- 30年戦った男が求めたものが「農場と嫁さん」なのが良い
- 最初に出会ったのが盗賊。もう嫌な予感しかしない
- 「嫁さんが欲しい」と言いながら弱った女性につけ込まない
- 農場を作っているはずなのに、どう見ても軍事基地である
- 宇宙から持ってきた装置が現地ではチートすぎる
- 襲撃されてもグレンが強すぎる
- エリーカとの生活が始まると急にスローライフっぽくなる
- エリーカもただ守られるだけのヒロインではない
- グレンは顔がないのに、意外と人間臭い
- 平穏に暮らしたいだけなのに、家族が増えるほど責任も増えていく
- そして嫁さん候補まで増えていく
- 戦闘と日常の落差がこの作品の魅力だと感じた
- まとめ|農場を作って嫁さんと暮らしたいだけなのに、どうしてこうなった
物語の概要
■ 作品概要
長年銀河の最前線で「不死身」と謳われた傭兵グレンは、全身の8割以上を義体化した身体の限界を悟り、多額の蓄財を投じて引退を決意する。
彼が新生活の場に選んだのは、三帝国の勢力が拮抗し暴力が基本通貨として通用する辺境惑星リボースIIIであった。降下直後、グレンは賊に捕らわれていたアーソディアンの少女エリーカを救出し、開拓のパートナーとして受け入れる。グレンは高度なテクノロジー機器「分子分解構成機」を駆使して生存インフラを急速に整備し、訪れる行商人のライラや傭兵スピカと相互互助関係を構築していく。
物語中盤、野生の蛮族「プレデターズ」の襲撃を退ける過程で、エリーカの秘められた戦闘能力と、彼女が所属する「コルディア教会」の存在が浮き彫りとなる。
教会の実行部隊が合流したことで、拠点は軍事的な要塞から大浴場や礼拝堂を備えた「農場」へと質的な発展を遂げる。
終盤、近隣の好戦的勢力に追い詰められたライラたちを保護したグレンは、圧倒的な防衛プロトコルと技術力をもって襲撃者を殲滅。エリーカを伴侶に迎え、開拓者としての第一歩を確固たるものにする。
■ 主要キャラクター
グレン(不死身のグレン)
- 立場・所属:元傭兵。
- 概要:プラズマグレネードで顔面を焼失し、体の8割以上が義体化されたサイボーグ。心臓部に特別製の反物質コアを動力源として内蔵し、常人を遥かに凌駕する出力を持つ。
- この巻での役割と変化:傭兵を引退し、リボースIIIで「農場主」としての再出発を図る。エリーカを救出し、技術提供と保護を通じて深い信頼関係を築く。
エリーカ
- 立場・所属:コルディア教会の巡礼者。人工種族アーソディアン。
- 概要:女性にのみ外骨格的特徴(外肢)が現れる種族特性を持つ。遺伝的に不安定な性質があり、親と同じ器官を受け継ぐとは限らない。彼女は腰から鋭利な刃を持つ複数の外肢を有する。
- この巻での重要な行動:賊に奴隷として捕らわれていたが、グレンに救出される。普段は弱々しい少女だが、戦闘時には外肢を解放し、高い殺傷能力を発揮する。
ライラ
- 立場・所属:タウリシアンの行商人。キャラバンリーダー。
- 役割:グレンの農場を訪れ、物資の取引と情報提供を行う。グレンの圧倒的な暴力性を「顔無し(フェイスレス)」の噂として広める側面も持つ。
スピカ
- 立場・所属:フォルミカンの傭兵。キャラバンの護衛隊長。
- 役割:人類ベースの労働者・戦士種族。グレンと共にプレデターズを撃退し、防衛・労働のパートナーとしての信頼資本を蓄積する。
ヘレナ / システィア / ミューゼン / ペトラ
- 立場・所属:コルディア教会のシスターおよび実行部隊員。
- 役割:行方不明のエリーカを捜索中に農場を訪れる。特にシスティアはエリーカの「従姉妹」であり、グレンの誠実さを確認した上でエリーカを託す。
- この巻での重要な行動:ペトラの提案により、農場に水の節約と娯楽を兼ねた大浴場を建設し、拠点の生活水準を劇的に向上させる。
書籍情報
フェイスレス・ドロップアウト 1 無貌の引退傭兵はお嫁さんが欲しい
著者:リュート 氏
イラスト:へいろー 氏
出版社:KADOKAWA(カドカワBOOKS)
発売日:2025年7月10日
ISBN:9784040759838
(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。
あらすじ・内容
顔まで義体の元傭兵の願いはーー素敵なお嫁さんとスローライフ!?
【このライトノベルがすごい!2026(宝島社刊) 新作単行本・ノベルズ部門 第8位ランクイン!】
顔までサイボーグ化済の無貌(フェイスレス)の傭兵グレンは危険な戦場に飽きて引退(ドロップアウト)。資源豊富な辺境惑星での農場経営と「可愛いお嫁さん」との穏やかな暮らしを堅く誓う。だが、現地で虐げられていたシスター・エリーカを目にし、その卓越した戦闘能力は錆びつく間もなく発揮されることに!
彼女と美味しいご飯を食べたり、農場の拠点建設を進める中で、角のある種族など個性的な美女たちと出会いつつ、新天地でのほのぼの(!?)時々血なまぐさい暮らし始まる!
フェイスレス・ドロップアウト 1 無貌の引退傭兵はお嫁さんが欲しい
感想
作者の名前を見て購入した『フェイスレス・ドロップアウト 1 無貌の引退傭兵はお嫁さんが欲しい』。
どうやら別作品と同じ世界の物語らしい。
ただし銀河規模で見ると、舞台はほとんど正反対の場所にある模様。
同じ世界観を使いながら、まったく違う場所の物語を描くというのは面白い。
そして読み始めてすぐに感じた。
主人公の望みはものすごく素朴なのに、やっていることが全然素朴ではない。
30年間も傭兵として戦い続けてきた男、グレン。
そんな彼が引退後に望んだものは、
「農場を作って、嫁さんをもらって、平穏に暮らしたい」
という生活である。
分かる。
30年も戦ったのなら、もう静かに暮らしたいだろう。
ところが、降り立った場所は係争地となっている惑星。
そして最初に遭遇したのが盗賊である。
……平穏って何だろう。
30年戦った男が求めたものが「農場と嫁さん」なのが良い
グレンの目的は分かりやすい。
もう戦いたくない。
農場を作る。
嫁さんが欲しい。
家族を作る。
そして平穏に暮らす。
傭兵として30年も生きてきた男の夢としては、驚くほど普通である。
銀河を支配したいわけでもない。
莫大な財産が欲しいわけでもない。
英雄になりたいわけでもない。
ただ自分の土地で作物を育て、好きな相手と暮らしたい。
長い間戦場で生きてきたからこそ、こういう普通の生活に憧れるのだろう。
その気持ちはかなり分かる。
問題は、グレン自身がまったく普通ではないことである。
最初に出会ったのが盗賊。もう嫌な予感しかしない
新天地へ降り立ったグレン。
さあ、ここから農場生活だ。
……とはならない。
最初に出会ったのが盗賊である。
しかも、その盗賊たちに捕まっていた女性エリーカを助けることになる。
いきなり戦闘。
いきなり救出。
いきなり保護。
農場生活はどこへ行った。
ただ、ここから始まるグレンとエリーカの生活が意外と良かった。
エリーカはかなり酷い目に遭っている。
グレンはそんな彼女を助けるのだが、必要以上に踏み込まない。
治療する。
食事を与える。
自由を返す。
安心して眠れる場所を用意する。
それ以上の見返りを要求しない。
30年間も傭兵をしてきた男なのに、このあたりの距離感がかなりまともなのである。
「嫁さんが欲しい」と言いながら弱った女性につけ込まない
特に印象に残ったのがここだった。
グレンは嫁さんが欲しい。
作品タイトルにも堂々と書いてある。
ところが、助けたエリーカが自分を差し出そうとしても、それを簡単には受け入れない。
自分が欲しいのは、命を助けた対価として差し出される女性ではない。
互いに愛し合える妻が欲しい。
だから身体も心も回復してから考えればいい。
この考え方は結構好きである。
「嫁さんが欲しい」という欲望自体は隠さない。
でも、相手の弱みに付け込んで手に入れようとはしない。
傭兵として殺伐とした人生を送ってきたわりに、変なところで誠実なのである。
このグレンの性格が、本作の日常パートをかなり読みやすくしていると感じた。
農場を作っているはずなのに、どう見ても軍事基地である
そして笑ってしまったのが農場建設である。
グレン本人は真面目に農場を作っている。
しかし配備するものがおかしい。
偵察ドローン。
戦闘ボット。
レーザータレット。
強力な動力設備。
農場……?
どう見ても軍事拠点である。
現地のエリーカから見ても農場というより要塞に近い。
だが、グレンにとってはこれが普通なのだろう。
30年間、傭兵として生きてきた男である。
安全に暮らしたい。
だから防衛設備を置く。
それだけ。
本人としては平穏な生活を守るために必要な設備を置いているだけなのが面白い。
グレンの考える「平和な農場」と、現地人が考える「平和な農場」の基準が違いすぎる。
宇宙から持ってきた装置が現地ではチートすぎる
そもそもグレンが持ち込んだ技術そのものが、この惑星ではかなり強力である。
本人からすれば使い慣れた道具でも、現地の人間から見れば垂涎もの。
当然、狙われる。
盗賊が来る。
また来る。
さらに別の武装集団までやって来る。
グレンとしては、
「俺は農場をやりたいだけなんだが?」
というところだろう。
しかし周囲から見れば、とんでもない武力と技術と物資を持った男が突然現れた状態である。
放っておかれるわけがない。
平穏に暮らすために持ってきた技術が、逆に騒動を呼び込んでいるのが何とも皮肉である。
襲撃されてもグレンが強すぎる
もっとも、盗賊が何人やって来ようがグレン本人はほとんど困らない。
30年間も傭兵として戦い続けた男である。
経験値が違う。
さらに装備も違う。
農場にはレーザータレットや戦闘ボットまでいる。
盗賊からすれば、
「すごい宝を持っている農場があるぞ!」
くらいの感覚なのだろう。
実際に襲ってみたら、
「何で農場にこんな戦力があるんだ」
となる。
ここがかなり爽快だった。
グレンは別に戦いたがっているわけではない。
むしろ戦いはもう十分である。
それなのに敵のほうから勝手にやって来る。
そして元傭兵として普通に処理する。
平穏なスローライフを目指しているはずなのに、戦闘になると容赦がない。
このギャップが良い。
エリーカとの生活が始まると急にスローライフっぽくなる
一方で、戦闘が終わるとちゃんと農場生活へ戻る。
畑を作る。
作物を植える。
エリーカが食べ物を採ってくる。
料理を作る。
一緒に食べる。
この時間が結構好きだった。
特に野イチゴから作ったジャムをグレンが気に入る場面など、本当にささやかな日常である。
30年間も傭兵として生きてきたグレンにとって、こういうものこそ欲しかった生活なのだろう。
派手な戦闘よりも、
「美味しいものを一緒に食べる」
という出来事のほうが、グレンの人生では新鮮なのかもしれない。
戦闘では圧倒的に強い男が、普通の生活には慣れていない。
この逆転が面白かった。
エリーカもただ守られるだけのヒロインではない
そしてエリーカも、単純な「主人公に助けられた女性」では終わらない。
彼女自身にも戦える力がある。
むしろ戦闘になると結構怖い。
最初はグレンに助けられ、保護される立場だった。
しかし農場で生活するようになると、自分も役に立とうとする。
食料を採集する。
料理をする。
農場で生活する。
武器の扱いも覚える。
何もしないまま守られていることを良しとしない。
このあたりも好感が持てた。
グレンが一方的に養うのではなく、少しずつ二人で生活を作っていく。
「嫁さんが欲しい」というタイトルから想像していたより、ちゃんと関係を積み上げている物語だった。
グレンは顔がないのに、意外と人間臭い
タイトルにもある通り、グレンは「無貌」である。
顔がない。
見た目だけならかなり怖い。
しかも元傭兵。
戦えば強い。
敵には容赦しない。
ところが中身は妙に常識的である。
嫁さんが欲しい。
美味しいものを食べると喜ぶ。
農場を作りたい。
家族を守りたい。
助けた女性につけ込むのは嫌だ。
顔がないのに、読んでいると妙に人間臭い。
むしろ顔のある周囲の人間たちのほうが、欲望むき出しで襲ってくる。
この対比も面白かった。
平穏に暮らしたいだけなのに、家族が増えるほど責任も増えていく
物語が進むと、グレンの「農場を作って嫁さんと暮らす」という夢も少しずつ形を変えていく。
一人なら自分だけ守ればいい。
エリーカと暮らすなら、彼女も守らなければならない。
さらに人が増えれば食料が必要になる。
防衛設備も必要になる。
交易も必要になる。
周辺勢力との関係も考えなければならない。
ただ農場を作れば終わりではない。
平穏に暮らすためには、平穏を維持するための力が必要になる。
ここは意外と現実的だった。
グレンは傭兵を辞めた。
しかし30年間で身につけた能力が不要になったわけではない。
今度は誰かを殺すためではなく、自分が作った生活を守るために使うことになる。
同じ力でも、使う目的が変わっているのである。
そして嫁さん候補まで増えていく
さらに面白いのが、グレンの目的だった「嫁さん探し」まで妙な方向へ進み始めることだった。
エリーカとの関係だけでも十分なのに、新たな人々との交流が始まる。
交易。
異文化。
異種族。
そして結婚観まで違う。
特にライラたちとのやり取りは、
「そうなるの?」
という展開の連続だった。
この世界では結婚が恋愛だけではなく、共同体同士の結びつきや安全保障、労働力、交易などにも直結している。
グレン自身は普通に嫁さんが欲しかっただけなのに、気がつけば農場経営どころか共同体作りに近づいている。
話がどんどん大きくなっている。
平穏って……。
戦闘と日常の落差がこの作品の魅力だと感じた
この作品で一番気に入ったのは、やはり戦闘と日常の落差である。
敵が来ればグレンは容赦なく倒す。
30年戦い続けた傭兵なので圧倒的に強い。
その直後には畑を作る。
エリーカと食事をする。
ジャムを食べて喜ぶ。
嫁さんについて真面目に考える。
そしてまた敵が来る。
忙しい。
スローライフなのか戦争なのか分からない。
だがグレン本人にとっては、全部が「平穏に暮らすため」の行動なのである。
戦うことそのものが目的だった傭兵時代とは違う。
今は帰る場所を守るために戦っている。
そこに引退傭兵ものとしての面白さを感じた。
まとめ|農場を作って嫁さんと暮らしたいだけなのに、どうしてこうなった
『フェイスレス・ドロップアウト 1』は、作者の名前で購入した作品だったが、期待していた方向とは少し違う面白さがあった。
30年間戦い続けた傭兵グレン。
ようやく引退した。
農場を作る。
嫁さんをもらう。
平穏に暮らす。
それだけが望みだった。
なのに最初に会ったのが盗賊。
助けたエリーカと一緒に暮らし始める。
農場を作ったら軍事基地みたいになる。
宇宙から持ってきた技術を狙って盗賊がやって来る。
襲撃者を倒したら、さらに人が集まってくる。
そして嫁さん候補まで増えていく。
平穏とは一体何だったのか。
ただ、グレン自身は確実に傭兵時代とは違う人生を歩き始めている。
誰かを倒すために拠点を作るのではない。
暮らすために農場を作る。
戦争に勝つために武器を使うのではない。
エリーカや家族を守るために使う。
30年間培ってきた戦う力が、ようやく「生きるための力」へ変わり始めている。
そこが印象に残った。
顔のない元傭兵が求めるものは、驚くほど普通である。
美味しい食事。
安心して眠れる家。
農場。
そして愛し合える嫁さん。
ただし、それを手に入れるための戦力だけが普通ではない。
本人は本気でスローライフをするつもりなのに、周囲がまったくスローライフをさせてくれない。
この調子で本当にグレンは「平穏な農場生活」を手に入れられるのだろうか。
……たぶん無理そうである。
最後までお読み頂きありがとうございます。
(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。
考察・解説
ストーリー・プロット
第1幕:傭兵引退とフロンティアへの降下
三十年近い戦場生活で内臓の殆どを失い、顔面を焼失したグレンは「イチ抜け(引退)」を宣言する。彼は蓄えた300万エネルの資産を、開拓用ガイドブック推奨の高度な機材や小型航宙艦「ザブトン」へと変換。馴染みのドワーフの爺さんが整備したザブトンには、最低限のシールドとレーザー砲が換装されていた。グレンは安全な一等市民権ではなく、自身の「暴力」という基本通貨が通用する無法地帯ながら資源豊富な辺境惑星リボースIIIを新天地に選ぶ。武装商船の伝手で大気圏を突破したグレンは、資源採取に適した丘陵地帯に降下。反物質コアの安定した出力を背景に、孤独な開拓生活を開始する。
第2幕:最初の接触とエリーカの救出
拠点構築の初期段階で、偵察ドローンが武装した賊の集団と、奴隷の首輪(外部インプラント)で拘束された少女エリーカを捉える。グレンは躊躇なく長距離狙撃用レーザーライフルで迎撃を開始。可視光線ではない不可視のレーザーは、発射後即着弾し、距離による威力減衰も僅かであるため、賊は狙撃地点を特定できないまま次々と頭部を蒸発させられ殲滅された。グレンは衰弱したエリーカを保護し、高度なメディカルキットで治療。彼女に制御キーを渡し、自らの意思で首輪を外させることで、単なる保護対象以上の信頼資本を構築し始める。エリーカはコルディア教会の巡礼者であることを明かし、農場への滞在を希望する。
第3幕:拠点の構築と最初の取引
グレンは「分子分解構成機」を使用し、土壌から抽出したケイ素やアルミニウム、鉄などの元素を用いて堅牢な地下倉庫や宿舎を次々と建設する。そこへ、タウリシアンのライラとフォルミカンのスピカ率いる行商人キャラバンが到着。グレンはこの星では希少な「不純物一切なしの精製水」と、分子分解構成機で精製した「純白の塩」を提供し、代価として現地通貨「タラー(銀貨)」や現地の食材を調達する。この取引を通じ、グレンはリボースIIIの経済状況や、フォルミカンという種族が人類の雄から種を貰い同族を産むという特異な生態に関する情報を収集し、生存インフラの基盤を確立する。
第4幕:プレデターズの襲撃と隠された力
平穏な開拓生活の中、警戒網が野生の蛮族種族「プレデターズ」の接近を検知する。採集中に包囲されたエリーカを救うため、グレンは反物質コアを励起させ、義体の出力を最大化して現場へ急行する。そこでグレンが目撃したのは、腰から生える複数の鋭利な外肢を自在に操り、返り血を浴びて敵を解体するエリーカの凄惨な戦闘姿であった。合流したグレンもまた、義体の圧倒的な膂力を活かし、素手で蛮族の頭部や胸郭を粉砕・破壊する。互いの異常なまでの戦闘能力を確認した二人は、その事実を相互補完的な能力として認め合い、パートナーとしての結束を強める。
第5幕:教会の来訪と生活の拡充
エリーカを捜索していたコルディア教会の実行部隊(ヘレナ、システィアら)が農場に到着する。従姉妹であるシスティアとの再会を喜ぶエリーカを見て、グレンは彼女たちを「身内」として受け入れる。彼女たちはグレンの高度な建築技術に驚嘆しつつ、農場内に礼拝堂と、デルフィニ種族の強い要望による大浴場を建設する。グレンもまた彼女たちから現地の狩猟技術や食材の熟成方法を学び、食卓は飛躍的に豊かになる。この交流を通じ、開拓地は最低限の生存拠点から、大浴場や娯楽室を備えた多文化的な「農場コミュニティ」へと質的な変化を遂げた。
第6幕:追撃者の殲滅と新たな日常
平和な農場に、ライラとスピカのキャラバンが極度の脱水状態で逃げ込んでくる。彼女たちは好戦的な勢力「イト何某」に執拗な追跡を受け、逃げ場を失っていた。追走してきた40名以上の重武装兵に対し、グレンはドローンを通じて最後通告を発令。警告無視を確認した瞬間、事前に設定されたキルゾーンにおいてレーザータレットと戦闘ボットを一斉起動する。反物質コアから供給される膨大なエネルギーを用いたレーザー掃射により、敵の指揮官や重火器兵は反撃の余地なく瞬時に沈黙。圧倒的な暴力による解決は、農場が惑星内でも屈指の難攻不落な聖域であることを対外的に知らしめる結果となった。グレンはエリーカを妻に迎え、開拓者としての日常を本格化させる。
主要な転換点
転換点:エリーカの救出
- 以前の状況:グレン一人による、孤独で機械的な開拓準備。
- 出来事:不可視のレーザー狙撃により賊を排除し、奴隷化されていたエリーカを保護する。
- 変化:自給自足の計画に「他者との共同生活」と「現地情報の入手」が加わる。
- 影響:コルディア教会との強力な同盟関係の契機となり、後のキャラバン来訪を促す要因となる。
転換点:プレデターズ戦でのエリーカの豹変
- 以前の状況:グレンはエリーカを「守るべき無力な弱者」として認識していた。
- 出来事:エリーカがアーソディアンの外肢を解放し、自ら敵を惨殺・解体する。
- 変化:エリーカの真の戦闘能力の判明と、彼女の種族特性への理解が進行する。
- 影響:お互いの異常性を認め合うことで、実力に基づいた対等な信頼関係と、防衛プロトコルの再定義がなされる。
転換点:大浴場の建設
- 以前の状況:最低限の生理的要求を満たすだけの、殺風景な軍事拠点に近い状態。
- 出来事:ペトラの強い提案により、水の循環利用を前提とした大浴場を建設する。
- 変化:拠点の機能が「生存」から「生活・娯楽」へと質的に転換する。
- 影響:来訪者や滞在者の満足度を劇的に高め、グレンの農場が安全かつ快適な「惑星一の補給拠点」として認知され始める。
主人公を中心とした人物関係の変化
人物名,開始時の関係,主要な出来事,巻末時の関係
エリーカ,救出した見ず知らずの被害者,治療、食事提供、プレデターズ戦での共闘、教会の理念共有,深い信頼と愛着に基づいた「唯一無二の伴侶」
スピカ,警戒対象の武装キャラバンリーダー,プレデターズ戦での共闘、水・塩の取引、風呂の共有,頼れる取引相手であり、将来的な「農場移住希望者」
システィア,エリーカを捜索する初対面のシスター,エリーカの保護状況確認、教会の建設、グレンの誠実さの確認,従姉妹であるエリーカを安心して託せる「信頼できる友人」
主人公の認識と周囲の評価
- 主人公自身の認識
- 自身を「モテるはずがない、顔のない、暴力しか能がない無骨なサイボーグ」と過小評価している。
- 周囲からの評価
- 「圧倒的な暴力(絶対的通貨)を保持しながらも、デリケートな配慮ができ、世話焼きで信頼に値するリーダー」と極めて高く評価されている。
- 認識の差が現れた場面
- ライラが流布した「怒らせれば首ごと背骨を引き抜く(あるいは頭ごと引き抜く)」という尾ひれがついた噂を耳にしたサムのキャラバンが、グレンの威容に怯えつつも、彼が提供する清潔な水、塩、そして丁寧な食事に感銘を受け、当初の恐怖を「敬意」へと変える場面。
クライマックス
- 発生原因 :好戦的勢力「イト何某」が、ライラたちの水の補給を妨害して脱水状態に追い込む。逃げ場を失った彼女たちは、グレンの農場を教えざるを得なくなった。
- 当初の状況 :ライラとスピカが極度の脱水状態で農場に逃げ込み、後方から40名以上の重武装兵(突撃銃、ロケット砲装備)が包囲を開始。
- 登場人物の行動 :グレンは上空のドローンを介して最後通告を発令。エリーカは宿舎の屋上で狙撃の待機に入る。
- 予定外の出来事 :敵勢力は農場の防衛力を軽視し、グレンの警告を「二人しかいない農場の虚勢」と嘲笑して進軍を継続した。
- 危機と対応 :敵が事前に設定されたキルゾーンへ侵入した瞬間、グレンは反物質コアの出力を励起させ、レーザータレットと戦闘ボットを完全起動。
- 決着 :非可視光線による狙撃のため、敵は狙撃地点を悟ることなく、指揮官や重火器兵が瞬時に頭部を蒸発させられ沈黙。残存勢力も戦闘ボットの掃射により一兵も残らず殲滅された。
- 直後の結果 :ライラたちの救出に成功。農場が「一度標的となれば確実に死を招く」難攻不落の防衛能力を持つことを実力で証明した。
巻末時点の状況
- 主人公の現在地 :惑星リボースIII、グレン農場。
- 立場 :基盤の確立された農場主であり、エリーカの夫。
- 関係性 :コルディア教会との強力な同盟関係、ライラ・スピカたちとの継続的かつ独占的な取引ルートの確保。
- 解決した問題 :当面の食料・水・電力インフラの安定化、初期襲撃者勢力の完全排除。
- 継続している問題 :近隣の好戦的勢力(イト何某)との潜在的な敵対関係の継続。
- 今後につながる要素 :大規模な農作業の本格開始、新たな移住者の受け入れ可能性、通信アレイ完成による外部星系とのコンタクト。
不死身の傭兵
主人公グレンは、「不死身のグレン」の二つ名を持つ元傭兵を指す。戦場生まれの孤児として約三十年間にわたり白兵戦主体の過酷な環境を生き抜いた経歴を持つ。傭兵稼業から身を引いた後は、第二の人生として惑星リボースIIIへ入植し、農場の開拓や配偶者を迎えた平穏な暮らしを目指す。「不死身の傭兵」と称される主な特徴を以下に整理する。
身体的特徴と内部構造
・高度な義体化
度重なる戦闘や約十年前におけるプラズマグレネードの被弾を経て、頭部において生身の部位は脳のみに留まる。全身の八割以上を人工パーツが占める。
・顔無しの外見
プラズマの爆風により顔面が損壊した結果、目や鼻を欠いた黒色光沢を帯びる人工皮膚で覆われている。
・規格外の体内機構
四肢には常人の十倍前後に達する出力を秘めた強化義体を備え、骨格も高強度の合金へと換装されている。心臓部には動力源として超小型反物質炉を移植されている。
戦闘能力と開拓技術
・徒手空拳による戦闘力
飛来する矢を素手で叩き落とす反応速度を発揮する。強化四肢から繰り出される拳撃や蹴り技により、襲撃者を瞬時に粉砕する。
・拠点構築と整備の技能
銃器の分解整備や復元技術に精通する。分子分解構成機、無人機、自動砲台、駆逐艦用動力機関などを活用し、単身で堅牢な防衛拠点を構築する手腕を発揮する。
性格と人物像
・誠実さと配慮
恐るべき戦闘能力や特異な風貌を備える一方、保護したエリーカに対して弱みに付け込まず休養を最優先させるなど、礼節をわきまえた優しさを示す。
・現実主義と人間味の調和
過酷な前線経験に基づく警戒心を怠らない一方、素直な欲求を隠さず、温かい食事や穏やかな生活を享受する人間味を併せ持つ。
まとめ
過酷な戦場で培われた規格外の戦闘力や技術と、穏やかな日常を愛する人間性が同居する。機械化された特異な外見の奥に宿る温かな人柄こそが、第二の人生を切り開く独自の魅力を形作っている。
惑星居住計画
惑星居住計画は、不死身のグレンと称される元傭兵が、過酷な軍務から退いた後に始動させた第二の人生のための開拓構想を指す。長年の戦闘生活を経て蓄積した資産や知識を基盤に、辺境の未開惑星において独自の生活拠点を築き上げる試みとなる。計画の動機や目的地の選定、物資の調達、現地での拠点構築に至る経緯を以下に整理する。
計画の背景と動機
・資産面での制約
約三十年間の傭兵生活を通じて蓄えた資産は約三百万エネルに留まり、治安が安定した先進惑星の一等市民権を獲得するために必要な数千万から億単位の費用には到達しなかった。
・居住環境の不適合
五十万エネルで取得可能な二等市民権を利用して航宙植民コロニーへ入居する選択肢も検討されたが、全身の八割以上を戦闘用義体へ換装した体躯では閉鎖空間での長期滞在に耐えられないと判断された。
・人生設計の根本方針
テラフォーミング済みの惑星で自給自足の農場を開墾し、配偶者を迎えて家庭を築くという目標の達成を目指して立案された。
目的地の選定
・環境と地政学的特性
三つの銀河国家に隣接する戦略上の要衝であり、有機生命体向けに環境改変が施されているものの、実質的な統治機関が存在しない無法地帯の惑星リボースIIIが選定された。
・選定の論理
宙賊や土着の武装集団、暴走した自律機械兵器、変異生物などの脅威が多発する過酷な地域ながら、培った戦闘能力を発揮して困窮者を保護すれば、信頼の獲得を通じて配偶者を得る契機につながるという独自の試算に基づき決定された。
事前準備と物資調達
・参考資料の活用
辺境開拓者向けの指針書に記載された推奨品目リストを精査し、漏れのない機材調達が進められた。
・調達された資材群
農業用作業機械、無人偵察機、分子分解構成機、医療資材、通信機器、各種娯楽データに加え、万一の喪失時に設備や装備を白紙から再構築可能な技術設計図群が確保された。
・移動手段の確保
汎用小型航宙艇を調達し、知人の船舶を仲介して目的の星系へと移送された。
現地での展開と拠点の確立
・防衛設備の先行配備
惑星への降下直後、開墾作業に先立って偵察網や戦闘用自動兵器、迎撃砲台を配備し、軍用駆逐艦の主機を流用した高出力発電施設を構築した。
・生活基盤の確保と物資供給
大気から抽出した清浄な水、構成機で製造した塩、高度な医薬品などを巡回交易商へ供給し、地域通貨や生鮮食料を買い取ることで補給地点としての機能を確立した。
・生活共同体の形成
拘束下から保護した修道女や、交易隊を率いる指導者らを迎え入れ、安全と物資を兼ね備えた自立拠点の基盤を固めた。
まとめ
この開拓構想は、過酷な戦場で培われた生存技術と物資管理の手腕を、破壊ではなく平穏な日常の構築へと転用した開拓記録に位置づけられる。極限の環境下で築かれた防衛網と生産設備は、単なる避難所にとどまらず、新たな生活基盤を支える要塞農場としての役割を果たしている。
異種族との婚姻
異種族との婚姻は単なる個人の恋愛にとどまらず、過酷な無法惑星リボースIIIにおいて平和な共同体を築き上げ、生き残るための核心的な理念および生存戦略として描かれる。
コルディア教会における一夫多妻異種婚の理念
・友愛と融和の教義
エリーカが所属するコルディア教会は、異種族同士の肉体的および精神的な融和と、良き隣人への愛を説く宗教組織に位置づけられる。
・理想の婚姻形態
種族を超えて愛し合い、子を産み育てることで争いを減らし平和をもたらすという考えのもと、通常の一夫一婦婚や同族婚も祝福される一方、一人の男性が複数の異種族を娶る一夫多妻異種婚が最上の形とされる。
各異種族の独自の生態と結婚文化
・タウリシアン
大型で立派な角を持つ種族であり、女性が嫁ぐ際には夫となる男性の手で角を切り落としてもらう独特の風習が存在し、角の切断が求婚の受け入れや夫婦の契りを意味する。
・フォルミカン
ほぼ雌性体のみで構成される生来的労働者および戦士の種族であり、成人後に姉妹で旅をして定住地を探す生態を持ち、他の人類系種族の男性から種を得て繁殖し、生まれる子はすべて同種族となる。
・アーソディアン
女性にのみ昆虫などの外骨格生物の特徴が現れる種族であり、通常の性比で生まれるものの、備わる外肢や器官の形状には個人差が見られる。
グレン農場における意義と発展
・家庭の構築
主人公のグレンは当初通常の一夫一婦を想定していたが、最初の妻エリーカを迎えた後、教会の理念やライラらの求婚を受け入れる形で一夫多妻異種婚へと進む。
・生存および交易基盤の確立
異種族の妻を迎える行為は、各種族の持つ独自の技術、労働力、交易網が農場に組み込まれることを意味し、農場は単なる耕作地を超えて自給自足と安全な取引を両立する交易拠点へと発展を遂げる。
まとめ
異種族との婚姻は、宗教的な融和思想と現実的な生存戦略が融合した独自の生活形態を示す。多様な種族の特性や絆を結集させる歩みは、無法の辺境惑星において強固な共同体を成立させる基盤となる。
農場の要塞化
農場の要塞化は、『フェイスレス・ドロップアウト』において、主人公グレンが抱く平穏な生活への望みと、過剰とも呼べる防衛設備との乖離を浮き彫りにする。無法惑星リボースIIIへ入植した元傭兵は、過酷な前線経験から最悪の事態を想定して開拓へ着手した。当人が最低限と捉える生活設備は、外訪者から前哨基地そのものと見なされる。
動力設備と建築構造
・駆逐艦主機の転用
居住区一帯へ電力を供給する目的で、軍用航宙駆逐艦の機関部を流用した発電施設を稼働させている。破損時には周囲数キロメートルへ甚大な被害を及ぼす規模の出力を有する。
・高耐久な建造技術
土壌の元素を再構築する加工機械を活用し、対人光線兵器の直撃を遮断する耐久性を備えた半地下施設や強固な建屋を築く。
警戒網と迎撃機構
・全方位監視網
無人偵察機を滞空巡回させ、広範囲の視覚情報と接近する不審な動向を常時捕捉する。
・無人防衛網の配備
屋根上などに固定式自動光線砲塔を配置し、不整地対応の自律戦闘機械と連動した迎撃態勢を敷く。
・射撃範囲の確保
周辺の樹木や障害物をあらかじめ撤去し、侵入者を一網打尽に捕捉する射撃区域を形成する。
地下防護施設と隠匿装備
・地下構造と退避経路
空爆を想定した地下退避所と保管庫を整備し、地下道を通じて往来を可能にする。
・高度軍用物資の保管
対人用光線銃、高熱兵器、防護力場発生器、高射照準器、超光速航行と地上爆撃能力を持つ小型航宙艇を地下へ隠匿する。
・防御設備の拡張計画
長距離砲撃や曲射攻撃を警戒し、堅牢な外壁、高射兵装、防護力場を展開する防衛構想を進める。
外訪者の反応と実戦記録
・来訪者の評価
保護された同居人、巡回商人、宗教関係者など、足を踏み入れた人々は例外なく軍事前哨拠点や防衛拠点と認識して警戒を示す。
・襲撃部隊の迎撃
重武装兵四十余名で構成された侵入勢力に対し、遠距離狙撃、固定砲台、戦闘機械の集中砲火を浴びせ、敷地への立ち入りを許さず撃破する。
まとめ
開拓地と称する居住区は、軍用規格の動力源、無人戦闘システム、隠匿された航宙艇により、未開惑星屈指の防護拠点を形成する。平穏を求める意識と軍事的な合理性が結合した結果、独自の要塞農場が生み出される。
コルディア教会
コルディア教会は、作中においてヒロインのエリーカが所属する宗教組織に位置づけられる。物語の根底を流れる価値観を形成し、過酷な開拓環境において異種族間の調和や生活基盤を支える重要な役割を果たす。その教義や防衛方針、主人公の拠点との関わりを以下に整理する。
創設目的と基本理念
・平和と安住の追求
争いが絶えない辺境の地において、人々が互いを尊重し支え合いながら平穏に暮らせる安住の地を築く目的で創設された。
・友愛の重視
すべてを無条件に包み込む博愛ではなく、家族や仲間、良き隣人との関係を重んじる友愛を行動の基本方針に掲げる。
・異種族融和と婚姻形態
異なる種族同士が精神的および肉体的に結びつき、次世代を育てる歩みを通じて対立の解消を目指す。通常の一夫一婦婚や同族婚を肯定しつつ、一人の男性が複数の異種族を配偶者として迎える形態を最も望ましい形として位置づける。
・始祖の教え
違いを肯定的に受け入れ、各自の個性を認め合う始祖コルトの言葉が組織全体の指導理念として継承されている。
現実的な防衛観と実行部隊
・武力行使の容認
調和を理想に掲げながらも現実の脅威を直視し、対話が成立しない外敵や武装勢力による侵略に対しては自衛のための戦闘を認める。
・実行部隊の配備
治安維持や信徒の保護を担う防衛組織を擁し、高度な防護装甲や重火器を装備して教団の安全確保に努める。
グレン農場との関わり
・交流の端緒
拘束具を装着され捕らわれていた修道女エリーカが解放された出来事を機に、開拓農場との間に深い協力関係が築かれた。
・拠点の拡充
農場の一角に地下退避所を兼備した礼拝堂が整備され、防衛と信仰を両立する共同施設としての機能が強化された。
・共同体の形成
異種族の女性たちが家族として加わる契機を与え、開拓拠点が単なる農耕地にとどまらず、多様な種族が集う交易と生活の中心地へ発展するための思想的基盤を提供する。
まとめ
コルディア教会の思想は、理想論にとどまらない現実的な防衛意識と融合し、過酷な環境下での生存戦略として機能する。多様性を受け入れ共生を目指す理念は、開拓農場が強固な生活共同体へと成長していく過程を力強く後押しする。
登場キャラクター
グレン農場
グレン
元傭兵の男性であり、身体の八割以上を義体化している。過酷な戦場を離れて無法惑星リボースIIIへ入植する。現実的で危機管理意識が高く、他者への面倒見が良い側面を持つ。エリーカやライラを妻として迎え入れる。
・所属組織、地位や役職 グレン農場の主。元白兵戦傭兵。
・物語内での具体的な行動や成果 分子分解構成機や軍用ジェネレーターコアを用いて拠点を構築する。奴隷にされていたエリーカを救出し保護を果たした。襲撃してきたプレデターズやイトゥルップ共同体の部隊を返り討ちにする。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 単身の入植者から、複数種族が集まるグレン農場の家長へと立場を広げる。心臓代わりに超小型反物質コアを移植されている。
エリーカ
コルディア教会に所属するシスターの女性に当たる。宙賊崩れの男たちに囚われていたところをグレンに救出される。アーソディアンと呼ばれる種族で、腰から鋭い外肢を生やすことができる。グレンの最初の妻となる。
・所属組織、地位や役職 コルディア教会・シスター。グレン農場・食料管理責任者。
・物語内での具体的な行動や成果 自ら首輪を解除してグレンの農場へ身を寄せる。野イチゴを採集してジャムを作り、グレンの好物となる。農場の料理や食料の保存管理を一手に担う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 巡礼者からグレン農場の共同経営者兼妻へ立場が変化する。鮮血を目にすると本能的に興奮する特質を持つ。
ライラ
タウリシアンと呼ばれる種族の女性に当たる。行商キャラバンのリーダーを務める。明るく商売熱心な性格で、計算高い側面をみせる。グレン農場の交易価値を見抜き、二番目の妻として嫁ぐ。
・所属組織、地位や役職 行商キャラバン・リーダー。グレン農場・資金管理兼交渉役。
・物語内での具体的な行動や成果 グレン農場で精製水や医薬品を購入し、食料や服飾品を売却する。イトゥルップ共同体に水を壊され、グレンのもとへ逃げ込む。角を切り落とす儀式を経てグレンの妻となる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 訪問商人からグレン農場の顔役に就任する。角を切られたことでグレンへ従属する誓いを立てた。
ポチ
グレンが持ち込んだ四足歩行型の軽量戦闘ボットを指す。犬やオオカミの骨格を模した形状をしている。エリーカの専属護衛として配置される。個体識別名としてポチと名付けられる。
・所属組織、地位や役職 グレン農場・専属護衛ボット。
・物語内での具体的な行動や成果 採集に出かけるエリーカに常に同行する。敵接近時には警告音を発して主へ知らせる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 単なる作業用機械から、エリーカに愛着を持たれる護衛ボットに位置づけられる。自律的な防衛・警報機能を備える。
コルディア教会
ヘレナ
コルディア教会に所属するシスターの女性に当たる。穏やかで知的な人物として描かれる。消息不明だったエリーカの無事を確認するために農場を訪れる。
・所属組織、地位や役職 コルディア教会・シスター。
・物語内での具体的な行動や成果 実行部隊を引き連れてグレン農場へ到着する。グレンと交渉を行い、農場内に礼拝堂を建てる合意を得る。完成した通信機を借りて教会支部へ連絡を入れる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 グレンに教会支部長への就任を打診したが断られる。頭部に小さな角を持つ。
ミューゼン
コルディア教会に所属するシスターの女性を指す。全身に複数の触手を持つ独特の身体構造をしている。感情が高まると不思議な踊りを披露する癖がある。
・所属組織、地位や役職 コルディア教会・シスター。
・物語内での具体的な行動や成果 ヘレナとともにグレン農場を訪問する。夜間にグレンの寝室へ聞き耳を立てて咎められる。農場内での風呂設置を大いに喜ぶ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 グレンの身体能力や装備の頑丈さに強い関心を示す。触手を用いたスキンシップを頻繁に行う。
システィア
コルディア教会に所属するシスターの女性に当たる。エリーカの従姉妹であり幼少期から姉妹のように育つ。厳格で礼儀正しく、教義や礼節を重んじる性格をしている。
・所属組織、地位や役職 コルディア教会・シスター。
・物語内での具体的な行動や成果 エリーカとの再会を果たして涙を流し喜ぶ。グレンに対して無礼を働いた味方を厳しく嗜める。礼拝堂の建設時に外観や仕様の意見を出す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 アーソディアンの種族特性を持つが、具体的な特徴は隠している。エリーカの幸福を祈りつつ農場を後にした。
ペトラ
コルディア教会実行部隊の隊長を務める女性に当たる。デルフィニと呼ばれる海洋哺乳類系の種族に分類される。豪快で好戦的な性格をしており、力自慢である側面をみせる。
・所属組織、地位や役職 コルディア教会・実行部隊隊長。
・物語内での具体的な行動や成果 ヘレナたちの警護を担当して農場へやってくる。グレンに腕相撲を挑んで敗北する。農場内に大浴場を設けるアイデアを提案する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 強力な尾と優れた膂力を誇る。グレンへ狩獲物の解体方法を伝授した。
コルディア教会実行部隊
コルディア教会が擁する武力組織を指す。友愛の理念に従わない敵対者から信徒を守る役割を担う。先進的なアーマーや武器で武装している。
・所属組織、地位や役職 コルディア教会・武力実行部門。
・物語内での具体的な行動や成果 シスターたちの行軍を護衛してグレン農場へ同行する。農場周辺で狩猟を行い、生鮮肉の確保に貢献する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 デルフィニなどの強靭な種族を中心に構成される。グレンの高度な防衛装備と戦闘力に感心を示した。
行商キャラバン
スピカ
フォルミカンと呼ばれる種族の女性に当たる。小柄な体格で頭部に触角を備える。旅の護衛集団を率いるリーダーを務める。警戒心が強くさばさばとした態度を見せる。
・所属組織、地位や役職 フォルミカン護衛隊・リーダー。
・物語内での具体的な行動や成果 ライラのキャラバンを護衛してグレン農場へ立ち寄る。襲来したプレデターズの北側部隊を仲間とともに撃退する。農場のシャワー施設を気に入り使用する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 定住地を探す姉妹集団を率いる。グレンの圧倒的な素手での戦闘力に驚愕した。
食料キャラバン
サム
食料を主に扱うキャラバンの代表を務める男性に当たる。標準的な人類の種族に分類される。軽い口調で物事を話すが、素直に非を認める柔軟さを持つ。
・所属組織、地位や役職 食料キャラバン・代表。
・物語内での具体的な行動や成果 ライラからの情報を受けてグレン農場へ補給に訪れる。精製水や精製塩を購入し、野菜や肉などの食料を売却する。農場で提供されたエリーカの料理に舌鼓を打つ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 初対面時にはグレンの威圧感に怯えていた。取引を通じてグレン農場を安全な補給拠点として認めた。
ジェシー
サムのキャラバンに同行する年嵩の女性を指す。補佐役としてサムの言動を制する役割を担う。気さくで面倒見の良い人柄をしている。
・所属組織、地位や役職 食料キャラバン・補佐役。
・物語内での具体的な行動や成果 失言したサムのケツに膝蹴りを入れてグレンへ謝罪する。農場滞在中にエリーカと交流し、採取や料理を一緒に行う。グレンの過保護な姿勢についてアドバイスを送る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 キャラバン内の実質的なまとめ役として機能する。エリーカの心身の回復に良い影響を与えた。
イトゥルップ共同体
オルカン
イトゥルップ共同体襲撃部隊の巨漢男性を指す。鼻の形が特徴的で、肩にロケット砲を担ぐ。好戦的で他者を見下す態度をとる。
・所属組織、地位や役職 イトゥルップ共同体・襲撃部隊員。
・物語内での具体的な行動や成果 ライラのキャラバンを追跡してグレン農場へ押し寄せる。グレンからの警告を無視してあざ笑う。開戦直後にグレンの長距離狙撃を受けて頭部を吹き飛ばされる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 部隊の重火力を担当していたが、最初の犠牲者となる。
ビリー
イトゥルップ共同体に所属する男性構成員を指す。夜間にグレン農場へ忍び込んだ襲撃者の一人に当たる。
・所属組織、地位や役職 イトゥルップ共同体・夜襲部隊員。
・物語内での具体的な行動や成果 構成機などの奪取を目論み、仲間とともに農場へ侵入する。自動防衛タレットの狙撃を受けて即座に頭部を撃ち抜かれる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 夜襲の先頭付近を歩いていたが、反撃を受けて死亡する。
イトゥルップ共同体襲撃部隊
近隣で好戦的かつ野心的と恐れられる武装勢力を指す。四十名以上の訓練された戦闘員で構成される。ライラたちの水に細工をして追い詰め、農場の場所を探ろうとする。
・所属組織、地位や役職 イトゥルップ共同体・軍事実行部門。
・物語内での具体的な行動や成果 ライラたちを追い回してグレン農場の防衛圏へ侵入する。グレンの警告を拒絶して進軍を試みる。レーザータレットや戦闘ボットの集中射撃を受け、全滅する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 突撃銃やロケット砲で武装していたが、光学兵器の前に一方的に壊滅した。
その他の人物・集団
爺さん(ドワーフ職人)
グレンと二十年来の付き合いがあるドワーフの職人を指す。口は悪いが面倒見が良く、手腕の確かな技量を持つ。グレンの過去や身体の状態をよく知る理解者に当たる。
・所属組織、地位や役職 ドワーフの整備職人。
・物語内での具体的な行動や成果 小型航宙艦ザブトンを整備してグレンに提供する。駆逐艦用ジェネレーターコアを居住地用に転用する設計図を引き渡す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 グレンの駆け出し時代から整備面で長年支え続けた。
女船長
リボース星系周辺を拠点にする武装商船の船長を務める女性に当たる。グレンとは十年以上の付き合いがある。倒錯的な愛玩好みの趣味を持ち、サバサバとした性格をしている。
・所属組織、地位や役職 武装商船・船長。
・物語内での具体的な行動や成果 退役したグレンとその大量の物資をリボースIII軌道上まで送り届ける。降下直前のグレンと軽妙なやり取りを交わす。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 グレンの無謀とも思える農場計画を呆れつつ見守った。
宙賊崩れの男たち
無法惑星で弱者を掠奪する悪質な悪党グループを指す。虐待目的で首輪をはめたエリーカを連れ回していた。実弾銃や粗末な近接武器で武装する。
・所属組織、地位や役職 宙賊崩れの掠奪集団。
・物語内での具体的な行動や成果 巡礼中だったエリーカを捕らえて虐待や暴行を加える。落下してきたグレンのシャトル物資を狙って接近する。グレンの遠射レーザー攻撃により全滅させられる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 グレンが最初に排除した敵対勢力となる。彼らから奪った鍵がエリーカの解放につながった。
プレデターズ
人類ベースの変異種で半裸の蛮族勢力を指す。他の人類種族の女性を宿主として繁殖する寄生生物的な生態を持つ。理性が薄く本能に従って暴力を振るう。
・所属組織、地位や役職 土着変異種族・野蛮集団。
・物語内での具体的な行動や成果 採集中のエリーカやグレン農場を半包囲して襲撃する。エリーカの外肢攻撃とグレンの素手格闘により惨殺される。逃亡を図った者もレーザーガンで全滅させられる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 交戦しても死体や戦利品に利用価値がない厄介な存在とされる。遺体は農場の肥料として処理された。
(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。
展開まとめ
プロローグ
不死身の傭兵
宇宙では複数の帝国が恒星系の支配権を争い、長い戦乱が続いていた。戦場で生まれ育ったグレンは、三十年近く傭兵として戦ううちに四肢や内臓の大半を失い、身体の八割以上を義体化していた。十年前にはプラズマグレネードで顔も焼失し、黒くのっぺりとした人工の顔を持つようになった。それでも生き延び続けたため、不死身のグレンと呼ばれていた。
戦いに疲れたグレンは傭兵団を円満に除隊し、残った資産で農場を築いて妻を迎えることを決めた。しかし安全な惑星の市民権を得るには資金が足りなかったため、三つの宇宙帝国が共同統治する無法地帯のリボース星系へ向かった。
惑星居住計画
グレンはテラフォーミングされた惑星リボースIIIを入植先に選んだ。そこには各国の武装勢力や宙賊、生物兵器、自律機械兵器、人工種族が入り乱れていたが、戦場慣れしたグレンなら暮らせる環境でもあった。
グレンは農業用ボットやドローン、分子分解構成機、食料、医療物資、武器、通信設備、技術資料を買い集めた。さらに小型輸送シャトルを購入し、馴染みの女船長の船でリボース星系へ向かった。危険な土地で力を示して誰かを守れば、妻を得られるかもしれないと考えていたのである。
#1:「よろしく、エリーカ」
リボースIIIへの降下
グレンは他勢力との衝突を避けながら資源も採取できる土地を選び、輸送シャトルと多数の物資ポッドを地上へ降下させた。偵察ドローンと作業用ボットを起動し、周辺の探索、資源回収、寝床や倉庫の建設を始めた。
食料生産も急務であったが、グレンは物資を守る防衛網と安全な寝床を優先した。半地下の倉庫や頑丈な施設を建て、将来の農場建設に備えた。
奴隷の首輪
偵察ドローンが、武装した五人の男と一人の女性を発見した。女性は全身に虐待の痕跡があり、身体と意思を拘束する奴隷の首輪を着けられていた。グレンが武装解除を警告すると、男たちは敵対的な態度を取ったため、彼は遠距離からレーザーで全員を射殺した。
女性はコルディア教会の巡礼者エリーカであった。彼女は旅の途中で助けた男たちに裏切られ、奴隷の首輪を着けられて暴行を受けていた。男たちが死んだ後も、エリーカは撃たれることを受け入れるように抵抗せず立っていた。
エリーカの治療
グレンはエリーカを拠点へ連れ帰り、水と食料を与えた。医療用のスキャナーで全身を調べ、傷を洗浄して治療用ジェルと抗生剤を使い、望まぬ妊娠を防ぐ薬も渡した。治療中もエリーカの意思を尊重し、それ以上の行為を求めなかった。
エリーカの腰には、鋭い刃を備えた一対の外肢が生えていた。グレンは驚きながらも彼女を異物扱いせず、傷の治療を続けた。
グレンは男たちから回収した首輪の制御キーをエリーカに渡し、自分で自由になるよう促した。エリーカは首輪を外し、グレンが用意した寝床で食事を取った。二人は互いに名乗り、エリーカは救ってくれたグレンへ感謝を伝えた。
#2:「えーっとぉ……農場?」
二人の距離
エリーカは命を救われた対価として自分を妻にしてもよいと考えていた。だがグレンは、弱った相手の事情につけ込むのは公正ではなく、欲しいのは互いに愛し合える妻であると伝えた。心身が回復してから改めて考えるよう求め、結論を急がせなかった。
エリーカは夜ごと悪夢に苦しみ、十分に眠れなかった。水まで遠慮していたため、グレンは水を自由に使ってよいと言い聞かせ、空気から水分を集める水筒を与えた。
農場の防衛設備
グレンはエリーカの傷んだ服を機械で修繕し、偵察ドローン、戦闘ボット、レーザータレットを配備した。軍用駆逐艦のジェネレーターコアを転用した動力施設も建設したため、エリーカには農場よりも軍事拠点のように見えた。
エリーカは何もせず保護されることを望まず、周辺で食べ物を採集したいと申し出た。グレンは採集用の鞄とナイフを渡し、護衛の戦闘ボットを同行させた。エリーカは野イチゴを見つけ、グレンに喜んでもらうため持ち帰った。
ライラのキャラバン
タウリシアンのライラが率いる商隊と、フォルミカンのスピカたちが農場へ接近した。グレンは偵察ドローンを通じて取引か戦闘かを選ばせ、武器から弾を抜くことを条件に一行を迎えた。
ライラたちは強固な動力施設やレーザータレット、戦闘ボットを見て、農場ではなく要塞ではないかと疑った。グレンは建設途中の農場であると言い張り、精製水、塩、医薬品、賊から奪った装備を商品として提示した。
グレンは精製水や医療品を売り、現地通貨のタラーを得た。代わりにエリーカの衣服、砂糖や調味料、食料、実弾ライフルと弾薬を購入した。エリーカが欲しがった品を遠慮なく選ばせるグレンを見て、ライラたちは彼の容貌に反した面倒見のよさを知った。
#3 : 「いや死なんが」
フォルミカンの姉妹
スピカは、自分たちフォルミカンが成人後に姉妹で旅をし、定住地を見つけて新たな集団を築く種族だと説明した。彼女たちは人類系種族の男性との間に子を作ることができ、生まれる子供はフォルミカンになるため、強い男性を共同体へ迎えようとしていた。
スピカはグレンたちの農場への定住もほのめかしたが、その最中に二つの武装集団が農場へ接近した。一方は北から、もう一方は採集中のエリーカの近くへ向かっていた。
鮮血のエリーカ
グレンはスピカたちに北側を任せ、自らエリーカの救援へ走った。しかし到着した時には、エリーカが刃の付いた外肢でプレデターズを切り刻んでいた。鮮血によって興奮した彼女は理性を失い、駆けつけたグレンにも襲いかかったが、声を聞くと我に返った。
グレンは怯えるエリーカを責めず、拠点へ戻るよう命じた。残ったプレデターズには単身で立ち向かい、飛来する矢を叩き落とし、投槍を投げ返し、拳や手刀、蹴りで次々と倒した。逃げた者もレーザーガンで射殺した。
暴力と情報
戦闘後、ライラとスピカたちはグレンの戦闘力と、エリーカが作った無残な死体に驚いた。グレンは敵の死体を処分し、今後の安全のために各地の事情を聞いた。
一行は食事を共にし、グレンはリボースIIIの種族、勢力、交易事情を学んだ。グレンも傭兵を辞めて農場を築き、妻を探していると明かした。エリーカは彼ならすぐに望みをかなえられると語り、さらに距離を縮めた。
#4:「……………もう一口くれ」
ポチと野イチゴ
ライラたちが出発すると、グレンは四足歩行型戦闘ボットをエリーカ専属の護衛とし、彼女が呼んでいたポチという名を正式に登録した。危険を感じたら銃で時間を稼ぎ、自分かポチを頼るよう言い聞かせた。
エリーカは再び野イチゴを集め、グレンが作った容器と購入した砂糖を使ってジャムを作った。生鮮食材の料理に馴染みがなかったグレンはその味に感動し、もう一口を求めた。野イチゴのジャムは彼の好物となった。
二人の家
グレンは複数人が暮らせる宿舎を建て、エリーカと相談しながら厨房、食堂、家具を整えた。エリーカは将来の住人増加も考慮し、十六人分の食事を用意できる厨房を提案した。
グレンがエリーカに今後も残る意思があるのか尋ねると、彼女は不安を浮かべた。グレンは、エリーカが残って食事を作ってくれれば助かるだけでなく嬉しいと伝えた。エリーカは笑顔で応え、二人で暮らす家の内装を選んだ。彼女の強い希望により、グレンの部屋には大きなベッドが置かれた。
旅人の補給所
西からサムとジェシーの商隊が訪れた。ライラから顔無しのグレンがプレデターズを素手で殺したと聞いていたため、一行は当初彼を恐れたが、取引を通じてまともな人物だと理解した。
グレンは水と塩を売り、穀物、野菜、保存食、肉などを購入した。さらに旅人へ食事と酒と宿を提供すれば、商隊が集まり、周辺の経済へ食い込めると考えた。エリーカの料理は好評であり、二人は農場を安全な交易拠点へ発展させる基礎を築いた。
#5 :「話が飛躍しすぎてついていけんのだが」
エリーカの求婚
出会いから一週間後、心身が回復したエリーカはグレンと大切な話がしたいと切り出した。彼女の意図を察したグレンは、自分のそばにずっといてほしいと告げた。エリーカは喜んで受け入れ、二人は夫婦となった。
グレンは念願の妻を予想より早く得たことを喜んだ。ところがエリーカは、ライラやスピカたちも妻に迎えて大家族を作れると楽しげに語ったため、グレンは話の飛躍に困惑した。
コルディア教会の理想
エリーカが属するコルディア教会は、異種族同士が互いを愛し、家族となることで争いを減らすという理念を掲げていた。その理想的な形が、一人の男性と異なる種族の複数の女性による家族であった。
敬虔な信徒であるエリーカは、グレンとともに教会の理想を体現する共同体を築きたいと望んでいた。グレンは当面二人で関係を深めたいと考えたが、スピカたちの労働力やライラの交易能力を思えば、彼女たちの移住を拒み切れないとも感じた。
教会を揶揄したグレンはエリーカを怒らせ、謝罪のために甘いパンを差し出した。さらに農場内へ礼拝施設を建設すると約束した。その夜、エリーカはグレンと同じ寝床で穏やかに眠った。
夜襲の壊滅
二十一人の賊が夜陰に乗じて農場を襲撃した。グレンはエリーカを起こさないよう一人で外へ出たが、敵の大半は配置済みのレーザータレットによって倒された。グレンは生き残った一人を始末し、敵の装備や物資を回収した。
グレンは、守る家族が増えれば防備や食料生産、交易、周辺勢力との交渉も必要になると考えた。傭兵とは異なる役割であっても、エリーカと築く生活を守るために担う覚悟を固めた。
人の道
エリーカは、コルディア教会の友愛が無条件の博愛ではなく、家族や友人などの良き隣人を愛する教えだと説明した。武器を持って襲う相手とは戦うことも認めており、グレンには今までどおり行動してよいと伝えた。ただし彼が人の道を外れそうになれば、自分が止めると約束した。
農場の本格始動
二人は畑を作り、穀物、芋類、野菜、豆、イチゴや果樹を植えた。農作業は人工知能を備えた機械に任せ、グレンは作業場で戦利品の銃を修復した。
グレンはエリーカにサブマシンガンを与え、分解整備と射撃を教えた。エリーカは彼のそばで作業を眺めながら、採集と料理を担った。グレンもまた、顔のない自分へ自然に笑いかけるエリーカと出会えたことに、傭兵を辞めた意味を感じていた。
教会への通信
エリーカはコルディア教会へ無事を知らせたいと頼んだ。グレンは遠出の危険を避け、地上の各地や軌道上の商船とも交信できる通信塔の建設を始めた。
完成を待つ間に、コルディア教会の実行部隊が農場へ接近した。エリーカはグレンが攻撃しないよう念を押し、来訪者が仲間であると伝えた。グレンは偵察ドローンを通して一行を歓迎し、平和的に農場へ案内した。
#6: 「それが朝の挨拶か?」
システィアとの再会
教会の一行にはシスターのヘレナ、ミューゼン、システィアと、ペトラが率いる八人の護衛がいた。エリーカは幼い頃から姉妹同然に育った従姉妹のシスティアと再会し、抱き合って涙を流した。
グレンはヘレナたちに、エリーカを救出して治療し、家族となった経緯を話した。彼女が受けた被害については無理に聞かないよう頼み、教会の仲間を自分の身内として宿舎や水、温かいシャワーを提供した。
異種族のシスターたち
ヘレナは黒い翼を持つイビリス、ミューゼンは六本の触手を持つディセンブラ、ペトラたちは強い尾と優れた膂力を持つデルフィニであった。いずれも女性の出生率が高い種族であり、コルディア教会には同様の種族が多く集まっていた。
エリーカとシスティアはアーソディアンであり、女性にはさまざまな外骨格生物の器官が現れた。エリーカの刃を備えた外肢もその特徴であった。彼女は鮮血を見ると本能が高ぶり、理性を失いやすいため、動物の解体を苦手としていた。
グレンは、自分が狩猟と解体を担い、エリーカが肉を料理すればよいと慰めた。夫婦は互いにできないことを補い合うものだと語り、彼女の負い目を軽くした。
教会の実行部隊
コルディア教会の実行部隊は、友愛では共存できない敵から信徒を守るための武力組織であった。長く戦場で生きたグレンは、言葉だけで平和を守ることはできず、力を示さなければ信用も得られないと理解を示した。
ペトラやミューゼンは暴力を基本通貨と呼ぶグレンの考えに共感した。ヘレナも、教会の現実的な一面を揶揄せず受け入れた彼へ感謝した。
礼拝堂と避難所
グレンはヘレナとシスティアの意見を聞き、農場内に礼拝堂を建設した。地下には攻撃を受けても耐えられる避難所を設け、秘密の物資倉庫へ通じる退路も用意した。
ヘレナはグレンに教会支部長の座を勧め、自分やシスティアたちも付けると持ちかけた。グレンは教会と友好関係を結ぶ意思を示したものの、農場を傘下に入れることは断った。防壁、シールド、対空兵器まで整えようとする彼に対し、皆は農場ではなく要塞であると指摘したが、グレンは農場だと言い張った。
初めての風呂
ペトラの提案により、グレンは共同浴場と少人数用の風呂を建設した。水の節約になるだけでなく、エリーカと一緒に入れると知ったことが決め手であった。
宇宙育ちのグレンにとって、大量の湯へ身体を沈める風呂は初めてであった。彼はエリーカとともに入浴し、その心地よさと二人で過ごす時間を楽しんだ。
教会一行の旅立ち
ヘレナたちは三日間滞在し、グレンへ狩った獣の解体方法を教えた。完成した通信機で教会の支部とも連絡を取り、エリーカの無事を知らせた。
出発時、グレンは燻製肉、ジャム、水などを持たせた。エリーカとシスティアは別れを惜しみながら、再び抱擁を交わした。教会の一行はグレンへ親しみを深め、彼とエリーカの農場を後にした。
#7 :「……旦那っていい趣味してるよな」
追われる商隊
ヘレナたちが去って一週間後、ライラとスピカたちが何者かに追われて農場へ逃げ込んできた。彼女たちは水を失い、荷物を捨てながら四十三人の武装集団から逃げていた。
グレンは一行を防衛圏へ誘導し、追手へ武装解除を要求した。追手は農場の戦力を侮って侵入したため、グレンはレーザーライフル、タレット、戦闘ボットを一斉に攻撃させた。敵は武器の射程へ入ることすらできず、逃走も降伏も許されないまま全滅した。
イトゥルップ共同体の脅迫
グレンは、農場の位置を敵へ知らせたのではないかとライラを追及した。ライラたちはイトゥルップ共同体の集落を訪れた際、サムが売った精製水や塩から、農場に高度な技術があると察知されていた。
共同体は農場の場所を聞き出そうとしたが、ライラたちは答えなかった。すると彼らは夜中に商隊の水を使えなくし、別の補給地へ向かえば賊に襲われると脅した。ライラたちには農場へ逃げる以外に生き延びる道がなかったのである。
エリーカは事情を酌み、交易網を持つライラたちとの関係も重視して許すよう勧めた。グレンは二度と同じことを繰り返さないよう警告し、償いを条件に一行を許した。
タウリシアンの求婚
ライラたちは償いとして農場で働くことを申し出た。さらにタウリシアンの女性にとって、強く裕福な男性へ嫁ぎ、安全な共同体を築くことは望ましい選択であり、農場へ移住してグレンの妻になりたいと告げた。
グレンは彼女たちを妻に迎える利点を問いただした。ライラは、商売の知識、広い交易網、労働力、子供を産み育てる力を提供でき、農場を町へ発展させられると説明した。グレンは長期的に家族や子供を守る環境を考え、その提案に価値を認めた。
全員を一度に迎えることはできないため、責任者であり最も交流の深いライラを選んだ。タウリシアンには結婚の際に角を切る風習があり、ライラはグレンに自分の角を切るよう頼んだ。苦痛を伴う作業を終えたグレンが切った角を飾ろうとすると、それが服従と所有を示す強烈な意味を持つと判明し、ライラは羞恥と興奮で倒れた。
三人の家族
グレンはエリーカとライラに、文化も育った環境も異なるため衝突はあっても、家族として互いの身体と心を守るよう求めた。二人は頷き、三人は家族となった。
ライラはそのまま農場へ残り、部下たちとスピカの姉妹はタウリシアンの拠点へ報告に向かうことになった。グレンは彼女たちの安全のため、整備済みの銃やロケット砲を安価で譲り、物資も補充した。
エピローグ
結納金の計画
旅立った一行は、ライラの嫁入りとイトゥルップ共同体の脅迫を報告し、賠償金を持ち帰る予定であった。しかしライラによれば、その金は実質的にはタウリシアンの伝統に基づく結納金であった。
タウリシアンの商隊には、交易を学びながら嫁ぎ先を探す目的もあった。ライラは最初に農場を訪れた時点からグレンに目を付けており、いずれ何らかの形で嫁ぐつもりであった。イトゥルップ共同体の事件は予想外であったが、それによって計画が早まっていた。
グレンは策を巡らせたライラを責めず、交渉や駆け引きを苦手とする自分とエリーカを支える存在として頼りにした。
秘密の物資倉庫
グレンは家族となった二人を秘密の地下倉庫へ案内した。そこには大量の食料、医療品、義体の予備部品、構成機、通信機、レーザー兵器、プラズマ兵器、拠点用シールドや対空兵器の部品が保管されていた。さらに高度な技術と設計図を収めたデータアーカイブもあった。
グレンは地中へ隠していた輸送シャトルのザブトンも見せた。ザブトンは惑星重力圏を脱出でき、超光速航行、シールド、レーザー砲、対地爆撃機能を備えていた。ライラは、グレンが農場ではなく国や要塞を築こうとしているのではないかと疑った。
グレンはただ安全な農場を作るための備えだと答え、リボースIIIへ来た選択に後悔はないと語った。宇宙で別の暮らしを選んでいれば、エリーカやライラとは出会えなかったためである。
グレン農場の役割
農場の本格稼働に際し、グレンは家族の役割を決めた。エリーカには農業統括機への権限を与え、食料生産、保存、料理をまとめる責任者とした。ライラには資金管理、商売、訪問者との交渉を任せ、農場の顔役とした。
グレンは施設建設、防衛、整備など、それ以外の仕事を担った。三人は必要に応じて相談しながら、安全で豊かな農場を築いていくことになった。
#EX-1:「いや、これがとっておきだが」
夫婦の休日
ヘレナたちが去って二日後、グレンは働き続けるエリーカを休ませるため、一日何もしない休日を設けた。二人は風呂へ入り、菓子や飲み物を用意し、農作業をボットに任せてホロムービーを鑑賞した。
エリーカはグレンが送ってきた傭兵生活に興味を示した。二人は航宙傭兵の記録映像を見たが、豪華な母艦で多くの女性と暮らしながら活躍する傭兵の姿は、グレンが知る過酷な戦場とは大きく異なっていた。
グレンは、自分が所属していた傭兵団では宙賊基地や反乱コロニー、軍事要塞などへ突入し、多くの仲間が消耗していたと話した。当時は食事と寝床があるだけで十分だと考えていたが、エリーカと過ごす現在の生活とは比べものにならないと語った。
とっておきの夕食
夕食には、グレンがとっておきと呼ぶ虫の姿をしたレーションを用意した。エリーカはその外見に強い拒絶を示したが、異なる食文化を否定するのかと問われ、涙ながらに食べる決意をした。
グレンは信仰心を利用するような言い方を反省し、無理に食べなくてよいと伝えた。それでもエリーカは一口を試し、見た目には耐えられないものの、味そのものは非常においしいと認めた。後には自分から求めるほど気に入ることになった。
二人は映像や食事を楽しみ、風呂で一日を振り返った。今後も週に一、二度は休みを設けると決め、翌日から再び農場の仕事へ励むことを約束した。
フェイスレス・ドロップアウト
同著者 作品
目覚めたら最強装備と宇宙船持ちだったので、一戸建て目指して傭兵として自由に生きたい
その他フィクション

Share this content:



















コメント