最強装備宇宙船 1 レビュー
まとめ
最強装備宇宙船 3 レビュー
物語の概要
本作は異世界転生×SFファンタジーに分類されるライトノベルである。かつて凄腕のFPSゲーマーであったが平凡な会社員だった主人公「ヒロ」が、ある日目覚めると自分がハマっていた宇宙ゲームに酷似した世界に存在し、しかも最強装備と一隻の宇宙船を所持していた。彼は「一戸建てを目指して」傭兵として自由に活動しながら、戦い、発掘、救助、そして美少女たちとの出会いを通じて異世界での新たな人生を切り拓いていく。
主要キャラクター
- ヒロ:本作の主人公。凄腕FPSゲーマーであった会社員が、目覚めたら宇宙船と最強装備を持つ世界に転移しており、傭兵として自由に生きる道を選んだ。
- ミミ:ヒロが拾った少女で、無一文の状態から彼のクルーとなるオペレーター。食べ物に目がなく、豪運の持ち主。
- エルマ:宇宙エルフ族で、シルバーランクの傭兵として登場。ヒロの実力を知り歯噛みするなど複雑な感情を持つ。酒好き。
物語の特徴
本作の魅力は、転生チート系の定番「圧倒的な装備で無双」という要素に加えて、「一戸建てを目指す」という比較的現実寄りな目標を掲げている点である。宇宙船というSF的スケールと、傭兵としての戦闘・契約・仲間との絆という王道ファンタジー・バトル要素が融合しており、読者に幅広い魅力を提供している。また、第2巻では貴族・軍人・生体ユニットという“政治・軍事・サイエンス”が入り混じる設定によって、単なる戦闘モノ以上の厚みを持った展開になっている点が他作品との差別化ポイントである。さらに、シリーズ累計部数の多さや、アニメ化企画が進行中である点も注目に値する。
書籍情報
目覚めたら最強装備と宇宙船持ちだったので、一戸建て目指して傭兵として自由に生きたい 2
著者:リュート 氏
イラスト:鍋島テツヒロ 氏
出版社:KADOKAWA(カドカワBOOKS)
発売日:2020年01月10日
ISBN:9784040734521
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あらすじ・内容
軍も巨大企業もヒロの力に目をつけるが――圧倒的な力で自由を謳歌!
ヒロ一行は、ショッピングやピクニックがてらのハイテク農場見学で日々を過ごすことに。だが、ひょんなことから巨大バイオテック企業に目をつけられ異世界人である自身のDNAデータを狙われることになり……?
感想
健康診断で未知の遺伝子が発覚! 人造肉工場と面倒くさい貴族令嬢
『目覚めたら最強装備と宇宙船持ちだったので、一戸建て目指して傭兵として自由に生きたい』2巻を読んだ。
今回、特に印象に残ったのは、健康診断を受けるだけで大騒ぎになってしまうヒロの身体と、あまりにも衝撃的な人造肉工場の見学である。
普通なら、健康診断は身体に異常がないか確認して終わるものだ。
ところがヒロの場合、翻訳用のインプラントが入っていないのに異星人と会話でき、遺伝子には未知の情報が大量に含まれているという。
いや、そもそもどうして言葉が通じているのか。
異世界転移だからと言えばそれまでだが、SF世界で科学的に検査されると、途端に謎が深まってしまう。
さらに、工場見学では人造肉の製造工程を見せつけられ、後半には宇宙海賊の討伐とコロニーを襲う怪物騒動まで発生する。
そして、ヒロにとって宇宙海賊以上に厄介そうなのが、帝国軍のセレナ少佐だ。
軍人としては優秀なのに、ヒロの前では妙にポンコツになる。
どこか『この素晴らしい世界に祝福を!』のダクネスを思わせる、面倒くさいけれど憎めない立ち位置である。
今回は、そんな2巻で印象に残った出来事と、読んでいて感じたことをまとめたい。
※以下、2巻のネタバレを含みます。
健康診断を受けるだけで大事件。ヒロの身体は謎だらけ
今回の舞台は、医療技術が発達したアレイン星系。
ヒロは、自分の身体に問題がないか確認するため、ミミやエルマと一緒に健康診断を受けることになる。
もともとヒロは、ゲームに似た宇宙世界へ突然やって来た人物である。
そのため、本人も自分の身体がどうなっているのか、正確には理解していない。
ここまでは納得できる。
しかし、検査結果がとんでもなかった。
まず、ヒロの脳には多言語翻訳インプラントが入っていない。
この世界では、出生直後に移植されるのが一般的な装置らしい。
ところが、ヒロはその装置なしで普通に会話している。
しかも、異星人の言葉まで理解できる。
いや、本当にどういう仕組みなんだろう。
ゲーム世界に転移したから自動翻訳が働いているのか。
それとも、ヒロ自身の身体が何らかの形で作り替えられているのか。
SF的な設定の中に、急にファンタジーのような謎が入り込んできた印象である。
さらに驚いたのが、遺伝子検査の結果だ。
ヒロの遺伝情報には、これまで確認されたことのない数値が大量に含まれているという。
担当医のショーコは研究者として興味津々になり、巨大企業イナガワテクノロジーまで巻き込んで、遺伝子データの買い取り話に発展する。
提示された金額は300万エネル。
健康診断に来ただけなのに、自分の遺伝子が高額商品になってしまった。
ヒロの規格外ぶりは戦闘能力だけではないらしい。
ただ、個人的には少し怖くも感じた。
これほど珍しい遺伝子情報を巨大企業が手に入れたら、研究だけで終わるとは限らない。
クローン作成を禁止する契約条項まで用意されているあたり、ヒロ自身もその危険性を理解している。
便利な医療技術がある世界だからこそ、身体の情報を渡すことの怖さも大きいのだろう。
ヒロの異世界告白。エルマの受け止め方が意外と現実的
健康診断の前に、ヒロはエルマへ自分の出自を打ち明けている。
元の世界では日本の会社員だったこと。
宇宙へ進出していない文明で暮らしていたこと。
そして、クリシュナの操縦技術はゲームで身につけたものだということ。
かなり突拍子もない話である。
普通なら信じてもらえないだろう。
実際、エルマも簡単には信じない。
医学的には妄想として説明できるのではないかと考えながら、それでも現在のヒロを否定することはしなかった。
ここは印象に残った。
エルマにとって大切なのは、ヒロがどこの世界から来たかではない。
今、目の前にいるヒロが優秀な傭兵であり、自分たちを大切にしてくれる船長だという事実なのだ。
この距離感はなかなかいい。
何でも無条件に信じるわけではない。
しかし、理解できないからといって相手を拒絶するわけでもない。
ヒロとエルマの関係が、単なる男女の関係だけではなく、互いを信頼する仲間として深まっていることが伝わってきた。
人造肉工場の見学が衝撃的。よく堂々と公開できるな(笑)
今回、個人的に一番強烈だったのは人造肉工場の見学である。
ヒロたちは健康診断後の休養も兼ねて、コロニー内の工場見学ツアーに参加する。
最初に訪れたのが、培養肉を製造している工場だった。
人工的に肉を作る技術自体は、SF世界なら不思議ではない。
しかし、問題はその製造工程である。
巨大な触手生物のような肉塊を培養し、そこから肉を切り出しているのだ。
しかも、その光景を見学客に堂々と公開している。
いや、それを見せたら食欲がなくなるだろう(笑)。
食品工場の見学といえば、衛生的な設備や効率的な製造ラインを見せて、商品の安全性をアピールするものだと思う。
ところが、この工場は原材料のインパクトが強すぎる。
見学者にとっては、知りたくなかった現実を突きつけられるようなものだ。
昔、ミミズを使ったハンバーグのような話を聞いて驚いたことがあるが、この世界の人造肉はさらに上を行っている。
もっとも、宇宙コロニーでは食料の安定供給が重要になる。
限られた空間で大量の人間を養うためには、効率的な食料生産が必要なのだろう。
理屈は理解できる。
それでも、あの製造工程を見せられたあとに肉料理を食べられるかと言われると、少し考えてしまう。
企業側が隠さず公開している姿勢は、ある意味すごい。
ただ、もう少し見せ方を工夫した方がいいのではないかとも思った。
水耕栽培と自動調理器。宇宙生活の食事情が面白い
人造肉工場の衝撃が大きすぎた一方で、水耕栽培農場の見学は興味深かった。
野菜だけでなく、藻やオキアミまで大量に育てている。
そして、それらを加工してフードカートリッジの原料にする。
宇宙船の自動調理器に材料を入れれば、さまざまな料理が完成する仕組みだ。
ここで面白かったのが、調理器のメーカーによって料理の味が違うという設定である。
同じ材料を使っても、調理方法によって仕上がりが変わる。
しかも、得意料理まであるらしい。
これは妙に現実的だと感じた。
現実でも、同じ材料を使っているのに、調理器具や調理方法で味が変わることはある。
それが未来の自動調理器にも残っているのだ。
宇宙船の限られた空間で、複数の調理器を揃えることが贅沢になるという発想も面白い。
ヒロたちは宇宙戦闘では派手な活躍をするが、こうした日常生活の細かい設定にも、この作品ならではの楽しさがある。
ただし、工場見学がかなり長く続くので、宇宙戦を期待していると少し物足りなく感じるかもしれない。
個人的には、こういう生活描写も嫌いではない。
それでも、もう少し宇宙船の整備や装備の改造について詳しく読んでみたい気持ちは残った。
エルマのポンコツぶりも健在。お酒が絡むと途端に危なっかしい
工場見学では、エルマの酒好きも存分に描かれている。
酒造工場で登場するのが、ワインの味がする果実や、ウイスキーを分泌する木である。
遺伝子工学が発達すると、酒までこんな作り方になるのか。
これはこれで、なかなか面白い。
しかし、エルマは試飲で完全に舞い上がってしまう。
最終的には高級酒を大量購入し、あとで決済履歴を見て青ざめる始末。
借金を抱えているのに、酒に大金を使ってしまうのだから困ったものである。
しかも、健康診断で自分の身体についてある事実を知らされ、ヒロとの関係を意識しすぎて泥酔する場面まである。
普段は頼れる年上のクルーなのに、恋愛や酒が絡むと急に不器用になる。
この落差が面白い。
一方、ヒロは酒に弱い。
宇宙酒場で酒を飲みながら荒くれ傭兵たちと情報交換するような展開を想像すると、少し残念でもある。
ハン・ソロのように、怪しげな酒場や賭博場で危険な仕事を引き受ける姿も見てみたい。
ただ、今のヒロはそういう場所で無茶をするより、ミミやエルマと美味しいものを食べている方が似合っている気もする。
セレナ少佐が面倒くさすぎる。軍人として優秀なのに恋愛面はポンコツ
今回、ヒロにとって最大の厄介者は、宇宙海賊よりもセレナ少佐だったのではないだろうか。
前巻からヒロを軍に勧誘していた彼女は、今度は対宙賊独立艦隊の戦術アドバイザーとして協力を求めてくる。
ヒロは自由な傭兵生活を望んでいる。
軍に所属して行動を制限されるなど、できれば避けたいはずだ。
それでも、セレナ少佐は諦めない。
条件を交渉し、報酬を提示し、何とかヒロを自分の仕事に引き込もうとする。
軍人として見れば、優秀な人材を確保したいという判断は理解できる。
しかし、ヒロからすれば面倒くさいことこの上ない。
さらに、彼女は侯爵家の令嬢でもある。
下手に関係を深めれば、軍だけでなく貴族社会の問題まで背負い込む可能性がある。
手を出したら絶対に厄介なことになる女性。
ヒロが警戒するのも当然だろう。
ところが、そんなセレナ少佐にも意外な一面がある。
高級料理店で酒を飲むと、仕事の不満をぶちまけ、ヒロへの嫉妬まで口にしてしまう。
軍人としての威厳はどこへ行ったのか。
このあたりは、どこか『この素晴らしい世界に祝福を!』のダクネスを思い出した。
もちろん、性格や設定が同じというわけではない。
ただ、身分が高く、能力もあるのに、主人公との関係では妙に残念な立ち位置になってしまうところが似ている。
本人は真剣なのに、読んでいる側からすると笑ってしまう。
少し気の毒ではあるが、こういうポンコツ令嬢がいると物語が賑やかになる。
特に、最後にヒロたちのリゾート旅行を羨ましがって船に押しかけてくる場面は面白かった。
仕事の後始末に追われる自分と、バカンスに向かうヒロたち。
その差に我慢できず、わざわざ文句を言いに来る。
もう完全に仕事とは関係ない。
軍人や貴族という肩書きを外せば、案外寂しがり屋なのかもしれない。
ヒロが距離を置きたがる一方で、セレナ少佐の方はますます執着を強めている。
この関係は今後も厄介なことになりそうだ。
宇宙海賊は相変わらず湧いてくる。でも戦闘はもっと読みたい
もちろん、2巻でも宇宙海賊との戦闘はある。
セレナ少佐の対宙賊独立艦隊に協力したヒロは、宙賊の行動パターンを分析し、効率的な掃討作戦を提案する。
特に面白かったのが、囮の輸送船を使って宙賊を誘い出す作戦だ。
宙賊は反撃できない民間船を狙う。
ならば、弱そうな船を用意して襲わせ、隠れていた軍艦で一気に撃破すればいい。
考えてみれば単純だが、合理的である。
そして、ヒロの知識を利用した作戦は次々に成果を上げる。
軍艦の圧倒的な火力と、ヒロの宙賊狩りの経験が組み合わさると、ここまで一方的な戦いになるのか。
このあたりは爽快だった。
ただ、個人的にはもう少しクリシュナ自身の戦闘を読みたかった。
ヒロの強さは十分に伝わってくる。
それだけに、装備を更新したり、船を整備したり、他の傭兵と競い合ったりする展開も見てみたい。
宇宙傭兵ものなのだから、もう少しオイルの匂いがするような描写があっても面白いと思う。
荒くれ者の傭兵仲間や、裏社会の仕事が登場すれば、世界観にも違った深みが出そうだ。
もっとも、この作品は硬派な宇宙戦争ものではない。
ヒロが自由気ままに暮らしながら、巻き込まれた事件を圧倒的な力で解決していく。
その気軽さが魅力なのだろう。
コロニーを襲う謎の怪物。健康診断から始まった騒動が大きすぎる
後半では、宇宙海賊とは別の事件まで発生する。
ヒロたちが戻ってきたアレインテルティウスコロニーが、謎の怪物に襲撃されていたのだ。
しかも、その怪物の姿は、工場見学で見た培養肉の素材にそっくりだった。
ここで、あの人造肉工場の描写がつながってくる。
最初は気持ちの悪い食品製造工程として登場した触手生物。
それが今度は、人間を襲う怪物として現れる。
いや、食料として培養していた生物が暴れ出すとか、怖すぎるだろう。
ヒロはパワーアーマー「RIKISHI」を装着し、怪物の掃討に向かう。
宇宙船での戦闘とは違い、今度はコロニー内部での白兵戦だ。
ここでもヒロの装備は強力で、多数の怪物を次々と撃破していく。
ただし、異常な再生能力を持つ個体との戦いでは、さすがのヒロも苦戦する。
最終的にはパワーアーマーから脱出し、危険な接近戦で怪物を倒すことになる。
ここは久しぶりに緊張感があった。
いくら最強装備を持っていても、未知の敵に対して完全に安全というわけではない。
しかも、倒した怪物にはヒロの遺伝子データが関係している可能性まで示唆される。
健康診断で発見された未知の遺伝子。
そのデータを狙った襲撃事件。
そして、コロニーを襲う異形の怪物。
すべてが無関係とは思えない流れである。
最終的には、培養肉用の人工生物を改変したバイオテロ事件だと明らかになるが、ヒロの遺伝子を巡る不気味さは残った。
今回の健康診断は、単なる日常イベントでは終わらなかったようだ。
まとめ|2巻は日常描写が多め。でもヒロの謎とセレナ少佐の存在感が面白い
2巻を振り返ると、前半はショッピングや健康診断、工場見学といった日常描写が中心だった。
宇宙傭兵としての激しい戦闘を期待していると、少し肩透かしを感じる部分もある。
ただ、その日常描写の中に、今後につながりそうな要素がいくつも盛り込まれていた。
特に気になったのは、ヒロの身体の謎である。
翻訳インプラントなしで異星人と会話できること。
未知の遺伝子情報を持っていること。
そして、その遺伝子データが巨大企業にとって高い価値を持つこと。
本人は自由な傭兵生活を望んでいるだけなのに、軍だけでなく企業からも注目され始めている。
これでは、普通に暮らすのも難しそうだ。
また、人造肉工場の見学も忘れられない。
あれだけ衝撃的な製造工程を堂々と公開する企業精神には、思わず笑ってしまった。
宇宙で暮らす人々の食生活は合理的なのだろうが、実際に見せられると話は別である。
そして、何よりセレナ少佐の存在感が大きかった。
軍人としては優秀で、貴族としての地位もある。
それなのに、ヒロの前では感情を隠せず、酒に酔って失敗し、最後にはバカンスに行くヒロたちを羨ましがって押しかけてくる。
面倒くさいけれど、どこか憎めないポンコツ令嬢である。
ヒロとしては距離を置きたいだろうが、読んでいる側としては今後も登場してほしいキャラクターだ。
全体としては、硬派な宇宙傭兵ものというより、SF世界を舞台にした気楽な冒険と日常の物語という印象が強い。
もう少し宇宙船の整備や武装の追加、個性的な傭兵仲間との交流があれば、個人的にはさらに楽しめそうだ。
それでも、健康診断からバイオテロまで話が広がってしまう展開や、ヒロと仲間たちの賑やかなやり取りは十分に面白かった。
次の目的地はリゾート星系。
今度こそ、ヒロたちはのんびりバカンスを楽しめるのだろうか。
……いや、これまでの展開を考えると、絶対に何か起きそうである。
最後までお読み頂きありがとうございます。
最強装備宇宙船 1 レビュー
最強装備宇宙船 全巻まとめ
最強装備宇宙船 3 レビュー
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登場キャラクター
佐藤孝宏(キャプテン・ヒロ)
元・日本の会社員から宇宙世界に転移し、小型戦闘艦クリシュナの船長として傭兵業を営む視点人物である。金銭感覚や食への執着などは庶民的である一方、戦闘や戦術に関しては徹底して現実主義かつ合理主義であり、宙賊相手には容赦のない殲滅戦を選ぶ冷徹さも併せ持つ。エルマとミミを対等な仲間として扱い、軍や大貴族に対しても距離を保ちつつ、適切な報酬と自分たちの自由を何より重視する姿勢を崩さない。
・所属/立場:小型戦闘艦【ASX-08 Krishna】の艦長兼傭兵であり、グラッカン帝国から見れば独立系の武装勢力に属する存在である。
・物語内での具体的な行動:アレイン星系で宙賊船団や拠点の掃討戦を指揮し、対宙賊独立艦隊の戦術アドバイザーとして囮作戦を立案・実行した。また、培養肉由来クリーチャー暴走事件ではパワーアーマー「RIKISHI」を駆って陸戦を担当し、総合病院の防衛やサンプル確保に大きく貢献した。
・物語内での位置付け/影響力:宙賊討伐の実績と比類ない戦術眼により、帝国軍内で「対宙賊戦の専門家」として認知され、セレナ少佐やイナガワテクノロジーから高額報酬での協力を求められる存在である。同時に、遺伝子データが極めて特異であることから、バイオテク企業にとっても戦略的な価値を持つ人物となっている。
エルマ
銀髪のエルフ女性であり、元は単独行動の独立傭兵であったが、自身の艦を大破させた賠償金をヒロに肩代わりされたことで、借金返済のためクリシュナのクルーとなった経歴を持つ。戦闘と操艦に優れた現場のプロである一方、酒好きで感情表現がストレートな面があり、酔うと暴走気味になるが、根本には仲間思いで責任感の強い気質がある。ヒロへの好意を自覚しつつも不器用に振る舞い、からかい合いと信頼が混じった関係を築いている。
・所属/立場:クリシュナ専属の操縦士兼ガンナーであり、元・独立傭兵かつ多額の負債を抱える債務者である。
・物語内での具体的な行動:宙賊戦では砲撃・シールド・フレア展開を担当し、ヒロの戦術を現場で実現する役割を担った。バイオテロ騒ぎでは人造肉工場・水耕栽培農場・酒造工場の見学に同行し、培養肉と酒に強く反応する姿を見せたほか、ショーコから「子作り可能な身体」であると告げられて動揺し、禁酒処分や失敗だらけの色仕掛けなど、私生活面でも物語を大きく動かした。
・物語内での位置付け/影響力:ヒロにとって最も頼れる戦闘要員かつ生活上の相棒であり、帝国や貴族社会の「常識」を叩き込む家庭教師役も担っている。借金と新しい船の購入資金という事情から、結果的に長期的なパートナーとしてクリシュナに縛られる形となり、その存在がヒロの行動選択に大きく影響している。
ミミ
コロニー出身の少女であり、トラブルに巻き込まれて多額の賠償金を負った過去を持つ。その負債をヒロに肩代わりされたことでクリシュナに乗り込んだ経緯があり、観測手兼通信手として訓練中の立場にある。食とお洒落への関心が強く、ロリータファッションやグルメ情報に目を輝かせるなど年相応の可愛らしさを見せる一方、金銭感覚や交渉時の冷静さを併せ持ち、意外と現実的な判断も下す。
・所属/立場:クリシュナの観測・通信担当見習いであり、将来は本格的なオペレーターを目指して学習を続ける身である。
・物語内での具体的な行動:アレイン星系の星系情報や医療機関情報を調べ上げ、ヒロの健康診断を段取りしたほか、ロリータショップ「アトリエ・ピュア」でのファッション一新や、傭兵ギルドでの報酬交渉に関与した。バイオテロ後はセンサー担当としてクリーチャー反応の異常をいち早く察知し、戦場での情報提供でヒロを支えた。
・物語内での位置付け/影響力:クリシュナの日常パートを彩る存在でありつつ、情報収集と交渉、さらには精神面での潤滑油として艦内の空気を和ませる役割を担っている。ショーコから勧められた薬の件では、エルマの変化を受け止める聞き役にもなり、三人の関係性を安定させる中心的な一人である。
帝国軍・対宙賊独立艦隊関係
セレナ=ホールズ
グラッカン帝国航宙軍に所属する女性将校であり、ホールズ侯爵家の令嬢にして対宙賊独立艦隊の指揮官を務める人物である。職務に対しては極めて真面目かつ有能であるが、軍内部で女性という理由で軽んじられてきた経験から、功績への執着と周囲への苛立ちを内面に抱える。ヒロの戦術眼と実績を誰よりも高く評価しており、軍人としての打算と個人的な好意が入り混じった複雑な感情を向けている。
・所属/立場:グラッカン帝国航宙軍少佐であり、新設された対宙賊独立艦隊の実質的な旗艦指揮官として行動する立場である。
・物語内での具体的な行動:ヒロを戦術アドバイザーとして招聘し、囮輸送船を用いた宙賊狩り作戦や拠点殲滅作戦を立案・実行した。自腹で囮船を購入するなど前のめりな姿勢を見せる一方、私生活ではストレスから泥酔して本音と嫉妬をこぼし、クリシュナ艦内で醜態を晒した後、ヒロから「危機管理の甘さ」を厳しく諭される場面も描かれている。
・物語内での位置付け/影響力:帝国側から見たヒロたちの窓口であり、軍と傭兵を結ぶキーパーソンである。宙賊殲滅作戦の成功で帝国内部での影響力を増しつつあり、その評価と功績が今後の艦隊運用やヒロたちへの依頼内容を左右する重要な要素となっている。
対宙賊独立艦隊の将兵
セレナ少佐のもとに編成された新設艦隊の将兵たちであり、星系軍でも機動艦隊でもない「宙賊専門の遊撃戦力」として位置付けられている。従来の大艦巨砲主義と宙賊戦の実態とのギャップに戸惑いつつも、ヒロの講義やシミュレーター訓練を通じて、小型艦主軸の運用思想を学び始めている。
・所属/立場:グラッカン帝国航宙軍所属で、戦艦・巡洋艦・コルベットなどから成る対宙賊独立艦隊の乗組員および指揮官層である。
・物語内での具体的な行動:ヒロの指導のもと、囮輸送船を用いた宙賊誘引作戦に参加し、小惑星帯で多数の宙賊艦を撃破した。基地攻撃作戦では傭兵と連携し、包囲殲滅戦を遂行することで、星系内の宙賊勢力を壊滅的打撃に追い込んだ。
・物語内での位置付け/影響力:宙賊の「量」を削り、ヒロたち傭兵の稼ぎ場を一つの星系から銀河全体へと拡散させる役割を担う存在である。同時に、帝国軍内部の艦隊運用思想の変革を促す実験部隊としての側面もあり、今後の軍制や治安構造に波紋を広げる要因となっている。
民間企業・医療関係
ショーコ
イナガワテクノロジー所属の女性医師であり、外見は地味な眼鏡と三つ編みの研究者風だが、実際には医療技術・遺伝子工学・ナノマシン開発において第一線級の能力を持つ研究者である。マイペースかつ眠たげな態度とは裏腹に仕事への集中力は非常に高く、ヒロの遺伝子データを見て露骨に興奮するなど学者気質が前面に出る場面も多い。ヒロにとっては三度も命を救った恩人であると同時に、自身の遺伝子を高値で買い取った契約相手でもある。
・所属/立場:巨大企業イナガワテクノロジーの研究開発部に所属する医師兼研究者であり、総合病院での診療業務も兼ねる立場にある。
・物語内での具体的な行動:ヒロ・エルマ・ミミの健康診断と予防接種を担当し、その過程でヒロの翻訳インプラント未搭載や特異な遺伝子情報を発見して、高額なデータ買い取り契約を結んだ。バイオテロ事件では、クリーチャー死体サンプルから短時間で駆除用ナノマシンを開発し、コロニー防衛の決定打を提供するとともに、異常再生個体にヒロの遺伝子痕跡がある可能性を示唆した。
・物語内での位置付け/影響力:ヒロの「異世界由来」という特異性を科学的に裏付け、同時に巨大企業とヒロたちの関係を強固にする媒介役である。医療面・技術面でクリシュナ一行の安全保障に関わるキーパーソンであり、その研究対象としての興味が今後どのような形で物語に影響するかが注目される存在である。
イナガワテクノロジー関係者
コウエイマルの運航会社として登場する大手企業であり、医療・バイオテクノロジー・宇宙輸送と多角的な事業を展開している。その現場スタッフや保安部隊、経営層の判断が、ヒロたちの仕事や報酬、さらにはコロニー全体の安全に直接関わっている。
・所属/立場:グラッカン帝国圏で活動する巨大複合企業であり、旅客船運航から最先端医療技術まで幅広い分野で影響力を持つ。
・物語内での具体的な行動:宙賊に襲われた旅客船コウエイマルの運営企業としてヒロに救護・護衛報酬を支払い、その後も健康診断紹介状やバイオテロ防衛報酬、高級フルーツとレアメタルの詰め合わせなどを通じてクリシュナと関係を深めた。一方で、培養肉由来クリーチャー事件やヒロ遺伝子データの扱いを通じ、企業倫理と実利の間で危ういバランスを取る姿も描かれている。
・物語内での位置付け/影響力:星系経済と医療インフラを支配する企業として、軍とは別の軸で宙域の安全保障に関与する勢力である。ヒロにとっては大口の取引相手であり、同時に自らの遺伝子情報を握るリスク要因でもあり、その動向が今後の物語上の緊張関係を生み出す可能性を孕んでいる。
戦闘一覧
#1:アレイン星系の交易コロニー
コウエイマル襲撃宙賊との戦闘
- 戦闘者: ヒロ(クリシュナ) vs 宙賊船(小型艦4隻)
- 発生理由: 救難信号を発していた旅客船コウエイマルが宙賊に追われており、ヒロがロックオンされたため敵対行為とみなして迎撃した。
- 結果: ヒロが重レーザー砲とシャードキャノンで2隻を瞬時に撃破し、残る2隻は逃走した(うち1隻は超光速離脱)。客船の防衛には成功した。
#5: トラブル体質×トラブル体質
路地裏でのショーコ救出
- 戦闘者: ヒロ vs 追手の男(遺伝子データ強奪犯)
- 発生理由: 遺伝子データを奪って逃げる男がショーコを追っており、ヒロが割って入ったところ、男が仕込みレーザーガンで攻撃してきたため。
- 結果: ヒロが男の左腕(武器内蔵)を撃ち抜いて爆発させ、壁に叩きつけて戦闘不能にした。
#7:剥がれる化けの皮
宙賊誘引(囮)作戦
- 戦闘者: 対宙賊独立艦隊(戦艦・巡洋艦)、囮船 vs 宙賊
- 発生理由: 宙賊を狩るため、囮の輸送船で誘き寄せ、小惑星に隠した艦隊で迎撃する作戦を実行した。
- 結果: 囮に釣られた宙賊船を一方的に迎撃し、累計で32隻(後に200隻以上)を撃破した。
#8:宙賊掃討作戦再び
宙賊拠点奇襲・殲滅戦
- 戦闘者: 対宙賊独立艦隊、傭兵部隊(ヒロ含む) vs 宙賊団(残存戦力)
- 発生理由: 宙賊の活動拠点を特定し、組織的な脅威を断つために包囲殲滅作戦を行った。
- 結果: 艦砲射撃による奇襲で拠点を破壊した後、ヒロたち傭兵が残存艦を掃討した。ヒロ単独で小型艦33隻、中型艦3隻を撃破し、宙賊団は壊滅した。
#9: コロニー襲撃
港湾区画での白い怪物掃討
- 戦闘者: ヒロ(パワーアーマー「RIKISHI」) vs 白い怪物(生物兵器)の群れ
- 発生理由: コロニー内に正体不明の生物兵器が溢れ、港湾管理局から駆除依頼を受けたため。
- 結果: パワーアーマーの火力と膂力で怪物の群れを一方的に粉砕・駆除し、港湾区画の安全を確保した。
総合病院前の防衛戦と異形個体との死闘
- 戦闘者: ヒロ(パワーアーマー) vs 白い怪物の群れ、再生能力を持つ異形個体
- 発生理由: イナガワテクノロジー総合病院に怪物が密集しており、内部への侵入を防ぐため防衛戦を行った。
- 結果: 通常個体は掃討したが、再生能力を持つ異形個体に苦戦。最終的にヒロがパワーアーマーごと拘束し、脱出して口内にプラズマグレネードを押し込むことで爆殺した。
展開まとめ
プロローグ
光の奔流の中での目覚め
佐藤孝宏はハイパースペースの光に満ちた回廊の中で目を覚まし、コックピットで居眠りしていたところをクルーのエルマに起こされた。周囲には操縦装置とホログラムの計器が並び、自分が「キャプテン・ヒロ」と呼ばれる状況を徐々に思い出していった。
エルマとミミの乗船経緯と関係性
エルマは銀髪のエルフで、賊討伐中の事故で船を大破させた結果、賠償金の一部を佐藤孝宏に肩代わりされたことで借金を負い、返済のためにクルーとなった。ミミは賠償金を背負わされたコロニー出身の少女で、彼に救われた形で乗船し、現在は観測手兼通信手として訓練中であった。この世界では「男の船に乗る女はその男の情婦と見なされる」という文化があり、二人はその常識を受け入れざるを得ない状況にあったため、三人は互いに情愛を認め合う関係を築いていた。
キャプテン・ヒロと戦闘艦クリシュナ
佐藤孝宏は「キャプテン・ヒロ」を名乗り、ユニーク艦とされる小型戦闘艦【ASX-08 Krishna】に乗船していた。彼はこの宇宙船と共に突然このSF的世界へ転移した存在であり、現在は傭兵として生活していた。
オンラインゲームSOLとの酷似と差異
彼が元の世界で没頭していたオンラインゲーム「SOL(ステラオンライン)」と、この宇宙世界の船・商品・敵性存在には多くの共通点があった。ただし恒星系名や帝国名などは一致せず、SOLの銀河図にも存在しない領域が広がっていたため、既知の情報と未知の情報が混じる不可解な環境であった。
傭兵としての活動と各自の目標
佐藤孝宏はSOLと同様に傭兵として活動し、宙賊狩りや帝国間の小競り合いで活躍したことで、帝国軍の士官に目をつけられ、軍に組み込まれそうになったため逃走中であった。彼の目標は上級市民権を取得し、惑星居住地に庭付き一戸建てを買うことである。ミミは銀河中の美食を味わうことを願い、エルマは300万エネルの借金返済と独立傭兵への復帰を目指していた。
アレイン星系への航行理由
佐藤孝宏は「ハイパードライブ事故で記憶が曖昧」という設定を使い、心配したエルマとミミに勧められた医療検査を受けるため、医療技術が発達したアレイン星系へ向かっていた。これは自由の確保と身体状態の確認を兼ねた航行であり、帝国軍の勧誘を避けるという思惑も同時に抱えていた。
#1:アレイン星系の交易コロニー
アレイン星系の概要と救難信号の検知
アレイン星系は二つの居住可能惑星と研究コロニー三つ、交易コロニー一つを持つ重要拠点であり、ハイテク製品と原材料の物流で賑わっていた。帝国軍の宙賊取り締まりも厳しいが完全ではなく、傭兵の需要も残っていた。ミミが概要説明を終えると、一行は交易コロニー行きを決定し、超光速航行中に亜空間センサーで滅多にないはずの救難信号を検知した。
宙賊襲撃への介入と戦闘
救難信号源へ向かったクリシュナは、中型客船が四隻の小型艦に追われている現場に到達した。呼びかけに対し宙賊側はロックオンで応えたため敵対行為と認定し、ヒロは重レーザー砲とシャードキャノンで二隻を瞬時に撃破した。残り二隻は逃走に移り、一隻は超光速ドライブで離脱して取り逃がしたが、客船の危機自体は退けることに成功した。
コウエイマル護衛契約と救護報酬
客船はイナガワテクノロジー所属の旅客船「コウエイマル」と判明し、船長からは足回りの損傷と星系軍到着までの護衛依頼が提示された。ヒロは救難信号に応じた救護義務と引き換えに、イナガワテクノロジー本社が救護報酬と護衛報酬を支払うという条件で口頭契約を成立させ、会話ログを証拠として保存させた後、宙賊艦の残骸から戦利品を回収した。
交易コロニー・アレインテルティウス到着
やがて一行の前に、立方八面体形状の超巨大コロニー「アレインテルティウス」が姿を現した。ターメーンプライムよりも大規模で、内部には高層ビル群が密集し、外光のない人工照明だけの常闇の街が広がっていた。クリシュナはオートドッキング機能で七十二番ハンガーに安全に接舷し、ヒロはミミに戦利品売却を任せ、自身とエルマは賞金受け取りと治安確認を兼ねて外出することにした。
星系軍駐屯地での賞金受領とダニエル軍曹
帝国軍の駐屯ビルでは、セキュリティゲートで武器を預け、身分確認を受けた後、ヒロとエルマは賞金カウンターのダニエル軍曹と対面した。ダニエル軍曹はイナガワテクノロジー船の無事を喜びつつ、ヒロ達が撃破した宙賊四人組が複数の民間船を襲ってきた厄介な連中であることを説明し、二隻分として1万5000エネルの賞金を支払った。
宙賊の違和感と今後の方針
ヒロとエルマは、被害件数に対して宙賊の積荷が酒と食料程度しかなく「どこかに戦利品を隠しているのではないか」と違和感を共有したが、四隻規模では拠点の特定は困難と判断し、今回は深追いしないと決めた。二人はミミの待つ船へ戻って食事と休養を取り、この栄えたコロニーで翌日以降に本格的な活動と情報収集を始める方針を固めたのである。
医療センター選びと健康診断の相談
クリシュナに戻ったヒロとエルマは、ミミからアレイン星系の医療センターを調べていたと報告を受けた。ミミはヒロの「記憶喪失設定」を真面目に受け止め、脳神経系か精神科かを検討していたが、ヒロは記憶だけでなく予防接種や全身チェックも含めた総合的検査が望ましいと提案した。エルマは自身は予防接種済みと述べたものの、ヒロはクルーの健康管理もキャプテンの義務として、三人全員で診察を受けることを決めた。
エルマの疑念と「異世界」告白
エルマはヒロの常識外れの発言や食文化の知識から、「記憶喪失は嘘ではないか」と改めて疑問を呈した。これを受け、ヒロは自分が別世界の日本で会社員をしており、元の世界では宇宙進出もしていなかったこと、傭兵としての技能やクリシュナ、装備はすべてゲーム内で培ったものだという主観的事実を打ち明けた。エルマはVRゲームの訓練転用などを踏まえつつも、未開レベルの文明からゲーム世界に入り込んだという話に頭を抱えつつ、「医療的には妄想として説明できるが、本人が困っていないなら深入りしない」という態度を取った。
関係性の確認とエルマの受容
ヒロは、自身の出自がどうであれエルマの評価が変わらないかを気にしたが、エルマは「今のヒロは優秀な傭兵であり、ちょっと痛いことを言う大きな子どもが追加された程度」と受け止めた。ヒロがエルマを「いい女」と評し、軽口から取っ組み合いに発展した結果、寝技で押さえ込まれるやり取りを通じて、二人は以前と変わらない距離感と信頼関係を再確認した。
戦利品の分配と借金・将来の話
戦利品売却と賞金により合計1万9500エネルの収入が入り、配分の結果、エルマは585エネル、ミミは88エネル、残りがヒロの取り分となった。ヒロは返済を急がなくて良いと改めて告げ、できるだけ長くエルマと一緒にいたい本音を漏らした。エルマも借金返済に加え、新しい船を買う資金が必要であると述べ、結果的に長い付き合いになると応じた。
休日の船内生活と朝のひととき
翌日は完全オフとして、ヒロは風呂とトレーニングをこなし、ミミは運動後に入浴しようとしていた。エルマはヒロのTシャツ一枚という「彼シャツ」状態で現れ、オンとオフのギャップを見せた。ヒロはミミにもシャツを譲る約束をし、高性能調理器テツジン・フィフスで各自の朝食を用意した。食卓では互いに「あーん」と食べさせ合うなど、ヒロとミミが親密な空気を共有し、そこへ風呂上がりのエルマが呆れつつも加わった。
デート提案と今後の行動方針
エルマは、今日は自分が船に残って連絡待ちを担当すると申し出て、ヒロとミミに「二人で街に出てデートも兼ねて遊んできたらいい」と提案した。同時に、傭兵ギルドへ顔を出してアレインテルティウス滞在の事実を伝えておくべきだと助言した。ミミは事前リサーチ済みでやる気を見せ、ヒロはトラブルが起きた際は自分が守ると約束し、二人で街へ出る準備を整える流れとなった。
#2:ミミとショッピング
アレインテルティウスの街歩きとミミのファッション欲求
ヒロとミミはターメーンプライムとは対照的に賑やかで多種多様な種族とファッションが入り混じるアレインテルティウスコロニー地下区画を散策した。高層ビルがコロニー構造を支える仕組みや、地下区画で時間帯ごとに明るさを変えている事情をミミが説明し、二人は街の規模と多彩さを実感していた。ヒロはロリータ系ドレスに身を包んだ女性を見て、ミミにもお洒落着を買おうと提案し、ミミは似合わないと否定しつつも明らかに興味を示していた。
ロリータショップ「アトリエ・ピュア」でのミミ変身劇
二人はロリータ・ファッション専門店「アトリエ・ピュア」を訪れ、強烈な圧の店員達に迎えられた。ヒロは予算を二万エネルまでと提示し、プロのコーディネートを一任した。ミミは採寸後、ヒロは待合スペースに通され、飲み物とお菓子でもてなされつつ着せ替えアプリでイメージを膨らませていた。やがて白と淡いピンクを基調としたフリルたっぷりのドレス姿のミミが現れ、ヒロは「天使」と拝むほど感動し、動画撮影まで行った。その後も上品なクラシカル系ドレスなど複数の衣装を試し、普段使いできそうな落ち着いたロリィタ服やハイパーウィーブ製インナーを購入した。
エルマとのやり取りとミミのゴスロリ姿
ヒロはミミの動画をエルマに送信し、エルマはミミの可愛さを絶賛するとともに、自分向けの服をねだる冗談を返した。ヒロはエルマにはより大人っぽい服が似合うと考えつつも、フリフリ服を着せたくなる欲求を隠さなかった。店を出た後、ミミは黒のゴスロリ風ドレスを着用し、恥ずかしさからヒロの服の裾をつまんで歩いた。ヒロは堂々と歩くよう励ましつつも、照れて顔を覆う仕草まで愛で、彼女への称賛を惜しまなかった。
傭兵ギルドでの報酬交渉と健康診断の算段
二人は港湾区画のビル内にある傭兵ギルドへ向かい、エレベーターでギルドのある階へ移動した。ギルド内は人間や異星人、メイド服姿やビキニアーマー姿まで入り混じる雑多な空間であり、特にミミのゴスロリ姿が注目を集めたが、ヒロと一緒に歩くことで周囲に「傭兵の連れ」と認識された。受付嬢に端末を提示してアレインテルティウスで活動する旨を伝えると、ちょうどイナガワテクノロジーから救援任務の報酬提示が届き、金額は五十万エネルと判明した。ヒロは船のエルマと通話で妥当性を確認し、ミミの提案でイナガワテクノロジーが運営する総合病院への紹介状も報酬条件に加えるよう依頼した。
コロニー名物への関心と日常感覚
交渉を受付に任せた後、ヒロはこのコロニーの名物料理や美味い店を尋ね、受付嬢を驚かせた。傭兵ギルドのカウンターで観光とグルメ情報を求めるのは想定外だったが、ヒロにとっては新天地での生活と食を楽しむことも重要であり、ミミとの“街デート”を満喫するという、戦闘任務だけに偏らない日常志向が表れている章であった。
#3:健康診断
健康診断への道中と名物料理の失敗
ヒロ、ミミ、エルマの三人はイナガワテクノロジーから受け取った紹介状を手に、同社が経営する総合病院へ向かった。前日に受付嬢から薦められた「名物料理」を試したが、それは素材をそのままペースト化しただけの栄養補給食品であり、味は薄く、旨味のあるシェイクのような微妙な代物であった。腹は満たされたもののリピートは不可能な一品で、三人は昨日の屋台を見ただけで表情を曇らせた。
イナガワテクノロジー本社ビルへの到着とナビユニット
到着した巨大ビルには企業名が大きく掲示されており、三人は迷うことなくエントランスに入った。エルマが壁面のコンソールに端末を翳すと、ナビゲーションユニット“N-34”と名乗る球体ロボが出現し、目的地まで案内を開始した。小動物のように転がりながら先導する姿にヒロとミミは可愛らしさを感じ、エレベーター移動を経て医療フロアへ到達した。
診察担当医ショーコとの対面
清潔で明るい医療区画に到着すると、ナビユニットは担当医の足元で停止した。そこに立っていたのはショーコと名乗る女性医師で、地味な眼鏡と三つ編みの落ち着いた外見ながらも整った顔立ちを持ち、大柄な胸部装甲が特徴的であった。彼女は眠そうな目つきでありながら柔らかく微笑み、三人の健康診断を担当すると自己紹介した。
ショーコによる問診とハイパードライブ事故の説明
ヒロ達は自己紹介を交わし、ショーコ医師から総合的な健康診断の説明を受けた。ミミが「記憶喪失」と話しかけるが、ヒロはそれを否定し、自身はハイパードライブ中の事故でターメーン星系に突然飛ばされ、以前の寄港記録も残っていない特殊な経歴であると明かした。また、その事故の影響で記憶があやふやで現状と噛み合わない部分もあるため、身体への影響を詳しく検査してほしいと要望した。
最新型医療ポッドによるフルスキャンとショーコの立場
三人は病歴やアレルギーがないことを確認された後、イナガワテクノロジー製最新型医療ポッドでフルスキャンを受けた。装置は陽電子コンピューターを内蔵した大型高性能モデルであり、ヒロはその規模と技術に圧倒されつつ検査を受けた。ショーコは、実は現場医というより研究開発部所属の研究畑の人間であり、ヒロ達の診断も恩人である三人の診察案件をかなり強引にねじ込んだ結果であると打ち明けた。彼女は、ヒロ達がかつて宙賊に襲われた船を救ったことで、自身も宇宙の藻屑にならずに済んだと感謝していた。
翻訳インプラント未搭載と異常な遺伝子データ
スキャン結果を確認したショーコは、ヒロの脳に銀河では常識である多言語翻訳インプラントが一切入っていないことに驚愕した。通常、これは出生直後に無償で移植されるものであり、ヒロの年齢で未搭載という事例はほぼ存在しないと説明された。それにもかかわらず、ヒロは各種異星語を問題なく聞き取り復唱でき、テスト上はインプラント所有者と同等の理解能力を示した。続いて遺伝子データの解析結果から、ヒロの遺伝情報にはこれまで観測されたことのない値が多数含まれており、「未開拓のフロンティア」に満ちた極めて興味深いサンプルであると判明した。
遺伝子データ売買の交渉と屈辱的なサンプル採取
ショーコは、未知の遺伝子データは将来的に医療や進化研究に大きな価値を持つとして、高額で買い取りたいと申し出た。ヒロは、自身の安全とクルーの健康を最優先とし、遺伝子データの提供と引き換えに今後の医療ケアを全面的にイナガワテクノロジーに任せることを条件に合意した。社内の決裁は驚くほど早く進み、報酬額は300万エネル(日本円換算で約三億円)と提示された。契約書には個人情報保護、勝手なクローン作成の禁止、違反時の高額賠償などヒロに有利な条項が盛り込まれており、ヒロは署名して契約を成立させた。
その後、血液と精液の採取に移ると、ヒロは医療ポッド内で予想外の方法による精液採取を受け、精神的ダメージを負う。処置後にロビーへ戻ったヒロは目を赤くし、ミミの胸に顔を埋めて慰めを求め、エルマからは「その程度で泣くな」と呆れられる一方、ミミは本気で彼を気遣った。ショーコは説明を端折った自分の落ち度を認め、本来は個室での自己採取や自らの手助けという選択肢もあったと明かし、エルマと微妙な掛け合いを見せた。
予防接種と診断結果説明への移行
遺伝子データ提供が終わると、次に予防接種が実施された。ヒロはガンタイプの注射器で腕や首筋、胸などに何度か押し当てられるだけの、痛みのない処置に拍子抜けする。ショーコは、痛みを伴う注射が前提である地球側の医療技術は相当遅れていると推測するが、ヒロは自身の出自に関わる事情をこれ以上掘り下げられることを避け、異世界・惑星住みとしての事情は伏せるよう念押しした。
最後に三人はロビーで合流し、ショーコはフードカートリッジの直飲みを「おすすめ」として挙げるが、前日の不味い名物料理の記憶からヒロとミミは即座に拒否した。その後、ショーコは診断結果のデータが揃ったことを告げ、詳細な結果説明を行うため三人を個室へ案内することになった。
診断結果と予防接種の完了
ショーコは三人の検査結果について、潜在的な疾病も生理機能の問題もなく全員が健康体であると告げた。予防接種はすでに一通り完了しており、エルマは追加不要、ヒロとミミには必要分が投与されたが、副作用の可能性はごく低く、三日ほど安静に過ごすよう指示された。受診料は三人で九万エネルと高額であり、ヒロは医療費の高さを痛感しつつ、健康を得た対価として割り切ろうとしていた。
ショーコの内緒話とエルマの動揺
診断説明の途中でショーコはヒロを遠ざけ、ミミとエルマだけにタブレットを見せながら何事かを耳打ちした。ミミは自分の身体により適した薬があると教えられただけだと説明し、ヒロは費用負担を申し出ている。一方エルマは顔を真っ赤にして内容を濁し、明らかに取り乱していたが、ミミは「悪い話ではない」とだけ告げ、本人の口から語られる時を待つべきだとした。
観光計画とエルマの不自然な行動
副作用の心配が少ないとわかったため、ヒロ達は三日間の安静期間も外出は可能と判断し、翌日にアレインテルティウスコロニーの工場見学ツアーへ行く計画を立てた。ミミはフードカートリッジや人造肉、水耕栽培農場、造船所、酒造工場などの見学候補を挙げ、最後に試飲付きの酒造工場を組み込む案を提示し、エルマも内心強く反応していた。その直後、エルマは慌てて「買い物」に出ると言い残して船を飛び出し、以後ヒロとの接触を極力避ける不自然な行動を取り始めた。
酒で空回りした夜の突撃
その夜、エルマは夕食も個室で済ませ、ヒロの入浴時間まで指定して顔を合わせないように準備したうえで、真っ赤な顔と清楚な白いネグリジェ姿でヒロの部屋を訪れた。緊張で挙動不審になりながらヒロの隣に座り、何かを言い出そうとするが言葉にならず、ついに奇声と共に服を勢いよく脱ぎ捨ててその場に倒れてしまう。実はウイスキーを瓶ごと一本空けて「気合い」を入れており、アルコールに耐えきれず意識を失った形で、ヒロは裸で伸びている彼女を介抱するだけに留め、同じベッドで何もせずに眠りについた。
朝の大騒ぎと「子作り」可能宣言の衝撃
翌朝、エルマはヒロの腕に抱きついたまま目を覚まし、昨夜の自分の行動を思い出して湯気が出るほどの羞恥に悶えた。問い詰められたエルマは、ショーコから「エルフとして、精神的伴侶と認めた相手と子作りできる身体になっている」と告げられたことを打ち明け、その相手がヒロである自覚ゆえに動揺していたと説明する。ヒロはいつも通り挨拶をしてさらにからかい、エルマは枕で顔面を押し付けるなど朝から大暴れしつつも、二人の関係が一歩踏み込んだ段階に差し掛かりつつあることが示唆されたのである。
#4:工場見学ツアー
エルマの気持ちと関係の確認
朝の食堂で、ヒロはエルマが自分に好意を抱いているのではないかとからかい、エルマは真っ赤になって否定しつつも動揺していた。ミミに窘められたことで空気は和らぎ、ヒロはエルマの頼もしさや一緒にいて気楽な点を率直に褒め、自分も好意を抱いていると告げた。エルマも同じ気持ちであると不器用に認め、三人は改めて「仲良し」であると確認した。
培養肉工場ツアーの衝撃
その後、三人はシエラコーポレーションの「人造肉工場」見学に向かったが、看板に「培養肉製造工場」と書かれているのを見てエルマは露骨に嫌がった。受付の男の異様なテンションに不安を覚えつつも、滅菌室兼ゴンドラに乗せられ、工場内部を強制見学させられた。そこでは透明な孵化器で培養された紐状の肉塊が巨大な触手生物へと成長し、その身体から肉が切り出される工程が延々と映し出され、三人は強い嫌悪感と精神的ダメージを負い、当分肉を食べたくないほどに消耗した。
水耕栽培農場ツアーとフードカートリッジの正体
続いて訪れたマイカコーポレーションの水耕栽培農場は、外観こそ培養肉工場と瓜二つであったが、内部は明るく清潔で、受付の女性も穏やかであった。滅菌処理ののちガラス張りの回廊を歩きながら、三人は太陽灯の光の下で栽培されるクレソン状の野菜や、藻とオキアミを育てる巨大プールを見学した。そこでは各船から回収された生活廃棄物を肥料・飼料として再利用しており、フードカートリッジの主原料がこうして循環している現実を知ったヒロ達は、理屈としては理解しつつも複雑な感情を抱いた。
自動調理器の食べ比べと需要構造の理解
農場併設の加工工場では、藻やオキアミ、野菜がペースト化され、例のフードカートリッジに加工される様子を見学した後、できたてカートリッジを様々なメーカーの自動調理器で調理して試食した。三人は同じオムライスを別メーカーで作らせて食べ比べ、味付けや食感の差から「得意料理」がメーカーごとに違う可能性を感じ取る。中でもデザートのプリンはシーマズ社のものが突出しており、自動調理器を複数台揃える富裕層と、高性能機一台に集約する選択肢の双方が「宇宙空間の限られた居住スペース」を前提にした贅沢の形であると理解した。
酒造工場見学への期待
水耕栽培農場での見学と食事を終えた三人は、最後の目的地である酒類製造工場に向かうことにした。先の培養肉工場のトラウマから「次もまともな施設であること」を願いつつも、酒好きのエルマは上機嫌でスキップしながら先導し、ヒロとミミはそんなエルマの背中を追いながら、ほどよく平和な雰囲気のまま次のツアーへと歩みを進めたのである。
酒造大手コーリュービバレッジ工場への到着
三人は足取り軽いエルマに引っ張られる形で、帝国有数の酒造メーカー「コーリュービバレッジ」の工場に到着した。エルマはキレとコクのあるビールで有名な同社の解説を嬉々として語り、半ば浮かれた様子で試飲コーナーへ急ごうとしたが、ヒロにたしなめられてまずは工場見学を行うことになった。館内は大手らしく他の見学客もおり、ビール製造ラインは高速かつ正確に稼働しており、ヒロとミミは規則的に動く機械の様子に心地よさを感じていた。
ワインの実という遺伝子改良果実
次のエリアは果樹園と化したワイン工房であり、「ワインの実」と呼ばれる果実が栽培されていた。これは遺伝子工学の成果として、果実そのものにアルコールとワインの風味を持たせた品種であり、採れたてを有料で試食できた。エルマとミミは嬉しそうに口に運び、ヒロも一粒試すと、ブドウのような食感と共にワインそのものの味と香りが口内に広がり、すぐに顔を赤くした。二人はヒロの酔いやすさをからかいながらも、「果実の段階で酒になっている」という文明の発達に感心していた。
ウイスキーの木と天然物・合成物の違い
続いて三人は「蒸留酒の木」が生える区画に案内され、樹液として天然ウイスキーを分泌する木の存在を知った。解説によれば、木から採れる樹液は高級品とされ、コーリュービバレッジは別に廉価な合成ウイスキーも製造しているとのことであった。試飲コーナーでは、エルマが天然ウイスキーを満面の笑みで飲み干し、ミミは強さにむせながらも何杯か挑戦した。ヒロは二人の様子を宥めつつ、飲み過ぎないよう気を揉んでいたが、見学を終える頃にはエルマは完全にベロベロ、ミミもふらつく状態であった。
高級酒の大人買いと一週間の禁酒宣告
どうにか船クリシュナまで二人を連れ帰った後、酔いが覚めたエルマは自分の端末の決済履歴を見て青ざめた。ツアー出口で上機嫌のまま高級酒を大量に大人買いしており、その総額は十万エネルに達していたのである。まだヒロへの借金を一切返していない身での散財に対し、ヒロは一週間の禁酒と、破った場合はショーコ先生の「慣れれば病みつき」と評した検査を再体験させると警告した。エルマは涙目で禁酒を約束し、こうしてハプニング混じりの工場見学を終えた三人は、医師の指示どおり三日間の静養に入った。しかし、この静養が新たな厄介事を呼び寄せることになるとは、この時はまだ誰も知らなかったのである。
#5: トラブル体質×トラブル体質
禁酒一日目とエルマへの温情
翌朝、禁酒一日目のエルマは、未開封の高級酒を前に食堂で涙を流していた。自分の金で買った酒を前に嘆く姿に、ヒロは「好きなものを禁じられる苦しみ」を自覚し、全面禁酒を撤回して「量をセーブするなら可」と条件付きで許可した。ただし再び泥酔して醜態を晒した場合はショーコの検査「ズブリ」を再体験させると釘を刺し、エルマは怯えながらも節酒を約束した。ミミは若干呆れつつも、その甘さを静かに見守っていた。
一人での外出と再び発動するトラブル磁石
この日はミミが船内でオペレーターの勉強を進めることにし、ヒロは「たまには一人で気楽に」と街へ遊べる道具、できればゲーム機を探しに出かけた。しかし端末を弄りながら歩いているうちに人気の少ない路地に入り込み、そこで追われている女性の声と男の怒鳴り声を耳にする。様子を窺うと、白衣姿で胸元を揺らしながら逃げてくるのは面識のあるショーコであり、ヒロは深い溜息をつきつつもレーザーガンを抜いて間に割って入った。
ショーコ救出と遺伝子データ強奪事件
ヒロは飛び出してきたショーコを抱き止めつつ、追ってきた男に警告射撃を行い、両手を頭の後ろに組むよう命じた。しかし男は左腕に内蔵した仕込みレーザーガンで反撃を試みる。ヒロは呼吸を止めて動きを見切り、先に男の左腕を撃ち抜いて爆発させ、壁に叩きつけて戦闘不能にした。その後、官憲への通報と並行してショーコを落ち着かせ、現場に駆け付けたエルマとミミから「手口」「女難」とからかわれつつ事情を聴く。
ショーコは、ヒロの遺伝子データを収めたセキュリティケースを研究所に持ち帰る途中で襲撃され、ケースを奪われたと説明した。
ケースは堅牢で位置発信機能もあるため、コロニーの官憲とイナガワテクノロジー保安部、場合によっては傭兵ギルドに奪還依頼が出される見込みであったが、利害関係のあるヒロに依頼が回ることはないとされた。
保安部の到着と「一人歩き禁止」宣言
やがて武装したイナガワテクノロジー保安部が到着し、上層部が激怒していると告げられたショーコは、始末書と叱責を覚悟しながら彼らに連れられていった。事情聴取を終えたヒロはその場を離れようとするが、すぐにエルマとミミに両腕を拘束される。二人は「セキュリティの高いコロニーですら一人歩きさせられないトラブル体質」と断じ、自分たちも同行することを宣言した。結果的にヒロは二人と一緒に店巡りを楽しむことになり、この世界では家庭用ゲーム機は既に廃れており、高性能な据え置き端末と周辺アクセサリで遊ぶスタイルが主流であることを、後になって知ることになるのである。
#6:対宙賊独立艦隊
船内静養のはずがセレナ少佐来訪
トラブル続きの日々を踏まえ、ヒロ達はこの日を船内で大人しく過ごす方針とした。ヒロはミミに勧められた電子書籍アプリで読書を始めるが、その最中にクリシュナに来客があり、ホロ映像に映ったのはターメーン星系にいるはずのセレナ=ホールズであった。彼女は大尉から少佐へ昇進したことを告げ、食堂でヒロ達と対面したうえで、「お誘いに来ました」と切り出した。
対宙賊独立艦隊の構想と勧誘内容
セレナ少佐は、帝国航宙軍が星系防衛艦隊と機動艦隊に大別される現状を説明し、防衛艦隊は治安維持のため戦力を分散せざるを得ず、機動艦隊は費用と外交的リスクから軽々には動かせないことを語った。その結果、宙賊や宇宙怪獣に対する「遊撃戦力」が不足しており、これまでは傭兵に頼ってきたが、今回新設された「対宙賊独立艦隊」がその役割を担うと説明したうえで、宙賊退治のノウハウを教える戦術講師としてヒロに依頼したいと明かした。
契約条件を巡る交渉と妥協
ヒロは長期拘束と割に合わない報酬を理由に即座に拒否し、ノウハウ獲得は傭兵ギルド経由で行うべきだと主張した。しかしセレナ少佐は、ターメーン星系防衛戦での独自作戦と結晶生命体の活用を高く評価し、「大胆かつ残忍な手を躊躇なく実行できる人物」としてヒロ個人に固執した。エルマは、帝国貴族かつ佐官の要請を強硬に突っぱねると却って面倒になると耳打ちし、ヒロも渋々交渉に応じる。最終的に、対宙賊独立艦隊への協力は「尉官待遇で三十日」「一日十時間以内の拘束」「傭兵ギルド経由の指名依頼」「日当五万エネル」という条件でまとまり、事前に艦艇性能と武装データ、シミュレーター用データを受け取ることが取り決められた。
エルマの賠償問題とセレナ少佐の価値観
仕事の話が一区切りすると、ヒロはターメーン星系でエルマの船が星系軍戦艦に突っ込んだ件について、賠償額や納期限に不正がなかったかを確認した。セレナ少佐は、戦艦を中破させ多数の帝国軍人に重傷者を出した以上、本来はより重い罪に問われてもおかしくなく、賠償金で済んだのはむしろ軽い処分であると説明した。また、短すぎる納期限は自分の通達を無視した担当者の嫌がらせであり、その担当者は既に処分済みであると述べた。エルマは自らの不注意を認めつつ、その結果ヒロと共に行動する今の状況は悪くないと受け入れ、ヒロもそれ以上追及しないことにした。
契約傭兵提案とヒロの一刀両断
セレナ少佐はさらに「依頼完遂の暁には自分個人の契約傭兵の地位を与える」と提案し、帝国貴族かつ軍佐官の庇護により帝国貴族や軍絡みのトラブルに巻き込まれにくくなるメリットを強調した。しかしヒロは、セレナ少佐やホールズ侯爵家の敵対勢力に狙われやすくなるリスク、船の行動制限、「貸し一つ」が帳消しにされる不公平さを挙げて、デメリットの方が大きいと切って捨てた。
セレナ少佐は悔しがりつつも、無理に「首輪」を嵌めれば壊れる存在もあると認め、まずは餌付けからと発言し、「狙った獲物は逃さない」と執念を新たにした。最終的に、今回は戦術指導の依頼を受けてもらえたことに満足したと述べ、傭兵ギルド経由で正式依頼とデータを送ると約して艦を後にした。
ヒロは仕事中は言葉遣いに注意すると答えつつ、私的に会うつもりはないと内心で強く決意していたのである。
対宙賊艦隊協力前の準備と不安
セレナ少佐が去った後、ヒロ・ミミ・エルマは食堂で昼食を取りながら、侯爵令嬢に対しても遠慮なく物を言ったヒロの態度を振り返っていた。ミミとエルマはセレナ少佐を「危険な女」と見做して強い警戒を示し、ヒロが籠絡されないよう念を押した。その一方で、今後はヒロが対宙賊独立艦隊への戦術アドバイザーとして拘束されるため、ミミはオペレーター訓練、エルマは両名のサポートに専念する方針を固め、三人はクリシュナ内で引きこもりつつ準備を進めることにした。
グラッカン帝国貴族制度の危険性と教養訓練
数日後、ヒロはエルマに命じられ、グラッカン帝国の貴族が起こしたトラブル事例や横暴をまとめたホロ映像教材で「貴族の常識」を叩き込まれていた。帝国では貴族が「正当な理由」を掲げれば平民を殺害しても罪に問われないという危険な特権を持ち、その「正当な理由」の定義は曖昧で恣意的運用が可能であった。ただし、過度な乱暴狼藉は帝国の品位を損なうとして皇帝や他の貴族から処罰される仕組みもあり、貴族たちは体面と相互監視の中でバランスを取っていると説明された。エルマは、一般常識の欠如したヒロに対し、言葉遣いと態度の危険性を重ねて諭した。
傭兵社会の性モラルと「船に女が乗る」慣習
エルマはさらに、傭兵社会における「男の船に女が乗る=恋愛・性的関係を覚悟する」という暗黙の慣習の背景も解説した。かつてはハイパードライブの性能が低く、船内で一か月以上二人きりになる航行が当たり前であったため、そうした環境下で何も起こらない方が例外であり、女側も同意のうえで乗船するのが常識となった経緯があると語られた。ヒロは自分の世界とあまりに異なる価値観に驚きつつも、この世界の歴史と慣習を理解すべく基礎教養の学習を続けることを決意した。
データ分析とシミュレーションによる事前研究
一週間の準備期間の中で、ヒロは前半こそ一般常識の教材に費やしたが、その後はセレナ少佐から送られてきた対宙賊独立艦隊の艦艇データや編成資料を読み込み、シミュレーターでの実戦的検証に時間を割いた。艦隊側の艦で戦うケース、逆に自艦クリシュナで宙賊と交戦するケースなどを何度も繰り返し、宙賊戦における船種ごとの適性や、小惑星帯での機動限界を体感的に把握していったのである。
戦術アドバイザー就任と宙賊の実態講義
やがてヒロは対宙賊独立艦隊旗艦のブリーフィングルームで正式に戦術アドバイザーとして紹介され、宙賊狩りのノウハウを伝える講義を開始した。まず、宙賊は三〜五隻程度の船団で行動し、拿捕した民間船を改造した脆弱な船体に、クラスⅠ〜Ⅱの光学兵器やミサイルを過剰搭載して火力だけを増した存在であることを説明した。彼らは反撃を想定せず、民間船のシールドを短時間で飽和させて拿捕することに特化しており、軍艦が接近すると即座に逃走する臆病さも指摘した。
星系データから導く宙賊行動パターンと艦隊構成批判
次にヒロは、ターメーン星系の過去データを星系マップ上に投影し、宙賊と民間船の遭遇地点、傭兵による撃破地点、行方不明船の推定航路、さらに星系軍活動ポイントを重ねて表示した。その結果、宙賊の活動域が星系軍の行動圏を巧妙に避けていることが一目瞭然となり、自身もこうした分布分析を基に宙賊の狩場を割り出していると明かした。講義の締めくくりとして、ヒロは「小惑星帯主体の宙域で宙賊を狩るには、巡洋艦や戦艦は機動性と取り回しの点で不適切であり、真に狩り尽くすには艦隊編成そのものを見直す必要がある」と断言し、セレナ少佐と将兵に衝撃を与えた上で、自身の腹案となる新たな作戦構想を提示しようとしていた。
宙賊掃討作戦の展開
対宙賊独立艦隊はアレイン星系で初の掃討任務を実施し、ヒロは旗艦レスタリアスのブリッジで作戦状況を監視していた。囮として中型輸送船を配置し、弱い救難信号で宙賊を誘引する作戦は順調に進行し、三十二隻の撃破が確認されていた。ヒロは軍艦の火力と射程の圧倒的優位性に満足しており、セレナ少佐は卑怯ではないかと複雑な表情を見せつつ、実績が上がっている事実を否定できなかった。
囮船の構造と誘引作戦の仕組み
囮となっている中型輸送船はセレナ少佐が私財で購入した500万エネルの船であり、帝国軍人が乗り込んでいるため、宙賊が突入しても内部で制圧可能な仕組みであった。艦隊側は小惑星群で宙賊の有無を確認した後、ジェネレーターを落とした戦艦・巡洋艦を小惑星に紛れ込ませ、囮に釣られて近づいた宙賊をキャパシターに蓄えた電力で迎撃する戦法を繰り返していた。狩り場を移動しつつ同じ方法を繰り返すことで宙賊の警戒を回避していた。
戦果と利益の分配
この日の最終的な戦果は五十七隻であり、撃破賞金の二割がヒロのボーナスとして支払われる取り決めのため、約10万エネルがヒロに入る見込みとなった。セレナ少佐は囮船の経費を申請できず、私財負担の重さにため息をこぼしていたが、ヒロは成果が出れば経費扱いにできるかもしれないと慰めた。
今後の方針と契約の継続
ヒロは宙賊本拠地の発見までは今回の誘引作戦を基本にしつつ、状況に応じた応用戦術で実績を重ねる方針を示した。しかし契約期間はまだ半分以上残っており、セレナ少佐はヒロに今後も同行を求めたため、ヒロは敬礼をしながら次の作戦内容を思案することとなった。
#7:剥がれる化けの皮
剥がれる化けの皮
宙賊掃討戦後、整備期間に入った対宙賊独立艦隊の隙を突き、セレナ少佐は私服姿でヒロをブリッジに呼び出し、街での食事に誘った。ヒロは勧誘目的を警戒しつつエルマに連絡を入れ、ミミとエルマの同行を条件に外出を受諾した。
高級オーガニック料理店での会食
四人は貴族や富裕層が利用する高級エリアのオーガニック料理専門店を訪れ、個室で本物の肉や野菜を使った料理を堪能した。ヒロは地球での「オーガニック料理」との違いを思い出しつつ、ミミと料理談義を楽しんだ。エルマの民族衣装風の服や、ミミのお嬢様然とした服装も相まって、場の雰囲気は当初こそ和やかであった。
セレナの泥酔と本音の露呈
酒が進むにつれセレナ少佐は泥酔し、職場で女性だからと侮られ頭を下げ続けている鬱憤や、男たちの視線への不満をぶちまけたうえ、ヒロへの勧誘が無茶なものであると自覚していることも漏らした。更に、ヒロに最初に目を付けたのは自分なのに他の女とくっついていると嫉妬心まで露わにし、ヒロの軍入りを懇願した。
しかし提示された月給は四千エネル程度であり、一日で十万エネルを稼ぐこともあるヒロにとっては割に合わず、彼は長期的な出世ルートとしての利点は認めつつも入隊を断り、代わりに報酬次第で仕事は請けると線引きを示した。
最終的にセレナ少佐は地団太を踏きつつ泣き崩れ、そのまま寝てしまったため、三人は高額な会計を支払った上で彼女をクリシュナへ運び、簡易医療ポッドで酔いを抜いた。
後始末と関係整理
解毒後に目覚めたセレナ少佐は、会食での醜態を深く恥じてヒロ達に謝罪した。ヒロはオーガニック料理を楽しめた礼を挙げつつ、今回の件は貸し借りなしとし、代わりに同種の店をいくつか紹介してほしいと求めて関係を中立に戻した。セレナ少佐は紹介状を約束し、クリシュナを後にした。残されたヒロは、酔った彼女の恋愛めいた言動は強かな勧誘の一部と割り切り、これ以上追及せず通常どおり接するのが最善と結論づけた。一方ミミは、女性軍人としての立場の苦労を垣間見たことを印象深く受け止めていた。
宙賊の元を断つ決断
囮作戦による宙賊掃討は順調に成果を挙げていたが、一週間ほどで宙賊が警戒し、まったく釣れなくなった。落とすまでの間に完全な通信封鎖を徹底することは難しく、囮作戦の手口が宙賊側に露見したと考えられた。ヒロとセレナ少佐は船名・船舶IDの変更や外装の再塗装といった偽装策により囮船の再利用を検討したが、同時にセレナ少佐の戦果が軍上層部で高く評価され、囮用新造船の経費計上も通りそうな状況が判明した。
宙賊の総量と限界の認識
囮作戦の累計戦果は二百隻以上に達し、宙賊の戦力は明らかに減少していた。ゲームのように無限に湧く存在ではなく、恒星系ごとに数が限定される以上、残存戦力も先細りが避けられない。また、宙賊は拠点を失えば補給・整備が困難となり、組織的な襲撃力を喪失するため、ヒロはそろそろ“元を断つ”べきだと提案した。撃破した艦から抽出したデータキャッシュには宙賊拠点の位置情報が複数一致しており、信頼度の高い座標が得られていた。
拠点攻撃の方針と必要戦力
セレナ少佐は基地殲滅の決断を下し、包囲殲滅戦を基本戦術に据えると共に、傭兵ギルドへの協力要請を行う意向を示した。ヒロは契約外での参戦となるため報酬条件次第としつつ、作戦立案に助言を続けた。単純な基地破壊なら旗艦戦艦一隻と巡洋艦五隻を擁する現戦力だけで十分であるが、殲滅となると逃走する宙賊艦を四方から押さえる多数の前衛艦が不可欠となる。ヒロは最低三十隻、理想は五十隻のコルベットが必要と進言し、セレナ少佐もこれに同意した。
軍内事情と増援確保の課題
コルベットは俊敏さ・制圧力・近接機動戦能力に優れ、宙賊掃討では主軸とも言える艦種であるが、帝国航宙軍上層部では大艦巨砲主義派と機動戦重視派が対立しており、数的増強は簡単ではない。セレナ少佐は可能な限り独立艦隊の増員を図ろうとしていたが、足りない戦力は傭兵による外注で補う以外にないと判断された。
作戦承認への動き
必要データと戦力試算が揃ったことで、セレナ少佐は基地殲滅作戦の実施許可を司令部へ上奏する方針を固めた。ヒロもまた、己の役割と報酬条件を見極めつつ、次段階の大規模戦闘に向けて態勢を整え始めていた。
#8:宙賊掃討作戦再び
宙賊掃討作戦再び
セレナ少佐の上奏から二日後、対宙賊独立艦隊は星系軍を動かさず、アレイン星系から離脱したように偽装しつつ実際は星系内に潜伏し、奇襲作戦を開始した。事前録画のホロ動画でブリーフィングを行うことで情報漏洩を防ぎ、傭兵たちは指定時刻に超光速ドライブを同期させて宙賊拠点宙域へ急行した。
報酬条件とヒロたちの参戦
ヒロ、エルマ、ミミはクリシュナで参戦し、固定報酬5万エネルに加え、小型艦・中型艦・大型艦撃破ごとの成果報酬と賞金、さらに積荷の戦利品を狙っていた。軍主導の大規模討伐は高報酬が見込めるため、傭兵たちがこぞって参加しており、ヒロも稼ぎ時と見てやる気を高めていた。
宙賊基地への奇襲と展開
超光速ドライブ解除と同時に戦艦・巡洋艦による艦砲射撃が始まり、宙賊拠点の小惑星はレーザー砲やプラズマ砲で徹底的に叩かれた。初撃でハンガーの一部が破壊され、多くの宙賊艦が展開する前に潰されたが、残存艦が慌てて発進し、傭兵たちとの近接戦闘に雪崩れ込んだ。
クリシュナの猛攻と宙賊の恐慌
ヒロは高速機動で敵編隊の背後を奪い、重レーザーと散弾砲で小型艦三隻を瞬時に撃破し、続いてミサイル支援用に改造された中型艦二隻を優先目標として攻撃した。エルマのフレア展開でシーカーミサイル弾幕を突破し、散弾砲をミサイルベイごと叩き抜いて中型艦を爆散させると、残る宙賊は恐慌状態に陥り、逃走を図ったが、ヒロは「宙賊は皆殺し」と言い放ち、重火器で容赦なく撃ち落としていった。
戦果集計と戦利品回収
周辺宙域の敵影が消えたのち、ヒロの戦果は小型艦三十三隻、中型艦三隻に達し、討伐報酬と参加報酬、賞金を合わせて約七十万エネルに見積もられた。さらにレアメタルやハイテク製品、酒やドラッグなど価値の高い積荷を回収するため、ヒロは周囲警戒を担当し、エルマがミミに残骸回収ドローンの操作を教えながら回収作業を進めることになった。帝国側は違法薬物も軍買い上げとする方針であり、スカベンジャーに悪用される前に傭兵による回収を奨励していた。
#9: コロニー襲撃
コロニー襲撃
宙賊討伐後、ヒロたちは戦利品を確認し、ハイテク製品を中心に大きな収穫があったと判断した。危険物は回収していないとエルマが強調したが、以前拾った「歌う水晶」の影響でエルマとミミは過度に警戒していた。作戦終了通達を受け、ヒロたちはアレインテルティウスコロニーへ帰還することにした。
超光速帰還中の会話と今後の計画
帰路についた三人は、今後の稼ぎ場所として紛争宙域や観光惑星宙域の宙賊討伐などを検討し、バカンスを兼ねた討伐という案に傾いていた。ヒロは惑星上の一戸建て取得という長期目標があるものの、急ぐ必要はないと考え、状況を楽しむ余裕を持っていた。
コロニー異変の発覚と緊急通信
コロニーへ接近すると、一部区画の停電、誘導灯の赤点滅、船舶の一斉離脱など明らかな異常が確認された。港湾管理局へ通信を試みると「正体不明の攻撃的な生物がコロニーを襲撃している」と救援を求められ、パワーアーマーの有無まで問いただされた。ヒロとエルマは金のない依頼を断る姿勢を見せ、依頼手続きの確認を促しつつ入港を決断した。
パワーアーマー装備と白兵戦準備
三番ハンガーへ停泊後、ヒロは船の掌握を仲間に任せ、自身はパワーアーマー装備のためカーゴルームへ向かった。パワーアーマーは高い装甲・火力・膂力を持ち、白兵戦では戦車並みの性能を発揮する装備である。ヒロはプラズマグレネードなど閉鎖空間でも使える武器を選択し、未知の怪物に備えた。港湾管理局の説明にある脅威はゲームでは見覚えがなく、ヒロは現実世界との違いを感じながら慎重な対応に移る覚悟を固めた。
パワーアーマー「RIKISHI」の性能と白い怪物掃討
ヒロは正式名称の長い強化外骨格「TMPA’13 RIKISHI mkⅡ」をパワーアーマーと呼び、装甲と膂力を最重視したヘビーアーマーとして運用していた。分厚い装甲と大出力ジェネレーターにより、抱き潰し・踏み潰し・体当たり・高圧電流・肩部レーザーなどで白い怪物の群れを一方的に粉砕し、港湾区画周辺の安全を確保した。外見は相撲取りめいた「ダサかっこいい」機体であったが、SOLでも最強格の機体として知られる戦力であり、今回も無傷同然で任務を完了したのである。
イナガワテクノロジー総合病院からの救援依頼と培養肉への疑念
港湾管理局からの報酬付き依頼を片付けたヒロは、傭兵ギルド経由で新たにイナガワテクノロジー総合病院の救援要請を受けた。怪物の襲撃で負傷者治療中の病院周辺に個体が集まりつつあり、パワーアーマー装備の傭兵による防衛が求められていたのである。移動中、ヒロたちは白い怪物の姿が工場見学で見た人造肉の素材である触手生物に酷似していることから、培養肉工場の管理不備か、あるいはモグリ業者による暴走ではないかと推測し、培養肉産業への影響を案じつつ状況を確認していった。
病院前の惨状と怪物群の殲滅
中層フロアに到達したヒロは、白い大型・中型・小型の怪物が人間を食い荒らす阿鼻叫喚の光景を目撃した。パワーアーマーを装着したヒロにとっては、彼らは格闘とスプリットレーザーで蹂躙可能な雑兵に過ぎず、生存反応がない通りを一方的に掃討していく。総合病院前には怪物群が集中しており、ヒロは高出力レーザーランチャーで群れを薙ぎ払いながら、内部の隔壁を腐食で破られかけていた病院側からサンプル採取依頼を受け、後のナノマシン開発のため状態の良い死体を選別した。
再生能力を持つ異形の強敵との死闘
掃討中、ミミのセンサーが「怪物の反応でありながら人間にも見える」奇妙な反応を感知し、人間のような肌と多数の眼を持つ三脚二腕の異形が出現した。驚異的な速度と再生能力を備えたこの個体は、肩部レーザーやレーザーランチャーによる連続射撃でも致命傷に至らず、ヒロのシールドエネルギーを急速に削っていった。追い詰められたヒロは、敵の四肢を絡め取ってパワーアーマーごと拘束し、緊急脱出で外へ出て相手の顔面に張り付き、口内にプラズマグレネードを押し込むという奥の手を実行した。超高温プラズマの爆発により化け物は完全に消し飛び、パワーアーマーも大きな損傷を負いながらも辛うじて稼働可能であった。
ショーコとの再会とナノマシン対策の開始
戦闘後、ヒロは病院隔壁前に小型・中型・大型の怪物死体と黒焦げの異形個体の腕を積み上げ、イナガワテクノロジー側へサンプルとして提供した。対応に現れたのは以前から縁のあるショーコ医師であり、視界リンクを通じて戦闘結果と観察情報を共有したヒロは、各種の知能・行動特性・異形個体の再生能力と凶暴性について報告した。ショーコはこれらのサンプルから、怪物のみを標的とする駆除用ナノマシンを二時間ほどで作成すると宣言し、ヒロはその間、病院前と周辺の怪物死骸を整理しつつ外周警備に当たり、再侵攻に備えて待機することになったのである。
コロニー内での休息とショーコとの再会
ヒロは総合病院に招き入れられ、パワーアーマーの浄化が完了するまでの間、入浴と休息の機会を得てショーコに歓待されていた。彼女は対クリーチャー用ナノマシンの開発を既に完了させており、ヒロの働きに感謝を示す。会話の中で、異様な再生能力を持つ色違いの個体にヒロの遺伝子データの痕跡が含まれている可能性がほのめかされ、イナガワテクノロジーへの不信感がヒロの中で強まっていた。また、短期間に三度命を救われたことからショーコは「運命」を冗談めかして口にし、ヒロが船医として勧誘する一幕もあったが、彼女は研究設備と対象のない船には乗らないと笑って断った。
クリーチャー騒動の収束と各社の対処策
その後、ヒロは浄化を終えたパワーアーマーを装着して帰艦する途中、帝国航宙兵のパワーアーマー部隊がコロニー内を巡回し、残存クリーチャーを処理している光景を目にした。出処については依然不明だったが、イナガワテクノロジーの駆除用ナノマシンに加え、軍用ロボットメーカーのイーグルダイナミクス社が駆除特化ロボットを投入し、化学メーカーのサイクロン社がクリーチャー専用の毒性物質を提供するなど、複数のハイテク企業が対応策を打ち出したことで、騒動は収束に向かいつつあった。
報酬と分け前に対するクルーの判断
今回の一連の戦闘で多数の死傷者が出たことを思いながらも、ヒロは自分たち傭兵が大きな報酬を得た事実を冷静に受け止めていた。エルマとミミは、地上戦闘で実際に命を張ったのはヒロだけであるとして、自分たちへの分配は不要だと明言し、ヒロの取り分を優先する判断を下した。ヒロもまた、クルーの支援の重要性を認めつつも、彼女たちの意向を尊重して分配を受け入れた。
五日間の待機と艦内での私的時間
軍と港湾管理局からの正式な報酬支払いは、コロニー全体の混乱のため五日遅れとなった。その間ヒロは、損傷したパワーアーマーの修理に出し、外出の危険性も高いことから艦内で待機する生活を送った。三人は久々にまとまった休暇を得た形となり、ヒロ、エルマ、ミミは艦内で一緒に過ごしながら心身を緩める時間を共有し、結果的にクルー同士の関係性と結束が一段と深まることになった。
収支精算と母艦購入の検討、次の目的地へ
最終的に、略奪品売却分も含めた戦利品と、拘束期間三十日の拘束費、出撃時の同伴ボーナスを合算した今回の稼ぎは二百七十万エネル超となり、そのうち船長取り分としてヒロが受け取る額は二百六十万エネル強であった。これによりヒロの総資産は約一千七百万エネルに達し、彼は小型艦を格納できる大型母艦の購入可能性を検討する。
しかしエルマは、母艦の購入と改装には倍程度の資金が必要になると指摘し、ヒロも現段階では資金が中途半端であると判断して購入を保留した。
そのうえで一同は、ミミが推すリゾート星系への移動と、そこでの輸送任務および宙賊討伐でさらなる資金を稼ぐ方針を決定し、補給と艦のセルフチェック、パワーアーマーの再点検など発艦準備を着々と進め、次の恒星系へ向けて再び旅立つ構えを固めたのである。
#10: めんどくさいけどかわいい少佐
セレナ少佐の乱入とヒロの塩対応
シエラ星系へ向けた出発準備が整い、後は発艦するだけという段階で、セレナ少佐が私服姿でクリシュナに乗り込んできた。ヒロは強引な勧誘を再開されたと受け取り、あからさまな舌打ちと「めんどくさい」といった塩対応で押し返した。セレナ少佐は貴族としての威厳を保とうとしつつも、ヒロ達だけがリゾート星系でバカンスと宙賊退治を兼ねて過ごすことに対して「ずるい」と感情を露わにし、羨望と不満から絡みに来たのだと次第に本音を漏らしていった。
妬み全開の本音とミミの仲裁
セレナ少佐は、アレインテルティウスコロニーでのバイオテロ後処理として、気味の悪い触手クリーチャーの映像資料と報告書に追われる日々を送っており、その一方でヒロ達がリゾート地へ向かうと聞いて理屈抜きに「妬ましくて絡みに来た」と告白した。ヒロはその身勝手さに「放り出す」とまで言い放って追い出そうとするが、ミミが間に入り、セレナが軍人や侯爵令嬢としてではなく「ただの自分」としてヒロ達と息抜きしたいだけなのだと指摘し、艦内で飲み会を開くことで折り合いをつけることになった。
輸入珍味パーティとキワモノ料理の洗礼
エルマの高級酒ストックと、ミミが通販で取り寄せていた「輸入品」を広げ、四人は壮行会を兼ねた飲み会を始めた。テーブルにはピンク色のパスタや黒光りする球体、指ほどの大きさの「エビのような何か」など、見た目のインパクトが強い珍味が並んだ。ヒロは最初にピンク色のパスタを試食し、ウニのように甘く濃厚な味で美味だと評価するが、正体がウーチワーム由来であると知って自己欺瞞で「うにパスタ」と言い張る羽目になった。続いて黒い球体や芋虫めいた食材も、見た目に反して味は悪くなく、四人とも恐る恐る口にしながらも「珍味」として受け入れていった。ただし、最も怪しい皿はヒロの目の前に配置されており、ミミとエルマの悪意ある並べ方に対する疑念だけは残った。
酒に呑まれる三人と少佐の大爆発
やがて酒が進むと、ミミはヒロに物理的に絡みつきつつ脱ぎかける危うい酔い方を見せ、エルマは上機嫌で下ネタ混じりにからんでくる状態になった。セレナ少佐は、独立艦隊や上層部への不満、バイオテロを防げなかった軍の不手際などを延々と愚痴り、ヒロの襟元を掴んで揺さぶりながら鬱積したストレスをぶちまけた。ヒロは彼女をなだめつつも「これは危険すぎる」と判断し、酔いつぶれたセレナ少佐をお姫様抱っこで医務室へ運び、簡易医療ポッドに収容して強制的に睡眠と解毒を行わせた。その後はエルマとサシ飲みをし、最終的にはエルマも飲み過ぎて撃沈したため、同じように医療ポッドに放り込むことになった。
酔い覚めの説教とセレナ少佐の反省
しばらくして医療ポッドから覚醒したセレナ少佐は、頭を蓋にぶつけるなどポンコツぶりを発揮しつつも、ヒロから「見知らぬ傭兵の船で泥酔して意識を失うのは貴族の子女として無防備すぎる」と諭される形となった。ヒロは、この世界には身体や精神を容易に拘束・改変する技術や、誘拐・人身売買のリスクが現実に存在することを示し、彼女がいかに危険な行為をしたかを具体的に説明した。セレナ少佐は顔を赤くして深く反省し、謝罪するとともに、酒の飲み方を改めることを約束した。
別れの挨拶と再会の予感
ヒロはセレナ少佐の剣を返し、噂を避けるためにも自艦へ戻るよう促した。セレナ少佐はタラップを降りる途中で振り返り、「また会えますか」と、捨てられた子犬のような視線で問いかけた。ヒロは、彼女が宙賊を追い、ヒロも宙賊狩りで稼ぐ以上、いずれ戦場で再会するであろうと答え、さらに彼女に貸しが積み上がっていることも示唆した。セレナ少佐は微笑みながら去り、ヒロは彼女の存在を「自分が背負うには重い」と感じつつも、縁があればまた会うだろうと考えた。この騒動により出発は一日延期となり、クリシュナ一行は翌日の発艦に予定を組み直すことになったのである。
エピローグ
バイオテロ事件の全貌とテロ組織の正体
翌朝、ヒロは前夜の飲み会の影響も軽く、朝からトレーニングと入浴を済ませ、コーヒーを飲みながら情報端末でニュースを確認していた。物資の消費は酒がエルマの私物、珍味がミミの私物であったため微々たるものであり、出発自体はいつでも可能な状態であった。ヒロが注目していたのは、先日の培養肉工場発の触手生物騒ぎ、すなわちバイオテロ事件の続報であった。
報道によれば、生白い触手生物は培養肉用に人工的に作られた生物をベースに、脱走時に自死する安全装置を遺伝子操作で無効化し、攻撃性を高めた改変体であると判明していた。犯行声明は「人工生物保護協会」なる組織から出されており、人工生物や人工生命体の権利保護を掲げた過激な団体として認識されつつあった。帝国政府はこの組織の殲滅を帝国軍に指示しており、事態はテロ対策フェーズへと移行していた。また、イナガワテクノロジーからは防衛報酬とは別に高級フルーツの詰め合わせが届けられ、その籠の底には高純度レアメタルが隠されていたが、ヒロは裁判沙汰にする手間を嫌い、深追いしない判断を下していた。
いつも通りの朝食とセレナ少佐をめぐる雑談
記事を読み終えたタイミングでミミとエルマが食堂に現れ、三人はいつものように挨拶を交わした。ヒロは朝食後に出発する予定を伝え、エルマは「今日は邪魔は入らないでしょうね」と皮肉を含んだ一言を漏らし、ミミもセレナ少佐を「トラブルメーカー枠」と認識したことを示唆した。もっとも、ヒロには既に1700万エネルという莫大な資産があり、一〜二日の足止めは誤差と見なせる余裕があったため、会話は「今日のシェフおまかせメニュー」や食欲の話題へとすぐに移っていった。新天地へ向かう出発の朝であっても、三人の朝食風景はいつも通りの賑やかな日常であった。
アレイン星系を離脱するための発艦と慎重なコロニー出航
朝食を終えた一行は、リゾート惑星を抱えるシエラ星系に向けて出発することを決定した。アレイン星系では、今後セレナ少佐率いる対宙賊独立艦隊が積極的に宙賊討伐を行う予定であり、宙賊狩りによる稼ぎの旨味は薄れると判断されたからである。ミミが発艦申請を行い、エルマはサブシステムの管理を担当し、クリシュナはドックを離脱してコロニー内部を低速で移動し始めた。
コロニー内外を隔てるゲートは交通量が多く、玉突き事故による大惨事を避けるため発艦順が割り振られており、クリシュナは三番手としてゲート通過の順番を待った。黄塗装の輸送船に続いてゲート内の気密シールドを通過し、コロニー外の宇宙空間へ出たところで、ヒロはジェネレーター出力を上げて安全圏まで加速、アレイン星系からの離脱航路に乗った。
超光速航行と「見張り当番」の真相
コロニーを離れた後、ミミがナビゲーションを操作し、最終目的地であるシエラ星系へ向かうハイパーレーン上の経由星系としてパモニ星系などを設定した。クリシュナはまず超光速ドライブで通常空間の移動を行い、続けてハイパードライブをチャージしてハイパーレーンへ接続し、空間と光が歪む中でハイパースペース航行に突入した。
ハイパースペースでは基本的にオートパイロットが艦を制御し、レーンの流れに沿って進めるだけで操船上の負荷は少ない。しかし従来、航行中は「見張り役」を一人置くべきだというのが船乗りの慣例とされており、ヒロ達も交代制で見張りをしてきた。ミミがその必要性に疑問を呈すると、エルマは「あれは嘘」と白状し、見張り当番は実務上の必須要件ではなく、ヒロと二人きりになる時間を確保するための口実であったと明かした。この告白により、ヒロは睡眠不足や無意味なシフトを避けるべく、今後は見張り当番を廃止し、常識の範囲で行動を自制する方針に改めることにした。
長い航路での暇つぶしとリゾートへの期待
ハイパースペース航行中は外部ネットワークとの接続が不可能であり、長時間にわたり船内で完結した娯楽しか利用できない状況となる。ヒロは、事前にホロ動画、ゲーム、電子書籍などを用意しておかなければ、トレーニングと食事と入浴と睡眠だけの退屈な生活になりがちであり、その結果として「爛れた生活」に流れやすい空間であると自嘲気味に認識していた。
ヒロは改めてクルー全員に自由時間を宣言し、まずはシエラ星系およびリゾート惑星の観光案内データを食堂で一緒に閲覧することを提案した。ミミは嬉々として観光情報の用意があると答え、エルマはヒロに背中を押されながら食堂へ向かった。アレイン星系ではバイオテロと宙賊討伐で慌ただしい日々が続いていたが、今度こそは邪魔の入らない旅路とバカンスが待っているという期待を抱きつつ、クリシュナは静かにハイパースペースを進むのであった。
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