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魔導具師ダリヤはうつむかない

小説「魔導具師ダリヤはうつむかない 4 巻」感想・ネタバレ

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魔導具師ダリヤはうつむかない

魔導具師ダリヤ 3巻レビュー
まとめ
魔導具師ダリヤ 5巻レビュー

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  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
      1. 主要登場人物
        1. ダリヤ・ロセッティ
        2. ヴォルフレード・スカルファロット(ヴォルフ)
        3. イヴァーノ・メルカダンテ
        4. オズヴァルド・ゾーラ
        5. フォルトゥナート・ルイーニ
        6. マルチェラ
        7. ドリノ・バーティ
  2. 読んだ本のタイトル
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
          1. ただ、温かいものを食べてほしかった
          2. ところが財務側から横槍が入る
          3. しかもダリヤ本人まで侮辱される
          4. 今のダリヤには一緒に戦ってくれる人がいる
          5. 商会長として「プレゼンする側」に立つダリヤ
          6. そしてプレゼンがうまくいきすぎる
          7. 「安くします」だけではなかったのが面白い
          8. 魔物討伐部隊が使っているという実績
          9. ダリヤ本人より周囲の方が商売の規模を理解している気がする
          10. 前巻の「商会長一年生」から一歩進んだ
          11. 最初はただ、温かい食事をしてほしかっただけなのに
          12. 商会の名前を入れただけなのに、効果がデカすぎる
  5. 考察・解説
      1. ストーリー・プロット
        1. 第1幕:王城納品の打診と貴族作法への苦慮
        2. 第2幕:オズヴァルドの指導と師弟契約の締結
        3. 第3幕:過酷な遠征現場と新魔導具「ギョウザ」での交流
        4. 第4幕:王城正規納品と遠征用コンロ100台の発注
        5. 第5幕:服飾ギルド長フォルトゥナートとの交渉と貴族の流儀
        6. 第6幕:男同士の組み手と「唐揚げ」の夕食
        7. 第7幕:複合付与の成功と「嘆きの魔剣」
      2. 主要な転換点
        1. 1. オズヴァルドによる天狼の牙付与への警告と師事の決定
        2. 2. 王城での遠征用コンロ実演と100台の見積もり依頼
        3. 3. イヴァーノとフォルトゥナートの腹芸交渉
        4. 4. マルチェラとヴォルフの組み手
        5. 5. ドリノによる「罠女」誤解と謝罪
      3. ダリヤを中心とした人物関係の変化
        1. オズヴァルド・ゾーラ
        2. フォルトゥナート・ルイーニ
        3. ドリノ・バーティ
      4. 主人公の認識と周囲の評価
        1. 主人公自身の認識 :
        2. 周囲からの評価 :
  6. キャラクター紹介
      1. ダリヤ・ロセッティ
      2. ヴォルフレード・スカルファロット
      3. イヴァーノ
      4. オズヴァルド・ゾーラ
      5. グラート・バルトローネ
      6. ジルドファン・ディールス(ジルド)
      7. ルチア
      8. フォルトゥナート
      9. レオーネ・ジェッダ
      10. マルチェラ
      11. フェルモ
      12. カルロ・ロセッティ
      13. アルテア・ガストーニ
  7. 戦闘 一覧
    1. 曇天の遠征
        1. 遠征中の野営
    2. 唐揚げと年上の男友達
        1. 庭での組み手
    3. 友の誤解と微風布
        1. ドリノとの衝突(兵舎内)
        2. シャツ破り実験(回想)
    4. 誰がための遠征用コンロ
        1. 財務部員によるダリヤへの圧迫
    5. 番外編  父と娘の魔導具開発記録 ~声渡りの魔導具 ~
        1. セイレーンとの歌合戦(伝承・回想)
  8. 展開まとめ
    1. 王城向け礼儀作法と緑の塔の姫君
        1. 王城訪問への準備
        2. 天狼の牙の危険
        3. カルロの若き日の姿
    2. ひき肉のラビオリもどきと魔女の家
        1. 遠征用コンロとギョウザ
        2. オズヴァルドへの師事
    3. 曇天の遠征
        1. 過酷な野営
    4. 王城正規納品と魔物討伐部隊
        1. 魔物討伐部隊からの感謝
        2. 正規納品と遠征用コンロ
        3. 王城訪問後の祝宴
    5. 幕間 服飾ギルド長と貴族の流儀
        1. フォルトゥナートの忠告
    6. シメの塩スープパスタ
        1. 負傷したヴォルフ
    7. 幕間 商業ギルド長と貴族の流儀
        1. イヴァーノの後ろ盾
    8. 唐揚げと年上の男友達
        1. ヴォルフとマルチェラ
    9. 人工魔剣制作四回目〜嘆きの魔剣〜
        1. 複合付与の実験
    10. 友の誤解と微風布
        1. ドリノの勘違い
        2. 風を通す布
        3. 財務部長ジルド
    11. 幕間 夜会の迎えと初めての紅茶
        1. アルテアへの贈り物
    12. 誰がための遠征用コンロ
        1. 価格を巡る対立
        2. 財務部への説明会
    13. 幕間 意地っ張りとつながれた者
    14. ダリヤという名の魔導具師
        1. 叙爵への道
        2. 遠征練習会
    15. 番外編 父と娘の魔導具開発記録 ~声渡りの魔導具~
        1. カルロと声渡り
        2. 父の願い
  9. 魔導具師ダリヤはうつむかない 一覧
  10. その他フィクション

物語の概要

■ 作品概要

本巻では、ロセッティ商会長のダリヤ・ロセッティが、五本指靴下と乾燥中敷きの大口注文を受けて王城の魔物討伐部隊へ直接納品と挨拶を行うことになり、保証人のヴォルフレード(ヴォルフ)とともに貴族マナーの習得に苦慮する場面から幕を開ける。
商会実務を担うイヴァーノとともに高級魔導具店の店主オズヴァルド・ゾーラを訪ねたダリヤは、貴族作法の指導を手配してもらうだけでなく、自身の無知に起因する危険な付与作業(天狼の牙)について指摘を受けた。
オズヴァルドは亡き親友カルロの後継者を守り育てるべく、金貨五十枚の後払いを条件にダリヤを弟子に迎え、希少素材の扱い方や複合付与の技術を教授し始める。王城への正式納品を終えたダリヤたちは、贈答した「靴乾燥機」やヴォルフの実演した「遠征用コンロ」が高い評価を得て、魔物討伐部隊長のグラートから遠征用コンロ百台の見積もり依頼を獲得した。
服飾ギルド長フォルトゥナートとの腹芸を交えた交渉や、庶民の友人マルチェラとヴォルフの交流、騎士ドリノの誤解と謝罪を経て、周囲との関係性を深めていく。
最終的に、ダリヤはオズヴァルドから借り受けた状態異常防止の金の腕輪を身につけ、教わった魔封銀の技術で接合部を固定することにより、複合付与を施した「嘆きの魔剣」を完成させた。商会経営の安定や魔導具師としての技術向上とともに、周囲との信頼基盤を確立するまでの歩みが丹念に描かれる。

主要登場人物

ダリヤ・ロセッティ
  • 立場・所属 : ロセッティ商会の商会長、魔導具師(庶民育ち、父カルロは名誉男爵)。
  • 主な役割・今巻での重要な変化・行動 : 王城への正式納品に伴い貴族作法を習得。オズヴァルドから天狼の牙等の希少素材付与に伴う生命の危険性を指摘され、金貨五十枚の後払いを条件に彼の弟子として技術を学ぶ契約を結ぶ。オズヴァルドから借りた状態異常防止の金の腕輪を装着し、魔封銀を用いた複合付与で小型の試作魔剣「嘆きの魔剣」を完成させる。
ヴォルフレード・スカルファロット(ヴォルフ)
  • 立場・所属 : 伯爵家四男、魔物討伐部隊員(赤の職種)、ロセッティ商会の保証人。
  • 主人公との関係 : 友人。
  • 主な役割・今巻での重要な変化・行動 : 遠征先での劣悪な環境や食生活の窮状をダリヤに伝え、遠征用コンロの導入を考案。自ら討伐した変異種二角獣の素材を金貨十一枚の特別卸値で購入し、ダリヤに研究材料として提供する。王城の隊長執務室でベーコンを焼く実演を行い、遠征用コンロ百台の見積もり獲得に貢献する。マルチェラとの組み手を通じて庶民の友人関係を築き、ドリノの誤解からダリヤを庇護・同行する。
イヴァーノ・メルカダンテ
  • 立場・所属 : ロセッティ商会の商会員(元商業ギルド職員)。
  • 主な役割・今巻での重要な変化・行動 : 商会の実務と対外交渉を担当。服飾ギルド長フォルトゥナートによる薬草入りワイン(リラックス効果・口が滑らかになる薬効)を用いた情報探索に対し、自発的に下唇を噛んで耐え抜き、水虫対策メモを渡すことで防毒等の指輪を獲得。商業ギルド長ジェッダ子爵夫妻やフォルトゥナートから貴族間取引の指導を受け、関係性を構築する。
オズヴァルド・ゾーラ
  • 立場・所属 : 高級魔導具店『女神の右目』店主、ゾーラ商会長(男爵)。カルロの元学院仲間。
  • 主な役割・今巻での重要な変化・行動 : ダリヤに王城向け作法の手配を行い、ダリヤの魔力値(8単位)に対する危険な付与作業の無知を正す。かつて学院時代に「暴風雨」と呼ばれた親友カルロが教え残した無知による事故を防ぎ、後継者を守り育てるため、一人前になってからの分割払い(金貨五十枚、利子なし)を条件に、ダリヤに希少素材や複合付与の技術を教える師匠となる。
フォルトゥナート・ルイーニ
  • 立場・所属 : 服飾ギルド長(子爵家出身、元騎士)。
  • 主な役割・今巻での重要な変化・行動 : ロセッティ商会の急速な台頭に対し、服飾ギルドへの取り込みと大口顧客開拓を狙ってイヴァーノに接近。薬草入りワイン(リラックス効果・口が滑らかになる薬効)で内情を探るが、耐え抜いたイヴァーノの手腕を認め、防毒・防混乱等の銀の指輪を贈呈。貴族商売における交渉相手および助言者となる。
マルチェラ
  • 立場・所属 : 運送ギルドの運送人(庶民)。ダリヤの友人(イルマの夫)。
  • 主な役割・今巻での重要な変化・行動 : ヴォルフと緑の塔の庭で身体強化を用いた素手・手合わせの組み手を行い、互いの実力を認め合って打ち解ける。かつてダリヤの元婚約者トビアスが内緒で行っていた塔の保全作業(階段や床の修繕)を引き継ぎ、緑の塔のヒビ割れた階段を土魔法で補修する。
ドリノ・バーティ
  • 立場・所属 : 魔物討伐部隊員(赤の職種、庶民出身)。
  • 主な役割・今巻での重要な変化・行動 : 入隊初期に自身が「罠女」に引っかかりかけた過去のトラウマ(自己歴史による勘違い)から、王城でダリヤがランドルフやヴォルフと親しげなことやスカートのインク汚れ等の状況を「商会の利益のために騎士を誘惑する罠女」と誤解して暴言・牽制を吐く。後に真実を知って猛省し、緑の塔で片膝をついて謝罪して和解する。

読んだ本のタイトル

魔導具師ダリヤはうつむかない ~今日から自由な職人ライフ~ 4
(英語名:Dahlia in Bloom: Crafting a Fresh Start with Magical Tools)
著者:甘岸久弥  氏
イラスト:景 氏

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あらすじ・内容

ロセッティ商会、急発展! そしてダリヤに試練が訪れる!?

商会を立ち上げてからも、大好きな魔導具づくりに邁進する女性魔導具師のダリヤ。
ダリヤのロセッティ商会は、魔物討伐部隊との取引により思いがけぬスピードで王城へ出入りするまでに。軽量小型化した『遠征用コンロ』も新たに魔物討伐部隊への導入が検討され、これで遠征時の騎士達の食事環境が良くなれば、とダリヤはさらに奮起する。
しかし急発展する若手商会、しかも商会長は爵位を持たない庶民となれば、貴族から向けられる視線は好意的なものばかりでなく――。
「『飼い猫』がどこまでやれるかね?」「お言葉を撤回いただきたく思います」
商会長として、魔導具師として、貴族相手にダリヤ・ロセッティはその名を示す!
新たな商材、そして広がる新たな販路……『人工魔剣』の制作にもついに進展が!?
魔導具師ダリヤのものづくりストーリー、波乱の第四弾、開幕!

魔導具師ダリヤはうつむかない ~今日から自由な職人ライフ~ 4

感想

魔物から街や人々を守ってくれている魔物討伐部隊。

彼らが遠征先で野営するとき、少しでも温かいものを食べてほしい。

そんなダリヤの素朴な思いから作られたのが、遠征用の小型魔導コンロだった。

ところが、それを部隊へ導入しようとすると話は一気に大きくなる。

予算が絡む。

貴族が絡む。

そして、なぜかダリヤまで侮辱される。

ただ便利な魔導具を作っただけなのに、どうしてこうなった。

しかし今回面白かったのは、そこでダリヤ一人が戦うわけではないところだった。

魔物討伐部隊がいる。

ロセッティ商会の仲間がいる。

ヴォルフをはじめ、ダリヤを支えてくれる人たちがいる。

前巻で少しずつ形になってきた「ロセッティ商会」というチームが、本格的に動き始めた巻だったと感じた。

そして最後には、妨害してきた財務側へプレゼンすることになるのだが……。

これが予想以上にうまくいく。

いや、うまくいきすぎだろう。

ただ、温かいものを食べてほしかった

そもそもダリヤが遠征用コンロを作った理由が好きだ。

ものすごい利益を出したいわけではない。

有名になりたいわけでもない。

魔物討伐部隊の人たちは、自分たちの安全を守るために危険な場所へ行っている。

その遠征先で、

「せめて温かいものを食べられたら」

というところから始まっている。

この発想がいかにもダリヤらしい。

戦闘用の魔導具ではない。

これを持ったから強くなるわけでもない。

ただ、寒い野営地で温かい料理を食べられる。

でも実際に遠征する人にとっては、こういうものこそありがたいのだと思う。

疲れている。

寒い。

明日も魔物と戦わなければならない。

そんなときに温かいスープや料理が食べられるだけでも、かなり違うはずだ。

派手ではない。

しかし現場にいる人には確実に役立つ。

ダリヤの魔導具らしい商品だと感じた。

ところが財務側から横槍が入る

しかし、部隊で使うとなれば当然お金がかかる。

そこで問題になるのが予算である。

魔導コンロそのものが便利かどうかだけでは決められない。

部隊として大量に導入するなら、その費用を認めてもらう必要がある。

そして、そこへ財務を取り仕切る上位貴族側から横槍が入る。

どうやら単純な予算の問題だけではない。

個人的な感情まで絡んでいるらしい。

ここが読んでいて、

「面倒くさいな……」

と思ってしまった。

現場では必要とされている。

使う人たちも欲しがっている。

作る側も価格を抑えようとしている。

それなのに、別のところから止められる。

組織が大きくなると、良い物を作るだけでは話が進まないのだ。

しかもダリヤ本人まで侮辱される

さらに嫌だったのが、魔導具の話だけで済まなかったことだ。

ダリヤ本人にまで侮辱的な言葉が向けられる。

これは腹が立つ。

商品について、

「高い」

「必要性が分からない」

「予算に合わない」

と言われるなら、まだ商談として理解できる。

しかし作った人間まで侮辱する必要はない。

ここでダリヤが奮起する。

そして彼女を支える周囲の人たちも動き始める。

この流れが良かった。

今のダリヤには一緒に戦ってくれる人がいる

以前のダリヤなら、何か言われても自分で抱え込んでしまったかもしれない。

しかし今は違う。

ヴォルフがいる。

魔物討伐部隊がいる。

イヴァーノをはじめとする商会の仲間がいる。

商業ギルドとのつながりもある。

父カルロから続いてきた縁もある。

ダリヤ自身がこれまで作ってきた人間関係もある。

気がつけば、かなり多くの人が彼女を支えている。

ここまで読んできて印象に残ったのは、ダリヤが急にものすごく強くなったわけではないことだ。

全部一人で解決できるようになったわけでもない。

それでも、困ったときに一緒に考えてくれる人が増えた。

これはかなり大きな変化だと思う。

商会長として「プレゼンする側」に立つダリヤ

そして最終的に、ダリヤたちは財務系の上位貴族たちを相手に説明することになる。

これまでのダリヤなら、かなり荷が重かったはずだ。

何しろ相手は上位貴族。

しかも財務を扱う人間たちである。

ただ、

「この魔導具は便利です」

だけでは通らない。

いくらかかるのか。

なぜ必要なのか。

導入することで何が変わるのか。

予算を出す価値があるのか。

そこを説明しなければならない。

魔導具師として物を作る能力とは、まったく別の力が必要になる。

前巻では商会長一年生だったダリヤ。

その彼女が今度は、自分たちの商品を背負って上位貴族たちの前へ出ていく。

ロセッティ商会、本当に大きくなってきたな。

そしてプレゼンがうまくいきすぎる

緊張する場面になるかと思った。

財務側から厳しく追及されるのかと思った。

ところが結果は……。

うまくいった。

ものすごくうまくいった。

というか、うまくいきすぎた。

最初は魔導コンロを認めてもらうための説明だったはずなのに、話を聞いていた財務側の貴族たちまで救われていくような展開になる。

ここが思わず笑ってしまった。

対立していたはずなのに、

「敵を言い負かして勝利!」

では終わらない。

相手にも相手の事情がある。

財務側は財務側で、限られた予算を管理しなければならない。

現場からは、

「あれが欲しい」

「これも必要だ」

と言われる。

でも使えるお金には限界がある。

だから財布の紐を締めれば嫌われる。

必要な役目なのに、感謝されにくい。

考えてみれば、かなりしんどい立場である。

そんな彼らにとっても、ダリヤたちの提案には意味があった。

妨害してきた側を叩き潰して終わるのではなく、結果的に財務側まで救われる。

この着地は面白かった。

「安くします」だけではなかったのが面白い

もちろん、遠征用コンロはできるだけ価格を抑える。

魔物討伐部隊に大量導入してもらうのだから、そこは重要である。

ダリヤ自身も最初から高級品を作ろうとしていたわけではない。

必要な人へ行き渡るものにしたい。

しかし今回さらに面白かったのが、コンロの裏側にロセッティ商会の名前を入れることだった。

これが思っていた以上に大きな意味を持つ。

単なる刻印。

それだけのはずなのに、商会にとってはとんでもない宣伝になる。

魔物討伐部隊が使っているという実績

考えてみれば当然なのかもしれない。

危険な遠征へ向かう魔物討伐部隊。

その彼らが実際に使っている魔導具である。

壊れやすい物では困る。

使いにくい物でも困る。

現場で使えない物なら、そもそも持っていく意味がない。

そんな人たちが使っているコンロに、

「ロセッティ商会」

と入っている。

これは強い。

ものすごく強い。

広告を出すより説得力があるのではないだろうか。

「あの魔物討伐部隊が使っている商品を作った商会」

という実績が勝手についてくる。

価格を抑えて利益を減らしたように見えて、その代わりに商会の名前が広がる。

目先の利益だけではない商売になっている。

ダリヤ本人より周囲の方が商売の規模を理解している気がする

ここまで来ると、ダリヤ本人が一番状況を分かっていないような気さえしてくる。

本人は、

「遠征先で温かいものを食べてもらえれば」

くらいの気持ちで作っている。

ところが周囲から見ると違う。

魔物討伐部隊に正式採用される。

大量に使われる。

商会名が刻まれる。

上位貴族や財務関係者にも名前が知られる。

ロセッティ商会の信用が上がる。

次の商売につながる。

……とんでもない広告塔では?

ダリヤが便利な物を作る。

イヴァーノたちが商売として形にする。

ヴォルフたちが現場側から支える。

商業ギルドや周囲の人々が道を作る。

この役割分担がかなり強くなってきた。

前巻の「商会長一年生」から一歩進んだ

3巻では、ダリヤは魔導具を作ることはできても、商会経営についてはまだ分からないことだらけだった。

だからイヴァーノに、

善意だけで商品を渡してはいけない。

きちんと対価を取る。

契約する。

商会として利益を考える。

そういったことを教えられていた。

4巻では、その経験が少しずつ形になってきたように感じる。

今度は商品を作るだけではない。

価格を考える。

相手へ説明する。

組織と交渉する。

商会の名前そのものを価値にしていく。

ダリヤが「魔導具師」だけではなく、「ロセッティ商会長」として前へ進み始めている。

最初はただ、温かい食事をしてほしかっただけなのに

それにしても、始まりを考えると面白い。

ダリヤはただ、

「魔物討伐部隊の人たちに、遠征先でも温かいものを食べてほしい」

と思っただけである。

そこから小型魔導コンロを作った。

軽くした。

安くした。

量産できるようにした。

部隊への導入を目指した。

すると財務側から止められた。

上位貴族へ説明することになった。

プレゼンした。

なぜか財務側まで救われた。

さらにコンロへ商会名を入れたことで、ロセッティ商会の宣伝効果まで生まれた。

話が大きくなりすぎである。

でも、この広がり方が『魔導具師ダリヤはうつむかない』らしくて面白い。

ダリヤは世界を変えようとして魔導具を作っているわけではない。

目の前の誰かが、

「もう少し楽になればいい」

「もう少し便利になればいい」

と思って作っている。

ところが、その小さな発明が商会を動かし、ギルドを動かし、騎士を動かし、ついには上位貴族まで動かしてしまう。

本人の想像以上に影響が大きくなっていく。

商会の名前を入れただけなのに、効果がデカすぎる

今回一番印象に残ったのは、派手な魔導具そのものより、この商売の広がり方だった。

遠征用コンロは、戦闘で敵を倒す道具ではない。

ただ料理を温めるための道具である。

しかし、それによって遠征中の騎士たちが温かい食事をとれる。

現場が助かる。

財務側にも納得できる形ができる。

ロセッティ商会の名前も広がる。

結果として、関わった人たちの多くに利益が生まれる。

ダリヤ本人はそこまで計算していたのだろうか。

たぶん、最初から全部は考えていなかったと思う。

だからこそ面白い。

自分にできることを一つ作る。

周囲の人がそれを支える。

そこから予想もしなかったところまで話が広がっていく。

ロセッティ商会、まだできたばかりなのに成長速度がおかしくない?

そしてコンロの裏に商会名を入れるだけで、この宣伝効果。

前巻では商会長一年生だったダリヤだが、気がつけばロセッティ商会そのものが無視できない存在になり始めている。

本人だけが、その影響力にまだ気づいていないような気もする。

そこがまたダリヤらしくて面白かった。

魔導具師ダリヤ 3巻レビュー
まとめ
魔導具師ダリヤ 5巻レビュー

最後までお読み頂きありがとうございます。

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考察・解説

ストーリー・プロット

第1幕:王城納品の打診と貴族作法への苦慮

五本指靴下と乾燥中敷きの大口注文が入ったことで、ロセッティ商会が王城の魔物討伐部隊へ直接納品挨拶を行うことが決定する。庶民育ちのダリヤと応用作法が苦手なヴォルフは緑の塔で礼儀作法の本に苦戦する。王城向けの正式作法を習得するため、保証人であるヴォルフの同行のもと、ダリヤとイヴァーノは高級魔導具店『女神の右目』の店主オズヴァルド・ゾーラを訪ねる。

第2幕:オズヴァルドの指導と師弟契約の締結

オズヴァルドとその妻たちから作法講習の手配を受け、大量の暗記カードを渡されたダリヤは勉強を開始する。その場でオズヴァルドは、ヴォルフが身につける妖精結晶の眼鏡と天狼の牙の腕輪がダリヤ製であることを見抜き、ダリヤの魔力値(8単位)で天狼の牙を付与した行為が命に関わる危険なものであったと指摘する。かつて学院時代に「暴風雨」と呼ばれた亡き親友カルロが教え残した無知による事故を防ぎ、彼の後継者としてダリヤを守り育てるため、オズヴァルドは金貨五十枚の後払いを条件にダリヤを弟子とすることを提案し、ダリヤは即座に承諾する。

第3幕:過酷な遠征現場と新魔導具「ギョウザ」での交流

魔物討伐部隊は雨と冷え、牙鹿との戦闘により疲弊し、喉の腫れや風邪でも温かいスープすら飲めない遠征現場の現実が描かれる。一方、緑の塔ではダリヤが改良型遠征用コンロの試作を行い、訪れたヴォルフに「ひき肉のラビオリもどき(ギョウザ)」と赤エールを振る舞う。ヴォルフは遠征の食生活改善のため、遠征用コンロの隊への導入を決意し、自ら討伐した変異種二角獣の素材を金貨十一枚の特別卸値で買い取り、研究材料としてダリヤに提供する。

第4幕:王城正規納品と遠征用コンロ100台の発注

ダリヤ、イヴァーノ、ルチアは王城を訪れ、グラート隊長率いる魔物討伐部隊へ靴下と中敷きの正規納品を完了する。全隊員から足元環境改善の感謝と最敬礼を受ける。ロセッティ商会は贈答品として「靴乾燥機」五台を贈呈し、さらにヴォルフが隊長執務室で遠征用コンロを使いベーコンを焼いて見せたことで、グラート隊長から遠征用コンロ百台の見積もり依頼を獲得する。

第5幕:服飾ギルド長フォルトゥナートとの交渉と貴族の流儀

服飾ギルド長フォルトゥナートはロセッティ商会の利権と動向を探るため、イヴァーノを酒に誘う。薬草入りワイン(リラックス効果・口が滑らかになる薬効)で内情を聞き出そうとするフォルトゥナートに対し、イヴァーノは自発的に下唇を噛んで耐え抜き、ダリヤ考案の水虫対策メモを渡す。イヴァーノの手腕を認めたフォルトゥナートは防毒・防混乱等の銀の指輪を贈呈する。報告を受けた商業ギルド長ジェッダ子爵夫妻もイヴァーノを後押しし、東国白絹の値上げ等を通じて商会を援護する姿勢を示す。

第6幕:男同士の組み手と「唐揚げ」の夕食

マルチェラ夫婦が緑の塔を訪れ、ヴォルフと初対面する。マルチェラとヴォルフは庭で身体強化を用いた素手での組み手を行い、服を破くほどの激しい打ち合いを経て親交を深める。また、マルチェラはかつてトビアスが内緒で行っていた塔の保全作業を引き継ぎ、階段の欠けを土魔法で補修する。喧嘩と勘違いして激怒したダリヤに対し二人は謝罪する。ダリヤはニンニク・ショウガ味および蜂蜜魚醤味の二種類の「鶏の唐揚げ」と酒を振る舞い、一同で和やかに食卓を囲む。

第7幕:複合付与の成功と「嘆きの魔剣」

ダリヤはオズヴァルドから借り受けた状態異常防止(防毒・混乱防止等)の金の腕輪を装着し、オズヴァルドから教わった「魔封銀」を用いた接合部の固定化技術を使って、ネジ付き短剣への複合付与(研ぎいらず、洗浄の水、速度強化の風、軽量化、硬質強化)を試みる。魔法干渉を克服し試作魔剣が完成する。水が流れる様子からヴォルフにより「嘆きの魔剣」と命名される。ダリヤは王城専属魔導具師への勧誘を断り、庶民の暮らしに役立つ魔導具作りを志す意思を再確認する。

主要な転換点

1. オズヴァルドによる天狼の牙付与への警告と師事の決定
  • それ以前の状況 : ダリヤは父カルロから教わった知識だけで魔導具を作成しており、希少素材の危険性や複合付与の理論を知らなかった。
  • 出来事 : オズヴァルドがダリヤの魔力値(8単位)に対して天狼の牙付与が生命に関わる危険な行為だと指摘し、かつて学院で「暴風雨」と呼ばれた親友カルロの後継者を事故から守り育てるため、指導を申し出た。
  • 変化 : ダリヤは自身の無知と未熟さを自覚し、オズヴァルドと正式に師弟関係(金貨五十枚の後払い)を結んだ。
  • 次への影響 : 魔封銀を使った複合付与技術の修得に繋がり、後の「嘆きの魔剣」作成成功や魔導具師としての視野の広がりに結びついた。
2. 王城での遠征用コンロ実演と100台の見積もり依頼
  • それ以前の状況 : 遠征用コンロはダリヤ、ヴォルフ、職人フェルモが試作を重ねていた段階で、製品としての納品実績はなかった。
  • 出来事 : ヴォルフがグラート隊長の前で遠征用コンロを使い、燻しベーコンを焼いて実演してみせた。過酷な野営地で温かいスープすら飲めず疲弊していた隊の課題が、コンロによって解決可能と判断された。
  • 変化 : グラート隊長が遠征先での実用性を即座に評価し、百台の大量見積もりを直接依頼した。
  • 次への影響 : ロセッティ商会に靴乾燥機と並ぶ巨大な受注機会がもたらされ、商会の経営基盤と王城・騎士団との取引実績が極めて強固になった。
3. イヴァーノとフォルトゥナートの腹芸交渉
  • それ以前の状況 : ロセッティ商会は服飾ギルドを通さずに商業ギルド主導で靴下や中敷きを展開しており、服飾ギルド側からの干渉が懸念されていた。
  • 出来事 : フォルトゥナートが薬草入りワイン(リラックス効果・口が滑らかになる薬効)を使ってイヴァーノから情報を引き出そうとしたが、イヴァーノは唇を噛んで耐え抜き、水虫対策メモを渡して取引に応じた。
  • 変化 : フォルトゥナートがイヴァーノの有能さを認め、防毒の指輪を贈るとともに貴族向け商売のアドバイザーとしての関係を構築した。
  • 次への影響 : 商業ギルド長ジェッダ子爵が対抗して東国白絹の値上げ等でバックアップを決め、商会の防衛力が向上した。
4. マルチェラとヴォルフの組み手
  • それ以前の状況 : マルチェラはダリヤの元婚約者問題の経緯から、ヴォルフの人物像やダリヤへの影響を警戒・見極めようとしていた。
  • 出来事 : 庭で身体強化を使った全力の組み手を行い、互いの身体能力と人柄を直接確かめ合った。あわせてマルチェラはトビアスのかつての役割を引き継ぎ、土魔法で階段を補修した。
  • 変化 : 互いを「ヴォルフさん」「マルチェラさん」と呼び合う対等な友人として認め合い、打ち解けた。
  • 次への影響 : ヴォルフにとって貴族の立場を離れて気兼ねなく話せる庶民の友人ができ、緑の塔での居場所がより確固たるものになった。
5. ドリノによる「罠女」誤解と謝罪
  • それ以前の状況 : ドリノはダリヤが騎士団の幹部(ヴォルフやランドルフ)と急速に親しくなっていることを見て不審に思っていた。
  • 出来事 : 入隊初期に自身が罠女に引っかかりかけたトラウマ(自己歴史)から、王城でスカートにインクがついたダリヤに対し、騎士を惑わす「罠女」だと誤解して冷淡な牽制発言をした。後に事実を知ったヴォルフが激怒した。
  • 変化 : ドリノは自分の身勝手な勘違いを猛省し、緑の塔を訪れてダリヤに片膝をついて謝罪した。ダリヤは事情を理解して快く許した。
  • 次への影響 : ドリノやランドルフがダリヤの手料理(アスパラのベーコン巻き、エビフライ、パンプディング等)でもてなされ、騎士団員個人としての深い信頼関係が構築された。

ダリヤを中心とした人物関係の変化

オズヴァルド・ゾーラ
  • 開始時 : 亡き父カルロの知り合いで、高級魔導具店の店主(遠い存在)。
  • 主な出来事 : 礼儀作法の指導を受ける中、天狼の牙付与の危険性を指摘され、秘伝の技術講習を提案される。
  • 巻末時 : 授業料金貨五十枚で技術を学ぶ「師匠と弟子」の関係。
フォルトゥナート・ルイーニ
  • 開始時 : 服飾ギルド長であり、事業のライバル・警戒対象の貴族。
  • 主な出来事 : イヴァーノを介した交渉、および水虫対策情報の提供。
  • 巻末時 : お互いの有用性を認めつつ、イヴァーノを通じて間接的に貴族交渉のアドバイザー・取引相手として繋がる関係。
ドリノ・バーティ
  • 開始時 : ヴォルフの同僚騎士(面識がほとんどない状態)。
  • 主な出来事 : 王城での「罠女」という誤解に基づく暴言と、その後の緑の塔での真摯な片膝立ちの謝罪、夕食の共食。
  • 巻末時 : 誤解が完全に解け、手料理を振る舞う気兼ねない知人・友人関係。

主人公の認識と周囲の評価

主人公自身の認識 :
  • 自分は未熟で考えなしな駆け出しの庶民魔導具師である。
  • 父カルロの足元にも及ばず、技術や知識(天狼の危険性や複合付与など)が大きく不足している。
  • 作れる魔導具も生活用の地味なものであり、王城や貴族社会には不釣り合いだと感じている。
周囲からの評価 :
  • オズヴァルド : 亡きカルロの情熱と才能を受け継ぎ、着実に美しさと魅力を増している魔導具師(「緑の塔の姫君」)。教え甲斐のある優秀な弟子。
  • グラート隊長・魔物討伐部隊員 : 足元環境や遠征食の劇的改善をもたらした最大の功労者・賓客。最敬礼を捧げるべき対象。
  • ヴォルフ : 自身の生活や精神を救ってくれたかけがえのない友人であり、素晴らしい発想力を持つ尊敬すべき魔導具師。
  • イヴァーノ・ルチア : 商会・工房の核であり、次々と画期的な製品を生み出す信頼できるリーダー・友人。
  • 認識の差が現れた場面 :
  • 隊員待機室で全隊員から最敬礼と大波のような歓声(「ありがとうございました!」)を受けた際、ダリヤ自身はなぜそこまでの敬意を払われるのか理解できず固まってしまった場面。
  • オズヴァルドから天狼の牙の付与で「一歩間違えると死にます」と指摘され、自身の無知と技術不足を思い知らされた場面。

キャラクター紹介

ダリヤ・ロセッティ

オルディネ王国で活動する魔導具師であり、ロセッティ商会の会長を務める。前世の記憶と知識を活かし、人々の生活を改善する魔導具の開発に尽力している。ヴォルフレードとは互いに信頼し合う友人関係にあり、魔導具の研究や食事を共にする時間を大切にしている。

  • 所属組織、地位や役職
    • ロセッティ商会・会長。
    • 魔物討伐部隊御用達商会・相談役。
  • 物語内での具体的な行動や成果
    • 五本指靴下と乾燥中敷きを魔物討伐部隊に納品し、隊員の足元の環境改善に貢献した。
    • オズヴァルド・ゾーラから王城向けの礼儀作法や、高度な魔導具制作技術の指導を受けた。
    • 王城で遠征用コンロのプレゼンテーションを行い、財務部との予算交渉を成功させた。
    • 遠征用コンロや靴乾燥機などの功績により、魔物討伐部隊の相談役に任命され、男爵叙爵が予定されることとなった。
    • 父カルロが遺した魔導具「声渡り」を使用し、父の声を聞く体験をした。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
    • 魔物討伐部隊からの厚い信頼を獲得し、準男爵扱いの待遇を受けることになった。
    • 商会長として、財務部や他ギルド長とも対等に渡り合う姿勢を見せた。

ヴォルフレード・スカルファロット

王城騎士団の魔物討伐部隊に所属する騎士。ダリヤの魔導具開発を素材提供や意見出しで支える一方、彼女との交流を通じて精神的な安らぎを得ている。

  • 所属組織、地位や役職
    • 王城騎士団・魔物討伐部隊員。
    • スカルファロット家・四男。
  • 物語内での具体的な行動や成果
    • ダリヤが試作したポップアップトースターのパンを捕獲し、「フライングトースター」と名付けた。
    • 変異種の二角獣の素材をダリヤに提供し、魔剣や魔導具の研究協力を申し出た。
    • ダリヤの友人であるマルチェラと手合わせを行い、身体強化を使わない純粋な力比べを楽しんだ。
    • アルテア・ガストーニの夜会の迎え役を務め、彼女にダリヤからの贈り物である小型魔導コンロを渡した。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
    • ダリヤの男爵叙爵の可能性を知り、自身の身分や周囲への影響について考えを巡らせている。

イヴァーノ

ロセッティ商会の商会員であり、元商業ギルド職員。ダリヤの右腕として、商会の運営や対外的な交渉を一手に引き受ける。

  • 所属組織、地位や役職
    • ロセッティ商会・商会員。
  • 物語内での具体的な行動や成果
    • 王城への納品挨拶に同行し、商会としての体面を保つための補佐を行った。
    • 服飾ギルド長フォルトゥナートからの引き抜き工作に対し、商業ギルド長から渡された防護の指輪をつけて対応した。
    • 遠征用コンロの価格設定において、商会の利益と名誉を守るためにダリヤに助言した。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
    • 商業ギルド長や服飾ギルド長といった高位の貴族とも渡り合い、商会を守る防波堤としての役割を果たしている。

オズヴァルド・ゾーラ

熟練の魔導具師であり、ダリヤに技術と礼儀作法を指導する師匠的存在。ダリヤの父カルロに恩義を感じている。

  • 所属組織、地位や役職
    • ゾーラ商会・商会長。
    • 魔導具師。
  • 物語内での具体的な行動や成果
    • ダリヤに対し、王城向けの礼儀作法を習得させるための資料提供と指導を行った。
    • 秘密保持を条件に、希少素材の付与や複合付与などの高度な技術をダリヤに教える契約を結んだ。
    • 妻エルメリンダに対し、ダリヤへの指導は過去の恩返しと才能への期待からであることを語った。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
    • ダリヤの才能を認め、彼女を後継者候補のように大切に扱う姿勢を見せている。

グラート・バルトローネ

魔物討伐部隊の隊長。部下の生活環境改善に熱心であり、ダリヤの魔導具を高く評価している。

  • 所属組織、地位や役職
    • 魔物討伐部隊・隊長。
  • 物語内での具体的な行動や成果
    • 遠征用コンロの導入を決断し、財務部に対して予算の増額を求めた。
    • 財務部長ジルドとの確執を乗り越え、部隊の待遇改善のために協力関係を築いた。
    • ダリヤを魔物討伐部隊の相談役として迎え入れ、彼女を貴族社会の圧力から守る「囲い込み」を行った。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
    • ダリヤの商会を部隊の御用達とすることで、彼女に貴族としての地位を得る道筋を作った。

ジルドファン・ディールス(ジルド)

王城の財務部長。予算管理に厳格な姿勢を見せるが、根底には騎士団への複雑な思いがある。

  • 所属組織、地位や役職
    • 財務部・部長。
  • 物語内での具体的な行動や成果
    • 当初は遠征用コンロの導入に懐疑的であり、ダリヤに対して厳しい態度を取った。
    • ダリヤのプレゼンテーションと試食会を経て、コンロの有用性と彼女の誠意を認めた。
    • 過去の非礼をダリヤに謝罪し、魔物討伐部隊への予算配分を見直すことを約束した。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
    • グラートとは幼馴染であり、過去の弟の死を巡るわだかまりを解消し、協力体制へと転じた。

ルチア

ダリヤの友人であり、服飾ギルドの工房長。服飾に関する情熱と才能を持つ。

  • 所属組織、地位や役職
    • 服飾ギルド・工房長。
  • 物語内での具体的な行動や成果
    • ダリヤと共に王城へ赴き、魔物討伐部隊への正規納品の手続きを行った。
    • 隊員たちから靴下や中敷きの感謝を直接伝えられ、仕事への自信を深めた。
    • 帰りの馬車では服のデザインに没頭し、イヴァーノを呆れさせた。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
    • 服飾ギルド長から工房長に任命され、自身の工房を持つに至った。

フォルトゥナート

服飾ギルド長であり、子爵。ロセッティ商会の製品に強い関心を持っている。

  • 所属組織、地位や役職
    • 服飾ギルド長。
    • 子爵。
  • 物語内での具体的な行動や成果
    • イヴァーノに対し、ロセッティ商会の情報を求めたり、昼食会に誘うなどして接触を図った。
    • ダリヤの叙爵に向けた準備を進める役割を担うことになった。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
    • 商会への興味は尽きないが、商業ギルド長からの牽制もあり、慎重に距離を詰めている。

レオーネ・ジェッダ

商業ギルド長であり、子爵。イヴァーノとロセッティ商会を背後から支える。

  • 所属組織、地位や役職
    • 商業ギルド長。
    • 子爵。
  • 物語内での具体的な行動や成果
    • 服飾ギルド長からの引き抜き工作に対抗するため、イヴァーノに高価な魔導具の指輪を与えた。
    • イヴァーノに対し、自身を名前で呼ぶことを許し、将来的な独立を支援する姿勢を示した。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
    • イヴァーノを自身の派閥における重要な人物として扱い、保護を与えている。

マルチェラ

運送ギルドの職員であり、ダリヤの友人。

  • 所属組織、地位や役職
    • 運送ギルド職員。
  • 物語内での具体的な行動や成果
    • ヴォルフレードと手合わせを行い、身体強化を使わない力比べで互角の勝負をした。
    • 試合中に服を破いてしまい、ダリヤに叱られた。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
    • 騎士であるヴォルフとも対等に接し、友人としての交流を深めている。

フェルモ

ガンドルフィ工房の職人。

  • 所属組織、地位や役職
    • ガンドルフィ工房・職人。
  • 物語内での具体的な行動や成果
    • ダリヤと共に泡ポンプボトルの改良やクラーケンテープの貼り付け作業を行った。
    • ダリヤから一角獣の角のペンダントを受け取り、妻バルバラの治療に役立てた。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
    • ダリヤとの協力関係を通じて、工房の技術向上と安定化を図っている。

カルロ・ロセッティ

ダリヤの亡き父であり、魔導具師。

  • 所属組織、地位や役職
    • 元魔導具師。
  • 物語内での具体的な行動や成果
    • 過去の回想にて、声を変化させる魔導具「声渡り」を開発した経緯が語られた。
    • オズヴァルドを過去に救ったことがあり、その恩義が現在のダリヤへの支援につながっている。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
    • 彼の遺した技術や人脈が、死後もダリヤを支える重要な基盤となっている。

アルテア・ガストーニ

ガストーニ公爵家の実力者。ヴォルフレードと親しい関係にある。

  • 所属組織、地位や役職
    • ガストーニ公爵家。
  • 物語内での具体的な行動や成果
    • 夜会の迎えに来たヴォルフから、ダリヤ作の小型魔導コンロを受け取った。
    • ヴォルフの女性関係について尋ねつつも、彼の選択を尊重する姿勢を見せた。
  • 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
    • ヴォルフに対して保護者のような愛情を持ち、彼の成長を見守っている。

戦闘 一覧

曇天の遠征

遠征中の野営
  • 戦闘者:魔物討伐部隊 vs (なし・自然環境)
  • 発生理由:遠征中であるため。
  • 結果:戦闘の描写はないが、隊員は軽い傷や体調不良、衛生状態の悪化に苦しんでいる。

唐揚げと年上の男友達

庭での組み手
  • 戦闘者:ヴォルフ vs マルチェラ
  • 発生理由:ヴォルフが眼鏡を外して変装を解いた後、親交を深めるため遊びとして組み手を行った。
  • 結果:互角の勝負となり、双方の服が破れたため中断。ダリヤに喧嘩と誤解され、怒られた。

友の誤解と微風布

ドリノとの衝突(兵舎内)
  • 戦闘者:ヴォルフ vs ドリノ
  • 発生理由:ドリノがダリヤについて失礼な発言(男と勘違いしていたことに関連する誤解)をし、ヴォルフが激怒したため。
  • 結果:ヴォルフがドリノを壁に押し付けたが、ランドルフの介入により収まった。ドリノは自身の非を認め、ダリヤに謝罪へ向かった。
シャツ破り実験(回想)
  • 戦闘者:ダリヤの父(カルロ) vs ダリヤ(当時)
  • 発生理由:風魔法付与の実験として、父が着ていたシャツにダリヤが魔法をかけたが、制御できず暴発したため。
  • 結果:父のシャツが破れて脱げてしまった。その後、罰ゲーム等への応用が考えられた。

誰がための遠征用コンロ

財務部員によるダリヤへの圧迫
  • 戦闘者:魔物討伐部隊員 vs 財務部員(ジルド含む)
  • 発生理由:ジルドが退出した後、ダリヤが財務部員たちから無言の圧力(身動きできないほどの圧迫感)を受けたため、隊員たちが怒って守ろうとした。
  • 結果:騎士が取り締まり、不適切発言をした隊員には訓練が命じられた。物理的な戦闘には発展せず。

番外編  父と娘の魔導具開発記録 ~声渡りの魔導具 ~

セイレーンとの歌合戦(伝承・回想)
  • 戦闘者:ある歌手 vs セイレーン
  • 発生理由:セイレーンの髪を得るため、歌で勝負を行った。
  • 結果:歌手が勝利し、セイレーンの髪を手に入れた。

展開まとめ

王城向け礼儀作法と緑の塔の姫君

王城訪問への準備

魔物討伐部隊へ五本指靴下と乾燥中敷きを正式納品することになり、ダリヤは王城へ赴くための礼儀作法に頭を悩ませていた。伯爵家出身のヴォルフも正式な来客向け作法には詳しくなく、二人は緑の塔で分厚い礼儀作法書と格闘した。

より確実に学ぶため、ダリヤ、ヴォルフ、イヴァーノは魔導具店「女神の右目」の店主オズヴァルドを訪ねた。そこでダリヤとイヴァーノは大量の暗記用資料を渡され、今後はオズヴァルドと第一夫人カテリーナから王城向け作法を教わることになった。

天狼の牙の危険

オズヴァルドはヴォルフの妖精結晶の眼鏡と腕輪に目を留め、ダリヤが天狼の牙を付与したと知ると、その危険性を指摘した。天狼の牙は魔力が尽きても生命力まで奪う場合があり、実際に付与中の死亡例もあった。ダリヤは父カルロから希少素材の危険性や複合付与について十分教わっていなかったことを知った。

オズヴァルドはカルロの知識が途絶えていることを惜しみ、金貨五十枚を対価として、希少素材、魔力量の増やし方、複合付与などをダリヤに教えると申し出た。ダリヤは即座に受諾した。代わりにオズヴァルドは、自分に万一のことがあった場合、高等学院の魔導具科に通う息子へ技術を伝えてほしいと頼み、ダリヤもそれを引き受けた。

カルロの若き日の姿

オズヴァルドは学院時代のカルロが「暴風雨」と呼ばれていたことを明かした。カルロは魔石を大量に直結した洗浄機を作り、学院の壁に穴を開けるほど無茶な研究をしていた。オズヴァルドも当時の魔導具研究会に所属しており、二人は古くからの仲間だった。

ダリヤは温厚だった父にも、自分と同じように魔導具を試したくて仕方がない時代があったことを知った。一方、オズヴァルドにとってカルロは、妻と弟子に裏切られて絶望していた自分を救った恩人でもあった。彼はその恩を今も忘れず、カルロの娘であるダリヤを「緑の塔の姫君」として見守っていた。

ひき肉のラビオリもどきと魔女の家

遠征用コンロとギョウザ

緑の塔へ戻ったダリヤは、ヴォルフに改良した遠征用コンロを試してもらった。安定性や安全装置を強化した新型を使い、前世のギョウザに似た料理を焼いた。ヴォルフは豚肉入りとエビ入りの双方を気に入り、エールと合わせて大量に食べた。

未知の料理が次々と出てくる緑の塔を、ヴォルフは絵本の「森の魔女の家」にたとえた。ダリヤが料理をギョウザと呼ぶことにすると、ヴォルフもその名を気に入った。

オズヴァルドへの師事

食後、ダリヤは自分が魔導具師として未熟だったことに落ち込んでいると打ち明けた。しかし、オズヴァルドから複合付与を学べば人工魔剣の開発にも応用できると考えており、学ぶことへの期待も大きかった。

ヴォルフは変異種の二角獣を研究材料としてダリヤへ提供し、そこから利益が出た場合は授業料に回してよいと申し出た。ダリヤは申し出を受け入れた。また、自分が人を傷つける魔導具を作ろうとした場合には止めてほしいとヴォルフに頼んだ。ヴォルフはそれを約束し、ダリヤが人に追われる魔女になるなら自分は魔王になると笑った。

曇天の遠征

過酷な野営

魔物討伐部隊は牙鹿の討伐を終え、雨の中で野営していた。隊員は汗と雨で濡れ、負傷者や風邪をひいた者も出ていた。しかし遠征食は硬い黒パン、干し肉、チーズが中心であり、喉を痛めた者でも温かい食事を取れなかった。

ダリヤの防水布によって雨漏りや食料の水濡れは改善されていたが、ヴォルフは食生活にも改善が必要だと痛感した。遠征用コンロがあれば、体調を崩した仲間に温かいスープや湯を用意できる。ヴォルフはロセッティ商会との関係を理由に批判されても構わないと考え、王都に戻り次第、隊長へ導入を進言することを決めた。

王城正規納品と魔物討伐部隊

魔物討伐部隊からの感謝

ダリヤ、イヴァーノ、五本指靴下の工房長となったルチアは王城を訪れた。ダリヤはカテリーナから四回にわたり礼儀作法を習い、大量の暗記事項を覚えて本番に備えていた。

魔物討伐部隊では、多数の隊員が五本指靴下と乾燥中敷きへの感謝を示した。靴内環境が改善され、水虫の再発者も出なくなっていた。衛生管理も見直され、タオルや足拭きマットの共用方法まで変更されていた。

正規納品と遠征用コンロ

商業ギルド長ジェッダ、服飾ギルド長フォルトゥナートも加わり、正式な納品手続きが行われた。これによりロセッティ商会には安定した利益が入ることになった。さらに商会は靴乾燥機五台を贈り、イヴァーノは翌日から販売すると抜け目なく宣伝した。

続いてヴォルフが遠征用コンロを持ち込み、実演としてベーコンを焼いた。小さく軽量ながら十分な火力を持つことが評価され、グラート隊長は百台分の見積もりを依頼した。ダリヤは、自分の魔導具が魔物と戦う者達の生活を少しでも改善できることを喜んだ。

王城訪問後の祝宴

翌日、ダリヤ達はガブリエラ、ドミニクらと正規納品を祝った。商会設立から短期間で王城取引まで進んだことが話題となり、ダリヤが将来爵位を得る可能性まで語られた。

帰り際、ドミニクは婚約破棄の日と同じように、ダリヤ達のこれからに幸いが多いことを祈った。ダリヤは婚約破棄後の生活を振り返り、人と幸運に恵まれていることを実感した。

幕間 服飾ギルド長と貴族の流儀

フォルトゥナートの忠告

フォルトゥナートはイヴァーノを酒席へ誘い、商売に関する貴族独特の交渉や駆け引きを教えた。イヴァーノはロセッティ商会が急速に成長した一方で、自分が貴族社会について知らなすぎることを思い知らされた。

フォルトゥナートは時に威圧的な駆け引きを交えながらもイヴァーノの能力を高く評価し、彼との交流を深めた。イヴァーノも簡単には飲み込まれず、将来的には対等な関係を目指す意志を持った。

シメの塩スープパスタ

負傷したヴォルフ

ヴォルフは訓練中に盾を鳩尾へ受けており、祝宴でも食事を控えていた。ダリヤは緑の塔で消化しやすい塩味のスープパスタを作り、ヴォルフに食べさせた。

食事をしながら二人は魔物討伐部隊の環境や爵位について話した。将来ダリヤが男爵位を得ても緑の塔に住み続けるつもりだと知り、ヴォルフは自分もこれまで通り訪ねてよいかと尋ねた。ダリヤは笑って、いつでも待っていると答えた。

幕間 商業ギルド長と貴族の流儀

イヴァーノの後ろ盾

イヴァーノはジェッダとガブリエラから、フォルトゥナートとの付き合い方や貴族社会の力関係を教えられた。さらにロセッティ商会には商業ギルド長レオーネという強い保証人がいるため、必要以上に恐れることはないと知った。

イヴァーノは自分の知識不足を認め、オズヴァルドやフォルトゥナートから学びながら、いずれ商売人として対等に渡り合うことを目標とした。

唐揚げと年上の男友達

ヴォルフとマルチェラ

緑の塔でヴォルフはダリヤの幼なじみマルチェラと改めて親しくなり、互いに堅苦しい敬語をやめた。イルマも加わり、四人で食卓を囲んだ。

マルチェラとヴォルフは身体強化を使った腕比べまで始め、ダリヤとイルマに叱られた。食事や酒を通じて二人の距離は縮まり、マルチェラはヴォルフを下町の酒場へ連れていくと約束した。ヴォルフにとってマルチェラは、貴族社会とは関係なく付き合える年上の男友達となった。

人工魔剣制作四回目〜嘆きの魔剣〜

複合付与の実験

ダリヤとヴォルフはオズヴァルドから教わった技術を使い、人工魔剣の制作を再開した。魔封銀を接合部分に使い、異なる付与を干渉させず組み合わせる方法を試した結果、これまで不可能だった複合付与に成功した。

完成した短剣には予想外の性質も現れ、二人は相変わらず奇妙な魔剣の命名を巡って言い合った。それでもダリヤにとっては、新しい技術によって人工魔剣研究が大きく前進した瞬間であった。

友の誤解と微風布

ドリノの勘違い

ダリヤが一人で王城へ見積書を届けた際、ヴォルフの友人ドリノは彼女を、男を利用する女性だと誤解し、嫌味を口にしてしまった。後から事実を知ったドリノがヴォルフに告白すると、ヴォルフは激怒して彼を壁へ押しつけた。

ヴォルフ、ドリノ、ランドルフはその日のうちに緑の塔へ向かった。ドリノは謝罪し、ダリヤも彼がヴォルフを心配していたための誤解だったと理解した。その後は料理と酒を囲み、三人の騎士とダリヤは互いのことを話して関係を修復した。

風を通す布

遠征時の暑さについて話す中、ダリヤは以前失敗した「風を通す布」を思い出した。グリーンスライムを利用した布を改めて試すと、身体の周囲へ穏やかな風を流せることが分かった。ドリノやランドルフからも、鎧の下着、手袋、兜など様々な用途が提案された。

イヴァーノはこれが騎士団装備や一般服にも広がる商品になると見抜き、服飾ギルドとの共同開発を提案した。ダリヤはルチア、フォルトゥナート、魔導具師、染色職人らと試作を重ねた。付与した布の色や風量、染色方法など数多くの問題を解決し、最終的に「微風布」と名付けられた素材が完成した。

財務部長ジルド

完成品を魔物討伐部隊で試していたところ、財務部長ジルドが現れた。彼はグラートと旧知の仲でありながら、過去の遠征を巡る出来事から長年距離を置いていた。

ジルドの弟はかつてグラートが率いた遠征で命を落としていた。グラートは友から弟を頼まれながら守れなかったことを自らの責任として背負い続けていた。ダリヤは過酷な遠征では誰か一人に責任を負わせられないと訴え、二人の間にあった長年の傷に触れた。

その後、ヴォルフとダリヤも互いに気まずさを残しながら話し合い、最後には説明会が終わったら二人でゆっくり飲もうと約束した。

幕間 夜会の迎えと初めての紅茶

アルテアへの贈り物

ヴォルフは前公爵夫人アルテアの夜会の迎えを務めた。ダリヤは以前酒を贈られた礼として小型魔導コンロをアルテアへ贈っていた。

アルテアはダリヤが人から一方的に恩を受けることを避け、自分で返せる範囲しか受け取ろうとしない性格だと見抜いていた。一方でヴォルフとダリヤの関係にも興味を持っており、二人を気にかけていた。最後には自ら小型魔導コンロで紅茶を淹れたが、慣れない作業のため出来上がった紅茶はひどい味となった。

誰がための遠征用コンロ

価格を巡る対立

遠征用コンロの王城向け説明会を前に、ダリヤとイヴァーノは価格を巡って意見を対立させた。ダリヤは魔物討伐部隊の待遇改善を優先して価格をできるだけ下げようとしたが、イヴァーノは商会として適正な利益を得なければ継続供給できないと主張した。

ダリヤには、傷だらけで森に倒れていたヴォルフの姿が忘れられなかった。魔物と戦う者達に必要な物を届けたいという思いは強かったが、最終的には商会として続けられる価格との折り合いをつけた。

財務部への説明会

王城では財務部と魔物討伐部隊を前に遠征用コンロの説明会が開かれた。ダリヤ達は実際の遠征食を用意し、硬い黒パンや干し肉しか食べられない環境を財務部員にも体験させた。

さらに過去の遠征における死傷者や過酷な環境が示され、温かい食事を取れることが単なる贅沢ではなく、隊員の体調と士気を支えるために必要だと訴えられた。ダリヤは利益を削った価格を提示したが、商会を守る必要性も指摘され、適正な取引として進められることになった。

グラートはダリヤに魔物討伐部隊の相談役魔導具師となるよう依頼した。ダリヤは戸惑いながらも、部隊の役に立てるならと引き受けた。

幕間 意地っ張りとつながれた者

グラートとジルド

説明会後、グラートはジルドの執務室を訪れ、ロセッティ商会を支持する複数の推薦状を示した。ジルドはダリヤやヴォルフ、グラートを巡る噂もあって商会を警戒していたが、説明会を通じて認識を改めた。

二人はかつて親友だったが、ジルドの弟が遠征で亡くなったことを境に離れていた。グラートは自分を責め、ジルドもまた弟の死と向き合えずにいた。しかし長い対話の末、二人は学生時代のような言葉を交わし、再び酒を酌み交わす約束をした。

ダリヤという名の魔導具師

叙爵への道

魔物討伐部隊御用達商会の会長となり、さらに相談役魔導具師を引き受けたことで、ダリヤは男爵位を授けられる可能性が非常に高くなった。本人は状況を理解できず戸惑ったが、フォルトゥナートやルチアは早くも叙爵用ドレスの話を始めた。

遠征練習会

ダリヤは遠征練習会へ参加し、隊員達と共に遠征用コンロを使った料理や食材の保存方法を試した。卵など、これまで遠征には向かないと考えられていた食材にも利用の可能性が広がった。

グラートはこれまで、遠征で失われた隊員や病気で去った仲間を守れなかったことを長く悔やんでいた。防水布、五本指靴下、乾燥中敷き、遠征用コンロ、微風布と、ダリヤの魔導具によって遠征環境が次々と改善される様子を見て、その重荷が少しずつ軽くなった。

グラートは、誰にも寄りかからず、自分の手が届く範囲を懸命に救おうとするダリヤを見つめ、改めて魔物討伐部隊の魔導具師として力を貸してほしいと頼んだ。

番外編 父と娘の魔導具開発記録 ~声渡りの魔導具~

カルロと声渡り

生前のカルロは、若いダリヤに声を変える魔導具「声渡り」を見せていた。セイレーンの髪を付与した魔導具で、声質や音量を変えることができた。ダリヤはその仕組みに興味を持ち、父から素材や構造について教わった。

カルロは男爵となってから貴族社会に関わる中で、魔導具師の技術を利用しようとする危険な者達にも接していた。そのためダリヤを守ろうとし、危険な知識や人間関係から遠ざけることもあった。

父の願い

カルロは妻を失い、自分にも何が起こるかわからないことを考え、もしもの場合にはオズヴァルドら信頼できる者達にダリヤを託そうとしていた。

やがてダリヤも自分で声渡りを作り上げた。その声が亡き母テリーザに似た瞬間、カルロは懐かしさに涙をにじませながら娘と笑った。そして、魔導具を通した声ではなく、ダリヤ自身の笑い声こそが最も似合うと感じ、娘の人生に涙が少なく笑顔が多いことを願った。

魔導具師ダリヤはうつむかない 一覧

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