぐれに去り、命だけは拾った。負傷と飢えの中、獲物も狩れず窮地に立たされる。
異質な人間との出会い
弱ったまま辿り着いた不可解な場所。不倒の大木が倒され、堀が掘られている。そこに現れた人間から、王者以上の恐怖を感じ取る。戦いを覚悟するが、人間は敵意を示さず招き入れた。そこには倒されたゲートボアの肉があり、人間の圧倒的な力を悟る。
主への帰順
人間は食料を与え、出産の場を整え、森で容易に獲物を仕留めた。その強さと恩により、クロと雌は彼を主と認める。だが一つの懸念が残る。主は自分たちを犬と思っていることだ。クロたちは本来、インフェルノウルフという種族である。その誤解が明らかになる時を、わずかな不安とともに受け止めているのである。
10 再確認
塩への渇望
生活に不足している物を改めて自覚し、最も必要なのは塩であると結論づけた。海は望めず、盆地状の地形から岩塩の可能性を考えるが容易ではない。塩の探索と並行し、畑を耕し直して次の作物実験に着手する。
果実と穀物への挑戦
保存性を考え、リンゴ、ナシ、ミカン、オレンジ、カキ、モモを四本ずつ植える想定で育成。トマトを増やし、稲も一面だけ試験栽培する。水田造成の課題は大きいが、米への欲求は強い。さらにアブラナ、サトウキビ、大豆、小麦も試し、将来的な油や砂糖の確保を視野に入れる。
森の探索
新たな資源を求め森を十日探索するが、大きな成果は得られない。牙の生えた兎が多数を占め、他は大きなネズミや猪が散見されるのみ。木材確保の問題も浮上し、探索と資源管理の両立を考える。
移動方法の改良
耕しながらの移動で迷わずに済んでいたが、効率向上を求め『万能農具』を手押し車に変形させることに成功する。これにより移動速度は向上するが、耕さなければ迷う可能性があると気づく。しかしクロたちの存在により道案内が可能だと発想を転換する。自転車化は失敗したものの、森での探索効率向上という新たな可能性を得たのである。
11 川
川との遭遇
手押し車を用いた探索は一度は迷子を招いたが、クロたちの助けで帰還に成功する。行動範囲が広がった五日目、街尾火楽は上流の沢を発見する。幅五メートルほどの清流は冷たく澄み、さらに進むと岩壁を流れ落ちる滝に辿り着いた。高さ七、八メートルの斜瀑である。
道の開通
滝と寝床を結ぶため、『万能農具』を用いて道を開削する。昼は耕し、夕刻は手押し車で帰還する工程を繰り返し、十五日かけて約五キロの道を開通させた。これにより水源への安定した往復が可能となる。
水利用構想
目的は水の大量確保である。井戸水の運搬負担を解消し、畑や将来の水田、さらには風呂用の水も得たいと考える。しかし直接水路を寝床まで引けば防御上の弱点となるため、畑の外側に百メートル四方、最深五メートルのため池を造成する計画を立てる。十日で掘削を終え、排水路も整備した。
水路建設の試行錯誤
滝上部からため池へ水を導く方法を検討する。木製は脆弱で固定困難、石材は高さ維持が難しいと判断する。最終的に土を『万能農具』で硬化させる案に到達する。材料は豊富であり、理論上は実現可能である。こうして街尾火楽は、長期事業となる水路建設に着手したのである。
12 水路作り開始
水路工事の難航
ため池側から滝へ向けて土を盛り、『万能農具』のハンマーで固める作業を開始する。しかし進捗は遅く、十日で五百メートル程度。全体の十分の一に過ぎず、滝に近づくほど必要土量は増える。単純計算では終わらない長期事業であると悟る。
収穫による中断
トマト、アブラナ、サトウキビが収穫期を迎え、水路工事は一時中断する。サトウキビの甘味に涙しつつ、アブラナの種を保存。小麦や大豆、稲の脱穀方法を考えていなかったことに気づき、農業知識の不足を痛感する。稲は水田化せずとも実を付け、常識との差に驚く。
栽培の整理
果実系はまだ結実せず、成長のみが進む。木材確保の将来的可能性に思い至るが、まずは優先順位を整理する。畑はトマト二面のみ残し、他は空け、水路完成を最優先とする。
冬の兆し
三十日後、気温低下に気づき季節の存在を再認識する。来訪から約四か月が経過していると推測し、冬の到来を危惧する。水路工事を中断し、保存性の高いジャガイモ、サツマイモ、ダイコン、ニンジンを急ぎ栽培する。
備えへの転換
寒さ対策として薪を大量に備蓄する。『万能農具』で伐採した木は即座に薪として利用可能であり、冬支度を進める。生活基盤の整備は水路から越冬準備へと軸足を移したのである。
13 冬の準備と新しい住人
冬の失念と備蓄開始
作物の異常な成長速度と穏やかな気候に油断し、冬の存在を失念していたことを自覚する。来訪から四か月近く経過していると推測し、越冬準備を急ぐ。肉の保存のため地下室を掘り、クロたちと協力して兎や猪を確保する。血抜きと内臓処理を徹底し、保存性と味を向上させる工夫も行う。
内臓処理と役割分担
内臓の扱いに悩みつつも、消化器系以外はクロたちに与える方針を決める。心臓付近の石状物も彼らは問題なく摂取する。狩りは主にクロたちが担い、街尾火楽は仕留めと処理を担当する形へと役割が明確化する。
防寒対策の強化
薪の備蓄、草の大量確保に加え、小屋の防寒改修を実施する。壁を二重構造にし、草を詰めて断熱。扉も蝶番を木材加工で自作し、住居としての機能を高める。毛皮利用を試みるも失敗し、防寒着の確保に苦慮する。
巨大蜘蛛との邂逅
水路付近で発見されたのは、二畳以上の体躯を持つ巨大蜘蛛であった。敵意はなく、クロサンの合図で糸を紡ぎ布を織る。高品質な布を献上され、その知能と技術に驚嘆する。蜘蛛は衣服のみならず、毛皮のなめしまで行い、布と組み合わせて防寒着を仕立てる。
新たな同居人
蜘蛛は寝床近くの大木に住み、ジャガイモを好む。布やカーテンの制作、防寒強化に大きく貢献する存在となる。街尾火楽はその名をザブトンと名付け、新たな仲間として迎え入れたのである。
14 ザブトン
見張り役としての蜘蛛
ザブトンは鳴かない代わりに、木を叩いて合図を送る。北一回、東二回、南三回、西四回と教えると正確に覚え、異変の方向まで知らせるようになった。高所にある大木から周囲を監視し、危険を事前に察知する優秀な見張り役となる。
連携による狩り
ザブトンの合図で南へ向かうと、クロニが未知の獣を追い込んでいた。街尾火楽は『万能農具』を構え、冷静に対処して仕留める。解体ではザブトンが糸で吊るし作業を補助し、毛皮の処理まで手際よく行う。生活基盤は連携によって安定していく。
防寒と生活改善
寒さが増す中、ザブトン製の衣服が大きな支えとなる。さらに大きな布袋を作ってもらい、草を詰めた敷布団と掛け布団で暖を取る。雪が舞い始め、保存用作物を急ぎ収穫して地下室へ収納する。果実木の防寒は手が回らず見送る。
冬の暮らしへ
クロたちは犬小屋に籠もり、布で風を防ぎつつ固まって眠る。街尾火楽は冬の間、小物製作や石臼づくりなど内作業に励む決意をする。水漏れしない器の完成や粉加工道具の制作など課題は多いが、ザブトンという新たな同居人の存在が、越冬への大きな力となっていた。
[二章〕同居人
1 冬到来
冬到来
冷たい風が吹き荒れ、本格的な冬が訪れた。吹雪に見舞われる日もあり、雪が積もることもあったが、事前の備えにより生活は維持できた。ザブトンは木の上に籠もり、クロたちは犬小屋か火のそばで過ごす。外出は寒さとの戦いであり、特にトイレへの移動が負担となった。三十日ほど籠もるうちに積雪も見られたが、やがて解ける程度に留まった。
角の脱落と春の兆し
さらに日が経つと、クロイチたちの角が自然に落ちた。季節の変わり目を告げる出来事であり、春の到来を実感する。
新たな同居人
ザブトンの周囲に拳大の小蜘蛛が多数現れる。出産による増員らしく、子蜘蛛たちはザブトン同様にジャガイモを食べていた。ザブトンはしばらく姿を見せなかったが、数日後に再び姿を現す。
春の訪れ
気温は徐々に上昇し、残雪も日陰にわずかに残るのみとなる。クロたちは森へ出るようになり、春の訪れを確信する。厳しい冬を越え、生活は新たな季節へと移り変わったのである。
2 春が来た
角の生え変わり
クロイチたち四匹の角が自然に脱落した。回収して犬小屋に飾ると、意匠性の高い形状が際立つ。年一回の生え変わりらしく、クロとユキの額にも新たな小角が芽吹き始めた。種族特性への理解が一歩進む。
春作の計画
冬の消費を踏まえ、味の濃い作物を導入する方針に転換。ニンニク、タマネギ、ネギを新規に試す(犬への給餌は不可)。併せて茶の栽培も検討。定番のトマトとジャガイモを各二面、果樹二面、残り二面にキャベツとほうれん草を配置し、栄養のバランスを整える。
防御設備の点検
丸太柵は異常なし。堀では牙兎が一匹死亡しており、衛生を考慮して肥料化。ため池には雪解け水が溜まっていた。底は硬化済みで漏水はないが、排水路より水位が低く自然排水は不可のため当面放置とする。
水路工事の再開と改修
滝からの導水工事を再開。勾配に不安はあるが、まずは滝まで到達を優先する。構造が森を遮る壁状になっている点に気づき、動物と自身の通行確保のため複数箇所に通行穴を先行開削。機能と生態系への配慮を両立させた。
3 クロイチたちの旅立ち
四匹の出立
春の暖気が安定した頃、クロイチ、クロニ、クロサン、クロヨンが揃って現れ、一吠えの後に四方へ走り去った。角は立派に生え変わっている。クロとユキの仕草から、四匹は伴侶探しに出たのだと悟る。納得と同時に寂しさが残る。
畑の守り手
四匹が不在となるが、畑はザブトンの子蜘蛛たちが防衛を担う。糸で鳥を絡め取り、害虫も捕食。数は百匹以上に増え、やがて脱皮して雑誌大まで成長する。土運びも手伝い、水路工事の分業が可能になった。効率は明らかに向上する。
水路の進捗と欲求
六十日で水路は半分まで到達。目的は水田だけでなく、風呂の実現でもある。ザブトン製の布の恩恵で入浴欲求が強まり、工事への意欲が高まる。
帰還と増員
最初にクロニが伴侶を連れて帰還。続いてクロサン、クロイチ、クロヨンもそれぞれのパートナーと戻る。全員無事であったことに安堵する。負傷の跡はあるが致命傷はない様子。新たな家族の増加は喜ばしいが、名付けと食料確保の課題が浮上する。
次なる覚悟
やがて各カップルの出産も見込まれる。個体数増加を見据え、畑の拡張と資源管理が必須となる。喜びと責任を受け止め、街尾火楽は生活基盤のさらなる強化を決意した。
4 クロイチたちのパートナー
名付けと関係性
クロイチの伴侶をアリス、クロニの伴侶をイリス、クロサンの伴侶をウノ、クロヨンの伴侶をエリスと名付けた。覚えやすさを優先し、アイウエオ順で統一する。中でもウノはよく懐き、遊んでいるとクロサンに連れ戻される様子が印象的であった。
犬エリアの整備
新たな家族のため、川と反対側に十六面分の区画を確保し、丸太柵で囲った。堀は隔離の印象を避けるため埋め戻す。各カップル用に四畳半程度の小屋を建設し、井戸も新設。トイレ用の浅い穴と衝立も用意し、生活基盤を整える。この区画を「犬エリア」と呼ぶことにした。
生活の安定
新しい面々もトマトを好み、フライングディスクにも夢中になる。タマネギを口にしたエリスに焦る場面もあったが、問題は起きなかった。とはいえ油断は禁物とし、給餌管理に注意を払う。
茶の試行錯誤
冬の間に植えた茶の木が順調に育ち、新芽を摘んで試作を開始する。焙煎の知識不足から失敗を重ねるが、試行錯誤の末に常飲可能な味へ到達する。茶漉しがないため直入れで飲む不便さは残るが、生活の質は確実に向上した。
家族が増え、住環境も拡張された。食料と設備の整備は続くが、日常は着実に豊かさを増している。
5 畑を拡張
新畑エリアの造成
家族の増加を見越し、既存畑の南側に十六面分の新畑エリアを造成した。水路工事は遅延するが、冬備蓄と出産期の食欲増大を考えれば拡張は必須である。既存区画は実験用とし、耕作条件や作物反応を検証する場に位置付けた。
協力体制の確立
ザブトンの子らは害虫駆除に加え、トマトやナスなどの収穫も担当する。箱への整頓まで行う働きぶりである。アリスの背に乗って移動する姿も見られ、犬たちとの共存関係が深化した。クロたちは収穫に挑むが、食欲が勝り断念する。
出産前後の負荷増大
ユキたちの腹が目立ち始めると、狩りは雄に集中する。雌の食欲は旺盛で、解体処理の負担が増す。やがてエリスを皮切りに、アリス、クロサン、ユキ、イリスが相次いで出産し、一気に子が増える。食事は二カ所で用意する体制となった。
狩猟と成長
ウノは単独で巨大な猪を仕留める成果を示す。運搬は困難であったが、確かな戦力となった。群れ全体が家庭を持ち、責任感を帯びていく様子がうかがえる。
漁労の試行錯誤
魚食を求めて川へ向かうが、『万能農具』は釣竿化できない。仕掛けを工夫して三十センチ級を確保するも、味は泥臭く不評。牙を持つ魚の存在など、この世界の生態の違いも確認された。新たな食料源としては課題が残る結果であった。
畑と家族は拡大し、生活は一層忙しさを増した。基盤強化の道のりは続く。
6 冬の備えと全裸少女?
冬支度と不安
寒気が戻り始め、子犬たちも狩りに出られるほど成長した。地下室を増設し備蓄は十分だが、水路未完成と塩未確保が懸念材料である。肉からの塩分摂取に望みを託すが確証はない。来年の優先目標を塩の確保、水路完成、そして伴侶探しと定める。
木工の進展と風呂計画
樹脂に頼らぬ木組みのみで水漏れしないマスの製作に成功。接合角度と内圧対策を改良し、犬エリアの水飲み場で実用化した。檜の育成も視野に入れ、風呂実現へ一歩前進する。
子犬たちの命名
クロの子四匹をクロゴ、クロロク、クロナナ、クロハチと命名。さらに、エリスとクロヨンの間に生まれた白毛の雌をフブキと名付けた。多数の子の中で識別できる個体のみ命名する方針とする。
北側の異変
ザブトンが北側の異常を報告。クロたちが殺気立ち急行する。現場には銀髪の全裸少女が立ち、傷だらけで応戦していた。クロたちの攻撃を受けるたび、少女の身体は幼く縮む。言葉は通じ、「助けて」と訴える。
対峙の開始
街尾火楽は『万能農具』を手に前へ出る。クロたちの警戒は解けぬまま、少女との直接対峙が始まった。
7 野蛮?
救助の試みと反転
街尾火楽は銀髪の少女を庇い、上着を掛けて保護しようとした。しかし少女は首筋に噛み付き、吸血によって急速に成長・治癒する。異変に反応したクロが体当たりで引き離し、群れは少女を徹底的に攻撃する。
吸血の正体
制止後、少女は吸血鬼であると判明する。吸血は回復手段であり、敵意ではないと弁明する。吸血による被害や吸血鬼化の懸念を街尾火楽は確認するが、影響はなく、魅了も効かないと説明される。
追加吸血と完全回復
街尾火楽は安全性を見極めたうえで追加の吸血を許可。少女は小学生程度から中学生、高校生、最終的に大学生相当の女性へと成長し、傷も完全に消える。街尾火楽には貧血等の症状は現れない。これは神から授かった「健康な肉体」の恩恵と推測される。
同居の決断
吸血鬼の女性に敵意はなく、クロたちの警戒も解いた。街尾火楽は彼女を住居へ招き入れる。こうして新たな同居人が加わり、生活はさらに変化の局面を迎えた。
8 ルー
新たな同居人
吸血鬼の名はルールーシー=ルー。呼称は紆余曲折を経て「旦那様」に落ち着く。街尾火楽が受け入れたことでクロたちも受容するが、ザブトンと子らを見て失神する一幕があった。説明後は共存するものの、背後に立たれると緊張する様子が残る。
塩の発見
ルーの指摘で塩不足が判明。井戸の壁から硬い土塩層を削り取り、煮出して結晶を得る方法を確立する。地下約五十センチに土塩層が存在し、ため池予定地にも確認。汚染防止のため覆土し固化処理を施す。念願の塩を安定供給できる体制が整う。
衣服と体格制御
ルーは魔力で衣服を生成可能だが、ザブトン製の高品質な服を好む。体格は小型化が自在で、昼は中学生相当、夜は成人相当へ変化。昼の小型化は街尾火楽への自制促進が目的と明かす。
畑と順応
収穫期に労働力が増加。ザブトンの子らが不得手な根菜を中心にルーが担当し、短期間で順応する。冬支度は計画通り進行。
魔法の実用化
街尾火楽は魔法理論を学ぶが才能不足と判定。実践は断念する一方、ルーの魔法を生活に組み込む。夜間照明は夜明けまで持続し、虫も寄らない。火起こしも魔法で代替。冬を迎え、二人と群れは基盤を固めつつ春を待つ。
9 冬が短く春が来た
春の始動と果実エリア
冬は体感的に短く、春とともに今年の最優先目標を水路完成に定める。北側に五十メートル四方を一面とする区画を十六面造成し、果実エリアを新設。リンゴ、ナシ、ミカン、オレンジ、カキ、モモに加え、ブドウ、パイナップル、バナナ、サクランボ、クリを試験導入。茶も増産する。
狩猟の継続と資源懸念
初獲物は巨大な猪。運搬は街尾火楽が担う。肉の確保は順調だが、森の獲物枯渇を懸念し、捕獲ペース調整を検討。角の生え変わりも始まり、落ち角を各小屋へ飾る。
子らの旅立ちと残留
ザブトンの子らが糸で風に乗り次々と旅立つ。ザブトンは残留組と新たな子蜘蛛の誕生を示し、群れは維持される。続いてクロイチたちの子らも伴侶探しへ出立。一部は残留し内部でカップル成立。血縁回避の行動も確認される。フブキはアリスの子と組み、居残り組となる。
住環境の再設計
増加を見込み、犬エリアに長屋風の大型小屋を複数棟建設。馬房様式で効率化を図る。旅立ちと帰還を前提に収容力を拡張。
衣服と家具の進化
ザブトン製の新作衣服を受領。礼として木製マネキンを製作し、服作りを支援。袋状の織物を座布団へ転用し改良が進む。トイレ用はU字型を提案し採用。さらにソファを試作。ルーの提案で次はベッド整備を検討する。
春は拡張と再編の季節である。人手と住環境を整え、水路完成へ向けて基盤を固める。
閑話 ルー
吸血姫ルールーシーの危機
ルールーシー=ルーは吸血鬼であり、人間の国では一国の軍を動かさねば捕らえられないほどの力を持つ存在であった。しかし現在、インフェルノウルフ十頭以上に包囲され、さらに背後にはデーモンスパイダーも控える絶望的状況に追い込まれていた。逃亡は封じられ、戦闘を選択するも連携攻撃により圧倒され、魔力を失い続けた結果、体は幼児の姿にまで縮小し、消滅寸前に陥った。
ヒラクとの邂逅と救済
絶望の中、人間であるヒラクが現れた。ルーは本能に従いヒラクの血を吸い魔力を回復するが、ヒラクの命令によりインフェルノウルフたちは攻撃を停止した。ヒラクは敵意を示さず、さらに血の提供を申し出る。ルーは血から魔力を得て完全に回復し、体格と力を取り戻す。ヒラクは吸血鬼であることを知っても恐れず、むしろ受け入れる姿勢を示した。
死の森の主と吸血姫の理解
ルーはヒラクの服がデーモンスパイダーの糸で作られていることや、インフェルノウルフが従っている様子から、彼が死の森の支配者であることを理解した。ヒラクは吸血の影響や危険性を気にせず、ルーを家へ招き入れた。ルーは自身の魅了効果すら彼に通じないことに驚きつつも、彼の善意を受け入れた。
求婚と新たな人生の始まり
互いに自己紹介を終えた後、ヒラクは吸血鬼であることを理由に拒絶することなく、共に生きることを望んだ。ルーはこれを求婚と受け止め、彼の伴侶となる決意を固める。吸血鬼である自分を恐れず受け入れた存在に対し、深い愛情と感謝を抱くようになった。
吸血鬼としてではなく、妻としての幸福
ヒラクとの生活はルーにとって新たな幸福であった。強大な吸血姫ではなく、一人の妻として受け入れられたことに安らぎを感じる。彼との日々は愛情に満ちており、将来や家族の可能性にも思いを巡らせる。かつて孤独に生きてきた吸血姫は、死の森で初めて真の安住の地を得たのである。
10 翼のある女性
再び北の異変
ザブトンの報せで北に異常を察知。クロたちが急行し、街尾火楽とルーが追う。現場では白翼の天使族の女性が群れに甚振られていた。吸血の危険がないと判断したのか、クロたちは手足や翼に噛みつき制圧している。街尾火楽が制止し、事態を収める。
天使ティアの来訪
女性はティアと名乗る天使族。ルーとは旧知で、かつて対立関係にあった様子。ティアはルーを追って「死の森」へ到達したという。理由は、ルーが街で騒動を起こし賞金首となっているための追跡であった。
関係の変化
ルーは自らの非を認め、この地での争い停止を提案。ティアも了承する。ルーは街尾火楽を「旦那様」と紹介し、三者の関係は一時的に和解へ向かう。クロたちの存在が抑止力となっていることも両者は認識する。
小屋での決着
小屋へ招いた後、ルーの強引な主導で三者の距離は急速に縮まる。ティアは抗議するも、最終的に同居を受け入れる形となる。こうして天使族ティアが新たな住人として加わり、共同生活はさらに賑やかさを増した。
11 同居人がさらに増える
ティアの順応と二人の共闘
ティアが同居して十日が経過し、ルーと同様に生活へ順応する。ザブトンへの恐怖で気絶する点も共通していたが、日常は安定していた。ルーとティアは急速に親しくなり、共に食事を楽しみながら協力関係を築く。二人は街尾火楽の体力的負担を考慮し、新たな同居人を増やす必要性を話し合う。
ティアの外出と群れの帰還
ティアは心当たりがあるとして外出する。その間にクロイチたちの子供がパートナーを伴って帰還し始める。多くは負傷していたが無事に戻り、新たな仲間も群れへ加わる。クロたちが仲介することで新参の犬たちも打ち解け、群れの規模は拡大した。
特異な個体マサユキの誕生
イリスの子の雄は三匹の雌を伴って帰還する。争いはなく安定した関係を築いていたため、街尾火楽はその個体を「マサユキ」と命名する。複数の伴侶を持つ存在として象徴的な個体となり、群れの多様性を示す例となった。
生活基盤の拡張
群れの増加により長屋型の小屋は有効に機能する。狩りの成功率も高く、街尾火楽は血抜きや解体作業に追われる日々を送る。農作業と並行した多忙な生活が続く中、群れと生活基盤は着実に拡大していった。
新たな来訪者の予兆
数日後、ティアが帰還する。その背後には戦装束を纏った七人の女性が同行していた。新たな同居人の到来により、生活はさらに大きく変化する兆しを見せる。
12 ハイエルフ
七人の来訪
ティアに伴われ、リア、リース、リリ、リーフ、リコット、リゼ、リタの七人が来訪。種族はハイエルフで、二百年前に人間の戦争で集落を失い、放浪の末に定住地を求めているという。年齢は三百〜四百歳台だが外見は若い。労働力としての価値も高く、街尾火楽は同居を許可する。
住環境の整備
南西エリアを十六面で区画し、防衛のため丸太柵と堀を設置。井戸、トイレ、地下室、ゴミ捨て場も整備。建設は七人が主導し、十日で二階建て高床式ログハウスを完成させる。大広間兼ダイニング、左右の倉庫、二階の個室八室という構成で、一室は空き部屋とする。内装は街尾火楽が担当。
生活への順応
七人は畑作物の味に感動し、弓術で狩りにも参加。ザブトンとも衣類面で協力関係を築く。呼称は最終的に「村長」で定着。
繁殖の申し出
定住の条件として「種族存続のための繁殖」を明確に提示される。女性陣の協議でローテーションが決定し、街尾火楽の拒否は通らず。南西エリア中央に家を建てた理由も、将来的な増員を見越したものであったと判明する。
拡張する共同体
こうして吸血鬼、天使、ハイエルフ、インフェルノウルフ、デーモンスパイダーが共存する体制が整う。生活はさらに賑やかさと責任を増し、街尾火楽は慰めに来たマサユキに感謝しつつ、新たな局面へ進む。
閑話 リア
流浪するハイエルフの現状
リアはハイエルフの一族の長であり、かつての村を戦争で失い、「死の森」で流浪生活を続けていた。森は強力な魔物が支配しており、縄張りの境界に生じる不安定な安全地帯を見極めながら移動を繰り返すことで生存していた。一族は三十人以上から八人にまで減少しており、滅亡の危機に直面していた。
天使族ティアとの遭遇
ある日、天使族ティアが吸血鬼を追ってリアたちのもとを訪れた。ティアは単独でキラーラビットを仕留める実力を持ち、死の森を自在に移動できる存在であった。ティアは一夜を共にした後、森の中心へ向かって去った。この時点でリアたちはティアの真意を知らなかった。
定住地の提案
約一ヶ月後、ティアは再びリアたちの前に現れ、定住可能な場所を紹介できる可能性があると告げた。ただし、それは保証ではなく、リアたち自身が定住を願い出る必要がある条件付きの提案であった。財産を持たないリアたちは対価を危惧しつつも、一族存続のため覚悟を決め、案内を受けることを決断した。
死の森の中の異常な拠点
リアたちが案内された先には、死の森の常識を覆す光景が広がっていた。硬い大地に畑が作られ、丸太小屋が建ち、魔獣インフェルノウルフやデーモンスパイダーと共存する男、街尾火楽が存在していた。その圧倒的な力と異質な環境に、リアたちは衝撃を受けつつも、こここそ求めていた安住の地だと確信する。
無償の受け入れと驚愕
リアたちは頭を下げて定住を願い出たが、街尾火楽は対価を求めることなく受け入れた。その寛大さにリアは深い感銘を受ける。同時に、街尾火楽が死の森の硬木を容易に伐採し、建材を瞬時に加工する様子を目の当たりにし、その力の規格外さを理解した。
定住と一族存続への決意
リアは一族の存続のため、この地に根を下ろす決意を固める。安定した食料と安全な住環境は、一族にとって長年求め続けた理想であった。リアは街尾火楽の存在を一族の未来を支える柱と認識し、この地で生き続けることを誓うのであった。
13 エルフに対する認識
理想像と現実の乖離
リアたちが来た直後、街尾火楽はエルフ像との違いに驚く。森と共に静かに暮らし、火や鉄を避ける種族という先入観に対し、リアは即座に否定する。火を使わなければ生きられず、森を過度に神聖視すれば即座に死ぬと断言する。流浪生活で培った現実的な生存技術こそが、彼女たちの本質であった。
農耕技術とパン作り
リアたちは小麦の脱穀・製粉に熟達し、発酵種を用いてパンを焼く。街尾火楽が後回しにしていた工程を補完し、農業面で大きな戦力となる。定住の難しさや繁殖の条件も現実的に語られ、彼の中の幻想的なエルフ像は崩れていく。
鍛冶と採掘の能力
さらにリアたちは鍛冶技術を持ち、矢尻や刃物を自作してきたと明かす。二百年の流浪の中で、多くの技能を身につけていた。炉の建設や採掘も提案し、共同体の生産基盤を強化する方向へ動き出す。
拡張する農地と労働力
農地は八ヘクタール規模に達し、新畑エリアも拡張される。水路作りにもリアたちとザブトンの子供たちが協力し、作業効率は向上する。自力農業の体制を整えることが今後の課題とされる。
増加する家族と識別の課題
クロたちは百頭以上に増え、出産ラッシュも続く。個体識別は角の形や光で可能だが、街尾火楽には見分けが難しい。名前付けも限界に近づき、群れの規模拡大を実感する。
果実の収穫と生活の充実
実験的に植えた果樹が実り、リンゴ、ナシ、ミカン、オレンジ、カキ、モモが収穫される。ザブトンやルー、ティア、リアたちそれぞれに好みがあり、共同体の食生活は豊かになる。一方で同居人の増加により、収穫量や狩猟圧への不安も芽生える。
再定義されるエルフ像
リアたちは自然と調和する幻想的存在ではなく、過酷な環境で技術を磨き続けた実務的な種族であった。街尾火楽は自らの先入観を放棄し、現実に即した新たな理解へと至る。
14 異世界物のお約束 リバーシとチェス
翼と飛行の実態
ティアの翼は装飾ではなく実際に飛行可能であり、収納も自在であった。ルーも飛行能力を持つが、いずれも頻繁には用いない。畑付近で飛行した際にザブトンの糸に絡まる失態を重ね、以後は慎重になる。魔法と異世界という前提が、細かな理屈を不要にしていた。
料理と調味料への思索
胡椒をはじめとする調味料が植物由来であることを再認識し、来年は胡椒やレモン、ワサビ、ゴマ、トウガラシ、ショウガ、オリーブの栽培を目標とする。料理は主に街尾火楽が担当し、焼く・煮る・蒸す・揚げる・炒める・茹でるなど多様な手法を用いる。作物の質の高さと『万能農具』の恩恵により評価は高い。
冬籠りと生活改善
冬は小屋に籠もり内職を行う。ルーとティアは魔術準備や薬草加工に励み、研究室兼住居の新築を要望する。リアたちはログハウスで小物制作を行い、カゴやカバンを量産する。ザブトンは冬眠するが、事前に布地を大量に提供していた。
娯楽の導入
冬の娯楽としてリバーシとチェスを制作する。リバーシはリアたちに好評を博し、チェスはルー、ティア、さらにクロたちにも受け入れられる。クロたちは規則を理解し、専用の駒を用意すると高度な対局を行うようになる。街尾火楽は実力差を自覚し、威厳維持のため対局を控えることを検討する。
冬の点検と雪遊び
天候の良い日は柵や堀の点検を行い、森の警戒を怠らない。雪だるま作りが始まり、特にティアが夢中になる。手袋を作って与えるなど、冬の穏やかな時間が共有される。
こうして冬は、労働と準備、そして娯楽に満ちた静かな充実期として過ぎていく。
15 スライムが来た春
春の目標と新たな問題
春を迎え、街尾火楽は水路完成、新居建設、そして長らく放置していた排泄物貯留部の清掃を目標に掲げる。ルーとティアの魔法で発酵分解を試みるが、強烈な悪臭が発生し使用不能となる。早急な対策が必要となった。
スライム導入案
ティアは都市で下水処理に利用されるスライムの存在を提案する。排泄物や死骸を消化する掃除屋的生物であり、凶暴ではないという。ティアが十日で捕獲を引き受ける間、街尾火楽は旧トイレを封鎖し、新たなトイレを設置する。
十七匹の新住人
ティアが持ち帰ったのは拳大の野生スライム十七匹。クロとザブトンが捕食しないことを確認し、トイレ各所に配置する。旧トイレには十匹を投入し、処理を委ねる。
心理的障壁
実用面では有効だが、スライムが下にいると意識することで街尾火楽は用を足す際に躊躇を覚える。他の同居人は平然としており、慣れの問題であると理解する。
こうして春、新たな住人スライムが加わり、共同体は衛生面でも一歩前進することとなった。
16 クロたちの求婚とキノコ
旅立ちと成長
今年もザブトンの子供たちが旅立つ。残る者もおり、新たな子も生まれる。最初に残った子はザブトンの四分の一ほどに成長していた。クロたちは角の生え変わりを迎え、角を回収して地下室へ保管する。角が生えると求婚の旅に出るため、それまで遊びや訓練を行う。
遊具と彫刻
激しい争奪を避けるため、木球を獣皮で包んだボールを制作し好評を得る。狩り訓練用に猪型の木像を作るが一日で破壊される。クロの要望に応じて自身の彫像を制作し、社の前に狛犬のように配置。ユキの像も作るが、より野性味が強く仕上がる。
魚の活用
水路整備と並行し、魚の泥臭さ対策をリアたちから学ぶ。清水で数日絶食させることで改善するという。岩を削った水槽で試し、白身魚の味を確認。定期的な確保を決め、食卓が豊かになる。
求婚の実態
クロたちの求婚は、求愛・勝負・話し合いで決まる。基本的に雌が主導し、雄は狩りで強さを示す。戦闘は致命的にならない範囲で行われる。過去にクロとユキが負傷していた件から、外部に強敵が存在する可能性を再認識し、警戒を強める。
キノコ栽培の成功
これまで避けていたキノコに挑戦する。『万能農具』の特性を応用し、木材を菌床としてシイタケとブナシメジの栽培に成功。重要なのは明確なイメージと適切な土台であると再確認する。マツタケは地面と赤松が条件と推測し、赤松の育成を開始。長期計画として期待を寄せる。
17 新しい住人と水路の完成と風呂
巨大蜂の新たな定住
ザブトンの子供が糸で縛った巨大な蜂を連れてきた。全長三十センチほどの女王蜂であり、ザブトンの子供は飼育を希望していた。安全性を確認したうえで、北の果実エリアに巣用の小屋を建設する。やがて巣が完成し、通常サイズの働き蜂に加えて中型の兵隊蜂も誕生する。蜂の存在により、将来的なハチミツの生産が期待されるようになった。
水路の完成と農業基盤の確立
長期間取り組んできた水路がついに完成した。ため池へ安定して水が流れ込むことを確認し、農業と生活の基盤が大きく向上する。水路の完成により水の確保が容易となり、今後の発展の可能性が広がる。
風呂小屋の建設
水路完成を機に、念願であった風呂小屋の建設を開始する。沸かし場、洗い場、湯船、脱衣所を備えた本格的な構造を整え、石窯で沸かした湯を水路で湯船へ送る仕組みを構築する。排水にはスライムを利用した浄化設備を設け、環境への配慮も行う。湯船は大型で、景観を楽しめる窓も設置された。
風呂の導入と生活の変化
この世界では風呂の習慣がなく、住人たちは使い方を知らなかったため、実際に入浴して見せることで説明する。久しぶりの入浴により、身体と精神の両面で深い安らぎを得る。住人たちも風呂の快適さを理解し、入浴は生活の重要な要素として定着することとなった。
水路の完成、蜂の定住、風呂の導入により、村の生活環境は大きく向上し、文明的な生活へと確実に近づいたのである。
18 風呂の周辺整備とハイエルフ追加
風呂周辺の防備強化
風呂小屋はため池南西側に設置され、南西エリアを拡張して取り込まれた。丸太柵と堀を増設し、水路を妨げない形で外周を防備する。入浴時は無防備になるため、視界を確保しつつ侵入を防ぐ設計とした。安全と節度を両立させるための整備である。
水汲み機構の導入
水運搬の負担軽減のため、水車式の汲み上げ装置を設置する。多数の木桶を取り付けた水車を手回しで動かし、石窯へ水を供給する仕組みである。完全自動ではないが、労力は大幅に軽減された。風呂用の椅子や手桶も整備され、設備は充実する。
クロたちの帰還と増員
クロの子供たちがパートナーを伴い帰還し、犬エリア拡張の必要が生じる。マサユキには新たに二頭の伴侶が加わっていた。群れは順調に拡大している。
ハイエルフ五人の来訪
クロの子供に導かれ、ラファ、ラーサ、ララーシャ、ラル、ラミの五人のハイエルフが到着する。リアたちと同様に姉妹・従姉妹で構成された一族であり、保護後に定住が決定する。当面は既存のログハウスに同居するが、住居新築が急務となる。
建設速度の飛躍
五人の加入により建設速度は飛躍的に向上する。ラファたちのログハウスは五日で完成。その勢いのまま、街尾火楽の新居建設も進む。木材調達と加工は街尾火楽が担当し、組み立てはハイエルフたちが主導する。気付けば大規模な新居が完成していた。
共同体は防備、生活基盤、人口のすべてにおいて拡張を続け、村としての体裁をさらに強固なものにしていく。
19 マイホーム
予想外の大邸宅
完成した新居は、基礎のしっかりした大規模なログハウスであった。個室の確保や村長の家としての体裁を理由に拡張された結果である。東西に長い長方形構造で、中央に二階吹き抜けの大ホールを備える。ホールは集会所としての利用も想定されていた。
内部構造と生活機能
一階左側は街尾火楽の私的空間で、寝室・私室・倉庫・専用トイレを完備する。一階には合計三カ所のトイレが設置され、スライムを活用した衛生設備が整えられた。右側には食堂と室内キッチンがあり、屋外調理場へと続く動線も確保。地下には食料庫が設けられている。
二階左側は個室群で、ルーとティアがそれぞれ部屋を確保。右側は作業場や倉庫用途の部屋が並ぶ。採光も十分で、居住性は高い。
防備の変化と花壇整備
旧寝床との間の柵と堀は撤去され、代わりに一部を花壇へ転用。薔薇を植え、観賞用植物の栽培実験も兼ねることにした。前小屋は解体せず、倉庫として活用する。
建設の立役者たち
建設を主導したのはリアとラファたちだが、ティアの魔法によるゴーレム運用も大きく貢献した。用途に応じて一体から三十体まで使い分け、作業効率を飛躍的に高めた。
また、この森の木材は極めて硬く優秀な建材であることが判明する。伐採と加工は困難だが、街尾火楽の「万能農具」により問題は解消されていた。結果として、建設速度向上の一因となっていた。
ザブトンとの連絡機構
ホール天井には鳴子が設置され、糸でザブトンの大木と接続された。外部からの合図を室内で受け取るための仕組みであり、防衛体制も強化された。
増え続ける子犬たち
今年も多数の子犬が誕生し、把握が困難なほど増加する。その中にフブキと同様の純白の個体が二頭確認された。成長後に識別でき次第、名付ける予定である。
新居は機能性と象徴性を兼ね備え、共同体の中心としての役割を担う拠点となった。
20 建築ラッシュと周辺事情?
加工施設の整備
新居完成後も建設は続き、作業小屋・乾燥小屋・燻製小屋が新設された。特に燻製小屋は保存性向上のため強く求められ、肉の長期保存体制が整う。収穫物の加工拠点が整備されたことで、農作業は一段と安定した。
調味料への挑戦
胡椒、ゴマ、トウガラシ、ショウガを収穫。レモンやオリーブは未結実、ワサビは水田管理中である。将来的にはシナモン、クローブ、ナツメグ、カルダモン、クミン、ローリエを育て、最終的にカレーを目指す計画を立てる。少量多品種生産で食の質向上を図る。
竹の実験栽培
竹は地下茎で拡大するため、森の一角十メートル四方を耕し実験栽培を実施。耕作地内のみで急成長することを確認する。拡散は抑えられたが成長速度は予想以上であり、慎重な管理が必要と判断。切り出した竹は建材や食器として活用され、高評価を得る。
冬支度と鉄加工
冬を迎え、リアたちは炉に付き鉄製品の製作を進める。街尾火楽は直接手伝えない代わりに料理で支援する。調味料の効果により食卓は充実し、味噌・醤油・乳製品・卵への欲求が芽生える。外部からの購入や家畜導入を視野に入れ始める。
魔王勢力圏という事実
この地は特定の領主の支配下ではないが、勢力圏としては魔王の影響下にあるとルーから知らされる。徴税や干渉はなく、街尾火楽が築いた土地は事実上の自領と認識される。不安は残るが、現実的な脅威は確認されていない。
増える人口と内面の葛藤
ラファたち五人の加入により、共同体はさらに拡大する。全員が整った容姿を持ち、街尾火楽は内面的な自制心との戦いを意識する。共同体の発展とともに、生活基盤と精神面の両立が求められる状況となった。
[三章] 外が騒がしい
1 ワイバーンに襲われた春
平穏な春と突然の警報
冬の間、街尾火楽は料理に没頭していた。ルーやティアは常に美味しいと評価するが、街尾火楽は本音かどうか疑っていた。そんな穏やかなやり取りの最中、ザブトンの警報が鳴り響く。異常の規模は音の大きさから明白であった。
空からの襲撃
上空には巨大なワイバーンが出現する。全長二十メートル級と推測される個体は急接近し、直径十メートル級の炎球を大木へ放つ。ルーとティアが防御魔法で直撃を防ぐも、破片が畑や建物に降り注ぐ。リアたちは消火に奔走する。
街尾火楽の反撃
静かな怒りの中、街尾火楽は「万能農具」を槍形態で投擲する。槍は一直線に飛翔し、ワイバーンの片翼を削り落とす。さらに追撃し、三重の結界を貫通して胴体に直撃。瀕死状態で墜落する。クロたちが現地へ駆け、とどめを確認する。
被害確認と冷静化
被害はトマト畑の一部損傷とザブトンの糸焼失に留まる。ルーとティアの初撃防御が大きかった。襲撃は魔王の指示ではなく野良個体の可能性が高いと判断される。極めて稀な遭遇であった。
戦果と宴
ワイバーンは解体され、食材として活用される。肉は美味とされ、冬に研究した調味料と合わせて宴が開かれた。
周辺への波紋
しかし、この撃墜は周辺勢力に大きな衝撃を与える。魔王城では「鉄の森」のワイバーン撃墜に動揺が広がる。四天王の仕業かと憶測が飛び交う。南の山の竜も攻撃の威力を目撃し、敵対回避と友好締結の必要性を検討する。
街尾火楽にとっては自衛行動に過ぎなかったが、その一撃は周辺世界の勢力図に静かな波紋を広げ始めていた。
2 酒が欲しい
酒造への着想
ワイバーン討伐後の宴で、街尾火楽は酒の必要性を痛感する。米から日本酒、ブドウからワインという発想に至るが、日本酒は麴菌の問題があるため研究課題とする。当面は工程が単純なワイン醸造を目標に定めた。
酒用ブドウ畑の拡張
既存の甘味用ブドウではなく、ワイン向け品種を念じながら新畑エリア東側を大規模拡張する。畑は八面×八面の六十四面となり、その半分三十二面を酒用ブドウに割り当てた。衝動的な拡張ではあったが、基盤整備は進む。
調味料と果実エリアの整備
追加の調味料作物を家周辺の初期畑へ少量栽培。オリーブは果実エリアに増設する。果実エリアも北側へ拡張され、四面×八面規模へ拡大する。
蜂の増殖と蜂蜜確保
ザブトンの子供たちが管理する蜂は順調に繁殖し、四カ所へ巣分けされた。保護用の屋根を設置し、最初の巣から約三百五十ミリリットル相当の蜂蜜を採取する。量は少ないが品質は高く、共同体に好評であった。
樽製作の開始
ララーシャが樽製作技術を有していることが判明する。街尾火楽が木材を加工し、ララーシャが組み上げる体制で水漏れのない樽を完成させる。酒醸造を見据え大量生産を開始する。二百年ぶりの作業ながら技術は確かであった。
鍋料理と味の追求
作業の合間、鍋料理が人気を博す。昆布や鰹節がないため肉出汁主体であるが受けは良好。さらなる改良のため調味料拡充や柚子栽培を検討する。現在はシイタケによる出汁代替の研究を進めている。
酒造計画は即時実現には至らないが、農業・加工・保存の基盤は着実に拡張されつつあった。
3 ため池の改良と神様に感謝
春の恒例と生活の変化
ザブトンの子供たちの旅立ちを見送り、続いてクロたちの角の生え変わりが始まる。例年ならパートナー探しで一部が外へ出るが、今年は内部で組み合わせが成立し、大きな移動はなかった。
ため池の二段構造化
水源から一直線に流入していたため池に改良を施す。ゴミや生物の流入対策として、手前に水深五十センチの貯水池を新設し、竹柵で区切る。逆ピラミッド型で深さ五メートルある本体への直接流入を防ぐ仕組みである。
排水系統の浄化強化
風呂排水と同様、ため池の排水路にも浄化用プールを設置し、スライムを投入する。川へ流れる前に浄化する二重構造とした。スライムは自然増殖し、自主的に必要箇所へ移動することも確認された。色違い個体も見られるが、無害であると判断する。
ハイエルフ勧誘計画
森に散在するハイエルフへ移住を呼びかけるため、リーフとラーサを派遣する。護衛はクロの子供十頭。帰還は冬までを予定し、新規住居の準備も並行して進める。
ワイン醸造開始
酒用ブドウが収穫期を迎え、石臼で破砕し樽へ仕込む。大樽十六基分を仕込み、潰し方を変えて複数パターンを試す。成功は未知数であるが、共同体全員が期待を寄せ、ブドウ畑継続で意見は一致する。
収穫分担と労働体制
穀物や根菜の収穫は街尾火楽が中心となり、ザブトンの子供たちはハサミで対応可能な作物を担当する。労働分担により効率は向上し、消費増加にも対応できている。
作物成長の検証
タマネギで実験を行った結果、街尾火楽が耕した土地なら「万能農具」なしでも育つが、他所では腐敗することが判明する。成長速度の異常な速さは「万能農具」による影響であると推測される。果実系は結実まで高速成長し、その後は通常速度に戻る。
生活基盤の改良と農業検証を通じ、街尾火楽は改めて自らの力と神への加護に感謝するのであった。
4 エルフ追加
クロたちの出産変化と犬エリア拡張
今年のクロたちの出産率は約半数に留まった。これまでほぼ全員が出産していたため異例である。自律的な調整の可能性も示唆される。ユキも出産しなかったが、それでも頭数は増加するため、犬エリアを東へ同規模拡張し、畑四面×八面へ拡大する。長屋も新設された。
ハイエルフ四十二人の来訪
リーフとラーサが勧誘に出ていた一団が帰還し、同行者は予想を大きく上回る四十二人。全員若い女性であった。かつて集落が襲撃された際、男性は戦闘、女性は避難に回ったという背景が語られる。
放浪の理由
避難先の他部族に属すると女性の扱いが良くないため、若い女性たちは独立放浪を選択していた。移住した男性や子供は他部族に保護されたが、その部族も人間に滅ぼされたという。生存者は再び分散し、男性は貴重な存在として保護下に置かれているため、奪還は争いを招く可能性が高い。
住居不足と建設急務
想定を超える人数により住居が不足する。急ぎログハウス建設が進められる。街尾火楽は労働参加を条件に定住を認める。
統率体制の整備
人数増加に伴い代表を設ける必要が生じ、リアが代表を務めることとなる。新規加入者も格付けを終え了承済みと報告される。詳細には踏み込まず、街尾火楽は新参者が円滑に馴染むよう配慮を指示する。
共同体は急速に拡張し、人口構成も大きく変化した。安定運営のための組織化が進められていく。
5 フローラと鬼人族メイドと牛
吸血鬼フローラの来訪
春の終わり、空中を浮遊しコウモリを従えた女性が現れる。クロたちは妊娠中の仲間を守るため攻撃し、彼女を幼児化させる。ルーの到着により彼女は従姉妹のフローラ=サクトゥであると判明する。ルーを探して訪れた吸血鬼であり、街尾火楽がクロたちの主であると知ると態度を改める。
フローラは滞在中、ザブトンや作物、料理の豊かさに驚き、定住を決意する。ただし旧居の整理のため一度帰還する。
鬼人族メイド二十名の加入
冬前、フローラは二十名の鬼人族メイドを伴って再来する。彼女たちは元の屋敷の従者であり、代表はメイド長アンである。命令系統は整理され、吸血鬼側はルーが代表、鬼人族はアンが代表となる。鬼人族は街尾火楽の世話を最優先とし、続いてルーとフローラを支える体制となる。
これにより生活支援体制が強化され、共同体の機能は大幅に向上する。
牛四頭の導入と牧畜の開始
フローラは生活改善のため牛四頭を連れてきた。そのうち三頭は妊娠中であり、将来的な牛乳確保が見込まれる。街尾火楽は犬エリア北側に牛エリアを新設し、牧草地と牛舎を急ぎ整備する。鬼人族メイドは牛の飼育技術を持ち、世話を担当する。
クロたちやザブトンには牛を襲わないよう指示され、牛も徐々に環境に慣れていく。
共同体の拡大と生活基盤の強化
吸血鬼フローラと鬼人族メイド、さらに牛の導入により、村は農業中心の生活から牧畜を含む複合的な生活圏へ発展する。住民数の増加と役割分担の明確化により、共同体は新たな段階へ移行した。
6 ティアが出掛けて冬が来る
共同体の拡大と勢力構成の変化
吸血鬼二名、鬼人族二十名、ハイエルフ五十四名に加え、クロたちやザブトン、蜂、スライム、牛など、多くの存在が共同体に加わり、急速に規模が拡大していた。天使族であるティアは、自らの立場が相対的に弱まったと感じ、勢力の均衡を図るため新たな従者を連れてくることを決意する。
ティアは鶏の確保も兼ねて旅立ち、春頃の帰還を約束した。街尾火楽は彼女の不在に寂しさを覚えながらも、残された共同体の維持に努める。
鬼人族メイドによる生活環境の改善
鬼人族メイドたちは優れた実務能力を発揮し、掃除、洗濯、火の管理などを徹底する。これにより生活環境は大きく改善され、住居は常に清潔で快適な状態が保たれるようになる。ベッドの管理や火の使用も効率化され、冬でも暖かく過ごせる環境が整備された。
彼女たちは主従関係を保ちながら適切な距離感を維持し、街尾火楽に安心感を与える存在となった。
技能分担による生産性の向上
家事を鬼人族メイドが担うことで、街尾火楽は木工などの制作に集中できるようになる。また、ルーとフローラは薬の研究に専念し、各人が専門分野に集中する体制が整う。これにより共同体全体の生産性と機能性は向上した。
一方で鬼人族メイドは料理の知識が乏しかったため、冬の間に街尾火楽が調理技術を教えることとなり、技能の向上が図られる。
新住民の適応と文化の安定
鬼人族メイドは事前知識によりクロやザブトンの存在にも冷静に対応したが、新たに来たハイエルフたちはザブトンの姿に驚き気絶するなど、適応には差が見られた。
それでも全体としては秩序が維持され、役割分担と生活基盤の整備により、共同体は冬を安定して迎えることができた。
7 三人の天使を追加 鶏を持ったリザードマンもいますよ
ティアの帰還と新たな戦力の加入
春の訪れと共にティアが帰還し、新たに三名の天使族と十五名のリザードマンを連れてきた。天使族のグランマリア、コローネ、クーデルは武装した戦士であり、ティアの部下として遊撃および警備を担う存在であった。
リザードマンたちは天使族の従者として仕えており、代表はダガである。彼らは独自の住居を希望し、南西エリアに新たな住居が建設された。ハイエルフたちの協力により、短期間で居住環境が整備された。
鶏の導入と新たな食料供給体制の確立
リザードマンたちは手土産として四十羽の鶏を連れてきた。内訳は雄鶏五羽、雌鶏三十五羽であり、卵の供給が期待された。ただし、雌鶏は毎日産卵するわけではなく、平均して二日に一個の産卵であるため、供給量は一日十個程度と見込まれた。
街尾火楽は将来的な安定供給を見据え、鶏舎を建設し、鶏の飼育環境を整備した。また、クロたちやザブトンに対して鶏への干渉を禁じるなど、安全対策も講じられた。
メイド寮の建設と居住環境の拡張
鬼人族メイドの増加により、既存の住居では収容が困難となったため、新たにメイド専用の寮が建設された。個室、共用設備、暖炉などを備えた住居であり、生活環境はさらに向上した。
これにより、住民の役割分担と生活基盤はより安定し、共同体としての体制が強化された。
警備体制の確立と防衛力の強化
三名の天使族は戦闘能力を活かし、森の警備と巡回を担当することとなった。これは過去のワイバーン襲撃を教訓とした措置であり、被害を未然に防ぐための防衛体制の強化であった。
従来はザブトンの警報とクロたちの行動に依存していたが、専任の警備戦力が加わることで、防衛能力は大きく向上した。
村の成立と『大樹の村』の命名
共同体の拡大により、街尾火楽はこの地が単なる住居ではなく村として機能していることを認識し、名称を決めることを提案した。
議論の末、ザブトンが示した大樹にちなみ、「大樹の村」という名称が採用された。この瞬間、街尾火楽を中心とした共同体は正式に村としての形を持つこととなり、新たな段階へと移行した。
8 酒の完成と来客(魔王の使い)
ワインの完成と宴の熱狂
仕込んでいたワインが完成し、試飲会はそのまま宴会へと発展した。人数の増加もあり消費量は激しく、一度の宴で四樽が空となった。リアやハイエルフたちは強く感激し、鬼人族メイドたちも静かに杯を重ねた。
街尾火楽自身は熟成の甘さを感じていたが、評価は上々であり、酒用ブドウ畑の拡張が決定された。クロたちも一樽分を消費し、酔って千鳥足になる姿まで見せた。以後、ワインは常飲ではなく、特別な宴席用と定められた。
卵と牛乳による料理の進化
牛乳と卵の確保により、料理の幅は大きく広がった。プレーンオムレツは懐かしい味をもたらし、プリンの試作ではカラメルの香りに住民たちが集まった。卵不足により数量限定となり、小さな争奪戦が起きた。
その後、プリンは村内で評判となり、卵は一時的に専用使用となった。鶏の増加が今後の課題となった。
魔王の使者ビーゼルの来訪
村に初めての来客が現れた。魔王の使いを名乗るビーゼルである。周囲にはルー、ティア、フローラ、クロたちが控え、リアやダガも武装して警戒態勢を整えた。
ビーゼルは関係構築のための交渉を求めた。街尾火楽はこの地での生活を認める代わりに、畑作物の収穫物一割を税として納めると提案した。さらに徴収は冬前に来訪して行うことと定め、牛乳・卵・蜂蜜・酒などは対象外とした。
交渉は円滑にまとまり、書面で取り決めが交わされた。結果として村は魔王軍の保護下に入りつつ、実質的な独立性を維持する形となった。
魔王城での評価と誤解
魔王城ではビーゼルが報告を行った。吸血姫、殲滅天使、インフェルノウルフ、ハイエルフ、リザードマン、鬼人族、さらにはグレートデーモンスパイダーの存在まで示唆され、魔王側は強大な戦力に戦慄した。
手土産の果実と、それを包んでいた布がデーモンスパイダーの糸であると判明し、恐怖はさらに増幅された。結果として魔王側は友好関係を維持する方針を固め、大樹の村との関係は安定した形で始動することとなった。
9 来客竜
竜ドライムの来訪
魔王の使者来訪から間もなく、再び来客があった。名をドライムと名乗る由緒正しき竜である。全長三十メートルに及ぶ巨体で現れたが、頭を下げたまま挨拶を行い、執事風の従者が応対を代行した。
手土産として高級な装飾剣を差し出され、ダガが受け取りアンが検分した。目的は南方の山に巣を構える近隣住民としての挨拶であった。
人間形態への変身と宴席
サイズの問題から小型化を求めると、ドライムは人間の姿へと変化した。気弱そうな中年男性の姿で再度名乗りを上げた。
そのまま招き入れ、宴席となる。酒と食事に満足したドライムは滞在を望んだが、執事に諫められ巣へ帰ることとなった。帰路には大量の作物を土産として持ち帰らせた。
来客対応体制への反省
竜の来訪を受け、街尾火楽は村の来客対応体制に課題を見出した。来客を屋外で立たせたままにする現状や、全員が集結する体制は非効率であると判断した。
来客用の建物建設を決定し、出迎え役を基本的に街尾火楽、ルー、ティアの三名とした。ただしアン、リア、ダガらの意向もあり、各種族から数名を加える形に改めた。
警報と合図の整備
ザブトンの警報は危険専用とし、来客用に鐘による合図を新設した。鐘はリアたちが製作したものである。
夜間滞在時の見張りはフローラが担当することとし、役割分担を明確化した。
こうして大樹の村は、来客増加を見越した受け入れ体制の整備を進めることとなった。しかし、体制を整えた直後に再び来客が訪れることになる。
10 来客獣人族
獣人族ガルフ一行の来訪
魔王の使い、竜に続き、鎧を着込んだ獣人族の一行が来訪した。総勢十二名。代表はガルフと名乗り、東の山中にあるハウリン村から友好を求めて来たと告げた。
ルーは威厳ある態度で応対し、全員の所在確認を求めた。森に潜んでいた二名がクロたちに発見され姿を現す。無断潜伏を理由に対応は一段階厳しくなり、一行は建設済みの来客用宿へと案内された。
宿の整備と来客管理
来客用建物は大人数を想定して建てられた平屋であり、「宿」と呼ぶことにした。敷地は柵で囲い、内部は自由だが無断外出は認めないという明確な線引きを設けた。
宿周辺には果樹を植え、目隠しと実利を兼ねた景観整備を進めた。リンゴ、ナシ、カキ、サクランボ、さらにイチゴやスイカなども植えられた。南西エリアは「居住エリア」、街尾火楽の家と大樹周辺は「大樹エリア」と正式に呼称が定められた。
歓迎の宴と外交姿勢
夜には宿で歓迎の宴を開いた。食事は普段よりやや豪華な程度とし、ワインは一人二杯までと制限付きで提供した。ルーやティアは慎重姿勢であったが、街尾火楽は礼を尽くす方針を貫いた。
応対の格は来客の手順や態度に応じて変わる。手土産を持参しなかった点、隠密行動を取った点から、竜来訪時ほどの厚遇とはならなかった。
ハウリン村の事情と目的
宴席での会話から、ハウリン村は五百人規模の山中連合体であり、主に犬系獣人で構成されていることが判明した。狩猟と採掘を生業とし、人間の村との交易で成り立っていたが、最近は関係悪化で停滞している。
新たな交易先として大樹の村に目を付けたのが今回の訪問理由である。また、この地域一帯は魔王領であり、彼らも税を納めている立場であることが明らかとなった。
警戒と友好の均衡
隠れていた二名についてガルフは「初訪問ゆえの警戒」と説明した。万一に備え、村へ報告できる体制を取っていたという。
大樹の村側も慎重に情報収集を行いながら歓待を続けた。敵対の意思が明確でない限り礼を尽くすという姿勢を保ちつつ、警戒を解かない。外交の実地経験が、徐々に積み重ねられていった。
11 ハウリン村
友好の真意と文化差の理解
ガルフたちは帰還した。目的は偽りなく友好であった。手土産を持参しなかったのは、ハウリン村にその風習がないこと、そして経済的余裕がないことが理由であった。
ルーやティアと再確認すると、手土産は裕福な都市や貴族社会の慣習であり、必須ではないと理解した。思い込みで相手を測るべきではないと街尾火楽は認識を改めた。
交易構想と開催地の問題
友好は成立したが、交易については検討が必要であった。形態は通貨ではなく物々交換の市である。複数村が参加するため開催は秋頃となる予定である。
本来は交互開催が慣例だが、輸送負担の大きさからハウリン村側のみでの開催を希望された。大樹の村で商品を用意する負担も大きいが、参加形式であれば取りやめも可能と判断された。
畑の大規模拡張
相談の結果、畑は八×八の六十四面から十六×十六の二百五十六面へと四倍に拡張された。穀物類を中心に、小麦・大麦・大豆・稲・トウモロコシを増産する。
野菜類は従来規模を維持しつつ、アブラナとサトウキビが重点作物として推奨された。油と砂糖は交易価値が高いと判断されたためである。
六十四面は酒用ブドウ畑に充てられている。人口増加と交易需要を見据えた生産体制の再構築であった。
交易候補品の選定
ハウリン村側は主に作物を求めている。果実とワインの評判は特に良かった。
一方で大樹の村側が関心を持ったのは、鉱石製品、塗料、銀製食器、鉄製調理器具、ガラス瓶などである。鉄製鍋やフライパンは石製より圧倒的に扱いやすく、保存容器としてのガラス瓶も有用と判断された。
塗料は宿のフェンスや建物装飾に活用できる。銀製品や薬関連素材にはルーとフローラが強く関心を示した。
食品加工と発酵技術の進展
ワサビ栽培に成功した。ため池近くに水田環境を整備し、『万能農具』で整地と水流調整を行った結果である。ただし用途は未確定であった。
味噌と醤油の製作はフローラへ移管された。分量管理と試行錯誤により品質向上を図る。
麹作成では、『万能農具』を杓文字状にして発酵を願うことで安定した生成が可能となった。専用の発酵小屋を建設し、継続的な実験が進められている。
こうして大樹の村は、生産拡張と交易準備を同時に進める段階へと入った。
12 役割の再確認
各種族の分担整理
人口増加を受け、街尾火楽は村内の役割を整理した。
リアたちハイエルフは建築、収穫、狩猟、採掘を担う主力労働力である。鉄を集め、冬場に加工する体制を整えている。建物は必要に応じて増築され、機能性も向上している。
アンたち鬼人族メイドは生活改善担当である。料理技術の普及、清掃管理、宿の維持運営、新料理や加工食品の研究を進めている。成果は着実に現れ、村の食生活は向上している。
ダガ率いるリザードマンは力仕事を担当する。家畜管理も志願し、鶏と牛の世話を任されている。水辺を好むが就寝はきちんとベッドで行う。
クロたちは巡回と狩猟を担う最古参の戦力である。意思疎通は限定的だが信頼は厚い。
ザブトンたちは縫製と見張りを兼任する。生地や衣類の品質は高く、警報役としても不可欠である。
グランマリア、クーデル、コローネの天使族三名は空からの警戒担当である。休養を挟みつつ巡回体制を維持している。
ルー、ティア、フローラは研究と指揮を担当する中枢である。薬研究、魔法研究、味噌や醤油の製造改良を進め、医療的役割も果たしている。
蜂は蜂蜜、家畜は乳と卵を供給し、スライムも含め生産基盤を支えている。
夜の問題と人口構成
住民はほぼ女性であり、街尾火楽への関心は強い。関係を持つ人数は限定したが、それでも負担は大きい。神から授かった健康な肉体はあるが、精神的余裕には限界がある。
リザードマンに期待を寄せたが、卵生であるため事情は異なっていた。
ルーの懐妊
ルーの懐妊が判明した。村は祝賀に包まれ、同時に希望者が増加した。街尾火楽は責任の重さを実感する。
リザードマン側でも産卵申請が出され、ため池横に専用区画を整備した。五つの卵が並び、孵化まで交代で見守られることとなった。
吸血鬼の変化
ルーの懐妊に際し、吸血鬼は血の契約で増える種族ではなかったのかという疑問が出た。しかし実際に懐妊している以上、種の在り方そのものが変化している可能性が示唆された。
大樹の村は、役割分担の安定とともに、新たな命を迎える段階へと進み始めた。
13 交易という名の物々交換市
出発準備と代表選出
秋を迎え、ハウリン村での物々交換市に参加する日が来た。本来は街尾火楽が赴くつもりであったが、トップが軽々しく動くべきではないと説得され断念した。
激しいジャンケンの末、名代はティアに決定。リザードマン五名、ハイエルフ十名を加えた総勢十六名での参加となった。卵の孵化が近いため、リザードマンは全員参加とはならなかった。
竜ドライムによる輸送
移動十日を想定していたが、ドライムが輸送を申し出た。報酬はワイン一樽である。竜の飛行により一時間足らずで到着可能となり、輸送日数は不要となった。
その結果、準備期間を積み荷作成に充てられた。統一規格の木箱に果実、穀物、硬質野菜、調味料、そしてワイン十樽を詰めた。
ハウリン村での市
ハウリン村側は竜の来訪に驚愕したが、市は無事開催された。最初は警戒されたが、試食の提案により状況は一変した。果実の味が広まり、半ばには全品の交換が成立した。
持参した作物は高評価を得た。ワインも例外ではなく、十樽すべてが交換対象となった。交換できなかった品は一つもなかった。
帰還と成果
ティアたちは予定通り帰還した。交換品は塗料、金属製品、鉱石製品など多岐にわたる。市は成功といえる結果であった。
ワイン全量が交換されたことで、ドライムはやや落胆したが、報告会で提供されると聞き機嫌を直した。
初参加ながら大樹の村は交易先として確かな評価を得た。今後の定期的な参加に向け、基盤は整った。
14 酒を飲みながらの報告会と新しい住人
交易報告会という名の宴
ドライム同席のため、報告会は宿で開催された。
ハウリン村到着時、竜の姿で現れたドライムにより村は一時騒然となったが、なんとか鎮静化。その夜は持参した非常食を消費して宿泊した。
翌日の交換市では当初警戒され客足は遠かったが、試食を始めたことで一気に人が集まり、半日ほどで全品の交換が成立した。
特に人気だったのは果実とワイン。穀物類もすべて交換できたが、多くは村長や名主がまとめて確保したため実需の評価は今後の課題とされた。
ハウリン村の事情
交換後、村長らに引き止められ、今後も市への参加を要請された。また市以外での穀物交易も打診された。
ハウリン村は採掘を主産業とし、鉱石を人間の村へ売って食料を得てきたが、その流通が滞っているため食料事情は厳しい状況にある。遠方からの交易はあるものの安定とは言えず、大樹の村との継続的な交易を強く望んでいるという。
移住の打診
報告の中でティアは、ハウリン村から移住希望者受け入れの打診があったと告げる。食料不足対策としての口減らしの可能性が高い。
問題は、希望者が若い女性のみであったことだった。
街尾火楽は受け入れに前向きな姿勢を示すが、条件として若い男性を数名加えること、そして希望があれば一家単位での移住も認めると伝えるよう指示する。
一方的に助ける関係ではなく、互いに補い合う形を望んだ判断であった。
新たな住人の到着
十日後、ドライムの輸送により移住者が到着した。
獣人族二十五名。内訳は女性二十二名、男性三名。
ただし男性三名は幼児であった。
期待とは異なったが、将来への種として受け止めることにした。
代表はセナ。垂れた犬耳が特徴で、ハウリン村村長の娘である。彼女は奴隷同然の扱いも覚悟していたが、街尾火楽は大樹の村の仲間として迎え入れることを明言した。
当面の住居を用意し、生活に慣れた後は各自の希望を聞く方針とした。世話係には鬼人族メイドのラムリアスが任命された。
こうして大樹の村は、また新たな一歩を踏み出した。
15 獣人族と交易成果
移住者用住居の整備
移住の打診を受けた直後から、ハイエルフたちと協力し、三十名ほどが暮らせる大きな住居を建設した。基本は二〜四人の相部屋とし、いきなり個室で孤立しないよう配慮した。
到着した獣人族は二十五名。幼い男児三名を除き、ほとんどが小中学生相当の少女で、最年長のセナでも高校生ほどに見える年頃であった。家事経験はあり、生活面の問題はなかった。
移住者は多人数家族の次女以降が中心で、村全体の人口構成に致命的な影響はないという。セナが同行したのは、内外に対する示威と責任の表明の意味があった。
文化差と戸惑い
セナは覚悟を決めて移住してきた立場であり、村との関係維持の観点からも特別扱いを避けるべきだという周囲の判断があった。
価値観の違いに戸惑いながらも、関係維持を優先する形となった。前世界の常識とのズレを改めて自覚する出来事であった。
移住者の適応状況
世話係ラムリアスの報告では、移住者は労働意欲が高く、仕事を求める姿勢も積極的であった。
問題点としては、幼い子供たちがザブトンの子供やクロたちを怖がることが挙げられた。しかし村の守護的存在である彼らを遠ざけることはできず、時間をかけて慣れてもらう方針を取った。
男児三名は獣人族の少女たちに世話を任せた。将来的な村の安定を見据えた判断である。
交易成果の活用
ハウリン村との交易で得た品は実用性が高かった。
鉄製の調理器具は料理効率を大きく向上させた。包丁、鍋類、フライパンなどが揃い、調理の幅が広がった。
銀製食器は来客用として確保され、宿や自宅の格が上がった。すでに一部はドライム専用となっている。
ガラス瓶は調味料や薬の保存に重宝され、瞬く間に配布された。山刀や斧、蠟燭、針、毛糸、皮製品などの小物類も生活基盤を底上げした。
蠟燭は魔法が使えない者にとって特に重要であり、原材料が木由来であることも確認された。
村の共有財産という意識
村内に通貨はなく、生産物は基本的に共有財産である。人が増えたことで制度の見直しも考えられたが、住人たちは「すべて村長の物」と答えた。
それが信頼の表れなのか、価値観の違いなのか。大樹の村の在り方は、静かに形を整え続けている。
[終章] 村です
1 税金を持って行かれる
税の徴収と空飛ぶ絨毯
冬前、ビーゼルが税の徴収に訪れた。
街尾火楽は取り分けておいた作物を倉へ案内する。正確な収穫量を把握していないため、各作物の一回分収穫量の二〜三割を目安に用意していた。畑の拡張により、その量は相応に多い。
リンゴは他の果実を傷めるため別保管として説明する。
運搬について問うと、ビーゼルは空飛ぶ絨毯を呼び出す。巨大な絨毯が出現し、そこへ荷を積むことで持ち帰るという。積み込みはダガたちが担当した。
戦況と勇者の存在
食事を共にしながら近況を尋ねると、人間との戦争は膠着状態であり、勇者一行が各地で活動しているという話が出る。
魔王が戦争をしているという事実、そして勇者の存在に、街尾火楽は改めて自分の立場を認識する。
さらにビーゼルは、リンゴの評判が良いため、今後は一部作物を金銭で買い取りたいと提案した。交易の形が一歩進む可能性を示す話である。
そのまま宴となり、ビーゼルの帰還は翌日になった。
魔王城での報告
帰還したビーゼルは四天王筆頭ランダンに報告する。
問題となったのは、村にいる蜘蛛の存在である。
確認の結果、全長二十メートル級のグレートデーモンスパイダーは存在しなかった。
しかし。
グレートデーモンスパイダーがさらに成長した存在――イリーガルデーモンスパイダーが確認された。大きさは二〜三メートル程度に縮小するが、危険度は桁違いである。
しかも多数。
ランダンは現実を受け止めきれず逃亡を図るが、ビーゼルはそれを許さない。
大樹の村は、魔王側から見ても規格外の存在となっていた。
2 森での騒動
魔法が使えない者
村で魔法を使えないのは、街尾火楽と獣人族の幼い男児三名のみであった。
他種族はほぼ全員が何らかの魔法を扱える。天使族、吸血鬼、ハイエルフ、鬼人族、リザードマン、獣人族の女性陣も例外ではない。
人間に限れば、素質を持つ者は十人に一人、実際に使える者は百人に一人程度と聞き、多少の安堵を覚える。とはいえ、魔法習得への挑戦は密かに決意した。
その後、クロやザブトン、蜂、さらにはスライムまでもが魔法を扱う姿を目撃し、改めて衝撃を受ける。頼れるのは牛と鶏だけという現実であった。
森での爆発音
冬直前、村から離れた森で連続する爆音と振動が発生する。
原因はグラップラーベアとブラッディバイパーの交戦であった。
グラップラーベアは全長五〜六メートル級。ブラッディバイパーは直径一メートル、長さ二十メートル級の巨大蛇である。冬眠前の食料確保を巡る争いと推測された。
狩猟の決断
被害防止と食料確保を兼ね、街尾火楽は討伐を決断する。
グランマリアにより現地へ空輸される。
現場は怪獣同士の激戦状態であったが、「万能農具」による一撃で双方の首を刈り取り、戦闘は瞬時に終了した。
戦闘で荒れた森は耕し直し、自然回復の準備を整える。到着したリアたちには蛇の回収を任せ、熊は先に運搬した。
戦果と評価
帰村まで二日を要したが、肉は無事に持ち帰られた。
熊肉は臭みがあり、調味料を多く要したが食用可能。蛇肉はあっさりしており好評で、唐揚げは奪い合いになるほどであった。
毛皮はザブトンが評価し、肉はクロたちに好評。結果的に両者とも資源として有用であった。
リザードマンの誕生
同時期、リザードマンの卵が孵化する。
冬前に孵るのは、強敵が動きの鈍い時期に成長するためという合理的な理由によるものだった。
厳しい環境で生き抜いてきた種族の知恵である。
大樹の村で生まれた命が、健やかに育つことを願うばかりであった。
3 冬の間に周辺地理の勉強
周辺地理の把握
冬が訪れ、食料に不安はなかったため、街尾火楽は内職と勉強に時間を充てることにした。
特に反省したのが周辺地理への無知である。
村は巨大な盆地の中央付近に位置し、盆地全体を覆う森は「死の森」と呼ばれている。ハイエルフが装備を整えて横断するのに約一か月。空を飛べる天使族なら半日で越えられる距離である。
南の山脈は竜の山と呼ばれ、ドライムが住む。そこを越えた先には「鉄の森」、さらに南には海と人間の街があるという。
西の山脈の向こうには魔王の城と街。現在、魔王国(ガルガルド魔王国)は西側のフルハルト王国と戦争中である。村は城の裏側にあたり、戦禍に巻き込まれる可能性は低い。
東の山の向こうにはハウリン村と、その先にタロッテ村。いずれも魔王領だが、魔族の常駐はない。
北は険しい山岳地帯。危険な存在が封印されたという噂もあるが真偽は不明である。
こうして大まかな勢力図と地理を把握した。
種族ごとの出自
リアの村は北西の山の向こう。
ルーはフルハルト王国のさらに北にあった旧国出身。
天使族はさらに北方に連絡拠点を持つが、多くは単独行動が基本。
それぞれの来歴を聞きながら、街尾火楽は世界の広さを実感した。
ドワーフの来訪
冬のある日、一人のドワーフが来訪する。
目的は酒。
対価として提示されたのは鍛冶ではなく、酒造技術。グレプ(葡萄)以外からの醸造技術を持つという。
試飲の結果、定住が決定した。歓迎会が即座に企画され、村人は新住民を迎え入れる。
冬の娯楽
寒さで屋外活動が減り、室内遊びが発展する。
リバーシやチェスに加え、街尾火楽が制作したミニボウリングが人気を博した。
幅一メートル、長さ十メートルの簡易レーン。木製ピンには悪人の顔が彫られ、石製ボールで倒す。
予想以上の盛り上がりを見せ、最終的にレーンは六つに増設。春には専用の遊技場建設が決定する。
なお、最初に試作されたのはダーツであったが、投げナイフ競技と化し、ハイエルフや鬼人族、リザードマン、さらには酔ったドワーフまで正確に命中させる中、街尾火楽のみ成果を出せず断念。
こうして冬の村は、学びと娯楽と新たな仲間を得ながら静かに充実していった。
4 エルダードワーフ
ドノバンの正体と現実
村に来たドワーフはドノバン。自称エルダードワーフであるが、違いはよく分からない。樽のような体格に太い手足、堂々たる成人男性であった。
待望の成人男性の到来であったが、彼はヒゲのない女性に興味がないと明言し、村の人口問題は即座に解決とはならなかった。文化の差は大きい。
酒造り拡大計画
ドノバンは大麦とトウモロコシでの酒造りを提案する。作物の出来を高く評価し、生産量の倍増、さらには倍の倍を求めた。
リアと相談のうえ、春には畑を大幅拡張。
二百五十六面から五百十二面へ。ブドウ畑も倍増し、酒用作物の区画も増設した。
さらにゴマ畑を拡張し、油の多様化も図る。
春の村の動き
耕作は街尾火楽のみの作業であり、他の住民はそれぞれの役割に従事する。
クロたちは狩猟。
ザブトンは縫製。
ハイエルフは建築と修復、ドノバン邸と遊技場の建設。
鬼人族は料理と清掃。
リザードマンは水路整備と家畜管理。
獣人族は脱穀、製粉、油搾り、砂糖・塩の製造。
村の機能は着実に分業化されている。
ドワーフ増員
やがてクロッスという別のドワーフが来訪し、同様に定住を決めた。理由はドノバンを追って来たからである。
作物の質を評価し、自然に受け入れられる形となった。
万能農具への危機感
順調な村運営の裏で、街尾火楽は不安を抱く。
すべては「万能農具」に依存している。
これが使えなくなった場合、村はどうなるのか。
実験の結果、万能農具で耕した畑では成長が早いが、通常の畑では普通の作物と同じ速度になることが判明している。また、未耕地では育たない。
そこで小規模な通常農法の畑を用意し、ハイエルフ、リザードマン、獣人族に練習を任せた。収穫物は自由としたため、主に酒の原料が栽培されている。
村は発展を続ける一方で、依存からの脱却も模索し始めていた。
5 料理と飲み物事情
料理の向上と限界
ドライムが頻繁に来訪する理由は料理と酒である。村人たちも高評価だが、街尾火楽には物足りなさが残る。原因は食材と調味料の不足、そして自身の料理知識が素人水準であることにあった。
鬼人族のアンたちと協力し、前世界の記憶を頼りに改良を進める。
成果として丼物、焼き物、煮物、鍋物が一定水準に到達した。
決定的だったのはマヨネーズの完成である。卵と酢を基に試行錯誤し、日本酒造りの副産物から酢を抽出して成功した。卵の殺菌には薬剤を用い、安全面にも配慮した。
マヨネーズは料理の幅を大きく広げ、村の食卓に変化をもたらした。
酒と熟成の課題
酒は熟成前に消費されることが最大の問題である。
寝かせる前に飲まれてしまうため、品質向上が難しい。
解決策として酒用ブドウ畑を拡張。生産量を増やし、熟成用の余裕を確保しようと試みる。
並行してジュース、お茶、コーヒーの開発も進めた。
獣人族はジュースを好み、魔族ビーゼルはお茶を大量購入するなど、新たな需要も生まれた。
季節行事と帰還
春にはクロたちの角の生え変わり、蜂の巣分け、ザブトンの子供の旅立ちが行われる。
前年に出ていった三十頭のクロの子供たちが傷だらけで帰還。数日後、ザブトンの子供を背に再び旅立った。何をしているのかは不明だが、成長の証と受け止めた。
風呂の増設
ドワーフ加入により混浴体制の見直しが必要となる。
当初は男女別を計画したが、女性陣の反対により、既存の風呂は街尾火楽専用(希望者可)、新たに男女別浴場を建設することになった。
薪不足の懸念は魔法で解決。火属性魔法で湯を沸かし、獣人族の訓練にも活用された。
蜂の嘆願と果実エリア拡張
蜂から新たな樹木の植樹要望が出る。
クロの子供とザブトンの子供が探索し、目的の木を発見。背の低い花木で実も付ける種類だった。
果実エリアを西側へ倍増し、新木に加えゴム、アロエ、ヤシなども植栽。将来の拡張余地も確保した。
誕生
やがてルーが無事出産。健康な男児が誕生する。
記憶が曖昧になるほどの動揺を経て、街尾火楽は父となった。
村では祝宴が続き、新たな世代の始まりが静かに刻まれた。
6 息子誕生と襲来
アルフレートの誕生
息子はアルフレートと名付けられた。命名はルーであり、街尾火楽の提案は却下された。
前世で病に倒れた自身の血を引くことに不安を抱く。神から与えられた「健康な肉体」の加護が子に及ぶかは不明である。種族についても、人間と吸血鬼の子としてどう成長するか判断できない。
現時点では人間の子供と変わらない。鬼人族の話では、種族的特徴は成長後に現れるという。種族が何であれ、二人の子であることに変わりはないと決意する。
ルーは母となり、性格がやや穏やかになった。鬼人族の献身により育児体制は万全だが、街尾火楽は父としての役割が少ないことに複雑な思いを抱く。
ダンジョン探索の発覚
クロの子供たち三十頭とザブトンの子供たちは、森の南にあるダンジョンを攻略していたことが判明する。発見はグランマリアによる偶然だった。
ダンジョンは放置すれば魔物が溢れる危険があるため、ハイエルフ中心の攻略組が編成される。街尾火楽は参加を望むが却下される。
しかし準備中、ダンジョンからクロの子供たちが出現。自主的に探索していた事実が明らかとなる。骨などの戦利品は回収され、資源として保管された。
竜の襲来
昼過ぎ、ザブトンの警報が鳴る。南から飛来する竜を確認。街尾火楽は「万能農具」を槍に変え、投擲体勢を取る。
接近した竜はドライムより小柄だがワイバーンではない。そこへドライムが体当たりを仕掛け、空中戦が始まる。
さらに北から真っ白な大型竜が接近。街尾火楽は即座に槍を投げるが、竜は回避する。二投目を準備した瞬間、ドライムの従者グッチが制止する。
誤解の正体
現れたのはドライム、その妻グラッファルーン、そして娘ラスティスムーンであった。
最初に飛来した竜は娘ラスティスムーン。白い竜は妻グラッファルーンだった。
原因は誤解である。ドライムが大樹の村に家を建てたこと、アルフレート誕生祝いを準備していたことが、娘には浮気の証拠に見えた。娘は村を焼こうと直行し、ドライムが阻止し、さらに妻が追ってきたという流れであった。
街尾火楽の攻撃はグラッファルーンの結界や耐性を突破しかけた。本人の無自覚な攻撃力が、竜族にとっても脅威であることが明らかになる。
双方が謝罪し、騒動は収束する。
新たな住人
グラッファルーンは、ラスティスムーンに村へ住むよう命じる。街尾火楽の力を監視し、竜族へ向かぬよう努めよとの判断であった。
こうして、本人の知らぬ間に新たな住人が決定する。
なお、騒動の最中もアルフレートは熟睡していた。大物の片鱗を見せる誕生直後であった。
7 ラスティ
ラスティの人物像
ドライムの娘ラスティスムーンは、村ではラスティと呼ばれている。竜の姿では十五メートルほどの巨体だが、人間形態では中学生ほどの外見で、金髪ロングに鋭い印象を持つ。角と尻尾が竜であることを明確に示している。
当初は華やかなドレス姿だったが、村に住み始めてからは村娘風の服装に改めた。順応は早く、食事・娯楽・役割を与えられることで自然と馴染んでいった。
嗜好と遊戯
食事は何でも食べるが甘味を好む。特に干し柿に執着を見せ、在庫を前に落胆する姿もあった。
チェスやリバーシ、ミニボウリングでは獣人族の少年たちと拮抗した勝負を楽しむ。フライングディスクでは人間形態で勝てず、竜化して勝利を誇るなど、見た目より幼さを感じさせる一面もあった。
生活能力の欠如
各種作業を試させた結果、狩りでは獲物を威圧し過ぎ、採掘は大雑把、家畜世話や家事は不得手であった。畑仕事は作物保護のため不許可とされた。
結論として、戦闘特化型で生活能力は乏しいと判明する。森の警備担当案も出たが、最終的に別の役割が与えられる。
外交担当としての適性
ラスティは客人対応と交渉に高い適性を示した。魔王の使者ビーゼルとの取引では、果実や砂糖、ミルクを巧みに提案し、価格交渉も円滑に進める。
さらに、小型ワイバーン二十頭を使い通信網を構築。魔王城、ハウリン村、ドライムとの連絡が迅速化した。飼育はリザードマンが担当し、家畜やザブトンの子供との衝突防止策として首輪を装着させている。
父との関係
ドライムは頻繁に訪れ、風呂や食事を楽しむ。使用人派遣を巡っては希望者が殺到するなど、村の生活水準の高さが竜族内でも話題となっている。
ラスティは父をたしなめつつも、村での生活を受け入れている。
余波
魔王城ではビーゼルが帰還後すぐ実家へ向かったことが報告され、動向が気に掛けられていた。
こうしてラスティは、戦闘力ではなく外交力で村に貢献する存在として定着していった。
閑話 フラウレム
魔王国の才媛
フラウレム=クロームは、魔王国クローム伯爵家の令嬢である。父は魔王の幹部ビーゼル=クライム=クローム。
王都グライゼンで王姫のご学友を務め、成績優秀、武術も実戦級。容姿にも自信があり、求婚は家を通じて殺到していた。結婚は父が決めるものと受け入れているが、未決定であることに周囲の視線を気にしていた。
そんな中、父の命でとある村へ赴くことになる。理由は明示されず、「魔王国の命運を左右する」とだけ告げられた。
村での衝撃
到着早々、ラスティスムーンに出迎えられる。魔王国で“要注意”とされる竜である。着替えを余儀なくされるほどの衝撃だった。
続いて現れたのは、森で恐れられるハイエルフの集団、さらにインフェルノウルフの群れ。死を覚悟するが、全てラスティスムーンの支配下と知らされる。
デーモンスパイダーの精神攻撃で気絶し、三度目の着替え。幼生体の数にも戦慄する。さらにグノーシスビーの巣と兵隊蜂、名付きの天使四人、吸血姫ルールーシー、吸血鬼フローラが現れる。
死の森の頂点級存在が集結している現実に、情報整理が追いつかない。
村の実態
鬼人族、リザードマン、エルダードワーフなど希少種族が普通に暮らす。獣人族の子供や家畜に癒やされ、宿の調度や料理、酒、風呂の質に驚愕する。
ここは単なる辺境の村ではないと悟る。
致命的な誤認
ラスティスムーンを村の頂点と誤解し、村長を“そこの人間”と呼んでしまう。
後にラスティスムーンから告げられる。
その人間こそ、吸血鬼ルーや天使ティアを妻に持ち、インフェルノウルフやデーモンスパイダー、ハイエルフらを従える村長であり、ドライムの友人であり、グラッファルーンが戦いを避けた存在であると。
竜族を巻き込まぬよう忠告を受け、己の立場を理解する。
再定義
魔王国の才媛フラウレムは、その瞬間に死んだ。
生まれ変わった彼女は、村長に忠実であろうと決意する。魔王国の命運を左右するという父の言葉の意味を、ようやく理解し始めたのであった。
8 ビーゼルの娘とスライム
フラウレムの移住
ビーゼルの娘フラウレムが村に移住した。監視ではなく、正式な移住であるという。
見た目は人間と変わらないが、魔力量は桁違いらしい。最初はラスティに任せ、夜に挨拶へ行くと、既に良好な関係を築いていた。
初日は場違いなドレス姿で不安を覚えたが、二日目からは作業着に着替え、農作業にも前向き。十日ほどで「フラウ」と呼ぶほどに打ち解けた。
動きは良く、理解も早い。農業戦力としてはラスティ以上である。村の各種族とも問題なく馴染んでいる。
スライムの増殖と進化
スライムはティアが連れてきた十七匹から始まった。下水や汚水の浄化を担い、数は百を超えるまで増加。
青のブルースライムを起点に、グリーン、イエロー、レッドなど属性違いが出現。ブラックやホーリースライムのような希少種も確認された。
問題が起きたのは、保存用ワイン樽に侵入した個体である。中身を飲み干し、紫色の“酒スライム”へ変化した。
村初の裁判
酒を飲み尽くされたことで村人が激怒。村初の裁判が開かれ、有罪判決。
死刑案や監禁案が出るが、フラウレムが「スライムが罰を理解するのか」と指摘。場は冷静になり、裁判は解散。
対策として酒蔵の管理強化が決定。酒スライムはその後も村を徘徊し、宴会で酒にありつく存在として定着した。
食文化の現実
ラスティとフラウの話から、外の食事情が判明する。
料理は焼くか煮るが基本。食は栄養補給と割り切られ、主食の単一化が進む。魔物の存在により狩猟や漁も容易ではない。
酒は飲料水代わりで大量生産され、味より量が重視される。良質な酒は支配層が独占する。
大樹の村の酒が評価される理由は、技術ではなく原料作物の質の高さにあった。
飢饉と戦争
単一作物依存の危険は現実化していた。西のフルハルト王国で疫病が発生し、飢饉が拡大。食料を求め周辺国へ戦争を仕掛けている。
魔王国は多種族連合ゆえ主食が分散し、被害は抑えられたが余裕はない。それでも裕福と見なされ、対立が続く。
疲弊した土地を奪っても利益は出ない。現実は単純ではない。
村長としてできるのは、作物を増やし、求めに応じて価格を調整することだけ。より多く育てる決意を新たにするのであった。
9 ワイバーン通信と港町のマイケルさん
子の成長と周囲の圧力
アルフレートは目に見えて成長していた。立つ日も近いと感じる。
ティアやハイエルフたちは次の子を望む様子を見せ、ドライムやビーゼルも遠回しに孫を求めてくる。本人の了承なく話を進める気はないとヒラクは釘を刺す。
ワイバーン通信の確立
ラスティの小型ワイバーンによる通信は定期便方式で運用されている。基本は一日一便。頻度は相手との関係で調整する。
主な内容は獣人族移住者から家族への手紙、そして穀物と鉱物の交換交渉。ハウリン村との連絡は週一回である。
輸送は当初ドライム頼みだったが、現在はラスティが担当。甘味を報酬に引き受けてもらった。
ハウリン村が食料を大樹の村に依存し、採掘と鉄器生産に専念する案も出ているが、ヒラクは単一依存の危険を懸念する。
海産物への挑戦
フラウの提案で、南方の港町シャシャートとの交易を目指す。目的は海産物の入手。
持参品として酒を提案するが、村の総意で却下。余剰作物中心で物々交換を行う方針となる。
ヒラクの同行は却下され、代表はフラウ、輸送はラスティ、護衛兼荷運びにダガらリザードマン五名が選ばれた。途中、ドライムの巣で一泊する行程である。
帰還と新たな縁
三日後、一行は無事帰還。大量の海産物と共に、シャシャートの商人マイケル=ゴロウンを連れてきた。
ゴロウン商会の会頭であり、作物の質に驚き、継続取引を望んでの来訪であった。
さらにラスティは悪魔族の使用人ブルガとスティファノを同行させる。スティファノはグッチの親戚である。
海産物と調味料
持ち帰った魚介は氷漬け保存。マグロ、カツオ、サンマ、サバに似た魚、ホタテやサザエに似た貝が確認された。毒や寄生虫の懸念があり、扱いは慎重を要する。
加えてシャシャート特産の調味料も入手。魚醤に似た液体で、味の幅を広げる可能性がある。
その夜は遠征の労いの宴会。マイケルの歓迎は翌日に持ち越された。
交易は新たな段階へ進みつつあった。
10 商談?
商人マイケルの目的
昼前、宿の広間でヒラク、ルー、ティア、フラウ、そして商人マイケル=ゴロウンが向き合う。ラスティは前夜の宴で夜更かしし欠席である。
マイケルは来訪の目的を明言する。
一つ目は継続取引の打診。
二つ目は取引可能な作物の拡大確認。
三つ目は新たな商材の探索。
そして最後に、大樹の村の御用商人の地位獲得である。
虚飾を排した姿勢は評価された。
輸送と竜の立場
マイケルは輸送が竜によって行われる点を確認する。ヒラク側は明確に線を引く。ラスティの協力は善意であり、村が竜へ指示を出すことはない。
「共存」という言葉で関係性を示し、過度な期待や思惑を牽制した。
取引成立
余剰作物の卸量は事前調整済み。マイケルは初回として高値を提示し、交渉は円滑に進む。書面作成も合意。
酒は少量のみ友誼として提供するが、商業規模では不可と判断された。
結果、穀物に加え、蜂蜜、ザブトンの布、砂糖、塩、油が売却された。特に「死の森」の塩は品質差により高評価を得る。
仕入れ要望
大樹の村側の要望は山羊と馬。
山羊は一般的な乳源であり入手しやすい。
馬はヒラクの移動手段としてルーとティアが希望した。
さらに魚介類、とりわけ昆布を強く要請。昆布は現地で雑草扱いだが、ヒラクは乾物としての価値を見抜いている。
中継交易の確立
ハウリン村の鉱物を大樹の村が中継し、ゴロウン商会へ卸す形も決定。距離と安全性の問題を考えれば、竜輸送が可能な大樹の村の存在は特異である。
魚介料理の挑戦
歓迎会では持ち帰った魚介が主役となる。
揚げ、炙り、煮付けなどを鬼人族やハイエルフへ指導しながら調理。シャシャート産の魚醤系調味料を活用する。
寄生虫対策から生食は見送られた。寿司はまだ遠い。
村人の評価は上々。ヒラクは満足には届かないが、次の目標を明確にする。
早く昆布が欲しい。
閑話 マイケル
野心ある商人
マイケル=ゴロウンは、シャシャートの街を代表する有力商人である。資金は潤沢、取引相手も多い。だが接待ばかりで本気の商談が減っている現状に物足りなさを感じていた。酒や料理よりも、金の匂いを好む男である。
突然の来訪者
ある日、先触れもなく若い娘が来店する。当初は田舎者と軽視しかけるが、嫌な予感から丁寧に応対する。
それは正解だった。相手はクローム伯爵家の令嬢フラウレム。王姫の学友であり、次代幹部候補とも目される存在。逆らえば命はない。態度を即座に改め、商談に入る。
竜との遭遇
店前に積み上げられた作物の山。そして護衛はリザードマン。さらに角と尾を持つ少女がいる。
ラスティ――竜。
門番竜の娘ラスティスムーンの名が脳裏をよぎる。噂に聞く強大な存在。下手な対応は死に直結すると理解する。
しかし荷を確認した瞬間、恐怖を上回る感情が湧く。
圧倒的な金の匂い。
王都で話題の高品質作物が山積みである。即決で「言い値で買う」と宣言。さらに村への同行を願い出る。
恐怖の旅路
商機を掴むため、竜の背に乗る。門番竜の巣で一泊し、『死の森』上空を飛ぶ。
吸血姫、殲滅天使、皆殺し天使、インフェルノウルフ――危険な名が並ぶ中、恐怖は限界を超え、諦念に変わる。
だが覚悟も決まる。何が何でも商機を掴むと。
大樹の村での衝撃
到着した村の長ヒラクは、インフェルノウルフの頭を撫でる男だった。しかも腰が低い。
宿は質が高く、シーツはデーモンスパイダー製と思しき上質品。深く考えるのをやめる。
夕食は未知の料理の数々。キラーラビットやゲートボアの高級肉。想像不能な調理法。ワインはこれまでの人生で最高の味。
虜になる。
交渉と挫折
翌日の交渉は激戦。吸血姫を相手に踏ん張る。作物の継続取引には成功するが、竜輸送の独占は不可能と理解する。
ワインも商売規模では得られず、少量のみ。
落胆しつつも、商機は掴んだ。村の作物は確実に大金を生む。
未来の大商人
宴席で孫の話をしたところ、なぜか周囲に微妙な反応をされる。理由はわからない。
マイケル=ゴロウン。
シャシャートの有力商人。
そして、後に魔王国を代表する商人となる男である。
11 キノコと畑拡張
魚料理と味の進化
マイケルの送迎で数日不在だったラスティが帰還し、ドライムも同行した。目的は魚料理である。特にフライ系が好評だった。
干物や小魚から取ったダシも上出来であった。海魚は泥臭くなく、川魚との違いに納得する。クロたちも海魚を気に入り、内臓処理済みのものしか食べなくなった。味の向上は時に贅沢を生む。
甘味と子育て
赤子に蜂蜜は避けるべきと判断し、甘味はサツマイモや栗、果実を活用する。栗は切れ込みを入れないと破裂することを学ぶ。
アイスクリームを試作すると、プリン同様に争奪戦が発生。評判は良いが供給が追いつかない。
黒い宝石の発見
キノコ栽培中、試しに掘った場所から黒トリュフを十個収穫する。前世では高級食材だったが、ヒラク自身の評価は控えめ。しかし村人は驚愕する。こちらの世界でも希少で「黒い宝石」と呼ばれる存在であった。
増産の是非を迷うが、村人総出で拡大を希望。出荷しなければ相場崩壊は避けられると判断する。
調理は粉末やスライスで提供。ヒラク以外は深く味わい、獣人族は感涙。クロとユキに少量を与えたことで子狼たちの視線が痛くなる。増産は急務となった。
新たな家畜の導入
ワイバーン通信で山羊、馬、干し昆布、さらにエビやカニが用意できたと連絡が入る。受け取りは再びフラウとラスティが担当。
帰還時、山羊と馬は竜の背で気絶状態で固定されていた。暴れるための処置であり、怪我は回復魔法で対応可能。
山羊雄二頭・雌八頭、馬は雌雄一頭ずつを導入。牧場拡張のため、畑を八面×八面から十二面×十二面へ拡張し、牧場エリアへ改称する。
山羊は脱走を試みるが、森で牙兎に襲われて以後は大人しくなる。馬は当初から従順だった。
犬エリアも東へ拡張するが、名称は変更せず継続。
昆布出汁と甲殻類の発見
干し昆布で出汁を取り、スープを作成。村人は驚く。エビは問題なく受け入れられたが、カニは抵抗が強い。
見た目がザブトンの子に似ていることが原因かと疑い、確認するが無関係と判明。ヒラク、鬼人族、ラスティは問題なく食す。
味は極めて良好。広めない方が得策と判断する。弱点は匂い。レモン水で手を洗い対処する。
後日、ドライムがカニ料理を望むが既に完食済み。追加発注を決意する。
食と生産は着実に拡張していった。
12 食文化
薬草畑の整備
ヒラクは健康体で病知らずだったが、村人にとって薬草は重要資源だった。必要な薬草を都度探すのは困難と知り、専用の薬草畑を設置する。
畑の東側に四×四面の区画を用意し、ハイエルフが採取した薬草を根ごと植え付ける。種類は想像以上に多い。中には前世で危険視された植物も含まれていたが、厳重管理を条件に栽培を開始した。
薬草は高価で取引される品でもあり、将来的な収入源にもなり得る。
酒造と発酵の発展
ドワーフの酒造は順調で、ワイン、ビール、蒸留酒の三種を軸に改良が続く。ヒラクの知識を元に米酒造りにも挑戦し、酒麴も「万能農具」で育成。完成度は未熟ながら将来性が見える。
ドワーフは酒に引き寄せられるように増え、現在八人となった。
乳製品の確立
牛乳が安定供給され、バターとチーズの製造が始まる。チーズ作りに必要な酵素は子牛由来が一般的だが、屠ることを拒み「万能農具」で代替酵素を実現。完成したチーズと酒は大樹の社へ供えられた。
豆腐と加工食品
大豆から豆腐を製造。搾りかすはオカラとなる。味と香りは良好で、そのままでも食べられるが、魚醤系調味料を合わせて味の幅を広げる。
魚のすり身を裏漉しし、練って成形し、茹でて冷やし、カマボコを完成させる。布はザブトン製。加工技術が確立していく。
香辛料とカレー
唐辛子、シナモン、クローブ、ナツメグ、カルダモン、クミン、ローリエが揃い、試行錯誤でカレー粉を調合。完成品はスープ状ながら好評を博し、定期メニューとなる。
寒天と甘味文化
天草から寒天を作成し、果実ゼリーを開発。食後の定番となり、原料不足で追加発注が必要となる。
甘味は村の活力を高める要素となった。
肉料理とパン文化
鬼人族の調理技術は向上し、下味・火加減・余熱を駆使した料理が完成度を増す。ローストボアは人気料理となり、ワサビを使ったソースも研究される。
パン窯を新設し、一次・二次発酵を取り入れた製法が確立。食パン型や菓子パンが誕生する。チーズ完成によりピザも登場し、流行する。
食と未来
食文化の充実は村に活力をもたらす。その流れの中で、ティアの妊娠が判明する。
豊かさは確実に根を張り始めていた。
13 代官と娯楽
魔王城での密談
魔王はビーゼルに問い質す。娘フラウを大樹の村へ送った理由は何か。
ビーゼルは「代官として」と答える。あの村の管理は自身に一任されており、将来を見据えた措置だと説明する。扱いを誤れば魔王国に大きな影響を与えかねないため、最悪の責任を負える立場の者を置いたという。
魔王は渋々了承する。
代官就任のからくり
大樹の村でビーゼルはヒラクに提案する。フラウを名目上の代官とし、魔王国へのポーズとすること。
実務支配は求めない。代官に税を納める形にし、その税は管理地のために使う。つまり実質的な減税である。
ヒラクは罠を疑うが、任命権を村長側に渡す契約を結ぶことで懸念は解消される。代官の上位に村長が位置する形となった。
フラウは全力で罷免を願うが却下。実質は名誉職に近い。
村の成長と家族
リザードマンの子供たちは急成長し、獣人族の子供を追い越す勢い。ヒラクは我が子アルフレートの成長に焦りを覚える。
ティアの妊娠で関係悪化を懸念するも、ルーは経験者として献身的に支え、周囲を驚かせる。村では子を望む声もさらに強まる。
働き過ぎの村
村人は基本的に休まない。理由は「働かざる者、食うべからず」。ヒラクの勤勉さも影響している。
村長として、休む姿勢も示す必要を感じる。
娯楽の創出
休養を兼ね、遊具制作に着手する。
まずはボール。だがクロたちが反応し、結局犬遊びになる。
次にブーメランを試作。「万能農具」を参考に成功するも、流行は短命。フライングディスクに敗れる。
ゴルフの誕生
大人向け娯楽としてゴルフを考案。木製クラブと球を制作し、簡易コースを整備。芝を育て、旗を立てる。
思惑は的中。主に鬼人族に好評となる。
思い通りにいかない球筋が面白く、昼食後の優雅な時間が生まれた。
一方、獣人族の子供たちは馬や山羊に夢中。馬術の腕前はヒラクを上回りつつあった。
村は食だけでなく、娯楽でも豊かさを増していった。
閑話 木
千年の古木の危機
森で最も大きな木は、平穏な日々を送っていた。そこへ現れた一人の人間が、周囲の木々を瞬時に土へと変えていく。
恐怖が走る。次は自分か。
だが人間は古木を切らず、幹に穴を開け、内部を整え、巣のように利用した。痛みはないが不安は尽きない。
神像と覚醒
やがて幹に神像が安置される。大地神か創造神かはさておき、信仰の対象として扱われることに、古木は悪い気はしなかった。
その瞬間、眠っていた知性が目覚める。
私は、目覚めた。
共存の始まり
デーモンスパイダーが住み着き、出産の場ともなる。不安はあったが、共存を受け入れる。
畑が広がり、インフェルノウルフが現れ、森の様相は一変する。それでも人間は侵略ではなく、耕すことに喜びを見出していた。
ならば見守ろう。
守護の決意
ワイバーンが襲来し火を噴く。燃える恐怖。しかし人間は撃退する。
竜も来る。異形も来る。すべて人間が対処する。
理解した。この人間に逆らってはならない。むしろ役立つ存在であるべきだと。
古木は決意する。人間たちの病を防ぎ、生活を守る恩恵を広げようと。根を張る範囲まで効果は及ぶ。
伝達の試み
問題は伝え方。葉で文字を作る案は失敗。枝で文字を形作ることを思いつく。完成には百年を要するが構わない。
デーモンスパイダーが仲介を申し出る。感謝し、託す。
千年の守護
人間は根元に水を与える。害虫は消え、生命はさらに伸びる。
あと千年、いや二千年は見守れる。
願いは一つ。朽ちるその日まで、大切に扱い、次の世代へも伝えてほしい。
私は、ここで見守り続ける。
閑話 神
偉い神の仕事事情
私は神である。しかも偉い神だ。複数世界の守護と管理を任される立場にある。仕事量は膨大で、処理能力を遥かに超える。
解決策は部下の創造。能力は劣るが数で補わせた。結果、世界は安定したが、今度は私の仕事が減りすぎた。必要とされないのも寂しい。部下が仕事を回してくれるが、立場が微妙に逆転している気もする。
魂の研磨と致命的ミス
私の担当業務の一つは魂の研磨。角の立った魂に苦行の人生を与え、丸くする。
だが私は誤って、既に美しい魂を苦行の人生へ転生させてしまった。
気付いた時には遅く、三十九年後、彼が死んでからしか再会できなかった。輝く魂が目に痛い。後悔するが、神は自らの規則を破れない。
異世界への転移
謝罪はできないが、救済は可能。転生ではなく転移を提案する。記憶を保ったまま、別世界で生き直してもらう。
彼の望みは二つ。病気にならない体。そして人の少ない場所での生活。
「健康な肉体」を与える。副次効果で寿命も延びる。
転移先も人が少ない場所を選定する。だが危険生物が多い土地だったことを後で思い出す。
農業という願い
さらに彼は農業を望む。私の手持ちに農業特化の力はない。担当神へ連絡し、神具の複製品「万能農具」を用意する。
使い方も教え、初心者パックも付与。転移完了。
新たな不安と逆転
直後、連絡が入る。「万能農具」は通常の人間では精神消耗で倒れる危険があるという。
しかし彼は倒れない。
理由は「健康な肉体」。精神状態も即座に正常化する効果があり、神具の消耗を打ち消していた。
結果、神具を事実上使い放題。
私は結論づける。ミスではない。必然である。
私は常に見守っている。全部、うまくいっている。たぶん。
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